【財務分析】これだけ押さえて! 財務3表の基本パターン23選

1 まずは決算書の基本的な形を覚えよう

決算書(いわゆる「財務3表」)は会社の状態を示す大切な情報源ですが、数字が多くて苦手という人も多いでしょう。しかし、安心してください。細かな数字が分からなくても、

決算書の形を見れば、何となく会社の状態が分かります。

この記事では、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書で「これだけ押さえておけば大丈夫」という基本的な形を全部で23個紹介します。細かなことはさておき、まずは形を覚えてください。

2 損益計算書でよく見る形「7選」

損益計算書とは、会社がもうかったか損をしたかを示す財務諸表です。少し難しく説明すると、会計期間の売上、費用、利益の状況を示した財務諸表となります。英語では「Profit and Loss Statement」と表記されるので、「PL」「P/L」と略すこともあります。

損益計算書の基本的な形は次の通りで、ここから売上や利益(ここでは、売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益)がどのように変化するのかに注目します。

損益計算書の基本的な形

損益計算書でよく見られる形は次の通りです。説明は一例であるものの、よく表れるパターンです。

損益計算書によく表れるパターン

損益計算書を読むときは、

利益と対になる費用(売上原価など)や収益に注目

しましょう。また、営業利益までは本業について表していますが、経常利益から先は本業以外の活動も加味されます。経常利益や税引前当期純利益が特徴的な動きをしている場合、有価証券や固定資産の売却などをしている可能性があるので、その理由を調べてみましょう。

3 貸借対照表でよく見る形「8選」

貸借対照表とは、会社がどのようにお金を調達し、それを何に使っているかを示す財務諸表です。少し難しく説明すると、ある時点(通常は決算日ですが、企業によって異なります)の会社の「財政状態」を示した財務諸表となります。英語では「Balance Sheet」と表記されるので、「BS」「B/S」と略すこともあります。

貸借対照表の基本的な形は次の通りで、ここから5つの箱(流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、純資産)の大きさがどのように変化するのかに注目します。

貸借対照表の基本的な形

貸借対照表でよく見られる形は次の通りです。説明は一例であるものの、よく表れるパターンです。

貸借対照表によく表れるパターン

貸借対照表を読むときは、

流動と固定、資産と負債、負債と純資産のバランスに注目

しましょう。その上でちょっと深掘りすると、例えば、次のようなことが分かります。

流動資産が流動負債よりも大きい点は好ましい。でも、売掛金が長期に滞留している一方、買掛金の決済サイトが短いので、今後、資金繰りに窮する恐れがあるかもしれない……。

4 キャッシュフロー計算書でよく見る形「8選」

キャッシュフロー計算書とは、会社の現金の流れ(キャッシュフロー)を示す財務諸表です。少し難しく説明すると、損益計算書や貸借対照表では表れないキャッシュの流れを、3つの区分で詳細に示した財務諸表となります。英語では「Cash Flow Statement」と表記されるので、「CS」「C/S」と略すこともあります。

キャッシュフロー計算書では、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローのプラスとマイナスの組み合わせに注目します。

キャッシュフロー計算書の基本的な形

キャッシュフロー計算書で見られる形は次の通りです。説明は一例であるものの、よく表れるパターンです。

キャッシュフロー計算書によく表れるパターン

繰り返しますが、キャッシュフロー計算書を読むときは、3つのキャッシュフローのプラスとマイナスに注目しましょう。さらに深掘りするなら、

損益計算書や貸借対照表も併せて確認し、プラスとマイナスの理由まで調べてみる

とより専門的な分析になります。

以上(2025年6月更新)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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画像:photo-ac

未来への出航! 小松島市が挑む新プロジェクト

2025年2月4日に、小松島市、株式会社サーキュレーション、株式会社イノベーションパートナーズ、株式会社徳島大正銀行、とくぎんトモニリンクアップ株式会社は「地域経済の好循環に向けた共創推進」を目的とした連携協定を締結しました。

今回、小松島市は連携協定に基づき、企業版ふるさと納税を活用した新たな事業「Komatsushima Innovators Port」をスタートします。自らも企業版ふるさと納税の獲得に尽力された中山市長に、本事業の意気込み等について、伺ってまいりました。

起業創業支援・事業者支援
小松島市でプロジェクト始動!
事業の柱となるInnovators創出プログラム

【特長】
1.プロのアドバイザーによる伴走支援・コンソーシアムによるサポートを行います。
2.参加者一人ひとりの希望に合わせて専門人材や支援内容を計画(完全オーダーメイド型支援)

インタビューの内容をまとめた動画は、こちらからご覧いただけます!
(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


―(1)小松島ステーションパーク内に完成したこかげテラスに行ってまいりました。公園や広場もあって、とても素敵な空間でした。

ありがとうございます。

大好評で、こかげテラスにはすでに多くの方に来ていただいており、相乗効果で小松島ステーションパーク全体が賑やかになっています。公園とこかげテラスがあるニホンフラッシュたぬき広場の間の県道を、土日祝日は歩行者天国にしています。そのため、安心して子どもたちが遊べる空間になっております。

―(2)小松島市の魅力について教えてください。

小松島市は四国の玄関口として非常に賑わっていました。交流人口も含めますと、5万人、6万人、7万人と推移をしておりましたが、橋が掛かった関係でフェリーの需要が少なくなり企業が撤退していきました。ピーク時から比べて約1万人、人口が減ってきておりますが温暖な気候により、一次産品が本当に美味しく、どこに出しても恥ずかしくない地場産品が揃っています。ついこの間も、東京出張の折に、トマトをお土産で持っていきました。著名なインフルエンサーの方が「小松島市のトマト」をインスタグラムにアップしていただきました。インパクトがある地場産品が豊富で、美味しく、かつ安心安全です。

小松島市特産品

また、小松島には海、山、川がありポテンシャルが非常にあります。なかでも一番大きいのは、港が3つあることです。本港地区、金磯、赤石に港があり、特に赤石は、令和12年までの延伸が認められ工事に着手したところでございます。以前からダイヤモンドプリンセスをはじめとした、2千人、3千人規模の大きなクルーズ船が寄港しております。今までは大塚国際美術館や祖谷のかずら橋、にし阿波に訪れていたのが少しずつではございますが小松島市内を周遊していただける外国人の数が増えてきています。

こかげテラスや小松島ステーションパークの整備によって、人が集える場所が増えてきたのではないかと思っております。ぜひ、小松島市にお越しいただければと思います。

―(3)中山市長が就任されて以降、取り組みをされたまちづくり等について教えてください。

地方創生の一丁目一番地は、人口減少にどう向き合うかです。少子化や高齢化、静かな有事に向き合って何とか解決していこうといった取組をしております。その中の大きな1つ、子育て世代応援プロジェクトを柱に、小松島は徳島県で1番子育てがしやすいということを積極的に売り出しております。プロジェクトの1つに、インクルーシブ型遊具の設置があります。小松島市に公園は何か所かありますが、長い時間楽しめる公園はありませんでした。古い遊具を撤去し、市民の皆さまの「遊ぶ場所がない」というご意見に対し、まずは居場所をしっかり作っていこう、家族で子どもを連れて半日、1日遊べる空間を作っていこうということで、小松島ステーションパークを整備させていただきました。

小松島ステーションパーク

また、「働く場所がない」、「子育てを終えて再就職をすることも難しい」といった意見も伺いました。そこで、テレワークを含めた、リスキリング事業にも一昨年より積極的に挑戦をしております。昨年は3名の方が大企業に就職され、多くのサラリーを得ているといった成功事例もでました。これからも、積極的に取り組んでまいりたいと思っています。

―(4)インクルーシブ型遊具のそばのSL車両も、傷んでいた部分の塗装工事をされていましたね。公園で子どもを遊ばせたり、図書館で借りた本をこかげテラスで読むなど、充実した週末を過ごす事が出来そうです。

相乗効果で図書館の本の貸し出し率も上がっていくのではないかと思います。活字離れが言われて久しいですが、小松島市の拠点として今後も整備を加えていこうと思っております。わくわくする空間を小松島ステーションパークから港に向けて、散策しながら時間をつぶせるようなまちづくりの計画をしています。

こかげテラス

―(5)ケント・モリさん等様々な方を「小松島市ふるさとアンバサダー」※ に委嘱されていますが、この取組はどのように着想されましたか?

小松島市の面積45平方キロメートルのうち山間部がほとんどを占めており平地部は少ないです。狭いエリアに11の小学校があります。どの小学校も歩いて通える範囲ですが、少子化の波を受けて生徒数が減ってきています。残念ながら複式学級の学校も何校か存在しており、1クラスしかないため学級替えが出来ません。そのため生きる力の教育がたくましい教育が出来ているのかなと危惧したことからから、学校再編に取り組んでおります。

多くの子育て中のご家族、お父さん、お母さんに小松島市を選んでいただくために、小松島市ならではの教育を子どもには受けてもらうのがいいのではないかと思っております。例えば、著名な方に触れ合い、教えてもらう。このような環境が都会と違って田舎ではなかなかありません。そのため外部人材を招き、教壇に立ってもらい生徒に教えていただく外部人材活用事業を、一昨年から始めました。文化、スポーツ、音楽、様々なジャンルを超えてなかなか教わることができない、羨んでいただけるような教育をしていこうと取り組んでおります。今年も引き続きケント・モリさんはじめ、さまざまな著名な方に直接指導をいただけるようになっております。

※「小松島市ふるさとアンバサダー」・・・文化、スポーツ、芸術等のさまざまな分野で活躍されている市出身者や市ゆかりの方に、小松島市の魅力を発信していただくとともに、新たな小松島ファン(関係人口)を増やしていくことを目的に創設。

【委嘱されている皆さん】
・住友 紀人氏・・・小松島市出身。作・編曲家。
・福島 和可奈氏・・・タレント、マラソンランナー。
・山本 貴子氏・・・小松島市出身、ピアニスト。
・堀尾 和孝氏・・・小松島市出身、プロギタリスト。
・山崎 ていじ氏・・・演歌歌手。
・KENTO MORI氏・・・ダンスアーティスト
・都 玲華氏・・・徳島市出身。プロゴルファー。
・木村 柊也氏・・・小松島市出身。総合格闘家

―(6)2025年2月4日に連携協定(地域経済の好循環に向けた共創推進に関する連携協定)を締結した事業者にどのようなことを期待しますか?

ソフトバンクと三井住友FGが包括提携を発表する際に「大連立」という言葉が使用されておりました。今回の5者連携は、まさに「大連立」ではないかと思います。行政に対してさまざまな企業の知見、ノウハウ、経験を伝えていただけると、小松島市がもしかすると徳島県で一番の市になるかもしれません。このような期待を持って、この事業に取り組んでまいります。

(7)小松島市では今後どのようなことを実現されたいですか?

小松島市の財源を確保するためには、ふるさと納税が大きな手段ではないかなと思っております。今回徳島大正銀行様より大阪の企業様を紹介していただき、すでに複数社から高額な寄付をしていただきました。まだまだ本市はやらなければいけないことがたくさんあります。しかし、財源の確保がなかなか追い付いていません。そのため、企業版ふるさと納税等を利用し、しっかりと財源を確保したうえで、子育て世代応援プロジェクトや学校再編、ごみ処理施設整備等を実施してまいりたいと思います。
そのために、私自らセールスマンとなっていろんなところに赴き、本市の良いところをしっかりとアピールして、小松島ファンを作っていきたいと思っております!

―(8)この記事を読んでいる方にメッセージをお願いいたします!

小松島市には本当に素晴らしい環境があり、人の心も気持ちも温かい市でございます。財政が非常に厳しい中で、やらなければいけないことを後ずさりするのではなく、前に向いて進もうと思っております。「Komatsushima Innovators Port」という旗を掲げ、しっかりと地方創生に取り組んでまいります。大連立も行いましたので、様々な企業の人たちのお力を借りながら、しっかりと持続可能な小松島市のまちをつくってまいります。ぜひ、ご賛同いただき、小松島市のまちづくりに積極的参画していただきますようお願い申し上げます。

以上が、小松島市の中山 俊雄市長がお話ししてくださった内容です!

また、6月9日(月)には、今回の事業のキックオフイベントが開催されます。

とくさくnaviでは今回の事業の取材を続けていきますので、ぜひ、お見逃しなく!

以上(2025年6月作成)

画像:徳島大正銀行 窪内 由記

建設業者必見! 公共工事の受注に必要な経営事項審査の手引き

1 経営事項審査とは

経営事項審査は、

建設業者が、国や地方自治体から発注される公共工事を直接請け負う際に必要となる審査

です。

公共工事を発注する機関は、競争入札に参加しようとする建設業者の資格審査を行うこととされています。この審査では、「客観的事項」と「発注者別評価」の審査結果を点数化して、順位や格付けを行います。このうちの「客観的事項」に当たるのが経営事項審査で、主に次の項目を数値化して評価します。

  • 経営規模
  • 経営状況
  • 技術力
  • その他の審査項目(社会性等)

この記事では、経営事項審査の具体的な項目や手続きの流れなどを解説します。

2 経営事項審査の概要

1)公共工事の競争入札参加資格審査について

経営事項審査は、建設業法で「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない」と規定されています(建設業法第27条の23第1項)。

「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるもの」とは、国、地方公共団体、法人税法別表第一に掲げる公共法人、国土交通省令で定める法人が発注する建設工事で、工事1件の請負代金の額が4500万円(該当する建設工事が建築一式工事の場合は9000万円)以上のものです(建設業法施行令第27条の13柱書)。

なお、堤防の欠壊・道路の埋没・電気設備の故障その他施設または工作物の破壊・埋没等の応急の建設工事、緊急の必要その他やむを得ない事情があるものとして、国土交通大臣が指定する建設工事は、上記建設工事には含まれません(建設業法施行令第27条の13第1号、第2号)。公共工事の競争入札参加資格審査の概要を示すと、次の通りです。

公共工事の競争入札参加資格審査

公共工事の競争入札参加資格審査のうち、発注者別評価の審査に用いられる発注者点は、公共工事の発注者によってそれぞれ基準や重点が異なりますが、客観的事項となる経営事項審査は、どの公共工事の発注者においても共通の評定値となります。

2)審査項目

経営事項審査では、次の項目を基に総合評定値(P)を算出します。

  • 経営規模(X)
  • 経営状況(Y)
  • 技術力(Z)
  • その他の審査項目(社会性等)(W)

3)経営規模(X)

1.年間平均完成工事高(X1)

年間平均完成工事高(X1)は、審査基準日を含む2事業年度分または3事業年度分における完成工事高を平均した年間平均完成工事高を、評点テーブルに当てはめて評点が付けられます。

2.自己資本額と利払前税引前償却前利益額(X2)

経営事項審査における自己資本額とは、貸借対照表上の純資産の額を指します。「審査基準日の自己資本額」または「審査基準日の自己資本額と前審査基準日の自己資本額の平均の額」を算出し、評点テーブルに当てはめて評点が付けられます。

利払前税引前償却前利益額(営業利益+減価償却費)は、審査基準日を含む2事業年度分の平均の額を算出し、評点テーブルに当てはめて評点が付けられます。

自己資本額の点数と利払前税引前償却前利益額の点数を合計して2で除したものが、自己資本額と利払前税引前償却前利益額(X2)となります。

4)経営状況(Y)

1.経営状況を算出するための8指標

経営状況は、審査基準日を含む事業年度の貸借対照表および損益計算書、株主資本等変動計算書に計上された数値から算出される8指標で構成され、次の式で算出します。

  • 純支払利息比率(%)(Y1)=(支払利息-受取利息配当金)/売上高×100
  • 負債回転期間(月)(Y2)=(流動負債+固定負債)/(売上高÷12)
  • 総資本売上総利益率(%)(Y3)=売上総利益/総資本(2期平均)×100
  • 売上高経常利益率(%)(Y4)=経常利益/売上高×100
  • 自己資本対固定資産比率(%)(Y5)=自己資本/固定資産×100
  • 自己資本比率(%)(Y6)=自己資本/総資本×100
  • 営業キャッシュフロー(億円)(Y7)=営業キャッシュフロー(円)/1億円(2期平均)
  • 利益剰余金(億円)(Y8)=利益剰余金(円)/1億円

2.経営状況点数(A)と経営状況の評点(Y)

8指標の数値を基に、経営状況点数(A)と経営状況の評点(Y)を次の式で算出します。

  • 経営状況点数(A)

=-0.4650(Y1)-0.0508(Y2)+0.0264(Y3)+0.0277(Y4)+0.0011(Y5)+0.0089(Y6)+0.0818(Y7)+0.0172(Y8)+0.1906(小数点第3位を四捨五入)

  • 経営状況の評点(Y)=167.3×A+583(小数点第1位を四捨五入)

5)技術力(Z)

技術力(Z)の評点は、業種別技術職員数の点数(Z1)と工事種類別年間平均元請完成工事高の点数(Z2)を用いて次の式で算出します。

  • 技術力(Z)の評点

=業種別技術職員数の点数(Z1)×4/5+工事種類別年間平均元請完成工事高の点数(Z2)×1/5(小数点第1位以下は切り捨て)

6)その他の審査項目(社会性等)(W)

その他の審査項目(社会性等)(W)については、次の評点を基に算出します。

  • 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況(W1)
  • 建設業の営業継続の状況(W2)
  • 防災活動への貢献の状況(W3)
  • 法令遵守の状況(W4)
  • 建設業の経理の状況(W5)
  • 研究開発の状況(W6)
  • 建設機械の保有状況(W7)
  • 国または国際標準化機構が定めた規格による認証または登録の状況

算出式は次の通りです。

その他の審査項目(社会性等)(W)
=(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)×10×190/200
(Wの評点がマイナス値であっても、合計値のまま計算します)

7)総合評定値(P)

3)~6)を基に、総合評定値(P)は次の式で算出されます。

P=0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)

8)まとめ

前3)~6)の内容を一覧にまとめ、審査項目・最高点・最低点・ウエート、総合評定値(P)の算式を示すと、次の通りです。

審査項目・最高点・最低点・ウエート、総合評定値(P)の算式

また、経営事項審査の申請手続きの流れは次の通りです。

経営事項審査の申請手続き

経営事項審査の申請の手続きは、「経営状況(Y)分析の申請」と「経営規模等(X1、X2、Z、W)評価の申請及び総合評定値(P)の請求」に分けることができます。

  • 申請者は、経営状況(Y)分析について、登録経営状況分析機関に申請します。
  • 登録経営状況分析機関は、経営状況(Y)分析結果通知書を申請者に通知します。
  • 申請者は、経営規模等(X1、X2、Z、W)評価の申請及び総合評定値(P)の請求について、経営状況(Y)分析結果通知書を添付して、許可行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)に対して申請します。
  • 許可行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)は、経営規模等(X1、X2、Z、W)評価結果通知書及び総合評定値(P)通知書(経営事項審査結果通知書)を申請者に通知します。

登録経営状況分析機関は、次のウェブサイトで確認できます。

■国土交通省「登録経営状況分析機関一覧」■
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000091.html

3 参考

1)審査基準日

原則として、申請をする日の直前の事業年度終了日(直前の決算日)を指します。

2)有効期間

審査基準日から1年7カ月の間(結果通知書を受け取ってからの期間ではありません)を指します。

3)有効期間を切れ目なく継続するためには

経営事項審査は、毎年、決算終了後4カ月以内を目安に申請が必要です(3月決算の会社は7月末日まで)。

以上(2025年6月更新)

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画像:rrice-Adobe Stock

職業紹介は無料!? 多様なスキル「退職自衛官」の雇用!

1 幅広い業界で活躍する「退職自衛官」

人手不足が叫ばれる昨今、「思うように優秀な人材が集まらない」「新卒を雇っても育てる時間と人員が足りない」という悩みは、業界を問わず、多くの経営者が抱えているはずです。そこで、この記事では人手不足解消のヒントとして、

退職自衛官雇用(自衛隊を退職した人材を、一般企業の社員として雇用すること)

という採用手法をご提案します。

「自衛隊とウチの会社とじゃ、畑が違いすぎないか?」と思う人もいるでしょうが、例えば、

  • 潜水艦乗組員の経験を活かし、造船会社に再就職
  • 准看護師の資格と衛生職のキャリアを活かし、保育施設に再就職
  • 補給員の経験を活かし、不動産会社に再就職

など、実は幅広い業界で退職自衛官が活躍しています。しかも、

退職自衛官の職業紹介(マッチング)は、一般財団法人の自衛隊援護協会が「無料」で実施している

ので、会社は多様なスキル・資格を持った人材を、費用を抑えて雇用できるわけです。

2023年度は、任期を終えた20から30代半ばの自衛官から、早期退職をした50代の自衛官まで、7000人ほどの人材が自衛隊を退職し、その中には民間企業での再就職を目指す人も一定数いました。この状況は多くの会社にとってチャンスかもしれません。

以降で、実際に退職自衛官が再就職した企業で活躍している事例や、退職自衛官を雇用する具体的な方法などについて紹介していきます。人手不足解消のための一手として、参考にしていただけますと幸いです。

2 退職自衛官を雇用した企業の事例紹介

まずは、実際に退職自衛官を雇用した企業の事例を、各企業が「退職自衛官を採用して良かった」と感じているポイントと共に紹介していきます。

1)潜水艦乗組員の経験を活かし、造船会社に再就職

造船関係の事業を行っている、とある会社では、経験が豊富なエキスパートを採用したいという理由から、自衛隊援護協会から紹介を受け、退職自衛官の雇用に踏み切りました。「幅広い知識を持ち、また自衛隊での経験も豊富なため、(有用な)アドバイスをいただき、とても助かっている。また、部下を指導する力と人柄も兼ね備えている」と、関係者は語ります。

採用された退職自衛官は、自衛隊で長く潜水艦の乗組員として働き、その海上でのキャリアを活かし、再就職後は造船管理の分野で活躍をしているそうです。自衛官は非常に転勤が多いため、新しい仕事や人間関係にも順応しやすい傾向があり、それが再就職先でも活きてくるそうです。

2)准看護師の資格と衛生職のキャリアを活かし、保育施設に再就職

ある保育施設を運営する会社は、「自衛隊援護協会から紹介される人材が優秀」という理由で、長年退職自衛官の採用を続けています。「真面目で礼儀正しく、初めに採用した人材が良かったので、退職自衛官にはとても良いイメージを持っている」と、関係者は語ります。

例えば、ある退職自衛官は、自衛隊で衛生職(隊員の身体検査や救護、医療事務に関する業務)の仕事をしていました。退職後、准看護師(注)の資格とそのキャリアを活かして、再就職後は認定こども園の保育士として活躍をしているそうです。

(注)国の特例措置により、准看護師は保育士として見なすことができ、准看護師の資格を持つ退職自衛官を保育士として採用することも可能です。

3)補給員の経験を活かし、不動産会社に再就職

ある不動産業の会社は、社会人としてのマナーを身に付けた人材を採用したいという理由で、自衛隊援護協会から紹介を受け、退職自衛官の雇用を始めました。「自衛隊での勤務経験により、すでに社会人としてのマナーや事務スキルを身に付けている上に、お客様とのコミュニケーションの心配もない。(退職自衛官は)実務スキルさえ身に付ければ即戦力になり得る人材」と、関係者は語ります。

採用された退職自衛官は、自衛隊で補給部隊(必要となる物品を調達・出荷する部隊)として経験を積み、そのキャリアを活かし、再就職後はマンション管理組合をサポートするマネージャーとして活躍をしているそうです。社会人スキルはもちろんですが、自衛隊での共同生活を経て手に入れた高い協調性が、お客様との関係の構築に役立っているとのことです。

ここで紹介した事例以外にも、トラックドライバーや警備員、調理師など、退職自衛官は様々な業界で再就職し、活躍しています。また、事例で紹介した「准看護師」のように資格を持っている人も多いため、即戦力として採用できる人材がそろっているといえます。次からは、退職自衛官を採用するための基本情報と具体的な方法、また持っている資格などについて紹介していきます。

3 退職自衛官雇用の概要

1)定年退職自衛官と自衛隊新卒の違い、それぞれのスキル

一般企業への再就職を目指す退職自衛官は、

  • 定年退職自衛官(若年退職した自衛官)
  • 自衛隊新卒(任期を終えた自衛官)

に大別できます。両者の概要は、図表1の通りです。

退職自衛官の基本情報

1.定年退職自衛官

自衛官は所属や階級によりますが、毎年4000人程度が56歳から57歳で退職します。自衛隊法では、自衛官は定年に達した日(各人の誕生日)の翌日に退職すると規定されており、年間を通して定期的に求職者が公表されます。

会社員の定年退職(おおむね60歳から65歳)と比べると、自衛隊の定年はかなり早いように思えますが、これは精強性を維持するためです。

若年定年制故に体力に自信があり、なおかつ長年隊員の指揮などに従事してきたことにより、マネジメント力や、指導力に長けた人材が多い

というのが定年退職自衛官の特徴です。

ただし、自衛官の定年年齢は段階的に引き上げられていますので、定年退職自衛官の雇用を検討する場合は、防衛省・自衛隊のウェブサイトなどで現在の規定を確認してください。例えば、2024年10月には、1佐から3佐と、2曹から3曹の定年年齢が1年引き上げられています。

■防衛省・自衛隊「自衛隊の定年年齢の引上げについて」■
https://www.mod.go.jp/j/press/news/2024/09/20b.html

2.自衛隊新卒

自衛隊新卒とは、自衛隊で任期を満了した若年層(20から30代半ば)の人材で、毎年3000人程度の自衛官が退職しています。退職時期は任期満了日で、毎年3月に集中して自衛隊新卒者が出ています。

自衛隊新卒は年が若い故に、「任務がつらいから退職した」と思われることも多いですが、これは自衛隊が任期制(任期は所属によって2年から3年の幅あり)を敷いているためで、自衛隊新卒は各種教育や厳しい訓練を通じて、

規律・責任感、実行力、チームワークなど、社会人としての基本的な素養を身に付けた人材

です。

また、定年退職自衛官・自衛隊新卒ともに、任務や退職前の職業訓練などによって、多種多様なスキルを習得しています。図表2は退職自衛官が取得している資格の一例ですので、参考にしてください。

退職自衛官が取得している資格の一例

2)採用方法

次に、退職自衛官の採用方法について解説します。基本的な流れは、図表3の通りです。

退職自衛官の採用方法

図表3のように、防衛省・自衛隊は、自衛隊援護協会と手を組み、退職自衛官の再就職に関しての支援を行っています。なお、首都圏および愛知県に再就職を希望する自衛隊新卒については現在、民間の再就職支援会社が再就職支援を行っています。

基本的には、雇い入れを検討している会社が自衛隊援護協会に求人を登録し、防衛省・自衛隊を通して退職自衛官と会社をマッチングさせる仕組みですが、防衛省・自衛隊に直接、求人情報を提供して、自衛隊援護協会に取り次いでもらうことも可能です。

なお、防衛省・自衛隊と自衛隊援護協会が管理している採用活動については、

求人の掲載から雇用に至るまで、雇い入れる側の会社の費用負担は一切ありません。

詳しくは、防衛省・自衛隊の次のサイトをご確認ください。

■防衛省・自衛隊「退職自衛官の雇用をお考えの皆さまへ」■

退職自衛官雇用の窓口となっている自衛隊援護協会は本部(東京都)の他、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡にある支部を通じて、定期的に合同会社説明会や無料の雇用相談などを行っています。詳しくは自衛隊援護協会のウェブサイトでご確認の上、各支部にお問い合わせください。支部の人材情報サイトでは、今現在、どんなスキルを持った退職自衛官が求職をしているのか確認することもできます。

■自衛隊援護協会■
https://www.engokyokai.jp/

3)予備自衛官制度

退職自衛官を雇用する際に注意しておきたいのが「予備自衛官制度」です。予備自衛官制度とは、

任期を終えた自衛官が、任意で非常勤の自衛隊員として、年間所定の訓練に参加し、大規模災害等の際には自衛官として勤務する制度

です。予備自衛官制度の概要は、図表4の通りです。

予備自衛官制度

例えば、九州を中心に未曽有の被害が出た令和2年7月豪雨や、まだ記憶に新しい令和6年能登半島地震などでも、予備自衛官が活躍しました。

予備自衛官制度に登録している退職自衛官を雇用する場合は、規定の訓練日数に加えて大規模災害などの際に、該当社員が出勤できない

ということになります。予備自衛官制度は再就職先の協力ありきの制度でもあるので、各給付金などが用意されています。給付金についての詳細は、防衛省・自衛隊ウェブサイトをご参照ください。

■防衛省・自衛隊「雇用企業協力確保給付金制度」■
https://www.mod.go.jp/j/profile/reserve/koyou/index.html

以上(2025年6月作成)

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画像:ChatGPT

このままじゃ現場が回らない! 建設業の人手不足打開のカギは?

1 建設業「2024年問題」の現在地は?

労働基準法の「時間外労働の上限規制」が建設業にも適用される(いわゆる2024年問題)ようになってから、1年以上がたちました。

時間外労働の上限規制(2024年4月1日~)

とはいえ、建設業はもともと

  • 社員の高齢化が進む一方、職場のイメージなどから若手がなかなか入ってこない
  • 工期の関係で、月曜日から土曜日の週6日勤務が当たり前になっている
  • 日中は現場で作業し、夜、会社に戻ってから事務作業を行うのが常態化している

など、長時間労働に陥りやすい傾向があり、2024年問題への対応がいまだ追いついていない会社が少なくありません。建設業の会社は、どのように人手不足を解消すればよいのでしょうか。この記事ではそのためのヒントとして、

  • 人手不足の原因を掘り下げて考え、働き方改革につなげる
  • 賃上げや業務のDX化、アウトソーシングなどの施策を打つ

をご提案します。また、建設業界の制度改正にも注意が必要です。直近では、

改正建設業法が2025年12月13日までに施行され、社員などの処遇改善、資材価格高騰による労務費のしわ寄せ防止などが求められる

ようになる予定です。こちらの改正内容についても巻末(第4章)で紹介していますので、ぜひご確認ください。

2 人手不足の原因を掘り下げて考え、働き方改革につなげる

建設業は、工期が決まっている上に、下請が元請に合わせて働かないといけないケースが多いため、長時間労働にメスを入れにくい業界といわれています。そこで、

今の状況のまま労働時間を減らすのではなく、人手を増やし1人当たりの作業量を減らす

という発想で長時間労働の改善を考えてみましょう。まずは人手不足の状況の整理です。

建設業における職業別就業者数の推移を見ると、全体の就業者数は2003年(604万人)から2022年(479万人)にかけて125万人減少しています。就業者の多くを占める技能者も、2003年(401万人)から2022年(302万人)にかけて99万人減少しています。

建設業における職業別就業者数の推移

次に注目したいのが、

若手がなかなか入らず、就業者の高齢化が進行している

という状況です。建設業における55歳以上の就業者の割合は、2003年(26.0%)から2022年(35.9%)にかけて9.9ポイント増え、逆に29歳以下の割合は、2003年(17.7%)から2022年(11.7%)にかけて6.0ポイント減っています。しかも、55歳以上の割合は全産業を上回り、逆に29歳以下の割合は全産業を下回るという状態が20年間ずっと続いています。

建設業就業者の高齢化の進行

従って、人手不足の解消に当たってはまず

いかに若手の入職率を向上(または離職率を低下)させるか

を考えることが大切です。厚生労働省では建設業の会社に対するアンケート調査結果として、「常用の若年技能労働者が定着していない理由」のデータを公表しています。

常用の若年技能労働者が定着していない理由

若手が定着しない理由としては、「仕事環境の厳しさ」「技能・技術習得の難しさ」などが関係しているケースが多いようです。

これらの問題を解決し、若手の入職率を向上(または離職率を低下)させることができれば、人手不足の解消につながるでしょう。仮に即座に若手の採用などにつながらなくても、

「仕事環境の厳しさ」「技能・技術習得の難しさ」などを改善する取り組み自体が、既存社員の長時間労働の改善につながりやすい

ので、やってみる価値は十分あります。次章で具体的な取り組みの内容をいくつか紹介します。

3 賃上げや業務のDX化、アウトソーシングなどの施策を打つ

1)賃上げ

冒頭でも軽く触れましたが、建設業では「工期の関係で、月曜日から土曜日の週6日勤務が当たり前になっている」という会社が少なくありません。ただ、これは工期だけの問題ではなく、

建設業に日給制の会社が多く、週6日勤務しないと生活給を確保できない

という社員側の事情が絡んでいるケースもあるようです。もし、今よりも単時間労働分の賃金を上げることができれば、生活給を当てにしている既存社員の時間外労働を減らしつつ、前述した若手の「収入の低さ」「休日の少なさ」などに対する不満を解消できるでしょう。

厚生労働省が毎年3月ごろに公表する「賃金センサス(賃金構造基本統計調査)」には、賃金や賞与に関するデータが、会社の規模や産業、社員の属性(性別、年齢、勤続年数、役職、職種など)に応じて細かく分けられています。例えば、建設業の「所定内給与額(基本給など)」は、2024年時点で1カ月当たり35万2600円です(一般労働者の場合)。

自社の賃金が世間相場を下回っている場合、賃上げを検討してもよいかもしれません。ただ、基本給などの固定的な賃金は一度上げると簡単に下げられないので、慎重を期すなら、まずは

支給要件を満たす社員に対して支給する「手当」の増額

で対応するとよいでしょう。建設業であれば、現場作業に従事する社員に支給する「現場手当」や、建築士・土木施工管理技士などの有資格者に支給する「資格手当」などがそうです。雪が多い地域では、除雪作業を行う社員に手当を支給するケースなどもあります。

2)業務のDX化、アウトソーシング

建設業の会社の中には、業務のDX化を図ることで長時間労働の改善を図っているところが数多くあります。例えば、

  • 施工管理アプリを導入し、オンラインで図面上にメモや写真を残せるようにすることで、会社に資料を取りに戻ったり、印刷したりする手間を削減する
  • 測量や土量算出を、人力ではなくドローンやレーザースキャナーを活用して行うことで、現場の社員の負担を軽減する
  • 発注者・元請・下請間の連絡を、オンライン会議システムで行うようにすることで、日程調整や移動にかかる時間を削減する
  • 社員にタブレット端末を貸与し、現場での作業を終えた後、会社に戻らなくても事務作業を行えるようにする。クラウド勤怠管理システムも導入し、打刻も現場で行う

といった取り組みがあります。

また、これまで現場の社員がやっていた業務を、別部署や外部の業者にアウトソーシングしている会社もあります。例えば、

  • 現場の社員が行っていた安全書類等のチェックを別部署に委託する
  • 3D施工図の設計を外部のCADオペレーターに委託する

といった取り組みがあります。

業務のDX化、アウトソーシングの取り組みは、前述した若手の「仕事のきつさ」「作業環境の厳しさ」などの不満解消につながるでしょう。なお、これらの取り組みについては、国土交通省が詳細な事例集を公表していますので、興味がある人は下記URLからご確認ください。

■国土交通省「建設業における働き方改革推進のための事例集(下記URL下段)」■
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_fr1_000001_00050.html

3)元請との関係調整

社内で働き方改革を推進したくても、取引先との関係が影響してなかなか前に進まないというのは、どの業界でもある話です。建設業の場合、前述した通り、下請が元請に合わせて働かないといけないケースが多いなど、「元請>下請」という力関係になりがちです。

下請法などにより、元請と下請は対等な関係で取引できるようにルールが整備されていますが、なかには力関係を盾に、元請が下請に理不尽な要求をのませようとする悪質なケースもあります。

社員を守るためにも、明らかに理不尽な要求に対しては泣き寝入りせず、毅然とした対応を取ることが大切です。もしも元請・下請間でトラブルになりそうなときは、次のような相談窓口を活用しましょう。

■中小企業庁「下請かけこみ寺」■
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/kakekomi.html
■公正取引委員会「独占禁止法相談ネットワーク」■
https://www.jftc.go.jp/soudan/madoguchi/soudan-net.html

4)「3K」のイメージを払拭する

採用活動社内の働き方改革を図ることができたら、それらを若手の求職者に上手に伝えることが大切です。

例えば、賃金額が世間相場よりも高かったり、ユニークな手当を導入したりしている場合、求人情報でしっかりPRしたいところです。

また、建設業は、いわゆる「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージを持たれがちですが、前述した業務のDX化などが進む中で、社員の働き方は変わりつつあります。施工管理アプリやドローンを使って事業を行っている場合などは、その様子を動画で撮影して、会社のウェブサイトやSNSなどで視聴できるようにすると、若手が興味を持ちやすいかもしれません。

4 (参考)2025年の建設業法改正について

最後に、2025年12月13日まで(公布日である2024年6月14日から1年6カ月以内)に施行予定の、改正建設業法について解説します。今回の改正のポイントは大きく3つに分けられます。

1)処遇改善

1.労働者の処遇確保の努力義務化

建設業者に対し、労働者の処遇を確保する「努力義務」が課せられます。具体的には、

  • 労働者の能力(知識や技能)を公正に評価して賃金を支払うこと
  • その他、労働者の処遇を確保するための措置を効果的に実施すること

が求められるようになります。

2.不当に金額の低い見積もり提出・見積もり依頼の禁止

また、労務費(賃金原資)について、国土交通省の中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成し、それに基づいて

著しく低い材料費等による見積もり提出・見積もり依頼が禁止

されるようになります。

3.不当に金額の低い請負契約の禁止

この他、建設工事の請負契約について、

注文者がその地位を利用して、原価に満たない金額で契約を締結することが禁止

されます。

2)資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止

1.契約締結前のルールの追加

請負契約の締結前のルールとして、

  • 受注者が注文者に、資材高騰などの請負金額に影響を及ぼすリスクの情報を通知すること
  • 資材が高騰した際の請負代金などの「変更方法」を、契約書記載事項として明確に定めること

が義務付けられます。

2.契約締結後のルールの追加

請負契約の締結後のルールとして、

  • 実際に資材高騰等が起きた場合、受注者が注文者に、請負代金等変更について協議を申し出ることができること
  • 注文者は、受注者から協議の申し出があったら、それに誠実に協議応じる努力義務を負うこと

が定められます。

3)働き方改革・生産性向上

1.働き方改革

いわゆる工期ダンピング(建設工事を施工するために通常必要とされる期間よりも著しく短い工期を設定する請負契約)への規制が強化されます。

もともと注文者については、工期が著しく短い請負契約を締結することが禁止されていますが、このルールが受注者側にも適用

されるようになります。また、

  • 受注者が注文者に、資材が入手困難になるなど工期に影響を及ぼすリスクの情報を通知する義務を負うこと
  • 通知を受けた注文者は、工期の調整について誠実に協議に応じる努力義務を負うこと

が定められます。

2.生産性向上

本来、公共性があったり、多くの人が利用したりする建物の建設工事では、専任の監理技術者等を置くことが義務付けられていますが、

ウェアラブルカメラなどのICTを活用することを条件に、専任者の設置義務が緩和

されます。

以上(2025年6月更新)
(監修 弁護士 田島直明)

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画像:koumaru-Adobe Stock

労災防止! 建設業特有の安全衛生管理体制をチェック

1 安全管理が大変だからこそ、ルールが重要な建設業

建設業は、墜落・転落などの労働災害(以下「労災」)が特に起きやすい業種です。危険な作業が多いのもそうですが、もう1つ大きな理由として、多くの事業者が同じ場所で作業をする「重層下請構造」のため、安全管理が難しいということが挙げられます。

重層下請構造のイメージ

労働安全衛生法(以下「安衛法」)では、こうした建設業特有の事情に合わせた労災防止のルールを定めています。取り急ぎ押さえておくべきルールは、

  • 注文者や事業者など、立場に応じて変わる労災防止対策の義務
  • 統括安全衛生責任者など、建設業特有の安全衛生管理体制

です。以降で詳しく紹介しますので、不安がある場合はご一読ください。

2 立場に応じて変わる労災防止対策の義務

1)注文者、事業者、特定元方事業者それぞれの義務を整理

建設業の労災防止対策を考える上で、まず押さえておきたいのが安衛法の「注文者」「事業者」というワードです。簡単に言うと、

  • 注文者:仕事の全部または一部を他者に依頼する者
  • 事業者:自社の雇用する労働者に作業をさせる者(事業を行うもので労働者を使用するもの)

という意味で、それぞれに異なる労災防止対策が義務付けられています。言葉の意味は単純ですが、建設業の場合、前述した重層下請構造の関係で、誰が注文者で、誰が事業者かが分かりにくいので、念のため図で整理してみましょう。図表2の赤囲みの部分が該当者です。

建設業における注文者と事業者のイメージ

図表2の場合、注文者は「発注者、元請、一次下請」になります。二次下請は自分たちの仕事の一部を請け負わせる相手がいないため、注文者にはなりません。一方、事業者は「元請、一次下請、二次下請」になります。発注者は自社の雇用する労働者を現場で働かせないのであれば、(建設現場の労災防止対策を実施すべき)事業者にはなりません。

さて、注文者と事業者には、それぞれ図表3の労災防止対策が義務付けられています。なお、事業者のうち、建設業・造船業の場合については、

発注者から直接建設等の仕事の依頼を受ける元請は、安衛法の「特定元方事業者」

に当たり、通常の事業者の義務に加えて、特定元方事業者の義務も果たさなければなりません。

注文者、事業者、特定元方事業者の義務

どれも大切な義務ですが、図表3の赤字の「健康障害防止措置」については、2023年4月1日に「一人親方等の安全衛生対策」に関する法改正がありましたので、事業者は義務の内容について認識の誤りがないか、いま一度確認しておきましょう。

2)健康障害防止措置は、労働者だけでなく「一人親方等」も対象

健康障害防止措置とは、安衛法第22条で列挙されている「危険有害な作業」に従事する労働者が健康障害になるのを防ぐため、事業者が実施しなければならないとされる措置のことです。具体的には、

  • 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
  • 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
  • 計器監視、精密工作等の作業による健康障害
  • 排気、排液または残さい物による健康障害

を防止するために必要な措置を実施する義務があります。

建設業の場合、例えば、ずい道(トンネル)の掘削作業や金属の溶接作業などで、労働者が粉じんにさらされることがありますが、こうした場合は「粉じんを防ぐための保護具を労働者に着用させる」などの措置を実施する必要があります。また、

自社の労働者だけでなく、「作業を請け負わせる一人親方等」「同じ場所で作業を行う労働者以外の人」についても、健康障害防止措置が義務付け

られています。

一人親方等や労働者以外の人に対する健康障害防止措置

一人親方等や労働者以外の人に対して健康障害防止措置を実施する義務を負うのは、「その人たちに仕事を請け負わせる事業者」です。イメージは図表5の通りです。

健康障害防止措置の実施義務を負う事業者

なお、元請(特定元方事業者)の場合、自ら仕事を請け負わせる一次下請や一人親方等に対して健康障害防止措置の実施義務を負うだけでなく、

下請(一次下請だけでなく全ての下請)が健康障害防止措置の実施義務に反している場合、その下請に対して必要な指示を行う義務

も負います。

3 建設業特有の安全衛生管理体制

前章で紹介した義務を確実に履行するため、各事業者には安全衛生管理体制の構築が義務付けられています。建設業の場合、図表6の通り、建設業特有の担当者の選任が必要となります。なお、労働者数は同じ場所で作業をする労働者(自社が雇用する者以外も含む)の人数です。

建設現場に必要な担当者は?

以降で各担当者の概要、選任に必要な手続きを紹介します。なお、図表6は建設業特有の内容ですが、この他に通常の安全衛生管理体制(建設業以外の業種にも広く適用されるもの)の構築も必要となるため、注意してください。詳細は、次の記事をご確認ください。

1)統括安全衛生責任者

1.主な職務

元方安全衛生管理者などを指揮し、次の6つの事項を統括管理します。

  • 協議組織の設置・運営
  • 作業間の連絡・調整
  • 作業場所の巡視(巡視の頻度については特に定めなし)
  • 下請(関係請負人)が行う労働者の安全衛生教育に対する指導・援助
  • 仕事の工程に関する計画、作業場所における機械、設備等の配置計画の作成、当該機械、設備等を使用する作業に関し下請(関係請負人)が安衛法等に基づき講ずべき措置についての指導
  • その他労働災害防止のために必要な事項

2.担当者になれる者、選任時に必要な手続き

建設現場において、事業を実質的に統括管理する者が担当します。元請(特定元方事業者)は事業の開始後、担当者の氏名等を、遅滞なく現場を管轄する労働基準監督署長に報告します。

2)元方安全衛生管理者

1.主な職務

統括安全衛生責任者が統括管理する事項のうち、技術的事項の管理を担当します。

2.担当者になれる者、選任時に必要な手続き

大学または高等専門学校における理科系統の正規課程修了者で、3年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験がある者など、一定の資格を有する者でなければなりません。元請(特定元方事業者)は事業の開始後、担当者の氏名等を、遅滞なく現場を管轄する労働基準監督署長に報告します。

3)店社安全衛生管理者

1.主な職務

統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者の選任義務がない建設現場にて、主に次の5つの職務を担当します。

  • 建設現場における、統括安全衛生管理を担当する者(現場代理人等)に対する指導
  • 作業場所の巡視(毎月1回以上)
  • 労働者の作業の種類その他作業の実施状況の把握
  • 協議組織の会議への参加
  • 仕事の工程に関する計画、作業場所における機械、設備等の配置計画の作成、当該機械、設備等を使用する作業に関し下請(関係請負人)が安衛法等に基づき講ずべき措置が講じられているかの確認

2.担当者になれる者、選任時に必要な手続き

大学または高等専門学校の卒業者等で、3年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験がある者など、一定の資格を有する者でなければなりません。元請(特定元方事業者)は事業の開始後、担当者の氏名等を、遅滞なく現場を管轄する労働基準監督署長に報告します。

4)安全衛生責任者

1.主な職務

建設業特有の安全衛生管理体制の中で、唯一下請(関係請負人)が選任する担当者で、次の6つの職務を担当します。

  • 統括安全衛生責任者との連絡
  • 統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項の関係者への連絡
  • 2.の事項のうち、下請(関係請負人)に関するものの実施についての管理
  • 下請(関係請負人)がその労働者の作業の実施に関し計画を作成する場合における当該計画と元請(特定元方事業者)が作成する仕事の工程に関する計画等との整合性の確保を図るための統括安全衛生責任者との調整
  • 労働者の混在作業に起因する労働災害に関する危険の有無の確認
  • 下請(関係請負人)がその仕事の一部を他の請負人に請け負わせている場合における、その請負人の安全衛生責任者との作業間の連絡調整

2.担当者になれる者、選任時に必要な手続き

担当者になるための要件については特に定めがありませんが、職長が選任されることが多いようです。なお、選任に当たり、現場を管轄する労働基準監督署長などへの報告は不要です。ただし、選任した場合はその旨を元請(特定元方事業者)に遅滞なく通報する必要があります。

以上(2025年6月更新)
(監修 TMI総合法律事務所 弁護士 池田絹助)

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画像:unsplash

はじめてでも大丈夫!【とくぎんサクセスクラブ】パソコンセミナーのご紹介

とくぎんサクセスクラブでは、隔月でパソコンセミナーを開催しています。
「パソコン操作に自信がない」「独学では限界を感じている」そんな会員さまのためのセミナーです。
Excel・Word・PowerPoint等、基本操作からビジネスに役立つソフトの使い方まで、丁寧にサポートします。

会場:株式会社ジョイメイト徳島バイパス店 徳島市沖浜1丁目9番地2

8月開催のPCセミナーはAI基本講座! AIを仕事で上手く活用する方法を学ぶことができます!

 

前園さん

【インストラクター 前園 和弘 氏】

「仕事でイメージしやすい」を意識して講習しています。講習中は、職場でどういう場面で利用されているかを交えながら、様々な機能をマスターしてもらいます。
職場での疑問が一つでもすっきりしてもらえる手助けになれたらと思います。
よく使う科目から、今後仕事で使いそうな科目にも興味をもっていただいて、ぜひ当校のパソコンセミナーを活用してみてください!

 

森さん

【インストラクター 森 尚美 氏】

「丁寧にわかりやすく」を心がけて講習しています。
講習に使用するテキストは、当校の講師によるオリジナルです。仕事でよく利用する機能を中心に構成し、普段のパソコン教室で質問が多かったり、操作に注意が必要だったりする内容も踏まえていますので、講習後にすぐに仕事に取り入れることができます。
どの科目もご好評いただいておりますので、ぜひ受講してみてください!

 

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セミナーの様子

 

【過去受講者さまの声】

  • 「初めて参加しましたが、また機会がありましたらぜひ参加させていただきます。とても勉強になり、楽しかったです。」
  • 「参考になる話が多く、もっと色々と教えていただきたいです。」
  • 「前より分かることが増えて、嬉しかったです。」
  • 「説明がとても分かりやすかったです。」

セミナー内容は開催月によって変わります。

初級~応用コースまで、レベルに合わせての受講ができますので、この機会にご参加ください! お申込みは以下のセミナー・イベントページよりお進みください。

以上(2025年6月作成)

【朝礼】「6月病」と“ゆるさ”のすすめ……ゆっくり前に進むチームづくりを!

【ポイント】

  • 6月病になりやすい人には、真面目、責任感が強いなどの特徴がある
  • 「無理をしすぎない。でも、自分に余裕がある日は、誰かをちょっと助けてみる」が大切
  • “持ちつ持たれつ”の精神を大切にするチームは、折れずに生き残っていける

おはようございます。皆さんは「6月病」をご存じでしょうか。5月病ともいわれますが、4月に入社や異動を経験した人が、環境の変化に適応できずにストレスを抱え過ぎて心身の不調や体調不良を起こすことをいいます。医学的には「適応障害」の一種で、真面目な人、責任感が強い人などが6月病になりやすいそうです。

私は医者ではないので医学的なアドバイスはできませんが、6月病になりにくいチームをつくるため、日々の仕事の心構えとして、皆さんの心に留めておいてほしいことが2つあります。

1つは、「無理をしすぎないように」です。当たり前のことですが、頑張りすぎて体や心を壊してしまっては元も子もありません。もちろん、時には歯を食いしばってガッツを見せなければならない場面もありますが、頑張りというものはそこまで長く持続しません。大切なのはメリハリですから、いい意味で“ゆるさ”を身に付けてください。

もう1つは、「余裕があるときは、誰かをちょっと助けよう」です。頑張りすぎてしまう人というのは、「自分が頑張らないせいで、他の人にしわ寄せがいってしまうこと」を心配しています。だから、「この人、少し頑張りすぎだな」と思う人がいたら、「今日は私がやっとくよ」と自分のほうから助け舟を出せる人になってください。余裕のあるときだけ、ちょっとだけでいいのです。真面目な人にそういうことを言うと、「いえ、一人で大丈夫です」と返してくるのがお決まりですが、そこでもう一押し、「いいから、いいから」と笑顔で言える人になりましょう。

無理をしすぎない。でも、自分に余裕がある日は、誰かをちょっと助けてみる。そのぐらいのメンタルでいたほうがお互いに楽ですし、私はそういう“持ちつ持たれつ”の精神を大切にするチームこそ、これからの厳しいビジネス環境を生き残っていけると思います。しなやかな組織ほど、折れにくいですからね。

今日も、それぞれのペースで。でもチーム全体としては、ゆっくりでもちゃんと前に進んでいける。そんな一日を一緒につくっていきましょう。

以上(2025年6月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

「大学×企業の可能性を広げる」近畿大学リエゾンセンターに聞く産学連携の今と未来(2)

令和4年3月24日、近畿大学と徳島大正銀行は「産学連携包括契約」を締結しました。
産学連携・交流を円滑に推進するための組織が近畿大学リエゾンセンター(KLC)です。
「とくぎんサクセスクラブnavi」(とくさくnavi)では、KLCのコーディネーター武田和也さんへのインタビューを3回連載でお届けします。産学連携の『今』、地域企業とのつながり方や未来の可能性に迫ります。

【第2回】

第2回では、実際に企業と行われた産学連携の事例を中心に紹介します。産学連携のメリットや、とくぎんサクセスクラブ会員企業さまとのエピソードも交え、その実態に迫ります。

―近畿大学ではこれまでにどのような産学連携の取り組みがありましたか。

現在、年間で250~300程の相談事案をコーディネートしています。相談の件数はどんどん増えてきました。私は全ての相談に目を通していますが、以前は理系ネタが多かったんです。町工場から、こういう機械加工をしているけれど加工がうまくいかない、プラスチックの成型するときのプラスチックの流れ方がうまくいかない、そのような技術的な相談が多かったんです。最近では、文系ネタも増えて、自社商品を展開したい、などのビジネスの相談が多いです。デザインの相談も多くなっていますね。
近畿大学が学生を増やそうと広報にも力を入れて、その宣伝で大学の名前が知れ渡っていくにつれて、KLCへの相談の数も増えていきましたね。
ご相談をいただく地域は近畿地区が一番多く、次に関東、と続きます。海外からのご相談もあるんですよ。四国からのご相談は少ないので、今回を機にぜひ増えてほしいです。
以前は直接面談ばかりでしたが、コロナ以降はWeb面談も増えました。遠方であったり、ご都合で難しい際はwebでも対応することができます。

―大学と企業のどのような橋渡しを目指しているのですか。

なるべくお断りしないようにしています。どうしても先生がいらっしゃらない場合や、分析装置だけを貸し出してほしい、なんてご依頼の時はお断りをすることもあります。ただ、お断りするときも、その分析ならあそこの研究機関でできますよ、とご紹介したり情報をお渡しするようにしています。
ご相談を引き受けるときは、企業も大学もWIN WINになるように。また、どんぴしゃの先生でなくてもある程度情報をお渡しすることもできるので、関連の先生をご紹介するようにしていますね。

近畿大学内にあるKLCショールーム

―企業がKLCを活用することでどんなメリットがありますか。

企業内に研究部門や部署がなくても委託することができます。得意な分野を持っている先生と企業が希望しているものが合致するなら研究を依頼するのもありなんじゃないでしょうか。また、いつも同じ頭で考えていると似たような商品展開になることがありますよね。
ちょっと違うアイデアがほしい、そんな時に大学を利用してもらうのもいいと思います。学生たちのアイデアは常識に縛られていません。奇抜なアイデアになるかもしれませんが、それが社内の起爆剤になるかもしれないですね。
また、企業にとっては、近畿大学との共同研究という謳い方ができるので、そちらもメリットになるのではないでしょうか。
新潟のおせんべい屋さんからのご相談の例です。若い人たちにおせんべいを食べてもらいたいのでビジネス展開を考えてほしいとご依頼を受けました。また、おせんべい屋さんはお得感のある大きなパッケージでなければ売れないというイメージを持っていました。そこで、学生たちの鞄の中身をみせてもらい、テーブルの上に出して、どんなお菓子をもっているかの傾向を調べると、小さくてかわいいお菓子が入っていたんです。お徳用サイズを持ち歩く学生はなかなかいないので、小さくても売れるんではないかとヒントを得て、小さいパッケージの商品を開発しました。そして生まれた商品は、小さくて持ち運びしやすく、若者でも親しみやすいと好評でした。パッケージのキャラクターも学生たちの案です。

共同研究により開発された様々な商品

共同研究により、これまでに様々な商品が開発されています。次回はリエゾンセンターが描く産学連携の進め方や、企業へのメッセージをご紹介します。
近畿大学産学連携についてのご相談は、お取引のある営業店にお問合せください。または、とくぎんサクセスクラブnaviのお問合せフォームからご連絡ください。

以上(2025年6月作成)

画像:近畿大学リエゾンセンター

【分かりやすい原価計算(6)】設備などの初期投資は超・固定費~投資の判断を左右する「回収期間」~

1 設備などの初期投資は、超・固定費

「設備投資がなかったら、どんなに楽だっただろう」という嘆きを聞くことがあります。この設備投資というものが、どうしてその後の状況の変化で大きな問題になるのか、投資するときにはどのようなことに気を付ければよいかを一緒に考えていきましょう。これも原価計算が解決する課題です。

費用をかけるときはそれが変動費であるか固定費であるかを理解しておく必要があります。そして、今回は固定費の中の固定費ともいえる「初期投資」について説明したいと思います。

固定費は、売上の増減によらず一定額発生する費用であり、何か手を打たなければ将来にわたり発生し続けるものです。これに対して、初期投資は、

設備や新規事業など多額のお金がいっぺんに出ていってしまうもの

です。支払ったら最後、もう取り返すことはできません。実は、この特徴が通常の固定費(基本的に将来にわたって発生が続く費用)以上にやっかいなのです。

どういうことかというと、初期投資を支払った後で、状況が想定と違ってしまうケースがあります。例えば、海外から観光客が増えているからとホテルを建設中にコロナ禍に見舞われた会社は、既に建設に要した初期投資を取り戻すことはできません。また、仮にホテルはなんとか開業できたとしても、人の動きが抑制され宿泊客が激減している状況では、建設にかかった初期投資をすぐに取り戻すことは不可能です。このように、過去に支払ってしまったものというのは、当たり前の話ではありますが、どうにもできないのです。

初期投資のために銀行から借入をする場合も、考え方は同じです。なぜなら、自社から実際にお金が出ていくタイミングが銀行からの借入によって後ろ倒しになるだけで、結局自社で負担せざるを得ないのは同じだからです。

そうは言っても、経営をする以上は投資をしないというわけにはいきません。では、どうすればよいでしょうか。それは、初期投資が必要になった場合には、その案件の自社にとっての負担の大きさ、つまりリスクの大きさを客観的に理解しておくと判断がしやすくなります。

2 リスクは「回収期間」でつかもう

初期投資のリスクの大きさを測る指標として「回収期間」を使います。ざっくり言えば、回収期間とは「投資後、何年たったら収支がトントンになる予想なのか」を示しています。

例えば、新工場建設にかかる投資の回収期間が2年という場合には、新工場が予定どおりに操業し売上につながれば、投資で出ていった金額と同じ金額が入ってきて元がとれるのが、2年後ということです。

「回収」という言葉の意味は、かけたお金が回収できる、つまり、収支がトントンになることを意味します。ちなみに、有名な「損益分岐点売上高」は、損益計算書上の収支がトントン、つまり利益がゼロになる売上高のことです。回収期間というのは、「投資版の損益分岐点売上高」と考えると分かりやすいかもしれません。

次に、判断の仕方です。回収期間が2年と4年であればどちらがいいでしょうか。答えは2年です。

この数年の間で痛感した方も多いと思いますが、遠い将来ほど予測することは難しいものです。回収期間においても、先は分からないので、長くないほうが安全という考え方がベースにあります。回収期間は簡単に計算できますので、ぜひ勘を鍛えるために次の数値例を参考にしてください。

3 事例で確認。回収期間で見る投資リスク判断

機械の購入代金が100万円であり、手元に残るお金が年30万円という投資案件があったとします。まず、投資のマイナスと投資してからの収支のプラスを前から足していき、プラスになるところを見つけます。

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この場合、

-100万円(機械の購入代金。つまり初期投資額)に30万円+30万円+30万円+30万円で4年目でプラス

になります。プラスになる年数が同じであれば、その中でも小数点以下がどれくらいになるかの端数を見て判断します。

最初の3年と、4年目は10万円だけあればよいので、10万円を1年分の30万円で割って0.33…、3.33年となります。

この投資の回収期間は、3.33年と評価します。

4 実務の手順の肝は、予測数値の洗い出し

実際の実務の手順は、

  1. 投資額を見積もる
  2. 変化する収入と費用の金額を洗い出す
  3. 「回収期間」を計算
  4. 計算結果をもとに経営者と検討

となります。上記で見たように計算自体は簡単ですが、肝となるのは1.と2.の手順です。

1.については、業者に設備の見積もりを依頼するなどして投資額を見積もります。

2.については、製品の増産や新製品の販売によって売上が増える場合はその金額を変化する収入として予測します。また、それにともなって増加する仕入などが変化する費用です。あるいは、人を増やさないといけないのであれば、人件費の増加も変化する費用になります。ここでポイントとなるのは投資によって変化するものを考えるということです。投資してもしなくてもかかる費用は、考える必要がありません。なぜなら、投資してもしなくても変わらないので、投資の判断には影響がないからです。このように数値を予測するところが大事になります。

5 回収期間は何年がベスト!?

投資の検討をする際、回収期間は短いほうが安全でよいのは分かると思います。では、実際の判断に用いるときには、具体的に何年までならよいのでしょうか。実は、この点については、各社の資金状況や事業の種類によって大きく異なります。そのため、個別に判断していくしかないのです。そして、同じ業種でも扱うジャンルによっては、回収期間の目安は異なるべきです。

飲食業で考えてみましょう。飲食業は、出店のために6カ月分の敷金や什器備品を必要とするなど初期投資が多い業種の1つです。そのため、回収期間が指標として重視される傾向にあります。

例えば、タピオカ屋を出店するとしましょう。数年前に流行したのはまだ記憶に新しいですが、タピオカのような新メニューを主に扱う場合には、その流行が数年、数十年にわたって続くかどうかはその時点では分かりません。とすると、回収期間としてはできるだけ早く、数カ月から1年程度、長くても2年以内を目指したほうが安全でしょう。

一方、出す店がラーメン屋だった場合は話が変わります。ラーメンは、人気が安定しているジャンルといえるため、タピオカに比べれば、長い期間需要が見込めるでしょう。もちろん、回収期間は短いほうがいいものの、3~5年程度の回収期間であれば、許容できることも多いといえます。

このように、同じ飲食業でも主力のメニューが違えば、顧客や市場の状況はまったく異なります。その結果、回収期間の目安にも大きな影響を与えるのです。そこで、自社が取り組む事業の性質を十分理解した上で、目安は各自が設定するしかありません。逆に、目安がイメージできないようであれば、その事業や業種に関する情報収集が十分ではない可能性がありますので、再考したほうがいいかもしれません。

いかがでしょうか。固定費の中の固定費である「初期投資」の判断に役立つ手法として、回収期間を押さえて、次の一手につなげてほしいと思います。

以上(2025年5月更新)

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画像:Shutter z-shutterstock