名称変更と新枠創設! 2025年版「事業承継・M&A補助金」のご紹介

「事業承継・M&A補助金」は、2025年の改正によって枠組みが整理され、後継者承継からM&A後の統合(PMI)、廃業・再チャレンジまで、企業の多様な場面で活用できる制度になりました。

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あなたの老後を左右する? 年金改正、遺族年金「5年有期給付化」と「子の加算」の解説と対策

今後遺族年金制度が大きく変わります。特に、子のない40歳未満の女性については、共働き夫婦が主流となっている昨今では、遺族への給付の必要性が薄れているとはいえ、無期(終身)支給から5年の有期支給への変更は相当大きな変更です。

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ここがポイント2025年の年末調整!~基礎控除、給与所得控除、特定親族特別控除の改正を徹底解説~

令和7年度税制改正は、基礎控除や給与所得控除の改正、特定親族特別控除の創設など、大きな改正がありました。これらは、令和7年12月の年末調整作業から影響するものであり、年末調整における税額計算はもとより、従業員への周知もしっかり行っていく必要があります。

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全事業所が対象!育児・介護休業法改正に係る指針の実務対応のポイント(後編)

令和7年10月1日に施行される育児・介護休業法の改正と関連した両立支援指針の内容を解説し、中小企業が両立支援を経営施策として取り入れる際の実践的なポイントをご紹介します。

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2025年9月「日経ビジネス電子版」過去30日間の人気記事ベスト10

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アイデアと技術が化学反応! 中小企業×大学の最強タッグ術②

1 企業事例から「産学連携」のイメージをつかもう!

産学連携とは、

企業が大学や研究機関と協力し、研究者の知見や最新技術を取り入れる取り組み

です。

「産学連携とはどんなものか」というイメージをつかんでいただくため、

産学連携により、こどもたちの世界観を広げる教育プログラムを開発した企業「シンクアロット」

にインタビューを実施しました。研究者との連携をどのように始め、どんな成果を得たのかを以降で詳しくご紹介します。また、巻末では産学連携を検討する際の基本的な流れと、利用可能な支援制度についても記載しているので、興味がある人はぜひご確認ください。

なお、この記事は後編です。前編では産学連携により、今までにない美味しいデカフェコーヒーを生み出した企業の事例を紹介しています。

2 「こどもたちに、世界観を広げるための平等な機会を与えたい」シンクアロット

シンクアロット

「こどもたちの世界観を広げる」をビジョンとして掲げるシンクアロット。代表の漆間康介(うるま こうすけ)さん。

同社は2018年の設立以来、保育園・幼稚園(以下、園)の未就学児向け教育プログラム「せかいタッチ」を中心に事業を展開しています。「せかいタッチ」は、教材を通じて海外の自然や文化、言葉に触れ、さらに現地園児とのオンライン交流を組み合わせ、こどもたちの心の育ちを支援するサービス。未就学児教育の現場に科学的な体験と学びを届けています。

1)産学連携に至った経緯

漆間さんは、自身の海外赴任経験から「新しい世界に触れる体験が人の視野を広げる」と確信。海外・異文化と交流することで、異なる人や文化に関心を持つ機会を、その環境にかかわらず与えたいと考え、サービスを立ち上げます。しかし、

教育サービスの効果を客観的に示すのは容易ではなく、科学的裏付けが不可欠

でした。

そこで、当時参加していた多摩イノベーションエコシステムを通じて、効果検証に協力してくれる大学の研究者を探すことに。数人の先生と面談を重ねた結果、国際基督教大学で発達心理学を研究している直井望(なおい のぞみ)上級准教授と出会います。

直井上級准教授が「多様性や文化がこどもたちに与える影響」に関心を示したこともあり、両者のニーズが一致して「せかいタッチ」の共同研究を行うことになりました。

2)産学連携だからこそできたこと

研究開始時、最大の課題は「こどもたちの世界観や好奇心をどう測るのか?」でした。当時はまだ効果を測るノウハウもなく、何もかも手探りの状態だったのです。

当初、シンクアロットは「こどもたちに手をあげてもらう」ことで効果を測る予定でしたが、直井上級准教授から「未就学児は肯定バイアス(『はい』か『いいえ』の質問をされたら『はい』と答えてしまう現象)が強く、単純な質問形式では正確な評価は困難である」との指摘が……。

そこで、シンクアロットと直井上級准教授は相談の上、

文字が読めないこどもたちでも視覚的に理解できる、イラストなどを多用したワークシート形式を採用しつつ、肯定バイアスがかからないよう、少人数グループにして効果を測る

という方法で、実験を行うことになりました。海外園との交流前後での変化を測定し、主体性や探究心、世界観の広がりを科学的に評価できる体制を構築したのです。

シンクアロット

また、共同研究の過程で、サービス運営の仕組み自体を見直す契機も生まれました。当初は日本と海外、それぞれの園が1:1の交流を単発で行う想定でしたが、実験の結果、少ない回数の交流では、こどもたちはすぐに「海外のこどもたちと遊んだこと」自体を忘れてしまうことが分かりました。加えて、本サービスが「(海外・異文化に対する)バイアスを減らすことにつながっている」と科学的に実証するには、交流の回数が不十分であることも判明しました。

そこで、シンクロアットは

サービスの価格などを鑑みて複数園同時の交流に切り替え、年間の実施回数を増やす形

にサービスを再設計したのです。分析に基づいてサービスを見直した結果、現在では多くの園への「せかいタッチ」の導入が実現しています。

シンクアロット

漆間さんは、

「産学連携があったからこそ、科学的根拠に基づいたサービス改善が可能になった」

と振り返ります。大学側の専門知識と研究手法を借りることで、単なる権威付けに留まらず、サービス内容の本質的改善につながることになりました。研究者との対話やデータ分析の結果、プログラムの構造や運用方法を見直すきっかけも得られ、事業の成長につながっています。

「権威付けだけに留めず、自社サービスの本質的価値を見直す機会として活用してほしいと思います。事業内容に共感してくださる先生と出会えれば、ハードルは決して高くなく、両者にメリットがあるのです」(漆間さん)

4 産学連携へのステップ

産学連携は想像よりも現実的な選択肢です。また、両者の取り組みを振り返ると、「教育機関側も、研究を社会に活かしたいと考えている」という見落としがちな観点もはっきりと見えてきます。

しかし、実際に一歩を踏み出そうとすると、「何から始めればいいのか」「費用はどうなるのか」といった疑問が出てきます。そこで最後に、産学連携を検討する際の基本的な流れと、利用可能な支援制度について整理します。

産学連携の一般的なステップは次の通りです。

  • ニーズの整理:自社が解決したい課題や強化したい分野を明確にする
  • 大学・研究機関とのマッチング:自治体や商工会議所、産業支援機関が窓口となる場合が多い
  • 共同研究・試作開発の検討:技術的な可能性や知的財産の扱いを含め、協議を重ねる
  • 契約・実施:契約締結後、研究や開発をスタート。進行管理や成果物の確認も重要

また、いざ共同研究先が見つかったとしても、資金面で不安を抱える企業も多いでしょう。そんなときに取り組みを後押しするのが、

国や自治体による補助金・助成金制度

です。代表的なものとしては、次の制度が挙げられます。

■中小機構「ものづくり補助金」■
https://seisansei.smrj.go.jp/subsidy_guide/subsidy_info/manufacturing_subsidy.html
■経済産業省「産学融合拠点創出事業」■
https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2025/k250219001.html

各自治体や金融機関でも、産学連携プロジェクトに対して独自の支援を行っている場合がありますので、自社のニーズがはっきりとしたらまずは相談してみるのも一手です。

以上(2025年10月作成)

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画像:シンクアロット

アイデアと技術が化学反応! 中小企業×大学の最強タッグ術①

1 未来を拓く「産学連携」という選択肢

「アイデアはある。でも、それを実現するための人材も技術も足りない……」。ビジネスにおける理想と現実とのギャップ、経営者なら誰しも一度はそんな歯がゆい思いをした経験があるのではないでしょうか。そこで検討したいのが大学や公的研究機関との「産学連携」です。

産学連携とは、

企業が大学や研究機関と協力し、研究者の知見や最新技術を取り入れる取り組み

です。基礎研究の成果を事業化につなげたり、若手人材との交流から新しい発想が生まれたりと、企業単独では実現できないことが実現できるようになるのです。産学連携と聞いて、何だか専門的で取っつきにくそうだというイメージがあるかもしれませんが、実は中小企業でも産学連携に取り組むところが増えています。

「産学連携とはどんなものか」というイメージをつかんでいただくため、

産学連携により、今までにない美味しいデカフェコーヒーを生み出した企業「ストーリーライン」

にインタビューを実施しました。研究者との連携をどのように始め、どんな成果を得たのかを以降で詳しくご紹介します。

なお、この記事は前編です。後編では産学連携により、こどもたちの世界観を広げる教育プログラムを開発した企業の事例を紹介しています。

2 「美味しいデカフェコーヒーで世界を変える」ストーリーライン

ストーリーライン

「ディープテックで持続可能な未来をデザインする」をビジョンとして掲げるストーリーライン代表の岩井順子(いわい じゅんこ)さん。2018年に同社を設立し、デカフェコーヒー(カフェインを抜いたコーヒー)の開発・製造を中心に事業を展開、現在、東京・神奈川・宮城の3カ所に拠点を置いています。

同社の代表的な事業が、大学との共同研究から生まれた「ZEN Craft Decaf Process™」。

従来のデカフェ製造では失われやすかったコーヒー豆本来の旨み成分を保ちながら、豆の破損を抑え、水の使用量も削減できる革新的な製法

です。

岩井さんが妊娠した娘さんのためにデカフェコーヒーを購入しようとした際、美味しいデカフェコーヒーがなかなか見つからずショックを受けたことが、起業のきっかけだったそうです。「美味しいデカフェコーヒーがない」問題の背景には、

  • アフリカやアジアなどの生産国から、直接デカフェコーヒーを輸入することができず(デカフェ加工の工場がドイツ、カナダ、メキシコなどにしかない)、時間・コストがかかるため、安価で低品質な原料が使われている
  • コーヒー豆本来の成分を保持する画期的な抽出技術が開発されていない

といった問題が潜んでいました。

この問題を解決するには、「生産国で高品質なデカフェコーヒーを製造し、直接輸出できる仕組み」が必要……。そう考えた岩井さんはストーリーラインを設立し、高品質デカフェコーヒー生産のための技術開発に取り組み始めます。

1)産学連携に至った経緯

岩井さん曰く、事業を起こした当初、カフェイン除去技術については教育機関との共同研究ではなく、民間企業との技術連携による協業を想定していました。しかし、相手企業の事情により、計画は頓挫することに……。

当時は廃業さえ考えていましたが、そんなときに人づてに出会ったのが、東北大学で「超臨界流体技術」を研究している渡邉賢(わたなべ まさる)教授でした。

そもそも、「超臨界流体」とは、対象物に圧力と熱を加え臨界点を超えることで、液体と気体両方の特性を併せ持った状態のことを指します。カフェインレスコーヒーの製造において、超臨界二酸化炭素を利用したカフェイン抽出法は既に存在はしており、一定の評価を得ていましたが、

従来の超臨界二酸化炭素抽出では、それまでの他の製法と同じように豆を水水(溶媒)に浸しながらカフェインを抽出するため、その過程で風味も同時に抜け落ち、飲みごたえ品質保持に欠けることが課題

でした。

そこで、ストーリーラインと東北大学はタッグを組み、

「水に頼らずにカフェインを取り除く」という独自製法を確立。これにより、超臨界二酸化炭素を溶媒に用いた全く新しい手法で、豆本来の風味を極力損なわない、高品質デカフェコーヒーの生産に成功

したのです。

ストーリーライン

現在は高品質デカフェコーヒーの量産に向けた研究を進めると同時に、カフェインレス市場拡大のために、企業独自の取り組みとして、体調に合わせてカフェイン量をコントロールする「カフェインコントロール」の実証店舗も運営しています。

ストーリーライン

2)産学連携だからこそできたこと

「ほぼ普通のコーヒーと変わらない味わいを持つデカフェコーヒー」――これこそが、研究者との連携によって実現した大きな成果。岩井さんは、「産学連携がなければ到達できなかった領域」と振り返ります。

もっとも、創業当時は研究者が社内にいなかったストーリーラインにとって、資金調達や技術理解は大きなハードルでした。さらにコロナ禍で機材導入も遅れ、思うように開発が進まない時期も続きました。それでも「生産国で高品質なデカフェコーヒーを作りたい」という軸を守り抜き、2026年からは国内での量産フェーズへ入ります。ゆくゆくは、生産地のインフラを担い、持続可能なコーヒー生産を実現する存在になること目指しているそうです。

「産学連携の最大の魅力は、技術を通じて人とのつながりが広がること」

と岩井さんは語ります。超臨界技術の研究者から機械分野の専門家を紹介されるなど、大学を起点にネットワークが次々と拡大しました。単独の企業活動では得られなかった知識や人材にアクセスできたことが、研究を大きく前進させています。

「まずは相談してみればいいじゃない、と思っています。研究者の先生方も、自分の研究が社会でどう役立つかを試したいと考えている。良い相手と出会えれば、お互いに大きなメリットになるはずです」(岩井さん)

以上(2025年10月作成)

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画像:ストーリーライン

投資のキャッシュ・フローを見積もる/設備投資の成果チェック(2)

1 実務の手順のキモは、予測数値の洗い出し

実際に現場で投資評価を行うときには、投資によって生じるキャッシュ・フローの見込みが重要になります。投資評価の作業フローは、

  • 投資額を見積もる
  • 「変化する収入」と「変化する費用」の金額を洗い出す
  • 損益(PL)の予測、キャッシュ・フローを計算する
  • 投資評価のための指標を計算する
  • 計算結果をもとに経営者と検討

となります。

今回説明するのは、キャッシュ・フローの見込み作業に位置付けられる1.から3.の手順です。4.および5.で用いる「投資評価の指標」には、代表的なものが4つあり、本シリーズの次回以降で詳しく解説します。

2 キャッシュ・フローの見込みの作業とポイント

1)投資額を見積もる

まずは、業者に設備の見積もりを依頼するなどして投資額を見積もります。新しい機械の導入であれば、高額なものほどA社、B社と複数の見積もりをとることが多いでしょう。新しい店舗の出店であれば、不動産の賃貸や内装工事といったさまざまな支出の見積もりをとる必要があります。

2)「変化する収入」と「変化する費用」の金額を洗い出す

次に、投資によって「変化する収入」を予測し、それに伴って「変化する費用」を洗い出します。

  • 変化する収入 … 製品の増産や新店舗での販売によって増える売上
  • 変化する費用 … それに伴って増加する仕入代、人件費など

ここで重要なのは「投資によって変化するものだけを考える」という点です。投資の有無にかかわらず発生する費用は、投資の判断には影響しないため計算対象外とします。実務では、担当者の方が「せっかくの機会だから」と思って、関連しそうな支出を広く拾いすぎてしまうケースも見られます。

ただし、投資してもしなくても変わらない支出まで入れてしまうと、正確な指標(回収期間など)が計算できず、経営判断を誤らせるリスクを高めてしまいます。しっかり対象を絞り込むためにも「変化するもの」に集中して項目を収集することが大切です。

3)損益(PL)の予測、キャッシュ・フローを計算する

損益を予測し、キャッシュ・フローを計算するポイントは2つあります。

1つ目のポイントは、費用の分け方です。注目するのは、「売上と連動するかどうか」という点です。これは、ある支出が「変化する費用」にあたるかどうかを判断する基準にもなります。売上と一緒に増えたり減ったりする費用を「変動費」といい、反対に売上に関係なく、毎月決まった金額だけかかる費用を「固定費」といいます。

  • 変動費 … 売上や仕事の量によって増減する費用(例:材料費、仕入代など)
  • 固定費 … 売上の増減に関係なく一定額発生する費用(例:家賃、人件費など)

なお、すでに社内で管理会計を取り入れており、普段から変動費と固定費の区分に慣れている会社は注意が必要です。投資は、課題解決や収益拡大を目的に行うため、通常の費用と発生状況が変わってくることが多くあります。普段は固定費と考えていたものが、この投資に関しては変動費になるというケース(その逆のケース)もあり得るので、気を付けてください。改めて、この投資では「変動費なのか、固定費なのか」をゼロから考える心構えで臨みましょう。

2つ目のポイントは、シナリオを複数パターン作ることです。例えば、5000万円の売上が期待できるとします。その場合、5000万円だけでなく、4000万円(下振れ)と、6000万円(上振れ)のケースも含めた3つのシナリオを試算しておくと安心です。このとき、3つのシナリオをゼロから作るのは大変ですが、変動費・固定費を分けておけば作業が楽になります。

  • 5000万円の売上を前提とした場合の変動費は「売上の〇%」、固定費は「一定額」と予測する
  • そこから、売上4000万円のシナリオを作るときは、変動費の金額だけを売上に応じて再計算する
  • 同じように、売上6000万円の場合のシナリオの場合も、変動費の金額だけを売上に応じて再計算する

このように、ある条件を変えて、複数のパターンを試算することを「シミュレーション」と呼びます。 

3 事例演習:店舗の新規開設シミュレーション

【前提条件】

  • 年間売上:初年度3000万円、2年目から3年目の成長率2%、4年目・5年目は横置き
  • 売上原価率(変動費):売上の40%
  • 人件費(固定費):300万円
  • 賃借料(固定費):200万円
  • 交通費(変動費):売上の5%
  • 初期投資額(固定費):2000万円、減価償却方法は5年償却・定額法・残存価額ゼロ
  • 実効税率(変動費):30%
  • 割引キャッシュ・フロー(注)で用いる割引率:10%

前提条件

1)売上の考え方

売上は客単価×客数といった具体的な数字から各月の見込みを出していきます。このような見込みであれば、実績との差異が発生した際に、原因は客単価、または客数なのか、あるいはその両方なのかを把握できます。

売上の構成要素である客単価・客数は、よくKPI(重要業績評価指標)としても使われています。業績を改善するために必要な行動を考える指標として、この切り口が適しているからです。その上で、2年目以降の売上がどれくらい成長するのか、その成長がどれくらい続くのかといったことを考えに入れます。

新しいものは、おおむね3年くらいで軌道に乗り、その後は横置きか減少傾向になる…といった具合に、事業計画上の成長率をシミュレーションにも取り入れていきます。

2)費用の考え方(売上原価、交通費)

変動費の売上原価や交通費などは、売上と連動します。それぞれの売上に対する比率を見積もり、売上の金額とあわせて年度ごとの金額を出していきましょう。特に売上原価は、投資の利益を最も左右する可能性のある変動費です。そのため、

主要なものについて個別に数字を作るようにし、内訳として明記しておきましょう

。これは実績が乖離(かいり)した場合や、売上が想定より下がった場合、問題点を明確にし、利益維持・回復する対策を早期に練る上でも大切になります。

3)人件費の考え方

人件費は、人員計画などに基づいて数字を出します。人件費というのは繁忙期の残業代を除くと、営業活動に連動しない固定的な部分が大半と考えられます。なお、社員については「平均月給×人数」、パート・アルバイトについては「平均時給×労働時間数」といった具合に、雇用形態ごとに明確に分けておきましょう。

4)その他の費用の考え方

金額が大きくない、重要度の低い費用の場合は、数字の根拠について、必ずしも積み上げである必要はありません。大体このぐらいという数字でもよいことも多くあります。また、重要度の低い費用について、細かすぎるのも問題です。細かすぎる情報は管理も大変で、経営陣にとってもノイズ(雑音)となってしまうからです。

ここで大事なのは、「変化する費用」でないものは考慮しないことです。例えば、新店舗の開設をしても、本社管理部門の費用が増えないのであれば、本社の管理費はシミュレーションに入れません。もちろん、管理部門の負担は増えるかもしれませんが、業務効率化で十分対応できたり、閉める店舗もあったりなど、人を増やす必要がなく支出に影響がなければ「変化する費用」にはなりません。

5)特殊な費用である減価償却費の考え方

減価償却費とは、機械や建物など将来にわたって使い続けられる一定額以上の資産を購入したとき、その支出を一度に費用化せずに固定資産として計上し、使用期間に応じて毎年少しずつ費用に振り分けていく会計処理のことです。つまり、「過去に支払ったお金を、時間で分けて費用化しているもの」です。この費用は、損益計算書に費用として計上され、製造現場にあるものであれば原価の一部にもなります。しかし、費用として計上されるタイミングでは支払いは発生しないため、非資金費用と呼ばれます。

投資評価でキャッシュ・フローを計算する際、「実際の支出は過去に済んでいるので無視してもよいのでは?」と思うかもしれません。しかし、減価償却にはもう一つ大切な効果があり、それは税金を減らす働きです。具体的には、費用を計上した年には「減価償却費×実効税率」の分だけ税金が少なくなります。これを、タックスシールドと呼びます。

減価償却費が400万円、実効税率が30%であれば、その年に支出はありませんが、400万円×30%(実効税率)=120万円だけの税金の支払いが減るということです。

シミュレーション例では、減価償却費を引いた利益に税率をかけて税金を計算します。その後にキャッシュ・フローの計算において、税引後利益に減価償却費を足し戻すことで当期キャッシュ・フローの見込みを計算しています。

以上(2025年10月作成)

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画像:apinan-Adobe Stock

【10月25日】公益社団法人徳島県産業国際化支援機構主催!第2回 商談会出展スタートアップセミナー


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徳島県では、県内の6次産業化事業者や農商工連携事業者の皆さまを対象に、商談会を活用した販路拡大や商品力強化を支援するセミナーを開催いたします。

ぜひこの機会にご参加ください。

なお、このセミナーは徳島県が10月25日、26日に開催する「食の宝島とくしまフェス」のイベントの一部として実施されます。


【募集概要】

  • 日時 令和7年10月25日(金)10:30~12:30(講演:90分、質疑応答:30分)
  • テーマ 「販路拡大に活かす商談会戦略と市場ニーズ対応の商品開発」
  • 講師 本山 喜之 氏(「資源賛美プロジェクト」代表・6次産業化地域プランナー)
  • 会場(現地) アスティとくしま 第3会議室(「食の宝島とくしまフェス」会場) 定員20名ほど
  • 会場(オンライン) ZOOM
  • 参加対象 商談会出展予定事業者、6次産業化・農商工連携事業者、関心のある県内事業者
  • 申込方法 機構または徳島県ホームページに掲載の申込書に必要事項をご記入の上、FAXまたはE-mailにて申込
  • 参加費 無料
  • 申込締切 令和7年10月24日(金)
問合わせ先
公益社団法人徳島県産業国際化支援機構 販路開拓・海外進出課(担当:市川)
TEL:088-676-3001
FAX:088-676-3040
E-mail:ichikawas@tokushima-bussan.com

以上(2025年9月作成)

東京(有楽町駅)にあるんじょ! 「徳島・香川トモニ市場~ふるさと物産館」

JR有楽町駅前の東京交通会館1階に、徳島・香川のアンテナショップ「徳島・香川トモニ市場~ふるさと物産館」があるのをご存知でしょうか。

こちらはトモニホールディングス設立に伴う共同施策の一環として、トモニグループのお取引先および徳島県・香川県を中心とした地域の優れた特産品のPRを目的として、開設しております。

また、徳島県より「阿波とくしまアンテナショップ」第1号として認定されています。

お近くへ来られた際はぜひお立ち寄りください!

トモニ市場外観

アクセスについては以下の案内図、または東京交通会館公式ウェブサイトをご覧ください。

周辺案内図

館内案内図

〒100-0006 東京都千代田区有楽町2-10-1東京交通会館1階
TEL/03-6269-9333 FAX/03-6269-9355
営業時間/10:30~19:00 定休日/交通会館 休館日

リンク

以上(2025年10月作成)