【朝礼】「伝わっている」は思い込み? ズレを埋めるコミュニケーション術

【ポイント】

  • 「自分が思っている自分の姿」と「相手から見た自分の姿」
  • まずは、自分の印象や欠点などを、身近な人に聞いてみることから始める
  • 問題を改善するときは、極端すぎるかもと思うほど、大げさな言動を心がけてみる

仕事をスムーズに進めるためには、自分の気持ちや考えを、相手にきちんと伝えることが大切です。ただ、「きちんと伝える」というのは、思っているより難しいものです。こちらは誠意を持って伝えたつもりなのに、なぜか相手に誤解されてしまった——そんな経験はないでしょうか。例えば、謝罪のために取引先を訪問したのに、かえって相手を怒らせてしまった、というようなケースです。なぜ、こういったことが起きるのか。理由はいろいろ考えられますが、一つ挙げるとすれば、「自分が思っている自分の姿」と「相手から見た自分の姿」がズレているからです。

皆さんは「ジョハリの窓」という言葉を聞いたことがありますか。これは、自分と他人の視点から「知っていること・知らないこと」を4つに分けて整理したフレームワークです。自分も相手も知っている「開放の窓」、自分は気づいていないけれど相手には見えている「盲点の窓」、自分は知っているが相手には伝わっていない「秘密の窓」、自分にも相手にも見えていない「未知の窓」です。

コミュニケーションを円滑にするには、お互いの認識が重なっている「開放の窓」を広げることが大切で、そのためには「盲点の窓」と「秘密の窓」を「開放の窓」に変えていく必要があります。なかでも特に意識してほしいのが「盲点の窓」です。自分では気づけない部分だからこそ、問題があっても放置されやすいのです。まずは、信頼できる身近な人に「自分はどんな印象を与えているか」を率直に聞いてみることから始めてみてください。

次に、問題を改善するときには、「少し極端過ぎるかも……」と思うほど、大げさな言動を心掛けるようにしてください。例えば、熱意をもって仕事に取り組んでいるにもかかわらず、周囲からは熱意が足りないと思われている人は、「1番」にこだわってみてください。上司から「この仕事、担当したい人はいるか」と聞かれれば、「私にやらせてください」と1番に手を挙げる、忙しそうな人がいれば真っ先に「何か手伝いましょうか」と声を掛けるといった具合です。

こうした、自分を眺める他人の目を意識した取り組みは、仕事をスムーズに進めるのにも役立ちますし、ビジネスパーソンとしての自身の成長にもつながるはずです。

           

以上(2026年6月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

「それ、私の仕事じゃないです」 仕事を断る部下をどう動かす?

1 仕事を断る部下は本当にわがままなのか?

管理職や教育担当者の皆さん、部下に仕事を頼んだときに、

「それって私の仕事ですか?」「それは私の仕事ではありません」

と渋られたり、断られたりして、戸惑った経験はありませんか?

上司の立場からすると、「業務命令に従わないなんてけしからん!」と怒りたくなるかもしれません。一方で、部下が仕事を断る理由が単なるサボりやわがままなら論外ですが、そうでないなら、アプローチ次第で部下の行動を改善させられるかもしれません。

そこで、この記事では「部下が仕事を断る理由」を次の4タイプに分けた上で、彼らの行動を改善させるための効果的なアプローチ法を紹介します。

部下が仕事を断る理由

2 やりたくない仕事は絶対にしない!「自分ブランド」タイプ

自分ブランド

1)特徴は?

「自分ブランド」タイプは、「この仕事は自分の成長やキャリアに関係ない」とみなして仕事を断るタイプ。基本的には、仕事を断る際にこんなことを考えています。

「誰でもできる雑用ばかりをやると、本来の仕事ができずに成長できない」

「安請け合いすると、『都合の良い便利屋』として消費されてしまいそう」

2)効果的なアプローチは?

本人の得意なことや強みに注目したり、今後の成長につながることを示したりすると、頼まれた仕事を自分ごととして捉えやすいです。例えば、次のようなアプローチをしてみましょう。

「細かいところまで気が回る〇〇さんだからこそ、この仕事をお願いしたい」

「来客は△△社の部長だから、直接顔をつないでおくと今後のキャリアに活きると思う」

3)逆効果なアプローチは?

次のように、「周りがやっているから」と義務を強調して押し付けるのは避けましょう。

「みんなやっていることだから」

「それもあなたの仕事でしょ」

3 忙しくて無理です!「キャパオーバー」タイプ

キャパオーバー

1)特徴は?

「キャパオーバー」タイプは、「今は忙しいので、無理です」として仕事を断るタイプ。基本的には、仕事を断る際にこんなことを考えています。

「抱えている仕事が増えると、段取りが狂う」

「この仕事を引き受けると余裕がなくなるし、忙しすぎるのは嫌だ」

なお、本当に業務量が多くて手が回らない部下もいます。そうした部下に新しい仕事を頼むのは難しいので、どれほどの業務を抱えているのか、果たしてその部下のキャパシティに合っているのかは、普段から注視しておきましょう。

2)効果的なアプローチは?

まず、「今抱えている仕事を教えて」などと現状をヒアリングしてみましょう。その上で、次のようなアプローチをしてみると、パニックにならずに仕事を進められるでしょう。

1.自分の段取りを変えるのが苦手(優先順位がつけられない)な部下の場合

今抱えている仕事を書き出すなどして可視化し、期日が近いものや重要度が高いものを先に進めて、余裕があるものは後送りにするなど、優先順位を決めるよう、部下に促しましょう。

2.防衛反応として、つい「忙しい」と言ってしまう部下の場合

1回に全ての仕事を頼まず、小さなタスクに分解して、順番に依頼してみるとよいでしょう。

3)逆効果なアプローチは?

次のように、部下の「忙しい」を疑ったり、根性論で押し切ったりするのは避けましょう。

「本当に忙しいの?」と疑いをぶつける

「みんな忙しいのだから頑張って!」「頑張ればできる!」と根性論で押し切る!

4 ミスしたらどうしよう……「リスク回避」タイプ

リスク回避

1)特徴は?

「リスク回避」タイプは、「自分だけでこの仕事をやるには重たい」「失敗したくない」と考えて仕事を断るタイプ。基本的には、仕事を断る際、こんなことを考えています。

「失敗したら周りに迷惑がかかる」

「過去にミスをして怒られた経験があり、引き受けるのが不安だ」

2)効果的なアプローチは?

次のように、「困ったら一緒に考えるから」とサポートする姿勢を見せたり、責任を部下だけに負わせないと伝えたりすると、不安感を払拭することができるでしょう。

「分からないことがあれば遠慮なく言ってね」

「最終的な責任は私が持つから、まずは思い切ってやってみよう」

3)逆効果なアプローチは?

次のように、「自分で考えろ」と突き放したり、全部丸投げしたりするのは避けましょう。

「どうすればいいか、少しは自分で考えて」

「全部自分でやってみるのも良い経験になるから、とりあえずやって」

5 私に頼むのはなぜですか? 「理由待ち」タイプ

理由待ち

1)特徴は?

「理由待ち」タイプは、「指示の意図や背景が分からない」と考えて仕事を断るタイプ。基本的には、仕事を断る際、こんなことを考えています。

「自分に向かない仕事なのに、なぜ頼んでくるの?」

「本来の役割でない仕事を引き受けるのは合理的か?」

2)効果的なアプローチは?

次のように、「仕事をお願いする理由」を明確に伝えたり、仕事の目的を踏まえて頼んだりすると、スムーズに頷いてもらいやすいでしょう。

「〇〇さんの〜という強みが、この仕事に活かせると思うので」

「急ぎ対応が必要なので、1時間だけでも引き受けてもらえると助かる」

3)逆効果なアプローチは?

次のように、いきなり雑な指示をしたり、部下が質問しにくくなる言い方をしたりするのは避けましょう。

「理由とかいいからとにかく早くやって」

「なんでそんなこと気にするの?」

6 違法になることもあるので要注意!

なかには、どんな対応をしても「最低限の仕事だけやればいい」と考える、働かない部下もいます。この場合、上司自身が疲弊しないよう、次のように考え方を変えることも重要です。

  • 労働条件通知書などで定めた業務ができているなら、現状維持として割り切る
  • 配置転換を検討し、部下が能力を発揮できる状況を作る
  • 「もっと成長したい」「成果を出したい」と考えている他のメンバーにリソースを割く

なお、部下が仕事を断るケースとして、よく挙げられるのが「雑用」を頼んだ場合です。雑用の範囲は次のように多様です。

雑用の範囲

こうした雑用は、職場の業務をスムーズに進める上で重要なものであり、労働条件通知書などに記載があれば、雑用を社員に命じることは問題ありません。例えば、労働条件通知書の業務内容の欄で、メインとなる業務の後に「その他これらに付随する業務」などの形で雑用について記載している会社は多いです。

ただし、雑用が無制限に認められるかというと、必ずしもそうではなく、次のような場合はハラスメントとして違法になることがあります。一昔前は意外とよく見られた光景かもしれませんが、今は控えたほうが無難です。

  • コピー取りだけを指示する:業務上の合理性がなく、能力に見合わない
  • 女性社員にお茶出しを強要する:性別による役割分担
  • 休日に上司の引っ越しを手伝わせる:業務とは関係のない拘束

以上(2026年6月作成)

pj00824
画像:日本情報マート

部下指導に悩む教育担当者がやる気を取り戻す7つのアプローチ

1 教育担当者の負担はますます重くなる

今の時代、教育担当者は会社にとって非常に大切な存在です。少子化で採用が難しくなる中、せっかく採った人材をいかに定着・戦力化できるかが、中小企業の競争力を左右するからです。問題は、その教育担当者の多くが、新人や若手の指導で壁にぶつかっていることです。

かつての「見て盗んで覚えろ」式の指導は通用しなくなり、価値観の異なるZ世代への接し方に悩む担当者も増えています。さらに、自分の業務をこなしながら後輩も育てるという二重の負担が、教育担当者を疲弊させています。

そんなときこそ、教育担当者に対する社長のフォローが必要です。やる気というのは、闇雲に応援されたり、一方的にアドバイスを与えられたりしても湧いてきません。社長がまず心掛けるべきは、

教育担当者の気持ちに寄り添い、何に悩んでいるのかをよく聞くこと

です。

その上で、教育担当者の悩みに応じて、具体的なアプローチの仕方を考えます。以降では、7つのパターンを例に社長が教育担当者に働き掛ける例を紹介します。

2 部下が生意気?

1)社長と呆田(あきれた)さんの会話

教育担当者の呆田さんに、社長が話し掛けました。話をしているうちに、どうやら呆田さんは、「仕事ができないのに生意気な部下にあきれてしまい、お手上げの状態になっている」ことが分かりました。

社長:呆田君、いつもご苦労様。
   部下の教育は大変だね。
   呆田君の部下は、特に難しいと人事部も言っているからね。

呆田:本当ですよ。社長、なぜ、あのような社員を採用したのですか?
   何度言っても仕事を覚えないのに、自分の意見ばかり主張してきます。
   しかも、その主張が的外れなのですから、もうお手上げです……。

社長:まぁまぁ。気持ちは分かるが、まだ君の部下になって1カ月だ。根気強く頼むよ。
   今は色々な社員がいるから、社員の良い面を引き出す教育投資は欠かせないよ。

呆田:それは分かりますが、あまりにもレベルが低いですよ。
   もう私にできることは全部やりました。
   私以外に、もっと教育担当として適任の社員がいるのでは?

2)呆田さんへのアプローチ

今どき、呆田さんのような教育担当者は少なくないでしょう。簡単な仕事でさえ満足にできないのに自己主張が激しく、場合によっては上司の教え方が悪いと不満を漏らす部下がいます。教育担当者が「お手上げ」になってしまうのも分かります。

このケースでは、部下に問題があるのは明らかです。しかし、呆田さんも、部下の仕事のできなさ加減や生意気な物言いばかりに気を取られていて、視野が狭いようにも見受けられます。

人材不足の折、「ピカピカの新人」は期待しにくいです。となると、今どきの人材育成は、教育担当者が視野を広く持ち、それなりの時間をかけて部下の良いところを見つけ、伸ばしていかなければなりません。

呆田さんに対して、社長はどのようにアプローチするべきでしょうか。効果的なのは、

小さくてもよいので社長と一緒にできる仕事を与えること

です。社長の考えに触れることで、呆田さんの視野は広がるでしょう。

社長との仕事で、呆田さんはミスをするはずです。その際、頭ごなしに叱らず、呆田さんの話を聞き、ミスを取り返す方法を一緒に教え、ある程度任せます。これは、日ごろ呆田さんが行っている指導と同じはずなので、呆田さんは自分の教え方を再確認できます。

教育担当者としての経験が浅いと、短期的な成果、つまり部下の”成長の証し”をすぐに求めてしまいがちですが、人はゆっくりとしか育ちません。そのことを呆田さん自身が体験できる環境を社長がつくることが大切です。

3 部下が自分についてこない?

1)社長と寂椎(さみしい)さんの会話

教育担当者の寂椎さんに、社長が話し掛けました。話をしているうちに、どうやら寂椎さんは、「一生懸命に部下を指導しているのに、部下が自分を慕ってくれなくてさびしがっている」ことが分かりました。

社長:寂椎君、いつもご苦労様。
   ん? 君、ちょっと元気がないんじゃないか?

寂椎:いや、なんというか……。
   私、部下に好かれる上司になろうと頑張ってるんですけど……。
   部下が私でなく、私の同僚の○○さんにばかり話を聞くらしくて、寂しくて……。

社長:なるほど、その気持ちは分からなくもないが、部下は寂椎君を慕っているはずだよ。
   寂椎君のように一生懸命な教育担当者はそうそういない。自信を持って!

寂椎:はぁ~。それなら、もう少し態度で示してくれてもいいと思います。
   最近はオンラインも多く、部下がさらによそよそしい気もします……。
   私ではなく、私の同僚のほうが教育担当として適任なのでは?

2)寂椎さんへのアプローチ

真面目な教育担当者ほど、寂椎さんのような感情になりがちです。寂椎さんには、自分の頑張りを部下に押し付けるつもりはありません。しかし、頑張った分だけ感謝してもらいたいのが人間というものです。

一方、このケースでは部下にも特に悪気はないのでしょう。部下としても、日ごろ、自分の面倒を見てくれる教育担当者に感謝をしているはずです。ただ、他の人の意見も聞いてみたいという思いがあるのも当然です。

一生懸命に教えているからこそ、教育担当者にはある意味、”自分色に染めたい”という感情があります。しかし、部下の成長を願うなら、さまざまな人の意見を聞いたほうがよいのは明らかで、ここに教育担当者のジレンマがあります。

寂椎さんに対して、社長はどのようにアプローチするべきでしょうか。まず行いたいのは、

社長が寂椎さんとその部下をオンラインの異業種交流会などに招待すること

です。

教育担当者と部下がセットで参加している状況であれば、社員教育などをテーマに部下に話を振ってみることで、寂椎さんが知りたがっている「自分の指導に対する部下の考え」を聞き出せるかもしれません。そこに日ごろの指導への感謝などがあれば、寂椎さんも自分の教え方を肯定できます。同時に、社長はこうした場で、寂椎さん自身がさまざまな人から意見を聞けるよう配慮します。そして、寂椎さんは教育担当者として優れているが、寂椎さん自身がもっと成長するためには、さまざまな人の話を聞くことが大切だということを理解させるのです。

教育担当者である自分の言うことを聞いてほしいのは当然です。しかし、どんなに一生懸命で、優れた教育担当者であっても、やはり考え方には偏りがあります。それを埋めるべく、たくさんの人と話をする大切さを体験させることが必要です。

4 自分は人に教えられる器ではない?

1)社長と能不(のうぶ)さんの会話

教育担当者の能不さんに、社長が話し掛けました。話をしているうちに、どうやら能不さんは、「自分には能力が不足していて、部下を育てることには向いていないと思い自信を失っている」ことが分かりました。

社長:能不君、いつもご苦労様。
   ん、どうした? 少し顔色が良くないよ。

能不:実は社長に相談しようと思っていたことがあります。
   言いにくいのですが、私を教育担当から外してください。

社長:なぜ、そういうことになるんだい?
   能不君は一生懸命に頑張っているじゃないか。私も認めている。
   それなのに、一体、どうしたんだ?

能不:私には、うまく教えることができません。
   他の教育担当者に指導されている新人や若手はどんどん成長しています。
   このままでは部下に申し訳なくて……。

2)能不さんへのアプローチ

責任感の強い教育担当者ほど、能不さんのような感情になりがちです。責任感が強い分、部下に高いハードルを課し、また他の教育担当者やその部下と自分たちを比べてしまいます。

自分の部下に一番になってほしい気持ちはどの教育担当者にもあるでしょう。しかし、無理をし過ぎると部下への態度が厳しくなったり、自分自身が自信を失ったりしてしまいます。場合によっては、「自分は役立たずだ」とふさぎ込んでしまうかもしれません。

能不さんに対して、社長はどのようにアプローチするべきでしょうか。

まず、社長が、引き続き能不さんに教育担当を任せるか否かを判断

しなければなりません。能不さんの思いがエスカレートすると、自分の能力不足に悩み、離職を考えかねないからです。

引き続き能不さんに教育担当を任せる場合、

  • 「教育担当者の能力の高さだけで、部下を成長させることはできない」こと
  • 「自分の能力の高低よりも、部下の性格とそれに合わせた教え方」を考えるほうが大事であること

を伝えます。

自分自身の教育担当者としての資質を疑うのは当然です。しかし、それは自分側の分析にすぎません。教育担当者と部下は、人間同士のぶつかり合いです。教育担当者は、自分のことよりも、部下のことを少しでも多く考えることが大切なのです。

5 何でも教えすぎてしまう?

1)社長と世話焼さんの会話

教育担当者の世話焼さんに、社長が話し掛けました。話をしているうちに、どうやら世話焼さんは、「部下に丁寧に教えているつもりなのに、部下がいつまでも自分で動けるようにならず、行き詰まりを感じている」ことが分かりました。

社長:世話焼君、いつもご苦労様。
   最近、少し疲れた顔をしているけど、どうかしたかい?

世話焼:社長……私、部下には丁寧に教えているつもりなんです。
    分からないと言われたら隣でやって見せるし、ミスしたら一緒に直して……。
    なのに、いつまで経っても一人でできるようにならないんです。

社長:それは大変だったね。でも、世話焼君は本当によく面倒を見ているよ。
   部下も助かっているはずだ。

世話焼:そうだといいんですが……。
    正直、私がいないと何もできない部下になってしまっている気がして。
    私の教え方が間違っているのでしょうか。

2)世話焼さんへのアプローチ

世話焼さんのような教育担当者は、面倒見がよく、部下思いです。しかし、「親切心」と「過干渉」は紙一重です。手取り足取り教え続けることで、部下が「自分で考える」機会を奪ってしまっているかもしれません。

ポイントは、

世話焼さんに「あえて教えない」経験をさせること

です。例えば、世話焼さんが担当している業務の一部を部下に任せ、世話焼さんには「答えを教えず、ヒントだけ出す」というルールを設けてもらいます。

部下が自力で答えを出したとき、世話焼さんはその達成感を一緒に感じられるでしょう。大切なのは、「手を出さないことが、部下への信頼の表れである」と、体験を通じて理解させることです。教育担当者の本当の役割は、部下の代わりにやってあげることではなく、部下が自ら動けるようになる環境を整えることなのです。

6 自分のやり方を押し付けてしまう?

1)社長と押付(おしつけ)さんの会話

教育担当者の押付さんに、社長が話し掛けました。話をしているうちに、どうやら押付さんは、「自分が経験してきたやり方を部下に教えているのに、部下が素直に従わず、関係がぎこちなくなっている」ことが分かりました。

社長:押付君、いつもご苦労様。
   最近、部下とのやり取りはどうだい?

押付:いやあ、参りましたよ。
   私が長年やってきた方法を丁寧に教えているのに、部下がなかなか従わなくて。
   「もっと効率的なやり方がある」なんて言い出すんです。

社長:ほう、部下はどんな方法を提案しているんだい?

押付:それが、ツールを使うとか、手順を変えるとか……。
   でも私のやり方は長年の経験で培ったもので、確かな実績があります。
   それを軽んじられているようで、正直、面白くないんです。

2)押付さんへのアプローチ

押付さんの経験や実績は、確かに価値あるものです。しかし、時代や環境が変わる中で、かつて最善だったやり方が、今も最善とは限りません。また、部下が新しいやり方を提案しているとすれば、それは「仕事を良くしたい」という意欲の表れとも言えます。

ポイントは、

押付さんの経験を「肯定しながら」、視野を広げる機会を設けること

です。例えば、部下が提案したやり方を一度試す場を設け、押付さんにその結果を評価してもらいます。これなら、押付さんも冷静な目で部下を見られるかもしれません。

大切なのは、経験を否定することなく、「経験を土台に、さらに良い方法を一緒に探す」姿勢を押付さんに持ってもらうことです。自分のコピーを作ることではなく、部下が自分を超えていけるよう導くことこそが、教育担当者の役割であると理解させましょう。

7 教育に時間が取れない?

1)社長と忙殺(ぼうさつ)さんの会話

教育担当者の忙殺さんに、社長が話し掛けました。話をしているうちに、どうやら忙殺さんは、「自分の業務が忙しすぎて、部下の指導に十分な時間を割けず、焦りと罪悪感をかかえている」ことが分かりました。

社長:忙殺君、いつもご苦労様。
   最近、ずいぶんバタバタしているようだけど、大丈夫かい?

忙殺:社長、正直に申し上げると、厳しい状況です。
   自分の担当業務だけでも手いっぱいで……。
   部下に「教えてください」と言われても、「後でね」と答えることが続いていて。

社長:そうか。それは忙殺君も大変だね。

忙殺:部下には申し訳ないと思っているんですが、どうにも時間が……。
   このままでは部下の成長を妨げてしまっている気がして、
   私が教育担当のままでよいのか不安です。

2)忙殺さんへのアプローチ

忙殺さんのケースは、本人の意欲や能力の問題ではなく、業務量と役割設計の問題です。教育担当者に過度な負荷がかかっている場合、いくら本人が頑張ろうとしても限界があります。

このケースで社長がまず取り組むべきは、

忙殺さんの業務量を見直し、教育担当としての時間を確保すること

です。「教育担当者」という役割は、時間があればやるものではなく、時間を確保してやるべきものです。社長が率先して、忙殺さんの業務の一部を他に移すか、優先順位を整理することが求められます。

「まとまった時間がなくてもできる指導」を忙殺さんと一緒に考えることも大切です。例えば、短時間のフィードバックを習慣化したり、チェックリストを使って部下が自己確認できる仕組みを整えたりすると、教育の質を落とさずに時間の負担を減らせます。「教育環境を整えるのも教育担当者の仕事だ!」と安易に突き放してしまうと、問題はいつまでも解決しません。

8 世代間のギャップに悩んでいる?

1)社長と隔世(かくせい)さんの会話

教育担当者の隔世さんに、社長が話し掛けました。話をしているうちに、どうやら隔世さんは、「若い世代の価値観や仕事への向き合い方が自分とはまるで違い、どう接してよいか分からずとまどっている」ことが分かりました。

社長:隔世君、いつもご苦労様。
   最近、若い部下たちとはうまくやれているかい?

隔世:それが、正直よく分からなくて……。
   仕事よりプライベートを優先したがるし、
   「なぜそうするのか」をいちいち説明しないと動かないし。
   私が若い頃は、見て盗んで覚えるのが当たり前だったんですが。

社長:なるほど、確かに今どきの若者は違うよね。

隔世:ええ。否定したいわけじゃないんです。
   ただ、どう接したらいいのか、何を言えば伝わるのか……。
   教育担当者としての自信がなくなってきました……。

2)隔世さんへのアプローチ

隔世さんの戸惑いは、多くのベテラン社員が感じているものです。世代間のギャップは確かに存在しますが、それは「どちらが正しいか」の問題ではありません。「自分の常識が通じない」と感じるのは、隔世さんが時代の変化に正直に向き合っている証拠です。

このケースで求められるのは、

世代の違いを「壁」ではなく「学びの機会」として捉え直すこと

です。例えば、社長は隔世さんに「若い部下が大切にしていることを一つ聞いてみよう」と促してみましょう。相手を理解しようという小さな一歩が、部下との関係性を変えるきっかけになるかもしれません。

また、「なぜそうするのか」を、きちんと部下に説明するよう、隔世さんに働きかけることも大切です。理由を丁寧に伝えることで、部下は納得して動けるようになり、自分で考える力も育ちます。隔世さん自身が若い世代の価値観を理解しようとする姿勢を持つことで、部下との信頼関係が深まり、指導の質も高まるでしょう。

以上(2026年7月更新)

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画像:metamorworks-Adobe Stock

【業種別データ】金属素形材製品製造業の動向

2023年の金属素形材製品製造業は、事業所数・従業者数がほぼ横ばいで安定する一方、製造品出荷額は約2.63兆円(前年比+5.0%)と回復基調にあります。アルミ・金属プレスが回復をけん引する反面、粉末・金製品は縮小。原材料使用額の上昇で原材料比率は約60.5%、付加価値率は33.8%にとどまり、収益性改善とコスト管理、付加価値向上が喫緊の課題です。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の金属素形材製品製造業の事業所数は3872事業所(対前年比99.3%)、従業者数は9万4692人(対前年比99.0%)、製造品出荷額等は2兆6320億4400万円(対前年比105.0%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は24人(対前年比99.6%)、現金給与総額は1億600万円(対前年比99.8%)、原材料使用額等は4億1100万円(対前年比106.1%)、製造品出荷額等は6億8000万円(対前年比105.7%)、付加価値額は2億3000万円(対前年比104.5%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は434万円(対前年比100.1%)、製造品出荷額等は2780万円(対前年比106.0%)、付加価値額は940万円(対前年比104.9%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は60.5%(対前年比100.5%)、同付加価値額比率は33.8%(対前年比98.9%)、同現金給与総額比率は15.6%(対前年比94.4%)となっています。

【2450 金属素形材製品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)アルミニウム・同合金プレス製品製造業

2023年のアルミニウム・同合金プレス製品製造業の事業所数は582事業所(対前年比99.5%)、従業者数は1万5113人(対前年比100.1%)、製造品出荷額等は5944億5600万円(対前年比105.0%)

となっています。

1事業所当たりの従業者数は26人(対前年比100.6%)、現金給与総額は1億1700万円(対前年比100.4%)、原材料使用額等は6億4000万円(対前年比103.3%)、製品出荷額等は10億2100万円(対前年比105.6%)、付加価値額は3億1900万円(対前年比110.8%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は450万円(対前年比99.8%)、製品出荷額等は3933万円(対前年比104.9%)、付加価値額は1230万円(対前年比110.1%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は62.7%(対前年比97.8%)、同付加価値額比率は31.3%(対前年比105.0%)、同現金給与総額比率は11.4%(対前年比95.1%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2451 アルミニウム・同合金プレス製品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)金属プレス製品製造業(アルミニウム・同合金を除く)

2023年の金属プレス製品製造業(アルミニウム・同合金を除く)の事業所数は3185事業所(対前年比99.5%)、従業者数は6万8892人(対前年比100.7%)、製造品出荷額等は1兆7089億4900万円(対前年比107.7%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は22人(対前年比101.2%)、現金給与総額は8800万円(対前年比101.8%)、原材料使用額等は3億3400万円(対前年比110.3%)、製品出荷額等は5億3700万円(対前年比108.3%)、付加価値額は1億7300万円(対前年比104.3%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は408万円(対前年比100.6%)、製品出荷額等は2481万円(対前年比107.0%)、付加価値額は802万円(対前年比103.0%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は62.3%(対前年比101.9%)、同付加価値額比率は32.3%(対前年比96.3%)、同現金給与総額比率は16.5%(対前年比94.0%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2452 金属プレス製品製造業(アルミニウム・同合金を除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)粉末や金製品製造業

2023年の粉末や金製品製造業の事業所数は105事業所(対前年比94.6%)、従業者数は1万687人(対前年比88.0%)、製造品出荷額等は3286億3900万円(対前年比92.6%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は102人(対前年比93.1%)、現金給与総額は5億9000万円(対前年

比94.8%)、原材料使用額等は14億7400万円(対前年比92.3%)、製品出荷額等は31億3000万円(対前年比97.8%)、付加価値額は14億4700万円(対前年比102.8%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は580万円(対前年比101.9%)、製品出荷額等は3075万円(対前年比105.1%)、付加価値額は1422万円(対前年比110.5%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は47.1%(対前年比94.4%)、同付加価値額比率は46.2%(対前年比105.1%)、同現金給与総額比率は18.9%(対前年比96.9%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2453 粉末や金製品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【金属素形材製品製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【業種別データ】洋食器・刃物・手道具・金物類製造業の動向

2023年の洋食器・刃物・手道具・金物類製造業は、事業所数・従業者数が微減する一方で製造品出荷額は約8,923億円とやや減少し、原材料比率が55.2%で付加価値率は40.2%にとどまります。特に洋食器は出荷額が前年の34.3%に急落し、作業工具も落ち込む一方、機械刃物や「その他の金物類」は堅調で付加価値を伸ばしています。総じて品目間で明暗が分かれ、コスト管理と高付加価値化、製品力強化や海外展開の検討が今後の重点課題です。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の洋食器・刃物・手道具・金物類製造業の事業所数は2388事業所(対前年比99.3%)、従業者数は3万9210人(対前年比98.9%)、製造品出荷額等は8923億2200万円(対前年比97.9%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は16人(対前年比99.6%)、現金給与総額は6800万円(対前年比101.9%)、原材料使用額等は2億600万円(対前年比97.3%)、製造品出荷額等は3億7400万円(対前年比98.6%)、付加価値額は1億5000万円(対前年比98.8%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は412万円(対前年比102.4%)、製造品出荷額等は2276万円(対前年比99.0%)、付加価値額は915万円(対前年比99.2%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は55.2%(対前年比98.7%)、同付加価値額比率は40.2%(対前年比100.2%)、同現金給与総額比率は18.1%(対前年比103.4%)となっています。

【2420 洋食器・刃物・手道具・金物類製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)洋食器製造業

2023年の洋食器製造業の事業所数は93事業所(対前年比100.0%)、従業者数は977人(対前年比89.6%)、製造品出荷額等は157億5700万円(対前年比34.3%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は11人(対前年比89.6%)、現金給与総額は3300万円(対前年比91.2%)、原材料使用額等は6400万円(対前年比20.0%)、製品出荷額等は1億6900万円(対前年比34.3%)、付加価値額は9000万円(対前年比54.7%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は310万円(対前年比101.9%)、製品出荷額等は1613万円

(対前年比38.3%)、付加価値額は859万円(対前年比61.1%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は38.0%(対前年比58.2%)、同付加価値額比率は53.3%(対前年比159.7%)、同現金給与総額比率は19.2%(対前年比266.2%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2421 洋食器製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)機械刃物製造業

2023年の機械刃物製造業の事業所数は435事業所(対前年比99.5%)、従業者数は5979人(対前年比100.5%)、製造品出荷額等は931億7800万円(対前年比103.9%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は14人(対前年比100.9%)、現金給与総額は5900万円(対前年比103.0%)、原材料使用額等は9100万円(対前年比111.1%)、製品出荷額等は2億1400万円(対前年比104.3%)、付加価値額は1億1100万円(対前年比99.4%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は432万円(対前年比102.1%)、製品出荷額等は1558万円(対前年比103.4%)、付加価値額は805万円(対前年比98.5%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は42.7%(対前年比106.5%)、同付加価値額比率は51.7%(対前年比95.3%)、同現金給与総額比率は27.7%(対前年比98.7%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2422 機械刃物製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)利器工匠具・手道具製造業(やすり、のこぎり、食卓用刃物を除く)

2023年の利器工匠具・手道具製造業(やすり、のこぎり、食卓用刃物を除く)の事業所数は330事業所(対前年比99.7%)、従業者数は5892人(対前年比97.6%)、製造品出荷額等は1147億300万円(対前年比99.4%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は18人(対前年比97.9%)、現金給与総額は6900万円(対前年比101.4%)、原材料使用額等は1億7200万円(対前年比98.5%)、製品出荷額等は3億4800万円

(対前年比99.7%)、付加価値額は1億6100万円(対前年比99.8%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は385万円(対前年比103.6%)、製品出荷額等は1947万円(対前年比101.8%)、付加価値額は902万円(対前年比101.9%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は49.4%(対前年比98.8%)、同付加価値額比率は46.3%(対前年比100.1%)、同現金給与総額比率は19.8%(対前年比101.7%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2423 利器工匠具・手道具製造業(やすり・のこぎり・食卓用刃物を除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)作業工具製造業

2023年の作業工具製造業の事業所数は189事業所(対前年比96.9%)、従業者数は4342人(対前年比97.0%)、製造品出荷額等は898億1200万円(対前年比89.9%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は23人(対前年比100.1%)、現金給与総額は9800万円(対前年比99.4%)、原材料使用額等は2億1500万円(対前年比98.7%)、製品出荷額等は4億7500万円(対前年比92.7%)、付加価値額は2億3800万円(対前年比87.4%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は427万円(対前年比99.3%)、製品出荷額等は2068万円(対前年比92.7%)、付加価値額は1035万円(対前年比87.3%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は45.2%(対前年比106.4%)、同付加価値額比率は50.0%(対前年比94.3%)、同現金給与総額比率は20.7%(対前年比107.2%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2424 作業工具製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)手引のこぎり・のこ刃製造業

2023年の手引のこぎり・のこ刃製造業の事業所数は82事業所(対前年比100.0%)、従業者数は1108人(対前年比97.3%)、製造品出荷額等は193億5600万円(対前年比96.7%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は14人(対前年比97.3%)、現金給与総額は5700万円(対前年比

96.3%)、原材料使用額等は1億1800万円(対前年比88.1%)、製品出荷額等は2億3600万円(対前年比96.7%)、付加価値額は1億1300万円(対前年比106.4%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は420万円(対前年比99.0%)、製品出荷額等は1747万円(対前年比99.4%)、付加価値額は835万円(対前年比109.4%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は49.9%(対前年比91.2%)、同付加価値額比率は47.8%(対前年比110.1%)、同現金給与総額比率は24.0%(対前年比99.6%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2425 手引のこぎり・のこ刃製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

7)農業用器具製造業(農業用機械を除く)

2023年の農業用器具製造業(農業用機械を除く)の事業所数は144事業所(対前年比98.0%)、従業者数は1345人(対前年比94.1%)、製造品出荷額等は248億3800万円(対前年比87.2%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は9人(対前年比96.0%)、現金給与総額は3700万円(対前年比97.5%)、原材料使用額等は1億500万円(対前年比87.5%)、製品出荷額等は1億7200万円(対前年比89.0%)、付加価値額は6200万円(対前年比92.0%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は394万円(対前年比101.5%)、製品出荷額等は1847万円(対前年比92.7%)、付加価値額は665万円(対前年比95.9%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は61.0%(対前年比98.3%)、同付加価値額比率は36.0%(対前年比103.4%)、同現金給与総額比率は21.3%(対前年比109.6%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2426 農業用器具製造業(農業用機械を除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

8)その他の金物類製造業

2023年のその他の金物類製造業の事業所数は1115事業所(対前年比99.6%)、従業者数は1万9567人(対前年比100.2%)、製造品出荷額等は5346億7800万円(対前年比104.4%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は18人(対前年比100.6%)、現金給与総額は7300万円(対前年比103.6%)、原材料使用額等は2億9100万円(対前年比103.5%)、製品出荷額等は4億8000万円(対前年比104.9%)、付加価値額は1億6700万円(対前年比105.8%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は416万円(対前年比103.0%)、製品出荷額等は2733万円(対前年比104.2%)、付加価値額は950万円(対前年比105.1%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は60.7%(対前年比98.6%)、同付加価値額比率は34.8%(対前年比100.8%)、同現金給与総額比率は15.2%(対前年比98.8%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2429 その他の金物類製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【洋食器・刃物・手道具・金物類製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

pj55079
画像:Mariko Mitsuda

【業種別データ】非鉄金属素形材製造業の動向

2023年の非鉄金属素形材製造業は、事業所数はほぼ横ばい(1267)、従業者数は微増(4万3112人)で雇用は安定し、製造品出荷額は約1.29兆円(前年比+7.4%)と回復基調です。特にアルミダイカストが顕著な伸びを示しました。一方、原材料使用額の上昇で原材料比率は約55.8%と高止まりし、付加価値率の改善は限定的。収益性向上とコスト管理が当面の課題です。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の非鉄金属素形材製造業の事業所数は1267事業所(対前年比99.6%)、従業者数は4万3112人(対前年比100.1%)、製造品出荷額等は1兆2872億1100万円(対前年比107.4%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は34人(対前年比100.5%)、現金給与総額は1億6000万円(対前年比105.2%)、原材料使用額等は5億6700万円(対前年比108.4%)、製造品出荷額等は10億1600万円(対前年比107.8%)、付加価値額は3億8100万円(対前年比108.0%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は471万円(対前年比104.8%)、製造品出荷額等は2986万円(対前年比107.3%)、付加価値額は1118万円(対前年比107.5%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は55.8%(対前年比100.6%)、同付加価値額比率は37.5%(対前年比100.2%)、同現金給与総額比率は15.8%(対前年比97.6%)となっています。

【2350 非鉄金属素形材製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)銅・同合金鋳物製造業(ダイカストを除く)

2023年の銅・同合金鋳物製造業(ダイカストを除く)の事業所数は166事業所(対前年比100.0%)、従業者数は3681人(対前年比101.0%)、製造品出荷額等は1327億6200万円(対前年比108.3%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は22人(対前年比101.0%)、現金給与総額は1億1200万円(対前年比104.0%)、原材料使用額等は5億1500万円(対前年比107.3%)、製品出荷額等は8億円(対前年比108.3%)、付加価値額は2億4700万円(対前年比101.1%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は503万円(対前年比103.0%)、製品出荷額等は3607万円(対前年比107.3%)、付加価値額は1114万円(対前年比100.2%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は64.4%(対前年比99.0%)、同付加価値額比率は30.9%(対前年比93.4%)、同現金給与総額比率は14.0%(対前年比96.0%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2351 銅・同合金鋳物製造業(ダイカストを除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)非鉄金属鋳物製造業(銅・同合金鋳物及びダイカストを除く)

2023年の非鉄金属鋳物製造業(銅・同合金鋳物及びダイカストを除く)の事業所数は345事業所(対前年比99.1%)、従業者数は8431人(対前年比100.5%)、製造品出荷額等は2089億800万円(対前年比104.5%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は24人(対前年比101.4%)、現金給与総額は1億1000万円(対前年比102.4%)、原材料使用額等は3億3900万円(対前年比111.9%)、製品出荷額等は6億600万円(対前年比105.4%)、付加価値額は2億3100万円(対前年比96.6%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は451万円(対前年比101.0%)、製品出荷額等は2478万円(対前年比104.0%)、付加価値額は943万円(対前年比95.2%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は55.9%(対前年比106.1%)、同付加価値額比率は38.1%(対前年比91.6%)、同現金給与総額比率は18.2%(対前年比97.1%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2352 非鉄金属鋳物製造業(銅・同合金鋳物及びダイカストを除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)アルミニウム・同合金ダイカスト製造業

2023年のアルミニウム・同合金ダイカスト製造業の事業所数は464事業所(対前年比99.8%)、従業者数は2万3324人(対前年比99.7%)、製造品出荷額等は7520億5900万円(対前年比109.3%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は50人(対前年比99.9%)、現金給与総額は2億3900万円(対前年比107.3%)、原材料使用額等は8億7600万円(対前年比108.9%)、製品出荷額等は16億2100万円(対前年比109.6%)、付加価値額は6億2000万円(対前年比114.2%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は475万円(対前年比107.4%)、製品出荷額等は3224万円(対前年比109.7%)、付加価値額は1233万円(対前年比114.3%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は54.1%(対前年比99.4%)、同付加価値額比率は38.2%(対前年比104.2%)、同現金給与総額比率は14.7%(対前年比97.9%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2353 アルミニウム・同合金ダイカスト製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)非鉄金属ダイカスト製造業(アルミニウム・同合金ダイカストを除く)

2023年の非鉄金属ダイカスト製造業(アルミニウム・同合金ダイカストを除く)の事業所数は147事業所(対前年比99.3%)、従業者数は3043人(対前年比98.7%)、製造品出荷額等は463億5500万円(対前年比106.1%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は21人(対前年比99.3%)、現金給与総額は7500万円(対前年比100.0%)、原材料使用額等は1億5500万円(対前年比101.9%)、製品出荷額等は3億1500万円(対前年比106.8%)、付加価値額は1億3900万円(対前年比110.1%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は364万円(対前年比100.7%)、製品出荷額等は1523万円(対前年比107.5%)、付加価値額は672万円(対前年比110.8%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は49.2%(対前年比95.4%)、同付加価値額比率は44.1%(対前年比103.0%)、同現金給与総額比率は23.9%(対前年比93.7%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2354 非鉄金属ダイカスト製造業(アルミニウム・同合金ダイカストを除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)非鉄金属鍛造品製造業

2023年の非鉄金属鍛造品製造業の事業所数は145事業所(対前年比100.0%)、従業者数は4633人(対前年比101.4%)、製造品出荷額等は1471億2700万円(対前年比101.4%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は32人(対前年比101.4%)、現金給与総額は1億7000万円(対前年比103.6%)、原材料使用額等は6億円(対前年比103.4%)、製品出荷額等は10億1500万円(対前年比101.4%)、付加価値額は3億7000万円(対前年比100.3%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は531万円(対前年比102.2%)、製品出荷額等は3176万円(対前年比100.0%)、付加価値額は1157万円(対前年比98.9%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は59.2%(対前年比102.0%)、同付加価値額比率は36.4%(対前年比98.9%)、同現金給与総額比率は16.7%(対前年比102.2%)となっています。詳しくは、下表を参照してください。

【2355 非鉄金属鍛造品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【非鉄金属素形材製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

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PayPayが3月、米国市場に上場した。十分な成長機会を求めた結果とはいえ、日本にとって「パッシング」された事実は重い。

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法規制を突破せよ!尖った新規事業を実現する国の支援策

1 法規制を突破する「3つの制度」

突然ですが、

「画期的な事業アイデアがあるのに、法規制に引っかかってしまい、アイデアが実現できない、あるいは、法規制を突破する方法が分からず困っている……」

という悩みを抱えている人はいないでしょうか?

実は、法規制などにぶつかったとき、国がそれを突破する手助けをしてくれる3つの制度があります。

  • グレーゾーン解消制度:法規制の適用対象になるか否かをあらかじめ確認できる制度
  • プロジェクト型「規制のサンドボックス」:期間や参加者を限定した実証実験を行い、実証実験で得たデータを基に法規制の見直しにつなげる制度
  • 新事業特例制度:今のままだと法規制に引っ掛かるが、ルールを個別に作り変え、特例として認めてほしいと要望できる制度

これらは、個々の企業の事業内容に即した規制改革を進めていくために創設された制度です。以降で制度の概要や活用事例を紹介していきますので、ご興味があれば経済産業省のウェブページなどを確認してみてください。

■経済産業省「グレーゾーン解消制度・プロジェクト型『規制のサンドボックス』・新事業特例制度」■
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/index.html

また、この記事で紹介する申請書照会書・申請書等の書式は、いずれもこちらからダウンロードできます。

■経済産業省「グレーゾーン解消制度、新事業特例制度及び規制のサンドボックス制度の様式」■
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/detail.html

2 グレーゾーン解消制度の概要

1)制度を利用する際の流れ

グレーゾーン解消制度とは

法規制の対象になりそうな事業について、関係省庁から実際に規制の適用を受けるか否かの「公的な回答」を得られる制度

です。利用の流れは次の通りです。

グレーゾーン解消制度の利用手続きの流れ

1.事前相談

企業は、事業の計画や確認したい事項をまとめて事業所管省庁に相談します。事業所管省庁は、この後の手続きがスムーズに進むように必要な情報の提供と助言をしてくれます。

2.申請書(照会書)の作成・提出

次に、企業は「新事業活動に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令の規定に係る照会書」を事業所管省庁に提出します。

3.回答書の受け取り

原則として、照会書の提出から1カ月以内に、事業所管省庁・規制所管省庁の連名で確認結果の通知が届きます。規制の適用を受けないと判断されれば、企業は特段の許認可などを取得することなく事業を実施できます。一方、規制の適用を受けると判断された場合、

新事業特例制度(後述)を利用して、突破を試みる

ことができます。

2)活用事例

グレーゾーン解消制度は、2014年1月の施行から、経済産業省が所管の案件だけで299件の回答実績があります(2025年12月末時点)。また、直近の活用事例には、次のようなものがあります。

1.事業名

建設業界への電子契約サービスの提供(申請:2026年3月4日 回答:2026年4月3日)

2.概要

建設業向けのクラウド型受発注サービスを提供する企業が、建設工事の請負契約を電子化するに当たり、自社サービスが建設業法施行規則第13条の4第2項に定められた次の3つの技術的基準に適合するか否かを照会しました。

  • 見読性:相手方がファイルへの記録を出力することにより書面を作成できること
  • 原本性:ファイルに記録された契約事項等について、改変が行われていないか確認できる措置を講じていること
  • 本人性:契約の相手方が本人であることを確認できる措置を講じていること

3.照会結果

国土交通省から

  • PDFファイルによる閲覧・印刷が可能であること
  • 公開鍵暗号方式の電子署名とタイムスタンプ付与により改ざん検知が可能であること
  • 本人確認措置を講じた上で契約が行われること

を根拠として、技術的基準を満たし適合する旨の回答があり、同社のサービスは建設工事の請負契約に利用が可能となりました。

この他の活用事例は、経済産業省のウェブサイトで確認できます。

■経済産業省「グレーゾーン解消制度の活用事例」■
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/result/gray_zone.html

3 プロジェクト型「規制のサンドボックス」の概要

1)制度を利用する際の流れ

プロジェクト型「規制のサンドボックス」とは

AI、ブロックチェーンなどの革新的な技術やビジネスモデルを活用したいとき、規制の適用を受けずに素早く実証実験を行い、その結果に基づいて規制の見直しにつなげる制度

です。利用の流れは次の通りです。

規制のサンドボックス制度の利用手続きの流れ

1.事前相談

企業は、対象の事業について内閣官房の一元窓口に事前相談を行います。

2.計画の策定・実証計画の認定申請を所管の大臣に提出

企業は、実証実験の計画をまとめ、「新技術等実証計画の認定申請書」を規制所管省庁と事業所管省庁の大臣に提出します。

3.見解の送付

申請書を受けた所管する大臣(規制所管省庁、事業所管省庁)は、内閣府に設置した新技術等効果評価委員会に見解を送付して意見を求めます。

4.計画認定、公表

所管する大臣は、計画が既存の規制法令に違反しない場合には認定します。所管する大臣の見解(認定の可否、しない場合の理由など)は新技術等効果評価委員会でも審議されます。

5.定期報告、終了報告

企業が行った実証実験の定期報告、終了報告を基に、規制所管省庁は必要な規制の撤廃や緩和のための法制上の措置その他の措置を講じます。

2)活用事例

規制のサンドボックス制度は、2018年6月の施行から、経済産業省が所管の案件だけで21件の認定実績があります(2025年12月末日時点)。活用事例には、次のようなものがあります。

1.事業名

ブロックチェーン技術を活用した電子的取引に係る第三者対抗要件に関する実証(申請:2025年1月27日 認定:2025年3月19日)

2.概要

ブロックチェーン技術を実装した電子取引インフラを運営する企業が、自社システムと「オンライン取引ツール」を用いて、債権・信託受益権の譲渡に係る承諾を電子的に完結させ、産業競争力強化法に定める第三者対抗要件の特例措置に必要なシステム要件を満たすことの実証を行ったものです。

この他の活用事例は、経済産業省のウェブサイトで確認できます。

■経済産業省「規制のサンドボックス制度の活用事例」■
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/result/sandbox.html

4 新事業特例制度の概要

1)制度を利用する際の流れ

新事業特例制度とは、

事業を実施する上で支障となる規制があるとき、安全性などの確保を条件に、規制の特例を認めてもらう制度

です。利用の流れは次の通りです。

新事業特例制度の利用手続きの流れ

1.規制の特例措置を求める申請書の作成・提出

企業は、事業所管省庁に事前相談をした後、「新事業活動に関する新たな規制の特例措置の整備に係る要望書」を事業所管省庁に提出します。

事業所管省庁が要望書を適切と判断すれば、規制所管省庁に規制の特例措置を整備するよう要請してくれます。規制所管省庁が規制の特例措置を整備するか否かを決定した後、事業所管省庁を経由して企業に結果が通知されます。原則として、要望書の提出から1カ月で検討結果が通知されます。

2.新事業活動計画の策定・認定申請

特例措置が認められた場合、企業は新事業活動計画の認定申請を行います。具体的には、「新事業活動計画の認定申請書」を事業所管省庁に提出します。

3.回答・認定書の交付

事業所管省庁が申請書を適切と判断すれば、新事業活動計画を認定することについて規制所管省庁に同意を求めてくれます。規制所管省庁は、新事業活動計画の内容について規制が求める安全性などの観点から検討し、適切と判断したら認定の同意をします。その後、事業所管省庁から企業に対して、認定書が交付されます。

4.新事業活動の実施

認定書の交付をもって、企業は新規事業を実施できます。もちろん、規制の特例措置に係る安全性などを確保する措置を含め、提出した新事業活動計画に沿って実施する必要があります。

5.事業の報告

新規事業を実施する際、各事業年度が終了してから3カ月以内に、「年度における認定新事業活動計画の実施状況報告書」(以下「報告書」)に必要事項を記載し、事業所管省庁へ事業の実施状況を報告しなければなりません。

2)活用事例

新事業特例制度は、2014年1月の施行から、経済産業省が所管の案件だけで16件の認定実績があります(2025年12月末時点)。活用事例には、次のようなものがあります。

1.事業名

電動キックボード運転時のヘルメット任意着用等(申請:2021年1月25日 回答:2021年2月5日)

2.概要

電動キックボードのシェアリングサービスの公道走行実証を行う事業者が、当時は原動機付自転車と同じ扱いとされていた電動キックボードについて、

  • ヘルメット着用を任意とすること
  • 普通自転車専用通行帯の走行を認めること
  • 自転車道の走行を認めること
  • 自転車が交通規制の対象から除かれている一方通行路の双方走行を認めること

について特例措置の整備を要望したものです。

3.結果

実証実験で蓄積したデータを基に、2023年7月に改正道路交通法が施行されました。これにより、一定の基準を満たす電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」という新区分に分類され、16歳以上であれば運転免許が不要、ヘルメット着用は努力義務、自転車レーンや路側帯なども走行可能となりました。新事業特例制度を通じた実証が、全国規模の規制改革に結びついた例といえます。

この他の活用事例は、経済産業省のウェブサイトで確認できます。

■経済産業省「新事業特例制度の活用事例」■
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyokaitakuseidosuishin/result/shinjigyou.html

以上(2026年6月更新)

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画像:Levente Janos-Adobe Stock

【分かりやすい原価計算(6)】設備などの初期投資は超・固定費~投資の判断を左右する「回収期間」~

1 設備などの初期投資は、超・固定費

「設備投資がなかったら、どんなに楽だっただろう」という嘆きを聞くことがあります。この設備投資というものが、どうしてその後の状況の変化で大きな問題になるのか、投資するときにはどのようなことに気を付ければよいかを一緒に考えていきましょう。これも原価計算が解決する課題です。

費用をかけるときはそれが変動費であるか固定費であるかを理解しておく必要があります。そして、今回は固定費の中の固定費ともいえる「初期投資」について説明したいと思います。

固定費は、売上の増減によらず一定額発生する費用であり、何か手を打たなければ将来にわたり発生し続けるものです。これに対して、初期投資は、

設備や新規事業など多額のお金がいっぺんに出ていってしまうもの

です。支払ったら最後、もう取り返すことはできません。実は、この特徴が通常の固定費(基本的に将来にわたって発生が続く費用)以上にやっかいなのです。

どういうことかというと、初期投資を支払った後で、状況が想定と違ってしまうケースがあります。例えば、海外から観光客が増えているからとホテルを建設中にコロナ禍に見舞われた会社は、既に建設に要した初期投資を取り戻すことはできません。また、仮にホテルはなんとか開業できたとしても、人の動きが抑制され宿泊客が激減している状況では、建設にかかった初期投資をすぐに取り戻すことは不可能です。このように、過去に支払ってしまったものというのは、当たり前の話ではありますが、どうにもできないのです。

初期投資のために銀行から借入をする場合も、考え方は同じです。なぜなら、自社から実際にお金が出ていくタイミングが銀行からの借入によって後ろ倒しになるだけで、結局自社で負担せざるを得ないのは同じだからです。

そうは言っても、経営をする以上は投資をしないというわけにはいきません。では、どうすればよいでしょうか。それは、初期投資が必要になった場合には、その案件の自社にとっての負担の大きさ、つまりリスクの大きさを客観的に理解しておくと判断がしやすくなります。

2 リスクは「回収期間」でつかもう

初期投資のリスクの大きさを測る指標として「回収期間」を使います。ざっくり言えば、回収期間とは「投資後、何年たったら収支がトントンになる予想なのか」を示しています。

例えば、新工場建設にかかる投資の回収期間が2年という場合には、新工場が予定どおりに操業し売上につながれば、投資で出ていった金額と同じ金額が入ってきて元がとれるのが、2年後ということです。

「回収」という言葉の意味は、かけたお金が回収できる、つまり、収支がトントンになることを意味します。ちなみに、有名な「損益分岐点売上高」は、損益計算書上の収支がトントン、つまり利益がゼロになる売上高のことです。回収期間というのは、「投資版の損益分岐点売上高」と考えると分かりやすいかもしれません。

次に、判断の仕方です。回収期間が2年と4年であればどちらがいいでしょうか。答えは2年です。

この数年の間で痛感した方も多いと思いますが、遠い将来ほど予測することは難しいものです。回収期間においても、先は分からないので、長くないほうが安全という考え方がベースにあります。回収期間は簡単に計算できますので、ぜひ勘を鍛えるために次の数値例を参考にしてください。

3 事例で確認。回収期間で見る投資リスク判断

機械の購入代金が100万円であり、手元に残るお金が年30万円という投資案件があったとします。まず、投資のマイナスと投資してからの収支のプラスを前から足していき、プラスになるところを見つけます。

画像1

この場合、

-100万円(機械の購入代金。つまり初期投資額)に30万円+30万円+30万円+30万円で4年目でプラス

になります。プラスになる年数が同じであれば、その中でも小数点以下がどれくらいになるかの端数を見て判断します。

最初の3年と、4年目は10万円だけあればよいので、10万円を1年分の30万円で割って0.33…、3.33年となります。

この投資の回収期間は、3.33年と評価します。

4 実務の手順の肝は、予測数値の洗い出し

実際の実務の手順は、

  • 投資額を見積もる
  • 変化する収入と費用の金額を洗い出す
  • 「回収期間」を計算
  • 計算結果をもとに経営者と検討

となります。上記で見たように計算自体は簡単ですが、肝となるのは1.と2.の手順です。

 1.については、業者に設備の見積もりを依頼するなどして投資額を見積もります。

 2.については、製品の増産や新製品の販売によって売上が増える場合はその金額を変化する収入として予測します。また、それにともなって増加する仕入などが変化する費用です。あるいは、人を増やさないといけないのであれば、人件費の増加も変化する費用になります。ここでポイントとなるのは投資によって変化するものを考えるということです。投資してもしなくてもかかる費用は、考える必要がありません。なぜなら、投資してもしなくても変わらないので、投資の判断には影響がないからです。このように数値を予測するところが大事になります。

5 回収期間は何年がベスト!?

投資の検討をする際、回収期間は短いほうが安全でよいのは分かると思います。では、実際の判断に用いるときには、具体的に何年までならよいのでしょうか。実は、この点については、各社の資金状況や事業の種類によって大きく異なります。そのため、個別に判断していくしかないのです。そして、同じ業種でも扱うジャンルによっては、回収期間の目安は異なるべきです。

飲食業で考えてみましょう。飲食業は、出店のために6カ月分の敷金や什器備品を必要とするなど初期投資が多い業種の1つです。そのため、回収期間が指標として重視される傾向にあります。

例えば、タピオカ屋を出店するとしましょう。数年前に流行したのはまだ記憶に新しいですが、タピオカのような新メニューを主に扱う場合には、その流行が数年、数十年にわたって続くかどうかはその時点では分かりません。とすると、回収期間としてはできるだけ早く、数カ月から1年程度、長くても2年以内を目指したほうが安全でしょう。

一方、出す店がラーメン屋だった場合は話が変わります。ラーメンは、人気が安定しているジャンルといえるため、タピオカに比べれば、長い期間需要が見込めるでしょう。もちろん、回収期間は短いほうがいいものの、3~5年程度の回収期間であれば、許容できることも多いといえます。

このように、同じ飲食業でも主力のメニューが違えば、顧客や市場の状況はまったく異なります。その結果、回収期間の目安にも大きな影響を与えるのです。そこで、自社が取り組む事業の性質を十分理解した上で、目安は各自が設定するしかありません。逆に、目安がイメージできないようであれば、その事業や業種に関する情報収集が十分ではない可能性がありますので、再考したほうがいいかもしれません。

いかがでしょうか。固定費の中の固定費である「初期投資」の判断に役立つ手法として、回収期間を押さえて、次の一手につなげてほしいと思います。

以上(2026年5月更新)

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画像:Shutter z-shutterstock

これだけ押さえてカスハラ対策! 弁護士が教える4つのポイント

1 2026年10月1日、カスハラ防止措置が義務化!

顧客が店員などに対してささいなミスで土下座を強要したり、弁償を要求したりする。あるいは「お気に入り」だからと言い寄り、長時間拘束する。こういった言動は、

カスハラ(カスタマーハラスメント、顧客等による悪質な嫌がらせ)

の典型例です。「お客様は神様です」という言葉に象徴されるように、日本の会社は昔から顧客を大切にする文化があります。しかし、「理不尽な要求にも応じ続けることが本当に顧客を大切にすることなのか」という問題があり、そんな中、改正労働施策総合推進法により、

2026年10月1日から、カスハラ防止措置が義務化

されることになりました。

厚生労働省の「カスハラ防止指針」(正式名称は「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)によると、全ての会社に次のカスハラ防止措置が義務付けられることになります。

(図表1)【カスハラ防止措置(2026年10月1日から義務化)】

カテゴリ No. 措置の内容
方針の明確化・周知啓発 カスハラには毅然とした態度で対応し、社員を保護する旨の方針を明確化し、社員に周知・啓発する
カスハラの内容と対処の内容を社員に周知する
相談体制の整備 相談窓口をあらかじめ定め、社員に周知する
相談窓口担当者が適切に対応できるようにする
事後の迅速かつ適切な対応 事実関係を迅速かつ正確に確認する
被害者に対する配慮のための措置を適正に行う
再発防止に向けた措置を講ずる
カスハラ抑止のための措置 特に悪質なカスハラへの対処の方針をあらかじめ定め、社員に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備する
その他の措置 相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、社員に周知する
相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、社員に周知・啓発する

(出所:厚生労働省「カスハラ防止指針」を基に作成)

ご覧の通り、会社には、社員からの相談窓口の整備や相談対応など求められるようになります。対策不備がある場合には、行政による助言・指導・勧告等の対象となり、勧告に従わない場合には会社名公表の対象となる可能性があります。それに、カスハラから社員を守らなかったことで、社員が会社に怒りを向けて訴訟トラブルなどに発展するリスクもあります。

義務化まで残り4カ月。この記事では、中小企業が今すぐ取り組むべき4つの鉄則を紹介します。なお、カスハラの定義や防止措置の詳細についてはこちらもご確認ください。

■厚生労働省「カスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務となります!」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

2 鉄則1 「これはカスハラか?」——判断基準を会社で共有する

カスハラへの対応で最初につまずくのが、

「これはカスハラなのか、それとも正当なクレームなのか」という判断

です。ここを曖昧にしたまま対応すると、社員が萎縮して正当なクレームにも対応できなくなったり、逆にカスハラを見過ごしてしまったりします。

厚生労働省「カスハラ防止指針」では、「次の3つをすべて満たす場合にカスハラが成立する」と定義しています。

  • 顧客、取引の相手方、施設の利用者その他会社の事業に関係を有する者が、
  • 社会通念上許容される範囲を超えた言動により、
  • 社員の就業環境を害すること

では、具体的にどのような言動がカスハラになり得るのか。図表2を見てください。

(図表2)【カスハラになる可能性がある言動の例】

イ 言動の「内容」が許容範囲を超えるもの
①要求に理由がない・無関係な要求
①要求に理由がない・無関係な要求
性的な要求、プライバシーに関わる要求、商品・サービスと無関係な要求など

②契約を著しく超えるサービスの要求
②契約を著しく超えるサービスの要求
契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること

③対応が著しく困難・不可能な要求
③対応が著しく困難・不可能な要求
契約金額の著しい減額など、対応が著しく困難または不可能な要求

④不当な損害賠償要求
④不当な損害賠償要求
商品・サービスと無関係な不当な損害賠償を要求すること

ロ 言動の「手段・態様」が許容範囲を超えるもの
①身体的な攻撃
①身体的な攻撃
殴る・蹴る・叩くなどの暴行、物を投げつける、わざとぶつかるなど

②精神的な攻撃
②精神的な攻撃
脅迫・暴言・土下座の強要・盗撮・SNSへの投稿をほのめかすなど

③威圧的な言動
③威圧的な言動
大声で威圧する、必要以上に距離を詰める、反社会的な言動など

④継続的・執拗な言動
④継続的・執拗な言動
同じ質問を執拗に繰り返す、揚げ足取り、同じメールを繰り返し送るなど

⑤拘束的な言動
⑤拘束的な言動
長時間の居座りや電話で社員を拘束すること

(出所:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」「カスハラ防止指針」を基に作成)

カスハラ防止指針によると、カスハラは図表2の通り、

  • 言動の「内容」が許容範囲を超えるもの
  • 言動の「手段・態様」が許容範囲を超えるもの

に大別されます。暴力・暴言、土下座の強要、長時間の居座り、SNSへの書き込みをちらつかせた脅しなどは、カスハラに該当し得る典型的な言動です。これらは法的には、

民法の「不法行為」(故意・過失によって他人の権利や法律上の利益を侵害する行為)

に該当する可能性があります。また、言動の内容によっては、刑法(傷害罪、脅迫罪、強要罪、名誉毀損罪、不退去罪など)や軽犯罪法が適用されることもあります。

逆に図表2のような言動に当たらない(言動の「内容」「手段・態様」に問題がない)場合、カスハラではなく正当なクレームということになります。カスハラ対策は「理不尽な要求から社員を守る」ためのものですから、正当なクレームには真摯に対応しなければなりません。

顧客等の言動について、社員が安易に「それ、カスハラですよね?」と発言してしまってトラブルになるケースもある

ので注意しましょう。このあたりの考え方については、こちらのコンテンツが参考になります。

なお、カスハラの対象となる「顧客等」の範囲は意外と広く、対面での顧客だけでなく、取引先の担当者、施設の近隣住民、電話やSNS上でのやり取りも含まれます。「うちは対面販売がないから関係ない」とはなりません。

3 鉄則2 類型別に「うちの対応方針」を事前に決めておく

冒頭で紹介した通り、今回の法改正では、カスハラを防止するために

  • 方針の明確化・周知啓発
  • 相談体制の整備
  • 事後の迅速かつ適切な対応
  • カスハラ抑止のための措置
  • その他の措置

を実施しなければなりません。基本的な対応は、社内のハラスメント(パワハラやセクハラ)の防止措置と同じですから粛々と進めましょう。ただ、事業主の方針等や相談窓口の設置はもちろん大切ですが、それ以上に社員が気にしているのは、

いざ現場でカスハラが起きたとき、どう対応すればいいのか

でしょう。前章で紹介した通り、カスハラにはいくつかの類型があるので、類型ごとの対応方針をあらかじめ決めておくことが重要です。

(図表3)【カスハラの類型に応じた対応方針の例】

イ 言動の「内容」が許容範囲を超えるもの
①要求に理由がない・無関係な要求
①要求に理由がない・無関係な要求
要求の根拠と商品・サービスとの関係を確認する。無関係な要求には「対応しかねます」と毅然と断り、同じ説明を繰り返さない。上司が対応を引き継ぎ、書面で回答する方法も有効。

②契約を著しく超えるサービスの要求
②契約を著しく超えるサービスの要求
契約書・約款・規程を根拠に提供範囲を明示し、「できかねます」と伝える。繰り返し要求される場合は複数名で対応し、最終回答を書面で通知することを検討する。

③対応が著しく困難・不可能な要求
③対応が著しく困難・不可能な要求
根拠を示して明確に断る。過大な値引き・返金要求は応じない旨を伝え、上司が対応を引き継ぐ。要求内容を記録・保存し、必要に応じて顧問弁護士や外部機関に相談する。

④不当な損害賠償要求
④不当な損害賠償要求
要求の根拠を確認し、商品・サービスと無関係な損害賠償には応じない。金額が大きい場合や法的手続きを示唆される場合は、速やかに顧問弁護士・外部機関に相談する。

ロ 言動の「手段・態様」が許容範囲を超えるもの
①身体的な攻撃
①身体的な攻撃
複数名で対応し、安全な場所に移動する。状況に応じて即座に警察(110番)へ通報する。被害状況を記録・保存し、被害を受けた従業員の心身のケアを最優先する。

②精神的な攻撃
②精神的な攻撃
上司が対応を引き継ぎ、一人で対峙させない。土下座要求には絶対に応じない。脅迫・SNS投稿のほのめかしは内容を記録・保全し、必要に応じて警察・弁護士に相談する。

③威圧的な言動
③威圧的な言動
複数名で対応し、冷静に「そのような言い方はお控えください」と伝える。改善しない場合は「対応を一時中断します」と告げて距離を置く。やり取りの内容を記録する。

④継続的・執拗な言動
④継続的・執拗な言動
「すでに回答済みです」と繰り返し伝える。電話は一定時間経過後に「本日の対応はここまでです」と告げて終了できる旨を社内ルールとして定め、着信拒否等の措置も検討する。

⑤拘束的な言動
⑤拘束的な言動
最初に「対応時間は○分です」と伝え、時間を区切って対応する。退去しない場合は「退去をお願いします」と毅然と告げ、応じなければ警察への通報を行う。

(出所:厚生労働省「カスハラ防止指針」「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を基に作成)

類型によって対応の中身がかなり異なります。例えば暴力など身体的な攻撃は複数名で対応しつつ即座に警察に通報しますが、土下座の強要は上司が対応を引き継いで要求に一切応じない、執拗な電話は一定時間経過後に電話を切ることを毅然と伝える、といった具合です。

また、カスハラ特有の防止措置(義務)の内容として、会社には

特に悪質なカスハラへの抑止措置を講じる

ことが義務付けられます。繰り返し悪質な行為を行う相手に対しては、警告文の発出、商品・サービスの提供拒否、店舗への出入り禁止といった対処方針をあらかじめ定め、社員に周知しておく必要があります。

なお、図表3はあくまで大枠の方針です。実際の対応は、

  • カスハラが初めて行われたのか、繰り返し行われているのか(初めての場合、内容によっては注意だけで済ませることも検討)
  • 対応した社員に落ち度はなかったのか(正当なクレームに対する社員の対応不備が原因でトラブルが拡大した場合には、事実関係を確認した上で、会社として必要な説明や謝罪を行うことも検討)

なども考慮して慎重に判断します。

そのためには、カスハラ対応における社内の役割分担を明確にする必要があります。次章以降で見ていきましょう。

4 鉄則3 社員は事実を正確に会社に報告する

顧客等から電話や対面などで会社に対してクレームがあった場合、まずは窓口の社員が初期対応に当たります。ここで社員に求められるのは、

顧客等を不用意に刺激しないよう注意しつつ、会社が顧客等への対応を検討するために必要な情報を集めること

です。ポイントは次の2つです。

  • 限定的な謝罪:不快感を与えたことについてだけ謝罪する
  • 事実の把握:顧客等の要求の内容や問題が発生した経緯を正確に把握する

1.では、顧客等に対し、「このたびは不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」など、不快感を与えたことだけを謝ります。正確に状況が把握できていない段階では、不用意に会社の非を認めたり、相手の要求に応じたりするべきではありません。

2.では、顧客等の住所・名前・連絡先などを確認した上で、話を一通り聞き、要求の内容や問題が発生した経緯を確認します。事実を正確に把握するため、必要に応じて会話を録音するなどして証拠に残します。また、現場対応は1人で行わず、可能な限り複数名で対応するのがよいでしょう。

1.と2.が完了したら、社員は顧客等から確認した情報を上司に報告し、今後の対応について相談します。ただし、身体的な攻撃や性的な言動を受けたなど緊急性が高いときは、1.と2.の状況に関係なく、即座に上司に報告します。

5 鉄則4 上司または経営者が具体的な対応を決める

カスハラに関する社内対応の流れは次の通りです。

カスハラに関する社内対応の流れ

上司は社員から、顧客等の要求の内容や問題が発生した経緯について話を聞き、

カスハラであれば、その内容に基づいて顧客等への具体的な対応を決定

します。ただし、

  • 顧客等が重要な取引先である
  • 弁護士、警察などに相談すべき案件である(訴訟手続が必要、犯罪行為に当たるなど)

などといった場合は、必要に応じて経営者が判断します。詳細が決まったら、状況に応じて適切な人が対応します。顧客等が取引先(会社)の場合は、社内にハラスメント相談窓口があるでしょうから、必要に応じて窓口担当者とも連携しましょう。

なお、社員がすでにカスハラによって精神的ショックを受けている場合、顧客等から引き離す、医師による面談を実施するといった措置も併せて検討します。

この他、上司または経営者が具体的な対応を決定したり、社員が前述の初期対応を行ったりする上で支障がないよう、定期的に社内で対応ルールの教育・研修を実施するとよいでしょう。

以上(2026年6月更新)
(監修 弁護士 坂東利国)

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画像:ChatGPT