【ハラスメント対策】 もう「ハラスメント」とは言わせない!安心のシーン別セリフ集

1 ハラスメントと言わせない指導をお手伝いします

部下の指導は上司(管理職)の仕事。とはいえ、部下との関係が浅いうちに少し突っ込んだ指導をすると「ハラスメント!」と言われかねません。「そんなつもりはないのに……」と言いたいことも言えなくなってしまった経験もあるかもしれませんが、ご安心。

以降で、ハラスメントになる問題発言と、それをホワイト発言に変換した例を紹介するので、どこがいけないのか確認してみてください。この記事を読めば、

ハラスメントと言わせない指導

に一歩近づきます!

早速、パワハラ(パワーハラスメント)、セクハラ(セクシュアルハラスメント)、マタハラ(マタニティハラスメント)の順番で確認していきましょう。

2 パワハラ発言になりやすい言い方、なりにくい言い方

パワハラは、職場の優越的な関係(上司と部下など)を背景に、業務上必要のない(または行き過ぎた)言動によって相手の就業環境を害するハラスメントです。パワハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例は次の通りです。

パワハラになりやすい言い方、なりにくい言い方

赤字が問題発言です。退職をにおわせる発言(1.と2.)、相手を侮辱する言葉(3.と4.)は、パワハラの典型例です。短時間で仕事を終わらせることを強制する(5.と6.)、部下から仕事を取り上げる(7.)というのも、部下の業務量や納期の状況などによってはパワハラになります。「自分は正論を言っているから」と部下の言い分に耳を傾けない(8.)、休日や休暇などのプライベートに干渉する(9.と10.)というのもリスキーです。仲間はずれにしたり(11.)、業務外の場面で特定の役割を強要したりする(12.)のも慎みましょう。

これを踏まえ、図表右側の「パワハラになりにくい言い方」に言い換えていきます。ポイントは次の通りです。

  • 1.のセリフ:何ができていないのかを明確にしつつ、できていることは評価する
  • 2.のセリフ:「新人のお手本になる」というポジティブなメッセージに言い換える
  • 3.のセリフ:部下の勉強不足は事実として指摘しつつ、改善策も示す
  • 4.のセリフ:上司の指示に問題があったことは素直に認め、その上で部下に改善を促す
  • 5.のセリフ:残業を認めない理由を伝え、仕事を引き取った上で部下を帰らせる
  • 6.のセリフ:仕事の目標時間と併せて、目標を達成するためのヒントも伝える
  • 7.のセリフ:安易に仕事を取り上げず部下にやらせつつ、次回の目標を設定する
  • 8.のセリフ:教えたことのヒントを与えて、部下自身に思い出させる
  • 9.のセリフ:休日の過ごし方には干渉せず、遅刻したことについてのみ注意する
  • 10.のセリフ:有給休暇の取得は妨げず、一方で休み明けにやるべきことは伝える
  • 11.のセリフ:親睦会を任意参加にして、参加するかどうかは部下自身に決めさせる
  • 12.のセリフ:部下にもメリットがあることを伝え、「命令」ではなく「お願い」する

3 セクハラになりやすい言い方、なりにくい言い方

セクハラは、身体的な接触や性的な言葉によって就業環境を害したり、相手がこうした言動を拒否した場合に評価を下げるなどの嫌がらせをしたりするハラスメントです。セクハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例は次の通りです。

セクハラになりやすい言い方、なりにくい言い方

赤字が問題発言です。相手の容姿の特徴を指摘する発言(1.と2.)、恋愛や結婚など個人のプライベートに干渉する発言(3.と4.)、下心があると受け取られそうな発言(5.と6.)、「女性らしい」「男のくせに」など性差を強調する発言(7.と8.)は、セクハラと受け取られがちです。愛称やおばさん、お嬢さんなどと呼ぶ(9.と10.)のも、避けたほうが無難です。相手の体調を気遣う発言(11.と12.)は、業務上必要であっても、周囲に社員がいる状況などでは言い方に配慮が必要です。

これを踏まえ、図表右側の「セクハラになりにくい言い方」に言い換えていきます。ポイントは次の通りです。

  • 1.のセリフ:容姿の特徴的な部分を指摘するのではなく、容姿全体を褒める
  • 2.のセリフ:「雰囲気が変わった」「健康的」など、オブラートに包んだ表現にする
  • 3.のセリフ:具体的な休暇の過ごし方には触れず、楽しんでくるようにとだけ伝える
  • 4.のセリフ:「年齢」「結婚」に関するワードを使わずに、不安なことがないかを聞く
  • 5.のセリフ:部署の集まりであることを伝え、個人的な誘いと疑われないようにする
  • 6.のセリフ:部下の声や話し方が「仕事にどう役立っているか」という視点で褒める
  • 7.のセリフ:「女性らしい」というワードが、具体的に何を意味するかを考える
  • 8.のセリフ:個性を尊重しつつ、「元気があるとさらにいい」と遠回しに伝える
  • 9.のセリフ:職場の風土などにもよるが、「○○さん」などの呼称で統一する
  • 10.のセリフ:「○○さん」、名前が分からない場合は「清掃員さん」などと呼ぶ
  • 11.のセリフ:「生理痛」「更年期」というワードを使わずに、体調不良を気遣う
  • 12.のセリフ:「肌荒れ」というワードを使わずに、疲労が見えることを指摘する

4 マタハラになりやすい言い方、なりにくい言い方

マタハラは、妊娠等(妊娠や出産、育児休業の取得など)をした相手の就業環境を害する言動をしたり、育児休業などの取得を理由に評価を下げるなどの嫌がらせをしたりするハラスメントです。マタハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例は次の通りです。

マタハラになりやすい言い方、なりにくい言い方

赤字が問題発言です。妊娠・出産等への否定的な発言はマタハラの典型例です(1.)。また、相手を気遣ったつもりでも、退職や雇用形態の変更をにおわせる発言(2.と3.)、仕事を一方的に取り上げる発言(4.)、育児休業を取りにくくなる発言(5.と6.と7.)などは、マタハラと受け取られがちです。部下を必要としていないように取れる発言(8.)、育児休業中の過ごし方などに干渉する発言(9.と10.)、職場に復帰したばかりの部下を焦らせるような発言(11.)にも注意しましょう。なお、マタハラは、社員が妊娠・出産等で「働けない」ことを理由に行われるイメージがありますが、「働いている」ことを理由に行われる発言(12.)もマタハラになり得ます。

これを踏まえ、図表右側の「マタハラになりにくい言い方」に言い換えていきます。ポイントは次の通りです。

  • 1.のセリフ:部下のつらさに寄り添って、安心できる言葉をかける
  • 2.のセリフ:「復帰が大変」という話ではなく、「復帰のサポート」に関する話をする
  • 3.のセリフ:育児休業を取得しても、部下に不利益がないことを強調する
  • 4.のセリフ:妊娠中の業務について部下の要望を聴く(医師の指示がある場合はそれも)
  • 5.のセリフ:育児休業は、子どもを育てるための大切な休みであることを強調する
  • 6.のセリフ:家族のサポートを受けられるか、柔らかい言い方で確認する
  • 7.のセリフ:育児休業を取ることに「謝罪」は不要、「感謝」をするよう伝える
  • 8.のセリフ:部下が職場に戻ってくるのを待っていることを強調する
  • 9.のセリフ:育児休業中の連絡は原則せず、する場合も必要最低限にとどめる
  • 10.のセリフ:育児休業中の勉強は強制しない、プレッシャーがかかる言い方も避ける
  • 11.のセリフ:育児休業中のブランクに配慮して、徐々に仕事の感覚を取り戻させる
  • 12.のセリフ:自分の中の子育てのイメージを押し付けず、ポジティブな言葉をかける

以上(2025年11月更新)
(監修 弁護士 八幡優里)

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【規程・文例集】70歳雇用に対応 「定年再雇用規程」のひな型

1 70歳までの就業機会確保(努力義務)とは?

70歳までの就業機会確保とは、

70歳まで働くことを希望する社員に、会社がそうした機会を与える努力義務を負う

というもので、具体的には次の5つの措置のいずれかを実施することとされています(複数の措置を導入し、どの措置を適用するかは社員ごとに決定するといった対応も可能)。

70歳までの就業機会確保

もともと会社は「65歳までの雇用確保」の措置として、「定年廃止」「定年延長(65歳まで)」「継続雇用制度(65歳まで)の導入」のいずれかを実施する義務を負っています。

70歳までの就業機会確保の措置の内容を考える場合、まずは自社が実施している65歳までの雇用確保の措置をベースにするのがよいでしょう。世間一般に浸透しているのは、継続雇用制度の「再雇用制度(定年時に一度雇用契約関係を終了させ、再び雇用する)」です。

そこで、この記事では、

定年後、社員を70歳まで再雇用することを想定した、定年後の再雇用規程のひな型

を紹介します。なお、加齢により社内での就業継続が難しくなる社員などが出てくることが予想されるため、ひな型では定年後の再雇用を原則としつつ、

社員が希望する場合、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する

という選択肢も用意しています(実施に当たっては、創業支援等措置の計画の作成等が必要)。

2 定年後の再雇用規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【定年後の再雇用規程のひな型】

第1条(目的)

本規程は、定年後の再雇用について、対象となる従業員などについて定めるものである。労働条件については労働条件通知書によって個別に定めるものとする。なお、本規程に定めのない事項については、個別に労働条件通知書で定めたものを除き、「契約従業員用就業規則」(省略)を準用する。

第2条(定義)

定年後の再雇用とは、就業規則および契約従業員就業規則に定める定年に達した従業員を、最長で満70歳に達するまで継続雇用する制度である。

第3条(対象となる従業員)

1)定年に達した従業員のうち、再雇用を希望し、かつ各規則に定める退職事由および解雇事由に該当しない者は、満65歳に達するまで再雇用の対象とする。

2)前項にかかわらず、65歳に達した後も再雇用されることを希望し、各規則に定める退職事由および解雇事由に該当しない者のうち、会社の定める基準に該当する者については、満70歳まで再度の継続雇用の対象とすることがある。

第4条(再雇用の希望の聴取)

会社は、定年退職日の6カ月前までに、再雇用の希望の有無を聴取する。

第5条(再雇用期間および更新)

1)1回の再雇用期間は原則として1年間とする。ただし、契約の上限は従業員が満70歳に達するまでとし、それ以降の再雇用は行わない。

2)再雇用契約の更新を希望する従業員は、各契約期間満了の1カ月前までに会社に申し出るものとする。

3)会社は、第2項の申し出をした従業員について勤労意欲、就業態度、健康状態、会社の経営状況などを総合的に判断した上で労働条件を通知し、当該従業員がそれに合意した場合に再雇用契約を更新する。なお、更新に際し、労働条件は変更することがある。

4)65歳に達した者で、第2項の申し出をした従業員について、会社は、従業員の勤労意欲、就業態度、健康状態、会社の経営状況などを総合的に考慮し、就業の継続が難しいと判断した場合、再雇用契約の更新をしないことがある。その場合、会社は各契約期間満了の30日前までに、従業員に再雇用契約の更新をしない旨の予告をするものとする。

5)会社は、65歳に達した者で再雇用契約の更新をしない従業員が希望する場合、特定の業務について業務委託契約を締結することがある。

6)第5項の業務委託契約の上限は従業員が満70歳に達するまでとする。また、従業員が従事する業務、金銭の支払い、契約の締結頻度等の内容は、別途定める「創業支援等措置の計画」(省略)を基に決定するものとする。

第6条(賃金、昇給、賞与)

1)賃金は、業務内容および勤務時間数などを総合的に勘案し、個別に設定する。

2)昇給は原則として行わない。

3)賞与は個別に決定する。

第7条(退職金)

定年後の再雇用の従業員が退職した場合、退職金は支給しない。

第8条(年次有給休暇)

定年退職時に保有する年次有給休暇は引き継ぐものとする。また、年次有給休暇の勤続年数は定年退職前の勤続年数と通算する。

第9条(福利厚生)

再雇用者の福利厚生については、原則として、正社員と同一の扱いとする。

第10条(改廃)

本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則

本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2025年10月更新)

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【退職金制度】iDeCoと企業型DCが変わる? 加入可能年齢や限度額が引き上げ!

2025年6月20日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(年金制度改正法)」が公布され、「iDeCo(イデコ)」と「企業型DC(企業型確定拠出年金)」が改正されることになりました。

iDeCoは、社員が自分で掛金を拠出して運用する、個人型の確定拠出年金です。現行の制度では、会社員(国民年金の第2号被保険者)の場合、iDeCoに加入できるのは65歳までですが、

公布日(2025年6月20日)から3年以内に、加入可能年齢が70歳に引き上げ

られる予定です。

企業型DCは、会社が掛金を拠出するものの、運用は社員が自分の責任で行うという確定拠出年金です。企業型DCには、会社が拠出している掛金に、社員自身が掛金を上乗せすることができる「マッチング拠出」という仕組みがあります。現行の制度では、社員の掛金が会社の掛金を超えられないという制限がありますが、

公布日(2025年6月20日)から3年以内に、この掛金に関する制限が撤廃

されます。この他にも、「企業年金の運用の見える化」などの改正があります。

私的年金の見直し

現代は、昔に比べ定年まで働く社員が減る一方で、高齢化の進展により老後資金の心配をする社員が少なくなく、自社の退職金制度の在り方に迷っている会社も多いと思われます。

次の3本シリーズのコンテンツで、公的年金の減少などを見据え、退職金制度の在り方を考えるヒントを紹介していますので、興味のある人はぜひご確認ください。

以上(2025年10月作成)

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【規程・文例集】株式譲渡契約書のひな型

1 株式譲渡契約書に定めるべき内容

中小企業のM&Aで最もよく利用されるのが株式譲渡です。株式譲渡契約書は、合併や分割などの組織再編とは違い、契約書に必ず定めなければならない法定記載事項がありません。あくまで、契約当事者の認識の齟齬をなくし、株式譲渡をスムーズかつトラブルを未然に防止するために締結します。

そのような観点から契約が締結されるため、株式譲渡契約書に記載される主な事項は、支払条件や株式譲渡を実行するために契約当事者が遵守すべき事項になります。

1)支払条件について(第2条・第3条)

まず株式の売却価格を決めます。ここが合意できないと、その他の実行条件を決めることは難しいです。通常、株式譲渡の価格は、売主側の希望価格を参考にしつつ、買主側が独自に株式評価や対象会社のデューディリジェンスを行って決定します。

また、多くの場合、株式譲渡契約を締結してから株式譲渡を実行する(クロージング)までには一定の期間が必要です。問題は、その間に株式譲渡契約の締結時には想定していなかったことが生じて譲渡価格に影響を及ぼすことです。そこで、こうした事態を想定して「価格調整条項」を記載することがあります。

2)株式譲渡の実行(クロージング)条件について

株式の売却価格がおおよそ決まった後は、実際に譲渡をするための他の条件について決めていきます。主な記載事項は、契約当事者が行うべきことを定めた「クロージングの前提条件」や、双方が開示した情報や事実が正確であることを担保する「表明保証条項」などがあります。

1.クロージングの前提条件(第4条、第8条)

株式譲渡の目的はさまざまです。契約当事者は、自身の目的を実現するために相手方に行ってほしいことを株式譲渡契約において、クロージングの前提条件として定めることがよくあります。個別ケースによってさまざまな内容が考えられますので、契約条件の交渉を進めながら詰めていく必要があります。

2.表明保証条項(第6条、第7条)

株式譲渡を実行する上で、契約当事者が自ら網羅的に調査・検討ができればよいですが、実際は時間や費用、人的リソースなどの制約があり、難しいことがあります。そのため、それぞれが懸念している事項について、ある程度は調査をしつつも詳細については、「懸念事項がないこと」などを表明保証してもらう(その上で、表明保証違反があれば損失補償請求をできるようにしていることが通常です)という方法をとるのが一般的です。

2 株式譲渡契約書のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際に就業規則を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【株式譲渡契約書のひな型】

売主○○(以下「甲」という。)と買主○○(以下「乙」という。)は、甲が保有する○○株式会社(以下「対象会社」という。)の株式の譲渡について以下のとおり合意する。

第1条(譲渡の合意)

甲は、乙に対し、対象会社の普通株式○○株(以下「本件株式」という。)を譲り渡し、乙はこれを譲り受ける(以下「本件株式譲渡」という。)。

第2条(譲渡代金)

1)株式の譲渡代金は金○○円(1株当たり○○円)とする。ただし、次項に基づき調整を実施し、最終的な譲渡価格(以下「最終譲渡価格」という。)を決定するものとする。

2)最終譲渡価格は、次条1項の本件クロージング日時点の対象会社の純資産額が○○円を上回るときは、その差額を増額するものとし、下回るときは、その差額を減額するものとする。

第3条(支払方法)

乙は、甲に対し、令和○○年○○月○○日限り、前条の譲渡代金を支払う。

第4条(クロージング)

1)本件株式譲渡の実行(以下「本件クロージング」という)は、○年○月○日(以下「本件クロージング日」という。)に行うものとする。

2)本件クロージングにおいては、以下の手続きを実行する。

1.乙は、本件クロージング日において、次の事由がすべて充足されていることを条件として、甲が対象会社をして、株主名簿の名義書換を行わせることと引き換えに、第2条の金員を支払うものとする。

  • イ.第6条に規定される甲による表明保証が、重要な点において真実かつ正確であること
  • ロ.甲が、本件クロージング日までに本契約、法令及び社内規程等に基づいて必要となる手続をすべて履行していること
  • ハ.対象会社の取締役会が本件株式譲渡を承認していること

2.甲は、本件クロージング日において、次の事由がすべて充足されていることを条件として、乙から前項の金員の支払いを受けることと引き換えに、対象会社をして株主名簿の名義書換を行わせるとともに、乙に対して別途合意した必要書類を交付する。

  • イ.条に規定される乙による表明保証が、重要な点において真実かつ正確であること
  • ロ.本件クロージング日までに本契約、法令及び社内規程等に基づいて必要となる手続をすべて履行していること

第5条(譲渡承認)

甲は、本件クロージング日までに、対象会社をして、本件株式譲渡の承認に係る取締役会決議を行わせるものとする。

第6条(甲の表明保証)

甲は、乙に対し、本契約締結日及び本件クロージング日において、次の事項を表明・保証する。

1)甲は、本件株式の完全な権利者であり、対象会社の株主名簿に記載された株主であること。

2)本件株式には、質権や譲渡担保権等の担保権は設定されておらず、その他株主の権利を制限する何らの負担を存しないこと。

3)省略

第7条(乙の表明保証)

乙は、甲に対し、本契約締結日及び本件クロージング日において、次の事項を表明・保証する。

1)省略

第8条(甲の義務)

1)甲及び対象会社は、本契約締結以降、本件クロージング日までの間、対象会社の事業を善良な管理者の注意をもって行うものとする。

2)甲及び対象会社は、本契約締結以降、本件クロージング日までの間、乙の事前の書面による同意を得ることなく、以下の事項を行ってはならないものとする。

  • 1.定款その他の対象会社の社内規則等の変更
  • 2.新株又は新株予約権の発行
  • 3.省略

第9条(秘密保持)

1)甲及び乙は、本件株式譲渡の内容及び存在、並びに、本件株式譲渡に関する交渉の経緯(デュー・ディリジェンスを含む。)その他本件株式譲渡の検討に際して他の本契約当事者(以下「他の当事者」という。)より取得した情報に関してこれを第三者に開示してはならない。ただし、本条と同等以上の守秘義務を負う甲又は乙の役職員、弁護士、公認会計士、税理士、ファイナンシャルアドバイザー等の専門家に対して開示する場合、法令若しくは司法・行政機関、金融商品取引所、日本証券業協会の規則等に基づき開示が義務付けられる場合、又は、事前に他の当事者の書面による承諾を受けた場合はこの限りではない。

2)前項の規定に拘わらず、売主及び買主は、以下の各号に掲げる情報については秘密保持義務を負わないものとする。

  • 1.開示を受けた時点で、既に公知である情報
  • 2.開示を受けた時点で、既に保有していた情報
  • 3.開示を受けた後に、受領者の責めによらず公知となった情報
  • 4.開示を受けた後に、秘密保持義務を負うことなく、第三者より適法に入手した情報

第10条(費用負担)

本契約締結に要する費用は、甲乙折半とする。

第11条(管轄)

本契約上の紛争については、その第一審の管轄裁判所を○○地方裁判所とすることに同意する。

以上(2025年9月作成)
(執筆 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

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制度があっても女性が辞めてしまうのはなぜ?/大門あゆみ弁護士の女性活躍ナビ(2)

1 その配慮は違法かもしれない

「女性の活躍推進」が叫ばれて久しいですが、多くの経営者がその重要性を認識し、様々な取り組みを進めていることでしょう。しかし、良かれと思って行った配慮が、実は法律に抵触し、女性のキャリアアップを阻む「落とし穴」になっているケースが少なくありません。例えば、

  • 「女性は家庭との両立が大変だろう」と責任の重い業務から外す
  • 「育児中の女性に転勤は酷だ」と本人の意向を確認せずに配置を決める

といった具合です。こうした一見「配慮」に見える行為が、実は差別(男女雇用機会均等法違反)と見なされるリスクをはらんでいるのです。

今回は、経営者が知らず知らずのうちに陥りがちな法的な落とし穴と、真に女性が活躍できる職場環境を構築するためのポイントを解説します。

2 男女雇用機会均等法違反のリスクと「無意識の偏見」

男女雇用機会均等法は、労働者が性別によって差別されることなく、その能力を十分に発揮できる職場環境の整備を目的としています。具体的には、募集・採用、配置、雇用形態の変更、昇進、降格、教育訓練、退職・解雇など、雇用管理のあらゆる段階で性別を理由とする差別を禁止しています。

これに違反する企業の措置は無効とされたり、不法行為として損害賠償請求の対象となったりする可能性があります。さらに、厚生労働大臣からの報告要求に虚偽の報告をすれば過料が科されます。また、厚生労働大臣からの助言・指導・勧告に従わない場合、厚生労働省ウェブサイトで企業名が公表されることもあり、そうなれば企業の社会的信用は大きく損なわれます。

問題なのは、

多くの差別が「意図せず」に行われている点です。その背景には、「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」

があります。例えば、

  • 管理職は男性の仕事
  • 女性には補助的業務が向いている

といった固定的な性別役割分担意識がそうで、こうした意識が評価や登用の機会に影響を与えているのです。実際に、コース別人事制度を導入した企業で、

総合職が全員男性、一般職が全員女性という運用実態から、女性に対する差別的な取り扱いが問題視され、裁判で違法と判断されたケース

もあります。

また、あるIT企業が開発したAI採用システムが、過去の応募者データ(ほとんどが男性)を学習した結果、女性を差別する判定を下すようになった事例があり、データに基づいた客観的な判断でさえも、元となる環境に偏りがあれば差別を生み出してしまう危険があります。

3 ハラスメント防止と「女性が辞めない職場づくり」

ハラスメントは、個人の尊厳を傷つけるだけでなく、被害者の休職や退職、職場全体の意欲や生産性の低下を招き、最終的には企業の貴重な人材の喪失と社会的信用の失墜につながる、極めて重大な経営リスクです。特に、セクシュアルハラスメントや、妊娠・出産・育児休業などを理由とするハラスメント(マタニティハラスメント等)は、女性が安心して働き続ける上で深刻な障壁となります。

セクハラ、パワハラといったハラスメントについて、法(男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法)および厚生労働省の指針は、事業主に対し、職場におけるハラスメントを防止するため、以下の雇用管理上の措置を講じなければならないとしています。中小企業の経営者であっても、以下の対応が必要となります。

1)方針の明確化と周知・啓発

トップが「ハラスメントは断じて許さない」という明確なメッセージを発信し、社内報やポスター、研修などを通じて全社員に徹底します。経営者が直接語りかけることが、中小企業では特に高い効果を持ちます。

2)相談窓口の設置

社員が安心して相談できる窓口を設置し、その存在を周知します。プライバシー保護への配慮も必要です。

3)厳正な対処・再発防止

職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応など、ハラスメントの相談があったときは、速やかに事実確認をし、被害者への配慮、行為者への処分等の措置を行い、改めて職場全体に対して再発防止のための措置を行います。

4)不利益な取扱いの禁止

相談者・行為者のプライバシーを保護するための必要な措置や相談したこと等を理由とする解雇その他不利益な取扱いをされない旨を就業規則等で定めます。

4 まとめ―「知らなかった」では済まされない時代に―

女性活躍を阻む差別やハラスメントは、「知らなかった」「そんなつもりはなかった」という言い訳が通用しない、重大なコンプライアンス違反です。ひとたび問題が顕在化すれば、損害賠償や行政処分といった直接的なコストだけでなく、企業の評判やブランドイメージの低下という、事業の存続を揺るがしかねない間接的な損害をもたらします。

重要なのは、制度を「作る」だけでなく、「機能させる」ことです。就業規則に立派な規定を盛り込んでも、社員が読んでいなければ意味がありません。相談窓口を設置しても、形骸化していては誰も利用しません。経営者は、制度が適切に運用されているか、現場の実態を定期的に確認する必要があります。例えば、管理職へのヒアリングを通じて実態を把握したり、ハラスメント研修を定期的に実施したりすることが有効です。また、単に「支援する」という掛け声だけでなく、育児中の社員がいる部署の人員を補充するなど、具体的な業務改善策を伴わせることが、制度を実質的なものにします。

経営トップ自らが強い意志を持って差別やハラスメントの根絶を訴え続け、制度の構築とその実効性ある運用の両輪を回していくこと。それこそが、多様な人材が定着し、企業の持続的な成長を支える「本当に強い職場」をつくるための鍵となるのです。

以上(2025年11月作成)
(執筆 法律事務所UNSEEN 弁護士 大門あゆみ)

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画像:法律事務所UNSEEN 弁護士 大門あゆみ

お金のやり取りがなくても税金が? 「みなし贈与」の落とし穴

1 「みなし贈与」とは何か?

通常の贈与は、一方が財産をあげて、もう一方が財産をもらうという当事者間の合意によって行われるやり取りをいいます。ただし、税金面では、

当事者間の合意がなくても「実質的に財産をタダまたは格安でもらった」とみなされて課税される

ケースがあります。これが「みなし贈与」です。重要な点は、当事者の「意図」ではなく、取引の「経済的な実態」に焦点が当てられることです。

みなし贈与は当事者間に「贈与のつもりがない」ケースが多く、税務調査で指摘されるまでその存在に気づかず、予期せぬ追徴課税が発生してしまうことがあります。取引の種類によっては追徴課税が多額になり、会社の経営を圧迫する事態に陥るケースもあります。

2 なぜ会社にとって重要なのか?

贈与と聞くと、個人間の取引をイメージする人が多いかもしれませんが、実は「みなし贈与」は個人と会社の間、あるいは関連会社間の取引においても広く適用されます。

中小企業では、経営者個人の資産と会社の資産が密接に関わっていたり、資金繰りの都合で関連会社間で融通し合ったりすることが少なくありません。例えば、次のような取引も見受けられます。

  • 創業者が会社の資金繰りを助けるために個人資産(土地や建物など)を安く譲渡する
  • 長年、社長個人が会社に貸し付けていた債務を免除する
  • グループ会社間でサービスを無償で提供する
  • 個人資産を会社に(第三者との取引に比べて)低価格で貸し付ける

いずれも会社を存続させたり、事業を円滑に運営したりするための「良かれと思って」の行為なのですが、こうした行為が税務上は「経済的な利益をタダで、または低額で渡された」とみなされてしまうのです。ちなみに、みなし贈与と呼びますが、贈与税が課されるわけではありません。みなし贈与は経済的な利益を受け取った側の所得となり、

  • 会社が利益を受け取った場合は法人税など
  • 個人が利益を受け取った場合は所得税など

が課されます。

3 会社で起こり得る「みなし贈与」の具体的なケース

1)会社への資産の低額譲渡

株主や役員、あるいは関連会社が、土地、建物、株式、知的財産などの資産を、その市場価格よりも著しく低い価格で会社に売却した場合に発生します。会社が市場価格と比べて安く資産を取得できた場合、その差額が会社にとっての経済的な利益「受贈益」とみなされます。

例えば、社長が個人的に所有する土地(市場価格5000万円)を、自身の会社に1000万円で売却したとします。この場合、会社は4000万円の経済的利益を得たことになり、この4000万円が受贈益として会社の利益に加算され、法人税の課税対象となります。

2)会社への債務免除

株主や役員、あるいは関連会社が、会社が負っている債務を免除した場合に発生します。債務が免除されると、会社は返済義務がなくなるため、その分だけ負債が減少し、会社の財務状況が改善されます。この債務の減少分が会社にとっての経済的な利益「債務免除益」とみなされます。

例えば、創業者個人が資金繰りに苦しむ会社に3000万円を貸し付け、後にその3000万円を会社の経営改善のために全額免除したとします。この場合、3000万円は債務免除益として扱われ、法人税の課税対象となります。

3)個人への債務免除

会社が、役員、従業員、または株主が会社に対して負っている債務を免除した場合に発生します。債務が免除されることで、個人は返済義務から解放され、その分だけ経済的な利益を得たとみなされます。

例えば、会社が従業員に500万円の社内融資を貸し付け、後にその従業員の功績をたたえて免除したとします。この場合、500万円は従業員にとって経済的な利益となり、所得税の課税対象となります。

4)個人への資産の低額譲渡・無償供与

会社が、役員、従業員などに対して、会社所有の資産(社用車、不動産、製品など)を市場価格よりも著しく低い価格で売却したり、あるいは無償で提供したりした場合に発生します。この場合、資産を受け取った個人が経済的な利益を得たとみなされます。

例えば、会社が所有する市場価格4000万円のマンションを、役員の1人に1000万円で売却したとします。この場合、役員は3000万円の経済的利益を得たことになり、この3000万円が役員の所得として、所得税の課税対象となります。

5)無償で役務提供

会社が個人や関連会社にサービスを無償で提供したり、逆に個人が会社に重要なサービスを無償で提供したりした場合も、「みなし贈与」の対象となる可能性があります。

例えば、役員が個人で別途経営する個人事業会社が会社から報酬を受け取らずに、市場価値に見合うような経営サービス(本来、委託手数料などが発生する業務)を提供し続けた場合などが考えられます。この場合、その役務の対価相当額が、役員への報酬として認定されたり、会社への寄付金とみなされたりして、法人税の課税対象となることがあります。

4 「みなし贈与」で損をしないための実践的対策

1)取引は必ず「時価」で行う

「みなし贈与」の課税は、原則として市場価値などの時価と実際の取引価額の差額に対して行われます。従って、この差額を発生させないことが、みなし贈与を回避する最も基本的で、最も重要な対策となります。

あらゆる資産(土地、建物、株式、機械設備、知的財産など)の譲渡、サービスの提供、貸付金の利息設定など、会社と株主、役員、従業員、あるいは関連会社との間で行われる全ての取引において、「時価」を意識し、その時価に基づいた適正な対価を設定することが大切です。

特に、不動産や非上場株式など、時価の算定が難しい資産については、専門家(不動産鑑定士、税理士など)による評価を事前に取得し、その評価額に基づいて取引を行うようにしましょう。評価の過程と結果は、税務調査に備えて詳細に文書化しておくことも大切です。

2)関連会社間取引の厳格化

複数の会社を経営している場合や、グループ会社が存在する場合、関連会社間での資金や資産、サービスのやり取りは頻繁に発生します。これらの取引も「みなし贈与」の対象となり得るため、第三者との取引と同様に厳格さをもって管理する必要があります。

具体的には、関連会社間であっても、全ての取引について正式な契約書を作成し、詳細な請求書を発行し、市場価格に基づいた適正な価格設定を行うようにしましょう。

3)債務免除は慎重に

会社が資金繰りに窮した際、株主や役員が会社への貸付金を免除することは、会社を救うための有効な手段となり得ます。しかし、前述の通り、これは会社にとって「債務免除益」となり、法人税の課税対象となります。

債務免除を検討する際には、その税務上の影響を十分に理解し、代替案も検討することが重要です。例えば、債務を株式に転換する「デット・エクイティ・スワップ(DES)」など、税務上より有利な選択肢がないかを、事前に税理士などの専門家と相談するようにしましょう。

4)役員・従業員への利益供与は適正に

会社が役員や従業員に対して、福利厚生やインセンティブとして経済的な利益を供与する場合も、曖昧な形で行うのではなく、その性質を明確にし、給与や賞与、あるいは適正な福利厚生費として適切に会計処理し、個人の所得税申告に正確に反映させるよう、本人への周知も忘れずに行いましょう。

5)専門家への早期相談

最も実践的で効果的な対策は、複雑な取引や関連会社間の取引を行う前に、必ず税理士や弁護士などの専門家に相談することです。

専門家であれば、「みなし贈与」のリスクを事前に特定し、時価の適切な算定方法についてアドバイスし、税務上最も効率的でリスクの低い取引スキームを提案することができます。また、万が一税務調査が入った場合でも、専門家の助言を受けて行った取引であれば、その正当性を主張しやすくなります。

以上(2025年10月作成)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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【かんたん消費税(2)】対応しないと損をする「インボイス制度」を今一度確認しよう

1 インボイス制度の影響

「インボイス(正式名称は「適格請求書」)制度」とは、

適用される税率や消費税額を請求書にきちんと記載し、適切に相手に知らせる

というものです。経営者が知っておくべきポイントは、

こちらがインボイス制度に対応しないと、取引相手で仕入税額控除が受けられず、取引先の消費税負担が重くなってしまうことです。これとは反対に、取引相手がインボイス制度に対応しないと、自社が損をする

ことになります。

インボイスには「適格請求書発行事業者の登録番号」を記載しますが、登録番号は自動的に発行されるものではなく、

適格請求書発行事業者の登録申請が必要

です。登録には、申請書を税務署に提出し、通知を受けます。登録番号の通知が来るまでに2週間~1カ月程度の時間がかかります。申請書を1枚提出すればよいだけの簡単な手続きなので、必要な場合には今すぐ申請しておきましょう。

2 インボイスが発行できるのは「課税事業者」のみ

適格請求書発行事業者の登録申請は、消費税の「課税事業者(納税義務がある事業者)」しかできません。もし貴社が「免税事業者(納税義務がない事業者)」であれば、

課税事業者になり、登録申請するか否かを検討

しなければなりません。免税事業者が課税事業者になると、確定申告の手間が増えます。また、納税額が増えることもあるので、税理士などに相談して慎重に判断しましょう。

3 経理の業務を売手側と仕入側で整理

1)売手側の場合

商品等を販売した相手先から求められた際は、

消費税法で決まっている項目を記載したインボイスを交付すると同時に、その写しを保存

しなければなりません。

インボイスにはどの請求書にも記載されている事項(貴社の社名や取引日、取引金額など)に加え、

  • 税率ごとの対価の合計額(税込または税抜)
  • 税率ごとの消費税額および適用税率
  • 適格請求書発行事業者の登録番号

などを記載しなければなりません。つまり、

インボイス制度に対応したフォーマットを作成する

必要があります。例えば、次のようなフォーマットです。

フォーマット

2)仕入側の場合

売手から請求書を受領したら、

適格請求書として必要な事項が全て記載されているか

を確認し、抜け漏れがあれば再発行を依頼します。

大事なことなので繰り返しますが、

インボイス制度が導入された後の取引(2023年10月1日以後の取引)については、仕入税額控除は適格請求書に「記載」されている仮払消費税しか控除できない

ことになります。つまり、適正な適格請求書を入手していない場合や、インボイスを発行できない取引先(免税事業者や適格請求書発行事業者の登録申請を行っていない取引先)からの仕入れについては、原則、仕入税額控除が認められません。

4 インボイス制度の特例

1)一部省略できる「適格簡易請求書」

インボイスには、取引相手の氏名や名称を記載します。しかし、例えばスーパーなどの場合、レジで消費者に名前を聞いて記入することは非現実的です。このように、業種によっては適格請求書に必要事項の全てを記載することが難しいこともあるため、以下に示す特定の業種については、記載事項を一部省略した「適格簡易請求書」が発行できます。

小売店業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限る)、これらの事業に準ずる事業で、不特定かつ多数の者と取引をする事業

2)インボイスを発行しなくてよい取引

例えば電車に乗る際は切符を購入しますが、都度、公共交通機関が利用者にインボイスを発行するのは非現実的なので、インボイスの発行が免除されます。この他に、以下に示す一定の取引についても、インボイスの発行が免除されます。

  • 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
  • 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売
  • 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売
  • 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
  • 郵便ポストに投函された郵便物及び荷物

3)免税事業者との取引について認められている経過措置

インボイス制度を導入したことによる影響の緩和措置として、インボイスが発行できない免税事業者(あるいは適格請求書発行事業者の登録をしていない事業者)との取引でも、一定期間は仕入税額控除を認める経過措置(移行期間)があります。ただし、経過措置期間中でも消費税の全額について仕入税額控除が認められるわけではなく、期間ごとに控除できる範囲が変わります。

経過措置期間中に認められる仕入税額控除の金額は次の通りです。

  • 2023年10月1日〜2026年9月30日:消費税額の80%まで控除可
  • 2026年10月1日〜2029年9月30日:消費税額の50%まで控除可
  • 2029年10月1日以降:控除不可

4)免税事業者が課税事業者を選択した場合の2割特例

免税事業者が、インボイス制度導入に伴って課税事業者を選択した場合、

納税額を、売上に係る消費税(仮受消費税)の2割とする制度

が導入されます。制度の適用にあたって、事前の届け出は必要ありません(確定申告書上で2割特例を選択する)。

なお、この制度の趣旨は「インボイス発行事業者の登録によって課税事業者になってしまう小規模事業者の負担を軽減するもの」となるため、適用できるのは、「インボイス制度のせいで仕方なく課税事業者になってしまった人」ということになります。そのため、たとえ小規模事業者であっても、以前から課税事業者を選択していた事業者などについては適用されません。

また、この制度は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間について期間限定で適用されます。

以上(2025年10月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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先着28社限定の「販路拡大」チャンス!~お早めにご確認ください!!

日頃よりとくぎんサクセスクラブをご愛顧いただき、誠にありがとうございます。

とくぎんサクセスクラブと香川ニュービジネスクラブが展開するビジネスマッチングサービス『TOMONY Business Information』が、今回からウェブ掲載に完全移行することになりました!

先着28社の会員さまの情報を、『TOMONY Business Information』に無料で掲載いたしますので、募集要項などをご案内させていただきます。

販路拡大や仕入先発掘などに、ぜひお役立ていただけますと幸いです。

前回の『TOMONY Business Information』は、こちらからご覧ください!

以下のリンクより、お早めのお申し込みをお待ちしております!!

お申し込みはこちらから!

募集要項

1.名称 TOMONY Business Information
2.目的 とくぎんサクセスクラブ会員さまの販路拡大・仕入先発掘等を目的とします。
3.募集社数 28社で先着順とします。(1会員1枠とします。)
【申込期限】令和7年11月21日(金)
4.掲載方法 徳島大正銀行ホームページおよび、とくぎんサクセスクラブnavi、また、香川銀行ホームページとKNBC(香川ニュービジネスクラブ)ポータルサイトへの掲載
5.掲載日 令和8年1月を予定
6.費用 無料
7.原稿について ①原稿はWebでご提出いただきます。
②原稿に添付できる写真の容量は1枚5MBまでです。それ以上の容量のものは添付できません。
③完成後の原稿は、今回よりカラーでの掲載になります。
④入稿期限は、令和7年11月28日(月)です。
⑤本サービスの趣旨にそぐわない内容のものはお断りする場合がございます。

その他ご不明な点は、事務局までご連絡ください。
連絡先:088-623-3111
担当:窪内

事務局一同、皆さまのご応募を心よりお待ちしております!

以上(2025年10月作成)

山中伸弥氏のノーベル賞受賞は、挫折を助走にした飛躍だった

高く飛ぶためには思いっきり低くかがむ必要があるのです

山中伸弥(やまなかしんや)氏は、iPS細胞の研究により、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した研究者です。

冒頭の言葉は、山中氏がノーベル賞受賞後に発表した書籍の中で語ったもの。「挫折や停滞は次の飛躍のための準備段階である」という意味が込められています。この言葉は、山中氏の研究人生における経験から生まれたものでもあります。

山中氏は大学を卒業後、整形外科の研修医として医療の現場に立っていました。しかし山中氏は、通常20分で終わる手術に2時間もかかるほど手先が不器用であることから、医師の先輩たちからは「ジャマナカ」と呼ばれていたそうです。また、自分より優れた医師でも救えない患者に何度も出会い、医療そのものの限界に打ちのめされます。ですが、山中氏は、今は治せないけがや病気でもいつか治せるようになりたいと、挫折を原動力に、研究者の道へ進む決意を固めます。

しかし、その後も苦難続き。山中氏は米国に留学し、最先端の研究技術などを学んで帰国しますが、日本の研究環境に直面すると米国との違いに失望感が募り、精神を病んでしまいます。そんな山中氏は、どん底にあって活路を見いだそうと手にした2冊の書籍によって、研究に向き合う姿勢を根本から変えることになります。1冊はがん研究に心血を注いだ黒木登志夫氏の書籍「がん遺伝子の発見」、もう1冊は名だたる大企業の成功に関するデイル・ドーテン氏の書籍「仕事は楽しいかね?」でした。黒木氏の本によって研究に対する情熱を思い出し、ドーテン氏の本から失敗の中にチャンスがあるという考えを学んだ山中氏は、「思い通りにならなくても結果を楽しみ、チャンスだと捉えよう」と決意。そこから心機一転、粘り強く研究を重ね、2006年に世界でも例のないiPS細胞を発見し、2012年にはノーベル賞を受賞するという偉業を成し遂げたのです。

山中氏の成功の陰には、医師としての挫折や研究環境への失望といった、「かがむ」経験がありました。多くの経営者にとっても、計画が思うように進まなかったり、事業でつまずいたり、人材育成で悩んだりすることは、誰しも経験し得るものですが、大切なのはその失敗や挫折の受け止め方です。失敗や挫折に悲観的になるのではなく、「自分は今、高く飛ぶためにかがんでいるのかもしれない」と意識することで、それらが次の挑戦の糧になります。行き詰まりや後退に感じる瞬間も、視点を変えれば未来の可能性を育む貴重な時間です。かがむ時間を恐れず、むしろ次の飛躍に向けて力をためる意識こそ、組織や事業の成長を後押しします。

山中氏は、学生へ向けた講演の中で、自分の「かがむ」経験を包み隠さず伝えています。高く飛んだ彼自身がそれを示すことで、挑戦する勇気や諦めない心の大切さを伝えているのです。

「山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた」(山中伸弥・緑慎也著、講談社、2012年)

以上(2025年10月作成)

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マネジメントの父・ドラッカーが世界最高と絶賛した「日本の小説」とは?

今年はマネジメントの父、ピーター・F・ドラッカー没後20年を迎えます。そのマネジメント論は現代でも深く息づいています。
「マネジメントの基礎を身につけたい」
「リーダーとして、どうメンバーに接したらいいのかわからない」
「管理職として仕事をしてきたけど、うまくいっていない気がする」
「ドラッカーは難しそうだから、今まで触れてこなかった」
そのような悩みを解決するヒントが詰まった書籍『かの光源氏がドラッカーをお読みになり、マネジメントをなさったら』が発売されます。本書は、これまでドラッカーを知らなかった人でも物語の中でその本質を学べる1冊です。
本記事では、著者の吉田麻子氏にドラッカーの魅力を伺いました。

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