【契約書の実務(1)】「及び、並びに」 紛らわしい用語を解説

書いてあること

  • 主な読者:契約実務に慣れていない経営者、担当者
  • 課題:契約書には紛らわしい用語が頻出するが、正しく理解していない
  • 解決策:契約書を読むための前提として、よく使われる語句の意味を知る

1 契約書、覚書、念書・誓約書の違い

契約とは、

「申し込み」と「承諾」という、相対する意思表示が合致することによって成立する法律行為

です。当事者同士の意思が合致すれば、原則として口約束でも契約は成立しますが、ビジネス上では書面を交わすのが通常です。書面には「契約書」「覚書」「念書・誓約書」などがありますが、そのタイトルだけで法的な効果に違いが生じるわけではありません。ただし、実務上はある程度の使い分けがされています。

1.契約書

これから行う取引の条件を明確にするため、当事者の合意内容を双方の権利義務の形で記載した書面です。

2.覚書

契約書を作成する前段階で当事者の合意事項を書面にしたもの、あるいは既にある契約条項の解釈や前提事実を明確にするためや補足で合意したい事項を定めるために契約書に付随して別途作成される書面です。

3.念書・誓約書

契約の一方当事者が相手方に差し入れる形式で、自分が義務を負うことやその義務を履行することを約する内容の書面です。

2 紛らわしい用語の解説

1)「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の違い

緊急度の高い順に「直ちに>速やかに>遅滞なく」として用いられるのが一般的です。ただし、具体的にどの程度で遅滞と評価できるかを示す基準にはなりにくいといえます。そのため、契約書上にはできる限り「3営業日以内」など、具体的に記載しましょう。

2)「~することができる」「~しなければならない」「~するものとする」の違い

それぞれ次の意味合いがあります。

  • 「~することができる」:するか否かを選択できる
  • 「~しなければならない」:することが義務である
  • 「~するものとする」:することが義務である

「~するものとする」は、「~しなければならない」と程度が異なることはあるものの、法的に義務を意味する用語であることは同じで、その効果も変わらないといえます。

3)「~とみなす」

「~とみなす」は、その事実等を擬制する意味で用いられます。例えば、売買契約書で「納品後5営業日以内に、乙(買い手)が甲(売り手)に対して検査に関する合否の通知を行わないときは、当該検査に合格したものとみなす」という条項がある場合、仮に検査に不合格となるような製品があっても、納品後5営業日以内に合否の通知を行わなければ、検査に合格したものとして扱われることになります。

4)「等」

「等」は、その前に示されているものと同種の他のものがあることを示します。例えば、「製品A」は「製品A」のみを示しますが、「製品A等」は製品A以外に特定できない別の製品があることを示します。

「等」には曖昧さがあります。これを排除するためには具体的な事項を列挙することになります。一方で、あえて「等」を使用して、解釈に幅を持たせることもあります。「等」については、その用語が使われている意図を考えることが大切です。

5)「及び」と「並びに」の違い

複数の用語を結ぶ接続詞です。「及び」と「並びに」はいずれも英語でいう「and」を意味しますが、契約書では使い分けがされています。まず、複数の用語を並列にする場合は、「及び」を使います。基本的な使い方は次の通りです。

  • 2つの用語を並べる場合は「支社1及び支社2」
  • 3つ以上の用語を並べる場合は「支社1、支社2及び支社3」(最後を「及び」でつなぐ)

次に、複数の用語を2つ以上の階層に分けて並べる場合は、最も下位の階層のみ「及び」でつなぎ、その他の上位の階層は全て「並びに」でつなぎます。基本的な使い方は次の通りです。

  • 階層が2つの場合は「(支社1及び支社2)並びに(関連会社)」
  • 階層が3つの場合は「[(支社1及び支社2)並びに(関連会社)]並びに(取引先)」

6)「又は」と「若しくは」の違い

複数の用語を結ぶ接続詞です。「又は」と「若しくは」はいずれも英語でいう「or」を意味する言葉ですが、契約書では使い分けがされています。まず、複数の用語を並列にする場合は「又は」を使います。基本的な使い方は次の通りで、「及び」の場合と同じです。

  • 2つの用語を並べる場合は「支社1又は支社2」
  • 3つ以上の用語を並べる場合は「支社1、支社2又は支社3」(最後を「又は」でつなぐ)

次に、複数の用語を2つ以上の階層に分けて並べる場合は、最も上位の階層のみ「又は」を使い、その他の下位の階層は全て「若しくは」でつなぎます。基本的な使い方は次の通りです。

  • 階層が2つの場合は「(支社1若しくは支社2)又は(関連会社)」
  • 階層が3つの場合は「[(支社1若しくは支社2)若しくは(関連会社)]又は(取引先)」

契約書の内容を確認する際に、押さえておくべきは用語に限りません。以降では、トラブルが発生した場合の規定など、内容確認で押さえておくべきポイントを紹介します。

3 内容確認で押さえておくべき5つのポイント

1)「5W2H」を確認する

契約書の内容をしっかり確認しないで締結してしまうと、後にトラブルになる恐れがあります。法務の知識や実務経験があれば理想的ですが、そうでなくても基本的な事項は確認することができます。まずは「5W2H」です。これはビジネスの基本ですが、契約書でも通用します。

  • Who:契約当事者は誰か
  • Why:契約締結の目的は何か
  • What:締結する契約の内容は何か
  • When:義務の履行日(権利の行使日)はいつか。契約期間はいつまでか
  • Where:義務の履行場所(権利の行使場所)はどこか
  • How:義務はどのように履行されるのか(権利はどのように行使するのか)
  • How much:契約を通じて支払う(受け取る)対価はいくらか

2)権利・義務の発生要件を確認する

権利・義務の発生要件をしっかりチェックしておかないと、トラブルになった際に自社が不利な立場に立たされることがあります。

例えば、製品の売買契約書の返品に関する条項が、「本売買契約に基づき納入された製品に不具合がある場合、乙(買い手)は、甲(売り手)に当該製品を返品することができる」としか定められていないと、「不具合」の基準が不明確です。

場合によっては、製品には問題は全くないが製品が入っているケースに傷がある、といったことでも、相手から返品を主張されかねません。こうした場合は、「不具合」に該当する事由をできる限り具体的に列挙するなど、権利・義務が発生する要件を明確にしておくべきです。

3)トラブルが発生した場合の規定を確認する

契約書の大切な役割の1つは、その契約に関するトラブルから自社の権利を守ることです。全てのトラブルを想定することはできませんが、少なくとも「発生する可能性の高いトラブル」「発生した場合に被害が大きいトラブル」については洗い出し、契約書に定めておきます。

また、トラブルが発生した際に、自社の負う義務が、適切かつ許容できるものであるかということも確認が必要です。契約の相手方が契約書の草案を作成した場合は、特に注意が必要です。草案の作成者側(相手方)にとって有利な条項が盛り込まれていることで、自社にとっては不利になることがあります。

4)関連する契約書についても確認する

基となる契約書(「原契約」や「基本契約」などといいます)には、関連する契約(以下「関連契約」)が覚書などのタイトルで締結されることがあります。このような場合、原契約だけではなく関連契約についても確認が必要です。

例えば、原契約締結時の販売金額は1000万円でも、その後に価格改定が行われ、覚書で1200万円に訂正しているケースがあります。この他にも、原契約と関連契約との間で支払日、納品日、権利・義務などが変更となり違いが生じている場合があるため、注意が必要です。

5)分からない点は、相手方に確認する

契約書を確認していると、「意味が分かりにくい条文」「不要と思われる条文」などが出てきます。こうした場合は、必ず相手方に確認しましょう。ただし、不要と思われる条文で特に意味をなさないことが明らかであれば、契約をスムーズに締結するためにあえてそのままにしておくことも、場合によってはあり得ます。

以上(2024年5月)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 平田圭)

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春の全国交通安全運動(2024/4号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

4月から6月にかけては、子どもが絡む交通事故が多い時期です。中でも小学1、2年生は交通事故に遭いやすい傾向があります。このため、運転者は通学路や登下校の時間帯を意識して運転する必要があります。

今年も春の全国交通安全運動が実施されます。この機会に歩行者優先の交通ルールを再確認し、安全運転を心がけましょう。

春の全国交通安全運動

1.春の全国交通安全運動

「春の全国交通安全運動」が次の要領で実施されます。
(内閣府・警察庁等主催)

◆運動期間:令和6年4月6日(土)から15日(月)まで
◆交通事故死ゼロを目指す日:令和6年4月10日(水)
◆重点テーマ(運動重点)

<全国重点>
①こどもが安全に通行できる道路交通環境の確保と 安全な横断方法の実践
②歩行者優先意識の徹底と「思いやり・ゆずり合い」運転の励行
③自転車・電動キックボード等利用時のヘルメット着用と交通ルールの遵守

<地域重点>
都道府県の交通対策協議会等は、全国重点のほか、地域の交通事故実態等に即し、必要に応じて各都道府県の重点項目を定めていますのでご確認ください。

春の全国交通安全運動ポスター

詳しくは、内閣府「令和6年春の全国交通安全運動推進要綱」をご参照ください。
https://www8.cao.go.jp/koutu/keihatsu/undou/r06_haru/youkou.html

2.横断歩道付近での交通ルールを再確認

自動車と歩行者の交通死亡事故の約7割は歩行者が横断中の事故であり、横断歩道やその付近での発生が多い状況です。この機会に横断歩道付近での交通ルールを確認し、横断歩道の道路標識等により一層注意を払い、歩行者優先を意識しましょう。

【歩行者優先のポイント】

  • 横断歩道の直前で停止できる速度に減速
  • 横断歩行者等がいる場合は、一時停止
  • 横断歩道手前で停止している車両の側方を通過して前方に出るときは、一時停止
  • 横断歩道手前30m付近では、追越し、追い抜き禁止
  • 横断歩道以外でも歩行者の道路横断を妨げないこと

横断歩道の道路標識

3.道路標識・路面標示にも注意

通学路やゾーン30の道路標識や路面標示などのあるところでは、子どもや高齢者との交通事故を起こすリスクがあります。このような場所では速度を落として走行する必要があります。

子どもは判断力が未熟で、視野が狭く、何かに集中して突然道路へ飛び出すなどの特性があります。高齢者は、加齢により視野が狭くなり、体力や判断力も衰え、無理な横断をする恐れがあります。このため運転者は「自車が見えているはず」と思ってはなりません。子どもや高齢者は車の動きを見ていません。

通学路やゾーン30の道路標識や路面標示をみかけたら、「子どもが飛び出すかもしれない」などと考えて、「思いやり」のある運転を励行しましょう。

通学路の道路標識

以上(2024年4月)

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アルバイトの戦力化のために

4月から多くの新入学生がアルバイトを始めることから、厚生労働省では4月から7月までの間「「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン」を実施しています。

本稿では、キャンペーンの重点項目を記載するとともに、アルバイトの戦力化について一例をご紹介いたします。

1 キャンペーンの重点項目について

厚生労働省では、重点的に呼びかける事項を各種学校や事業主団体等に協力依頼をして周知に努めています。その内容は以下の通りとなります。

(1)労働条件の明示

①契約はいつまでか
②契約期間の定めがある契約を更新する際のきまり
③どこでどんな仕事をするのか
④勤務時間や休みはどうなっているのか
⑤バイト代(賃金)はどのように支払われるのか
⑥辞めるときのきまり
⑦無期転換申込みができる有期労働契約の場合においては、無期転換申込みに関する事項及び無期転換後の労働条件

(2)シフト制労働者の適切な雇用管理

学生は学業が本分であり、学業とアルバイトが適切な形で両立できる環境を整えるよう配慮する必要があります。
使用者が一方的に急なシフト変更を命じることはできません

(3)労働時間の適正な把握

アルバイトも、労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録する必要があります。

(4)商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止

アルバイトが希望していないのに、 商品を強制的に購入させることはできません。

(5)労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

アルバイトの遅刻や欠勤などによる労働契約の不履行や不法行為に対して、 あらかじめ損害賠償額等を定めることはできません。

(厚生労働省「アルバイトの労働条件を確かめよう!〜キャンペーン実施中〜」より抜粋)

2 アルバイトの戦力化について

前述の記載は基本的に法律に則ったルールですが、法律を守っているだけでは、アルバイトが戦力として機能するわけではありません。特に働いたことのない新入学生が立派に働けるようになるには、それなりに受け入れ側の対応が必要となってきます。以下にいくつか対応手法を記載いたします。

・ウェルカムオリエンテーションの実施

新入学生をアルバイトとして採用した際に、ウェルカムオリエンテーションを実施することも一案です。このオリエンテーションでは、企業文化の紹介、職場のルール、働く上での期待値の共有などを行い、新入学生がスムーズに職場に溶け込めるようサポートします。また、仕事の基本的な流れや、安全に関する重要な指示もこの機会に伝えると良いでしょう。

・メンター制度の導入

新入学生に経験豊富なアルバイトスタッフや正社員をメンターとして割り当て、仕事のコツや職場での振る舞い方など、実務に必要な知識やスキルを伝授します。メンターが、新入学生の不安や疑問に耳を傾け、個々の成長をサポートすることで、新入学生は早期から自信を持って業務に取り組むことができるようになるでしょう。

・成功体験の積極的な提供

新入学生がアルバイトを通じて早期に成功体験を得られるよう、小さな成果でも積極的に評価すると良いでしょう。また、優れたアイデアを提案した新入学生をミーティングで評価するなど、努力と成果を公に認めることも大切です。このような経験は、新入学生の自信を高め、長期的に職場へのコミットメントを促す効果があります。また、他のアルバイトスタッフとの良好な競争と協力を促し、全体のモチベーション向上にも寄与します。

3 さいごに

新入学生がその職場を気に入ったなら、学校の友人をアルバイト先として紹介してくれるかもしれません。そうなれば、採用コストの削減や労働力不足の改善にもつながるでしょう。法定の対応を行うことはもちろん、行っている企業も次のステップを検討して実施してみてはいかがでしょうか?

※本内容は2024年3月14日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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アルバイトの戦力化のために

4月から多くの新入学生がアルバイトを始めることから、厚生労働省では4月から7月までの間「「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン」を実施しています。
本稿では、キャンペーンの重点項目を記載するとともに、アルバイトの戦力化について一例をご紹介いたします。

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人間ドックに育児サポート……「人事労務」で100年続く会社へ

書いてあること

  • 主な読者:自社の人事労務を見直し、もっと社員を大切にしたい経営者、人事労務担当者
  • 課題:人事労務の仕事内容は幅広く、どこから見直せばよいのか分からない
  • 解決策:SDGs(持続可能な開発目標)をベースに重要な取り組みを洗い出す

1 【SDGs】人事労務に関係する4つの目標

誤解を恐れずに言えば、かつての中小企業では、社員にかけるお金はコスト(人件費)として捉えられ、さらに慢性的な人手不足も相まって、「人事労務」の仕事が他の業務よりも後回しにされがちでした。

しかし、時代は変わりました。「人的資本経営」という言葉もあるように、今では社員のスキルや能力を「資本」として捉え、そこにかけるお金は「コストでなく投資である」という考え方が浸透しつつあります。社員を大切にしなければ会社は生き残っていけませんから、ある意味、これからの会社の未来は人事労務にかかっているともいえるのです。

ただ、人事労務の仕事内容は幅広く、見直すにもどこからメスを入れればいいか分からないという人も多いでしょう。そこで、この記事では、

SDGs(持続可能な開発目標)をベースに、人事労務の重要な取り組みを洗い出すこと

をご提案します。SDGsでは、「地球の社会課題に向き合い、変化に対応し、持続可能な社会を実現する」という観点から、17の目標が設定されています。次の図表は、そのうち人事労務に関係する4つの目標と具体的な取り組みの例を挙げたものです。以降で、図表の各取り組みのポイントを紹介するので、御社の人事労務の状況を確認する参考情報としてご活用ください。

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2 目標3「すべての人に健康と福祉を」

目標3は、年齢に関係なく全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進するというものです。「健康経営」という言葉もあるように、社員の健康は、会社が経営を続けていく上で、必ず守らなければならないものです。

1)過重労働の防止

残業(時間外労働)は、月45時間を超えると健康障害のリスクが高まり、月100時間(または2~6カ月平均80時間)を超えると過労死の危険があるとされています。近年は「時間外労働の上限規制」など、過重労働を防ぐための法整備が進んでいますが、例えば、社員が会社に隠れて残業する「サービス残業」の問題には対処できているでしょうか。

まずは、社員の労働時間を正しく管理できているか改めて確認しましょう。例えば、手書きの勤怠管理表などで社員の労働時間を管理している会社では、定期的に自己申告の内容とオフィスの施錠記録やPCのログ情報を照合するなどして、実態を調査する必要があります。

勤怠管理システムを導入している場合も、必要に応じてシステムの見直しを検討しましょう。例えば、オフィス向け入退室管理システム(スマートロック)の中には、記録される入退室のログ情報を勤怠管理の目的で使用できるタイプなどがあり、より正確に労働時間を管理できます。

過重労働の防止については、次の記事などが参考になります。

2)人間ドックなどの実施

会社には年1回以上、定期健康診断を実施する義務があります。ですが、法律で決められた「法定項目」を社員に受診させるだけでは、自覚症状のない病気などを見落とすこともあります。

そこで、法定項目以外の「法定外項目」を含む人間ドックなどを実施することを検討します。人間ドックは受診項目が多いだけでなく、医療機関によっては、例えば、脳疾患や心臓疾患、性別に特有のがん(例:子宮がん)など、分野を絞って集中的に検査できる所もあります。

忙しくてなかなか人間ドックの時間が取れないという場合もあるでしょうが、最近は、約30分で脳ドックの受診が終わる「スマート脳ドック」など、あまり時間のかからない検査も登場しています。

人間ドックなどの実施については、次の記事などが参考になります。

3)“ちょっとした体調不良”の改善

過重労働や病気に注目するあまり、肩こり、腰痛、ストレスといった社員の“ちょっとした体調不良”をおろそかにしていないでしょうか。「たかが肩こり」などと考えて放置すると、社員が仕事に集中できずミスをしたり、体調が悪化したりして、欠勤よりも大きな損失を会社にもたらしかねません。こうした状態を「プレゼンティーイズム」といいます。

定期健康診断の結果を確認するだけでなく、例えば社内アンケートで「あなたの仕事に悪影響を及ぼしている体調不良は?(肩こり、腰痛、ストレス、疲れ目(ドライアイ)、寝不足など)」を聞いたりすると、社員の体調不良の状況を「見える化」できます。

体調不良の改善方法はさまざまです。例えば、ヘルシーな社食サービスを導入したり、「1日の歩数」を計測するアプリを導入したり、昇降式のスタンディングテーブルを導入して立った状態でも仕事ができるようにしたりといった方法があります。

“ちょっとした体調不良”の改善については、次の記事などが参考になります。

3 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

目標5は、性別に関係なく、誰もが平等に活躍できる社会を実現しようというものです。「女性の権利向上」をイメージするかもしれませんが、「性別に関係なく平等に」が趣旨なので、男性、LGBTQなど性的少数者に対しても同じように配慮が必要です。

1)ハラスメントの防止

都道府県労働局や労働基準監督署への「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、2022年時点で6万9932件に上ります(厚生労働省「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)。社員の権利意識の高まりなどの背景もありますが、会社以外の機関にこうした相談が多く寄せられるのは、会社の「ハラスメント防止措置」がちゃんと機能していないからかもしれません。

会社は「ハラスメント相談窓口」を設置し、社員からの相談に応じて、事実確認、行為者の処分や被害者のケア、再発防止策の実施などを適正に行う義務があります。「相談窓口が周知されているか」「経営者が把握していない相談内容がないか」などを、いま一度確認しましょう。

一方で、上司がハラスメントと指摘されるのを恐れて、部下を指導できなくなるなどの事態も避けなければなりません。例えば、セクハラの場合、「容姿」や「女性らしさ」に踏み込まない指導を心掛けるだけでも、ハラスメントと指摘されるリスクを減らせます。弁護士などの専門家に研修を実施してもらうなどして、社員に正しい考え方を身に付けさせるとよいでしょう。

ハラスメントの防止については、次の記事などが参考になります。

2)妊娠・出産や育児のサポート

「育休(育児休業)」などの法整備が進み、妊娠・出産や育児を理由に退職することなく、仕事を続ける人が増えてきました。ただ、これまで育休の取得がなかった会社などは、いざ社員から相談があると、実務に不慣れなゆえに対応を誤ってしまう恐れがあります。

まずは、法制度の内容を正しく押さえましょう。近年は育児・介護休業法の法改正が続いていて、直近では、2022年10月から「育休の分割取得制度(2回まで)」「男性社員が取得できる短期の育休『産後パパ育休(出生時育児休業)』」が始まっています。

妊娠・出産や育児をする本人だけでなく、フォローに回る他の社員への配慮も重要です。例えば、育休中の業務を代替する社員に手当(業務代替手当)を支給する会社などがあります。ちなみに、育休については、2024年1月から、業務代替手当を支給した会社に対し、総額の原則4分の3(上限10万円×最大12カ月)を助成する「両立支援等助成金 育休中等業務代替支援コース」が始まっています(業務体制の整備や育児休業等に関する情報公表について別途支給あり)。

妊娠・出産や育児のサポートについては、次の記事などが参考になります。

3)LGBTQに配慮した職場環境の整備

LGBTQに関する取り組みは、非常にデリケートな問題です。会社は、社員が性的指向や性自認に関係なく、自分らしく働ける職場にしたいと考えますが、当事者本人は、「LGBTQであることを周囲に知られたくない」とカミングアウトできずにいるケースが少なくないため、対応に苦慮します。

難しいところですが、まず会社がやるべきことは、LGBTQに関する社員教育でしょう。例えば、「他人の性的指向や性自認を侮辱したり、他の社員に暴露(アウティング)したりすることはパワハラに当たる」「セクハラは、異性・同性関係なく成立する」といったことを教育し、こうしたハラスメントがあった場合、会社として厳しく対処する旨を周知します。

加えて、社内の設備も可能な範囲で見直しましょう。例えば、プライバシーが保護され、性別などに関係なく利用できる「独立個室型のトイレ」の設置などがそうです。ただ、こうした見直しについては、前述したカミングアウトの難しさから「意見を言いたくても言えない社員」がいる可能性があるので、匿名のアンケート調査で意見を募るなどして、慎重に行います。

LGBTQに配慮した職場環境の整備については、次の記事などが参考になります。

4 目標8「働きがいも経済成長も」

目標8は、経済成長を持続させつつ、全ての人が働きがいと十分な収入のある仕事に就ける社会を実現しようというものです。働きがいと十分な収入を確保するには、休みや仕事の生産性にも目を向ける必要があります。

1)賃上げの検討

社員の収入を確保する最もシンプルな方法は「賃上げ」です。2023年の春闘では、物価高などの影響を受けて3.58%(加重平均、定期昇給相当を含む)という高水準の賃上げが実施されました(日本労働組合総連合会「2023春季生活闘争第7回(最終)回答集計結果」)。ただ、賃金は一度引き上げると、「労働条件の不利益変更」などの関係で簡単には引き下げられないので、実施は慎重に検討する必要があります。

まずは、今の自社の賃金水準を世間相場と比較し、本当に賃上げの必要があるかを判断することが重要です。世間相場は、厚生労働省「賃金センサス(賃金構造基本統計調査)」などで確認できます。相場を上回っている場合、無理に賃上げに取り組む必要はないかもしれません。

逆に、相場を下回っている場合は賃上げを検討する必要がありますが、基本給を引き上げると後が大変になるかもしれません。その場合、「手当」で実質的な賃上げをするのも1つの手です。手当は就業規則で定める要件を満たす場合に支給するものなので、要件を満たさなくなったら支給を止められます。例えば、物価高が続く間、社員の生活費を補てんするために支給する「インフレ手当」などは、経済情勢が変わってきたら支給を打ち切ることもできます。

賃上げの検討については、次の記事などが参考になります。

2)休暇取得の促進

仕事のパフォーマンスを上げるためには、適度な休みも必要です。ですが、社員の中には「周囲が忙しそうなのに自分だけ休めない」などの理由から、休暇を取得しない人がいます。

休暇取得を促進する方法としては、まず「取得のハードルを下げること」が挙げられます。例えば、年休(年次有給休暇)は、必要な手続きを踏めば、「半日単位」「1時間単位」で与えたり、一定日数まで会社が取得時季を計画的に割り振ったりすること(計画的付与)ができます。

また、会社が独自に定める「特別休暇」の場合、取得時季や目的を明確に設定することで取得しやすくなるケースもあります。例えば、本人の誕生日(または誕生月)に取得できる「誕生日休暇」、子どもの学校行事に参加する場合に取得できる「学校行事休暇」などがあります。

休暇の取得促進については、次の記事などが参考になります。

3)ペーパーレス化の促進

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進行やリモートワークの浸透などを背景に、紙からデータへの動きが本格化しています。印刷などの手間を減らせば業務のスピードアップが図れますし、紙の消費量を減らすことでコスト削減や環境保全にもつながります。

ペーパーレス化の対象となる書類はさまざまですが、人事労務に関して言うと、例えば社員の入社時に交付する労働条件通知書は、社員の同意があればメールなどで交付できますし、就業規則や36協定の届け出も「電子政府の総合窓口(e-Gov)」を使って電子申請で行えます。

書類の保存についても、紙でなくデータで保存できるものがほとんどです。例えば、就業規則は、常に社員が確認できるのであれば、社内イントラネットにPDFをアップすることなどが可能です。紙からデータ保存に切り替えれば、オフィス内の省スペース化も図れるでしょう。

ペーパーレス化の促進については、次の記事などが参考になります。

5 目標10「人や国の不平等をなくそう」

目標10は、国内や国家間の不平等を是正しようというものです。会社の場合、社員が雇用形態、年齢、国籍などによって不利益を被ることがないように注意する必要があります。

1)同一労働同一賃金の実現

同一労働同一賃金は、簡単に言うと「同じ(価値の)仕事をしている社員には、同じ額の賃金を支払わなければならない」という考え方です。正社員とパート等の待遇格差を是正する観点から2020年4月に法制化されましたが、いまだに実現に至っていない会社は少なくありません。

同一労働同一賃金のポイントは、「仕事内容、能力、成果などの違いに基づく待遇格差は違法でない」という点です。例えば、正社員、パート等の役割分担に基づいて基本給や手当の額に差を付けるのは問題ありません。ちなみに会社はパート等から求められた場合、待遇格差の内容や理由を説明する義務があるので、いざというとき合理的な説明ができるよう準備しておきましょう。

なお、パート等の待遇改善は重要ですが、それが逆にパート等に不利益に働くケースもあるので注意が必要です。例えば、厚生年金保険の被保険者数が常時100人超(2024年10月からは常時50人超)の会社に勤めるパート等は、「賃金が月額8万8000円以上」などの要件を満たすと、社会保険に加入し、社会保険料を負担する義務が生じます(家族の扶養に入れなくなる)。

同一労働同一賃金の実現については、次の記事などが参考になります。

2)高齢社員の活用

会社には、社員を65歳まで雇用するための措置を講じる義務、70歳まで働ける機会を確保する努力義務があります。人間は基本的に加齢によって身体機能が変化するので、高齢社員を雇用し続ける場合、その点を考慮する必要があります。

例えば、平衡機能の低下(直立姿勢時の重心動揺が大きくなり、転倒しやすくなる)や聴力の低下(騒音時の声などが聞こえにくく、「危ない」と言われても気付かない)はけがにつながる恐れがあるので、定期的に健康診断や体力チェックテストを実施して社員の状態を把握するなど、対策を講じる必要があるでしょう。

なお、高年齢者雇用安定法では、社員が70歳まで働ける機会を確保するための選択肢として、フリーランス化なども認めています。フリーランスは、労働時間という概念がなく自分のペースで働きやすい面もあるので、社員が定年を迎えたら、雇用という選択肢にこだわらず、フリーランスとして力を貸してもらうというのも1つの方法です。

高齢社員の活用については、次の記事などが参考になります。

3)外国人の活用

今や外国人が働いている会社は日本でも珍しくありませんが、初めて外国人を雇用する会社などは、日本人を雇用する場合との違いが分からず、戸惑ってしまうかもしれません。

結論から言うと、日本で働く外国人には労働基準法などの労働関係法令が適用されるので、基本的な扱いは日本人と変わりません。ただ、それぞれの外国人が持つ「在留資格」によって、行える活動や日本で働ける期間に違いがあるので、その点には注意が必要です。

また、就業時間中に礼拝のため席を外したり、食べてはいけない食材の関係で他の社員がお菓子を勧めた際にトラブルになったりすることがあるので、宗教・文化の違いについてはある程度把握しておく必要があります。難しい面もあるかもしれませんが、外国人が働きやすい社内体制や関係性を構築した結果、高い成果を上げている会社も数多くあります。

外国人の活用については、次の記事などが参考になります。

以上(2024年4月作成)
(監修 ひらの社会保険労務士事務所)

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画像:metamorworks-Adobe Stock

【朝礼】「面白い」「楽しい」は自分でつくれる

おはようございます。突然ですが、皆さんは最近、声を上げて笑ったことはありますか? 面白いと思ったこと、楽しいと思ったこと、何でもいいです。もし、あるなら、大いに結構! 一方で「よくよく考えないと出てこない」「もしかしたら無いかもしれない」という人がいるのであれば、ぜひこれから話すことを聞いてください。

今日、私が皆さんに伝えたいのは、

毎日を面白く、楽しくするのは自分次第

ということです。こう言うと、「何を当たり前のことを」「うさんくさい」と思うかもしれませんが、自分の「心持ち」次第で、毎日のちょっとした出来事が、いくらでも面白く、楽しく感じられるのです。

例えば、先週、私がぎっくり腰になったときのことをお話ししましょう。ぎっくり腰になったことのある人は分かると思いますが、とても痛いし、動きも制限されるので、表面的にはマイナスな出来事です。けれど、そんなマイナスの状況でも、自分の心持ち次第で「面白い」「楽しい」と思えるポイントはあるものです。

私が真っ先に面白いと思ったのは、「初めてのぎっくり腰で痛がる私」と「日常的に痛がる患者に接している医師や薬剤師」の温度差です。私は大騒ぎしているのに、医師や看護師はそういう患者に慣れているせいか終始冷静で、まるでテレビのコント番組を見ているかのようなおかしさがありました。

また、楽しかったこともあります。私は普段ジムに通っているのですが、しばらく通えなくなるので、代わりにどのように痛くなく、体がなまらないように体を動かしたらいいかを研究しました。これはとても興味深いテーマでした。

あまり出歩けなくなった分、読みたかった本を片っ端から読む時間も、お世話になっている人たちに手紙を書く時間もつくれました。

繰り返しになりますが、私が毎日を面白く、楽しくできるのは「そうする」と決めているからです。だから、口に出す言葉にはとても気を付けます。「面白い」「楽しい」と言葉を発し、声を出して笑っていると、本当に気持ちもそうなるのです。

これは、仕事も同じです。例えば、お客さまから難しいことを要求されたとき、「面倒くさい」と口に出したり、顔をしかめたり、ため息をついたりしていませんか? 自覚がある人は、今日からやめましょう。代わりにポジティブな言葉を発してみるのです。例えば「これができたら面白いかも!」「どうすれば効率的にできるかを試すチャンスだ!」「私の考えのほうがうまくいきそうだな…よし、交渉にチャレンジしてみよう!」と。

どうですか? 気持ちが前向きになったり、ちょっとワクワクしたりしませんか? 同じ毎日なら、ため息だらけの毎日より、楽しいワクワクの毎日のほうがいいのは間違いありません。あえて、ポジティブな言葉を発し、楽しい毎日をつくってください。

以上(2024年4月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【健康経営】 目をケアしてカラダも健康に! 「眼精疲労」対策のポイント

書いてあること

  • 主な読者:休息や睡眠を取っても目の疲れが取れない人
  • 課題:眼精疲労を放っておくと緑内障や白内障になる恐れがある
  • 解決策:日ごろから目を酷使しない。また、異常を感じたら迷わず眼科を受診する

1 ただの「目の疲れ」と侮ってはいけない理由

1日中パソコンを見ていると、近くの物が見えにくくなったり、目がショボショボしたりします。そして、休息や睡眠を取っても、こうした異常が回復しないケースを「眼精疲労」と呼びます。眼精疲労は「白内障」「緑内障」などの目の病気、「糖尿病」などのカラダの病気とも関係があり、眼精疲労を放置していると、気が付かないうちにこれらの重い病気が進行してしまうことがあります。逆に言うと、

「目に異常を感じたら、早めに医師に相談する」という癖を付けておけば、重い病気を早期に発見でき、カラダ全体の健康につながる

ということです。

この記事で、眼精疲労に詳しい現職の産業医が眼精疲労の正しい知識と、会社や個人でできる眼精疲労対策のポイントを紹介するので、参考にしてください。

2 眼精疲労の主な症状と原因、治療法

1)眼精疲労の主な症状と原因

眼精疲労の主な症状としては、次のようなものがあります。目に表れる症状と、カラダに表れる症状があるのが特徴です。

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眼精疲労の主な原因は以下の通りです。

1.生活環境やストレス

パソコンやスマホが手放せない現代は目を酷使しやすく、眼精疲労を中心とした異常の総称「VDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)症候群」になる人が多いです。この他、過度なストレスから筋肉のこわばりや血流への影響が出て、それらが複合的に重なり合い、眼精疲労につながります。

2.目の病気

まずは「ドライアイ」です。ドライアイになると、目の表面が乾燥して眼球が傷つきやすくなります。「眼精疲労の患者の約6割にドライアイの症状がある」といわれます。マスクを長時間着用していると、マスクの上部から息が漏れ、目の表面が乾き、ドライアイが加速するというデータもあります。

また、網膜に像を結ぶレンズの働きをする水晶体が白く濁る「白内障」も、濁りによる見えづらさや、光が乱反射することによるまぶしさが眼精疲労の原因になります。眼圧が高まり視神経や網膜に支障をきたす「緑内障」や、まぶたが垂れ下がったまま上がりにくくなる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」も、視界が狭まるのに無理にあらがおうとした結果、眼精疲労を引き起こすことがあります。

3.カラダの病気

眼精疲労の原因になるカラダの病気としては、風邪やインフルエンザなどの感染症や、高血圧や糖尿病、副鼻腔炎といった慢性的な病気が挙げられます。また、虫歯や歯周病、更年期障害から起きる頭痛や目の奥の痛みなどが、眼精疲労の原因になることもあります。

4.眼鏡やコンタクトなど矯正器具の不具合

近視や乱視、遠視、老眼などの「屈折異常」を矯正するメガネやコンタクトの度数が合っていないことも、眼精疲労の原因の1つです。左右の視力が大きく異なる場合、眼鏡による矯正で左右の像の大きさが異なることで、眼精疲労の原因になることもあります。

2)眼精疲労の治療法の例

眼精疲労になる原因によって治療方法は違います。ですので、症状に気付いたら、早めに眼科を受診しましょう。目の病気であればそのまま眼科で治療を行えますし、カラダの病気など目以外に原因があることが分かれば、内科などの適切な診療科を紹介してもらえます。

軽度の眼精疲労の場合、眼鏡の度数調整、ビタミン点眼、調節機能を改善する目薬の点眼などで症状を和らげる治療法があります。他にも目の周りを温める温罨法(おんあんぽう)、眼の周りを冷やす冷罨法(れいあんぽう)などで目や周辺の筋肉の血管を刺激し、血流を促すことも効果的です。

なお、眼精疲労対策として市販の目薬を使う人も多いですが、種類が多いので、自分の症状に合った目薬を選ぶのはなかなか難しいです。通常、パッケージの「疲れ目」「ドライアイ」「充血」などの文言を参考にして選びますが、自信がなければ、医師に目薬を処方してもらうようにしましょう。

3 眼精疲労への対策ポイント

1)「VDT健診などの各種検診」「オンライン診療」がおすすめ

眼精疲労は、「症状に気付いたら、早めに医者に相談する」ことが大切です。社員に確実に受診を促したいのであれば、会社が主体となって、

VDT健診をはじめ、視力・視野検査、眼圧測定、顕微鏡検査、眼底検査などを実施

しましょう(ただし、定期健康診断のように受診を義務にする場合、就業規則の変更が必要)。人間ドックのオプションで、こうした目の検査を実施してくれる病院もあります。

また、もう1つおすすめしたいのが「オンライン診療」の活用です。これは、

スマホなどを使って、ドライアイや目の腫れなどについて診察を受けられる

というものです。視力・視野検査などはできませんが、気になる症状について医師に相談できれば、次のアクションの助けになります。忙しくて、なかなか眼科に行く時間が取れないビジネスパーソンでも気軽に利用できます。オフィス環境を整えることも、眼精疲労対策として有効です。具体的には、

  • パソコンなどのVDTの連続作業時間に制限を設ける
  • コントラストや輝度を下げる
  • ディスプレイ位置を工夫する(目からの距離・高さ)
  • 太陽光が画面に入り込まないようにカーテンを引く
  • エアコンの風が直接目に当たらないように風よけをデスクに立てる
  • 目に優しい照明を利用する(100~500ルクス)

などが挙げられます。

この他、目の異常が常態化してくると、本人が「そもそも良好な状態がどんなものだったか」が分からなくなってくるケースがあるので、会社が眼精疲労に役立つ知識を職場内で共有する仕組みを整えることも重要です(外部講師を招いての勉強会など)。

2)セルフケアのポイントは「作業環境」「食生活」「眼鏡」などさまざま

眼精疲労を予防するためには目を酷使しないことが一番です。そのために、「目を大事にするセルフケア」に取り組みましょう。

例えば、日々の業務の作業環境。パソコンのディスプレイの位置が高いと目が疲れるので、ディスプレイ位置は目から40センチ以上離し、少し見下ろす程度の高さに配置するようにします。「1時間ごと」など時間を決めて、パソコンから離れる休憩時間を設けることも必要です。

また、きちんと睡眠時間を取るとともに、ビタミンAやビタミンB1、B6、ビタミンEが豊富なレバーやうなぎ、豚肉など「目にいい」食材を意識して食べましょう。抗酸化作用アントシアニンを含むブルーベリーなども、疲れ目の改善に良いとされています。

コンタクトレンズを常用していてドライアイが気になる人は、思い切って眼鏡に切り替えるというのも1つの選択です。他にも目の潤いを保つために定期的な点眼や室内の加湿、意識的にまばたきを増やす、目の体操、こめかみから頭のマッサージ、顔や首のツボを押すなど、個人でできることはたくさんあります。

以上(2024年3月作成)
(執筆 株式会社フェアワーク 吉田健一)
https://fairwork.jp/

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画像:polkadot-Adobe Stock

【規程・文例集】復職時に使える「時短勤務の労働条件に関する合意書」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:私傷病休職から復職する社員に、時短勤務を適用することを検討している経営者
  • 課題:当面の間、社員の働き方が変わることになるが、何に注意すればよいか分からない
  • 解決策:時短勤務の労働条件(労働時間や賃金など)が曖昧だと社員とトラブルになる。会社と社員との間で合意書を取り交わし、労働条件を明確にしておく

1 デリケートな復職時こそ、労働条件を明確にする

「休職」とは、社員が私傷病(仕事以外の理由によるケガや病気)で働けない場合、労働契約を維持したまま、労働を一定期間免除する制度です。会社が就業規則等で休職期間の上限を定め、社員が休職期間の満了前に働ける状態にまで回復したら「復職」させる、というのが一般的な流れです。

とはいえ、復職は非常にデリケートな問題で、社員が復職直後から休職前と同じように働こうとして再び体調を崩し、そのまま退職してしまうケースなどが少なくありません。私傷病の内容などにもよりますが、

復職後は当面の間、労働時間の短縮(いわゆる「時短勤務」)などによって業務の負担が軽くなるよう配慮し、経過を見ながら徐々に従前の働き方に戻していく

のが無難です。

ただし、休職前と復職後で労働条件が変わる場合、あらかじめその変更内容について会社と社員が合意しておかないと、トラブルになる恐れがあります。特に時短勤務の場合、労働時間や賃金について、次のような点に注意する必要があります。

  • 社員が無理なく働ける労働時間か、始業・終業時刻のルールや時間外労働の有無などを明確にしているか
  • 労働時間を短縮した分だけ賃金の支給額が減る場合、具体的な支給額や計算方法などを明確にしているか

次章では、私傷病休職からの復職時を想定した「時短勤務の労働条件の合意書」のひな型(専門家監修付き)を紹介します。

2 「時短勤務の労働条件に関する合意書」のひな型

以降で紹介するひな型は、一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【時短勤務の労働条件に関する合意書】

株式会社○○(以下「甲」)と、従業員○○(以下「乙」)は、乙が○年○月○日から開始する時短勤務の労働条件について、下記の通り合意する。

第1条(目的)

本合意書は、乙が私傷病休職(○年○月○日から○年○月○日まで)から復帰後、休職事由の発生以前の通常の業務と、質・量ともに同程度の業務(以下、通常の業務という)を遂行できる状態に回復するまでの間、時短勤務を行うために必要な労働条件を定めることを目的とする。

第2条(適用)

1)変更後の労働条件は、第4条から第7条までの通りとする。本合意書に定めのない労働条件については、原則として従前(当該私傷病休職の開始日の前日である○年○月○日以前、以下同じ)の通りとする。ただし、従前の内容を適用することに支障があるものについては、甲乙が合意の上、労働条件を決定する。

2)本合意書で定める労働条件の適用期間は、○年○月○日から○年○月○日までの3カ月間とする。ただし、甲が必要と判断した場合、その期間を短縮することがある。

第3条(時短勤務の終了)

1)時短勤務終了時に、乙が通常の業務を遂行できる状態まで回復していると認められる場合は、原則として従前と同一の労働条件で復職するものとする。ただし、従前の内容を適用することに支障があるものについては、甲乙が協議の上、労働条件を決定する。

2)時短勤務終了時に、乙が通常の業務を遂行できる状態まで回復していると認められない場合は、甲は乙に対し、再度の休職を命じることがある。ただし、甲が必要と認める場合は、時短勤務期間を3カ月間、1回に限り延長することができる。

3)甲は第1項、第2項において、乙が通常の業務を遂行できる状態に回復したかを判断するため、乙に対し、医師の診断書の提出を求めることがある。また、甲が診断書を作成した医師に面談を求めた場合、乙はその実現に協力しなければならない。

4)甲が第2項において、乙に対し、再度の休職を命じる場合の休職期間および休職期間を満了した場合の取り扱いについては、就業規則第○条による。

第4条(労働時間)

1)甲は、乙の心身の状態と本人の希望を考慮の上、1日8時間、1週40時間の範囲内で、日・週ごとの労働時間を決定し、乙に対し事前に通知する。

2)甲は、乙の心身の状態と本人の希望を考慮の上、午前8時から午後5時の間で始業・終業時刻を日毎に決定し、乙に対し事前に通知する。

3)乙は、第2項により事前に通知された始業時刻に遅刻し、もしくは終業時刻前に業務を終了する場合、甲に都度報告しなければならない。

4)乙は時短勤務中、甲が特別に認めた場合を除き、時間外労働、休日労働、深夜労働をしてはならない。

第5条(業務内容)

甲は、乙の心身の状態と本人の希望を考慮の上、業務内容を決定する。

第6条(休日・休暇)

休日・休暇の扱いは、従前の通りとする。

第7条(賃金)

1)賃金は、日給月給制から時給制に変更する。

2)時給単価は、業務内容、従前の基本給・諸手当の金額等を勘案し、○○円とする。

3)通勤手当は、実費を支給する。

4)割増賃金等(所定労働時間外の労働に対する賃金、法定労働時間外の労働に対する割増賃金、法定休日の労働に対する割増賃金、深夜の労働に対する割増賃金)の扱いは、従前の通りとする。

5)控除項目(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税、持株会拠出金など)の扱いは、従前の通りとする。

上記内容を証するために本合意書2通を作成し、甲、乙、立会人が記名捺印の上、甲乙が各々1通を所持する。

○年○月○日

 

       甲

 

       乙

 

               立会人

以上(2024年4月更新)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【収支シミュレーション】 介護老人保健施設の開業収支モデル

書いてあること

  • 主な読者:介護老人保健施設の開設を検討している人
  • 課題:自社の所有地に介護老人保健施設を新築する
  • 解決策:開業、運営に掛かる費用の目安を押さえ、収支計画をシミュレーションしてみる

1 介護老人保健施設とは

介護老人保健施設とは

入院治療を必要としない要介護高齢者などを対象に、リハビリテーションや日常的な看護・介護を行うことで心身諸機能の改善や日常生活行動の向上を促し、最終的に家庭に復帰させることを目的とする施設

です。

介護老人保健施設では、入所サービス以外に、通所リハビリや短期入所(ショートステイ)などのサービスも提供しています。

介護老人保健施設を開設するには、

  • 法人格を取得する(介護老人保健施設を開設できるのは、「地方公共団体」「医療法人」「社会福祉法人」「その他厚生労働大臣が定める者」に限られています)
  • 厚生労働省令で定められた事項を都道府県知事に届け出る
  • 厚生労働省が定める「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」を満たす
  • 施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から介護保険法に基づく「介護保健施設」の指定を受ける

必要があります。

なお、市区町村によって基準が異なる場合や、設置を計画していた施設の数を満たしているといった理由で申請を受け付けていない場合があるため、事前に市区町村の担当部署に確認しましょう。

また、市区町村によって施設整備費や設備整備費などに補助金を出していることもあるので、併せて確認するとよいでしょう。

2 開業収支を考える

1)前提条件

1.売上高

売上高は、施設定員を70人として年間4億7000万円とします。算出式は次の通りです。

(介護サービス10万800円×12カ月+日常生活費等1万8330円×365日)×定員70人×稼働率85%≒4億7500万円

介護老人保健施設の売上高は、介護サービス費と日常生活費等から成ります。

厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和5年11月審査分)第5表 介護サービス受給者1人当たり費用額,要介護状態区分・サービス種類別」によると、短期入所療養介護(老健)の介護サービス受給者1人当たりの費用額は10万800円となっています。介護保険が適応されるので利用者の負担は1割(一定基準以上の所得がある場合は2割または3割)となります。

日常生活費等は、食材料費、教育娯楽費、日用品代などで、利用者が実費を負担します。

2.原価率

厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」の介護事業費用(4)その他を参考に売上高の32.0%とします。

3.人件費

厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」の介護事業費用(1)給与費64.2%を参考に3億180万円(4億7000万円×64.2%)とします。

4. 施設設備整備費

建物(延床面積3000平方メートル。1平方メートル当たり工事単価31万円)は9億3000万円。建物附属設備(電気・給排水・消火設備など)は1億3500万円とします。

その他の諸条件は図表1の通りです。

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2)収支シミュレーション

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3 介護老人保健施設の1施設1カ月当たり収支

厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査結果」によると、介護老人保健施設の1施設1カ月当たり収支は次の通りです。

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以上(2024年3月更新)

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画像:mapo-Adobe Stock

社会保険の適用拡大でコスト増! シフトで働くパートは新たに社会保険に加入させるべきか?

書いてあること

  • 主な読者:2024年10月1日から「社会保険の適用拡大」の対象になる会社の経営者、人事労務担当者
  • 課題:シフト制パートが被保険者になるのか判断しにくいし、本人の意向もある
  • 解決策:被保険者になるかは、一定期間の労働時間を週単位に換算した上で判断する。それぞれのパートの希望する働き方をヒアリングした上で、シフトを調整する

1 労働時間が読めない「シフト制パート」の社会保険加入

「社会保険の適用拡大」とは、2024年10月1日から、社会保険(健康保険と厚生年金保険)の被保険者となるパートの範囲が拡大されることです。ここでいう「パート」とは、

週の所定労働時間または月の所定労働日数が、正社員の4分の3未満の短時間労働者

のことです。本来、パートは社会保険の適用対象外ですが、会社が厚生年金の被保険者数について一定の要件を満たし、さらにパートが労働時間や賃金について一定の要件を満たすと、社会保険に強制加入となります。2024年10月1日からは、この会社が満たすべき

厚生年金の被保険者数の要件が、「常時100人超→常時50人超」へと拡大

されます(図表1)。パートを雇用する多くの中小企業が対象になるわけです。

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難しいのは、社会保険の適用拡大の対象となる会社が、

労働日や労働時間が流動的な「シフト制パート」を雇用している場合

です。シフト制パートは、週や月ごとに作成されるシフト表などに基づいて、「1日4~6時間×週2~3日」など流動的に働くので、被保険者になるかが分かりにくくなっています。一方で、社会保険の適用拡大によって、被扶養者であるパートが被保険者になると、

家族の扶養から外れ、これまで負担義務のなかった社会保険料が賃金から天引きされる

ようになります。「社会保険料の負担義務がない」という理由でパート勤務を希望している人もいるでしょうから、トラブルがないようにするには、

  • シフト制パート特有の労働時間のルールを押さえること
  • どのシフト制パートが被保険者になるのかシミュレートすること
  • 2024年10月1日以降の働き方をシフト制パートと協議すること

が大切です。以降で詳しく見ていきましょう。

2 シフト制パート特有の労働時間のルールを押さえる

1)被保険者になるか否かは、労働時間を「週単位に換算」して判断する

パートが社会保険に加入する要件の1つは、「週の所定労働時間が20時間以上であること」ですが、シフト制パートは労働時間が流動的なため、日本年金機構では、

一定期間内の労働時間を週単位に換算した場合、20時間以上になるかどうか

で判断するとしています。具体的な計算方法は図表2の通りです。

画像2

1日の所定労働時間は労働日ごとに異なるが、休日などの周期は一定である場合(例:月に10日の休日を確保する場合)は、図表2の1.の計算式を使います。

また、就業規則や個別の労働契約に「所定労働時間は月◯時間(年◯時間)」といった定めがある場合、2.または3.の計算式を使います。なお、2.の計算式については次のように、繁閑期(繁忙期や閑散期)などがある場合に適用される特別ルールがあります。

繁閑期などで特定の月の所定労働時間が「例外的に長く(短く)なる」場合、その特定の月を除く月の所定労働時間を、「月の所定労働時間×12カ月÷52週」で週単位に換算する

2)労働時間は、労働契約ではなく実態で判断する

もう1つ押さえておくべきなのが、

労働契約上の所定労働時間が「週20時間未満」でも、実労働時間が2カ月連続「週20時間以上」で、今後も同じ状況が続くと見込まれる場合、3カ月目から社会保険に加入する

というルールです(日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集」)。つまり労働時間は、労働契約ではなく実態(実労働時間)で判断します。

逆に言うと、次のようなケースでは社会保険に加入しないことになります。

  • 所定労働時間は「週20時間以上」だが、実労働時間が毎月「週20時間未満」である場合
  • 実労働時間が2カ月連続で「週20時間以上」になったが、3カ月目は「週20時間未満」で、今後も同じ状況が続くと見込まれる場合

3 どのシフト制パートが被保険者になるのかシミュレートする

1)毎月89時間以上働くなら、確実に労働時間の要件を満たす

基本的なルールが分かったら、自社のどのシフト制パートが被保険者になるのか、シミュレートしてみましょう。まずは労働時間の確認です。

労働時間を週単位に換算する方法は前述した通りですが、それだけだと分かりにくいので、図表3のように、週単位に換算した労働時間が20時間以上となるボーダーラインを出してみます。

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20時間以上かどうかは、前述した通り労働契約ではなく実態で判断します。仮に各月の実労働時間が図表4の通りであれば、1.から3.のボーダーラインを全て超えるので、週単位に換算した労働時間は確実に20時間以上になります。

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分かりにくければ、ざっくり

毎月89時間以上働くなら、確実に労働時間の要件を満たす

と覚えておくとよいでしょう。

2)1カ月当たりの賃金やその他の要件も確認する

次に「1カ月当たりの賃金が8万8000円以上か」を確認します。

仮に時給が1113円(東京都の地域別最低賃金、2023年10月~)のシフト制パートが、前述した図表4と同じ時間だけ働いた場合、1カ月当たりの賃金は図表5のようになります。全ての月で1カ月当たりの賃金が8万8000円以上になるので、賃金の要件も満たします。

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あとは、「継続して2カ月を超えて使用される見込み」「学生でない」という要件を満たせば、そのシフト制パートは社会保険に加入することになります。

なお、ここまで被保険者要件を確実に満たす働き方を紹介してきましたが、実際は

  • 週単位に換算した労働時間が、20時間以上の月もあれば、20時間未満の月もある
  • 1カ月当たりの賃金が、8万8000円以上の月もあれば、8万8000円未満の月もある

など、働き方が一定ではなく、被保険者になるかの判断がつきにくい場合があります。このあたりについては個別・具体的な判断になる可能性があるため、所轄の年金事務所に確認するようにしてください。

4 2024年10月1日以降の働き方をパートと協議する

1)社会保険に加入することのメリットとデメリットを伝える

どのシフト制パートが被保険者になるのかが分かったら、対象となるパートに、2024年10月1日から社会保険に加入する旨を伝えた上で、今後の働き方について協議します。まずは社会保険に加入するメリットとデメリットを伝えましょう。

現状、被扶養者であるシフト制パートが社会保険に加入すると、

家族の扶養から外れ、これまで負担義務のなかった社会保険料が賃金から天引きされるようになり、賃金の手取り額が減る可能性

があります。ただ、その代わり、

  • 傷病手当金や出産手当金などの保険給付を受けられるようになり、保障が手厚くなる
  • 国民年金に加えて厚生年金保険の給付も受けられることになり、将来の年金が増える
  • 今までのように扶養の範囲(労働時間や賃金など)を気にせず、思い切り働ける

といったメリットがあります。加えて、産前・産後休業や育児休業を取得する際、社会保険料が免除されることなども教えてあげるとよいでしょう。

2)社会保険加入前後の労働条件を明らかにする

シフト制パートが一番気にするのは、「社会保険に加入した場合、手取り額がいくら減るのか」でしょう。こうした場合、図表6のように「社会保険加入前」と「社会保険加入後」の労働条件が分かる比較表を作って説明すると、本人も働き方をイメージしやすくなります。なお、基本給(9万8130円)は、前述した図表5における1カ月当たりの賃金の平均額です。

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3)働き方の希望を聞き、必要に応じて労働条件を調整する

労働条件の比較表を渡す際は、併せて図表7のような「社会保険の加入に関する意向確認書」も交付しましょう。これは、2024年10月1日以降、社会保険への加入を希望するかどうかの、本人の希望を確認するための書面です。

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「社会保険に加入したくない」と回答したシフト制パートについては、今後の労働時間など、労働条件の変更について話し合う必要があります。なお、その際は

仮にシフト制パートの労働時間を減らした場合、2024年10月1日以降、業務を回していけるか

に注意しなければなりません。場合によっては、シフト制パートの労働時間を減らした分、「他のパートに仕事を割り当てる」「新たにパートを雇用する」などの対応が必要になる可能性があります。

以上(2024年4月作成)
(監修 ひらの社会保険労務士事務所)

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画像:takasu-Adobe Stock