うつ病から復職した社員が、再び「休みたい」と言ってきた場合の「愛」ある対応とは?

書いてあること

  • 主な読者:うつ病から復職した社員の症状が再び悪化した場合の対応を知りたい経営者
  • 課題:再度の休職は可能か? 休職期間が残っていない場合はどうすればいいか?
  • 解決策:休職期間の「通算」のルールを確認する。休職期間が残っていない社員を雇用し続けたい場合、雇用形態の変更など働き方のルールを変える

1 復職した矢先に再び症状が悪化するケースは珍しくない

「休職(私傷病休職)」とは、

社員が私傷病(仕事以外の理由によるケガや病気)で働けない場合、労働契約を維持したまま、一定期間労働義務を免除する制度

です。就業規則で定めた休職期間が満了するまでに社員が働ける状態に回復したら「復職」、そうでなければ「自然退職」となるのが一般的な流れです。

もちろん復職できるのが理想ですが、うつ病のように完治の判断が難しい病気の場合、

社員が復職した矢先に、再び症状が悪化してしまうケース

は珍しくありません。経営者としては、「社員に働く意思があるなら、症状が改善するまで根気強く待ってあげたい」という気持ちもあるでしょう。ただ、他の社員との兼ね合いもあり、ある程度はルールに基づいて対応せざるを得ないのがつらいところです。

そこで、この記事では、「復職した社員の症状が再び悪化しても、雇用を継続できるようにするにはどうすればよいか」を、次の3つに注目して考えていきます。

  1. 休職期間の「通算」の規定を確認する
  2. 雇用形態の変更などによって働き方のルールを変える
  3. 社員の生活保障(傷病手当金や退職金)にも注意する

2 休職期間の「通算」の規定を確認する

休職制度は、法律上の制度ではなく、会社が就業規則で独自にルールを定めて実施します。そして、休職制度がある会社の中には、一定期間内に同じまたは類似の傷病で再び休職したら、休職期間を「通算」する規定を設けているところがあります。具体的には次の通りです。

復職した社員が、その後○カ月以内に、同じまたは類似の傷病により再度欠勤をした場合、もしくは通常の労務提供ができなくなった場合は復職を取り消し直ちに再休職とする。この場合、以後連続または断続する欠勤は、復職前に休職した期間と通算する。

このような「通算」の規定があった場合の流れを確認します。例えば、休職期間が最長6カ月間の会社で、社員がうつ病で2カ月間休職したとします。この場合、復職後すぐにうつ病が再発したら、休職期間は通算され、再休職できる期間は4カ月間(6カ月間-2カ月間)となります。ただし、うつ病以外の病気であれば、それが原因で再休職しても、休職期間は通算されません。

仮に1回目の休職で6カ月間休んだ場合、休職期間の上限に達してしまうので、再休職はできません。その場合、一般的には、休職期間の満了までに復職できなかったとして、自然退職になります(就業規則に定めが必要。なお、うつ病以外の病気による再休職は6カ月間まで可)。

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3 雇用形態の変更などによって働き方のルールを変える

休職期間が残っていない社員をそれでも雇用し続けたいのであれば、「雇用形態の変更や部署移動などによって働き方のルールを変える」ことを検討します。

例えば、「正社員は休職制度の対象だが、パート等は対象外にしている」という会社の場合、

社員の雇用形態を正社員からパート等に変更し、休職制度の対象から外す

という方法で雇用を継続することができます。

また、「パート等にも休職制度を適用する」という会社の場合も、次のように労働日を調整することで、正社員が休んだ場合は「欠勤」扱いとなる日を、「休日」扱いにできる可能性があります(「欠勤」扱いにならなければ、休職制度を適用する必要がない)。

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ただし、雇用形態の変更は会社の一存では行えません。社員との合意が必要です。特に正社員からパート等に転換する場合、一般的には、

  • 業務内容や責任が変わることで、賃金が下がる
  • 所定労働時間が変わることで、年次有給休暇の付与日数が少なくなる

など、従前よりも労働条件が引き下げられるケースが多いです。ですから、書面などで労働条件の変更部分を明確にした上で、合意を得るようにします。

なお、社員と労働条件について相談する際は、

正社員として業務を行える状態に回復した場合、パート等から正社員に戻れるか否かについても明らかにして社員に伝える

ようにしましょう。

4 社員の生活保障(傷病手当金や退職金)にも注意する

最後に、復職した社員が再び働けなくなってしまった場合の生活保障について、「休職期間が残っている場合」と「休職期間が残っていない場合」とに分けて考えてみます。

1)休職期間が残っている場合

社員が一定の要件を満たせば、再休職中に健康保険の「傷病手当金」がもらえます。支給額は「おおむね休職前の賃金の3分の2」です。通常、傷病手当金は、療養のために連続3日以上休んでからでないともらえませんが、

同じ傷病であれば、2回目以降は再び会社を休んだ日(再休職した日など)から支給

されます。ただし、支給期間は、同一の傷病について最初に支給が開始されてから通算1年6カ月間が上限なので、例えば、1回目の休職で傷病手当金を2カ月間もらった場合、再休職での支給期間は1年4カ月間(1年6カ月間-2カ月間)までとなります。

ただし、雇用形態を正社員からパート等に変更した場合、

社員が健康保険の被保険者でなくなり、傷病手当金がもらえなくなる可能性がある

ので注意が必要です。

なお、社員の年次有給休暇(年休)が残っている場合、休職に入る前に取得してもらうことも併せて検討しましょう。一度休職に入ると、労働義務が免除された状態になり、年休が取得できなくなってしまうので注意が必要です。

2)休職期間が残っていない場合

前述した通り、雇用形態が変わると賃金は従前よりも下がるケースが多いので、社員は不安です。こうした場合の対策として、

正社員からパート等に転換した時点で退職金を支給し、当面の生活に充ててもらう

という方法があります。退職金規程などで「雇用形態が正社員からパート等に変更され、かつ社員が雇用形態の変更時に退職金を受け取ることを希望した場合、退職金を支給する」という旨の規定を設けておけば対応可能です。

ただし、その場合、

パート等に転換した社員の症状が改善し、再び正社員に戻った場合の退職金の取り扱い

に注意が必要です。退職金規程などに「社員が退職した場合、退職金を支給する」という定めがあれば、パート等が正社員再転換後に退職する際にも退職金を支給することになりますが、その場合、図表3のように「パート等への転換時に退職金をもらったか否か」によって退職金の算定方法が変わり、支給額に差が出ることがあります。

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以上(2024年4月更新)
(監修 弁護士 田島直明)

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画像:琢也 栂-Adobe Stock

時代に追いついた「商標・意匠」の法改正。ロゴやデザインを使ったマーケティングがしやすくなった!

書いてあること

  • 主な読者:商標や意匠を登録してビジネスを有利に進めたい経営者
  • 課題:商標や意匠は早い者勝ちのはず。リソース不足で先行する知財の調査などが困難
  • 解決策:現在のマーケティング手法に合わせ、商標登録や意匠登録がしやすくなった

1 登録要件が緩和された商標登録と意匠登録

2023年6月14日に、「不正競争防止法等の一部を改正する法律」(いわゆる「知財一括法」)が公布されました。これにより、不正競争防止法、商標法、意匠法その他の知的財産法が改正され、2024年4月1日までに順次施行されました。

知財の活用は企業規模を問わず重要ですが、今回、商標登録や意匠登録について

登録要件が緩和されたので、リソースが少ない中小企業でも対応しやすくなったこと

が特徴です。この記事では、知的財産権に詳しい弁護士が、法改正のポイントを分かりやすく解説します。

2 商標登録のポイント

1)商標は早い者勝ち?

商標とは、

企業が自社の取り扱う商品・サービスを、他社のものと区別するために使うロゴマークやネーミング、シンボルアイコン

のことで、文字や図形、記号、立体的形状などによって表されます。消費者にとってロゴなどはブランドであり、購入する商品を決める際の重要な要素となります。商標が「もの言わぬセールスマン」と言われるゆえんです。

商標を自社の権利とするには、特許庁に出願し、「商標登録」しなければなりません。商標登録をすると、自社の商標として独占的に使用でき、ブランドイメージの維持につながります。もちろん、他社の商標侵害にも対抗すること(差止請求や損害賠償請求など)ができます。改正前は、商標は早い者勝ちで、他社に先駆けて登録する必要がありました。

2)改正で併願登録が可能に!

今回の改正で、いわゆる「コンセント制度」が導入されました。コンセント制度とは、

既に登録されているロゴと似ていても、相手が同意(コンセント)すれば併存登録できる

というものです。先行する登録商標の権利者の同意があれば、類似する商標を併存して登録できるようになりました。ただし、

併存して登録ができる商標は、それぞれ商標につき出所混同の恐れがない場合に限定

されます。消費者が混同するような「パクリ商標」は、当然、認められないのです。図表1は商標登録の一般的な流れですが、関連するのは1番左の「先行商標の登録調査」とその隣の「商標登録の出願」です。

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もう1つポイントがあるので補足します。改正前は、「商標の中に他人の氏名が含まれる場合、本人の承諾がないと商標登録できない」ことになっていました。しかし、ファッション業界などのように、創業者やデザイナー等(知名度が高いとは限らない)の氏名をブランド名に用いることが多い業界は困ってしまいます。そこで、今回の改正で、

商標に含まれる「他人の氏名」に一定の知名度がなければ、誰にも承諾を得る必要はない(一定の知名度がある場合、知名度のある他人1人にだけ承諾を得ればよい)こと

になりました(ただし、出願商標に含まれる氏名と無関係の者による濫用的な出願は拒絶されます)。これにより、新興ブランドのデザイナーの氏名を含む商標が保護され、ブランド選択の幅、ひいてはビジネスチャンスを広げやすくなります。

3 意匠登録のポイント

1)意匠とは?

意匠とは、

モノや建築物、画像のデザインのこと

です。商標のロゴと同じように、消費者にとってデザインは、購入する商品を決める際の重要な要素となります。意匠を自社の権利とするには、特許庁に出願し、「意匠登録」しなければなりません。登録できた場合のメリットは、商標の場合と同じであると考えてよいです。

2)法改正で事前マーケティングが可能に!

意匠は「新規性」がなければ登録できません。ここでいう新規性とは、「デザインが新しく、まだ世に知られていない」ということです。ですから、たとえデザイナー本人でも、既に公開されているデザインについて意匠登録するには、「出願と同時に例外の適用を受ける旨の書面(例外適用書面)を提出」「出願から30日以内に自ら公開したことを証明する証明書(例外適用証明書)を、自己が公開した全ての意匠について網羅的に提出」という面倒な実務が必要でした。今回の改正でこの点が見直され、出願前に似たようなデザインが複数公開された場合、

最も早く公開された意匠について「例外適用証明書」を提出すれば、それ以後の公開については証明書が不要

になりました。図表2は意匠登録の一般的な流れですが、関係するのは、左から2番目の「意匠登録の出願」です。

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現在は、

  • 色違いや細部をちょっとだけ変えた複数のデザインを創作する
  • SNSで発売前の製品デザインを断片的に公開する
  • クラウドファンディングでは、先行してデザインを公開して資金調達する

といったマーケティングが当たり前のように行われており、法令がそれに追いついた格好です。

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4 その他のポイント

商標登録・意匠登録以外のポイントとして、不正競争防止法について補足します。不正競争防止法の改正により

デジタル空間における模倣行為の差止めが認められる

ようになりました。これまでは有体物に対してパクリが禁止されていましたが、最近は「メタバース」などのデジタル空間で商品が販売されるケースもあります。こうした状況を踏まえ、デジタル空間上であっても、他人の商品形態を模倣した商品を提供する行為については、不正競争行為として差止めが認められます。

以上(2024年4月作成)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:Kaspars Grinvalds-Adobe Stock

「ガチャガチャ」が地域おこしの起爆剤に? 協会に聞いたご当地ガチャ成功の秘訣

書いてあること

  • 主な読者:ガチャガチャを使って地域活性化を図りたい中小企業、自治体担当者など
  • 課題:ガチャガチャが本当に地域の活性化につながるのか、商品化やPRに当たり、どのような準備が必要になるのかを知りたい
  • 解決策:地域の中で、ご当地ガチャや街ガチャをやりたいという仲間を、どれだけ集められるかが肝心。その地域で影響力や外部への発信力が高い人との人脈を築けると、スムーズに企画が進められる

1 ガチャガチャが地域活性化のきっかけに?

小銭を入れてハンドルを回すと、おもちゃや雑貨などが入ったカプセルがランダムに出てくる「ガチャガチャ」。昨今では、ガチャガチャ専門店をはじめ、ショッピングモールや駅ナカ、書店など、さまざまな場所でガチャガチャを見かける機会が増えています。

実際に、10年前と比較しても市場規模が大きく拡大しています。

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このガチャガチャ人気に注目し、自治体の中には、その地域の名所や特産品などをキーホルダーやバッジなどのグッズにした「ご当地ガチャ」や「街ガチャ」によって、地域の活性化を図ろうとする動きがあります。

こうした「ご当地ガチャ」や「街ガチャ」の取り組みは、SNSで拡散されたり、ニュースで取り上げられたりすることで話題を呼んだものもありますが、どの程度地域の活性化に貢献しているのでしょうか?

この記事では、前提知識として、ガチャガチャ市場の最近の動向をはじめ、業界の第一人者となる日本ガチャガチャ協会(東京都中央区)へのインタビュー、ご当地ガチャ、街ガチャの取り組み事例の紹介を通じて、ガチャガチャはどのような仕組みのビジネスなのかをひもといていきます。

なお、ガチャガチャは、メディアによっては「カプセルトイ」や「カプセル玩具」などと呼ぶこともありますが、昨今ではカプセルの中身は玩具だけでなく、多種多様な商品が登場しており、正確な表現とはいえなくなっています。そのため、この記事でも特別な注釈がない限りは、「ガチャガチャ」で呼称を統一していることをあらかじめご承知おきください。

2 まずは、ガチャガチャビジネスの仕組みをひもとこう

1)ガチャガチャビジネスのプレーヤーは?

ガチャガチャビジネスも他業界と同じように、「メーカー」「オペレーター」「販売店」の3者に大きく分けられます。

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1.メーカー

商品の企画・販売を手掛ける企業です。バンダイ(東京都台東区)とタカラトミーアーツ(東京都葛飾区)が市場シェアの7割を占めているといいます。また、ガチャガチャの筐体(きょうたい)製造もこの2社が市場シェアを独占しているようです。

2.オペレーター

メーカーが作った商品や筐体を仕入れ、ショッピングモールなどの販売店に筐体の設置を手掛ける企業です。設置料として売り上げの15~20%を販売店に支払って筐体を設置し、商品の補充や売り上げの集金などのメンテナンスを行います。

ガチャガチャの流通は、メーカーが発行する新商品情報をオペレーターが見て3?カ月前に発注数を決め、その数量だけメーカーが商品を製造してオペレーターに納品するという仕組みになっています。

また、筐体から得た利益をメーカーと販売店に還元したり、販売店で商品が売れ残ったりしたときには、在庫のリスクを負う役割もあります。

3.販売店

オペレーターから供給された商品と筐体を自社のスペースに置いて、消費者向けに販売します。

かつては個人経営の駄菓子屋や文房具店の軒先などに筐体がよく置かれていましたが、昨今では、ショッピングモールやゲームセンター、駅ナカなど、販売店となる場所が増えています。

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2)進化するガチャガチャビジネスのトレンド

1.キャッシュレス決済

これまでガチャガチャを購入するには、100円単位の小銭が必要でしたが、昨今では、QRコードや交通系ICカードなどで、キャッシュレス決済が可能な筐体が登場しています。

消費者側では、両替などで手元に小銭を用意しなくても手軽に購入できるようになったり、メーカー側でも、100円単位でしか商品の値段を設定できないという制約がなくなるなどのメリットがあります。

2.環境に配慮したカプセルの登場

ガチャガチャが登場してから現在に至るまで、商品がプラスチックのカプセルに入っているスタイルは変わりませんが、SDGsや脱プラなどの流れに合わせて、カプセルのリサイクルや、プラスチックを使わないカプセルを用いる動きがあります。

例えば、ケーツーステーション(大阪府岸和田市)がレンゴー(大阪府大阪市)、大宝工業(大阪府守口市)と共同で開発した紙カプセルの「ecoポン」は、資源ごみとして回収すればリサイクルが可能で、一般ごみとして焼却しても有害物質が出ないという特徴があります。

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3.ガチャガチャ購入のオンライン化

ガチャガチャを購入するには、筐体のある場所に行かなければならず、購入者にとっては、目当ての商品を探して店舗を何軒もはしごするという手間があります。

こうした側面から、通販でガチャガチャの商品を購入できる環境が整っています。

例えば、バンダイが運営している「ガシャポンオンライン」では、自社で取り扱っているガチャガチャの商品をオンライン上で購入できます。

また、ホビーストック(東京都墨田区)が運営するウェブサイトの「colone(コロネ)」は、オンラインで決済をすることで、ガチャガチャを回すことができるサービスです。購入した商品が重複してしまった際には、ユーザー同士で交換することもできます。

ガチャガチャを回すワクワク感よりも、商品を効率よくコレクションしたい人には向いているといえるでしょう。

3 日本ガチャガチャ協会に聞く ご当地ガチャ成功の秘訣

ここでは、ガチャガチャビジネスのコンサルティングや商品企画などを手掛けている、日本ガチャガチャ協会代表理事の小野尾勝彦氏に、ご当地ガチャ成功の秘訣をインタビューしました。

1)そもそも、ご当地ガチャとはどんなものでしょうか?

地域の活性化にガチャガチャを用いる試みです。観光客向けの商品から、地域の人だけが知っているローカルなネタまで広く取り扱い、外部向けには地域の魅力発信、内部向けには地元愛の醸成を図るものになります。

多くは地域の観光協会や地元企業など、有志のグループが自主的に取り組んでおり、メーカーやオペレーターは関与していません。そのため、ライセンス商品やメーカーオリジナル商品とはまた違った分類になります。

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2)ご当地ガチャにしやすい人気の商品はありますか?

ご当地ガチャになる商品は、キーホルダーやバッジがほとんどとなっています。特に、アクリルキーホルダーはイラストや写真をきれいに写しやすく、フィギュアやミニチュアなどの立体物よりも低価格、小ロットで、クオリティーの高い商品ができるので人気があります。

お土産物屋でアクリルキーホルダーをレジ横などに置いて販売するよりも、ガチャガチャの商品にすることで低価格で購入できるので、お土産として人にプレゼントしやすくなるし、何が出るか分からないワクワク感から、楽しんで購入してもらえるといったメリットがあります。

また、その地域で有名な店舗の看板は、目にする機会は多いものの、商品化されることが少ないので、ガチャガチャの商品として人気があります。

3)ご当地ガチャのPRは、どのような媒体が向いていますか?

新聞や地元のフリーペーパーによるPRが一般的です。また、ガチャガチャはSNSでのウケも良く、SNSで拡散されて話題になった結果、テレビ番組などでも特集されて一気に認知度が高くなったケースもあります。

4)ご当地ガチャの企画を進める際に、苦労しがちな点は何でしょうか?

地域の店舗などをモチーフに商品を作る際に、店舗の管理者に商品化の許諾を取ったり、商品の監修などを依頼したりするところは、特に時間がかかる工程です。

店舗ごとに個別に交渉するよりも、商店街振興組合など、その地域の店舗を取りまとめている組織があれば、そちらに交渉するとスムーズに企画が進められるかもしれません。

また、今でこそガチャガチャの認知度は高まりつつありますが、一昔前だと子どものおもちゃというイメージもあったため、商品化に乗り気ではなかったケースもあります。

5)ここまでを踏まえて、ご当地ガチャの企画を進める際の秘訣は何でしょうか?

その地域の中で、ご当地ガチャをやりたいという仲間を、どれだけ集められるかが肝心です。例えば、地元のイラストレーター、新聞社やフリーペーパーなどの媒体に携わっている人、観光協会、地域の商店街の組合員など、その地域における影響力や外部への発信力が高い人との人脈を築けると、スムーズに企画が進められると思います。

4 「ご当地ガチャ」「街ガチャ」の取り組み事例

1)飲食店の看板がモチーフの「立石ガチャ」(東京都葛飾区)

カプセルトイの製造・販売を行うプレステージ(埼玉県八潮市)と、日本ガチャガチャ協会が共同で手掛けています。

ラインアップは、京成立石駅前に点在する「蘭州」「鳥房」「二毛作」「ミツワ」「栄寿司」の5店舗と、立石のランドマークである「呑(の)んべ横丁の看板」の計6種類。第2弾は串揚げ店「毘利軒(びりけん)」、店内で飲めるスーパー「倉井ストアー」、趣のある大衆店「ゑびすや食堂」、再開発で閉店となった「江戸っ子」「木村屋豆腐店」、再開発で撤去された「呑(の)んべ横丁の看板」となっています。

モチーフとなったこれらの店舗は、立石地区の再開発で閉店することになり、メモリアルとして残したいという思いから、ガチャガチャの商品化につながったものになります。

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2)街ガチャin船橋(千葉県船橋市)

船橋市観光協会と日本ガチャガチャ協会の共催で、「カプセルトイで街を元気に!ジモト愛をガチャに込めて、街を盛り上げるプロジェクト」として、 市内の名物、名所、文化をイラストに描いたキーホルダーを製作・販売しています。

各イラストは船橋在住のイラストレーターや作家が担当し、2021年10月の発売開始から第4弾までが、商品として販売されています。

ガチャガチャの筐体には、小銭が不要でキャッシュレス決済ができる「ピピットガチャ」を使用しています。また、ガチャガチャのカプセルも生分解性プラスチックでできている「AMバイオカプセルR?」を使うなど、環境に配慮していることも特徴です。

日本ガチャガチャ協会によると、観光協会などと連携し、商品化からリリースまでの期間が短く、早めに告知ができたことで売上の拡大につながったといいます。

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3)大宮ガチャタマ(埼玉県さいたま市)

ご当地ガチャの先駆けといわれており、大宮駅周辺の観光スポットや老舗などをモチーフにしたアクリルキーホルダーを販売しています。

大宮駅前西口で商業ビルを展開するアルシェ(埼玉県さいたま市)が企画し、大宮駅や株式会社ルミネアソシエーツが協力、ジェットワークスが販売元となっています。

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、大宮を元気にするきっかけとして、地元しか知らないものやマニアックなものを商品化したいということが始まりといいます。

2021年3月から発売を開始して、当初は最初のロットとして1000個が売れればよいと想定されていましたが、SNS上での投稿などで話題となり、2日で完売したといいます。

現在は第5弾までシリーズ化されており、累計で140万個ほどが売れているそうです。

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4)街ガチャin藤枝 朝ラーメンガチャ(静岡県藤枝市)

静岡県藤枝市が、固有の食文化である「朝ラーメン」を全国に発信するため、観光協会や藤枝朝ラー文化軒究会と連携して取り組む、カプセルトイを活用したまちおこしプロジェクトです。

市内10店舗の朝ラーメンをモチーフにしたアクリル製のキーホルダーを、カプセルトイで販売しています。

藤枝市観光案内所や朝ラーメンを出す各店舗での販売をはじめ、「藤枝大祭り会場」などのイベント時には、イベント会場でも販売しています。

現地を訪れた観光客だけでなく、地域住民にも愛される商品として、地域活性化につなげる狙いがあります。

5)島根県安来(やすぎ)市のイチゴ農家が発案した「安来ガチャ」

市内の農家や地元産業の店主ら住民をキャラクターにしたシールや、イチゴなどの特産品をデザインしたマスキングテープなどが入ったガチャガチャです。

市民をデフォルメしたシールをガチャガチャに入れて販売する奇抜なアイデアで話題をつくるだけでなく、キャラシールは農家や店に持ち込むと特典があるため、特典・景品を利用して安来の中に入り込んでもらったり、リピーターづくりにつなげたりしているといいます。

6)全国初のカーボンオフセット カプセルトイ(北海道南富良野町)

北海道ガス(北海道札幌市)と南富良野町が共同で取り組んでいます。

「道の駅南ふらの」でカーボンオフセット証明(20kg-CO2)と、南富良野町のイメージキャラクター「南ちゃん」グッズをセットにしたカプセルを、1個につき500円で販売しています(カーボンオフセット分が220円、グッズが280円。いずれも税込価格)。このうち、カーボンオフセット分の売上金を全額、南富良野町の環境保全活動に活用しています。

観光客など、現地を訪れた人がガチャガチャを購入し、気軽にカーボンオフセットに参加できる仕組みをつくることで、環境保全の取り組みへの理解促進につなげることを狙いとしています。

以上(2024年4月作成)

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画像:naka-Adobe Stock
Mariko Mitsuda

不適切にもほどがある「令和版 問題社員」が、会社の評判を静かに、確実に落とし続ける

書いてあること

  • 主な読者:時代の変化に乗り遅れているかもしれない社員と、そうした社員をマネジメントする経営者や管理職
  • 課題:社員は自覚なしに非常識な行動を取っているが、確実に相手の信用を失い、取引の縮小や解除を申し出られることもある
  • 解決策:「夜中にメールを送るのは迷惑、すぐに電話をかけるのも迷惑」など、昔とは違う常識を伝えてバージョンアップしてもらう

1 時代に乗り遅れた「令和版 問題社員」が増殖中

いつの時代も、会社に迷惑を掛ける問題社員はいますが、そのありようも時代とともに変わってきました。

例えば、堂々と悪さをした上に、SNSでそれを自慢する「バイトテロ」です。情報が拡散されれば会社の信用はガタ落ちで、会見や消毒など後処理のコストもかかります。ただ、バイトテロの悪質さは世間も知っているので、逆に会社に同情し、応援してくれる人もいます。

このバイトテロよりも怖いのが、

時代の変化に乗り遅れていたり、勘違いしたりしている「令和版 問題社員」

です。例えば、皆さんの会社に「夜中にメールを送る社員」や「すぐに電話をかける社員」はいませんか? 昔は夜中に送られてきたメールに対して、「頑張ってくれている」と寛容だった相手も、今では、

「こんな時間にメールを送ってくるなんて迷惑だ。ブラック企業か!」

と敬遠します。そう、時代は変化しているのです。この変化に気付かずに昔のままのやり方を続けている「令和版 問題社員」は、静かに、そして確実に会社の評判を落としています。

この記事では、「令和版 問題社員」の典型例を紹介します。御社は大丈夫ですか?

なお、この記事の内容は、会社ごとに良しあしの判断が分かれるものであり、あくまでも1つの意見であることをあらかじめご了承ください。

2 夜中でもメールなら問題ないって本当?

最初に紹介するのは、夜中や早朝でもお構いなしにメールを送る問題社員です。このタイプの言い分は、

  • メールを送っているだけだから、相手に迷惑は掛からない
  • 夜中(早朝)に送っておけば、相手は始業時に内容を確認できる
  • 「自分はこんなに働いている!」とアピールがしたい

といったものです。

しかし、相手がメールの受信通知をオンにしていたら、寝ているところを起こしてしまうかもしれません。それに、働き方改革が進む昨今、夜中のメールは目立ちます。相手が、

「すごい時間にメールが届いていますが、お体は大丈夫ですか?」

と確認してきたらご用心。特に大企業は社会的な信用を大事にするので、こちらをブラック企業と疑ったら、取引を縮小・解除してきます。

一方、「働きたい人はモーレツに働いてもいい。それも個人の選択」という意見も広まっています。夜中まで働く必要があるなら、周囲を巻き込まない工夫をしてもらいましょう。例えば、メーラーのタイマー予約を使って、午前1時ではなく、朝8時30分に送信予約するなどです。

ただし、メールの送信時間の設定を社員に指示するのと、労働時間管理は全く別の問題です。長時間労働が慢性化したり、労働基準法で定められている残業の上限を超えたりしているのは、本当のブラック企業です。労働時間管理には十分に注意しましょう。

3 「すぐ電話 もらったほうは 大迷惑」(字余り)

次に紹介するのは、すぐに電話をかける問題社員です。このタイプの言い分は、

  • テキストでは伝わりにくいので、音声で伝えるのがよい
  • 「思い立ったらすぐ電話」のスピード重視。都合が悪いなら折り返しでいいですよ
  • 相手と仲良しだから電話をしても嫌がられない

といったものです。

しかし、ホームページにさえ電話番号を載せなくなってきた今、かかってきたら逃げられない電話応対を強いられる相手の状況に配慮するべきです。テレワーク中の相手に直電するのも考えものです。都合が悪ければ折り返しでいいというのも自分勝手な意見です。電話が鳴れば集中が切れるし、折り返し電話をするというタスクが増えるのもストレスだからです。

セキュリティーの問題もあります。外から電話で取引内容などを大きな声で話す人がいますが、電話の相手は、

「おいおい、情報セキュリティーは大丈夫?」

と心配になります。「外出先でも、携帯電話で込み入った話ができる人は仕事ができる」という評価は変わったのです。

今は、電話も相手とスケジュール調整する時代です。具体的には、

チャットで「今日、何時ごろなら電話できますか?」と確認した上で電話をするのが礼儀

です。1990年代にメールが普及した理由の1つは、「相手の仕事を邪魔しないこと」でしたが、今、このことが改めてフォーカスされています。

「会うほどではないが、テキストでは伝わりにくい」というときは、ボイスメールを使うように推奨してください。これは留守番電話のようなもので、こちらの用件を音声で相手に伝えられます。相手も細かなニュアンスを感じ取りやすいでしょう。

付け加えるなら、最も避けるべきなのは、

すぐに電話をかけてくるのに、こちらからの電話にはほとんど出ない(折り返しもない)という一方通行の行動

です。「なんて自分勝手な!」と相手を怒らせてしまっている可能性が高いです。

4 発言はただじゃない。お仕事版「口だけ番長」

次に紹介するのは、言っていることはもっともだが実態が伴わない、お仕事版「口だけ番長」です。このタイプの言い分は、

  • 存在感を示すためには発言しないと
  • 自分なりに勉強しているし、知識はあるはず
  • 発言したときは、本当に後で対応しようと思っていた(が、忘れた)

といったものです。

この場合、こちらが何と言おうと、相手が求めているのは「プロの対応である」ことに尽きます。そのため、

  • 発言内容はもっともらしいが、具体性がなく、次の行動に結びつかない
  • 月次ミーティングで、1カ月前と同じことを言っている

などの状態が続けば、当然、相手はこちらの提案を受け入れなくなり、最後は別の取引先にくら替えするでしょう。今どきは経験の浅い社員や若手でも現場に出す会社も多いですが、実力不足のままでは駄目なのです。

もちろん、経験の浅い社員や若手にチャンスを与えるのは良いことですし、人手不足でどうしようもないこともあります。大切なのは、

実力不足の社員に任せきりにせず、教育とベテランのフォローをセットにすること

です。それでも成長しなかったり、そもそも向上心がなかったりするなら、その社員は現場に出すべきではないかもしれません。

5 決まったことをひっくり返す無邪気や厄介者

最後に紹介するのは、決まったことを後からひっくり返す問題社員です。このタイプの言い分は、

  • 後で別の大切な予定が入ったので、リスケ(リスケジュール)はやむなし
  • 心理的安全性があれば、思いつきレベルでも発言するべき
  • 発言内容を覆すのは、全て良い仕事のためだ

といったものです。

最も顕著な例はリスケです。1カ月前から決めていたのに、前日や当日になってリスケを申し出ます。体調不良はやむなしですが、別の理由で急なリスケを申し出るため、相手は、

「自分の予定よりも重要な予定って何? 自分は軽く見られた?」

と困惑します。特にオンラインはリスケのハードルが下がりがちですが、これは大きな間違いです。リアルもオンラインも関係なく、決めた予定は守るのが基本です。

決まった要件を後から無邪気に変える問題社員もいます。「要件定義の際は気付かなかった」「後から別の良い方法を思いついた」ということでしょうが、

既にAと決まったことをBに変えるのは、最初からBと決めるよりもコストがかかる

ものです。このタイプは、「心理的安全性」を「言いたいことは何でも言っていい」と勘違いしていますが、現実はそんなに甘くありません。上の例でいえば、「AをBに変える合理的な理由や熱意」がなければ周囲は検討すらしたくないのです。

決まった要件を変えたいという社員がいたら、まずは上司が話を聞いてみましょう。要件を変えるだけの合理的な理由や熱意がないなら、はっきり「NO!」と伝えます。「言った者勝ち」の世界ではないのですから。

以上(2024年5月作成)

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新入社員や中途社員の「テレワーク疲れ」 解消のポイントは「社員と向き合う」

書いてあること

  • 主な読者:新入社員や中途社員がテレワークにストレスを感じていることに悩む経営者
  • 課題:オフィスで顔を合わせていたときに比べて細やかなコミュニケーションが取れない
  • 解決策:定期的な1on1ミーティングで雑談したり、社員の本音を引き出したりする。その上で心身の健康をサポートする仕組みを取り入れる

1 テレワークでもメンタルヘルスケアの基本は同じ

働き方改革やコロナ禍を経て、テレワークは1つの働き方として、すっかり定着しました。ただ、通勤時間の短縮や業務の効率化などのメリットがある一方で、

テレワークに不慣れな社員が、孤独感や閉塞感からストレスを抱える「テレワーク疲れ」

に陥るケースが少なくありません。社会に初めて出る新入社員や、前職がオフィスワークだった中途社員などがそうです。彼らにとって、分からないことをその場で質問しづらい、他の社員と交流しづらいといったテレワーク特有の事情は、ストレスを感じやすいのかもしれません。

せっかく入社した社員がストレスで休職したり、やる気を失って転職したりする事態は避けたいところですが、「今さらオフィスワークには戻したくない」という経営者もいるでしょう。

そこで、この記事では、テレワークのメリットを享受しつつテレワーク疲れを回避するため、

コミュニケーションと環境(制度)づくりの両面から社員をフォローしていくこと

をご提案します。ポイントは、

テレワークだからといって、メンタルヘルスケアの本質が変わるわけではない

という考え方です。個々の部下と向き合って支援していくという、基本的な社員管理を、「テレワークならでは」という点で少し改善すればいいのです。以降で詳しく見ていきましょう。

2 テレワークに合ったコミュニケーションの取り方

1)定期的な1on1ミーティング

テレワークだと、上司は部下の指導に十分な時間が取りにくく、指示も曖昧になりがちです。その状態で、「この仕事をお願い」と部下に任せると、部下は会社から何を求められているのかが分からなくなります。

そこで取り組むとよいのが、オンラインによる定期的な1on1ミーティングです。1on1の場で、

  • 会社の将来に関する方針を伝える
  • 部下に期待する役割や成果をディスカッションする

などして、仕事の意味付けをします。また、オンラインだと部下は上司の「圧」を直接的に感じずに話しやすい面もあるので、これを機会に部下の意見をしっかり聞き、丁寧なフィードバックをすることで信頼関係が高まります。

2)毎朝の情報共有

いくらオンラインでつながっていても、テレワークだとチームとしての一体感を共有しにくいものです。現場に全員が集まって、「頑張ろう!」と声を掛け合うことの効果は大きく、これだけで理念や目標だけではなく、実務のこまごました点も含めて、「やる」という気持ちが共有できていた部分があります。

この状態に少しでも近づけるには、

10分間など短時間でよいので、オンライン上で朝礼を行うことが大切

です。朝礼といっても上意下達で社長が話したり、持ち回りでスピーチをしたりするのではなく、皆が気軽に話せる「情報共有の場」とします。特に営業の新しい動きや足元のプロジェクトの進捗は共有しにくくなるので、そのあたりの情報を持ち寄り、同じ地点に立つのです。

そうした意味では、ビデオはオフでも問題ありません。かつてはビデオオンを強制するケースもありましたが、状況は変わりました。それよりもビジネスの状況を踏まえ、きちんと議論できることが大切です。

また、もし真剣ではない社員がいたら、参加させなくてもよいでしょう。全員参加という悪平等を断ち切ることもリモートでは大切なことです。

3)適度な出社の機会を設ける

中には、出社したほうがONとOFFの切り替えがうまくいく、誰かとコミュニケーションができるといった理由から出社を望む社員もいます。2023年にコロナ禍の規制が解除されて以降、オフィスワークに回帰したり、出社とテレワークを織り交ぜた「ハイブリッド型」に移行したりする会社が増えてきています。

ただ、だからといって、テレワークを全面廃止したり、無理に出社日を設定したりする必要はありません。オフィスを開放し、オフィスと自宅、どちらで仕事をしてもいいことにすればいいだけです。また、個々の社員にヒアリングをした上で1on1ミーティングをオフィスで行ったり、歓送迎会を自由参加で行ったりしてもいいでしょう。

3 リモート疲れを解消する環境(制度)づくり

1)雑談ルームを開設する

テレワークではとにかく雑談が減ります。これまで雑談は無駄な時間だと思われていましたが、なくなって初めて、意外といい息抜きになり、良い関係性を維持する潤滑油になっていたことが分かります。

そこで、オンライン上に雑談ルームを設け、いつでも気軽に話せる場としましょう。もちろん、ビデオのオンオフはどちらでもよく、出入りも自由として入室のハードルを下げます。慣れないうちは、なかなか雑談が始まらないので、経営者や上司から話し掛けましょう。

2)健康管理を促す

テレワーク中は、起床・就寝時間が遅くなったり運動不足になったりと、生活リズムが乱れがちです。テレワークの社員にフレックスタイム制を認めている会社も多いと思いますが、生活のリズムが乱れたままでは、会社が把握していない時間にこっそり残業する社員が出てくるなど、労働時間管理の問題も生じます。

そこで、社員の生活リズムを整え、健康管理を促します。具体的には、毎朝の情報共有の際にオンラインでつないでラジオ体操をしたり、就業時間に中抜けしてウォーキングやランニングをすることを認めたりします。福利厚生の一環として、オンライン上のフィットネス講座の受講料を補助するのもよいでしょう。

3)メンタルヘルスの診断ツールを活用する

軽いテレワーク疲れだと、本人も周囲もメンタルヘルスの不調に気付きにくいものです。しかし、その状態を放置すると大きな問題になる恐れがあります。そこで、ストレスやメンタルヘルスの状態を確認できるツールの導入を検討してもよいでしょう。例えば、幾つかの質問に回答することで、メンタルヘルスの状態を診断するツールなどがあります。また、オンライン上で専門家に悩みを相談できるサービスもあります。

以上(2024年4月更新)

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部下を「うつ病」にしてしまった上司の処分はどこまでが適切か?

書いてあること

  • 主な読者:部下をマネジメントできない上司の処分を検討している経営者
  • 課題:どの程度の処分が妥当なのか分からない
  • 解決策:就業規則に基づき処分する。ただし、上司が処分されるのは「部下をマネジメントできなかったからである」ということを認識する

1 部下をマネジメントできない上司の処分をどうする?

上司の役目は、部下が仕事のルールを守り、心身ともに健康に働けるようきちんとマネジメントすることです。仮に上司が部下のマネジメントを怠り、

  • 部下が過重労働などによりうつ病になってしまった
  • 部下が不祥事を起こしてしまった

などの問題が起きてしまった場合、監督不十分ということで何らかの懲戒処分を検討するのは自然な流れです。

ただ、「どの程度の懲戒処分が妥当か?」というのは難しい判断です。労働契約法では「社員の問題行動に対して重すぎる懲戒処分は無効」とされていて、上司の監督責任についても一般的には、

  • 監督責任を果たせなかったからといって上司を懲戒解雇にすることは困難
  • 部下が不祥事を起こした場合、部下よりも重い処分を上司に科すことも困難

と考えられています。

とはいえ、懲戒処分に消極的になって、マネジメント能力に問題のある上司を放置してしまっては本末転倒です。経営者に求められるのは、

懲戒処分のルールを押さえた上で、「会社の秩序を守るためなら、必要な処分は辞さない」という毅然とした態度を崩さないこと

です。この記事では、部下をうつ病にしてしまうなど、監督責任を果たせない上司の懲戒処分についてまとめています。参考にしていただければ幸いです。

2 まずは就業規則をチェック!

部下をマネジメントできない上司に懲戒処分を科す根拠は、会社の「就業規則」です。具体的には、「監督責任を果たさないこと」を、就業規則の懲戒事由の1つとして定めておく必要があります。例えば、

  • 部下への管理監督、または業務上の指導、指示を怠ったとき
  • 業務上の怠慢、または監督不行き届きにより事故を発生させたとき

といった具合です。普通、就業規則には、懲戒事由の最後に

  • その他前各号に準ずる行為

という規定を設けて、懲戒処分の対象となる行為を広く解釈できるようにするのですが、こうした定め方は社員とのトラブルにつながることもあるので、上のように明確に定めておいたほうが無難です。

以上が懲戒処分を行う上で最初に押さえるべきポイントです。以降は、「部下が過重労働でうつ病になってしまった場合」「部下が不祥事を起こした場合」という具体的なケースについて、懲戒処分のポイントを見ていきましょう。

3 部下が過重労働などによりうつ病になってしまった場合

1)基本的な考え方

部下が過重労働などによりうつ病になってしまった場合、上司の懲戒処分を検討する際のポイントは次の通りです。

  • 上司の指示の仕方に問題はなかったか、部下の心身にどのぐらい影響を与えたか
  • 部下の業務量、業務内容、労働時間を適切に把握していたか
  • 上司が部下の心身の不調を知り、それを防げる状況にあったか
  • 過去の懲戒処分とのバランスはとれているか

上司は、部下に業務について指示をする権限を持っていますが、同時にその負担が重くなりすぎないようマネジメントする責任も負っています。ですから、上司の指示の仕方に問題があった場合、監督責任を問われる可能性が高くなります。

2)事例で考える上司の懲戒処分

1.部下が過重労働になり、うつ病になったケース

部下が過重労働になった場合、上司の指示の仕方などによっては、懲戒処分が認められる可能性があります。

一般的に懲戒解雇は難しいといわれていますが、

上司が「部下が過重労働をしていること」「心身の不調があること」を知りながら、過重な業務を指示しているなど、相当悪質なケースの場合は、懲戒解雇が認められる可能性

があります。

また、上司には部下の労働時間を適正に把握する義務がありますから、例えば「テレワークで管理がしにくい」などは、監督責任を軽くする理由にはなりません。テレワークであれば、上司はウェブ面談や電話を通じて、部下の仕事の状況を把握する必要があります。

2.上司の指示がパワハラになり、それがもとで部下がうつ病になったケース

上司に悪意がなくても、指導の仕方に問題(暴言を吐く、大勢の前で長時間叱るなど)がある場合、パワハラ(パワーハラスメント)になることがあります。

一般的にパワハラの懲戒処分に関しては、

初犯の場合、懲戒解雇のような重い処分は認められにくく、通常は降格処分が限界

と考えられています。懲戒解雇クラスの処分が認められるのは、

  • 過去にパワハラを理由に懲戒処分を受けた上司が、その後も執拗なパワハラを続けていて、今後も改善される見込みがないといったケース
  • 初犯であっても暴行に及ぶようなハラスメントが長期間継続され組織秩序を大きく害したケース

など、悪質な場合に限られるでしょう。

こうしたケースでは、懲戒処分に固執せず、上司としての資質を欠いているとして、人事評価を引き下げるなどの人事上の処遇で対応することも検討するとよいでしょう。

4 部下が不祥事を起こした場合

1)基本的な考え方

部下が不祥事を起こした場合、上司の懲戒処分を検討する際のポイントは次の通りです。

  • 部下の行為が会社にどのぐらいの損害を与えたか
  • 上司が部下の不正行為を知り、それを防げる状況にあったか
  • 過去の懲戒処分とのバランスはとれているか

また、上司の監督責任が問われる具体的なケースとしては、次のようなものが考えられます。

  • 部下が横領などの犯罪行為をした
  • 部下がハラスメントをした

部下の犯罪行為について、上司の監督責任を問うことは可能です。ただし、上司に懲戒処分を科す理由は、あくまで「監督責任を怠った」からです。例えば、部下が巧妙に犯罪を隠して、簡単には気付けないようなケースでは、上司の監督責任を問うことは難しいでしょう。

2)事例で考える上司に対する懲戒処分の内容

1.部下が横領などの犯罪行為をしたケース

横領などの重大な犯罪行為の場合、部下本人については懲戒解雇が認められるケースが多いです。ただ、それに引きずられて上司に対しても同じような重い処分を科すのは問題です。

部下の横領と上司の「監督責任」は別の問題であり、一般的に部下に対する処分よりも軽い処分が相当

とされているからです。つまり、懲戒解雇が認められるケースはほとんどありません。

上司に対する懲戒解雇が認められるケースは、上司が部下の犯罪行為を知っていた、または容易に知り阻止できる状況にあったのに、その対応を怠った場合などに限定されるでしょう。

2.部下がハラスメントをしたケース

会社にはパワハラやセクハラ(セクシャルハラスメント)を防止する義務がありますから、ハラスメントをした部下とその上司については、厳正に対処する必要があります。一方、この場合も、

上司に対する懲戒処分は、部下に対する処分よりも軽くするのが相当

とされているので、実際にはけん責などの軽度の処分に落ち着くケースが多いでしょう。

ただ、ハラスメントを防げなかった点は、上司の資質にかかわる問題なので、懲戒処分にこだわらず、人事上の処遇によって降格などを行うことについては検討の余地があります。

ハラスメントの事案でしばしば見られるのは、上司が責任を負うのを恐れ、部下からハラスメントの申告を受けているのにうやむやにしたり、杜撰(ずさん)な対応をしたりして、強引に解決したかのように扱ってしまうケースです。被害者は、ハラスメント行為そのものだけでなく、こうした上司の対応によってもひどく傷付けられます。

こうした上司による「もみ消し」を防ぐためにも、会社としてハラスメントの相談窓口を設置し、社内に周知しておくことが重要です。

5 社員の不祥事に対する役員の責任は?

最後に、課長や部長が不祥事を起こした場合等に、その担当役員(取締役)に懲戒処分を科すことはできるかを検討していきます。結論から言うと、

就業規則は「社員」に対して適用されるため、役員に懲戒処分を科すことは不可

です。

とはいえ、役員は「善管注意義務」として、不祥事の防止に加え、不祥事が生じない組織体制を構築する義務を負っています。ですから、こうした義務を怠って会社に損害を生じさせた場合については、担当役員に損害賠償を請求することが可能です。

また、会社法では、役員はいつでも株主総会決議で解任することができます。正当な理由のない解任を行った場合には、残任期間の報酬に相当する額などを支払う必要がありますが、会社の不祥事等の防止を怠り、善管注意義務を果たしていないといえるような場合には、「正当な理由」があると判断される可能性があります。

なお、よく大企業の不祥事で役員の給与が減給とされる例がありますが、たとえ株主総会決議で減給の決議がされたとしても、その役員が合意しなければ減給とすることはできないので注意しましょう。

以上(2024年4月更新)
(執筆 日比谷タックス&ロー弁護士法人 弁護士 堀田陽平)

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「修繕引当金」「特別修繕引当金」の会計処理ルールと金額の目安について

書いてあること

  • 主な読者:自社ビルや工場、商用ビルなどを所有する中小企業の経営者
  • 課題:「修繕引当金」「特別修繕引当金」の会計処理のルールや金額の目安を知りたい
  • 解決策:引当金の時点では、損金に算入できない。損金に算入できるのは、「修繕」を行った事業年度のみである点に注意する。金額の目安については、実際の工事の見積もりや不動産会社の公表しているデータなどを参考にする

1 不動産の修繕に必要な「修繕引当金」「特別修繕引当金」

自社ビルや工場、商用ビルなどを所有する会社は、建物の状態を保つために修繕が必要です。特に数年に1度の大規模修繕などは費用が高額になるため、修繕を行った事業年度だけに修繕費用の全額を計上するのではなく、大規模修繕に備えて毎年費用をコツコツ計上しておくことが、正確な利益計算をする上で重要になります。

そこで利用する勘定科目が、「修繕引当金」と「特別修繕引当金」です。これらの勘定科目を利用することで、将来発生する修繕や大規模修繕に備えた利益計算や資産管理ができます。ただし、経営者や担当者の中には、修繕引当金と特別修繕引当金のルールや計上方法が分からない人もいるかもしれません。

この記事では、修繕引当金と特別修繕引当金の会計処理のルールや、いくら計上すればいいかの目安を紹介します。

2 会計処理のルール

1)そもそも「修繕引当金」「特別修繕引当金」とは?

「修繕引当金」「特別修繕引当金」は、名前は似ていますが用途が異なります。それぞれの概要は次の通りです。

  • 修繕引当金:毎年行う定期修繕が予算の制約や工事スケジュールの遅れなどの何かしらの理由で、事業年度内に実施できなかった場合に計上するもの
  • 特別修繕引当金:数年に1度の大規模修繕に備えて各事業年度に分割して計上するもの

修繕引当金が必要に応じて計上されるのに対し、特別修繕引当金は数年に1度の大規模修繕に備えて基本的には各事業年度に分割して計上します。例えば、1000万円かかる大規模修繕を5年に1度行う場合、1~4年目は毎年200万円の特別修繕引当金を計上するといった具合です。

2)修繕引当金と特別修繕引当金は損金に算入できない

修繕引当金と特別修繕引当金は、

いずれも会計上は「費用」になりますが、税金計算上では損金に算入できません。

つまり、決算書上には記載されますが、確定申告書上では損金としない調整(損金不算入)をします。会計上で計上した引当金の繰入額が損金に算入できるのは、実際に修繕を行った事業年度のみとなります。

3)それぞれの引当金の計上時の会計処理

1.修繕引当金

まずは、修繕引当金の仕訳を確認します。毎年定期的に行っている自社ビルの定期修繕(費用30万円)が、諸事情によって翌事業年度に行われることになった場合の仕訳は次の通りです。修繕引当金に相対する勘定科目は「修繕引当金繰入」となります。修繕引当金を負債勘定、修繕引当金繰入を費用勘定として仕訳します。

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実際に翌事業年度に定期修繕を行った場合の仕訳は次の通りです。前期で負債勘定として計上した修繕引当金を相殺する仕訳を行います。貸方科目は、支払方法に応じて適宜変更してください。

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2.特別修繕引当金

次は、特別修繕引当金の仕訳です。5年に1度、自社ビルの大規模修繕(費用3000万円)を行う場合の1~4年目の仕訳は次の通りです。3000万円を5年間で分割し、各事業年度に600万円ずつ計上、特別修繕引当金を負債勘定、特別修繕引当金繰入を費用勘定として仕訳します。

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また、大規模修繕を実際に行った5年目の仕訳は次の通りです。4年間積み上げた特別修繕引当金を相殺します。5年目分の600万円は修繕費として計上しましょう。

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3 設定金額の目安

修繕引当金は、毎年行っている定期修繕が事業年度内に実施されなかった場合に計上するため、計上金額は本来行うはずだった定期修繕にかかる費用です。従って、過去に行った定期修繕費用の平均値などから設定金額を計算します。

特別修繕引当金は、大規模修繕に備えて計上するため、「大規模修繕にかかる費用(見積額)÷大規模修繕の周期(年数)」が、毎年計上するべき金額になります。大規模修繕の費用や頻度は、建物の形状や規模、立地、設備の仕様などによって変わりますから、建物ごとに設定金額を計算します。

以降に大規模修繕の費用と頻度の参考資料等を示しますが、最終的な設定は、公認会計士などの専門家に相談してから決めるようにしてください。

1)不動産会社の調査データより

不動産売買や仲介業などを展開している株式会社ボルテックス(東京都千代田区)によると、自社ビルの一般的な修繕サイクルと費用の目安は次の通りです。

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同社によると、ビルの大規模修繕工事にかかる費用は、建物の規模や築年数によって異なるものの、2000万~3000万円程度が相場とのことです。

また、マンションでは、大規模修繕工事の周期を12年として、長期修繕計画が組まれていることが多いですが、オフィス用のビルについても、外壁や防水など建物の性能に関わる点は、ほぼ同じ程度で計算されるとのことです。

2)国土交通省の調査データより

国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、マンションの大規模修繕工事の実施時期は次の通りです。

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マンションの大規模修繕工事の工事金額は次の通りです。

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また、床面積(1平方メートル)当たり工事金額は次の通りです。

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以上(2024年3月作成)
(監修:税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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高齢社員の働き方改革 「自分はまだ若い!」と思っている社員が労災に遭わないようにするには?

書いてあること

  • 主な読者:高齢社員を雇用しているので、その労働災害が心配な経営者
  • 課題:具体的にどう対策すればよいのかが分からない
  • 解決策:加齢による身体機能の変化を、客観的に高齢社員に気付いてもらうことが第一歩

1 休業4日以上の労災は60歳以上が28.7%

人材不足の日本では高齢社員に頼る部分がますます大きくなっていきますが、問題は若年社員よりも労働災害(労災)に遭いやすいことです。2022年に発生した労災によって4日以上休まなければならない死傷者数は、60歳以上が3万4928人(全体の28.7%)と最多です。

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人間は加齢とともに身体機能が低下していくので、高齢者員を多く抱える会社ほど、労災のリスクが高まります。具体的な対策のポイントは、

  • 身体機能の中で、特に低下しやすいものを押さえる(平衡機能、聴力など)
  • 高齢社員に「労災に遭う危険がある」と気付かせる(健康診断、体力テストなど)
  • 身体機能に配慮し、高齢社員の働き方改革を図る(役割分担、労働時間など)

です。以降でそれぞれ紹介するので、確認していきましょう。

2 身体機能の中で、特に低下しやすいものを押さえる

まずは、加齢とともに身体機能がどの程度低下するのかを押さえましょう。図表2は、20~24歳ないし最高期の身体機能を100とした場合の、55~59歳における各種機能の水準です。赤字の身体機能は、水準が50未満に低下しているもので、特に注意が必要です。

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赤字の機能に注目した場合、業務では次のような問題が生じることが考えられます。

  • 夜勤後体重回復:夜勤で減少した体重が回復しにくく、疲れやだるさを感じる
  • 平衡機能:直立姿勢時の重心動揺が大きくなり、転倒しやすくなる
  • 皮膚振動覚:振動に対する感覚が鈍化し、機械の異常などに気付きにくくなる
  • 聴力:騒音時の声などが聞こえにくく、「危ない」と言われても気付かない
  • 薄明順応:暗い場所で作業をしようとしても、目が慣れず、物が見えにくい

3 高齢社員に「労災に遭う危険がある」と気付かせる

高齢社員の中には「自分はまだ若い!」と思っていて、体の衰えを自覚していない人が少なくありません。ですから、高齢社員に対し「労災に遭う危険がある」と気付かせることが大切です。次のような点がポイントです。

1)就業規則などに盛り込み、経営者の姿勢を示す

就業規則(本則や安全衛生管理規程など)に高齢社員の労災防止に関する事項を定めます。安全委員会や衛生委員会の設置義務がある会社なら、委員会の調査審議事項に盛り込むのもよいでしょう。何より大切なのは、

経営者が本気で高齢社員の労災防止に取り組もうとしていると、社内に周知すること

です。こうして高齢社員が健康を意識するようになると、自分の状態などについて相談したくなるかもしれないので、「相談窓口」などを設置するとさらに効果的です。

2)健康診断を実施する

高齢社員の健康状態は、毎年実施する定期健康診断である程度把握できます。パート等(週の所定労働時間が正社員の4分の3未満の社員)については、定期健康診断の実施義務はありませんが、高齢のパート等が多いなら、対象に含めるのが望ましいです。定期健康診断では、

聴力、自覚症状や他覚症状(所見)の有無などが確認できますし、健診機関によっては「平衡機能検査」などのオプション検査も実施

します。高齢社員も今の健康状態が分かれば、無理をせず慎重に行動するようになるでしょう。

3)体力テストを実施する

高齢社員が自らの状態を正しく把握するために、体力テストを実施するのもよいでしょう。 例えば、ある製鉄会社では体力低下を早期に認識し、改善を促すためのスクリーニングテストを行っています。スクリーニングテストでは、

  • 転倒リスクを確かめるためのバランス歩行や片足立ち上がり
  • 腰痛リスクを確かめるための上体起こしや体前屈

などを実施し、結果を5段階で評価します。結果が良くない社員には、どのような運動が必要かなどのアドバイスも行っています。

4 身体機能に配慮し、高齢社員の働き方改革を図る

高齢社員に気付きを促すといっても、本人の努力だけで労災をゼロにするのは困難です。健康診断の結果などから高齢社員の傾向をつかんで、会社側でも労働条件を工夫し、労災が起きにくい環境を整えることが大切です。次のような点がポイントです。

1)社内設備を変える

高齢社員が働きやすいよう、社内設備の改善をしていきます。例えば、転倒を防ぐなら、転びやすい場所に手すりを設置する、暗くて作業がしにくい場所の照明を増やすといった具合です。

2)役割分担を変える

人手不足の会社などでは、高齢社員も多くの業務を担当せざるを得ませんが、労災リスクの高い業務については、部分的に若手に任せることを検討してみましょう。例えば、運送業の会社で、高齢社員が梱包・運搬・開梱の全てを担当している場合、

高齢社員は、梱包と開梱だけに専念してもらい、運搬は若手社員に任せる

などして、転倒や腰痛などのリスクを低減します。役割変更が難しい場合は、高齢社員にアシストスーツの着用を義務付けるなどして、身体への負担軽減を図りましょう。

3)労働時間を変える

高齢社員の身体機能を考慮して、労働時間を工夫することも大切です。例えば、疲れが取れにくいという高齢社員の場合、

夜勤はやめて日中の短い時間に勤務する(高齢社員が複数いる場合はシフト制にする)

などすれば、労災対策になるでしょう。

4)雇用の仕方に注目する

高齢社員を継続雇用する場合、1年ごとなどに労働契約を更新するのが一般的です。もし、健康状態を考慮して雇用継続が難しいという判断になったのなら、「雇止め(労働契約を更新しない)」という選択もやむを得ません。ただし、雇止めにはルールがあるので、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」などに注意しましょう。また、フリーランスのように、雇用以外の方法で、高齢社員が自分のペースで働ける選択肢を用意しておくのも1つの手です。

以上(2024年3月更新)

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うつ病から復職できない社員を退職させざるを得ない場合の「愛」ある対応とは?

書いてあること

  • 主な読者:社員が休職中で、かつ復職が難しい場合の対応を知りたい経営者
  • 課題:社員に退職の話をするのはつらいが、曖昧な対応でトラブルが起きるのも困る
  • 解決策:「社員の健康」を第一に考えつつ本人の心情にも寄り添う。「休職期間満了通知書(兼合意書)」で認識を合わせる

1 休職中の社員がそのまま退職するケースは珍しくない

「休職(私傷病休職)」とは、社員が私傷病(仕事以外の理由によるケガや病気)で働けない場合、労働契約を維持したまま、労働の義務を一定期間免除する制度です。

就業規則で定めた休職期間が満了するまでに、

  • 社員が働ける状態まで回復したら、復職(元の業務か、もっと軽い業務に復帰させる)
  • 回復しなければ、退職(休職期間の満了とともに、労働契約が自動的に終了する)

となるのが一般的です(なお、休職期間の満了による退職は、通常「自然退職」と呼ばれます)。理想は社員が復職することですが、うつ病などの場合、状況によって治療にかかる時間に幅があり、症状が回復せず退職に至るケースも珍しくありません。

経営者や労務担当者にとって、苦しい状況にある社員に退職の話を切り出すのは、とてもつらいことです。かといって、曖昧な対応をすると、休職期間が満了して退職となったときに、社員が「そんな話は聞いていない!」と言い出してトラブルになる恐れがあります。

この記事では、休職中に社員の症状が回復せず、いよいよ退職を考えざるを得なくなった場合の対応のポイントとして、次の2つを紹介します。

  1. 「社員の健康」を第一に考えつつ本人の心情にも寄り添う
  2. 「休職期間満了通知書(兼合意書)」で認識を合わせる

2 「社員の健康」を第一に考えつつ本人の心情にも寄り添う

1)復職させることが、必ずしも社員のためになるとは限らない

休職は法律で定められた制度ではなく、会社がそれぞれの就業規則に基づいて運用しますが、

  1. 社員が休職要件(一定日数の欠勤など)に該当したら、休職命令を出す(休職開始)
  2. 休職期間の満了が近づいてきたら、復職の可否を判断し、社員に伝える
  3. 休職期間の満了とともに(またはその前に)、社員が復職または退職する(休職終了)

という流れは、基本的にどの会社でも同じです。

社員が退職するケースにおいて、2.は経営者や労務担当者にとって特につらいものです。苦しい状況にある社員に退職の話は切り出しにくいですし、経営者や労務担当者にも「社員が復職を望んでいるなら、できる限りその気持ちに応えたい」という思いがあります。

ですが、うつ病などのように完治の判断が難しい病気の場合、

復職を急ぎすぎたせいで、回復しつつあった症状が再び悪化してしまうケース

は珍しくなく、その場合、社員は余計に苦しむことになります。ですから、復職の可否は

会社が第一に守るべきは「社員の健康」である

ということを念頭に置いて、努めて冷静に判断しなければなりません。

2)休職中、社員とじっくり話す機会を設けることが大切

社員の健康を第一に考えると言っても、会社側の主観で「復職できない」と決めつけるのはNGです。社員の体調や治療の状況など必要な情報を集めた上で判断しなければなりません。

また、仮に「復職できない」という判断が妥当だとしても、突然退職を切り出されたら社員は動揺しますし、場合によっては会社に反発してきます。ただでさえ、私傷病でつらい状況にあるわけですから、コミュニケーションには配慮が必要です。

復職の可否を判断するのに必要な情報を集めつつ、社員の心情に寄り添うには、休職中、社員とじっくり話す機会を設けることが大切です。具体的には、

休職開始からある程度時間がたったタイミングで、電話やオンラインでの面談を実施

します。時間とともに社員の状況が変化する可能性があるので、社員の体調にもよりますが、できれば「休職開始から1カ月ごと」など目安を決めて、複数回実施するのが望ましいです。

面談の主な目的は、

  1. 復職の可否を判断するのに必要な情報を集める
  2. 不安を感じたり自分を責めたりしてしまう社員の心情に寄り添う
  3. 休職について、会社と社員との間で認識のギャップがないかを確認する

の3つです。これらの目的を意識し、会社から社員に聞くこと、会社から社員に伝えることを事前に整理した上で面談に臨みましょう。具体例は次の通りです。

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面談の際は、社員の体調に配慮してあらかじめ時間を区切り、時間内に聞けなかったことは、次の機会にヒアリングします。また、うつ病などの場合、社員の話すスピードや会社側が言ったことに対するリアクションが遅くなる場合がありますが、そこは社員のペースに合わせるようにします。なお、面談時の社員の様子も、復職の可否を判断する大切な要素のひとつです。

3)復職の可否は明確に伝える。ただし、社員への感謝も忘れない

休職中の面談で社員の状況を把握したら、休職期間の満了前に社員から主治医の診断書を提出してもらい、復職の可否を判断します。ただし、社員の主治医が仕事内容を詳しく把握していないケースもあるため、場合によっては会社指定の医療機関などに協力を仰ぎます(このあたりは就業規則で明確に定めておく必要があります)。

復職の可否について判断したら、電話やオンラインで結果を社員に通知します。復職できると判断した場合、それを社員に伝えた上で、職場に復帰する時期や復職後の業務、勤務形態などについてすり合わせをしていきます。一方、復職できないと判断した場合、どのように社員に伝えるかが悩ましいですが、曖昧な言い方をするとかえってトラブルになる恐れがあるので、

  • 社員が復職可能な状態まで回復したとは認められないと判断したこと
  • 社員が休職期間の満了とともに退職となること

などを明確に伝えるようにします。

社員によっては会社を辞めたくなくて「私はもう大丈夫です、働けます」と食い下がってくる人もいますが、主治医の診断書なども踏まえた上での判断ですから、

「復職を急いで症状を悪化させたくない、あなたの健康を第一に考えた結果だ」

などと伝え、会社の決定を安易に曲げることはしないようにします。

逆に、退職を受け入れつつ「会社に迷惑ばかりかけてしまい、申し訳ありません」と謝罪してくる人もいますが、社員に落ち度はありませんし、会社にとっても不本意な退職ですから、

「在職中、社員がいてくれてどれだけ助かったか」など、社員への感謝

を精一杯伝え、誠実な態度を示して社員と別れるようにします。

3 「休職期間満了通知書(兼合意書)」で認識を合わせる

1)書面を交わしておくと、「言った」「言わない」のトラブルが起きにくい

社員と慎重に対話すれば、休職に関するトラブルをある程度防ぐことができますが、口頭でのやり取りだけでは、お互いに誤解が生じたり、重要なことを聞き漏らしたりするリスクがあります。よりトラブル防止に重きを置いた対応をするのであれば、

会社と社員との間で「休職期間満了通知書(兼合意書)」を交わすこと

をお勧めします。

休職期間満了通知書(兼合意書)とは、休職期間が満了する前に、社員に対して

  • 社員が復職可能な状態まで回復したとは認められないと判断したこと
  • 社員が休職期間の満了とともに退職となること

などを通知する書面です。復職の可否については前述したように口頭でも社員に通知しますが、併せて書面も交わすことで、「言った」「言わない」のトラブルが起きにくくなります。

また、社員が雇用保険の被保険者の場合、休職期間の満了により退職した際に、その旨を所轄ハローワークに届け出る必要がありますが、この際、退職理由を証明する添付書類として休職期間満了通知書(兼合意書)を活用できます。

2)退職について社員が合意する署名欄を設けておくと安心

休職期間満了通知書の書式は任意ですが、次のように退職について社員が合意する署名欄を設けておくと、トラブル防止に役立ちます。なお、ここでは割愛していますが、実際は「就業規則の休職に関する条文」「休職期間の計算方法」などを別紙として添付するのが望ましいです。

 

〇年〇月〇日

休職期間満了通知書 兼 合意書

〇〇〇〇 様

株式会社〇〇〇〇    

代表取締役 〇〇〇〇 印

 

 

あなたは、病気療養のため、当社就業規則第〇条の規定により、〇年〇月〇日より休職されていますが、〇年〇月〇日をもって本休職期間が満了となります。

当社は、電話および面談(オンライン)でのあなたの様子、医師の診断書などを基に、慎重に復職の可否を検討して参りましたが、最終的に、復職可能な状態まで回復したと認めることはできないと判断しました。

つきましては、当社就業規則第◯条の規定により、あなたは本休職期間が満了する〇年〇月〇日をもって退職となりますので、本書をもって通知します。

あなたの一日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。

以上

———————————————————————————————————–

株式会社〇〇〇〇    

代表取締役 〇〇〇〇 殿

 

上記の内容について承知しました。〇年〇月〇日をもって退職となることに合意します。

〇年〇月〇日

氏名 〇〇〇〇 印

4 その他、休職期間の満了に当たって押さえるべきこと

1)傷病手当金や基本手当の手続きは迅速に行う

社員が休職期間の満了とともに退職する場合、私傷病の状況によっては、退職後もしばらく働けない可能性があります。仮に社員が健康保険や雇用保険の給付の受給資格を持っているのであれば、支給が滞らないよう、給付に関する会社側の手続きを迅速に行うことが大切です。

例えば、退職時に健康保険の被保険者だった社員が一定の要件を満たす場合、

退職後も健康保険から傷病手当金が支給

されます。支給額はおおむね在職中の賃金の3分の2で、支給期間は同じ傷病について最初に傷病手当金を受けた日から通算1年6カ月間です。会社は所定の申請書について、勤務状況や賃金の支払い状況などの証明をし、その他必要な事項(振込先や療養担当者の意見)を社員やその主治医に記入してもらった上で、保険者(全国健康保険協会など)に送付する必要があります。

また、退職時に雇用保険の被保険者だった社員が一定の要件を満たす場合、

退職後、就職活動をしている間、雇用保険から基本手当が支給

されます。支給額はおおむね在職中の賃金の45~80%で、支給期間は退職日の翌日から原則1年間です(正確には、そのうち失業中で就職活動をしている期間)。ただし、私傷病などですぐに働けない場合、最大3年間の延長が可能です。会社は所定の離職証明書を、所轄ハローワークに提出して離職票の交付を受け、社員に送付する必要があります。

2)場合によってはフリーランスとして働いてもらうことを検討する

ここまで、社員に配慮しつつトラブルなく別れることを前提に話をしてきましたが、経営者や労務担当者の中には「このまま別れるのはつらい、何とか一緒に働く道を残したい」と考える人もいるはずです。こうした場合、社員が退職した後に、

業務委託契約を結んでフリーランスとして働いてもらう

という手があります。もちろん、症状が回復してからという前提ですが、決められた就業時間の中で働く社員と違い、フリーランスは自分で働く時間をコントロールできますし、会社も必要なときだけ仕事を依頼できるので、お互いに無理をせず仕事ができる可能性があります。

一方、自由な働き方である分、自分で自分を管理できない人はフリーランスに向きません。

  • 会社から逐一指示を受けなくても、自分で仕事の筋道を立てられるか?
  • 仕事のスケジュールやお金の管理などにルーズでないか?
  • 発破をかけられなくても、自分で努力し、成長していく意欲があるか?

などを検討した上で、フリーランスとしての働き方を打診するかを決めましょう。

ただし、社員の症状が回復していない状況でいきなりフリーランスの話を持ちかけると、かえってプレッシャーを与えてしまう恐れがあります。まずは退職後の連絡方法だけ確保しておき、退職からある程度時間がたってから連絡を取るなどの配慮が必要です。

以上(2024年4月更新)
(監修 みらい総合法律事務所 弁護士 田畠宏一)

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画像:shironagasukujira-Adobe Stock

現タカラトミーの創業者・富山栄市郎氏。逆境のおもちゃ会社が100年企業となった理由が分かる一言とは?

市場は変わるぞ。次の一手が大事だぞ。ヒットのあとには必ず停滞がやってくる。気を引き締めろ

富山栄市郎(とみやまえいいちろう)氏は、今から100年前の1924年に、21歳の若さで富山玩具製作所(現タカラトミー)を創業し、おもちゃ業界全体の発展に貢献した人物です。少年時代からおもちゃを作る玩具製作所で働いていた富山氏は、そこでモノ作りの楽しさを知り、いつか自分の手でおもちゃを作りたいと考えるようになります。そうして立ち上げたのが富山玩具製作所です。富山氏は斬新なおもちゃを次々に生み出し、おもちゃ業界をけん引していきますが、事業を支えたのはその発想力だけではありませんでした。

冒頭の言葉は、戦後に富山玩具製作所が富山商事と名を改め、「スカイピンポン」というおもちゃを売り出した頃、富山氏が社員たちに言い聞かせた言葉です。スカイピンポンは、ラケットの中にあるバネを使ってピンポン球のキャッチボールを楽しめるプラスチック製のおもちゃです。ブリキ人形などの金属製のおもちゃが主流だった時代に、プラスチック製のおもちゃを作るという発想は斬新で、スカイピンポンはたちまち人気になります。しかし、富山氏はその人気に甘んじることを良しとしませんでした。彼はそれまでの経験から、1つの成功が長くは続かないことを知っていたからです。

富山玩具製作所を立ち上げて間もない頃、富山氏は外国の飛行機をモデルにおもちゃを作り注目を集めますが、やがて昭和恐慌、さらには第二次世界対戦が始まり、おもちゃ作り自体を続けることが難しくなります。戦後、やっとの思いで事業を再開した際も、戦闘機のおもちゃで子どもたちの心をつかみ会社を立て直しますが、工場の火災や戦闘機ブームの停滞などで再び窮地に立たされます。何度も辛酸をなめ、時には人員整理という苦渋の決断を迫られてきた富山氏は、もう同じことを繰り返すまいと心に誓っていたのです。

富山氏は、スカイピンポンと並行して、目玉商品となる別のおもちゃ作りに取り組みます。それは、家の中でプラスチック製のレールをつなぎ合わせ、電車を走らせて遊ぶ「プラレール」。現代でもなお、子どもたちから愛されているおもちゃです。スカイピンポンでプラスチック製のおもちゃの存在を世に知らしめて市場を変え、そこに別のおもちゃを投入する。このように、成功を収めても油断せず「次の一手」を打ち続けることで、富山氏は会社を大きくしていったのです。

会社経営は、よくマラソンに例えられます。事業目標は、マラソンの途中にある道標(みちしるべ)であり、何か大きな成功を収めて目標を達成すれば、「道標を通過した」ということができます。ただ、それはゴールではありません。経営者が夢を見続ける限り、マラソンは続きます。一時の成功を喜ぶのはいいですが、そこに満足して足を止めてしまったら、それ以上先には行けません。大切なのは、足を動かし続けること。それが成功の後に繰り出す「次の一手」なのです。

出典:「社史『軌跡~夢をカタチに~』」(タカラトミーウェブサイト)

以上(2024年3月作成)

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