書いてあること
- 主な読者:「お給料」の計算の仕組みについて知りたい新入社員
- 課題:お給料が振り込まれたけれど、入社前に言われていた金額よりも少ないのはなぜ?
- 解決策:給与明細を確認する。社会保険料や税金などお給料から天引きされるものがある
今日はうれしい給料日。推しのグッズを買おう!! しかし、前から気になっていたのだけど、お給料から結構な金額が引かれている。「健康保険料」とか「所得税」とか。ちょっと損をしている気分だけど、会社がやってくれていることだから特に気にしなくてもいいよね?
1 給与明細を見るとお給料の支払いの流れが分かる
お給料は皆さんが頑張った証し。とてもうれしいものですよね。ところで、皆さんは「給与明細」に書かれている内容をきちんと理解していますか? 例えば、「控除」はお給料から引かれる金額ですが、「そういうものなんでしょ?」と、何も調べないままスルーしていませんか? 控除は一定のルールに基づいて行われていて、皆さんの生活にも影響します。また、会社だってお給料の計算を間違えることがあるので、基本的な仕組みは知っておかないといけません。
多くの会社では、正社員のお給料を「日給月給制」という方法で計算しています。日給月給制とは、
1カ月単位でお給料を計算し、欠勤や遅刻・早退があればその分を差し引く
というものです。この場合、一般的な給与明細のイメージは次の通りです。
細かい項目は会社ごとに違いますが、日給月給制の給与明細には「勤怠」「支給額」「控除額」という3つの欄があります。これは、会社が毎月のお給料を、
- 勤怠(1カ月の出勤状況)に基づいて、
- 支給額(お給料の全額)を計算した上で、
- 控除額(社会保険料や税金など、皆さんの生活のために使われるお金)を天引きして
支払っているからです。
早速、各欄の数字を見る際のポイントを確認していきましょう。皆さん自身の給与明細を手元に置きながらチェックしてみてください。
2 【勤怠】に書かれていること
「勤怠」の欄に記載される一般的な項目は次の通りです。
- 出勤日数:皆さんが実際に働いた日数
- 時間外勤務(残業):皆さんが1日8時間、1週40時間(原則)を超えて働いた時間数
- 時間外勤務(深夜):皆さんが22時から翌日5時(原則)の間に働いた時間数
- 時間外勤務(休日):皆さんが法定休日(日曜日の場合が多い)に働いた時間数
- 有休日数:皆さんが年次有給休暇(有休)を取って会社を休んだ日数。お給料が出る
- 欠勤日数:皆さんが有休などを取らずに会社を休んだ日数。お給料が出ない
- 遅刻・早退時間:皆さんが遅刻や早退をした時間。お給料が出ない
時間外勤務(残業、深夜、休日)をすると、その時間数に応じた金額がお給料にプラスされます。一方、欠勤や遅刻・早退があると、欠勤日数や遅刻・早退時間に応じた金額が、お給料から引かれます。ただし、有休はお給料が引かれません。
ちなみに、欠勤や遅刻・早退をしても、その分のお給料が引かれないパターンもあり、これを「完全月給制」といいます。
3 【支給額】に書かれていること
「支給額」の欄に記載される一般的な項目は次の通りです。
- 基本給:基本となる給料。手当などは含まれない
- 役職手当:役職(部長や課長など)に応じて支給される手当
- 家族手当:配偶者や子供の人数などに応じて支給される手当
- 住宅手当:住宅の家賃などに応じて支給される手当
- 通勤手当:電車の定期代などに応じて支給される手当
- 時間外手当:時間外勤務(残業、深夜、休日)に応じて支給される手当
- 欠勤控除:欠勤日数に応じて引かれるお給料。欠勤がなければ引かれない
- 遅刻・早退控除:遅刻・早退時間に応じて引かれる給料
基本給は毎月もらえます。手当(時間外手当を除く)も条件を満たせば、毎月もらえます。手当の種類やもらうための条件は会社によって違うので、先輩に確認してみてください。
4 【控除額】に書かれていること
「控除額」の欄に記載される一般的な項目としては、
- 社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料)
- 税金(所得税、住民税)
- 生命保険料など(生命保険料、社宅や寮の費用、財形貯蓄、労働組合の組合費など)
があります。これらは、毎月、皆さんの給料から天引きされますが、負担したお金はどれも皆さんの生活のために使われます。
1.社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料)
毎月負担する代わりに、医療費の補助、高齢になってからの年金や福祉サービス、失業時の給付などを受けられます(介護保険料は40歳になってから負担)。
毎月のお給料からは、次の保険料が控除されます。なお、各計算式の%の部分(保険料率)は、いずれも2023年度のもので定期的に改定されます。また、健康保険料と介護保険料については、「全国健康保険協会(協会けんぽ)」という公法人の保険に加入するのが一般的なので、その東京支部の計算方法を記載しています(都道府県ごとに保険料率が異なる)。
- 健康保険料:毎月のお給料×10%×1/2
- 厚生年金保険料:毎月のお給料×18.3%×1/2
- 介護保険料(40歳になってから):毎月のお給料×1.82%×1/2
- 雇用保険料:毎月のお給料×0.6%(農林水産・清酒製造、建設の事業は0.7%)
ちなみに、上の計算式では分かりやすく「毎月のお給料」と記載していますが、厳密に言うと健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料については、お給料を一定の金額幅で区分した「標準報酬月額」というものをベースに保険料を計算します。
2.税金(所得税、住民税)
毎月負担する代わりに、国や地方自治体がそのお金を、公園や道路など公共インフラの整備、医療、年金、福祉などに還元します。
毎月のお給料からは、次の税金が控除されます。ただし、住民税は、前年の1月から12月に一定以上の収入がある人が対象なので、新入社員(新卒)の場合、入社した年は0円になるのが一般的です(入社2年目から天引きが開始)。
- 所得税:毎月のお給料(社会保険料を控除した額)や扶養親族の数に応じた税額
- 住民税:前年の所得(収入から必要経費を控除した金額)に課される「所得割額」と、一定の所得がある人全員に均等に課される「均等割額」を合算した税額
ちなみに、所得税については、毎月のお給料から天引きされるのは「見込み額」で、実際の納付額は、毎年12月に行う「年末調整」という作業で受けられる控除を調整した上で確定します。例えば、その年に払い込んだ生命保険料などを申告すると、天引きされた所得税の一部が「還付」として戻ってくることがあります。
3.生命保険料など(生命保険料、社宅や寮の費用、財形貯蓄、労働組合の組合費など)
毎月負担する代わりに、団体加入の生命保険など、会社が独自に設定しているサービスを受けられます。
毎月のお給料からは、あらかじめ契約などに基づいて決められた金額が天引きされます。
ちなみに、社会保険料や税金は、「法定控除」といって法令で天引きが認められていますが、生命保険料などのように会社が独自に設けた項目は、「法定外控除」といって会社が労働組合(あるいは社員の代表)と「労使協定」という書面を交わして天引きします。
以上(2024年12月更新)
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画像:Mariko Mitsuda