【健康経営】健康診断で「異常」の所見があったらどうする?

1 健康診断は「異常」が発見されてからが本番!

会社は労働安全衛生法などに基づき、法定の健康診断(定期健康診断など)を実施する義務があります。ただ、これで終わりではなく、「異常」の所見があった社員について、

医師等(医師または歯科医師)の意見を聴き、必要に応じて労働時間の短縮や配置転換などをしなければならない

ことをご存知でしょうか。この義務には罰則がなく、「健康診断の後は社員の責任」という勘違いもあってか、

  • 健康診断の結果を確認していない
  • 「異常」の所見があった社員に、病院に行くよう忠告するだけで終わっている

など、健康診断がやりっ放しになりがちです。

健康診断は社員の健康を守るために実施するものであり、

「異常」が発見されてからが本番!

といっても過言ではありません。ちなみに、定期健康診断で「異常」の所見があった社員の割合は2023年時点で58.9%に上ります。会社が何もしなければ、6割近い社員の健康が危ぶまれると思って、以降で紹介する「異常」の所見があった社員への対応をご確認ください。

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2 「異常なし」以外は「異常」の所見あり

健康診断結果には、社員の健康状態が「判定区分」として記載されています。判定区分の設定は医療機関ごとに異なりますが、例えば次のようなイメージです。

  1. 異常なし:健康状態に特に問題はない
  2. 軽度異常:数値上は異常を認めるが、日常生活に差し支えない
  3. 経過観察:治療や精密検査は不要だが、生活習慣を改善しつつ経過を見る必要がある
  4. 要治療:病気と考えられるので、治療や保健指導を受ける必要がある
  5. 要精密検査:さらに詳しく検査を行い、病気の有無を確認する必要がある

上の5つの場合、「1.異常なし」以外は「異常」の所見があるものとなります。医療機関がこれ以外の判定区分を設定している場合も、

「所見を認めない」など、明らかに問題ないと判断できるもの以外は、基本的に「異常」の所見があるものと考えて差し支えない

でしょう。

3 医師等の意見聴取はどうやって進める?

「異常」の所見があった社員については、

健康診断をしてから3カ月以内に、就業上必要な措置について医師等の意見を聴取

しなければなりません。意見を聴取する相手は、

  • 会社の産業医(社員数が常時50人以上の場合、選任は義務)
  • 地域産業保健センター(労働者健康安全機構が運営)の健康相談窓口
  • 社員の主治医(社員が主治医の意見を会社に伝える)

などがあります。通常、社員の健康診断結果を医師等に渡した上で意見を聴取します。これは法令で認められた行為ですが、健康診断結果は「要配慮個人情報」なので、その取り扱いには注意しましょう。

さて、厚生労働省の指針では、医師等から主に聴取すべき意見として次の2つが示されています(厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」)。

  1. 就業区分(通常勤務でよいか、就業制限や休業が必要か)と必要な措置(労働時間の短縮、作業の転換など)に関する意見
  2. 作業環境管理(施設や設備の状況など)や作業管理(作業方法など)に関する意見

意見聴取は、口頭と書面(意見書など)のどちらで行っても構いませんが、

聴取した意見は、健康診断結果の個人票に記載しなければならない

ので注意してください。

4 就業上必要な措置って具体的に何?

就業上必要な措置の内容は、おおまかに次のように区分できます。

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多くの場合は「通常の勤務でよい」ということになりますが、そうでなければ医師等の意見を勘案して措置を実施します。その際、

措置の対象となる社員の意見も聴き、内容について了解を得た上で実施するのが望ましい

とされています(厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」)。

なお、措置を講じるために社員の上司などの協力を求める場合、社員の病気などに関する情報は提供せず、措置の目的や内容を中心に伝えるのが基本です。健康管理業務に従事しない上司に要配慮個人情報を提供すると、個人情報保護法に違反する恐れがあります。

5 社員に治療や精密検査を受けるよう命令できる?

ここまで会社の義務について紹介してきましたが、社員も自らの健康維持のために努力しなければなりません。例えば、

通常の勤務でよい(就業上必要な措置はない)が、治療や精密検査は必要

というのはよくあるケースですが、社員が治療や精密検査を受けないまま健康状態を悪化させたら、健康診断を実施した意味がありません。

こうした場合、就業規則に、

健康診断で「異常」の所見があるなど、会社が必要と認めた場合、治療や精密検査を受けなければならない

といったことを定めるとよいでしょう。また、命令する以上は、会社による費用負担、就業時間中の受診、受診している間の給与の支払いなどについても検討する必要があるでしょう。

6 「異常」の所見があった場合に役立つ制度はある?

健康診断の結果、次の4つの検査項目全てで「異常」の所見があった社員(例外あり)は、労災保険の「二次健康診断等給付」を受けられます。

  1. 血圧検査
  2. 血中脂質検査
  3. 血糖検査
  4. 腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定

二次健康診断等給付の内容は、

  1. 二次健康診断:脳血管と心臓の状態を把握するために必要な検査
  2. 特定保健指導:脳・心臓疾患の発症の予防を図るための保健指導

の2種類で、どちらも無料です(どちらも年度内に1回まで)。実施義務はありませんが、該当する社員がいる場合、積極的に受診を奨めるとよいでしょう。

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以上(2025年4月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 小出雄輝)

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画像:Marina Zlochin-Adobe Stock

【かんたん法人税(3)】固定資産に係る税務

1 固定資産に係る税務上の重要ポイント

シリーズ第3回では、固定資産のうち有形減価償却資産に係る税務上の取り扱いに注目します。固定資産とは、

長期に保有する資産の総称で、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に区分

されます。「長期に保有」は、ワンイヤールール(1年以内の売却や処分を予定していない)で判断します。また、有形固定資産および無形固定資産のうち、減価償却の対象となる資産は、減価償却資産と呼ばれます。固定資産の分類は次の通りです。

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固定資産に係る税務上の取り扱いは、取得時の処理、減価償却、修繕をした場合など、詳細に定められています。固定資産に係る税務上の重要ポイントは次の通りです。

  • 取得価額の判定
  • 減価償却費を損金算入するための要件
  • 一括償却資産と中小企業者における減価償却の特例
  • 特別償却制度
  • 資本的支出と修繕費
  • 評価損・耐用年数の短縮
  • 売却時・除却時の税務

2 減価償却の概要と減価償却資産の分類

1)基本的な考え方

建物や機械などの有形固定資産、鉱業権や特許権などの無形固定資産は、取得後、使用することで時間の経過とともに経済価値が消耗・損耗していきます。この資産の経済価値の消耗・損耗分を減価(価値の減少)と見なし、その金額を一定の方法により、資産の使用可能期間にわたって、各期の費用として配分する会計処理を「減価償却」といいます。

前述の通り、減価償却の対象となる資産は減価償却資産として区分され、次のように分類されます。なお、減価償却資産には、建物、車両、器具備品、機械装置、ソフトウエア、営業権などの他、家畜や果樹などの生物も含まれます。

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固定資産の分類は、税務調査で指摘されやすいポイントなので、資産取得の際に適切に区分しておく必要があります。

2)減価償却方法

減価償却の方法にはいくつかがありますが、一般的なものは定額法と定率法です。

  • 定額法:耐用年数にわたり、毎期均等の金額を減価償却費として計上
  • 定率法:耐用年数にわたり、未償却残高を毎期同じ割合を減価償却費として計上

耐用年数とは、固定資産を事業に利用できる年数のことで、税法上、業種や資産ごとに決められています。会計上は、企業が任意に合理的な耐用年数を決めて償却することができますが、その場合は税法基準での処理との二重管理が生じ煩雑になるため、多くの中小企業では税法基準で償却計算が行われています。

耐用年数も税務調査で指摘されやすいポイントです。税務調査では、資産の耐用年数が法定耐用年数にのっとったものかどうか確認されます。また、その資産が実際に事業で使用されているかも確認されます。原則として、使用されていない資産の減価償却は損金算入が認められません。

定額法と定率法の仕組みは次の通りです(取得価額100万円、耐用年数5年の資産を例示)。なお、この記事では、旧定額法・旧定率法についての説明を省略します。

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定額法、定率法ともに、償却終了時に備忘価額(保有していることを忘れないように財務諸表に表示する価額)として帳簿価額1円を計上します(図表3-定額法および定率法の「5年目の期末帳簿価額」)。

また、現行の定率法において、償却当初の償却率(0.4)は定額法の償却率(0.2)の2倍となっています。ただし、当初の償却率(0.4)のままでは耐用年数内に、備忘価額1円まで減価償却することができません。そこで、帳簿価額が取得価額に一定の率を乗じた金額(改定取得価額、図表3-定率法の「3年目の期末帳簿価額」)まで到達した後は、新たな償却率(0.5。改定償却率)により償却を行うこととなります。

なお、改定取得価額とは、当初の償却率による償却額が初めて償却保証額(資産の取得価額に当該資産の耐用年数に応じた保証率を乗じて計算した金額)に満たないこととなる年の期首における未償却残高のことをいいます。また、改定償却率とは、改定取得価額に対しその償却費の額が、その後毎期均等になるように当該資産の耐用年数に応じた償却率をいいます。

3)固定資産を処分した場合の会計処理

ここでは、図表3の事例を使って、固定資産を処分するときの会計処理を説明します。

例えば、定額法により償却していた資産が、3年間使用した時点で壊れてしまったため処分したとします。この場合、処分時(3年経過時)のこの資産の帳簿価額40万円(=取得価額100万円-減価償却累計額60万円)を、会計上、固定資産(資産科目)から費用科目に一度に振り替える必要があります。本ケースでは、40万円の固定資産除却損を損益計算書に計上し、固定資産の帳簿価額をゼロにします(税務上の詳細な取り扱いは後述)。このように、固定資産を処分した場合には、期中に予定していなかった費用が発生し、利益に大きく影響するため注意が必要です。

3 固定資産に係る税務上の取り扱いと留意点

1)取得価額の判定

固定資産の取得価額の判定は、通常その単位ごとに行います。単位といっても、全ての資産が1個の資産で成り立つわけではありません。例えば、「応接セット」として資産計上することがあります。この場合は、一式そろって初めて機能するものなので、取得価額も一式分(テーブル、椅子、ソファなどの合計)の価額となります。また、資産の取得に際し、付随して生じる費用(設置費用など)も、取得価額に含めなければなりません。取得価額とすべき付随費用が費用(支払手数料など)として処理されていないかどうかは、税務調査でも指摘の多いポイントの1つです。

また、税務上は取得価額が10万円未満のもの(または使用可能期間が1年未満のもの)については、固定資産として資産に計上せず、消耗品費などとして一括で費用にすることができます(詳細は後述)。

2)減価償却費を損金算入するための要件

有形減価償却資産については耐用年数経過時に1円まで償却することが可能ですが、減価償却費を損金算入するためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 法人税法施行令で定められている償却限度額以内であること
  • 損金経理を行っていること
  • 別表明細書(別表16)を確定申告書に添付すること

3)一括償却資産と中小企業者における減価償却の特例

税務上、10万円以上の固定資産を購入した場合には、減価償却資産として資産に計上するのが原則ですが、取得価額が30万円未満のものについては、次のような処理方法が認められています。

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取得価額が10万円未満(または使用可能期間が1年未満のもの)のものについては前述した通り、固定資産とせず費用に計上できます。

取得価額が10万円以上20万円未満のものについては、一括償却資産として資産計上し、3年間で償却することが認められています。固定資産の多くは、耐用年数が3年を超えるものが多いため、通常より早期に償却(費用計上)することができます。

また、中小企業者等(資本金の額等が1億円以下の一定の法人)においては、「少額減価償却資産の特例」という、30万円未満の固定資産を費用に計上できる制度(年間の総額が300万円に達するまで)が利用できます。適用を受ける場合には、適用額明細書を法人税の確定申告書に添付する必要があります。

4)特別償却制度

特定産業の保護・育成や特定の投資の促進などを目的として、租税特別措置法に規定されているのが、特別償却制度です。この制度を利用することで、償却限度額が増加し、税負担を減少させられます。税法上の早期償却の方法には、初年度特別償却と割増償却とがあります。

  • 特別償却:資産を取得した最初の期のみ、償却限度額を増加させるため特別償却率を乗じることを認める制度
  • 割増償却:数年間にわたり普通償却限度額(通常の減価償却に係る償却限度額)とは別に、特別償却限度額を認める制度

特別償却は、対象資産ごとに対象事業者が設定されており、ほとんどの場合、青色申告法人であることが要件になります。また、申告時には特別償却についての付表の添付が求められます。これらの適用要件を満たしているかどうかも、税務調査で指摘の多いポイントの1つです。また、租税特別措置法の適用を受ける場合には、適用額明細書を法人税の確定申告書に添付する必要があります。

5)資本的支出と修繕費

資本的支出と修繕費の取り扱いは、現場担当者の判断にミスが生じやすい項目の1つです。資本的支出とは、すでに保有している固定資産の修理、改良などのために支出した金額のうち、その固定資産を使うことのできる期間(使用可能期間)を延長させる部分または価値を増大させる部分をいいます。資本的支出に該当する場合は、費用ではなく、新たな固定資産を購入したものとして資産計上し、耐用年数にわたり減価償却を行っていかなければなりません。

一方、修繕費とは、固定資産の維持管理または原状回復のための支出をいいます。修繕費に該当する場合は、費用として処理されます。

資本的支出か修繕費かを判断するためのフロー図は次の通りです。

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修繕費と減価償却資産が適切に区分されているかどうかは、税務調査において指摘の多いポイントですので、留意する必要があります。

6)評価損、耐用年数の短縮

1.固定資産の評価損について

固定資産の価格の下落による損失は、会計上で評価損として費用計上することがありますが、税務上は原則として評価損の損金算入は認められません。ただし、例外として、固定資産について、一定の事実があった場合には、損金経理により帳簿価額を減額することを条件に、評価損の損金算入が認められています。税務上、固定資産の評価損を計上できるケースとできないケースは次の通りです。

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2.固定資産の耐用年数の短縮について

固定資産の耐用年数は、耐用年数表により画一的に定められています(法定耐用年数)。ただし、一定の理由により、使用可能期間が法定耐用年数と比較しておよそ10%以上短くなったと判断される場合には、所轄税務署長の承認を受けることで、法定耐用年数を使用可能期間に短縮できます。

7)売却時・除却時の税務

有形固定資産を売却した場合、売却時点の帳簿価額と売却価額との差額を固定資産売却損益として処理します。固定資産売却損益は、臨時的に発生した損益として特別損益に表示されます。また、売却に際して手数料などの付随費用が生じた場合は、売却損益に反映します。

なお、固定資産を除却する場合、税務においては固定資産を実際に廃棄するまでは除却損を損金に算入できません。従って、実務上は廃棄を証明する資料、例えば産業廃棄物管理票(マニフェスト)などを適切に保存・管理する必要があります。

ただし、次のような場合には、実際に廃棄せずとも、帳簿価額から処分見込額を控除した金額の損金に算入できます。これを有姿除却(有姿=姿を残したままの意)といいます。

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図表7の(1)は、税務調査で指摘の多いポイントの1つです。固定資産を再使用しないことを明らかにするため、当該固定資産の現況、使用中止に至った経緯、転用等の再使用の可能性を検討した資料を残しておく必要があります。

4 リース取引

リースとは、企業が設備を導入する場合に、自社で購入(所有)するのではなく、リース会社が購入した物件を賃借し使用する取引のことです。リース取引は、中途解約ができず、その資産の購入代金のほぼ全額をリース料という形で支払う賃貸借取引である「ファイナンス・リース」と、それ以外のリース取引である「オペレーティング・リース」とに分類されます。

税務上では、ファイナンス・リースのみが「リース取引」に該当し、原則として売買したものとして取り扱われます。従って、固定資産を購入した場合と同じく、リース期間にわたり減価償却をしていかなければなりません。

一方、オペレーティング・リースは、税務上は賃貸借取引とされるため、賃借料、レンタル料などの費目で処理されることになります。

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また、ファイナンス・リース取引(税務上の「リース取引」)は、リース期間の中途または終了後に所有権が移転するかしないかという観点で、さらに「所有権移転ファイナンス・リース」と「所有権移転外ファイナンス・リース」とに分類することができます。ファイナンス・リースでは減価償却費を費用計上することとなりますが、取引内容により減価償却方法が変わりますのでご留意ください(詳細は図表9の通りです)。

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なお、2027年4月1日以降に開始する事業年度から、リースに関する会計基準が変更されます。監査法人の監査が必要な上場企業などに対しては強制適用となりますが、中小企業については任意の適用となります。新しい基準(新リース会計基準)では、これまでオペレーティング・リースとして、賃借料を費用計上するだけで良かったものも、会計上はファイナンス・リースと同様、貸借対照表上に資産・負債として計上し、減価償却費により費用計上することになります。ただし、

税務上は、新しい基準適用したとしても、オペレーティング・リースについては、現行の処理(賃借料などを損金とする処理)を継続

するとして、特段の変更はありません。

そのため、新リース会計基準を適用した場合のオペレーティング・リース取引については、会計上の処理(減価償却と利息費用を費用処理)と、税務上の処理(賃借料などを損金処理)で差異が生じるので、確定申告において税務調整が必要になります。

以上(2025年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 富永慎也)

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画像:pixabay

【健康経営】健康診断の対象者や診断項目はどうやって決まる?

1 ルールを押さえた上で工夫する

働き方が自由になる中で、健康診断についても、

  • 社員の自宅近くの病院で健康診断を受けられるようにした
  • テレワークで社員の健康が気になるので、会社の裁量で診断項目を増やした

といった見直しを検討する会社が増えています。このように社員のために工夫を凝らすのはよいですが、健康診断については労働安全衛生法と関係法令でさまざまなルールが定められていて、知らず知らずのうちに法令に違反してしまうケースがあります。違反となれば罰則(50万円以下の罰金)が科せられることもあります。

そうならないためには、会社はどのようなことに注意すればよいのでしょうか。この記事では、健康診断のルールを次の3つにまとめて紹介します。

  1. 対象者のルール:従事する業務によっては特殊な健康診断もある
  2. 診断項目のルール:法定項目は必ず、法定外項目は会社の裁量で実施
  3. 診断結果のルール:異常の所見がないかを確認。データの取り扱いに細心の注意を払う

2 対象者のルール

1)法定の健康診断の種類

法定の健康診断には、一般健康診断と特殊健康診断等とがあります。

  • 一般健康診断:社員の職種に関係なく行うもので、5種類ある
  • 特殊健康診断等:特定の有害な業務に常時従事する社員に行うもので、3種類ある

それぞれの内容は次の通りです。

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健康診断の実施場所については細かい制限がないので、「医師が健康診断を行う医療機関」であれば、対象者ごとに実施場所が違っても問題ありません。ただし、

健康保険の保険者(全国健康保険協会など)から健康診断の費用補助を受ける場合、保険者が指定する医療機関

で行う必要があります。

なお、この他、図表1に含まれない(一般健康診断でも特殊健康診断等でもない)イレギュラーな健康診断として、

  • リスクアセスメント対象物に関する健康診断
  • 濃度基準値設定物質に関する健康診断

があります。

リスクアセスメント対象物とは、「ラベル表示、SDS等による通知」「職場における危険性・有害性の特定・リスク低減等」が義務付けられている危険・有害物質のことで、これを取り扱う事業場では、リスクアセスメント(有害性のリスク診断)の結果に基づいて社員の意見を聴き、必要に応じて健康診断を実施し、就業上必要な措置を講じる義務があります。

濃度基準値設定物質とは、リスクアセスメント対象物のうち、ばく露量が濃度基準値(厚生労働大臣が定める濃度の基準値)以下なら健康障害を生ずる恐れがない物質として厚生労働大臣が定める物質のことで、濃度基準値設定物質について、社員が濃度基準値を超えてばく露した恐れがある場合、速やかに健康診断を実施し、就業上必要な措置を講じる義務があります。

2)役員も現場で働いていれば対象

健康診断の対象は、原則として社員だけですが、

兼務役員(経営業務以外の業務にも携わり賃金が支払われる)は対象

になります。

3)パート等(パートタイマー、嘱託社員など)、派遣社員の場合

パート等については、一般健康診断の場合は図表2で「○」が付く社員、特殊健康診断等の場合は特定の有害業務に常時従事する社員が、健康診断の対象になります。

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派遣社員の場合も、考え方はパート等(図表2)と同じですが、

  • 一般健康診断は「派遣元」に実施義務がある
  • 特殊健康診断等は「派遣先」に実施義務がある

といった違いがあるので注意が必要です。

3 診断項目のルール

1)法定項目と法定外項目

健康診断の項目には、

  • 法定項目:法令で受診が義務付けられており、原則として、社員に受診させる
  • 法定外項目:会社が裁量で決める「がん検診」などで、受診するか否かは社員の自由

があります。

例えば、雇入時健康診断と定期健康診断の法定項目は次の通りです。

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費用は原則として全額会社負担ですが、35歳以上で健康保険の被保険者である社員については、「生活習慣病予防健診」として保険者から費用の補助を受けられます(全国健康保険協会の場合。健保組合によっては、健保組合独自の給付制度が用意されている場合があります)。

2)就業規則等の規定に注意

法定項目は法令に基づくため、無条件で社員に受診を命じられます。社員がこれを拒んでも、会社が健康診断の準備を整えていれば罰則(50万円以下の罰金)は受けません。一方、法定外項目は法令に基づかないので、

就業規則等に「診断項目の内容」「社員に受診を義務付ける旨」を定めるか、社員の同意を得ないと受診を命じることはできない

といった違いがあります。

また、法定項目と法定外項目とを問わず社員が受診を拒んだ場合、就業規則等の懲戒事由に定めがあれば、その社員を懲戒処分の対象とすることができます。とはいえ、違反内容に対して重すぎる懲戒処分は過剰制裁となるため、基本的には戒告・けん責など軽めのものとすべきでしょう。

4 診断結果のルール

1)診断結果の取得

診断結果は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」に該当するため取り扱いに注意が必要で、法定項目と法定外項目とで次のような違いがあります。

  • 法定項目:社員の同意を得なくても取得可能
  • 法定外項目:「健康管理のため」など情報の利用目的を示し、社員の同意を得て取得

実務上、診断結果は会社に直接送られてくることが多いので、遅滞なく社員本人に通知する必要があります。

2)診断結果の保存

法定項目の診断結果は、

  • 一般健康診断の場合、5年間の保存
  • 特殊健康診断等の場合、5年間から40年間の保存(健康診断の種類により異なる)

が義務付けられています。なお、派遣社員の場合は少し特殊で、一般健康診断の診断結果は原則として派遣元のみが保存、特殊健康診断等の診断結果は派遣先が原本、派遣元が写しを保存します。

診断結果は、紙の他、データ(PDFなど)でも保存できます。なお、医師等の押印・電子署名は不要です。

3)診断結果を提供できる範囲

健康診断で異常の所見があった社員については、配置転換など就業上必要な措置について医師などの意見を聴きます。その際、医師などから過去の診断結果などの情報を求められた場合は、提供することが認められています。

この他にも、就業上の措置を実施する上で必要最小限な範囲、例えば、社員の健康管理業務に従事する産業医、保健師、衛生管理者などには過去の診断結果などの情報を提供できます。ただし、「上司」などは社員との関係は深いものの、健康管理業務に従事しないため、原則として情報は提供すべきではありません。

4)「健康診断結果報告書」の届け出

社員数50人以上で定期健康診断を実施した会社、特殊健康診断等を実施した全ての会社は、健康診断の実施後、遅滞なく所定の「健康診断結果報告書」を作成して所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。なお、健康診断結果報告書については

2025年1月1日から「電子政府の総合窓口(e-Gov)」によるオンラインでの提出(電子申請)が義務化

されているのでご注意ください。

■厚生労働省「各種健康診断結果報告書」■

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/18.html

■電子政府の総合窓口(e-Gov)■

https://www.e-gov.go.jp/

■厚生労働省「労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/denshishinsei.html

以上(2025年4月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)

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勤務間インターバル制度の導入で最大840万円の助成金が!?

1 「勤務間インターバル制度」は助成金の対象

残業削減は既にさまざまな方法で試行錯誤されていると思いますが、やはり社員の過重労働が心配です。この記事では別の視点から、「勤務間インターバル制度」を紹介します。勤務間インターバル制度とは、労働時間等設定改善法で定められている

社員が終業してから次に始業するまでに、一定時間の休息を取ることを促進することで、社員の生活時間や睡眠時間を確保する制度(実施は努力義務)

です。就業規則等で休息時間数を設定し、終業から次の始業までの間隔が休息時間数に満たなければ、その時間数分、労働したものとみなしたり、翌日の始業時刻を繰り下げたりします。

図表1は、休息時間数が13時間の勤務間インターバル制度のイメージです。

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本来の始業時刻は9時ですが、前日に21時まで働いたので、翌日の勤務は10時(前日の終業時刻から13時間後)からとしています。また、本来の始業時刻である9時から10時までの1時間については労働したものとみなしています(単に始業時刻を後ろ倒しにするパターンもあります)。

勤務間インターバル制度は働き方改革を実現するための1つの取り組みですが、いまひとつピンとこないこともあって導入は進んでいません。ただし、一定の要件を満たした場合には、

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の対象となり、最大840万円を受給できる可能性がある

ことをご存じでしょうか。助成金の支給を受ける場合、事前に所定の「交付申請書」を事業実施計画書などとともに、所轄都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。

2025年度の助成金の申請期限は、2025年11月28日まで

です。

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■厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html

2 勤務間インターバル制度を導入する際のポイント

1)休息時間数の考え方・導入方法

過重労働を防止する上で、休息時間数が長いに越したことはありません。とはいえ、いきなり長い休息時間数で運用するのは難しいので、最初は短めに休息時間数を設定し、状況を見つつ徐々に延長していくのがよいでしょう。ただし、休息時間数が9時間未満だと、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の対象外になってしまうので注意が必要です。

なお、一度設定した休息時間数を安易に短くするのは避けるべきです。とはいえ、取引先との商談や社内の重要な会議などで、休息時間の確保が難しくなるケースもあります。こうした場合は、社員から事前に申請させるようにした上で、社員の体調維持に配慮しましょう。

実際に勤務間インターバル制度を導入する際は、労使での話し合いを土台とし、制度導入の検討、制度の設計、運用、見直しのフェーズに沿ってPDCAサイクルを回しながら進めることが大切です。厚生労働省が運営する「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、超過勤務が発生しがちな業界ごとに「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル」や「導入・見直しのためのワークシート」が掲載されており、具体的な方法を確認する際の参考になります。

■働き方・休み方改善ポータルサイト「資料ダウンロード」■
https://work-holiday.mhlw.go.jp/interval/download.html

2)就業規則の規定例

以下は、休息時間数を9時間とした場合の就業規則の規定例です。なお、休息時間数を確保するため、本来の始業時刻から休息時間の満了時刻までは労働したものとみなし、その時間分の賃金は減額しないものとしています。社員に有利な規定となっていることをご認識ください。

【規定例】

第◯条(勤務間インターバル制度)

1)会社は社員に対し、1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに、少なくとも9時間の継続した休息時間を与える。ただし、災害その他やむを得ない事情がある場合はこの限りでなく、会社は社員に対し、休息時間中であっても業務を行わせることができる。

2)前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間については労働したものとみなす。

この他に、年末年始や業務の緊急性など特別な事情が生じた場合には、適用を除外する定めを設けるなど、柔軟に対応することも可能ですので、会社の実態に応じて検討しましょう。

3 導入している会社が少ないのはなぜ?

最後に補足として、なぜ勤務間インターバル制度の導入が進んでいないのかを紹介します。興味がある方はご確認ください。

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勤務間インターバル制度を「導入している」と回答した会社はわずか5.7%です。そして、勤務間インターバル制度を導入していない理由は次の通りです。

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導入しない理由としては、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」という会社が多いようです。これは、働き方改革により長時間労働が是正されてきたことによる影響が大きいでしょう。

しかし、特定の業界では、依然として超過勤務が常態化している業界もあります。また、「人員不足や仕事量が多いことから、当該制度を導入すると業務に支障が生じるため」など、今の体制に勤務間インターバル制度が合わない会社もあるようですので、必要性や業務の実態、業界も踏まえた上で導入を検討することが大切です。

以上(2025年5月)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:Ollyy-shutterstock

始動 とくぎんトモニリンクアップ! 徳島をつなぐ・結びつける。~メンバーが躍動する徳島の未来

2025年2月4日、徳島大正銀行の100%子会社として「とくぎんトモニリンクアップ」が設立されました。

経営を取り巻く環境がますます変化する中、とくぎんトモニリンクアップは徳島県に、具体的にどのようなつながりをもたらしてくれるのでしょうか。今回、「とくぎんサクセスクラブnavi」(とくさくnavi)では、とくぎんトモニリンクアップで躍動する若手メンバーに単独インタビューを行い、同社の具体的な活動や、徳島県の可能性についてお話をお伺いしました。

お話をしてくださったのは、とくぎんトモニリンクアップの役職員である、以下5人です。
5人のフレッシュな「ひとこと動画」をぜひご覧ください!
(それぞれの画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


取締役 GX事業部担当役員 三木さん


GX事業部 部長 岸さん


事業サポート部 部長 補助金・助成金コンサルタント 河野さん


事業サポート部 補助金・助成金担当 太皷地(たいこぢ)さん


事業サポート部 森長さん

―とくぎんトモニリンクアップの事業内容を教えてください

とくぎんトモニリンクアップは、主に4つの事業を展開していく予定です。

1)GX(グリーントランスフォーメーション)事業

GX事業については、とくぎんトモニリンクアップが自ら太陽光発電などの発電事業者となって、地域に再生可能エネルギーを供給していきます。また、GXコンサルティングや、Jクレジットの創出・販売も進めることで、地域内の中小企業の脱炭素経営の支援を行い、地域のカーボンニュートラルを推進していきます。

2)一次産業活性化事業

一次産業活性化事業については、一次産業のプロである生産者や自治体などと連携しながら、新たな就業者を創出していくための仕組みづくり等を検討していきます。もちろん、魅力的な徳島の県産品もアピールしていきます。

3)持続可能なまちづくり事業

持続可能なまちづくり事業については、とくぎんトモニリンクアップがハブやコーディネーターとなって地域の事業者や自治体と連携し、地域資源や自然資本を活かした地域の課題解決に繋がるビジネスモデルの設計等を進めていきます。

4)補助金申請サポート事業

補助金申請サポート事業については、前述した3つの事業に付随する補助金の申請サポートを行います。既に徳島大正銀行で行っている補助金申請サポートを進化させ、GX関連の補助金申請にも力を注ぎます。

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取締役 GX事業部担当役員 三木さん

―とくぎんトモニリンクアップの「強み」を教えてください

銀行は、銀行法によって行うことができる事業範囲が決まっています。しかし、近年は銀行法や関連規則などの改正によって規制緩和が進み、いわゆる「銀行業高度化等会社」として取り組むことができる事業の範囲が広がっています。

人口減少に歯止めをかけたり、県産品を広めていったりする上で、銀行本体で認められている事業だけでは限界があります。そこで、銀行業高度化等会社を設立し、私たちも事業主体となって、リスクを取りながら活動することにしました。

他の金融機関も銀行業高度化等会社を設立していますが、そうした事例も研究しました。先行する銀行業高度化等会社は、発電事業や地域商社など単独の事業を展開するケースが多いです。しかし、私たちは「GX、一次産業、まちづくり、補助金」を柱にして、多面的な事業展開を進めていきます。これらの事業の親和性を高め、相乗効果を生み出していきたいと考えています。

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GX事業部 部長 岸さん

―設立日に小松島市と連携協定を結ばれましたね

2025年2月4日の設立と同時に、徳島県小松島市、サーキュレーション、イノベーションパートナーズ、徳島大正銀行、そしてとくぎんトモニリンクアップで「『地域経済の好循環に向けた共創推進』を目的とした連携協定」を締結しました。関係者で連携を密にしながら、小松島市の地域産業の振興、産業を支える担い手及び事業者等の創出・育成を推進していきます。

設立日に締結した連携協定ということで、メンバーの思い入れも大きいです。連携協定の参画者が小松島市の解決したい課題を理解し、各団体の有する環境や資源、特徴を活かしながら、新しい施策を共創していきたいと思っております。

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事業サポート部 部長 補助金・助成金コンサルタント 河野さん

―小松島市のような連携は今後も増えていきそうですか?

はい。まずは徳島県内を中心に広げていきたいと考えています。

自治体によって抱えている課題は違いますので、プロダクトアウトではなく、マーケットインで、自治体が求める役務を提供できるようにします。もちろん、当社単独でのサポートには限界がありますから、連携先も増やしていきます。

地域に根差した銀行の一員である私たちが、地域の課題を解決するためのハブ機能・コーディネート機能を果たす。これが、とくぎんトモニリンクアップの真骨頂です。

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事業サポート部 補助金・助成金担当 太皷地さん

―とくぎんトモニリンクアップが行うサポートのイメージを教えてください

例えばGX事業については、まずは徳島県内を中心に、中小企業が脱炭素経営を行うためのサポートをします。GXコンサルティングを行う会社は数多くありますが、私たちの強みは、徳島大正銀行の情報力・機動力を活かした豊富なネットワークにあります。様々な連携先と協力することで、「ワンストップ」サポートが可能になります。例えば、温室効果ガスの排出量の可視化から削減計画の策定までのサポートはもちろんですが、工場建設を検討される先には、その分野の専門家をお引き合わせしたり、検討の場に私たちも立ち会ってアイデアを出したりすることができます。

補助金申請サポート事業についても同様です。常時30件程度の申請をご支援しておりますが、先ほどの例でいうと、工場建設を検討される先に対して、申請可能な補助金をご提案したり、実際にその申請サポートをしたりもします。現在は経済産業省管轄の補助金が中心ですが、今後は環境省管轄の補助金にもサポート範囲を広げていきます。

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事業サポート部 森長さん

―とくぎんトモニリンクアップの今後の展望をお聞かせください

まずは足場固めをして、安定的に事業を展開できるようにしていきます。

そして、とくぎんトモニリンクアップが活動することでご縁が広がり、結果として徳島大正銀行のお取引先が増えれば、私たちにとってもとてもうれしいことです。徳島大正銀行には古い歴史を誇る「とくぎんサクセスクラブ」もありますので、こちらからも様々なサービスをご提供できたらよいと思います。

とくぎんトモニリンクアップの一つ一つの活動は「点」ですが、それを有機的に結びつけて「面」とし、大きな渦を生み出していきます。

今後も、とくぎんトモニリンクアップの情報を、「とくさくnavi」を通じて発信していきたいと思っていますので、ご期待ください。

(聞き手 日本情報マート 代表取締役 松田泰敏)

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昭和世代vsZ世代~「自分で考えてみて」と「教えてほしい」

1 「自分で考えてみて」と「教えてほしい」の線引きは?

ジェネレーションギャップは世の常……。今どきであれば、部下を持つ「昭和世代」の上司が、若手の部下である「Z世代(1990年代半ば~2010年代初頭生まれを中心とした世代)」との価値観のギャップに、戸惑うケースが多いかもしれません。例えば、仕事で昭和世代がZ世代に指導を出す際、

「自分で考えてみて」と「教えてほしい」のラインの見分け方で擦れ違いが生じる

ことがあります。

昭和世代の皆さんからすれば「少し考えれば分かる」ような質問を、部下がしてきたらどうしますか? 思わず「自分で考えなさい! 全く、若い世代はすぐに答えを聞きたがる!」と言ってしまうかもしれません。

ただ、Z世代は本当に楽をしたいから質問をしてきたのでしょうか? もし、本当に困っているのだとしたら……。こうしたときは、

お互いに自分がやるべき仕事を理解し、本当に相手に任せるべき仕事か(本当に自分ではどうにもならないのか)を見極める

ことが大切です。以降で、「自分で考えてほしい」と思っている昭和世代のAさんと、「教えてほしい」と思っているZ世代のBさんの“擦れ違い会話”を紹介します。両者の擦れ違いを解消するためのポイントを見ていきましょう。

2 その「自分で考えてみて」、本当に合っていますか?

営業職として働いている上司のAさん(昭和世代)と、部下のBさん(Z世代)。ある日、Aさんは、Bさんと定期面談をした人事部のCさんから報告を受けました。どうやら、Bさんは「Aさんに、もう少し指導してほしい、一緒に仕事をしてみたい」と思っているようです。

パワハラやモラハラ、ロジハラなど、とにかくハラスメントの問題で部下を指導しにくい時代……。自ら「指導されたい!」と申し出てくるとは見どころがあります。Aさんは「よし!」と気合を入れて、Bさんへの指導を始めました!

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Bさん、クライアントに提出する、この資料のことだけれど……これはまだ、先方に提出できるレベルじゃないかもな。

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見ていただいてありがとうございます! Aさんから見て、その資料のどんなところを修正したら、「提出できるレベル」になるのでしょうか?

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どんなところって……それを考えるのも仕事だぞ? 自分で考えてやってみてくれ。

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ええっと……そこを、具体的に指導していただきたいんですけど……。

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だから、自分で考えてやってみてって! 自分で何が悪いか分からないようじゃ駄目だよ!

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(そんなこと言われたって、参考資料もろくにないのに分かるはずがないよ……! 自分で考えてミスしたら、どうせまた怒るじゃないか……!)

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(自分で考えるのも仕事だろ。自分で何が悪いのか分かっていないようじゃ駄目じゃないか。全く、最近の若いモンは……)

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……。

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(あれ……? 思った以上にへこんじゃっているぞ……? 仕事の手も止まっている……)

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(……そういえば私もついこの前、知らない専門用語ばかり使ってくる人に出会って困ったことがあったな……。何が分からないのかさえ分からないから、ぼうぜんとしちゃうんだよな。Bさんも同じ状況なのかもしれない)

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(そうか……何も分からないまま厳しく指導されても、余計に困ってしまうよね。今度指導をするときは、話しながらBさんの業務がどんな状況にあるのか、一緒に整理してみよう。もっと良い指導ができるかもしれない)

Aさんは自分の経験を思い出したことで、Bさんが「何が分からないのかさえ分からない」状況に陥っていることを理解し、指導のための糸口を無事、つかんだようです。

3 その「教えてほしい」、本当に合っていますか?

Aさんは自分の指導方法を反省し、次からは、「Bさんが分からないことをきちんと聞き出そう!」と決意しました。

ただ、「教えてほしい」と頼む前に、Bさんが「自分で考えなければならない」ケースもあります。例えば、仕事に必要な情報がそろっていて、ちょっと頭をひねれば答えを導き出せそうなときです。

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Aさん、クライアントに提出する資料ですが……事例はどのようなものを載せればいいでしょうか。

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なるほど。何を使えばいいか、見当もつかないって感じかな?

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はい……どうすれば、うちのサービスを気に入ってもらえるのか、想像ができなくて。

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この前の打ち合わせの感じだと、クライアントは商品の販売先を拡大したいという課題を持っている。だから、うちのサービスでそれをサポートする流れだね。Bさんならどうする? 合っていなくてもいいから、自分で考えて何個か挙げてごらん。

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その正解が分からないから、Aさんにお聞きしているのですが……。

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ええっ!?

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(私が教えた事例をそのまま資料にしても成長なんてできないぞ……? でも、この間、Bさんに同じようなことを言ったら落ち込んでいたしなぁ……)

Aさんは、今度こそ本当に困ってしまいました。ここで押さえておきたいのは、Z世代は「デジタルネイティブ」であることです。物心ついた頃から当たり前にインターネットを使い、

「調べれば答えがすぐに分かる」環境で育ってきた世代

です。ですから、Bさんがすぐに答えを求めるのはある意味、自然なことですが、

仕事は、明確な「正解」があることのほうが少ない

のです。Z世代の成長のカギは、そこを理解できるかどうかにあるのかもしれません。

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(何が正解なのか読めないし、的を射た質問ができないのが怖くて発言しにくい……! 分からないから聞いているんだし、教えてくれたっていいじゃないか……!)

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(社会は厳しいなあ……。怖いけど、取りあえず自分でやるしかないのか。ええと、クライアントの悩みはこれ、弊社がお薦めしたいサービスはこれ、過去の事例は……あのファイルにまとめてあるんだよな……?)

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(あれ……? よく考えたら今、分からないことって、そんなにないのでは……?

4 それぞれの「やるべき仕事」を理解し、共有しましょう

Bさんは、困ってしまったAさんと、もう一度話してみることにしました。

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Aさん、さっきはすみません……。取りあえず自分でやってみます!

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えっ!? 急にどうしたの!?

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冷静になって考えてみれば、Aさんがおっしゃっていたように、「誰の、どのような悩みを解決したいのか」が分かっていれば、自分でも考えられるのではないかと思いまして……。それが私の「やるべき仕事」ですよね。すみません、甘えていました。

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そうか、やってみてくれるならよかった……! 私も、この間は突き放すような言い方をしてしまって悪かったね。本当に分からないことなのであれば、これからは具体的に指導するよ。それが指導役としての「やるべき仕事」だもんな。

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これからは、私もまず自分で考えて、頭の中を整理してから、Aさんに質問をするようにします!

AさんとBさんが、お互いの「やるべき仕事」を理解し、共有することで、2人の擦れ違いは解消されたようです。今回は、「自分で考えてみて」と「教えてほしい」の壁をテーマにしましたが、他のテーマであっても、

自分の役割を理解した上で、「自力でできることはやる」「人に任せられることは任せる」

ようにすれば、擦れ違いは解消され、お互いの良さが引き出されていくはずです。

以上(2025年4月作成)

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画像:ChatGPT

農業法人の設立~農事組合法人の場合~

目次

1 農事組合法人になることのメリット
2 法人形態を検討するときに考えるべきこと
3 設立の流れと、農地を所有・賃借するときの要件

1 農事組合法人になることのメリット

農業法人は、大別すると、会社法に基づく「会社法人」と、農業共同組合法に基づく「農業組合法人」があり、さらに細かくは次の図表のように分かれています。

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この記事では農事組合法人について扱います。近年、農家の高齢化や引退に伴って、任意組織である集落営農全体の数は減っていますが、農事組合法人は増えています。農業経営の法人化をする上で、農事組合法人を選択するメリットには次のようなものがあります。

以降では、設立時に検討すべきことや設立の流れについて詳しく紹介します。なお、法人化そのもののメリットや、農事組合法人のポイントについて知りたい場合、次のコンテンツをご確認ください。

▶ 59021 個人経営はもう限界? 農業法人化で未来を切り拓く!
▶ 59022 農業法人の設立~会社法人の場合~

2 法人形態を検討するときに考えるべきこと

農事組合法人は「農業生産の協業によって、組合員の共同の利益を増進すること」が目的であり、事業内容は農業に関連するものに限られています。組合員も原則として「農民」(注)でなければならず、設立には3人以上の農民が必要で、雇用においては、組合員以外の常時従事者がその総数の2/3以下になるように調整しなければなりません。

(注)農業協同組合法において、農民とは「自ら農業を営み、または農業に従事する個人」です。

このような特徴から、農事組合法人は次のような場合に適しています。

なお、設立後に、会社法人に組織変更できるため、後々、事業を多角化したい場合でも、法人化する時は農事組合法人を選択することが可能です。また、農事組合法人には2つの区分があり、農業経営を行うか行わないかで分けられていることも押さえておきましょう。

1号法人:共同利用施設の設置や農作業の共同化を行う(農業経営を行わない)

2号法人:1号法人の事業に加え、農作物の生産や加工品の製造、販売なども行う(農業経営を行う)

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3 設立の流れと、農地を所有・賃借するときの要件

農事組合法人の組織形態を取る場合、農業協同組合法の規程にのっとって設立手続きを進める必要があります。ここでは、農事組合法人を設立するときのおおまかな流れについて紹介します。なお、実際に農事組合法人を設立するときは、弁護士や税理士、行政書士、社会保険労務士などの専門家と相談しながら手続きを進めてください。

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ただし、会社法人は設立しただけでは、農地を取得・賃借することはできず、その農地を所轄する農業委員会の許可を得るか、農地中間管理機構(農地バンク)を利用する必要があります。また、所有する場合には、一定の要件を満たした上で、農業委員会に届け出をして審査を受け、「農地所有適格法人」として認可を得なければなりません。なお、1号法人は農業経営を行わないという前提のため、農地の取得・賃借ができません。これら農地制度や農事組合法人の設立手順について詳しくは、以下のウェブサイトをご確認ください。

■農林水産省「農地制度」■
https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/soudan/index.html
■農林水産省「農事組合法人とは(設立方法も含む)」■
https://www.maff.go.jp/j/keiei/sosiki/kyosoka/k_sido/kumiai/

以上(2025年4月更新)

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画像:pixabay

農業法人の設立~会社法人の場合~

目次

1 個人農家が会社法人になることのメリット
2 法人形態を検討するときに考えるべきこと
3 設立の流れと、農地を所有・賃借するときの要件

1 個人農家が会社法人になることのメリット

農業法人は、大別すると、会社法に基づく「会社法人」と、農業共同組合法に基づく「農業組合法人」があり、さらに細かくは次の図表のように分かれています。

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この記事では会社法人について扱います。農業経営の法人化をする上で、会社法人を選択するメリットには次のようなものがあります。

以降で、設立時に検討すべきことや設立の流れについて詳しく紹介します。なお、法人化そのもののメリットや、農事組合法人のポイントについて知りたい場合、次のコンテンツをご確認ください。

▶ 59021 個人経営はもう限界? 農業法人化で未来を切り拓く!
▶ 59023 農業法人の設立~農事組合法人の場合~

2 法人形態を検討するときに考えるべきこと

会社法人は営利行為が目的であり、事業内容は農業に限りません。また、構成員1人で設立でき、雇用においても制限がありません。経営者に権限を集中させることや、他の農家あるいは農家以外から出資を受けることが可能です。

これらの条件から、会社法人は次のような場合に適しています。

会社法人には5つの区分があります。しかし、有限会社は新たに設立できないため、会社法人を設立する場合、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社から選択することになります。これら4つの法人形態は、それぞれの位置づけを図表2のように表せます。

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合名会社と合資会社は、構成員のうち1名以上もしくは全員が無限責任を負うことになります。つまり、ある農業法人が多額の負債を抱えて破産した場合、その無限責任を負う構成員は、私財を投げ売ってでも負債を弁済しなくてはなりません。

よって、農業法人を設立するときは、おおむね株式会社か合同会社から選択されます。これらの違いは、図表3の通りです。

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なお、農業法人で最も多いのは株式会社です。ただし、株式の全部において譲渡制限のある非公開会社に限られるという点に注意しなければなりません。

3 設立の流れと、農地を所有・賃借するときの要件

会社法人の組織形態を取る場合、会社法の規程にのっとって設立手続きを進める必要があります。ここでは一例として、株式会社を発起により設立するときの流れについて紹介します。なお、実際に会社法人を設立するときは、弁護士や税理士、行政書士、社会保険労務士などの専門家と相談しながら手続きを進めてください。

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ただし、会社法人を設立しただけでは、農地を取得・賃借することはできず、その農地を所轄する農業委員会の許可を得るか、農地中間管理機構(農地バンク)を利用する必要があります。また、所有する場合には、一定の要件を満たした上で、農業委員会に届け出をして審査を受け、「農地所有適格法人」として認可を得なければなりません。これら農地制度や会社法人の設立手順について詳しくは、以下のウェブサイトをご確認ください。

■農林水産省「農地制度」■
https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/soudan/index.html
■農林水産省「農業法人について『法人の設立手続』」■
https://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/n_seido/seturitu_tetuzuki.html

以上(2025年4月更新)

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画像:amosfal-Adobe Stock

個人経営はもう限界? 農業法人化で未来を切り開く!

目次

1 経営基盤を強化する農業経営の法人化
2 農業経営を法人化するメリット
3 農業経営を法人化する方法
4 農地を取得もしくは借りるときの規制

1 経営基盤を強化する農業経営の法人化

高齢化・引退などによる農業従事者の減少や担い手不足、耕作放棄地の増加……日本の農業を取り巻く環境は年々厳しくなっています。国際情勢の混迷による肥料・ガソリンなどの高騰や、気候変動による大雨・台風・日照りなどの被害を受けるリスクも高まっています。

こうした中、農林水産省は人材確保や農地集積、スマート農業推進などによる安定性・効率性・競争力の向上を図るべく、農業経営の法人化を推進しています。なぜ、個人でなく法人なのかというと、法人化することで次のようなメリットがあるからです。

以降で、これらのメリットを掘り下げていきます。

についても紹介しますので、ポイントを押さえた上で農業経営の法人化を検討しましょう。

2 農業経営を法人化するメリット

1)経営管理能力と対外信用力が向上する

個人農家は、事業資金と生活費の区別が曖昧になっている場合が多くあります。

法人化すると、これらを明確に区別することになるため、経営状況を把握しやすくなります。また、複式簿記による記帳や財務諸表の作成などの事務負担は増えますが、コスト削減を意識するようになるなど、経営責任に対する自覚を持つ機会が得られます。

さらに、財務状況が明らかになることで、取引先や金融機関への対外信用力が向上し、新規の販路開拓や、商品開発などのパートナーの獲得、資金調達の拡大において有利になります。

2)社会保険制度の整備で人材を確保しやすくなる

個人農家の従業員は、各自で国民健康保険と国民年金に加入することになります。また、従業員数が5人未満であれば、原則として事業主が従業員を労災保険と雇用保険に加入させる義務はありません。そのため、これらの社会保険制度が未整備になっている場合が多くあります。

法人化(会社法人または確定給与支払い制の農事組合法人)すると、従業員を健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険に加入させることになります。社会保険料の負担は増えますが、求職者に病気・けが・失業などのリスクに対して備えがあるという安心感を与え、人材を確保しやすくなるという大きなメリットが得られます。なお、従事分量配当制の農事組合法人化の場合は、組合員は事業主と同様に国民健康保険・国民年金に加入することになり雇用保険は適用されませんが、組合員以外の従業員はやはり健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険に加入させなければなりません。

3)経営の継承手続きが円滑になる

個人農家は、取引や契約の締結を個人名義で行うため、代表者の交代時に資産や契約に関する継承手続きが煩雑になります。

法人化すると、取引や契約の締結を法人名義で行うようになるため、代表者が交代しても資産の帰属や体外的な契約関係が継続します。

また、個人農家では、後継者は親族を中心に選びがちで、場合によっては候補者がいないという状況になりかねません。法人化すると、役員や従業員から後継者を選んだり他社と合併したりと、経営継承の選択肢が広がります。

4)所得が一定よりも多い場合、税負担を軽減できる

個人農家は、所得が多いほど税率が高くなる所得税が適用されています。

法人化すると、定率課税の法人税が適用され、所得が一定よりも高い場合、個人農家に比べて所得税の税率は低くなります。ただし、利益がなくても、法人住民税(都道府県民税・市町村民税)の均等割が課税されることに注意しなければなりません。

他にも、役員報酬は一定の要件を満たすことで損金算入できるため、そのぶん税負担が軽くなることや、欠損金の9年間(2018年4月1日以降に開始される事業年度において生じる欠損金は10年間)の繰り越し控除が認められる(個人農家は3年間)などの税制上のメリットがあります。

5)充実した公的支援策を受けられる

法人化すると、次の制度資金の融資限度額が拡大されます。

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それぞれの制度融資の詳細は、以下のウェブサイトをご確認ください。

■日本政策金融公庫「スーパーL資金」■
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/a_30.html
■日本政策金融公庫「経営体育成強化資金」■
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/keieitaiikusei.html
■農林水産省「農業近代化資金」■
https://www.maff.go.jp/j/g_biki/yusi/06/1_0603.html

3 農業経営を法人化する方法

1)農業法人の区分

農業法人とは、稲作や畑作、施設園芸、畜産などの農業を営む法人の総称です。大別すると、会社法に基づく「会社法人」と、農業共同組合法に基づく「農事組合法人」があり、さらに細かくは次の図表2のようになります。

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農事組合法人は、農業経営を行うか否かで区分されます。

2)農業法人の設立手続き

農業法人を株式会社や合同会社などの会社法人として設立する場合、その手続きは一般的な会社と同じです。農業組合法人の設立手続きについては、以下の記事をご確認ください。

▶ 59022 農業法人の設立~会社法人の場合~
▶ 59023 農業法人の設立~農事組合法人の場合~

4 農地を取得もしくは借りるときの規制

個人農家が法人化するに当たって、所有している農地の権利を農業法人に移行させたいとき、一定の要件を満たした上で許可を得る必要があります。

1)農地の取得や賃借を行うときの要件

農地の取得・賃借などを行う場合、その農地を所轄する農業委員会の許可を得るか、農地中間管理機構(農地バンク)を利用する必要があります。このとき農業法人は、次の要件を満たさなければなりません。

また、農業法人が農地を賃借する場合、次の要件も満たす必要があります。

2)農業法人が農地を取得するための認可「農地所有適格法人」

農業法人が農地を取得する場合、1)の許可とは別に、農地法に定められた要件を満たした上で、その農地を所轄する農業委員会に届け出て審査を受けなければなりません。ここで認可された法人を「農地所有適格法人」といいます。なお、農林水産省によると、2023年1月1日時点の農地所有適格法人は2万1213法人、認可を受けていない一般法人(リース方式)は4121法人となっています。

農地所有適格法人の要件は次の通りです。

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3)農地所有適格法人の要件適合を確保するための規制・制度

農地所有適格法人は、農業委員会に届け出て認められた後も、その要件を満たし続けなければなりません。これを確認するために、次の措置が設けられています。

1. 毎事業年度ごとに農業委員会に報告する義務

農地所有適格法人は、毎事業年度の終了後3カ月以内に、農地所有適格法人報告書を提出し、事業の状況などを農業委員会に報告しなければなりません。報告をしない、もしくは虚偽の報告をした場合、30万円以下の過料が課せられます。なお、農地所有適格法人以外の農業法人でも、農地を借りている場合は、毎事業年度の終了後3カ月以内に農業委員会に報告することが義務付けられています。

2.農業委員会の勧告およびあっせん

農業委員会は、農地所有適格法人が要件を満たさなくなる恐れがあると認められるときは、その農業法人に対して必要な措置を取るべきことを勧告できます。このとき、農業法人から農地の所有権を譲渡したいと申し出があった場合、農業委員会はあっせんに努めます。

4)農地所有適格法人が要件を満たさなくなった場合

農地所有適格法人は、その要件を満たさなくなれば、農地所有適格法人ではなくなります。ただし、要件を満たさない状態が一時的なものであると認められた場合は、農地所有適格法人ではなくなったとは判断されません。

要件を満たすことが難しいと判断された場合、一定の猶予期間を経て、農業法人は所有している農地を譲渡し、貸し付けられている農地は所有者に返還しなければなりません。これを過ぎても所有している農地や貸し付けられている農地などは、最終的に国に買収されることになります。

以上(2025年4月更新)

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画像:Alexander Raths-Adobe Stock

今こそ「オール徳島」で渦巻き戦略! 地域商社トップ 横石知二さんに聞いてみた【とくさくnavi単独インタビュー】

2024年11月11日、公益社団法人徳島県物産協会を発展的に改組して、「公益社団法人徳島県産業国際化支援機構」(以下「機構」)を立ち上げ、12月16日から本格稼働を始めました。機構はいわゆる「地域商社」で、会長には、葉っぱビジネスで知られる株式会社いろどりの横石知二さんが就任しています。その他のメンバーも市場の代表、県庁や金融機関からの出向者、モデルなどそうそうたる顔ぶれです。

機構は徳島県庁にオフィスを構え、「オール徳島」を旗印に、県産品を、県外はもちろん、海外にも売り出すための仕掛けづくり、場面づくりを行っています。

今回、「とくぎんサクセスクラブnavi(とくさくnavi)」では、横石さんへの単独インタビューを行い、ワクワクが止まらないこれからの徳島について、お話を伺いました。

後半には、徳島大正銀行から機構に出向している市川諭さんのインタビューも掲載しています。

お二人のインタビューの内容をまとめた動画は、こちらからご覧いただけます!
(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)



―機構の概要や狙いについてお聞かせください。

これまでの組織は、縦割りになってしまいがちで、一体的・組織的に活動できていないこともありました。縦割りだと連携が難しく、徳島県内の限られた生産品を取り合ってしまうことになります。しかも、これだけ人口が減っている中、このままでは立ちいかなくなってしまいます。

ですから、県外や海外に打って出る必要があるのです。これを個人ごと、あるいは機能ごとに縦割りで進めるのは難しいですから、今回、「地域商社」という枠組みをつくり、県産品の企画やプロモーションを一体的に行うことにしました。

まさに「オール徳島」での取り組みです!

徳島県産業国際化支援機構

―「オール徳島」とはすてきなフレーズですね

全国に地域商社は多数ありますが、私たち機構の特徴は、「民間と行政が一体となったプロモーションを強力に展開する」ことです。バイヤー同士の連携も進めています。

今、北海道などの地域に対しても県産品をアピールしているのですが、そのときに、例えば青果など単品を売り込むだけでなく、鮮魚や肉、加工品なども幅広く売っていくことが必要です。ただ、これまではそうした事例はありませんでした。青果のバイヤー、鮮魚のバイヤーといったように担当が違うので、自分が取り扱っていない商品の販売には積極的ではないのです。そこを改善し、「オール徳島」として、青果、鮮魚、肉、加工品などの垣根なく、紹介し合えるようにしています。うまくいけば、【億単位の売上】も狙えるわけで、こうした動きは既に始まっています。

加えて、機構では文化や観光も巻き込んで、さらに徳島を盛り上げていくことが戦略の柱になっています。官民が一体となって取り組む、“「オール徳島」の渦巻き戦略”です。

―「今こそチャンス」とおっしゃっていますね。

最近、「徳島の県産品が欲しい」という問い合わせが増えていて、「潮目が変わってきた」と感じます。先日も東京の大手スーパーの方が徳島に来て、「徳島に、こんなに魅力的な商品がたくさんあるとは知りませんでした」と言っていました。問い合わせは日本だけではなく海外からも来ており、今、追い風が吹いています。

魅力的な徳島の県産品

徳島には個性的な人が多く、そうした人にはこだわりがあるので、他人とは違う素晴らしいものを作ってくれるのです。ただ、売ることは苦手です。「個性的でまとまりにくいが、ものはいい。だけど売るのは苦手」というのが徳島の特徴です。

このような状況を機構が取りまとめていきます。「オール徳島」として魅力的な県産品を集約、発信していくことで、大いに可能性が広がっていきます。生産の現場に、「いよいよ、あなたの出番が来ましたよ!」と巻き込んでいくことで、活気も出てきています。

ですから、まさに「今こそ、世界に打って(売って)出なければならない」ということなのです。

これまで、徳島は観光が弱く、外の目から見て商品をブラッシュアップする機会がありませんでした。そこで、文化や観光も巻き込んで徳島ブランドをブラッシュアップして、付加価値を高めていきます。これこそが売るための「舞台」になると考えています。

―「オール徳島」をまとめる人材が重要になってきますね

はい、まさに人材が大切です。かつて、いろどりの事業で知り合ったとても有名な料理人が、「商品を作ることよりも、人を磨きなさい」と教えてくれましたが、機構にも通じるところがあります。

今、いろどりでやってきたような、「気を育てる」ことも始めています。気を育てるというのは、メンバーとの間に信頼関係を築き、「やる気を育てる」ということです。相手と接し、「この人ならこういうことができる」と一緒に取り組み、それができたら「もっと、ここまでできる」と、また一緒に取り組む。こうして丁寧に経験を積み重ねながら一緒に成長していくことが、私は好きです。できることが増え、他人から認めてもらえたら誰だってうれしいことです。自分に役割があるということは幸せなのだと思います。

ただ、少し迷っています。

私のこのやり方は時間がかかります。タイミングによっては、各分野のプロフェッショナルを集め、戦略を立てて一気呵成(かせい)に取り組んだほうがスピーディーで良いこともあります。

今は、しっかりと状況を見極めながら、一つ一つ積み上げていくことと、一気に組織をつくってアクセルを踏むことのバランスを取っています。

こうして人が育ち、取り組みが大きくなって盛り上がっていく中で、若者が「面白そうだ! 自分もやってみよう!!」と、当事者になってチャレンジしてくれたらうれしいです。

―具体的な取り組みでは、「動物的なひらめき」を大切にしていると伺いました。

用意周到に段取りをしても、想定通りにはいかないことはよくあります。ですから、私の場合、どちらかというと動物的なひらめきを大切にしています。

横石知二さん

例えば、東京でマルシェに出展した後、徳島に帰る深夜バスの中でもいろいろと考えています。「どれくらいの人数が乗っているのか、どの年代の人が多いのか、そもそもなぜこのバスに乗っているのか?」といったことを考えながら、世の中の動きを捉え、ビジネスのヒントを探しています。

いろどりの始まりも、たまたま立ち寄った大阪・難波の『がんこ寿司』で、あるお客さんがつまもののモミジを大切そうに、きれいなハンカチの上に置いて眺めている姿を見た瞬間でした。「葉っぱが売れる!」とは、まさに動物的なひらめきで、そのアイデアにとても興奮しました。『がんこ寿司』には、1000万人のお客さまが来たそうですが、その中で葉っぱを売ろうと思ったのは私だけかもしれないですから、1000万分の1のひらめきだったわけです。

きちんと戦略を立て、しかも動物的なひらめきは逃さずに、県産品を販売する舞台を整えていきます。

―他の組織と連携する計画はありますか?

そうですね。それぞれの組織には良さがあって、その良さがどのように相乗効果を発揮するかということでしょうね。成功する連携というのは、それぞれの組織が「成長していくぞ!」と上を向いていないとダメで、一方が上を目指して成長していても、もう一方がそれについてこなかったり、マイナスだったりすると、いい連携にはなりません。

どのような組織と連携するかはこれからの課題の1つですが、成長を目指していく中で、お互いにとって良い連携先と巡り合えたらよいと思います。

―機構の目指す姿についてお聞かせください

まず売上をしっかり伸ばすことです。数字が全く上がらないのは問題ですから。

同時に「人」です。想いのある人をどれだけ集められるかということですが、そのためには、機構に関わる仕事を楽しいな、面白いなと思ってもらえるようにしなければなりません。「良かった、楽しかった、面白かった、うれしかった」。こんな言葉が次々と生まれてくるようにしたいですね。

いわゆる大手商社と違って、私たちは地域商社ですから、売上はもちろんですが、やはり徳島県の皆さまや、そこに関わってくださる方の幸せや喜びを追求していく存在でなければならないと思っています。

その結果、売上が5億円、10億円、20億円、100億円となっていけたらよいです。今は、それが実現可能なタイミングだと思います!

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横石さん、単独インタビューにご対応いただき、誠にありがとうございました。機構を中心に動き出す徳島の未来がとても楽しみになりました。

さて、このような横石さんを支える、頼れる機構のメンバーの1人が、徳島大正銀行から出向してきた市川さんです。機構の現状について、メンバーの立場からお話をお伺いしました。ここからは、市川さんへのインタビューをご紹介します。

―日々、どのような活動をされているのですか?

機構は2024年12月16日から本格稼働したばかりですが、改組前の徳島県物産協会から引き継いだ案件をこなしつつ、どのように“「オール徳島」の渦巻き戦略”として展開していくかを試行錯誤しています。

市川諭さん

打ち出しやすいのは、ストーリー性がある商品です。例えば、「農薬を使っていない」などのこだわりのある商品は打ち出しやすいです。海外視察で発見した魅力的な商品が、徳島県にあるかを探すというアプローチもします。とにかく、「これは売れるかもしれない」という商品を、日々探しています。

―新しい発見はありましたか?

頻繁に現場を訪れて生産者の話を聞いたり、各市町村の役場に行ったりして情報収集をしていますが、「徳島に住んでいるからこそ気付かないことがある」と感じます。

例えば、「藍(あい)」です。徳島の人から見ると「藍」は身近な工芸品なのですが、移住してきた方は、私たちが気付かない付加価値を付けてくれていて、美術品っぽくしたり、企業ロゴを藍染めで作ったりしています。

この他にも、阿南の竹など可能性のある商材を発見しています。阿南の竹は、住民の高齢化で竹が放置されている状況なので、何とか商品化できないかアイデアを検討しています。

―今後の意気込みをお聞かせください

いわゆる地域商社には、「企画、生産、流通、販売」などの機能がありますが、機構ではこれらを一貫してサポートしていきたいと考えています。そのために、他の機関との連携もしていく必要があると思います。

横石会長はものすごい行動力のある人で、様々な情報が集まってきます。その背中を見て刺激を受け、自分の背中を押してもらいつつ活動しています。

これまでの銀行員として養ってきたノウハウも活かしつつ、「オール徳島」で徳島の魅力を広く伝えていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

横石知二さん・市川諭さん

(聞き手 日本情報マート 代表取締役 松田泰敏)

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