【新人経理向け】簿記を使って、会社の取引の全体像をイメージしてみよう

1 経理担当者の基礎は簿記

財務諸表を作成するには、勘定科目とその処理方法を知る必要があります。そのために必要なのが、簿記の知識です。全ての取引を仕訳し、項目ごとに集計したものが財務諸表となるからです。取引を見たとき、会計上、どのように処理されるのかをすぐに判断するためにも、項目ごとの仕訳のパターンをイメージできるようになることが大切です。また、財務諸表の項目から仕訳をイメージすることでも、数値に変化があったときの分析に役立ちます。

この記事では、新人経理担当者向けに

  • 複式簿記の基本“貸方”と“借方”の考え方
  • 貸借対照表の表示区分ごとの各勘定の処理方法

をまとめています。簿記の基本中の基本を押さえていきましょう。

2 複式簿記の基本“貸方”と“借方”の考え方

簿記(この記事では複式簿記)は、企業の活動を記録するものです。例えば、商品を現金で仕入れれば、商品(資産)が増え、現金(資産)が減ります。また、商品を現金で販売した場合、売上高(収益)が増え、現金(資産)も増えると同時に、商品(資産)が減り、売上原価(費用)が増えます。複式簿記は、こうした

出ていく財貨と入ってくる財貨といった、2つの流れを同時に記録

できます。

勘定は借方(かりかた)と貸方(かしかた)の2つに分けることができます。貸借対照表の左側(資産の部)の科目が借方勘定で、右側(負債の部と純資産の部)の科目が貸方勘定です。また、損益計算書の収益・利益に当たるのが貸方勘定で、費用・損失に当たるのが借方勘定です。

初心者には理解しにくいかもしれませんが、貸借対照表の場合、次のように考えると分かりやすいと思います。貸借対照表の右側は負債の部と純資産の部ですが、これは企業活動に必要な資金の調達方法を表しています。この資金を左側の資産の部にあるさまざまな資産の形で運用します。

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簡単な簿記の仕訳例を見ながら、どのように各勘定に反映されるのかを見てみましょう。

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  • 現金及び預金勘定は10万円の増加(-10万円+20万円)
  • 仕入勘定は25万円の増加(+10万円+15万円)
  • 売上勘定は45万円の増加(+20万円+25万円)
  • 買掛金勘定は15万円の増加
  • 売掛金勘定は25万円の増加

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勘定科目の内容は、貸方と借方に分かれます。各勘定科目の金額の増減は、次のようになります。

  • 貸方勘定の金額の増加は貸方に記帳、減少は借方に記帳
  • 借方勘定の金額の増加は借方に記帳、減少は貸方に記帳

以降では、貸借対照表の表示区分ごとの、主な勘定科目の処理方法を説明していきます。

3 流動資産

1)流動資産に含まれるもの

流動資産に含まれるものは、次の通りです。

現金及び預金、受取手形、売掛金、有価証券、商品及び製品(棚卸資産)、前渡金、前払費用、未収収益、未収入金など

2)売上債権と貸倒引当金

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受取手形と売掛金は売上債権といいますが、これらは必ずしも現金化できるとは限りません。こうした債権には貸し倒れリスクがついて回るからです。例えば、売掛金の期末残高が1000万円あり、このうちの2%程度が貸し倒れになるリスクがあると過去のデータから判断した場合は、20万円(1000万円×2%)の貸倒引当金を設定します。

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3)棚卸資産

商品は、仕入れて保有している段階では資産です。その商品を販売して初めて売上原価(費用)となります。売上原価は次の式で算出されます。

期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価

この期末商品棚卸高が貸借対照表の流動資産の棚卸資産を構成します。また、これが翌期の期首商品棚卸高となり、翌期以降に費用となって売上原価を構成することになります。

例えば、期首商品棚卸高200万円、当期商品仕入高1000万円、期末商品棚卸高100万円の場合、当期の売上原価は次の通りです。

当期の売上原価=200万円+1000万円-100万円=1100万円

期末商品棚卸高100万円が流動資産に表示されます。

4)前渡金、前払費用、未収収益、未収入金

1.前渡金

前渡金は商品や原材料などの仕入れや外注加工などの発注に際し、代金の一部または全部を、物品の受け入れや外注加工の完了前に交付した場合、その金額を一時的に処理する勘定です。前払金、手付金ともいわれます。前渡金は金銭債権ではなく物品やサービスの給付請求権となるため、貸倒引当金を設定できません。

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2.前払費用

前払費用は、一定の契約に基づいて、継続して役務やサービスの提供を受ける場合、決算日においてまだ提供されていない役務やサービスに対して事前に支払った対価のことです。未経過の支払利息、賃借料などがこれに当たります。

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これにより、翌期分の費用を翌期に繰り延べることができます。

3.未収収益

未収収益は、一定の契約に基づいて、継続して役務やサービスの提供を行う場合、決算日において既に提供した役務やサービスに対してまだ受領していない対価のことです。未収の受取利息、賃貸料などがこれに当たります。

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これにより、当期分の収入を見越して当期の収益を計上することができます。

4.未収入金

未収入金は、売掛金以外の固定資産、有価証券売却代金などの本来の事業目的以外の財貨やサービスを提供した場合の代価の未収額を処理する勘定です。

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4 固定資産

1)固定資産に含まれるもの

固定資産には有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産が計上されます。それぞれに含まれるものは、次の通りです。

  • 有形固定資産:建物、機械装置、車両運搬具、土地など
  • 無形固定資産:ソフトウエア、のれん、借地権、工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)など
  • 投資その他の資産:投資有価証券、関係会社株式など

2)有形固定資産の減価償却

減価償却費は、営業費用の一部として損益計算をする上で費用計上されます。減価償却累計額は固定資産勘定を間接的に減額する評価勘定です。減価償却累計額は、土地などの非償却資産を除く固定資産の減価償却費の累計額です。固定資産取得価額から減価償却累計額を差し引いた価額が、償却資産の未償却残高(帳簿価額)となります。

ここでは次の前提条件で「定額法償却」について説明します。

前提条件:期首に機械装置を100万円で購入。耐用年数は10年

定額法による場合、各年度の減価償却費は次の式で算出されます。

  • 各年度の減価償却費=取得価額/償却率(耐用年数ごとに定められている定額法の率)
  • 各年度の減価償却費=100万円/0.100(耐用年数10年の場合の償却率)=10万円

また、期首資産価額、減価償却費、期末資産価額は次のように推移します。資産は備忘価額1円を残して、10年間で99万9999円を償却します。

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減価償却累計額は、原則的には貸借対照表の有形固定資産を間接的に減額する評価勘定として表示され、減価償却費は、損益計算書において営業費用として処理されることになります。

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有形固定資産の貸借対照表での表示は、次の通りです(5年度の期末)。

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3)投資その他の資産

投資その他の資産は、投資有価証券、関係会社株式、関係会社出資金、破産更生債権等、投資不動産などで構成されています。

例えば、取引先の経営状況が悪化して、会社更生法や民事再生法などの適用を受けることになった場合、通常の売掛金と区別するため、次のような会計処理を行い、投資その他の資産の欄に計上されるようになります。

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5 繰延資産

かつての会計規則(旧商法施行規則)では、繰延資産として、創立費、開業費、研究費及び開発費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、建設利息が挙げられていました。

ただ現在の会計規則(会社計算規則)では、繰延資産についての例示はなく、「繰延資産として計上することが適当であると認められるもの」を「繰延資産」とするとされています。繰延資産は帳簿価額から償却額を控除した直接控除方式で記載しなければなりません。

6 流動負債

1)流動負債に含まれるもの

負債の部は流動負債と固定負債に分けられます。

流動負債には、次のようなものが含まれます。

支払手形、買掛金、短期借入金、リース債務、前受金、前受収益、未払金、未払費用など

2)支払手形、買掛金

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3)前受金、前受収益、未払金、未払費用

1.前受金

前受金は商品や原材料などの仕入れや外注加工などの受注に際し、代金の一部または全部を、物品の出荷や外注加工の完了の前に受け取った場合、その金額を一時的に処理する勘定です。前受金は金銭債務というよりも、物品やサービスの給付債務となります。

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2.前受収益

前受収益は、一定の契約に基づいて、継続して役務やサービスの提供を行う場合、決算日においてまだ提供していない役務やサービスに対して事前に受領した対価のことです。未経過の受取利息、賃借料などがこれに当たります。

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これにより翌期分の収益を翌期に繰り延べることができます。

3.未払金

未払金は、固定資産、有価証券購入代金などの本来の事業目的以外の財貨やサービスの提供を受けた場合の代価の未払分を処理する勘定です。

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4.未払費用

未払費用は、一定の契約に基づいて、継続して役務やサービスの提供を受ける場合、決算日において既に提供を受けた役務やサービスに対してまだ支払っていない対価のことで、未払いの支払利息、保険料、賃借料、リース料などです。

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これにより当期分の正しい費用を計上することができます。

4)借入金

借入金は、金銭消費貸借契約により金銭を借り入れた場合に生じる債務です。この借入金は、返済期限までの期間によって次のように分類します。

  • 短期借入金:決算日から1年以内に返済期限の到来するもの
  • 長期借入金:決算日から1年を超えて返済期限の到来するもの

短期借入金の借り入れから返済までの取引の仕訳を見てみましょう。

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また、短期借入金、長期借入金は、もし役員からのもの、親会社からのものがあれば、それぞれ区分して計上しなければなりません。

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7 固定負債

固定負債は、社債、長期借入金、退職給付引当金などで構成されています。ここでは、社債の発行について説明します。

社債は、資金を調達するために社債券という有価証券を発行することによって生じる企業の債務です。

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社債発行費の償却を60カ月(償還までの期間5年)とした場合、社債発行費の償却、社債の額面と簿価の差額は×6年3月31日に解消します。

×6年3月31日に社債を償還した際の仕訳例は次の通りです。

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8 純資産の部

1)純資産の部の表示項目

純資産の部は、株主資本、評価・換算差額等、新株予約権に区分されます。

さらに、株主資本と評価・換算差額等は次のように分けられます。

  • 株主資本:資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式
  • 評価・換算差額等:その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、土地再評価差額金

会社計算規則に基づいた純資産の部の表示項目は次の通りです。

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2)増資の仕訳

株主総会決議に基づく取締役会の決議により、株式1000株を第三者に割当増資することになりました。

発行価額は1株につき7万円、1株当たり2万円を資本金に組み入れないことにし、かつ発行価額と同額の申込証拠金を受け入れることにしました。また、申込期日までに全額が払い込まれました。

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3)利益配当

株主総会において、次の配当を決議しました。

  • 配当金:1000万円
  • 利益準備金:100万円

この場合の仕訳例は次の通りです。

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4)自己株式

自己株式を1000万円で取得しました。

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自己株式1000万円を1100万円で売却しました。

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自己株式処分差益は、純資産の部のその他資本剰余金となります。

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以上(2025年4月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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【新人経理向け】財務諸表の基本となる「損益計算書」と「貸借対照表」

1 財務諸表の基本となる損益計算書と貸借対照表

一定期間の経営状態や財務状況を示す財務諸表。その中でも、損益計算書と貸借対照表は会社の決算時に、企業規模を問わず全ての会社で作成が求められる重要な書類です。損益計算書は事業の成果を表す一方で、貸借対照表は財務状態を示すという違いがあります。

これらは株主や税務署など、外部への申告書類としてはもちろん、社員が自社の経営状態を把握するためにも欠かせない書類です。そのため、決算業務に携わる担当者はそれぞれの内容をよく理解しておく必要があります。

この記事では、損益計算書と貸借対照表について勉強したい新人経理担当者向けに、それぞれの概要と、仕入れや販売などの財政状態の変化がどのように表れるのかを見ていきます。

2 損益計算書の概要

1)損益計算書とは

損益計算書は

一定期間の企業の経営成績を表すもの

です。一番上の「売上高」から費用を引いていき、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つの利益を求める構造になっています。

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2)5つの利益の見方

1.売上総利益

「売上高」から「売上原価」を引いた金額が「売上総利益」として表示されます。この金額がマイナスになるときは「売上総損失」として表示されます。

2.営業利益

「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」の合計額を引いた金額が「営業利益」として表示されます。この金額がマイナスになるときは「営業損失」として表示されます。

3.経常利益

「営業利益」に「営業外収益」を加算し、「営業外費用」を引いた金額が「経常利益」として表示されます。この金額がマイナスになるときは「経常損失」として表示されます。

4.税引前当期純利益

「経常利益」に「特別利益」を加算し、「特別損失」を引いた金額が「税引前当期純利益」として表示されます。この金額がマイナスになるときは「税引前当期純損失」として表示されます。

5.当期純利益

「税引前当期純利益」から「法人税、住民税及び事業税」を引いて、さらに「法人税等調整額」を加減した金額が「当期純利益」として表示されます。この金額がマイナスになるときは「当期純損失」として表示されます。

3 貸借対照表の概要

1)貸借対照表とは

貸借対照表は

企業の期末日など、一定時点の財政状態を表すもの

です。財政状態とは資金の運用と調達の状況をいい、資産合計と負債・純資産合計は同じ金額となります。

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貸借対照表は、資産の部、負債の部、純資産の部で構成されています。貸借対照表の左側が資産の部、右側には負債の部と純資産の部が配置されています。

左側の資産の部は、資金の運用状況を表しています。右側の負債の部と純資産の部は、資金の調達状況を表しています。分かりやすくいえば、負債の部は借入金などによる資金調達を表しています。また、純資産の部のうち、株主資本は出資者からの出資による資金調達を表しています。

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資産の部は、流動資産、固定資産、繰延資産に分けられます。固定資産はさらに有形固定資産と無形固定資産、投資その他の資産に分けられます。

負債の部は流動負債、固定負債に分けられ、純資産の部は株主資本、評価・換算差額等、新株予約権に分けられます。

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2)資産の部

資産の各科目は現金及び預金、受取手形、建物その他の資産の性質を示す適当な名称を付した科目に細分しなければなりません。

1.流動資産

流動資産は、現金や当座預金、普通預金などの最も流動性の高い資産を筆頭に、売掛金や受取手形など営業に関係する債権、商品などの棚卸資産、1年以内に回収が見込まれる営業外の短期貸付金などの債権も含まれます。

商品などの棚卸資産は、仕入れた段階では費用ではなく資産です。その後、販売された分について、費用として計上します。

売掛金などの債権には回収不能が予想される分を貸倒引当金として計上します。例えば、売掛金が100万円あり、このうち5%程度が回収不能になることが予想される場合、5万円(100万円×5%)を貸倒引当金として流動資産の部にマイナスの金額として計上します。

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2.固定資産

固定資産は、次のように分けられます。

  • 有形固定資産(建物や機械装置、工具器具備品、車両運搬具、土地など)
  • 無形固定資産(ソフトウエア、特許権、借地権、のれんなど)

固定資産は、その取得時に資産に計上しますが、建物にしても機械装置にしても、時の経過とともに劣化(価値が減少)していきます。この劣化分を考慮して、毎期、減価償却費を計上して、劣化する部分を費用計上していきます。

例えば、取得価額100万円の備品を5年かけて定額法で償却する場合、毎期の減価償却費は次の式で計算できます。

減価償却費=取得価額/償却率(耐用年数ごとに定められている定額法の率)

20万円=100万円×0.200(耐用年数5年の場合の償却率)

従って、取得から丸3年が経過した上記の備品は、次のように表示されます。

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減価償却累計額とは、毎年の減価償却費の累計額(60万円=20万円×3年)をいいます。

または、固定資産の備品を次のように表示し、減価償却累計額を貸借対照表の下に注記事項とすることもできます。

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無形固定資産(のれんなど)は、償却額を控除した残額を記載します。

なお、有形固定資産の償却は帳簿価額が1円になった時点で償却(耐用年数の最後の年の減価償却費は「帳簿価額-1円」)を終えますが、無形固定資産は帳簿価額が0円になるまで償却します。

2.投資その他の資産

投資その他の資産は、満期まで1年超の定期預金、長期貸付金、投資有価証券、関係会社株式、破産債権、更生債権などが表示されます。流動資産、有形固定資産、無形固定資産または繰延資産に属さないものを表示します。

3.繰延資産

かつて(旧商法施行規則)は、繰延資産として、創立費、開業費、研究費及び開発費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、建設利息が挙げられていました。

しかし、現在(会社計算規則)は、繰延資産についての例示はなく、「繰延資産として計上することが適当であると認められるもの」を「繰延資産」とするとされています。繰延資産は償却額を控除した直接控除方式で記載しなければなりません。

3)負債の部

負債の部は、流動負債、固定負債に区分されます。負債の各科目は、支払手形、買掛金、社債その他の負債の性質を示す適当な名称を付した科目に細分しなければなりません。

1.流動負債

買掛金、支払手形その他の営業取引によって生じた金銭債務は、流動負債に記載しなければなりません。

借入金その他の営業取引によって生じた金銭債務以外の金銭債務で、その履行期が決算期後1年以内に到来するもの、または到来すると認められるものは、流動負債に記載しなければなりません。

2.固定負債

流動負債に記載した金銭債務以外の金銭債務は、固定負債に記載します。

4)純資産の部

純資産の部は「株主資本」「評価・換算差額等」「新株予約権」に区分されます。

さらに、それぞれ次のように区分されます。

1.株主資本

  • 資本金:会社設立時の出資金や増資払込などの金額です
  • 資本剰余金:株主が払い込んだお金のうち、資本金に含まれなかった金額です
  • 利益剰余金:会社の活動によって得た利益のうち、社内に留保している金額です
  • 自己株式:会社が買い取った自社株式の金額です

2.評価・換算差額等

  • その他有価証券評価差額金:売買目的有価証券や満期保有目的債券、子会社および関連会社株式以外の有価証券を期末に時価評価した場合の評価差損益の税効果分を除いた金額です
  • 繰延ヘッジ損益:先物取引やオプション取引について、期末時点での時価評価による差額を翌期以降に繰り延べるときに使います
  • 土地再評価差額金:土地の再評価に関する法律に規定されている、再評価差額金です

3.新株予約権

  • 投資家などに会社が発行する株式の交付を受けることができる権利を発行し、払込を受けた代金です

会社計算規則に基づいた純資産の部の表示科目は次の通りです。

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4 財政状態の説明

貸借対照表の理解を深めるため、財政状態の変化について、複式簿記の知識がない人でも分かるような簡易な例で説明します。

1)財政状態1(資本金1000万円を現金で保有しているときの財政状態)

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2)財政状態2(200万円を借り入れ、それを現金で保有しているときの財政状態)

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3)財政状態3(商品100万円を現金払いで仕入れたときの財政状態)

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4)財政状態4(土地400万円を現金払いで取得したときの財政状態)

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5)財政状態5(建物300万円を現金払いで取得したときの財政状態)

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6)財政状態6(商品200万円を掛けで仕入れたときの財政状態)

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7)期末の財政状態

最後に、商品200万円を400万円で販売し、買掛金100万円、販売費100万円、借入金の利息10万円を支払ったところで決算日を迎えたときの財政状態は次の通りです。なお、建物の減価償却費10万円を計上しています。

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損益計算書の当期純利益が貸借対照表の純資産の部の繰越利益剰余金に加算され、期末における企業の財政状態が示されます。貸借対照表は資産の合計額と負債・純資産の合計額が一致します。

以上(2025年4月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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【かんたん法人税(6)】経営者に係る税務

1 経営者に係る税務上の重要なポイント

シリーズ第6回では、経営者(役員)に係る税務上の取り扱いに注目します。最も注意が必要なのは役員に対する給与や退職金(以下「役員給与等」)です。役員給与等は、

一定のルールに基づかないと損金算入できず、また損金算入できる金額にも限度がある

からです。

また、中小企業のうち、とりわけ同族会社では、

業務上の費用と私的な費用の区別が曖昧となりがちで、税務調査で指摘される

ことも多いです。私的な費用と判断された場合、その費用は役員給与等として取り扱われ、一定のルールに沿ったものでなければ損金算入できません。こうした区別をきちんとすることはもちろん、業務上の費用でも私的な費用と誤解を受けることがないように、所定の書類などをそろえておきましょう。

役員に係る税務上の重要ポイントは次の通りです。

  • 損金算入ができる3種類の役員給与
  • 過大役員給与
  • 役員退職金
  • 使用人兼務役員
  • 役員と会社の取引
  • 私的な費用

2 損金算入が認められる3種類の役員給与

1)定期同額給与

定期同額給与とは、「定期的(=毎月)」に「同額で支給される給与」です。一般的に毎月支給される役員給与がこれに当てはまり、事業年度を通じて毎月同額で支給されている場合に限り、損金算入できます。

税務調査では、総勘定元帳などによって毎月の役員給与が同額で計上されているかチェックされるので注意しましょう。なお、どんなことがあっても金額の変更が認められないというわけではなく、次のような場合などに役員給与の金額の変更が認められます。

1.期首から3カ月以内の変更

通常、期首から3カ月以内に定時株主総会が実施されます。この株主総会の決議により役員給与の変更がされたなら、金額の変更が認められます。この場合、税務調査において金額の変更理由を聞かれたときに備え、株主総会の議事録を作成・保管しておくことが重要です。

2.職務の内容に変更があった場合

通常の取締役が代表取締役に就任するなど、事業年度中において職務の内容に変更があった場合は、その職務内容に応じた役員給与の金額の変更が認められます。この場合、職務内容がどのように変わったのかなどについて、税務調査において具体的な説明を求められることが多いため、議事録などの関係書類を事前に準備しておくことが重要です。

2)事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、役員に対する給与の「支給金額」や「支給日」などをあらかじめ決めておき、税務署に「届出書」を提出することで損金算入が認められる役員給与です。定期同額給与以外で、例えば夏と冬に賞与の形で役員給与を支払いたい場合などに利用されます。

なお、届出書の提出期限は次の通りです。ただし、その届出書に記載した支給金額と実際の支給金額が異なっていたり、支給日が異なっていたりする場合には、支給金額の全額が損金に算入できなくなる恐れもあるため注意が必要です。

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3)業績連動給与

業績連動給与とは、会社の売上や利益に連動させて支給額が決められる役員給与です。なお、この業績連動給与は、同族会社には原則として適用できないなど、適用要件が主に上場企業を対象としたものになっているため、この記事では詳細な説明を省略します。

3 過大役員給与の取り扱い

役員給与は、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当すれば、原則として損金に算入できます。しかし、役員給与の支給を受ける役員の職務内容などに照らし、「役員給与の水準が高額過ぎる」と判断された場合は、その高額とみなされた部分の金額(適正額を超える部分の金額)については損金に算入できません。役員給与の金額が適正額かどうかについては単に金額のみで判断されるのではなく、次の2つの基準に従って総合的に判断されます。

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税務調査では、売上や利益が横ばいにもかかわらず役員給与の金額が増加していたり、従業員の給与を上げていないにもかかわらず、役員給与のみ多額に増加していたりする場合などは、その理由の説明を求められる場合があります。従って、役員給与については、金額の決定過程を詳細に説明できるよう、議事録などの関係書類を事前に準備しておくことが重要です。

4 役員退職金

原則として役員退職金は損金算入されますが、「損金に算入する時期」と「過大役員退職金」に注意しましょう。

役員退職金が損金算入される時期は、原則として「株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度」です。ただし、「会社が退職金を実際に支払った事業年度において損金経理(経理上、費用として処理すること)をした場合」は、その支払った事業年度において損金算入することも認められています。

注意が必要なのは、「支給した役員退職金が高額過ぎる(過大役員退職金)」と判断された場合、その高額とみなされた部分の金額(適正額を超える部分の金額)は損金算入できないことです。役員退職金の金額が適正額かどうかの判断基準は会社の状況によってさまざまですが、一般的に次の基準に従って総合的に判断されます。

  • 会社の業務に従事した期間
  • 退職の事情
  • 類似する会社の役員退職金の支給状況等

役員退職金は金額が大きくなることもあり、税務調査においては、金額の算定根拠についてよく説明を求められます。従って、役員給与と同様に、金額の決定過程について詳細に説明できるよう、議事録や算定根拠資料などを事前に準備しておくことが重要です。

5 使用人兼務役員

使用人兼務役員とは、

「部長」や「課長」など使用人としての地位を有し、かつ、部長職や課長職に日々従事している役員

をいいます。具体的には、「取締役経理部長」などの肩書となります。

使用人兼務役員の給与については、役員として支給された給与に該当する部分と、使用人として支給された部分とで、損金の取り扱いが異なります。

「役員として支給された給与」は、「定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与」(以下「定期同額給与等」)のいずれかに該当する場合に、原則として損金算入できます。また、「使用人として支給された給与」は、通常の使用人給与と同様に、原則として全額が損金算入できます。

ただし、経営者の親族については、「使用人兼務役員」としての肩書であっても、税務上は「役員」として取り扱われる場合があるので注意が必要です。具体的には株式の持株割合によって判断され、次の全てに該当し、会社の経営に従事していると判断された場合、税務上は「役員」とされます。

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従って、使用人兼務役員の「使用人」としての職位に対して支給した賞与でも、税務上は役員に対する賞与とされるため、「事前確定届出給与」の届出書を提出していなければ、支給額の全額が損金に算入できないので注意しましょう。

6 役員と会社の取引

税務上、役員と会社との間の取引は、「第三者(外部)と同等の条件で行うべき」とするのが原則的な考え方です。例えば、会社の所有している不動産を時価よりも低い価額で役員に譲渡(低額譲渡)した場合、不動産の時価と譲渡価額の差額は、役員に対する一定の利益供与とみなされます。その結果、税務上「役員給与」扱いになり、所得税の源泉徴収が必要になるとともに、定期同額給与等にも該当しないため、損金算入もできません。

会社から役員に対して無利息で資金の貸し付けを行った場合も同様に、適正利率相当が役員給与として取り扱われます。役員との取引だからといって、自分たちの都合で安易に価格を決定した場合などには、税務調査において価格の算定方法について指摘され、想定外の納税を伴うことがあります。役員と会社との取引に係る金額の決定過程については税務調査時に詳細に説明できるよう、議事録や契約書などの関係書類を事前に準備しておくことが重要です。

7 私的な費用

本来は経営者個人が自分で支払うべき私的な費用を会社の費用として経理処理した場合、その費用については、税務上「役員給与」として取り扱われます。例えば、経営者1人の飲食代は税務上の交際費や会議費ではなく、役員給与とされます。

また、ゴルフクラブの入会金を法人会員として支払った場合、その入会金は会社の資産として計上しなければなりません。プレー代などは交際費等として一定の限度額の範囲内で損金に算入できますが、ゴルフクラブに入会した事実を経営者以外の従業員などに知らせていなかったため、税務調査において「業務に不要なもの=実質的に経営者が個人で負担すべきもの」と判断され、役員給与として取り扱われたケースもあります。

このように、業務に関連しない私的な費用については役員給与とされ、所得税の源泉徴収を要するとともに、定期同額給与等に該当しない場合には損金にも算入できません。

税務調査では、単に領収証の有無などを確認するだけではなく、「業務に必要なものか」といった視点からも調べられますので、関係書類などを事前に準備しておき、業務上必要な経費であることを説明できるようにしておくことが重要です。

以上(2025年4月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:pixabay

受験生のハートに刺さった乳酸菌タブレットの「屋外広告」とは?

1 OOH広告を使って「とがったアプローチ」を!

売り上げにつながるような「広告」の出し方って何でしょう? 分かりやすいのは、電車内のスクリーンに流れる動画や渋谷スクランブル交差点の3D広告のように、

掲示する場所や機会を多くして、広告に触れる人の母数を増やすこと(大量のリーチ)

ですが、これには大掛かりで費用も手間もかかるという問題があります。

なるべく費用や手間をかけたくない場合、

掲示数が少なくても、広告に触れた人に強烈な印象を残すこと(とがったアプローチ)

が必要になりますが、これはこれで「そんな簡単に印象に残るなら、誰も苦労しない」という話になります。ただ、取り組むハードルが低い分、アイデア次第で可能性は無限に広がるので、他社の事例などを見ながら勉強するだけでも、御社の広告は‟前進”していきます。

そこで、この記事では「OOH(Out Of Home)広告」、つまり屋外広告にスポットを当てて、

ユーモアのあるOOH広告を使った、とがったアプローチ

のポイントを紹介します。まずは、実際にOOH広告を出している会社へのヒアリング内容を紹介するので、ぜひご覧ください。

(注)この記事では、実際に屋外にある広告以外に、スマートフォンやPC、テレビなどを通さず、掲示してある場所を通りかかった人の目に入る広告も、OOH広告として扱います。

2 広告を通じて手渡す「想いを込めたお守り」

ここでは、生活者起点のマーケティング支援会社であるネオマーケティング(東京都渋谷区)が2023年に行った、乳酸菌タブレット「おなかはかせ(現在は販売終了)」のOOH広告を紹介します。この広告は、

若い世代に、乳酸菌タブレットを効果的にアピールすること(認知度アップ)

を目的に実施され、2023年1月27日から7日間、小田急線新宿駅構内に貼り出されました。

「本番で集中したい受験生をおなかはかせは応援します。」という文言と共に、ポスターに貼り付けられていたのは、実物のお守り。それも、プロジェクトメンバーが実際に神社へ持って参詣し、ゲン担ぎをしたものだといいます。

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本広告では7日間で約500個のお守りを配布し、大盛況になったそうです。成功のポイントは

「受験生」を明確なターゲットにして、期間(受験シーズン)や場所(通勤・通学の人が多い駅)を選定し、エモーショナルで想いが込められたアプローチを行った点

です。

どのような思いで広告を作ったのか、どのような点を工夫したのかなどを、「おなかはかせ」事業責任者であるネオマーケティングの加藤 賢大(かとう たかひろ)氏に聞きました。

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「(広告制作時は)ただひたすら、悩みを持つ受験生を応援したい、という気持ちでした。人通りの多い駅構内でのピールオフタイプ広告であれば、目に入った受験生や保護者の方にお守りを持って帰ってもらえるかもしれないと思い、この形を選びました」(加藤氏)

「ピールオフ」とはそもそも、「剥がす」という意味。ピールオフタイプ広告は、ポスターにグッズを貼り付け、それを見た人が剥がして持って帰ることのできる広告のことです。思いが詰まったお守りを手渡す手段としては最適でしょう。

また広告のデザインについても、次のように語ります。

「お守りを貼り付けるポスター本体のデザインにもこだわりました。お守りがメインなので背景は主張しすぎず、けれど、“お守りで受験生を応援したい!”というメッセージはきちんと伝わるよう、絵馬風の木目のデザインなども盛り込んだものを自社で制作しました」(加藤氏)

実際に貼られた広告を見てみると、

  • 明確なメッセージ
  • コンセプトに合ったデザイン
  • ピールオフすることで文字が見える仕組み

といった具合に、随所からこの広告にかける想いが感じられます。

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また、期間中は思いも寄らない苦労もあったそうです。

「予想以上に、お守りがすぐにさばけてしまうことが判明したんです。半日に一度はお守りを補充しに新宿駅に行ったりして、期間中はなかなか大変でした……。けれど、メンバーが願掛けしたお守りは全て、配り終えることができました。結果的に認知度アップにもつながり、とても充実したプロジェクトになりました」(加藤氏)

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努力のかいあって、広告の開始前と比べてSNSのインプレッション数は1.76倍、サイトのユニークセッション・ユニークユーザー数は2.7倍まで上昇したそうです。

また、「おなかはかせ」のプロジェクトでは、広告が貼り出されるまで毎日(30日間)、プロジェクトメンバーがお守りを手に健康祈願を行う様子を、XとInstagramのアカウントに投稿。SNSでの宣伝を組み合わせることで、若い世代に効果的なアプローチを行いました。

実際、ピールオフタイプ広告の写真を撮って、SNSにアップロードする方もいらっしゃったそうです。プロジェクトメンバーの「受験生を応援したい!」という情熱が、ピールオフタイプ広告によってターゲットにきちんと伝わったのでしょう。

ネオマーケティングの事例から、OOH広告は、

利用者(特に広告のターゲット)が多く行き交う場所を確保する

というポイントを押さえることが重要だということがわかります。また、

対象物(貼り付けるもの)がなくなり次第、補充する時間と人員が必要

という手間もかかりますが、従来より幅広いターゲットにとがったアプローチを与え、自社製品や自社サービスの認知度を高めることが可能といえます。

以上、実際にユーモアのあるOOH広告を出しているネオマーケティングの事例でした。以降では、この章のピールオフタイプ広告も含め、OOH広告の種類を次の3タイプに分けて紹介します。

3 ポスター~ビジュアルと文言でシンプルに勝負

ポスタータイプ広告は、街中で最もよく見かける屋外広告です。大まかな概要は、下の図表の通りになります。

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設置場所は駅、バス停、道路脇など多岐にわたり、用意するものはビジュアル、文言、印刷物。

最も手数が少なく、うまくいけば、かなりの手間対効果を得られる

ことが利点です。

一見簡単そうに思えますが、シンプルなだけあり、自社商品を効率的に宣伝するためには、かなりとがったアプローチが必要です。

例えば、ただ単に商品の写真・宣伝の文言・自社のロゴをデザインしたポスターを作るのではなく、

コピーライターを雇い、ユーモアのあるキャッチコピーを考案する、デザイナーと連携してカメラマンやモデルを用意する

など、広告の前を通りかかった人の視覚と好奇心を刺激するような工夫が必要不可欠です。

4 ピールオフ~「自分で手に取る」体験を提供

ピールオフタイプ広告は、ポスタータイプ広告に試供品やステッカー、カードなどを貼り付け、通行人がそれを剥がして持ち帰ることができるタイプの、近年流行している広告です。大まかな概要は、下の図表の通りになります。

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特に人通りの多い駅や学生街、または商業施設の中などで実施されることが多く、ポスタータイプ広告と比べると、貼り付けるものも必要になってくることから、費用も手間もかかります。

しかし、希求力が強く、影響力が大きいのも確かです。基本的に軽量で落下しづらいものであれば貼り付けることができますので、例えば、化粧品やマスクなどのサンプルを貼り付け、

自社商品に興味がある人が直接手に取れる

ことが大きな利点です。

また、コミックやドラマなどのピールオフタイプ広告では、通行人がステッカーやカードなどを剥がしていくことによって、ポスターの全容が見えるようになる仕組みも多用されます。毎日の通勤・通学途中にだんだんとポスターの全容が明らかになっていくことによって注目をあおり、より強い宣伝効果を得ることができます。

5 サイネージ~より的確なターゲティングが可能

サイネージタイプ広告は、ポスタータイプ広告、ピールオフタイプ広告とは違い、特定の場所に設置されたサイネージ(画面)に、「映す」という手法が取られる広告です。大まかな概要は、下の図表の通りになります。

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サイネージタイプの広告は、東京駅や新宿駅などのターミナル駅をはじめ、商業施設やサービスエリア、ゴルフ場、あるいは高層マンション、ビルのエレベーター内などにも設置されています。ポスター

タイプ広告、ピールオフタイプ広告と比べて最も大きな利点は、

広告に動きをつけることが可能であること

です。また、画面がある場所であればどこでも設置できるので、

「富裕層」「ファミリー」「若者」など、自社商品を宣伝したいターゲットに合わせて、より的確な時間帯・場所に掲示することが可能

です。

以上(2025年4月作成)

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画像:ネオマーケティング

ブログでポルシェを300台売った“ブルドーザー”が語る販路開拓の勘どころ/販路開拓事例集

1 今度はテスラジャパンに挑む

「ブログでポルシェを300台売った」という異色の実績を持つ、株式会社ストーリーテラーズ代表取締役、通称“ブルドーザー”こと高野(こうの)美奈子さん。

「本当にいい会社に光が当たる世の中をつくりたい」

その想いのもと、高野さんはとにかく行動を続けています。企業ごとのストーリーを丁寧に紡ぎ出し、それを記事や動画といったコンテンツにして発信。そして販路開拓も突き進めます。気持ちと実際の行動の両方があるからこそ、高野さんの言葉には、説得力があります。

今回、高野さんはなんと、ゼロからテスラジャパンにアプローチし、最終的には社長へのインタビュー記事の掲載まで実現しました。この、ゼロからテスラジャパン社長にまでつながった「高野さん流テスラジャパンモデル」を横展開した販路開拓を行い、高野さんは今、大阪で、八尾市や東大阪市の製造業の“魅力発掘隊”としても絶賛活躍中です。

このインタビューでは、そんな高野さんに「販路開拓の勘どころ」を、実際のエピソードを交えて語っていただきました。

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2 質問「これまで販路開拓やチャンスを切り開く中で一番大変だったことは?」

「一番大変だったのは、キーマンにたどり着くことです」

明確な目的は「テスラジャパンの社長に会う」ことでしたが、最初はメール・郵送・直接訪問など、あらゆる手段を試しても反応はなし。ゼロからの飛び込みだったので、それも当然だったかもしれません。

関西から東京まで出向いたものの、企画書を手渡すことができなくて入り口のポストに投函する場面もあった高野さん。まさに“ブルドーザー”の異名を体現する行動です。

しかし結果が出なかったため、戦略を一度練り直すことに。

そこで見つけたのが「テスラオーナーズクラブジャパン」(クラブ)という団体。高野さんはオーナーとしてこのクラブに参加し、更新が止まっていたウェブサイトに対して「無償で更新をお手伝いしましょうか?」と提案します。

キーマンである団体の代表理事を見つけてつながり、信頼関係を築いたうえで、コンテンツ執筆を担当。その後、代表理事から「こんなに良いコンテンツを書いてくれるなら、社長インタビューもどうですか?」という流れになり、テスラジャパンの社長へとつながっていきました。

「回り道のようで、結果的に、それが一番の近道だったんだと思います」

高野さんは今回、テスラジャパンにチャレンジしていく中で、「仕事につなげたい」から「お役に立ちたい」というような気持ちに変わっていったことなどを、正直に教えてくださいました。ここは高野さんの言葉をそのままお借りしてご紹介します。

「当初は、テスラジャパンとつながることで何か仕事につながればという思いがありました。正直、打算的な気持ちもありましたし、ビジネスとして合理的に動こうと考えていました。

ただ、実際にプロジェクトに関わり、社長とも直接やり取りをさせていただく中で、『仕事がほしい』という気持ちは次第に薄れていきました。

それ以上に、目の前のことに価値を提供したいという気持ちが大きくなっていったんです。

結果として、自分が持っているスキルや価値――たとえば『発信の支援』といったミッションに沿った行動を起点に、テスラオーナーの方々から別案件の相談をいただいたり、新たなビジネスの可能性が広がりました。

改めて実感したのは、『先に与える側に立つこと』が、長期的な信頼や販路拡大につながるということ。

目の前の利益だけを追うのではなく、ミッションドリブンで動くことの大切さを、今回の経験から学ばせてもらいました。

今回の出会いと機会に、心から感謝しています」

目の前のことに「お役に立ちたい」という気持ちで精一杯集中して力を尽くす。そして感謝の気持ちを持ち続ける。こうしたことも、とても大事なのではないかと思います。

3 高野さんの販路(チャンス)開拓のポイントは4つ

1)チャンスに気づく力

「テスラオーナーズクラブジャパン」を見つけたとき、そのサイトが更新されていないことに着目し、「ここなら自分の力が活かせるかも」と気づいたことが始まりでした。

2)キーマンを見つける根気と洞察力

メーリングリストやメールのやり取りの中から、どの人が実際に意思決定しているのかを丁寧に読み取る。肩書きだけでなく、宛名やメールのやりとりなどからキーマンを見つけ出す観察眼と根気。これも大事なポイントです。

3)自分が役に立てることをしたいですという姿勢

高野さんも改めて振り返っていますが、最初から何かを売り込むのではなく、「お金にはならなくても、役に立ちたい」という気持ちで関わる姿勢が重要。高野さんの「ウェブサイト更新、私ならお役に立てるかもしれません」という申し出が、のちの社長インタビューにつながりました。ビジネスはボランティアではありませんが、根底にある「役に立ちたい」という気持ちは欠かせないものです。

4)いいコンテンツを作る力

実はこれが一番基本、大前提といえるでしょう。高野さんのコンテンツは、読んでいて分かりやすく、そして面白い。きれいごとだけでなく、現場のリアルも伝えられる。コンテンツとはつまり高野さんの商品です。「商品がいい」のがまず大事。「こういういいコンテンツにしてくれるなら、社長インタビューもぜひ」となるのです。

ちなみに、高野さんが「コンテンツを作るうえで大事にしていること」は、本記事の最後に掲載しています。

4 質問「販路開拓に必要な情報とは? どうやって入手するか?」

「自分で動く。自分で動いて情報を取りに行く。これが一番大事だと思います」

「最初は『テスラジャパンの知り合い、誰かいませんか?』と周囲に聞いて回っていましたが……」と語る高野さん。やがて、自分で動くことの大切さに気づいたそうです。

実際に自ら行動していると、「こういうところなら入り込めるかも」と周囲からアドバイスが受けられたりすることもあったとのこと。

「紹介すること」も同じです。自ら動いている人には紹介したくなるし、動かない人には紹介したくなくなるものです。

5 最後の質問「販路開拓で一番大事なこととは?」

「大事なのは、役に立ちたいという気持ちと行動。そしてコンテンツの良さ」

役に立ちたい気持ちがあったら次は行動が大事。ただし、役に立ちたい気持ちがあってもコンテンツ(商品)がダメだと、「いい人だけど、コンテンツ(商品)はイマイチ」で終わってしまう。

逆に、コンテンツが良くても、最初から「売りたい売りたい」では人は逃げる。つまり、

役に立ちたいという気持ち × 行動 × 商品の質

この3つが揃うのが販路開拓に最も大事なことだと、高野さんは自分の経験を振り返りつつまとめてくださいました。

「これから10年で1万社。本当にいい会社に光が当たるように頑張ります!」

楽しそうに、そして覚悟を持ってそう語る高野さん。

高野さん、今回の販路開拓インタビューにお答えいただきありがとうございます!

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高野さんがコンテンツで大事にしていること

  • 読み手への配慮(わかりやすさ、敬意、感情)
  • 読み進めたくなる構成力(興味がない人でも読める設計)
  • 内容そのものの誠実さ(マウントを取らない、嫌な気持ちにさせない)

読み手の気持ちに配慮しつつ、自然と引き込まれ、気づけば心に何かが残るような構成を、丁寧に、誠実に。読んでよかったと思ってもらえることを大事にしている。

こうした点は、テキストコンテンツのみならず、高野さんのつくる動画からも伝わってきます。

以上(2025年4月作成)

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画像:株式会社ストーリーテラーズ提供

【かんたん法人税(5)】交際費・会議費・福利厚生費などに係る税務

1 主な販管費に係る税務上の重要なポイント

シリーズ第5回では、主な販売費および一般管理費(以下「販管費」)に係る税務上の取り扱いに注目します。法人税の課税所得を計算する上で、販管費は損金算入できるものが多いです。しかし、

科目によっては一定金額、または全額損金に算入できないものもある

ため、税務担当者は科目ごとの基本を理解する必要があります。

また、中小企業のうち、とりわけ同族会社においては、

業務上の費用と私的な費用の区別が曖昧となりがちで、税務調査で指摘される

ことも多いです。こうした区別をきちんとすることはもちろん、業務上の費用でも私的な費用と誤解を受けることがないように、所定の書類などをそろえておきましょう。

販管費に係る税務上の重要ポイントは次の通りです。

  • 交際費の損金算入限度額
  • 10000円以下の接待飲食費
  • 交際費と会議費の区別
  • 業務上の交際費と私的交際費の区別
  • 福利厚生費の範囲
  • 寄附金の損金算入限度額とその範囲
  • 租税公課
  • 業務委託費(グループ会社などに対するもの)の取り扱い

2 販管費に係る税務上の取り扱いと留意点

1)交際費・会議費

1.交際費の損金算入限度額の算定方法

原則として、交際費は全額が損金算入できません。しかし、取引先との接待飲食費(社外飲食費)の50%相当額については、損金算入できます。また、中小法人については、特例として年800万円まで損金算入が認められています(「定額控除限度額」といいます)。

つまり、中小法人は社外飲食費の50%相当額と定額控除限度額とを比較し、いずれか多い方を損金算入限度額として選択することができます。

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上記の「社外飲食費」については、帳簿書類に次の項目を記載しておく必要があります。税務調査においては、この記載事項についてチェックされるので注意しましょう。

  • 飲食等を行った年月日
  • 飲食等に参加した得意先や仕入先等の氏名または名称およびその関係
  • 飲食費の額ならびに飲食店の名称および所在地
  • その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項

2.10000円以下の接待飲食費の取り扱い

取引先との接待飲食費のうち、1人当たり10000円以下のものは交際費の範囲から除かれます(以下「少額交際費」)。従って、少額交際費は上記1.の損金算入限度額に含めることなく損金算入できます。ただし、少額交際費として取り扱うためには、帳簿書類に上記の記載事項の他に、

  • 飲食等に参加した者の人数

も追加で記載する必要があります。

3.交際費と会議費の区別

会議や打ち合わせで提供されるお茶やお菓子、昼食代といった飲食費は、通常は会議費として損金に算入できます。ただし、昼食代であっても、通常の金額を超えるようなものについては交際費とされます。

どの程度までが会議費として認められるかについて、税務上では明らかにされていません。しかし、例えば居酒屋や高級飲食店などにおける飲食費など、一般的な会議では利用されなそうな場所での飲食費などは、税務調査において交際費と指摘される可能性が高いです。

4.業務上の交際費と私的交際費の区別

お酒を共にする接待などは、取引先と懇親を深めることができるでしょう。中小企業においては、一定限度額まで損金算入することが認められています。

一方、経営者1人での飲食など私的なものについては、税務上の交際費とはされずに「役員給与」とされ、損金算入できません。なお、役員給与の詳細な取り扱いについては、下記のリポートをご参照ください。

また、取引先との接待費用であっても、帳簿書類でそれが証明できない場合や領収証が無い場合などは、税務調査において私的費用として疑われる可能性もあるので注意しましょう。

2)福利厚生費

役員や従業員(以下「従業員等」)の慰安のために行われる旅行や新年会・忘年会などに通常要する費用で、おおむね従業員等の全員を対象とする場合は福利厚生費とされ、損金算入できます。また、従業員等またはその親族等のお祝いやご不幸などに際して、一定の基準に従って支給される金品(例えば、結婚祝いや香典など)も福利厚生費として損金算入できます。

一方、特定の従業員等のみを対象とした旅行費用や、特定の人だけ基準を超える高額な香典などは福利厚生費とされず、税務上は「給与」として取り扱われます。「給与」と認定されると、所得税の源泉徴収が必要ですし、役員の場合は費用そのものが損金算入できません。

税務調査においては、例えば社員旅行の場合は対象者が誰であるか、香典などについては、一定の基準(社内規程など)通りに支払われているかなどをチェックされるので注意しましょう。

3)寄附金

1.寄附金の種類と損金算入限度額の算定方法

法人税法において寄附金は次の4種類に区分され、それぞれ損金に算入できる金額(損金算入限度額)が定められています。

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2.税務上の寄附金の範囲

国・地方公共団体や一定の公益法人等(以下「国等」)に対する寄附金は会社が意図して行うものであり、領収証も発行されるため、他勘定で処理するといった誤りは少ないでしょう。

しかし、税務上の寄附金はこういった国等に対する意図した寄附金よりも非常に範囲が広く定義されています。例えば、

資産を時価より低く譲渡した場合、「譲渡した相手方に利益供与を行った」として、税務上は時価と譲渡価額との差額が寄附金として取り扱われる

ことがあります。

また、

返済能力のある取引先に対する売掛金を債権放棄した場合なども、「取引先に対して利益供与を行った」として、債権放棄額が寄附金として取り扱われる

こともあります。このように税務上の寄附金は、一般的な用語で使われるものより非常に範囲が広いため注意しましょう。もし判断に困るケースが出てきた場合には、税理士などの専門家に相談することが重要です。

4)租税公課

租税公課にはさまざまな種類がありますが、税務上、その種類によって損金に算入できるものとできないものとがあります。また、損金に算入できるものであっても、その損金に算入する時期が決まっています。主な租税公課の取り扱いは次の通りです。

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5)業務委託費

自社で作業が不可能な業務などを外部に業務委託した際に支払う業務委託費については「役務提供を受けた日」において損金に算入されますが、業務委託先がグループ会社や親族の経営する会社の場合には、業務委託費の金額を意図的に操作することも可能なため、税務調査においては重点的に調べられます。

従って、グループ会社などに対する業務委託費については、

金額の決定過程を税務調査時に詳細に説明できるよう、関係書類などを事前に準備する

ことが重要です。

以上(2025年4月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 富永慎也)

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画像:buritora-Adobe Stock

【中堅社員のスピーチ例】お客さまから頼られるための3つのポイント

【ポイント】

  • お客さまと接する際は、会社としてだけでなく自分個人を信頼してもらう必要がある
  • それには「お客さまへの理解」「自社の商品・サービスの知識」「人間性」が不可欠
  • 上司が責任を取ってくれるのは、自分がお客さまの信頼を得るために努力した先の話

新年度が始まり、このたび私はある取引先のメイン担当になりました。昨年度までは上司がメイン担当で、私はサポート役に徹していました。そのため、お客さまとの会議でも、「上司の邪魔にならないように」と発言しないことがほとんどでしたが、これからは自ら前に出て、積極的にコミュニケーションを取らなければなりません。だから、今年度は「会社ではなく、私という個人をお客さまに信頼してもらう」ことを目標に掲げます。そのための第一歩として、まずは以前上司から教わった「お客さまから頼られる人が持つ3つのポイント」を実践してみたいと思います。

1つ目は「お客さまへの理解」です。お客さまが抱えている課題は何か、ニーズを理解しないと、自社の商品やサービスをどのように勧めればよいのか分かりません。まずは、お客さま自身のことだけでなく、お客さまがいる地域の特性など、周辺情報も含めて頭にたたき込みます。

2つ目は「自社の商品・サービスの知識」です。自社の商品・サービスは、競合他社と比べて何が優れているのか、お客さまが抱えている課題をどのように解決できるのか、その良さを提供する側として正確に理解しておかなければなりません。だから、実際に商品・サービスを使ってみて良い点・悪い点を分析して、もし、お客さまの要望に合わないときも代替策を提案できるようにします。

3つ目は「人間性」です。具体的には、「礼儀正しく約束を破らないこと」「相手の立場に立って、必要な物事をよく考えられること」だといえるでしょう。ただ、「人間性」は一朝一夕では身につかないので、まずはお客さまから「常に自分たちを気にかけてくれている、何か困ったときには話を聞いてもらえそうだ」と思ってもらえるよう、「マメな連絡を欠かさないこと」を徹底します。

これまでの私には「何かあっても上司が何とかしてくれる」という甘えがありました。もちろん、私がメイン担当になった後も、上司は「自分が責任を取るから安心していい」と言ってくれますが、それは私がお客さまの信頼を得るために努力を重ねた先にある話だと思っています。先ほど口にした「会社ではなく、私という個人をお客さまに信頼してもらう」という目標を口だけで終わらせないよう、教わった3つのポイントを実践し、成果を上げ、皆さんにたくさんの良い報告ができるよう、頑張っていきます。

以上(2025年4月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【かんたん法人税(4)】人材(従業員)に係る税務

1 従業員に係る税務上の重要なポイント

シリーズ第4回では、従業員に係る税務の取り扱いに注目します。従業員に支給する給料や賞与、退職金などは、法人税の課税所得を計算する上では、原則として支給額の全額が損金算入されますが、重要なのは損金算入のタイミングです。

税務調査において、従業員に関する税務で重要視されるポイントは、

  1. 従業員に対する給料等の損金算入のタイミングが適切であるか否か
  2. 損金算入をする上での書類が適切に保管されているか

といった点です。損金に算入するタイミングを誤った場合、一時的に想定外の税金を追加納税しなければならないケースもあり得るので注意しましょう。

また、同族会社においては、従業員に対する給料であっても、場合によっては支給額の全額が損金算入されないケースもあるので、併せて注意する必要があります。

従業員に係る税務上の重要ポイントは次の通りです。

  • 決算賞与の未払計上の損金算入
  • 従業員の退職金関連(一時金、各種年金制度の拠出金、退職給付引当金)の取り扱い
  • ストック・オプションの取り扱い
  • 過大な使用人給与の損金不算入

2 従業員に係る税務上の取り扱いと留意点

1)決算賞与の未払計上の損金算入

1.従業員に対する賞与の損金算入時期の原則

従業員に対する賞与の損金算入時期の原則的取り扱いは次の通りです。

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図表1の通り、あらかじめ定められている支給予定日(支給予定日が定められていない場合は実際に支給された日)に損金算入されることとなり、支給予定日前に未払計上して損金に算入することは、原則として認められていません。

2.決算賞与の未払計上の損金算入の特例

1.の原則的な取り扱いに対し、決算賞与(夏季・冬季賞与のように定期的に支払われる賞与ではなく、決算上の利益に基づき支払われる賞与)については、未払計上し、支給予定日前に損金算入できる特例があります。この特例を適用するには、次の要件の全てを満たす必要があります。

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(要件1)の通知については、書面か口頭かについてまでの規定はありません。しかし、税務調査においては適正に通知を行っていることを証明するためにも、書面にて作成し、かつ、各従業員に署名してもらうのが賢明です。

また、(要件2)については、通知をした従業員の全員に対して決算賞与を支払う必要があります。例えば、通知をした日から支給日までの間に退職した人について支給しないケースは、この要件を満たさないこととなるため注意が必要です。

この特例を適用することで、未払計上した分、課税を繰り延べること(本来なら当事業年度に係る法人税を、翌事業年度以降に持ち越すこと)ができます。ただし、要件を1つでも満たさない場合は、原則通り、「支給した日」に損金算入されます。この点は税務調査でも重点的にチェックされる可能性が高いので、注意しましょう。

2)従業員の退職金関連の取り扱い

1.退職一時金の取り扱い

従業員に支給する退職一時金については、「退職日」「退職金支給日」「就業規則に明記されている支給日(退職日から〇カ月以内など)」のいずれかのタイミングを選択して損金算入できます。

例えば3月決算法人で、従業員が3月末日に退職し、かつ退職金を4月末に支給した場合、3月末日あるいは4月末日のいずれでも損金算入が可能となるため、当事業年度の損益状況に応じて選択できます。

2.各種年金制度の拠出金

中小企業が従業員の退職金を積み立てることを目的として、中小企業退職金共済などの制度に加入し、掛金を支払うケースがあります。この掛金については「実際に払い込みをした日」に損金算入されます。

従って、期末において当月分を未払計上したとしても、実際の払い込みがなされていないことから、未払計上分については損金に算入されません。税務調査においては、特に決算前後に計上された掛金の払込時期についてチェックされるので注意しましょう。

3.退職給付引当金

従業員の退職に伴う退職金の支給に備えて退職給付引当金を設定し、退職金相当額を社内に留保するケースがあると思います。ただし、税務上、この退職給付引当金の繰入額についての損金算入は認められていません。

従って、従業員の退職金に係る費用については、実際に従業員が退職し、退職金を支給した場合において、上記1.の退職一時金支給に係る損金算入時期に従って損金算入されることになります。

3)ストック・オプションの取り扱い

ストック・オプション制度とは、法人が従業員の労働の見返りとして、一定の期間(権利行使期間)中に、あらかじめ定められた価額(権利行使価額)で自社の株式を取得できる権利を、従業員に付与する制度です。

ストック・オプションを付与された従業員は、自社株式の株価が上昇した場合でも、権利行使価額にて株式を取得することができるため、その値上がり分について利益が得られます(その従業員が得た利益は、原則として権利行使をした際に「給与所得」になるので所得税が課されます)。

一方、会社側では、ストック・オプションを従業員に対する給与(ストック・オプション費用)として費用計上します。ストック・オプション費用については、従業員が付与されたストック・オプションにつき、権利行使をして株式を取得し、従業員に対し所得税が課されるとき(給与等課税事由が生じたときといいます)に損金算入されます。従って、ストック・オプションを従業員に付与した時点では、このストック・オプション費用は損金算入できません。

なお、ストック・オプションについては、権利行使価額や権利行使期間において一定の要件を満たす「税制適格ストック・オプション」があります。詳細な説明は省略しますが、税制適格ストック・オプションである場合、従業員が権利行使したときに、従業員に対して所得税(給与所得として)が課されません。

会社でストック・オプション費用を損金算入するのは、給与等課税事由が生じたときと決められているため、税制適格ストック・オプションの場合、ストック・オプション費用を損金に算入できない点に留意しましょう。

4)過大な使用人給与の損金不算入

従業員に対する給与は、原則として全額損金に算入されます。ただし、同族会社の場合、法人の役員と特殊関係にある従業員(以下「特殊関係使用人」)に対する給与については、支給された給与のうち、不相当に高額と判断される部分の金額については損金不算入として取り扱われます。

これは、一般の従業員については雇用契約に基づき、双方の合意のもとで給与が決定されるのに対し、特殊関係使用人に対しては手続きが不透明で、かつ不相当に高額な給与となる可能性があるからです。給与額を調整して、法人税を不当に減少させることを防ぐため、このような取り扱いとなっています。特殊関係使用人とは次の者をいいます。

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支給した給与が不相当に高額か否かの判断は難しいですが、通常は特殊関係使用人の職務内容や、一般の従業員に対する給与の支給状況等を考慮して判断されます。

例えば、一般の従業員と同年齢・同職務にもかかわらず、特殊関係使用人の給与が著しく高い場合には、差額部分について損金不算入とされる可能性があります。特殊関係使用人に対する給与の決定過程については、税務調査時に詳細に説明できるよう、関係書類などを事前に準備しておくことが重要です。

以上(2025年4月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 富永慎也)

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画像:pixabay

令和7年度の新入行員研修が行われました!

令和7年4月11日(金)、徳島大正銀行では、新入行員59人を対象に「四国八十八箇所巡り」のお遍路体験研修を実施しました。

【研修の目的】

・各自が目標にチャレンジし最後まで諦めない強い意思を持たせること
・同期との連帯感を醸成し、高い目標に対する達成感や充実感を経験させること
・四国八十八か所の歴史・文化を勉強し体感させること

【お遍路とは】

弘法大師・空海が修行した八十八箇所の霊場を回る巡礼の旅のことです。
霊場は徳島の霊山寺から始まり、高知、愛媛、そして弘法大師生誕の地である香川までの4県にわたって続き、総距離1,400kmにも及びます。

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1番札所「霊山寺」で板東頭取があいさつし、「目標を達成する力や同期との連帯感を育んでほしい」と述べて激励しました。

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出発前の新入行員に、本日の意気込みを聞いてみました!

天野さん

【天野さん】祖父が徳島出身で小さい時にお遍路を歩いたことがあり、その時の記憶が蘇ればと思っています!

山本さん

【山本さん】すごく楽しみにしていたので、みんなと一緒にがんばりたいと思います!

2番札所「極楽寺」ではご住職から参拝の作法を学び、社会人生活に向けありがたいお言葉をいただきました。

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この後、最長で11番札所「藤井寺」まで、約37kmを歩いて巡りました。
新入行員研修は最長5月2日まで続きます。
今後も新しい挑戦を共に乗り越え成長していくことと思います。皆さまにはあたたかく見守りいただけますと幸いでございます。

以上(2025年4月作成)

目標未達の部下Iさんから思いつきのような企画提案が、どう声をかけますか?/ 武田斉紀の『次世代リーダーに必須の コミュニケーション習慣』【実践編】(10)

書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:コミュニケーションに関わる知識やノウハウは、頭では理解できても、実際の場面で使いこなせるようになるまでには高いハードルがあるものです。
  • 解決策:前回シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』での知識やノウハウを聞いただけではまだ一歩を踏み出せない、あるいはトライしてみたがうまくいかないという方のために、新シリーズでは【実践編】として社内の“あるある”場面を想定した質問に対して一緒に考えながら、実践イメージを膨らませていただきます。またリーダー側の視点とは別に、若手社員側の視点による上司世代との上手な付き合い方のヒントも紹介していきます。リーダー世代と若手社員とのコミュニケーションギャップを埋めることは、世界を舞台にスピーディな成長をめざす日本企業にとっても喫緊の課題だからです。

1 目標未達の部下Iさんから、ある日思いつきのような企画提案が、どう声をかけますか?

今シリーズは、前シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』の実践編としてお送りしています。毎回実際にありそうなさまざまなシチュエーションを想定して、その際にどんなコミュニケーションを取るのが望ましいかを一緒に考えていきます。

前回第9回のテーマは「部下のプライベートの問題」でした。職場でのさえない表情が気になっている部下から一時的な早退希望を相談された際のコミュニケーションのあり方について、上司、部下、それぞれの立場から考えてみました。いかがだったでしょうか。

今回は課題[事例9]です。以下に再掲しますので、前回皆さんが考えてみた解答を思い出してみてください。まだ考えていなかった方もぜひ考えてみてください。自ら考えないで、解説だけを読んでいても身に付きませんよ。

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Q.部下のIさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声をかけますか? また、それを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください。書かれているさまざまな要素を考慮してみましょう。

[事例9]

〇部下のIさんが、ある日の朝突然、「新しい企画を考えたんですけど、ぜひ聞いてください」と興奮気味に話しかけてきました。

〇課の目標達成の期限が間近に迫っていました。課の多くのメンバーは、すでに目標を達成したりほぼ確実にしたりしていますが、Iさんを含めた数人の達成がもう少しのところで見通せないため、課としての目標達成が不確実な状況です。

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テーマは「モチベーションの育て方」です。これまで同様、起こっている事象を整理することから始め、現場で起こっていることの可能性を探ってみましょう。皆さんの職場でも似たようなケースはありませんか。

2 期初に、上司として部下にどんな要望をし、評価の基準を示したか

日々の会話において、部下との間でこんなやりとりをしていませんか。

Iさん「新しい企画を考えたんですけど、ぜひ聞いてください」

上司「Iさん、いい加減にして! うちの課が今どういう状況か分かってる? 目標達成の期限目前なのに、あなたと何人かが目標未達のせいでみんなが困ってるんだよ!」

私自身もかつて現場の上司としての経験があり、当時今回と同じようなシチュエーションに遭遇していたら、感情に任せてキレそうになっていたかもしれません。

部署の目標達成の結果いかんで、報奨金や賞与なども変わるとなればなおさらです。頑張って既に目標を達成している他のメンバーの気持ちを思えば、個人の目標達成に集中していない、手を抜いているように見える部下に対して厳しく当たってしまう気持ちは分かります。

けれども一度立ち返っていただきたいのは、「上司であるあなたは、メンバーに対して何を求めてきたか」という点です。目標を定めた期の初めにおいて、課を率いる立場として部下にどんな要望をし、どんな評価の基準を示したでしょうか。

「個人や組織の取り組みによって何かを成し遂げていく」のが「仕事」です。したがって、目的や目標のない業務は仕事とはいえません。皆さんの部署ではどうですか。期初にどんな目標とその評価基準が示されたでしょうか。

組織を率いる立場の上司は、一定期間(1年というスパンもあれば、それを3カ月や1カ月に区切っている場合もあるでしょう)に組織全体と所属する個人がなすべきこと[=目標]、およびその評価方法[=評価基準]を、あらかじめ示さなければなりません。

「うちは毎日が接客のルーティン業務だから、目標も評価基準も明確に定めていません」というのでは、組織や会社の未来が心配です。

どんな組織にも、現状の課題は常に存在します。毎日のルーティンの質や生産性をさらに向上させ改善していってこそ、競合の中で生き残り成長できるのです。漫然と日々の業務をこなしているだけでは後退していくばかり、数年後には部署も会社もなくなっているかもしれません。

仕事を始める前に目標や評価基準を提示しないのは、ゲームでいえばルールがないのと同じです。目指すゴールも、達成したときのごほうびや勝ち負けの基準(評価の基準)も見えないようなゲームに、誰も真剣に取り組もうとはしないでしょう。

まして、「仕事」は楽しいだけの遊びではなく、個人の生活や人生のかかった「報酬を前提とした契約」なのですから。

3 期初に示したゲームのルールで部下に目標達成を要望し、支援する

期初に「今期、課と個人に求めることは目標に掲げた数値が100%(全て)であって、評価も100%その結果次第です」と決めて示していたのであれば、感情的な言い方は良くないとしても、先ほどのIさんへの上司の一言も分からないではありません。

とはいえ、せっかくの提案ですから「その新しい企画、今聞いたほうがいい内容ですか。目標の締め切り後でも遅くなければ、そこで聞かせてもらいますよ」と確認した上で、「提案はありがたいが、今は個人の目標数値の達成に100%集中してほしい」と働きかければよいでしょう。

そこで、部署と個人の目標数値達成の評価基準に占める割合が100%ではなく、仮に70%だとしたらどうでしょう。評価基準の残りの30%は、?業務改善や新たな取り組みへの新しい提案”で決まるとしたら?

もしかしたら、Iさんは「自分の目標がまだ未達で部署に申し訳ない。目標達成は諦めないが、残り30%のほうで結果を出せないか考えてみよう」と発想して、知恵を絞ったのかもしれません。新しい提案であれば、70%のほうの目標達成を進めながら、例えば移動時間にでも考えることができるでしょう。

そんな状況で、上司が先ほどの一言を言ってしまったら、Iさんはどう感じるでしょうか。私がIさんなら、上司に頭ごなしに否定されて「だって期初に目標と評価基準の30%は“業務改善や新たな取り組みの新しい提案”で決まるって言ったじゃないですか」と怒りたくなります。Iさんの仕事へのモチベーションがどうなるか心配です。

上司が期の途中で、特段の理由なく勝手に、期初に示したルールを途中で無視したり変更したりしてはいけません。Iさんに限らず、他のメンバーもモチベーションが下がる可能性があります。その結果、課の70%のほうの目標達成ももっと難しくなるかもしれません。

繰り返しますが、上司としては期初に示したゲームのルール(目標と評価基準)で部下に目標達成を要望し、支援していきましょう。

ちなみに途中でのルール変更が一切だめだと言っているのではありません。何らかの会社としての方針転換などによって、期中に見直すべきケースもあるでしょう。その際は課の全員を集めて、背景を説明しながら新たな目標と評価基準を示し、共有し直せばいいのです。

4 上司が最初にかけるべき言葉とは?

部下のIさんに最初にかける言葉は次のようなイメージです。

「新しい企画について聞かせてもらうのは楽しみですが、それは今期中に取り組んだほうがいい企画ですか」

Iさんから緊急性が高いとか、今期の目標達成にも関わる内容だと話があれば、

「分かりました。ではすぐに時間を取るので、詳しく聞かせてください」

と言って、忙しかろうと時間を取ってじっくりと「傾聴」してください。

もし、そこまでではないという反応であれば……

「では新しい企画については、締め切り後に時間を取るのでぜひ聞かせてください。今はIさん自身も課も今期の仕事の評価基準の〇%を占めるメインの数値目標の達成が厳しい状況です。Iさんが〇〇や〇〇で頑張っているのは知っていますが、現状は厳しい。目標達成に向けて諦めずに一緒に頑張っていきましょう!」

Iさんが明らかにサボっているのであれば話は別ですが、目標未達とはいえ本人なりに頑張っているのであれば、先にその頑張りを認めて(=承認して)、「褒めて」あげましょう。

人は、他人からいきなり欠点や改善すべき点を指摘されると、自己否定されたような気持ちになり、プライドも傷ついて素直に聞けないものです。しかしながら、先に良い所を認めて「褒めて」もらえると、改善点は割と素直に受け入れられ、行動にも移せるものです。

皆さんにも経験があるのではないですか。特にベテランや年配者になればなるほど、誰かに指摘されることはなくなるものです。年上部下を抱えている上司であれば、先に良い所をしっかりと認めた上で要望することで、相手の自主的な行動を促しやすくなります。

もちろん、最後の一言に挙げた「目標達成に向けて頑張っていきましょう!」という声かけだけで終わってはいけません。

現状と本人の計画や取り組みを確認した上で、期限までに確実に目標達成できるようにマネジメントするのが上司の仕事です。必要なら既に目標達成済みの他のメンバーの力も借りればいいでしょう。彼らだって課全体の目標を達成したいはずです。

5 上司は本人の希望そのままだけでなく、幅広い選択肢を用意しベストを探る

ポイントを整理しましょう。

【今回の3つのポイント】

1 感情的にならずに、期初に課と個人に対してどんな目標と評価基準を示して共有したのかを思い出す

2 新しい企画提案の緊急性や今期への寄与度をIさんに確認した上で、提案を今「傾聴」するべきか否かを判断する

3 Iさん個人のメイン目標の達成に向けて、現状と本人の計画や取り組みを確認し、頑張りを「褒めた」上で、確実に目標達成できるように「前向き発想」でマネジメントする

はたしてIさんは、個人と部署の目標達成の現状をどのように捉えて、新しい企画をあなたに提案しようとしているのでしょうか。可能性の選択肢はいろいろと考えられますね。となれば、取りあえず冷静になってIさんに質問し、「傾聴」してみましょう。

上司が感情的になって勝手な判断をしてしまうと、Iさん本人だけでなく、その状況を見たり、あるいは間接的に話を聞いたりした他のメンバーのモチベーションもが下がり、あなたへの信頼まで失いかねません。

片や、上記の【今回の3つのポイント】の点を踏まえて対応すれば、Iさん本人をはじめ、他のメンバーのモチベーション、あなたへの信頼も高めていけるはずです。そのためにも、まず冷静な「傾聴」が鍵になるのです。

最後に、逆に皆さんがIさんの立場だとして、できることを考えてみましょう。

できれば上司から質問される前に、こちらから個人と課の目標達成の現状をどのように捉えているのかを話してみたらどうでしょう。現状をちゃんと理解した上での提案と分かれば、上司の聞く耳も変わるというものです。

上司からの質問は、企画の提案の話だけにとどまらないことは容易に想像できます。メイン目標の達成についても、計画や取り組みを説明できるように準備しておくべきです。その上で期限までに確実に目標達成できるためのアドバイスを求めましょう。

6 若手部下のJさんが部署の業務に「タイパ悪くないですか?」、どう声をかけますか?

次回に向けた課題[事例10]が今シリーズ最後の事例です。【実践編】の総仕上げのつもりで、あなたなりに考えてみてください。

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Q.若手部下のJさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声をかけますか? また、それを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください。書かれているさまざまな要素を考慮してみましょう。

[事例10]

〇若手部下のJさんは、配属から間もないこともあって、部署全体の業務の流れはもとより、自身の業務にさえ精通できていません。そんなある日、Jさんは上司のあなたに「この業務ってタイパ悪くないですか?」と問いかけてきました。

〇そればかりか「先に先輩に話してみたんですが、“つべこべ言わずに自分の仕事を早く覚えろ”と怒られました。納得いかないです」と不満そうです。

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テーマは「仕事の任せ方」です。「タイパ」はご存じかと思いますが、「タイムパフォーマンス」のことです。起こっている事象を整理することから始め、現場で起こっていることの可能性を探ってみましょう。皆さんの職場でも似たようなケースはありませんか。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。日常で事例と近いシーンがあれば、ぜひ『新たな3つのコミュニケーション習慣』の実践にトライしてみてください。

次回もお楽しみに。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mail to: brightinfo@brightside.co.jp

※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。

『新スペシャリストになろう!』 https://amzn.asia/d/e8GZwTB

『なぜ社長の話はわかりにくいのか』 https://amzn.asia/d/8YUKdlx

以上(2025年4月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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