【労務のお仕事】社員が「退職」したとき

1 退職時の手続きの見落としに備えよう

社員の退職時は、退職届の徴求や雇用保険の手続きなど、やるべきことがたくさんあり、実務の抜け漏れが生じがちです。そこで、この記事では正社員が自己都合退職したことを想定し、必要な手続きをリストにまとめつつ、重要なポイントを紹介します。なお、便宜上、健康保険の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ)とします。

手続きリストは、

  1. 退職前または退職当日
  2. 退職後

の2段階に分かれています。また、

各手続きをオンライン化できるかについても記載

していますので、書類のペーパーレス化を検討したい場合などにもご活用いただけます。ただし、手続きで必要となる添付書類については省略していますので、その点は各書類の提出先などにご確認ください。

なお、入社時の手続きについて知りたい場合、こちらのコンテンツをご確認ください。

2 退職前または退職当日の手続き

一般的な退職前または退職当日の手続きは次の通りです。

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1)手続き書類の取得:健康保険被保険者証、退職所得の受給に関する申告書

健康保険被保険者証を返却できない(紛失したなど)場合、「健康保険被保険者証回収不能届」を年金事務所に提出すれば返却が免除されます。ただし、健康保険被保険者証の返却も健康保険被保険者証回収不能届の提出も、手続きは訪庁または郵送でしか行えません。なお、

2024年12月2日以降は、マイナンバーカードが「マイナ保険証」として利用できるようになった関係で、新規の健康保険被保険者証が発行されなくなっていますが、2025年12月1日までに退職した既存社員の被保険者証については、引き続き返却手続きが必要

なので、注意してください。また、「高齢受給者証」の交付を受けている70~74歳の社員については高齢受給者証も併せて返却が必要です(健康保険被保険者証も高齢受給者証も、2025年12月2日以降は回収不要で、社員が自分で破棄してよい)。

なお、2024年12月2日以降に入社した社員については、マイナンバーカードを取得していない場合、またはマイナンバーカードを保有しているがマイナ保険証登録をしていない場合に限り、

保険証の代替となる「資格確認書」の交付

を受けられます。この交付を受けた社員が退職する場合、資格確認書の返却義務が生じますので、漏れが生じないようにきちんと状況を把握しておく必要があります。

退職所得の受給に関する申告書は、社員が正しい税額で、所得税の源泉徴収を受けるために必要な書類です。取得しない場合、退職金の支給額に対し、一律で20.42%が源泉徴収されます。こちらはPDFなど、オンラインでの取得が可能です。

2)法定書類の作成:雇用保険被保険者離職証明書

雇用保険被保険者離職証明書は3枚複写となっており、書面の名称は、

  • 「雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)」(1枚目)
  • 「雇用保険被保険者離職証明書(安定所提出用)」(2枚目)
  • 「雇用保険被保険者離職票-2」(3枚目)

となっています。

雇用保険被保険者離職証明書(安定所提出用)と雇用保険被保険者離職票-2には、社員が離職理由に異議がないことなどを証明するための署名欄があります。社員本人の署名が原則ですが、帰郷その他やむを得ない理由により、社員本人の署名が困難な場合は、その理由を記載した上で会社の印を押印することが認められています。

なお、雇用保険被保険者離職証明書は、「電子政府の総合窓口(e-Gov)」上で作成し、電子申請で提出することもできます(事前に電子証明書の取得が必要)。その場合、「離職証明書の記載内容に関する確認書」という書類を作成して社員に署名なつ印をしてもらい、PDFで電子申請データに添付することで、離職理由に異議がないことなどを証明します。

■電子政府の総合窓口(e-Gov)■

https://www.e-gov.go.jp/

3)その他の書類の取得:退職届

退職届の取得は任意ですが、後述する「雇用保険被保険者資格喪失届」を所轄ハローワークに提出する際、退職の事実を客観的に証明する書類が必要となるため、取得しておくのが無難です。労務管理上の観点からも、退職の意思、退職日、退職理由などを明らかにしておくことで、社員とトラブルになるリスクを減らす上で有効です。

オンラインで退職届を取得する場合、社員の直筆で署名なつ印のある退職届をPDFなどにして送ってもらいます。なお、「一身上の都合で退職します」と記載されたメールなどを退職届の代わりにするのは、本人が作成したものであると証明することが難しくなるので避けたほうがよいでしょう。

3 退職後の手続き

一般的な退職後の手続きは次の通りです。

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1)給与・退職金の支払い

退職金に関する社員とのトラブルを防ぐため、退職金の支給の有無、支給する場合は支給額や支給時期などについて、退職時に本人に通知しておくとよいでしょう。なお、給与明細や退職金支給明細は、社員の同意があればPDFなどで交付できます。

2)法定書類の提出:社会労働保険関連

健康保険・厚生年金保険については、法定書類の提出後、資格喪失に関する通知が会社に送付されます。これは社内で保管します(退職日から2年間保管)。

雇用保険については、法定書類の提出後、次の書面が交付されます(1.と2.は一体の書面)。2.と4.は社員に交付し、1.と3.は社内で保管します(退職日から4年間保管)。

  1. 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)
  2. 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(被保険者通知用)・雇用保険被保険者離職票-1
  3. 雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)
  4. 雇用保険被保険者離職票-2

なお、法定書類の提出手続きは、社会労働保険関連は「電子政府の総合窓口(e-Gov)」から、税務関連は「地方税ポータルシステム(eLTAX)」から、電子申請で行えます(どちらも事前に電子証明書の取得が必要)。ただし、健康保険被保険者証(高齢受給者証、資格確認書)については、現物を年金事務所に訪庁または郵送で返却しなければなりません。

■電子政府の総合窓口(e-Gov)■

https://www.e-gov.go.jp/

■地方税ポータルシステム(eLTAX)■

https://www.eltax.lta.go.jp/

3)社員への書類送付:雇用保険被保険者離職票、退職証明書

2025年1月20日から、雇用保険被保険者離職票など雇用保険資格の喪失関係書類(本人控え分)を、マイナポータルで受け取れる行政システムがスタートしています。本人がマイナポータルからデータを直接取得できるので、会社からの送付作業のひと手間が減ります。ただし、サービスを利用するには、資格喪失の手続きを電子申請(e-Gov)で行うのに加え、「マイナンバーをハローワークに登録する」などの事前準備が必要になります。

■厚生労働省「被保険者の皆さまへ 2025年1月から、『離職票』をマイナポータルで受け取れるようになります!」■

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001353163.pdf

■マイナポータル「離職票をマイナポータルで受け取る」■

https://img.myna.go.jp/manual/03-04/0230.html

退職証明書は、退職後であっても社員から請求があった場合は、必ず交付しなければなりません。実務上は、退職前に要否を確認しておくとよいでしょう。なお、退職証明書は、社員の同意があればPDFなどで交付できます。

なお、会社の中には、あらかじめ退職証明書を作成して退職時に本人に交付しているところも多いです。退職後、本人が国民健康保険に加入する場合などに、市区町村から前職の退職証明の提示を求められるケースがあるからです。

以上(2025年4月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:Andrey Popov-Adobe Stock

2025年「賃上げ」に対する経営者315人の本音。御社はどうする?

1 2年連続で賃上げする企業は87.8%!

春闘をはじめ、「賃上げ」に関する話題が今年も世間を賑わせています。そこで、昨年に引き続き、経営者315人を対象に、賃上げに関する緊急アンケートを行いました(2025年3月19日から3月27日まで)。前回のアンケート結果については、こちらをご確認ください。

今回は、「2025年度に賃上げを実施する」という企業が全体の36.5%、そのうち

「2年連続(2024年度・2025年度)」で賃上げを実施するという企業が、なんと87.8%

もいました。ちなみに、2年連続で賃上げすると答えた企業の2024年度(昨年度)の賃上げ率は、「3%以上」が最も多かったです。

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2 賃上げを実施するか否か、何を基準に判断する?

ここからは、2025年度の賃上げの方針についての回答結果を紹介します。

まずは、賃上げをするか否かを判断するために重視する情報についてですが、「自社の業績」が圧倒的に多くなっています。

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3 賃上げする企業が求めている情報は?

では、具体的にどれだけの企業が賃上げをするのでしょうか?

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2025年度に賃上げを実施する企業は36.5%(このうち87.8%が2年連続での実施)で、2〜3年以内に実施するという企業は14.0%となっています。賃上げする企業が求めている情報は、助成金などに関する情報、社会保険料への影響に関する情報でした。少しでも賃上げの負担を軽減したいというところでしょう。

また、経営者が賃上げについて相談する相手は、顧問の税理士が最も多く、自社の取締役がこれに続きます。

賃上げを検討する際に参考となるリポートは以下の通りです。

4 どうやって、どの程度の賃上げをする?

賃上げの手法や賃上げ率はどうでしょうか。

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賃金の範囲としては、「基本給のみ」が最も多く、基本給の他に手当や賞与も上げるという企業が続きます。かつては、基本給は上げず、手当や賞与を上げて対応する企業が多かったですが、2025年はそれよりも踏み込んだ賃上げを検討する企業が増えています。

具体的な賃上げ率は、「3%以上」が最も多いですが、その次は「5%以上」となっており、賃上げに対する企業の意気込みがうかがえます。

賃上げの手法については、ベースアップで実施する企業が最も多く、定期昇給が続きます。両方を行うという企業も多く、やはり賃上げに本気で取り組む企業が増えている状況を垣間見ることができます。

5 賃上げ「しない企業」の経営者が考えていることは?

これまでとは逆に、賃上げをしない企業の状況を紹介します。

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なぜ、賃上げをしないのかについては、「業績の先行きが不透明だから」が圧倒的に多くなっています。前述した通り、賃上げをするか否かを判断するために最も重視される情報は「自社の業績」でした、やはり、業績が伴わない賃上げは難しいということでしょう。

どうなったら賃上げをするのかについては、これまで同様に業績が重視されていて、「業績好調が続くと確信できたとき」が圧倒的に多くなっています。

以上(2025年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

「賃上げ」はどこまで必要? 労働分配率や賞与・退職金を基準に考える

1 賃上げ前に労働分配率を確認する

毎年春闘の時期になると、賃上げに関する話題を耳にする機会が増えます。例えば、

2025年春闘では、「みんなでつくろう!賃上げがあたりまえの社会」をスローガンに、昨年に引き続き、賃上げ目標を「5%以上(定期昇給相当分を含む)」とする方針

が打ち出されています。

どこまで賃上げに取り組むかは経営者次第ですが、人件費の負担を考えるのであれば、

賃上げを検討する前に、自社の人件費が適正な水準にあるのかを「労働分配率」で確認

しておく必要があります。労働分配率の計算方法はさまざまで、適正な数値は業種や業態によって異なります。ここでは労働分配率を求めるための計算式を紹介します。実際に、自社の適正水準を検討する際は、社会保険労務士や会計士・税理士などに相談してみるとよいでしょう。

1.労働分配率の算出方法

労働分配率=人件費÷付加価値

2.付加価値の算出方法

  • 控除方式:主に製造業で使用
      付加価値=売上高-外部購入価値(製品仕入高、直接材料費、外注加工費等)
  • 加算方式:主に非製造業で使用
      付加価値=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費

平均的な労働分配率や付加価値を知りたい場合、経済産業省「企業活動基本調査」の業種別データが参考になります。自社の過去3~5年程度の労働分配率を計算して、適正と思われる利益を出していた年度を基準にするとよいでしょう。

■経済産業省「企業活動基本調査」■

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/index.html

以降では、賃上げの種類、賞与や退職金への影響を回避する方法などを紹介します。ここまでの内容を踏まえた上で賃上げを検討する場合は、ぜひご確認ください。

2 2種類の賃上げ「定期昇給」「ベースアップ」

1)定期昇給

定期昇給とは、

企業の定める賃金テーブル(賃金表)に基づき、賃金が従業員の年齢や勤続年数に応じて自動的に昇給(自動昇給)すること

です。査定昇給(人事考課などに基づいて昇給を行うこと)も、定期的に実施する場合は定期昇給に含まれますが、自動昇給とは異なります。企業の中には、能力や成果をもっと賃金に反映させようと、自動昇給の見直しに取り組んでいるところが少なくありません。

2)ベースアップ

ベースアップとは、

賃金テーブルを書き換え、全従業員の賃金水準を一斉に引き上げること

です。賃金テーブルが書き換えられるため、能力や成果が低い従業員も昇給(賃上げ)の対象となります。昇給は賃金規程で定められているもの、ベースアップは業績などに応じて臨時的に実施されるものです。

3 賞与や退職金への影響を回避する

1)賞与や退職金の負担を回避するには「基本給連動型→基本給非連動型」

賃上げをした場合、毎月の賃金だけでなく、賞与や退職金の負担も増えることがあります。それは、

基本給を賞与や退職金の計算基礎とする「基本給連動型」の制度

を導入している場合です。基本給連動型は、基本給に一定の支給率を掛けて賞与や退職金を計算するなど、シンプルな運用が可能ですが、基本給が支給額のベースになるため、賃上げの影響を受けやすくなります。賃上げの影響を回避したい場合、

基本給を賞与や退職金の計算基礎としない「基本給非連動型」の制度

を導入するという方法があります。

以降で、基本給非連動型の賞与・退職金制度の例を紹介します。なお、賞与・退職金制度を従前のものから変更する際は、「労働条件の不利益変更」に注意する必要があります。

2)賃上げの影響を回避する賞与制度(業績連動型)

ここでは、基本給非連動型の賞与制度の例として、「業績連動型」を紹介します。

業績連動型は、企業が重視する業績指標、勤務成績などを基に支給率を決め、賞与原資にその支給率を掛けて賞与を計算する仕組みです。業績指標については営業利益や経常利益などが、勤務成績については部門業績や人事考課の結果などがよく用いられます。

  • メリット:能力や成果を賞与に反映させやすい
  • デメリット:賞与の支給額が安定しにくく、従業員からすると不安がある

3)賃上げの影響を回避する退職金制度(定額制、別メニュー方式、ポイント制)

ここでは、基本給非連動型の退職金制度の例として、「定額制」「別メニュー方式」「ポイント制」を紹介します。

1.定額制

定額制は、勤続年数に応じて定額を定め、退職金を支給する仕組みです。例えば、20年勤続で退職した従業員の退職金は400万円、30年なら600万円といった具合です。

  • メリット:退職金の計算が不要
  • デメリット:能力や成果を退職金に反映させられない

2.別メニュー方式

別メニュー方式は、退職時の役職に応じて定額を定め、勤続年数別の支給率を掛けて退職金を計算する仕組みです。基本給連動型(退職時の基本給を退職金の基礎とする制度)と定額制を混合したようなイメージです。

  • メリット:退職金の計算が簡単
  • デメリット:能力や成果を退職金に反映させにくい

3.ポイント制

ポイント制は、一定のルールに基づいて従業員にポイントを付与し、退職時の累計ポイント数に単価を掛けて退職金を計算する仕組みです。ポイントには、勤続年数に応じて付与する「勤続ポイント」、資格等級などに応じて付与する「等級ポイント」、人事考課の結果などに応じて付与する「個人ポイント」などがあり、一般的に複数のポイントを組み合わせて運用します。

  • メリット:能力や成果を退職金に反映させやすい
  • デメリット:退職金の計算が複雑、付与されるポイント数などについて従業員の納得が得られないケースがある

4 社会保険料などへの影響にも注意する

1)労働保険料

労働保険料(労災保険料と雇用保険料)は、毎月の賃金の総支給額に保険料率を掛けて計算します。そのため、残業代などで賃金が変動すると保険料も異なってきます。また、賃上げの場合も保険料に影響します。

2)社会保険料

社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)は、4~6月に支給した賃金の平均額をベースに決まります。そして、その年の9月から翌年の8月までは原則固定となります。この手続きを「定時決定」といい、算定基礎届を毎年7月初旬に年金事務所に届け出ます。

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ただし、固定的賃金(稼働実績に関係なく支給されるもの)が変動し、連続する3カ月間の賃金の平均額が2等級以上変わると、4カ月目から社会保険料が改定されます。これを「随時改定」といい、月額変更届を固定的賃金が変動した月から起算して4カ月目に速やかに届け出ます。

なお、7月から9月までのいずれかの月に随時改定をした場合、定時決定は行いません。4月から賃上げをする場合などは、随時改定の要件に該当しても定時決定として扱い、9月分の保険料から改定してしまうことがありますが、これは誤った運用です。

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5 賃上げに表れる経営者の思い

ベースアップをした場合、以降の人件費が増大します。将来的に企業の業績が悪化しても、賃下げは労働条件の不利益変更になるので、簡単に行うことができません。そのため、足元の業績好調を理由に、利益分配の目的で賃上げを検討しているのであれば、ベースアップではなく、賞与で賃上げをしたほうが無難という考え方もできます。これであれば、翌年度の業績に応じて柔軟に賞与の支給額を決められます。

頑張っている従業員に報いたいというのは、経営者の変わらぬ思いです。そうした意味で、賃上げは従業員に感謝の気持ちを伝える重要な取り組みです。ただし、事前に賃上げのメリットとデメリットを把握し、業績などに見合った適切な方法を選択しましょう。

以上(2025年3月更新)

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画像:Team Oktopus-shutterstock

【朝礼】なぜ、「新年度だから、目標を立てよう」では駄目なのか?

【ポイント】

  • ビジネスの環境は日々変わるので、変化に応じて即行動できる姿勢が大切
  • 年度のように、思考や行動を縛っている「見えない呪縛」がたくさんある
  • 目の前にあるルールを考えて、納得がいかなければ、声を上げるべき

新年度を迎えて、新しい目標を立てた人もいるでしょう。これまでの私であれば、「新年度に目標を立てて取り組むことは、とても良いことです。努力をして、ぜひ、目標を達成できるようにがんばってください」と言って、皆さんを叱咤(しった)激励してきました。

しかし、今回は、冒頭に「新年度に」という言葉を付けるのをやめて、「目標を立てて取り組むことは、とても良いことです。努力をして、ぜひ、目標を達成できるようにがんばってください」としました。その理由は、「年度」という縛りから解放されてほしいからです。

もちろん、新年度に目標を立てるのは悪いことではありません。会社も、皆さんに年度単位で目標を立ててもらい、その達成度を評価します。私自身も経営者として1年間の「業績」という結果に基づいて評価を受けます。そのため、年度という期間を全く無視していいわけではありませんが、過度に年度という単位に縛られることは良くないと思っています。

理由は至ってシンプル、「日々のビジネス活動は、年度単位では動いていないから」です。私たちが考えなければならない市場環境、競合他社、お客様のニーズなどは、日々変わります。その変化に応じて、年度にとらわれることなく即行動、そんな姿勢を持ってもらいたいと思っています。

実は、年度と同じように、私たちの思考や行動を縛っているものはたくさんあります。私は、こうした「見えない呪縛」が成長しようとしている会社や皆さんの障害になっていると思っています。
身近な例でいえば「担当業務」がそうです。担当業務の内容や手順は、「必ず守るべきもの」と思い込みがちです。しかし、より効率的な方法やミスが発生しない方法があれば、すぐに変更できるようなスピーディーかつ柔軟な組織になってほしいと思っています。

そのための大切なことは2つあります。1つは、目の前にあるルールの意味を考えることです。もう1つは、もし、考えても自分が納得できなければ、「なぜ、こうなっているのですか?」と声を上げることです。そのひと声が、皆で考え、ルールを良い方向に変えていくきっかけになるはずです。

こうしたことの積み重ねが、会社の成長のために、一番必要だと肝に銘じてください。

以上(2025年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

物流業界必読! 面倒な 「実運送体制管理簿」をかんたん作成

1 「実運送体制管理簿」とは?

早速ですが、

2025年4月から、改正貨物自動車運送事業法により、荷主から運送を委託された元請事業者に対し、「実運送体制管理簿」という運送の実態を記録する管理簿の作成が義務付けられました。

実運送体制管理簿の作成義務があるのは元請事業者ですが、トラック運送業は多重下請構造になっており、作成に当たっては荷主や実運送事業者などと連携する必要があります。ですから、この記事は、トラック運送事業者(特に元請事業者)だけではなく、荷主企業にもお役立ていただきたい内容になっています。

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実運送体制管理簿を作成する元請事業者にとっては、「ただでさえ人手不足なのに、さらに事務負担が増えるのか……」と愚痴の一つも言いたいところですが、これについては便利なサービスも登場しているので、後ほどご紹介します。

では、実運送体制管理簿の内容をみていきましょう。また、第4章では物流業界を取り巻く環境と国や業界団体が目指す将来像についても簡単に紹介しているので、ご確認ください。

2 実運送体制管理簿に記載することと、未対応時の罰則

1)実運送体制管理簿に記載すること

元請事業者が実運送体制管理簿を作成しなければならないのは、荷主企業(真荷主)から引き受けた1.5トン以上の貨物の運送について、他のトラック運送事業者を利用したときです。この場合、貨物の運送ごとに、次の事項を記載した実運送体制管理簿を作成します。

  • 実運送事業者の商号または名称
  • 実運送事業者が実運送を行う貨物の内容および区間
  • 実運送事業者の請負階層
  • その他国土交通省令で定める事項

実運送体制管理簿には、

  • 記載しなければならない項目は決まっているが、書式は事業者が自由に決められる
  • 作成・保存の方法は、紙媒体、電子媒体のどちらでも構わない

というルールがあります。つまり、必要なことさえ記録してあれば問題ありません。

「実運送体制管理簿」のイメージは次の通りです。

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なお、4.の「その他国土交通省令で定める事項」は、後から追加される可能性がありますが、1.~3.の事項が記載されていれば、既存の配車表を活用することも可能です。実運送体制管理簿は、貨物の運送の完了した日から1年間、営業所に備え置く必要があります。

(注)真荷主とは、一般貨物自動車運送事業者として利用運送を行う一番上位の事業者に「直接」運送の委託をしている事業者のことです。真荷主から貨物の運送を引き受ける際に、元請事業者から実運送事業者に至るまでの一連の委託関係が明らかとなっている場合は、貨物の運送ごとに実運送体制管理簿を作成する必要はありません。

実務の具体的な留意点などについては、国土交通省からQ&A(随時更新)が出ていますのでそちらをご確認ください。

■国土交通省「改正貨物自動車運送事業法(令和7年4月1日施行)について」■
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000014.html

2)未対応時の罰則

実運送体制管理簿の作成・保存に不備が認められ、貨物自動車運送事業法違反とみなされると、「文書警告」や「自動車の使用停止」の行政処分を受ける恐れがあります。

行政処分の対象となる事業者は、必ずしも元請事業者だけではありません。実運送体制管理簿に係る通知義務違反があれば、下請事業者が対象になるケースもあり得ます。

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なお、元請事業者は、図表2の行政処分以外に、下請法の「優先的地位の濫用」の罪に問われるリスクもあります。

■国土交通省「【別表】(貨物)違反事項ごとの行政処分等の基準(令和7年2月改正、4月施行)」■
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/baseline.html

3 実運送体制管理簿の作成もできる便利なサービス

実運送体制管理簿の作成については、次のような便利なサービスもあるので、活用してみるとよいでしょう。

■Hacobu「MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)」■
https://hacobu.jp/movo-vista/
■AppLogi「AppLogi DX Platform(アップロジ・ディーエックス・プラットフォーム)■
https://app-logi.co.jp/
■Univearth「LIFTI carriers(リフティ・キャリアズ)」■
https://www.lifti.jp/carriers

トライアル期間の有無や、問い合わせ対応などのフォロー体制などを考慮しつつ、こうしたサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか?

4 (参考)物流業界を取り巻く環境と国が目指す将来像

1)物流の2024年問題

物流は生活・経済を支える社会インフラですが、「物流の2024年問題」を抱えています。働き方改革関連法の施行によって、ドライバーの長時間労働の是正などが期待される半面、物流の停滞が懸念されているのです。何も対策を講じなければ、輸送能力が2024年度には14%(4億トン相当)、2030年度には34%(9億トン相当)不足し、貨物を今のようには運べなくなる恐れがあるといわれています。

こうした中、「流通業務総合効率化法」と「貨物自動車運送事業法」の改正法が2024年5月に公布され、順次施行されつつあります。

■国土交通省「物流改正法」■
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000029.html

2)国が目指す将来像は「フィジカルインターネット」

「フィジカルインターネット」は、インターネットで用いられるパケット通信(データを小分けにして送受信する)の考え方を、現実の物流の世界にも適用しようというものです。

概念的には、物流の機能を細かく分けて、使いたい機能を、使いたいときに、使いたい人が最適なかたちで組み合わせて使えるようにするということです。

経済産業省・国土交通省は、「フィジカルインターネット」を実現すべく、2040年を目標としたロードマップを2021年10月に取りまとめ、公表しています。

■国土交通省「フィジカルインターネット・ロードマップをとりまとめました!」■
https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000594.html

3)物流ダイナミックプライシングの適用可能性

「フィジカルインターネット」に大きく関係してくるのが、ダイナミックプライシングをはじめとする、物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

「ダイナミックプライシング」は、商品やサービスの需要と供給の状況に応じて価格を変動させる仕組みで、航空券の料金やホテルの宿泊料などで使われています。物流ダイナミックプライシングは、この仕組みを物流業界にも適用しようというものです。

経済産業省は、「令和4年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(ダイナミックプライシングの物流適応に関する調査)最終報告書」として、有限責任監査法人トーマツが取りまとめた委託調査報告書を公表しています。

■経済産業省「令和4年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(ダイナミックプライシングの物流適応に関する調査)最終報告書」■
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2022FY/000278.pdf

4)トラックの「標準的運賃」の告示

物流ダイナミックプライシングの実現に関係してくるのが、適正な運賃のあり方です。

ダイナミックプライシングでは、需要が多ければ料金が上がり、需要が少なくなれば料金が下がるのが本来の姿です。しかし、物流業界の現状は、価格競争で需要を奪い合い、忙しいのにもうらない状態になってしまっています。

こういった事態を避けるためにも、一定程度の運賃水準が保たれなければなりません。国土交通省は、2024年3月、トラックの運賃水準を8%引き上げるとともに、荷役の対価等を加算した、新たな標準的運賃を告示しました。この告示は2024年6月から施行されています。

■国土交通省「『標準的な運賃』について」■
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000118.html

5)貨物自動車運送の「事業許可更新制」導入検討

標準的運賃を守らないトラック運送事業者が受注を増やしてしまっては本末転倒です。こうした中、全日本トラック協会を中心とする業界団体からの強い要望を受け、自民党トラック議連などが検討を進めているのが、貨物自動車運送の「事業許可更新制」です。真っ当な競争環境をつくるためにトラック運送事業者の質を問い、悪質事業者の退場を促すものです。

2025年2月に開催された自民党トラック議連の総会では、「事業許可更新制」の導入などを盛り込んだ貨物自動車運送事業法の改正法案と制度運用に伴う新法(適正競争推進特別措置法=仮称)の骨子が明らかにされました。主な内容としては次の通りです。

  • 有効期間を5年間とする「事業許可更新制」を導入
  • 更新制度を運用する公的機関(適正競争推進機関=仮称)を新設
  • 新制度と実施機関が運用を開始するまで3~5年程度の猶予期間を設ける

早ければ、今国会の会期末(2025年6月22日)までに超党派の議員立法で、国会に法案が提出される見込みです。

■全日本トラック協会「広報とらっく(2025年2月25日号)」■
https://jta.or.jp/pdf/kohotruck/20250225.pdf

6)「事業許可更新制」を実現するための環境整備の1つが「実運送体制管理簿」

「事業許可更新制」を実現するために必要なのが、多重下請構造の是正です。物流業界は、

荷主企業→元請事業者→一次請→二次請→三次請→四次請……

と多重下請構造となっており、実際に貨物を運ぶ実運送事業者は四次請やそれより後の事業者であることも珍しくありません。

ドライバーの働き方改革を実現し維持していくには、荷主企業が払う運賃が、実運送事業者が受け取る運賃と同じでなければなりませんが、そうした環境を整備するために必要なのが、運送契約を書面で交わし、誰がどこに何をいくらで運んだのか分かるようにしておくことです。

「実運送体制管理簿」の作成義務化は、「事業許可更新制」を実現するための環境整備の1つと捉えられるでしょう。

以上(2025年4月作成)

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令和7年度やまがた未来くるエネルギー補助金(山形県再生可能エネルギー等設備導入促進事業)のご案内

山形県では、家庭や事業所における再生可能エネルギー等設備の導入を促進するとともに、温室効果ガス排出量の削減を図るため、再生可能エネルギー等設備の導入にかかる経費の一部を補助します。

補助対象事業や申請受付期間などの詳細な内容は、こちらのページからご確認ください。

令和7年度やまがた未来くるエネルギー補助金


誹謗中傷はダメ! 軽い気持ちの再投稿が処罰対象になる!?

1 誹謗中傷はダメ! 再投稿でも処罰される恐れがある

皆さんは、SNSや動画共有サイトなどで、芸能人やアスリートなどの著名人を誹謗中傷するような投稿を見かけたことがあるかもしれません。

「容姿や性格、人格に関する悪口」「虚偽や真偽不明の情報」「プライバシーの暴露」などといった悪質な投稿は後を絶たず、そうした投稿に端を発し精神的に追い詰められて自ら命を絶ってしまう人もいて、大きな社会問題となっています。

こうした中、ネット上の誹謗中傷については、法改正等によって、様々な対策が進められてきています。

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忘れてはならないのは、

  • 匿名だからといって何を言ってもいいわけではない
  • ネット上の誹謗中傷の発信者は技術的に特定され得る
  • 元の発信者でなくても、軽い気持ちでした再投稿(注)が処罰対象になることもある

ということです。

ネット上の誹謗中傷を巡っては民事事件(損害賠償請求)も多くありますが、まずは、刑事事件として問題となるのはどのような行為で、それに対してどのような罰則が科せられるのかを見ていきましょう。

(注)再投稿とは、共感したり気に入ったりした情報をそのまま拡散する行為をいいます。SNSによって「リツイート(旧Twitter)」「リポスト(X)」など名称が異なります。

2 ネット上の投稿 刑事事件として問題となる行為と罰則

1)名誉毀損、侮辱

名誉毀損については、

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する

とされています(刑法第230条第1項)。

侮辱については、

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処する

とされています(刑法第231条)。

例えば、「A氏は、裏で反社会的勢力とつながっているようだ」といった投稿をした場合、A氏から名誉毀損の罪で告訴される恐れがあります。また、「B氏は、自己中でわがまま。最悪。キモい」といった投稿をした場合、B氏から侮辱の罪で告訴される恐れがあります。

なお、人の名誉の「人」は、個人だけでなく法人も含まれると解釈されます。相手が著名人に限られるわけではなく、一般人でも会社でも相手の名誉(社会的評判)を傷つけるような投稿をしてはいけません。

2)信用毀損・業務妨害、威力業務妨害

信用毀損・業務妨害については、

虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する

とされています(刑法第233条)。

威力業務妨害については、

威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条(第233条)の例による

とされています(刑法第234条)。

信用毀損・業務妨害、威力業務妨害は親告罪ではないため、被害者(や法定代理人など)からの告訴がなくても、検察が起訴することはあり得ます。

例えば、「C社は、パワハラがひどい。ヤバイ」といった投稿は、信用毀損・業務妨害の罪に問われる恐れがあります。また、「D店が気に食わない。火をつけてやる」といった投稿は、威力業務妨害の罪に問われる恐れがあります。

3)脅迫、強要、恐喝

誹謗中傷とは少し異なるかもしれませんが、いわゆる「カスハラ」に当たるような悪質なクレーマーによるネット上の脅迫、強要、恐喝などもあり得ます。

脅迫については、

生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する

とされています(刑法第222条第1項)。

強要については、

生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する

とされています(刑法第223条第1項)。

恐喝については、

人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する

とされています(刑法第249条第1項)。

脅迫、強要、恐喝も親告罪ではないため、被害者(や法定代理人など)からの告訴がなくても、検察が起訴することはあり得ます。

例えば、「E店の店員、殺す」といった投稿は脅迫の罪に問われる恐れがあります。また、「F店は接客態度がなってない。謝罪広告を出せ」といった投稿は、強要の罪に問われる恐れがあります。さらに、「G社は、機密情報を暴露されたくなければカネを払え」といった投稿をすれば、恐喝の罪に問われる恐れがあります。

3 再投稿でも処罰される!?

ケースによっては、悪質な投稿を再投稿した者も告訴される恐れがあります。実際に、名誉毀損や侮辱に該当する投稿を再投稿した者に対する損害賠償請求を認容する下級審判例が相次いでいます。

再投稿であっても、その投稿が誰かを傷つけることにならないか、慎重に考えて行動しないといけません。「正義感にかられて」「つい軽い気持ちで」などの主張や弁明は通用しないといえるでしょう。

また、性的被害を受けたとの女性ジャーナリストによる訴えに対し、旧Twitterで「売名行為だ」などと誹謗中傷する複数の投稿があり、当時現職だった国会議員が、それらの投稿に繰り返し「いいね」を押したことで、名誉を傷つけたかどうかが争われた裁判もありました。同裁判では最高裁が議員側の上告を退ける決定をし、同議員に賠償を命じた二審の判決が確定しました。これは、特殊なケースとも考えられますが、

  • 誹謗中傷に対しては社会全体がより厳しい目で見るようになっている
  • SNSでの振る舞いには責任が伴う

ことを忘れてはなりません。

4 参考

1)検察統計による被疑事件の起訴人員数の推移(罪名別)

第2章で紹介した「刑事事件として問題となる行為」について、法務省「検察統計」を基に、起訴された人員数の推移をまとめてみました。

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名誉毀損と侮辱は、被害者(や法定代理人など)からの告訴がなければ検察が起訴できない親告罪ですが、2023年には278人(対前年42人増)が名誉毀損で、73人(対前年30人増)が侮辱で起訴されています(検察統計調査。死者名誉毀損を除く被疑事件)。

同じく、2023年には117人(対前年6人減)が信用毀損・業務妨害で、220人(対前年70人増)が威力業務妨害で起訴されています(検察統計調査。電子計算機損壊等業務妨害を除く被疑事件)。また、2023年には702人(対前年22人増)が脅迫で、122人(対前年35人増)が強要で、448人(対前年124人増)が恐喝で起訴されています(検察統計調査)。

これらのうち「ネット上の誹謗中傷」が占める割合などは明らかではありませんが、毎年、数百人が起訴されるに至る様子がうかがえます。

2)SNSなどで誹謗中傷を受けて困ったとき、傷ついて辛いときは

総務省では「インターネット上の書き込みなどに関する相談・通報窓口のご案内」というチャート式で、どういう場合に、どこに相談・通報すればよいのか分かりやすくまとめた資料を公表しています。

SNSなどで誹謗中傷を受けて困ったとき、傷ついて辛いときは、独りで抱え込まず、信頼する人や公的な相談窓口に相談しましょう。

■総務省「インターネット上の書き込みなどに関する相談・通報窓口のご案内」■

https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/trouble/reference/reference01.html

以上(2025年3月更新)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)

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ムーミンの作者トーベ・マリカ・ヤンソン氏と「ほんとの自由」

あんまりおまえさんがだれかを崇拝したら、ほんとの自由はえられないんだぜ

トーベ・マリカ・ヤンソン氏は、「ムーミン」シリーズの生みの親です。2025年は、ムーミン小説出版80周年。日本で放映されたテレビアニメのムーミンに慣れ親しんでいた方も多いでしょう。

冒頭の言葉は、ムーミンシリーズのキャラクターであるスナフキンが物語の中で、自分に憧れ付き纏ってくる小さな生き物に言い放ったものです。スナフキンという人物は、一言で表すなら「束縛を嫌う自由人」です。他のキャラクターは家を持ち、宝物を集め、自分の持ち物に強いこだわりを持っているのですが、スナフキンだけはいつもリュックサックひとつで旅をしています。彼にとって、何かに執着して自然体でいられなくなることは「不自由」。だから、自分を慕ってくる小さな生き物にも、冒頭の一見冷たくも思えるせりふを言うのですが、そのおかげで小さな生き物は「自由」の意味を知り、スナフキンのもとを去って、自分の人生を楽しむようになります。

自由人スナフキンは、シリーズを通し皆の憧れとして描かれていますが、これにはヤンソン氏自身の生い立ちが大きく影響しているかもしれません。彼女の父は著名な彫刻家で、彼女は幼い頃から芸術に親しんで育ち、わずか14歳で作家デビューを果たします。ヤンソン氏は芸術家である父を尊敬していましたが、成長するにつれ父の芸術に対する古い価値観や権威主義に疑問を抱くようになり、衝突することが増えていったのです。

それはある意味、ヤンソン氏の「本当は父親に認めてもらいたい」という執着の表れでもありました。冒頭の言葉は、彼女の父が亡くなってまもない頃の小説に書かれたものですが、もしかしたらヤンソン氏は自由人スナフキンの物語を通じて自身の執着を捨て去り、尊敬する父のありのままを受け止めようとしていたのかもしれません。

ビジネスでも、古い仕事の進め方を「今までこれでうまくいってきたから」と、あるいは新しい技術を「最先端だから間違いない」と、妄信してしまうことがあります。しかし、それはスナフキンの言う「ほんとの自由」とは大きくかけ離れたものです。自由とは、固定観念にとらわれず、あらゆる選択肢の中から、自分にとって必要なものを自分の考えで選べる状態のことなのです。

その自由を手に入れるためにはまず、小さな生きものがスナフキンに諭されて気付きを得たように、組織の中で知らず知らずのうちに「崇拝」してしまっていることがないかと、疑問を抱くことが大切です。ビジネス環境の変化が著しい昨今はなおさら、何かへの執着を捨てて、自社にとって本当に大切なものを選び取ることが求められます。それができる組織は強く成長します。

ちなみにスナフキンも、大切なハーモニカだけは、どんなときも手放しませんでした。それは彼なりの取捨選択の結果で、いまやハーモニカはスナフキンのトレードマーク。彼の個性であり、大切な要素として世界中で愛されています。

出典:「ムーミン谷の仲間たち」(ヤンソン 山室静/訳 講談社、2011年7月)

以上(2025年3月作成)

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「Windows10等サポート終了詐欺」に注意! 警告が表示されても電話しないで

1 「サポート詐欺」の手口を知っておこう

「サポート詐欺」をご存じでしょうか? パソコンでウェブサイトを閲覧中、

  • ウイルスに感染したかのような画面を表示させたり、警告音を発生させたりするなどして、不安をあおる
  • 解除するためには画面に記載された電話番号に連絡する必要があると思い込ませ、電話をかけさせる
  • サポート窓口の担当者をかたって遠隔操作ソフトをインストールさせたり、金銭をだまし取ったりする

といった詐欺の手口です。以降、こうした画面のことを「偽画面」と呼ぶことにします。

偽画面は全画面表示され、「閉じる」ボタンがないため、マウス操作では画面を閉じることができません。警告音が鳴りやまず、パニックに陥った状態で、つい偽画面に記載された電話番号に電話をかけてしまう……。そうすると、サポート窓口の担当者をかたった詐欺被害に遭ってしまうわけです。

サポート詐欺の偽画面が表示されるきっかけは、ウェブサイトに表示された広告枠の「次のページに進むためのボタンに見せかけた広告」や「続きが気になる画像」をクリックしたり、検索結果の上位に表示された偽広告をクリックしたりすることです。巧妙につくられているため、この時点で見破るのは難しいですが、

あらかじめ偽画面のイメージと、所定のキーを使った画面の閉じ方を押さえておく

ようにすれば、万が一クリックしてしまっても落ち着いて行動できます。

今年2025年は、マイクロソフトのOS「Windows 10」や、「Office2016」「Office2019」のサポートが10月14日(米国時間)に終了します。こうした出来事をきっかけに、マイクロソフトのサポート担当をかたった詐欺が増えることも懸念されます。

以降で、サポート詐欺の被害に遭わないための対策を確認していきましょう。

2 実際にどんな状態になるのか、パソコンで体験してみよう

情報処理推進機構(IPA)では、「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」を設けて注意喚起しています。パソコンで、同ページから「偽セキュリティ警告画面の閉じ方体験サイト」に行くと、実際にどんな状態になるのかを疑似体験できます。

■情報処理推進機構「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/measures/fakealert.html

(注)体験サイトを起動する前に、説明をよくお読みください。

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偽画面を開いてしまったとしても、いきなりウイルスに感染するわけではありません。まずは、落ち着いてパソコンの音量を下げましょう。その後、偽画面を閉じれば問題ありません。大切なのは、

絶対に偽画面に表示された番号に電話をかけないこと

です。偽画面の閉じ方は、

  • キーボードの「Esc」キーを長押しして全画面表示を解除して、ウインドウを閉じる
  • キーボードの「Ctrl」と「Alt」と「Delete」キーを同時に押して強制再起動する

といった方法があります。詳しくは、情報処理推進機構(IPA)の次のウェブサイトをご確認ください。

■パソコンに偽のウイルス感染警告を表示させるサポート詐欺に注意■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2024/mgdayori20241119.html

3 参考ウェブサイト

情報処理推進機構(IPA)では、次のウェブサイトなどを通じて注意喚起しています。

■サポート詐欺の偽セキュリティ警告はどんなときに出るのか?■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2023/mgdayori20240227.html
■会社や組織のパソコンにセキュリティ警告が出たら、管理者に連絡!■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2023/mgdayori20230711.html
■偽のセキュリティ警告に表示された番号に電話をかけないで■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2021/mgdayori20211116.html
■遠隔操作を他人に安易に許可しないで■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2020/mgdayori20201125.html

日本サイバー犯罪対策センター(JC3)では、解説動画をYouTubeで公開しています。

■サポート詐欺の手口について(動画解説)■
https://www.jc3.or.jp/threats/examples/article-356.html
■サポート詐欺の電話番号に電話をかけてみた(動画公開)■
https://www.jc3.or.jp/threats/examples/article-570.html

以上(2025年3月作成)

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戦わない人材採用のススメ PART.4~失敗しない採用面接とは?~

1 人材の見極めの重要性

このシリーズもPART.4になりました。今回は「失敗しない採用面接とは?」というテーマでお伝えします。これまでは、いかにして自社の魅力度を高めて採用候補人材を集めるか、という観点でお話ししてきましたが、今回は、候補者の人物像や適性をどうやって見抜くかという観点になります。

いつもお話しすることなのですが、人がいないのは困りますよね。でも、それよりも困るのは入社して半年や1年で辞められるケースです。厚生労働省が発表している令和3年3月の新規学卒者の3年以内離職率(下記参照)は高卒者で38.4%(前年から+1.4%)、大卒者34.9%(前年より+2.6%)となっており3年以内に3人に1人以上の方が離職しています。中途採用者の場合はいろんな見方があるため単純比較はできませんが、これらと同等もしくはそれ以上となっていると思われます。新卒採用、中途採用に関わらず、一旦入社した社員が短期間で退職してしまうと、それまでにかけた採用費用や勤務期間中に支払った賃金などが無駄になってしまうだけでなく、業務分担の見直しや先輩社員が新入社員の教育にかけた時間など、金額換算が難しいものまで含めると相当な損失となってしまいます。

また、さらにもっと困るのは不適格人材を採用してしまって、辞めてほしいけど辞めないケースです。日本の法律は従業員寄りのものとなっているため、会社の都合で一方的に辞めさせる(解雇する)ことは、ほぼできないに等しいものとなっています。よくアメリカ映画などで社員が社長から「You are fired!」と言われて、デスク周りの書類を段ボール箱に入れてすごすごと会社を去っていくシーンがありますが、日本ではあんなことはできません。正確に言うと、実際にできなくはないですが、後から社員から「不当解雇だ!」と訴えられると会社は負けてしまって、それまでの賃金も含めて多額のお金を支払わなくてはならなくなる(バックペイと言います)可能性が非常に高いということです。

特に、中小企業の場合、従業員数が少なくなればなるほど1名の重みが大きく、大企業であれば1人や2人不適格人材が紛れ込んでも会社全体からすればそれほど影響は大きくないですが、中小企業にとっては非常に大きなリスクと言え人材の見極めに失敗すると多額の損失を被るばかりか、不適格人材が辞めないことで他の優秀な社員の退職につながり、究極は組織が崩壊するというリスクもはらんでいると言えます。

新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)

出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します」
令和6年10月25日

2 見極めのための事前準備

経営者の皆さまから「どうやって人材を見極めれば良いか分からない」とか「良いと思って採用したが、実際は全然違った」などのお話をよく聞きます。確かに、30分や1時間の限られた時間の面接で人材を見極めるのは難しいですし、素晴らしい能力や相当な経験の持ち主であっても、100%正確に見抜くのは無理だと思います。しかしながら、前述の通り中小企業にとっては、その重要性は大企業に比べて非常に大きいという採用面接は極めて高難度のミッションと言えます。

ではどうすれば良いのか?まずは、事前準備をしっかりしましょうということです。PART.1でお伝えした人材要件を決めていただき、これをもとにして採用基準もしっかりと決めておきます。よって、「このような人物を採用する」逆に「このような人物は採用しない」ということを明確にしておき、面接の中でもその観点で見て基準に達しない人は決して採用しない、と腹を括ることです。人が足らない状態で、すぐにでも人が欲しい状況になると、応募のあった人の中から他の応募者と比較して一番良さそうな人を採用する、ということになりがちですが、この発想は危険です。一番良さそうであってもそれは比較論に過ぎず、自社の求める人材かどうかの観点が抜け落ちている可能性があります。あくまで自社の採用基準に照らして基準を満たしていなければ採用すべきではありません。きれいごとのように聞こえるかもしれませんが、他の応募者と比較し相対的に良いと思っても、その中に不適格人材が紛れ込んでいる可能性がないとは言い切れません。

また、準備という観点では、行き当たりばったりの採用面接ではなく、どのタイミングで誰が面接するのか?面札の際にはどういった質問をするのか?などの準備も大切です。こういった準備が不十分であればあるほど失敗につながる可能性が高まっていきます。

3 見極めのための具体論

さて、準備がしっかりできたとして、具体的に採用面接はどうすれば良いか?私が考えるポイントとしては二つあります。① できでるだけ多くの人が面接する、ということと、② 他の力も借りる、ということです。

① できるだけ多くの人が面接する

小規模企業の場合は社長のみが面接しているケースも多いと思いますし、中小企業であっても、担当者と経営者の2段階(2名)の面接としている会社が多いのではないでしょうか。これではダメだということではないのですが、多くの人の目で見ることで正確性を高めることができます。

例えば、担当者レベルの面接も1名ではなく2名以上の複数で行う。最終面接も社長だけでなく、役員全員で行うなどが考えられます。一人では気づけないことも複数の目で見る(例えば、社長がした質問に答えているタイミングでは、専務は応募者の表情やしぐさに注目するなど)と気づけることもあるかもしれません。また、採用後に配属しようと予定している部署の責任者や担当者が面接することも良いと思います。これは、人物像や適性を正確に見抜くという観点プラス採用後の育成に責任を持たせる意味もあります。面接した結果OKを出したわけですので、実際に配属されたあとの育成に対する責任感が変わってくると思います。よく聞く社員さんの愚痴で「社長(もしくは人事部)が採用する社員は使えないやつばっかりだ。もうちょっとましなやつを採用できないもんかね」みたいなことは言えなくなります。

「そんなことをしたら誰も採用できなくなる」というような反論も聞こえてきそうですが、それくらいハードルは高くして良いと思いますし、最終的な採用・不採用の決定権は経営者にありますので、そこはあらゆる要素を総合的に判断していただければ良いのです。

② 他の力も借りる

「他の力も借りる」とは、人間の判断だけでなく適性検査などもうまく活用する、という観点です。当然ながら人間の力には限界もありますし、応募者は面接の際には最上最高の自分を見せる努力をしていますので、面接だけで判断するのは危険です。よって、例えば最終面接の前に適性検査を受けていただいて、最終面接の際にはその適正検査の結果も踏まえて気になる点について質問してみる、ということを取り入れることで正確性が高まります。

世の中に適性検査はたくさんあるのですが、一つおすすめとして「不適正検査 スカウター」をご紹介します。その名の通り“不”適性検査ですので、「能力がどの程度あるか」や「職務適性があるか」というよりも“不適性”ではないかという観点の強い検査となっています。「定着しない、成長しない、頑張らない人材を見分ける業界唯一の不適性検査R」と紹介されています。

前述したとおり、不適格人材を誤って採用してしまう致命的ダメージを防ぐという効果もありますし、PART.1でご紹介しましたポータブルスキルとテクニカルスキルについて、テクニカルスキル(知識や技術)は入社後にしっかりと教育すれば良いわけですが、ポータブルスキル、思考・価値観については入社後にどうこうすることはほぼ不可能ですので、その人材のベーシックな部分で不適格ではないか、という点をこの検査で確認できる効果もあります。

実は私自身も試しに受けてみました。検査結果については自分自身で見てみて、かなり正確性が高いと感じました。検査の最後に記載されている総合的なコメントについてはほぼほぼ当たっているなという印象でしたし、「ネガティブ傾向」や「職務適性」「戦闘力」「虚偽回答の傾向」などの項目も当たっていましたし、採用・不採用に大きく影響を受けるポイントだと思いました。例えば「ネガティブ傾向」は「働く上でマイナス要因となる心理・情緒面の傾向」を測定していて数値化していますので、あまりに高い場合は採用を見送ることも考えるべきです。また、「虚偽回答の傾向」は、自分を良く見せようとして実際とは違う嘘の回答をしているとこの指標が高くなりますので、高い場合は面接での受け答えも、よりしっかりと慎重に聞いていただく必要があります。

これだけの項目が検査できて1件1,000円弱ですので、使わない手はないと思います。応募者にはメールで受験の案内を行い、応募者が回答すると瞬時にメールで会社側に回答が返ってくる仕組みとなっていますので、最終面接の前日までに受験していただければ十分に対応可能です。また、日本語以外にも英語やタイ語など8か国後に対応していますので、外国人の採用の際にも使えます。

<適性検査について>

適性検査

出典:みんなの採用部

<スカウターのご紹介>

https://scouter.transition.jp/

最後に、「リファレンスチェック」という言葉をご存じでしょうか?欧米では一般的なようですが、日本でまだまだ馴染みのないものだと思います。中途採用にしか使えないものですが、簡単に言うと前職の上司や同僚に前職時代の働きぶりを確認する、というものです。「そんなことができるの?」と驚かれるかもしれませんが、当然ながら勝手にはできず本人の同意が必要です。よって、本人が同意しない場合は実施できませんが、同意しないということは「聞かれたら困ることがある」「面接で前職の実績について嘘を言っている」という可能性も考えられます。本当の円満退職というのは難しいかもしれませんが、特に大きな損害を与えたりしていなければ同意できるのではないでしょうか?

適性検査よりはコストはかかりますがリファレンスチェック専用のサービス(下記back checkのご紹介 参照)もあり、その実効性は適性検査をはるかにしのぐものだと思います。確実を期すという意味では利用を検討されてはいかがでしょうか?応募者の同意が得られて前職時代の働きぶりが確認できればかなり有効な情報だと思いますし、同意が得られない場合は、面接で話していることが本当のことばかりではない可能性を疑うべきということになります。

<back checkのご紹介>

https://site.backcheck.jp/

4 まとめ

ここまで人材の見極めの重要性から具体的な面接の手法についてみてきました。いかがでしたでしょうか?すでに取り組まれていることもたくさんあったかもしれませんが、一つでも二つでも参考にしていただければ幸いです。

採用環境はこれからますます厳しくなっていきます。また、従業員数の少ない中小企業にとっては採用の失敗は会社の存続すら危うくする可能性があります。経営者は、人材採用は経営の最重要課題であるとの認識をもっていただいて取り組んでいただければと思います。

大きな会社は採用にかけられる予算もふんだんにあるのでしょうが、中小企業はそこで勝負しても勝ち目はありません。「戦わない人材採用」の観点で、今回ご紹介した取り組みは、どれも工夫次第でそんなに多額な費用をかけなくても取り組むことができます。また、社員さんと一緒に取り組むことで会社全体のモチベーションアップにもつながりますので、是非積極的に取り組んでみてください。

以上(2025年3月作成)

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画像:photo-ac