【中堅社員のスピーチ例】一歩を踏み出せば、後は楽しむだけ

おはようございます。今日は、私が昔、祖父に言われた言葉について話します。祖父は遠方に住んでいて、私とは、お盆とお正月の年2回だけ顔を合わせていました。中学1年のお盆に祖父の家に行った際、祖父から「最近、学校はどうなんだ?」と尋ねられた私は、「正直、あまり楽しくないんだよね」と返しました。

当時の私は、学校のクラスになじめず、勉強の成績もあまり良くなくて、鬱屈した日々を過ごしていたのですが、祖父は温厚な態度を崩さず、しかし、私をしっかり見つめてこう言いました。「お前は最近、何か新しいことにチャレンジしたかい? 楽しくないのは、もしかしたら、お前が何もしていないからかもしれないぞ」

このときの祖父の言葉を、私は話半分に聞いていて、あまり気に留めていなかったのですが、最近、仕事の中でふと、このときのやり取りを思い出す出来事がありました。

上司から、「ChatGPTを使って、社内資料に使う図表を作るように」と指示されたときのことです。図表自体はシンプルな作りですが、ChatGPTに作らせるには、指示の出し方に工夫が必要です。しかも、私はChatGPTに不慣れで、何度指示を出しても、思い描く通りの図表ができません。エクセルを使えば楽なのにと思いましたが、上司から「ChatGPTの使い方を身に付ければ、業務が効率化できる。たまには、新しいことにチャレンジしなきゃダメだ」と言われ、ハッとしました。

言われてみれば、私は最近、定例の業務を作業的にこなすだけで、チャレンジというものをしていませんでした。ふと、祖父の言葉を思い出し、「さすがに、このままではダメだ」と腕まくり。

私は、ChatGPTに出した自分の指示と、その指示によって生成された図表を、全て一覧にして見比べてみました。すると、自分の指示と、生成される図表との間にある規則性が、次第に分かってきました。何だか楽しくなってきた私は、その後も失敗を重ねつつ、指示の出し方を修正し、気付けば思い描く通りの図表を完成させていました。今では、ChatGPTへの指示の出し方をさらに工夫し、より複雑な図表も作れるようになっています。

私がやったことは、単に上司の指示を実行しただけで、チャレンジと呼ぶには少しおこがましいかもしれません。ですが、新しい世界に触れる、あがく、形にする、この一連の流れがとても楽しく、図表を完成させたときには、しばらく味わっていなかった、確かな達成感がありました。

自分の知らないことに挑戦するのって、面倒だし、勇気がいりますよね。私も正直、苦手です。しかし、今回の出来事から「苦手と思う気持ちを抑えて、一歩を踏み出せば、後は楽しむだけ」ということを実感しました。もし、皆さんの中に、最近仕事がなんとなく面白くないと思っている人がいたら、改めて祖父の言葉を贈ります。

あなたは、最近、何か新しいことにチャレンジしていますか?

以上(2024年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

情報セキュリティを担保するために

独立行政法人情報処理推進機構から「情報セキュリティ10大脅威2024」が公表されました。このうち「組織」向け脅威を見ると、外部からの攻撃によるもののほか、内部不正や不注意による情報漏えいなど、社内起因の脅威も垣間見られます。本稿では、社内起因の脅威のうち、内部不正にフォーカスを当て、現況と対策をお伝えするとともに、それを担保する規程の例をご紹介いたします。

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情報セキュリティを担保するために

独立行政法人情報処理推進機構から「情報セキュリティ10大脅威2024」が公表されました。このうち「組織」向け脅威を見ると、外部からの攻撃によるもののほか、内部不正や不注意による情報漏えいなど、社内起因の脅威も垣間見られます。

本稿では、社内起因の脅威のうち、内部不正にフォーカスを当て、現況と対策をお伝えするとともに、それを担保する規程の例をご紹介いたします。

1 内部不正による情報漏えいの現況と対応について

東京商工リサーチの調査によると、2023年の「個人情報漏えい・紛失事故」の件数は175件(前年比6.0%増)となっており、3年連続で最多件数を更新しました。そのなかで、情報の不正利用や持ち出しにより情報漏えいした「不正持ち出し・盗難」は24件(構成比13.7%)で、前年の5件から約5倍に増加しています。

情報のデータ化が進み、大量な情報であっても瞬時に操作できるようになりました。そのようなことから、企業における重要な情報は厳格に管理する必要性が高まっています。その管理や脅威への対策としては、次のようなことを実施することが考えられます。

脅威への対策

2 情報保護に関する規程について

前出のような対策については、漠然と運用するだけでなく、対策を担保する措置が必要です。例えば、企業と労働者とで情報保護に関する覚書を取り交わす、就業規則の服務規律に記載する、別途、情報取り扱いのルールについてのガイドライン等を作成して通知することなどが有効です。

次に、参考として経済産業省が公開している秘密情報管理に関する就業規則「服務規律」への規定例をご案内いたします。

秘密情報管理に関する就業規則「服務規律」への規定例

3 さいごに

企業の経営資源として、「ヒト」「モノ」「カネ」に「情報」が加わってから長らく経ちますが、ICT化の進展も相まって「情報」の価値が年々高まっています。

今一度、自社の情報資産について目を向けながら、保護体制について見直してみてはいかがでしょうか?

※本内容は2024年2月14日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

一流の経営者は健康管理も手を抜かない

書いてあること

  • 主な読者:自分の健康に自身があって、不摂生をしがちな経営者
  • 課題:多忙であり、自身の健康維持を後回しにしがち
  • 解決策:いつ健康を損ねるか分からないことを自覚し、簡単な健康管理から始める

1 日ごろから心がけたい7つの健康管理術

経営者が健康でハツラツとしていることは、経営者自身だけではなく、周囲にも良い影響を与えます。活力ある経営者の姿は社員に安心を与えます。また、取引先などは、

経営者の活力を「会社の活気」ととらえる

ので、元気な経営者が経営する会社に一目置くことになります。

ですから、「自分は健康だから大丈夫」と不摂生をせずに、自分の健康に注意しましょう。まずは、すぐに取り組める7つの健康管理術を紹介します。

1)しっかり寝る

かつては「睡眠時間の短さ」を自慢する人もいましたが、今はそのような時代ではありません。睡眠が心身の健康に与える重要な役割が解明されているからです。経営者は、多忙で、生活が不規則になりがちですが、しっかり睡眠を取るように時間を確保しましょう。

2)栄養バランスの取れた食事をする

経営者は会食が多く、栄養バランスの取れた食事をするのが難しいこともあります。そこで、毎回の食事の量を控えめにしたり、サラダやフルーツを多く摂取して、外食で不足しがちなビタミンやミネラルの補給に努めたりするなどの工夫が大切です。また、「食事を取るタイミング」「食事の中身(カロリー)」を、アプリで記録するのも効果的です。

3)お酒をあえて飲まないスタイル

ここ数年で、お酒を飲めるけれど、量を控えたり、あえて飲まなかったりする人が増えてきていることをご存じですか。そうしたライフスタイルを「ソバーキュリアス」と呼びます。会食でも、お酒を控えめにしたり、飲まなかったりすることで、思考もクリアになって会話に集中できるというメリットもあります。

4)趣味などで気分転換を図る

気分転換は効率化や新しいアイデアの発想につながります。ゴルフなど仕事上の付き合いにつながるスポーツの他、仕事から完全に切り離した趣味を楽しむのもよいでしょう。交友関係が広がり、思わぬところで仕事の関係につながることもあります。

5)気持ちを明るく保つ

経営者がストレス過多の状態になることを防ぐためには、日ごろから心に余裕を持ち、前向きな気持ちを維持しましょう。日常生活で笑いを増やすように努めたり、一歩引いて道を譲るように心がけたりすることで、心に自然と余裕が生まれてくるものです。

6)定期的にスポーツをする

ジムに通ったり、ジョギングをしたりするなど、身体を積極的に動かしましょう。毎日30分程度歩くなど軽い運動も健康に良いです。運動のための時間をつくるのが難しい場合は、「職場ではエレベーターではなく、階段を使うようにする」など、ちょっとした工夫をしてみましょう。

7)健康診断を受ける

健康管理を行うために、健康診断を受けたり、人間ドックを利用したりするとよいでしょう。また、経営者が率先して健康診断を受ける姿勢を見せることで、社員の健康管理への意識を向上させ、企業全体の受診率を上げる効果も見込めます。

2 「万が一」への備え

健康を損ねてしまった場合の対策も欠かせません。最も深刻な事態として想定されるのが、経営者の死亡です。万が一、経営者が死亡してしまった場合、金融機関からの借入金の返済・金利引き上げなどの要請、あるいは取引先からの買掛金や未払金の回収などの要請を受けるなど、企業は資金面の問題に直面する可能性があります。

また、交通事故やスポーツ中の転倒、心筋梗塞や脳梗塞、がんなどによって、入院が長期化したり、障害が残ったりして長い間働けなくなってしまうケースもあります。

こうした場合の資金面の対策としては、生命保険や損害保険を活用する企業が多いようです。仮に、そのような資金面の対策を講じていない場合は、早急に対策を検討する必要があります。

また、既に対策を講じている企業でも、事業の規模や内容は変化するため、自社の状況を踏まえた上で、保障金額などを定期的に見直しましょう。

3 経営者の「自覚」が大切

大切なことは、経営者本人が健康の維持に関心を持つことです。何の根拠も無いのに「自分だけは病気をしない」と考えがちですが、こうした意識が、健康管理に対する自覚の欠如につながり、結果として疾病や疾患などを招くことがあります。

経営者の健康管理に関する最大のポイントは、「人間である以上、いつ健康を損ねるか分からない」ということを改めて認識することです。同時に、経営者が健康を損ねた場合の影響がどれほど大きいものかについても認識しなければなりません。

以上(2024年3月更新)

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画像:unsplash

「睡眠不足」の経済損失は18兆円? 快眠のための8つのポイントを紹介!

書いてあること

  • 主な読者:睡眠不足などの睡眠に関連した悩みを持つビジネスパーソン
  • 課題:睡眠不足を解消したい、良い睡眠を取って健康になりたい
  • 解決策:睡眠サイクルを崩さないなど、快眠のための8つのポイントを紹介

1 睡眠不足による経済損失は年間18兆円

「健康経営」が注目される昨今ですが、中でも重要視されている分野の1つが「睡眠」です。睡眠は、人が生きる上で欠かせないものであり、

  • 疲労がたまった脳や体を休め、心身のバランスを取る
  • 成長ホルモンを分泌し、体の成長を促す、体の免疫力を高める、精神を安定させる

などの役割があります。ですが、日本では成人の5人に1人が睡眠の悩みを抱えているとされる他、睡眠不足による生産性の低下などにより、年間18兆円の経済損失との試算もあります。

この記事では、産業医監修のもと、

睡眠不足がもたらすリスク、昼寝の効能、快眠のための8つのポイントなど

をまとめました。健康経営には取り組んでいるけど、「睡眠についてはあまり考えたことがなかった」という人は、ぜひこのコンテンツをご確認ください。

2 睡眠不足がもたらすリスク

1)睡眠不足が企業にもたらす悪影響

睡眠不足の経験がある人は多いと思います。睡眠不足は脳の働きを鈍らせ、身体能力を低下させることが分かっています。病気が悪化したり、事故やミスをしがちになったりするなどは典型例です。

厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」では、

  • 人間が十分に覚醒して作業を行うことができるのは起床後12~13時間が限界
  • 起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下する

とした研究結果を紹介しています(なお、「睡眠指針2014」は2023年12月に改訂され、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」となりました)。

また、睡眠不足が連日続くと作業能率はさらに低下し、もし睡眠不足が6~7日間続いた場合、その後3日間は十分な睡眠時間を確保しても、日中の作業能率は十分に回復しないようです。ですから、毎日十分な睡眠時間を確保することが重要なのです。

2)ストレスチェックの義務化で関心が高まる睡眠

従業員50人以上の事業所には、ストレスチェックの実施が義務付けられています(従業員50人未満の事業所は努力義務)。これは、うつ病などメンタルヘルス不調を未然防止するための制度ですが、標準とされる57の質問には「よく眠れない」という項目が含まれています。

不眠症状とうつ病は密接に関連しているため、ストレスチェックと併せて、従業員の睡眠状態にも気を配ることは、メンタルヘルス不調の未然防止策としても重要でしょう。

3 昼寝の効能

朝早くから活動を続けている人間の脳は、覚醒してから5~6時間もたつと疲労が蓄積されていきます。特に13~15時前後の時間帯は、昼食を取ったのと相まって、疲労や眠気を強く感じることも多いでしょう。昼食後の数時間は生産性や判断力が低下し、ミスや集中力の低下(ボーッとする、あくびをするなど)が目立ちます。

このときにコーヒーを飲んだり体を動かしたりして、午後の仕事に備える人も多いと思いますが、睡眠不足を自覚しているなら、

ごく短時間(15~20分)の昼寝は効果的

です。短時間であれば、昼寝は脳を活性化させ、判断力や集中力を回復させます。ミスの減少、生産性の向上、事故予防、心身の健康増進なども期待できます。ただし、昼寝が20分を超えると深い睡眠に入ってしまい、かえって覚醒に時間がかかる場合があるので注意しましょう。

なお、会社によっては、昼寝(シエスタ)休憩を設けていたり、仮眠が取れるスペースなどがあったりするところもあります。

4 快眠のための8つのポイント

1)規則正しい生活を送る

  • 毎日同じ時刻に眠り、決まった時間に起きると、体内に睡眠のリズムがつくられ、不眠解消につながる
  • 休日もそのリズムを崩さない
  • 睡眠のリズムが狂っている場合は、太陽の光を浴びるとよい

2)朝食をしっかり食べる

  • 朝食は覚醒後のエネルギーとして利用されるため、しっかり摂取する。朝食を抜くと、その分のエネルギーを体内で補完しなくてはならないため、体に負担がかかってしまう
  • 食事を3度きちんと取ると、睡眠リズムが回復し、健康的な生活サイクルがつくられる

3)寝る前にぬるめのお風呂にゆっくり漬かる

  • ぬるめのお風呂に20~30分ほどゆっくり漬かることで、心臓に負担をかけることなく体を温め、心身共にリラックスした状態をつくる
  • 市販の入浴剤や防水機能が付いた音楽プレーヤーなどを活用することで、リラックス効果を高める

4)適度な運動をする

  • 適度な運動は熟睡を促す効果がある
  • 過剰な運動は心身を活発にするため、寝る前には控える

5)昼寝をする

  • 昼寝は午後の活動を活性化させる効能があり、夜の熟睡につながる
  • 時間帯は13~15時が望ましい。あまり遅い時間に昼寝をすると夜に眠れなくなる
  • 睡眠時間は15~20分くらいを目安にすること。1時間以上寝ると、逆に疲労がたまってしまう

6)お茶やコーヒーの量を減らす(カフェインを減らす)

  • カフェインには覚醒作用があるので、寝る前に摂取すると不眠の原因になる
  • カフェインを摂取し過ぎると、頭痛やめまい、胃腸障害などを引き起こすことがあるので注意する

7)睡眠環境(枕、ベッド、照明、音楽など)を改善する

  • 頭の位置や首の角度を考慮した枕、適度な硬さのベッド、柔らかく周辺を照らす間接照明、リラックスを促す音楽など、睡眠環境を自分の嗜好や体に合うように工夫する

8)寝ることを意識し過ぎない

  • 「寝ないと体が持たない」「たっぷりと睡眠を取らないと病気になる」などと強く意識し過ぎてしまうとそれが自己暗示となり、かえって寝られなくなるので、横になったら寝ることを意識せず、音楽を聴いたり、体の力を抜いたりするなどしてリラックスするとよい

これらの方法は、人によっては効果を発揮しなかったり、逆に眠りを妨げる恐れもあったりするので、自分に合った方法を見つけ、快眠につなげていくとよいでしょう。

5 寝酒は逆効果

寝付けないときに寝酒を飲むという人もいるでしょう。実際、アルコールには眠りを誘う作用があり、寝付きは良くなりますが、その一方で、眠りが浅くなってしまうことがあります。

浅い眠りとは、すなわち睡眠の質の低下です。例えば、二日酔いの朝など寝付いたのは遅い時間なのに、なぜか目が覚めてしまうことがありますが、これはアルコールによる覚醒作用です。「寝付けないから寝酒」というのは、実は逆効果なのです。

6 睡眠薬は必ず医師の判断で

最後に、睡眠薬(睡眠導入剤)を飲むときの注意点を紹介します。睡眠不足が続くと生産性や判断力が鈍るため、ビジネスパーソンの中には睡眠薬を使用されている方も多くいらっしゃるでしょう。

しかし、睡眠薬は使用法を誤ると、心臓や血管に負担がかかったり、依存症に陥ったりするリスクがありますので、使用の際は医師に相談し、正しい服用を心掛けなくてはなりません。自己判断で服用量を増やしたり、アルコールと一緒に服用したりしないよう注意しましょう。

以上(2024年3月更新)
(監修 株式会社フェアワーク 吉田健一)

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ChatGPT×経営者186人アンケート! どんなふうにChatGPTを使っていますか?

書いてあること

  • 主な読者:ChatGPT初心者。または、まだ使っていない経営者やビジネスパーソン
  • 課題:そもそもどうやって使えるの? 他の人のChatGPTの使い方を知りたい
  • 解決策:経営者の60%以上は「使用経験あり」もしくは「今後、使いたい」。アンケート結果から、実際の用途、効果などを知り、とにかくChatGPTに触れてみよう

1 他の人のまねでいい。まずはChatGPTに触れてみよう!

「使い方が分からないから」。2024年1月に行った経営者アンケートで、「ChatGPTを使用したことはなく、使用したいとも思わない」と回答した1人にその理由を尋ねたときの答えです。この人のように、使い方が分からないからChatGPTを使っていない人は多いのです。

この記事で「ChatGPTの使用経験について」のアンケート結果をご紹介しますので、他の経営者の使い方や感じている効果などを参考に、ChatGPTを使ってみてください。すでに使っている方は自分の現状とアンケート結果を見比べるのもいいでしょう。

新しいものかつ、誰でも簡単に触れられるのが今のChatGPTです。まず、一度、触れてみましょう。ちなみに「うれしい気持ちの画像をつくってください」とChatGPTに指示したものが次の画像です。こんなふうにChatGPTとやり取りすることもできるのです。

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2 ChatGPTの使用に関する経営者186人アンケート

1)ChatGPTの使用経験について

ChatGPTの使用経験は次の通りです。「使用したことがある」と「使用したことはないが、使用したい」を合わせると、実に66.7%もの経営者が使ったことがある、もしくは使いたいということになります。

なお、「使用したことはなく、使用したいとも思わない」と回答した人の理由は、「使い方が分からないから」の他は、「使うタイミングがないから」などがありました。

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2)ChatGPTの活用方法について

ChatGPTの活用方法(どのような業務に使っているか、もしくは使いたいか)は次の通りです。一番多いのは「文書作成(例:報告書、提案書)」で、次に「マーケティング(例:コンテンツ作成、SNS管理、アイデア出し)」が続きます。「その他」の回答としては、コーディング、プログラム作成といったものもありました。

一番多かった「文書作成(例:報告書、提案書)」に使った(使いたい)理由としては、「文章のたたき台づくりに使って、文書作成を省力化できるから」「書類づくりをスピードアップできるから」という回答がありました。

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3)ChatGPTの効果について

ChatGPTの効果(業務における変化)は次の通りです。一番多いのは「効率化、時短」で、次に「新しい視点」が続きます。

「効率化」は分かりやすいとして、「新しい視点」についてどういうことか尋ねたところ、「質問の返答の中には、今まで自分たちが考えていなかった内容が含まれることがある」「人の行動に対する新しい視点を与えてくれたり、やりたかったエクセルでの画像取り込みコードを生成してくれたりした」といった回答がありました。

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4)ChatGPTでやっていることについて

ChatGPTを使うときに実施していること(工夫などを含む)については次の通りです。一番多いのは「わからない、特にない」ですが、その次には「質問の仕方や回答を社内で色々試して情報をシェアしている」「文章だけでなく、エクセルの集計にもChatGPTを活用している」が続きます。

「質問の仕方や返答を社内で色々試して情報をシェアしている」と回答した人に、その理由を尋ねたところ、「どんな質問をしたらどのような回答が来るか、まだよくわかっていないところがあるので、なるべく社内で共有して、無駄な質問や的外れな質問をしないようにするため」「色々試して情報をシェアすることで、より良い活用方法を見いだそうとしているため」といったものがありました。

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5)ChatGPTの難しいところについて

ChatGPTの難しいところについては次の通りです。一番多いのは「情報の信ぴょう性、鮮度がわからない」で、次に「こちらの意図がなかなかうまく伝わらない」が続きます。「その他」の回答としては、「無料版なのでデータが古い」といったものもありました。

情報の信ぴょう性、鮮度は無料・有料、バージョンなどによっても印象が変わりそうです。一方、「こちらの意図がなかなかうまく伝わらない」というのは、AIとのやり取りだからこその難しさと考えられます。そこで、そう回答した人に理由を尋ねたところ、「質問についての返答が、的外れなことがあったため」「入力にコツがあるようなのですが、自分がそれをよく知らないからだと思う」といったものがありました。

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6)ChatGPTの今後の用途について

ChatGPTの今後の用途については次の通りです。一番多いのは「文章などコンテンツ作成の効率化」で、次に「社内の知識共有、マニュアル作成」「新しい商品やサービスのアイデア出し」が続きます。

「その他」の回答としては、「コーディングチェック」「プログラム作成」「対話的な反応」といったものもありました。

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7)ChatGPTを使わない理由について

最後に、ChatGPTについて「使用したことはなく、使用したいとも思わない」と回答した33.3%の人に尋ねた、ChatGPTを使わない理由については次の通りです。一番多いのは「よく知らないから」で、次に「自社では使う必要がないから」「使う機会がないから」が続きます。

「その他」の回答としては、「人の道に反するから」「使用することによる弊害や、セキュリティーの保証が不明確」といったものもありました。

いずれにしても、使ってみたことがない方は、「一度、試しに使ってみる」ことで分かってくることがあるかもしれません。

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以上(2024年3月作成)

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画像:Arnav Pratap Singh-Adobe Stock

「賃上げ」で使える助成金! 業務改善助成金など5種類を紹介

書いてあること

  • 主な読者:中小企業が賃上げの際に活用できる助成金等について知りたい経営者
  • 課題:具体的にどのようなものがあるか分からない
  • 解決策:主なものとして、「業務改善助成金」「キャリアアップ助成金」「働き方改革推進支援助成金」「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」「中小企業向け賃上げ促進税制」の5つを押さえる

1 賃上げの不安は、助成金等を上手に活用して払拭する

物価高の影響等から、賃上げ(定期昇給やベースアップ)に向けた動きが活発になっています。2024年春闘でも、「みんなで賃上げ。ステージを変えよう!」(日本労働組合総連合会)をスローガンに、賃上げ目標を「5%以上(定期昇給相当分を含む)」とする方針が打ち出されています。

ただ、多くの経営者は、

「先行きが不透明で、簡単には賃上げができない……」

と思っているのではないでしょうか。賃上げは簡単でも、賃下げは「労働条件の不利益変更」等の問題があって難しいので、不安になるのも無理はありません。そこでご提案したいのが、

助成金や補助金、税制を上手に活用し、賃上げによるコストアップに対応すること

です。

この記事では、

賃上げに関する中小企業向けの助成金等を5つ紹介

します。支給額や要件等の情報に加え、専門家のワンポイントアドバイスも載せています。なお、助成金等の内容は、2024年2月9日時点のもので将来変更される可能性があります。また、申請書の書き方や添付書類等については、各章で紹介しているURLをご参照ください。

2 業務改善助成金

1)業務改善助成金とは?

会社(実際は支店等の事業場単位)が事業場内最低賃金(最も賃金が低い社員の時給)を30円以上引き上げ、生産性を向上させるための設備投資等を行った場合、その費用の一部(最大600万円)を助成金として受け取れるというものです。

■厚生労働省「業務改善助成金」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。例えば、東京都の場合、地域別最低賃金が1113円(2023年10月1日~)なので、「事業場内最低賃金が1113円~1163円で、不交付事由に該当しない中小企業・小規模事業者」が対象になります。

  • 中小企業・小規模事業者であること
  • 事業場内最低賃金が、地域別最低賃金+50円以内であること
  • 解雇や賃金引き下げ等の不交付事由に該当しないこと

要件を満たしている場合、「賃上げの計画」「設備投資等の計画」を作成し、都道府県労働局に提出します。交付が決定されたら、計画に沿って賃上げと設備投資等を実施し、都道府県労働局に結果を報告すれば、助成金を受け取れます。

ちなみに、助成金の対象になる設備投資等の例としては、次のようなものがあります。

  • 設備投資(例:POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮)
  • コンサルティング(例:専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上)
  • その他(例:店舗改装による配膳時間の短縮)

3)受け取れる金額はいくら?

「助成上限額」までの範囲内で、「設備投資等の費用×助成率」で計算した額を受け取れます。

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4)専門家のワンポイントアドバイス

設備投資をする場合、都道府県労働局が交付を決定する前に業者と契約したり、都道府県労働局に提出した計画書や見積書と、内容や金額が異なる設備を導入したりすると、助成金が不支給になる恐れがあります。助成金が支給された後も、都道府県労働局から調査が入ったり、「状況報告書」の提出を求められたりすることがあるので注意が必要です。

3 キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

1)キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)とは?

有期パート等(契約期間の定めがある非正規雇用の社員)の基本給を3%以上増額するよう賃金規定等を改定した場合、賃上げをした有期パート等の人数に応じ、助成金を定額(1人当たり最大6.5万円)で受け取れるというものです。職務評価(職務の大きさを相対的に把握すること)の実施による加算(1事業所当たり20万円)も別途受けられます。

■キャリアアップ助成金■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。「キャリアアップ計画」は、有期パート等のキャリアアップを図る上での目標や措置に関する計画、「賃金規定等」は、就業規則の賃金規定、賃金テーブル、賃金一覧表等のことをいいます。

  • 賃金規定等の改定の前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局に提出すること
  • 有期パート等の基本給を3%以上増額するよう賃金規定等を改定すること
  • 改定後の規定に基づき、増額した賃金を6カ月間支給していること

なお、助成金は賃上げをした有期パート等の人数(1年度1社当たり100人が上限)に応じて支給されますが、対象となるのは

雇用保険の被保険者で、賃金規定等の改定の3カ月以上前から勤務している有期パート等だけ(助成金の申請時点で離職している者等を除く)

なので注意が必要です。ちなみに、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、雇用期間の見込みが31日以上ある人が、雇用保険の被保険者になります。

会社も有期パート等も要件を満たしている場合、6カ月分の賃金を支給した日の翌日から2カ月以内に都道府県労働局に申請をすれば、助成金を受け取れます。

3)受け取れる金額はいくら?

「賃上げ率に応じた支給額」を定額で受け取れます。また、職務評価を実施し、適正に有期パート等の賃金規定等に反映した場合、「職務評価の実施による加算額」が上乗せされます。

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4)専門家のワンポイントアドバイス

賃上げの実施前にキャリアアップ計画を作成・提出しないと、キャリアアップ助成金は受け取れません。また、労働保険料の未納や労働関係法令の違反がある会社は、助成金の対象から外れる恐れがあるので注意が必要です。

なお、キャリアアップ助成金は、第2章の業務改善助成金と同時に受け取ると、併給調整がかかって支給額が減ることがあります。ただ、

キャリアアップ助成金は「雇用保険の被保険者しか賃上げの対象にできない」のに対し、業務改善助成金は「被保険者でない者も対象にできる」

ので、社員の雇用保険の加入状況によってはこの問題をクリアできる可能性があります。

4 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

1)働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)とは?

残業削減や年休(年次有給休暇)の取得促進に関する一定の取り組みを行った場合、その経費の一部(最大250万円)を受け取れるという助成金です。一定以上の賃上げに関する加算(最大480万円)も別途受けられます。

■働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。

  • 中小企業であること
  • 労災保険の適用事業所であること(雇用保険の被保険者はいなくてもよい)
  • 年5日の年休取得に向けて就業規則等を整備していること
  • 助成金の申請時点で、次の1)から3)の「成果目標」のいずれかを満たしていること(賃上げに関する加算を受けたい場合、さらに4)も満たすことが必要)
    1)36協定の見直し(時間外・休日労働の時間数を一定以上縮減させる)
    2)年休の計画的付与制度の導入
    3)時間単位年休と1つ以上の特別休暇(政府が指定するもの)の導入
    4)3%以上または5%以上の賃上げ

要件を満たしている場合、残業削減や年休の取得促進に関する9つの取り組み(図表3)のいずれかを実施した上で、都道府県労働局に申請すれば、助成金を受け取れます。

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3)受け取れる金額はいくら?

助成上限額の範囲内で「取り組みの費用×助成率」で計算した額を受け取れます。なお、3%以上または5%以上の賃上げをすると加算額が上乗せされます。その場合、「助成上限額+賃上げに関する加算額」が、受け取れる金額の上限になります。

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4)専門家からのワンポイントアドバイス

働き方改革推進支援助成金は、第2章の業務改善助成金と性質が似ています。ただ、業務改善助成金には「事業場内最低賃金が、地域別最低賃金+50円以内であること」という要件があるのに対し、働き方改革推進支援助成金にはこの要件がないのが大きな違いです。事業場内最低賃金が高くて業務改善助成金の対象から外れてしまっても、働き方改革推進助成金を受け取れる可能性があるので、諦めずに活用を検討してみてください。

5 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

1)ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは?

会社が制度変更などへの対応として、革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化を行い、生産性を向上させるための設備投資等をした場合、その費用の一部(枠に応じ、最大1250万円~8000万円)を補助金として受け取れるというものです。なお、大幅な賃上げを行うと、補助上限額が引き上げられる(枠に応じ、補助上限額が最大2250万円~1億円に引き上げ)という特例措置を受けられます。

■ものづくり補助金総合サイト「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領」■
https://portal.monodukuri-hojo.jp/about.html

2)補助金を受け取るには?

まず、会社が次の基本要件を全て満たす事業計画書を策定し、実行する必要があります。なお、対象となるのは中小企業や小規模事業者等です。

  • 付加価値額を、年平均成長率+3%以上増加させること
  • 賃金の支給総額を、年平均成長率+1.5%以上増加させること
  • 事業場内最低賃金を、地域別最低賃金+30円以上とすること

また、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金には、

  • 生産プロセス改善等に関する設備投資等を対象とする「省力化(オーダーメイド)枠」
  • 製品・サービス開発に関する設備投資等を対象とする「製品・サービス高付加価値化枠」
  • 海外需要開拓に関する設備投資等を対象とする「グローバル枠」

があり、上記の基本要件に加え、それぞれの枠が設定する要件も満たす必要があります(枠ごとの要件の詳細は、ここでは割愛します)。

要件を満たしている場合、GビズID(1つのIDで複数の行政サービスにアクセスできるサービス)のプライムアカウントを取得、電子申請の後、「審査→交付決定→補助事業の実施→確定検査(交付額の決定)」という流れを経て実績報告と請求を提出すれば、補助金を受け取れます。

■GビズID(gBizID)■
https://gbiz-id.go.jp/top/

3)受け取れる金額はいくら?

「補助上限額」までの範囲内で、「設備投資等の費用×補助率」で計算した額を受け取れます。なお、大幅な賃上げ(賃金の支給総額を、年平均成長率+6%以上増加させる等)をした場合、補助上限額が引き上げられる特例措置を受けられます。

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4)専門家からのワンポイントアドバイス

前述した通り、補助金の申請後は「審査→交付決定→補助事業の実施→確定検査」といった具合にタスクが多いので、申請や補助事業の実施等は計画的に進めましょう。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、年に複数回に分けて募集が行われるので、その都度公募要領を確認し、スケジュールの誤認等がないよう注意が必要です。

6 中小企業向け賃上げ促進税制

1)中小企業向け賃上げ促進税制とは?

全社員の賃金(給与等支給額)を前年度比で一定率以上引き上げると、法人税の税額控除(控除率30%)を受けられるというものです。また、教育訓練費の引き上げや女性活躍・子育て支援の取り組みによって控除率の上乗せ加算(10~15%)が別途あり、最大で45%の税額控除が受けられるようになる予定です(令和6年度税制改正による改正)。

■中小企業庁「中小企業向け『賃上げ促進税制』」■
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html

2)税額控除を受けるには?

まず、会社が次の要件を満たす必要があります。

  • 青色申告書を提出する、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人であること
  • 普通法人のうち事業年度終了日における資本金の額または出資金の額が5億円以上の大法人による完全支配関係がある子法人等でないこと

税制の利用に当たって、税務申告より前に特段の手続きを行う必要はありません。ただ、法人税の申告の際に、確定申告書等に、適用額明細書、税額控除の対象となる控除対象雇用者給与等支給増加額、控除額、その金額の計算に関する明細を記載した書類を添付する必要があります。

3)控除率はどのぐらい?

給与等支給額の上昇率に応じて、15%または30%の控除を受けられます。さらに、教育訓練費の引き上げ、女性活躍・子育て支援に関わるくるみん・えるぼし認定の取得による上乗せ加算があります。なお、くるみん・えるぼし認定の取得による上乗せ加算は令和6年度税制改正により新たに設けられる予定です。

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4)専門家からのワンポイントアドバイス

令和6年度税制改正では、中小企業向け賃上げ促進税制について、前述した控除率の改正があった他、その年に控除できなかった控除額について、5年間繰り越して控除できる制度が新たに設けられる予定です。併せて押さえておきましょう。

以上、賃上げに関する中小企業向けの助成金等を5つ紹介しました。なお、厚生労働省ウェブサイトでは、ここまで紹介した内容の他に、最低賃金引き上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業等が公表されているので、興味がある人はそちらもご確認ください。

■厚生労働省「最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/index.html

以上(2024年3月作成)
(監修 ひらの社会保険労務士事務所)

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弁護士が注目する2024年度の法務3大ニュース

書いてあること

  • 主な読者:2024年度の注目すべき法務分野の改正を知りたい経営者、法務担当者
  • 課題:法務分野は改正が多いため、注目すべき話題に絞って把握したい
  • 解決策:「フリーランスの保護」「不当表示等に関する自主的な是正の促進や、違反行為に対する抑止力の強化等」「デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化」に注目する

1 2023年度・2024年度の3大ニュース

2023年度は、改正消費者契約法の施行による「契約書・約款の見直し」、改正電子通信事業法の施行による「電気通信事業該当性のチェック」の対応が求められた他、改正民法の施行による「所有者不明の不動産の有効活用」が認められるようになりました。

2024年度は、フリーランス保護新法の施行による「フリーランスの保護」、改正景品表示法の施行による「不当表示等に関する自主的な是正の促進や、違反行為に対する抑止力の強化等」が行われます。また、知財一括法の施行により、「デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化」が図られるため、スタートアップや中小企業において、知的財産を活用した新規事業展開が後押しされるようになるという法改正もあります。

2023年度・2024年度の法務3大ニュースは次の通りです。

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2 2023年度の総括

2023年6月1日より、改正消費者契約法が施行され、「法令に反しない限り、○万円を上限として賠償する」など、免責の範囲が不明確な条項が無効になった他、消費者を保護する規制が設けられました。自社の契約書や約款を見直し、消費者に不利益となる契約条項を修正するなど、法改正への対応を迫られた会社も多いのではないでしょうか。

また、2023年6月16日より、改正電子通信事業法が施行され、登録・届出を要する電気通信事業者の範囲が拡大しました。自社の事業が、電気通信事業に該当しないか改めてチェックする必要が出てきました。

その他、民法改正により、所有者が不明な不動産の処分につき新たな制度が設けられました。不動産業者を中心に、新たな法制度への理解が求められています。

3 2024年度の主なニュース

1)フリーランスの保護

遅くとも2024年秋ごろまでに、特定の会社に所属せず、業務委託で働くフリーランスを保護するための「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「フリーランス保護新法」)が施行される予定です。主なポイントは次の通りです。

  1. 書面等での契約内容の明示
  2. 報酬の支払い時期の明確化
  3. 委託事業者の遵守事項
  4. 募集情報の的確な表示
  5. 就業環境の整備

フリーランスは、通常の従業員のように、労働関係法令(労働基準法など)が適用されません。一応、一定の資本金要件を満たす会社と契約するフリーランスであれば、下請法による保護を受けられるケースもありますが、中小企業はこの資本金要件を満たさないケースが多く、フリーランスが不利益を受けやすいという問題があります。そこで、

下請法に関係なく、「特定受託事業者」(業務委託の相手方で、従業員を使用しない事業者。つまりフリーランス)に該当すれば、法律による保護を受けられるようにする

というのが、フリーランス保護新法の趣旨です。

「1.書面等での契約内容の明示」「2.報酬の支払い時期の明確化」は、会社とフリーランスの契約における「取引条件が明確でない」「報酬の支払いが遅れる、一方的に減額される」といった典型的なトラブルを防止するためのもので、フリーランスに業務を委託する会社に対し、次の対応を義務付けています。

  • 給付の内容や報酬の額、支払い期日等を書面やメールで明示すること
  • 報酬の支払い期日について、原則として、フリーランスから給付を受けた日から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内に設定すること

「3.委託事業者の遵守事項」は、立場の弱いフリーランスが、会社から不利益を押し付けられないよう、会社が遵守すべき事項を定めるものです。具体的には次の通りです。

  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく給付の受領を拒絶すること
  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
  • 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
  • 正当な理由がなく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
  • 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく給付内容を変更させ、またはやり直させること

その他、通常の従業員と同じように、フリーランスを募集するに当たって「4.募集情報の的確な表示」を行うこと、ハラスメントの防止や出産・育児・介護への配慮といった「5.就業環境の整備」を行うことなどが求められます。

2)不当表示等に関する自主的な是正の促進や、違反行為に対する抑止力の強化等

遅くとも2024年秋ごろまでに、会社の自主的な是正の促進や違反行為に対する抑止力の強化等を目的とした、「不当景品類及び不当表示防止法」(以下「景品表示法」)の改正法が施行される予定です。主な改正点は次の通りです。

  1. 確約手続の導入
  2. 課徴金制度の見直し
  3. 直罰規定の新設
  4. 適格消費者団体による開示要請規定の導入

景品表示法は、商品・サービスの品質・内容・価格等を実際よりも良く見せる(不当表示)、過大な景品を提供するなどして、消費者を惑わすのを防ぐための法律です。違反した会社は、行政指導や措置命令、課徴金納付命令等の対象になります。とはいえ、悪気なく不当表示等をしてしまい、自主的に是正しようとする会社にまで行政処分を課すのは酷です。そこで、

自主的に不当表示等の是正を進める会社に対しては、ある程度寛大な対応をしつつ、一方で悪質な会社に対しては、より重い処分を課すことで消費者を保護していく

というのが、今回の改正法の趣旨です。

「1.確約手続の導入」は、

不当表示等の疑いがある会社が「是正措置計画」を申請し、内閣総理大臣から認定を受けたときは、措置命令、課徴金納付命令の適用を受けないようにする

というものです。是正措置計画は、不当表示等を疑われるきっかけとなった行為とその影響を是正するための措置に関する計画です。

「2. 課徴金制度の見直し」は、

  • 適切な売上額を報告できない会社について、行政庁が売上額を推計することで、速やかに課徴金を納付させる規定
  • 一定期間内に繰り返し違反する会社の課徴金を、本来の1.5倍に増額する規定

を新設するというもので、これにより、会社の違反行為に対する抑止力が強化されます。

「3.直罰規定の新設」も、会社の違反行為に対する抑止力を強化する改正です。現行法では、悪質な不当表示等を行った会社に対しては、行政処分を経てから、刑事罰を科せるようになっていますが、改正法では、

行政処分を経ずに直罰(100万円以下の罰金)を科すことができる

ようになります。

「4.適格消費者団体による開示要請規定の導入」は、適格消費者団体(消費者保護のための、違反行為の差止請求権を持っている団体)が、一定の場合に会社に対し、表示の裏付けとなる根拠資料の開示を求められるようにするものです。

3)デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化

2023年6月7日に「不正競争防止法等の一部を改正する法律」(以下「知財一括法」)が成立し、2024年4月1日までに不正競争防止法、商標法、意匠法、特許法、実用新案法、工業所有権特例法等の改正法が順次施行されます。複数の改正の中で特に重要なのが「デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化」で、ポイントは次の通りです。

  1. 登録可能な商標の拡充
  2. 意匠登録手続の要件緩和
  3. デジタル空間における模倣行為の防止
  4. 営業秘密・限定提供データの保護の強化

デジタル技術の活用により、特にスタートアップや中小企業の事業活動が多様化していますが、現行法では商標登録のハードルが高かったり、法律で十分に保護されないデータがあったりして、事業活動の妨げになる恐れがあります。そこで、

商標登録やデータ保護の問題をクリアして、スタートアップや中小企業の新事業展開を後押ししていく

というのが、知財一括法の趣旨です。

「1.登録可能な商標の拡充」は、類似する複数の商標の取り扱いを定めたものです。現行法では、他人が既に登録している商標と類似するものは原則登録できませんが、知財一括法では、

先行する商標権者が同意して、出所混同の恐れがなければ、併存して登録できる

ようになります。また、一定の場合には、他人の氏名を含む商標も、当人の承諾なく登録ができるようになります。

「2.意匠登録手続の要件緩和」は、創作者等が出願前にデザインを複数公開した場合の意匠登録のルールを定めたものです。通常、出願前にデザインが公開されると、新規性(新しく、まだ世に知られていないこと)が失われ、意匠登録が受けられなくなりますが、所定の証明書を提出すると意匠登録が受けられるようになります。現行法では、複数のデザイン全てについて証明書の提出が必要ですが、知財一括法では、

最初のデザインについての証明書を提出すれば、例外規定の適用を受けられる

ようになります。

「3.デジタル空間における模倣行為の防止」は、メタバース等のデジタル空間における模倣行為を規制するものです。

他人の商品形態を模倣した商品を提供する行為について、デジタル空間上であっても不正競争行為の対象とし、差止請求権等を行使できる

ようになります。

「4.営業秘密・限定提供データの保護の強化」は、他社に共有するビッグデータ(地図データ、消費動向データ等)の保護対象が拡充されるというものです。

データを秘密管理している場合も含め限定提供データとして保護し、侵害行為の差止請求権等を行使できる

ようになります。

4 今後の対応について

2024年度の各種法改正は、いずれも主に中小企業にとって、大きな影響があります。

最近は、フリーランスに業務を発注する中小企業が増えてきましたが、そうした会社は、フリーランス保護新法の内容を正しく理解し、規制に沿った対応をする必要があります。

一般消費者向けの商品やサービスを販売・提供する会社は、常に景品表示法を意識しなければなりません。直罰規定の新設や課徴金制度の見直し等の違反者に対する制裁も強化されていますので、意図せずに不当表示等を行ってしまった場合には確約手続を利用する等、早期に是正できる社内体制を構築しておくのもよいでしょう。

ビジネスを規制する法改正もあれば、一方で知財一括法のように、ビジネスを後押しする法改正もあります。自社に関係するものについては、タイムリーに情報を収集する必要があるでしょう。

以上(2024年3月作成)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:Artur Szczybylo-shutterstock

税理士が注目する2024年度の税務3大ニュース

書いてあること

  • 主な読者:2024年度の注目すべき税務分野の改正を知りたい経営者、税務担当者
  • 課題:税務分野は改正が多いため、注目すべき話題に絞って把握したい
  • 解決策:「賃上げ促進税制の拡充」「交際費(社外飲食費)の金額基準引き上げ」「事業承継税制の特例承継計画等の提出期限を2年延長」に注目する

1 2023年度・2024年度の3大ニュース

2023年度は、消費税のインボイス制度の導入に伴う小規模事業者の急激な税負担の増加を軽減させる措置が取られた他、中小企業の積極的な研究開発を促進する「中小企業技術基盤強化税制」の適用期限の延長、「中小企業経営強化税制」の対象設備の一部見直しが行われるとともに、適用期限が2年延長されました。

2024年度は、「賃上げ促進税制」を適用するにあたり、子育て支援・女性活躍支援をした企業に対しては控除率が加算され、最大控除率が従来の40%から45%まで拡充されるとともに、赤字決算の中小企業に対する救済・賃上げの動機づけとして、5年間の「繰越控除制度」が導入されます。また、交際費の範囲から除外される社外飲食費の金額基準が引き上げられます。その他には、中小企業を中心とした事業承継を円滑に実行させることを趣旨とした「事業承継税制」につき、特例承継計画・個人事業承継計画の提出期限が2年延長されます。

2023年度と2024年度の税務3大ニュースは次の通りです。

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2 2023年度の総括

2023年度は、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入され、影響範囲の大きさから、大きな関心事になりました。このインボイス制度の導入対応として、各社においては請求書のひな形変更などに追われましたが、国税当局における事前の周知などもあり、おおむね順調にスタートしたといえそうです。ただし、今後は実務上の不明点・疑問点なども出てくると考えられるため、国税当局側から示されるQ&Aなどには注視するようにしましょう。

3 2024年度の主なニュース

1)賃上げ促進税制の拡充(中小企業向け)

前年比で給与等を増加させた場合に、法人税から一定の税額控除が受けられる「賃上げ促進税制」について、控除率の上乗せ措置が見直され、税額控除率が最大40%から最大45%まで拡大されることになりました。

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新設された上乗せ措置の要件の1つとなる「くるみん・プラチナくるみん」とは、子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定を受けた会社に与えられるものです。また、「えるぼし・プラチナえるぼし」とは、女性活躍への取り組み状況が優れているとして、厚生労働大臣の認定を受けた会社に与えられるものです。具体的な説明は省略しますが、子育て支援・女性活躍支援をした企業に対しては、税務上のインセンティブ(控除率の上乗せ)が与えられることになります。

なお、賃上げ促進税制は、法人税を直接減額させる「税額控除」のため、赤字で法人税が生じない会社では、これまでは要件を満たしてもメリットを受けることができませんでした。今回の税制改正で、このような会社が制度を活用できるよう新たに「繰越税額控除」制度が導入されます。

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これにより、赤字であっても翌事業年度以降にメリットを受けられる可能性があるため、控除額に必要な資料などを整理しておくようにしましょう。

2)交際費(社外飲食費)の金額基準引き上げ

交際費は限度額を超えると損金(税務上の費用)に算入できませんが、社外飲食費で1人あたりの金額が一定基準以下であれば交際費とせず、会議費などとして損金に算入できます。この一定基準は今まで5,000円/1人でしたが、これが2024年4月1日以降の支払いから10,000円/1人に引き上げられます。

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なお、金額基準以下で会議費として処理できるのは、得意先その他の社外の人に対する接待飲食などに関連するものに限られ、役員や従業員のみの社内飲食費(全従業員参加の懇親会のような福利厚生費となるものは除く)は対象とならず、金額に関わらず交際費となるので注意しましょう。

3)事業承継税制の特例承継計画等の提出期限を2年延長

事業承継税制とは、特例承継計画などを提出した場合、事業承継時の贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度です。この特例承継計画等については、2024年3月末をもってその提出期限を迎える予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化などによって経営者の事業承継が遅れているため、この期限が2026年3月末まで延長されます。

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なお、「提出期限」は延長されるものの、「適用期限」は従来のままで延長されない見込みなので注意しましょう。

4 今後の対応について

2024年度においても、今回ご紹介した制度の他、中小企業の中堅企業への成長を後押しする税制など、各趣旨のもとで多くの税制改正が予定されています。税法上の優遇措置は、適用することによって大きな効果をもたらす一方、適用するための要件が厳格に定められているため、適用する上での理解を誤っていたり、必要な書類をそろえていなかったりすることで、税務調査で指摘され、思わぬ税負担を強いられることもあります。そのため、特に改正された規定については早めに準備を進めるとともに、適用する上での判断その他について迷いがある場合には、税理士などの専門家に相談し、適切に手続きを進めることが重要です。

以上(2024年3月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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社労士が注目する2024年度の労務3大ニュース

書いてあること

  • 主な読者:2024年度の注目すべき労務分野の改正を知りたい経営者、労務担当者
  • 課題:労務分野は改正が多いため、注目すべき話題を絞って把握したい
  • 解決策:「労働条件の明示ルール改正」「時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)」「社会保険の適用拡大」に注目する

1 2023年度・2024年度の3大ニュース

2023年度は、中小企業においても「月60時間超の時間外労働に対する50%以上の割増賃金の支払い」が義務付けられるなど、重要な法改正がありました。物価上昇の影響などを受け、最低賃金も過去最高に引き上げられ、人件費にも大きな影響があったのではないでしょうか。

2024年4月からは、労働契約の締結・更新時の「労働条件の明示ルール」に変更がある他、これまで適用が猶予されていた建設業や自動車運転業務について「時間外労働の上限規制」が適用されるようになります。また、10月には厚生年金保険の被保険者数が50人超の会社を対象とする、「社会保険の適用拡大」が控えています。

2023年度・2024年度の労務3大ニュースは次の通りです。

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2 2023年度の総括

2023年4月1日より、中小企業においても、月60時間超の時間外労働に対し、50%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられました。2010年に大企業に50%以上の割増賃金が義務付けられた後も、中小企業については適用が猶予されていた(25%以上の割増賃金を支払えばよかった)のですが、その10年以上続いた猶予措置が終了しました。

同じく2023年4月1日より、賃金のデジタル払いが認められました。労使協定を締結し、さらにデジタル払いを希望する従業員から個別の同意を得ることで、「〇〇ペイ」などの電子通貨での賃金の支払いが可能になっています。デジタル払いの対象となるのは、第二種資金移動業者が取り扱う口座で、金融庁によると、2023年12月31日時点で84社の業者が登録されています。

また、2023年3月期決算より、有価証券報告書の提出義務がある上場企業等については、人材育成や社内環境整備方針等の人的資本に関する情報を、有価証券報告書で公表することが義務付けられました。いまだ有価証券報告書への記載ルールが設けられていないため、開示情報について、課題が残る状況となっています。

3 2024年度の主なニュース

1)労働条件の明示ルール改正

2024年4月1日より、

労働契約の締結・更新時に、労働条件として明示する事項が追加

されます(改正労働基準法施行規則による)。内容は図表2の通りで、これらは全て労働条件通知書などの書面で明示しなければなりません。労働条件通知書のひな型のアップデート、また有期契約の従業員については通算契約期間の確認や無期転換後の労働条件の検討などを、しっかりやっておきましょう。

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1.就業場所・業務の変更の範囲

労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、雇入れ直後の就業場所・業務内容だけでなく、

労働契約の期間中における「変更の範囲」も明示

することが義務付けられます。雇用形態によって「変更の範囲」が変わるケースもあると思いますので、厚生労働省ウェブサイトに掲載されているパンフレットの記載例をもとに、内容を検討しておくようにしましょう。

■厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html

2.更新上限の有無と内容

有期労働契約の締結時・更新時に、

「契約期間は通算〇年まで」「契約更新は〇回まで」など、更新上限の有無と内容を明示

することが義務付けられます。明示する際は、現在の契約が何回目(何年目)に当たるのかを併せて従業員に伝えると、トラブル防止につながります。なお、新たに更新上限を設けたり、現在の更新上限を短縮したりする場合、事前にその理由を従業員に説明する必要があります。

3.無期転換申込機会、無期転換後の労働条件

「無期転換」とは、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、有期契約の従業員が会社に申し込むことで、期間の定めがない無期労働契約に転換されるルールのことです。改正後は、この無期転換を申し込む権利(無期転換申込権)が発生する契約更新のタイミングごとに、

「無期転換申込機会(無期転換を申し込める旨)」「無期転換後の労働条件」を明示

することが義務付けられます。無期転換後の労働条件は、就業規則や個別の労働契約で別段の定めをしなければ、無期転換前と同じになります。労働条件を変更する場合、明確に定めをする他、業務内容や責任を考慮して、他の従業員とバランスが取れた待遇にする必要があります。労働条件の決定に当たって考慮した事項も、可能な範囲で説明できるようにしておきましょう。

2)時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)

2024年4月1日より、

建設業、自動車運転業務、医師、砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)にも「時間外労働の上限規制」が適用される

ようになります(改正労働基準法による)。時間外労働の上限規制は、36協定に定められる時間数に上限を設けるというルールで、多くの会社は2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。建設業や自動車運転業務については、業務の特性や取引慣行の問題などから適用が猶予されていましたが、それが終了し、図表3の上限規制が適用されるようになります。

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「自動車運転業務」については、上限規制の他、拘束時間や勤務間インターバルについて定めた改善基準告示の改正も行われます。また、「医師」については、医療機関の区分に応じて規制内容が異なり、さらに区分に応じた計画作成や申請手続きを求められる場合もあります。

  • クライアント等との適正な納期の取り決め、スケジュールの緩和
  • 業界内の慣行の見直し、待機時間や再配達業務などの削減
  • 人材確保、後継人材の育成
  • IT機器・アプリケーションなどを活用した業務効率化
  • 上記により増加する負担費用を、取引価格等に転嫁していく取り組み

など、さまざまな角度から長時間労働の改善を検討し、上限規制に対応していきましょう。

3)社会保険の適用拡大

2024年10月1日より、

社会保険(健康保険と厚生年金保険)の適用対象となるパート等の範囲が拡大

されます(改正健康保険法、改正厚生年金保険法による)。ここでの「パート等」とは、

週の所定労働時間または月の所定労働日数が、正従業員の4分の3未満の短時間労働者

のことです。現行の制度では、「厚生年金保険の被保険者数が常時100人超の会社に雇用されていること」など、一定の要件を満たしたパート等が社会保険の被保険者になりますが、法改正後はこの被保険者要件が、図表4のように変更されます。

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注目すべき要件は、「1.厚生年金保険の被保険者数」で、

2024年10月1日より「常時100人超」→「常時50人超」への引き下げ

が行われ、より規模の小さな会社でもパート等が被保険者になるケースが出てきます。事前に

  • 現状、被保険者となっていないパート等の労働条件の確認
  • 2024年10月1日より社会保険の被保険者となるパート等に対し、配偶者等の扶養から外れる旨、社会保険加入のメリットやそれに伴う働き方の変化などについて説明
  • 2024年10月1日より社会保険の被保険者となるパート等の資格取得届の準備

などを行い、社会保険の適用拡大に備えましょう。

4 今後の対応について

2024年度、全ての会社で実務対応が必要になる法改正は、「労働条件の明示ルール改正」です。テレワークや時差出勤など、働き方が多様化する中で労働条件に関するトラブルが発生しやすくなっていますが、今回の法改正がさらに拍車をかける可能性があります。前述した通り、労働条件通知書のひな型のアップデートなどを欠かさないようにしましょう。

また、中小企業への影響が特に大きいのは、「社会保険の適用拡大」です。社会保険料は労使折半なので、対象となるパート等が多ければ、その分会社の保険料負担も増えます。配偶者等の扶養から外れない働き方を希望するパート等もいるでしょうから、場合によってはそうしたパート等が社会保険に加入しないで済むよう、人員確保に取り組む必要も出てくるでしょう。

今後の法改正の動向を把握した上で、人員確保や人件費の検討など、早めに対応を進めるようにしましょう。

以上(2024年3月作成)
(監修 社会保険労務士法人AKJパートナーズ)

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画像:Artur Szczybylo-shutterstock