税理士が注目する2024年度の税務3大ニュース

書いてあること

  • 主な読者:2024年度の注目すべき税務分野の改正を知りたい経営者、税務担当者
  • 課題:税務分野は改正が多いため、注目すべき話題に絞って把握したい
  • 解決策:「賃上げ促進税制の拡充」「交際費(社外飲食費)の金額基準引き上げ」「事業承継税制の特例承継計画等の提出期限を2年延長」に注目する

1 2023年度・2024年度の3大ニュース

2023年度は、消費税のインボイス制度の導入に伴う小規模事業者の急激な税負担の増加を軽減させる措置が取られた他、中小企業の積極的な研究開発を促進する「中小企業技術基盤強化税制」の適用期限の延長、「中小企業経営強化税制」の対象設備の一部見直しが行われるとともに、適用期限が2年延長されました。

2024年度は、「賃上げ促進税制」を適用するにあたり、子育て支援・女性活躍支援をした企業に対しては控除率が加算され、最大控除率が従来の40%から45%まで拡充されるとともに、赤字決算の中小企業に対する救済・賃上げの動機づけとして、5年間の「繰越控除制度」が導入されます。また、交際費の範囲から除外される社外飲食費の金額基準が引き上げられます。その他には、中小企業を中心とした事業承継を円滑に実行させることを趣旨とした「事業承継税制」につき、特例承継計画・個人事業承継計画の提出期限が2年延長されます。

2023年度と2024年度の税務3大ニュースは次の通りです。

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2 2023年度の総括

2023年度は、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入され、影響範囲の大きさから、大きな関心事になりました。このインボイス制度の導入対応として、各社においては請求書のひな形変更などに追われましたが、国税当局における事前の周知などもあり、おおむね順調にスタートしたといえそうです。ただし、今後は実務上の不明点・疑問点なども出てくると考えられるため、国税当局側から示されるQ&Aなどには注視するようにしましょう。

3 2024年度の主なニュース

1)賃上げ促進税制の拡充(中小企業向け)

前年比で給与等を増加させた場合に、法人税から一定の税額控除が受けられる「賃上げ促進税制」について、控除率の上乗せ措置が見直され、税額控除率が最大40%から最大45%まで拡大されることになりました。

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新設された上乗せ措置の要件の1つとなる「くるみん・プラチナくるみん」とは、子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定を受けた会社に与えられるものです。また、「えるぼし・プラチナえるぼし」とは、女性活躍への取り組み状況が優れているとして、厚生労働大臣の認定を受けた会社に与えられるものです。具体的な説明は省略しますが、子育て支援・女性活躍支援をした企業に対しては、税務上のインセンティブ(控除率の上乗せ)が与えられることになります。

なお、賃上げ促進税制は、法人税を直接減額させる「税額控除」のため、赤字で法人税が生じない会社では、これまでは要件を満たしてもメリットを受けることができませんでした。今回の税制改正で、このような会社が制度を活用できるよう新たに「繰越税額控除」制度が導入されます。

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これにより、赤字であっても翌事業年度以降にメリットを受けられる可能性があるため、控除額に必要な資料などを整理しておくようにしましょう。

2)交際費(社外飲食費)の金額基準引き上げ

交際費は限度額を超えると損金(税務上の費用)に算入できませんが、社外飲食費で1人あたりの金額が一定基準以下であれば交際費とせず、会議費などとして損金に算入できます。この一定基準は今まで5,000円/1人でしたが、これが2024年4月1日以降の支払いから10,000円/1人に引き上げられます。

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なお、金額基準以下で会議費として処理できるのは、得意先その他の社外の人に対する接待飲食などに関連するものに限られ、役員や従業員のみの社内飲食費(全従業員参加の懇親会のような福利厚生費となるものは除く)は対象とならず、金額に関わらず交際費となるので注意しましょう。

3)事業承継税制の特例承継計画等の提出期限を2年延長

事業承継税制とは、特例承継計画などを提出した場合、事業承継時の贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度です。この特例承継計画等については、2024年3月末をもってその提出期限を迎える予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化などによって経営者の事業承継が遅れているため、この期限が2026年3月末まで延長されます。

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なお、「提出期限」は延長されるものの、「適用期限」は従来のままで延長されない見込みなので注意しましょう。

4 今後の対応について

2024年度においても、今回ご紹介した制度の他、中小企業の中堅企業への成長を後押しする税制など、各趣旨のもとで多くの税制改正が予定されています。税法上の優遇措置は、適用することによって大きな効果をもたらす一方、適用するための要件が厳格に定められているため、適用する上での理解を誤っていたり、必要な書類をそろえていなかったりすることで、税務調査で指摘され、思わぬ税負担を強いられることもあります。そのため、特に改正された規定については早めに準備を進めるとともに、適用する上での判断その他について迷いがある場合には、税理士などの専門家に相談し、適切に手続きを進めることが重要です。

以上(2024年3月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:Artur Szczybylo-shutterstock

社労士が注目する2024年度の労務3大ニュース

書いてあること

  • 主な読者:2024年度の注目すべき労務分野の改正を知りたい経営者、労務担当者
  • 課題:労務分野は改正が多いため、注目すべき話題を絞って把握したい
  • 解決策:「労働条件の明示ルール改正」「時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)」「社会保険の適用拡大」に注目する

1 2023年度・2024年度の3大ニュース

2023年度は、中小企業においても「月60時間超の時間外労働に対する50%以上の割増賃金の支払い」が義務付けられるなど、重要な法改正がありました。物価上昇の影響などを受け、最低賃金も過去最高に引き上げられ、人件費にも大きな影響があったのではないでしょうか。

2024年4月からは、労働契約の締結・更新時の「労働条件の明示ルール」に変更がある他、これまで適用が猶予されていた建設業や自動車運転業務について「時間外労働の上限規制」が適用されるようになります。また、10月には厚生年金保険の被保険者数が50人超の会社を対象とする、「社会保険の適用拡大」が控えています。

2023年度・2024年度の労務3大ニュースは次の通りです。

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2 2023年度の総括

2023年4月1日より、中小企業においても、月60時間超の時間外労働に対し、50%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられました。2010年に大企業に50%以上の割増賃金が義務付けられた後も、中小企業については適用が猶予されていた(25%以上の割増賃金を支払えばよかった)のですが、その10年以上続いた猶予措置が終了しました。

同じく2023年4月1日より、賃金のデジタル払いが認められました。労使協定を締結し、さらにデジタル払いを希望する従業員から個別の同意を得ることで、「〇〇ペイ」などの電子通貨での賃金の支払いが可能になっています。デジタル払いの対象となるのは、第二種資金移動業者が取り扱う口座で、金融庁によると、2023年12月31日時点で84社の業者が登録されています。

また、2023年3月期決算より、有価証券報告書の提出義務がある上場企業等については、人材育成や社内環境整備方針等の人的資本に関する情報を、有価証券報告書で公表することが義務付けられました。いまだ有価証券報告書への記載ルールが設けられていないため、開示情報について、課題が残る状況となっています。

3 2024年度の主なニュース

1)労働条件の明示ルール改正

2024年4月1日より、

労働契約の締結・更新時に、労働条件として明示する事項が追加

されます(改正労働基準法施行規則による)。内容は図表2の通りで、これらは全て労働条件通知書などの書面で明示しなければなりません。労働条件通知書のひな型のアップデート、また有期契約の従業員については通算契約期間の確認や無期転換後の労働条件の検討などを、しっかりやっておきましょう。

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1.就業場所・業務の変更の範囲

労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、雇入れ直後の就業場所・業務内容だけでなく、

労働契約の期間中における「変更の範囲」も明示

することが義務付けられます。雇用形態によって「変更の範囲」が変わるケースもあると思いますので、厚生労働省ウェブサイトに掲載されているパンフレットの記載例をもとに、内容を検討しておくようにしましょう。

■厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html

2.更新上限の有無と内容

有期労働契約の締結時・更新時に、

「契約期間は通算〇年まで」「契約更新は〇回まで」など、更新上限の有無と内容を明示

することが義務付けられます。明示する際は、現在の契約が何回目(何年目)に当たるのかを併せて従業員に伝えると、トラブル防止につながります。なお、新たに更新上限を設けたり、現在の更新上限を短縮したりする場合、事前にその理由を従業員に説明する必要があります。

3.無期転換申込機会、無期転換後の労働条件

「無期転換」とは、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、有期契約の従業員が会社に申し込むことで、期間の定めがない無期労働契約に転換されるルールのことです。改正後は、この無期転換を申し込む権利(無期転換申込権)が発生する契約更新のタイミングごとに、

「無期転換申込機会(無期転換を申し込める旨)」「無期転換後の労働条件」を明示

することが義務付けられます。無期転換後の労働条件は、就業規則や個別の労働契約で別段の定めをしなければ、無期転換前と同じになります。労働条件を変更する場合、明確に定めをする他、業務内容や責任を考慮して、他の従業員とバランスが取れた待遇にする必要があります。労働条件の決定に当たって考慮した事項も、可能な範囲で説明できるようにしておきましょう。

2)時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)

2024年4月1日より、

建設業、自動車運転業務、医師、砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)にも「時間外労働の上限規制」が適用される

ようになります(改正労働基準法による)。時間外労働の上限規制は、36協定に定められる時間数に上限を設けるというルールで、多くの会社は2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。建設業や自動車運転業務については、業務の特性や取引慣行の問題などから適用が猶予されていましたが、それが終了し、図表3の上限規制が適用されるようになります。

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「自動車運転業務」については、上限規制の他、拘束時間や勤務間インターバルについて定めた改善基準告示の改正も行われます。また、「医師」については、医療機関の区分に応じて規制内容が異なり、さらに区分に応じた計画作成や申請手続きを求められる場合もあります。

  • クライアント等との適正な納期の取り決め、スケジュールの緩和
  • 業界内の慣行の見直し、待機時間や再配達業務などの削減
  • 人材確保、後継人材の育成
  • IT機器・アプリケーションなどを活用した業務効率化
  • 上記により増加する負担費用を、取引価格等に転嫁していく取り組み

など、さまざまな角度から長時間労働の改善を検討し、上限規制に対応していきましょう。

3)社会保険の適用拡大

2024年10月1日より、

社会保険(健康保険と厚生年金保険)の適用対象となるパート等の範囲が拡大

されます(改正健康保険法、改正厚生年金保険法による)。ここでの「パート等」とは、

週の所定労働時間または月の所定労働日数が、正従業員の4分の3未満の短時間労働者

のことです。現行の制度では、「厚生年金保険の被保険者数が常時100人超の会社に雇用されていること」など、一定の要件を満たしたパート等が社会保険の被保険者になりますが、法改正後はこの被保険者要件が、図表4のように変更されます。

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注目すべき要件は、「1.厚生年金保険の被保険者数」で、

2024年10月1日より「常時100人超」→「常時50人超」への引き下げ

が行われ、より規模の小さな会社でもパート等が被保険者になるケースが出てきます。事前に

  • 現状、被保険者となっていないパート等の労働条件の確認
  • 2024年10月1日より社会保険の被保険者となるパート等に対し、配偶者等の扶養から外れる旨、社会保険加入のメリットやそれに伴う働き方の変化などについて説明
  • 2024年10月1日より社会保険の被保険者となるパート等の資格取得届の準備

などを行い、社会保険の適用拡大に備えましょう。

4 今後の対応について

2024年度、全ての会社で実務対応が必要になる法改正は、「労働条件の明示ルール改正」です。テレワークや時差出勤など、働き方が多様化する中で労働条件に関するトラブルが発生しやすくなっていますが、今回の法改正がさらに拍車をかける可能性があります。前述した通り、労働条件通知書のひな型のアップデートなどを欠かさないようにしましょう。

また、中小企業への影響が特に大きいのは、「社会保険の適用拡大」です。社会保険料は労使折半なので、対象となるパート等が多ければ、その分会社の保険料負担も増えます。配偶者等の扶養から外れない働き方を希望するパート等もいるでしょうから、場合によってはそうしたパート等が社会保険に加入しないで済むよう、人員確保に取り組む必要も出てくるでしょう。

今後の法改正の動向を把握した上で、人員確保や人件費の検討など、早めに対応を進めるようにしましょう。

以上(2024年3月作成)
(監修 社会保険労務士法人AKJパートナーズ)

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画像:Artur Szczybylo-shutterstock

なぜ人は「肩こり」になるのか? 職場でできる解消法と併せて紹介

書いてあること

  • 主な読者:肩こりに悩むビジネスパーソン
  • 課題:そもそも、なぜ肩こりになるのか? どうすれば改善できるのか?
  • 解決策:主な原因は「筋肉の過度な緊張」。机や椅子の高さなどオフィス環境の改善を図ったり、こりをほぐすマッサージなどを行ったりすることで改善できる

1 軽く見てはいけない「肩こり」

ずしりと何かが乗っかるような不快感に、鈍い痛み……。「肩こり」はいつの時代も、多くのビジネスパーソンを悩ませます。有訴者率の上位5症状(2022年)を見ても、男女ともに、肩こりは「腰痛」に次いで第2位にランクインしています(厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」)。

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「肩こりや腰痛がもたらす経済損失は約3兆円」と試算した研究結果もあるほどで、会社の生産性を考える上でも、実は肩こりはとても重要な問題です。

「肩こりはあって当たり前、一生付き合うもの」と考えている人が多いでしょうが、

実は「オフィス環境」「マッサージやストレッチ」「生活習慣」を少し見直すだけで、肩こりを和らげられる可能性

があります。産業医監修のもと、肩こり解消のポイントをまとめましたので、気になる人はぜひこのコンテンツをご確認ください。

2 なぜ、肩こりになるの?

肩こりの主な原因は、「筋肉の過度な緊張」です。

人間は、首の骨を支柱として重い頭や腕を支えていて、その周りの首や肩の筋肉には常に大きな負担がかかっています。これらの筋肉が過度に緊張すると、血行不良が生じて酸素や栄養分が末端まで行き届かなくなり、筋肉は酸欠状態になります。

そして、酸欠状態でエネルギーを発生させると、乳酸などの老廃物が生み出されます。

血行が悪いと、老廃物は十分に排せつされず筋肉内に蓄積され、それが神経を刺激することで痛みや不快感が発生します。これが「肩こり」の正体

です。筋肉が過度に緊張する理由は、主に3つあります。

1)姿勢

人間の背骨は横から見ると緩やかなS字形に湾曲していて、全身のバランスを取ることにより、重心が偏らないようになっています。ですが、不自然な姿勢を取り続けると、全身のバランスが崩れてしまい、一部の筋肉が過度に緊張して、肩こりが起こります。うつぶせや腕枕などの不自然な姿勢で寝ている場合なども、肩こりになりやすいです。

2)運動不足

運動不足が続くと、筋肉の柔軟性が低下して次第に硬くなり、血管が圧迫されて血行が悪くなります。全身の筋力が弱ることにより、首や肩の筋肉に大きな負担がかかり、肩こりが起こります。

3)ストレス

ストレスがたまると、自律神経のうちの交感神経が刺激され、筋肉が緊張して血管が収縮し、肩こりが起こります。ストレスの原因は、多忙や人間関係、性格などさまざまですが、急激な環境の変化(「部署異動や転勤」など)があったときなどは、特に注意が必要です。

以上が、筋肉が過度に緊張する理由ですが、この他に、

内臓疾患(狭心症などの心疾患、肝炎・胆のう炎など)の症状で、肩こりが起こるケース

もあります。ですから、「頭痛や目まいなどを伴う」「肩以外の部分にも痛みがある」といった場合は、できるだけ早く医師に相談することをお勧めします。

3 オフィス環境を整えよう

デスクワークで長時間同じ姿勢を取ったり、パソコンを使用したりすることが多い職種では、特に肩こりに悩む人が多くいます。ここでは、肩こり対策としてのオフィス環境の改善法を紹介します。

1)机や椅子

机や椅子の高さが自分に合っていないと、首や肩、腕に力が入りすぎて肩こりが起こりやすくなるため、デスクワークでは机や椅子の高さの調節が重要になります。

理想的な椅子の高さは、座ったときに「膝と腰の角度が90度」になるのがよいといわれます。また、机の高さは椅子に座った際に「肘と同じくらい」が理想です。

2)デスクワークの姿勢

パソコンで作業をしていると、気付かないうちにディスプレーに近づいてしまうことがありますが、そのような場合、下を向く時間が長くなり、首の筋肉を過度に使ってしまいます。また、考え事をしているときなどは、足を組んだり、頬杖をついたりしがちですが、こうした姿勢も、首や背中の一部の筋肉に大きな負担がかかります。

デスクワークの姿勢は、

  • ディスプレーから40センチメートル以上目を離す
  • 視線を水平よりも少し下くらいに保つ

のが理想です。背筋をしっかりと伸ばして座り、体重は左右均等に配分するよう意識しましょう。また、机の周りが暗いと前かがみの姿勢になりやすく、これも肩こりの原因になります。ですから、スタンドライトなどを利用して十分な明るさを確保するようにしましょう。

なお、長時間パソコンに向かっていると、疲れ目による肩こりが起こりやすくなります。適宜休憩を取り、遠くの景色を眺めたり目薬を差したりして、目を休めることを心掛けましょう。

4 その場でできる簡単なマッサージやストレッチ

こり固まった筋肉をほぐすには、マッサージやストレッチを行うとよいです。首筋や肩の筋肉をもむ、軽くたたく、さらには肩こりに効くツボを指圧すると効果的です。ただ、その日の体調などによりマッサージやストレッチが逆効果になる恐れもあるので、自己判断はせず、医師・専門家の指示に従い、自分に合ったものを取り入れましょう。

1)マッサージ

人間の体には、内臓の働きや血行に大きく関係するツボ(経絡)があり、これらのツボを指圧することによって血行が良くなります。肩こりに効くツボは次の通りです。

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  • 風池(ふうち):後頭部、髪の毛の生え際のくぼんだ部分
  • 天柱(てんちゅう):後頭部、髪の毛の生え際にある太い2本の筋肉の外側の部分
  • 肩井(けんせい):肩のほぼ中央。肩先の中心点と首の付け根を結んだ真ん中部分
  • 肩髃(けんぐう):肩の前側にある腕との境目のくぼんだ部分
  • 曲垣(きょくえん):肩甲骨の内端のすぐ上にあるくぼんだ部分
  • 膏肓(こうこう):背骨の中心部分から指4本分外側に行った部分

これらのツボを、親指・人さし指・中指などで、体の中心に向かって押し込むように、ゆっくりと指圧します。その際、一定のリズムで繰り返し指圧して刺激を与えるとよいでしょう。なお、首・肩周り以外にも、次のような肩こりに効くとされるツボがあります。

  • 曲池(きょくち):肘を曲げた際にできるしわの外側の部分
  • 手三里(てさんり):肘を曲げるとできるしわから、指3本分手首寄りの親指側の部分
  • 外関(がいかん):手首の中央から指3本分肘寄りの部分
  • 合谷(ごうこく):手の甲。親指と人さし指の付け根の骨に近い部分
  • 頸頂点(けいちょうてん):人さし指と中指の付け根の間の部分

2)ストレッチ

筋肉をゆっくりと引っ張ったり伸ばしたりするストレッチも、肩こり解消に有効です。 ストレッチの基本は、首と肩の筋肉をほぐすことです。

  • 両手の指を組んで大きく背伸びをする
  • 手を伸ばして後ろで交差させて、ゆっくりと前屈する
  • 30秒ほど時間をかけて、首を大きくゆっくりと回す

などをしてみましょう。

なお、ストレッチを行う際は、深く息を吸い込んで、吐き出すようにすることで、さらに血行が良くなります。腹式呼吸(おなかを膨らませながら息を吸い、おなかをへこませながら息を吐く呼吸法)を取り入れると、より効果的です。

5 生活習慣(食生活、歩き方や立ち方、服装など)に注目

肩こりの症状は、日ごろの生活習慣でも、ある程度改善されます。日常生活の中での見直しのポイントを紹介します。

1)食生活

肩こりの主な原因は筋肉の過度な緊張による疲労や血行不良なので、「筋肉の疲労を解消する」「血行を良くする」などの効果がある食べ物を取るのも効果的です。肩こりに効くとされる主な栄養素は次の通りです。

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これらの栄養素が含まれる食べ物をバランスよく取ることが重要です。なお、表中の栄養素は食事の他、サプリメントで補ってもよいでしょう。

2)歩き方や立ち方

歩くときは背筋を伸ばして顎を引き、腕を歩く速度に合わせて軽く振るようにすると、正しい姿勢を保つことができます。通勤途中の電車などでも、「かばんなどを持つ手を時々左右で替える」「片側だけに体重をかけない」など、体のバランスを取ることを意識しましょう。

寝るときも、枕のサイズや柔らかさなど、自分に合ったものを選ぶなどして、バランスの良い姿勢で眠ることが大切です。

3)服装など

重い洋服は肩こりにつながりやすくなります。特に、冬場は厚着をすることが多いため、コートなどの防寒具はなるべく軽めのものを選びましょう。

また、靴選びも肩こり対策として重要です。足に合わない靴やヒールの高い靴を履いていると、歩き方に無理が生じて全身のバランスが崩れてしまい、一部の筋肉に負担をかけることになります。靴を買う際には、店で専門家の意見を聞きながら、自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。

4)運動

運動不足は筋肉の硬化による血行不良を招きます。「休憩時間に簡単な体操をする」「エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を利用する」「休日にウオーキングや水泳など、全身を動かすスポーツをする」など、日常から意識して運動を行うことが重要です。

5)ストレス対策

ストレスは、仕事や日ごろの生活の中で少しずつ蓄積され、やがて大きくなると肩こりを引き起こします。「小まめにストレッチをする」「一日のうちでゆっくりできる時間を持つ」「趣味に没頭する」などで、ストレス解消を心掛けましょう。

6)その他

肩こりは血行不良によって起こるため、こっている部分を温めて血行を良くすることが解消につながります。例えば、「入浴時に温かいシャワーを当てて刺激する」「乾いたタオルをのせ、その上から温めた蒸しタオルを当てる」「ドライヤーの温風やカイロを当てる」などの方法が効果的です。

以上(2024年3月更新)
(監修 株式会社フェアワーク 吉田健一)

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忙しい経営者のダイエットは無理をせず、“コツコツ”がポイント

書いてあること

  • 主な読者:健康管理の一環としてダイエットを考えている経営者
  • 課題:忙しくて運動をする時間が取れないし、会食が多くてダイエットが難しい
  • 解決策:隙間時間を活用した運動や、緩やかな糖質制限ダイエットなどに取り組む

1 あなたの健康管理は万全ですか?

「体が資本。ビジネスをする上で、健康が第一」です。

言われなくても分かっていることですが、経営者は「多忙でなかなか運動をする時間が取れない」「会食に行く頻度が高い」といったケースが多く、ダイエットがしにくい環境に置かれています。

とはいえ、経営のかじ取りをする経営者の身に、何か起きてからでは手遅れです。最近、体重が気になるという人は、できるだけ早い時期からダイエットに努め、健康な体をつくっていくことが大切です。この記事では、忙しい経営者がダイエットを成功させるポイントと、具体的なダイエット方法を紹介します。

2 ダイエットを成功させるポイント

1)無理をせず、“コツコツ型”で進める

ダイエットの目標は、健康な体を手に入れることであり、無理をして体を壊してしまっては本末転倒です。短期間で大きな成果を上げようとするのではなく、時間をかけて少しずつ減量にチャレンジしましょう。

大幅な減量を目指す場合も、いきなり過大な目標を立てるのではなく、まずは無理のない範囲で設定してください。それを達成できたら、改めて次の目標を設定するといったように、“コツコツ型”のダイエットがお勧めです。

なお、健康面で不安がある場合は、必ず医師に相談してからダイエットに取り組みましょう。

2)「隙間時間」をうまく使う

ダイエットに取り組む際は、毎日同じ時間に食事や運動をするなど、生活リズムを整えることが大切です。また、朝は体内の血糖値が低い関係で比較的脂肪が燃焼しやすいため、午前中の運動はダイエットに効果的といわれています。

ただ、午前中はメールの確認や打ち合わせ、業務指示などで特に忙しい経営者も多いでしょう。そうした場合は、無理に午前中に運動しようとせず、業務の合間や帰宅後のプライベートな時間など、自分の生活時間に合わせて、小まめにダイエットに取り組むとよいでしょう。

3)ダイエット(運動)仲間と一緒に取り組む

1人でダイエットを続けるのはなかなか大変ですが、仲間がいると、モチベーションが上がって取り組みやすくなることもあります。例えば、週に1度ランニングをする仲間などがいれば、「自分も頑張ろう」と張り合いが生まれます。

4)自分の現状をしっかりと把握する

ダイエットに取り組む場合、食事の摂取カロリー量や運動量の参考とするために、BMIなど自分の体に関するデータを把握しましょう。

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また、ダイエット中は毎食の摂取カロリーを記録しておきましょう。そうすると、例えば「1日に必要なエネルギーは2200キロカロリーなのに、今日の摂取カロリーは2800キロカロリーだった。600キロカロリーオーバーだから、明日からはもう少し食事量を調整しよう」といった具合に、自分の状況に合わせてダイエットの方針を決められます。

毎食の摂取カロリーを記録するのが難しい場合は、手帳にその日に食べたものをメモしておき、後でまとめて計算すればよいでしょう。

3 日々の食生活を見直す

1)糖質制限ダイエットを試してみる

糖質制限ダイエットは、パンや甘いものなどの糖質の摂取量を抑えるダイエット法です。制限する糖質量によって異なりますが、外食でも対応しやすく、前述したような細かいカロリー計算をしなくても、ある程度成果が出やすく、ダイエットの定番としてよく知られています。

手軽に取り組む場合は、朝食のパンを低糖質の商品に置き換える、朝食と昼食は通常通り食べて夕食のみおかずだけでご飯を抜くなど、糖質の高いメニューをあらかじめ把握しておき、無理のない範囲で糖質の摂取を控えるとよいでしょう。

2)かむ回数を増やして食事の量をコントロールする

かむ回数が増えると、満腹中枢や摂食中枢が刺激され、脳が満腹だと感じるため、食事の量を減らしても満腹感を得やすくなります。また、がんや虫歯・歯周病の予防、全身の体力向上にも効果があるといわれています。

日本歯科衛生士会「よく噛んで食べるための7カ条」を意識するとよいでしょう。

  1. 一口30回、噛んで食べる
  2. 右で10回、左で10回、両方で10回、噛んで食べる
  3. 飲み込もうと思ったら、あと10回噛む
  4. 食べ物の形がなくなるまで、よく噛む
  5. 先の食べ物を飲み込んだら、次のものを口に入れる
  6. 口に食べ物が入っている間は、水分を摂らない
  7. 一口食べたら、箸を置く

3)低カロリーで満腹感を得る

カロリーを抑えたものを多く食べて満腹感を得る方法もあります。例えば、白米に刻んだしらたき(こんにゃく)を混ぜて、かさを増やすなどの方法もお勧めです。

また、野菜サラダを多く食べた後に肉などのメイン料理に手を付けるなど、食べる順番も工夫しましょう。一般的に、最初に野菜をよくかんで食べると満腹感が高まり、炭水化物などの過剰摂取を防げるといわれています。さらに、野菜に入っている食物繊維は、血糖値の上昇を抑える効果があり、糖尿病の予防にもつながります。

4)夜遅くに食べない

ダイエットをする場合、夜遅くの食事は避けましょう。なぜなら、エネルギーが消費されにくく、余ったエネルギーが体脂肪として蓄積され、肥満の原因になります。また、翌朝は食欲がなくなり朝食が食べられなくなることで生活リズムにも悪影響が出ます。

ただし、忙しい経営者はどうしても食事が夜遅くになってしまうこともあるでしょう。そのような場合、できるだけ低脂肪で消化の良いものを食べるようにしましょう。野菜などを多く取り、お肉や揚げ物などは少なめにするのがお勧めです。

4 運動によって代謝しやすい体をつくる

1)運動をする際の参考

運動をして消費カロリーを増やすことは、ダイエットの基本です。運動で消費されるカロリーはそれほど多くないものの、筋肉がついて基礎代謝が上がれば、太りにくい体質に近づきます。

継続的に取り組む運動の例は次の通りです。なお、性別や体重を選択して、簡単に運動の消費カロリーを調べることができるウェブサイトやスマートフォン用のアプリなどがあるため、運動をする際の消費カロリーの参考にしてみるとよいでしょう。

2)ウオーキング(散歩)に取り組む

昼食後のウオーキングを日課にするなど、小まめに歩くようにしましょう。歩くことは運動の基本であり、生活に手軽に取り入れられます。また、ウオーキングは、外の風に当たり体を動かすことで、気分をリフレッシュできます。行き詰まったときなどに思考を整える効果も期待できるでしょう。

3)ランニングやマラソンに取り組む

ランニングやマラソンに取り組むことも検討しましょう。ランニングやマラソンは体力をつけられるため、ハードに働きたい経営者にはお勧めです。

ただし、いきなりランニングやマラソンに取り組むのは、普段運動をしていない人にはハードルが高いかもしれません。そのため、例えば、東京マラソンへの参加を最終目標として、最初は短い距離から始めて少しずつ走行距離を延ばしていくなど、楽しみを見つけながら取り組むことがポイントになります。

4)筋トレに取り組む

ダイエットには筋トレもお勧めです。筋トレで筋肉量を増やして基礎代謝を上げれば、カロリーを消費しやすい体をつくれます。

筋トレというと、ジムにある器具を使っての本格的なトレーニングを想像する人も多いかもしれませんが、筋トレは自宅でも可能です。

腕立て伏せや腹筋、スクワットなどの自重トレーニングでも十分に筋肉をつけられます。忙しくてジムに通う時間が取れない経営者は、自宅などでの自重トレーニングを検討してみてください。

5)プロの手を借りるのも手

忙しい経営者は、限られた時間で効率的に運動をして、成果を上げたいと思う人も多いのではないでしょうか。こうした場合、トレーナーの力を借りるのも1つの方法です。体への負担を軽減させながら、自分に合ったトレーニングメニューを提案してもらえます。

最近は、トレーナーがマンツーマンで指導をしてくれる「パーソナルトレーニング」も増えているので、ぜひ利用を検討してみてください。

以上(2024年3月更新)

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残業削減の3ステップ「ターゲット決め・実態調査・目標設定」

1 足元で増加中の残業時間

厚生労働省によると、残業(所定外労働時間)の月平均は、直近5年間では10時間前後で推移しています。

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人材不足の問題もありますが、残業削減は変わらぬ経営の重要課題です。大切なのは、

現在の残業削減は、働き方改革やSDGsとも関係していますし、無理な定時退社命令がパワーハラスメントになる

ということです。会社は、これを踏まえて社員が健康で働きやすい環境を整えなければなりません。

これまで以上に重要になった残業削減を成功させるステップは次の3つですので、この記事で紹介します。

  1. (ターゲット決め)誰の残業を削減するかを決める:定量的な実績に基づいて決める
  2. (実態調査)本当に残業するほど業務が多いのかを探る:ヒアリングして理由を聞く
  3. (目標設定)目標を設定してやりきる:中間目標と最終目標を決めフォローアップする

2 (ターゲット決め)誰の残業を削減するかを決める

優先的に残業を削減すべき社員は、

  • 36協定の上限時間に抵触しそうな社員
  • 業務内容の割に残業が多い社員

です。

36協定の上限時間は、労働基準法の「時間外労働の上限規制」の範囲内で設定しなければなりません。時間外労働の上限規制とは、社員に時間外・休日労働を命じる際、会社が守らなければならないルールで、違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

2024年4月1日からは、時間外労働の上限規制の適用範囲が拡大され、「新技術・新商品等の研究開発業務」を除くほぼ全ての業種・業務が対象となっています。

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例えば、図表2の「通常」の会社に勤める社員の場合、図表3のような働き方をしていると、時間外労働の上限規制に抵触します。

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3 (実態調査)本当に残業するほど業務が多いのかを探る

優先的に残業を削減すべき社員を決めたら、その社員に残業する理由を聞いてみます。最初、多くの社員は「業務量が多いから」と答えるでしょうが、その背景には、

  • 非効率な進め方をしているが、自分で気付いていない
  • 実は残業代を当てにしている

といった問題があります。

この辺りを明らかにするために、事前に業務内容の詳細を報告してもらい、ある程度、会社側で当たりをつけた上で、

  • やらなくてよい業務はあるか?
  • アウトソーシングできないか?
  • やめられないが、改善できそうな業務はあるか?

と質問してみましょう。その際、対象となる社員を批判するのではなく、冷静に状況を分析・改善する姿勢を崩してはいけません。そうして場を和ませつつ、残業代を当てにしていそうな社員にはその背景を聞いてみます。

こうして質問を繰り返していくと、残業削減の方向性が見えてきます。

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4 (目標設定)目標を設定してやりきる

残業削減の方法が決まったら、目標設定をしましょう。例えば、

  • 現時点の状況(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間
  • 中間目標1(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間(○時間削減)
  • 中間目標2(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間(○時間削減)
  • 最終目標(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間(○時間削減)

といった具合に、中間目標、最終目標を設定します。中間目標を設定するのは、思ったより残業削減の効果が上がらない場合に、軌道修正を図りやすくするためです。

目標設定の後は、中間目標の達成期限ごとに残業削減の実績(何時間削減できたか)を確認し、中間目標に届いていない場合、社員にその理由をヒアリングします。考えられる理由としては次のようなものがあります。

  • 業務配分の見直しや各部署(部門)の配置の検討が十分ではなかった
  • 社員が真剣に取り組まなかった
  • 残業削減の方法が現実的でなかった
  • 中間目標の設定後に新しい業務が割り振られた

このサイクルを繰り返しても、残業削減が想定通りに進まなければ、社員個人のレベルでは、残業削減を進めるのが難しい可能性があります。その場合、

  • 事業の一部のアウトソーシング
  • 定時以降の取引が必要なクライアントとの取引縮小
  • 新たな人員の補充

など、会社レベルでの施策の実施を検討する必要も出てくるでしょう。

以上(2025年4月更新)
(監修 弁護士 田島直明)

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「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」のひな型

1 36協定の更新忘れにご注意を!

会社は本来、労働基準法(以下「労基法」)の法定労働時間(休憩時間を除き、原則1日8時間、1週40時間)を超えて社員を働かせることができません。これは、違反すると6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられるという罰則付きのルールですが、

会社が社員の代表と「時間外労働・休日労働に関する協定(通称「36協定」)」を締結し、会社の住所を管轄する労働基準監督署に届け出る

と罰則が適用されなくなり(免罰的効果)、時間外労働(法定労働時間を超える労働)や休日労働(法定休日の労働)を社員に命じられるようになります。なお、36協定と呼ばれる理由は、この協定が労基法第36条に基づく労使協定(過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定)だからです。

ちなみに、

36協定の有効期間は「最長1年」で、毎年更新が必要

です。36協定を更新せずに時間外労働や休日労働を命じるのは違法ですから、有効期間は必ず確認しておきましょう。また、同じ内容の36協定を毎年使い回せばそれでいいというわけではありません。例えば、2024年4月1日からは「時間外労働の上限規制」の適用を猶予されていた、

建設事業、自動車運転業務、医師、砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)が上限規制の対象

に追加されました(いわゆる「2024年問題」)が、こうした法改正への対応ができているかも都度チェックする必要があります。

以降で、36協定のポイントやひな型を紹介するので、確認していきましょう。

2 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)のポイント

1)時間外労働・休日労働の時間数の上限は決まっている

会社は、社員に時間外労働や休日労働を命じる場合、次の内容を守らなければなりません。これを「時間外労働の上限規制」といい、これに違反する36協定は無効となります。

2024年4月1日からは、時間外労働の上限規制の適用範囲が拡大され、「新技術・新商品等の研究開発業務」を除くほぼ全ての業種・業務が対象となっています。

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通常、36協定に定められる時間外労働の時間数は、どの業種・業務も原則「1カ月45時間まで、1年360時間まで」です。これを「限度時間」といい、限度時間の範囲内で時間数を定めたものを「一般条項」といいます。

ただし、臨時的な特別な事情がある場合に限り、36協定に「特別条項」を設けることで、限度時間を超える時間外労働を社員に命じることが認められます。

特別条項とは、「納期が著しく逼迫して限度を超える時間外労働をしなければ対応できない」など、特別で臨時的な事態を想定した定め

です。特別条項を設けた場合、会社は限度時間を超える時間外労働を定められますが、1カ月の限度時間(原則45時間まで)を超えられるのは、1年に6回までです(自動車運転業務、医師を除く)。また、限度時間を超える場合も、図表の「臨時的な特別な事情がある場合」の時間数を遵守しなければなりません。これに違反すると、労基法の罰則の対象になります。

2)特別条項を設ける場合、「健康確保措置」を定める必要がある

特別条項を設ける会社は、社員の健康・福祉を確保するための措置(健康確保措置)を36協定に定める必要があります。次のいずれかから措置を選択するのが望ましいとされています。

  1. 医師による面接指導
  2. 深夜業(原則として午後10時から午前5時までの労働)の回数制限
  3. 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  4. 代償休日・特別な休暇の付与
  5. 健康診断
  6. 連続休暇の取得
  7. 心とからだの相談窓口の設置
  8. 配置転換
  9. 産業医等による助言・指導や保健指導

なお、医師の場合は上記の健康確保措置に加え、医療法等に基づく「追加的健康確保措置」を定める必要があります。追加的健康確保措置の内容についてはこちらをご確認ください。

■厚生労働省「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」■

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000677260.pdf

3)厚生労働省ウェブサイトの「36協定届」に追記して「36協定」とする

36協定は定められた様式で届け出る必要があります。限度時間の範囲内で時間外労働を命じる場合は一般条項の36協定届、限度時間を超える時間外労働を命じる場合は、特別条項付きの36協定届を使用します。次のURLからダウンロードできます。

■厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html

また、実務上はこれらの様式に必要な事項を書き加えて、36協定にするのが一般的です。次章では、必要な事項を書き加えた36協定のひな型を紹介します。

なお、36協定はあくまでも労基法上の免罰的効果があるだけなので、実際に社員に時間外労働や休日労働を命じるには、就業規則等にもその旨を定めておく必要があります。

3 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした協定を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

 

【時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)のひな型】

 

株式会社○○○○(以下「甲」)と従業員の過半数代表者△△△△(以下「乙」)は、労働基準法第36条第1項に基づき、法定労働時間を超える勤務(以下「時間外労働」)および法定休日における勤務(以下「休日労働」)に関して下記の通り協定する。なお、甲は時間外労働および休日労働が従業員の健康状態や家庭生活に与える影響に配慮し、時間外労働および休日労働が最小限のものとなるように努めるものとする。

第1条(具体的事由)

甲が従業員に就業規則第○条の規定に基づき時間外労働および休日労働を命じることができる具体的な事由は次の通りとする。

  1. 需要の増大・納期集中により、緊急増産が必要なとき。
  2. 急激な販売量増加により、営業業務並びに発送業務が必要なとき。
  3. 機械など製造設備が故障したとき。

第2条(時間外労働または休日労働を必要とする業務の種類および従業員数)

時間外労働および休日労働を必要とする業務の種類および従業員数は次の通りとする。

  1. 製品の組み立て、検査、梱包。従業員数(  名)。
  2. 販売。従業員数(  名)。
  3. 製造・販売のサポート業務。従業員数(  名)。
  4. 業務遂行のための企画・立案業務。従業員数(  名)。

第3条(延長することができる時間および起算日)

1)時間外労働時間の限度は次の通りとする。

  1. 1日につき8時間以内。
  2. 1カ月間につき45時間以内(起算日:毎月1日)。
  3. 1年間につき360時間以内(起算日:4月1日)。

2)所定休日(時間外労働)および法定休日(休日労働)の労働時間の範囲は次の通りとする。ただし、業務の都合によりやむを得ない場合は午後10時00分まで延長することができる。

  1. 午前8時00分から午後5時00分までの間で実働8時間以内。

3)前2項の延長時間は、時間外労働時間数の上限を示すものであり、常に当該時間まで時間外労働を命じるものではない。

第4条(休日労働の日数)

休日労働は1カ月につき4日以内とし、事前に甲および乙の協議を経た上で実施するものとする。

第5条(特別条項)

1)第3条にかかわらず、予測不能な機械等の故障、納期の著しい逼迫など臨時の必要がある場合は、甲および乙の協議を経た上で、1年につき6回を限度に時間外労働時間の限度を1カ月につき80時間(休日労働を含む)、1年につき720時間(休日労働を含まない)まで延長することができる。

2)前項において時間外労働および休日労働を必要とする業務の種類および従業員数は次の通りとする。

  1. 製品の組み立て、検査、梱包。従業員数(  名)。
  2. 販売。従業員数(  名)。
  3. 製造・販売のサポート業務。従業員数(  名)。
  4. 業務遂行のための企画・立案業務。従業員数(  名)。

3)第1項の延長時間は、特別な事情がある場合における時間外労働時間数の上限を示すものであり、常に当該時間まで時間外労働を命じるものではない。

4)会社および従業員は、常に業務遂行に要する時間に注意を払い、1カ月当たり60時間を超える時間外労働(休日労働を含む)が生じないよう配慮する。

第6条(従業員に対する健康および福祉を確保するための措置)

前条により時間外労働の範囲を延長する場合において、甲は従業員に対する健康および福祉を確保するために次の措置を実施する。

  1. 対象従業員に対する医師による面接指導。
  2. 対象従業員に対する11時間の勤務間インターバルの設定。

第7条(割増賃金率)

1)時間外労働における割増賃金率は、次の各号の率とする。

  1. 1カ月45時間以内の時間外労働:25%。
  2. 1カ月45時間を超える時間外労働:25%。
  3. 1カ月60時間を超える時間外労働:50%

2)休日労働における割増賃金率は、一律35%とする。

第8条(有効期間)

本協定の有効期間は○年○月○日から1年間とする。

 

締結日 ○年○月○日

                 甲 株式会社○○○○

                   代表取締役 ○○○○

 

                 乙 株式会社○○○○

                   従業員代表 △△△△

以上(2025年4月更新)
(監修 みらい総合法律事務所 弁護士 田畠宏一)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【朝礼】管理職の皆さん、もっと闘ってください

おはようございます。今日は、特に管理職の皆さんに伝えたいメッセージがあります。それは、「もっと闘ってください」です。

今どきはすぐに「何とかハラスメント」と言われたり、SNSに投稿されたりするので、とにかく“空気”を読み、波風を立てないことが良しとされがちです。そうなると、物事に異を唱えたり、主張すべきことを主張しなかったり、指導を怖がったりして、「闘わない管理職」が出てきます。

これは由々しき事態です。私は管理職の皆さんに、声を大にして伝えます。おかしいと思うことには、堂々と異を唱えてください。主張すべきところは、相手がどこの誰であろうと、真正面からきちんと主張してください。部下やメンバーが間違っていて正す必要があるなら、しっかりと厳しく指導をしてください。管理職の皆さんには、その権利がありますし、もっと言えば、そうする義務があるのです。

昔、私は、社外の人と契約を結ぶとき、主張すべきことを主張せず、大失敗したことがあります。大企業との初取引で、売り上げが欲しいと焦った私は、相手にとって有利な条件の契約を、ほぼ相手の要求通りの内容で通してしまったのです。契約は締結できましたが、後になってから、金額的にも納期的にも、こちら側が一方的に無理をしなければならなくなり、部下にも大変な思いをさせ、結局、たった1年でこちらから契約解消を申し出ることになってしまいました。

この大失敗で、私は「相手がどこの誰であろうと、こちら側の主張すべきことは、しっかり主張して闘うことが、部下や会社、そして相手、顧客をも守ることなのだ」と実感しました。

闘うのは、社内でも同じです。管理職の皆さん、上長や、たとえ社長の私であろうとも、おかしいと思うなら、指摘して闘ってください。部下に対してもそうです。嫌われること、波風が立つことを恐れていたら、指導はできません。時には厳しい指導も必要です。それで部下や周りから何か言われるようなら、そのときは私が管理職の皆さんを守ります。

ただし、「闘うこと」と「争うこと」とは違います。相手を打ち負かそうと批判したり、傷つけたり、自分勝手に主張したりするのは闘いではなく争いです。闘いはより良い結果を導くためのものですが、争いは何も生み出しません。むしろ、相手を打ち負かそうという思いが強くなることで、本当にハラスメントになってしまうケースもあります。私は「闘うこと」は応援しますが、「争うこと」には厳しく対処します。何のために闘うのかを見失わないようにしてください。

異を唱えたり、主張したり、厳しく指導したりするのは、正直に言って、面倒で手間のかかることでもあります。「闘う」とは、「面倒で手間のかかることから逃げ出そうとする自分と闘う」ことに他なりません。管理職の皆さん。もう一度言います。逃げずに、しっかり闘ってください。

以上(2024年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

変形労働時間制やフレックスタイム制で働き方改革を実現!

1 3種類の変形労働時間制とフレックスタイム制

「変形労働時間制」とは、

1カ月や1年など一定の期間内において、1日10時間や1日6時間など労働時間を弾力的に設定する制度

です。労働基準法(以下「労基法」)では、3種類の変形労働時間制が定められています。

また、より柔軟な労働時間制度として「フレックスタイム制」があります。これは、

一定の期間内において、始業・終業時刻の決定を社員に委ねることができる制度

です(フレックスタイム制を変形労働時間制の一種とする考え方もあります)。

制度の概要や導入手続きをざっくり一覧にまとめたのが図表1です。

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以降でそれぞれの制度の詳細を解説していくのですが、次の用語は重要になるので、ご確認ください。

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2 1カ月単位の変形労働時間制

1)制度の概要

1カ月単位の変形労働時間制とは、

1カ月以内の一定の期間(「変形期間」といいます)における週の平均労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内であれば、法定労働時間を超える所定労働時間を設定できる制度

です。例えば、図表3は法定労働時間が1日8時間、1週40時間の会社が、変形期間を1カ月(31日)に設定した場合のイメージです。

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1日8時間を超えて労働する日、1週40時間を超えて働く週がありますが、週の平均労働時間が40時間以内に収まっていれば、時間外労働は発生しません。具体的には、「法定労働時間の総枠」という基準で判断します。法定労働時間の総枠は、原則として、

法定労働時間の総枠=週の法定労働時間×変形期間内の暦日数÷7日

で計算します。図表3の場合、法定労働時間の総枠は177.1時間(40時間×31日÷7日)で、

法定労働時間の総枠(177.1時間)>1カ月(31日)の所定労働時間の合計(174時間)

となります。この場合、週の平均労働時間が40時間以内に収まっていることになり、時間外労働は発生しません。

ただし、各日、各週の所定労働時間は、一度定めると原則として変更できないので注意してください。図表3のようにシフトを定めても、実際の労働時間が各日、各週の所定労働時間を超えると、この後に紹介するルールに基づいて時間外労働が発生する可能性が出てきます。

2)時間外労働などのルール

1カ月単位の変形労働時間制で時間外労働が発生するのは次のケースです。

  1. (1日単位)所定労働時間が8時間を超える日はその所定労働時間、それ以外の日は8時間を超えて働いた時間
  2. (1週単位)週の所定労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超える週はその所定労働時間、それ以外の週は40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えて働いた時間。ただし、1.で計算した時間を除く
  3. (変形期間全体)法定労働時間の総枠を超えて働いた時間。ただし、1.または2.で計算した時間を除く

なお、これとは別に、法定休日に働いた場合は休日労働が、原則として22時から翌日5時に働いた場合は深夜労働が発生します。

3)導入の手続き

必要な手続きは、労使協定の締結と届け出(就業規則で定める場合は不要)、就業規則の変更と届け出です。

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3 1年単位の変形労働時間制

1)制度の概要

1年単位の変形労働時間制とは、

1カ月超1年以内の一定の期間(「対象期間」といいます)における週の平均労働時間が40時間(特例措置対象事業場の場合も40時間)以内であれば、法定労働時間を超える所定労働時間を設定できる制度

です。基本的なルールは1カ月単位の変形労働時間制と同じですが、1年単位の変形労働時間制の場合、さらに図表5のルールが加わります。

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2)時間外労働などのルール

1年単位の変形労働時間制で時間外労働が発生するのは次のケースです。

  1. (1日単位)所定労働時間が8時間を超える日はその所定労働時間、それ以外の日は8時間を超えて働いた時間
  2. (1週単位)週の所定労働時間が40時間(特例措置対象事業場も40時間)を超える週はその所定労働時間、それ以外の週は40時間(特例措置対象事業場も40時間)を超えて働いた時間。ただし、1.で計算した時間を除く
  3. (対象期間全体)法定労働時間の総枠を超えて働いた時間。ただし、1.または2.で計算した時間を除く

なお、休日労働や深夜労働のルールは、1カ月単位の変形労働時間制と同じです。

3)導入の手続き

必要な手続きは、労使協定の締結と届け出、就業規則の変更と届け出です。

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労使協定の項目にある「d.対象期間における労働日、各日の所定労働時間」について補足します。1年単位の変形労働時間制は長いので、事前に全労働日の所定労働時間を特定するのは難しいです。そのため、対象期間を1カ月以上の期間ごとに区分した場合に限り、

  1. 最初の期間については、労働日と労働日ごとの所定労働時間
  2. それ以外の各期間については、各期間の労働日数と総労働時間のみ

を労使協定に定めればよいとされています。例えば、図表7は対象期間を1カ月ごとに区分した場合のイメージです。

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ただし、この場合も、最初の期間以外の各期間の労働日と労働日ごとの所定労働時間を、各期間の始まる30日前までに過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の同意を得て、書面で定めなければなりません。

4 1週間単位の非定型的変形労働時間制

1)制度の概要

1週間単位の非定型的変形労働時間制とは、

1週の労働時間が40時間(特例措置対象事業場の場合も40時間)以内であれば、法定労働時間を超える所定労働時間を設定できる制度

です。他の制度と違い、常時雇用する社員が30人未満の小売業、旅館・料理店・飲食店だけが導入できます。例えば、図表8は1週間単位の非定型的変形労働時間制を用いて1週間働く場合のイメージです。

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1週の労働時間が40時間以内なので、1日8時間を超える所定労働時間を設定しても、時間外労働になりません。ただし、設定できる所定労働時間は、1日10時間が上限です。また、1週間単位の非定型的変形労働時間制の場合、各日の所定労働時間は、遅くとも毎週1週間の仕事が始まる前までに、勤務表を張り出すなどして社員に書面で通知します。

2)時間外労働などのルール

1週間単位の非定型的変形労働時間制で時間外労働になるのは次のケースです。

  1. (1日単位)所定労働時間が8時間を超える日はその所定労働時間、それ以外の日は8時間を超えて働いた時間
  2. (1週単位)40時間(特例措置対象事業場の場合も40時間)を超えて働いた時間。ただし、1.で計算した時間を除く

なお、休日労働や深夜労働のルールは、1カ月単位の変形労働時間制などと同じです。

3)導入の手続き

必要な手続きは、労使協定の締結と届け出、就業規則の変更と届け出です。

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5 フレックスタイム制

1)制度の概要

フレックスタイム制とは、

3カ月以内の一定期間(「清算期間」といいます)についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で始業・終業時刻の決定を社員に委ねる労働時間制度

です。通常は、必ず働かなければならない「コアタイム」と、社員が自主判断で働く「フレキシブルタイム」を設けます。例えば、図表10はコアタイムを10時から15時、フレキシブルタイムを6時から10時と15時から19時に設定した場合のイメージです。

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働き方の自由度が高い半面、社員の始業と終業がばらつきやすくなります。かといってフレキシブルタイムを極端に短くしたり、社員にフレキシブルタイムに働くよう強制したりすることはできないのですが、社員に翌日の始業時刻の目安を確認したり、社員の同意を得て特定の時間に始業させたりする程度であれば問題ないとされています。

2)時間外労働などのルール

フレックスタイム制は、1カ月以内の場合と1カ月超3カ月以内の場合とで時間外労働のルールが変わります。なお、休日労働や深夜労働のルールは、フレックスタイム制の期間にかかわらず、1カ月単位の変形労働時間制などと同じです。

1.フレックスタイム制の期間が1カ月以内の場合

フレックスタイム制の期間の実労働時間が、週平均で40時間(特例措置対象事業場の場合は44時間)を超えると時間外労働になります。具体的には、前述した「法定労働時間の総枠」で判断します。

法定労働時間の総枠=週の法定労働時間×清算期間内の暦日数÷7日

2.フレックスタイム制の期間が1カ月超3カ月以内の場合

フレックスタイム制の期間中の実労働時間が、週平均で40時間(特例措置対象事業場の場合も40時間)を超えると時間外労働になります。便宜上、このルールを「40時間ルール」とします。同時に、フレックスタイム制の開始の日から1カ月ごとに区分した各期間の労働時間が週平均50時間を超えた場合も時間外労働になります。こちらも便宜上「50時間ルール」とします。

フレックスタイム制の期間を1カ月超3カ月以内に設定した場合、40時間ルールと50時間ルールのいずれかの条件に該当すると、時間外労働が発生します。例えば、図表11は、清算期間が3カ月の場合の、割増賃金の対象となる時間数のイメージです。

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賃金は、まず各月について50時間ルールにのっとって計算した割増賃金を支払い、次に清算期間終了時に、40時間ルールにのっとって法定労働時間の総枠を超えた分の割増賃金を支払います(50時間ルールに基づき既に支払った金額を除く)。図表11の場合、各月で支払うべき割増賃金は次のようになります。

  • 4月(単月):5.8時間(=220時間-214.2時間)分
  • 5月(単月):割増賃金の支払いはなし
  • 6月(単月):5.8時間(=220時間-214.2時間)分
  • 6月(3カ月):88.4時間(=620時間-520時間-5.8時間-5.8時間)分

6月は、6月単月で生じた割増賃金(50時間ルールに基づき計算するもの)と、3カ月の清算期間で生じた割増賃金(40時間ルールに基づき計算するもの。ただし、4月(単月)と6月(単月)で生じた割増賃金を除く)の両方を支払うことになります。

3)導入の手続き

必要な手続きは、労使協定の締結と届け出(清算期間が1カ月以内の場合、届け出は不要)、就業規則の変更と届け出です。

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以上(2025年4月更新)
(監修 弁護士 坂東利国)

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画像:WinWin-Adobe Stock

【規程・文例集】「ストレスチェック制度実施規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:ストレスチェック制度を実施するための規程のひな型が欲しい経営者
  • 課題:具体的に何を定めればよいかが分からない。健康診断と似たような運用でいいの?
  • 解決策:実施者、受検結果などの扱いが健康診断と異なるので、明確にルールを定める

1 健康診断とのルールの違いに注意する

ストレスチェック制度とは、

社員が所定の質問に答えて自身のストレス状態を把握する「ストレスチェック」や、高ストレス者に対する「医師による面接指導」などの一連の施策のこと

です。社員数が常時50人以上の会社は、年1回以上、ストレスチェックを実施しなければなりません(社員数が常時50人未満の会社は努力義務)。

ストレスチェック制度を実施するには、制度の実施者や受検結果の取り扱いなどについて、就業規則(ストレスチェック制度実施規程など)で定める必要があります。問題は、

ストレスチェック制度と健康診断のルールを混同している会社が少なくないこと

です。どちらも社員の健康状態をチェックするための制度ですが、両者は似て非なるものです。

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「健康診断と混同している部分があるかもしれない……」という人は、次章で専門家が監修したストレスチェック制度実施規程のひな型を紹介していますので、自社の就業規則と照らし合わせながら確認してみましょう。

2 ストレスチェック制度実施規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【ストレスチェック制度実施規程のひな型】

第1章 総則

第1条(目的)

本規程は、株式会社○○○○(以下「会社」)が、労働安全衛生法第66条の10の規定に基づく「心理的な負担の程度を把握するための検査等」(以下「ストレスチェック制度」)を実施するに当たり、その実施方法等を定めるものである。本規程に定めのない事項は、労働安全衛生法その他の関係法令によるものとする。

第2条(定義)

本規程において使用する語句の定義は次の各号に定める通りである。

  1. ストレスチェック:
    ストレスに関する質問票に従業員が記入し(またはITシステムに入力し)、それを集計・分析することで、従業員が自らのストレスの状態を調べる検査。
  2. ストレスチェック制度:
    ストレスチェックの結果を踏まえた医師による面接指導や集団分析等、一連の施策の総称。
  3. 衛生委員会:
    労働安全衛生法第18条に定められている組織で、従業員の健康障害を防止するための基本となるべき対策などを調査審議する。
  4. 衛生管理者:
    労働安全衛生法第12条に定められている者で、従業員の安全または衛生のための教育の実施など、衛生にかかわる技術的事項を管理する者。
  5. 産業医:
    労働安全衛生法第13条に定められている者で、従業員の健康管理および、健康診断や面接指導等、作業環境の維持管理、健康教育などの項目について医学に関する専門的知識を必要とする業務を行う医師。
  6. 集団分析:
    ストレスチェックの結果を、個人が特定されない一定の規模で分析すること。

第3条(適用範囲)

1)ストレスチェック制度の適用範囲は、次の各号のいずれにも該当する従業員である。

  1. 会社と期間の定めのない労働契約を交わしている従業員。次のいずれかに該当する期間の定めのある労働契約を交わしている従業員を含む。

    a.労働契約の契約期間が1年以上の従業員

    b.契約更新により1年以上使用される予定の従業員

    c.1年以上継続して使用されている従業員

  2. 1週間の労働時間が、当該事業場の同種の業務に従事する通常の従業員の所定労働時間の4分の3以上の従業員。

2)会社は、原則として人材派遣会社等から当社に派遣されている派遣労働者をストレスチェック制度の適用対象としない。

第4条(趣旨等の周知)

会社は、次の各号に定める内容を社内掲示板に掲示する他、本規程を配布する等の方法により、ストレスチェック制度の趣旨等を従業員に周知する。

  1. ストレスチェック制度は、従業員自身のストレスへの気付きおよびその対処の支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防を目的とするものであり、メンタルヘルス不調者の発見を一義的な目的とはしないものである。
  2. 従業員にストレスチェックの受検義務はない。ただし、専門医療機関に通院中等の特別な事情がない限り、受検することが望ましい。
  3. ストレスチェックの結果は直接本人に通知され、本人の同意なく会社が結果を入手することはない。従って、ストレスチェックを受検するときは、正直に回答することが重要である。
  4. 本人がストレスチェックの結果を会社に提供することに同意した場合や、医師による面接指導を申し出た場合、会社はそれらによって得た情報を本人の健康管理のために限って使用する。
  5. 本規程第37条に定める事項。

第2章 ストレスチェック制度の実施体制

第5条(ストレスチェック制度担当者)

1)ストレスチェック制度担当者(以下「担当者」)は、ストレスチェック制度の実施計画の策定や計画に基づく実施の管理等の実務を行う。

2)担当者は人事労務課の従業員および衛生管理者とし、その氏名は社内掲示板に掲示する等の方法により従業員に周知する。

3)人事異動等により担当者の変更があった場合は、その都度、同様の方法により従業員に周知する。本規程第6条のストレスチェックの実施者、第7条のストレスチェックの実施事務従事者、第8条の面接指導の実施者についても同様の扱いとする。

第6条(ストレスチェックの実施者)

1)ストレスチェックの実施者(以下「実施者」)は、実際にストレスチェックを行う他、ストレスチェック制度の実施計画の策定などにも積極的に協力する。

2)実施者は会社の産業医および保健師の2名とし、産業医を実施代表者、保健師を共同実施者とする。

第7条(ストレスチェックの実施事務従事者)

1)ストレスチェックの実施事務従事者(以下「実施事務従事者」)は、実施者の指示のもとストレスチェックの日程調整、従業員等への連絡、調査票の配布と回収、結果のデータ入力等の各種事務処理を担当する。

2)実施事務従事者は人事労務課の従業員および衛生管理者とするが、人事に関する権限を有する者は実施事務従事者になることはできない。

第8条(面接指導の実施者)

ストレスチェックの結果に基づく面接指導の実施者は会社の産業医とする。

第3章 ストレスチェック制度の実施方法

第1節 ストレスチェック

第9条(ストレスチェックの実施時期)

ストレスチェックは1年以内ごとに1回実施するものとし、実施時期は業務の状況を勘案して部門ごとに設定する。

第10条(対象者)

1)適用対象となる従業員は、専門医療機関に通院中等の特別な事情がない限り、実施時期にストレスチェックを受検するように努めなければならない。

2)ストレスチェック受検の意思があるものの、出張等の業務上の都合により、ストレスチェックの実施期間にストレスチェックを受検することができなかった従業員は、会社が別途指定する実施時期にストレスチェックを受検するものとする。

3)ストレスチェックの実施時期の全期間に休職しており、休職期間が1カ月以上の従業員については、ストレスチェックの対象外とする。

第11条(受検の勧奨)

会社は、従業員の受検状況を把握し、未受検の従業員に対して、実施事務従事者または各職場の管理者を通じて受検の勧奨を行うことがある。

第12条(調査票および方法)

1)ストレスチェックは、厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を用いて行う。

2)ストレスチェックは、社内LANを用いてオンラインで実施する。社内LANが利用できない従業員は、紙媒体で実施する。

第13条(ストレスの程度の評価方法・高ストレス者の選定方法)

1)ストレスチェックの個人結果の評価は、厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(以下「マニュアル」)に示されている素点換算表を用いて換算し、その結果をレーダーチャートに示すことにより行う。

2)高ストレス者の選定は、マニュアルに示されている「評価基準の例(その1)」に準拠し、以下のいずれかに該当する者を高ストレス者とする。

  1. 「心身のストレス反応」(29項目)の合計点数が77点以上である者。
  2. 「仕事のストレス要因」(17項目)および「周囲のサポート」(9項目)を合算した合計点数が76点以上であって、かつ「心身のストレス反応」(29項目)の合計点数が63点以上の者。

第14条(ストレスチェックの結果の通知方法)

ストレスチェックの個人結果の通知は、「実施者または実施者の指示を受けた実施事務従事者」(以下「ストレスチェックの結果通知者」)が実施者名で行う。通知方法は、原則として各従業員に電子メールを送信することで行うが、電子メールが利用できない従業員および電子メールを希望しない従業員に対しては封筒に封入し、紙媒体で通知する。

第15条(セルフケア)

従業員は、ストレスチェックの結果および結果に記載された実施者の助言・指導に基づき、ストレスを軽減するためのセルフケアを適切に行うように努めなければならない。

第16条(会社への結果提供に関する同意の取得方法)

実施者は、ストレスチェックの結果を従業員に通知する際、その内容を会社に提供することについて同意するか否かの意思確認を行う。従業員が同意する場合は、従業員は結果通知の電子メールに添付または封筒に同封された「同意書」(省略。以下、同様)に入力または記入し、発信者宛てに送付するものとする。同意書の提出が確認された場合、ストレスチェックの結果通知者は、実施者の指示により、ストレスチェックの結果の写しおよび「同意書」の写しを人事労務課に提供する。

第17条(ストレスチェック受検時の賃金の取り扱い等)

1)ストレスチェックの受検に要する時間は業務時間として取り扱う。

2)従業員は、業務時間中にストレスチェックを受検するものとし、管理者は従業員がストレスチェックを受検する時間を確保できるように配慮しなければならない。

第2節 医師による面接指導

第18条(面接指導の申出の方法)

1)ストレスチェックの結果、医師による面接指導を受ける必要があると判定された従業員が医師の面接指導を希望する場合、結果通知の電子メールに添付または封筒に同封された「面接指導申出書」(省略。以下、同様)に入力または記入し、結果通知の電子メールあるいは封筒を受け取ってから30日以内に、発信者宛てに送付するものとする。

2)医師による面接指導を受ける必要があると判定された従業員から、結果通知後20日以内に「面接指導申出書」の提出がなされない場合は、ストレスチェックの結果通知者は、実施者の指示により、実施者名で電子メールまたは電話により申出の勧奨および最終的な意思確認を行う。この際、第三者にその従業員が面接指導の対象者であることが知られないよう配慮する。

3)医師による面接指導を受ける必要があると判定された従業員以外の従業員から、面接指導の申出を受けた場合、会社はこれを拒むことができる。

第19条(面接指導の実施方法)

1)面接指導の実施日時および場所は、面接指導の実施者または面接指導の実施者の指示を受けた実施事務従事者が、該当する従業員およびその管理者に電子メールまたは電話により通知する。この際、第三者にその従業員が面接指導の対象者であることが知られないよう配慮する。なお、面接指導の実施日時は、「面接指導申出書」が提出されてから、30日以内に設定する。

2)通知を受けた従業員は、指定された日時に面接指導を受けるものとし、管理者は従業員が指定された日時に面接指導を受けることができるよう配慮しなければならない。

第20条(面接指導結果に基づく医師の意見聴取方法)

会社は、面接指導が終了してから30日以内に、「面接指導結果報告書兼意見書」(省略。以下、同様)により、面接指導の実施者から結果の報告および意見の提出を受ける。

第21条(面接指導結果を踏まえた措置の実施方法)

1)面接指導の実施者から、面接指導の結果を踏まえた就業上の措置が必要であるとの意見書が提出され、これに基づいて会社が人事異動を含めた就業上の措置を実施する場合、人事労務課の担当者が該当する従業員に就業上の措置の内容およびその理由等を説明する。なお、前記説明を行う際は面接指導の実施者も同席するものとする。

2)従業員は、正当な理由がない限り、会社が指示する就業上の措置に従わなければならない。

第22条(面接指導を受けるのに要する時間の賃金の取り扱い)

面接指導を受けるのに要する時間は業務時間として取り扱う。

第3節 集団ごとの集計・分析

第23条(集計・分析の対象集団)

ストレスチェックの結果の「集団ごとの集計・分析」(以下「集団分析」)は、原則として、課ごとの単位で行う。ただし、10人未満の課については、他の課と合算する等して個人が特定されない規模で行う。

第24条(集計・分析の方法)

集団分析は、マニュアルに示されている仕事のストレス判定図を用いて行う。

第25条(集計・分析結果の利用方法)

1)ストレスチェックの結果通知者は、実施者の指示により、人事労務課に集団分析の結果(個人のストレスチェックの結果が特定されないもの)を提供する。

2)会社は、集団分析の結果に基づき、必要に応じて、職場環境の改善のための措置、管理者に対する研修を行う。従業員は、会社が行う職場環境の改善のための措置の実施に協力しなければならない。

第4章 記録の保存

第26条(ストレスチェックの結果の記録の保存担当者)

ストレスチェックの結果の記録の保存担当者は、実施事務従事者である衛生管理者とする。

第27条(ストレスチェックの結果の記録の保存期間・保存場所)

ストレスチェックの結果の記録は、会社のサーバーまたは金庫内に5年間保存する。

第28条(ストレスチェックの結果の記録の保存に関するセキュリティーの確保)

保存担当者は、会社のサーバーまたは金庫内に保管されているストレスチェックの結果が第三者に閲覧されることがないよう、パスワードの設定等、必要な管理を徹底しなければならない。

第29条(会社に提供されたストレスチェックの結果・面接指導結果の保存方法)

1)人事労務課は、従業員の同意を得て会社に提供されたストレスチェックの結果の写しおよび「同意書」の写し、ストレスチェックの結果通知者から提供された集団分析の結果、「面接指導結果報告書兼意見書」を、社内の金庫に5年間保存する。

2)人事労務課は、第三者に社内に保管されている前項の資料が閲覧されることがないよう、必要な管理を徹底しなければならない。

第5章 ストレスチェック制度に関する情報管理

第30条(ストレスチェックの結果の共有範囲)

従業員の同意を得て会社に提供されたストレスチェックの結果の写しは、人事労務課内のみで保有する。

第31条(面接指導結果の共有範囲)

「面接指導結果報告書兼意見書」は、人事労務課内のみで保有する。そのうち就業上の措置の内容等、職務遂行上必要な情報に限定して、該当する従業員の管理者に提供する。

第32条(集団分析結果の共有範囲)

1)実施者から提供された集団分析の結果は、人事労務課内で保有するとともに、課ごとの結果については当該課の管理者に提供する。

2)会社は、集団分析の結果とそれに基づいて実施した措置の内容を、衛生委員会に報告する。

第33条(健康情報の取り扱いの範囲)

ストレスチェック制度に関して取り扱われる従業員の健康情報のうち、診断名、検査値等の生データや詳細な医学的情報は実施者が取り扱うものとする。人事労務課に関連情報を提供する際は、適切に加工しなければならない。

第6章 情報開示、訂正、追加および削除と苦情処理

第34条(情報開示等の手続き)

従業員は、ストレスチェック制度に関して情報の開示等を求める際には、「ストレスチェック制度の情報開示請求」(省略)を人事労務課に提出するものとする。

第35条(苦情申し立ての手続き)

従業員は、ストレスチェック制度に関する情報の開示等について苦情の申し立てを行う際には、「ストレスチェック制度の苦情申立書」(省略)を人事労務課に提出するものとする。

第36条(守秘義務)

従業員からの情報開示や苦情申し立てに対応した人事労務課の従業員は、それらの職務を通じて知り得た従業員の秘密を第三者に漏らしてはならない。

第7章 不利益な取り扱いの防止

第37条(会社が行わない行為)

会社は、ストレスチェック制度に関して次の行為を行わない。

  1. 医師による面接指導の申出を行った従業員に対して、申出を行ったことを理由として、その従業員に不利益となる取り扱いを行うこと。
  2. 従業員の同意を得て会社に提供されたストレスチェックの結果を理由として、その従業員に不利益となる取り扱いを行うこと。
  3. ストレスチェックを受検しないことを理由として、その従業員に不利益となる取り扱いを行うこと。
  4. ストレスチェックの結果を会社に提供することに同意しないことを理由として、その従業員に不利益となる取り扱いを行うこと。
  5. 医師による面接指導が必要とされたにもかかわらず、その申出を行わないことを理由として、その従業員に不利益となる取り扱いを行うこと。
  6. 就業上の措置を行うに当たって、面接指導の実施者から意見を聴取する等、労働安全衛生法および労働安全衛生規則に定められた手順を踏まずに、その従業員に不利益となる取り扱いを行うこと。
  7. 面接指導の結果に基づく就業上の措置を行うに当たって、面接指導の実施者の意見と内容・程度が著しく異なるなど必要と認められる範囲内となっていないものや、従業員の実情が考慮されていないものなど、労働安全衛生法その他の法令に定められた要件を満たさない内容で、その従業員に不利益となる取り扱いを行うこと。
  8. 面接指導の結果に基づく就業上の措置として、次に掲げる措置を行うこと。

    a.解雇すること。

    b.期間を定めて雇用される従業員について契約の更新をしないこと。

    c.退職勧奨を行うこと。

    d.不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換や職位(役職)の変更を命じること。

    e.その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること。

第8章 雑則

第38条(改廃)

本規程の改廃は、衛生委員会において調査審議を行い、その結果に基づいて変更を行うものとする。

附則

本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2024年3月更新)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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【健康経営】ストレスチェック制度の実務チェックリスト47項目

1 特有のルールがあり、実務も多いストレスチェック制度

ストレスチェック制度とは、

社員が所定の質問に答えて自身のストレス状態を把握する「ストレスチェック」や、高ストレス者に対する「医師による面接指導」などの一連の施策のこと

です。社員数が常時50人以上の会社は、年1回以上、ストレスチェック制度を実施する義務があります。現状、社員数が常時50人未満の会社は努力義務ですが、政府は近年のメンタルヘルス不調の増加などを考慮し、これらの会社も義務化の対象に加える方針のようです。

そんな状況なので、今後中小企業においてもストレスチェック制度の実施に取り組む会社が増えてくることが予想されますが、注意しなければならないのは、

ストレスチェック制度には、「健康診断と違って社員に受検を強制できない上に、受検結果も社員の同意がないと取得は不可」など特有のルール

があり、場当たり的に取り組むと法令違反や実務の抜け漏れが起きかねないという点です。

そこで、この記事では、

ストレスチェック制度で最低限押さえるべき47項目の実務チェックリスト

を紹介します。ストレスチェック制度を実施する前に、この記事の実務チェックリストを確認してみてください。なお、ストレスチェック制度の実施に当たって疑問や悩みがある場合は、労働者健康安全機構の「ストレスチェック制度サポートダイヤル」などをご利用ください。

■労働者健康安全機構「ストレスチェック制度サポートダイヤル」■

https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/helpline/tabid/1008/Default.aspx

2 これだけは押さえる! 実務チェックリスト47項目

ストレスチェック制度を実施する際は、次のチェックリストを実務の抜け漏れ防止にご活用ください。

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なお、最後(その他)の「心理的な負担の程度を把握するための検査等報告書」については、

2025年1月1日から「電子政府の総合窓口(e-Gov)」によるオンラインでの提出(電子申請)が義務化

されているのでご注意ください。

■厚生労働省「労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/denshishinsei.html

以上(2025年4月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 渡邉和也)

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