カスハラ客はお断り! 旅館業法の改正で認められた宿泊拒否ができるケースとは?

書いてあること

  • 主な読者:旅館、ホテル、簡易宿所(カプセルホテル、民宿、山小屋など)の経営者
  • 課題:旅館業法が改正され、迷惑客の宿泊を拒否できるようになったが、実際、どういった場合に宿泊を拒否していいのか知りたい
  • 解決策:制度の主旨を理解した上で、従業員への研修機会の提供、宿泊客への制度改正の周知、宿泊約款の改定などの対応を行う

1 迷惑客の「宿泊拒否」が可能に

2023年12月13日より改正旅館業法が施行されました。大きな改正点は、

  • 宿泊施設の営業者が迷惑客の宿泊を拒否できるようになったこと
  • 改正前の宿泊拒否事由の1つ「伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき」が「特定感染症の患者等であるとき」と明確化されたこと

です(特定感染症については後述)。

宿泊施設の営業者は一定の場合を除いて「宿泊を拒んではならない」のが原則です(旅館業法第5条第1項)。この原則には変わりありませんが、今般の法改正で、宿泊を拒否してもよい事由が追加され、宿泊しようとする者がしつこくムリな要求をしてきた場合に、宿泊を拒否できるようになりました。

また、コロナ禍のとき、発熱があることだけでは宿泊を拒否できない、宿泊客に対して感染防止対策への実効的な協力の求めを行うことができない、という問題が露呈したことを受け、改正法では「特定感染症の患者等であるとき」と、宿泊拒否の事由が明確化されました。

今般の法改正後、いわゆる「カスハラ(カスタマーハラスメント)」に当たるような行為があった場合、宿泊施設側は正々堂々と宿泊を拒否してよいわけですが、そうはいっても、

実際、どういった場合に宿泊を拒否していいのか

判断が難しい場面が出てくるのは間違いありません。また、改正法令が施行されたばかりで、宿泊施設側も、宿泊しようとする客側も何がNGなのか、よく分からないのが実情でしょう。

そこで、この記事では、改正法令や厚生労働省の検討会資料などを基に、宿泊を拒否できる具体例、留意点、宿泊施設に求められる対応策を紹介します。

2 宿泊を拒否していいのは、どのような場合か

1)宿泊拒否の事由として新たに定められた「特定要求行為」を繰り返した場合

特定要求行為とは、「その実施に伴う負担が過重であって他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求として厚生労働省令で定めるもの」をいいます。宿泊しようとする者が従業員に対して特定要求行為を繰り返した場合、宿泊施設は宿泊を拒否できます。具体的には次のような行為が挙げられます。

  • 不当な割引、契約にない送迎等、他の宿泊者に対するサービスと比較して過剰なサービスを行うよう繰り返し求める
  • 自身の泊まる部屋の上下左右の部屋に宿泊客を入れないことを繰り返し求める
  • 特定の者にのみ自身の応対をさせること、または特定の者を出勤させないことを繰り返し求める
  • 土下座等の社会的相当性を欠く方法による謝罪を繰り返し求める
  • 泥酔し、他の宿泊者に迷惑を及ぼすおそれがある状態になり、長時間にわたる介抱を繰り返し求める
  • 対面や電話、メール等により、長時間にわたって、または叱責しながら、不当な要求を繰り返し行う
  • 要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が不相当な言動を交えての要求を繰り返し行う

7番目の「要求の内容の妥当性」については、宿泊施設が提供するサービスに瑕疵(かし)・過失が認められない場合や、要求の内容が、宿泊施設が提供するサービスの内容とは関係がない場合は、妥当性を欠くものと考えられます。

また、「当該要求を実現するための手段・態様が不相当な言動」とは、身体的な攻撃(暴行、傷害)、精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)、土下座の要求等が挙げられます。これらは、たとえ要求の内容に妥当性があったとしても不相当とされる可能性が高い(場合によっては犯罪行為)です。また、商品交換、金銭補償、謝罪(土下座を除く)の要求などは、要求の内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があります。

なお、ここでいう「宿泊しようとする者」は、これから1泊目の宿泊をしようとする者だけでなく、既に1泊以上していて2泊目以降の宿泊をしようとする者も含まれます。

2)改正法で明確化された「特定感染症の患者等であるとき」に当たる場合

特定感染症とは、感染症法における一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症(入院等の規定が準用されるものに限る)および新感染症のことをいいます。

宿泊施設の営業者は、

特定感染症が国内で発生している期間に限って、宿泊しようとする者に対し、症状の有無などに応じて、特定感染症の感染防止に必要な協力を求めることができる

こととされました。宿泊拒否を巡って訴訟となった「ハンセン病元患者」や「HIV/エイズ患者」については、法改正前から宿泊拒否の対象でないことが厚生労働省の通知で示されていましたが、今般の法改正によって、宿泊拒否の対象としてはならないことが、より明確になりました。

なお、今般の法改正で、宿泊者名簿の記載事項として「職業」が削除され、代わって「連絡先」が追加されたのも、宿泊客に対し、特定感染症の感染防止に必要な協力を求めるためです。

3)その他の場合

その他、法改正前と同じく、

  • 宿泊しようとする者が賭博その他の違法行為または風紀を乱す行為をするおそれがあると認められるとき
  • 宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき

にも宿泊を拒否できます。

都道府県によって条例で定める事由は異なりますが、例えば、「宿泊しようとする者が身体または衣服が著しく不潔であるため他の宿泊者に迷惑を及ぼすおそれがある」「宿泊しようとする者が明らかに支払能力がないと認められる」などが挙げられます。

また、宿泊しようとする者が暴力団など反社会的勢力の構成員であることが判明した場合も宿泊を拒否できると考えられます。

3 障害のある人への合理的配慮に留意

繰り返しになりますが、宿泊施設の営業者は一定の場合を除いて「宿泊を拒んではならない」のが原則です。宿泊しようとする者の状況等に配慮して、みだりに宿泊を拒むことがないようにするとともに、宿泊拒否の事由に当たる場合でも、客観的な事実に基づいて判断し、宿泊しようとする者からの求めに応じてその理由を丁寧に説明できるようにする必要があります。

特に留意しなければならないのは、

2024年4月から障害者差別解消法に基づく「合理的配慮」の提供が努力義務ではなくなり、義務化される

ことです。

障害者差別解消法では、障害がある人への不当な差別的取り扱いを禁じており、障害があることを理由に宿泊を拒むことはできません(障害があることは、旅館業法の宿泊拒否の事由にも当たりません)。

また、宿泊しようとする障害のある人が「合理的配慮」を求めてさまざまな要求を繰り返したとしても、それをもって宿泊を拒否してよいのかは一概には言えません。宿泊拒否の事由とされる「負担が過重」や「余裕がないとき」の解釈が宿泊施設側に委ねられている部分が大きいため判断が難しいところです。

無制限に対応を強いられたり、業務の遂行に支障を来すおそれがあったりする要求に応じる必要はありませんが、そうした要求に対しても、まずは「要求には応じられないが、宿泊自体は受け入れる」ことを説明し、それでもなお要求を繰り返す場合は、宿泊を拒むことができます。

なお、旅館業法第5条第1項各号に規定されていない宿泊拒否事由を宿泊約款に規定したとしても、無効であり、同項にない事由による宿泊拒否は、旅館業法違反となります。

4 宿泊施設に求められる対応策

1)従業員への研修(努力義務)

旅館業法の改正によって、宿泊施設に対して、従業員への研修を行うことが努力義務化されました。障害のある人をはじめ、ハンセン病元患者やHIV/エイズ患者などに対する不当な差別的取り扱いにつながることのないようにし、宿泊者に対してその特性に応じた適切なサービスを提供できるようにすることが大切です。

厚生労働省は、旅館業法の研修ツール等を順次ウェブサイトに掲載していく予定です。ぜひ確認してみましょう。

■厚生労働省「旅館業法の研修ツールについて」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188046_00006.html

また、生成AIを活用した教育研修ツールも登場しています。例えば、インタラクティブソリューションズの「iRolePlay」では、AIと対話形式でのロールプレイが可能で、迷惑客として理不尽な要求を繰り返すAIに対して接客するなど、さまざまな設定でトレーニングできます。

■インタラクティブソリューションズ「iRolePlay」■
https://www.interactive-solutions.co.jp/service/iroleplay.html

2)宿泊客への周知

宿泊者は、旅館業法の改正で、迷惑客の宿泊を拒否できるようになったことや、宿泊者名簿に「連絡先」を記載するようになったことを認識していないかもしれません。厚生労働省は周知用ポスターを作成し、ウェブサイトで公開しているのでぜひ活用しましょう。

■厚生労働省「宿泊者の皆様へ 令和5年12月13日から旅館業法が変わります!」■
https://www.mhlw.go.jp/kaiseiryokangyohou/download/poster_dl.pdf

また、宿泊約款を改定し、特定要求行為を繰り返した場合には宿泊を拒むことがある旨などを明記しておくとよいでしょう。観光庁が「モデル宿泊約款」をウェブサイトで公開しているので参考にしましょう。

■観光庁「モデル宿泊約款」(最終改正令和5年12月13日)■
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001747987.pdf

5 参考

■厚生労働省「改正旅館業法の円滑な施行に向けた検討会 とりまとめ」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35694.html
■厚生労働省「旅館業法改正 | TOP」■
https://www.mhlw.go.jp/kaiseiryokangyohou/
■旅館業法■
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000138
■旅館業法施行規則■
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323M40000100028
■障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律■
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000065

以上(2024年2月作成)

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画像:Elnur-shutterstock

2024年4月に大幅な規制緩和 ライドシェアって何?

書いてあること

  • 主な読者:ライドシェア解禁の動向を知りたい経営者など
  • 課題:ライドシェア解禁に向けた議論が進められているが、ポイントがつかみにくい
  • 解決策:2024年4月から、タクシーの需要に供給が追い付かない地域・時期・時間帯に限り、タクシー事業者の管理下でのライドシェアが解禁予定だが、詳細は未定

1 2024年4月から、ライドシェアが一部解禁へ

ライドシェアは、配車アプリを介して乗客とドライバーをマッチングし、乗客がドライバーに対価を支払って目的地まで車で運んでもらうサービスです。米国のUberなどが有名で、現地の移動で利用したことがある人もいるのではないでしょうか。配車アプリの機能によりますが、乗客は、乗降場所の設定、料金の決済まで事前に行えるようになっています。ドライバーは、指定された場所で乗客を乗せて目的地まで運べばよく、料金を受け取り損なう心配もありません。

便利なライドシェアですが、日本では、いわゆる「白タク」行為として道路運送法によって禁止されています。その一方で、タクシーの需要に供給が追い付かない観光地や過疎地の交通インフラ問題が顕在化しています。

2023年12月には超党派の議員勉強会が、ライドシェアの導入について、2024年中にも必要な法整備を行うよう政府に求める提言を取りまとめました。その後、政府は、2024年4月から、タクシー事業者の運行管理の下でライドシェアを一部認める方針を固めました。

この記事では、注目されるライドシェアについて、道路運送法による規制の概要を押さえたうえで、規制緩和に向けた政府の方針について解説します。

2 道路運送法による規制の概要

1)旅客自動車運送事業は許可制

道路運送法では、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業を旅客自動車運送事業と定め、国土交通大臣による許可制をとっています。

タクシーは、一般乗用旅客自動車運送事業に該当します。タクシー事業者は、運行管理者の選任をはじめとする運行管理体制の整備をしなければならず、旅客運賃・料金も国土交通大臣の認可を受けなければなりません。ドライバーは第二種運転免許の保有などの要件を満たす必要があります。

ライドシェアは、現行法では無許可で一般旅客自動車運送事業を営む「白タク」行為に該当し、一般のドライバーが自家用車を使って乗客を運び運賃・料金を得ることは禁止されています。これに違反したドライバーは、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処されます(併科あり)。なお、乗客側の罰則は定められていません。

2)自家用車による有償運送は原則禁止

道路運送法では、自家用車による有償運送を原則禁止しており、自家用車による有償運送が認められるのは、

市町村、NPO法人などが地域住民や観光客を対象に、国土交通大臣の登録を受けて行うとき(自家用有償旅客運送)

などに限られます。自家用有償旅客運送は、運送の対価として実費の範囲内での収受が認められています。2006年の制度創設以降、全国に広まり、2022年3月末時点で、

  • 地域住民や観光客の移動手段を確保する「交通空白地有償運送」は、670団体で実施
  • 介護を必要とする者の移動手段を確保する「福祉有償運送」は、2470団体で実施

されています。

3 政府による規制緩和の主な方針

1)2024年4月からライドシェアが一部解禁

2023年12月20日に開かれたデジタル行財政改革会議で、政府は、

現状のタクシー事業では不足している移動の足を、地域の自家用車や一般ドライバーを活かしたライドシェアにより補う

という方針を打ち出しました。具体的には、

  • タクシー事業者の配車アプリで蓄積しているデータを基に、タクシーが不足している地域・時期・時間帯を特定する
  • タクシー事業者が運送主体となり、地域の自家用車・ドライバーを活用し、アプリによる配車とタクシー運賃の収受が可能な運送サービスを2024年4月から提供する

としています。この新制度の創設に先立ち、現行の自家用有償旅客運送についても、

  • 適用対象となる「交通空白」について、「地域」だけではなく、夜間などの「時間帯」による空白の概念も取り込む
  • 従来、タクシー運賃・料金の2分の1が目安とされてきた有償運送の対価を、タクシーの約8割まで引き上げ、ドライバーの適正報酬を確保する
  • 一定のダイナミックプライシングを導入する

など大幅に見直されます。

さらに、利便性を向上するために、

  • NPO法人などの非営利団体だけでなく、株式会社も運送の実施主体からの受託により参画できることを明確化する
  • 道路運送法の許可または登録の対象外の運送(無償運送)について、アプリを通じたドライバーへの謝礼の支払いが認められることを明確化する

としています。

一般のドライバーは、タクシー事業者の管理下で自家用車を使って乗客を運び運賃・料金を得られるようになるわけですが、詳細は未定の部分が多く、政策の動向を継続してウォッチしていく必要があります。

例えば、タクシー事業者と一般のドライバーの関係は「安全性の確保を前提に、雇用契約に限らずに検討を進める」とされており、タクシー事業者から一般のドライバーへの業務委託契約が成り立つのか、運行の安全性をどのように確保するのか、万一事故を起こしたときの責任はどうなるのかなどの課題があります。

2)第二種運転免許取得者の確保に向けた制度の改正

政府は、深刻なタクシードライバー不足を改善するため、ドライバーになるための運転免許を取得しやすい制度に改める方針も打ち出しています。具体的には、

  • 第二種運転免許取得に係る教習について、1日当たりの技能教習の上限時間の延長や、教習内容の見直しなどを図り、2024年4月以降できる限り早期から教習期間を大幅短縮する
  • タクシードライバーになるために課せられている道路運送法に基づく法定研修の期間要件(10日)を撤廃する
  • タクシー業務適正化特別措置法に基づいて課されている地理試験について、2023年度中に廃止する

としています。また、2024年4月以降に行う第二種免許試験について、多言語での受験を可能とし、外国人のドライバーへの積極的な採用を促す方針です。

4 今後の政策動向に注目

タクシー業界のドライバー不足の背景には、高齢ドライバーの引退だけでなく、求職者が賃金の高い別の仕事を選ぶ傾向が続いていることが挙げられます。

さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大期には、乗客数が激減したためにドライバーを辞めてしまうケースも相次ぎました。国土交通省によると、個人タクシーを除くタクシードライバーの数は、2020年3月末時点の26万1671人から、2022年3月末時点では22万1849人と大幅に減少しました。

そうした中、観光地や過疎地の移動手段を確保するための一策として期待を集めるライドシェア。2023年12月20日に開かれたデジタル行財政改革会議で、政府は、

タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024年6月に向けて議論を進めていく

と、期限を設けて言及しています。

業界団体の強い反対もある中、一足飛びに全面解禁とはいかないものの、2020年に「いわゆる『ライドシェア』は引き続き導入を認めないこと」が附帯決議として明記された(第201回国会の衆議院国土交通委員会(4月14日)、参議院国土交通委員会(5月26日))ところからは、方針が大きく転換されたといえるでしょう。今後の政策動向が注目されます。

以上(2024年2月作成)

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画像:terovesalainen-Adobe Stock

【朝礼】2024年度はビジネスの旅に出発しよう!

皆さん、おはようございます。今日は「目的地主義ではなく、旅の道中を楽しむ」というテーマについてお話しします。

アップルの共同創業者であるスティーブ・ジョブズのことは皆さんも知っているでしょう。そのジョブズの有名な言葉に「旅そのものが報酬だ」というものがあります。「旅は目的地に行くためにするものではない。道中のさまざまな経験こそが旅であり、かけがえのない報酬である」ということです。実際、ジョブズの旅は実にエキサイティングです。アップルを設立した後に解雇され、そして再雇用されるという経験をしつつ、革新的な製品を世に送り出し続けました。ジョブズは、そうした旅の中で、かけがえのない経験を積みながら歩んでいきました。

もう1人、ウォルト・ディズニーの言葉「夢見ることができれば、それは実現できる」も印象深いものです。一口に「夢」といっても、それにどれだけまい進できるかは人それぞれです。ディズニーは、自分の生み出すキャラクターが人々を笑顔にし続けることを夢見て、さまざまな困難を乗り越え、最高のエンターテインメントの世界を築き上げました。ディズニーの旅は、持続的な創造性と挑戦の連続ですが、私はその根底に夢に対する貪欲な姿勢があったと考えています。自分の夢に貪欲で、全力で立ち向かっていったからこそ、彼の生み出したキャラクターは、今なお世界中を魅了してやまないのです。

さて、2人の偉大な経営者と同じように、私たちも、日々、ビジネスの旅を続けています。私たちには経営計画があり、それを達成することが目下の目標になっていますが、それは札所(ふだしょ)の1つに過ぎません。私たちが掲げているミッションを達成し、あるべき理想の姿を実現することが真の目的であり、夢なのです。そういう意味では、私たちはまだまだ長い旅の途中です。

もうすぐ2024年度が始まります。私たちの旅に新たな1ページが刻み込まれるわけですが、出発の前に、皆さんに伝えたいことがあります。それは、

夢に憧れ、私たちの旅を思う存分に楽しむ

ということです。楽しくなければ夢に憧れ続けることはできないですし、長く続けることもできません。ジョブズとディズニーもそうであったはずですが、私たちも夢を追い続ける旅を大いに楽しみましょう。

皆さん、目をつぶり、私たちが夢をかなえた瞬間をイメージしてください。皆さんはどこに立っていますか、周囲には誰がいますか、どんな話をしていますか。そして何より、ワクワクしてきましたか。今、皆さんがイメージした世界を必ず成し遂げようではありませんか。2024年度、当社は新しい中期経営計画の下、これまで以上に新規事業にまい進します。皆さん一人ひとりの努力と挑戦、仲間を思うチームワーク、そして何より旅を楽しむ心を忘れずに、さぁ、出発です!

以上(2024年2月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

交差点での右折(2024/2号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

多くの車や人が行き交う交差点は、交通事故が起こりやすい場所です。

特に右折では、運転者は対向車はもちろんのこと、歩行者や自転車などにも十分注意しなければなりません。一瞬の気の緩みが重大事故につながるおそれがあります。

今月は、このような重大事故となる危険が高い、信号のある交差点での右折における安全運転を考えます。

交差点での右折

1.交差点での右折に潜む危険

令和4年の統計をみると、信号のある交差点で発生した交通事故は約5.3万件あり、その内、右折事故は約2万件にのぼり、全体の約40%を占めています。

交通事故件数

出典:公益財団法人交通事故総合分析センター「令和4年版交通統計」から当社作成

交差点での右折は、走行中の対向車とのタイミングを計ったり、横断歩道上の歩行者や自転車などの安全を確認したりする必要があり、運転行動が複雑です。また、交通状況で想定外のことが起こったり、心理面で負荷がかかったりすることもあります。例えば以下のような危険が潜んでいます。

◆交通状況の危険

  • 対向車の陰から二輪車などが飛び出してくる。
  • 黄色信号で対向車が無理に交差点へ進入してくる。
  • 自転車が目前の横断歩道を猛スピードで走行する。

◆運転者の心理面の危険

  • 後続車がいるプレッシャーで、早く右折しなければと焦る。
  • 対向車の車体が小さい場合など、そのスピードを実際よりも遅く感じる。
  • 対向車の動きに気を取られてしまい、横断歩道上の歩行者や自転車への注意が疎かになる。

右折をする際は、様々な危険が常に潜んでいることを意識して運転することが大切です。

2.右折時の安全運転のポイント

右折時の安全運転のポイント

以下の運転行動で上図のような安全確認を徹底し、事故を防ぎましょう。

  • 交差点の中央寄りを徐行して、交差点の状況を広く見るようにしましょう。(交差点内での視野が広がり、右後方(※1)の確認がしやすくなります。)
  • 対向車に急減速させるような強引な右折をしてはいけません。対向車が途切れない場合には、焦らず信号が変わるまで待つことが大切です。(対向車の陰(※2)に注意しましょう。)
  • 交差点の信号が青に変わる瞬間に(対向車よりも先に)、猛ダッシュでショートカットするような右折をしてはいけません。

3.重大事故を避けるために

交差点右折時の重大事故で、多くの歩行者や自転車搭乗者が被害にあっています。交差点の右折では、対向車だけに気を取られないようにし、右折先の横断歩道にいる歩行者や自転車などにも注意を向ける必要があります。

対向車の陰や運転者の視野の外など見えないところに歩行者や自転車などがいるかもしれないと想定しながら運転しましょう。

見えない先に注意

以上(2024年2月)

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画像:amanaimages

労務の都市伝説 「試用期間なら社員を簡単に解雇できる」は是か非か?

書いてあること

  • 主な読者:試用期間中は社員を簡単に解雇できると思っている経営者、人事労務担当者
  • 課題:本採用の拒否が「不当解雇」になるのが、どのようなケースなのか分からない
  • 解決策:就業規則に「本採用の拒否」の規定があることを確認した上で、相手の能力や経験に応じて柔軟に対応する

1 試用期間の直後は社員を簡単に解雇できる?

多くの会社は、社員が入社してからの一定期間を試用期間とし、本採用するか否かを見極めています。試用期間を経て社員に適性がないと判断したら本採用を拒否するわけですが、これが「不当解雇」になるケースがあります。

試用期間中やその直後は社員を簡単に解雇できると勘違いしている人がいますが、これは間違いです。試用期間中の労働契約は、

「解約権留保付労働契約」といい、すでに労働契約が成立しているが、試用制度を前提に、使用者には正当な理由があれば労働契約を解約できる権利が留保されている

というものです。過去に最高裁は次のように示しています(最高裁大法廷昭和48年12月12日判決)。

  • 本採用の拒否は、通常の解雇よりも広く解雇の自由が認められる
  • 試用期間中、社員は他社への就職機会を失っていることなどを考慮し、本採用の拒否は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当な場合のみ許される

つまり、確かに試用期間後の本採用の拒否は通常の解雇よりも緩やかといえるが、何でも許されるわけではないということです。ポイントは、

就業規則に「本採用の拒否」に関する規定があることと、相手の能力や経験に応じて柔軟に対応すること

です。

2 就業規則に「本採用の拒否」に関する規定はあるか?

まずは「解雇権濫用法理」を押さえましょう。これは、

「客観的に合理的な理由」「社会通念上の相当性」を欠く解雇は無効になる

というルールで、試用期間後に本採用を拒否する場合にも適用されます。

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就業規則に解雇事由が規定されていないと、裁判などで客観的に合理的な理由がないと判断されます。ですから、

就業規則に「試用期間中に社員として不適格と認めた場合、解雇することがある」などの規定を設ける

ことが、本採用を拒否する大前提となります。

3 試用期間ならではの注意点を押さえる

就業規則の規定を確認したら、次に大切なのは、どのようなケースで本採用の拒否が不当解雇になりやすいか、典型例を押さえることです。次章で具体的なポイントを紹介します。

1)試用期間の途中で解雇していないか?

通常、試用期間は3~6カ月間ぐらいです。誰でも、すぐに仕事ができるようになるわけではないからです。ですから、

試用期間の途中で「適性がない」と性急に判断して解雇するのは、適性の見極め方に問題があるとして、不当解雇になる恐れ

があります。

過去、会社が営業職の社員を採用した後、成績不良を理由に6カ月間の試用期間の途中(3カ月間)で解雇し、争いになった裁判例があります。会社は社員に対して忠告を行い、成績を改善する機会を与えていたようですが、裁判では、

試用期間の満了後に解雇する場合も「客観的に合理的な理由」「社会通念上の相当性」が求められる以上、期間を短縮する場合、より一層高度の合理性と相当性が求められる

などの理由から、本件は不当解雇と判断されました(東京高裁平成21年9月15日判決)。

試用期間の途中での解雇が認められる可能性があるとすれば、例えば、

  • 著しいレベルの経歴詐称があり、会社の期待した能力が全くないと入社後に判明した
  • 正当な理由(病気など)なく遅刻・無断欠勤を繰り返し、何度注意しても改善しない

など、明らかに社員としての適性がないと判断できるケースです。

2)新卒や未経験者の能力不足に厳しすぎないか?

新卒や業界未経験者に「数カ月の試用期間で、他の社員と同じぐらい働けるようになれ」というのは酷です。ですから、

初心者であることを十分考慮せずに能力不足で解雇すると、不当解雇になる恐れ

があります。

過去、社労士事務所が実務経験のない社労士を職員として採用した後、試用期間中のミスを理由に解雇し、争いになった裁判例があります。事務所は、職員が顧客の意向を十分確認せずに社労士業務を行ったことなどから能力不足と判断したようですが、裁判では、

実務経験がないと分かって職員を採用した以上、即戦力として期待できる状況ではなく、事務所が職員に対し、顧客への意向確認を十分行うよう明確に指示した形跡もない

などの理由から、本件は不当解雇と判断されました(福岡地裁平成25年9月19日判決)。

初心者の能力不足を理由とした解雇が認められる可能性があるとすれば、例えば、

社会人歴は長いのに協調性がなく、何度注意しても周囲とトラブルを繰り返す

など、そもそも社会人としての資質が欠如しているケースです。

3)経験者だからといって、指導をおろそかにしていないか?

業界経験者を採用した場合、能力不足を理由とする解雇が認められやすい傾向にあります。ただし、同じ業界であっても仕事の進め方や必要とされる知識などは会社によって異なります。ですから、

経験者だからといって、必要な指導をしないまま解雇すると、不当解雇になる恐れ

があります。

過去、土木工事の設計監理会社が、設計の経験がある社員を採用後、試用期間中に設計図面の作成業務を命じるも、十分な能力がないと判断して解雇し、争いになった裁判例があります。会社が作成を命じた図面は、社員が過去に経験したことのない種類のもので、裁判では、

経験のない業務にもかかわらず、会社が具体的な指導をした形跡がなく、また、社員は時間をかけつつも、最終的に要求された作業を完了しており、一概に能力不足といえない

などの理由から、本件は不当解雇と判断されました(東京地裁平成27年1月28日判決)。

経験者の解雇が認められる可能性があるとすれば、この裁判例の逆パターンで、

前職の経験があればこなせるレベルの業務を与え、なおかつ会社が指導を繰り返しているのに、業務を十分こなせない

など、仕事の進め方などの違いを踏まえても、経験者としての能力が不足しているケースでしょう。また、「会社がどれだけ真摯に指導をしたか」によって不当解雇になるか否かは変わってくるので、指導を行った日時や内容を「指導記録」などとして残すことが大切です。

なお、上の裁判例が不当解雇と判断された理由には、会社の指導不足の他に、

経験者として採用されたものの、給与の額が経験を考慮したといえるほど高くなかった

というものもありました。経験者の待遇と業務内容が釣り合っているかも要チェックです。

4 (参考)「内定取り消し」の注意点

試用期間中の労働契約は「解約権留保付労働契約」であると説明しましたが、「内定(採用内定)」もこれと同じです。内定とは、会社が内定者(採用選考に合格した求職者)に社員として採用する旨を通知し、内定者が入社を待っている状態です。会社が内定を出した時点で、

会社と内定者の間に、入社日を始期とする解約権留保付労働契約が締結

されたとみなされます。そのため、内定を出した相手に社員としての適性がないことなどが判明したとしても、その内定を取り消すと、「不当解雇」として違法になる恐れがあります。しかも、内定取り消しの場合は「会社名公表」というペナルティーまであります。

内定取り消しも通常の解雇よりはハードルは低いものの、実施するには「客観的に合理的な理由」「社会通念上の相当性」が必要です。具体的に内定取り消しが認められやすいケースとしては、次のようなものがあります。なお、内定取り消しの場合も、解雇予告や解雇予告手当の支払いは必要です。

  • 卒業を採用条件としているのに、内定者が単位を取得できず卒業できない
  • 特定の資格や免許の取得を採用条件としているのに、その取得ができない
  • 業務に支障が出るレベルの健康上の問題が見つかった
  • 著しいレベルの経歴詐称があり、会社の期待した能力が全くないと判明した
  • 内定後に刑事事件を起こしたり、反社会勢力とのつながりが判明したりした

上の例の他に、会社の経営悪化が原因でやむを得ず内定を取り消すケースなどがありますが、こうしたケースの内定取り消しは、「整理解雇」という、人員整理を理由とする解雇に該当し、実施するための要件が厳しくなります。何より内定者側に落ち度がない内定取り消しになるので、トラブルを避けたいのであれば、

内定者に一定の補償や損害賠償を示して協議した上で、内定を取り消すこと

が無難です。

以上(2024年2月作成)
(監修 弁護士 田島直明)

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「【どのように】褒めるか」の5つの手法とその活用テクを伝授/武田斉紀の『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』(8)

書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:最近話題のZ世代(1990年代後半以降生まれで会社においては20代前半くらいまで)だけでなく、それ以前の平成生まれ(30代前半くらいまで)の世代と、現在経営や管理職を担っている昭和世代との世代間ギャップが注目されています。それは価値観の違いやコミュニケーションの違いとして表れ、変化や多様性が求められる昨今、日本企業において深刻な経営の足かせとなりつつあるようです。
  • 解決策:まず会社においてZ世代を含む平成生まれと昭和生まれの世代背景を整理しながら、ギャップを埋めるための「価値観の変化」を明らかにします。その上で、筆者が多くの講演や企業研修で紹介してきた『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』を実践的に指南します。

1 相手を【どのように】褒めるべきかを、意識できていますか?

今シリーズでは、昭和生まれの管理職・リーダー世代と、平成生まれ、とりわけ「Z世代」との価値観に、ここ10年ほどで“真逆”といえるほどのギャップが生まれていることを取り上げています。

世界のビジネス上の価値観は、平成生まれや「Z世代」の価値観のほうに寄っており、会社の成長を今後も目指すためには管理職・リーダー側の皆さんが、価値観やコミュニケーション習慣を見直す必要に迫られているのです。

『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』その1の『傾聴』に続いて、第6回からは、その2『褒める』を取り上げています。

『褒める』は各社における35歳くらいから以下の平成生まれや、新人や若手の「Z世代」が育ってきた環境を象徴するキーワードの1つです。彼らは昭和生まれの『叱る』ではなく、『褒める』ことを優先した教育を経験しています。

同時に『褒める』は、『傾聴』と同様にグローバルで互いを尊重し合うDEI(=Diversity:多様性、 Equity:公平性、 Inclusion:包括性)にもつながっており、昭和世代にとって「人を褒めるなんて恥ずかしくて自分には無理」と逃げている場合ではなくなっているのです。

今回は、前回の「【何を】褒めるか」に続いて、「【どのように】褒めるか」の5つの手法とその活用テクニックを伝授したいと思います。

皆さんは、相手を「褒める」ときに、【何を】褒めるかだけでなく、【どのように】褒めるのがベストかを意識できていますか?

2 ①言葉にして2~3割増しで褒める ②すぐ褒める、後でも褒める

①言葉にして“2~3割増し”で褒める

言葉にしないとあなたの思いは相手に伝わりません。もっというと普通に褒めただけでは相手にはその数分の1しか伝わっていません。なので私は「自分が思っている“2~3割増し”で褒めましょう」とお勧めしています。

普段より2~3割増しで声を張り「〇〇さんの〇〇なところ、いいですね!」と言ってみてください。さらに満面の笑顔と大きめのジェスチャーで「いいね!」と親指を添えられれば満点です。

経験的にはこちらが少し大げさだったかもと思うくらいで、相手にはちょうどよい感じで届いているようです。それくらいしないと他人にこちらの思いのたけは届きません。せっかく勇気を持って届けたつもりが、実にもったいないと思いませんか。

そうはいっても、一度もやったことないのに、恥ずかしくていきなりそんなことできないという方は、まずは声も出さず「いいね!」と親指を添えるだけでもOKです。少しは相手に思いが届くでしょう。そうして何度かやっていると、「どうせやるのに少ししか伝わらないなんてもったいない」と思うようになるでしょう。

最初は恥ずかしくてもすぐに慣れますし、周囲の目も気にならなくなりますよ。

②すぐ褒める、後でも褒める

いつ褒めるかでいえば、【何を】に気付いた直後がベストです。そして後でも褒めましょう。素晴らしいことは、何度褒めてあげてもいいのですから。

相手は自分がうまくできた、貢献できたと思ったら、すぐに誰かに何か言ってほしいものです。そこですかさず気付いて一言かけてくれた人に対して「この人は分かってくれている」と感じるのではないでしょうか。直後であれば直後のほうがいいし、最初であればなおさら感謝されます。

何かのイベントや会議の最中など、その場では褒められないケースもあるでしょう。ならば終了して本人が一息ついたタイミングがチャンスです。「今日の〇〇さんの発表、よかったですね」と一番先に言ってあげたいものです。

発表がイベント全体に好影響を与えるくらいよかったのであれば、一日の終了時にも思い出すように言ってあげてください。「今思い出しても、今日のイベントの成功は〇〇さんの発表が効いてましたね」

本人は家に帰ってその日を気持ちよくかつ前向きに振り返り、自分なりの反省点やもっとできたなと思う点を洗い出して、さらに上を目指してくれることでしょう。

3 ③みんなの前で褒める、1対1で褒める ④You、 I、 第三者を使い分ける

③みんなの前で褒める、1対1で褒める

従来、マネジメントの基本として「褒めるときはみんなの前で、叱るときは1対1で」といわれていましたが、最近は人前で褒められることを本気で嫌がる人も目立ちます。無理強いしても、褒める効果どころか逆に嫌われるかもしれません。相手の嗜好を日常的に確認しておくとよいでしょう。

よほど嫌いな相手からでない限り、褒められて嫌な人はいません。人前で褒められるのが苦手と分かれば、場所を変えて1対1のときに褒めてあげればいいだけのことです。

人前で褒められるのがうれしい人は、1対1で褒めても喜んでくれるはずです。場面ごとに言い回しを変えて、何度でも褒めてあげてください。

本人が「もっと褒めて、もっと褒めて」と言ってくるかもしれません。うれしいから言っているのです。笑いながら「欲しがりますねえ(笑)、次回もっと褒めますから」などと冗談で返すだけで、場は和むはずです。

みんなの前で褒めると、周囲からも称賛の言葉を引き出せます。周囲のメンバーにも「よーし、次は自分も褒められるように頑張ろう」と好影響を及ぼし、職場やチームの雰囲気は盛り上がっていくことでしょう。

④You、 I、 第三者を使い分ける

これはテクニックの1つとして覚えておいてください。Youは「事実に基づいた客観的な」褒め方。Iは「自分が感じた主観的な」褒め方。第三者は文字通り、「その場にいない別の人が褒めていたことを知らせる」褒め方です。それぞれに効果があるので、使い分けられるとよいでしょう。

例えば、Youだと「あなたは〇〇をしたのですね。頑張りましたね」に対して、Iだと「私はあなたの〇〇に感動しました、すごいですね」といった感じ。第三者だと「〇〇さんが、あなたの頑張りを褒めていましたよ」と伝えるのです。

第三者を介した情報発信は信頼性が増しやすいという心理効果を「ウィンザー効果」と呼び、マーケティングなどでも使われています。第三者が、普段接することの少ない上司の上司、社長、あるいは本音が聞きづらい取引先の関係者やお客様であったりすると、さらに効果は絶大です。

4 ⑤相手をより理解するつもりで両面から探す

【どのように】褒めるかで立ち返るべき基本は、相手をより理解するつもりで褒め方を考えることです。「相手が気付いてほしい点」は何か、あるいは「本人が気付いていない優れた点」はないか、その両面からアプローチしてみましょう。

「両面」は前回ご説明した【何を】褒めるかにも当たりますが、褒める側の視点を【どのように】持つべきかという点で、こちらに加えてみました。

SNSであえて発信していない人も含めて、誰しも大なり小なり承認欲求はあるものです。

「相手が気付いてほしい点」に気付いて真っ先に褒めてあげられると、あなたは特別な一人になれます。

相手は「この人は私のことを見てくれている、分かってくれる」と思えるからです。

特に上司と部下の関係作りには向いているでしょう。

さらには「本人が気付いていない優れた点」を見つけて教えてあげられたらどうでしょう。

「そんなことで褒められたのは初めてです」という本人の言葉には、驚きと共に小さな自信が芽生えています。

「私の〇〇という強みは、〇〇さんが発見してくれたおかげなのです」と、一生ものの関係にさえなれるかもしれません。

チームスポーツで言えば、現在のポジションや役割でなかなか結果を残せずに悩んでいる選手に対して、監督が「あなたは〇〇の特徴があると思うよ。〇〇のポジションにチャレンジしてみてはどうですか」と褒めてアドバイスをすることがあります。

コンバートされた先で可能性を見いだして成長できた選手はどう考えるでしょうか。「今の自分があるのは監督のおかげです」とずっと思ってくれるのではないでしょうか。

相手をより理解するつもりで寄り添うこと。本人が気付いてほしい点、気付いていない優れた点の両面からアプローチすることで、互いに強い信頼関係が生まれるのです。

以上、今回は「【どのように】褒めるか」の5つの手法とその活用テクニックをご紹介してきました。

前回の【何を】と今回の【どのように】をセットにしてマスターし、常にベストな「褒める」を意識できれば、職場やチームの互いの信頼関係は良くなり、人もおのずと育っていくことでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。次回は、「NGな褒め方」や「褒めてばかりでなく、時には叱るべきか?」をテーマにお話ししていきたいと思います。

<ご質問を承ります>ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mail to: brightinfo@brightside.co.jp

※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』(PHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。キャリア選択でお悩みの方にお薦めです。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CMCW1FVY/

以上(2024年2月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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採用ミスマッチの解消などに役立つ職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成プロセス

書いてあること

  • 主な読者:ジョブ型雇用の導入を検討している経営者
  • 課題:職務記述書(ジョブディスクリプション)の内容や作成プロセスが分からない
  • 解決策:当該職務を担当する社員にヒアリングし、難易度、必要なスキルなどをまとめる。そこに経営者のメッセージも込めて職務記述書に落とし込む

1 職務記述書とは

社員を採用する際の方針は、

  • ジョブ型雇用:あらかじめ特定の職務をこなせる社員を採用
  • メンバーシップ型雇用:自社の理念に共感をしている社員を採用

に分けられます。専門職採用や中途採用の場合、一般的にはジョブ型雇用が向いています。そこで使われるのが「職務記述書(ジョブディスクリプション)」という、

職務内容(担当業務の内容、難易度、必要なスキルなど)をまとめた書類

です。この職務記述書は募集要項と似ていますが、募集要項は待遇面の説明が中心で、担当業務の内容は簡単に紹介する程度です。ジョブ型雇用では、職務記述書に記載された職務をこなせるかどうかが、採用の可否や待遇を決定する判断基準になります。ですから、職務記述書をうまく活用すれば、

  • 「採用してみたらスキルなどが期待外れだった」などの採用ミスマッチを解消する
  • 「やる気がある」などの曖昧な基準での人事評価をやめ、賃金や人員配置を適正化する

といったこともできます。この記事では、職務記述書の作成プロセスとサンプルを紹介します。

2 職務記述書の作成プロセス

1)知る:募集ポジションの職務内容や就業環境についてヒアリングする

職務記述書は、募集ポジションの職務について、業務内容やその難易度、必要なスキルなどの詳細を1つずつ洗い出して作成します。経営者も社内の職務内容は把握していますが、もっと細かいレベルまで落とし込む必要があるので、現場の声を聞きます。

まずは、対象の職務を行っている社員やその上司にヒアリングを行い、募集ポジションの職務内容や就業環境について、経営者自身が誤った認識をしていないか確認します。例えば、次のような質問例が考えられます。

【現職の社員への質問例】

  • 定期業務

 ・重要度の高い業務の内容
 ・発生頻度(1カ月にどのくらい行うか、という表現でOK)

  • 人間関係

 ・リポートライン(タスクの遂行や進捗報告などのコミュニケーションのフロー)
 ・意思決定プロセス(意思決定者は誰か、自分の裁量範囲はどのくらいか)

  • 求められる行動、果たすべき役割
  • 必要だと思われるスキル・知識・資格・経験
  • 業務で難しいこと・厳しいこと(具体的な内容、乗り越えるための技術やコツ)

【上司への質問例】

  • 責任の範囲(どのくらい裁量があるか)
  • 求められる行動、果たすべき役割
  • 必要だと思われるスキル・知識・資格・経験
  • 入社後に苦戦しそうだと予想されること

2)分析する:職務をこなすために必要なスキルなどを掘り下げる

ヒアリングの結果、経営者と現場の認識にズレがなければ、職務をこなすために必要なスキルなど(技能、知識、資格、経験など)を列挙します。会社の求めるスキルなどを全て兼ね備えた求職者にはなかなか出会えないので、次のように優先順位を決めます。

  • スキルなどがない場合、職務を一切行えないのか、一部なら遂行可能なのか
  • 研修で習得させることが可能か、その場合の期間やコストはどの程度か

3 職務記述書のサンプル

次の職務記述書は、アプリ開発を行う会社がシステムエンジニアを募集する場合の例です。

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「職務内容」「必要な知識」などは、現職の社員や上司へのヒアリングの結果などを基に、できるだけ詳細に書き出します。「目標(ノルマなど)」も記載すると、求職者に対してより鮮明に仕事のイメージが伝わります(目標設定が複雑になる場合は、別紙などで提示)。「期待される特性」は、会社のミッションやビジョンにも関係する重要な項目ですので、会社として何を大切にしているかが求職者に伝わるよう、メッセージを工夫しましょう。

また、職務記述書を作成する際は、厚生労働省の「職業能力評価基準」も参考になります。職業能力評価基準とは、

仕事をこなすために必要な「知識」「技術・技能」「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」を、業種別、職種・職務別に整理したもの

です。

■厚生労働省「職業能力評価基準の策定業種一覧」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04653.html

以上(2024年1月更新)

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「結果を出すチーム」を率いるリーダーが重視すべきたった1つのこと

書いてあること

  • 主な読者:結果を出す良いチームを作りたいが、なかなかうまくいかない管理職
  • 課題:リモートワークでコミュニケーションが減り、これまで以上に難しくなっている
  • 解決策:情報共有を徹底することが、良いチームを作るための基本

1 情報はチームの血液のようなもの

会社ではさまざまなシーンでチーム活動が行われます。上司の皆さんが部下と協力してクライアントに提案することもチーム活動ですが、「提案の目的・内容、クライアントの意向」などの情報が共有されていないとチームワークが乱れ、良い結果につながりません。つまり、

情報はチームの血液であり、スムーズな「情報共有」が重要

です。リモートワークが進んだり、チャット前提のコミュニケーションが普及したりしている現在、チームの情報共有はこれまで以上に重要な課題になりました。

皆さんはチームのリーダーの立場ですが、もし、「チームがうまくいっていない」と感じていたら、この記事を読んでみてください。チーム内において情報共有する上で大切なポイントを紹介していきます。

2 チーミングは最初が肝心!

1)リーダーズインテグレーションとは?

リーダーが最初に行うのが「リーダーズインテグレーション」です。リーダーズインテグレーションとは、

チームが形成された直後に行う“情報共有のためのキックオフミーティング”

です。

チームの進化過程を示した「タックマンモデル」によると、チームは形成してもすぐには機能せず、混乱と統一のフェーズを経験します。形成当初の混乱は、情報格差から生じがちです。まだ情報の伝達ルールが整っていないので、「他のメンバーは知っているのに、私には情報を与えられていない」と、不公平感や臆測が生まれやすいのです。そこで、リーダーとメンバーが最低限の情報を共有するために、リーダーズインテグレーションが必要になるのです。

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2)リーダーズインテグレーションの際の注意点

リーダーズインテグレーションで大切なことは、メンバーが「知っているはず」だという先入観を持たず、素直に自分が知りたいことと、メンバーに知ってほしい情報を共有することです。例えば、「自分はせっかちな性格である」などと伝えます。また、メンバーには、

  • チームについて知っていること、聞きたいこと
  • リーダーについて知っていること、聞きたいこと

を挙げてもらい、それにリーダーが答えることで心理的安全性を確保します。

3)リーダーのコミットメント

リーダーズインテグレーションで、皆さんはメンバーにコミットメントをします。これにより、皆さんがリーダーであることをメンバーに知らしめ、基本的なルールを共有することができます。コミットメントの例は次の通りです。

  • 快適なチーム活動を約束する
  • 常にリーダーとしての威厳を持って活動することを約束する
  • メンバーの業務状況、家庭生活に配慮することを約束する
  • 時間厳守を約束する(無駄に活動を長引かせない)
  • 定期的に活動の進捗を伝えることを約束する
  • 中立な立場で指揮を執ることを約束する
  • 独断しないことを約束する
  • チーム活動を周囲の雑音から守ることを約束する
  • チーム活動の責任はリーダーである自分が負うことを約束する
  • 正当な権利は、リーダーである自分が上司と交渉することを約束する

3 「ジョハリの窓」を意識した情報共有

チームが動き始めてからの情報共有については、「ジョハリの窓」を参考にします。心理学者のジョセフ・ルフトとハリー・インガムが考案したもので、両者の氏名に由来して「ジョハリの窓」と呼ばれます。コミュニケーションにおける気付きのモデルとして有名ですが、チームの情報共有にも応用することができます。

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互いのことは活動を続けるうちに分かってきますが、コミュニケーションをサボると「開放の窓」が広がりません。そこで、

  • リーダーが、チームに関する全般的な情報を積極的に共有して、「隠された窓」を小さくする
  • メンバーから質問や指摘を受けて、「盲目の窓」(問題点)を小さくする

ようにしていきましょう。

以上(2024年1月更新)

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都市部の優秀な“同志”を割安で採用〜「地方副業」マッチングサイト活用のススメ

書いてあること

  • 主な読者:業務改善や販路拡大などの課題を抱えている地方企業の経営者
  • 課題:優秀な人材を採用して知見を得たいが、どのような方法があるか分からない
  • 解決策:地方副業のマッチングサイトを用いて、都市部の人材を副業人材として招く。求める人物像を固定せず、企業の課題を掲載すれば、応募者が解決策を提案してくれる

1 地元の正社員採用に限界を感じたら、都市部の副業人材を!

  • これまで、地元に住んでいる人を正社員として採用してきたけれども、それだけでは自社が抱える課題を解決できない
  • 販路拡大や自社PRなど新たな取り組みを始めたいが、社内に知見がなく、専門的な人材を採用するにも高額な人件費をかけることができない

そんな悩みを抱える地方企業の経営者にお勧めするのが、

都市部の優秀な人材に、原則、オンライン勤務という条件で業務委託する「地方副業」マッチングサイトの活用

です。都市部で働く年収1000万円クラスの優秀な人材も、月額数万円程度でサポートしてくれる、オトクな仕組みです。しかも、今は応募者の数が圧倒的に多い「買い手市場」です。1件の募集につき15~18人の応募があり、何人と面談しても追加料金がかからないのが一般的となっています。もちろん、採用してみてマッチしないと感じたら契約を打ち切ることもできます。

ただし、応募者に“同志”として自社の成長に貢献してもらうためには、自社の考えや活動に共感してもらい、働きやすい環境を整えるなど、幾つかの注意点もあります。

この記事では、地方副業のマッチングサイトを運営する4社・団体の担当者に聞いた、地方企業が都市部の優秀な副業人材を募集・採用する際のポイントや、副業人材の動向などを紹介します。また、副業人材を活用した地方企業の成功事例も掲載しています。

自社に新しい風を吹き込み、成長を軌道に乗せるための起爆剤としての副業人材の活用を、ぜひ、ご検討ください。

取材を受けてもらったマッチングサイトを運営する会社・団体は、以下の通りです(取材の時期が早かった順に掲載)。

YOSOMON!:NPO法人ETIC.(エティック)(東京都渋谷区)が運営

■YOSOMON!■
https://yosomon.jp/

Skill Shift:みらいワークス(東京都港区)が運営

■Skill Shift■
https://www.skill-shift.com/

HiPro Direct for Local(旧:Loino):パーソルキャリア(東京都千代田区)が運営

■HiPro Direct for Local■
https://talent.direct.hipro-job.jp/talent/for-local/top/?utm_source=Loino_close&utm_medium=referral&utm_campaign=Loino_close_001

サンカク:リクルート(東京都千代田区)が運営

■サンカク■
https://sankak.jp/

2 副業人材の採用は双方にwin-winなシステム

地方副業は、企業側、副業人材側の双方にメリットがあります。地方副業のマッチングサイト運営者に聞いた、企業側、副業人材側のそれぞれがマッチングサイトを利用する理由としては、次のようなものがあります。

1)企業側がマッチングサイトを利用する理由

1.正社員よりも低価格、短期間で優秀な副業人材に仕事を依頼できる

副業人材の応募者の平均年齢は30~40代が7割以上で、正社員が6割程度、フリーランスが4割程度といいます。正社員の人が自身のスキルを試すために副業をはじめ、慣れてきたらフリーランスに転身するケースもあるそうです(Skill Shift)。特に、30代後半が年齢のボリュームゾーンとなっており、現場で働きつつ、マネジメント経験もある人材が中心となっているといいます(サンカク)。本業での年収は600万円超が7割近くを占めており、2割は1000万円超と、本業である程度の実績があり、十分な稼ぎのある人が応募しているそうです(Loino)。こうした優秀な人材にもかかわらず、副業人材に支払う月額の報酬は、Skill Shiftでは3万~4万円と、正社員よりも割安で仕事を依頼することが可能です。

マッチングサイトには、採用の有無にかかわらず案件の掲載費用が発生するものもあれば、案件の掲載や副業人材との面談までは無償で、副業人材を採用した段階で費用が発生する成果報酬型のものもあります。例えば、サンカクの場合、副業人材とマッチングした場合に費用が発生しますが、案件を募集する文面の作成や応募者との座談会、面談に関しては、無償でサポートを受けることができます。

採用期間も「原則1カ月単位」(YOSOMON!)、「半年以上のプロジェクト」(サンカク)などで、募集した案件の事業が終了したり、マッチング後に事業がうまく進まなかったりした場合、速やかに契約を解除できます。

後述しますが、応募者の多くは、報酬目当てではなく、募集企業への共感や、地方への貢献、自らのスキルアップなど、高い“志”を持っているので、共に成長できる“同志”を見つけられる可能性が高いといえるでしょう。

2.買い手市場となっているため、人材を選択する幅が広い

全てのマッチングサイトの担当者が口をそろえて話すのが、「今は買い手市場」ということです。サイトや案件によっても異なりますが、1件の募集に対して、15~18人程度が応募してくるといいます。また、応募者は企業の思いに共感して、企業に貢献できる自分のスキルを理解した上で応募するため、「質」が高いそうです。

どのマッチングサイトも、自社都合で募集を取り下げるケースなどを除き、ほとんどの場合は人材を採用できているとのことです。中には、副業人材との座談会や面談の結果、副業人材から良いアイデアがたくさん出たため人数を絞りきれず、当初の予定よりも多く副業人材を採用するケースもあるそうです。

もし、人選が難しい場合は、募集内容に適した能力や意欲の高い人材を、マッチングサイトの担当者が選んで薦めてくれることもあります。

3.面談だけでも優れた知見やアイデアを得ることができる

一般的に、マッチングサイトは何人の応募者と面談しても追加料金がかからないので、時間さえ都合がつけば、応募者全員とオンラインで面談することが可能です。「それぞれの募集案件で、少なくとも5人の副業人材を集めて座談会を開いているケースもあります」(サンカク)。

また、面談では応募者側が募集内容に応じた提案をしてくれるため、提案を聞くだけでも参考になるとして、「応募者全員と面談をした旅館業者もいる」そうです(Skill Shift)。

4.自社が抱えている課題を明確にできる

副業人材の採用活動を通して、経営者が考えている自社の最優先課題に潜んでいる本質的な課題が見つかったり、新たな課題を解決するための方法が分かったりすることも少なくないようです。

企業が副業人材を募集しようとする段階では、「『DX化を進めたい、販路を拡大したい』など、思いはあるものの、必要な機能や人材などの明確な要件定義ができていないことが多い」といいます(サンカク)。このため、マッチングサイト運営者のサポートや応募者からの提案によって、本質的な課題や、課題解決のために必要な人物像や解決策が導き出されるケースが多いようです。

2)副業人材側がマッチングサイトを利用する理由

1.企業への共感

マッチングサイト運営者によると、副業を志望する理由として、その企業への共感や、その企業を応援したいという気持ちで応募する人が多く、「報酬が第一」の人はとても少ないといいます。

中には、「副業先の企業にそのまま転職したケースもある」そうです(Skill Shift)。

2.地域貢献、地方創生

自分の出身地や住んだことがある場所、旅行で訪れて気に入った地域など、思い入れのある地域の企業に、移住・転職を伴わず貢献できることを魅力に感じて応募する人も少なくありません。

「将来的に地方への移住や出身地に戻ることを検討しており、その地域を知る足掛かりとして副業を始める人や、地方の人とのつながりを楽しんでいる人もいる」(Loino)、「もともと地方の出身者で、地元とのつながりを持ちたい、都市部で得たスキルや経験を還元したいという思いを持った人もいる」(サンカク)そうです。

3.キャリアアップ

正社員として勤務している企業では経験できないような、経営企画などの業務を副業として行うことで、自らのキャリアアップにつなげることを目的としている人もいるそうです。

「副業人材にとっては、経営陣と直接仕事のやり取りができ、自分のアイデアで会社が変わっていく様子を目の前で実感できることがメリットになる」といいます(サンカク)。

中には、「マネジメントになった人事部門の部長クラスの人が、現場の感覚を忘れないために応募するケースもある」そうです(Loino)。

4.日常では得られない体験

日常の中では得られない体験を求めて、地方副業に応募するケースもあります。

例えば、Skill Shiftでは、ツーリズムと絡めた副業体験として、福島県いわき市で2泊3日のクラフトビール開発ツアーと、参加者によるクラフトビール発展のためのアイデアのプレゼン大会を開催しました。

また、スポーツによるまちおこしとして、アメフト社会人リーグ・Xリーグのクラブチームの広報・PRの副業案件もあります。他の副業案件と比較して謝礼が低額となる代わりに、オフィシャルポロシャツの贈呈や練習・試合観戦の特典があり、通常の副業にはない珍しい体験といえます。

他にも、漁業・水産業者向けに特化した地方副業のマッチングサイトである「GYOSOMON!」(ギョソモン!)では、副業人材への報酬は金銭ではなく「魚」となっています。このサイトはYOSOMON!が共同で運営しており、「応募者は、副業の報酬として、ご近所などに配らないといけないほどの大量の魚が送られてくるという、日常ではできない体験に魅力を感じる人が多い」といいます。

3 副業人材を募集・採用する際の勘所

1)自社のファンになってもらう

副業人材に共感してもらうためには、自社のファンになってもらえるPRを行うことが重要です。例えばLoinoでは、募集の文面を作る際に、「企業が目指している姿や、社内の人が気付いていないような、企業の魅力を掲載するようにしている」といいます。また、副業人材との面談でも、企業の実現したいことや、企業ならではの魅力を話すとよいそうです。

2)募集する業務を絞るよりも課題を示す

副業人材でマッチングに成功する秘訣は、「業務のアウトソースとは異なる」ことを意識し、「経営課題を一緒に考えてくれるパートナーというイメージで採用すべき」といいます(Skill Shift)。

募集に際しても、「これをしてくださいと細かく決めるより、今、企業がどんなことに取り組んでいて、どんな困り事があるのかを掲載して、協力、支援をしてほしいというニュアンスの文面のほうがよい」そうです(YOSOMON!)。

3)経歴や肩書だけで選ばない

マッチングサイト運営者の多くは、採用に関しては、経歴や肩書にとらわれず、熱意や提案内容を重視すべきといいます。

「経歴や条件面よりも、企業や地域への思いがどれだけあるか、企業の課題に対してどんなアイデアで解決できるかという視点で選考をしている企業が、副業人材とうまくマッチする」(Skill Shift)、「副業人材側も企業の募集案件をきちんと読み込んだ上で応募をしているので、経歴や条件面よりも、面談を通じての相性・フィーリングで採用する人材を判断するほうがマッチする」(YOSOMON!)とのことです。

また、「上から目線」の応募者は避け、“同志”としてふさわしい人材を選んだほうがよいようです。例えば、青森県のある企業では、「面談をした応募者の『一緒に汗をかきましょう』という言葉を聞いて採用を決めた」そうです(サンカク)。

4)既存の社員を巻き込む

副業人材の働き方としては、経営者のブレーンのような形で相談相手になる場合と、既存の社員と協業する場合があります。

既存の社員と協業する場合、社員が副業人材の存在に反発して、マッチングがうまくいかないケースもあるようです。

副業人材を採用する場合、ノウハウを社員に落とし込むことも大切なので、副業人材との面談は、経営者だけでなく、現場の社員も参加できるとよいでしょう。事前に社員のコンセンサスを得ておき、「社長が思いつきで変なことを始めた」と思われない状態からスタートすべきといえます。

5)副業人材の稼働時間を考慮する

副業人材の場合、本業以外の時間帯で稼働するため、自社の就業時間外や週末にやり取りをすることがあります。オンラインでも円滑にやり取りするために、チャットツールなどの用意は必須になります。副業案件によって異なりますが、週1回~月1回の頻度でオンライン面談を開き、それ以外はチャットツールを活用して、副業人材とやり取りを進めているケースが多いといいます。

課題だけ明示する形であれば、副業人材のほうで必要な作業を、自分でスケジュールを立ててやってくれるようになります。

6)時には顔合わせも必要

副業案件の多くはウェブマーケティング、ECサイトの強化、事業戦略の立案など、リモートワークでも進められるものですが、お互いの理解を深めるためにも顔合わせは必要です。

企業によっては、プロジェクトを始める際に副業人材を企業側の費用負担で現地に招き、顔合わせをして親睦を図ったり、設備や工場を見学してもらったりして、自社への理解を深めてもらう取り組みをしているところがあります。副業人材の側から、現地で顔を合わせることを希望するケースも少なくないようです。

4 副業人材の成功事例

1)副業人材がファシリテーターになって社員のアイデアを募集(Loino)

来客数増加を課題にしていた、地域に数店舗を展開するスーパーマーケットが採用した副業人材は、既存の社員からのアイデアを募集することを提案しました。副業人材がファシリテーターになって社員を集めた会議を開催したところ、社員からさまざまなアイデアが出され、実際に採用したアイデアも生まれたそうです。

会議を行うことによって、社内コミュニケーションの活性化にもつながったといいます。

2)ECサイトの全面改修などで売り上げが前年度の17倍に(サンカク)

石川県のある和菓子製造販売会社では、ECサイトのテコ入れが課題となっていました。当初、経営者はSNSの活用によるテコ入れを想定して副業人材を募集しましたが、応募者を集めた座談会では、応募者側からサイトの改修などさまざまな提案が出て、応募者同士でも提案のブラッシュアップが行われるなど、盛り上がりを見せたといいます。

そこで経営者は座談会に参加した応募者5人を、それぞれ担当分野を決めた上で採用し、社内の若手社員数人とともにプロジェクトチームを結成。ECサイトの全面的な改修だけでなく、デジタルマーケティング戦略の上流から再設計し、企業のウェブページとECサイトを含めて最適化に取り組んだことで、ECサイトによる売り上げは前年度の17倍に達したそうです。

劇的な成果を目の当たりにして、既存の社員のモチベーション向上や育成にもつながり、新たなスキルを身に付けようと、自ら勉強を始める社員も現れるようになったといいます。

3)蓄光グラスの販売強化で副業人材の本業にも貢献(Skill Shift)

岐阜県でサンドブラスト(砂などの研磨剤を吹き付ける加工方法)や蓄光技術を生かした「月光グラス」の販売、OEM生産を手掛ける会社では、OEMに頼らない新商品の開発や自社の認知度向上を目的に、副業人材を募集しました。

募集の結果、キャンプに関心のある方が副業人材としてマッチングし、蓄光して暗い場所で光る月光グラスがキャンプで映えるのではないかといった点や、夜の時間を豊かにできるのではという観点から、新商品の開発やPRを一緒に進めたといいます。

また、副業人材が本業で勤務している商業施設でも、イベントを開催して月光グラスを売り込むことができたため、本業にも貢献ができた事例となります。

5 (参考)副業・兼業に関するデータ

地方副業の背景や、リクルート「兼業・副業に関する動向調査(2022)」から、ふるさと副業(回答者自身の住まいとは異なる地域での兼業・副業)への関心について紹介します。

1)地方副業が活性化した背景

地方副業が活性化した背景には、2018年1月に厚生労働省によるモデル就業規則の改定を受け、さまざまな企業が副業・兼業の解禁を打ち出したこと、2019年6月に政府が「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」で、副業・兼業も含めた多様な形態を通じて、地域企業に関わる「関係人口」(移住や観光以外の地域と多様に関わる人)の創出・拡大を掲げたことなどが挙げられます。さらに、2020年以降のコロナ禍でリモートワークが普及し、地方移住や副業・兼業、ワーク・ライフ・バランスの関心が高まったことも背景にあります。

実際に、Skill Shiftでは、2017年12月のサービス開始以来、副業・兼業の解禁やコロナ禍などのターニングポイントをきっかけに、副業人材の登録者数が大幅に増えています。

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2)「ふるさと副業」への興味

リクルート「兼業・副業に関する動向調査(2022)」によると、ふるさと副業に関しては、約半数の回答者が「非常に興味がある」「興味がある」と回答しています。

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3)「ふるさと副業」に興味がある理由

「自分に関わりのある地域に貢献したいから」がほぼ半数を占め、「地域問わず、地方創生に興味があるから」と「自分の経験や能力を地方企業で活かしたいから」が続きます。

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4)「ふるさと副業」で希望する働き方

テレワーク・現地訪問のいずれかで働きたい割合の合計と、両方を併用して働きたい割合がほぼ同数となっています。

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以上(2024年1月更新)

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画像:tiquitaca-Adobe Stock

社員の「やる気」は完璧を求めず、割り切って損切りすることも必要な理由

書いてあること

  • 主な読者:社員のやる気を高めて、活気ある組織を作りたい経営者
  • 課題:社員のやる気は流動的で、不満に感じていることのレベルも本当にさまざまである
  • 解決策:全社員のやる気が同時期に高まることはない。優秀な社員のケアを優先する

1 社員の「やる気」は完璧を求めない

経営者にとって、社員の「やる気」は重要であると同時に厄介な問題です。経営者と社員とでは仕事に向き合う姿勢が違うので、経営者の思いを全力で社員にぶつけても、それを受け止められる社員は一部に限られます。経営者としては、同じ熱量で語り、ビジネスを進めていきたいのですが、これは高望みというものです。

となると、別のアプローチで社員のやる気を高める必要があります。具体的な方法はさまざまですが、根本にあるのは、

社員の不満足を解消し、自己実現をサポートすること

であり、これはハーズバーグの「2要因理論」や、マズローの「欲求段階説」といった理論でも裏付けられています。

もう一つ大切なことは、全社員のやる気が同時期に高まることはないという事実です。やる気はとても気まぐれで、「ある時、ある社員のやる気は高いが、別の社員は低い」というのが常です。そのため、

経営者は社員の「やる気」に完璧を求めず、高くあるべき社員が高ければいい

という、ある意味で損切りの感覚を持つことが大切です。

2 不満足の解消が不可欠だが……

1)ハーズバーグの「2要因理論」とマズローの「欲求段階説」

社員のやる気を考える際、よく紹介されるのがハーズバーグの「2要因理論」とマズローの「欲求段階説」という2つの理論です。これらの理論を紐解くと、不満足を解消しなければ、社員のやる気は高まらないことが分かります。

まず、ハーズバーグの2要因理論では、

  • 衛生要因:満たされないと不満になるが、満たされても満足になりにくい
  • 動機付け要因:満たされると満足になるが、満たされなくても不満になりにくい

に注目します。

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次にマズローの欲求段階説では、人の欲求として5つを段階的に示していますが、これらは、

  • 低次の欲求:生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求
  • 高次の欲求:尊厳の欲求、自己実現の欲求

といったように分かれます。

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2)2つの理論に共通する「不満足の排除」

2つの理論について確認しておきたい重要なポイントは、

2要因理論では衛生要因が満たされなければ、満足の要因にアプローチしてもあまり意味がなく、欲求段階説では低次の欲求が満たされなければ、高次の欲求が刺激されない

ということです。

ところで、自分で選んだ組織に所属しているのだから、衛生要因や低次の欲求は、ある程度、満たされているはずです。にもかかわらず、このレベルさえ満たされていない社員がいる場合、その社員のやる気を高めたいなら、人間関係や職務を根本的に変える必要があるでしょう。

  • 配置転換をして、現在の人間関係から解放させる
  • 職務変更をして、適正の再発見をする

一方、これを言っては元も子もありませんが、

  • どんなに素晴らしい会社にも、一定の「アンチ」がいる
  • 衛生要因や低次の欲求であっても、完璧に満たされている社員は少ない
  • 衛生要因や低次の欲求が満たされていない社員は、会社を大事に考えていない
  • 社員自身も、現状を変えるための努力を何もしていない可能性がある

ことも事実です。となると、衛生要因や低次の欲求さえ全く満たされていない社員は静観するというのも、厳しいようですが、一つの選択肢です。

ちなみに、社員のやる気を高めるためにコミュニケーションを良くし、発言の機会を与えることが大事といわれます。しかし、衛生要因や低次の欲求さえ全く満たされていない社員については、よほどうまく働きかけないと発言せず、沈黙するだけに終わるでしょう。

3 自己実現は1対1の関係から

満足要因や高次の欲求が満たされていない社員の扱いは、前述した衛生要因や低次の欲求さえ全く満たされていない社員とは違います。この社員は、

  • 実力ややる気があるのに、それを発揮できる機会に恵まれていない
  • 本来やるべきでない仕事に忙殺され、結果を出せていない

といった状況に陥っている可能性があります。最悪の場合、

自分の実力を活かすチャンスがもらえる会社に転職しよう

ということになってしまい、会社として大きな損失です。

そうした社員は既に社内で一定の地位にあると思います。昔ながらの考え方なら、「自分を引き上げてくれた会社で定年まで勤める」ということですが、現在の状況は違っており、簡単に転職してしまいます。

こうした社員を引き留めるのは容易ではありません。優秀な社員ほど刺激を求め、新しい状況に身を置きたがるので、経営者は社員に刺激を与え続けなければなりません。具体的には、

経営者が1対1で本気で話を聞き、チャンスを与える

ようにします。その際、「社員の意見を聞くことが大事」との指摘がありますが、社員としては優秀だが、経営者から見れば不十分というレベルなら、その必要もないかもしれません。それよりもむしろ、足りないと思える点を丁寧に伝え、それを克服する手伝いをしてあげるのがよいでしょう。

いずれにしても、自己実現を目指すようなレベルの高い社員のやる気を高めたければ、個別のアプローチが必要であり、しかもその適任者は経営者となります。先ほどとは全くトーンが異なり、

このレベルの社員のやる気が低い責任の多くは経営者にある

と考え、本気で取り組むべきことです。

以上(2024年1月更新)

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