仕事に人工知能(AI)を活用する職場が増えつつあります。AIは生産性の向上や人手不足の緩和などにつながるため、少子高齢化が進む日本では、今後も企業が積極的に導入していくと考えられます。本稿では、独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表した「AIの職場導入による働き方への影響等に関する調査」の結果から、AIと働き方に関する最新事情をお知らせします。
AI導入による働き方への影響
仕事に人工知能(AI)を活用する職場が増えつつあります。AIは生産性の向上や人手不足の緩和などにつながるため、少子高齢化が進む日本では、今後も企業が積極的に導入していくと考えられます。本稿では、独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表した「AIの職場導入による働き方への影響等に関する調査」の結果から、AIと働き方に関する最新事情をお知らせします。
1 残業時間が減少
調査は、同機構が2024年5~6月、全国の労働者を対象に実施し、22,000人から有効回答を得ました。22,000人のうち、勤務先の企業でAIが使われていると答えた労働者は2,833人(有効回答数に占める割合12.9%)。2,833人のうち、自身がAIを利用していると答えた労働者は1,854人(同8.4%)でした。この1,854人に、AIを利用する前後で仕事の質や働き方がどう変わったかを尋ねたところ、次のようにAIの効果を感じさせる回答が得られました。
(単位=%。端数処理の関係で合計が100%にならない場合がある)


※独立行政法人労働政策研究・研修機構「AIの職場導入による働き方への影響等に関する調査」の結果より
「仕事のパフォーマンス」については、「かなり改善した」「少し改善した」が計60.6%で、改善効果が表れています。
「上司や管理者による従業員へのマネジメントの公平性」「メンタルヘルスとウェルビーイング(生活満足度や幸福度等)」「職場における安全性と身体の健康」の変化については、いずれも「わからない」が4割強。それでも、「改善した」が「悪化した」よりも多く、一定の効果が見て取れます。
「月間の総残業時間」の変化については、「わからない」が44.8%でしたが、「減少した」も計28.5%で、「増加した」を上回りました。
「年次有給休暇の取得日数」「平均的な賃金総額(税金と社会保険料を差し引く前の額面)」「職場で上司・同僚・部下と話す機会」の変化については、「増加した」が「減少した」を上回ったもの、「わからない」が5割前後を占めています。「仕事で新しい事を学ぶ機会」については、「増加した」が計40.5%に達し、効果が出ているようです。
2 仕事が失われる不安
一方、AI導入に伴う不安もみられました。AI によって今後2年以内に自身の仕事が失われる不安について尋ねたところ、全有効回答22,000人のうち、「極めて心配」「かなり心配」「ある程度、心配」「わずかながら心配」が計 43.7%、「(2年を超えて)今後10年以内」では計 50.7%でした。
また、今後10年間を見据え、自身の産業分野の賃金にAIが影響を与えるかについても質問しました。全有効回答22,000人のうち、「わからない」が44.6%、「賃金に影響を与えないと思う」が24.1%でしたが、AIは「賃金を減少させると思う」も22.6%を占め、「賃金を増加させると思う」の8.7%を大幅に上回っています。
さらに、AIの利用に伴い勤務先が訓練の提供や資金の援助をしてきたかを聞いたところ、勤務先の企業でAIが使われている労働者2,833人の62.8%が「いいえ」と答えました。企業の支援が十分とは言えないようです。
3 さいごに
AIは企業活動に大きなプラス効果を及ぼします。その反面、ChatGPTなどの生成AIについては、機密情報の誤入力や意図しない情報漏洩などのリスクもあります。セキュリティインシデントが発生してしまうと、企業に甚大な損害を与えるので、回避しなければなりません。
そのためには、社内規定やガイドラインを定め、生成AIを利用できる対象従業員、入力可能な情報の範囲、生成された結果の活用方法などを明確にしておく必要があります。適切なAI活用に向け、従業員に学習やリスキリングの機会を提供することも欠かせません。ご対応につきましては注意して進めてみてください。
※本内容は2025年10月10日時点での内容です。
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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日没前後の運転は要注意!(2025/11号)【交通安全ニュース】
活用する機会の例
- 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
- 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
- マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など
日没前後の時間帯は薄暮時間帯※と言われ、視界が刻々と変化していきます。
特に、秋から冬にかけては、帰宅や夕食の買い物などで自動車や人の動きが活発になる時間帯と重なるため、交通事故のリスクが高まります。
今号では、薄暮時間帯の事故防止について考えます。

※警察庁では、日没前後1時間を「薄暮時間帯」としています。
(日の入り時刻は、月日や都道府県により異なります。)
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/hakubo.html
薄暮時の事故発生状況
令和2年~6年の5年間における時間帯別死亡事故件数(図1)は、日没時刻と重なる17時台~19時台に多く発生しています。

さらに、薄暮時間帯の当事者別死亡事故(図2)を見てみると、「自動車対歩行者」が半数を占めています。
薄暮時間帯に事故が増加する要因の1つとして、視界の急激な変化と目の働きの低下による「見落とし」が考えられます。

※図1、図2ともに 出典:警察庁交通局「薄暮時間帯における交通時事故」より当社作成
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/hakubo.html
薄暮時間帯の視界の変化
秋から冬にかけての薄暮時間帯は、刻々と視界が変化していきます。

- 目が暗い状態に慣れるまでには時間がかかるため、自動車や自転車、歩行者などお互いの発見が遅れる。
- 暗くなるにつれて、明るい場所と暗い場所との差(コントラスト)が大きくなり、物の色や形がはっきりと見えにくくなる。
特に、黒やグレーなど暗い色の服装の歩行者は、路面や背景の色に溶け込んでしまい、ほとんど見分けがつかない状態になるため「見落とし」に注意が必要です。
事故防止のポイント
下記を実践して薄暮時間帯の事故を回避しましょう。
①早めのライト点灯
日没30分前を目安に、意識してヘッドライトを点灯しましょう。薄暗くなったなと感じたら、即点灯が基本です。ライトの目的は、「自分がよく見るため」だけではなく、「自分の車の存在を周囲に知らせるため」です。歩行者や自転車に早く気付いてもらうことも重要です。
②ハイビームを積極的に活用する
基本はハイビームで走行します。遠くまで見通せることで危険をいち早く発見できます。見える距離はハイビームでは約100m、ロービームでは約40mです。なお対向車や先行車がある場合は、ロービームにして、こまめな切り替えを行いましょう。
③歩行者や自転車を意識して見に行く
暗がりや物陰、電柱の影など、見えにくい場所に注意深く目を配り、 意識して見にいくようにしましょう。特に住宅街や交差点など歩行者や自転車が多い場所では、認知が遅れてもすぐに対応ができるように、速度を抑えて走行しましょう。
以上(2025年11月)
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【参加無料】中小企業向け「省エネ推進セミナー2025」を開催します(オンライン)
令和7年11月5日(水)、一般社団法人環境共創イニシアチブが経済産業省資源エネルギー庁の補助事業の一環として中小企業等を対象とした「省エネ推進セミナー2025」を開催します。
本セミナーでは、経済産業省が補助事業として実施している「令和6年度補正 中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費(地域エネルギー利用最適化・省エネルギー診断拡充事業)」の活用方法を、事例を交えてわかりやすく紹介します!
詳細はチラシ、もしくはWEBページをご参照ください。
↑クリックで拡大表示↑
以上(2025年10月作成)
【朝礼】なぜ、あなたの「話し方」では伝わらないのか
【ポイント】
- 独り善がりで、一方的に話していたら、お客さまは聞く耳を持ってくれない
- 大きな声でハッキリとした口調で話すことをおろそかにしない
- まともな話し方ができなければ、営業のスタートラインにも立てない
先日、「お客様に私の話を真剣に聞いていただけなくて、悩んでいます……」という相談を若手社員から受けました。そこで、私がお客様役になり、彼にいつもやっているように話してもらったのですが、「お客様が話を聞かない気持ちが分かる」というのが率直な感想でした。彼の話には、2つの問題があったのです。
1つ目は、独り善がりで、一方的に話していたことです。営業担当者は「売りたい!!」という気持ちを強く持っています。売るために、お客様に自分の考えや知識を伝えたいと強く思うほど、独り善がりで、一方的に話しがちです。しかし、お客様の立場になってみてください。「営業」と聞けば、多くのお客様は「売り込まれそう……」と身構えます。その上、一方的に話しては、お客様は一歩引いてしまい、聞く耳を持ってくれません。皆さんの周囲にいる優秀な営業担当者を観察すれば、一方的に話すのではなく、お客様との会話を大切にし、お客様の求める情報を提供していることが分かるはずです。
2つ目の問題は話し方です。くだんの若手社員は、小さな声で語尾も曖昧な話し方でした。皆さんは大きな声で、ハッキリとした口調で話していますか? たとえ営業担当者が有益な情報を話していても、小さな声で「ボソボソ……」と自信なさげでは、熱意を感じられません。内容以前に、聞く気が半減します。一方、同じ内容でも、大きな声でハッキリとした口調で話されれば、気持ち良く、より真剣に聞こうという気になります。まず耳を傾けてもらうために、大きな声でハッキリとした口調で話すことをおろそかにしてはいけません。
私たちがお客さまから選ばれるためには、商品のスペック、価格、対応の迅速さなど、私たちの優れた点をお客様に認めてもらうことです。そのために一役買うのが、話し方だといえます。
もちろん、話し方が優れているだけでは、ビジネスで成功を収めることはできません。しかし、まともな話し方ができなければ、スタートラインに立つことさえかなわないのです。その点を強く認識しておいてください。
以上(2025年10月作成)
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画像:Mariko Mitsuda
ヒント4[採用4]:入社日までに「入社後のギャップを最小化する」/武田斉紀の『人が辞めない会社、10のヒント』(5)
目次
1 「好きな人は好き」にさせる事実の一行は見つかりましたか?
今シリーズの狙いは、経営者、人事担当者、現場の皆さんのお悩みである「社員を採ってもすぐに辞めてしまう上に、そもそも採れない」という課題を解決すること。『人が辞めない会社、10のヒント』と題して、毎回1つずつご紹介していきます。
『人が辞めない会社』に変わるための課題、その原因と解決策は会社によってさまざまです。
今回ご提示するヒントが皆さんの抱える原因に明らかに当てはまらない場合は、読み飛ばしてくださって結構です。ですが、ヒントの1~9までが該当しなくても、10が当てはまるかもしれません。
全社共通の原因もあれば、部署ごとの固有の原因も存在することでしょう。原因が1つだけというケースは少ないので、何回分か読んでいただければ「これはうちにも当てはまるな」というものを見つけていただけるのではと思います。
第2回から前回の第4回までは、採用は会社の入り口であり、『人が辞めない会社』に変わるための重要な最初の一歩であることをお話ししてきました。
自社を必要以上に大きく見せることなく、会社が“目指すこと”、“大切にしたいこと”を明示する。それを体現している社内の事実を見つけ出し、分かりやすい一行キャッチフレーズにしてアピールする。そうすればSNSの時代、「好きな人は好き」という人が全国、世界から集まってくれます。
「好きな人は好き」で集まってくれた人は、会社が“目指すこと”、“大切にしたいこと”に強く共感してくれた人材です。あとはその中から、自社で予め設定した「求める人材像」の資質・性格、経験やスキルなどの基準に沿って、本当に“採用したい人材”を絞り込んでいけばいいのです。
ただ、本当に“採用したい人材”を絞り込めて相思相愛で内定まで出せたとして、その人材が入社後すぐに辞めてしまう可能性はないでしょうか。
ということで、
今回は採用編の最後となるヒント4:入社日までに「入社後のギャップを最小化する」です。
あなたの会社では、これから入社してくる人材に対して、入社後のギャップが極力ないよう、事前に必要な情報や、入社後のイメージを十分に伝えられていますか。良いことだけでなく、悪いことも全てです。
2 内定者に伝えるべき全ての情報を、入社前に伝えられていますか?
残念なことに、私がこれまで採用をご支援してきた会社で、内定者に対して入社後のギャップが極力ないよう「入社日までに伝えるべき情報」をきちんと整理し、全て伝えきれている所はほぼ皆無でした。
原因は主に2つ。1つは、「マイナス情報を伝えたら、入社してくれなくなるのではないか」という懸念です。
担当者としては苦労して内定までこぎつけた候補者には、辞退せず入社して欲しいと願うもの。「〇名入社させた」という実績を見せたい気持ちもあるでしょう。
でも本当は分かっているはずです。入社後にギャップを感じてすぐに辞めてしまった場合、本人にも会社にもデメリットしかないということを。
本人は何より悔しいでしょう。「なぜ、そういう情報を入社前に教えてくれなかったのだ」と。事前に「〇〇について気になるので教えてください」と質問していたら、なおさらでしょう。履歴書には「〇〇社 4月入社 5月退社」というように“傷”を付けてしまいます。
会社にとっても「入社者がすぐに辞めた」という事実はマイナスでしかありません。事前に分かっていれば、他の適した候補者を採用し入社してもらうこともできたでしょう。二重の損失です。どこかの部署が欠員となり、再募集をかけなければなりません。
もう1つの原因は、採用する側が自社のことをよく知っているつもりで、実はよく分かっていないというものです。
つまり、内定者に対して入社後のギャップが極力ないように「入社日までに伝えるべき情報」をきちんと整理できていないのです。
前者の原因については、採用担当者とその上司に考え直していただくしかありません。何人入社させたかも大事ですが、そこから何人が辞めずに残ったかのほうがより大事なのですから。
3 「入社日までに伝えるべき情報」を、5×3のマトリクスで整理する
後者の原因を解決するポイントは、改めて内定者、あるいは応募者、採用候補者に対して「入社日までに伝えるべき情報」を整理することです。次の5×3のマトリクスで情報を網羅してみることをお勧めします。
【縦軸の項目】
1)企業理念(目的・価値観)・ビジョンなど…各々の内容および社内での共有度
2)会社情報…基本情報(売上・利益・従業員数の推移、拠点など)/歴史沿革のポイント/事業内容と業績・比率、業界でのポジション、強みなど
3)仕事情報…配属可能性/仕事内容/勤務地/勤務日と時間および残業/教育/異動/キャリアステップなど
4)待遇情報…入社時と将来の給与・年収・諸手当・昇給賞与・報償制度/人事評価制度/休日休暇/福利厚生など
5)企業文化、職場環境…特徴キーワード、具体的エピソード、社外・業界でのイメージなど
【横軸の項目】
A.一般に+(プラス)情報…ほぼ万人にとってプラスと思える情報
B. [〇〇な人]に+(プラス)情報…人によってはマイナスだが、〇〇な人ならプラスに感じてくれそうな情報
C.一般に-(マイナス)情報…ほぼ万人にとってマイナスと思える情報
縦軸の5項目は分かりやすいと思いますので、横軸のほうを補足しましょう。少し「社員を採ってもすぐに辞めてしまう」ではなく、「そもそも採れない」の解決策の話になってしまいますが。
A.は、ふだん自社の強みとして前面に打ち出しているものでよいのですが、他にも例えば
例)毎週2回まで当日申請でリモートワークできる制度あり など
小さなことと思えても、できる限りたくさんピックアップしましょう。A.の情報は全て採用時の武器になります。小さくても独自だったり、量があったりすれば勝ちきれるのです。
B.の例を挙げてみましょう。
例)企業相手の仕事(いわゆるto B)で一般に分かりにくい →一般顧客ではなくプロ相手の仕事がしたい人には成長を感じられて楽しい職場
例)休日が土日ではない →平日休みたい人にはプラス(旅行好きなど)。加えて例えば「イベントが土日の際は〇回まで優先的に他の曜日と交替できる制度あり」だとお子様など家族のイベントや推し活時にも対応できてデメリットが軽減される
例)古い業界 →会社としては業界を改革したいと思っていて、同志を探している
B.ではどれだけプラスに感じてくれる「〇〇な人」をイメージできるかが重要です。「こんな事実を伝えたらみんな他社に行ってしまう」と考えないことです。どう伝えようとマイナスに感じる人は他社に行きます。けれどプラスに感じる人にとってはA.以上に「好きな人は好き」と引きつける可能性が高いのがB.の情報です。
最後にC.の例を挙げますが、ほぼ万人にとってマイナスである以上、伝えてプラスに感じてもらうことは無理としても、ゼロに近づける努力をするべきです。以下の→部分のようにできる限りマイナスをひっくり返せるかもしれない事実を拾ってみてください。
例)初任給が安い →平均年齢が若く昇進は早い、課長の年収は悪くない
例)三交替制で生活が不規則 →慣れれば意外と便利、管理職以上は時間固定勤務
例)急対応が多く海外旅行など無理 →複数担当制を試験的に導入中、既に海外旅行経験者もいる
細かすぎると思える内容でも、入社後にギャップを感じて退職につながりそうな項目は丁寧に拾ってみてください。同時にB.やC.に当たる情報については、プラスに感じてくれる「〇〇な人」をイメージしたり、あまりマイナスに感じないですむトークを用意したりしましょう。
なお、過去にすぐに退職した人の理由が分かれば、それに関わる情報も必ず入れておきましょう。同じような人を二度と生まないために。
4 全て伝えるにしても、どの情報をいつ伝えるかのタイミングは重要!
採用担当者でC.情報を先に伝える人はいないでしょう。募集時に伝えるべきはA.情報ないしはB.情報です。
A.情報を1つ掲げたくらいでは大手企業、人気企業にはかなわないかもしれませんが、独自色のあるA.情報やたくさんのA.情報なら戦えるかもしれません。腹をくくってB.情報にこだわって伝えれば「好きな人は好き」という人材がSNSなどを通じて集まってくれる可能性があります。
また、仕事内容への悪いイメージが原因でそもそも人が集まらないという業界・業種の会社へのアドバイスとしては、入社までに最終的に仕事内容を見せる前に、仕事の前提となる“高次”の情報提供から入ることをお勧めします。
例えば、1)の掲げている企業理念への熱い思いや、2)の会社情報で社会からいかに強く期待され感謝されている会社であるか、あるいはその歴史といった情報です。それらの情報があるかないかで、仕事内容は同じでも全く違った見え方になるからです。
そろそろ「社員を採ってもすぐに辞めてしまう」話のほうに戻しましょう。
ここで天秤(てんびん)ばかりをイメージしてみてください。就職希望者は候補とした会社ごとにこの天秤ばかりを持っています。片方の皿がプラス情報、反対がマイナス情報です。
本人は候補とした各社を回るたびに、その天秤ばかりの左右に新たに知った情報を乗せていきます。ささいなように見えて本人にとっては重い情報もあれば、重要そうに見えて本人にとっては軽い情報もあります。そして、最終的に自分を選んでくれた会社の中で、プラスのほうに一番傾いた会社を選ぶのです。
ところが最終的に選んだ会社から内定をもらい、入社したところが知らされていなかったマイナス情報が飛び込んできたらどうでしょう。たくさんの天秤ばかりを並べ、迷いながら時間をかけて自分が信じた1つを選んだだけにショックは大きい。
そのショック度とマイナス情報の程度によっては、天秤ばかりはマイナス側に完全に傾いてしまい、彼らは退職を決意するのです。
ではどうすればよいか。簡単に言えば、出会いから入社までの間に「入社日までに伝えるべき情報」を全て伝えつつ、天秤ばかりをなるべくマイナス側に傾かせないようにすることです。プラス情報を先に伝えておいて、マイナス情報を小出しにし、マイナス側に傾き過ぎないようにするのです。
採用プロセスにおいて、候補者一人ひとりの自社用天秤ばかりの現状は、頻繁に声をかけたり、相手の表情を確認したりしながら、次の情報を選んで乗せるしかありません。
本人は就職活動中に自社だけでなく、他社とも日々接触しています。自社の天秤ばかりの状態は、他社で得られた情報と比較されることでも傾きが変わります(マイナス側だけでなく、ラッキーにもプラス側に傾くこともあります)。
候補者一人ひとりの天秤ばかりを頻繁にいちいち確認することなど面倒に思えるかもしれません。が、とりわけ中小企業で採用に成功している会社はそこまで丁寧に対応しているのです。
とはいえ、伝えるべき大きなマイナス情報が残っているときはどうすればいいのでしょうか。まず、対策を考えましょう。現時点でできていないことでも、トップが何とかしたいと真剣に考えているのであれば(できればいつまでにかを約束)、それを説明することで説得できるかもしれません。
そうして、プラス側の傾きを維持しつつ、マイナス情報も丁寧に伝えていくしかないのです。本人のマイナスの傾きが大きくなってしまうようなら、残っているA.やB.の情報を順次投入しましょう。
それでも傾きが戻らず他社に行ってしまうのであれば、最後は諦めるしかありません。残念ながらそれが現在の貴社の採用力です。今後もっと採用力を上げていく努力をすればいいでしょう。
すでにお分かりと思いますが、「入社日までに伝えるべき情報」を全て伝えるにしても、どの情報をいつ伝えるかのタイミングはとても重要!なのです。
5 伝えるべき情報を、全て伝えきれているかチェックする
5×3のマトリクスに整理した情報は、基本的には全てを、内定者全員に入社までに伝えましょう。
採用実務を担当した人なら分かると思いますが、どの内定者や採用候補者にどの情報を伝えているのか、あるいは伝えていないのかを把握しておくことは大変です。ですが、そこは5×3の一覧表を意識しつつ、丁寧にチェックしていくしかありません。
全項目をチェックしていくのは厳しいですが、多くの退職者の退職理由に関係していると思われる重要情報については、伝え漏らしてはいけません。相手の志向や価値観などを見極めながら、個々に適したタイミングを判断して伝えましょう。
「これについて伝えておくね」と話して、仮に本人が他の社員や周囲からすでに同じ情報を得ていたのであれば、「そう、で、どう思った?」と本人の受け止め方を確認すればいいでしょう。「全然気になりません」という人もいれば、「早く聞いていたら他社に変えていました」という人もいます。
互いの貴重な時間を無駄にしないためにも、タイミングとともに全ての伝えるべき情報を伝えきれているかのチェックに努めてください。とりわけ外してはいけない情報については赤字にするなど注意しておきましょう。
6 入社後のギャップが少なければ少ないほど、人は辞めない
入社までにかかる時間は、採用する側にとってもそうですが、採用される側にとっても膨大です。それだけの時間をかけて、実に多くの候補の中から、自分の行きたい会社を絞り込んできたわけです。
最後に決めた会社に入社して、思っていたこととのギャップさえなければ辞めたくなるわけがありません。なぜなら自分で描いた中で一番の理想の職場であるはずだからです。
もちろん、いくら伝えるべき情報を、5×3のマトリクスで整理してタイミングよく伝えきれたとしても、本人の入社後のギャップを100%埋めることは不可能です。
理由の1つ目は、情報伝達が完璧なケースはまずないということ。人はそれぞれ背景や個性も異なり、こちらが意図したことと相手の情報の受け取り方がずれることは当たり前にあるからです。
「この点は内定する前に話したよね」「えっ? そうでしたっけ。記憶になくて今びっくりしているのですが……」といった会話は珍しくありません。担当者はできる限り内定者の記憶に残るようなコミュニケーションを心がけましょう。
理由の2つ目は、たとえ本人の入社後のギャップがゼロに近かったとしても、配属された職場の状況は個々に異なるかもしれないということ。
職種別採用ではない場合、配属された仕事内容と本人のイメージにギャップが生まれることもあるでしょう。また制度や社風なども、月日を経て内定時から変わっている場合もあります。
これらについても、入社後に採用担当者や配属された職場のメンバーおよび上司が本人に声をかけ続ければ、理解を得られ、退職防止につなげることができます。
第2回から今回第5回まで、『人が辞めない会社』に変わるためには[採用]という入り口が肝心ということでお話ししてきました。
人材獲得の入り口である採用においては、自社を「必要以上に大きく見せることなく」、求める人材像として「会社が“目指すこと”、“大切にしたいこと”を明示」してみましょう。ネットやSNSの力で、あなたの会社が本当に“採用したい人材”にアプローチすることができます。
そうして内定までこぎつけた人材に、「入社日までに伝えるべき情報」を整理して全て伝え、入社後のギャップが少なければ少ないほど、人は辞めないのです。
第5回を最後までお読みいただきありがとうございました。次回からはしばらく[仕事]についてのヒントをご紹介していきます。
毎回ご紹介するヒントを参考にしながら、自社を退職する一人ひとりの「辞める理由」と、働いている一人ひとりの「辞めない理由」を丁寧に拾ってみましょう。見えてきた自社ならではの“課題”を解消し“強み”を活かせれば、『人が辞めない会社』へと変われるはずです。
<ご質問を承ります>
ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで
Mailto:brightinfo@brightside.co.jp
https://www.brightside.co.jp/
※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。
『新スペシャリストになろう!』
https://amzn.asia/d/e8GZwTB
『なぜ社長の話はわかりにくいのか』
https://amzn.asia/d/8YUKdlx
以上(2025年11月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/
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11/8(土)、11/9(日)徳島・香川「トモニマルシェ」開催!
11/8(土)、11/9(日)に東京交通会館1Fピロティ(JR有楽町駅前)にて徳島・香川「トモニマルシェ」を開催いたします!
また、11/3(月)~11/9(日)にトモニ市場では、「トモニ市場感謝祭」も行われます!
11/8(土)の13時~と15時~には、徳島県マスコットキャラクター「すだちくん」がトモニ市場店頭に登場予定です。
ご家族・ご友人をお誘い合わせの上、ぜひお越しください!
【開催概要】
- 日時 2025年11月8日(土)11:00~17:30、2025年11月9日(日)11:00~17:30
- 場所 東京交通会館1Fピロティ(JR有楽町駅前)東京都千代田区有楽町2丁目10番1号
- 主催 東京交通会館(交通会館マルシェ事務局)
- 共催 トモニホールディングス、徳島大正銀行、香川銀行

当行及びとくぎんトモニリンクアップ株式会社と鳴門市が「ゼロカーボンシティの実現に向けた連携協定」を締結しました!
当行及びとくぎんトモニリンクアップ株式会社は、鳴門市と「ゼロカーボンシティの実現に向けた連携協定」を令和7年9月29日に締結いたしました。
3者は、脱炭素経営の普及啓発や事業者支援を通じて、鳴門市の温室効果ガス排出量実質ゼロの実現に向けて連携して取り組みます。
(1)カーボンニュートラルに関する普及啓発に関すること
(2)事業者間の情報・意見交換の場づくりに関すること
(3)脱炭素経営の取組を進める事業者の支援に関すること
(4)その他、鳴門市のゼロカーボンシティの実現に必要なこと

以上(2025年10月作成)
【ハラスメント対策】行為者の処分と被害者のケア 事実が確認できなくても対応する!
目次
1 行為者の処分と被害者のケア
事実確認の結果、ハラスメントがあったことが明らかになったら、すぐに行為者の処分と被害者のケアをします。
- 行為者の処分の基本は、行為の内容と懲戒処分の重さを釣り合わせること
- 被害者のケアの基本は、被害者がつらくないよう、行為者と被害者とを引き離す
です。以降で詳しく見ていきましょう。
2 行為者の処分:行為の内容と処分の重さを釣り合わせる
まずは行為者の処分について見ていきましょう。懲戒処分を検討する場合、その根拠となるのが就業規則です。一般的には、ハラスメントを就業規則の「服務規律違反」に当たるとして、「戒告(口頭注意)、けん責(始末書の提出)、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇」などの懲戒処分を適用します。ただ、
行為者のやったことに対して重すぎる懲戒処分は無効になる
ので、どの処分を適用するかは、次の事項などを踏まえて慎重に判断する必要があります。
1.行為の悪質性・重大性
言動の内容・質や頻度・量を考慮します。犯罪に当たるようなハラスメントをした場合などは、情状が悪くなります。
2.結果(被害)の重大性
被害者に与えた身体や精神への被害(苦痛)の大きさなどを考慮します。ハラスメントが原因で被害者が休職や退職をした場合などは、情状が悪くなります。
3.懲罰歴や指導・注意歴
過去に懲罰歴や指導・注意歴がない状態で、反省や改善の機会を与えないまま厳しい懲戒処分を科すと、懲戒権の濫用として処分が無効となることがあります。
次章でハラスメントに関する懲戒処分の事例を紹介しますが、実際に処分の内容を検討する際は、事前に弁護士などの専門家に相談するのが無難です。
3 事例に見るハラスメントの懲戒処分
1)懲戒解雇の事例
犯罪になるようなハラスメントについては、懲戒解雇が認められやすい傾向にあります。例えば、嫌がる女性社員に無理やりキスをするなど、強制わいせつ罪(現行法では、不同意わいせつ罪)に当たり得る行為をした部長について、懲戒解雇が認められた裁判例があります(東京地裁平成22年12月27日判決)。
逆に犯罪に当たらないようなハラスメントの場合、懲戒解雇が認められにくくなります。例えば、慰安旅行の宴会で女性社員の肩を抱いたり、「胸が大きいね、何カップかな」などと発言したりした支店長への懲戒解雇が有効かを争った裁判例があります。裁判では、ハラスメント自体は悪質と判断されましたが、行為者の会社への貢献、反省の程度、指導・注意歴がないなどの事情から、懲戒解雇は認められませんでした(東京地裁平成21年4月24日判決)。
2)出勤停止の事例
女性の派遣社員に対し、「もうそんな歳になったん。結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで」などのセクハラ発言を、1年余りにわたって繰り返した課長代理について、10日間の出勤停止処分が有効かを争った裁判例があります(大阪高裁平成26年3月28日判決、最高裁第一小平成27年2月26日判決)。この裁判では、大阪高裁と最高裁とで意見が分かれました。
大阪高裁では、被害者がはっきりと拒否しなかったため、課長代理が自分の発言を許されていると勘違いしたこと、会社から警告や注意を受けなかったことなどから、出勤停止処分は認められませんでした。
一方、最高裁では、課長代理は部下を指導する立場にあることや、セクハラの被害者は職場の人間関係が悪くなることなどを心配して行為を拒否できないケースが多いこと、この事案のセクハラ発言の多くが周囲に人のいない状況で行われ、会社が警告や注意をする機会がなかったことなどから、出勤停止処分が認められました。
3)降格の事例
成果の低い部下に「(一定の成績が上がらなければ)会社を辞めると一筆書け」「会社に泣きついて居座りたい気持ちは分かるが迷惑なんだ」などの発言を繰り返し、退職を迫った役員補佐について、降格処分が認められた裁判例があります(東京地裁平成27年8月7日判決)。
4 被害者のケア:行為者と被害者とを引き離す
ハラスメントの事実が確認できても、行為者が自主退職したり、解雇されたりするとは限りません。行為者が会社に残る場合、被害者がつらくないよう、行為者と被害者とを引き離すことが重要です。一般的な方法は「配置転換」ですが、この際、
被害者ではなく、行為者を配置転換することがポイント
です。被害者を配置転換してしまうと、被害者はハラスメントだけではなく、仕事の内容についても被害を受けることになりかねません。「せっかく勇気を出して相談をしたのに、不利益な取り扱いを受けた!」と被害者が会社を訴える恐れもあります。
中小企業では、社員数の関係で配置転換が難しいケースがありますが、その場合、席替えや業務上の関わりをなくすなどして、行為者と被害者の接点を減らします。また、定期的に状況を確認し、被害者が望むなら、会社が行為者と被害者との関係を修復するように努めます。
なお、被害者が「行為者の処分を社内に公表してほしい」と求めてきても、それは行為者のプライバシー情報なので公表できません。
5 ハラスメントの事実が確認できなかったら?
ハラスメントは、
被害者が主張する事実が確認できない、確認できた事実がハラスメントであると判断できないなど、いわゆる「グレーゾーン」のケースが多い
です。とはいえ、簡単に対応を打ち切ると、
- 行為者は「自分は正しい」と思い込み、また同じような言動を繰り返す
- 被害者は「自分はないがしろにされた」と会社を信用しなくなり、外部に相談する
といったように事態が悪化します。
そこで、被害者には、
事実確認の調査や調査結果を丁寧に説明し、会社が真剣に対応したことを伝える
ようにします。被害者が調査結果に納得できない場合、再調査を求められることがありますが、そのときはどのような点に不満があるのかなど、被害者の意見を丁寧に聞きましょう。
また、行為者には、
今回はハラスメントに当たらないと判断したけれど、次は違う判断になるかもしれないから、言動を改めたほうがいい
などと注意・指導します。
とにかく、
ハラスメントの事実が確認できなくても、行為者と被害者への対応は必要である
ことを押さえておきましょう。
以上(2025年10月更新)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)
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