ファクタリング活用の検討〜 売掛金の回収、与信管理など資金繰りの改善につながるって本当?

書いてあること

  • 主な読者:売掛金の早期回収や資金調達をしたい、与信管理をしたい経営者
  • 課題:資金繰りに悩みがあり、早く資金調達したい。取引先の与信管理も充実させたい
  • 解決策:売掛金を回収したい場合は買取型のファクタリング、取引先の与信管理を充実させたい場合は保証型のファクタリングを活用する

1 資金繰りの改善につながる「ファクタリング」のご提案

ファクタリングとは、

ファクター(ファクタリングのサービス提供企業)が、債権者から売上債権(請求書)を買い取ったり、債務者の代金支払いを保証したりするサービス

で、次のような問題の解決につながります。

  • 早期に売掛金を回収したい
  • 取引が1社に集中しており、その取引先が倒産した際のリスクが大きい
  • 取引先から担保を取れない
  • 与信管理が十分ではない(与信管理をアウトソーシングしたい)
  • 手形の発行・受取などに関する業務を効率化したい

特に、売上債権を買い取る「買取型のファクタリング」(内容は後述します)は、売上債権を早期に現金化できるので、資金繰りの改善に役立ちます。さまざまな経済情勢の変化が経営環境に大きな影響を及ぼす現在では、ファクタリングの活用を検討してみるのも一策だと思います。現在では、オンライン型のファクタリングを実現するFinTech企業のサービスもあり、より便利かつスピーディーに売上債権を現金化できるようになっているので、お勧めです。

また、資金繰りに困っていない企業にとっても、与信管理をアウトソーシングして新規取引先との取引をスピーディーにスタートするためにファクタリングを検討するのもよいでしょう。

この記事では、経営者の方々にファクタリングの活用をご提案する第一歩として、一般的に知られているファクタリングの仕組みや種類をご紹介します。ファクターによってサービスの内容や仕組みなどが異なる点にご留意ください。

2 ファクタリングのメリットと注意点

ファクタリングの種類にはさまざまな分類方法がありますが、引き受け方法という面から見ると、次の2つに分けられます。

  • 買取型:ファクターが、債権者から売上債権(請求書)を買い取るファクタリング
  • 保証型:ファクターが、債務者の代金支払いを保証するファクタリング

買取型・保証型のファクタリングには、それぞれ次のようなメリットがあります。ファクタリングの活用を検討する際に重要な点だと思いますので、ぜひご確認ください。

【買取型】

  • 売上債権を早期に現金化できる
  • 担保、保証人が不要である
  • 取引先が倒産しても回収する義務を負わない

【保証型】

  • 担保、保証人が不要である
  • ファクターから取引先の信用情報が提供される
  • 新規取引先との取引開始時のリスクヘッジにつながる

ファクタリングは銀行などからお金を借りる「融資」とは違いますので、担保や保証人は必要ありません。また、貸借対照表にも影響はありません(「借入金」にはなりません)。資金調達の選択肢として、また回収リスクの負担を軽減する保険のような存在として活用できます。

一方、ファクタリングには注意点が2つあります。1つ目は、手数料です。一般的に融資の利率などに比べて手数料は高くなる傾向にあります。2つ目は、取引先への対応です。取引先にファクタリングの活用を知られると、自社の経営状況の悪化を疑われる恐れがあります。

3 ファクタリングの仕組みをざっくりご紹介

買取型・保証型のファクタリングの仕組みは、次の通りです(一般的な流れです)。

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図表1で紹介しているのは、債権者・債務者・ファクターの「3社間によるファクタリング」です。

この他に、債権者・ファクターの「2社間によるファクタリング」があります。この場合、基本的には債務者に知られることなくファクタリングを活用できますが、3社間に比べて手数料が高くなることが多いようです。

4 その他のファクタリングの種類

これまで見てきた他、ファクタリングは決済方法、申込み方法、対象となる取引の内容などさまざまな面で分類されます。その他の主な種類の一例は次の通りです。

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1)一括ファクタリング

金融機関などのファクターが債務者(支払企業側)の決済を代行するサービスです。債権者が保有する売上債権をファクターに一括して譲渡するため、債務者は支払業務の効率化を図れます。

また、一部のファクターでは、電子記録債権(でんさい)を一括ファクタリングの仕組みに組み込んだサービスを提供しています。電子記録債権は、手形など紙媒体で管理されてきた債権を電子化したものです。

2)オンラインファクタリング

申込みから入金までなど一連の手続きがオンライン上で完結するサービスです。対面での手続きや書類の郵送などは不要です(一部書類の郵送などが必要な場合もあります)。種類として多いのは買取型のファクタリングです。

買取型の場合、オンライン上で決算書や売上債権の請求書などをアップロードし、審査を受けます。中には即日対応をうたっているファクターもあり、早期にサービスを活用することができます。

3)国際ファクタリング

輸出入の貿易にファクタリングを活用するサービスです。国際ファクタリングは、債権者・債務者・ファクターに加えて、ファクターの提携先である海外のファクターの4社間で行われます。海外のファクターが信用調査を行った上で、債務者の信用リスクを保証します。

輸出入を行う際の決済には従来、L/C(Letter of Credit、信用状)が使われてきましたが、国際ファクタリングを活用することで、手間とコストがかかるL/Cの手続きが不要になるなどのメリットがあります。

以上(2023年11月更新)

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画像:MQ-Illustrations-Adobe Stock

勤務間インターバル制度について

勤務間インターバル制度は、2018年の6月に制定された「働き方改革関連法」で「労働時間等設定改善法」(労働時間等の改善に関する特別措置法)が改正され、2019年4月1日より会社の努力義務と定められました。

勤務間インターバル制度の目的は、労働者の健康維持をはじめ、ワークライフバランスの確保など多様な働き方を促進するためのものです。労働者が働く上で、十分な睡眠時間や生活の時間を確保できないままでいると、心身ともに大きな負荷がかかります。こうした負担を軽減し、労働者の「働きすぎ」を抑止するものとして、期待される制度です。

本稿では、勤務間インターバル制度の概要と企業の導入状況について、ご紹介して参ります。

1 勤務間インターバル制度

「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保するものです。

勤務間インターバル制度のイメージ

【例】11時間の休息時間を確保するために始業時刻を後ろ倒しにする場合

始業時間を後ろ倒しにする場合のイメージ

(厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」)

制度導入に際してのポイントは、「休息時間の設定」と「休息時間が翌日の所定労働時間と重複する際の対応」となります。

【休息時間の設定】

休息時間の設定目安は、9時間~11時間(国が推奨)。

【休息時間が翌日の所定労働時間と重複する場合】

休息時間の確保のために、下記のいずれかの対応を行う。
① 始業時刻の繰り下げ。
② 重複する時間を働いたものとする。

2 企業の導入状況

勤務間インターバル制度の導入状況別の企業割合をみると、「導入している」が6.0%(令和4年調査5.8%)、「導入を予定又は検討している」が11.8%(同12.7%)、「導入予定はなく、検討もしていない」が 81.5%(同80.4%)となっています。

勤務間インターバル制度の導入状況別企業割合及び1企業平均間隔時間

(厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」)

3 さいごに

勤務間インターバル制度を導入する際は、会社の就業規則に規定する必要があります。

勤務間インターバル制度の導入は、労働者の健康維持やワークライフバランスの確保に留まらず、労働生産性の向上や雇用維持にも繋がります。会社の現状を把握した上で、労働環境に配慮した制度導入を考えてみてはいかがでしょうか。

※本内容は2023年11月9日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

勤務間インターバル制度について

勤務間インターバル制度は、2018年の6月に制定された「働き方改革関連法」で「労働時間等設定改善法」(労働時間等の改善に関する特別措置法)が改正され、2019年4月1日より会社の努力義務と定められました。

勤務間インターバル制度の目的は、労働者の健康維持をはじめ、ワークライフバランスの確保など多様な働き方を促進するためのものです。労働者が働く上で、十分な睡眠時間や生活の時間を確保できないままでいると、心身ともに大きな負荷がかかります。こうした負担を軽減し、労働者の「働きすぎ」を抑止するものとして、期待される制度です。

本稿では、勤務間インターバル制度の概要と企業の導入状況について、ご紹介して参ります。

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うちの広告はだまし打ち? ステマ規制で変わらざるを得ない広告の内容

書いてあること

  • 主な読者:景品表示法の「ステマ規制」について知りたい経営者や営業担当者
  • 課題:ステマをしないためには、どう対策すればいい?
  • 解決策:景品表示法のルールを理解し、「これは広告です」とはっきり消費者に伝える

1 消費者を装った「ステマ」はNG!

2023年10月から、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)のステマ規制が始まりました。この法律は、商品・サービスの品質、内容、価格などが消費者に正しく伝わるよう、紛らわしい表示を規制するもので、今回規制の対象になったステマ(ステルスマーケティング)とは、

広告である旨を隠して商品・サービスを宣伝すること

です。例えば、

  • 社員が一般の消費者を装い、自社の商品について「この商品は素晴らしい!」とSNSで投稿する
  • 会社が社外のインフルエンサーに、「会社からの依頼であることを隠して商品を宣伝してほしい」と依頼する

などが典型的なステマの例です。

広告だと分かっていれば、消費者はある程度の誇張が含まれていると考え、それを含めて合理的な判断ができるはずですが、それを隠されると、広告を第三者の感想であると誤解し、だまされてしまいます。ここが問題とされ、ステマが規制されたわけです。「ウチはステマなんてやらないから大丈夫」という経営者も、

会社側に悪意がなくてもステマが成立するケースがある上に、2023年9月以前に作成した広告も規制の対象に含まれるので注意が必要

です。これから自社の広告を見直す場合、まず基本として次のポイントを押さえましょう。

  • 「ステマとは何か」を景品表示法に沿って押さえる
  • 「広告(事業者の表示)とは何か」を正しく理解する
  • 「これは広告です」とはっきり消費者に伝える
  • 「関係者がステマ規制に対応できているか」を確認する

2 「ステマとは何か」を景品表示法に沿って押さえる

日ごろ、消費者はさまざまな「表示」を見て買い物をします。例えば、商品パッケージ、カタログ、テレビCM、セールストーク、SNSの投稿など……これらは全て表示です。表示の仕方に問題があると、消費者は安心して商品・サービスを選べません。

そこで、景品表示法では、消費者の自主的かつ合理的な選択を妨げないよう、次の3つの表示を規制しています。ステマは2023年10月から、3.の「指定告示」に追加されました。

  • 優良誤認表示:内容(品質、規格など)が、実際よりも著しく優良だと誤認させる表示
  • 有利誤認表示:取引条件(価格など)が、実際よりも著しく有利だと誤認させる表示
  • 指定告示:1.と2.以外で、消費者に誤認される恐れがある表示(内閣総理大臣が指定)

消費者庁では、ステマを

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」と定義

しています。「事業者の表示」とは、会社が消費者に対し、商品・サービスの情報を知らせる表示全般、つまり広告のことです。これに沿って上の定義を言い換えると、

ステマとは「広告に該当し、なおかつ広告であることが消費者に伝わらない表示」

ということになります。図表1のように捉えると分かりやすいでしょう。

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ステマを疑われる広告が発見された場合、消費者庁の調査を経て、違法かどうかが判断されます。違法と判断された場合、会社(広告主)に対し、次の流れでペナルティが科せられます。なお、前述した通り、2023年9月以前に作成された広告も、同年10月以後に消費者に表示されていれば、ステマ規制の対象になります。

  • まず会社に対し、「違反した表示の差し止め」などの措置命令が下される
  • 措置命令に従わない場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象になる

3 「広告(事業者の表示)とは何か」を正しく理解する

自社の広告が知らないうちにステマに該当していないかを確認するには、まず「広告(事業者の表示)とは何か」を正しく理解する必要があります。消費者庁では図表2の通り、「広告と判断されるもの」が大きく4つに区分され、具体例付きで示されています。

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例えば、営業担当者が個人のSNSアカウントを使い、一般の消費者を装って自社商品のポジティブな投稿をするケースなどは、営業担当者の立場などにもよりますが、「2.第三者になりすまして行う表示」に該当します。

会社がインフルエンサーに、有償で「ウチの商品に関するポジティブな投稿をしてほしい」と依頼するケースなどは、「3.第三者に行わせる表示(明示的な依頼・指示あり)」に該当します。また、直接口に出さなくても、忖度(そんたく)してもらうことを期待して無償で商品を提供するなどした場合、「4.第三者に行わせる表示(明示的な依頼・指示なし)」になり得ます。

ただし、3.と4.の「第三者に行わせる表示」については例外があり、

  • 第三者があくまで自分の意思に基づいてポジティブな投稿をしたと認められる場合
  • 会社がポジティブな投稿だけでなく、ネガティブな投稿も公平に拾って消費者に発信している場合

などは、「事業者の表示には該当しない」とされています。

4 「これは広告です」とはっきり消費者に伝える

何が広告に該当するかを理解したら、次は「広告である旨が消費者に伝わる表示になっているか」を確認します。こちらも図表3の通り、消費者庁から「事業者の表示であることが明瞭なもの・不明瞭なもの」の具体例が示されています。

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基本的な考え方は、

  • 「これは広告です」と明言すれば、ステマになる可能性は低い
  • 明言しない場合、その分ステマと判断されるリスクが高まる

です。「あまり営業色を出したくない」と考えて控えめな広告を打つケースもあるかもしれませんが、広告である旨が消費者に伝わらないのはNGです。

特に、「表示が分かりにくい(広告の文字が小さい、色が薄い、表示場所が目立たないなど)」といったケースは、会社側に悪意がなくても起こり得る問題なので、自社の広告をいま一度見直しておきましょう。繰り返しになりますが、

2023年9月以前に作成された広告もステマ規制の対象なので、現在世に出ている広告は全てチェック

する必要があります。

5 「関係者がステマ規制に対応できているか」を確認する

経営者がステマ規制について理解していても、実際に広告に携わる関係者が正しく対応できていなければ意味がありません。ステマ規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する会社(広告主)ですが、実際に広告に携わる関係者が正しく対応しなければ、経営者が知らないうちにステマ規制に抵触してしまう恐れがあります。

実際に広告に携わる関係者とは、「会社の営業担当者」「インフルエンサー」「広告代理店」などです。例えば、次のような内容についてチェックしておきましょう。

1.営業担当者への教育は十分か、社内ルールは明確か

営業担当者がSNSなどで、一般の消費者を装って自社の商品を称賛したり、競合他社の商品を批判したりすると、ステマ規制に抵触する恐れがあります。営業担当者には、こうした行為がステマに該当することを教育した上で、「自社の商品・サービスをSNSなどで紹介する場合、その文章や動画の中で社員であることを必ず明かさないといけない」など、社内ルールを明確にした上で厳守させましょう。

2.インフルエンサーに広告を依頼する場合、表示のルールを共有できているか

インフルエンサーに広告を依頼する場合、広告に関する表示のルールを事前に会社とインフルエンサーとの間で共有しておきましょう。例えば、

  • YouTubeの場合、動画内に「プロモーションを含みます」と表示してもらう
  • Instagramの場合、ハッシュタグの数を決めた上で、「広告」「PR」などのタグを必ず入れてもらう

といった対応が考えられます。景品表示法に沿った表示のルールになっていれば、基本的にステマの心配はありません。

3.広告運用が広告代理店任せになっていないか

会社によっては、広告運用の大部分を広告代理店に任せているケースもあるでしょう。ですが、ステマを指示したのが広告代理店であっても、処罰の対象となるのは会社(広告主)で、「広告代理店が勝手にステマをした」という言い訳は通用しません。広告代理店任せにせず、広告の内容は必ず自社でチェックするなど、管理体制を整えましょう。

以上(2023年12月)
(監修 弁護士 八幡優里)

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画像:metamorworks-shutterstock

不動産の保有・売却・賃貸時それぞれにかかる税金とは?

書いてあること

  • 主な読者:活用していない不動産の取り扱いに迷っている経営者
  • 課題:不動産を保有するだけで固定資産税がかかる。地域によっては都市計画税もかかる
  • 解決策:目先の資金繰りだけではなく、売却や賃貸した際の納税額を確認して意思決定する

1 その不動産は、自社にとって本当に必要ですか?

不動産は保有しているだけでは収益を生みません。むしろ税金や補強費用・防犯費用など、キャッシュが出ていくばかりです。もし、資金繰りに窮していたり、将来に備えたりしたい場合、保有している不動産の資金化を検討したいところでしょう。例えば、かつて投資用に購入したが塩漬け状態になっている不動産を賃貸物件にしたり、売却したりすることで資金が確保できます。

注意が必要なのは、不動産の売却では多額の利益(または損失)が出ることがあり、

法人税・住民税・事業税(以下「法人税等」)の納税額に大きな影響を及ぼす

ことです。また、土地の売却は「消費税の非課税売上」に該当しますが、非課税売上が大きくなると課税売上割合(仮受消費税と相殺できる仮払消費税の金額を決める割合)が下がり、

通常の決算より消費税の納税額が増える

ことが多いです。

不動産を賃貸する場合も、賃貸から生じた利益については法人税等がかかるため、事前に納税額をシミュレーションしておくことが重要です。

2 保有しているだけでかかる税金とは

1)不動産の保有でかかるのは「固定資産税」と「都市計画税」

不動産保有時に課される税金は「固定資産税」と「都市計画税」です。

固定資産税とは、毎年1月1日時点で不動産(土地・建物)を保有している人に課せられる税金です。都市計画税は固定資産税に似た税金ですが、保有している不動産が市街化区域内(都市部など)にある場合に課される税金です。

固定資産税は確定申告を行う法人税などと異なり、賦課課税方式といって地方自治体が税額を計算して納税通知書と納付書が送られてきますので、その納付書を使って納付します。都市計画税も固定資産税と同様で、都市計画税が課される場合には、固定資産税と併せて納付することになります。

2)固定資産税と都市計画税の計算方法と特例

固定資産税と都市計画税の計算方法は同じです。課税標準(固定資産税評価額)に税率を掛けて計算します。なお、税率は地方自治体によって異なります。ここで紹介している税率は、標準税率(地方税法で定める通常の税率)です。

  • 固定資産税=課税標準(固定資産税評価額)×1.4%
  • 都市計画税=課税標準(固定資産税評価額)×0.3%

土地の固定資産税評価額は「公示地価」の70%程度になるように設定されています。公示地価とは、国土交通省が発表する全国の土地価格の基準値のことで、毎年3月に発表されます。家屋の固定資産税評価額は、家屋を再建築する場合にかかる費用と、その家屋の劣化状況を加味して決定され、おおむね建築費の50~70%程度の価格になります。

なお、住宅用地(土地)は、一戸当たりの広さによって受けられる固定資産税・都市計画税の特例(税率を掛ける前の金額である課税標準を減額する制度)があります。

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また、新築住宅(家屋)については、居住部分や床面積の割合によって受けられる固定資産税の特例(税額から直接差し引くことができる制度)があります。

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3 不動産を売却すると、どんな税金がかかる?

1)法人税・住民税・事業税

不動産を売却し、売却価格が帳簿価格を上回る場合(つまり利益が出た場合)、法人税等がかかります。不動産を売却して得た利益は、その利益単体で法人税等が課せられるのではなく、本業で得た利益(所得)と合算して課せられます。そのため、不動産を売却して利益を得たのに対し、本業が赤字の場合には、損益を通算して所得を計算することになります。不動産売却で赤字が出て本業が黒字の場合も同様に通算されます。

2)消費税

不動産取引のうち、土地部分は非課税取引に該当するので消費税は課されませんが、建物部分については消費税が課されます。そのため、建物部分の売却価格に応じた消費税を不動産の買い手から預かり、本業から生じた消費税と併せて申告・納付する必要があります。

3)印紙税

不動産を売買するときには契約書を作成しますが、この契約書には収入印紙を貼らなければなりません。この収入印紙の金額は、契約書に記載された契約金額に応じ、200円から48万円までになります。これは2024年3月31日までに作成された契約書に限られ、2024年4月1日以降に作成された契約書については金額が変わる可能性があります。

4 不動産を賃貸すると、どんな税金がかかる?

1)法人税・住民税・事業税

不動産を売却した場合と同様に、賃貸料収入については、本業で得た利益(所得)と合算して法人税等が課せられます。

2)消費税

不動産の賃貸のうち、「土地の貸付」「建物のうち居住用物件の貸付」は非課税取引に該当するので消費税は課されませんが、「建物のうち事業用物件の貸付」については消費税が課されます。そのため、事業用物件の賃貸料収入とともに消費税を借り手から預かり、本業から生じた消費税と併せて申告・納付する必要があります。

3)印紙税

不動産を賃貸するときには契約書を作成しますが、このうち「土地の貸付」については、契約書に収入印紙を貼らなければなりません(建物の貸付の場合、収入印紙は不要です)。この収入印紙の金額は、契約書に記載された契約金額に応じ、200円から60万円までとなります。

4)固定資産税・都市計画税

固定資産税・都市計画税は毎年1月1日時点で不動産(土地・建物)を保有している人に課せられる市町村税です。そのため、不動産を賃貸する場合、固定資産税・都市計画税は不動産を保有するオーナーが負担します。

以上(2023年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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【資金繰り】不確実な時代の資金繰りを安定させるポイントとは?

書いてあること

  • 主な読者:不確実性の高い時代において、資金繰り管理を強化したい経営者
  • 課題:資金繰り表を作成しておらず、売掛金の管理なども経理担当者に任せきり
  • 解決策:まず資金繰り表を作成する。また、経営者が資金繰りに積極的に関与する

1 適切な資金繰りはできていますか?

経営が行き詰まる最大の原因は資金ショートですから、

資金繰り表を作成し、適切な資金繰りを管理することでリスクを回避することが基本

です。物価高や国際情勢の不安定化などで経営の先行きが不透明さを増している現在、資金繰りがより重要になってきていることを、経営者は痛感していることでしょう。

資金繰り表は最低でも3カ月先、理想的には1年先まで作成しておきたいものです。また、一般的な資金繰り表は月次ですが、資金繰りがタイトな場合は、日次の資金繰り表(日繰り表)を作成します。また、資金繰り表はキャッシュ・フロー計算書と混同されがちですが、両者は、

  • 資金繰り表:将来のお金の流れを把握して経営のかじ取りに活かす内部資料であり、いわゆる直接法(主要な取引ごとに資金の増減を加減算する方法)で計算されることが多いです。
  • キャッシュ・フロー計算書:過去のお金の流れを社外に報告するための財務諸表でいわゆる間接法(損益計算書の利益から一定の項目を調整する方法)で計算されることが多いです。

といったように異なります。

この記事では、月次資金繰り表の例を見ながら、実際の作業やポイントを解説していきます。おさえるべき主なポイントは次の通りです。

  • 資金繰り表の記載内容を理解する
  • 予測と実績の差異を分析し、その後の資金繰りに活かす
  • 月末の必要現金を確保する
  • 資金繰りが悪化する原因を知る(売上の急拡大など)

2 月次資金繰り表のポイント

まずは、月次資金繰り表の例をご確認ください。どういったことが読み取れるでしょうか?

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1)前月繰越金

最初の月(上記の例では8月の100,000)の前月繰越金(1)は、

実際の現金残高を記入します。銀行口座や小口現金出納帳の合計額を確認

しましょう。それ以降の月は、前月の翌月繰越金(8)と同額が記入されるようにします。

2)営業収入と営業支出

営業収入の項目(2)には、

営業部門などから販売実績や販売見込みの情報を入手

して記入します。過去の銀行口座などの入金を観察することも、得意先の販売傾向の予測に役立ちます。販売見込みは可能な限り正確な予測を入手し利用することが理想的ですが、将来のシナリオを考えるうえで楽観・中庸・悲観の3つの数値を用意することもあります。担当者からの報告を反映するだけでなく、経営者としての経験則を活かして見極めるようにすることが大切です。すでに発生している売掛金・受取手形などの営業債権については、回収スケジュールに基づき資金繰り表に反映します。

営業支出の項目(3)には、

過去の銀行口座や小口現金出納帳の出金を基に記入

します。過去の出金内容から網羅的に支出項目を抽出できるため、銀行口座や小口現金出納帳の情報は重要です。すでに支払義務が生じている買掛金・支払手形などの営業債務については、支払スケジュールに基づき資金繰り表に反映します。なお、リモートワークなどによってオフィス家賃や通勤手当などの固定費が変わることもあるので、そのときの状況に合わせて精査していきます。

3)投資収入と投資支出

投資収入の項目(4)には、

設備投資計画、稟議書や取締役会議事録を基に、店舗閉鎖などによる重要な資産の売却情報を記入

します。

投資支出の項目(5)には、

設備投資計画、稟議書や取締役会議事録を基に、設備投資の購入情報を記入

します。

いずれも、取引の内容によっては見積額と実績が大きく乖離(かいり)することがあるため、可能な限り精度の高い情報を得るようにします。

4)財務収入と財務支出

財務収入の項目(6)には、

新規の借入れや増資の金額を記入

します。

財務支出の項目(7)には、

借入金の返済・利払いは、金銭消費貸借契約書などに添付されている返済予定表を基に、借入金の返済と利払いを記入

します。

3 差異分析こそノウハウの種

資金繰り表は、過去の実績を基に将来予測を作成します。そのため、

実績が判明した段階で予測と実績の差異を分析し、その後の資金繰り表の作成に活かす

ことが不可欠です。中小企業においては資金繰り表自体を作成していないこともあるかもしれませんが、経営者が資金繰りに積極的に関与することで、今まで知らなかった課題や取引先の状況変化のサインが見えてくることがあります。

例えば、いつもは期日通り行われていた取引先からの入金が遅れていた場合には、取引先の財務状況の悪化のサインかもしれません。このような小さなサインがあれば、将来考えられる営業収入への悪影響を、実際の資金繰り表に当てはめて調整していきましょう。

4 月末必要現金を増やして安全弁に

資金繰り表を作成したら、各月末残高(翌月繰越金)に注目します。資金ショートを防ぐためには、各月末残高(翌月繰越金)が月末必要現金を上回っていることが必須条件です。月末必要現金は、翌月上旬の支払合計額に一定のバッファーを見込んで決めるもので、通常は月売上の1~2カ月分程度の現金があることが望ましいといわれます。ただし、現在のような不確実性の高い時代には、重要な得意先の売掛金の回収が遅れた場合なども想定して、資金繰りに支障を来さないような現金を準備しておくことが目安になるでしょう。

5 資金繰り悪化の代表的なケース

1)赤字の継続

販売不振が続き、入金が減少する一方で、それに見合うだけの費用を減らすことができず出金が一定額のままの場合、赤字(損失)が継続します。その結果、会社の現金が減り続け、資金繰りが悪化していきます。

2)売上の急拡大

売上が急拡大した場合、それに合わせて資金も豊富になると考えがちです。これは中長期的には正しいですが、短期的には正しくないことがあります。なぜなら、入金と支払いのタイミングによっては支払額の方が多額となり、資金繰りが一時的に苦しくなることがあるからです。

例えば、新規取引先に商品を販売する場合、出荷の時点で売上は計上されますが、代金が入金されるまでには一定の期間がかかります。また、その商品を仕入れたり、配送したりするためのコストがかかっています。さらにいえば、新規獲得に関わる人件費などのコストもかかっています。以上から、売上が急拡大するときには資金繰りに注意する必要があります。

3)販売できないと見込まれる棚卸資産

棚卸資産は、原則として、得意先に引き渡されることで売上が計上され、その結果、入金につながります。しかし、棚卸資産として会社の手元にある間は、現金が棚卸資産に形を変えていると解釈できるため、棚卸資産を長く保有すると自由に使用できない現金が増え、資金繰りの悪化原因となり得ます。また、陳腐化や品質の低下により価値が低くなり、販売見込みがなくなった棚卸資産は、さらに資金繰りに悪影響を与えます。したがって、棚卸資産の保有期間や保有量を減らすことも、資金繰りの改善に役立ちます。

以上(2023年11月更新)
監修(税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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【資金繰り】資金ショートしない支払いと入金のベストタイミングの求め方

書いてあること

  • 主な読者:資金繰り改善に一策を講じたい中小企業の経営者・経理担当者
  • 課題:利益が出ているのに、資金繰りが悪化する原因を突き止めたい
  • 解決策:入金サイトと支払いサイトを把握し、理想は入金サイトをできる限り短く、支払いサイトをできる限り長くする

1 黒字でも、資金繰り悪化のからくり

会社の利益は売上から費用を差し引いて計算しますが、

売上と費用が、現金の動きと必ずしも一致しない

ことに注意が必要です。なぜ一致しないのかというと、売上債権(売掛金など)や仕入債務(買掛金など)は取引を行った月末などを締め日とし、そこから数カ月後に決済されるケースが多いからです。これは、

利益に相当する現金が売上と同時に獲得できるわけではない

ことを意味しています。

利益と現金収支の関係を次の事例で確認してみましょう。

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売上のペースに合わせて利益も毎月2倍のペースで増加しており、一見、非常に優良な会社に見えますが、現金収支は毎月マイナスとなっており、利益が増えるほど収支のマイナスが増加していることが分かります。

売上債権は2カ月後決済のため、この会社の場合、損益計算書に計上した売上が4月以降にならないと入金されません。同じく仕入債務は1カ月後決済のため、売上が発生した2月から支払期限が到来することになります。

このように、常に支出が先行する状態にあります。加えて、売上増加に伴い仕入も増加するため、資金不足が拡大していきます。このまま資金不足を解消できない場合、

黒字であっても支払いができずに会社は倒産してしまう、いわゆる、「黒字倒産」

に陥る恐れがあるわけです。

2 入金サイトと支払サイト

大切なのは、損益計算書の利益だけでなく、現金収支も適切に管理することです。営業の現場で入金や支払いのタイミングを決めるシーンがありますが、経理部から指示される時期を伝えるだけでなく、資金繰りの視点から、なぜ、○日締めの○日払いなのかであるとか、請求書を発行した後○日以内の入金をお願いしているのかを考えてみることが大切です。

これはつまり、入金サイトと支払サイトの関係です。

  • 入金サイトは売上を計上してから売上債権が入金されるまでの期間、
  • 支払サイトは仕入を行ってから仕入債務を支払うまでの期間

を指します。

3 入金サイトと支払サイトを把握してみよう

入金サイトと支払サイトは、取引先ごとに個別に決定されます。詳細は契約内容で確認できるはずですが、決算書の情報からもおおむねの数値を把握することができます。入金サイトおよび支払サイトと決算書の関係を次の事例で確認してみましょう。

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合計欄の計上額から回転期間を算定すると、売上債権の回転期間は2.0カ月、仕入債務の回転期間は1.0カ月となります。これは、事例2の前提条件に記載している売上債権の入金サイトおよび仕入債務の支払サイトと一致しており、決算書の情報から入金サイトと支払サイトを把握できることが理解できると思います。

取引先の決算書が入手できる場合、取引先のおおむねの入金サイトと支払サイトを把握することができるため、条件交渉に当たっての参考情報として活用できます。

4 資金繰りの改善方法を考える

仕入債務の支払期限到来前に売上債権が入金されていると資金繰りは楽になるので、自社の都合だけで考えれば、

入金サイトはできる限り短く、支払サイトはできる限り長く

というのが理想です。ただし、売上債務と仕入債務は表裏の関係であり、こちらの資金繰りが楽になれば、相手の資金繰りが苦しくなることもあるので配慮が必要です。

そこで、販売先に対しては入金サイトの短縮を交渉する場合、早期入金に対して一定の割引を実施するなど、販売先にとってもメリットがある方策を提案するのも一策です。また、取引開始に当たって保証金を事前に受け取ることで、当初の支払期限までの資金不足に対応することも考えられます。

一方、仕入先に対しては可能な限り支払いまでの期間を長くする他、販売による代金回収まで支払いを留保するなどの交渉が考えられます。ただし、繰り返しますがこれは仕入先にとっては資金繰りの悪化要因となるので慎重な交渉が必要となります。

また、預けている取引保証金の減額や返還を求めることで資金不足に対応することも考えられます。

なお、大企業に比べ信用力に劣ることが多い中小企業では、現金ビジネスを除き入金サイトのほうが支払サイトより若干長いことが一般的なため、入金サイトと支払サイトのタイムラグ期間の資金不足(いわゆる「運転資本」)は、金融機関からの借入金などを活用することが欠かせません。

5 取引先との良い関係が大切

資金繰りについて、自社に有利な条件を整えるには、取引先との良好な取引関係の維持により一定の信用を得ることが不可欠です。これは、販売先および仕入先のみならず、運転資本の調達先となる金融機関との関係においても同様です。

当初の契約条件の遵守はもちろんのこと、特に金融機関との関係においては、自社の財務状況を積極的に開示することも大切だと考えられます。

以上(2023年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 米山泰弘)

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画像:ururu-Adobe Stock

「電子帳簿保存法」対応。スキャナ保存は本当に業務効率化につながるのか?

書いてあること

  • 主な読者:DXの一環として、ペーパーレス化など経理の電子化を進めたい経営者
  • 課題:電子帳簿保存法の改正でペーパーレス化が進めやすくなったと聞くが、本当?
  • 解決策:細かな要件が多く、体制整備も必要。費用対効果をしっかり検討する

1 電子帳簿保存法?

DX(デジタル・トランスフォーメーション)が大いに注目を集めていますが、多くの会社は手始めに「ペーパーレス化」に取り組んでいるようです。まずはイメージしやすいペーパーレス化から、ということでしょう。

こうした中で注目されているのが「電子帳簿保存法」(以下「電帳法」)の改正です。電帳法では決算書や請求書などを電子データで保存するためのルールが定められています。例えば、クラウド会計システムの導入など一定の要件を満たした場合、キャッシュレス決済の利用明細データが領収書の代わりにできることなどが、電帳法で定められています。

まずは、2022年1月に施行された改正電帳法の全体像を見てみましょう。

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ポイントを紹介します。国税関係帳簿・国税関係書類の電子保存と国税関係書類(決算関係書類を除く)のスキャナ保存は、任意で実施できます(2021年12月31日以前は税務署長の承認が必要でした)。一方、電子取引に係る取引情報の保存は義務化されるので、電子取引を行う会社は守らなければなりません。電子取引の場合、

注文書や領収書などの原始記録が保存されていない恐れがある

ため、厳しくなっているのです。

改正電帳法には便利なイメージがあります。それは事実ですが、一方で多くの要件が事細かく決められてもいます。改正電帳法を利用してペーパーレス化を進めたい経営者は、改正電帳法の「面倒な部分」をきちんと押さえておく必要があります。詳細を確認されたい方は、このまま読み進めてください。

2 改正電帳法で定められている3つの事項

1)国税関係帳簿・国税関係書類の電子保存(最初から一貫して電子データ)

国税関係帳簿・国税関係書類とは、

国税に関する法律により備え付けおよび保存をしなければならないこととされている帳簿と書類

です。具体的には、

  • 国税関係帳簿:仕訳帳、総勘定元帳、経費帳、売上帳、仕入帳など
  • 国税関係書類:損益計算書、貸借対照表、見積書、請求書、納品書、領収書の控えなど

となります。

国税関係帳簿・国税関係書類の電子保存とは、

国税関係帳簿・国税関係書類を最初から一貫してパソコンなどで作成したものを保存すること

をいいます。

2)国税関係書類のスキャナ保存(紙から電子データへ)

国税関係書類とは、前述した損益計算書、貸借対照表、見積書、請求書、納品書、領収書の控えなどです。

そして、国税関係書類のスキャナ保存とは、

取引の相手先から紙(書面)で受け取った請求書や自己が作成した請求書などのコピーを、スキャナで読み取って保存すること

をいいます。

3)電子取引に関する取引情報の保存

電子取引に関する取引情報とは、ウェブサイト上や電子メールなどで行われる電子取引でやり取りされる契約書や見積書、請求書などのことです。

そして、電子取引に関する取引情報の保存とは、

文字通り、電子取引でやり取りされる取引情報を保存すること

をいいます。

2024年1月1日から、電子取引に関する取引情報は印刷をして紙で保存することは認められず、電子データによる保存が義務付けらます。電子データによる保存は、システムの導入などの対応が必要です。まだ準備に取り掛かっていない場合は、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

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3 業務効率化につながりやすいスキャナ保存制度

1)電子保存とスキャナ保存の対象の違い

まず、混同しがちな国税関係帳簿・国税関係書類の電子保存とスキャナ保存の違いを整理しておきましょう。

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両者にはこのような違いがあるのですが、経費精算など経理業務の効率化につながりやすいのは、国税関係書類のスキャナ保存(以下「スキャナ保存制度」)だといえるので、注目していきます。

2)国税関係書類のスキャナ保存制度の概要

国税関係書類のうち、

契約書や領収書など決算関係書類以外の書類については、スキャナで読み取って作成した電子データで保存することが可能

です。とても便利ですが、電子データは簡単に加工できるので、紙であったときと同程度の証拠(「真実性と可視性」という)を電子データで確保することが求められています。具体的には、領収書などをスマートフォンで撮影したら、2カ月と7営業日以内(改正前は3営業日以内)にタイムスタンプを付与します。タイムスタンプとは、

デジタル上の時刻認証で、外部の認定事業者が発行するもの

です(改正前のものは自書署名が必要)。なお、2022年1月1日以降は、訂正や削除履歴が確認できるシステム上に保存する場合はタイムスタンプが不要です。

その他、システムの検索機能などさまざまな要件があります。詳細については、下記のURLをご参照ください。

■国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存!」■

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/08.htm

4 スキャナ保存制度を導入するための体制

1)システムの費用

スキャナ保存制度を導入する場合、真実性と可視性を確保するための要件を満たしたシステムや設備を整える必要があります。また、タイムスタンプにかかる費用なども考慮しなければなりません。これらの要件を満たした経費精算システムを導入する場合、初期費用(10万円程度)と、会社規模(社員数など)に応じた月額費用(数万円~)が必要です。

2)社内規程などの整備

スキャナ保存制度を導入する会社は、必ず作業責任者、作業の過程、順序および入力方法などの手続きを明記した規程を整備しなければなりません。

また、スキャナによる入力方式について、その業務の処理にかかる通常の期間(最長2カ月)を経過した後、おおむね7営業日以内に入力する方法(業務処理サイクル方式)を採用した場合、作業責任者、処理基準および判断基準などを含めた業務サイクル(書類の作成または受領からスキャナで読み取り可能となるまでの作業の流れ)におけるワークフローなど、企業の方針を社内規程に定めなければなりません。

ただし、スキャナによる入力方式について、書類の作成または受領後、おおむね7営業日以内に入力する方法(早期入力方式)を採用する場合、上記のような業務サイクルにおける規程を整備する必要はありません。

5 実務家からのアドバイス

スキャナ保存制度の導入・運用するには相応の体制整備とコストが必要です。スキャナ保存制度を導入することで、こうしたデメリットを上回るだけのメリット(帳簿書類の保存コスト削減など)を得られるのかについて、慎重に検討しましょう。

スキャナ保存制度を導入する際は、併せて国税関係帳簿・国税関係書類の電子保存制度の導入を検討するとよいでしょう。国税関係帳簿、決算関係書類、自己発行の重要書類は電子保存し、相手が発行した重要書類のみスキャナ保存することにすれば、自己発行の重要書類をスキャナ保存する手間が省けます。また、国税関係帳簿・国税関係書類の電子保存制度ではタイムスタンプの付与の必要がありませんので、コスト面でも有利です。

スキャナ保存制度の導入を検討する際には、税理士やスキャナ保存制度に関するサービスを提供している企業などに相談してみるようにしましょう。

以上(2023年11月更新)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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画像:pixabay

【経理人材の育成(7)】外部のツール(セミナー、書籍)を使った人材育成

書いてあること

  • 主な読者:経理人材の育成や、経理部全体の効率化に悩む中小企業のマネジメント職
  • 課題:人材育成に外部のツール(セミナーや書籍)を使っているが、成果が出る使い方を知りたい
  • 解決策:セミナーは講師のプロフィール、目次、対象者に着目し、レベルのあったものを選び、事前の準備や事後の共有方法を明確にする。書籍は実際の業務への関連性が高い部分を指定してあげる

1 外部のツールを活用して管理職本来の業務に集中しよう

今回は、

外部のツールを活用した人材育成

についてお話しします。人材育成というと、管理職の皆さんにとっては、膨大な時間と労力がかかり、負担に感じがちです。しかし、外部のツールを使うことで、皆さんの負担は軽減されますし、より有用な知識を身につけてもらうことができます。分かることをすべて自分で教える必要はなく、一般的な内容であれば外部のツールを、社内特有の内容であれば他のメンバーをというように、内容に応じた伝達方法を適切に設計することの方が、管理職には求められます。

そこで、今回は外部のツールの中でもよく利用されているセミナーと書籍について、人材育成につながる使い方を紹介します。

2 いいセミナーの見分け方

多くの場合、知識を習得するためにセミナーを受講すると思います。セミナーの効果を上げるために大事なのは、自社や受講される方に合ったセミナーを選ぶことです。

例えば、「この先生は有名だから」といった理由でセミナーを選ぶ方がいますが、実際に受講される方のニーズや習熟レベル次第では無意味になってしまう場合があるのです。私自身もセミナー講師をしているため、受講者と講義内容のミスマッチが生じるケースを目にして、時間と費用がもったいないと感じることもしばしばです。

セミナー受講を決める際には、パンフレットを見るはずです。書かれている内容を見て、受講者に合ったものかどうかを確認しましょう。具体的には、次の3点を確認することで、セミナーの成果は大きく上がります。講師の立場からすると、セミナー内容に適した方に来ていただくために、工夫して書くことが多いのもこの3点といえます。

  • プロフィール
  • 目次
  • 対象者

プロフィールを通じて、その講師がその内容を語るにふさわしいかどうかが分かります。公認会計士や税理士だからといってすべての分野に精通しているわけではなく、得意分野は人それぞれです。また、得意分野というからには、これまでの経歴の中でその分野の経験を積んでおり、その旨がプロフィールに書かれているはずです。つまり、プロフィールを通じて、そのセミナーのテーマを解説する資格があるのかどうかを判断できるのです。

また、なぜ得意分野とする講師のほうがいいかといえば、そうでない講師に比べて、分かりやすい説明や実務のコツなどを聞くことができるからです。特に、詳しく理解したい場合にはこだわった方がいい点といえます。

さらに、目次に目を向けて、自分が知りたい内容がそのセミナーに含まれていることを確認することも大事です。例えば、インボイスをテーマにしたセミナーといっても、制度や仕組みの概要、会社での取り組み方とスケジュール、システムでの対応など人により聞きたいことはさまざまです。セミナーの限られた時間の中ですべてを網羅するのは現実的ではないため、セミナーの中で特に力を入れている項目を見つけることができます。

また、セミナーによっては対象者を明示してくれる場合もあります。同じ経理職といっても、経験や知識はさまざまです。多くの場合、講師は受講者の経験や知識に関して、特定のレベルを想定して話すため、あまりにレベルが合わないと、講師が使う用語が分からないという場合もあるでしょう。パンフレットに表示されている対象者に合致しない場合は参加を見送る方がいいかもしれません。習熟レベルは、メンバー自身よりも、経験豊富な管理職の皆さんの方が客観的に判断できると思いますので、助言するのもよいでしょう。

3 セミナーは、事前事後こそが大事

メンバーと相談の上、受講してもらうセミナーが決まったら、事前の準備も重要です。セミナーに誰かを参加させるのは、会社に不足している知識を得ることが目的の1つです。たとえ、新任経理向けの基礎研修だったとしてもそうです。むしろ、基礎的な知識ほどベテランの皆さんにとってはどこからどう説明したらいいのか分からないという面もあります。

加えて、セミナー参加には人材育成の側面もあります。1つのセミナーには、会社から1名だけが参加するケースが多いものです。ですから、

セミナーの前後を通じて、会社にとって必要な情報は何なのかを理解し、セミナーで得た情報を会社に持ち帰って共有する

という、この一連の過程を自分の力で達成することができれば、セミナーで紹介された知識に加えて、「知識を習得する」スキルを同時に身につけることができるのです。

このスキルを身につけるには、人によっては管理職の皆さんの助けが要るでしょう。例えば、経験が浅いメンバーには、解決したい具体的な事項を事前に言葉にして3つほど伝えてみるのもいいでしょう。セミナー参加後には、部門の会議で、セミナーで新たに得た情報を共有してもらうのもおすすめです。本人にはプレゼンテーションの練習になりますし、残りのメンバーも知識を吸収できて、一石二鳥です。必要に応じて管理職の皆さんが説明をサポートしてももちろん構いません。

このように、事前と事後の取り組みを行うことで、メンバーはセミナー中も集中して聞くことができるはずです。

4 セミナー中のメモは最小限に、講師への質問は積極的に

セミナー中によく講師の発言を熱心にメモする方を見かけますが、議事録を作るようにメモしながら、頭の中で情報を咀嚼(そしゃく)するのはなかなか大変です。そこでおすすめなのは、自社あるいは自分でやってみたいと感じた情報だけを中心にメモをとるというやり方です。そうすることで、セミナーが終わったあとには、自社オリジナルのアクションリストが出来上がります。

また、あらかじめ知りたいと思っていたことが講義内で触れられなかった場合には、遠慮なく質問しましょう。多くの講師は、熱心に聞いてもらったからこそ質問が出ると感じ、歓迎します。セミナーは会社の問題解決手段の1つなのですから、専門家から直接助言を受けられる機会を有効活用しましょう。同時に、専門家との対話スキルを身につけるきっかけにもなるはずです。経理の世界では、皆さんご存じのように、専門家に支援をしてもらう機会が多くありますので、そのスキルの練習にもなります。

5 書籍の選び方と活かし方

経理の仕事は、簿記に始まり、会計基準や税法など理論を理解することが必要なので、勉強は不可欠です。管理職の皆さんがすべて説明しようとすると、時間がいくらあっても足りません。助けとなるツールを使うのが現実的でしょう。

セミナーに比べて書籍特有のメリットもいくつかあります。

  • セミナー以上に体系立って理解ができること
  • いつでも再確認できること

です。特に、経理の現場で作業をしながら、どういうことだったかなとすぐに書籍を確認できるのは、書籍ならではです。ちなみに、調べるという点では、ネット検索が楽ですが、その情報が正しいかどうかの確認をしなければならず、結局手間がかかってしまうケースも多いです。

新しい業務を割り当てた場合に、ぜひ参考になる書籍も合わせて提供するのもいいと思います。私も管理職時代には、メンバーには、読むべき章を指定して書籍を渡すようにしていました。書籍1冊丸ごとだと、初めてその業務を担当する人には負担が大きいものです。そこで、実際の業務への関連性が高い部分を中心に、一、二章だけ指定すれば、積極的に読んでくれました。

さらに、書籍の中から適切な章を選ぶのも大事ですが、それ以前に適切な書籍を選ぶことはもっと大事です。これもセミナー選びと共通しますが、自分に合った書籍を選ぶには、自分の知識レベルを客観的に把握する必要があるため、結構難しいものなのです。そこで、メンバーには、なぜこの本を選んだかという理由を丁寧に説明しつつ、適切な書籍を紹介するといいでしょう。

なお、経理分野の書籍は種類によって使い方が異なることも、メンバーには注意を促したほうがいいかもしれません。例えば、税法や会計基準を網羅的に載せた辞書のような本もありますが、これらは前から読むのはお勧めしません。何か調べものがあるときに、まさしく辞書のように「引く」本といえます。経験を積んだ皆さんであれば、当たり前のことかもしれませんが、メンバーにとってはまだ気がつかない場合もあります。

業務自体を身につけてもらうものもちろん大事なことですが、業務を身につけるための学び方をスキルとして身につけることは、さらに大事です。とくに、経理の分野は、新制度や改正などの動きも多く、常に勉強が必要です。学ぶスキルの重要性は他の職種に比べても高く、業務の成否に直結するといっても過言ではありません。管理職の皆さんにとって、メンバーが学ぶスキルを身につける支援をすることは、経理人材としての大きな成長につながります。まずは、書籍やセミナーといった身近な手段から、うまく活用いただけたら幸いです。

以上(2023年11月作成)

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画像:Kittiphan-Adobe Stock

約260年続いた江戸幕府の初代将軍・徳川家康。彼が後継者に告げた一言の真意とは?

水よく船を浮かべ、水よく船を覆す。ただこのことを、よく心得られよ

徳川家康は、織田信長、豊臣秀吉とともに、戦国の三英傑の一人に数えられる人物です。最初は小国の三河(現在の愛知県東部)を治める一大名に過ぎませんでしたが、数々の戦いに勝利して勢力を伸ばし、やがて江戸幕府の初代将軍となり、長く続いた戦国の世を終わらせました。

冒頭の言葉は、家康が2代将軍である息子の秀忠(ひでただ)に度々言い聞かせたとされる教訓で、「水(領民)は船(幕府)を浮かべもするが、転覆させもする。だから領民の心が離れないよう、行いには重々注意しなければならない」という意味があります。1600年、天下分け目の決戦といわれる「関ヶ原の戦い」に勝利した家康は、1603年に江戸幕府を開きますが、2年後には将軍の座を秀忠に譲ります。これは、将軍職が徳川家によって代々引き継がれていくことを世に知らしめるためでしたが、一方で家康には、秀忠に将軍職を譲るに当たって懸念していることがありました。

それは「人生経験の差」です。家康は戦国の世を生き抜いてきた人物です。若い頃から三河を囲む敵国の脅威にさらされ、時には一向宗という教えの信徒になった領民に一揆を起こされるなど、領国の内外に自分を脅かしかねない存在を抱えながら、苦労の果てに将軍の座を手に入れました。

一方、息子の秀忠は、家康からすれば戦国の世の苦労をほとんど知らない人物です。家康が秀忠に将軍職を譲った頃には、徳川家の力はすでに揺るぎないものになっており、秀忠にとって敵といえるような存在はほとんどいませんでした。

家康はこの状況を、「秀忠は苦労せずに将軍になったから、下手をすればおごって世を乱すかもしれない」と危惧していました。だからこそ、「徳川家が盤石に思えても油断するな。領民は常に見ているぞ」と度々くぎを刺したのです。そのかいあってか、秀忠はおごることなく諸法度の制定や貿易の統制に取り組み、家康から引き継いだ江戸幕府をより強固な組織へと進化させました。

会社の経営者も、どこかで後継者に後を託すときがやってきます。家康の言葉を借りるなら、水は「社員」、船は「会社」であり、社員の心が経営者から離れれば、会社は立ち行かなくなります。このことは後継者にしっかり教えておく必要があるでしょう。ですが、社員の心が離れないようにするのと、社員の顔色をうかがうのは違います。船は水に浮かべて終わりではなく、針路を決めて前進しなければなりません。時には社員からの反対を押し切って、経営者自身が正しいと信じた道を前に進まなければならないこともあります。

大切なのは「後継者にトップとしての緊張感を持たせつつ、信じて後を託すこと」です。秀忠は、武将としての才にはあまり恵まれなかったようですが、家康は「これからの平和な時代には秀忠が必要だ」と考え、彼に後を託しました。将軍職が代々そうして継承されていったから、江戸幕府は260年余りも続いたのかもしれません。

出典:「明良洪範続編」(浜松・浜名湖ツーリズムビューローウェブサイト 家康公「伝」)

以上(2023年11月作成)

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