【朝礼】来たる巳年は「周囲を呑み込む気迫」を持とう

【ポイント】

  • 蛇には、「たとえ小さな存在であっても、自分は人には負けない」という気迫がある
  • 「自分が正しいと思うことについては、堂々と主張する気迫」を持ってほしい
  • 仮に主張が受け入れられなくても、「自分に何が足りなかったのか」を学ぶことができる

皆さん、おはようございます。12月になり、今年も残すところあとわずかです。少し気が早いですが、来年の干支は「巳(み)」、つまり蛇です。蛇というと、おどろおどろしい模様の毒蛇などをイメージして、身構えてしまう人もいるかもしれません。ですが、蛇は嫌われることも多い一方、多くの土地で、霊性をそなえた神聖な存在として扱われてもきたのです。

そんな蛇にまつわることわざに「蛇は寸にして人を呑(の)む」というものがあります。「蛇は一寸ほどの小さなものでも、すでに人を呑もうとする気迫がある」という意味です。本来は、優れた人物が、幼い頃から抜きんでた才能を示すことの例えとして使われるのですが、今回はそこではなく、「一寸の蛇」という部分に注目してください。

一寸は約3センチメートル、人を呑み込めるような大きさではありません。ですが、それでも蛇は「たとえ小さな存在であっても、自分は人には負けない」という気迫を持ち、堂々としているのです。どうでしょう、少し蛇に対するイメージが変わってきたのではないですか?

さて、私が来年、皆さんにぜひ意識していただきたいのが、「周囲を呑み込む気迫」を持つことです。皆さんの誰もが、上司や顧客の意見、会議の雰囲気などに流され、自分の言いたいことを主張できずに終わってしまった経験があると思います。かくいう私自身にもあります。

ですが、周囲に流されるばかりでは、皆さんの成長はそこで止まってしまします。だからこそ、自分が正しいと思うことについては、勇気を出して堂々と主張してほしいのです。もちろん仕事ですから、単なるわがままになってはいけませんし、皆さんの主張が常に受け入れられるとは限りません。ですが、それもまた皆さんが「自分に何が足りなかったのか」を学び、成長するチャンスです。

蛇は、脱皮を繰り返すことから「変化と再生」の象徴とされています。「自分はこれを成し遂げたい」という気迫を持って仕事に臨み、失敗してもめげずに立ち上がる。2025年はそんな「挑戦を繰り返す年」にしてください。来年、気迫のある皆さんに会えるのを楽しみにしています。

以上(2024年12月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【3分で分かる個人情報保護(4)】個人データの取り扱いを委託する場合に守らなければならないルール

1 個人データの管理を委託する場合のルールは3つ

個人データの取り扱いの全部または一部を外部に委託する場合、守らなければならないルールが3つあります。具体的には

  • 適切な委託先を選定する
  • 委託契約を締結する
  • 委託先における個人データ取扱状況を把握する

です。以降でポイントを確認していきましょう。

2 適切な委託先を選定する

委託先の選定に当たっては、委託先が、自社と同等あるいはそれ以上の安全管理措置を講じていることを確認することが求められます。

そのため、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」の「10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容」に定める各項目が、委託する業務内容に沿って、確実に実施されることについて、あらかじめ確認しなければなりません。詳しくは次のウェブサイトをご覧ください。

■ガイドライン10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a10

3 委託契約を締結する

委託契約には、当該個人データの取り扱いに関する、必要かつ適切な安全管理措置として、委託元、委託先の双方が同意した内容を定めます。そうするとともに、「委託先における委託された個人データの取扱状況を委託元が合理的に把握することを盛り込むことが望ましい」とされています。

例えば、次のような事項が盛り込まれた契約を締結するとよいでしょう(ここで委託者は委託元、受託者は委託先を指します)。

  • 委託者および受託者の責任の明確化
  • 個人データの安全管理に関する事項
  • 再委託に関する事項
  • 個人データの取扱状況に関する委託者への報告の内容および頻度
  • 契約内容が遵守されていることを委託者が、定期的に、および適宜に確認できる事項
  • 契約内容が遵守されなかった場合の措置
  • 事件・事故が発生した場合の報告・連絡に関する事項
  • 契約終了後の措置

なお、委託契約の締結と言っても、必ず「業務委託契約書」を取り交わさなければならないわけではありません。委託元、委託先の双方が安全管理措置の内容について合意をすれば法的効果が発生するので、合意内容を客観的に明確化できるなら、書式は問われません。例えば、委託先から委託元への誓約書の差入れや、覚書や合意書などの取り交しでも問題ありません。

4 委託先における個人データ取扱状況を把握する

委託契約で定める内容と重複するところがあるかもしれませんが、委託先における委託された個人データの取扱状況を把握するために、「定期的に監査を行う等により、委託契約で盛り込んだ内容の実施の程度を調査した上で、委託の内容等の見直しを検討することを含め、適切に評価することが望ましい」とされています。

5 (参考)個人データの取り扱いの委託は第三者提供ではない

個人情報保護法では、法令に基づく場合などの例外を除いて、「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」とされています。

一方、委託については、「第三者に該当しないものとする」とされています(この他に第三者に該当しないものとして、事業の承継、共同利用もあります)。そのため、委託元は、あらかじめの本人の同意または第三者提供におけるオプトアウトを行うことなく、委託先に対して、個人データを提供することができます(その代わりに、委託先に対する監督責任が課されます)。

個人データの取り扱いを委託する先は他の者(=第三者)なのだから、「第三者提供なのでは?」と理解に苦しむかもしれませんが、

個人データの提供先は個人情報取扱事業者とは別の主体として形式的には第三者に該当するものの、委託された業務の範囲内でのみ、本人との関係において提供主体である個人情報取扱事業者と一体のものとして取り扱うことに合理性があるため、第三者に該当しないものとする(ガイドライン3-6-3 第三者に該当しない場合)

というルールなのです。

以上(2024年12月更新)

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画像:pixabay

「じゃがいも×マーケティング」の世界史~食文化で歴史を変えたフリードリヒ2世の秘策とは?

1 もし、あの国がひとつの会社だったとしたら…

高校の授業で習った世界史……。もう記憶の彼方という人も多いでしょうが、社会人になってから学び直してみると、意外と高校生だったあの頃より面白く感じるものです。なぜなら、

世界史を知れば知るほど、「会社」と「国家」がよく似ていることに気が付く

からです。となれば、世界史上の出来事から何か学べることもあるはず……。この記事では「国家」を1つの「会社」に例え、世界史上の出来事を紹介します。今回取り上げるのは、現ドイツの原型になった国家「プロイセン」が、18世紀に行ったマーケティング戦略です。詳細は後述しますが、このプロイセンは会社に例えるなら

新しい食材を世界に流通させたいと考えている商社

です。現代でもタンパク質危機(プロテイン・クライシス)を解決しようと、昆虫食や植物性タンパク質の食品を開発する会社がありますが、それとも似ているかもしれません。

(注)この記事は巻末の参考書籍を基に作成していますが、世界史上の出来事などについて諸説ある内容が含まれます。あらかじめご了承ください。

2 フリードリヒ2世が打ち出した新商品「じゃがいも」

プロイセンは、土壌が痩せている地域が多く、元来収穫に乏しい国でした。そして、18世紀のヨーロッパでは飢饉(ききん)が頻繁に起きており、食糧問題は国民にとっても国家にとっても喫緊の課題でした。そこで、「早急になんとかしなければ!」と立ち上がったのが、

プロイセンの国王・フリードリヒ2世

です。

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フリードリヒ2世は、別名「フリードリヒ大王」とも呼ばれる偉大な王様。会社で例えるなら“敏腕経営者”です。

そんな彼が新たな主食として目をつけたのは……なんと「じゃがいも」

でした。

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現代に生きる私たちにとってはごくありふれた食材ですが、実は

当時のヨーロッパでは、じゃがいもの主な用途は「食用」ではなく「観賞用」だった

のです。私たちが食べるのは、地中にあるじゃがいもの「茎」の部分ですが、当時の人々はそこには見向きもしませんでした。むしろ、じゃがいもの「芽」などが有毒であるという理由で、

「食べると病気になる! 不純な植物だ! 悪魔の食べものだ!」

など、散々なことを言っていたのです……。

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しかし、じゃがいもは

冷涼で痩せた土地でも良く育ち、しかも茎の部分は栄養たっぷりの万能な食材

です。このことを知った“敏腕経営者”フリードリヒ2世は、プロイセンの食糧事情を立て直すため、じゃがいもを「食べ物として普及させよう!」と奔走します。

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3 成功のカギは「ブランディング」にあった!

とはいえ、食文化はそう簡単に変えられるものではありません。フリードリヒ2世は

自らじゃがいもを毎日美味しそうに食べてみせたり、国中を回ってじゃがいもの魅力を伝えるキャンペーンを実施したりしますが、ただ知名度が上がっただけ

で、食べ物としてはなかなか普及しませんでした。

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では、どうやってじゃがいもを普及させたのでしょうか? その答えは

現代にも通じるマーケティング戦略「ブランディング」です。フリードリヒ2世はなんと、じゃがいも畑を「立派な装備の軍隊に守らせた」

のです。

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噂はたちまちに広がり、国民は

「王様があそこまでして守るじゃがいもって何……?」

「そんなに貴重で美味しいものなの……?」

と好奇心を煽られ、段々じゃがいもに心惹かれていきました。その結果、プロイセンでは当時のヨーロッパではいち早く、じゃがいもが食ベ物として普及していったのです。

4 「じゃがいも×マーケティング」で歴史が変わった

じゃがいもは、

国民の食べ物として普及しただけでなく、「豚の飼料」としても活躍

しました。じゃがいもは冬の時期でも保存しておけるので、厳しい冬でも家畜に餌を与えることが可能になり、人々はいつでも肉を食べられるようになったのです。その結果、

プロイセンではじゃがいも&豚肉料理(ソーセージやベーコンなど)という、現代のドイツ料理に象徴されるような食文化が生まれ定着

していくことになります。

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美味しくて安定した食事は国力の増強につながり、

プロイセンはやがて、“ライバル会社(周辺国家)”を次々にまとめ上げて“グループ会社”とし、現代における「ドイツ」という“大会社”を作るに至った

のです。仮にフリードリヒ2世が、じゃがいものマーケティングに失敗していたら、今のドイツは存在していなかったかもしれません。

現代においても、

「ブランディング」はマーケティングの基本

です。“敏腕経営者”フリードリヒ2世は、「じゃがいもは価値のあるものだ」という意識を“消費者(国民)”に植え付けることに成功し、“会社”を大きく育てたということです。現代の日本に生きる私たちが、

「主食を米から謎の植物に変えろ!」

と言われたら、きっと戸惑いますし、誰も見向きもしないかもしれません。新しい商品やサービスを売り出す際、斬新なものほど世間に受け入れられにくいというのは世の常ですが、食文化をひっくり返したフリードリヒ2世のことを考えれば、

結局のところ「モノは売り方次第である」ということ

が分かります。

【参考文献】

「世界史を大きく動かした植物」(稲垣栄洋(著)、PHPエディターズ・グループ、2018年7月)

以上(2024年12月作成)

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画像:イラストAC・写真AC

【3分で分かる個人情報保護(3)】個人データを自ら取り扱う場合に守らなければならないルール

1 個人データを自ら取り扱う場合のルールは3つ

個人データを個人情報取扱事業者(会社)が自ら取り扱う場合、守らなければならないルールが3つあります。具体的には

  • データ内容の正確性を保ち、必要がなくなったら消去する
  • 安全管理措置を講じる
  • 従業者を監督する

です。以降でポイントを確認していきましょう。

2 データ内容の正確性を保ち、必要がなくなったら消去する

個人データは、正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければなりません。

「正確かつ最新の内容に保つ」とはいえ、保有する個人データをすべて、いつも最新化しなければいけないわけではありません。それぞれの利用目的に応じて、その必要な範囲内で正確性・最新性を確保すれば大丈夫です。

また、「遅滞なく消去する」といっても、具体的に「いつまでに」「○日以内に」という期限は特にありません。業務の遂行上の必要性や引き続き個人データを保管した場合の影響等も勘案し、必要以上に長期にわたることのないようにしましょう。ただし、他の法令で保存期間が定められている場合があることに気をつけなければいけません。例えば、賃金台帳は労働基準法に基づき原則5年間保存が義務付けられています。

3 安全管理措置を講じる

取り扱う個人データの漏えい、滅失または毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければなりません。

個人データの「漏えい」とは個人データが外部に流出すること、「滅失」とは個人データの内容が失われること、「毀損」とは個人データの内容が意図しない形で変更されることや、内容を保ちつつも利用不能な状態となることをいいます(3つまとめて、「漏えい等」といいます)。

「安全管理のために必要かつ適切な措置」については、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」に具体例が示されています。この記事の第5章で、参考として、社員数100人以下の「中小規模事業者」が講じるべき安全管理措置について紹介しています。最低限対応しないといけない内容ですので、確認してみてください。

■ガイドライン10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a10

4 従業者を監督する

従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりません。

「従業者」は、雇用関係にある社員(正社員、契約社員、嘱託社員、パート社員、アルバイト社員など)だけではなく、取締役、執行役、理事、監査役、監事、派遣社員なども含まれます。

「必要かつ適切な監督」は、前述した安全管理措置で「やる」と決めたことがしっかり守られているかチェックすることです。

5 (参考)「中小規模事業者」が講じるべき安全管理措置

ガイドラインの10「(別添)講ずべき安全管理措置の内容」で例示されている中小規模事業者における手法を紹介します。

1)基本方針の策定

「事業者の名称」「関係法令・ガイドライン等の遵守」「安全管理措置に関する事項」「質問および苦情処理の窓口」などの項目を策定する

2)個人データの取り扱いに係る規律の整備

個人データの取得、利用、保存等を行う場合の基本的な取り扱い方法を整備する

3)組織的安全管理措置

  • (組織体制の整備)個人データを取り扱う従業者が複数いる場合、責任ある立場の者とその他の者を区分する
  • (個人データの取り扱いに係る規律に従った運用・個人データの取扱状況を確認する手段の整備)あらかじめ整備された基本的な取り扱い方法に従って個人データが取り扱われていることを、責任ある立場の者が確認する
  • (漏えい等事案に対応する体制の整備)漏えい等事案の発生時に備え、従業者から責任ある立場の者に対する報告連絡体制等をあらかじめ確認する
  • (取扱状況の把握および安全管理措置の見直し)責任ある立場の者が、個人データの取扱状況について、定期的に点検を行う

4)人的安全管理措置

  • (従業者の教育①)個人データの取り扱いに関する留意事項について、従業者に定期的な研修等を行う
  • (従業者の教育②)個人データに付いての秘密保持に関する事項を就業規則等に盛り込む

5)物理的安全管理措置

  • (個人データを取り扱う区域の管理)個人データを取り扱うことのできる従業者および本人以外が容易に個人データを閲覧等できないような措置を講じる
  • (機器および電子媒体等の盗難等の防止①)個人データを取り扱う機器、個人データが記録された電子媒体または個人データが記載された書類等を、施錠できるキャビネット・書庫等に保管する
  • (機器および電子媒体等の盗難等の防止②)個人データを取り扱う情報システムが機器のみで運用されている場合は、当該機器をセキュリティワイヤー等により固定する
  • (電子媒体等を持ち運ぶ場合の漏えい等の防止)個人データが記録された電子媒体または個人データが記載された書類等を持ち運ぶ場合、パスワードの設定、封筒に封入し鞄に入れて搬送する等、紛失・盗難等を防ぐための安全な方策を講じる
  • (個人データの削除および機器、電子媒体等の廃棄)個人データを削除し、または、個人データが記録された機器、電子媒体等を廃棄したことを、責任ある立場の者が確認する

6)技術的安全管理措置

  • (アクセス制御)個人データを取り扱うことのできる機器および当該機器を取り扱う従業者を明確化し、個人データへの不要なアクセスを防止する
  • (アクセス者の識別と認証)機器に標準装備されているユーザー制御機能(ユーザーアカウント制御)により、個人情報データベース等を取り扱う情報システムを使用する従業者を識別・認証する
  • (外部からの不正アクセス等の防止①)個人データを取り扱う機器等のオペレーティングシステムを最新の状態に保持する
  • (外部からの不正アクセス等の防止②)個人データを取り扱う機器等にセキュリティ対策ソフトウェア等を導入し、自動更新機能等の活用により、これを最新状態とする
  • (情報システムの使用に伴う漏えい等の防止)メール等により個人データの含まれるファイルを送信する場合に、当該ファイルへのパスワードを設定する

7)外的環境の把握

外国において個人データを取り扱う場合、当該外国の個人情報の保護に関する制度等を把握した上で、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる

以上(2024年12月更新)

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画像:ribkhan-Adobe Stock

【人事はつらいよ】「残業するな」と言っただけなのにジタハラ(時短ハラスメント)?

1 社員のために「定時で帰れ」と言っているのに……

残業が一向に減らない……。今日だってもう定時を回っているのに、誰も帰ろうとしない。ここは経営者の私が帰りやすい雰囲気を作ろう! こう思ったA社の社長は言いました。

「もう定時を過ぎているぞ。さぁ、今日は残業禁止だ! 早く帰ってくれ!」

全員すぐに帰るだろうと思った社長でしたが、みんな座ったまま動こうとしません。そのうち、社員の1人が口を開きました。

「社長、今の業務量では残業しないと終わらないです。それなのに一方的に『残業禁止』だなんて……。今の発言はジタハラ(時短ハラスメント)です!」

困ったことに他の社員もこの意見に賛同する始末……。社長は釈然としません。

「社員の体調やプライベートを考えて言っているのに。それをジタハラって言うのは、どういうことだ。この国はおかしくなってしまったのか?」

2 社員のための「時短」も行き過ぎるとハラスメントに……

コスト削減、働き方改革、SDGs……会社はさまざまな観点から、長時間労働の是正に積極的に取り組んでいます。しかし、こうした会社の姿勢が、時にジタハラになることがあります。ジタハラとは、

「時短」、つまり社員の労働時間を短くすることに関連したハラスメント(嫌がらせ)

です。法令上の定義はありませんが、一般的には、

業務量などに関係なく、会社が一方的に残業を禁止したり、シフトを減らしたりすること

を指します。

ポイントは、「会社が一方的に」という部分です。会社は社員のためを思って時短に取り組むわけですが、それが一方的だと、

  • 業務量の変わらないまま時短を強制された社員が、こっそり隠れ残業をする
  • 無理なスケジュールでの仕事を余儀なくされた社員が、ケアレスミスを連発する
  • 合理的でない時短が続くことによって、社員がやる気を失う

などの問題が発生します。ジタハラを直接規制する法令はありませんが、

このように社員の仕事に支障を来すような極端な時短は、違法なパワハラ(パワーハラスメント)とみなされる恐れがある

ので注意が必要です。

3 パワハラの「過大な要求」に該当すると違法になる

パワハラは、労働施策総合推進法で定義されたハラスメントで、

職場の上下関係など優越的な関係を利用した嫌がらせ

です。具体的には、次のような業務上必要のない(または行き過ぎた)言動によって、社員の仕事に支障を来すことを指します。

  1. 身体的な攻撃:暴行、傷害
  2. 精神的な攻撃:脅迫・名誉毀損、侮辱、ひどい暴言等
  3. 人間関係からの切り離し:隔離、仲間外れ、無視
  4. 過大な要求:業務上明らかに不要・遂行不可能なことの強制、仕事の妨害等
  5. 過小な要求:不合理に程度の低い仕事を命じること、仕事を与えないこと
  6. 個の侵害:私的なことへの過度な立ち入り

会社にはパワハラなどのハラスメント防止措置が義務付けられているので、対応が不十分なために社内でハラスメントが発生すると、民法上の使用者責任などを問われる恐れがあります。

ジタハラがパワハラ(違法)になる場合、上の「4.過大な要求」に該当する可能性が高いです。違法になる例とならない例について、弁護士にヒアリングした結果は次の通りです。

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ケース1~3に共通して言えることは、

  • 社員を定時で帰らせるための対策を講じず、残業禁止を言い渡すだけだと違法になる
  • 「業務を引き取る」「改善点を指摘する」など対策を講じた上で、社員の残業を禁止するのであれば違法にならない

という点です。違法にならない例については、

  • 業務の一部を他の社員に振っていいから、今日は帰りなさい
  • 納期がきついなら取引先と交渉していいから、今日は帰りなさい

などのケースもあります。とにかく、具体策が必要なわけです。結局のところ、

ジタハラ最大の問題は、会社が社員の抱えている課題に向き合わず、時短を強制すること

であると分かります。

経営者からすれば、「決められた時間内に終業できるよう工夫するのも仕事のうちだろう、そこまで会社が面倒を見ないといけないのか」という印象かもしれませんが、法令や社員の権利意識が変わってきている今、不要なトラブルを防ぐ意味でも、会社のほうから歩み寄る姿勢を見せるのがよいでしょう。

以上(2024年12月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)

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【3分で分かる個人情報保護(2)】個人情報を取得・利用するときに守らなければならないルール

1 個人情報を取得・利用するときのルールは計5つ

個人情報を取り扱う際は、個人情報保護法に基づく取得・利用のルールを守らなければなりません。具体的には、

  • 個人情報を取得するときのルールが2つ
  • 個人情報を利用するときのルールが3つ

あります。以降で確認していきましょう。

2 個人情報を取得するときのルール

1)不正の手段によって個人情報を取得してはならない

当然ですが、不正の手段(偽りなど)によって個人情報を取得してはなりません。

2)個人情報を取得した場合は、速やかに、その利用目的を本人に通知または公表する

あらかじめその利用目的を公表している場合を除いて、個人情報を取得した場合は、速やかに、本人に個人情報の利用目的を通知・公表しなければなりません。

利用目的の通知・公表の方法については、特に定めはありません。

  • 通知であれば、書面・メール等に記載する
  • 公表であれば、ウェブサイトの分かりやすい場所や、店舗に掲示する

といった方法が考えられます。本人に対して口頭で利用目的を通知する方法も認められます。

なお、取得の状況から見て利用目的が明らかな場合は、利用目的の明示は不要です。例えば、名刺交換した相手に自社の商品・サービスの案内を送るときなどがそうです。

3 個人情報を利用するときのルール

1)利用目的をできる限り特定しなければならない

個人情報の利用目的は、できる限り具体的に特定しなければなりません。

例えば、ネット通販で商品を購入しようとしたとき、氏名や住所などの個人情報を入力しますが、その利用目的として「当社の商品の配送およびアフターサービスのご案内のため」と書いてあれば、商品を購入した顧客は、どのような目的で自分の個人情報が使われるのか認識できます。「事業活動に用いるため」「マーケティング活動に用いるため」といった曖昧な表現はNGです。具体的に利用目的を特定しているとは言えないからです。

2)利用目的の範囲を超えて取り扱うときは、あらかじめ本人の同意を得る

あらかじめ本人の同意を得ないで、利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはなりません。

ただし、この同意を得るために個人情報を利用すること(メールを送ったり、電話をかけたりするなど)は目的外利用には該当しません。

3)違法または不当な行為につながるような利用方法はNG

違法または不当な行為とは、法令(個人情報保護法など)に違反する行為や、直ちに違法とはいえないものの、法令の制度趣旨や公序良俗に反する行為など、社会通念上適正とは認められない行為をいいます。

解釈の余地はありますが、個人情報についてこれまでと異なる取り扱いをしようとするときは、見切り発車にせず、弁護士や個人情報保護委員会に確認するのがよいでしょう。不適正な利用の具体例が、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」に列挙されています。興味のある方は確認してみてください。

■ガイドライン3-2 不適正利用の禁止(法第19条関係)■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a3-2

4 要配慮個人情報を取得するときは「本人の同意が必要」

要配慮個人情報とは、

不当な差別や偏見などの不利益が生じないよう、取り扱いに特に配慮を要する個人情報

のことです。具体的には、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実、心身の機能の障害があること、医師等により行われた健康診断の結果などが該当します。

法令に基づく場合などの例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはなりません。

実務上、あらかじめ本人の同意を得ておくほうがよいのは、

社員の健康情報(健康診断の結果や病歴など、健康に関する個人情報)を取得する場合

です。健康情報の多くは要配慮個人情報に該当しますが、そうでない場合も機微な情報が含まれ得ることなどから、要配慮個人情報に準じて取り扱うのが望ましいとされています。

例えば、定期健康診断の結果などは、労働安全衛生法に基づいて取得するものですが、「健康の確保のため」という利用目的を通知し、社員の同意を得て取得するとよいでしょう。

■個人情報保護委員会「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/ryuuijikou_health_condition_info/

以上(2024年12月更新)

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【人事はつらいよ】採用面接の雑談が違法なの? 聞いてはいけない“NG質問”

1 緊張をほぐす雑談のはずが、なぜ炎上騒ぎに!?

会社のSNSが炎上している!! こんな報告がA社の社長に入ってきました。どうやら数日前に面接した相手がSNSに次のような投稿をしたようです。

「A社は採用面接で、出身地とか家族構成とか、採用に関係ないことをやたらと聞いてくるので気持ち悪い。というか、これって法律違反じゃない?」

情報は拡散し、「ひどい会社だ」という意見もあれば、「それくらいいいでしょ」という意見もあります。とにかく、A社にとって好ましくない事態なのですが、社長は釈然としません。

「確かに聞いたよ。『生まれはどちらですか?』『ご両親は何の仕事をしていますか?』って。でも、これって緊張をほぐすための雑談でしょ。なぜ、こんなにたたかれるの?」

2 “NG質問”は職業安定法などで定められている

日ごろから人と話す機会が多い社長は「コミュ力」が高いです。だからこそ、採用面接の面接官になったら、相手の緊張をほぐすための雑談もします。「お互いにリラックスして話しましょう」という優しさに他なりません。

ところが、この優しさが法律違反につながります。

求職者に聞いてはいけない “NG質問”

を尋ねると職業安定法に違反したり不法行為となったりする恐れがあり、“NG質問”の中には、「本籍・出生地」「家族」「尊敬する人物」「購読新聞・雑誌・愛読書」などが含まれるのです。

これらの質問は「就職差別につながる恐れがある」ということなのですが、「なぜ、愛読書を聞いたら就職差別になるのか?」という疑問は、一旦置いておきましょう。ルールはルール。まずは“NG質問”を確認してみたいと思います。

3 聞いてはいけない11項目の“NG質問”

厚生労働省は、就職差別につながる恐れがある情報として、

  • 本人に責任のない事項
  • 本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)

の2つを挙げ、これらに該当する質問の例を11項目紹介しています。

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採用面接でこれらの質問をしたらアウトです。身元確認の観点から、本籍・出生地、家族などは聞いておきたいという人もいるでしょうが、求職者の適性や能力には直接関係がないので、聞いてはいけません(質問する代わりに住民票を提出させるなどの対応も、採用段階では不可)。

ただ、これらの内容でも、相手が自ら進んで話す分には問題ないそうです。「私は◯◯県の出身なので寒さに強く……」「最近読んだ◯◯という本に感銘を受け……」などと話す求職者は結構いますよね。

また、“NG質問”をしても罰則はありませんが、

ハローワークから改善命令が出される場合があり、これに従わないと、厚生労働省ウェブサイトで会社名が公表されたり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されたりすることがあるので要注意

です。ちなみに、2022年度は求職者からハローワークに「本人の適性・能力以外の事項を把握された」との苦情が802件寄せられており、うち37.3%は「家族」に関することとなっています。

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4 逆に採用面接で聞いてもよい“OK質問”は?

1)求職者の適性・能力に関する質問

“NG質問”はできませんが、

求職者の適性・能力に関する質問はOK

です。例えば、

テレワークが可能かを確認するため、住宅状況について質問する

といったケースです。ただし、求職者とのトラブルを防ぐため、

「なぜ質問するのか」を求職者に説明し、了承を得た上で答えてもらうのが無難であり、また、確認のために必要となる最小限の情報に限るべき

です。

2)求職者の思想・信条に関係ない質問

求職者の適性・能力に関する質問の他に、

求職者の思想・信条に関係ない質問もOK

です。例えば、次のような質問です。

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このような質問は単なる雑談と考えられていますが、念のため、

「これは合否には関係がないのですが……」などと断ってから質問するのが無難

です。よかれと思ったことが裏目に出ることもありますので、ルールをきちんと把握しなければなりません。

以上(2024年12月更新)
(監修 TMI総合法律事務所 弁護士 池田絹助)

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画像:metamorworks-shutterstock

中小企業における子育て・介護支援の最新動向

令和7年4月に施行される育児・介護休業法の改正のなかには、育児休業取得状況の公表義務対象となる企業規模の変更も含まれ、これまでの「従業員数1000人超の企業」から「従業員数300人超の企業」へと大きく拡大されます。本稿では、今から準備を進めておきたい育児・介護関連の法改正について、その概要と対応のポイントをまとめます。

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年末年始に家族の集まるタイミングで相続について考えよう

親や兄弟姉妹と集まることが多い年末年始。普段話しづらい話題でも家族全員で顔を合わすからこそ話せたり、考えを確認できたりということがあるかと思います。
ぜひこの時期に、家族が将来どうしていくのがより良いか、対策も含めて相続について考えてみませんか。

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脱炭素機器のリース料を補助! ESGリース促進事業のご紹介

中小企業等を支援する国や自治体の補助金・助成金事業では、雇用・人材開発・IT補助・コロナ支援など幅広いジャンルの支援があります。
本レポートでは、おすすめの補助金・助成金について支援の内容や対象条件、申請方法等についてわかりやすく紹介します。

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