社員がキラキラ働き出す! 事業計画を策定する本当の意義

書いてあること

  • 主な読者:事業計画の重要性は認識しているが、実際には策定していない社長
  • 課題:事業計画の策定には時間がかかるし、社長(経営者)の頭の中にあれば十分では?
  • 解決策:事業計画は社員の成長のきっかけになる。社長と社員が一緒に事業計画を策定する

1 多くの社長が理解していない事業計画の意義

皆さんの会社では事業計画を策定していますか? もし策定していないとしたら、その理由は次のようなものかもしれません。

  • 策定するのに手間と時間がかかる
  • どうせ計画通りには進まないと思っている
  • 全て自分(社長)の頭の中にあるから大丈夫

この理由を見て「大体、そんな感じ」と思った皆さん、少しお付き合いください。今のままで放置していると、会社が次のような停滞ムードが漂う組織になってしまうかもしれません。

  • 経営方針は社長が決めていて、社員は指示に従うだけ
  • 足元の業務に追われ、目線を上げて検討できない
  • 良くも悪くも安定していて刺激がなく、社員に向上心が芽生えない

事業計画がない会社の社員は、

明確な目標と活動のよりどころがなく、目標を達成しようとする推進力もない状態

で働いているところがあり、経営が安定している会社ほど「ゆでガエル」状態に陥る恐れがあります。もちろん、事業計画さえあれば万全というわけではありませんが、

社長の頭の中にある見通しや、今、力を入れている事業の重要さが社員に共有されれば、社員は日々の頑張りが「何のためであるのか」を理解できる

ようになります。積極的な社員は目標達成のために必要な能力を得ようと自発的に勉強しますし、社外とのつながりを広める社員もいるでしょう。こうした社員がいる中小企業は強いです。

このように、事業計画は、

事業を定義し、その進捗を管理するだけでなく、組織を作り、社員の成長を促すもの

です。この記事では、「事業計画(利益計画・販売計画)」の一般的な内容を紹介しますが、

裏ミッションとして「社長にしかできない組織作り」

を意識していただければ幸いです。

2 事業計画で社員は全てを理解する

事業計画とは、

当期の経営目標を達成するための計画

です。事業計画に必ず盛り込まれるのは、

  • 利益計画:目標となる売上高や利益をまとめたもの
  • 販売計画:顧客別や商品別の売上高(販売数量)をまとめたもの

です。詳細な「数字」が記載されているので、金融機関などとコミュニケーションを図る際も役立ちます。この他、例えば人員を増やす場合や新規事業を始める場合は、その計画を詳細にまとめたりします。

いずれにしても、事業計画には会社全体の取り組みがまとめられています。また、「どの程度いけそうなのか?」といった肌感覚も盛り込まれるため、事業計画の策定に社員を巻き込めば、社員は会社の多くを知ることができます。大企業では、

社長→(ここが遠い)→経理本部→本部長→部長→課長→社員

といったコミュニケーションになりがちですが、中小企業では、

社長→全ての社員

といったコミュニケーションも可能です。社員からすれば、

利益計画・販売計画といった具体的な数値について、社長がどのような思いやロジックで考えているかを間近で見ることができる

という、貴重な経験になるわけです。

3 利益計画策定のポイント

1)利益計画は具体的な行動まで落とし込む

ここからは、少し実務的な話をします。

利益計画とは、目標となる売上高や利益をまとめたもので、いわば計画年度の予測損益計算書(予測P/L)です。事業計画の策定は利益計画から検討するのが一般的ですが、それは会社が達成すべきゴールを示すのが利益計画になるからです。

ゴールが決まると現状とのギャップも明らかになりますが、それだけでは社員はそのギャップを埋める具体的な行動を起こしません。ですから、利益計画の数字を達成するための具体的な行動まで落とし込む必要があります。例えば、当期純利益を前年度比20%増に設定する場合、

どの商品の販売を強化すべきなのか(販売計画)を、全社的な課題と位置付けた上で、具体的に検討していく

ことになります。

2)フォーマットは損益計算書に合わせる

利益計画の進捗管理をスムーズに行うために、利益計画のフォーマットは損益計算書と同じにするのが基本です。また、実現性・妥当性のある利益計画にするために、科目は細かな単位まで落とし込みます。細分化の基準は、

経理が使用している勘定科目や補助科目

です。さらに、年度の金額を月次で細分化します。支店(店舗)や部門が複数ある場合は、「支店(店舗)別・部門別」でも細分化するとよいでしょう。

3)当期純利益から逆算するのが基本

損益計算書は「売上高-費用=利益」という構成になっていますが、利益計画では、

目標利益=達成可能売上高-許容費用

と考えます。言葉を変えると、まず獲得すべき目標利益があり、それを達成可能な売上高の中で実現するために許容できる費用を算出します。会社の状況などによりますが、達成すべき目標登記純利益は、「企業(社長)の目標額」「過去数年間の実績額」「資金計画(借入金計画、資金調達計画など)」などを勘案して検討します。

借入金の返済などを考慮した当期純利益は、次の計算式で算出できます。

目標当期純利益=予定借入金返済額+予定配当金額+目標社内留保額-予定減価償却費

目標当期純利益を決定したら、損益計算書を下から上っていくイメージで費用を検討します。

  • 法人税などを加えて税引前当期純利益を算出する
  • 特別損益がある場合はこれを加減して経常利益を算出する
  • 営業外損益を加減して営業利益を算出する
  • 販売費・一般管理費を加えて売上総利益を算出する
  • 最後に売上原価を加えて必要な売上高を算出する

といった具合です。この際、不要な費用は削減していきますが、実現性・妥当性が重要です。無理に費用を削減して、見た目だけ筋肉体質の利益計画としても意味がありません。また、支出額を予測しにくい費用は、前年度実績を目安に計上するとよいでしょう。

4 販売計画策定のポイント

1)「顧客別」と「商品別」に検討する

販売計画は、利益計画で策定した売上高や売上総利益(粗利益)などを、顧客別・商品別に展開した計画であり、

  • 顧客別販売計画:顧客別に売上高などを検討する
  • 商品別販売計画:商品別に売上高などを検討する

が基本となります。

例えば、小売業など不特定多数、あるいは小口取引が中心の会社は、顧客別販売計画の策定にあまり意味がなく、商品別販売計画がメインとなります。一方、製造・卸売業など大口顧客との継続取引が中心の会社は、顧客別販売計画と商品別販売計画の両方を策定します。

2)実現性・妥当性がある計画を策定する

販売計画でも実現性・妥当性が求められます。社員を巻き込みながら販売計画を策定する場合、「目標利益を達成する!」という強い思いが社員に芽生えるのはよいのですが、実現が難しいチャレンジングな販売計画になってしまうことがあります。

気持ちは大事です。しかし、確たる根拠もないまま希望的観測に基づいて見積もられた販売計画は意味がなく、時間が進むほどに未達成が大きくなってきつくなります。必ず具体的なアクションプランとセットで考えましょう。

3)攻める順番を決める

販売計画の実現性・妥当性を高める戦略の考え方は、確実性の高いところを攻めることです。販売先(既存顧客・新規顧客)と商品(既存商品・新商品)に分けた場合、次のようになります。

  1. 既存顧客への既存商品の販売額
  2. 既存顧客への新商品の販売額
  3. 新規顧客への既存商品の販売額
  4. 新規顧客への新商品の販売額

これは、過去の販売実績や市場のトレンドなどに基づいて優先順位を付ける考え方です。「1.既存顧客への既存商品の販売額」は、最も確実性が高くなります。逆に「4.新規顧客への新商品の販売額」は未知であり、販売計画の精度は落ちます。

ただ、これはあくまでも一例です。新規事業にチャレンジしている場合などは、当然、「4.新規顧客への新商品の販売額」を検討することになります。

5 社長と社員が一緒に事業計画を遂行する

事業計画は策定して終わりではなく、遂行しなければ意味がありません。教科書的に言えば、

月次単位で実績を把握して、事業計画との差異を分析して対策を講じる

ことになるのですが、この説明に具体性はありません。

事業計画の遂行についても、月次で全社ミーティングを行い、全社的に共有するのが望ましいでしょう。メンバーはいずれ絞っていけばよいですが、当初は会社が本気で事業計画を運営していることを周知するため、全社員に参加してもらいます。そうする中で、自社に合った方針が固まっていきます。例えば、計画と実績にプラスマイナス5%の差異が生じた場合、その理由を追及する会社がありますが、ただそれをまねするだけでは現場の実務負担が増すだけです。

中小企業には中小企業のやり方、自社には自社のやり方があります。「プラスマイナス15%になった差異から注目する」など、自社にとって無理のないルールを決めればよいですし、見るべき数字を絞ってもよいでしょう。とにかく、

社長と社員にとって事業計画が常に意識される存在

になれば成功です。

また、会社にはチャレンジしなければならないときがあります。そうしたときこそ、この記事で紹介したように全社一丸となって事業計画を策定し、推進していければ理想的です。それが会社と社員の大きな成長につながります。

以上(2024年10月更新)

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画像:pixabay

「退職一時金と企業年金」「DBと企業型DC」、結局どれを選ぶべき?/人生100年時代の退職金制度を考える(2)

書いてあること

  • 主な読者:自社の退職金制度の方向性について考えている経営者
  • 課題:「退職一時金と企業年金」「DBと企業型DC」、結局どの制度を選べばいいのか?
  • 解決策:社員の手取りが増え、会社にとっても負担の少ない制度を選択する。税金のルール(退職所得控除、公的年金等控除など)、運用の責任・利回りなどに着目する

1 退職金をいかに魅力的な制度にするか?

大卒の社員が定年退職したときにもらえる退職金は、2012年(約1224万円)から2022年(約1092万円)にかけて、10年間で約132万円減少しています。高専・短大卒、高校卒の場合も傾向は同じで、特に2022年の退職金は両者とも1000万円を下回っています。

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退職金が減っている主な理由は、昔に比べ定年まで働く社員が減り、退職金制度の在り方を見直す会社が増えてきたからだといわれています。そんな状況なので、逆に今、退職金の額を増やそうとしている会社は、社員にとって魅力的に見えるかもしれません。

「ウチの会社の規模ではそんなに退職金を払えない……」という経営者もいるでしょうが、

  • 税金の負担が少なく、控除後の手取りが多くなる退職金制度
  • 会社の負担は一定で、社員が運用に成功すれば手取りを増やせる退職金制度

などもあるので、諦めるのはまだ早いです。

第1回では、「人生100年時代」の中で、社員が老後を過ごすのにどのぐらいの費用が必要で、いくら退職金があれば生活費を賄えるかをシミュレートしました。85歳までの生活を想定した場合、夫婦2人暮らしでは912万円、独身では744万円の退職金が必要でした。

今回は、「社員の手取りが多くなる退職金制度は何か」に注目し、「退職一時金 vs 企業年金」「DB vs 企業型DC」を比較し、どの制度が退職金の手取りがより多くなるのかをシミュレートします。なお、シミュレーションは、統計データを参考にした一例であり、実際の内容は会社の制度や社員の働き方、運用結果などによって異なります。

2 退職一時金 vs 企業年金

退職金の受け取り方には「退職一時金」「企業年金(退職年金)」の2つがあります。

退職一時金は、退職金を一括で受け取る方法です。退職所得控除(課税計算をする際、退職金の収入額から差し引くことのできる非課税枠)が利用でき、退職金が一定金額以内であれば所得税や住民税はかかりません。

企業年金は、退職金を年金形式で受け取る方法です。退職金を受け取り切るまでは勤めていた会社が運用してくれるので、一時金で受け取るより年金額が多くなることがあります。ただし、退職所得控除は受けられず、代わりに公的年金等控除(課税計算をする際、公的年金と企業年金の合算額から差し引くことのできる非課税枠)が適用されます。

両者のどちらが魅力的かですが、結論、退職金が退職所得控除の範囲内に収まるのであれば「退職一時金」で問題ありません。一見、企業年金のほうがお得に感じますが、なぜでしょうか。その理由を次のシミュレーションで解説します。

【試算条件】

  • 65歳男性で、配偶者はなし
  • 勤続43年で、再雇用はなし
  • 退職金額は1000万円
  • 一時金で受け取る場合と、年利1.0%の10年確定年金(年間101万円)で受け取る場合で試算
  • 公的年金は年180万円(月15万円×12カ月)を65歳から75歳まで受け取るものとする
  • iDeCoや企業型DCは未加入とする
  • 社会保険料は考慮しない

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退職金が退職所得控除の範囲内に収まるのであれば、退職一時金で受け取ったほうが手取りは多くなります。額面上多く見える企業年金を選びたくなりますが、退職一時金で受け取ったほうが支払う税金が少なくなるのです。その理由は、退職所得控除と公的年金等控除の非課税枠の違いにあります。

退職所得控除は、勤続年数が20年超の場合、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で算定します。勤続年数が長いほど、非課税枠を大きく利用できる仕組みです。勤続43年なら、

退職一時金の非課税枠=2410万円(800万円+70万円×(43年-20年))

となります。

一方、公的年金等控除は、社員の年齢と「公的年金+企業年金」の額をベースに算定されます。社員が65歳以上で「年110万円<公的年金+企業年金<年330万円」(その他所得を考慮しない)の場合、公的年金等控除は年110万円です。今回のケースでは「公的年金(年180万円)+企業年金(年101万円)=年281万円」なので、10年間で見ると、

企業年金の非課税枠(10年間)=1100万円(110万円×10年間)

となるのです。額面上は企業年金のほうが多くても、税金の非課税枠を考えると、退職一時金のほうがお得なわけです。

改めて、退職一時金と企業年金のメリット・デメリットを確認してみましょう。

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手取りの観点では、シミュレーションでも紹介した通り、退職一時金に軍配が上がることが多いようです。ただ、一度に大金が手元に入るため、計画性がなかったり浪費癖があったりする社員の場合などは、使い込んでしまうリスクを考えて、企業年金のほうがよいという考え方もできるでしょう。

3 DB vs 企業型DC

DB(確定給付企業年金)は、受け取る年金額があらかじめ決まっている企業年金です。労使間の規約に基づいて運用する「規約型」と、会社とは別法人の基金を設立して行う「基金型」に分けられます。想定通りの運用ができない場合、会社が追加の拠出をするので、社員は決められた年金額を必ず受け取れます。

一方、企業型DC(企業型確定拠出年金)は、会社が掛け金を拠出するものの、運用は社員が自分の責任で行う企業年金です。運用に成功すれば退職金を本来の額よりも増やすことができますが、運用に失敗した場合は、元本割れで退職金が減ることもあります。

結論から言うと、両者のどちらが魅力的かは、ケース・バイ・ケースです。具体的に、次のシミュレーションで解説します。

【試算条件】

  • 65歳男性で、配偶者はなし
  • 年収400万円で試算
  • 勤続43年で、再雇用はなし
  • DB・企業型DCともに、65歳になったときから10年間、年金形式でもらうと仮定
  • DBは、企業年金連合会の規約型のデータを基に年100万円で試算
  • 企業型DCは、22歳で加入とし、運用失敗(元本割れ)した場合と、運用成功(月2万円を年利2.0%で運用)した場合の両方を想定
  • 公的年金は年180万円を65歳から75歳まで受け取るものとする
  • 社会保険料は考慮しない

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計算結果を確認すると、手取り合計は、

企業型DC(運用成功)>DB>企業型DC(運用失敗)

となっています。上記のシミュレーションの場合、運用成功した企業型DCの金額は魅力的ですが、運用に失敗した場合のリスクもなかなかです。確実に退職金を用意したい社員にとっては、DBを選択したほうが無難かもしれません。

なお、DBの受け取り方や企業型DCの積立金額・利率によって試算結果は異なるので、実際の額のイメージについては、専門家などに確認してみましょう。また、企業型DCは最大で5.5万円までの掛け金を設定できるため、上記の試算結果よりも多くの退職金を用意できる可能性があります。

改めて、DBと企業型DCのメリット・デメリットを確認してみましょう。

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シミュレーションでも紹介した通り、DBと企業型DCは対照的な制度です。「将来の受給額を確定させたい」という社員にはDBが、「運用次第で元本以上の退職金を受け取りたい」という社員には企業型DCがオススメです。

4 「制度の併用」も視野に入れる

退職金制度は、必ずしも1つに絞る必要はありません。複数の退職金制度を組み合わせる「制度の併用」も可能です。例えば、DBと企業型DCの併用がそうです。

前述した通り、DBは将来の受給額が決まっていて安心な半面、会社にとっては追加拠出のリスクがあり、企業型DCは会社が運用成績について責任を負わない半面、社員にとっては元本割れのリスクがあります。この点、両制度を併用すると、それぞれの制度の長所を活かしつつ、リスクを低減できる可能性があります。

なお、DBと企業型DCを併用する場合、2024年12月からの制度改正についても押さえておきましょう。両制度を併用する場合、

2024年11月までは、企業型DCの掛け金は「月額2.75万円」が上限

となります。つまり、DBの運用に関係なく、企業型DCの掛け金の上限が一律で決まってしまうルールになっているのですが、制度改正により、

2024年12月からは、企業型DCの掛け金は「月額5.5万円-DBの掛け金相当額」が上限

になり、改正前よりも柔軟な制度運用が可能になります。詳細については、厚生労働省ウェブサイトをご確認ください。

■厚生労働省「確定給付企業年金制度の主な改正(令和6年12月1日施行)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/newpage_00041.html

次回は、「退職金制度を見直してみたが、それでも十分な退職金を用意できそうにない……」という経営者向けに、財形貯蓄やiDeCo+(イデコプラス)などの福利厚生と退職金制度を併用して、社員の資産形成をサポートする方法を紹介します。

以上(2024年11月作成)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:pek-Adobe Stock

【中堅社員のスピーチ例】この人にあと何回会える?

【ポイント】

  • 年月を経ると、「いるのが当たり前」だった人と別れなければならないことがある
  • 一回一回の出会いを意味のあるものにする、「一期一会」の精神を大切にする
  • 一期一会を意識すると、人との接し方や仕事への向き合い方が変わってくる

おはようございます。今日は、私の家族のことについて話します。少し前に父が誕生日を迎えたので、お祝いをするため、父と母を浅草に連れていきました。2人が人力車に乗ったことがないというので、人力車に乗せて浅草の町を観光し、そのまま和楽器の生演奏を楽しめる居酒屋へと連れていき、食事と音楽を堪能しました。父と母はたいそう喜んでくれました。

これまでもささやかな誕生日プレゼントなどは時折贈っていましたが、実は両親のためにこうしたイベントを企画するのは、恥ずかしながら生まれて初めてのこと。なぜ、今回急に企画を考えたのかというと、自分が30代、両親が60代を迎える中で、ふと「自分は両親にあと何回会えるのだろう?」という疑問が浮かんできたからです。

両親はまだまだ元気ですが、普段は離れて暮らしていて、直接顔を会わせるのは年に数回です。昔は「両親がいるのが当たり前」と考えていましたが、年月とともに亡くなる親戚も出てくる中で、かつては当たり前だと感じていたことが、次第にそうではなくなってきました。だからこそ、「両親が健在なうちに、少しずつ恩返しをしていきたい」と、今さらながら考えたわけです。

会社員としての日々も同じです。私は毎日皆さんと挨拶を交わし、顧客や取引先と接していますが、時折「この人にあと何回会えるかな?」と考えることがあります。また、毎日のようにデスクに向かい、仕事をしていますが、「この日々はいつまで続くのかな?」と考えることもあります。

茶道には、「一期一会(いちごいちえ)」という言葉があります。茶会で相手と接する際は、それが一生に一度の出会いであると心得て、互いに誠意を尽くすべきという考え方です。茶はいつでも飲めるけれど、「同じ茶」が飲める機会は一度きりしかないから、その一度きりを大切にしようというのです。

「日々、当たり前だと思っていることは、実は当たり前ではないんだ」と考えると、多少馬が合わない人がいたとしても、あるいは日々の仕事にマンネリを感じていても、向き合い方が変わってくるかもしれません。月並みではありますが、今日という日を大切にしていきましょう。

以上(2024年11月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

デリケートな「生理」の問題。 体調が悪そうな女性社員に、どう声をかけますか?~事例付きで紹介

書いてあること

  • 主な読者:「生理」で体調を崩している女性社員への対応を知りたい男性の経営者や上司
  • 課題:女性特有の問題だけに深入りしにくいし、どう対応すればいいのか分からない
  • 解決策:女性社員が自然に自己対応できる雰囲気を作る。まずは生理の基礎知識を再確認する。また、福利厚生の制度などを取り入れることも効果的

1 「生理の問題はタブー」という意識から脱却しよう

女性にとって深刻な「生理」の問題。女性社員314人に独自アンケート(2024年9月30日から10月1日まで)を実施したところ、62.1%から「生理が原因で不便を感じたことがある」との回答が得られました。

もしも職場に生理で体調を崩している女性社員がいたら、男性の経営者や上司の方は、どう声をかけるでしょうか? 正直なところ、

「助けにはなりたいけど、女性特有の問題だけに声をかけにくい……」

という人が多いかもしれません。とはいえ、「何とかしたいけど、何もできない」という状態が続くのは、お互いにとってストレスになりますし、労務管理上の問題も出てきます。

そこで、この記事では、生理の問題に冷静に対処する上で押さえておきたい内容として、

  • 生理の基礎知識(周期や症状)、女性社員が体調を崩したときのための福利厚生
  • 体調の悪そうな女性社員への声のかけ方(だめな言い方、望ましい言い方の事例付き)

を紹介します。

2 生理の基礎知識と福利厚生

具体的な内容に入る前に、生理について押さえておいてほしいことが2点あります。

  • 症状には個人差があること
  • 体調不良の際に備えて、働き方の選択肢があるのが望ましいこと

生理の症状やその程度は、個人によってかなり大きな差があります。自分の家族などの症状を基準にすると、対応を間違える恐れがあります。

また、生理による体調不良の程度は、女性社員本人にしか分かりません。休むのか出勤するのか、あるいは、テレワークに切り替えるのか会社で稼働を続けるのか。本人に選択肢を与えられることが望ましいです。

以上2点を念頭に置いた上で、まずは生理の基礎知識から見ていきましょう。

1)生理の基礎知識(周期や症状)

生理について、最低限押さえておきたいのが図表1の内容です。

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繰り返しになりますが、全ての項目について「個人差がある」ことに注意が必要です。例えば、腹痛はなく、経血量も少なく、3日で生理が終わる人や、立ち上がれないくらいの体調不良と、気軽に動けない経血量と、7日以上の出血などの症状を抱えている人もいるなど、かなり差があります。

他に知っておくとよい知識として、次のようなことが挙げられます。

  • 経血を排出するタイミングや量を、本人がコントロールすることはできない
  • 生理は必ずしも、毎月決まった日に来るわけではない
  • 病院に行っても、アレルギーや体質、周りの環境によって、症状が改善しない人もいる
  • 生理前にPMS(月経前症候群)で体調が悪くなる人も。何らかの症状がある人は70%~80%、日常生活に支障をきたす人は5.4%ほど(日本産婦人科学会「月経前症候群(Premenstrual syndrome:PMS)」)
  • 生理の症状には個人差があるため、同性である女性同士でも理解し合うことができず、症状が軽い人が症状が重い人に心無い発言をすることも少なくない。「女性のことだから」と他の女性社員に対応を任せるのではなく、会社として対応を考えるのが望ましい

2)女性社員が体調を崩したときのための福利厚生

労働基準法上、生理で就業が困難な女性社員から請求があったら、会社は休暇を与えなくてはなりません。これを一般的に「生理休暇」といいます。とはいえ、ただ生理休暇を与えるだけでは、体調不良の女性社員への対応として不十分なケースもあります。

誰にとっても働きやすい職場を実現するため、生理に関する福利厚生の例を紹介します。 なお、実際に福利厚生を整備する場合、次のポイントが網羅できていると理想的です。

  • 複雑な手続きや直接的な言葉なしで、自己判断で制度を利用できる
  • 本人に行動の選択が委ねられている
  • 「女性だけ」「生理痛だけ」に限定しない

1.「体調不良休暇」を導入しよう

2023年に厚生労働省が公開したデータでは、

女性労働者がいる事業所のうち、2020年度中に生理休暇の請求者がいた事業所はわずか3.3%(出所:厚生労働省「働く女性と生理休暇について」)

です。生理休暇を請求しない理由としては、「(男性上司なので/利用している人が少ないので)申請しにくい」「休んで迷惑をかけたくない」などがあるようです。

こうした問題をクリアしたい場合、理由に関係なく取得できる年次有給休暇(年休)を使ってもらうという方法もありますが、「せっかくの年休が、毎月の生理のためだけに減っていくのは困る……」と不満に思う女性社員もいるかもしれません。

そこで、会社が独自に定める特別休暇の1つとして、

性別に関係なく、生理の症状に限らず、体調不良であれば取得できる「体調不良休暇」

などを導入するのもよいでしょう。なお、性別を問わず腹痛や頭痛がある場合、鎮痛剤や他の薬を飲んでから効果が出るまでは、一定の時間を置く必要があります。こうした場合に備え、

体調不良休暇を「1時間単位」で取得できる仕組みにしておく

こと、さらに鎮痛剤などが効くまでの間、小休憩を取れる場所も確保できるとよいでしょう。

2.テレワーク制度の拡充を検討しよう

テレワークを実施できる業種・職種の場合、

体調不良時に自己判断でテレワークへの切り替えができる制度

を導入するのも効果的です。生理による症状で就業できなくなる理由には、「職場の空調で気分が悪くなる」「人目が気になる」「気を使われたくない」など、勤務場所を自宅に切り替えれば解決する問題も存在します。

3.専門家に相談しやすい環境を導入しよう

婦人科医などの専門家に相談しやすいシステムを導入するのもいいでしょう。生理痛の症状で困っているけど、上司や同僚には相談しにくいという場合、

婦人科のオンライン診療サービスなどを福利厚生に加えることで、本人が自発的に診療を受ければ、症状を和らげられる可能性

があります。職種にもよりますが、通院にかかる時間や病院での待ち時間の問題をクリアできます。なお、当たり前ですが、こうした福利厚生サービスは存在が知られていないと意味がないので、定期的に社内に周知することも忘れないようにしましょう。

4.女性用トイレに生理用品を常備しよう

急に生理が来たときにも対応できるよう、生理用品を女性用トイレに常備しておきます。ただ「置いておく」だけでは防犯上好ましくない場合もありますが、最近は女性用トイレの個室内で、アプリを使って無料で生理用品を取り出せる機器なども開発されています。

5.研修制度を導入しよう

生理用品メーカーなどは、会社向けに生理に関する研修を行っているところがあります。研修では生理の基礎知識や生理用品についての講習の他、相互理解を促すディスカッションなども実施されます。性別や年齢に関係なく、社員全員が研修を受けることで、知識や会話の擦れ違いを緩和することができるでしょう。

3 体調の悪そうな女性社員への声のかけ方

ここでは、体調が悪そうな女性社員に接する際の声のかけ方の事例を、

  • セクハラやパワハラになり得る「問題発言(だめな言い方)」
  • 問題発言を女性社員に寄り添うものに変えた「言い換え事例(望ましい言い方)」

に分けてシチュエーション別に紹介します。なお、問題発言のセリフは、冒頭で紹介した独自アンケートの対象者(女性社員314人)のうち、「生理中、職場で不快に感じる言動をされた(あるいは見聞きした)ことがある」という85人が、「実際に言われて困った言葉」です。

1)女性社員の体調が悪そうに見えるとき

まずは、女性社員の体調が悪そうに見えるときの言い換え事例です。

生理と明言しないこと、周囲に他の社員がいる環境では指摘しないこと

がポイントです。

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2)女性社員から生理痛がつらいと申告されたとき

次に、社員に「生理痛がつらい」と申告されたときの言い換え事例を紹介します。

否定から入らないこと、解決法を決め付けずに本人に選択を委ねること

がポイントです。

例えば、病院に行くかどうかは本人の体調にもよりますし、人によっては生理痛のために病院に行くことを悟られたくない場合もあります。

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3)業務が忙しいとき

業務が忙しいときに体調を崩されると、いつもよりスムーズに業務ができなくなって困ることもあるでしょう。しかし、生理の症状はコントロールできないことも多く、また、生理休暇の取得の拒否は、前述した通り労働基準法違反にもなり得ます。どうしても人員が必要な場合、

時間休や休憩の提案、テレワークへの切り替えを含め、本人に判断を委ねること

がポイントです。

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4)その他

その他、アンケートで挙がってきた問題発言としては、次のようなものがあります。これらのセリフは言い換えが難しく、そもそも発言を控えるべき言葉です。

・生理休暇、前回と同じ日に取らないんだね

生理は毎月決まった日に来るわけではありません。

・今日は生理休暇取れないよ

労働基準法上、生理休暇は女性社員が請求したら必ず取得させなければなりません。

・(冷え込みが辛いという女性社員に対して)せっかく換気しているのに……

生理痛は、冷え込みで症状が悪化します。嫌な顔をせず、どうしても換気が必要な場合はブランケットを貸し出す、事前に許可を得てコートなどを着てもらう、風の当たらない場所に移動してもらうなどの配慮が求められます。

・生理中かどうか、においでわかるときがあるんだよね

女性に明らかに不快感を与える発言は、セクハラになる恐れがあります。

・女はこれだから困るよ

「女だから」「男だから」など性差を強調する発言は、セクハラになる恐れがあります。

・今日はよくトイレ行くね/今忙しいからトイレ行かないで

相手を精神的に追い詰めたり、明らかに不要(または不可能)なことを命じたりする発言は、パワハラになる恐れがあります。

以上(2024年11月作成)

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画像:nabuKO

企業理念を策定する際の基本ステップ

書いてあること

  • 主な読者:企業理念を通じて、企業の価値観を社員と共有したい経営陣
  • 課題:企業理念を策定、あるいは改定したい。企業理念を日々の活動に役立てたい
  • 解決策:社員を巻き込みつつ企業理念を策定、あるいは改定し、定期的に思いを再確認する場を設ける

1 今こそ求められる企業理念

  • お客さまを起点にすること、創造への情熱、優れた運営へのこだわり、長期的な発想―Amazon.com,Inc.)
  • Paint it RED! 未来を塗り替えろ。―コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社
  • 服を変え、常識を変え、世界を変えていく―株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)

これらは全て、誰もが名前を知っている企業の「企業理念」です。

企業理念は、企業としてどうありたいか、大切にしたい価値観はどういうものかを言語化し、社内外に示すものです。経営環境がめまぐるしく変化する今だからこそ、企業理念を策定する、あるいは改定することに大きな意味があるのではないでしょうか。

また、自社が今後も進化し成長していくためには、社員一人ひとりが自分で考え行動できる組織が理想的です。社員が企業の一員としてどう動いていくかを考える際に、企業理念は行動のよりどころとなります。

自社がこの先も成長し、業績を伸ばしていくために、社員全員で企業理念を共有することには一考の価値があります。この記事では、社員を巻き込みながら企業理念を策定、あるいは改定するためのステップを、順を追って紹介します。

2 企業理念を策定、あるいは改定する際の基本ステップ

1)まずは現状分析を行う

企業には、明文化されているか否かにかかわらず、「企業文化(価値基準)」が存在します。

例えば、

  • 商品を作るときに必ず考えるべき視点
  • サービスとして世に出す際に譲れない基準

といったもので、「企業文化」は「その企業らしさ」を表します。この企業らしさは、企業理念と密接に関係してきます。仮に、素晴らしい文章・文言の企業理念を策定したとしても、今ある企業文化とかけ離れていると社員は共感せず、企業理念を策定、あるいは改定することによる効果は期待できなくなるでしょう。

そこで、まずは企業文化となっている価値基準や考え方を明らかにするために、自社の現状分析をしてみましょう。このとき、

必ず社員を巻き込んで行う

ことがポイントです。今の企業文化を醸成し、それに従って実際に行動している社員たちを対象としたアンケートやインタビューを行ったりすると、自社のリアルな現状が見えてきます。

ただし、単に「企業活動において重視していることや価値観を教えてください」と質問しても、社員は回答に困り、有効な回答が得られにくいでしょう。同年代の社員や同じ部課の社員など、

比較的親しい人たちを複数集めて、「仕事をするときに、何を大切にしている?」などのテーマで、雑談風に話を進める

のも一策です。

2)次に共通項を探し出してキーワードを検討する

現状分析から得た結果を基に、多くの社員が共有している価値観や考え方などを抽出していきます。具体的には、社員の口からよく出るキーワードやフレーズなどを探し、羅列していくと、現状の企業文化がだんだんと見えてくるでしょう。

例えば、

「少しくらい時間がかかっても、お客さまのためなら動いちゃうところはあるよね」

「みんなそれを嫌だとも思っていないですよね。むしろ要望を言ってもらったほうがやりがい感じるというか」

「お客さまに喜んでもらえることを大切にしている社員が多いですね」

という会話があったとします。ここからは、「お客さま第一」「やりがい」といったキーワードやフレーズが抽出できます。

次に、抽出したキーワードやフレーズの妥当性を検討します。社員の価値観を尊重することは重要ですが、それだけで企業理念を策定することはできません。企業のかじ取りを行う経営者の思いも反映させつつ、社員の思いとバランスを取ることが重要です。

また、多くの社員の中で共有されているキーワードやフレーズでも、それが企業にとってあまり重要なものでなければ排除します。これらの視点から検討を加え、実際に企業理念に盛り込むべきキーワードやフレーズを絞り込みます。

3)表現のスタイルを検討し、企業理念を具体的に決めていく

最後に、いよいよ企業理念を形にしていきます。策定した企業理念は、社員に広く受け入れられ、親しまれるものにする必要があります。そのためには、表現のスタイルについても、慎重に検討することが大切です。

例えば、表現のスタイルには、以下のようなものが挙げられます。

  • 漢字中心のシンプルなスタイル(「利他の心」「愛他主義」など)
  • 長めの文章スタイル(「私たちは、お客さま第一主義を貫き通します」など)
  • カタカナ・英語スタイル(「クライアント・ファースト」「Just for our clients」など)

どれも意味としてはほとんど同じですが、伝わり方や印象が全く違うことが分かります。社風や年齢層などに見合った表現方法を選ぶことで、社員に浸透しやすい企業理念になります。表現方法一つにしても、企業の「あるべき姿」を表す重要なものと認識しましょう。

3 企業理念を活用して、前向きな企業を目指す

最後に、企業理念を経営に活かしている好事例を紹介します。

今回、企業理念の活用についての取材に応じてくださったのは、タスキーグループ代表の青谷 貴典(あおや たかのり)氏。同グループは仙台とつくばを主な拠点に、バックオフィスの総合支援事業を行っている企業です。

青谷氏は、企業理念についてこう語ります。

「企業理念って、旗のようなイメージなんです。企業としての課題を肌で感じると、自然に旗が立つ。社員も経営者も、同じ旗のもとに集まって、共感して、一緒に働き戦っていく。そして、その旗の下が居場所になっていくような」(青谷氏)

同グループが掲げているのは、以下のようなMVVC(ミッション、ビジョン、バリュー、カルチャー)。企業によってMVVCの定義は異なりますが、一般的にミッションが本記事における「企業理念」、カルチャーが「企業文化」に相当します。

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同グループでは今年の夏初めて、これらを活用した研修を行いました。その目的は「企業理念(ミッション)」と密接に関係している、「企業文化(カルチャー)」の再検討です。

「私自身も、新卒で入社した企業で一社員として働いていた頃は、「企業理念は経営者から与えられるもの」という印象が強かったんです。すると、仕事もやらされている、という感覚になり、自分の仕事に手触り感がなくなって、楽しくなくなっていく。やはり企業理念は、社員全員が「自分事」として感じる必要があると思っています。そのために、若手含めみんなで、企業理念について考える機会が欲しかったんです」(青谷氏)

研修では、インターンも含めた社員全員でグループのMVVCを再確認。グループの価値観や強みについてディスカッションを行った後、企業文化(カルチャー)について再考すべく、意見を出し合いました。

「企業理念を活用した研修で、社員それぞれの視点や価値観を聞くことができて面白かったし、参考になった。これからも定期的にこのような研修を続けていきたいし、若手社員主導で、時代に合わせて企業理念を改定したりすることも考えています。これをやりなさい、と押し付けられるよりも、何でやらなきゃいけないのか、を自分たちで考えて、仕事の価値観を明確にしたほうが、働くことは確実に楽しくなりますから」(青谷氏)

今回の研修で話し合った意見を基に作り上げた、タスキーグループの新たな企業文化は、2025年の年明けにも発表予定です。

トップダウン方式で企業理念を決めるのではなく、社員と共に考え、共有し、一丸となって働いていく。

企業理念という「旗」を全社一体となって描くことは、皆が前向きに働くためのきっかけにもなり得るでしょう。

企業理念は、策定したら終わりというわけではありません。企業理念を企業内部に浸透させ、それを常に尊重して活動できる組織を作り上げることに意味があります。そのためには、

社員に企業理念の周知徹底を図ることはもちろん、経営者自らが率先して企業理念を重視した活動を心掛けること、そして企業理念に込められている思いを社員と共有する場を定期的に設けること

が必要です。定期的に場を設けることは、テレワークなど社員同士が離れて仕事をする機会が多くなっている場合、コミュニケーションの機会創出という面でも有効でしょう。

また、既に企業理念が存在している企業であっても、定期的に企業理念を見直すことを検討してみましょう。その際は、現場で働く社員たちも巻き込み、共に企業理念を練り直すことが重要です。皆で同じ理念を持っている、という感覚を手に入れることで、社員はもっと活き活きと働けるようになるのではないでしょうか。

以上(2024年10月更新)

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画像:pixabay

技能実習制度は廃止へ 「育成就労制度」の創設で外国人雇用はどう変わる?

書いてあること

  • 主な読者:外国人雇用を検討している経営者や人事労務担当者
  • 課題:技能実習制度が廃止され「育成就労制度」が始まるらしいが、内容がよく分からない
  • 解決策:企業が外国人を「特定技能」に育成して戦力化する制度。まずはイメージをつかむ

1 「国際交流」から「人材確保」にシフトした新制度が開始

人手不足が深刻化する中、日本で働く外国人の数は増加を続け、2023年10月末時点で過去最高の204万8675人となりました。このうち41万2501人(20.1%)は「技能実習」の在留資格を持つ外国人、技能実習生です(厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況」)。技能実習制度は、技能実習生が日本企業の下で実習を受け、母国で身に付けにくい技能の習得を図る制度ですが、「企業が技能実習生に、技能の習得に関係ない単純労働をさせる」などの問題が頻発し、

2024年6月21日から3年以内に技能実習制度に代わり、新たに「育成就労制度」が開始

されることになりました。

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育成就労制度は、「育成就労」という在留資格を設け、外国人を原則3年間で一定以上の技能を持つ「特定技能」に育成する制度です。根拠法は、「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(育成就労法)」になります。

技能実習制度と似ていますが、

  • 技能実習制度は、外国人が日本で習得した技能を、将来母国に持ち帰ることを想定した「国際協力」のための制度(特定技能への移行も可能だが、制度上は「帰国」が原則)
  • 育成就労制度は、外国人が技能の習得後も、日本企業の戦力として活躍することを想定した「人材確保」のための制度(帰国せず、日本に「在留」することが原則)

であり、目的が異なります。

育成就労制度は、外国人が日本に残って働くことが前提なので、受け入れ企業は外国人を将来の戦力にすべく、大切に育成するでしょう。前述した、企業が「技能の習得に関係ない単純労働をさせる」という問題の解決につながることも期待されます。

施行はまだ先ですが、時間をかけて外国人を戦力化していく制度なので、人手不足解消の打ち手を外国人に期待している企業は、早めに準備をしておいたほうがよいかもしれません。以降で制度の概要を簡単に紹介するので、今のうちにイメージを押さえておきましょう。

なお、育成就労について詳しく知りたい場合、次のURLも併せてご確認ください。

■e-Gov「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」■
https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC0000000089/20270620_506AC0000000060
■出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正法について」■
https://www.moj.go.jp/isa/01_00461.html

2 育成就労制度は、特定技能制度の「前段階」

育成就労制度の紹介に入る前に、先ほども軽く触れた「特定技能制度」について説明します。

特定技能制度とは、国内での人材確保が困難な「特定産業分野」において、一定の技能レベルを持つ外国人を受け入れることを目的とした制度

です。在留資格は、業務に必要とされる技能レベルに応じて「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類に分けられます。2号のほうが1号よりもレベルの高い技能を必要とします。

  • 特定技能1号:相当程度の知識または経験を要する業務に従事する外国人
  • 特定技能2号:熟練した技能を要する業務に従事する外国人

2024年9月30日時点で、特定技能1号の特定産業分野は、「介護」「ビルクリーニング」「工業製品製造業」「建設」「造船・舶用工業」「自動車整備」「航空」「宿泊」「自動車運送業」「鉄道」「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」「林業」「木材産業」の16分野です。特定技能2号の特定産業分野は、この16分野から「介護」「自動車運送業」「林業」「鉄道」「木材産業」を除いた11分野です。

特定技能の外国人を雇用できれば、企業にとっての「即戦力」になりますが、それだけの人材を確保するのはハードルが高く、この点をクリアするための制度が育成就労制度です。

育成就労の外国人は、在留資格を取得した当初は特別な技能を持っていませんが、

  • 原則3年間の育成就労で技能レベルを高め、特定技能1号の在留資格を取得させる
  • 特定技能1号の在留期間中(上限は5年間)に、よりレベルの高い技能を身に付けさせる
  • 特定技能2号の在留資格を取得させる(「介護」分野は対象外)

という流れで、段階的に戦力化が図れます。なお、特定技能1号には在留期間の上限(5年間)がありますが、特定技能2号には上限がない(在留資格の更新は定期的に必要)ので、2号まで取得させることができれば、長期的に企業の戦力として活躍してもらうことが期待できます。

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3 技能実習制度との違いとは?

1)対象としている産業分野・職種が違う

育成就労制度は、特定技能制度の「前段階」という位置付けなので、対象としている産業も同じく、特定産業分野が基本になります。正確に言うと特定産業分野のうち、

就労を通じて技能を修得させることが相当とされる「育成就労産業分野」

が対象になるのですが、詳細は現段階では明らかにされていません。

一方、技能実習制度では、技能実習2号・技能実習3号については従事させられる職種が省令で定められています(技能実習1号については特に定めなし)。

両者が対象としている産業分野・職種は若干異なっていて、例えば、特定技能1号における分野と技能実習2号移行対象職種を比較してみると、2024年9月30日時点で、

特定産業分野のうち「自動車運送業」「林業」について、対応する技能実習の職種がない

ことが分かります。詳細については、次のURLをご確認ください。

■出入国在留管理庁「制度説明資料 : 外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(令和6年9月30日更新)」(産業分野・職種の比較については資料P40以降を参照)■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html

仮に育成就労法の施行日(2024年6月21日から3年以内)の時点で、企業が技能実習生を受け入れている場合、受け入れ企業の産業分野が「育成就労産業分野」として設定されていれば、そのまま育成就労制度の下で受け入れを続けることができます。

また、施行日の時点ですでに来日している技能実習生については、技能実習制度の下で受け入れを続けることができます。施行日までに技能実習計画の認定の申請がなされ、施行日から原則3カ月以内に技能実習を開始する場合についても同様です。

2)計画の認定手続きは基本的に同じ(ただし、育成就労制度のほうが手間が少ない)

育成就労制度では、外国人の受け入れ企業が「育成就労計画」を作成し、「監理支援機関」の認定を受ける必要があります。育成就労計画には

外国人に従事させる業務、業務に必要な技能、育成就労の目標(例:日本語能力)など

を定めます。

技能実習制度の場合も、受け入れ企業が技能実習計画を作成して監理団体の認定を受ける必要があり、このあたりの流れはどちらの制度も基本的に同じです。

  • 技能実習制度では「技能実習1号」「技能実習2号」「技能実習3号」のそれぞれの段階で計画の認定を受ける必要がある(最大3回、認定を受ける必要がある)
  • 育成就労制度では、当初から外国人労働者のキャリアアップを視野に入れて、3年間の計画の認定を受ければよい(1回、認定を受ければよい)

という具合に、育成就労制度のほうが認定手続きにかかる手間は少なくなっています。

3)就労開始前の日本語教育がマストに

育成就労制度では、外国人が就労を始める前までに、日本語能力「A1」相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格すること、またはそれに相当する日本語講習を認定日本語教育機関などで受講することが求められます。

一方、技能実習制度では、日本語能力の要件は原則ありません(「介護」分野を除く)。

育成就労制度で必要とされる「A1」とは、日本語の初歩レベル。日常的な表現や非常に基本的なフレーズを理解・使用でき、相手がゆっくり、はっきりと話し、手助けしてもらえれば、簡単なやりとりができるレベルです。業種によっては、より高度なレベルの指定も可能になる予定です。なお、受け入れ企業が外国人の日本語教育を行う義務を負うのかどうかは、現段階では明らかにされていません。

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4)一定の状況を満たせば転籍も可能に

育成就労制度では、技能実習制度よりも「転籍(企業との労働契約を解消し、別の企業と労働契約を結ぶこと)」の要件が緩和されています。

技能実習制度では技能実習生の失踪が多く、2023年の失踪者数は9753人にも上ります(出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数(速報値)」)。出入国在留管理庁によると、失踪の主な原因としては「賃金の不払いなど、受け入れ企業の不適切な取り扱い」も多いようです。

そして、この問題の温床になっていると指摘されてきたのが、技能実習生に対する「転籍」の制限です。技能実習制度では転籍の制限が厳しく、技能実習生は受け入れ企業の労働条件が悪質でも他社に移ることができず、失踪しか選択肢がない状況に追い込まれやすかったのです。

育成就労制度では、この点が改善され、

  • 人権侵害(パワハラや暴力)を受けたなどの「やむを得ない事情」がある場合
  • 同一業務区分内(転籍前とほぼ同じ業務に従事し)、就労期間・技能等の水準・転籍先の適正性に係る一定の要件を満たす場合(詳細は省令でこれから規定)

については、本人の意向がある場合、転籍が認められることになりました。

以上(2024年10月作成)

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画像:ChatGPT

とくぎんサクセスクラブnavi 操作マニュアル

【朝礼】「目黒のさんま」はなぜ殿様の心を捉えたのか?

【ポイント】

  • 「目黒のさんま」には、主君を気遣いさんまの塩気や油気を抜いてしまう家臣が登場する
  • 「手間をかけて作ったもの」に価値があるとは限らない。相手のニーズをよく考える
  • 相手への思いやりから、あえてニーズに沿わない決断をすることが必要なケースもある

今日は、古典落語の「目黒のさんま」を紹介します。細かい部分は噺家(はなしか)ごとに異なりますが、私の知っている内容でお話しします。

江戸時代、「雲州公」という殿様が目黒に行ったときのこと。小腹が空いた雲州公は、近所の農家が焼いていたさんまを食べることになります。さんまは庶民の食べ物で、雲州公が口にするのは初めてでしたが、彼はその味を気に入りました。

その後、雲州公は、「黒田公」という殿様に「領地を治めるなら、庶民の生活をよく知るべきだ」と、さんまを勧めます。黒田公はその言葉に従い、家臣に命じて房州(ぼうしゅう)という地域の網元から新鮮なさんまを仕入れさせますが、家臣は「焼いたさんまをそのまま出すのは、殿の体に悪い」と考え、塩気や油気を抜いてしまいます。

この味が黒田公には不評でした。黒田公は後日、雲州公に「房州からさんまを取り寄せたが、まずかったぞ」と不満を漏らします。すると、雲州公はこう答えました。「それは房州のさんまだからだ。さんまは目黒に限る」と。

さんまを焼いていた農家に偶然出会っただけなのに、さんまが目黒の特産物だと勘違いしている雲州公が滑稽ですね。ただ、私が注目してほしいのは、房州からさんまを取り寄せて調理した黒田公の家臣です。注目してほしい点は2つ。

1つは、黒田公の家臣が網元から新鮮なさんまを仕入れた上に、塩気や油気を抜いて丁寧に調理をしていること。相当手間をかけたのに、なぜ黒田公には不評だったのか。それは、さんまを初めて食べる黒田公にとって、大切なのは「新鮮さ」や「ヘルシーさ」ではなく、「味」だったからです。私たちは、「手間をかけて作ったもの」に価値があると思いがちですが、実際のビジネスでは、それが本当に相手(顧客など)のニーズを満たしているかを、よく考える必要があります。

もう1つは、黒田公の家臣の対応も、場合によっては正解になり得るということ。仮に黒田公が体調面に問題を抱えていたなら、主君の体を気遣って塩気や油気を抜くのは当然です。相手のニーズを理解した上で、あえてニーズに沿わない決断をすることが必要なケースもあるのです。

以上(2024年11月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

職場の人間関係、どうするの? 不仲・いざこざを解決するヒント

職場の人間関係において不仲やいざこざが起きた際、企業としてどのような対応をとるべきか、また、解決のヒントについてご説明いたします。

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公的年金シリーズ 第2弾 いまから知っておきたい遺族年金の基礎知識

遺族年金についてよく知っておくことで、将来の生活設計を立てる上で、どのくらいの準備が必要か把握できます。そして、遺族年金だけでは不安がある場合や今後の遺族年金の改正を考えると、民間会社の生命保険も検討してみましょう。

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