過去最大の引き上げ額 最低賃金引き上げによる企業への影響と実務

地域別最低賃金が、過去最大の引き上げ率により、全国加重平均1,002円へと改定されてから2か月が経過しました。

都道府県別に見ると、最高は東京都の1,113円で、最も低い岩手県では、従前から39円引き上げられて893円となっています。

政府の最重要課題に位置付けられた賃上げを実行する形での改定となりましたが、企業ではどんな影響があるのか、求められている実務的対応とともにまとめました。

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「年休の買い取り」で社員の不満解消と新しい福利厚生を実現!(就業規則の規定例付き)

書いてあること

  • 主な読者:社員から「使わない年休を買い取ってほしい」と言われた経営者・労務担当者
  • 課題:そもそも年休の買い取りは法的に認められるのか?
  • 解決策:原則NGだが、「時効になった年休を買い取る場合」など例外はある

1 年休の買い取りはあくまで例外的な対応

労働基準法により、会社は入社後6カ月以上勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤した社員に「年休(年次有給休暇)」を付与します。問題は、実際に社員が取得する年休の日数が、付与日数の58.3%(厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」)にとどまることです。年10日の年休が付与される社員であれば、約4日の年休を取得できずにいる計算です。

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同調査での年休の取得率は、年々少しずつ伸びてきていますが、会社の規模が小さくなるほど、仕事が忙しくて年休を取得する余裕がない社員が増えてきます。そうした社員の中には、

使わない年休を買い取ってほしい(使わない年休分の賃金を支払ってほしい)

と考えたり、実際に請求したりする人がいます。

経営者や労務担当者も、「年休が取れないなら、せめて社員が損をしないよう買い取ってあげたい」と考えるかもしれませんし、

見方を変えれば、年休の買い取りは新しい福利厚生

になります。法令上、年休は社員の疲労回復やリフレッシュのために「休暇」として与えるのが原則で、買い取りは法的には認められてはいませんが、例外的な対応として一定の条件を満たせば可能とすることができます。

この記事では、年休の買い取りに関する実務のポイントとして、

  • 会社も社員も、年休の買い取りの「強制」はできない
  • 年休の買い取りが認められやすいケースが3つある
  • 買い取った年休分の賃金は「賞与」扱い、社会保険料に注意する

を紹介します。また、この記事の最後には、これらのポイントを踏まえた就業規則の規定例を載せているので、併せてご確認ください。

2 会社も社員も、年休の買い取りの「強制」はできない

まず押さえておきたいのは、

  • 会社は社員に「年休を買い取るから、休まず出勤しろ」と強制することはできない
  • 社員も会社に「使わない(使えなかった)年休を買い取れ」と強制することはできない

という点です。

前述した通り、年休は社員が疲労を回復して心身ともにリフレッシュするための制度です。買い取りが当たり前になってしまうと、休暇としての意味がなくなってしまいますから、制度の趣旨を損なうような買い取りの仕方はNGとされているのです。

労働基準法には、年休の買い取りに関する具体的な定めがありませんが、行政通達では

会社が年休の買い取りを予約することや、本来なら請求できるはずの年休日数を減らしたり与えなかったりすることは違法である

とされています(昭和30年11月30日基収4718号)。つまり、会社が社員に「年休を買い取るから、休まず出勤しろ」と強制することはできません。逆に、社員が会社に「使わない(使えなかった)年休を買い取れ」と強制するケースについては、

未消化の年休を事後に使用者が買い取る義務はない

とした裁判例があります(大阪高裁平成14年11月26日判決)。他の言葉に言い換えると、

年休の買い取りは、会社と社員が自由な意思に基づき合意した場合に初めて認められる

ということです。

3 年休の買い取りが認められやすいケースが3つある

会社と社員が年休の買い取りについて合意していても、買い取りが無制限に認められるわけではありません。例えば、労働基準法には

年10日以上の年休が付与されている社員には、会社が時季を指定して年5日の年休を取得させなければならない

というルールがあり、仮に会社と社員が合意していても、付与された10日以上の年休を全て買い取るといった対応は認められません(最低5日は休暇として取得させなければならない)。

そんなわけなので、会社は労働基準法の年休のルールに違反しないよう、買い取りを認めるケースを明確に決めておく必要があります。一般的に、次の3つのケースは、年休の買い取りが認められやすいとされています。

  1. 時効により消滅した年休の買い取り
  2. 退職により取得されない年休の買い取り
  3. 法定の付与日数を上回る部分の年休の買い取り

1.時効により消滅した年休の買い取り

労働基準法では、社員が年休を取得しない場合、その年休は付与された日(基準日)から2年が経過したタイミングで、時効により消滅します。時効により消滅した年休はもう取得できないので、買い取っても問題ありません。

2.退職により取得されない年休の買い取り

退職が近い社員は、退職日までに残っている年休を使いきれない場合があります。こうした場合に、使いきれなかった日数分の年休を買い取ることは問題ありません。退職時の引き継ぎなどの関係で、年休を取得したかったのに退職日直前まで出勤をした結果、取得しきれなかった年休が発生した場合、社員と相談して買い取るという対応も可能です。

ただし、前述した通り、社員に年休の買い取りを条件として出社を強制するのは違法です。

3.法定の付与日数を上回る部分の年休の買い取り

会社によっては、法定の付与日数を上回る年休を社員に付与しているところがあります。例えば、法令上は「年10日」の年休を付与すべき社員に、会社ルールで「年15日」の年休を付与している場合、5日(15日-10日)分については、買い取っても問題ありません。

4 買い取った年休分の賃金は「賞与」扱い、社会保険料に注意

年休の買い取り金額に関して法的な決まりはありません(例外的な対応であるため)が、実際に年休を取得した場合の賃金額と同じとするケースが一般的です。具体的には、

  • 平均賃金(直近3カ月間の賃金総額(賞与等を除く)÷直近3カ月間の総日数)
  • 1日働いた場合の通常の賃金(月給制などの場合、1日単位に換算した金額)
  • 標準報酬日額(標準報酬月額÷30日)

のいずれかになります。どれを選択するかは、就業規則に定めます。

問題は買い取った年休分の賃金の支払いで、

年休を買い取った場合、その分の賃金は「賞与」として計上しなければならない

という点に注意が必要です。通常の賃金や退職金に上乗せして支払うのではなく、これらと区別できる形で賞与として社員に支払わなければなりません。

また、社員が社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者の場合、買い取った年休分の賃金(賞与)には社会保険料がかかってきます。賞与の社会保険料は、

支給日から5日以内に日本年金機構に提出する「被保険者賞与支払届」

に基づいて決まりますので、書類の提出漏れがないように注意しましょう。なお、被保険者賞与支払届は賞与を支払うたびに提出が必要になりますので、業務の煩雑さを考えるのであれば、

年休の買い取り分の賃金は、賞与支給月(6月、12月など)に通常の賞与と合算して支払う(賞与明細の内訳などで、年休の買い取り分の賃金がいくらかを明らかにする)

といった対応にするのもよいでしょう。

5 年休の買い取りに関する就業規則の規定例

最後に、年休の買い取りに関する就業規則の規定例を紹介します。なお、実際にこうした規定を盛り込む際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受け、自社に沿った内容で対応されることをお勧めします。

【規定例】

第◯条(年次有給休暇の買い取り)

1)会社は、次の各号について社員から年次有給休暇の買い取りの請求があり、会社が法の定める年次有給休暇の趣旨などを考慮して問題がないと判断した場合、その買い取りを行う。

  1. 時効(基準日から2年後)により消滅した年次有給休暇の買い取り
  2. 退職により取得されない年次有給休暇の買い取り
  3. 法定の付与日数を上回る部分の年次有給休暇の買い取り

2)会社は、社員からの請求に基づき、年次有給休暇の付与日数、基準日および時効、その他年次有給休暇の買い取りに関し必要な情報を提供する。

3)年次有給休暇の買い取り日数は、会社と社員が協議の上決定する。なお、労働基準法第39条第7項に基づき時季を指定して付与する年次有給休暇については、買い取りの対象としない。

4)年次有給休暇を買い取る場合、その1日当たりの賃金額は、就業規則第◯条で定める、実際に年次有給休暇を取得した場合の賃金額と同額とする。

5)年次有給休暇を買い取る場合、会社はその賃金額を明らかにした上で、毎年6月または12月に支給する賞与に合算して社員に支払う。ただし、第1項第2号に基づく年次有給休暇の買い取りの場合においては、当該社員の退職月に臨時賞与として支払う。

以上(2023年11月作成)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:umaruchan4678-Adobe Stock

【収支シミュレーション】フィットネスクラブの開業収支モデル

書いてあること

  • 主な読者:フィットネスクラブの開設を検討している人
  • 課題:賃借物件を借りてフィットネスクラブを運営する
  • 解決策:開業、運営に掛かる費用の目安を押さえ、収支計画をシミュレーションしてみる

1 フィットネスクラブ業界の動向

1)フィットネスクラブの形態

フィットネスクラブは、室内プール、トレーニングジム、スタジオなどを設けて、インストラクターやトレーナーが運動の指導を行う施設です。

昨今では、利用者のニーズに合わせて、パーソナルトレーニングを行う施設や、トレーニングマシンのみを設置し、24時間利用できる施設など、サービスを特化させることで他社との差異化を図る動きがあります。

主な施設の形態と特徴は次の通りです。

1.スポーツクラブといわれる複合施設

トレーニングマシン以外にもスタジオやプール、お風呂などが併設されている複合施設です。昔からあるものも多く、施設自体が大きく会員数も多いのが特徴となっています。利用者の年齢層も幅広いです。運営側からすると、さまざまな施設を保有するため施設の管理費や賃料などが高額になるデメリットがあります。

2.パーソナルトレーニング

パーソナルトレーニングは、専属のトレーナーがつき、基本的にマンツーマンでトレーニングをサポートします。本格的に体を鍛えたいスポーツ選手や自分の意思ではサボってしまう人、金銭的に余裕のある人などが利用するサービスです。利用者はトレーナーの専門性やコミュニケーションの取りやすさを重視するため、運営側からすると、どのようなトレーナーを雇用できるか(もしくは業務委託できるか)も重要となります。

3.マシン特化ジム

マシンのみを設置しているジムです。24時間営業している場合も多く、利用者が好きなタイミングで利用できます。また、近年は簡易的なマシンのみを設置して無人で営業する施設もあり、複合施設などと比べて利用料が安いのが特徴です。ただし、マシンの使い方がわからない人は利用しづらいといったデメリットもあります。

4.スタジオ特化型フィットネススタジオ

マシンなどは設置せず、ヨガやダンス、ピラティスなどのスタジオでのエクササイズに特化して運営する形態です。トレーニングというよりは、女性などが運動目的で利用することも多いです。スタジオという環境から、会員同士のつながりも生まれやすくなっています。 また、定員を設けることが一般的なため、利用者の混雑に悩まされることもありません。運営側からすると、いかに人気があるインストラクターを起用できるかも集客アップや継続率アップに欠かせないポイントです。

2)フィットネスクラブの市場規模について

フィットネスクラブの市場規模は調査資料によって異なります。ここでは経済産業省「経済構造実態調査」のフィットネスクラブに関するデータを用います。最新データである2022年のフィットネスクラブの売上総額(市場規模)は5344億8900万円です。

また、資本金や事業従事者規模別の売上高が出ている2020年のデータは図表1の通りです。

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2020年におけるフィットネスクラブの事業所数は4840事業所、年間売上高は5899億1300万円です。1事業所当たりの年間売上高は1億2200万円となります。

総務省「人口推計」によると2020年10月1日時点の人口は1億2614万6000人なので、1人当たりマーケットサイズは4676円(5899億1300万円/1億2614万6000人)です。

3)消費者ニーズについて

一般的に、フィットネスクラブの利用目的として次のようなものが挙げられます。

  • 日々の運動不足を解消して、健康維持と体力向上を目指したい
  • 運動やトレーニングにより理想的な体・スタイルを手に入れたい
  • トレーナーから自分に合ったトレーニング方法を教わりたい
  • 運動を通じてストレスを解消したい
  • 会員同士の交流により交友関係を広げたい

どの消費者ニーズに応えたいかによって、開業するフィットネスクラブの形態は変わってくるでしょう。

2 フィットネスクラブの最新技術・店舗の事例

1)破格の月会費で手軽にジムを利用できる

低価格で手軽にジムを利用できる「chocoZAP」の利用者が急増中です。chocoZAPはRIZAPグループ(東京都新宿区)が運営する全国に800店舗以上あるジムです。月額3278円(税込)で24時間・365日全店舗のジムが使い放題となっており、普段着のままでトレーニングやエクササイズができることが特徴です。

2022年7月にサービスを開始し、2023年8月時点の会員数は80万人となっています。同じく、Fast Fitness Japan(東京都新宿区)が運営する24時間営業フィットネスの「エニタイムフィットネス」の会員数が約78万人(2023年6月末時点)なので、サービス開始から約1年でエニタイムフィットネスの会員数を追い抜きました。

低価格で手軽に利用できることから、本格的なトレーニングやハードなメニューに壁を感じる若年層の利用が多いです。

2)サウナブームを取り入れる

昨今のサウナブームに乗じて、併設されたお風呂やサウナを売りにするフィットネスクラブもあります。

例えば、コナミスポーツ(東京都品川区)では、「コナスポ的湯るジム通い」をキャッチコピーに、運動後だけでなく、仕事帰りや体調を整えるためにお風呂やサウナを利用できることをアピールしています。店舗によっては、プール・お風呂・サウナのみの利用が可能な「アクア&スパ・アクアプラン」があります。

3)アミューズメント型フィットネスクラブで集客を狙う

フィットイージー(岐阜県岐阜市)では、ジムやスタジオ以外にもさまざまなサービスを用意して入会者の獲得を狙っています。

フィットイージーが用意するサービスには、次のようなものがあります。

  • ゴルフシミュレーター
  • ドライブシミュレーター
  • エステマシン
  • タンニングマシン
  • サウナ
  • ボルダリング
  • 高濃度酸素ルーム
  • コワーキングスペース

コワーキングスペースがある店舗は、フリーランスやテレワークが多い人にも人気です。

4)働きながら運動できる

快眠グッズ製造直販を手掛けるムーンムーン(熊本県熊本市)では、オフィスチェアとフィットネスバイクが合体した「コズクワール」を開発しました。コズクワールを使えば、仕事や勉強をしながらフィットネスバイクをこぐことができます。忙しいビジネスパーソンにとっては、運動のために時間を取るのではなく、仕事と運動を同時に行える本商品は魅力的かもしれません。

5)AIトレーナーによるトレーニング指導を受けられる

AIヘルステックスタートアップのLifeform AI(オーストラリア・シドニー)では、人間の姿勢や運動の状態を分析できるAIを開発しています。2023年2月から3月にかけて東京ドームシティ内のフィットネスクラブで、AIトレーナーによるコーチングのデモンストレーションが行われました。さまざまなプロフェッショナルのトレーナーの動きを学習したAIコーチから、トレーニングのやり方を評価され、フィードバックが受けられる仕組みです。

AI技術が進展していくなかで、いつでも手軽に高度なトレーニングを受けられるAIトレーナーのニーズは高まっていくかもしれません。

3 新規開業・運営に当たっての留意点

1)新規開業で必要な各種届出を確認する

フィットネスクラブ内にシャワーやジャグジー設備などを用意する場合、公衆浴場法による届出が必要です。事前にフィットネスクラブ所在地を所管する保健所へ届け出て、営業許可をもらいましょう。

2)開業する地域の需要を見極める

フィットネスクラブを開業するに当たって、あらかじめ需要を見極めることは重要です。開業する地域にどのような人が多いかによって、フィットネスクラブの形態は変わってきます。忙しいビジネスパーソンや若年層が多いのであれば、いつでも気軽に利用できる24時間営業の店舗の需要が高いでしょう。また、家族連れや高齢者が多いのであれば、さまざまな利用用途があり会員同士のつながりもできやすい複合型のフィットネスクラブがいいでしょう。

3)トレーナーやインストラクターを確保する

スタジオでのレッスンやパーソナルトレーニングを行うフィットネスクラブでは、トレーナーやインストラクターが必要です。どのようなトレーナーやインストラクターを雇用するかによって、集客力や継続率が変わります。トレーニングに関する専門性だけでなく、人柄なども含めて採用しましょう。また、人気インストラクターなどに業務委託やスポットで講師を依頼して、集客力を高める方法も考えられるでしょう。

4)衛生管理に注意する

フィットネスクラブは、人が密集することに加え、1つのトレーニング機器を多くの人で利用するため、感染症のリスクが高い施設です。消毒液の設置や空気の入れ替えなどで、できるだけ感染リスクを下げましょう。

フィットネスクラブにおける新型コロナウイルス感染症対策はこちらで紹介されているので、参考にしてみてください。

■日本フィットネス産業協会「FIAフィットネス関連施設における新型コロナウイルス感染拡大対応ガイドライン」■

https://fia.or.jp/covid19-fitness/

5)安全面に注意する

フィットネスクラブでは、トレーニング機器の故障や破損などによる事故に注意が必要です。トレーニング機器の定期的な検査やメンテナンスが必要になります。また、万が一のことが起きた際に備えてAEDを設置し、スタッフにAEDの使い方の訓練を受けてもらいましょう。さらに、施設の不備などが原因で事故が起きた場合には高額な賠償請求を受けることもあります。賠償請求に備えて、賠償責任保険への加入も検討してみてください。

6)個人情報の管理に注意する

フィットネスクラブは1施設あたり300~数千人の会員がいることが一般的です。会員数や施設規模を問わず、個人情報の管理には特に注意しましょう。他会員への会員情報の開示禁止、会員情報の持ち出し禁止などを徹底し、個人情報の流出が発生しないような管理体制を作りましょう。

4 開業収支を考える

1)前提条件

1.売上高

ここでは、会員1人当たりの平均年会費10万1283円(注)×見込会員数1500人=1億5192万円を3年度目に達成すると仮定し、シミュレーションをします。

また、1年度目の売上高は1億634万円(1億5192万円×70%)、2年度目の売上高を1億3673万円(1億5192万円×90%)とし、4年度目以降は10%ずつ売上が増えるものと仮定します。

(注)経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」における、2022年のフィットネスクラブの売上高と会員数を基に算出した数値です。

2.原価率

日本政策金融公庫「小企業の経営指標2021」を参考に、売上高の15%とします。

3.人件費

日本政策金融公庫「小企業の経営指標2021」を参考に、売上高1億5192万円の35.2%となる5348万円とします。

4.店舗設備整備費用等

  • 内装工事費、トレーニング機器、設備等の整備費用:1億5000万円
  • 開設する物件の賃借料:月額126万6000円

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5 経営指標

日本政策金融公庫「小企業の経営指標2021」によると、フィットネスクラブの経営指標は次の通りです。

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以上(2023年11月作成)

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先急ぎ運転に注意!(2023/11号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

年末が近づくにつれ何かと慌ただしくなると、車の運転も早く目的地に着こうと先急ぎ運転になりがちです。先急ぎ運転は、ちょっとしたことで焦りやイライラを感じ、スピードを出す、安全確認を疎かにするなど危険な運転行動をしてしまうため、事故を起こす危険が高まります。

これから年末に向けて事故を起こさないよう先急ぎ運転に注意しましょう。

先急ぎ運転に注意

1.「急ぎの心理」と先急ぎ運転

月別交通事故件数は、例年10月から12月にかけて増加傾向にあります。その一因として先急ぎ運転が考えられますが、その背後には「急ぎの心理」があると言われています。

月別交通事故件数

出典:公益社団法人交通事故分析センター 令和4年版「交通事故統計年報」から当社作成

①「急ぎの心理」

太古から人類は、“急ぐこと”で外敵などの危険から身を守ったり、貴重な食料を獲得したりして生存競争を生き抜いてきました。そのため、人間のDNAには、“急ぐこと”が本能として刷り込まれているそうです。
例えば、運転中に誰かに追い越されただけで不快に感じる、それは「急ぎの心理」によるものと考えられます。

②先急ぎ運転の危険

目的地に早く着こうと急いでいる場面で、前にノロノロ運転している車がいたり、渋滞に巻き込まれたりするなどちょっとしたきっかけで、潜在している「急ぎの心理」が顔を出すと言われています。
「急ぎの心理」が顔を出すと無意識に先急ぎ運転になってしまいます。先急ぎ運転は、焦りやイライラの感情が生じやすく、危険な運転行動を誘発するため、事故を起こす危険が高まります。

<先急ぎ運転における危険な運転行動>

  • スピードを出す。
  • 前の車との車間距離を詰める。
  • 無理な追い越しや割り込みをする。
  • 注意が散漫になり、安全確認を疎かにする。
  • 信号の変わり目に強引に交差点を通行する。
  • 車線変更を繰り返す。

など

2.先急ぎ運転への対処法

目的地に早く着こうと先を急いでも、事故を起こしては取り返しがつきません。「急ぎの心理」になることで、事故の当事者とならないようにするための対処法をご紹介します。

◆先急ぎ運転の要因を作らない

運転するときは、時間に余裕を持って、早めに出発することを心がける。

約束の時間に遅れそうなときは、早めに先方へ連絡することを習慣づける。

先急ぎ運転

◆「急がば回れ」を意識する

先を急いでも到着時間はさほど短縮されないと考える。先急ぎ運転は危険な運転行動につながることはあっても、決して得になることはないため、「急がば回れ」を意識する。

◆自分の運転特性を把握した運転をする

「運転適性診断」を受診し、自分の運転特性(運転のクセ)を把握する。性格面で感情的な傾向がみられる場合は、診断のアドバイスを踏まえて運転を見直す。

自分の運転特性を把握した運転

◆エコドライブを習慣化する

エコドライブを習慣化することによって、急加速や急減速などを減らし、「急ぎの心理」が顔を出したとしても先急ぎ運転になりにくくする。(日頃からエコドライブを実践する。)

3.運転中にイライラを感じたら

近年注目されている「アンガーマネジメント」に「6秒ルール」があります。

人の怒りのピークは6秒と言われており、「6秒ルール」とは、6秒をやり過ごすことで冷静さを取り戻すというものです。

6秒の間に深呼吸をしたり、あるいは子どもの名前やペットの名前などを口に出したりすると効果的です。

もしも運転中に焦りやイライラを感じたら、「6秒ルール」を試すことをおすすめします。

6秒ルール

出典:一般社団法人日本アンガーマネジメント協会「アンガーマネジメントイライラ・怒りのコントロール術」から当社作成

以上(2023年11月)

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年収の壁・支援強化パッケージについて

厚生労働省は、年収が一定額を超えると手取りが減ることから、パートタイム労働者等が就労調整をする事例がみられる、いわゆる「年収の壁問題」の支援強化パッケージを発表し、「106万円の壁」「130万円の壁」への当面の対応策を示しました。

年金制度の改正が予定される令和7年度までの措置として、令和5年10月から実施していくとのことです。

本稿では、厚生労働省から公表された「年収の壁・支援強化パッケージ」について、説明いたします。

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年収の壁・支援強化パッケージについて

厚生労働省は、年収が一定額を超えると手取りが減ることから、パートタイム労働者等が就労調整をする事例がみられる、いわゆる「年収の壁問題」の支援強化パッケージを発表し、「106万円の壁」「130万円の壁」への当面の対応策を示しました。

年金制度の改正が予定される令和7年度までの措置として、令和5年10月から実施していくとのことです。

本稿では、厚生労働省から公表された「年収の壁・支援強化パッケージ」について、説明いたします。

1 年収の壁とは

厚生労働省が実施した「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」によると、会社員などの配偶者で扶養されていて保険料の負担がない「第3号被保険者(社会保険上の被扶養配偶者)」のうちおよそ4割が就労していることが明らかになっています。

第3号被保険者の手取り収入の変化(イメージ)

(厚生労働省「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査」)

上記のように、一定以上の収入増となった場合、新たに発生する社会保険料の負担や収入要件が定められている配偶者手当等が無支給となるなど、手取り収入が減少することを恐れ、就業調整をしている方が存在します。

これにより、本人の働く意欲が阻害され、さらには企業にとっても貴重な労働戦力を有効活用できないジレンマが常態化していました。

2 支援強化の内容

厚生労働省は、「年収の壁・支援強化パッケージ」の中で、大きく分けて3つの対応を行うとしております。

年収の壁・支援強化パッケージ

(厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」)

3 さいごに

厚生労働省が発表した具体的な施策の概要は、次の通りとなります。

  1. キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の新設
  2. 社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
  3. 事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
  4. 企業の配偶者手当の見直し促進
  5. 業務改善助成金の活用促進

同省は、この「年収の壁・支援強化パッケージ」の各対応策について、今後所要の手続きを経た上で、関係者と連携し、着実に進めていくこととしています。企業は、このパッケージの趣旨や制度内容を良く理解し、適切に活用していきましょう。

※本内容は2023年10月6日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

「成果を生む会議」に変える “ファシリテーター”が押さえる3つの手順

書いてあること

  • 主な読者:初めて会議で進行役を任されたビジネスパーソン
  • 課題:経験がないので会議をどのように進めたらよいのか分からない
  • 解決策:会議のファシリテーターとして、プロセス・デザイン、プロセス・マネジメント、コンフリクト・マネジメントという3つの手順を押さえる

1 会議の成否はファシリテーターの力量次第

皆さん、社内外や対面・非対面を問わず、会議で次のような経験をしたことはありませんか?

  • 時間を割いて集まっているのに、一部のメンバーからしか意見が出ない
  • 議論がかみ合わず一向に先に進まない
  • 意見が対立したまま時間ばかりが経過し、結論に至らない

会議が、このような「うんざり」なものになってしまうかどうか、鍵を握るのがファシリテーターです。ファシリテーターとは、会議のメンバーや議長をサポートし、

全員が意見を出しやすいよう、環境を整え、論点を整理し、全員が納得するかたちで結論に導く役割を担う人

です。

一朝一夕に「できる」ファシリテーターになれるわけではありませんが、この記事では、成果を生み出す会議にするために、ファシリテーターとして押さえておくべき3つの手順について解説します。

  1. プロセス・デザイン(会議の場のデザイン)
  2. プロセス・マネジメント(会議のかじ取り)
  3. コンフリクト・マネジメント(衝突の解消)

2 プロセス・デザイン

プロセス・デザインとは、

会議に先立ち、会議の効率を上げるために行う準備

です。必要なのは、主に次の4つのポイントを明らかにしておくことです。

  1. 会議の目的
  2. 具体的なアウトプット
  3. 会議のルール
  4. メンバーの役割

1)会議の目的

「何のために会議を行うか」を明確にします。会議の目的が曖昧だと、議論は的外れでまとまりのないものとなります。事前に目的を確認し、会議の方向性を決めましょう。会議の目的をその都度確認することで、月例会議(月ごとに行われる部内会議)のような定型業務でも形骸化しにくくなります。

2)具体的なアウトプット

「会議によってどのようなアウトプットを目指すか」を明確にします。例えば、営業部が行う会議で方向性が「営業部の売り上げを伸ばす」ならば、アウトプットはこれを具体的にした「3カ月以内に、営業部の売り上げを前年度比105%とする」とします。

アウトプットの具体的なイメージを共有することにより、メンバーは、より具体的なアイデアを出しやすくなります。

3)会議のルール

「どのようなルールに基づいて会議を行うか」を明確にします。ファシリテーションではメンバーの自主性を尊重しますが、ともすればメンバーが自由に発言をし過ぎて会議が混乱することもあります。そこで、「発言は最後まで聞く」「部署や肩書の違いにとらわれない」「会議時間は60分までとする」などのおおまかなルールを決定しておきます。

このルールは、メンバーがいつでも確認できるようにしておくとより効果的です。

4)メンバーの役割

「メンバーがどのような役割を担うか」を明確にします。例えば、

  • 活発に発言をするメンバーは、会議前半でアイデア出しをする際のムードメーカー
  • 発言回数は多くないが、話をよく聞いているメンバーは書記

など、メンバーの特性を活かした役割をある程度決定しておくことで、会議を円滑に進めることができます。

3 プロセス・マネジメント(発散のプロセス)

プロセス・マネジメントとは会議のかじ取りのことで、「発散のプロセス」「収束のプロセス」の2つから成り立ちます。

  • 発散のプロセス:メンバーからアイデアを広く集めることが目的
  • 収束のプロセス:集めたアイデアをまとめて、最終的な意思決定を行うことが目的

ここでは、発散のプロセスについて紹介します。

1)傾聴・復唱

ファシリテーターはメンバーの発言をしっかりと聞き、発言の一部やキーワードを繰り返したり、メンバーの発言を自分の言葉でまとめて相手に伝えたりします。メンバーはファシリテーターが自分の発言を復唱することで、「自分の意見がちゃんと伝わっている」という安心感を持ちます。

ただし、ファシリテーターは中立性を保たなくてはならないため、「今までで一番素晴らしい発言ですね」といった、中立性を欠くような言い方は避けましょう。

メンバーからさまざまな発言が出てきたら、今度はそれらに対して質問を行い、発言の本質を探ります。このときの質問には、「オープン・クエスチョン」「クローズド・クエスチョン」の2つの種類があります。

1.「オープン・クエスチョン」

自由に答えられる質問です。「売り上げ減少の原因は何だと思いますか?」などの質問がオープン・クエスチョンに当たります。オープン・クエスチョンは答えを限定しないため、メンバーの自由な発想を膨らませる上で役立ちます。

2.「クローズド・クエスチョン」

「はい」「いいえ」のいずれかで答えられる質問です。「売り上げ減少の原因は、自社の営業力の低下だと思いますか?」などの質問がクローズド・クエスチョンに当たります。クローズド・クエスチョンは答えを限定するため、メンバーの発言を細かい点まで絞り込む上で役立ちます。

ファシリテーターは基本的には意見を言わない「黒子」ですが、時としてメンバーの発言を喚起して会議をより活性化させるために発言することもあります。例えば、発言が途絶えて会議全体が停滞した場合、メンバーの発言を促すために、ファシリテーターが自分の意見に基づいてメンバーに問いかけるケースが考えられます。その際、メンバーの発言を否定するのではなく、メンバーの発言を十分に受け入れた上で問いかけをします。

2)言葉以外のメッセージ

メンバーによる言葉以外のメッセージを読み取ることも重要です。例えば、感情的になったメンバーは、イライラとした表情となり、発言の際は声のトーンが高くなります。このような場合、ファシリテーターは、感情的になったメンバーと視線を合わせ、発言に対してはっきりとうなずき、そのメンバーのことを理解しようとしていることを伝えます。

言葉以外のメッセージは、言葉以上にメンバーの本音を伝えるものです。ファシリテーターは、言葉と言葉以外のメッセージの両方を十分に理解するように努めましょう。

4 プロセス・マネジメント(収束のプロセス)

発散された発言をまとめ、絞り込む上で重要なのは論理性です。論理とは、話が「どこから」「どこを通って」「どこに着くのか」を明確にすることです。メンバーの論理の偏りや飛躍を取り除くことで、全体の認識が統一されます。その際に重要なのは、相手を否定しないことです。相手の主張に対して、冷静に質問の形式で、相手に自分で答えを探させることが重要です。

1)ファシリテーション・グラフィック

メンバーから出た発言は、ファシリテーターがホワイトボードなどに逐次記録していきます。これをファシリテーション・グラフィックといいます。

ファシリテーション・グラフィックは、会議の流れを視覚化し、発言したメンバーの意図をグループ全体に分かりやすく認識してもらうための重要なツールです。ですが、メンバーの発言を一言一句漏らさず記録する必要はありません。発言を要約したり、キーワードを抽出して短くまとめたりすることで、会議の全体的な流れを書くことが重要です。

2)ロジックツリー

発言のポイントを漏れや重複がないように整理するために、問題の原因などをツリー状に並べて整理する方法です。ロジックツリーでは、下位の項目は上位の項目をさらに細かく分析したものとなっています。営業部門の売り上げ減少を例にしたロジックツリーは次の通りです。

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メンバーの発言から得られた情報をこのように並べると、現状の問題および目標がよく分かります。

この会議では、メンバーの発言を分析した結果、売り上げ減少の原因は、「『個々の営業社員が提供するサービスの質の低下』による『自社の営業力低下』」であることが分かりました。従って、目標は「営業社員の販売スキルアップ」とします。

ファシリテーターは、この目標に対して、再度発散のプロセスを用いてメンバーから解決策についての発言を募ります。ただし、最初の発散のプロセスとは異なり、今回はより直接的な目標が定まっているため、より具体的かつ内容が絞り込まれた発言が期待できます。

3)意思決定

ここまでで、「営業社員の販売スキルアップ」という目標が設定され、その解決策についての発言が集まりました。次は、「これらの発言を基に、どのような解決策を決定するか」という意思決定を行います。

意思決定には幾つかの方法がありますが、ここでは多重投票を活用します。多重投票が多数決と異なるのは、メンバー1人が1票ではなく、多数の票を持っている点です。多数集まった発言について、メンバー各自は良いと思う案全てに投票します。多重投票を何度か繰り返し、獲得票が少ない案を外していくと、最終的に1つの案が残ります。この案についてグループで議論し、最終的な意思決定を行います。

コンセンサスによる意思決定で重要なのは、次に挙げる点です。

  • 合理的かつ民主的に意思決定を行う
  • 少数派の意見を尊重する
  • 全員が納得できるアイデアを完成させるまで諦めない

5 コンフリクト・マネジメント

多くの会議では、コンフリクト(対立・衝突)が発生します。このコンフリクトを協調的に解消することをコンフリクト・マネジメントといいます。

1)互いの意見の確認

例えば、多重投票の結果、Aさんが発言した「営業社員は、毎週2時間は新商品の勉強会のために時間を割く」という解決策が最後まで残ったとします。しかし、Bさんからは、「現場にはそんな余裕はない。時間を割けるのは30分が限界」という発言があり、コンフリクトが発生しました。

コンフリクトが発生した場合、ファシリテーターは、まずメンバーに互いの意見を説明してもらい、双方で正確に理解しているかどうかを確認します。例えば、ここで「本当は同じ意見であるにもかかわらず、どちらかのメンバーが相手の意見を誤って解釈していた」ということが分かれば、コンフリクトはすぐに解消されます。

2)相互理解の橋渡し

一方で、互いの意見が異なることが分かった場合は、「どのようにして自分が異なる意見を持つに至ったか」について双方に説明してもらいます。さらに、「自分が相手の立場であったらどう考えるか」についても質問します。

このプロセスでは、コンフリクトにあるメンバー同士に、それぞれ相手の判断基準に基づいて考えてもらうことで、相手の判断基準を受け入れ、理解することができるようになります。ファシリテーターはこの相互理解の橋渡しを行うのです。

3)全体にとってプラスの状態をつくる

ファシリテーターによるコンフリクト・マネジメントにより、前述のAさんとBさんとで相互理解することができ、「各営業所で、異なる商品について週に30分の新商品知識勉強会を開催する。そして、その結果を部内で回覧し、メンバーは空いている時間に他の営業所の資料に目を通し、商品知識の獲得に努める」という解決策が新たに生まれました。このように、メンバー同士、そして全体にとってプラスの状態をつくり出すことこそが、ファシリテーションの最終的な目標です。ここで重要なのは、

コンフリクトは解消しなくてはならないが、意見の違いは解消しなくてもよい

ということです。

違いを違いとして受け入れ、そこからさらにプラスを取り出すことが、コンフリクトの協調的な解決方法です。

4)メンバーに会議についての気付きを促す

また、ファシリテーションでは会議の終了後にも重要なプロセスがあります。それは、メンバーに、会議についての気付きを促すことです。会議を通して、メンバーは今までにない本音の意見を発言し、協力して1つの解決策をまとめ上げました。その中でメンバーが、次の点をしっかりと認識することで、ファシリテーションの効果はさらに高まります。

  • 自分は何をしたか、何をしなかったか
  • 自分は何をどのように考えたか
  • 解決策に対して、自分は何をどのように実践するか

ファシリテーションを通じて各メンバーが、「自分はどのように自主性を発揮できたか、できなかったか。また、これからどのように発揮するか」ということに気付き、考えることが、さらにメンバーの自主性を育成することにつながります。ファシリテーターは、会議を振り返りながら、これらについてメンバーに問いかけます。

5)ファシリテーターのフィードバックを求める

そして、ファシリテーター自身にも、フィードバックが必要です。ファシリテーションについて、メンバーから意見をもらうことは、自身の成長にとって非常に重要です。

メンバーからの意見はファシリテーターのファシリテーションスキルを高め、そしてそのファシリテーションスキルが、さらに次のメンバーを育てることにもつながります。

以上(2023年11月更新)

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他人に自社の名刺を持たせると、思わぬ「損害賠償」を求められる?

書いてあること

  • 主な読者:業務委託先に自社の名刺を持たせている会社の経営者
  • 課題:自社の名刺を持つ業務委託先がトラブルを起こすと、「名板貸し責任」などを問われる恐れがある
  • 解決策:業務委託先に自社の名刺を持たせないことが本来の解決策。これが難しい場合、少なくともリスクを認識しておく必要がある

1 他人に自社の名刺を持たせてはいけない?

IT会社(いわゆる「SIer(エスアイアー)」)が、要件定義や開発の一部を下請け業者に委託する際、下請け業者の社員に自社の名刺を持たせているケースも見受けられます。しかし、これには問題があります。具体的には、

下請け業者の社員が起こしたトラブルの責任を負うことになったり、偽装請負とみなされたりする

ことがあるのです。自社の社員以外に自社の名刺を持たせなければよいのですが、営業上、なかなか難しいこともあります。この記事では、他人が自社の名刺を持つリスクについて、具体例を交えて紹介しますので、まずはそちらを確認した上で、慎重にご判断いただければと思います。

2 ありがちな事例で考えてみる

下請け業者の社員に自社の名刺を持たせている「ITベンダーA社」の事例です(この事例は架空のものです)。

A社は、ネット通販を行うB社のサイト運用・保守の業務委託を受けています。ただし、実際にB社のサイトの保守を担当しているのは、A社の下請けであるC社の山田さんです。下請けに任せるのはよくあることで、A社は特に違和感などはありませんでした。

そんなある日、B社ではサイトがダウンしたため、山田さんから貰った名刺を見て、山田さんに「サイトがダウンしているので、至急、復旧してほしい」と連絡を試みました。急ぎの対応が必要ですが、山田さんとなかなか連絡がつかず、結局、サイトの復旧まで1日を費やしました。

復旧後、A社はB社に提出した顛末(てんまつ)書において、山田さんが下請けであるC社の社員であることを明らかにしました。今回のサイトのダウンでB社には少なからぬ損害が生じており、その賠償について今も話し合いがされています。

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さて、この事例において、A社、C社、山田さんにどのような法的責任を追及することができるのでしょうか。それぞれの立場から、生じ得る法的責任を説明します。

3 A社(ITベンダー)に生じ得る法的責任

1)再委託契約の規定があるか?

A社とB社が準委任契約を交わしていた場合で考えます。準委任契約とは、

当事者の一方が法律行為でない事務を相手方に委託し、相手方がこれを承諾することを内容とする契約

です。請負契約が成果物を納品するなど仕事の完成を目的とするのに対して、準委任契約は規定された業務を行うことを目的としています。

サイトの運用・保守は、請負契約ではなく準委任契約に基づいて行われることが多いですが、ITサービス関連の契約では、請負契約、準委任契約のどちらの場合もあり得ます。契約内容として、請負契約と準委任契約のどちらの契約なのか、また、運用・保守の範囲についてもトラブルになりやすいため、あらかじめ明確にしなければなりません。

原則として、準委任契約の場合、再委託は認められていません。準委任契約の目的は、規定された業務を行うことです。事例でいえば、B社はA社の業務遂行能力に期待して契約を結んでいるのであり、B社に断りなく、A社は他社にB社の業務を委託することはできません。

そのため、A社がC社に再委託する場合は、あらかじめA社とB社の間との契約で、再委託を認める規定がなければ契約違反となります。当然、C社所属の山田さんをA社所属の社員であるかのように名刺を持たせて業務を行わせることも契約違反です。

2)名板貸し責任

B社は山田さんがA社の人間であると信じて、サイトの復旧をお願いしていました。山田さんのミスでサイトの復旧が遅れてしまい、損害が発生したとしても、山田さんはC社の社員であるため、B社が山田さんの責任をA社に追及するのは難しいようにも思われます。とはいえ、それでは、A社の名刺を持つ山田さんを信じたB社は厳しい立場となります。

こうした問題を避けるため、会社法では「名板(ないた)貸し責任」という規定があります。具体的には、「自己の商号を使用して事業または営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う」(会社法第9条)というものです。

A社は、山田さんに自社の名刺を持たせていたので、自社の商号使用を許諾していたといえ、山田さんをA社所属の社員と誤認したB社に対して名板貸し責任を負います。名板貸し責任が認められると、

その範囲には制限がなく、取引によって生じた債務を全て連帯して負う

ことになります。他人に自社の名刺を持たせて業務をさせることについては、相当のリスクがあることを認識しなければなりません。

3)偽装請負

A社とC社が業務委託(準委任)契約を交わしている場合、A社が山田さんに「他よりも優先してB社サイトを復旧して」などのように行うべき業務を直接指示すると、「偽装請負」となる恐れがあります。

A社が山田さんに指揮命令を下すには、C社が派遣業として許可を受けて、A社に山田さんを派遣しなければなりません。仮に偽装請負に当たると判断された場合、A社・C社とも会社名が公表されたり、労働局から是正措置命令などの行政処分が下されたりすることになります。

4 C社に生じ得る法的責任

A社がB社に対して名板貸し責任を負う場合、C社も連帯して責任を負います。対外的には、C社はA社と連帯してB社に対する責任を負う形となります。ただし、山田さんのミスでB社に対して責任を負うことになった場合、A社とC社との内部的な責任割合は等分ではなく、C社が相応に負うべきケースもあり得ます。その場合、C社はA社に対して求償債務を負います。

なお、C社が山田さんに、A社の名刺を持って業務を行わせることに関する雇用者としての法的責任についてですが、A社から承諾を受けている限り、ほとんど考えられません。

5 山田さんに生じ得る法的責任

最後に、山田さん自身についての責任です。所属していない会社の名刺を持つことについて、捉え方によっては経歴を詐称しているようにも思われます。しかし、山田さんがこれによってB社から財産上の利益を得るなどしていない限り、詐欺などで刑事責任を追及することは難しいといえます。

以上(2023年10月更新)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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笹島建設創業者・笹島信義。黒部ダム建設の際、リスクを伴う事業の継続を決めた彼の使命感が分かる一言とは?

我々には、いかに困難で危険な工事であっても、成し遂げなければならない事情があった

笹島信義(ささじまのぶよし)氏は、1956年から1963年にかけて行われた黒部ダムの建設において、最も困難な工事といわれる「大町2号トンネル工事」を成し遂げた作業班の中心人物です。この工事が難航を極めた理由は、作業班が着工2年目に遭遇した破砕帯(はさいたい)にあります。破砕帯とは、岩盤の中で岩が細かく砕けた、通常よりもろく崩れやすい地層のことですが、1957年、その破砕帯から人が吹き飛ばされるほど大量の地下水と土砂が噴出し、トンネル工事は中断を余儀なくされたのです。

冒頭の言葉は、笹島氏が自身の著書の中で、トンネル工事の今後を検討する委員会が開かれたときのことを振り返って述べた言葉です。委員会には、学者や技術者などの有識者が招かれましたが、破砕帯の脅威が未知数だったことなどから、工事の続行については否定的な意見が飛び交いました。しかし、笹島氏は有識者の前でも、「冬になれば、水が減り、トンネルを掘れるようになると思う」と言って、工事の続行を強く望みました。

笹島氏の心の内には、ある使命感がありました。それは「戦後の荒廃と虚脱から抜け出し、日本の産業を興隆させるために、何としても電力不足を解消する」というもの。当時の日本は日常的に停電が繰り返され、工場は停電のたびに作業を休止しなければならないなど、深刻な電力不足に陥っていました。だから、笹島氏は「この工事の本当の発注者は、国家であり国民である」と考えて、文字通り命がけで工事に取り組んでいたのです。

冬になると、笹島氏の言った通り坑内の水が減少し、工事再開が可能となりました。そして、破砕帯との遭遇から7カ月後、最後まで諦めなかった作業班はついに破砕帯を突破、1958年に大町2号トンネルは無事開通したのです。

ビジネスでは、経営者が会社の進むべき道を決める際、常に何らかのリスクが付いて回ります。ノーリスクで成功を得られるケースはゼロに等しく、時には「社員に負担を強いるかもしれない」「失敗したら会社が傾くかもしれない」といった大きなリスクを背負いつつ、困難なことに挑戦しなければならないケースもあります。

そんなときに経営者を支えるのは、「わが社はこの事業を通じて、社会のためにこんなことを成し遂げるんだ」という強い使命感です。笹島氏は、破砕帯との遭遇によりトンネル工事の危険性が新聞などで取り沙汰されるようになった際、作業員たちが家族から反対されて現場を離れてしまうことを危惧しましたが、実際はほとんどの作業員が現場に残ったそうです。それは、「自分たちがトンネル工事で日本を支えるんだ」という笹島氏の使命感が、作業員たちの誇りとなり、自分事として共有されていたからです。いつの時代も、経営者の本気の思いは社員を突き動かし、困難な壁を突破する力となるのです。

出典:「おれたちは地球の開拓者:トンネル1200本をつくった男:大事にしたい日本人の生き方」(笹島信義、ベストブック、2010年10月)

以上(2023年10月作成)

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事業承継やM&Aの事前準備としての効用も!中小企業にも求められる内部監査

書いてあること

  • 主な読者:内部監査の実施を検討している中小企業の経営者
  • 課題:内部監査を活用し、会社に存在する可能性のあるリスクをどう識別・対応すべきか
  • 解決策:内部監査の概要や実施事項、ポイントなどを理解し、調査項目や留意点を確認する

1 なぜ、中小企業も内部監査を行ったほうがよいのか?

内部監査とは、

  1. 社内規程や業務マニュアルなどの自主ルールが、現状と照らして適切かの検証
  2. 企業の中の組織や個人が、当該ルールを守っているかの検証
  3. 当該ルールを逸脱した実務が行われている場合などに、改善や予防のための助言や勧告

を行う取り組みです。上場企業や会社法上の大会社にとって内部監査は義務ですが、中小企業は任意です。実際、内部監査を行っている中小企業は少ないのですが、この記事では、次のような理由から中小企業に内部監査の実施をご提案いたします。特に、長い間、担当者や業務の遂行方法が変わっていないような中小企業は、この記事を読んでみてください。

  • 内部監査がないと不祥事が長期間見過ごされ、発覚したときの被害が甚大になる
  • 事業承継やM&Aを控えている場合、後継者や買収元へ引き継ぐ会社の状態をチェックする意味合いで有用になる

2 内部監査の実施フロー

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1)年度計画の立案

内部監査を担当する部門の年度計画を策定します。とはいえ、人的・時間的リソースには限りがあるので、

リスクの高い順番に内部監査の対象とする(リスク・アプローチ)

ようにします。通常、年度計画には、

  • 内部監査のテーマ
  • 内部監査の対象
  • 内部監査を行う部門の社員(以下「内部監査部員」)
  • 内部監査の実施に必要な費用

が織り込まれ、適切な承認者(経営者や取締役会など)に報告の上、承認を得ます。なお、内部監査は独立性の確保が重要になるため、内部監査部員は、監査を受ける部門とは関連のない人物にする必要があります。

2)業務計画の立案

業務計画は、年度計画で絞り込まれた内部監査のテーマのうち、重点的に見るべき具体的な項目を要約したものです。ここでも前述したリスク・アプローチに基づいて実施します。

リスクの高い項目を絞り込む際は、監査対象となる拠点の概要を把握する必要があるため、拠点の担当者に事前に監査があることを伝え、

予備調査:概要インタビューや関連規程類の閲覧

を行って、スムーズに本調査につなげることがあります。ただし、不正調査の場合は、事前通知をしないこともあります。

3)事前準備

計画が策定されたら、

  • 内部監査部員の作業内容や作業に対応するリスクなどをまとめた内部監査手続書の作成
  • 監査実施通知書(内部監査の概要)の作成と監査対象拠点への通知
  • 監査対象拠点との日程調整

を行います。

限られたリソースで一定の要求水準を満たすには、内部監査部員の努力はもちろん、監査対象となる拠点が質問に正確に回答したり、依頼された資料をきちんとそろえたりするなど協力が不可欠です。

4)監査現場作業

実際に監査対象となる拠点に赴き、予備調査で得た情報と、事前準備で作成された内部監査手続書に基づいて監査手続を実施します。監査手続の手法はさまざまで、例えば、次のような作業が挙げられます(下記以外にも、再実施、分析、計算調べなどがあります)。

  1. 質問:内部監査部員が監査対象となる拠点の責任者や担当者に質問して、回答を得る
  2. 閲覧:関連規程やマニュアルなどの文書を読み、ルールの存在を確認する
  3. 照合:一致すべきデータ同士を突き合わせ、整合性を確認する
  4. 観察:実際に業務を実施している現場に赴き、業務・設備などの状況を確認する

「最もスムーズにリスクを確かめられる手続きはどれか?」を意識しながら選択するのですが、内部監査手続書通りに監査手続を進めても、想定外のリスクが判明するケースがあります。その場合、新たに判明したリスクの内容とその重要性を勘案しながら、追加の監査手続を実施すべきか否かを検討します。

また、内部監査は限られたリソースで行うため、全ての項目・取引に対して漏れなく監査手続を実施することは難しいです。そのため、取引全体の母集団からサンプル(判断に必要な一部の資料)を抽出して、監査手続を実施する「サンプリング」を採用するのが一般的です。

5)監査調書の作成

監査調査とは、

実施した内部監査手続とその結果を記録し、経営者に提出される内部監査報告書上の結論のベースとして使用されるもの

です。監査調書は、

  • 個別の監査手続の実施内容と結果が記載される個別監査調書
  • 個別監査調書の内容をまとめた総括監査調書

に大別されます。

個別監査調書は、実施された監査手続によって監査調書のフォーマットも変わりますが、例えば、次のような形式が挙げられます。

  • 議事録:質問実施日、出席者・回答者、質問項目や議題、回答内容などをまとめたもの
  • フローチャート:質問などによって把握した業務の流れを図にして可視化したもの
  • 照合シート:照合した書類の結果をまとめたもの

監査手続が終了した段階で個別監査調書が作成され、総括監査調書に転記・要約します。総括監査調書は、内部監査部門の責任者が内部監査報告書の作成に際して、各監査項目について問題点が識別されたか否かを正確に判断できるように、簡潔に記載します。

6)結果の検討と報告書の作成

現場作業の最終日、監査現場作業の結果について、監査対象の拠点の責任者などと協議する講評会を開きます。特に、

不備事項に関する事実確認や、不備を解消するための改善活動(効果的かつ実現可能であること)

は重要な協議事項です。十分な協議を行わずに事実確認を誤ってしまうと、本来は不備ではない内容や、非現実的なスケジュール感での改善活動の実施案が報告書に記載されてしまいます。

講評会や監査調書をベースとして、最終成果物である内部監査報告書を作成・発行します。内部監査報告書のフォーマット例を紹介しますので、参考にしてください。

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7)改善指示、フォローアップ監査

報告書に記載された不備が放置されたままでは問題です。そのため、拠点において計画通りに改善活動が行われているかを確認する、フォローアップ監査を実施します。フォローアップ監査では、

報告書に記載された「何を」「いつまでに」実施するかの改善案に基づいて、改善活動が行われているかを確認

します。フォローアップ監査も内部監査の一環であることを認識しましょう。

8)コンサルティング業務への発展

ここまで紹介してきた内部監査の実施フローは、主に整備された業務が想定通りに運用されているか否かを確認・報告する機能(保証機能)です。この他、内部監査には、会社の発展にとって最も有効な改善策を助言・勧告する機能(助言機能)もあります。特に「6)結果の検討と報告書の作成」において、報告書に改善提案を記載した場合は、助言機能の一例になります。

さらに、もう一歩進んだ助言機能として、コンサルティング業務も考えられます。さまざまな拠点などを独立した立場で把握する内部監査では、多くのノウハウが蓄積されるため、そのノウハウを活かしたコンサルティングを依頼されるケースが想定されます。例えば、

  • 新規業務プロセスに必要な内部統制についてのコンサルティング
  • 社内講師としてリスク管理体制、内部統制に関連した研修を実施

などが挙げられます。

なお、コンサルティング業務においては次の留意点を念頭に置きましょう。

  • コンサルティング業務を受けても、当該部門が内部監査の範囲より外れることはない
  • コンサルティング業務実施側が最終意思決定者になることは客観性を害するため、行った助言を最終的に採用するかの意思決定は当該部門の責任者が行う
  • 独立性維持の観点より、コンサルティング業務を行った内部監査実施者は、対象部門の監査実施者から一定期間外すような工夫が必要

3 内部監査を意義あるものにするために必要なこと

1)内部監査の要件

内部監査の結果を歪めないために、

  • 独立性
  • 職業的懐疑心(入手した情報をそのままうのみにせず、客観的な判断を心掛けること)
  • 専門的知識
  • 会話・文章力

などが必要です。「内部監査人は、良心と信念に基づき、公正・普遍の立場で監査を行い、いかなる圧力にも負けない」ことが重要なので、特に独立性の確保に努めましょう。

そのために、内部監査部門を経営者直属にします。こうすることで、他部門の指揮命令系統から外れ、不必要な干渉を排除できるからです。また、リソースが限られた中小企業では難しい面もありますが、内部監査部門と他の部門との兼任は認めないのが基本です。

2)内部監査の体制

中小企業が単独で内部監査を実施することが、リソースや知識の面から難しいことがあります。その場合、公認会計士や弁護士などに内部監査をアウトソーシングすることが考えられます。外部委託の範囲によって、

  1. 内部監査に関する教育の支援のみ委託するパターン
  2. 特定分野の内部監査支援を委託するパターン
  3. 内部監査実施の全面的支援を委託するパターン

が考えられます。

3)内部監査に必要な規程の整備

内部監査の根拠となる規程の整備が必要です。一般的に、内部監査規程は、

  1. 総則
  2. 内部監査の計画
  3. 内部監査の実施
  4. 内部監査結果の報告

といった項目で構成されます。内部監査規程は会社の基本規程の1つです。そこでは詳細な内容は入れられないので、別途、内部監査マニュアルなどを作成して実務的なことを記載します。

4 子会社の内部監査

1)子会社の内部監査全般

最後に、難易度がやや上がる子会社の内部監査について触れておきます。中小企業でも子会社を持っているケースがあり、内部監査の対象とすることがあります。しかし、

親会社が子会社を自由に内部監査できる法令はないため、子会社は拒否できる

ことになっています。こうした問題を回避するために、あらかじめ親・子会社間で、親会社が監査を行うことを認める契約を締結するなど、スムーズに内部監査を行える環境作りが必要です。

子会社を内部監査する場合は、

  • 親会社の内部監査部門が全ての子会社を一括して内部監査する方法
  • 各子会社に対して内部監査部門を設置する方法
  • 各地域に統括会社を設置して、その中に内部監査部門を持たせる方法

などがあります。どの方法を採用するにしても、内部監査の方針や要求水準が一定になるように注意しましょう。具体的には、規程やマニュアルの統一、定期的な品質評価レビューなどが挙げられます。

2)海外子会社の内部監査

海外に拠点を持つ中小企業も少なくないのですが、海外子会社の内部監査は国内子会社に比べて難しい面があります。距離や言語の壁が高く、対応できる人材の確保もままならないからです。ただ、壁が高いほど目が届きにくくなるということで、逆に内部監査が必要になってきます。

海外子会社に対する内部監査で最大の注意点は、法制度や商慣習が違うことです。内部監査の主目的の1つは法令遵守ですが、肝心の法制度を理解していないと、目指すべきところが明確になりません。その国独自の法制度を調べるのはなかなか難しいため、必要に応じて現地法務に精通した弁護士に相談することも検討します。

また、文化、価値観、言葉の違いにも注意しましょう。内部監査手続の多くはコミュニケーションや書類の閲覧によって行われるため、使用可能な言語(日本語、英語もしくは現地語)の確認と、通訳の要否などを検討する必要があります。

なお、これらの問題をクリアすることが難しい場合には、外部の専門家である公認会計士や弁護士に委託することも検討しましょう。

以上(2023年10月更新)

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