【労災の落とし穴(製造業)】 腰痛の悪化は労災にならない?

この記事では、現役社労士が直面した小さな製造業の労災の事例として、「業務により腰痛が悪化した社員について、『もともと腰が悪かったのなら、労災ではない』と判断してしまった会社」の話を紹介します(実際の会社が特定できないように省略したり、表現を変えたりしているところがあります)。

1 もともと腰が悪かったので、労災保険を使わせなかった……

社員数5人の機械メンテナンス会社に勤めるDさん。出張先の工場で重い機械の点検作業をしている最中、腰をひねって激痛に襲われました。もともと腰痛持ちのDさんは「持病が悪化しただけかもしれない」と考え、社長には報告せずに病院へ向かいます。

医師からは「椎間板ヘルニアの疑いがあるため、一定期間の休業が必要」と診断され、Dさんは社長に報告しました。

しかし、社長は休業を認めたものの、「もともと腰が悪かったのなら、業務とは関係ない」と労災にはしない方針を示し、Dさんは「自己都合休業」になってしまいました。

2 業務により腰痛が悪化したのなら、労災になり得る

腰痛はビジネスパーソンであれば大抵の人が抱える悩みなので、労災と関係ないように思われがちですが、実は状況次第で労災認定されます。

具体的には業務起因性について、図表のように独自の基準が定められています。「災害性の原因による腰痛」「災害性の原因によらない腰痛」にそれぞれの基準がありますが、今回は業務中に腰をひねったことによる腰痛なので、前者(赤字部分)に注目してください。

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このケーススタディーでは、社長が「もともと腰が悪かったのなら、業務とは関係ない」と言っていますが、Dさんは点検作業中に腰をひねり、椎間板ヘルニアを疑われるほど腰を痛めているので、

医師が「業務により症状が著しく悪化した」と明確に結論付けたのなら、業務起因性が認められる可能性が高い

です。業務遂行性については、そもそも業務時間中に発生した事故ということで認められるので、このケースが労災認定される可能性も高いといえるでしょう。

3 腰痛については医師の判断に任せつつ、社内では腰痛予防対策を講じる

腰痛は製造業の現場で起きやすい職業病の1つですから、まずは前述した図表の考え方をしっかり押さえましょう。

「災害性の原因による腰痛」の場合、腰痛の悪化に医学的な根拠があるかどうかを判断するのは医師なので、社員本人や社長が勝手に判断せず、まずはきちんと医師に相談するようにしましょう。

また、毎日不自然な体勢での作業を行っていて腰痛が悪化した場合なども、「災害性の原因によらない腰痛」として労災認定されることがあります。ですから、

  • かがんで作業をしなくても済むよう、高さを調節できる作業台や椅子を用意する
  • 重量物を運ぶ作業が多い場合、腰への負担を和らげるアシストスーツを着用させる
  • 作業前に、社員全員でストレッチを中?とした腰痛予防体操をする

などの腰痛予防対策を講じて、社員が腰を痛めにくい環境をつくることが大切です。腰痛予防対策についてより詳しく知りたい場合、厚生労働省が予防のポイントやチェックリストを公表しているので参考にするとよいでしょう。

■厚生労働省「腰痛予防対策」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31158.html

以上(2025年5月作成)

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画像:ChatGPT

【労災の落とし穴(製造業)】 本人のミスなら自己責任?

この記事では、現役社労士が直面した小さな製造業の労災の事例として、「保護具を着用しなかったせいで負傷した社員について、『本人のミスなので労災ではない』と判断してしまった会社」の話を紹介します(実際の会社が特定できないように省略したり、表現を変えたりしているところがあります)。

1 保護メガネを着用しなかったという理由で、労災保険を使わせなかった……

社員数20人で、溶接作業が中心の工場に勤めるCさん。ある日、業務時間中に保護メガネの着用を忘れて作業していた際、目に金属片が入ってしまいました。Cさんは作業を中断し、水で洗い流すなどの応急処置をしましたが、痛みが激しく視界もぼやけた状態です。

社長に報告したところ、「保護メガネを着用せずにけがをしたなら自己責任。会社が補償する必要はない」と言われ、Cさんも「自分のミスだから仕方ない」と思い込んでしまいます。

病院に行くと角膜に傷ができており、医師から「数日間の安静が必要」と診断されました。しかし、社長は「有給休暇を使って休むように」と指示し、労災保険を使うことを拒否。結局、Cさんは健康保険で診療を受けなければならなくなりました。

2 「本人のミスかどうか」は労災認定には関係ない

業務中の事故でけがをした場合、それが労災になるかどうかは、

  • 業務遂行性:その事故は、「会社の支配・管理下にある」ときに発生したのか
  • 業務起因性:その事故は、「業務と因果関係がある」といえるか

を基準に判断されます。つまり、

事故が「本人のミスによるものかどうか」は労災認定には関係ない

ので、「自己責任だから労災申請しなくていい」という言い分は通用しません。

このケーススタディーでは、Cさんは会社の支配・管理下にある業務時間中に、溶接作業で生じる金属片によってけがをしているので、労災認定される可能性が高いでしょう。

3 社員への「安全衛生教育」を徹底する

社員が「故意に事故を起こした」「私的な用事をしていて事故に遭った」などの特殊なケースでなければ、業務中におきたけがは、基本的に労災になるので労災保険を使うことを徹底しましょう。

また、会社には社員がけがや病気をせずに働けるよう配慮する「安全配慮義務」があるので、

「安全衛生教育」の実施体制に問題があれば、会社は労災発生の責任を問われる

こともあります。現場に「作業中は必ず保護メガネを着用すること!」などの張り紙をした上で、社長や管理職からも口頭で指導する体制を整える必要があるでしょう。

なお、社員にも自身の健康を守り、安全に働けるよう努力する「自己保健義務」があるので、安全管理を徹底させるためにも、社内規程(就業規則本則や安全衛生管理規程)で、

  • 社員には作業前に保護具を着用する義務があること
  • 着用義務に違反し、注意・指導をしても改善しない場合、懲戒処分の対象とすること

などを定めておくとよいでしょう。

以上(2025年5月作成)

pj00749
画像:ChatGPT

【新人経理向け】保有目的によって決算書に記載する金額が変わる有価証券の決算処理

1 金融商品のポイントは時価評価

決算書にはさまざまな資産が計上されますが、決算時、特に注意が必要なのが金融商品です。金融商品は大きく金融資産と金融負債に分けられ、次のようなものがあります。

  • 金融資産:現金預金、金銭債権(受取手形、売掛金、貸付金など)、有価証券(株式、公社債など)、デリバティブ取引による正味の債権
  • 金融負債:金銭債務(支払手形、買掛金、借入金、社債など)、デリバティブ取引による正味の債務

金融商品の会計処理は、

取得原価ではなく、時価評価で期末時点の価額を貸借対照表に反映

しなければなりません。

取得原価のまま決算書に載せてしまうと、その金融資産が含み損(取得時よりも時価が値下がりしていること)を抱えていたとしても、実際にそれを売却するまでは含み損があるかどうかは分かりません。また、時価評価すれば債務超過になる貸借対照表でも、取得原価のままなら健全に見えてしまう場合も考えられます。会社が倒産するまで「多額の不良債権」の存在が外部から把握できないケースもあり得るのです。

こうしたリスクをなくすために、この記事では、中小企業の経理実務に即した会計ルールである「中小会計要領」(中小企業の会計に関する基本要領)に合わせて、有価証券の評価と会計処理の方法を解説します。

2 異なる有価証券の評価方法

1)有価証券の分類と評価

中小会計要領では、原則として取得原価での会計処理になります。ただし、売買目的有価証券(短期間の価格変動により利益を得る目的で、売買を繰り返す有価証券)は時価での会計処理になります。また、時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、時価で貸借対照表に計上し、評価差額を当期の損失として減損処理しなければなりません。

2)売買目的有価証券

時価の変動による利益を得ることを目的に保有する有価証券は、

決算日の時価で貸借対照表に計上し、評価差額は当期の損益

として処理します。「時価の変動による利益を得ることを目的として保有する」とは、

時価の短期的な価格変動により利益を得ることを目的とし、同一銘柄に対して相当程度に繰り返し売買が行われる体制が整っていること

が前提です。例えば、定款に会社の目的として有価証券売買業が記載されており、有価証券売買のための人材が独立した専門部署で有価証券売買を行っている場合が挙げられます。

そのため、一般の事業会社が余剰資金の運用目的で有価証券を購入しても、その有価証券は売買目的有価証券に分類されないのが原則です。ただし、売買を頻繁に繰り返していると判断できる場合は、売買目的有価証券に分類することができます。売買目的有価証券を売却した場合、売却時点で付されている帳簿価額と売却価額との差額を当期の売却損益として処理します。なお、同一銘柄の有価証券を売買目的有価証券とそれ以外の区分で分けて保有しており、当該有価証券の一部を売却したときは、これらが社内で、明確に分別管理されていなければ、まずは売買目的有価証券を売却したものと推定します。

3)事例で確認 売買目的有価証券の会計処理

A株式(上場有価証券)を売買目的で保有しており、その有価証券の取引状況は次の通りとします。

×1年度期中においてA株式を1000万円で取得

×1年度期末のA株式の時価は1100万円

×2年度期中にA株式を1500万円で売却

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3 株や債券が大暴落したときの「減損」

1)市場価格のある有価証券の減損処理

取得原価で評価した有価証券(売買目的有価証券以外の有価証券)のうち、市場価格または合理的に算定された価額(時価)のあるものについて時価が著しく下落したとき(回復する見込みがあると認められる場合を除く)は、時価で貸借対照表に計上し、評価差額を当期の損失として評価損を計上する必要があります。

「時価が著しく下落したとき」とは、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合が当てはまります。

例えば、その他有価証券を1000万円で取得したが、期末時価が400万円に下落し、かつ、将来取得原価まで回復する見込みがはっきりしない場合には、評価損を計上する必要があります。

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次年度以降のその他有価証券の取得原価は減損処理後の金額400万円となります。なお、この評価額は税務上も損金処理できることになっています。

2)市場価格のない株式の減損処理

市場価格のない株式(証券取引所で売買されていない株式や出資金など)は取得原価で貸借対照表に計上します。また、株式の発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が著しく下がったときは相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として評価損を計上する必要があります。

「財政状態の悪化による実質価額が著しく下がったとき」とは、大幅な債務超過などでほとんど価値がないと判断できる場合などが当てはまります。

なお、この評価額は税務上も損金処理できることになっています。

以上(2025年4月)
(監修 税理士 石田和也)

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画像:photo-ac

【業種別データ】綱・網・レース・繊維粗製品製造業の動向

綱・網・レース・繊維粗製品製造業は、事業所数こそ微減ながら、2023年の製造品出荷額は前年比105.5%と増加し、1事業所当たり・1人当たりの出荷額や付加価値も伸びており、生産性は改善傾向にあります。一方、分野別に見ると、漁網やフェルト・不織布、上塗り織物などは堅調な伸びを示す一方、レースは事業所・従業者・出荷額が減少しており、需要構造の変化がうかがえます。業界全体の売上高営業利益率はマイナス、損益分岐点比率も高く、売上は伸びても収益・財務基盤には大きな課題が残る業界と言えます。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の綱・網・レース・繊維粗製品製造業の事業所数は1029事業所(対前年比98.7%)、従業者数は2万229人(対前年比100.0%)、製造品出荷額等は5463億8700万円(対前年比105.5%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は20人(対前年比101.4%)、現金給与総額は8300万円(対前年比103.9%)、原材料使用額等は3億900万円(対前年比104.7%)、製造品出荷額等は5億3100万円(対前年比106.9%)、付加価値額は1億9300万円(対前年比108.7%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は422万円(対前年比102.5%)、製造品出荷額等は2701万円(対前年比105.5%)、付加価値額は979万円(対前年比107.2%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は58.1%(対前年比98.0%)、同付加価値額比率は36.3%(対前年比101.6%)、同現金給与総額比率は15.6%(対前年比97.2%)となっています。

【1150 綱・網・レース・繊維粗製品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)綱製造業

2023年の綱製造業の事業所数は95事業所(対前年比100.0%)、従業者数は1631人(対前年比104.7%)、製造品出荷額等は356億2000万円(対前年比107.9%)となっています。

【1151 綱製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)漁網製造業

2023年の漁網製造業の事業所数は101事業所(対前年比100.0%)、従業者数は2190人(対前年比100.4%)、製造品出荷額等は529億3400万円(対前年比109.6%)となっています。

【1152 漁網製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)網地製造業(漁網を除く)

2023年の網地製造業(漁網を除く)の事業所数は53事業所(対前年比96.4%)、従業者数は1020人(対前年比106.0%)、製造品出荷額等は226億9200万円(対前年106.1%)となっています。

【1153 網地製造業(漁網を除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)レース製造業

2023年のレース製造業の事業所数は123事業所(対前年比97.6%)、従業者数は1104人(対前年比92.9%)、製造品出荷額等は181億7400万円(対前年比98.5%)となっています。

【1154 レース製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)組ひも製造業

2023年の組ひも製造業の事業所数は107事業所(対前年比100.9%)、従業者数は1032人(対前年比103.5%)、製造品出荷額等は115億9100万円(対前年比111.0%)となっています。

【1155 組ひも製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

7)整毛業

2023年の整毛業の事業所数は30事業所(対前年比107.1%)、従業者数は189人(対前年比108.0%)、製造品出荷額等は30億8500万円(対前年比137.3%)となっています。

【1156 整毛業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

8)フェルト・不織布製造業

2023年のフェルト・不織布製造業の事業所数は231事業所(対前年比97.9%)、従業者数は9232人(対前年比97.7%)、製造品出荷額等は2874億9600万円(対前年比103.8%)となっています。

【1157 フェルト・不織布製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

9)上塗りした織物・防水した織物製造業

2023年の上塗りした織物・防水した織物製造業の事業所数は45事業所(対前年比102.3%)、従業者数は1824人(対前年比109.1%)、製造品出荷額等は840億500万円(対前年比102.2%)となっています。

【1158 上塗りした織物・防水した織物製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

10)その他の繊維粗製品製造業

2023年のその他の繊維粗製品製造業の事業所数は244事業所(対前年比96.8%)、従業者数は2007人(対前年比98.0%)、製造品出荷額等は307億8900万円(対前年比122.8%)となっています。

【1159 その他の繊維粗製品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【レース・繊維雑品製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

賃上げ、設備投資。2025年度の注目税制を税理士が厳選!

1 税制改正大綱の内容はいつから実行される?

毎年年末に税制改正大綱が公表されますが、その内容は今すぐに実行されるわけではありません。税制改正大綱の内容を実行するための法令は、年明け1~3月に国会で審議されますし、そもそも税制改正大綱には、

その翌年度の改正だけでなく、翌々年度以降の改正

も含まれているのです。

となると、経営者や実務担当者は、税制改正大綱の内容が、いつから実行されるのかを意識しておく必要があります。そういう意味でいえば、直近の税制改正大綱の内容はどうなのでしょうか。皆さんが注目している税制が、実はまだ先のことだったら困りますよね。

そこで、この記事では、近年話題になっている様々な税制の中から、

中小企業が2025年度に使える税制

について紹介していきます。具体的には、

賃上げ、設備投資、寄附

をした、または検討している中小企業の経営者や実務担当者は確認してみてください。

なお、この記事で紹介している賃上げ、設備投資に関する税制は、中小企業者等を対象としています。中小企業者等とは、

資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人(同一の大規模法人から、発行済株式の総数または出資の総額の2分の1以上を所有されている法人などを除く)など

をいいます。

2 【賃上げ】賃上げ促進税制

賃上げ促進税制は、

中小企業が前年度よりも給与などを増やした場合に、その増加額の一部が控除できる制度

です。通常要件に加え、上乗せ措置があり、それぞれの要件を満たすごとに、一定の税額控除率が加算されます(最大の税額控除率45%)。

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例えば、給与の合計額を前年度から500万円増やした場合、75万円(=500万円×15%)を法人税額から控除できます(通常要件のみを満たした場合のケースです)。税額控除(法人税を減額するもの)なので、75万円分、納税額が少なくなります。ただ、上限金額が決まっており、税額控除前の法人税額の20%までしか控除できません。

この税制の適用を受けるためには、法人税の申告の際に、確定申告書に、税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額と、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

なお、賃上げ促進税制は税額控除であるため、

  • 法人税が発生しない赤字の会社
  • 黒字であっても、納税額が控除額より少ない会社

は要件を満たしても、その年度にメリットの全部または一部を受けられません。そのような会社には、最大5年間、控除しきれなかった額を繰り越して税額控除を受けられる措置があります。

3 【設備投資】中小企業投資促進税制・中小企業経営強化税制・固定資産税の特例

1)中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、

生産性の向上を目的に、一定の設備投資やソフトウエアを購入した場合に、その投資額の一部を税額控除か、特別償却(通常の減価償却費のかさ増し)のいずれかを選択して適用できる制度

です。ただし、資本金3000万円超の中小企業については特別償却しか適用できません。

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例えば、生産性の向上を目的に200万円の機械装置を購入して税額控除を選択した場合、14万円(=200万円×7%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、購入した設備ごとに購入金額や重量などの下限が決められています。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。

この税制は、事前の申請などは必要なく、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類を添付することで適用を受けられます。

1.特別償却の場合

  • 中小企業者等が取得した機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表
  • 適用額明細書

2.税額控除の場合

  • 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
  • 適用額明細書

2)中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、

中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて、新たな設備投資をした場合に、税額控除か即時償却のいずれかを選択して適用できる制度

です。要件は4つのタイプに分かれており、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。昨年度(2024年度)まで対象であったデジタル化設備(C類型)が除かれ、新たに経営規模拡大設備(B類型の拡充)が加えられています。

また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(別表や適用額明細書)を添付することで、適用を受けられます。

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例えば、150万円のシステム投資を行って税額控除を選択した場合、15万円(=150万円×10%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、中小企業投資促進税制と同様、購入した設備ごとに購入金額の下限が決められているので注意が必要です。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。

この税制を受けるためには、事前に経営力向上計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定までおおよそ3カ月はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(認定計画の申請書および認定書の写しや別表、適用額明細書)を添付しなければなりません。

3)固定資産税の特例

固定資産税の特例は、

中小企業等経営強化法の認定を受けた認定先端設備等導入計画に基づいて、新たな設備投資をし、かつ一定率以上の賃上げを表明した場合に、固定資産税の一部が3年間または5年間減免される制度

です。

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例えば、機械装置200万円を購入した場合、約14万円(≒200万円×1.4%×1/2。一般要件のみを満たした場合の購入初年度ケースです)の固定資産税の減免を受けられます。

この税制を受けるためには、事前に先端設備等導入計画を作成し、市区町村(東京都特別区の場合は東京都)から認定を受けなければなりません。設備投資については、認定後に行うことが必須です。なお、先端設備等導入計画の作成には1カ月程度はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、償却資産の申告の際に、一定の書類(先端設備等導入計画に係る固定資産税の課税標準の特例適用申請書や認定書の写しなど)を添付しなければなりません。

4 【寄附】企業版ふるさと納税

企業版ふるさと納税は、

会社が自治体に寄附すると、税負担を軽減することができる制度

です。軽減効果は、寄附額の最大9割とされており、内訳は、

  • 法人住民税と法人税の税額控除が4割
  • 法人事業税の税額控除が2割
  • 法人税の損金算入で約3割

です。寄附額の下限金額は10万円で、本社が所在する自治体などへの寄附は対象外となっています。寄附を募っている自治体や事業については、内閣府「企業版ふるさと納税ポータルサイト」で確認してみましょう。

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なお、企業版ふるさと納税には、個人版と異なり返礼品はありません。そのため、会社の社会貢献活動や自治体とのパートナーシップ構築などを目的に行われています。この税制を受けるためには、確定申告時に、企業版ふるさと納税の適用がある寄附を行ったことを申告するとともに、受領証の写しを提出(法人税の申告にあっては保管)しなければなりません。

以上(2025年5月作成)
(執筆 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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画像:Vanz Studio-Adobe Stock

【労災の落とし穴(製造業)】 労災かくしで労基署の調査が!?

この記事では、現役社労士が直面した小さな製造業の労災の事例として、「社員と口裏を合わせて労災かくしをしようとした結果、それが労働基準監督署にバレてしまった会社」の話を紹介します(実際の会社が特定できないように省略したり、表現を変えたりしているところがあります)。

1 社員と口裏を合わせたつもりが、本人が医師に真相を打ち明けて大問題に……

社員数10人の金属製造工場に勤めるBさん。機械に部品をセットする際に誤って指を挟み、大量に出血してしまいました。医師からは「少なくとも1週間程度は安静が必要。指の機能回復に時間がかかる」と診断され、10日以上仕事を休むことになりました。

この会社では、過去に似た状況で社員が負傷し、労働基準監督署の調査が入ったことがあります。苦い経験のある社長は、Bさんに「指のけがぐらいなら健康保険で治療してくれる。業務中のけがだってことは黙っていてね」と持ちかけます。Bさんは「社長がそう言うなら……」と、指示に従いました。

しかし、悪いことはできないもので、数カ月後に事態は急変します。Bさんはけがの回復が芳しくなく、医師から手術が必要と宣告されます。会社への不満が募っていたBさんは、とうとう医師に「実は業務中のけがだった」と打ち明けました。この話が病院から労働基準監督署に伝わり、監督官による会社への立ち入り調査が実施されました。

調査の結果、明らかに業務中のけがなのに、労働者死傷病報告が提出されていなかったことが判明。会社側が故意に報告をせず、社員にも口止めしていた点が重く見られ、社長は労働安全衛生法違反で、刑事責任を問われることになりました。

2 口裏を合わせても、いずれはバレる

労災かくしに協力させられた社員の中には、会社への不満だったりつい口を滑らせたりして

医師や労働基準監督署に「実は業務中のけがだった」と報告する人も少なくありません。その結果、労働基準監督署の監督官による立ち入り調査が実施され、経営者が処罰されるケース

もあります。業務中にけがをした場合、診察や治療を受ける際は、原則として労災保険を使わなければなりません。

このケーススタディーは、長期休業が必要なレベルのけがにもかかわらず、健康保険を使わせるという極めて悪質な労災かくしです。「労災であっても、社員と口裏を合わせて報告しなければバレない」という甘い考えが通用するはずもなく、結果として社長が刑事責任を問われることになりました。

3 意図的な労災かくしは言語道断、正しい手続きを!

まずは、「労災が発生したら労災保険で対応する」「労災により休業・死亡が発生した場合、労働者死傷病報告を提出する」という法律のルールを守りましょう。ちなみに、労働者死傷病報告の提出時期は、

  • 4日以上の休業(または死亡)の場合:労災発生から遅滞なく
  • 4日未満の休業の場合:3カ月ごと(4月末、7月末、10月末、1月末)

となっていて、2025年1月からは「電子政府の総合窓口(e-Gov)」での提出(電子申請)が義務化されています。

なお、会社が労災保険で対応しようとしても、社員のほうが「会社に迷惑をかけたくない」と健康保険を使おうとするケースが時折見受けられますが、社員の意思に関係なく、

事故の内容が労災であれば、会社は労働者死傷病報告を提出しなければならない

ので、労災かくしを疑われないためにも、「業務中のけがの場合は労災保険を使うこと」を社員にも徹底させましょう。万が一健康保険で診察や治療を受けてしまった場合でも、所定の手続きを踏めば労災保険に切り替えられる制度があるので、併せて社員に周知するとよいでしょう。

■厚生労働省「お仕事でのケガ等には、労災保険!」■
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000150202.pdf

以上(2025年5月作成)

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【労災の落とし穴(製造業)】 労災に健康保険を使ったら違法?

この記事では、現役社労士が直面した小さな製造業の労災の事例として、「社員が業務により負傷したのに、労災保険でなく健康保険を使うよう指示してしまった会社」の話を紹介します(実際の会社が特定できないように省略したり、表現を変えたりしているところがあります)。

1 業務中に膝を打撲した社員に、労災保険でなく健康保険を使うよう指示した……

社員数10人の金属加工工場に勤めるAさん。ある日、プレス機のオペレーション中、足元の部品につまずいて転倒し、膝を打撲してしまいました。膝が赤く腫れていましたが、忙しいこともあり、Aさんは周囲に「このぐらい、大したけがじゃない」と言い、社長も「病院へ行きなさい」とは言わず、そのまま業務に復帰させました。

しかし、その後も膝の痛みが引かなかったので、翌日、Aさんは病院に行きました。診断結果は靭帯損傷、医師からは「念のため1日休業した上で、数週間通院するように」と言われました。

ところが社長に報告すると、社長は「1日の休業で済むレベルなら軽傷だし、労災にしなくてもいいでしょ? 労働基準監督署から監督官が来るかもしれないし、労災保険料が上がるのも困るから、健康保険を使ってくれ」と、Aさんに頼み込みます。Aさんは「社長がそう言うなら……」と、指示に従ってしまいました。

2 業務中のけがで健康保険を使うのは違法!

業務中にけがをした場合、診察や治療を受ける際は、原則として労災保険を使わなければなりません。安易に健康保険を使うと、後に労働基準監督署が実態を確認した際、労災かくしとみなされる恐れがあります。また、社員にとっても、

診察や治療にかかる費用が、労災保険を使えば「自己負担0円」で済むところ、健康保険を使うことで「3割が自己負担」になってしまう

という問題があります。

3 まずは労働者死傷病報告のルールを正しく押さえよう

まずは、「労災が発生したら労災保険で対応する」「労災により休業・死亡が発生した場合、労働者死傷病報告を提出する」という法律のルールを守りましょう。ちなみに、労働者死傷病報告の提出時期は、

  • 4日以上の休業(または死亡)の場合:労災発生から遅滞なく
  • 4日未満の休業の場合:3カ月ごと(4月末、7月末、10月末、1月末)

となっていて、2025年1月からは「電子政府の総合窓口(e-Gov)」での提出(電子申請)が義務化されています。

なお、会社が労災保険で対応しようとしても、社員のほうが「会社に迷惑をかけたくない」と健康保険を使おうとするケースが時折見受けられますが、社員の意思に関係なく、

事故の内容が労災であれば、会社は労働者死傷病報告を提出しなければならない

ので、労災かくしを疑われないためにも、「業務中のけがの場合は労災保険を使うこと」を社員にも徹底させましょう。万が一健康保険で診察や治療を受けてしまった場合でも、所定の手続きを踏めば労災保険に切り替えられる制度があるので、併せて社員に周知するとよいでしょう。

■厚生労働省「お仕事でのケガ等には、労災保険!」■
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000150202.pdf

後は基本的なことですが、「社員がけがをしたら、すぐに病院で診てもらう」「現場を整理整頓された状態に保つ」ようにしましょう。症状が悪化する前に病院を受診すればその分回復が早くなりますし、小さな製造業の場合、清掃や作業時の動線チェックを習慣化するだけでも労災の防止に大きな効果があります。

以上(2025年5月作成)

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【新人経理向け】決算のメーン作業となる棚卸資産と固定資産の評価の全体像を把握する

1 棚卸資産と固定資産の評価は決算のメーン作業

さまざまな集計や計算が行われる決算作業の中でも、金額の大きさなどからメーンとなるのが、棚卸資産と固定資産の評価です。

  • 棚卸資産:売上原価の計算と、期末評価額の算定、減耗損の有無の判断
  • 固定資産:減価償却の計算と減損の有無の判断

この記事では、新人経理担当者に必要な棚卸資産と固定資産の会計処理を解説します。

  • 商品や製品などの棚卸資産の評価
  • 建物や機械装置などの有形固定資産の評価

2 商品や製品などの棚卸資産の評価

1)売上原価と期末商品棚卸高

製造業以外の業種の売上原価は、

売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高

で計算できます。

当期に仕入れたものが全て売上原価になるのではなく、販売につながった商品だけが売上原価として損益計算書に記載されることになります。期末商品棚卸高は棚卸資産として貸借対照表に記載されて次期に繰り越され、次期以降の売上原価の一部になります。

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2)製造業の製品製造原価と期末製品棚卸高

製造業は原材料を仕入れて、それを加工し出荷します。そのため製造業の場合、売上原価と期末棚卸高は自社製造製品が対象になります。

製造に必要な費用は、材料費、労務費、製造経費に大きく分けることができます。

  • 材料費:「材料費=期首材料棚卸高+当期材料仕入高-期末材料棚卸高」で計算
  • 労務費:製造に携わる社員の給与、賞与、退職金、各種社会保険料などを集計
  • 製造経費:工場の光熱費、消耗品費、建物の減価償却費、外注費などを集計

製造業の場合、商品仕入高の代わりに当期製品製造原価を用いて売上原価を計算します。

また、棚卸資産は、材料棚卸高、仕掛品棚卸高(期末時点で製造途中の未完成品)、製品棚卸高により計算されます。その算出フローは次の通りです。

  • 当期材料費=期首材料棚卸高+当期材料仕入高-期末材料棚卸高
  • 当期総製造費用=当期材料費+当期労務費+当期製造経費
  • 当期製品製造原価=当期総製造費用+期首仕掛品棚卸高-期末仕掛品棚卸高
  • 売上原価=期首製品棚卸高+当期製品製造原価-期末製品棚卸高

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3)棚卸資産の主な評価方法

商品などの棚卸資産は取得原価を基に評価しますが、いつ仕入れたかによって価額が異なる場合が多いです。物価上昇時では、先に仕入れた商品より後から仕入れた商品のほうが仕入値は高くなります。一方、物価下落時では、先に仕入れた商品より後から仕入れた商品のほうが仕入値は安くなります。

そのため、決算時には次の評価方法の中から選択した方法で売上原価・製造原価の払出原価と期末棚卸資産の価額を評価することになります。

1.個別法

取得原価の異なる棚卸資産を区別して記録し、その個々の実際原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法です。個別法は、一品一品受注生産しているような棚卸資産の評価に適した方法です。

2.先入先

出法最も古く仕入れものから順次払出し、期末棚卸資産は最も新しく仕入れたものからなるとみなして、期末棚卸資産の価額を算定する方法です。

3.平均原価法

仕入れた棚卸資産の平均原価を算出し、この平均原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法です。なお、平均原価は、総平均法(1年間分をまとめて平均原価を計算する方法)または移動平均法(仕入れる都度平均原価を計算する方法)によって算出します。

4.売価還元法

値入率などが同じ棚卸資産のグループごとの期末の売価合計額に、原価率を乗じて期末棚卸資産の価額とする方法です。売価還元法は、取扱品種の極めて多い小売業等の業種における棚卸資産の評価に適用されます。売価還元法によると、期末棚卸資産は

期末棚卸資産=期末棚卸資産の通常の販売価額×原価率

の算式で計算されます。

なお、原価率は、

原価率=(期首棚卸資産+当期仕入高)/(当期売上高+期末棚卸資産の通常の販売価額)

の算式で計算されます。

例えば、期首棚卸資産の取得原価が200万円、当期仕入高が1000万円、当期売上高が1400万円、期末棚卸資産の通常の販売価額が200万円の場合、次の通りです。

原価率=(200万円+1000万円)/(1400万円+200万円)=75%

期末棚卸資産=200万円×75%=150万円

4)棚卸資産の減耗損はありますか

本来、商品在庫は、仕入数量から売上数量を引いた数量と一致すべきものですが、さまざまな要因(紛失や盗難など)で数量不足が起きることがあります。本来あるべき数量(帳簿棚卸数量)に比べて実際の数量(実地棚卸数量)が少ないケースです。この数量の減少による損失を減耗損といいます。減耗損の仕訳例は次の通りです。

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減耗損が毎期不可避的に発生するものは売上原価に含めるか、または販売費として扱います。一方、経常的でない異常な減耗損は特別損失(金額的に重要性の乏しい場合は営業外費用)として扱います。

5)棚卸資産の評価損はありますか

販売するために保有する棚卸資産は、取得原価で貸借対照表に計上します。ただし、期末における正味売却価額(期末時点で市場で販売できる価額)が取得原価よりも下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額とします。この場合、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理します。なお、詳細な解説は省略しますが、会計基準上は認められていないものの、税務上は原価法も認められています。

前期に評価損を計上した棚卸資産については、当期首に戻入れを行う方法(洗替え法)と行わない方法(切放し法)のいずれかを棚卸資産の種類ごとに選択適用することができます。また、売価の下落要因を、

  • 物理的劣化
  • 経済的劣化
  • 市場の需給変化

の要因ごとに区分できるときは、その区分ごとに洗替え法と切放し法のいずれかを選択適用できます。この場合、いったん採用した方法は、原則として、継続して適用しなければなりません。切放し法と洗替え法による仕訳例は次の通りです。なお、税務上、切放し法は認められません。

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3 建物や機械装置などの有形固定資産の評価

1)減価償却とは

建物や機械装置、車両運搬具などは、少額のものを除き有形固定資産として計上します。これらの資産は購入した年度だけ使用するのでなく、翌年度以降も使用されます。そのため、耐用年数(資産の種類や性質ごとに異なります)の期間を通じて、費用処理する方法が取られています。この処理を減価償却といい、毎期一定の金額、または一定の割合で価値が減るという仮定で費用処理します。現在は、パソコンなどで自動計算されるため、計算方法よりも、むしろ貸借対照表にどのように計上されているのかを押さえることが大切です。

2)事例で学ぶ 減価償却の会計処理

減価償却について、次の条件を基に説明します。

機械装置を100万円で購入、耐用年数は10年、定額法定額法による場合、各期の減価償却費は次式で算出されます。

各年度の減価償却費=取得価額×償却率(耐用年数ごとに定められている定額法の率)

各年度の減価償却費=100万円×0.100=10万円

また、期首帳簿価額、減価償却費、期末帳簿価額は次のように推移します。資産は備忘価額1円を残して、10年間で99万9999円まで償却します。

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減価償却累計額は、原則的には貸借対照表の有形固定資産を間接的に減額する評価勘定として表示され、減価償却費は、損益計算において営業費用として処理されることになります。各期の仕訳例は次の通りです。

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貸借対照表では次のように表示されます。原則は間接控除方式ですが、直接控除方式によることもできます。

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以上(2025年4月更新)
(監修 税理士 石田和也)

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「勤務時間外は電話に出ません!」 つながらない部下の対処法

1 たまに耳にする「つながらない権利」って何?

皆さんは「つながらない権利」という言葉をご存じですか?

プライベートの時間(勤務時間外)では、社員は会社からの仕事に関する連絡(電話・メール・チャットなど)への対応を断ることができるという権利

のことです。フランスで2016年に法制化されたのをきっかけに、他のヨーロッパ諸国でもこのつながらない権利が広がっています。国によっては、勤務時間外の連絡そのものを禁止していて、違反すると会社に罰金が科される場合もあるほどです。

日本では法制化には至っていませんが、

テレワークなどで働き方が自由になった一方、仕事とプライベートの境界があいまいになり、社員が「常に仕事につながれた状態」になりやすい環境

ができています。そんな中で、つながらない権利をめぐって上司と部下が対立することもしばしば。例えば、上司が急ぎでお願いしたいことがあっても、部下が「勤務時間外ですから」とそれを突っぱねてしまうのです。上司と部下、両者の主張はおそらくこんなカンジでしょう。

(上司)そりゃ、プライベートは大切だろうけど、時と場合によるだろう! そっちは勤務時間外でもこっちは働いているんだ! 少しは融通を利かせてくれないと困る!

(部下)こっちは休みたいし趣味だって楽しみたいのに、当然のように連絡されたんじゃプライベートの意味がない! 勤務時間中は真面目に働いているんだから、いいでしょ!

つながらない権利は、基本的には部下寄りの考え方に立ちますが、会社からすると上司の主張も一理あるかもしれません。どちらの主張も汲んだ「バランスの取れたつながらない権利」を実現するにはどうすればいいのか、そのためには「会社」「上司」「部下」それぞれが以降で紹介するポイントを押さえることが大切です。

2 会社:働き方のルールをきちんと作る!

1)「原則、勤務時間外には連絡しない。ただし、急ぎの案件などは別」が基本

まずは、会社が働き方のルールをきちんと作りましょう。就業規則等に、つながらない権利の規定を設けている会社は少数派かもしれませんが、例えば日本労働組合総連合会(以下「連合」)が次のような規定例を紹介しています。

【規定例】

第〇条(つながらない権利(勤務時間外の連絡))

1 会社は勤務時間外の従業員に対し、緊急性が高い場合を除き、電話、メール、その他の方法で連絡等を行わない。

2 従業員は、勤務時間外の別の従業員に対し、電話、メール、その他の方法で連絡をしてはならない。ただし、緊急性の高いものはこの限りではない。

3 勤務時間外の従業員は、会社または別の従業員からの電話、メール、その他の方法による連絡について、応対する必要はない。

4 会社は、会社または別の従業員からの電話、メール、その他の方法による連絡に応対しなかった従業員に対して、人事評価等において不利益な取扱いをしない。

(出所:連合「【重点分野-2】テレワーク導入に向けた労働組合の取り組み方針」)

ざっくりポイントをまとめると、

会社は原則として、勤務時間外には社員に連絡しないが、急ぎの案件などでは連絡することがある。ただし、社員が応対しなくても、人事評価等で不利益な取扱いはしない

です。

2)連絡手段についてはもう少し細かいルールを

連絡手段については、必要に応じてもう少し細かいルールを決めておくのもよいでしょう。例えば、

  • 普段、業務で使用するチャットツールについては、勤務時間外では通知をオフにすることを推奨し、社員が安心してプライベートを過ごせるよう配慮する
  • その上で、どうしても急ぎ連絡を取らなければならない場合は、あらかじめ「急ぎの連絡手段(携帯電話への連絡など)」を決めておき、そちらに連絡する

といった具合に、連絡手段を使い分けるようにすると、メリハリが付けやすいかもしれません。あるいは、チャットツールなどについて、深夜・早朝・休日などの時間帯にはアクセス制限をかける仕組みを整えると、上司が部下に悪気なく連絡してしまうのを防ぐことができます。

3)社外への伝達も忘れずに!

社員のプライベートを守るためには、取引先などに自社の営業時間をきちんと伝えておきましょう。例えば、自社のウェブサイトや問い合わせフォームに

「弊社の営業時間は平日9時~18時です。土日祝日は休業日のため、お問い合わせには翌営業日に対応いたします」

といった表記をすることが考えられます。

この他、システム面を工夫して、休暇中の社員への電話を会社に転送したり、時間外に届いたメールを自動削除して再送を求めたりする機能を導入している会社もあります。こうした機能がある場合は、あらかじめ取引先などに説明し、理解を得るようにしましょう。

3 上司:勤務時間外には原則連絡せず、する場合も配慮を!

1)「自分が若い頃は……」は通用しない

上司の中には、「自分が若い頃は、夜中や休日に上司から連絡を受けても対応していた」という人がいるかもしれませんが、今の時代、それは通用しません。本来、プライベートの時間は体を休めたり、趣味を楽しんだりするためのものであり、上司から連絡が来るのが当たり前になると、部下は安心して休むことができません。厳しいようですが、

「原則、勤務時間外には連絡しない」というのが鉄則。しなければならないのだとしたら、それは自身のマネジメントに問題がある

ぐらいに思っておいたほうがいいでしょう。

2)「急ぎの連絡をする基準」を部下と共有する

とはいえ、1)のように教科書通りにもいかないのがビジネスなので、どうしても部下に連絡をしなければならない場合に備え、「急ぎの連絡をする基準」を部下と共有しておきましょう。

  • 基本は「部下にその日のうちに連絡をしないと業務に支障が出る場合のみ」連絡する
  • 翌営業日の連絡で間に合うなら、翌営業日に回してその日は連絡しない

です。休日などに、「翌営業日の対応で間に合うが、忘れないうちに部下に連絡しておきたいので……」とチャットだけを送る上司もいるでしょうが、

上司が即日返信を求めていなくても、部下のほうはいざ連絡を受けると、「自分も早く返信しなければ」と圧を感じることがある

ので、避けたほうが無難です。

また、連絡する場合は次のポイントを意識すると、部下も対応しやすいでしょう。

  • 要点を簡潔に伝える
  • 急ぎかどうかを明確にする
  • 深夜や早朝など、対応が難しい時間帯は避ける

3)稼働した時間の労働時間管理はしっかりと!

勤務時間外に部下に何らかの作業を依頼する場合、部下が稼働した時間は労働時間になります。当然、稼働した時間分の賃金は必要ですし、状況によっては時間外・休日労働の割増賃金も支払わなければなりませんから、労働時間管理はしっかり行いましょう。

4 部下:急ぎの連絡については、可能な限り協力を!

1)正当な業務命令であれば、基本的には従う

部下にとっては「勤務時間外はなるべく会社から連絡を受けたくない」ものですし、ここまでお話しした通り、つながらない権利は最大限尊重されるべきものでしょう。

一方、ほとんどの会社は就業規則等で「36協定に基づき、社員に時間外・休日労働を命じることがある」などの規定を設けています。

部下のほうも正当な業務命令であれば、基本的にはそれに従う義務がある

ので、その点は認識しておきましょう。とはいえ、休日などに急に連絡を受けて即座に対応するのが難しいケースもあるので、その場合は上司に

「今すぐは無理ですが、○時以降なら対応できます」

などと返事して、落としどころを探りましょう。

2)上司のつながらない権利にも配慮を!

また、ここまでは「上司が勤務中」「部下が勤務時間外」という前提で話をしてきましたが、逆のパターンで「部下が勤務中」「上司が勤務時間外」というケースもあります。その場合は当然、部下のほうも上司のつながらない権利に配慮をする必要があります。第3章で紹介した通り、

  • 基本は「上司にその日のうちに連絡をしないと業務に支障が出る場合のみ」連絡する
  • 翌営業日の連絡で間に合うなら、翌営業日に回してその日は連絡しない

です(上司から「今日は先に上がるけど、○時に業務の報告をしてほしい」などと頼まれた場合は別です)。

以上(2025年4月作成)

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【業種別データ】製糸業、紡績業、化学繊維・ねん糸等製造業の動向

製糸業、紡績業、化学繊維・ねん糸等製造業は、事業所数・従業者数が微減する一方で、2023年の製造品出荷額は前年から2割超増と大きく伸び、1事業所・1人当たりの生産性も改善しています。成長を牽引するのは化学繊維・炭素繊維で、綿紡績など伝統分野は事業縮小が続く構図です。他方、経営指標では業界平均の営業利益率・自己資本比率がマイナスで、黒字かつ自己資本プラス企業との二極化が進行しており、構造改革と高付加価値化がなお課題と言えます。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の製糸業、紡績業、化学繊維・ねん糸等製造業の事業所数は776事業所(対前年比99.2%)、従業者数は1万9567人(対前年比98.8%)、製造品出荷額等は7004億5200万円(対前年比120.6%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は25人(対前年比99.6%)、現金給与総額は1億1600万円(対前年比100.3%)、原材料使用額等は5億1000万円(対前年比116.4%)、製造品出荷額等は9億300万円(対前年比121.5%)、付加価値額は3億3500万円(対前年比127.7%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は461万円(対前年比100.8%)、製造品出荷額等は3580万円(対前年比122.1%)、付加価値額は1327万円(対前年比128.3%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は56.4%(対前年比95.7%)、同付加価値額比率は37.1%(対前年比105.1%)、同現金給与総額比率は12.9%(対前年比82.5%)となっています。

【1110 製糸業、紡績業、化学繊維・ねん糸等製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)製糸業

2023年の製糸業の事業所数は14事業所(対前年比107.7%)、従業者数は174人(対前年比119.2%)、付加価値額は10億7800万円(対前年比86.6%)となっています。

【1111 製糸業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)化学繊維製造業

2023年の化学繊維製造業の事業所数は116事業所(対前年比98.3%)、従業者数は8086人(対前年比101.4%)、製造品出荷額等は4146億2300万円(対前年比137.6%)となっています。

【1112 化学繊維製造業】

4)炭素繊維製造業

2023年の炭素繊維製造業の事業所数は22事業所(対前年比100.0%)、従業者数は3286人(対前年比99.0%)、製造品出荷額等は1535億8700万円(対前年比109.9%)となっています。

【1113 炭素繊維製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)綿紡績業

2023年の綿紡績業の事業所数は24事業所(対前年88.9%)、従業者数は889人(対前年比72.8%)、製造品出荷額等は153億7500万円(対前年比56.1%)となっています。

【1114 綿紡績業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)化学繊維紡績業

2023年の化学繊維紡績業の事業所数は82事業所(対前年比100.0%)、従業者数は1415人(対前年比97.5%)、製造品出荷額等は223億3300万円(対前年比112.6%)となっています。

【1115 化学繊維紡績業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

7)毛紡績業

2023年の毛紡績業の事業所数は51事業所(対前年比100.0%)、従業者数は1077人(対前年比102.8%)、製造品出荷額等は215億7100万円(対前年比103.0%)となっています。

【1116 毛紡績業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

8)ねん糸製造業(かさ高加工糸を除く)

2023年のねん糸製造業(かさ高加工糸を除く)の事業所数は377事業所(対前年比100.3%)、従業者数は3164人(対前年比100.2%)、製造品出荷額等は448億9300万円(対前年比104.2%)となっています。

【1117 ねん糸製造業(かさ高加工糸を除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

9)かさ高加工糸製造業

2023年のかさ高加工糸製造業の事業所数は70事業所(対前年比97.2%)、従業者数は1249人(対前年比98.0%)、製造品出荷額等は255億8200万円(対前年比99.7%)となっています。

【1118 かさ高加工糸製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

10)その他の紡績業

2023年のその他の紡績業の事業所数は20事業所(対前年比95.2%)、従業者数は227人(対前年比107.1%)、製造品出荷額等は14億1100万円(対前年比92.1%)となっています。

【1119 その他の紡績業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【繊維工業(衣服,その他の繊維製品を除く)の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda