書いてあること

  • 主な読者:効率よく営業や販促などを行いたい営業担当者。営業DXを進めたい経営者
  • 課題:場当たり的で属人的な営業や販促が多く、時間と手間がかかる。社内にノウハウが蓄積されていかない。見当違いな営業をしたくない。
  • 解決策:データを使って「相手をよく知る」ことが営業効率化の第一歩。何より、営業担当者自身が、データを使って営業することが面白くなるはず!

1 データを使った営業活動は、効率的で何より “面白い”

「データを使った営業活動」とは、地図上の商圏データや、検索キーワード・閲覧ログ・購買履歴・人流などの行動データ、ユーザーが回答するアンケートデータなどを活かして「営業・販促・マーケティング」(この記事ではまとめて「営業活動」)を進めることです。もっと分かりやすく言うと、次のようなことです。

データを使って、相手のことをよく知ったり、相手にどのようなニーズや困りごとがあるか仮説を立てたりして、営業活動に取り組むこと

こうしたデータを使った営業活動は、的を射た営業、いわば“すべらない営業”を実現する可能性を高めるため、次のような課題の解決につながります。

  • 人手不足なので、営業活動の効率化を図りたい
  • 場当たり的なものではなく、確率の高い営業活動を行いたい
  • 営業活動を「見える化」して、ノウハウを社内で蓄積したい
  • 営業DX化を進めたいので、まずはその第一歩を踏み出したい
  • 失敗を怖がる若手営業担当者に、少しでもヒントを持たせたい

現在、「SalesTech(セールステック。営業×テクノロジー)」と呼ばれる、ITを活用して営業活動の効率化を図るツールがたくさん登場しています。この記事では、SalesTechのうち、データを使った営業活動の事例をいくつか紹介しますので、活用を検討してみてください。

データを使った営業活動は、何より「この人の属性や行動を考えると、この点にニーズがあるのかも」と仮説を立てられる点が、ワクワクして面白いのです。特に営業担当者の皆さんは、この面白さがよく分かるでしょう。きっと今日からあなたの営業活動が変わります!

2 データ×営業活動にはどのようなものがあるか?

データ×営業活動(データを使った営業活動)にはさまざまなものがあります。一部の事例をまとめたのが、以下のポジショニングマップです。分類の仕方は人によりますが、この記事では、次の4象限に分類しています(一部、象限が複数にわたるものもあります)。

横軸:「行動・購買」など人の行動を表すもの、「属性・嗜好」など人となりを表すもの

縦軸:「客観的」な数値やログで現れるもの、アンケート回答のような「主観的」なもの

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1)当たりそうな販促(後ほど具体的な事例をご紹介)

「どのような人が住んでいるか(世帯の種類など)」「どのような店舗があるか」といった地図上の商圏データを使って、どのエリアで、どのような販促方法が当たりそうかなどを予測・分析している例です。このデータ活用方法が、まずは一番イメージしやすいかもしれません。

2)当たりそうなニーズ(後ほど具体的な事例をご紹介)

ネットの検索キーワードや閲覧ログデータから、「こういうニーズがありそうだ」などを予測・分析している例です。ネット検索データの分析はもはや一般的で、今は「検索キーワード×他のデータ、独自の分析・コンサル」など、さらに付加価値を付けたものが登場しています。

3)組み合わせて予測

天候や属性といった「属性的」データと、購買POSデータや人流データという「行動的」なデータを組み合わせて、「どんな天気・気温のときに何が売れるか」「どの観光地にどんな人がどれくらい来そうか」などを予測・分析している例です。

4)評価アンケート

顧客にアンケートして、満足度などの回答を数値化。営業活動に加え、既存商品の向上、新商品の開発などにも活かしている例です。例えば、顧客が見ているウェブサイトの文章や画像に対して、ごく簡単にラジオボタンなどで評価をアンケートする方法もあります。

5)理由アンケート

顧客にアンケートして、購入した理由などの回答をデータ化。顕在・潜在ニーズの両方を分析して営業活動、商品開発に活かしている例です。パーティーグッズ購入理由の回答「一人で過ごすと思われたくなかったから」など、意外な潜在ニーズが判明した例もあります。

6)動画からも見える化

いまどきは、動画から、AIを使って「感情」という超主観的なものをデータ化することも可能になりつつあります。例えば、オンライン商談のレコーディングデータから「誰がいつポジティブ発言をしたか」が分かり、どの営業トークが効果的だったかなどを分析する例があります。

3 データ×営業活動の具体的事例

データを提供している側の企業へのヒアリングに基づき、具体的な事例をご紹介します。小さな企業や店舗でもイメージしやすい「商圏データを使った営業活動」と、今の時代に合った「検索キーワードなど行動履歴から興味・関心・ニーズを把握した上での営業活動」の事例です。

1)地図上の商圏データを使った事例:ゼンリンマーケティングソリューションズ

ゼンリンマーケティングソリューションズが提供しているのは、主に商圏データです。地図上で、駅ごとに住んでいる人の世帯の種類や年収などの属性、競合も含め他店舗の出店状況なども分かります。

2020年4月設立の同社は2023年に4年目を迎えており、「データを使った営業活動がしたい」との問い合わせは年々増えているそうです。月間約30件、1日に1件ペースで問い合わせがあり、大企業から中小企業、小規模店舗まで幅広い顧客がいます。現在、横須賀商工会議所など商工団体の黒子として、商圏データの提供や販促支援などの小規模事業者支援も行っています。

1.ゼンリンマーケティングソリューションズの商圏データの特徴

株主のゼンリンによる全国津々浦々にわたる地図データをはじめ、公的統計データや民間で生成されたデータの活用が、何と言っても大きな特徴です。また、単に統計データをそのまま使っているわけではなく、独自のデータの組み合わせや分析で、商圏データをつくっています。例えば、「住んでいる人の年収」は、住宅土地統計や家計調査、課税状況といった統計をベースに、家(部屋)の面積なども組み合わせた上、独自の分析を加えて推計しています。

2.商圏データの活用事例

例えば、静岡県の八百屋さんの事例があります。もともとは大手スーパーの近所に店舗があり、スーパーには無い商品を取り扱うなどして上手に集客していましたが、八百屋さん自身が移転。スーパーと離れてしまったことで、客数も減ってしまいました。

そこで、どうにか集客を増やそうと、商圏データを使って、ターゲットとしている20~30代の核家族がどのあたりに住んでいるかを把握。そのエリアに一極集中し、必ず目に止まるよう5000部のポスティングを2回実施したそうです。

このポスティングチラシの内容も工夫しました。野菜や果物は、まとまって買うと重たくなります。そこで、「宅配の定期便」を始め、チラシに記載したのです。それが奏効し、実際に問い合わせ・成約もありました。ゼンリンマーケティングソリューションズでは、このとき、チラシの作成やポスティングも行っています。商圏データを提供するだけでなく、実際に相談に乗る、チラシの作成やポスティングをするといった「実働」を行ってくれるのは、人手が少ない店舗側からしてみると、実効性のある「データ×営業活動」といえるでしょう(チラシの作成やポスティングは、別途費用が発生します)。

ゼンリンマーケティングソリューションズによると、「老舗のベーコン屋さんが高級ベーコンを訴求するために富裕層エリアを発見。そこに絞ってプロモーションを行った事例」「複数店舗を持つ中堅ローカルスーパーで、異動してきた店長がその地域の特徴(どのような人が住んでいるのか)を知るために使っている事例」など、この他にも事例はさまざまです。

3.中小企業や小規模店舗がデータをうまく営業活動に使うコツ

ゼンリンマーケティングソリューションズによると、データ×営業活動のメリットは、「成功の確度を上げ、失敗のリスクを減らす」点にあります。そして、うまくデータを活用するコツとしては、「比較が大事」としています。

例えば、ターゲットにしているエリアが自分のよく知っているエリアと比べてどうか(住んでいる人、乗降客数、駅周りの店舗など)。隣の駅と比べてどうか。また、店舗であれば、ベンチマークとしているお店と比べてどうか。こうした「比較」は、データを集めた後、自分でデータを分析し、判断するときに大いに役に立つと思われます。

ゼンリンマーケティングソリューションズの商圏データの詳細などは、こちらから閲覧&お問い合わせすることができます。

■ゼンリンマーケティングソリューションズ■

https://www.zenrin-ms.co.jp/

2)企業の興味・関心・ニーズをピンポイントに把握する事例:Sales Marker

Sales Marker(セールスマーカー)社が提供しているのは、社名と同じ「Sales Marker」というSaaSのサービスです。これは、ネット上での検索キーワードやフレーズなど相手(営業対象となる企業の担当者)の行動履歴データからニーズを把握・分析し、営業活動を行うもので、この営業手法を「インテントセールス」といいます。

インテントセールスは、日本ではその言葉自体がまだ新しく、Sales Marker社が日本初といわれています。同社によると、サービスリリースから1年半少しで導入社数は270社以上、最近では1日に1社は受注しているほどニーズが増えているそうです(実績は2023年11月時点)。

1.Sales Markerによるインテントセールスの特徴

インテントセールスは、何と言っても「インテント=意図、目的」の言葉通り、検索キーワードやフレーズなどの顧客の行動履歴データからニーズが把握でき、その「ニーズがある状態」で営業活動できるのが特徴です。手当たり次第、ローラー作戦、といった手法とは真逆で、言ってみれば「ニーズがありそうだと分かっている相手(企業)」にアプローチすることになるので、効率的で的を射た営業活動になります。

また、Sales Markerは、その企業の関心データ(インテントデータ)に、約500万法人の企業データベース(部署や担当者といったデータ)を掛け合わせているのも大きな特徴です。そのため、新規先であっても、「(自社に対して)ニーズがありそうな企業」の「どの部署の誰にアプローチすればいいか」が分かるわけです。まさに的を射た、効率的で新しい営業活動です。ちなみに、Sales Marker社によると、アプローチに必要な部署や担当者情報は、各企業のプレスリリースや人事異動情報などから随時更新されているそうです。

2.Sales Markerの活用事例

例えば、大阪府のデザイン会社の事例があります。なんとこのデザイン会社では、本業がデザイナーである1名が、Sales Markerを使って営業活動を行って成果を上げているそうです。つまり、営業やマーケティングが担当ではない「兼任」にもかかわらず、1名で成果を上げられていることになります。Sales Marker社によると、この状況は、「一般的な企業で言えば、新人の営業担当が一人で成果を上げられるようなイメージ」ということです。

このデザイン会社の事例は、Sales Markerのウェブサイトにも詳しく掲載されています。それによると、Sales MarkerのUIが分かりやすく使いやすいことに加え、日常的にSales Marker社のインテントセールスコンサルタントとアポ獲得率・商談率・受注率向上のための目線合わせをしていることも成功要因の一つといえるそうです。このおかげで、ターゲットに対するアプローチの仕方など営業的な進め方を相談しつつ、Sales Markerを運用していけるようです。

Sales Markerの事例の特徴は、営業活動の相手にも喜んでもらえるという点かもしれません。何しろ、その検索キーワードやフレーズを使ってネット上で検索していた相手からすれば、「ちょうど今、探していた(検索していた)ものを持っているところがアプローチしてくれた」ことになるからです。そして、相手に喜んでもらえると、営業活動が楽しく面白いものに感じられるでしょう。

3.中小企業などがインテントデータをうまく営業活動に使うコツ

Sales Marker社によると、インテントデータをうまく使うコツとしては、やはりコンサルティングを活用することだといいます。

Sales MarkerのUIが分かりやすいとはいえ、導入時も、導入後もすぐに使いこなせるとは限りません。また、中には、リソース不足で営業未経験の担当者がインテントデータを運用する場合もあるでしょう。特に、中小企業の場合はなおさらです。そうしたときも、インテントデータをただ発見するだけでなく、一緒に営業戦略からアプローチするメールの文面まで、コンサルタントに上手に相談しながら運用していくのがよいと思われます。

Sales Markerの詳細などは、こちらから閲覧&お問い合わせすることができます。

■Sales Marker社「Sales Marker」■

https://sales-marker.jp/

4 大事なのは「分析」と「出口」、そして「答え合わせ」

データ×営業活動は、これまで紹介した例の他にもさまざまです。そして、今後も、色々なデータ活用方法が出てくるでしょう。いずれの場合も、データ×営業活動で大事なのは、データを集めることではなく集めた後です。

「で、どうなの?」という分析

「で、どうする?」という出口

この2つをしっかり実践していかなければなりません。集めたデータを見て、次のように進めていくことが必要です。

「分析」の例:この人はこの検索キーワード、フレーズを使っているから、こういうニーズがあると思われる。しかも属性が経営者だから、このニーズは強い

「出口」の例:このエリアに住んでいる人は中高年者が多いから、この商品の訴求メリットはこの点にして、手に取ってもらいやすいポスティングを、来月から実行しよう

そして、忘れてならないのは「答え合わせ」です。データから見えた分析の結果は、何%くらい合っていたのか。出口で実践したこと(実際の営業活動)は、目標に対して何%くらい成果を上げることができたのか。こうした「データ×営業活動の結果データ」を蓄積し、泥臭く次の運用に活かしていくことが、何よりも大切です。

以上(2023年12月作成)

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画像:Irene-Adobe Stock

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