1 展示会への出展、何から始めればいい?

新規営業先を獲得するには、日々の営業活動ももちろん大切ですが、

自社の商品・サービスを必要としている顧客が集まる「展示会」に出展する方法

もあります。ただ、これまで展示会に出展したことがない人は、「興味はあるけど、なんだか時間も手間も人手も必要で大変そう」「何をしたらいいか分からない」と思う人もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、

展示会へ出展する際に、展示会の選定から開催後の挨拶・営業まで自社で行う準備として必要なモノ・コトやその手順を網羅的に説明し、「何をしたらいいか分からない不安」を解決

します。展示会に出展するに当たり、出展決定前から開催後にかけてやるべきことは次の通りです。次章以降で、それぞれの事項について詳しく解説していきます。

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また、こちらから実際に展示会に出展する際に使える仕様書(マニュアル)と、シフト表のテンプレートをダウンロードできますので、お役立ていただけますと幸いです。

仕様書ダウンロード

シフト表ダウンロード

2 出展決定前

そもそもどのような展示会に出展するのか、ブース位置はどうするのかなどを検討します。

1)展示会の選定

まず、出展する展示会を選定しましょう。展示会の種類としては、

  • ビジネスショー(例えば金融IT、介護産業など、テーマに沿って多くの企業が集まるB to B向けの展示会。主に新規の取引先を開拓するために開催される)
  • パブリックショー(ビジネスショーと同じくテーマに沿って企業が集まるが、展示販売を主な目的とするB to C向けの展示会。商品・サービスの購入だけでなく、新製品情報の発表の場としても使われる)
  • プライベートショー(単一企業が開催するクローズドなB to B向けの展示会。自社グループの商材アピールや新製品の発表などにも使われる)
  • オンライン展示会(時間や場所にとらわれず自社の商品・サービスをアピールでき、リアル開催と比べると、比較的コストが低い)

などが挙げられます。出展する目的によって展示会の形態が違いますので、それぞれの特徴を確認した上で、どの展示会に出展するか検討するとよいでしょう。

2)ブース位置の選定

ブースの場所選びも重要です。会場や動線(会場における、来場者が移動するであろう経路)にもよりますが、

  • 同じ分野(例えば管理部門、DXなど)の企業が集まっているところに出展すると、部門担当者が通りかかる可能性が高い
  • 会場の奥側は人の流れが悪い
  • MAPの近くは目的地が決まっている人が多く、声をかけても断られやすい

などのポイントがあります。例えば、次のような会場であった場合、☆印がついている位置に人通りが多くなります。

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展示会によって事情は違ってくるので、展示会主催者側の意見も聞いた上で、ブースの場所を検討していきましょう。

3)セミナー出演の検討

展示会で自社の商品・サービスをPRしたい場合、自社のブースで説明するのとは別に、セミナー(講演)を開催するのもよいでしょう。多くの展示会では出展者が登壇するセミナーを企画しているので、そこに申し込みます。

セミナーは、自社の商品・サービスをより深く、細かく、新規顧客に伝えるチャンス

です。セミナーへの参加者は、自社の商品・サービスに何らかの関心があって、自ら話を聞きに来ている人たちです。セミナーの間は必ず話を聞いているので、内容次第ではさらに自社に関心を持ってもらえる可能性がありますし、参加者と名刺交換などをすれば、セミナー後に改めてアプローチをかけられます。なお、セミナーの規模にもよりますが、名刺交換はセミナー前の、参加者が着席したときがチャンスです。セミナーの後だと、参加者は(次のセミナーに参加するためなどで)急いで退場するので、名刺交換ができないことも多いです。

3 開催前準備(モノ関連)

ここからは、B to Bの新規顧客開拓などを目的に行われる「ビジネスショー」への出展を前提として、順を追って紹介していきます。

出展が決定したら、最初に準備するべきはノベルティーなどの製作物です。これらは、自社の商品・サービスを来場者に知ってもらう上で欠かせません。ただし、

会場によっては、ノベルティーの配布や装飾物のカスタマイズが禁止されているケース

があるので、実際に出展する際は、あらかじめ主催者側に確認を取るようにしてください。

1)ノベルティーの製作

ノベルティーとは、企業の名前やURLを入れて配布する贈呈用の品物のことです。

  • 飲食物(菓子類やドリップバッグコーヒーなど)
  • 事務用品(ボールペン、メモ帳、カレンダーなど)
  • 日用品(タオル、カイロ、タンブラーなど)

などを配布するのが一般的です。

ノベルティーを作る際は、

宣伝効果が高まるよう、自社のロゴや商品・サービス名などが目立つデザインにする

ことがポイントです。パッと見たときの分かりやすさやインパクトが大切なので、必要に応じて、

  • 自社サイトなどのQRコードを印刷する(印刷可能箇所が少ない場合)
  • デザイナーにノベルティーのデザインを外注する

といった対応を検討しましょう。なお、飲食物ならパッケージや外箱、それ以外であればノベルティー本体にデザインを印刷するのが定石ですが、OPP袋(透明袋)にノベルティーと自社のチラシを一緒に封入し、配布することも可能です。

2)装飾物の製作

装飾物とは、ブースなどに設置するパネルやポスターのことです。準備する際は、

  1. 主催者側に発注する方法(デザイン入稿から先は設営から撤去まで主催者側で行う)
  2. 自社で用意する方法(デザイン入稿後外部業者に印刷を依頼し、その後は搬入から設営、撤去まで自社で行う)

があります。

それぞれのメリット・デメリットを次の図表にまとめましたので、より自社に合った方法を検討しましょう。

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パネルは偶然通りかかった人にも自社の商品・サービスの内容が伝わるよう、文字は少なく、イラストや写真を使い、簡潔で分かりやすいデザインにすることを心がけましょう。

また、自社で設営などを行う場合、会場によっては発泡スチロールや可燃性の布など、特定の素材の使用が禁止されているケースもあります。パネルの素材や取り付け時に使う器具なども含めて、主催者側のマニュアルなどをよく確認して準備を進めましょう。

3)配布物の製作

配布物とは、自社の商品・サービスの概要が分かるチラシやパンフレットのことです。時間がない来場者の場合、資料やチラシを受け取ってそのまま帰ってしまうこともあるので、

人が説明しなくても、読むだけで自社商品・サービスの内容が理解できるもの

になるよう心がけましょう。

例えば、

  • 文章だけで説明せず、イラストや写真などの「絵」で魅せる
  • 「商品・サービスを実際に利用してどうだったか」「自社に対してどのような印象を持ったか」といった、“リアルな声”を資料に掲載する

などの方法が考えられます。

4)ブース内備品の準備

ブース内備品とは、来客への説明用に、自社サイトや商品・サービスの資料などを映すPCやディスプレーのことです。

会場によっては、「たこ足配線」が禁止されているケース

があるので、PCやディスプレーの搬入方法なども含め、主催者側のマニュアルなどをよく確認して当日必要なものをそろえていきます。

また、会場やブースの位置によってはインターネット回線がつながりづらいこともあるので、

ブースの位置が確定し次第、会場へ下見に行き、ネットの環境を確認した上でWi-Fiルーターなどの準備をする

ことをお勧めします。

説明用とは別にディスプレーを配置し、商品・サービスの概要が分かる動画を流しておくと、来場者の目に留まりやすくなります。ただ、

ブース外に聞こえるような大きい音声の再生は禁止されていることもある

ので、主催者側に確認の上、準備するとよいでしょう。

4 開催前準備(ヒト関連)

1)シフト作成

展示会の開催に合わせて社員のスケジュールを調整し、シフトを組みます。必要な人数はブースの広さにもよりますが、例えば、ブースの大きさが2m×2mの場合、

ブース内外に3人(ブース内:説明役の社員1人、ブース外:呼び込み役の社員2人)

がいる状況が望ましいでしょう。2m×2mのブースであれば、ブース内に入れるのは2人(来客1人+説明役の社員1人)が目安です。実際のブースの広さなどを考慮して、人数を調整することになります。

2)オペレーション作成

オペレーションとは、展示会の来場者やブースへの来客に対して、自社の人員がどのように対応するか、その手順や声かけ・説明のパターンなどを示したものです。

声かけとブース説明の一貫性を持たせるために、仕様書にオペレーションを記載して、当日参加する社員にシフトと共に事前に共有

しておくと、当日の運営がスムーズに進みます。

例えば、仕様書には以下のようなオペレーションとそれぞれの内容を記載します。

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あくまで一例ですが、自社のことを全く知らない来客Bにはまず事業内容を理解してもらい、ニーズを引き出す必要があるので、上の図表のようにオペレーションが分かれます。

3)事前告知

展示会開催前の告知も集客には欠かせません。

  • 自社サイトやSNSで告知する
  • 電話やメールなどで周知する

など、既存の取引先や営業先に働きかけて、自社で完結させる告知の方法もありますが、展示会によっては、

事前に展示会の公式サイトに宣伝枠を取り、自社のブースの概要を掲載することも可能

ですので、費用感や効果を含めて主催者側に相談し、検討してみるのも1つの方法です。

4)設営

パネルなどの設営を主催者側に委託するとしても、展示に使うPCなどは、ほとんどの場合、自社での設営が必須です。例えば、東京で開催される展示会に、東北や関西などの企業が出展する場合、

設営日(おおよそ開催の1~2日前)には設営役の社員を前乗りさせ、PCのセッティングや装飾品のチェックなどを済ませておく

とよいでしょう。

5 当日・開催後

1)当日のブース運営

イベント当日の運営については、

事前に社員に共有したオペレーションを基本に、臨機応変に対応していく

ことが大切です。

特に通路での声かけや備品の位置などについては、ルール上禁止している展示会もありますが、来客や周囲のブースの状況などを見て対応を変えていくのがよいでしょう。

自社のことを知らない来場者に興味を持ってもらうのは難しいですが、時間がありそうな人には積極的に声かけしましょう。ブースまで呼んで詳しい説明ができると、営業のチャンスもさらに広がります。

声かけのポイントとしては、次のようなものがあります。

  • どこに行くか迷っている素振りの来場者に集中して声をかける(行き先が決まっている人よりも話を聞いてもらいやすく、丁寧な説明ができる)
  • 相手に断り文句を出させない(例えば、「◯◯に興味ありますか?」と声をかけるより、「次、どこを見るか決まっていますか?」と聞くほうが、相手は断りにくい)
  • 相手と同じ方向を向き、進行方向を片足半分ほど塞ぐ(向き合うと敵対心を抱かれやすいので、同じ方向を向いて足止めする)

その他、「時間がない」と断られたときのために、例えば「3分で説明します」といった決まり文句(また、実際にその時間内に商品・サービスを紹介できるオペレーション)も用意しておくと、話を聞いてもらえる可能性が高くなるでしょう。

2)当日のセミナー運営

当日のセミナー運営について気を付けるべきポイントは、

参加者と名刺を交換する時間・人員を確保する

ことです。セミナー終了後はそのまま帰ってしまう参加者も多く、一斉に声をかけることは難しいため、来場した順に声をかけて名刺を交換する人員を用意しておくとよいでしょう。

また、忘れがちなのが登壇者の水分補給用の飲み物です。長時間しゃべ続ける場には必要ですが、セミナー会場の近くにコンビニエンスストアや自動販売機がない場合もあります。

あらかじめ、セミナー登壇者の水分補給が認められているか会場に確認を取った上で、人数分を購入しておくなど、準備を万全にしましょう。

3)撤去

展示会が終了したら、当然ながら、自社から持ち込んだものは自社で片付けます。基本的に、シフトに入っていた人材がそのまま撤去作業に当たるでしょうから、開催時間後も余裕を持ったスケジュールを確保しておきましょう。

撤去作業時は周りも慌ただしくて焦りがちですが、

パネルやポスターなどを剥がす際に壁を傷つけたり、汚したりしないようにする

など、丁寧な作業を心がけましょう。主催者側の備品を破損させると弁済を求められることもあります。

なお、展示会が2日にわたる場合などは、1日目はブースを撤去せず、備品などをそのまま置いておけることが多いです。ただし、盗難などのトラブルを防ぐため、

持ち込んだディスプレーを保護するためにシートや布を被せる、収納できるものは鍵付きの棚(レンタルできる場合もある)にしまう

などの対応が必要になります。

4)開催後の挨拶・営業

展示会で交換した名刺の管理や、再度の営業などをスムーズに進めるために、

事前に営業先管理用のExcelシートや、ブースやセミナーへの来場の感謝を伝えるメールの型などを作成しておく

ことをお勧めします。

例えば以下の例のように、名前や企業名などの基本的な情報だけでなく、下の図表の「連絡」欄のように個別のフラグを立てておくなど、あらかじめ営業のパターンを決めておくと管理がしやすくなります。

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また、このリードの強弱の違いによって、メールの文面を数パターン用意しておくという方法も考えられます。例えば、

  • メールα(挨拶/オンライン・訪問打診の頭出し/より詳しい自社商品・サービス説明資料をPDFで添付)
  • メールβ(挨拶/ブースで配布した事業内容の資料をPDFで添付)

という具合です。

展示会は新規顧客獲得のための糸口をつかむために出展するもので、撤収作業が済めば終わる、というわけではありません。チャンスを実利にまでつなげられるよう、チーム一丸となって営業活動に取り組みましょう。

以上(2025年1月作成)

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