書いてあること
- 主な読者:アフターコロナを踏まえて、自社の今後を考える経営者
- 課題:他社との差異化を図るために何をすべきなのか、検討のヒントが欲しい
- 解決策:人手不足を解決するための生産性向上や、新しい担い手づくりなどが求められる
1 中小企業が足元で抱える課題は?
業種による違いは大きいものの、コロナ禍からの脱却が急速に進み、中小企業全体で見れば、売上高や経常利益なども回復してきています。しかし、業績が回復して企業が採用を進めると、今後は人手不足が問題になってきます。
そこでこの記事では、2023年版「中小企業白書」(以下「白書」)から、業種を問わず課題となりうる「人手不足への対応策」や「新たな担い手づくり」に焦点を当て、競合他社との差異化を図るためのヒントを紹介します。なお、この記事で紹介する図表の出所は全て白書であることや、分かりやすさを重視したことから、出所の記載や注釈は省略しています。詳細な内容を確認したい場合は、白書の本編をご覧ください。
2 人手不足対応のカギは「生産性向上」
1)採用に注力しつつ、生産性向上を図る
人手不足への対応は、正社員やパートタイマーなどの人材採用に限りません。業務プロセスの見直しによる業務効率化や、社員の能力開発、ITなどの設備投資によって生産性向上等に取り組む動きが見られます。
2)職場環境の改善で魅力の向上を実現する
人材確保のために中小企業が取り組んでいることとして、「給与水準の引き上げ」や「長時間労働の是正」があります。また、「育児・介護などと両立できる制度の整備」、「福利厚生の拡充」を通じた職場環境の改善などによって、職場の魅力向上に取り組む動きがあります。
3 他社との差異化は、担い手づくりが肝心
1)経営者仲間との積極的な交流を通じて、企業の成長意欲を喚起する
経営者が成長意欲を高めるきっかけには、同業種・異業種の経営者との交流が大きな比率を占めています。
2)リスキリングに取り組むことが、自社の成長にもつながる
経営者が学習時間を意図的に確保している企業のほうが、売上高増加率の水準が高い傾向にあるようです。経営者自身が学ぶ姿勢を見せることで、組織全体のリスキリングを推し進めるきっかけにもなります。
経営者が取り組んでいるリスキリングの内容としては、「書籍・セミナー受講等による知識の収集」、「社外での勉強会への参加」が上位に上がっています。
一方、役員・社員に提供しているリスキリングの内容は、「書籍・セミナー受講等による知識の収集」、「社外での勉強会への参加」、「新しいスキルに関する資格取得」が多いようです。
4 事業承継によって新たな担い手の創出を図る
1)事業承継後の事業再構築で成果を出す
事業承継は経営資源の散逸を防ぐとともに、経営者の世代交代により、企業を変革するチャンスになります。また、事業承継時の経営者年齢が若い企業ほど、企業の成長に寄与する事業再構築に取り組む傾向があります。
ここでいう事業再構築とは、新たな製品の製造または、新たな商品もしくはサービスを提供することや、製品または商品、もしくはサービスの製造方法、または、提供方法を相当程度変更することを指します。
2)後継者に意思決定を任せてみる
後継者の新しい挑戦を促す上で、事業再構築の取り組みといった課題を与えるなどして、先代経営者は後継者に経営を任せることが重要です。また、従業員からの信認を確保することも大切で、従業員から信認を得て、事業再構築を行う企業ほど、売上高年平均成長率が高い傾向にあります。
5 終わりに
白書からは、多様な働き方や意思決定の柔軟さなどといった中小企業ならではの特性を活かして、他社との差異化を図ることの大切さが明らかにされています。
白書の中では、人手不足をきっかけに、デジタル化による業務効率化を実現した企業や、副業人材を活用することで売上の向上につなげた企業など、個別具体的な企業の事例も紹介しているので、自社の戦略を立てる際の参考にするとよいでしょう。
以上(2023年7月作成)
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