テレワークや外出中の社員を災害から守るためのチェックリスト
1 チェックリストで確認 オフィス外での防災対策
職場の防災対策は、社員がオフィスで働いていることを前提にしたものだけではありません。例えば、社員が外回りの営業をしていたり、テレワークをしていたりと「オフィス外」で働いているときに災害が発生したら、連絡を取り合うのは難しくなります。
この記事では、そうしたケースに備えるための基本的な対処法をご提案します。まずは次のチェックリストを基に、オフィス街で働く社員に対して、どのぐらい防災対策を周知できているかを確認してみましょう。
2 外出中に災害が発生した際の対処法は?
ここでは、行政機関や企業などが提供している防災情報を参考に、外出中に災害が発生した際の対処法について説明します。いざというときに落ち着いて対応できるように、あらかじめ社員に周知しておきましょう。
1)地震が発生したときは?
1.オフィス街・繁華街・住宅街
その場で立ち止まらずに、速やかに建物や電柱などから離れるようにします。カバンや上着などでガラスや看板などの落下物から身を守りながら、公園などの広い場所に避難します。
広いところに逃げる余裕がない場合は、耐震性の高い鉄筋コンクリートの建物に避難するようにしましょう。
また、住宅街では、門や塀が倒れてくる可能性があるので、近づかないようにしましょう。切れて垂れ下がっている電線は電気が流れている可能性があるので、近づいたり触ったりしないように注意が必要です。
2.地下街
柱や壁のそばで揺れが収まるまで待つようにします。停電した場合でも、非常照明がつくまではむやみに動かないようにしましょう。
また、地下街では60メートルごとに非常口が設置されています。混雑による転倒や将棋倒しなどの事故を避けるために、1つの非常口に殺到せず、落ち着いて地上に出ましょう。
3.電車の中
電車は地震計や緊急地震速報のデータなどを基に、強い揺れを観測した際には緊急停車します。急ブレーキのはずみで転倒しないように、手すりやつり革にしっかりつかまるようにしましょう。座っている場合には、進行方向に近いポールなどにつかまると体勢が安定します。
また、反対側の電車に接触したり、電線で感電したりといった事故を避けるために、勝手に降車せず、乗務員や駅員の指示を待ってから降車するようにしましょう。
4.車の運転中
運転中に地震が発生したときは、追突事故などを避けるために、ハザードランプを点灯して徐々にスピードを落とし、道路の左側に寄せて停車します。慌てて車外に出ると、対向車や後続車に接触したり、落下物に巻き込まれたりする危険があるため、揺れが収まるまではカーラジオやスマートフォンで地震情報や道路交通情報を聞きつつ車内で待機しましょう。
やむを得ず車を置いて避難する場合には、連絡先のメモを残した上で、緊急車両や救援車両の通行の妨げにならないように、道路外の場所、もしくは道路の左側に寄せて駐車しておきましょう。いざというときに移動させられるように、ドアはロックせずに、キーは運転席などの目立つ場所に置くか、差したままにしておきましょう。
5.エレベーターの中
揺れを感じたら、行先階のボタンをすべて押し、最初に止まった階で降りるようにします。もし、閉じ込められてしまったら、非常ボタンを押して管理会社に連絡を取るか、消防や警察に連絡して救助を待ちます。
2)水害が発生したときは?
1.建物の中にいる場合
台風や大雨などによって引き起こされる土砂災害、洪水、浸水といった水害にも注意が必要です。水害が発生した際に、マンションなどのように頑丈であったり、浸水する可能性が低かったりする建物の中にいる場合は外に出ようとせず、2階以上など高い場所に移動して水が引くまで待つようにしましょう。
もし、建物の外に出て避難するときには、次のようなことに注意が必要です。
- 避難所に行くときは、できる限り複数人で固まって移動する
- マンホールや段差、側溝の有無を確認しながら移動する(棒があるとよい)
- 水位が膝のあたりまで上昇している場合は、移動をやめて近くの建物へ避難する
なお、水害は地震とは異なり、発生した際の被害をある程度予測できます。あらかじめ、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」などで、自宅や訪問先の場所が浸水する危険性はないか、最寄りの避難所がどこにあるのかなどを情報収集しておきましょう。ハザードマップポータルサイトは、自治体が作成・公開している「わがまちハザードマップ」以外にも、現在地の情報や地図上からその場所のハザードマップを確認できるため、外出先でも役立ちます。
■国土交通省「ハザードマップポータルサイト」■
https://disaportal.gsi.go.jp/
2.車の運転中
局地的な集中豪雨などが頻繁に発生する昨今では、車の運転中に大雨に遭遇する可能性もあります。冠水した道路で、水深が車の床面を超えると浸水してエンジンが故障したり、水圧でドアが開かなくなったりする危険性があります。
特に、高架下、立体交差などのアンダーパスといった周辺の土地よりも低い場所に入ってしまうと浸水して車が動かなくなり、立ち往生する危険性が高いため、このような場所は避けて移動しましょう。
万が一、車内にまで浸水した場合には、慌てずに車を停めてすぐにエンジンを停止させましょう。その上で、いきなり道路に出るのではなく、片足を出して水深を測りつつ、進んできた方向に歩いて戻るようにしましょう。
ドアが開かない場合、窓ガラスを割って脱出する必要があります。車に脱出用ハンマーを備えておくとよいでしょう。また、脱出用ハンマーがない場合でも、シートからヘッドレストを取り外し、柄の部分を1本、窓ガラスの隙間にねじ込んで力を加えるとテコの原理で窓ガラスを割ることができます。いざというときのために覚えておきましょう。
3 テレワークや外出先でも取り組める防災対策
1)防災備蓄品を自宅や社用車に備える
企業向けに防災備蓄品を提供している企業の中には、テレワークの浸透を受けて、コンパクトにまとまった防災備蓄品を提供しているところもあります。テレワークを行う社員にも最低限の備えをしてもらうために、会社で購入費用を補助したり、防災備蓄品を配布したりできると良いでしょう。
例えば、アスクル(東京都江東区)では、「小スペース防災用品」として棚に収納できるA4サイズのファイルにまとまった防災備蓄品セットを販売しています。また、フェーズフリー用品(災害時のために準備するのではなく、普段使っているものを災害時にも役立てる考え方)として、普段使いができるスリッパやウェアラブルメモなども取り扱っています。
■アスクル「防災用品特集」■
https://www.askul.co.jp/sf/bousai/00/0/
なお、車内に防災備蓄品を備える際には、季節によって防災備蓄品の内容が変わることに注意が必要です。例えば、夏場であれば車内が高温になるので、食料の保管には向きません。また、冬場であれば、毛布や使い捨てカイロなどの寒さ対策が重要になります。
2)安否確認サービスを平常時の連絡手段としても活用する
さまざまな企業が提供している安否確認サービスですが、災害発生時に限らず、連絡網や健康管理ツールとして平常時でも利用できたり、自動で安否確認メールを配信したりするサービスを選ぶと、いざというときにも慌てずに対応できます。
例えば、リロクラブ(東京都新宿区)では、安否確認システムの「Relo安否コネクト」を提供しています。あらかじめ条件を設定しておくことで、地震や気象情報と連動して自動で安否確認メールを配信することもできるため、管理者による手動配信の負担を軽減できます。
また、健康状態の報告や社員向けアンケートのテンプレートなど、災害発生時だけに限らず、平常時の連絡手段として利用できる機能も備えています。
■リロクラブ 安否確認システム「Relo安否コネクト」■
https://www.reloclub.jp/crisis-management/safetycheck/
3)防災訓練をオンラインでも行う
これまでの防災訓練は、社員全員がオフィスに集まって行うのが前提でしたが、テレワークの浸透を受けて、オンライン会議システムなどを利用してリモート環境でも防災訓練ができるサービスがあります。
例えば、レスキューナウ(東京都品川区)ではWeb会議方式で防災訓練ができるサービスを提供しています。アンケートやチャット機能などを活用して防災訓練を行うことができ、録画機能もあるため、当日に防災訓練に参加できなかった社員にも訓練内容を共有できます。
■レスキューナウ「アドバイザリーサービス(リモート防災訓練)」■
https://www.rescuenow.co.jp/riskmanagement/advisory05
以上(2025年3月更新)
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画像:lemono-shutterstock