経営者を支える「参謀2.0」。参謀獲得の新たな動きを見逃すな!

1 「参謀2.0」を考える。なぜ、経営者には参謀が必要なのか?

いかに優れた経営者でも、1人でできることには限界があります。だからこそ、

自分とは違う視点で物事を捉えてくれる、時には「それは違うんじゃないですか?」と諫めてくれる「参謀」

の存在が欠かせないのです。

ここ数年で参謀の在り方も変わってきました。例えば、新規事業を立ち上げる際、コアとなる人物(参謀)を業務委託で外部から招聘(しょうへい)するケース、金融機関がDX参謀などとして、会社を強力にサポートするケースなどが出てきています。

  • 参謀は社内の人材に限らず、外部から招くこともできる
  • 特定分野に強い「ジョブ型参謀」を組み合わせて活用してもいい

というわけです。以降ではこの流れを踏まえて、経営者が参謀を獲得する上で押さえておきたい重要な視点を紹介します。

2 「内部×外部」で化学反応を起こす!

参謀は誰にでも務まるものではないので、選定や育成にはどうしても時間がかかります。とはいえ、経営者が使える時間は限られています。それに、経営者自身が参謀を育てると、どうしても考え方が似通ってしまい、「違う角度から見てくれる」という参謀の大事な役割が薄れてしまいます。

もし、御社が参謀の育成に困っているなら、参謀を「業務委託で外部から招聘する」のも一策です。実際、こうして参謀を獲得し、事業を成功に導いている経営者は数多くいます。

とはいえ、単に業務委託として使うだけだと、その参謀との契約が終わった後は何も残りません。ですから、

社内の参謀候補と外部から招聘した参謀とでチームをつくり、社内の参謀候補に新しい知見を吸収させること

が重要です。

これには別の意味もあります。外部から参謀が招聘されると、自社の参謀候補は面白くありません。しかし、一緒にチームを組ませれば、参謀候補は「経営者は自分に期待してくれているんだな」と自信を持てるわけです。

3 「ジョブ型」参謀はすでに存在する

経営者に「経営に必要な能力は?」と質問すれば、「人間力」「判断力」「リーダーシップ」などの答えが返ってくるでしょう。ですが、これではかなり抽象的です。具体的に掘り下げていくと、経営者の仕事は本当に幅広くて、実にさまざまな能力が必要なことが分かります。そして、経営者を支える参謀にも、同じように多様な力が求められます。

ただ、何もかもに精通した「オールマイティーな参謀」は、そうそういるものではありません。ですから、考え方を少し変えて

「ジョブ型参謀」のチームを意識してみましょう。「DXであればA参謀」「採用教育であればB参謀」といった具合

です。例えば、顧問税理士は、税務会計における社外参謀といえますが、DXには明るくないかもしれません。こういう場合は、別の分野で専門的な知見を持つ参謀を獲得し、組み合わせればよいのです。

また、参謀は必ずしも管理職クラス(部長や課長など)である必要はありません。通常の社員の中にも、経営者の目が届かないところで、コツコツと勉強を重ねている人がいます。気付けば、ある分野では社内の誰よりも詳しくなっている、なんてことも珍しくありません。そうした社員は、自分の得意とする分野において、ジョブ型参謀としての役割を立派に果たしてくれるでしょう。

4 参謀リーダーという考え方

参謀が複数いる場合、参謀を束ねる「参謀リーダー」がいると意見がまとまりやすくなります。この参謀リーダーは、DXや税務会計などに明るくなくても大丈夫です。むしろ必要なのは

コミュニケーション能力が高くて、いい意味で経営者をうまく使える器

です。次のような資質を持った人が、参謀リーダーに向いています。

1)イエスマンにも反対勢力にもならない

参謀リーダーは、経営者が喜びそうな意見をまとめる「イエスマン」ではありません。さまざまな情報に触れ、必要なら経営者に対し、「それ、ちょっと待った方がいいかもしれません」と異を唱えられる立場でなければなりません。

ただし、経営者を見下したり、反対勢力になったりすることは絶対にありません。敬意を持ちながらも、言うべきことは言える、そんな絶妙なバランス感覚が求められます。

2)現場(社員)の声を吸い上げる

経営者は現場の声を聞こうとしますが、社員の方は正直なところ、経営者に率直な意見を言うのをためらいがちです。特に悪い情報ほど、なかなか経営者の耳には届きません。

参謀リーダーは、経営者の目となり耳となって、普段は把握しにくい社内の本音や雰囲気をキャッチし、適切なタイミングで伝える必要があります。特に、経営方針に不満を持っている社員や、辞めそうな社員の動きには要注意です。

3)経営者の代弁者となる

経営者は社員に向けて、いろんなメッセージを発信します。理念を語ったり、新しい施策の内容や狙いを説明したり……。

ですが正直、多くの社員にとって、「社長が何を言いたいのか」を正確に理解するのは難しいものです。そこで、参謀リーダーが経営者の通訳役になって、メッセージの真意を分かりやすく伝えることが大切です。これで組織の一体感が高まり、施策の浸透度もグッと上がります

4)経営者をうまく使う

経営者でなければ対処できない課題があります。例えば、大事な交渉が行き詰まったときに、経営者が直接出ていくことで流れが変わることがあります。

参謀リーダーには、いつも経営者を頼るのではなく、「ここぞ!」という場面で、いい意味で経営者をうまく使って、物事を有利に進める器用さが求められます。経営者の時間と影響力を最大限に活かす「プロデューサー」のような役割です。

以上(2026年1月更新)

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ヒント6[仕事2]:仕事の意義を共有できれば、人は簡単には辞めない/武田斉紀の『人が辞めない会社、10のヒント』(7)

1 入社者へのフォローが実り落ち着いてきた頃に、新たな問題が……

今シリーズの狙いは、経営者、人事担当者、現場の皆さんのお悩みである「社員を採ってもすぐに辞めてしまう上に、そもそも採れない」という課題を解決することです。『人が辞めない会社、10のヒント』と題して、毎回1つずつご紹介していきます。

『人が辞めない会社』に変わるための課題、その原因と解決策は会社によってさまざまです。

今回ご提示するヒントが皆さんの抱える原因に明らかに当てはまらない場合は、読み飛ばしてくださって結構です。ですが、ヒントの1~9までが該当しなくても、10が当てはまるかもしれません。

全社共通の原因もあれば、部署ごとの固有の原因も存在することでしょう。原因が1つだけというケースは少ないので、何回分か読んでいただければ「これはうちにも当てはまるな」というものを見つけていただけるのではと思います。

『人が辞めない会社』に変わるために、前回第6回からは入社後のヒントについてお話ししています。第6回では、入社者にとっては誰しも「事前のイメージとのギャップはあるもの」と想定して対応するべきであると申し上げました。

入社初日を終えた時点からしばらくは、職場の上司だけでなく、人事や事前に設定したメンター(相談相手)も関わりながら定期的かつ丁寧なフォローを続けることが重要であると。

特に新卒採用の場合、正社員として働くことは初めてで、戦力になるまでには時間がかかります。中途採用の人も、前職との違いにしばらくは戸惑うかもしれません。それでもしっかりとしたフォローがあれば、よほど入社前の勘違いでもない限り、本人のギャップは解消されていくことでしょう。

入社者それぞれが仕事に慣れてくると、日々の小さな成功と挫折を繰り返しながら会社や所属する組織にもなじんできます。配属先の上司や、採用し配属に関わった人事としては、フォローしてきた努力が実り「これでもう大丈夫だろう」と思いたいところです。

ところがこの頃から、入社者には新たなモヤモヤが芽生え始めています。何でしょうか?

2 “仕事の意義=やりがい”の実感は、仕事に前向きな社員にこそ必須

とりわけ

仕事に対して前向きな「生活に必要なお金を稼ぐ手段」以上の価値を求めて入社した社員にとって、仕事に慣れてくるにつれて新たなモヤモヤが芽生え始めます。

それは「自分の仕事は何かの役に立っているのだろうか」という“仕事の意義=やりがい”の実感です。

会社として目指している企業理念やこだわっている存在意義(パーパスなど)については、入社前から説明してきたかもしれません。それらに強く共感して入社した社員ほど、仕事に慣れてくると、担当業務を通して“仕事の意義”を実感したいと思うようになってきます。

幸い顧客と接点のある部署に配属された場合は、すぐにお客様から「ありがとう」の言葉をいただくなどして、“仕事の意義”を実感できる場合もあるでしょう。

片や配属された部署や担当業務によっては、企業理念や存在意義(パーパスなど)につながる“仕事の意義”を実感しにくいことも多いはずです。

実感が得にくい仕事の場合、「日々取り組んでいる自分の仕事は何かの役に立っているのだろうか」という疑問が湧いてたまっていきます。自分が共感して入社したこの会社、仕事に求めていたものは何だったのだろうと。

やがては「こんなはずじゃなかった」と入社時点で選ばなかったほうの会社や第3の選択肢など、隣の芝生が青く見えるようになってくるのです。これはとても危険な状態です。

3 “仕事の意義”を感じられる、小さな成功体験の機会を用意する

仕事に対して最初から前向きな社員ばかりでもないでしょう。「仕事は生活に必要なお金を稼ぐ手段に過ぎない。さっさと終えてプライベートを充実させたい」と割り切って考える若手社員もいます。

ですが、彼らは気が付いていないのかもしれません。働く世代にとって「人生の約半分は仕事の時間」なのです。アルバイトで1日数時間働くのとは違います。働いている時間は、多少の残業や通勤時間なども考慮すると1日8時間以上。睡眠やトイレ、お風呂の時間を除くと、起きている時間の半分かそれ以上なのです。

よほどの好待遇であれば、単調で、時に体力的・精神的につらい日々も「お金のためと割り切って」我慢できるかもしれません。が、その前提となる好待遇は仕事への人並み以上の努力なくして得られません。

では好待遇はあきらめ、そこそこの給料を受け入れてプライベートの時間のために我慢して働くとしましょう。毎日8時間、起きている時間の半分以上となると我慢するには長すぎます。しかもそれが何十年と続くのです。

効率(コスパ、タイパ)良く稼ごうと思っていた人ほど、我慢できなくなります。来る日も来る日も8時間我慢しても給料が変わらないのであれば、お金以外の“何か”を求めたくなるはずです。

そんなとき、会社や上司が本人が担当している“仕事の意義=やりがい”を提示できたらどうでしょう。例えば本人が担当している仕事の質次第で、お客様が「ありがとう」と声をかけてくださることを伝えるのです。

声をかけられた本人はうれしいでしょう。褒められてうれしくない人はいません。その日一日くらいは何だか得した気分になれるのではないでしょうか。

お客様からの高い評価が続けば、会社からも評価されて待遇アップの可能性が高まるでしょう。より近道の効率(コスパ、タイパ)を求めていたはずが、少し遠回りに見えても“仕事の意義”に気付き追求することで、結果的に効率が良くなるのです。

仕事を通した小さな手応え、成功体験に出会わせてあげるだけで本人のやる気を引き出せる上に、待遇も上がる可能性があることを伝えられます。

そのためには“仕事の意義=やりがい”を提示してあげることが近道です。

4 部下に、担当する“仕事の意義”を伝えられていますか?

新卒、中途に限らず新人が「こんなはずじゃなかった」と感じて退職を考える理由の最たるものは「仕事のイメージ」のギャップだそうです。「自分はこんな仕事をしたくてこの会社を選んだわけじゃなかった」と感じてしまうのです。

あなたは部下に対して、その人が担当する仕事内容や手順を説明するだけでなく、“仕事の意義”についてしっかりと伝えられていますか。

「教会のレンガ積みの話」を聞いたことがある人は多いでしょう。

旅人が道を歩いているとレンガを積んでいる人たちがいる。彼らに何をしているのかと聞くと、ある人は「ただレンガを積んでいるだけですよ」と答え、ある人は「レンガを積んでこの町の新しい教会を建てるのです」と答え、ある人は「町の人々の心を支える場所を創っています」と答える。

三者三様であるものの、2人目、3人目の人には仕事に対する誇りややりがいがあり、2人目の人は、仕事=やりがいを、3人目の人は、仕事=生きがいと思えるまでのものを感じているはずです。

客観的に見ればただレンガを積んでいるだけの仕事でも、その先にある仕事の意義をどう感じているかは、人によって全然違うという例え話です。

レンガを積むという仕事をどう捉えるか。「ただレンガを積む仕事」→「町の教会を建てる仕事」→「町の人々の心を支える場所を創る仕事」と視点を変えていくことを、「抽象の階段(または、はしご)」を登ると呼びます。

抽象の階段(はしご)を登って視点を高くして見直してみるだけで、仕事自体は変わらなくても、仕事の持つ意義は全く違って見えるのです。

一人の仕事だけで教会が建つわけではありません。ならば一人くらい手を抜いてサボってもいいのでしょうか、それで良い教会は建つでしょうか。一人ひとりの良い仕事が積み重なって初めて、町の人々に末永く愛される良い教会が生まれます。

あなたの仕事や、あなたの部下が担当する“仕事の意義”とは何でしょう。それを一人ひとりに伝えられていますか。また小さなことからでもいいので、個々の“仕事の意義”を実感できる機会を用意できていますか。

5 宅配会社の仕事は、「ただ荷物を届けているだけ」ではなかった

「教会のレンガ積みの話」は分かりやすいのですが、新人の場合、いきなり「目の前の自分の担当業務の意義は?」と聞かれても、すぐにイメージが湧かないかもしれません。あなたならどうしますか。

私は以前、ある大手宅配会社の部長クラスの方を対象に、自社の仕事の意義を考える研修を行ったことがあります。同社でも他の宅配会社と同じように、若手社員の何年かは自ら配送を担当するのが決まりです。

毎日大小の荷物を大量に抱えて、朝から晩まで一つひとつ丁寧に届ける。時間通り届くのが当たり前という感覚の人も珍しくなく、少し遅れると怒鳴られ、再配達を繰り返してようやく届けても「ありがとう」や「お疲れ様」の一言もない。誰しもが「やってられるか」という気持ちになるでしょう。

新卒1年目にしては給料が良かったとしても、そんな毎日が続くとどんどん心が削られます。いつなんどき退職を思い立っても不思議ではないでしょう。

現場を離れて管理職になったらなったで、毎日クレームやストレスにさらされている部下たちが辞めないよう、明日も前向きに取り組めるようにマネジメントしなければいけません。皆さんの職場と比べても、早期退職がより心配される職場ではないでしょうか。

私は部長の皆さんに質問しました。「そんな中で、皆さんはどうしてこれまで辞めずに働いて来られたのですか?」と。すると、一人ひとり、これまでの仕事人生を振り返って、答えを見つけようとしました。

ある人は、ずっと取引がなく、何度営業しても相手にしてもらえなかった会社の社長からある日突然電話があったそうです。「この荷物を今晩中に〇〇まで届けてもらえないだろうか」と。トラックの配送では間に合わないが、新幹線なら最終便で間に合うかもしれない。

彼は「分かりました。何とかしてみます」と返し、チームの仲間に翌朝の業務を分担してもらうことにして、荷物を受け取り新幹線に飛び乗りました。荷物はその日のうちに無事に届けることができ、現地から報告の電話を入れたところ、社長は電話口で何度もお礼の言葉をくださったそうです。

それ以来、仕事の依頼をくださるようになって、大切な取引先の一つになったそう。「荷物を届けるというのは、人と人との信頼なんだ」と改めて感じたことが、今まで仕事を続けて来られた理由かもしれませんとその部長は言いました。

別の部長は当時担当していた営業所の近くで、阪神淡路大震災を体験したそうです。道路も交通機関も寸断されて、担当エリアである淡路島に荷物を運べない。どうしたものかと所内で話し合っていると、誰かが「空路で四国に運んで、反対側から淡路島に運んだらどうだろう」と思いつきました。

さっそく営業所をあげて本社に働きかけて動き出し、他の宅配会社よりもいち早く島内に荷物を届けることができました。中には日々必要な医薬品もあって、震災で手元の薬が尽きていた人から涙を流して感謝されたそうです。

「あの日届けた際にいただいた感謝の言葉が、今でも自分の支えになっているんですよ」とその部長は言いました。会社が説明してきた“仕事の意義”、「ただ荷物を届けているのではない、心を届けているのだ」の言葉は、頭では分かっていたつもりでしたが、心の底から実感した瞬間だったそうです。

部長の皆さんは、それぞれが同じように特別なお客様との体験談を持っていました。順にエピソードを聞くたびに、他の部長も私も感動してしまいました。宅配は「ただ荷物を届けているだけ」の仕事ではなかったのです。

6 “仕事の意義”を1対1だけでなく、チームで共有する

“仕事の意義”を感じるには、個人の体験談やお客様の声が響きます。1対1だけでなく、チームで共有しましょう。

最高のサービスを提供することで知られる東京ディズニーリゾートやザ・リッツ・カールトンホテルでは、毎日のチームミーティングで、大切にするべき理念や行動原則を確認するだけでなく、現場の一人ひとりが体験したお客様とのエピソードを共有しているそうです。

クレームや失敗した対応の報告もあるでしょうが、それらは次にどうすればよいか、みんなで話し合って対策を考えます。同時にうれしかった体験も共有しているのです。ある人は「こんなお礼の言葉をいただいた」、ある人は「感謝のお手紙をいただいた」と。

前日につらい体験をしたメンバーも、私だけではないのだと少し気持ちが軽くなるでしょうし、次こそ頑張ろうと思えるでしょう。辞めたい気持ちがよぎったとしても、「自分もお礼の言葉をいただくまでは頑張ってみよう」「感謝のお手紙をいただけるまでは頑張ろう」と思い直せるのではないでしょうか。

そうして気持ちを立て直し、翌日からも前向きに仕事に取り組んでいくことで、遠くない日にお客様からうれしい反応をいただけるようになるはずです。次第に少々のことでは辞めたい気持ちにならなくなってきます。

気が付けば部署に新人が入ってきても、自ら“仕事の意義”を伝えられる人材に育っていることでしょう。こうした好循環が『人が辞めない会社』の実現につながるのです。

新しく仲間になった新卒や中途の社員には、なかなか仕事の意義が捉えにくいもの。彼らが担当する業務の意義について伝えるのは、先輩や上司, あるいは採用に関わった担当者の仕事です。

とはいえ、すでに長く働いている社員の皆さんでさえ、仕事の意義について改めて考えたことがないかもしれません。ならば、この機会にぜひ新たな仲間と共に、一緒に考え共有してみてください。

入社後のフォローを続けながらも仕事に慣れてきた頃には、社員一人ひとりの担当業務ごとの“仕事の意義=やりがい”を伝え、実感させてあげてください。本人が“仕事の意義”を実感できてそれを仲間と共有できれば、人は簡単には辞めません。

第7回を最後までお読みいただきありがとうございました。次回も[仕事]についてのヒントをご紹介します。

毎回ご紹介するヒントを参考にしながら、自社を退職する一人ひとりの「辞める理由」と、働いている一人ひとりの「辞めない理由」を丁寧に拾ってみましょう。見えてきた自社ならではの“課題”を解消し“強み”を活かせれば、『人が辞めない会社』へと変われるはずです。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mailto:brightinfo@brightside.co.jp
https://www.brightside.co.jp/

※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。

『新スペシャリストになろう!』
https://amzn.asia/d/e8GZwTB
『なぜ社長の話はわかりにくいのか』
https://amzn.asia/d/8YUKdlx

以上(2026年1月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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【書籍ダイジェスト】『メタトレンド投資』

本書は、Apple、Tesla、NVIDIAといった成功企業の株を早くから買い、成果を上げた著者が実践する投資手法を自ら明らかにしている。
伝説のプログラマーにして起業家・投資家でもある著者が勧めるのは、多くの投資家が用いるテクニカル分析やファンダメンタルズ分析によらず、景気サイクルや中銀の金利政策といったマクロトレンドよりも長期変化の潮流を読み取り、適切なタイミングで投資を行う「メタトレンド投資」である。

書籍ダイジェストは、こちらからお読みいただけます。pdf

【中堅社員のスピーチ例】千里を走る名馬の心得

【ポイント】

  • 馬に千里を走る才能があったとしても、才能を見いだせる伯楽は少ない
  • 「自分は力があるのに認めてもらえない」と不満を言うだけでは、状況は変わらない
  • 力に気付いてもらえるよう、仕事ぶりで信頼を積み上げることが大切

おはようございます。2026年の干支は「午(うま)」、馬です。この「馬」にちなんだことわざ「千里の馬は常に有れども伯楽(はくらく)は常には有らず」をもとに、今年一年の自分の働き方についてお話ししたいと思います。

このことわざは、1日に千里を走るほどの力を秘めた名馬はたくさんいるが、名馬を見つけ出せる伯楽(馬の素養を見分ける人)は限られている。転じて、世の中に有能な人は多いが、その才能を見いだせる人物は少ないという意味で使われます。伯楽に才能を見いだされなかった馬は、一生ただの馬で終わってしまうわけですが、ここで考えたいのが、「馬は馬で、伯楽が才能を見いだしてくれるのをただ待っているだけでいいのか」という問題です。

例えば、ビジネスの場合だと、よくあるのがこんなケースです。「自分はもっとできるはずなのに、上司は難しい案件や大事なプロジェクトを任せてくれない」「同じ人ばかり指名されていて、不公平だ」心の中でそう不満を抱えつつ、でも自分からは特に動かない——こういう状態です。

しかし、上司の立場からすると、「期限を守るか」「基本的な仕事の精度は安定しているか」「チームへの影響を考えて動けるか」といった「安心して任せられる材料」が見えない人に、いきなり難しい仕事は振りづらいものです。「力はある“かもしれない”けれど、実際はどうか分からない人」よりも、「これまでの仕事ぶりで信頼を積み上げている人」を選ぶのは当たり前です。

私自身にも、「評価してくれる人がいれば、本気を出せるのに」と考えていた時期がありました。でも、今は「評価されるに足る材料を、自分がどれだけ提示しているか」が問われていると感じています。だから、「気付いてもらえない」と言う前に、「気付いてもらえるよう努力をしているか」と、常に自問自答することを心がけています。

2026年は、「任されないことへの不満」ではなく、「任せたくなる存在になる準備」に時間を使う一年にしたいと思います。上司からの大きな仕事を“待つ”のではなく、「この人に振ろう」と自然に名前が挙がるような、信頼と実績を積み上げる“千里の馬”を目指します。

以上(2026年1月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

              

食の未来は水槽の中に!? 改めて注目される「陸上養殖」

1 新規参入が相次ぐ陸上養殖

陸上養殖とは、

陸上に人工的につくった環境下で食用の水産物を養殖する事業のこと

です。ヒラメ、クルマエビ、トラフグ、アワビ、ウニ……こうした高級食材を、今よりもっと手軽に口にできる日がやって来るかもしれません。さまざまな水産物の陸上養殖が実用化されているからです。

海に囲まれ、さまざまな水産物に恵まれている日本ですが、近年は気候変動に伴う海水温の上昇、海流の変化などにより、種類によっては不漁が長期化し、各方面に影響が及んでいます。こうした状況の中、陸上養殖は

水質や水温を管理できるため「安定供給が可能」になると期待

されています。

また、漁業権の取得が不要であり、漁業法による制約を受けないため、

外資系企業や大手企業を含む水産以外の異業種による新規参入も増加

しています。水産庁によると、2025年1月1日時点の陸上養殖業の届出件数は740件、前年から78件増加しました。

さて、一口に陸上養殖といってもさまざまですが、特に期待されているのは「閉鎖循環式」です。

閉鎖循環式とは、施設内に整備された水槽の水を循環させながら、水中に排せつされた当廃物や餌を取り除き、水質を保つことで河川や海洋と接触することなく養殖するもの

です。

閉鎖循環式の陸上養殖の現状は、簡潔に言うと、

  • 初期投資とランニングコスト(餌代、水質や水温を保つためのエネルギー代など)が高いため、中小企業にとっては参入のハードルが高い
  • 一方、そうした中でも、これまで廃棄してきた食品残渣(ざんさ)を餌として有効活用したり、養殖した水産物を地域の新たな特産品として売り出したりする中小企業も増え始めている

という具合です。

この記事では、主に「閉鎖循環式」の陸上養殖に焦点を当て、外部環境や、参入事例を紹介します。食の未来を考えるきっかけとして、新規事業を構想する際のヒントとしてお役立てください。

2 陸上養殖を取り巻く市場環境

1)外部環境と成長要因

陸上養殖を取り巻く外部環境を整理してみましょう。

陸上養殖を取り巻く外部環境

1.政治(Political)

政府は、2020年に魚類養殖を対象とした「養殖業成長産業化総合戦略」を策定、2021年には貝類・藻類養殖に対する記述を追加し改訂を行いました。また、「マーケットイン型養殖業等実証事業」など国や自治体が支援制度を充実させています。こういった点は追い風と考えられます。

2.経済(Economical)

資材価格や人件費の上昇により、規模にもよりますが、初期投資は数千万円から数億円にも上ります。また、円安や原材料高を背景に、餌代やエネルギー代が高騰しています。消費地と生産地が近接することで販売時の輸送コストは抑えられますが、逆風のほうが強いといえるでしょう。

3.社会(Social)

陸上養殖は「食の安全」「エシカル消費」「SDGs」といったキーワードにつながる点で高く評価されており、こういった点は追い風です。

4.技術(Technological)

後述する「好適環境水®」の実用化、サンマやウナギなどの完全養殖(人工ふ化から育った親魚が産んだ卵を再びふ化~稚魚~成魚まで育てること)の成功例が現れていることなどは、今後の事業化に向けた追い風と考えられます。

2)陸上養殖の参入分析

「閉鎖循環式」の陸上養殖については、以前は体系的な情報がありませんでしたが、「内水面漁業振興法施行令」の改正により、2023年4月から届出制となりました。

2025年1月1日時点での陸上養殖業の届出件数(都道府県別)は次の通りです。

2025年の陸上養殖業の届出件数(都道府県別)

クビレズタ(海ぶどう)の養殖が盛んな沖縄県の届出件数が最も多く、大分県、鹿児島県、熊本県など九州地方に多い傾向が見られます。ただし、岐阜県をはじめ、いわゆる「海なし県」でも陸上養殖業の届出があります。

また、水産庁によると、2023年度、陸上養殖業により生産された水産物の合計出荷数量は6392トンで、ヒラメ1786トン、トラフグ1324トン、ニジマス791トン、アユ773トン、クビレズタ(海ぶどう)536トンと主に魚類が上位を占めています。

閉鎖循環式の陸上養殖の競争環境は次のように考えられます。

閉鎖循環式の陸上養殖の競争環境

3 陸上養殖の事例

大手企業、ベンチャー企業、異業種の中小企業など、陸上養殖を手掛ける企業は多種多様です。ここでは、その事例を5つ紹介します。

1)NTTグリーン&フード

通信大手NTTのグループ会社「NTTグリーン&フード」は、2024年12月、静岡県磐田市にシロアシエビ(バナメイエビ)の陸上養殖プラント(磐田プラント)を竣工しました。同社は、2024年8月、同じく磐田市でエビの陸上養殖事業を展開する「海幸ゆきのや」の全持ち分を関西電力から譲受し完全子会社としており、生産量で国内最大級のエビの陸上養殖施設を有する事業者となりました。

磐田プラントは、スズキ部品製造が保有する建屋を活用し、主にバイオフロック方式(水槽内に浮遊する微生物の集合体によって水を浄化する方式)を採用しています。外部パートナーによる検証エリアでは完全閉鎖循環方式も導入し、リサイクル可能な素材でかつ断熱性にも優れた環境配慮型の養殖用・ナーサリー(稚エビ用)水槽などを設置しています。

なお、磐田市では、磐田プラントの完成をきっかけに「エビ」を軸にした産業振興と地域活性化を進める取り組みが始まっています。教育機関を巻き込んだ食育活動や、地元飲食店によるメニュー化を通じて、地域住民が一体となって、陸上養殖エビの一大産地化を目指しています。

NTTグリーン&フード

2)マルハニチロ養殖技術開発センター

水産大手マルハニチロは、2025年9月、養殖研究を行うグループ会社「マルハニチロ養殖技術開発センター」において、事業レベルに準じる飼育密度でのサンマの試験養殖を成功させました。

マルハニチロ養殖技術開発センター

マルハニチロ養殖技術開発センターでは、世界で初めてサンマ水槽内繁殖を成功させた「ふくしま海洋科学館」から支援を受け、サンマ養殖の研究に着手。その後、クロマグロやブリ、カンパチ、マダイの人工種苗生産などで長年培ってきた養殖技術や研究開発の知見を生かし、サンマ養殖に適した餌や飼育設備の検討を重ね、2024年6月に出荷目安である100グラムを超えるサイズへ成長させることに成功しました。また、同年8月には人工授精にも成功し、事業化に向けた技術の蓄積を継続しています。

なお、マルハニチロは2026年3月にUmios(ウミオス)に社名変更を予定しています。

3)海藻ラボ

海藻ラボ(徳島県海部郡海陽町)は、徳島大、徳島文理大などと協働して海藻の陸上養殖に取り組んでいます。通常、海藻の海面養殖では、海水温の影響を受けるため、年間の3、4カ月に限られますが、同社は異なる生育水温を必要とする、あおさ(ヒトエグサ)とミリンソウ(「あかねそう®」)の2種類の海藻を組み合わせた「陸上二毛作養殖システム」を採用し、同一施設による通年養殖を実現しました。これらの海藻は、陸上養殖海藻としては日本初の有機藻類JAS認証を取得しています。

海藻ラボ

同社のプロジェクト「海藻が拓く、輝く未来の『ブループラネット』 海藻が 人と海を 豊かに、健康に。」は、2025年に開催された大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現するプロジェクトとしてベストプラクティスの1つに選ばれました。

4)北三陸ファクトリー

北三陸ファクトリー(岩手県九戸郡洋野町)では、磯焼けによって痩せた実入りの悪いウニを廃棄するのではなく、商品に変える「再生養殖」に取り組んでいます。
磯焼けは、大型の海藻の大部分が沿岸の一部で枯れてしまう現象で、ウニによる食害が一因とされています。同社は、北海道大学をはじめとした研究機関や事業者との協力のもと、ウニがおいしくなるための「餌」、ウニをおいしく育てるための「カゴ」、そしてウニそのものを高品質にし、価値のある水産物として再生するための「再生養殖」の仕組みを確立し、特許を取得しました。「再生養殖」を適切に運用することで、痩せた実入りの悪いウニも2カ月という短期間で出荷レベルの実入りに改善することができるといいます。

同社は、再生養殖を通じて商品化したウニを「豊かな自然と地域を様々な人と一緒に育む」という願いを込めて「はぐくむうに®」と名づけ、統一ブランドで販売しています。

北三陸ファクトリー

同社は、同じように磯焼けで困っている事業者に向けて、養殖事業開始から出荷販路確保に至るまでのコンサルティングも行っています。

5)エムテック

精密切削加工・複合加工、医療機器製造を手掛けるエムテック(茨城県ひたちなか市)は、2023年9月に新たにアクア事業部を発足し、シロアシエビ(バナメイエビ)の閉鎖循環型陸上養殖を始めました。

同社は、地域特産のサツマイモ「紅はるか」を干し芋に加工する際に発生する皮などの残渣を餌の一部として利用しています。また、養殖に使う濾過槽(ろかそう)などの設計開発・製造から販売を、同社も参画する共同受注体「GLIT(Guild for Leading Innovative Technology)」で担っています。生産されたエビは「はるか海老®」として、地元の日本料理店などに出荷され、好評を得ています。

エムテック

4 参考

1)まさに魔法の水「好適環境水®」

「好適環境水®」は、海水の中から魚類に必要な成分をナトリウム、カリウム、カルシウムなどに絞り込み、淡水魚も海水魚も同じ水槽で飼育できる人工飼育水です。岡山理科大学の山本俊政准教授(生命科学部生物科学科)が中心になって研究を進めています。

開発のきっかけは、2005年ごろ、学生が海水に住むプランクトンを淡水で育ててみようとしたことでした。淡水の中に少量残存していた海水によってプランクトンが大量に繁殖することをつかみ、本格的な研究が始まりました。試行錯誤の結果、魚にとって最低限必要な成分と、各組成間の黄金比を見つけ出すことに成功。2010年には、35トン水槽4基と140トン水槽を備えた実験場「生命動物教育センター」(現・生物生産教育研究センター)が完成しました。

岡山市の条例で魚類廃液を下水道に流せないことが判明したものの、同センターは土壌細菌を活用し、濾過装置を併設して水を循環させる閉鎖循環式を採用することでピンチを切り抜けたといいます。

「好適環境水®」で飼育すると成長速度が早まるというデータもあります。「好適環境水®」は、塩分濃度が海水の約4分の1に調整されており、体内の塩分濃度との浸透圧調整に関わるストレスが軽減されるのが理由ではないか、とみられています。また、全て人為的にコントロールされた環境で養殖するため、気象や赤潮などの影響を受けない上、病気が発生しにくいというメリットもあります。

岡山理科大学では「好適環境水®」による海水魚養殖の研究により、トラフグ、ヒラメ、クエ、クロマグロ、シマアジ、ウナギ、ウマヅラハギ、オニテナガエビ、クルマエビ、バナメイエビ、ブラックタイガーなどの陸上養殖に成功し、それらは随時出荷されています。

岡山理科大学「生物生産教育研究センター」
https://renkei.office.ous.ac.jp/ercop/

2)水産庁「養殖業事業性評価ガイドライン」

水産庁は、金融機関が養殖業の経営実態の評価を容易にする養殖業(魚類、貝類、藻類、陸上養殖およびその他養殖)に対する「養殖業事業性評価ガイドライン」を策定しました。

養殖業は、

  • 事業期間が複数年にまたがり事業内容の評価が困難
  • 代金回収までに餌代などに多額の運転資金が必要
  • 販売価格の暴落や自然災害の経営リスクが大きい

といった特徴のため、金融機関からすると従来の評価手法では養殖経営体の経営実態を適切に評価することが難しく、資金需要に応えにくい状況があります。

ガイドラインでは、養殖業における経営の特徴、金融事情、食の安全・環境配慮等の事業性評価を行うための基本的留意点を述べ、6つの事業性評価の項目(市場動向、経営事業継続力、販売力、動産価値、品質生産管理、リスク管理・対策)と評価手法を提示し、この評価項目と評価手法に基づき作成する「養殖業ビジネス評価書」の作り方を示し、養殖経営体の事業性が見える化されやすくなるようにしています。

この他に養殖水産物の動産登記上の留意点、第三者の評価機関を活用した事業性評価の実施の流れ、事業性評価に必要となる資料やデータの出典を含め、金融機関が養殖業の事業性評価に必要な融資の判断材料を提供しています。

水産庁「養殖業事業性評価の推進」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/yousyoku/jigyoseihyoka.html

以上(2025年12月作成)

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画像:水産庁、岡山理科大学、NTTグリーン&フードほか

チェックリストでわかる入社・退社手続きの実務

厳しい採用難の時代において、「ヒト」を大切にする働きやすい企業であるという姿勢を表明し、事業を円滑に発展させていく新規採用を見通すためにも、また既存の従業員を守っていくためにも、適切な人事労務管理を行い、会社の土台をしっかりと固めていくことが必要です。

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中小企業が知っておくべき「令和8年度税制改正大綱」のポイント

1 賃上げ促進税制の廃止時期と控除率の変更

従業員の給与等(給与所得に該当する給与、賞与など)を前年度より一定以上増やした場合に、税額控除を受けられる賃上げ促進税制について、会社規模(中小企業・中堅企業・大企業)ごとに、廃止の時期や控除詳細の変更が行われます。

賃上げ促進税制(給与等の増加割合と控除率)の改正内容

また、

教育訓練費を一定以上増やすと受けられる控除率の上乗せ措置(最大10%)の廃止

も盛り込まれています(廃止時期については、税制改正大綱に記載なし)。

2 特定生産性向上設備等投資促進税制の新設

青色申告を提出している法人が、国から「生産性向上につながる」と認められた一定の設備を取得した場合に、

  • その投資額の全額を損金に算入できる即時償却
  • 税額控除(7%)

のいずれかを選択できる制度(特定生産性向上設備等投資促進税制)が新設されます。なお、税額控除における控除税額は法人税額の20%を上限とし、もし上限を超過した控除税額があるときは、3年間繰り越しが可能です。

この制度は、業種を問わず適用できますが、

  • 2029年3月31日までに、設備投資の内容について計画書を作成し、産業競争力強化法に基づく国の確認を受ける
  • 確認を受けた日から5年以内に、その設備を実際に取得し、事業で使い始める

必要があります。その他の主な要件は次の通りです。

対象設備の金額要件と計画要件

3 中小企業技術基盤強化税制の延長と繰越税額控除の導入

中小企業向けの研究開発支援策の1つである、

中小企業技術基盤強化税制(税額控除の特例と控除税額の上限の上乗せ特例)の適用期限が、3年間延長

されます。この制度は、研究開発投資を行った法人が、その事業年度に損金に算入する試験研究費の一定割合(12~17%)の金額を税額控除できるというものです。

また、一時的な赤字などでその事業年度に税額控除の恩恵を受けられなかった場合でも、

控除限度超過額を3年間繰り越すことができる「繰越税額控除」が新たに導入

されます。

4 少額減価償却資産の特例の対象となる取得価額の引き上げ

少額の備品などを購入した際、即時に全額を損金に算入できる少額減価償却資産について、

対象になる取得価額が40万円未満(改正前は30万円未満)に引き上げ

られます。また、引き上げの他に、

  • 事業年度終了の日において常時使用する従業員の数が400人以下(改正前は500人以下)の法人が適用対象
  • 適用期限が3年間延長され、2029年3月31日までの間に購入して事業のために使用したものが対象

になります。

なお、令和8年度税制改正大綱には、上限額変更の記載はないため、年間300万円の上限に変更はないとみられます。

5 インボイス経過措置による控除率の縮小幅と期間の変更

インボイスが発行できない免税事業者(あるいは適格請求書発行事業者の登録をしていない事業者)からの仕入れについては、原則控除が受けられません。

しかし、制度導入直後の急激な税負担の増加などの影響を避けるため、導入後の数年間は、インボイスが発行できない事業者からの仕入れでも、一定額の控除を受けられる経過措置(インボイス経過措置)が設けられています。その控除率について、2026年10月1日より段階的に縮小され、最終的にはなくなりますが、今回の税制改正により、その縮小幅の変更と廃止までの期間が延長され、次のようになります。

  • 2023年10月1日〜2026年9月30日:仕入れにかかる消費税額の80%まで控除可
  • 2026年10月1日〜2028年9月30日:仕入れにかかる消費税額の70%まで控除可
  • 2028年10月1日〜2030年9月30日:仕入れにかかる消費税額の50%まで控除可
  • 2030年10月1日〜2031年9月30日:仕入れにかかる消費税額の30%まで控除可
  • 2031年10月1日~:控除不可

6 インボイス3割特例の創設(小規模個人事業者のみ対象)

免税事業者がインボイス制度の導入を機に、課税事業者を選択した場合、納税額を、売上に係る消費税の2割とする制度(インボイス2割特例)が、2026年9月30日に廃止されます。今回の税制改正により、

小規模個人事業者限定で、納税額を、売上に係る消費税の3割とする制度(インボイス3割特例)

が創設されます(2年間の経過措置)。なお、今回創設されるインボイス3割特例は、

法人は対象外

であるため、2割特例を受けていた法人は、2026年10月1日以後は、従前通り、本則課税または簡易課税の方法で消費税の納税額を計算しなければなりません。

以上(2026年1月作成)
(執筆 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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画像:Gemini

誤解しやすい 労務管理シリーズ 第2回 労働時間・賃金計算編

労働時間と賃金計算は、働く人にとって非常に身近で重要な労働条件の一つです。その一方で、制度の複雑さや用語の曖昧さ、会社ごとの運用の違いなどが原因となり、誤解や認識のズレ、ミスが生じやすいものでもあります。このような複雑なルールや法令を正しく理解し、適正な労働時間管理と賃金計算、運用の向上に役立ててください。

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カスハラ対策を支援! 東京都のカスハラ防止対策奨励金のご紹介

奨励金とは、国や自治体などが事業主に対して、職場環境の整備、雇用の促進、企業立地など、特定の取り組みや行動を後押しする目的で支給する報奨的な性格を持つ支援金です。奨励金は一定の行動や取り組みを実施したことを要件としており、要件に該当すれば支給を受けられる可能性が比較的高い点が特徴です。

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正味現在価値法と内部利益率法の考え方/設備投資の成果チェック(5)

1 投資判断の精度を一段引き上げられる2指標

投資評価の判断で使う主な指標には、

  • 回収期間法
  • 投資利益率法
  • 正味現在価値法
  • 内部利益率法

の4つがあります。

前回(第4回)解説した回収期間法は「安全性」やどれだけ早く元が取れるかという「時間的な価値」に着目した指標であり、投資利益率法はどれだけ儲かるかという「収益性」に着目した指標でした。つまり、回収期間法では収益性が考慮されず、投資利益率法では安全性や時間的な価値が反映されません。

シリーズ最終回となる今回は、正味現在価値法と内部利益率法を解説します。いずれも

時間的な価値と収益性の両方を考慮した指標

で、投資判断の精度を一段引き上げてくれます。前回(第4回)と同じシミュレーション例(A案・B案・C案)を使いながら、考え方と計算の流れ、そして実務で使えるExcel関数までを整理していきます。

2 「時間的な価値」と「収益性」を両立した正味現在価値法

正味現在価値法は、

資金調達コストを基準に、将来得られるキャッシュ・フロー(回収額)を今の価値(現在価値)に直し、その合計が当初の投資額をどれだけ上回るかを見る指標

です。

時間的な価値を考慮するというアプローチは、キャッシュ・フローを得られるのが早いほうがいいという考え方に立っています。同じ1万円でも、「今すぐ手に入る1万円」と「1年後にもらえる1万円」では、どちらの価値が高いでしょうか。多くの人は、今すぐ手に入る1万円のほうがありがたいと感じるはずです。この感覚を数字で表したものが、割引計算です。

例えば、利率が5%とすると、今の1万円は、1年後には利息500円分増えて1万500円になります。つまり、今の1万円と1年後の1万500円は同じ価値だといえるのです。計算式にすると

1万円×(1+0.05)=1万500円

となります。これは、今の1万円を1年後の価値に直した計算です。

では逆に、1年後にもらえる1万円を、今の価値ではいくらかを考えてみましょう。この場合は、1万円を(1+0.05)で割ります。

1万円/(1+0.05)=約9524円

になります。2年後、3年後……の1万円も、年数分だけ割り引いていきます。例えば、5年後の1万円の計算は(1+0.05)で5回割り、

1万円÷(1+0.05)÷(1+0.05)÷(1+0.05)÷(1+0.05)÷(1+0.05)=約7835円

です。

5年後の1万円の計算

このように求めた今の価値を、正味現在価値(Net Present Value。通称「NPV」)といいます。なお、ここでは預金利息を使いましたが、企業の場合は借入金利などの資金調達コストを使うのが一般的です。なぜなら、少なくともその資金調達コストを超える分を、必ず稼がないといけないからです。

早速、次の事例(A案・B案・C案)を使って現在価値を計算し、比べてみましょう。ここでは、資金調達コストを10%とします。

NPVの計算

A案で見てみましょう。具体的には次のような数字になります。

-100+25/(1+0.1)+35/(1+0.1)2+50/(1+0.1)3+30/(1+0.1)4+35/(1+0.1)5
=-100+22.7+28.9+37.6+20.5+21.7(小数点第一位未満四捨五入で表記)
=-100+131.4
=31.4

ここで見ていただきたいのは、キャッシュ・フローの単純合計(割引計算をしない各年のキャッシュ・フローの合計)はC案のほうが大きいですが、正味現在価値(NPV)ではA案のほうが大きくなっています。これは、C案のキャッシュ・フローが4年目と5年目に多く、時間的な価値を考慮するとA案の方が有利であることを示しています。

正味現在価値法は、「収益性(どれだけ大きいか)」だけでなく、「時間的な価値(どれだけ早いか)」も合わせて評価できる点が特徴です。また、「大きさ」に時間調整は必要ですが、合計した数値で有利かどうかを判断できる点も、直感的で理解しやすいと言えます。

3 もう1つの重要指標「内部利益率法」

内部利益率法は、

回収額の正味現在価値の合計と当初の投資額が一致する利率を求める指標

で、Internal Rate of Return(インターナル レイト オブ リターン)、頭文字からIRRと呼ばれます。考え方は、先ほどの正味現在価値法と似ていますが、利率そのものを答えとして求める点が異なります。

事例(A案)を使って内部利益率法の式を書くと次のようになり、xを求めることになります。

-100+25/(1+x)+35/(1+x)2+50/(1+x)3+30/(1+x)4+35/(1+x)5=0

この「x」はどのように求めればよいのか。結論から言うと、実務ではExcelを使って計算するしかありません。正味現在価値は手計算できないこともありませんが、内部利益率を手計算で求めることは一般的には難しいです。実務では、ExcelのIRR関数(内部利益率を求めるための関数)を使うのが前提になります。IRR関数については、第5章で紹介します。

早速、事例(A案・B案・C案)を使って計算した内部利益率を比べてみましょう。

IRRの計算

ここでも、先ほどと同様、A案が最も利益率が高い(A案21.1>C案17.5>B案12.4)ため、A案が有利であることを示しています。

内部利益率法は、将来に入ってくるキャッシュ・フローを全て同じ重みで扱うのではなく、回収までに時間がかかるほど割引は大きくなる仕組みになっています。そのため、資金の回収が早い投資ほど有利に評価されやすく、同時に、投資全体の利回りも確認できるので収益性も加味されています。このことから、内部利益率法は「時間的な価値」と「収益性」の両方を1つの数値で判断できる指標といえます。

4 特徴が似た2つの指標の使い分けと投資効率の判断基準

正味現在価値法も内部利益率法いずれも、「時間的な価値」「収益性」両方を含めて評価できる指標です。この2つの指標がそれぞれ向いているのは、

  • 正味現在価値法は、投資額が同じか、または近い案件を比較するケース
  • 内部利益率法は、投資額の大きさが異なる案件を比較するケース

です。

なお、投資効率の目安としては、経済産業省が公表した『伊藤レポート2014』で示された ROE8%以上というものがあります。この数値を、資本効率改善の最低基準として参考にすることで、個別の投資案件が一般的に求められる利益水準と比べて十分かどうかを確認することができます。中小企業においても、この数値を一つの基準としておくと、投資判断がしやすくなります。

5 ダウンロードした実務で使えるExcel例とその解説

1)正味現在価値法

実務では、Excelを活用することがおすすめです。次のExcelでは、年ごとのキャッシュ・フロー(CF_青色背景の箇所)と割引率(下図のD5セル)を入力して正味現在価値を計算します。なお、Excelには、本リポートの計算例で使用した事例(A案・B案・C案)の数値を入れております。

【図表ダウンロード_WS:4投資評価の例 (現在価値)】

前述したように、手計算ではそれぞれの年度のキャッシュ・フローを現在価値に直し、全ての数字を合計します。しかし、Excelでは、NPV関数(正味現在価値を計算するための関数。A案の場合はC5セル)を使って一発でNPVの合計額(A案の場合は、D3からH3までの各CFを、D5に入力した割引率で割り引いた正味現在価値の合計額)が算出できます(A案の場合はC5セル)。複製する場合にはご参考ください。

=C3+NPV(D5,D3:H3)

2)内部利益率法

【図表ダウンロード_WS:5投資評価の例 (内部利益率)】

内部利益率法は、Excelを使うことが必須です。前述の通り、IRR関数を使っています(A案の場合はC6セル)。複製する場合にはご参考ください。

=IRR(C3:H3)

6 4指標が計算できるシミュレーション用Excelシート

最後に、これまで解説してきた4指標に加え損益計算やキャッシュ・フロー計算が計算できるExcelシートをご提供します(ダウンロードしてお使いください)。各項目の前提条件を変えることで、複数のパターンを試算することができます。また、各指標の計算式も入力されているので、シミュレーションごとの指標計算も自動で行えます。

【図表ダウンロード_WS:6】

以上(2026年1月作成)

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画像:apinan-Adobe Stock