目次
1 働き方改革推進支援助成金を活用しよう!
働き方改革やSDGsの観点から、社員の「健康」維持が大きく注目されています。残業を減らす、休暇や休日を増やすなど、アプローチの方法はさまざまです。就業規則の整備や設備導入にはコストがかかるため、助成金を活用しながら取り組みを進めることをお勧めします。
例えば、
建設業など特定の業種が時間外労働の削減などに取り組み、一定の成果目標を達成した場合に最大1370万円が支給
されるのをご存じですか。具体的には「働き方改革推進支援助成金」という助成金がそうです。以降では、それぞれの制度概要と申請上のポイントを専門家が解説します。
なお、助成金の内容は2026年4月13日時点のもので、将来変更される可能性があります。また、申請書の書き方や添付書類については、全コースまとめてこちらに記載されていますので、ご確認ください。
厚生労働省「働き方改革推進支援助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html#h2_free3
2 業種別課題対応コース(最大1370万円)
1)業種別課題対応コースとは?
建設業、運送業等、病院等、砂糖製造業、情報通信業、宿泊業の中小企業が生産性を向上させ、時間外労働の削減などに取り組んだ場合に助成を受けられるというものです。なお、砂糖製造業は、「鹿児島県・沖縄県の事業者のみ」が対象です。
2)助成金を受け取るには?
中小企業で、申請時点において一定の要件(年5日の年休(年次有給休暇)の取得に向けた就業規則等を整備している、法的要件を満たした36協定を締結し、届け出ている等)を満たしている会社が、「成果目標」を設定し、成果の達成に向けて「支給対象となる一定の取り組み」を実施する必要があります。
具体的な「成果目標」となるのは次の7つで、1つ以上を選択する必要があります。
- 月60時間超の36協定の時間外・休日労働時間数の縮減
- 所定外労働時間数の削減(1.との同時選択は不可)
- 年休の計画的付与制度の導入
- 時間単位年休+1つ以上の特別休暇(注1)の導入
- 勤務間インターバル制度の導入
- 4週における所定休日の1日以上の増加(建設業のみ)
- 「医師の働き方改革の推進(注2)」の実施(病院等のみ)
(注1)病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇等が対象です。
(注2)労務管理体制の構築(労務管理責任者の設置等、副業・兼業を行う医師の労務管理体制の整備、労働時間管理に関する研修の実施)、医師の労働時間の実態把握を指します。
「支給対象となる取り組み」は次の7種類です。
- 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの、業務研修を含む)
- 社員に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(注)
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(注)
(注)原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
3)受け取れる金額はいくら?
取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表1の額)を受け取れます。なお、指定する社員について、
- 賃上げの実施を成果目標に加え、実施を達成した場合は「賃上げに関する加算」
- 割増賃金の引上げを成果目標に加え、実際に達成した場合は「割増賃金率の引上げに関する加算」
が受けられます(次章以降の「労働時間短縮・年休促進支援コース」「勤務間インターバル導入コース」にも一部、同様の制度があります)。

要件を満たし、選択した成果目標の達成や各種加算の適用条件を満たした場合、最大で次の額の助成を受けられる計算になります。
- 建設業:1370万円
- 運送業等:1290万円
- 病院等:1340万円
- 砂糖製造業:1270万円
- 情報通信業、宿泊業:1270万円
4)専門家のワンポイントアドバイス
働き方改革推進支援助成金は全部で5つのコースがありますが、いずれも
2026年度の「交付申請書」の申請期限は、2026年11月30日まで(予算の制約により11月30日以前に締め切られる場合があるので注意)
となっているので、早めに準備を進める必要があります。加えて、時間外労働の削減などの各種取り組みについても、
交付決定後、2027年1月31日までに提出した計画に沿って取り組みを実施した上で、支給申請期限までに都道府県労働局に支給申請をしなければならない
ので、交付申請書の提出時期によっては非常にタイトなスケジュールになります。期限内に提出するためにも、余裕を持って計画的にプロジェクトの立案等を進めるようにしてください。
このコースは選択肢が多い分、「自社の業種で、どの成果目標を組み合わせれば最大効果を狙えるか」を考えることが肝要です。特に注意すべきは、
成果目標1(36協定の縮減)と成果目標2(所定外労働時間数の削減)は同時選択できない
という制約がある点です。
賃上げ加算は、「常時30人以下」の事業主の場合、1人当たりの加算額が2倍になるため、小規模の会社ほど相対的にメリットが大きい仕組みです。自社の規模を踏まえて、賃上げ対象人数を戦略的に設定しましょう。
3 労働時間短縮・年休促進支援コース(1020万円)
1)労働時間短縮・年休促進支援コースとは?
生産性を向上させ、時間外労働の削減、年休や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組んだ場合に助成を受けられるというものです。
2)助成金を受け取るには?
中小企業で、申請時点において一定の要件(年5日の年休(年次有給休暇)の取得に向けた就業規則等を整備している等)を満たしている会社が、「成果目標」を設定し、成果の達成に向けて「支給対象となる一定の取り組み」を実施する必要があります。
具体的な「成果目標」となるのは次の3つで、1つ以上を選択する必要があります。
- 月60時間超の36協定の時間外・休日労働時間数の縮減
- 年休の計画的付与制度の導入
- 時間単位年休+1つ以上の特別休暇(注)の導入
(注)病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇等が対象です。
「支給対象となる取り組み」は次の7種類です。
- 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの、業務研修を含む)
- 社員に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(注)
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(注)
(注)原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
3)受け取れる金額はいくら?
取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表2の額)を受け取れます。

要件を満たした場合、最大1020万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
このコースは、残業削減を掲げるだけでなく、年休の計画的付与や時間単位年休と特別休暇の新規導入など、制度整備を伴う成果目標が中心です。就業規則の整備や年休管理簿の作成が要件に含まれるため、申請前に社内規程と運用実態を点検しておくとスムーズです。
その他の基本的な注意点は、業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年1月31日までとなります。
4 勤務間インターバル導入コース(最大970万円)
1)勤務間インターバル導入コースとは?
勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設ける勤務間インターバル制度の導入などを行った場合に助成を受けられるというものです。
2)助成金を受け取るには?
中小企業で、申請時点において一定の要件(36協定を締結しており、過去2年間に月45時間超の時間外労働の実態がある、年5日の年休(年次有給休暇)の取得に向けた就業規則等を整備している等)を満たしている会社が、「成果目標」を設定し、成果の達成に向けて「支給対象となる一定の取り組み」を実施する必要があります。
具体的な「成果目標」となるのは次の3つで、1つ以上を選択する必要があります。
- 新規導入(所属社員の1/4超を対象とする勤務間インターバルを新たに導入する)
- 適用範囲の拡大(勤務間インターバルの適用範囲を所属社員の1/4または1/2超とする)
- 時間延長(所属社員の1/4または1/2超とする勤務間インターバルの休息時間数を、2時間以上延長して9時間以上とする)
「支給対象となる取り組み」は次の7種類です。
- 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの、業務研修を含む)
- 社員に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(注)
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(注)
(注)原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
3)受け取れる金額はいくら?
取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表3の額)を受け取れます。

要件を満たし、成果目標の達成に加えて賃上げ加算や割増賃金率引上げ加算の適用条件も満たした場合、最大970万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
成果目標は支給要領の別表に基づいて上限額が変わるため、申請前に対象人数と休息時間数の組み合わせを確認し、賃上げ加算や割増賃金率加算を組み合わせるかも含めて計画することが重要です。
また、制度導入に当たっては、
単に「○時以降の残業禁止、○時以前の始業禁止」と定めるだけでは対象にならない
ので注意してください。就業規則等で「終業から次の始業までの休息時間を確保する」旨を明記する必要があります。
なお、2026年度の改正で、11時間以上の休息時間を新規導入する場合の上限額が150万円に引き上げられました(2025年度は120万円)。可能であれば11時間以上を目指すことで、助成額を最大化できます。
その他の基本的な注意点は、業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年1月31日までとなります。
5 団体推進コース(最大500万円)
1)団体推進コースとは?
事業主団体等(中小企業の団体やその連合団体等で1年以上の活動実績があるものなど)が、傘下の構成事業主(社員を雇用する会社)の社員について、労働条件を改善するため、時間外労働の削減や賃上げに向けた取り組みを実施した場合に助成を受けられるというものです。
2)助成金を受け取るには?
課題対応の「成果目標」として
事業主団体等が事業実施計画に基づき、時間外労働の削減・賃上げに向けた改善事業の取り組みを行い、構成事業主の2分の1以上にその取り組みまたは取り組み結果を活用
する必要があります。
支給対象となる取り組みは、次の10種類です。いずれも成果目標の達成に向けて実施する必要があります。
- 市場調査
- 新ビジネスモデルの開発、実験
- 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)
- 取引適正化への理解促進など、労働時間などの設定の改善に向けた取引先との調整
- 販路の拡大などの実現を図るための展示会開催および出展
- 好事例の収集、普及啓発
- セミナー(勤務間インターバル制度に関する事項を含む)の開催など
- 巡回指導、相談窓口の設置など
- 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
- 人材確保に向けた取り組み
3)受け取れる金額はいくら?
取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表4の額)を受け取れます。

要件を満たした場合、最大500万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
前述した通り、このコースでは、団体自身が取り組みを実施するだけでは足りず、構成事業主の2分の1以上にその取り組みまたは取り組み結果を活用させる必要があります。そのため、
申請段階から「誰に、どう横展開するか」を具体化しておく
ことが肝要です。事業計画の策定段階から、構成事業主への事前説明・参加意向の確認を丁寧に行い、「計画倒れ」にならない体制を整えましょう。
その他の基本的な注意点は、業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年2月14日までとなります。
6 取引環境改善コース(最大100万円)
1)取引環境改善コースとは?
荷主集団等が、トラックドライバーの時間外労働の削減等のために、荷待ち・荷役時間の短縮に向けた取引環境整備の取り組みを実施した場合に助成を受けられるというものです。
2)助成金を受け取るには?
この助成金は、次の要件などを満たす荷主集団等を対象としています。
- 荷主集団等を代表して、本助成金の申請に係る事務等を行う事業者(代表事業主)および構成員を合わせて3者以上で構成された組織であること
- 代表事業主を含め、少なくとも1以上の荷主もしくは倉庫事業者および1以上の運送事業者で構成されていること
- 組織として現に活動しているまたは今後具体的に活動することが見込まれる荷主集団であること
- 中小企業事業主の占める割合が、構成員たる運送事業者の1/2を超えていること
荷主集団等は、
事業実施計画で定める改善事業を行い、運送事業主の1/2以上に対して荷待ち・荷役時間および労働時間の短縮に効果を上げる
という成果目標を達成する必要があります。
支給対象となる取り組みは、次の5種類です。いずれも成果目標の達成に向けて実施する必要があります。
- 取引適正化への理解促進など、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整
- 好事例の収集、普及啓発
- セミナー(勤務間インターバル制度に関する事項を含む)の開催など
- 巡回指導、相談窓口の設置など
- 運送事業者等が利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新
この他、代表事業主が法人格を有すること、代表事業主および全構成員が同一の企業グループに属していないことなども要件に含まれます。
3)受け取れる金額はいくら?
取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表5の額)を受け取れます。

要件を満たした場合、最大100万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
他の4コースとは異なり、個社の中小企業事業主ではなく「荷主集団等」が申請主体となります。荷主集団等の構成要件を満たすことに加え、構成員である運送事業者の2分の1以上に対して、荷待ち・荷役時間や労働時間の短縮効果を上げる必要があります。そのため、申請時にはどの取引工程を見直し、どのような効果を見込むかまで具体化しておくことが重要です。
その他の基本的な注意点は業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年2月14日までとなります。
以上(2026年5月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)
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画像:日本情報マート



























