なぜ昭和のコミュニケーションはアップデートが必要か/武田斉紀の『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』(1)

書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:最近話題のZ世代(1990年代後半以降生まれで企業においては20代前半くらいまで)だけでなく、それ以前の平成生まれ(30代前半くらいまで)の世代と、現在経営や管理職を担っている昭和世代との世代間ギャップが注目されています。それは価値観の違いやコミュニケーションの違いとして表れ、変化や多様性が求められる昨今、日本企業において深刻な経営の足かせとなりつつあるようです
  • 解決策:まず企業においてZ世代を含む平成生まれと昭和生まれの世代背景を整理しながら、ギャップを埋めるための「価値観の変化」を明らかにします。その上で、筆者が多くの講演や企業研修で紹介してきた『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』を実践的に指南します

1 昭和のコミュニケーションを見直すべき1つ目の理由は「現場との世代ギャップ」

職場でリーダーと呼ばれる立場の人たちには、チームや課や部といった組織を文字通りリードしたり、マネジメントしたりする役割が求められています。

組織は人でできており、そのパフォーマンスは属する一人ひとりが互いに関わりながら付加価値を生み出していくことで決まります。そこにはコミュニケーションが欠かせません。

メンバー同士のヨコのコミュニケーションも重要ですが、日々のマネジメントにおいて、リーダーとメンバーとの間のいわゆるタテのコミュニケーションは、組織のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。

しかし、日本企業においてタテのコミュニケーションに危機が訪れています。理由は2つあって、1つ目はリーダーと「現場との世代ギャップ」です。

日本企業は、1955年以降の高度成長期を終身雇用制と年功序列の下に経験してきました。ところが1980年代後半からのバブル経済をピークに、それが崩壊した1991年以降は低成長の時代がずっと続いています。少子高齢化や定年制の延長も相まって、多くの日本企業では、中高年代が多く若手が少ない逆ピラミッド構造になっています。

そして30代後半~50代が占める管理職のほとんどは昭和生まれ(1988年まで、大卒で35歳くらい以上)であり、現場を任されている平成生まれ(35歳以下)とは、幼少期から過ごしてきた環境や教育が全くと言っていいほど異なっているのです。

2 平成以降の価値観は「丁寧な指導/褒める/傾聴」や「個性の尊重/助け合い」

あるアンケートによれば、新入社員が理想とする職場像、上司像はこの10年で大きく変化しているそうです。

理想の上司像として低下している項目は、低下幅が大きい順に「仕事に情熱を持って取り組む」「周囲を引っ張るリーダーシップ」「言うべきことを言い、厳しく指導する」など。上昇している項目は、上昇幅が大きい順に「一人ひとりに丁寧に指導する」「よいことやよい仕事を褒める」「相手の意見や考え方に耳を傾ける」などでした。

理想の職場像として低下している項目は、同じく「活気がある」「互いに鍛え合う」「みんなで1つの目標を共有する」など。上昇している項目は「互いの個性を尊重する」「互いに助け合う」などでした。

キーワードを拾うと、低下しているのが「情熱/引っ張る/厳しい」「活気/鍛え合う/目標の共有」、上昇しているのが「丁寧な指導/褒める/傾聴」「個性の尊重/助け合い」となります。

昭和時代を生きてきた上司の世代にとっては「情熱/引っ張る/厳しい」「活気/鍛え合う/目標の共有」が理想とされてきた価値観であり、「丁寧な指導/褒める/傾聴」「個性の尊重/助け合い」は推奨されてこなかった、むしろ避けられてきた価値観ではないでしょうか。

昭和世代は、終身雇用制と年功序列で約束されたポストと未来を信じて、丁寧な指導もないままに失敗を繰り返し、上司に叱られながら働いてきました。褒められた経験などほとんどありません。上からの命令は絶対で、今なら完全アウトのパワハラまがいの日常に、個性を押し殺して耐え忍んできたのです。

一方で、平成以降の世代は少子化の中で、個別指導や個性重視の教育を受けてきました。“褒めて伸ばす”を合言葉に、昭和世代とは逆に大きな失敗の経験も叱られた経験もほとんどありません。互いが平等で、競争よりも困った仲間がいれば助け合う、それが当たり前の日常で、価値観です。

一般に、一人の人間の価値観は成人する頃にはでき上がり、以降は年齢を経るにつれて固まり強化される一方だといわれます。社会人として最初に身に付いてしまった価値観は、容易には変えられません。結果として、目の前で大きな変化が起きていようと認めようとせず、わずかに残る昔の価値観を探し出しては変われない自分を正当化してしまうのです。

世代間のギャップは、平成・令和世代が今の昭和世代と同じくらいの年齢になっても、次の世代に対して感じることなのでしょう。若い世代も人ごとではありません。

少なくとも組織においてリーダーとなる人たちは、世代間の価値観のギャップとしっかりと向き合い、メンバーの目線に合ったリーダーシップやマネジメントへとアジャストしていく必要がありそうです。

3 コミュニケーションを見直すべき2つ目の理由は「世界とのギャップ」

日本企業のリーダーが昭和のコミュニケーションを見直すべき2つ目の理由は、「世界とのギャップ」です。

大きな背景としては申し上げるまでもなく、国内の少子高齢化によるマーケットの縮小が挙げられます。事業が国内で完結している、あるいは海外比率が少ない状態なら、日本は日本のやり方で成長していけばよかったのですが、そうはいかなくなったのです。

海外に市場を求める必要に迫られ、人材採用において国内の人手不足による売り手市場と海外進出に必要な人材獲得の2つの意味で向き合うことになりました。

しかしながら、バブル経済後から続く低成長の影響で相対的な円の価値は下落し、日本の給与水準は世界的に見て高いとは言えないレベルになっています。

高度人材だけでなく、サービス業などの分野においても給与で日本企業を選ぶ外国人は減り続けています。以前から指摘されている日本語習得の難しさも原因の1つと聞きます。日本人の専門知識や語学力のある優秀な人材さえ、ビジネスチャンスや好待遇を求めてどんどん海外に流出しているのです。

日本企業のリーダーが、国内だけを見ていればよかった時代はとうに終わっています。むしろ「世界とのギャップ」は広がっていくばかりです。ここでも変わりゆく世界の価値観を理解し、アジャストしていかなければなりません。

たとえばセクハラやパワハラなどのハラスメントへの厳しい目、すでに常識となりつつあるDEI(ダイバーシティ:多様性、エクイティ:公平性、インクルージョン:包括性)という価値観、企業の社会的存在としてのSDGsやESGといった価値観など。

さまざまな分野におけるイノベーションも価値観の変化を革新的に迫ってきています。最近でいえば「生成AI」などが代表でしょう。

「生成AI」は2022年11月末に公開され、2023年は年明けから対話だけでなく、画像生成、音楽生成などの分野でも大きな話題となり、開発と規制の是非が世界的に議論されています。

ところが2月に実施された日本の経営者に向けたあるアンケートでは、約6割が生成AIの存在を知らないと答えていました。こんな状態では、日本企業のリーダーが「世界とのギャップ」を埋めることは容易ではないといえるでしょう。

4 2つの価値観のギャップを埋めるヒントは、メンバーとのコミュニケーションに

立派な次世代のリーダーとなるためには、「現場との世代ギャップ」「世界とのギャップ」を埋めていく必要がありそうです。

では具体的に、どんなことに取り組めばいいでしょうか。

「世界とのギャップ」を埋めるためには、まず日常的に目を外に向けて、自身の従来の価値観に縛られずに広く情報収集を怠らないことです。何でも一度は体験するなり吸収してみる。その上で自分なりの感想や考え方を持って追い続けることが重要です。

かくいう私も早々に生成AIサイトに登録し、いろいろと試しつつ自分なりに考えてみました。今回もこのシリーズの企画書を付けた上で、「第1回のタイトルを、読者にぐっと刺さる感じで20字以内で10個考えて」と聞いてみました。

A4で1枚くらいある企画書をいつの間に読み込んだのでしょう。わずか数秒でまるで魔法のように異なる10案が生成されました。一つひとつ切り口や言葉のチョイスが異なり、私1人では出てこなかっただろう表現もありました。が、最終的には自分がオリジナルで考えたものを採用しました。結局ピンとくるものがなかったからです。

生成スピードには驚かされつつも、精度はまだまだかなという印象でしたが、案自体がとても参考になったのも事実です。片や生成AIは平気で嘘をつくマイナス面などが指摘されています。あくまでの過去データからの学習ですし、最新情報を教師データとして提供しない限りアップデートもしてくれません。

とはいえAIは人間と違って24時間、365日、猛スピードで学び続けます。あっという間に嘘のない、高い精度の案をいくつも提案してくれるレベルに成長するでしょう。すでに対話だけでなく、画像・動画・音楽・3D・プログラミングやアプリ開発の分野まで、誰にでもアプローチできる世界を作り出しています。

さて、日常的に目を外に向けて広く情報収集を怠らないことで、「世界とのギャップ」は少しずつ埋めていくことはできそうですが、「現場との世代ギャップ」はどうでしょう。

例えば生成AIについても、昭和世代のマネジメントよろしく、部下に対して「生成AIを知っているか。私が使ってみたらこうだった、だから仕事ではこう使え」と上意下達で指示命令を出しますか。

彼らに本音を聞けば、「とっくに使ってみて、メリットとデメリットもわかっていますよ」と答えるかもしれません。ネットやSNSの時代です。昭和世代よりも平成・令和世代のほうが新しい価値観、世界のトレンドをキャッチするスピードは速いのです。

であるならば素直に彼らに聞いてみてはどうでしょう。「世界とのギャップ」と同時に「現場との世代ギャップ」も埋まっていくことと思います。メンバーとのコミュニケーションを深めることは、2つの意味でリーダーの価値観のギャップを埋めることにつながるのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。次回は、今回お話しした2つの価値観のギャップを埋めるためのキーワードをご紹介していきたいと思います。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mail to: brightinfo@brightside.co.jp

以上(2023年7月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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画像:PureSolution-Adobe Stock

ECサイト用「特定商取引法に基づく表記」のひな型

インターネット上で行われる取引は、どこからでも取引ができるため、大変便利です。一方、相手の「顔」が見えない取引であることから、トラブルになることも少なくありません。そこで、特定商取引法では、

消費者がインターネットで商品を販売する事業者の情報を正確に理解し、トラブルに巻き込まれないようにするために取引に必要な情報を表示することを義務付けている

のです。
この記事では、一般的な特定商取引法に基づく表記の例を紹介します。

特定商取引法に基づく表記のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした文書を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【特定商取引法に基づく表記のひな型】

1)販売業者の名称

株式会社○○
住所:000-0000(郵便番号) ○○○○○○○○○○
TEL: XX-XXXX-XXXX
Mail: XXXXX@XXXXX. XX. XX
代表者:○○
運営責任者:○○

2)販売価格等

販売価格:各商品ご購入ページに表示します。
販売価格以外の必要料金:ウェブページの閲覧、商品のご購入、コンテンツダウンロード等に必要となるインターネット接続料金、通信料金等は、お客様のご負担となります。それぞれの料金は、お客様がご利用のインターネットプロバイダ、携帯電話会社等にお問い合わせください。
その他必要となる料金は以下の通りです。

3)商品の申込期間

各商品の申込期間の設定がある場合には、その旨およびその内容について、各商品ご購入の最終確認ページにて表示します。

4)支払方法

クレジットカード決済(各商品ご購入の最終確認画面にて表示します)。

5)販売価格の支払時期

各カード会社の引落日(各商品ご購入の最終確認画面にて表示します)。

6)商品の引渡時期・サービスの提供時期

当社による代金決済手続の完了確認後、○日以内に商品をお届けします。

(各商品ご購入の最終確認画面にて表示します)

7)返品・キャンセルに関する特約

本サイトで販売する商品については、ご注文完了後○日以内は、ウェブサイト上の手続によりご注文のキャンセルが可能です。
商品が到着した日から○日以内は、原則として返品(全額返金)を承ります。返品については、お電話(XX-XXXX-XXXX)でのご連絡をお願いいたします。
不良品の場合を除き、返送料についてはお客様のご負担となります。

以上
(執筆 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年7月24日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ECサイト用「プライバシーポリシー(個人情報保護方針)」のひな型

プライバシーポリシー(個人情報保護方針)とは、

特定の個人を識別することができる情報(以下「個人情報」)や個人の移動・行動・購買履歴等の情報(以下「パーソナルデータ」)の取扱方針を明文化したもの

です。
個人情報保護法は、プライバシーポリシーの策定自体を法的義務として定めているわけではありません。もっとも、個人情報を取得したら、その利用目的を本人に通知すること等は義務付けられているので、プライバシーポリシーは係る義務を履行するための一つの方法として策定されているといえるでしょう。
加えて、現在は、個人情報の重要性が高まる中で、プライバシーポリシーを策定することで、サービス利用者に安心感を与え、会社の信頼性を高めるための手段としても活用されています。
この記事では、個人情報保護法にのっとった一般的なプライバシーポリシーの例を紹介します。

プライバシーポリシーのひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした文書を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【プライバシーポリシーのひな型】

株式会社○○(以下「当社」といいます)は、当社のサービスを利用する利用者様(以下「利用者」といいます)の個人情報の取得、利用その他一切の取扱いについて、以下の通りプライバシーポリシー(以下「本ポリシー」といいます)を定め、これに従い、適切な取扱いおよび保護に努めます 。

1)個人情報とは

「個人情報」とは、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」)に定める「個人情報」を指し、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含みます)または個人識別符号が含まれるものを指します。

2)個人情報の利用目的

当社は、以下の目的に必要な範囲で、利用者の個人情報を取得し、取得した情報を利用させていただきます。以下の目的の範囲を超えて個人情報を利用する場合には、事前に適切な方法で利用者からの同意を得るものとします。

3)個人情報の管理と保護

個人情報の管理は、厳重に行うこととし、次に掲げる場合を除き、利用者の同意がない限り、第三者に対しデータを開示・提供することはいたしません。また、安全性を考慮し、個人情報への不正アクセス、個人情報の紛失、破壊、改ざんおよび漏えい等のリスクに対する予防並びに是正に関する対策を講じます。

4)個人情報の取扱いの委託

当社は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データの取扱いの全部または一部を委託する場合がございます。この場合、当社は、委託先としての適格性を十分審査するとともに、契約にあたって守秘義務に関する事項等を定め、委託先に対する必要かつ適切な監督を行います。

5)第三者提供

当社は、個人情報保護法その他の法令に基づき開示が認められる場合を除き、あらかじめ利用者の同意を得ないで、個人情報を第三者に提供しません。ただし、次に掲げる場合は上記に定める第三者への提供には該当しません。

6)共同利用

当社は、利用目的の達成に必要な範囲で、利用者の個人情報を以下の範囲および目的で共同利用することがございます。

〈共同利用の目的〉
・○○のため
〈共同利用する個人情報の範囲〉
・利用者から特に申入れがある場合を除いて、利用者の全ての個人データ
〈共同利用する者の範囲〉
・株式会社○○
〈個人情報の管理について責任を有する者の名称〉
・株式会社○○(代表者○○)

7)個人情報の開示

当社は、利用者(本人に限る。本条において以下同じ)から当社の保有する個人情報の開示を求められたときは、利用者に対し、遅滞なくこれを開示します。但し、開示することにより次のいずれかに該当する場合は、その全部または一部を開示しないこともあり、開示しない決定をした場合には、その旨を遅滞なく通知します。

8)個人情報の訂正等

1.利用者は、当社の保有する個人情報が誤った情報である場合には、当社に対し、当該個人情報の訂正、追加または削除(以下「訂正等」といいます)を請求することができます。
2.前項の請求を受けた場合、当社は遅滞なく必要な調査を行い、その結果前項の請求に理由があると判断した場合には、遅滞なく当該個人情報の訂正等を行います。
3.当社は、前項に基づき訂正等の実施・不実施について判断した場合には、遅滞なく、利用者ご本人に対してご連絡いたします。

9)個人情報の利用停止等

1.利用者は、当社に対し、当社の保有する個人データの利用の停止、消去または第三者提供の停止(以下「利用停止等」といいます)を請求することができます。
2.当社は、前項の請求を受けた場合には、遅滞なく必要な調査を行い、その結果前項の請求に理由があると判断した場合には、当該個人データの利用停止等を行うものとします。但し、個人情報の利用停止等に多額の費用を要する場合その他利用停止等を行うことが困難な場合であって、利用者の権利利益を保護するために必要なこれに代わるべき措置をとれる場合は、この代替策を講じます。
3.当社は、前項に基づき利用停止等の実施・不実施について判断した場合には、遅滞なく、利用者ご本人に対してご連絡いたします。

10)Cookie(クッキー)その他の技術の利用

当社のサービスは、Cookieおよびこれに類する技術を利用することがあります。これらの技術は、当社による当社のサービスの利用状況等の把握に役立ち、サービス向上に資するものです。Cookieを無効化されたい場合は、ウェブブラウザの設定を変更することによりCookieを無効化することができます(Cookieを無効化すると、当社のサービスの一部の機能をご利用いただけなくなる場合があります)。

11)プライバシーポリシーの変更手続

当社は本ポリシーの内容を適宜見直し、その改善に努めます。本ポリシーの内容は、法令その他本ポリシーに別段の定めのある事項を除いて、変更することができるものとします。変更後のプライバシーポリシーは、当社所定の方法により、利用者に通知し、または当社ウェブサイトに掲載したときから効力を生じるものとします。

12)法令、規範の遵守

当社は、保有する個人情報に関して適用される日本の法令、その他規範を遵守します。

13)苦情および相談への対応

当社は、個人情報の取扱いに関する利用者からの苦情、相談を受け付け、適切かつ迅速に対応いたします。また、利用者からの当該個人情報の開示、訂正、追加、削除、利用または提供の拒否などのご要望に対しても、適切かつ迅速に対応いたします。

14)安全管理措置

当社が利用者よりお預かりした個人情報は、個人情報ファイルへのアクセス制限の実施、アクセスログの記録および外部からの不正アクセス防止のためのセキュリティ対策の実施等、組織的、物理的、人的、技術的施策を講じることで個人情報への不正な侵入、個人情報の紛失、破壊、改ざん、および漏えい等を防止いたします。万一、利用者の個人情報の漏えい等の事故が発生した場合、当社は、個人情報保護法および関連するガイドラインに則り、速やかに監督官庁への報告を行うとともに、当該監督官庁の指示に従い、類似事案の発生防止措置および再発防止措置等の必要な対応を行います。

15)当社住所・代表者氏名・個人情報保護管理者

当社住所、代表者および個人情報保護管理者の氏名は以下の通りです。
住所:○○
代表者:○○
個人情報保護管理者:株式会社○○ ○○部長

16)お問い合わせ窓口

当社の個人情報の取扱いに関するお問い合わせは下記までご連絡ください。
株式会社○○ お客様対応窓口
住所:000-0000(郵便番号) ○○○○○○○○○○
TEL: XX-XXXX-XXXX
Mail: XXXXX@XXXXX. XX. XX

○年○月○日制定・施行

以上
(執筆 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年7月24日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ECサイトをトラブルなく開設・運営するための法律知識

販路開拓ができればビジネスの可能性は大きく広がります。近年はメーカーなどがユーザーにダイレクトに商品やサービスを提供するD2C (Direct to Consumer) の考え方が浸透し、ECサイトを開設して販路開拓をする動きが加速しています。
ECサイトを開設することで、

  • 地理的な制約を受けず、国内外のユーザーに商品を販売するチャンスが得られる
  • ユーザーと直接コミュニケーションを取りながら自社ブランドを強化できる

などのメリットが期待できます。
ECサイトを簡単に開設できるサービスも数多く登場しているので、始めること自体のハードルは高くありません。一方、ECサイトをトラブルなく開設・運営するには民法や消費者契約法などのルールを知っておく必要があるのですが、ここはあまり意識されていないようです。
そこで、この記事でECサイトをトラブルなく開設・運営するための法律の知識を紹介します。これからECサイトを開設しようとしている方はもちろん、既にECサイトを運営している方にとっても参考になる内容ですのでぜひご活用ください。

1 「利用規約」を作成する際に気を付ける法律

ECサイトには多くのメリットがありますが、お互いの「顔」が見えないためにトラブルが起こりがちです。そのため、「利用規約」によってユーザーと明確な取引条件で合意し、万一トラブルが発生した際の解決策を定めておかなければなりません。
利用規約を作成する際は前述した通り、主に、

  • 民法
  • 消費者契約法

のルールに注意する必要があります。以下でポイントを確認しましょう。

1)民法

まず、民法についてです。以前は、ECサイト運営者(以下「運営者」)が自社に有利な利用規約を一方的に作成することもあり、ユーザーとの間で契約条件に関するトラブルが多発していました。このような背景も踏まえて2020年4月に民法が改正され、定型約款に関する新たな規定が導入されました。定型約款とは、

事業者が不特定多数の顧客と行う取引について、契約内容を画一的に定めている条項の総称

です。利用規約が定型約款に該当する場合、以下のように取り扱われます。

1.契約内容に関する合意
ユーザーが個別の条項を認識していなくても、以下のいずれかの条件を満たす場合は、ユーザーとの間で利用規約が契約内容として合意されたものとみなされます。

  • 当事者間で利用規約を契約内容とする合意があった場合
  • 運営者が事前に利用規約を表示し、ユーザーがそれを認識できる状態であった場合

ただし、ユーザーの権利を制限したり、一方的にユーザーの利益を害したりするような条項については、後述する消費者契約法との関係で無効となります。具体的には、

  • ユーザーに解除権を放棄させる条項
  • ECサイト運営者の損害賠償責任を免除する条項

などです。

2.定型約款の変更
以下の条件を満たす場合、運営者はユーザーと合意しなくても契約内容を変更できます。

  • 変更内容がユーザーの一般的な利益に合致する場合
  • 変更が契約の目的に反せず、変更の必要性や内容の相当性、その他の変更に関連する事情が合理的である場合

上記に該当するとしても、一方的に利用規約を変更するのであれば、

変更した内容の効力発生時期と変更後の内容を適切に明示し、インターネットなどで周知する

ことが必要です。また、ユーザーの一般的な利益に合致しない変更については、変更の効力が発生する前に周知しなければ効力が発生しません。

2)消費者契約法

次に消費者契約法です。一般的に、運営者(以下、この章では「事業者」)とユーザーとでは商品・サービスや契約内容などに関する知識に差があります。つまり、ユーザーに十分な知識がなく、不公平な契約を強いられる恐れがあるということです。
そこで、こうした不公平を是正するために、事業者とユーザーとの契約内容に一定の制限を設けているのが消費者契約法です。具体的には、利用規約に次のような条項を定めても無効となります。

  • 事業者の債務不履行により、消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、または事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
  • 事業者の故意または重大な過失による債務不履行によって、消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、または事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
  • 事業者の債務の履行に際してされた事業者の不法行為によって、消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、または事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
  • 事業者の故意または重大な過失による債務の履行に際してされた事業者の不法行為によって、消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、または事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
  • 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させ、または事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する条項
  • 解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い、当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものについては、当該額を超える部分
  • 支払うべき金銭の全部または一部を消費者が支払期日までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払いをする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6%の割合を乗じて計算した額を超えるものについては、当該額を超える部分
  • 消費者の権利を制限し、または消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法の信義誠実の規定に関する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害する条項

2 利用規約に記載すべき内容

 ここまで利用規約を作成する際に気を付けるべき法律について紹介してきました。ここでは、こうした法律の要件を満たした利用規約の内容を紹介します。

1)ユーザー登録

ユーザーが、

  • 利用規約に同意した上でユーザー登録を行うこと
  • 利用登録にあたって年齢を詐称するなど、虚偽の登録によって生じたトラブルはユーザーの自己責任であること

などを定めます。

2)代金の支払方法

支払方法はECサイト運営者の指定する方法で行う必要があることなどを定めます。

3)サービス内容の変更

ユーザーに通知なくサービス内容などを変更する可能性があることなどを定めます。

4)禁止事項

ユーザーが行ってはならない禁止事項を個別に列挙します。一般的な内容は以下の通りです。なお、当社とはECサイト運営者のことです。

  • 本規約に違反する行為
  • 当社、当社がライセンスを受けているライセンサーその他第三者の知的財産権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、肖像権等の財産的または人格的な権利を侵害する行為またはこれらを侵害する恐れのある行為
  • 当社または第三者に不利益もしくは損害を与える行為またはその恐れのある行為
  • 不当に他人の名誉や権利、信用を傷つける行為またはその恐れのある行為
  • 法令または条例等に違反する行為
  • 公序良俗に反する行為もしくはその恐れのある行為または公序良俗に反する恐れのある情報を他のユーザーまたは第三者に提供する行為
  • 犯罪行為、犯罪行為に結びつく行為もしくはこれを助長する行為またはその恐れのある行為
  • 事実に反する情報または事実に反する恐れのある情報を提供する行為
  • 当社のシステムへの不正アクセス、それに伴うプログラムコードの改ざん、位置情報を故意に虚偽、通信機器の仕様その他アプリケーションを利用してのチート行為、コンピューターウィルスの頒布その他本サービスの正常な運営を妨げる行為またはその恐れのある行為
  • マクロおよび操作を自動化する機能やツール等を使用すること
  • 本サービスの信用を損なう行為またはその恐れのある行為
  • 青少年の心身およびその健全な育成に悪影響を及ぼす恐れのある行為
  • 他のユーザーのアカウントの使用その他の方法により、第三者になりすまして本サービスを利用する行為
  • 詐欺、規制薬物の濫用、預貯金口座および携帯電話の違法な売買等の犯罪に結びつくまたは結びつく恐れのある行為
  • 犯罪収益に関する行為、テロ資金供与に関する行為またはその疑いがある行為
  • その他当社が不適当と判断する行為

5)退会

ユーザーは、所定の要件を満たした上で、定められた手続きを踏むことで退会できることなどを定めます。

6)損害賠償責任

損害賠償責任が発生する要件や、賠償責任の上限額などを定めます。

7)返品、交換、返金

返品、交換、返金が可能な場合について定めます。

8)著作権・知的財産権

著作権や商標権などを侵害する行為に対する罰則やECサイト運営者の対応方法、二次利用の可否などを定めます。

9)利用規約の変更

ユーザーに通知なく利用規約を変更する可能性があることや、利用規約の変更後にユーザーがサービスを利用した場合は、変更に同意したものとみなすことなどを定めます。なお、前述した通り、利用規約の変更がユーザーの利益に合致しない場合などは、一方的に規約変更ができず、所定のプロセスを経なければなりません。

3 利用規約に基づいた契約を成立させるために

利用規約に法的な拘束力を持たせるには、利用規約をユーザーに明確に表示し、認識してもらわなければなりません。具体的には、次のような点に留意して進めましょう。

4 プライバシーポリシーの作成

個人情報保護法では、

個人情報データベースを事業のために利用している個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、すみやかに、その利用目的を、本人に通知し、または公表しなければならない

と定められています。そのため、事前に利用目的を公表する目的で、ECサイトや自社サイトにプライバシーポリシー(個人情報保護方針)を掲載するのが通常です。プライバシーポリシーの主な内容は以下の通りです。

なお、上記を前提とした一般的なプライバシーポリシーの例を以下のコンテンツで紹介しているので参考にしてください。

ECサイト用「プライバシーポリシー(個人情報保護方針)」のひな型

5 特定商取引法に基づく表記の作成

1)ユーザーに安心してもらうための表記

特定商取引法でも、ECサイトに表記しなければならない事項があります。これはユーザーに安心してECサイトを利用してもらうためのものであり、次のような内容になります。

なお、上記を前提とした一般的な特定商取引法に基づく表記の例を以下のコンテンツで紹介しているので参考にしてください。
ECサイト用「特定商取引法に基づく表記」のひな型

2)カートシステムの最終画面で必要になった表記

なお、改正特定商取引法の施行により2022年6月1日からは、

カートシステムの最終確認画面において、利用者が注文確定の直前段階で以下の各契約事項を簡単に最終確認できるよう表示すること

が必要になりました。詳しくは消費者庁が運営している特定商取引法ガイドで紹介されているので、参考にしてください。

■特定商取引法ガイド■
https://www.no-trouble.caa.go.jp/

1.分量
商品の数量、役務の提供回数などのほか、定期購入契約の場合は各回の分量も表示します。

2.販売価格・対価
複数商品を購入するユーザーに対しては支払総額も表示し、定期購入契約の場合は2回目以降の代金も表示します。

3.支払時期・方法
定期購入契約の場合は各回の請求時期も表示します。

4.引渡・提供時期
(ユーザーとの解約手続の関係上)定期購入契約の場合は次回分の発送時期等についても表示します。

5.申込みの撤回、解除に関する事項
返品や解約の連絡方法・連絡先、返品や解約の条件等について、ユーザーが見つけやすい位置に表示します。

6.申込期間(期限のある場合)
季節商品のほか、販売期間を決めて期間限定販売を行う場合は、その申込期間を明示します。

以上
(執筆 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年7月24日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

2024年改正にも対応。15分で理解! 相続税のポイント

書いてあること

  • 主な読者:事業承継を控えているなど、相続税の知識が必要な人
  • 課題:日常生活ではあまり触れない税金である上、相続税の計算は複雑
  • 解決策:基礎的な情報として法定相続人や相続税の計算を把握する

1 まずは相続を自分ごととして捉える

相続税は、

亡くなった人の財産を相続した人に掛かる税金で、原則として、亡くなった日(正確には亡くなったことを知った日)から10カ月以内に申告・納税

をしなければなりません。

相続に慣れている人はいません。しかも、相続税に対応しなければならないのは、親族が亡くなった直後であることがほとんどです。事前に基本的なポイントを押さえておくことが、いざ相続が生じたときに少しでも余裕をもって対応できることに繋がります。

この記事では、まず、注目度の大きい2024年1月以降に適用される相続税等(贈与税を含む)の改正についてまとめます。その次に、相続税を考える際の重要ポイントである法定相続人、法定相続分、相続税の課税範囲、相続税の基本的な計算方法を解説します。自分の親族構成に当てはまる箇所をチェックし、相続時に自身がどのような点に対応しなければならないのかを想定しながら読み進めてみてください。

2 相続税・贈与税の2024年改正

1)相続時精算課税の基礎控除(年110万円)が創設

相続時精算課税とは、

生前に行った贈与のうち、2500万円までは贈与税が非課税となり、2500万円を超える贈与には一律20%の贈与税がかかる課税方法

です。相続時精算課税を選択した場合は、暦年課税(1年間ごとに贈与税を計算する課税方法で、毎年110万円の基礎控除がある)は受けられません。なお、非課税となった2500万円分の贈与財産については、贈与税は非課税となるものの、相続時に相続税の課税対象となります。

2024年1月以降については、

相続時精算課税にも毎年110万円の基礎控除が創設

されます。そのため、相続時精算課税を選択後に行った生前贈与のうち、毎年110万円については、相続税の課税対象となりません。その上、110万円以下の贈与については贈与税の申告が不要となります(2023年12月までに相続時精算課税を選択した人が贈与した場合には、少額でも申告が必要)。

2)相続税の課税対象となる生前贈与の期間が延長(3年から7年に)

暦年課税による生前贈与を行った場合、毎年110万円の基礎控除を受けることができます。しかし、暦年課税でも死亡日以前3年間分の贈与財産については、全額が相続税の課税対象となります。

2024年1月以降については、

  • 死亡日以前3年間の生前贈与:これまで同様に全額が相続税の課税対象になる
  • 死亡日以前4~7年間の生前贈与:100万円を差し引いた額が相続税の課税対象になる

といった取り扱いになります。

3 民法による相続人の範囲および相続の順位

相続人として配偶者は特別です。それ以降は、第1順位の相続人が存在すれば第2順位と第3順位の相続人に相続権はありません。同様に第2順位の相続人が存在すれば第3順位の相続人に相続権はありません。

1)配偶者

被相続人(亡くなった人)の配偶者は常に相続人となります。

2)子供-孫(第1順位)

被相続人の子供は、相続人となります。このとき、その子供が相続前に死亡している場合や、相続権を持たない場合は、その人の子供(被相続人の孫、孫が死亡しているときはひ孫)が代わって相続することができます。これを、「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。

3)父母-祖父母(第2順位)

上記の2)に該当する相続人がいない場合は、被相続人の父母(直系尊属)が第2順位で相続人となります。このとき、父母共に死亡している場合、または相続放棄をしている場合で、祖父母が存命しているときは、被相続人の祖父母が父母に代わって相続することになります。

4)兄弟姉妹-甥姪(第3順位)

上記、2)および3)に該当する相続人がいない場合、兄弟姉妹が第3順位の相続人となります。このとき、その兄弟姉妹が死亡している場合は、その子供が代襲して相続することができます(ただし、兄弟姉妹の子供が死亡している場合は、孫が代わって相続することはできません)。

4 民法による「法定相続分」の主なパターン

1)第1順位の相続における法定相続分:配偶者1/2、子供1/2

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2)第2順位の相続における法定相続分:配偶者2/3、親1/3

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3)第3順位の相続における法定相続分:配偶者3/4、兄弟1/4

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5 課税対象となる財産

相続税は、原則として相続または遺贈(遺言書による贈与。「死因贈与(財産を渡す人と、受け取る側が双方で合意した契約を基に行う贈与)」を含む)によって取得した財産の全てが対象になります。ただし一部、非課税財産と呼ばれるものがあります。

1)課税対象となる財産

次のように、相続発生時において金銭に見積もることができる財産は、全て課税対象に含まれます。

現金、預貯金、有価証券、土地、建物、貴金属、書画、骨董品、貸付金、営業権、借地権・特許権など

2)みなし相続財産

法律的には被相続人からの相続や遺贈によって取得したものではないものの、結果として財産を相続したのと同じ経済効果のあるものも「みなし相続財産」と呼ばれ、課税対象となります。主なものは次の通りです。

1.保険金

被相続人の死亡によってもらった生命保険や損害保険の保険金で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたもの。

2.生命保険契約に関する権利

被相続人が保険料を負担していた保険などで、相続開始の日までに保険事故が発生していないもの。

3.死亡退職金など

被相続人の死亡によってもらった退職金や功労金その他これらに準ずる給与のうち、死亡後3年以内に支給額が確定したもの。

4.定期金に関する権利

被相続人が掛け金や保険料を負担した定期金給付契約(生命保険契約を除く)で、相続開始の日までに給付が開始されていないもの。

5.その他

遺言により、著しく低い価額で財産を譲り受けたり、対価を支払わずに債務の免除を受けたりしたような場合。

3)生前贈与された財産

生前に財産を贈与することで、相続税を免れようとすることを防ぐために、相続または遺贈により財産を取得した者が、被相続人が死亡する前3年(2024年1月以降については7年)以内に贈与されていた財産は、原則として相続税の計算上、課税対象となる財産に含めなければなりません。その課税対象額は、相続時点の額ではなく、贈与を受けた時点の金額となります。なお、この場合には贈与税額控除が適用されます(詳細後述)。

6 非課税となる財産

非課税となる主な財産は、次の通りです。

  • 墓地、墓石、仏壇、仏具
  • 国または地方公共団体などへ贈与した相続財産
  • 公益法人などが継続して事業を行うために使用されるもの
  • 保険金などの一部(限度額は法定相続人の数×500万円)
  • 退職手当金・功労金の一部(限度額は法定相続人の数×500万円)
  • 地方公共団体が実施している、心身に障害のある人のための共済制度に基づく給付金の受給権

7 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産

相続時精算課税制度の適用を受けた場合には、その適用を受けた贈与財産も相続税の課税対象(2024年1月以降の贈与については、年110万円までの非課税枠が創設されます)となります。なお、当該財産は贈与時の価額が課税対象額となります。

8 相続税の計算方法のアウトライン

相続税の確定までの基本的な流れは次の通りです。

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1)「遺産額」を算出する

被相続人の財産を合計した遺産総額から、相続税の課税対象に含めるのが不適当なものを差し引いて、遺産額を算出することになります。主なものは次の通りです。

  • 非課税財産
  • 受け継いだ債務(借入金・未払金・未払税金などのいわゆる借金)
  • 葬式費用

2)「正味の遺産額」を算出する

前述した、生前贈与された財産(被相続人が死亡する前3年(2024年1月以降は7年)以内に贈与されていた財産)と相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産(2024年1月以降は、年110万円の非課税枠が創設)を遺産額に加算し、正味の遺産額を算出します。

3)「課税遺産総額」を算出する

相続財産は被相続人の名義になっている財産ですが、例えば、相続財産が住宅のような場合、相続人となる配偶者や子供などは、その住居に住んでいることになります。そうした生活権を簡単に奪ってしまうことはできません。そこで、基礎控除と呼ばれる制度があります。

基礎控除額は次の計算式で算出します。

3000万円+600万円×法定相続人の数

基礎控除額が正味の遺産額を上回るときは、相続税はかかりません。なお、税務上は法定相続人の数の計算について、養子の数に制限があります。実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までしか法定相続人の数の計算に含めることはできません。

4)「相続税の総額」を算出する

まず、課税遺産総額に法定相続分の割合を乗じて、各人の法定相続分に応じた相続額を求めます。その上で、次の算出式および相続税の速算表に基づいて、各法定相続人の仮の相続税額を出します。そして、それを合計したものが相続税の総額となります。

各法定相続人の仮の相続税額

=各法定相続人の法定相続分に応じた相続額×税率-控除額

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5)「各相続人の相続税額」を算出する

相続税の総額が決まれば、正味の遺産額に占める各相続人が実際に取得した正味の遺産額の比率に応じて、各相続人の相続税額を算定します。各相続人の相続税額の計算式は次の通りです。

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6)「各相続人の納税額」を決定する

各人の相続税額に、各相続人に適用される税額加算・控除を加味して、各相続人の納税額を算出・決定します(詳細は後述)。

9 相続税の税額加算および控除

1)税額が加算されるケース

相続人が、配偶者または一親等の血族である子供(第1順位の代襲相続人も含む)および親以外の者であるとき、各人の算出税額に20%加算された税額を納めなければなりません。具体的には、

被相続人の祖父母、兄弟姉妹などが相続した場合に、相続税額が加算

されることとなります。また、いわゆる孫養子(実子が生存しており「代襲相続人」に該当しない孫)も加算の対象です。

2)税額が控除されるケース

1.贈与税額控除

被相続人から相続開始前3年(2024年1月以降は7年)以内に財産の贈与を受けている場合、贈与を受けた年分ごとに次の計算式で算出された金額を相続税額から控除することができます。

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相続時精算課税制度を適用した場合も、その贈与財産に対応する贈与税額が相続税額から控除されます。

2.配偶者に対する相続税額の軽減

配偶者の税額軽減措置です。この適用を受けるには、軽減される金額の計算の明細の他、次の書類が必要となります。

  • 戸籍謄本(相続開始日から10日経過以後に作成されたものに限る)
  • 遺産分割協議書または遺言の写しなど、配偶者の取得した財産が分かる書類
  • 相続人全員の印鑑証明(原本)

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3.未成年者控除

法定相続人のうち、相続開始時に18歳未満の人の場合、次の計算式で算出された金額を相続税額から控除することができます。

10万円×(18歳-相続開始時の年齢)

4.障害者控除

法定相続人のうち、心身に障害のある85歳未満の人の場合、次の計算式で算出された金額を相続税額から控除することができます。

10万円×(85歳-相続開始時の年齢)

(注)特別障害者については、上記算式の10万円が20万円となります。

5.相次相続控除

今回の相続(第2次相続)の被相続人が死亡する前10年以内に、相続(第1次相続)により取得した財産について相続税額を納付した場合、次の計算式で算出された金額を相続税額から控除することができます。

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6.外国税額控除

外国にある財産を相続して、外国で日本の相続税に当たる税金を支払った場合に、次の金額を相続税額から控除することができます。

その国で支払った税金の全額(一定の限度あり)

以上(2023年7月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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【伝わる文章の書き方】書き始める前に準備しよう

1 書く前の下ごしらえ

文章を書いていて、何度書き直してもうまくいかなかった経験はありませんか? 誤字脱字や文法などをチェックするのは、自分が言いたいことを読者に分かりやすく伝えるために大切です。しかし、何度書き直しても、何を言いたいのか伝わらず、納得できる文章にならないとしたら、それは書き始める前の準備が足りていなかったのかもしれません。

文章(書き言葉)は、一般的に話し言葉より論理的なつながりが重視されます。詩歌や小説など文学的な作品でないなら、何をどのような順番で書くかという事前の計画、構成案が不可欠です。

書く前の下ごしらえ

構成案なしに書き始めることは、レシピなしで料理を始めるのと似ています。慣れていない人が、使う食材の種類や分量、入れる順番などを決めずに始めると、食材が生煮えだったり、味のバランスがおかしかったりします。気付いてもう一度加熱したり、調味料を足したりしても、なかなか挽回できません。

書くのも同じです。構成があやふやであれば、情報が分散してまとまりがなく、何度も読み返さないと理解できない文章になりがちです。
そのため、文章を書くときは、事前の準備が欠かせないのです。

2 書くためのプロセス

文章を書く全体の流れを把握すると、いつ何をすればよいかがイメージできるはずです。書くためのプロセスは、文章の長さや内容、形式によっても異なりますが、本稿では数百字から2000字程度の短い文章を書く場合のプロセスを想定しています。

文章を書くときの全体的な流れは次の通りです。

<全体的な流れ>

●文章を書く前の準備・書き始める

  • 1.持っている事実を整理する
  • 2.問いを立てて、書きたい結論(主張)を決める
  • 3.構成案を作り、それに従って書く

●書いた文章を直す

  • 4.読み返して直す(文法中心)
  • 5.読み返して直す(表現中心)

このプロセスはいつも絶対的に変わらないものではなく、書く目的や内容、文章の長さによっては省略することもあります。
以降では、この文章を書くときの全体的な流れのうち、「文章を書く前の準備・書き始める」について詳しく紹介していきます。

3 持っている事実を整理する

前述した、話し言葉と書き言葉の大きな違いである論理(ロジック)とは、どんなものなのでしょうか。ビジネス書で多くのベストセラーを生み出したライターの古賀史健氏は、『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』で、「言葉における論理は、絵画における遠近法」 というような表現をしています。

今ある情報を見える化して、書きたい内容をイメージし、またそれが本当に書けそうかどうかを判断する準備をします。

具体的なステップは次の通りです。

  • ステップ1:持っている事実を全て書き出す
  • ステップ2:欠けている事実を探す
  • ステップ3:事実を分類する

1)ステップ1:持っている事実を全て書き出す

事実とは情報のことです。この後で決める自分の結論(主張)の前提となります。

今分かっている事実を箇条書きで全て書き出します。頭の中にある状態で構成を考えたら、後できっと足りない情報が出てきます。何が分かっていて何が分からないかを整理するのです。

なお、この段階ではきちんとした書き言葉(文語体)で表現する必要はありません。ただし、口語的な副詞や形容詞(「やっぱり」や「いい」など)、ら抜き言葉などは使わないほうが後で修正が少なくて済みます。

取引先に資料の催促メールを送るために分かっている事実を書き出してみると、次のようになります。

  • 〇日の会議で、資料を▲日までに送ってもらうように頼んだ
  • 明日の社内会議でその資料を基に話すことになっている
  • ▲日を過ぎたが、担当者から送られてきていないのを確認した
  • ただし、絶対に見落としていないとはいえない

2)ステップ2:欠けている事実を探す

全て書き出したつもりでも、見落としている部分はあるものです。ステップ1で挙げた中に、欠けている事実がないか確認します。

見えていない情報に気付くのは容易ではありませんが、5W1H(Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どうやって))に当てはめて確認するクセをつけるとよいでしょう。上の例では、Howの情報が抜けています。資料は郵送で届くはずなら、メールを確認する意味はありません。

相手が知っている情報であればあえて書く必要はありませんが、足りない情報に自分で気付けるようになると、相手とのトラブルの可能性を下げられます。

なお、事実は正しいことが大前提です。書き並べた情報が本当に正しいのかどうか、情報源となる資料を確認しましょう。

3)ステップ3:事実を分類する

集めた事実を意味ごとに分類します。同じ内容をグループ化し、小見出しを付けるイメージです。

催促メールの例で考えると次のようになるでしょう。

●これまでの経緯

  • 〇日の会議で、資料を▲日までにメールで送ってもらうように頼んだ
  • ▲日を過ぎたが、担当者から送られてきていないのを確認した
  • ただし、絶対に見落としていないとはいえない

●これからに向けたお願い

  • 明日の社内会議でその資料を基に話すことになっている
    →そのために、すぐに送ってもらいたい。また、できればいつまでに送ってもらえるか確認したい

このように分類することで、自分が言いたいことが前よりも明らかになってきます。

4 問いを立てて、書きたい結論(主張)を決める

続いて集めた事実を基に、伝えたい自分なりの結論(主張)を明らかにします。

具体的なステップは次の通りです。

  • ステップ4:読み手の目線を入れ、結論(主張)を整理しタイトルを付ける
  • ステップ5:結論の根拠となる推論(理由)を確かめる

1)ステップ4:読み手の目線を入れ、結論(主張)を整理しタイトルを付ける

まずは自分がこの文章で何を伝えたいか、読み手にどんな反応をしてほしいかをイメージします。上の例では、「担当者に資料を送ってほしい」という目的がはっきりしているので、一見答えは出ているように見えます。

しかし、このステップで大切なのは読み手の視点を入れることです。もしタイトル(件名)に「お約束していた資料の督促」と入れたら、読み手は責められたと感じるはずです。

それが本意ではないなら、この文章の目的は「担当者との関係を良好に保ったまま、今日中に資料を送ってもらいたい」となります。タイトルはシンプルに「資料送付のお願い」くらいがよいでしょう。

2)ステップ5:結論の根拠となる推論(理由)を確かめる

ステップ4と同様、読み手に自分の主張を伝えるための準備です。読み手の視点に立って、事実と結論が納得できるものか確認します。内容が複雑なら、ステップ3で分類した事実のグループ単位などで、結論(主張)、推論(理由)、前提(事実)に分けてみるとよいでしょう。

5 構成案を作り、それに従って書く

いよいよ構成案を作って実際に書くステップです。書き始める前に、どの事実を載せて何を省くかを決めておきます。

具体的なステップは次の通りです。

  • ステップ6:事実を並べる順番を決める
  • ステップ7:どれくらいの分量にするか決める
  • ステップ8:完成した構成案に従って書く

1)ステップ6:事実を並べる順番を決める

ステップ4、5で相手目線を取り入れた事実を基に、一番伝えたい結論を表現するのにふさわしい順番を考えます。

催促メールの場合、次の順番はいかがでしょうか。箇条書きの頭に付けた数字が書く順番です(この順番が唯一の正解ではありません)。

●これまでの経緯の確認

  • 1.〇日の会議で、資料を▲日までにメールで送ってもらうように頼んだ
  • 2.▲日を過ぎても、担当者から送られてきていない
  • 3.ただし、絶対に見落としていないとはいえない

●これからに向けたお願い

  • 4.明日の社内会議でその資料を基に話すことになっている
  • 5.すぐに送ってもらいたい
  • 6.忙しい中で対応してもらうが申し訳ない
  • 7.これからも良好な関係を保ちたい
    (できればいつまでに送ってもらえるか確認したいが、それは必要に応じて電話する)

なお、適切な順番は、文章を載せる場所、媒体によって異なります。ビジネスのメールは基本的に最後まで読んでもらえますが、ネット記事のように途中で読者の離脱が想定される場合は、冒頭に結論を持ってきて読み手の興味を引いたほうが、読んでもらいやすくなります。

2)ステップ7:どれくらいの分量にするか決める

事実を書く順番が決まったら、その事実をどれくらい肉付けして表現するか決めます。強調したいところは長めに語り、分かりづらいところには例え話を入れます。テンポを良くするために、重要でないところは大胆に削ってみてもよいでしょう。

3)ステップ8:完成した構成案に従って書く

最後に、完成した構成案に合わせて原稿を書きます。

【参考文献】

  • 『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(山田ズーニー、PHP新書、2001年10月)
  • 『哲学思考トレーニング』(伊勢田哲治、ちくま新書、2005年7月)
  • 『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ』(唐木元、インプレス、2015年8月)
  • 『【新版】日本語の作文技術』(本多勝一、朝日文庫、2015年12月)
  • 『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』(古賀史健、ダイヤモンド社、2021年4月)

以上(2023年7月更新)

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【伝わる文章の書き方】文章を書くのは難しい?

1 話すよりも書くほうが大変?

わたしたちはメールなどで毎日何かしらの文章を書いています。普段のメモやメールであればほとんどストレスなしに書けますが、普段と少し違う内容になったとたん、予定した時間の何倍もかかってしまうことがあります。

話すよりも書くほうが大変?

例えば、メールで人に何かを催促しなければならないとき、何と書きますか。対面や電話であれば、声のトーンなどで気遣っている気持ちを表現できますが、メールではそれができません。伝えたい内容はそれほど複雑でなくても、自分の意図を相手に正しく伝えるにはよく考えて文章を作る必要があります。

例えば、取引先に約束していた資料を催促する場合、こういうメールになるでしょうか。

先日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

その際にご依頼した資料の件でご連絡致しました。
わたしがメールを紛失してしまったのかもしれませんが、ご依頼した資料に関するメールが確認できない状態でございます。
大変お手数をおかけしますが、メールを再送していただけないでしょうか。

いただいたメールを基に、明日、社内で会議を開くことになっています。
お忙しい中大変恐縮ですが、ご対応のほど、何卒よろしくお願い致します。

このメールは、敬語をしっかり使い、丁寧な印象になるよう工夫しています。また、「明日社内の会議で使う」という理由も添えたのは、相手に納得して対処してもらうためです。

普段は当たり前にできているからこそ、意識的に相手に伝わる文章を書こうとすると、どうしてよいか分からなくなってしまいます。書きやすい手順、注意すべきポイントを押さえて自分のやり方を見直してみてはいかがでしょうか。

2 意外に違う“話し言葉”と“書き言葉”

映像や音楽の迫力を伝えるとき、話して説明するのと書くのでは、どちらが伝えやすいですか? 口では説明できるのに、文字ではなかなか表現しにくいことがあります。

話し言葉と書き言葉、両方とも言葉を使うことは同じですが、話すときの言葉は音声、書くときの言葉は文字で表されるのが大きな違いです。話し言葉は音声なので、声のトーン、大きさで情感を込められます。また、身ぶり、視線、表情などで情報をさらに付与できます。

一方、書き言葉は、音声や身ぶりなどで表現される話し言葉の非言語的な情報を、主に「論理(ロジック)」で補っているといわれています。文章を読むとき、話し言葉なら気にならない細かな矛盾が気になってしまうのは、書き言葉にとって論理がとても重要だからです。

また、普段はあまり意識されていませんが、話し言葉と書き言葉の言い回しの違いも文章を書くときの悩みのタネになるでしょう。文章を一旦話し言葉で書いてから書き言葉に直してみると、直す箇所の多さに驚くはずです。例えば、ビジネス文書などでは、語尾が「●●なんです」となっていると、基本的に「●●なのです」「●●となっています」などに修正しなければなりません。

3 論理(ロジック)とは何か

前述した、話し言葉と書き言葉の大きな違いである論理(ロジック)とは、どんなものなのでしょうか。ビジネス書で多くのベストセラーを生み出したライターの古賀史健氏は、『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』で、「言葉における論理は、絵画における遠近法」 というような表現をしています。

絵画は三次元の現実を二次元の世界で表現するため、遠近法で空間的関係性を損なわないようにしています。

言葉の論理は、“結論(主張)” “前提(事実)” “推論(理由)”の3つで成り立っています。わたしたちが頭の中だけで考えているとき、自分ではその考えにはそれなりに理由があると思っていますが、それはただの主観にすぎません。他人から見れば、ほとんど理由になっていない場合があります。

例えば、ある人が映画を見てとても感動し、思わず「この映画は世界一だ」と言ったとします。本人にとっては自分が感動したことほど、映画を称賛する根拠は必要ありませんが、「わたしが感動したから、この映画は世界一だ」という文章は、論理的に正しく、多くの人を納得させるとは言い難いでしょう。文章を書く際の論理とは、自分の考えを客観によって裏打ちするための技術のようなものです。

では、論理の組み立て方について、哲学の分野などで使われるクリティカルシンキングの手法を使って考えてみましょう。

そもそもクリティカルシンキングとは、ある意見をうのみにせずに吟味する、批判的思考のことです。クリティカルシンキングはある意見を検証するとき、結論、推論、前提の3つの要素にわけて考えます。先ほどの例を分解すると、次のようになります。

  • 結論:この映画は世界一の作品だ
  • 前提:わたしはこの映画に感動した
  • 推論:わたしを感動させた映画が世界一の作品である

わたしたちが「論理的に妥当だと認めてもいい」と思うのは、前提と推論が共に妥当だったときです。

この例の場合、「わたしは感動した」という前提には嘘はないでしょう。しかし、その前提から「この映画を世界一だ」とする推論は明らかに間違っています。他人に正しい推論と納得してもらうには、世界一の映画作品を評価する方法を明らかにして、それを満たしているという前提がなければ難しいのです。

このように論理的な正しさは結論、前提、推論の関係の中で判断され、文章を書くときはそうした論理的な正しさに留意しなければなりません。

ただし、一口に文章といっても、私的な手紙、メール、ビジネス文書、エッセイ、論文、公文書など、その形式によって、求められる論理の厳密さは変化します。先ほどの文章を書いた「わたし」が、カンヌ映画祭の審査員を務めるような人物で、その記事がエッセイとして美容雑誌などに載っていたら、多くの読者は違和感なく読み進めるでしょう。

文章を書くときには、そうした臨機応変さも含めて、論理をうまく使いこなすことが必要なのです。

【参考文献】

  • 『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(山田ズーニー、PHP新書、2001年10月)
  • 『哲学思考トレーニング』(伊勢田哲治、ちくま新書、2005年7月)
  • 『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ』(唐木元、インプレス、2015年8月)
  • 『【新版】日本語の作文技術』(本多勝一、朝日文庫、2015年12月)
  • 『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』(古賀史健、ダイヤモンド社、2021年4月)

以上(2023年7月更新)

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【伝わる文章の書き方】書いた文章を直す

1 書くためのプロセス

文章を書く全体の流れを把握すると、いつ何をすればよいかがイメージできるようになります。書くためのプロセスは、文章の長さや内容、形式などによっても異なりますが、この記事では数百字から2000字程度の短い文章を書く場合のプロセスを想定しています。

文章を書くときの全体的な流れは次の通りです。

<全体的な流れ>

●文章を書く前の準備・書き始める

  • 1.持っている事実を整理する
  • 2.問いを立てて、書きたい結論(主張)を決める
  • 3.構成案を作り、それに従って書く

●書いた文章を直す

  • 4.読み返して直す(文法中心)
  • 5.読み返して直す(表現中心)

このプロセスはいつも変わらないものではなく、書く目的や内容、文章の長さによっては省略することもあります。

この記事では、この文章を書くときの全体的な流れのうち、「書いた文章を直す」について紹介します。ただし、本稿では概要だけの紹介にとどめ、より詳しい方法に関心がある方は、記載する参考文献をご確認ください。

2 読み返して直す(文法中心)

読み返して直す

結論、前提、推論を整理してから書き始めれば、単なる自分の主観だけではなく、客観的な論理で裏打ちされた文章になります。

そこから文章をさらに磨かなければならないのはなぜでしょうか。一つは、純粋に読者のためです。せっかく自分の文章を読んでもらえるなら、喜んでほしいと思うのは自然なことです。

また、取引先に送った見積もり金額など、誤ってはいけないミスもあります。ミスを防ぎ、文章を読みやすくするため、文法をチェックする具体的なステップは次のようになります。

  • ステップ9:表現の重複をなくす
  • ステップ10:文章の構造をチェックする
  • ステップ11:句読点で意味をとりやすくし、リズムをつくる
  • ステップ12:改行や漢字ひらがなで視覚的なバランスを整える
  • ステップ13:もう一度事実確認をする
  • ステップ14:全文を読み直す

これらのステップは、概念的にルールを理解するよりも、実際の文章から問題のある箇所に気付き自分で直す練習が必要です。

参考となる書籍は次の通りです。関心のある人はぜひご覧ください。

【参考文献】

  • 『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ』(唐木元、インプレス、2015年8月)
  • 『【新版】日本語の作文技術』(本多勝一、朝日文庫、2015年12月)

3 読み返して直す(表現中心)

ここでの表現とは、読者を引きつけて楽しませるものです。ただし、詩や小説などの文学的な作品に書かれているような「名文」や「うまい文章」である必要はありません。読者に分かりやすくするためのステップは、次の通りです。

  • ステップ15:この文章でしか読めないエピソードを入れる/活かす
  • ステップ16:伝えたい話を的確に表現する例え話を作る

自分の表現力でオリジナリティーを出すには、普通根気強く訓練する必要があります。しかし、テーマに合ったエピソード(インタビュー、独自コメントなど)を調べるのは、やる気があれば技術はさほど関係ありません。

また、扱う話題が抽象的だと、読者はなかなかイメージできず理解できません。例え話は、その分かりづらさを補い、読者の理解を高めてくれる方法です。

例え話を作る技術、文章力を磨く考え方などが書かれた参考文献は次の通りです。

【参考文献】

  • 『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(山田ズーニー、PHP新書、2001年10月)
  • 『哲学思考トレーニング』(伊勢田哲治、ちくま新書、2005年7月)
  • 『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ』(唐木元、インプレス、2015年8月)
  • 『【新版】日本語の作文技術』(本多勝一、朝日文庫、2015年12月)
  • 『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』(古賀史健、ダイヤモンド社、2021年4月)

以上(2023年7月更新)

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「自著」を経営者の名刺代わりに。手軽にできる電子書籍の自費出版のポイント

書いてあること

  • 主な読者:自著の出版に興味のある中小企業経営者、士業、専門家
  • 課題:書籍の執筆・出版は資金や手間が掛かりそう
  • 解決策:無料ツールなどを使ってプロ顔負けの電子書籍を作れる。執筆・校正・表紙デザインなどを外部サービスに比較的安価で依頼することも可能

1 自著を出版する6つのメリット

「何をきっかけとして創業したのか、どのような苦難があったのか、社員や顧客への思い、商品・サービスの誕生秘話、自身や会社ならではの専門知識」。こうした経営者の思いなどを知りたい人は社内外にたくさんいます。

それらを書籍にまとめ自費出版すれば、社員教育や採用、自身や会社の周知やブランディングに役立てることができます。自著を出版するメリットは主に次の6つです。

  1. 自身や会社の理念、事業内容などを社員や求職者に知ってもらい、社員教育や採用活動に活用できる
  2. 自身や会社の専門知識や経験を顧客や取引先にアピールすることで、その情報を参考にしてビジネスの相談や取引の機会が生まれる可能性がある
  3. 専門知識や特定のノウハウを書けば、その業界やトピックにおける「専門家」「その道のプロ」としての信頼性や評判を上げることができる
  4. 外部の人が口コミやSNSなどを通じて他の人に推薦することがあれば、自身や会社の知名度が広がる可能性がある
  5. テレビや雑誌などのメディアがネタを探す際の事前資料となるため、インタビューや特集記事などに取り上げられやすくなる
  6. 経営者自身が会社の専門知識やビジネス戦略、経験、理念などをまとめることで、自社の強みを再構築することができる

とはいえ、

書籍を出版するのは簡単ではない、ましてや中小企業や一個人には難しい

と考える人は多いでしょう。

確かに出版社に委託して紙の書籍を作ってもらったり、書店に流通させたり、不特定多数に届けるために広告宣伝を打ったりすると、数十万円~数百万円規模の予算が必要。原稿の確認や修正のやり取りにも相当の手間が掛かります。

しかし、

社員や顧客、名刺を配った相手などにPCやスマホで読んでもらう

ことを第一の目的にした場合、

予算や手間を抑えながら一定以上のクオリティの電子書籍を自費出版することが可能

です。

電子書籍なら紙の書籍のように在庫を抱える必要はなく、名刺の裏に自著の表紙画像と書籍のQRコードをプリントして配ったり、メールにURLを添付したりすることができます。また、電子書籍なら価格を0円に設定することができ、多くの人に読んでもらいやすくなります。

この記事では、誰でも手軽に電子書籍を出版する方法を分かりやすく解説します。

2 まずは書籍の中身を決める

1)テーマと内容

まずは肝心のテーマ・内容を決めます。自身の経営人生をただまとめるのではなく、読んだ人が「何かを得られる」内容が書かれているとなお良いでしょう。

創業に至った経緯を書くのであれば、その道程でどんな失敗をし、どう苦難を乗り越えてきたのかという教訓を織り交ぜます。社員への思い、顧客への思いを熱く述べれば、著者や会社への親近感や信頼感の醸成につながります。

地域に根ざした経営をしているのであれば、これまで地域とどう関わってきたのか、どのような貢献をしてきたのかなどを書けば、想定読者である地域住民になじみ深さを感じてもらうことができます。

お世話になった取引先などへ事前に許可を取り、印象的なエピソードなどを紹介すれば取引先との関係を深めることにつながる上、取引先が書籍を紹介してくれることもあるでしょう。

自社の商品・サービスの誕生秘話を紹介するのであれば、誕生に至った苦労だけでなく、開発するに当たってどのような工夫を施したのか、他社商品・サービスとの差異化ポイントなど、商品・サービス開発のヒントとなるような情報も書くといいでしょう。

そうすることによって社員や既存顧客がその商品・サービスへの親近感を抱きやすくなる上、新規顧客からの問い合わせなどのビジネスチャンスにつながる可能性もあります。

2)タイトルは一工夫が必要

社員や顧客などに読んでもらう書籍とはいえ、タイトルが「●●社の創業史」「■■商品の誕生秘話」といったお堅いものでは、読んだ人が何を得られるのかが明確になっておらず、読んでもらいづらくなります。

例えば、「●●社が絶体絶命の危機から回復した5つの方法」「地元で20年愛され続ける3つの習慣」や「■■商品が一日100個売れるようになったのは▲▲をやめたから」など、読んだ人が自分に照らし合わせて有益そうだ、内容が面白そうだと感じるタイトルを付けるのがおすすめです。

書店やAmazonのビジネス・経済のカテゴリーでヒットしている書籍のタイトルなどを参考にするといいでしょう。

3)文字数は少なくてもOK

一般的に紙の新書の場合、一冊当たりの文字数は8万~12万字程度と言われています。しかし電子書籍の場合、文字数の決まりは特にありません。価格も自由に設定できるため、例えば「1万字の書籍を200円で売る」といったことも可能です。

文字数の目安として、例えばビジネスパーソンを対象としたビジネス書籍なら2万字が推奨されています。2万字は、通勤電車や休憩時間に20分~30分前後で読める文量と言われているためです。

宣伝広報を目的として0円で配布する、ということを念頭に置けば、伝えるべき内容が分かりやすく書かれてさえいれば文字数はそれこそ数千字でも構いません。

4)校正・校閲は意外に重要

誤字脱字のチェックは重要です。一般的に書籍に対して人は「しっかりしたもの」という権威性を感じています。些細な漢字のミスや、表記の揺れ、事実誤認などが多いと「チープさ」「手作り感」が出てきてしまいます。

自費出版といえども、読者は書籍に対して一定の権威性を求めているので、校正・校閲は繰り返し行ったほうがいいでしょう。自身で見直したり社員に任せたりするだけでなく、外部の校正のプロに頼るのも一策です。

例えば、ココナラやランサーズといったアウトソーシングサービスでも校正・校閲を手軽に依頼することができます。金額的にもリーズナブルですが、依頼する際はなるべく対応実績の豊富なプロを選ぶと間違いがないでしょう。

■ココナラ■

https://coconala.com/

■ランサーズ■

https://www.lancers.jp/

5)必ずしもあなたが書く必要はない

書籍になるような長い文章を書いたことがないという方も多いでしょう。その場合、経営者自身が無理して書く必要はありません。自著を作る上で最も重要なのは、伝えたい情報を読者に面白く、分かりやすく伝えることです。そのためには、慣れない文章を貴重な時間を使って書くよりも、別の誰かに書いてもらったほうがいい場合があります。

現に経営者や著名人の著書の中には、外部のライターが著者にインタビューをし、その内容をライターがまとめ、最終的に著者がチェックするといった形で出版されているケースも少なくありません。

前述したココナラやランサーズなどでは、こうしたインタビューに特化したライターに数万円~で依頼することも可能です。

3 表紙やタイトルデザインは権威性の象徴

自費出版で見落としがちなのが、表紙とタイトルデザインの豪華さ・ゴージャス感です。ここでいう豪華さ・ゴージャス感とは、一般に流通している書籍のような品格や、プロの手が入っている感じを指します。

自費出版では表紙やタイトルデザインも自前のパワーポイントなどを使って用意することができますが、どうしてもレイアウトや文字のフォントでは先述したような「チープさ」「手作り感」が出てきてしまいます。

表紙やタイトルデザインは書籍の看板であり、著者や会社の権威性や信頼性を想起させるものですので、こだわるべきポイントと言えます。

最近ではCanva(キャンバ)といったウェブ上の無料ツールで、誰でも手軽に表紙をデザインすることが可能です。Canvaで「電子書籍 表紙」などと検索すれば、商業書籍と遜色ない表紙・タイトルデザインの案がいくつも出てきます。自著のイメージに合ったテンプレートを選んだり、自前で用意した画像などを組み合わせたりしてプロ顔負けの表紙を作成することができます。

■Canva■

https://www.canva.com/

また前述したココナラやランサーズでも、数千~数万円で書籍の内容やタイトルに合った表紙を作成してくれるサービスが数多く出品されているので、こちらを利用してもいいでしょう。

4 電子書籍を出版する

書籍の原稿が出来上がったら、いよいよ電子書籍として出版手続きを行います。電子書籍を販売できるストアは数多くありますが、本記事では世界で最も利用者の多い電子書籍ストアであるAmazon Kindleストア(以下「Kindleストア」)において無料で出版する方法を紹介します。

1)原稿をEPUB形式にする

Kindleストアに限らず、多くの電子書籍ストアでは、EPUBというファイル形式で電子書籍が販売されています。そのためWordやPDFにまとめた原稿をEPUB形式に変換する必要があるのですが、これもRomancer(ロマンサー)といったウェブ上の支援ツールを活用すれば手軽に行うことができます。

Romancerは月額660円(税込)でWordやPDFをそのままの見た目・文字サイズでEPUB化したり、Romancer上に直接見出しや本文を入力して読者が自由に文字サイズなどを変更できる形式に変換できたりします。

■Romancer■

https://romancer.voyager.co.jp

2)Kindleストアに登録する

EPUB化した原稿が用意できたら、Kindleストアに登録します。登録方法は下記のKindle Direct Publishing(以下「KDP」)のウェブサイト上でも詳細に説明されていますが、本記事でも簡単に解説します。

■KDPでの出版■

https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/GHKDSCW2KQ3K4UU4

KDPで自費出版する手順は次の通りです。

1.アカウントの作成

KDPのウェブサイト(https://kdp.amazon.co.jp)にアクセスし、無料でアカウントを作成します。

2.著者ページの設定

KDPのダッシュボードにログインし、著者ページの設定を行います。著者ページには自己紹介やプロフィール画像、連絡先情報などを設定できます。

3.タイトル情報の入力

書籍の詳細情報を入力します。タイトル、サブタイトル、著者名、言語、カテゴリーなどの情報を提供します。

4.書籍の内容のアップロード

EPUB化した原稿をKDPにアップロードします。

5.表紙画像のアップロード

書籍の表紙画像を設定します。

6.価格を設定する(0円にするにはKDPセレクトの登録設定をオフにしておく)

希望の価格を入力します。ここで著書のロイヤリティを設定することができます。「KDPセレクト」の登録設定をオンにすると希望小売価格の70%を受け取る代わりにKindleストアでの専売となり、さらにKindle Unlimitedという月額読み放題サービスに加入した読者が無料で読める書籍の対象となります(著者には1ページ読まれるごとに報酬が支払われます)。

ただし、

KDPセレクトの登録設定をオンにしてしまうと価格を0円(無料)にすることができない

ため、オフにしておきます。その上で、初期設定では価格を0円にすることはできないため、適当な価格を入れておきます。価格を0円に設定する方法は後述します。

7.出版とプレビュー

必要な情報を入力した後、プレビュー機能を使用して書籍のレイアウトや表示を確認します。問題がなければ、「出版」ボタンをクリックして書籍を出版します。

3)Kindleストアで無料販売する

長期的にKindleストアで無料販売する場合は、「プライスマッチ」という手続きを踏む必要があります。

これはKindleストア上で販売されている書籍と、他の電子書籍ストアで販売されている同一の書籍の価格を合わせるというものです。

そのため、先ほどKDPで出版した電子書籍を、楽天koboといった価格を0円に設定できる電子書籍ストアで登録・販売し、その上でAmazonにプライスマッチを申請する必要があります。

楽天koboで販売するには、AmazonのKDPに当たる楽天koboライティングライフにアカウント登録する必要があります。出版手続きはAmazonと同様に銀行口座や必要情報、EPUB形式の原稿データを登録していくだけです。

楽天koboにおいて0円で出版したら、KDPにログインし、メニューの「ヘルプ」→画面左端の「お問い合わせ」→「価格設定」→「プライスマッチ」の順にクリックしていきます。

すると画面右側に、楽天koboで0円に設定した書籍の販売ページURLや販売価格など、申請時に必要となる内容が表示されるので、それに従って申請メールを書き、「メッセージを送信」をクリックすればプライスマッチの申請は終了です。

なお、2)の6.でも先述しましたが、KDPセレクトに登録しているとプライスマッチの申請が通らないので、

必ずKDPセレクトの登録設定はオフにしておく

ことがポイントです。

なお、ここまで紹介したKindleストアや楽天koboの出版手続きやプライスマッチの申請方法などは、あくまで2023年5月時点の情報です。システムや規約の変更などで手続きや方法が変わる可能性があることにご留意ください。

4)出版申請の手続きを外部に丸投げすることもできる

ココナラやランサーズでは、この出版申請の手続きの代行サービスも出品されています。こちらは表紙やタイトルなどの制作も込みで5万円~というものが多いようです。

サービスによっては、本記事でこれまで解説してきた原稿の執筆(企画・構成)、校正・校閲などもひっくるめて代行してくれるところもありますが、全てを丸投げするとそれなりに費用も掛かります。

また、出版申請の代行は、KDPアカウントや銀行口座の情報などの漏洩リスクがゼロではありません。さらに、丸投げすると書籍の内容を修正・加筆したり、価格を変更したり、出版を取り下げたりする際に勝手が分からず、また代行業者に依頼することになってしまいます。

外部サービスに依頼する際はそうしたリスクを踏まえつつ、あくまで自身が制作をハンドリングするということを念頭に置くようにしましょう。

以上(2023年7月作成)

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【朝礼】たまには「面倒」な三河武士になってください

突然ですが、皆さんの周りに「この人、面倒だな」と感じる人はいますか? 「面倒」の意味はいろいろありますが、私がイメージしているのは「人に何かを言われても、簡単には自分の意見を曲げない頑固な人」です。例えば、リーダーがチームの行動方針を提案したとき、1人だけ反対するような人です。リーダーや他のメンバーからすれば、反対する人を説得するのには手間も時間もかかるので、面倒だと思う気持ちも分かります。

ただ、私はこうした面倒な人こそ、会社に必要な人材だと思っています。ちょうど大河ドラマで「どうする家康」が放映中ですので、けさは徳川家康の家臣を例に、この話をしたいと思います。

家康の家臣の多くは、家康の一族に代々仕えた譜代の武士で、本拠地にちなみ「三河武士」と呼ばれます。三河武士は戦場では勇敢な一方で、冒頭で話した「面倒な人」が多いことでも有名です。

例えば、三河武士の中でも随一の猛将として知られる本多忠勝(ほんだただかつ)です。彼は、娘婿の真田信之(さなだのぶゆき)が、家康の敵となった父・昌幸(まさゆき)と弟・幸村(ゆきむら)の助命を嘆願した際に、「真田親子を助けなければ、自分は徳川の兵と戦って死ぬ」とまで言って後押ししました。忠勝以外にも似たようなことをした家臣はいます。家康の立場からすれば、面倒なことこの上ないでしょうが、彼は多くの場面でこうした家臣の振る舞いを許し、少なからずその意見を聞き入れています。なぜでしょうか?

私は、家康がこの三河武士の面倒さを、逆に頼もしく感じていたからではないかと思います。誰かとの衝突を恐れず、そこに自分の命を懸けられる家臣は、他国と戦いになったときに頼りになるからです。しかも、家康に異を唱えた三河武士の多くは、自分の損得だけではなく、徳川家や家康のことまで考えていました。信之の嘆願を後押しした忠勝は、信之に恩を売ることによって、信之と真田家の家臣や旧領の民を徳川家がしっかり掌握できるメリットまで考えていたはずです。

家康の三河武士への信頼感は、豊臣秀吉に「あなたの宝物は何か」と聞かれた際、「私のために命を懸けてくれる家臣が500人います。それが宝物です」と答えたという逸話からも分かります。

私たちの仕事の話に戻ります。この会社では、残念ながら経営者である私が決めることに、異を唱える人がほとんどいません。スピーディーに物事を進められるのは良い面もありますが、一方で「皆さんは、ただトップに従うだけでいいのか」「自分の本気をトップにぶつけてでも成し遂げたいことはないのか」と不安にもなります。

私の考えが全部正しいなんてことは、あり得ません。ですから、皆さんの中に、会社の方針に少しでも疑問を抱いている人がいるのなら、それを私にぶつけてきてください。衝突を恐れず、そこに本気で挑める人が、これからの会社を支えます。ここぞというときには、面倒な三河武士になることも大切なのです。

以上(2023年7月)

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画像:Mariko Mitsuda