【労災の落とし穴(製造業)】休憩時間中にけがしたら労災?

この記事では、現役社労士が直面した小さな製造業の労災の事例として、「休憩時間中、会社の設備が原因で負傷した社員について、『休憩時間中のけがだから、労災ではない』と判断してしまった会社」の話を紹介します(実際の会社が特定できないように省略したり、表現を変えたりしているところがあります)。

1 休憩時間中のフォークリフトとの接触事故で、労災保険を使わせなかった……

社員数15人の部品加工工場に勤めるEさん。工場内ではフォークリフトで材料や製品を移動させていますが、カーブミラーが未設置の曲がり角がある上、スペースが狭くて通路の区画が曖昧……。さらに休憩スペースの出入り口とフォークリフトが頻繁に通る通路が隣接していて、いつ接触事故が起きても不思議ではない状態です。

ある日の休憩時間中、Eさんは用を思い出して休憩スペースを出ようとした際、通路のカーブを曲がってきたフォークリフトに接触し、右足を骨折してしまいました。しかし、社長は「休憩時間中の事故だから労災ではない」と判断し、Eさんは健康保険で治療を受けることになってしまいました。

2 休憩時間中も、会社の施設内で発生した事故は労災になり得る

休憩時間中の事故については、社員が業務から解放されて自由に過ごせる状況であれば、原則として労災になりません。ただし、会社の施設内で休んでいて、かつ会社の設備が原因でけがをした場合は、

  • 緊急時など必要があれば、会社が社員に干渉できる(業務遂行性)
  • 会社が安全管理を怠り、社内に潜む危険が顕在化したといえる(業務起因性)

という理由から、労災認定されることがあります。

このケーススタディーでは、社長が「休憩時間中の事故だから労災ではない」と判断していますが、Eさんは休憩時間中、工場内の休憩スペースで過ごしているので、業務遂行性は認められるでしょう。加えて、

  • 曲がり角の見通しが悪いのに、カーブミラーが設置されていない
  • 休憩スペースが危険な位置にあるにもかかわらず、明確な動線区分がされていない

という、会社の安全管理が不十分な状態でフォークリフトと接触し、けがをしているので、業務起因性も認められるでしょう。つまり、労災認定される可能性が高いです。

3 事故が起きないよう、環境整備を徹底!

製造業の現場では、フォークリフトや台車など、車両と人との接触事故が起こりやすいです。「スペースが限られているし、ある程度の事故は仕方がない」というような考えだと、いざ事故が起きたとき、安全配慮義務違反で責任を問われることになりかねません。

まずは、会社としてできる限りの事故防止策が取れているかを確認しましょう。例えば、

  • 床にラインを引く、安全柵・ブザー・カーブミラーを設置するなど、物理的な環境整備を徹底する
  • 休憩スペースの配置を再検討し、通路をフォークリフトが横断しないようにする

といった具合です。また、フォークリフトの運転者だけでなく、休憩スペースを利用する全社員に対して、「危険箇所の共有」「利用時の注意点」を周知徹底する必要があります。

以上(2025年5月作成)

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【株主総会】手続きを削減し、株主総会を1日で終わらせる方法

1 株主総会の手続きは大幅に省略できる

定時株主総会(以下「株主総会」)の開催は株式会社の義務とはいえ、スケジュールを意識して手続を進めることは大変です。特に、オーナー企業の社長は、

日ごろからコミュニケーションをとっているのに、仰々しい株主総会が必要なのか?

などと考えるでしょう。

そのような社長に知っていただきたいのは、取締役と株主の同意を前提に、

株主総会の実務を大幅に省略し、「最短1日」で済ませることができる

ということです。具体的に省略できるのは、

取締役会の招集手続や決議、株主総会の招集手続、株主総会の決議

となりますので、この記事で、そのための手続きを紹介していきます。

この記事で想定するのは、中小企業に多く見られる「非公開会社」で、機関設計は「取締役会・監査役設置会社」です。非公開会社とは、

全ての株式の譲渡について、会社の承認が必要となる旨を定款に定めている会社

のことです。

2 取締役会の招集手続や決議の省略

1)取締役の招集通知を省略

株主総会を開催する前に取締役会を開催し、

  • 株主総会の招集
  • 会社が作成した計算書類等の承認

について決議する必要があります。この取締役会を開催するのにも招集手続が必要ですが、

取締役と監査役の全員の同意がある場合、招集手続をせずに取締役会を開催

できます。例えば、取締役や監査役が出社していて同意を得られる場合や社内チャットで呼びかけてすぐにウェブ会議で集まることができる場合、その場で会議をするように取締役会が開催できるわけです。

ちなみに、通常の招集手続を経る場合、開催日の1週間前まで(定款によって短縮される場合もあります)に招集通知を発送しなければなりません。

2)取締役会の決議を省略

取締役会の決議も省略できます。その条件は、

  • 取締役が、取締役会で決議したい内容を提案する
  • 提案された内容の議決に参加できる全ての取締役が書面やメールなどで同意する

ことです。これらが満たされた場合、その「提案を可決する旨の決議があった」とみなされます。このような決議を、一般的に“書面決議”といいます。

つまり、

取締役Aが「株主総会の招集」と「計算書類等の承認」をしたいことを書面やメールなどで提案し、他の取締役が書面やメールなどで同意した場合、取締役会の招集通知も決議も省略できる

ということです。

なお、書面決議を行う場合、注意点があります。監査役設置会社の場合、

監査役が、その提案に異議を述べていない

ことが求められます。上記の場合でいうと、取締役Aは監査役にも提案を送付して、異議がないかを確認する必要があります。

3 株主総会の招集手続の省略

通常、株主総会を開催するには、株主に書面などによる招集通知を発送しなければなりません。ただし、次の条件が満たされた場合については、株主総会の招集手続を省略できます。

  • 書面やメールなどによる議決権行使を認めない
  • 株主全員が同意する

ちなみに、通常の招集手続をする場合、

招集通知は、株主総会の1週間前までの発送が必要

です。より詳細にいうと、この1週間には、招集通知の発送日と株主総会の日を含まず、中1週間が必要です。

また、書面やメールなどによる議決権行使を認める場合、株主総会の招集手続を省略することはできません。この場合、

招集通知は、株主総会の2週間前までの発送が必要

です。

4 株主総会の決議の省略

株主総会では株主の決議が必要ですが、これも省略できます。その条件は、

  • 取締役が、株主総会で決議したい内容を提案する
  • 提案された内容の議決に参加できる全ての株主が書面かメールなどで同意する

ことです。これらが満たされた場合、その「提案を可決する旨の決議があった」とみなされます。また、取締役が株主総会の報告事項について株主全員に通知し、株主総会への報告を省略することにつき同意を得た場合も、当該報告があったものとみなされます。このような決議も、前述した取締役会の場合と同じで、一般的に“書面決議”といいます。

ただし、株主間に対立がある場合などは注意しましょう。書面決議では、議決権を行使できる全ての株主全員から同意を得る必要があるので、決議したい内容に反対する株主がいると、書面決議は成り立たないことになります。

このような場合、招集手続からやり直さなければならなくなる可能性があり、株主総会がスケジュール通りに行かなくなる恐れがあります。そのため、最初から書面決議によらず、実際に開催する前提で準備する必要があります。

5 残念! 株主総会議事録は省略できない

株主総会の終了後、会社は株主総会議事録を作成しなければなりません。結論から言うと、

株主総会議事録の作成は省略できない

ということになります。これは株主総会の書面決議を行った場合も変わりません。

なお、作成した株主総会議事録は、一定の期間、会社の本店(支店にはその写し)を備え置く必要があります。また、株主総会議事録は、役員の選任といった商業登記の申請手続において、添付資料として使用します。

以上(2025年4月更新)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:Mariko Mitsuda

ビジネスと人権

ビジネスの現場で、労働者の「人権」を守ろうという動きが活発化しています。政府は、「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020~2025)」を策定するなどして、国際的に認められた「労働者の基本的権利」を尊重するよう、企業に呼びかけています。2024年10月には厚生労働省が、具体例をわかりやすくまとめた「労働におけるビジネスと人権 チェックブック」を作成しました。本稿では、中小企業の現場で起こりやすい、身近な人権侵害の事例を紹介します。

1 児童、外国人労働者への権利侵害

<事例1>

児童労働に関する事例1

児童労働に関する事例です。労働基準法では、満18歳未満の人に、時間外労働や休日労働、深夜労働を行わせることを原則禁止しています。例外的に、1週間の労働時間が40時間を超えない範囲内で、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合には、他の日の労働時間を10時間まで延長できます。高校生のアルバイトなどを雇っている企業は、注意が必要です。

<事例2>

強制労働に関する事例2

強制労働に関する事例です。上記のケースは、労働基準法が禁止している強制労働に該当する可能性があります。会社が従業員にお金を貸した場合に、会社がその借金を賃金と相殺することも、労働基準法で禁止されています。

<事例3>

強制労働に関する事例3

強制労働に関する事例です。外国人を雇用している企業は注意が必要です。パスポートや在留カードがないと、労働者が転職したくても、他の仕事を見つけることができません。また、公的サービスを受けることもできなくなります。携帯電話を預かることも、労働者が外部にアクセスできず、隔絶された状況に置かれるため、強制労働に当たる可能性があります。

<事例4>

結社の自由と団体交渉に関する事例4

結社の自由と団体交渉に関する事例です。労働者の過半数を代表する者(労働者代表)は、36協定などを締結する際に必要です。労働者の話し合いや挙手、投票など民主的な方法で選ばなければならず、使用者の指名や、使用者の意向に基づく選出はできません。また、経営者と一体となって従業員の労働条件などを決める立場の人(管理監督者)は、労働者代表になれません。

2 差別、安全衛生上のリスク

<事例5>

差別に関する事例5

差別に関する事例です。採用面接時に、本人に責任のない事項(本籍・出生地、家族、住宅状況、生活環境・家庭環境)や、思想・信条に関わること(宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、購読新聞、愛読書など)を尋ねないよう、注意が必要です。職務遂行に関係ない個人的な事情により採用を判断することになってしまい、差別につながるおそれがあります。

<事例6>

差別に関する事例6

差別に関する事例です。産前産後休業は労働基準法で、育児・介護休業は育児介護休業法に定められた労働者の権利です。しかし、中小零細企業の中にはいまだに、「うちの会社には育児・介護休業制度はない」と言う経営者がいます。これらの休業は、企業の規模にかかわらず、労働者に与えなければなりません。

<事例7>

安全衛生に関する事例7

安全衛生に関する事例です。労働安全衛生法などの定めにより、仕事中にけがや病気で労働者が死亡したり、休業したりした場合には、労働基準監督署に報告する義務が企業に課されています。

3 さいごに

「労働におけるビジネスと人権 チェックブック」では、「児童労働」「強制労働」「結社の自由と団体交渉」「差別」「安全衛生」の5分野で、計61の事例を取り上げています。各分野について、サプライチェーンにおける取引先企業の労働者などとの対話も、人権を守るうえで重要であると明記されています。

※事例はいずれも、厚生労働省「労働におけるビジネスと人権 チェックブック」より引用

※本内容は2025年4月10日時点での内容です。
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:Aryanedi-Adobe Stock

ビジネスと人権

ビジネスの現場で、労働者の「人権」を守ろうという動きが活発化しています。政府は、「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020~2025)」を策定するなどして、国際的に認められた「労働者の基本的権利」を尊重するよう、企業に呼びかけています。2024年10月には厚生労働省が、具体例をわかりやすくまとめた「労働におけるビジネスと人権 チェックブック」を作成しました。本稿では、中小企業の現場で起こりやすい、身近な人権侵害の事例を紹介します。

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目指せ100億!「中小企業成長加速化補助金」は最大5億の補助

1 設備投資に使える 中小企業成長加速化補助金

現在、中小企業庁では「売上高100億円」を目指す中小企業を応援する「100億企業成長ポータル」を立ち上げています。売上高100億円は、多くの経営者にとって「途方もない額」である一方、「いつの日か達成してみせる!」という野心をかき立てる数字かもしれません。とはいえ、実際に中小企業がこの目標を達成するには大規模な設備投資が不可欠で、「その資金をどう調達するの?」と聞かれると、困ってしまう経営者も多いはずです。

そこで活用したいのが、

設備投資を最大5億円まで補助する「中小企業成長加速化補助金」

です。2024年度補正予算により2025年からスタートした中小企業庁所管の補助金で、これを上手に活用すれば、自己資金の負担を抑えつつ最新設備の導入が可能になり、競争力の強化につながります。以降で、補助金の概要や申請のポイントについて解説しますので、興味のある方はぜひご確認ください。

2 中小企業成長加速化補助金とは?

1)中小企業成長加速化補助金の概要

この補助金は、売上高10億円以上100億円未満の中小企業に対して補助を行うことで、工場の新設・増築や設備の導入を促進するためのものです。書類と面接の審査を経た後、交付決定された企業に対して、実績報告後に補助金が支払われます。

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■中小企業庁「中小企業成長加速化補助金」■
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/koubo/2025/250314001.html

2)中小企業成長加速化補助金の詳細な要件

1.補助上限額・補助率

補助上限額は5億円で、補助率は1/2となっています。

【計算例】補助対象経費の総額(最大10億円)×補助率1/2=補助金額(最大5億円)

2.補助事業期間・公募スケジュール

補助事業期間は24カ月となります。他の補助金に比べて長めではありますが、交付申請後にしか発注・契約できません。交付申請は採択決定日から2カ月以内が期限となります。

1次公募に申し込む場合、交付決定は早くても2025年9月の上旬以降となる見込みです。

  • 2025年4月下旬:公募説明会
  • 2025年5月8日(木):申請受付開始
  • 2025年6月9日(月)17時:申請受付締切
  • 2025年7月上旬:1次審査結果の公表
  • 2025年7月下旬~8月下旬ごろ(お盆期間を除く):プレゼン審査
  • 2025年9月上旬以降:採択結果の公表

工場の新設や海外から設備を船便にて輸送して設置する場合は、補助事業期間内に工場の新設が完了するか、設備の設置が完了するかを確認してください。

3.補助対象者

売上高100億円を目指す中小企業です。また、売上高10億円以上100億円未満の中小企業であることが要件ですので、全社での売上高がこの幅に入るかをチェックしてください(対象外になる場合、経済産業省から他の補助金が出ていますので、そちらの活用をご検討ください)。

なお、原則として直近決算期の売上高で判断するそうですが、何らかの事情がある場合には、直近3期分の決算に基づくそうです。事前に事務局に相談することをお勧めします。

4.補助事業の要件

要件の1つ目として、「100億宣言」を専用ポータルサイトにて行う必要があります。これは中小企業が自ら「売上高100億円」の実現に向けた取り組みを行っていくことを宣言するもので、

  • 企業概要
  • 企業理念・経営者の意気込み
  • 売上高100億円実現の目標と課題
  • 売上高100億円に向けた具体的措置(取り組み)

などを定めます。詳細は、中小企業庁ウェブサイトをご確認ください。

■中小企業庁「100億宣言」■
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/100oku/index.html

2つ目として、投資額が1億円以上であることが必要です。投資額とは建物費、機械装置費、ソフトウェア費の補助対象経費の合算金額であり、外注費、専門家経費は含みません。

3つ目として、賃上げが求められています。補助事業が完了した日を含む事業年度(基準年度)の「給与支給総額(注)」または「従業員(非常勤含む)及び役員の1人当たり給与支給総額」と比較した、基準年度の3事業年度後(最終年度)の「給与支給総額」または「従業員及び役員の1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率(基準率)が、補助事業実施場所の都道府県における直近5年間(2019年度を基準とし、2020年度~2024年度の5年間)の最低賃金の年平均上昇率以上であることが必要です。賃上げ要件を満たさなかった場合は補助金返還を求められます。

(注)給料、役員報酬、賞与、各種手当(残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当)等、給与所得として課税対象となる経費を指します。

補助対象経費は建物費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費となります。

3 補助金を活用するメリットとデメリット

1)中小企業成長加速化補助金のメリット

中小企業成長加速化補助金のメリットは、次の通りです。

1.資金調達の一環となる

この補助金は、事業計画を実現するために必要な資金を提供します。これにより、中小企業は新しい建物や設備の資金の一部を得ることができ、本来費用としてかかる金額よりも負担を減らすことができます。

2.事業成長を促進する

補助金を受けることで本来、建物や設備に投資するはずであった資金を他の経営資源に回せるようになり、企業の成長が加速し競争力が向上します。また、補助金を活用して新設の工場での増産や、設備投資による革新的な製品の製造が可能にな

ります。

さらにこの補助金には、

補助事業の事業化により収益を得られたと認められる場合でも、収益納付を求められない

という特徴があります(他の補助金では、補助事業の事業化によって収益が出た場合に収益納付を求められることが多いです)。

2)中小企業成長加速化補助金のデメリット

中小企業成長加速化補助金のデメリットは、次の通りです。

1.交付決定まで発注や契約ができない

書類審査とプレゼン審査があり、実際に工場の建設や設備を発注・契約するまでにタイムラグが生じます(予定では早くとも2025年9月上旬以降)。今すぐ事業を開始したい場合、他の補助金を活用することをお勧めします。

2.計画通りに事業が進まない場合に計画変更がしづらい可能性がある

計画通りに事業が進まない場合、補助金を活用して建てた工場や設備を他の用途に使う際は、事前に事務局への相談が必要となります。変更が認められないケースも想定されますので、しっかりとした計画を練ることが大切です。

4 申請のポイント

中小企業成長加速化補助金を申請する際は、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

1)事業計画の明確化

申請書には、革新的な事業計画を詳細に記載する必要があります。計画の目的、具体的な内容、実施方法、期待される成果などを明確に説明しましょう。申請書類の1つに投資計画書(様式1)がありますが、これはパワーポイント形式になっているので、

書類審査後のプレゼン審査は、投資計画書を使用したものになることが想定

されます。書類審査はもちろんのこと、プレゼンしやすい書類の作成も心掛けましょう。

2)申請に必要な書類等の準備

申請は電子申請となりますので、GビズID(1つのIDで複数の行政サービスにアクセスできるサービス)のプライムアカウントを、あらかじめ準備しておきましょう。

■GビズID(gBizID)■
https://gbiz-id.go.jp/top/

申請書類は全申請者にとって必要なものと、該当者のみが必要となるものがあります。金融機関の確認書やリース料軽減計画書など、社外から入手するものは、あらかじめ対象の機関(金融機関やリース事業協会)に相談しておくとスムーズです。

3)申請期限

2025年5月8日(木)から2025年6月9日(月)17時です。最終日は申請が殺到し、システムの動作が重くなる可能性があります。早めの申請完了をお勧めします。

4)2次公募について

時期は明記されていませんが、2次公募が予定されています。1次公募に申請が間に合わない場合は、2次公募の活用をご検討ください。また、1次公募で不採択となった場合も、2次以降の公募に申請することが可能です。

5)その他の注意点

補助対象とする事業の内容が、農作物の生産自体に関するものなど、1次産業を主たる事業としている場合は対象外となります(この場合、農林水産省関連の補助金の活用をご検討ください)。

ただし、1次産業を営む事業者であっても、補助対象とする事業の内容が2次・3次産業に関する事業である場合は、対象となり得るとのことです。

また、医療、介護、売電といった国の他の制度(公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等)との重複を含む事業、及び同一または類似した内容の事業は対象外となりますのでご注意ください。

要件は多々あるものの、中小企業成長加速化補助金は補助金額が非常に大きく、事業を後押ししてくれる補助金です。該当する場合には活用をご検討されてはいかがでしょうか。

以上(2025年5月作成)
(執筆 川崎朋子)

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【労災の落とし穴(製造業)】 腰痛の悪化は労災にならない?

この記事では、現役社労士が直面した小さな製造業の労災の事例として、「業務により腰痛が悪化した社員について、『もともと腰が悪かったのなら、労災ではない』と判断してしまった会社」の話を紹介します(実際の会社が特定できないように省略したり、表現を変えたりしているところがあります)。

1 もともと腰が悪かったので、労災保険を使わせなかった……

社員数5人の機械メンテナンス会社に勤めるDさん。出張先の工場で重い機械の点検作業をしている最中、腰をひねって激痛に襲われました。もともと腰痛持ちのDさんは「持病が悪化しただけかもしれない」と考え、社長には報告せずに病院へ向かいます。

医師からは「椎間板ヘルニアの疑いがあるため、一定期間の休業が必要」と診断され、Dさんは社長に報告しました。

しかし、社長は休業を認めたものの、「もともと腰が悪かったのなら、業務とは関係ない」と労災にはしない方針を示し、Dさんは「自己都合休業」になってしまいました。

2 業務により腰痛が悪化したのなら、労災になり得る

腰痛はビジネスパーソンであれば大抵の人が抱える悩みなので、労災と関係ないように思われがちですが、実は状況次第で労災認定されます。

具体的には業務起因性について、図表のように独自の基準が定められています。「災害性の原因による腰痛」「災害性の原因によらない腰痛」にそれぞれの基準がありますが、今回は業務中に腰をひねったことによる腰痛なので、前者(赤字部分)に注目してください。

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このケーススタディーでは、社長が「もともと腰が悪かったのなら、業務とは関係ない」と言っていますが、Dさんは点検作業中に腰をひねり、椎間板ヘルニアを疑われるほど腰を痛めているので、

医師が「業務により症状が著しく悪化した」と明確に結論付けたのなら、業務起因性が認められる可能性が高い

です。業務遂行性については、そもそも業務時間中に発生した事故ということで認められるので、このケースが労災認定される可能性も高いといえるでしょう。

3 腰痛については医師の判断に任せつつ、社内では腰痛予防対策を講じる

腰痛は製造業の現場で起きやすい職業病の1つですから、まずは前述した図表の考え方をしっかり押さえましょう。

「災害性の原因による腰痛」の場合、腰痛の悪化に医学的な根拠があるかどうかを判断するのは医師なので、社員本人や社長が勝手に判断せず、まずはきちんと医師に相談するようにしましょう。

また、毎日不自然な体勢での作業を行っていて腰痛が悪化した場合なども、「災害性の原因によらない腰痛」として労災認定されることがあります。ですから、

  • かがんで作業をしなくても済むよう、高さを調節できる作業台や椅子を用意する
  • 重量物を運ぶ作業が多い場合、腰への負担を和らげるアシストスーツを着用させる
  • 作業前に、社員全員でストレッチを中?とした腰痛予防体操をする

などの腰痛予防対策を講じて、社員が腰を痛めにくい環境をつくることが大切です。腰痛予防対策についてより詳しく知りたい場合、厚生労働省が予防のポイントやチェックリストを公表しているので参考にするとよいでしょう。

■厚生労働省「腰痛予防対策」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31158.html

以上(2025年5月作成)

pj00750
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【労災の落とし穴(製造業)】 本人のミスなら自己責任?

この記事では、現役社労士が直面した小さな製造業の労災の事例として、「保護具を着用しなかったせいで負傷した社員について、『本人のミスなので労災ではない』と判断してしまった会社」の話を紹介します(実際の会社が特定できないように省略したり、表現を変えたりしているところがあります)。

1 保護メガネを着用しなかったという理由で、労災保険を使わせなかった……

社員数20人で、溶接作業が中心の工場に勤めるCさん。ある日、業務時間中に保護メガネの着用を忘れて作業していた際、目に金属片が入ってしまいました。Cさんは作業を中断し、水で洗い流すなどの応急処置をしましたが、痛みが激しく視界もぼやけた状態です。

社長に報告したところ、「保護メガネを着用せずにけがをしたなら自己責任。会社が補償する必要はない」と言われ、Cさんも「自分のミスだから仕方ない」と思い込んでしまいます。

病院に行くと角膜に傷ができており、医師から「数日間の安静が必要」と診断されました。しかし、社長は「有給休暇を使って休むように」と指示し、労災保険を使うことを拒否。結局、Cさんは健康保険で診療を受けなければならなくなりました。

2 「本人のミスかどうか」は労災認定には関係ない

業務中の事故でけがをした場合、それが労災になるかどうかは、

  • 業務遂行性:その事故は、「会社の支配・管理下にある」ときに発生したのか
  • 業務起因性:その事故は、「業務と因果関係がある」といえるか

を基準に判断されます。つまり、

事故が「本人のミスによるものかどうか」は労災認定には関係ない

ので、「自己責任だから労災申請しなくていい」という言い分は通用しません。

このケーススタディーでは、Cさんは会社の支配・管理下にある業務時間中に、溶接作業で生じる金属片によってけがをしているので、労災認定される可能性が高いでしょう。

3 社員への「安全衛生教育」を徹底する

社員が「故意に事故を起こした」「私的な用事をしていて事故に遭った」などの特殊なケースでなければ、業務中におきたけがは、基本的に労災になるので労災保険を使うことを徹底しましょう。

また、会社には社員がけがや病気をせずに働けるよう配慮する「安全配慮義務」があるので、

「安全衛生教育」の実施体制に問題があれば、会社は労災発生の責任を問われる

こともあります。現場に「作業中は必ず保護メガネを着用すること!」などの張り紙をした上で、社長や管理職からも口頭で指導する体制を整える必要があるでしょう。

なお、社員にも自身の健康を守り、安全に働けるよう努力する「自己保健義務」があるので、安全管理を徹底させるためにも、社内規程(就業規則本則や安全衛生管理規程)で、

  • 社員には作業前に保護具を着用する義務があること
  • 着用義務に違反し、注意・指導をしても改善しない場合、懲戒処分の対象とすること

などを定めておくとよいでしょう。

以上(2025年5月作成)

pj00749
画像:ChatGPT

【新人経理向け】保有目的によって決算書に記載する金額が変わる有価証券の決算処理

1 金融商品のポイントは時価評価

決算書にはさまざまな資産が計上されますが、決算時、特に注意が必要なのが金融商品です。金融商品は大きく金融資産と金融負債に分けられ、次のようなものがあります。

  • 金融資産:現金預金、金銭債権(受取手形、売掛金、貸付金など)、有価証券(株式、公社債など)、デリバティブ取引による正味の債権
  • 金融負債:金銭債務(支払手形、買掛金、借入金、社債など)、デリバティブ取引による正味の債務

金融商品の会計処理は、

取得原価ではなく、時価評価で期末時点の価額を貸借対照表に反映

しなければなりません。

取得原価のまま決算書に載せてしまうと、その金融資産が含み損(取得時よりも時価が値下がりしていること)を抱えていたとしても、実際にそれを売却するまでは含み損があるかどうかは分かりません。また、時価評価すれば債務超過になる貸借対照表でも、取得原価のままなら健全に見えてしまう場合も考えられます。会社が倒産するまで「多額の不良債権」の存在が外部から把握できないケースもあり得るのです。

こうしたリスクをなくすために、この記事では、中小企業の経理実務に即した会計ルールである「中小会計要領」(中小企業の会計に関する基本要領)に合わせて、有価証券の評価と会計処理の方法を解説します。

2 異なる有価証券の評価方法

1)有価証券の分類と評価

中小会計要領では、原則として取得原価での会計処理になります。ただし、売買目的有価証券(短期間の価格変動により利益を得る目的で、売買を繰り返す有価証券)は時価での会計処理になります。また、時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、時価で貸借対照表に計上し、評価差額を当期の損失として減損処理しなければなりません。

2)売買目的有価証券

時価の変動による利益を得ることを目的に保有する有価証券は、

決算日の時価で貸借対照表に計上し、評価差額は当期の損益

として処理します。「時価の変動による利益を得ることを目的として保有する」とは、

時価の短期的な価格変動により利益を得ることを目的とし、同一銘柄に対して相当程度に繰り返し売買が行われる体制が整っていること

が前提です。例えば、定款に会社の目的として有価証券売買業が記載されており、有価証券売買のための人材が独立した専門部署で有価証券売買を行っている場合が挙げられます。

そのため、一般の事業会社が余剰資金の運用目的で有価証券を購入しても、その有価証券は売買目的有価証券に分類されないのが原則です。ただし、売買を頻繁に繰り返していると判断できる場合は、売買目的有価証券に分類することができます。売買目的有価証券を売却した場合、売却時点で付されている帳簿価額と売却価額との差額を当期の売却損益として処理します。なお、同一銘柄の有価証券を売買目的有価証券とそれ以外の区分で分けて保有しており、当該有価証券の一部を売却したときは、これらが社内で、明確に分別管理されていなければ、まずは売買目的有価証券を売却したものと推定します。

3)事例で確認 売買目的有価証券の会計処理

A株式(上場有価証券)を売買目的で保有しており、その有価証券の取引状況は次の通りとします。

×1年度期中においてA株式を1000万円で取得

×1年度期末のA株式の時価は1100万円

×2年度期中にA株式を1500万円で売却

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3 株や債券が大暴落したときの「減損」

1)市場価格のある有価証券の減損処理

取得原価で評価した有価証券(売買目的有価証券以外の有価証券)のうち、市場価格または合理的に算定された価額(時価)のあるものについて時価が著しく下落したとき(回復する見込みがあると認められる場合を除く)は、時価で貸借対照表に計上し、評価差額を当期の損失として評価損を計上する必要があります。

「時価が著しく下落したとき」とは、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合が当てはまります。

例えば、その他有価証券を1000万円で取得したが、期末時価が400万円に下落し、かつ、将来取得原価まで回復する見込みがはっきりしない場合には、評価損を計上する必要があります。

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次年度以降のその他有価証券の取得原価は減損処理後の金額400万円となります。なお、この評価額は税務上も損金処理できることになっています。

2)市場価格のない株式の減損処理

市場価格のない株式(証券取引所で売買されていない株式や出資金など)は取得原価で貸借対照表に計上します。また、株式の発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が著しく下がったときは相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として評価損を計上する必要があります。

「財政状態の悪化による実質価額が著しく下がったとき」とは、大幅な債務超過などでほとんど価値がないと判断できる場合などが当てはまります。

なお、この評価額は税務上も損金処理できることになっています。

以上(2025年4月)
(監修 税理士 石田和也)

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【株主総会】開催当日の進行、開催後の手続き

1 議事進行シナリオを作成する

この記事で想定するのは、中小企業に多く見られる「非公開会社」で、機関設計は「取締役会・監査役設置会社」です。非公開会社とは、

全ての株式の譲渡について、会社の承認が必要となる旨を定款に定めている会社

のことです。

さて、大きな会社では定時株主総会(以下「株主総会」)をスムーズに進めるために、

株主からの質疑を想定した想定問答集の作成、議事進行のリハーサル

を行います。しかし、特に難しい議案がない限り、株主が少ない中小企業がそこまでの準備をする必要はなく、

議事進行手順などを整理した「議事進行シナリオ」を作成

しておけば十分でしょう。

株主総会の運営方式には、

  • 一括上程方式:議案を全て上程した後に質疑応答を行って採決する方式
  • 個別上程方式:議案ごとに上程、質疑応答、採決を行う方式

がありますが、一括上程方式のほうがシンプルで、運営もスムーズといえます。

2 一括上程方式の場合の議事進行シナリオの例

1)株主総会の進め方

では、具体的に当日の議事進行についてご紹介します。一括上程方式の場合の議事進行シナリオは次の通りです。中小企業の場合、ここまできっちり行う必要はないでしょうが、一つの例として参考にしていただければと思います。

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2)株主総会の議長

通常、株主総会の議事運営をする議長は定款に定められており、一般的には代表取締役が務めます。定款で定められていない場合は株主総会で選任します。

3)決議要件の確認

株主総会の決議には、普通決議、特別決議、特殊決議の3種類があり、決められる内容や必要な要件が違います。ここでは、取締役の選任などで求められる普通決議について触れます。普通決議とは、

議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席(定足数)し、出席した株主の議決権の過半数の賛成(決議要件)による決議

です。定足数については、定款に定めることで変更・排除することができます。ただし、決議要件は変更できません。

4)採決

採決の具体的な方法は法令で定められていません。また、決議の賛否が明らかになれば、賛否の具体的な数を確定する必要もありません。そのため、採決の方法などを定款に定めていないのであれば、議長の合理的な裁量に委ねます。例えば、

異議の有無を出席者全体に尋ねる、挙手、拍手、起立、記名投票など、賛否を判定できる方法であれば問題ない

といえます。

3 議事録の作成

1)記載事項

取締役は、株主総会の議事録を作成しなくてはなりません。議事録に記載する主な事項は次の通りです。

  • 株主総会の日時および場所
  • 株主総会の議事の経過の要領およびその結果
  • 株主総会において述べられた意見または発言があるときはそれらの内容の概要
  • 株主総会に出席した取締役等の氏名または名称
  • 議長がいるときは議長の氏名
  • 議事録作成者の氏名

法令では、議事録に株主総会に出席した取締役等の氏名または名称を記載することが求められています。実際は、議事録が原本であることを判別しやすくするために、出席した取締役等の署名または記名押印をする会社が多いです。

2)作成期限

議事録の作成期限は決まっていませんが、一般的に、

株主総会後、2週間以内に作成

します。これは、商業登記の添付書類として議事録が必要な場合があり、登記事項に変更があった際は2週間以内に変更の登記をしなければならないためです。

4 決議通知書などの発送

多くの場合、株主総会の後、全株主に株主総会での決議結果を知らせるための「決議通知書」や、事業報告書、配当金関係書類などを送付します。ただ、これらの書類の提供は法令で求められてはおらず、株主との良好な関係を維持・構築するための取り組みです。

5 公告の実施

株主総会の後、遅滞なく株主総会で承認を受けた計算書類を公告しなければなりません。非大会社の場合、貸借対照表を計算書類として公告します(損益計算書は不要です)。大会社とは「資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の会社」のことなので、これ以外が非大会社となります。

公告の方法は、「官報」「日刊新聞紙」「電子公告」の中から選んで定款に定めることができます。定款に定めがない場合は官報で公告します。公告方法が官報または日刊新聞紙の場合、貸借対照表の要旨を公告すれば大丈夫です。

なお、公告方法を官報または日刊新聞紙としている場合でも、決算公告のみをインターネットのホームページに掲載して対応することができます。この場合、貸借対照表などが掲載されるウェブページのURLを登記する必要があります。

6 書面などの備え置き

株主総会に関連する書面などの中には、一定期間、本店や支店に備え置かなければならないものがあります。備え置きが必要となる主な書面などは次の通りです。また、これらの書面などについては、株主などからの請求があれば開示しなければなりません。

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7 株主総会議事録の例

【第○回定時株主総会議事録】

 

○年○月○日 午前○時、住所○○○○○○○ 当社本社○階第○会議室において、第○回定時株主総会を開催した。

出席した取締役:○○○○、○○○○、○○○○

出席した監査役:○○○○

 

定刻、代表取締役社長○○○○は、定款第〇条の定めに基づき議長席に着き、開会を宣言した。引き続き、議長は出席株主数およびその議決権個数を次の通り報告し、本総会の議案の決議に必要な定足数を充足している旨を告げた。

議決権を有する株主数:○名

総株主の議決権:○個

出席株主数:○名(議決権行使書を含む)

その議決権個数:○個

 

【議事の進行方法】

議長は、本総会の議事の進め方について、監査報告、報告事項の報告、決議事項の内容の説明の後に、報告事項および決議事項に関する質疑や動議などを一括して受け付け、その後に決議事項について採決に入る旨を説明し、議場に諮ったところ、出席株主の多数の賛成により了承された。

【報告事項】

議長は、第○期事業年度(○年○月○日から○年○月○日まで)の事業報告の内容を説明し、報告を行った。

議長は、監査役に対し、事業報告、計算書類、議案の監査結果についての監査報告を求めた。監査役○○○○氏は、監査の結果は「第○回定時株主総会招集ご通知」に添付した監査報告書謄本(別添)の通りであり、特に指摘すべき事項はない旨、また、本総会の各議案に関しても法令・定款に違反する事項および不当な事項はない旨を報告した。

【決議事項】

第1号議案:第○期事業年度に係る計算書類承認の件

議長は、決議事項の議案審議に入る旨を述べ、第1号議案を上程した。議長は、第○期事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書および個別注記表)は「第○回定時株主総会招集ご通知」に添付した計算書類の通りである旨の説明を行った。

 

第2号議案:取締役3名選任の件

議長は本議案を上程し、現在の当会社取締役である○○○○氏、○○○○氏、○○○○氏の全員の任期が本総会終結のときをもって満了となるので、取締役3名の選任を行いたい旨、その候補者3名は「第○回定時株主総会招集ご通知」記載の通りである旨を述べた。

 

【質疑と説明】

議長は株主に質疑を求めたところ、株主からの次の質疑に対して議長が次の説明をした。

  • 株主番号○:(質疑内容の要点を記載)
  • 議長:(説明内容の要点を記載)

【採決】

以上をもって質疑を終わり、議案の採決に入った。

第1号議案:満場一致をもって原案の通り承認可決された。

第2号議案:満場一致をもって原案の通り承認可決された。なお、選任された各取締役は、その場で就任を承諾した。

議長は以上をもって本日の議事を終了した旨を告げ、午前○時に閉会を宣した。

 

上記、議事の経過および結果を明確にするため、本議事録を作成する。

 

○年○月○日

株式会社○○○

 

議事録の作成者 代表取締役 ○○○○ 印

8 決議通知書の例

○年○月○日

株主各位

住所:○○○○○○○

社名:株式会社○○○

代表取締役 ○○○○

 

第○回 定時株主総会 決議ご通知

 

拝啓 平素は格別のご高配を承り厚く御礼申し上げます。

さて、本日開催の当社第○回定時株主総会において、下記の通り報告並びに決議がなされましたので、ご通知申し上げます。

敬具

 

報告事項

第○期(○年○月○日から○年○月○日まで)の事業報告、計算書類および監査役の監査結果報告の件

本件は、上記書類の内容を報告いたしました。

決議事項

第1号議案:第○期事業年度に係る計算書類承認の件

本件は、原案の通り承認可決されました。

第2号議案:取締役3名選任の件

本件は、原案の通り承認可決され、○○○○、○○○○、○○○○が就任いたしました。

以上

以上(2025年4月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 渡邉和也)

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画像:Mariko Mitsuda

賃上げ、設備投資。2025年度の注目税制を税理士が厳選!

1 税制改正大綱の内容はいつから実行される?

毎年年末に税制改正大綱が公表されますが、その内容は今すぐに実行されるわけではありません。税制改正大綱の内容を実行するための法令は、年明け1~3月に国会で審議されますし、そもそも税制改正大綱には、

その翌年度の改正だけでなく、翌々年度以降の改正

も含まれているのです。

となると、経営者や実務担当者は、税制改正大綱の内容が、いつから実行されるのかを意識しておく必要があります。そういう意味でいえば、直近の税制改正大綱の内容はどうなのでしょうか。皆さんが注目している税制が、実はまだ先のことだったら困りますよね。

そこで、この記事では、近年話題になっている様々な税制の中から、

中小企業が2025年度に使える税制

について紹介していきます。具体的には、

賃上げ、設備投資、寄附

をした、または検討している中小企業の経営者や実務担当者は確認してみてください。

なお、この記事で紹介している賃上げ、設備投資に関する税制は、中小企業者等を対象としています。中小企業者等とは、

資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人(同一の大規模法人から、発行済株式の総数または出資の総額の2分の1以上を所有されている法人などを除く)など

をいいます。

2 【賃上げ】賃上げ促進税制

賃上げ促進税制は、

中小企業が前年度よりも給与などを増やした場合に、その増加額の一部が控除できる制度

です。通常要件に加え、上乗せ措置があり、それぞれの要件を満たすごとに、一定の税額控除率が加算されます(最大の税額控除率45%)。

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例えば、給与の合計額を前年度から500万円増やした場合、75万円(=500万円×15%)を法人税額から控除できます(通常要件のみを満たした場合のケースです)。税額控除(法人税を減額するもの)なので、75万円分、納税額が少なくなります。ただ、上限金額が決まっており、税額控除前の法人税額の20%までしか控除できません。

この税制の適用を受けるためには、法人税の申告の際に、確定申告書に、税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額と、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

なお、賃上げ促進税制は税額控除であるため、

  • 法人税が発生しない赤字の会社
  • 黒字であっても、納税額が控除額より少ない会社

は要件を満たしても、その年度にメリットの全部または一部を受けられません。そのような会社には、最大5年間、控除しきれなかった額を繰り越して税額控除を受けられる措置があります。

3 【設備投資】中小企業投資促進税制・中小企業経営強化税制・固定資産税の特例

1)中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、

生産性の向上を目的に、一定の設備投資やソフトウエアを購入した場合に、その投資額の一部を税額控除か、特別償却(通常の減価償却費のかさ増し)のいずれかを選択して適用できる制度

です。ただし、資本金3000万円超の中小企業については特別償却しか適用できません。

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例えば、生産性の向上を目的に200万円の機械装置を購入して税額控除を選択した場合、14万円(=200万円×7%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、購入した設備ごとに購入金額や重量などの下限が決められています。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。

この税制は、事前の申請などは必要なく、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類を添付することで適用を受けられます。

1.特別償却の場合

  • 中小企業者等が取得した機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表
  • 適用額明細書

2.税額控除の場合

  • 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
  • 適用額明細書

2)中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、

中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて、新たな設備投資をした場合に、税額控除か即時償却のいずれかを選択して適用できる制度

です。要件は4つのタイプに分かれており、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。昨年度(2024年度)まで対象であったデジタル化設備(C類型)が除かれ、新たに経営規模拡大設備(B類型の拡充)が加えられています。

また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(別表や適用額明細書)を添付することで、適用を受けられます。

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例えば、150万円のシステム投資を行って税額控除を選択した場合、15万円(=150万円×10%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、中小企業投資促進税制と同様、購入した設備ごとに購入金額の下限が決められているので注意が必要です。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。

この税制を受けるためには、事前に経営力向上計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定までおおよそ3カ月はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(認定計画の申請書および認定書の写しや別表、適用額明細書)を添付しなければなりません。

3)固定資産税の特例

固定資産税の特例は、

中小企業等経営強化法の認定を受けた認定先端設備等導入計画に基づいて、新たな設備投資をし、かつ一定率以上の賃上げを表明した場合に、固定資産税の一部が3年間または5年間減免される制度

です。

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例えば、機械装置200万円を購入した場合、約14万円(≒200万円×1.4%×1/2。一般要件のみを満たした場合の購入初年度ケースです)の固定資産税の減免を受けられます。

この税制を受けるためには、事前に先端設備等導入計画を作成し、市区町村(東京都特別区の場合は東京都)から認定を受けなければなりません。設備投資については、認定後に行うことが必須です。なお、先端設備等導入計画の作成には1カ月程度はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、償却資産の申告の際に、一定の書類(先端設備等導入計画に係る固定資産税の課税標準の特例適用申請書や認定書の写しなど)を添付しなければなりません。

4 【寄附】企業版ふるさと納税

企業版ふるさと納税は、

会社が自治体に寄附すると、税負担を軽減することができる制度

です。軽減効果は、寄附額の最大9割とされており、内訳は、

  • 法人住民税と法人税の税額控除が4割
  • 法人事業税の税額控除が2割
  • 法人税の損金算入で約3割

です。寄附額の下限金額は10万円で、本社が所在する自治体などへの寄附は対象外となっています。寄附を募っている自治体や事業については、内閣府「企業版ふるさと納税ポータルサイト」で確認してみましょう。

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なお、企業版ふるさと納税には、個人版と異なり返礼品はありません。そのため、会社の社会貢献活動や自治体とのパートナーシップ構築などを目的に行われています。この税制を受けるためには、確定申告時に、企業版ふるさと納税の適用がある寄附を行ったことを申告するとともに、受領証の写しを提出(法人税の申告にあっては保管)しなければなりません。

以上(2025年5月作成)
(執筆 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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