「地味」で「古い」会社でも若手に刺さる「面白さ」はある(日経トップリーダー, 2024/07号)

未来を支えていくはずの若手人材が採れなくなっている。が、諦めるのはまだ早い。
自社が果たす「社会的使命」を丁寧に伝えて、志ある若者が集うようになった企業がある。
フルタイムでの採用にこだわらず、柔軟に外部人材の力を取り込む工夫も必要だ。

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聞けぬメンタル不調、高まる調査需要 経歴詐称を見抜け(後編)(日経ビジネス電子版, 2024/07/12)

採用調査では応募者の3割に問題が見つかっている。特に多いのは「経歴詐称」。採用環境が変わる中、企業の情報開示は進んできた。対照的に応募者側の情報開示に関する透明性については課題が残っている。

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アクセンチュア江川社長が語る強さの秘訣 デジタルシフトをいち早く 組織間の横連携に自信(日経ビジネス電子版, 2024/07/26)

競合からも「デジタルトランスフォーメーション(DX)1強」との声が上がるアクセンチュア。8年間で社員数は4倍に拡大し、売上高も毎年2桁成長を遂げている。江川昌史社長が日経ビジネスLIVEに登壇し、強い組織づくりのポイントを明かした。

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今こそ、人的資本経営 食品会社で世界初のISO30414認証取得、「日清流Job型」を推進(Human Capital Online, 2024/07/18)

2024年3月、日清食品ホールディングスがISO30414の認証を取得した。2021年頃から研究を始め、過去3カ年分の人的資本に関するあらゆるデータを準備した。認証取得の経緯や推進中の新たな取り組みについて、2人のキーパーソンに聞く。

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【朝礼】北口榛花選手のやりは、なぜ誰よりも遠くへ飛んだのか?

おはようございます。今日は2024年7月24日から8月11日にかけてパリで開催された、あのスポーツの祭典についてお話しします。この大会で、日本は金メダル20個を含む計45個のメダルを獲得しました。定番の柔道や体操、今大会から新たに競技に加わったブレイキンなど、今回も見どころがたくさんありましたが、私の中で特に強く印象に残ったのは、女子やり投げの北口榛花(きたぐちはるか)選手です。

やり投げはその名の通り、片手に持ったやりを遠くへ投げてその飛距離を競う、投擲(とうてき)種目の1つです。テレビで見ていると一見単純な競技に見えますが、クロスステップと呼ばれる横向きの動きで助走をつけ、速度をキープしたまま投擲に入るという、とても難しい動作を要求されます。それにスピードやバネはもちろん、最適な角度でやりを投げなければ飛距離は出ませんから、投擲にも極めて繊細な技術が求められるのです。

そんなやり投げですが、北口選手は、8月10日に行われた決勝で、1投目から65メートル80センチという圧倒的な記録を見せつけ、金メダルを勝ち取りました。しかも、この65メートル80センチという記録は、なんと北口選手の今季自己ベスト。難易度の高い競技にもかかわらず、大会の決勝という大舞台で、1投目にして自身の最高のパフォーマンスを引き出す勝負強さには、ただただ驚かされました。

一方、競技終了後にインタビューを受けた北口選手の言葉はとても謙虚なものでした。彼女は、金メダルを手にした心境を聞かれ、こう答えたのです。「夢の中では、70メートル投げられていたので、ちょっと悔しい部分もある。大事な試合で勝ち続けることは簡単じゃない。それを続けられるように頑張っていきたい。今日出なかった記録も、夢じゃなくて次はかなえられるように」と。

ここで、皆さんに考えてほしいのは「はたして北口選手は、金メダルを取るためにやりを投げていたのか」ということです。もちろん、試合に出る以上、優勝は意識していたでしょうが、北口選手の言葉を聞くと、彼女はやり投げにおいて、「他人の前に自分に勝つ」「自分の限界を超える」ということを強く意識しているように感じられます。練習でも本番でも、変わらずその思いで臨んでいるからこそ、大舞台の1投目でも全力が出せるし、その思いの強さが突き抜けているからこそ、常に先を見据えて努力することができるのではないでしょうか。彼女にとって金メダルはゴールではなく、1つの通過点なのかもしれません。

私たちのビジネスも同じです。売上や利益、業界シェア、会社が掲げる目標はさまざまありますが、それらはあくまで通過点です。私たちが会社を通じて実現したい理想、そのために「もっと成長したい」「限界を超えたい」と思い続けることが大切です。全てはその思いの積み重ね。結果は後からついてきます。

以上(2024年9月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【かんたん会社法(17)】株式会社の解散と清算

書いてあること

  • 主な読者:会社法に基づく株式会社の解散と清算の流れを把握したい人
  • 課題:解散と清算の手続きは複雑で、難しそう
  • 解決策:解散するだけでは法人格は消滅しない。解散後、残った資産や負債を処理する清算手続きが必要

1 解散と清算

株式会社(以下「会社」)にも始まりと終わりがあり、会社の始まりが設立だとすれば、終わりは解散と清算になります。設立と同様、解散と清算の手続きは会社法の定めに従う必要があります。

  • 解散:法人格を消滅させる原因となる事実のこと。原則、会社が解散するだけでは法人格は消滅しない。清算の手続きが必要
  • 清算:解散した会社の資産や負債の処理のための法的な手続きのこと。解散した会社が残った債務を全額支払うことができる場合は通常清算となり、解散した会社が債務超過で裁判所の監督のもと行われる清算の場合は特別清算となる

2 解散と清算の手続き

1)解散の理由の発生

会社は、理由なく解散することはできず、会社法で定められた次の理由が必要です。

  1. 定款で定めた存続期間の満了
  2. 定款で定めた解散の事由の発生
  3. 株主総会の特別決議
  4. 合併(合併によって消滅する会社の場合)
  5. 破産手続開始の決定
  6. 裁判所による解散命令・解散判決
  7. 休眠会社のみなし解散

以降では、3.株主総会の特別決議によって会社の解散と清算をする場合の手続きを紹介します。

2)株主総会の特別決議

会社は、株主総会を開催して、特別決議によって解散を決定します。

3)清算人の選任

清算人は、会社に必ず置かれる機関であり、清算手続きを遂行する役割を担います。清算人に就任するのは、通常、取締役であった者ですが、定款または株主総会の普通決議によって選任することもできます。

4)解散登記・清算人就任の登記

会社は、解散の日から2週間以内に、会社の本店所在地で解散登記をします。清算人についても、解散日から2週間以内に、本店所在地で清算人就任の登記をします。

5)財産目録・貸借対照表の作成

清算人は、就任後遅滞なく、会社の財産の現況を調査し、解散日現在の財産目録・貸借対照表を作成します。

清算人は、その後株主総会を開催して、作成した財産目録等・貸借対照表の承認を受けます。

6)債権者異議手続き

会社は、解散後遅滞なく、会社の債権者に対して、2カ月以上の期間を定めて、期間内に債権の申出を行うよう官報で公告し、かつ知れている債権者には個別に催告をします。

7)債権取り立て・財産換価処分・債務弁済

清算人は、会社を解散した際に未処理となっている契約の履行などの事務を終わらせ(現務の結了)、会社の債権を取り立てたり、財産を売却して換価したりするなどします。そして、前述した債権者異議手続きの期間後、全ての債権者に対して弁済を行って会社の債務を完済し、残余財産を確定させます。

8)清算事務年度の定時株主総会

清算人は、清算事務を行っている間、清算事務年度ごとに、貸借対照表、事務報告、附属明細書を作成します。清算事務年度とは、解散日の翌日から始まる各1年の期間のことです。例えば、2021年3月31日に解散した場合の清算事務年度は、2021年4月1日~2022年3月31日になります。

清算期間が長期化する場合、清算事務年度ごとに定時株主総会を開催します。清算人は、定時株主総会において、事務報告を行い、貸借対照表の承認を受けます。

9)残余財産の確定・分配

清算人は、7)の手続きで会社の債務を完済し、残余財産が確定した後、各株主の有する株式数に応じて残余財産を株主に分配します。

10)決算報告書の作成と株主総会の承認

会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、決算報告書を作成します。清算人は、株主総会を開催して、決算報告の承認を受けます。

株主総会による決算報告の承認によって、清算事務の全てが終わります(清算の結了)。

11)清算結了登記

会社は、清算が結了したときは、決算報告承認の日から2週間以内に、本店所在地で清算結了登記をします。

清算人は、この登記から10年間、清算会社の帳簿資料を保存します。

以上(2024年7月更新)
(監修 TMI総合法律事務所 弁護士 池田賢生)
(監修 TMI総合法律事務所 弁護士 梶原大暉)

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画像:Mariko Mitsuda

コーヒー栽培に農業参入チャンス! 国産市場の動向と活用事例

書いてあること

  • 主な読者:農業ビジネスへの参入を考えている経営者
  • 課題:需要の高い農作物を探している
  • 解決策:国産コーヒーの現状やビジネス環境を押さえ、参入を検討する

1 コーヒー2050年問題に見るビジネスチャンス

日本では、コーヒー豆のほとんどをブラジル、ベトナム、コロンビアといった温暖な国々からの輸入に頼っています。ですが今、気候変動の影響で、こうした国々でのコーヒー豆の収穫量が減り続けています。2050年にはコーヒー栽培に適した土地が今の半分に減るという予測もあり、これを「コーヒー2050年問題」と呼びます。

遠くない未来、気軽にコーヒーを飲めなくなるかもしれない……。そんな状況の中、

ゆっくりと広まりつつあるのが、輸入に頼らない、日本独自の「国産コーヒー」の栽培

です。中心産地の沖縄本島と奄美群島(鹿児島県)では、コーヒー栽培に参入する事業者が増え、大手食品メーカーがその支援に乗り出しています。また、コーヒーの販売だけでなく、観光農園によるコーヒーツーリズムや、コーヒー苗を観葉植物として販売するなど幅広く活用されています。

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エスプレッソマシンやカプチーノマシンなどを展開するデロンギ・ジャパンが2023年に行った調査によると、日本のコーヒー飲用量は全国平均で1日1人当たり2.04杯。旺盛な需要があるにもかかわらず、供給を輸入に依存しているコーヒーが、国産に切り替わっていくとすれば大きなビジネスチャンスです。

ただ、国産コーヒーについては、表に出ている情報がまだまだ少なく、参入したくてもポイントが分かりにくいのが悩みどころ。そこで、この記事では、

国内最大のコーヒー栽培地である沖縄県において、コーヒー栽培や6次産業化の支援をしている「沖縄コーヒー協会」へのヒアリング

などを基に、主に沖縄県の国産コーヒー市場について、市場の動向や国産コーヒーの活用事例、参入上の規制・制度などをまとめました。

2 国産コーヒー市場の動向。日本でコーヒーの木は育つのか?

1)コーヒー豆の栽培事業に成功するためのポイント

まずは、コーヒー豆栽培への参入に成功するためのポイントを紹介します。沖縄コーヒー協会の事務局長・田﨑さゆり氏によると、ポイントは次の2つだそうです。

  • 人を巻き込むこと
  • 資金計画を練ること

人を巻き込むことの重要性については、次のようにコメントをいただきました。

「コーヒーの木は、秋から春にかけて赤い実をつけて、4日ほどで黒く熟します。これを放置してしまうと、翌年の実がなりません。収益化するためには、木の栽培は400本くらいから始める必要があり、これを収穫するための人手が不足していると、失敗の原因になります。収穫時期だけでも手伝ってもらえるような人手を確保することが、何より重要です」(田﨑氏)

資金計画を練ることの重要性については、次のようにコメントをいただきました。

「台風被害を防ぐためのビニールハウスを建設するなど、コーヒー栽培は多額の初期投資が必要ですが、収穫できるようになるまでに最低でも3年はかかりますから、十分な資金計画を持って挑むことが重要です。まだまだ実績が少ないこともあって、運転資金を理由とした融資がなかなか通らないので、新規で始める方は、本業のある会社か、いわゆる半農半Xのような別に収入源がある方、定年退職後の方であることが多いです」(田﨑氏)

2)コーヒーの木が育つ条件

コーヒーの木を生育するのに最適な環境とされる地域が「コーヒーベルト」。コーヒーベルトは、北緯25度から南緯25度のエリアを意味する言葉で、日本でいうと石垣島や宮古島など、沖縄本島よりもさらに南にある小さな島々が当てはまります。ですが、コーヒーベルトの外側でコーヒーの木が育たないわけではありません。生育条件さえ満たせれば、栽培は十分に可能です。

その条件とは、

  • 平均20度ほどの気温
  • 強すぎず弱すぎない日当たり
  • 恵まれた雨量(水量)
  • 水はけのいい土壌

です。ちょっと意外だったでしょうか? コーヒーといえば、南国の灼熱の大地で育つイメージを持たれる人も多いと思います。しかし実際は、直射日光に弱い繊細な植物で、日差しの強すぎる地域では、そばに背の高い木(シェードツリー)を植えて日陰を作ってあげる必要などがあります。たしかに有名な産地にも、ブルーマウンテンやキリマンジャロといった涼しい高地が多く含まれています。

3)日本の栽培適地と、沖縄県における国産コーヒーの動向

国内でコーヒーの栽培に適している地域は、沖縄本島と奄美群島(鹿児島県)です。この地域では、100年以上前からコーヒー豆が個人栽培されていたそうで、近年、本格的な農業としての栽培が始まりました。

沖縄コーヒー協会・田﨑氏へのヒアリングによると、同県における栽培農家は70軒以上で、2023年度(収穫時期:2022年11月~2023年5月)の出荷量は約7トンでした。

近年は、栽培と販売において実績が生まれ、栽培したい人、購入したい人からの問い合わせが急激に増えているそうです。しかし、コーヒーの木は苗を植えてから収穫できるようになるまで3年、本格的な量を収穫できるようになるまで4~5年はかかり、需要の増加に対して供給が全く追いついていないというのが現状です。

4)国内のコーヒー栽培を取り巻く投資

コーヒー2050年問題に対処しようとする大手コーヒーメーカーの支援プロジェクトも進んでいます。

例えば、ネスレ日本(兵庫県神戸市)は、沖縄県名護市や琉球大学と連携、元サッカー日本代表の髙原直泰氏が代表を務める地元サッカークラブの沖縄SV(エス・ファウ)と協業して、「ネスカフェ 沖縄コーヒープロジェクト」を発足(2019年)させました。耕作放棄地の活用支援や、沖縄出身のバンド・HYのオフィシャルサポーター就任(2024年)などを通じた認知度向上にも貢献しています。

味の素AGF(東京都渋谷区)は、2017年、徳之島コーヒー生産支援プロジェクトを始動させました。奄美群島の徳之島のコーヒー農家を支援すべく、コロンビアから農業技師を招いて技術指導を実施したり、収穫祭を主催して島内産コーヒーを身近に感じてもらう取り組みをしたりしています。

5)九州以北でのコーヒー栽培

栽培適地外のはずの本州においても、和歌山県、岡山県、広島県、京都府、千葉県、長野県を始め、なんと山形県や秋田県でも栽培に挑戦している事業者や個人がいます。

大きな課題は生育環境の温度ですが、温室(ビニールハウスやガラスハウスなど)やIT技術をうまく組み合わせたり、ビニールハウス隣接の工場から出た排熱を利用したりと、工夫を凝らして栽培に取り組んでいます。

「凍結解凍覚醒法」という種子をマイナス60度まで半年もの長い時間をかけて凍結・解凍することで、15度程度の気温でも育つようにさせる方法を確立している事例もあり、地域の制限を受けない栽培方法が普及していくことが期待できます。

3 コーヒー栽培に参入するときの規制や制度

法人が農業ビジネスに参入するとき、必要とされる要件は基本的に個人と共通しています。また、コーヒー栽培特有の規制・制度はありません。ただし、農地を所有したい場合は、農地所有適格法人になる必要があります。これらの要件は、以下の通りです。

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これに加えて、農地を売買もしくは賃借する場合は、市区町村ごとに設置された農業委員会の許可を受ける必要があります。農地中間管理機構(いわゆる農地バンク)から農地を借り受ける場合は、同機構が作成する「農用地利用集積等促進計画」に必要な書類などを提出し、都道府県知事の認可を受ける必要があります。

さらに、観光農園を始める場合は、観光・体験用の設備、例えば併設カフェ・焙煎体験スペース・トイレ・駐車場などを農地に設置するとき、農地転用の手続きをして、都道府県知事もしくは指定市町村長の許可を得る必要があります。なお、市民農園整備促進法による農園開設の場合には手続きは不要です。詳しくは管轄の市区町村の農業委員会にお問い合わせください。

4 沖縄県における国産コーヒーの活用事例

1)コーヒー豆の卸先は高級サービス店

沖縄コーヒー協会の田﨑氏によると、「高級豆のブルーマウンテンが生豆1万円/キログラムのところ、沖縄県産コーヒーは生豆2~4万円/キログラムが取引相場」とのことで、一般的な飲食店やコーヒーショップにおいて取り扱われることは、今のところめったにないそうです。

購入者の一例として挙げられるのは、着物店のような高級品を取り扱っている会社です。長時間の商談になることが多く、お客様へのおもてなしとして提供する飲み物を少しでも良いものにしたいという思いから、国産で安心できる沖縄県産コーヒーを購入されるといいます。

2)菓子・ジャム・紅茶・ビールの原料に

菓子専門店の亀屋万年堂(神奈川県横浜市)は、自社の代名詞でもある商品「ナボナ」の数量限定フレーバーとして「沖縄ナボナ 珈琲とバター」を2023年5月に発売しました。この商品には、餡(あん)に沖縄県産コーヒー、生地に沖縄県産コーヒーのカスカラパウダー(乾燥させた果肉と皮をパウダー状にしたもの)を使用しています。

このように、コーヒーは豆以外の部分も利用できます。しかし、コーヒーチェリー(果肉部)は可食部が少ないことから食品として利用されることは少なく、海外では堆肥として二次利用される以外には大半が廃棄されることが多かったそうです。しかし近年は、食品ロスの観点から見直され始めており、シロップやお茶が作られています。

とはいえ、海外産は生豆になった状態のものを輸入しているため、コーヒーチェリーやコーヒーリーフ(葉)を利用した商品は、国産ならではと言えるでしょう。国内のコーヒー農園では、コーヒーチェリーのジャムや、リーフティーといった商品も作られ始めています。他にも、琉球大学発のスタートアップ企業・琉球コーヒーエナジー(沖縄県中頭郡西原町)がカスカラをブレンドした「コーヒーチェリービール」を開発するなど、さまざまな商品が生まれています。

3)収穫できる観葉植物としてオフィス導入。観光農園も人気

コーヒーの木は、観葉植物としても有名です。とある企業からは、国産であること、国内の農家から栽培のアドバイスをもらえることに着目して、オフィス勤務の社員全員のデスクにコーヒー苗の苔玉(こけだま)を設置したいという要望があったそうです。卓上の緑に癒やされ、自分で栽培したコーヒー豆を飲むこともできるという、ちょっと変わった福利厚生として企画されました。

体験の観点からは、沖縄コーヒー協会が中心となって、観光農園で豆の収穫・焙煎を体験した後、沖縄県産コーヒーを味わう「コーヒーツーリズム」を提唱しています。現在は、カフェ併設の観光農園で一連のサービスが提供されていますが、コーヒーの価格が安定すれば、地元のカフェや宿泊施設などでも提供されるといったように取り組みが広まっていくことが期待されます。

5 ゆるやかに成長してきたコーヒー市場の動向

コーヒーやコーヒー飲料の売上高の統計を取るのはとても難しいと考えられます。なぜなら、カフェにおけるコーヒーの売上高を調べるならば、飲食物とその他の飲料を分けて集計しなければならないからです。

そこで今回は、消費者の支出金額と豆の消費量の推移を調べることで、コーヒー市場の成長性を確認します。まずは、直近20年間におけるコーヒーの1世帯当たり年間支出金額の推移を見てみましょう。

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コーヒーの1世帯当たり年間支出金額は、総務省統計局「家計調査」によると、

2004年がコーヒー3974円だったのが、2023年には6134円(1.54倍)に増加

していることが分かります。これだけでは物価の上昇による変化かもしれないので、コーヒー消費量のデータも見てみましょう。

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日本のコーヒー消費量は、全日本コーヒー協会「日本のコーヒー需給表」によると、生豆換算で2004年に42万7949トンだったのに対して、

2023年には40万1627トン(0.94倍)に微減はしていますが、これほど大きな消費量が維持されている

ことが分かります。

最後に、(図表4)を参考にして、直近5年間(2019年~2023年)の動向を確認してみましょう。

2019年以降はコロナ禍の影響により一旦は消費量が減っていますが、1世帯当たりの年間支出金額はむしろ増加しました。自宅でコーヒーをいれる「おうちカフェ」が流行していたことが要因の一つだと考えられます。新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した2022年には豆の消費量も回復し、コーヒーの根強い需要を示しています。

2023年は、豆の消費量が前年度比7.2%の減少となりました。原因を全日本コーヒー協会にヒアリングしたところ、「価格の高騰が一つの要因になっているのではないか」とのことでした。なお、2024年1月~5月の速報値では、前年度比7.0%の増加となっており、回復基調にあると考えられます。

以上(2024年8月作成)

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画像:amenic181-Adobe Stock

(国税編)どこまで知ってる「日本の税金50種」

書いてあること

  • 主な読者:税金に関する知識を広げたい人
  • 課題:「インボイス」や「定額減税」など税金に関する話になったけれど、日本にはどのような税金があるのか、実は詳しく知らない
  • 解決策:日本の税金の種類や、それぞれ何に対して課されているかなどについて知っておくことで、自分がどのような税金を払っているのかなど、税に対する意識を高めていく

1 日本に存在する税金の種類は、何種類?

最近ニュースなどを見ていると、インボイスや定額減税はもちろん、インバウンド増加に伴う観光税の導入論や、ガソリン代高騰によるガソリン税廃止論など、とにかく税金の話が出てきます。また、実生活で、車や不動産を購入すると、自動車税、自動車重量税、不動産取得税、固定資産税など多くの税金が絡んできます。では、ここで質問です。

みなさんは現在日本に存在する税金が何種類あるかご存じでしょうか?

法人税や所得税、消費税などはなじみ深いのでご存じだと思いますが、日本にはそれ以外にも多くの税金が存在し、その数はなんと約50種類。なお、次の図表上の分類方法については次の章以降で解説します。

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自分の生活に直接かかわる税金も、そうでない税金も、自分の住んでいる社会でどのような税負担があるのか知っておいて損はありません。まずは、興味のある税金からチェックしてみましょう。

この記事は、日本に存在するそれぞれの国税の概要をまとめています。地方税については、次のリポートをご参照ください。

2 税金の分類方法

税金の分類方法はさまざまですが、この記事では、以下の2つに分類(カテゴリー分け)してみます。

1)税金を納める場所がどこか? に着目した分類

国税と地方税とがあります。

  • 国税:国に納める税金
  • 地方税:地方公共団体に納める税金

2)何に対してかかるか(課税されるか)? に着目した分類

所得課税、資産課税等、消費課税があります。

  • 所得課税:所得や利益に対して課される税金
  • 資産課税等:その資産を保有していることに対して課される税金
  • 消費課税:商品やサービスを購入したり使ったりすることに対して課される税金

3 国税のうち、所得課税に分類される税金

1)所得税

所得税は、個人の所得(年間の収入から経費や所得控除などを差し引いて計算した金額)に対して課される税金です。税率は所得額に応じて異なり、所得額が高くなるほど上がります。これを「累進課税」といいます。具体的には、

所得額の区分別に5~45%

となり、次のようになります。

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所得税は、年に一度(原則2月16日~3月15日)、確定申告をして納付します。なお、会社員(パート含む)への給与やフリーランスの報酬(一定の報酬を除く)など、会社から支払われるものについては、支払時点で所得税を徴収し、会社が本人に代わって納付する源泉徴収制度があります。さらに、会社員については年末調整により、所得税が精算されるので、原則確定申告は不要です。

2)法人税

法人税は、会社の所得(税務上の利益)に対して課される税金です。税率は原則、

23.2%

です。ただし、

企業規模の小さい中小企業には、一部所得に対して軽減税率(15%または19%)

が適用されます。

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原則として、法人税は事業年度の終了日から2カ月以内に確定申告をし、納付します。なお、定時株主総会が事業年度の終了日の翌日から3カ月以内に行われることが定款に定められており、期限内に決算が確定しない場合は、申請書を税務署に提出することで申告期限を1カ月延長することができます。ただし、納付期限については延長されるわけではないため、納付は見込みの金額で行い、確定後差額を精算します。

3)地方法人税

地方法人税は、法人税額をベースに課される税金です。国が徴収し、地方自治体に対する地方交付税の財源として使われます。税率は原則、

10.3%

です。

原則として、申告・納付については法人税と同様に事業年度の終了日の翌日から2カ月以内に行います。

4)特別法人事業税

特別法人事業税は、法人事業税の一部を分離して創設され、法人事業税の一部(基準法人所得割額または基準法人収入割額)をベースに課される税金です。地域間の経済格差を是正するためのもので、2019年10月1日以降に始まる事業年度から適用されています。税額は、法人事業税に基づいて計算され、

企業の資本金に応じて30%から260%

です。

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原則として、申告・納付については法人税と同様に事業年度の終了日の翌日から2カ月以内に行います。

5)復興特別所得税

復興特別所得税は、東日本大震災の復興資金を確保するため、所得税額をベースに課される税金です。震災からの復興事業を支援するため、2013年から2037年までの25年間、所得税額に対して追加的に課税されます。税率は2.1%です。

申告・納付については原則、所得税と同様で、確定申告をして納付をします(会社員などへの給与や一定の報酬については源泉徴収制度)。

6)森林環境税

森林環境税は、森林の整備や保全を支援するため、国民1人ひとりに課される税金です(未成年や障がい者、その他所得が一定額以下の人などを除く)。2024年度から、住民税の均等割(定額で課される住民税)に加算される形で納税者1人当たり年間1000円徴収されます。

4 国税のうち、資産課税等に分類される税金

1)相続税

相続税は、被相続人の死亡により受け継ぐ財産に対して課される税金です。

税率は

法定相続分に応じた取得金額の区分別に10%から55%

までとなっており、取得金額が大きいほど高い税率が適用されます。なお、相続税には基礎控除額(3000万円 + 法定相続人の数 × 600万円)があるため、相続財産の総額が基礎控除額以下である場合には相続税は課税されません。

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相続税は、被相続人の死亡を知った日(相続の開始があったことを知った日)の翌日から10カ月以内に確定申告をし、納付をします。もし、遺産分割がまだ完了していない場合でも、期限内にその時点で確定した内容で、仮の申告(未分割申告)・納税をし、確定後、修正申告等・納税等を行います。

2)贈与税

贈与税は、他の人から財産を贈与された場合に、その1年間に受け取った財産に対して課される税金です。

税率は、

課税価格(贈与を受けた財産の合計額-基礎控除額110万円)の区分に応じて10%から55%

となっており、課税価格が大きいほど高い税率が適用されます。ただし、贈与を受けた財産の合計額が基礎控除額以下なら贈与税は課されません。また、贈与をした人と受けた人の関係により、適用される税率が異なる場合もあります。

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贈与税は、財産を贈与された翌年の2月1日から3月15日まで申告をし、納付します。

3)登録免許税

登録免許税は、不動産やその他財産の取得、会社設立などの登記や登録、特許などの許認可手続きの際に、財産の価額や重量、登記の件数などをベースとして課される税金です。税率(または税額)は、

財産や登記の種類ごと

に定められています。

申告は不要で、登記などを行う際にその行った法務局等で納付します。原則、現金で納付しますが、登録免許税の額が3万円以下の場合などには収入印紙を申請書に貼付する方法(印紙納付)も認められています。また、2024年1月より、オンラインによる申請については、クレジットカードやペイジーなどによる電子納付などもできるようになっています。

4)印紙税

印紙税は、法律で定められた課税文書を作成した場合に、その文書に対して課される税金です。課税対象となる文書は、

取引に係る契約書、手形、株券など20種類の文書に区分されており、それぞれの区分ごとに規定されている金額に応じて

税額が定められています。なお、印紙税は紙の文書に対して課されるものであるため、電子契約書については課税されません。

まず郵便局やコンビニなどで収入印紙を購入します。購入時点では印紙税を納付したことにはならず、文書に収入印紙を貼り、消印(収入印紙とその文書にまたがって押す印)を押すことで納付したこととされます。申告は不要ですが、取り交わす文書が課税文書に該当するかどうか各自で確認することになります。

5 国税のうち、消費課税に分類される税金

1)消費税

消費税は、商品やサービスの購入・利用することに対して課される税金です。なお、土地の売買や病院などで受ける社会保険医療など一定の取引(非課税取引という)については、消費税が課されません。

税率は、

  1. 軽減税率(8%):酒類・外食を除く飲食料品の購入や新聞の定期購読への適用税率
  2. 標準税率(10%):それ以外の取引への適用税率

の2つがあります。それぞれ、次のように内訳が決まっています。

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申告は、消費税を消費者から預かった事業者側が行います。法人の場合、期限については原則、事業年度が終了した日から2カ月以内に確定申告をし、納付します。法人税同様、申請書を税務署に提出することで申告期限を1カ月延長することができます(法人税の申告延長をしている法人に限る)。ただし、納付期限については延長されるわけではないため、納付は見込みの金額で行い、確定後差額を精算します。

2)酒税

酒税は、アルコール飲料の出荷等に対して課される税金です。税率は、

アルコール飲料を4種17品目に分類し、それぞれの分類ごとに1キロリットル当たりの税額

が定められています。例えば、1キロリットル当たりでは、

  • ビール:18万1000円
  • 日本酒(清酒):10万円
  • ウイスキー:37万円(アルコール度が37度を超えると1度ごとに1万円加算)

となります。

申告は、酒類の製造者が1カ月分ごとに行います。期限については、原則、製造場から出荷等した月の翌月末日までに申告し、出荷等した月の翌々月末日までに納付します。輸入の場合は、原則、輸入時に輸入申告と関税の申告納付にあわせて、酒税の申告・納付をします。

3)たばこ税・たばこ特別税

たばこ税は、たばこ製品の販売等に対して課される税金です。たばこに関する税金は、国税である「国たばこ税」と「たばこ特別税」、地方税である「都道府県たばこ税」「市区町村たばこ税」に区分されます。

税率は、

  • 国たばこ税:1000本当たり6802円
  • たばこ特別税:1000本当たり820円
  • 都道府県たばこ税:1000本当たり1070円
  • 市区町村たばこ税:1000本当たり6552円

となります。合計で1000本当たり1万5244円となり、たばこ1本当たり15.2円の税金が含まれる計算です。

申告は、たばこの製造者が1カ月ごとに行います。期限については、原則、販売した月の翌月末日までに申告・納付します。輸入の場合は、原則、引き取り時に輸入申告と関税の申告納付にあわせて、たばこ税の申告・納付をします。

4)揮発油税・地方揮発油税

揮発油税は、一般的にガソリン税といわれ、ガソリンの出荷等に対して課される税金です。ガソリンに関する税金は国税である揮発油税と、地方税である地方揮発油税に区分されます。

税率は原則、

  • 揮発油税:1キロリットル当たり2万4300円(本則税率)
  • 地方揮発油税:1キロリットル当たり4400円(本則税率)

となります。合計で1キロリットル当たり2万8700円となり、ガソリン1リットル当たり28.7円の税金が含まれる計算です。

申告は、揮発油の製造者が1カ月ごとに行います。期限については、原則、出荷等した月の翌月末日までに申告・納付します。輸入の場合は、原則、引き取り時に輸入申告と関税の申告納付にあわせて、揮発油税・地方揮発油税の申告・納付をします。

5)石油ガス税

石油ガス税は、LPガス税ともいわれ、車の燃料として使われるLPガスの出荷等に対して課される税金です。税率は原則、

1キログラム当たり:17.50円

となります。

申告は、LPガス容器に充填するスタンド業者が1カ月ごとに行います。期限については、原則、出荷等した月の翌月末日までに申告し、出荷等した月の翌々月末日までに納付します。輸入の場合は、原則、引き取り時に輸入申告と関税の申告納付に合わせて、石油ガス税の申告・納付をします。

6)航空機燃料税

航空機燃料税は、航空機用の燃料の航空機への積み込みに対して課される税金です。税率は原則、

1キロリットル当たり2万6000円

となります。

申告は、航空機の所有者、または整備・試運転者が1カ月ごとに行います。期限については、原則、積み込みをした月の翌月末日までに申告・納付します。なお、海外に離着陸する航空機に対する燃料の積み込みについては、国際的な慣行により、相互に非課税となっています。

7)石油石炭税

石油石炭税は、原油、ガス状炭化水素、石炭といった燃料を採取場から搬出等することに対して課される税金です。税率は燃料の種類ごとに異なり、

  • 原油・石油製品:1キロリットル当たり2800円
  • ガス状炭化水素:1トン当たり1860円
  • 石炭:1トン当たり1370円

となります(それぞれ、地球温暖化対策のための税率の特例による加算額を含みます)。

申告は、原油等の採取者が1カ月ごとに行います。期限については、原則、採取した月の翌月末日までに申告・納付します。

8)電源開発促進税

電源開発促進税は、電気を販売することに対して課される税金です。税率は、

販売する電気1000キロワット毎時当たり375円

となります。

申告は、電力を供給する送配電事業者(一般送電配事業者等)が1カ月ごとに行います。期限については、原則、販売した電気料金の支払いを受ける権利が確定した月の翌月末日までに申告・納付します。

9)自動車重量税

自動車重量税は、所有している自動車の重量に対して課される税金です。税額は、車両重量や購入からの経過年数、種別、用途ごとに設定されており、例えば普通自動車(エコカー減税対象外)の場合、

  • 新規登録時:車両重量0.5トンごとに7500円ずつ加算した金額
  • 新規登録~13年未満:車両重量0.5トンごとに8200円ずつ加算した金額
  • 新規登録~13年以上18年未満:車両重量0.5トンごとに11400円ずつ加算した金額

となります。なお、燃費基準に適合した車や環境に配慮した車には減免措置(エコカー減税)が設けられており、免税や税額軽減措置が受けられます。

申告は不要で、自動車の新規登録(新規検査)と購入後の車検時に印紙を納付書に貼り付けることで納付します。

10)国際観光旅客税

国際観光旅客税は、日本から出国することに対して課される税金です。税額は、

一定の場合を除き、国籍、渡航手段などに関係なく、一律で1000円

です。なお、2歳未満の子供や乗り継ぎで入国後24時間以内に出国する場合など特定の条件に該当する場合は免除されます。

申告は、原則、航空券や乗船券の販売に合わせて消費者らから航空会社や船舶会社が徴収し、旅行者が出国する月の翌々月末日までに納付します。

11)関税

関税は、外国から輸入されるものに対して課される税金です。税率は、

  1. 基本税率:自国で設定した、関税定率法で定められた税率
  2. 暫定税率:相手国間と特殊事情がある場合などに暫定的に適用され、関税暫定措置法で定められた税率
  3. 特恵税率:開発途上国のうち、日本側がこの税率を認めた国(特恵受益国)を原産地とする輸入品に対して適応される税率
  4. 特別特恵税率:上記の特恵受益国のうち、後発開発途上国(LDC)を原産地とする輸入品に対して適用される税率(すべて無税扱いとなる)
  5. WTO協定税率:WTO加盟国を原産地とする輸入品に対して、それ以上の関税を課さないことを約束(譲許という)されており、WTO協定の譲許表に定められている税率
  6. 経済連携協定(EPA)税率:日本と特定の国との間で結ばれた経済連携協定(EPA)で定められている税率

に区分されます。

申告・納税は、

  • 申告納税方式:外国から一般貨物や課税価格が20万円を超える一定の郵便物を輸入する場合に適用され、物の品名、数量、課税標準、税額等を輸入者が申告し、銀行窓口などで納付する方法
  • 賦課課税方式:外国から日本へ自身が入国した場合などは、携帯品・別送品申告書に必要事項を記入して税関に提出し、税関が計算した税額を税関検査場内の銀行窓口または税関職員に納付する方法

があります。なお、申告納税方式の場合には、専門の通関業者に委託し、通関業務(申告から納税の立て替え)の代行してもらうケースが一般的です。のちに、通関業者に対して、立て替え金と委託料等を合わせて支払います。

12)とん税・特別とん税

とん税は、外国貿易船が港に入る際に、船の総トン数に対して課される税金です。また、とん税とあわせて徴収される特別とん税については、地方自治体に譲与される仕組みとなっています。税率は原則、納付の方法ごとに定められており、

  1. 都度納付:とん税が16円(総トン数1トンまでごとに)、特別とん税が20円(総トン数1トンまでごとに)で、入港ごとに納付する方法
  2. 一時納付:とん税が48円(総トン数1トンまでごとに)、特別とん税が60円(総トン数1トンまでごとに)で、開港ごとに1年分をまとめて納付する方法

の2種類となっています。

以上(2024年8月作成)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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(地方税編)どこまで知ってる「日本の税金50種」

書いてあること

  • 主な読者:税金に関する知識を広げたい人
  • 課題:「インボイス」や「定額減税」など税金に関する話になったけれど、日本にはどのような税金があるのか、実は詳しく知らない
  • 解決策:日本の税金の種類や、それぞれ何に対して課されているかなどについて知っておくことで、自分がどのような税金を払っているのかなど、税に対する意識を高めていく

1 日本に存在する税金の種類は、何種類?

最近ニュースなどを見ていると、インボイスや定額減税はもちろん、インバウンド増加に伴う観光税の導入論や、ガソリン代高騰によるガソリン税廃止論など、とにかく税金の話が出てきます。また、実生活で、車や不動産を購入すると、自動車税、自動車重量税、不動産取得税、固定資産税など多くの税金が絡んできます。では、ここで質問です。

みなさんは現在日本に存在する税金が何種類あるかご存じでしょうか?

法人税や所得税、消費税などはなじみ深いのでご存じだと思いますが、日本にはそれ以外にも多くの税金が存在し、その数はなんと約50種類。なお、次の図表上の分類方法については次の章以降で解説します。

画像1

自分の生活に直接かかわる税金も、そうでない税金も、自分の住んでいる社会でどのような税負担があるのか知っておいて損はありません。まずは、興味のある税金からチェックしてみましょう。

この記事は、日本に存在するそれぞれの地方税の概要をまとめています。国税については、次のリポートをご参照ください。

2 税金の分類方法

税金の分類方法はさまざまですが、この記事では、以下の2つに分類(カテゴリー分け)してみます。

1)税金を納める場所がどこか? に着目した分類

国税と地方税とがあります。

  • 国税:国に納める税金
  • 地方税:地方公共団体に納める税金

2)何に対してかかるか(課税されるか)? に着目した分類

所得課税、資産課税等、消費課税があります。

  • 所得課税:所得や利益に対して課される税金
  • 資産課税等:その資産を保有していることに対して課される税金
  • 消費課税:商品やサービスを購入したり使ったりすることに対して課される税金

3 地方税のうち、所得課税に分類される税金

1)住民税

1.個人住民税

個人住民税は、その地域に住む個人に対して課される税金です。個人住民税は、都道府県民税と市町村民税に分かれ、それぞれ「均等割(均等に一定額が課される)」と「所得割(その人の所得を基に課される)」によって計算されます標準税率は、

  • 均等割:都道府県民税が1500円、市区町村民税が3500円の合計5,000円
  • 所得割:都道府県民税が4%、市町村民税が6%の合計10%

です。標準税率とは、地方税法で定められた税率のことで、各自治体が一定の範囲内でその税率と異なる税率(制限税率)を定めることができます。

申告は、会社員など給与所得者であれば給与から天引きされる「特別徴収」が行われるため、申告は不要です。フリーランスや個人事業主など給与所得以外の収入がある場合は確定申告を行い、住民税の計算に必要な情報を税務署に申告します。納付は、給与から天引きされる「特別徴収」と、年4回(6月、8月、10月、1月)の分割払いで納付書に基づいて納付する「普通徴収」の2つの方法があります。特別徴収の場合には会社が代わりに、毎月10日までに納付します。

2.法人住民税

法人住民税は、その地域に事業所を持つ会社に対して課される税金です。法人住民税は、法人都道府県民税と法人市町村民税に分かれ、それぞれ「均等割(資本金等の額と従業員数に応じて一定額が課されるもの)」と「法人税割(その会社の法人税額を基に課されるもの)」によって計算されます(東京23区内の法人都民税は、法人市町村民税分を分けず、合わせて計算されます)。

標準税額は、

  • 均等割:都道府県民税が2~80万円、市町村民税が5~300万円で、資本金等の額と従業員数に応じて金額が決められる
  • 法人税割:道府県民税が法人税額の1.0%、市町村民税が法人税額の6.0%

です。個人住民税同様、各自治体が一定の範囲内でその税率と異なる税率(制限税率)を定めることができます。

申告・納付については、法人税と同様に原則、事業年度終了日の翌日から2カ月以内に行います。

2)事業税

1.個人事業税

個人事業税は、その地域で一定の事業を行う個人事業主などの所得に対して課される税金です。税率は第1~3種に区分された業種ごとに異なり、

  • 第1種事業(物品販売業、運送取扱業など37業種):5%
  • 第2種事業(畜産業、水産業、薪炭製造業の3業種):4%
  • 第3種事業(医業、弁護士業など30業種):5%
  • 第3種事業のうち、あんま・マッサージその他医業に類する事業、装蹄師業:3%

となっています。

申告は、所得税の確定申告書または個人住民税の申告書を提出した人は必要ありません。ただし、所得税の確定申告書の「住民税・事業税に関する事項」または個人住民税申告書の「事業税に関する事項」に必要事項の記載が必要です。納付は、都道府県から送付される納税通知書に基づき行います。納税通知書に記載された期限内に納付します。

2.法人事業税

法人事業税は、その地域で事業を行う会社に対して課される税金です。法人事業税は、資本金の額または出資金の額(以下「資本金の額」)に応じて、

  • 「所得割(その会社の所得を基に課される)」のみ課される会社と、
  • 外形標準課税(「付加価値割(その会社の損益や給与額、利子、賃借料の合計を基に課されるもの)」、「資本割(その会社の資本金を基に課されるもの)」、「所得割」)が課される会社

に分かれます。ここでは、資本金の額が1億円以下の普通法人等(電気・ガス供給業、保険業以外を営む会社)について解説します。税率は、次の通りです。

画像2

申告・納付については、法人税と同様に原則、事業年度終了日の翌日から2カ月以内に行います。

4 地方税のうち、資産課税等に分類される税金

1)不動産取得税

不動産取得税とは、不動産の購入、交換、贈与、家屋の建築・改築などで取得した不動産価額(原則、固定資産税課税台帳に登録された固定資産の評価額)に対して課される税金です。なお、社会福祉法人や医療法人など一定の法人が一定の使用目的で取得した不動産に対しては不動産取得税が課されません。税率は

原則4%で、現在、土地と住宅については軽減税率の3%

が適用されます。

申告は、都道府県ごとに定められた期限内(例えば東京都の場合は、取得の日から30日以内)に行い、のちに納税通知書が送られてきます。納付は、納税通知書に基づき行います。納税通知書に記載された期限内(原則発送月の月末)に納付します。

2)固定資産税

固定資産税は、毎年1月1日時点で所有している土地、家屋、償却資産の評価額に対して課される税金です。なお、固定資産の評価額(税率を乗じる基になる金額)が土地なら30万円、家屋なら20万円、償却資産(土地、家屋以外の資産で、事業用に使用するもの)なら150万円に満たない場合は固定資産税が課税されません。税率は

原則1.4%ですが、市町村ごとに異なる税率

を定めることができます。住宅用地や新築住宅などに対しては軽減措置が適用されるため、通常よりも低い税負担で済む場合があります。

固定資産税の申告は、土地・家屋と、償却資産で異なります。土地・家屋については、申告は必要ありません(登記時に市区町村が把握できるため)。一方、償却資産については、毎年1月末日までにその年の1月1日時点で所有している償却資産について申告が必要になります。納付は、地方自治体から送付される納税通知書に基づき行います。年4回(6月末、9月末、12月末、2月末まで)の分割払いが可能であり、納税通知書に記載された期限内に納付します(一括払いの場合の期限は6月末)。

3)特別土地保有税

特別土地保有税は、投資目的などで取得または所有している一定規模以上の土地の取得価額に対して課される税金です。なお、2003年以降は課税の停止措置が取られています。税率は、

  • 保有の場合には、原則1.4%
  • 取得の場合には、原則3%

です。

現在は課税停止となっているため、申告・納税ともに必要ありません。

4)法定外普通税

法定外普通税は、地方税法に定められていない税金で、地方自治体が地域の状況やニーズに基づいて設定する税金です。現在(2024年4月1日時点)、全国で22件の法定外普通税が実施されています。主な例として、

  • 別荘等所有税(静岡県熱海市で実施):所有している別荘などの延べ床面積1平方メートルにつき650円
  • 歴史と文化の環境税(福岡県太宰府市で実施):駐車行為1回につき、車種別に50~500円

などがあります。

5)事業所税

事業所税は、特定の都市部において一定規模以上の事業所の面積や給与総額に対して課される税金です。なお、床面積が1000平方メートル以下の事業所で、指定された都市内における従業員数が100人以下の事業者には課税されません。税率は、事業所の床面積に対する「資産割」と給与総額に対する「従業者割」で分かれ、原則

  • 資産割:事業所床面積(平方メートル)×税率600円
  • 従業者割:従業者給与総額×税率0.25%

となります。

事業所税の申告は、法人の場合は事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に、個人事業主の場合は毎年3月15日までに申告し、納付します。

6)都市計画税

都市計画税は、都市計画区域(都市計画法に基づいて整備、開発、保全が必要と認められている地域)内に所有している土地と家屋の評価額(固定資産評価基準に基づいて計算された価額)に対して課される税金です。税率は

原則0.3%以下で、市区町村ごとに定めた率

となります。なお、住宅用地については固定資産税と同様に、評価額の一部を減額する特例措置があります。

都市計画税の申告は、固定資産同様、必要ありません(登記時に市区町村が把握できるため)。納税についても、固定資産税の納税通知書と併記されて送られ、納税についても固定資産税と同様の取り扱いとなります。

7)水利地益税

水利地益税とは、治水や利水に関する公共事業で直接恩恵を受ける土地、家屋の価額や面積に対して課される税金です。たとえば、河川の堤防整備や排水機場の設置などの事業によって、浸水リスクの低減や農業生産の向上などの恩恵を受ける地域の土地所有者に課されます。税率は、

課税を実施する市区町村が条例で設定(例えば、岐阜県羽島市では3150円/1000平方メートル)

します。

水利地益税の申告や徴収方法も、市区町村が条例で定める方法によるとされます。例えば、岐阜県羽島市では、所有している田の耕作者、地目などの変更がある場合、申請書を1月31日までに提出し、送付される納税通知書に基づき納付します。

8)共同施設税

共同施設税は、地域の生活を支える共同施設(公民館や体育館など)の維持や管理のために、その共同施設の利用によって得られる利益に対して課される税金です。

なお、現在、共同施設税の課税を実施している地方自治体はありません。

9)宅地開発税

宅地開発税は、宅地開発に伴うインフラ整備(排水路、緑地、公園など)などのために、一定面積以上の宅地開発を行う際に課される税金です。

なお、現在、宅地開発税の課税を実施している地方自治体はありません。

10)国民健康保険税

国民健康保険税とは、国民健康保険に加入する世帯に対して課される税金です。国民健康保険は、自営業者や退職者などが加入する健康保険で、市区町村ごとに、保険「料」の形式をとるか、保険「税」の形式をとるかのいずれかの方法を選択されています。

税額は、

市区町村ごとの年間の医療給付費、被保険者の所得や被保険者数により変動

します。

国民健康保険税の申告は、所得税・住民税の確定申告をしている人、給与・年金等の支払報告書が市区町村から送られている人は必要ありません。市区町村が前年度の所得を把握できない世帯には所得申告書が送られてくるので、必要事項を記入後返信が必要です。納税については、送付される納税通知書に基づき納付します。

11)法定外目的税

法定外目的税は、地方税法に定められていない税金で、地方自治体が特定の目的のために設定する税金です。現在(2024年4月1日時点)は全国で45件が実施されています。主な例として、

  • 宿泊税(東京都、大阪府、福岡県、京都府京都市、石川県金沢市などで実施):東京都の場合、1泊1万円以上1万5000円未満については100円/1泊となります。地方自治体ごとに税率は異なります
  • 美ら海税(沖縄県座間味村で実施):1回の入域につき1人100円

などがあります。

7 地方税のうち、消費課税に分類される税金

1)地方消費税

消費税(地方消費税含む)は、商品やサービスの購入・利用すること対して課される税金です。なお、土地の売買や病院などで受ける社会保険医療など一定の取引(非課税取引という)については、消費税が課税されません。

税率は、

  1. 軽減税率(8%):酒類・外食を除く飲食料品の購入や新聞の定期購読への適用税率
  2. 標準税率(10%):それ以外の取引への適用税率

の2つがあります。それぞれ、次のように内訳が決まっています。

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消費税の申告は、消費税を消費者から預かった事業者側が行います。期限については事業年度が終了した日から2カ月以内に確定申告をし、納付します。法人税同様、申請書を税務署に提出することで申告期限を1カ月延長することができます(法人税の申告延長をしている法人に限る)。ただし、納付期限については延長されるわけではないため、納付は見込みの金額で行い、確定後差額を精算します。

2)地方たばこ税

たばこ税(地方たばこ税を含む)は、たばこ製品の販売等に対して課される税金です。たばこに関する税金は、国税である「国たばこ税」と「たばこ特別税」、地方税である「都道府県たばこ税」「市区町村たばこ税」に区分されます。

税率は、

  • 国たばこ税:1000本当たり6802円
  • たばこ特別税:1000本当たり820円
  • 都道府県たばこ税:1000本当たり1070円
  • 市区町村たばこ税:1000本当たり6552円

となります。合計で1000本当たり1万5244円となり、たばこ1本当たり15.2円の税金が含まれる計算です。

たばこ税の申告は、たばこの製造者などが1カ月ごとに行います。期限については、原則、販売した月の翌月末日までに申告・納付します。輸入の場合は、原則、引き取り時に輸入申告と関税の申告納付にあわせて、たばこ税の申告・納付をします。

3)ゴルフ場利用税

ゴルフ場利用税は、ゴルフ場を利用する際に利用者に対して課される税金です。なお、18歳未満、70歳以上、障害者、国体・国際競技大会のゴルフ競技(公式練習を含む)に参加する選手が利用した場合や、学校の教育活動として利用した場合には課税されません。税額は、

標準税率が800円(1人1日当たり)で、最大1200円まで都道府県ごとに設定

されています。

ゴルフ場利用税の申告は、ゴルフ場利用税を預かっているゴルフ場の経営者などが行います。期限については1カ月分まとめて、翌月15日(または都道府県によっては指定された日)までに申告、納付します。

4)軽油引取税

軽油引取税は、自動車の燃料である軽油の引き取り(購入)に対して課される税金です。なお、農林水産業や特定の産業用途に利用される軽油に関しては一定の条件のもと、非課税措置や免除が設けられています。税率は、

1キロリットルあたり3万2100円

です。

軽油引取税の申告は、軽油引取税を預かっている元売業者や特約業者(ガソリンスタンドの経営者など)が1カ月ごとに行います。期日については、原則、毎月分をまとめて翌月末日までに申告し、納付します。

5)自動車税・軽自動車税

自動車税・軽自動車税は、毎年4月1日時点で所有している自動車・軽自動車に対して課される税金です。税額は、用途や排気量や新規登録の時期に応じて設定されており、

  • 自家用乗用車:総排気量に応じて2万9500円~11万1000円(2019年10月1日以降に新車登録したもの)
  • 自家用乗用軽自動車:1万800円

となっています。なお、燃費基準に適合した車や環境に配慮した車には特例措置が設けられており、2026年3月31日までに新車登録を行った場合は、燃費基準の達成度合により概ね75%の減税が設定されています。また、新車登録から13年超経過した自動車(電気自動車など環境性能の高いエコカーは除く)に対しては通常の税率に追加で一定の率がかかります。

自動車税の申告は、新規登録時や名義変更時などに運輸支局または自動車検査登録事務所に併設されている自動車税事務所に提出し、初回納税を行います(一定の場合を除く)。2年目以降の納税については、送付される納税通知書に基づき、毎年5月末日までに納付します。

6)鉱区税

鉱区税は、地下に埋蔵されている鉱物を採掘する権利(鉱業権)に対して課される税金です。税額は原則、

  • 砂鉱(砂金、砂鉄、砂すずなどの金属鉱のこと)を目的としない鉱業権の鉱区
    1. 試掘鉱区(実際の採掘をする前に鉱物の有無などを調査するための採掘を行う鉱区):面積100アールごとに年額200円
    2. 採掘鉱区:面積100アールごとに年額400円
  • 砂鉱を目的とする鉱業権の鉱区:面積100アールごとに年額200円

です。

鉱区税の申告は、鉱業権を保有している人が取得した際(期限については都道府県ごとに異なります。東京の場合は取得日から7日以内)に申告します。納税については、送付される納税通知書に基づき、毎年5月末日までに納付します。

7)狩猟税

狩猟税は、狩猟を行うのに必要な狩猟免許を取得した人に対して課される税金です。税額は原則、

免許の種類に応じて、5500円から1万6500円まで

となります。

狩猟税の申告は、狩猟者の登録申請をしたときに行い、同時に納付も行います。

8)鉱産税

鉱産税は、鉱山で金属鉱石や石炭などの鉱産物の価額に対して課される税金です。税率は原則、

標準税率は1%とされ、最大1.2%まで市区町村ごとに設定

されています。

鉱産税の申告については、鉱物の掘採の事業を行う鉱業者が1カ月ごとに行います。期日については、原則、毎月分をまとめて翌月末日までに申告し、納付します。

9)入湯税

入湯税とは、温泉や鉱泉を利用する入湯客に対して課される税金です。一般的には温泉地や温泉施設での宿泊や入浴時に課されます。税率は原則、

入湯客1人当たりの定額で150円

です。なお、市町村によって異なる場合があり、日帰りや宿泊の利用形態により細かく設定されている場合もあります。

入湯税の申告については、入湯税を預かっている温泉施設や旅館などの経営者が1カ月ごとに行います。期日については、毎月分をまとめて翌月末日(または都道府県によっては指定された日)までに申告し、納付します。

以上(2024年8月作成)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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【中堅社員のスピーチ例】キングカズに学んだ生涯現役の心得

おはようございます。私が入社してからそれなりに長い年月がたちました。今もなお現場で働いていますが、年齢的には「ベテラン」の域になり、プレーヤーとしての仕事よりも、後輩の指導や他のメンバーの統率など、マネジャーとしての仕事が多くなってきました。こうした中、最近の私は「皆がのびのびと働けるように」と考え、あまり前面に出ず、あえて一歩引いた働き方を心がけてきました。ただ、マネジャーの仕事にやりがいを感じる一方、自分がプレーヤーとして一線を退いていくような感覚に、どこか寂しさと退屈さを覚えてもいたのです。

そんなときに知ったのが、プロサッカー選手のキングカズこと三浦知良(みうらかずよし)氏の「ベテランらしくないプレーをしたい」という言葉です。三浦氏は57歳になった現在も活躍を続ける、現役のサッカー選手です。2024年6月に、アトレチコ鈴鹿というクラブからのオファーを受け、横浜FCから期限付きの移籍をしましたが、その記者会見で語ったのが先ほどの言葉です。

ベテランらしくないプレーとは「果敢に攻撃していく、ドリブルで勝負していく」という意味です。ベテランらしく周囲を活かすプレーもするけど、自分が前に出るチャンスは逃さない。そんなプロとしての熱い思いと矜持(きょうじ)を感じさせる言葉でした。三浦氏がアトレチコ鈴鹿への移籍を決めたのも、他のチームよりも長時間、試合に出られる可能性があったからだそうです。

そんな三浦氏の姿勢を知り、私は「自分は勝手に一線を退いた気になっているだけではないか。プレーヤーとして活躍できるよう、もっと努力すべきではないのか」と深く反省しました。

なぜ三浦氏は、この年齢になるまで現役でいることができたのでしょうか。調べているうち、その理由に気が付きました。彼は「とにかくサッカーが好きで、試合に出たいという情熱を持ち続けている」のです。三浦氏は、熱心なサッカー一家に生まれ、3歳からW杯のビデオを観て育ち、わずか15歳でブラジルに渡りました。これほど長くサッカーを続けていながら、2020年のインタビューでは「15歳の頃と同じくらいボールを蹴るのが好きですか」という質問に対して、「はい、いつも楽しんでいます」とまっすぐに答えています。

「好きだから」というのはありきたりな理由にも聞こえますが、選手寿命が20代後半から30代前半といわれるサッカーの世界において、57歳の三浦氏が今なお活躍していることを考えれば、その情熱と努力が並大抵のものでないことは容易に想像できます。強い意志とは、こういう純粋でシンプルな気持ちにこそ宿るのかもしれません。

私は現場が好きです。もちろん、マネジャーとしての仕事もしっかり全うしますが、同時に自分がプレーヤーであるという気持ちを捨ててはいけないのだと、三浦氏の言葉から学びました。新しい現場にむしろ一歩踏み込んでいく姿勢で、私も「生涯現役」を貫きたいと思います。

以上(2024年9月作成)

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画像:Mariko Mitsuda