従業員が仕事を楽しみ始める、経営者の「対話術」(2)~従業員に「成長」を意識させて仕事を楽しくするには?~

書いてあること

  • 主な読者:自社の従業員がイキイキと働いていないと感じる経営者
  • 課題:従業員が、「自分は変われる」という「成長マインド」で仕事をしていない
  • 解決策:自分の理想像を目標に掲げるように導く。成長のきっかけやヒントにつながる具体的な指摘や、公平で納得感のある評価を伝えることで、成長マインドを刺激する

1 イキイキ働くための鍵「成長マインド」は入社3カ月で低下?

従業員がイキイキと働くために、極めて重要な鍵となるものが「成長マインド」です。一人ひとりのエンゲージメントに気を配ることも必要ですが、その前に、まず成長マインドを持てる文化や制度を整えること。その前提があって、従業員のエンゲージメントは高まるのです

ところが、成長マインドを持って入社した従業員が、入社後わずか3カ月で成長マインドを低下させてしまうケースもあるようです。「2019マイナビ新入社員意識調査~3カ月後の現状~」では、「社会人生活にどのようなことに期待をもっていますか」という質問に対して、入社時は、1位が「自分が成長できる」(68.0%)で、2位以下は「収入が得られる」(47.7%)、「新しいことに挑戦できる」(43.0%)、「新しく人間関係を構築できる」(32.0%)、「社会や会社に貢献できる」(29.3%)と続いています。

収入が得られるという現実的な項目よりも、自己成長に対する期待感が強いのが分かります。自己成長だけでなく、新しいことへの挑戦や社会や会社への貢献などの項目も、それを通じて自分が成長しますから、成長に関する項目であるといえます。そして、いずれもエンゲージメントを高めるために重要な要素です。そのマインドが、3カ月という実に短い期間のうちに変化してしまうというのです。

入社から3カ月後の7月に行った意識調査では、「自分が成長できる」は10.8ポイント下がって57.2%、「新しいことに挑戦できる」は10.3ポイント下がって32.7%、「社会や会社に貢献できる」は3.0ポイント下がって26.3%と、エンゲージメントを高める要素が軒並み低下しています。

それに対して「収入が得られる」が11.7ポイントも上昇して59.4%で、「自分が成長できる」を逆転して1位になっています。このマインドの違いは仕事のあらゆる場面で関わってきて、その人の成長を左右します。

2 「成長マインド」の有無で上司への反応が真逆に

1)「成長マインド」を刺激してエンゲージメントを高める

成長マインドは、キャロル・S・ドゥエックが自身の著書『マインドセット「やればできる!」の研究』で提唱した考え方で、エンゲージメントを高めるうえで極めて重要な鍵となるものです。

成長マインドは「自分は変わる」「自分は変われる」という前提で臨む姿勢のことです。上司はさまざまな場面で、部下を評価する言葉を語りますし、時に叱責することもあるでしょう。日ごろの仕事においても、「キミはここをもっと直したほうがいい」「こういうところにもっと力を入れたほうがいい」など、上司から見たフィードバックを与えてくれることもあります。

成長マインドで受け取るならば、「上司の指摘を次の成長の糧にしよう」「ヒントとして活かせる部分を見つけよう」と、その先の成長につながる要素をいくらでも見つけ出すことができるのです。

これを上司の立場から見るなら、上司としては部下の成長マインドにしっかりと訴え、成長のきっかけやヒントとなるような指摘を、なるべく具体的に提示するよう心掛けるべきだといえます。そうした部下の成長マインドを刺激することで、エンゲージメントをさらに高めることができるようになるのです。

2)「固定マインド」の従業員は、自分を評価する上司しか認めない

給料の面での「成功」を得るために必要なものは、上司の評価です。ある程度真面目に仕事をして、上司に気に入られ、それなりの成果も出していれば、上司は評価をしてくれるはずです。その結果、給料は多少なりとも上がることでしょう。

しかしこの場合、部下が上司に対して抱くのは「この上司は自分を評価してくれる。良い上司だ」という、あくまでも自分の都合に合わせて上司の存在意義を規定したものにすぎません。これを「成長マインド」とは逆の意味の「固定マインド」といいます。

固定マインドは、簡単にいうなら「自分は変わらない」「自分は変われない」という考えを前提に置いた姿勢です。

ここで大切なのは、部下の側がそうした言葉を固定・成長のどちらのマインドで受け取るか、つまり部下側の受け取り方です。

「固定マインド」で受け取ると、上司が良い評価をしてくれたときは「良い上司だ」と思う半面、上司に怒られたときは「この上司とは合わない」「悪いところしか見てくれない」と考えてしまいがちです。これでは、その先の成長につながる要素を何一つつかむことができません。

3 従業員の「成長マインド」の育て方

1)自分の理想像を描き、心から納得できる「目標」を掲げる

成長マインドのトリガーになるのは「目標」です。人は自分がそうなりたいと願う理想像を描き、それを目標として掲げると、現状とのギャップがおのずと浮かび上がり、「そのギャップを埋めよう」というマインドになっていきます。このように目標を掲げることで成長意欲を引き出す手法は、コーチングでもごく一般的なものです。

目標に向かって努力しているのに成長マインドになり切れていない人は、目標と自分のなりたい姿にズレがあるのかもしれません。エンゲージメントを高めるには、自分が心から納得できる目標を掲げることが大切です。

2)「報われない感覚」が成長意欲をそぎ、バーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こす

ストレスなくイキイキと働くためには、労働時間の長さよりエンゲージできているかどうかが大切です。いくら短時間でも仕事がつまらないと感じればストレスがたまり、逆に仕事が楽しければ、多少は長く働いても精神的な疲れが蓄積していくことはありません。ただ、がむしゃらに働いていたのに、ある日突然、風船がしぼむようにして気持ちが萎えてしまうことがあります。いわゆるバーンアウトです。

バーンアウト研究の第一人者であるオランダの心理学者シャウフェリは、バーンアウトの特徴として、「疲労感」「皮肉感(仕事や会社に対する嫌悪感や、それを自覚しつつも働き続ける自分に抱く自嘲的な感覚)」を挙げています。

疲労感や皮肉感を左右する重要なものに、対価・報酬と公平感があります。自分は会社に貢献しているつもりなのに、それに対して正しい対価や報酬が支払われない。この報われない感覚が疲労感や皮肉感のもとになり、成長意欲をそいで、燃え尽き症候群を引き起こすのです。

3)公平で納得感のある評価を行い、フィードバックする

従業員の成長意欲が活発でエンゲージメントが高く、疲弊退場型の退職が少ない会社の多くは、褒める仕組みや納得感のある評価制度が整えられています。

納得感の高い評価制度を導入している会社の一つがグーグルです。どれだけパフォーマンスを出したのかというKPI(重要業績評価指標)も評価対象になっていますが、根底にあるのは、「Googly(グーグルらしさという意味の造語)」の評価だそうです。グーグルらしさに明確な定義はありませんが、話を聞いていると、従業員は個人プレーではなくチームワークを重視して働くことをグーグルらしいと捉えているようです。興味深いのは、それを360度、つまり上司だけでなく、同僚や部下も評価するという点です。例えばチームワークをうまく促せず、メンバーの能力を発揮させられないマネジャーは部下から悪い評価を下されます。上からだけでは一面的になりかねない評価も、360度で見ることでより公平なものになる、という考え方のようです。

そうした評価が全員にフィードバックされることも特徴の一つといわれています。最終的な評価だけが伝えられるのではなく、何がどう評価されたのかを確認できるので、次の年度に改善すべき点がはっきりと分かります。成長マインドを持つ人は、上司から足りない点を指摘されたとき、それを受け止めて理想の自分に近づく努力をすることができるといいました。従業員全員に評価をフィードバックしてくれるグーグルは、成長マインドの人にとって理想の環境といえるでしょう。

従業員が組織に貢献することで、周りから褒められたり正しく評価されたりする仕組みによって、働く人がきちんと報われる感覚を持てれば、バーンアウトするのではなくエンゲージメントの高い状態を保つことができ、さらに組織に貢献してくれます。

褒められたり正しく評価されたりする環境があることは、働く人の成長マインドも促します。一人ひとりが成長マインドで仕事に取り組めば、組織としても成長しやすくなります。マネジメント側の責任は重大です。

【参考文献】

「楽しくない仕事は、なぜ楽しくないのか?」(土屋裕介、小屋一雄、2020年2月)

以上(2021年4月)
(執筆 日本エンゲージメント協会 佐々木拓哉、小屋一雄)

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画像:Gutesa-shutterstock

「会計・財務」の用語集 よく使う略称などを紹介

書いてあること

  • 主な読者:会計・財務でよく使う用語の意味を知りたい人
  • 課題:似ている用語、独特の用語が多くて混乱する
  • 解決策:先に損益計算書や貸借対照表が示すものを理解し、その上で関連する用語を覚える

本稿で紹介する用語は次の通りです。

損益計算書、売上高、売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益、営業外収益・費用、経常利益、特別利益・損失、税引前当期純利益、法人税、住民税及び事業税、税引後当期純利益、貸借対照表、流動資産、固定資産、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産、繰延資産、流動負債、固定負債、純資産、キャッシュ・フロー計算書、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー、売上高営業利益率、総資本経常利益率、自己資本利益率、自己資本比率、流動比率、固定比率、労働生産性、設備生産性、労働分配率

1 損益計算書に関連する用語・略称・定義

1.損益計算書(Profit and Loss Statement・PL・P/L)

損益計算書とは、一定期間(通常1年間)の会社の経営成績である利益(Profit)、または損失(Loss)を示すものです。利益は、売上高などの「収益」から、売上原価などの収益を得るために支出した「費用」を差し引いて算出されます。

2.売上高(Sales)

商品・製品・サービスの売上によって得られた収益の総額です。会社の収益力を見る上で、最も基本的な数値の1つです。損益計算書上の最上段に表示するため「Top Line(トップライン)」とも呼ばれ、カタカナ英語としても定着しています。

3.売上原価(Cost of Goods Sold、Cost of Sales)

小売業の仕入原価や製造業の材料費・労務費・製造経費など、商品の調達や製品の製造に必要な原価です。売上に直接紐づけられる費用を計上することから、業種によって原価の範囲は異なります。

4.売上総利益(Gross Profit)

「粗利(あらり)」とも呼ばれ、その事業年度中のもうけの源泉を表しています。

売上総利益=売上高-売上原価

5.販売費及び一般管理費(Selling and General Administrative Expenses)

売上に直接紐づけられない人件費や諸経費(水道光熱費、広告宣伝費、減価償却費など)です。

6.営業利益(Operating Profit、Operating Income)

本業による利益です。会計・財務の世界では、営業(Operating)とは本業のことを表します。

営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費

7.営業外収益・費用(Non-Operating Income・Non-Operating Expenses)

本業以外の投資・財務活動によって生じた収益や費用です。営業外収益には預貯金の受取利息などが含まれます。また、営業外費用には支払利息などが含まれます。

8.経常利益(Ordinary Profit)

本業以外の投資・財務活動までを勘案した利益です。経常とは常に一定という意味であり、通常などと訳される「Ordinary」という英語が使われています。

ある年度の経常利益を見ることで、毎年度どれくらいの利益を出しているのかが把握できます。なお、欧米諸国の損益計算書には経常利益の概念はなく、日本固有の考え方とされます。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

9.特別利益・損失(Extraordinary Gains・Extraordinary Losses)

会社の経常的な経営活動とは直接関係のない、臨時的、偶発的(Extraordinary)に生じた収益や費用です。特別利益には、固定資産売却益などが含まれます。また、特別損失には自然災害や訴訟による損失などが含まれます。

10.税引前当期純利益(Pretax Profit)

臨時的、偶発的に発生する収益と費用までを考慮した利益です。

税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失

11.法人税、住民税及び事業税(Income Taxes)

法人税、住民税及び事業税は、当期のもうけに課せられる税金です。

12.税引後当期純利益(Net Profit)

会社が処分可能な最終利益です。税引後当期純利益は、会社の財務体質強化のために内部留保や、新たな設備投資の原資となります。損益計算書上の最下段に表示するため「Bottom Line(ボトムライン)」とも呼ばれ、トップラインと同様にカタカナ英語として定着しています。

税引後当期純利益=税引前当期純利益-法人税、住民税及び事業税

2 貸借対照表に関連する用語・略称・定義

1.貸借対照表(Balance Sheet・BS・B/S)

貸借対照表とは、ある時点(通常は決算日時点)の会社の財政状態を示すものです。貸借対照表には、決算日時点での会社がどのようにお金を調達し、そのお金を何に投資しているのかといった資金の状態が表示されています。英語表記の通り、左右の勘定科目が必ずBalance、一致することが特徴です。

2.流動資産(Current Assets)

現金・預金、受取手形、売掛金、棚卸資産など、原則として1年以内に回収される資産です。

3.固定資産(Fixed Assets)

建物・付属設備・構築物、特許権など、原則として1年超にわたって保有される資産です。

a.有形固定資産(Tangible Fixed Assets)

固定資産のうち、建物・付属設備・構築物、土地など有形の財産として会社が保有する資産です。

b.無形固定資産(Intangible Fixed Assets)

固定資産のうち、特許権、ソフトウエアなど無形の財産として会社が保有する資産です。

c.投資その他の資産(Investments and Other Assets)

固定資産のうち、関係会社株式、出資金、長期貸付金など、主に本業以外の投資活動のために保有する資産です。

4.繰延資産(Deferred Assets)

創立費、開業費、株式交付費など既に発生した費用のうち、現在から将来にわたって効果が見込まれるために、経過的に貸借対照表に記載される資産です。延期したなどの意味を持つ、Deferredという言葉が使われています。

5.流動負債(Current Liabilities)

支払手形、買掛金など、原則として支払期限が1年以内の負債です。

6.固定負債(Fixed Liabilities)

社債、長期借入金など、原則として支払期限が1年超になる負債です。

7.純資産(Net Assets)

資本金、資本剰余金、利益剰余金など返済する必要がない資金です。純資産は大きく株主資本(=資本金+資本剰余金+利益剰余金-自己株式)と株主資本以外に区分され、株主資本以外としてはその他有価証券評価差額金、新株予約権などがあります。株主資本とその他有価証券評価差額金等を合わせて自己資本、自己資本に新株予約権等を合わせて純資産と言いますが、厳密に区別せず純資産を自己資本と呼ぶこともあります。

3 キャッシュ・フロー計算書に関連する用語・略称・定義

1.キャッシュ・フロー計算書(Cash Flow Statement・CS・C/S)

キャッシュ・フロー計算書とは、一定期間(通常1年間)の会社の現金の流れ(キャッシュ・フロー)を、会社の活動ごとに示すものです。キャッシュ・フロー計算書では、営業活動、投資活動、財務活動によって、どのようにキャッシュが動いたかを示しています。

2.営業活動によるキャッシュ・フロー(Cash Flows-Operating Activities)

商品の販売による収入や商品の仕入れによる支出など、営業損益計算の対象となった取引の他、投資活動および財務活動以外の取引に関するキャッシュの動きを示す項目が記載されます。

3.投資活動によるキャッシュ・フロー(Cash Flows-Investing Activities)

有形固定資産、有価証券および投資有価証券の取得による支出および売却による収入に関するキャッシュの動きの他、貸し付けやその回収、定期預金の預け入れやその払い戻しなどに関するキャッシュの動きを示す項目が記載されます。

4.財務活動によるキャッシュ・フロー(Cash Flows-Financing Activities)

短期・長期の借入とその返済、自己株式の取得、配当金の支払いなどに関するキャッシュの動きを示す項目が記載されます。

4 財務分析に関連する用語・略称・定義

前章までは、財務3表に記載されている勘定科目の用語や定義などを見てきました。こうした内容を押さえた後は、そこに記載されている数字を読み解く財務分析の力も必要になります。財務分析は、次のような視点から行います(他の視点もありますがここでは割愛します)。

  • 収益性分析:十分な利益を獲得しているか、会社の稼ぐ力がどの程度あるかについて、次のような指標を使って分析します。
  • 安全性分析:安全に経営を継続していけるか、会社の債務支払い能力がどの程度あるかについて、次のような指標を使って分析します。
  • 生産性分析:会社が経営資源を効率的に利用して生産できているかについて、次のような指標を使って分析します。

収益性分析

1.売上高営業利益率(Operating Margin)

売上高に対して、営業利益(本業で稼いだ利益)がどれだけ得られたかを示す指標であり、数値が高いほど収益性が高いといえます。

売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100

2.総資本経常利益率(Return On Assets・ROA)

総資本(負債+純資産)に対して、経常利益がどれだけ得られたかを示す指標であり、数値が高いほど効率的に資本運用できているといえます。

総資本経常利益率=経常利益÷総資本×100

3.自己資本利益率(Return On Equity・ROE)

自己資本(純資産)に対して、最終的な利益(税引後当期純利益)がどれだけ得られたのかを示す指標であり、数値が高いほど株主の投資額に対して効率的に利益を生み出しているといえます。

自己資本利益率=税引後当期純利益÷自己資本×100

安全性分析

4.自己資本比率(Equity Ratio)

総資本に対して、自己資本の占める割合を示す指標であり、数値が高いほど倒産しにくい会社、つまり負債(返済が必要な他人資本)に左右されないため、経営が安定しているといえます。

自己資本比率=自己資本÷総資本×100

5.流動比率(Current Ratio)

1年以内に現金化できる資産が、1年以内に返済すべき負債をどれだけ上回っているかを示す指標であり、数値が高いほど安全性は高いといえ、業種にもよりますが一般的には200%以上ある場合に安心とされています。

流動比率=流動資産÷流動負債×100

6.固定比率(Fixed Ratio)

1年超にわたって使用される資産が、自己資本によってどれくらい賄われているかを示す指標であり、数値が低いほど安全性は高いといえ、業種にもよりますが一般的には100%以下となることが望ましいとされます。

固定比率=固定資産÷自己資本×100

生産性分析

7.労働生産性(Labor Productivity)

従業員1人当たりが、どれだけの付加価値を生み出しているのかを示す指標であり、数値が高いほど従業員1人当たりの生産性は高いといえます。付加価値とは、売上高から外部購入分の価値(材料費、材料部品費、運送費、外注加工費など)を差し引いたものです。

労働生産性=付加価値÷従業員数

8.設備生産性(Equipment Productivity)

設備(有形固定資産)を用いて、どれだけ付加価値を生み出しているのかを示す指標であり、数値が高いほど資産当たりの生産性は高いといえます。

設備生産性=付加価値÷有形固定資産×100

9.労働分配率(Labor Share)

付加価値の中で、人件費として配分された部分が、どの程度あるかを示す指標であり、(適切な給与水準を確保することが前提ですが)数値が低いほど生産性は高いといえます。

労働分配率=人件費÷付加価値×100

以上(2021年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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画像:pixabay

激変! 令和時代のサウナビジネス最前線

書いてあること

  • 主な読者:新規事業を考えている経営者、レジャー事業者など
  • 課題:サウナ愛好家を取り込みつつ、新たなユーザー層も獲得したい
  • 解決策:従来のサウナと、「令和のサウナ」の違いを把握し、他社の取り組みを参考にする

1 最近のサウナは「ととのう」体験を重視

サウナがブームです。それも経営者に人気です。特にサウナで「高温→冷水風呂→外気に当たる」サイクルを経て得られる、多幸感といえる「ととのう」がSNSを盛り上げています。サウナ好きな人たちからは、高温下で黙々とサウナに入ることで自身の内面に向き合えるとされ、座禅や瞑想(めいそう)にも通じるマインドフルネスを体験することができるとの声も聞かれます。

インターネット上の特定の言葉の検索トレンドを分析するツール「Googleトレンド」で「サウナ」を調べてみると、2019年ごろから頻繁に検索されるようになっているようです。また、「ととのう」も昨今のサウナブームを象徴するバズワードになっています。

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サウナ好きな経営者からは、

「サウナで考え、水風呂で決断する」

という名言まで登場しています。サウナをテーマにしたテレビドラマが放映されたり、近くのサウナ関連の情報を集めたポータルサイトがオープンしたりと、何かと話題の令和のサウナの動向を追ってみました。

2 バリエーション豊富な令和のサウナ

令和のサウナの特徴として、種類の多様化が挙げられます。従来のイメージを覆すように内装やサービスが多様化し、新しいユーザー層の獲得につながっています。

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1)おうちサウナ:サウナ傘

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて始まった外出自粛により、自宅で消費できるもの・サービスへの消費(巣ごもり消費)が増えています。サウナ関連商品では、各社から自宅のお風呂をサウナに変身させるようなサウナ傘が登場しました。

見た目はビニール傘を裏返しにしたようなサウナ傘は、先端をバスタブにかぶせることで、お湯の蒸気を傘の内部に閉じ込め、「スチームサウナ」のように使用できます。高温の本格的なサウナには及びませんが、傘の内部では温度、湿度ともに上昇し、リラックス効果も期待できそうです。

数千円前後と比較的安価なため、「サウナに興味あるけど、いきなりサウナデビューはちょっと…」というビギナー層や、健康や美容に関心の高い人が「ワンランク上のバスタイム」を手軽に実現できるアイテムとして支持が広がっています。

2)コワーキングサウナ:KOOWORK(クーワーク)

昨今、働き方が多様化する流れに乗り、さまざまな人がオフィスをシェアするコワーキングスペースが増えています。仕事のリフレッシュや、重要な決断を前にしてメンタルを「ととのえる」ことを狙い、コワーキングスペースにサウナを取り入れる施設が登場しました。

KOOWORK(神奈川県横浜市)は、全席にコンセントを備えたワークスペースに加え、ディスプレーとホワイトボードを取り付けたミーティング用サウナルームや宴会場もあります。

ひと仕事を終えてサウナでととのえ、ミーティングではクリアな思考でアイデアを生み出す。ミーティングを乗り切った後はサウナでリフレッシュして宴会に突入。

サウナ×コワーキングスペースは、サウナ好きハードワーカーにはうってつけの仕事環境といえそうです。

3)空きスペース活用サウナ:三田高野山弘法寺

サウナに必要な機材を準備し、空いたスペースを有効活用することで予想外の場所でもサウナを楽しむことができます。

弘法大師を本尊とする三田高野山弘法寺(東京都港区)では、期間限定の寺サウナを開催しました。これは、お寺の建物の屋上に設置したアウトドア用のまきテントでのサウナと、お寺での瞑想が体験できるイベントです。屋上にはまきテントの他にも冷水のビニールプールや、外気浴もできる椅子も備え付けました。

サウナの後には、瞑想を体験することで、参加者は「ととのいの境地」に達することができたようです。さらに、協賛するお店や企業によるサウナ関連グッズやオリジナルカクテル、フードの販売もあり、サウナ好きには文字通り極楽浄土かもしれません。

他のお寺からも開催依頼が来ているようで、「寺離れ」など檀家の減少に直面する一方で、古くから地域とのつながりを持っているお寺を活性化させる可能性があります。

機材をそろえれば野外でも比較的簡単に始められるサウナの特徴を活かし、今後も予想外のロケーションでのサウナの出現が期待されます。

4)イベント型サウナ:チームラボ、TikTok

サウナブームの波は、アートの領域にまで押し寄せています。プロジェクションマッピングで有名なチームラボは、若者に人気の映像アプリTikTokと共同で、アートとサウナが融合したイベント「チームラボリコネクト」(東京都港区)を2021年3~8月まで期間限定で開催しています。

これは、サウナでととのい、感性をクリアにさせた状態でチームラボが誇る映像作品を体験できるものです。7室あるサウナルームや冷水シャワーでは、さまざまな音楽や映像作品が楽しめ、その後に「アート浴エリア」でリラックスして作品を鑑賞することができます。

アート浴エリアは、インスタレーションが浮かぶ部屋や、暗闇の中で壁一面に鮮やかな無数の花の映像が映し出される部屋などがあり、自身が作品と一体化するかのような没入感に浸れることができるようです。

インスタグラムや、協賛するTikTokには関連動画が続々とアップされており、「映え」を意識した若者や、トレンドに敏感な世代へサウナの魅力をアピールすることができそうです。

5)本格セルフ式サウナ:ソロサウナtune(チューン)

アクティビティ化するサウナを歓迎しつつも、ここぞというときにはじっくりととのいたいと思うサウナ好きもいます。そんなサウナ好きのために、「本格おひとりさま」サウナがオープンしました。

ソロサウナtune(東京都新宿区)は、「日本初の完全個室の本格的なフィンランド式サウナ」を特色としたサウナです。同施設は、着替え~サウナ利用~冷水シャワー~ベンチでの休憩までを個室で楽しむことができます。他の人に気にせず、ロウリュ(サウナの石に水をかけて室内に水蒸気を発生させる、フィンランド式サウナの入浴法)を好き放題でき、サウナやシャワーの利用を順番待ちすることもありません。完全個室なので「裸の他人と室内で過ごすのはちょっと…」というサウナ初心者にもハードルが低めです。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、人との接触や「密」を避けることもできます。おひとりさまサウナは「新しいサウナ様式」のカタチの一つといえるでしょう。

3 サウナ関連動向

このように、さまざまなタイプが登場し、ユーザーの裾野が広がっているサウナ市場。「サウナー」と呼ばれるユーザーの推計人口や、令和のサウナの特徴を見てみましょう。

1)サウナ人口「サウナー」の動き:日本のサウナ実態調査2021

日本サウナ・温冷浴総合研究所(日本サウナ総研)の調査「日本のサウナ実態調査2021」によると、「サウナー(年1回以上サウナを利用するサウナ愛好家)」の推計人口は次の通りです。

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同調査によると、サウナーの人口は2500万~2900万人程度と推計されています。2021年(※調査は2020年12月に実施)に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響で前年までよりも数値が落ち込んだことを考慮する必要があります。

また、同調査では「温冷浴(熱い温度のサウナに入り、その後で冷水のお風呂に入り外気に当たることを繰り返す入浴方法)」の認知度も調査しています。それによると、「知っていて、実践している」が増加する一方で、「知らない」が継続的に減少しています。

温冷浴は令和のサウナの醍醐味である「ととのう」感覚を体験するために不可欠な入浴方法であり、実践割合が増えていくことで、新しいユーザーの獲得に期待できそうです。

2)多様化するサウナ:令和のサウナと昭和のサウナの比較

さまざまなタイプが出現し、認知度も上昇中の令和のサウナは、従来の昭和のサウナとどういった点で異なるのでしょうか。各種のタイプからは、次のような違いが見えてきました。

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冒頭の通り、「ととのう」体験は、健康意識の高まりや、ストレスを軽減しメンタルを調整するマインドフルネスにも通じるものがあります。

また、従来の「暑い」「単調」のイメージを一変させる、趣向を凝らしたさまざまなタイプのサウナが登場していることや、温冷浴や熱波(ロウリュで発生した水蒸気をあおいで循環させること)などの認知の高まりは、近年の消費トレンドの一つの「コト消費」とも相性が良いといえます。

以上(2021年4月)

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画像:Adobe Stock-kichigin19

【朝礼】新年度に改めて身に付けたい「素直さ」

先日、私は2人のとても素晴らしい起業家に出会いました。1人はSNSマーケティングの会社を、もう1人はフィンテック系の会社を立ち上げています。2人とも年齢は25~26歳で、事業に対する熱量がすごい、勉強家・努力家である、緻密にビジネスを積み重ねている、具体的な実績を上げているなど、この場では語り尽くせないほど多くの魅力がありました。なかでも私が一番感心したのは、2人の「素直さ」です。

例えば、SNSマーケティングの会社を立ち上げた起業家は、周囲から言われた「足元を重視するあまり、未来視点で考えることが苦手」という点を自身の課題として受け止め、現在、長期事業計画の見直しを進めています。

フィンテック系の会社を立ち上げた起業家も、もともとの原動力は「単にお金持ちになりたい」だったそうですが、「先輩起業家やメンター陣から自分の足りない【思い】の部分や精神的に未熟な点を厳しく指摘していただいた」ことを受け止め、「本当に実現したいことは何か」から改めて考え直したといいます。結局、根幹となる会社のビジョンも大きく軌道修正したそうです。

事業計画の見直しやビジョンの軌道修正の大変さは、並大抵のものではないでしょう。しかし、2人とも、「指摘してもらえたから今がある。心から感謝している」と言っていました。皆さんは、この2人の「素直さ」がいかにすごいか、分かるでしょうか。

この2人は、「受け止める」ことと「行動する」ことがセットになっています。ただ周りの話を受け止めるのは、ただ「聞いただけ」であり、「素直」とはいえません。私自身、これまでの自分の行動を振り返ってみると、人の意見に素直に耳を傾けているつもりでも、「分かっているが」「良いと思うけど」と言いつつ、行動に移さないことがたくさんありました。考え方の違いから、あえて行動に移さなかったこともありますが、多くの場合、私はただ「素直」を装っていただけなのかもしれません。

受け止めた上で「実際に行動に移す」ができて初めて、本当に「素直」といえます。行動に移せば、何かが変わりますし、新しいものも生まれます。よく「素直な人が伸びる、成長する」といわれるのは、「行動に移す」ことで、前に進めるからなのでしょう。

人生でもビジネスでも、「素直さ」がいかに大切かを説いたことで有名なのが、松下幸之助氏です。松下氏は、「素直な心になることを心掛け、自分なりに工夫をこらしていくならば、誰でも素直になれる」という趣旨の教えを残しています。私はこの「自分なりの工夫」とは、「行動に移し、いったんやってみること」と捉えています。

年齢も役職も社歴も関係ありません。皆さんも、新年度に、もう一度「素直に受け止め行動に移す」ことを実践してみませんか。きっと今より前に進めます。

以上(2021年3月)

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画像:Mariko Mitsuda

ファイナンス特有の「見えないコスト」の考え方/経営者のためのファイナンス講座(2)

書いてあること

  • 主な読者:将来の意思決定に役立つファイナンス思考を身に付けたい経営者
  • 課題:将来の意思決定にはコストの見積もりが必須。会計では出てこないファイナンス特有の見えないコストの考え方を知りたい
  • 解決策:現金や車両などの現物を持つことで、手間や設備など見えないコストが発生する。「持たない」という選択肢を常に持っておくことが大切

1 キャッシュレス決済導入店が増えたファイナンス的理由とは

政府のキャッシュレス推進に新型コロナウイルス感染症の拡大が拍車をかける格好で、電子マネーなどのキャッシュレス決済に対応する店舗が急増しています。デジタル化の流れは不可逆といえますが、ここでは別の視点でキャッシュレスを捉えてみましょう。

キャッシュレス決済を検討する場合、店舗側の手数料負担がしばしば議論されますが、「現金を持つコスト」については、あまり触れられない気がします。例えば、現金は電子マネーよりも会計時間が長く、レジ締めも大変なので店員に負担がかかり、人件費がかさみます。また、現金の横領や盗難に備えるために防犯カメラなどを設置するなど、セキュリティーのためのコストがかかります。集まった現金を銀行に運ぶために現金回収業者と契約するのであれば、そのコストもかかります。キャッシュレス決済の手数料と現金を持つコストを比べると、前者のほうが店舗に有利な場合もあるのです。まさにこの点を考慮して、キャッシュレス決済を導入した店舗も数多くあります。

2 「現金」「現物」を持つことで多重にコストがかかる

さて、現金を持つコストは一般的な会社でも同じです。現金が置いてあると、いろいろな物品や手間がかかります。現金を保管するための金庫や監視用の防犯カメラも要るでしょうし、日計表の作成、小口現金の管理などの事務作業は典型例です。

こうした問題も、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の流れの中で見直されています。近ごろは手形(2026年に廃止されるという報道が最近ありました)や小切手はあまり見かけなくなりましたし、インターネットバンキングも普及しています。今や、金庫には金目のものは入っていない、もしくは金庫がない会社も珍しくないのです。

持つことでコストがかかるのは、現金だけではありません。現金以外でも、形ある「現物」を持つと、必ずといっていいほど関連するコストが何重にも発生します。例えば、カーシェアリングです。法人でカーシェアリングを利用する会社が増え、社有車を持たなくてよくなりました。そうなると、総務担当者は車両を管理しなくて済みますし、保守費用もかかりません。何よりも、本体を購入したりリースしたりという多額の出金がなくなります。

また、中小企業でも会計システムが一般に使われていますが、これも自社で買わなくても済むようになりました。以前は自社所有のパソコンにインストールしても、そのパソコンでしか会計ソフトが使えませんでした。近年、何度かあった消費税率の変更のたびに更新費用がかかるということもありました。これも、自社で会計システムを持つことで発生したコストといえます。しかし、会計ソフトのクラウド化が進んだ今では、保守費用や出張費用(支社間など)などは不要になり、どのパソコンからもアクセスできるようになりました。

このように、現金、現物を持つ場合には、その購入費用だけではなく、一見見落としがちな関連コストも漏れなく把握することが、ファイナンス的には大事なのです。

3 中小企業こそ、現物コストから解放される

現金や現物を「持たないこと」をファイナンスの側面から考えると、その恩恵を最も受けるのは、実は中小企業です。規模が小さくても事業上必要なので、自前で持たざるを得ないと無理していた中小企業が、利用度合いに応じたコスト負担で済むようになるからです。

多くの中小企業は人手不足の中で何とか事業を回しており、特に人件費が高い高度人材を雇うことは難しいものです。これを外部に管理を任せれば、これらの人材を雇用しなくて済むのです。都度利用する場合の単価も、大手企業と比較してそれほど変わりないことも多いようです。これまで自社で所有するときには、多額の設備投資のための資金の捻出に苦労したことを考えると、資金的なメリットは小さくありません。

4 「シェアリングエコノミー」を、両面から活用する

「シェアリングエコノミー」というと、民泊仲介サイトやシェアサイクルなど個人向けのイメージがあるかもしれません。しかし、会社こそ活用したときのメリットは大きいのです。

誤解してほしくないのですが、自社で持つことがファイナンス的には悪いということではありません。従来通り自動的に自社所有を選ぶのではなく、関連するサービスなどの情報を得て、どちらが得かを検討することが大事です。その際に購入費用以外の見えないコストの存在がポイントになります。加えて、サービス提供側としてこの考え方を活用できないか検討することも有効です。例えば、比較的高価なサービスや物を、法人向けに販売している会社は、売るのではなく利用に応じて課金する形態にできないか考えてみるのです。利用側と提供側の両面から、「持つことが本当に自社にとってベストなのか」を改めて考えてみてください。

以上(2021年4月)
(執筆 管理会計ラボ 代表取締役 公認会計士 梅澤真由美)

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新入社員も知っておきたい 財務会計の考え方

書いてあること

  • 主な読者:財務を勉強中の新任経理担当者、若手社員
  • 課題:財務の知識を身に付けたいが、読書や簿記の勉強だけではなかなか頭に入らない
  • 解決策:商品の仕入れや取引先との商談など、日々の活動が財務諸表にどのように反映されるのかを考えてみる

1 財務の知識は、日々の自分の業務と照らし合わせて学ぼう

財務の知識を身に付けようと思ったときにお勧めの方法は、日々の自分の業務と照らし合わせて考えることです。例えば、「会社から貸与されたパソコンは、財務上、どのように処理されるのか?」が分かると、そのパソコンを使って、どれだけの成果を上げたら元が取れるのかを考えられるようになるはずです。

以降では、日々の仕事を例に挙げて、それぞれの活動が財務諸表にどのように反映されるのかを見ていきます。なお、入社してあまり年数のたっていない人にとって、財務諸表上の数字だけを見て、取引をイメージするのは難しいものです。財務諸表の数字は、取引ごとに簿記のルールに従って同じ項目(勘定)ごとに集計したものです。数字をより身近に感じてもらうため、例ごとにどの項目(勘定)に影響するのかを確認しながら見ていきましょう。

なお、事例に入る前に財務3表の基本を確認したいときは、次の記事をご参照ください。

また、簿記の基本ルールについて確認したいときは、次の記事をご参照ください。

2 個人の業務は財務諸表にどう表れる?

ここで紹介するAさんは、海外からアパレル商品を仕入れて、国内の小売店に販売しているX社に務めています。Aさんの5月の業務や周辺の動きが財務諸表にどのように反映されるのかを、PLの項目順に沿って見ていきます。

なお、先月末(4月30日)時点のX社のBSは次の通りです。

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1)売上高

5月、前年度から営業してきたZ社に400足のシューズが売れました。1足当たり5000円なので、売上高は200万円です。6月中旬に入金される予定です。

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2)売上原価

1.在庫

Aさんが担当しているシューズの在庫は、5月1日時点で100足です。1足1300円なので、在庫は13万円分です。

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2.仕入れ

Aさんは、5月に取引先から500足のシューズを仕入れました。1足当たり1500円なので、仕入れ費は75万円です。6月に支払う予定です(出金は6月に行いました)。

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3.売上原価の算定

5月中に売れたシューズは400足です。売上原価は、5月1日時点の100足と新たに仕入れて販売した300足分となります。5月1日時点の100足は1足当たり1300円、新たに仕入れた300足は1足当たり1500円なので、合計58万円になります。

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4.5月末商品棚卸高

Aさんが担当しているシューズの在庫は、5月31日時点で200足です。5月1日時点で100足だったところに500足を仕入れて600足。そこから400足が売れたので、残りは200足ということです。

なお、棚卸資産の評価方法は、先入先出法(先に仕入れた商品から先に出していく方法)を採用しています。

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3)先月(4月)の売り上げの入金

Aさんが4月に掛けで販売したシューズの代金が5月に現金で入金されました。販売は300足、1足当たり5000円なので、売上高は150万円となります。

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4)先月(4月)の仕入れの支払い

Aさんは、4月上旬に仕入れたシューズの代金を仕入先に現金で支払いました。仕入れは400足、1足当たり2500円なので、仕入れ費は100万円となります。

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5)販売費及び一般管理費

1.給与手当

Aさんが勤めるX社の給料日は毎月25日。Aさんの基本給は20万円で、この他に地域手当の2万円、家族手当の1万5000円、通勤手当の1万5000円が支給されるので、合計は25万円です。

なお、ここでは社会保険料や源泉所得税は省略しています。

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2.旅費交通費

Aさんは、Y社の担当者と商談をするために、日帰りで大阪に出張しました。往復の新幹線代が3万円掛かりました。また、最寄り駅からY社までの往復のタクシー代が2000円掛かりました。

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3.交際接待費

Aさんは、Y社への手土産として3000円のお菓子を購入しました。

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4.福利厚生費

Aさんが勤めるX社に新入社員が入ってきたので、ウェブ会議システムを使ってオンライン歓迎会をしました。歓迎会は10人が参加し、1人5000円の予算でおのおのが好きな飲み物や出前を注文して楽しみました。

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5.会議費

Aさんは社内会議に出席しました。全員で10人参加しています。そこで出された仕出し弁当は、1食当たり1000円です。

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6.消耗品費

Aさんは、営業に使う資料や取引先からもらった名刺を整理するため、事務用品の通信販売会社から書類ケースとカードケースを2000円で購入しました。

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7.荷造運搬費

先日の商談で、Y社に商品を売ることが決まりました。AさんはY社へ商品を送るため、荷造り用の段ボールと緩衝材を3000円で購入しました。運送業者の配送費は5000円が掛かりました。

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8.固定資産の購入と、決算時の減価償却費

会社で新しいパソコンを1台購入し、Aさんに貸与しました。購入代金の20万円は6月に支払います。また、購入したパソコンは工具・器具備品(資産)としてBSに反映されます。

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X社では、5月に自社のECサイトを開設し、ネット販売を開始しました。ECサイトの作成は専門業者に外注しており、作成代金の200万円は6月に支払う予定です。また、作成したECサイトはソフトウエア(資産)としてBSに反映されます。

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5月末に、既存の固定資産(建物附属設備 取得価額550万円 帳簿価額500万円)に関する減価償却費を計上します。耐用年数の22年間で減価償却を行っています。

併せて、新しく購入したパソコン(工具・器具備品)と、外注作成したECサイト(ソフトウエア)の減価償却費(5月分)を計上します。

なお、パソコンは4年間、ECサイトは5年間の耐用年数でそれぞれ減価償却を行います。全て定額法を採用しています。

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6)営業外費用

X社は前年度に銀行から500万円を借り入れています。支払利息で月額8330円を支払いました(金利は年2%です)。

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7)5月のAさんのPL、BSはこのようになる

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このように、まずは、自分自身の活動でPLとBSを作ってみましょう。自分が会社の利益にどれだけ貢献しているのか、業務に掛かった経費一つひとつが会社の財務状況にどのような影響を与えるのかを日々考えることで、社会人に求められる「数字で考える視点」が養われていきます。

以上(2021年4月)
(監修 税理士 石田和也)

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水卜麻美アナ~心理的安全性のベースとなる自己開示の達人~/2021年、最も学ぶべきマネジメントの三賢人

書いてあること

  • 主な読者:部下のヤル気を引き出したい経営者
  • 課題:部下との信頼関係をしっかりと築きたいが、飲みにケーションなどもできず困る……
  • 解決策:水卜アナの言動から、“ありのままに正直な”自分をさらけ出すコミュニケーションを学び、部下との信頼関係を強固にする

本連載では、最も旬といえる3人のリーダーを「マネジメントの三賢人」として取り上げます。なにゆえ彼らのチームビルディングやメンバーコミュニケーションが素晴らしいのかについて、組織開発の理論を用いて解説していきます。事例を理論とともに学ぶことが、実践につなげていく近道だと考えるからです。学んで真似て体得する、です。

最終回の本稿では、女性リーダーとして日本テレビの水卜アナを取り上げます。彼女が「理想の上司」に選ばれ続ける理由を紐解くと、そこには、今最も必要とされる組織づくりのヒントが詰まっていました。ぜひ組織変革の一助としてください。

  • 第三の賢人
    日本テレビ水卜麻美アナ
    「理想の上司」女性部門で5年連続1位に輝く。この4月には日本テレビの看板である朝の情報番組の総合司会に抜擢された、いまや日テレを代表する女性アナウンサー

学んで真似るポイント

  • 組織に心理的安全性をもたらすための土台となる自己開示の重要性とその方法
  • 上司からの自己開示は、部下との信頼関係を築く上で、極めて重要なコミュニケーション
  • 自己開示の返報性が機能することで、組織に心理的安全性がもたらされるようになる
  • 上司は自分を自慢する自己提示に陥りがち。だからこそ水卜アナの自己開示力をお手本に

1 『ZIP!』の総合司会

日本テレビの水卜麻美アナウンサー(33)が、また「理想の上司」の女性部門で第1位に輝きました。このランキングは、某保険会社が“今春入社を控えた新社会人”を対象に“理想の上司として思い浮かぶ有名人”を聞いて発表しているもので、いまでは年頭の恒例行事となってきた感があります。冒頭で「また」と言ったのは、このランキングにおいて水卜アナが5連覇しているからです。

3月まで司会を務めた朝の情報番組『スッキリ』で、水卜アナは「本当に、真面目に言って、後輩のおかげだなって思っていて」と慕ってくれる後輩に感謝のコメント。メインMCの加藤浩次さんに、そういう言葉が理想の上司に選ばれる理由であるとツッコまれ、水卜アナ本人は「いいこと言っちゃったみたいになっちゃった!」と照れました。こうしたトークにも彼女の人柄がにじみ出ています。

一方で、仕事ぶりも高く評価されています。存在感はあるけれど出しゃばらない。番組では自らの役割はきっちりとこなす。アナウンサーとしての技術も確か。この4月の改編で3年半務めた『スッキリ』を卒業し、『ZIP!』の総合司会に就任することになったのも、こうした評価の賜物でしょう。

実は、日テレの朝の情報番組で女性がメイン司会になるのは史上初です。日テレの朝番組といえば、あの『ズームイン!! 朝!』。初代の徳光和夫さんはじめ、福留功男さん、福澤朗さん、羽鳥慎一さんと日テレを代表するアナウンサーが代々司会を務めてきました。局の看板番組の系譜を継ぐ「朝の顔」に抜擢されたわけです。

2 ぶっちゃけキャラの好感度

そのキャラを確立したのは、入社1年目で抜擢された『ヒルナンデス!』での食リポでした。その食べっぷりが話題になり、食いしん坊キャラが定着しました。また日テレの入社面接で、変顔を披露して内定を勝ち取ったという武勇伝もあってか、ミスコンあがりの美人系女子アナたちとは、明らかに一線を画す「親しみやすさ」が、彼女の好感度をぐんぐん上げていきました。

しかし水卜アナが支持される本質は、「変顔」や「食いしん坊」といったキャラによるものだけではないと思うのです。自分が「食いしん坊」であることを素直に認めていること、もっというと、全面的に「食いしん坊」な自分を受け入れているわけではない、ということさえ包み隠さずにいること。これが水卜アナの“ぶっちゃけ力”の半端ないところです。

アナウンサーという職業柄、もっと自己管理すべきかもしれないと思っているのに、“食欲に負けてしまっている”という本音を、水卜アナはものすごく正直に話します。誰でも感じたことのあるような“身近な悩み”を、テレビに出ている有名人が“女子会ノリ”で話してくるわけです。親近感を持たないはずがありません。

これが「自己開示」の持つパワーです。自己開示とは、自分に関するプライベートな情報を相手に話すこと。特に少し恥ずかしいと感じるくらいのことを正直に打ち明けると、「そんなことまで話してくれるなんて、自分に心を開いてくれているんだ」と相手は認識し、心の距離が縮まりやすくなります。

3 転んだアザまで自己開示

水卜アナの自己開示エピソードを、もうひとつ紹介しましょう。

女性芸人の頂点を決める『THE W』の記者会見でのこと。MCでタッグを組むチュートリアルの徳井義実さんと2人で出席することになっていたのが、徳井さんが開始予定時刻に間に合わないというハプニングが発生。相方の到着まで時間を埋めるべく、水卜アナが急きょ“前説”を行うことになったのです。

経験のない水卜アナは、そこで「本邦初公開です」というネタを披露しました。それは「マンホールで滑りまして、ここにえげつないアザを作ってしまったんです」というもので、右ひざにできた痛々しいアザを披露。「転んだ時はあんまり痛くないじゃないですか。“転んだことの恥ずかしさ”でその場を逃げ出したいということだけで頭いっぱいで、『私、全然今転んでないですからね』みたいな顔をしてバーっと立ち去って、次の日に普通に『スッキリ』に出ようとしてスカートをはいたら『何これ!?』って……」と、 “アザあるあるネタ”を明かしたのです。

さらに水卜アナは続けます。「どうしようと思って『スッキリ』にずっとロングスカートで出ていたんですけど、今日はさすがにちょっとドレッシーに決めようと、結婚式でいつも着ている一張羅の黒いワンピースを着たら、ひざが意外に出るスカートで、皆さまに『あいつは一体どうしたんだ?』って思われる前に、先に発表しておこうかなと思いました」。

こうして流れるようなトークで場を盛り上げ、「本当に私の超絶しょうもない前説にお付き合いいただいて、ありがとうございました! 」と謙虚にあいさつ。会見のピンチを救った水卜アナに、報道陣からは大きな拍手が沸き起こりました。(「水卜アナ、初公開の自虐ネタで会見ピンチ救う『えげつないアザが……』」、マイナビニュース、2019年6月19日配信より)

4 自己開示の返報性

自己開示は、信頼関係を築くのに欠かせないコミュニケーションといわれています。特に上司と部下といった上下関係の場合、上司側の自己開示は重要となります。水卜アナが理想の上司に選ばれる理由は、(意図して行っているのではないにせよ)このものすごい自己開示力のおかげです。

企業でも政治の世界でも、ディスクローズ(情報を明らかにすること、発表すること)の重要性が高まっているのはご存じのとおり。情報が開示されないと透明性がなくなり、信頼・信用が得られないからです。これはリーダーシップにも当てはまります。部下から信頼を得たかったら、リーダー自身が、自分がどういう人間なのかを真っ先に明らかにする必要があります。この第一歩が信頼関係を築く礎となるのです。

自分の情報をさらけ出してくれると、“心の壁” が取り除かれ、安心感が生まれます。積極的に自己開示をすることで、好感や信頼感を与えられるのです。

そして相手から自己開示されると「こんなにさらけ出してくれたんだから、私も自分の話をしなきゃ」と感じ、自己開示をお返ししたくなる心理が働きます。自己開示は相手を信じて渡すプレゼントですが、もらうとお返しもしたくなるのです。これを「自己開示の返報性」といいます。

つまり上司が自己開示をすることは、部下の自己開示を促すことになるのです。例えば日々の職場でのコミュニケーションで「いや~困ったな~」とか「わあ、嬉しい!」とか、上司が自分の気持ちを素直に話すと、部下も「困った」「助けて」が言いやすくなります。小さな自己開示の連続が信頼関係を育んでいくのです。

こうした職場は、まさに「心理的安全性」が担保されている環境に他なりません。心理的安全性(Psychological Safety)は、この連載を通してのキーワードです。心理学用語で、 “他人の反応におびえたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出すことのできる環境を提供すること”を意味します。あのグーグルが、最もパフォーマンスを発揮するチームの条件として発表したことで、一気に注目を集めるようになりました。

リーダーの自己開示は、組織に心理的安全性をもたらす一丁目一番地なのです。

5 自己開示と自己提示

おそらく自己開示の重要性について異を唱える人はいないでしょう。最近、組織マネジメントにおいて注目を集める「1on1」といった1対1の面談でも、上司の自己開示がスムーズな対話につながるとされています。読者の中には「日々、自分から率先して自己開示している」という人も少なくないかもしれません。

しかしながら、実は、リーダーがきちんと自己開示できているかというと、やや疑問符が付きます。本人は自己開示しているつもりでも、自分を良く見せることを目的とした “自分語り”になってしまっていることがしばしば見受けられるからです。例えば、ある人が「東大に入ったものの、周りが優秀すぎて友達ができなかった」というエピソードを披露したとしましょう。「大学になじめなかった」という失敗談を打ち明けているようで、実はこれ、「東京大学出身である」というアピールにも聞こえますよね。

このように“相手からの褒め言葉や承認欲求の充足を主な目的”としたコミュニケーションは、自己開示ではなく、「自己提示」と呼ばれる行為です。上位管理者であるという立場から、部下から尊敬を勝ち取りたいとか評価されたいといった心理が働くのも理解はできますが、それだと「自慢している」「虚勢を張っている」と解釈されてしまうことも多々あります。

自己開示の達人として、水卜アナを取り上げたのはココです。彼女からは、良く見られたいという邪心がまったく感じられませんよね。彼女が組織マネジメントの観点から戦略的に自己開示しているかどうかはさておき、見習ってほしいのは、彼女の“ありのままに正直な”自分をさらけ出すコミュニケーションスタイルです。

“ありのままに正直に”話す自己開示のポイントは、1.仕事と無関係の話を仕掛ける、2.返答にプライベートな要素を交ぜる、3.ときには部下に弱みを見せる、の3つと言われています。もっと砕けた表現だと、「趣味」であるとか「笑える失敗談」とか「自信のないところ」とか。そういったちょっとした自己開示から始めていけばよいとされています。しかし職場という名の戦場で、日々「鎧」を着て戦ってきたビジネスパーソンには、そのちょっとしたことが、意外と難しいのかもしれません。そんな時には、ぜひ水卜アナを思い出してみてください。

以上(2021年4月)
(執筆 平賀充記)

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画像:Halfpoint-Adobe Stock

決算前に確認したい「減価償却」基本を分かりやすく解説

書いてあること

  • 主な読者:減価償却の基本を知りたい中小企業の経営者・経理担当者
  • 課題:なぜ、取得した費用をすべて計上しないのか分からない
  • 解決策:減価償却は固定資産の価値を分割して費用にする処理。財務会計と税務会計の取り扱いも異なる

1 減価償却とは

減価償却とは、固定資産の取得価額を一定期間にわたり、分割して費用計上する会計上の処理をいいます。固定資産は、通常、数年から数十年使い続けます。もし、購入時に一括して費用計上してしまうと、次の年から、その固定資産がもたらす影響が財務諸表に正確に反映されなくなってしまうので、減価償却によってこれを防げます。

また、固定資産は使用や時間の経過により、少しずつ価値が減少します。このような実態を正確に財務諸表に反映するために、固定資産は一旦資産計上し、使用期間にわたって少しずつ減価償却を行っていくことになります。

2 減価償却の財務上の効果

減価償却が他の費用と違う点は、支出を伴わないことです。なぜなら、固定資産の取得時に支払いは済んでおり(分割払いなどの場合は除く)、その後は、計算上の金額が財務諸表に計上されるだけだからです。つまり、減価償却費の分だけ利益は減少しますが、資金は減少しません。このことは、利益以外の部分で、減価償却費分の資金が社内に留保されていることを意味し、「自己金融効果」と呼ばれます。新たな資金が入ってくるわけではありませんが、資金繰りや将来の投資計画を作成する際、減価償却費が意思決定の1つのポイントになります。

3 財務と税務で取り扱いが違う?

1)償却方法

財務上と税務上の減価償却の主な違いは、「償却方法」と「耐用年数」の取り扱いです。財務上認められる減価償却方法は次の通りです。

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財務上は、資産の使用実態に合う上記の減価償却方法のいずれかを会社が継続して適用することを前提に、自由に選択することができます。

一方、税務上は、資産ごとに適用できる減価償却方法が法律で決められています(以下「法定償却方法」)。もし、税務上認められていない方法で償却した場合、納税額を計算する際に法定償却方法で再計算しなければなりません。そのため、実務上は、税務上の法定償却方法により減価償却を行うのが一般的です。税務上の法定償却方法は次の通りです。

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2)耐用年数

財務上、減価償却の耐用年数はその固定資産の材質や使用環境により、会社ごとに合理的な年数を設定できます。また、同じ種類の固定資産であっても、使用頻度が違うなどを理由に、異なる耐用年数を設定することができます。

一方、税務上の減価償却の耐用年数は法律で定められています(法定耐用年数)。税務は基本的に、会社ごとに計算基準が異なることで、会社間の不平等を生じさせないこと(課税の公平性)が前提となっているため、会社が独自で見積もった耐用年数は認められません。実務上では、償却方法と同様、税務基準を基に行われていることが一般的です。

4 固定資産の減価償却に係る税務特有の取り扱い

1)少額減価償却資産

少額減価償却資産とは、「使用可能期間が1年未満」または「取得価額が10万円未満」のいずれかに該当する減価償却資産(減価償却を行う固定資産)をいいます。その事業の用に供した事業年度において、取得価額の全額を損金経理(費用として経理)した場合に、その全額を損金(税務上の費用)の額に算入することができます。つまり、固定資産として一旦資産計上する必要はなく、購入時に消耗品費などの費用として処理され、減価償却はしません。

なお、中小企業者等(資本金の額などが1億円以下で一定の法人)の場合は、一定の範囲内で、取得価額が30万円未満である減価償却資産も少額減価償却資産として処理することができます。

2)一括償却資産

一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の減価償却資産をいい、3年間の均等償却をすることができます。つまり、機械装置や工具器具備品などの個々の耐用年数を把握し、固定資産として計上するのではなく、一括償却資産として計上し、3年間の均等償却を行います。そのため、通常の減価償却はしません。

取得価額が30万円未満の固定資産(減価償却資産に限る)の税務上の取り扱いは次の通りです。

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3)特別償却

特別償却とは、通常の減価償却費(以下「普通償却費」)の他に、設備の取得など投資をした固定資産の取得価額に一定の割合を乗じて計算するなどした特別な償却費(以下「特別償却費」)を損金に算入できる制度です。損金に算入できる償却費が増加(普通償却費+特別償却費)することで、所得金額を減少させる効果があり、投資額の早期回収が可能になります。

以上(2021年3月)
(監修 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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従業員が仕事を楽しみ始める、経営者の「対話術」(1)~仕事が楽しい、そうでないときの違いとは?~

書いてあること

  • 主な読者:自社の従業員がイキイキと働いていないと感じる経営者
  • 課題:従業員が「強み」を発揮し、「仕事が楽しい」と感じてもらう方法がわからない
  • 解決策:各従業員の「心のクセ」に合わせたアプローチ方法で「やる気」を引き出す。心のクセを知る効果的な方法が、従業員との対話になる

1 仕事が楽しい従業員と、そうでない従業員の違いとは?

1日の3分の1の時間は仕事をしているのだから、仕事が楽しくないと人生が楽しいはずがない」というのは、よく言われている話です。楽しく仕事をすれば人生も楽しくなるとわかっていても、やはり楽しそうに仕事をしている人と、そうでない人がいます

何が原因で分かれてしまうのでしょうか。同期で入社5年目の仕事が楽しくないと感じているAさんと、仕事が楽しいと感じているBさんを例に挙げて、違いを見てみましょう。

<Aさん>

  • 日曜日の夜、テレビでお気に入りのバラエティー番組が終わり、また明日から仕事が始まると思うと憂鬱な気分になる
  • 土曜日、日曜日と自宅で好きなテレビ番組を見たり、ゲームをしたりして、のんびりしたはずなのに、先週の仕事の疲れがまだ残っているような気がする
  • 悪く評価されたくないので、上司から頼まれた仕事はきちんとこなすタイプで、課長の信頼は厚く、業務に対しては良い評価を得ている。ただし、言われた以上の仕事をやりたいとは思わない
  • 周りをシャットアウトして集中して仕事をしているときは、同僚も話しかけないように気を遣っている
  • そのため、上司からは「もう少しチームワークよく仕事ができるようになるといい」と言われている

<Bさん>

  • 現在の仕事はやりたかったことではないが、今後のキャリアを広げるために突き詰めている
  • ただ言われたことだけをやるのではなく、常に相手のために自分ができることはないか、どうしたらより良い仕事ができるかを考えている
  • 改善したほうがよいと思う点を上司に積極的に提案している
  • わからないことがあると、同僚によく聞いて回っている
  • 人間関係に壁をつくらず、周りも気軽に話しかけてくれるし、「手伝ってほしい」と言えば、みんな快くサポートしてくれる
  • 業界の動向に気を配るなど、知識の習得とスキルを磨くことにも余念がない
  • 平日の夜には異業種交流会に参加し、時間と体力に余裕のある土曜日や日曜日には街づくりのボランティアに参加している

2 「エンゲージメント」が仕事の楽しさを左右する

仕事に面白みを感じられないAさんと、イキイキと仕事に没頭し、職場の人間関係も良好なBさん。同期入社の2人が任されている仕事はさほど変わりないのですが、仕事に取り組む状態はまるで違います。AさんとBさんを分けるのが「エンゲージメントの状態の違い」です。エンゲージメントの日本語訳や解釈は様々ですが、私たちが強調したいのは「歯車がかみ合う」という解釈です。仕事が調子よく進む。職場の人間関係がうまくいっている。そんな状態を言い表すとき、よく「歯車がかみ合っている」または「しっくりいっている」といった言葉を使います。

Bさんは、ただ言われたことだけをやるのではなく、どうしたらより良い仕事ができるかを考えて楽しそうに仕事をしています。また、知識の習得とスキルを磨くことにも余念がなく、より自分らしくイキイキと働いています。人間関係に壁をつくらないので、職場の同僚や上司とのコミュニケーションも円滑で、仲間としっくりといっているように見えます。

それに対してAさんは、頼まれた仕事はきちんとやるが、言われた以上のことをやりたいとは思いません。また、集中するときは周りをシャットアウトしてしまうため、仕事も職場の人間関係も歯車がかみ合わず、しっくりこない状態でした。だから、仕事がいまひとつ面白くないし、上司からはもう少しチームワークよく働いてほしいと言われていたのです。

このように「歯車がかみ合っているか、しっくりいっていると感じるか」。つまり、エンゲージメントの向上が仕事を楽しくするために欠かせないのです。

3 自分の「強み」を発揮できるとエンゲージメントが高まる

エンゲージメントと密接な関係にあるのが、個人の持つ「強み」です。自分の強みを「発想力」、アイデアを生み出す力だと考えているビジネスパーソンがいました。あるとき、その「発想力」を評価され、ビジネスプランを考案する仕事を上司から任せられました。もともとビジネスプランを考えることが大好きだったという彼は、任された仕事を見事に遂行し、依頼した上司の想像をはるかに上回る成果を出します。その結果、彼は自分の仕事はもちろんのこと、その仕事を任せてくれた会社に対して、強いエンゲージメントを感じるようになりました。

一方で、自分が強みとは考えていない能力の発揮を期待されて仕事を任され、「つまらない」と感じながら仕事を続けたために思うような成果を出せず、ついにエンゲージメントも感じることができなかった、という人もいます。もちろん中には、任された仕事を進めるうちに自分が知らなかった強みに気づき、仕事が楽しくなり、結果的にエンゲージメントが向上したケースもあります。

いずれにしても、仕事を進める過程で、個人の持つ「強み」がエンゲージメントに大きく作用したのです。自分が「強み」だと感じているものは、得意なことや好きなことでもあります。その得意なこと、好きなことを任され、邁進するからこそ「やる気」も生まれます。

4 従業員の「強み」を発揮させるには?

1)個々人に応じたアプローチで「やる気」を引き出す

ただ、上司の立場から考えたとき、誰に対しても同じアプローチで「やる気」を引き出せるかといえば、そうとも言えないのがまた難しいのです。

そんなときにこそ、多様性を活かすことが問われています。人それぞれ性格が違うわけですし、人生経験も違います。だからこそ、仕事においても多様な可能性を期待できるのです。それにもかかわらず、誰に対しても同じ頼み方で「やる気」を引き出せると決めつけ、個々人に応じたアプローチを工夫せずに進めていると、むしろ逆効果で「やる気」を失う人も出てきかねません。

この人は、どのような頼み方をすれば、一皮むけて強みを発揮してくれるだろうか」。そこをしっかり考えることが、部下のエンゲージメントを引き出すための第一歩と言えるでしょう。

2)従業員の「自主性」を大切にする

エンゲージメントを高める方法の一つとして、従業員の「自主性」を大切にすることが挙げられます。

例えば、カフェチェーンのスターバックスは、来店したお客様に対する挨拶などのコミュニケーション方法をマニュアルで規定せず、個人に任せていることが知られています。いわばパートナー(従業員)の自主性やコミュニケーション力、発想力、共感力、心遣いなどを信頼した方法論と言えます。

従業員は、お客様をもてなすために自分の「強み」を発揮して創意工夫し、その結果が店舗の売り上げはもちろん、個人の評価につながっていくので、やる気が高まり、エンゲージメントも深まります。スターバックスの場合は、こうした接客を実現するために徹底した研修とコーチングを行っていると言います。

3)従業員一人ひとりの「心のクセ」を知るために「対話」を重ねよう

私たちは、個人の持つ「強み」を、「スキル」「知見」、そして「心のクセ」の組み合わせだと考えています。この中で、スキル、知見は、子供の頃から成長を続け、社会人生活を送る中でいろいろな要素を身につけて、どんどんと変わっていくものですが、「心のクセ」は実は年齢を重ねてもあまり変わらないものだと考えられています。

「心のクセ」を知るために効果的な方法が、「対話」です。「対話」の中で、以下のような質問をしてみることで、従業員の「心のクセ」が見えてきます。

これまでの仕事で、最高に楽しいと思った仕事を思い返してください。

  • どんな内容の仕事でしたか?
  • どんな仲間と一緒でしたか?
  • どんな困難がありましたか?
  • その仕事のどこが楽しかったのですか?

こうした「対話」が積み重なることで、仕事に対する意味や意義も感じられるようになります。自分の強みが活かされれば自然とエンゲージメントが高まり、それが職場やチームによい影響を与えてチームの実績も上がり、さらには会社全体にも素晴らしい結果がもたらされます。

【参考文献】

「楽しくない仕事は、なぜ楽しくないのか?」(土屋 裕介、小屋 一雄 2020年2月)

以上(2021年3月)
(執筆 日本エンゲージメント協会 佐々木拓哉 小屋一雄)

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画像:Gutesa-shutterstock

【朝礼】音声SNSに学ぶ「進行役」に必要な3つの力

先日、今年の1月末ごろから日本でも大いに盛り上がっている音声SNSを使い始めました。今日はそのツールを通じて私が改めて学んだ「進行役の秘訣」を、皆さんにお伝えします。

この音声SNSでは自由に「部屋」を作って会話ができるため、参加者はさまざまなテーマで座談会を開催しています。ただ、映像や画面の共有は一切できず、音声だけでコミュニケーションを取る仕組みなので、通常の座談会以上に「進行役」の役割が重要になります。たくさんの座談会を体験する中で、私は座談会やミーティングの進行役には、「共有力」「展開力」「行動力」の3つの力が重要だと実感しました。

まずは「共有力」です。「音声しかない」SNSなので、進行役は情報や状況を参加者に共有しなければなりません。進行がうまい人は、スピーカーの発言が難しすぎる場合、すかさずその内容を簡潔に、分かりやすく補足説明します。また、座談会が盛り上がってくると、スピーカー同士にだけ通じるローカル話も出てきがちですが、それもかみ砕いて、もしくは聞き手が分かる事例に置き換えて共有します。こうして、「置いてきぼり」が出ないようにしているのです。

共有するのは情報だけではなく、「時間の共有」も含まれます。進行役は、スパッと短く発言する、話をまとめる、1時間など決められた時間できっちり終わるなど「他の人の時間を共有している」意識を持って座談会を進行しています。

次に「展開力」です。座談会では話をテンポよく進めるために、話題を次々と展開していかなければなりません。進行のうまい人は、この「展開力」が抜群です。スピーカーに質問して同じ話を掘り下げるだけではなく、スピーカーの話を受けて、「今の話で思い出した話が一つあって」「今の話を別の観点で見ると」と続け、関連しつつも少し違う別の論点にスムーズに移っていくのです。そうすると聞き手は、スピード感とたくさんの情報量、思考量を感じることができ、充足感が得られるのです。

こうした「展開力」を身に付けるには、圧倒的な知識と経験、それに基づく自分自身の深い考察が必要です。そのために欠かせない力が、「行動力」です。書籍を読む、人の話を聞くなど、とにかくさまざまな体験をする行動力が源泉になっているからこそ、上手な進行役は、スピーカーからもさまざまな話を引き出せるのではないでしょうか。

今、皆さんにお伝えした「共有力」「展開力」「行動力」は、日ごろのビジネスでも大いに求められます。例えば、最近はオンライン会議でもカメラをオフにして音声だけで話をすることが増えています。音声だけだと、集中できる会議とそうでない会議との差が顕著になりますが、その原因の一つは進行役の力量です。最近、オンライン会議がいま一つだなと感じている人は、「共有力」「展開力」「行動力」を考えてみてください。

以上(2021年3月)

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画像:Mariko Mitsuda