【朝礼】固い結束力で繁栄した最強集団の悲劇

突然ですが、皆さんは最強の肉食動物は何だと思いますか? 単体で戦えばライオンやトラかもしれませんが、集団では「リカオン」が最強だと私は思っています。なぜなら、リカオンの狩りの成功率が、70%とも80%ともいわれるほど高いからです。対してチーターの狩りの成功率は50%、ライオンは30%、トラに至っては10%とされているので、リカオンのすごさが分かります。

リカオンはアフリカに生息するイヌ科の動物で、10頭から数十頭の群れで生活しています。体長は1メートルほど、体重は30キログラムほどと小柄ですが、群れの結束力がすごいのです。

リカオンの結束力を支えている習性の1つが、狩りに行くかどうかを、くしゃみによる投票で決めることです。群れの誰もが最初にくしゃみをすることで狩りに行くことを提案できますし、リーダーの同意も必須ではありません。ただし、ある群れでは、最初にリーダーがくしゃみをした場合は、3頭程度がくしゃみで同意すると狩りに行きますが、経験が浅く序列の低いリカオンが提案した場合、10頭ほどの同意が必要といいます。

この誰もが提案者になれる方法は、メンバーの意思を尊重する民主的、かつ合理的なもので、学ぶべき点があります。私は皆さんにも、積極的に提案し、意欲的に仕事を進めてほしいと思います。

とはいえ、組織として我が社が目指すのは、リカオンのような集団ではありません。リカオンは、生き残るには決定的な弱点があるからです。

リカオンは体格で勝るライオンなどに襲われることを避けるため、縄張りを持たず広範囲に移動して、天敵と接触する機会を減らしています。

問題は、環境の変化により身を守るのが難しくなっているのに、その生活スタイルを変えられていないことです。人間の生活領域の拡大に伴い、リカオンは広範囲に移動することがあだとなって、人間との接触機会が増えました。そのため、家畜を食べる「害獣」として駆除されたり、人間が飼っている犬の病気に感染したりしています。今では最盛期の1%に当たる5000頭ほどにまで減少しているとの報告もあり、絶滅危惧種に指定されています。同じく数を減らしているライオンやチーターと比べても、圧倒的に負けています。

私は、リカオンの結束力の強さが「集団的な思考停止」を招き、それが広範囲での移動スタイルを変えられない要因になっていると思います。外部環境の変化への対応でなく、集団の和を最優先してきたため、仲間に生活スタイルの変化を強いる提案は、出しにくかったのかもしれません。

会社という組織も同じです。単なる仲良し集団で居心地の良さに安住していては、組織は前に進めません。時には私や同僚への批判をしてもいいのです。会社のために改善すべきと思ったら、一時的に集団の結束を乱すことを恐れず異を唱え、皆と違う方向に進むことで、会社を変えてください。私もそうしています。それこそが、会社の永続につながる、真の組織貢献です。

以上(2021年1月)

pj17039
画像:Mariko Mitsuda

子会社を閉じる(解散・清算)ときの税務の留意点

書いてあること

  • 主な読者:子会社の業績が悪化し、その対応を判断しなければならない経営者
  • 課題:解散・清算の税務は、通常ほとんど触れない特殊分野であり、よく分からない
  • 解決策:100%子会社の子会社株式清算損や評価損といった損金の扱いに注意する

1 子会社整理の際に検討される主な方法

子会社の業績が悪化し、事業の継続が困難になってしまった場合、経営者は子会社の整理を決断しなければなりません。子会社を整理する際の主な方法をまとめた上で、「解散・清算」に注目し、税務上の留意点などを解説します。最後に、解散・清算の手続きもまとめます。

1)親会社が吸収合併する

合併には吸収合併と新設合併とがありますが、一般的には親会社が子会社を吸収合併するケースが多いです。この場合、重複コスト(経理や総務といった管理業務など)をカットできる一方、子会社の負うリスクを引き継ぐことになります。主なメリット・デメリットを整理すると次のようになります。経営者は税理士などの専門家に相談しつつ、考えられるメリットとデメリットをできるだけ網羅的に把握することが大切です。

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2)買い手がいる場合、子会社の経営権や事業を譲渡する

合併によるメリットが見込めない場合は解散・清算手続きを検討するのがほとんどですが、買い手がいる場合は経営権や事業の譲渡も検討できます。経営権の譲渡とは、株式を譲渡することです。また、事業譲渡とは、子会社が営んでいる事業のうち、買い手の希望している事業に関連する資産や負債を譲渡することです。

3)子会社を解散・清算する

合併によるメリットが見込めず、経営権や事業の買い手も現れない場合は、子会社を解散・清算する検討に入ります。

1.解散

解散とは、事業活動をやめて会社を消滅させることです。なお、会社は解散しただけでは消滅することはなく、続けて「清算」という手続きが必要になります。

2.清算

清算とは、会社の財産を換金したり、債権・債務を整理したりすることです。これらの手続きを経て、最終的に残った財産を株主に分配したところで手続きは終了し、会社は消滅します。なお、清算には「通常清算」と「特別清算」とがあります。「通常清算」は、会社の財産で全ての債務を返済することができるとき(債務超過でないとき)に取られる方法で、「特別清算」は債務超過を疑われる会社が裁判所の監督下のもとで進められる方法です。

2 子会社を清算するときの税務上の主な留意点

1)子会社に対する債権の免除

子会社が債務超過の状態にある場合、特別清算を避けるため、親会社から子会社に対する貸付金(子会社側では借入金)などの債権(子会社側では債務)を免除することが多いです。この債権の免除による損失(貸倒損失)は親会社の損金(税務上の費用)とすることができますが、免除の金額が過剰な場合、損金として認められないケースがあります。

2)子会社株式清算損は損金にできない

残余財産の分配がある場合、親会社は、子会社株式の帳簿価額と残余財産分配額(全ての資産を現金化し、負債の弁済・納税した後に残る財産の価額)の差額は、損益計算書に損失として計上することになります。税務上もこの損失は損金となります。

ただし、持株割合が100%の子会社(以下「100%子会社」)の株式については、この損失は例外として損金になりません。

3)子会社株式評価損を損金にできない

子会社が解散して清算手続きに入った場合、親会社が子会社株式評価損を計上することがあります。この評価損については、子会社の財務状況などによっては税務上も損金になります。

ただし、子会社株式清算損と同じように、100%子会社の株式について計上した評価損は損金になりません。

4)100%子会社の繰越欠損金は親会社に引き継ぐことができる

100%子会社の株式については、親会社側で子会社株式清算損や評価損を損金にすることはできません。その代わり、100%子会社の有している繰越欠損金を親会社に引き継ぐことができます。繰越欠損金とは、残余財産が確定した日の翌日前10年以内に開始した事業年度で生じた欠損金(税務計算上の純損失)で、税務計算上で所得と相殺していない未処理のものをいいます。

5)税理士などへの相談

解散や清算に関連する税務は、事業が続いている段階では触れることのない特殊分野です。損金の取り扱いも通常時と異なる点が多く、思わぬ課税が生じる可能性もあります。解散や清算をするときは税理士などの専門家へ相談し、誤った処理をしないようにすることが重要です。

3 子会社の解散・清算実務(通常清算の場合)の流れ

1)株主総会による解散決議と清算人の選任

会社を解散する場合、株主総会で解散決議を行い、承認を得る必要があります。同時に、その後の清算事務を執行する「清算人」の選任も併せて行います。清算人になるのに資格などは必要なく、一般的には代表取締役だった人が清算人になるケースが多いです。

2)登記手続き

解散が承認されてから2週間以内に、解散登記と清算人の選任登記を行わなければなりません。

3)官報公告

債権者に会社の解散を通知するとともに、債権の申し出をするよう、官報に公告を出す必要があります。なお、官報公告は、申し込みから実際に掲載されるまで10営業日前後の日数がかかります。

4)貸借対照表と財産目録の作成

清算人は、解散日の貸借対照表と財産目録を作成し、株主総会の承認を得ます。また、株主総会で承認された後は、必要な税務申告書を作成して提出します。

5)債権の回収や債務の弁済

解散日現在で未回収の債権を回収し、保有する財産を換価した上、債務の弁済を行います。なお、3)の公告から2カ月間(債権の申し出期間)は債務を勝手に弁済することはできません。従って、債務については、債権の申し出期間が経過してから弁済するようにしましょう。

6)清算確定申告

債権の回収・財産の換価を行った上、全ての債務を弁済したところで残った財産の金額が確定(残余財産の確定)したら、1カ月以内に必要な税務申告(清算確定申告)をします。この清算確定申告が、会社が行う最後の確定申告手続きになります。

7)残余財産の分配

必要な税務手続き・納税が完了したら、株主の持株割合に応じて残余財産を分配します。

8)決算報告書の作成と株主総会の承認

清算手続き中に得た収入の額や債務の弁済額などを記載した決算報告書を作成し、株主総会の承認を得たら清算は結了し、会社は消滅することになります。

9)清算結了の登記と税務届出書の提出

8)の株主総会の承認を受けて清算が結了したら清算結了登記を行うとともに、必要な税務届出書を税務署や県税・市税事務所に提出することで、全ての手続きは終了となります。

4 解散・清算で経営者が考えるべきこととは?

1)債権者への通知

会社を解散した場合、国が発行する官報で「解散した旨」や「債権の申し出をしてほしい旨」などを通知(公告)する必要があります。なお、経営者が解散を決断する前に取引先などにその事実が知れ渡ってしまうと、信用不安に陥るリスクがあるので注意しましょう。

2)従業員の解雇

会社が従業員を雇用している場合は、清算手続き中に従業員を解雇しなければいけません。解雇は早い段階で行うほうが給与や法定福利費の負担を抑えられます。しかし、経営者が解散を決断する前に解雇予定であることを知られると、従業員の動揺も大きく、解散までの期間の業務に支障が出ることがあります。従って、従業員に解雇通知を出すタイミングは慎重に決める必要があります。

3)保有財産の換価

負債(買掛金や借入金)の弁済に充てるため、保有している固定資産などは売却して現金化(換価)しなければなりません。なお、不動産などについては売却に時間がかかる一方、慌てて売却すると、安い金額でしか売れないこともあります。このような売却に時間がかかる資産は解散・清算を決定する前の段階で現金化する判断が必要です。

4)各種契約の解除

事務所のテナント契約やリース契約などがある場合には、解約手続きをする必要があります。契約内容によっては、事前に解約通知を行わないと違約金が取られる場合があるので、あらかじめ確認しておきましょう。

5)その他

会社を解散した場合は、税務署や社会保険事務所などに届け出をしなければなりません。また、許認可を必要とする事業を行っている場合、各業法に従って廃業届などを提出する義務があるケースがあります。

以上(2021年2月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

pj30110
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【朝礼】デジタル時代だからこそ熱くなれ!

ビジネスのデジタル化が急速に進んでいます。その影響もあり、「感情を表に出さず、とにかく機械のように働くこと」を【効率化】と考える人もいるようです。しかし、私はそうした働き方には反対であり、デジタル化が進む時代だからこそ、「よりウエットに、人と人とのつながりを深める」ことを重視したいと考えます。それが私の信条であると同時に、今後のビジネスの可能性を広げていくために欠かせない、重要な要素であると信じているからです。

私には、尊敬してやまないビジネスの恩師がいます。今から20年ほど前、その恩師から「君は本当にすごいな!」と褒められたことがあります。それは、私が電話とメール、提案書のやりとりだけで、一度も相手と会うことなく数百万円の契約を獲得したからです。今でこそオンラインでの商談が普及していますが、当時はそのような発想は全くありません。「とにかく会って話そう」というのが通常です。しかもその相手は、社会的に非常に“おかたい”業界の人です。常識的に考えて、相手が一度も会ったことのない私と契約をするなんて考えられません。

にもかかわらず私が契約できたのは、もちろん会社の実績もありますが、それ以上に私の本気の姿勢と熱意が伝わり、私自身を信頼してもらえたからだと思っています。

皆さん、私はどうやって会ったことのない相手の信頼を得たと思いますか。

「人のどこを見て、信頼するか」は人それぞれですが、自己分析をしてみると、電話などのやりとりだからこそ、挨拶をきちんとするとか、時間などの約束を守るといったことに注意していました。そして、ここが重要なのですが、相手から難しい要求をされても、その難題と真正面から向き合う姿勢を決して崩しませんでした。夜遅くまで電話で話したり、一日に何十通もメールでやりとりしたりしました。互いの上司を説得するための作戦を一緒に考えたことも何度もありました。そうした中で強固な信頼関係が生まれ、「あなたと、このプロジェクトを成功させたい!」と互いに思えるようになったのです。

表面だけを捉えれば、電話やメールだけの営業は効率的に映り、そこばかりが注目されます。しかし、この例で私が心掛けたのは、泥臭いコミュニケーションを通じて、私の熱意を示すことでした。電話やメールは手段にすぎません。

これからのビジネスでは、画面越しでしか話したことのない相手と提携することが普通になります。そのとき、皆さんは相手のどこを評価して「組んでもいい!」と判断しますか。逆に、相手からの信頼をどのように勝ち取りますか。ましてや今は「個」を尊重する時代です。聞こえはいいですが、要は「会社の看板を外した状態で、皆さんが、どれだけ清く正しく存在感を示せるか」ということです。感情を奮い立たせ、熱い思いを伝えることがその答えになるはずです。

以上(2021年1月)

pj17038
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】議論に必要なのは「愛」「尊敬」「知識」

皆さんは、同僚やクライアントと正しく「議論」することができますか。議論とは、特定のテーマについて互いの意見を論じ合うことです。ビジネスでもしばしば議論することがありますが、これは互いに知恵を出し合い、より良い仕事をするためのものです。

ところが、ビジネスで行われる議論の多くは「勝負」になりがちです。「論破」という言葉に引っ張られるのか、「相手を言い負かすこと」が目的になっているのです。こういう間違った議論では雰囲気が険悪になり、相手から何か言われると自分自身を否定された気分になってしまいます。議論で否定するのは意見の内容や分析であり、相手自身ではないのですが、感情的になるとこの大原則を忘れがちです。しかし、論破されるのは悔しいかもしれませんが、自分にはなかった視点を得て、考え方を見直すきっかけになるわけですから、決して「負け」ではないのです。

また、経験上、議論が「勝負」になりがちなことを分かっている人は、衝突を避けるための努力をします。素晴らしいことですが、やはり方向性を間違えている人が多いように思います。よくあるのは、議論を深めるというよりも、相手をおだてて場を和ませ、折衷案に落とし込むケースです。しかし、こうした折衷案に魅力はありません。

どうすればビジネスでの議論がうまくいくでしょうか。議論の「さしすせそ」と「たちつてと」という興味深い指摘があるので紹介します。

まず、議論の「さしすせそ」は、議論を円滑に進めるための言葉です。具体的には、「さすがですね、知りませんでした、すごいですね、センスがいいですね、そうなんですね」と相手を肯定し、場の雰囲気を和らげる言葉です。

一方、議論の「たちつてと」は、研究者やエンジニアなどがよく使う言葉とされています。具体的には、「例えば? 違いは? つまり? 定義は? 統計的な裏付けは?」と質問し、状況を確認する言葉です。

ここで重要なのは、「さしすせそ」と「たちつてと」を対立項のように捉え、自分がどちらを使ったら有利かなどと考えないことです。「さしすせそ」も「たちつてと」も、議論を進めるためのきっかけにすぎません。議論の展開や雰囲気を考えて、「それは知りませんでした。ちなみに、統計的な裏付けはあるのですか?」と両方を組み合わせて使えばよいだけのことです。

議論には目的があります。お客様にとって良いサービスをつくるための議論であれば、まずお客様への愛がなければなりません。また、議論の相手は、共に良いサービスを検討する仲間であり、そこに尊敬がなければなりません。最後に、議論を深めるには準備、つまり知識が必要です。この「愛」「尊敬」「知識」を意識して議論すれば、くだらない勝ち負けにこだわることはなくなります。今年、皆さんの議論がバージョンアップすることを期待しています。

以上(2021年1月)

pj17037
画像:Mariko Mitsuda

役員退職慰労金を使った自社株式の評価引き下げ

書いてあること

  • 主な読者:役員退職慰労金を使って自社株式の評価を引き下げたい経営者
  • 課題:税務上、適正な役員退職慰労金の決め方や自社株の評価方法が分からない
  • 解決策:役員退職慰労金の損金算入時期をきちんと把握し、純資産価額方式で評価する

1 役員退職慰労金と純資産価額方式で評価を下げる

株式の評価額は評価方式によって大きく変わります。そのため、株式を高額で譲渡したい場合と低額で譲渡したい場合とで評価方法を自由に選択できたら便利です。しかし、実際はそうはいかず、相続税法において「取引相場のない株式」は、「純資産価額方式」や「類似業種比準方式」などによって評価することになっています。

本稿でご提案するのは、役員退職慰労金(以下「役員退職金」)を支払うタイミングで、前述の純資産価額方式を採用することで自社株式の評価を下げる方法です。例えば、事業承継(代替わり)では、現在の経営者の退任と、新しい経営者の就任があります。現在の経営者には役員退職金が支払われる一方、新しい経営者には基本的に“安く”会社を渡したいものです。このようなときに検討する方法です。具体的には、役員退職金を内部留保から支払って純資産を減らし、(純資産価額方式で評価すると)自社株式の評価を下げるということです。

2 さまざまな面から検討しなければならない

1)純資産価額方式とは

純資産価額方式は、企業の純資産に着目した企業価値の評価する方法であり、算出方法は次の通りです(財産評価基本通達185)。評価差額は資産の含み益ですが、これに37%を乗じて評価差額に対する法人税等に相当する金額を算出します(財産評価基本通達186-2)。

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一般的に、純資産価額方式は他に比べて株式の評価額を引き下げる手段が少ないと考えられますが、役員退職金の支払いを利用すれば大丈夫な場合もあります。内部留保から役員退職金を支払えば、その分だけ純資産は減少します。純資産価額方式で算定される株式評価額を引き下げられるというわけです。

2)基本的に役員退職金は損金になる

役員退職金を内部留保から支払って純資産を減らし、純資産価額方式で評価すると、自社株式の評価が下がるという方法ですが、役員退職金が税務上の損金になるかどうかも同時に考えなければなりません。純資産価額方式で評価額を下げたとしても、法人税等の納税が多額に発生してしまう可能性があるからです。

この点、役員退職金は、債務(支払い)が確定した日の属する事業年度の損金となります。役員退職金の支払いによる当期利益の大幅な減少を避けるため、毎期、有税で積み立てている場合は、役員退職金支給時に引当金と相殺し、引当金取崩額を損金計上することになります。具体的な取り扱いは法人税基本通達で定められています。

【法人税基本通達9-2-28(役員に対する退職給与の損金算入の時期)】
退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とする。ただし、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度においてその支払った額につき損金経理をした場合には、これを認める。

損金になるか否かは重要なポイントなので、以降でもう少し説明します。

3)期中に退職した場合、支払いが確定したときに損金となる

役員が期中に退職した場合、内規により未払い計上することはできます。しかし、債務は確定していないので損金にはなりません。株主総会の決議や取締役会の決議で、役員退職金が具体的に確定した事業年度に損金計上するのが原則です。ただし、役員退職金の額が確定していても、会社の資金繰りの都合上、支払われない場合は、実際に支払った事業年度に損金計上することも認められています。

4)役員退職金を分割支給する場合、支給するべきときに損金となる

中小企業ではオーナー経営者や同族の役員が多く、役員在任期間が長くなりがちです。仮に在任1年当たりに換算した役員退職金が少額でも、在任期間が長期にわたると役員退職金は高額になります。このような場合、役員退職金を分割して支給することもあります。

税務上、役員退職金を分割支給する場合、支給するべきときに損金計上できます。株主総会の決議等による確定前に役員退職金の総額を費用で処理したとしても、未支給分は損金に算入できません。仮に、役員退職金5000万円を2分割支給(年間2500万円ずつ支給)する場合の税務上の取り扱いは、次のいずれかとなります。

  • 株主総会の決議等により、金額の確定した日の属する事業年度において一括して損金計上する。未払いの役員退職金分は未払い計上となる
  • 分割支給する日の属する事業年度ごと、2年間にわたって損金計上する

役員退職金を長期間で分割支給すると、支給額を恣意的に操作することで会社の利益を減少させるなどして課税を逃れることができます。これを防ぐため、役員退職金の分割支給は、資金繰りの悪化などの合理的な理由が求められるといわれています。また、長期間の分割支給は、退職年金支給と指摘される可能性もありますので、注意が必要です。

3 役員退職金による自社株式の評価引き下げは可能?

自社株式の評価が「ゼロ」であれば、譲渡であれ贈与であれ、原則課税はありません。例えば、創業者が後継者となる子供に自社株式を譲渡するとしましょう。その際、会社は創業者役員に多額な役員退職金を支払います。その金額が、貸借対照表上の純資産の部の合計に土地などの含み益または含み損を加減算した金額を上回った場合、創業者役員に役員退職金としてこの金額を支払った段階で、純資産価額方式で株式を評価すると、自社株式の評価は「ゼロ」となります。

会社は多額の役員退職金を支払うことになりますが、役員退職金規程が整備されていれば支払いの根拠ができます。また、退任役員への退職慰労金贈呈が株主総会の決議により承認されていれば、会社法上の問題はありません。

一方、会社が過大な役員退職金を支払った場合、法人税法上、役員退職金の損金計上が否認されるケースがあります。ただし、役員退職金が「不相当に高額であるか否か」の判定は企業規模や役員の在任期間などから税務署が下すため、会社では支払った役員退職金が「不相当に高額であるか否か」の判断をしにくいのが実情です。通達などで明らかにされていない事項もあります。税務署の判断と会社の税務上の処理が異なるリスクを低減するために、税理士などの専門家に相談しましょう。

以上(2021年2月)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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【朝礼】営業の現場で使える「4H」

今日は、もうすぐ始まる新年度にスタートダッシュを決められるよう、皆さんに覚えておいてほしいことを話します。

皆さんは、「3H(さんえいち)」という言葉を聞いたことがありますか? 「初めて」「変更」「久しぶり」の最初の文字「H(えいち)」を取ったもので、人がミスや間違いを起こしがちな作業シーンを表しています。初めての作業、変更があった作業、久しぶりの作業はヒューマンエラーが起きがちなので注意しましょうということで、主に工場などで使われていると聞きます。

私は、この3Hは、営業の現場でも同じだと考えています。営業はお客さまとコミュニケーションを取るのが大事な仕事ですが、特にコミュニケーションを取ってほしい、気を配ってほしい場面があります。それが、この「3H」の「初めて」「変更」「久しぶり」なのです。

例えば、お客さまの窓口担当者が変わり、「初めて」の方が担当になったときを想像してください。新しい担当者は、恐らく、自分が担当することになった案件や業務を精査し、見直そうとします。つまり、こちらのアクション次第でチャンスにもピンチにもなるのです。「初めて」の担当者に対しては、挨拶と同時に、そのお客さまがこれまでどのように当社のサービスを使ってくださっていたか、課題は何か、他のお客さまはどう使っているか、当社ができることは何か、そうしたことを早めに、しっかりと説明しましょう。

お客さまがこれまでと違ったことを依頼してきたとき、つまり何か「変更」があったときも同様です。お客さまが新しいことを考えているかもしれませんし、こちらが気付いていない課題が出てきているかもしれません。必ず「なぜそうした変更があるのか」を尋ねましょう。これも、チャンスにもピンチにもつながります。

そして、営業ではなるべく「久しぶり」はないほうがいいのですが、疎遠になってしまったお客さまがいる場合、ホームページやプレスリリース、業界ニュースなどで新しい動きがあったら連絡を取るチャンスです。ニュースを見ましたと、「久しぶり」に連絡を取り、お客さまの近況を聞いてみてください。そこには、新しいチャンスが隠れているかもしれません。

以上が「初めて」「変更」「久しぶり」の「3H」ですが、私は、もう1つ加えて「当社の営業の4H」にしたいと思います。4つ目のHは「ハイブリッド」です。当社ではオンラインの営業も取り入れ、対面とオンラインの両方で、ハイブリッドな営業ができるようになっています。このことも、お客さまとコミュニケーションを取るチャンスです。「対面でもオンラインでもお話しできるようになりましたので、どちらでもご希望のほうで、ぜひお会いしたいです」と連絡を入れてみてください。お客さまと話をするきっかけになるでしょう。

お客さまとコミュニケーションを取る際の「4H」。新年度、ぜひ実践していきましょう!

以上(2021年2月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】新しい生活様式に、歩くことを取り入れよう

今朝のテーマは、「皆さんの健康管理」です。これまで何度も話をしていることですが、年末のこの時期、改めてお伝えします。

特に、健康管理に関心が薄く、運動をしていない人はよく聞いてください。健康は自身だけの問題ではありません。健康を害すると、家族はもちろん、病欠に伴う業務の穴埋めをする上司や同僚にも迷惑を掛けることになります。

私は病気になることが悪いと言っているのではありません。避けられない病気もあります。ですが、日ごろから健康管理を怠るべきではないと言いたいのです。

私のお勧めは歩くことです。道具などを使う必要はなく、費用も掛かりません。何より体への負担も小さいので、無理なく行えます。例えばエスカレーターでなく階段を使ったり、目的地の1つ前の駅やバス停で降りて歩いてみたりと、自分の工夫次第で、ちょっとした時間を利用して実践できることもメリットです。

私は1日1万歩を目標に、いつも歩数計を携帯して歩いています。コロナ下で外出する機会が減っているため、歩数チェックを毎日行って歩くことを意識しなければ、目標は達成できません。私なりの新しい生活様式に、歩くことを取り入れようとしているのです。

私が歩くことで健康管理につなげようと考えたきっかけは、江戸後期に精密な日本地図を作成した伊能忠敬(いのうただたか)です。

忠敬は、当時では人生の晩年ともいえる55歳から70歳過ぎまでの約17年間かけて、全国を歩いて測量し、日本地図を作成しました。踏破した距離は、3万5000キロメートルとも、4万キロメートルともいわれています。1日の歩行距離は、40キロメートル程度に上ったそうです。

実は忠敬は、元来は体が強いほうではなく、持病のぜんそくに悩まされていたといいます。当初は測量中に発作が起きることもあったようですが、発作は次第になくなっていったそうです。歩き続けることで心肺機能が高まり、体が強くなったのかもしれません。歩くことは、何歳から始めても効果がある、という良い事例です。結局、忠敬は、当時では長命の73歳で亡くなりました。

古代ギリシャの医者で「医学の父」とも呼ばれるヒポクラテスも、「歩くことは人間にとって最良の薬である」という言葉を残しています。近年の研究では、1日8000歩歩くことが、がんや生活習慣病などにかかるリスクを低下させる、という報告もあるそうです。また、歩きなどの適度な運動には、免疫力を高める効果があるともいわれているので、風邪やインフルエンザなど、さまざまな感染症にかかるリスクを低減させることも期待できます。

私は、健康管理に努めることは、社会人としての最低限の義務だと思っています。皆さんは、そのために自分に何ができるか、考えてみてください。

以上(2020年12月)

pj17032
画像:Mariko Mitsuda

事業も素敵、ド真剣、それ以上にビジョンが素敵、さらに実践も。25歳女性起業家の巻〜【世界をまるごとハッピーに。】その活動を聞きました〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、大槻 祐依さん(株式会社FinT代表)です。

25歳女性起業家、そして可愛らしい、それだけでこのコーナーに取り上げた? 実はそうではありません。これだけ事業の内容もしっかりし、ビジョンもしっかりした経営者さんが、たまたま25歳の女性である。それが今回取り上げさせていただいた次第です。女性向けのメディア運営、SNSマーケティングと今どきの事業概要ですが、コンシューマー向けサービスでは名だたる企業から仕事を受注している、しかも単発仕事ではなく継続的に取引がある。それも理念に沿った運営をしている。だからこそ、社員さん、お客さん、取り巻く周囲の皆さんがハッピーである、その仕事への取り組み方姿勢に、インタビューしながらある意味感動すら覚えたのが今回の大槻さんです。

1 インタビューの感想を最初に

1)日本情報マートのお二人から

いつもこのリポートのインタビューの際に私に付き添ってくださって真剣にお話を聞いてくださる、松田さんと梅津さん、そのお二人が今回かなり感動の領域にまで喜んでくださいました。冒頭ではありますが、お二人のインタビューの感想から披露したいと思います。

●松田さんの感想
大槻さんとのインタビューを通じて、すごく温かいものを感じました。何を大切にすべきなのか? の中心に「愛」があって、それが全くブレないところから発するエネルギーは心地よかったです。地道な努力を積み重ねながら少しずつクライアントと信頼関係を構築していることからも、誠実な印象を受けます。

感じる力、挑戦する力、やり抜く力

これらを原動力として、「小さなことでもいいから、まずは一歩を踏み出す。失敗したってそれは成功のもと」と考える。
構えず、自然体でこう考えるようになる背景には、素晴らしい家庭がありました。
きっと会社のメンバーにとっても非常に働きやすい会社なのだろうなと思います。
とても良いお話をお伺いすることができ、学びの多い時間でした。本当にありがとうございます!

●梅津さんの感想
「世界をまるごとハッピーに」を掲げる大槻さんのインタビューをお伺いして、一番に思うのは、「大槻さんにお会いできて、まず、私がハッピーになりました!」ということです。

誰かをハッピーにしたい、世界をハッピーにしたい、そしてそれは自己犠牲ではなく、もちろん自分自身もハッピーでありたい。こうした大槻さんの本気の思いや熱量は、多くのことを学ばれて、具体的な実績もあるからこその、ずっしりとした厚みを感じましたし、心から感動しました。

愛×努力と実績。

大槻さんからは終始、ご両親、世界、メンバー、事業、コンテンツなど世の中全てに対する「愛」を感じました。その上で、努力され、勉強され、実績を積まれている。本当にすごい方です。
さらに、ご自身をよく知っておられるとも感じました。ご自身の考え方や課題などもよくわかっておられて、全てを素直に受け止め、全力で前向きに努力されていると感じました。

大槻さんがいてくださったら、これからの世界は大丈夫! と思いました! 多くのことを勉強させていただきました、素晴らしい時間でした。本当にありがとうございました!

2)大槻さんをご紹介くださった森岡さんのコメント

森岡さんは日本では珍しいAmazonブティックエージェンシーである株式会社ウブンを経営されています。大槻さんの先輩経営者で、私に素晴らしい若手経営者として大槻さんをご紹介くださいました。森岡さんから見た大槻さんについてコメントを寄せていただきました。

■大槻さんの経営者としての人となりと印象、事業や仕事ぶりについて

  • イーストベンチャーズのインターンを経て確かそのまま起業を実現している彼女。イーストベンチャーズから出資受けていることからも、「人となり」と「優秀さ」を信頼されて(≒期待されて)の出資と紹介してくださった人から聞いています。
  • スタートアップ・ベンチャーキャピタル界隈で起業する多くの若手経営者のように、「プロダクト=事業」といった起業家になるため、成りたくて起業と思っていたのですが、何度か話をするうちに「この子は起業の先の経営を見ていて、経営者として成長していきたいんだな」「物事の考え方が経営者としてのベースを持っているんだな」と感じることが多く、この子の下に将来優秀な起業家が集り、より会社や事業が成長していくんだなと感じました。

    多くの若手起業家は事業家どまりで、そこから先の経営者になれない人が多いのですが、既に経営者としての素質を持っていると感じています。
  • FinT社の名前の由来はフィンテック。創業後市況が悪く事業をピポットし今成長していることからも、事業ではなく経営目線で運営していることが伺えます。
  • 事業はメディア事業とSNSマーケティング支援事業を運営。
    若くして起業し、知名度もない大槻さん&FinTさんがまずやったのは、メディア事業の創造。
    メディアは20代の女性向けメディア(Sucle)
    下記リリースの通り、


https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000044523.html

自らメディアを立ち上げ、運営1年半でインスタフォロワー30万人突破させ、その運営ノウハウを生かして、企業のインスタマーケの支援をする形で、メディア事業→SNSマーケティング支援事業を一気に立ち上げました。

このやり方も見ても起業家、事業家とよりも経営者という言葉が似合うと思います。

彼女は自分自身が一番強い、そしてターゲット自体も自分である、「20代女性向けメディア」を普段使い慣れている「インスタ」を活用し、立ち上げ、収益化をしていき、【できそうなことをやってできることを増やしていきました】。
また、今度は【今できることからもう一度できそうなこと(=インスタマーケ支援)】をやり、まさにランチェスター戦略の連続(ニッチな領域×1番になれること)で、事業創造、推進をしていっているように感じます。

  • また、これは言っていいかわかりませんが、人と組織を見る目があり、事業が成長していなかったり、スタックしていると見るや課題と要因を見抜き、ボードメンバーの配置や役割変えなどもすぐに実行する「目利き」と「実行力」があると感じてます。

私の受けた彼女の印象は「謙虚」「肝っ玉が座っている」「短絡的ではなく長い目で物事を見られる優秀さがある」方と見ています。
実年齢は若いですが、落ち着いていてしっかりしていて自頭よく、将来が本当に楽しみな経営者の方です!

と皆さん、大槻さんのことを絶賛であり、ファンになる、それこそハッピーになる、特に冒頭のお二人はオンライン上で初めて、そして1時間でこの感想と。特に梅津さんはインタビュー後半感動のあまり涙ぐんでいらっしゃいました。大槻さんの考え方、事業への取り組み姿勢がなぜこうなっていったのか、大槻さんのプロフィールを深堀りしながらお話を進めたいと思います。

2 大きな影響、変化があった高校と大学時代のお話し そして起業へ

1)高校時代にホームステイを受け入れたことで世界が広がった

トビタテ留学JAPANのポスター画像です

こちらのポスターは、文部科学省の留学奨学金を活用してのプログラム。トビタテ留学JAPANのサイトはこちらです。この写真の主が大槻さん。当時大学2年生、ご自身もこのプログラムで留学経験があります。この留学や海外との関わりのスタートは高校生の時。それは1年生の時にホームステイを自ら応募し、受け入れて、オーストラリア人セーラさんに日本のお菓子に興味、日本流のファッションと、折角日本に興味を持って留学しているセーラさんに自身でいろんなプランを考えて、たくさんの体験を提供することをやっていたらものすごく喜んでもらったこと。
この経験ってもっと多くの日本に訪れる外国の人々に体験してほしい、紹介したいとこの頃から考えるようになっていたそうです。この経験が大学に入学と同時に大きく寄与することに。

2)大学入学とともに起業家養成講座へチャレンジ そして日本を代表する大学生へ

中高一貫の普通の女子高出身、ビジネスとは縁遠い中で大学生活をスタートしたと話す大槻さん(早稲田大学文化構想学部に入学)。簡単に単位が取れるかも、と思って友人たちと相談し、違う学部だった起業家養成講座を選択、そこの講義でたくさんのオモシロイビジネスマン、多様な経歴の方々のお話しを聞く機会を得たことが起業家への道の入口に。1年生の時に、大学内のビジネスプランコンテストに応募し、見事優勝! という栄冠を勝ち取ります。この時のビジネスプランの内容が、前述の高校時代のホームステイ経験を生かして、「訪日外国人旅行者向け日本文化体験企画運営会社」というインバウンドのプランを発表しました。外国の方々の本当に欲しい物を実現したい、世界と日本を本気でつなげたいという熱意をぶつけたそうです。
このコンテストチャレンジの際に、仕事帰りのお父様が何度もピッチの練習に付き合い、精度を上げていったことも大きいと振り返ります。素敵なお父様ですね。2015年2月、このコンテストのご褒美(副賞)にシリコンバレーへ招待のプログラムでたくさんの現地の起業家に会い、5週間滞在することになったそうです。帰国後、大学2年生時にベンチャーキャピタルでインターンを経験後、2年の途中からシンガポールへ留学(これがトビタテ留学JAPANのプログラム)し1年間、多岐にわたる経験ができたそうです。
なかなかここまでの経験を持つ大学生もお目にかかることは無いですが、ご本人も大学3回通ったくらいの経験をしたと話されていました。

大槻さん近影です

【最近の大槻さん】

3)起業への道

シンガポールから帰国後、IT系メディア会社でインターンの後に起業を決意します。当初は、シンガポールに留学していた際に感じた、お金のこと、お金の価値について日本の大学生は勉強していない人が多い。シンガポールでは当たり前だったファイナンスの知識を持ち合わせることが日本の学生には必要と、ファイナンスと学生を近づけることを事業目的としてFinTを立ち上げます(最初は学生向けフィンテックで起業だったんですね)。
大学生の仲間と一緒に共同創業者として起業するも、フィンテックが自分のやりたいことではないことに気づき半年ほどで解散、自分一人になって、自分のやりたいことは何かを考え、2017年12月に女性向けのメディア「Sucle(シュクレ)」を立ち上げたいとそこからやりたいことを仕事にしたことで勢いもつき1年でインスタのフォロワーが55万を超えています。(Sucleに関しては4つのメディアを展開。その合計数)
このメディアを運営しているといろんな方々から大槻さんに相談が舞い込むようになってきてボランティアでノウハウを提供していると気づけばそれが専門家となっていることに気づいたり、周囲からもその専門領域の事業化を進められ、コンサルしているうちにさらに自身のレベルも上がって今度は運用代行の事業化へと入っていきます。まさに関わるみんながハッピーになっていったと話します。

3 FinTの事業について

1)会社について、大切なビジョン、そこにお母さんも手伝っていることが大きい

現在のFinT社は、社員15名、業務委託を含めると40名。4期目に入ります。
会社のビジョン、HPの冒頭に掲げていらっしゃいます。

FinT社ビジョンの画像です

    【世界をまるごとハッピーに。】
    つくりたいのは、
    サイコーにハッピーな世界。
    簡単なことじゃない。
    でも、本気で思ってる。
    だから、まずは自分たちから
    ハッピーになる。
    誰かの犠牲の上に成り立つ幸せなんて、
    きっと長く続かないから。
    わたしたちは、
    好きなことや得意なことで、
    今日もみんなをハッピーにする。
    思いっきり、楽しみながら。

これからの時代、自分を犠牲にしたり、誰かを犠牲にすることをビジネスにしないことが本当に大切と思います。変な売り込みでは買う側、売る側、誰も幸せにならない、正直に向き合うことの大切さ。江戸時代の【近江商人】のように、陰徳善事の考え方にも近いと思います。

大槻さんにお話しを伺っていて時々、お母様のことが話題にでます。大槻さんの会社で大きな役割を果たされているのがお母様。大槻さんのお母様は普段税理士事務所にお勤めの傍ら、FinT社の経理部長の役割を担っているそうです。会社全体が丸裸です! と大槻さんは笑います。ちゃんとした大人がバックアップをしている体制もFinT社の強みに感じます。

ご両親が小さな頃から、機会提供をし続けられたこと、選択権を大槻さんに与えながら、自分で考える、一歩を踏み出す勇気を持つことができたことも、会社経営の大きな礎につながっていると感じました。素晴らしいご家族だと思いました。

2)事業概要について

FinT社の事業の柱は、2つ。自社メディアの運営(そこにノウハウの蓄積ができていることが大きい)、そしてクライアント企業のインスタを中心としたSNSマーケティング。クライアントは有名企業からも多数あり、現在までに累計80アカウントを超えているそうです。当初から売り込むのではなく知り合いからのご紹介の連続だったと。

FinT社の事業概要の説明資料を示した画像です

大手広告代理店でも、SNS上でキャンペーンを行ったり、フォロワーを買うようなことを提案するところがあることは私も聞いたことがあります。しかし、数があっても、なんの興味もない人々の集合体、FinT社のクライアントとその先のお客さんとのエンゲージメントを高めることが一番大切。そこにフォーカスして事業を進めているそうです。
クライアントには出版会社、アパレルブランド、美容、生活商材と幅広く、年齢層としては20代?40代向け女性向けの商材が中心領域となっています。

あと少しでフォロワー数が70万に近づいている、【わたしの節約(MATE)】、2019年の初めにスタート、0から半年間で30万フォロワーを獲得しています。詳細はこちらをご覧ください。
上記以外にも、10万、20万のフォロワーを獲得していたり、運用企業側(同業者)からの紹介まで最近は始まっているそうです。

3)大手企業からも発注が続く

得意なこと好きなことをみんながやっているからこそクライアントからの評価が高い。しかも緻密に丁寧に対応していることを伺いました。
大槻さんは、SNSを自社運用できる会社は自社でやった方が良いと話します。自社でリソースが割ける会社や、投下できる資金に余裕のないベンチャー企業のお客様は少ないとも。
80を超えるアカウントを運営していて、継続率も相当高いレベル。その中で事例を2つ以下にて。

メルカリの事例を示した画像です

・メルカリについての事例

SNS運用していなかったところ、一度話し合いをし、出品者が少ない、それを増やしたい、インスタの利用者に主婦が多く、ちょうど節約に親近感を持っている人が多く、出品者へのトリセツ的な立ち位置で真に利用したいというファン作りを行っているそうです。

サボンの事例を示した画像です

・サボンについての事例

きれいな世界感、いい写真だけにこだわってきたものの、さらにエンゲージメント ユーザーの口コミを増やしたい、FinT社では写真一枚一枚へのこだわりも工夫、口コミ3倍にもなっている、黄金式をみつけることに注力していると大槻さんは話します。具体的には、商品写真そのものにもこだわるが写真に写り込んでいる周りのモノ、時には蓋が閉じている、閉じていない、水道の蛇口が、金色とそうでないのとで反響が違う、その細かい一つずつ、ロジックを見出し、意味付けして工夫を重ねるという丁寧さ。
フォロワーを金銭で買うようなことは一切していない。これも商品への【愛】をもっているかどうか。

これだけの【仕事】をしているからこその単価でもあるそうで、月間50万円?100万円程度のコストが必要だそうです。

4)今後の展開について

大槻さんに今後の展開にコメントをいただきました。

    会社の大きな方向性としては、昨年掲げた「世界をまるごとハッピーに」というビジョンをもっと大きく社会に打ち出していきたいと考えています。
    昨今は新型コロナウイルスの影響があり、今世界はどこに行ってもみんなが苦しい状況にあります。この状況下で「世界をまるごとハッピーにする」とわたしが壮大なビジョン掲げている以上、会社として顧客のみなさまをいろいろな形でハッピーにしながら、全力でメンバーの好きなことや得意なことを生かしてハッピーになれる環境を整えたいという願望と、責任を感じています。経営者としても、この苦しい状況でも負けずにわたしが挑戦していくことが、他の誰かが何かをチャレンジする時のきっかけになるのであれば、それほど私がハッピーになることはありません。誰かの良きロールモデルとなれるよう、引き続き頑張っていきたいです。

    事業に関しましては、「SNSマーケティングといえばFinT」と言われるような実績と信頼を積み上げていきたいです。
    つい昨年、デジタルの広告費がテレビメディアの広告費を抜いたというニュースがありました。それに付随するようにしてSNSマーケティングもいよいよ多様化・本格化しており、社会の流れの変化を感じています。そんな中で、学生の頃から日常的に接していたSNSで様々な施策や取り組みができること、若いからこそ感覚的にわかる部分を生かせるSNSマーケティングに携われていることに、とても誇りに感じています。自分たちが得意とするSNSで企業様のサポートをすることは、まさにビジョンにもあるような「好きや得意を生かす」ということにもつながるからです。これから、より市場が大きくなることは予想されるため、既存の運用代行に止まらず、広告運用やライブ配信、インフルエンサー事業やタイアップの商品開発など、販売促進としてSNSでできることを幅広くカバーしていきたいです。

    最後になりましたが、このような機会を設けてくださり、本当にありがとうございました。
    聞き手がここまで素敵な方々で、褒めてくださったり、自分の振り返りとなる質問をしてくださると、「ハッピー」な取材になるのだと感じました。
    とてもポジティブな気分になれました。世界をまるごとハッピーにできるよう、愛を持って頑張ります!

自己犠牲なく、関わるみんながハッピーに、そしてSNS運用といえばFinT! て言われたい。この業界で日本一になりたいと話します。そのためにも何度も仮説検証を正しくやっていく、そして自社メディア、シュクレもガッツリ伸ばしたいとも。まだまだ海外に行き足りていないけども、世界や、世界の人々に課題がたくさんあることがわかった、その解消・解決のために自分たちでできること、いろんな事業をやっていきたい。古着、コスメ、好きや得意から事業を立ち上げられる、ちゃんと事業をやっていけたら良いなと思っていますと。

大学生の頃から誰かのロールモデルになりたい、これも大切にしているところ。留学生になった経験で、周囲の人にも影響を受けて行動を起こすことのきっかけになった。これからも私がチャレンジすることで周りのハッピーになったら良いと思う。

10年先20年先については、まだ全く見えていないところが課題ですときっぱり、未来視点を持ちながら、そのために今を一生懸命に頑張る、いろんな勉強、知識を得たいと超前向きに、視座を上げていく。

私自身もこのインタビューさせていただいてハッピーでした、大槻さんにまるごとハッピーにしてくださいました。
感じる力が強いこと、これはご両親の影響が大きい、これをやっては駄目だと単に否定するのではなく、選択の機会を広げ、失敗体験、成功体験の経験値を上げることができる環境を提供することが大切ですね。
また、まず一歩を踏み出すことが大事であること、失敗は成功のもと、大きなことだけをやるのではなく小さな成功体験を積み上げていく姿勢にも共感しました。

最後に、このリポートが良いところにフォーカスしていることに大槻さんから褒めてくださったことに感謝しています。ありがとうございました!

この記事を作成するにあたり、以下の記事を参考にさせていただきました。

早稲田ウィークリー【自分世代のトレンド発信で女子大生の心をつかむ早大生起業家】2018年7月

以上(2021年2月作成)

【図解】財務3表のつながりかた

書いてあること

  • 主な読者:貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書(財務3表)の基本が知りたい人
  • 課題:数字の羅列にしか見えなくて、とっつきにくい
  • 解決策:財務3表の基本を知り、実際の事業活動をイメージしながらつながりを意識する

1 事業活動と財務諸表

事業を始めるときは、銀行からお金を借りたり、投資家からお金を集めたりして(調達する)、それを元手に商品を仕入れたり、必要な備品や機械装置などを購入します(投資する)。そして、仕入れた商品や製造した製品を販売して利益を上げます(投資を回収する)。これら一連の事業活動が貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書(以下「財務3表」)に集計されています。

つまり、財務3表を読み、またそのつながりを理解することで会社の状況がよりよく見えてくるようになります。早速、確認していきましょう。

2 事業活動を数字にするためのルール“複式簿記”

複式簿記とは、全ての事業活動を2つの側面で捉えて、「資産・負債・純資産・収益・費用」といった5つの要素に分類する記帳方法です。これら5つの要素は、2つの側面(左右)でそれぞれ記帳する場所が次のように決まっています。

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例えば、銀行から現金を借り入れるという取引は、現金を資産の場所に、借入金を負債の場所に記帳します。このように、複式簿記に従って、全ての取引を決まった場所に記帳していくことで、事業活動が数字でまとめられます。これら5つの要素を上下に区切ると、資産・負債・純資産の部分が貸借対照表に、収益・費用の部分が損益計算書になります。そして、作成された貸借対照表と損益計算書を基に、キャッシュフロー計算書を作成していきます。

3 貸借対照表とは

貸借対照表とは、ある時点における会社の財政状態を表す財務諸表です。財政状態とは、「会社がどのようにお金を調達し、そのお金を何に投資しているのか」の状態です。貸借対照表は次の3つの要素で構成され、左側に資産、右側に負債と純資産が計上されます。

  • 資産:手元にある現金や会社が購入した商品、土地・建物などの財産
  • 負債:銀行からの借入金や買掛金などの債務
  • 純資産:投資家からの出資金や、会社が稼いだ利益の積み立て分など

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4 損益計算書とは

損益計算書とは、一定期間における会社の業績(どれだけもうけたか、そのもうけの内訳は何かなど)を表す財務諸表です。損益計算書は次の2つの要素で構成され、さらにその2つの要素の差額として利益(または損失)を計算します。なお、図表1の損益計算書は右に収益、左に費用と横形の表でしたが、通常の損益計算書は上に収益、下に費用が記載されます。

  • 収益:商品の売り上げなど事業活動により稼いだ成果
  • 費用:商品の仕入れや人件費の支払いなど、会社の事業活動上のコスト

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5 キャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー計算書とは、一定期間のキャッシュの増減を表す財務諸表です。キャッシュフロー計算書は、キャッシュの増減を次の3つの区分に分けて表示し、その期間におけるキャッシュの増減を明確にします。なお、キャッシュフロー計算書は、貸借対照表と損益計算書を基に作成されますが、本稿では詳細は省略します。

  • 営業活動によるキャッシュフロー:売り上げ、仕入れ、経費など主に本業によるキャッシュの動きを示す
  • 投資活動によるキャッシュフロー:固定資産や有価証券の取得・売却などによるキャッシュの動きを示す
  • 財務活動によるキャッシュフロー:借り入れや返済、増資などによるキャッシュの動きを示す

キャッシュフロー計算書には、直接法と間接法の2通りがあります。この2つは、営業活動によるキャッシュフローの計算において表示方法が異なります。

直接法は現金による収入・支出に係る取引を総額で集計し、その差額として、営業活動によるキャッシュフローを計算する方法です。間接法は損益計算書の利益または損失(正確には税引前当期純利益(または損失))から、減価償却費などの現金の増減に関わりのない項目などを調整して、営業活動によるキャッシュフローを計算する方法です。投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローの計算は直接法も間接法も同じです。本稿では一般的に採用されている間接法を用いています。

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6 財務3表のつながり

貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書は別々の目的で作成されるものの、それぞれがつながっています。そのつながりを読み解くことで、事業活動の流れが把握できます。財務3表のつながりを理解するときのポイントは次の3つです。

  • 貸借対照表(純資産)と、損益計算書(税引後当期純利益または損失)はつながっている
  • 損益計算書の税引前当期純利益または損失とキャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローはつながっている
  • 貸借対照表(資産(現金))とキャッシュフロー計算書の現金の残高は一致する

具体的なつながりのイメージは次の通りです。

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7 事例で確認。財務3表のつながり

ここでは、設立1年目の株式会社の基本的な取引を基に、それぞれの取引がどのように財務3表に反映されているのかを、財務3表のつながりを見ていきながら説明します。なお、便宜上、取引ごとに損益計算書の利益(または損失)を計算して、貸借対照表の純資産(株主資本)に反映させており、その都度、キャッシュフロー計算書を作成しています。

1)会社設立時の資金の準備(お金を調達する)

会社の設立に当たって、資金の調達をします。内訳は、銀行からの借り入れが400万円、投資家からの出資が600万円です。

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資金調達した1000万円(400万円+600万円)は、貸借対照表の「資産(現金)」に計上します。

銀行から借り入れた400万円は、貸借対照表の「負債(借入金)」に計上します。

投資家から出資を受けた600万円は、貸借対照表の「純資産(資本金)」に計上します。

現金が増加したため、キャッシュフロー計算書の「財務活動によるキャッシュフロー」に、それぞれの取引による増加分(プラス400万円とプラス600万円)を記載します。

2)備品を現金で購入(お金を投資する)

会社を運営するためには、パソコンなどの備品が必要です。ここでは、パソコン30万円を現金で購入しました。

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購入したパソコン30万円は、貸借対照表の「資産(備品)」に計上します。

購入の際に支払った現金30万円を、貸借対照表の「資産(現金)」から減少させます。

また、現金が減少したため、キャッシュフロー計算書の「投資活動によるキャッシュフロー」に、備品の購入による減少分(マイナス30万円)を記載します。

3)商品を現金で仕入れ(お金を投資する)

商品200万円(100個×単価2万円)を現金で仕入れます。

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仕入れた商品の200万円は、貸借対照表の資産(たな卸資産)に計上します。

仕入れに支払った現金200万円を、貸借対照表の「資産(現金)」から減少させます。

また、現金が減少したため、キャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」に、たな卸資産の増減(マイナス200万円)を記載します。

4)商品を現金で売り上げ(投資を回収する)

商品(50個)を300万円で売り上げ、代金を現金で受け取りました。

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商品の売り上げ300万円は、損益計算書の「収益(売上)」に計上し、費用(売上原価)100万円との差額200万円が利益となります。この利益は貸借対照表の「純資産(利益剰余金)」にも計上されます。

売り上げで受け取った現金300万円は、貸借対照表の「資産(現金)」を増加させます。さらに、売り上げた商品(100万円=50個×単価2万円)を「資産(たな卸資産)」から減少させます。

また、損益計算書上の利益はキャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」にプラス200万円を、たな卸資産の増減については「営業活動によるキャッシュフロー」にマイナス100万円(△200万円+100万円)を記載します。

5)決算日

資産(備品)30万円は、便宜上5年間使用できるものとした場合には、その期間を通して6万円ずつ減価償却費として費用計上します。事業年度を通して利益が出ると、会社は法人税等を納付しなければなりません。法人税等とは法人税・法人事業税・法人住民税をいいます。実際に法人税等を計算する場合には、税法上のさまざまな調整が必要になりますが、ここでは簡略化して法人税等を60万円とします。

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法人税等60万円は、損益計算書の「利益(税引前)」の下に計上し、最終的な利益である税引後の利益が計算されます。

法人税等60万円を、貸借対照表の「負債(未払法人税等)」に計上します。法人税等の支払いは、決算日の翌日から2カ月以内と定められており、例えば3月決算の会社については、5月末までとなります。そのため、法人税等の支払いは翌期になり、決算を確定する時点では未払いとなり、貸借対照表の「負債(未払法人税等)」に計上します。

従って、設立1年目においては、法人税等の支払いによる現金の増減はなく、キャッシュフロー計算書には影響しません。

以上(2021年1月)
(監修 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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【朝礼】うわべだけの発言は要らない

最近、私は「PMBOK」というプロジェクトマネジメントの手法を学んでいます。当社の新規事業であるウェブサービスの開発が進む中、私自身がプロジェクトマネジャーを務めるケースが増えたため、基本を学ぼうと思ったのです。

プロジェクトマネジメントの手法はさまざまですが、大きく2つに分けられます。1つ目は、最初に要件を“ガチガチ”に決め、上流工程から順番に進めていく「ウォーターフォール開発」です。もう1つは、わりと“フワッ”とした要件からでもよいのでまずは作り始め、走りながら改善していく「アジャイル開発」です。

私が学んでいるPMBOKは、ウォーターフォール開発の手法です。この手法は、要件定義が終わらなければ実装に入れないのでもどかしく、一度要件が決まると、基本的に後戻りができないという難点がありますが、学んだこともあります。

例えば、具体的なイメージを関係者間で共有する癖がつきました。要件定義が曖昧な状態でプロジェクトを進めると、後で必ずトラブルが起こります。そのため、プロジェクトマネジャーは、プロジェクトの関係者に対して、さまざまな角度からアプローチして必要な情報を集め、明確な方針を打ち出します。こうした進め方のため、情報収集の際に、関係者から「曖昧で表面的な発言」が出ると非常に気になります。こうした発言は、どんなに奇麗な言葉で説明されても、「まぁ、そうですよね」という結論しか導き出せません。

こうした発言は、実は新人よりもキャリアの長い人にありがちです。業種を問わず、長い間同じ業務に携わっていると、その分野のことを、それなりに話せるようになります。しかし、その時々で必要な知識を深め、常に自分の考えを持つようにしなければ、それはうわべだけの発言になってしまいます。発言通りに事を進めていくとどうなるのか、発言の後に続く行動はどのようなものか、という具体性が欠けてしまうのです。

先日あるクライアントに依頼され、ウェブコンサルタントとの定例ミーティングに参加したのですが、そのウェブコンサルタントは、まさにそうしたタイプでした。聞こえのよい言葉を並べ、「ここが重要です」「今後もウオッチします」などと言うものの、なぜ重要なのか、これまでウオッチしてきた結果はどうなのか、今後は具体的に何をウオッチするのかには一切触れません。要は何もしておらず、うわべだけで話しているのです。

さて、皆さんの話には具体的な中身があるでしょうか。細かいところにまで言及していれば具体的である、というわけではありません。ビジネスは突き詰めれば、「やるか、やらないか」です。

私が考える具体的な話とは、「やるか、やらないか」を決めるための判断材料になり得るかどうかです。これはつまり、発言者が当事者として、足元はもちろん、少し先の未来も見据え、「自発的に具体的な行動を起こすことを前提とした意見」かどうかということなのです。

以上(2020年11月)

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画像:Mariko Mitsuda