「大学×企業の可能性を広げる」近畿大学リエゾンセンターに聞く産学連携の今と未来(3)

令和4年3月24日、近畿大学と徳島大正銀行は「産学連携包括契約」を締結しました。
産学連携・交流を円滑に推進するための組織が近畿大学リエゾンセンター(KLC)です。
「とくぎんサクセスクラブnavi」(とくさくnavi)では、KLCのコーディネーター武田和也さんへのインタビューを3回連載でお届けします。産学連携の『今』、地域企業とのつながり方や未来の可能性に迫ります。

【第3回】

最終回となる第3回では、リエゾンセンターが描く産学連携の進め方や、企業へのメッセージをご紹介します。「大学と連携してみたいけど、何から始めれば…?」という方へのヒントも必見です。

―今後、どのような産学連携を進めていきたいと考えていますか。

今までは、教員の研究テーマに合致したネタでないと技術相談が成立してこなかったんですが、企業のふわっとした「ビジネス展開を考えてほしい」といった相談にも対応できることがよくわかってきました。商品化につながっている例もたくさんあります。
また、学生が関わってくることにも面白みを感じています。若い学生たちが自分ごととして考えることができています。一番信用性が高いのは、若い人たち向けの商品展開を考えてほしい、といったご相談ですね。そういったご相談がどんどん増えていけばいいなと思っています。
また一方で、学生たちが関わって商品化につながることで学生たちの就職活動時に大きなアピール材料にもなります。デザインのご相談を受けた際、学生がデザインを考え、展示会にいってそのご縁で就職が決まったこともありました。当時2011年は就職活動氷河期でしたが、希望の企業へ就職できたのも産学連携の効果で、企業だけでなく学生たちにもメリットがあることも知りました。
このように、企業にとっても大学や学生にとってもWINWINとなる産学連携が増えることにも期待しています。

コーディネーターへの相談風景

―「こんなことから始めてみては?」というアドバイスがありましたらお聞かせください

商品化に関するお困りごと、商品を作った時の不具合、学生たちに考えてもらいたい若い人たち向けのアイデアなどお気軽にご相談いただけたらと思います。オンライン相談もできるので、遠方からのご相談も大歓迎です。共同研究だけでなく色々なメニューをもっています。アイデアがほしい、分析をお願いしたい、デザインを考えてほしいだけでもかまいません。企業のお困りごとをビジネスコンテストで発表してもらう、なんてメニューもあります。企業のお困りごとへのアイデアを学生が3ヶ月かけて考えて、3ヶ月目で優勝者を決めるコンテストです。色々な学生のアイデアをお持ち帰りいただけるのでおすすめです。また、先生に企業にいってもらって指導してもらう、セミナーを行ってもらうなどもできます。企業の希望を聞きながら、希望に合うようなメニューを選び出すのが我々コーディネーターの仕事ですのでお任せください。

企業の相談に応じるコーディネーターの武田和也さん

―とくぎんサクセスクラブの会員さまへメッセージをお願いします。

何でもご相談ください。ハードルはありません。とりあえず何ができるか聞いてあげようか、みたいな軽い気持ちでご相談ください。とくぎんサクセスクラブ会員様からのご相談をお待ちしております。

以上、近畿大学リエゾンセンターのコーディネーター武田和也さんへのインタビューを3回連載でお届けしました。
近畿大学産学連携についてのご相談は、お取引のある営業店にお問合せください。または、とくぎんサクセスクラブnaviのお問合せフォームからご連絡ください。

以上(2025年5月作成)

画像:近畿大学リエゾンセンター

【債権回収】倒産するかもしれない相手と取引を継続するか否かの判断基準

1 いかに早く察知できるかが勝負

取引先からの支払いが滞り、こちらの催促にも応じない場合、いよいよ経営が危ないかもしれないので、速やかに行動しましょう。債権保全と回収の方法は幾つかありますが、取引先が破産や民事再生などの法的手続きを取ると、原則として個別の取り立てを行うことが禁止され、債権回収が認められなくなる場合があります。また、取引先に債権を持つのは自社だけではないはずですから、債権回収は「早い者勝ち」ともいえます。

この段階になったら、

いかに早く察知して判断し、行動するかが重要

です。この記事では、危ない取引先との取引について、「訴訟になる前の債権回収」の視点でまとめています。経営者は特に、

  • 仮差押え:取引先が資産を処分できないように差し押さえる
  • 商品の引き揚げ:相手の同意を得て自社商品を引き揚げる
  • 相殺の実行:取引先との債権債務を相殺する
  • 担保の取得、実行:担保を取得する、債務不履行なら不動産競売などを行う
  • 動産売買の先取特権の実行:自社が販売した商品を当然に引き揚げる

について知っておかなければなりません。

債権回収は時間との勝負である一方で、倒産手続が開始された後には、手続開始前の一部弁済が偏頗(へんぱ)弁済として否認され、弁済に対応する金銭等を破産管財人に対して返還しなければならなくなります。したがって、早期回収を図る場合でも、取引先の倒産申立ての可能性や時期を見極め、専門家と連携して慎重に判断する必要があります。

2 取引を継続するか否かを判断する

取引先に関する情報収集が重要ですが、悠長に構えている時間はありません。取引を継続するか否かを判断する過程で、取引先へのヒアリングや、同業他社から情報収集をするので、情報収集と取引を継続するか否かの判断はセットで行うことになります。

取引先からの支払いが滞り、催促をしてもなお遅延が解消されない場合は、

  • 決済サイトを短くする
  • 取引量を減らす
  • 担保を設定する
  • リスク相当分を価格に上乗せする

といったことも検討します。

取引を継続しない場合は、契約書の「解約」か「約定解除」を実行します。解約とは、

当事者の一方の意思表示により、将来に向かって解約するというもので、「3カ月前に通知すれば解約できる」

といったように定めるものです。約定解除とは、

契約書に定められた条件に抵触する場合に解除するというもので、「1度でも支払いを怠ったときに契約を解除できる」

といったように定めるものです。もし、契約書にこれらの定めがなければ、取引先との話し合いにより「合意解除」することになります。

なお、契約解除には「法定解除」もあります。法定解除ができるのは、相手に「債務不履行」や「契約不適合」(相手から納品された目的物が仕様とは異なっていること)があった場合です。債務不履行には次の3つがあります。

  • 履行遅滞:支払いが遅れているなど
  • 履行不能:支払うことができないなど
  • 不完全履行:一部しか支払われていないなど

法定解除の場合、債務不履行があっただけではなく、その後に履行の催告等の手続きを経なければ、解除することはできません。

3 仮差押えをするか否かを判断する

取引先が資産を勝手に処分しないように、「仮差押え」をすることを検討します。仮差押えとは、

売上債権などの金銭債権を保全するために、取引先の保有している財産を暫定的に差し押さえる制度

です。もう少し簡単に言うと、

訴訟を提起して、判決が出ても、実際に回収ができるようになるまでには時間がかかります。その間に相手が資産を処分してしまうと、回収できる資産がなくなるので、そうならないよう(相手が勝手に処分することがないようにするため)、仮で差し押さえておく

というものです。仮差押えは金銭債権を対象としています。一方、仮処分とは、

仮差押えと異なり、取引先に対して有する金銭債権以外の権利を保全する制度

です。例えば、譲渡担保権を設定している取引先の物件が第三者に譲渡される恐れがある場合、それを阻止するために利用されます。以降、仮差押えについて説明をしていきます。

仮差押えは有効な債権回収の手段、交渉手段となりますが、次のような注意点もあります。取引先の状況や費用についても検討する必要があります。

  • 仮差押えは、回収の優先権ではない。従って、他の債権者も回収手続への参加を行った場合、各自の債権額の按分でしか回収できなくなる恐れがある
  • 仮差押えは、取引先が破産などの法的な倒産手続を取り、当該手続きが開始されると失効する。この場合、有効な債権回収手段とはならない
  • 仮差押命令を取得するためには、裁判所に担保金を積む必要がある。また、不動産を仮差押えする場合は登録免許税も必要

なお、仮差押えの主な流れは次の通りです。

仮差押えの主な流れ

4 商品を引き揚げるか否かを判断する

取引を継続しない場合は、速やかに取引先の倉庫などにある自社の商品を引き揚げます。

一方、取引が継続している状態で商品を引き揚げるには取引先の同意が必要です。同意がないと、自社が窃盗罪に問われたり、不法行為として損害賠償責任を負わされたりする恐れがあるからです。ただし、取引先の同意を得た上での商品の引き揚げでも、その後すぐに取引先が破産などの法的手続を取った場合は認められないことがあります。

引き揚げ商品が自社の売却した商品でなければ、「代物弁済」または「動産譲渡担保権」を実行します。代物弁済とは、

他の動産を受け取って債権の弁済に充てること

です。動産譲渡担保権とは、債権者に対して所有権を形式的に譲渡する方式の担保権であり、

取引先がそのまま利用できる状態で、動産を担保に取れる方法

です。動産を取引先のところにおいたままですので、譲渡担保が設定していることを知らない第三者に対しては担保の効力を主張できない恐れがありますが、少なくとも譲渡担保を知っている第三者に対しては、自己の優先権を主張できるので、一定の効果はあります。そのため、機械等の動産を譲渡担保に取る場合は、機械にプレートを付けたり、担保物件であることを示す札を立てるなどして明認方法を施すようにします。

5 相殺するか否かを判断する

相殺とは、

自社が取引先に負っている債務と、取引先が自社に負っている債務(自社から見ると債権)を相殺すること

です。原則として債権債務の弁済期が到来していることが条件ですが、自社が取引先に負っている債務については、弁済期が到来していなくても、自社が期限の利益を放棄することで相殺の対象となります。相殺は、相手方に対する意思表示によって行います。通常、証拠を残すために「内容証明郵便」を送ることで相殺通知を行います。相殺をすることによって、自分の債務分については、事実上優先的に債権を回収することができることとなります。

なお、相殺は取引先が法的な倒産手続きを取った場合に制限されることがあります。例えば破産手続きの場合、

取引先が破産手続き開始申立をしたことを知っているのに、その後に債権を取得して相殺を持ちかけることは禁止される

などといった制限です。

6 担保の設定・実行するか否かを判断する

担保には不動産などの物的担保と、経営者個人の連帯保証のような人的担保があります。ただ、担保を設定したとしても、例えば、経営者個人に支払い能力があるかは分からないので、この辺りの調査は必要です。

また、取引先が法的な破産手続きを取ることを知っているのに担保を取得しようとした場合、その担保は認められなくなる恐れがあります。

一方、債務不履行が発生し、取引先の経営が一刻を争う状態であれば、速やかに担保を実行します。例えば不動産を担保としている場合、担保不動産競売によって債権回収を図ります。担保不動産競売の主な流れは次の通りです。

担保不動産競売の主な流れ

7 動産売買の先取特権を実行するか否かを判断する

商品などの動産を売買した場合、当該動産の代金が未払いであれば、「動産売買の先取特権」という「法定担保物権」を有します。まず、先取特権とは、

特定の財産について、他の債権者に優先して債権回収することを認める制度

です。この先取特権が動産売買についているわけですから、動産売買の先取特権とは、

自社は取引先に販売した動産を優先的に回収できる

というものです。さらにこれは、法定担保物権という、

法律上当然に発生する担保物権なので、事前に物的担保を設定しておく必要はない

ことになります。

動産売買の先取特権は、動産競売により代金回収を行うことがまず考えられます。例えば、次の場合です。

  • 債権者が執行官に対し当該動産を提出したとき
  • 当該動産の占有者が差押えを承諾することを証明する文書を提出したとき
  • 債権者が担保権の存在を証する文書を提出して動産競売の許可を申し立て、執行裁判所がこれを許可し、許可決定が債務者に送達されたとき

しかし、取引先が当該動産の代金を自社に支払わないまま、第三者に当該動産を譲渡してしまう場合もあります。この場合は、対象となる動産がすでに債務者の手許にないため、動産競売の方法を用いることができません。しかし、取引先がその代金を第三者から受け取っていない場合は、取引先の第三者に対する売上債権を差し押さえることができます。これを、

動産売買の先取特権に基づく物上代位

といいます。

以上(2025年7月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【中小企業のためのBCP】 社員の「安否確認」手段を整備しよう

1 緊急時、社員の安否確認が不可欠な2つの理由

昨今はいつどこで大きな地震が起きてもおかしくなく、備えはどの会社にとっても必須です。

いざ災害が起こってもスムーズに行動できるよう、事前に決めておきたいのが、安否確認の手段です。緊急時に社員の安否確認が不可欠なのは、

  • 社員と、社員の家族の安全を確保するため
  • 事業継続や再開の判断をするため

です。

社員の安否確認をすることは当然ですが、社員の家族も心配です。また、大規模な自然災害の場合、社員の状況によって事業継続(あるいは再開)の状況は変わってきます。「誰が業務をできるのか?」は大切な情報です。

会社が行うべき安否確認の流れは次の通りです。

  • 避難して安全を確保してから、集合場所に集まった社員を点呼で確認する
  • 外出中やリモートワークなどでその場にいない社員と連絡を取り、安否確認をする
  • 安否情報を集計し、待機や出社などの状況に適した指示を出す

このとき、2.で発生しがちな課題として、いざというときに普段の連絡手段が使えないことがあります。特に電話は、災害発生時に回線の混雑や通信制限で使えない場合があります。

では、どうやって社員の安否確認を行えばよいでしょうか。また、日ごろからどのような備えをしておくべきでしょうか。具体的に見ていきましょう。

2 どのように社員の安否確認を行うか?

1)5つの主な安否確認手段を比較

ここでは、官公庁や各種企業が提供している防災情報を参考に、5つの主な安否確認手段を取り上げ、その特徴と注意点を比較します。

安否確認手段の比較

「社員への使い方の教育」「安否状況の集計作業」「導入費用」「運用費用」などを比較すると、それぞれの手段で一長一短があります。

東京商工会議所「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート(2024年調査)」によると、社員の安否確認に最も多く使われる手段は、「メールやSNS」の52.5%となっています。普段から使い慣れている連絡手段とはいえ、集計作業が煩雑であり、社員数や事業拠点数が多い場合は、安否情報を集めるだけでもかなりの時間が取られてしまいます。

対して、安否確認システム/サービスは、導入や運用に費用がかかるものの、安否状況を自動で集計できる上、安否確認メールの自動送信や、報告がない場合のメール再送信機能を備えているものもあり、混乱した状況でも安否情報をスムーズに整理できます。

また、災害用伝言ダイヤル(171)は無料で利用できますが、データ通信専用SIMカードでは音声通話ができないため、社員が格安SIMを使っている場合には注意が必要です。災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言板(web171)について、詳しくは以下の総務省ウェブサイトをご確認ください。

■総務省「災害用伝言サービス」■
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/net_anzen/hijyo/dengon.html

2)安否確認の前提となるインターネット接続環境の確保

安否確認手段はさまざまありますが、災害用伝言ダイヤル(171)を除けば、インターネットに接続できる環境が必要です。

そこで知っておきたいのが、災害用統一SSID「00000JAPAN」(ファイブゼロジャパン)です。「00000JAPAN」は、災害発生時に携帯電話会社などが無料開放する公衆無線LAN(Wi-Fi)のアクセスポイントで、これを利用してインターネットに接続できます。

ただし、「00000JAPAN」は、被災地で誰でも使えるという利便性を確保するため、通信の暗号化などセキュリティーへの対応は行われていません。「00000JAPAN」を利用するときは、安否確認や災害関連情報の収集にとどめるようにしましょう。

■無線LANビジネス推進連絡会■
https://www.wlan-business.org/00000japan/

3 日ごろから備えておきたいことは?

災害発生時に、安否確認手段が未整備だったら、もう手遅れです。そうならないために早急に決めておくべきなのは、「安否確認で優先的に使う手段」と「安否情報として報告する内容」です。その上で、報告・連絡といった基本的な行動が普段からしっかりできる組織を作っていきましょう。

1)安否確認で優先的に使う手段を1つ決めておく

日常業務で、メール、電話、ビジネスチャットなど複数のツールを用途に応じて使っている会社も多いでしょう。

しかし、緊急時には、連絡手段が複数あることで、かえって混乱を招く場合があります。バックアップ的に複数の安否確認手段を持っておくことは大切ですが、優先的に使う手段は1つに決めておきましょう。

2)安否情報として報告する内容を決めておく

社員が安否情報を登録するときの文言(メッセージ)については、

  • 名前
  • 現在いる場所(自宅・会社・外出先)
  • 状況(例:1人・家族や同僚と一緒)
  • 安否(けがの有無など)
  • 出社の可否
  • 次にメッセージを入れる時刻

など報告する内容を決めておきましょう。

災害用伝言ダイヤル(171)の録音時間は30秒以内、災害用伝言板(web171・各キャリア)の文字数は100文字以内(名前と状況以外)となっており、簡潔に伝える必要があります。災害発生時は、社員がパニックを起こし、うまく情報を伝えられなくなることもあり得ます。安否確認の訓練の実施や、報告すべき情報を記したカードを配布するなどの工夫をしましょう。

なお、災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言板(web171・各キャリア)は、体験利用日を設けており、災害発生時以外でも利用できます。詳しい日程は、各サービスのウェブサイトをご確認ください。以下、一例として紹介します。

■NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」■
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171s/howto.html
■NTT東日本「災害用伝言板(web171)体験利用のご案内」■
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/web171s/howto.html
■NTT西日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」■
https://www.ntt-west.co.jp/dengon/taiken/
■NTT西日本「災害用伝言板(web171)体験利用のご案内」■
https://www.ntt-west.co.jp/dengon/web171/taiken.html

3)報告・連絡をしっかりできるようにする

どれだけ事前に安否確認の体制を整備しても、災害発生時には想定外の事態が起こり得ます。

重要なのは、平時でも基本的な報告・連絡を、全員がしっかりとできる組織であることです。例えば、連絡に対して迅速にレスポンスを行う、外出するときに行き先を周知する(周囲のメンバーも確認する)といった基本的な行動です。社員がこうしたことをできているのか、いま一度確認し、できていないようであれば、普段から徹底するように、あらためて注意を促しましょう。

また、避難を要する災害に見舞われた場合、スマートフォンや携帯電話のバッテリーが切れてしまい、継続的な安否確認ができなくなる恐れがあります。外出時の持ち物や避難用品に充電済みのモバイルバッテリーを加えるなどの呼びかけをしておきましょう。

以上(2025年7月更新)

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画像:NOBUHIRO ASADA-shutterstock

【財務分析】会社の良し悪しを判断する基本の指標20選

1 財務分析は「仮説→検証」の繰り返し

財務分析は、会社の状況について「仮説」を立て、それを検証するために行うものです。例えば、次のようなイメージです。

  • 「老朽化した設備があり、有形固定資産の効率性が落ちている?」と仮説を立てたら、有形固定資産回転率が低くないかを確認してみる
  • 「借入金が増加し、短期安全性が低下している?」と仮説を立てたら、流動比率や当座比率を比較してみる

この記事では、財務分析に使う代表的な20の分析指標を紹介します。ただし、上から順番に計算していく必要はありません。会社の状況で「収益性」「安全性」「生産性」のうち、どの要素を判断したいかによって、必要な指標を使いわけてみてください。

2 収益性に関する指標10選

1)総資本経常利益率

総資本経常利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。

総資本経常利益率=経常利益÷総資本

また、総資本経常利益率の計算式は次のように分解することができ、収益性に影響を与える要因をより詳細に分析できます。

総資本経常利益率

=(経常利益÷売上高)×(売上高÷総資本)

=売上高経常利益率×総資本回転率

2)売上高総利益率

売上高総利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。

売上高総利益率=売上総利益÷売上高

売上総利益は次の式で計算できます。

売上総利益=売上高-売上原価

売上原価とは、販売した商品の仕入れや製造にかかった費用です。例えば、小売業は販売した商品の仕入代金が該当します。また、製造業は製品の製造費用などが該当します。

3)売上高営業利益率

売上高営業利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。

売上高営業利益率=営業利益÷売上高

営業利益は次の式で計算できます。

営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費

販売費及び一般管理費とは、販売部門や総務・経理といった管理部門などで発生する費用です。人件費・事務用品費・旅費交通費・広告宣伝費・支払家賃・減価償却費などが該当します。

4)売上高経常利益率

売上高経常利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。

売上高経常利益率=経常利益÷売上高

経常利益は次の式で計算できます。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

営業外収益とは、財務活動や投資活動など、本業以外で得た収益です。受取利息・受取配当金・有価証券売却益などが該当します。また、営業外費用とは、本業以外で発生した費用のことです。支払利息・為替差損・有価証券売却損・社債利息などが該当します。

5)ROE(Return On Equity、自己資本利益率)

ROEの計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

ROE=税引後当期純利益÷自己資本

6)ROA(Return On Assets、総資本利益率)

ROAの計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

ROA=税引後当期純利益÷総資本

7)総資本回転率

総資本回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

総資本回転率(回)=売上高÷総資本

なお、総資本回転率が悪化する例として、保養所などの売上獲得に直接貢献しない資産を多く所有していることなどが挙げられます。

8)売上債権回転率

売上債権回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

売上債権回転率(回)=売上高÷売上債権

売上債権は次の式で計算できます。

売上債権=受取手形+売掛金など

9)棚卸資産回転率

棚卸資産回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

棚卸資産回転率(回)=売上高÷棚卸資産

棚卸資産とは、販売されずに在庫として会社に残っている資産です。商品・製品の他に原材料・仕掛品なども含みます。棚卸資産回転率が低い場合、在庫過多や不良在庫の恐れがあります。

10)有形固定資産回転率

有形固定資産回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。

有形固定資産回転率(回)=売上高÷有形固定資産

3 安全性に関する指標7選

1)流動比率

流動比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。

流動比率=流動資産÷流動負債

流動資産とは、現金預金・受取手形・売掛金・棚卸資産など1年以内に現金化が見込める資産です。また、流動負債とは、支払手形や買掛金など1年以内に支払う必要のある負債です。

流動比率は、短期的な支出を短期的な収入でどの程度補うことができるかが把握できる指標です。1年以内という基準で資産と負債の比率を見るわけですが、「1年以内に回収できるか、また、支払いが可能かどうか」までは考慮されていません。そのため、資産と負債が同一の状態である100%では安全とは言い切れず、200%以上が望まれます。

2)当座比率

当座比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。

当座比率=当座資産÷流動負債

当座資産は、流動資産から棚卸資産を除いた換金性の高い資産です。

当座資産=現金預金+受取手形+売掛金+有価証券など

受取手形・売掛金は、貸倒引当金を控除した後の値を用います。貸倒引当金とは、取引先の倒産などにより回収ができなくなる可能性がある金額を見積もった値です。

当座比率は流動比率よりも資産の回収可能性を考慮した指標であり、100%以上が望まれます。もし当座比率が低い場合、支払原資に対する短期借入金などの比率が大きいことが分かります。また、当座比率についても回収や支払いのタイミングは考慮されていません。流動比率が高いのに当座比率が低い場合、棚卸資産(在庫)が過剰となっている恐れがあります。

3)手元流動性比率

手元流動性比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。

手元流動性比率(カ月)=(現金預金+有価証券)÷月商

手元流動性比率は、短期的な安全性を見る際に信頼できる指標です。なぜなら、手元流動性は、現金預金とすぐに現金化できる有価証券だけで安全性を評価するからです。一概にはいえませんが、中小企業の場合は1.7カ月以上が望まれます。

4)固定比率

固定比率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど安全性は高くなります。

固定比率=固定資産÷自己資本

固定資産とは、建物や土地など1年超にわたって使用される資産です。固定比率は、短期では回収の難しい固定資産が返済する必要のない自己資本によってどれくらい賄われているか、企業の長期的な安全性を見るための指標で、100%以下となることが望まれます。

5)固定長期適合率

固定長期適合率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど安全性は高くなります。

固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)

固定負債とは、社債や長期借入金など1年以内に支払う必要がない負債です。固定長期適合率は、長期的な安全性を見るための指標ですが、自己資本に加えて固定負債も考慮していることが特徴です。固定長期適合率は、100%以下となることが望まれます。

6)自己資本比率

自己資本比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。

自己資本比率=自己資本÷総資本

自己資本比率は、総資本のうち、返済する必要がない自己資本が占める割合です。安全性の観点から見ると、自己資本比率は高ければ高いほど好ましくなります。ただし、負債で事業投資をして負債コスト以上の利益を上げている場合、自己資本比率が低くても問題はありません。 そのため、収益性の観点から見ると、自己資本比率が高ければ良いというわけでもありません。

7)負債比率

負債比率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど安全性は高くなります。

負債比率=負債÷自己資本

負債比率は、負債と自己資本を比較する指標です。負債比率は、自己資本比率を補完するものですが、安全性分析としては、自己資本比率もしくは負債比率のどちらか一方を分析すれば良いといえます。

4 生産性に関する指標3選

1)労働生産性

労働生産性の計算式は次の通りです。この比率が高いほど従業員1人当たりの生産性は高くなります。

労働生産性(円)=付加価値÷従業員数

労働生産性の計算式を次のように分解すると、生産性に影響を与える要因の詳細が見えてきます。

労働生産性(円)

=(売上高÷従業員数)×(付加価値÷売上高)

=1人当たり売上高×付加価値率

2)設備生産性

設備生産性の計算式は次の通りです。この比率が高いほど資産当たりの生産性は高くなります。

設備生産性=付加価値÷有形固定資産

設備生産性の計算式を次のように分解すると、生産性に影響を与える要因の詳細が見えてきます。

設備生産性

=(売上高÷有形固定資産)×(付加価値÷売上高)

=有形固定資産回転率×付加価値率

3)労働分配率

労働分配率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど生産性は高くなります。

労働分配率=人件費÷付加価値

労働分配率が高ければ、労働生産性が低いか、余剰人員を抱えている可能性があります。

以上(2025年6月更新)
(監修 エスコート税理士法人 税理士 林孝行)

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画像:pexels

中小企業が知っておきたい 自社PRや補助金獲得につながる宣言集

1 積極的な「宣言」が成長のチャンスに

「パートナーシップ構築宣言」や「SECURITY ACTION(セキュリティ対策自己宣言)」など、世の中にはさまざまな「宣言」があります。これらは簡単に言うと、

企業が社会的責任などを果たす上で、「何に取り組んでいるのか」を端的に表すもの

です。宣言に伴い付与されるロゴマークなどが自社PRに役立つのはもちろん、宣言に取り組むことは “企業が成長するきっかけ”にもなります。なぜなら、宣言するまでの過程で、

  • 自社には、どのような課題があるのか
  • 課題を解決するには、どのような目標を立てればいいのか
  • 目標を達成するには、どのような取り組みが必要なのか

などに、真剣に向き合うことになるからです。また、宣言の中には

補助金の加点などの優遇措置を受けられたり、あるいは宣言すること自体が補助金申請の必須要件になっていたりするもの

もあります。

この記事では、中小企業が行うさまざまな宣言の中から、

  • 補助金の加点や融資金利の優遇などにつながる宣言
  • イメージアップ、人材獲得や取引拡大などにつながる宣言

を紹介します。

2 補助金の加点や融資金利の優遇などにつながる宣言

1)「パートナーシップ構築宣言」(中小企業庁)

パートナーシップ構築宣言は、

企業が「サプライチェーン全体の共存共栄、下請事業者との取引の適正化などに取り組むこと」を発注者側の立場から宣言するもの

です。

宣言するには、

  • サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携(企業間の情報共有や連携、IT実装支援やサイバーセキュリティ対策、専門人材マッチング、グリーン化、健康経営など労働環境に関する取り組み)を図ること
  • 下請中小企業振興法に基づく「振興基準」を遵守すること

が必要です。

宣言すると、

政府、自治体などのさまざまな補助金の加点措置や優遇措置が受けられる

ようになります。また、

次のロゴマークの使用が認められ、宣言企業であることをアピールできる

ようになります。

パートナーシップ構築宣言

なお、「宣言」は全国中小企業振興機関協会が運営するポータルサイトに掲載されますが、掲載後に指導・助言を受けるなど、宣言を履行していないと認められた場合、掲載が取りやめになることもあるので注意が必要です。

補助金の加点などの優遇措置については、次のウェブサイトをご確認ください。

■「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト 宣言するメリット■

https://www.biz-partnership.jp/merit/index.html

2)「100億円宣言」(中小企業庁)

100億円宣言は、

経営者自らが、「売上高100億円」という野心的な目標を目指し、実現に向けた取組を行っていくことを宣言するもの

です。

宣言には、

  1. 企業概要(足下の売上高、従業員数等)
  2. 売上高100億円実現の目標と課題(売上高成長目標、期間、プロセス等)
  3. 売上高100億円実現に向けた具体的措置(生産体制増強、海外展開、M&A等)
  4. 実施体制
  5. 経営者のコミットメント(経営者自らのメッセージ)

を盛り込む必要があります。

この宣言は、中小企業成長加速化補助金を受けるための要件となっています。また、宣言をすることで

宣言の公式ロゴマーク活用による自社PRや、経営者ネットワークへの参加

といったメリットもあります。

詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。

■100億企業成長ポータル■

https://growth-100-oku.smrj.go.jp/

3)「SECURITY ACTION(セキュリティ対策自己宣言)」(情報処理推進機構)

SECURITY ACTION(セキュリティ対策自己宣言)は、

中小企業が「情報セキュリティ対策に取り組むこと」を宣言するもの

です。取り組み目標に応じて「★一つ星」と「★★二つ星」のロゴマークがあります。

宣言するには、中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン付録の

  • 「情報セキュリティ5か条」に取り組むこと(★一つ星)
  • 「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で自社の状況を把握した上で、情報セキュリティ基本方針を定め、外部に公開すること(★★二つ星)

が必要です。取り組み目標を決めて、自己宣言者サイトから申請をすると、1~2週間程度でロゴマークの使用方法が伝えられます。

宣言すると、

「IT導入補助金」「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」などの申請ができる

ようになります(宣言が申請要件の1つになっています)。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。

■SECURITY ACTION 自己宣言を申請要件などにしている補助金・助成金一覧■

https://www.ipa.go.jp/security/security-action/requirement/requirement.html

4)「健康企業宣言」(全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」)各支部)

健康企業宣言(健康宣言とも。協会けんぽの支部によって名称が異なる)は、

企業が「健康経営に取り組むこと」を宣言するもの

です。

宣言するには、協会けんぽの各支部が定める取り組みを実施します。支部によって内容が異なりますが、例えば、東京支部の場合、

  • (STEP1)「100%健診実施」「健診結果の活用」などの5項目、「食」「運動」「性差に応じた健康課題」などの7項目(選択式)に取り組むことを宣言すること
  • (STEP2)「健診・重症化予防」「メンタルヘルス対策」など6項目に取り組むこと

が必要です。

宣言すると、

支部ごとに設定された、さまざまな特典やサポートが受けられる

ようになります。例えば、東京支部では東京信用保証協会の信用保証料率の優遇が受けられるといった特典があります。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。

■協会けんぽ東京支部「健康企業宣言Rとは」■

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/tokyo/cat070/collabo271210-1/

3 イメージアップ、人材獲得や取引拡大などにつながる宣言

1)知的障がい者フレンドリー宣言(Lean on Me)

知的障がい者フレンドリー宣言は、

企業が「知的障がいのある人が活躍できる社会づくりに取り組むこと」を宣言するもの

です。運営会社のLean on Me(大阪府高槻市)は、障がい者支援者向けのe-ラーニング教材の提供などをしている会社で、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)におけるアドバイザリー契約を結んでいます。

宣言するには、

  1. 知的障がい特性理解のための研修を実施する(年1回以上)
  2. 知的障がいのある人を雇用している
  3. 知的障がいのある人が関わるチャリティーイベントに協賛する
  4. 知的障がいのある人が関わるチャリティーイベントにボランティア参加する

の4つのフレンドリーアクションのうち、1つ以上の活動に取り組むことが必要です。

宣言すると、

知的障がい者フレンドリーカンパニー特設サイトに登録され、フレンドリーカンパニー専用バナーを使用できる

ようになります。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。

■知的障がい者フレンドリーカンパニー■

https://leanonme.co.jp/friendlycompany/

2)ISO自己適合宣言

ISO自己適合宣言は、

企業が「国際標準規格ISOに基づくマネジメントシステムを運用していること」を宣言するもの

です。多くの企業は、ISO認証を取得するために、日本適合性認定協会(JAB)が認定した適合性評価機関の審査を受けていますが、ISO9001やISO14001などのマネジメントシステムについては自己適合宣言も認められています。

宣言するには、

ISOに基づくマネジメントシステムの構築・運用が適合していること

が必要です。ただし、実際には、それだけでは信頼度が低いため、

初回は適合性評価機関を通じて認証を取得し、更新する際に外部の第三者機関に適合を証明してもらう検証審査を基に自己宣言に切り替える方法

も取られています。

宣言すると、

適合性評価機関による審査を受けるのと比べて、費用を抑えることができる

ようになります。第三者機関の審査を受ける場合も、「SDC検証審査協会」のような非営利法人に依頼することで費用を抑えられるでしょう。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。

■SDC検証審査協会■

https://www.v-sdc.jp/iso/

3)認知症バリアフリー宣言(日本認知症官民協議会)

認知症バリアフリー宣言は、

企業が「認知症やその家族の人が地域で安心して暮らしていくために、生活のあらゆる場面での障壁を減らしていくこと」を宣言するもの

です。

宣言するには、

  1. 社内の「人材の育成」
  2. 行政、他業種などとの「地域連携」
  3. 認知症の家族をサポートできる社内制度
  4. 顧客が利用しやすいサービス・店などの環境整備

の4つに継続的に取り組むことが必要です。

宣言すると、

認知症バリアフリー宣言ポータルのウェブサイトに宣言内容が掲載されるとともに、ロゴマークが提供され、自社での広報活動に活用できる

ようになります。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。

■認知症バリアフリー宣言ポータル■

https://ninchisho-barrierfree.jp

4)SDGs宣言

SDGs宣言は、

企業が「SDGs(持続可能な開発目標)の17項目に取り組んでいること」を宣言するもの

です。他の宣言のように所管の機関があるわけではなく、あくまで自主的に行う宣言です。

細かいルールはありませんが、宣言するには、次のような項目をまとめる傾向にあるようです。発信の方法については、すでに実施している企業を参考にするとよいでしょう。

  • 宣言文
  • 自社の取り組みと、それに関連するSDGs目標(17項目のうちのいずれか)
  • 宣言の公表日
  • SDGsの説明

宣言すると、

SDGsのロゴやアイコンを使える

ようになります。これらは国連広報センターのウェブサイトからダウンロード可能です。ただし、資金調達や販促用商品などの商業用途に使う場合は、あらかじめ国連に許諾申請する必要があります。なお、自社のSDGs関連活動など、会社資料や社内報といったものに使う場合は、許可を取る必要はありません。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。

■SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン■

https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_logo/

また、多くの自治体ではSDGs宣言を募集して、情報提供やPRなどを支援しています。支援制度を利用したい方は、各自治体のウェブサイトをご確認ください。

以上(2025年6月更新)

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とくぎんサクセスクラブ 令和7年度 海外現地セミナー【米国テキサス州経済・産業視察】

nasa

令和7年度 海外現地セミナーの開催&詳細が決定しました!

今年はテキサス発の宇宙とビジネスの最前線を体感する内容になっております!

旅程や内容の詳細などは、以下のPDFからご覧ください。

お申し込みは、以下のフォームからお願いいたします。

【開催概要】

  • 旅行期間 2025年10月6日(月)~12日(日)
  • 参加人数 20名 ※先着順
  • 参加費用 お一人様 1,220,000円
  • 申し込み締め切り 2025年7月18日(金)

※参加者数が変動した場合、ご旅行代金を変更させていただく場合があります
※ビジネスクラス追加料金お一人様1,200,000円
※2名部屋ご利用の場合、お一人様80,000円引きとなります

問合せ先
とくぎんサクセスクラブ事務局(担当:泉)
088-656-1125

以上(2025年6月作成)

【財務分析】仕入れや販売をしたときに財務諸表の数値はどう変化する?

1 日々の企業活動は財務諸表にどう影響する?

財務諸表(損益計算書、貸借対照表)の読み方に慣れるには、

商品の仕入れや販売などの企業活動が、財務諸表のどのような箇所に影響するか

を実際に確認してみることが大切です。

財務諸表にはさまざまな数字が出てきますし、似通った専門用語も多いため、最初はどこを見ると良いのかがわからないかもしれません。しかし、慣れてくると、ポイントを押さえて読めるようになり、それほど時間をかけずに会社の財務状況を大まかにつかめるようになります。

この記事では、財務諸表の概要を説明した上で、商品の仕入れや販売などの企業活動が財務諸表の数値にどのように影響するかを見ていきます。

2 損益計算書の概要

損益計算書は、

会社が一定期間の営業活動によって、どれだけの利益を上げられたかを示すもの

です。利益は次の5段階となっており、商品・サービスの売り上げから、売上原価や人件費などを差し引いて計算します。

  1. 売上総利益:自社の商品やサービスに係る売上から売上原価を差し引いた利益
  2. 営業利益:売上総利益から人件費など販管費を差し引いた本業にかかる利益
  3. 経常利益:営業利益から受取・支払利息などの本業以外の収益・費用を反映した利益
  4. 税引前当期純利益:経常利益から臨時的に生じた特別利益・損失を反映した利益
  5. 当期純利益:税引前当期純利益から法人税等の金額を差し引いた最終の利益

どの利益を重視するかは、損益計算書を読む理由や読み手の立場によって異なります。例えば、投資家などは会社の配当原資がどの程度あるのかを見るために、当期純利益に注目します。また、類似商品を扱う競合他社の損益計算書を見る際は、売上原価を差し引いた売上総利益などに注目します。

損益計算書の様式例

3 貸借対照表の概要

貸借対照表は、

決算期末時点における会社の資金調達・運用の状況を示すもの

です。会社は借り入れや株式発行などにより資金調達を行い、調達した資金で商品を仕入れたり、機械装置を購入したりしますが、その資金の状態を示すのが貸借対照表です。貸借対照表を読む際は、次の5つの項目に注目します。

  1. 流動資産:現金預金や売掛金など短期間(1年以内)で現金化できる資産
  2. 固定資産:1年を超えて現金化されず、長期間保有・使用される資産
  3. 流動負債:買掛金や短期借入金など返済期限が短期間(1年以内)の負債
  4. 固定負債:返済期限が1年を超える負債
  5. 純資産:株主からの出資金や事業活動から得た利益の蓄積額など

業種や企業の事業戦略などによって、どの項目が高めなのか、または低めなのかといった特徴が異なります。

貸借対照表の様式例

4 仕入れや販売で貸借対照表と損益計算書はどう変化する?

1)事業活動の概要(前提条件)

ここでは、小売業A社の仕入れ、販売などの事業活動が貸借対照表と損益計算書にどのような影響を与えるかを解説します。

小売業A社は、この1年間で次の事業活動を行いました。以降は第1事業年度とします。

a.営業用資金として、金融機関から長期で1000万円を借り入れる。また、自己資金の注入により、株主資本が500万円となる

b.営業店舗として土地を250万円、建物250万円を現金500万円で取得する(建物の減価償却期間は25年、減価償却費は年間10万円とします)

c.商品を1個当たり3000円で2000個、現金で仕入れる

d.仕入れた商品を1個当たり5000円で1000個、現金で販売する

e.減価償却費10万円を販管費に計上し、第1事業年度の税金(税引前当期純利益の30%の57万円)を翌事業年度(第2事業年度)に支払うことになるため未払計上する

上記の事業活動を仕訳(取引を借方と貸方に分けたうえで、取引内容に応じて適切な勘定科目に振り分けること)した結果は次の通りです。

第1事業年度の小売業A社の事業活動の仕訳結果

2)財務諸表の変化

1.小売業A社の貸借対照表

仕訳結果に基づいて、第1事業年度の小売業A社の貸借対照表の変化を見てみましょう。

第1事業年度の小売業A社の貸借対照表の変化

2.小売業A社の損益計算書

次に、第1事業年度の小売業A社の損益計算書を見てみましょう。

第1事業年度の小売業A社の損益計算書

損益計算書の一番下にある当期純利益は、会社の最終的なもうけを表す項目です。来期の初めの貸借対照表では、当期純利益は純資産に利益剰余金として計上され、会社が更なる成長を遂げるための投資や、自己資本の充実により財務基盤を強化するための原資に充てられます。第2事業年度期首の小売業A社の貸借対照表は次の通りです。

第2事業年度期首の小売業A社の貸借対照表

以上(2025年6月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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「新たなコミュニケ―ション習慣」、後は「習うより慣れよ」/武田斉紀の『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』【実践編】(12)

書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:コミュニケーションに関わる知識やノウハウは、頭では理解できても、実際の場面で使いこなせるようになるまでには高いハードルがあるものです。
  • 解決策:前回シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』での知識やノウハウを聞いただけではまだ一歩を踏み出せない、あるいはトライしてみたがうまくいかないという方のために、新シリーズでは【実践編】として社内の“あるある”場面を想定した質問に対して一緒に考えながら、実践イメージを膨らませていただきます。またリーダー側の視点とは別に、若手社員側の視点による上司世代との上手な付き合い方のヒントも紹介していきます。リーダー世代と若手社員とのコミュニケーションギャップを埋めることは、世界を舞台にスピーディな成長をめざす日本企業にとっても喫緊の課題だからです。

1 「新たなコミュニケ―ション習慣」基礎編・実践編を終えるに当たって

今シリーズもいよいよ最終回です。前回シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』がいわば基礎編だったのに対し、その実践編としてお送りしてきました。

実践編では、基礎編を通して知識やノウハウは分かったけれど、「現場で実践するにはまだハードルが高い」「うまく一歩を踏み出せない」という方を想定しました。毎回、実際にありそうなさまざまなシチュエーションを設定して、その際にどんなコミュニケーションを取るのが望ましいかを一緒に考えてきましたが、いかがだったでしょうか。

さて、ここで皆さんに質問です。「新たなコミュニケ―ション習慣」、すなわち「①傾聴」「②褒める」「③前向き発想」の3つを実際にどれくらい使ってみましたか。

皆さんは少なくとも、これらが『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』であるとご認識いただけたでしょう。だからこそ実際に使ってみよう、できれば使いこなせるようになりたいと思い描き、実践編へと進んでこられたのはないでしょうか。

「見るとやるとでは大違い」という言葉があるように、新たな取り組みは最初からうまくはいきません。とはいえやってみないかぎり、いつまでたっても身に付かないのです。それでは学んだ意味がありません。タイパが最悪です(笑)。

12回シリーズの最終回、基礎編も含めると全24回の最終回に、私が皆さんに送りたいメッセージ。それはタイトルにある通り、『後は「習うより慣れよ」』です。

新たな取り組みを“実際やってみる”ことは、簡単ではありません。人は誰しも失敗して恥をかきたくないもの。とりわけ経験を積んでベテランと呼ばれる立場や、それなりの地位にある人にとっては「今さら恥などかけない」という気持ちが邪魔をするでしょう。

昭和世代の人から「最近の若い人は失敗したがらない」という声を聞きますが、今の昭和世代も失敗したがらない点では同じです。はい、書いている私自身もその一人です。

「やったことのない新たな取り組みをしようとするから失敗するのだ。あえて新しいことに取り組まなければ失敗しないですむ。多くの人が取り組み始めたら、そのとき始めればいい。そうすれば失敗しても目立たないだろう」

そう考えて、後回し、後回しにしてきた人も多いのではないでしょうか。

2 「①傾聴」は一期一会を楽しむ

私自身の「習うより慣れよ」の体験談を2つ紹介しましょう。「新たなコミュニケ―ション習慣」の「①傾聴」と「②褒める」についてです。どちらもかつての自分にとっては苦手なコミュニケーションでした。

ちなみに「③前向き発想」は、生来前向きな性格ゆえ、さほど苦もなく実行できました。現在管理職の立場にいる皆さんの中にも「③前向き発想」なら得意だという方は多いかもしれませんね。

しかし一方で、

「③前向き発想」は行き過ぎると、時に“前向きの押し付け”になってしまうことがあります。みんながみんな、いつも「③前向き発想」の言葉で背中を押されて前向きになれるわけではありません。

そのことを理解してからは、私は先に相手の心の状態を把握し、「確かに大変ですよね」などと現状を受け止めた上で適切な言葉で鼓舞するように心がけています。

私の体験談。まず、

「①傾聴」について。多くの人は元来、他人の話を聞くよりも自分の話を聞いてもらうほうが気持ちのいいものです。

私も以前は、自分の話を聞いてもらいたがるくせに、他人の話は話半分で聞いているタイプの人間でした。

「自分の話を聞いてもらうのも楽しいが、他人の話を聞くのも楽しい」ことに気付けたのは、社会人になってからです。人事部門での面接や、制作部門での取材(インタビュー)の仕事がきっかけでした。面接もインタビューも、相手に「聞く・質問する」のが仕事です。

人事部で面接担当者をしていた当時、私は新卒や中途採用に加えて毎日何十人と応募のあるアルバイトの一次面接を一手に任されていました。

「今日も明日もたくさんの人と面接をして、同じような質問を繰り返すだけの毎日なのか」と想像すると、ちっとも楽しくありません。そこで面接を「自身の面接スキルを磨くための時間にしよう」と思い直しました。最初はあくまで自分軸でした。

人事の面接では時に自社のアピールもしますが、質問によって「いかに相手の良さを引き出せるか」が求められます。一次面接で私が最初にお会いするわけですから、毎回毎回が一期一会の本番です。「相手は一人ひとり異なるわけだから、その人その人で質問を変えてみるべきではないか」と考えました。

とはいえ、本番でいきなり書類を広げても、緊張して何から質問すればいいか分かりません。

そこで、あらかじめ可能な限り書類を読み込み、事前にいくつか質問を用意することにしました。どんな質問をどんな言葉でしてみようか。すると、この人はきっとこういう答えを返してくるに違いない。だったら、さらにこんな質問をしてみよう。少し楽しくなってきました。

「この人はこういう人だろう」と仮説を立てるのですが、実際に質問してみると、意外な答えが返ってくることが少なくありません。思い込みは禁物です。同じような経歴に見えても、そこに至った理由や背景は一人ひとり違うのだと知りました。

制作部門でのインタビューの仕事も同じでした。初めてお会いする相手の話を十分に引き出そうと、できるだけ準備はしておくものの、いざ質問を始めると、返ってくる答えが想像と異なることが多々ありました。

そこで聞く側が面食らっていては、話を掘り下げることはできません。私は想定外の答えが帰ってきた場合、それを素直に受け止めることを覚えました。「へえ、そうなんですね」と目を輝かせます。すると相手は、もっと知ってもらいたくて詳しく話してくれるのです。

人間は一人ひとり違うのだと改めて思い知らされました。と同時に、いろいろな人の話をじっくりと聞く=「①傾聴」することは、共感できたり、新たな発見になったりと、実に楽しく面白いことなのだと気付けたのです。

おまけに、相手は自分の話をじっくり聞いてくれたと心から喜んでくれるのです。「①傾聴」って素晴らしいと確信できました。

3 親しい人との会話も、日々毎回が一期一会

初めて会う人との会話はもちろんですが、日常の仕事での上司や部下、仲間との会話も日々毎回が“一期一会”です。

相手が血を分けた親子や兄弟姉妹でさえ、私たちは相手のことを全て知っているといえるでしょうか。他人ならなおさらです。

普段からコミュニケーションが取れていない相手はもとより、親しくしている人同士であっても、今日、そして今の相手の心情や考えていることは、じっくりと聞く=「①傾聴」しない限り深く知ることはできません。

シリーズの事例を通し、注意するべきポイントとして何度も取り上げてきたように、部下がこちらの思いもよらない反応や言葉を発してきても、感情的に反応するのはやめましょう。ひと呼吸おいて気持ちを落ち着かせ、先入観を排して「まずは傾聴してみよう」と発想してみてください。

こちらが先入観を捨てて「①傾聴」することで、相手は本当の気持ちや悩みを打ち明けやすくなるでしょう。相手の話をしっかりと受け止め(=承認)、気持ちを理解する(=共感)ことで、ようやく相手の反応や言葉の真意が見えてくるはずです。

相手はあなたが「話を聞いてくれる人か否か」を、あなたの反応を見て瞬時に判断しています。

「話を聞いてくれない人」には話してもムダなので話しません。心を開いて相談しようなどと思わないでしょう。

逆に「この人はどんな話をしても、否定しないで最後まで聞いてくれる」と判断すれば、相手はきっと心を開いてくれるはずです。

4 まず「褒める」で、人は育つ

次は

「②褒める」について。以前にもお話ししましたが(前回シリーズ第6回)、私もかつては極端な“褒め下手”でした。

まず「褒める」が大事ですといわれても、そもそも私自身、他人から褒められた記憶も、褒めた記憶もほとんどない。面と向かって褒めるなんて恥ずかしくてできない。自分はお世辞すら言えない性分なのだからしょうがない。そんな風に考えていました。

私がコミュニケーション習慣を、まず「褒める」に変えようとしたのは20年以上前でしょうか。はっきり覚えてはいないのですが、きっかけは当時の部下とのやりとりや子育ての経験だったように思います。

年齢を重ねてきて、会社では新人や若手社員との年齢や世代格差が広がっていました。私は昭和世代ですから、部下の育成は叱って注意するのが基本だと信じていましたが、どんどん相手の反応が鈍くなっていくのを感じていたのです。

片やその頃、子どもが生まれて子育てと向き合うことになりました。自分は親から褒められた記憶はあまりない、叱って注意された記憶しかないけれど、自分の子どもの教育もそれでいいのだろうかと逡巡(しゅんじゅん)しました。

人を育てるためのコミュニケーションについていろいろと調べていた頃に、タイミング良く社内異動があり、研修講師としての育成の機会をいただきました。半年間、他の仕事は一切せず、毎日研修施設に通ってトレーニングを受けるのです。座学を経てひたすら実技を繰り返す、精神的に割と過酷な時間でした。

そこで学んだ基本の一つに、講師は受講者の気付きをしっかりと受け止めるというのがありました。どんな気付きだろうと「なるほど、いいですね」と、気付いたことを褒めて受け止める。すると受講者は、自分の気付きや発言が認めてもらえたと感じ、もっと自ら学ぼうという意欲が湧いてくるのだと。

「それで、それで?」とその先を促してみたり、「今の〇〇さんの発言について、他の人はどう思いますか?」と周囲に投げかけてみたりすることで、気付きは増幅していきます。すると周囲の気付きや学びまでもがどんどんと高まっていくのが分かりました。

相手を「褒める」とは何も大袈裟なことではなく、「相手の良い所を認めてあげること」なのだと知りました。

わざわざお世辞を言う必要もないし、そんなものは相手にバレます。

相手の良い所を見つけて、まず「いいね」と「褒める」=相手を認めることで人は育つのだと実感しました。

褒めてばかりで人は育つのかという指摘をよくいただきます。私は必要に応じて「要望」や「改善点」を伝えます。ただそれは普段からの頑張りなど、相手をまず褒めて認めた後です。そのほうが人は「要望」や「改善点」を受け入れやすいからです。

その昔、若手は経験や知識のある先輩から教わることばかりでした。が、IT化の進んだ現在は上司が部下に教わる知識も増えています。またイノベーションが求められる中では、上司や先輩の経験がかえって邪魔をすることも増えてきました。

上司と部下は同じ大人同士であり、仕事の上では互いにプロ。マネジメントと実行役という役割が違うだけで、そこに人としての上下はありません。

となれば、上司が部下を一方的に「叱る」のはおかしいと私は考えています。

相手に対する「期待」を込めながら、必要に応じて「要望」や「改善点」を伝えるのがいいのではないでしょうか。上司から部下に対してはもちろん、部下から上司に対しても。

5 「②褒める」は自分のためと思ってもいい

まず「褒める」、その上で「期待」を込めながら必要に応じて「要望」や「改善点」を伝えることで人は育つ。そう学びながらも、なかなか人を褒められない私には、3つの誤解がありました。前回シリーズで説明しましたが再掲して、簡単に解説します。

【誤解1】「褒める」なんて自分には無理と思い込んでいる

【誤解2】他人を「褒める」と、その分自分が損をする

【誤解3】「褒める」と相手が慢心して天狗になってしまう

【誤解1】は今回のタイトルと冒頭で触れたように、『後は「習うより慣れよ」』です。

「褒める」の効果を十分に学んだのなら、自分には無理と言っている場合ではありません。部下とのコミュニケーションをよりスムーズに変えたい、人を育てられる上司になりたいのであれば、身近な人から褒めてみましょう。

私はやってみました。小さい声で「いいね」と言ってもなかなか相手には伝わりません。せっかくやるのに十分に伝わらなければもったいないですよね。勇気を振り絞って普段の2、3割増しくらいの声に表情、手ぶりなどをつけて褒めてみました。

めったに褒めたことのない私に対して、部下は最初「どうしたんですか、急に」と怪訝(けげん)な顔をします。かといって嫌がっているようでもありません。ここでひるんではいけないのです。褒め続けましょう。

次第に部下には、こちらが本気で褒めようとしているのが伝わるようになってきます。照れ臭そうにしながらもうれしそうです。そして、その上で伝えた「要望」や「改善点」に対しては、前向きに反応してくれるようになりました。

「要望」や「改善点」があれば、まず褒めて相手を認めた上で、一人ひとりの能力や状況と相談しながらどんどん指摘していいのです。「ここが気になる、なぜなら……」と。納得のいく理由や事実があればパワハラには当たりません。

【誤解2】の他人を「褒める」と、その分自分が損をするというのは私の単なる思い込みでした。その分自分が損をするどころか、むしろずいぶんとお得なのだと分かりました。

工夫しながら褒め続けていると、第三者からは「武田さんは人を褒めるのが上手ですね」「褒めて人を育てるのが上手ですね」と“褒められる”ようになってきました。褒めるのは自分も気持ちがいいし、相手も笑顔になる。損することなどなくて、得することばかりです。

そう、

「②褒める」は自分のためと思ってもいいのです。それでいて周囲のみんなも幸せな気持ちになれる、実にハッピーなコミュニケーションなのです。

ちなみに私の「他人にお世辞すら言えない性分」は昔も今も変わっていません。

「褒める」は「お世辞」ではありません。自分が「いいね」と気付いたことを、相手にちゃんと伝えてあげるだけの実に単純な行為なのです。

最後に【誤解3】です。「褒める」ことで慢心する人も中にはいますが、多くの日本人は謙虚なので天狗にはなりません。とりわけ上を目指している人ほど「いえ、まだ大したことはありません。もっと頑張ります」と、褒められたことを意気に感じて頑張ってくれます。

ほんの一部の天狗になってしまう人には、「〇〇さんはもっとできるでしょう。信じていますよ」と、高い期待を伝えればいいのです。

6 あなたは、今の自分を本気で変えたいですか?

あなたが前回、今回のシリーズを読む中で、『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』としての3つの「新たなコミュニケ―ション習慣」を十分に学べたのなら、あとは実践してみるしかありません。

もしそれでも一歩が踏み出せない場合は、「自分は今の自分を本気で変えたいと思っているのだろうか」と自問してみてください。もしかしたら、本気で変えたいとは思っていないのかもしれません。

「もうすぐ定年だし、今のままでもなんとかなるだろう」

「自分が変わるのなんて面倒臭い、若い奴が変わればいいじゃないか」

定年までもう少しなら何とかなるかもしれません。でも、あなたはその後、若い世代とコミュニケーションを交わす機会はありませんか。再雇用で、新たなコミュニティで、お子さんやお孫さんたちと、将来介護してもらう施設の若いスタッフと。

若い世代はいずれ社会の主役となり、皆さんは彼らに世話になる立場です。しかも何度もお話ししているように、世の中の流れは、明らかに若い世代の考え方に近い方向に変わってきています。

今さら自分が変わるなんて無理だからと諦めるのか。あるいは小さな一歩を踏み出し、時代に合わせてアップデートしようと努力するのか。どちらを選ぶかはあなた次第です。

今回のシリーズも最後までお読みいただきありがとうございました。

自分を変えたいと決めた方は、3つの「新たなコミュニケ―ション習慣」、「①傾聴」「②褒める」「③前向き発想」を“習慣”になるまで実践してみてください。一旦“習慣”にできれば、まるで日常の生活の一部のように自然に行動できるようになれますよ。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mail to: brightinfo@brightside.co.jp

※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。

『新スペシャリストになろう!』https://amzn.asia/d/e8GZwTB

『なぜ社長の話はわかりにくいのか』https://amzn.asia/d/8YUKdlx

以上(2025年6月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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ミスタープロ野球・長嶋茂雄氏。彼が生涯を懸けて貫いた「不屈の精神」

我が巨人軍は永久に不滅です

野球界の枠を超え、戦後、日本の象徴の一人として国民的な敬愛を集めたのが「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄氏です。華々しく活躍するスターのイメージが強いですが、実は数々の困難に立ち向かい、克服してきたのが長嶋氏です。経営者が激動の時代を生き抜き、組織を存続・発展させていく上で、長嶋氏の「不屈の精神」から学ぶべき点が数多くあります。

長嶋氏の言葉の中で、最も多くの人々の心に刻まれているのは、なんといっても1974年の現役引退セレモニーの際の「我が巨人軍は永久に不滅です」でしょう。この言葉には、読売ジャイアンツへの深い愛情、自身がその一員であったことへの誇り、そして、ファンへの感謝の念が凝縮されています。

また、ビジネスに置き換えれば、この言葉から経営者が率いる組織やブランドの「不屈の精神」を感じることもできます。個人の引退や世代交代があっても、あるいは厳しい逆境に直面しても、組織の魂は決して失われない、つまり、会社は存続していくのだというメッセージです。

長嶋氏の生涯はまさに「不屈の精神」を体現したものだといえます。長嶋氏は現役引退後、すぐに巨人軍監督に就任しますが、1年目の1975年には球団史上初の最下位という屈辱を味わいます。これは長嶋氏にとって大きな試練でした。しかし、この経験を糧にチーム再建に着手し、翌年には大型補強を行いリーグ優勝、若手には猛練習を課し、後の主力選手を育成しました。失敗を真摯に受け止め、未来を見据えた厳しい改革を断行するリーダーシップが伺えます。

また、2004年には脳梗塞で倒れ、右半身まひと言語障害という重い後遺症に悩まされました。スポーツの世界大会での監督就任も断念せざるを得ない状況でした。しかし、ここでも長嶋氏は「不屈の精神」で、壮絶なリハビリテーションに取り組みます。9年間でリハビリを休んだのはわずか2回だったと報じられています。

こうした長嶋氏の生き様は、経営者に次のような教訓を示しています。

  • 困難な状況でも、組織やブランドは「不滅」であると信じ、それを内外に示すこと
  • 自身の失敗や組織の低迷を恐れず、そこから学び、立ち上がる「不屈の精神」を持つこと
  • 未来のために、時には厳しく、しかし情熱を持って人材育成に取り組むこと
  • 予期せぬ個人的な困難に直面しても、諦めずに挑戦し続けること

2025年6月3日、長嶋氏は89年の生涯を終えられました。日本を代表する偉大な先達の死は悲しいことですが、彼が生涯を懸けて貫いた「不屈の精神」は、今なお、私たちに大きな勇気と希望を与えてくれています。

出典:「長嶋茂雄終身名誉監督が死去」(読売ジャイアンツ公式ウェブサイト、2025年6月3日)

以上(2025年6月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【助成金の落とし穴】 退職者が出たせいで助成金が不支給に!?

1 もらえるはずだった助成金が、なぜもらえなくなるのか?

賃上げ、両立支援、人材育成、健康経営……。社員の雇用環境に係る会社の取り組みをサポートするため、厚生労働省は様々な「助成金」を実施しています。2025年度から大幅に内容が拡充されたものもあり、特に人事労務に割けるリソースが少ない中小企業にとっては、大きな助けになるでしょう。

ただ、注意しなければならないのは、

一定のルールを守って申請しないと、助成金が不支給になる(受給後にルール違反が発覚した場合は、返還を求められる)ケースがある

ということです。申請書類の内容を偽って助成金を不正受給した場合や、労働関係法令に違反した場合(例:残業代の未払い)などは不支給の典型例ですが、会社側に悪意がなくても、

  • 一定期間内に社員を解雇してしまった……
  • 制度を導入した後のことを考えていなかった……
  • 併給不可や併給調整のルールを知らなかった……

といった理由により、助成金がもらえなくなることがあります。助成金は社内制度の導入や申請書類の準備など、申請にも相応の手間がかかるため、“落とし穴”にはまらないよう、この記事で基本的な内容を押さえておきましょう。

2 一定期間内に社員を解雇してしまった……

助成金の中には、一定期間内に解雇(会社都合により、社員を退職させること)を行った場合、支給が受けられなくなるものがあります。助成金を受け取るためだけに、会社が社員を雇用したり解雇したりすることを防ぐためです。例えば、キャリアアップ助成金(正社員化コース)がそうです。

【キャリアアップ助成金(正社員化コース)】

就業規則等に基づき、非正規社員を正社員に転換し、転換後に一定以上賃金を増額した場合、助成金を受け取れる

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

赤字の通り、キャリアアップ助成金(正社員化コース)には、「正社員転換の6カ月前から1年間、社員(雇用保険被保険者)の解雇等をしてはならない」というルールがあります。正社員化の対象者のことにばかり注目して、他の社員の退職に無頓着だと、不支給の痛手を被ることになりかねません。

自己都合退職は対象となりませんが、会社が円満退職だと思っていたら、社員が退職後に「あれは会社都合だった!」と、態度を豹変させるケースもあるので注意が必要です。ただし、懲戒解雇のように社員本人の責めに帰すべき事由がある場合は、例外として不支給になりません。

3 制度を導入した後のことを考えていなかった……

助成金の中には、特定の制度を導入することで受け取れるものがありますが、単に制度を導入するだけでなく、運用面で一定の効果を上げることが要件に含まれているケースがあります。例えば、人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)がそうです。

【人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)】

雇用管理制度(賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度)、雇用環境整備(社員の直接的な作業負担を軽減する機器・設備等の導入・運用)の措置のいずれかを実施し、離職率が低下した場合に助成金を受け取れる

人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)

例えば、雇用管理制度の一環として、賃金規定制度(賃金表の整備)や諸手当等制度(資格手当など)を導入したとしても、それで満足してしまって、離職率の低下目標を達成できなければ、助成金は受け取れません。

しかも、制度を導入するには、就業規則への定めが必要であり、一度定めをすると簡単にはその制度を廃止できません。つまり、助成金は受け取れないまま、新しい制度だけが存続する形になります。制度の導入だけに注力し、運用面がおざなりにならないよう注意しましょう。

4 併給不可や併給調整のルールを知らなかった……

助成金の中には、ある助成金をもらうと別の助成金がもらえなくなるものがあります。例えば、両立支援等助成金の出生時両立支援コース(第1種)と育児休業等支援コース(育休取得時)は、育休取得者が同一の場合、併給不可とされています。

【両立支援等助成金(出生時両立支援コース)】

会社(実際は支店等の事業場単位)が、「男性社員」が育休を取得するための雇用環境や業務体制を整備し、男性社員が実際に育休を取得した場合、助成金を受け取れる

両立支援等助成金(出生時両立支援コース)

【両立支援等助成金(育児休業等支援コース)】

社員(男性・女性を問わない)の育休の取得・職場復帰が円滑に進むよう、会社が一定の取り組みをした場合、助成金を受け取れる

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育児休業等支援コースでは「育休復帰支援プラン」という、育休(産後パパ育休を含む)の取得・職場復帰をサポートするための計画書を、育休取得者ごとに策定する必要がありますが、同じ育休取得者について出生時両立支援コースを申請してしまうと、育児休業等支援コースの助成金は受け取れず、育休復帰支援プランの策定にかけた時間も無駄になってしまいます。

もっとも、出生時両立支援コースの対象は「男性社員」、育児休業等支援コースの対象は「社員(男性・女性を問わない)」という違いがあるので、社内の育休取得者を区分けして、どのコースで申請を挙げるか検討することは可能です。

ちなみに、助成金には併給不可の他に、

複数の助成金を受け取る場合に支給額に調整がかかる「併給調整」

というルールもあります。併給調整については、厚生労働省が助成金の組み合わせによってどのように調整がかかるかを示した「併給調整早見ツール」を公表しているので、確認してみてください。

■厚生労働省「雇用関係助成金の申請にあたって(併給調整早見ツール)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00018.html

5 1回しか受け取れない助成金を少額で申請してしまった……

不支給とは少し違いますが、助成金の中には「1社につき1回しか受け取れないものがある」というのも覚えておきましょう。例えば、人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)がそうです。

【人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)】

有給の教育訓練休暇制度(3年間で5日以上の取得が可能な制度)を導入し、対象者が当該休暇を取得して教育訓練等を受けた場合、助成金を受け取れる

人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)

実際に教育訓練休暇を取得する社員の賃金や、制度の導入にかかった費用(社会保険労務士への相談費用)などが助成対象になりますが、社内への制度の周知が甘く、実際に教育訓練休暇を使う社員がほとんどいなかった場合などは、支給額が少なくなる可能性があります。1社につき1回しか受け取れない以上、導入当初から社員に制度を使ってもらえるように制度設計をする必要があるでしょう。

以上(2025年6月作成)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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