女性活躍推進法が改正され、今年4月から、従業員101人以上の企業に「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が義務づけられます。情報の公表によって企業の女性活躍を促すとともに、求職者が企業を選ぶ際の参考にする狙いがあります。本稿では、「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の計算方法や公表手順などについて説明します。
女性活躍推進法に基づく情報公表
女性活躍推進法が改正され、今年4月から、従業員101人以上の企業に「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が義務づけられます。情報の公表によって企業の女性活躍を促すとともに、求職者が企業を選ぶ際の参考にする狙いがあります。本稿では、「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の計算方法や公表手順などについて説明します。
1 男女間賃金差異
「男女間賃金差異」「女性管理職比率」は、事業年度ごとに計算します。改正法の施行(今年4月1日)後、最初に終了する事業年度の実績を、事業年度終了後おおむね3か月以内に公表します。例えば、令和8年4月末に事業年度が終わる企業は、令和8年7月末までに公表することになります。その後も、毎年同じ時期に公表します。
公表の場は、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」が最適です。自社のホームページなどで公表してもかまいません。
「男女間賃金差異」の公表は、301人以上の企業はすでに義務となっており、今年4月からは101~300人の企業にも拡大されます。算出方法は次の通りです。
- ①「全労働者」「正社員」「パート・有期社員」の3区分を設定
- ②区分ごとに、男女別の平均年間賃金(総賃金÷従業員数)を計算
- ③区分ごとに、「女性の平均年間賃金」÷「男性の平均年間賃金」×100で「男女間賃金差異」を計算

2 女性管理職比率
「女性管理職比率」の公表は、301人以上の企業、101~300人の企業の両方に、今年4月から新たに義務づけられます。女性管理職数÷全管理職数×100で算出します。
管理職とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」の合計です。また、「課長級」とは、次のいずれかにあてはまる人です。
- ①事業所で通常「課長」と呼ばれている者であって、その組織が2係以上からなり、もしくは、その構成員が10人以上(課長を含む)のものの長
- ②同一事業所において、課長のほかに、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「課長級」に相当する者(ただし、一番下の職階ではないこと)
一般的に「課長代理」や「課長補佐」は、「課長級」に該当しません。
また、301人以上の企業は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の実績について、現在でも公表が義務となっています。下の2つの表から、それぞれ1項目以上を選んで公表する必要があります。101~300人の企業は、下の表の計14項目のうち1項目以上を公表しなければなりません。

3 さいごに
女性活躍推進法に基づく情報公表の義務については、怠っても罰則がありません。ただ、必要がある場合には、労働局が企業に助言、指導、勧告を行うことができます。この機会にきちんと公表し、女性が活躍しやすい環境づくりのきっかけにしてはいかがでしょうか。企業イメージの向上や、男女問わず優秀な人材の確保にもプラスになると思います。
また、女性活躍推進法では、101人以上の企業に一般事業主行動計画の策定・届出を義務づけています。こちらも忘れないよう気をつけてください。
※表はすべて、厚生労働省リーフレット「女性活躍推進法が改正されました!」より抜粋
※本内容は2026年2月10日時点での内容です。
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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画像:photo-ac
2026年度の制度改正! 税務・労務・法務のプロは何に注目する?
中小企業を取り巻くビジネス環境は日々変化しています。特に税務・労務・法務の分野では毎年のように制度改正が行われ、キャッチアップも大変です。そこで、税理士、社労士、弁護士が厳選した、中小企業の経営者が押さえておくべき2026年度の制度改正のニュースを3つずつ紹介します。
1 税理士が注目する税務3大ニュース
2026年度、税理士が注目する制度改正のニュースは次の3つです。
- 中小企業者等に対する少額減価償却資産の損金算入特例について、取得価額基準が引き上げられます
- インボイス制度の8割控除特例について、適用期限が延長、控除割合も見直されます
- 事業承継税制について、特例承継計画等の提出期限が延長されます
本編では、2026年度の制度改正の内容を詳しく解説している他、前年度(2025年度)の振り返りもしています。
2 社労士が注目する労務3大ニュース
2026年度、社労士が注目する制度改正のニュースは次の3つです。
- 2026年4月1日より、年金制度改革(在職老齢年金の見直しなど)が順次スタートします
- 2026年4月1日より、子ども・子育て支援金制度が始まります
- 施行時期は未定ですが、政府内で労働基準法の大改正(約40年ぶり)が議論されています
本編では、2026年度の制度改正の内容を詳しく解説している他、前年度(2025年度)の振り返りもしています。
3 弁護士が注目する法務3大ニュース
2026年度、弁護士が注目する制度改正のニュースは次の3つです(一部は施行済)。
- 2026年1月1日より、下請法が「取適法」に改正されました(施行済)
- 2026年5月25日より、企業価値担保権が創設され、土地・工場等だけでなく「事業全体」を担保にできるようになります
- 2026年10月1日より、カスハラや就活セクハラの防止措置の実施が義務付けられる予定です
本編では、2026年度の制度改正の内容を詳しく解説している他、前年度(2025年度)の振り返りもしています。
以上(2026年3月作成)
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画像:日本情報マート
税理士が注目する2026年度の税務3大ニュース
1 2025年度・2026年度の3大ニュース
2025年度は、中小企業の800万円までの所得に対して適用される軽減税率について、賃上げや物価高への対応に直面している中小企業の状況を踏まえ、適用期限が2年延長されました(所得の大きい中小企業に対する軽減税率については見直し)。また、防衛力の抜本的強化を図るための安定的な財源確保の観点から、従来の法人税の付加税として新たに「防衛特別法人税」が創設されました。さらに、中小企業の事業承継を円滑に実行させることを趣旨とした事業承継税制についても、一昨年度に引き続き所定の見直しがなされました。
2026年度は、従来の「中小企業者等に対する少額減価償却資産の損金算入特例」について、昨今指摘されている物価高による影響に対応するため、取得価額基準が「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられます。また、消費税関連として、免税事業者等からの課税仕入れについて認められている 「8割控除特例」は、適用期限が2年延長されるとともに、控除割合の見直しも行われます。その他としては、中小企業等の経営者の円滑な世代交代を通じた生産性向上といった課題を解決するため、事業承継税制について、特例承継計画等の提出期限が延長されることとなります。
2025年度と2026年度の税務3大ニュースは次の通りです。
(図表1)【2025年度・2026年度の税務3大ニュース】
●2025年度
| 一定の中小企業に対する法人税率(軽減税率)の適用期限の延長 | 一定の中小企業に適用される法人税の軽減税率(15%)の適用期限が2年(2027年3月31日までに開始する事業年度まで)延長されました。なお、所得の大きい法人については、軽減税率が従来の15%ではなく、17%にアップします。 |
|---|---|
| 防衛特別法人税の創設 | 法人税の付加税として、新たに防衛特別法人税が創設されました。2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。 |
| 事業承継税制の特例措置に係る役員就任要件の見直し | 中小企業の事業承継を一層後押しし、生産性向上・成長への支援を強化する観点から、役員就任要件の見直しがなされました。2025年1月1日以後の贈与から適用されています。 |
●2026年度
| 中小企業者等に対する少額減価償却資産の損金算入特例見直し | 中小企業者等に対する少額減価償却資産の損金算入特例の適用期限が3年延長され(2029年3月31日まで)、取得価額の基準が「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられます。 |
|---|---|
| インボイス制度の8割控除見直し | 免税事業者等へ支払う課税仕入れに係る仕入税額控除の特例が2年延長され(2031年9月30日まで)、控除割合の見直しが行われます。 |
| 事業承継税制の承継計画の提出期限の延長 | 事業承継税制の適用を受けるために必要な特例承継計画の提出期限が、法人版の場合は1年6カ月延長され(2027年9月30日まで)、個人版の場合は2年6カ月(2028年9月30日まで)それぞれ延長されます。 |
(出所:税理士法人AKJパートナーズ作成)
2 2025年度の総括
2025年度は、リーマン・ショックの際の経済対策として講じられた「中小企業に対する法人税率(軽減税率)」についての適用期限の延長が決定された一方、新たな税目として「防衛特別法人税」が創設されました。つまり、税負担が減る形となる軽減税率は維持されたものの、新たな税目の創設によって、税負担が増加する方向での改正も行われたわけです。
防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する法人に適用されるものであり、中小企業に対する具体的な影響を現段階で見通すことは難しいですが、近年の物価上昇も相まって国民生活への影響が懸念される中、「力強い経済成長」を実現する政策が、今後も継続して打ち出されることに期待したいところです。
3 2026年度の主なニュース
1)中小企業者等に対する少額減価償却資産の損金算入特例見直し
中小企業者等が器具備品 (PCなど)といった減価償却資産を取得した場合、その取得価額が30万円未満であれば、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を適用し、資産計上せずに全額を損金算入することができます。
この特例は中小企業者等の事務負担の軽減を図ることを目的として設けられたもので、適用期限は2026年3月31日まで、取得価額の基準は「30万円未満」とされていましたが、
- 適用期限が3年延長 (2029年3月31日まで)される
- 取得価額の基準が「40万円未満」に引き上げられる
こととなります。
なお、この特例が適用できるのは、
- 少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円まで(従来通り)
- 常時使用する従業員の数が400人 (改正前は500人) を超える法人は適用除外
となる点に注意しましょう。また、この特例を適用した場合においても、取得価額が10万円以上のものについては「償却資産申告」の対象となる点にも併せて注意しましょう。
(図表2)【少額減価償却資産の特例と償却資産申告】
| 取得価額 | 10万円未満 | 10万円以上20万円未満 | 20万円以上40万円未満 |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 全額損金算入可 | 一括(注1)と特例(注2)の選択可 | 特例の選択可 |
| 償却資産税 | 申告不要 | 一括を選択した場合は申告不要 (特例を選択した場合は要申告) |
要申告 |
(出所:税理士法人AKJパートナーズ作成)
(注1)「一括」一括償却資産の損金算入制度
(注2)「特例」少額減価償却資産の特例制度
2)インボイス制度の8割控除見直し
2023年10月1日から、消費税のインボイス制度が導入されて以降、免税事業者等への支払いは、原則として仕入税額控除の対象にはならなくなっています。ただ、制度導入直後の急激な税負担の増加などの影響を避けるため、制度開始後6年間は、免税事業者等からの課税仕入れについても、一定割合まで仕入税額控除を認める経過措置が設けられていました。
しかし、小規模な国内事業者については、さらなる緩和を図る必要があることから、
- 経過措置の適用期限を2年延長(2031年9月30日まで)
- 控除割合についても見直しが行われる
することとなりました。具体的には次の通りです。

なお、
一の免税事業者等からの課税仕入れの額の合計額が年間で1億円を超える場合
には、その超える部分の課税仕入れについては経過措置の適用が認められません。改正前の上限は10億円でしたので、大幅な引き下げとなる点に注意が必要です。
3)事業承継税制の特例承継計画の提出期限の延長
法人版事業承継税制(特例措置)の措置の適用を受けるためには、認定経営革新等支援機関の所見を記載した特例承継計画を、2026年3月31日までに都道府県知事へ提出する必要がありますが、この提出期限が、
1年6ヵ月延長(2027年9月30日まで)
されます。
また、個人版事業承継税制についても、その適用を受けるためには、認定経営革新等支援機関の所見を記載した個人事業承継計画を、2026年3月31日までに都道府県知事へ提出する必要がありますが、この提出期限は、
2年6ヵ月延長(2028年9月30日まで)
されます。
これらの規定は、中小企業等の経営者の円滑な世代交代を通じた生産性の向上といった課題を解決するための時限措置です。中小企業の経営者や個人事業主の方は、提出期限の到来を見据え、早めに事業承継に取り組むことが重要といえるでしょう。
4 今後の対応について
2026年度においても、今回ご紹介した制度の他、足元の物価高への対応として、物価上昇に連動して所得税の基礎控除の引き上げが行われるなど、多くの税制改正が予定されています。
今回ご紹介した「中小企業者等に対する少額減価償却資産の損金算入特例」など、減税方向の改正については積極的に活用すべきと考えますが、税務上の優遇措置を適用するにあたっては、要件が厳格に定められていたり、所定の書類の保存が必要であったりするケースがほとんどです。
税務調査において要件を満たしていない点を指摘されると、思わぬ税負担を強いられることになりますので、特に改正された規定については早めに準備し、判断に迷う場合には、税理士などの専門家に相談し、適切に手続きを進めましょう。
以上(2026年3月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)
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画像:Mariko Mitsuda

