法令違反しているかも!? 闇バイトの募集と誤解されない「SNSでの求人募集」の仕方

インターネットやSNS等で労働者を募集する際には法律違反とならないように、必ず”6情報”(①求人者・労働者の募集を行う者の氏名又は名称、②住所(所在地)、③連絡先、④業務内容、⑤就業場所、⑥賃金)を記載することを念頭に置き、求人広告を作成するようにしましょう。

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【管理会計】赤字の注文でも変動費が低ければ利益がでる~「限界利益」を覚える

1 質問:製造原価よりも安い注文はお断りするべきか?

自社の商品(自社工場で製造)が百貨店バイヤーの目に留まり、新規で10万個の注文がありました! 現在、その商品は取引先20社に提供していて、すべて販売単価は700円、製造原価は550円です。

ところが、百貨店の条件は厳しく、

販売単価を500円に値下げしてほしい

と値引きを要請してきました。自社工場の生産能力には余力があって10万個の追加製造は引き受けられそうですが、販売単価が安い。

さて、ここで問題です。単純に、

原価割れで、赤字だ!

と考えるのは正しいのでしょうか。こうしたシーンに直面することはよくあるので、判断の基準をご紹介します。

2 「限界利益」という感覚を持つ

前述した百貨店の案件は、数字だけ見ると原価割れです。しかし、原価の内訳を確認すると評価が変わるかもしれません。仮に、その商品の原価は次の通りとしましょう(話を単純化するため、ここでは、材料費と人件費以外を考慮しないものとします)。

  • 変動費:450円。販売個数に応じて増える材料費など
  • 固定費:100円。販売個数に関係なく生じる人件費など

例えば、すでに別で生産している売上で固定費が賄われている状態にあり、現在の生産能力で10万個の増産に耐えられるなら(固定費が増えないなら)、商品を1個販売するごとに増える原価は材料費の450円だけです。つまり、百貨店提示の販売単価でも、1個販売するごとに50円(500円-450円)もうかります。これを管理会計の分野では「限界利益」と呼びます。

限界利益=売上高-変動費

この限界利益で固定費を賄うことができれば収支トントンであり、これを「損益分岐点」と呼びます。

3 「損益分岐点」をマスターする

改めて整理すると、

商品の売上高から変動費を引いたものが限界利益で、この限界利益が固定費を上回れば利益が出る

ということです。そして、限界利益と固定費がイコールになるポイントが損益分岐点です。図で確認すると分かりやすいでしょう。

損益分岐点のイメージ

固定費を限界利益率(売上高に占める限界利益の割合)で割れば、損益分岐点になる売上高が分かります。

損益分岐点売上高=固定費÷(1-(変動費÷売上高))

これにより、「この商品が、どのくらいもうけを出しているか」が分かるので、百貨店の注文を受けるか否かについて根拠を持って決められるようになります。念のため補足をすると、販売価格が同じであれば、限界利益率の高いほうが利益を出しやすくなります。

4 練習問題

(問題1)

販売単価が1000円(変動費400円、固定費400円)の商品を、合計で5000個販売しました。この場合の限界利益はいくらですか? また、限界利益率はどのくらいですか?

(問題1の回答)

販売単価の1000円から変動費400円を引くと、1個当たりの限界利益は600円です。その商品を合計で5000個販売しており、商品全体の限界利益は600円×5000個で、300万円となります。また、限界利益率は売上高に占める限界利益の割合なので、60%となります。

問題1の答え:300万円、60%

(問題2)

販売単価が1000円、製造単価が800円の商品があります。製造を外注した場合、外注単価は570円です。この商品を外注するか否かを検討する際に、どのような情報が必要ですか? また、どのような条件の場合に外注しようと思いますか? なお、外注費は全て変動費として取り扱います。

(問題2の回答)

自社の製造単価が800円、外注単価(変動費)が570円の場合、一見、外注すれば230円のコストが削減できると思えます。しかし、自社の固定費が高く、外注すると製造単価が800円を超える恐れがあります。となると、単純にいえば自社の変動費が570円超ならば外注を検討することができます。

問題2の答え:必要な情報は変動費と固定費

以上(2025年6月更新)
(監修 KOSOパートナーズ合同会社 代表社員CEO 公認会計士 朝倉厳太郎)

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画像:pixabay

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【中堅社員のスピーチ例】なぜ、あなたの指示は部下に伝わらないのか

【ポイント】

  • 部下が成長しないのは、部下を教育する上司の「言語化」が足りないからかもしれない
  • マニュアルのような大仰なものでなく、メモ書きでもいいので「ポイント」を言葉にする
  • 言葉化することで、上司と部下との間に共通認識が生まれ、部下が成長しやすくなる

おはようございます。私が部下を持つ上司の立場になってから数年が経ちました。今日は私と同じ上司の皆さんに、ぜひ聞いていただきたい話があります。皆さんは、部下がなかなか仕事を覚えてくれなくて、モヤモヤした経験はないでしょうか。私は上司になってからそのようなモヤモヤがずっと続いていたのですが、最近になって、それは部下ではなく、部下を教育する私のほうに問題があったのだと気付くことができました。

私に足りなかったものは「言語化」です。私は今まで部下に何かを教える際、「私が今からやるから、同じようにやってみて」と、具体的な言葉で伝えずに指導をすることが多々ありました。私自身も若い頃、当時の上司から「仕事は見て覚えるものだ」と言われて育ちましたし、日々の業務も忙しく、マニュアルなどを作る余裕もなかったからです。

ですが、あるとき別の会社で働く友人から、アドバイスを受けました。その友人も、私と同じく部下を持つ上司ですが、このようなことを言われました。「仕事のポイントが『10個』あったとして、部下に『5個』しか言葉で伝えてなかったとしたら、それはできなくて当たり前だよ」と。私が「でも、マニュアルを作る時間もないし……」と言いかけたら、その友人は「そんな大仰なものじゃなくて、教えることをメモ帳やホワイトボードに書き出すだけでいいんだよ」と返してきました。

友人の言う通り、部下に何かを教える前に、ポイントをメモに書き出して渡すようにしたら、部下とのコミュニケーションが一変しました。先ほどの例えで言うなら、言語化によって「ポイントが10個あること」が私と部下の共通認識になり、部下は仕事の全体像が分かって質問がしやすくなり、私も「部下が理解できていること、できていないこと」を整理しやすくなったのです。

上司にも仕事がある以上、全てを手取り足取り教えるわけにはいきませんし、部下の成長のために「見て覚えてもらうこと」が必要なときもあります。とはいえ、チームで仕事をする以上、基本となるのはやはり「言葉」であり、「忙しいから」「言葉にしにくいから」といった理由で言語化を怠けていては、いつまでたっても上司も部下も成長できないのだと考える今日このごろです。

以上(2025年6月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

荷物があるのに運べない! 物流業の人手不足打開のカギは?

1 物流業「2024年問題」の現在地

労働基準法の「時間外労働の上限規制」が物流業にも適用される(いわゆる2024年問題)ようになってから、1年以上がたちました。

時間外労働の上限規制(2024年4月1日~)

とはいえ、物流業は「2割長く、2割安い」職業といわれており、もともと

  • 点呼や運行日報の記入などを人力で行っているケースが多い
  • 長時間の運転時間の他、荷待ち時間が発生したり、本来依頼になかった荷役作業を急ぎで依頼されたりすることが多い
  • 労働時間が不規則で年次有給休暇が取りにくいなどの理由から、若手が入りにくい

など、長時間労働に陥りやすい傾向があり、2024年問題への対応がいまだ追いついていない会社が少なくありません。物流業の会社は、いかに人手不足を解消すればよいのか。この記事ではそのヒントとして、

業務のDX化や配置転換で長時間労働を是正すること

をご提案します。

なお、物流業界においては、2024年問題への対策として

2025年4月1日から改正流通業務総合効率化法・改正貨物自動車運送事業法が施行され、荷主・物流事業者に対する規制などが強化

されています。第3章で紹介していますので、自社が対応できているか改めてご確認ください。

2 業務のDX化や配置転換で長時間労働を是正する

中小企業クラスの物流業における、時間外労働の削減に関する取り組み事例を紹介します。

1)ドライバーの点呼や運行日報の記入を自動化

物流業では、安全運転の徹底のため、運行管理者がドライバーの出発前や帰社後に点呼を取り、健康状態や呼気中のアルコール濃度をチェックすることが欠かせません。ですが、この業務にかかる時間は、DX化によって削減できる可能性があります。

例えば、ある会社は、各営業所に設置したロボットが、ドライバーの健康状態やアルコール濃度のチェックを自動で行い、運行管理拠点にデータを送る形で点呼を行っています。

ロボットが点呼を行うことで、運行管理者がドライバーと対面する必要がなくなり、作業時間を大幅に削減できる

ようになったそうです。

また、この会社では、運行日報の記入の自動化も実施しています。運行日報は手書きが当たり前という会社も多いですが、

「デジタルタコグラフ(デジタコ)」を使い、運転時の速度・走行時間・走行距離などを自動で記録できるようにする

ことで、ドライバーの負担を軽減しているそうです。デジタコと連携した勤怠管理システムもあり、勤怠管理も自動化することもできます。

2)セーフティーレコーダーで荷待ち時間を削減

ドライバーの長時間労働が慢性化しやすい原因の1つに、荷物の積み下ろしが終了するまでドライバーが待機する「荷待ち時間」の問題があります。

例えば、ある会社は、ドライブレコーダー機能とデジタコ機能が一体になったセーフティーレコーダーを全車に導入し、車両の速度、走行時間、走行距離などを分析することで、荷待ち時間がどの程度発生しているのかを突き止めました。さらに、

荷待ち時間を可視化したデータを顧客に見せ、荷待ち時間短縮の協力を仰ぐ

ようにし、配送ルートの見直しも併せて行うことで、時間外労働の削減に成功したそうです。

3)高齢ドライバーを事務職に配置転換し、効率の良い配車を

どの会社でも従業員の高齢化は大きな課題ですが、物流業においては特にその傾向が強いです。経験豊かなベテランは会社にとって戦力の要ですが、一方で人間の身体機能は年齢とともに低下していくため、高齢化とともにドライバーが事故に遭うリスクも高まっていきます。

例えば、ある会社は、こうした高齢のドライバーをあえて「事務職」に配置転換することで、事故のリスクを減らすとともに、働き方改革に成功しました。「経験豊かなベテランを現場から外して大丈夫なのか?」と思うかもしれませんが、

ドライバーの仕事内容を細かく把握しているからこそ、配車が効率良く行える

という側面があり、結果的に職場全体の時間外労働の削減につながったそうです。例えば、どのサイズのトラックなら現場に入れるかなどを細かく顧客とやり取りしながら、ドライバーの仕事を決められるといった具合です。

4)「あえての新卒採用」に取り組む

中小企業の場合、ドライバーは中途採用が基本です。トラックの運転免許については、大型免許であれば原則21歳以上、中型免許であれば原則20歳以上といった具合に年齢要件が高めに設定され、なおかつ一定の運転経験が受験資格に含まれているため、新卒採用に取り組みにくい面があります。ただ、人手不足と高齢化の中、そんなことばかり言ってもいられません。

例えば、ある会社は、「いつまでも若手を入れないわけにはいかない」と考え、

物流業のいわゆる3K(きつい、汚い、危険)のイメージを取っ払い、新卒の人にも興味を持ってもらえる会社づくり

に取り組みました。業界未経験者であっても会社が費用を出して免許を取ってもらう形を整え、労働時間が不規則で年次有給休暇が取りにくいという課題を解決するため、年5日の計画年休制度も導入するなどした結果、高卒のドライバーの新卒採用に成功しました。また、従業員のユニフォームを清潔なデザインに一新したり、社内にパウダールームを設けたりすることで、女性の新卒採用にも成功し、人材の確保・育成を継続しているようです。

3 (参考)2025年の流通業務総合効率化法等改正について

最後に、2025年4月1日から施行されている、改正流通業務総合効率化法・改正貨物自動車運送事業法について解説します。今回の改正のポイントは大きく3つに分けられます。

1)荷主・物流事業者に対する規制(改正流通業務総合効率化法)

1.物流効率化のための努力義務

荷主(発荷主、着荷主)と物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)について、次のような措置を講じる努力義務が課されています。

荷主・物流事業者の「取り組むべき措置」「判断基準」

2.特定事業者の指定と義務

「特定事業者」と呼ばれる、主務大臣が指定する一定規模以上の荷主・物流事業者について、物流効率化のための措置に関する中期計画の作成や提出が義務付けられています。

また、特定事業者に該当する荷主については、物流効率化のために必要な業務を統括管理する「物流統括管理者」の選任が義務付けられています。

2)トラック事業者の取引に対する規制(改正貨物自動車運送事業法)

1.実運送体制管理簿の作成

荷主から運送を委託された元請事業者について、1.5トン以上の貨物を運送するために他のトラック事業者(実運送事業者)を利用した際、「実運送体制管理簿」という運送の実態を記録する管理簿を作成することが義務付けられています。

2.運送契約時の書面交付

荷主・トラック事業者・利用運送事業者(実運送業者に運送を委託する事業者)は、運送契約の締結時に、提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、燃料サーチャージ等)について記載した書面を交付することが義務付けられています。

3.下請け利用の適正化

トラック事業者・利用運送事業者について、他事業者の運送の利用(下請け)を適正化する努力義務が課され、一定規模以上の事業者には、適正化に関する管理規程の作成や責任者の選任が義務付けられています。

3)軽トラック事業者に対する規制(改正貨物自動車運送事業法)

1.貨物軽自動車安全管理者の選任と講習受講

軽トラック事業者の営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、定期的な講習を受講させることが義務付けられています。

2.事故情報の公表

軽トラック事業者に係る事故報告や安全確保命令に関する情報が、国土交通省のウェブサイトで公表対象となります。

以上(2025年6月)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:emma-Adobe Stock

「大学×企業の可能性を広げる」近畿大学リエゾンセンターに聞く産学連携の今と未来(3)

令和4年3月24日、近畿大学と徳島大正銀行は「産学連携包括契約」を締結しました。
産学連携・交流を円滑に推進するための組織が近畿大学リエゾンセンター(KLC)です。
「とくぎんサクセスクラブnavi」(とくさくnavi)では、KLCのコーディネーター武田和也さんへのインタビューを3回連載でお届けします。産学連携の『今』、地域企業とのつながり方や未来の可能性に迫ります。

【第3回】

最終回となる第3回では、リエゾンセンターが描く産学連携の進め方や、企業へのメッセージをご紹介します。「大学と連携してみたいけど、何から始めれば…?」という方へのヒントも必見です。

―今後、どのような産学連携を進めていきたいと考えていますか。

今までは、教員の研究テーマに合致したネタでないと技術相談が成立してこなかったんですが、企業のふわっとした「ビジネス展開を考えてほしい」といった相談にも対応できることがよくわかってきました。商品化につながっている例もたくさんあります。
また、学生が関わってくることにも面白みを感じています。若い学生たちが自分ごととして考えることができています。一番信用性が高いのは、若い人たち向けの商品展開を考えてほしい、といったご相談ですね。そういったご相談がどんどん増えていけばいいなと思っています。
また一方で、学生たちが関わって商品化につながることで学生たちの就職活動時に大きなアピール材料にもなります。デザインのご相談を受けた際、学生がデザインを考え、展示会にいってそのご縁で就職が決まったこともありました。当時2011年は就職活動氷河期でしたが、希望の企業へ就職できたのも産学連携の効果で、企業だけでなく学生たちにもメリットがあることも知りました。
このように、企業にとっても大学や学生にとってもWINWINとなる産学連携が増えることにも期待しています。

コーディネーターへの相談風景

―「こんなことから始めてみては?」というアドバイスがありましたらお聞かせください

商品化に関するお困りごと、商品を作った時の不具合、学生たちに考えてもらいたい若い人たち向けのアイデアなどお気軽にご相談いただけたらと思います。オンライン相談もできるので、遠方からのご相談も大歓迎です。共同研究だけでなく色々なメニューをもっています。アイデアがほしい、分析をお願いしたい、デザインを考えてほしいだけでもかまいません。企業のお困りごとをビジネスコンテストで発表してもらう、なんてメニューもあります。企業のお困りごとへのアイデアを学生が3ヶ月かけて考えて、3ヶ月目で優勝者を決めるコンテストです。色々な学生のアイデアをお持ち帰りいただけるのでおすすめです。また、先生に企業にいってもらって指導してもらう、セミナーを行ってもらうなどもできます。企業の希望を聞きながら、希望に合うようなメニューを選び出すのが我々コーディネーターの仕事ですのでお任せください。

企業の相談に応じるコーディネーターの武田和也さん

―とくぎんサクセスクラブの会員さまへメッセージをお願いします。

何でもご相談ください。ハードルはありません。とりあえず何ができるか聞いてあげようか、みたいな軽い気持ちでご相談ください。とくぎんサクセスクラブ会員様からのご相談をお待ちしております。

以上、近畿大学リエゾンセンターのコーディネーター武田和也さんへのインタビューを3回連載でお届けしました。
近畿大学産学連携についてのご相談は、お取引のある営業店にお問合せください。または、とくぎんサクセスクラブnaviのお問合せフォームからご連絡ください。

以上(2025年5月作成)

画像:近畿大学リエゾンセンター

【債権回収】倒産するかもしれない相手と取引を継続するか否かの判断基準

1 いかに早く察知できるかが勝負

取引先からの支払いが滞り、こちらの催促にも応じない場合、いよいよ経営が危ないかもしれないので、速やかに行動しましょう。債権保全と回収の方法は幾つかありますが、取引先が破産や民事再生などの法的手続きを取ると、原則として個別の取り立てを行うことが禁止され、債権回収が認められなくなる場合があります。また、取引先に債権を持つのは自社だけではないはずですから、債権回収は「早い者勝ち」ともいえます。

この段階になったら、

いかに早く察知して判断し、行動するかが重要

です。この記事では、危ない取引先との取引について、「訴訟になる前の債権回収」の視点でまとめています。経営者は特に、

  • 仮差押え:取引先が資産を処分できないように差し押さえる
  • 商品の引き揚げ:相手の同意を得て自社商品を引き揚げる
  • 相殺の実行:取引先との債権債務を相殺する
  • 担保の取得、実行:担保を取得する、債務不履行なら不動産競売などを行う
  • 動産売買の先取特権の実行:自社が販売した商品を当然に引き揚げる

について知っておかなければなりません。

債権回収は時間との勝負である一方で、倒産手続が開始された後には、手続開始前の一部弁済が偏頗(へんぱ)弁済として否認され、弁済に対応する金銭等を破産管財人に対して返還しなければならなくなります。したがって、早期回収を図る場合でも、取引先の倒産申立ての可能性や時期を見極め、専門家と連携して慎重に判断する必要があります。

2 取引を継続するか否かを判断する

取引先に関する情報収集が重要ですが、悠長に構えている時間はありません。取引を継続するか否かを判断する過程で、取引先へのヒアリングや、同業他社から情報収集をするので、情報収集と取引を継続するか否かの判断はセットで行うことになります。

取引先からの支払いが滞り、催促をしてもなお遅延が解消されない場合は、

  • 決済サイトを短くする
  • 取引量を減らす
  • 担保を設定する
  • リスク相当分を価格に上乗せする

といったことも検討します。

取引を継続しない場合は、契約書の「解約」か「約定解除」を実行します。解約とは、

当事者の一方の意思表示により、将来に向かって解約するというもので、「3カ月前に通知すれば解約できる」

といったように定めるものです。約定解除とは、

契約書に定められた条件に抵触する場合に解除するというもので、「1度でも支払いを怠ったときに契約を解除できる」

といったように定めるものです。もし、契約書にこれらの定めがなければ、取引先との話し合いにより「合意解除」することになります。

なお、契約解除には「法定解除」もあります。法定解除ができるのは、相手に「債務不履行」や「契約不適合」(相手から納品された目的物が仕様とは異なっていること)があった場合です。債務不履行には次の3つがあります。

  • 履行遅滞:支払いが遅れているなど
  • 履行不能:支払うことができないなど
  • 不完全履行:一部しか支払われていないなど

法定解除の場合、債務不履行があっただけではなく、その後に履行の催告等の手続きを経なければ、解除することはできません。

3 仮差押えをするか否かを判断する

取引先が資産を勝手に処分しないように、「仮差押え」をすることを検討します。仮差押えとは、

売上債権などの金銭債権を保全するために、取引先の保有している財産を暫定的に差し押さえる制度

です。もう少し簡単に言うと、

訴訟を提起して、判決が出ても、実際に回収ができるようになるまでには時間がかかります。その間に相手が資産を処分してしまうと、回収できる資産がなくなるので、そうならないよう(相手が勝手に処分することがないようにするため)、仮で差し押さえておく

というものです。仮差押えは金銭債権を対象としています。一方、仮処分とは、

仮差押えと異なり、取引先に対して有する金銭債権以外の権利を保全する制度

です。例えば、譲渡担保権を設定している取引先の物件が第三者に譲渡される恐れがある場合、それを阻止するために利用されます。以降、仮差押えについて説明をしていきます。

仮差押えは有効な債権回収の手段、交渉手段となりますが、次のような注意点もあります。取引先の状況や費用についても検討する必要があります。

  • 仮差押えは、回収の優先権ではない。従って、他の債権者も回収手続への参加を行った場合、各自の債権額の按分でしか回収できなくなる恐れがある
  • 仮差押えは、取引先が破産などの法的な倒産手続を取り、当該手続きが開始されると失効する。この場合、有効な債権回収手段とはならない
  • 仮差押命令を取得するためには、裁判所に担保金を積む必要がある。また、不動産を仮差押えする場合は登録免許税も必要

なお、仮差押えの主な流れは次の通りです。

仮差押えの主な流れ

4 商品を引き揚げるか否かを判断する

取引を継続しない場合は、速やかに取引先の倉庫などにある自社の商品を引き揚げます。

一方、取引が継続している状態で商品を引き揚げるには取引先の同意が必要です。同意がないと、自社が窃盗罪に問われたり、不法行為として損害賠償責任を負わされたりする恐れがあるからです。ただし、取引先の同意を得た上での商品の引き揚げでも、その後すぐに取引先が破産などの法的手続を取った場合は認められないことがあります。

引き揚げ商品が自社の売却した商品でなければ、「代物弁済」または「動産譲渡担保権」を実行します。代物弁済とは、

他の動産を受け取って債権の弁済に充てること

です。動産譲渡担保権とは、債権者に対して所有権を形式的に譲渡する方式の担保権であり、

取引先がそのまま利用できる状態で、動産を担保に取れる方法

です。動産を取引先のところにおいたままですので、譲渡担保が設定していることを知らない第三者に対しては担保の効力を主張できない恐れがありますが、少なくとも譲渡担保を知っている第三者に対しては、自己の優先権を主張できるので、一定の効果はあります。そのため、機械等の動産を譲渡担保に取る場合は、機械にプレートを付けたり、担保物件であることを示す札を立てるなどして明認方法を施すようにします。

5 相殺するか否かを判断する

相殺とは、

自社が取引先に負っている債務と、取引先が自社に負っている債務(自社から見ると債権)を相殺すること

です。原則として債権債務の弁済期が到来していることが条件ですが、自社が取引先に負っている債務については、弁済期が到来していなくても、自社が期限の利益を放棄することで相殺の対象となります。相殺は、相手方に対する意思表示によって行います。通常、証拠を残すために「内容証明郵便」を送ることで相殺通知を行います。相殺をすることによって、自分の債務分については、事実上優先的に債権を回収することができることとなります。

なお、相殺は取引先が法的な倒産手続きを取った場合に制限されることがあります。例えば破産手続きの場合、

取引先が破産手続き開始申立をしたことを知っているのに、その後に債権を取得して相殺を持ちかけることは禁止される

などといった制限です。

6 担保の設定・実行するか否かを判断する

担保には不動産などの物的担保と、経営者個人の連帯保証のような人的担保があります。ただ、担保を設定したとしても、例えば、経営者個人に支払い能力があるかは分からないので、この辺りの調査は必要です。

また、取引先が法的な破産手続きを取ることを知っているのに担保を取得しようとした場合、その担保は認められなくなる恐れがあります。

一方、債務不履行が発生し、取引先の経営が一刻を争う状態であれば、速やかに担保を実行します。例えば不動産を担保としている場合、担保不動産競売によって債権回収を図ります。担保不動産競売の主な流れは次の通りです。

担保不動産競売の主な流れ

7 動産売買の先取特権を実行するか否かを判断する

商品などの動産を売買した場合、当該動産の代金が未払いであれば、「動産売買の先取特権」という「法定担保物権」を有します。まず、先取特権とは、

特定の財産について、他の債権者に優先して債権回収することを認める制度

です。この先取特権が動産売買についているわけですから、動産売買の先取特権とは、

自社は取引先に販売した動産を優先的に回収できる

というものです。さらにこれは、法定担保物権という、

法律上当然に発生する担保物権なので、事前に物的担保を設定しておく必要はない

ことになります。

動産売買の先取特権は、動産競売により代金回収を行うことがまず考えられます。例えば、次の場合です。

  • 債権者が執行官に対し当該動産を提出したとき
  • 当該動産の占有者が差押えを承諾することを証明する文書を提出したとき
  • 債権者が担保権の存在を証する文書を提出して動産競売の許可を申し立て、執行裁判所がこれを許可し、許可決定が債務者に送達されたとき

しかし、取引先が当該動産の代金を自社に支払わないまま、第三者に当該動産を譲渡してしまう場合もあります。この場合は、対象となる動産がすでに債務者の手許にないため、動産競売の方法を用いることができません。しかし、取引先がその代金を第三者から受け取っていない場合は、取引先の第三者に対する売上債権を差し押さえることができます。これを、

動産売買の先取特権に基づく物上代位

といいます。

以上(2025年7月更新)

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画像:Mariko Mitsuda