賃金をどう分配する? 経営戦略から考える同一労働同一賃金

書いてあること

  • 主な読者:2021年4月1日から同一労働同一賃金に対応する経営者
  • 課題:同一労働同一賃金は、パート等の賃上げにしかならないと感じている
  • 解決策:解決策:経営戦略と賃金制度の連動を確認する。正社員とパート等といった雇用形態ではなく、経営戦略上の業務や能力の重要性に応じて賃金を分配する

1 同一労働同一賃金は適正賃金の実現に役立つ

パートタイム・有期雇用労働法によるパート等の同一労働同一賃金のルールが、2021年4月1日から中小企業にも適用されます。同一労働同一賃金はパート等の賃上げと考えられがちですが、そうではありません。同一労働同一賃金のルールの目的は、「同じ(価値の)仕事をしている社員に同じ額の賃金を支払う」ことです。ですから、社員の業務内容や責任の程度が違う場合、その違いに応じて賃金に差を設けても、待遇格差が不合理でない限りは違法になりません。

同一労働同一賃金は、経営者が経営戦略に沿って賃金制度を構築するきっかけになります。「経営目標・経営方針に照らして目下重要な戦略は何か。その戦略を実行するために核となる業務や能力は何か」を考え、その業務や能力の大きさに応じて賃金を支払うということです。賃金の支払い基準が明確であれば、パート等から待遇格差に関する疑問が寄せられたとしても、しっかりと説明することができます。本稿では、基準を明確にするための考え方の例を紹介します。

なお、同一労働同一賃金の基本ルールについては、次の記事をご確認ください。

2 経営戦略における賃金の立ち位置

一般的に経営戦略とは、経営理念やビジョンを実現するための、経営目標・経営方針や各分野の戦略を指します。

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賃金に関する戦略は経営戦略上、「人事戦略」に該当しますが、経営戦略の他の要素とも密接な関係にあります。例えば、賃金を引き上げる選択をした場合、人件費の増加によって経営目標・経営方針(期末営業利益○○万円など)、ひいては各分野の戦略の見直しが必要になる可能性があります。

賃金の見直しが経営戦略の他の要素に与える影響は、できる限り減らしたいところでしょう。そのためには、「賃金の見直しが必要だから経営戦略を見直す」のではなく、「経営戦略に沿って賃金を適正に支払う」という視点が重要になります。以降では、この視点に立った賃金支払いの考え方の例を2つ紹介します。

3 戦略実行の核となる「業務」に注目する

1)考え方

経営戦略上の重要度に応じて業務を順位付けし、その順位に応じて賃金を社員に分配します。例えば、IT戦略上「新データベースの構築」を重視する場合、その構築業務に従事する社員には、他の社員よりも多めに賃金を支払います。経営戦略上、特に重要と位置付けている業務であれば、さらに細分化してもよいでしょう。同じ新データベースの構築業務の中でも、「上流工程」である要件定義や設計などに従事する社員には、より多く賃金を支払うこともできます。

2)同一労働同一賃金との関係性

同一労働同一賃金では、業務内容や業務に対する責任の程度を基準に、「同じ仕事をしているか」を判断します。例えば、前述の「新データベースの構築業務」に従事する正社員とパート等が1人ずついて、正社員は主に「要件定義、設計」を、パート等は主に「開発、テスト」を担当するとします。この場合、業務内容が異なるため、両者は同じ仕事をしていることにはなりません。また、同じ業務に従事していても、正社員が業務を統括してパート等に指示を出す立場にあるならば、両者の責任の程度は異なるため、同じ仕事をしていることにはなりません。

「業務の重要性」をベースに賃金を設定した場合、パート等に正社員との待遇格差の理由を説明する際は、パート等の労働条件通知書などと照らし合わせながら、待遇格差が妥当なものであるかを明示するとよいでしょう。

4 戦略実行の核となる「能力」に注目する

1)考え方

経営戦略の達成に必要な能力を順位付けし、その習熟度に応じて賃金を社員に分配します。例えば、営業戦略上「サービスAの成約」を重視する場合、サービスAに関する営業の能力が高い社員には、他の社員よりも多めに賃金を支払います。

能力は人によって評価がブレやすいので、経営者が評価基準を決めます。例えば、「サービスAの成約」を重視する場合、成約件数や商談件数などが評価基準としては分かりやすいでしょう。「サービスの要点を理解して、プレゼンできるか」など、定性的な評価基準を用いる場合は、各部門長による人事考課の結果などを基にするのもよいでしょう(評価基準は事前に各部門長に伝えます)。

2)同一労働同一賃金との関係性

同一労働同一賃金では、能力の違いに応じて支給される賃金がある場合、その違いに応じた待遇格差は、原則として許容されます。例えば、前述の「サービスAの成約」の場合、成約件数や人事考課の結果に応じた待遇格差を設けることは、一概に不合理とはいえません。

ただし、成約件数などは社員の所定労働時間などに左右される部分もあるため、正社員とパート等の労働条件の違いも考慮する必要があります。また、人事考課の結果を賃金に反映させる場合は、正社員とパート等の人事制度の違いに注意しましょう。

「能力」をベースに賃金を設定した場合、パート等に正社員との待遇格差の理由を説明する際は、中期経営計画の中から企業が必要とする人材などの記述を引用し、営業成績表や人事考課表などと照らし合わせながら、能力との関連性を明示するとよいでしょう。ただし、「能力または経験」「業績または成果」「勤続年数」に応じて支給するものについては、それぞれに応じた部分に関して、同一であれば同一の支給をしなければならず、一定の相違がある場合はその相違に応じた支給をしなければならないので注意しましょう。

以上(2021年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ)

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画像:unsplash

【規程・文例集】産業雇用安定助成金に対応した「出向者取扱規程」と「出向契約書」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:「産業雇用安定助成金」を受給したい在籍出向を検討中の経営者
  • 課題:在籍出向をしたことがなく、何から着手すべきか分からない
  • 解決策:まずは「出向者取扱規程(就業規則)」と「出向契約書」を整備し、出向元、出向先、出向者の関係を明らかにする

1 コロナ禍の在籍出向を支援する「産業雇用安定助成金」

在籍出向とは、出向元(自社)と従業員の労働契約を維持したまま、従業員が出向元の指示で出向先(他社)とも労働契約を交わし、出向先の指揮命令で働くことです。大企業が子会社に従業員を出向させることが典型でしたが、足元では、コロナ禍の雇用維持のために取引先などと労働力をシェアする「従業員シェア」に、在籍出向の仕組みが利用されています。

そして、コロナ禍の在籍出向(従業員シェア)を支援すべく、2021年2月に「産業雇用安定助成金」が創設されました。

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産業雇用安定助成金は、親子関係など資本関係のない会社同士であれば、出向元も出向先も受給できることが特徴です(雇用調整助成金など他の助成金を受給している場合、受給できないこともあります)。受給要件はさまざまですが、まずは「出向者取扱規程(就業規則)」と「出向契約書」を整備することから始めましょう。これらは出向元、出向先、出向者の関係を法的に根拠付ける書類で、これらがないとそもそも在籍出向を実施できないからです。

以降では産業雇用安定助成金に対応した、出向者取扱規程と出向契約書のひな型を紹介します。

2 出向者取扱規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【出向者取扱規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、就業規則第○条の「出向」を命じられた従業員の取扱いなどについて定める。なお、本規程における出向は、出向先の経営力や技術力の強化、人材の育成、出向先との人事交流、雇用調整等を目的とする。

第2条(対象範囲)
本規程は、原則として無期契約の従業員にのみ適用する。

第3条(用語の定義)
本規程において各用語の定義は、次の各号に定めるところによる。

  • 出向
    会社に在籍したまま、会社の命令に従って、取引先など他の事業主との雇用契約関係に基づき当該事業主の業務に従事することをいう。
  • 出向者
    会社から出向する従業員をいう。
  • 出向先
    出向者を受け入れる取引先などをいう。

第4条(遵守事項)
1)会社は、出向の必要性を検討し、労働基準法などの関係法令を遵守し、出向者の選定方法その他の条件が適切なものとなるよう確認した上で従業員に出向を命じなければならない。
2)出向者は、出向目的に従って、出向先と会社との協力関係の維持発展に努めなければならない。

第5条(出向手続き)
1)会社が出向を命じるときは、事前に出向の対象となる従業員に出向の目的や出向先名、適用される就業条件を書面で明示する。
2)会社は、事業活動の縮小を理由として出向を命じるときは、事前に従業員の過半数を代表する者と、次の各号について定めた労使協定を締結する。

  • 出向先の事業所の名称、所在地、事業の種類および事業主の氏名(法人の場合は代表者の氏名)
  • 出向実施予定時期・期間
  • 出向期間中および出向終了後の処遇
  • 出向者の範囲および人数

3)会社は、事業活動の縮小を理由として出向を命じるときは、事前に出向の対象となる従業員から書面により同意を取得する。

第6条(出向期間)
1)出向期間は原則として1カ月以上2年以内の範囲で、目的に応じてその都度決定する。また、出向目的の達成状況などにより、出向期間を短縮または延長することがある。
2)出向者の出向期間は、会社の勤続年数に通算し、年次有給休暇、退職金、永年勤続表彰などに関し、通常の勤続期間と同様の取扱いとする。

第7条(出向期間中の会社における取扱い)
1)出向期間中、出向者は原則として会社の総務部に籍をおき、就業規則第○条の出向休職とする。
2)出向者の人事考課は、出向先からの報告に基づき会社が行う。また、出向期間中の会社における出向者の昇進および昇給については、会社に勤務した場合と同等に取り扱う。
3)出向者は、出向期間中に住所、連絡先、氏名、家族その他会社の人事管理上必要とする身上に変更が生じた場合は、都度会社に届け出なければならない。

第8条(出向者の労働条件等)
1)出向者の労働時間、休憩、休日、休暇、服務規律、安全衛生、法定外災害補償、福利厚生並びに出向先での配置転換および出張については、出向先の規程による。ただし、年次有給休暇は会社の勤続年数に基づき付与される(労働基準法第39条第7項の規定に基づく使用者の年次有給休暇の時季指定義務は出向先が履行する)。
2)出向先の労働時間、休日、休暇の労働条件が会社のものよりも不利益となる場合は、会社はその不利益を解消するよう必要な措置を講じる。
3)出向者は、出向期間中においても会社の福利厚生制度を利用することができる。
4)出向者の表彰および懲戒については、出向先の規程により出向先が行う。ただし、諭旨解雇および懲戒解雇については、会社の規程により会社が行う。
5)出向者の休職、退職および普通解雇については、会社の規程による。なお、出向者が出向期間中に休職(出向休職を除く。以下同じ)、退職または解雇(懲戒処分としての解雇の場合を含む。以下同じ)する場合は、会社に復職させた上で休職もしくは退職、または解雇する。
6)出向者の賃金については、会社が支払う。ただし、通勤費、交通費および出張費については、会社と出向先との合意により決定する。

第9条(社会保険等)
1)出向期間中、出向者の健康保険、厚生年金保険、介護保険および雇用保険の適用は、原則として会社において行う。ただし、法令により異なる取扱いがなされる場合は、この限りでない。
2)出向期間中、出向者の労働者災害補償保険の適用は、出向先において行う。

第10条(復職)
1)次の各号に定める事情が生じた場合、出向は終了し、出向者は会社に復職する。

  • 出向期間が終了したとき
  • 出向の目的を達成したとき、または出向の目的が消滅したとき
  • 心身の故障等出向先での労務提供が困難なとき
  • 会社の休職事由、普通解雇事由、懲戒事由に該当したとき
  • 出向期間中に会社を退職するとき
  • 前号に掲げる事由のほか、復職させるべき理由があるとき

2)復職後の所属および処遇は、業務上の都合もしくは出向者の能力、経験、技能、希望等を総合的に勘案の上決定する。

第11条(罰則)
従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第12条(特例)
出向先の事情その他特別な事情により本規程で処理し難い場合は、取締役会において方針を決定するものとする。

第13条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

3 出向契約書のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした契約書を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【出向契約書のひな型】

○○(以下、「甲」という)と□□(以下、「乙」という)は、甲の従業員を乙に出向させるに際し、その取扱いについて次の通り出向契約(以下、「本契約」という)を締結する。

第1条(定義)
1)本契約において、出向とは、甲の従業員を甲に在籍させたまま、乙の従業員として乙の業務に従事させることをいう。
2)本契約において、出向者とは、乙に出向する甲の従業員をいう。

第2条(出向元と出向先の名称および所在地)
出向元(甲)と出向先(乙)の名称および所在地は次の通りである。

  • [出向元(甲)]名称             所在地 
  • [出向先(乙)]名称             所在地

第3条(出向者および出向期間)
出向者および出向期間は次の通りとする。なお、出向期間の短縮または延長をしようとする場合は、甲乙協議の上、書面による合意により決定し、甲は決定内容を出向者に通知する。

  • [出向者] 氏名        生年月日   年   月   日生
  • [出向期間]   年   月   日から   年   月   日まで( 年間)

第4条(出向形態等)
1)出向者は、出向期間中、甲の従業員者として甲に在籍したまま、乙の指揮命令下において乙の業務に従事する。
2)出向者は、出向期間中、甲において休職扱いとする。ただし、出向者の出向期間は甲の勤続年数に通算する。

第5条(二重出向の禁止)
乙は、出向者を乙以外の会社へ出向させてはならない。

第6条(出向者の業務等)
1)乙における出向者の勤務地、所属、役職および業務内容は次の通りとする。なお、乙は、これらの事項を変更する場合は、甲の事前の書面または電子メールによる承諾を得るものとする。

  • [勤 務 地]
  • [所 属]
  • [役 職]
  • [業務内容]

2)乙は、甲指定の方法に基づき、出向者の勤務状況その他甲指定の事項を翌月○日までに甲に報告するものとする。

第7条(出向者の労働条件等)
1)出向者の労働時間、休憩、休日、休暇、服務規律、安全衛生、法定外災害補償、福利厚生並びに乙での配置転換および出張については、乙の定めるところによる。ただし、年次有給休暇は甲の勤続年数に基づき付与される(労働基準法第39条第7項の規定に基づく使用者の年次有給休暇の時季指定義務は乙が負うものとし、その取扱いについては乙の定めるところによる)。
2)出向者の表彰および懲戒については、乙の定めるところにより乙が行う。また、諭旨解雇および懲戒解雇については、甲の定めるところにより甲が行う。
3)出向者の休職、退職および普通解雇については、甲の定めるところによる。
4)出向者の賃金(時間外、休日および深夜労働に対する割増賃金を含む)については、甲の定めるところにより甲が出向者に直接支払う。ただし、通勤費、交通費および出張費については、乙の定めるところにより乙が出向者に直接支払う。
5)乙は、出向時に、出向者に対して労働条件を明示する。ただし、甲は、甲乙協議の上、乙に代わって出向者に対して労働条件の明示を行うことができる。

第8条(安全衛生の措置等)
出向者に対する安全衛生の措置等は、乙の負担により乙が実施する。

第9条(社会保険等)
1)出向期間中、出向者の健康保険、厚生年金保険、介護保険および雇用保険については、甲において被保険者資格を継続させ、その事業主負担分の保険料は甲が負担する。
2)労働者災害補償保険については、乙において加入し、その保険料は乙が負担する。

第10条(出向先の給与負担金等)
1)出向に伴う給与負担金として、甲が第7条の定めに基づき出向者に支払った賃金(時間外、休日および深夜労働に対する割増賃金を含む)に相当する額を乙が全額負担する。ただし、月の途中に出向が開始または終了した場合の当該月の給与負担金については日割り計算とする。
2)乙は、甲に対して、前項に定める給与負担金を当月末日までに甲の指定する口座に振り込むものとする。なお、振込手数料は乙の負担とする。

第11条(復職)
出向者が次の各号に該当した場合、甲は当該出向者に対して復職を命じるものとする。

  • 出向期間が終了したとき
  • 出向の目的を達成したとき、または出向の目的が消滅したと甲が判断したとき
  • 心身の故障等乙での労務提供が困難であると甲が判断したとき
  • 甲の休職事由、普通解雇事由、懲戒事由に該当したと甲が判断したとき
  • 出向期間中に甲を退職するとき
  • 前号に掲げる事由のほか、復職させるべき理由があると甲が判断したとき

第12条(機密保持)
1)甲および乙は、本契約期間中に知り得た相手方の業務上の情報その他の機密情報(次の各号に該当するものを除く。以下、「機密情報等」という)を、相手方の書面による事前の同意を得ることなく、第三者に提供、開示または漏洩してはならず、本契約を履行する以外の目的に使用してはならない。

  • 開示を受けた時点で既に保有している情報
  • 開示を受けた時点で既に公知であった情報
  • 開示の前後を問わずその責に帰すべき事由によらずに公知となった情報
  • 開示の前後を問わず正当な権利を有する第三者より適法に入手した情報
  • 開示された情報に基づかずに独自に開発した情報

2)前項の規定にかかわらず、甲および乙は、裁判所または行政機関の命令、要請等により要求される場合には、当該要求に対応するのに必要な範囲で機密情報等を開示することができる。ただし、甲または乙は、当該要求を受けた旨を相手方に遅滞なく通知するものとする。
3)甲および乙は、機密情報等の滅失、毀損または漏洩のないようその責任において万全に機密情報等を保管するものとし、本契約が終了した場合において、相手方から機密情報等について返却または破棄(電磁的記録の場合は削除)を指示されたときは、その指示に従い返却または破棄(電磁的記録の場合は削除)をするものとする。
4)本条の規定は、本契約終了後もなお有効とする。

第13条(個人情報)
甲および乙は、出向者の個人情報の取扱いに関しては、個人情報の保護に関する法律、関連法令およびガイドラインを遵守し、当該個人情報の保護に努めるとともに、当該個人情報を出向者の雇用管理および業務に必要な範囲についてのみ使用し、当該個人情報の滅失、毀損または漏洩のないよう必要かつ適切な措置を講じるものとする。

第14条(損害賠償)
甲および乙は、本契約に違反することにより、相手方に損害を与えた場合、相手方に対し、損害賠償をしなければならない。

第15条(有効期間)
本契約の有効期間は、第3条の規定による出向期間が終了するまでとする。

第16条(協議解決)
本契約に定めのない事項、または本契約の解釈について疑義が生じたときは、甲乙は誠意をもって協議の上解決する。

第17条(合意管轄)
甲および乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときには、訴額等に応じ、○○簡易裁判所、または○○地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。

以上(2021年4月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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画像:ESB Professional-shutterstock

「会計・財務」の用語集 よく使う略称などを紹介

書いてあること

  • 主な読者:会計・財務でよく使う用語の意味を知りたい人
  • 課題:似ている用語、独特の用語が多くて混乱する
  • 解決策:先に損益計算書や貸借対照表が示すものを理解し、その上で関連する用語を覚える

本稿で紹介する用語は次の通りです。

損益計算書、売上高、売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益、営業外収益・費用、経常利益、特別利益・損失、税引前当期純利益、法人税、住民税及び事業税、税引後当期純利益、貸借対照表、流動資産、固定資産、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産、繰延資産、流動負債、固定負債、純資産、キャッシュ・フロー計算書、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー、売上高営業利益率、総資本経常利益率、自己資本利益率、自己資本比率、流動比率、固定比率、労働生産性、設備生産性、労働分配率

1 損益計算書に関連する用語・略称・定義

1.損益計算書(Profit and Loss Statement・PL・P/L)

損益計算書とは、一定期間(通常1年間)の会社の経営成績である利益(Profit)、または損失(Loss)を示すものです。利益は、売上高などの「収益」から、売上原価などの収益を得るために支出した「費用」を差し引いて算出されます。

2.売上高(Sales)

商品・製品・サービスの売上によって得られた収益の総額です。会社の収益力を見る上で、最も基本的な数値の1つです。損益計算書上の最上段に表示するため「Top Line(トップライン)」とも呼ばれ、カタカナ英語としても定着しています。

3.売上原価(Cost of Goods Sold、Cost of Sales)

小売業の仕入原価や製造業の材料費・労務費・製造経費など、商品の調達や製品の製造に必要な原価です。売上に直接紐づけられる費用を計上することから、業種によって原価の範囲は異なります。

4.売上総利益(Gross Profit)

「粗利(あらり)」とも呼ばれ、その事業年度中のもうけの源泉を表しています。

売上総利益=売上高-売上原価

5.販売費及び一般管理費(Selling and General Administrative Expenses)

売上に直接紐づけられない人件費や諸経費(水道光熱費、広告宣伝費、減価償却費など)です。

6.営業利益(Operating Profit、Operating Income)

本業による利益です。会計・財務の世界では、営業(Operating)とは本業のことを表します。

営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費

7.営業外収益・費用(Non-Operating Income・Non-Operating Expenses)

本業以外の投資・財務活動によって生じた収益や費用です。営業外収益には預貯金の受取利息などが含まれます。また、営業外費用には支払利息などが含まれます。

8.経常利益(Ordinary Profit)

本業以外の投資・財務活動までを勘案した利益です。経常とは常に一定という意味であり、通常などと訳される「Ordinary」という英語が使われています。

ある年度の経常利益を見ることで、毎年度どれくらいの利益を出しているのかが把握できます。なお、欧米諸国の損益計算書には経常利益の概念はなく、日本固有の考え方とされます。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

9.特別利益・損失(Extraordinary Gains・Extraordinary Losses)

会社の経常的な経営活動とは直接関係のない、臨時的、偶発的(Extraordinary)に生じた収益や費用です。特別利益には、固定資産売却益などが含まれます。また、特別損失には自然災害や訴訟による損失などが含まれます。

10.税引前当期純利益(Pretax Profit)

臨時的、偶発的に発生する収益と費用までを考慮した利益です。

税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失

11.法人税、住民税及び事業税(Income Taxes)

法人税、住民税及び事業税は、当期のもうけに課せられる税金です。

12.税引後当期純利益(Net Profit)

会社が処分可能な最終利益です。税引後当期純利益は、会社の財務体質強化のために内部留保や、新たな設備投資の原資となります。損益計算書上の最下段に表示するため「Bottom Line(ボトムライン)」とも呼ばれ、トップラインと同様にカタカナ英語として定着しています。

税引後当期純利益=税引前当期純利益-法人税、住民税及び事業税

2 貸借対照表に関連する用語・略称・定義

1.貸借対照表(Balance Sheet・BS・B/S)

貸借対照表とは、ある時点(通常は決算日時点)の会社の財政状態を示すものです。貸借対照表には、決算日時点での会社がどのようにお金を調達し、そのお金を何に投資しているのかといった資金の状態が表示されています。英語表記の通り、左右の勘定科目が必ずBalance、一致することが特徴です。

2.流動資産(Current Assets)

現金・預金、受取手形、売掛金、棚卸資産など、原則として1年以内に回収される資産です。

3.固定資産(Fixed Assets)

建物・付属設備・構築物、特許権など、原則として1年超にわたって保有される資産です。

a.有形固定資産(Tangible Fixed Assets)

固定資産のうち、建物・付属設備・構築物、土地など有形の財産として会社が保有する資産です。

b.無形固定資産(Intangible Fixed Assets)

固定資産のうち、特許権、ソフトウエアなど無形の財産として会社が保有する資産です。

c.投資その他の資産(Investments and Other Assets)

固定資産のうち、関係会社株式、出資金、長期貸付金など、主に本業以外の投資活動のために保有する資産です。

4.繰延資産(Deferred Assets)

創立費、開業費、株式交付費など既に発生した費用のうち、現在から将来にわたって効果が見込まれるために、経過的に貸借対照表に記載される資産です。延期したなどの意味を持つ、Deferredという言葉が使われています。

5.流動負債(Current Liabilities)

支払手形、買掛金など、原則として支払期限が1年以内の負債です。

6.固定負債(Fixed Liabilities)

社債、長期借入金など、原則として支払期限が1年超になる負債です。

7.純資産(Net Assets)

資本金、資本剰余金、利益剰余金など返済する必要がない資金です。純資産は大きく株主資本(=資本金+資本剰余金+利益剰余金-自己株式)と株主資本以外に区分され、株主資本以外としてはその他有価証券評価差額金、新株予約権などがあります。株主資本とその他有価証券評価差額金等を合わせて自己資本、自己資本に新株予約権等を合わせて純資産と言いますが、厳密に区別せず純資産を自己資本と呼ぶこともあります。

3 キャッシュ・フロー計算書に関連する用語・略称・定義

1.キャッシュ・フロー計算書(Cash Flow Statement・CS・C/S)

キャッシュ・フロー計算書とは、一定期間(通常1年間)の会社の現金の流れ(キャッシュ・フロー)を、会社の活動ごとに示すものです。キャッシュ・フロー計算書では、営業活動、投資活動、財務活動によって、どのようにキャッシュが動いたかを示しています。

2.営業活動によるキャッシュ・フロー(Cash Flows-Operating Activities)

商品の販売による収入や商品の仕入れによる支出など、営業損益計算の対象となった取引の他、投資活動および財務活動以外の取引に関するキャッシュの動きを示す項目が記載されます。

3.投資活動によるキャッシュ・フロー(Cash Flows-Investing Activities)

有形固定資産、有価証券および投資有価証券の取得による支出および売却による収入に関するキャッシュの動きの他、貸し付けやその回収、定期預金の預け入れやその払い戻しなどに関するキャッシュの動きを示す項目が記載されます。

4.財務活動によるキャッシュ・フロー(Cash Flows-Financing Activities)

短期・長期の借入とその返済、自己株式の取得、配当金の支払いなどに関するキャッシュの動きを示す項目が記載されます。

4 財務分析に関連する用語・略称・定義

前章までは、財務3表に記載されている勘定科目の用語や定義などを見てきました。こうした内容を押さえた後は、そこに記載されている数字を読み解く財務分析の力も必要になります。財務分析は、次のような視点から行います(他の視点もありますがここでは割愛します)。

  • 収益性分析:十分な利益を獲得しているか、会社の稼ぐ力がどの程度あるかについて、次のような指標を使って分析します。
  • 安全性分析:安全に経営を継続していけるか、会社の債務支払い能力がどの程度あるかについて、次のような指標を使って分析します。
  • 生産性分析:会社が経営資源を効率的に利用して生産できているかについて、次のような指標を使って分析します。

収益性分析

1.売上高営業利益率(Operating Margin)

売上高に対して、営業利益(本業で稼いだ利益)がどれだけ得られたかを示す指標であり、数値が高いほど収益性が高いといえます。

売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100

2.総資本経常利益率(Return On Assets・ROA)

総資本(負債+純資産)に対して、経常利益がどれだけ得られたかを示す指標であり、数値が高いほど効率的に資本運用できているといえます。

総資本経常利益率=経常利益÷総資本×100

3.自己資本利益率(Return On Equity・ROE)

自己資本(純資産)に対して、最終的な利益(税引後当期純利益)がどれだけ得られたのかを示す指標であり、数値が高いほど株主の投資額に対して効率的に利益を生み出しているといえます。

自己資本利益率=税引後当期純利益÷自己資本×100

安全性分析

4.自己資本比率(Equity Ratio)

総資本に対して、自己資本の占める割合を示す指標であり、数値が高いほど倒産しにくい会社、つまり負債(返済が必要な他人資本)に左右されないため、経営が安定しているといえます。

自己資本比率=自己資本÷総資本×100

5.流動比率(Current Ratio)

1年以内に現金化できる資産が、1年以内に返済すべき負債をどれだけ上回っているかを示す指標であり、数値が高いほど安全性は高いといえ、業種にもよりますが一般的には200%以上ある場合に安心とされています。

流動比率=流動資産÷流動負債×100

6.固定比率(Fixed Ratio)

1年超にわたって使用される資産が、自己資本によってどれくらい賄われているかを示す指標であり、数値が低いほど安全性は高いといえ、業種にもよりますが一般的には100%以下となることが望ましいとされます。

固定比率=固定資産÷自己資本×100

生産性分析

7.労働生産性(Labor Productivity)

従業員1人当たりが、どれだけの付加価値を生み出しているのかを示す指標であり、数値が高いほど従業員1人当たりの生産性は高いといえます。付加価値とは、売上高から外部購入分の価値(材料費、材料部品費、運送費、外注加工費など)を差し引いたものです。

労働生産性=付加価値÷従業員数

8.設備生産性(Equipment Productivity)

設備(有形固定資産)を用いて、どれだけ付加価値を生み出しているのかを示す指標であり、数値が高いほど資産当たりの生産性は高いといえます。

設備生産性=付加価値÷有形固定資産×100

9.労働分配率(Labor Share)

付加価値の中で、人件費として配分された部分が、どの程度あるかを示す指標であり、(適切な給与水準を確保することが前提ですが)数値が低いほど生産性は高いといえます。

労働分配率=人件費÷付加価値×100

以上(2021年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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画像:pixabay

激変! 令和時代のサウナビジネス最前線

書いてあること

  • 主な読者:新規事業を考えている経営者、レジャー事業者など
  • 課題:サウナ愛好家を取り込みつつ、新たなユーザー層も獲得したい
  • 解決策:従来のサウナと、「令和のサウナ」の違いを把握し、他社の取り組みを参考にする

1 最近のサウナは「ととのう」体験を重視

サウナがブームです。それも経営者に人気です。特にサウナで「高温→冷水風呂→外気に当たる」サイクルを経て得られる、多幸感といえる「ととのう」がSNSを盛り上げています。サウナ好きな人たちからは、高温下で黙々とサウナに入ることで自身の内面に向き合えるとされ、座禅や瞑想(めいそう)にも通じるマインドフルネスを体験することができるとの声も聞かれます。

インターネット上の特定の言葉の検索トレンドを分析するツール「Googleトレンド」で「サウナ」を調べてみると、2019年ごろから頻繁に検索されるようになっているようです。また、「ととのう」も昨今のサウナブームを象徴するバズワードになっています。

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サウナ好きな経営者からは、

「サウナで考え、水風呂で決断する」

という名言まで登場しています。サウナをテーマにしたテレビドラマが放映されたり、近くのサウナ関連の情報を集めたポータルサイトがオープンしたりと、何かと話題の令和のサウナの動向を追ってみました。

2 バリエーション豊富な令和のサウナ

令和のサウナの特徴として、種類の多様化が挙げられます。従来のイメージを覆すように内装やサービスが多様化し、新しいユーザー層の獲得につながっています。

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1)おうちサウナ:サウナ傘

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて始まった外出自粛により、自宅で消費できるもの・サービスへの消費(巣ごもり消費)が増えています。サウナ関連商品では、各社から自宅のお風呂をサウナに変身させるようなサウナ傘が登場しました。

見た目はビニール傘を裏返しにしたようなサウナ傘は、先端をバスタブにかぶせることで、お湯の蒸気を傘の内部に閉じ込め、「スチームサウナ」のように使用できます。高温の本格的なサウナには及びませんが、傘の内部では温度、湿度ともに上昇し、リラックス効果も期待できそうです。

数千円前後と比較的安価なため、「サウナに興味あるけど、いきなりサウナデビューはちょっと…」というビギナー層や、健康や美容に関心の高い人が「ワンランク上のバスタイム」を手軽に実現できるアイテムとして支持が広がっています。

2)コワーキングサウナ:KOOWORK(クーワーク)

昨今、働き方が多様化する流れに乗り、さまざまな人がオフィスをシェアするコワーキングスペースが増えています。仕事のリフレッシュや、重要な決断を前にしてメンタルを「ととのえる」ことを狙い、コワーキングスペースにサウナを取り入れる施設が登場しました。

KOOWORK(神奈川県横浜市)は、全席にコンセントを備えたワークスペースに加え、ディスプレーとホワイトボードを取り付けたミーティング用サウナルームや宴会場もあります。

ひと仕事を終えてサウナでととのえ、ミーティングではクリアな思考でアイデアを生み出す。ミーティングを乗り切った後はサウナでリフレッシュして宴会に突入。

サウナ×コワーキングスペースは、サウナ好きハードワーカーにはうってつけの仕事環境といえそうです。

3)空きスペース活用サウナ:三田高野山弘法寺

サウナに必要な機材を準備し、空いたスペースを有効活用することで予想外の場所でもサウナを楽しむことができます。

弘法大師を本尊とする三田高野山弘法寺(東京都港区)では、期間限定の寺サウナを開催しました。これは、お寺の建物の屋上に設置したアウトドア用のまきテントでのサウナと、お寺での瞑想が体験できるイベントです。屋上にはまきテントの他にも冷水のビニールプールや、外気浴もできる椅子も備え付けました。

サウナの後には、瞑想を体験することで、参加者は「ととのいの境地」に達することができたようです。さらに、協賛するお店や企業によるサウナ関連グッズやオリジナルカクテル、フードの販売もあり、サウナ好きには文字通り極楽浄土かもしれません。

他のお寺からも開催依頼が来ているようで、「寺離れ」など檀家の減少に直面する一方で、古くから地域とのつながりを持っているお寺を活性化させる可能性があります。

機材をそろえれば野外でも比較的簡単に始められるサウナの特徴を活かし、今後も予想外のロケーションでのサウナの出現が期待されます。

4)イベント型サウナ:チームラボ、TikTok

サウナブームの波は、アートの領域にまで押し寄せています。プロジェクションマッピングで有名なチームラボは、若者に人気の映像アプリTikTokと共同で、アートとサウナが融合したイベント「チームラボリコネクト」(東京都港区)を2021年3~8月まで期間限定で開催しています。

これは、サウナでととのい、感性をクリアにさせた状態でチームラボが誇る映像作品を体験できるものです。7室あるサウナルームや冷水シャワーでは、さまざまな音楽や映像作品が楽しめ、その後に「アート浴エリア」でリラックスして作品を鑑賞することができます。

アート浴エリアは、インスタレーションが浮かぶ部屋や、暗闇の中で壁一面に鮮やかな無数の花の映像が映し出される部屋などがあり、自身が作品と一体化するかのような没入感に浸れることができるようです。

インスタグラムや、協賛するTikTokには関連動画が続々とアップされており、「映え」を意識した若者や、トレンドに敏感な世代へサウナの魅力をアピールすることができそうです。

5)本格セルフ式サウナ:ソロサウナtune(チューン)

アクティビティ化するサウナを歓迎しつつも、ここぞというときにはじっくりととのいたいと思うサウナ好きもいます。そんなサウナ好きのために、「本格おひとりさま」サウナがオープンしました。

ソロサウナtune(東京都新宿区)は、「日本初の完全個室の本格的なフィンランド式サウナ」を特色としたサウナです。同施設は、着替え~サウナ利用~冷水シャワー~ベンチでの休憩までを個室で楽しむことができます。他の人に気にせず、ロウリュ(サウナの石に水をかけて室内に水蒸気を発生させる、フィンランド式サウナの入浴法)を好き放題でき、サウナやシャワーの利用を順番待ちすることもありません。完全個室なので「裸の他人と室内で過ごすのはちょっと…」というサウナ初心者にもハードルが低めです。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、人との接触や「密」を避けることもできます。おひとりさまサウナは「新しいサウナ様式」のカタチの一つといえるでしょう。

3 サウナ関連動向

このように、さまざまなタイプが登場し、ユーザーの裾野が広がっているサウナ市場。「サウナー」と呼ばれるユーザーの推計人口や、令和のサウナの特徴を見てみましょう。

1)サウナ人口「サウナー」の動き:日本のサウナ実態調査2021

日本サウナ・温冷浴総合研究所(日本サウナ総研)の調査「日本のサウナ実態調査2021」によると、「サウナー(年1回以上サウナを利用するサウナ愛好家)」の推計人口は次の通りです。

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同調査によると、サウナーの人口は2500万~2900万人程度と推計されています。2021年(※調査は2020年12月に実施)に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響で前年までよりも数値が落ち込んだことを考慮する必要があります。

また、同調査では「温冷浴(熱い温度のサウナに入り、その後で冷水のお風呂に入り外気に当たることを繰り返す入浴方法)」の認知度も調査しています。それによると、「知っていて、実践している」が増加する一方で、「知らない」が継続的に減少しています。

温冷浴は令和のサウナの醍醐味である「ととのう」感覚を体験するために不可欠な入浴方法であり、実践割合が増えていくことで、新しいユーザーの獲得に期待できそうです。

2)多様化するサウナ:令和のサウナと昭和のサウナの比較

さまざまなタイプが出現し、認知度も上昇中の令和のサウナは、従来の昭和のサウナとどういった点で異なるのでしょうか。各種のタイプからは、次のような違いが見えてきました。

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冒頭の通り、「ととのう」体験は、健康意識の高まりや、ストレスを軽減しメンタルを調整するマインドフルネスにも通じるものがあります。

また、従来の「暑い」「単調」のイメージを一変させる、趣向を凝らしたさまざまなタイプのサウナが登場していることや、温冷浴や熱波(ロウリュで発生した水蒸気をあおいで循環させること)などの認知の高まりは、近年の消費トレンドの一つの「コト消費」とも相性が良いといえます。

以上(2021年4月)

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【朝礼】新年度に改めて身に付けたい「素直さ」

先日、私は2人のとても素晴らしい起業家に出会いました。1人はSNSマーケティングの会社を、もう1人はフィンテック系の会社を立ち上げています。2人とも年齢は25~26歳で、事業に対する熱量がすごい、勉強家・努力家である、緻密にビジネスを積み重ねている、具体的な実績を上げているなど、この場では語り尽くせないほど多くの魅力がありました。なかでも私が一番感心したのは、2人の「素直さ」です。

例えば、SNSマーケティングの会社を立ち上げた起業家は、周囲から言われた「足元を重視するあまり、未来視点で考えることが苦手」という点を自身の課題として受け止め、現在、長期事業計画の見直しを進めています。

フィンテック系の会社を立ち上げた起業家も、もともとの原動力は「単にお金持ちになりたい」だったそうですが、「先輩起業家やメンター陣から自分の足りない【思い】の部分や精神的に未熟な点を厳しく指摘していただいた」ことを受け止め、「本当に実現したいことは何か」から改めて考え直したといいます。結局、根幹となる会社のビジョンも大きく軌道修正したそうです。

事業計画の見直しやビジョンの軌道修正の大変さは、並大抵のものではないでしょう。しかし、2人とも、「指摘してもらえたから今がある。心から感謝している」と言っていました。皆さんは、この2人の「素直さ」がいかにすごいか、分かるでしょうか。

この2人は、「受け止める」ことと「行動する」ことがセットになっています。ただ周りの話を受け止めるのは、ただ「聞いただけ」であり、「素直」とはいえません。私自身、これまでの自分の行動を振り返ってみると、人の意見に素直に耳を傾けているつもりでも、「分かっているが」「良いと思うけど」と言いつつ、行動に移さないことがたくさんありました。考え方の違いから、あえて行動に移さなかったこともありますが、多くの場合、私はただ「素直」を装っていただけなのかもしれません。

受け止めた上で「実際に行動に移す」ができて初めて、本当に「素直」といえます。行動に移せば、何かが変わりますし、新しいものも生まれます。よく「素直な人が伸びる、成長する」といわれるのは、「行動に移す」ことで、前に進めるからなのでしょう。

人生でもビジネスでも、「素直さ」がいかに大切かを説いたことで有名なのが、松下幸之助氏です。松下氏は、「素直な心になることを心掛け、自分なりに工夫をこらしていくならば、誰でも素直になれる」という趣旨の教えを残しています。私はこの「自分なりの工夫」とは、「行動に移し、いったんやってみること」と捉えています。

年齢も役職も社歴も関係ありません。皆さんも、新年度に、もう一度「素直に受け止め行動に移す」ことを実践してみませんか。きっと今より前に進めます。

以上(2021年3月)

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画像:Mariko Mitsuda

ファイナンス特有の「見えないコスト」の考え方/経営者のためのファイナンス講座(2)

書いてあること

  • 主な読者:将来の意思決定に役立つファイナンス思考を身に付けたい経営者
  • 課題:将来の意思決定にはコストの見積もりが必須。会計では出てこないファイナンス特有の見えないコストの考え方を知りたい
  • 解決策:現金や車両などの現物を持つことで、手間や設備など見えないコストが発生する。「持たない」という選択肢を常に持っておくことが大切

1 キャッシュレス決済導入店が増えたファイナンス的理由とは

政府のキャッシュレス推進に新型コロナウイルス感染症の拡大が拍車をかける格好で、電子マネーなどのキャッシュレス決済に対応する店舗が急増しています。デジタル化の流れは不可逆といえますが、ここでは別の視点でキャッシュレスを捉えてみましょう。

キャッシュレス決済を検討する場合、店舗側の手数料負担がしばしば議論されますが、「現金を持つコスト」については、あまり触れられない気がします。例えば、現金は電子マネーよりも会計時間が長く、レジ締めも大変なので店員に負担がかかり、人件費がかさみます。また、現金の横領や盗難に備えるために防犯カメラなどを設置するなど、セキュリティーのためのコストがかかります。集まった現金を銀行に運ぶために現金回収業者と契約するのであれば、そのコストもかかります。キャッシュレス決済の手数料と現金を持つコストを比べると、前者のほうが店舗に有利な場合もあるのです。まさにこの点を考慮して、キャッシュレス決済を導入した店舗も数多くあります。

2 「現金」「現物」を持つことで多重にコストがかかる

さて、現金を持つコストは一般的な会社でも同じです。現金が置いてあると、いろいろな物品や手間がかかります。現金を保管するための金庫や監視用の防犯カメラも要るでしょうし、日計表の作成、小口現金の管理などの事務作業は典型例です。

こうした問題も、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の流れの中で見直されています。近ごろは手形(2026年に廃止されるという報道が最近ありました)や小切手はあまり見かけなくなりましたし、インターネットバンキングも普及しています。今や、金庫には金目のものは入っていない、もしくは金庫がない会社も珍しくないのです。

持つことでコストがかかるのは、現金だけではありません。現金以外でも、形ある「現物」を持つと、必ずといっていいほど関連するコストが何重にも発生します。例えば、カーシェアリングです。法人でカーシェアリングを利用する会社が増え、社有車を持たなくてよくなりました。そうなると、総務担当者は車両を管理しなくて済みますし、保守費用もかかりません。何よりも、本体を購入したりリースしたりという多額の出金がなくなります。

また、中小企業でも会計システムが一般に使われていますが、これも自社で買わなくても済むようになりました。以前は自社所有のパソコンにインストールしても、そのパソコンでしか会計ソフトが使えませんでした。近年、何度かあった消費税率の変更のたびに更新費用がかかるということもありました。これも、自社で会計システムを持つことで発生したコストといえます。しかし、会計ソフトのクラウド化が進んだ今では、保守費用や出張費用(支社間など)などは不要になり、どのパソコンからもアクセスできるようになりました。

このように、現金、現物を持つ場合には、その購入費用だけではなく、一見見落としがちな関連コストも漏れなく把握することが、ファイナンス的には大事なのです。

3 中小企業こそ、現物コストから解放される

現金や現物を「持たないこと」をファイナンスの側面から考えると、その恩恵を最も受けるのは、実は中小企業です。規模が小さくても事業上必要なので、自前で持たざるを得ないと無理していた中小企業が、利用度合いに応じたコスト負担で済むようになるからです。

多くの中小企業は人手不足の中で何とか事業を回しており、特に人件費が高い高度人材を雇うことは難しいものです。これを外部に管理を任せれば、これらの人材を雇用しなくて済むのです。都度利用する場合の単価も、大手企業と比較してそれほど変わりないことも多いようです。これまで自社で所有するときには、多額の設備投資のための資金の捻出に苦労したことを考えると、資金的なメリットは小さくありません。

4 「シェアリングエコノミー」を、両面から活用する

「シェアリングエコノミー」というと、民泊仲介サイトやシェアサイクルなど個人向けのイメージがあるかもしれません。しかし、会社こそ活用したときのメリットは大きいのです。

誤解してほしくないのですが、自社で持つことがファイナンス的には悪いということではありません。従来通り自動的に自社所有を選ぶのではなく、関連するサービスなどの情報を得て、どちらが得かを検討することが大事です。その際に購入費用以外の見えないコストの存在がポイントになります。加えて、サービス提供側としてこの考え方を活用できないか検討することも有効です。例えば、比較的高価なサービスや物を、法人向けに販売している会社は、売るのではなく利用に応じて課金する形態にできないか考えてみるのです。利用側と提供側の両面から、「持つことが本当に自社にとってベストなのか」を改めて考えてみてください。

以上(2021年4月)
(執筆 管理会計ラボ 代表取締役 公認会計士 梅澤真由美)

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決算前に確認したい「減価償却」基本を分かりやすく解説

書いてあること

  • 主な読者:減価償却の基本を知りたい中小企業の経営者・経理担当者
  • 課題:なぜ、取得した費用をすべて計上しないのか分からない
  • 解決策:減価償却は固定資産の価値を分割して費用にする処理。財務会計と税務会計の取り扱いも異なる

1 減価償却とは

減価償却とは、固定資産の取得価額を一定期間にわたり、分割して費用計上する会計上の処理をいいます。固定資産は、通常、数年から数十年使い続けます。もし、購入時に一括して費用計上してしまうと、次の年から、その固定資産がもたらす影響が財務諸表に正確に反映されなくなってしまうので、減価償却によってこれを防げます。

また、固定資産は使用や時間の経過により、少しずつ価値が減少します。このような実態を正確に財務諸表に反映するために、固定資産は一旦資産計上し、使用期間にわたって少しずつ減価償却を行っていくことになります。

2 減価償却の財務上の効果

減価償却が他の費用と違う点は、支出を伴わないことです。なぜなら、固定資産の取得時に支払いは済んでおり(分割払いなどの場合は除く)、その後は、計算上の金額が財務諸表に計上されるだけだからです。つまり、減価償却費の分だけ利益は減少しますが、資金は減少しません。このことは、利益以外の部分で、減価償却費分の資金が社内に留保されていることを意味し、「自己金融効果」と呼ばれます。新たな資金が入ってくるわけではありませんが、資金繰りや将来の投資計画を作成する際、減価償却費が意思決定の1つのポイントになります。

3 財務と税務で取り扱いが違う?

1)償却方法

財務上と税務上の減価償却の主な違いは、「償却方法」と「耐用年数」の取り扱いです。財務上認められる減価償却方法は次の通りです。

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財務上は、資産の使用実態に合う上記の減価償却方法のいずれかを会社が継続して適用することを前提に、自由に選択することができます。

一方、税務上は、資産ごとに適用できる減価償却方法が法律で決められています(以下「法定償却方法」)。もし、税務上認められていない方法で償却した場合、納税額を計算する際に法定償却方法で再計算しなければなりません。そのため、実務上は、税務上の法定償却方法により減価償却を行うのが一般的です。税務上の法定償却方法は次の通りです。

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2)耐用年数

財務上、減価償却の耐用年数はその固定資産の材質や使用環境により、会社ごとに合理的な年数を設定できます。また、同じ種類の固定資産であっても、使用頻度が違うなどを理由に、異なる耐用年数を設定することができます。

一方、税務上の減価償却の耐用年数は法律で定められています(法定耐用年数)。税務は基本的に、会社ごとに計算基準が異なることで、会社間の不平等を生じさせないこと(課税の公平性)が前提となっているため、会社が独自で見積もった耐用年数は認められません。実務上では、償却方法と同様、税務基準を基に行われていることが一般的です。

4 固定資産の減価償却に係る税務特有の取り扱い

1)少額減価償却資産

少額減価償却資産とは、「使用可能期間が1年未満」または「取得価額が10万円未満」のいずれかに該当する減価償却資産(減価償却を行う固定資産)をいいます。その事業の用に供した事業年度において、取得価額の全額を損金経理(費用として経理)した場合に、その全額を損金(税務上の費用)の額に算入することができます。つまり、固定資産として一旦資産計上する必要はなく、購入時に消耗品費などの費用として処理され、減価償却はしません。

なお、中小企業者等(資本金の額などが1億円以下で一定の法人)の場合は、一定の範囲内で、取得価額が30万円未満である減価償却資産も少額減価償却資産として処理することができます。

2)一括償却資産

一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の減価償却資産をいい、3年間の均等償却をすることができます。つまり、機械装置や工具器具備品などの個々の耐用年数を把握し、固定資産として計上するのではなく、一括償却資産として計上し、3年間の均等償却を行います。そのため、通常の減価償却はしません。

取得価額が30万円未満の固定資産(減価償却資産に限る)の税務上の取り扱いは次の通りです。

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3)特別償却

特別償却とは、通常の減価償却費(以下「普通償却費」)の他に、設備の取得など投資をした固定資産の取得価額に一定の割合を乗じて計算するなどした特別な償却費(以下「特別償却費」)を損金に算入できる制度です。損金に算入できる償却費が増加(普通償却費+特別償却費)することで、所得金額を減少させる効果があり、投資額の早期回収が可能になります。

以上(2021年3月)
(監修 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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【朝礼】音声SNSに学ぶ「進行役」に必要な3つの力

先日、今年の1月末ごろから日本でも大いに盛り上がっている音声SNSを使い始めました。今日はそのツールを通じて私が改めて学んだ「進行役の秘訣」を、皆さんにお伝えします。

この音声SNSでは自由に「部屋」を作って会話ができるため、参加者はさまざまなテーマで座談会を開催しています。ただ、映像や画面の共有は一切できず、音声だけでコミュニケーションを取る仕組みなので、通常の座談会以上に「進行役」の役割が重要になります。たくさんの座談会を体験する中で、私は座談会やミーティングの進行役には、「共有力」「展開力」「行動力」の3つの力が重要だと実感しました。

まずは「共有力」です。「音声しかない」SNSなので、進行役は情報や状況を参加者に共有しなければなりません。進行がうまい人は、スピーカーの発言が難しすぎる場合、すかさずその内容を簡潔に、分かりやすく補足説明します。また、座談会が盛り上がってくると、スピーカー同士にだけ通じるローカル話も出てきがちですが、それもかみ砕いて、もしくは聞き手が分かる事例に置き換えて共有します。こうして、「置いてきぼり」が出ないようにしているのです。

共有するのは情報だけではなく、「時間の共有」も含まれます。進行役は、スパッと短く発言する、話をまとめる、1時間など決められた時間できっちり終わるなど「他の人の時間を共有している」意識を持って座談会を進行しています。

次に「展開力」です。座談会では話をテンポよく進めるために、話題を次々と展開していかなければなりません。進行のうまい人は、この「展開力」が抜群です。スピーカーに質問して同じ話を掘り下げるだけではなく、スピーカーの話を受けて、「今の話で思い出した話が一つあって」「今の話を別の観点で見ると」と続け、関連しつつも少し違う別の論点にスムーズに移っていくのです。そうすると聞き手は、スピード感とたくさんの情報量、思考量を感じることができ、充足感が得られるのです。

こうした「展開力」を身に付けるには、圧倒的な知識と経験、それに基づく自分自身の深い考察が必要です。そのために欠かせない力が、「行動力」です。書籍を読む、人の話を聞くなど、とにかくさまざまな体験をする行動力が源泉になっているからこそ、上手な進行役は、スピーカーからもさまざまな話を引き出せるのではないでしょうか。

今、皆さんにお伝えした「共有力」「展開力」「行動力」は、日ごろのビジネスでも大いに求められます。例えば、最近はオンライン会議でもカメラをオフにして音声だけで話をすることが増えています。音声だけだと、集中できる会議とそうでない会議との差が顕著になりますが、その原因の一つは進行役の力量です。最近、オンライン会議がいま一つだなと感じている人は、「共有力」「展開力」「行動力」を考えてみてください。

以上(2021年3月)

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画像:Mariko Mitsuda

経理担当者はもちろん、営業担当者も知っておくべき「決算整理仕訳」

書いてあること

  • 主な読者:初めて決算仕分けを行う新任経理担当者や営業担当者など
  • 課題:「会社の決算書の数字」と「自分の業務」のつながりを理解したい
  • 解決策:決算の期間に売上や費用を合わせて考えるようにする

1 日々の仕訳と何が違う? 「決算整理仕訳」とは

決算と聞くと、多くの人は貸借対照表、損益計算書などの決算書や、株主総会での決算発表をイメージするでしょう。しかし、同じ質問を経理担当者にすると、恐らく「決算整理仕訳」という膨大な仕訳を思い浮かべます。この決算整理仕訳が、決算の始まりであり、土台となる作業になります。決算整理仕訳では日々の仕訳では出てこない項目を整理し、それぞれの勘定を決算日時点の数値に確定します。

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決算整理仕訳には、売上原価の計算や、減価償却や、収益費用の見越し・繰延べなど、財務会計を学ぶ上でも重要な考え方が詰まっています。また、決算整理仕訳で、文字通り、数字が確定するため、経営者はもちろん、営業担当者なども決算仕訳の基本は知っておくべきです。

2 決算整理仕訳に必要なこと

決算整理仕訳では、一般的には次の項目を整理します。

売上原価の算定、収益費用の見越し・繰延べ、減価償却の計上、貯蔵品(切手・印紙など)

貸倒引当金の計上、有価証券の評価

これらの仕訳を処理するためには、さまざまな情報が必要です。例えば、「収益費用の見越し・繰延べ」では、売り上げた商品がいつ発送または納品され、その売上に対する費用はどの支出なのかを正確に把握しなければなりません。この情報は、商品管理担当部署や営業部署などから聞き出さなければなりません。もし、今期中に取引先に発送・納品されていない商品や、完了していないサービスに対する費用が計上されていると、売上がないのに費用だけが先に決算書に記載されてしまい、正確な数値となりません。これは、決算書を基に計算される税金計算にも影響することになり、税務調査でもよく指摘される「期ズレ」の原因となります。

このように、決算整理仕訳の背景を知ることは、会社の決算書の数字と自分の業務のつながりを知る上でも重要なのです。以降では、経理部署以外の部署にも関連する主な決算整理仕訳として、売上原価、収益費用の見越し・繰延べ、減価償却に注目します。

3 主な決算整理仕訳の内容と留意点

1)売上原価の算定

売上原価とは、会社の売上に直接対応する費用をいいます。例えば、小売業であれば、売り上げた商品の仕入額が売上原価です。一般的に、売上原価は売上の都度把握するのではなく、決算整理仕訳により、年間の売上に対応する売上原価を次の算式で計算します。

売上原価=期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高

例えば、期首商品棚卸高が100万円、当期仕入高が3000万円、期末商品棚卸高が150万円だった場合、売上原価は2950万円(100万円+3000万円-150万円)となります。決算整理仕訳として、期首商品棚卸高、当期仕入高、期末商品棚卸高を次の仕訳で処理すると、貸借対照表(以下「BS」)と損益計算書(以下「PL」)にそれぞれ次のように反映されます。

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実務上、重要になるのが、決算日に商品管理部署などで行われている実地棚卸です。実地棚卸により、期末商品棚卸高(翌期の期首商品棚卸高)を把握します。特に、決算日直近に発送した商品は期ズレの原因になりやすいので注意しましょう。

なお、近年は会計ソフトの発達により決算整理仕訳が月次決算として毎月落とし込まれている企業も多くなっています。月次決算での在庫は帳簿棚卸の数字を利用し、年度末決算時のみ実地棚卸の数字を利用します。

2)減価償却

減価償却とは、固定資産の取得価額のうち、その期に対応した分を一定のルールに基づいて一部ずつ費用に計上していくことをいいます。建物、機械装置などの固定資産は数年間にわたって使用することで売上に貢献すると考えた場合、多額な固定資産の取得価額を購入時に一括で費用化すると、期間ごとの利益を正確に計算できません。そのため、会社の固定資産は、決算時に一定の計算方法で、減価償却費を計算します。

例えば、A社では決算日において、建物附属設備250万円、機械装置70万円、器具備品30万円の減価償却費が計上された場合、減価償却費分、それぞれの固定資産の帳簿価額から控除した金額が、決算日における固定資産の会計上の価値を表すことになります。決算整理仕訳として、減価償却費を次の仕訳で処理すると、BSとPLにそれぞれ次のように反映されます。

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実務上、重要になるのが、決算日時点において、それぞれの固定資産がどのような状態にあるのか正確に把握することです。例えば、従業員に貸与されるノートパソコンのように会社から持ち出し可能なものは、決算日時点でそのもの自体が使える状態であるのか、期中に廃棄したものはないかなどの棚卸が必要です。また、新しく購入したものは、いつから使い始めたかによって、その期の減価償却費も変わってきます。そのため、固定資産を貸与されたり、使用したりしている部署については、その使用状況を固定資産台帳に記載するなどして経理部署と共有する必要があります。

なお、月次決算では、年度内に計上見込みの減価償却費を月次按分した金額で各月に計上します。

3)収益費用の見越し・繰延べ

収益費用の見越し・繰延べとは、決算日をまたいで影響する収益と費用について、その1年間(3月末決算会社であれば、4月1日から3月31日)に計上すべき収益費用の金額に調整することをいいます。それぞれの内容は次の通りです。

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以降では、それぞれ事例を挙げて、最後にまとめて行う仕訳例と、BSとPLにどう反映されるのかを紹介します。なお、いずれの事例も×2年3月31日が決算日のA社を前提とし、期中には収益費用を分割計上せず、現金の受け取り・支払い時点に一括して収益・費用を計上しているものとします。

1.収益の見越し

A社は、B社に提供しているサービス料金(240万円)を、毎期9月に過去の1年間分を後払いで受け取っています。そのため、決算日時点では、今期6カ月分の120万円(×1年10月から×2年3月分)が、まだ計上されていない収益となります。なお、決算整理仕訳前のPLには、前期×0年9月に受け取ったサービス料金の当期分120万円のみが計上されています。

2.費用の見越し

A社は、C社に委託しているウェブサイトの保守料金(60万円)を、毎期1月に過去の1年間分を後払いしています。そのため、決算日時点では、今期3カ月分の15万円(×2年1月から×2年3月分)が、まだ計上されていない費用となります。なお、決算整理仕訳前のPLには、前期×0年1月に支払った保守料金の今期分45万円のみが計上されています。

3.収益の繰延べ

A社は、D社に提供しているサービス料金(120万円)として、毎期10月に次の1年間分を前払いで受け取っています。そのため、決算日時点では、翌期6カ月分の60万円(×2年4月から×2年9月分)が、今期に計上されている収益となります。なお、決算整理仕訳前のPLには、前期×0年10月に受け取ったサービス料金の今期分60万円と、×1年10月に受け取った1年間分のサービス料金120万円の合計額180万円が収益に計上されています。

4.費用の繰延べ

A社は、備品の賃借料(12万円)として、毎期1月に次の1年間分を前払いで支払っています。そのため、決算日時点では、翌期9カ月分の9万円(×1年4月から×1年12月分)が、今期に計上されている費用となります。なお、決算整理仕訳前のPLには、前期×0年1月に支払った賃借料の当期分9万円と、×1年1月に支払った1年間分の賃借料12万円の合計額21万円が計上されています。

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実務上、重要になるのが、それぞれの収益・費用に関連する部署(例えば、売上金であれば営業部署など)において、契約内容を正確に請求書の摘要欄などに反映してもらうなど、取引先とのやり取りや、担当者が前払いや後払いについての認識を経理部署と共有することです。

以上(2021年3月)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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