オンライン時代でも必要な「読書」による社員教育

書いてあること

  • 主な読者:社員に読書の習慣を身に付けてほしい経営者
  • 課題:オンラインでの情報収集がメインになり、社員が読書に意義を見いだせない
  • 解決策:「考える力」を育てるには、読書が必要不可欠であることを伝える。読書の習慣がない社員のために、定期的に読書会を実施する

文化庁「平成30年度『国語に関する世論調査』」によると、全国16歳以上の男女の47.3%が、1カ月に1冊も本を読まないとされています。経営者の中にも、「ウチの社員は全然本を読まない」と歯がゆく思っている人がいるでしょう。

一方、オンラインでの情報収集に慣れている社員は、「本当に読書なんて必要なの?」と疑問に思っているかもしれません。インターネットで検索したり、動画で配信されるオンライン講義を視聴したりすれば、本を読むよりも簡単に情報が手に入るからです。オンライン時代に読書はいらないのでしょうか? このことについて、本稿で考えていきたいと思います。

1 読書は「考える力」を育てるためのもの

読書とオンラインでの情報収集の違いのイメージは次の通りです。注目したいのは「学習に対する姿勢」です。

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例えば、インターネット検索の場合、誰にでも分かりやすい平易な文章で書かれたコンテンツが検索上位に来る傾向にあります。また、オンライン講義の場合、文字だけでなく、映像や音声も交えて講義が行われるため、理解がしやすくなっています。

しかし、その分、学習に対する姿勢は受動的になりがちです。つまり、知りたいことについての答えが簡単に与えられるため、「考える力」が育ちにくくなります。

一方、読書の場合、1回読めば理解できる簡単なものもありますが、オンラインのコンテンツに比べて文章が難解だったり、著者自身の思想が多分に含まれていたりして、理解するのに時間がかかることが少なくありません。

しかし、その分、「この言葉はどういう意味だろう」「著者はどういう経緯でこの思想に至ったのだろう」など疑問を持つ機会が増えるため、学習に対する姿勢は能動的になります。つまり、知りたいことについての答えを自分なりに探そうとするようになるため、「考える力」が育ちます。

2 社員に読書を習慣付ける読書会とは?

本来、読書は自主的に行うものですが、読書の習慣がない社員は、なかなか自ら本に当たろうとしません。そこで、社員が積極的に本を読むようになる仕組みをつくることが重要になります。

そのための1つの方法が「読書会」です。これは、あらかじめ課題図書として設定された本などについて、社員が各自の意見を発表したり討論したりする会です。事前に本を読んでこなければ、意見発表も討論もできないため、読書会を定期的に実施することで、普段本を読まない社員にも、読書の習慣が付くことが期待できます。

読書会の進め方は、おおむね次の通りです。

  • 各自で課題図書を読む
  • 本の要点や意見をA4用紙1枚程度に文書化する
  • グループを組んで自分の意見を発表し、それを参加者同士で討論する
  • 各自の意見を調整し、実務に即してまとめ直し、会社としての意見統一を図る
  • 実務に即してまとめ直された情報を共有する

参加者は4~5人で1つのグループを組みます。また、各自の意見を発表したり討論したりするための所要時間は、30分~1時間程度とします。

3 読書会の流れ

1)課題図書の選定

読書会の題材とする本は、次の基準によって経営者が選定するとよいでしょう。

  • 自社の業界や職種に関連したもの
  • 実務に活かせるヒントがあるもの

このような基準であれば、一般的なビジネス書から自己啓発系の本まで、幅広い分野から自由に選定できます。最初は簡易な本から始めても構いませんが、前述の通り、社員に「考える力」を身に付けさせることが目的なので、徐々に理解が難しい本なども取り入れていくとよいでしょう。

なお、読書会は社内研修の一環として行うため、題材とする本は会社の経費で購入します。

2)本の要点や意見を文書化する

各社員は、読書会開催前に、本の要点や意見を文書化します。文章量は1000文字程度がよいでしょう。本には重要なポイントとなる「キーワード」や「特定のセンテンス」があるので、これらを用いて文章を作成し、さらに文章量を最小限まで削ることで、その本の内容がより分かりやすくなります。

キーワードや特定のセンテンスは、その本を理解する上での「要」ともいえるものですので、本文中でも頻繁に使用されます。従って、キーワードや特定のセンテンスを見つけるためには、「よく出てくる言葉やセンテンス」に注目するとよいでしょう。

なお、鉛筆やマーカーペンなどを用いて、文章のポイントと思われるキーワードに印を付けたり、特定のセンテンスを意味別に色分けしたりすると、文章の構成や流れが分かりやすくなります。

3)討論会を行う

各自がまとめた要点や意見(A4用紙1枚程度)を他の参加者と共有します。それぞれを読み比べてみると、「自分が重要だとして取り上げた点を、他の参加者は取り上げていなかった」「自分が取り上げなかった点を、他の参加者は重要だとして取り上げていた」「他の参加者と同じ点を重要だとして取り上げたが、その理由が異なっていた」など、さまざまな気付きがあるでしょう。

これらの点について話し合うことで、例えば、「ポイントとなるキーワードを見落としていた」「ポイントとなる特定のセンテンスを読み違えていた」「文章の構成を読み違えていた」といったことが分かります。

次に「本の要点を、具体的にどのように実務に活用するか」について討論します。例えば「製造業における業務改善」という本を題材とした場合、自社が小売業であれば、その内容をそのまま実務に活用することは困難です。

そこで、本の内容のポイントとなるキーワードや特定のセンテンスを抽出して、自社の状況に当てはめて考えることが必要です。例えば、上記の「製造業における業務改善」を小売業の読書会で取り上げる場合、「セル生産方式」についての内容から「作業の習熟化」というポイントを抽出し、そのポイントを「小売業の人材育成」に活用する方法を検討するという流れが考えられます。

その際、参加者との意見調整や本の要点を実務に活用するためには、論理的思考力によって導かれた工夫と、それを伝えるコミュニケーション力が求められます。こうしたこともビジネスパーソンに必要とされる能力の強化に役立ちます。

4)フィードバックする

前述した「製造業における業務改善」のポイントを小売業が実務に活用してみたところ、不具合が出てきたとします。その場合は、実務に即した形にまとめ直し、再度実務に活用してみる必要があります。このように、絶えず「知識」と「経験」をフィードバックすることにより、社員の読書会の効果はさらに高まります。

以上(2020年10月)

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画像:pixabay

オンラインも踏まえたお客様の「生の声」の活かし方

書いてあること

  • 主な読者:商品開発や営業活動に悩む担当者を中心とした、幅広いビジネスパーソン
  • 課題:「お客様の声」を聞けていない。聞けてもどう活かすかイメージができない
  • 解決策:まず、基本的な活かし方「お客様のニーズ把握」「社員の誇り」「会社の未来」の3つを実践する

1 お客様の「生の声」は、集められても活かせない?

どのような商品・サービスにも、使ってくださるお客様がいます。企業は、良い意見も悪い意見も、お客様の「生の声」(お客様自身の声)を大事にしなければなりません。とはいえ、アンケートやヒアリングなどで「生の声」を知っても、それを活かせていない企業も多いのではないでしょうか。

そこで本稿では、基本的で分かりやすい「生の声」の3つの活かし方、「お客様のニーズ把握」「社員の誇り」「会社の未来」をご紹介します。どれも目新しいことではありませんが、改めて「なぜお客様の生の声を聞くのか」について、考えてみることができるでしょう。

なお、本稿でいう「生の声」は、直接会って話すことに加え、電話、メール、アンケート、オンラインミーティングなども含みます。本稿の後半で、お客様から「生の声」をいただく際のポイントもまとめていますので、御社の日ごろの活動にお役立てください。

2 「生の声」の3つの活かし方

1)お客様のニーズ把握

ここでは、お客様からいただいた「生の声」の活かし方を考えます。まず、第一に、「生の声」で、お客様のニーズを把握することができます。お客様と接する機会をたくさんつくれば、お客様の発する言葉、思い、好き(嫌い)などを共有できます。

実際に、あるサービス業では、お客様にインタビューをしたおかげで、なぜ自分たちのサービスを導入してくださったのかという思いや、お客様の仕事に対する情熱などが初めて分かりました。その後、社員たちはお客様のことを積極的に知ろうとするようになりました。

こうしてお客様の思いを知ることができるようになれば、会話の中で、お客様自身も気付いていなかったニーズが明らかになるかもしれません。それに対応してお客様に喜んでいただくことができれば、これほどうれしいことはないでしょう。

2)社員の誇り

どのような社員も、直接お客様から「ありがとう。これがとても役に立ったよ」と言われたら、うれしく感じるものです。また、逆に直接お叱りを受けたら、「申し訳ない、二度とこういうことをしてはいけない」と実感することができます。

つまり、お客様の「生の声」はある意味、経営者や上司の言葉より、ずっと社員の心に響くのです。実際にある製薬会社では、営業以外の社員が直接お客様と話す機会をつくったことで、自分たちの仕事の意義が感じられ、とても喜んだといいます。

社員に喜びと誇りを感じてもらうには、お客様とたくさん接することが一番です。そして、社員一人ひとりがいただいたお客様からの「生の声」を、多くの社員の目に触れるよう、社内で共有することも大切です。

お客様から言われてうれしかったことを朝礼で発表したり、社内報や社内ブログなどで紹介したりするのもよいでしょう。こうして、社員一人ひとりが、お客様から「生の声」をいただくことを誇りに思える風土づくりも欠かせません。今日からやってみましょう。

3)会社の未来

お客様からの「生の声」を常に確認していれば、それは、次のビジネスのヒントにもなります。実際に、お客様に「商品への不満足」などをヒアリングした結果を活かしてPB(プライベートブランド)商品を開発し、ヒットさせているオフィス用品メーカーもあります。

また、お客様からの「生の声」を、会社のウェブサイトやSNSなどで社外に向けて発信するのもよいでしょう。会社として大切にしているのは、お客様からの「生の声」と、それを誇りに思っている社員たちであることを、感謝とともに広く伝えるのです。

時には、「会社として大切にしていること」に賛同した人が、一緒に働きたいと言ってくれるかもしれません。このように、お客様からの「生の声」は、ビジネスのヒントや賛同してくれる人が見つかるなど、会社の未来につながる可能性を秘めています。

3 「生の声」をいただく際に実践したい6つのポイント

お客様から「生の声」をいただくときは、どうすればお客様が「生の声」を発しやすくなるかを考えることが大切です。中には、新型コロナウイルス感染症の予防のため、「対面じゃなくオンラインのほうがいい」というお客様もいるかもしれません。そうしたお客様には、安心して話せる環境づくりも重要です。ここでは、そうしたポイントを6つに分けてご紹介します。

1)準備をする

質問の項目などをあらかじめ決めておく他、お客様のことや、自分たち自身のことについてもしっかり予習しておきましょう。その際には、3C(Customer、Competitor、Company)の視点が参考になります。お客様にとっての顧客と競合、自分たちの競合、商品・サービスなどの状況を確認しておきます。

また、SNSなどでお客様が最近関心のありそうなこともチェックしておけば、アイスブレイクや質問などに使えます。話の主役はあくまでもお客様です。お客様が話してくださったことを深掘りする質問をするためにも、しっかりとした下準備が必要です。

2)雰囲気をつくる

「生の声」をいただくときは、何よりも、お客様が話しやすい雰囲気づくりが大切です。常に、「どうすればお客様が気持ち良く話ができるか」という視点で考えましょう。時に笑い、手をたたくなど、お客様の話にリアクションするのは、まず基本です。

また、関係性や状況にもよりますが、お客様のほうが緊張していたり、構えていたりする場合があります。服装や持ち物、最近の出来事など、お客様が軽いトーンで話ができそうな話題でアイスブレイクし、場をリラックスさせるのも一策です。

3)趣旨を伝える

お客様には、初めに趣旨をしっかりとお伝えしなければなりません。時間を割いてくださったことへのお礼とともに、「生の声」をいただくことで、今後もっとお客様の役に立てるようになりたいという目的を伝えましょう。

こうした前向きな趣旨をお伝えすれば、お客様も、自分(お客様)が言ったことが何につながるかが分かるので、日ごろ「もっとこうしてほしい」と思っていることや、至らない点(悪い点)を、より言いやすくなるかもしれません。

4)思いを聞く

「生の声」をいただくときは、商品・サービスの機能などのことだけでなく、できるだけ、お客様の思いを引き出したいものです。それが本当に「お客様のためになること」「お客様のニーズ」につながっていくからです。

そこで、「どのような思いで商品・サービスを導入してくださったのか」「日ごろ、どのようなことを考えて活用していただいているか」「お客様ご自身が実現したいことはどのようなことか」といったことを質問するようにしましょう。

5)継続する仕組みをつくる

お客様からいただいた「生の声」は、「いただきっぱなし」ではいけません。できるだけ対応を試み、実現を目指します。途中経過でもいいので、お客様にはいただいた「生の声」を、次にどのように活かそうとしているかをお知らせしましょう。

また、お客様から「生の声」をいただく取り組みは、「その後の報告」も含めて、実践し続け、バージョンアップし続けることが大切です。「月に一度は必ず『生の声』をいただく」など、定期的に継続する仕組みをつくりましょう。

6)オンラインなど非対面の選択肢も用意する

今どきは、ウェブ会議ツールを使ったオンラインミーティングなど、非対面でお客様から「生の声」をいただく用意も欠かせません。その際、お客様のご要望などによっては、事前にウェブ会議ツールを実際につないでリハーサルしてみるなどの準備が必要です。

また、オンラインミーティングでは、対面よりもリアクションを大きくすることを心掛けましょう。その他、背景をお客様ゆかりの土地の写真にする、質問項目が分かりやすいイラストを準備するなど、対面ではないオンラインだからこそ、細かい配慮が欠かせません。

以上(2020年10月)

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画像:rh2010-Adobe Stock

財務諸表は必ず読み取れるようにしよう/起業3年目までにマスターしたい財務・資金繰りの基本(1)

はじめまして。起業コンサルタント(R)、税理士の中野です。今回から12回にわたり、創業間もない経営者のみなさまのために資金繰りの基本について解説してまいります。

資金は会社にとっての血液。その血液である資金が枯渇したら、会社を存続させることはできません。資金調達の可否が会社の将来を決めるといっても過言ではありません。必要な資金を必要なときに、より良い条件で集められるような体制作りが重要なのです。そのために必要な基本エッセンスを見ていきましょう。

第1回は、会社の現状把握についてです。中でも、いわゆる財務諸表を読み取るチカラは経営者として必ず身に付けておきたい基本中の基本です。「日ごろの経理や決算処理は税理士に任せていて、試算表や決算書などはろくに見たことがない」という方、要注意ですよ。

経理作業や決算申告の作業は自分ではしないとしても、財務諸表を読み取るチカラがないと、資金繰りを読むことができません。次回以降解説しますが、財務諸表さえ読み取っていれば資金繰りは完璧というわけではありません。ただ、基本データとして、財務諸表を読み取るチカラはどうしても必要となるのです。初めての人でも分かりやすいように簡潔に書きますので、一緒に見ていきましょう。

1 損益計算書の読み取り方

損益計算書は、一言でいえば会社がどれだけもうかって、どれだけ損をしたのかを示した表です。会社が稼いだ金額「収益」が材料費や旅費交通費などの「費用」よりも多ければ黒字、収益よりも費用の方が多ければ赤字です。日常でもよく耳にする言葉ですね。黒字か赤字かを判断するには、まず、いくらの利益が出ているのかを知る必要がありますが、一口に利益といっても会社がお金を稼ぐ方法はいろいろあります。本業でモノやサービスを売って得たお金のほかにも、銀行に預金して得る利息や、自社の建物の一部を他社に貸して得る家賃なども利益に入ります。

損益計算書では、これらの利益を本業との関連の度合いからいくつかの段階に分け、段階ごとにもうかった金額や損をした金額を表示しています。

決算書を読む人に対して会社が本業でどれだけもうけているかということを知らせるため、会社がどれだけモノやサービスを売っているか(=売上高)を一番上に表示します。

その次に出てくるのが売上原価です。売上原価とは、仕入れた商品の代金、製造に掛かったコストなど、売上のもとになるモノやサービスを作るのに掛かった金額の合計です。売上高から売上原価を引いた金額が売上総利益です。

売上総利益の次は、売上原価以外で本業に掛かる費用が表示されます。この費用は販売費及び一般管理費(略して「販管費」)といいます。例えば、営業部門や管理部門の人件費や交通費、打ち合わせ費用、オフィス家賃などです。売上原価と販管費を合計すれば、本業に掛かる費用はすべて網羅したことになります。

最後に、売上総利益から販管費を引いたものが、営業利益(赤字の場合は営業損失)として損益計算書上に表示されます。営業利益は、本業で稼ぎ出した利益を表しており、営業利益を出せたかは会社にとってとても重要なポイントです。

本業以外の活動による収益や費用は、営業外収益または営業外費用として損益計算書に表示されます。営業外収益の代表例は、預金利息です。ほかに、本業以外の株式やFXなどを保有している会社の場合は、それらの売却益や配当金も営業外収益となります。営業外費用の代表例は、金融機関などから資金を借りた場合の利息です。

営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引いたものを経常利益といいます。経常利益は、当期純利益と区別して「正常な企業活動による利益」と覚えておきましょう。

会社は、時に予期しない事態に見舞われることがあります。例えば、会社の車両で自損事故を起こし廃車になってしまった場合などです。このように、突発的な原因で発生した費用は、損益計算書の「経常利益」の下に、特別損失として計上されます。逆に、会社の車両を他人に譲った結果、利益が出たなどの突発的な収益は、特別利益として表示されます。経常利益から、特別利益を足し、特別損失を差し引いたものを税引前当期純利益といいます。

さらに税引前当期純利益から、会社が納税すべき法人税などの金額を引いた金額を税引後当期純利益といいます。当期純利益は、一時的、突発的な収益や費用を含めた、その期に会社が獲得した利益を表しています。

損益計算書の画像です

2 貸借対照表の読み取り方

貸借対照表は、一言でいえば、決算日時点での会社の資産や負債などの一覧表です。

資産の部、負債の部、純資産の部という3つのブロックに分かれています。

貸借対照表の画像です

貸借対照表では、資産の部は左側、負債の部と純資産の部は右側に表示されます。そして、左側の金額の合計額と右側の金額の合計額は必ず一致します。そのため、貸借対照表は左右が釣り合う(バランスする)ということから、バランスシート(B/S)とも呼ばれます。

右の負債の部や純資産の部は、会社の資金をどうやって調達したかを表します。借入金などの負債は、外部の金融機関などから借りてきたお金なので、いつか返さなければなりません。他人から借りたお金なので「他人資本」といいます。

一方、資本金などの純資産は、株主から投資を受けたお金や会社が稼いだ利益の金額で、いわば自分のお金です(「自己資本」といいます)。会社の持ち主は株主ですから、株主が投資したお金(=資本金)や、そのお金をもとに会社が稼いだ利益は株主のものである(帰属する)という考えを表したものです。

これらの他人資本と自己資本を利用して、どのように会社が資金を運用しているかを表すのが、左側の資産の部です。現金や預金として持っているものもあれば、在庫商品、製造に使う機械などに形を変えたものもあります。このように、調達したお金を会社がどのように運用しているかが一目でわかるのが貸借対照表です。

貸借対照表を見るときは、「安全にお金を調達できているか」ということと、「調達したお金を使って利益を生み出すために、効率的に運用しているか」というポイントが重要になります。

貸借対照表は、損益計算書に比べると難しく感じがちですが、

  • 資金繰りそのもの(気づかずに運転資金がショートする可能性もある)
  • 追加融資
  • 許認可(有料職業紹介の免許更新など)
  • 取引先からの信用

などにも影響する重要な財務諸表です。必ず読み取り方をマスターしておきましょう。

次回はさらに進んで、損益計算書や貸借対照表を分析する方法を解説していきます。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年10月5日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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企業と従業員を「感情」でつなぐ対話 押さえておきたい5つのポイント

書いてあること

  • 主な読者:従業員の士気や定着率を高める方法を知りたい経営者
  • 課題:テレワークを中心とした働き方の急速な変化によって、従業員のコミュニケーション不足による人間関係の希薄化、会社への帰属意識の低下を懸念している
  • 解決策:自社における「従業員エンゲージメント」の高さを知り、従業員との対話によって一緒にエンゲージメントを高めていく

1 働き方が変わり、会社への不満が高まる?

新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、テレワークを中心とした働き方の急速な変化や、業績の悪化による企業の存続危機が生じています。こうしたことにより、皆さんの会社の従業員は次のような問題を抱えているのではないでしょうか?

  • コミュニケーション不足による人間関係の希薄化と、会社やチームへの帰属意識の低下
  • 会社や上司からのフィードバックが不足しており、承認欲求が満たされず、成長している実感も得られにくくなる。自分が何を期待されているかが分からなくなる
  • 自分の将来への不安や会社への不満などのネガティブな感情ばかりが強くなる

こうした問題は、with/afterコロナ時代に生き残っていくために必要な、「従業員エンゲージメント」を低下させるきっかけになります。そのため、中小企業の経営者にとっては、これらの問題をどのように解決するかが今後の重要な課題となるでしょう。

ここでは、そもそも「従業員エンゲージメント」とは何なのか? そして、その重要性にも触れながら、従業員エンゲージメントを高めるために今すぐ取り組むべきことを紹介します。

今年1月には、日本経済団体連合会が「働き方改革フェーズ2」として、エンゲージメントを高める職場づくりの重要性を指摘しています。こうした中、ぜひ自社の組織と照らし合わせながら、従業員エンゲージメントについて考えるきっかけにしてください。

2 従業員エンゲージメントとは何か?

昨今、この「従業員エンゲージメント」の重要性が高まっていることもあり、さまざまな定義が飛び交っています。そこで、我々の従業員エンゲージメントの理解を紹介します。

「エンゲージメント」という言葉について辞書を引くと、日本語では次のように訳されます。

  • 婚約
  • 約束、契約、誓約、雇用
  • (歯車などの)かみ合い

この中でも、我々は3番目の(歯車などの)かみ合い、つまり複数の歯車がぴったりとかみ合い、全てが違和感なくうまく回っているような状態が、本質的にエンゲージメントを表しているのではないかと考えています。また、我々はこの状態を「しっくりくる」と表現することもあります。

歴史を遡ると、1990年にボストン大学の組織行動研究者であるウィリアム・カーンが、「組織におけるHuman Resource」の論文でエンゲージメントという言葉を使ったのが、職場でのエンゲージメントの認識の始まりです。そのときは、「パーソナル・エンゲージメント」という言葉を使い、「仕事上の役割に対し、肉体的・認知的・感情的に没頭している状況」と説明されました。

続いて、1997年にアメリカの大統領選挙などの世論調査で有名なギャラップ社が「従業員エンゲージメント」という言葉を使用し、2007年に調査データが発表されて以降、広く認知されるようになりました。ギャラップ社は従業員エンゲージメントを「組織に対して強い愛着を持ち、仕事に対して熱意を持っている状態」と定義しています。さらに注目すべき点は、その膨大な調査データから、企業が重要視している生産性・利益率・定着率などは、従業員エンゲージメントと強く相関していることを証明しているのです。

エンゲージメントの話をすると、「満足度」との違いについてとても多くの質問を受けます。また、「ロイヤルティー」「モチベーション」との違いについても聞かれます。そこで、それぞれの違いを次のようにまとめました。

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エンゲージメントが高いということは、組織や仕事に当事者意識を持ち、当該組織や仕事と感情的につながっている状態なので、時には上司に対して異論を唱えることもあります。また、個人主義ではなく仲間と議論をしながら、切磋琢磨(せっさたくま)することを楽しむ傾向もあります。

3 エンゲージメントの高さを知る方法

エンゲージメントは、20世紀に入ってから欧米を中心に浸透し、今ではグローバル企業のリーダーの4分の3がエンゲージメントの向上のために、投資を強化しようとしているというデータもあります。また、株式投資の投資判断の指標とする動きまであります。

ではエンゲージメントは、どのように測定されるのでしょうか?

従業員エンゲージメントの重要性が広く認知されたのを機に、各社がさまざまな測定指標を用いた調査を実施しています。その中でも最も代表的な調査が、先に紹介したギャラップ社の「Q12(キュー・トゥエルブ)」です。12の質問があり、内容も非常にシンプルですが、質問項目に対する点数の高さと組織の業績の高さの相関関係を証明したことから、Q12は世界中で知られています。

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これらの質問に高い評価をする従業員の多い組織はエンゲージメントが高く、業績・生産性も高いということなのですが、皆さんの組織はどうでしょうか?

リーダー、マネジャーの大切な仕事の一つは、部下にこれらの項目を高く評価してもらえるような人間関係をつくり、当事者意識を高めることになります。ですから、この調査項目を高く評価してもらうために活動することは、リーダー、マネジャーのマネジメント力を鍛えることにもなります。

4 なぜ日本のエンゲージメントは低いのか?

2018年のギャラップ社による従業員エンゲージメント(仕事への熱意度)調査では、日本は139カ国中132位という結果でした。ギャラップ社以外のコンサルティング会社のデータでも同じ傾向が見られます。

日本の従業員は長時間労働こそするが、仕事に当事者意識を持たず、熱意も低いのでしょうか? どうやら、データを見る限り、それは否定できません。でも、みんなこんなに頑張っているのに、なぜ従業員エンゲージメントが低いといわれるのでしょうか?

その理由は、日本では個よりも会社そのものの箱にばかり目を向ける傾向が強いためです。それが、個人の熱意ややりがい、仕事の楽しさを引き下げる大きな要因になっているのです。

例えば、日本の就職は、「就社」だとよくいわれます。その仕事がしたい、その商品を扱いたい、という熱意からではなく、その看板のもとで働きたい、という思いで会社を選ぶことが多いのです。「いい仕事をしていますね」よりも、「いい会社で働いていますね」と言われたい、ということでしょう。

また、日本では、大学で何を勉強したかよりも、どこの大学に入ったかを重視する傾向がありますが、それもとても日本のガラパゴス的なことです。そして、有名企業という輝かしい看板のもとに入ったものの、自分を活かせていない、何かが違う、ちっともやる気が出ない、という状況に陥ってしまうことがよくあるのです。こうしたことが当たり前のように起こっていることと、日本の従業員エンゲージメントの低さが無関係であるはずはありません。

大手企業は、福利厚生などでは有利であり、社員の満足度が高い傾向がありますが、エンゲージメントに関しては、必ずしも中小企業を凌駕(りょうが)していません。中小企業は、企業によって差が大きいものの、個を重視し、仕事の楽しさや仲間との切磋琢磨によって、エンゲージメントを高めることに成功しているケースを我々はたくさん見てきました。そういう企業は規模にかかわらず高い生産性を誇っているものです。

5 エンゲージメントを高めるための方法

上司であれば、誰もが部下のエンゲージメントを高めたいと思うでしょう。しかし、そのために具体的な行動を起こしている上司はごくわずかです。皆さんは、エンゲージメントが大切だと頭で理解していても、どうしたらそれを向上できるのかが分からずに苦労をしているようです。

それもそのはず、エンゲージメントは「感情」に強く関わるものだからです。感情は論理的ではないので、なかなかガイドラインをつくることができません。「人それぞれだからね」と言ってしまえば、それ以上話は進みません。

でも、ご安心ください。20年以上にわたって組織におけるエンゲージメントの重要性が世界的に注目され、多くの研究も行われたことにより、エンゲージメントを高めるためのガイドラインは確立されつつあります。

キーワードは「対話」です。

個を尊重した対話がこれからのエンゲージメント向上の基本になるのです。個を尊重するといっても、部下を常にべた褒めしようとしたり、腫れ物に触るように扱ったりするわけではありません。求められるのは、次に挙げる5つの要素を意識した対話をすることです。

  • 個の強みに目を向けて対話をする
  • 日常的に、必要なときはいつでも対話をする
  • 上から尋問するのではなく、お互いに自分のことを話し、双方向の対話をする
  • 過去ではなく、未来志向の対話をする
  • どのようにすればエンゲ−ジメントを高められるかを話し合い、共に実行する

エンゲージメントはリーダーやマネジャー1人で高められるものではありません。メンバーと一緒に高めるものです。この5つの要素を意識して組織のメンバーと対話を継続すれば、人間関係の質は間違いなく変わり、エンゲージメントは向上します。

エンゲージメント向上のコーチングに取り組む中小企業の経営者は、この5つの要素を意識した対話を進めることによって、組織の風土を大きく変えることに成功しました。この方は、それまでとは違ったタイプの対話に取り組んでいた時期を振り返って、このように言っていました。

  • 「メンバーそれぞれと対話をしてみて、いかにこれまでの自分が組織で起こっていることを分かっていなかったかを知り、がくぜんとしてしまいました。今考えれば、あの瞬間から全てが変わりました」

この方は、遅ればせながらこのことに気付いたからよかったのですが、実際には組織のことが分からないまま経営を続けているリーダーも少なくありません。

そのままにしていると、トップがいくら意気込んでもメンバーは人ごとのように白けていて、言葉では「はい、やります」と言いながら、陰ではトップの悪口ばかり言う。そんなエンゲージメントの低い組織になってしまいます。

繰り返しますが、そうならないためには真摯な対話が第一です。相手に興味を持ち、そんな自分にも興味を持ち、対話をしましょう。そうすれば、自然とやらなくてはならないことが明確になり、それをメンバーと一緒に地道に進めることで、エンゲージメントは必ず向上します。そして、それは業績の向上を意味するのです。

以上(2020年10月)
(執筆 日本エンゲージメント協会 佐々木拓哉 小屋一雄)

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画像:Julia Lazebnaya-shutterstock

出張の削減も 現地視察をオンラインで代替できる最新映像技術

書いてあること

  • 主な読者:コロナで海外や県外などへの移動がしにくく、現地視察ができない経営者など
  • 課題:「リモート視察」の方法としてVR(仮想現実)などの現状を知りたい
  • 解決策:VRでできること、メリットなどを把握し、自社で利用を検討する

1 コロナで注目「新しい見学様式」

新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大から、1年近くが経とうとしています。こうした中、外出の自粛が要請されたり、海外や県外などへの移動が制限されたりしています。ビジネスシーンにおいても、Zoomなどのオンラインツールが急速に普及するなどし、「リモート○○」と呼ばれる、「新しい生活様式」に対応するような取り組みが定着しつつあります。

その一つに、VR(Virtual Reality、仮想現実)などの技術を活用し、遠隔地にある工場や倉庫などの生産・物流拠点を、あたかも訪問したような体験ができる「リモート視察」を導入する動きも出てきました。

遠隔地訪問による感染リスクを抑え、さらに出張費用や訪問に掛かる時間まで削減できる、VR関連技術などを活用した取り組み事例や、導入のコツなどを確認してみましょう。

2 「リモート視察」こんなことができる

1)VR海外出張 NEWJI×floorvr

製造業向けに資材調達や購買業務を支援するNEWJI(ニュージ)は、VR関連の映像サービスを提供するfloorvr (フロアブイアール)と共同で、海外工場を国内からオンラインでリアルタイムに視察できる「NEWJI VR」のβ版を、2020年8月にリリースしています。

NEWJI VRは、海外との取引が増える製造業において、購買部門や品質管理部門による人的、経済的な負担の大きい海外出張を軽減するために開発されました。資材の調達先などを視察したい企業の担当者は、NEWJI から提供される専用ゴーグルを装着し、現地に設置された配信機材を通じて、現地の映像を360度シームレスに見ることができます。

海外との取引が多い総合商社や大手メーカーによるNEWJI VR体験事例が紹介されていますが、現場感が伝わってくることや、タイムラグのない高画質などが評価され、高い顧客満足度を獲得しているようです。

NEWJI VRの紹介ページでは、出張予算の簡単なコストダウンシミュレーションも行うことができ、出張予算が年間80万円以上掛かる場合には、コストメリットが見込めそうです。

■NEWJI■
https://company.newji.ai/
■floorvr■
https://floorvr.jp/
■NEWJI VR 紹介ページ(イメージ動画が再生できます)■
https://newji.jp/vr-factory

2)VR展示会 シンボシ

映像やスマートフォン向けアプリの制作を手掛けるシンボシは、仮想空間に展示会場を再現したVR展示会を提供しています。

このVR展示会はVR画像と、その画像に関連する説明動画を組み合わせて表示できるのが特徴です。VR展示会場は、実際の展示ブースを基に生成され、訪問者は仮想ブース内を「Google ストリートビュー」のように移動することができます。展示物の詳細情報は、仮想ブース内に「レ点マーク」で表示され、カタログなどが閲覧可能です。詳細情報には、PDF形式の説明資料の他に、オンラインショップなどのURLも添付できるため、仮想ブース内で商品を確認し、オンラインで注文を促すことも可能です。

また、VR展示会では訪問者数や展示商品の詳細情報のクリック数などのデータを収集することができるため、「展示会に出展してみたものの、効果がよく見えない」という、リアルな展示会にありがちな課題も解消できそうです。

■シンボシ■
https://www.simbosi.co.jp/

3)VRで不動産物件を内見 NURVE

 VRコンテンツのプラットフォームを提供しているNURVE(ナーブ)は、VRゴーグルを用いて、マンションやアパートの室内を内見できる「VR内見」を不動産業者などに提供しています。

VR内見は、部屋を探している顧客が、不動産会社の店頭でVRゴーグルを装着して部屋の様子を把握することができます。VR内見を使うことで、内見予定の現地までの移動時間を短縮でき、より多くの部屋を紹介することが可能です。

同社は、VR内見をさらに発展させ、顧客と不動産会社がオンラインで会話しながら部屋を内見でき、商談も同時に行える「パノラマオンライン商談ツール」の提供を、2020年7月から開始しています。

こうしたサービスに加え、旅行先のホテルなどをVRで事前に確認できるサービスなども同社は提供しています。

■NURVE■
https://www.nurve.jp/

(注)「VR内見」「パノラマオンライン商談ツール」は、ナーブ株式会社の登録商標です。

4)3Dホログラム会議 イトーキ×ホロラボ

オフィス関連家具の製造などを手掛けるイトーキは、3D映像などを制作するホロラボと共同で、リアルタイム遠隔3Dコミュニケーションシステム「HOLO-COMMUNICATION」の法人向けの提供を、2020年5月から開始しました。

Microsoftのゴーグル型デバイス「HoloLens 2」や、AIセンサーなどを搭載した開発者向けデバイス「Azure Kinect DK」で構成するHOLO-COMMUNICATIONは、遠隔地の会議参加者の姿を立体的に生成することができます。従来のウェブ会議システムに比べ、映像が3Dで生成されるため遠隔地の会議参加者同士がよりリアルに感じられ、対面での会議と遜色のないコミュニケーションを取ることができます。

HOLO-COMMUNICATIONは、3D映像のニーズ調査や遠隔地との会議などの目的に適したシステム一式の提供プランと、自社アプリの開発を想定した開発パッケージ付きのプランの2つがあります。

■イトーキ■
https://www.itoki.jp/
■ホロラボ■
https://hololab.co.jp/
■HOLO LAB HOLO-COMMUNICATION紹介ページ(イメージ動画が再生できます)■
https://hololab.co.jp/holo-communication/

3 「リモート視察」導入のコツ

実際に「リモート視察」に取り組んでいる企業の評価はどんなものがあるのでしょうか。画像が固まったり、乱れたりして何が映っているのか把握できないことや、「やっぱり現地に行って目で見るのが一番!」という意見もあるかもしれません。導入事例はまだ少ないものの、「リモート視察」導入を進めている企業からは次のような話が聞けました。

海外から産業資材などを輸入する商社の場合

  • 導入の背景

主に中国や東南アジアで製造した鉄鋼製品や樹脂製品などを輸入・販売しており、輸入前の製品の確認や、不良品発生時の現場確認などに海外工場へ視察することが多かった。こうした中、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて海外へ渡航することが困難になったため。

  • 導入の狙い

当初の目的としては現地視察の代替・補助を想定していたが、海外工場と国内でやり取りがスムーズに進むようになれば、顧客への工場紹介や現地視察の経験が少ない社員・新入社員への事前レクチャーにも活用できそうだと感じている。

  • 想定する運用方法

当面は、目視などで済むレベルの業務(製品の外観などのチェックや、不良品発生時の現場の状況確認など)での運用を想定している。不良品などの確認は、映像だけで安易に判断を下せない場合もあるため、実際に現地に足を運ぶ必要がある。

  • コスト感について

中小・中堅企業にとって、「リモート視察」の導入コストは、「正直安いものではない」ものの、毎回の渡航・滞在費、現地および国内の人員・日程調整などをトータルで考えると、メリットがあると感じている。特に、中小企業でも海外出張や海外とのやり取りが普段から多い企業の場合、検討に値するのでは。

  • 「リモート視察」試してみた“気付き”

本格導入はこれからではあるものの、当初の想定よりも活用方法は可能性があると感じている。例えば、これまでは海外工場を紹介する場合は、パンフレットや画像などで対応していたが、「リモート視察」であれば、その場で細かい質問などのやり取りなどができ、現地の詳細をより理解できると感じる。

また、経済産業省などの関係機関も、民間企業によるVR関連技術のビジネスシーンへの導入を支援しています。近畿経済産業局では、コンテンツ産業支援室が旗振りとなってセミナーの開催や、導入の手引書などを公開しています。

■経済産業省 近畿経済産業局 関西でのVR/AR/MR活用促進の取組■
https://www.kansai.meti.go.jp/3-2sashitsu/vr/index.html

4 大きく伸びるVR関連市場

これまで紹介してきたVRなどの技術は、実は長い歴史があり、古くは1960年代に発明された、ニューヨークの風景が再現されるシミュレーター「Sensorama(センソラマ)」まで遡るともいわれています。その後、幾度のブームと沈静化の波を乗り越え、近年の本格的なブームが到来しています。

VR関連技術などの市場規模としては、IDCやIHS Technologyなどが推計しています。

IDC Japanのプレスリリースによると、日本国内の「AR/VR関連市場」の市場規模は、2023年には34.2億ドル(約3600億円)、2018〜2023年の5年間の平均成長率(CARG)は21.5%と予想されています。

5 最後に:VR? MR? AR?「没入感」がキーワード

ここまで、VRなどの技術について紹介してきましたが、似たような言葉にMR(複合現実)、AR(拡張現実)などもメディアなどで見聞きすることもあるかと思います。さらに、これらを総称するものとしてXR(クロスリアリティ)もあります。

これらは、自身がどれだけ仮想の空間に入り込めるかという「没入感」の程度により分類することができます。簡潔にまとめると、以下のようになります。

画像1

VRなどの技術が本格的にビジネスシーンに浸透してきたのはつい最近で、新型コロナウイルス感染症のまん延を背景に、今後は用途も増えていきそうです。

前出の近畿経済産業局によると、従来は大企業が新規事業の一環としてVR関連技術の導入に関心を示していたものの、新型コロナウイルス感染症の影響で、展示会や商談会がキャンセルやオンライン開催となったことを受けて、自社製品のアピールをVR関連技術で検討する企業が増えつつあるそうです。

現時点では、中小企業が導入する事例は必ずしも多くはありませんが、今後も活用シーンの増加や導入コストの低下なども期待でき、動向を注視すべき分野といえるでしょう。

以上(2020年10月)

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画像:unsplash

採用活動のゴールは入社後の定着にあり/採用活動のデジタルシフトで攻めに転じる!リクルーティングDX最前線(5)

書いてあること

  • 主な読者:採用活動のデジタル化を検討したい経営者
  • 課題:デジタルは苦手。それに人を採用するのだから、リアルのほうがいい?
  • 解決策:コロナ禍で新人教育は混乱、新人は不安を感じがち。オンボーディングをサポートするデジタルツールを駆使することがエンゲージメント向上や離職防止のカギに

採用した新人が入社後すぐに辞めてしまうーー。増加傾向にある早期離職は採用現場における頭の痛い問題です。入社したての新人に“この職場ならやっていけそう”“この会社で頑張っていきたい”と感じてもらうことこそが、採用活動の真のゴールなのです。

最終回の本稿では、入社後にスポットを当てましょう。職場への早期順応、定着戦力化を早める「オンボーディング」という育成プログラムが、最近注目を集めています。オンボーディングをサポートするデジタルツールや、その活用が人事のDX(デジタルトランスフォーメーション)へとつながっていく未来について、解説していきます。

1 オンボーディングとは

オンボーディングとは、教育・育成プログラムのひとつです。新しく組織に入ったメンバーに対して、「業務に必要な知識・仕事の手順」や「オフィスルール」「企業理念や大切にしているカルチャー」などを指導しながら、職場への定着、自律した人材として戦力化を図ることを目的としています。

英語で表記するとon-boarding。もともとはon-board=飛行機や船に乗るという意味から生まれた造語で、入社した“職場にうまく乗り込めた状態”を表す言葉でした。欧米ではすでにさまざまな企業が取り入れていますが、日本においてはあまりなじみがなかった概念かもしれません。しかし、「飲み会で交流を深めること」や「メンターがついて会社のルールを教えること」も立派なオンボーディングの取り組みです。パーソルキャリアが行った「コロナ禍における中途採用者のオンボーディング実態調査」の分類を引用しながら、オンボーディングを整理してみました。

  • 入社前のオフィス見学
  • 人事・採用担当者との面談(入社前/入社後)
  • 配属先上司との面談(入社前/入社後)
  • 配属先メンバーとの顔合わせ(入社前/入社後)
  • 中途採用者同士の顔合わせ(入社前/入社後)
  • 歓迎会など、業務時間外に行う非公式イベント
  • 人事部主導の研修
  • 配属先主導の研修
  • OJT(On-The-Job-Training)

こうしてみても、新人の“スムーズな乗船”に向けて行うべき働きかけが実に多岐にわたっていることが分かります。

2 若者の価値観変化

なぜ、いまオンボーディングが注目を浴びているのでしょうか。それは離職の問題が見過ごせなくなってきているからです。厚生労働省が発表している新規大卒就職者の事業所規模別離職状況によると、平成29年3月卒の新卒社員のうち、1年目で離職した社員は全体の11.5%。約10人に1人が1年目で離職していることになります。

もっとも、この数値自体がこの30年間大きく変わっているわけではありません。多くの人事担当者が口をそろえるのは「なんの相談もなしに突然辞める」という離職傾向です。まだ戦力になっていない新人とはいえ、いきなり辞められるのは大きなダメージです。

突然辞める背景には、彼らが育ってきた環境が大きく影響しています。

  • ネットの普及により、探せばすぐにベストな情報が手に入る。
  • 学校で厳しい指導を受けたり、強制されたりすることが減少している。
  • 個性が尊重され、自分は自分、相手は相手と考える。競争はしない。
  • 危険は排除され、予想外の場面に出くわすことは少ない。
  • 面白いツールやコンテンツに囲まれて楽しい時間が過ごせる。

つまり、失敗することや否定されることを過度に恐れてチャレンジできず、結果的に受け身で自分基準の行動をとる傾向にあるのです。もちろん一括りにすることはできませんが、若手社員の顔を思い浮かべてみると、少なからず心当たりがあるのではないでしょうか。

3 コロナ禍というVUCAの時代

一方で、今の社会環境はVUCA(変動性・不確実性・複雑性・不透明性)と言われる時代。こうした状況への対応が求められるなか、いまの若者たちは、直面するであろう困難を自分で何とかする経験が積みにくい環境で育ってきたわけです。そこに、コロナ禍が直撃しました。

「新入社員導入研修も動画で見るばかりで、ちゃんと社会人としての基礎が身に付いたのか不安なまま。なのに配属されてOJTが始まってしまった。やっていけるんだろうか」

「正式に配属された! やっと仕事ができる! と思ったのにテレワーク継続で全然教えてもらえない。質問は自分からって教わったけど、遠慮してなかなか聞けない」

「上司や先輩社員がコロナへの対応にかかりっきり、自分はまともな仕事ができていないし、何のためにここに入社したのか…」

「テレワークでは仕事上のやりとりだけで雑談も少ないし、とても悩みの相談なんてできない。職場の人ってもっと仲間って感じがするもんだと思ってた」

「よく同期と助け合うって先輩たちから聞いてたけど、ソーシャルディスタンスのこともあるし、なかなか同期とも話せない…」

戸惑いを隠せない新入社員の声が多数寄せられています。

4 リモートでのオンボーディング

新人の突然離職を防ぐためにもオンボーディングの重要性が高まるなか、コロナ禍という不測の事態が加わったことで、どの企業でも新人教育は混乱をきたしています。特に難しいのが、テレワークが進むなかで、対面でのコミュニケーションが限定されてしまうことでしょう。オンラインツールを活用したリモートでのコミュニケーションは、対面でのコミュニケーションと比較すると、どうしても情報が伝わりにくい側面があります。

パーソルキャリアが整理したオンボーディングタスクを見ても分かるように、新人とのコミュニケーションは、業務コミュニケーションと組織コミュニケーションに大別されます。業務コミュニケーションにおいては、短い期間で業務を担えるようになるため、業務に直接つながる情報、知識を提供する必要があります。一方、組織コミュニケーションは、その組織において、新人メンバーがつながり、チームに迎え入れられていると感じられ、チームの一員として実感を持てるようになることです。

また組織コミュニケーションにおいては、単なるつながりだけでなく、会社や組織に対しての求心力を高めることも重要。いわゆるエンゲージメントの観点です。ミッション、ビジョン、バリューなど企業理念を語ることはもちろん、先輩社員が自分の言葉で会話を重ねることが、企業文化を伝えていく上ではとても有効だとされています。

こうしたオンボーディングのコミュニケーションをリモートで行っていくのは容易ではありません。だからこそ、いろいろなデジタルツールを使いこなす必要があるのです。かなり回り道をしましたが、ここからオンボーディングにおけるDXについて解説していきましょう。

5 コミュニケーションを支援するデジタルツール

リモートでのコミュニケーションを円滑にするには、WEB会議システムやチャットツールのようなデジタルコミュニケーションツールはもちろん、育成に使えるeラーニングツール、知見を提供する情報共有・ナレッジ蓄積ツールなど、目的やシーンに合わせてデジタルツールを駆使することが重要です。

加えてお勧めするのが、オンボーディングのクオリティを高めるコミュニケーションツールを活用すること。その代表格が社内SNSです。新人の見えにくいコンディションを知ることで、タイムリーにフォローできる。あるいは業務習熟度を把握することで、指導のレベルや役割付与の適正化が図れる。こんな機能が搭載されたツールがいくつも登場しています。

もう少し具体的に解説しましょう。例えば、仕事終わりに今日の業務の出来栄えや納得感、あるいは充実感を入力する社内SNSがあります。いわゆる日報のようなものと言えば分かりやすいでしょうか。ただ、もう少しくだけた感じのインターフェイスにすることで、気軽に本音が言いやすい仕掛けを作るなど、いくつも工夫が施されていたりします。

業務や職場に慣れきっていない新人の気持ちは、ただでさえ浮き沈みが激しくなりがちですから、コンディションを把握してタイムリーにフォローすることは、離職抑止に極めて重要です。

また、「感謝」の気持ちを贈りあう社内SNSもあります。いまの新人はフェイスブックやインスタグラムで「いいね」を送りあう世代ですから、こうした仕掛けは我々が思う以上にフィットするらしく、仲間への信頼、組織への帰属意識を高めるのに一役買ってくれるのです。

6 科学的なタレントマネジメント

とはいえ本連載で繰り返しお伝えしてきたように、デジタルツールの活用がすなわちDXということではありません。つまりご紹介した社内SNSの活用がゴールではないのです。もちろん新人のモチベーションを高める、あるいは組織へのエンゲージメントを高めることに効果はあるのですが、重要なのはその先にあります。

デジタルツール活用の本質的な価値は、データが蓄積されていくことにあります。個々の社員のコンディション変化をデータ上で付き合わせることで、離職の相関関係を解析していくことが可能になります。さらには職場の問題点を特定し離職防止策の検討につなげていくことができます。

実際に、蓄積されたデータから1on1(Yahoo!などが実践する1対1の面談)を支援するテックサービスもあります。例えば新人Aさんとの面談では、こんな内容をこんな言い方で伝えようとか、Bさんとの面談では、聞き役に徹してこういう感情を引き出そうとか、AIによって面談内容をアドバイスしてくれる技術がすでに登場しているのです。

タレントマネジメントやピープルアナリティクスという言葉も、かなり一般化してきました。属人的な人事から科学的な人事へと変革していくーー。これこそがDXで目指す世界観です。リクルーティングDXの終着点は、人事の本質的なDXにつながっていき完結するのです。

コロナ禍によって激変した採用市場。突然、現出した不況によって採用を絞る企業が続出するいまだからこそ、その逆をつくことでいい人材を獲得できるーー。空前の人手不足で採用に苦慮してきた企業の皆様に、そんな思いを伝えるべく本連載は始まりました。

勇気をもって積極採用に臨む際の武器がDXです。採用の勝ち組となるためには、デジタルツールを駆使しながら、組織変革までを見据えて取り組んでいくDXの視点こそが重要なのです。最後に、改めてこのメッセージをお贈りすることで、本連載を閉じさせていただきます。ご愛読ありがとうございました。

以上(2020年10月)
(執筆 平賀充記)

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画像:Inside Creative House-shutterstock

人を惹きつける「社名や商品名のネーミング」

会社や商品などの知名度やブランド力を高めるために、ネーミングが重要であることは誰もが理解しています。とはいえ、なかなか良いネーミングができない、というのが現実です。

ネーミング開発に約40年携わり、「BIG EGG」「ゆうパック」「かもメール」「ハルメク(雑誌)」など300以上のネーミングの実績を持つ、高橋誠さんに、人を惹きつけるネーミングの考え方や手法について解説してもらいます。これから起業する方、スタートアップで新商品や新サービスを開発しようとしている方には、以降で高橋さんが紹介しているネーミングに必要な4つの要件や、「課題」「発想」「評価」「登録」という手順が参考になるかもしれません。悩みながら楽しみながら、ネーミングを進めていきましょう!

1 社名・商品名・サービス名に良いネーミングは欠かせない

「名は体を表す」という言葉があります。名前はその実体を表すのだから、名づけは慎重に行わなければいけないという、ネーミングの大切さを示した言葉です。
ビジネスでのネーミングといえば社名・商品名・サービス名などですが、それ以外にも、部門名やプロジェクト名、施設名などがあり、これらもしっかりと考えたいものです。
コンビニでは、毎年約6000もの新商品が発売されますが、各店の棚に置かれても、2週間でほとんどが消えてしまいます。各コンビニ店には、平均して常時約2500点の商品が置かれていますが、1年後まで残るのは3割ほどだそうです。
このような激烈な競争状態の中で新商品や新サービスが生き残るには、まず商品やサービスそのものが魅力あるものでなければなりません。それに加えて、ネーム(名前)、スローガン(説明)、ロゴ(文字など)、パッケージなどの工夫も欠かせません。
ある調査によると、商品がヒットする要素で、断トツ1位が「ネーム」だったそうです。以下、「スローガン」「パッケージ」の順でした。このようにネーミングは、商品のヒットに最も影響力があるものなのです。
ネーミングの重要性を多くの企業は理解しており、2019年末の登録商標総数は約191万件に上り、その上、毎年11万件も増えています。ネーミングはビジネスの成功のために、絶対に欠かせない課題です。

2 ネーミングを成功させる4つの要件がある

ネーミングを成功させるには、次の4要件を押さえることが大切です。

1)ネーミングはトップ主導で、全社を巻き込んで行う

「ブルーレットおくだけ」「トイレその後に」「熱さまシート」など、ネーミングでヒットを飛ばし続けているのが小林製薬です。その先頭に立つのが、小林一雅会長です。私も小林製薬のネーミング研修に参加しましたが、会長の精神が全社員に浸透していました。

ネーミングは会社の最重要の仕事の1つですから、トップ自ら考え、率先して実施するべきです。そしてその精神を継ぐ社員たちが、トップと同じ思いで臨むべきです。

2)社名がローマ字やカタカナでも、意味が伝わるものにする

最近、ローマ字やカタカナの社名が増えています。私が心配するのは、漢字は表意文字ですが、ローマ字やカタカナは表音文字なので、意味が通じにくいということです。しかしたとえローマ字表記でも、東陶機器はTOTOに、有線ブロードネットワークスはUSENにして、旧名のイメージを伝えるようにしています。社名でも商品・サービス名でも、ローマ字やカタカナ名にするには、分かりやすくする工夫がとても大切です。

3)「商品・サービスのネーミング」は、対象にピタリと合わせたものにする

おもちゃのバンダイは、シニアを対象に、「大人の超合金」シリーズの模型、「アポロ11号」「新幹線0系」「宗谷」などを発売しています。「超合金」は、1970年代の「超合金マジンガーZ」などロボット玩具で使った名称の再現です。シニア層が子どものときに親しんだ思い出を、呼び起こさせるネーミングといえます。一方、「子ども向けの商品のネーミング」では、子どもの好きなキャラクター名を使うという手があります。王子ネピアのティッシュ「鼻セレブ」の子ども向けの商品名は「ネピア アンパンマン 鼻セレブ」です。

商品ネーミングは、対象にピタリと合わせて表現することが基本です。

4)「サービス名」は、商品名以上にネーミングを重視する

「宅急便」は、ヤマト運輸が1976年に始めたサービスです。一般名称は「宅配便」ですが、「宅急便」を一般名称と考える人もいます。その後、日本通運が「ペリカン便」、佐川急便が「飛脚宅配便」、西濃運輸が「カンガルー便」などの名で参入しましたが、全て「〇〇便」です。

わが社は日本郵政の「ゆうパック」をお手伝いしました。私たちはまず、「便」をやめました。そして、郵便の「ゆう」と小包の「パック」の、日本語と英語を組み合わせた「独自の名前」を考えました。サービス名は、商品名と違い、目に見えての差別化がしにくいものだけに、商品ネーミングよりもネーミングの重要性が高いといえます。

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3 ネーミング開発では、課題を明確にし、発想し、評価し、決定したら商標登録をする

ネーミング開発は、「課題」「発想」「評価」「登録」の手順で行います。
社名の開発でしたら、社の概要、競合会社の社名、最近の新社名の傾向などの情報を集め、詳細に分析して、新ネームの課題を明確にすることがまず必要です。
次に、社内で発想会議を実施しましょう。発想会議は、5~7人くらいの発想チームで行います。メンバーに事前に課題を渡しておき、事前に頭のウォーミングアップをしておいてもらいます。発想会議は、ブレインストーミングなどの発想法を活用しで実施します。発想会議の後は、出されたアイデアをラフにまとめて、評価をします。
評価では、まず長さが適切かチェックしましょう。記憶の研究者ジョージ・ミラーは、「マジカルナンバー7±2」という研究で、数字や単語の記憶は、短期的な記憶でも7文字前後が限界だとしています。そこで、ネーミングは原則として「7文字以内」とすべきでしょう。

次は「意味・視覚・音感」の3観点からの評価ですが、ポイントは以下の通りです。

  • 意味評価=会社・商品・サービスの内容や意味が伝わるか
  • 視覚評価=文字・図形・色彩が良く、見て見やすく、イメージが良いか
  • 音感評価=発音がしやすく、聞いて気持ち良く、感じが良いか

現代はグローバル時代、社名も商品名・サービス名もグローバルを意識したネーミングが欠かせません。ソニーやサンリオは、世界のどの国でも悪いイメージがない名前だといわれます。わが社でも、グローバルに耐えるネーミングの依頼が増えており、ネーミングの評価では主要言語(英・独・仏・西・伊・中)のチェックを必ず行います。

ネーミング開発の最後は、商標登録です。ネーミングが決まったら、必ず商標を登録して「商標権」を確保しましょう。そうすれば、侵害されたら「使用の差し止め」や「損害賠償」を請求できます。自らの知的財産を守るには、商標登録が必須です。

4 ネーミングを良いブランドに育てる

最後は、ネーミングした社名・商品名・サービス名をブランド化する工夫を考えましょう。ブランドは、「識別性」「保証性」「価値性」の3条件を備えたものといえます。

  • 識別性=人々に、他とは違う「独自」なものと認識されている
  • 保証性=その会社や商品・サービスなら「安心」という信頼感を持たれている
  • 価値性=人々に、「価値」あるものとして認められている

ブランドは、人々との間の信頼の絆から生まれます。そのためには、ブランドを息長く管理して、大きく育てることが肝心です。ブランド管理には、ブランドの「活性化」と「コミュニケーション」そして「リスク管理」が必要です。
どんなに評判の良いブランドでも、何もせずにそのままにしておけば衰退します。花王の「アタック」は、1987年に、「ザブ」に代わる主力製品として登場しました。その後、2009年には超コンパクト液体洗剤「アタックNeo」、2013年には洗浄時間を短縮化した、「ウルトラアタックNeo」が発売されました。このように、ブランドを常に活性化して、コミュニケーションをし続けることが欠かせません。
ブランドを取り巻くリスクは、商品の欠陥、人体への危害などの製品のリスク、社員や役員の犯罪など、さまざまあります。これらが表面化すれば、ネット経由でたちどころに大勢の人が知ることになります。だからリスク管理は大変重要です。
市場には多くの企業や商品、サービスがあふれています。ブランド力を高め、リスクから守り、ブランドを「企業の顔」にするためには、ブランドに関わる全ての関係者たちが、そのブランドに愛着と誇りを持つことが不可欠です。
ネーミング開発では最初の段階から関係者たちを巻き込むべきです。わが社はネーミング開発を、我々と社員の方々とが一緒になって進めます。またネーミングやブランドの大切さを、全社員の方に訴える講演会なども必ず実施します。

そして良いブランドにするのに最も重要なのは、消費者たちの支持です。わが社も広告やPRの長い経験と強いネットワークを持っています。ですからネーミング開発ではネーミングからブランド定着までの一貫した流れを、お手伝いするようにしています。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年9月30日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

第14回 A.T.カーニー日本法人会長 梅澤 高明氏/森若幸次郎(John Kojiro Moriwaka)氏によるイノベーションフィロソフィー

かつてナポレオン・ヒルは、偉大な多くの成功者たちにインタビューすることで、成功哲学を築き、世の中に広められました。私Johnも、経営者やイノベーター支援者などとの対談を通じて、ビジョンや戦略、成功だけではなく、失敗から再チャレンジに挑んだマインドを聞き出し、「イノベーション哲学」を体系化し、皆さまのお役に立ちたいと思います。

第14回に登場していただきましたのは、経営コンサルタント 梅澤 高明氏です。A.T.カーニー日本法人会長であり、CIC Japan(ケンブリッジ・イノベーション・センター・ジャパン)の会長、クールジャパン機構 社外取締役、ナイトタイムエコノミー推進協議会(JNEA)理事、元バンドマンで現在もDJ活動をされるなど多彩な表情を持つ梅澤氏の素顔とは?(以下インタビューでは「梅澤」)。

1 「『あぁ、音楽で食べていくのはこういう人たちなのか』と諦めがつきました」(梅澤)

John

本日は、梅澤さん、お忙しいところを本当に愛りがとう(愛+ありがとう)ございます!
お話をできることを非常に楽しみにしておりました。

私と梅澤さんの共通項でもある「音楽」や「イノベーション、スタートアップ支援」などの話と、梅澤さんのお人柄や考え方、そしてそれらが現在のご活躍にどう繋がっていくのかなど、順を追ってお聞きしていきたいと思います。

早速ですが、梅澤さんが東京大学時代に結成されたバンド、「G-SCHMITT(ゲーシュミット)」について教えてください。YouTubeに上がってる映像見ましたが、もはやプロですね♪

梅澤

G-SCHMITTは、僕が大学3年の頃に作ったバンドです。音楽雑誌で募集をかけ、メンバーを集めました。

インディーズバンドとして計9枚のレコードを出し、年に1〜2回、全国の主要な都市をツアーで回っていました。

John

梅澤さんは作曲もご担当されていたのですよね。バンドを組む前から、音楽のご経験があったのですか?

梅澤

幼少期からずっとピアノを習っており、音感を磨く聴音のトレーニングを受けていました。それは、バンド活動や作曲・編曲でも役立っていたと思います。

作曲については、僕1人で全てを作っていたわけではありませんが、曲作りのきっかけとなる部分を作っていたような感じですね。

寝る寸前などふとした瞬間に、良いリフが浮かんでくるのです。
忘れないうちに飛び起きて、リフと、それに合わせたコード進行をギターとベースで弾き、カセットテープに録音していました。

その録音を元にスタジオでドラマーがリズムを刻んで、ギターがコードを重ねていき、楽曲として仕上げていく、という流れでしたね。

John

梅澤さん、やはりかっこいいですね! 私も3歳の頃からエレクトーンを習い、小学校に入ってから12歳までピアノを弾いてました。今は、クラシックもディープハウスも聞きますが、20代の頃はオーストラリアでヒップホップやR&Bの大型イベントをプロモーションしたり、ラジオDJをした後、東京でYouTubeで知り合ったラッパーたちと、ヒップホップレーベルを運営していたこともあります。

でも梅澤さんのような、いわゆる「曲がおりてくる」体験をしたことはなかったです。ラップのフリースタイルとかは自然としてますが。梅澤さんの音楽の才能も凄いですね♪ いつもファッションもすごくオシャレですし。

梅澤

ありがとうございます。
それでも結局、「音楽で食べていけるほどの才能ではない」と途中で諦めました。

インディーズながらレコードを出すと、毎回数千枚は売れました。しかし、5000枚くらいが限度だったのです。

いわゆるヒットと言われる1万枚、3万枚には及ばず、どうしたらいいのかと考えていました。

また当時、ギタリストの布袋 寅泰さんが所属するバンドや、レベッカと一緒に何度かライブをやらせてもらったことも、音楽を諦めるきっかけとなりました。

同じライブハウスに出ていた彼らが、瞬く間に世間の注目を集め、デビュー1年ほどで武道館に立つようなバンドとなっていったのです。
そんな彼らを見て、「あぁ、音楽で食べていくのはこういう人たちなのか」と思い、諦めがつきましたよ。

John

音楽だけで食べていくというのは大変なことですよね。才能、独自性、トレンドを見極める能力、マーケティング力、周りのバックアップ、学ぶ姿勢、情熱、スタッフのチームとして総合力など、多くを求められる領域だと思います。

私も一時は、ヒップホップを諦めてビジネスの世界へ飛び込んだ経験を持つ者として、非常に共感します!

2 「インバウンド需要の高まりも踏まえて、『日本は24時間、観光客をおもてなしできる国になるべきだ』というコンセプトを打ち出しました」(梅澤)

John

バンド活動は諦めた梅澤さんですが、現在DJとして音楽活動を再開されていますよね。どのような背景があったのでしょうか。

梅澤

DJの活動を始めたきっかけは、風営法改正のロビイング活動に関わったことと、一般社団法人 ナイトタイムエコノミー推進協議会(JNEA)という団体を設立したことです。

法改正とナイトタイムエコノミー振興という一連の活動に参加する中で、クラブ・音楽イベントに足を運ぶ機会が増え、「見ているだけじゃなく、自らももう一度プレイする立場になっても良いかな」と思うようになったのです。

アソビシステムのDJ、ChiMyさんに家庭教師としてついてもらって練習して、ある程度自信がついたところで活動をスタートしました。

John

やはり、梅澤さんは、音楽がお好きなのですね!
最近の梅澤さんのSNSなどを拝見すると、ビジネスパーソンというよりもアーティストに見えるほどです(笑)。

イノフィロ梅澤様画像です

風営法改正運動に参加し、ナイトタイムエコノミー推進協議会を設立したということですが、そもそも風営法改正運動に参加するようになったきっかけは、何だったのでしょうか。

梅澤

風営法の改正に向けた署名活動と政治への働きかけをリードしていた弁護士・齋藤貴弘さんとの出会いがきっかけでした。
彼もDJをやっていて、音楽に傾倒している方なのですよ。

そんな斎藤さんが僕を訪ねてくれて、風営法の問題点や、これからどのように変えていきたいかなどを熱く語ってくれたのです。

僕も、もともと音楽のフィールドにいたので、そうした風営法の問題点は実体験として感じていましたし、「そんな活動をしている方がいるなら喜んで協力しよう」と思ったのです。

僕が手伝ったのは主にロビイング。
インバウンド需要の高まりも踏まえて、「日本は24時間、観光客をおもてなしできる国になるべきだ」というコンセプトを打ち出しました。
風営法改正は経済政策の1つなのだ、という考え方です。

結果的に、2015年に法改正が実現し、2016年に施行されました。

しかし、法改正はあくまで第一段階。次に「法改正により経済が動いている」という実態をつくる動きをはじめたのです。

そのために先ほど触れた団体・JNEAを設立し、東京ガールズコレクションの立ち上げを行った永谷亜矢子さんという凄腕のイベントプロデューサーにも加わってもらって、ナイトタイムエコノミーの振興に注力しました。

そうした活動を本格的にスタートしたのは、2019年のことですね。

3 「全体を見て重要なポイントを見つけ出し、大きく物事を解決する力。それがないと会社も社会も、結局は大きく変えられないのです」(梅澤)

John

法改正をスタートと捉え、現在に至るまで「経済が動いている」実態をつくるための活動を続けられているのですね。
お話を伺うと、先ほどのロビイングの「日本は24時間、観光客をおもてなしできる国になるべきだ」というコンセプトもそうですが、梅澤さんの物事の捉え方・見せ方というのは、一瞬で聞き手の脳裏に刻まれる強さがあり、本当に素晴らしいなと感じます。

日米双方での経営コンサルタントとしてのご経験が生かされているのでしょうか?

梅澤

生きている部分もあると思います。

僕はアメリカにいた頃と現在とで、2つの異なるコンサルティング手法を取っています。

1つはアメリカにいた頃に得意としていた、定量分析を用いたマーケティング。もう1つは現在得意としている、デザイン思考などのクリエイティブ・シンキングです。

定量分析を用いたマーケティングとは、わかりやすく言うと過去の統計を元に売上予測を立てるということです。

例えばあるメーカーの売り上げをYとおき、様々な変数をXとします。Xに入るものは、価格や割引額、メディアへのプロモーション、その日の天候などです。さまざまな変数の中で、どの変数が売上に大きな影響を与えるのかを導き出していきます。

今ならビッグデータ解析で容易に予測モデルが立てられますが、僕がアメリカにいた20年前はまだそういった技術がなかった。

また、アメリカにも統計学を専門とする人は多くいましたが、マーケティング領域でそれを活かす人は少なかったため、このモデルは重宝されました。

一方で、現在僕が得意としている右脳型のクリエイティブ・シンキングは、この定量分析のマーケティングや、一般的なコンサルティング手法とは全く違うアプローチです。

一般的に、コンサルティングの仕事というのはエンジニアリングなのです。
問題を要素分解していき、解決しやすい単位まで問題を小さくし、1つひとつ解決していく。それを最後に再統合すれば問題全体が解決するはず、という考え方です。

デザイン思考などのクリエイティブ・シンキングはその真逆で、全体性を重視します。

例えば企業の戦略には多くの部門による様々な活動が包含されます。個々の活動に分解して、それぞれを改善することは勿論可能です。しかし、それらの活動は相互につながっており、一つの活動のやり方を変えると、別の部門の関連する活動にも影響が及びます。従って、要素分解して、個別の活動の部分最適を実現しても、必ずしも全体最適が実現されるとは限らないわけです。

デザイン思考などの考え方は、問題を全体として捉え、その中でもっとも重要なポイントを見つけ出し、その最重要ポイントを大きく進化させる手段を考える、というアプローチと言えます。

全体を見て重要なポイントを見つけ出し、大きく物事を動かす力と、要素分解して個別の問題を一つ一つ解決する力。会社や社会の進化には、その両方が必要です。MBA的なトレーニングを受け、個別の問題解決の手法を扱える人材は、産業界でもかなり増えました。だから、僕は多くの会社が苦手としている、全体を俯瞰してクリエイティブな発想を生むアプローチをより重視してコンサルティングを行っています。

イノフィロ梅澤様画像です

John

確かに、問題を要素分解して解決するというのが一般的になっていますね。

梅澤さんの場合は、物事を小さく分解していく思考と、逆に大きく全体を俯瞰していく思考の両方で課題を捉え直すことが出来るので、より柔軟かつ本質的な解決方法が導き出せるのでしょうね。

特に、「大きな変化を生むためには右脳型の発想が必要」というのは今の日本にもっと浸透してほしいと願います。素晴らしい気づきを頂きました。

4 「都市開発・観光・文化、これらが日本では仕事として分断されてしまっていますが、これを繋げないと魅力的な街や素敵な観光体験はつくれません」(梅澤)

John

梅澤さんは現在、A.T.カーニーやCIC Japanなどさまざまな仕事を兼任していらっしゃいますよね。それぞれの仕事をどのように配分して、生活をされているのですか?

梅澤

A.T.カーニーの仕事が50%、CIC Japanが30%、残りの時間でいろんなことに携わっているような状態ですね。A.T.カーニーでは会長という立場ですが、第一線のコンサルタントとしてバリバリ動いていますよ。

僕は「面白そう」と思うと、考えるより先に手が出てしまう人間なのです(笑)。

A.T.カーニーの仕事の割合を50%まで下げたのは、カーニーの外の領域の仕事にも遠慮せずに挑戦できる環境を作りたかったから。ここ3年、そんな動き方をしている内に、いまのような活動の広がりになりました。

どれが特別ということもなく、全部の仕事が楽しく充実しています

John

梅澤さん、素晴らしい働き方、生き方ですね。それぞれのお仕事に、梅澤さんが携われることで、成功する確率も高まると思うので、お仲間もきっと幸せでしょうね。

しかし、A.T.カーニーの会長でありながら、その仕事の割合を50%にするというのは勇気もいると思います。どうして、ご決断できたのですか?

梅澤

50代になってから「人生100年と言われる中、自分はこのままでいいのか」と考えたことがきっかけです。

100歳まで生きるのなら、98歳くらいまでは現役でいたい。
そのためには、自分にとっての選択肢は広げていったほうがいいし、選択肢を広げるには自己革新を続けないといけないと考えました。

自己革新のために、A.T.カーニーの仕事以外にも、2つ目・3つ目の真剣に取り組む新たな仕事をつくりました。その結果、「経営コンサルタント」という要素以外にも、スタートアップ支援、ナイトタイムエコノミー、DJ、大学教授など、自分の要素が増えていきました。

要素が多いほど選択肢が広がり、人と違う掛け合わせができるのでユニークなポジショニングも取れます。楽しく仕事ができると思います。

John

人生の選択肢を増やすために自己革新を続けること。それが梅澤さんの若々しさ、バイタリティーの秘訣にも繋がっているように感じます。素敵です。

人一倍多くの人生経験を積まれ、多様な表情と幅広い知識をお持ちの梅澤さんですが、ずばり今の日本に足りないものは何だとお考えですか?

梅澤

日本に足りないと感じるのは、オプティミズム(楽天主義)でしょうか。
悲観から入りがちで、なかなか行動を起こせない国民性があると思います。

GDP成長率が低い」「幸福度ランキングが低い」などと問題視する声もよく聞かれますが、GDP成長ありきの発想はもう捨てていいのではないかなと国の委員会などでも問題提起しています。

幸福度ランキングに関しても、口で言うほど幸福度が低い訳ではないのでは?と思います。そうでなければ、日本を捨てる人が続出するはずですが、そうはなっていませんよね。

実は日本のことが好きな人は多いはずですし、「現状に文句を言うだけでなく、もっと行動を起こしてみては」と思います。

John

「日本の幸福度ランキングが低いと言っても、本当に幸福じゃなければ住み続けないのではないか」という意見は、先ほどの「定量分析を用いたマーケティング」と「右脳型のマーケティング」の話とも共通する部分があるように感じます。なぜランキングが低いのかを分析する必要もありますが、それで悲観的になると物事を大きく変えようとするエネルギー自体も失われてしまうかもしれません。まず行動して、実態を変化させていこうという姿勢は、ナイトタイムエコノミーの振興などにも繋がっているのかもしれませんね。

梅澤

そうかもしれませんね。僕は、ナイトタイムエコノミーは大きなポテンシャルを秘めたテーマだと思っています。

日本の産業を客観的に分析すると、これから強みになってくるのは観光や文化産業です。また、豊かな文化を持つことが観光立国の重要な条件とも言えるので、この2つは非常に密接に関係しています。

文化の0→1」が最も起こりやすいのは夜です。例えば音楽ベニューのビジネスを例に考えると、昼間や夕方のステージは固定費を回収するために多くの客を集めたい、そのためにはメジャーなアーティストを呼ぶことが必要です。

しかし、深夜のステージになると、固定費はすでに回収しているので、追加の人件費や光熱費が回収できればOKです。だからリスクを取って、新しいアーティスト、実験的なアーティストに機会を与えることもできる。こういう取組みから、新しい文化の芽が生まれるのです。

また、バーやクラブなど夜の遊び場では、自然と多様なクラスターの人たちが交差し、社会でのステータスに関係なく名刺抜きで人と人がコミュニケーションをとれます。そんな多様な交わりから、新しい文化やビジネスのアイデアが生まれてくるのです。

それなのに、日本ではそんな夜の遊び場、すなわちコミュニティプレースが、風営法で厳しく規制されてきました。
従って、ナイトタイムエコノミーの活性化は、観光政策でもあり文化政策でもあり、街づくりの重要テーマでもあるのです。

都市開発・観光・文化、これらが日本では仕事として分断されてしまっていますが、これを繋げないと魅力的な街・素敵な観光体験はつくれません

僕はこの3つを繋げていきたいと考えていますし、実際に都市開発のコンセプト立案の段階で、文化や観光の要素を取り込むような仕事も増えています。

イノフィロ梅澤様画像です

John

確かに、都市開発や文化政策の一部としてクラブを捉える、という発想はないですね。

私は20代の頃、オーストラリアでヒップホップとR&Bの大きなイベントを毎週プロモーションしたことがあるのですが、街の文化はクラブから生まれている、という実感がありました。

文化の最先端として、一流の大学や大企業に属する人、起業家、弁護士、医者、芸能人、アーティストなど様々なお客様もクラブに来て下さってましたし、友達の誕生日を祝うなどさまざまなシーンで活用して頂くための工夫もしていました。クラブと言っても、シドニーのファイナンシャルディストリクトにあるオシャレなバーや、シティのど真ん中にある歴史的建造物をクラブにつかったりして、ラグジュアリー感にエッジが効いた雰囲気を演出するようにしていました。クラブの中で、雪を降らす演出もしたこともあり、最後は、床が水でビショビショになって、モップでみんなで拭いたこともあります(笑)。

海外では、ダンスは生活の一部となっていますよね。

梅澤

そうですね。

僕も海外のさまざまな都市でクラブに行きましたが、20歳から60歳まで、年齢を問わず多くの人が「同じアーティストが好き」という気持ちでクラブに来て、音楽を楽しむ光景を数多く目にしました。

一方、日本では「クラブは25歳までのもの」と思っている人が多い。

クラブもそうですが、日本では遊び方全般を年齢やライフステージでセグメントしてしまっていて、それがすごく不自然に見えます。

メディアがマスしかなくて、みんなが同じTVや新聞を見ていた時代ならまだしも、これだけ情報も増え、趣味趣向が細分化しているのだから、年齢や職業に囚われずもっと自由に好きなものに興じていいと思います。

John

日本のクラブカルチャーで、遊び方や年齢でのセグメント、すごく分かります。若い人しか行ったらいけないような雰囲気がありますよね。

海外から日本に来た友人などに「40代くらいの大人がちょっとお酒を飲みながら会話をし、音楽も楽しめて、少しだけ踊れる、そんなお店はないの?」と聞かれますが、なかなか思いつきません。

梅澤

確かに海外の方からすると不思議かもしれませんね。

まだまだ数は少ないですが、日本にもそうした用途で使えるお店は少しずつ増えていますよ。僕自身もそうした大人向けのベニューでDJをすることが多いです。

典型的な大きなクラブではなく、個性的なDJバーやリスニングバーも日本にはたくさんあります。そういう音楽ベニューが実は海外の文化人にも高く評価されており、重要な観光資源にもなっていると思います。

John

都内はもちろん、各地方都市も含めて、もっとそのような場所が増えると観光業界も盛り上がるでしょうね。超ディープな音を流すオシャレな社交場があると、言葉や人種の壁が一気になくなり、仲良くなれるんですよね♪

5 「コロナ禍により、音楽ファンは、これまで当たり前だったライブやイベントが、いかに価値の高いものだったかということを、再認識したのではないでしょうか」(梅澤)

John

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、今後は音楽イベントや観光のオンライン化というのも登場すると思います。

ナイトタイムエコノミーのオンライン化について、梅澤さんはどうお考えですか?

梅澤

まず、音楽やコンテンツをオンラインで配信してファンに届けるというのはコロナ以前から当たり前のものとなっていましたよね。

ではクラブに行っていた人たちが、オンラインでDJのプレイが聴けるようなイベントに参加したり、コンテンツに同じようにお金を払ったりするか? と言うと、答えはNOです。
それが日本における現時点の状況だというのが私の理解で、欧米を含めてまだ成功例は見たことがありません。

大きな要因の1つは、オンラインイベントの場合、聴覚も視覚もPC上の限られた体験でしかないということ。

リアルイベントでは、大音量で音質が良いのはもちろん、視覚の刺激も、匂いや臨場感もPC上の視聴とは桁違いです。

その結果、リアルコンテンツが3000円だとした場合、オンラインで1000円で販売しても、なかなか買ってもらえないという結果に至ってしまうのです。

ビジネスセミナーやイベントはオンラインでもそれなりの価値は提供できますが、音楽やスポーツなどエンターテイメントの分野はやはり違いますね。

John

なるほど。とはいえ、コロナ禍でリアルなイベントが開催できない中、ミュージシャンやコンテンツを提供する側に、何かできることはないのでしょうか?

梅澤

状況にもよりますが、リアルの強みを活かして付加価値を提供できれば、今後、これまで以上の価格でチケットを購入してもらうことは可能だと思います。

コロナ禍により、音楽ファンは、これまで当たり前だったライブやイベントが、いかに価値の高いものだったかということを、再認識したのではないでしょうか。

例えばこれまで3000円だったライブチケットでも、今後はもっと高い金額を払ってもらうことは可能だと思います。

リアルへ誘導するために、オンラインで擬似体験をしてもらえるような動線をつくるのも重要です。

オンラインで多くの人にお試しでイベントを体験してもらい、リアルへ誘導する。リアルはよりこれまでよりも高い金額を設定し、最高の体験を提供する場とする。そんな組み合わせになっていくでしょう。

John

なるほど。オンライン上で試し、リアルで体感したいと思ってもらえるような仕組みにしていくのですね。

個人的には、アーティストの活動を社会全体で支えるような動きも出てきてほしいと感じます。

海外では、国がアーティストを保護し、住居を提供して給与を支払っている例などもありますよね。今、日本ではビジネスばかりが取り上げられていますが、文化面で新しい価値を産み出そうとする人をもっと応援する社会になってほしいですね。

6 「世の中を変えるためにはもっといろいろなスタートアップが必要で、そのためにはいろいろな起業家が必要。ダイバーシティはそのための、当然の与件なのです」(梅澤)

John

ここまで梅澤さんのアートやナイトタイムエコノミーに関するお話を伺ってきましたが、スタートアップを支援する活動についてもお聞かせいただきたいです。

梅澤さんが手がけられた、2020年10月1日オープンのCIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)とは、どのような施設なのでしょうか。

梅澤

CIC Tokyoは国内最大規模の都心型イノベーションキャンパス。「日本の起業環境を劇的に改善すること」をミッションにしています。

まずはスタートアップの数を増やす、続いてGO GROBALのスタートアップを増やしたいと考えています。

また、僕たちは「スタートアップエコシステムのダイバーシティを高めたい」という想いもあるので、女性起業家・外国人起業家・外国発スタートアップのサポートをしていくというのも目指していきます。

場所は虎ノ門ヒルズの隣にできた新築ビル、虎ノ門ヒルズビジネスタワー。15・16階を使い、占有面積は6000平米以上、最大250社までの企業が入れる広さです。

2人用の部屋から50名規模の部屋まで用意していますので、スタートアップ企業の成長に合わせて、CIC内でオフィスを拡張していただけます。

CICは世界9都市に展開しており、スタート時から世界につながる場として活用いただけます。

イノフィロ梅澤様画像です

John

現在CICに入居が決まっている企業はどのような規模・業種が多いのでしょうか?

梅澤

7割以上がスタートアップです。
それ以外は、スタートアップを支えるエコシステムのプレイヤーを想定しています。

具体的には、アカデミア、弁護士・弁理士や税理士・会計士、HR企業、VC・投資家、大手企業のオープンイノベーション部隊、さらに政府のイノベーション関連部局の出島などに入ってもらいます。

こだわったのは、現代に即したイノベーションエコシステムをつくり上げること。

例えば、シリコンバレーの初期のスタートアップは、ガレージ発のIT企業と投資家がいれば成長できました。

しかし、第4次産業革命以降ではリアルとオンラインを繋げたビジネスモデルが中心となっています。

リアルの世界にデバイスをばらまき、センサーで情報を集め、ソフトウェアで解析し、サービスという形で出力する。そのようなビジネスモデルなので、スタートアップ一社と投資家だけでは成立しないのです。

デバイスを広くばらまくためには大企業と組むことも必要だし、サービスの出力についても自動運転やドローンの飛行といった国の規制に関わってくるものが多いので、「レギュレーションを変えること」がビジネスモデルをつくる過程に必須で入ってきます。

このようなイノベーションを実現するためには、スタートアップと行政の繋がりも必要不可欠です。

そういった背景もあったので、スタートアップ・大手企業・行政などが全部集まれる場が必要だと考えていました。そんな時に、すでに世界でそうしたイノベーションの場を実現しているCICの日本参入の意図を知り、そのプロジェクトに飛び込んでリードすることになりました。

John

梅澤さん、さすが、素晴らしいお考えですね! スタートアップが成功する背景には、彼らを支えるエコシステムが欠かせません。CEOの熱意や優れたプロダクトはもちろん大切ですが、いかに良いチームを作るのかを忘れるとスケールは難しいですね。

入居するスタートアップについて、特にジャンルの制限などはないのですか?

梅澤

基本的に幅広いセクターをカバーしますが、ヘルスケア、環境・エネルギー、スマートシティ等のクラスターは初期からつくっていこうと思っています。

JETROや諸外国の政府関係機関とも連携していくことで、海外企業も積極的に受け入れていく方針です。

John

CIC Japanが目指す姿のお話の中で、「女性起業家・外国人起業家・外国発スタートアップのサポート」ということも掲げておられました。
なぜ、特に彼らを支援しようと考えてらっしゃるのでしょうか。

梅澤

イノベーション=新結合ですよね。
ということは、結合する要素の多様性が非常に重要です。

これまでの日本のスタートアップは割とBtoCのWeb/モバイルサービスが中心で、意外と同質性が高かったと思います。

僕たちは世の中を変えるお手伝いをしたいと思っているのです。
世の中を変えるためにはもっといろいろなスタートアップが必要で、そのためにはいろいろな起業家が必要。ダイバーシティはそのための、当然の与件なのです。

イノフィロ梅澤様画像です

7 「世界中に魅力的な都市がたくさんある中で、何を磨いて発信するか。地方都市に住む人々が、自分たちの魅力について、徹底的に考え抜くことからではないでしょうか」(梅澤)

John

梅澤さん、素晴らしいですね、賛同致します。私も講演などでよく「Diversity of ideas」と伝えています。立場や育った環境が違う人同士が集まる利点は、多様なアイデアを得られやすいことにあるのではないかと思います。

また、私もスタートアップやイノベーションエコシステムによる地方創生という領域に取り組んでいるのですが、梅澤さんのお話をお伺いしていると、これは地方にも取り入れられるのではと感じています。

どのような活動をしていけば、地方でそうしたエコシステムを生み出したり、中小企業を活性化させたりして経済を回していけるようになるのでしょうか。

梅澤さんのアドバイスをいただきたいです。

梅澤

地方でできることはもっとあると思いますし、それを認識されることからではないでしょうか。

CIC Tokyoの姉妹組織として、ベンチャー・カフェ東京という団体があります。
ベンチャー・カフェはイノベーション創出のためにさまざまな交流イベントを企画・提供する団体で、過去2年半の間に115回ほどのイベントを実施し、のべ2万5千人もの方にご参加いただきました。

地方都市からも引き合いが多く、愛知県名古屋市や茨城県つくば市での定例イベントも8月にスタートしました。

そんなベンチャー・カフェのイベントの一環で、先日京都の方々とお会いする機会がありました。

その際、現地の方々が「京都には東京のような大企業がないのが弱みです」とおっしゃっていたのが印象に残っています。

僕からすると「京都のほうがよほど、世界で戦えるそれぞれの分野のドミナントプレイヤーがいるじゃないか」と思います。
さらにそういった企業の多くは、創業家が経営していてビジョナリー。東京の大企業よりも勝るものをたくさん持っています。

東京じゃないとダメなのではないか、その固定観念を取り払ってほしい。

John

なるほど。まず自分たちが自らの強みに気づくべき、ということでしょうか。

梅澤

そうですね。

世界中に魅力的な都市がたくさんある中で、何を磨いて発信するか。地方都市に住む人々が、自分たちの魅力について、徹底的に考え抜くことからではないでしょうか。

ミニ東京・ミニ大阪はいりません。それなら東京や大阪に行った方が良い。自分たちにしかないものを見つけて磨くべきです。

John

日本全国で、その土地のカラーに合ったさまざまなエコシステムやコミュニティを生み出していくのが重要なのですね。

参考にするとしても、みんな揃ってシリコンバレーを目指すのではなく、自分たちと似た属性を持った国の成功事例やその一部を取り入れてみる、そのような方法がいいのかなと、今のお話をお伺いして感じました。

梅澤

そうですね。CICも今、多くの国からラブコールをいただいていますが、それはCICがボストンモデルと言われており、シリコンバレーではない”第2のベンチマーク“となっているからだと思います。

しかし、そんなCICも日本とボストンでは大きく違います。東京でボストンの真似はできないし、それが最適解でもありません

これは企業にも同じことが言えると思います。
大企業のマネではなく、ユニークな強みで魅力的な中小企業には、お客様も未来の従業員も集まってくるものです。

大手企業に目を向けるのではなく、自分たちは何を目指しているのだろう?何をやりたくて事業をやっているのだろう? ということを常に考えた方が良いと思います。

やりたくないことは、やめてしまってもいい。
僕はそう考えています。

John

自分達の魅力やビジョンに根ざした最適解を模索する重要性がよくわかりました。
まだまだお伺いしたいことはたくさんあるのですが、最後の質問です。

梅澤さんにとって、「イノベーションの哲学」とは何でしょうか。

梅澤

僕のイノベーションの哲学は、「本質を見る直観力」です。

物事の本質を捉えることからスタートしないと、本当に意味のあるイノベーションはできません。

本質とは、世間や業界の常識とは少しずれたところにあることが多いし、そのずれが大きいほど、大きなイノベーションの価値があります。

世間や業界の常識と本質のずれに気がついても、自分の直感が信じられないという方もいると思います。

しかし、人が作ったルールや物差しの中で競争するのは面白くないですよね。
それで勝てる人は少数で、勝てない人は辛いだけ。

まずはレールから外れて自由になることが、イノベーションの第一歩ではないでしょうか。

John

梅澤さん、本日は貴重なお話を愛りがとうございました! これからも一緒に、世界中から日本に多くの方々が働きに、遊びに来たくなる国にして行きたいですね。また、日本と世界を繋いで、スタートアップやアーティストと一緒に、より楽しい、より健やかなエコシステムをデザインしましょう! CIC設立本当におめでとうございます!

梅澤氏のイノベーションの哲学を示した画像です

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年9月30日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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中小企業における戦略的な合併/弁護士が教える組織再編~事業再編・M&Aを学ぶ~(5)

書いてあること

  • 主な読者:複数の会社によるグループ会社の経営者
  • 課題:経営環境が変化する中で、グループ全体を見渡して最適な組織形態としたい
  • 解決策:グループ内に赤字会社があったり、複数の小規模な会社があったりする場合には、合併によりグループ全体にメリットが生じる

経営者は、経営環境が変化する中で、事業の形態を変えつつ経営をしなければなりません。2社以上の会社を1つにする合併も、有力な選択肢となります。このような合併は、株主総会の3分の2以上の賛成を得ることで行うことができます。では、実際に中小企業ではどのようなケースで、どのような合併が行われているのか、具体例をもってご紹介したいと思います。

1 不採算のグループ会社を整理、救済するための合併

1つ目は、収益が悪化した会社を救済するための合併です。

グループ会社であるX社とY社は、ともに不動産事業を営む会社ですが、X社の保有していた不動産価値が大きく下落し、金融機関からも借入金の返済を求められ、経常収支も赤字の状態です。他方、Y社は区画整理事業などを手掛けており、大型の案件が引き渡しとなることで利益を計上する見込みです。Y社は非常に多額の法人税の負担が見込まれる状態です。

このままの状態でX社とY社を単独で経営すると、X社は信用力の低下と収益の悪化により、資金ショートを起こす危険性があります。当然、X社が破綻することになれば、Y社にも大きな悪影響を与えることになるでしょう。

このようなケースでは、Y社がX社を救済するために合併をすることが有効な対策となります。

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1)信用力の強化

X社は赤字経営が続き、かつ、保有資産の価値が目減りし、信用力が低下していましたが、黒字経営を続けるY社と一体となることによって、信用力を回復することができます。

2)繰越欠損金の引き継ぎなど

さらに、過去においてもX社は赤字経営が続いていたとしたら、(多額の)繰越欠損金がある可能性があります。この繰越欠損金は、合併によってY社に引き継がれます。そうなるとY社の所得(税務上の利益)から控除することができるため、Y社の法人税の負担は軽減されます。また、X社が保有する不動産は、不動産市況の下落によって多額の含み損失があります。合併後、その不動産を売却することで資産の譲渡損失が計上され、法人税の負担も軽減することができます。

このような形でX社の繰越欠損金や含み損失をY社の利益と相殺することによって、X社とY社双方にメリットがあります。

3)具体的な手続きについて

X社とY社の例で示した合併は、次のようなステップで実施します。

  • ステップ1

まず、X社の株主が保有する株式をY社が買い取り、X社をY社の100%子会社とします。通常、X社は赤字経営が続いていますので、譲渡代金は低額になり、株式譲渡の負担は軽くなるケースが多くなります。

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  • ステップ2

Y社がX社を100%子会社にした後に、Y社が子会社となったX社を合併します。このように完全子会社を合併という手続きにすることにより、合併手続きを簡略化して実行することができます。

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2 会社の規模を大きくするための合併

2つ目は、複数の会社で同一の事業を営んでおり、事業規模を大きくすることによって、会社の信用力を高めるために合併です。

建設業を営んでいるX社、Y社、Z社は、それぞれ売上規模が10億円から15億円であり、単体で見ると地域内でもそれほど目立った企業規模ではありません。ところが、これを合併すると、単体で40億円の規模となり、地域内でも上位の建設会社となります。

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1)工事利益率の改善

建設会社の場合、企業規模が大きくなることで大規模な工事を受注できるようになります。例えば、これまで孫請けの立場だったものが、元請けの立場になれば、工事利益率が大きく改善できます。

2)間接部門の合理化

X社、Y社、Z社で別々に行っていた管理部門(経理や総務部門など)を統合することで、人件費を抑えて業務効率を上げることができます。

3)信用力の向上

会社の規模が拡大することによって、その地域でも上位の建設会社となることができ、信用力の向上に期待が持てます。信用力が向上すれば金融機関からの評価も高くなりますし、より優秀な人材を集めることも可能となります。

4)具体的な手続きについて

X社とY社とZ社の例で示した合併は、次のようなステップで実施します。

  • ステップ1

企業規模を大きくする合併の場合、まずは合併後に存続する会社(以下「合併存続会社」)を選定します。通常の場合、これまでの会社の伝統や、資産規模から合併存続会社を決定します。資産規模が大きい会社を合併存続会社に指定することによって、移転する資産規模を小さくすることができ、合併時に発生する移転コスト(不動産取得税・登録免許税)を抑えることができます。

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  • ステップ2

合併存続会社が決定した後は、3社の1株あたりの価値を精査し、合併比率を算定して、合併存続会社が合併消滅会社(合併により消滅する会社)を吸収する形で合体します。合併消滅会社の株主には、あらかじめ定められた合併比率に従って、合併存続会社の株式が新株発行されます。

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  • ステップ3

このような合併により、X社およびZ社の資産や一切の契約関係がY社に包括的に承継されます。具体的には、従業員の労働契約や取引先との取引条件なども、そのまま引き継がれることになります。また、X社およびZ社の株主にはY社の株式が新株発行され、Y社の株主に整理されます。

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3 リストラクチャリングとしての合併

最後に、グループ会社のリストラクチャリングとして合併を活用するケースをご紹介します。本体会社の事業と関連する事業を子会社に実施させるケースは多いと思いますが、その関連事業を整理する手法として合併が利用されるケースも多いです。

例えば、本体会社が、X社、Y社、Z社の3社で関連事業を営んでおり、そのうちのY社が慢性的な赤字に陥っているようなケースです。このような場合、グループ全体では黒字経営ができており、Y社の従業員の雇用も守りたいものです。また、Y社は、繰越欠損金がたまっているはずなので、それをグループの収益性の高い会社の利益と相殺させることが必要となります。

そこで、慢性的な赤字経営となっているY社を、本体会社と合併させることによって整理することになります。

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1)繰越欠損金の引継ぎ

Y社の繰越欠損金が本体会社に引き継がれ、本体会社の黒字部分と相殺させることによって、法人税の負担軽減がされる効果があります。

2)Y社の清算手続きの簡略化

Y社は慢性的な赤字に陥っているので、清算すると破産手続き、あるいは特別清算手続きを実施しなければなりません。しかし、グループ全体では黒字経営ができているにもかかわらず子会社を破産させると、グループ全体の信用力が低下する恐れがあります。その点、合併によって子会社を整理すれば、このような信用上の問題を最小限に抑えることができます。

3)税務否認事例に注意

合併を活用した子会社のリストラクチャリングについて、近年、税務の否認事例が出ているので、注意をしなければなりません。Y社のリストラクチャリングを実施する前に、Y社の事業を新設法人(新Y社)に事業譲渡し、Y社を繰越欠損金だけが残る会社にした上で合併した事案について、繰越欠損金の引継ぎが否認されています。税務当局は、事業譲渡によって事業の実体は新設法人に移転しており、その後の合併は、繰越欠損金を引き継ぐためだけに行われた税目的の合併だとして否認されています。

本来であれば、Y社の赤字はグループ内の赤字であり、本体会社に繰越欠損金が引き継がれるべき事例でしたが、厳しい判断もなされています。実際の手続きについては、法務および税務の両面からの検討が重要になります。

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以上(2020年10月)
(執筆 日比谷タックス&ロー弁護士法人 代表弁護士 福崎剛志)

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日本の水道崩壊、今そこにある危機を明らかに〜AI技術を活用したFractaの日本における取り組みについて〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、樋口 宣人さん(Fracta 日本法人代表)です。

道路上から突然水が吹き上がる、道路が陥没する、そんなニュースを毎年何度か見かけます。例えば今年の1月には横浜磯子区での水道管の破裂で、3万世帯で断水がありました。その記事はこちらです(読売新聞電子版から引用)。この破裂した水道管が敷設されたのは1973年、記事中にもある通り1973年から一度も交換していないそうです。
我々が最低限生きていくための大切な最後のインフラであるのが水道。世界トップレベルで誇らしい、日本の水道インフラ、安心安全、衛生的、その誇らしい水道に危機的状況が迫っている。そんな現状とこの社会課題と向き合い、日本のために、水道事業の未来のため、次世代に水道のツケをまわさないために、シリコンバレーが発端の日本人シリアルアントレプレナーが米国で起業、奮闘し導入が進んだAI技術を日本で展開中のFracta社、その日本法人の代表である樋口さんにお話を伺いました。

【Fracta 日本法人代表 樋口 宣人さん】

1 日本の水道の財務インパクトについて

1)日本の水道の年間予算について

危機だ、危機だと煽るつもりはありませんが、今の現状を把握しておくことは重要ですね。まずはアウトラインを。日本の水道における【2050年】と【水道崩壊】について。

◆マクロ要因としての人口減少

  • 2010年の1億2,800万人をピークに、2065年には8,800万人へ
  • 3兆2,450億円の水道料金収入は、2兆2,200億円へ
  • 水道資産をこのまま維持しようとすれば、水道料金は47%もの引き上げが必要

◆管路の老朽化

  • 水道関連資産の7割を占める水道管は老朽化が進む
  • 水道局の約4割で、水道管を中心とした台帳管理の整備がままならない状況に
  • 将来30年間の更新費は年平均約1兆6千億円、修繕費は同約2.3千億円との試算
    出所:令和元年度全国水道関係担当者会議資料 (2019)その1(会議資料)その2(パワーポイント資料編)

◆都会と地方の格差拡大

  • 人口密集度の違いが水道料金の総量の大小に直結
  • 一方で、配管の総延長は必ずしも地域の人口密集度に比例しない
  • 人口減は地方においてこそ顕著であり、半減すらあり得る (水道料金は2倍に)
  • 地方の水道局から経営は逼迫

上記のみならず、台風、地震などの自然災害、コロナウィルス等々への対処も今後増えていくことも考えれば危機が増大していることは明白ですね。

2)財務インパクトを解りやすく

こちらの動画をご覧ください。左右の違いをお解りいただけると思います。

【上記は3年前に行ったサンフランシスコのシミュレーション今後50年後】

街の有様が左と右でどう違うか一目瞭然だと思います。
 まだまだ健全な水道管を押し並べて交換していてしまうとコストは莫大に次代に掛かってしまいます。その財務インパクトを、Fracta社が2017年に試算しました。

サンフランシスコ(約270万人、約2,000km)にFractaを適用すれば、最大40%のコスト削減、すなわち年間20億円の削減を期待できます(※)。つまり50年で単純に計算すると最大20億円×50年で1,000億円のコストを下げていくこと、財務インパクトは莫大ですね。この長期間におけるインパクト、この理解が未来のために大切に感じ、対策を講じていくことが重要に思います。

  • ※試算方法

    ・サンフランシスコ(SFPUC)の給水収益は、500億円(2017年度)
    ・SFPUCの管路更新費30~50億と推測*
    →仮に管路更新費を40%**コスト削減できれば、最大20億円の削減となる。
    注1)*SFPUCからのヒアリングに基づいて、FRACTAが推計した。事業規模がほぼ同じ大阪市と対比しても、ほぼこの水準だと考えられる。

    注2)**SFでのタイムシフトスタディで得たFRACTA検証結果(2018)

3)日本の水道事業が抱える課題(行政とのジレンマ)

実際に同社を導入する際の予算感について、これがすごく簡単。

  • →1キロ10,000円程度(初期費用を除いて)
  • これに対して実際に道路を掘り起こして埋設された水道管を交換する費用は?
  • →1キロの水道管交換費用1億円
  • 市町村における水道管ってどのくらいの長さ?
  • →10万人都市の管路延長は約500~800キロ。FRACTAへ依頼した場合のコストは500〜800万円となります。これが毎年かかる費用となります。

米国でも相当の実績を引っ下げて、日本に持ち込んでいるこの技術、しかしながら、樋口さんは市町村の行政の壁もあると感じています。

行政側の方々と話していると、立場、立場で現状の認識が異なり、技術論に終始し、本来のあるべき姿に議論が及ばないことが見受けられます。技術的な優劣比較ではなく社会コストをいかに下げるか、全体最適の見地でもっとディスカッションができることを望んでいます。行政側の未来への財務戦略の根幹でもある水道インフラ、まさに茹でガエルにならないように早めの決断をしていくべきタイミングに感じます。

2 事業化までのスピード、Fracta社の米国での展開について

1)米国での展開、その当初から私は存じていました

私がなぜFracta社と懇意か? それは、創業者の加藤さんが仲良くしてくださっているからなんです。

【こちらは今年の1月に加藤さんが帰国された際の写真です。笑顔が爽やかですね。】

加藤さんとは、Google社に東大発ロボットベンチャーを売却後すぐにある方のご縁でお会いさせていただきました。かれこれ、6年ほど前になります。その後、私が独立する際、私を慮って連絡をいただきご自身の著書【未来を切り拓くための5ステップ―起業を目指す君たちへ―】を進呈くださり、応援、エールを贈ってくださいました。思い出すたびにアツいものが込み上がります。

それから、あらゆる管の中を自由に進んでいくロボットベンチャーに関わるようになった加藤さん、当初は日本発で活動されていましたが、海外で!ということから米国へ旅立つことに、その際にもお会いさせていただきました。米国の広い大地を縦横無尽に張り巡らされている【管】、その調査用にこの自律走行ロボットで事業化をしていこうと頑張っていたのですが、その自律走行するにも図面が必要だった、その図面データを作ること自体に【価値】があり大事だった。その図面データをアナログからデジタル化できれば大きなマーケットがある、大きな事業化が見えてくる、そこで自律走行ロボットからAIによる水道管調査へピボットしたことから快進撃がスタートとなります。そこから加藤さんの突進力、米国の水道事業者への突撃に次ぐ突撃で現在は全米27州63の水道事業者が採用、既に約12万kmの水道管データを学習済みだそうです。

2)AI技術を活用し水道管劣化を防ぐことはヘルスケアに似ている

 樋口さんのお話の中から、このAIによる水道管調査って、人の【ヘルスケア】に似ていると。私もそのとおりと思いました。私も受診している健康診断。3年に1度とかではなく毎年受診することで、経年のデータ状況がわかりやすくなっています。なにも過去データがなく、当てスッポのように年数ベース古い方から交換している現状は、米国、日本もほぼ同じ。ヘルスケア、健康診断と同様にAI調査を毎年受けることでどの部分から補修するのか、交換するのかを選択して工事計画を立てていく。まさに冒頭の動画シミュレーションの結果に繋がることだと思います。

樋口さんからもシミュレーションができることが大きい、手術するのか、しないのか、将来に向かって、今まさに健康診断をやるかやらないかで、水道での大切な部分の色分け、エリアによっては、優先的にまもるべき病院、工場、発電所、介護施設どこを優先するのかの判断軸もこの調査でえられることになります。

話を伺っていて、私は水道管のピンピンコロリを目指すものだと認識しました。

米国事例 ミシガン州における漏水リスクの予測診断の画像です

広大なエリアのミシガン州、同社の予測診断情報をサイト上でも開示しています。
 そのサイトはこちらです。

3 日本国内で進む事例

1)樋口さんはなぜ、Fracta社にジョインしたのか?

樋口さんとお会いしていて、米国にいる加藤さんと同じ様に、アツい感性をお持ちであることを感じます。その樋口さんのプロフィールについて。

Fracta 日本法人代表
東京大学工学部卒、スタンフォード大学院経営工学修士(MS)。
1990年三菱総合研究所入社。専門はオペレーションズリサーチ、意思決定分析。官公庁の政策立案並びに企業の戦略策定に関わる調査研究、コンサルティングに従事。その後、2000年ケンコーコム(株)を共同創業し常務取締役COO、2015年(株)ウォーターダイレクト代表取締役などベンチャー企業経営者を歴任。2019年9月よりFractaに参画。日本における事業開発責任者として事業統括にあたる。

樋口さんと以前にお話していて、官公庁向けの未来の街づくりに関するお仕事、スタートアップの立ち上げや中小規模の会社経営全般の切り盛り、水に関わること、そして最先端技術に関わること今までのご経験が今のお仕事の布石となり、巡り巡ってこれをやるべしって感じの縁が重なったものと仰っていました。

2)ファーストペンギンが出始めている日本の地方行政での実績について

2019年から日本では実証検証がスタートし、アメリカ同様日本においても有用性を確認しているそうです。実際の役務としての業務委託は今年から始まっていて10以上の自治体で何かしらの【実績】があります。インタビュー時点の9月初旬は2021年度の予算組が始まっているところにアプローチをしている状況だそうです。

実際の事例について。

・愛知県豊田市の事例。同市の発表サイトはこちら。こちらの事例については水道産業新聞記事【豊田市上下水道局の新展開ルポ】から抜粋いたします。豊田市は、愛知県のほぼ中央に位置する人口42万4000人の中核都市。水道は昭和31年に給水開始し、導・送・配水管の総延長は約3,656キロ。現在の年間整備・更新延長は約40キロで総延長に対する整備・更新率は1.1%となっている。豊田市担当者のFRACTA社導入へのコメントとして、『より具体的にどの路線から更新を行っていくのかの優先順位を決定するにあたって、前回の管網機能評価を実施してから5年が経過していることから、旧簡水地区も含めて再度行うことも検討しました。しかし、従来の手法で行う管網機能評価は、職員の経験によるところが大きいですが、旧簡水地区の漏水箇所を熟知している職員は少数であるため、十分な精査を行うことが不可能な状況です。加えて、今年度からストックマネジメント計画が開始し、整備路線の選定は市民などから注目される可能性が高く、優先順位付けの根拠を定めておく必要があるなかで、過去の漏水箇所と行った客観的な要因と土壌環境などの事実に基づいて破損確率を高精度に解析するAIを活用した水道管劣化予測に注目しました』さらに今回の取り組みが持続可能な水道経営につながることを期待し、『市民の皆さんに対して将来にわたって安全・安心な水道水を供給できるよう、今回の結果を上手く活用して効率的に管路の更新を進めていきたいと思います』と結んでいます。まさに決断をしたからこそ言えるコメントと感じますね。

・福島県会津若松市の事例。同市の資料はこちらです。会津若松市は上下水道局では、水道管更新計画の立案にあたり、工事台帳や竣工図面を基にして、布設年度や管種、管継手種類、漏水修理記録から導いた事故(漏水)率といった間接的な情報により、管路更新の優先度を決定してきた。優先度の高い管路は布設年度が古い管に偏っているが、古い管と位置づけられるものでも機能を維持している管路は多く、古い管は更新することにすぐに結び付けにくいのが現状となっている。そのため、有収率向上や管路更新の適正化を図るため、AIを用いた管路劣化度調査を行い、またその結果を基に新たな管路維持管理手法を策定することとした。同局担当者は、効率的な管路更新に向けて、『今回のAIによる診断法は、管路診断法のうち、市がこれまで実施困難だった直接診断法にとって代わる手法として位置づけられるもの。間接的な情報とAIによる診断の結果を組み合わせ、管路更新をの優先順位決定のための1つの要素とすることにより、管路劣化情報が加味された、より多角的な視点で捉える効率的な管路更新を目指したい』とコメントしています。(以上今年7月20日付水道産業新聞より)

福島民報の6月11日(論説)の最後には、市はスマートシティ会津若松の実現に向け、ICTオフィスを軸に事業を展開している。着実に成果を挙げているが、市民の隅々までスマートシティの恩恵が行き渡っているとは言えない状況にある。生活に身近な水道事業へのAIやICTの活用は、市民の理解に大きな役割を果たすだろう。と書かれています。

記事を拝見していて、スマートシティ構想にも合致し、まさに水道インフラのDX(デジタルトランスフォーメーション)を行うものであり、都市デザイン、都市開発への影響度も高いことを感じます。

3)Fracta社の日本における展開について

今年の8月に私のご縁で、樋口さんに登壇していただいたことがあります。そのイベントはこちらです。このイベントの企画開催者である平林さんに樋口さんのこと当日の感想をお聞きしました。『樋口さんは謙虚でクレイジーな方という印象でした。まず自分の話よりも人の話をよく聞いて、誰からでもなにかを学び取る姿勢が本当にステキな方だなと。一旦話し始めると淡々と話しているんですがよくよく聞いているとクレイジーな発想で現実にまで落とし込まれているのがとても印象的でした。例えば、いまの水道管診断のAI技術を他業界への展開のお話(この日本に導入しはじめのタイミングでそこまで描いているのか?)など』という平林さんも一瞬で樋口さんのファンになったのだと感じました。

    Fracta社の想いについて

  • 社会を支えるインフラが、社会の問題にならないために。
  • 多くの課題を解決し、社会益を創り出すために。
  • イノベーションで世界を変えていく

上記の想いを水道インフラからまず実現していく、日本国中で社会益を実現しながら。この挑戦を初めたばかりですが、8月の終わりにまた新たなリリースも有りました。【フラクタ、AIで水処理のコスト削減 栗田工業と:日本経済新聞】記事はこちら。このスピード感と展開力まさにワクワクドキドキの連続、楽しみが尽きない感じです。水道管ビジネスを基礎にこの先には、ガス管、下水道、さらにトンネル、橋梁、人がなかなか近づけないようなインフラにもこの技術は転用可能と感じます。

このようなフルスロットルで駆け抜ける米国発スタートアップ企業と日本の自治体が取り組みを加速すること、またここに地域金融機関とも連携強化することで地方の活性化が進むことを願いたいと思います。

以上(2020年9月作成)