目次
1 サイバー攻撃は「対岸の火事」ではない
2025年秋、アサヒビールの親会社アサヒグループホールディングス(アサヒグループHD)、通販大手のアスクルを襲ったサイバー攻撃によるシステム障害。受注・出荷業務の停止、飲食店や小売店への商品供給が長期にわたって滞るなど、サプライチェーンに深刻な影響を及ぼしました。これらはランサムウェア(身代金要求型ウイルス)に感染したことが原因です。
こうしたランサム攻撃は、従来のように「データを元に戻してほしければ金を払え」と脅すだけでなく、「金を払わなければ盗んだ機密情報・個人情報を公開するぞ」と脅す二重、三重の恐喝が主流
となっています。
IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威2026」では、「ランサム攻撃による被害」が第1位としてランクイン
しました(初選出の2016年以来、11年連続11回目)。
「サイバー攻撃といっても、うちは中小企業で、狙われるような機密情報もないし、大丈夫だろう」と、仮にあなたがそう考えているのであれば、すぐ認識を改める必要があります。警察庁「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」によると、2025年の1年間で報告されたランサムウェアの被害件数は226件、そのうち、中小企業が143件(約6割)を占めています。
サイバー攻撃の対象は無作為で選ばれ、大企業のみならず、中小企業が狙われることもあります。決して「対岸の火事」ではない
のです。
大企業に対する攻撃の踏み台として、「取引先である中小企業」が標的にされることもあります。自社が踏み台にされ、大切な取引先に多大な迷惑をかけてしまう。さらに、賠償責任や社会的信用の失墜により、再起不能なダメージを受ける恐れがあります。
この記事では、難しい技術の話は抜きにして、これだけはやってほしいアクションを「3つの鉄則」として紹介します。
2 今日から始める「3つの鉄則」
1)「怪しいメール」の添付ファイルやURLリンクを開かない
サイバー攻撃の入り口の多くは、依然として「人の不注意」を突くメールです。見覚えのない差出人からのメールはもちろん、知っている差出人でも、
件名や本文の内容に違和感(「至急」「未払い」「請求書」など)があれば、添付ファイルやURLリンクは開かない
ようにしてください。
URLリンクは画像などに仕込まれている場合もあるので、
文字列だけでなく、画像などもクリック/タップしない
ように注意が必要です。また、本文に記載された電話番号なども偽装されている恐れがあります。その番号に電話をかけてはいけません。
2)「パスワードの使い回し」を即刻やめる
パスワードは、容易に推測できないよう、
大小英字・数字・記号を混ぜた複雑なものにして、他のサービスと同じものは使わない
ようにしてください。パスワードを使い回ししていると、一つのアカウント情報が漏洩してしまったとき、他のウェブサービスやアプリにも不正アクセスされて、芋づる式にアカウントを乗っ取られる恐れがあるからです。
3)オフラインの「バックアップ」を確保する
重要なデータは定期的に、
ネットワークから切り離した「物理的な外付けハードディスク」や「専用のクラウド」に保存する体制を構築
します。ランサムウェアは、ネットワーク上の全てのデータを暗号化して使えなくします。物理的に隔離されたバックアップさえあれば、労力・時間はかかるとしても、自力で復旧できる可能性があります。
3 ランサム攻撃は「ビジネス」として横行している
今や、ランサム攻撃は「ビジネス」として横行しているのが現実です。ダークウェブ(一般的な方法ではアクセスできず、Googleなどの検索エンジンで見つけることも不可能なウェブサイト)には、サービスとしてのランサムウェア(RaaS: Ransomware as a Service)が存在し、サブスクリプション(月額制)や利益の分配など、複数の収益モデルが成立しているといいます。つまり、
専門知識がなくてもツールを「購入」して、ランサム攻撃を実行できる仕組みが世界中に普及している
のです。
4 もし「おかしい」と思ったら
どれだけ対策をしても、ランサム攻撃を100%防ぐことは不可能です。大切なのは、「ランサムウェアに感染したかもしれない」と思ったときの初動です。
他のPCへの感染拡大を防ぐため、
まずは物理的にネットワークから切り離します。LANケーブルでネットワークに接続しているなら、LANケーブルを抜く。Wi-Fiでネットワークに接続しているならWi-Fiを切る
といった対応が必要です。その際、PCの電源を切る必要はありません。
そして、情報システムの担当者・責任者に、すぐに報告します。
自分のミスを責められるのを恐れて隠すのが一番の悪手、「おかしい」と思ったら即報告
です。
サイバー攻撃から会社を守るためには、情報システムの担当者・責任者だけの力では限界があります。経営者の皆さんの強いリーダーシップと、全従業員の「自分事」としての意識改革が何よりも求められます。
5 ランサム攻撃による被害を食い止めるためのチェックリスト
| チェック項目 | 済 |
|---|---|
| 見覚えのないメールの添付ファイルやURLは絶対に開いていない | □ |
| 業務で使うすべてのサービスで、パスワードの使い回しをしていない | □ |
| パスワードは容易に推測できないように、大小英字・数字・記号を混ぜた複雑なものにしている | □ |
| 重要なデータは定期的に自動・手動でバックアップを取っている | □ |
| バックアップデータは、ネットワークから物理的に切り離した外付けHDDや専用クラウドに隔離している | □ |
| パソコンやサーバーのOSやソフトは常に最新状態にアップデートしている | □ |
| 「画面がおかしい」「ウイルスかも」と思ったら、まずLANケーブルを抜く/Wi-Fiを切る手順を知っている | □ |
| 異変に気づいたとき、社内で報告するべき先(担当者の連絡先)を把握している | □ |
| たとえ自分のミスであっても隠さず即座に報告できる | □ |
以上(2026年7月更新)
pj60381
画像:日本情報マート















