【書籍ダイジェスト】『すらすら読める新訳 自由論』

本書は、1859年にジョン・スチュアート・ミルが発表し、日本では『自由論』として知られる『On Liberty』の新訳。平易な現代語で翻訳されており、現代にも通じる「社会において個人の自由はどこまで許されるか」の本質的な議論が伝わりやすい書になっている。
「人は他人に危害を加えない限り自由だ」という主張が柱であり、それに関する歴史的な事例や、想定される反論とそれへの回答を交えながら、論を展開する。

書籍ダイジェストは、こちらからお読みいただけます。pdf

SNSの「いいね」がトラブルに? ソーシャルハラスメントの6類型

1 SNS上で引き起こされる「ソーシャルハラスメント」

今やSNSは社会インフラ。ビジネスにおいても社員同士の連絡や採用広報、マーケティングなど、さまざまな用途でSNSが活用されています。一方、そうした状況の中、社員による「悪口・誹謗中傷に当たる投稿をする」「SNSのフォローや『いいね』を強要する」など、

SNSに関するさまざまなハラスメント、「ソーシャルハラスメント」(以下「ソーハラ」)

が問題になっています。

ソーハラは、個人の尊厳を深く傷つけるだけでなく、会社のレピュテーションリスクや法的リスクにも直結する、看過できない課題ですが、法務・労務体制が十分でない中小企業では、ソーハラへの対応が後手に回りがちです。

そこで、この記事では、中小企業の経営者や労務担当者の皆様が、ソーハラの実態を理解し、具体的な防止策と対応策を講じるための実践的な情報を提供します。

2 具体的にどのような行為がソーハラになる?

ここでは、ソーハラの主なパターンをご紹介します。

1)悪口・誹謗中傷

匿名性や拡散性の高いSNSの特性を利用し、特定の個人や会社、商品に対して事実無根の悪口や根拠のない誹謗中傷を投稿する行為です。名誉毀損や侮辱罪に該当する可能性があり、会社イメージの著しい低下を招くこともあります。

2)不適切な写真・動画の投稿、拡散

酒席での不適切な行動や、業務とは関係のないプライベートな写真・動画を本人の許可なく撮影し、SNSに投稿・拡散する行為です。特に、身体的特徴や性的な内容を含む場合は、セクハラに該当することがあります。

3)「いいね」やフォローの強要

主に上司が部下に対し、自身の投稿への「いいね」やアカウントのフォローを執拗に求めたり、それらを業務評価に結びつけたりする行為です。部下は上司の意向に反する行動を取ることで不利益を被ることを恐れ、精神的な負担を感じるようになります。

4)プライベートの詮索・晒し

SNSに投稿された写真や情報から、社員のプライベートを執拗に詮索したり、本人の許可なく晒したりする行為です。個人のプライバシーを侵害するだけでなく、ストーカー行為に発展する可能性も孕んでいます。

5)オンライン上での監視・つきまとい

社員のSNSアカウントを密かに監視し、業務時間外の投稿内容を業務に関連付けて指摘したり、批判したりする行為です。また、特定の社員のSNSアカウントに頻繁にコメントやメッセージを送ったり、ライブ配信などに執拗に参加したりすることも含まれます。

6)業務時間外の連絡・業務指示

緊急性がないにもかかわらず、深夜や休日にSNSのメッセージ機能を通じて業務連絡や業務指示を行う行為です。社員は常に業務から解放されないというプレッシャーを感じ、心身の健康を損なう恐れがあります。

次章からは、上記のパターンごとに具体的な事例を挙げ、それが法的にどのような問題になり得るのか、またどのように対応すべきかについて解説します。ただし、対応策は一例ですので、実際に同様の事案が起きた場合、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

3 悪口・誹謗中傷

1)上司を逆恨みして誹謗中傷する若手社員

若手社員のAさんは、仕事のミスが多いことを理由に、上司のB課長からよく叱られます。鬱憤がたまっていたAさんは、SNSに「ウチのBって上司、マジで使えない」「Bはハラスメントをしている」といった投稿を度々行いました。B課長はその投稿を目にして、精神的に深く傷つき、会社に行きたくないと感じるようになりました。

2)法的にどのような問題になり得るのか?

Aさんの行為は、パワハラ6類型の「精神的な攻撃」に類似するハラスメント行為であり、B課長の人格権を侵害する不法行為となる可能性が高いです。。精神的な攻撃とは、侮辱、名誉毀損、ひどい暴言などがこれに当たります。会社が適切な対応を怠ると、会社の安全配慮義務違反につながり、B課長の精神的苦痛について、会社の責任が問われる可能性があります。

3)対応策は?

投稿内容がAさんのものであることが明らかな場合、Aさんに即投稿を削除するよう指示します。投稿が匿名であっても、B課長に対する誹謗中傷であることが明らかな場合、情報流通プラットフォーム対処法にのっとり、大規模プラットフォーム事業者(プロバイダ等)の削除申出窓口から、書き込みの削除を請求することが可能です。

投稿者がAさんであることが特定できた場合、どのような意図があったのかなどの事実確認をした上で、本件がハラスメントに該当することを説明し、再発防止のための指導を行います。悪質な場合や指導をしても投稿をやめない場合は、就業規則に基づき懲戒処分も検討します。

被害者であるB課長に対しては、精神的ケアを行い、必要であれば産業医面談やカウンセリングの機会を提供します。

3 不適切な写真・動画の投稿、拡散

1)悪ふざけで女性社員の動画を許可なくSNSに投稿した同僚

Cさんは、会社の飲み会で、居酒屋の店員に扮した同僚の女性社員Dさんが、酔った勢いで男性社員に抱きつかれている様子をスマートフォンで撮影し、本人の許可なく会社のSNSグループに投稿しました。Dさんは「セクハラ被害を受けた」と晒されたことで深く傷つき、会社を辞めたいと考えるようになりました。

2)法的にどのような問題になり得るのか?

この事例は、「環境型セクハラ」に該当する可能性が高いです。環境型セクハラは、性的な言動により就業環境が害され、社員の能力の発揮に悪影響が生じることを指します。性的な言動により、Dさんの就業環境が著しく害されたと判断されます。また、本人の許可なく動画を撮影し、拡散したことは、人格権を侵害するハラスメントに該当します。

3)対応策は?

まずはCさんに即座に動画を削除させ、拡散を防止します。さらに、Cさんにどのような意図があったのかなどの事実確認をした上で、本件がハラスメントに該当することを説明し、再発防止のための指導を行います。悪質な場合や指導をしても投稿をやめない場合は、就業規則に基づき懲戒処分も検討します。

被害者(Dさん)が安心して働けるよう、必要に応じて配置転換なども検討しますが、基本的に配置転換させる対象は行為者(Cさん)です。被害者を配置転換してしまうと、被害者はハラスメントだけではなく、仕事の内容についても被害を受けることになりかねません。

4 「いいね」やフォローの強要

1)部下に「いいね」やフォローを強要する上司

E課長は、自身のSNSアカウントで日常の出来事や趣味に関する投稿を頻繁に行っています。E課長は部下のFさんに対し、業務時間中に「私の投稿に 『いいね』ついてないよ、早く押しといてね」「なんでフォローしてくれないの?」などと繰り返し発言し、露骨に「いいね」やフォローを強要しました。Fさんは、E課長との人間関係を悪化させたくない一心で、仕方なく「いいね」やフォローをしましたが、そのことでSNSの利用が苦痛になりました。

2)法的にどのような問題になり得るのか?

この事例は、E課長が、優越的な関係を背景として、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動をすることで、Fさんの就業環境が害されたとして、パワハラに該当する可能性があります。

3)対応策は?

E課長に対し、SNS活動は個人の自由であることを説明し、部下への干渉、「いいね」やフォローの強要を行わないよう指導します。悪質な場合や指導をしても改善が見られない場合は、就業規則に基づき懲戒処分も検討します。

なお、本件は上司から部下に対するソーハラですが、例えば会社の公式アカウントについて、「いいね」やフォローをするよう業務命令を出すのも、基本的には避けたほうがよいです。SNSは本来、個人がプライベートで自由に使用するものです。そこに業務命令が介入する余地がどの程度あるかは疑問の残るところです。

5 プライベートの詮索・晒し

1)部下のSNS投稿について執拗に質問し、周囲に言いふらす上司

営業部の女性Gさんが、業務時間外に友人と旅行に行った写真を個人のSNSに投稿しました。数日後、上司のH課長がGさんに対し、業務中に「この前の旅行、楽しかったみたいだね。彼氏と行ったの?」「写真の背景、〇〇だよね?どんな店だった?」などと執拗に質問してきました。さらに、H課長は、GさんのSNS投稿を他の社員に見せながら、「彼女にもついに彼氏ができたらしいぞ」などと吹聴しました。

2)法的にどのような問題になり得るのか?

この事例は、パワハラ6類型の「個の侵害」に該当する可能性が高いです。「個の侵害」とは、私的なことに過度に立ち入る言動を指します。また、性的な要素が含まれる場合や、職場環境を害するような場合は「環境型セクハラ」に該当する可能性もあります。

3)対応策は?

まずはH課長に対し、個人のプライベートな情報に不必要に立ち入らないように注意し、業務に関係のない質問や情報共有を行わないよう指導します。悪質な場合や指導をしても投稿をやめない場合は、就業規則に基づき懲戒処分も検討します。

なお、被害者がハラスメントを受け流して意思をはっきりと伝えない場合があります。そして、このような場合に加害者を頭ごなしに叱責すると、「セクハラだと思わなかった。嫌なら嫌と言ってくれなければ分からないじゃないか」と反発してくることがあります。ですので、いきなり頭ごなしに叱責するのは得策とはいえないケースがあります。

6 オンライン上での監視・つきまとい

1)部下のSNSをフォローし、休日の過ごし方などを執拗に聞く上司

I課長は、部下のJさんのSNSアカウントをフォローし、業務時間外に投稿した内容(例えば、休日の過ごし方や趣味の活動など)について、職場で全て把握しているかのように話しかけてきます。「週末は〇〇に行ってきたんだね。仕事の疲れは取れた?」など、一見気遣うような言葉も、Jさんにとっては監視されているようで常に不快でした。

2)法的にどのような問題になり得るのか?

この事例は、業務とは無関係な私生活への過度な干渉「であり、部下が当惑や不快の念を示したのにやめないような場合は、パワハラ6類型の「個の侵害」に該当する可能性が高いです。上司としては部下との雑談のつもりであっても、部下のプライベートに必要以上に踏み込むのは避けるべきです

3)対応策は?

 基本的な対応は「5 プライベートの詮索・晒し」と同じです。

7 業務時間外の連絡・業務指示

1)深夜や休日でもおかまいなしに連絡を入れる上司

K課長は、部下のLさんに対し、休日や深夜でもSNSのメッセージ機能で業務に関する連絡や指示を頻繁に送ってきます。例えば、夜11時に「明後日までにこの資料を修正しておいて」とメッセージを送ったり、休日に「〇〇の進捗ってどうなってる?」と聞いたりします。しかも、メッセージへの返事が遅いと叱るので、Lさんは気持ちが休まりません。

2)法的にどのような問題になり得るのか?

この事例は、パワハラ6類型の「過大な要求」に該当する可能性があります。「過大な要求」とは、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なこと、あるいは業務とは関係のないことを強制することです。業務時間外の過度な連絡や指示は、社員の心身の健康を害し、過重労働につながる恐れがあります。

3)対応策は?

まずK課長に対し、業務時間外の連絡・指示を控えるよう指導します。

その上で、就業規則等で「原則、勤務時間外には連絡しない(緊急の案件などを除く)」などのルールを定め、社内に周知します。SNSの通知についても、勤務時間外では通知をオフにすることを推奨し、社員が安心してプライベートを過ごせるよう配慮します。

以上(2025年8月作成)
(監修 弁護士 坂東利国)

pj00785
画像:Robert Kneschke-Adobe Stock

経営状態を見える化する 「予実管理」の手引き(2025年9月号)

先が見通せないVUCAの時代に、企業が生き残り持続的な成長を遂げるために、「予実管理」を行なう必要性が高まっています。また、生成AIや各種ITツールの発達を追い風に、中小企業においても、正確かつ効果的な予実管理が可能になってきています。本冊子を教材として社内教育に活用したり、各事業部門の実務担当者に読んでもらったりして、予実管理の精度を高めましょう。


【朝礼】「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の精神を大切に!

【ポイント】

  • 会社はチームであり、成果が出たときこそ、謙虚な姿勢を忘れてはならない
  • 謙虚さとは、自分の現状に満足せず、常に学び続け、高みを目指す姿勢の表れでもある
  • 謙虚さを忘れなければ、会社全体の稲穂もより一層豊かに実っていく

おはようございます。この9月は、私たちにとって上期の総決算、つまりこの半年間の努力の成果を振り返り、下期へとつなげる大切な1カ月です。さて、この実りの秋にちなんで、今日皆さんと共有したいことわざがあります。それは、「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」です。稲が実れば実るほどその重みで穂が垂れ下がる様子から転じて、「学問や徳が深まり、人間として大きく成長した人ほど、自らを誇示することなく、謙虚な姿勢でいるものだ」という教えを示しています。

私たちもこの上期、さまざまな目標を掲げ、日々業務に励んできました。それぞれが困難に直面しながらも、知恵を絞り、工夫を凝らし、時には協力し合いながら、多くの成果を上げてきたことと思います。企画が形になったこと、お客様に喜んでいただけたこと、プロジェクトを成功させたことなど、一人ひとりの努力が実を結び、会社としても着実に成長できた半年間だったと思います。

まさに、私たちの努力の「稲穂」が豊かに実った時期といえます。しかし、ここで大切なのが、この「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の精神です。成果が出たときこそ、私たちは謙虚な姿勢を忘れてはなりません。例えば、皆さんのプロジェクトが成功したとします。その成功は、個人の能力だけでなく、チームメンバーの協力、他部署のサポート、あるいは上司の適切な指示、そして何よりもお客様からの信頼があってこそ成り立ったものです。自分一人の力ではない、という感謝の気持ちを持つことが、さらなる成長への第一歩となります。

ただ、謙虚さとは、単に控えめであればよいのではありません。それは、自分の現状に満足せず、常に学び続け、高みを目指す姿勢の表れでもあります。上期に素晴らしい成果を出せたからこそ、私たちはその成功体験から何を学び、何を改善できるのかを冷静に見つめ直す必要があります。課題や反省点と真摯に向き合うことで、下期にはさらに大きな実りを得られるはずです。

私たち一人ひとりが、自分の「実り」をしっかりと受け止めつつも、決しておごることなく、常に学びの姿勢を持ち続けること。そして、周囲への感謝を忘れず、互いに協力し合うことで、会社全体の稲穂もより一層豊かに実っていくことでしょう。

以上(2025年9月作成)

pj17227
画像:Mariko Mitsuda

商品開発×人財開発×デザインで挑む! 徳島発・新商品開発プロジェクト


↑クリックで拡大表示↑

徳島県産業国際化支援機構(以下「機構」)は、県内中小企業の競争力強化と県産品の販路拡大を目的に、「徳島セレクト商品開発実践業」を展開します。

事業では、商品開発・人財開発・デザインの専門講師を迎え、魅力的な加工品の創出と国内外へのプロモーションを支援。ヒット商品を手がけてきた講師の助言を受けながら、新商品の開発や既存商品のリニューアルにも取り組みます。

売れる商品づくりに本気で挑戦したい事業者さまにとって、絶好の機会です。ご興味のある方はぜひご参加ください。


【開催概要】

  • 参加対象 県内食品製造事業者
  • 定員 5事業者
  • 会場 とくしま産業振興機構 セミナー室
  • 申込方法 機構または徳島県ホームページに掲載の申込書に必要事項をご記入の上、FAXまたはE-mailにて申込
問合わせ先
公益社団法人徳島県産業国際化支援機構 販路開拓・海外進出課
TEL:088-676-3001
FAX:088-676-3040
E-mail:yamamotog@tokushima-bussan.com

地域商社の関連記事はこちら!

以上(2025年8月作成)

教育訓練休暇給付金 10月スタート

今年10月1日、教育訓練休暇給付金がスタートします。従業員が業務に必要な知識・技術を身につけるため無給の休暇を取って学ぶ場合に、雇用保険から従業員に給付金が出る制度です。従業員が給付金を受け取るには、会社が就業規則を整備し、書類などの手続きを行わなければなりません。本稿では、教育訓練休暇給付金のしくみや、会社がやるべきことについてお伝えします。

この記事は、こちらからお読みいただけます。pdf

教育訓練休暇給付金 10月スタート

今年10月1日、教育訓練休暇給付金がスタートします。従業員が業務に必要な知識・技術を身につけるため無給の休暇を取って学ぶ場合に、雇用保険から従業員に給付金が出る制度です。従業員が給付金を受け取るには、会社が就業規則を整備し、書類などの手続きを行わなければなりません。本稿では、教育訓練休暇給付金のしくみや、会社がやるべきことについてお伝えします。

1 無給休暇を連続30日以上

給付金の対象は、雇用保険の一般被保険者です。65歳未満で、正社員または1年以上の雇用が見込まれるパート従業員が該当します。就業規則等に基づき、会社からの業務命令ではなく本人が自発的に希望し、連続30日以上、教育訓練を受けるため無給の休暇を取ることが条件です。

教育訓練にあてはまるのは、①学校教育法に基づく大学、大学院、専修学校等での勉強、②教育訓練給付金の指定講座を行う法人が提供する教育訓練等、③司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得など職業安定局長が定めるもの――です。

さらに、①休暇開始前2年間に12か月以上、雇用保険の被保険者期間がある、②休暇開始前に5年以上、雇用保険の加入期間がある――という要件もクリアする必要があります。

給付日数は、雇用保険の加入期間に応じて異なります。給付金の日額は原則、休暇開始前6か月の賃金日額に応じて計算されます。

○給付日数

給付日数

○支給額のイメージ

支給額のイメージ

※給付月額は、給付金の日額×30日

2 就業規則等を整備

従業員が教育訓練休暇給付金を受け取るためには、まず、会社が、教育訓練休暇について就業規則や労働協約などに定め、従業員に周知する必要があります。規定する内容は、対象となる教育訓練、休暇の長さ、休暇取得の手続きのほか、休暇を与える対象者に勤続年数などの基準を設けるか、休暇を賞与や退職金の算定期間に入れるかなどです。

厚生労働省は、規程例をパンフレットで公表しています。ハローワークや、各都道府県の働き方改革推進支援センターでも相談に応じています。

○手続きの流れ

手続きの流れ

就業規則に基づき、従業員から教育訓練休暇を取りたいと申し出があったら、会社と従業員の間で休暇を取ることについて合意します。会社は合意後、従業員から提出された教育訓練休暇取得確認票に必要事項を記載し、休暇開始日から起算して10日以内に賃金月額証明書を作り、管轄のハローワークに提出しなければなりません。その際、教育訓練休暇が定められた就業規則等、賃金台帳、出勤簿の写しも添付します。

ハローワークから、賃金月額証明書、教育訓練休暇給付金支給申請書が交付されたら、速やかに従業員に渡してください。一連の流れは、離職票の交付手続きに似ています。

教育訓練に専念してもらうため、教育訓練休暇中に、会社が出勤を求めることはできません。また、解雇や雇止め、休業を予定している従業員は、教育訓練休暇給付金の支給対象にならないので、注意してください。

3 さいごに

教育訓練休暇を導入するかどうかは、各企業の裁量に任されています。さらに、教育訓練休暇給付金は、就業規則等に基づき会社と従業員が合意したうえで休暇を取ることが前提となっています。会社が休暇取得を拒み、合意しなければ、給付金は支給されません。

人員体制や繁忙の状況によっては、教育訓練休暇を導入するのが難しいケースもあるでしょう。無給とはいえ、連続30日以上の休暇を与えるのは、中小企業にとってハードルが高そうです。その一方で、従業員のスキルアップや資格取得を後押しする手段として、この給付金の活用を前向きに検討してみるのもよいでしょう。

※図表はすべて、厚生労働省のパンフレット「教育訓練休暇給付金のご案内」より

※本内容は2025年8月10日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

sj09156

画像:photo-ac

単なるゲームじゃない! シニア向けeスポーツの市場動向と参入ポイント

1 拡大するシニア向けeスポーツ市場の可能性

高齢化が進む日本社会で、シニア層のニーズは多様化しています。健康維持、社会参加、生きがい創出などへの関心が高まる中、新たなビジネスチャンスとして注目されているのが、

シニア向けeスポーツ

です。eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦を、スポーツ競技として楽しむものです。

体力や年齢といった身体的な制約が少ないため、シニア層も気軽に楽しむことができます。

最近のシニア層は、日常的にスマートフォンやパソコンを使いこなしている人も多く、コンピューターゲームなどにもさほど抵抗感が少ない

という特徴があり、そうした意味で「シニア向けeスポーツ」は、今後ますます注目を集める可能性があります。

この記事では、中小企業の経営者がシニア向けeスポーツ市場への参入を検討する際に必要となる、市場の基本情報、具体的なメリット、参入時の注意点、参考事例を紹介します。

2 日本のeスポーツ市場規模の推移とシニア市場の展望

1)eスポーツ市場全体の成長予測

日本のeスポーツ市場は、近年急速な成長を遂げており、今後もその拡大が予測されています。日本eスポーツ協会の予測によると、市場規模は2019年の61億1800万円から右肩上がりに成長し、2025年で199億8200万円に達する見込みです。

日本のeスポーツ市場規模の推移

2)シニア層のeスポーツへの関心と潜在的ニーズ

eスポーツ市場全体が拡大していく中で、特に「シニア向け」が注目キーワードとなっています。eスポーツは身体的な制約を受けにくいため、「体力がなくても参加できる」「年齢や障害の有無に関わらずプレイできる」といった点で、運動するのは難しい人でも気軽に楽しめるのが強みです。

また、今のシニア層はデジタル分野への関心が強く、デジタルハルメクホールディングス(東京都千代田区)の「eスポーツに関する意識と実態調査(2025年2月)」によると、eスポーツへの関心が最も高いのは70代以上で、「プレイ/視聴」のいずれかに関心がある人の割合が約半数(52.6%)を占めています。

3)シニア向けeスポーツの多面的なメリット

シニア向けeスポーツは、プロを目指すような高い競技性だけでなく、自分のペースで「楽しい」と感じられる娯楽性も重要視されています。例えば、60歳以上の人だけが会員になることができ、スタッフが初心者にゲーム機の操作方法などを指導してくれるeスポーツ施設などがあります。シニア層が同じ施設に通う仲間同士で交流したり、自分の孫や会社の若手社員と一緒にオンラインゲームで遊んだりすることで、刺激を受けられるという面もあるでしょう。

シニア向けeスポーツの、単なる娯楽を超えたさまざまなメリットを見ていきましょう。

1.健康促進

eスポーツは、ストレス軽減、記憶力向上、認知症予防といった脳機能の活性化効果が期待されています。また、足腰が悪くてもプレイできるため、身体的な負担が少なく、リハビリテーションの一環としても活用可能です。

2.交流促進

同じ施設に通う仲間同士での交流はもちろん、自分の孫や会社の若手社員と一緒にオンラインゲームで遊ぶことで、世代を超えた新たなコミュニケーションが生まれます。これは孤立防止にも繋がり、社会とのつながりを創出する重要な要素となります。

3.生きがい創出

一般的に、eスポーツで求められる反射神経や動体視力は加齢とともに低下する傾向にあるため、プロゲーマーのピークは20~30代といわれていますが、なかには平均年齢65歳以上のプロeスポーツチームも存在します。「本気でプロの選手を目指す」などの目標を持つことで、新たな生きがいを得る人もいるでしょう。

シニア向けeスポーツが提供するこれらのメリットは、単なるエンターテイメントの枠を超え、認知症予防、リハビリ、孤立防止といった「健康・福祉サービス」としての側面を強く持っています。eスポーツを健康・福祉のツールとして位置づけると、新しいビジネスチャンスが見えてくるかもしれません。

3 シニア向けeスポーツ市場参入における競争環境分析

1)シニア向けeスポーツ事業参入の分析

シニア向けeスポーツ施設を開業する、もしくは関連のサービスを行うと仮定して、シニア向けeスポーツ事業の競争環境を、ビジネスフレームワークの「ファイブフォース分析」で考えてみます。

ファイブフォース分析

シニア層の中には、デジタルのゲームはとっつきにくい、ゲームは体に良くないといったマイナスイメージを抱えている方もいるかもしれません。一方で、そうしたシニア層に対して、「認知症の予防に効果がある」「シニア層同士、あるいは世代を超えた新たな出会いやコミュニケーションの場ができる」、そして、「これから仲間と本気でプロ選手を目指すワクワク&充実感を、改めて感じてみませんか」などのアピールをしていくことが、eスポーツを普及させる鍵になりそうです。

2)事業モデルと収益源の多様性

シニア向けeスポーツ事業の収益源は、次のようなものが考えられます。

1.施設運営

ゲーミングPCやチェアを備えたeスポーツカフェや、月額会員制のスポーツジムのような施設運営が基本的なモデルとして考えられます。例えば、60歳以上限定のeスポーツ施設「ISR e-Sports」では、月~金曜日は1000円、土曜日は2000円の利用料を設定しており、登録料や年会費は無料です。

2.イベント・大会主催

シニア限定のeスポーツ大会や配信イベントを企画・開催することも有効です。例えば、大会や配信イベントの参加費、観覧チケットの販売、グッズ販売などが収益源として挙げられます。

3.コンテンツ開発・プログラム提供

健康維持や認知機能向上をテーマにした独自のコンテンツ開発や、シニアのデジタルリテラシー向上支援を組み合わせたプログラム提供も考えられます。

4.スポンサー料・広告収入

eスポーツ市場全体で最も大きな収益源はスポンサー料や広告収入とされています。シニア向け市場の場合、健康関連企業や介護関連企業がスポンサーになってくれることが期待されます。

5.介護保険外サービスとの連携

介護施設でのeスポーツ導入事例が増加しており、今後は医療分野との連携も進む可能性があります。介護予防やリハビリテーションの一環としてのeスポーツ提供は、新たな収益源となり得ます。

4 シニア向けeスポーツの事例

1)日本初の60歳以上限定eスポーツ施設: ISR e-Sports (兵庫県神戸市)

ISR e-Sportsは、日本初の60歳以上限定eスポーツ施設として2020年に開業しました。この施設は、eスポーツによって同じ場所・同じ時間を参加者同士が共有することで新たなコミュニケーションが生まれることを大切にしています。シニア世代にとっては、生きがいづくりや孤立防止にもつながります。特筆すべきは、

プレイ前の準備体操やプレイ後のクールダウンタイムを設けるなど、シニアの身体に配慮した運営を行っている点

です。また、スタッフがゲームの操作方法を丁寧に指導し、初心者でも安心して楽しめる環境を提供しています。

■ISR e-Sports■
https://isr-group.co.jp/isr-parsonel/e-sports/

2)シニア向けeスポーツ関連サービス:ハッピーブレイン (熊本県合志市)

ハッピーブレインは、自治体や高齢者施設、重度障がい者向けにeスポーツの導入サービスを提供しています。特筆すべきは、

ボタン操作のみで楽しめる「UDe-スポーツ(ユーディイースポーツ)」を導入し、身体的な制約がある方でも参加しやすい工夫をしている点

です。施設内でのオフライン対戦に加え、Zoomを活用したオンライン対戦で他施設との交流も促進しています。

■ハッピーブレイン■
https://hb-e-sports.com/

3)リハビリ施設でのeスポーツ活用:友愛会(宮崎県小林市)

友愛会は、運営する通所リハビリテーション施設の「デイケアさとやま」(静岡県沼津市)でリハビリサービスの一環としてeスポーツを活用しています。この施設では、

eスポーツを「脳トレ」と位置づけ、利用者の注意・遂行機能、ワーキングメモリー、情報処理能力の改善に効果がある

と考えています。サービス提供に当たっては、日本アクティビティ協会が認定する「健康ゲーム指導士」(ゲームを通じて、健康寿命や社会参加寿命の延伸のために活動する人材)の養成講座をスタッフが受講するなどして、準備を整えたそうです。

■デイケアさとやま■
https://www.satoyama2.jp/daycare/index.html

4)シニア専門のeスポーツチーム運営:エスツー(秋田県秋田市)

エスツーは、平均年齢65歳以上のプロeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」を運営しています。特筆すべきは、

「孫にも一目置かれる存在」をスローガンに掲げ、加齢や病気予防だけでなく、プロ選手を目指すという高い目標設定

です。若手の専属コーチを付け、仲間と切磋琢磨(せっさたくま)する姿は、シニア向けeスポーツの新しいあり方を示しています。また、国際交流試合も実施し、1万人以上が視聴するなど、国内外から注目を集めています。

■マタギスナイパーズ■
https://matagi-snps.com/
■エスツー■
https://www.esu2.co.jp/

5)自治体での事例

全国各地の自治体で、シニア向けeスポーツの講座や体験会、交流会が実施されています。

具体的な取り組みとして、群馬県太田市は、60歳以上の団体向けにゲーム機と講師を派遣する「シニアeスポーツ出前講座」を無料で提供しており、地域住民の健康増進と交流促進に貢献しています。また、横浜市青葉区では地域ケアプラザでeスポーツ体験会が開催され、「太鼓の達人」などを通じた交流が行われています。鳥取県では「ねんりんピックはばたけ鳥取2024」でeスポーツが初めて正式種目に採用されるなど、全国的な広がりを見せています。

■太田市「太田市シニアeスポーツ推進事業」■
https://www.city.ota.gunma.jp/page/1023988.html
■横浜市青葉区「高齢者の社会参加促進に向けたeスポーツの活用」■
https://www.city.yokohama.lg.jp/aoba/kenko-iryo-fukushi/fukushi_kaigo/koreisha_kaigo/kaigo-yobou/esports.html
■鳥取県「ねんりんピックはばたけ鳥取2024」■
https://www.pref.tottori.lg.jp/nenrin-wmg/

他にも、千葉大学予防医学センター 社会予防医学研究部門が作成した「高齢者のつながりと健康を育むデジタルアクティビティのすすめ ~介護予防・通いの場の新しいカタチとしてのeスポーツ導入ガイド」の中で、自治体によるシニア向けeスポーツの導入事例を紹介しています。自治体関係者向けの資料ではありますが、版権やゲーム機材に関するFAQなどもあるため、参考にすると良いでしょう。

■自治体関係者を対象とする「高齢者eスポーツ導入ガイド」公開のお知らせ■
https://jesu.or.jp/contents/news/news-250625/

5 シニア向けeスポーツ施設を開業する際の法的留意点

最後に、シニア向けeスポーツ施設を開業する際の法的留意点を紹介します。

シニア向けeスポーツ施設にゲーム機を設置して開業する場合、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)の適用を受けることがあります。風営法の適用を受ける場合、学校の近くには開業できなかったり、都道府県の公安委員会への営業許可申請が必要になったりします。

インターネットカフェなどが、パソコンのように汎用性のある機器を用いてeスポーツを楽しめる環境を提供する場合、その機器はゲーム以外の機能が現実に利用可能な状態である限り、「ゲーム機」には当たらない(風営法の適用を受けない)とされていますが、この辺りは専門家に確認するなどして慎重に判断する必要があります。

また、シニア向けeスポーツ施設を経営していて、ゲームの大会を開催したい場合、告知や大会での競技の様子をインターネット配信する際に著作権法違反に該当しないか、賞金を用意したい場合、刑法上の賭博罪に当たらないかなどに留意する必要があります。

日本eスポーツ連合では、eスポーツにまつわる法律上の課題や、大会を開く際の留意点などをまとめた「かんたんeスポーツマニュアル」を公開しているので、参考にするとよいでしょう。

■日本eスポーツ連合「規約・マニュアル」■
https://jesu.or.jp/contents/terms/

以上(2025年8月更新)

pj50562
画像:tkc-Adobe Stock

【事業承継】最も大切な後継者選び。後継者に備えてほしい9つの資質

1 「人(経営)の承継」が事業承継のスタート

事業承継にはさまざまな課題がありますが、最初に着手すべきなのは、

「人(経営)の承継」である後継者問題

です。後継者が決まらなければ、

借入金や債務保証の引き継ぎなどの具体的な話ができず、事業承継が進められない

からです。中小企業庁「事業承継ガイドライン」(以下「ガイドライン」)で紹介されている「事業承継計画書」の様式も、後継者が決まっていることが前提になっています。

これを裏付けるデータとして以下をご覧ください。後継者選びの方針や決定状況によって、事業承継の障害や課題が違っていることがお分かりいただけると思います。

事業承継における障害・課題

後継者の決定状況

このように、後継者選びは事業承継のスタート地点ともいえるわけですが、既に後継者を決めている会社は29.9%にすぎないのが実情です。本気で事業承継を進めるならば、まずは後継者選びを進めなければなりません。

2 3つある後継者選びのメリット・デメリット

「人(経営)の承継」の方法には、

  • 子どもなどへの親族内承継
  • 役員や従業員への親族外承継
  • M&Aによる第三者への親族外承継

の3つがあります。それぞれのメリット・デメリットは次の通りです。

3つある後継者選びのメリット・デメリット

最近は第三者を後継者とするケースが増えていますが、やはり親族や従業員を後継者にしたい経営者も多いです。このあたりは、

後継者候補となる親族の有無、事業の状態などを踏まえて慎重に検討

することになるでしょう。例えば、事業の状態が芳しくない、社内の結束が弱いといった場合、その苦労を親族には負わせたくないかもしれません。

いずれにしても、後継者に是非とも備えてほしいマインドがあるものです。経営者の考え方によって違ってくる面もありますが、主なものを9つにまとめて次章で紹介します。

3 後継者に備えてほしい9つの資質

1)健康である

心身が健康であることは大前提です。無理をして心身の調子を崩してしまったら、結果として多くの人に迷惑を掛けることになってしまいます。自分のことをよく理解し、必要に応じて肩の力が抜ける人でなければなりません。真面目なのはいいですが、集中していない状態で「ダラダラ」と続けるのは良くありません。

2)謙虚で、感謝の気持ちを忘れない

謙虚さも欠かせない資質です。経営者は社内外のさまざまな人に支えられて、経営者でいることができます。このことを常に忘れることなく、周囲に感謝の気持ちを伝えられる人でなければなりません。もし、後継者に指名されたことで有頂天になって偉ぶるような人は経営者に向きません。

3)理想の姿を描いている

経営者には「何がなんでもこれをやりたい!」「世の中のここを変えたい!」といった理想の姿があり、それが活動の原動力になると同時に、人物の奥行きにもなります。先代が描く理想の姿を承継したばかりの後継者が、すぐに自分の理想の姿を見つけることは難しいかもしれませんが、「全くない」というのでは物足りません。

4)基本的にポジティブ

経営は山あり谷ありです。基本はポジティブで、落ち込んでもすぐに立ち直れる、良い意味でのずうずうしさが必要です。コロナ禍で経営環境が激変する中でも、「本当に厳しい……」と動けなくなる人は経営者に向きません。「変化の中にはチャンスがある」とポジティブに考えてチャレンジする人でなければなりません。

5)失敗を恐れない

事業のほとんどは失敗します。この失敗を恐れていては、いつまでたってもチャレンジできません。失敗は失敗として、そこから学び、次に活かしていける人でなければなりません。そうした人が率いる組織は、チャレンジと学習を繰り返すことができます。これは組織が成長する上で不可欠なことです。

6)決断が速いが、短慮ではない

経営者は決断の連続であり、決められない人は経営者になれません。とはいえ、何を考えて判断したらよいのか分からないまま、ばくちのように右か左かを選択し続けたら会社は潰れます。論点を整理して考えられる人でなければなりません。一方、時間をかけて決断すべきことについては、どんと構えて考える落ち着きも必要です。

7)勤勉である

どのような会社でも、恐らく最も勉強しているのは経営者でしょう。自分の知識や技術をバージョンアップし続けないと、すぐに取り残されることを知っているからです。多忙な中でも時間を見つけ、勉強をする人でなければ経営者に向きません。いまだに一人でオンライン会議につなげない困った経営者になるような人を、後継者に選んではいけません。

8)ビジネスの知識がある

会社経営では、IT、法務、税務、労務、会計、営業、マーケティングなどの知識が必要です。とはいえ、一人で各分野のスペシャリストになることはできません。そこで、広く浅くでもよいので各分野の肝となる知識は押さえていなければなりません。そのためには、価値ある情報を教えてくれる社外の人脈が大切です。

9)趣味がある

ビジネスだけでは、人として面白みがないかもしれません。スポーツやアートなど何でもよいのですが、打ち込める趣味を持っていると、人としての深みが増します。それに、経営者の会食では意外なことにワインやアートなどの話がほとんどで、ビジネスの話は本当に少ないのです。そうした場についていくためにも趣味は必要です。

以上(2025年8月更新)

pj80112
画像:Mariko Mitsuda

「建設業だけの助成金」6選! 支給額は最大1000万円?

1 人材確保やスキルアップに使える「建設業だけの助成金」

建設業では、労働力人口の減少に加え、長年にわたって業界を支えてきた熟練技術者の高齢化と引退が急速に進んでいます。そんな状況にあって企業が持続的に成長し、競争力を維持するには、新たな人材の確保と、既存社員のスキルアップが必須です。

国や地方自治体は、企業の人材投資を後押しするために、様々な助成金を実施していますが、

人材確保やスキルアップに使える「建設業だけの助成金」

があるのをご存じでしょうか? 以降で、建設業を営む中小企業向けの助成金を取り上げ、主な要件や支給額などを紹介します。

なお、助成金の内容は、2025年8月17日時点のもので、将来変更される可能性があります。申請書の書き方や添付書類などについては、次のURLをご参照ください。

■厚生労働省「建設事業主等に対する助成金」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kensetsu-kouwan/kensetsu-kaizen.html

2 人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース)

1)助成金の概要は?

建設関連の認定訓練を実施した場合に支給される助成金です。建設業界における技能水準の向上と、それを支える訓練体制の強化を目的としています。

2)助成金を受け取るには?

この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。

  • 雇用管理責任者の選任:建設業の人事労務管理を担当する者を選任する必要があります。
  • 訓練の実施:都道府県から支援(認定訓練助成事業費補助金または広域団体認定訓練助成金の交付)を受けて、認定訓練を実施する必要があります。
  • 賃金要件の達成(賃金助成または賃金向上助成を受ける場合): 支給対象事業終了日の翌日から1年以内に、雇用する全ての建設労働者の毎月決まって支払われる賃金を5%以上増加させる必要があります。また、賃金助成を受けるには、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の支給決定を受ける必要があります。
  • 資格等手当要件の達成(資格等手当助成を受ける場合):訓練修了日の翌日から1年以内に、全ての算定対象となる建設労働者に対して資格等手当を就業規則等で規定し、実際に支払い、賃金を3%以上増加させる必要があります。

3)受け取れる金額はいくら?

この助成金では、訓練の実施した場合に助成が受けられ、さらに賃金要件や資格等手当要件を達成した場合、支給額が増額されます。

  • 経費助成:認定訓練を実施した場合、対象経費の1/6が助成されます。
  • 賃金助成:人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の支給決定を受け、2)の賃金要件を達成した場合、金額がプラスされます。
  • 賃金向上助成・資格等手当助成:賃金助成の対象となった上で、2)の賃金要件または資格等手当要件を満たした場合、金額がさらにプラスされます。

人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース)

3 人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)

1)助成金の概要は?

中小企業が、若年者の育成や熟練技能の維持・向上を目的とし、キャリア段階に応じた技能実習を実施した場合に支給される助成金です。建設業界における技能の継承と向上を包括的に支援することを目的としています。

2)助成金を受け取るには?

この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。

  • 雇用管理責任者の選任:建設業の人事労務管理を担当する者を選任する必要があります。
  • 技能実習の実施:キャリアに応じた技能実習を実施することが必須です。「1日1時間以上であること」「期間を6カ月以内とすること」などの要件を満たす必要があります。
  • 賃金要件の達成(賃金助成・賃金向上助成を受ける場合):支給対象事業終了日の翌日から1年以内に、雇用する全ての建設労働者の毎月決まって支払われる賃金を5%以上増加させ、算定対象となる建設労働者に支払う必要があります。
  • 資格等手当要件の達成(資格等手当助成を受ける場合): 訓練修了日の翌日から1年以内に、全ての算定対象となる建設労働者に対して資格等手当を就業規則等で規定し、実際に支払い、賃金を3%以上増加させる必要があります。
  • 離職者の発生状況:事業主都合による離職者を一定期間中に発生させていないことが要件となります。

3)受け取れる金額はいくら?

この助成金では、事業主の規模(雇用保険被保険者数)などに応じた助成が受けられます。さらに賃金要件や資格等手当要件を達成した場合、支給額が増額されます。

  • 経費助成:技能実習を実施した場合、1人当たり最大10万円の助成が受けられます。
  • 賃金助成:2)の賃金要件を達成した場合、金額がプラスされます。
  • 賃金向上助成・資格等手当助成:経費助成または賃金助成の対象となった上で、2)の賃金要件または資格等手当要件を満たした場合、助成率または金額がプラスされます。

人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)

4 トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)

1)助成金の概要は?

若年者(35歳未満)または女性を試行的に雇用する際に、通常のトライアル雇用助成金(一般トライアルコース、障害者トライアルコース)に加えて支給される助成金です。一般的なトライアル雇用助成金とは別に、建設業界における若年者・女性の労働者を対象として試行雇用する場合、追加の助成を受けられます。

2)助成金を受け取るには?

この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。

  • 雇用管理責任者の選任:建設業の人事労務管理を担当する者を選任する必要があります。
  • 労働者の新規雇用:建設現場作業に従事する若年者(35歳未満)または女性をトライアル雇用として新規に雇用することが必須です。
  • トライアル雇用助成金の要件充足:トライアル雇用助成金のうち、一般トライアルコースまたは障害者トライアルコースの支給決定を受ける必要があります。

3)受け取れる金額はいくら?

この助成金では、トライアル雇用した対象労働者1人につき、月額最大4万円が通常のトライアル雇用助成金に加えて3カ月間支給されます。最大額(月額4万円)を受け取るには、実際の就労日数が、予定された就労日数の75%以上である必要があります。

トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)

5 人材確保等支援助成金(若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野))

1)助成金の概要は?

若年者や女性の入職・定着を促すための職場環境改善事業(例:現場見学会、入職者向け研修、労災予防の取り組み、表彰制度)を実施した場合に受け取れる助成金です。この助成金は、単に若年者や女性を「採用する」だけでなく、建設業界で長く働き続けられるような「魅力的な職場環境を創る」ことを目指しています。

2)助成金を受け取るには?

この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。

  • 雇用管理責任者の選任:建設業の人事労務管理を担当する者を選任する必要があります。
  • 事業計画の策定と実施: 若年者や女性の入職・定着を図るための具体的な事業(例:入職者向け研修、労災予防の取り組み、表彰制度)の計画を策定し、その計画に基づいた事業を実施することが求められます。
  • 賃金要件の達成(賃金向上助成を受ける場合): 支給対象事業終了日の翌日から1年以内に、雇用する全ての建設労働者の毎月決まって支払われる賃金を5%以上増加させ、算定対象となる建設労働者に実際に支払う必要があります。
  • 離職者の発生状況:一定期間中に事業主都合による離職者を発生させていないことが要件となります。

3)受け取れる金額はいくら?

この助成金では、企業規模と賃金要件の達成状況に応じて、対象経費に対する助成率が異なります。

  • 経費助成:中小企業は対象経費の3/5、中小企業以外は9/20が助成されます。
  • 賃金向上助成:2)の賃金要件を満たした場合、さらに3/20が上乗せされます。

人材確保等支援助成金(若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野))

6 人材確保等支援助成金(作業員宿舎等設置助成コース(建設分野))

1)助成金の概要は?

女性専用の作業員施設や、特定の地域(石川県)での作業員宿舎・施設・賃貸住宅の設置を支援する助成金です。女性の定着を妨げる要因の一つである女性専用施設を充足させること、特定の地域における労働者の住環境を整備することが目的です。

2)助成金を受け取るには?

この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。

  • 雇用管理責任者の選任:建設業の人事労務管理を担当する者を選任する必要があります。
  • 助成対象施設の設置:女性専用の作業員施設を賃借により設置、または石川県内で作業員宿舎、賃貸住宅、作業員施設を賃借により設置する必要があります。
  • 賃金要件の達成(賃金向上助成を受ける場合):女性専用施設を設置する場合において、別途定められた賃金要件を満たす必要があります。

3)受け取れる金額はいくら?

この助成金では、設置する施設の種類と所在地によって、支給額または助成率が異なります。

  • 女性専用の作業員施設:対象経費の3/5が助成されます。
  • 作業員宿舎(石川県内):建設作業員1人当たり25万円が支給されます。
  • 賃貸住宅、作業員施設(石川県内):対象経費の2/3が助成されます。

さらに、女性専用施設を設置する場合において、賃金要件を満たせば、上記の助成率に加えて3/20が上乗せされます。

人材確保等支援助成金(作業員宿舎等設置助成コース(建設分野))

7 人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等活用促進コース(雇用管理改善促進事業))

1)助成金の概要は?

建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用して雇用管理を改善する事業主に対し、技能労働者数に応じて支給される助成金です。CCUSは、技能労働者の就業履歴や保有資格などを業界横断的に登録・蓄積する仕組みで、これにより技能の評価や処遇改善、適正な賃金水準の確保につながることが期待されています。

2)助成金を受け取るには?

この助成金を受け取るためには、以下の基本要件を満たす必要があります。

  • 雇用管理責任者の選任:建設業の人事労務管理を担当する者を選任する必要があります。
  • CCUSの活用と雇用管理改善: 建設キャリアアップシステム(CCUS)を実際に活用し、それを通じて雇用管理の改善促進事業を行うことが必須です。事業を行うに当たっては、「雇用する全ての技能者の技能者登録が完了している」「レベル判定で昇格評定を受けた技能者の賃金を5%以上増加させている」必要があります。

 また、この助成金は、次のいずれにも該当する建設技能者に支給されます。

  • 賃金の増額改定前の過去1年間において、雇用保険の一般被保険者(短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者を除く)であること
  • 本事業の開始から過去6カ月間に離職していないこと(自己都合退職、本人の責めに帰すべき理由による解雇などを除く)

3)受け取れる金額はいくら?

対象となる建設技能者1人当たり16万円が支給されます。上限は160万円です。

人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等活用促進コース(雇用管理改善促進事業))

以上(2025年8月作成)

pj00786
画像:years-Adobe Stock