うつ病が回復しない社員の休職期間が満了してしまったら?

1 休職中の社員がそのまま退職するケースは珍しくない

「休職(私傷病休職)」は、社員が私傷病(仕事以外の理由によるケガや病気)で働けない場合、労働契約は継続しつつ、一定期間仕事を休んでもらう(労働の義務を免除する)制度です。

就業規則で定めた休職期間が満了するまでに、

  • 社員が働ける状態まで回復したら、復職(元の業務か、より軽い業務に復帰させる)
  • 回復しなければ、退職(休職期間の満了とともに、労働契約が自動的に終了する)

となるのが一般的です。ちなみに、休職期間の満了による退職は「自然退職」と呼ばれます。

理想は社員が復職することですが、うつ病などの場合、状況によって治療にかかる時間は人それぞれで大きく異なり、残念ながら症状が回復せず退職に至るケースも珍しくありません。

経営者や労務担当者にとって、苦しい状況にある社員に退職の話を切り出すのは、とてもつらいことです。かといって、曖昧な対応をしてしまうと、いざ休職期間が満了して退職となった場合、社員が「そんな話は聞いていない!」と言い出してトラブルになる恐れがあります。

この記事では、休職中に社員の症状が回復せず、いよいよ退職を考えざるを得なくなった場合の対応のポイントとして、次の2つを紹介します。

  • 「社員の健康」を第一に考えつつ本人の気持ちにも寄り添う
  • 「休職期間満了通知書(兼合意書)」で認識を合わせる

2 「社員の健康」を第一に考えつつ本人の気持ちにも寄り添う

1)復職させることが、必ずしも社員のためになるとは限らない

休職は法律で定められた制度ではなく、会社がそれぞれの就業規則に基づいて運用しますが、基本的な流れはどの会社でも同じです。

  • 社員が休職要件(一定日数の欠勤など)に該当したら、休職命令を出す(休職開始)
  • 休職期間の満了が近づいてきたら、復職の可否を判断し、社員に伝える
  • 休職期間の満了とともに(またはその前に)、社員が復職または退職する(休職終了)

経営者や労務担当者にとって特につらいのは、2.「復職が不可」となった場合です。苦しい状況にある社員に退職の話は切り出しにくいですし、経営者や労務担当者にも「社員が復職を望んでいるなら、できる限りその気持ちに応えたい」という思いがあります。

ですが、うつ病などのように完全に治ったかどうかの判断が難しい病気の場合、

復職を急ぎすぎたせいで、回復しかけていた症状が再び悪化してしまうケース

は珍しくありません。その場合、社員は余計に苦しむことになります。ですから、復職の可否は

会社が第一に守るべきは「社員の健康」である

ということを念頭に置いて、感情に流されず、冷静に判断しなければなりません。

2)休職中、社員とじっくり話す機会を設けることが大切

社員の健康を第一に考えると言っても、主観だけで「復職できない」と決めつけるのはNGです。社員の体調や治療の状況など、必要な情報を集めた上で判断しなければなりません。

また、仮に「復職できない」という判断が妥当だとしても、突然退職を切り出されたら社員は動揺しますし、場合によっては会社に反発するかもしれません。ただでさえ、病気でつらい状況にあるわけですから、コミュニケーションには十分な配慮が必要です。

復職の可否を判断するのに必要な情報を集めつつ、社員の気持ちにも寄り添うには、休職中、社員とじっくり話す機会を設けることが大切です。具体的には、

休職開始からある程度時間がたったタイミングで、電話やオンラインでの面談を実施

します。時間とともに社員の状況が変化する可能性があるので、社員の体調にもよりますが、できれば「休職開始から1カ月ごと」など目安を決めて、複数回実施するのが望ましいです。

面談の主な目的は、

  • 復職の可否を判断するのに必要な情報を集める
  • 不安を感じたり自分を責めたりしてしまう社員の気持ちに寄り添う
  • 休職について、会社と社員との間で認識のギャップがないかを確認する

の3つです。これらの目的を意識して、会社から社員に聞くこと、会社から社員に伝えることを事前に整理してから面談に臨みましょう。具体例は次の通りです。

会社から社員に聞くこと・伝えること

面談の際は、社員の体調に配慮してあらかじめ時間を区切り、時間内に聞けなかったことは、次の機会にヒアリングします。また、うつ病などの場合、社員の話すスピードやこちら側の質問に対するリアクションが遅くなる場合がありますが、そこは社員のペースに合わせるようにします。なお、面談時の社員の様子も、復職の可否を判断する大切な要素のひとつです。

3)復職の可否は明確に伝える。ただし、社員への感謝も忘れない

休職中の面談で社員の状況を把握したら、休職期間の満了前に社員から主治医の診断書を提出してもらい、復職の可否を判断します。ただし、社員の主治医が仕事内容を詳しく把握していないケースもあるため、場合によっては会社指定の医療機関などに協力を仰ぎます(このあたりは就業規則で明確に定めておく必要があります)。

復職の可否について判断したら、電話やオンラインで結果を社員に通知します。復職できると判断した場合、それを社員に伝えた上で、職場に復帰する時期や復職後の業務、勤務形態などについてすり合わせをしていきます。

一方、復職できないと判断した場合、どのように社員に伝えるかが悩ましいですが、曖昧な言い方をするとかえってトラブルになる恐れがあるので、

  • 社員が復職可能な状態まで回復したとは認められないと判断したこと
  • 社員が休職期間の満了とともに退職となること

などを明確に伝えるようにします。

社員によっては会社を辞めたくなくて「私はもう大丈夫です、働けます」と食い下がってくる人もいますが、主治医の診断書なども踏まえた上での判断ですから、

「復職を急いで症状を悪化させたくない、あなたの健康を第一に考えた結果だ」

などと伝え、会社の決定を安易に曲げることはしないようにします。

逆に、退職を受け入れつつ「会社に迷惑ばかりかけてしまい、申し訳ありません」と謝罪してくる人もいますが、社員に落ち度はありませんし、会社にとっても不本意な退職ですから、

「在職中、社員がいてくれてどれだけ助かったか」など、社員への感謝

を精一杯伝え、誠実な態度を示して社員と別れるようにします。

3 「休職期間満了通知書(兼合意書)」で認識を合わせる

1)書面を交わしておくと、「言った」「言わない」のトラブルが起きにくい

社員と慎重に対話すれば、休職に関するトラブルをある程度防ぐことができますが、口頭でのやり取りだけでは、お互いに誤解が生じたり、重要なことを聞き漏らしたりするリスクがあります。

よりトラブル防止に重きを置いた対応をするのであれば、

会社と社員との間で「休職期間満了通知書(兼合意書)」を交わすこと

をお勧めします。

休職期間満了通知書(兼合意書)とは、休職期間が満了する前に、社員に対して

  • 社員が復職可能な状態まで回復したとは認められないと判断したこと
  • 社員が休職期間の満了とともに退職となること

などを通知する書面です。復職の可否については前述したように口頭でも社員に通知しますが、併せて書面も交わすことで、「言った」「言わない」のトラブルが起きにくくなります。

また、社員が雇用保険に加入している場合、休職期間の満了により退職した際に、その旨を所轄ハローワークに届け出る必要がありますが、この際、退職理由を証明する添付書類として休職期間満了通知書(兼合意書)を活用できます。

2)退職について社員が合意する署名欄を設けておくと安心

休職期間満了通知書の書式は任意ですが、次のように退職について社員が合意する署名欄を設けておくと、トラブル防止に役立ちます。なお、ここでは割愛していますが、実際は「就業規則の休職に関する条文」「休職期間の計算方法」などを別紙として添付するのが望ましいです。

 

〇年〇月〇日

休職期間満了通知書 兼 合意書

〇〇〇〇 様

株式会社〇〇〇〇    

代表取締役 〇〇〇〇 印

 

 

あなたは、病気療養のため、当社就業規則第〇条の規定により、〇年〇月〇日より休職されていますが、〇年〇月〇日をもって本休職期間が満了となります。

当社は、電話および面談(オンライン)でのあなたの様子、医師の診断書などを基に、慎重に復職の可否を検討して参りましたが、最終的に、復職可能な状態まで回復したと認めることはできないと判断しました。

つきましては、当社就業規則第◯条の規定により、あなたは本休職期間が満了する〇年〇月〇日をもって退職となりますので、本書をもって通知します。

あなたの一日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。

以上

———————————————————————————————————–

株式会社〇〇〇〇    

代表取締役 〇〇〇〇 殿

 

上記の内容について承知しました。〇年〇月〇日をもって退職となることに合意します。

〇年〇月〇日

氏名 〇〇〇〇 印

4 その他、休職期間の満了に当たって押さえるべきこと

1)傷病手当金や基本手当の手続きは迅速に行う

社員が休職期間の満了とともに退職する場合、私傷病の状況によっては、退職後もしばらく働けない可能性があります。仮に社員が健康保険や雇用保険の給付の受給資格を持っているのであれば、支給が滞らないよう、給付に関する会社側の手続きを迅速に行うことが大切です。

例えば、退職時に健康保険の被保険者だった社員が一定の要件を満たす場合、

退職後も健康保険から傷病手当金が支給

されます。支給額はおおむね在職中の賃金の3分の2で、支給期間は同じ傷病について最初に傷病手当金を受けた日から通算1年6カ月間です。会社は所定の申請書について、勤務状況や賃金の支払い状況などの証明をし、その他必要な事項(振込先や療養担当者の意見)を社員やその主治医に記入してもらった上で、保険者(全国健康保険協会など)に送付する必要があります。

また、退職時に雇用保険の被保険者だった社員が一定の要件を満たす場合、

退職後、就職活動をしている間、雇用保険から基本手当が支給

されます。支給額はおおむね在職中の賃金の45~80%で、支給期間は退職日の翌日から原則1年間です(正確には、そのうち失業中で就職活動をしている期間)。ただし、私傷病などですぐに働けない場合、最大3年間の延長が可能です。会社は所定の離職証明書を、所轄ハローワークに提出して離職票の交付を受け、社員に送付する必要があります。

2)場合によってはフリーランスとして働いてもらうことを検討する

ここまで、社員に配慮しつつトラブルなく別れることを前提に話をしてきましたが、経営者や労務担当者の中には「このまま別れるのはつらい、何とか一緒に働く道を残したい」と考える人もいるはずです。こうした場合、社員が退職した後に、

業務委託契約を結んでフリーランスとして働いてもらう

という手があります。もちろん、症状が回復してからという前提ですが、決められた就業時間の中で働く社員と違い、フリーランスは自分で働く時間をコントロールできますし、会社も必要なときだけ仕事を依頼できるので、お互いに無理をせず仕事ができる可能性があります。

一方、自由な働き方である分、自分で自分を管理できない人はフリーランスに向きません。

  • 会社から逐一指示を受けなくても、自分で仕事の筋道を立てられるか?
  • 仕事のスケジュールやお金の管理などにルーズでないか?
  • 発破をかけられなくても、自分で努力し、成長していく意欲があるか?

などを検討した上で、フリーランスとしての働き方を打診するかを決めましょう。

ただし、社員の症状が回復していない状況でいきなりフリーランスの話を持ちかけると、かえってプレッシャーを与えてしまう恐れがあります。まずは退職後の連絡方法だけ確保しておき、退職からある程度時間がたってから連絡を取るなどの配慮が必要です。

以上(2025年11月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 渡邉和也)

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画像:shironagasukujira-Adobe Stock

(地方税編)どこまで知ってる「日本の税金50種」

1 日本に存在する税金の種類は、何種類?

ニュースなどを見ていると、年収の壁の引き上げや、ガソリン代高騰を背景にガソリン税の暫定税率の撤廃など、とにかく税金の話が出てきます。また、実生活で、車や不動産を購入すると、自動車税、自動車重量税、不動産取得税、固定資産税など多くの税金が絡んできます。では、ここで質問です。

みなさんは現在日本に存在する税金が何種類あるかご存じでしょうか?

法人税や所得税、消費税などはなじみ深いのでご存じだと思いますが、日本にはそれ以外にも多くの税金が存在し、その数はなんと約50種類。なお、次の図表上の分類方法については次の章以降で解説します。

税金の種類

自分の生活に直接かかわる税金も、そうでない税金も、自分の住んでいる社会でどのような税負担があるのか知っておいて損はありません。まずは、興味のある税金からチェックしてみましょう。

この記事は、日本に存在するそれぞれの地方税の概要をまとめています。国税については、次のリポートをご参照ください。

2 税金の分類方法

税金の分類方法はさまざまですが、この記事では、以下の2つに分類(カテゴリー分け)してみます。

1)税金を納める場所がどこか? に着目した分類

国税と地方税とがあります。

  • 国税:国に納める税金
  • 地方税:地方公共団体に納める税金

2)何に対してかかるか(課税されるか)? に着目した分類

所得課税、資産課税等、消費課税があります。

  • 所得課税:所得や利益に対して課される税金
  • 資産課税等:その資産を保有していることに対して課される税金
  • 消費課税:商品やサービスを購入したり使ったりすることに対して課される税金

3 地方税のうち、所得課税に分類される税金

1)住民税

1.個人住民税

個人住民税は、その地域に住む個人に対して課される税金です。個人住民税は、都道府県民税と市町村民税に分かれ、それぞれ「均等割(均等に一定額が課される)」と「所得割(その人の所得を基に課される)」によって計算されます標準税率は、

  • 均等割:都道府県民税が1500円、市区町村民税が3500円の合計5,000円
  • 所得割:都道府県民税が4%、市町村民税が6%の合計10%

です。標準税率とは、地方税法で定められた税率のことで、各自治体が一定の範囲内でその税率と異なる税率(制限税率)を定めることができます。

申告は、会社員など給与所得者であれば給与から天引きされる「特別徴収」が行われるため、申告は不要です。フリーランスや個人事業主など給与所得以外の収入がある場合は確定申告を行い、住民税の計算に必要な情報を税務署に申告します。納付は、給与から天引きされる「特別徴収」と、年4回(6月、8月、10月、1月)の分割払いで納付書に基づいて納付する「普通徴収」の2つの方法があります。特別徴収の場合には会社が代わりに、毎月10日までに納付します。

2.法人住民税

法人住民税は、その地域に事業所を持つ会社に対して課される税金です。法人住民税は、法人都道府県民税と法人市町村民税に分かれ、それぞれ「均等割(資本金等の額と従業員数に応じて一定額が課されるもの)」と「法人税割(その会社の法人税額を基に課されるもの)」によって計算されます(東京23区内の法人都民税は、法人市町村民税分を分けず、合わせて計算されます)。

標準税額は、

  • 均等割:都道府県民税が2~80万円、市町村民税が5~300万円で、資本金等の額と従業員数に応じて金額が決められる
  • 法人税割:道府県民税が法人税額の1.0%、市町村民税が法人税額の6.0%

です。個人住民税同様、各自治体が一定の範囲内でその税率と異なる税率(制限税率)を定めることができます。

申告・納付については、法人税と同様に原則、事業年度終了日の翌日から2カ月以内に行います。なお、申告の延長については、法人税と同じ扱いになります。

2)事業税

1.個人事業税

個人事業税は、その地域で一定の事業を行う個人事業主などの所得に対して課される税金です。税率は第1~3種に区分された業種ごとに異なり、

  • 第1種事業(物品販売業、運送取扱業など37業種):5%
  • 第2種事業(畜産業、水産業、薪炭製造業の3業種):4%
  • 第3種事業(医業、弁護士業など30業種):5%
  • 第3種事業のうち、あんま・マッサージその他医業に類する事業、装蹄師業:3%

となっています。

申告は、所得税の確定申告書または個人住民税の申告書を提出した人は必要ありません。ただし、所得税の確定申告書の「住民税・事業税に関する事項」または個人住民税申告書の「事業税に関する事項」に必要事項の記載が必要です。納付は、都道府県から送付される納税通知書に基づき行います。納税通知書に記載された期限内に納付します。

2.法人事業税

法人事業税は、その地域で事業を行う会社に対して課される税金です。法人事業税は、資本金の額または出資金の額(以下「資本金の額」)に応じて、

  • 「所得割(その会社の所得を基に課される)」のみ課される会社と、
  • 外形標準課税(「付加価値割(その会社の損益や給与額、利子、賃借料の合計を基に課されるもの)」、「資本割(その会社の資本金を基に課されるもの)」、「所得割」)が課される会社

に分かれます。ここでは、資本金の額が1億円以下の普通法人等(電気・ガス供給業、保険業以外を営む会社)について解説します。税率は、次の通りです。

税率

申告・納付については、法人税と同様に原則、事業年度終了日の翌日から2カ月以内に行います。なお、申告の延長については、法人税と同じ扱いになります。

4 地方税のうち、資産課税等に分類される税金

1)不動産取得税

不動産取得税とは、不動産の購入、交換、贈与、家屋の建築・改築などで取得した不動産価額(原則、固定資産税課税台帳に登録された固定資産の評価額)に対して課される税金です。なお、社会福祉法人や医療法人など一定の法人が一定の使用目的で取得した不動産に対しては不動産取得税が課されません。税率は

原則4%で、現在、土地と住宅については軽減税率の3%

が適用されます。

申告は、都道府県ごとに定められた期限内(例えば東京都の場合は、取得の日から30日以内)に行い、のちに納税通知書が送られてきます。納付は、納税通知書に基づき行います。納税通知書に記載された期限内(原則発送月の月末)に納付します。

2)固定資産税

固定資産税は、毎年1月1日時点で所有している土地、家屋、償却資産の評価額に対して課される税金です。なお、固定資産の評価額(税率を乗じる基になる金額)が土地なら30万円、家屋なら20万円、償却資産(土地、家屋以外の資産で、事業用に使用するもの)なら150万円に満たない場合は固定資産税が課税されません。税率は

原則1.4%ですが、市町村ごとに異なる税率

を定めることができます。住宅用地や新築住宅などに対しては軽減措置が適用されるため、通常よりも低い税負担で済む場合があります。

固定資産税の申告は、土地・家屋と、償却資産で異なります。土地・家屋については、申告は必要ありません(登記時に市区町村が把握できるため)。一方、償却資産については、毎年1月末日までにその年の1月1日時点で所有している償却資産について申告が必要になります。納付は、地方自治体から送付される納税通知書に基づき行います。年4回(6月末、9月末、12月末、2月末まで)の分割払いが可能であり、納税通知書に記載された期限内に納付します(一括払いの場合の期限は6月末)。

3)特別土地保有税

特別土地保有税は、投資目的などで取得または所有している一定規模以上の土地の取得価額に対して課される税金です。なお、2003年以降は課税の停止措置が取られています。税率は、

  • 保有の場合には、原則1.4%
  • 取得の場合には、原則3%

です。

現在は課税停止となっているため、申告・納税ともに必要ありません。

4)法定外普通税

法定外普通税は、地方税法に定められていない税金で、地方自治体が地域の状況やニーズに基づいて設定する税金です。現在(2025年4月1日時点)、全国で23件の法定外普通税が実施されています。主な例として、

  • 別荘等所有税(静岡県熱海市で実施):所有している別荘などの延べ床面積1平方メートルにつき650円
  • 歴史と文化の環境税(福岡県太宰府市で実施):駐車行為1回につき、車種別に50~500円

などがあります。

5)事業所税

事業所税は、特定の都市部において一定規模以上の事業所の面積や給与総額に対して課される税金です。なお、床面積が1000平方メートル以下の事業所で、指定された都市内における従業員数が100人以下の事業者には課税されません。税率は、事業所の床面積に対する「資産割」と給与総額に対する「従業者割」で分かれ、原則

  • 資産割:事業所床面積(平方メートル)×税率600円
  • 従業者割:従業者給与総額×税率0.25%

となります。

事業所税の申告は、法人の場合は事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に、個人事業主の場合は毎年3月15日までに申告し、納付します。

6)都市計画税

都市計画税は、都市計画区域(都市計画法に基づいて整備、開発、保全が必要と認められている地域)内に所有している土地と家屋の評価額(固定資産評価基準に基づいて計算された価額)に対して課される税金です。税率は

原則0.3%以下で、市区町村ごとに定めた率

となります。なお、住宅用地については固定資産税と同様に、評価額の一部を減額する特例措置があります。

都市計画税の申告は、固定資産同様、必要ありません(登記時に市区町村が把握できるため)。納税についても、固定資産税の納税通知書と併記されて送られ、納税についても固定資産税と同様の取り扱いとなります。

7)水利地益税

水利地益税とは、治水や利水に関する公共事業で直接恩恵を受ける土地、家屋の価額や面積に対して課される税金です。たとえば、河川の堤防整備や排水機場の設置などの事業によって、浸水リスクの低減や農業生産の向上などの恩恵を受ける地域の土地所有者に課されます。税率は、

課税を実施する市区町村が条例で設定(例えば、岐阜県羽島市では3150円/1000平方メートル)

します。

水利地益税の申告や徴収方法も、市区町村が条例で定める方法によるとされます。例えば、岐阜県羽島市では、所有している田の耕作者、地目などの変更がある場合、申請書を1月31日までに提出し、送付される納税通知書に基づき納付します。

8)共同施設税

共同施設税は、地域の生活を支える共同施設(公民館や体育館など)の維持や管理のために、その共同施設の利用によって得られる利益に対して課される税金です。

なお、現在、共同施設税の課税を実施している地方自治体はありません。

9)宅地開発税

宅地開発税は、宅地開発に伴うインフラ整備(排水路、緑地、公園など)などのために、一定面積以上の宅地開発を行う際に課される税金です。

なお、現在、宅地開発税の課税を実施している地方自治体はありません。

10)国民健康保険税

国民健康保険税とは、国民健康保険に加入する世帯に対して課される税金です。国民健康保険は、自営業者や退職者などが加入する健康保険で、市区町村ごとに、保険「料」の形式をとるか、保険「税」の形式をとるかのいずれかの方法を選択されています。税額は、

市区町村ごとの年間の医療給付費、被保険者の所得や被保険者数により変動

します。

国民健康保険税の申告は、所得税・住民税の確定申告をしている人、給与・年金等の支払報告書が市区町村から送られている人は必要ありません。市区町村が前年度の所得を把握できない世帯には所得申告書が送られてくるので、必要事項を記入後返信が必要です。納税については、送付される納税通知書に基づき納付します。

11)法定外目的税

法定外目的税は、地方税法に定められていない税金で、地方自治体が特定の目的のために設定する税金です。現在(2025年4月1日時点)は全国で48件が実施されています。主な例として、

  • 宿泊税(東京都、大阪府、福岡県、京都府京都市、石川県金沢市などで実施):大阪府の場合、宿泊料(5000円以上)の区分ごとに1泊200円~500円が課されます。地方自治体ごとに税額・税率は異なります
  • 美ら海税(沖縄県座間味村で実施):1回の入域につき1人100円

などがあります。

5 地方税のうち、消費課税に分類される税金

1)地方消費税

消費税(地方消費税含む)は、商品やサービスの購入・利用すること対して課される税金です。なお、土地の売買や病院などで受ける社会保険医療など一定の取引(非課税取引という)については、消費税が課税されません。税率は、

  • 軽減税率(8%):酒類・外食を除く飲食料品の購入や新聞の定期購読への適用税率
  • 標準税率(10%):それ以外の取引への適用税率

の2つがあります。それぞれ、次のように内訳が決まっています。

消費税

消費税の申告は、消費税を消費者から預かった事業者側が行います。期限については事業年度が終了した日から2カ月以内に確定申告をし、納付します。法人税同様、申請書を税務署に提出することで申告期限を1カ月延長することができます(法人税の申告延長をしている法人に限る)。ただし、納付期限については延長されるわけではないため、納付は見込みの金額で行い、確定後差額を精算します。

2)地方たばこ税

たばこ税(地方たばこ税を含む)は、たばこ製品の販売等に対して課される税金です。たばこに関する税金は、国税である「国たばこ税」と「たばこ特別税」、地方税である「都道府県たばこ税」「市区町村たばこ税」に区分されます。税率は、

  • 国たばこ税:1000本当たり6802円
  • たばこ特別税:1000本当たり820円
  • 都道府県たばこ税:1000本当たり1070円
  • 市区町村たばこ税:1000本当たり6552円

となります。合計で1000本当たり1万5244円となり、たばこ1本当たり15.2円の税金が含まれる計算です。

たばこ税の申告は、たばこの製造者などが1カ月ごとに行います。期限については、原則、販売した月の翌月末日までに申告・納付します。輸入の場合は、原則、引き取り時に輸入申告と関税の申告納付にあわせて、たばこ税の申告・納付をします。

3)ゴルフ場利用税

ゴルフ場利用税は、ゴルフ場を利用する際に利用者に対して課される税金です。なお、18歳未満、70歳以上、障害者、国体・国際競技大会のゴルフ競技(公式練習を含む)に参加する選手が利用した場合や、学校の教育活動として利用した場合には課税されません。税額は、

標準税率が800円(1人1日当たり)で、最大1200円まで都道府県ごとに設定

されています。

ゴルフ場利用税の申告は、ゴルフ場利用税を預かっているゴルフ場の経営者などが行います。期限については1カ月分まとめて、翌月15日(または都道府県によっては指定された日)までに申告、納付します。

4)軽油引取税

軽油引取税は、自動車の燃料である軽油の引き取り(購入)に対して課される税金です。なお、農林水産業や特定の産業用途に利用される軽油に関しては一定の条件のもと、非課税措置や免除が設けられています。税率は、原則

1キロリットルあたり3万2100円(1リットル当たり32.1円)

です。2026年4月1日に廃止される暫定税率は1リットル当たり17.1円で、上記の本則税率に上乗せされて課されています。

軽油引取税の申告は、軽油引取税を預かっている元売業者や特約業者(ガソリンスタンドの経営者など)が1カ月ごとに行います。期日については、原則、毎月分をまとめて翌月末日までに申告し、納付します。

5)自動車税・軽自動車税

自動車税・軽自動車税は、毎年4月1日時点で所有している自動車・軽自動車に対して課される税金で、種別割と環境性能割の2種類があります。

種別割の税額は、用途や排気量や新規登録の時期に応じて設定されており、

  • 自家用乗用車:総排気量に応じて2万5000円~11万1000円(2019年10月1日以降に新車登録したもの)
  • 自家用乗用軽自動車:1万800円

となっています。なお、燃費基準に適合した車や環境に配慮した車には特例措置が設けられており、2026年3月31日までに新車登録を行った場合は、燃費基準の達成度合により概ね75%の減税が設定されています。また、新車登録から13年超経過した自動車(電気自動車など環境性能の高いエコカーは除く)に対しては通常の税率に追加で一定の率がかかります。

環境性能割の税率は、燃費基準値達成度などに応じて決定され、

自動車の取得価格×1.0~3.0%(電気自動車など一定の燃費基準達成度のものは非課税)

となります。

種別割・環境性能割の申告は、新規登録時や名義変更時などに運輸支局または自動車検査登録事務所に併設されている自動車税事務所に提出し、初回納税行う(一定の場合を除く)か、自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS。自動車を保有するための各種手続きをオンラインで一括して行うことできるサービス)にて申告して納めます。環境性能割は取得などの時のみに課されますが、種別割については、2年目以降にも納税が発生し、送付される納税通知書に基づき、毎年5月末日までに納付します。

6)鉱区税

鉱区税は、地下に埋蔵されている鉱物を採掘する権利(鉱業権)に対して課される税金です。税額は原則、

  • 砂鉱(砂金、砂鉄、砂すずなどの金属鉱のこと)を目的としない鉱業権の鉱区

  • 試掘鉱区(実際の採掘をする前に鉱物の有無などを調査するための採掘を行う鉱区):面積100アールごとに年額200円
  • 採掘鉱区:面積100アールごとに年額400円

  • 砂鉱を目的とする鉱業権の鉱区:面積100アールごとに年額200円

です。

鉱区税の申告は、鉱業権を保有している人が取得した際(期限については都道府県ごとに異なります。東京の場合は取得日から7日以内)に申告します。納税については、送付される納税通知書に基づき、毎年5月末日までに納付します。

7)狩猟税

狩猟税は、狩猟を行うのに必要な狩猟免許を取得した人に対して課される税金です。税額は原則、

免許の種類に応じて、5500円から1万6500円まで

となります。

狩猟税の申告は、狩猟者の登録申請をしたときに行い、同時に納付も行います。なお、猟友会などの鳥獣捕獲などを行う事業者が一定の基準を満たす場合には、都道府県知事の認定を受けることができ、この認定を受けた事業者に従事する人について、課税を免除しています。

8)鉱産税

鉱産税は、鉱山で金属鉱石や石炭などの鉱産物の価額に対して課される税金です。税率は原則、

標準税率は1%とされ、最大1.2%まで市区町村ごとに設定

されています。

鉱産税の申告については、鉱物の掘採の事業を行う鉱業者が1カ月ごとに行います。期日については、原則、毎月分をまとめて翌月末日までに申告し、納付します。

9)入湯税

入湯税とは、温泉や鉱泉を利用する入湯客に対して課される税金です。一般的には温泉地や温泉施設での宿泊や入浴時に課されます。税率は原則、

入湯客1人当たりの定額で150円

です。なお、市町村によって異なる場合があり、日帰りや宿泊の利用形態により細かく設定されている場合もあります。

入湯税の申告については、入湯税を預かっている温泉施設や旅館などの経営者が1カ月ごとに行います。期日については、毎月分をまとめて翌月末日(または都道府県によっては指定された日)までに申告し、納付します。

以上(2025年12月更新)
(監修 税理士 石田和也)

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(国税編)どこまで知ってる「日本の税金50種」

1 日本に存在する税金の種類は、何種類?

ニュースなどを見ていると、年収の壁の引き上げや、ガソリン代高騰を背景にガソリン税の暫定税率の撤廃など、とにかく税金の話が出てきます。また、実生活で、車や不動産を購入すると、自動車税、自動車重量税、不動産取得税、固定資産税など多くの税金が絡んできます。では、ここで質問です。

みなさんは現在日本に存在する税金が何種類あるかご存じでしょうか?

法人税や所得税、消費税などはなじみ深いのでご存じだと思いますが、日本にはそれ以外にも多くの税金が存在し、その数はなんと約50種類。なお、次の図表上の分類方法については次の章以降で解説します。

税金の種類

自分の生活に直接かかわる税金も、そうでない税金も、自分の住んでいる社会でどのような税負担があるのか知っておいて損はありません。まずは、興味のある税金からチェックしてみましょう。

この記事は、日本に存在するそれぞれの国税の概要をまとめています。地方税については、次のリポートをご参照ください。

2 税金の分類方法

税金の分類方法はさまざまですが、この記事では、以下の2つに分類(カテゴリー分け)してみます。

1)税金を納める場所がどこか? に着目した分類

国税と地方税とがあります。

  • 国税:国に納める税金
  • 地方税:地方公共団体に納める税金

2)何に対してかかるか(課税されるか)? に着目した分類

所得課税、資産課税等、消費課税があります。

  • 所得課税:所得や利益に対して課される税金
  • 資産課税等:その資産を保有していることに対して課される税金
  • 消費課税:商品やサービスを購入したり使ったりすることに対して課される税金

3 国税のうち、所得課税に分類される税金

1)所得税

所得税は、個人の所得(年間の収入から経費や所得控除などを差し引いて計算した金額)に対して課される税金です。税率は所得額に応じて異なり、所得額が高くなるほど上がります。これを「累進課税」といいます。具体的には、

所得額の区分別に5~45%

となり、次のようになります。

所得税

所得税は、年に一度(原則2月16日~3月15日)、確定申告をして納付します。なお、会社員(パート含む)への給与やフリーランスの報酬(一定の報酬を除く)など、会社から支払われるものについては、支払時点で所得税を徴収し、会社が本人に代わって納付する源泉徴収制度があります。さらに、会社員については年末調整により、所得税が精算されるので、原則確定申告は不要です。

2)法人税

法人税は、会社の所得(税務上の利益)に対して課される税金です。税率は原則、

23.2%

です。ただし、

企業規模の小さい中小企業には、一部所得に対して軽減税率(15%、17%または19%)

が適用されます。

法人税

原則として、法人税は事業年度の終了日から2カ月以内に確定申告をし、納付します。なお、定時株主総会が事業年度の終了日の翌日から3カ月以内に行われることが定款に定められており、期限内に決算が確定しない場合は、申請書を税務署に提出することで申告期限を1カ月延長することができます。ただし、納付期限については延長されるわけではないため、納付は見込みの金額で行い、確定後差額を精算します。

3)地方法人税

地方法人税は、法人税額をベースに課される税金です。国が徴収し、地方自治体に対する地方交付税の財源として使われます。税率は原則、

10.3%

です。

原則として、申告・納付については法人税と同様に事業年度の終了日の翌日から2カ月以内に行います。

4)特別法人事業税

特別法人事業税は、法人事業税の一部を分離して創設され、法人事業税の一部(基準法人所得割額または基準法人収入割額)をベースに課される税金です。地域間の経済格差を是非するためのもので、2019年10月1日以降に始まる事業年度から適用されています。税額は、法人事業税に基づいて計算され、

企業の資本金に応じて30%から260%

です。

特別法人事業税

原則として、申告・納付については法人税と同様に事業年度の終了日の翌日から2カ月以内に行います。

5)復興特別所得税

復興特別所得税は、東日本大震災の復興資金を確保するため、所得税額をベースに課される税金です。震災からの復興事業を支援するため、2013年から2037年までの25年間、所得税額に対して追加的に課税されます。税率は2.1%です。
申告・納付については原則、所得税と同様で、確定申告をして納付をします(会社員などへの給与や一定の報酬については源泉徴収制度)。

6)森林環境税

森林環境税は、森林の整備や保全を支援するため、国民1人ひとりに課される税金です(未成年や障がい者、その他所得が一定額以下の人などを除く)。2024年度から、住民税の均等割(定額で課される住民税)に加算される形で納税者1人当たり年間1000円徴収されます。

7)防衛特別法人税

防衛特別法人税は、防衛力強化のための財源として、法人税額(一定の税額控除を適用しないで計算した法人税額から基礎控除額500万円を控除した金額)をベースに課される税金です。2026年4月1日以後に開始する事業年度から課税が始まります。税率は原則、

4%

です。

原則として、申告・納付については法人税と同様に事業年度の終了日の翌日から2カ月以内に行います。

4 国税のうち、資産課税等に分類される税金

1)相続税

相続税は、被相続人の死亡により受け継ぐ財産に対して課される税金です。税率は

法定相続分に応じた取得金額の区分別に10%から55%

までとなっており、取得金額が大きいほど高い税率が適用されます。なお、相続税には基礎控除額(3000万円 + 法定相続人の数 × 600万円)があるため、相続財産の総額が基礎控除額以下である場合には相続税は課税されません。

相続税

相続税は、被相続人の死亡を知った日(相続の開始があったことを知った日)の翌日から10カ月以内に確定申告をし、納付をします。もし、遺産分割がまだ完了していない場合でも、期限内にその時点で確定した内容で、仮の申告(未分割申告)・納税をし、確定後、修正申告等・納税等を行います。

2)贈与税

贈与税は、他の人から財産を贈与された場合に、その1年間に受け取った財産に対して課される税金です。税率は、

課税価格(贈与を受けた財産の合計額-基礎控除額110万円)の区分に応じて10%から55%

となっており、課税価格が大きいほど高い税率が適用されます。ただし、贈与を受けた財産の合計額が基礎控除額以下なら、原則、贈与税は課されません。また、贈与をした人と受けた人の関係により、適用される税率が異なる場合もあります。

贈与税

贈与税は、財産を贈与された翌年の2月1日から3月15日まで申告をし、納付します。

3)登録免許税

登録免許税は、不動産やその他財産の取得、会社設立などの登記や登録、特許などの許認可手続きの際に、財産の価額や重量、登記の件数などをベースとして課される税金です。税率(または税額)は、

財産や登記の種類ごと

に定められています。

申告は不要で、登記などを行う際にその行った法務局等で納付します。原則、現金で納付しますが、登録免許税の額が3万円以下の場合などには収入印紙を申請書に貼付する方法(印紙納付)も認められています。また、2024年1月より、オンラインによる申請については、クレジットカードやペイジーなどによる電子納付などもできるようになっています。

4)印紙税

印紙税は、法律で定められた課税文書を作成した場合に、その文書に対して課される税金です。課税対象となる文書は、

取引に係る契約書、手形、株券など20種類の文書に区分されており、それぞれの区分ごとに規定されている金額に応じて

税額が定められています。なお、印紙税は紙の文書に対して課されるものであるため、電子契約書については課税されません。

まず郵便局やコンビニなどで収入印紙を購入します。購入時点では印紙税を納付したことにはならず、文書に収入印紙を貼り、消印(収入印紙とその文書にまたがって押す印)を押すことで納付したこととされます。申告は不要ですが、取り交わす文書が課税文書に該当するかどうか各自で確認することになります。

5 国税のうち、消費課税に分類される税金

1)消費税

消費税は、商品やサービスの購入・利用することに対して課される税金です。なお、土地の売買や病院などで受ける社会保険医療など一定の取引(非課税取引という)については、消費税が課されません。税率は、

  • 軽減税率(8%):酒類・外食を除く飲食料品の購入や新聞の定期購読への適用税率
  • 標準税率(10%):それ以外の取引への適用税率

の2つがあります。それぞれ、次のように内訳が決まっています。

消費税

申告は、消費税を消費者から預かった事業者側が行います。法人の場合、期限については原則、事業年度が終了した日から2カ月以内に確定申告をし、納付します。法人税同様、申請書を税務署に提出することで申告期限を1カ月延長することができます(法人税の申告延長をしている法人に限る)。ただし、納付期限については延長されるわけではないため、納付は見込みの金額で行い、確定後差額を精算します。

2)酒税

酒税は、アルコール飲料の出荷等に対して課される税金です。税率は、

アルコール飲料を4種17品目に分類し、それぞれの分類ごとに1キロリットル当たりの税額

が定められています。例えば、1キロリットル当たりでは、

  • ビール:18万1000円
  • 日本酒(清酒):10万円
  • ウイスキー:37万円(アルコール度が37度を超えると1度ごとに1万円加算)

となります。

申告は、酒類の製造者が1カ月分ごとに行います。期限については、原則、製造場から出荷等した月の翌月末日までに申告し、出荷等した月の翌々月末日までに納付します。輸入の場合は、原則、輸入時に輸入申告と関税の申告納付にあわせて、酒税の申告・納付をします。

3)たばこ税・たばこ特別税

たばこ税は、たばこ製品の販売等に対して課される税金です。たばこに関する税金は、国税である「国たばこ税」と「たばこ特別税」、地方税である「都道府県たばこ税」「市区町村たばこ税」に区分されます。税率は、

  • 国たばこ税:1000本当たり6802円(1本当たり約6.8円)
  • たばこと特別税:1000本当たり820円(1本当たり約0.8円)
  • 都道府県たばこ税:1000本当たり1070円(1本当たり約1.0円)
  • 市区町村たばこ税:1000本当たり6552円(1本当たり約6.5円)

となります。合計で1000本当たり1万5244円となり、たばこ1本当たり約15円の税金が含まれる計算です。

申告は、たばこの製造者が1カ月ごとに行います。期限については、原則、販売した月の翌月末日までに申告・納付します。輸入の場合は、原則、引き取り時に輸入申告と関税の申告納付にあわせて、たばこ税の申告・納付をします。

4)揮発油税・地方揮発油税

揮発油税は、一般的にガソリン税といわれ、ガソリンの出荷等に対して課される税金です。ガソリンに関する税金は国税である揮発油税と、地方税である地方揮発油税に区分されます。税率は原則、

  • 揮発油税:1キロリットル当たり2万4300円(1リットル当たり24.3円)
  • 地方揮発油税:1キロリットル当たり4400円(1リットル当たり4.4円)

となります。合計で1キロリットル当たり2万8700円となり、ガソリン1リットル当たり28.7円の税金が含まれる計算です。2025年12月31日に廃止される暫定税率は1リットル当たり25.1円で、上記の本則税率に上乗せされて課されています。

申告は、揮発油の製造者が1カ月ごとに行います。期限については、原則、出荷等した月の翌月末日までに申告・納付します。輸入の場合は、原則、引き取り時に輸入申告と関税の申告納付にあわせて、揮発油税・地方揮発油税の申告・納付をします。

5)石油ガス税

石油ガス税は、LPガス税ともいわれ、車の燃料として使われるLPガスの出荷等に対して課される税金です。税率は原則、

1キログラム当たり:17.50円

となります。

申告は、LPガス容器に充填するスタンド業者が1カ月ごとに行います。期限については、原則、出荷等した月の翌月末日までに申告し、出荷等した月の翌々月末日までに納付します。輸入の場合は、原則、引き取り時に輸入申告と関税の申告納付に合わせて、石油ガス税の申告・納付をします。

6)航空機燃料税

航空機燃料税は、航空機用の燃料の航空機への積み込みに対して課される税金です。税率は原則、

1キロリットル当たり2万6000円

となります。

申告は、航空機の所有者、または整備・試運転者が1カ月ごとに行います。期限については、原則、積み込みをした月の翌月末日までに申告・納付します。なお、海外に離着陸する航空機に対する燃料の積み込みについては、国際的な慣行により、相互に非課税となっています。

7)石油石炭税

石油石炭税は、原油、石油製品、ガス状炭化水素、石炭といった燃料を採取場から搬出等することに対して課される税金です。税率は燃料の種類ごとに異なり、原則、

  • 原油・石油製品:1キロリットル当たり2800円
  • ガス状炭化水素:1トン当たり1860円
  • 石炭:1トン当たり1370円

となります(それぞれ、地球温暖化対策のための税率の特例による加算額を含みます)。

申告は、原油等の採取者が1カ月ごとに行います。期限については、原則、採取した月の翌月末日までに申告・納付します。

8)電源開発促進税

電源開発促進税は、電気を販売することに対して課される税金です。税率は、

販売する電気1000キロワット毎時当たり375円

となります。

申告は、電力を供給する送配電事業者(一般送電配事業者等)が1カ月ごとに行います。期限については、原則、販売した電気料金の支払いを受ける権利が確定した月の翌月末日までに申告・納付します。

9)自動車重量税

自動車重量税は、所有している自動車の重量に対して課される税金です。税額は、車両重量や購入からの経過年数、種別、用途ごとに設定されており、例えば普通自動車(エコカー減税対象外)の場合、原則、

  • 新規登録時:車両重量0.5トンごとに1万2300円ずつ加算した金額
  • 新規登録から13年未満:車両重量0.5トンごとに8200円ずつ加算した金額
  • 新規登録から13年以上18年未満:車両重量0.5トンごとに1万1400円ずつ加算した金額
  • 新規登録から18年以上:車両重量0.5トンごとに1万2600円ずつ加算した金額

となります。なお、燃費基準に適合した車や環境に配慮した車には減免措置(エコカー減税)が設けられており、免税や税額軽減措置が受けられます。

申告は不要で、自動車の新規登録(新規検査)と購入後の車検時に印紙を納付書に貼り付けることで納付します。

10)国際観光旅客税

国際観光旅客税は、日本から出国することに対して課される税金です。税額は、

一定の場合を除き、国籍、渡航手段などに関係なく、一律で1000円

です。なお、2歳未満の子供や乗り継ぎで入国後24時間以内に出国する場合など特定の条件に該当する場合は免除されます。2025年11月時点の報道では、税額の引き上げ(3000円)やビジネスクラス以上の旅行客に対しては5000円とする案などが検討されています。

申告は、原則、航空券や乗船券の販売に合わせて消費者らから航空会社や船舶会社が徴収し、旅行者が出国する月の翌々月末日までに納付します。

11)関税

関税は、外国から輸入されるものに対して課される税金です。税率は、

  1. 基本税率:自国で設定した、関税定率法で定められた税率
  2. 暫定税率:相手国間と特殊事情がある場合などに暫定的に適用され、関税暫定措置法で定められた税率
  3. 特恵税率:開発途上国のうち、日本側がこの税率を認めた国(特恵受益国)を原産地とする輸入品に対して適応される税率
  4. 特別特恵税率:上記の特恵受益国のうち、後発開発途上国(LDC)を原産地とする輸入品に対して適用される税率(すべて無税扱いとなる)
  5. WTO協定税率:WTO加盟国を原産地とする輸入品に対して、それ以上の関税を課さないことを約束(譲許という)されており、WTO協定の譲許表に定められている税率
  6. 経済連携協定(EPA)税率:日本と特定の国との間で結ばれた経済連携協定(EPA)で定められている税率

に区分されます。

申告・納税は、

  • 申告納税方式:外国から一般貨物や課税価格が20万円を超える一定の郵便物を輸入する場合に適用され、物の品名、数量、課税標準、税額等を輸入者が申告し、銀行窓口などで納付する方法
  • 賦課課税方式:外国から日本へ自身が入国した場合などは、携帯品・別送品申告書に必要事項を記入して税関に提出し、税関が計算した税額を税関検査場内の銀行窓口または税関職員に納付する方法

があります。なお、申告納税方式の場合には、専門の通関業者に委託し、通関業務(申告から納税の立て替え)の代行してもらうケースが一般的です。のちに、通関業者に対して、立て替え金と委託料等を合わせて支払います。

12)とん税・特別とん税

とん税は、外国貿易船が港に入る際に、船の総トン数に対して課される税金です。また、とん税とあわせて徴収される特別とん税については、地方自治体に譲与される仕組みとなっています。税率は原則、納付の方法ごとに定められており、原則、

  1. 都度納付:とん税が16円(純トン数1トンまでごとに)、特別とん税が20円(総トン数1トンまでごとに)で、入港ごとに納付する方法
  2. 一時納付;とん税が48円(純トン数1トンまでごとに)、特別とん税が60円(総トン数1トンまでごとに)で、開港ごとに1年分をまとめて納付する方法

の2種類となっています。ちなみに、純トン数とは総トン数(船全体の内部容積)から機関部や操船部、燃料タンクなど一定のものを除いた貨物搭載部分の容積をいいます。

以上(2025年12月更新)
(監修 税理士 石田和也)

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安く仕入れたくても、 行き過ぎた “値切り交渉”は違法!

1 危険な値切り交渉をしていませんか?

少しでも有利な条件で取引したい……経営者なら誰でも考えることでしょう。ですが、ご用心。ほんの少し誠実さを欠いたために、法令違反になってしまう恐れがあるからです。

「何とかして安くしたい」という気持ちからのことですが、日頃のちょっとした交渉が問題になることがあるので、注意が必要です。この記事では独占禁止法と下請法(2026年1月からは中小受託取引適正化法、以下「取適法」)に注目します。

2 その値切り交渉は「独占禁止法」違反かも?

1)「優先的地位の濫用」に注意

独占禁止法は、会社同士の公正で自由な競争を守るために、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法などを規制する法律です。このうち値切り交渉に関連して押さえておきたいのが、不公正な取引方法として規制されている「優越的地位の濫用」です。

  • 優越的地位の濫用:取引上で優越した地位にある事業者が、その地位を利用して相手方に対し、不当に不利益を与えること

優越的地位にある事業者が価格交渉を行う場合において、以下で紹介するようなケースは、独占禁止法違反になる恐れがあります。

2)ケース1:自社の予算単価のみを基準として、一方的に通常の価格より著しく低い単価を定める

自社の予算内に収めることができるように価格交渉を行うことがあると思います。ですが、取引先と十分に協議せず、予算のみを基準に一方的に通常より著しく低い単価を定めることは、濫用行為に該当する恐れがあります。

3)ケース2:量産打ち切り後の補給品として発注したのに、量産時と同じ単価を定める

量産期間の終了後の補給品の製造には、量産品の製造のコストよりもより多くのコストを要します。それにもかかわらず、量産品と補給品を同一の単価とすることは、濫用行為に該当する恐れがあります。

3 その値切り交渉は「下請法(取適法)」違反かも?

1)「下請代金の減額」「買いたたき」に注意

下請法(取適法)は独占禁止法を補完する法律で、発注者と受注者が資本金の額の要件を満たし、かつ、一定の取引類型に該当する場合に適用されます。なお、2026年1月から(取適法に名称変更されてから)は従業員基準も導入されます。

下請法(取適法)には、発注者(親事業者)の義務や禁止事項などが具体的に規定されています。発注者の禁止事項のうち、値切り交渉に関連して、特に押さえておきたいのが、下請代金の減額、買いたたきです。

  • 下請代金の減額:あらかじめ定めた下請代金を減額すること
  • 買いたたき:類似品などの価格や市場価格に比べて、著しく低い下請代金を不当に定めること

発注者が値切り交渉を行う場合において、以下のようなケースが下請法(取適法)違反になる恐れがあります。

2)ケース1:受注者と合意しているからという理由で、下請代金の減額を行う

よくある誤解として、「発注者(親事業者)と受注者(下請事業者)が合意していれば、あらかじめ定めた下請代金を減額できる」というものが挙げられます。下請法(取適法)では、

受注者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金を減額することを禁止

するため、これに該当する場合は合意があったとしても違法となります。

3)ケース2:給付の内容に知的財産権が含まれているにもかかわらず、当該知的財産権の対価を考慮しないで価格を決定する

発注者と受注者との間で、給付の内容に知的財産権が含まれている場合に、当該知的財産権の対価を協議することなく、一方的に通常支払われる対価より低い対価を定めた場合には、買いたたきに該当する恐れがあります。

4)ケース3:不況時や為替変動時に協力依頼などと称して大幅な価格低減を一方的に要求する

発注者と受注者との間で、製品・サービスごとに「そもそもコスト削減が可能なのか」「どの程度可能なのか」を、合理的な根拠に基づきながら協議する必要があります。発注者が一方的に値下げを要求し、価格を設定することはNGです。

2026年1月から(取適法に名称変更されてから)は

協議に応じない一方的な代金決定が禁止

されます。例えば、値下げ交渉の場合、発注者が値下げを要請する場合において、受注者がその説明を求めたのに、具体的な理由の説明や根拠資料の提供をせずに一方的に価格を決定することは違法になります。

4 値切られる側になったときのための防御

受注者が値切られる側になったときのために、取引が開始される前の見積もりの時点で、

具体的にどのような業務に対する対価なのかを明記

しておきましょう。何に対する見積り(対価)なのかを明確にしておくことで、業務の追加等の際に、価格交渉を行いやすくなります。

また、発注者の資本金や取引の類型を確認し、下請法(取適法)の適用対象か否かを事前に確認しておくのがよいでしょう。

以上(2025年12月更新)
(監修 TMI総合法律事務所 弁護士 池田絹助)

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【ハラスメント対策 まとめ】 法改正、指導のポイント、規程集など

1 正直ウンザリの「ハラスメント」でも対策は必須

職場で発生する「ハラスメント(嫌がらせ)」。時代とともにモラハラやロジハラなど、次々と新しいものが出てきて、正直ウンザリという人もいるでしょう。

とはいえ、深刻なハラスメントで精神などを病んでしまう人が後を絶たないのも事実。また、男女雇用機会均等法などにより、会社には一定の「ハラスメント防止措置」の実施が義務付けられています。これが不十分なせいでハラスメントが発生すると、会社がその責任を問われるリスクもあります。思いは人それぞれでしょうが、いずれにせよ対策は必須です。

この【ハラスメント対策】シリーズでは、会社に義務付けられているハラスメント防止措置の内容をはじめ、ハラスメントについて押さえておくべきポイントを紹介します。

2 どんなハラスメントについて対策が必要?

冒頭でも述べた通り、近年はさまざまなハラスメントが増えてきていますが、まずは法令によってその内容が明確に定義されている

  • パワハラ(職場などでの上下関係を背景にしたハラスメント)
  • セクハラ(性的な言動によるハラスメント)
  • マタハラ、パタハラ、ケアハラ(妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント)

について対策を講じましょう。会社はこれら5つについて、ハラスメント防止措置を講じる義務を負っているので、まずは各ハラスメントの内容を正しく理解することが肝心です。

3 防止措置の一歩目「ハラスメント防止規程」はどう定める?

ハラスメント防止措置とは、具体的には次の5つを指します。

  • ハラスメントの方針(ハラスメントを行ってはならない旨など。就業規則等の文書に規定)の明確化、周知・啓発
  • ハラスメントに関する相談窓口の設置・運用
  • 事実確認、被害者に対する配慮のための適正な措置、行為者への適正な措置と再発防止に向けた措置の実施
  • 相談者や行為者のプライバシーを保護、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨の周知・啓発
  • 業務体制の整備など、マタハラ等の原因や背景となる要因を解消するための措置の実施

このうち、1.の「ハラスメントの方針」については、「ハラスメント防止規程」などの形で定めることが多いです。4.の「不利益な取扱いの禁止」などもこの規程に定めるとよいでしょう。

4 ハラスメント相談窓口の担当者は誰にすればいい?

ハラスメント相談窓口は、ハラスメントに関する相談や苦情を受け付け、被害を最小限に食い止めるための窓口です。

相談窓口がうまく機能していれば、深刻なハラスメント問題に至る前に事態を収めることができます。逆に、社員から「相談しにくい」と思われてしまうと、いつまでたっても会社がハラスメントの存在を感知できず、問題が深刻化してしまう恐れがあります。

  • 相談窓口は、会社の内部に設置するのか、外部に設置するのか(併設も可)
  • 内部に設置する場合、担当者を誰にするのか(経営者や役員、管理職、人事労務担当部門や法務部門の社員、社内の診察機関、産業医、カウンセラー、労働組合など)

などを検討しつつ、「相談しやすい」窓口にしましょう。

5 ハラスメントの事実確認はどうやって進める?

ハラスメントに関する相談が相談窓口に寄せられた場合、会社はすぐにハラスメントの事実があったか否かを確認します。これを「事実確認」といいます。具体的には、

相談者(被害者など)、第三者(目撃者など)、行為者の順番で事情聴取をする

ことになります。

経営者としては、早く白黒をつけたいので、ついつい事実確認を行う担当者をせかしがちですが、調査不足は事実誤認のもとです。後々の対応(社内処分など)を誤らないためにも、「焦らず、じっくりと事実確認を行うこと」を心がけましょう。

6 行為者の処分はどの程度が妥当? 被害者のケアは?

事実確認の結果、ハラスメントがあったことが明らかになったら、すぐに行為者の処分と被害者のケアをします。

  • 行為者の処分の基本は、行為の内容と懲戒処分の重さを釣り合わせること
  • 被害者のケアの基本は、被害者がつらくないよう、行為者と被害者とを引き離す

です。仮にハラスメントの事実が確認できなくても、被害者に対し、事実確認の調査や調査結果を丁寧に説明し、会社が真剣に対応したことを伝えるなど、真摯な対応が求められます。

7 ハラスメントの再発防止のためには何をすればいい?

ハラスメントが発生した場合、会社は再発防止策を講じなければなりません。具体的には

  • 発生したハラスメントについて社内に情報を開示する
  • ハラスメントの方針(ハラスメント防止規程など)を再周知する
  • ハラスメント防止研修を実施する

などが挙げられます。

8 結局のところ、上司は部下をどう指導すればいい?

ハラスメント防止措置を講じることは会社の義務ですが、措置を講じた結果、上司がハラスメントと指摘されるのを恐れて、部下を指導できなくなってしまっては本末転倒です。

  • 上司がハラスメントになりそうな言動や指導をしていたら、改めさせる
  • 一方、部下の指導は上司の役目であり、そこに臆病になる必要はないと伝える

ことが大切です。

なお、ハラスメントは上司から部下に対して行われることが多いですが、パワハラなどの場合、部下から上司に対して行われる、いわゆる「逆パワハラ」が話題に上がることも多いです。逆パワハラも会社が防止すべきハラスメントの1つですので、毅然とした対応が求められます。

9 就活生や取引先へのハラスメントについてはどう対応する?

ここまで紹介したハラスメント防止措置は、主に社内のハラスメント(社員に対して行われるもの)を想定していますが、この他に社外のハラスメント(就活生や取引先の担当者に対して行われるもの)についても対策を講じる必要があります。

就活生に対するハラスメントについては、

就活生の内定辞退を回避するために行われる「オワハラ(就活終われハラスメント)」

など、特有のハラスメントもあるのでしっかり内容を押さえておく必要があります。特に、2025年6月11日公布の改正男女雇用機会均等法により、

いわゆる「就活セクハラ」の防止措置が義務化(公布日から1年6カ月以内に施行予定)

されている点に注意が必要です。

取引先に対するハラスメントについては、基本的な対応の流れは社内の場合と同じですが、

取引先の社員を事情聴取する場合、必ず取引先の担当部署の承諾を得なければならない

など、特有の対応のポイントがありますので、併せて押さえておきましょう。

10 顧客などからの「カスハラ」についてはどう対応する?

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、

顧客などが、社員に悪質な嫌がらせ(土下座の強要など)をすること

です。「お客様は神様です」などというように、日本企業は総じて顧客を上に見てその要求を受け入れる姿勢がありますが、

正当なクレームには真摯に、理不尽なカスハラには毅然と対応する

ようにしないと、社員を守れません。折しも、2025年6月11日公布の改正労働施策総合推進法により、

カスハラの防止措置が義務化(公布日から1年6カ月以内に施行予定)

されることになりましたので、この機会にカスハラの類型や対応のポイントを押さえ、正しい対応が取れるように周知しましょう。

11 職場に貼れる、ハラスメント防止に役立つ「職場ポスター」

最後に、ハラスメント防止に役立つ「職場ポスター」を紹介します。印刷してそのまま職場に掲載してお使いいただける、PDF形式のコンテンツになっています。ぜひご活用ください。

以上(2025年12月更新)

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「チーズ」の地理学~小規模生産を武器に変える方法とは?

1 意外に重要! 「地理」と経済の関係

高校の授業で習った地理……。もう記憶のかなたという人も多いでしょうが、社会人になってから学び直してみると、意外と高校生だったあの頃より面白く感じるものです。なぜなら、

地理を知れば知るほど、経済活動との関係の深さが見えてくる

からです。となれば、身近な食べ物の値段の付け方や販売戦略にも、「地理」が密接に関わっているはず……。

例えば、お酒のおつまみの定番「チーズ」。お酒を楽しんでいるときは意識しないかもしれませんが、実はこのチーズの生産と流通の裏側にも、地形や気候といった地理条件が深く関わっています。むしろ、

地理が分からないとチーズの価値は語れない

と言っても過言ではないのです。

今回取り上げるのは、世界中で高級品として扱われるヨーロッパのナチュラルチーズ。

実はその多くが、「特定の土地で、ほんの小規模でしか作ることができない」

という、とてもユニークな生産背景を持っています。

地理が経済を形づくり、ブランドを生み、そして価格を決める―その過程について、楽しく解説します。

(注)この記事は複数のウェブサイトの情報を基に作成していますが、生産上の背景・歴史などについて諸説ある内容が含まれます。あらかじめご了承ください。

2 「高級チーズ」はどうやって生まれた?

日本のスーパーで欧州産のチーズを手に取ると、思わず値段に目を見張ってしまいます。味は確かにおいしい。ただ、高い! ですが、それにはちゃんと理由があります。

ヨーロッパの高級チーズは、土地そのものの価値を背負っている

のです。

例えば、世界三大ブルーチーズの1つであり、「チーズの王様」との呼び声が高い、フランスの「ロックフォールチーズ」。真っ白なチーズに青カビの模様が入った、クリーミーな食感とピリッとした辛みが特徴のブルーチーズです。

ロックフォールチーズ

このチーズは、「ロックフォールという名前がついている、ただの青カビチーズ」ではありません。実は、

フランスの南部にあるロックフォール村に存在する「特定の洞窟」から流れ込む、冷たい空気にさらして熟成しなければ、独特の青カビが育たない

のです。つまり、同じ配合で青カビチーズを作っても、場所が変われば「ロックフォールチーズ」にはなりません。

他にも、湿度や標高、風の通り道、牛が食べる牧草の種類、などなど……。ヨーロッパのチーズの風味は、土地に刻まれた“地理の偶然”の産物です。つまり、

そもそも、大量生産することができないので、価格を下げることは不可能

なわけです。だからこそ希少で、だからこそ価値が生まれるのです。

3 短所を武器に変える戦略

1)「生産しにくい」を強みに変える「テロワール」という概念!

では、1つの村でしか生産できないチーズは、どのようにして世界三大ブルーチーズにまで上り詰めたのでしょうか? ここにも「地理」的な理由が隠されていました。

土地が違えば味が変わる。ということは、「本物」を名乗るためには厳しい基準が必要になります。その基準となる考え方が、

フランスのワイン文化から広まった「テロワール」という概念

です。テロワールとは、

土壌・気候・地形・そばで育っている植物など、その土地が本来持つ「環境の個性」が食品の品質に影響を与える

という考え方。つまり、「この土地だからこそ、この味が生まれる」といった意味合いの、ワインやコーヒー、チーズなど、ブランド価値のある生産物を語る際によく見聞きする概念です。

2)15世紀、フランス国王の保護がブランド価値を生んだ!

諸説ありますが、

フランスでは、およそ600年前から、ロックフォールチーズを取り巻く「テロワール」の概念が認知されていた

といわれています。1411年、当時のフランス国王・シャルル6世が、

「この村の村民だけが、この洞窟でチーズを熟成する権利を持っているぞ!」

というお触れを出したのです。そして、その後も、ロックフォールチーズは王室の保護下に置かれることになりました。ロックフォールチーズはチーズの王様と呼ばれていますが、歴史をたどってみれば、王様というよりはお姫様のようですね。

テロワール

当時からロックフォールチーズは大人気の特産品でした。しかし、なぜ王室は直々にお触れを出してまで、ロックフォールチーズを保護し続けたのでしょうか? それは、

ロックフォール村周辺の土地は痩せていて、小麦もブドウも育たない不毛の地だったから

といわれています。

小麦でパンも焼けず、ブドウでワインも造れない小さな村がうまくやっていくには、ブランド価値のある特産品が必要不可欠。これは「フランス王室が優しいから」というよりは、治めている地域の地理的特性をよく理解した上で、飢饉(ききん)による反乱などの危険性を回避するためです。つまり、帝王学の1つだったと考察されます。

ロックフォール

ちなみに、とある言い伝えでは、

「お触れを出したシャルル6世はロックフォールチーズが大好物だった」

ともいわれています。

「大好きだから保護したい!」

という理由でお触れを出していたと想像すると、栄華を極めたフランス・ヴァロワ朝の王様も、なんだか身近な存在であるかのように感じてくるのが不思議です。

いずれにせよ、王様の保護を取り付けたことで、1つの村でしか生産できないロックフォールチーズの評価は、

「生産性の低いチーズ」から「王様お墨付きの希少価値の高いチーズ」へと180度転換

したわけです。

3)20世紀のブランド管理システムが、ロックフォールチーズの価値を押し上げた!

現代でも、欧州では生産物の価値を守るため、AOP(原産地保護呼称)やAOC(原産地統制呼称)といった制度が整えられています。簡単に言えば、「ここで作られた、この製法の生産物だけを本物と認めます!」という“ブランド管理システム”です。

実は、ロックフォールチーズはチーズとしてのAOP認定第1号!

AOP認定

経緯は諸説ありますが、近代化が進みロックフォールチーズのおいしさが世界中に広まるにつれ、

テロワールに即さない“偽・ロックフォールチーズ”が市場に氾濫するようになってしまったことがきっかけで、地元の生産業者たちが声を上げた

のだそうです。

フランス王朝があった時代から革命を挟み、幾度も戦火の渦に巻き込まれてきたフランス。それでもロックフォールチーズは数世紀にわたり、「守られるべき存在」として、そのブランド価値を守り続けています。

AOP・AOCに登録されているブランドの中で他の例を挙げるとしたら、フランス・シャンパーニュ地方で、特有の方法で、認められた者によって生産された製品のみその名を冠することができる「シャンパン」でしょう。ロックフォールチーズと同じように、希少で価格が高くとも、そのブランド価値のおかげで人々の心をつかんで離しません。

4 「再現できない個性=唯一無二の価値」

まとめると、ヨーロッパの地理条件は複雑であり、それぞれの土地によって環境が大きく異なるため、生産者たちは「同じ生産物を大量生産することはなかなか難しい」という短所を抱えていました。しかし、

その短所を「ブランド価値」という武器に変えるために、「テロワール」という概念を基にした厳格な基準が作り出された

のです。つまり、

「再現できない個性=唯一無二の価値」

この構図を描くことによって、少量生産であるからこその強いブランド力が生まれ、高価格でも消費者は、「その価値がある」と納得して購入するようになるわけです。

ブランド力

大量生産や規模拡大だけが正解ではなく、限られた条件の中だからこそ生まれる価値もある。

そして、その価値をどう伝えるかが、企業の腕の見せどころ

です。

年末年始にはぜひ、「食材がどこから来たのか」「どんなふうに育ったのか」「どんな戦略で流通しているのか」など、身近なものに思いをはせてみてください。もしかしたら、バーやレストランのテーブルに置かれた一片のチーズや一杯のワインの中に、自社サービス・製品が発展する意外なヒントが隠されているかもしれません。

以上(2025年12月作成)

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画像:いらすとや

不動産登記の種類とその活用方法

不動産売買や仲介をするとき、必要不可欠な情報である「不動産登記」。一般の方にはあまりなじみはないかもしれませんが、不動産業のみなさまにとっては見慣れたものといえるでしょう。しかし、登記簿謄本は取引時などに確認するだけで、その後は書庫にファイリングされていたり、PDFの状態でパソコンに保存されていたりするケースがほとんどではないでしょうか(なかには破棄されてしまっている場合も)。

「不動産登記」は営業活動や物件管理などで活用可能な様々な情報が含まれており、これを活用しない手はありません。ただ、なぜあまり活用できていないかというと、紙やPDFの状態では活用し辛い面があるからだと思います。また、登記といっても様々な種類があり、目的によって必要な内容も異なります。

そこで今回は、不動産登記の種類とその活用方法について説明します。

不動産登記の種類3つ

不動産登記の種類3つ

「不動産登記」は、1つの不動産ごとに1つ作成されます。 土地は1筆(1つの土地の単位)ごとに、建物については1戸ごとに登記がされます。

「不動産登記」は、大まかに「全部事項」・「所有者事項」・「地図・図面」に分けられます。各項目で得られる情報は異なるため、営業活動や物件管理で活用したい情報をどこで確認できるかを把握しておくことが大切です。

全部事項

閉鎖登記に関する内容を除く、すべての内容を確認できるもので、表題部・権利部(甲区)・権利部(乙区)の項目に分けて記載されています。

項目 記載内容 得られる情報
表題部 土地や建物に関する事項 土地:
不動産番号、地番、地目(土地の用途)、地積(土地の面積)、登記理由、登記日付
建物:
不動産番号、所在、家屋番号、種類、構造、床面積、登記理由、登記日付、所有者
権利部(甲区) 所有権に関する事項 登記の目的、受付年月日、受付番号、所有者の氏名・住居表示
権利部(乙区) 所有権以外の権利に関する事項 抵当権や地上権など所有権以外の権利名、受付年月日、受付番号、権利者の氏名・住居表示、権利の詳細

所有者事項

所有者事項では、不動産の現在の所有者に関する内容が記載されています。

不動産の所在地と家屋番号が記載されており、その不動産の所有者の氏名や住居表示を確認可能です。所有者が複数人いる場合は、所有権の持分も記載されます。

地図情報・図面情報

地図情報を請求するといわゆる公図を取得できます。請求した土地を中心として周囲の土地の情報を確認可能です。不動産の所在、地番、縮尺のほか、制度区分や基本三角点等の位置も把握できます。

なお、場合によっては、周辺の土地情報が表示されないこともあります。

地図情報のほかに、図面情報の請求・取得も可能です。図面の種類は下記です。

図面の種類 得られる情報
土地所在図(乙区) 1筆の土地の所在
地積測量図 1筆の土地の測量結果
地役権図面 地役権(特定の土地の利益のために、他者の土地を利用できる権利)が設定されている範囲
建物図面 建物の位置
各階平面図 建物の階ごとの平面の形状

取得した不動産登記情報の活用方法

不動産登記情報の活用方法

取得した「不動産登記」は、紙やPDFのままでは活用し辛いため、活用するためにはExcelに転記するなどデータ化が必要となります。データ化することで、活用の幅が広がり、より効果的なアプローチや業務の効率化が実施できるようになります。

具体的な活用例は、次のとおりです。

■全部事項

▼営業推進

表題部(土地)

  • 地目から不動産有効活用の提案
  • 面積から富裕層のリストアップ

表題部(建物)

  • 面積から富裕層のリストアップ
  • 新築年月日から建物リフォームローンの提案

甲区

  • 所有者名、所有者住所からの名寄せ
  • 登記原因の「売買」、「相続」から不動産売買、相続対策等の提案

▼管理・その他

自社物件データベースの作成

■所有者事項

  • 特定エリアの所有者一覧データベースの作成
  • DM送付

不動産登記情報の活用には多くの手間がかかる

不動産登記情報の活用

不動産登記情報を有効活用すれば、見込み客への的確なアプローチを実現できたり、機会損失を防いだりできます。しかし、有効活用するには多くの手間がかかる点が課題としてあげられます。ここでは、不動産登記情報の活用に際して生じる手間を紹介します。

登記情報の取得に時間がかかる

不動産登記情報の活用で悩ましいのが、登記情報の取得に時間がかかることです。特に不動産ごとに登記情報を1件ずつ取得していると、膨大な手間と時間がかかってしまいます。

また、登記情報取得のため不動産登記簿謄本を利用する際は地番が必要です。この地番を正確に調べるには、法務局への問い合わせることが必要となり、多くの時間がかかってしまいます。ブルーマップとGoogleマップの照合が必要な場合は、さらに営業担当者の負担が大きくなります。

登記情報の入力に手間がかかる

登記情報をデータベース化する際に入力を手作業で行うと、非常に多くの手間や労力が生じます。手作業では、入力時だけでなく更新や削除などを行う際の編集にも時間がかかります。入力や編集などで複数回にわたって人の手が加わることで、人的ミスが起こるリスクがあるのも難点です。

不動産登記情報の活用を効率的に進める方法

前章で解説した手間を省いて、不動産登記情報の活用を効率的に進めるには、「登記情報取得代行・データベース化サービス」の活用が有効です。

「登記情報取得代行・データベース化サービス」では、大量の登記情報の取得とデータベース化を代行できます。登記情報の手入力にかかる労力や時間を削減できるため、営業活動に注力することが可能です。

サービスについて、詳しくはこちらをご覧ください。

まとめ

「不動産登記」は営業活動や物件管理などで活用可能な様々情報が含まれておりますが、紙やPDFの状態では活用し辛い面があり、活用するには、データ化する必要があります。自ら手入力などで「不動産登記」をデータ化するには、大変な労力と時間がかかります。

不動産登記を有効利用するためには、登記情報取得代行・データベース化サービスを活用してみてはいかがでしょうか。

(出典:ホームズメディア)

【かんたん消費税(7)】インボイスの保存は絶対条件「仕入税額控除」の内容と計算方法

1 インボイスでなければ消費税で損をする?

消費税は、「預かった消費税(仮受消費税)」から「支払った消費税(仮払消費税)」を差し引いて計算します。これを「仕入税額控除」といいますが、インボイス制度が導入されてから(2023年10月1日以後)は、

「適格請求書発行事業者」から発行してもらったインボイスを保存することが、仕入税額控除の条件

になっています。適格請求書発行事業者とは、国税庁に適格請求書発行事業者の登録をした事業者です。

相手が適格請求書発行事業者でも正確なインボイスをもらえなかったり、相手が適格請求書発行事業者の登録をしていなかったりする場合、仕入税額控除が受けられず、皆さんが損をすることがあるのです。

インボイスの有無の影響

インボイスは大事なものですから、紛失しないように保存方法も決めておきましょう。このタイミングで電子帳簿保存法にも対応し、インボイスの電子保存を検討してもよいかもしれません。

2 仕入税額控除が楽々な会社とは?

仕入税額控除には、「原則課税」と「簡易課税」とがありますが、ここでは原則課税に注目します。なお、簡易課税は課税売上高が5000万円以下など、一定の要件を満たす企業が採用できる、仕入税額控除の計算を簡単にした仕組みです。

さて、原則課税に話を戻します。【簡易】課税という制度があるくらいなので、仕入税額控除の計算は複雑なのですが、実は、次の2つのいずれの要件も満たす会社は全額控除が認められています。規模がそれほど大きくなく、厳密に計算しなくても影響は軽微と考えられているからです。

  • 課税売上高が5億円以下
  • 課税売上割合(売上高に対する課税売上高の占める割合)が95%以上

全額控除が認められてない場合、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」で計算しなければなりません。このようにさまざまな計算方法のある仕入税額控除の全体像をまとめると次のようになります。

仕入税額控除

3 「個別対応方式」と「一括比例配分方式」

1)個別対応方式とは

仕入税額控除の基本は次の通りで、これを最も厳密に行うのが個別対応方式です。

  • 課税売上に対応する仕入で発生した仮払消費税:全額控除する
  • 非課税売上に対応する仕入で発生した仮払消費税:控除できない
  • 課税売上と非課税売上に共通した仕入で発生した仮払消費税:一定割合だけ控除する

個別対応方式

2)一括比例配分方式とは?

一方、一括比例配分方式は個別対応方式よりは楽です。なぜなら、一括比例配分方式では個別対応方式のように仮払消費税を3つに区分することなく、

仮払消費税の全額に課税売上割合を掛けた金額を仕入税額控除額とする

ことができるからです。

一括比例配分方式

ただ、一括比例配分方式は、一度採用したら最低2年間は変更できないので注意してください。事務負担が楽だからといって安易に一括比例配分方式を採用すると、仮に翌期は個別対応方式のほうが納税額が減る場合でも、個別対応方式は採用できなくなってしまいます。

4 その他仕入税額控除の特例

仕入税額控除の計算にはさまざまな特例があり、これを見逃すと税務調査で指摘を受けることがあります。主な特例を紹介するので、ご確認ください。

1)課税売上割合の著しい変動(土地の売却など多額の非課税売上が発生したときなど)

高額で長い期間使い続ける固定資産は、取得した事業年度の状況(課税売上割合)だけで、仕入税額控除の金額を決定することが不合理なケースがあります。そのため、課税売上割合が直近3年間のもの(通算課税売上割合)と比べて、

  • 著しく増加した場合には、仕入税額控除額を加算する
  • 著しく減少した場合には、仕入税額控除額を減算する

という一定の調整をします。

例えば、普段は売上のほとんどが課税売上に該当する会社なのに、たまたま、ある事業年度に土地などを売却したために多額の非課税売上が生じて課税売上割合が著しく変動するケースなどが該当します。

この調整は、固定資産を取得した事業年度を含めて3年間のうちに行われる可能性があります。そのため、多額の設備投資をした場合は、その後の課税売上割合の推移に注意し、仕入税額控除の調整もれによって税務調査で指摘されないようにしましょう。

2)固定資産の転用(固定資産の取得から3年以内に、使用用途を変更したときなど)

課税業務用に使用する目的で固定資産を購入した場合、個別対応方式で仕入税額控除を計算すれば、仮払消費税は全額控除できます。逆に、非課税業務用に使用する目的で固定資産を購入した場合、個別対応方式で仕入税額控除を計算すれば、仮払消費税は一切控除できません。

しかし、固定資産は比較的長い間使い続けるにもかかわらず、取得した事業年度の用途だけで仕入税額控除の金額を決定するのは不合理なケースがあります。そのため、取得した固定資産を、3年以内に

  • 課税業務用から非課税業務用に用途変更した場合は、仕入税額控除額を減算する
  • 非課税業務用から課税業務用に用途変更した場合は、仕入税額控除額を加算する

という一定の調整をします。

多額の設備投資をした場合は、その後の用途変更の可能性に注意し、仕入税額控除の調整もれによって税務調査で指摘されないようにしましょう。

以上(2025年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:kai-Adobe Stock

あなたの老齢年金は月額いくら? 複数の条件でシミュレート!

1 あなたの老齢年金はいくら?

人生100年時代。何だかんだといっても「老齢年金」にも頼りたいところです。皆さんが知りたいのは、「何歳になったらいくらもらえるのか?」ということだと思いますので、この記事で、2025年10月27日時点の制度に基づいたシミュレーションを示します。先に老齢年金の基本ルールを知りたい人は、こちらのコンテンツをご確認ください。

さて、この記事でシミュレーションのモデルとなるのは、次の条件のAさんです。なお、Aさんは60歳以降も厚生年金保険に加入しながら働いていますが、60歳以降の賞与支給はないものとします。

  • 生年月日:1965年4月2日(2030年4月1日に65歳)
  • 性別:男性
  • 生計維持関係にある家族:妻(2030年4月1日に60歳)
  • 国民年金保険料の納付済期間:2025年4月1日時点で40年(1985年4月1日加入)
  • 厚生年金保険の被保険者期間:2030年4月1日時点で42年(1988年4月1日加入)
  • 平均標準報酬月額(2003年3月31日まで):29万円
  • 平均標準報酬額(2003年4月1日以降):44万円

(注)平均標準報酬月額、平均標準報酬額は、厚生労働省「健康保険・船員保険被保険者実態調査(令和5年10月)」を基に算定。

老齢年金は、原則として65歳からもらえます。Aさんの老齢年金の支給額(原則)は次の通りです。

老齢年金の支給額

受給開始は2030年4月1日以降、支給額は月額20万5324円ですが、これだけで老後の生活を支えられるか気になります。そもそも老後の生活費はどのぐらいなのか、次の章で確認してみましょう。

2 老齢年金だけだと厳しい?

総務省「2024年家計調査」によると、1世帯1カ月当たりの実支出(2人以上、勤労者世帯)は次の通りです。

1世帯1カ月当たりの実支出

Aさんの老齢年金の支給額(原則)は月額20万5324円でした。妻の老齢年金やその他の収入もあるので一概に言えませんが、

65~69歳の実支出(総額)が月額38万6131円であることを考えると、少なくともAさんの老齢年金だけで生活を支えるのは難しい

といえそうです。

3 働きながら老齢年金をもらうと支給額が減る?

60歳以降も厚生年金保険に加入したまま、働きながら老齢年金をもらうと、

「在職老齢年金」といって、賃金額に応じて老齢年金が調整される仕組みの対象

になります。老齢年金と賃金の合計額が「支給停止調整額」というボーダーラインを超えると、老齢年金が減額されます。減額の対象は老齢厚生年金だけであり、老齢基礎年金は対象外です。

ここでは、Aさんの60歳到達時の賃金などの前提条件を、次のように設定します。

  • 60歳到達時の賃金(月額):44万円
  • 基本月額:9万6108円(65歳時点における老齢厚生年金の報酬比例部分の額)
  • 総報酬月額相当額:44万円(65歳時点における標準報酬月額、賞与の支給はなし)

(注)60歳到達時の賃金は、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(産業計、男性(学歴計)、55~59歳の所定内給与額)を、総報酬月額相当額は日本年金機構「厚生年金保険料額表」を基に算定。

2025年4月1日以降の在職老齢年金の制度では、

基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円を超えると、老齢年金が減額される

ことになっています。基本月額は老齢厚生年金の報酬比例部分のことなので、60歳以降の賃金が下がればその分、65歳から受給できる年金額(基本月額)も下がり、老齢年金は減りにくくなります。この点を強調し「賃金が維持されても、手放しで喜ぶべきではない」と示す記事もありますが、在職老齢年金の調整対象となったとしても、

老齢年金が減るだけで全体の収入は増えますし、会社もこの点を考慮して賃金を設定する

ため、それほど気にする必要はないという見方もできます。Aさんが65歳から老齢年金をもらう場合の収入(月額)は次の通りです。

Aさんが65歳から老齢年金をもらう場合の収入

賃金が60%に下がったとしても月額46万4392円なので、前述した月額38万6131円(65~69歳の1世帯1カ月当たりの実支出)を超えます。

なお、賃金100%の場合、現状のルールでは基本月額(9万6108円)と総報酬月額相当額(44万円)の合計が51万円を超えるため、在職老齢年金で1万3054円の減額が発生していますが、

2026年4月1日からは支給停止調整額が「51万円」から「62万円」に引き上げ

られるため、2026年4月1日以降のルールでは減額は発生しないことになります。

【支給停止調整額が51万円 → 62万円に引き上げられた場合の月の収入】

  • (賃金の低下率100%)63万2270円 → 64万5324円

ちなみに、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給している65歳以上70歳未満の方は、毎年10月に年金額が見直されることになっています(在職定時改定)。

以前は65歳以降に支払った厚生年金保険料が年金額に反映されるタイミングは、70歳到達時または退職時など限定的でした。しかし、2022年4月の法改正により、基本月額は毎年見直しされることが決まったため、在職老齢年金にも少なからず影響が派生することになります。

4 60歳から老齢年金をもらう場合は?

60歳から65歳までの生活が不安な場合、「繰り上げ受給」といって、老齢年金をもらう時期を前倒しにすることができます。ここでは支給を60歳に繰り上げることを想定します。この場合、老齢年金(加給年金は繰り上げできず、65歳から満額を支給)は60歳からもらえますが、

支給を繰り上げた5年分、支給額が減る(Aさんの場合、24%の減額)

ので注意が必要です。また、老齢年金と「高年齢雇用継続給付」を同時にもらう場合も、老齢年金が減ります。高年齢雇用継続給付とは、雇用保険給付の1つで、

賃金額が60歳到達時の75%未満に低下した場合に、低下後の賃金に一定率を掛けた額の給付を受けられる制度(65歳になると支給終了。2025年4月以降の最大給付率は10%)

です。

Aさんが60歳から老齢年金をもらう場合の収入(月額)は次の通りです。

Aさんが60歳から老齢年金をもらう場合の収入

支給を繰り上げた分、60~64歳の収入は安定しますが、65歳以降の老齢年金は減るので、慎重な判断が必要です。

5 75歳から老齢年金をもらう場合

老後の生活に余裕がありそうな場合、繰り上げ受給とは逆に、「繰り下げ受給」といって老齢年金をもらう時期を後ろ倒しにすることができます。ここでは支給を75歳に繰り下げることを想定します。この場合、老齢年金の受給開始は75歳からとなり、

支給を繰り下げた10年分、支給額が増える(Aさんの場合、84%の増額)

ことになります。ただし、繰り下げ受給だと繰り下げた期間についての加給年金は一切もらえず、繰り下げた分に対する増額もありませんので注意する必要があります。Aさんが75歳から老齢年金をもらう場合の収入(月額)は次の通りです。

Aさんが60歳から老齢年金をもらう場合の収入

支給を繰り下げた分、75歳以降の収入が多くなります。ただ、65~74歳の間は賃金や私的な年金などで生活しなければならないので、60歳以降も賃金が多い人や貯蓄に余裕がある人に向いているといえます。

なお、賃金の低下率が100%、90%、80%の場合、図表5の通り在職老齢年金による減額が発生しています。ただ、こちらも2026年4月1日から支給停止調整額が51万円から62万円に引き上げられた場合、減額される部分が小さくなるため、月の収入が次のように変わってきます。

【支給停止調整額が51万円 → 62万円に引き上げられた場合の月の収入】

  • (賃金の低下率100%)72万7222円 →78万2222円
  • (賃金の低下率90%)70万3709円 → 74万4709円
  • (賃金の低下率80%)67万8684円 → 69万4658円

以上(2025年12月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:takasu-Adobe Stock

老齢年金の基本ルール! 年齢や働き方で支給額が変わる?

1 人生100年時代の必須知識

人生100年時代。老後の生活設計を考えると、やはり頼りにしたいのが「公的年金」です。ここでいう公的年金は、一定の年齢になったら支給を申請できる「老齢年金」のことで、

  • 国民年金から支給される「老齢基礎年金」
  • 厚生年金保険から支給される「老齢厚生年金」

に大別されます。気になるのは、「いつから、いくらもらえるのか?」ですよね。これを知るためには、次の3点を押さえることが肝要になります。

  • 老齢年金は2階建て。原則65歳から支給
  • 繰り上げと繰り下げで支給額が変わる
  • 働きながらもらうと支給額が減る可能性がある

この記事では、制度が複雑な老齢年金について、この3つのポイントを掘り下げて説明します。なお、老齢年金やその他の制度の内容は、2025年10月27日時点のものです。

また、次のコンテンツでは、老齢年金が具体的にどのぐらい受け取れるのかのシミュレーションを紹介していますので、併せてご確認ください。

2 老齢年金は2階建て。原則65歳から支給

老齢年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金があり、次のように2階建てのイメージです。どちらも、

原則65歳(正しくは、65歳に達する日(誕生日の前日)が属する月の翌月)から支給

されます。

老齢年金の全体像

2025年4月1日時点で、65歳以降の支給額は次の通りです。

  • 老齢基礎年金(注):83万1700円×国民年金の保険料納付済月数など÷480月
  • 経過的加算:1734円×生年月日に応じた率×厚生年金保険の加入月数-83万1700円×(20歳以上60歳未満の厚生年金保険の加入月数÷(加入可能年数×12))
  • 報酬比例部分:2002年度以前の報酬の平均(a)+2003年度以降の報酬の平均(b)
  • 加給年金:23万9300円(配偶者と第1子・第2子、配偶者のみ生年月日に応じた特別加算あり)、7万9800円(第3子以降)

(注)国民年金の付加保険料を納めた期間がある場合、老齢基礎年金が加算されます。

報酬比例部分にある「平均標準報酬月額」と「平均標準報酬額」は紛らわしいですが、要は

2002年度以前と2003年度以降とに分けて、1カ月当たりの報酬の平均額を出している

ということです。

  • 2002年度以前は「標準報酬月額(月例賃金などの「報酬月額」を一定幅で区分したもの)」の平均額
  • 2003年度以降は「標準報酬月額+標準賞与額(賞与総額から1000円未満の端数を切り捨てたもの)」の平均額

を使って、報酬比例部分の額を計算します。

■日本年金機構「年金額の計算に用いる数値」■
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/nenkingaku/20150401-01.html

3 繰り上げと繰り下げで支給額が変わる

1)繰り下げ受給・繰り上げ受給:繰り上げると減額、繰り下げると増額

老齢年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給には、次のような真逆の性質があります。

  • 繰り上げ受給:65歳よりも早く老齢年金をもらう(60~64歳)。結果、支給額は減る
  • 繰り下げ受給:65歳よりも遅く老齢年金をもらう(66~75歳)。結果、支給額は増える

具体的に、どれだけ支給額が変わるのかのイメージは次の通りです(金額は概算です)。

老齢年金の支給額

繰り上げ受給の場合、支給を1カ月繰り上げるごとに、1962年4月1日以前生まれの人は0.5%(最大30%)、1962年4月2日以後生まれの人は0.4%(最大24%)、支給額が減ります。

繰り下げ受給の場合、支給を1カ月繰り下げるごとに、生年月日に関係なく0.7%(最大84%)、支給額が増えます。

一度、繰り上げか繰り下げをした場合、それを取り消すことはできず、減額または増額された老齢年金が生涯支給されます。ただし、老齢年金のうち「加給年金」だけは、繰り上げ・繰り下げの対象外のため、減額や増額がされることはありません。また、繰り下げ期間中、加給年金は支給されません。

2)特別支給の老齢厚生年金:繰り上げ受給に似ているが別の制度

特別支給の老齢厚生年金とは、

65歳前の一定の年齢に達したときから老齢年金を特別にもらえる制度

です。老齢年金の繰り上げ受給に似ていますが全くの別の制度で、受給しても年金額の減額や増額等は一切発生しません。昔は60歳から老齢厚生年金の受給が開始されていたのですが、1985年に支給開始時期(原則)が65歳に引き上げられることになりました。その経過措置として、生年月日等に応じて65歳前に支給されるのが特別支給の老齢厚生年金です。具体的な対象は、

  • 男性:1961年4月1日以前生まれ
  • 女性:1966年4月1日以前生まれ(男性の5年後)

に限定され、支給開始時期も性別と生年月日によって決まっています。

元々は「報酬比例部分」と「定額部分」とで構成されていた特別支給の老齢厚生年金ですが、経過措置の一環として支給開始年齢や給付内容が段階的に引き上げられるようになっており、

2025年4月1日以降に受給権が発生する場合、65歳前にもらえるのは「報酬比例部分」だけで、「定額部分(老齢基礎年金に相当する部分)」の支給は原則としてされない

という点に注意が必要です。

2025年4月1日以降に特別支給の老齢厚生年金をもらえる人は次の通りです。前述した通り、元々この制度は、1985年に老齢年金の支給開始時期(原則)が60歳から65歳に引き上げられた際、経過措置として設けられたものなので、将来的には対象者がいなくなります。

特別支給の老齢厚生年金

4 働きながら老齢年金をもらうと支給額が減る可能性がある

1)在職老齢年金:減額されることがある

在職老齢年金とは、

60歳以降も働きながら老齢年金をもらう場合、支給額が調整される制度

です。具体的には、老齢厚生年金の額に基づく「基本月額」と、賃金額に基づく「総報酬月額相当額」の合計が「支給停止調整額」というボーダーラインを超えると支給額が減ります。

  • 基本月額 = 老齢厚生年金の報酬比例部分の額
  • 総報酬月額相当額 = 標準報酬月額 + (過去1年間の標準賞与額÷12)
  • 支給停止調整額 = 51万円(2026年4月1日からは62万円)

在職老齢年金

2)高年齢雇用継続給付:減額

高年齢雇用継続給付とは、60歳から65歳到達前の期間において、要件に該当することで受けられる雇用保険給付の1つで、

現在は、賃金額が60歳到達時の75%未満に低下した場合に、低下後の賃金に一定率を掛けた額の給付を受けられる制度

です。2025年4月1日以降、最大支給率は10%となっています。

高年齢雇用継続給付と老齢年金が併せて支給される場合、60歳到達時の賃金と比較した低下率を基に、老齢年金が次のように減額されます。最大減額率は4%となっています。

高年齢雇用継続給付

以上(2025年12月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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