目次
1 Z世代も上司になる時代がやってきた
「Z世代(1990年代中盤から2010年代序盤に生まれた世代)」が管理職になって、部下を育てる時代になりました。「あのZ世代に上司が務まるの?」と不安を覚えている場合ではありません。これからの企業を支えていくのはZ世代、あるいはそれよりもさらに若い世代なのですから、その成長を温かく支援したいものです。
Z世代は、デジタルネイティブと呼ばれます。AIなくして経営を語れない時代にあって、Z世代のこうした特徴は、上司としての長所になり得ます。また、丁寧な説明(物事の「意味」)を求める点も、裏を返せば「Z世代は部下に丁寧に説明をする」ということにもなります。Z世代を一括りにするべきではありませんが、広い特徴としてこれらを捉えてうまく指導していきたいものです。

以降では、Z世代上司の成長を見守る社長、直接指導する管理職のヒントとなる具体的な情報をお伝えしていきます。例えば、Z世代上司に、
「何かあれば相談して」
と声がけするのは大切ですが、もっと効果的な言い換えがあるので、以降で紹介します。巷では、入社初日の午前で退職代行に駆け込む「4時間退職」も起こっています。ある意味、Z世代以上に手強い新人とうまくやっていけるのはZ世代上司かもしれません。
2 Z世代上司の特徴を、長所として理解する
Z世代については、「承認欲求が強い」「自分で考えるよりも先に答えを求める」といった特徴が挙げられることがあります。これらをネガティブな特性とばかりはいえず、育ってきた環境が生んだ傾向です。その背景を理解すれば、上司としての強みに転じる側面が見えてきます。
例えば、Z世代はキャリアの初期から、情報過多の環境にいます。仕事の進め方も、評価のされ方も、先輩の姿を見て自然に学ぶより、検索や動画で自ら調べる習慣が身に付いています。
また、コロナ禍でテレワークが当たり前になったタイミングで社会人になった層も多く、「職場の空気を読んで覚える」より、「明確な基準や指標を持ってそれを拠りどころにする」傾向にあります。
こうした背景を考慮すると、Z世代の特徴としては、下記が言えそうです。あなたの職場にも当てはまるのではないでしょうか。こうしたZ世代の特徴は、マイナスではなく、むしろ上司としてチームを動かすときに直接活きる特性です。
- 目的と基準が明確なら、主体的に動ける
- 情報を素早く収集・整理できる
- 複数の選択肢をフラットに比較できる
一方で、報告・連絡・相談の習慣、締め切りを守ること、責任をとること。こうした仕事の基本は、世代や年齢などに関係なく求められます。「Z世代の特性だから仕方ない」と容認することは、本人のためにも組織のためにもなりません。「変わらない大切な仕事の基本は基本として明確に伝える」「できていなければ厳しく指摘する」が、Z世代を上司に育てる第一歩です。
3 Z世代上司が最初につまずきやすい3つのポイント
Z世代を初めて管理職・リーダー職に就けたとき、どこで詰まるかを知っておくと、先手を打てます。よくある壁は次の3つです。これらはZ世代に限った特徴とは言い切れないでしょうが、特にZ世代上司が最初につまずきやすい点かもしれません。
1)年上の部下への指示に躊躇する
Z世代は、自分より年上、あるいは社歴が長い社員に指示を出すことに、強いストレスを感じるケースが少なくありません。「生意気だと思われないか」「反発されたらどうしよう」という不安から、曖昧な指示になったり、言うべきことを言えなかったりします。
ここで経営者や上長がやるべきは、「年上が相手でも指示を出しなさい。それがあなたの役割であり、あなたにその役割を担ってもらうのが会社としての決定事項だ」と明言することです。そして、年上の部下にも「あなたはこの上司に従う必要がある」と伝えなければなりません。役割の正当性を組織として示さなければ、Z世代上司は一人で戦うことになります。
2)「叱る」「注意する」ができない
Z世代は、高圧的な指導を受けた経験が比較的少ない世代です。そのため、部下を叱る・注意するという行為に慣れておらず、問題を見て見ぬふりをしてしまうことがあります。「嫌われたくない」「摩擦は面倒だから回避したい」という感情が、判断より先に来るのです。
対策は、「注意の仕方」を具体的に教えることです。感情的に言うのではなく、「この点が、この基準に照らして、こう問題がある」と事実ベースで伝える方法を、ロールプレイングなどを通じて、Z世代上司に身に付けさせましょう。「叱り方」ではなく、「伝え方」の技術として教えることがポイントです。
3)「答え」を持っていないと感じて委縮する
「上司たるもの、答え(正解)を持っていなければならない」と思い込み、分からないことを聞かれたときに焦る。あるいは、部下の相談に対して「自分にはまだ分からない」と感じるものの部下の前で格好つけてしまい、後から自己嫌悪に凹む。こうしたパターンもよく見られます。
経営者や上長は、「答えを持っている上司」より「一緒に考えられる上司」の方が、今の職場では機能することを伝えましょう。そして、「答えが出ないときは経営者や上長に相談していい」という逃げ道を明示しておくことも大切です。
4 力を引き出すための経営者や上長の関わり方
経営者や上長が、Z世代上司の力を引き出すために何ができるか。現場で機能する3つのアプローチは次の通りです。
1)「役割」ではなく「権限」を渡す
Z世代上司を「チームリーダーに任命する」だけでは不十分です。何を決めていいのか、どこまで自分で判断してよいのかが曖昧なまま役割だけ与えると、Z世代上司は動けなくなります。
「採用面接の一次選考は任せる」「チームの業務分担は自分で決めていい」「予算10万円以内の発注は決裁不要」など具体的な権限の範囲を明示することで、初めて「自分の仕事」として動けるようになります。特に明確な基準や指標を持っていたいZ世代上司の場合、具体的でない曖昧な権限は、判断ミスへの恐怖を生んでしまうでしょう。
2)週1回、15分の「壁打ち」を設ける
「困ったことがあれば相談しろ」と言っても、おそらくZ世代上司はなかなか来ません。「こんなことを相談したら頼りないと思われる」と誤解していたり、「忙しそうで声をかけにくい」という遠慮が先に立ったりしがちだからです。
そこで経営者や上長は、週に1回、15〜30分程でいいので、定期的にZ世代上司と話す時間を設けてみましょう。「最近どんなことで困ったか」「部下との関係で気になることはあるか」などを引き出します。「経営者や上長が聞いてくれる」という仕組みを作ることで、Z世代上司には話す機会ができ、問題を一人で抱え込みにくくなります。
3)「うまくいったこと」を言語化させる
Z世代は、失敗への感度が高い一方で、成功体験を自分の力として積み上げるのが苦手な場合があります。人にもよりますが、うまくいっても「たまたまだ」「自分の実力じゃない」と流してしまい、自信につながりにくいかもしれません。
経営者や上長は「先週、あの部下の案件がうまく進んだのはなぜだと思う?」と問い、自分の言葉で語らせる。具体的に言語化させることで、経験が「再現可能なスキル」になります。具体的に「何がよかったか」を一緒に分解する習慣が、Z世代上司の成長を加速させるでしょう。

5 育てる側の覚悟
Z世代上司が失敗したとき、「やっぱり無理だった」と結論づけるのは早計です。失敗の原因は「権限が曖昧だった」「フォローの仕組みがなかった」「基準を明確に、かつ具体的にしていなかった」という場合も少なくありません。
「Z世代」とひとくくりにするのはナンセンスですが、若い世代の社員を上司にするためには、組織側もある程度変わり、進化していくことが求められます。これまで「見て覚えろ」「背中で示せ」で機能してきた部分を、言語化・仕組み化していく、といった具合です。言語化・仕組み化は、Z世代上司のためだけでなく、結果的に組織全体を底上げしてくれるでしょう。
これから、Z世代上司がますます増えていきます。彼らが上司として育つかは、育てる側の関わり方でも変わってきます。ある意味、Z世代上司の成長は、組織の鏡ともいえるでしょう。
6 「Z世代上司が育つ言葉」に言い換えてみよう
経営者や上長からのZ世代上司への声掛けは、ちょっとした言い方の差で、受け取り方が大きく変わります。「✕:悪い例」を「◎:よい例」に言い換える例をご紹介します。
「何かあれば相談して」
›
「毎週○曜日の午前中、15分話す時間をとろう」
「自分で考えて動いて」
›
「この範囲は任せる。迷ったときは声をかけて」
「なんでそんなことも言えないの」
›
「言いにくかったと思うけど、どう伝えようとした?」
「答えくらい自分で出して」
›
「一緒に整理しよう。まず何が引っかかる?」
「あの件、うまくいったね」
›
「あの件、なぜうまくいったと思う?自分の言葉で言ってみて」
「年上の部下が言うことを聞かないのは、あなたが悪い」
›
「あなたがリーダーなのは会社が決めたこと。私が後ろにいる」
「もっと自信を持って」
›
「先週のあの判断はよかった。なぜそうしたか聞かせて」
以上(2026年4月作成)
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画像:日本情報マート






