目次
1 税制改正大綱の内容はいつから実行される?
毎年年末に税制改正大綱が公表されますが、その内容は今すぐに実行されるわけではありません。税制改正大綱の内容を実行するための法令は、年明け1~3月に国会で審議されますし、そもそも税制改正大綱には、
その翌年度の改正だけでなく、翌々年度以降の改正
も含まれているのです。
となると、経営者や実務担当者は、税制改正大綱の内容が、いつから実行されるのかを意識しておく必要があります。そういう意味でいえば、直近の税制改正大綱の内容はどうなのでしょうか。皆さんが注目している税制が、実はまだ先のことだったら困りますよね。
そこで、この記事では、近年話題になっている様々な税制の中から、
中小企業が2026年度に使える税制
について紹介していきます。具体的には、
設備投資、研究開発、賃上げ、寄附
をした、または検討している中小企業の経営者や実務担当者は確認してみてください。
この記事で紹介している設備投資、研究開発、賃上げに関する税制は、中小企業者等を対象としています。中小企業者等とは、
資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人(同一の大規模法人から、発行済株式の総数または出資の総額の2分の1以上を所有されている法人などを除く)など
をいいます。
なお、この記事で紹介している税制の内容は、2026年3月26日時点のもの(令和8年度税制改正大綱で定められた内容については予算審議中のもの)で、将来変更される可能性があります。
2 【設備投資】中小企業投資促進税制
中小企業投資促進税制は、
生産性の向上を目的に、一定の設備投資やソフトウエアを購入した場合に、その投資額の一部を税額控除か、特別償却(通常の減価償却費のかさ増し)のいずれかを選択して適用できる制度
です。ただし、資本金3000万円超の中小企業者等については特別償却しか適用できません。

例えば、生産性の向上を目的に200万円の機械装置を購入して税額控除を選択した場合、14万円(=200万円×7%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。
なお、購入した設備ごとに購入金額や重量などの下限が決められています。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。
この税制は、事前の申請などは必要なく、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類を添付することで適用を受けられます。
1.特別償却の場合
- 特別償却の償却限度額の計算に関する付表(以下「付表」)
- 適用額明細書
2.税額控除の場合
- 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
- 適用額明細書
3 【設備投資】中小企業経営強化税制
中小企業経営強化税制は、
中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて、新たな設備投資をした場合に、その投資額の一部を税額控除か、全額を即時償却のいずれかを選択して適用できる制度
です。要件は4つのタイプに分かれており、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。なお、C類型は2025年4月1日をもって廃止となっています。

例えば、150万円のシステム投資を行って税額控除を選択した場合、15万円(=150万円×10%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。
なお、中小企業投資促進税制と同様、購入した設備ごとに購入金額の下限が決められているので注意が必要です。一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。
また、この税制を受けるためには、事前に経営力向上計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定までおおよそ3カ月はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(認定計画の申請書および認定書の写しや別表または付表、適用額明細書)を添付しなければなりません。
4 【設備投資】中小企業防災・減災投資促進税制
中小企業防災・減災投資促進税制は、
中小企業等経営強化法の認定を受けた事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画に基づいて、企業の防災・減災目的の設備投資をした場合(認定を受けた日以後1年以内に対象設備を取得して、事業用として使用した場合に限る)に、特別償却を適用できる制度
です。

例えば、150万円の耐震設備を取得した場合、24万円(=150万円×16%)を特別償却として損金に計上できます。
また、この税制は、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(付表と適用額明細書)を添付することで、適用を受けられます。
この税制を受けるためには、事前に事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定まで、不備がない状態でおおよそ45日はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(付表と適用額明細書)を添付しなければなりません。
5 【設備投資】少額減価償却資産
少額の備品などを購入した際、資産計上をすることなく、即時に全額を損金に算入できる少額減価償却資産について、
2026年度より、対象になる取得価額が40万円未満(改正前は30万円未満)に引き上げ
られています。
なお、この特例は、
事業年度終了の日において常時使用する従業員の数が400人以下(改正前は500人以下)の法人が適用対象
になります。
6 【設備投資】固定資産税の特例
固定資産税の特例は、
中小企業等経営強化法の認定を受けた認定先端設備等導入計画に基づいて、新たな設備投資をし、かつ一定率以上の賃上げを表明した場合に、固定資産税の一部が3年間または5年間減免される制度
です。

例えば、機械装置200万円を購入した場合、約14万円(≒200万円×1.4%×1/2。一般要件のみを満たした場合の購入初年度ケースです)の固定資産税の減免を受けられます。
この税制を受けるためには、事前に先端設備等導入計画を作成し、市区町村から認定(東京都特別区の場合は、計画申請・認定は特別区が、課税は東京都が行います)を受けなければなりません。設備投資については、認定後に行うことが必須です。なお、先端設備等導入計画の作成には1カ月程度はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、償却資産の申告の際に、一定の書類(先端設備等導入計画に係る固定資産税の課税標準の特例適用申請書や認定書の写しなど)を添付しなければなりません。
7 【研究開発】中小企業技術基盤強化税制
中小企業技術基盤強化税制は、
中小企業が行う研究開発(試験研究)について、その試験研究費の一部を税額控除できる制度
です。

例えば、3000万円の試験研究費が計上された場合、360万円(3000万円×12%)の税額控除を受けられます。ただし、控除できる金額は原則として法人税額の25%が上限となります。
なお、2026年度の税制改正では、適用期間が3年間延長されるとともに、控除しきれなかった税額を3年間繰り越せる制度(繰越税額控除制度)が追加されました。これにより、
- 当期が赤字で法人税が発生しない場合
- 控除額が法人税額25%を上回る場合
であっても、将来の黒字年度で控除を活用できるようになります。ただし、「その年度の試験研究費が比較試験研究費(過去3年間の平均額)を超えていること」という条件がある点には注意が必要です。
この税制は、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(別表や適用額明細書)を添付することで、適用を受けられます。
8 【賃上げ】賃上げ促進税制
賃上げ促進税制は、
中小企業者等が、前年度よりも給与などを増やした場合に、その増加額の一部が税額控除できる制度
です。通常要件に加え、上乗せ措置があり、それぞれの要件を満たすごとに、一定の税額控除率が加算されます。昨年度(2025年度)に引き続き制度自体は継続されていますが、
2026年度は教育訓練費に係る税額控除率(10%)の上乗せ措置が廃止
され、最大控除率が35%(昨年度は45%)に縮小しています。

例えば、給与の合計額を前年度から500万円増やした場合、75万円(=500万円×15%)を法人税額から控除できます(通常要件のみを満たした場合のケースです)。
この税制の適用を受けるためには、法人税の申告の際に、確定申告書に、税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額と、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。
なお、賃上げ促進税制は税額控除であるため、
- 法人税が発生しない赤字の会社
- 黒字であっても、納税額が控除額より少ない会社
は要件を満たしても、その年度にメリットの全部または一部を受けられません。そのような会社には、最大5年間, 控除しきれなかった額を繰り越して税額控除を受けられる措置があります。
また、2026年度の税制改正で、
- 中堅企業(資本金1億円超で、従業員2000人以下)は、2027年3月31日をもって廃止
- 大企業(中小企業者等、中堅企業以外の企業)は、2026年3月31日をもって廃止
が決まっています。中小企業者等においては、「期限到来時(2027年3月31日)の状況を踏まえて必要な見直しを検討する」という表現にとどめられ、継続か廃止かの明確な判断は来年度以降の税制改正の議論にて行われる見込みです。
9 【寄附】企業版ふるさと納税
企業版ふるさと納税は、
会社が自治体に寄附すると、税負担を軽減することができる制度
です。
軽減効果は、寄附額の最大9割とされており、内訳は、
- 法人住民税と法人税の税額控除が4割
- 法人事業税の税額控除が2割
- 法人税の損金算入で約3割
です。寄附額の下限金額は10万円で、本社が所在する自治体などへの寄附は対象外となっています。寄附を募っている自治体や事業については、内閣府「企業版ふるさと納税ポータルサイト」で確認してみましょう。
■内閣府「企業版ふるさと納税ポータルサイト」■
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html

なお、企業版ふるさと納税には、個人版と異なり返礼品はありません。そのため、会社の社会貢献活動や自治体とのパートナーシップ構築などを目的に行われています。
この税制を受けるためには、確定申告時に、企業版ふるさと納税の適用がある寄附を行ったことを申告するとともに、受領証の写しを提出(法人税の申告にあっては保管)しなければなりません。
以上(2026年5月作成)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)
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画像:日本情報マート






























