【税務調査の真実(2)】オンラインの調査が増えているって本当?

もはや都市伝説? 税務調査にまつわる噂

「別に悪さをしているわけではないけれど、税務調査は嫌だ」。ほとんどの経営者はこう考えるでしょう。いきなり調査官がやって来て、あれこれと帳簿の提出を求められ、多額の税金を支払わされるイメージです。それに、とにかく「面倒」です。

こうした思いもあり、税務調査については、

「税務調査は突然やってくる」や「税務調査は断れる」

など、さまざまな臆測が飛び交いますが、これは本当なのでしょうか。この記事では、現役税理士に覆面インタビューを実施し、普段はなかなか聞くことのできない税務調査の舞台裏を徹底的に聞き出しました。

Q1 オンラインによる税務調査って本当に増えているの?

これまで大企業中心だったオンラインによる税務調査(以下「オンライン税務調査」)が、2025年9月以降、中小企業にも本格的に導入され始めます。最初は金沢・福岡国税局エリアから導入され、順次エリアが拡大される予定です。

画面越しの調査は実地調査に比べ一見ラクに感じますが、対面とは違い、相手の反応や表情が読み取りづらく、意図しない発言が誤解されるリスクがあります。また、資料をその場で提示して説明できないため、「誤送信」や「ファイルの誤共有」といったオンライン特有のトラブルも起こることもあり得ます。税理士の立会いもオンライン対応が可能になったものの、通信環境によっては調査官とのやり取りが途切れたり、調査の流れをコントロールしづらくなったりすることもあります。経営者は、発言内容だけでなく、送受信データや画面共有の管理にも十分注意を払う必要があります。

なお、オンライン税務調査については、納税者と顧問税理士の同意があった上で実施されます。

Q2 調査日数は会社ごとに違う?

調査日数は会社ごとに異なり、1日で終わる調査もあれば、5日以上続く調査もあります。一般的な中小企業の場合、大体2~3日の調査が多いようです。

調査日数は、会社の規模(売上高や資産規模など)、業種業態、同時に行われる調査税目など、さまざまな要因で決定されます。そのため、前回の調査が1日で終わったからといって、次回も同じ調査日数だとは限りません。

Q3 税務調査の間、経営者は何をする?

税務調査の対応は、基本的には税理士と自社の経理(税務)責任者が行います。経営者が調査官と話をするシーンは、通常、調査の冒頭で行われる会社概要の説明時(スケジュールの調整は可能)となります。

知っておいてもらいたいのは、この会話の中においても、調査官は目を光らせているということです。趣味の話や世間話などをして場の雰囲気を和らげ、経営者を油断させるのも、調査官の調査手法の1つです。例えば、週末の過ごし方を聞く中で、経営者のプライベートな趣味やその頻度などを把握し、個人資産(別荘やクルーザーなど)を会社の資産として計上していないかなどの判断材料とすることもあります。

Q4 調査官は何を見ている?

基本的に、調査官は提出を要求した帳簿や、売上・仕入関連資料、経費資料などを黙々と調べ続けます。その他、棚卸資産・固定資産の実物チェックや疑義のある取引の担当者へのヒアリングが行われます。最近では、従業員のパソコンや、サーバー内のデータをチェックすることもあります。例えば、表や文書ファイルの更新日時を見て、取引日と照らし合わせるなどです。

また、調査官にとっては、従業員同士の会話など、見聞きするもの全ての情報が税務調査の資料となります。例えば、トイレに行く際に社内の売店に立ち寄って、店員に世間話をしながら会社役員の勤務状況を聞いたり、喫煙室で従業員同士の会話を聞いていたりと、いろいろなところで調査官は会社の実態を知ろうとします。

Q5 社歴の浅い会社には税務調査は入らない?

税務調査が全くないわけではありませんが、設立後3年未満の会社に税務調査が入ることはまれだといえます。

モバイルアプリ開発などで、売上が急激に伸びた会社などは調査に入ることがあるかもしれませんが、設立直後の会社は売上規模が小さく、取引の動きも少ないことから、調査に入っても指摘事項があまりないと考えられます。また、過去の取引が少ないと、調査官側も事前に十分な分析ができないことなどから、調査対象になりにくいのではないでしょうか。

Q6 調査官によって調査の結果が左右される?

調査官によって調査の結果が左右されることは、少なからずあります。納税者側の反論に耳を傾けてくれる調査官もいれば、全く耳を傾けない調査官もいます。また、高圧的な態度の調査官もいれば、柔和な態度の調査官もいます。

ただ、耳を傾けない調査官だからといって、指摘を全て受け入れないといけないかといえば、そうではありません。そういうときのために、代理人として税理士がいますので、納得のいかない指摘に対しては、税理士と相談しながら理路整然と対応していきましょう。

Q7 前回調査と指摘が変わることってあるの?

前回の税務調査で指摘されなかった項目について、次の税務調査で指摘されることがあります。中には、前回の調査官から認められた経理処理について指摘される場合もあります。

調査ごとに指摘が変わるのは、前回の調査官が見落としていたり、判断が間違っていたりすることなどが考えられます。もし、前回の調査官に認められた経理処理について指摘された場合は、前回の調査で、調査官に対して話した取引の背景や、経理処理が認められた経緯などを詳細に説明しましょう。

Q8 税務調査対策としてワンポイントアドバイスを!

基本的なことですが、書類をしっかり保存・整理しておきましょう。言うまでもありませんが、契約書関係はすぐに提出できるようにしておいてください。調査官にとっても、提出依頼をした書類がすぐに出てくると、その会社に良い印象を抱くはずです。

万一、作成漏れなどにより契約書がない取引などがある場合は、税務調査の有無にかかわらず、すぐに作成するようにしてください。最終的に、調査官は書類を基に、その経理・税務処理が認められたものなのか、認められたものでないのかを判断することになるからです。

ただし、印紙を貼るべき契約書の作成を失念していた場合には注意が必要です。印紙のデザインは年度によって異なる場合があり、調査のために後付けで貼ったことが露呈する恐れもあります。

以上(2025年11月更新)

pj30051
画像:Andrey_Popov-shutterstock

【税務調査の真実(1)】AIで対象の会社を決めているって本当?

もはや都市伝説? 税務調査にまつわる噂

「別に悪さをしているわけではないけれど、税務調査は嫌だ」。ほとんどの経営者はこう考えるでしょう。いきなり調査官がやって来て、あれこれと帳簿の提出を求められ、多額の税金を支払わされるイメージです。それに、とにかく「面倒」です。

こうした思いもあり、税務調査については、

「税務調査は突然やってくる」や「税務調査は断れる」

など、さまざまな臆測が飛び交いますが、これは本当なのでしょうか。この記事では、現役税理士に覆面インタビューを実施し、普段はなかなか聞くことのできない税務調査の舞台裏を徹底的に聞き出しました。

Q1 対象になるのは、どんな会社? AIが決めているって本当?

基本的に、どのような会社も税務調査の対象になります。ただ、長い間(7年以上)、税務調査が入っていない会社や、直近3~5年の決算書類の比較・分析から異常な数値の動きが見られる会社は、調査の対象となりやすいようです。また、国税局・税務署側も毎年テーマを持って調査を行っているケースがみられます。例えば、ネット通販やクラウドサービスの利用を通じて、海外の取引先やプラットフォームと関わるケースが増えていることや、各国の税務当局の国際連携の強化を背景に、海外の業者や子会社との取引、暗号資産の海外利用などは、近年の調査で注目度が高まっている分野です。他にも、売上が急激に伸びている会社なども目につきやすいでしょう。

近年、税務署は膨大な申告データをAIで分析し、申告漏れや不正の可能性が高い納税者を調査対象として選定しているようです。一部報道では、2023年度の中小法人の追徴税額(法人税・消費税)の約8割はAI判定対象から発生したとも報じられています。

Q2 税務調査は突然やって来る?

税務調査は強制調査と任意調査とに大別されます。強制調査は、突然、やってきますが、これは悪さをしている場合に受ける調査です。通常は、事前に連絡があります。

強制調査とは、悪質な脱税の疑いがある者に対して行われる調査です。いわゆる「マルサ」(国税局査察部の通称)が担当し、査察調査とも呼ばれます。調査官は事前に実態を調べ、脱税が事実であることに確信を持った上で会社にやって来ます。納税者による帳簿などの証拠書類の隠蔽を防ぐために、事前の連絡はなく、突然やって来ます。

任意調査とは、調査に入るために会社の同意が必要な調査です。ほとんどの税務調査がこちらに該当し、強制調査のように突然やって来ることはありません。事前に会社や顧問税理士に対して調査の予告が来ます。基本的には電話で連絡が来た後に、事前準備資料リストその他の書類が送られてきます。

Q3 税務調査を断ることができる?

強制調査の場合は、裁判所の令状を持って調査に入るため断れません。会社側の都合で調査日を変更することもできません。

任意調査の場合も、原則として断ることはできません。ただし、事前予告の段階での日程調整は融通が利きます。調査官から日程が提案されますが、会社の繁忙期、立ち会いの税理士の都合などもろもろの正当な理由があれば、日程を調整できます。

Q4 税務調査が集中する時期はある?

調査官(税務職員)の人事異動は毎年7月に行われます。そこから1年間、調査官は与えられたノルマ(調査件数など)を基に税務調査を行っていくことになります。なるべく早くノルマを消化するため、年内、特に8〜9月に税務調査が多く行われます。

また、7月の人事異動に合わせて、調査官の評価が決まることを考えると、年内、遅くとも翌年の4月ごろまでに行われる調査に力が入ると考えられます。

Q5 税務調査が中止になることはある?

基本的に、一度予告された税務調査は必ず行われます。

ただし、4~6月ごろに予告された税務調査について、調査時期を7月以降で日程調整をお願いすると、まれに調査が実施されないことがあります。はっきりした理由は分かりませんが、調査の実施自体がうやむやになってしまうケースが過去にありました。明確ではありませんが、考えられるのは「7月に行われる調査官の人事異動により、新旧担当者間の引き継ぎがうまく行われていない」「そもそも重要性の高い調査対象ではない」といった理由です。

Q6 反面調査はどのように対応する?

反面調査とは、調査対象会社の取引先などに対して、取引状況などを確認する調査で、自社に対しては調査対象会社との契約書や請求書などの提出が求められます。反面調査の性質は、調査対象会社に対する税務調査が強制調査か任意調査かに準じます。調査対象会社に配慮して、事実と異なった回答をしたり、あやふやな回答をしたりすると、自分の首を絞めることにもなり得ます。事実を淡々と語り、求められた書類などは提出するようにしましょう。

Q7 繰越欠損金があると税務調査が入りにくい?

繰越欠損金がある会社は、税務調査後において修正申告をしても所得が発生しにくいので、税金を徴収できる可能性が低いという意味においては対象外となることが多いのではないでしょうか。

ただし、繰越欠損金のある会社に税務調査が入るケースもたくさんあります。そのため、繰越欠損金があるから、税務調査が来ないだろうという考えは正しくありません。

Q8 どういった科目を重点的に調査する?

売上・仕入関連の勘定の場合、期ズレに注意しましょう。例えば、3月決算の会社であれば、特に3月・4月の取引は重点的に調べられます。収益・費用を正確に計上するためには、日々の書類整理や、経理担当者だけでなく営業担当者など、従業員全体の期ズレに関する意識を高めることなどが大切です。

人件費では、役員、特に同族会社であれば身内に関連する報酬や給与でしょう。例えば、勤務実態(業務内容や出勤日数)に見合わない報酬・給与を支払っていないかが重点的に調べられます。

固定資産では、資本的支出(固定資産として計上しなければならない修繕費用など)を、費用計上していないかといった点も指摘されやすい箇所でしょう。

他には、外注委託費です。特に外注委託先に身内が経営している会社がある場合、委託業務の内容と金額が適正なものかがよく調べられます。

Q9 税務調査に臨む経営者にアドバイスを!

税務調査のあるなしにかかわらず、税務顧問としてお願いしたいのは、「イレギュラーなことをやるときは、事前に相談してほしい」ということです。事前に相談してくれさえすれば、多くの場合、税務的なリスクをかなり減らすことができます。もちろん、完全に違法な取引を合法にすることはできませんが、白黒つけがたい取引であれば、より白に近づけることは可能です。もし、事後に報告を受けた場合には、後付けで対策を練ることとなってしまい、十分な対応ができません。

また、税務・会計処理は日々の取引の積み重ねです。税務調査の予告が来てからまとめて書類を整理したとしても、どうしても抜け漏れが生じます。日々の税務・会計処理を、継続して適切に処理していれば、税務調査は決して恐れるものではないのです。

以上(2025年11月更新)

pj30034
画像:ChatGPT

【朝礼】自分なりの「祓い」で場を整え、勝負に臨もう!

【ポイント】

  • 神道では、神事の前に「祓(はら)い」で不浄を取り除き、神々を待つ準備をする
  • ビジネスでは、「勝負事の前に、勝負に臨むためのマインドをつくる」ことが大切
  • 「深呼吸をする」「意気込みを紙に書きだす」など自分なりの祓いをして、勝負に臨もう

おはようございます。突然ですが、皆さんは「神楽月(かぐらづき)」というのをご存じですか?語源は神前で舞や音楽を奉納する「神楽(かぐら)」で、稲の収穫後や冬至の月に神を祀(まつ)る行事が多かったため、旧暦の11月を神楽月と呼ぶことがあるそうです。

さて、神楽に限らず神道では、神事の前に「祓(はら)い」という儀式が行われます。細かい内容は、神事の内容あるいは地域などによって異なりますが、例えば神楽の場合だと、東西南北の四方を舞い清めることなどがあります。心身に付いた罪や穢(けが)れなどの不浄を取り除き、清らかな状態に戻すことで、神々を待つ準備をするわけです。

なぜ、急にこんな話をするのかというと、この祓いは、私たちが日々仕事をする上での心構えにも大きく関係するからです。皆さんは「お客様は神様です」という言葉の由来をご存じでしょうか? 演歌歌手の三波春夫さんがよく口にしていた言葉だそうで、「客の前で歌うときは、あたかも神前で祈るときのように雑念を払い、澄み切った心にならなければ完璧な芸を見せることはできない」という意味が込められています。

大切なのは「雑念を払って、澄み切った心になる」「完璧な芸を見せる」という部分。つまり、神道の祓いというのはビジネス的な見方をすると、「勝負事の前に、勝負に臨むためのマインドをつくる儀式」ともいえるわけです。私たちの仕事の場面に置き換えてみましょう。

例えば、商談やプレゼンの当日であれば、「本番前に深呼吸をして、頬を軽くたたく」「当日の朝、意気込みを紙に1行ぐらいで書きだしてみる」といった具合に、何か特定の行動をしてみましょう。なんだか古臭いと思うかもしれませんが、「100パーセントの力を発揮できる」と自分に言い聞かせてやってみると、意外とそれが効いてくることがあるのです。

仕事に忙殺され、メリハリがなくなると、いざというときに力を発揮するのも難しくなります。大切なのは自分なりの「祓い」で場を整え、勝負に臨むこと。勝負の前のわずかな時間を大切にしていきましょう。

以上(2025年11月作成)

pj17235
画像:Mariko Mitsuda

                             

2025年10月「日経ビジネス電子版」過去30日間の人気記事ベスト10

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経営者が認知症を発症した場合に会社が直面する4大リスク

1 単なる健康問題では済まない経営者の認知症リスク

日々精力的に活動している経営者の中には、「自分は認知症にならない」と考えがちな人が少なくありません。しかし、認知症は誰にでも起こり得るもので、決して他人事ではありません。しかも、いつ発症するかの予測はできませんから、何も対策をしていないと、会社は思わぬリスクに直面することになります。そうです、経営者の病は、経営者個人の健康問題にとどまらず、会社経営全般に関わる問題としての認識が必要なのです。

具体的に想定されるリスクは次の4つで、以降で順番に解説していきます。

  • 契約が無効になるリスク
  • 資金繰り悪化のリスク
  • 事業承継が進まないリスク
  • 経営者個人の資産管理トラブルが起こるリスク

なお、具体的な認知症対策については、次のコンテンツをご参照ください。

2 契約が無効になるリスク

中小企業やオーナー企業では、多くの場合、経営者自身が会社の重要な意思決定や契約を行っています。これらの契約が有効とされるためには、契約者自身が自分の行動の動機やその結果を正しく判断できる「意思能力」が必要です。

しかし、認知症が進み、正しい判断ができない(意思能力がない)となると、

契約や株式の売買、贈与、融資の契約などが法的に無効になる

ことがあります。例えば、「取引先との新規契約を結んだが、後に経営者の意思能力が問題となり、契約自体が無効と判断される」「金融機関との融資契約や保証契約を結んだが、経営者に意思能力がなかったとして、契約自体が無効と判断される」といった具合です。

さらに、経営者が会社の株式の過半数を持っている場合、判断力の低下は株主総会での議決権行使にも影響します。

決算承認や役員変更、会社のルール(定款)の変更など、会社経営に不可欠な決議ができなくなり、会社の経営機能が事実上ストップ

してしまいます。

こうした事態は、金融機関や取引先に信用不安を与えるだけでなく、会社の評判や新規取引のチャンスにも影響します。認知症による判断力低下は、単なる健康の問題ではなく、会社の法律行為や事業継続に直結する重大なリスクになります。

3 資金繰り悪化のリスク

もし、経営者が認知症などで判断力が低下すると、会社の資金繰りに大きな悪影響が出ます。

まず、経営者名義の預金口座についてです。金融機関は本人の判断力が不十分だとみなした場合、本人の財産をトラブルなどから守るために口座を凍結することがあります。これにより、生活費だけでなく、会社への貸付金や運転資金の入出金にも影響が出ます。特に、経営者個人の資金が会社の緊急資金や保証資金として使われている場合、

口座が凍結されると、会社への貸し付けや個人保証の実行ができず、資金ショートの発生リスクが高まる

ので注意が必要です。

さらに、経営者が保有する不動産や株式などの個人資産も、判断力が低下すると売却や担保設定ができなくなります。

個人資産が会社の資金繰りや融資の担保に使われている場合、資金調達が滞る

ことになり、会社の存続に影響します。

4 事業承継が進まないリスク

事業承継手続きの中心となる自社株式の譲渡や贈与は、経営者本人の意思に基づいて行う法律上の行為です。つまり、「自分が何を、なぜ、どんな目的で行っているのか」を正しく判断できる意思能力が必要になります。

しかし、もし経営者が認知症を発症すると、意思能力が失われ、

自社株式の譲渡や贈与といった行為は法的に無効になります。その結果、後継者に自社株式を移すことができず、事業承継そのものがストップ

してしまうのです。

さらに、自社株式を誰に承継するかを決めないまま経営者が亡くなってしまった場合、自社株式は相続財産となり、経営者の相続人間の遺産分割協議に委ねられます。場合によっては、会社経営に関与したことのない相続人や、複数の相続人が自社株式を相続し、一定数以上の議決権を保有するケースも考えられます。

会社の重要な決定を行うたびに、自社株式を相続した相続人全員の合意が必要となり、経営判断のスピード感が損なわれたり、なかには現場の感覚とずれた決議が行われたりする

こともあり得ます。

5 経営者個人の資産管理トラブルが起こるリスク

認知症が進むと、経営者自身が自分の財産を正確に把握することが難しくなります。例えば、どこの銀行にいくら預金があるのか、不動産の権利証や生命保険の書類がどこに保管されているのか、上場株式をどの証券会社で管理しているのかなどです。家族が本人に代わって管理しようとしても、全体像をつかむのに時間や手間がかかるケースが多いのです。

そして、見逃せないのが、重要書類や印鑑の管理が曖昧になるリスクです。

個人の銀行印や会社の実印が適切に管理されていないと、不正に使われたり、資産を勝手に引き出されたりする

ことがあります。なかには、家族や親族、さらには信頼していた社員が、経営者の判断力の低下に乗じて資産を流用してしまうトラブルも起こり得ます。こうした事態を防ぐには、早めに資産管理体制を整えることが欠かせません。

経営者の個人資産の管理が難しくなることは、一見すると家庭の問題のように見えます。しかし、中小企業では経営者個人の資産と会社の資金が密接に結びついているケースが多く、これは会社の資金繰りなどにも直結する経営課題です。さらに、財産の把握や管理をめぐって家族間で意見が割れると、相続トラブルや家族内の対立に発展し、結果的に会社の経営判断にも悪影響を及ぼします。

以上(2025年11月作成)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 平田圭)

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画像:Quality Stock Arts-Adobe Stock

【規程・文例集】社員をハラスメントから守る!「ハラスメント防止規程」のひな型

1 どのハラスメントも対応の方針は基本的に同じ

ハラスメントは、放置すると被害を受けた社員の心身を蝕むだけでなく、訴訟などのトラブルにも発展しかねない重大な問題です。特に次のハラスメントは、法令により一定の防止措置を講じることが会社に義務付けられています。

  • パワハラ(パワーハラスメント)
  • セクハラ(セクシュアルハラスメント)
  • マタハラ等(妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント)

一定の防止措置とは次の5つのことですが、根幹となるのは1.のハラスメントの方針です。

  • ハラスメントの方針(ハラスメントを行ってはならない旨など。就業規則等の文書に規定)の明確化、周知・啓発
  • ハラスメントに関する相談窓口の設置・運用
  • 事実確認、被害者に対する配慮のための適正な措置、行為者への適正な措置と再発防止に向けた措置の実施
  • 相談者や行為者のプライバシーを保護、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨の周知・啓発
  • 業務体制の整備など、マタハラ等の原因や背景となる要因を解消するための措置の実施

ハラスメントの方針は「ハラスメント防止規程」などの形で定めますが、内容に問題があると、事案が発生した際の対応でトラブルが起きます。次章で専門家が監修したハラスメント防止規程のひな型を紹介しますのでご確認ください。

ちなみに、ハラスメントの種類(パワハラ、セクハラなど)ごとに規程を分ける必要はなく、1つにまとめて差し支えありません。ただし、どのようなハラスメントを防止の対象とするのかは明確に定義しておきましょう。また、直近の法改正として、

  • 2024年11月1日からは、フリーランスに対するハラスメント防止措置の義務化(施行済)
  • 2025年6月11日から1年6カ月以内に、「就活セクハラ」の防止措置の義務化(未施行)

があるので、

ハラスメント防止規程に「社外の人間に対するハラスメントも許さない旨」を明記

しておきましょう。

2 「ハラスメント防止規程」のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

なお、前述した「社外の人に対するハラスメントを許さない旨」については、第1条(目的)第3項をご確認ください。

【ハラスメント防止規程のひな型】

第1条(目的)

1)本規程は、職場におけるハラスメントの防止、並びにこれらのハラスメントが発生した後の雇用管理上の対応について定めるものであり、役員および従業員(以下「従業員等」)に適用される。

2)本規程における「職場」とは、会社内に限らず、取引先、出張先など、すべての業務遂行場所をいい、また、就業時間内に限らず、実質的に職場の延長とみなされるものを含むものとする。

3)本規程における「ハラスメント」とは、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント、その他これらに準ずるすべての行為をいい、当社の従業員等に対して行われるものの他、取引先の従業員等、当社から業務を委託するフリーランス、就活生など、当社の従業員等以外に対して行われるものも対象とする。

第2条(パワーハラスメントの定義)

1)パワーハラスメントとは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超え、相手の就業環境を害することをいう。

2)すべての従業員はパワーハラスメントに該当する以下のような行為を行ってはならない。

  • 殴打、足蹴りするなどの身体的暴力行為。
  • 相手やその親族、友人などの人格や尊厳を傷つける行為。
  • 業務遂行に関係のない要求を相手にしたり、自らの固定観念を相手に押し付けたりするような行為。
  • 業務遂行に関係のない事項について、執拗に相手から説明を求めること。
  • 違法行為を強要すること。
  • 相手を無視することや誹謗中傷すること、その他相手の名誉を傷つける噂を社内外に流布すること。
  • 業務遂行上の指導であっても、相手の人格や尊厳を侵害する言動を繰り返しとること。また、必要以上に叱責を繰り返すこと。
  • 業務遂行上の指導であっても、客観的に実現が不可能な内容を相手に求めて過度の精神的な苦痛を与えること。
  • 故意に情報を与えない、連絡事項を伝えない等の行為を繰り返し、職務遂行を妨害すること。
  • 解雇や降格など相手に雇用不安を与えるような言動をとること。
  • 能力や経験とかけ離れた程度の低い業務を命じる、あるいは業務を与えないこと。
  • 特定の従業員を業務から外す、集団で無視するなど人間関係を切り離すこと。
  • 従業員に不要な商品の購入を強要したり、ノルマを達成できない場合に自腹で契約を結ばせたりすること。
  • その他、相手の人格や尊厳を侵害する言動をとること。

第3条(セクシュアルハラスメントの定義)

1)セクシュアルハラスメントとは、職場における性的な言動に対する従業員等の対応などにより相手の労働条件に関して不利益を与えること、または性的な言動により相手の就業環境を害することをいう。

2)すべての従業員等はセクシュアルハラスメントに該当する以下のような行為を行ってはならない。なお、相手の性別・性的指向・性自認は問わない。

  • 不必要な身体への接触。
  • 性的および身体上の事柄に関する不必要な質問・発言。
  • 性的な内容に関する噂を社内外に流布すること。
  • 交際・性的関係の強要。
  • わいせつ図画の閲覧、配布、掲示。
  • 性的な言動への抗議または拒否などを行った相手に対して、解雇、不当な人事考課、配置転換などの不利益を与える行為。
  • 性的な言動により、相手の就業意欲を低下せしめ、能力の発揮を阻害する行為。
  • その他、相手に不快感を与える性的な言動。

第4条(妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント)

1)妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントとは、従業員等の妊娠または出産、産前産後休業、育児休業(出生時育児休業を含む)、介護休業の請求、その他の妊娠または出産の事由に関する言動により、相手の就業環境が害されることをいう。

2)すべての従業員等は妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントに該当する以下のような行為を行ってはならない。

  • 部下の妊娠・出産、育児・介護に関する制度や措置の利用等に関し、解雇その他不利益な取扱いを示唆する言動。
  • 部下または同僚の妊娠・出産、育児・介護に関する制度や措置の利用を阻害する言動。
  • 部下または同僚が妊娠・出産、育児・介護に関する制度や措置を利用したことによる嫌がらせ等。
  • 部下が妊娠・出産等したことにより、解雇その他の不利益な取扱いを示唆する言動。
  • 部下または同僚が妊娠・出産等したことに対する嫌がらせ等。

第5条(ハラスメントの防止)

1)すべての従業員等は、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、職務上の地位・権限・職権、雇用形態に関係なく、職場において相手の人格や尊厳を尊重し、ハラスメントあるいはそれらと疑われる行為をしてはならない。

2)管理者は、他の従業員等がハラスメント(疑い例を含む)を受けていることを知ったときは、それを黙認してはならず、速やかに「ハラスメント相談窓口」(第6条にて定義。以降同様)に通知しなければならない。

3)従業員等は、他の従業員等がハラスメント(疑い例を含む)を受けていることを知ったときは、速やかに上司および「ハラスメント相談窓口」に通知しなければならない。

第6条(「ハラスメント相談窓口」の設置)

1)会社は「ハラスメント相談窓口」を設置する。「ハラスメント相談窓口」は、次の各号に定める業務を行うものとする。

  • ハラスメントに関する従業員等やその親族からの相談の受け付け。
  • 教育指導によるハラスメントの未然防止。
  • ハラスメントの事実関係の確認など早期解決、再発防止。
  • その他、ハラスメントの未然防止、早期解決に資する業務。

2)「ハラスメント相談窓口」の責任者(以下「窓口責任者」)は総務部長とし、「ハラスメント相談窓口」の担当者(以下「窓口担当者」)は会社が個別に指名した従業員等とする。

3)会社は、窓口責任者および窓口担当者に別途定める「ハラスメント相談対応マニュアル」(省略)を配布する。窓口責任者および窓口担当者は当該マニュアルに基づき、ハラスメントの防止および対応に当たらなければならない。また、窓口責任者および窓口担当者は、会社が指定するハラスメント防止教育を受講しなければならない。

4)会社は、窓口責任者および窓口担当者の名前を、人事異動などの変更の都度、周知させる。

第7条(ハラスメントへの対応)

1)ハラスメント(疑い例を含む)の相談や報告があった場合、窓口担当者は、相談者からの事実確認の後、窓口責任者へ報告する。

2)窓口担当者は、相談者の人権に配慮した上で、必要に応じて相談者、ハラスメントの疑いのある言動をした者(以下「行為者」)、被害者、上司並びに他の従業員等から事実関係を聴取し、関係する資料の提出を求める。

3)前項の聴取や関係する資料の提出を求められた従業員等は、正当な理由がない限り、調査に協力すべき義務を負い、事実を隠ぺいせず、真実を述べなければならない。また、聴取の対象となる事実関係や聴取を受けていることについて社内外で口外する等、会社の調査を妨害する行為をしてはならない。

4)窓口担当者は、窓口責任者に事実関係を報告する。

5)ハラスメントの早期解決に困難な状況が生じた場合、窓口責任者は、法令に基づく紛争解決援助および調停など、中立的第三者機関を利用することができる。

6)会社によるハラスメントの調査を適正に進めるため、または被害拡大を避けるために必要と会社が判断する場合には、問題解決のための措置を講ずるまでの間、暫定的に行為者に対し、相談者等に対する接触の禁止、勤務場所の変更、自宅待機等の緊急措置を命じることがある。自宅待機の期間中、会社は労働基準法第26条の「休業手当」を支払うものとする。また、会社が必要と判断する場合には、相談者その他従業員等に対し、勤務場所の変更等を命じることがある。

7)ハラスメントの事実が確定した場合、会社は行為者については就業規則に照らして処分を決定する。また、ハラスメントの被害者および行為者の配置転換など、被害者の労働条件上の不利益の回復等のために必要な措置を講じるものとする。

第8条(不利益な取扱いの禁止)

会社はハラスメントに関する相談や報告を行ったこと、または事実関係の確認に協力したことなどを理由として不利益な取扱いを行ってはならない。

第9条(プライバシーの保護)

1)何人も、ハラスメントに関する相談および聴取などで知り得た情報を、みだりに第三者に漏洩してはならない。

2)窓口責任者および窓口担当者は、ハラスメントへの対応に当たって、被害者および行為者など関係する従業員等のプライバシーの保護に十分に留意しなければならない。

第10条(再発防止の義務)

窓口責任者は、ハラスメント(疑い例を含む)の事案が生じたときは、改めてハラスメント防止を周知徹底すると同時に、研修を実施するなど、適切な再発防止策を講じなければならない。また、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントに関しては、業務体制の整備など、発生の原因や背景となる要因を解消するために必要な措置を講じなければならない。

第11条(改廃)

本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則

本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2025年10月更新)
(監修 みらい総合法律事務所 弁護士 田畠宏一)

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【かんたん消費税(6)】消費税の計算は「原則課税」か「簡易課税」で行う

1 赤字でも納税が必要な消費税

消費税は物を売ったり買ったりした場合などに課税されます。会社が赤字でも納税しなければならないケースもあります。また、一つ一つの取引ごとに課税されるかどうかを判断し、独自に消費税を計算しなければならないので、非常に手間もかかります。

経営者としても、ある程度、消費税の計算方法を理解していないと、決算のときに想像以上の納税が発生して納税資金に困る場合もあります。この記事では消費税の計算方法についての概要を説明します。

2 計算は「原則課税」と「簡易課税」の2つ

1)差額を納税する

消費税の納税額は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて計算します。預かった消費税を「仮受消費税」、支払った消費税を「仮払消費税」と呼びます。

  • 仮受消費税:物を売ったり、サービスを提供したりした場合に預かる消費税
  • 仮払消費税:物を買ったり、サービスの提供を受けたりした場合に支払う消費税

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2)2つの計算方法

納税額の計算方法には、原則課税と簡易課税とがあり、次のように異なります。

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簡易課税の特徴は、実際に支払った仮払消費税の額に関係なく、仮受消費税に一定割合を掛けたものを仮払消費税とみなすことです。仮払消費税の詳細な集計が不要なので簡単ですが、適用を受けるには、

  1. 基準期間の課税売上高が5000万円以下
  2. 期日までに簡易課税を適用する旨の届出書を提出している

といった要件を満たす必要があります。そして、1.の要件を見れば、簡易課税が小規模な会社を対象にしていることがお分かりいただけるでしょう。

3 原則課税による計算の流れ

ここでは、多くの会社で行われている原則課税に注目し、計算の流れをざっくりと解説します。経営者が詳細な計算の流れを知る必要はありませんが、「課税標準とは何か」「仕入税額控除とは何か」といったことは、イメージできるようになると理想です。

1)計算の流れ

原則課税では、仮受消費税から仮払消費税を差し引いて納税額を計算します。ただし、帳簿上の残高を単純に差し引くのではなく、

税法に従って正しく計算し直した上で納税額を計算

します。具体的には、以下の流れで計算されます。

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2)課税標準額に係る消費税額の計算(申告する仮受消費税)

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課税標準額とは、

申告する「仮受消費税」のベースとなる金額

です。消費税の取引は「課税取引」「不課税取引」「非課税取引」「免税取引」の4つに分かれるので、

実際に消費税が発生する「課税取引」の税込金額

を集計します。重要なのは、

取引が課税取引に該当するかどうかの判断

です。商品の売上などだけでなく、建物などの資産(非課税取引となる土地などを除く)を売却したものも含めます。

次に、実際に集計した課税取引の税込金額を税抜金額にします。具体的には、

「課税取引」の税込金額×100/110

と計算します。つまり、税抜にしているということで、これを「課税標準額」と呼びます。課税標準額は、1000円未満は切り捨てです。

ここまできたら、

1000円未満の端数を切り捨てた課税標準額に消費税率を掛ける

ことで、課税標準額に係る消費税額(申告する仮受消費税)が計算できます。なお、消費税率は、原則として10%ですが、軽減税率が適用される取引は8%です(説明の便宜上、税率は国税と地方消費税の合計としています)。

3)仕入控除税額の計算(申告する仮払消費税)

仕入控除税額とは、

申告する「仮払消費税」の金額で、仕入れや支出に係る消費税額

です。具体的には、

(国内の課税取引(仕入)の税込金額×10/110)+輸入消費税

と計算します。なお、消費税率は、原則として10%ですが、軽減税率が適用される取引は8%です(説明の便宜上、税率は国税と地方消費税の合計としています)。

詳細は割愛しますが、実際の仕入控除税額の計算はとても細かく、一定の条件のもとに「仮受消費税からそのまま全額控除できるケース」と「全額控除できないケース」とがあります。

4)返品等や貸倒れがあった場合

取引では返品を受け付けて消費者に返金することがあります。とはいえ、販売時に預かった消費税は国に納付しているのに、返金を消費税込ですると、納税者(つまり自社)は損をします。そのため、

返品等で返金をする場合は、返金に含まれている消費税を仮受消費税から控除

できます。

また、物を販売して売掛金を計上したものの、入金されずに貸倒れとなった場合も返品の際と同じ考え方とします。つまり、

貸倒れた金額に含まれている消費税を仮受消費税から控除

できます。

以上をまとめると、最終的には、

仮受消費税-仮払消費税-(返品・値引・貸倒金額に含まれる消費税)

によって、国に納付すべき金額が計算されることになります。

以上(2025年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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変形労働時間制やフレックスタイム制で働き方改革を実現!

1 3種類の変形労働時間制とフレックスタイム制

「変形労働時間制」とは、

1カ月や1年など一定の期間内において、1日10時間や1日6時間など労働時間を弾力的に設定する制度

です。労働基準法(以下「労基法」)では、3種類の変形労働時間制が定められています。

また、より柔軟な労働時間制度として「フレックスタイム制」があります。これは、

一定の期間内において、始業・終業時刻の決定を社員に委ねることができる制度

です(フレックスタイム制を変形労働時間制の一種とする考え方もあります)。

制度の概要や導入手続きをざっくり一覧にまとめたのが図表1です。

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以降で各制度の詳細を解説していきますが、次の用語は重要になるので、ご確認ください。

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2 1カ月単位の変形労働時間制

1)制度の概要

1カ月単位の変形労働時間制とは、

1カ月以内の一定の期間(「変形期間」といいます)における週の平均労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内であれば、法定労働時間を超える所定労働時間を設定できる制度

です。例えば、図表3は法定労働時間が1日8時間、1週40時間の会社が、変形期間を1カ月(31日)に設定した場合のイメージです。

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1日8時間を超えて労働する日、1週40時間を超えて働く週がありますが、週の平均労働時間が40時間以内に収まっていれば、時間外労働は発生しません。具体的には、「法定労働時間の総枠」という基準で判断します。法定労働時間の総枠は、原則として、

法定労働時間の総枠=週の法定労働時間×変形期間内の暦日数÷7日

で計算します。図表3の場合、法定労働時間の総枠は177.1時間(40時間×31日÷7日)で、

法定労働時間の総枠(177.1時間)>1カ月(31日)の所定労働時間の合計(174時間)

となり、週の平均労働時間が40時間以内に収まっているので、時間外労働は発生しません。

ただし、各日、各週の所定労働時間は、一度定めると原則として変更できないので注意してください。図表3のようにシフトを定めても、実際の労働時間が各日、各週の所定労働時間を超えると、この後に紹介するルールに基づいて時間外労働が発生する可能性が出てきます。

2)時間外労働などのルール

1カ月単位の変形労働時間制で時間外労働が発生するのは次のケースです。

  1. (1日単位)所定労働時間が8時間を超える日はその所定労働時間、それ以外の日は8時間を超えて働いた時間
  2. (1週単位)週の所定労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超える週はその所定労働時間、それ以外の週は40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えて働いた時間。ただし、1.で計算した時間を除く
  3. (変形期間全体)法定労働時間の総枠を超えて働いた時間。ただし、1.または2.で計算した時間を除く

なお、これとは別に、法定休日に働いた場合は休日労働が、原則として22時から翌日5時に働いた場合は深夜労働が発生します。

3)導入の手続き

必要な手続きは、労使協定の締結と届け出(就業規則で定める場合は不要)、就業規則の変更と届け出です。

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3 1年単位の変形労働時間制

1)制度の概要

1年単位の変形労働時間制とは、

1カ月超1年以内の一定の期間(「対象期間」といいます)における週の平均労働時間が40時間(特例措置対象事業場の場合も40時間)以内であれば、法定労働時間を超える所定労働時間を設定できる制度

です。基本的なルールは1カ月単位の変形労働時間制と同じですが、1年単位の変形労働時間制の場合、さらに図表5のルールが加わります。

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2)時間外労働などのルール

1年単位の変形労働時間制で時間外労働が発生するのは次のケースです。

  1. (1日単位)所定労働時間が8時間を超える日はその所定労働時間、それ以外の日は8時間を超えて働いた時間
  2. (1週単位)週の所定労働時間が40時間(特例措置対象事業場も40時間)を超える週はその所定労働時間、それ以外の週は40時間(特例措置対象事業場も40時間)を超えて働いた時間。ただし、1.で計算した時間を除く
  3. (対象期間全体)法定労働時間の総枠を超えて働いた時間。ただし、1.または2.で計算した時間を除く

なお、休日労働や深夜労働のルールは、1カ月単位の変形労働時間制と同じです。

3)導入の手続き

必要な手続きは、労使協定の締結と届け出、就業規則の変更と届け出です。

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労使協定の項目にある「d.対象期間における労働日、各日の所定労働時間」について補足します。1年単位の変形労働時間制は長いので、事前に全労働日の所定労働時間を特定するのは難しいです。そのため、対象期間を1カ月以上の期間ごとに区分した場合に限り、

  1. 最初の期間については、労働日と労働日ごとの所定労働時間
  2. それ以外の各期間については、各期間の労働日数と総労働時間のみ

を労使協定に定めればよいとされています。例えば、図表7は対象期間を1カ月ごとに区分した場合のイメージです。

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ただし、この場合も、最初の期間以外の各期間の労働日と労働日ごとの所定労働時間を、各期間の始まる30日前までに過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の同意を得て、書面で定めなければなりません。

4 1週間単位の非定型的変形労働時間制

1)制度の概要

1週間単位の非定型的変形労働時間制とは、

週の労働時間が40時間(特例措置対象事業場も40時間)以内であれば、法定労働時間を超える所定労働時間を設定できる制度

です。他の制度と違い、常時雇用する社員が30人未満の小売業、旅館・料理店・飲食店だけが導入できます。例えば、図表8は1週間単位の非定型的変形労働時間制を用いて1週間働く場合のイメージです。

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週の労働時間が40時間以内なので、1日8時間を超える所定労働時間を設定しても、時間外労働になりません。ただし、

設定できる所定労働時間は、1日10時間が上限

です。また、各日の所定労働時間は、遅くとも毎週1週間の仕事が始まる前までに、勤務表を張り出すなどして社員に書面で通知しなければなりません。

2)時間外労働などのルール

1週間単位の非定型的変形労働時間制で時間外労働になるのは次のケースです。

  1. (1日単位)所定労働時間が8時間を超える日はその所定労働時間、それ以外の日は8時間を超えて働いた時間
  2. (1週単位)40時間(特例措置対象事業場の場合も40時間)を超えて働いた時間。ただし、1.で計算した時間を除く

なお、休日労働や深夜労働のルールは、1カ月単位の変形労働時間制などと同じです。

3)導入の手続き

必要な手続きは、労使協定の締結と届け出、就業規則の変更と届け出です。

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5 フレックスタイム制

1)制度の概要

フレックスタイム制とは、

3カ月以内の一定期間(「清算期間」といいます)について、あらかじめ定めた総労働時間の範囲内で始業・終業時刻の決定を社員に委ねる制度

です。通常は、必ず働かなければならない「コアタイム」と、社員が自主判断で働く「フレキシブルタイム」を設けます。例えば、図表10はコアタイムを10時から15時、フレキシブルタイムを6時から10時と15時から19時に設定した場合のイメージです。

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働き方の自由度が高い半面、社員の始業と終業がばらつきやすくなります。ただし、フレキシブルタイムを極端に短くしたり、社員にフレキシブルタイムに働くよう強制したりすることはできません(注)。

(注)社員に翌日の始業時刻の目安を確認したり、社員の同意を得て特定の時間に始業させたりする程度であれば問題ないとされています。

2)時間外労働などのルール

フレックスタイム制は、1カ月以内の場合と1カ月超3カ月以内の場合とで時間外労働のルールが変わります。なお、休日労働や深夜労働のルールは、フレックスタイム制の期間にかかわらず、1カ月単位の変形労働時間制などと同じです。

1.フレックスタイム制の期間が1カ月以内の場合

フレックスタイム制の期間の実労働時間が、週平均で40時間(特例措置対象事業場の場合は44時間)を超えると時間外労働になります(法定労働時間の総枠」で判断)。

法定労働時間の総枠=週の法定労働時間×清算期間内の暦日数÷7日

2.フレックスタイム制の期間が1カ月超3カ月以内の場合

フレックスタイム制の期間中の実労働時間が、

  • 週平均で40時間(特例措置対象事業場の場合も40時間)を超えると時間外労働になります(便宜上「40時間ルール」とします)。
  • 同時に、フレックスタイム制の開始の日から1カ月ごとに区分した各期間の労働時間が週平均50時間を超えた場合も時間外労働になります(便宜上「50時間ルール」とします)。

40時間ルールと50時間ルールのいずれかの条件に該当すると、時間外労働が発生します。例えば、図表11は、清算期間が3カ月の場合の、割増賃金の対象となる時間数のイメージです。

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賃金は、まず各月について50時間ルールにのっとって計算した割増賃金を支払い、次に清算期間終了時に、40時間ルールにのっとって法定労働時間の総枠を超えた分の割増賃金を支払います(50時間ルールに基づき既に支払った金額を除く)。図表11の場合、各月で支払うべき割増賃金は次のようになります。

  • 4月(単月):5.8時間(=220時間-214.2時間)分
  • 5月(単月):割増賃金の支払いはなし
  • 6月(単月):5.8時間(=220時間-214.2時間)分
  • 6月(3カ月):88.4時間(=620時間-520時間-5.8時間-5.8時間)分

6月は、6月単月で生じた割増賃金(50時間ルールに基づき計算するもの)と、3カ月の清算期間で生じた割増賃金(40時間ルールに基づき計算するもの。ただし、4月(単月)と6月(単月)で生じた割増賃金を除く)の両方を支払うことになります。

3)導入の手続き

必要な手続きは、労使協定の締結と届け出(清算期間が1カ月以内の場合、届け出は不要)、就業規則の変更と届け出です。

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以上(2025年11月更新)

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横領を隠して退職した不届き者から退職金を取り戻すには?

1 不届きな社員から退職金を取り戻す方法

退職金は長年働いてくれた社員に報いるためのものです。ですが、中にはそんな厚意を踏みにじる不届きな社員もいて、そうした場合には厳しく対応しなければなりません。例えば、

横領を隠したまま転職し、退職金だけしっかり受け取って去っていく社員

がいたらどうですか?

退職するときに、在職中の不祥事を発見できない場合に、こうした問題が生じるのですが、次の3つのポイントを押さえれば、退職した社員に、退職金の返還を適正に請求することができます。以降で詳しく見ていきましょう

  • 民法の「不当利得返還義務」の仕組みを理解する
  • 就業規則の「退職金の支給制限や返還の定め」を確認する
  • 不祥事の重さと長年の功労を照らし合わせる

2 民法の「不当利得返還義務」の仕組みを理解する

不祥事を隠して退職した社員に対し、すでに支払ってしまった退職金の返還を請求できる法的な根拠は、民法の「不当利得返還義務」です。これは、

法律上正当な理由がないのに、他人の損失と引き換えに利益を受けた人(受益者)は、損失を受けた人(損失者)に、その利益を返還しなければならないという義務のこと

です。損失者が「受益者の受けた利益が不当利得であること」を立証して、利益の返還を求めた場合、受益者はこれを拒むことはできません。ただし、返還請求を行えるのは、「不当利得が生じた時点から10年間(損失者が不当利得に気付いた場合は、その時点から5年間)」です。

退職金の場合に当てはめると、

「不祥事を起こした社員には、退職金の全部または一部を支払わない」というルールであれば、本来であれば支給されない(または減額される)はずの退職金を満額受け取った場合、その社員は会社の損失と引き換えに利益を受けている

ことになります。

問題は、「退職金を満額受け取ることに、法律上正当な理由があるか」です。この点については、労働基準法で「退職金制度を設ける場合、退職金の支給対象者、金額の決定・計算・支払いの方法、支給時期を、就業規則で定めなければならない」とされています。つまり、

就業規則の内容が、法律上正当な理由があるかを判断する基準になるということであり、そこで、次に紹介する「退職金の支給制限や返還の定め」が重要になってくる

というわけです。

3 就業規則の「退職金の支給制限や返還の定め」を確認する

退職金の返還請求に関して、就業規則に次の2点を定める必要があります。

  • 退職金の支給制限:懲戒事由に相当する背信行為をした社員には、退職金の全部または一部を支払わない
  • 退職金の返還:懲戒事由に相当する背信行為をした社員に、すでに退職金を支払ってしまっている場合、当該社員に退職金の全部または一部の返還を命じる

過去に、

退職金請求権が雇用契約から生ずる社員の基本的な権利であることに鑑みると、その支払いを拒めるのは、就業規則に定められた不支給事由が存在する場合に限定されると解するべきである

と判断した裁判例(広島地裁平成2年7月27日判決)があるため、必ず定めておきましょう。

【規定例】
第○条(退職金の支給制限)

1)就業規則第○条で定める懲戒規定に基づき懲戒解雇された従業員または懲戒事由に相当する背信行為を行った従業員には、退職金を支給しない。
2)就業規則第〇条で定める懲戒規定に基づき諭旨解雇され自己都合退職した従業員には、退職金を一部支給しないことがある。

第○条(退職金の返還)
退職金支給後において、前条で定める退職金の支給制限に該当した者については、既に支給済の退職金の全額または一部の返還を命じる。この場合、返還を命じられた者は誠実にこれに応じなければならない。

上の規定例では、「退職金の支給制限」「退職金の返還」の対象となるのは、いずれも懲戒解雇または諭旨解雇に相当する不祥事を起こした社員です。

退職金の減額・不支給が有効と判断されるには、それに見合うだけの非違・背信行為が行われたことが必要

であるため、懲戒処分のうち重大なものに限るものとしています。

4 不祥事の内容と長年の功労を照らし合わせる

就業規則に退職金の支給制限や返還の定めがあっても、請求額の全額が回収できるとは限りません。

支給制限の話になりますが、過去の裁判例では、

懲戒解雇であっても、退職金を不支給とすることは、長年の功労を打ち消す重大な背信行為がなければ合理的とはいえないので、減額などにとどめるべき

と判断したもの(東京高裁平成15年12月11日判決)があります。この裁判では、痴漢行為が原因で懲戒解雇された社員の退職金を不支給とすることの可否が争われ、最終的に70%の減額が妥当と判断されました。判決文では、

  • 退職金全額を不支給とするには、当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要である
  • 業務上の横領や背任など、会社に対する直接の背信行為とはいえない職務外の非違行為がある場合、会社の名誉信用を著しく害し、会社に無視し得ないような現実的損害を生じさせるなど、横領や背任に匹敵するような強度な背信性を有することが必要である

という旨が示されています。

退職金の返還請求についても同様です。どの程度の額の返還が認められるかは、社員の不祥事の内容と長年の功労を照らし合わせた上で判断されます。

なお、社員の不祥事によって会社が損害を受けた場合、退職金の返還請求とは別に、受けた損害に関する損害賠償請求が認められる可能性があるので、必要に応じて検討しましょう。

5 (参考)同業他社に転職した社員の退職金は?

参考として、社員が退職後、就業規則の競業避止義務に違反して、同業他社に転職した場合の退職金の返還請求について説明します。

競業避止義務違反を理由に退職金の返還請求が認められるかについては、退職した社員側の職業選択の自由の問題などもあって判断が難しいですが、「同業他社に転職した場合、退職金の半額を返還させる」という就業規則の規定の有効性等が争われた過去の裁判例では、

就業規則の競業避止義務に違反することで、勤務中の功労に対する評価が減殺される

として、退職金の一部の返還請求を認めたもの(最高裁第二小法廷昭和52年8月9日判決)があります。

ただ、一般的に、競業避止義務違反は横領や背任等の不祥事よりも悪質性が低いといえるため、仮に返還請求が認められたとしても、回収できる額は退職金の一部にとどまる場合が多いと考えられます。なお、就業規則に競業禁止に関する定めがあっても、これに違反した場合に退職金の返還を命じる旨の定めがなければ、退職金の返還請求は原則として認められません。

以上(2025年11月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 小出雄輝)

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【税の勘所】押さえておきたい税金の「期間」

1 押さえておきたい税金の「期間」

この記事では、主な税金(法人税・消費税・相続税・贈与税)に関する「期間」を整理します。

押さえておきたい税金の数字~期間編~

2 20年以上:贈与税

20年以上は、夫婦間で居住用財産を贈与した場合、2000万円まで非課税となる婚姻期間です。

婚姻期間が20年以上の配偶者から居住用財産を贈与された場合(一定の要件を満たす必要があります)、その居住用財産の課税価格から2000万円まで控除できます。そのため、基礎控除(110万円)を合わせた2110万円までは贈与税がかかりません。

3 7年:相続税

7年以内は、生前贈与分を相続税の課税価格に加算しなければならない期間です。

財産を相続した人が、被相続人(亡くなった人)からその相続開始(被相続人が亡くなった日)前7年(2023年12月31日以前は3年)以内に贈与されていた場合、その贈与されていた財産は相続税の課税価格に加算されます。ただし、相続時精算課税を選択している場合には、年間110万円(非課税枠)までの生前贈与については相続財産に含まなくてよいため、相続税の課税価格には加算されません。

なお、相続が発生した年に贈与された財産も、相続税の課税価格に加算しなければなりませんが、2024年1月1日~2030年12月31日までの間の贈与については一定の経過措置が適用されます。

生前贈与に係る経過措置

4 10カ月以内:相続税

10カ月以内は、相続税の申告期限です。

財産を相続した人は、

被相続人から財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合

に、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に、所定の事項を記載した申告書を、被相続人の死亡時における住所地を管轄する税務署長に提出しなければなりません。

5 2カ月以内:法人税、消費税

2カ月以内は、法人税および消費税の確定申告期限(原則)です。

法人は、原則として、各事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に、管轄する税務署長に対し、確定した決算に基づき、法人税及び消費税の確定申告書を提出しなければなりません。

以上(2025年11月更新)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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