【かんたん法人税(6)】経営者に係る税務

1 経営者に係る税務上の重要なポイント

今回は、経営者(役員)に係る税務上の取り扱いに注目します。最も注意が必要なのは役員に対する給与や退職金(以下「役員給与等」)です。役員給与等は、

一定のルールに基づかないと損金算入できず、また損金算入できる金額にも限度がある

からです。

また、中小企業のうち、とりわけ同族会社では、

業務上の費用と私的な費用の区別が曖昧となりがちで、税務調査で指摘される

ことも多いです。私的な費用と判断された場合、その費用は役員給与等として取り扱われ、一定のルールに沿ったものでなければ損金算入できません。こうした区別をきちんとすることはもちろん、業務上の費用でも私的な費用と誤解を受けることがないように、所定の書類などをそろえておきましょう。

役員に係る税務上の重要ポイントは次の通りです。

  • 損金算入ができる3種類の役員給与
  • 過大役員給与
  • 役員退職金
  • 使用人兼務役員
  • 役員と会社の取引
  • 私的な費用

2 損金算入が認められる3種類の役員給与

1)定期同額給与

定期同額給与とは、「定期的(=毎月)」に「同額で支給される給与」です。一般的に毎月支給される役員給与がこれに当てはまり、事業年度を通じて毎月同額で支給されている場合に限り、損金算入できます。

税務調査では、総勘定元帳などによって毎月の役員給与が同額で計上されているかチェックされるので注意しましょう。なお、どんなことがあっても金額の変更が認められないというわけではなく、次のような場合などに役員給与の金額の変更が認められます。

1.期首から3カ月以内の変更

通常、期首から3カ月以内に定時株主総会が実施されます。この株主総会の決議により役員給与の変更がされたなら、金額の変更が認められます。この場合、税務調査において金額の変更理由を聞かれたときに備え、株主総会の議事録を作成・保管しておくことが重要です。

2.職務の内容に変更があった場合

通常の取締役が代表取締役に就任するなど、事業年度中において職務の内容に変更があった場合は、その職務内容に応じた役員給与の金額の変更が認められます。この場合、職務内容がどのように変わったのかなどについて、税務調査において具体的な説明を求められることが多いため、議事録などの関係書類を事前に準備しておくことが重要です。

2)事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、役員に対する給与の「支給金額」や「支給日」などをあらかじめ決めておき、税務署に「届出書」を提出することで損金算入が認められる役員給与です。定期同額給与以外で、例えば夏と冬に賞与の形で役員給与を支払いたい場合などに利用されます。

なお、届出書の提出期限は次の通りです。ただし、その届出書に記載した支給金額と実際の支給金額が異なっていたり、支給日が異なっていたりする場合には、支給金額の全額が損金に算入できなくなる恐れもあるため注意が必要です。

事前確定届出給与

3)業績連動給与

業績連動給与とは、会社の売上や利益に連動させて支給額が決められる役員給与です。なお、この業績連動給与は、同族会社には原則として適用できないなど、適用要件が主に上場企業を対象としたものになっているため、この記事では詳細な説明を省略します。

3 過大役員給与の取り扱い

役員給与は、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当すれば、原則として損金に算入できます。しかし、役員給与の支給を受ける役員の職務内容などに照らし、「役員給与の水準が高額過ぎる」と判断された場合は、その高額とみなされた部分の金額(適正額を超える部分の金額)については損金に算入できません。役員給与の金額が適正額かどうかについては単に金額のみで判断されるのではなく、次の2つの基準に従って総合的に判断されます。

役員給与

税務調査では、売上や利益が横ばいにもかかわらず役員給与の金額が増加していたり、従業員の給与を上げていないにもかかわらず、役員給与のみ多額に増加していたりする場合などは、その理由の説明を求められる場合があります。従って、役員給与については、金額の決定過程を詳細に説明できるよう、議事録などの関係書類を事前に準備しておくことが重要です。

4 役員退職金

原則として役員退職金は損金算入されますが、「損金に算入する時期」と「過大役員退職金」に注意しましょう。

役員退職金が損金算入される時期は、原則として「株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度」です。ただし、「会社が退職金を実際に支払った事業年度において損金経理(経理上、費用として処理すること)をした場合」は、その支払った事業年度において損金算入することも認められています。

注意が必要なのは、「支給した役員退職金が高額過ぎる(過大役員退職金)」と判断された場合、その高額とみなされた部分の金額(適正額を超える部分の金額)は損金算入できないことです。役員退職金の金額が適正額かどうかの判断基準は会社の状況によってさまざまですが、一般的に次の基準に従って総合的に判断されます。

  • 会社の業務に従事した期間
  • 退職の事情
  • 類似する会社の役員退職金の支給状況等

役員退職金は金額が大きくなることもあり、税務調査においては、金額の算定根拠についてよく説明を求められます。従って、役員給与と同様に、金額の決定過程について詳細に説明できるよう、議事録や算定根拠資料などを事前に準備しておくことが重要です。

5 使用人兼務役員

使用人兼務役員とは、

「部長」や「課長」など使用人としての地位を有し、かつ、部長職や課長職に日々従事している役員

をいいます。具体的には、「取締役経理部長」などの肩書となります。

使用人兼務役員の給与については、役員として支給された給与に該当する部分と、使用人として支給された部分とで、損金の取り扱いが異なります。

「役員として支給された給与」は、「定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与」(以下「定期同額給与等」)のいずれかに該当する場合に、原則として損金算入できます。また、「使用人として支給された給与」は、通常の使用人給与と同様に、原則として全額が損金算入できます。

ただし、経営者の親族については、「使用人兼務役員」としての肩書であっても、税務上は「役員」として取り扱われる場合があるので注意が必要です。具体的には株式の持株割合によって判断され、次の全てに該当し、会社の経営に従事していると判断された場合、税務上は「役員」とされます。

使用人兼務役員となれないケース

従って、使用人兼務役員の「使用人」としての職位に対して支給した賞与でも、税務上は役員に対する賞与とされるため、「事前確定届出給与」の届出書を提出していなければ、支給額の全額が損金に算入できないので注意しましょう。

6 役員と会社の取引

税務上、役員と会社との間の取引は、「第三者(外部)と同等の条件で行うべき」とするのが原則的な考え方です。例えば、会社の所有している不動産を時価よりも低い価額で役員に譲渡(低額譲渡)した場合、不動産の時価と譲渡価額の差額は、役員に対する一定の利益供与とみなされます。その結果、税務上「役員給与」扱いになり、所得税の源泉徴収が必要になるとともに、定期同額給与等にも該当しないため、損金算入もできません。

会社から役員に対して無利息で資金の貸し付けを行った場合も同様に、適正利率相当が役員給与として取り扱われます。役員との取引だからといって、自分たちの都合で安易に価格を決定した場合などには、税務調査において価格の算定方法について指摘され、想定外の納税を伴うことがあります。役員と会社との取引に係る金額の決定過程については税務調査時に詳細に説明できるよう、議事録や契約書などの関係書類を事前に準備しておくことが重要です。

7 私的な費用

本来は経営者個人が自分で支払うべき私的な費用を会社の費用として経理処理した場合、その費用については、税務上「役員給与」として取り扱われます。例えば、経営者1人の飲食代は税務上の交際費や会議費ではなく、役員給与とされます。

また、ゴルフクラブの入会金を法人会員として支払った場合、その入会金は会社の資産として計上しなければなりません。プレー代などは交際費等として一定の限度額の範囲内で損金に算入できますが、ゴルフクラブに入会した事実を経営者以外の従業員などに知らせていなかったため、税務調査において「業務に不要なもの=実質的に経営者が個人で負担すべきもの」と判断され、役員給与として取り扱われたケースもあります。

このように、業務に関連しない私的な費用については役員給与とされ、所得税の源泉徴収を要するとともに、定期同額給与等に該当しない場合には損金にも算入できません。

税務調査では、単に領収証の有無などを確認するだけではなく、「業務に必要なものか」といった視点からも調べられますので、関係書類などを事前に準備しておき、業務上必要な経費であることを説明できるようにしておくことが重要です。

以上(2026年8月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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財務3表のつながりを図解でわかりやすく解説

1 企業活動を数字で示すのが財務3表

一般的に、企業の事業は次のような流れで進みます。

  • 銀行からの借入や投資家からの出資によって資金を調達する
  • その資金を元手に商品を仕入れたり、製造に必要な機械設備を購入したりする
  • 商品やサービスを顧客に販売して利益を上げることで、投資を回収する

この事業活動のサイクルを、経営成績、財政状態、現金の流れの観点から数字で示したものが、財務3表となります。

  • 損益計算書:一定期間の企業の経営成績を表すもの
  • 貸借対照表:企業の期末日など、一定時点の財政状態を表すもの
  • キャッシュフロー計算書:一定期間の企業の現金の流れを表すもの

また、この財務3表はそれぞれが独立しているわけではなく、そのつながりを理解することで会社の状況がよりよく見えてくるようになります。早速、確認していきましょう。

2 事業活動を数字にするためのルール”複式簿記”

それぞれの財務3表の説明の前に、複式簿記の考え方を押さえておきましょう。

決算書は日々の仕訳を基に作成されます。この仕訳を記録・集計して記帳するのが複式簿記です。複式簿記では、全ての事業活動を原因と結果の両面で捉えて、「資産・負債・純資産・収益・費用」といった5つの要素に分類します。

これら5つの要素は、2つの側面(左右)でそれぞれ記帳する場所が次のように決まっています。

5つの要素の記帳場所

例えば、銀行から現金を借り入れるという取引は、現金を資産の場所に、借入金を負債の場所に記帳します。このように、複式簿記に従って、全ての取引を決まった場所に記帳していくことで、事業活動が数字でまとめられます。これら5つの要素を上下に区切ると、資産・負債・純資産の部分が貸借対照表に、収益・費用の部分が損益計算書になります。そして、作成された貸借対照表と損益計算書を基に、キャッシュフロー計算書を作成していきます。

3 貸借対照表とは

貸借対照表とは、

ある時点における会社の財政状態を表す財務諸表

です。財政状態とは、「会社がどのようにお金を調達し、そのお金を何に投資しているのか」の状態です。貸借対照表は次の3つの要素で構成され、左側に資産、右側に負債と純資産が計上されます。

  • 資産:手元にある現金や会社が購入した商品、土地・建物などの財産
  • 負債:銀行からの借入金や買掛金などの債務
  • 純資産:投資家からの出資金や、会社が稼いだ利益の積み立て分など

貸借対照表の構成要素

4 損益計算書とは

損益計算書とは、

一定期間における会社の業績(どれだけの利益を上げたか、そのもうけの内訳は何かなど)を表す財務諸表

です。

損益計算書は次の2つの要素で構成され、さらにその2つの要素の差額として利益(または損失)を計算します。なお、図表1の損益計算書は右に収益、左に費用と横形の表でしたが、通常の損益計算書は上に収益、下に費用が記載されます。

  • 収益:商品の売り上げなど事業活動により稼いだ成果
  • 費用:商品の仕入れや人件費の支払いなど、会社の事業活動上のコスト

損益計算書の構成要素

5 キャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー計算書とは、

一定期間のキャッシュの増減を表す財務諸表

です。キャッシュフロー計算書は、キャッシュの増減を次の3つの区分に分けて表示し、その期間におけるキャッシュの増減を明確にします。

  • 営業活動によるキャッシュフロー:売り上げ、仕入れ、経費など主に本業によるキャッシュの動きを示す
  • 投資活動によるキャッシュフロー:固定資産や有価証券の取得・売却などによるキャッシュの動きを示す
  • 財務活動によるキャッシュフロー:借り入れや返済、増資などによるキャッシュの動きを示す

なお、キャッシュフロー計算書には、直接法と間接法の2通りがあります。直接法は、商品の販売や仕入れ、経費の支出など、主要となる取引を個々に合算していく方法です。従来の損益計算とは別で新たに営業活動によるキャッシュフローを計算するための手続きを一から行う必要があり、計算手続きに労力がかかります。

一方で、間接法は損益計算書の税引前当期純利益を基に加減して計算できるため、直接法と比べると労力が少なくすみます。以降では、間接法を基にキャッシュフロー計算書の構成を紹介していきます。

キャッシュフロー計算書の構成要素

6 財務3表のつながり

貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書は別々の目的で作成されるものの、それぞれがつながっています。そのつながりを読み解くことで、事業活動の流れが把握できます。財務3表のつながりを理解するときのポイントは次の3つです。

  • 貸借対照表(純資産)と、損益計算書(税引後当期純利益または損失)はつながっている
  • 損益計算書の税引前当期純利益または損失とキャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローはつながっている
  • 貸借対照表(資産(現金))とキャッシュフロー計算書の現金の残高は一致する

具体的なつながりのイメージは次の通りです。

財務3表のつながりの全体像

7 事例で確認。財務3表のつながり

ここでは、設立1年目の株式会社の基本的な取引を基に、それぞれの取引がどのように財務3表に反映されているのかを、財務3表のつながりを見ていきながら説明します。なお、便宜上、取引ごとに損益計算書の利益(または損失)を計算して、貸借対照表の純資産(株主資本)に反映させており、その都度、キャッシュフロー計算書を作成しています。

1)会社設立時の資金の準備(お金を調達する)

会社の設立に当たって、資金の調達をします。内訳は、銀行からの借り入れが400万円、投資家からの出資が600万円です。

取引1:資金の準備

資金調達した1000万円(400万円+600万円)は、貸借対照表の「資産(現金)」に計上します。

銀行から借り入れた400万円は、貸借対照表の「負債(借入金)」に計上します。投資家から出資を受けた600万円は、貸借対照表の「純資産(資本金)」に計上します。

また、現金が増加したため、キャッシュフロー計算書の「財務活動によるキャッシュフロー」に、それぞれの取引による増加分(プラス400万円とプラス600万円)を記載します。

2)備品を現金で購入(お金を投資する)

会社を運営するためには、パソコンなどの備品が必要です。ここでは、パソコン30万円を現金で購入しました。

取引2:備品の購入

購入したパソコン30万円は、貸借対照表の「資産(備品)」に計上します。

購入の際に支払った現金30万円を、貸借対照表の「資産(現金)」から減少させます。

また、現金が減少したため、キャッシュフロー計算書の「投資活動によるキャッシュフロー」に、備品の購入による減少分(マイナス30万円)を記載します。

3)商品を現金で仕入れ(お金を投資する)

商品を200万円分(100個×単価2万円)、現金で仕入れます。

取引3:商品の仕入れ

仕入れた商品の200万円は、貸借対照表の資産(たな卸資産)に計上します。仕入れに支払った現金200万円を、貸借対照表の「資産(現金)」から減少させます。

また、現金が減少したため、キャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」に、たな卸資産の増減(マイナス200万円)を記載します。

4)商品を現金で売り上げ(投資を回収する)

商品50個を300万円で売り上げ、代金を現金で受け取りました。

取引4:商品の売り上げ

商品の売り上げ300万円は、損益計算書の「収益(売上)」に計上し、費用(売上原価)100万円との差額200万円が利益となります。この利益は貸借対照表の「純資産(利益剰余金)」にも計上されます。

売り上げで受け取った現金300万円は、貸借対照表の「資産(現金)」を増加させます。さらに、売り上げた商品(100万円=50個×単価2万円)を「資産(たな卸資産)」から減少させます。

また、損益計算書上の利益はキャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」にプラス200万円を、たな卸資産の増減については「営業活動によるキャッシュフロー」にマイナス100万円(△200万円+100万円)を記載します。

5)決算日

資産(備品)30万円は、便宜上5年間使用できるものとした場合には、その期間を通して6万円ずつ減価償却費として費用計上します。事業年度を通して利益が出ると、会社は法人税等を納付しなければなりません。法人税等とは法人税・法人事業税・法人住民税をいいます。実際に法人税等を計算する場合には、税法上のさまざまな調整が必要になりますが、ここでは簡略化して法人税等を60万円とします。

取引5:法人税等の計上

法人税等60万円は、損益計算書の「利益(税引前)」の下に計上し、最終的な利益である税引後の利益が計算されます。

法人税等60万円を、貸借対照表の「負債(未払法人税等)」に計上します。法人税等の支払いは、決算日の翌日から2カ月以内と定められており、例えば3月決算の会社については、5月末までとなります。そのため、法人税等の支払いは翌期になり、決算を確定する時点では未払いとなり、貸借対照表の「負債(未払法人税等)」に計上します。

従って、設立1年目においては、法人税等の支払いによる現金の増減はなく、キャッシュフロー計算書には影響しません。

以上(2026年7月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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運転資金の計算方法と資金繰り改善のシミュレーション

1 運転資金の計算は「売掛金+棚卸資産(在庫)−買掛金」で、まずはざっくりと!

運転資金とは、日々会社を経営するために必要な資金です。「資金繰り」の目的の1つは、運転資金が不足しないように管理することです。

運転資金を意識することはとても重要ですが、皆さんは「運転資金の計算方法」や「毎月必要な運転資金額」を把握していますか。また、いざというときに備えて、運転資金の調達先を確保していますか。

会社を経営していくためには様々な資金が必要となりますが、大別すると、

  • 運転資金:会社を経営するために、「継続的に」必要となる資金
  • 設備資金:土地・建物やPCなどを調達するために、「そのときだけ」必要となる資金

になります。運転資金は継続的に発生するものだからこそ、足りなくなると資金ショートを起こし、最悪の場合は倒産してしまいます。

となると、気になるのは自社にいくらの運転資金が必要なのかということだと思いますので、実際に計算してみましょう。まずは皆さんの会社の貸借対照表(BS)をご準備ください。そして、貸借対照表の中から「売掛金」「棚卸資産(在庫)」「買掛金」の3つの数字を見つけて、次のように計算してみてください。

運転資金=売掛金+棚卸資産(在庫)−買掛金

これが、自社に必要な運転資金をざっくりと示す目安です。図で示すと、次のようなイメージになります。

運転資金のイメージ

なぜ、この計算式で運転資金が分かるのかを簡単に説明します。

1.売掛金とは、既に販売しているが、まだもらっていないお金。「売上債権」ともいう

2.棚卸資産(在庫)とは、既に調達しているが、まだお金になっていない商品など

3.買掛金とは、既に購入しているが、まだ払っていないお金。「仕入債務」ともいう

整理すると、売掛金と棚卸資産(在庫)はまだお金になっていない資産です。一方、買掛金は手元にあるお金で、支払期日までは自由に使えます。売掛金と棚卸資産(在庫)が入ってくるまでの間、買掛金で賄えればよく、足りないようなら、その部分を補うのが運転資金となるわけです。

2 「運転資金回転期間」で、もう少し細かく!

先の「運転資金=売掛金+棚卸資産(在庫)−買掛金」は、ざっくりと運転資金を計算するものですが、もう少し細かく計算する方法もあります。それは、財務分析で一般的な「回転期間」を用いるものです。回転期間とは会社経営の効率性を知るためのもので、売掛金や棚卸資産(在庫)などの資産を回収するための期間や、買掛金などの負債を支払うまでの期間を把握することができます。

具体的には次の3つの回転期間を用います。なお、以下では日ごとの指標としています。月間で計算する場合は、「÷365日」の部分を「÷12カ月」としてください。

1.売上債権回転期間=売上債権÷(売上高÷365日)

2.仕入債務回転期間=仕入債務÷(売上原価÷365日)

3.棚卸資産回転期間=棚卸資産÷(売上原価÷365日)

売上債権回転期間は、売掛金を回収するまでの期間を示すもので、数値は小さいほど好ましいです。反対に仕入債務回転期間は、買掛金を支払うまでの期間を示すもので、数値は大きいほど好ましいです。また、棚卸資産回転期間は、在庫が売れるまでの期間を示すもので、数値は小さいほど好ましいです。

これら3つの回転期間を使って、運転資金回転期間を次のように求めます。

運転資金回転期間=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間−仕入債務回転期間

ここで出てきた期間の運転資金が必要ということになります。例えば、計算した結果が、

運転資金回転期間=30日

1日当たりの売上高=10万円

となった場合、

運転資金=300万円(30日×10万円)

となります。

3 固定的にかかる費用も賄う。「固定費」と「変動費」について

ここまで運転資金の計算方法について解説してきましたが、

会社経営にはオフィス賃料や人件費などのコストもかかる

ことに注意が必要です。こうした、売上に関係なくかかる費用を「固定費」と呼びます。教科書的には、

固定費は、売上が増えても変わらない点は好ましく、逆に売上が減っても変わらない点は好ましくない

という二面性があります。なお、実際の経営においては、売上が増えれば仕事も増えるので社員を雇ったりするため、実際は固定費も増えます。同様に売上が減ればコスト削減をするため、やはり固定費は減ります。

一方、売上高の増減に比例する費用を「変動費」と呼びます。ここまで触れてきた売上原価は、典型的な変動費です。

代表的な固定費と変動費の例

4 運転資金が不足する原因とは?

1)原因1:決済サイトのバランスが悪い

資金繰りは、手元にお金があればあるほど楽になるもので、逆もしかりです。では、皆さんが販売する側になった場合、

  • パターンA:売掛金の決済サイトは60日、買掛金の決済サイトは30日
  • パターンB:売掛金の決済サイトは30日、買掛金の決済サイトは60日

では、どちらが好ましいといえるでしょうか?

話を単純にするために、

  • 販売は、60日ごとに250万円
  • 仕入れは、60日ごとに50万円
  • 固定費は、30日ごとに80万円

という前提で、パターンAとパターンBをシミュレーションしてみましょう。

シミュレーション例(1)

当然ですが、買掛金の決済サイトが、売掛金の決済サイトよりも長いパターンBのほうが資金繰りは楽になっています。

また、注目したいのはパターンAです。損益計算書(PL)では、

  • 年間の売上高:1500万円(250万円×6回)
  • 年間の費用:1260万円(50万円×6回+80万円×12カ月)

※なお、7回目の仕入れは在庫の状態であり費用(売上原価)に計上されません。

  • 年間の営業利益:240万円(1500万円−1260万円)

となるのですが、キャッシュはマイナス10万円となっていることです。これが「勘定合って銭足らず」の状態で、黒字倒産の原因となります。

対して、パターンBは、

年間の営業利益:240万円(1500万円−1260万円)

と同額ですが、キャッシュはプラス240万円となっています。

この大きな違いは決済サイトによるものです。

となると、売掛金の決済サイトは短く、買掛金の決済サイトは長くすればよいということになりますが、これは取引相手と表裏の関係であることを忘れてはなりません。自社が楽になれば、相手が苦労することになるかもしれません。

このことを念頭に置き無茶な要求はせず、双方にとってバランスの良い決済サイトを契約によって決めることが、スムーズな取引のために必要です。

2)原因2:棚卸資産回転期間が悪い

棚卸資産は、すぐに販売してキャッシュに変えたほうが効率的です。これを定量的に示す財務分析の指標が、前述した「棚卸資産回転期間」です。

棚卸資産回転期間=棚卸資産÷(売上原価÷365日)

前述のパターンAとパターンBで、売掛金と買掛金の決済サイトを変えず、棚卸資産回転期間が2分の1になった場合で考えてみましょう。

話を単純にするために、

  • 販売は、30日ごとに250万円
  • 仕入れは、30日ごとに50万円
  • 固定費は、30日ごとに145万円(売上高が増えるので、固定費も増やしています)

という前提で、パターンAとパターンBをシミュレーションしてみましょう。

シミュレーション例(2)

棚卸資産回転期間を2分の1にしたことで、パターンAとパターンBともに資金繰りが楽になっています。

3)原因3:売上が増えた

売上が増えれば変動費も増えます。また、固定費についても、どこかのタイミングで上げざるを得ません。

例えば、売上増に対応するため人員増・設備増・家賃増などの投資を行った結果、これに伴う支出の増加が売上の増加を上回る場合などがあります。売上だけではなく利益にも注目し、変動費と固定費をコントロールしなければ、資金繰りが厳しくなる恐れがあります。

この辺りは、損益分岐点の考え方が役立ちます。

4)原因4:売上が減った

売上が減れば変動費も減ります。しかし、一定期間、固定費はそのままとなるので、資金繰りが厳しくなります。

5)原因5:スポットや季節的要因で資金が必要になった

賞与の支払い、急な仕入れなど、会社経営ではスポットで資金が必要になることがあります。こうしたときは資金繰りが厳しくなります。

また、スポットではありませんが、季節的要因で資金が必要になることもあります。

5 運転資金の主な調達方法

1)公的な融資制度

日本政策金融公庫や地方自治体が行う公的な融資制度です。基本的には低金利で融資を受けることができ、かつ創業時などで実績がない会社にとっても窓口を広げているため、有効な選択肢となります。

2)ファクタリング

売上債権を現金化するファクタリングという資金調達方法です。自社が所有している売掛金を専門のファクタリング会社に売却することで、すぐに資金を手に入れることができます。手数料などの分、目減りしてしまうものの、資金回収の待ち時間を短縮できます。

3)クラウドファンディング

インターネットを通じて、不特定多数の人から資金を調達するのがクラウドファンディングです。クラウドファンディングの主な型は次の3種類です。

  • 購入型(製品やサービスを受ける権利を購入してもらって、資金を調達する方法)
  • 寄付型(製品やサービスなどのリターンは発生しない、寄付と同様な形で資金を調達する方法)
  • 投資型(将来的に株式や利子、配当をリターンとして、投資してもらい資金を調達する方法)

4)設備のリース・レンタルサービス

設備投資に関連する運転資金を節約するために、リースやレンタルのサービスを利用する方法です。これにより初期投資を抑えつつ、必要な機材や設備をそろえることができます。

6 運転資金の種類

ここまでの説明で間接的に触れていることではありますが、運転資金には、いくつかの種類があるので補足しておきます。

1)経常運転資金(正味運転資金、所要運転資金)

経常運転資金、正味運転資金、所要運転資金などと呼ばれるものです。いわゆる「運転資金」というときは、この経常運転資金を指します。求め方は、前述した通りです。改めて紹介すると、次のようになります。

1.運転資金=売掛金+棚卸資産(在庫)−買掛金

2.運転資金=運転資金回転期間×1日当たりの売上高

2)増加運転資金

売上の増加に伴い必要となる資金です。売上が増えると仕入れなどが増え、運転資金が必要になることがあります。

3)減少運転資金

売上の減少に伴い必要となる資金です。売上が減っても、一定期間、固定費は変わらないため、運転資金の確保が難しくなります。

4)スポット、季節運転資金

賞与の支払いや急な仕入れ、季節的要因によって必要となる運転資金です。

以上(2026年7月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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出張中、「新幹線の移動時間は労働時間ですよね?」と社員に聞かれたら?

1 会社の指揮命令下に置かれているかどうかが重要

出張の多い社員から、「出張先までの新幹線や飛行機の移動時間って、労働時間ですよね?その分の残業代は出ますか?」と聞かれることがあります。「移動中は仕事をしていないのだから関係ないだろう」と思うかもしれませんが、一概にそうとは言えません。

労働基準法上の「労働時間」とは、社員が会社の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働契約や就業規則の定め方にかかわらず、客観的な実態によって判断されます(最高裁平成12年3月9日判決)。つまり、移動時間が「社員が自由に使える時間か、会社の指示や管理下に置かれた時間か」によって結論が変わってくるのです。

そして、出張の移動時間以外にも、育児や介護のための中抜け、勤務時間外のメール・チャット対応、タバコ休憩など、日常の中で労働時間かどうか判断に迷うケースはさまざまあります。判断が複雑なものもあるので、事例別にイメージをつかんだほうが無難です。以降でいくつかの事例について、法令や裁判例に基づく解釈を紹介するので参考にしてください。

2 テレワークや出張での移動時間

テレワークは、就業場所(自宅やサテライトオフィスなど)を、就業規則や雇用契約書で明示(限定)した上で実施します。とはいえ、社員が「より集中しやすい場所で作業したい」など、自分の都合でカフェや図書館に移動して作業することもあります。このように

社員自身の都合で就業場所を移動し、その間自由に利用できる時間は、労働時間として扱わなくてもよい

とされています。ただし、移動時間中に会社から指示を受けてノートPCなどで業務を行う場合や、会社がテレワークをやめて急遽出社するよう命じるなど、会社都合で就業場所を指定した場合は、会社の指揮命令下にあるとみなされ、労働時間になります。

出張の場合も基本的な考え方は同じです。行政解釈でも、出張の際の休日の移動は、物品の監視等の特別な指示がある場合を除き、労働時間として扱わなくてよいとされています。自宅から出張先までの移動時間は、通常は労働時間になりません。しかし、上司と打ち合わせをしながら出張先に向かったり、会社から移動手段を指定されたり、会社から指示を受けてお金や製品を管理したりなど、会社の指揮命令下にあるとみなされる状況では労働時間になります。

この他、建設業などの場合、一旦会社に集合してから現場に向かうことがありますが、この移動時間が労働時間に当たるのかも、移動の態様によって判断が分かれます。例えば、

  • 「会社に集合し、資材を積み込んでから現場に向かうよう、会社から命令されている」など、移動時間が自由時間とはいえないので、労働時間になる
  • 「現場に直行したい人は直行する」「会社に集合したい人は、集合してから向かう(車両運転者や集合時刻については各自が任意で決定)」など、移動の仕方を社員が自由に決められる場合、労働時間にならない

といった具合です。

3 中抜け

「子どもの保育園への送迎」「家族の介護」など、社員が私用で業務を中断することがあります。こうした中抜けの時間は、

会社から指示を受けず、社員が自由に利用できる場合、労働時間として扱わなくてもよい

とされています。労働時間を計算する場合、社員から1日の始業・終業時刻と一緒に中抜けの時間を報告してもらうなどして対応しましょう。

中抜けの時間は、「休憩時間(無給)」にすることも、社員の求めに応じて「時間単位年休(1時間単位で取得できる年次有給休暇)」とすることも可能です。ただし、どちらの場合も就業規則等で定め、事前に社員に周知しなければなりません。また、時間単位年休を導入するには労使協定の締結が別途必要です。中抜け時間の取り扱いは、厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」にも記載があります。ちなみに、時間単位年休の時間は、社員の自由な行動が保障されていれば、労働時間になりません。例えば、就業時間が9時から18時までの会社(所定労働時間:8時間)で、社員が

  • 9時から11時まで、2時間の時間単位年休を取得
  • 11時から20時まで、8時間勤務(1時間休憩)

した場合、実際の労働時間は11時から20時までの8時間なので、法定労働時間内(原則として1日8時間、1週40時間)ということで残業は発生せず、割増賃金を支払う必要はありません。

4 勤務時間外のメール・チャット対応

スマートフォンの普及により、勤務時間外や休日でも、上司や取引先からメールやチャットが届くことは珍しくありません。「通知が来ただけ」なのか「対応まで求められているか」で、労働時間になるかどうかが変わります。

具体的な対応(返信、資料作成など)を求められておらず、翌営業日の確認で差し支えない場合、労働時間として扱わなくてもよい

とされています。一方、

上司から「今すぐ確認して対応してほしい」と即時対応を求められ、実際に資料修正や顧客対応などの業務を行った場合、その対応に要した時間は労働時間になる

と考えられます。

ちなみに、対応を求められていない通知の受信であっても、こうした連絡が常態化すると社員のプライベートを圧迫し、精神的な負担につながります。「休日・夜間の連絡は翌営業日の確認でよい」旨をルール化し、緊急時以外は送信を控える、あるいは予約送信機能を活用するといった工夫が望ましいでしょう。

近年は、勤務時間外の業務連絡を遮断する「つながらない権利」への関心も高まっています。関連する制度として、終業から次の始業までに一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」があり、労働時間等設定改善法で導入が会社の努力義務とされています。時間外の連絡ルールとセットで導入を検討する価値があるでしょう。

5 持ち帰り残業

タイムカードを打刻して退勤した後、自宅でパソコンを開いて仕事を続ける、いわゆる「持ち帰り残業」をする社員がいます。この場合の労働時間の判断は、

自宅での作業は会社の直接の指揮命令下から離れているため、原則として労働時間にならない

とされています。ただし、

所定時間内に到底終わらない業務量であることを会社が把握しながら、自宅での作業を黙認している場合、黙示の指示があったとして労働時間になる

と判断される可能性があります。実際、退勤後のメール送信履歴やファイルの更新履歴といった客観的な記録をもとに、自宅での作業を労働時間と認定した裁判例もあります。

持ち帰り残業を防ぐには、「持ち帰り残業を禁止する」旨を社内で明確にした上で、業務量が適正かを定期的に確認し、パソコンのログイン時刻とタイムカードの打刻時刻に大きな乖離がないかをチェックする運用が有効です。

厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」でも、自己申告された労働時間とパソコンの使用時間等の客観的な記録に著しい乖離がある場合には、実態調査を行って労働時間を補正するよう求められています。

6 タバコ休憩

喫煙する社員が頻繁に離席してタバコ休憩を取ることについて、非喫煙の社員から「不公平だ」という声が上がることがあります。休憩時間として扱えるかどうかは、

電話対応や来客対応などの業務から完全に解放されているかどうかで判断する

とされています。喫煙室に移動し、その間は一切の業務対応を求められない状態であれば「休憩時間」として扱い、その時間分の賃金を控除しても問題ありません。一方、電話が鳴ったらすぐ対応する必要があるなど、業務からの解放が保障されていない場合は休憩時間とはいえず、労働時間として扱う必要があります。

実際のオフィスでは、業務からの完全な解放が保障されているとはいえないため、タバコ休憩は労働時間として扱わざるを得ないケースが大半です。もっとも、賃金を支払うこととは別に、勤務時間中の頻繁な離席は職務専念義務の観点から注意・指導の対象とすることができます。

ただし、数分単位の喫煙時間をすべて正確に記録し、その都度賃金から控除するのは、管理コストの面で現実的ではありません。実務では、非喫煙者に「禁煙手当」を支給したり、喫煙の有無にかかわらず利用できる「特別休暇」を設けたりするなど、待遇面で公平感を確保する対応が広がっています。

なお、健康増進法により、事務所や工場などは原則屋内禁煙とする必要があり、屋内に喫煙場所を設ける場合は、基準を満たす喫煙専用室の設置が求められます。労務管理と併せて、喫煙環境の整備状況も確認しておきましょう。

以上(2026年9月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

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【賃金データ集】賃金改定の動向

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「賃金改定の動向」です。

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 賃金改定の概要

毎年、1月ごろから注目され始める「春闘」(日本経済団体連合会では「春季労使交渉」、日本労働組合総連合会では「春季生活闘争」)は、日本独特の労使闘争であり、1956年ごろから現在の形になったといわれます。

春闘では、全国中央組織である労働団体や産業別・雇用形態別組織の指導・調整の下、労働組合が結束して企業との団体交渉に臨みます。中心となる交渉のテーマは、基本給や一時金(賞与)の引き上げ要求ですが、この記事では基本給に注目します。まずは、春闘で話題になる定期昇給やベースアップの仕組みを確認してみましょう。

定期昇給、ベースアップ、賃金改善のイメージ

2 賃金改定の潮流

1)近年の春闘の傾向

日本労働組合総連合会(以下「連合」)が公表している、2022年春闘から2026年春闘までの賃上げ率(平均賃金方式、定期昇給相当分を含む、加重平均)の動向をお知らせします。

大企業と中小企業の賃上げ額の推移

注目すべきは、

2024年、2025年、2026年と3年連続で、加重平均で5%台の賃上げ

が実現していることです。

2024年春闘は、連合が「経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へとステージ転換をはかる正念場である」として、賃上げ目標(定期昇給相当分を含む)を2023年の「5%程度」から「5%以上」に改めました。加重平均での5%超えは33年ぶりでした。

2025年春闘は、「賃上げと価格転嫁・適正取引における格差解消をセットで進めていく」という方針が示され、多くの中小組合で格差是正を含めた積極的な要求が提出されました。

2026年春闘は、「実質賃金の持続的な上昇を伴う『賃上げノルム』の確立に向け、3年連続の5%以上の賃上げを目指す」という方針が示され、実現に至りました。

3 厚生労働省の統計資料による賃金改定の状況

民間主要企業における春季賃上げ状況の推移

民間主要企業における春季賃上げ状況の推移

4 日本経済団体連合会の統計資料による賃金改定の状況

昇給とベースアップの実施状況の推移

賃上げ額および賃上げ率の推移

春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)

春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(加重平均)

5 地域ごとの状況(東京、大阪、愛知、千葉)

東京都内企業の春季賃上げ要求・妥結状況(加重平均)

大阪府内企業の春季賃上げ要求・妥結状況

愛知県内企業の春季賃上げ要求・妥結状況

6 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は次の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/shuntou/roushi-c1.html

民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況

■1~6月実施分 昇給・ベースアップ実施状況調査結果■
https://www.keidanren.or.jp/policy/index09.html

昇給・ベースアップ実施状況調査結果

■春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果、春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果■
http://www.keidanren.or.jp/policy/index09.html

春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果、春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果15

■経済要求・妥結状況調査■
http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/sodan/chousa/youkyu-daketsu/

経済要求・妥結状況調査

■春季賃上げ要求・妥協状況■
http://www.pref.osaka.lg.jp/sogorodo/chousa/

春季賃上げ要求・妥協状況

■県内企業の春季賃上げ、夏季一時金及び年末一時金要求・妥結状況調査結果■
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/rodofukushi/0000052467.html

県内企業の春季賃上げ、夏季一時金及び年末一時金要求・妥結状況調査結果

以上(2026年7月更新)

pj17902
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インボイス制度の2026年問題! 2026年10月から消費税負担が増える?

1 改正により多少緩和された「インボイス制度の2026年問題」

2026年10月に、インボイス制度が大きな転換期を迎えることをご存じでしょうか。具体的には、

1.仕入先に免税事業者などがある会社が影響を受ける

免税事業者などからの仕入れに係る経過措置(以下「インボイス経過措置」)の控除率が縮小

2.インボイス制度の導入を機に、課税事業者となった小規模事業者が影響を受ける

免税事業者が課税事業者を選択した場合の2割特例(以下「インボイス2割特例」)の廃止

の2つです。適切な準備を怠ると、消費税負担が増えるだけでなく、既存の取引関係にも変化が生じることになりかねません。

2026年度税制改正により、控除率(経過措置)の縮小幅の変更と廃止までの期間が延長され、その影響は多少緩和されたものの、制度縮小と廃止という方向性そのものは変わっていません。このインボイス制度の経過措置の控除率縮小やインボイス2割特例の廃止のポイントを知り、対策を講じるようにしましょう。

2 インボイス経過措置による控除率の縮小について

1)内容は?

インボイス制度の下では、適格請求書発行事業者として登録した事業者しか「適格請求書(インボイス)」を発行できず、買い手側(課税事業者)はインボイスを保存することで、仕入税額控除を受けられます。つまり、インボイスが発行できない免税事業者(あるいは適格請求書発行事業者の登録をしていない事業者)からの仕入れについては、原則控除が受けられません。

しかし、制度導入直後の急激な税負担の増加などの影響を避けるため、導入後の数年間は、インボイスが発行できない事業者からの仕入れでも、一定額の控除を受けられるインボイス経過措置が設けられています。一定額の控除率は段階的に縮小され、最終的にはなくなります。

インボイス経過措置による控除率の縮小

この経過措置による控除率の第一段階の縮小(80%→70%)が、2026年10月に到来します。

2)控除率が縮小することの影響は?

1.消費税負担の増加

免税事業者から商品やサービスを仕入れている場合、これまで80%控除できていた消費税が、2026年10月からは70%の控除しかできなくなります。つまり、控除できない10%分がそのまま消費税の納税負担として上乗せされるのです。免税事業者との取引が多いほど、納税額の増加になります。

納税額の増加は、会社の資金繰りに直接影響します。特に、利益率の低い事業や、運転資金がタイトな企業にとっては、予期せぬ支出増が経営を圧迫する可能性があります。

2.仕入れコストの増加と価格交渉の必要性

仕入税額控除が縮小されるということは、免税事業者からの仕入れコストは当然上がります。そのため、こうしたコスト増を加味した価格交渉や取引先の選定基準の見直しが必要になります。また、現時点では2031年10月以降、この経過措置が終わることになっているので、段階的に行われる控除率の縮小だけでなく、経過措置の完全終了も視野に入れることが大切です。

3)取るべき対応は?

1.消費税の納税シミュレーションをして、資金繰りへの影響を把握

2026年10月以降の消費税の納税額がどう変化するか、シミュレーションしましょう。現在の取引状況(免税事業者からの仕入額の見込みや前年度取引実績値など)に基づいて、経過措置の控除率が70%・50%・30%となる場合(余裕があれば、2031年の経過措置の完全終了の場合も併せて)の納税額を計算し、資金繰りへの影響を把握しましょう。

2.取引先との具体的な協議と、価格・取引条件の再検討

まずは、免税事業者の取引先に対し、適格請求書発行事業者への登録を促すことを検討しましょう。もし取引先が登録しない選択をした場合には、価格の見直しや取引条件の再交渉が必要になる可能性があります。ただし、その際は、

独占禁止法や取適法に違反しないよう細心の注意が必要

です。例えば、一方的に値引きを要求したり、取引価格を据え置いたまま消費税分を負担させたりすることは、優越的地位の濫用とみなされるリスクがあります。交渉担当者は、取引先との良好な関係を維持しつつ、デリケートな交渉を誠実かつ丁寧に、そして法的なリスクを理解した上で進める必要があります。

3 インボイス2割特例の廃止について

1)内容は?

インボイス2割特例とは、免税事業者がインボイス制度の導入を機に、課税事業者を選択した場合、

納税額を、売上に係る消費税(仮受消費税)の2割とする制度

です。この特例を適用すると、売上に係る消費税額の20%だけを納税すればよいことになります。つまり、80%の消費税額が免除される計算です。例えば、売上に係る消費税が50万円であれば、納税額は10万円で済みます。この特例は、事前の届け出が不要で、複雑な消費税の納税計算の簡便さも特徴です。

この制度を適用できるのは、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間です。最短で影響が出るのは課税期間の開始日を10月1日としている会社(事業年度を10月~翌年9月としている会社など)です。この場合、2026年10月1日以降の取引について、特例を適用できなくなり、通常の課税事業者と同様の処理が必要になります。

なお、2026年度税制改正により、小規模個人事業者限定で、納税額を売上に係る消費税の3割とする制度(インボイス3割特例)が創設されます。税率は増えたものの、簡便な納税計算は継続されます。ただし、法人は対象外のため、従前どおり、通常の課税事業者と同様の処理が必要になります。

2)その影響は?

1.消費税負担の大幅増、キャッシュフローの悪化、利益率の低下

インボイス2割特例の廃止により、これまで売上に係る消費税額の20%で済んでいた納税が、通常の計算方法に戻ります。納税額が大幅に増える可能性があり、特に仕入れが少ない事業や、これまで消費税を価格に含んでいながら納税していなかった事業では、影響が大きくなります 。

納税額の増加は、手元の資金(キャッシュフロー)を直接圧迫します。これまで免税事業者だった会社は、消費税の納税を考慮した資金繰り計画を新たに立てる必要が出てきますし、また価格に含んでいた消費税相当額を納税に回すことになり、実質的な利益率が低下します。

2.経理業務の複雑化

インボイス2割特例では、売上に係る消費税額に20%を掛けるだけで消費税の計算が済みましたが、廃止後は、

売上に係る消費税額から仕入にかかる消費税額を差し引く「原則課税」または、売上に係る消費税額に一定割合を乗じて計算する「簡易課税制度」

で計算しなければなりません。特に原則課税の場合は、仕入取引一つ一つのインボイスの保存、税率ごとの区分経理など経理業務が複雑化し、小規模事業者にとっては大きな負担となります。

3)取るべき対応は?

1.原価管理の徹底と価格戦略の見直し

消費税の負担が増える分、まずは仕入れや経費などのコストを見直して、削減できるところがないか確認しましょう。また、商品やサービスの価格に消費税の負担を上乗せする「価格の見直し」も大切な対応の1つです。その際は、周りの競合や市場の動きにも注意しながら、自社の商品やサービスの魅力を保てるように、無理のない価格の付け方を考えることが大切です。

2.会計ソフト・請求書発行システムの導入・活用

インボイス2割特例廃止後の複雑な消費税計算や、インボイスの保存・管理には、会計ソフトや請求書発行システムの導入が不可欠といっても過言ではありません。これらのシステムは、請求書の作成・発行、受領したインボイスの内容チェック、税率ごとの区分経理、消費税の自動計算などを効率化し、経理業務の負担を大幅に軽減します。なお、インボイス制度に対応したシステムを導入する際は、デジタル化・AI導入補助金(インボイス枠)が申請可能かどうかチェックするようにしましょう。

以上(2026年8月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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【税務調査】インボイス導入で要注意。あなたの会社の消費税が調査される!

1 インボイス制度で消費税の税務調査が増える?

消費税の税務調査は法人税や所得税と併せて調査されるケースが一般的ですが、インボイス制度が始まって以降、消費税に関する処理が適切かどうか税務調査の中でもその重要性は高まっています。

インボイス制度は、

請求書に適用される税率や消費税額などを記載し、適切に相手に知らせるもの

です。ポイントは仕入税額控除です。仕入税額控除とは、「預かった消費税(仮受消費税)」から「支払った消費税(仮払消費税)」を差し引くことです。そして、仕入税額控除を受けられる支払いが、

インボイス発行事業者(「課税事業者」で、かつ適格請求書発行事業者の申請・承認を受けた事業者)に対するものに限定

されます。ここの運用が税務調査で重点的に確認されることがあります。

また、インボイス制度導入に伴い、いわゆる「免税事業者」から課税事業者に変わるケースが多くありました。免税事業者は消費税の申告・納税に慣れていないためミスが生じやすく、この点を税務調査で指摘されるかもしれません。

この記事では、消費税の税務調査で指摘を受けやすい項目や注意点を説明するので、参考にしてください。

2 本当に「免税事業者」でよいか?

免税事業者は消費税の申告・納税の必要がありませんが、税務調査で実は課税事業者であることが判明するケースがあります。そうなったら、

期限後申告をして、課税事業者であった期間分の申告・納税

をしなければなりません。期限後申告をしたり、納付税額につき決定を受けたりすると、その申告によって納める税金の他に無申告加算税や延滞税が課されます。もし、課税事業者であることを意図的に隠していたり、仮装していたりして悪質であると判断された場合には、さらに重加算税が課される可能性があります。

もう一度、確認しておきましょう。消費税の申告義務は、

原則として、基準期間(その事業年度の前々事業年度)の課税売上高が1000万円を超える

場合に生じます。ただし、

  • 設立1年目や2年目の会社(基準期間がない会社)
  • 売上が急拡大した会社

などの場合は特例の判定方法もあります。

なお、申告義務の有無の判定の詳細は、以下のコンテンツで説明しています。

3 本当に「仕入税額控除」の対象か?

仕入税額控除の適用については、

  • 帳簿および請求書などがしっかり保存されているか
  • 非課税取引や不課税取引を課税取引として処理し、仕入税額控除の対象としていないか

が調査されます。以下で、一般的な会社で多く見られる問題を紹介します。

なお、仕入税額控除や、非課税取引・不課税取引の詳細は、以下のコンテンツで説明しています。

1)交際費(祝い金や香典など)

祝い金や香典など、商品やサービスなどの見返りを求めない現金の支出は不課税取引となり、支払った消費税は控除できません。課税取引か不課税取引かは、会計処理システムに入力する際に同時に登録していると思いますが、日々の取引で生じがちな不課税取引については、入力時の注意事項としてメモを残しておくと抜け漏れがなくなります。

2)外注費

従業員やパートに対する給与は不課税取引となり、支払った消費税は控除できません。問題は、自社の従業員以外に対する支払いなどが外注費か給与か分かりにくい場合です。外注費になるか給与になるかは、基本的には、

請負契約に基づくものか(外注費)、雇用契約に基づくものか(給与)

によって判断できますが、最終的には実態に応じた判断が必要です。外注費は課税取引となり、支払った消費税は控除できます。働き方が多様化している昨今、明確な契約の有無で消費税の判断をするようにしましょう。

3)諸会費

業界団体(同業者団体や組合など)に支払う会費は不課税取引となり、支払った消費税は控除できません。ただし、業界団体が主催するセミナーや講演会に参加するための特別会費は課税取引となり、支払った消費税は控除できます。消費税の取り扱いを取引先ではなく、支出の内容ごとに判断するようにしましょう。

4)旅費交通費(海外出張)

海外出張にかかる旅費交通費(航空チケット代や現地のホテル代・飲食代など)は、免税取引または不課税取引となり、支払った消費税は控除できません。海外出張の場合は、出発前・到着後の支出(国内での支出)と、現地での支出を明確に区分して整理しましょう。

4 本当に「簡易課税制度」を適用してよいか?

消費税には、小規模事業者だけが適用を受けられる「簡易課税制度」があります。簡易課税制度が適用できるのは、

  • 基準期間の課税売上高が5000万円以下
  • 期日までに簡易課税を適用する旨の届出書を提出している

の2つを満たした事業者です。

簡易課税制度の適用を受けると、

預かった消費税×みなし仕入率(業種ごとに決められている)

の計算式で仕入税額控除の計算ができます。簡易課税制度の適用を受けるのは事業者の判断です。また、適用を受けるためには、

納税地の所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出

する必要があります。

税務調査では、

  • 簡易課税制度の適用ができる会社か否か
  • 業種によって異なるみなし仕入率の適用が妥当か否か

が確認されます。例えば、製造業として申告していたところ、税務調査で小売業だと判断された場合、申告誤りとなり追加で納税が必要になります。

なお、簡易課税制度の詳細は、以下のコンテンツで説明しています。

5 本当にその「課税売上割合」で正しいか?

課税売上割合とは、

総売上高に対する課税売上高の占める割合

です。課税売上割合については、

  • 課税売上高が適正に集計されているか否か
  • 課税取引を非課税取引や不課税取引として取り扱っていないか否か
  • 以上を踏まえ、課税売上割合が95%以上か未満か

が調査されます。

もし課税売上割合が95%未満だと、課税仕入額の全額控除の対象になりません。注意が必要なのは、その事業年度に土地を売却(非課税取引)したり、住宅の貸し付け(非課税取引)事業を新たに開始したりした場合です。金額が大きい非課税取引があると、売上高に占める課税売上割合が下がり、95%未満になることがあるのです。実際に95%未満となっていると、支払った消費税が一部しか控除できなくなります。

多額の取引や、スポット的なイベントが生じたときは、消費税のみならず、税金の計算に大きく影響を及ぼす場合があるので、顧問税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

以上(2026年7月更新)
(監修 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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用がないのに「早出」する社員でも賃金は支払わないとダメ?

1 「業務外の早出」を放っておいたら、困った事態に?

ある朝、A社長がいつもより早く会社に来て仕事をしていると、まだ始業前だというのに、社員のBさんとCさんが出社してきました。驚いたA社長が声をかけると、2人は照れくさそうにこう答えました。

A社長「2人とも、ずいぶん早いね。始業は9時からだよ? 何か急ぎの用事でもあるのかい?」

Bさん「いえ、実は通勤ラッシュが少し苦手で……」

Cさん「最近、朝早く目が覚めてしまうもので、会社で読書でもしようかなと……」

特に用事がなくても、朝早くから出勤してくる社員は意外と多いものです。少しくらいなら問題ありませんが、あまり行き過ぎると、次のような困りごとが生じてしまう恐れがあります。

  • 早出のタイミングで勤怠を打刻すると、その分の賃金を支払わなければならなくなる
  • 始業前に万が一事故などが起きても、会社としてすぐには対応できない
  • 朝から空調設備を稼働させることになり、その分コストがかさんでしまう

一方で、社員にとっては「通勤ラッシュを避けられる」「朝の時間を自己啓発に充てられる」「(夏場は)涼しい時間帯に作業できる」といったメリットがあるのも事実です。そう考えると、

労務管理上のポイントをきちんと押さえたうえで、業務外の早出を認めてあげる

という選択肢も、十分に考えられるでしょう。

2 押さえておきたいのは「労働時間管理」と「安全管理」

業務外の早出を認めるかどうかを考える際に、まず押さえておきたいポイントは次の2つです。

1)労働時間管理:働いていない時間には、賃金を支払う必要はありません

業務外の早出に関しては、

基本的には労働時間には当たらず、賃金を支払う義務もありません。

これは、「ノーワーク・ノーペイの原則(働いていない時間には給料が発生しないという考え方)」にもとづくものです。ただし、完全月給制(1カ月単位で計算し、労働時間にかかわらず定額の賃金を支給する仕組み)のような例外もありますので、自社の給与体系と照らし合わせて確認しておくと安心です。

2)安全管理:業務外の早出でも、労災が認められることがあります

早出中に起きた事故でも、次のようなケースでは労災と認められる可能性があります。

  • 業務災害:業務にあたっていなくても、会社の施設や設備が原因で事故が起きた場合
  • 通勤災害:出勤日に、いつもより早く通勤している途中で事故が起きた場合

さらに、会社側に落ち度があった場合には、「社員の安全管理を怠った(安全配慮義務違反)」として行政指導の対象になったり、けがをした社員から損害賠償を求められたりするリスクもありますので、注意が必要です。

3 カギとなるのは、ルールを作って社員にしっかり伝えること

業務外の早出を認める場合には、会社がルールをはっきりと定め、社員にきちんと守ってもらう必要があります。これから紹介するようなルールを就業規則などに明文化し、社員にしっかりと周知していきましょう。

1)「事前申請」のルールで、早出をきちんと把握・区別しましょう

早出を希望する社員には、

理由を問わず「事前申請」をしてもらう

ようにしましょう(社員が早出を希望するときは、前日までに申請してもらうなど)。

その際、申請書(紙)や申請フォーム(Web)に「業務上の早出」「業務外の早出」のチェック欄を用意しておき、早出の時間については

  • 「業務上の早出」であれば、労働時間としてカウントする(賃金を支払う)
  • 「業務外の早出」であれば、労働時間としてカウントしない(賃金は支払わない)

というように、申請内容に応じて取り扱いを分けるとよいでしょう。

ただ、社員の中には、本当は業務外の早出なのに、業務上の早出だと偽って申請し、賃金を多くもらおうとするケースがあるかもしれません。その防止策として

業務上の早出をする場合には、「申請の際に業務内容もあわせて記載してもらう」「上司が成果物を確認する」

といった対応も必要になってくるでしょう。逆に、本当は業務上の早出なのに、「仕事が遅れていることを上司に知られたくない」「会社に余計な負担をかけたくない」といった理由から、業務外の早出として申請してしまう社員もいるかもしれません。こうした社員がいないかどうか、定期的に実態を確認してみることも大切です。

併せて勤怠管理システムについても、早出の時間が自動的に労働時間へ含まれてしまわないよう、設定をよく確認しておく必要があります。

2)「時差出勤制度」で、コストと柔軟性を両立させましょう

業務外の早出をする社員が増えると、社内の照明や冷暖房にかかる水道光熱費もかさんでしまいます。そこで、「時差出勤制度」の導入も検討してみるとよいでしょう。

時差出勤制度とは、所定労働時間を変えずに、始業・終業の時刻だけを変更するしくみ

です。例えば、1日の所定労働時間が8時間、休憩が1時間の社員であれば、始業・終業時刻だけを「9時始業、18時終業」から「8時始業、17時終業」に変更するようなイメージです。所定労働時間は8時間のまま変わりませんので、水道光熱費の問題も最小限に抑えることができます。なお、時差出勤制度を導入する際は、就業規則の変更・届け出が必要になりますので、忘れないようにしましょう。

さらに柔軟な制度を目指すのであれば、社員自身に始業・終業の時刻を管理してもらう「フレックスタイム制」を導入するのもひとつの方法です。ただし、「導入の要件が細かい」「社員が制度をきちんと理解し、適切に運用することが求められる」「社員の稼働する時間帯が時差出勤制度以上にばらつきやすい」といった注意点もありますので、押さえておきましょう。

3)危険な場所には、なるべく立ち入らせないようにしましょう

始業時刻前は、どうしても安全管理が手薄になりがちで、建設業や製造業では早出した社員が事故を起こしてしまうリスクが高まります(例えば、上司の目が届かないところで作業場に立ち入り、けがをしてしまうといったケースです)。

そこで、業務外の早出をする社員については、

事務室や休憩室など、安全な「待機場所」を決めておき、作業場には立ち入らせない

ようにルール化するとよいでしょう。出社してから始業までの時間は待機場所で過ごしてもらい、作業場などには立ち入らないよう、しっかりと伝えておくことが大切です。待機場所を決めることが難しい場合には、社員が行動してよい範囲をあらかじめ厳格に決めておくようにしましょう。

この他、早出のときの私物の持ち込みや、設備の利用(Wi-Fi、飲食など)に関するルールも、安全管理や情報管理の観点から整えておく必要があります。

4)場合によっては、早出そのものを禁止することも考えましょう

例えば、荒天や災害の際には、社員が「早めに出社しておこう」と考えることがありますが、それによって事故に遭ってしまうと、安全配慮義務違反として会社が責任を問われることもあります。ですから、

防災気象情報などの内容に応じて、社員に自宅待機を指示する(早出そのものを禁止する)

といった対応も必要になってくるでしょう。

以上(2026年7月更新)

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画像:SunnySide-Adobe Stock

【かんたん法人税(1)】会計と税務の違いを理解しよう

1 経営者にとって最も身近な「法人税」

法人税は中期経営計画と関係性が深く、いわゆる「決算対策」の対象にもなります。そこで、このシリーズで、経営者が押さえておきたい法人税のポイントをまとめていきます。

この回では、法人税の課税対象や計算に関する全体像などをご説明します。経営者が特に押さえておきたいのは、

  • 会計:収益-費用=利益
  • 税務:益金-損金=所得

の違いです。決算対策で自社に有利な取り組みをするのも、税務調査で指摘を受けるのも、基本的にはこの違いから生じますので、しっかりと確認していきましょう。

2 法人税の概要

1)納税義務者は法人

法人税の納税義務者(税金を納める義務がある者)は「法人」です。法人には株式会社や合同会社の他、一般社団法人や医療法人など多くの形態があります。

法人税法上では、これらの法人を、

  • 内国法人:国内に本店または主たる事務所等を有する法人
  • 外国法人:内国法人以外の法人

の2つに区分しています。一般的な法人の多くは「内国法人」の、「1.普通法人」に該当します。

法人税法上における法人

2)課税対象は所得

法人税の課税対象は、

事業活動を通じて得た「所得の金額」

です。「所得」は会計上の「利益」に近い概念ですが、会社法と法人税法という法律の違いにより、

  • 会計上は収益となるが、法人税法上は収益とならないもの
  • 会計上は費用となるが、法人税法上は費用とならないもの

などが存在するため、必ずしも「利益=所得」とはなりません。この点の詳細は後述します。

3)税率は原則として23.2%

法人税の税率は、

原則として23.2%

です。ただし、中小法人の場合、

所得が年800万円以下の部分は15.0%(一定以上の所得金額がある場合には、17%または19%)に軽減

されます。例えば、所得が1000万円の中小法人(適用除外事業者には該当しない)の場合、800万円までは15.0%が適用され、800万円を超える部分(1000万円-800万円=200万円)には23.2%が適用されます。

なお、適用除外事業者とは、前3事業年度の平均所得金額が15億円超の中小企業者のことです。また、所得金額が年10億円超の中小法人については、所得のうち800万円以下の部分に適用される軽減税率が、17.0%となっています。

法人税の税率

4)申告期限

1.確定申告

法人税は、

原則として、事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に確定申告をして法人税を納付

します。ただし、災害その他やむを得ない事情がある場合などは上記申告期限を延長することも可能です。

2.中間申告

事業年度が6カ月を超える法人は、事業年度開始の日以後6カ月を経過した日から2カ月以内に中間申告書を提出して中間法人税を納付します。一般的な1年決算法人の場合、前事業年度の法人税の12分の6相当額を中間法人税として納付するのが基本です。

3 「利益」と「所得」の違いと税務調整

1)「利益」と「所得」の違い

会計上の利益は「収益-費用=利益」として計算されますが、法人税法上の所得は「益金-損金=所得」として計算されます。益金は収益、損金は費用に近い概念ですが、会社法と法人税法という法律の違いにより、

会計上は収益(費用)となるが、法人税法上は益金(損金)とならないものがあるなど、両者は必ずしも一致しない

ことになります。

益金の場合、会計上の収益に「会計上は収益とならない(していない)が、法人税法上は益金となるもの」を加算し、「会計上は収益となるが、法人税法上は益金とならないもの」を減算することによって、法人税法上の益金が計算されることになり、損金についても同様です。この加減算調整のことを「税務調整」といいます。これを図解すると次の通りとなります。

「利益」と「所得」の違い

2)税務調整の種類

税務調整項目として代表的なものは次の通りです。

1.益金算入項目:会計上は収益ではない、税務上は益金

  • 会計上と法人税法上の認識基準(どのタイミングで売上に計上するか)の違いによる売上の計上漏れなど

2.益金不算入項目:会計上は収益、税務上は益金ではない

  • 受取配当金(種類によって受取配当金の全額が益金にならないケースと、一部が益金にならないケースがある)
  • 法人税や住民税などの還付金
  • 資産の評価益(民事再生法の適用など税務上の所定の要件を満たす場合には益金となるケースもある)

3.損金算入項目:会計上は費用ではない、税務上は損金

  • 会計上と法人税法上の計上基準の違いによる売上原価の計上漏れ

4.損金不算入項目:会計上は費用、税務上は損金とならない

  • 法人税や住民税の本税
  • 延滞税や加算税などの附帯税
  • 賞与引当金や退職給付引当金の繰入額
  • 役員賞与
  • 減価償却超過額(税務上認められる限度額を超えて費用計上したもの)
  • 資産の評価損(災害や陳腐化など税務上の所定の要件を満たす場合には、損金となるケースもある)

4 法人税の具体的な計算過程と実務

1)所得金額の算定

収益と益金、費用と損金に違いがあるため、利益と所得は必ずしも一致しません。そこで税務調整が必要となりますが、実際の確定申告書を作成する上では、益金と損金について別々に税務調整を行うのではなく、「会計上の利益をスタート」として、この会計上の利益に直接所定の税務調整を行うことによって所得金額を算出します。

図表4において会計上のP/Lと税務上のP/Lの違いをイメージした上で、実際の確定申告書を作成すると図表5のようになります。

会計上のP/Lと税務上のP/L

確定申告書のイメージ

2)法人税額(特別控除等考慮前)の計算

法人税額(特別控除等考慮前)は、上で計算した税務上の所得金額(課税所得金額)に法人税率を乗じて求めます。

法人税額(特別控除等考慮前)

3)法人税額(特別控除等考慮後)の計算

法人税法においては、従業員の賃上げを行ったり、試験研究費の支出をしている法人に対しては、計算した法人税を減額する制度(税額控除制度)などがあったりします。また、法人税額の他、一定の同族会社に対して所定の追加税額を課する制度(特別税額制度)などがあります。

従って、上記2)で計算した法人税額に、税額控除制度や特別税額制度によって計算した金額を加減算して1事業年度の法人税の総額を求めます。

法人税額(特別控除等考慮後)の計算

4)納付すべき法人税額の計算

上記3)で計算した法人税額は1事業年度の法人税の総額ですので、最後にその事業年度中に納付した中間納付額を控除することで「確定申告により納付すべき法人税額」が計算されます。

納付すべき法人税額の計算

5)実務上の留意点

法人税の課税対象となる所得の金額は「会計上の利益」をスタートにして所定の税務調整を加減算して計算されます。従って、まずは期中における会計処理を正確に行い、正しい「会計上の利益」を計算することが大前提となります。

また、税務調整を行う上で必要な資料の保存には注意しましょう。「税金計算用ファイル」をあらかじめ用意しておくなど、税金計算作業にスムーズに入れるように普段から準備しておくことが重要です。確定申告時期に慌てて収集しようとしても資料が見つからなかったり、あるいは収集漏れが見つかったりすることがあります。その場合、本来は受けられる税額控除などが受けられない可能性もあります。

なお、この記事で紹介した税務調整項目はほんの一部であり、実務上は多岐にわたります。不明点などがある場合には、税理士と綿密にコミュニケーションを取って作業を進めることなども非常に有用です。

以上(2026年8月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:Campagne-Adobe Stock

【中堅社員のスピーチ例】「いつもの自分」に、新しいインプットを

【ポイント】

  • 自分の中から出てくるアイデアが、過去の経験の焼き直しになっていないか?
  • インプットの元が書籍であれば、専門家の知識が整理された体系的知識を吸収できる
  • 全く異なる分野の知見に触れることで、日常の課題を解決するヒントが見つかる

皆さん、おはようございます。7月に入り、いよいよ夏本番ですね。日中の日差しが厳しくなり、外回りの方はもちろん、オフィスにいても体力の消耗を感じやすい時期です。こうした暑い時期は、休日を涼しい室内で過ごすことが増えるのですが、私には今月、意識的に取り組みたいと思っていることがあります。それが「アウトプットのためのインプット」です。

中堅社員である私たちは、ある程度仕事を1人で進め、自分なりにアイデアを出して解決策を導き出せるようになっています。ただ、そのアイデアが「過去の経験の焼き直し」に過ぎないというケースは、意外と多いものです。今まで自分がやってきた仕事の枠の中でしか物事を考えられないと、そこから出てくるアイデアは、小さな変化しか起こせません。新しい風を入れなければ、部屋の空気はいつの間にか淀んでしまいます。

私自身、最近の自分を振り返ると、実務に必要な情報だけを効率よく拾うことばかりに集中し、まとまった知識や新しい視点を取り入れる時間が疎かになっていました。アウトプットを絞り出すばかりで、中身を補充できていなかったのです。これは、水を足さずにポンプだけを動かし続けているような状態かもしれません。

そこで、私は今月から、自分の専門外の分野の書籍を1冊読むことに決めました。例えば、他業界の成功事例や、一見仕事とは無関係に思える古典、最新テクノロジーの解説書など。ネットで断片的な情報をつまみ食いするのとは違い、1冊を通して読むことで、思わぬ角度から日常の課題へのヒントが見つかることがあります。

もし皆さんの中で、「最近この本が面白かった」「この著者の考え方が使えそう」といったおすすめがあれば、ぜひ休憩時間に教えてください。お互いにインプットを持ち寄って、チームとしてより良いアウトプットにつなげていけたらと思っています。暑さに負けず、今週も一緒に頑張りましょう。

以上(2026年7月作成)

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画像:Mariko Mitsuda