耐久性を測るシナリオ分析・感度分析/「設備投資の成果、チェックしてますか?」シリーズ(番外編)

1 不確実な時代だからこそ求められるシナリオ分析と感度分析

多くの経営者は、事業が計画通りに進むことを前提に、投資の効果をシミュレーションします。しかし、実際はそう計画通りにはいきません。特に売上は不確実性が高く、「予定通りに売れる」とは限りませんし、将来の数字を正確に予測することも容易ではありません。

不確実性の高い時代だからこそ、投資評価も「最も可能性が高いと考えたケース(以降「ベースケース」)」だけで判断するのでは不十分です。

売上や費用などが想定から外れた場合に対応するためにも、「シナリオ分析」や「感度分析」を活用することが重要

です。

もし計画が大きく狂ったとき、その投資は「会社を支える武器」ではなく、「会社を沈める重り」になってしまう可能性もあります。投資をギャンブルにしないためにも、様々なケースを想定し、投資の判断のよりどころとなる「数字を使った会社の守り方」を学んでいきましょう。

2 将来の不確実性を反映させた投資評価の分析手法

シナリオ分析と感度分析は、

将来の不確実性を考慮して投資の妥当性を判断するための投資評価における分析手法

です。実務では両者は同じ意味で使われることもありますが、厳密には分析の仕方が異なります。ここではそれぞれの特徴を分けて考えていきます。

これまで見てきた投資評価の代表的な4つの指標、

1.回収期間法

2.投資利益率法

3.現在価値法

4.内部利益率法

について、それぞれの指標を使う際に、シナリオ分析、感度分析をどのように取り入れるのかを見ていきましょう。どちらも、経営者が投資を実行するかどうかの意思決定をする際に役立つ手法なので、ぜひ基本的な考えを理解し、実務に活かしていただけたらと思います。

3 シナリオ分析は「複数の前提(数値)」を変えて考える

シナリオ分析とは、

売上、費用、資本コスト(投資に必要な資金の調達コスト)など、複数の前提を同時に変えて、投資結果がどう変わるかをシナリオごとに確認して投資評価を行う分析手法

です。代表的なのは、

1.ベースケース(想定しているケース)

2.楽観ケース(上振れしたケース)

3.悲観ケース(下振れしたケース)

の3つを用意する方法です。

例えば、売上が計画を上回り、費用も抑えられた場合にはどうなるのか。反対に、売上が伸びず、費用も増えた場合にはどの程度の損失が出るのか。このように複数の条件を組み合わせて考えることで、どのような状況なら投資が成立し、想定外の事態が起きた場合にどれくらい損失が出てしまうのかを数字で把握できます。

4 感度分析は「1つの前提(数値)」を変えて考える

感度分析は、

売上高の成長率や販売単価など、1つの前提だけを変えた場合に、投資評価にどのように影響を与えるかを見ていく分析手法

です。

例えば、「売上高の成長率が1%上がった場合に利益はどれくらい増えるか、投資利益率は何%変わるのか」「逆に売上高の成長率が1%下がった場合にどれだけ利益が減り、投資利益率は何%変わるのか」といった形で分析します。

このように、1つの数値を動かしてみることで、どの数値が投資結果に大きな影響を与えるのかを把握できます。つまり、注目した数値の変化が、検討する指標にどれだけ影響を与えるかの感度を分析します。

5 シナリオ分析と感度分析どちらを使うか

シナリオ分析と感度分析は、理論上は異なる分析方法ですが、実務では必ずしも明確に分けられていないケースが多いと感じます。このことに、問題があるわけではありません。中小企業の投資判断では目的に応じて両方を組み合わせるなど、その場に合った分析方法を選んで使うとよいでしょう。

シナリオ分析では、複数の前提を同時に変えて分析するため、行う人によって作る数字にかなり幅があり、設定次第ではさまざまなケースが考えられます。そこで、まずは前述した「ベースケース」「楽観ケース」「悲観ケース」の3つのシナリオに絞って考えてみましょう。

ベースケースでは、売上、費用、資本コストなどについて、「最も可能性が高い」と思う数値を設定します。楽観ケースでは事業がかなりうまく進んだベストの場合の数値を、悲観ケースでは事業がかなり厳しい状況になったワーストの場合の数値を設定します。

楽観ケースと悲観ケースで、極端なケースを想定しておくことで、それぞれの数字をどの程度にするか悩む余地を減らすことができ、シナリオを立てやすくします。また、極端なケースとベースケースがあれば、投資の全体像のイメージがつきやすくなります。

一方で、感度分析では、一つの数値に絞って、その数値のみを変化させ分析します。ここで注目したいのがKPI(重要業績評価指標)です。KPIとは、事業の業績に大きな影響を与える重要な数字のことです。

例えば、営業部門なら「販売単価」や「販売個数」、製造部門なら「歩留り率」や「機械稼動率」などがKPIに当たります。投資判断では、こうしたKPIを一つずつ動かしてみることで、「どの数字が計画を左右するのか」が把握できます。

6 事例演習:店舗の新規開設シミュレーション

それでは事例をつかってシナリオ分析と感度分析を行ってみましょう。ベースケースとなる前提条件は次の通りです。

なお、ここで掲載するシミュレーション一覧で使用されているExcelシートは、記事の末尾からダウンロードできます。

【前提条件(ベースケース)】

  • 年間売上:初年度2000万円、2年目から3年目の成長率2%、4年目・5年目は横置き
  • 売上原価率(変動費):売上の40%
  • 人件費(固定費):300万円
  • 賃借料(固定費):200万円
  • 交通費(変動費):売上の5%
  • 初期投資額(固定費):2000万円、減価償却方法は5年償却・定額法・残存価額ゼロ
  • 実効税率(変動費):30%
  • 割引キャッシュ・フロー(将来得られるお金を現在の価値)で用いる割引率:10%

ベースケースの場合のシミュレーション一覧

1)シナリオ分析のシミュレーション例

まず、シナリオ分析からやってみましょう。売上成長率と原価率を変化させる数字とし、楽観と悲観のシナリオは次のとおりとします。

シナリオ分析のケースごとの数値

なお、楽観ケースの場合のシミュレーション一覧は次の通りです。

楽観ケースの場合のシミュレーション一覧

悲観ケースの場合のシミュレーション一覧は次の通りです。悲観ケースの場合は、正味現在価値がマイナスとなってしまいます。

悲観ケースの場合のシミュレーション一覧

これにより各指標は次のようになります。

前提数値を変えたときのそれぞれの投資評価指標の変化

会社全体の財政状況や収支計画により、一概には言えませんが、上記の結果を踏まえた分析例を挙げておきます。

【分析例】

この投資は、順調に売上が伸びれば(楽観およびベースケースの場合)、約3~3年半で回収でき利益も出ます。ただし、売上が落ち込み、原価率が高まる(悲観ケースの場合)と逆に赤字になり、投資額を回収できなくなる恐れがあります。良いときより悪いときの影響の方が大きいため、実行はしつつ、毎月売上と原価率を確認し、悪化の兆しが出たらすぐ見直せる体制を整えることが大切です。

2)感度分析のシミュレーション例

次に、感度分析を行います。売上の成長率に注目して考えてみましょう。

売上成長率を3%に変えた場合の感度分析を行った場合のシミュレーション一覧は次の通りです。

売上成長率を3%に変えた感度分析を行った場合のシミュレーション一覧

上記のシミュレーションの前提(売上成長率3%)に加え、売上成長率を1%ずつ変えたときの各指標は次のようになります。売上成長率が1%変わると、投資利益率が約0.6%増減することが見てとれます。

前提数値を変えたときのそれぞれの投資評価指標の変化(感度分析)

会社全体の財政状況や収支計画により、一概には言えませんが、上記の結果を踏まえた分析例を挙げておきます。

【分析例】

売上成長率が年2%から3%に上がると、利益や投資の採算はかなり良くなります(回収の速さ・利益ともに改善)。逆に言えば、売上の伸びがわずかに計画を下回るだけで採算が悪化しやすい投資でもあるため、毎月の売上をこまめに確認しながら進めることが大切です。

7 経営現場でどう活用すべきか

中小企業の現場では、複数の項目を変化させるのは煩雑であるため、重要と考えるKPIに絞った感度分析が現実的でしょう。ただし、投資の計画段階で「この数字を下回ったら投資を続けるのは難しい」という、ワーストのシナリオを描いて最低限のラインを決めておくことも重要です。あらかじめ厳しいケースを想定し、撤退基準を持っておけば、事業が想定通りに進まなかったときにも、冷静に判断しやすくなります。

これは、「ここまで大量の時間とお金をかけたのだから、今さらやめられない」という誤った経営判断を防ぐことにもつながります。すでに投じた時間とお金は、取り戻すことができない「埋没コスト」です。投資を続けるか撤退するかを判断するときは、過去にいくら使ったかではなく、その時点から先にどれだけの収入が見込め、どれだけの支出が必要になるかを比較することが大切です。

分析は、数字を作ること自体が目的ではありません。実際の経営判断に役立ててこそ意味があります。「何を判断するための分析なのか」を意識しながら、投資を続ける場合と撤退する場合の両方を考えておきましょう。

8 シミュレーション用Excelシート

最後に、これまで解説してきたシミュレーション一覧で使用されているExcelシートをご提供します(ダウンロードしてお使いください)。Excelシートの左側(青色の背景色のセル)の前提数値を入力すると、右側のシミュレーション結果が自動で更新されます。自社で新規出店や設備投資を検討する際にも、数字を置き換えて活用してみてください。

【ダウンロード_WS:シミュレーション覧(DL対応)】

以上(2026年10月作成)

pj35182
画像:日本情報マート

経営のヒントとなる言葉(岩崎彌太郎)

「事業は必成を期し得るものを選び、一旦始めたならば百難に撓(たわ)まず勇往邁進して、必ずこれを大成しなければならぬ」(*)

出所:「日本のリーダー名語録 優れた指導者に学ぶ決断力 明治・大正・昭和」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

  • 「事業を起こそうと志すならば、成功の目算がたつものを選び、一度手をつけたら、たとえどんな困難に遭遇しても乗り越え、成功をつかみとらなくてはならない」

ということを表しています。

貧しい家に生まれながらも、幼いころから学才に恵まれていた岩崎氏は、江戸留学を経て土佐藩に戻り、藩の重臣吉田東洋(よしだとうよう)氏や後藤象二郎(ごとうしょうじろう)氏から才能を認められて藩内で頭角を現していきました。

1867年、岩崎氏は土佐藩の殖産興業組織「開成館」の長崎出張所勤務を命じられ、外国商人を相手に、最新式の武器や艦船の購入、土佐藩物産の販売に携わることとなります。また、当時、長崎を拠点として政治活動を行っていた海援隊の坂本龍馬と出会い、さまざまな面で海援隊の活動を支えました。この長崎滞在中に、岩崎氏は国際感覚を磨いて交渉術を学び、土佐藩における経済担当としての力量を高めていきました。

明治維新後、岩崎氏は土佐藩の商事を担当する九十九(つくも)商会を率いることとなり、その後、この商会を三菱商会へと改称しました。当時は、外国船が日本の海運を牛耳っており、日本の沿岸航路から日本船は締め出されていました。岩崎氏は、この現状を打破するために、外国船との競争に果敢に挑みました。

こうした中、1874年、外交問題の紛糾から、日本は台湾出兵に踏み切ることとなりました。出兵に際して、政府は英国や米国の海運会社に兵員や食糧の輸送を要請しましたが、直前になって協力を断られたため、急きょ輸送用の外国船を購入し、半官半民の企業である日本国郵便蒸気船会社に兵員や食糧の輸送を要請しました。

しかし、同社は兵員や食糧の輸送を行っている間に三菱に顧客を奪われることを恐れ、政府の要請に対して煮え切らない対応を取り続けました。このため、政府はやむを得ず岩崎氏に兵員や食糧の輸送を要請しました。

三菱にとって、台湾出兵に際しての政府の要請は、ともすると経営の危機にもつながりかねない重大な問題でした。しかし、岩崎氏は「国あっての三菱」との言葉とともに、政府の要請を受け入れることを決断しました。

岩崎氏の決断を受け、政府は計10隻の外国船を購入し、その運航を三菱に委託しました。こうして、三菱は兵員や食糧の輸送に全力を尽くし、台湾出兵における輸送任務を見事に完遂しました。

台湾出兵の成功により、三菱は政府より委託を受け、政府所有の船舶を自由に使用できるようになりました。このことにより、三菱は大きく躍進して沿岸航路の競争に復帰しました。一方、政府の信頼を失ってしまった日本国郵便蒸汽船会社は、三菱に大きく水をあけられ、1875年には解散に追い込まれることとなりました。

後に、岩崎氏は次のような言葉を遺(のこ)しています。

「人間は一生のうち、必ず一度は千載一遇の好機に遭遇するものである。しかし凡人はこれを捕へずして逸してしまふ」

人生には、一度は「千年に一回」ともいうべき大きなチャンスが訪れますが、たとえそのチャンスが訪れたとしても、普通の人はそれに気付かずに見逃してしまいがちです。しかし、常に事業の大成を狙っていた岩崎氏は、台湾出兵を千載一遇の大きなチャンスと見抜き、そのチャンスを生かすべく、大きく躍進して成功をつかんだのです。

ひとたび事業に取り組んだならば、必ず成功を期さなくてはならない。常にそうした強い意志を持ち続けることで、チャンスが訪れたときにそれを生かし、成功をつかむことができるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

いわさきやたろう(1835~1885)。土佐国(現高知県)生まれ。儒学者安積艮斎(あさかごんさい)の私塾で学ぶ。1869年、開成館(土佐藩の殖産興業組織)大阪出張所に異動。1870年、九十九(つくも)商会(開成館大阪出張所の事業を引き継ぎ、土佐藩士によって設立された私商社)社主就任。1873年、三川商会(九十九商会の後身)を三菱商会と改称(その後、三菱蒸汽船会社、郵便汽船三菱会社などに改称し、三菱財閥の源流となる。本稿では「三菱」)。

【参考文献】

「日本のリーダー名語録 優れた指導者に学ぶ決断力 明治・大正・昭和」(武田鏡村、PHP研究所、2007年4月)

「岩崎弥太郎と三菱四代」(河合敦、幻冬舎、2010年1月)

「明治の巨人岩崎弥太郎」(砂川幸雄、日本経済新聞出版社、2011年8月)

以上(2026年10月更新)

pj​15015
画像:日本情報マート

(9月景気ウォッチャー調査)景気は5カ月連続改善も、先行きに影【統計情報ダイジェスト】

2026年9月の景気現状判断DI(季節調整値:季節変動を取り除いた景気実感を示す指標)は、前月比0.6ポイント上昇の47.0となりました。景気の良し悪しの境界線となる「50」は依然として下回っているものの、5カ月連続で持ち直しの動きを見せています。

景気の現状判断DI(季節調整値)

主な項目別の動きは次の通りです。

  • 家計動向関連:46.8(前月比+1.3ポイント)
    • サービス関連(50.5/前月比+3.7ポイント)が景気の境界線である50を超え、小売関連(45.5/前月比+0.8ポイント)、飲食関連(46.7/前月比+0.5ポイント)が改善した一方、住宅関連(40.3/前月比-5.8ポイント)は大幅に低下しました。
  • 企業動向関連:47.1(前月比-1.1ポイント)
    • 製造業(47.3/前月比-1.5ポイント)、非製造業(46.9/前月比-1.1ポイント)ともに低下しました。
  • 雇用関連:49.0(前月比+0.2ポイント)

旅行やレジャー需要、一部の機械関連需要などが全体の底上げに寄与しています。一方で、物価高による家計の節約志向や、原材料価格・仕入単価の高止まりが企業の収益を圧迫しているという指摘も根強く、数字の緩やかな改善の裏で、個社ごとの収益環境には大きな格差が生じているのが実情です。

2~3カ月後を見通す景気先行き判断DI(季節調整値)は、前月比-0.9ポイントの47.4となりました。

景気の先行き判断DI(季節調整値)

主な内訳は次の通りです。

  • 家計動向関連:47.0(前月比-1.0ポイント)
    • 飲食関連が43.9(前月比-3.8ポイント)、サービス関連が48.5(前月比-2.7ポイント)、住宅関連が41.0(前月比-1.2ポイント)と低下しています。
  • 企業動向関連:47.8(前月比-1.3ポイント)
    • 製造業(47.9/前月比-1.9ポイント)、非製造業(48.1/前月比-0.7ポイント)ともに持ち直し傾向だったのが低下に転じました。
  • 雇用関連:48.4(前月比-0.2ポイント)

先行き判断DIは3分野すべてで低下しており、経営判断には一層の慎重さが求められます。

好材料としては、賃上げの定着による個人の実質購買力の改善期待や、インバウンド(訪日外国人観光客)による需要、堅調な設備投資需要が挙げられます。

しかし、リスク要因も少なくありません。最大の懸念は、依然として高水準で推移する仕入単価やエネルギーコスト、さらには深刻な人手不足に伴う人件費の上昇です。また、金融政策の動向や長期金利の上昇による金利負担への警戒、海外情勢の不確実性など、企業の財務や資金繰りに影を落とす要素も存在します。

今回の調査結果を踏まえ、中小企業が取り組むべき実践的なアプローチは次の2点です。

1.適正な価格転嫁と付加価値の再定義の徹底

コスト高が常態化する中、自社だけで負担を抱え込むことは資金繰りの悪化を招きます。自社製品・サービスの強みを改めて整理し、取引先や顧客に対して説得力のある価格改定を粘り強く進めることが不可欠です。

2.採用計画の見直しと生産性向上の同時推進

人手不足と人件費の高騰が避けられない環境下では、やみくもな人員増強ではなく、デジタルツールの活用や業務プロセスの効率化による省人化を進め、限られたリソースで収益を最大化する体制構築が急務となります。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■内閣府「令和8年9月調査(令和8年10月8日公表):景気ウォッチャー調査」■
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2026/1008watcher/menu.html

以上(2026年10月作成)

pj10214
画像:ChatGPT

(国語に関する世論調査)世代間ギャップを強みに変える! 「言葉のズレ」の正しい処方箋【統計情報ダイジェスト】

「最近の若い社員は、上司の呼び方や言葉遣いがどこかフランクで気になる……」そんな経営者の違和感は、単なる気のせいではありません。文化庁の令和7年度「国語に関する世論調査」によると、私たちが日常何気なく使っている言葉の規範や感覚には、世代間で確かなズレが生じています。少子高齢化が進み、多様な世代が協働する中小企業の現場において、この言葉の微細な変化を把握し、適切に対処することは、採用や定着率を左右する重要なマネジメント課題となっています。

この言語ギャップは、実際の社内コミュニケーションや若手育成において少なからぬ影響を及ぼしています。象徴的なのが、会社の課長に対する部下の呼び掛けに関する調査結果です。課長に部下が呼び掛けるとき望ましい呼び方は、全体では「課長」が62.9%と多数派を占める一方、20代では「名字に『さん』を付ける」が42.5%に上り、「課長」(46.8%)に肉薄しています。こうした社内での肩書や敬称に対する感覚のズレを「マナー違反だ」と頭ごなしに否定してしまうと、若手社員は萎縮し、心理的安全性が損なわれます。その結果、報連相の頻度が低下し、チームの連携不足や離職リスクを高める原因になりかねません。

望ましい呼び方(課長に部下が呼び掛けるとき)(年齢別)

さらに、今回の調査で特に注目すべきなのが、ビジネスや日常で使われる具体的な表現に対する世代間の受容度の違いです。

「使うことがある」割合(年齢別)

例えば、一言だけで話が通じるような気心が知れている「ツーカーの(仲)」という言葉を使うことがある人は、70歳以上では66.8%なのに対し、20代ではわずか7.0%となっています。

また、なるべく早く、可能な限り急いでという意味で「なるはやで」という言葉を使うことがある人は、20代では76.4%なのに対し、70歳以上では7.2%となっています。

若手層は効率的でスピード感のある略語を自然体で取り入れる一方、ベテラン層が長年慣れ親しんできた阿吽の呼吸的な表現は、デジタルネイティブ世代にはもはや「伝わらない言葉」になりつつあるのです。

こうした変化にどう向き合うべきでしょうか。単なる「言葉の乱れ」や「若者の言葉遣い・礼儀の低下」と嘆くのではなく、「コミュニケーションの効率化・フラット化へのニーズ」と捉え直すことが肝要です。

硬直化した形式的な呼称にこだわるよりも、心理的距離感を縮めるオープンな対話を評価する社内風土をつくることは、若手人材のエンゲージメント向上や採用ブランディングに直結します。もちろん、顧客折衝や対外的なビジネスシーンでは従来の敬語やマナーが求められるため、社内と社外で使い分ける「TPOに応じた言語運用能力」を、叱責ではなく丁寧な育成プロセスを通じて伝えるアプローチが求められます。

言葉の変化は、時代を映す鏡であり、社会の価値観が変容している証拠です。その変化をしなやかに受け入れ、世代間の架け橋となる柔軟な組織文化を構築することこそ、企業の持続的成長と変化への対応力を高めるカギとなります。言葉のズレを乗り越えた先にあるチームワークこそが、これからの不確実な時代を切り拓く中小企業の最大の武器となるのです。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■文化庁「国語に関する世論調査」■
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/

以上(2026年10月作成)

pj10215
画像:ChatGPT

(東京商工リサーチ全国企業倒産状況2026年度上半期)中小企業の生存戦略とは?【統計情報ダイジェスト】

経済活動の正常化が進む一方で、物価高騰や深刻な人手不足は、日本経済の基盤を支える中小企業にとって極めて重い経営負担となっています。東京商工リサーチが発表した最新の調査データによると、2026年度上半期の企業倒産件数は高水準での増加傾向が続いており、多くの企業が収益確保や資金繰りに苦慮している実態が浮き彫りになりました。

企業倒産 上半期推移

経営資源が限られる中小企業がこの厳しいマクロ環境を生き抜き、持続的な成長を実現するためには、客観的なデータを直視し、早急に「守り」と「攻め」の両面から経営戦略を見直す必要があります。

東京商工リサーチが発表した「2026年度上半期(4~9月)の全国企業倒産動向」によると、負債額1000万円以上の全国企業倒産件数は5373件(前年同期比3.8%増)となりました。特筆すべきは、これが5年連続で前年同期を上回っており、2013年度に次ぐ非常に高い水準を記録している点です。また、倒産件数だけでなく、負債総額についても8561億6900万円(前年同期比23.5%増)と大幅な増加に転じています。

2026年度上半期(4-9月)産業別倒産状況

このマクロ環境における大きな特徴は、外的なコスト負担の増大や人材確保の難しさに耐えきれなくなった企業が次々と脱落する「コストインフレ型の淘汰フェーズ」が本格化していることです。かつてコロナ禍の資金繰りを支えた各種支援策の効果が薄れる中、売上高の回復がコスト上昇のスピードに追いつかない企業が限界を迎えています。さらに、金融市場が「金利のある世界」へとシフトする中で、金融機関の姿勢にも変化が見られます。これまで返済猶予などで支えられてきた企業に対しても、今後は単なる延命ではなく、将来性や事業性をより厳しく見極めたうえでの選別が進む可能性が高まっています。経済全体が緩やかな賃上げや回復基調にある一方で、恩恵を十分に受けられない小・零細企業との二極化が深刻な課題となっています。

現在の経営環境において、中小企業を最も深く蝕んでいるのは、「物価高・コスト高」「人手不足と賃上げ疲れ」「価格転嫁の遅れ」という3つの構造的リスクです。これらは単独で発生するのではなく、互いに連鎖し合って企業の財務体力を容赦なく削り取っています。

1.物価高・コスト高

世界的な資源価格の動向や円安基調を背景に、原材料費、電力やガスなどのエネルギーコスト、さらに物流費など、企業活動に不可欠なあらゆるコストが高騰しています。売上高がコロナ前並み、あるいはそれ以上に回復している企業であっても、原価率の上昇によって営業利益が大きく圧迫され、手元に残るキャッシュが減少する「売上増・利益減」のジレンマに陥るケースが後を絶ちません。

2.人手不足と賃上げ疲れ

労働力人口の減少が続く中、人材確保のための採用コストや給与水準は上昇の一途をたどっています。東京商工リサーチの調査でも、「人手不足」を背景とした倒産が過去最多(240件)を更新しており、その深刻さが数字に表れています。優秀な人材の流出を防ぐために賃上げを余儀なくされるものの、それが生産性の向上や売上拡大に直結していない企業にとって、相次ぐ賃上げは財務基盤を直撃します。実施したくてもできない、あるいは無理に実施した結果として資金繰りが破綻するという痛ましい構図が存在します。

3.価格転嫁の遅れ

取引先との関係悪化や顧客離れを恐れるあまり、高騰した原材料費や人件費分を販売価格に十分反映できていない中小企業が非常に多く存在します。仕入先や外注費の値上げを受け入れる一方で、自社の販売価格は据え置いたままにした結果、コスト増のしわ寄せが自社の利益を削る形で跳ね返ります。この価格転嫁の遅れが、致命的な資金不足を招く最大の要因です。

倒産の傾向には規模や業種ごとに明確な特徴が現れています。規模別で特に注目すべきは、資本金1000万円未満の小・零細企業が倒産全体の6割を超える圧倒的な割合を占めている点です。大企業のような潤沢な内部留保や資金調達力を持たない小規模事業者にとって、数カ月の赤字や突発的なコスト増、あるいは一時的な資金の目詰まりは直ちに事業継続の断念を意味します。

また、産業別の動向を見ると、10産業のうち6産業で前年同期を上回るなど、幅広い分野に倒産の波が広がっています。例えば、長年にわたり高水準で推移してきた建設業では、資材価格の高騰に加え、深刻な人手不足や時間外労働の規制強化が重なり、受注を確保していながらも採算割れや工期遅延によって経営に行き詰まるケースが見られます。一方で、建設業全体としては前年同期を下回る動きも見られたものの、依然として1000件台の高水準が続いており、製造業や運輸業などを含めて、各産業がそれぞれ固有の課題を抱えながら苦しい運営を強いられています。このように、特定の業種にとどまらず、地域経済や日常生活に密着した身近な分野にまで淘汰の波が深く浸透しているのが現状です。

この過酷なマクロ環境を生き抜き、持続可能な企業へと生まれ変わるために、中小企業が早急に実行すべき「攻めと守りの生存戦略」として、次の3つの具体的な施策を提示します。

1.自社商品の価値再定義と、誠実かつ適切な価格転嫁の徹底

「値上げをしたら顧客がすべて離れてしまう」という漠然とした恐怖心を一度捨て去る必要があります。自社が提供している商品やサービスの真の価値、他社にはない強みを改めて棚卸しし、取引先や顧客に対してその必要性を論理的かつ誠実に説明して適正な価格交渉を行うことが不可欠です。サプライチェーン全体の持続可能性を守るためにも、適正な利益を確保する価格設定は避けて通れない経営課題です。

2.省力化・生産性向上のためのデジタルツール・IT活用の推進

深刻な人手不足と人件費の高騰に対抗するためには、限られた人員でこれまで以上の成果を生み出す業務効率化が絶対条件となります。クラウド型の業務管理システムやチャットツール、定型業務を自動化するソフトウェアなどを積極的に導入し、人手による作業を最小限に抑えましょう。各種補助金なども活用しながら計画的なIT投資を行い、浮いたリソースを付加価値の高いコア業務へとシフトさせることが求められます。

3.財務体質の強化と資金繰りの早期見直し

金融環境の変化を見据え、手元流動性を厚めに確保し、資金繰り表を用いた精緻なキャッシュフロー予測を行う「守り」の体制づくりが要となります。金融機関との日頃からのオープンな情報共有を行い、自社の事業計画を明確に示すことで、信頼関係に基づいた安定的な資金調達環境を維持することが企業の寿命を左右します。

東京商工リサーチの最新データが示すように、2026年度上半期の企業倒産動向は、物価高や人手不足が中小企業の経営に深刻な影を落としている現実を如実に物語っています。しかし、この厳しい環境のなかであっても、変化を直視して自らのビジネスモデルや財務体質を柔軟に変革し、高収益体質へと生まれ変わる企業は確実に存在します。

経営者に求められるのは、外的要因の変化を傍観することなく、自社の強みを再定義したうえで「攻めと守りの経営」を力強く実践することです。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■東京商工リサーチ 全国企業倒産状況 2026年度上半期(4-9月)■
https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1203308_1610.html

以上(2026年10月作成)

pj10216
画像:ChatGPT

「100人でみた日本」から読み解く! 人手不足・健康・両立支援の経営戦略【統計情報ダイジェスト】

厚生労働省は毎年「厚生労働白書」を公表する際、そのダイジェスト版の広報資料「100人でみた日本」「日本の1日」を併せて公表しています。

日本の人口は、1日当たり2516人のペースで減少しています。

日本の1日(人口について)

総人口を100人とすると、100人中65歳以上が29.4人、75歳以上も17.3人を占める超高齢社会となっています。

人口100人でみた日本(人口について)

こうした急速な人口減少と高齢化の波は、中小企業の経営基盤、特に採用や事業継続において避けて通れない構造的課題を突きつけています。経営者は、この大きなマクロの変化を正しく認識し、自社の舵取りを見直す時期にきています。

労働現場の実態に目を向けると、100人中55.4人が仕事に就いており、そのうち雇われている人は50.2人(男性26.8人、女性23.4人)です。雇用形態の内訳を見ると、正社員が30.1人を占める一方、パート(8.4人)やアルバイト(3.9人)、契約社員・嘱託(3.1人)、派遣(1.3人)など多様化が進んでおり、週35時間未満の短時間で働く人が19.6人に上ります。

人口100人でみた日本(労働について)

会社の健康診断で「有所見」となる人が100人中29.4人に達し、12歳以上の44.8人が日常生活で悩みやストレスを感じている現実があります。

人口100人でみた日本(健康・医療について)

労働相談件数は1日当たり3293件にのぼり、仕事中のけがなどの労働災害も1日当たり371人となっています。

日本の1日(労働について)

これは、現場の労働環境や心身の健康維持において、見過ごせないリスクが蓄積していることを示しています。

こうしたマクロなデータを自社の組織づくりにどう活かすべきでしょうか。例えば、6歳未満の子どもを持つ親が育児や家事に費やす時間は、夫が1日当たり1時間54分であるのに対し、妻は7時間28分と大きな偏りが見られます。また、介護サービスを受けている人が100人中4.5人存在します。仕事をしながら、育児や親の介護に直面する従業員も少なくありません。

日本の1日(育児について)

人口100人でみた日本(福祉・年金について)

経営者やマネジメント層は、旧来の画一的な長時間労働モデルや、個人の自己責任に依存したマネジメントから脱却しなければなりません。短時間勤務や多様な雇用形態を選択できる柔軟な労務環境の整備に加え、日々の対話を重視するマネジメントへ舵を切ることが、優秀な人材の離職を防ぎ、定着率を高める決定的なカギとなります。

人口減少や少子高齢化は避けられない現実ですが、それをただの経営リスクとして悲観する必要はありません。むしろ、自社の組織風土や働き方を現代の社会構造に合わせてアップデートする絶好の機会と捉えるべきです。一人ひとりの社員の健康や、育児・介護といったライフステージに寄り添う温かみのある経営体制こそが、これからの縮小社会を生き抜く中小企業の最大の強みとなり、持続的な成長を支える原動力となります。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■厚生労働省「令和8年版厚生労働白書 これからの医療・介護・福祉の現場で働くことを考える (100人でみた日本、日本の1日)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/26/26-3.html

以上(2026年10月作成)

pj10217
画像:ChatGPT

【高齢者雇用】法改正で変わる高齢社員の働き方、どうマネジメントする?

1 法改正の動向を押さえつつ、自社の方針を決めよう

日本の65歳以上人口は、1950年には総人口の5%にも満たなかったものの、その後はどんどん増加し、2025年10月時点では29.4%に達しています(内閣府「令和8年版高齢社会白書」)。

こうした少子高齢化の進行により、多くの会社が深刻な人手不足に直面しています。実際、製造業や建設業、運輸業などではその傾向が顕著で、長年の経験や技術を持つベテラン人材は、単なる「戦力の穴埋め」ではなく、若手の育成や品質の安定に欠かせない存在になっています。

会社にとって「高齢社員をどのように雇用し続けるか」は、今や避けて通れない経営課題。特に2025年・2026年は高年齢者雇用・給付制度において重要な節目を迎えています。いずれもすでに施行済の内容ですが、押さえておきたいものは次の4つです。

1.高年齢者雇用確保措置の経過措置が終了(2025年3月31日)

2.高年齢雇用継続給付の縮小(2025年4月1日)

3.在職老齢年金の支給停止調整額の見直し(2026年4月1日)

4.高齢社員の労災防止措置の実施が努力義務化(2026年4月1日)

これらの制度改正は相互に影響し合うため、就業規則・処遇制度の見直しや社員への説明を怠ると、誤解や不満がトラブルに直結するリスクがあります。まずは4つの改正点について、詳しく見ていきましょう。

2 高年齢者雇用確保措置の経過措置が終了(2025年3月31日)

会社は高年齢者雇用安定法により、社員を65歳まで雇用するために

  • 定年の引き上げ(65歳まで)
  • 定年制の廃止
  • 継続雇用制度(65歳まで)の導入

のいずれかの措置を実施する義務があります。このうち、継続雇用制度(65歳まで)については、以前は労使協定(2012年度以前に締結されたものに限る)により、例えば、「希望者のうち62歳以上のみを継続雇用の対象とする」といった基準を設けることが認められていました。

しかし、2025年3月31日をもってこの経過措置は終了し、

定年後も働くことを希望する社員は全員、継続雇用(65歳まで)の対象

になりました。

経過措置の流れ

すでに施行済の内容ですが、過去に経過措置を利用していて就業規則等に「希望者のうち62歳以上のみを継続雇用の対象とする」などの文言が残っている場合、速やかに「希望者全員を65歳まで雇用する」といった内容に修正しなければなりません。

ただし、例外として「心身の故障がある者」「勤務状況が著しく不良な者」など、合理的な理由により、65歳までの雇用が難しい人を就業規則等に基づいて対象から除くことは可能です。

3 高年齢雇用継続給付の縮小(2025年4月1日)

高年齢雇用継続給付とは、

賃金が「60歳時点の75%未満」に低下した状態で働く場合に支給される雇用保険給付

です。雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の社員が対象です。

社員を定年後に再雇用すると、定年前と比べ賃金がガクッと下がることがあります。こうした場合に、社員の仕事へのモチベーションが下がらないよう、高年齢雇用継続給付が減った分の賃金を補填するわけです。

この高年齢雇用継続給付は、以前は賃金低下率に応じて最大15%が支給されていましたが、

2025年4月1日以降に60歳になった新規受給者からは、最大給付率が「10%」に引き下げ

られています(2025年3月31日以前に60歳になった人の給付率は最大15%のまま。なお、将来的には給付自体の廃止が予定されています)。

高年齢雇用継続給付のイメージ(2025年4月~)

例えば、60歳時点の賃金が月額40万円、再雇用後が月額24万円(60歳時点の60%)の場合、

  • 改正前の給付額:3.6万円給付(24万円×15%)
  • 改正後の給付額:2.4万円給付(24万円×10%)

となり、月額1.2万円、年額14.4万円もの差が出てしまいます。

高年齢雇用継続給付の縮小により、60歳以降の社員は従来よりも実質収入が下がる可能性があります。社員のモチベーション低下を防ぐためには、会社としては「給付ありき」の賃金設計を避け、職務給・役割給の導入や評価制度の見直しなどを検討する必要があります。

4 在職老齢年金の支給停止調整額の見直し(2026年4月1日)

在職老齢年金とは、

年金を受け取りながら働くと、賃金が一定以上の場合、年金の一部がカットされる制度

です。厚生年金保険に加入しながら年金をもらう60歳以上の社員が対象で、賃金(ボーナスを含む)と年金の合計額が「支給停止調整額」というボーダーラインを超えると、十分な収入があるとみなされ、老齢年金の一部または全額が支給停止となる仕組みです。

ただ、「せっかく働いても年金が減ってしまうのは困る」という声が多く寄せられているのに加え、近年の賃金上昇の影響もあって、支給停止調整額は段階的に引き上げられています。

2026年4月1日からは、支給停止調整額は「51万円→62万円」

になりました。簡単に言うと、

  • 賃金(ボーナスを含む年収の1/12)と、老齢厚生年金の合計額が月62万円以下の場合、年金は全額支給される
  • 合計額が月62万円を超える場合、超えた分の1/2の額が年金から差し引かれる

という仕組みになっています。なお、支給停止を受けるのは年金のうち老齢厚生年金(厚生年金保険)だけで、老齢基礎年金(国民年金)は対象になりません。具体的には次のようなイメージです(図表3の「50万円」は2024年度の金額です)。

在職老齢年金の見直し(2026年4月~)

5 高齢社員の労災防止措置の実施が努力義務化(2026年4月1日)

現在、日本では労働者の高齢化が急速に進んでおり、さらに高齢社員が労災に遭った場合、重症化や長期休業の傾向が顕著であることが指摘されています。こうした状況から、

2026年4月1日からは、高齢社員の労災防止措置として「高齢社員の特性に配慮した作業環境の改善」「作業の管理その他の必要な措置」を実施することが努力義務化

されました。措置の内容としては、「高年齢者の労働災害防止のための指針」により、次のような内容が示されています。

高齢社員の労災防止措置(努力義務)

6 これからの高齢者雇用をどう考える?

制度改正の内容を踏まえた上で、企業は「高齢社員をどのような形で雇い続けるか」という方針を検討する必要があります。代表的な視点をいくつか紹介します。

1)70歳までの雇用機会をどう確保するか

高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保は義務ですが、70歳までは「努力義務」とされています。とはいえ、単なる「努力」ではなく、実際に具体的な措置を検討・導入することが求められています。例えば、

  • 定年を70歳に延長する
  • 継続雇用制度の対象を70歳まで広げる
  • グループ会社や他社での再就職を支援する
  • フリーランスや業務委託での就業機会を設ける

などの方法が考えられます。70歳までの就業機会をどう設計するかは、今後の人材戦略に直結する大きなテーマです。

2)高齢社員の待遇はこのままでよいか

定年後の社員を再雇用する場合、賃金は定年前よりも下がるのが一般的ですが、

「パートや嘱託だから」というだけで賃金を下げるのは、同一労働同一賃金違反

です。仕事内容や役職、労働時間、責任、ノルマなどが定年前とどう変わるのかを考慮した上で、待遇を決めるようにしないといけません。

特に、2025年4月1日以降は高年齢雇用継続給付が新規受給者から縮小されているため、「給付で差額を補う」従来型の設計では社員の不満が残りやすくなります。今後は、職務や責任に応じた合理的な賃金制度へ移行し、処遇に納得感を持たせる人事制度を整えることが重要です。

在職老齢年金にも注意しましょう。法改正でボーダーライン(支給停止調整額)が段階的に引き上げられているとはいえ、高所得であればあるほど老齢年金のカット幅が大きくなるのは変わりません。カットされた分の年金は退職後も戻ってきませんから、賃金設計を考える際は確認が必要です。

3)シニア労災をどう防ぐか?

厚生労働省「労働災害発生状況」によると、2025年の労働災害による休業4日以上の死傷者のうち、60歳以上の割合は31.3%に上ります。直近5年間の動向を見ても、全年齢に占める「シニア労災」の割合は徐々に上昇してきています。

シニア労災の状況

高齢社員の多くは、「自分はまだ若い」と思っているケースが少なくないので、健康診断や体力テストで自分の体の状態を正しく理解してもらうことが大切です。また、時短勤務やフレックスタイム制、在宅勤務制度、あるいは労働時間の枠にとらわれないフリーランスなど、加齢に合わせて自分のペースで稼働できる働き方を提案してみるのもよいでしょう。

以上(2026年10月更新)

pj00718
画像:ChatGPT

【著者紹介】

三原明日香(みはら あすか)

著者近影

東京都文京区在住の社会保険労務士。長年行政からの委託で町工場の調査やレポート記事を執筆してきた経験を活かし、小規模な製造業中心にサポートしている。フリーライターとしても15年以上活動中。

【朝礼】「聞き上手」は話を聞かない ― 傾聴の秋に考える”間”の効能

【ポイント】

  • 聞き上手な人ほど、話す量ではなく「間」の使い方がうまい
  • 沈黙を怖がって言葉をかぶせると、相手は考えをまとめる機会を奪われる
  • 相手が話し終えて3秒待つことを、今月から意識してみる

おはようございます。読書の秋、芸術の秋とよく言われますが、今日は「傾聴の秋」ということで、人の話を聞く姿勢について少しお話ししたいと思います。皆さんの周りに、「この人に相談すると、なぜか話しやすいな」と感じる人はいませんか。そういう人を思い浮かべると、実はよくしゃべる人よりも、口数が少なく、静かに聞いてくれる人であることが多いのではないでしょうか。

私たちは「聞き上手」というと、相づちが上手だったり、質問が的確だったりすることをイメージしがちです。もちろんそれも大切ですが、実はそれ以上に重要なのが「間」、つまり沈黙の使い方だといわれています。

人は誰かに何かを話すとき、頭の中で考えを整理しながら言葉を選んでいます。特に、悩みごとや込み入った相談ほど、話の途中で言葉に詰まったり、少し黙って考え込んだりする瞬間があります。このとき、聞き手が「気まずいから」と沈黙を埋めるように話しかけたり、先回りして「それってつまりこういうことですよね」と結論を急いだりすると、相手は自分の考えを最後まで言語化する機会を失ってしまいます。

これは、私たち自身にも心当たりがあるのではないでしょうか。後輩や部下から相談を受けたとき、早く答えを出してあげたい、力になりたいという気持ちから、つい相手の話を遮って自分の意見やアドバイスを挟んでしまう。もちろん、良かれと思ってなのですが、相手からすると「最後まで聞いてもらえなかった」という印象だけが残ってしまうこともあります。

そこで、ぜひ試していただきたいのが、相手が話し終えたと思ってもすぐに言葉を返さず、「3秒だけ待ってみる」ということです。たった3秒ですが、この間があることで、相手は「もう少し付け加えよう」と考えを深めたり、聞き手側も相手の言葉を咀嚼する余裕が生まれたりします。沈黙は気まずいものではなく、相手への信頼の表れです。「あなたの話をちゃんと受け止めていますよ」というメッセージにもなります。話す技術よりも「待つ」技術を意識して、周囲とのコミュニケーションを見つめ直してみましょう。

以上

pj17259
画像:Mariko Mitsuda

用がないのに「早出」する社員でも賃金は支払わないとダメ?

1 「業務外の早出」を放っておいたら、困った事態に?

ある朝、A社長がいつもより早く会社に来て仕事をしていると、まだ始業前だというのに、社員のBさんとCさんが出社してきました。驚いたA社長が声をかけると、2人は照れくさそうにこう答えました。

A社長「2人とも、ずいぶん早いね。始業は9時からだよ? 何か急ぎの用事でもあるのかい?」

Bさん「いえ、実は通勤ラッシュが少し苦手で……」

Cさん「最近、朝早く目が覚めてしまうもので、会社で読書でもしようかなと……」

特に用事がなくても、朝早くから出勤してくる社員は意外と多いものです。少しくらいなら問題ありませんが、あまり行き過ぎると、次のような困りごとが生じてしまう恐れがあります。

  • 早出のタイミングで勤怠を打刻すると、その分の賃金を支払わなければならなくなる
  • 始業前に万が一事故などが起きても、会社としてすぐには対応できない
  • 朝から空調設備を稼働させることになり、その分コストがかさんでしまう

一方で、社員にとっては「通勤ラッシュを避けられる」「朝の時間を自己啓発に充てられる」「(夏場は)涼しい時間帯に作業できる」といったメリットがあるのも事実です。そう考えると、

労務管理上のポイントをきちんと押さえたうえで、業務外の早出を認めてあげる

という選択肢も、十分に考えられるでしょう。

2 押さえておきたいのは「労働時間管理」と「安全管理」

業務外の早出を認めるかどうかを考える際に、まず押さえておきたいポイントは次の2つです。

1)労働時間管理:働いていない時間には、賃金を支払う必要はありません

業務外の早出に関しては、

基本的には労働時間には当たらず、賃金を支払う義務もありません。

これは、「ノーワーク・ノーペイの原則(働いていない時間には給料が発生しないという考え方)」にもとづくものです。ただし、完全月給制(1カ月単位で計算し、労働時間にかかわらず定額の賃金を支給する仕組み)のような例外もありますので、自社の給与体系と照らし合わせて確認しておくと安心です。

2)安全管理:業務外の早出でも、労災が認められることがあります

早出中に起きた事故でも、次のようなケースでは労災と認められる可能性があります。

  • 業務災害:業務にあたっていなくても、会社の施設や設備が原因で事故が起きた場合
  • 通勤災害:出勤日に、いつもより早く通勤している途中で事故が起きた場合

さらに、会社側に落ち度があった場合には、「社員の安全管理を怠った(安全配慮義務違反)」として行政指導の対象になったり、けがをした社員から損害賠償を求められたりするリスクもありますので、注意が必要です。

3 カギとなるのは、ルールを作って社員にしっかり伝えること

業務外の早出を認める場合には、会社がルールをはっきりと定め、社員にきちんと守ってもらう必要があります。これから紹介するようなルールを就業規則などに明文化し、社員にしっかりと周知していきましょう。

1)「事前申請」のルールで、早出をきちんと把握・区別しましょう

早出を希望する社員には、

理由を問わず「事前申請」をしてもらう

ようにしましょう(社員が早出を希望するときは、前日までに申請してもらうなど)。

その際、申請書(紙)や申請フォーム(Web)に「業務上の早出」「業務外の早出」のチェック欄を用意しておき、早出の時間については

  • 「業務上の早出」であれば、労働時間としてカウントする(賃金を支払う)
  • 「業務外の早出」であれば、労働時間としてカウントしない(賃金は支払わない)

というように、申請内容に応じて取り扱いを分けるとよいでしょう。

ただ、社員の中には、本当は業務外の早出なのに、業務上の早出だと偽って申請し、賃金を多くもらおうとするケースがあるかもしれません。その防止策として

業務上の早出をする場合には、「申請の際に業務内容もあわせて記載してもらう」「上司が成果物を確認する」

といった対応も必要になってくるでしょう。逆に、本当は業務上の早出なのに、「仕事が遅れていることを上司に知られたくない」「会社に余計な負担をかけたくない」といった理由から、業務外の早出として申請してしまう社員もいるかもしれません。こうした社員がいないかどうか、定期的に実態を確認してみることも大切です。

併せて勤怠管理システムについても、早出の時間が自動的に労働時間へ含まれてしまわないよう、設定をよく確認しておく必要があります。

2)「時差出勤制度」で、コストと柔軟性を両立させましょう

業務外の早出をする社員が増えると、社内の照明や冷暖房にかかる水道光熱費もかさんでしまいます。そこで、「時差出勤制度」の導入も検討してみるとよいでしょう。

時差出勤制度とは、所定労働時間を変えずに、始業・終業の時刻だけを変更するしくみ

です。例えば、1日の所定労働時間が8時間、休憩が1時間の社員であれば、始業・終業時刻だけを「9時始業、18時終業」から「8時始業、17時終業」に変更するようなイメージです。所定労働時間は8時間のまま変わりませんので、水道光熱費の問題も最小限に抑えることができます。なお、時差出勤制度を導入する際は、就業規則の変更・届け出が必要になりますので、忘れないようにしましょう。

さらに柔軟な制度を目指すのであれば、社員自身に始業・終業の時刻を管理してもらう「フレックスタイム制」を導入するのもひとつの方法です。ただし、「導入の要件が細かい」「社員が制度をきちんと理解し、適切に運用することが求められる」「社員の稼働する時間帯が時差出勤制度以上にばらつきやすい」といった注意点もありますので、押さえておきましょう。

3)危険な場所には、なるべく立ち入らせないようにしましょう

始業時刻前は、どうしても安全管理が手薄になりがちで、建設業や製造業では早出した社員が事故を起こしてしまうリスクが高まります(例えば、上司の目が届かないところで作業場に立ち入り、けがをしてしまうといったケースです)。

そこで、業務外の早出をする社員については、

事務室や休憩室など、安全な「待機場所」を決めておき、作業場には立ち入らせない

ようにルール化するとよいでしょう。出社してから始業までの時間は待機場所で過ごしてもらい、作業場などには立ち入らないよう、しっかりと伝えておくことが大切です。待機場所を決めることが難しい場合には、社員が行動してよい範囲をあらかじめ厳格に決めておくようにしましょう。

この他、早出のときの私物の持ち込みや、設備の利用(Wi-Fi、飲食など)に関するルールも、安全管理や情報管理の観点から整えておく必要があります。

4)場合によっては、早出そのものを禁止することも考えましょう

例えば、荒天や災害の際には、社員が「早めに出社しておこう」と考えることがありますが、それによって事故に遭ってしまうと、安全配慮義務違反として会社が責任を問われることもあります。ですから、

防災気象情報などの内容に応じて、社員に自宅待機を指示する(早出そのものを禁止する)

といった対応も必要になってくるでしょう。

以上(2026年10月更新)

pj00681
画像:SunnySide-Adobe Stock

退職金制度、このままで大丈夫? 制度の方向性は「廃止or変更」

1 退職金制度の導入率は10年間で14.7ポイント低下

中小企業の退職金制度の導入率は、2024年時点で64.2%です。2014年は78.9%だったので、10年間で14.7ポイント低下しました(東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」)。

退職金制度の導入率の推移と退職金制度の種類の割合(%)

退職金制度には、一時金で支給する「退職一時金」、年金形式で支給する「退職年金(企業年金)」があります。中小企業の76.1%は退職一時金のみの導入で、基本的には長く働くほど金額が増える仕組みになっています。

ただ、最近は定年まで同じ会社で働き続ける人が減ってきた関係で、従来の退職金制度が実情に合わなくなってきている面は否定できません。とはいえ、経営者としては「従業員の頑張りに、何らかの形で報いたい」という思いもあるでしょう。

そこで、この記事では、退職金制度の見直しの方向性として、

1.退職金制度の廃止(制度を廃止して賃金に上乗せするなど)

2.退職金制度の変更(支払いの負担が少ない制度などに移行する)

の2つを紹介します。

2 退職金制度の廃止の方向性

1)退職金前払い制度

退職金制度を廃止して、その分を賃金に上乗せする方法です。次のように、「会社に勤め続けるか分からないから、それなら賃金が増えたほうがよい」と考える社員に寄り添ったものになります。

また、「今の収入を増やして運用に回したい」と考えている従業員がいれば、そのニーズに対応できます。

退職金前払い制度の背景にある社員と経営者の想い

常用雇用の社員1人1カ月当たりの労働費用(社員を雇用することで発生する費用)を見てみましょう。現金給与額(賃金)と退職給付等の費用(退職金)の関係は次のようになっています。

常用雇用の社員1人1カ月当たりの労働費用

退職給付等の費用を現金給与額に回せば、他社を上回る賃金水準にすることもできるかもしれません。ただし、次のような注意点があります。

  • 賃金の上げ幅によっては、社会保険の標準報酬月額(月例賃金を一定の金額幅で区分したもの)が上がり、社員と会社の社会保険料負担が増える
  • 退職一時金には「退職所得控除」、退職年金には「公的年金等控除」という非課税枠が設けられているが、現金給与として前払いする場合、その分の金額は「給与所得」として課税対象になる(手取りがさほど増えない可能性がある)
  • 賃金に上乗せした分は、時間外労働や休日労働の割増賃金(残業代)の算定基礎にも含まれるため、残業代の単価も上がる(割増賃金の基礎から除外できるのは、家族手当・通勤手当・住宅手当など法令で限定された7種類の賃金のみ)

退職金制度を完全に廃止することで、対外的なアピールポイントが下がる

なお、退職金制度の廃止や減額は、社員にとって労働条件の「不利益変更」に当たります。原則として社員一人ひとりの合意が必要で、合意を得ずに就業規則(退職金規程)の変更だけで進める場合は、変更の必要性、社員が受ける不利益の程度、賃金への上乗せなどの代償措置、労働組合等との交渉の経緯などから見て「合理的」と認められることが条件になります。

少なくとも、廃止時点までに積み上がった退職金相当額は保全する経過措置を設けた上で、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見書を添えて変更後の就業規則を労働基準監督署に届け出(常時10人以上の社員を使用する場合)、社員に周知しましょう。

2)iDeCo+(イデコプラス)

iDeCo(イデコ)とは、社員が自分で掛金を拠出して運用し、60歳以降に受け取る個人型確定拠出年金です。このiDeCoの制度の中に、

拠出限度額の範囲内(社員の掛金と会社の掛金の合計で0.5万円以上、2.3万円以下)で、iDeCoに加入する社員の掛金に追加して、会社が掛金を拠出できる「iDeCo+(イデコプラス)」

という制度があります(正式名は「中小事業主掛金納付制度」)。

会社が拠出した掛金は全額損金に算入されます。つまり、

給与扱いにならないため、標準報酬月額に影響せず、社会保険料も増えない

ということです。また、個人の運用をサポートする制度なので、通常の退職金制度より事務負担が軽くなります。

ただし、次の点に注意が必要です。

  • 対象は、社員(厚生年金の被保険者)が300人以下で、企業型確定拠出年金(企業型DC)、確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金を実施していない中小企業に限定される
  • 導入するには、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の同意が必要になる
  • 会社が、掛金(社員拠出分と会社拠出分)をまとめて実施機関に納付する必要がある(社員拠出分の掛金は、給与天引き)

なお、iDeCoについて2点、制度改正があります。現行のルールでは、会社員(国民年金の第2号被保険者)の場合、iDeCoに加入できるのが65歳未満となっていますが、

2026年12月1日から、加入可能年齢が70歳未満に引き上げ

られることが決まっています。また、同じく

2026年12月1日から、拠出限度額が2.3万円から6.2万円

に引き上げられます。

いずれも2026年12月分の掛金(2027年1月引落し分)から反映されます。iDeCo+の掛金合計の上限(2.3万円)もこれに合わせて引き上げられる予定で、国民年金基金連合会では2026年7月から、事業主掛金を増額したい会社向けの事前受付を始めています。

■厚生労働省「2025年の制度改正(確定拠出年金)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html
■iDeCo公式サイト「お知らせ」■
https://www.ideco-koushiki.jp/news/

iDeCo+を活用することで、社内の退職金制度を廃止した後も、社員への将来に向けた補助を継続させることが可能となります。また、iDeCo+を導入していることは採用面などにおいて、自社アピールに利用することができます。

3 退職金制度の変更の方向性

中小企業が導入できる退職金制度には次のようなものがあります。それぞれ特徴があるので、支払いの負担などを考慮して、自社に合ったものを選定しましょう。

退職金制度の主な種類

退職金制度の選択肢は、退職一時金と退職年金のどちらを採用するか、または併用するかです。支払いの負担を考えると、年金形式で支給する退職年金は、退職一時金に比べて負担を平準化しやすいメリットがあります。一方で、退職年金には「60歳以降など、一定の年齢にならないと引き出せない」というルールがあり、退職金を早くもらいたい社員からは敬遠されるかもしれません。

また、退職金の準備を自社で行うか、外部機関で行うかも重要です。例えば、中小企業退職金共済制度を利用していない場合、中小企業は自社で引当金を積むケースが多いですが、その場合、損金算入が認められません。一方、外部機関に積み立てる場合、損金に算入できる部分があるため、税法上のメリットがあります。

外部機関の代表例が中小企業退職金共済制度(中退共)です。掛金は全額が損金(個人事業主は必要経費)になる上、新規加入時には掛金月額の2分の1(社員1人当たり上限5000円)を加入後4カ月目から1年間、月額1万8000円以下の掛金を増額した場合には増額分の3分の1を1年間、国が助成します。退職金制度の変更先として検討する際は、この助成も織り込んで負担を試算しましょう。

■中小企業退職金共済事業本部「制度の特色」■
https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/kentou/seido/seido02.html

退職金制度の種類は、どれも一長一短です。1つの退職金制度に絞り込むのではなく、退職金前払い制度なども含め、複数の仕組みを組み合わせるのも一策です。

なお、図表4のうち、企業型確定拠出年金(企業型DC)について1点、制度改正があります。企業型DCには、会社が拠出している掛金に、社員自身が掛金を上乗せすることができる「マッチング拠出」という仕組みがあります。かつては、社員の掛金が会社の掛金を超えられないという制限がありましたが、

2026年4月1日から、この掛金に関する制限は撤廃

されています。これにより、余裕があれば多くの掛金を拠出できるようになりました。

また、税務面でも2026年1月1日から退職金に関する改正が施行されています。企業型DCやiDeCoの一時金を2026年1月1日以後に受け取り、その翌年以降に会社の退職一時金を受け取る場合、受け取る年の前年以前9年内(改正前は4年内)に受け取ったDCの一時金が退職所得控除の重複調整の対象になりました(いわゆる「5年ルール」から「10年ルール」への見直し)。併せて、会社が2026年1月1日以後に支払う退職金については、受給者全員分の「退職所得の源泉徴収票」を税務署に提出することになったため、退職金の支払事務も見直しておきましょう。

■国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)税制改正等の内容」■
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2026/pdf/01.pdf

4 廃止と制度変更の「折衷案」

ここまで、退職金制度の廃止と変更の方向性について考えてきましたが「折衷案」として、

賃上げと退職金制度の縮小を同時に実施する

という方法もあります。

退職金制度の見直しの方向性(2つの方向性)

例えば、企業型DCを導入している場合、

賃金の一部を、引き続き賃金(手当など)として受け取るか、企業型DCの掛金にするかを社員が選択できる「選択制DC」

という制度があります。今の収入を多くしたい社員などは賃金として受け取り、将来に備えたい社員などは掛金にすることを選択します。掛金にすることを選択した場合、当然賃金は減りますが、その分、社会保険料負担なども下がる可能性があります。

ただし、掛金に回した分だけ標準報酬月額や雇用保険の賃金額が下がるため、将来の老齢厚生年金のほか、傷病手当金・出産手当金、雇用保険の基本手当・育児休業給付などの給付額も下がる可能性があります。選択制DCを導入する際は、こうしたデメリットも含めて社員に説明し、説明した記録を残しておくことが、後々のトラブル防止につながります。

■厚生労働省「確定拠出年金制度」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/index.html

退職金前払い制度に似ていますが、こちらは社員に受け取り方の選択肢を与えることで、実質的に賃上げと退職金制度の縮小を同時に実施するイメージです。

以上(2026年10月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

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画像:ChatGPT