自社のウェブサイトが改ざんされないためのセキュリティ対策とは

1 加害者にもなりかねない「ウェブサイトの改ざん」

「ウェブサイトの改ざん」は、ウェブサイトのシステムの脆弱性を突かれて、コンテンツやデザイン、機能が不正に書き換えられてしまうもので、例えば、次のような危険があります。

  • リンクが不正に書き換えられ、クリックするとフィッシングサイトに誘導される
  • 悪意のあるスクリプトが埋め込まれ、アクセスするとマルウェアに感染してしまう
  • 悪意のあるスクリプトが埋め込まれ、入力フォームに記入した情報が窃取されてしまう

自社が運営するウェブサイトが改ざんされてしまうと、自分たちは被害者なのにもかかわらず、ウェブサイトを訪れた人たちに対する加害者になってしまう恐れがあります。

IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威2026」では、「システムの脆弱性を悪用した攻撃」が第4位としてランクイン

しました(初選出の2016年以来、6年連続9回目)。

安全にウェブサイトを運用管理するためには、ウェブアプリケーション、ウェブサーバー、ネットワークなどについて、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。

IPA(情報処理推進機構)の「ウェブサイトのセキュリティ対策のチェックポイント20ケ条」を基に、対策が実施できているか確認してみましょう。次のページからチェックリスト(エクセルファイル)をダウンロードできます。

■IPA「ウェブサイトのセキュリティ対策のチェックポイント20ケ条」■
https://www.ipa.go.jp/security/vuln/websecurity/sitecheck.html

2 ウェブサイトのセキュリティ対策のチェックポイント

ここでは、IPA「ウェブサイトのセキュリティ対策のチェックポイント20ケ条」を、順に、少し解説を足して紹介します。

1)ウェブアプリケーションのセキュリティ対策

1.公開すべきでないファイルを公開していませんか?

個人情報や機密情報の記載されたファイル、「.htaccess」などのシステムファイルなどは、公開すべきでないファイルです。誤って公開してしまっていた場合、単に非公開にするだけでは検索エンジンのキャッシュとして残っている恐れもあります。

例えば、所有するウェブサイトの情報をGoogle検索結果から削除しようとする場合、Google Search Consoleを通じて手続きできます。

■Google Search Consoleヘルプ「ウェブサイトの情報を Google から削除する」■
https://support.google.com/webmasters/answer/7479439

2.不要になったページやウェブサイトを公開していませんか?

不要になったウェブサイトを公開したまま放置していると、管理が及ばず、脆弱性が発覚した際に影響を受ける恐れがあります。期間限定のページなどは、公開期間が終了になった際に非公開にするようにします。

3.「安全なウェブサイトの作り方」に取り上げられている脆弱性への対策をしていますか?

後述の第3章でもう少し詳しく触れますが、IPA「安全なウェブサイトの作り方(改訂第7版)」では、ウェブアプリケーションの脆弱性のうち、届出件数が多い脆弱性や攻撃による影響度が大きい脆弱性を取り上げ、概要や対策方法を解説しています。必ず確認し、対策を実施しましょう。

4.ウェブアプリケーションを構成しているソフトウェアの脆弱性対策を定期的にしていますか?

ウェブアプリケーションは様々なソフトウェアやフレームワーク、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)などで構成されています。これらに脆弱性が発見された場合、都度、セキュリティパッチを当てたり、バージョンアップしたりするといった対策が必要です。

5.不必要なエラーメッセージを返していませんか?

ウェブアプリケーションのエラーメッセージから、ウェブサイトの設定情報などが漏えいし、攻撃に悪用されることがあります。攻撃者に余計な情報を与えないためにも、エラーメッセージの内容は必要最低限にします。

6.ウェブアプリケーションのログを保管し、定期的に確認していますか?

ログ情報は、不正アクセスやその兆候、故障などの事故があった際、原因を追究するために必要な情報源です。必要な期間、ログを保管し、正しく取得できているか定期的に確認しましょう。

7.インターネットを介して送受信する通信内容の暗号化はできていますか?

ウェブアプリケーションと利用者の間で交わされる通信は、盗聴や改ざん、なりすましなどの被害を受ける恐れがあります。通信内容を暗号化(HTTPS化)すれば、仮に盗聴などの被害を受けても重要情報が不正に取得されることを防止できます。

ウェブサイトを運営するときは、第三者機関からサーバー証明書を取得し、TLS(現在の主流はTLS1.2およびTLS1.3)を設定することが安全性の担保につながります。

8.不正ログインの対策はできていますか?

別のウェブサイトやサービスから漏えいしたIDやパスワードを使った不正ログインは後を絶ちません。ログイン機能のあるウェブサイトでは、利用者に対して、「複雑で推測されにくいパスワードを設定する」「パスワードを使いまわさない」という基本対策をアナウンスするとともに、IDやパスワードの入力を一定回数間違った場合にアカウントをロックする機能の実装や、多要素認証の導入などを検討しましょう。

2)ウェブサーバーのセキュリティ対策

9.OSやサーバーソフトウェア、ミドルウェアをバージョンアップしていますか?

OSやサーバーソフトウェア、ミドルウェアのバージョンアップは、セキュリティ対策の基本です。ただし、バージョンアップをすることで、今まで動作していたウェブアプリケーションが正常に動作しなくなる場合もあるため、事前に検証することが重要です。

10.不要なサービスやアプリケーションがありませんか?

ウェブサーバー上で不要なサービスが起動している場合、そのサービスが悪用されることがあるため、最低限必要なもの以外は、停止します。不要になったアプリケーションも削除します。

11.不要なアカウントが登録されていませんか?

ウェブサーバーやウェブサーバーを管理する端末に不要なアカウントが登録されている場合、悪用される恐れがあります。最低限必要なアカウント以外は削除しましょう。特に、開発工程やテスト環境で使用したアカウントが残っていないか注意しましょう。

12.推測されやすい単純なパスワードを使用していませんか?

推測されやすい単純なパスワードを設定している場合、アカウントを乗っ取られ、悪用される恐れがあるため、推測されにくい複雑なパスワードを設定・使用するようにします。特に管理者権限を持ったアカウントやリモート管理ソフトなどのアプリケーションは注意が必要です。

13.ファイル、ディレクトリへの適切なアクセス制御をしていますか?

サーバー上に配置されているファイル、ディレクトリに適切なアクセス制限がされていない場合、非公開のはずのファイルを第三者に見られたり、不正なプログラムを設置されて実行されたりする恐れがあります。

14.ウェブサーバーのログを保管し、定期的に確認していますか?

ウェブサーバーのログ(「システムログ」「アクセスログ」「データベース操作ログ」など)は不正アクセスなどがあった際、原因を追究するために必要な情報源です。必要な期間、ログを保管し、正しく取得できているか定期的に確認しましょう。

3)ネットワークのセキュリティ対策

15.ルータなどを使用してネットワークの境界で不要な通信を遮断していますか?

境界ルータなどのネットワーク機器を使用して、不要な通信を遮断することで、攻撃の糸口を減らすことができます。運用上、外部から内部ネットワークへの通信が必要な場合は、情報を秘匿するためVPNなどを利用することを検討します。内部の通信の場合でも、不要な通信を遮断することで、万が一、侵入された場合の被害を軽減できる可能性があります。

16.ファイアウォールを使用して、適切に通信をフィルタリングしていますか?

ファイアウォールを設置していても、適切なフィルタリング設定がなされていない場合、防御することができません。「どのサーバー」の「どのサービス」に「どこから」のアクセスを許可する(許可しない)のか、設定を見直しましょう。

17.ウェブサーバー(または、ウェブアプリケーション)への不正な通信を検知または、遮断していますか?

IDS(Intrusion Detection System:不正侵入検知システム)、IPS(Intrusion Prevention System:不正侵入防止システム)、WAF(Web Application Firewall:ウェブアプリケーションファイアウォール)を導入することで、ウェブサイトと利用者の間の通信を検査し、自動的に検知、遮断をすることができます。

18.ネットワーク機器のログを保管し、定期的に確認していますか?

ネットワーク機器のログは不正アクセスなどがあった際、原因を追究するために必要な情報源です。必要な期間、ログを保管し、正しく取得できているか定期的に確認しましょう。

4)その他のセキュリティ対策

19.クラウドなどのサービス利用において、自組織の責任範囲を把握した上で、必要な対策を実施できていますか?

クラウドやホスティングのサービスを利用してウェブサイトを運営している場合、サービス提供事業者側がセキュリティ対策を実施しているケースも少なくありません。サービス提供事業者側の責任範囲を把握した上で、不足する対策は自社で対応することを検討します。

20.定期的にセキュリティ検査(診断)、監査していますか?

セキュリティ対策を実施しているか、自社内で確認した上で、第三者機関による脆弱性診断やセキュリティ監査を受けることは、対策漏れなどを洗い出すために効果的な手段です。

3 ウェブサイト改ざんにつながる代表的な脆弱性

足元では、CMS(コンテンツ管理システム)の脆弱性を突かれて、プラグイン経由で改ざんされる被害が増えています。特に、WordPressは、世界で一番利用されているCMSであるが故に、本体やプラグインの脆弱性を狙った自動攻撃の標的になりやすいので要注意です。

また、IPA「安全なウェブサイトの作り方(改訂第7版)」では、ウェブサイト改ざんにつながる11種類の脆弱性を取り上げ、脆弱性の原因そのものをなくす根本的な解決策などが解説されています。

■IPA「安全なウェブサイトの作り方(改訂第7版)」■
https://www.ipa.go.jp/security/vuln/websecurity/about.html

これらは、よく知られている脆弱性であり、全てに対応が必要です。ここでは代表的な3つの脆弱性を取り上げて紹介します。

1)SQLインジェクション

SQLインジェクションは、ウェブアプリケーションのSQL文(データベースへの命令文)の組み立て方の脆弱性を突き、不正なSQL文を実行させてデータベース内の情報を窃取・改ざん・消去するものです。

運営主体やウェブサイトの性質を問わず、データベースを利用するウェブアプリケーションを設置しているウェブサイトに存在しうる問題です。

根本的な解決策として、次が挙げられます。

  • SQL文の組み立ては全てプレースホルダで実装する。
  • SQL文の組み立てを文字列連結により行う場合は、エスケープ処理等を行うデータベースエンジンのAPIを用いて、SQL文のリテラルを正しく構成する。
  • ウェブアプリケーションに渡されるパラメータにSQL文を直接指定しない。

2)クロスサイトスクリプティング(XSS:Cross-Site Scripting)

クロスサイトスクリプティング(XSS)は、ウェブアプリケーションの出力処理(画面への表示)の脆弱性を突き、不正なスクリプトを埋め込んで、ウェブサイトにアクセスした利用者のブラウザ上で実行するものです。「XSS」と略すのは、スタイルシート言語(Cascading Style Sheets)で使用されている「CSS」と混同しないようにするためです。

運営主体やウェブサイトの性質を問わず、あらゆるサイトにおいて注意が必要な問題です。Cookieを用いたセッション管理を行っているサイトや、フィッシング詐欺の標的になりやすいログイン画面や個人情報の入力画面などを持つサイトは、特に注意が必要です。

根本的な解決策として、次が挙げられます。

  • ウェブページに出力する全ての要素に対して、エスケープ処理を施す。
  • URLを出力するときは、「https://」で始まるURLのみを許可する。
  • <script>…</script> 要素の内容を動的に生成しない。
  • スタイルシートを任意のサイトから取り込めるようにしない。

3)クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)

クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)は、ウェブアプリケーションのセッション管理(リクエストの正当性確認)の脆弱性を突き、ログイン中の利用者に不正なリンクを踏ませるなどして、あたかもその利用者が操作をしたかのようにウェブアプリケーションに不正なリクエストを送信し、実行させるものです。

Cookieを用いたセッション管理や、Basic認証、SSLクライアント認証を実装しているウェブサイトは、CSRFによる影響を受ける可能性があります。

根本的な解決策として、次が挙げられます。

  • 処理を実行するページをPOSTメソッドでアクセスするようにし、その「hiddenパラメータ」に秘密情報が挿入されるよう、前のページを自動生成して、実行ページではその値が正しい場合のみ処理を実行する。
  • 処理を実行する直前のページで再度パスワードの入力を求め、実行ページでは、再度入力されたパスワードが正しい場合のみ処理を実行する。
  • Refererが正しいリンク元かを確認し、正しい場合のみ処理を実行する。

4 ウェブサイトの改ざんの被害に遭ってしまったら

警察庁は、ウェブサイト改ざんの被害に遭った場合、アクセスログ等の資料を持参して、最寄りの警察署またはサイバー犯罪相談窓口に通報・相談するように呼びかけています。

e-Gov電子申請(デジタル庁が運営する電子申請のポータルサイト)からオンラインで「サイバー事案に関する通報等」を行うこともできますが、e-Govアカウントの取得やアプリのインストールなどが必要です。いざというときに備えて、事前に対応しておくとよいでしょう。

■警察庁「ウェブサイト改ざん対策」■
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/countermeasures/hacked-website.html

以上(2026年7月更新)

pj60384
画像:日本情報マート

個人情報の取り扱いについて苦情が来たら、どうすればいいの?【かんたん個人情報保護法(8)】

1 個人情報の取り扱いについて苦情が来ても対応できる準備を

個人情報の取り扱いについて苦情が来たときの処理は、法律上あくまで努力義務ですが、消費者などの本人との信頼関係を構築し、事業活動に対する社会の信頼を確保するため、実務上は対応が必須と考えられます。

「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」は、苦情の適切かつ迅速な処理を行うに当たり、必要な体制の整備として、

  • 苦情処理窓口の設置や苦情処理の手順を定める

ことなどを挙げています。また、

  • いわゆるプライバシーポリシーを策定し、それを公表する(ホームページへの掲載、店舗の見やすい場所への掲示など)ことで、あらかじめ、対外的に分かりやすく説明する
  • 委託の有無、委託する事務の内容を明らかにする等、委託処理の透明化を進める

といったことも重要です。特に、前者のプライバシーポリシーの掲載等は、消費者等との信頼関係を構築するのに役立つでしょう。

なお、個人情報取扱事業者は、保有個人データの取り扱いに関する苦情の申出先について、本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む)に置かなければなりません。「本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む)」とは、

ホームページへの掲載、パンフレットの配布、本人の求めに応じて遅滞なく回答を行うこと等、本人が知ろうとすれば、知ることができる状態に置くこと

で、常にその時点での正確な内容を本人の知り得る状態に置く必要があります。この対応は努力義務ではなく「義務」です。

苦情の申出先としては、苦情を受け付ける担当窓口名・係名、郵送用住所、受付電話番号その他の苦情申出先(個人情報取扱事業者が認定個人情報保護団体の対象事業者である場合は、その団体の名称および苦情解決の申出先を含む)とされています。

2 (参考)認定個人情報保護団体制度

認定個人情報保護団体は、個人情報保護委員会の認定を受けて、業界・事業分野ごとに個人情報の保護の推進を図るための自主的な取り組みを行っている団体です。

認定個人情報保護団体は、消費者と事業者の間に立ち、対象事業者である個人情報取扱事業者の個人情報の適正な取り扱いの確保を目的として、消費者からの苦情の処理や相談対応を行うこととされています。

対象事業者になると、認定個人情報保護団体から苦情処理の第三者機関としての関与・アドバイスを受けられます。また、個人情報保護法などに関連する最新の情報提供も受けられます。

個人情報保護委員会では、認定個人情報保護団体一覧を公表しています。対象事業者になるための要件は、認定個人情報保護団体ごとに異なります。

■個人情報保護委員会「認定個人情報保護団体一覧」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/nintei/list/

以上(2026年7月更新)

pj60355
画像:Orapun-Adobe Stock

経営のヒントとなる言葉(福澤諭吉)

「見込みあればこれを試みざるべからず。いまだ試みずしてまずその成否を疑う者はこれを勇者と言うべからず」(*)

出所:「学問のすすめ」(中央公論社)

冒頭の言葉は、

「たとえ実現が困難と思われるようなことであっても、少しでも成功する見込みがあれば、積極的に取り組まなくてはならない」)

ということを表しています。

福澤氏は、幼い頃から漢学の分野で非凡な才能を発揮していました。しかし、中津藩(現大分県)の下士という低い身分の家に生まれたため、門閥制度が厳しい藩内では能力を発揮する場が与えられませんでした。このため、藩を出ることを決意し、長崎での留学を経て大坂(現大阪府)の蘭学者緒方洪庵(おがたこうあん)の適塾に入り、蘭学の習得に努めました。

1858年、福澤氏は中津藩の命を受けて江戸で蘭学塾を創設しました。その後、開港して間もない横浜を訪れ、世界ではもはやオランダ語ではなく英語が主流となっていることを知り、独学で英語の習得に取り組みました。

こうした中、1860年に江戸幕府が米国に使節団を派遣した際、福澤氏も随行して渡米し、西洋文明に触れて大きな衝撃を受けました。その後、1862年には欧州への使節団として諸国を視察し、議会制度や医療制度、教育制度などさまざまな海外事情についての見聞を広め、帰国後に自らの渡米・渡欧体験を基に『西洋事情』を出版しました。

『西洋事情』は、西洋諸国の社会制度や文化、技術、歴史などについて体系的に解説した書籍です。厳しい封建制度の下、加えて依然として攘夷(外国人や外国文化を排斥すること)の機運が残っていた当時、西洋文明についての理解を得ることは困難であり、命さえ狙われかねない危険をともないました。

しかし、福澤氏は、近代国家としての日本の創造において西洋文明の導入が不可欠であることを確信し、西洋文明を広く人々に知らしめるべく啓蒙活動に情熱を傾けたのです。

こうして、その後全10冊にわたって出版された『西洋事情』は、当時しては空前のベストセラーとなり、幕末の日本人および新生日本の誕生に多大な影響を与えることとなりました。

福澤氏は、学問について、次のように述べています。

「学問の要は活用にあるのみ。活用なき学問は無学に等し」(*)

学ぶだけでは学問を修めたとはいえません。学んだことを実際の行動に生かすことで学んだことが生きてくるのです。この福澤氏の実学の精神は連綿と受け継がれ、現在の慶應義塾大学の教育理念として根付いています。

積極的な挑戦を続ける姿勢と、そこから得られたものを実践する行動力。この二つの精神によって、学んだことを最大に生かすことができるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

ふくざわゆきち(1835~1901)。大坂(現大阪府)生まれ。1858年、江戸(現東京都)で蘭学塾(現慶應義塾大学)設立。1872年より「学問のすゝめ」刊行。

【参考文献】

(*)「学問のすすめ」(福沢諭吉、中央公論社、1984年7月)
「福翁自伝」(福沢諭吉(著)、富田正文(校訂)、岩波書店、1978年10月)
「福澤諭吉旧居・福澤記念館」(公益財団法人福澤旧邸保存会)

以上(2026年5月更新)

pj​15061
画像:日本情報マート

残業する社員を「頑張っている」と評価するのは違法? 今どきの人事評価のポイントを解説

1 「人事権の裁量の濫用」に当たる人事評価は違法

人事評価は、社員に「会社から評価された」という達成感を与え、モチベーション向上につなげる重要な制度です。しかし、上司(評価者)の主観を完全に排除することが難しく、

  • 好き嫌いで評価しているのでは?
  • 最近のミスだけが強調されすぎているのでは?

と受け取った社員が、不満から離職してしまうこともあります。とはいえ、社員の不満を恐れて甘く評価するのは健全とはいえませんから、上司はあくまで毅然とした評価をするべきです。

一方、もう一つ意識しておきたいことがあります。それは、

人事評価の内容が「人事権の裁量の濫用」に該当する場合は違法

になるということです。具体的には、

  • 残業している社員を「頑張っている」と高く評価する
  • 大きなミスをした社員を就業規則より厳しい降給にする

などのケースですが、こうした問題は、

働いている時間の長短を評価要素に組み込んでいたり、経営者や上司の鶴の一声で高評価も低評価も認められたりするような、昔ながらの感覚が残る会社で起こりがち

です。「人事評価は毅然とするべきであるが、違法はいけない」という、当たり前のことを実現するために、この記事を参考にしていただければ幸いです。

2 残業している社員を「頑張っている」と高く評価するリスク

人事評価の内容が法令に違反していれば人事権の裁量の逸脱となり、会社が損害賠償義務を負うこともあります。特に、次のような法令(強行法規)違反につながる人事評価は認められません。

  • 国籍・信条・社会的身分を理由に、労働条件について差別をする(労働基準法第3条)
  • 性別を理由に、賃金について差別をする(労働基準法第4条)
  • 性別を理由に、異動や契約更新について差別をする(男女雇用機会均等法第6条)
  • 妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由に、不利益な取扱いをする(男女雇用機会均等法第9条、育児・介護休業法第10条当)

妊娠・出産により育児休業等を取得した女性に対し、会社が復職後の成果報酬をゼロとする査定を行い、トラブルに発展した事案では、

査定の内容は、育児・介護休業法における不利益取扱いの禁止の趣旨に反し、人事権の裁量の濫用に当たる

と判断されました(東京高裁平成23年12月27日判決)。こうした過ちを起こさないための最も単純な解決策は、例えば、

  • 育児休業等をしている社員の人事評価は、前年度の評価を据え置く
  • 同等の等級にある社員の成果報酬査定の平均値を用いる

ことです。

また、

残業や休日労働に協力する社員を「頑張っている」と高く評価し、そうでない社員を「努力が足りない」と低く評価する

といったことがあるなら、すぐに改めましょう。

法の趣旨に反する人事評価は、人事権の裁量の濫用に当たる恐れがありますし、社員の時間外労働を誘発し、サービス残業を黙認することにもなりかねず、民事上・刑事上のリスクもあります。そうでなくても社員のほうから、「時代に逆行している古臭い会社」と見切りを付けられる可能性があります。

3 大きなミスをした社員を就業規則より厳しい降給にする

就業規則や賃金規程にない基準、あるいは定めに違反する基準を用いて人事評価を行うと、人事権の裁量の濫用に当たる恐れがあります。例えば、賃金の決定方法は必ず就業規則などに定めて社員に周知・開示し、守らなければなりません。そのため、

いかに社員が大きなミスをしたとしても、就業規則などの定めを超える降給はできない

のです。

なお、人事評価によって降格された社員は降給となるのが通常ですが、前提は、

役職などと賃金が連動していることを就業規則などで明確に規定しておく

ことです。御社の就業規則などを確認してみてください。次のように定めてあれば問題ありません。

【就業規則の規定例】

第●条(昇格・降格)

会社は、社員に勤務成績不良など職務不適格事由がある場合、役職罷免、職位および資格等級の引き下げなどの降格を命ずることがある。

【賃金規程の規定例】

第●条(昇降給・昇降格)

  • 職務給の昇給・降給は、毎年1回、原則として4月に行うものとする。
  • 昇給・降給は、別表1(省略)に定める基準に基づき人事考課により決定する。
  • 職務等級の昇格・降格は、別表2(省略)に定める基準に基づき人事考課により決定する。この場合、昇格・降格後の役職と職務等級に基づき賃金を決定する。
  • 懲戒処分による降格および勤務成績不良等、職務不適格事由による人事権の行使としての降格の場合も、降格後の役職と職務等級に基づき賃金を決定する。

以上(2026年9月更新)
(執筆 石原法律事務所 弁護士 磯田翔)

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【交渉術】なぜ、流ちょうに正論を話す人ほど交渉相手に嫌われてしまうのか?

1 交渉に勝つ秘訣は相手に選ばせること

ビジネスに交渉はつきものですが、なかなかうまくいかないことが多いです。冷静に双方の利益を考えられたらいいのですが、なぜか相手の意見には反発したくなります。心理学では、これを「心理的リアクタンス(抵抗)」と呼びます。

厄介なのは、心理的リアクタンスは相手が自分と同じ意見を言っていても生じることです。「わざわざあなたに言われなくても分かっているよ」といった具合ですが、皆さんも心当たりはありませんか。

とにかく、この心理的リアクタンスを突破することが交渉に勝つためには必要です。そのために大切なポイントは、

相手に「自分の自由が脅かされている」と感じさせないよう、自らの意思で意見を選択できる環境をつくること

です。以降で具体的に説明しますので、参考にしてみてください。

2 交渉相手の心理的な抵抗を和らげる方法

1)こちらが情報提示して、交渉相手が結論を出す

1つのケーキを争うことなく2人で分ける方法に、「1人が半分にカットし、もう1人が選ぶ」というものがあります。これと同じ考え方は交渉にも応用できます。

当社が交渉相手に情報(選択肢など)を提示し、交渉相手が自ら選択できるように導きます。交渉相手は「提示された情報を基に、自らの意思で選択した」と感じるため、心理的リアクタンスが発生しにくくなります。

交渉に慣れていないと、「早くまとめよう」と思うあまり結論を急ぎがちです。しかし、こちらが落としどころを提示していくと、交渉相手は結論を押し付けられたと感じます。あくまでも結論は交渉相手が導いたという状況が必要なので、例えば、

「御社の競合はこのサービスを導入していますが、御社は導入しないのですか?」

などと言って交渉相手に考えてもらい、実際に選択してもらいます。

2)ネガティブ情報をうまく伝える

問題はどのような情報を提示するかですが、具体的な方法には、

  • 一面提示:自社の主張に合うこと(または合わないこと)だけを伝える
  • 両面提示:自社の主張に合うことも、合わないことも伝える

があります。先の例で示すと次のようになります。

  • 一面提示:御社の競合はこのサービスを導入していますが、御社は導入しないのですか? 競合は大きな成果を上げていますよ
  • 両面提示:御社の競合はこのサービスを導入していますが、御社は導入しないのですか? 競合は大きな成果を上げていますよ。ただし、年間コストが高いですが……

一面提示は論点を絞り込みやすいので、交渉がシンプルになるメリットがあります。ただ、交渉相手もネガティブ情報をある程度は知っているはずですから、実際は両面提示をすることになるでしょう。ここで大切になるのが、

ネガティブ情報を提示する順番とタイミング

です。

例えば、最初にネガティブ情報を提示する場合、直後に「今、お話ししたデメリットをカバーする十分なメリットがあるので、お伝えします」といったように話を進めます。先にネガティブ情報を提示して誠実さをアピールしつつ、デメリットを打ち消していきます。

逆に、最後にネガティブ情報を提示する場合、「ここまでは良い話ばかりしてきましたが、実は、○○というデメリットもあります」といったような話の進め方です。交渉相手がこちらの提案に十分なメリットを感じている場合、「デメリットよりもメリットのほうが大きい」など、前向きな姿勢で検討してもらえるでしょう。

3)ユーモアを交える、同調する

多くの心理学者によって、

ユーモアには心理的リアクタンスの発生を抑制する効果がある

と認められています。交渉だからといっていきなり堅苦しい話をせずに、雑談から入ることも無駄ではないのです。

また、

交渉相手の意見を否定せずに、同調すること

も有効です。人は自分の意見を肯定してくれる相手には好意を抱きやすく、反対もしかりです。とはいえ、交渉相手の主張と反対の方向に導きたいシーンだと交渉相手に同調できません。このような場合は、趣味やファッションなど交渉とは関係のない別の部分で同調します。

3 自社の製品を売り込む際の話法

ここまでの流れを踏まえ、交渉の流れをシミュレーションしてみましょう。ここでは、自社の「電子契約・契約書管理サービス」を取引先の社長にお勧めするシーンを想定します。

自社:御社のDX(デジタルトランスフォーメーション)は進んでいますか?

相手:いや、どうしたものかと悩んでいるよ。

自社:最近は、契約業務の電子化に関心を持つ中小企業が増えていますよ(情報提示)。

相手:契約の電子化ね〜。それはDXといえるの?

自社:確かに、そういう意見も多いです(同調)。紙の契約書に押印というのは昭和な感じで、我々世代にはなじみ深いですが(笑)(ユーモア)。

相手:ははは。そうだね、イメージが湧きやすい。

自社:実際、2024年の法改正で取引書類の電子化対応が求められるようになったこともあり、契約業務の電子化に取り組む中小企業は今後さらに増えていくでしょう。

相手:うちの同業も始めたらしい。古臭い会社と思われるのも心外だし。

自社:契約書の締結を電子契約サービスに切り替えたり、既存の紙の契約書をクラウドで一元管理するところから始めるケースが多いです(情報提示)。

相手:なるほど。確かにうちも契約書の管理には手間がかかっているな。

自社:当社の取引先は、この取り組みで契約締結にかかる時間を80%も削減しました(情報提示)。

相手:80%も削減したのか。すごいな!

自社:当社のサービスをご利用いただければ、セキュアに契約書を保管・検索できます。そこから始めて、少しずつ電子化の範囲を広げ、DXにつなげていくのはどうでしょうか?

相手:まずは始めてみることが大切ということだね。

自社:はい。はい。契約業務の電子化自体にそれほど大きな効果はないかもしれませんが、DXの一歩を踏み出すという意味ではとても有意義です(両面提示)。

相手:そうだな。よし、やってみよう!

以上(2026年9月更新)

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画像:ChatGPT

【賃金データ集】 賃金体系・形態管理と支給額の検討

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「賃金体系・形態管理と支給額の検討」です。

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 所定内給与額の推移と賃金マネジメントの重要性

2025年の男性の所定内給与額は37万3400円です。一方、2025年の女性の所定内給与額は28万5900円で、男性の所定内給与の76.6%の水準です。同じ計算をすると、1980年の女性の所定内給与は男性の58.9%の水準だったので、約45年間で17.7ポイント上昇したことが分かります。

所定内給与額の推移

2 賃金体系の管理

1)賃金体系の一例

賃金をマネジメントする上で、最初に知っておきたいのが「賃金体系」です。賃金体系とは、賃金の要素である基本給や諸手当の組み合わせのことです。賃金体系を理解することで賃金の全体像が把握できるようになります。

賃金体系の一例

2)基準内賃金

現金給与の「毎月きまって支給する給与」の中心は「基準内賃金」で、概要は次の通りです。

通常の労働に対して支払われる基本給や諸手当のことで、基準外賃金の算定基礎になるもの

なお、諸手当のうち、家族手当、住宅手当、通勤手当などは基準外賃金の計算の基礎から除外できるため、基準内賃金に含めないケースがあります。

また、基準内賃金と似た言葉に「所定内給与(賃金)」があります。基準内賃金と所定内給与はほぼ同義ですが、所定内給与は企業が就業規則などに定めた所定労働時間の労働に対する賃金で、家族手当、住宅手当、通勤手当などが含まれます。

1.属人給、仕事給、総合(決定)給

基準内賃金の中心は「基本給」です。基本給は次のように大別されますが、一般的なのは属人給と仕事給です。

  • 属人給:年齢など労働者の属人的な要素によって決定される賃金
  • 仕事給:業績・成果や保有能力など仕事に関係する要素によって決定される賃金
  • 総合(決定)給:勤続年数と担当職務を評価する賃金

基本給の要素を属人給と仕事給に振り分けることが難しい場合、「本給」などの名目で設定されるのが典型ですが、運用しやすい一方、評価基準が曖昧になりがちという問題があります。

基本給の区分

2.基本給の体系

基本給の体系は、属人給や仕事給などをどのように組み合わせるかによって次のように大別されます。

  • 単一型体系:1つの基本給の要素によって構築された体系
  • 併存型体系:複数の基本給の要素によって構築された体系

単一型体系の場合、「研究職は100%職務給」「営業職は100%成果給」といった運用ができますが、配置転換で職務が変更された場合、労働者がケガなどをした場合などに問題が生じるため、これを導入する企業と対象となる労働者は限られます。このような事情から、多くの企業は併存型体系を導入しており、属人給と仕事給の割合を調整することで賃金制度をマネジメントしています。

3)基準外賃金

現金給与の「毎月きまって支給する給与」のもう1つの要素が「基準外賃金」で、概要は次の通りです。

通常の労働以外に対して支払われる賃金で、時間外労働手当(いわゆる「残業手当」)など

基準外賃金は、通常よりも割り増しした金額を支払わなければならず、その割増率は労働基準法で定められています。いわゆる「残業」が慢性化している企業では、基準外賃金が大きな負担になります。特に、2023年4月1日からは、中小企業に対する割増賃金率の猶予措置が廃止され、従業員の残業(時間外労働)が1カ月で60時間を超える場合、その時間については50%以上の割増賃金の支払いが必要になったため、注意が必要です。

また、基準外賃金と似た言葉に「所定外給与(賃金)」がありますが、これは基準外賃金と同じ意味です。

3 賃金形態の管理

1)賃金形態の種類と賃金支払いの5原則

賃金は労働の単位(時間や出来高)に応じて支払うという考え方があり、それを類型化したものが「賃金形態」です。具体的には、次のようなパターンがあります。

  • 時間給、日給、月給など時間によって計算されるパターン
  • 出来高給のように販売個数などによって計算されるパターン

賃金形態を管理することで、雇用形態(正社員やパートなど)、職務の難易度、成果を上げるまでの期間などに応じて賃金をマネジメントしやすくなります。

注意が必要なのは、労働基準法の「賃金支払いの5原則」です。賃金支払いの5原則は次の通りで、一部、例外があるものの、順守しなければなりません。そのため、年俸制を導入した場合でも、年俸を12等分して毎月支払うことになります(賞与を支払う場合はさらに細かく分けて賞与相当分を確保します)。

  1. 通貨払いの原則
  2. 直接払いの原則
  3. 全額払いの原則
  4. 毎月1回以上払いの原則
  5. 一定期日払いの原則

2)賃金形態の状況

厚生労働省「平成26年就労条件総合調査」によると、主な賃金形態で最も割合が高いのは「月給」の80.9%です。

賃金形態の状況

4 賃金支給額を決定する際の視点とこれまでの変遷

1)賃金支給額を決定する際の視点

労働者が労働力を提供し、企業がその対償として賃金を支払うことは労働契約の基本です。賃金支給額はこの点を前提としつつ、次の視点を考慮して決定されます。

1.企業の賃金支給能力(コスト)

労働者の労働力を購入するという「人件費」の視点です。他のコストと賃金(人件費)を全く同様に捉えることはできませんが、賃金が販売費・一般管理費(製造業などでは売上原価)の多くを占めているのは事実であり、これを適正水準に保つ必要があります。

2.労働力の市場価値

賃金には、労働力の需給状況に応じて変化する市場性があります。具体的には、労働者数全体、特定の業界の就業者、特定の技能の習得者などが変化の要因になります。現在のような「売り手市場」だと、一般的に賃金は上昇します。

3.他社の支給額

賃金は企業規模、業種、地域によって支給水準が異なります。この水準を下回ると労働者の不満足につながり、他社に転職してしまうこともあります。企業は、モデル賃金に関する情報を収集し、自社との違いを確認しておく必要があります。

4.雇用を巡るトレンド

景気動向、雇用環境、人事制度の変化などによって賃金のトレンドが生じます。分かりやすいのは、人手不足への対策として賃上げを検討するケースです。

5.労働者の生活保障

賃金は労働者にとって「生活の糧」であり、労働者の年齢、家族構成、居住地域などを考慮する必要があります。

6.労働者の貢献度

企業への貢献度は、労働者の職務遂行能力、担当職務の難易度、具体的に達成した成果(売り上げや研究成果など)などによって変わるため、これを加味して賃金を決定します。

7.利益分配

企業業績に連動し、利益分配の意味合いで支給する賃金です。毎月きまって支給される「業績給」と、臨時的に支払われる「賞与・期末一時金」の場合があります。

2)日本企業における賃金制度の変遷とこれからの動き

賃金支給額は前述した視点を考慮した上で決定され、それを実現するための仕組みが賃金制度として構築されます。これまでの日本企業の賃金制度は、その時々の状況に応じて年功主義から能力主義・成果主義へと変化してきました。主な流れを、基本給の構成要素の変化を中心に確認してみましょう。

1.年功主義(年齢給、勤続給)

戦後の日本の賃金体系に大きな影響を与えたのが、1946年に電力関係企業の労働組合が提案した、いわゆる「電産型賃金体系」です。これには、労働者の年齢、家族構成、勤続年数などに重きを置いた、生活防衛的・安定的な賃金制度であるといった特徴があり、基本給の中心は「年齢給」「勤続給」でした。

電産型賃金体系には、「職能給」などといった能力給も組み込まれてはいるものの、その割合はそれほど高くありませんでした。

2.能力主義(職能給、職務給)

家族構成や勤続年数などによって賃金の大部分が決定される電産型賃金体系への不満が高まり、1950年代後半から1980年代にかけて、基本給に「職能給」「職務給」が取り入れられるようになりました。

中でも職能給は、いわゆる「職能資格制度」として多くの日本企業に定着しました。しかし、職能資格制度が年功的に運用されるようになり、能力主義がほぼ有名無実化し、問題となりました。

3.成果主義(成果給、業績給)

1990年代に入ると、脱年功主義がより鮮明なものとなり、成果主義が注目されるようになりました。ここで基本給の要素として注目されたのが、「成果給」「業績給」です。

成果主義では、従業員が個人(あるいはチーム)で目標を達成するために取ったプロセスとその結果を評価するのが基本です。しかし、1990年代当時は、結果を必要以上に重視する企業が多く、「過酷な目標設定による従業員のストレス過多」「自分の成績につながらない仕事を嫌う従業員の発生」「確実に達成できそうな低い目標を掲げる従業員の発生」などの問題が生じ、多くの企業で成果主義の導入は失敗に終わりました。

もっとも、近年は業務管理ツールの発達に伴い、評価の中心を結果に置きつつ、プロセスについてもある程度評価する、バランスの取れた成果主義を導入している企業もあります。

5 賃金支給額を決定する際の考え方

賃金支給額を検討する際は「適正人件費」に注目します。適正人件費の算出方式はいくつかありますが、例えば、「売上高×付加価値率×労働分配率」によって求めます。付加価値は売上高から原価(製造業は材料費や外注加工費、小売業は売上原価)を差し引いたもので(業種によって異なります)、その割合が付加価値率です。また、労働分配率とは、付加価値に占める人件費の割合です。自社の過去3年分のデータと将来の利益目標を参考に付加価値率などを設定すれば、適正人件費の目安を把握することができます。

付加価値率

また、世間相場を確認するためには、自社の「適正人件費」だけではなく、他社の賃金支給状況も確認します。世間相場と大きな違いがある場合は、必要に応じて見直しを検討します。

1)売上高労務費比率、売上高人件費比率

中小企業庁「令和7年中小企業実態基本調査(令和6年度決算実績)」によると、合計の売上高労務費比率は6.46%、売上高人件費比率は9.46%です。

2024年度決算における売上高および営業費用(全体)

2024年度決算における売上高および営業費用(建設業)

2024年度決算における売上高および営業費用(製造業)

2024年度決算における売上高および営業費用(情報通信業)

2024年度決算における売上高および営業費用(情報通信業)

2024年度決算における売上高および営業費用(運輸業、郵便業)

2)賃金支給額

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模計、産業計の「きまって支給する現金給与額」は37万500円で、そのうちの34万600円が所定内給与額です。差額の2万9900円は時間外労働手当などです。また、「年間賞与その他特別給与額」は100万9600円です。

賃金支給額

6 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は以下の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■賃金構造基本統計調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

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■就労条件総合調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/11-23.html

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■企業活動基本調査■
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/

画像11

■中小企業実態基本調査■
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/kihon/

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以上(2026年8月更新)

pj17901
画像:ChatGPT

【中堅社員のスピーチ例】「仕事を忘れて休む」のにもスキルがいる

【ポイント】

  • 休むときに、「仕事を完全に忘れる」ことも、非常に重要なビジネススキル
  • 休むためのコツは、休みに入るときに「オフへの切り替え行動」をする
  • 「仕事を忘れるのは不真面目だ」と思う必要はない

皆さん、おはようございます。お盆休みを前に、旅行の準備を進めている方や、家でのんびり過ごす時間を心待ちにしている方など、それぞれ充実した休みの計画を立てられているかと思います。一方で、「あの案件、休み明けにどう進めようか」「私が休んでいる間、他部署や後輩に迷惑はかからないだろうか」などと、仕事のことが頭から離れず、きちんと休めなそう……と、お悩みの方もいるのではないでしょうか。

真面目に、責任感を持って仕事に向き合っている人ほど、無意識に仕事のスイッチがオンになったままになりがちです。しかし、人間の脳や心は、緊張状態がずっと続くと確実に疲弊してしまいます。長く、安定して良いパフォーマンスを発揮し続けるためには、「休むときに、仕事を完全に忘れる」ことも、非常に重要なビジネススキルの一つです。

私が実践している休むためのコツは、休みに入るときに「オフへの切り替え行動」をすることです。例えば、金曜日の終業後にはお気に入りのお店に足を運ぶ、好きな音楽に浸るなど、それぞれが取り組みやすいものを試してみてください。また、会社用のPCやスマホを思い切って見えない場所に片づけるのも良いでしょう。いずれにせよ、何となく休日を迎えてしまうと、オンからオフへの切り替えがうまくいかず、仕事のことを考えたままになりがちです。

「仕事を忘れるなんて、不真面目ではないか」と思う必要は全くありません。プロのスポーツ選手が試合の後に徹底的なリカバリーを行うのと同じで、私たちビジネスパーソンにとっても、最高のパフォーマンスを出すための「プロとしての心のメンテナンス」といえます。脳を完全にリフレッシュさせるからこそ、休み明けに全く新しいアイデアが浮かんだり、驚くほど新鮮な気持ちで仕事に向き合えたりするものです。

そのためにも、今週のうちに自分のタスクや引き継ぎ事項を綺麗に整理し、最高の状態で休みを迎えられるよう、今日の業務も集中して進めていきましょう。

以上(2026年8月作成)

pj17256
画像:Mariko Mitsuda

6月実質賃金が6カ月連続プラス! 企業が迫られる賃金還元と成長の好循環【経営者とっておきニュース】

厚生労働省が発表した2026年6月の毎月勤労統計調査(速報)によると、1人当たりの実質賃金指数(消費者物価指数で実質化したもの)は144.1(前年同月比1.6%増)となり、6カ月連続でプラスを記録しました。

現金給与総額(名目賃金)は531,677円(前年同月比3.4%増)と大きく伸び、基本給を示す所定内給与(279,189円、同3.4%増)や賞与等の特別に支払われた給与(232,445円、同3.5%増)の上昇が全体を牽引しています。

今回の背景には、高水準となった春季闘争(春闘)の回答が基本給のベースアップに反映されたことや、業績好調に伴う夏季賞与の増額があります。さらに人手不足対策としての賃金底上げも寄与しています。

この動きは経済各所に多様な影響を与えます。

  • 物価高に負けない賃金上昇により個人の購買力が回復し、消費拡大が期待されます。
  • 大企業を中心に賃上げが進む一方、原材料費や労務費の価格転嫁が不十分な中小企業では、人件費負担の増加が利益を圧迫する懸念があります。

今後は、賃上げ原資を確保できる高付加価値企業と、コスト増加を吸収できない企業の業績二極化が進むと予測されます。

他地域のビジネスパーソンにとっても、「単なるコスト増としての賃上げ」ではなく、「労働生産性の向上と適切な価格転嫁を組み合わせた事業構造の転換」を推進する視点が不可欠です。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和8年6月分結果速報」■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2606p/dl/houdou2606p.pdf

以上(2026年8月作成)

pj10120
画像:terovesalainen-Adobe Stock

(全産業)7月LOBO調査、業況DI改善も人件費増加が中小企業を圧迫【経営者とっておきニュース】

日本商工会議所が発表した2026年7月の早期景気観測(LOBO調査)によると、全産業合計の7月の業況DIは▲21.2となり、前月比で1.0ポイント改善しました。

地政学リスクに伴う中東情勢緊迫化への懸念が一時的に和らいだことが、改善の一因となりました。一方で、原材料・エネルギー価格の高止まりに加え、人手不足に対応するための人件費増加が中小企業の収益を強く圧迫しており、依然としてマイナス圏での推移が続いています。

今回の動きの背景には、エネルギー価格の急騰に対する不安が和らいだ一方、深刻な人手不足に伴う賃上げ要請や人件費負担の増加が本格化している実態があります。

この動向は、地域の産業や事業者に対して多角的な影響を及ぼします。

  • 地政学リスクの沈静化に伴い、建設業では価格転嫁の進展、製造業ではAI・半導体関連の設備投資需要をけん引役に、持ち直しの兆しが見られます。一方、サービス業では物価高に伴う消費の冷え込みに猛暑による外出控えが重なり、悪化しています。
  • 仕入価格の高止まりに加え、労務費や最低賃金引上げに対応するための人件費負担が急増しています。価格転嫁が十分に追いついていない中小企業や下請け事業者では、売上が回復しても利益が残りにくい「利益なき繁忙」に陥る懸念が生じています。

今後は、コスト上昇分の価格転嫁を進められる企業と、価格据え置きによるコスト増で収益性が低下する企業の業績格差が拡大すると予測されます。

他地域のビジネスパーソンにとっても、人件費を含むコスト上昇は不可避な課題です。明日から意識すべき視点は、「単なるコスト削減(抑制)に終始するのではなく、適正な価格転嫁の交渉を推進すると同時に、省力化投資(DX)を通じて1人当たりの付加価値額を引き上げる視点」です。市場の変化に対応した収益構造の再構築が持続的成長の鍵となります。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■日本商工会議所「LOBO調査(2026年7月期結果)」■
https://cci-lobo.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2026/07/LOBO202607.pdf

以上(2026年8月作成)

pj10114
画像:terovesalainen-Adobe Stock

(建設業)7月LOBO調査、価格転嫁と暑さ対策が拓く地域経済の明日【経営者とっておきニュース】

日本商工会議所が発表した2026年7月の早期景気観測(LOBO調査)によると、建設業界では資材コスト高や人手不足といった厳しい環境が続くなか、業況に改善の兆しが見られています。中東情勢に伴う資材の供給滞りの影響が一段と和らいでいることや、発注者に対する価格転嫁が着実に進展していることが主な要因です。ただし、業種や現場によっては供給面の影響が依然として続いているとの声もあり、完全な解消には至っていません。足元では受注が回復傾向へ向かっており、今夏の猛暑に対しても、国や自治体が示した指針に基づき柔軟な現場対応が進められています。

これまで建設業界は、原材料費の高止まりや深刻な人手不足により厳しい採算性に直面してきました。しかし今回の調査から、価格転嫁への理解が発注者側に広がりつつあることが明らかになりました。発注者ごとの対応にばらつきはあるものの、適正価格での受注が増加することで、中小建設企業の収益改善への足がかりとなっています。

サプライチェーンにおいては、中東リスクによる資材の目詰まりの影響が緩和し、工期遅延の懸念が和らぎつつあります。公共工事や既存施設の改修・設備工事を中心に、地元経済への好影響も期待されます。

一方で、急務の課題として浮上しているのが今夏の猛暑対策です。現場の安全確保と稼働率維持の両立が求められるなか、国や自治体から明確なガイドラインが提示されたことで、作業時間の見直しや柔軟な施工計画が可能になりました。発注者の理解を得ながら環境整備を進める取り組みは、地域全体の施工体制を維持する上でも極めて重要です。

今後の建設市場は、価格転嫁の浸透と受注回復に支えられ、緩やかな改善傾向が続くと見込まれます。一方でコスト高止まりは長期化するため、単なる価格転嫁にとどまらず、施工の効率化やデジタル化(DX)の推進が継続的な経営課題となります。

他業種の経営者にとっても、「コスト増に対し適切な価格転嫁を交渉しつつ、行政指針等を活用して現場の就労環境を迅速にアップデートする姿勢」は、人材確保と持続的成長を果たすための汎用的な教訓と言えます。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■日本商工会議所「LOBO調査(2026年7月期結果)」■
https://cci-lobo.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2026/07/LOBO202607.pdf

以上(2026年8月作成)

pj10126
画像:terovesalainen-Adobe Stock