目次
「入社1年目の教科書」シリーズでは、皆さんに今のうちから身に付けてほしい社会人の基礎を分かりやすくまとめたものです。服装・挨拶のマナーや電話の出方など初歩的な内容から、契約のルールなど少し専門的な内容まで、幅広く紹介していますので、参考にしてください。
また、印刷して新入社員に配るためのPDF版も用意していますので、よろしければこちらもご活用ください。
1 最初が肝心! 社会人の常識やマナー
社会人になって皆さんが最初に接する相手は、会社の上司や先輩です。上司や先輩は新たに仲間となった皆さんを優しく出迎えてくれるでしょうが、その優しさに甘え過ぎず、社会人の常識やマナー、ルールを守って「大人として」行動することが大切です。
1)「会社の一員である」ことを自覚し、常識やマナーを大事にしよう
フレンドリーな雰囲気の会社、服装などのルールが比較的緩い会社などはたくさんありますが、どんな会社であっても「会社の一員である」という自覚を持って仕事をしないといけないのは同じです。社会人の常識や服装・挨拶のマナーを紹介します。
2)仕事のルールは「就業規則」を読んで理解しよう
会社の「就業規則」には、就業時間やお給料の計算方法など、働く上での基本的なルールが定められています。皆さんがまず押さえるべきは「服務規律」です。服務規律には「就業時間中は仕事に専念しなければならない」など、仕事をする上での基本的な心構えが書かれています。
一般的な就業規則の項目や、服務規律の内容を紹介します。
2 電話やメールの基本を押さえよう
電話やメールは、ビジネスの基本ツールです。最初は使い方に戸惑うかもしれませんが、マナーなどを早めに押さえておくと、電話やメールの内容(商品やサービスに関する具体的な話)に気を回す余裕が出てきて、仕事への理解が深まります。取引先を訪問したり、議事録を作成したりするときも、同じようにポイントを押さえて臨むことで、会話の内容に集中できます。
1)電話は怖がらずに出よう
電話応対では、「取り次ぎのために自社の商品名や部署、担当者を覚えられる」「リアルなビジネストークを、敬語を交えながら体験できる」といった、ビジネスの基礎体力が身に付きます。怖がらずに電話に出るためのコツを紹介します。
2)パソコンのキーボードは「静かに」叩こう
パソコンのキーボード操作に慣れていないと、見慣れない配列に悪戦苦闘。やたらに力強くキーを押してしまうので、タイピング音がうるさくなりがちです。大切なのは正しい姿勢なので、パソコンを使うときの視線の高さや、キーボード操作で指を置く基本位置を紹介します。
3)メール独特の「お作法」を覚えよう
メールは今でもビジネスにおける主力の連絡手段です。メールは長く使われてきたツールなだけに、宛先(TO、CCなど)や言い回しについて独特の「お作法」があるので、正しいマナーを身に付けましょう。メールの送り方や誤送信時の対応のポイントを紹介します。
4)訪問する際は、しっかりと事前準備をしよう
初めて取引先などを訪問するときというのは誰でも緊張しますが、「時間を取ってくれた相手に感謝し、決して準備を怠らないこと」を忘れなければ基本的には大丈夫です。取引先などを訪問する際の準備やマナーを紹介します。
5)席次の基本を覚えて、臨機応変に対応しよう
席次の基本は、偉い人が座る「上座」が、出入口とは反対の奥の席です。応接室、会議室、自動車、列車、エレベーターにも席次がありますが、時と場合によることもあります。席次についてのマナーを紹介します。
6)議事録で必要なのは速記ではない。事前準備を怠らないようにしよう
議事録の作成と聞くと、会議の進行と同時に会話をまとめていく「速記」をイメージする人がいますが、実は違います。必要なのは、アジェンダの事前共有、会議中の要点のまとめ、会議後の確認です。議事録作成のポイントを紹介します。
3 お金の流れが分かれば会社のことが見えてくる
ビジネスでは、商品やサービスを売ったり、必要な備品や設備を買ったりと、さまざまなお金の流れがあります。皆さんの「お給料の支払い」も、そうした流れの1つといえるでしょう。自社のお金の流れを見れば、例えば「自社が今、どのような活動に注力しているのか」などが、他社のお金の流れを見れば、例えば「今後も取引関係を継続できそうか」などが分かります。
1)自分のお金と会社のお金を明確に分けよう
社会人になると、仕事のために会社のお金を使うようになります。そのときに大切なのは、自分のお金と会社のお金を明確に分けることです。お金に関する基本的なルールを紹介します。
2)給与明細を見れば、お給料の支払いの流れが分かる
お給料はもらうと、とてもうれしいものです。ただ、社会保険料や税金など、お給料から引かれる金額があることをご存じでしょうか。お給料の額や内訳などを示す「給与明細」の仕組みを紹介します。
3)源泉徴収票を見れば、1年間のお給料の支払い状況が分かる
源泉徴収票は、1年間の年収や税金・社会保険料の情報が記載された大切な書類です。住宅ローンの申請や確定申告、転職時に必要となるため、捨てずに保管しましょう。
4)3つの財務諸表を押さえれば、会社のお金の動きが分かる
財務諸表は会社のお金の流れを表す重要な書類で、社会人はこれが読めて初めて一人前といわれます。会社がもうかったか損をしたかを示す「損益計算書」、会社がどのようにお金を調達し何に使っているかを示す「貸借対照表」、会社の現金の流れを示す「キャッシュフロー計算書」の読み方を紹介します。
5)金融リテラシーの基本を押さえて、もっとお金に詳しくなろう
稼いだお金を株式や投資信託などの金融商品に投資する資産形成。今では、高校の授業にも「金融教育」が組み込まれています。ただ、具体的に何をしたらよいのか分からないこともあります。そこで、資産形成の基本について紹介します。
4 そろそろ独り立ち。半歩先ゆくビジネスのルール
入社したての頃は、上司や先輩が皆さんに付いて仕事を教えてくれますが、ある程度時間がたつと、やがて1人で仕事をするようになります。そのときに注意しなければならないのが、契約違反、情報の取り扱い、取引先への営業などで、知らず知らずのうちに法律に違反してしまうことです。
1)契約の内容をしっかり把握しよう
仕事は、相手とさまざまな「契約」をしながら進めます。契約は相手との約束であり、守らなかった場合はペナルティーがあるので注意が必要です。契約の基本的なルールを紹介します。
2)ビジネス文書は何のために作成されるのかを知っておこう
ビジネス文書は、誠実にトラブルなくビジネスを進めるために必要なものです。納品書、検収書、注文書、見積書などさまざまなビジネス文書があって最初は混乱しますが、「何のために作成されるのか」を意識していれば、トラブルなく使いこなすことができます。ビジネス文書の種類や使用目的などを紹介します。
3)情報の取り扱いには細心の注意を払おう
仕事をしているとたくさんの情報を取り扱いますが、どんな情報であっても慎重に取り扱い、相手の会社や個人、取引内容を特定できるような情報は話さないのが基本です。情報の取り扱いに当たって押さえておくべき6つの注意事項を紹介します。
4)営業では、正しい情報を相手に魅力的に伝えよう
商品やサービスを売りたいからといって、話を盛り過ぎるような不当なセールストークなどをするのは法律違反です。営業で必要なのは、相手のニーズを捉え、正しい情報を魅力的に伝える力です。法律に違反しないセールストークなどのポイントを紹介します。
5)取引先には無理なお願いをしないように気を付けよう
ビジネスでは、こちらが有利な立場(発注する側など)にあるときほど、無理なお願いをしがちです。取引内容に注意しないと、「下請法」という法律に抵触し、自社の社会的な信用を傷つけてしまう恐れがあります。皆さんが守らなければならない義務や禁止事項を紹介します。
6)著作物の侵害などをしないために注意点を知っておこう
プレゼン資料やチラシを作るとき、ネット上で公開されている動画や画像を無断で使用すると、著作権の侵害になることがあります。動画や画像を使用する際のルールを紹介します。
5 働き過ぎてもダメ! 健康に働きましょう
仕事熱心なのは良いことですが、働き過ぎで体を壊してしまっては意味がありません。残業は必要最低限にして、休みを取り、健康診断も受けましょう。自分の健康をコントロールできてこそ、一人前の社会人といえるのです。
1)残業は上司の許可を得た上で、最低限にとどめよう
労働時間は、「原則1日8時間、1週40時間までが上限」と決められています。どうしても仕事が終わらないときは残業が認められますが、必ず事前に許可を得ることが大切です。残業の定義や申請するときのマナーを紹介します。
2)年次有給休暇(年休)は積極的に取得しよう
会社には、入社後6カ月以上勤務すると、お給料をもらいつつ休みを取れる「年次有給休暇(年休)」という制度があります。正社員の場合、1年間に5日の年休を取るのが決まりなので、積極的に取得しましょう。年休のルールや申請するときのマナーを紹介します。
3)健康診断の受診など健康管理のルールを知っておこう
会社には、社員が病気やけがをせずに安心して働けるように配慮をする義務があり、社員には自ら健康管理に取り組む義務があります。健康診断もこの一環です。皆さんが守るべき健康管理のルールを紹介します。
以上(2026年2月更新)
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画像:Mariko Mitsuda
【朝礼】「変化」を歓迎し、新しい風を呼び込む
【ポイント】
- 新入社員は、「自分が口を出すことではない」と思わず、素直な違和感をぶつけてほしい
- 既存社員は、後輩からの疑問を「ルールだから」と一蹴せず、一緒に考えてほしい
- 「今までこうだったから」という慣習を打ち破るのは、「外の視点」を持った存在
皆さん、おはようございます。そして、今月から私たちの仲間に加わった新入社員の皆さん、数ある企業の中から、我が社を選んでくれたことを心から嬉しく思います。今日、私が皆さんに伝えたいことは、「新しい風を歓迎し、変化を恐れずに楽しもう」です。
新入社員の皆さんは、今、大きな期待とそれ以上の不安を抱えていることでしょう。「早く仕事を覚えなければ」「失敗してはいけない」と、焦っているかもしれません。しかし、私から皆さんにお願いしたいのは、「素直な違和感をぶつけてほしい」ということです。仕事を進める中で、「この作業は本当に必要なんだろうか?」「このやり方は非効率ではないか?」と感じる瞬間が必ずあるはずです。そのときに、「新人の自分が口を出すことではない」と、言葉を飲み込まないでください。実は、その違和感こそが、今の我が社が成長するために最も必要な糧なのです。
長く組織にいると、どうしても「今までこうだったから」という慣習に縛られ、思考停止に陥りがちです。この慣習を打ち破り、新しい価値を生み出すのは、「外の視点」を持った存在です。皆さんの新鮮な目、若い感性、そして時に「なぜ?」と問いかける素直さが、凝り固まった私たちの組織に新しい風を吹き込み、アップデートさせてくれる。私はそう確信しています。
そして、既存社員の皆さん。今日から、皆さんは「教える立場」になります。しかし、それ以上に「学ぶ立場」であってほしいと思います。後輩たちの素朴な疑問に対し、「これがルールだから」と一蹴するのは簡単です。しかし、そこで立ち止まり、「確かに、なぜこうなっているんだろう?」と一緒に考えてみてください。新入社員を迎え入れるのは、単に人員を増やしたいからではありません。私が本当に期待しているのは、皆さんが自らを見つめ直し、進化するチャンスにしてほしいからです。慣れたやり方を変えるのは面倒かもしれません。しかし、変化することを止めた瞬間に、組織の成長は止まります。
新入社員の皆さんは、失敗を恐れず、皆さんの視点を大事にして思ったことをどんどんぶつけてください。既存社員の皆さんは、その風を大きな心で受け止め、共に変化を楽しんでください。共に頑張りましょう。
以上(2026年4月作成)
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画像:Mariko Mitsuda
【PDFで印刷可能】企業が押さえておきたいハラスメント対策
全ての企業には、職場の「ハラスメント」を防止するため、一定の防止措置(相談窓口の設置、相談があった場合の事実確認など)の実施が義務付けられています。
リソースが限られる中小企業では、日々の業務に追われ、このあたりの体制整備までなかなか手が回らないのが実情でしょう。 しかし、ハラスメントに対する法規制や社会の目は年々厳しくなってきています。万が一トラブルが起きた際、対応が後手に回ると、訴訟や信用失墜などで甚大なダメージを負うかもしれません。
そこで、ハラスメントの種類や防止措置のポイントを「ハラスメント対策ガイド」として、印刷できるPDFにまとめました。相談窓口の設置・事実確認・行為者処分・被害者ケア・再発防止に至るまで、基本をしっかり復習できますので、ぜひご活用ください。
なお、このPDFは次の6本のコンテンツを再編したものです。ハラスメント対策について、興味のある項目だけを知りたい場合、こちらをご確認ください。
以上(2026年3月作成)
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画像:日本情報マート
人間ドックに育児サポート……「人事労務」で100年続く会社へ
目次
1 【SDGs】人事労務に関係する4つの目標
誤解を恐れずに言えば、かつての中小企業では、社員にかけるお金はコスト(人件費)として捉えられ、さらに慢性的な人手不足も相まって、「人事労務」の仕事が他の業務よりも後回しにされがちでした。
しかし、時代は変わりました。「人的資本経営」という言葉もあるように、今では社員のスキルや能力を「資本」として捉え、そこにかけるお金は「コストでなく投資である」という考え方が浸透しつつあります。社員を大切にしなければ会社は生き残っていけませんから、ある意味、これからの会社の未来は人事労務にかかっているともいえるのです。
ただ、人事労務の仕事内容は幅広く、見直すにもどこからメスを入れればいいか分からないという人も多いでしょう。そこで、この記事では、
SDGs(持続可能な開発目標)をベースに、人事労務の重要な取り組みを洗い出すこと
をご提案します。SDGsでは、「地球の社会課題に向き合い、変化に対応し、持続可能な社会を実現する」という観点から、17の目標が設定されています。次の図表は、そのうち人事労務に関係する4つの目標と具体的な取り組みの例を挙げたものです。以降で、図表の各取り組みのポイントを紹介するので、御社の人事労務の状況を確認する参考情報としてご活用ください。

2 目標3「すべての人に健康と福祉を」
目標3は、年齢に関係なく全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進するというものです。「健康経営」という言葉もあるように、社員の健康は、会社が経営を続けていく上で、必ず守らなければならないものです。
1)過重労働の防止
残業(時間外労働)は、月45時間を超えると健康障害のリスクが高まり、月100時間(または2~6カ月平均80時間)を超えると過労死の危険があるとされています。近年は「時間外労働の上限規制」など、過重労働を防ぐための法整備が進んでいますが、例えば、社員が会社に隠れて残業する「サービス残業」の問題には対処できているでしょうか。
まずは、社員の労働時間を正しく管理できているか改めて確認しましょう。例えば、手書きの勤怠管理表などで社員の労働時間を管理している会社では、定期的に自己申告の内容とオフィスの施錠記録やPCのログ情報を照合するなどして、実態を調査する必要があります。
勤怠管理システムを導入している場合も、必要に応じてシステムの見直しを検討しましょう。例えば、オフィス向け入退室管理システム(スマートロック)の中には、記録される入退室のログ情報を勤怠管理の目的で使用できるタイプなどがあり、より正確に労働時間を管理できます。
過重労働の防止については、次の記事などが参考になります。
2)人間ドックなどの実施
会社には年1回以上、定期健康診断を実施する義務があります。ですが、法律で決められた「法定項目」を社員に受診させるだけでは、自覚症状のない病気などを見落とすこともあります。
そこで、法定項目以外の「法定外項目」を含む人間ドックなどを実施することを検討します。人間ドックは受診項目が多いだけでなく、医療機関によっては、例えば、脳疾患や心臓疾患、性別に特有のがん(例:子宮がん)など、分野を絞って集中的に検査できる所もあります。
忙しくてなかなか人間ドックの時間が取れないという場合もあるでしょうが、最近は、約30分で脳ドックの受診が終わる「スマート脳ドック」など、あまり時間のかからない検査も登場しています。
人間ドックなどの実施については、次の記事などが参考になります。
3)“ちょっとした体調不良”の改善
過重労働や病気に注目するあまり、肩こり、腰痛、ストレスといった社員の“ちょっとした体調不良”をおろそかにしていないでしょうか。「たかが肩こり」などと考えて放置すると、社員が仕事に集中できずミスをしたり、体調が悪化したりして、欠勤よりも大きな損失を会社にもたらしかねません。こうした状態を「プレゼンティーイズム」といいます。
定期健康診断の結果を確認するだけでなく、例えば社内アンケートで「あなたの仕事に悪影響を及ぼしている体調不良は?(肩こり、腰痛、ストレス、疲れ目(ドライアイ)、寝不足など)」を聞いたりすると、社員の体調不良の状況を「見える化」できます。
体調不良の改善方法はさまざまです。例えば、ヘルシーな社食サービスを導入したり、「1日の歩数」を計測するアプリを導入したり、昇降式のスタンディングテーブルを導入して立った状態でも仕事ができるようにしたりといった方法があります。
“ちょっとした体調不良”の改善については、次の記事などが参考になります。
3 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
目標5は、性別に関係なく、誰もが平等に活躍できる社会を実現しようというものです。「女性の権利向上」をイメージするかもしれませんが、「性別に関係なく平等に」が趣旨なので、男性、LGBTQなど性的少数者に対しても同じように配慮が必要です。
1)ハラスメントの防止
都道府県労働局や労働基準監督署への「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、2024年時点で5万4987件に上ります(厚生労働省「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)。社員の権利意識の高まりなどの背景もありますが、会社以外の機関にこうした相談が多く寄せられるのは、会社の「ハラスメント防止措置」がちゃんと機能していないからかもしれません。
会社は「ハラスメント相談窓口」を設置し、社員からの相談に応じて、事実確認、行為者の処分や被害者のケア、再発防止策の実施などを適正に行う義務があります。「相談窓口が周知されているか」「経営者が把握していない相談内容がないか」などを、いま一度確認しましょう。
また、2026年10月1日からは、カスハラ(カスタマーハラスメント、顧客等による嫌がらせ)、就活セクハラ(就活生に対するセクシュアルハラスメント)についてもハラスメント防止措置が義務付けられるようになります。こちらの準備も早めに進めておきましょう。
ハラスメントの防止については、次の記事などが参考になります。
2)妊娠・出産や育児のサポート
「育休(育児休業)」などの法整備が進み、妊娠・出産や育児を理由に退職することなく、仕事を続ける人が増えてきました。ただ、これまで育休の取得がなかった会社などは、いざ社員から相談があると、実務に不慣れなゆえに対応を誤ってしまう恐れがあります。
まずは、法制度の内容を正しく押さえましょう。近年は育児・介護休業法の法改正が続いていて、特に2025年度は、「子の看護等休暇」の対象となる子の年齢が「小学校就学前 → 小学校3年生修了まで」に引き上げられる、3歳以上小学校就学前の子を育てる社員のための「柔軟な働き方を実現するための措置等」が新設されるなど、大幅な改正がありました。法改正対応について見落としがないか、いま一度確認しておきましょう。
妊娠・出産や育児のサポートについては、次の記事などが参考になります。
4 目標8「働きがいも経済成長も」
目標8は、経済成長を持続させつつ、全ての人が働きがいと十分な収入のある仕事に就ける社会を実現しようというものです。働きがいと十分な収入を確保するには、休みや仕事の生産性にも目を向ける必要があります。
1)賃上げの検討
社員の収入を確保する最もシンプルな方法は「賃上げ」です。日本労働組合総連合会(連合)では、毎年春闘での賃上げ率(平均賃金方式、定期昇給相当分を含む)を公表していますが、直近(加重平均)では、2024年度が5.10%(中小企業は4.45%)、2025年度が5.25%(中小企業は4.65%)という高水準の賃上げが実施されています(連合「2024年春季生活闘争第7回(最終)回答集計結果」「2025年春季生活闘争第7回(最終)回答集計結果」)。
一方で、多くの経営者は「先行きが不透明で、簡単には賃上げができない……」と不安を抱えています。賃上げは簡単でも、賃下げは「労働条件の不利益変更」等の問題があって難しいので、不安になるのも無理はありません。そこでご提案したいのが、助成金を上手に活用し、賃上げによるコストアップに対応することです。例えば、中小企業の場合、有期パート等(契約期間の定めがある非正規雇用の社員)の基本給を3%以上増額すると受け取れる「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)」などがあります。
2)休暇取得の促進
仕事のパフォーマンスを上げるためには、適度な休みも必要です。ですが、社員の中には「周囲が忙しそうなのに自分だけ休めない」などの理由から、休暇を取得しない人がいます。
休暇取得を促進する方法としては、まず「取得のハードルを下げること」が挙げられます。例えば、年休(年次有給休暇)は、必要な手続きを踏めば、「半日単位」「1時間単位」で与えたり、一定日数まで会社が取得時季を計画的に割り振ったりすること(計画的付与)ができます。
また、会社が独自に定める「特別休暇」の場合、取得時季や目的を明確に設定することで取得しやすくなるケースもあります。例えば、本人の誕生日(または誕生月)に取得できる「誕生日休暇」、子どもの学校行事に参加する場合に取得できる「学校行事休暇」などがあります。
休暇の取得促進については、次の記事などが参考になります。
3)ペーパーレス化の促進
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進行などを背景に、紙からデータへの動きが本格化しています。印刷などの手間を減らせば業務のスピードアップが図れますし、紙の消費量を減らすことでコスト削減や環境保全にもつながります。
ペーパーレス化の対象となる書類はさまざまですが、人事労務に関して言うと、例えば社員の入社時に交付する労働条件通知書は、社員の同意があればメールなどで交付できますし、法定書類(社会・労働保険関連、税務関連)の提出も「電子政府の総合窓口(e-Gov)」を使って電子申請で行えます。
2026年度に制度が拡充された「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」も積極的に活用していきましょう。例えば、働き方改革や賃上げに対応するため、生産性向上・業務効率化に役立つITツール(ソフトウェアやAIを含む)を導入する場合、その導入経費の一部が補助されることがあります。
ペーパーレス化の促進については、次の記事などが参考になります。
5 目標10「人や国の不平等をなくそう」
目標10は、国内や国家間の不平等を是正しようというものです。会社の場合、社員が雇用形態、年齢、国籍などによって不利益を被ることがないように注意する必要があります。
1)同一労働同一賃金の実現
同一労働同一賃金は、簡単に言うと「同じ(価値の)仕事をしている社員には、同じ額の賃金を支払わなければならない」という考え方です。正社員とパート等の待遇格差を是正する観点から2020年4月に法制化されましたが、いまだに実現に至っていない会社は少なくありません。
同一労働同一賃金のポイントは、「仕事内容、能力、成果などの違いに基づく待遇格差は違法でない」という点です。例えば、正社員、パート等の役割分担に基づいて基本給や手当の額に差を付けるのは問題ありません。ちなみに会社はパート等から求められた場合、待遇格差の内容や理由を説明する義務があるので、いざというとき合理的な説明ができるよう準備しておきましょう。
なお、パート等の待遇改善は重要ですが、それが逆にパート等に不利益に働くケースもあるので注意が必要です。例えば、厚生年金保険の被保険者数が常時50人超の会社(2035年10月以降は全ての会社が対象)に勤めるパート等は、一定の要件を満たすと社会保険に加入し、社会保険料を負担する義務が生じます(家族の扶養に入れなくなる)。
同一労働同一賃金の実現については、次の記事などが参考になります。
2)高齢社員の活用
会社には、社員を65歳まで雇用するための措置を講じる義務、70歳まで働ける機会を確保する努力義務があります。人間は基本的に加齢によって身体機能が変化するので、高齢社員を雇用し続ける場合、その点を考慮する必要があります。
例えば、平衡機能の低下(直立姿勢時の重心動揺が大きくなり、転倒しやすくなる)や聴力の低下(騒音時の声などが聞こえにくく、「危ない」と言われても気付かない)はけがにつながる恐れがあるので、定期的に健康診断や体力チェックテストを実施して社員の状態を把握するなど、対策を講じる必要があるでしょう。
なお、高年齢者雇用安定法では、社員が70歳まで働ける機会を確保するための選択肢として、フリーランス化なども認めています。フリーランスは、労働時間という概念がなく自分のペースで働きやすい面もあるので、社員が定年を迎えたら、雇用という選択肢にこだわらず、フリーランスとして力を貸してもらうというのも1つの方法です。
高齢社員の活用については、次の記事などが参考になります。
3)外国人の活用
今や外国人が働いている会社は日本でも珍しくありませんが、初めて外国人を雇用する会社などは、日本人を雇用する場合との違いが分からず、戸惑ってしまうかもしれません。
結論から言うと、日本で働く外国人には労働基準法などの労働関係法令が適用されるので、基本的な扱いは日本人と変わりません。ただ、それぞれの外国人が持つ「在留資格」によって、行える活動や日本で働ける期間に違いがあるので、その点には注意が必要です。
また、就業時間中に礼拝のため席を外したり、食べてはいけない食材の関係で他の社員がお菓子を勧めた際にトラブルになったりすることがあるので、宗教・文化の違いについてはある程度把握しておく必要があります。難しい面もあるかもしれませんが、外国人が働きやすい社内体制や関係性を構築した結果、高い成果を上げている会社も数多くあります。
外国人の活用については、次の記事などが参考になります。
以上(2026年3月更新)
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画像:metamorworks-Adobe Stock






