【2025年度版】社員に関する法定義務の一覧表

1 まずは全企業共通の法定義務から押さえる

「人」に関するルールは複雑で、10人以上で就業規則の作成義務、50人以上でストレスチェックの実施義務などのように決まっています。抜け漏れなく行うために一覧表で確認しましょう。この記事では各種労働法に基づく人事労務の法定義務の内容を、

  1. 全企業共通のもの
  2. 業種や事業形態(法人、個人)などによって変わるもの

に分けて一覧表で紹介します。

2 人事労務の主な法定義務など(2025年4月1日時点)

早速ですが、人事労務の主な法定義務など(2025年4月1日時点)は次の通りです。一覧表は社員数または該当者数の昇順となっており、社員数で見る項目には「●」印を、該当者数で見る項目には「○」印を付けています。また、2025年4月1日施行の項目は「赤字」にしています。

法定義務などの具体的な内容は、( )内の法令を参照してください。また、安衛法(労働安全衛生法)の「安全衛生管理体制」に係る法定義務については、対象業種を一部省略して記載しています。詳しくは、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」などをご確認ください。

■厚生労働省「職場のあんぜんサイト(安全衛生キーワード)」

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo_index01.html

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以上(2025年3月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:unsplash

【規程・文例集】役員退職金規程で必ず確認すべき3つの条項

1 役員退職金規程を整備する際の留意点

役員退職金の支給にはさまざまなルールがありますが、「役員退職金規程」を整備することで、客観的に計算方法などを示すことができます。とはいえ、インターネットで公開されているひな型をそのまま使うと、自社の実情に合わず、思わぬ問題が生じることがあります。

そこで、この記事では、ひな型でよく出てくる条文をどう見直せばトラブルになりにくいのかについて、弁護士が解説します。紹介するのは、特に重要な定めである、

適用範囲、支給算定基準、支給時期

の3つです。各条文の赤字部分に注目してください。

2 適用範囲

1)ひな型でよく見る条文

第●条(適用範囲)

本規程は役員の全員に適用する。

第●条(非常勤役員の取り扱い)

非常勤役員については、その功労実績に基づき本規程以外の取り扱いをすることができる。

2)見直しのご提案

第●条(適用範囲)

本規程は常勤役員(職員に準じて勤務する役員および1週間のうち決まった曜日に勤務する役員をいう)に適用する。

第●条(削除)

3)弁護士からのワンポイントアドバイス

全ての役員(取締役または監査役)が対象であることを前提とするひな型がありますが、実際は社外役員に対する役員退職金などの取り扱いを、別途定めることが必要になるケースが多いです。そのような事態に対応するため、退職金規程の適用範囲を常勤役員(非常勤役員)に限定した方がよいでしょう。

3 支給算定基準

1)ひな型でよく見る条文

第●条(支給算定基準)

退職金の支給は、退任時の最終報酬月額を基準として、退任する役員が歴任した役位ごとに次の計算式により得られる額を累計し、その総額とする。ただし、総支給額に1000円未満の端数が生じたときは1000円に切り上げるものとする。

退任時の最終報酬月額×役員在任期間(年数)×各役位別の功績倍率

2)見直しのご提案

第●条(支給算定基準)

退職金の支給算定基準は、歴任した役位ごとに次の計算式により得られる額を累計し、その総額を基準とする。同一の役位に在任中、報酬月額に変動がある場合は、そのうちの最高報酬月額を基準とする。ただし、役位ごとの支給基準額に1000円未満の端数が生じたときは1000円に切り上げるものとする。

役位別の報酬月額×各役位の役員在任期間(年数)×各役位別の功績倍率

3)弁護士からのワンポイントアドバイス

条文例は退任時の最終報酬月額を基準に退職金を計算していますが、役位ごとの報酬月額を基準とするように修正しています。役位ごとに基準額を算出しているので透明性が高まっています。また、役位在任中に報酬月額の変動がある場合は、各役位に係る最高額または最終額を用いる例が多いです。

4 支給時期

1)ひな型でよく見る条文

第●条(支給時期)

退職金は、役員が業務の引き継ぎを完全に終了させ、かつ、会社に対して返済すべき債務があるときは、その債務を返済した日から○カ月以内に一時金として支給する。

2)見直しのご提案

第●条(支給時期)

退職金は、役員が業務の引き継ぎを完全に終了させ、かつ、会社に対して返済すべき債務があるときは、その債務を返済した日から○カ月以内に一時金として支給する。ただし、経済界の景況、会社の業績いかん等により、当該役員またはその遺族と協議の上、支給の時期、回数、方法について別に定めることができる。

3)弁護士からのワンポイントアドバイス

ひな型でよく見る条文では、一時金として支給時期が記載されています。しかし、会社の状況によっては、一時金として支払うことが難しい場合もあるので、支払時期について協議の余地を残しておくと無難です。

以上(2025年2月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 小出雄輝)

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育児関係の新しい給付金

令和7年4月、雇用保険制度に育児関係の新しい給付金が創設されます。「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」です。本稿では、この二つの給付金について概要をお伝えします。

1 出生後休業支援給付金

子どもが生まれた直後の一定期間に、夫婦がそれぞれ14日以上の育児休業を取ると、最大28日間、出生後休業支援給付金が支給されます。「一定期間」とは、父親は子の出生後8週間以内、母親は産後休業後8週間以内です。

給付金の額は、休業開始前賃金の13%相当です。従来の育児休業給付金または出生時育児休業給付金(休業開始前賃金の67%)に上乗せされ、給付率は計80%となります。

○出生後休業支援給付金のイメージ

出生後休業支援給付金のイメージ

※厚生労働省の資料「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」より

育児休業給付金、出生時育児休業給付金、出生後休業支援給付金はいずれも非課税です。さらに育児休業中は、健康保険・厚生年金の保険料が免除され、勤務先から給与が支給されなければ雇用保険料も発生しません。このため、給付率80%で、手取り10割相当の給付となります。

また、次の場合には、配偶者が育児休業を取らなくても、出生後休業支援給付金が支給されます。

出生後休業支援給付金が支給されます

※厚生労働省のリーフレット「2025年4月から『出生後休業支援給付金』を創設します」より

2 育児時短就業給付金

2歳未満の子供を育てるために、時短勤務を行い収入が減った場合に、それを補うのが育児時短就業給付金です。性別に関係なく受け取ることができます。給付率は、時短勤務中に支払われた賃金額の10%です。ただし、時短勤務前の賃金額を超えないように、給付率が調整されます。

育児時短就業給付金は、原則として時短勤務を始めた日の属する月から、時短勤務を終えた日の属する月までの各月に支給されます。次の事例では、4/1~4/30(支給対象月①)から3/1~3/31(支給対象月⑫)まで12か月間、育児時短就業給付金が支給されます。

育児時短就業給付金が支給されます

※厚生労働省のリーフレット「2025年4月から『育児時短就業給付金』を創設します」より

育児時短就業給付金は、次の①②の両方を満たす人が対象です。

  • ①2歳未満の子を養育するために時短勤務をする雇用保険の被保険者である
  • ②育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて時短勤務を開始した、
    または、時短勤務開始日前2年間に被保険者期間が12か月ある

そのうえで、次の③~⑥の要件をすべて満たす月について支給されます。

  • ③初日から末日まで続けて雇用保険の被保険者である月
  • ④1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
  • ⑤初日から末日まで続けて、育児休業給付また介護休業給付を受給していない月
  • ⑥高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月

3 さいごに

出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金は、性別にかかわらず、労働者が仕事と子育てを両立できるよう、経済的に支援するのが目的です。どんな小さな企業であっても、従業員が希望したら、給付金を受給するための申請をハローワークに対して行わなければなりません。

どちらの給付金もしくみが複雑なので、厚生労働省のウェブサイトで詳細を理解しておくとよいでしょう。

※本内容は2025年2月10日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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弁護士が注目する2025年度の法務3大ニュース

1 2024年度・2025年度の3大ニュース

2024年度は、フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行による「フリーランスの保護」、改正景品表示法の施行による「不当表示等に関する自主的な是正の促進や、違反行為に対する抑止力の強化等」が行われました。また、知財一括法の施行により、「デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化」が図られました。

2025年度は、情報流通プラットフォーム対処法による「誹謗中傷防止のための大規模プラットフォーム事業者への規制」、流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法の改正による「物流効率化と特定事業者への規制強化」が行われます。また、建設業法等の改正により、「建設業の処遇改善・働き方改革・生産性向上」も図られます。2024年度・2025年度の法務3大ニュースは次の通りです。

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2 2024年度の総括

2024年度の各種法改正は、いずれも主に中小企業にとって大きな影響がありました。特に、フリーランス・事業者間取引適正化等法が施行されたことで、フリーランスに業務を発注する会社の多くが、体制の見直しを迫られたのではないでしょうか。

また、一般消費者向けの商品やサービスを販売・提供する会社としては、景品表示法違反による直罰規定の新設や課徴金制度の見直し等で制裁の強化もあり、不当表示等を行った場合の社内体制の構築も求められるようになりました。

その他、知財一括法により、特にスタートアップや中小企業を中心として、商標登録のハードルが下がり、また、データ保護が強化されて、新事業の展開が後押しされたことと思います。

3 2025年度の主なニュース

1)誹謗中傷防止のための大規模プラットフォーム事業者への規制

インターネット上における誹謗中傷被害を防止するため、2025年5月16日までに、従来のプロバイダ責任制限法に代わり、情報流通プラットフォーム対処法が施行されます。この法律の規制の対象となるのは、

「大規模特定電気通信役務提供者」(大規模特定電気通信役務を提供する者として、総務大臣に指定された事業者。いわゆる大規模プラットフォーム事業者のこと)

で、主にSNSや匿名掲示板等の運営事業者が該当します。

「誹謗中傷は主に大規模プラットフォームで行われるので、被害を食い止めるには大規模プラットフォーム事業者に迅速かつ十分な対応を義務付けるべきだ」というのが同法の趣旨で、主要なものとして次の5つの義務が設けられます。

  • 削除申出窓口・手続の整備・公表
  • 削除申出への対応体制の整備(十分な知識経験を有する者の選任等)
  • 削除申出に対する判断・通知(原則、一定期間内)
  • 削除基準の策定・公表(運用状況の公表を含む)
  • (削除した場合)発信者への通知

「1.削除申出窓口・手続の整備・公表」「2.削除申出への対応体制の整備」「3.削除申出に対する判断・通知」は、

投稿の削除対応の迅速性を求めるもの

です。大規模プラットフォーム事業者には、利用者からの削除申請を受け付ける窓口や手続を整備し、その情報を公表することが義務付けられます。また、誹謗中傷等の情報を削除してほしいと申出があった場合、

十分な知識経験を有する「侵害情報調査専門員」が遅滞なく調査を実施し、一定期間内にその情報が権利を侵害しているかを判断、その後、結果を申請者に通知

しなければなりません。

「4.削除基準の策定・公表」「5.発信者への通知」は、

削除対応に関する運用状況の透明性を求めるもの

です。一般の利用者からしても、どのような投稿が削除の対象となるのか明確でなければ、自由に情報発信を行うことができません。そのため、大規模プラットフォーム事業者は、

削除対象となる投稿がどのようなものか、どのような行為があった場合にアカウントが停止されるのか、基準を策定した上で事前に公表

する義務を負います。そして、投稿の削除やアカウントの停止を行った場合、その旨を発信者に対して通知しなければなりません。

これらの義務に違反した場合、大規模プラットフォーム事業者は、行政指導・行政命令を受けたり、行政命令に違反した場合には刑事罰を受けたりします。

2)物流効率化と特定事業者への規制強化

いわゆる「2024年問題」による、物流停滞への懸念や死亡・重傷事故の増加に対処するため、2025年4月1日より、改正流通業務総合効率化法・改正貨物自動車運送事業法が施行されます。

まず、改正流通業務総合効率化法のポイントは次の通りです。

  • 全ての事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課す
  • 1.の取り組み状況について国が判断基準を策定し、指導・助言、調査・公表を実施する
  • (一定規模以上の事業者に対し)中長期計画の作成や定期報告等を義務付ける
  • (一定規模以上の荷主に対し)物流統括管理者の選任を義務付ける

2024年4月1日より、物流業界にも労働基準法の「時間外労働の上限規制」が適用されるようになり、物流の停滞が懸念されています。そのため、

  • 物流の効率化
  • 商慣行の見直し
  • 荷主・消費者の行動変容

を行って、荷待ち・荷役時間の短縮や積載率の向上等を図ることで、この問題を乗り切ろうというのが改正法の趣旨です。

具体的には、「荷主(発荷主、着荷主)」「物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)」それぞれに、次のような措置を講じる努力義務が課せられます。

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続いて、改正貨物自動車運送事業法のポイントは次の通りです。

  • 運送契約の締結等の際、所定の事項を記載した書面の交付等を義務付ける
  • 元請事業者に対し、実運送体制管理簿の作成を義務付ける
  • 下請事業者への発注適正化について努力義務を課し、一定規模以上の事業者に対し、管理規程の作成や管理者の選任を義務付ける

真荷主と運送事業者が運送契約を締結するとき、また、運送業務を受託した事業者(元請事業者)がその仕事をさらに下請けに出すときには、原則として以下の事項を記載した書面を交付しなければなりません。

  • 運送の役務の内容およびその対価
  • 運送の役務以外の役務が提供される場合は、その内容および対価
  • その他省令で定める事項

また、これと併せて、元請事業者には、

実際の運送体制を記録した管理簿(実運送体制管理簿)の作成・保存が義務付けられ、下請け発注に関する一定の健全化措置を講ずること

も義務付けられます。

3)建設業の処遇改善・働き方改革・生産性向上

2024年6月14日に建設業法等の改正法が公布され、一部の規定を除き、2025年12月13日までに施行される予定です。今回の建設業法等の改正のポイントは次の通りです。

  • 従業員の処遇改善
  • 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
  • 働き方改革と生産性向上

建設業は、住居やオフィス、商業施設の建設や地域のインフラ構築を担う重要な役割がある一方で、他産業より賃金が低く、就労時間も長いため、担い手の確保が困難な状況にあります。そのため、従業員の処遇改善・働き方改革・生産性向上を促し、建設業の担い手を確保しようというのが改正法の趣旨です。

「1.従業員の処遇改善」では、

建設業者に対して従業員の処遇を確保する努力義務を課すとともに、国が処遇確保に係る取り組み状況を調査・公表

していくことが求められます。これと併せて、

著しく低い労務費等による見積もりや見積もり依頼を禁止

することで、適正な労務費等の確保を目指しています。また、「2.資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止」のために、契約時のルールとして

  • 資材高騰等請負額に影響を及ぼすリスクの情報は、受注者から注文者に提供すること
  • 資材が高騰した際の請負代金等の「変更方法」を、契約書記載事項として明確化すること

が義務付けられます。

その他、長時間労働を抑制するために著しく短い工期による契約締結を禁止したり、ICTを活用した生産性の向上を求めたりする等、「3.働き方改革と生産性向上」の定めも置かれています。

4 今後の対応について

2025年度も、2024年度と同様に、様々な法改正が行われます。

まず、情報流通プラットフォーム対処法については、インターネット上の誹謗中傷の被害防止と被害者の迅速な救済が期待されています。主に大規模プラットフォーム事業者を対象としていますが、その他のプラットフォームを運営する事業者も、同法の考えを理解した上で、自社として誹謗中傷等にどう向き合うかを検討していくとよいでしょう。

改正流通業務総合効率化法・改正貨物自動車運送事業法については、実際に運送を担う末端の事業者が適正な報酬を得られるようになることが期待されています。多重下請構造が出来上がっている物流業界が対象ということで、影響を受ける会社も多いでしょうから、自社に求められる取り組みの内容を確認しておきましょう。

建設業法等の改正についても、趣旨はおおむね同じです。今後の建設業の担い手を確保するためには、従業員に対して処遇の改善や働き方改革を促すことが必要ですから、法改正を機に、自社の体制を見直していきましょう。

以上(2025年3月作成)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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税理士が注目する2025年度の税務3大ニュース

1 2024年度・2025年度の税務3大ニュース

2024年度は、賃上げ促進税制の拡充や、事業承継を円滑に実行させることを趣旨とした、事業承継税制の特例措置に係る計画提出期限の延長の他、交際費から除外することができる社外飲食費の金額基準の引き上げが行われました。

2025年度は、中小企業の年800万円までの所得に対して適用される軽減税率が2年延長され、所得の大きい中小企業に対する軽減税率が見直されます。また、防衛力の抜本的強化を図るための安定的な財源確保の観点から、従来の法人税の付加税として「防衛特別法人税(仮称)」が創設(適用は2026年4月1日以後に開始する事業年度から)されます。さらに、中小企業の事業承継を円滑に実行させることを趣旨とした事業承継税制が、2024年度に引き続き見直されます。

2024年度・2025年度の税務3大ニュースは次の通りです。

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2 2024年度の総括

2024年度は、「賃上げ促進税制の拡充」など、賃上げや設備投資の促進などを意図した様々な改正がなされたものの、その効果は限定的であったといわれています。特にこの10年における経済環境や、それに応じた企業行動が大きく変化したことも影響し、これまでの法人税改革は意図した効果を上げてこなかった旨が税制改正大綱にも明記されました。

今後は税制も含めた様々な政策手段、中小企業も含めた持続的な経済成長に向けた手当てを期待したいところです。

3 2025年度の主なニュース

1)一定の中小企業に対する法人税率(軽減税率)の延長

一定の中小企業については、年800万円までの所得に対して、通常より低い法人税率(軽減税率:15%)が適用されます。軽減税率の適用期限はもともと2025年3月31日までに開始する事業年度とされていましたが、適用期限が2年延長され、

2027年3月31日までに開始する事業年度

とされました。なお、同じ中小企業でも、

所得が年10億円を超える会社については、軽減税率が15%から17%にアップ

します。

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2)防衛特別法人税(仮称)の創設

防衛力の抜本的強化や防衛費を安定的に確保することを目的として、「防衛特別法人税(仮称)」が創設されます。

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防衛特別法人税とは、基準法人税額から年500万円を差し引いた金額に対して4%の税率で課税するものです。この防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。ただし、

基礎控除として常に年500万円が控除されるため、

所得金額が2400万円以下であれば防衛特別法人税は発生しない

ことになります。

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3)事業承継税制の特例措置に係る役員就任要件の見直し

現行の法人版事業承継税制(特例措置)においては、「後継者が、贈与の日まで3年以上継続して役員等であること」という役員就任要件が設けられています。この要件について、

贈与の直前において役員等であること

というように、役員就任期間が緩和されました。

現行の法人版事業承継税制(特例措置)の適用期限が2027年12月31日であるため、この要件を満たすには、逆算すると2024年12月31日(適用期限の3年以上前)までには、後継者が贈与承継会社の役員等に就任する必要がありました。今回の改正により、適用期限の直前まで事業承継税制の特例措置の適用が検討・実施できるようになります。なお、個人版事業承継税制についても同趣旨の見直しがなされます。この改正は、2025年1月1日以後の贈与より適用されます。

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4 今後の対応について

2025年度においても、今回ご紹介した制度の他、スタートアップへの投資促進や活力ある地域経済の実現を後押しする税制など、多くの税制改正が予定されています。今回ご紹介した「防衛特別法人税」など増税方向の改正については、自社に影響があるかどうか、もしあるならキャッシュフローにどの程度の影響を及ぼすのかを、事前に確認しておくことが重要です。

一方で、税務上の優遇措置には適用するための要件が厳格に定められていたり、所定の書類の保存が必要な場合があったりするため、事前の準備が大切です。必要な書類をそろえていないことなどを税務調査で指摘され、思わぬ税負担を強いられることもあるので、特に改正された規定については早めに準備を進め、適用する上での判断などに迷いがある場合には、税理士などの専門家に相談し、適切に手続きを進めましょう。

以上(2025年3月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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社労士が注目する2025年度の労務3大ニュース

1 2024年度・2025年度の3大ニュース

2024年度は、特にパート等関連では、明示する労働条件の範囲が広がったり(「無期転換」に関するものを含む)、社会保険の適用拡大が進んで、中小企業で働くパート等の多くが社会保険の加入対象となったりしました。また、いわゆる「2024年問題」として、建設業、自動車運転業務などに、時間外労働の上限規制が適用されました。

2025年度は、育児・介護に関する支援制度、高年齢者の働き方に関する重大な制度改正が実施されます。また、近年、社会問題となっている、いわゆる「自爆営業」について、厚生労働省のパワーハラスメント防止指針に対応が明記され、防止に向けた対策が求められる予定です。

2024年度・2025年度の労務3大ニュースは次の通りです。

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2 2024年度の総括

2024年4月1日より、労働契約の締結・更新時に明示すべき労働条件として、「就業場所・業務の変更の範囲」「更新上限の有無と内容」「無期転換申込機会、無期転換後の労働条件」が追加されました。特に無期転換後の労働条件の整備への対応が万全ではない会社も目立つところです。

同じく2024年4月1日より、「時間外労働の上限規制」が、長らく適用を猶予されていた建設業、自動車運転業務、医師、砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)にも適用されるようになりました。いわゆる「2024年問題」です。業務体制の変更を余儀なくされた会社も多かったのではないでしょうか。

また、2024年10月1日より、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入するパート等の範囲が拡大されました。改正前は、厚生年金保険の被保険者数が「常時100人超」の会社に雇用され、一定の条件を満たすパート等が対象でしたが、この被保険者数の要件が「常時50人超」に引き下げられました。なお、パート等については現在、年収の壁、国民年金の第3号被保険者問題、税制上の扶養範囲の見直しなどが議論されており、今後の動向に注視する必要があります。

3 2025年度の主なニュース

1)育児・介護に関する支援制度の拡充

2025年4月1日(一部は10月1日)より、

働きながら育児・介護をする従業員に対する支援制度が拡充

されます。内容は図表2の通りですので、要点を押さえつつ、必要に応じて就業規則や労使協定の見直しを行いましょう。なお、今回の改正により、育児・介護の支援制度等について、従業員への個別周知や意向確認などが必要になってきますが、このあたりについては、面談を実施する担当部署に負担が偏らないよう留意することも大切です。

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また、育児関連では支援制度の拡充に伴って、2025年4月1日より、「共働き・共育て」の推進などを目的とする雇用保険給付「出生後休業支援給付金」「育児時短就業給付金」が新設されます。

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もともと雇用保険には、最大で休業開始前賃金の67%相当額を支給する「育児休業給付金」という給付がありますが、図表3の給付が新設されることで、保障がより手厚くなります。 

2)高年齢者の働き方に関する改正

2025年4月1日より、

定年後も働くことを希望する従業員は全員、継続雇用(65歳まで)の対象

になります。これまで、労使協定(2012年度以前に締結されたものに限る)により、一定年齢以上の従業員を、継続雇用の対象から除外すること(雇用確保義務に対する経過措置)が認められていましたが、この経過措置が終了します。

さらに、同じく2025年4月1日より、

雇用保険給付の高年齢雇用継続給付の最大支給率が「15%→10%」に引き下げ

られます。高年齢雇用継続給付は、賃金が「60歳時点の75%未満」に低下した状態で働く場合に支給される雇用保険給付で、この支給率が次の通り変動します。

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3)パワーハラスメント防止指針に「自爆営業」が追加(予定)

現在(2025年1月31日時点)、政府内で、

パワーハラスメント防止指針に、パワハラの1つとして「自爆営業」を追加

することが検討されています。自爆営業とは、会社が使用者としての立場を利用し、従業員に不要な商品の購入を強要したり、ノルマを達成できない場合に自腹で契約を結ばせたりすることです。過去に、郵便局員が年賀はがきの販売ノルマなどにより、うつ病を発症した事案が労災認定されたことで、自爆営業という言葉が世に知れ渡ることになりました。

指針には、自爆営業が次の3要素を満たすと、パワハラに該当する旨が盛り込まれる予定です。

  • 優越的な関係を背景とした言動であること
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
  • 従業員の就業環境が害されるものであること

もともと労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)により、会社にはパワハラの防止措置が義務付けられています。「自爆営業」が指針に具体的に明記されることで、防止措置の責任が明確化するため、具体的な防止策を講じる必要が出てきます。

4 今後の対応について

2025年度のトピックスには、労働力の減少を防ぐための改正が多く含まれています。

今回の育児・介護休業法の改正は内容が多岐にわたり、就業規則の見直し、従業員への周知など、実務面でもいろいろと対応が必要になるでしょう。ただ、両立支援に積極的に取り組むことは、会社にとっても「子育てサポート企業」としての認定(くるみん認定など)が受けやすくなったり、「両立支援等助成金」を受け取れたりといったメリットがあります。従業員の離職を防止する観点からも重要な改正ですので、これを機に社内の体制を見直していきましょう。

高年齢者については、高年齢雇用継続給付が縮小されるのに加え、現在、在職老齢年金(働きながら老齢厚生年金をもらうと、一定の場合に年金が減額される制度)の支給停止調整額の引き上げが検討されています。「公的給付があるから」という理由で、継続雇用する従業員の賃金を定年前よりも低く設定する運用も、次第に難しくなっていくかもしれません。従って、高年齢者に対する雇用制度・処遇の見直しも進めていくべきでしょう。

以上(2025年3月作成)
(監修 社会保険労務士法人AKJパートナーズ)

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育児介護休業法が改正されたと聞きました。3歳の子を養育する労働者にどのような措置・確認をしなければならないのでしょうか?

QUESTION

育児介護休業法が改正されたと聞きました。3歳の子を養育する労働者にどのような措置・確認をしなければならないのでしょうか?

ANSWER

柔軟な働き方を実現するための措置を講じなければなりません。

解説

令和7年10月1日より、事業主に新たな措置を講じることが求められました。

対象:3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(労使協定を締結することで入社1年未満の労働者及び1週間の所定労働日数が2日以下の労働者からの利用申出については拒むことが可能)

内容:法令が定める次の措置の中から「2つ以上」の措置を選択して講じた上で、労働者がそのうち1つを選択して利用すること

  • 1-始業時刻変更等の措置
  • 2-在宅勤務等の措置(10日以上/月)
  • 3-保育施設の設置運営等
  • 4-就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
  • 5-短時間勤務制度

これらの措置を選択する際は過半数労働組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。

また3歳未満の子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は柔軟な働き方を実現するための措置として上記で選択した制度(対象措置)に関する以下の事項の周知と制度利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。

意向確認については、家庭や仕事の状況が変化する場合があることを踏まえ、労働者が選択した制度が適切であるか確認すること等を目的として、上記の時期以外(育児休業後の復帰時、短時間勤務や対象措置の利用期間中など)にも定期的に面談を行うことが望ましいとされております。

※本内容は2025年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.93190

画像:Mariko Mitsuda

2025年4月に改正育児介護休業法が施行されたと聞きました。介護休業制度に関しては具体的にどのような措置・確認をしなければならないのでしょうか?

QUESTION

2025年4月に改正育児介護休業法が施行されたと聞きました。介護休業制度に関しては具体的にどのような措置・確認をしなければならないのでしょうか?

ANSWER

40歳等でのタイミングで介護に関する情報提供をしなければなりません。

解説

労働者が介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関す下記の事項について情報提供しなければなりません。

  • 1- 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等の制度の内容について
  • 2- 介護休業・介護両立支援制度等の申出先
  • 3- 介護休業給付金に関すること

情報提供の方法は「面談・書面交付・FAX・電子メール等」のいずれか(FAX・電子メールは労働者が希望する場合に限る)とされております。

また、情報提供に当たっては「介護休業制度」は各種制度の趣旨・目的(介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するものなど)を踏まえて行うことや情報提供の際に、併せて介護保険制度について周知することが望ましいとされております。

※本内容は2025年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.93180

画像:Mariko Mitsuda

カスタマー・ハラスメント(カスハラ)に関して、企業の義務や責任などを定めた法令等はありますか?

QUESTION

カスタマー・ハラスメント(カスハラ)に関して、企業の義務や責任などを定めた法令等はありますか?

ANSWER

カスタマーハラスメント(カスハラ)を直接的に規制する法律は現時点ではありませんが、企業の義務や責任を定めた法令やガイドラインがいくつか存在します。
なお、企業には労働契約法第5条に基づき従業員の安全を確保する義務(安全配慮義務)があり、カスハラから従業員を守る責任があります。

解説

カスタマー・ハラスメント(カスハラ)を直接的に規制する全国的な法律は現時点では存在しませんが、企業には労働契約法第5条に基づき従業員の安全を確保する義務(安全配慮義務)があり、カスハラから従業員を守る責任があります。

また、カスタマー・ハラスメント(カスハラ)に関して、次のような企業の義務や責任を定めた法令やガイドラインがいくつか存在します。

・労働施策総合推進法

  • ⇒この法律は、職場におけるパワーハラスメント防止措置を企業に義務付けていますが、その防止指針において、顧客からの著しい迷惑行為に対する企業の対応が推奨されています。

・厚生労働省のガイドライン

  • ⇒厚生労働省が作成した『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』では、企業が取るべき具体的な対策や対応方法が示されています。

・労働者災害補償保険法

  • ⇒厚生労働省が定めた「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」には、顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた場合や企業が対応策を講じなかったことなども労災の認定対象として示されています。

なお、条例になりますが、東京都で全国初の「カスハラ防止条例」が制定されています(2025年4月施行)。この条例では、カスハラ行為の禁止などが明記されています。

今後の法整備の動向にもご留意いただきながら、上記法令やガイドラインに則して適切な対応や体制を整えることが重要です。

※本内容は2025年2月28日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.95080

画像:Mariko Mitsuda