ヒント5[仕事1]:事前にいくら伝えても、入社後のギャップは必ずある/武田斉紀の『人が辞めない会社、10のヒント』(6)

1 本人が自信をもって入社しても、日々の仕事にギャップはある

今シリーズの狙いは、経営者、人事担当者、現場の皆さんのお悩みである「社員を採ってもすぐに辞めてしまう上に、そもそも採れない」という課題を解決すること。『人が辞めない会社、10のヒント』と題して、毎回1つずつご紹介していきます。

『人が辞めない会社』に変わるための課題、その原因と解決策は会社によってさまざまです。

今回ご提示するヒントが皆さんの抱える原因に明らかに当てはまらない場合は、読み飛ばしてくださって結構です。ですが、ヒントの1~9までが該当しなくても、10が当てはまるかもしれません。

全社共通の原因もあれば、部署ごとの固有の原因も存在することでしょう。原因が1つだけというケースは少ないので、何回分か読んでいただければ「これはうちにも当てはまるな」というものを見つけていただけるのではと思います。

第2回から前回の第5回まで、『人が辞めない会社』に変わるための「採用段階」におけるヒントについてお話ししてきました。第6回からは入社後のヒントについてです。

さて、採用し内定を出した候補者が、無事に入社してくれたとしましょう。いざ配属されてみると、本人にとって「採用時に聞いていたイメージと違った」「こんなはずじゃなかった」となるケースは珍しくありません。皆さんにも覚えがあるのではないでしょうか。

いくら入社までに丁寧に情報を伝えてきたとしても、入社後の配属現場でのイメージに100%ギャップがないということはありません。

たとえ、アルバイトからそのまま正社員になって、同じ職場に配属されたとしてもです。アルバイトと正社員の仕事内容の違い、期待の違いからギャップは生まれます。

ましてや一般の新卒採用や中途採用のルートで入社した場合、もっとギャップはあるでしょう。

会社側は、入社者にとって誰しも「事前のイメージとのギャップはあるもの」と想定して対応するべきなのです。

2 新卒採用、中途採用、入社後ギャップが生まれるそれぞれの理由

新卒であれば、職種別採用でもなければ本人希望の職種に配属されるとは限りません。そのギャップから、「自分がやりたい仕事ではない」「こんなはずじゃなかった」とモチベーションが下がり、早期に辞めてしまう可能性があります。

もし、配属が本人希望職種の通りだったとしても、先ほども触れたようにアルバイトと正社員では任される仕事内容も期待も異なります。

本人のイメージより内容や期待が大きすぎて「自分には無理だ」と思わせてしまうこともあれば、逆に「この程度の仕事しか任せてもらえないのか」と落胆することもあるでしょう。

そこは丁寧に説明してあげてください。例えば「最初に任せる仕事はこれこれで、できれば半年、1年後にはこうなってほしいが、このように育てていくので安心して欲しい。先輩たちも最初は戸惑うけれど、1年後にはみんな一人前に育っているよ。その先にはこんな世界が待っているよ」と。

中途採用の場合は、経験やスキルを期待しての職種別採用が主体でしょうから、仕事上のギャップは少ないだろうと思われるでしょうか。実はそうとも限りません。

同じ職種であっても会社が違えば大なり小なり業務内容は異なります。職場環境や文化の違いもあるでしょうし、入社前に描いていたイメージと完全一致する可能性は低いでしょう。

また、「三つ子の魂百まで」といいますが、社会人として就職した1社目での経験の影響は大きいもの。良かれ悪かれ“基準”になりがちです。前職での経験やルールが邪魔をして新しい職場にすぐに慣れないこともあります。新卒のように気軽に相談できる同期も少なく、中途入社者のほうが「こんなはずじゃなかった」に陥りやすいのかもしれません。

繰り返しますが、会社側は、どんなルートで入社した人でも「事前のイメージとのギャップはあるもの」と想定して対応するべきです。

特に最初が肝心。早い人だと初日で結論を出してしまうかもしれません。どうすればいいでしょうか?

3 初日から丁寧に、少しずつ間隔を空けつつ定期的なフォローを続ける

少しの時間でもいいので、初日終了後に本人の感想を聞く時間を設けましょう。

他の人がいる場で「どうだった?」と投げかけても、なかなか本音は聞けません。表情や態度だけで判断するのも危険です。本音が表に出やすいか否かには個人差がありますから。

できればいわゆる1on1(ワン・オン・ワン、1対1)の形で設定できるといいでしょう。本人に振り返りの感想を短い文章にしてもらって、それを共有しながら進めるのもいいかもしれません。文章にすることで本人の感情、本音が予め整理できます。

入社初日から数日を研修に充てている場合は、初日終了後面談を担当した人で集まって、改善点を翌日以降の研修に反映できるといいでしょう。その上で「昨日皆さんに初日の感想を聞いて、こういう意見がいくつか聞かれたので、今日はこんな感じに少し変えてみますね」という一言をもらえるだけで、入社者は安心できるものです。

「(新卒、中途に関わらず)新人の導入にそこまで慎重かつ丁寧に対応しなければいけないの?」と思われるでしょうか。

こうしたフォローは本人を甘やかすためのものではありません。新たな職場への不安は、誰しも大なり小なり感じるもの。細やかなフォローは、その不安や誤解を解消し、防げる退職を減らすためであり、一日も早く本来の仕事に取り組んでもらうために必要なことなのです。

もし、皆さんが卒業した学校のよく知る後輩が、あるいはあなたの家族や親戚が、あなたがいるからと同じ会社に入社してきたのだとすればどうですか?入社日にちゃんと来ているか気になるでしょう。初日を終えてどんな感想を抱き、どんな気持ちでいるか心配ではないでしょうか。

後輩や家族を迎えるのと同じ気持ちで新しいメンバーを迎えることができれば、彼らは心強いでしょう。たとえ「こんなはずじゃなかった」と思えるできごとがあったとしても、すぐに辞めようとは発想しないでしょう。その前に、一度相談してみようと思うのではないでしょうか。

入社後すぐに人事主導の導入研修がある場合は、採用活動から直接接してきた担当者がフォローするほうが本人も本音を言いやすく、相談もしやすいでしょう。でも、配属先で過ごす時間が増えてくると、なかなか人事だけではフォローしきれなくなってきます。

そこで入社時点で、入社者一人ひとりに“メンター”と呼ばれる相談相手を、現場に近い人から選んで付けておくといいでしょう。

職場の先輩や上司でもいいのですが、彼らはそうでなくても仕事上フォローする立場にあります。仕事でのトラブルの場合は、かえって相談しづらくなる場合もあります。

できれば近い部署、近い年代で、本人と相性の良さそうな同性のメンターがお薦めです。

相性が心配であればメインとサブの2人体制でも構いません。本人には何かあれば遠慮せず相談しやすいほうに声を掛ければいいと伝えておいてください。上司や職場の仲間にも、メンター制度と担当者については予め理解を得ておいてください。

そうして「入社初日」、「研修が続くのであれば中日や終了後」に人事担当者から。「現場での初日」、「1週間後くらい」にメンターや職場の上司から声をかけて1on1ミーティングを実施してみましょう。

4 一人ひとりの面談後の記録を人事が一元管理し、必要に応じたフォローを

入社者一人ひとりの面談後の記録は、人事で一元管理しておきましょう。各部署にいる間は上司が閲覧できるようにし、退職を予感させる変化があれば双方が気付けるようにするのです。最近ではAIがコメントから退職可能性を予測してくれたりもします。

上司が変化に気付けば、まず自ら声をかけてみてもいいでしょうし、かけづらいようなら人事に気軽に相談できる仕組みにします。現場の上司は毎日接しているだけに変化に気付きにくいかもしれません。メンバーの悩みへの対応スキルにも差があるでしょう。

人事が先に変化に気付けば、上司にフィードバックして対応方法を相談する。あるいは上司との関係が原因と思われる場合は、先に本人に直接話を聞いてから対応を考えます。

職場の先輩やメンターにまで個人の面談情報を全て共有するのは難しいかもしれません。彼らには「気になる変化があれば上司または人事、どちらでもよいので相談してほしい。報告して欲しい」と伝えておきましょう。

情報が漏れなくタイムリーに集まる仕組みを作っておくことが重要です。

入社者の側からすると、「常に誰かが見てくれている安心感がある」「複数の相談相手がいるので、ケースバイケースで相談しやすい」「誰に相談しても最終的には人事(入社時に世話になった人など)も知ってくれているのだと思える」。

そうして「人事」「職場の先輩や上司」「メンター」が随時情報を共有しながら、本人が一日も早く仕事に集中できる環境づくりに努めましょう。こうした丁寧かつ定期的なフォローがあればあるほど、本人はすぐに辞めないはずです。

少子化や人手不足の中、時間とお金をかけて採用した人材は“宝”です。“宝”だから甘やかしましょうと言っているのではありません。“宝”だから、大切に扱ってほしいのです。

人事で一元管理しておく一人ひとりの面談後の記録は、その他の人事情報とも連携させることで、長期的な人材育成にもつなげることができます。その辺りの話はまた改めて。

入社初日から一人ひとりを個別にフォローするとともに、当面は頻繁にフォローできる体制をつくりましょう。人事と現場、さらにはメンターを設定して三者が協力しながら、スムーズな導入を目指してください。

第6回を最後までお読みいただきありがとうございました。次回も[仕事]についてのヒントをご紹介します。

毎回ご紹介するヒントを参考にしながら、自社を退職する一人ひとりの「辞める理由」と、働いている一人ひとりの「辞めない理由」を丁寧に拾ってみましょう。見えてきた自社ならではの“課題”を解消し“強み”を活かせれば、『人が辞めない会社』へと変われるはずです。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

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※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。

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以上(2025年12月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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【資金繰り】不確実な時代の資金繰りを安定させるポイントとは?

1 適切な資金繰りはできていますか?

経営が行き詰まる最大の原因は資金ショートですから、

資金繰り表を作成し、適切な資金繰りを管理することでリスクを回避することが基本

です。物価高や国際情勢の不安定化などで経営の先行きが不透明さを増している現在、資金繰りがより重要になってきていることを、経営者は痛感していることでしょう。

資金繰り表は最低でも3カ月先、理想的には1年先まで作成しておきたいものです。また、一般的な資金繰り表は月次ですが、資金繰りがタイトな場合は、日次の資金繰り表(日繰り表)を作成します。また、資金繰り表はキャッシュ・フロー計算書と混同されがちですが、両者は、

  • 資金繰り表:将来のお金の流れを把握して経営のかじ取りに活かす内部資料であり、いわゆる直接法(主要な取引ごとに資金の増減を加減算する方法)で計算されることが多いです。
  • キャッシュ・フロー計算書:過去のお金の流れを社外に報告するための財務諸表でいわゆる間接法(損益計算書の利益から一定の項目を調整する方法)で計算されることが多いです。

といったように異なります。

この記事では、月次資金繰り表の例を見ながら、実際の作業やポイントを解説していきます。押さえるべき主なポイントは次の通りです。

  • 資金繰り表の記載内容を理解する
  • 予測と実績の差異を分析し、その後の資金繰りに活かす
  • 月末の必要現金を確保する
  • 資金繰りが悪化する原因を知る(売上の急拡大など)

2 月次資金繰り表のポイント

まずは、月次資金繰り表の例をご確認ください。どういったことが読み取れるでしょうか?

月次資金繰り表の例

1)前月繰越金

最初の月(上記の例では8月の100,000)の前月繰越金(1)は、

実際の現金残高を記入します。銀行口座や小口現金出納帳の合計額を確認

しましょう。それ以降の月は、前月の翌月繰越金(8)と同額が記入されるようにします。

2)営業収入と営業支出

営業収入の項目(2)には、

営業部門などから販売実績や販売見込みの情報を入手

して記入します。過去の銀行口座などの入金を観察することも、得意先の販売傾向の予測に役立ちます。販売見込みは可能な限り正確な予測を入手し利用することが理想的ですが、将来のシナリオを考えるうえで楽観・中庸・悲観の3つの数値を用意することもあります。担当者からの報告を反映するだけでなく、経営者としての経験則を活かして見極めるようにすることが大切です。すでに発生している売掛金・受取手形などの営業債権については、回収スケジュールに基づき資金繰り表に反映します。

営業支出の項目(3)には、

過去の銀行口座や小口現金出納帳の出金を基に記入

します。過去の出金内容から網羅的に支出項目を抽出できるため、銀行口座や小口現金出納帳の情報は重要です。すでに支払義務が生じている買掛金・支払手形などの営業債務については、支払スケジュールに基づき資金繰り表に反映します。なお、リモートワークから出社回帰といった勤務形態の変更などによってオフィス家賃や通勤手当などの固定費が変わることもあるので、そのときの状況に合わせて精査していきます。

3)投資収入と投資支出

投資収入の項目(4)には、

設備投資計画、稟議書や取締役会議事録を基に、店舗閉鎖などによる重要な資産の売却情報を記入

します。

投資支出の項目(5)には、

設備投資計画、稟議書や取締役会議事録を基に、設備投資の購入情報を記入

します。

いずれも、取引の内容によっては見積額と実績が大きく乖離(かいり)することがあるため、可能な限り精度の高い情報を得るようにします。

4)財務収入と財務支出

財務収入の項目(6)には、

新規の借入れや増資の金額を記入

します。

財務支出の項目(7)には、

借入金の返済・利払いは、金銭消費貸借契約書などに添付されている返済予定表を基に、借入金の返済と利払いを記入

します。

3 差異分析こそノウハウの種

資金繰り表は、過去の実績を基に将来予測を作成します。そのため、

実績が判明した段階で予測と実績の差異を分析し、その後の資金繰り表の作成に活かす

ことが不可欠です。中小企業においては資金繰り表自体を作成していないこともあるかもしれませんが、経営者が資金繰りに積極的に関与することで、今まで知らなかった課題や取引先の状況変化のサインが見えてくることがあります。

例えば、いつもは期日通り行われていた取引先からの入金が遅れていた場合には、取引先の財務状況の悪化のサインかもしれません。このような小さなサインがあれば、将来考えられる営業収入への悪影響を、実際の資金繰り表に当てはめて調整していきましょう。

4 月末必要現金を増やして安全弁に

資金繰り表を作成したら、各月末残高(翌月繰越金)に注目します。資金ショートを防ぐためには、各月末残高(翌月繰越金)が月末必要現金を上回っていることが必須条件です。月末必要現金は、翌月上旬の支払合計額に一定のバッファーを見込んで決めるもので、通常は月売上の1~2カ月分程度の現金があることが望ましいといわれます。ただし、現在のような不確実性の高い時代には、重要な得意先の売掛金の回収が遅れた場合なども想定して、資金繰りに支障を来さないような現金を準備しておくことが目安になるでしょう。

5 資金繰り悪化の代表的なケース

1)赤字の継続

販売不振が続き、入金が減少する一方で、それに見合うだけの費用を減らすことができず出金が一定額のままの場合、赤字(損失)が継続します。その結果、会社の現金が減り続け、資金繰りが悪化していきます。

2)売上の急拡大

売上が急拡大した場合、それに合わせて資金も豊富になると考えがちです。これは中長期的には正しいですが、短期的には正しくないことがあります。なぜなら、入金と支払いのタイミングによっては支払額の方が多額となり、資金繰りが一時的に苦しくなることがあるからです。

例えば、新規取引先に商品を販売する場合、出荷の時点で売上は計上されますが、代金が入金されるまでには一定の期間がかかります。また、その商品を仕入れたり、配送したりするためのコストがかかっています。さらにいえば、新規獲得に関わる人件費などのコストもかかっています。以上から、売上が急拡大するときには資金繰りに注意する必要があります。

3)販売できないと見込まれる棚卸資産

棚卸資産は、原則として、得意先に引き渡されることで売上が計上され、その結果、入金につながります。しかし、棚卸資産として会社の手元にある間は、現金が棚卸資産に形を変えていると解釈できるため、棚卸資産を長く保有すると自由に使用できない現金が増え、資金繰りの悪化原因となり得ます。また、陳腐化や品質の低下により価値が低くなり、販売見込みがなくなった棚卸資産は、さらに資金繰りに悪影響を与えます。したがって、棚卸資産の保有期間や保有量を減らすことも、資金繰りの改善に役立ちます。

以上(2025年11月更新)
監修(税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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【PDF】年末に増える迷惑電話対策用「印刷して貼れる職場ポスター」

印刷して職場に掲載できるポスターです。

今回は、年末に増える迷惑電話への対策用に、社員に守ってほしい電話応対の3つのポイントをまとめました。


こちらからポスターのPDFをダウンロードできます。社員への呼びかけのため、職場などに貼ってご活用ください

こちらからダウンロード

以上(2025年12月作成)

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画像:日本情報マート

社会保険の適用拡大、ついに全企業へ! 会社の保険料負担はいくらに……?

1 社会保険の適用拡大……いよいよ全ての会社が対象に?

「社会保険の適用拡大」とは、社会保険(健康保険と厚生年金保険)の被保険者となるパート等の範囲が拡大されることです。ここでいう「パート等」とは、

週の所定労働時間または月の所定労働日数が、正社員の4分の3未満の短時間労働者

のことです。本来、パート等は社会保険の適用対象外ですが、会社が厚生年金の被保険者数について一定の要件を満たし、さらにパート等が労働時間や賃金について一定の要件を満たすと、社会保険に強制加入となります。

現状は、会社とパート等が図表の1.から5.までの要件を全て満たすと、パート等が社会保険に加入するルールになっていますが、2025年6月20日公布の年金制度改正法によって、図表1の赤字部分「1.厚生年金保険の被保険者数」「3.賃金」にメスが入ることになりました。

パート等の被保険者要件

「1.厚生年金保険の被保険者数」については、現状は常時50人超の被保険者を雇用する会社が対象になっていますが、

10年かけて段階的に縮小・撤廃され、2035年10月以降は全ての会社が対象になる

ことになりました。直近では、2027年10月から、被保険者数が常時35人超の会社が対象になります。

厚生年金保険の改正

「3.賃金」については現状、月額8.8万円以上の賃金要件が定められていますが、

年金制度改正法の公布日(2025年6月20日)から3年以内に、この賃金要件は撤廃される

ことになりました。

賃金の改正

2 社会保険料の負担はいくら増えるのか?

1)まずは条件を設定しよう

社会保険の適用拡大によって、今雇用しているパート等が新たに被保険者になると仮定します。会社とパート等の条件を次のように設定してみましょう。社会保険料は、全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」)の「令和7年度保険料額表(東京都)」を用いて計算します。

  • 厚生年金保険の被保険者数:36人(2027年10月から社会保険の適用拡大の対象)
  • 週の所定労働時間:20時間(1日4時間×週5日勤務)
  • 1カ月当たりの賃金:10万4000円(時給1300円×週20時間×4週)
  • 勤務期間の見込み:継続して2カ月を超えて使用される見込み
  • 適用除外:学生でない

なお、時給については、2025年10月から、東京都の地域別最低賃金が1226円になったことを受け、1300円で設定しています。

2)会社の毎月の負担は、パート等1人につき最低でも1万4669円増える

社会保険料は、健康保険料と厚生年金保険料に分かれていて、それぞれ、

標準報酬月額(月例賃金を一定の金額幅で等級別に区分したもの)×保険料率

で計算した額を、会社とパート等が折半して負担します。なお、健康保険料率はパート等が40歳未満の場合と、40歳以上65歳未満の場合とで異なります。1)の条件の場合、

  • 標準報酬月額:10万4000円
  • 健康保険料率:9.91%(40歳未満の場合)、11.5%(40歳以上65歳未満の場合)
  • 厚生年金保険料率:18.3%

となり、会社とパート等の社会保険料の負担は次のようになります。

会社とパート等の社会保険料の負担

図表4の場合、パート等が社会保険に加入することで、会社の負担はパート等1人につき

月額1万4669円(1万5496円)、年額に換算すると17万6028円(18万5952円)増える

ことになります。

3 実務上、会社がすべきことは何か?

1)対象となるパート等に、社会保険料の天引きが発生する旨を説明する

パート等の中には現状、配偶者などの家族(被保険者)の扶養に入っている人(被扶養者)がいます。社会保険の適用拡大によって、被扶養者であるパート等が被保険者になると、

家族の扶養から外れ、これまで負担義務のなかった社会保険料が賃金から天引きされる

ようになります。「社会保険料の負担義務がない」という理由でパート等での勤務を希望している人もいるでしょうから、被保険者要件を満たすパート等には、社会保険の適用拡大が開始される前に、社会保険料の天引きが発生する旨を説明しましょう。

なお、パート等の中には現状、家族の扶養に入っておらず、国民健康保険と国民年金に加入して自分で保険料を払っている人もいます。こちらのパート等についても社会保険料の天引きは当然発生しますが、保険料の負担については、

社会保険料<国民健康保険料+国民年金保険料

と、社会保険への加入によって軽くなるケースが多いようです(国民健康保険料の計算方法が自治体によって異なり、賃金額などによっては負担が重くなることもあるので注意)。

また、社会保険への加入により厚生年金にも同時加入する事になりますので、将来、自身が受け取る年金額にも寄与できる旨を説明に加えるのもよいかもしれません。

2)社会保険料の天引きと併せて、保険給付の変更についても説明する

パート等が社会保険の被保険者になると、社会保険料の負担が発生する代わりに、今まで受けられなかった保険給付を受けられるようになります。

保険給付の比較

ざっくりイメージを説明すると、

社会保険に加入することで、私傷病や出産で休業する期間の生活保障が受けられるようになり、年金については、国民年金に加えて厚生年金保険の給付も受けられる

ようになります。社会保険料の天引きの件と併せてパート等に伝えてあげると親切です。

3)パート等が希望する場合、労働条件の見直しを検討する

パート等が被扶養者の場合、社会保険が適用されると聞いて「扶養から外れたくないから、もう少し労働時間を短くしたい」などと、会社に相談してくる可能性があります。この点、

会社がパート等と合意して労働条件を変更した結果、パート等が被保険者要件を満たさなくなるのであれば、社会保険に加入させる必要はない

ということになります。

一方、パート等の中には「これ以上労働時間を短くすると、賃金が減って生活が苦しいから社会保険には加入する。むしろ社会保険料が天引きされるなら、もっと労働時間を長くして賃金を増やしたい」と考える人もいるかもしれません。基本的な考え方は労働時間を短くする場合と同じですが、パート等に配偶者がいると、

労働時間を長くしてパート等の給与収入(賃金など)が増えると、パート等の配偶者が所得税の配偶者特別控除を受けられなくなるケースがある

ので注意が必要です。労働条件の見直しについては慎重に検討しましょう。

4)社会保険に加入するパート等については、適正に加入手続きを行う

社会保険の適用拡大が施行される前に、パート等の労働条件を見直すのは問題ありませんが、施行後は被保険者要件を満たすパート等を全員、社会保険に加入させなければなりません。

直近では、2027年10月1日から、厚生年金保険の被保険者数が常時35人超の会社が対象になります。これらの会社に被保険者要件を満たすパート等がいる場合、

被保険者要件を満たすようになった日から5日以内(この場合、2027年10月6日まで)に、各パート等の「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を所轄年金事務所に提出

しなければなりません。

5)新しいパート等の採用に向けて、求人案内や労働条件通知書も見直す

社会保険の適用拡大が開始された以降も、新しいパート等を採用することがあると思います。求人案内や労働条件通知書についても忘れずに見直しておきましょう。

求人案内については、職業安定法上、

募集するパート等に社会保険が適用されるかどうかを、必ず明示しなければならない

ので注意が必要です。社会保険の被保険者要件を満たすのにもかかわらず、「社会保険の適用なし」と記載しているのであれば、内容を修正しましょう。

労働条件通知書については、労働基準法上、社会保険の適用について明示する義務まではありませんが、現状の書式に項目があるのであれば、求人案内と同じように内容を修正します。

なお、社会保険の適用について確認するだけでなく、その他の労働条件が妥当かどうかについても、改めて検討してみましょう。例えば、

  • 現状、パート等の所定労働時間を週20時間に設定しているが、本当に週20時間も働く必要があるのか?
  • 現状、パート等1人につき担当業務を2つ設定しているが、担当業務を1つにする代わりにパート等を2人雇用することで、賃金や労働時間をコントロールできないか?

などを考えてみます。ただし、賃金に変更を加える場合は、最低賃金や同一労働同一賃金などの問題に注意が必要です。

直近の社会保険の適用拡大まで約2年あります。「まだ2年もある」と考えがちですが、思っているよりも早く時間は過ぎていくものです。自社が対象となる場合、または対象になりそうな場合は、できるだけ早めに準備を進めるようにしましょう。

以上(2025年12月更新)

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【朝礼】20周年のAKB48! 成功のカギは「ファンが参加する物語」

【ポイント】

  • AKB48は「選抜総選挙」など、「ファンが物語に参加できる仕組み」で人気を博した
  • 「製品やサービスを買ってもらったら終わり!」では、お客さまとの関係はそこで終わる
  • 「お客さまを巻き込んで、長い時間をかけ、一緒に物語を創っていく」という意識が大切

皆さん、おはようございます。皆さんは、アイドルグループの「AKB48」をご存じですよね。彼女たちが活動を開始したのが2005年、2025年12月でなんと結成20周年を迎えます。1つのエンターテインメントが、これほど長く多くの人々を魅了し続けるのは、驚異的なことです。では、その秘密は何でしょうか? 歌が上手いから? ダンスが特別だから? もちろん、それらも要素の1つでしょう。ですが、本質はそこにはないと私は考えています。

AKB48が実施した最も画期的なことは、「ファンが物語に参加できる仕組み」をつくり上げたことです。彼女たちのコンセプトは「会いに行けるアイドル」でした。その象徴が「選抜総選挙」。ファンは、CDに付いている投票券で、自分の応援するメンバー、いわゆる「推し」に投票する。遠くから応援するだけでなく、自分の一票がメンバーの未来を左右する。その仕組みがファンを強く引きつけたのです。

この仕組みづくりには、私たちも大きく学ぶべきところがあります。私たちは、お客さまを単なる「消費者」として見ていないでしょうか? 「製品やサービスを買ってもらったら終わり!」では、お客さまとの関係はそこで終わりです。そうではなく、お客さまを巻き込んで物語を作っていくにはどうすればよいかを考えることが大切です。

何も選抜総選挙のようなイベントをやれ、というのではありません。日々のお客さまとのコミュニケーションの中で、「製品やサービスについて思っていることを聞いてみる」「その声を製品やサービスに少しでも反映してみる」「その結果をお客さまにフィードバックする」、そんなシンプルな取り組みでいいのです。「お客さまの声を聞いたら、こんなことが実現できました!」と言われて、嫌な気持ちのする人はいないでしょう。

そうしたやり取りの中で、お客さまが「この会社をずっと応援したい」とファンになってくれたら、これほど心強いことはありません。「お客さまを巻き込んで、長い時間をかけ、一緒に物語を創っていく」という意識で、日々の仕事に取り組んでみてください。

以上(2025年12月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

2026年は午年~干支のエトセトラ(午編)

1 午(うま)に関する話

1)午年に起きた出来事

2026年の干支(えと)は、「午(うま)」です。前回の午年は、2014年(平成26年)の甲午(きのえうま)でした。2014年は、消費税が5%から8%へ引き上げられた年。また、青色発光ダイオード(LED)の開発で、赤﨑勇氏、天野浩氏、中村修二氏の3人がノーベル物理学賞を受賞したことも注目を集めました。

過去5回の午年に起きた主な出来事や流行語は次の通りです。

主な出来事や流行語

2)午年生まれの有名人

午年生まれの日本の有名人には、次のような人がいます(既に亡くなられた方も含みます)。

午年生まれの有名人

3)うまの話

日本において馬は、農耕や交通、そして戦の場でも欠かせない存在でした。力強く田畑を耕し、人や物を運び、戦場では武将の誇りと共に駆け抜けました。戦国時代には、織田信長の愛馬「白石鹿毛(しろいしかげ)」や上杉謙信の「放生月毛(ほうしょうつきげ)」など、名馬とともに戦った逸話が数多く残されています。戦国武将たちにとって馬は、単なる乗り物ではなく、共に命を預ける“戦友”だったのです。

時代が進むにつれ、馬は人々の暮らしから離れていきましたが、その存在は今なお日本文化の中に息づいています。例えば、正月の神社には、願い事を書いた「絵馬」がずらりと並びます。古来より神々の乗り物とされてきた馬に願いを乗せて届ける。そうした信仰から、今でも多くの人が、初詣で絵馬を奉納しているのです。

近年では、馬と触れ合うことで心を整える「ホースセラピー」も注目されています。馬は感情に敏感な優しい動物であるため、人の緊張を解きほぐし、安らぎをもたらすからです。力と優しさを併せ持つ馬は、今もなお、人と共に生きるパートナーとして活躍しているのです。

2 午(うま)にちなんだスピーチ事例

1)スピーチ事例1

午(うま)にまつわる話として、古代マケドニアの英雄・アレクサンドロス大王と愛馬ブケパロスの逸話があります。ブケパロスは非常に気性の荒い暴れ馬として有名でした。しかし、大王は、ブケパロスに臆病な一面があることを見抜きます。実はブケパロスは、他の馬より感覚が鋭く、自分自身の影におびえて暴れていたのです。そこで、大王はブケパロスの顔を太陽に向けさせ、影を見ないようにすることで、この暴れ馬を落ち着かせ、見事に乗りこなしたのです。

この逸話が教えてくれるのは、「先入観を捨てて、相手を理解すること」の大切さです。皆さんも、部下や同僚が仕事で困っているとき、サポートに入りたいのに的はずれな助言をしてしまった経験はないですか? それは、自分の経験や相手の普段の言動などから、「相手は、〇〇に困っているんだ」と決めつけているからかもしれません。

大切なのは、そうした先入観を捨て、相手が何につまずいているのかを注意深く観察し、聞き取り、理解すること。原因が分かれば、自然と解決策も見えてきます。自分の問題に向き合う場合も同じです。「自分は、〇〇に困っているんだ」というのは、実は思い込みかもしれません。今、置かれている状況を冷静に分析しながら、解決策を探りましょう。

馬たちが蹄の音高らかに駆けていくように、今年は一丸となって前へと進む年にしましょう。そのために、自他問わず抱えている困難や不安としっかり向き合って、理解する姿勢を大切にしていきましょう。それは必ず、チームや組織が前へ進んでいくための一助になります。

2)スピーチ事例2

馬の視野は非常に広く、およそ350度もあるといわれています。これは草食動物として、天敵である肉食獣の接近をいち早く察知するために進化した能力です。また、左右の目で異なるものを見る「単眼視」であるため、草を食べながらでも周囲の変化や危険を常に確認できます。馬は動くものに敏感で、わずかな風や音にも反応します。こうした能力のおかげで、馬は広大な草原でも安全に生活できるのです。

仕事の場でも、同じことが言えます。広い視野を持つことで、変化やリスクを早めに察知でき、柔軟に対応する力が養われます。新入社員や若手社員の皆さんは、まだ視野を広く持つことが苦手かもしれませんが、これは訓練で身につきます。例えば、「自分の仕事には誰が関わっているのか?」「自分の工程が終わったら、次は誰が何をするのか?」「この仕事の成功・失敗はお客さまにどのような影響を与えるのか?」。そういったことを一つずつ考えながら仕事をすると、視野は広がっていきます。

全体像を見ながらも、細かい見落としを拾うことができる「馬の視野」は、働く上でぜひとも理想としたい姿です。今年は干支にあやかって、馬のような視野を持って仕事をすることを心がけていきましょう。

しかし、実は馬にも、真後ろの約10度に死角があるそうです。同じように、たったひとりで全てを見渡すことはできません。弱点は仲間と補い合い、チームでカバーし、一丸となって前進していきましょう。

3 干支の起源・豆知識

1)干支の起源

ところで、「干支とは何か?」と聞かれたら、どう答えますか? 一般的に、干支とは、巳(へび)年や申(さる)年など、12種類の動物を、年ごとに当てはめたものと認識されています。しかし、実は干支(えと=かんし)とは、古代中国に起源を持つ、年月日や時刻、方位などを表す呼称で、10種類の「干」と12種類の「支」を組み合わせた60通りがあるのです。本章では、意外と知られていない干支の起源についてご紹介します。

干支の「干(え)」は10種類あり、十干(じっかん)といいます。

十干

これに陰陽五行思想(木・火・土・金・水)を結び付けて、次のようにも読みます。

陰陽五行思想

一方、干支の「支」は古代中国の天文学で、木星の位置を示すために天を十二分した呼称を起源にしており、十二支といいます。

十二支

さらに、十二支を動物に当てはめて、次のように呼ばれるようになったのです。

動物に当てはめ

中国では、古く殷(いん)の時代(紀元前16世紀~紀元前11世紀ごろ)から、この十干十二支の組み合わせで年月日が数えられたといいます。これが干支の起源です。

2)干支と十二支

現在の日本では、干支は十二支を指すように使われていますが、このように、厳密には干支と十二支とは異なります。本来の干支(十干十二支)の組み合わせは全部で60通りあり、日本で使われている12通りの十二支とは違うのです。干支は年月日や時刻に当てられますが、日本では一般的に年に当てて使われています。満60歳を還暦(かんれき、もしくは生まれ年の干支を「本卦(ほんけ)」と呼ぶことから本卦還(がえ)りともいう)というのは、干支が1周して生まれ年の干支に還(かえ)るところからきています。

ちなみに、2025年の干支は乙巳(きのとみ)、2026年の干支は丙午(ひのえうま)です。自分の生まれ年の干支が何かを、下表で確認してみましょう。

干支と十二支

3)干支が表す歴史年代

干支は年月日などの時間を表す呼称として、古くから使われており、具体的な年がすぐ分かるため、歴史上の事件の呼称としても多く用いられています。

有名な例としては、以下のようなものがあります。

  • 672年  みずのえさる 壬申(じんしん)の乱
  • 1592年 みずのえたつ 壬辰(じんしん)倭乱(わらん)(注)
  • 1868年 つちのえたつ 戊辰(ぼしん)戦争
  • 1911年 かのとい   辛亥(しんがい)革命

(注)日本でいう「文禄(ぶんろく)の役」です。

ちなみに、阪神甲子園球場は、「甲子(きのえね)」年の1924年に完成したことから名付けられています。

以上(2025年12月更新)

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アルコール依存症予備軍と運転リスク(2025/12号)【交通安全ニュース】

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活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

「一日の終わりに飲むお酒が、何よりの楽しみだ」

その習慣、本当に「楽しみ」の範囲で収まっていますか?

近年、本格的なアルコール依存症に至る手前の「アルコール依存症予備軍」と呼ばれる状態にある人が、ハンドルを握るケースが問題視されています。

アルコール依存症予備軍と運転リスク

アルコール依存の兆候と割合

アルコール依存症は、ある日突然なるものではありません。徐々に進行する病気です。

次のようなサインは、お酒に「コントロールされる」ようになっている危険な兆候です。

[兆候の例]

  • ストレス解消や気分転換のために、お酒を飲むことが習慣になっている。
  • 以前よりもお酒の量が増えないと、満足できなくなってきた。
  • 「今日は飲まないぞ」と決めても、つい飲んでしまうことがある。
  • お酒を飲まないと寝付けない、または夜中に目が覚めてしまう。
  • 飲んだ翌日に「何を話したか」「どうやって帰ったか」を思い出せないことがある。
  • 家族や周囲の人から、飲酒について心配されたり、注意されたりしたことがある。

男性におけるアルコール依存症と予備軍の割合

男性におけるアルコール依存症と予備軍の割合

厚生労働省の統計※1によると、依存傾向は男性が高く、男性における「アルコール依存疑い」「潜在的依存者(予備軍)」の割合が6%以上と推計されています。飲酒習慣がある人は他人事と言えない割合です。女性は1%以下と少ないですが、アルコール依存症になりやすい※2と言われています。

※1.出典:厚生労働省「わが国の成人の飲酒行動に関する全国調査2013年」参照
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2013/133061/201315050A/201315050A0002.pdf(2025.11.4閲覧)

※2.出典:厚生労働省「健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~」参照
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-04-003 (2025.11.4閲覧)

「予備軍」の運転に潜む3つの具体的なリスク

「アルコール依存症予備軍」でも運転に深刻な影響を及ぼします。

「予備軍」の運転に潜む3つの具体的なリスク

①常態的な「酒気残り」

毎日の多量飲酒により、肝臓のアルコール分解が追いつかなくなります。「酔いが覚めた」と感じていても「二日酔い運転」のリスクが高くなります。

②離脱症状による集中力の欠如

体からアルコールが抜け始めると、イライラ、手の震え、発汗、不安感といった軽い離脱症状が現れます。

この状態で運転すると、注意力が散漫になり、危険への反応が遅れたり、攻撃的な運転になったりします。

③脳機能の低下による判断ミス

習慣的な飲酒は、判断や理性を司る脳の前頭葉を萎縮させることが知られています。

通常時でも、速度超過や無理な追い越しなど、危険な判断を下しやすくなる傾向があります

アルコールの負の連鎖を断ち切るために

飲酒について見つめ直すことは、ご自身と周囲の大切な人たちを守るための勇気ある行動です。

【個人としてできること】

  • ・現状把握: 飲酒習慣を記録し、どれだけ飲んでいるか把握する。
  • ・休肝日 :「週に2日は必ず飲まない日を作る」など休肝日を設ける。
  • ・専門機関: 飲みすぎなど不安を感じる場合は専門の医療機関などに相談する。

【事業者としてできること】

  • ・アルコールチェック
    乗車前、乗車後のアルコールチェックを対面により厳格に運用する。
  • ・相談しやすい環境づくり
    アルコール依存症が「病気」であることを理解する風土を作り、安全運転管理者や上司が、プライバシーを守った上で相談に乗れる体制を整える。
  • ・健康診断との連携
    定期健康診断での問診・結果で問題がある場合には、必要に応じて産業医や専門医への受診を勧奨する。

以上(2025年12月)

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悩ましいハラスメントの境界線

業務時間外にLINEで連絡する、肩を叩いて励ますなどの行為は、職場のハラスメントに当たるのでしょうか。ハラスメントになるかどうかの境界線について、悩む企業も多いと思います。本稿では、最新の調査結果を参考に、ハラスメントの代表格であるパワーハラスメント(パワハラ)とセクシュアルハラスメント(セクハラ)について、基本的な考え方やハラスメント回避のヒントをお伝えします。

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悩ましいハラスメントの境界線

業務時間外にLINEで連絡する、肩を叩いて励ますなどの行為は、職場のハラスメントに当たるのでしょうか。ハラスメントになるかどうかの境界線について、悩む企業も多いと思います。本稿では、最新の調査結果を参考に、ハラスメントの代表格であるパワーハラスメント(パワハラ)とセクシュアルハラスメント(セクハラ)について、基本的な考え方やハラスメント回避のヒントをお伝えします。

1 グレーゾーン行為に注意

先端機器によるストレスの可視化に取り組むMENTAGRAPH株式会社(本社:東京都中央区)は今年9月、「ハラスメントの基準」に関する調査結果を公表しました。

調査は昨年12月、全国の22~65歳の管理職と非管理職各900人、計1,800人を対象に実施。「ハラスメントの基準に関して当てはまるものを選択してください」という質問では、次のような回答が出ました。

MENTAGRAPH株式会社 「ハラスメントの基準」に関する調査結果

※MENTAGRAPH株式会社 「ハラスメントの基準」に関する調査結果より

同社では、「身体的接触や属性・外見への言及、私的時間への侵入といった“グレーになりやすい行為”」が並んでいると指摘しています。これらの行為については、ハラスメントと感じる人が一定程度いる以上、慎むべきでしょう。

「肩を叩く」「『若いから体力がある』という発言」「髪型・服装への指摘」「業務時間外のLINEでの連絡」「下の名前での呼び捨て」については、非管理職のほうが管理職よりも「ハラスメントに当てはまる」と答えた割合が7.3~3.9ポイントも高く、大きなギャップがありました。同社は「現場(非管理職)はリスクとして敏感に捉える一方、管理職は『コミュニケーションの一形態』『指導の一環』と捉えがちで線引きが甘くなりやすい可能性が示唆されています」と注意を促しています。

2 ハラスメントの基準

これらの行為について従業員が「ハラスメントだ」と被害を訴えた場合に、会社は調査をして、ハラスメントに当たるかどうかの判断をしなくてはなりません。厚生労働省が示している判断の基準について、改めて確認しておきましょう。

まずパワハラは、①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超え、③労働者の就業環境が害されるもので、3つの要素をすべて満たすケースです。例えば、次のような行為がパワハラになります。

ハラスメントの行為類型

※厚生労働省サイト「あかるい職場応援団」より

例えば、「ハラスメントの基準」に関する調査結果のうち、「休暇取得の理由を尋ねる」は、過度に繰り返し行うと「個の侵害」に当たる可能性があります。一方、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワハラには当たりません。

セクハラは、「労働者の意に反する性的な言動」で、性的な関係の強要はもちろん、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘いなども含まれます。受け手が不快に感じればセクハラになり得ますが、セクハラかどうかの判断にあたっては、個人の受け止め方の違いもあるので、受け手の主観を重視しつつも一定の客観性が必要です。一般的には、被害者が女性の場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を、被害者が男性の場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準として、ケースバイケースで判断します。

また、性的関係を要求され、拒んだら解雇されたといったケースを「対価型セクハラ」、上司が女性社員の腰、胸などに度々触ったため、女性社員が苦痛を感じ就業意欲が低下したといったケースを「環境型セクハラ」といいます。

「ハラスメントの基準」に関する調査結果のうち、「肩を叩く」「髪型や服装への指摘」などは、例えば男性上司が女性の部下に対して行う場合、セクハラに該当しかねない行為と言えます。

3 さいごに

ハラスメントへの対応が遅れると、最悪の場合、訴訟に発展し企業に大きな負担がかかります。訴訟の結果、使用者責任、債務不履行責任が問われ、適切な措置を怠ったことに対する損害賠償、社会的信用の失墜、従業員のモチベーション低下なども生じかねません。また、ご対応を進められる場合は、厚生労働省の特設サイト「あかるい職場応援団」も大変参考になるので、目を通すことをお勧めします。

※本内容は2025年11月10日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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白書の「白書」! 働き方、産業、環境など日本の“今”が丸分かり

1 2025年もたくさんの白書が!

白書とは、特定の分野について国が現状と課題、これからの方針を公式にまとめたレポートです。「中小企業白書」「エネルギー白書」「環境白書」、耳にはするけれど中身まではなかなか目を通せていないという人は多いでしょう。ですが、最新の統計データや業界動向、政策の方向性が整理されている白書は、経営者にとって重要な「情報の宝庫」です。

2025年もたくさんの白書が公表されました!この記事では、数ある白書の中から20種類を取り上げ、直近の内容を紹介します。世の中でどのような動きがあったのか、さまざまな分野の白書を通して見ていきましょう。

2 中小企業白書(中小企業庁)

中小企業白書は、中小企業の実態や課題、国の中小企業政策の現状と今後の方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■中小企業庁「2025年版『中小企業白書』」■
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/

1)中小企業・小規模事業者の動向

中小企業・小規模事業者の課題として、円安・物価高の継続、「金利のある世界」の到来、構造的な人手不足の深刻化、過去最高水準の賃上げ圧力への対応などが挙げられています。経営者年齢も依然高い水準で推移しており、事業承継に向けた取り組みが必要とされています。

2)会社の成長・持続的発展に向けて有効な取り組み

経営力を個人特性面・戦略策定面・組織人材面の3つの視点で捉え、バランスよく強化すること、規模ごとに異なる「成長の壁(例:中小企業(成長段階)なら、経営者の一人体制の限界、スキル不足など)」の打破が求められています。

2025年版の内容については、こちらのコンテンツでも紹介しています。

3 経済財政白書(内閣府)

経済財政白書は、日本の景気や物価、雇用などの経済動向と、国の財政状況・財政運営の課題、今後の経済財政政策の方向性をまとめた白書です。直近の2025年度版には、次のような内容が記載されています。

■内閣府「令和7年度経済財政白書」■
https://www5.cao.go.jp/keizai3/whitepaper.html

1)日本経済の動向と課題

2025年半ばまでの経済の動向が記載されています。名目GDPが600兆円を超え、国内民間最終需要は1年にわたり増加を続ける一方、米国の関税措置による世界経済の下押しを通じた輸出への影響等が懸念されています。設備投資は持ち直しの動きが続いていますが、不確実性の高まりによる影響には留意が必要とされています。

2)賃金上昇の持続性と個人消費の回復に向けて

2024年度の賃金は、33年ぶりの賃上げ率となった春季労使交渉や、過去最大の上げ幅となった最低賃金の引上げ等の効果もあって、1994年以来最高の賃上げ率となりました。しかし、物価上昇との関係もあり、賃金が上昇したという実感を持つ人は、さほど増加しているわけではないようです。個人消費については、高齢層を中心に物価上昇における節約意識が働いており、消費の回復には給与所得の増加が特に重要とされています。

3)変化するグローバル経済と企業部門の課題

過去30年程度における日本の経常収支の変遷や企業行動の変化などが記載されています。また、中小企業の課題として、現預金比率が高い一方で、生産能力を高めるような前向きな設備投資が抑制されていることなどが挙げられています。

4 ものづくり白書(経済産業省)

ものづくり白書は、日本の製造業の現状や課題、生産性向上・DXなどを含む国の「ものづくり政策」の方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■経済産業省「2025年版ものづくり白書」■
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2025/index.html

1)製造業の競争力強化に向けたDX

個社単位のデジタル化・効率化は一定の成果が挙がっている一方で、「稼ぐ力」につながるだけの成果を創出できている製造事業者は少ないようです。企業間連携で産業単位の事業効率を向上させることや、ロボット・AIの開発・活用の重要性が示唆されています。

2)経済安全保障を踏まえた製造事業者の持続的成長

約6割の製造事業者が経済安全保障の取り組みを実施していないとされています。政府は、取り組みの好事例の発信等を通じて、経済安全保障の推進を後押ししていくとしています。

3)人材育成の取り組みとデジタル技術の活用

正社員以外の社員の能力開発がコロナ禍前の水準まで回復していないことなどが示唆されています。政府は、人材開発支援助成金や生産性向上支援センター、デジタル技術を含む多様な職業訓練の提供などを通じて、能力開発を支援していくとしています。

4)ものづくりを通じて社会課題の解決に貢献する人材の育成

政府は、デジタル等成長分野の人材育成(半導体人材の育成、産学協働リカレント教育モデルの確立など)、ものづくり人材を育む教育・文化芸術(学校等でのものづくり教育、技術者や伝承者の育成など)、Society5.0(注)を実現する研究開発(ものづくりに関する基盤技術の研究開発、産学官連携など)を推進していくとしています。

(注)Society 5.0:サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会のことで、情報社会(Society 4.0)に続く社会として提唱されています。

5 情報通信白書(総務省)

情報通信白書は、日本のICT(インターネット・スマホ・通信インフラ・デジタル経済など)の動向や課題、国の情報通信政策の方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■総務省「情報通信白書令和7年版」■
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/index.html

1)「社会基盤」としてのデジタルの浸透・拡大と動向

社会生活、企業活動において、スマートフォン・SNS・クラウド等が浸透・拡大しています。AIについては、世界的な開発競争が激化し、日本においても大規模言語モデル(LLM)の開発が盛んに行われています。一方で、日本のAI活力ランキング(2023年)は世界総合9位と低めで、企業における生成AIの活用方針策定なども海外に比べて遅れがちです。

2)進展するデジタルがもたらす課題

デジタル分野の主要な課題として、「信頼性のあるデジタル基盤の確保」「AIによるイノベーション促進とリスク対応」「サイバーセキュリティ」などが挙げられています。

3)進展するデジタルによる社会課題解決に向けて

少子高齢化が進む地方において、デジタル技術が地方創生のカギを握ることが示唆されています。また、災害が激甚化、頻発化する中、さらなるデジタルインフラの強靱化が引き続き求められていることなどが記載されています。

6 科学技術・イノベーション白書(文部科学省)

科学技術・イノベーション白書は、日本の研究開発や技術革新(AI・宇宙・バイオなど)の動向と課題、国の科学技術・イノベーション政策の方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■文部科学省「令和7年版科学技術・イノベーション白書」■
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa202501/1421221_00015.html

1)科学技術基本法制定から30年とこれからの科学技術・イノベーション

2025年が科学技術基本法制定から30年の節目に当たることから、同法制定の経緯や制定後30年の歴史などが紹介されています。制定後30年間の日本の科学技術・イノベーションの振り返りとして、「基礎研究力の低下」「人材」「研究インフラ」といった重要課題も掘り下げられています。

2)科学技術・イノベーション創出の振興に関して講じた施策

ものづくり白書の章でも紹介した「Society 5.0」を具体化し、国民の安全と安心を確保しつつ、ウェルビーイングを実現するための取り組みなどが紹介されています。

7 エネルギー白書(資源エネルギー庁)

エネルギー白書は、日本のエネルギー(電気・ガス・石油など)の現状や課題、政府の今後の方針をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■資源エネルギー庁「エネルギー白書2025」■
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/

1)福島復興の進捗

福島復興の現状として、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取り組み(燃料デブリの試験的取り出し成功など)、帰還困難区域の避難指示解除に向けた取り組み(大熊町等での復興再生計画の認定など)、新たな産業の創出に向けた取り組み(福島イノベーション・コースト構想)が紹介されています。

2)GX・2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み

日本のエネルギーを取り巻く環境変化を踏まえた上で、電力インフラ・データセンター立地・通信インフラの適正な整備(ワット・ビット連携)、2050年カーボンニュートラルに向けた次世代エネルギー革新技術(光電融合、ペロブスカイトなど)に関する取り組みなどが紹介されています。

8 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書(環境省)

環境白書は、日本や世界の環境問題の現状と施策をまとめた白書です。循環型社会白書は、ゴミ削減・リサイクルなどを通じ、資源をムダなく循環させる社会づくりの現状と施策をまとめた白書です。生物多様性白書は、絶滅危惧種や森林・海などの生き物と生態系の保護に関する現状と施策をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■環境省「令和7年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」■
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/

1)地球温暖化対策の目指す方向

2050年炭素中立(ネット・ゼロ)の実現に向け、温室効果ガスの排出量を2013年度と比べて、2035年度には60%、2045年度には73%削減する目標が設定されています。

2)循環経済(サーキュラーエコノミー)

サーキュラーエコノミーは、資源を効率的に循環させ、持続可能な社会をつくるとともに経済成長も実現するというものです。基本計画や法整備の状況、地域の特性を活かした循環資源や再生可能資源の活用事例などが記載されています。

3)自然再興(ネイチャーポジティブ)

ネイチャーポジティブは、生物多様性を維持するだけでなく、回復させるというものです。「30by30目標(2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する)」の実現に向けた取り組みとして、保護地域における取り組み(国立公園の指定など)や自然共生サイト(生物多様性が保全されている区域)の認定状況などが記載されています。

4)東日本大震災からの復興に係る取り組み

帰還困難区域における取り組み(避難指示の解除など)、未来志向の取り組み(「脱炭素×復興まちづくり」推進事業の実施など)、ALPS処理水(注)の海洋放出に係るモニタリングの状況などが記載されています。

(注)ALPS処理水:東京電力福島第一原子力発電所の建屋内にある放射性物質を含む水について、トリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水のことです。

9 食料・農業・農村白書(農林水産省)

食料・農業・農村白書は、日本の食料供給・農業・農村の今の姿と課題、そして国の今後の方向性をまとめた白書です。直近の2024年度版には、次のような内容が記載されています。

■農林水産省「令和6年度 食料・農業・農村白書 全文」■
https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r6/zenbun.html

1)新たな食料・農業・農村基本計画の策定

2024年に改正された食料・農業・農村基本法に基づき、食料自給率の他、食料安全保障の確保に関する目標を設定し、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めるための計画が策定されています。

2)合理的な価格形成と付加価値向上

コスト高騰に伴う農産物・食品への価格転嫁が業界全体の課題であることを踏まえ、合理的な価格の形成に向けた仕組みづくりに取り組んでいることや、消費者からコストの実態への理解・支持を得るための「フェアプライスプロジェクト」を継続していることなどが記載されています。

3)スマート農業と環境戦略

ドローンやAIによる農業の生産性向上や、「みどりの食料システム戦略」に基づく環境負荷低減の取り組みを推進していることなどが記載されています。

10 森林・林業白書(林野庁)

森林・林業白書は、日本の森林や林業(木材利用や山村を含む)の現状と課題、国の森林政策の方向性をまとめた白書です。直近の2024年度版には、次のような内容が記載されています。

■林野庁「令和6年度 森林・林業白書 全文」■
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r6hakusyo/zenbun.html

1)生物多様性の重要性と関心の高まり

「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」の章で紹介した内容とも重なりますが、生物多様性に関する国際的な動きとしてネイチャーポジティブの進展、国内の動きとして自然共生サイトの認定状況などが記載されています。

2)日本の森林における生物多様性とこれまでの保全の取り組み

日本の植物種数は5565種と、同じ島国かつ面積も同程度の英国などを上回る生物多様性が確保されています。さまざまな生育段階や樹種から構成される森林が、モザイク状に配置されている状態を目指して、多様な森林整備が推進されています。

3)生物多様性を高める林業経営と木材利用に向けて

林野庁が2024年に「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」や「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」を公表したことなどが記載されています。

11 水産白書(水産庁)

水産白書は、日本の水産業・漁業や水産資源の現状と課題、今後の水産政策の方向性をまとめた白書です。直近の2024年度版には、次のような内容が記載されています。

■水産庁「令和6年度 水産白書 全文」■
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/R6/250606_1.html

1)海洋環境の変化の状況

2024年の日本近海の平均海面水温が、統計開始以降、最も高い値となっています。また、黒潮大蛇行が2017年から継続し、過去に例のない長さで発生しており、黒潮が接岸する関東沖・東海沖では海水温が上昇する傾向にあります。

2)海洋環境の変化による水産資源・水産業への影響

海水温の上昇や海流の変化が、水揚量の減少、漁場まで遠出することに伴う燃油等の費用増加、出漁の見合わせなど漁業経営に大きな影響を与えています。特に、サンマ、スルメイカ、サケの漁獲量が近年大きく減少しています。

3)海洋環境の変化に対応するための取り組み

漁業・養殖業における取り組みとして「いか釣り漁船によるスルメイカ不漁に伴うアカイカ操業の実施」などが、加工・流通・消費に向けた取り組みとして「サワラの漁獲量が増加した地域におけるブランド化の取り組み」などが、漁港・漁場における取り組みとして「藻場再生」などが紹介されています。

4)今後の海洋環境の変化への対策

気候変動への緩和策として、水産分野では、漁船の電化・水素化等に関する技術の確立により、CO2の排出削減を図ること、CO2吸収源としてのブルーカーボンを推進することなどが記載されています。

12 国土交通白書(国土交通省)

国土交通白書は、日本の国土・インフラ・交通(道路・鉄道・空港・港湾など)の現状と課題、国土づくり・交通政策の方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■国土交通省「令和7年版国土交通白書」■
https://www.mlit.go.jp/statistics/file000004.html

1)国土交通分野における担い手不足等によるサービスの供給制約の現状と課題

建設業や運輸業の課題として、いわゆる「2024年問題」への対応や、就業者の高齢化・若年者の入職の減少、中長期的な担い手の確保・育成などが挙げられています。担い手不足等によるサービスの供給制約(メンテナンス不足で、水道の断水・漏水が発生するなど)についても記載されています。

2)国土交通分野における取り組みと今後の展望

業界内の人材の確保・定着に向け、「賃上げを含む処遇改善」「適切な価格転嫁」などに関する施策の状況が掲載されています。ICTスキル等により建設技術者の一部業務を代行する新職種「建設ディレクター」の活用や、人に代わり自動で鉄筋結束作業を行うロボットの導入などの事例も紹介されています。

13 観光白書(観光庁)

観光白書は、日本の観光(インバウンド・国内旅行・地域観光など)の動向や課題、国の観光政策の方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■観光庁「『令和6年度観光の状況 令和7年度観光施策』(観光白書)について」■
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00041.html

1)世界の観光の動向

2023年の「外国人旅行者受入数ランキング」において、日本(2510万人)が世界15位(アジアで2位)となりました。また、2024年の国際観光客数は14億4500万人(前年比10.7%増、2019年比1.3%減、世界観光機関(UN Tourism)の統計)と、コロナ前の2019年水準まで回復しています。

2)日本の観光の動向

2024年の訪日外国人旅行者数が3687万人(2019年比15.6%増)と過去最高を記録し、2024年の日本人の国内延べ旅行者数は5.4億人(2019年比8.2%減)とコロナ前の9割程度に回復しています。

3)日本人の国内旅行の活性化に向けて

仕事より余暇を重視する割合が増加傾向にある中で、一人当たり旅行回数の増加や滞在長期化を図る必要があるとされています。地域の取り組み事例として、「何度も地域に通う旅、帰る旅等の推進」「ワーケーション・ブレジャー等の普及促進」などが記載されています。

14 厚生労働白書(厚生労働省)

厚生労働白書は、日本の暮らし(医療・年金・福祉など)と働き方(雇用・労働政策など)の現状と課題、そして厚生労働行政の今後の方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■厚生労働省「令和7年版厚生労働白書」■
https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/index.html

1)変化する社会における社会保障・労働施策の役割を知る

次世代の主役となる若者向けに、社会保障・労働施策の歴史や機能、ヤングケアラー支援の取り組みなどが紹介されています。

2)現下の政策課題への対応

本格的な「少子高齢化・人口減少時代」を迎える中で、賃上げ、非正規雇用労働者の処遇改善、女性・若者・高齢者・就職氷河期世代等の活躍促進等、医療DX等の推進といった政策課題の現状や取り組みが紹介されています。

15 男女共同参画白書(内閣府)

男女共同参画白書は、日本社会における男女平等や女性活躍、男性の家事・育児参画などの現状と課題、国の男女共同参画政策の方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■内閣府「令和7年版男女共同参画白書」■
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/index.html

1)人の流れと地域における現状と課題

全ての都道府県で、家事関連時間は妻のほうが210分以上、仕事関連時間は夫のほうが180分以上長く、「男性は仕事、女性は家庭」という性別による固定的な役割分担が依然として残っていることなどが示唆されています。

2)若い世代の視点から見た地域への意識

東京圏に住んでいる人は、現在も東京圏以外に住んでいる人よりも、出身地域に「家事・育児・介護は女性の仕事」「食事の準備やお茶出しは女性の仕事」等といった固定的な性別役割分担意識が「あった」と感じている割合が顕著に高いとされています。

3)魅力ある地域づくりに向けて

個性と能力を発揮できる環境整備や魅力的な地域づくりに向け、「固定的な性別役割分担意識等を解消する」「全ての人にとって働きやすい環境をつくる」「地域における女性リーダーを増やす」「地域で学ぶ」の4つの取り組みが重要であるとされています。

16 こども白書(こども家庭庁)

こども白書は、日本のこどもや若者を取り巻く状況と、政府が進めている「こども政策」の取り組み状況を毎年まとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■こども家庭庁「令和7年版こども白書」■
https://www.cfa.go.jp/resources/white-paper/r07

1)全てのこども・若者が安全・安心な居場所を見つけられる社会を目指して

自殺対策や孤独・孤立対策等の観点から、全てのこども・若者が居場所を見つけることができるよう、こども家庭庁が「こどもの居場所づくりコーディネーター配置等支援事業」「こどもの居場所づくり支援体制強化事業」などを実施しています。

2)若い世代の描くライフデザインや出会いのサポート

若い世代が結婚・子育ての将来展望を描けない状況に対応するため、「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ(WG)」が開催されています。WGに基づき、各自治体の「地域少子化対策重点推進交付金」において、若い世代の描くライフデザイン支援や官民連携の結婚支援の取り組みを重点メニューとして支援する旨などが記載されています。

3)保育政策の新たな方向性

2025年度から2028年度末を見据えた保育政策の在り方を示した「保育政策の新たな方向性」が取りまとめられています。「1.地域のニーズに対応した質の高い保育の確保・充実(職員配置基準の改善など)」「2.全てのこどもの育ちと子育て家庭を支援する取り組みの推進(こども誰でも通園制度の推進など)」「3.保育人材の確保・テクノロジーの活用等による業務改善(保育士・幼稚園教諭等の処遇改善など)」の3つが柱となっています。

4)こどもの悩みに寄り添える社会に向けて

こども・若者にとっての利益を考え、そのための取り組み・政策を社会の中心に据える「こどもまんなか社会」の実現に向けて、「こどもの悩みを受け止める場に関するプロジェクトチーム」が発足しています。

17 食育白書(農林水産省)

食育白書は、日本人の食生活や「食に関する学び(食育)」の現状と課題、国の食育推進の取り組みをまとめた白書です。直近の2024年度版には、次のような内容が記載されています。

■農林水産省「令和6年度 食育白書(令和7年6月10日公表)」■
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/r6_index.html

1)食卓と農の現場の距離を縮める取り組みと今後の展望

食育に関心を持たない国民が増える中で、持続可能な食料システムを実現していくためには、国民が食生活を通じて農林水産業を意識する機会を作ることが大切であるとされています。食育の事例として「スポーツ選手と子どもたちによる田植えや稲刈り等の農業体験」などが記載されています。

2)消費者の行動変容を促す「大人の食育」の推進

若い世代(20~30歳代)や高齢者世代も、食に関する課題を多く抱えており、健康に生活するための「大人の食育」が大切であるとされています。食育の事例として「会社の従業員が野菜の知識を学ぶプログラム『食育マルシェ』」などが記載されています。

18 防災白書(内閣府)

防災白書は、日本で起きた地震・豪雨などの災害の状況と教訓、国や自治体の防災・減災の取り組みや今後の方針をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■内閣府「令和7年版防災白書」■
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r7.html

1)令和6年能登半島地震等の概要

被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージの実施、避難生活支援コーディネーター等の育成など、支援体制の強化が進められています。「被災者による朝市の復興(出張輪島朝市)」などのコラム記事も紹介されています。

2)令和6年能登半島地震を踏まえた防災対応の見直し

デジタル技術を活用した防災情報システムの整備や、地域防災力の強化に向けた取り組みが明記され、頻発・激甚化する災害に備える体制強化が進められています。

19 交通安全白書(内閣府)

交通安全白書は、日本の交通事故の実態や原因、歩行者・自転車・自動車などへの安全対策、国の交通安全政策の方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■内閣府「令和7年版交通安全白書」■
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/index-t.html

1)交通事故の状況

2024年の交通事故の死者・重症者数は2万9948人で、2015年の4万3076人から10年間で約30.5%減少しています。特に小学生は、2015年が1185人、2024年が686人と約42.1%減少しています。一方で、小学生の飛び出しによる事故が多く発生しており、効果的な交通安全教育等の実施、自動車等の運転者に対する教育の実施の必要性などが示唆されています。

2)通学路における交通安全の確保に向けた取り組み

通学路点検や歩道整備、スクールバスの運行、地域による見守り活動が推進されています。また、最高速度30キロメートル毎時の区域規制等を実施する「ゾーン30」の整備などが進められています。

20 警察白書(警察庁)

警察白書は、日本の犯罪などの治安情勢と警察の取り組み、今後の警察行政の方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■警察庁「令和7年版警察白書」■
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r07/index.html

1)SNSを取り巻く犯罪の情勢

SNSを通じて対面することなく、恋愛感情や親近感を抱かせたりして金銭をだまし取るSNS型投資・ロマンス詐欺の被害が著しく増加しています。匿名・流動型犯罪グループが、仕事の内容を明らかにせず、「高額」「ホワイト案件」等の表現を用いるなどして実行者を募集し、こうした犯罪に及ぶケースが確認されています。

2)SNSを取り巻く犯罪に対処するための警察の取り組み

SNSを取り巻く犯罪に対処するため、デジタル・フォレンジック(犯罪の立証のための電磁的記録の解析技術・手続き)を活用した捜査、匿名・流動型犯罪グループに「雇われたふり」をして検挙するための仮装身分捜査などが進められています。

21 防衛白書(防衛省)

防衛白書は、日本や周辺地域の安全保障環境と自衛隊の活動状況、そして日本の防衛政策の考え方・方向性をまとめた白書です。直近の2025年版には、次のような内容が記載されています。

■防衛省「令和7年版防衛白書」■
https://www.mod.go.jp/j/press/wp/index.html

1)統合作戦司令部と統合作戦

2025年3月に新設された「統合作戦司令部」について記載されています。海・空自の主要部隊や、宇宙やサイバー領域などで活動する部隊の指揮が、平素から統合作戦司令部官に一元化され、各種事態に迅速に対応できる体制になっています。

2)自衛官の処遇・勤務環境の改善、新たな生涯設計の確立

2024年度に取りまとめられた、「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」の一例が紹介されています。自衛官の処遇改善(30を超える手当の新設・金額引き上げなど)、生活・勤務環境の改善(営内隊舎の居室の個室化など)、新たな生涯設計の確立(再就職先の拡充等)といった内容が記載されています。

3)防衛この一年

災害派遣や対領空侵犯措置、在外邦人等輸送任務など、2024年度に国内外で活躍した隊員の声が紹介されています。

以上(2025年12月作成)

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画像:各白書より作成