採用活動で応募者のSNS調査を行うことは是か非か?

1 SNS調査をこっそりと行うのはNG

社員がSNSに投稿した不適切な内容で「炎上」や「情報漏洩」が起きてしまったら、会社にもダメージが及ぶかもしれません。採用内定を会社都合で取り消したり、社員を解雇したりするのは容易ではないため、リスクをなるべく減らす目的で行われるのが

SNS調査やリファレンスチェック(以下「SNS調査など」)

です。

  • SNS調査
    履歴書や面接の情報を基に、応募者のSNSの実名アカウントを調べて、投稿内容を確認すること。そこから出身地や誕生日などが一致する匿名アカウントを探し、プロフィール情報やフォローしている友人などから応募者本人かどうかを判別し、投稿内容を確認することを「裏アカ調査」という

  • リファレンスチェック
    履歴書や面接の情報を基に、応募者の前職の勤務状況や人物像について関係者に問い合わせること(中途採用の場合)

SNS調査などをすれば、履歴書や面接からは分からない応募者の「素の人柄」を知ることができるかもしれません。とはいえ、SNSは私生活の投稿です。勝手にSNS調査などを行っていいのかという疑問も残ります。

実際のところは、

SNS調査などは非常にグレーであり、こっそりと行うのはまずNG

です。この記事では、その理由を紹介します。

2 SNS調査などがグレーな理由

1)「SNS調査などに利用します」と通知する?

履歴書や面接を通じて得られる応募者の情報は「個人情報」です。個人情報の取得には、利用目的を特定の上、その目的の通知または公表しなければなりません。本人から直接書面で取得するなら、あらかじめ利用目的を明示します。

ですから、応募者の個人情報をSNS調査などのために利用するのであれば、その旨を、通知または公表する必要があります。ただし、個人情報をSNS調査などのために利用することを通知または公表すると、応募者の反感を買う恐れがあるので、あまり現実的とはいえません。

2)実名アカウントの閲覧まではOK。でもそれ以上はNG

厚生労働省職業安定局「募集・求人業務取扱要領(令和6年10月)」では、会社や会社から委託を受けた採用募集代行業者が応募者の個人情報を収集する場合、次のような適法かつ公正な手段を取らなければならないとされています。

  • 本人から直接収集する
  • 本人の同意の下で本人以外の者から収集する
  • 本人により公開されている個人情報を収集する など

応募者が実名アカウントで、公開範囲を限定せずにSNSに投稿している内容を確認することは問題ないでしょう。ただし、それ以上進めて、「裏アカ調査」やリファレンスチェックをするには、応募者の同意を得る必要があると考えられます。

3)採用活動で利用するなら、利用目的の通知または公表が必要

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」では、

個人情報を含む情報がインターネット等に公開されている場合、単にこれを閲覧するだけで、転記等を行わないのであれば、個人情報を取得しているとはいえない

とされています。

SNSの投稿は、不特定多数の人に見られることを前提としているので、応募者が公開アカウントでSNSに投稿している内容を確認するだけなら、個人情報の取得には当たりません。しかし、採用の検討材料にするなら、個人情報の取得に当たると考えられ、利用目的を特定の上、その目的を通知または公表することが必要です。

例えば、ディー・エヌ・エーグループの採用活動におけるプライバシーポリシーでは、利用目的の1つとして、

当社グループの採用選考に際し、候補者の適格性を評価するため(これには、バックグラウンドチェック、リファレンスチェック、その他の確認手続を含みます)

と記されています。「バックグラウンドチェック」と表記するなどの工夫もされています。

4)収集してはならない情報がある?

職業安定法では、事業主が求職者から情報を取得する場合につき、取得目的を制限しています。また、職業安定法に基づく指針(平成11年労働省告示第141号、最終改正令和6年厚生労働省告示第318号)では、以下の情報を、原則として収集してはならない情報として定めています。

  1. 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となる恐れのある事項(家族の職業、収入、本人の資産などの情報、容姿、スリーサイズなど)
  2. 思想および信条(人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書など)
  3. 労働組合への加入状況

例外的に、これらの情報であっても収集目的を示した上で本人から収集することができるケースもありますが、特別な職業上の必要性がある場合などに限定されています。不用意に収集すると職業安定法に基づく改善命令が発出される場合があり、この命令に違反すると、罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象になります。

なお、これらの情報は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」と一部重複しますが、

要配慮個人情報は本人の同意があれば収集できるのに対し、職業安定法に基づく指針の「収集してはならない情報」は、文字通り、原則として収集不可

となっている点に注意が必要です。

SNSには個人の考えなどを投稿することもあり、そこに「収集してはならない情報」が含まれる可能性は十分にあります。

5)調査代行業者への依頼やリファレンスチェックは個人情報の「第三者提供」

SNS調査などを代行する専門業者(以下「調査代行業者」)もいますが、調査代行業者への依頼は個人情報の「第三者提供」に当たると考えられます。調査代行業者が独自に調査した結果と、応募者の個人情報の突合は、企業の「委託」では不可能だからです。同様に、調査代行業者が依頼元の企業に個人情報を含む調査結果を渡すことも第三者提供に当たると考えられます。

個人情報の第三者提供を行う場合、あらかじめ本人の同意を得る必要があります。2022年4月に改正個人情報保護法が施行されたため、第三者提供に係る記録の開示請求手続に対応する必要があります。

同様に、リファレンスチェックも、履歴書や面接の個人情報を前職の企業に渡すことになるため、第三者提供に当たると考えられます。

3 SNS調査などがはらむリスク

このように、利用目的を明らかにして本人の同意を得られれば、SNS調査などを実施できることになりますが、懸念は残ります。例えば、「バックグラウンドチェックをします」と説明されても、応募者は「裏アカ調査」をされると認識できないでしょう。また、志望先の企業からSNS調査などの同意を求められたとき、それを拒否するのは難しいかもしれません。

この他、同姓同名の他人の情報との取り違いや、悪意の第三者によるなりすましが起こらないかといったことも危惧されます。

日本労働組合総連合会「就職差別に関する調査2023」によると、採用試験を3年以内に受けた15~29歳の男女計1000人のうち、

  • 「採用選考過程において、企業からSNSアカウントを調査する旨の通知を受けたことがある」という回答が11.7%
  • 「採用選考過程において、企業からSNSアカウントを調査されたことがある」という回答が10.7%

となりました。また、それぞれ「わからない」という回答が25.0%、29.3%を占めており、 さらに多くの調査が行われている可能性もあるといいます。

さらに、SNS調査などは「身元調査」にもなり得ます。このような調査の結果、目にしてしまった情報をもとに無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が生じ、新たな就職差別につながる恐れもありますので、注意が必要です。

以上(2025年2月更新)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)

pj60325
画像:wei-Adobe Stock

無信号交差点での注意点(2025/3号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

 先月号「交通信号の意味を再確認!」では信号の各色の点灯状態・点滅状態の意味や、信号機のない、または作動していない交差点における優先道路のルールについても改めて確認しました。
 今月号では、特に信号のない交差点=無信号交差点での事故について、その原因と対策を具体的な事例を基に考えます。

無信号交差点での注意点

比較的小さい交差点で発生する事故が多い

 警察庁が公開している「交通事故統計情報のオープンデータ」※1では、過去5年分の全国の交通事故発生地点や事故類型などがわかります。

 このオープンデータを分析した朝日新聞社の記事※2によると、2019~2020年に発生した人身事故のうち28万件超が交差点付近で発生し、うち6割が無信号交差点(信号機が設置されていない、または機能していない交差点)での事故であることがわかりました。

交通事故統計情報のオープンデータ

 歩行者、自転車が関連する事故の発生した無信号交差点の特徴を、車道幅や速度規制別に分類し集計したところ、「車道の幅が13メートル未満の小、中規模、かつ規制速度が時速20から40キロ以下の交差点で事故が集中していた。」とのことです。事故が「指定の速度規制なし等」の条件に分類されるケースでも、車道の幅が狭いなど小さい交差点で発生する事故が多いことが示されています。

無信号交差点の特徴

※1 警察庁, 交通事故統計情報のオープンデータ https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/opendata/index_opendata.html(2025.2.10閲覧)

※2 (株)朝日新聞社, みえない交差点 分析編 https://www.asahi.com/special/jiko-kosaten/analysis/?iref=mienaikosaten_map(2025.2.10閲覧)

※3 道幅が13m以上の道を「大」、5.5m以上13m未満を「中」、5.5m未満を「小」と分類。「大‐小」とは幅13m以上の道と5.5m未満の道が接続する交差点、の意味。

事故が多発する無信号交差点の特徴

 最近の5年間で10件以上の事故が起きた全国の無信号交差点を詳しく調べると、以下のような特徴がみられました。

■見通しが悪く左右確認しにくい

 死角をつくるもの(建物、地形、橋脚など)により左右確認が難しい交差点が目立ちます。このような場所ではカーブミラーが重要ですが、右図の例では①ミラーが遠くにあるため鏡像が見にくくなっています。また②前方道路と鋭角で交差するため、停止線を越えて交差点に進入しないと左方の直視が困難で、リスク増加の一因となりえます。

見通しが悪く左右確認しにくい

■直線が続き走行中の道路の見通しが良い

 非優先道路(交差点では一時停止)でも③遠くまで見通せるような直線の道路で事故が起こりやすいようです。その背景には「ついスピードが出やすい」「朝日・西日が眩しい」等が考えられるほか、元は直線単路だった場所に④新たに道路が整備され、新しく交差点ができたケースもあり、慣れない車が単路だったときと同様の走り方をしてしまうかも知れません。

直線が続き走行中の道路の見通しが良い

 その他、五差路など複雑な形状のため危険予測が難しい交差点や、高速道・幹線道路から分岐した直後の交差点(速度感覚が速いまま差し掛かる)において事故多発の傾向があるようです。

無信号交差点での事故防止ポイント

  • 死角が多い、鋭角で交差している、複雑な形状をしている、などの特徴のある交差点では車・人・自転車の接近が分かりづらい場合があります。交差点形状を十分把握し、カーブミラーに映る限られた情報を見極め、死角に気を配りながら慎重に通過しましょう。「見切り発車」は禁物です。
  • 見通しが良い、一見安全そうな交差点でも危険予知を怠らないようにしましょう。自分が走行中の道路の優先/非優先の区別を意識しましょう。特に非優先道路側にいる場合、左右から接近する車の有無を必ず確認し、その車を妨げないよう徐行・一時停止を心がけましょう。

以上(2025年3月)

sj09142
画像:amanaimages

【役員退職金】役員退職金を損金算入するために重要な3つのポイント

1 役員退職金の決定過程を明確にすることが基本

中小企業(特に同族企業)の経営者は、自分で自身や他の役員の役員退職金の支給額を決められます。自身はもちろん、経営に貢献してくれた役員に多くの役員退職金を支給したいものですが、その支給額の決定基準が曖昧だと税務調査で問題が指摘されることがあります。そうならないために、

  • 役員退職金が損金に算入できるタイミングを知る
  • 役員退職金の決定過程を明確にして規程で定める
  • 役員退職金を支給された役員は職務から完全に離れる

ことが必要です。

この記事では、税務の視点から役員退職金を解説します。補足として、役員退職金の支給を受けた役員の所得税についても触れます。

2 役員退職金が損金に算入できるタイミングを知る

役員退職金が損金に算入できるタイミングは次の2つです。

  1. 株主総会において役員退職金の支給を決議し、金額が確定した事業年度
  2. 実際に役員退職金を支給した事業年度

このタイミングさえ守っていれば、

利益が大きく出そうな事業年度に役員退職金を支給して、損金に算入すること

ができます。一方、株主総会の決議がされる事業年度より前の事業年度に、役員退職金の支給額を内定しておき、未払金として計上しても損金に算入できません。

3 役員退職金の決定過程を明確にして規程で定める

会社法上、役員退職金はいくら支払っても問題ありません。しかし、税務上はそうはいきません。高額過ぎる役員退職金は過大な退職給与となり、過大とされる部分は損金算入できません。気になるのは「高額」の基準ですが、この点は、

  • 法人の業務に従事した期間
  • 退職の事情
  • 業種や規模などが類似する会社の役員給与の支給状況

などから総合的に判断されます。ただ、「総合的に判断」というのは曖昧で、実際は「功績倍率法」を採用するのが一般的です。功績倍率法とは、

役員退職金を「退任時月額報酬×役員勤続年数×功績倍率」によって算出し、それを税務上の上限とみなす方法

です。例えば、退任時月額報酬が100万円、役員勤続年数が20年、功績倍率が3倍の場合は「6000万円(100万円×20年×3)」となります。なお、この金額はあくまでも税務上の上限であり、満額を支給する必要はありません。

一般的な功績倍率は1.5〜3倍ですが、税務上の明確な決まりはありません。功績倍率を明確にするためにも、役員退職金規程を作成しましょう。

4 役員退職金を支給された役員は職務から完全に離れる

役員退職金を支給された役員は、役員としての職務から完全に離れるのが原則です。

例外は、職務分掌の変更で役割が著しく変わったために支給される役員退職金です。例えば、常勤役員が代表権のない非常勤役員になる、取締役が監査役になるなどのケースであり、そこで支給される役員退職金は損金に算入できます。

いずれにしても「退職」の実態が必要です。逆に、形式上は役員を退任しているが、実質は変わっていない(代表取締役から顧問になったが、常勤し実質的に経営に関与し続けているなど)と判断されたら、役員退職金は「役員に対する臨時的な給与」として損金に算入できません。当然、役員退職金を受領した役員の所得税等も高くなります。

5 役員退職金を支給された役員の所得税

役員退職金は高額になりやすいので、支給された役員の所得税についても考えなければなりません。役員退職金が支給されたら、所得税及び復興特別所得税、住民税(以下「所得税等」)が源泉徴収されます。所得税等は、原則として、次の算式で計算した「課税退職所得」の金額に、税率を掛けて計算します。

(役員退職金の額-退職所得控除額)×2分の1

この計算式で示す退職所得控除額は次の通りです(2カ所以上で受給するなど一定の場合を除く)。

  • 勤続年数が20年以下:40万円×実際の勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
  • 勤続年数が20年超:800万円+70万円×(実際の勤続年数-20年)

所得税等の面で役員退職金は優遇されています。ただし、

役員の勤続年数が5年以下の場合、先の計算式の「2分の1」の措置は適用されないので、退職所得が2倍となって所得税等の負担も重くなる

ことになります。この勤続年数の考慮についてはミスが多い論点ですので留意しましょう。

また、

勤続年数5年以下の一般社員についても退職所得が300万円を超える部分は同様の取り扱い

になっています。

以上(2025年2月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

pj10046
画像:bephoto-Adobe Stock

【役員退職金】これだけ押さえれば大丈夫。役員退職金の基本ルールを簡単解説

1 役員退職金とは

役員退職金とは、

退任した役員に対し、在任中の会社への功労に報いることや、勤続に対する報奨として支給されるもの

です。役員退職金の基本的なルールを法務、会計、税務に分けて整理します。大切なポイントは次の通りです。

  • 法務:支給には株主総会の決議などが必要
  • 会計:支給時に一括で費用処理するか、有税積立(引当金)をして支給時に充当する
  • 税務:基本的に損金となるが、代表取締役の功績倍率の目安は「3倍」

2 役員退職金の法務

1)基本的な考え方

一定の権限を持つ役員が自身の役員退職金を自由に決めると、いわゆる「お手盛り」の懸念があります。そこで役員退職金の支給については、

役員退職金を含む役員報酬等について定款に定めるか、株主総会の決議が必要

です。ただし、定款に定めると金額を変更する際などの手続きが煩雑になるのでこうする会社は少なく、多くは株主総会の決議で役員退職金を支給しています。その際、株主総会では

支給対象者だけを開示し、支給額などは取締役会に一任する旨を決議

するのが一般的です。この決議を受け、取締役会で役員退職金規程に基づいて金額、支給の方法、時期などを決定します。こうした方法を「内規一任型」などと呼びます。

当然ですが、株主総会で否決されれば、役員退職金は支給されません。株主にとっては、役員退職金も役員報酬の一部であり、株主の利益と相反する部分があるのです。

株主総会の招集通知の記載例や、その後の取締役会での決議は以下の通りです。

2)「定時株主総会招集通知」の記載例

決議事項

第○号議案 退任取締役に対し退職慰労金贈呈の件

3)「議決権の行使についての参考書類」への記載例

第○号議案 退任取締役に対し退職慰労金贈呈の件

本総会終結の時をもって退任されます取締役 日本太郎氏に対し、その在任中の功労に報いるため、当社所定の内規に従い、相当額の範囲内で退職慰労金を贈呈することとし、その具体的金額、支給の方法、時期などは取締役会にご一任願いたいと存じます。

退任取締役の略歴は、次の通りです。

画像1

4)取締役会決議

役員退職金規程に基づき、役員退職金の金額、支給の方法、時期などを決定します。

3 役員退職金の会計と税務

まず会計についてです。役員退職金は支給時に一括して費用処理する場合もありますが、

役員退職金規程があり、支給実績がある場合、役員退職金引当金として有税積立(いわゆる「一時差異」で、後に損金となる)をしておき、支給時に充当するのが通常

です。

次に税務についてです。役員退職金は損金に算入できます。そのタイミングは次の2つです。

  1. 株主総会において役員退職金の支給を決議し、金額が確定した事業年度
  2. 実際に役員退職金を支給した事業年度

役員退職金を年金として支給する場合もありますが、その場合も支給した事業年度に支給した額を損金算入します。

なお、役員退職金の全額が無条件で損金に算入できるわけではありません。「役員退職金が高額過ぎる!」と判断されてしまうと、高額とされた部分(適正額を超える部分の金額)は損金に算入できません。

そこで、多くの会社は「功績倍率法」を採用しています。功績倍率法とは、

役員退職金を「退任時月額報酬×在任年数×功績倍率」によって算出し、それを税務上の上限とみなす方法

です。功績倍率によって金額が大きく変わりますが、この点については、

代表取締役の功績倍率は「3倍」が一般的で、これを超えると過大となる恐れがある

ことを覚えておいてください。

4 役員退職金の問題点

役員退職金は株主の利益と相反する部分があります。「退任時月額報酬×在任年数×功績倍率」で役員退職金を算出する場合、

勤続年数が長い役員の役員退職金は高額ですが、その者が本当に会社に貢献したかは疑問

です。さらに、その役員が会社に貢献して業績が良くなったとしても、その時期と役員が退任する時期にはズレが生じることもあります。現在の業績が低迷しているのに、過去の栄光で多額の役員退職金を支給することについて、意見が分かれるわけです。

このような理由から、株主総会における「退職慰労金贈呈の議案」に反対票を投じる株主もいますし、役員退職金を廃止する会社も少なくありません。

以上(2025年2月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

pj30117
画像:photo-ac

【朝礼】仕事の優先順位、皆さんは何を基準に決めますか?

【ポイント】

  • 依頼された仕事にどのぐらいの数の人が関わっているのか、影響範囲を知ることが大切
  • 今エネルギーを注げる仕事を見極め、成果を上げるタイミングを逃さないことも大切
  • いくつかの要素を天秤にかけた上で、仕事の優先順位を決め、その選択に責任を持つ

皆さんは日々、会社で多くの仕事をしてくれています。ウチは小さな会社ですから、一人一人が担当する業務の幅も広く、上手に「優先順位」を付けないと仕事が回りません。この優先順位、皆さんは何を基準に決めていますか? 今日は私が若い頃、2人の上司に言われた言葉をお伝えします。

まずは、私が新入社員の頃にお世話になった、1人目の上司の話です。あるとき、その方からこんな質問を受けました。「お客さまからの依頼と、同僚からの依頼、君だったらどっちを優先する?」。私は「お客さまからの依頼です」と答えました。同僚は社内の人間なので依頼を後回しにしても支障がなさそうですが、お客さまだとそうはいかないと思ったからです。ですが、上司は言いました。

「相手が社外の人間か、社内の人間かは関係ない。仕事の優先順位は、その仕事に関わる人の数で決めるんだ」。仮に同僚から依頼された仕事が重大なプロジェクトの一端だった場合、お客さまを優先して同僚の仕事を後回しにすれば、同僚の次工程に控える多くの社員の仕事がストップして損失が出るかもしれない。だから、仕事に関わる人がどのぐらいいるのかを見極める必要がある。これが1人目の上司から教わったことでした。

次は、そこから数年後にお世話になった、2人目の上司の話です。その方は、1人目の上司のかつての部下でもありました。あるとき、先ほどのエピソードをその方に話したら、こんな言葉が返ってきました。

「確かに、あの人の考え方は理にかなっている。ただ、私はその考え方が全てだとは思わないな。例えば、自分が今一番エネルギーを注げる仕事を後回しにして、他の仕事を優先したために、得られたはずの成果を逃してしまったとしたらどうだろう? これも一つの損失かもしれないね」。成果を上げられるタイミングを逃してはいけない。これが2人目の上司から教わったことでした。

いかがでしたか。仕事に関わる人の数も、成果を上げられるタイミングも、仕事の優先順位を決める重要な要素です。そして、それらを天秤(てんびん)にかけた上で、自分がベストだと思う仕事を選択し、その選択に責任を持つ。これが皆さんに求める、仕事の優先順位の付け方です。

以上(2025年3月作成)

pj17209
画像:Mariko Mitsuda

【2025年度版】社員に関する法定義務の一覧表

1 まずは全企業共通の法定義務から押さえる

「人」に関するルールは複雑で、10人以上で就業規則の作成義務、50人以上でストレスチェックの実施義務などのように決まっています。抜け漏れなく行うために一覧表で確認しましょう。この記事では各種労働法に基づく人事労務の法定義務の内容を、

  1. 全企業共通のもの
  2. 業種や事業形態(法人、個人)などによって変わるもの

に分けて一覧表で紹介します。

2 人事労務の主な法定義務など(2025年4月1日時点)

早速ですが、人事労務の主な法定義務など(2025年4月1日時点)は次の通りです。一覧表は社員数または該当者数の昇順となっており、社員数で見る項目には「●」印を、該当者数で見る項目には「○」印を付けています。また、2025年4月1日施行の項目は「赤字」にしています。

法定義務などの具体的な内容は、( )内の法令を参照してください。また、安衛法(労働安全衛生法)の「安全衛生管理体制」に係る法定義務については、対象業種を一部省略して記載しています。詳しくは、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」などをご確認ください。

■厚生労働省「職場のあんぜんサイト(安全衛生キーワード)」

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo_index01.html

画像1

以上(2025年3月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

pj00246
画像:unsplash

【規程・文例集】役員退職金規程で必ず確認すべき3つの条項

1 役員退職金規程を整備する際の留意点

役員退職金の支給にはさまざまなルールがありますが、「役員退職金規程」を整備することで、客観的に計算方法などを示すことができます。とはいえ、インターネットで公開されているひな型をそのまま使うと、自社の実情に合わず、思わぬ問題が生じることがあります。

そこで、この記事では、ひな型でよく出てくる条文をどう見直せばトラブルになりにくいのかについて、弁護士が解説します。紹介するのは、特に重要な定めである、

適用範囲、支給算定基準、支給時期

の3つです。各条文の赤字部分に注目してください。

2 適用範囲

1)ひな型でよく見る条文

第●条(適用範囲)

本規程は役員の全員に適用する。

第●条(非常勤役員の取り扱い)

非常勤役員については、その功労実績に基づき本規程以外の取り扱いをすることができる。

2)見直しのご提案

第●条(適用範囲)

本規程は常勤役員(職員に準じて勤務する役員および1週間のうち決まった曜日に勤務する役員をいう)に適用する。

第●条(削除)

3)弁護士からのワンポイントアドバイス

全ての役員(取締役または監査役)が対象であることを前提とするひな型がありますが、実際は社外役員に対する役員退職金などの取り扱いを、別途定めることが必要になるケースが多いです。そのような事態に対応するため、退職金規程の適用範囲を常勤役員(非常勤役員)に限定した方がよいでしょう。

3 支給算定基準

1)ひな型でよく見る条文

第●条(支給算定基準)

退職金の支給は、退任時の最終報酬月額を基準として、退任する役員が歴任した役位ごとに次の計算式により得られる額を累計し、その総額とする。ただし、総支給額に1000円未満の端数が生じたときは1000円に切り上げるものとする。

退任時の最終報酬月額×役員在任期間(年数)×各役位別の功績倍率

2)見直しのご提案

第●条(支給算定基準)

退職金の支給算定基準は、歴任した役位ごとに次の計算式により得られる額を累計し、その総額を基準とする。同一の役位に在任中、報酬月額に変動がある場合は、そのうちの最高報酬月額を基準とする。ただし、役位ごとの支給基準額に1000円未満の端数が生じたときは1000円に切り上げるものとする。

役位別の報酬月額×各役位の役員在任期間(年数)×各役位別の功績倍率

3)弁護士からのワンポイントアドバイス

条文例は退任時の最終報酬月額を基準に退職金を計算していますが、役位ごとの報酬月額を基準とするように修正しています。役位ごとに基準額を算出しているので透明性が高まっています。また、役位在任中に報酬月額の変動がある場合は、各役位に係る最高額または最終額を用いる例が多いです。

4 支給時期

1)ひな型でよく見る条文

第●条(支給時期)

退職金は、役員が業務の引き継ぎを完全に終了させ、かつ、会社に対して返済すべき債務があるときは、その債務を返済した日から○カ月以内に一時金として支給する。

2)見直しのご提案

第●条(支給時期)

退職金は、役員が業務の引き継ぎを完全に終了させ、かつ、会社に対して返済すべき債務があるときは、その債務を返済した日から○カ月以内に一時金として支給する。ただし、経済界の景況、会社の業績いかん等により、当該役員またはその遺族と協議の上、支給の時期、回数、方法について別に定めることができる。

3)弁護士からのワンポイントアドバイス

ひな型でよく見る条文では、一時金として支給時期が記載されています。しかし、会社の状況によっては、一時金として支払うことが難しい場合もあるので、支払時期について協議の余地を残しておくと無難です。

以上(2025年2月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 小出雄輝)

pj60243
画像:ESB Professional-shutterstock

育児関係の新しい給付金

令和7年4月、雇用保険制度に育児関係の新しい給付金が創設されます。「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」です。本稿では、この二つの給付金について概要をお伝えします。

1 出生後休業支援給付金

子どもが生まれた直後の一定期間に、夫婦がそれぞれ14日以上の育児休業を取ると、最大28日間、出生後休業支援給付金が支給されます。「一定期間」とは、父親は子の出生後8週間以内、母親は産後休業後8週間以内です。

給付金の額は、休業開始前賃金の13%相当です。従来の育児休業給付金または出生時育児休業給付金(休業開始前賃金の67%)に上乗せされ、給付率は計80%となります。

○出生後休業支援給付金のイメージ

出生後休業支援給付金のイメージ

※厚生労働省の資料「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」より

育児休業給付金、出生時育児休業給付金、出生後休業支援給付金はいずれも非課税です。さらに育児休業中は、健康保険・厚生年金の保険料が免除され、勤務先から給与が支給されなければ雇用保険料も発生しません。このため、給付率80%で、手取り10割相当の給付となります。

また、次の場合には、配偶者が育児休業を取らなくても、出生後休業支援給付金が支給されます。

出生後休業支援給付金が支給されます

※厚生労働省のリーフレット「2025年4月から『出生後休業支援給付金』を創設します」より

2 育児時短就業給付金

2歳未満の子供を育てるために、時短勤務を行い収入が減った場合に、それを補うのが育児時短就業給付金です。性別に関係なく受け取ることができます。給付率は、時短勤務中に支払われた賃金額の10%です。ただし、時短勤務前の賃金額を超えないように、給付率が調整されます。

育児時短就業給付金は、原則として時短勤務を始めた日の属する月から、時短勤務を終えた日の属する月までの各月に支給されます。次の事例では、4/1~4/30(支給対象月①)から3/1~3/31(支給対象月⑫)まで12か月間、育児時短就業給付金が支給されます。

育児時短就業給付金が支給されます

※厚生労働省のリーフレット「2025年4月から『育児時短就業給付金』を創設します」より

育児時短就業給付金は、次の①②の両方を満たす人が対象です。

  • ①2歳未満の子を養育するために時短勤務をする雇用保険の被保険者である
  • ②育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて時短勤務を開始した、
    または、時短勤務開始日前2年間に被保険者期間が12か月ある

そのうえで、次の③~⑥の要件をすべて満たす月について支給されます。

  • ③初日から末日まで続けて雇用保険の被保険者である月
  • ④1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
  • ⑤初日から末日まで続けて、育児休業給付また介護休業給付を受給していない月
  • ⑥高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月

3 さいごに

出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金は、性別にかかわらず、労働者が仕事と子育てを両立できるよう、経済的に支援するのが目的です。どんな小さな企業であっても、従業員が希望したら、給付金を受給するための申請をハローワークに対して行わなければなりません。

どちらの給付金もしくみが複雑なので、厚生労働省のウェブサイトで詳細を理解しておくとよいでしょう。

※本内容は2025年2月10日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

sj09141

画像:photo-ac

弁護士が注目する2025年度の法務3大ニュース

1 2024年度・2025年度の3大ニュース

2024年度は、フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行による「フリーランスの保護」、改正景品表示法の施行による「不当表示等に関する自主的な是正の促進や、違反行為に対する抑止力の強化等」が行われました。また、知財一括法の施行により、「デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化」が図られました。

2025年度は、情報流通プラットフォーム対処法による「誹謗中傷防止のための大規模プラットフォーム事業者への規制」、流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法の改正による「物流効率化と特定事業者への規制強化」が行われます。また、建設業法等の改正により、「建設業の処遇改善・働き方改革・生産性向上」も図られます。2024年度・2025年度の法務3大ニュースは次の通りです。

画像1

2 2024年度の総括

2024年度の各種法改正は、いずれも主に中小企業にとって大きな影響がありました。特に、フリーランス・事業者間取引適正化等法が施行されたことで、フリーランスに業務を発注する会社の多くが、体制の見直しを迫られたのではないでしょうか。

また、一般消費者向けの商品やサービスを販売・提供する会社としては、景品表示法違反による直罰規定の新設や課徴金制度の見直し等で制裁の強化もあり、不当表示等を行った場合の社内体制の構築も求められるようになりました。

その他、知財一括法により、特にスタートアップや中小企業を中心として、商標登録のハードルが下がり、また、データ保護が強化されて、新事業の展開が後押しされたことと思います。

3 2025年度の主なニュース

1)誹謗中傷防止のための大規模プラットフォーム事業者への規制

インターネット上における誹謗中傷被害を防止するため、2025年5月16日までに、従来のプロバイダ責任制限法に代わり、情報流通プラットフォーム対処法が施行されます。この法律の規制の対象となるのは、

「大規模特定電気通信役務提供者」(大規模特定電気通信役務を提供する者として、総務大臣に指定された事業者。いわゆる大規模プラットフォーム事業者のこと)

で、主にSNSや匿名掲示板等の運営事業者が該当します。

「誹謗中傷は主に大規模プラットフォームで行われるので、被害を食い止めるには大規模プラットフォーム事業者に迅速かつ十分な対応を義務付けるべきだ」というのが同法の趣旨で、主要なものとして次の5つの義務が設けられます。

  • 削除申出窓口・手続の整備・公表
  • 削除申出への対応体制の整備(十分な知識経験を有する者の選任等)
  • 削除申出に対する判断・通知(原則、一定期間内)
  • 削除基準の策定・公表(運用状況の公表を含む)
  • (削除した場合)発信者への通知

「1.削除申出窓口・手続の整備・公表」「2.削除申出への対応体制の整備」「3.削除申出に対する判断・通知」は、

投稿の削除対応の迅速性を求めるもの

です。大規模プラットフォーム事業者には、利用者からの削除申請を受け付ける窓口や手続を整備し、その情報を公表することが義務付けられます。また、誹謗中傷等の情報を削除してほしいと申出があった場合、

十分な知識経験を有する「侵害情報調査専門員」が遅滞なく調査を実施し、一定期間内にその情報が権利を侵害しているかを判断、その後、結果を申請者に通知

しなければなりません。

「4.削除基準の策定・公表」「5.発信者への通知」は、

削除対応に関する運用状況の透明性を求めるもの

です。一般の利用者からしても、どのような投稿が削除の対象となるのか明確でなければ、自由に情報発信を行うことができません。そのため、大規模プラットフォーム事業者は、

削除対象となる投稿がどのようなものか、どのような行為があった場合にアカウントが停止されるのか、基準を策定した上で事前に公表

する義務を負います。そして、投稿の削除やアカウントの停止を行った場合、その旨を発信者に対して通知しなければなりません。

これらの義務に違反した場合、大規模プラットフォーム事業者は、行政指導・行政命令を受けたり、行政命令に違反した場合には刑事罰を受けたりします。

2)物流効率化と特定事業者への規制強化

いわゆる「2024年問題」による、物流停滞への懸念や死亡・重傷事故の増加に対処するため、2025年4月1日より、改正流通業務総合効率化法・改正貨物自動車運送事業法が施行されます。

まず、改正流通業務総合効率化法のポイントは次の通りです。

  • 全ての事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課す
  • 1.の取り組み状況について国が判断基準を策定し、指導・助言、調査・公表を実施する
  • (一定規模以上の事業者に対し)中長期計画の作成や定期報告等を義務付ける
  • (一定規模以上の荷主に対し)物流統括管理者の選任を義務付ける

2024年4月1日より、物流業界にも労働基準法の「時間外労働の上限規制」が適用されるようになり、物流の停滞が懸念されています。そのため、

  • 物流の効率化
  • 商慣行の見直し
  • 荷主・消費者の行動変容

を行って、荷待ち・荷役時間の短縮や積載率の向上等を図ることで、この問題を乗り切ろうというのが改正法の趣旨です。

具体的には、「荷主(発荷主、着荷主)」「物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)」それぞれに、次のような措置を講じる努力義務が課せられます。

画像2

続いて、改正貨物自動車運送事業法のポイントは次の通りです。

  • 運送契約の締結等の際、所定の事項を記載した書面の交付等を義務付ける
  • 元請事業者に対し、実運送体制管理簿の作成を義務付ける
  • 下請事業者への発注適正化について努力義務を課し、一定規模以上の事業者に対し、管理規程の作成や管理者の選任を義務付ける

真荷主と運送事業者が運送契約を締結するとき、また、運送業務を受託した事業者(元請事業者)がその仕事をさらに下請けに出すときには、原則として以下の事項を記載した書面を交付しなければなりません。

  • 運送の役務の内容およびその対価
  • 運送の役務以外の役務が提供される場合は、その内容および対価
  • その他省令で定める事項

また、これと併せて、元請事業者には、

実際の運送体制を記録した管理簿(実運送体制管理簿)の作成・保存が義務付けられ、下請け発注に関する一定の健全化措置を講ずること

も義務付けられます。

3)建設業の処遇改善・働き方改革・生産性向上

2024年6月14日に建設業法等の改正法が公布され、一部の規定を除き、2025年12月13日までに施行される予定です。今回の建設業法等の改正のポイントは次の通りです。

  • 従業員の処遇改善
  • 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
  • 働き方改革と生産性向上

建設業は、住居やオフィス、商業施設の建設や地域のインフラ構築を担う重要な役割がある一方で、他産業より賃金が低く、就労時間も長いため、担い手の確保が困難な状況にあります。そのため、従業員の処遇改善・働き方改革・生産性向上を促し、建設業の担い手を確保しようというのが改正法の趣旨です。

「1.従業員の処遇改善」では、

建設業者に対して従業員の処遇を確保する努力義務を課すとともに、国が処遇確保に係る取り組み状況を調査・公表

していくことが求められます。これと併せて、

著しく低い労務費等による見積もりや見積もり依頼を禁止

することで、適正な労務費等の確保を目指しています。また、「2.資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止」のために、契約時のルールとして

  • 資材高騰等請負額に影響を及ぼすリスクの情報は、受注者から注文者に提供すること
  • 資材が高騰した際の請負代金等の「変更方法」を、契約書記載事項として明確化すること

が義務付けられます。

その他、長時間労働を抑制するために著しく短い工期による契約締結を禁止したり、ICTを活用した生産性の向上を求めたりする等、「3.働き方改革と生産性向上」の定めも置かれています。

4 今後の対応について

2025年度も、2024年度と同様に、様々な法改正が行われます。

まず、情報流通プラットフォーム対処法については、インターネット上の誹謗中傷の被害防止と被害者の迅速な救済が期待されています。主に大規模プラットフォーム事業者を対象としていますが、その他のプラットフォームを運営する事業者も、同法の考えを理解した上で、自社として誹謗中傷等にどう向き合うかを検討していくとよいでしょう。

改正流通業務総合効率化法・改正貨物自動車運送事業法については、実際に運送を担う末端の事業者が適正な報酬を得られるようになることが期待されています。多重下請構造が出来上がっている物流業界が対象ということで、影響を受ける会社も多いでしょうから、自社に求められる取り組みの内容を確認しておきましょう。

建設業法等の改正についても、趣旨はおおむね同じです。今後の建設業の担い手を確保するためには、従業員に対して処遇の改善や働き方改革を促すことが必要ですから、法改正を機に、自社の体制を見直していきましょう。

以上(2025年3月作成)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

pj98058
画像:Artur Szczybylo-shutterstock