【朝礼】仕事納めの日に伝えたい、たった1つのこと

【ポイント】

  • 今あるビジネス基盤「1」を、「0」ベースで見直し、新たなビジネス「2」を生み出す
  • こうしたチャレンジは、社員が経営者に着いてきてくれるからこそできること
  • 社員への感謝を忘れず、そして「1→0→2」のチャレンジを続けていこう

2024年も今日で仕事納めとなります。今年最後の朝礼で、私から皆さんに伝えたいことは1つだけ。「今年も、私のような経営者についてきてくれて本当にありがとう!」です。今年、我が社は大きなピンチに見舞われながらも、それを切り抜けることができました。新しいことにもチャレンジし、将来への布石を打つことができました。ひとえに皆さんの頑張りのおかげです。

今年の我が社の目標は「1→0→2」でした。これは、今あるビジネス基盤「1」を、「0」ベースで見直してダイナミックに改革を推し進め、新たなビジネス「2」を生み出すチャレンジを意味します。現場で働いている皆さんはあまり意識していなかったかもしれませんが、私には、多くの社員が積極的にチャレンジしている姿がはっきりと見えていました。これは、とてもうれしいことです。

一方、私は反省しています。私はこれまでもさまざまな場面で、皆さんとともに「2」を創り上げようという話をしてきたつもりですが、振り返ると私からの一方通行で、皆さんがその時々でどのような状況に置かれていたのか、皆さんの話をしっかり“聞き切る”ことができていませんでした。その反省を踏まえ、そして皆さんへの感謝を込めて、次の「ありがとう」を皆さんに贈ります。

  • あ:私から「あいさつ」をします
  • り:皆さんが夢中になれる「理想」を掲げます
  • が:誰よりも「頑張る」姿勢を貫きます
  • と:「共」に考え、悩み、喜ぶようにします
  • う:「上から目線」を改めます

「1→0→2」の取り組みは、来年も続きます。今年の成果を来年につなげるため、年末年始は家族と団らんする、思い切り趣味を楽しむなどしっかり休息を取ってください。よいお年を!

以上(2024年12月更新)

pj16794
画像:Mariko Mitsuda

え、うちの社員がギャンブル依存症!? WHOも認める病気に会社としてどのように向き合うか

1 ギャンブル依存症は誰でもなり得る?

大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の口座から巨額の預金を不正送金し、銀行詐欺罪などで訴追された元通訳が、自ら告白したことで注目される「ギャンブル依存症」。

ギャンブル依存症は、ギャンブルにのめり込み、自分ではコントロールができなくなってしまう精神疾患の1つ

で、世界保健機関(WHO)では「病的賭博」、米・精神医学会では「ギャンブル障害」として診断基準が定められています。

日本でも「ギャンブル等依存症対策基本法」により、ギャンブル等(公営競技である競馬・競輪・競艇・オートレース、その他パチンコ・パチスロといった射幸行為)にのめり込むことで、日常生活・社会生活に支障が生じている状態を「ギャンブル等依存症」と定義しています。

健全な娯楽のレベルで楽しむぶんには個人の自由ですが、仕事も手につかなくなるほどギャンブルにのめり込んでしまう社員がいたら、とても困りますよね。ただ、会社として社員の趣味にどこまで口を出してよいのかは悩むところもあります。

そこで、この記事では、

  • ギャンブル依存症について、会社が介入(懲戒処分など)できるケースを押さえること
  • ギャンブル依存症を生まない職場をつくること
  • ギャンブル依存症が疑われるときの参考情報、相談先を知っておくこと

をご提案します。

なお、ギャンブルは、広義には「金銭等を賭けて、より価値あるものを手に入れる行為」を指します。その意味では、FXや商品先物などの金融取引、宝くじやスポーツくじ、ゲームセンターのクレーンゲーム、スマホゲームやソーシャルゲームの「ガチャ」などもギャンブルといえるでしょう。また、違法ですが、海外のオンラインカジノや友人同士の賭け麻雀などの賭博もギャンブルです。この記事では便宜上、違法なものも含めて「ギャンブル」として扱います。

2 ギャンブル依存症の社員を解雇できるのか?

前提として、健全な娯楽として社員が個人的に行っているギャンブルを会社が規制することはできません。プライベートな時間をどう過ごすかは、基本的に労働者(=社員)の自由だからです。

ここでは、会社として判断が求められる次の3つの場合を考えてみましょう。

  1. 社員が行っているギャンブルが違法な賭博だった場合
  2. 合法でも勤務中に社員がギャンブルを行った場合
  3. ギャンブルに起因して社員が借金問題を抱えている場合

なお、判断の基になるのは、就業規則にどのように定めているかです。例えば、

就業規則にギャンブルに関する懲戒事由を定めていなければ、そもそも懲戒処分は不可

です。自社の就業規則が厚生労働省「モデル就業規則(令和5年7月版)」を参考に策定したものであれば、不足がないか確認の上、規定を見直して労働基準監督署に届け出るようにしましょう。

■厚生労働省「モデル就業規則(令和5年7月版)」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/

1)社員が行っているギャンブルが違法な賭博だった場合

多くの会社では、

「会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと」

を服務規律の遵守事項として定めています。賭博は、刑法が定める犯罪類型の1つで、単純賭博の場合は50万円以下の罰金または科料、常習賭博の場合は3年以下の懲役が科されます。社員が賭博を行ったことが明るみに出れば、会社の名誉や信用を損なう恐れがあります。つまり、

賭博をすること自体が服務規律違反(懲戒事由)

になるというわけです。

懲戒処分の種類(懲戒解雇、出勤停止、減給など)は、事案の大きさなどに応じて決めることになります。ただし、解雇の判断は慎重に行わなければなりません。たとえ、社員が単純賭博の容疑で現行犯逮捕されたとしても、それをもって直ちに解雇することはNGです。逮捕された時点では、社員が本当に有罪なのかは分からないからです。

また、逮捕された社員の家族や弁護人から「会社に迷惑をかけられない」といった理由で退職の申し入れがあるかもしれませんが、承認するかどうかは、事案の重大さや捜査状況を見ながら検討するべきでしょう。

なお、逮捕された場合、社員は身柄を拘束され働けない状態になります(検察官が起訴・不起訴といった終局処分を決定するまでに、最長23日間(72時間+20日間)身柄を拘束される恐れがあります)。そのフォローをどうするかなどは検討する必要があります。

2)合法でも勤務中に社員がギャンブルを行った場合

同じく服務規律の遵守事項として、

「勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと」

という定めもよく見受けられます。この定めにのっとると、

社員が勤務中に正当な理由なく店に行ってパチンコを打つのは服務規律違反(懲戒事由)

となります。

とはいえ、勤務場所を離れなくても、スマホがあれば、オンラインで競馬、競輪、競艇、オートレースに賭けることはできてしまいます。こうした行為を防ぐために、服務規律の遵守事項に「勤務中は職務に専念し、正当な理由なく私用で携帯電話他、通信機器での通話・メール等通信を行わない」旨を定めることも1つの手です。

なお、休憩時間は、労働者(=社員)に自由に利用させなければなりませんが、一定の制限を加えるのは可能です。服務規律の遵守事項に「休憩時間中のギャンブルを禁止する」旨を定めることも検討の余地があります。

このように「ギャンブルを禁止する」旨を定める場合、少なくとも会社のネットワーク環境からは、競馬、競輪、競艇、オートレース関連のウェブサイトに接続できないように設定するなど(Webフィルタリング)、技術的な対応も併せて行い、ルールと実態の整合性を保つように努めるとよいでしょう。

3)ギャンブルに起因して社員が借金問題を抱えている場合

社員がギャンブルに起因する借金問題を抱えていても、

職務遂行に影響を及ぼさない限り、会社が介入する余地はない

というのが原則です。とはいえ、社員が隠そうとしても、消費者金融業者などから督促の電話が会社にかかってきたり、裁判所から給与の差し押さえ命令が会社に送られてきたりすることで、借金問題は露呈します。

社員の借金問題が露呈したときには、本人としっかり話し合い、対応を決める必要があります。例えば、

社員が経理業務やレジ業務の担当の場合、直接お金を扱う職種を避けて配置転換をする

といった対応もあり得るでしょう。

また、現実には、社員が同僚から借金を重ねた挙げ句に、返済が滞りトラブルに発展することも起きています。こうしたトラブルを避けるためには、服務規律の遵守事項に

「社員間の金銭の貸借を禁止する」

といった定めを設けるとよいでしょう。

3 ギャンブル依存症を生まない職場づくりを

1)ギャンブル依存症の人は日本に何人いる?

ギャンブル等依存症対策基本法に基づいて2021年に行われた国立病院機構久里浜医療センターによる調査では、調査対象者の過去1年以内のギャンブル等の経験の評価結果から、「ギャンブル等依存が疑われる者」の割合を、成人の2.2%と推計しています(松下幸生、新田千枝、遠山朋海「令和2年度 依存症に関する調査研究事業 ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」、2021年)。

単純計算すると、社員数50人規模の会社では、ギャンブル依存症の社員が1人くらいいても不思議ではないということになります。

2)ギャンブル依存のメカニズムを知る

依存症の原因は、脳内の「報酬系」などの機能異常と考えられています。ギャンブルで勝ったときなどに、脳内では快楽物質であるドーパミンが放出され、多幸感や高揚感が得られます。そして、それを繰り返すうちに脳が刺激に慣れてしまい、より強い刺激を求めるようになります。その結果、行動がコントロールできなくなってしまうのがギャンブル依存のメカニズムと考えられています。

3)ギャンブル依存に至る変化を見過ごさない

最初は、興味本位で、友人や知り合いから教えてもらってギャンブルに手を出し、勝ったことに味をしめて、次第にのめり込んでしまうという人が少なからずいます。ギャンブル依存症になると、自らギャンブルをやめたくてもやめられない状態に陥り、泥沼から抜け出せなくなってしまいます。

例えば、職場で「パチスロで〇万円勝った」「週末に万馬券とった」「万舟きた」などと自慢気に吹聴している社員がいたら、度が過ぎていないか、それとなく言動に気をつけておきましょう。勤務中にギャンブルの話ばかりしているようであれば、口頭で注意することも必要です。

再三にわたって注意を聞かず、他の社員から苦情まで出てくるような場合などには、服務規律の遵守事項に照らして、けん責などの処分対象にすることも検討しましょう。

4 ギャンブル依存症が疑われるときの参考情報、相談先

1)ギャンブル等依存症対策推進本部

首相官邸に設けられたギャンブル等依存症対策推進本部では、ギャンブル等依存症を克服した人やその家族などからの体験談を公開しています。また、後述する「ギャンブル依存症問題を考える会」をはじめとする、相談先などを紹介しています。

■ギャンブル等依存症対策推進本部「ギャンブル等依存症を克服された方の体験談」■

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gamble/

2)依存症対策全国センター

国立病院機構久里浜医療センターは、アルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症、ゲーム依存症の全国拠点機関(依存症対策全国センター)に指定され、依存症の治療や回復支援に携わる専門家の育成、依存症相談事業の拡充、依存に関する情報発信の向上など各種事業を実施しています。

ギャンブル依存症を含む依存症に関する基礎的な知識を紹介しているほか、全国の依存症専門相談窓口と医療機関が検索できます。

■依存症対策全国センター■

https://www.ncasa-japan.jp/

3)ギャンブル依存症問題を考える会

ギャンブル依存症問題を考える会は、ギャンブル依存症当事者・家族の支援に力を入れ、そこから派生する各地域の支援者との連携や啓発活動を行っています。

考える会の代表・田中紀子氏らは、2018年、病的ギャンブラーとギャンブル愛好家を分ける重要4項目を抽出し、その頭文字から「LOST」と名付けた、ギャンブル依存症自己診断ツールを開発しました。

  • Limitless:ギャンブルをするときには予算や時間の制限を決めない、決めても守れない
  • Once again:ギャンブルに勝ったとき「次のギャンブルに使おう」と考える
  • Secret:ギャンブルをしたことを誰かに隠す
  • Take money back:ギャンブルに負けたときすぐに取り返したいと思う

直近1年間のギャンブル経験にあてはめ、上記4項目のうち2つ以上が「はい」という回答の場合、ギャンブル依存症の危険度が高いと考えられます(田中紀子、松本俊彦、森田展彰、木村智和「病的ギャンブラーとギャンブル愛好家とを峻別するものは何か:LINEアプリ・セルフスクリーニングテストを用いた病的ギャンブラーの臨床的特徴に関する研究」日本アルコール・薬物医学会雑誌 53 (6) 264-282、2018年)。

■ギャンブル依存症問題を考える会■

https://www.scga.jp/

以上(2024年12月作成)
(監修 弁護士 田島直明)

pj00720
画像:ChatGPT

【3分で分かる個人情報保護(6)】個人データを第三者に渡しても良い?

1 個人データの第三者提供には、あらかじめ本人の同意が必要

一般の事業会社が、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供できるのは、次のような場合です。

  1. 法令に基づく場合
  2. 人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
  3. 公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
  4. 国の機関もしくは地方公共団体またはその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき

なお、そもそも「第三者への提供」自体が利用目的である場合などには、所定の事項をあらかじめ本人に通知するか、本人が容易に知り得る状態に置いた上で、個人情報保護委員会へ届け出れば、「オプトアウト」の形で個人データを第三者に提供できます。

オプトアウトとは、あらかじめ本人の同意を得ることなく、個人データを第三者に提供すること(本人から求めがあった場合に、求めに応じて第三者提供を停止することが条件)

です。

注意が必要なのは「要配慮個人情報」を第三者に提供する場合です。

要配慮個人情報とは、不当な差別や偏見などの不利益が生じないよう、取り扱いに特に配慮を要する個人情報のこと

です。具体的には、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実、心身の機能の障害があること、医師等により行われた健康診断の結果などが該当します。要配慮個人情報をオプトアウトの形で第三者に提供することは禁止されており、法令に基づく場合などの例外を除いて、必ず本人の同意を得なければなりません。

実務上、社員の健康情報(健康診断の結果や病歴など、健康に関する個人情報)を健康保険組合に提供する場合などがありますが、健康情報の多くは要配慮個人情報に該当し、そうでない場合も機微な情報が含まれ得ることなどから、要配慮個人情報に準じて取り扱うことが望ましいとされています。あらかじめ利用目的を通知し、社員の同意を得ておくとよいでしょう。

■個人情報保護委員会「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/ryuuijikou_health_condition_info/

2 外国にある第三者への提供は制限されている

個人データを外国にある第三者に提供する場合、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得なければならず、その際、

  • 当該外国の名称
  • 適切かつ合理的な方法により得られた当該外国における個人情報の保護に関する制度
  • 当該第三者が講ずる個人情報の保護のための措置

に関する情報を、本人に提供しなければなりません。

この他にも押さえるべきポイントは多岐にわたります。そのため、ガイドライン(通則編)とは別に「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」が定められています。興味のある方は確認してみてください。

■個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_offshore/

3 第三者提供については記録を残す

個人データを第三者に提供したとき、または第三者から個人データの提供を受けるときには、次の事項の確認および記録の作成を行わなければなりません(保存期間は原則3年)。

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この他にも押さえるべきポイントは多岐にわたります。そのため、ガイドライン(通則編)とは別に「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)」が定められています。興味のある方は確認してみてください。

■個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_thirdparty/

以上(2024年12月更新)

pj60353
画像:THAWEERAT-Adobe Stock

【人事はつらいよ】妊娠した女性社員を気遣って業務を軽くしたのにマタハラ?

1 体調を気遣って業務を軽くしただけなのに……

A課長は、部下の女性社員Bさんから「妊娠したので、いずれ産休(産前・産後休業)をいただくことになります。日程は改めてご相談します」と報告を受けました。A課長は「Bさんがいつ休んでもいいようにしなければ」と部署内の業務体制を見直し、ある日、Bさんに言いました。

「Bさんの担当業務は他の社員に割り振ることにしたから、今日からは負担の少ない簡単な業務だけやってくれればいいよ。いつ休んでも大丈夫だから、遠慮なく言ってね」

しかし、Bさんの反応は、A課長の思っていたものとは違いました。

「課長、妊娠したとは言いましたが、私は働ける状態です! なぜ私に何の相談もなく、仕事を取り上げてしまうんですか? 産休を取られると迷惑だから、嫌がらせをしているんですか? それってマタハラ(マタニティハラスメント)です!」

A課長は釈然としません。

「Bさんを気遣っただけなのに、なぜマタハラなんて言われなきゃいけないんだ? 無理に働いておなかの子に何かあったら、それこそ問題じゃないか。納得いかない……」

2 就業に支障がない状態で業務を変更すると、マタハラ?

「マタハラ(マタニティハラスメント)」とは、

女性社員の妊娠・出産・育児に関する嫌がらせのこと

です。法的には、男性社員の育児に関する嫌がらせ「パタハラ(パタニティハラスメント)」や、介護に関する嫌がらせ「ケアハラ(ケアハラスメント)」を含めた、

「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント」

の一種で、会社は男女雇用機会均等法と育児・介護休業法にのっとって、これらのハラスメントを防止する義務があります。

マタハラ、パタハラ、ケアハラは、

  • 制度等の利用への嫌がらせ型(産休などを利用する(した)ことによる嫌がらせ)
  • 状態への嫌がらせ型(妊娠などによって就業状況が変わったことによる嫌がらせ)

に分けることができ、マタハラの場合、例えば次のような言動が当てはまります。

画像1

こうした言動のせいで、女性社員が産休などの制度を利用できなかったり、会社に居づらくなったりして就業環境が害されるとマタハラ(違法)になり、女性社員から民法に基づく損害賠償などを請求される恐れがあります。一方で、

上司などの言動が、客観的に見て業務上の必要性(業務分担や安全配慮など)に基づくものであれば、マタハラにならない

とされています。

さて、冒頭のA課長の「妊娠したBさんに、簡単な業務だけを命じる」という対応は、マタハラになるのでしょうか。内容自体は、図表の「状態への嫌がらせ型」の「2.妊娠などをしたことによる嫌がらせ」に近そうですが、A課長は妊娠したBさんを気遣っただけで、嫌がらせの意図はありません。判断が難しいですが、上の業務上の必要性の問題に照らすと、

  • Bさんが妊娠前後を通じて就業状況が変わらず就業に支障がない場合、妊娠を理由に勝手に業務を変更するとマタハラになる恐れがある(業務上の必要性がないため)
  • Bさんが妊娠してから、妊娠に由来する体調不良により早退や欠勤が続いているといった事情がある場合、業務を変更してもマタハラにならない(業務上の必要性があるため)

と考えられます。ただ、Bさんが体調不良の場合でも、「就業場所をオフィスから自宅に変更すれば、テレワークで今の業務を続けられる」ケースなどがあるので、慎重な判断が必要です。

3 女性社員と相談した上で対応すれば、基本的にOK

マタハラの問題には注意が必要な一方で、法令上、女性社員の業務内容や労働時間を必ず見直さなければならないケースというのもあります。具体的には、

  • 妊娠した女性社員から請求があった場合、軽易な業務に転換する義務(労働基準法)
  • 女性社員が妊娠中・出産後の健康管理について医師から指導を受けた場合、その指導事項を守れるよう必要な措置を講じる義務(男女雇用機会均等法)
  • 3歳未満の子を養育する社員(男性社員も含む)が請求した場合、所定外労働を免除する義務、または所定労働時間の短縮措置などを実施する義務(育児・介護休業法)
  • 小学校就学前の子を養育する社員(男性社員も含む)が請求した場合、1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働、深夜労働を免除する義務(育児・介護休業法)

などがあります。

いずれも基本的には、女性社員から請求を受けた上で対応するので、結局のところ、

妊娠・出産・育児で女性社員の業務を変更する場合、本人と相談した上で方向性を決めればトラブルになりにくい

といえます。ただし、業務を変更する場合、

降格や賃金の引き下げといった「労働条件の不利益変更」の問題

に注意が必要です。

過去に、会社が妊娠した女性社員を軽易な業務に転換した際、管理職から降格させてトラブルになった事例があります(最高裁第一小法廷平成26年10月23日判決)。最高裁判所は、

  • 原則として、妊娠中の軽易な業務への転換を理由に、降格させることは違法である
  • ただし、「当該女性社員が自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する場合」または「降格させずに業務を変更すると、円滑な業務運営や人員配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、当該措置が法の趣旨・目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき」は違法でない

との考えを示していて、この裁判では、会社が事前に「職場復帰後も女性社員を管理職に復帰させる予定がない旨」を本人に説明していなかったことなどから、降格は違法と判断されました。

つまり、会社が女性社員と業務の変更について相談する場合、

「女性社員に不利益はないか」「不利益がある場合、どのような内容なのか。また、不利益を避けられない理由は何か」などを明らかにして、本人に説明する必要がある

ということです。

近年は、育児・介護休業法の改正が続いていて、妊娠・出産・育児と仕事を両立するハードルは昔よりも下がってきています。だからこそ、会社がその両立を妨げないよう、マタハラ対策はしっかり進めておく必要があります。

以上(2024年12月更新)
(監修 弁護士 八幡優里)

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【3分で分かる個人情報保護(5)】個人データの漏えい等が発覚したら、どうすればいいの?

1 個人データの漏えい等が発覚したら関係各所に連絡、報告

個人データが漏えい、滅失、毀損してしまったときや、そのおそれがあるときに備えて、関係各所に連絡、報告できる体制を整えておく必要があります。

1)社内における報告および被害の拡大防止

責任ある立場の人に報告する手順や連絡手段の他、休日や深夜などにおける対応についても細かく定め、周知することで、誰もが同じような対応が取れるように整備することが重要です。

2)事実関係の調査、原因の究明、影響範囲の特定、再発防止策の検討および実施

一連の流れでの対応となります。再発防止策を講じるには、どうして漏えい等事案が発生したのか、何が問題だったのかなど細かく事案を調査した上で検討する必要があります。

3)個人情報保護委員会への報告および本人への通知

個人の権利利益を侵害するおそれが大きく、一定の要件に該当する漏えい等事案については、個人情報保護委員会への報告および本人への通知が義務化されたので注意が必要です(詳しくは次章をご覧ください)。

なお、ここでいう個人データの「漏えい等」とは、「漏えい」「滅失」「毀損」の3つの総称です。

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2 個人情報保護委員会へ報告しなければならない場合とは?

個人の権利利益を侵害するおそれが大きく、一定の要件に該当する漏えい等事案とは、

  1. 要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい等
  2. 不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある個人データの漏えい等
  3. 不正の目的をもって行われたおそれがある個人データの漏えい等
  4. 個人データに係る本人の数が1000人を超える漏えい等

のことです(「報告対象事態」といいます)。

個人情報保護委員会への報告を要する事例として次のような場合が挙げられます。

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個人情報保護委員会への報告は、「速報」と「確報」の2段構えで対応します。個人情報取扱事業者は報告対象事態を知った時点からおおむね3~5日以内に「速報」を、また、報告対象事態を知った時点から30日以内(不正の目的をもって行われたおそれがある個人データの漏えい等の場合は60日以内)に「確報」をあげなければなりません。

実際の報告は、原則として、個人情報保護委員会のホームページにある報告フォームから次の1から9までに掲げる事項を入力して行います。速報時点での報告内容については、報告をしようとする時点において把握している内容を報告すれば足ります。

  1. 概要
  2. 漏えい等が発生し、または発生したおそれがある個人データの項目
  3. 漏えい等が発生し、または発生したおそれがある個人データに係る本人の数
  4. 原因
  5. 二次被害またはそのおそれの有無およびその内容
  6. 本人への対応の実施状況
  7. 公表の実施状況
  8. 再発防止のための措置
  9. その他参考となる事項

■個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/leakAction/

(注)マイナンバーが含まれている場合と、そうでない場合で報告フォームの入り口が異なります。

3 本人への通知は「いつまでに」「どうやって」行う?

個人情報取扱事業者は、報告対象事態を知ったときは、本人への通知を行わなければなりません。対応内容は、個人情報保護委員会への報告とほぼ重なりますが、「いつまでに」「どうやって」の部分が異なります。

本人への通知までの時間的制限は明示されていません。具体的に通知を行う時点は、個別の事案において、その時点で把握している事態の内容、通知を行うことで本人の権利利益が保護される蓋然性、本人への通知を行うことで生じる弊害等を勘案して判断します。

また、本人への通知については、その様式は定められていません。ガイドラインでは、本人にとって分かりやすい形で通知を行うことが望ましいとされており、文書を郵便等で送付することや、電子メールを送信することによって知らせる方法が例示されています。

なお、本人へ通知すべき事項については、漏えい等報告における報告事項のうち、「概要」「漏えい等が発生し、または発生したおそれがある個人データの項目」「原因」「二次被害またはそのおそれの有無およびその内容」「その他参考となる事項」に限られます。

以上(2024年12月更新)

pj60352
画像:Mono-Adobe Stock

「ガンプラ」人気で市場が拡大! プラモデルの需要動向

1 プラモデル(特にガンプラ)の需要について

プラモデルは、コロナ禍に伴い外出を控えた人々が、家で楽しく過ごすための手段(いわゆる「巣ごもり需要」)の1つとして注目され、現在も市場規模が拡大しています。

実際の乗り物やアニメのキャラクターなどの様々なプラモデルがある中でも、「機動戦士ガンダム」のアニメや漫画、ゲームに登場するモビルスーツやモビルアーマーと呼ばれるロボットや戦艦などを立体化した「ガンプラ」は、次のような特徴があり、人気があります。

  • スナップフィット:パーツ同士を組み立てる際に、特別な工具や接着剤を使わずに組み合わせることが可能で、手を汚さずに組み立てできる
  • 多色成形:1枚のランナー(パーツが付いている枠)に数種類の色を同時に再現できる。そのまま組み立てるだけでカラフルな仕上がりになるため、塗装する必要がない
  • ブランドの豊富さ:スケール(大きさ)やコンセプトに合わせて複数のブランドがあり、組み立て時間や難易度を考慮しながら商品を選ぶことができる

BANDAI SPIRITS(東京都港区)が2023年12月に、18~59歳のプラモデル・フィギュアユーザー1000人を対象に行ったインターネット調査「BANDAI SPIRITS大人アンケート調査」によると、プラモデル・フィギュアを購入したきっかけとして多かったのは、

「好きなアニメやマンガのキャラクターに興味を持ったから」「自分1人でも始められるから」「作る楽しみや作りごたえがあると思ったから」など

で、好きな作品の立体物を自分の手で組み立てられる楽しさに需要があるとうかがえます。

■BANDAI SPIRITS「BANDAI SPIRITS大人アンケート調査」■

https://www.bandaispirits.co.jp/press/2024/240220.php

2 プラモデルの出荷金額などの動向

1)プラスチックモデルキット(プラモデル)製造業の産出事業所数・出荷金額など

プラスチックモデルキット製造業の産出事業所数と出荷金額の推移、並びに都道府県別の事業所数と出荷金額は次の通りです。

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また、プラスチックモデルキットの生産、販売数量、販売金額、月末在庫の推移は次の通りです。

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プラスチックモデルキットの産出事業所数と出荷金額は、静岡県が日本一となっています。静岡県は、プラモデル産業の源流となる木製模型飛行機の製造が盛んで、戦後木製からプラスチック製へと素材を変え、自動車・飛行機などの模型を中心に生産を拡大。その後も、スロットレーシングカーやキャラクター商品などをヒットさせ、プラモデルの一大産地となっています。

ガンプラも、静岡市葵区にある「バンダイホビーセンター」が生産拠点となっており、BANDAI SPIRITSによると、1980年の「1/144ガンダム」から始まり、2024年3月末時点までで約7億8745万個のガンプラを生産しています。また、今後の安定的な生産体制を確保するため、バンダイホビーセンター本館に近接する敷地内で新工場を建設する計画もあり、2026年度に新工場が本格稼働した際には、2023年度と比べて約35%の増産が可能になる見込みだそうです。

2)売上高の推移

ガンダムシリーズ(ガンプラ以外の商品・サービスを含む)の売上高の推移は次の通りです。

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ガンダムシリーズのグループ全体の売上高は、2020年3月期の781億円から、2024年3月期に1457億円と、5年間で187%も成長しています。その背景には、国内外で映像配信プラットフォームが普及し、多言語対応も進んだことで、ガンダムシリーズの認知度が向上し、新規ファンの獲得につながったことなどがあるようです。

また、海外展開も進んでおり、BANDAI SPIRITSのプレスリリースによると、2020年の発売40周年の時点で、ガンプラの年間販売額の5割が海外での売上とされています。組み立て体験会や現地モデラーによるプラモデル講習会などで認知を拡大させており、特に北米と中国市場を重点に置いているといいます。

3 プラモデルの製造・販売ルートについて

1)プラモデルの製造企業の事例

日本国内における主なプラモデルの製造企業を紹介します。

1.BANDAI SPIRITS(東京都港区)

プラモデル、フィギュア・ロボット、一番くじ、アミューズメント景品などの企画・開発・製造・販売を行っており、ガンプラは同社が手掛けています。

ガンプラ以外のプラモデルでは、「BEST HIT CHRONICLE」というシリーズ名で日清食品のカップヌードルや、ソニーのPlayStation、SEGAのセガサターンをプラモデルで再現した商品があります。

■BANDAI SPIRITS■

https://www.bandaispirits.co.jp/

2.壽屋(東京都立川市)

国内、海外のコンテンツ権利者から、人気アニメ、ゲーム、映画のキャラクターなどのライセンスを取得し、プラモデルやフィギュアなどの製造・販売を行っています。顧客のニーズを素早く社内へ反映できる「製販一貫体制(商品の開発から販売までを全て自社のみで担う体制)」を大きな強みにしており、国内に直営店が3店舗ある他、米国にも事業所を置いています。

また、創業地である立川市の活性策として、マラソンへの協賛や、社員が小学校に出向いてプラモデルの作り方を教える「出張プラモデル教室」なども実施しています。

■壽屋■

https://company.kotobukiya.co.jp/

3.青島文化教材社(静岡県静岡市)

2024年10月31日で創業100周年を迎え、乗用車・トラック・スーパーカーなどの自動車や艦船模型のプラモデルを中心に製造・販売を行っています。塗装や接着剤不要で組み立てることができ、安価な「ザ・スナップキット」や、群馬電機(群馬県みどり市)が手掛ける販促機器「呼び込み君」をプラモデル化した「スーパーサウンド『呼び込み君』ミニ」などが人気です。

また、ベネリックデジタルエンターテインメント(東京都千代田区)が運営するメタバース(インターネット上の仮想空間)の商業施設「そらのうえショッピングモール」に開設するホビーショップの第1弾に、同社が採用されています。実店舗ではスペースの制約から売り場に全ての商品を並べることが難しいですが、メタバースであればこうした問題も解消されます。

■青島文化教材社■

https://www.aoshima-bk.co.jp/

4.タミヤ(静岡県静岡市)

車やバイク、飛行機などのスケールモデル(縮尺に基づいて忠実に再現した模型)を製造・販売する模型メーカーです。フラッグシップ拠点として、東京都港区に「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」を2024年5月にオープンし、小学生向けに、ものづくり・プログラミングの学びを提供する「タミヤロボットスクール」などのイベントを展開しています。

■タミヤ■

https://www.tamiya.com/japan/index.html

5.ハセガワ(静岡県焼津市)

飛行機、船、自動車などの乗り物、架空のキャラクターモデル、輸入品プラモデルなどの販売を手掛けており、特に飛行機や旧車のスケールモデルに定評があります。入門向けプラモデルとして、接着剤不要/接着剤必要/本格派の3段階のシリーズをそろえており、接着剤不要のシリーズには乗り物だけでなく、オフィス家具やレトロ自販機のミニチュアなどユニークな商品もあります。

■ハセガワ■

http://www.hasegawa-model.co.jp/

2)ガンプラの製造工程について

BANDAI SPIRITSのウェブサイトによると、ガンプラ製造工程の流れは次の通りです。

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3)プラモデルの流通経路について

プラモデルの流通経路の例は次の通りです。

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メーカーが問屋(メーカーから商品を仕入れて小売業へ販売する事業)を通じて玩具店、家電量販店、模型店などへ提供する形態もありますが、インターネット通販サイトによる販売も今では盛んになっています。

また、ガンプラは、玩具店や家電量販店の玩具コーナーでの販売に限らず、Bandai Namco Groupの公式通販サイトである「プレミアムバンダイ」や、ガンプラの総合施設「ガンダムベース」など、自社直営での販売にも注力しています。

4 プラモデル業界の外部環境分析

プラモデル業界を取り巻く環境について、ビジネスフレームワークのPEST分析を基に触れていきます。

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政治の面では、政府が製造業を対象に、再生プラスチックの使用拡大に向けた計画を策定するよう義務づける方針を固め、「資源有効利用促進法」の改正に向けた検討を始めており、今後、パーツやランナーの再利用に向けた動きが進むことが想定されます。

経済の面では、コロナ禍による巣ごもり需要がきっかけでのプラモデルブーム再燃をはじめ、インバウンド消費の拡大や、キダルト層を取り込むための商品展開などによって、市場が拡大しています。一方で、原材料価格や包装資材の高騰、物流コストの上昇を受けて、値上げを実施する動きもあります。

社会の面では、プラモデルは個人の趣味としてだけでなく、ものづくりの楽しさを学ぶために学校の授業で採用されたり、医療機関でリハビリプログラムに取り入れられたりするなど、利用シーンや用途が拡大しています。その一方で、需要に供給が追い付かない背景から、ネットオークションやフリマサイトでの高額転売が問題になっています。

技術の面では、ガンプラは他のプラモデルと比べて色分けや組み立てやすさの面で、他のプラモデルよりも手に取りやすいメリットがあります。また、イベントなどを通じてランナーや海洋プラスチックごみを回収し、商品の一部、もしくは全体にリサイクル素材を使用したプラモデルも製造・販売しています。

5 参考:紙資材について

ここでは、プラモデルの箱に使われる「色板紙」のデータを取り上げます。

黄・チップ・色板紙の生産数量、販売数量、販売金額、月末在庫などの推移は次の通りです。

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以上(2024年12月作成)

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画像:Sutthisak-Adobe Stock

【人事はつらいよ】病気の社員をサポートしたいのに、社内での情報共有が違法?

1 社員の体調を思えばこそ、情報共有したいのに……

最近、元気がないAさん。上司のB課長が心配して理由を聞いてみました。最初は「大丈夫です」としか言いませんでしたが、B課長が「でも体調が悪そうだよ?」と聞くと、Aさんはしばらく沈黙した後、小さな声で答えました。「実は○○という病気なんです。でも重い病気じゃないので大丈夫です。放っておいてください」

ある日、出張に出ることになったB課長は、Aさんの先輩であるCさんに伝えました。

「ここだけの話だけど、Aさんが○○という病気らしい。Cさん、私が出張に出ている間、Aさんのことを気遣ってあげてくれ。具合が悪そうだったら早めに帰すようにね」

数日後、B課長が出張から帰ると、Aさんが詰め寄ってきました。どうやらB課長の出張中、Cさんが、体調の優れないAさんを帰そうとした際に、「B課長から病気については聞いているから」と口を滑らせてしまったようです。

「なんで病気のことを勝手にCさんに話したんですか? 知られたくなかったのに……。個人情報を勝手に話すなんて非常識です!」

B課長はAさんの気持ちも分かる一方で、どこか釈然としません。

「病気が機微な情報なのも、知られたくないのも分かる。でも、私が出張中、Aさんに万が一のことがあったら困るから、Cさんにだけ伝えてフォローをお願いしたんだ。それもダメなのか? 個人情報は社員の健康よりも大事なの?」

2 個人情報と社員の健康、結局どちらが優先?

個人情報保護法では、

「要配慮個人情報」という取り扱いに注意を要する極めて機微な個人情報については、原則として本人の許可を得ずに、第三者に提供してはならない

とされています。社員の健康に関する情報であれば、次のようなものが要配慮個人情報に該当します。

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一方、労働契約法には、

「安全配慮義務」といって、社員が安全で健康に働けるよう配慮すべきという会社の義務

が定められています。体調の優れない社員を早く帰らせたり、軽い業務に転換させたりするのもこの義務の一環で、当たり前ですが、見て見ぬふりをするといった対応は許されません。

冒頭のAさんの事例は、詰まるところ「要配慮個人情報の保護と安全配慮義務はどちらが優先されるのか」という問題なのですが、ざっくり言うと、

どちらも同じくらい重要で、原則、両立させなければならない

ということになります。

3 社員の許可を得て、必要最小限の情報のみを共有する

社員の病気について本人の許可なく、第三者に提供していいのは、例えば、

社員が病気で倒れ、医師に病名を告げないと生命の危険がある

など、緊急性の高いケースに限定されます。逆にこうしたケースでなければ、本人の許可なく、第三者に話すべきではありません。ですから、冒頭の「B課長がAさんの許可なく、病名をCさんに伝える」という対応は、たとえAさんのためであっても法令違反になる可能性があります。

では、要配慮個人情報の問題をクリアしつつ、安全配慮義務を果たすにはどうすればよいのでしょうか。ポイントは、

社員本人の許可を得て、業務をサポートする上で必要最小限の情報のみを共有すること

です。細かい説明は一旦置いておいて、まずは図表2を見てください。冒頭のB課長が、Aさんからサポートに必要な情報をヒアリングする際の会話の例です。

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図表2の会話の赤字部分に注目してください。重要なのは次の3点です。

  1. どんな病気かではなく、労務を提供できる状況かを確認することを意識する
  2. 会社には安全配慮義務、社員には自己保健義務があることを伝える
  3. 必要最小限の情報を、必要最小限の社員にのみ共有する

1.どんな病気かではなく、労務を提供できる状況かを確認することを意識する

図表2では、B課長がAさんの病気の話を聞いて、まず「仕事をするのに支障がないか」を確認しています。前述した通り、要配慮個人情報は極めて機微な情報です。「どんな病気か」という視点で情報を収集しようとすると、不要な情報まで詮索してしまう恐れがあるので、「労務を提供できる状況かを確認する」という意識で、必要最小限の情報のみを収集します。

2.会社には安全配慮義務、社員にも自己保健義務があることを伝える

図表2では、仕事への支障について話したがらないAさんに対し、B課長が安全配慮義務と自己保健義務の存在を伝えています。要配慮個人情報は、本人の許可なく収集できないので、自発的に話してもらう必要がありますが、「話したくないなら話さなくていい」というスタンスだと情報を得られないので、「社員の健康を守る」ことに対する会社の本気度を伝えます。

3.必要最小限の情報を、必要最小限の社員にのみ共有する

図表2では、B課長が「Cさんには病気のことを話さず、Aさんをフォローする上で必要な措置だけを話す」と言っています。社員のサポートに支障がなければ、病気に関する情報は話しません。必要な措置について共有する相手も、社員のフォローに関わる人だけに限定します。共有する情報量や相手が増えてしまうと、社員の病気に対する臆測が飛び交ったり、腫れ物に触るような雰囲気が広がったりする恐れがあるからです。

今回は少し難しい問題を取り上げました。社員の健康を守ることは会社の義務ですが、そのために知られたくない個人情報が周囲に伝わり、会社に居づらくなってしまうようなことは避けなければなりません。逆もまたしかりです。

以上(2024年12月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 平田圭)

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画像:metamorworks-shutterstock

【朝礼】来たる巳年は「周囲を呑み込む気迫」を持とう

【ポイント】

  • 蛇には、「たとえ小さな存在であっても、自分は人には負けない」という気迫がある
  • 「自分が正しいと思うことについては、堂々と主張する気迫」を持ってほしい
  • 仮に主張が受け入れられなくても、「自分に何が足りなかったのか」を学ぶことができる

皆さん、おはようございます。12月になり、今年も残すところあとわずかです。少し気が早いですが、来年の干支は「巳(み)」、つまり蛇です。蛇というと、おどろおどろしい模様の毒蛇などをイメージして、身構えてしまう人もいるかもしれません。ですが、蛇は嫌われることも多い一方、多くの土地で、霊性をそなえた神聖な存在として扱われてもきたのです。

そんな蛇にまつわることわざに「蛇は寸にして人を呑(の)む」というものがあります。「蛇は一寸ほどの小さなものでも、すでに人を呑もうとする気迫がある」という意味です。本来は、優れた人物が、幼い頃から抜きんでた才能を示すことの例えとして使われるのですが、今回はそこではなく、「一寸の蛇」という部分に注目してください。

一寸は約3センチメートル、人を呑み込めるような大きさではありません。ですが、それでも蛇は「たとえ小さな存在であっても、自分は人には負けない」という気迫を持ち、堂々としているのです。どうでしょう、少し蛇に対するイメージが変わってきたのではないですか?

さて、私が来年、皆さんにぜひ意識していただきたいのが、「周囲を呑み込む気迫」を持つことです。皆さんの誰もが、上司や顧客の意見、会議の雰囲気などに流され、自分の言いたいことを主張できずに終わってしまった経験があると思います。かくいう私自身にもあります。

ですが、周囲に流されるばかりでは、皆さんの成長はそこで止まってしまします。だからこそ、自分が正しいと思うことについては、勇気を出して堂々と主張してほしいのです。もちろん仕事ですから、単なるわがままになってはいけませんし、皆さんの主張が常に受け入れられるとは限りません。ですが、それもまた皆さんが「自分に何が足りなかったのか」を学び、成長するチャンスです。

蛇は、脱皮を繰り返すことから「変化と再生」の象徴とされています。「自分はこれを成し遂げたい」という気迫を持って仕事に臨み、失敗してもめげずに立ち上がる。2025年はそんな「挑戦を繰り返す年」にしてください。来年、気迫のある皆さんに会えるのを楽しみにしています。

以上(2024年12月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【3分で分かる個人情報保護(4)】個人データの取り扱いを委託する場合に守らなければならないルール

1 個人データの管理を委託する場合のルールは3つ

個人データの取り扱いの全部または一部を外部に委託する場合、守らなければならないルールが3つあります。具体的には

  • 適切な委託先を選定する
  • 委託契約を締結する
  • 委託先における個人データ取扱状況を把握する

です。以降でポイントを確認していきましょう。

2 適切な委託先を選定する

委託先の選定に当たっては、委託先が、自社と同等あるいはそれ以上の安全管理措置を講じていることを確認することが求められます。

そのため、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」の「10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容」に定める各項目が、委託する業務内容に沿って、確実に実施されることについて、あらかじめ確認しなければなりません。詳しくは次のウェブサイトをご覧ください。

■ガイドライン10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a10

3 委託契約を締結する

委託契約には、当該個人データの取り扱いに関する、必要かつ適切な安全管理措置として、委託元、委託先の双方が同意した内容を定めます。そうするとともに、「委託先における委託された個人データの取扱状況を委託元が合理的に把握することを盛り込むことが望ましい」とされています。

例えば、次のような事項が盛り込まれた契約を締結するとよいでしょう(ここで委託者は委託元、受託者は委託先を指します)。

  • 委託者および受託者の責任の明確化
  • 個人データの安全管理に関する事項
  • 再委託に関する事項
  • 個人データの取扱状況に関する委託者への報告の内容および頻度
  • 契約内容が遵守されていることを委託者が、定期的に、および適宜に確認できる事項
  • 契約内容が遵守されなかった場合の措置
  • 事件・事故が発生した場合の報告・連絡に関する事項
  • 契約終了後の措置

なお、委託契約の締結と言っても、必ず「業務委託契約書」を取り交わさなければならないわけではありません。委託元、委託先の双方が安全管理措置の内容について合意をすれば法的効果が発生するので、合意内容を客観的に明確化できるなら、書式は問われません。例えば、委託先から委託元への誓約書の差入れや、覚書や合意書などの取り交しでも問題ありません。

4 委託先における個人データ取扱状況を把握する

委託契約で定める内容と重複するところがあるかもしれませんが、委託先における委託された個人データの取扱状況を把握するために、「定期的に監査を行う等により、委託契約で盛り込んだ内容の実施の程度を調査した上で、委託の内容等の見直しを検討することを含め、適切に評価することが望ましい」とされています。

5 (参考)個人データの取り扱いの委託は第三者提供ではない

個人情報保護法では、法令に基づく場合などの例外を除いて、「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」とされています。

一方、委託については、「第三者に該当しないものとする」とされています(この他に第三者に該当しないものとして、事業の承継、共同利用もあります)。そのため、委託元は、あらかじめの本人の同意または第三者提供におけるオプトアウトを行うことなく、委託先に対して、個人データを提供することができます(その代わりに、委託先に対する監督責任が課されます)。

個人データの取り扱いを委託する先は他の者(=第三者)なのだから、「第三者提供なのでは?」と理解に苦しむかもしれませんが、

個人データの提供先は個人情報取扱事業者とは別の主体として形式的には第三者に該当するものの、委託された業務の範囲内でのみ、本人との関係において提供主体である個人情報取扱事業者と一体のものとして取り扱うことに合理性があるため、第三者に該当しないものとする(ガイドライン3-6-3 第三者に該当しない場合)

というルールなのです。

以上(2024年12月更新)

pj60128
画像:pixabay

「じゃがいも×マーケティング」の世界史~食文化で歴史を変えたフリードリヒ2世の秘策とは?

1 もし、あの国がひとつの会社だったとしたら…

高校の授業で習った世界史……。もう記憶の彼方という人も多いでしょうが、社会人になってから学び直してみると、意外と高校生だったあの頃より面白く感じるものです。なぜなら、

世界史を知れば知るほど、「会社」と「国家」がよく似ていることに気が付く

からです。となれば、世界史上の出来事から何か学べることもあるはず……。この記事では「国家」を1つの「会社」に例え、世界史上の出来事を紹介します。今回取り上げるのは、現ドイツの原型になった国家「プロイセン」が、18世紀に行ったマーケティング戦略です。詳細は後述しますが、このプロイセンは会社に例えるなら

新しい食材を世界に流通させたいと考えている商社

です。現代でもタンパク質危機(プロテイン・クライシス)を解決しようと、昆虫食や植物性タンパク質の食品を開発する会社がありますが、それとも似ているかもしれません。

(注)この記事は巻末の参考書籍を基に作成していますが、世界史上の出来事などについて諸説ある内容が含まれます。あらかじめご了承ください。

2 フリードリヒ2世が打ち出した新商品「じゃがいも」

プロイセンは、土壌が痩せている地域が多く、元来収穫に乏しい国でした。そして、18世紀のヨーロッパでは飢饉(ききん)が頻繁に起きており、食糧問題は国民にとっても国家にとっても喫緊の課題でした。そこで、「早急になんとかしなければ!」と立ち上がったのが、

プロイセンの国王・フリードリヒ2世

です。

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フリードリヒ2世は、別名「フリードリヒ大王」とも呼ばれる偉大な王様。会社で例えるなら“敏腕経営者”です。

そんな彼が新たな主食として目をつけたのは……なんと「じゃがいも」

でした。

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現代に生きる私たちにとってはごくありふれた食材ですが、実は

当時のヨーロッパでは、じゃがいもの主な用途は「食用」ではなく「観賞用」だった

のです。私たちが食べるのは、地中にあるじゃがいもの「茎」の部分ですが、当時の人々はそこには見向きもしませんでした。むしろ、じゃがいもの「芽」などが有毒であるという理由で、

「食べると病気になる! 不純な植物だ! 悪魔の食べものだ!」

など、散々なことを言っていたのです……。

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しかし、じゃがいもは

冷涼で痩せた土地でも良く育ち、しかも茎の部分は栄養たっぷりの万能な食材

です。このことを知った“敏腕経営者”フリードリヒ2世は、プロイセンの食糧事情を立て直すため、じゃがいもを「食べ物として普及させよう!」と奔走します。

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3 成功のカギは「ブランディング」にあった!

とはいえ、食文化はそう簡単に変えられるものではありません。フリードリヒ2世は

自らじゃがいもを毎日美味しそうに食べてみせたり、国中を回ってじゃがいもの魅力を伝えるキャンペーンを実施したりしますが、ただ知名度が上がっただけ

で、食べ物としてはなかなか普及しませんでした。

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では、どうやってじゃがいもを普及させたのでしょうか? その答えは

現代にも通じるマーケティング戦略「ブランディング」です。フリードリヒ2世はなんと、じゃがいも畑を「立派な装備の軍隊に守らせた」

のです。

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噂はたちまちに広がり、国民は

「王様があそこまでして守るじゃがいもって何……?」

「そんなに貴重で美味しいものなの……?」

と好奇心を煽られ、段々じゃがいもに心惹かれていきました。その結果、プロイセンでは当時のヨーロッパではいち早く、じゃがいもが食ベ物として普及していったのです。

4 「じゃがいも×マーケティング」で歴史が変わった

じゃがいもは、

国民の食べ物として普及しただけでなく、「豚の飼料」としても活躍

しました。じゃがいもは冬の時期でも保存しておけるので、厳しい冬でも家畜に餌を与えることが可能になり、人々はいつでも肉を食べられるようになったのです。その結果、

プロイセンではじゃがいも&豚肉料理(ソーセージやベーコンなど)という、現代のドイツ料理に象徴されるような食文化が生まれ定着

していくことになります。

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美味しくて安定した食事は国力の増強につながり、

プロイセンはやがて、“ライバル会社(周辺国家)”を次々にまとめ上げて“グループ会社”とし、現代における「ドイツ」という“大会社”を作るに至った

のです。仮にフリードリヒ2世が、じゃがいものマーケティングに失敗していたら、今のドイツは存在していなかったかもしれません。

現代においても、

「ブランディング」はマーケティングの基本

です。“敏腕経営者”フリードリヒ2世は、「じゃがいもは価値のあるものだ」という意識を“消費者(国民)”に植え付けることに成功し、“会社”を大きく育てたということです。現代の日本に生きる私たちが、

「主食を米から謎の植物に変えろ!」

と言われたら、きっと戸惑いますし、誰も見向きもしないかもしれません。新しい商品やサービスを売り出す際、斬新なものほど世間に受け入れられにくいというのは世の常ですが、食文化をひっくり返したフリードリヒ2世のことを考えれば、

結局のところ「モノは売り方次第である」ということ

が分かります。

【参考文献】

「世界史を大きく動かした植物」(稲垣栄洋(著)、PHPエディターズ・グループ、2018年7月)

以上(2024年12月作成)

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画像:イラストAC・写真AC