【例文付き】従業員の情報漏洩に備える秘密保持誓約書の作成方法

書いてあること

  • 主な読者:従業員の情報の持ち出しを防止したい経営者
  • 課題:「秘密保持誓約書」のひな型を流用するだけでは、法的な効力がない?
  • 解決策:最も重要なのは秘密情報の定義。また、物理的・技術的な防御も怠らない

1 自社にあった「秘密保持誓約書」を作成しよう

情報漏洩は会社の信用は著しく損なうため、会社はその防止に尽力しています。しかし、残念ながら従業員が情報を持ち出すケースも少なくありません。従業員による情報持ち出しや漏洩を防ぐには、心理的な抑止と、物理的・技術的な防御の両輪で取り組むべきです。

心理的な抑止とは、「秘密保持誓約書」の取り付けや、研修や周知を繰り返すことです。また、物理的・技術的な防御とは、そもそも従業員が情報を持ち出せないように、情報へのアクセスを制限したり、データの入った媒体や機器を持ち出したりできないようにしたりすることです。

本稿で紹介するのは、心理的な抑止である秘密保持誓約書です。多くの企業は一般的な「ひな型」を使っていると思いますが、これでは、いざというときに会社を守れないことがあります。具体的な定め方を、例文を示しながら弁護士が解説します。

2 最も重要なのは「秘密情報」の定め方

1)秘密保持契約:ひな型と修正例

秘密保持誓約書には「秘密保持の誓約」があります。まずは、ひな型でありがちな条文と修正後の条文を比較してみます。

  • ひな型:第1条(秘密保持の誓約)
  • 私は、業務上知り得た会社の機密事項、工業所有権、著作権秘密やノウハウの一切について、貴社の許可なく、第三者に開示しまたは自ら使用しないことを約束いたします。
  • 修正後:第1条(秘密保持の誓約)
  • 私は、就業規則および情報管理規程を遵守し、次に示される貴社の秘密情報について、貴社の許可なく、第三者に開示、漏洩しまたは自ら使用しないことを約束いたします。
     1)製品開発に関する技術資料、製造原価および販売における価格決定等の貴社製品に関する情報
     2)貴社の顧客に関する事項(氏名、住所、連絡先、決済方法、取引内容を含む全ての事項)
     3)取引先に関する事項(会社名、所在地、担当者名、連絡先、契約条件を含む全ての事項)
    (途中略)
     〇)その他、貴社が秘密保持の対象として指定した事項

ひな型の問題は、シチュエーションを選ばず、具体性にも乏しいことであり、これでは裁判で効果が認められない恐れがあります。例えば、東京地裁平成17年2月25日判決では、薬局において、仕入れや在庫管理等に使用する薬品リストが、営業秘密に該当するかが争われました。この会社の就業規則では、「会社の機密、ノウハウ、出願予定の権利等に関する書類、テープ、ディスク等」、「(その他)業務上機密とされる事項および会社に不利益となる事項」について、持ち出しや漏洩を禁じていましたが、裁判所は、「当該規定はその対象となる秘密を具体的に定めない、同義反復的な内容にすぎない」と述べています。

2)漏洩させたくない秘密情報をできるだけ具体的に定める

上記の裁判例も踏まえ、漏洩させたくない情報は秘密情報として定義し、できるだけ具体的に例示します。例えば、次のように定めます。

  • 顧客リスト、顧客情報、ID、パスワードその他顧客に関してシステムから得られる情報
  • 顧客に関する一切の情報(個人情報、申込書・契約書記載の情報、取引条件を含む)
  • 商品の仕入れ価格、卸価格、リベート額、販売価格、その他取引先の情報、取引内容および条件
  • 新商品・新製品の研究・開発に関する計画およびその内容
  • 設備投資計画およびその内容
  • 短期・中長期の販売計画・販売戦略に関する情報
  • 経営計画その他重要な業務執行に関する情報
  • 公表前の財務諸表およびその基礎データ、セグメント別(製品別等)の収支情報
  • 〇〇の運営において保有する運営ノウハウ
  • 従業員の個人情報(給与水準、保有スキル、経歴、研修受講暦等を含む)および従業員の個人情報が記載されているデータ、システム
  • 従業員教育に関する資料、営業マニュアル
  • セキュリティー管理の基礎となる情報(保安、警備、管理システム運営体制・ノウハウ等)

ただし、具体的にすると範囲が狭くなるので、必要な情報が抜ける恐れがあります。そこで、「その他、貴社が秘密として指定した事項」を秘密保持の範囲に含めるようにしましょう。このような文言を入れることで、個別に指定することで必要な事項が秘密保持の範囲から漏れてしまうことが防げますし、今は想定していない秘密情報が出てきたときにも対応できます。

3)秘密保持の内容(行動態様)についても確認する

秘密保持の内容(行為態様)についても確認し、特に注意させたい内容は明記します。

  • 他社に開示しない:第三者、特に貴社と競合する事業者に開示しないことを約束します
  • 就業の目的にのみ利用する:就業の目的にのみ使用し、当該目的以外に使用しません
  • 社外に持ち出さない:就業場所においてのみ使用し、持ち出しません
  • 複製をしない:全部または一部に限らず、また媒体の種類にかかわらず複製しません

4)就業規則や情報管理規程にも定める

就業規則や情報管理規程にも秘密保持について定めます。秘密保持違反を懲戒理由とするのが通常ですが、その場合、懲戒事由に秘密保持義務違反を含むことを就業規則に明記する必要があります。

3 その他、よくある重要な定めの規定例

1)退職時、退職後のケアを忘れずに

ひな型の中には、在職中の秘密保持についてのみ定め、退職後の秘密保持について定めていないものがあります。退職後の秘密保持も重要なので、次のように記載しましょう。秘密情報の返還についても忘れずに定めましょう。

  • 第◯条(退職後の秘密保持)
  • 私は、前条の秘密情報について、貴社を退職した後においても、第三者に開示、漏洩しまたは自ら使用しないことを約束いたします。
  • 第◯条(秘密情報の返還等)
  • 私は、在職中所持していた貴社等の資産(書類、備品、機器のみならず、電磁的または電子的記録媒体も含むがこれらに限定されません。)は、退職の際、貴社の指示に従い、直ちに全て返還または破棄します。在職中であっても、貴社等から指示のあったときは同様とします。

2)損賠賠償を定める。違約金はNG

秘密保持義務に違反した際の損害賠償義務を定めることには、一定の抑止力があります。なお、従業員に対する違約金を定めることは労働基準法で禁止されているので、あくまでも発生した損害に対する賠償となります

  • 第◯条(損害賠償)
  • 私は、第○条に違反した場合、法的な責任を負担するものであることを確認し、貴社が被った一切の被害を賠償することを約束します。

3)その他、会社の実情に応じて定める事項

その他、会社の実情や必要に応じて、次のような定めを置くことも考えられます。競業避止義務などは、必ずしも有効になるとは限らず、広範な定めは無効とする裁判例も多くありますが、先の損害賠償と同様に、規定を置くことが抑止力となります。

  • 第〇条(モニタリングへの同意)
  • 私は、貴社の機密情報の保護のため、貴社が必要に応じてモニタリング(監視カメラ、メール・ネットワークアクセスのモニタリングを含みます。)をすることにつき同意します。
  • 第〇条(所持品検査)
  • 私は、正当な事由がある場合、貴社入室時もしくは退室時、または在室時に、貴社が私個人の所有物・所持品を検査することにつき同意し、貴社の行う所持品検査に協力します。
  • 第〇条(ライセンス管理)
  • 私は、違法なソフトウェアや個人所有のソフトウェアを会社のパソコンにインストールしません。また、貴社の承諾なく、会社所有のソフトウェアを個人のパソコンに違法にインストールしません。
  • 第〇条(秘密情報の厳重な管理)
  • 私は、在職中、貴社の秘密情報について、貴社〇〇規程および貴社の監督に従い責任をもって厳重に管理します。
  • 第〇条(権利の帰属)
  • 私は、貴社に在職中に作成、考案したあらゆる知的財産権およびノウハウに関する一切の権利および利益が貴社等に属することを認め、当該知的財産権等について私に権利、利益が属することを一切主張致しません。
  • 第〇条(競業避止義務)
  • 私は、貴社を退職後、〇年間は、貴社と競合関係に立つ事業を行いません。
  • 第〇条(従業員および顧客の引き抜き)
  • 私は、貴社を退職した後、貴社の従業員および貴社顧客の不当な引き抜きを行いません。

以上(2020年12月)
(監修 みらい総合法律事務所 弁護士 田畠宏一)

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画像:photo-ac

【朝礼】今年は、「本気の年」にしよう

今日は、2021年を、皆さんがどのような年にしていくか、そのヒントになる出来事をお話ししたいと思います。

先日、私は当社の大事なお客さまから相談を受けました。そのお客さまの会社では、来年度に向けて新商品を開発しようとしており、それに関して、いわゆる「ユーザーインタビュー」のようなことをしたいとのことでした。

具体的には、新商品のターゲット層となる経営者何人かに、インタビュー形式で、新商品に関連したことを質問していくという内容です。インタビューの目的は、「新商品に、本当にニーズはあるか」「自分たちが想定している活用シーンは本当にあり得るか」「どのような機能が喜ばれそうか」などを明らかにすることでした。お客さまは、私に、「インタビュー相手となる経営者は初対面の人がいい。4~5人ほど紹介してもらえないだろうか」と相談してきたのです。

相手は、日ごろ大変お世話になっており、当社の新規事業立ち上げのきっかけもつくってくれたとても大事なお客さまです。皆さんなら、どういう人を紹介するでしょうか。

どんな人がいいか色々と考えましたが、私は結局、「本気の人」にしようと決めました。ビジネスや人に真っすぐ向き合い、心から感謝し、人に寄り添える人。世の中を良くしようと真剣に思い、困難に立ち向かっていける人。厳しいことでも、言うべきことは毅然と言える人。

それが私の考える「本気の人」であり、今回、私はそうした人たちをお客さまに紹介しました。自身のビジネスとは全く関係ないインタビューにもかかわらず、その人たちは忙しい中、時間を調整し、「少しでもお役に立てれば」と言いながらしっかりと答えてくれました。本当にありがたいことです。

インタビューをした後、お客さまは、こう話してくれました。「正直に言うと、甘く見ていた。予想を遥かに超えて皆さんが真剣に答えてくれたので、自分たちの考えが不十分なことがよく分かった。そこまで考えて商品をつくっていないと気付いたし、目が覚めた。そういう意味では厳しい内容だったが、インタビューとしては大成功。とても感謝している。ここからまた頑張りたい」。

「本気」は「本気」を生みます。インタビューを受けてくれた人たちの真摯な姿勢が良い影響となり、お客さまもギアを上げ、「本気」になったのではないか。私はそのように感じています。

さて、皆さん。私が言いたいことはもう分かるでしょう。今年はぜひ、「本気」の年にしてください。仕事の進め方、人との関わり方、働き方、生き方。今年はそれらが大きく変わり、皆さんも、さまざまなことを考えさせられたはずです。今年は、それを行動に移しましょう。本気で考え、本気で動く。そうすれば、必ず道は拓けます。2021年を、皆さん一人ひとりが、「本気で輝く年」にしていきましょう!

以上(2020年12月)

pj17035
画像:Mariko Mitsuda

勝てるチーム作りの心得 ~元ラグビー日本代表主将から学ぶ組織論~

書いてあること

  • 主な読者:組織がシャキッとしないと悩んでいる経営者
  • 課題:組織に活を入れる際の参考にできる成功事例を知りたい
  • 解決策:2019年のワールドカップでベスト8に躍進したラグビー日本代表の組織作りを参考にする。重要なのは「目標設定」と「コミュニケーション」

1 8年前に1勝もできなかったチームがW杯で8強に

皆さん、初めまして。元ラグビー日本代表の菊谷崇(きくたに たかし)です。私は日本代表主将として、2011年にニュージーランドで開催されたワールドカップ(以下「W杯」)に出場しました。この大会で日本代表は1次リーグで4試合を戦い、3敗1分け。そう、1試合も勝つことができませんでした。

それから8年後の2019年に、自国開催のW杯で日本代表が世界中に巻き起こした旋風は、皆さんも記憶に新しいことと思います。この8年間で日本代表はどうやって「勝つ組織」に変わっていったのでしょうか。

私は、2014年まで代表チームに身を置き、代表の引退後も、チームが変化し、成熟する様子を見守ってきました。1勝もできなかったチームに「勝者のメンタリティー」が備わり、ベスト8進出を果たすまでの過程について、私なりの分析と考察をお届けできればと思います。

2 「ローマは一日にして成らず」 8強の礎に2015年のW杯あり

2019年W杯の躍進は、イングランドで開催された2015年W杯が礎になっています。2015年W杯は、W杯で24年間勝利のなかった日本代表が、世界ランキング3位だった南アフリカ代表にラストワンプレーで逆転勝利した、「ブライトンの奇跡」が話題になった大会です。

その2015年W杯に向けて、2012年4月にエディー・ジョーンズさん(現イングランド代表監督)が、日本代表のヘッドコーチ(以下「HC」)に就任しました。エディーさんのHC就任こそ、それまでの7回のW杯で1勝(21敗2分け)しかできなかった日本代表に、強化のための“メス”が入った瞬間だったと思います。

エディーさんは、日系米国人の母親と日本人の妻がいて、東海大学や日本の社会人チームでの監督(HC)経験もあることから、日本人と日本ラグビーのことを熟知していました。

一方で、オーストラリア代表のHCとして2003年W杯で準優勝に導くなど、世界の強豪国のレベルもよく知っています。そのため、世界で勝てない日本代表が抱える課題を理解していました。HCに就任した時点で、勝つ組織にするというゴールから逆算して、日本代表を、「どこからどのようにして変えていけばよいのか」のプランができていたのだと思います。

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3 エディーHCの「勝てるチーム作り」のポイント

エディーHC率いる日本代表(以下「エディーJAPAN」)で私が感じた、エディー流の「勝てるチーム作り」のポイントを紹介します。

1)大きなビジョンと2つの目標を掲げる

エディーHCが就任時に最初に掲げたのが、「日本のラグビーを変える」というビジョンでした。後にエディーHCは、「日本ではかつて、ラグビーはとても人気のあるスポーツでした。しかし、いつの間にか人気がなくなってしまった。私が就任した当初、誰もが日本はラグビーではうまくいかないと思っていました。そこで私は、もう一度ラグビーをポピュラーなスポーツにしたいと考えました。そのためには、世界の舞台で勝つことのできるチームにしたかったのです」と日本のメディアに伝えています。勝ちたいという思いは誰にもありますが、まず「なぜ勝たないといけないのか」を大きなビジョンで示すことで、勝つことの意義を、より強く意識できるようになりました。

さらに、具体的な目標は、「W杯ベスト8」という「結果目標」に加えて、日本代表が「憧れの存在になる」という「意義目標」の2つを掲げました。意義目標を掲げた経緯については後で話しますが、2つの目標があったからこそ、日本代表は、多様性豊かな選手全員が同じ方向にベクトルをそろえ、1つのチームにまとまることができたのだと思います。

2)組織の弱点を分析し、計画的に克服していく

世界のラグビーでは、「ティア1(ワン)」と呼ばれる強豪国と、日本などが該当するその下の中堅国「ティア2(ツー)」などにランク付けされています。

私が主将として出場した2011年W杯は、いわゆるティア1チームとの試合経験を積まないまま、大会に臨んでいました。それまで「勝利」という結果を世界に残していなかった日本代表は、ティア1チームと試合をするチャンスをもらえなかったのです。初戦の相手はティア1のフランスでしたが、過去にフランスと対戦した経験がある選手は1人だけ。強豪国との試合経験がなく、対戦相手の情報が映像しかないという厳しい環境では、「勝つ」と意気込んではいたものの、勝てると確信できる根拠に乏しい状態でした。

経験不足という日本代表の弱点を克服するために、エディーHCは、まずティア2チームとの対戦で着実に勝利を重ねていき、強豪国との試合を実現させる、というプランを立てました。そのプラン通り、エディーJAPANは2012年11月にティア2のルーマニア、ジョージアに勝利します。日本代表にとって、アウェーでヨーロッパチームに勝つのは初めての快挙でした。そして翌2013年6月には、ティア1であるウェールズを日本に迎え、第2試合で初勝利(トータル1勝1敗)を飾りました(注:執筆者は上記4試合にフル出場)。

ウェールズ戦での勝利によって世界的に日本代表の力が認められたことで、その後、毎年1~2回は世界ランキング上位チームとの対戦が組めるようになりました。より強度の高い試合を経験することが可能になり、そこで得た経験を基にチームの目標設定を毎年更新していくことで、チームの戦力が上がったように思います。

ちなみに、ウェールズ戦後に聞いた話ですが、この試合に勝たなければ、エディーHCと日本ラグビーフットボール協会との契約が終わっていた可能性もあったそうです。組織を変えるため、そして周囲の理解を得るためには、絶対に結果を残さなければならないタイミングがあるのかもしれません。

3)データを示した上での「世界一」ハードな練習

エディーJAPANは、世界一といえるハードな練習量が有名でした。日本代表は年間120日ほどの合宿を行いますが、「朝5時から朝食まで」「午前中」「夕方から夜まで」と1日3回の練習を行う「ラグビー漬け」の毎日でした。しかも、約4年間で休日はたった2日でした。

選手たちがハードな練習についていけたのは、それぞれの練習に、「なぜ」の説明がされていたため、納得して取り組めたからです。エディーHCは世界のトップレベルをベンチマークに、具体的な数字を示して、日本代表に足りない部分を理論的に説明しました。そのため、選手たちに「世界で勝つ」という意識が強まり、練習でも主体的に動く選手が増えていったのです。

図表は、エディーHCが示したデータと目標の代表的な例です。

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図表の数字は、15人の選手が試合中の1分間に走る距離の平均値(メートル毎分)です。日本の最高峰であるトップリーグでは75メートル、世界ランキング1位のニュージーランド(以下「NZ」)代表は95メートルでした。エディーHCは、世界で勝つためには、この数値をNZ代表さえ上回る100~110メートルにしなければならない、という目標を示したのです。

なぜかというと、日本代表の選手たちはNZ代表の選手たちより体格で劣るため、ボールを止めずに、パスやランニングで勝負している時間を増やす必要があったからです。そして、試合で110メートル走るために、練習では120メートル走ることを目指しました。その結果、前述した2013年6月にウェールズに勝利した頃には、120メートル走れるようになっていたのです。

ハードな練習や、データで目標を示すことは、「それを乗り越えたときに、勝利への自信につながる」というメリットがあります。当時の日本代表キャプテンだった廣瀬俊朗(ひろせ としあき)さんは、ハードな練習について、「追い込まれても前を向ける選手をピックアップしたかったのだと思います」と語っていました。そのような過酷な時間を乗り越えたからこそ、これまでW杯で1勝しかしていなくても、自信を持ってW杯の開催地に乗り込むことができたのです。また、データでNZ代表を上回っているという「事実」が自信の裏付けとなり、想定範囲外のことが起こっても安定したプレーを続けられるようになったのだと思います。

4)リーダーグループを中心とした、主体性とコミュニケーションの重視

エディーHCが構築したチーム体制は、それまでと大きく変化しました。主将(キャプテン)という立場はあるものの、「リーダーグループ」という組織によって、選手が主体的に活動できる環境作りが進められました。チーム発足当初にエディーHCが指名したリーダーグループのメンバーと、グループ内での担当は、次の通りでした(敬称略)。

  • 主将(キャプテン):廣瀬俊朗
  • 日本人と外国人とのコミュニケーション担当:リーチ・マイケル
  • グラウンド内担当:五郎丸歩(ごろうまる あゆむ)
  • グラウンド外担当:菊谷崇

リーダーグループは、この4人に加えて、エディーHCが招聘(しょうへい)したメンタルコーチにサポートしてもらいました。当初は外部の人は不要だと思っていましたが、自分たちだけでは気付かなかったアドバイスをもらえ、有益だということが分かりました。例えば、プレーについて指導する立場である五郎丸さんが、選手を褒めることが得意でないことが分かると、「1日1回、人を褒めよう」というアドバイスをしてくれて、コミュニケーションが円滑になりました。

リーダーグループはまず、選手たちの意向を踏まえて「理想とする日本代表は何なのか」を話し合い、目標設定を行いました。エディーHCも合宿の開始時など定期的に参加し、目標や課題を確認します。ただし、目標の立案や、目標を実現させるための具体的な活動内容と実行プランを作成するのは、リーダーグループです。そして、選手たちに、それらを理解し、実行してもらうように説明をします。このような過程で、リーダーグループを中心に選手たちの主体性が向上し、日本代表としてのロイヤルティー(愛着心)が高くなったと思います。

リーダーグループの取り組みの一例が、日本代表が「憧れの存在になる」という「意義目標」を設定したことです。純粋にラグビーの人気が出てほしいと願う選手たちの思いに加えて、日本代表の価値向上を図るという目的がありました。

ラグビーの場合、国籍を問わず、その国に3年以上生活すれば代表資格を得られます。分かりやすく言うと、多くのスポーツの日本代表が「日本人の代表」なのに対し、ラグビーの日本代表は「日本地域の代表」という考え方ができます。このため、日本代表に外国人が多く入ることになるのですが、この考え方に戸惑う方も多く、ファン獲得に大きな壁となりました。「憧れの存在になる」には、この壁を取り払う必要がありました。

この問題についてリーダーグループで話し合った結果、試合前の国歌斉唱の際は、外国人も含めた選手全員で歌うことに決めました。そして、毎週のミーティング後にスタッフ、コーチを含め全員で国歌斉唱を練習することにしました。また、歌詞の意味を知るために、「さざれ石」がある宮崎県日向市の神社を参拝したりもしました。こうした活動の積み重ねが、多様性豊かな選手たちを1つのチームにまとめることにつながったのでしょう。そして、結果として2019年W杯でラグビーというスポーツが注目されるきっかけになったと思います。

5)ベテランの経験値や影響力を活用

すでにベテランとなっていた私を日本代表に呼んでくれたエディーHCは、ベテラン選手の経験値や影響力を、勝てるチーム作りに巧みに活用しました。

ラグビーでベテランの経験値が役に立つのは、実は試合中ではなく、練習後の体のメンテナンスや、試合前にやっておく準備などです。ベテランは試合の重要な局面でも周りを見渡す余裕や判断力があるというイメージを持たれているかと思いますが、それは試合に向けて行ってきた準備の量の問題であり、経験値とは別物です。

最もベテランの経験値が活きる場面は、2019年W杯での躍進の理由とも関連します。私は日本代表がベスト8に進めた要因の1つは、日本開催だったことだと思っています。なぜなら、W杯は開幕戦から決勝戦まで44日間を要し、事前キャンプを含めると2カ月近い長丁場だからです。

普段、日本で過ごしている日本代表メンバーは、日本での暮らしについて十分な経験値を持っています。ですが、他国の代表メンバーは、日本で過ごすという経験値がほとんどありません。気候、食事、ホテルでの生活、家族とのコミュニケーションなどは、選手のプレーを左右する重要な項目です。W杯で勝つには、外国での長期の生活に柔軟に対応できることが必要なのです。その点、ベテランには、長期の海外遠征時に必要な持ち物や海外での時間の使い方、海外でストレスをためない環境作りなど、若手選手にアドバイスできる経験値があります。

ベテランの影響力として最も大きいのは、練習に対する姿勢や、チームに貢献しようとする姿勢などを、若手選手に見せることです。海外遠征では帯同できるスタッフに限りがありますので、選手たちも裏方作業を行わなければなりません。そうしたときに、ベテラン選手が大きな荷物を運んだり、アイシングの準備をしたり、選手に水を渡したりと、裏方作業を積極的に行うことで、控えの若手選手もチームの勝利のために貢献しようという気持ちになってくれます。

また、前述のように、エディーJAPANはハードな練習量が有名でしたが、エディーHCから、練習では私のようなベテラン選手が、ひたむきに、積極的に取り組む姿勢を見せるように求められました。私としては、ある意味で若手選手を奮起させるための「見せしめ」のような立場ですので、代表復帰を後悔した時期も少なからずありました。

私自身は、エディーJAPANで3年間プレーし続け、当初のエディーHCの希望通りに、若手選手へ経験を伝え、役割を全うして代表を引退。ちょうど2015年W杯まで、残り1年を切った時期でした。

6)大一番で選手が力を発揮できる環境を設定する

エディーHCは、選手たちが自信を持ってW杯の開催地へ乗り込めるように、もう1つの「準備」をしていました。それは、2015年W杯の第1試合である南アフリカ戦の試合会場で、事前に2回、試合を行ったことです。W杯の第1試合という大一番を、慣れない環境でプレーするのではなく、自分たちのイメージをしっかり持った状態で挑めるようにするためです。このような環境を設定することも、マネジメントをする立場の人にとっての、重要な仕事だと感じました。

7)失敗者を責める組織でなく、失敗しないようサポートできる組織にする

エディーHC以前の日本のラグビーは、テクニック重視の練習が多く、状況判断を伴う練習が少なかったと思います。エディーHCは、「それでは試合でプレッシャーがかかったときに、練習で積み上げたことが発揮できない」という考えを持っていましたので、練習は常にゲーム中心で、状況判断が必要なメニューを取り入れていました。

エディーHCが重視したのは、ボールを保持している選手が行う状況判断を、ボールを持っていない選手がどうサポートするか、でした。特にラグビーは、前にいる選手にはボールをパスできませんので、味方は全員、ボール保持者の後方にいます。つまり、ボールを持っている選手は、味方を目視できない中で状況判断をしなければなりません。このため、常に後ろにいる味方が声をかけてサポートする必要があるのです。逆に言うと、ボールを保持していない人が言葉でサポートをすることで、プレーに良い影響を与えることができるわけです。それを15人という大所帯で行うわけですから、ラグビーは、コミュニケーションや対人関係のスキルが求められるスポーツといえるでしょう。

私は現役を引退してから3年になりますが、エディーHCの下で培った経験を活かし、ラグビーのコーチをしています。特にエディーHCの指導方法や考え方を取り入れているのが、自分で立ち上げた子供向けのラグビーアカデミーです。

ラグビーアカデミーの子供たちは、ミスをした選手に対し、「なんでパスをしない」「なんでそっちに行くんだ」と注意します。そんなときに私たちコーチは、「変わらない過去に激しく問いかけても未来は何も変わらない。未来に向けて、次に同じ場面が来たらどんな声かけをすればパスをしてもらえるか考えてみよう」と声かけをします。

皆さんも職場で、ミスをした社員に対して「なんで…」と言っていませんか? ミスという変わらない過去ではなく、未来に向けてミスをなくす改善策に目を向けるようにすると、コミュニケーションの取り方も変わってくるかもしれません。

4 終わりに:重要なのは目標設定とコミュニケーション

たくさんのエディー流の仕掛けを持って臨んだ2015年W杯で、「ブライトンの奇跡」を起こした日本代表。ジェイミー・ジョセフHCに引き継がれてからのさらなる活躍は、皆さんもご存じの通りと思います。

私は、エディーJAPANが残した、2015年W杯の実績と、主体性やコミュニケーションを重視するチーム作りという礎があったからこそ、ジェイミーJAPANは強豪国との対戦が可能となり、「One Team」と呼ばれるまでにチームが一体化したのだと思っています。

私が日本代表やトップリーグで経験して感じたのは、組織に必要なものは、「まとまり」と「目標設定」だということです。「まとまり」を作るためのキーになるのは、コミュニケーションだと思います。エディーJAPANと、その後の日本代表の活躍は、そのことを裏付けてくれています。

以上(2021年1月)
(執筆 元ラグビー日本代表主将 菊谷崇)

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画像:執筆者提供

ビジネスマッチング応用編/新チャレンジには外部の力も借りてみよう(2)

書いてあること

  • 主な読者:ビジネスマッチング(商談会、紹介、ウェブサイトなど)に参加する経営者
  • 課題:ビジネスマッチングで、少しでも成果を上げたい
  • 解決策:事前に【誰の、何を、解決できるか】を明確に。「商談シート」の事前準備も有効

1 ビジネスマッチングで重要なのは「最初の商談」

ビジネスマッチングを利用することで、ビジネスの可能性を広げることができます。ビジネスマッチングの仕組みはさまざまですが、とにかく最初の商談が重要です。面識のない人同士が商談をするため、“最初のつかみ”ができないと、なかなか次に進めません。

最初の商談がうまくいくかどうかは、事前準備で変わってきます。そこで本稿では「ビジネスマッチング応用編」として、必要な事前準備を幾つかご提案します。ビジネスマッチングの基本的な仕組みなどを知りたい方は、以下のコンテンツをお読みください。

2 事前に【誰の、何を、解決できるか】を明らかにする

限られた時間でビジネスマッチングの相手に興味を持ってもらうためには、「何を伝えるか」が非常に重要です。そこでまず、事前に、商品やサービスが【誰の、何を、解決できるか】を明らかにしておきましょう。これが最も基本かつ重要で、これに尽きるといっても過言ではありません。相手が経営者の場合、「御社のサービスで何が実現できますか?」と単刀直入に聞かれたりします。要は、詳しい機能の説明よりも、「この商品やサービスは自分たちに関係があるかどうか」を知りたいということです。

よく、営業活動の中で、メリットは「できること」、ベネフィットは「メリットの結果、得られるいいこと、変化」と言いますが、ビジネスマッチングの「最初の商談」では、このベネフィットを伝えるのが大切です。そこに興味関心があれば、次に具体的な話に進めやすくなるからです。

例えば、「人々の興味関心を把握して、それぞれに合ったテーマのメールを自動配信するツール」の場合で考えてみましょう。メリットは「効率的にメールの開封数・クリック数を増やすことができる」であり、ベネフィットは「今より効率よく営業成果が上がり、新規事業の原資とリソースが捻出できる(興味関心に合った“滑らない”内容のメールを送って営業活動ができるから)」などになります。

こうした【誰の、何を、解決できるか】は、次のようなイメージで事前にまとめておくと、頭の中が整理でき、限られた時間の中でも慌てずに大切なことを伝えられるようになります。また、多くの会社(経営者)が参加する商談会の場合などは、もう一歩進めて、分かりやすいキャッチコピーも用意しておくとよいでしょう。

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この【誰の、何を、解決できるか】は、商談会などだけではなく、ウェブサイトのビジネスマッチングサービスで案件を登録する際にも役に立ちます。ウェブサイト上では、上記のように整理しておいた内容を参考にする他、実績や金額例なども併せて登録しておくとよいでしょう。

3 「商談シート」を準備する

もう一つの事前準備としてお勧めしたいのは、「商談シート」です。商談シートにまとめた内容は、「営業活動のログ(履歴)」になるので、次回のビジネスマッチングや今後の営業活動、商品開発に役立てることができます。また、商談会や紹介された人と会うときに、相手に確認するのを忘れたり、こちらが伝え忘れたりするのを防ぐのにも使えます。

商談シートはエクセルなどの他、書き込みやすい紙ベースのものを手元に用意するのも一策です。今どきはオンラインでの商談会や紹介も多いので、手元でメモできるほうが活用しやすいかもしれません。商談シートには、例えば次の1)から4)の項目などを盛り込みましょう。

1)属性:相手の企業名、氏名、業種、事業概要、実績、社員数など

ビジネスマッチングする相手の基本情報です。紹介者がいる場合は、その情報も入れておきます。オンラインの場合、名刺情報が入手しにくいので、企業名や氏名はしっかり確認しましょう。その場でSNSでつながると、基本情報が入手しやすいかもしれません。

2)内容:相手(もしくはこちら側)の商品やサービスの提案内容、対する反応など

相手から提案のあった商品やサービスの内容、もしくはこちら側から提案した内容を入れておきます。重要なのは、それに対する反応です。相手からの提案であればこちら側の関心度を、こちら側からの提案であれば、相手の反応を忘れずに記録に残し、次につなげます。

3)確認:相手に確認したこと、相手から質問されたことなど

具体的な価格や仕様など相手に確認したことを入れておきます。逆に、相手から質問されたことを商談シートにメモしておけば、「どのようなことを聞かれやすいか」が分かるので、次回のビジネスマッチングにも役に立ちます。

4)次回:次回のアクション、ランクなど

資料をいつまでに送るのか、見積もりをいつまでに出すのかなど、次回のアクションも忘れずに残します。また、すぐにビジネスになりそうなのか、ひとまず情報交換にとどめて様子を見るのかなど、今後の進め方をランク付けしておくと営業の優先度がつけやすくなります。

商談シートの記入例は次の通りです。

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4 紹介者には「思い」も伝える

ここまで紹介した内容のうち、【誰の、何を、解決できるか】は、ビジネスマッチングの紹介者に、自社の商品やサービスを説明する際にも役に立ちます。例えば、金融機関のビジネスマッチングを利用する場合、金融機関の担当者にもきちんと【誰の、何を、解決できるか】を伝えましょう。金融機関の担当者はさまざまな会社(経営者)を知っているため、商品やサービスで得られる「効果」だけでなく、「思い」が合いそうな先、経営者同士で共感できそうな先を紹介してくれることもあります。

以上(2021年1月)

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ビジネスマッチング基礎編/新チャレンジには外部の力も借りてみよう(1)

書いてあること

  • 主な読者:ビジネス上の出会いを求めている経営者
  • 課題:信頼できる相手や会社と出会い、ビジネスの可能性を拡げたい
  • 解決策:金融機関のビジネスマッチングサービスで、新しく出会うチャンスを増やす

1 ビジネスマッチングサービスで出会いを広げよう!

経営者は常に既存事業の強化や新規事業の開発について考えています。それを実現しようとする上で、自身が進出しようとしている分野の専門家、自身が求めている技術を有する企業、自身が悩んでいることを経験したことのある経営者などとの出会いはとても貴重です。

本稿で紹介する「ビジネスマッチングサービス」とは、こうした出会いを加速させるための仕組みです。今どきは、プライベートな意味で人と人が出会うマッチングアプリが数多く登場していますが、ビジネスマッチングとは、まさにビジネス上の出会いを加速させる仕組みなのです。知らない相手とビジネスをすることには一定のリスクがありますが、銀行など金融機関が主催しているビジネスマッチングであれば安心です。

ビジネスマッチングサービスを利用したことのある経営者のアンケートでは、40%近くの経営者が「また使いたい」「良い出会いがあった」と回答しています(日本情報マート独自調べ。詳細後述)。ビジネスマッチングサービスをうまく活用すれば、新たなビジネスの可能性が大きく広がっていく可能性があります。ビジネスマッチングで大切な「最初の商談」の準備について知りたい方は、以下のコンテンツをお読みください。

2 ビジネスマッチングサービスの種類を知ろう!

1)ビジネスマッチングサービスでできること

改めて、ビジネスマッチングサービスで期待できることを整理すると次のようになります。

  • 販路を見つける:新しい営業先、市場の開拓などにつながる
  • 協業先を見つける:新しいコラボレーション、販売代理店契約などにつながる
  • 技術力を見つける:アイデアの商品化につながる他、新商品開発の可能性も広がる
  • 人を見つける:これまでにない知見、新しいリソースの獲得につながる
  • ニーズを見つける(知る):売りたい、買いたい案件などから、最近どのようなニーズがあるのか、どのような新しいビジネスがあるかなどを知る。ビジネスのヒントになる

そして、これらを実現するためのビジネスマッチングサービスにはさまざまな分類があります。以下で整理してみましょう。

2)最も大切なのは信頼できる相手を紹介してくれること

ビジネスマッチングサービスで最も重要なポイントは、信頼できる相手を紹介してくれることです。この点で最も優れているのは金融機関によるビジネスマッチングサービスです。金融機関は自らの顧客同士や、金融機関が審査をした相手などをビジネスマッチング先として紹介するため、反社会的勢力など好ましくない相手が紛れ込む恐れが小さいのです。

金融機関によるビジネスマッチングサービスにはさまざまな形態があるので、ここで整理してみましょう。

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この「金融機関によるビジネスマッチングサービス」は、

  • 金融機関の顧客である中小企業と中小企業を結ぶ
  • 金融機関の顧客である中小企業と金融機関の業務提携先を結ぶ

が基本となります。複数の金融機関が提携して上の1.を行えば広域のビジネスマッチングとなります。また、ビジネスマッチングによって具体的な商売が成立した場合などに、金融機関が手数料を得るサービスを有償ビジネスマッチング、手数料を得ないサービスを無償ビジネスマッチングなどと呼びます。また、顕在化した企業の提携ニーズだけではなく、経営者同士を集めて交流してもらうことで“化学反応”が起こることを期待する交流会が開催されるケースも多くあります。

いずれにしても安心して相手と話せることや、ビジネスマッチング先の多様さが金融機関によるビジネスマッチングサービスの特徴です。

3)インターネットで完結するサービスの普及

ビジネスマッチングサービスは、仲介者などと呼ばれる「人」が介在することが多いのですが、ここ2~3年はウェブサイト上だけで完結するサービスも出てきています。かつてもこうしたインターネット上で売り買い情報をやりとりするサービスがありましたが、「商売は、実際に相手と会って行うもの」という意識が根強かったこともあり、なかなか活性化しないのが実情でした。

しかし、インターネットに抵抗のない比較的若手の経営者にとってはインターネット上で完結できるビジネスマッチングサービスのほうが便利な面もあり、普及してきています。新型コロナウイルス感染症で“オンライン”が一気に身近になったこともこうした動きに拍車を掛けています。

ただし、やはりどこかで仲介者が入ったほうがスムーズに話が進むのも事実です。この点、金融機関によるビジネスマッチングサービスでは、インターネットの仕組みを使いつつも、渉外担当者が適時のフォローをすることで出会いや商談がスムーズにいくようにしています。

4)その他の分類

この他、ビジネスマッチングサービスの特徴として、

  • 特定分野か、多分野か
  • メンバー限定か、オープンか
  • 地域限定か、全国か

などの違いがあるので、自社のニーズに合ったビジネスマッチングサービスを探してみるとよいでしょう。

3 ビジネスマッチングに関する経営者アンケート

最後に、ビジネスマッチングサービスに関する経営者アンケートの結果をご紹介します。実際に活用した経営者はどう感じたのか、また、多くの経営者はビジネスマッチングサービスについてどのようなイメージを持っているのか。今後のご参考になれば幸いです(2020年11月、日本情報マートが独自に行ったアンケートで、回答した経営者・役員は508人です)。

Q1 さまざまな人や会社、案件などと出会う可能性のあるビジネスマッチングサービスを使ったことがありますか?(以降全て出所は日本情報マート)

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ビジネスマッチングサービスを「使ったことがある:70人 13.8%」に対して、「使ったことがない:315人 62.0%」です。業種や年代などにもよるかもしれませんが、今後の活用に期待したいところです。

Q2 ビジネスマッチングサービスを使ってみてどうでしたか? 近いものを全てお選びください。(Q1で使ったことがあると答えた70人が回答)

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実際に活用すると、「情報収集できた」「出会いがあった」と感じているようです。

Q3 ビジネスマッチングサービスに対するイメージはどのようなものですか? 近いものを全てお選びください。(Q1で使ったことがある、使ったことがない、分からないと答えた406人が回答)

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プラス回答「もう一つの営業ツール」「世界が広がる」がある一方で、「お金がかかる」「うさんくさい」といったマイナス回答があるのも事実です。初めてのビジネスマッチングサービスでは、「信頼できるよく知っている金融機関の担当者」が仲介者となってくれるものを活用するのがよいのかもしれません。

以上(2020年12月)

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【朝礼】牛になりますか、馬になりますか

明けましておめでとうございます。今年のえとは「丑(うし)」です。そこで、けさは、「牛も千里、馬も千里」ということわざを紹介します。

このことわざは、歩くのが遅い牛でも、走るのが速い馬でも、いずれは千里に到達するというところからきています。それが転じて、「能力の違いがあっても、努力を怠らなければ、最終的には同じ結果にたどり着くことができる」という意味で用いられています。

このように言うと、皆さんの多くは、馬のほうが牛よりも先に千里に到達することをイメージするでしょう。しかし、それは牛と馬が「整備された平坦な道」を進むという前提に立った場合の話です。どういうことか、もう少し掘り下げて説明します。

実は牛には、進む速さで劣る代わりに、馬よりも優れている点があります。それは、体のバランスです。牛は多くの種類が、中指と薬指の2本の指で地面に立っています。これに対し、馬は多くの種類が、中指1本で地面に立っています。体を支える指が多い分、牛は体のバランスを取りやすくなっています。そのため、傾斜地や坂道のように足場の悪い場所を歩く能力が、馬よりも優れているのです。

つまり、冒頭のことわざに照らして考えると、仮に牛と馬が「整備されていない足場の悪い道」を進む場合であれば、牛のほうが馬よりも先に千里に到達する可能性もあるわけです。

さて、皆さん、会社には、事業を通じてお客様や社会に対して実現したいことがあります。例えるなら、千里の道の先にあるゴールです。そして、そのゴールにたどり着くためには、さまざまな道があります。

先ほどの整備された平坦な道と、整備されていない足場の悪い道で例えるなら、前者は「すでに開拓されている分野」、後者は「まだ開拓が進んでいない分野」といえるでしょう。皆さんなら、どちらの道を進んでゴールを目指しますか?

これには正解はありません。すでに開拓されている分野を突き進むのが得意な「馬」のような人もいるでしょうし、まだ開拓が進んでいない分野で、着実に前進を重ねていく「牛」のような人もいるでしょう。自分の得意とする分野で、少しでもゴールに近づけるよう、存分に力を発揮してもらえればと思います。

ただし、忘れないでほしいことがあります。それは、「どの道を進むかを決めるのは、皆さん一人ひとりである」ということです。たとえどんな道を選んでも、自分が一度「この道で頑張りたい」と思ったのなら、その選択に責任を持ってほしいのです。千里の長い道を進んでいる限り、必ずどこかでくじけそうになることがあります。そんなとき、皆さんを支えてくれるのは、「努力を続ける」という意志です。1年間、強い意志をもって業務にまい進してください。

以上(2021年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】逆風の今こそ「会社は誰のためのものか」を実感するとき

今朝は皆さんに、少し大きな視点に立って、我が社や皆さんの仕事の社会的な意義について考えてみてもらいたいと思います。

今、世界では改めて、会社は誰のためのものか、という議論がされています。以前なら教科書通り、会社は株主のもの、が正解でした。しかし今は、これまで以上に、会社の社会的な意義が問われるようになりました。会社は株主だけのためでなく、従業員、取引先、地域社会など、直接・間接の利害関係者に配慮することが求められています。

それでは皆さんは、民間の会社がなぜ地域社会にまで配慮すべきなのかを、考えたことがあるでしょうか。自社のイメージアップ、という目先の利益を得るためということも、もちろんあるでしょう。しかし私は、長い目で見たときに、自社の利益だけでなく、地域社会との共存共栄まで考えられる、誠実で志の高い会社であることこそが、我が社の存続にとって重要だと思っています。

それを理解するヒントが、老舗(しにせ)の会社の家訓にあります。老舗の会社には、「先義後利」「利他」などの家訓がある企業が少なくありません。近江商人の「三方よし」の教えも同じです。いずれも、社会の幸せを考えることを重視した教えです。家訓は基本的に外部にアピールするものではなく、代々、家中で伝えられてきたものです。老舗の会社の経営者が残した言葉は、イメージアップを図る目的ではなく、自社を長く存続させるために最も適切な教えのはずです。

私の経験上、どのような会社にも、順風のときと逆風のときがあります。そして私は、会社の存亡に関わるほどの逆風下で、誰かに手を差し伸べられて首の皮一枚で窮地を逃れた会社と、誰にも見向きもされずに消えていった会社を見てきました。生き残った会社に共通するのは、その会社が誠実であることを理解している多くの関係者が、「この会社を支えてあげたい」「できる限り存続のために協力したい」と思っていた、ということです。老舗の会社の経営者も同じように、会社の「生き死に」を見てきたからこそ、社会との共存共栄の思いを持つよう戒めたのだと思います。

ご存じの通り、我が社も今、厳しい逆風下にあります。それでも、なんとかやれているのは、皆さんの頑張りもありますが、それだけではありません。我が社がこれまで誠実に、高い志を持って事業に取り組んできたからこそ、「応援しているから頑張って」「うちも厳しいけど、長年お世話になっているので」と、取引を継続してくださっているお客様がいるからなのです。

私は、この逆風が一段落したら改めて、我が社が取引先や地域社会のために、何ができるかを考え、そして行動するつもりです。この逆風下でも、我が社は生かしてもらったという「感謝と恩返し」の気持ちを大切にしたいのです。皆さんも、我が社や仕事の社会的な意義を感じ、取引先など全ての関係者に対して誠実に、高い志で向き合ってください。

以上(2020年11月)

pj17029
画像:Mariko Mitsuda

干支のエトセトラ(丑編)

書いてあること

  • 主な読者:丑年にちなんだ話題や、スピーチなどを探しているビジネスパーソン
  • 課題:話題などを調べたり、スピーチを考えたりする時間がない
  • 解決策:過去の丑年に起こった出来事、丑年にちなんだスピーチ例を学ぶ

1 丑(うし)に関する話

1)丑年に起きた出来事

2021年の干支は「丑(うし)」です。前回の丑年は、2009年(平成21年)でした。2009年はWBC(ワールドベースボールクラシック)の第2回大会で日本チームが2度目の優勝を果たしたことが日本を湧き立たせ、衆議院選挙によって自民党から民主党へ政権交代が行われたことが大きな話題となりました。それ以前の丑年には、1973年には第一次オイルショック、1985年にはプラザ合意と、世界経済の大きな節目となった年がありました。

過去5回の丑年に起きた主な出来事や流行語は次の通りです。

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2)丑年生まれの有名人

丑年生まれの日本の有名人には、次のような人がいます(既に亡くなられた方も含みます)。

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3)丑の話

江戸時代まで、日本では時刻を表すのに一昼夜を12に分け、それを十二支に当てました。真夜中が子(ね)の刻で、午前1時〜午前3時までを丑(うし)、午前3時〜午前5時までを寅(とら)といった具合に割り当てたわけです。

丑の刻を表す丑とはもともと位置や方角を示したものであり、丑と寅の刻の中心の3時を表す方角は北東となります。陰陽道では、この丑寅(艮)の方角は鬼門であり、鬼が侵入してくる方角だとされています。

このような陰陽道の影響もあり、丑の方角や丑の時刻というのは人々に恐れられてきました。丑の刻とは、おおよそ午前1時から3時を指しますが、この時間は人が鬼に変貌したり、鬼が現れたりする時間と考えられていたようです(現在でも、風水では鬼門は「災いが訪れる方角」として、家を建てる際に「水回り」「玄関」は北東の方角に造ると縁起が悪いなどといわれます)。

2 丑(うし)にちなんだスピーチ例

1)スピーチ例1

今年の干支は丑です。動物の「牛」にちなんだ諺(ことわざ)はさまざまありますが、その1つに「牛売って牛にならず」というものがあります。これは、「飼っていた牛を売った代金で、新たな牛を買おうとしても、お金が足りず買うことができない。見通しが甘くて損をしてしまう」という意味があるとされています。

こうした意味が転じて、「人は誰しも自分のことは高く評価しがちだが、自分が思っているほど他人からは評価されていない」という解釈もあるようです。皆さんの中にも、日ごろ、「自分はちゃんとやっているのに、周りから正当に評価されていない」と不満を持っている人がいるのではないでしょうか。

「ちゃんとやっている」と思っているのは、あくまでも皆さん自身の「自分の尺度」「自分の基準」です。人から見たら、「それはできて当たり前。まだまだ足りない」と思われるのかもしれません。今年は、そうした「自分視点」から抜け出して、周りの言うことを素直に受け止めてみてください。

一方で、矛盾するかもしれませんが、もう一つ私が皆さんに言いたいのは、「人からどう評価されるかを考えて仕事をしているうちは、まだまだだ」ということです。お客様のため、周りのために一生懸命に考え行動していれば、ワクワクしますし、「自分はちゃんとやっているのに正当に評価されていない」「自分は人からどう評価されているのだろうか」などと思う暇もありません。

今年、もし、「自分は正当に評価されていない」と思うことがあったなら、皆さんにやってほしいことは2つです。1つは、「これは自分の基準で考えていただけだ、相手の視点に立って考えてみよう」と「自分視点」を抜け出そうとすること。

そしてもう1つは、「そんなことを考えている暇もなくなるほど、もっと一生懸命に取り組もう」とすることです。極端かもしれませんが、どのような時代になっても、こうしたことは変わらず大切だと私は思います。今年も皆さん、ぜひよろしくお願いします。

2)スピーチ例2

今年の干支は丑ですが、実は、丑は昔から縁起の悪いものとして扱われてきた一面があるようです。「丑三つ時」「丑寅の方角」などは分かりやすい例でしょう。特に、「丑寅の方角」は鬼門といって鬼が侵入してくる不吉な方角だとされています。

しかし、同時に鬼門には、鬼が入ってこないようさまざまな方策が施されてきたのです。例えば、「丑の刻参り」で有名な京都の貴船神社では、平安の昔から日照りや長雨が続いたときや国家有事の際には、必ず勅使が差し向けられ、祈りがささげられていました。

このように、言ってみれば「丑」は、危難をもたらすとともに、危難から守るべき要を表してもいたのです。昔の人はこの鬼門にさまざまな工夫をして立ち向かっていきました。翻って皆さんは、自分の鬼門、苦手なことや過去の失敗などに、どのように向き合っているでしょうか。

鬼門の中には、これまで避けてきたから気付かなかっただけで、突破することで自身が成長できるものがあるかもしれません。そうした「突破すべき鬼門」がないか、皆さん、いま一度、避けてきたものと向き合ってみてください。

例えば、数字が苦手な人は、会社の売上や利益などの分かりやすい数字を把握するところから始めてもよいでしょう。営業活動に悩んでいる人は、担当のお客様に月一回必ず連絡を入れることを徹底するのも一策です。そうした一歩ずつでいいので、今年、皆さんがそれぞれの「鬼門を突破する」ことを期待しています。

3 豆知識・干支の由来

1)干支の起源

干支は身近な話題である一方、「干支とは何か?」について、はっきりと答えられる人は意外と少ないかもしれません。改めて「干支の基礎知識」を紐解いてみましょう。

干支は、「かんし」ともいわれ、古代中国に起源を持ち、年月や時刻、方位などを表す呼称とされる言葉です。干支の「干(え)」は10種類あり、十干(じっかん)といいます。

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これに陰陽五行思想を結びつけて、それぞれ陽を意味する兄(え)、陰を意味する弟(と)を当てて、次のようにも読みます。

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一方、干支の「支(と)」は古代中国の天文学で、木星の位置を示すために天を十二分した呼称を起源にしており、十二支といいます。

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さらに、十二支を動物に当てはめて次のように呼ばれるようになったのです。

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中国では、古く殷(いん)の時代(紀元前16世紀~紀元前11世紀頃)から、この十干十二支の組み合わせで年月日が数えられたといいます。これが干支の起源です。

2)干支と十二支

現在の日本では、干支は十二支と同じ意味で使われていますが、厳密には干支と十二支とは異なります。本来の干支(十干十二支)の組み合わせは全部で60通りあり、現在日本で使われている12通りの十二支とは違うのです。干支は年月日や時刻に当てられますが、日本では一般的に年に当てられて使われています。満60歳を還暦(かんれき、もしくは生まれ年の干支を「本卦(ほんけ)」と呼ぶことから本卦還りともいう)というのは、干支が1周して生まれ年の干支に還(かえ)るところからきています。

また、「甲子(きのえね)」などの言葉を耳にしたことがある人も多いはずです。この呼び方も干支からきています。

ちなみに、2021年の干支は辛丑(かのとうし)、2022年の干支は壬寅(みずのえとら)です。自分の生まれ年が干支では何年なのか、図表7で確認してみましょう。

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3)干支が表す歴史年代

古くから、干支は年月日などの時間を表す呼称として使われてきました。具体的な年がすぐ分かる干支は、歴史上の事件に対する呼称としても多く用いられています。

有名な例としては次のようなものがあります。

  • 672年 みずのえさる 壬申(じんしん)の乱
  • 1592年 みずのえたつ 壬辰(じんしん)倭乱 ※日本でいう文禄の役
  • 1868年 つちのえたつ 戊辰(ぼしん)戦争
  • 1911年 かのとい   辛亥(しんがい)革命

ちなみに、阪神甲子園球場は「甲子(きのえね)」年の1924年に完成したことから名付けられています。

以上(2020年12月)

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【朝礼】坂本龍馬に学ぶ「勉強が楽しくなるとき」

私は日ごろから皆さんに、書籍を読んで知識を蓄える、外部の人間に会って知見を広げるなど、「勉強」を欠かさないよう伝えています。しかし、残念ながら、現状ではこれが十分にできている社員はほとんどいません。

皆さんの多くは、私から注意を受ければそのときは積極的に勉強しようとしますが、その姿勢は長続きしません。それは皆さんの中に、「業務が忙しいから、勉強にまで手が回らない……」「難しい勉強は苦手だ……」といった思いや考えがあるからでしょう。しかし、私に言わせると、勉強はとても楽しいものであり、勉強が続かない人はそこに気付いていないのです。そこで、今日は「勉強が楽しくなるヒント」について話したいと思います。

皆さんは、土佐藩出身の幕末の志士、坂本龍馬をご存じでしょうか。当時、険悪だとされていた薩摩藩と長州藩の仲を取り持って「薩長同盟」を成立させ、倒幕のきっかけをつくった人物です。この他にも、議会による政治運営など新しい政治構想についてまとめた「船中八策」を起草するなど、先進的な考えを持った聡明(そうめい)な人物というイメージがあります。

ただ、こうしたイメージとは裏腹に、子供の頃の龍馬は、実は落ちこぼれだったといわれています。12歳で漢学の塾に入学したものの、勉強嫌いであまりに出来が悪かったため、すぐに退塾させられたという説があります。

一方、剣術が得意だった龍馬は、14歳で入門した道場で腕を上げ、19歳のときに土佐藩から剣術修行のための江戸遊学の許可を得ます。しかし、江戸を訪れて間もなく、ペリー率いる黒船の来航を目の当たりにし、外国の軍事力に強い関心を持つようになります。龍馬は、兵学者・佐久間象山などに学んで外国に関する知見を広げ続けます。そして、28歳のときに幕臣・勝海舟の「外国に負けない強い海軍をつくる」という考えに感銘を受けて彼の弟子となり、歴史の表舞台へと飛び出していきます。

子供の頃は勉強嫌いだった龍馬が、外国という知らない世界について、積極的に学ぼうとした理由は何だったのか。考え方はさまざまですが、私は龍馬が得意とした剣術が関係しているように思います。龍馬は卓越した強さを持っていたものの、江戸で見た黒船は剣術では到底太刀打ちできない存在でした。剣術に打ち込み、強さを追求し続けてきた龍馬だからこそ、黒船の強さに人一倍魅了され、それが外国について学びたいという思いへと変わっていったのではないかと思います。

ですから勉強が苦手という皆さんは、まず自分の得意分野を極めることを考えてください。もしかしたら、その先に別の世界への入り口が待っているかもしれません。たとえ自分が知らない世界でも、それが自分の得意分野の延長線上に広がっている世界であれば、学びたいという思いは自然と湧き上がってくるはずです。

以上(2020年11月)

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【朝礼】リモートワークは実践フェーズに突入します

今朝は、リモートワークを今後も当社の基本的な働き方として続けていく上で、皆さんに認識してほしい大事な話をします。

新型コロナウイルス感染症まん延の影響で、ビジネスの進め方も働き方も変化しました。特に最近、当社において大きく変わってきたと私が感じているのは、社外の人との関わり方です。当社は今までも、社外のさまざまなネットワークを活用して仕事を進めてきました。ここにきてリモートワークやオンライン会議が定着してきたこともあり、数カ月の間に、その動きが加速したと思っています。

これまでは、どうにか当社の中で進めようとしてきた仕事を、社外の知見ある人に依頼することでスピードアップし、より質の高い成果が得られるようになってきているのです。皆さんは、このことを、どれだけ実感を持って受け止められているでしょうか。

はっきり言いましょう。社外の人との仕事が加速すれば、社員である皆さんに求められることのレベルは一段も二段も上がります。「あなたは当社にいて、何を実現できるのですか?」という質問を、一人ひとりが突き付けられていることに他ならないからです。この大きな状況の変化を、皆さんは認識していますか?

皆さんの仕事ぶりを見聞きしていると、中には、この変化を本当に分かっているのかどうか、いささか疑問に思える人もいます。

私は、こうした変化を皆さんが認識できないのは、一義的には私に責任があると思ってきました。リモートワークの場合、会社が変わろうとしている空気感などを実感するのは難しいものです。それならば、組織を率いる者は、そうした空気感を言葉にして皆さんに伝えなければならない。そう思って私はこの数カ月、社外の人との仕事が加速すること、会社がこれから実践しようとしていること、営業状況などを一つひとつ具体的に、皆さんにアナウンスしてきました。

皆さん一人ひとりに求めるレベルやスピード感が大きく変わっていくということも、繰り返し伝えてきました。しかし、その「伝達フェーズ」は終わりです。これからは、もう遅いくらいですが、「実践フェーズ」に突入します。

私はもう、一つひとつの出来事を、具体的に皆さんにアナウンスすることはしません。会社が今後どう変わるのか、何をやろうとしているのかを、本当に知りたい人は、私や上司に自ら質問してきてください。社外の人に負けない知見を得て、自分に任せてほしい仕事があるなら、ぜひ自分から手を挙げて実績を見せてほしいのです。

指示や情報を与えられることを待っているだけでは、もう前に進めない、何も手に入らないことを、どうか認識してください。そういう段階は、もう終わりです。当社はこれからますます変わります。ついてこられるか否かは、皆さん次第です。肝に銘じてください。

以上(2020年10月)

pj17027
画像:Mariko Mitsuda