【事業承継】本気の事業承継で大切な後継者育成の考え方

書いてあること

  • 主な読者:自らの子供に事業承継をしたい経営者
  • 課題:自身の子息・子女に何を教育すべきか迷っている。そもそも、経営者の器なのかも見極めたい
  • 解決策:自身の子息・子女といってひいきせずに、長い時間をかけて見極める

1 経営者が押さえておくべきこと

自身の高齢化が進み、事業承継が差し迫った課題になっている経営者は少なくないはずです。事業承継では、自社株式の承継など「資産の承継」と、後継者育成など「経営の承継」が車の両輪となりますが、より重要なのは経営の承継といえます。従来に比べて減ってきてはいますが、中小企業では依然として経営者の子息・子女を後継者とするケースが多いです。

「後継者育成には時間がかかるものだ」と漠然と考えるのではなく、期間や内容を明確に決めなければなりません。この記事では、自身の子息・子女を後継者とすることを想定し、後継者に求められる資質などを紹介しています。

2 子息・子女でも例外ではない後継者に必要な3つの資質

1)マインド

後継者には、いかなる困難に直面しても必ず乗り越えてみせるという強いマインドが必要です。経営者の責任や果たすべき役割は、その質や重要性という点で他の従業員とは一線を画します。経営者の意思決定は、企業の業績や存続は言うまでもなく、従業員や取引先などとの関係にも多大な影響を及ぼすからです。

また、経営者として過ごす日々は決して順風満帆ではなく、困難の連続です。重責に耐えながら困難に立ち向かい、企業を維持・発展させていくためには、強いハートが求められます。これは、経営者としての前提条件といえます。

2)実務能力

経営者に常に求められるのは成果です。どれほど素晴らしい目標を掲げ、熱意を持って取り組んでも、収益の向上、新規事業の立ち上げなど具体的な成果を残していかなければ、経営者としては失格です。

また、後継者は周囲の信頼を獲得しなければ経営者として活動することができません。従業員や取引先をはじめとした利害関係者から認めてもらうためには、「この人が経営のかじ取りを行うのであれば企業の行く末は安心」と評価してもらえる成果が必要です。

3)知識

後継者には、経営戦略・マーケティング・財務など経営に関する広範な知識が求められます。中小企業の経営者は、実務を通じて習得した独自のノウハウや経営感覚を重視して経営しています。そのためか、経営に関する知識を机上の空論としてそれほど重視しない傾向があるようです。

しかし、経済環境が変化する中で、従来の考え方や手法だけでは通用しなくなってきていることを経営者が最も痛感しているはずです。この点を素直に受け止め、積極的に学ぶ姿勢がなくてはなりません。

3 後継者育成における経営者の役割

1)企業の根幹を成す「企業の理想・価値観」を伝える

経営者には、「どのような企業にしたいか」という理想や、大切にしたい価値観があります。こうした理想・価値観は、経営上の意思決定において最も基本的かつ重要な指針であり、短期的に見直すものではありません。

企業の理想・価値観は、経営理念のように明文化されているものばかりではなく、暗黙のうちに組織内で共有されているものもあります。こうした企業の理想・価値観を、後継者にしっかりと伝えることも経営者の大切な役割です。

2)「アドバイス」「サポート」を通じて後継者を側面から支援する

後継者が経営者として成長していく過程で経験する不安や悩みは数え切れません。「今回の意思決定やプロジェクトの進め方は正しかったのか」という業務上の問題はもちろん、「自分は経営者としてふさわしいのか」という根本的な点でも悩みます。

経営者は「経営者」という立場としてはもちろん、後継者の性格や心情を理解できる「肉親」という立場からも、後継者の相談に乗ってあげましょう。ただし、適度な距離感は保ちます。後継者を常に見守りつつも、基本的にはアドバイスやサポートは後継者から相談を受けたときのみ行うといった姿勢がちょうどいいかもしれません。

3)企業を支える「人的ネットワークの承継」を行う

経営を進める上では、従業員・取引先・金融機関をはじめとした社内外の利害関係者との良好な関係が欠かせません。とはいえ、経営者が長年にわたって培ってきた信頼関係は、後継者という立場だけで自動的に引き継がれるわけではありません。それなりの時間をかけ、自分の力で利害関係者と信頼関係を構築しなければなりません。

経営者は、後継者と利害関係者とのコミュニケーションを深める場をセッティングするようにしましょう。例えば、社内については、経営者が頼りにしている幹部と一緒に仕事をさせます。また、社外については、金融機関や他社の経営者などとの会談・会合に後継者を同席させるとよいでしょう。

4 本当に後継者としてふさわしいのか?

経営者が後継者育成で悩むのは、

後継者は、経営者としてふさわしい人材なのか?

という根本的な問題です。

できるなら、自分の子息・子女に継がせたいと考えるのは、経営者の当たり前の心情です。しかし、経営者という役割は誰にでもこなせるものではありません。自分の子息・子女が経営者としてふさわしい人材か否かということを、経営者は客観的に考えなければなりません。

近年は、M&Aやビジネスマッチングの一環で親族外承継をサポートするサービスもあります。経営者は企業の行く末を考え、私情に流されることなく、冷静な選択をすることが求められます。

以上(2021年9月)

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画像:Mariko Mitsuda

こびない上司が部下に伝えたいこと

書いてあること

  • 主な読者:次世代のリーダーとして、過去にとらわれずに組織を率いる中堅リーダー
  • 課題:本人の意図とは別に、周囲に悪影響を与えてしまうことがある
  • 解決策:自分の志を周囲に示し、賛同する仲間を募る

1 とがった人は格好いい?

中堅社員のAさんは、他部署の上司であるBさんに憧れています。たまにしか会うことがなく、一緒に仕事をしたこともないBさんに憧れを抱くのには幾つかの理由があります。Aさんは、上の者にも臆せず“かみつく”Bさんを格好いいと思っています。また、他の上司とは明らかに雰囲気の違い、服装もオシャレだと感じています。そうしたBさんのとがった姿に、Aさんは旧態依然とした組織への反抗のシンボルを重ねているのです。

あるとき、AさんはBさんに言いました。「Bさんは本当に頼りになりますね。上の人にも平然と“かみつく”のですから。格好いいです。それに引き換え、今の自分の上司は“腰巾着”みたいで情けないです」。するとBさんは、次のように返しました。

「Aさんには私が“かみついている”ように見えるのか。だったら私を反面教師にしたほうがいい。私は目指すべき理想を実現するために、上とディスカッションをしているだけだ!」

2 本人と周囲とのギャップ

組織では、Bさんのような存在に対する評価が大きく分かれます。ある評価は「上との衝突もいとわない『勇気ある変革者』」、別の評価は「これまでの秩序を乱す『礼儀知らずの無法者』」といったものです。大切なのは、表面的な言動だけで判断しないことです。大人がとがるのには、それなりの理由があるからです。

実際、周囲からはとがっているように見えても、当の本人は自分が信じる理想に向かって進んでいるだけです。上に意見できない風潮を変えるために、自ら率先して意見しているだけであり、単に反抗しているわけではないのです。

これは、服装でも同じです。真面目といわれる職業でさえネクタイを外す時代。Bさんは、自由な雰囲気を醸し出すための手っ取り早い方法として、カジュアルな服装を選択しているだけで、自分の趣味を押し通すためではありません。

また、とがっている人は一生懸命に仕事をしますし、勉強もします。上に意見を言い、時には理想を掲げるわけですから、日々努力をして実力をつけないと、「口だけの存在」として無視されてしまうからです。この結果、とがっている人の多くは会社の上層部の理解を得ます。上層部から見て、「言うだけのことはある。何かやってくれそうだ!」と期待するに足る存在に見えるからです。

3 とがる人の義務

繰り返しになりますが、とがっている本人の意識と周囲の見方には大きなギャップがあります。組織に対してある程度の影響力を持つようになったら、そのギャップを解消していかないと、Aさんのように誤解する人が出てきます。

自分が周囲とは違う言動をとる理由を理解してもらう努力は、組織でとがる人の義務だといえます。そして、この行動はまさに中堅社員がこれから学ぶべきリーダーシップの本質であるともいえるでしょう。目指すべき理想が明確であれば、それを正しく理解して賛同してくれる人が出てきます。そうした人たちは、これから中堅社員が組織を率いていく際のかけがえのない仲間になることでしょう。

以上(2021年8月)

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画像:Damir Khabirov-shutterstock

【朝礼】相手を思いやる努力を惜しむな

今日は、皆さんに「思いやり」について考えてもらうために、1つの質問をしたいと思います。

ハンカチが必要なときに、会社の同僚が消毒済みのハンカチを貸してくれたとします。あなたはどのようにハンカチを返すべきでしょうか? ちなみに、ハンカチはそれほど高価には見えないものとします。私が4つ選択肢を出すので、自分ならこうすると思う方法を選んでください。

  • ハンカチを使った後、そのまま返す
  • 急いで別のハンカチを買って渡す
  • 後日、借りたハンカチを洗濯して返す
  • 後日、もっと上質なハンカチを買って渡す

どうでしょうか。私は、考えれば考えるほど難しいと感じる質問をしたつもりです。なぜなら、ハンカチを貸してくれた人の状況や性格、あなたとの関係性などによって、正解が変わるからです。

よほど気心の知れた、付き合いの長い同僚であれば、1番でもよいでしょう。ですが、そこまでの関係性のある同僚は少ないかもしれません。

もし、貸してくれた人が、その日にハンカチが使えずに困ることを気遣うのであれば、2番を選ぶのが妥当でしょう。

ものを大切にする人や、「借りたものは返すべき」という思いの強い人、あるいは貸したハンカチそのものに思い入れがある人に対しては、借りたハンカチ自体を返すことが重要ですから、3番が正解ということになります。

これはまれなケースかもしれませんが、もし、ハンカチを貸してくれた人がかなりの潔癖性で、「ハンカチを返してもらっても使えない」と考えるような人だったら、4番が無難にも思えます。

3番と4番の両方をすればいいと思った人もいるでしょう。ですが、「ハンカチ1枚のために色々してもらうのは、逆に申し訳ない」と感じる人もいるかもしれません。「だったら貸した本人に聞けばいい」のでしょうか。貸した人が遠慮がちなタイプなら、「『返して』とも言いにくいから、『あげるよ』と答えよう」と考えてしまいかねません。

というわけで、この質問に絶対的な正解はありません。私が知りたかったのは、この質問の答えを、自信をもって簡単に出したのか、悩んだ末に「強いて挙げれば」で出したのか、なのです。

皆さんに戒めてほしいのは、相手の気持ちを思いやることなく、“独り善がり”や“何となく”で方法を決めてしまわないことです。どうすれば相手が喜ぶかを、きちんと考えてほしいのです。

それをビジネスに当てはめるなら、自社のサービスやその提供方法は、お客さまにとって本当に最適なのか、常に考えることです。お客さまのことを思いやり続けることは、相手との関係性を深め、新しいサービスを生むことにつながります。結果的に選択を誤ったとしても、「実はこのように考えまして」と説明すれば、こちらの誠意は受け取ってもらえます。相手を思いやる努力は、決して無駄になりません。

以上(2021年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「現場感」は思いやりから生まれる

ビジネスは「現場感」を持って進めなければなりません。現場感に対する解釈は人それぞれですが、私の考えはこうです。「現場感とは、携わる人の喜びや悩みを踏まえて、仕事の意義や仕組みを理解する感覚」。

現場感のない思考は机上の空論にすぎず、そのような発言をすれば、「この人はビジネスが分かってない」と厳しい評価を受けます。先日、当社にマーケティング施策を提案してきたコンサルタントも現場感がありませんでした。そのコンサルタントの提案は、大企業並みの豊富なリソースがなければ着手できない施策ばかりだったのです。また、実務はマーケティング担当者に任せて、経営者は社長室にどっしりと構えていればよいと言っていました。このコンサルタントは、中小企業にはマーケティング担当者がいないケースが多いことや、中小企業の経営者は“社長業”だけではなく、それこそマーケティングからちょっとした事務まで、組織運営に関することは何でもやるという実態が分かっていなかったのです。

何事も経験しなければ分かりません。そうした意味では、中小企業の“社長業”を経験していなければ、中小企業の経営者の本音が分かるはずはありません。しかし、このレベルで終わっているうちは現場感が身に付きません。大切なのは、自分は中小企業のことが分かっていないということを認識し、“無知の知”の状態になって、現場感を持つための努力をすることなのです。

皆さん、改めて考えてみてください。皆さんには現場感がありますか?

この質問に答えるためには、「皆さんの『現場』」を定義する必要があります。こう言うと、ほとんどの人は自分が働いている場所が現場であると定義しますが、それだけでよいでしょうか。製造担当者であれば工場、販売担当者であれば店舗が現場であることは間違いありません。しかし、会社全体ということで考えれば、工場も店舗も現場です。つまり、製造担当者は工場だけではなく、店舗も自分の現場であると認識しなければならないのです。さらに付け加えれば、お客様が当社の製品を使って活動する場所も、私たちにとっての現場であるわけです。これが分からなければ、先のコンサルタントのように、現場感のない的外れな提案をすることになってしまいます。

現場感を持つためには、相手に聞くしかありません。相手が社内の人であっても、社外の人であっても同じです。相手の今抱えている課題を聞き出し、思いを共有するのです。

ただし、特に社外の人から現場の話を聞き出すことは簡単ではありません。そこで常日ごろから、相手を思いやる気持ちを示し、「この人に話せば、何か力になってくれるかもしれない」と信頼してもらわなければならないのです。こうした努力をした人だけが、現場感のあるビジネスをすることができます。現場感は相手を思いやることで身に付くものです。忘れないでください。

以上(2021年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

飲酒運転の根絶に向けて(2021/08号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

飲酒運転による交通事故は、2006年に福岡県で幼児3名が死亡する重大事故が発生するなど大きな社会問題となりました。その後、飲酒運転の厳罰化・行政処分強化などにより、飲酒運転による交通事故は年々減少しているものの、近年では下げ止まり傾向にあり、依然として飲酒運転による悲惨な交通事故は後を絶ちません。

飲酒運転は悪質・危険な犯罪です。
私たち一人ひとりが、「飲酒運転を絶対にしない、させない」という強い意志を持ち、飲酒運転を根絶しましょう。

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※ 警察庁Webサイト 「飲酒運転による交通事故件数の推移」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/img/insyu_03.pdf (2021.7.13閲覧)

1.飲酒運転での死亡事故事例

飲酒運転は、絶対に許されません。被害者も加害者も あまりに多くのものを失います。

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2.飲酒の影響

アルコールの影響について理解を深めましょう。

①体内からアルコールが抜けるまでの時間

リスクの低い飲酒の目安として1日純アルコール20グラム(=1単位)以内と示されており、1単位のアルコールが体内で分解されるには、個人差はありますが約4時間かかります。2単位では約8時間となり、3単位では約12時間かかります。

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※特定非営利活動法人ASK Webサイト「アルコールが体から抜けるまでの時間」
https://www.ask.or.jp/article/8502 (2021.7.13閲覧)

②少量の飲酒でも危険

アルコールが認知・判断・動作に与える影響は、酒に強いか弱いかに関係なく、同じ飲酒量であれば同程度という検証結果もあります。しかし、酒に強い人ほど酒による酔いの自覚症状が出にくいため、酔いの程度を低く評価する傾向があります。少量の飲酒だから酔っていないだろうと思っても、アルコールによる「脳の麻痺」は始まっています。

※警察庁Webサイト 科学警察研究所交通安全研究室「低濃度のアルコールが運転操作等に与える影響に関する調査研究」
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/insyuunten/kakeiken-kenkyu.pdf  (2021.7.13閲覧)

3.飲酒運転を根絶しましょう

飲酒運転に対する社会的制裁は非常に大きいものです。

<飲酒運転をしないために>

  • ・翌日に運転予定がある場合は、飲酒を控えましょう。
    翌朝アルコールが残っていると「飲酒運転」になります。
  • ・飲酒習慣のあるドライバーは、自身のアルコール依存度を把握しましょう。アルコール依存症の疑いのある方は専門医に相談しましょう。

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<飲酒運転をさせないために(職場での取り組み)>

  • ・日頃から過度の飲酒とならないよう、お互いに気を付けましょう。
  • ・飲酒習慣のあるドライバーに対しては、運転前のアルコール残量チェックを行いましょう。
  • ・従業員の健康管理の一環で、習慣飲酒やアルコール依存の状況を把握し、必要に応じて健康指導を行いましょう。

≪飲酒運転防止の取り組みの参考≫

日本損害保険協会のサイト「飲酒運転防止マニュアル」https://www.sonpo.or.jp/report/publish/bousai/trf_0003.html

以上(2021年8月)

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画像:amanaimages

基本をおろそかにした仕事をするな! ~「バック・トゥ・ベーシックス」の大切さを確認する~

書いてあること

  • 主な読者:入社3〜5年目でさらに成長したい中堅社員
  • 課題:「基本」の大切さは分かっているが、忙しいと疎かになってしまうことがある
  • 解決策:忙しいからこそ、難しいからこそ「基本」を判断のよりどころにする

1 ルールを守らなかったら……

「リモートワーク中なのだから、いつも以上に確認しないと駄目じゃないか。もう一度、確認して!」

現金出納帳と実際の現金残が一致していないことを報告した経理課の中堅社員Aさんは、課長に大目玉を食らいました。Aさんの会社では、毎日、17時に現金出納帳への記載や帳簿と実際の現金残の確認をする決まりです。最近は、リモートワークが導入されて環境が変わったので、2人で確認することがルール化されたのですが、Aさんはそれを守らなかったのです。

「失敗したな……」としょんぼりとしながら、改めて現金残などの確認をするAさんでした。

2 基本を徹底することの難しさ

中堅社員になると業務は多様になり、難しい決断も迫られます。業務量も増えるので、慌ただしい中で多くの仕事をこなさなければなりません。そんな中堅社員だからこそ、大切にしなければならないのが「基本」です。基本とは、「ルールや手順を守る」「時間を守る」「お客様を優先する」といったもので、中堅社員にとっては「今さら何を……」と思うようなことです。

しかし、業務上のミス、お客様からのクレームなど、身近な問題だけでなく、マスコミで報じられるような世間を騒がす大きな不祥事も、その原因を探ると、「基本をおろそかにしている」という点にあることが少なくありません。

成長が期待され、また、日々、より難易度の高い業務への対応が求められる中堅社員の目は、より高い方に向けられがちです。しかし、そうしたときだからこそ、謙虚な姿勢で、いま一度、基本を重視することの大切さを認識することが大切なのです。

3 今、基本を再認識することの3つの意義

1)難易度の高い業務に向かう基礎作り

中堅社員に求められる難易度の高い業務の多くは、非定型的な意思決定を伴うものです。端的な例を挙げると「決まった手順を覚えて、特定の業務をこなせるようになる」といったことから、

その特定の業務を、より効率的に進めるためには、どのように改善すべきか。また、その改善案の実現は、どのように進めていくか

といったイメージです。

非定型的な意思決定を行う際は、さまざまな状況を考慮しますが、基本に従うことは最低条件です。例えば、コスト削減を進めていても、サービスの質の低下などお客様に悪い影響が及ぶ恐れがあれば、そのまま採用することはできないはずです。このように、基本は、意思決定の大切なよりどころであり、それをないがしろにしては、質の高い意思決定はできません。

2)部下への指示・指導

部下への指示・指導という点では、基本にのっとった指示・指導は、部下の納得性を高めるために不可欠です。

部下も人間です。上司の指示・指導だといっても、自身が理解・納得できないことに対しては、反発心を覚えます。また、実践しようとしても、上司の意図通りのパフォーマンスを発揮することはできません。

しかし、基本にのっとった指示・指導であれば、部下は理解・納得できるものです。仮に、理解・納得できなくとも、基本にのっとったものであることを説明すれば、指示・指導の意図を納得させる際の一助となります。

3)周囲からの信頼の獲得

基本にのっとった仕事に対する姿勢や、部下に対する指示・指導を続けることは、周囲からの信頼を獲得する上でも効果的です。常に基本を意識して業務に当たることで、自身の言動にブレがなくなり、一貫性が生まれます。そうした姿は、周囲から信頼を得るためには大切になります。

4 「基本に忠実に」の難しさ

「基本に忠実に」と言うと、「何をいまさら」と言う人もいるでしょう。しかし、こうしたことが言われるのには、それなりの意味があります。それは、「当たり前のことだが、実践し続けることが難しい」ということです。

そうした意味では、これからさらなる飛躍が期待される中堅社員だからこそ、いま一度、その大切さをかみしめることが必要なのです。

以上(2021年8月)

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画像:iiierlok_xolms-Adobe Stock

初期投資のリスクを測るモノサシ「回収期間」/経営者のためのファイナンス講座(6)

書いてあること

  • 主な読者:将来の意思決定に役立つファイナンス思考を身に付けたい経営者
  • 課題:一度に多額の支払いが必要になる初期投資の判断は難しい
  • 解決策:ファイナンスでは「回収期間」を用いることで、どれだけ自社にとってその投資のリスクが小さいかを判断する

1 設備などの初期投資は、超・固定費

今回は、固定費の中の固定費ともいえる存在について解説したいと思います。それは、設備や新規事業などの「初期投資」です。

固定費は、売上の増減に関わらずに一定額発生する費用であり、手を打たなければ将来にわたり発生し続けるものです。これに対して初期投資は、いっときに多額のお金を支払います。払ったら最後、もう取り戻すことはできません。将来にわたって発生が続く固定費と違い、過去の支払いで、支払ったら最後変えることができないのが初期投資なのです。実は、この特徴が、固定費以上に、悪魔にも天使にもなるのです。

2 初期投資は、何が難しいのか?

初期投資を支払った後で、状況が想定と違ってしまうというケースがあります。例えば、海外からの観光客が増えているからと、ホテルを建設中にコロナ禍に見舞われた会社は、すでに建設に要した初期投資を取り戻すことはできません。また、仮にホテルはなんとか開業できたとしても、人の動きが抑制され宿泊客が激減している状況では、建設にかかった初期投資を取り戻すことは不可能です。このように、すでに支払ってしまったものというのは、当たり前の話ではありますが、どうにもできないのです。

そのため、資金に余裕がある会社は別として、一般的な中小企業にとっては、初期投資に慎重になるのは必然なことです。これは、初期投資のために銀行から融資を受けるという場合も、考え方は同じです。なぜなら、自社から実際にお金が出ていくタイミングが融資によって後ろ倒しになるものの、結局、自社で負担せざるを得ないのは同じだからです。

これまでの経験から、中小企業の経営者は肌感覚が優れており、さらに資金に対する保守的な考え方故に、あまり無理な初期投資を行うことが少ないと感じています。しかし、もし初期投資が必要になった場合には、その案件が自社にとっての負担の大きさ、つまりリスクの大きさをファイナンス的に理解しておくと判断がしやすくなります。

3 リスクは回収期間でつかむ

ファイナンスでは、初期投資のリスクの大きさを測る指標として、「回収期間」を使います。ざっくり言えば、回収期間とは、「投資後、何年たったらトントンになるのか」を示します。例えば、新工場建設投資の回収期間が2年という場合には、新工場が予定通りに操業し売上につながれば、投資で出ていった金額と同じ金額が入ってきて元が取れるのが、2年後ということです。

「回収」という言葉の意味は、かけたお金が回収できる、つまり収支がトントンになることを表します。「損益分岐点売上高」という考え方がありますが、これは、損益計算書上の収支がトントン、つまり利益がゼロになる売上高のことです。回収期間というのは、投資版の損益分岐点売上高と考えると分かりやすいかもしれません。

4 回収期間は短いほうがいい理由

では、次は判断の仕方です。回収期間が2年と4年であればどちらがいいでしょうか。答えは2年です。

回収期間においては先のことは分からないので、あまり長くないほうが安全という考え方がベースにあります。

例えば、500万円の機械を生産拡大のために新たに購入するとします。これにより追加の売上が発生し、追加分の材料費などを差し引いても、手元にお金が1年当たり200万円残る見込みとしましょう。この場合、投資額500万円÷得られる年当たり資金200万円=2.5年と計算できます。つまり、この場合の機械の回収期間は2.5年となります。

5 短い方がいいとしても、回収期間は具体的に何年がベスト?

短い方がいいのは分かったと思いますが、実際に判断に用いるときには、具体的に何年ということが知りたくなることでしょう。実は、この点については、各社の資金状況や事業の種類によって大きく異なります。そのため、個別に判断するしかないのです。

仮に、同じ飲食業でも、扱うジャンルによっては、回収期間の目安は異なるべきです。飲食店で考えてみましょう。飲食業は、出店のために6カ月分の敷金や什器設備を必要とする、初期投資が重い業種の1つです。そのため、回収期間が指標として重視される傾向があります。

例えば、タピオカドリンク屋を出店するとしましょう。数年前に流行したのはまだ記憶に新しいですが、このような新しいメニューを主に扱う場合には、その流行が数年、数十年にわたって続くかどうかは分かりません。とすると、回収期間としては、できるだけ早く、例えば、数カ月から1年程度、長くても2年以内を目指したほうが安全です。

一方、出す店がラーメン屋だった場合は、話は変わります。ラーメンは人気が安定しているジャンルといえますので、タピオカドリンクに比べれば、長い期間需要が見込めるでしょう。もちろん、回収期間は短い方がいいものの、例えば、3〜5年程度の回収期間であれば、許容できることも多いといえます。

このように、同じ飲食業でも主力のメニューが違えば、顧客や市場の状況は全く異なります。その結果、回収期間の目安にも大きく影響を与えるのです。そこで、自社が取り組む事業の性質を十分理解したうえで、目安は各社で設定するしかありません。逆に、目安がイメージできないようであれば、その事業や業種に関する情報収集が十分ではない可能性がありますので、再考した方がいいかもしれません。

6 安全であることが中小企業では特に大事

これまでの説明の通り、回収期間を用いることで、どれだけ自社にとってその投資のリスクが小さいかを判断できます。この視点をファイナンスでは「安全性」と呼び、回収期間はそれを判断する代表的な指標の1つです。回収期間以外にも、ファイナンスの世界には安全性に関する多数の指標があります。

また、安全性以外に、ファイナンスが大事にする視点として収益性がありますが、中小企業においては、基本的には「収益性」よりも「安全性」を優先して確認する方がいいでしょう。なぜなら、資金面の制約が大きいこと、さらには、多角化されていないが故に、1つの失敗が全体に大きな影響を与えるためです。

特に、初期投資は多額かつその固定性故に、固定費以上に会社の業績に与える影響は大きいのです。回収期間は簡単に計算できますので、ぜひ勘を裏付けるための材料という形でも、使ってみていただければと思います。

以上(2021年8月)
(執筆 管理会計ラボ 代表取締役 公認会計士 梅澤真由美)

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画像:pixta

突然、社員が訴えてきたらどうする?「労働審判手続」の概要

書いてあること

  • 主な読者:これから増えるかもしれない「労働審判手続」による社員とのトラブルに備えたい経営者
  • 課題:労働審判手続は聞き慣れない。それに、審理の内容が非公開のため情報が少なく、手続のイメージがつかみにくい
  • 解決策:社員から労働審判手続の申立てがあったら早期に弁護士に相談する。第1回期日での回答が特に重要

1 会社が不利? 準備が不十分な状態で争う

解雇や賃金の支払いなどをめぐって社員とトラブルになった場合、社員が「会社と話し合ってもらちが明かない」と判断すると法的手続に打って出ることがあります。訴訟手続、総合労働相談、紛争調整委員会によるあっせんなどの他に、「労働審判手続」があります。

労働審判手続は、「原則3回以内」という短い期日で集中的に審理を行うため、主張書面や証拠書類の一括提出主義が取られています。これにより、労働紛争の迅速な解決ができますが、裏を返すと、社員は十分な準備で労働審判手続に臨んでくるのに対して、会社は態勢が整わないうちに労働審判手続に突入することになりかねません。

労働審判手続の概要は後述しますが、経営者が心得ておくべきことは、社員から労働審判手続の申立てがあったら早期に弁護士に相談することです。労働審判手続では、最初の主張書面、証拠書類によって紛争解決の大きな道筋が確定します。従って、早期に弁護士に相談し、次の内容について打ち合わせておくことが極めて重要になるのです。

  • 予想される争点の整理
  • 会社の主張の方向性の検討
  • 証拠の収集(事情をよく知る関係者の日程の確保も含む)
  • 事案の見通しと調停となった場合の解決イメージ(いくらまで金銭の支払いが可能なのかなど)

それでは、労働審判手続の特徴や対応のポイントなどを確認していきましょう。

2 労働審判手続の特徴は?

1)「労働審判委員会」が審理を行う

労働審判手続では、「労働審判委員会」という会議体が審理を行います。労働審判委員会は、裁判官である労働審判“官”1名、裁判官ではないですが、労働関係に関する専門的知識、経験を有する労働審判“員”2名で構成されています。通常、労働審判“員”は使用者側・労働者側の団体が推薦した弁護士となります(使用者側と労働者側が1名ずつ)。

審理は法廷ではなく裁判所の一室において、各出席者が室内の円テーブルを囲む形式で行われます。なお、審理の内容は非公開です。

2)原則3回以内で終了する

労働審判法により、労働審判手続は原則として3回の期日で手続を終了させなければなりません。「特別の事情がある場合」は3回を超えることも認められていますが、この特別の事情は極めて狭く解釈されており、3回を超える例はほとんど見られません。実務上、2回で終了することが多いです。

なお、このように期日の回数に制限があることから、裁判所からは、事情をよく知る担当者や、調停を成立させるか否かの決定権を持つ担当者の出席が求められます。そのため、これらの担当者にも出席してもらうようにしておきましょう。

3)主張書面や証拠書類は一括で提出する(一括提出主義)

労働審判手続では、労働紛争の迅速な解決を図るため、主張書面や証拠書類の一括提出主義が取られています。そのため、使用者側・労働者側共に、主張立証責任に関係なく、想定される争点や事前の交渉経緯などに関する主張証拠を、第1回期日の前に一括で提出しなければなりません。これ以降の提出が認められないわけではありませんが、あくまで例外的です。

4)労使間の個別的な労働紛争を扱う

労働審判手続の対象は、「労使間の個別的な労働紛争」です。次の3つが社員からの申立てが多い内容で、特に多いのは、解雇に関する紛争(地位確認)と賃金未払いに関する紛争です。

  • 解雇、配置転換、降格の効力を争う紛争
  • 賃金、退職金、解雇予告手当の支払いを求める紛争
  • セクハラ・パワハラによる損害賠償を求める紛争

ただし、セクハラ・パワハラの加害者本人に対する請求(労使間の紛争でない)や不当労働行為などの集団的な紛争(個別的な紛争でない)は、労働審判手続の対象になりません。

5)比較的争点が単純な紛争、調停による解決の可能性がある紛争の解決に適している

労働審判手続は、原則3回以内で終了し、主張書面や証拠書類の一括提出主義が取られている都合上、比較的争点が単純な紛争の解決に適しています。一般的に、能力不足解雇や単純な残業代未払いに関する紛争は申立てがされやすくなっています。

一方、内容が複雑、請求金額が大きい、膨大な証拠を要するといった紛争の解決には適していません。例えば、整理解雇、差別的取扱い、就業規則の不利益変更、労災に関する事件などは申立てがされにくいといえます。もっとも、新型コロナウイルス感染症の拡大による経営不振から、今後は整理解雇、雇止めに関する労働審判の申立てが増加することが懸念されます。

また、実務的にはほとんどが調停で解決されているため、次のように交渉の経緯などから見て調停による解決が見込める事案については、申立てがされることが多いといえます。

  • 主要な事実関係の認識に大きな相違がない
  • 想定される解決金の認識に大きな相違がない
  • 感情的な対立がない

労働組合が絡む事案でなく専ら個別的な事案である場合にも、労働審判の申立てがされやすいといえます。

3 労働審判手続の流れと終了のパターンは?

1)労働審判手続の流れ

労働審判手続は、次の流れで進行します。

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まず、申立てがなされると、第1回期日は申立てから40日以内の日程で指定されます。会社には裁判所から申立ての内容が記載された「申立書」の副本が送付されます。会社は、申立書の内容を確認の上、第1回期日の1週間前までに、反論をまとめた「答弁書」を提出します。

第1回期日までには労使双方の主張書面や証拠書類が出そろうため、労働審判委員会は第1回期日前に、それらを確認して争点を検討します。第1回期日当日は、労働審判委員会が争点に基づき、当事者や関係者に対して質問を行います。これを「審尋」といいます。

審尋を終えると、いったん当事者は退席し、労働審判委員会で評議がされ、当該事案に対する心証が形成されます。労働審判委員会は、その心証に基づいて、解決案(調停案)を示し、その後は、調停の成立に向けた手続が進むことになります。労働審判委員会からの解決案の提示は、第1回期日中に行われることが多く、第1回期日は、審尋を含めて2時間程度を要する場合が多いです。

2)労働審判手続の終了のパターン

労働審判手続の終了のパターンとしては、次の3つがあります。

  • 調停の成立
  • 労働審判
  • 労働審判を行わず終了

実務では約7割が調停の成立で終了しています。例えば、解雇事案の場合、次のような調停案が考えられます。

  • 申立人と相手方は、申立人が相手方を令和○年○月○日付で合意退職したことを相互に確認する
  • 相手方は、申立人に対して、本件解決金として○○万円の支払義務があることを認める

なお、労働審判手続は非公開であるため、調停が成立した場合は、「申立人および相手方は、本件紛争の経緯および本調停の内容を、正当な理由なく第三者に口外しないことを相互に約束する」などの守秘義務条項を加えることもあります。

3回の期日で調停が成立しない場合、労働審判委員会が労働審判を下します。審判については、基本的に調停案として示される内容と類似することとなります。例えば、解雇事案では、次のような審判が下されます。

  • 相手方は、申立人に対し、令和○年○月○日付で行った解雇の意思表示を撤回し、申立人が相手方を令和○年○月○日付で会社都合により合意退職したことを確認する
  • 相手方は、申立人に対し、本件解決金として〇〇万円の支払義務があることを認め、これを直ちに支払う

ただし、この審判は、2週間以内にどちらかが異議を申し出ると失効し、通常の訴訟手続に移行します。異議の理由は問われないため、労働審判の効力は不安定なものといえます。

また、件数としてはあまり多くはないですが、当該紛争が労働審判による解決に適していないと労働審判委員会が判断した場合、労働審判を下すことなく終了することもあります。この場合も訴訟手続に移行することとなります。

4 労働審判手続の対応ポイント

1)第1回期日が勝負

第1回期日「前」の準備だけでなく、第1回期日「当日」の対応も重要です。第1回期日では、労働審判委員会から審尋が行われますが、審尋での回答内容や回答態度は労働審判委員会の心証に大きく影響します。

次のようなケースは、労働審判委員会の心証を悪くしたり、調停成立が難しいと判断されたりする恐れがあるため、注意が必要です。弁護士とともに事前に想定問答を作成し、リハーサルを行い、会社にとって弱い点の補強や回答の練習をしておきましょう。

  • 主張・証拠書面で記載したストーリーと、回答内容が適合しない
  • 会社担当者であれば当然ながら知り得る事項について、しどろもどろな回答をする
  • 感情的な回答をする

2)訴訟手続への移行を想定しておく

最終的に訴訟手続へ移行する可能性があることを想定しておくことも重要です。必ずというわけではありませんが、通常は労働審判手続での主張や証拠が、そのまま訴訟手続でも使われます。そのため、「どうせ調停で終わるだろう」と高をくくらず、訴訟手続へ移行して判決となった場合を十分に視野に入れ、主張立証の構成を組み立てておく必要があります。

また、労働審判“官”は裁判官ですので、労働審判委員会から提示される調停案の内容や、場合によって直接的に行われることがある心証開示の内容は、訴訟手続に移行した際の裁判所の判断を予測する重要なファクターとなります。

会社としては、これらの調停案や心証開示の内容から、訴訟手続へ移行した場合のリスクと早期解決のメリットを慎重に検討しながら、調停案を承諾するか否か判断することが重要です。

以上(2021年8月)
(執筆 日比谷タックス&ロー弁護士法人 弁護士 堀田陽平)

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画像:pixabay

飛ばすためにゴルフのスイングは頻繁に見直す。では、朝令暮改も理解できますか?

書いてあること

  • 主な読者:入社3〜5年目でさらに成長したい中堅社員
  • 課題:一度、決まったことを変更するのが許せない。特に自分に関係する変更の場合
  • 解決策:本気だからこそ、日々、改善する。良い朝令暮改があることを理解する

1 前に言っていたことと違う!

レンタル会社に勤める中堅社員のAさんは、課長と今後の営業方針について話し合っています。しかし、どうも会話がかみ合いません。

Aさんは課長に詰め寄って言いました。「私の計画のどこがダメなんですか? 以前、課長は値下げをしてでも、まずは顧客数を増やすことが大切だと言っていましたよね!」。すると課長は、「確かに随分前にそう言った。しかし、今は値下げをするような局面ではない。そのことは、現場のAさんも肌で感じているでしょう。定価でも十分に顧客が取れるのに、わざわざ値下げをする必要はない!」と答えました。

それでもAさんは、「今更そんなことを言われても困ります。現場も混乱しますよ……」と食い下がります。課長は、「ふぅ~」とため息をついた後、抑えた口調で「いいかい。ビジネスの状況は常に変わっているんだ。昔の方針をいつまでも引きずらずに、今の状況を正しく捉えて行動してほしい。現場が混乱しないようにマネジメントするのも君の仕事の一環だろう!」と言いました。

Aさんは黙って聞いていましたが、内心では「でも、確かに課長は値下げをしてもいいと言ったんだ。皆に何て説明しよう……」と、納得できずにいました。

2 納得できるか否かの境目はどこにある?

企業では、一度決まった方針が頻繁に見直されます。毎年度策定される事業計画が良い例です。事業計画は中長期の経営計画を達成するために足元でやるべきことをまとめたものなので、その時々の環境に応じて内容が大きく変わることが珍しくありません。事業計画の変更について思うところがある社員もいるはずですが、“会社の方針”ということで、比較的すぐに納得します。また、中堅社員のレベルだと、事業計画と自分の仕事を十分にリンクさせて考えられないので、雲の上の出来事のようにぼんやりと捉えているところもあります。

しかし、冒頭のAさんが経験したような、身近な存在である課長の方針転換になると、そう簡単には納得したくないのかもしれません。なぜなら、「値引きをしてもよい」という方針は、以前に課長から直接聞いて納得したことなので、方針転換に従うためには自分自身の考え方も見直さなければならず、心理的な抵抗が生じるからです。さらに、そうした方針転換は自分の行動にダイレクトに影響を及ぼすことが多いものです。これまで積み重ねてきたものを見直すというのは、相当なエネルギーが求められるものであり、できれば避けたいのです。

3 朝令暮改は納得できるか?

朝に伝えられた方針が、夕方に改められる「朝令暮改」は、悪い意思決定の例としてやり玉に挙がります。社長が朝令暮改をしたとしても、そう簡単には受け入れられるものではないでしょう。多くの社員は、「すぐに覆すような方針をかかげるな」「どうせまた変わるから、しばらく様子をみよう」と考えるからです。

しかし、朝令暮改のような急なものを含め、方針転換をするには相応の理由があります。また、決めたことを覆すには勇気が必要です。中堅社員になったなら、朝令暮改を毛嫌いするのではなく、その理由を考えてみるようにしなければなりません。

4 ゴルフのスイングに朝令暮改はないか?

ここで全く視点を変え、ゴルフのスイングについて考えてみましょう。

ある朝、軽快にカッ飛ばす自分をイメージしながら練習場に行き、実際にその通りにスイングしてみたところ、まずまずの出来でした。数時間後、予約していたスクールの先生からスイングについてダメ出しを受け、「もっと遠くに真っすぐ飛ばしたければ、今のスイングを根本的に変えなければダメです」と厳しく指摘されたらどうでしょうか。

ゴルフが好きな人であれば、素直に先生の言葉を聞き入れて、スイングの改造に取り組むことでしょう。たとえ、これまで積み重ねてきたものを一から見直すことになったとしても、もっとうまくなりたいという一心で、やり直すことができるのです。

お分かりかと思いますが、

企業で行われている方針転換と、ゴルフのスイングの改造は、目的が「より良くするため」という点で共通

しています。また、ゴルフ好きの度合いを、経営に対する責任やビジネスに関する視野の広さに置き換えてみれば、社長はもちろん、管理職が頻繁に方針転換することも納得できるのではないでしょうか。方針転換は、会社をより良くするために必要だと判断されたからこそ、取り組まれるものです。

中堅社員が方針転換を受け入れられないのは、自分やその周辺だけしか見えていないからです。そのレベルのうちは、「せっかく決めたことを覆すのは大変だし、周囲にも説明できない」と考えてしまいます。しかし、視野を広げることができれば、いっときは苦労するかもしれないが、その先に新しい可能性が生まれたり、危険を回避できたりすることがイメージできるようになってきます。

5 受け入れ、動かし、自ら朝令暮改する

1)方針転換を受け入れる

中堅社員は、方針転換を受け入れる懐の深さを持ちましょう。たとえ、自分の行動にダイレクトに影響を及ぼす方針転換であったとしても、今よりも改善されるなら、過去のことは“サンクコスト”であると納得できるはずです。

ただし、全ての方針転換が正しいわけではありません。言われるがままになるのではなく、自分なりの基準を持ち、相手が上司であっても伝えるべきことは伝えなければなりません。

2)方針転換に沿って、周囲を動かす

中堅社員のうちから、方針転換の理由や内容を自分の部下などにきちんと説明し、そのように動いてもらえるように「伝え方」の訓練をしましょう。方針転換を決定事項として、一方的に伝えても周囲はついてこないので、中堅社員自身が方針転換について理解し、分かりやすい言葉に言い換えて伝えなければなりません。もちろん、不明な点は遠慮せずに上司に確認するようにしましょう。

また、中堅社員も自ら朝令暮改をする立場になり得ます。方針転換を受け入れ、周囲を動かすことは、そのときのための準備であることを忘れてはなりません。

以上(2021年8月)

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【朝礼】感謝に気付ける一日に

皆さん、おはようございます。けさは、とても大切なのに、なかなか気付くことができない「感謝の気持ち」についてお話しします。

早速ですが、皆さんは家族や知人から「あなたが働いている会社はどんなところですか。仕事は楽しいですか?」と聞かれたら、何と答えますか。分かりやすい例を出すと「同僚はすてきな人ばかり。仕事も楽しい!」「嫌な人ばかり。仕事も嫌い」という具合で回答するかもしれません。

私は、皆さんに「この会社は素晴らしい」と言わせるためにこの質問をしたわけではありません。そうではなく、「感謝に気付けるか否かで世界は大きく変わる」という事実に気付いてほしいのです。ぜひ、今、自分が出した答えを意識しながら、2人の旅人の逸話を聞いてください。

ある旅人が街にやって来ました。そして、街の入り口にいた老人に「この街はどんな街ですか?」と尋ねました。老人は聞き返します。「あなたが今までいた街はどんな街でしたか?」と。すると旅人は、

「ひどい街でした。嫌な人ばかりでした」

と答えます。それを聞いた老人は、「この街もあなたがいた街と同じですよ」と言いました。

またある日、別の旅人が街にやって来ました。そして、同じように街の入り口にいた老人に「この街はどんな街ですか?」と尋ねました。老人はまた聞き返します。「あなたが今までいた街はどんな街でしたか?」と。すると旅人は、

「とてもすてきな街でした。みんな良い人!」

と答えます。それを聞いた老人は、「この街もあなたがいた街と同じですよ」と言いました。

実は、2人の旅人が住んでいたのは同じ街でした。ただ、2人の感じ方が違うことで、街の印象も全く異なるものになっていたのです。どう捉えるかは自分次第であり、その結果として世界は大きく変わることが分かります。

最近、働き方の「自由」がフォーカスされています。これは素晴らしいことです。一方で、少しでも意に沿わないことがあると、「自由がなくてダメだ」と簡単に結論付けてしまうこともあるようで、とても残念です。もちろん、つらいことや改善すべきことはあります。それを我慢してほしいのではありません。ただ、少し視点を変えれば違う面が見えるのも事実です。

視力検査で使う1カ所が欠けた環を「ランドルト環」と呼ぶそうです。このランドルト環のように、欠けた部分は目立ちます。そして、なぜか私たちは欠けた部分をマイナスと捉えます。しかし、ほんの少し見方を変えてみれば、欠けた部分は感謝したいすてきなことに見えてきます。

この1カ月、皆さんは何回「ありがとう」と言われ、どれだけの感謝を周囲からもらいましたか。逆に、皆さんは何回「ありがとう」と言い、どれだけの感謝を周囲に伝えられましたか。ほんの少し視点を変えれば、感謝したいすてきなことに簡単に気付けるはずです。

以上(2021年8月)

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