36協定を締結・届出していても、限度時間を超える残業は違法となり、書類送検や企業イメージの低下など重大なリスクを招きます。
そこで本稿では、違法残業と判断される典型事例や原因を示すとともに、労働時間の正確な把握方法、誤った対策の問題点、実効性のある業務改善や管理手法など、実務に役立つ対応策を解説します。
ビジネス文書・法令文書 今月の特集は、こちらからお読みいただけます。
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36協定を締結・届出していても、限度時間を超える残業は違法となり、書類送検や企業イメージの低下など重大なリスクを招きます。
そこで本稿では、違法残業と判断される典型事例や原因を示すとともに、労働時間の正確な把握方法、誤った対策の問題点、実効性のある業務改善や管理手法など、実務に役立つ対応策を解説します。
ビジネス文書・法令文書 今月の特集は、こちらからお読みいただけます。
目次
近年、カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)は、深刻な社会問題として広く認識されるようになりました。2026年10月からは、労働施策総合推進法により 「カスハラへの防止措置を講じること」が事業主の義務となり、会社として取り組むべき課題となっています。
ただ、注意しなければならないのは、現場で発生するカスハラの多くは、必ずしも悪意ある言動から始まっているわけではないということです。むしろ、「商品・サービスに不具合があった」「説明を受けた内容と違っていた」など、
最初はごく普通のクレーム (苦情・問い合わせ)だったはずが、会社側の対応によって顧客の怒りがエスカレートし、カスハラに発展する
というケースが多いのです。
なぜ、こうした問題が起きてしまうのか。それは、
顧客は「きちんと説明・対応してほしい」と期待しているのに対し、会社側が「早く解決したい」 「トラブルを大きくしたくない」という思いや知識・経験の不足から、曖昧な返答や場当たり的な謝罪をしてしまう
からです。それが「話をきちんと聞いてもらえていない」「責任を回避しようとしている」と受け取られ、顧客の怒りをエスカレートさせてしまうのです。
つまり、現場のカスハラ対応で会社がまず見直すべきは「クレームの内容そのものの重大さ」よりも「どのように顧客に対応するか」です。特に初動では、
会社側の何気ない一言 (以下「NGワード」)が、顧客に「責任を認めた」 「対応を約束した」と受け取られ、その結果、想定外の要求につながるケース
などがあります。
この記事では、あるショッピングモール内の家電量販店を舞台に、
というケースを紹介します。トラブルを招きやすいNGワードと併せて、誤解を避ける言葉遣いと冷静な対話を維持するためのポイントも解説しますので、ぜひご確認ください。
ここは、ショッピングモール内の家電量販店。ある日、先週購入したコードレス掃除機を持った顧客が来店しました。対応したのはAさんです。
「この掃除機、買ったときからバッテリーの持ちが悪いんですけど。フル充電してもすぐ切れてしまって。仕事の合間にわざわざ来ているのに時間を無駄にしました」
顧客はいら立った様子で、やや強い口調でこう訴え、
「初期不良じゃないんですか? こういう商品を売るのはどうなんですか?」
と不満を続けました。
Aさんは状況を確認しようとしますが、会話の主導権を握られてしまいました。焦ったAさんは、その場を収めようとして思わず、
「申し訳ございません。今回の件は、私どもが全面的に悪いです」
と口にしてしまいました。すると、顧客の表情が変わりました。
「全面的に悪いって認めましたね? じゃあ、上位モデルに交換してください。それくらいの対応が普通でしょう、迷惑かけたんだから!」
と、語気も荒くなり、要求の水準が一気に高まりました。
Aさんが「交換の場合は同一機種での対応となります」と説明しても、「さっき全面的に悪いって言いましたよね?」と納得してもらえず、対応は長時間化し、周囲の顧客も注目する騒ぎになってしまいました。
トラブル対応の場面では、「まずは謝罪を」と考えがちです。しかし、事実関係が確認できていない段階で「全面的に悪い」と伝えてしまうと、その発言が顧客に「会社が責任を認めた」と受け取られてしまう恐れがあります。
顧客は「会社が責任を認めた以上、それに見合った補償を受けられるはずだ」と考え、問題を解決することよりも、“どの程度まで補償してもらえるのか”という点に関心が移ってしまうのです。その結果、本来の不具合対応を超えた要求へと発展してしまうこともあります。
こうした場合は、まず顧客から苦情が入った時点で、
「このたびはご不便をおかけして申し訳ございません。状況を確認させてください」
と、不快な思いをさせたことに対してのみ謝意を示し (部分的謝罪にとどめ)、まずは状況の確認を優先することが重要です。
また、顧客から「誠意を見せてほしい」といった発言があった場合でも、その場で具体的な対応を約束するのではなく、
「恐れ入りますが、社内で確認の上、改めてご案内いたします」
と伝えることで、今後の対応の流れを明確に示すことができます。
顧客対応においては、迅速な謝罪が重要な場面もありますが、責任の所在が明らかでない段階での全面的な非の認定(全面的謝罪)は、かえってトラブルを複雑にしてしまう恐れがあります。初動対応では、謝罪の内容と範囲を意識することが、問題の長期化を防ぐポイントといえるでしょう。
「この掃除機、買ったときからバッテリーの持ちが悪いんですけど。フル充電してもすぐ切れてしまって、仕事の合間にわざわざ来ているのに時間を無駄にしました」
Bさんが対応した顧客はいら立った様子で、やや強い口調でこう訴え、
「初期不良じゃないんですか? こういう商品を売るのはどうなんですか?」
と不満を続けました。
Bさんは状況を確認しようとしますが、会話の主導権を握られてしまいました。焦ったBさんは、まずは誠実に対応しようと考え、
「申し訳ございません。できる限りの対応をさせていただきます」
と伝えました。すると、顧客の表情が変わり、
「そうですか。では、もっと性能の良い上位モデルに交換してもらえるということですね?」
と返答してきました。Bさんは慌てて、
「交換については、製品不良が確認された場合に限られます」
と説明しますが、
「さっき“できる限りの対応をする”って言いましたよね?」
と納得してもらえず、その後のやり取りは平行線のままとなってしまいました。
Bさんは、ただ誠実に対応しようとしただけでした。しかし、当初は「まずは掃除機を見てもらいたい」という相談だったにもかかわらず、曖昧な表現がきっかけとなり、顧客側では「柔軟な補償対応をしてもらえる」という認識へと変わってしまいました。
顧客対応の場面では、誠実な印象を与えようとして、「できる限り対応します」といった表現を使ってしまうことがあります。しかし、「できる限り」という言葉の解釈は、会社側と顧客側で異なる場合があります。
会社側が「社内規定の範囲内で対応する」という意味で使ったとしても、顧客には「最大限の補償をしてもらえる」と受け取られてしまう恐れがあります。そして、「どの程度の対応が可能か」が明確に示されないままやり取りが進むと、顧客の期待が膨らみ、実際に可能な対応とのズレが生じやすくなります。
こうした場合は、まず顧客から苦情が入った時点で、
「社内で確認の上、対応可能な内容について改めてご案内いたします」
と、現時点では具体的な対応を約束できないと明確に伝えることが重要です。
また、顧客から具体的な補償内容を求められた場合でも、その場で判断するのではなく、
「恐れ入りますが、担当部署と確認の上、改めてご連絡いたします」
と伝えることで、対応の範囲について誤解が生じるのを防げます。
「できる限り」といった曖昧な表現は、相手の期待値を不用意に引き上げてしまう恐れがあります。初動対応では、対応の見通しを明確に示,し、現時点で確約できない事項については慎重に伝えることが、トラブルの拡大を防ぐポイントといえるでしょう。
「この掃除機、買ったときからバッテリーの持ちが悪いんですけど。フル充電してもすぐ切れてしまって、仕事の合間にわざわざ来ているのに時間を無駄にしました」
Cさんが対応した顧客はいら立った様子で、やや強い口調でこう訴え、
「初期不良じゃないんですか? こういう商品を売るのはどうなんですか?」
と怒りを続けました。
Cさんは、製品仕様について説明しようと、
「ですが、バッテリーの使用時間は使用状況によって変わる場合がございますので・・・」
と伝えました。顧客が「でも、購入時にはそんな説明は・・・」 と言いかけたところで、
「ですから、まずは使用方法を確認させていただかないと判断ができません」
と、Cさんは説明を重ねました。それでも顧客が話し始めようとしたので、
「だ〜か〜ら〜,、先ほども申し上げましたが、使用環境によって変わる仕様となっております」
と、やや強い口調で説明を続けました。すると顧客は、
「ちゃんと話を聞いていますか? こっちの言っていることを理解してもらえていない気がするんですが・・・」
と語気を強め、その後のやり取りはぎくしゃくしたものになってしまいました。
Cさんとしては、製品の仕様について丁寧に説明したつもりでしたが、顧客の側では「理解できていないのはあなたの方だと言われている」 「話を遮られている」と受け取られてしまったといえます。
顧客対応の場面では、状況を正しく説明しようとするあまり、「ですが」「ですから」といった接続詞を使ってしまうことがあります。また、「先ほども申し上げましたが」「何度も説明していますが」といった表現も、つい口にしてしまいがちです。
しかし、こうした言葉は、会社側としては説明を補足する意図であっても、顧客の側では、「理解できていないのはあなたのほうだ」と指摘されているように受け取られてしまう恐れがあります。その結果、自分の訴えを受け入れてもらえていないという不満が生じ、対話そのものが成立しにくくなることもあります。
こうした場合は、まず顧客の話を一度受け止めた上で、
「少し整理してご説明しますね。分かりにくい点があれば教えてください」
というように、説明に入る前に“理解を支援する姿勢”を示すことが重要です。
また、事情を説明する際にも、
「ご指摘の点について確認させていただいた上で、ご案内いたします」
など、相手の話を踏まえていることを明確に伝えると、対話を維持しやすくなります。
顧客対応においては、正確な説明が必要な場面もありますが、伝え方によっては「否定された」と受け取られてしまうことがあります。まずは相手の話を受け止める姿勢を示した上で説明に入ることが、トラブルの拡大を防ぐポイントといえるでしょう。
「この掃除機、購入時に“フル充電すれば1時間は使える”って説明を受けたんですけど、実際には30分も持たないんです。話が違うじゃないですか」
Dさんが対応した顧客はいら立った様子でこのように訴え、
「そのときの担当者は“1時間は使える”って説明していましたよね? それを信じて購入したんですが」
と、納得がいかないようでした。
Dさんは、該当する担当者が本日休みであることを思い出し、
「申し訳ございません。本日、担当者が休みのため、その点については分かりません」
と伝えました。すると顧客は、
「分からないってどういうことですか? そっちの会社の事情ですよね?」
と表情を曇らせました。Dさんが「担当者が出勤次第、確認いたします」と続けると、
「じゃあ、今日は何も対応してもらえないんですか?」
と語気が強まり、その後のやり取りは険悪な雰囲気になってしまいました。
Dさんとしては、現時点で確認できない事情を説明したつもりでしたが、顧客の側では「社内の問題を理由に対応を断られた」 「問題解決を先送りされた」と受け取られてしまったといえます。
顧客対応の場面では、確認が必要な内容について、「分かりません」と答えてしまうことがあります。しかし、この言葉は、会社側としては事実を伝えたつもりでも、顧客の側では、「対応する意思がない」 「会社の事情を優先している」と受け取られてしまう恐れがあります。
特に、「担当者が不在」 「本日は確認できない」といった社内事情は、顧客にとっては関係のない情報です。そのため、「分かりません」と伝えることで、責任を回避していると感じさせてしまうこともあります。
こうした場合は、まず顧客から苦情が入った時点で、
「担当者の確認も含めて、こちらで対応いたしますのでお時間をいただけますでしょうか」
と、社内事情ではなく、会社として対応する姿勢を示すことが重要です。
また、確認に時間がかかる場合には、
「確認が取れ次第、改めてご連絡いたします」
といった形で、今後の対応の流れを明確に伝えることで、対応放棄と受け取られるのを防ぐことができます。
顧客対応においては、正確な情報を提供することも重要ですが、それと同時に、「問題解決に向けて動いている」という姿勢を示すことが求められます。その場で回答できない場合でも、次の行動を示すことで、トラブルの拡大を防ぐことができるでしょう。
「この掃除機、フル充電しても30分も持たないんですけど。購入時には1時間は使えるって説明を受けたんですが」
Eさんが対応した顧客は納得がいかない様子でこのように訴え、
「もしかして、バッテリーに不具合があるんじゃないですか?」
と続けました。
Eさんは製品仕様を思い出しながら、
「そのような不具合は技術的にあり得ません」
と伝えました。すると顧客は、
「あり得ないって、どういうことですか? 実際に起きているんですけど」
と表情を曇らせました。Eさんが「使用状況によって変わる場合はあります」と補足しても、
「じゃあ、こっちの使い方が悪いってことですか?」
と語気が強まるばかりで、その後のやり取りは険悪な雰囲気になってしまいました。
Eさんとしては、製品の仕様に基づいて説明したつもりでしたが、顧客の側では「自分の訴えを否定された」「責任を押し付けられた」と受け取られてしまったのです。
顧客対応の場面では、技術的に考えにくい現象について、「あり得ません」と答えてしまうことがあります。しかし、この言葉は、会社側としては事実を伝えたつもりでも、顧客の側では、「あなたの訴えは間違っている」と否定されたように受け取られてしまう恐れがあります。
その結果、「問題は存在しない」という前提で対応されていると感じ、不信感を強めてしまうこともあります。
こうした場合は、まず顧客から苦情が入った時点で、
「現時点では同様の事例は確認されておりませんが、改めて確認させてください」
と、現時点での情報を伝えつつも、調査の余地を残した表現を用いることが重要です。また、顧客の使用状況について確認する際にも、
「念のため、使用状況を確認させていただいてもよろしいでしょうか」
と伝えることで、「責任を押し付けられている」と受け取られるのを防ぐことができます。
顧客対応においては、事実に基づいた説明も重要ですが、伝え方によっては、顧客の訴えそのものを否定していると受け取られてしまうことがあります。まずは可能性を排除せず、調査の姿勢を示すことが、トラブルの拡大を防ぐポイントといえるでしょう。
「この掃除機、フル充電しても30分も持たないんですけど。購入時には1時間は使えるって説明を受けたんですが」
Fさんが対応した顧客は納得がいかない様子でこのように訴え、対応への不満を口にし始めます。その後、
「こんな商品を売っておいてどう責任を取るんですか?」
「誠意ある対応をしてもらえないなら、上に話を通しますよ」
と語気を強めていきました。
対応に苦慮したFさんは、
「そのような言い方はお控えください。それ、カスハラですよ」
と伝えてしまいました。すると顧客は、
「今、私のことをカスハラだと言いましたよね? 侮辱されたので、別の窓口に相談します」
と強く反発し、その場で本社の相談窓口に連絡を入れてしまいました。
Fさんに侮辱の意図はなかったのですが、結果として「カスハラと言われた」という新たな苦情が本社に寄せられ、当初の製品不具合に関する相談とは別に、担当者の対応そのものが問題視される事態となってしまいました。
顧客対応の場面では、行き過ぎた言動に対して、「カスハラではないか」と感じることもあります。しかし、「カスハラ」という言葉をそのまま顧客に伝えてしまうと、「自分を侮辱された」と受け取られてしまう恐れがあります。
その結果、問題の焦点が、当初の相談内容から「担当者の発言の適切性」へと移ってしまうこともあります(二次苦情)。特に、「あなたはカスハラです」といったラベリングは、相手の行動を修正するどころか、防衛的な反応を引き起こし、対立を深めてしまう恐れがあります。
こうした場合は、まず顧客から苦情が入った時点で、
「恐れ入りますが、そのような言い方はお控えいただけますでしょうか」
と、行動に焦点を当てて伝えることが重要です。
また、対応が困難な場合には、
「これ以上のやり取りが難しい場合は、別の担当者へおつなぎいたします」
といった形で、状況の沈静化を図ることも有効です。
顧客対応の目的は、状況の沈静化や安全確保であり、相手にラベルを貼ることではありません。行動そのものに対して対応を求めることで、対立の激化を防ぐことができるでしょう。
以上(2026年4月作成)
pj00819
画像:日本情報マート
皆さん、おはようございます。今月、2026年4月は、ある世界的な企業が大きな節目を迎えました。Apple(アップル)の設立50周年です。1976年、スティーブ・ジョブズ氏らがたった数人で、しかも実家のガレージで始めた会社が、50年経った今、私たちの生活のインフラになっています。今日、皆さんのポケットやカバンの中にも、彼らのプロダクトが入っているのではないでしょうか。アップルの50年には、私たちの仕事にもそのまま刺さる学びが3つあります。
1つ目は、最初から完璧を目指さないこと。Appleの最初の製品「Apple I」は、今の完成品のパソコンのイメージと違って、一枚の基板(ボード)として売られたもので、買った側が周辺を整える前提でした。つまり最初から「全部入りの完成形」ではなく、まず形にして、届けて、改善していくという始まり方だったわけです。新しい取り組みというのは、最初は不格好で当然です。石橋を叩いて渡るのは大切ですが、チャンスを失っては本末転倒。とにかく「動く」ことを意識しましょう。
2つ目は、お客様の体験に執着すること。2007年に初代iPhoneを出したとき、Appleは「大きなマルチタッチ画面」と「指で直感的に操作できる新しいUI(操作画面)」を前面に出しました。機能を盛るより、「迷わず使える」体験を優先したのです。機能が充実した製品やサービスはもちろん便利ですが、行き過ぎると、お客様を置いてきぼりにしてしまうこともあります。それよりも「助かった」「ラクになった」にフォーカスすること。選択肢を増やすより、迷いを減らす。ここに執着したいですね。
3つ目は、仕事を減らす勇気を持つこと。ジョブズ氏が1997年に復帰したとき、社内のラインはかなり複雑になっていて、彼は会議の場で「もうやめよう」と制止し、2×2の表(コンシューマー(一般向け)/プロ向け×デスクトップ/ポータブル(ノート型))を書き、作るものを絞り込む方向へ舵を切ったと語られています。大切なのは、“捨てる・絞る・磨く”を積み上げることです。
私は、Appleの今日の成功は決して奇跡ではなく、上の3つのこだわりを50年間大切にしてきたからだと思っています。大きなイノベーションでなくても構いません。今日の皆さんの「小さなこだわり」が、我が社の次の50年を作る土台になります。新年度も張り切っていきましょう。
以上(2026年4月作成)
pj17248
画像:Mariko Mitsuda
目次
「出張は必要経費だから、特に見直す余地はない」 ――そう考えている経営者も多く、実際、出張の際には、交通費や宿泊費などの経費を処理するだけで終わっている会社も少なくありません。
ここで、見直すべきは経費そのものではなく、「出張手当(出張時に定額で支給する日当)」の設計です。出張手当を適切に制度化することで、
といったメリットがあるからです(詳細は後述)。
原材料費や人件費、社会保険料の上昇が続く昨今、こうした対策はますます重要になってきます。「税金対策」というと何だか難しく聞こえるかもしれませんが、法律で認められている仕組みを正しく整備して使うだけなので、過度なリスクを取る必要も、複雑な手続きに追われる必要もありません。
すでに出張手当を支給している会社であっても、昨今の物価上昇を踏まえ、現在の金額が実情に合っているかを見直すことは重要です。食事代などの相場が上がっているにもかかわらず、何年も金額を据え置いている会社も少なくありません。ですが、適正な範囲内で現実に即した水準に都度調整するようにしないと、制度の合理性が保たれなくなってしまいます。
出張手当は単なる税金対策にとどまりません。会社として「費用をどう管理し、どのように還元するか」という方針を明確にする、経営の仕組みを整える意味合いもあります。
この記事では、出張手当がもたらすメリットや経営上の仕組みとして活用する方法と、税務調査で否認されないための実務上のポイントを解説します。
出張手当を適切に制度化した場合、税負担の軽減などが可能になります。もう少し詳しく言うと、次のような効果が得られます。
出張旅費規程(出張時の費用や手当のルール)に基づいて支給した出張手当は、会社の費用として計上できます。その結果、税金を計算する基になる所得(税務上の利益)が少なくなり、法人税、事業税や住民税などの負担も軽くなります。
国内出張における旅費や出張手当は、消費税法の計算上「課税仕入れ」として扱われるため、会社は仕入税額控除 (支払った消費税を課税計算の中で控除できる仕組み)の適用を受けられます。これは、同じ金額を給与として支給した場合には得られない特徴です。なお、海外出張の場合は取り扱いが異なります。消費税は国内での取引に対してかかる税金のため、海外での宿泊費や海外出張に係る出張手当などは、原則として仕入税額控除の対象にはなりません。
出張手当は給与とは取り扱いが異なるため、社会保険料を計算する際の基準額に含まれません。つまり、会社は社会保険料の会社負担分(法定福利費)を増やさずに、従業員や役員に実質的な還元することができます。
従業員にとっても、経営者にとっても、出張手当は給与ではなく、出張中にかかる食事代や雑費を補うために支給されるお金です。そのため、一般的に妥当な範囲(詳細は後述)であれば、所得税や住民税がかからない非課税の扱いになります。
この違いは、特に役員報酬などで高い税率が適用される経営者にとって大きな意味を持ちます。同じ金額を報酬として受け取る場合と比べ、出張手当として支給されるほうが、実質的な手取りが増えることになります。
実務面で特に大きな効果が表れるのが、領収書を処理する負担の軽減です。出張手当は、あらかじめ規程で決めた金額を定額で支給する仕組みなので、実際に使った金額を都度精算するのに比べると、事務作業が非常に簡略化されます。
ただし、出張手当を導入したからといって、全ての出張費用が定額になるわけではありません。一般的には、
という使い分けが、実務では広く行われています。
このように役割を整理して運用すると、出張者は細かな支出を気にしすぎることなく本来の業務に集中でき、経理担当者も領収書の確認や処理にかかる手間を大幅に減らすことが可能になります。
経営者が最も気になるのは、「いくらまで認められるのか」という上限の問題でしょう。結論から言うと、税法上「何円まで」という明確な基準はありません。ただし、
「食事代などの補てんとして支給している」と合理的に説明できる水準であるか
は見られます。税務署が確認する主なポイントは、大きく2つあります。
役職ごとの責任や職務内容に応じた差があること自体は問題ありませんが、経営者だけが極端に高額といった不自然な設定は、実質的な給与とみなされるリスクが高くなります。
いわゆる「世間の相場」から大きく外れていないかが見られます。実務上の目安(1日当たり)としては、
が一般的な相場です。もちろん、会社の規模や出張の頻度によって適正額は異なります。上記以上の金額を設定する際には、その理由を客観的に説明できるようにしておきましょう。
出張手当が会社の経費として認められるためには、まず、
出張旅費規程を整備する
ことが前提となります。規程がないまま出張手当を支給すると、税務上は単なる給与と判断される恐れがあります。
出張旅費規程には、
など、運用ルールを明確に記載しておく必要があります。こうした内容が曖昧だと、制度としての客観性が弱くなり、税務調査の際に説明が難しくなります。
さらに、出張旅費に関する定めは、就業規則の相対的必要記載事項(定めをする場合、必ず記載しなければならない事項)に該当するので、
常時10人以上の従業員を雇用している会社が、出張旅費規程を整備・変更する場合、就業規則の一部として、所轄労働基準監督署に届け出る
必要があります。なお、出張旅費規程(就業規則)は、全従業員が規程の内容をいつでも閲覧できる状態にして周知しなければなりません。周知されていない規程は、万が一の労務トラブルの際に法的効力を否定される恐れがあるため、作成後は必ず社内共有を徹底しましょう。
また、役員に出張手当を支給する場合は、株主総会で承認を受け、議事録(会議内容を記録した書類)を残しておくと、後の税務調査で正当な手続きであることを説明しやすくなります。
制度が整っていても、税務調査で最も重視されるのは実際の運用です。規程通りに運用されていることを示すためには、出張報告書の作成が欠かせません。
領収書が不要となる出張手当の部分であっても、
などを記録し、出張が業務として行われた事実を示す必要があります。さらに、交通機関の控えや宿泊証明、名刺やメール履歴などの資料も併せて保管しておくと、実態を裏付ける証拠として有効です。これらの書類は、税務上原則7年間(欠損金がある年度は10年間)の保存が求められます。
出張手当は、本来、出張中にかかる費用を補うために支給されるお金である(給与ではない)ため、社会保険料を計算する際の基準額には含まれません。ただし、
といった場合、年金事務所の調査等で実質的には給与とみなされ、過去に遡って社会保険料の徴収を求められるリスクがあります。あくまで「出張に必要な実費の補填」という大原則を逸脱しない運用が重要です。
以上(2026年4月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)
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画像:日本情報マート
業務を進める上で、顧客との商談や支社などでの会議や打ち合わせ、研修などで出張する場合があります。出張旅費規程は出張に関わる旅費(交通費・宿泊を伴う出張の宿泊費・日当)の支給などについて定めるものです。支給する旅費の額などは企業によって異なりますが、職位ごとに支給する旅費の額を定めておくのが一般的です。
出張旅費規程を定める際のポイントとしては、主に次の2点が挙げられます。
上記のうち、2.については、例えば「交通費は最短の経路で計算すること」「ハイヤーなどは会社が必要と認めた場合にのみ利用できること」「出張から帰ったら旅費の精算をするための手続きを行うこと」などが挙げられます。
また、人事異動で従業員やその家族が新任地に向かうための引っ越し費用(交通費や家財道具の荷造り、運送に関わる費用など)について、出張旅費規程で定める場合があります。例えば、「会社が引っ越しに関わる費用をどこまで負担するか」などは定めておいたほうがよい項目です。ピアノなど、いわゆるぜいたく品などは運送費が高額になるため、企業と従業員とでトラブルになりやすいといわれるからです。以降で紹介する出張旅費規程では省略していますが、「ピアノについては1台分までは会社が負担する」「高額な骨董(こっとう)品は本人負担とする」などのように、別途内規を設けて詳細に定めておいたほうがよいでしょう。
この他、企業によっては国内だけではなく、海外へ出張する場合があります。以降で紹介する出張旅費規程のひな型では紹介していませんが、業務内容によっては、海外出張についても定めておく必要があります。
以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
第1条(目的)
本規程は、役員および従業員(以下「従業員等」)が会社の業務のために出張する場合の手続きおよびその旅費、並びに転勤のために居住地を変更する場合の交通費等の支給について定める。
第2条(出張の定義)
本規程で定める出張とは、会社の出張命令による国内出張をいう。
第3条(出張の区分)
1)出張の区分は次の通りとする。
1.日帰り出張
出張する従業員等(以下「出張者」)の勤務地より片道150キロメートル以上かつ片道2時間以上の地域で出発の当日帰着できる出張。
2.宿泊出張
通常、宿泊を必要とする地域への出張として会社が認めた地域への出張。
2)日帰り出張であっても、業務の都合上または交通不便等のため日帰りが困難な場合は宿泊出張として取り扱うことがある。
第4条(旅費の種類)
本規程で定める旅費の種類は次の通りとする。
1.交通費
2.宿泊費
3.日当
第5条(出張中の傷病・災難)
出張中の傷病(ただし業務外を除く)のため、または不慮の災難等によりやむを得ず出張した地域へ滞在したときは、医師の診断書、または事実の証明のある場合に限り、原則として7日以内において別表第1「旅費」(以下「別表第1」)に定める日当および宿泊費を支給する。
第6条(出張中の勤務)
出張中の勤務に関しては、特別の事情がある場合を除いて就業規則に定める所定労働時間を勤務し、休日に休務したものとみなす。ただし、業務の都合によりやむを得ず出発の日が休日となる場合または出張期間内に休日がある場合の旅費の取り扱いは次の通りとする。
1.宿泊費
休日の宿泊費は別表第1に定める宿泊費を支給する。
2.日当
休日勤務の場合の日当は別表第1に定める日当を支給する。
移動のみの場合の日当は別表第1に定める日当の50%を支給する。
完全休日の場合の日当は支給しない。
第7条(旅費の計算)
旅費の計算は最短の経路または時間によらなければならない。ただし、天災その他やむを得ない事由で順路を変更した場合は、実際の経路により旅費を計算し支給する。
第8条(タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等の利用)
タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等は緊急または特別の必要のある場合において所属長の許可を受けて利用できるものとし、航空機については会社が認める航空会社の航空機を利用するものとする。
第9条(交通費)
1)交通費のうち、鉄道運賃、船舶運賃、航空運賃については、別表第1に定める職位に応じた等級の額を支給する。
2)バス運賃についてはその実費を支給する。
3)社有自動車を利用した場合、あるいは他社の自動車に便乗した場合、交通費は支給しない。ただし、燃料費、通行料、駐車料等は実費を支給する。
4)タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等の利用については第8条に基づいて会社が必要と認めた場合であって、第14条第1項および第2項に定める手続きを行う際に領収書を添付したときには実費を支給する。
5)出張区間と通勤手当の認定区間が重複する場合には、それに該当する区間の交通費は支給しない。ただし、特に会社が必要と認めた場合にはこの限りではない。
第10条(宿泊費)
1)宿泊費は宿泊した夜数(午前0時を過ぎるごとに1夜とする)に応じて別表第1に定める額を上限とする実費を支給する。
2)宿泊研修等で宿泊費込みの受講料を会社が負担している場合は、宿泊費を支給しない。
第11条(日当)
1)日当は出張の初日から最終日まで、暦日により出張日数に応じて別表第1に定める額を支給する。ただし、午後出発の場合および午前帰着の場合には、その日については別表第1に定める日当の50%を支給する。
2)第3条第1項第1号の日帰り出張の場合は、その日について別表第1に定める日当の50%を支給する。
第12条(出張の手続き)
出張者は、出発の前日までに出発の日時、行き先、訪問先および用件について、別途定める「出張承認申請書」(省略)を所属長に提出し、承認を得なければならない。この手続きをしない者に対しては、旅費の支給をしないことがある。
第13条(旅費の仮払い)
出張者は、第12条に定める承認を得た場合には、出発前に別途定める「仮払申請書」(省略)を所属長に提出し、承認を得た上で旅費の仮払いを受けることができる。
第14条(帰社の報告および旅費の精算)
1)出張者が出張先から帰着したときは、3営業日以内に別途定める「旅費請求書」(省略)および「出張報告書」(省略)を所属長に提出し、承認を得た上で旅費の精算をしなければならない。
2)出張先からの帰着が予定より遅延するときは、電話その他によりその旨を所属長に報告しなければならない。
3)第14条第1項および第2項に定める手続きをしない者に対しては、旅費の支給をしないことがある。
第15条(転勤旅費の種類)
本規程で定める転勤旅費の種類は次の通りとする。
1.本人交通費
会社から転勤を命ぜられ転勤する者(以下「転勤者」)の旧任地から新任地までの交通費。
2.荷造り運送費
家財道具等の荷造り、運送に要する費用。
3.家族交通費
転勤者の家族の旧任地から新任地までの交通費。
4.宿泊費
転勤者及びその家族の新任地における宿泊費。
第16条(転勤者本人の交通費)
転勤者には、第9条に定める交通費を支給する。
第17条(荷造り、運送費等)
赴任および帰任に伴う荷造り、運送などの費用は会社が実費を支給する。
第18条(家族の交通費)
1)転勤者が配偶者、転勤者の父母および子を帯同するときは、帯同する家族1人につき、転勤者本人と同等の交通費の実費を支給する。ただし、子については、12歳未満の者は半額、6歳未満の者には支給しない。
2)転勤者が赴任した後、3カ月を経ても移転しない家族に関する交通費は、原則として支給しない。
第19条(転勤者の宿泊費)
転勤者およびその家族が、新任地に赴任してから新しい住居に入居するまでは、会社が認める宿泊施設に宿泊するものとし、その宿泊費は会社が負担する。
第20条(罰則)
役員および従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。
第21条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。
附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2026年4月更新)
(監修 税理士 石田和也)
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画像:ESB Professional-shutterstock
新事業を始めたいけれど、土地や建物がなくて融資が受けられない。かといって経営者保証に頼ると思い切った投資はしにくいし、事業承継にも差し支えるかも・・・・・・。多くの中小企業が抱える悩みです。そんな中小企業の経営者に紹介したいのが、2026年5月25日から始まる「企業価値担保権」です。企業価値担保権とは、
企業が金融機関から融資を受ける際に、信託という仕組みを通じて、有形資産(土地や建物)だけでなく、無形資産(ノウハウや顧客基盤) も含む 「企業の総財産」を担保にできる制度
です(根拠法は「事業性融資の推進等に関する法律」)。

これまでの融資は、決算書の数値と不動産の担保価値が審査の中心で、有形資産に乏しい企業、経営者保証が課されることにより事業承継や思い切った事業展開をためらっている企業は、資金調達の選択肢が限られてしまうのが課題でした。しかし、企業価値担保権が開始されることで、
事業の実態や将来性に着目した融資 (事業性評価に基づく融資)を受けやすくなる
のです。一方、その特性故に、融資を利用する経営者には、
金融機関に対し、自社の事業の継続性や収益性、事業計画などを説明するプレゼン力
が一層求められることになります。
そこで、この記事では、
を紹介します。新年度、さらなる事業展開を検討している経営者の方はぜひご一読ください。
なお、企業価値担保権についてより詳しく知りたい方は、こちらをご確認ください。
従来の担保権と企業価値担保権の違いを比較表としてまとめました。

前述した通り、
企業価値担保権の担保対象は「企業の総財産」
です。現在保有している財産だけでなく、将来取得する財産も含まれますし、現預金や設備だけでなく、
といった、貸借対照表に載らない無形資産も評価の対象です。
また、従来の担保権とのもう1つの大きな違いが「評価の視点」です。従来の担保権は、万が一返済できなくなった場合に「担保物を売っていくらで回収できるか」という処分価格で評価されていましたが、企業価値担保権では、「この事業が将来どれだけのキャッシュフローを生み出せるか」という事業継続価値を重視します。つまり、
過去の実績や現在の資産だけでなく、これからの成長の可能性が評価の対象
になるのです。
企業価値担保権は、企業(借り手)と金融機関(貸し手)の間に、法律に基づき新設される「企業価値担保権信託会社(担保権者)」が入る仕組みになっています。
おおまかなスキームのイメージは図表3の通りです。

企業は企業価値担保権信託会社(担保権者)と信託契約を結び、企業価値(自社の総財産)を担保目的財産として提供します。企業価値担保権は商業登記簿への登記によって設定されますが、設定後も企業は通常の事業活動の範囲において、財産の処分を自由に行うことができるので、取引が制限されることはありません。
なお、企業価値担保権のルールでは、借り手となれるのは株式会社・持分会社だけです。
企業価値を担保として融資を実行します。企業からの返済が滞る場合、企業価値担保権信託会社を通じて債権回収を行います。
なお、金融機関は金融庁の免許を取得した場合、企業価値担保権信託会社を兼任することが可能です。
企業から金融機関に対する債務の弁済が滞った場合、裁判所に申立てを行います。裁判所は事業の経営等を担う「管財人」を選定し、管財人は事業の経営等をしながら、スポンサーへの事業譲渡などを行い、その対価が金融機関への弁済に充てられることになります。
「事業を解体」して資産を売るのではなく、事業全体を維持したまま次の担い手に引き継ぐ「事業譲渡」などで対応するため、取引関係や従業員の雇用は維持される
というのが特徴です。
企業価値担保権を設定する場合、
経営者個人の連帯保証は原則として制限
されます。事業全体の価値を担保として評価するため、経営者個人の資産に頼る必要がなくなるという考え方です。これにより、経営者は個人資産を失うリスクを恐れず、より積極的な事業展開に踏み切れるようになると期待されています。
ただし、経営者が意図的に粉飾決算を行った場合や、企業の資産を不正に流用した場合は例外です。
前述した通り、企業価値担保権を活用した融資を利用する場合、経営者には「金融機関に対し、自社の事業の継続性や収益性、事業計画などを説明するプレゼン力」が一層求められます。ここでは、金融機関の元融資担当者にヒアリングした、経営者がプレゼン力を身に付けるために押さえておきたいポイントを紹介します。
新事業などやりたいことが明確にあるのに、融資を断られてしまう・・・・・・。そうした経営者の多くには、陥りがちな落とし穴が3つあります。
自社の技術や商品に対する自信は大切ですが、経営者が「ウチには立派な技術や商品がある!」と力説するだけでは、融資の許可は下りません。融資担当者が重視するのは「客観的な根拠」です。市場ニーズや競合との比較分析が欠けていると、業績悪化時の立て直し能力にも疑問を持たれかねません。
売上や利益が常に右肩上がりになっているものの、「なぜその数字が達成できるのか」という裏付けがないケースも多いです。融資の担当者は、計画の数字の整合性を必ず検証します。「どの施策が売上につながるのか」「根拠となるデータは何か」まで、事業計画書に落とし込むことが大切です。
外部の専門家や財務担当者に事業計画書の作成を任せきりにし、経営者自身が計画の中身を説明できないケースも少なくありません。作成を専門家などに任せること自体は問題ありませんが、肝心の経営者自身が中身を説明できなければ、事業への理解が低いと判断され、計画の実現可能性そのものを疑われます。
融資担当者との面談は、書面だけでは伝え切れない熱意を補足できる絶好の機会です。以下のNGパターンを避け、担当者に確実に伝わる説明を心がけましょう。
「革新的」「先進的」といった抽象的な表現では、担当者に事業の魅力が伝わりません。担当者はあらゆる業界の専門家ではないため、自社のビジネスモデルを具体的にイメージできる説明が不可欠です。
自社の強みだけをアピールし、競合参入やコスト高騰などのリスクに触れない説明は、「リスクを考慮していない」または「都合の悪い情報を隠している」という不信感を招きます。リスクと対策をセットで提示することが危機管理能力の証明になり、信頼感も高まります。
自社と競合の違いを、単に「(ウチのほうが)品質が高い、サービスが丁寧」と力説しても、そうした曖昧な表現では融資担当者は納得しません。金融機関が求めているのは、自社の強みがどのような競争優位性を生み、事業の持続につながるのか、というつながりです。現時点で直接の競合がいない場合でも、今後の参入可能性を想定した見通しは必須です。競合調査が不十分だと、「市場のニーズ自体を把握できていない」と見なされかねません。
融資担当者は経営者の説明を基に、社内で融資の稟議(りんぎ)を通さなければならない立場です。上位者を納得させる稟議書を書けるよう、
担当者に「武器」を渡す意識を持つ
ことがポイントだそうです。
事業計画の目標には、実績データに基づく根拠を添えましょう。担当者は「なぜその数字が達成できるのか」を上位者に説明する必要があるため、エビデンスのある資料は担当者の武器になります。例えば、
などの資料を添えるとよいでしょう。
融資担当者も、上位者への報告で活用できるレベルのデータがそろっている案件は、自信を持って説明ができますし、完成度の高い計画を提出してもらったなら、期待に応えたいという気持ちが高まるそうです。
収支計画は、売上・費用・利益の各項目が論理的につながり、「この前提なら達成可能」と担当者が納得できる水準に仕上げることが大切です。希望的観測より、堅実な根拠に基づく計画のほうが信頼を得られます。
審査では計画未達時のリスクシナリオも検証されます。返済を続けられる財務基盤や、経費削減などの経営判断ができることを計画に織り込んでおくことで、担当者からの信頼がより高まります。
以上(2026年4月作成)
(監修 石原法律事務所 弁護士 磯田翔)
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画像:日本情報マート
目次
毎年年末に税制改正大綱が公表されますが、その内容は今すぐに実行されるわけではありません。税制改正大綱の内容を実行するための法令は、年明け1~3月に国会で審議されますし、そもそも税制改正大綱には、
その翌年度の改正だけでなく、翌々年度以降の改正
も含まれているのです。
となると、経営者や実務担当者は、税制改正大綱の内容が、いつから実行されるのかを意識しておく必要があります。そういう意味でいえば、直近の税制改正大綱の内容はどうなのでしょうか。皆さんが注目している税制が、実はまだ先のことだったら困りますよね。
そこで、この記事では、近年話題になっている様々な税制の中から、
中小企業が2026年度に使える税制
について紹介していきます。具体的には、
設備投資、研究開発、賃上げ、寄附
をした、または検討している中小企業の経営者や実務担当者は確認してみてください。
この記事で紹介している設備投資、研究開発、賃上げに関する税制は、中小企業者等を対象としています。中小企業者等とは、
資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人(同一の大規模法人から、発行済株式の総数または出資の総額の2分の1以上を所有されている法人などを除く)など
をいいます。
なお、この記事で紹介している税制の内容は、2026年3月26日時点のもの(令和8年度税制改正大綱で定められた内容については予算審議中のもの)で、将来変更される可能性があります。
中小企業投資促進税制は、
生産性の向上を目的に、一定の設備投資やソフトウエアを購入した場合に、その投資額の一部を税額控除か、特別償却(通常の減価償却費のかさ増し)のいずれかを選択して適用できる制度
です。ただし、資本金3000万円超の中小企業者等については特別償却しか適用できません。

例えば、生産性の向上を目的に200万円の機械装置を購入して税額控除を選択した場合、14万円(=200万円×7%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。
なお、購入した設備ごとに購入金額や重量などの下限が決められています。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。
この税制は、事前の申請などは必要なく、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類を添付することで適用を受けられます。
中小企業経営強化税制は、
中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて、新たな設備投資をした場合に、その投資額の一部を税額控除か、全額を即時償却のいずれかを選択して適用できる制度
です。要件は4つのタイプに分かれており、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。なお、C類型は2025年4月1日をもって廃止となっています。

例えば、150万円のシステム投資を行って税額控除を選択した場合、15万円(=150万円×10%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。
なお、中小企業投資促進税制と同様、購入した設備ごとに購入金額の下限が決められているので注意が必要です。一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。
また、この税制を受けるためには、事前に経営力向上計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定までおおよそ3カ月はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(認定計画の申請書および認定書の写しや別表または付表、適用額明細書)を添付しなければなりません。
中小企業防災・減災投資促進税制は、
中小企業等経営強化法の認定を受けた事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画に基づいて、企業の防災・減災目的の設備投資をした場合(認定を受けた日以後1年以内に対象設備を取得して、事業用として使用した場合に限る)に、特別償却を適用できる制度
です。

例えば、150万円の耐震設備を取得した場合、24万円(=150万円×16%)を特別償却として損金に計上できます。
また、この税制は、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(付表と適用額明細書)を添付することで、適用を受けられます。
この税制を受けるためには、事前に事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定まで、不備がない状態でおおよそ45日はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(付表と適用額明細書)を添付しなければなりません。
少額の備品などを購入した際、資産計上をすることなく、即時に全額を損金に算入できる少額減価償却資産について、
2026年度より、対象になる取得価額が40万円未満(改正前は30万円未満)に引き上げ
られています。
なお、この特例は、
事業年度終了の日において常時使用する従業員の数が400人以下(改正前は500人以下)の法人が適用対象
になります。
固定資産税の特例は、
中小企業等経営強化法の認定を受けた認定先端設備等導入計画に基づいて、新たな設備投資をし、かつ一定率以上の賃上げを表明した場合に、固定資産税の一部が3年間または5年間減免される制度
です。

例えば、機械装置200万円を購入した場合、約14万円(≒200万円×1.4%×1/2。一般要件のみを満たした場合の購入初年度ケースです)の固定資産税の減免を受けられます。
この税制を受けるためには、事前に先端設備等導入計画を作成し、市区町村から認定(東京都特別区の場合は、計画申請・認定は特別区が、課税は東京都が行います)を受けなければなりません。設備投資については、認定後に行うことが必須です。なお、先端設備等導入計画の作成には1カ月程度はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、償却資産の申告の際に、一定の書類(先端設備等導入計画に係る固定資産税の課税標準の特例適用申請書や認定書の写しなど)を添付しなければなりません。
中小企業技術基盤強化税制は、
中小企業が行う研究開発(試験研究)について、その試験研究費の一部を税額控除できる制度
です。

例えば、3000万円の試験研究費が計上された場合、360万円(3000万円×12%)の税額控除を受けられます。ただし、控除できる金額は原則として法人税額の25%が上限となります。
なお、2026年度の税制改正では、適用期間が3年間延長されるとともに、控除しきれなかった税額を3年間繰り越せる制度(繰越税額控除制度)が追加されました。これにより、
であっても、将来の黒字年度で控除を活用できるようになります。ただし、「その年度の試験研究費が比較試験研究費(過去3年間の平均額)を超えていること」という条件がある点には注意が必要です。
この税制は、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(別表や適用額明細書)を添付することで、適用を受けられます。
賃上げ促進税制は、
中小企業者等が、前年度よりも給与などを増やした場合に、その増加額の一部が税額控除できる制度
です。通常要件に加え、上乗せ措置があり、それぞれの要件を満たすごとに、一定の税額控除率が加算されます。昨年度(2025年度)に引き続き制度自体は継続されていますが、
2026年度は教育訓練費に係る税額控除率(10%)の上乗せ措置が廃止
され、最大控除率が35%(昨年度は45%)に縮小しています。

例えば、給与の合計額を前年度から500万円増やした場合、75万円(=500万円×15%)を法人税額から控除できます(通常要件のみを満たした場合のケースです)。
この税制の適用を受けるためには、法人税の申告の際に、確定申告書に、税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額と、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。
なお、賃上げ促進税制は税額控除であるため、
は要件を満たしても、その年度にメリットの全部または一部を受けられません。そのような会社には、最大5年間, 控除しきれなかった額を繰り越して税額控除を受けられる措置があります。
また、2026年度の税制改正で、
が決まっています。中小企業者等においては、「期限到来時(2027年3月31日)の状況を踏まえて必要な見直しを検討する」という表現にとどめられ、継続か廃止かの明確な判断は来年度以降の税制改正の議論にて行われる見込みです。
企業版ふるさと納税は、
会社が自治体に寄附すると、税負担を軽減することができる制度
です。
軽減効果は、寄附額の最大9割とされており、内訳は、
です。寄附額の下限金額は10万円で、本社が所在する自治体などへの寄附は対象外となっています。寄附を募っている自治体や事業については、内閣府「企業版ふるさと納税ポータルサイト」で確認してみましょう。

なお、企業版ふるさと納税には、個人版と異なり返礼品はありません。そのため、会社の社会貢献活動や自治体とのパートナーシップ構築などを目的に行われています。
この税制を受けるためには、確定申告時に、企業版ふるさと納税の適用がある寄附を行ったことを申告するとともに、受領証の写しを提出(法人税の申告にあっては保管)しなければなりません。
以上(2026年5月作成)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)
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画像:日本情報マート
誰もが知っている大企業勤めならいざしらず、中小企業の場合、社長も一介の営業担当者も、まずは相手に「自分」を覚えてもらうことからビジネスが始まります。正方形の名刺、個性的な服装、つかみのトークなど、これらは全て「個」として自分を覚えてもらうための工夫です。
筆者は以前、1日に何件もアポイントが入る地方銀行系シンクタンクの名物執行役員に、一度で顔と名前を覚えてもらい、何度も連絡を取り合う仲になりました。残念ながら自社のビジネスにはつながりませんでしたが、代わりに多くの人を紹介したり、紹介してもらったりしましたし、通常は知り得ない金融機関の裏話も聞けました。
また、知人が東京の赤坂でカラオケスナックを開店したとき、ほとんど店に行けなかったにも関わらず、とても感謝され「あなたの開店祝いが一番良かった!」と絶賛されたことがあります。
どちらのケースも、私が一体何をしたかというと、
花を贈った。ただそれだけ
です。ポイントは相手のことを考え、ちょっとだけ工夫したことです。さて、ここでクイズです。私がしたちょっとした工夫とは、次の3つのうちどれだと思いますか?
答えを知りたい人はこちらをクリック(ログイン後)
答えを知りたい人はこちらをクリック(ログイン後)
花は一定期間、空間に飾られて視覚的に強い印象を残しますし、
立札に自社名を記せば「オフラインメディア」のような宣伝効果
が期待できます。4月は開業・開店、異動や昇進などが重なる時期ですから、花を贈って自分を覚えてもらう絶好の機会です!
この記事では、ビジネスで花を贈る際の基本マナーや、一歩進んだ「印象に残る贈り方」を紹介しています。花を贈って新年度の営業に弾みをつけましょう!

ビジネスで花を贈るシーンを想定し、予算やタイミングなどをまとめます。予算などは相手との関係によりますので、その辺りはうまく調整してください。
(図表)【花の贈り方の基本マナー】
| シーン | 予算の目安 | 贈るタイミング | 贈る場所 | 注意点・マナー |
|---|---|---|---|---|
| 開業・開店 | 1万~5万円 | オープン前日~当日朝 | 店舗・事務所 | 赤い花やラッピングは「火事」を連想させるため避けたほうが無難。開店時は多忙なので世話がかからない花が理想的 |
| 移転祝い | 1万~3万円 | 移転完了後~2週間以内 | 新事務所・新店舗 | 先方の片付けが落ち着く大安などの吉日を選ぶのが理想的。あえてタイミングをずらすと印象に残りやすいことも |
| 栄転・昇進 | 5千~3万円 | 辞令公表後~1週間以内 | 勤務先または自宅 | 人事のことなので慎重に進め、必ず正式な辞令が出てから贈ること。会社に届ける際はサイズに注意 |
| 退職・送別 | 3千~1万円 | 送別会当日・最終出勤日 | 送別会場・勤務先 | 持ち帰る際の負担にならないサイズとし、持ち帰り用の袋を用意すると丁寧。定年退職には華やかな花束が良い |
| お見舞い | 3千~5千円 | 入院後、容体が安定してから | 病院(許可が必要) | 鉢植えは「根付く=寝付く」を連想させるため厳禁。香りが強い花、落ちる花も避けるのが通常 |
| お悔やみ | 1万~2万円 | お通夜・告別式まで | 斎場・自宅 | 宗教により花の種類が異なること、斎場の広さによって受け入れられる献花に限りがあるため、必ず葬儀社に確認する |
(出所:日本情報マート作成)
ここからは「印象に残る花の贈り方」を紹介します。といっても、その方法はさまざまで、
などが考えられます。どういった方法がいいかは、相手の状況によって変わってきます。
つまり、
お決まりの行為として花を贈るのではなく、いかに相手のことを知り、その状況に合わせて工夫するか
が大切になります。冒頭でお出ししたクイズの答えもまさにこれに通じます。答えは以下の通りです。
今回の場合、オフィス移転といっても、近隣のテナント入居先から銀行本体の一室に移動するというものでした。私は、たまたま執行役員から移転のことを聞いていましたが、私以外の外部の人間で知っている人はほとんどいないとのことでした。
移転のお祝いに胡蝶蘭を贈ったのですが、あえて立札はつけませんでした。なぜかというと、
取引関係にない私が、なぜ、移転のことを知っていて、花まで贈ってくれるのか?(執行役員はこの相手に便宜を図るつもりか?)
とつまらない詮索を受けて、執行役員に迷惑をかけたくなかったのです。
結局、届いた花は私が贈った1鉢だけだったとのことで、それなりに目立ったようです。また、これは想定外だったのですが、立札がないため、執行役員が花の送り主である当社のことを説明してくれて、会社名と私の名前が内部で広まりました。もちろん、健全な関係であることも内部で理解されました。
このこともあり、執行役員との仲が深まっていきました。執行役員曰く「自分の立場に配慮した私の姿勢」を評価してくれたとのことでした。
カラオケスナックをオープンした知人はビジネススクールの学友で、開店のことは事前に相談されていました。出店場所やお店の広さは聞いていましたし、ワンオペで回すということも知っていました。開店祝いの花といえば胡蝶蘭が定番ですが、恐らく飾っておくスペースがないですし香りも気になります。また、ワンオペで店を回すとなると、花の世話もできないと考えました。
そこで私は、カウンターにおける大きさでテイストの異なるプリザーブドフラワーを3基贈ることにしました。なぜなら、
3基のプリザーブドフラワーを順番に飾るだけで、手間をかけずに雰囲気を変えられる
と思ったからです。
当時、私は仕事が忙しくて、ほとんど店に行けなかったのですが、「店内が明るくなって、変化も出せる」と、とても感謝されました。

2つのケースで共通するのは、
事前に相手の状況を把握できていた
ことです。花を贈るとインパクトがありますが、一方ではスペースが必要だったり、飾る順番について相手に気を遣わせたり、世話をしなければならなかったりという側面もあります。状況はそれぞれですが、事前の情報でこうしたマイナス要因を排除すれば相手は喜び、印象に残りやすいのだと思います。
以上(2026年3月作成)
pj00817
画像:日本情報マート
自転車の交通違反があった場合、指導警告のほか、これまでは
いわゆる「赤切符」の交付などの刑事手続き(有罪となった場合は前科がつく)
により処理されていました。
ただ、赤切符による処理は、反則金を納めれば刑事罰が免除される「交通反則通告制度」(いわゆる「青切符」)が導入されている自動車の交通違反と比べて時間的・手続き的な負担が大きく、検察に送致されても不起訴とされるケースが少なくありませんでした。そこで、悪質・危険な交通違反を迅速かつ適切に処理できるよう、
2026年4月から、自転車の交通違反についても、自動車と同じく「青切符」による取り締まりが行われる
ことになりました。
青切符は2026年4月以降、
「反則行為」という軽微な違反行為(信号無視、一時不停止など)については、交通反則通告制度(青切符)で対応されることになります。一方、「非反則行為」という重大な違反行為(酒酔い運転など)については、これまで通り赤切符での対応になります。

具体的には、図表2の反則行為が、反則金を支払うことで刑事罰を免除されることになります。

自転車への青切符導入については、警察庁から基本的な交通ルールと警察の交通違反の指導取締りの基本的な考え方についてとりまとめた自転車ルールブックが発表されています。警察庁「自転車ポータルサイト」からダウンロードできますので、こちらも併せてご確認ください。
自動車等が自転車等の右側を通過する場合(追い越す場合を除く)に十分な間隔がないとき、自転車等はできる限り道路の左側端に寄って通行しなければなりません。これに違反した場合、図表2の「被側方通過車義務違反」に当該します。
一方、自動車等は、自転車等との「間隔に応じた安全な速度」で進行しなければなりません。警察庁から、この場合の「間隔に応じた安全な速度」について、
という目安が示されています。これに違反した場合、3カ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金、反則金(普通車7000円)、違反点数2点が課せられる恐れがあります。
具体的な走行状況、道路状況や交通状況により異なりますが、自動車を運転していて、自転車の右側を通過する場合、これまで以上に注意が必要です。
警察庁によると、自転車関連事故(自転車が第1当事者または第2当事者となった交通事故)の件数は減少傾向にありますが、2024年の事故件数は約6万7531件と、依然として多くの事故が起きている状況にあります。
警視庁および各道府県警察は、管内の交通量が多い道路や、生活道路などで自転車が関係する違反や事故が多いエリアを「自転車指導啓発重点地区・路線」として、ウェブサイト上で公表しています。日常生活で自転車をよく利用する社員に、居住地や会社周辺の「自転車指導啓発重点地区・路線」を確認するよう、周知するのも自転車事故防止につながるでしょう。
2023年4月1日に施行された改正道路交通法によって、全ての自転車利用者に対し、乗車用ヘルメット着用が努力義務化されました。
自転車乗用中の交通事故で死亡した人の約5割が、頭部に致命傷を負っています(2020年から2024年の合計)。
ヘルメット着用はあくまで努力義務であり、罰則はありませんが、自転車乗用中の交通事故において主に頭部を負傷した死者・重傷者の割合では、
ヘルメットをしていなかった人の割合は、ヘルメットをしていた人と比べ約1.7倍
にも膨れ上がります。社員にヘルメットの着用を勧めることで、「もしものとき」の大きなケガを防ぐことができます。
自転車で交通事故を起こした場合には、運転者に刑事上の責任も問われます。さらに、重大な過失によって人を死傷させた場合には、「重過失致死傷罪」に問われる恐れもあります。被害者に対しては、民事上の損害賠償責任も発生します。
交通ルールをしっかり守って運転しなければならないことを、いま一度、社員に徹底させましょう。また、自転車向けの損害保険の加入も検討するとよいでしょう。
以上(2026年4月更新)
pj60245
画像:日本情報マート
人事部、経理部、法務部など、バックオフィス専門の部署がないことが多い中小企業では、経営者や管理職も例外なくこうした実務を行います。しかし、不慣れな上に、片手間で処理することが多いので、どうしても抜け漏れが生じがちです。
一方、こうした実務は法令で定められたものが多く、放置しておくと思わぬペナルティを受けることがあります。
これを避けるために、
「人事労務」「会計・税務」 「法務・その他総務」の主なお仕事を月別にリスト化した「月別実務リスト」
を作成しました。下記からPDFでダウンロードできますので、印刷してご活用ください。
なお、このPDFは次のコンテンツを再編したものです。興味のある月の業務だけを知りたい場合、こちらをご確認ください。
以上(2026年4月作成)
pj00815
画像:日本情報マート