【2026年度版 助成金ブック】採用・人材育成・賃上げなど25種類

2026年度の最新情報を基に、「採用」「人材育成」「賃上げ」などの助成金について、支給要件や実務のポイントを印刷できるPDFにまとめました。ぜひご覧ください。


こちらからダウンロード

収録されている助成金は次の通りです。

【採用活動編】

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース):最大240万円
  • 特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース):最大60万円
  • 早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース):最大40万円
  • トライアル雇用助成金(一般トライアルコース):最大15万円

【人材育成編】

  • 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース):最大1億円
  • 人材開発支援助成金(人への投資促進コース):最大3500万円
  • 人材開発支援助成金(人材育成支援コース):最大1000万円
  • 人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース):最大36万円

【育児サポート編】

  • 両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース):最大1342万円
  • 両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース):最大197万円
  • 両立支援等助成金(出生時両立支援コース):最大127万円
  • 両立支援等助成金(育児休業等支援コース):最大122万円
  • 両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース):最大90万円

【賃上げ編】

  • キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース):最大740万円
  • 業務改善助成金:最大600万円
  • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース):最大325万円

【健康経営編】

  • 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース):最大1370万円
  • 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース):最大1020万円
  • 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース):最大970万円
  • 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース):最大500万円
  • 働き方改革推進支援助成金(取引環境改善コース):最大100万円

【パート雇用編】

  • キャリアアップ助成金(正社員化コース):最大1680万円
  • キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース):最大75万円
  • キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース):最大60万円
  • キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース):最大56.8万円

以上(2026年7月作成)

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画像:日本情報マート

事業承継・M&A・紛争リスクを見据えた 中小企業の株式実務ハンドブック(2026年8月号)

非上場の中堅・中小企業の株式実務は、日常的に発生しないこともあり、株式管理が見直されないまま放置されてしまいがちです。しかし、場合によっては重大な経営リスクに直結することもあり得ます。

そこで本冊子では、非上場の中堅・中小企業の法務・総務担当者を主な読者として、自社で何を確認し、どの問題を経営陣に共有すべきか、どの場面で専門家に相談すべきかという観点から、株式実務の基本と実務上の留意点を整理します。


「サポート詐欺」に注意! 警告が表示されても電話しないで

1 「サポート詐欺」の手口を知っておこう

「サポート詐欺」をご存じでしょうか? パソコンでウェブサイトを閲覧中、

  • ウイルスに感染したかのような画面を表示させたり、警告音を発生させたりするなどして、不安をあおる
  • 解除するためには画面に記載された電話番号に連絡する必要があると思い込ませ、電話をかけさせる
  • サポート窓口の担当者をかたって遠隔操作ソフトをインストールさせたり、金銭をだまし取ったりする

といった詐欺の手口です。以降、こうした画面のことを「偽画面」と呼ぶことにします。

偽画面は全画面表示され、「閉じる」ボタンがないため、マウス操作では画面を閉じることができません。警告音が鳴りやまず、パニックに陥った状態で、つい偽画面に記載された電話番号に電話をかけてしまう……。そうすると、サポート窓口の担当者をかたった詐欺被害に遭ってしまうわけです。

サポート詐欺の偽画面が表示されるきっかけは、ウェブサイトに表示された広告枠の「次のページに進むためのボタンに見せかけた広告」や「続きが気になる画像」をクリックしたり、検索結果の上位に表示された偽広告をクリックしたりすることです。巧妙につくられているため、この時点で見破るのは難しいですが、

あらかじめ偽画面のイメージと、所定のキーを使った画面の閉じ方を押さえておく

ようにすれば、万が一クリックしてしまっても落ち着いて行動できます。

以降で、サポート詐欺の被害に遭わないための対策を確認していきましょう。

2 実際にどんな状態になるのか、パソコンで体験してみよう

情報処理推進機構(IPA)では、「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」を設けて注意喚起しています。パソコンで、同ページから「偽セキュリティ警告画面の閉じ方体験サイト」に行くと、実際にどんな状態になるのかを疑似体験できます。

■情報処理推進機構「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/measures/fakealert.html

(注)体験サイトを起動する前に、説明をよくお読みください。

偽セキュリティ警告画面の閉じ方体験サイト

偽画面を開いてしまったとしても、いきなりウイルスに感染するわけではありません。まずは、落ち着いてパソコンの音量を下げましょう。その後、偽画面を閉じれば問題ありません。大切なのは、

絶対に偽画面に表示された番号に電話をかけないこと

です。偽画面の閉じ方は、

  • キーボードの「Esc」キーを長押しして全画面表示を解除して、ウインドウを閉じる
  • キーボードの「Ctrl」と「Alt」と「Delete」キーを同時に押して強制再起動する

といった方法があります。詳しくは、情報処理推進機構(IPA)の次のウェブサイトをご確認ください。

■パソコンに偽のウイルス感染警告を表示させるサポート詐欺に注意■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2024/mgdayori20241119.html

3 サポート詐欺で金銭をだまし取られると戻ってこない?

サポート詐欺でだまし取られた金銭を取り戻すことは難しいのが現実です。サポート詐欺の手口は人間の焦燥感・恐怖と安心感の心理的なギャップを巧みに突くもので、(偽画面に)表示された番号に電話をかけると、次のようなかたちで金銭をだまし取られてしまいます。

  • 指示に従って、相手に指定された金融機関口座に自ら振り込んでしまう
  • 指示に従って、コンビニエンスストアで相手に指定された電子マネー(例えば「Amazonギフトカード」など)を購入し、コードを伝えてしまう
  • 指示に従って、遠隔操作ソフトをインストールし、パソコンへのアクセスを許可した結果、相手にインターネットバンキングの口座にアクセスされて不正送金されてしまう

1.のように自ら振り込んでしまった場合、「本人が同意して送金手続きを行った」とみなされてしまうため、金融機関側の制度による救済を受けられないケースがほとんどです。

2.のように電子マネーのコードを伝えた場合、犯人がまだコードを使って(チャージして)いなければ、電子マネーの発行元のサポート窓口に連絡し、アカウントの利用停止や額面の返金に対応してもらえる可能性があります。

3.のように遠隔操作による不正送金の場合、不正アクセスによる被害として、金融機関の補償対象になる可能性があります。

いずれの場合も、泣き寝入りを避けるために、まずは次の3カ所に同時並行で連絡を入れてください。

  • 警察(警察相談専用電話:#9110)
  • 金融機関(振り込みを行った金融機関、振込先の金融機関)
  • 消費者ホットライン(局番なしの188)

4 参考ウェブサイト

情報処理推進機構(IPA)では、次のウェブサイトなどを通じて注意喚起しています。

■サポート詐欺の偽セキュリティ警告はどんなときに出るのか?■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2023/mgdayori20240227.html
■会社や組織のパソコンにセキュリティ警告が出たら、管理者に連絡!■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2023/mgdayori20230711.html
■偽のセキュリティ警告に表示された番号に電話をかけないで■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2021/mgdayori20211116.html
■遠隔操作を他人に安易に許可しないで■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2020/mgdayori20201125.html

日本サイバー犯罪対策センター(JC3)では、解説動画をYouTubeで公開しています。

■サポート詐欺の手口について(動画解説)■
https://www.jc3.or.jp/threats/examples/article-356.html
■サポート詐欺の電話番号に電話をかけてみた(動画公開)■
https://www.jc3.or.jp/threats/examples/article-570.html

以上(2026年7月更新)

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画像:日本情報マート

仕事はできるが態度が悪い社員は会社に残すべきか?

1 優秀だけど問題が多い社員。残すかどうか?

仕事はできるものの、短気で口が悪い、上司の命令に従わない、遅刻が多いといった社員への対応には、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。ただの問題社員であれば、場合によっては辞めてもらう(解雇する)という選択肢も考えられますが、相手が会社の中核を担う優秀な社員となると、辞めてしまった後の影響が心配になるものです。とはいえ、優秀だからといって、問題のある言動をそのままにしておくわけにもいきません。

このようなケースにどう対応すればよいのか、次の2つのポイントから考えてみましょう。

  • 誰が相手でも「服務規律違反」には毅然と対処する
  • 辞めさせたくないなら「解雇する前」の段階で手を打つ

2 誰が相手でも「服務規律違反」には毅然と対処する

就業規則には「服務規律(社員が守るべき基本的な行動規範)」が定められています。誰が相手であっても、この「服務規律」をきちんと適用することが基本です。その上で、勤務態度が良くない社員には、次のような流れで対応していくとよいでしょう。

対処の流れ

図表のうち2)については労働条件通知書、雇用契約書や就業規則への定めが、3)から5)については就業規則への定めが必要になります。なお、1)については特に定めがなくても構いません。

また、5)の「普通解雇」とは、

社員としての適性がない(能力、健康状態、勤務態度などに問題がある)ことを理由とする解雇

です。問題社員への対処というと「懲戒解雇」をイメージする方も多いかもしれませんが、懲戒解雇は本来、横領やハラスメントといった重大な問題行為を対象とする処分ですので、単に勤務態度が良くない社員に対して行うと、無効となってしまう可能性が高い点には注意が必要です。

図表のケースでいえば、1)から4)までの行程を経ても社員の勤務態度が改善されない場合は、5)の普通解雇もやむを得ないという考え方です。逆にいえば、

1)から4)までの行程で社員が問題行為を起こさない状況をつくれば、解雇する必要はなくなる

ということになります。次章では、「『解雇する前』の段階で手を打ち、社員に会社に残ってもらう」という観点から、図表の各行程のポイントをご紹介していきます。

3 辞めさせたくないなら「解雇する前」の段階で手を打つ

1)注意:問題行為は必ず注意する。ただし、社員の言い分も聞く

社員の勤務態度に問題があるときは、まずはその上司から「君の言動は間違っている。改めなさい」などと注意してもらいましょう。大切なのは、「問題行為に気づいたら必ず注意する」という姿勢です。対応がその時々でまちまちになると、せっかく注意をしても社員から「今日は、上司の機嫌が悪いから注意されたのかな」などと、軽く受け取られる恐れがあります。

また、注意する際には、社員の言い分にも耳を傾けるようにしましょう。例えば、仕事の進め方について上司の指示に従わない社員は、もしかすると自分のやり方のほうが合理的だと考えているのかもしれません。実際にそうであれば、

「君のやり方のほうが良さそうだ、今回はそれでやってみよう。ただし、次回から自分の考えを試したい場合は事前に相談してくれ」

と社員の意見も取り入れながら、事前に相談しなかった点についてはやんわりと注意します。

それでも繰り返し注意して改善が見られない場合は、

「注意書」「指導書」などの形で、どのような注意をしたかを書面で残しておく

ようにすると、「言った、言わない」というトラブルを防ぐことができます。

2)配置転換など:問題行為を起こしにくく、能力を発揮できる状況をつくる

注意しても社員の勤務態度が改善しなければ、

  • 短気で口が悪い社員は、他の社員と関わらずに1人でできる業務を与える
  • 上司の命令に従わない社員には、思い切って権限を移譲してみる
  • 遅刻が多い社員は、「9時始業、18時終業」などの均一的な労働時間管理が適していない可能性を考え、働く時間を自分で決められる「フレックスタイム制」を適用する

といった具合に、配置転換や労働条件の変更を検討してみましょう。社員の勤務態度を無理に改めさせるというよりも、問題行為が起こりにくい状況を一緒につくっていくイメージです。

ただし、例えば「問題行為は起きにくいものの、単純作業しか行わないポジションに就ける」といった配置転換は、場合によってはパワハラと受け取られる恐れがありますし、優秀な社員を活かし続けたいという会社側の意図にも沿いません。ですから、

社員が「どうすれば問題行為を起こしにくいか」だけでなく、「どうすれば能力を発揮しやすいか」も一緒に考えながら、配置転換などを検討していくことが大切

です。

3)懲戒処分:貢献度に応じて処分を軽減しつつ、警告を忘れない

配置転換などをしても効果が見られなければ、就業規則の懲戒事由に基づいて懲戒処分を検討することになります。懲戒処分は、一般的に次の7種類に分けられます。ただし、社員の問題行為に対して重すぎる懲戒処分や、弁明の機会を与えずに行った懲戒処分は無効になってしまうこともあるため、注意しましょう。

  • 戒告:厳重注意を言い渡す(懲戒処分として行うので、前述した「注意」とは異なる)
  • けん責:始末書を提出させ、将来を戒める
  • 減給:一定期間、賃金額を下げる
  • 出勤停止:数日間、出勤することを禁じ、その間は無給とする
  • 降格:役職の罷免・引き下げ、または資格等級の引き下げを行う
  • 諭旨解雇:退職届の提出を勧告した上で、退職届の提出がなければ解雇とする
  • 懲戒解雇:即時に解雇する

一概にはいえませんが、単に勤務態度が良くない社員に対して懲戒処分を行う場合は、

一般的には「1.戒告」から「3.減給」あたりが妥当(「口が悪い」が行き過ぎてパワハラに当たる指導を繰り返した場合などは、「4.出勤停止」「5.降格」もあり得る)

です。実際には、「当該行為の動機、目的、方法、頻度等の行為態様」「会社に与えた損害や周囲への影響」「社員の過去の処分歴・指導歴や反省態度」「会社側の落ち度」「社員の会社への貢献度」などを考慮しながら、慎重に判断していきましょう。

例えば、社員が過去に新サービスを立ち上げたなど、客観的に評価できる実績を残している場合は、

その貢献度を考慮して、処分を引き下げること

ことも可能です。とはいえ、単に処分を軽くするだけでは社員が増長してしまう恐れもあるので、

「今回は、君のこれまでの会社への貢献度を考えて軽い懲戒処分とする。ただ、今後勤務態度に改善が見られなければ、次はより重い処分を科す用意がある」

といった具合に、社員が反省しない場合に備えて、警告も添えておきましょう。

4)退職勧奨:退職を促しつつ、社員に反省の意思があれば雇用継続を検討する

懲戒処分をしても状況が変わらない場合は、「退職勧奨」の実施を検討することになります。退職勧奨とは、

会社から社員に自主退職を促し、社員が同意した場合に退職させること

のことで、一般的な流れは次のようになります。

  • 「注意」「配置転換など」「懲戒処分」を実施したが状況が改善しなかったため、会社としては社員に自主退職してもらいたいと考えている旨を伝える
  • 退職勧奨に応じる場合の条件(退職金の支払い、年次有給休暇の消化など)について説明する
  • 社員に退職勧奨に応じるかを確認し、応じた場合に退職が成立する

退職勧奨は、会社が一方的に労働契約を解除する解雇とは違い、社員に退職を強制するものではありません。ですから、

仮に社員がこの時点で「退職したくありません、これまでの勤務態度を改めます」などと言ってくるようであれば、反省の様子によっては雇用を継続する

という選択肢もあります。逆に、ここでも社員が反省せず退職勧奨にも応じない場合や、「勤務態度を改める」と言いつつもそれが口だけで、その後も改善が見られないといった場合には、残念ながら解雇せざるを得ないという判断になります。

5)普通解雇:この行程まで来たら雇用継続は諦める

退職勧奨後も改善が見られない場合は、「普通解雇」の行程に移ることになります。労働基準法では、

普通解雇に限らず、解雇はその30日前に解雇予告をして実施しますが(解雇予告手当を支払えば日数を短縮可)、一度解雇予告をしたら会社の意思で撤回することは不可

です。つまり、普通解雇を決定した時点で、社員の雇用を継続する道は残念ながらなくなってしまいます。

繰り返しになりますが、どれだけ優秀であっても、ここまでの行程を経ても勤務態度に改善が見られない社員を雇用し続けることは、企業秩序を危うくしてしまいます。企業秩序と社員の定着、どちらも両立できるのが一番ですが、

いざ両立が難しくなったときは、企業秩序を優先するという姿勢を貫くこと

ことが大切です。

以上(2026年8月更新)

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画像:Stingray_Japan-Adobe Stock

個人データを自ら取り扱う場合に守らなければならないルール【かんたん個人情報保護法(3)】

1 個人データを自ら取り扱う場合のルールは3つ

個人データを個人情報取扱事業者(会社)が自ら取り扱う場合、守らなければならないルールが3つあります。具体的には

  • データ内容の正確性を保ち、必要がなくなったら消去する
  • 安全管理措置を講じる
  • 従業者を監督する

です。以降でポイントを確認していきましょう。

2 データ内容の正確性を保ち、必要がなくなったら消去する

個人データは、正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければなりません。

「正確かつ最新の内容に保つ」とはいえ、保有する個人データをすべて、いつも最新化しなければいけないわけではありません。それぞれの利用目的に応じて、その必要な範囲内で正確性・最新性を確保すれば大丈夫です。

また、「遅滞なく消去する」といっても、具体的に「いつまでに」「○日以内に」という期限は特にありません。業務の遂行上の必要性や引き続き個人データを保管した場合の影響等も勘案し、必要以上に長期にわたることのないようにしましょう。ただし、他の法令で保存期間が定められている場合があることに気をつけなければいけません。例えば、賃金台帳は労働基準法に基づき原則5年間保存が義務付けられています。

3 安全管理措置を講じる

取り扱う個人データの漏えい、滅失または毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければなりません。

個人データの「漏えい」とは個人データが外部に流出すること、「滅失」とは個人データの内容が失われること、「毀損」とは個人データの内容が意図しない形で変更されることや、内容を保ちつつも利用不能な状態となることをいいます(3つまとめて、「漏えい等」といいます)。

「安全管理のために必要かつ適切な措置」については、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」に具体例が示されています。この記事の第5章で、参考として、社員数100人以下の「中小規模事業者」が講じるべき安全管理措置について紹介しています。最低限対応しないといけない内容ですので、確認してみてください。

■ガイドライン10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容■
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a10

4 従業者を監督する

従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりません。

「従業者」は、雇用関係にある社員(正社員、契約社員、嘱託社員、パート社員、アルバイト社員など)だけではなく、取締役、執行役、理事、監査役、監事、派遣社員なども含まれます。

「必要かつ適切な監督」は、前述した安全管理措置で「やる」と決めたことがしっかり守られているかチェックすることです。

5 (参考)「中小規模事業者」が講じるべき安全管理措置

ガイドラインの10「(別添)講ずべき安全管理措置の内容」で例示されている中小規模事業者における手法を紹介します。

1)基本方針の策定

「事業者の名称」「関係法令・ガイドライン等の遵守」「安全管理措置に関する事項」「質問および苦情処理の窓口」などの項目を策定する

2)個人データの取り扱いに係る規律の整備

個人データの取得、利用、保存等を行う場合の基本的な取り扱い方法を整備する

3)組織的安全管理措置

  • (組織体制の整備)個人データを取り扱う従業者が複数いる場合、責任ある立場の者とその他の者を区分する
  • (個人データの取り扱いに係る規律に従った運用・個人データの取扱状況を確認する手段の整備)あらかじめ整備された基本的な取り扱い方法に従って個人データが取り扱われていることを、責任ある立場の者が確認する
  • (漏えい等事案に対応する体制の整備)漏えい等事案の発生時に備え、従業者から責任ある立場の者に対する報告連絡体制等をあらかじめ確認する
  • (取扱状況の把握および安全管理措置の見直し)責任ある立場の者が、個人データの取扱状況について、定期的に点検を行う

4)人的安全管理措置

  • (従業者の教育①)個人データの取り扱いに関する留意事項について、従業者に定期的な研修等を行う
  • (従業者の教育②)個人データについての秘密保持に関する事項を就業規則等に盛り込む

5)物理的安全管理措置

  • (個人データを取り扱う区域の管理)個人データを取り扱うことのできる従業者および本人以外が容易に個人データを閲覧等できないような措置を講じる
  • (機器および電子媒体等の盗難等の防止①)個人データを取り扱う機器、個人データが記録された電子媒体または個人データが記載された書類等を、施錠できるキャビネット・書庫等に保管する
  • (機器および電子媒体等の盗難等の防止②)個人データを取り扱う情報システムが機器のみで運用されている場合は、当該機器をセキュリティワイヤー等により固定する
  • (電子媒体等を持ち運ぶ場合の漏えい等の防止)個人データが記録された電子媒体または個人データが記載された書類等を持ち運ぶ場合、パスワードの設定、封筒に封入し鞄に入れて搬送する等、紛失・盗難等を防ぐための安全な方策を講じる
  • (個人データの削除および機器、電子媒体等の廃棄)個人データを削除し、または、個人データが記録された機器、電子媒体等を廃棄したことを、責任ある立場の者が確認する

6)技術的安全管理措置

  • (アクセス制御)個人データを取り扱うことのできる機器および当該機器を取り扱う従業者を明確化し、個人データへの不要なアクセスを防止する
  • (アクセス者の識別と認証)機器に標準装備されているユーザー制御機能(ユーザーアカウント制御)により、個人情報データベース等を取り扱う情報システムを使用する従業者を識別・認証する
  • (外部からの不正アクセス等の防止①)個人データを取り扱う機器等のオペレーティングシステムを最新の状態に保持する
  • (外部からの不正アクセス等の防止②)個人データを取り扱う機器等にセキュリティ対策ソフトウェア等を導入し、自動更新機能等の活用により、これを最新状態とする
  • (情報システムの使用に伴う漏えい等の防止)メール等により個人データの含まれるファイルを送信する場合に、当該ファイルへのパスワードを設定する

7)外的環境の把握

外国において個人データを取り扱う場合、当該外国の個人情報の保護に関する制度等を把握した上で、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる

以上(2026年7月更新)

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画像:日本情報マート

ファクタリング活用の検討~売掛金の回収、与信管理など資金繰りの改善につながるって本当?

1 資金繰りの改善につながる「ファクタリング」のご提案

ファクタリングとは、

企業が持っている売掛金を、ファクター(ファクタリングのサービス提供企業)が買い取ったり、取引先が代金を支払えなくなった場合に備えて支払いを保証したりするサービス

です。

ファクタリングを活用すると、次のような経営上の悩みを解決できる可能性があります。例えば、

  • 売掛金の入金まで待てず、早く現金化したい
  • 売上の大半を1社との取引に頼っており、その会社が倒産すると大きな影響を受ける
  • 取引先の信用力を十分に判断できず、不安がある
  • 債権管理(売掛金の回収管理)の負担を減らしたい
  • 手形業務に代わる仕組みを導入し、事務負担を軽減したい

といったケースです。

特に、売掛金を買い取ってもらう買取型ファクタリング(詳しくは後ほど解説)は、入金を待たずに資金を受け取れるため、資金繰りの改善に効果があります。原材料費や人件費の上昇など、経営環境の変化が大きい現在では、資金調達の選択肢の一つとして検討する価値があるでしょう。また、紙の約束手形が2027年3月末をもって廃止される予定です。手形取引を利用している企業では、決済方法や資金調達方法の見直しが必要となるため、売掛金を活用できるファクタリングは、有力な選択肢の1つとして注目されています。

資金繰りに問題がない企業でも、ファクタリングは役立ちます。例えば、取引先の信用調査を専門会社に任せることで、新しい取引先との契約を安心かつスムーズに進められるようになります。

この記事では、ファクタリングの利用を検討する際の第一歩として、基本的な仕組みや種類について分かりやすく解説します。なお、ファクタリング会社によって利用できるサービスや仕組み、契約内容は異なるため、利用する際には内容をよく確認するようご留意ください。

2 ファクタリングのメリットと注意点

ファクタリングの種類にはさまざまな分類方法がありますが、引き受け方法という面から見ると、次の2つに分けられます。

  • 買取型:ファクターが、債権者から売上債権(請求書)を買い取るファクタリング
  • 保証型:ファクターが、債務者の代金支払いを保証するファクタリング

買取型・保証型のファクタリングには、それぞれ次のようなメリットがあります。ファクタリングの活用を検討する際に重要な点だと思いますので、ぜひご確認ください。

【買取型】

  • 売上債権を早期に現金化できる
  • 担保、保証人が不要である
  • 原則として、取引先が倒産しても回収する義務を負わない

【保証型】

  • 担保、保証人が不要である
  • ファクターから取引先の信用情報が提供される
  • 新規取引先との取引開始時のリスクヘッジにつながる

ファクタリングは銀行などからお金を借りる「融資」とは違いますので、担保や保証人は必要ありません。また、貸借対照表にも基本的には影響はありません(「借入金」にはなりません)。資金調達の選択肢として、また回収リスクの負担を軽減する保険のような存在として活用できます。

一方、ファクタリングには注意点が2つあります。1つ目は、手数料です。一般的に融資の利率などに比べて手数料は高くなる傾向にあります。2つ目は、取引先への対応です。取引先にファクタリングの活用を知られると、自社の経営状況の悪化を疑われる恐れがあります。

3 ファクタリングの仕組みをざっくりご紹介

買取型・保証型のファクタリングの仕組みは、次の通りです(一般的な流れです)。

ファクタリングの仕組み

図表1で紹介しているのは、債権者・債務者・ファクターの「3社間によるファクタリング」です。

この他に、債権者・ファクターの「2社間によるファクタリング」があります。この場合、基本的には債務者に知られることなくファクタリングを活用できますが、3社間に比べて手数料が高くなることが多いようです。

4 その他のファクタリングの種類

これまで見てきた他、ファクタリングは決済方法、申込み方法、対象となる取引の内容などさまざまな面で分類されます。その他の主な種類の一例は次の通りです。

(図表2)【ファクタリングの主な種類の一例】

種類 引き受け方法 取引形態 特徴
一括ファクタリング 買取型 2社間・3社間 債権者の売掛債権を一括して譲渡。ただし債権者側発信ではなく、債務者(支払企業)側が「支払手段」として支払業務で行うもの。債務者の支払業務を効率化できる
オンラインファクタリング 買取型・保証型 2社間・3社間 オンラインで申込みなどやり取りが完結する。早期にサービスが利用できる
国際ファクタリング 保証型 4社間 海外のファクターが信用調査を行った上で、債務者の信用リスクを保証する。L/Cの手続きなどが不要

(出所:各ファクターのウェブサイトなどを参考に日本情報マート作成)

1)一括ファクタリング

金融機関などのファクターが債務者(支払企業側)の決済を代行するサービスです。債権者が保有する売上債権をファクターに一括して譲渡するため、債務者は支払業務の効率化を図れます。

また、一部のファクターでは、電子記録債権(でんさい)を一括ファクタリングの仕組みに組み込んだサービスを提供しています。電子記録債権は、手形など紙媒体で管理されてきた債権を電子化したものです。

2)オンラインファクタリング

申込みから入金までなど一連の手続きがオンライン上で完結するサービスです。対面での手続きや書類の郵送などは不要です(一部書類の郵送などが必要な場合もあります)。種類として多いのは買取型のファクタリングです。

買取型の場合、オンライン上で決算書や売上債権の請求書などをアップロードし、審査を受けます。中には即日対応をうたっているファクターもあり、早期にサービスを活用することができます。

3)国際ファクタリング

輸出入の貿易にファクタリングを活用するサービスです。国際ファクタリングは、債権者・債務者・ファクターに加えて、ファクターの提携先である海外のファクターの4社間で行われます。海外のファクターが信用調査を行った上で、債務者の信用リスクを保証します。

輸出入を行う際の決済には従来、L/C(Letter of Credit、信用状)が使われてきましたが、国際ファクタリングを活用することで、手間とコストがかかるL/Cの手続きが不要になるなどのメリットがあります。

以上(2026年7月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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【2026年7月最新版】ビジネスマッチングサービス公開中!

とくぎんサクセスクラブと香川ニュービジネスクラブ(香川銀行)は合同で、企業間の新たなビジネス機会創出を目的としたビジネスマッチングサービス「TOMONY BUSINESS INFORMATION」を公開しております。

本サービスには、各地域で活躍する多様な業種の会員さまの事業内容、マッチング希望情報などを掲載しており、新たな取引先や提携先の開拓に向けたヒントやきっかけを見つけていただける構成となっております。

本サービスが、会員さまの更なる発展ならびに有益なビジネスパートナーとのご縁を築く一助となれば幸いです。是非ご一読いただき、有効にご活用くださいますようお願い申し上げます。

とくぎんサクセスクラブ
香川ニュービジネスクラブ

ご覧いただく中でご関心をお持ちの事項がございましたら、事務局までお問い合わせください。

【連絡先】とくぎんサクセスクラブ(徳島大正銀行 法人推進部内)
TEL:088-656-1125

以上(2026年7月作成)

経営のヒントとなる言葉(徳川家康)

「勝事(かつこと)ばかり知(しり)てまくる事をしらざれば害其身(そのみ)にいたる」(*)

出所:「東照公御遺訓」(久能山東照宮ウェブサイト)

冒頭の言葉は、

「敗北から学び、逆境を乗り越えた者が、最終的に大きな成功をつかむ」

ということを表しています。

織田信長(おだのぶなが)、豊臣秀吉(とよとみひでよし)とともに、戦国の三英傑の1人に数えられる家康。「鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥(ほととぎす)」という言葉でも知られ、三英傑の中でも特に忍耐強い武将というイメージがあるかもしれません。

しかし、生来の家康は、実はとても気が短い人物だったといわれています。家康の気の短さを象徴する戦(いくさ)の1つに、武田信玄(たけだしんげん)と対峙した三方ヶ原(みかたがはら)の戦い(1572年)があります。

この戦で、家康は上洛を目指す信玄が、敵である自分の居城を攻めずに素通りしようとしたことに腹を立て、兵力差があるにもかかわらず、武田軍に攻撃を仕掛けてしまいます。結果は大敗、家康は多くの家臣を失いながら、命からがら城へと逃げ帰ります。自分の短気な性格のせいで大きな敗北を味わった家康は、後年この戦での憔悴(しょうすい)した姿を肖像画として描かせ、自分への戒めとして生涯離さなかったといわれています。

信玄の死後、家康は同盟を結んでいた信長とともに武田氏を滅ぼし、大大名となりますが、本能寺の変(1582年)で信長が討たれると、その家臣である秀吉への臣従を余儀なくされます。しかし、家康はその立場を受け入れ、10年以上もの間、自分が天下を取るチャンスを虎視眈々(たんたん)と待ち続けたのです。

家康の中には、「気の短さを克服しなければ、三方ヶ原の戦いのような敗北を再び味わうことになる」という思いが少なからずあったのでしょう。過去の敗北を決して忘れまいとする家康の姿勢は、次の言葉からもうかがい知ることができます。

「こころに望(のぞみ)おこらば困窮したる時を思ひ出(いだ)すべし」(*)

秀吉の死後、家康は関ヶ原の戦い(1600年)で、秀吉の家臣だった石田三成(いしだみつなり)を倒し、征夷大将軍に任命されます(1603年)。武家としてトップの地位を手に入れた家康でしたが、豊臣家とこれに従う多くの大名が依然として天下取りの障害となっていました。そこで家康は、豊臣家を滅ぼす大坂冬の陣・夏の陣(1614年・1615年)までの間、再び忍耐の時期を過ごすことになります。

家康は征夷大将軍に就任した時点ですでに60歳を超えていました。「人生50年」といわれたこの時代に、高齢の身でチャンスを待ち続けるのは、勇気のいる選択だったかもしれません。しかし、短気な性格のせいで失敗した経験を忘れず、耐え忍んだことが、最終的に家康を天下人に押し上げ、250年以上にわたる江戸時代の礎を築いたのです。

ビジネスでも、競合の動きを見るためなど、あえて「待ち」に徹し、耐え忍ばなければならないときがあります。しかし、経営者にとって「待ち」に徹するというのは、ある意味、行動を起こすよりもつらいことです。

行動を起こせば、それに応じて何らかの結果が返ってきます。結果が良ければ「自分の行動は正しかった」、悪ければ「改めるべきところがあった」と振り返ることができるでしょう。

一方、「待ち」に徹するというのは、競合の動きなどに目を光らせながら、将来の成功のための下準備を進めることです。この下準備は、短期的に結果を出すためのものではないため、経営者は「『待ち』に徹するという選択が本当に正しいのか」について、確信を持つのが難しいのです。これはとても怖いことです。また、経営者が大きな行動を起こさない状態が続けば、「なぜ社長は動かないんだ……本当に大丈夫なのか?」と言い出す社員も出てくるでしょう。

そうしたとき、経営者に試されるのは「自分の直感を信じ抜く勇気」です。経営者がこれまでの人生で培ってきたビジネスの経験値は、並大抵のものではありません。たとえすぐに答えが見えなくても、自分の信じたタイミングが来るのを待つのです。

忍耐はいつか実を結びます。成功をつかんだときは、経営者は社員の手を取って「『待ち』に徹したかいがあった」と喜びを共有しましょう。社員は思うはずです。「この社長についてきてよかった」と。そのときこそ、「ここまで一緒に耐えてくれてありがとう」と、社員に心からの感謝を伝えることを忘れてはなりません。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

とくがわいえやす(1542〜1616)。三河(みかわ)国(現愛知県)生まれ。豊臣秀吉(とよとみひでよし)没後に関ヶ原の戦いにおいて東軍を率いて、石田三成(いしだみつなり)と対戦し、勝利。征夷大将軍に任じられ、江戸幕府を開く。

【参考文献】

(*)「東照公御遺訓」(久能山東照宮ウェブサイト)

以上(2026年7月更新)

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画像:日本情報マート

「退職代行」で会社を去る社員……退職日や仕事の引き継ぎはどうなる?

退職代行とは、

会社に直接「退職(自主退職)したい」と言えない(言いたくない)社員が、他者(以下「退職代行者」)に依頼して、退職手続きなどを代行してもらうこと

です。入社したばかりの新入社員が退職代行を利用して辞めてしまうというニュース、皆さんも一度は目にしたことがあると思います。

「退職の手続きを人任せにするなんて非常識だ」と思うかもしれませんが、

退職代行であっても、社員本人の意思による申し出であれば、退職は成立する

ので、むげには扱えないのがつらいところです。

これまで社員に退職代行を使われた経験がない場合、「社員を通さずに退職について交渉していいの?」「仕事の引き継ぎはどうなるの?」など、いろいろと疑問もあるでしょう。この記事では、そんな経営者の疑問に答えるべく、退職代行の対応のポイントをまとめました。

Q1 なぜ、社員は自分で「退職したい」と言わないのか?

退職は本来、社員が自分の口で会社に申し出るのが礼儀です。社員に退職代行を使われると、経営者としては「なぜ自分の口で言わないの?」という腹立たしさもあり、同時に「最後なのに顔も見せてくれないのか……」という悲しさもあって、複雑な気持ちになります。

社員はなぜ、自分で退職を申し出ずに退職代行を使うのでしょうか? 人それぞれではありますが、例えば次のような理由が考えられます。

  • 人手不足で会社が非常に忙しいなど、「退職したい」と言えない雰囲気がある
  • 過去に退職を申し出たが、会社から引き留められ退職させてもらえなかった
  • 職場に問題(過重労働やハラスメントなど)があり、一刻も早く退職したい
  • うつ病などの精神疾患を患っていて、自分で退職手続きをしたくない
  • 自身がトラブルを起こして会社に居づらくなり、バツが悪いので黙って退職したい
  • 経営者や上司など、退職の窓口となる人間との折り合いが悪く、顔を合わせたくない

1.から4.は、「会社の対応に期待できない」という諦めや「自分の安全を守らなければ」という焦りから来るもので、退職代行を使われても仕方がないといえる面もあります(特に3.は、明らかに会社に問題がある)。5.と6.は、単純に「居心地が悪い」という不快感から来るもので、社員のわがままにも取れますが、直接「退職したい」と言いにくい心情は理解できるでしょう。

いずれにせよ、上のように

退職代行を使う社員は、会社に対して少なからずネガティブな感情を持っているケース

が多いです。「退職代行を使うなんて非常識だ」という考えも分かりますが、会社がこうした社員と直接退職について話をしようとすると、お互いの感情がヒートアップするなどして、かえってトラブルになることもあります。つまり、ポジティブに捉えるなら、

退職代行者が会社と社員の間に入ることで、退職手続きを円滑に進められる可能性がある

という考え方もできるわけです。

Q2 退職代行者って何者? 具体的に何ができる?

ここから退職代行の具体的な話に入ります。まずは「退職代行者とは何者で、具体的に何ができるのか」を確認していきましょう。一般的に、退職代行者は次の3種類に大別できます。

  • 弁護士:社員との委任契約により退職代行を行う法律の専門家
  • 労働組合:組合員となった社員について退職代行を行う労働者団体
  • 民間事業者:1.と2.のいずれにも該当せず、サービスとして退職代行を行う民間の会社

なお、2.の労働組合については、自社で労働組合を持たない中小企業の社員の場合、個人単位で加入できるユニオン(合同労働組合)が退職代行を行うことになります。

この3種類の退職代行者ですが、実は弁護士、労働組合、民間事業者それぞれで、退職代行で行えることが異なります。具体的には次の通りです。

退職代行で行えることの違い

お気付きかと思いますが、

民間事業者は「退職手続き」は代行できるが、会社との「交渉」は代行できない

のです。弁護士は弁護士法により、社員の代理として会社と直接交渉することが認められていますが、弁護士以外の者が同じことをすると非弁行為(違法)になるからです。ただし、労働組合は労働組合法により、労使関係や労働条件について会社と交渉すること(団体交渉)が認められているので違法になりません。言うなれば、

  • 弁護士、労働組合は、会社と直接交渉できる社員の代理
  • 民間事業者は、社員の要望を会社に伝えるだけのメッセンジャー

というイメージです。

なお、弁護士と労働組合については、退職に関する交渉がこじれて訴訟などに発展した際、弁護士は引き続き社員の代理として会社と争ったり、和解の交渉をしたりできるのに対し、労働組合にはその権限がないという違いがあります。

Q3 退職代行者から連絡が来たら、まず何をする?

社員が退職代行を使う場合、まずは退職代行者から会社に対し、「電話」「メール」「内容証明郵便」などで、社員に退職の意思があることや退職理由などについて連絡が来ます。

連絡が来たら、まずは退職代行者に対し、

  • 退職代行者が「弁護士」「労働組合」「民間事業者」のどれに当てはまるのか
  • 社員本人からの依頼であることを証明できるもの(委任状、本人直筆の退職届など)があるか

を確認しましょう。1.を確認するのは、退職代行者が退職について直接交渉できる相手なのかを判断するためです。2.を確認するのは、社員本人以外(社員の家族など)からの依頼だった場合、後々退職について本人とトラブルになる恐れがあるからです。

なお、民法上、

退職代行であっても、社員本人の意思による申し出であれば、退職は成立する

ので、社員本人からの依頼にもかかわらず、「退職代行を使っての退職は認めない」などと、退職代行者を拒絶することはできません。仮に拒絶したとしても、

  • 正社員等(無期雇用)の場合、退職の申し出から2週間が経過すれば退職できる
  • パート等(有期雇用)の場合、契約期間が満了すればいつでも退職できる(期間満了前の退職が認められる場合もある)

というルールがあるので、退職の成立自体を妨げることはできません。

Q4 退職に関する社員の要望には、どう答えればいいの?

退職代行者からの連絡が来る際は、社員に退職の意思があることや退職理由の他に、

退職に関する社員の要望(退職日、年次有給休暇の取得、未払い残業代の支払いなど)

も併せて伝えられます。

基本的に会社の選択肢は、

  • 社員の要望に異論がなければ、それに従う
  • 社員の要望に異論があれば、交渉して条件を決める

のいずれかになります。なお、2.については、退職代行者によって次のように対応が変わります。

  • 弁護士、労働組合:会社が退職代行者と直接交渉して条件を決める
  • 民間事業者:会社の要望を退職代行者から社員に伝えてもらい、社員からの回答を待つ

社員の要望に答える際は、口頭だと「言った、言わない」のトラブルになる恐れがあるので、

社員の要望に対する会社の回答を「回答書」などにまとめ、退職代行者に渡す

ようにしましょう。社内で検討すべき内容がある場合は、その内容についてだけ後日回答する旨を伝えます。

Q5 社員本人の口から退職理由を聞くのはNG?

退職代行者から連絡があった場合、経営者が特に気になるのは「なぜ、社員が退職することになったのか」でしょう。ただ、退職理由については、例えば

内容証明郵便で届いた書面に「一身上の都合により退職します」とだけ書かれているなど、表面的な理由しか分からないケース

が少なくありません。経営者としては、ちゃんとした退職理由を知りたいところですが、

退職代行者は、社員本人から伝えてよいと言われていること以外は基本的に話せない

ので、詳細を聞くのは難しいと考えられます。

「ならば、社員本人と直接話したい」という経営者もいるでしょうが、この点についても、

そもそも社員は会社とコミュニケーションを取りたくなくて退職代行を使っている

という事情があるので、基本的には避けるべきです。どうしても気になるのであれば、

退職代行者に「退職理由をもう少し詳しく知りたいと、社員に伝えてほしい」と依頼

するとよいでしょう。強要はできませんが、社員が同意した場合であれば、退職代行者もその範囲内で話をすることができます。

Q6 仕事の引き継ぎをしてほしいが、頼めるの?

多くの会社は、社員が退職する際に業務が滞らないよう、就業規則に

退職する社員は、会社の指示する期間内に速やかに後任者に業務の引き継ぎを行わなければならない

などの規定を設けています。退職代行の場合も、退職するまでは就業規則が適用されるので、

就業規則の内容を退職代行者に伝え、社員に引き継ぎをするよう働き掛けてもらうことは可能

です。ただ、問題は、会社とコミュニケーションを取りたくない社員が、

退職日までの間、年次有給休暇を使って休むなどして、引き継ぎを拒否するケース

があることです。年次有給休暇は、労働基準法で認められた社員の権利であり、会社も原則として取得を拒否できないので、こうしたケースでは引き継ぎが難航します。

難しいところですが、対応としては、

会社側で社員の担当業務に関する質問内容を取りまとめ、退職代行者経由で社員に渡し、回答してもらう

といった方法が考えられます。社内の人間と対面しない形での引き継ぎであれば、社員もある程度は応じてくれるかもしれません。

Q7 急な退職は正直迷惑……損害賠償は請求できるの?

通常の退職であれば、会社は社員と、退職日や引き継ぎなどについて綿密に話し合いながら、退職手続きを進めることができます。一方、退職代行の場合、退職代行者を挟んでの話し合いになる上に、会社もあまり社員を刺激したくないため、退職日や引き継ぎなどについては、通常の退職よりも会社が社員に譲歩せざるを得ない面があります。

経営者としては、「急な退職な上に、引き継ぎも不十分で迷惑が掛かった。少しは社員に補填してほしい」と考えるかもしれません。この点、民法上、

退職時に会社が具体的な損害を受けた場合であれば、社員に損害賠償を請求できる可能性

はあります。ただし、引き継ぎ不十分などを理由に請求が認められる可能性は低く、例えば、

社員が担当していた業務について、代替要員を急遽採用する必要に迫られたため、採用に掛かった費用の実額○○円を請求する

など、具体的な損害内容を会社側が立証する必要があります。

なお、損害賠償を請求せずに、退職時に発生した損害を賃金や退職金から差し引くことは、社員本人の自由な意思に基づく同意がなければ認められないので、注意が必要です。

以上(2026年7月更新)

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画像:umaruchan4678-Adobe Stock

このタイミングで年休取るかね…… 取得日の変更はどこまで可能?

1 年休は社員の権利だけど、繁忙期はちょっと……

労働基準法で定められている「年休(年次有給休暇)」は本来、

社員が希望する時季に、自由に取得することができる

とされています。いわゆる「年5日の年休取得」が法律で義務付けられているのもあり、どの経営者も年休の取得自体に異議を唱えることはないでしょう。ただ、繁忙期の年休取得という話になってくると、人手不足に悩まされているのもあって、内心「それはちょっと勘弁してよ……」と思っている人が少なくないかもしれません。

労働基準法上は、「時季変更権」といって、一定の場合に、会社が社員の年休の取得時季を変更できるルールがあるのですが、

時季変更権が認められる範囲は限定的で、不用意に行使すると労働基準法違反になりかねない(罰則は6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)

という点に注意が必要です。以降で時季変更権の正しいルールを押さえていきましょう。

2 繁忙期というだけでは「時季変更権」は使えない?

まず、時季変更権とは、

社員が申請した時季に年休を与えると、「事業の正常な運営に支障が出る具体的な事情」がある場合に限り、会社が年休の取得時季を変更することができるというルール

のことです。あくまで変更を認めるだけで、年休の取得自体を拒否することはできません。

ただ、この「事業の正常な運営に支障が出る具体的な事情」というのがくせもので、単に会社が繁忙期というだけでは認められません。次のように、時季変更権が認められるケースと、そうでないケースがあります。

次に、各裁判例などをもとにした判断基準を、ざっくりまとめた図表を紹介します。

各裁判例などをもとにした判断基準

また、時季変更権を行使する場合は、年休の申請があった時点で速やかに行い、その理由を具体的に、かつ明確に伝える必要があります。漠然とした理由や、休暇直前の通知は違法と判断されるリスクが高いです。

トラブルを避けるため、書面での通知なども検討しましょう。そして、可能な限り、社員の希望に沿った代替日を複数提示するなど、誠実な対応を心掛けることが望ましいでしょう。

3 時季変更権が「認められる」ケース

1)代替人員の確保が困難な場合

申請された時季に代替要員を確保するための合理的な努力を尽くしても、それが不可能である場合が該当します。

2)同時期の取得希望者が重なる場合

特定の時期に複数の社員から年休の申請が集中し、全員に取得を認めると業務が回らなくなる場合です。例えば、夏季繁忙期に年休取得者が重なり、予備人員で対応できなかったために、時季変更権を行使したことが適法と認められた裁判例があります(前橋地裁高崎支部平成11年3月11日判決)。

3)業務の遂行上、本人の参加が不可欠な場合

特定の社員でなければ遂行できない業務や、重要な研修・会議など、本人の出勤が必須である場合がこれに当たります。例えば、職場全体の業務改善のための研修期間中に年休を請求したことについて、研修目的の達成が困難になるとして、時季変更権の行使が適法と認められた裁判例があります(最高裁平成12年3月31日判決)。

4)年休が長期間にわたる場合

1カ月など連続した長期の年休申請で、代替人員確保が困難な場合も、時季変更権の行使が認められる可能性があります。

5)年休取得の申請が休暇の直前だった場合

就業規則で定められた申請期限を著しく過ぎて直前に申請された場合も、時季変更権の行使が認められる可能性があります。

4 時季変更権の行使が「認められない」ケース

1)「繁忙期のため」など漠然とした理由

単に「繁忙期だから」「仕事が多くなりそうだから」といった抽象的な理由では認められません。具体的な事業運営への支障が出ることを説明する必要があります。例えば、抽象的に繁忙期であるといっても、年休を認めることによる具体的な支障が明らかでない場合、時季変更権は認められないと判断した裁判例があります(名古屋地裁平成5年7月7日判決)。

2)慢性的な人手不足

常に人手不足である状態は、会社が人員配置を見直すなどして解消すべき問題であり、時季変更権行使の正当な理由とは認められません。例えば、人員不足が9カ月以上に及び常態化したまま行使された時季変更権は認められないと判断した裁判例があります(西日本ジェイアールバス事件(名古屋高裁金沢支部平成10年3月16日判決))。

3)退職直前の年休申請

社員は退職日以降に年休を取得できないため、退職直前の年休申請に対して時季変更権を行使することは、事実上年休の取得を妨害する行為とみなされ、原則として認められません。

4)年休の取得理由に基づく時季変更権の行使

年休の利用目的は労働基準法の関知するところではないため、利用目的を理由に時季変更権を行使することは許されません。例えば、社員がデモ参加のために年休を申請し、会社がデモ参加を理由に時季変更権を行使したことが違法とされた裁判例があります(最高裁昭和62年7月10日判決)。

5)代替要員の確保努力を怠った場合

合理的な努力をすれば代替要員を確保できたにもかかわらず、その努力を怠った場合も、時季変更権の行使は認められません。

6)計画的付与制度で指定された日

労使協定で定められた計画的付与日に対しては、時季変更権を行使できません。

5 結局は計画が大事! 計画的付与でトラブルなく年休消化を

繁忙期における年休の課題を解決し、時季変更権の行使に頼る頻度を減らすためには、事前の「計画」が非常に重要になります。そこで導入を検討したいのが、

計画的付与(労使協定で定められた日に年休を与えられる制度)

です。会社全体で一斉に付与することも、チームや個人単位での交代制にすることもできます。導入するには「労使協定」(事業場の過半数労働組合、それがない場合は労働者の過半数代表との書面による協定)の締結が必要になります。

計画的付与の対象は、付与日数のうち5日以上の部分です。例えば、年休の付与日数が10日の社員の場合は5日まで、20日の社員の場合は15日までです。これにより、特定の時期に年休申請が集中するのを防ぐことで、繁忙期の業務運営への影響を軽減できます。

計画的付与には主に3つの方式があります。

1)一斉付与方式

会社全体または事業場全体で休業日を設け、一斉に年休を付与する方式です。夏季休暇や年末年始と組み合わせることで、大型連休にすることも可能です。

2)班・グループ別の交代制付与方式

流通・サービス業など一斉休業が難しい業態で、班やグループ別に交代で付与する方式です。

3)個人別付与方式

社員個人ごとに計画表を作成し、誕生日などをメモリアル休暇として推奨するなど、個人の希望も踏まえて計画する方式です。

時季変更権の行使が「事後的な対応」であるのに対し、計画的付与は「事前のリスク分散」であるという点が、根本的に異なります。特に中小企業では、人員の柔軟性が低い傾向にあるため、計画的付与は、時季変更権の行使に頼る頻度を減らすための有効な手段となります。

以上(2026年7月更新)

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