採用活動で応募者のSNS調査を行うことは是か非か?

1 SNS調査をこっそりと行うのはNG

社員がSNSに投稿した不適切な内容で「炎上」や「情報漏洩」が起きてしまったら、会社にもダメージが及ぶかもしれません。採用内定を会社都合で取り消したり、社員を解雇したりするのは容易ではないため、リスクをなるべく減らす目的で行われるのが

SNS調査やリファレンスチェック(以下「SNS調査など」)

です。

●SNS調査

履歴書や面接の情報を基に、応募者のSNSの実名アカウントを調べて、投稿内容を確認すること。そこから出身地や誕生日などが一致する匿名アカウントを探し、プロフィール情報やフォローしている友人などから応募者本人かどうかを判別し、投稿内容を確認することを「裏アカ調査」という

●リファレンスチェック

履歴書や面接の情報を基に、応募者の前職の勤務状況や人物像について関係者に問い合わせること(中途採用の場合)

SNS調査などをすれば、履歴書や面接からは分からない応募者の「素の人柄」を知ることができるかもしれません。とはいえ、SNSは私生活の投稿です。勝手に調べていいものか、という疑問は当然あるでしょう。

実際のところは、

SNS調査などは非常にグレーであり、こっそりと行うのはまずNG

です。この記事では、その理由を紹介します。

2 SNS調査などがグレーな理由

1)「SNS調査などに利用します」と通知する?

履歴書や面接を通じて得られる応募者の情報は「個人情報」です。個人情報を取得する際は、利用目的を特定した上で、その目的を通知または公表しなければなりません。本人から直接書面で取得する場合は、あらかじめ利用目的を明示します。

つまり、応募者の個人情報をSNS調査などに使うのであれば、その旨を通知または公表する必要があります。ただ、そのことを正直に伝えると応募者の反感を買いかねないため、あまり現実的とはいえません。

2)実名アカウントの閲覧まではOK。でもそれ以上はNG

厚生労働省職業安定局「募集・求人業務取扱要領(令和6年10月)」では、会社や採用募集代行業者が応募者の個人情報を収集する場合、次のような適法かつ公正な手段を取らなければならないとされています。

  • 本人から直接収集する
  • 本人の同意の下で本人以外の者から収集する
  • 本人により公開されている個人情報を収集する など

応募者が実名アカウントで、公開範囲を限定せずに投稿している内容を確認すること自体は問題ありません。ただし、それ以上進めて「裏アカ調査」やリファレンスチェックを行う場合は、応募者の同意が必要です。

3)採用活動で利用するなら、利用目的の通知または公表が必要

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」では、

個人情報を含む情報がインターネット等に公開されている場合、単にこれを閲覧するだけで、転記等を行わないのであれば、個人情報を取得しているとはいえない

とされています。

公開アカウントの投稿を確認するだけなら、個人情報の取得には当たりません。ただし、「閲覧(見るだけ)」と「取得」の境界線には注意が必要です。閲覧した内容を評価シートに書き込んだり、データとして保存したりした時点で、個人情報の「取得」に該当します。採用の判断材料にする場合は、利用目的を特定した上で、その目的を通知または公表することが必要です。

「閲覧(見るだけ)」と「取得」の境界線

例えば、ディー・エヌ・エーグループの採用活動におけるプライバシーポリシーでは、利用目的の1つとして、

当社グループの採用選考に際し、候補者の適格性を評価するため(これには、バックグラウンドチェック、リファレンスチェック、その他の確認手続を含みます)

と記されています。「バックグラウンドチェック」と表記するなどの工夫もされています。

4)収集してはならない情報がある?

職業安定法では、事業主が求職者から情報を取得する場合につき、取得目的を制限しています。また、職業安定法に基づく指針(平成11年労働省告示第141号)では、以下の情報を原則として収集してはならない情報として定めています。

  • 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となる恐れのある事項(家族の職業、収入、本人の資産などの情報、容姿、スリーサイズなど)
  • 思想および信条(人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書など)
  • 労働組合への加入状況

例外的に、収集目的を示した上で本人から収集できるケースもありますが、特別な職業上の必要性がある場合などに限られます。不用意に収集すると職業安定法に基づく改善命令や是正措置の勧告が発出されることがあり、改善命令に違反すると、罰則(6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)の対象になるほか、改善命令や是正措置の勧告に従わなかった場合には会社名が公表され、さらにその公表により、ハローワークでの求人が不受理となったりするリスクもあります。

なお、これらの情報は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」と一部重複しますが、

要配慮個人情報は本人の同意があれば収集できるのに対し、職業安定法に基づく指針の「収集してはならない情報」は、文字通り、原則として収集不可

となっている点に注意が必要です。

SNSには個人の考えなどを投稿することもあり、そこに「収集してはならない情報」が含まれる可能性は十分にあります。

5)調査代行業者への依頼やリファレンスチェックは個人情報の「第三者提供」

SNS調査などを代行する専門業者(以下「調査代行業者」)もいますが、調査代行業者への依頼は個人情報の「第三者提供」に当たります。調査代行業者が独自に調査した結果と、応募者の個人情報の突合は、企業の「委託」では不可能だからです。同様に、調査代行業者が調査結果を依頼元の企業に渡すことも第三者提供に当たります。

個人情報を第三者提供する場合は、あらかじめ本人の同意を得る必要があるほか、第三者提供に係る記録の開示請求手続への対応も必要です。

リファレンスチェックも同様です。履歴書や面接で得た個人情報を前職の企業に渡すことになるため、第三者提供に当たります。

6)内定後のSNS調査には特に注意が必要

内定を出した後に裏アカ調査をして不適切な投稿が見つかったとしても、それを理由に内定を取り消すことは容易ではありません。内定が成立した時点で、企業と応募者の間にはすでに労働契約が成立したと解するのが一般的だからです(始期付解約権留保付労働契約)。つまり、内定取消しは法律上「解雇」と同等に扱われます。採用内定時に知っていたら採用することがなかったであろう客観的に合理的で社会通念上相当と認められるような重大な事由でなければ、採用内定取り消しは無効となり、内定者から損害賠償請求や地位確認の訴訟を起こされるリスクがあります。

SNS調査を行うのであれば、内定を出す前のタイミングで実施するのが鉄則です。

3 SNS調査などがはらむリスク

利用目的を明らかにして本人の同意を得られれば、収集禁止情報に触れない範囲において、SNS調査などを実施すること自体は可能です。ただ、懸念は残ります。例えば、「バックグラウンドチェックをします」と説明されても、応募者は「裏アカ調査」をされると認識できないでしょう。また、志望先の企業からSNS調査などの同意を求められたとき、それを断るのは現実的に難しいかもしれません。

この他、同姓同名の別人の情報との取り違えや、悪意の第三者によるなりすましが起こらないかといったことも気になるところです。

日本労働組合総連合会「就職差別に関する調査2026」によると、採用試験を3年以内に受けた15~29歳の男女計1000人のうち、

  • 「採用選考過程において、企業からSNSアカウントを調査する旨の通知を受けたことがある」という回答が20.8%
  • 「採用選考過程において、企業からSNSアカウントを調査されたことがある」という回答が21.8%

となっています。

さらに、SNS調査などは「身元調査」にもなり得ます。調査の結果、目にしてしまった情報をもとに無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が生じ、新たな就職差別につながる恐れもある点に注意が必要です。

以上(2026年8月更新)
(監修 弁護士 田島直明)

pj60325
画像:ChatGPT

オーナーからオフィス賃料の値上げ要求……交渉の余地はある?

1 「適正な賃料水準」を維持して自社の利益を守る

2026年6月現在、賃貸オフィス市況は「貸主(オーナー)優位」の局面になっています。例えば、東京では、人材獲得を急ぐ企業による優良ビルへの移転需要や、物価上昇などを背景に、31年ぶりの高値を記録。オーナー側から賃料の値上げ(増額)を打診される借主(テナント)も増えているといいます。

この記事では、こうしたインフレ局面において、オーナー側からの値上げ要求にただ従うのではなく、借地借家法に基づき「適正な賃料水準」を維持して自社の利益を守るための法的根拠と交渉のステップを見ていきます。

2 オフィス賃料の値上げ要求……何を根拠に交渉する?

オーナー側から「物価高」や「周辺相場の上昇」を理由に値上げを求められた際、借主(テナント)側にはどのような権利があり、どのような法的根拠に基づいて対抗できるのでしょうか。

1)まずは賃貸借契約書を確認する

オフィス賃料の値上げの打診があった場合、まずは賃貸借契約書の規定を最優先で確認しましょう。一般的な契約書には「経済事情の変動等により賃料が不相当となった場合、協議の上、改定することができる」といった賃料改定条項が設けられています。

ここで重要なのは、多くの契約書において値上げは「双方の協議(合意)」が前提となっている点です。オーナー側が一方的に通告しただけで自動的に賃料が上がるわけではありません。

なお、契約書に「更新時に賃料を〇%値上げする」といった自動値上げ特約が記載されている場合もあります。しかし、こうした特約があっても、実際の経済実態とかけ離れて不相当に高い金額になっている場合は、次に紹介する「借地借家法第32条第1項」の規定により、特約が無効とされるか、あるいは増額請求が制限される可能性があります。

2)借地借家法第32条第1項に基づいて対抗する

借地借家法第32条第1項(賃料増減額請求権)では、

  • 租税その他の負担の増減(固定資産税の上昇など)
  • 土地建物の価格の増減その他の経済事情の変動(物価や所得水準の変動)
  • 近傍同種の建物の賃料相場との比較

により、賃料が「近傍同種の建物の賃料と比較して不相当となったとき」に、「当事者(オーナー側とテナント側の両方)」は将来に向かって賃料を増やしたり減らしたりするよう求めることができると定めています。

オーナー側はこの規定を根拠に「増額」を求めてくるわけですが、同時にテナント側もこの規定を根拠に「現在の賃料は周辺相場と比較して妥当だから、増額は不相当だ」と主張することができます。

また、オーナー側から「値上げに応じないなら退去してくれ」と迫られても、普通借家契約であれば、賃料の不合意だけを理由に強制的に退去させることは基本的に認められません。協議がととのわない間は、テナント側は「自身が相当と認める金額(従前の賃料)」を支払っていれば、債務不履行(家賃滞納)にはなりません。

3 値上げ要求に対抗するためのポイントは?

実際にオーナー側からオフィス賃料の値上げを打診された際、良好な関係を維持しながら適正水準に抑えるためには事前の準備をしておきたいところです。

1)周辺の「継続賃料相場」を理解しておく

オーナー側は交渉の際、「周辺の新規募集賃料がこれだけ上がっている」というデータ(新規賃料)を出してくることが大半です。しかし、オフィス市場において「新規募集の相場」と「既存テナントの継続相場」は異なります。

  • 新規賃料: 空室に新しいテナントを入れる際の大幅に上昇した最新の相場
  • 継続賃料: すでに借りているテナントが更新する際の相場(急激な変動が抑えられる傾向がある)

テナント側は、現在のオフィス賃料が、周辺の「継続賃料の相場」と比べて妥当(適正)なのか、専門の不動産鑑定士のデータや仲介会社の情報を集めて客観的に見極めてみましょう。相場相応であれば、「現在の賃料は据え置きが妥当」と論理的に反論できます。

2)管理費・共益費の値上げ要請には「内訳」を求める

近年は、電気代の高騰やビルメンテナンスの人件費上昇を理由に、「管理費・共益費」の値上げを求められるケースも増えています。

この場合は、ただ拒絶するのではなく、オーナー側に対し「値上げをする合理的な根拠(エネルギー費や人件費の実際の上昇幅を示す資料)」の提示を求めましょう。オーナー側が出してきたコスト上昇の実績値と、値上げ要求額のバランスが崩れている場合は、上昇分に見合う適正な幅(例えば要求額の半額など)に落とし込む余地が生まれるかもしれません。

3)オーナー側に「空室リスク」と「入れ替えコスト」があることも意識する

貸し手優位とはいえ、オーナー側にとっても「既存テナントが退去し、次のテナントが決まるまでの空室期間」や「フリーレント(賃料無料期間)の提供」といった空室リスク、「原状回復費用」や「リーシング費用(テナント誘致にかかる仲介手数料や広告費など)」といった入れ替えコストは大きな負担です。

テナント側は、「現在の賃料で長く、安定して入居し続けること」自体がオーナー側にとって大きなメリットであることを意識し、変に萎縮せずに交渉に臨みましょう。

4 これからのインフレ時代を見据えた契約対策

オフィス賃料交渉は、オーナー側とテナント側の利益がぶつかり合うものです。現在の市場環境において、テナント側がかたくなに値上げを拒み続けると、長年築いてきたオーナー側との信頼関係を壊しかねません。自社のコスト削減だけでなく、オーナー側の運営事情(物価高によるコスト増)にも一定の理解を示し、「お互いにとって妥当な着地点(適正な増額幅)」を模索するバランス感覚を持っておきたいところです。

今後新たに契約を結ぶ、あるいは再締結する場合には、将来的なインフレの進行を見据え、以下のような先手を打った契約条項の改定を検討しておくことが大切です。

  • 賃料改定の頻度制限: 「賃料の改定協議は3年に1回を上限とする」など、頻繁な値上げ打診を防ぐ
  • スライド幅の上限設定: 「物価変動に伴う賃料改定であっても、前回の賃料の〇%を上限とする」といったインフレキャップ(上限)を設ける

オフィス賃料は企業にとって最大の固定費の一つです。市場の波に飲まれることなく、法的な仕組みと正しいデータを用いて、持続可能なオフィス戦略を構築していきましょう。

以上(2026年6月作成)

pj60387
画像:ChatGPT

【熱中症対策】熱中症予防で使えるグッズを一挙紹介!

1 熱中症対策は「予防」が肝心!

最近はテレワークをする企業が減少し、出社機会が増えています。直接コミュニケーションを取ることができる環境は喜ばしいものの、真夏のオフィスでは個人に合わせて細かな室温調整をすることが難しいことから、熱中症のリスクが高まるのも事実です。また、今年も猛暑になる可能性が高く、営業や屋外での作業などに従事する従業員は、常に熱中症のリスクと隣り合わせの状況にあります。

この記事では、職場で使用できる熱中症対策グッズについて、最新の動向を交えて紹介します。具体的な分類は次の通りです。

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熱中症対策グッズは、水分や塩分を補給するもの、冷感を与えるものなどさまざまです。企業で支給したり、あるいは購入費用を補助したりして、熱中症になりにくい環境整備を進めることが大切です。

2 水分や塩分を補給するグッズ

熱中症対策の基本は、こまめな水分補給です。ただし、大量に汗をかいたときは体内の塩分やミネラルも失われるため、水分と併せて塩分の補給も必要です。そこで、次のようなグッズを用意しておくとよいでしょう。

1)目盛り付きのタンブラー・ウォーターボトル

一般的に、夏場の水分の摂取目安は1.2リットル/1日程度とされていますが、仕事中に自分で摂った水分を細かく把握しているケースは多くありません。

最近は自分がどれくらい水分を摂っているのか一目でわかる、目盛り付きのタンブラーやウォーターボトルなどが販売されています。容量は1リットル以上のものが多いので、

デスクの上に置くようにすれば、あまり水分を摂っていなさそうな従業員に水分補給を促すこともできる

でしょう。

2)塩分を含む食品

汗をかく状況で水分を補給する際には、一緒に塩分も補給するように呼びかけましょう。水分だけを摂取すると体内のミネラルのバランスが崩れるため、熱中症になる恐れがあります。

例えば、塩分は、塩あめ、塩分タブレット、梅干しなどで補給できます。また、スポーツドリンクは水分と塩分を同時に補給できる点で有効です。しかし、糖分が多量に含まれているケースもあるので、飲み過ぎには注意が必要です。最近は糖分が控えめなものも販売されています。

なお、スポーツドリンクは熱中症予防には効果がありますが、実際に脱水症状(初期)が出た場合には、水分や塩分を効率よく体内に吸収させる「経口補水液」を摂取することが推奨されています。

この他、厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」では、休憩場所にアイススラリー(流動性の氷状飲料)を用意することも推奨されています。暑さの厳しい環境で長時間作業に従事する従業員がいる場合は、導入を検討してみましょう。

3 風を送るグッズ

風通しが悪い場所では汗が蒸発しにくく、体温の調節につながらない発汗が増えて脱水状態に陥りやすくなります。そこで、空調設備の整っていない場所で従業員が作業するときには、次のようなグッズを用意しておくとよいでしょう。

1)空調服

腰や脇に小型のファンが付いた服です。長袖のジャケットから袖のないベストまで、さまざまな製品があります。専用のウエア、ファン、バッテリーをそろえる必要がありますが、空調服を着ることで、エアコンの使えない場所でも涼しく過ごせます。

空調服の中に着るインナーは、できるだけ吸汗性、透湿性、速乾性の高いものを選ぶことを心がけましょう。綿などの汗が乾きにくい素材のインナーを着ていると、体が冷えすぎてしまい、逆に体調が悪くなる場合もあるので注意しましょう。

2)扇風機

首に掛けたり、手に持ち歩いたりして使える小型の扇風機は、通勤中やオフィスでの細かな体感温度の調整方法として主流になってきました。最近では、ファンの中心部や持ち手に冷却プレートを配置し、冷たい風を送ったり、肌を直接冷やしたりできる製品もあります。

ただし、

気温が高く乾燥した環境で扇風機を使うと、汗が体から熱を奪う前に乾いてしまい、体温が上がり続ける恐れがある

ことには注意しましょう。そのため、扇風機を使用する際は、水を霧状に噴射するスプレー、濡れたタオルなどを併せて用意するようにしましょう。

4 冷感を与えるグッズ

首元、わきの下、足の付け根など、太い血管が体の表面近くを通るところを冷やすと、効率良く体温を下げることができ、熱中症の予防につながります。そこで、次のようなグッズを用意しておくとよいでしょう。

1)ネッククーラー

首元を冷やし、体温の上昇を抑えるネッククーラーは熱中症対策にも役立ちます。中に保冷剤や冷却ジェルを入れて使うスカーフのようなタイプや、USB端子につないで動く電動のタイプなどさまざまなものがあるので、テレワークや通勤などのシーンに合わせて使いやすいものを選ぶとよいでしょう。

2)ミスト冷房

水を細かい霧状にして噴出する装置です。周辺を水で濡らすことなく身体を冷やすことができます。屋外や工場で使用する大型のものに限らず、USB端子につないでデスク周りで使える小型の製品もあります。

3)アイスパック(氷のう)

アイスパック(氷のう)は、休憩時などに額や首筋に当てて体のクールダウンを図ることができる他、熱中症の症状が出た従業員への緊急対処としても使用できます。最近は魔法瓶構造になっているアイスパックも発売されています。従来のものより長時間、冷たさを維持できるので、職場に多めに常備しておくと、いざというときに安心です。

4)手のひらの冷却用グッズ(冷却グローブ・手のひら用保冷剤)

手のひらのAVA血管(体温調節に関わる血管)を効率的に冷やすグローブ型デバイスや、手のひら用の保冷剤もあります。手のひらを冷やすと深部体温の上昇を抑制できるので、新たな熱中症対策として有効です。

5 危険時に警告して知らせるグッズ

熱中症の初期症状は目まいやふらつきなど、「単に疲れているだけ」と誤解しやすいものが多く、対処が遅れてしまうことがあります。管理者がこまめに従業員の体調をチェックすることが一番ですが、見た目に表れなかったり、業務が忙しかったりするときには、従業員の体調不良に気が付けないケースもあるでしょう。

そこで、熱中症の危険が高まったことを、客観的に把握できる状況をつくり出すことが大切です。次のようなグッズを用意しておくと、熱中症が重症化する前に対処できます。

1)ウエアラブル端末

ウエアラブル端末は、リストバンドや腕時計などの機器を体に取り付けて脈拍を測り、熱中症の危険がある場合にアラームやバイブレーションなどで通知することが可能です。利用者本人だけでなく、管理者側(社内の健康管理の担当者など)で異常を検知できる製品もあるため、異常を確認した管理者が利$2F64者と連絡を取れば、重症化する前に健康への影響を防ぐことができます。

2)温湿度計・センサー

カバンなどに取り付けたり、屋内に据え置いたりして使用します。屋外で使用する場合、熱中症の危険性はWBGT値(暑さ指数。気温と湿度に加えて、日射や地面からの照り返しによる熱を含めた数値)で測ることができますので、リスクの高い環境を早めに察知し、対策を打つことができます。

3)スマートフォンアプリ

その日の気温、湿度、気象条件などを基に熱中症の危険を通知します。アプリによっては時間単位や地域を指定して熱中症の危険を確認でき、また無料で提供されているものもあります。

始業前や休憩ごとなどにチェックし、その日のリスクに合わせた熱中症対策を講じるとよいでしょう。

以上(2026年6月更新)

pj40055
画像:日本情報マート

「暑い派」VS「寒い派」エアコンバトル! 平和的解決のカギは?

1 「暑い派」VS「寒い派」バトルが夏と共にやってくる!

暑くなってきたこの時期に従業員がオフィスに集まると、 “あの”問題が勃発します。それは、

エアコン温度の「暑い」vs「寒い」バトル

です。こっそりエアコンの設定温度を下げた暑がりの従業員を、寒がりの従業員が背後からじっと見ていたり、寒がりの従業員に気をつかって暑がりの従業員が汗だくになりながらやせ我慢をしていたり……皆さんも、一度は経験があるのではないでしょうか。

今年も去年に引き続き猛暑となる予想ですが、オフィスでは一人ひとりの好みに合わせた室温の調整が難しいので、企業としては、エアコンが本格稼働する前に、何とかこのバトルの対策を講じておきたいところです。また、

快適に働くための環境づくりは、業務の生産性向上という面でもとても大切

でしょう。

そこでこの記事では、オフィスにおける適温や、「暑い派」「寒い派」それぞれへのケア方法など、猛暑の中でも従業員が快適に働けるようにするポイントを紹介していきます。

ちょっとした工夫や心掛けで業務中の快適さは一気に変わりますので、今一度オフィス環境について振り返ってみましょう。

2 「快適さ」はさまざまな要素で出来ている

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1)快適さでオフィスの生産性も変わる!

空気調和・衛生工学会(暖冷房・換気や給水・排水など、生活に密着した設備を専門に研究する学会)の研究によると、室温の変化がオフィスでの生産性も影響することが明らかになっています。同学会の研究者らが発表した論文によると、

空気温度が26.5度を超えると生産性が大きく低下する

そうです。こうしてみると、オフィスでの快適な環境を用意することは、従業員の生産性向上、ひいては企業の業績アップにもつながるといえるでしょう。

2)バトルの原因の名は「PMV」

まずは、快適なオフィス環境を整えるために知っておくと良い知識、

「PMV(Predicted Mean Vote)、予測平均温冷感申告」

についてご紹介します。PMVとは「快適さを表す国際規格」で、

  • 室温
  • 湿度
  • 着衣量
  • 放射(日当たりや熱からの距離)
  • 気流(直接エアコンの風が当たるかどうか)
  • 活動量(体を動かしているか)

によって、その数値が左右されます。

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「PMV」では、暑さ・寒さの度合いを「-3~+3」の値で示します。そして国際的な基準(ISO:国際標準化気候)では、約9割の人にとって「快適」な数値は、上図のように「-0.5~+0.5」と、かなり狭い範囲。オフィスで仕事をする大多数が快適と感じるには、PMVをこの狭い範囲に収める必要があります。

つまり、同じオフィスで働いていても、人によって感じる暑さ・寒さは異なるということです。これが「暑い派」vs「寒い派」のバトルの原因で、

快適なオフィス環境を整えるためには、エアコンの温度設定だけでなく、「PMV」を構成する指標のさまざまな要素を捉えて対策する必要がある

といえるでしょう。

3)バトル鎮火のためのロードマップ

次に、この「PMV」を快適温度範囲に近い数値で平均化するために、経営者が従業員のためにできることを紹介します。

ポイントは、次の3段階でオフィス環境を調整することです。

  • 【対・全体】まずは部屋全体で「室温」「湿度」の最低限の環境を整える
  • 【対・陣営ごと】次に「暑い派」「寒い派」それぞれの陣営の従業員について、体感温度に合わせて席の移動を許可することで、「気流」「放射」を調整する
  • 【対・個人】最後に個人の「着衣量」に柔軟に対応することで、「活動量」や個人の代謝の差に対して微調整をかける

次章以降で、1,から3.の各要素をコントロールする方法を解説していきます。

3 【対・全体】「室温」「湿度」をコントロール

一番に整えておかなければいけないのが、対・全体の環境。すなわち、エアコンや除湿機で直接コントロールできる「室温」「湿度」です。

オフィスの衛生管理を定めた法令「事務所衛生基準規則」では、室内にエアコンなどの空調設備がある場合「室の気温が18度以上28度以下、相対湿度が40%以上70%以下になるよう努めなければならない」と定められています。

ただし、これはエアコンの設定温度の話ではなく、オフィスの「室温」や「湿度」の基準

です。

たとえエアコンの設定温度が28度でも、人が多いと体温で室温が上がるため、実際の体感温度は従業員の人数などによっても大きく左右されます。そのため、設定温度だけに頼らず、実際の室温・湿度を計測したうえで対策することが大切です。温度計や湿度計の用意を検討してみるのもよいでしょう。

また、近年記録的な猛暑が確認されていますので、「室温28度、湿度70%以下を基準にしているから大丈夫」と安易に判断するのではなく、気象情報などを見ながら柔軟な対応を心がけましょう。

4 【対・陣営ごと】フリーアドレスで「気流」「放射」を操る

オフィス全体の温度・湿度を整えるだけでは、「暑い派」VS「寒い派」の根本的な解決には至りません。そこで、

この夏は、フリーアドレスで放射・気流を調整

してみましょう。フリーアドレスとは、「席を固定せず、空いている席を自由に使う働き方」のことです。

例えば、窓際は放射熱で他の席よりも暖かくなるため、寒がりの従業員に向いています。

「寒い派」陣営が窓の近くのデスクに、「暑い派」陣営が日陰のデスクに移動することで、2つの陣営に「放射」の差をもたらす

ことができます。なお、紫外線の問題もあるので、基本的には夏場のブラインドは下げておくのがベターです。

また、

「暑い派」陣営はエアコンの風が当たる場所に、「寒い派」陣営はエアコンの風が当たらない場所に移動することで、「気流」も調節可能

です。改めて天井を見上げ、エアコンの位置や風がよく当たる席を確認してみるのもよいでしょう。

業務上の都合でフリーアドレスを取り入れることができない場合、次のような方法で気流を調整できます。

  • エアコンにアクリル板を取り付け、「寒い派」の従業員に直接風が当たらないようにする
  • サーキュレーターを設置し、エアコンの冷たい空気を分散させる

5 【対・個人】「着衣量」を柔軟に! 個人差を調節

夏場のエアコン問題は、「暑い派」VS「寒い派」の小競り合いだけでは済まないことがあります。「暑い派」「寒い派」陣営のみに着目し、個々へのケアを怠ると、

  • 暑い派陣営の中でも一番の暑がりは「熱中症」
  • 寒い派陣営の中でも一番の寒がりは「冷房病(クーラー病、体が急激な温度差についていけず、自律神経に異常をきたす症状)」

などになってしまう恐れがあるのです。

また、「暑い」「寒い」の感じ方は、活動量や代謝など、エアコンでは調整できない個人差にも左右されます。そこで有効なのが、個々の「着衣量」で体感温度を調整するという方法です。

身近で分かりやすい例は、「クールビズ」。軽装にすることで体感温度を下げる取り組みで、ネクタイを外すだけでも体感が変わるといわれています。全員が同じ快適さを感じることは難しくても、各人ができる限り快適さと健康をかなえられるよう、ネッククーラー・ブランケットの使用を許可するなど、従業員一人ひとりが体調を整えやすい環境づくりを目指しましょう。

また、オフィスワークでは喉の渇きを感じにくいため、無自覚に脱水が進む「かくれ脱水」のリスクがあります。涼しく感じるオフィスでも、定期的に水分補給をするよう呼びかけましょう。こちらのコンテンツでは最新の熱中症対策グッズを紹介していますので、ぜひご確認ください。

以上(2026年6月更新)

pj00716
画像:日本情報マート

【役員報酬】役員報酬の損金算入 「定期同額給与」と「事前確定届出給与」

1 役員報酬の額を決める際の視点

役員報酬の額を考える際、多くの会社は「企業業績」「従業員賃金とのバランス」「世間相場」の3つの要素を重視します。従業員賃金とのバランスが重視されるのは、中小企業の場合、多くの役員が従業員から出世するので、従業員賃金の延長線上に役員報酬があるためです。

一方、別の視点から考えた場合、

役員報酬の損金への算入

も非常に重要です。役員報酬は高額なので、損金に算入できるか否かで法人税等の負担が大きく変わってきます。この記事で、役員報酬を損金に算入するために導入する「定期同額給与」と「事前確定届出給与」の仕組みを紹介します。

2 定期同額給与とは

定期同額給与とは、

支給時期が1カ月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの(以下「定期同額給与」)。その他これに準ずるものとして政令で定める給与

です。定期同額給与は、役員報酬として支給する際の基本形で、後述する事前確定届出給与のような届け出は不要です。

3月決算の場合、当事業年度4月から翌事業年度3月までの12カ月の支給時期における支給額が同額である役員報酬が該当します。例えば、当事業年度4月から翌事業年度3月までの12カ月において毎月100万円支給するイメージです。

また、これに準ずるものとして政令で定める役員報酬とは、3月決算の場合、6月30日までに改定されて支給される役員報酬です。役員の報酬等は株主総会の決議事項であり、株主総会で役員報酬の支給枠が変更される場合に対応したルールです。

3月決算の場合、定期同額給与の基本形と定期同額給与に準ずるものは次の通りです。

定期同額給与の基本形

定期同額給与に準ずるもの

これ以外にも、定期同額給与の額の改定は臨時改定事由や業績悪化改定事由により認定されます。例えば、業績悪化改定事由に該当するのは次の通りです。

  1. 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  2. 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  3. 業績や財務状況または資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

3 事前確定届出給与とは

事前確定届出給与とは

その役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与および一定の業績連動給与を除く)で、決められた日までに納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届け出をしているもの

です。

事前確定届出給与には役員賞与のイメージがあります。かつて、会計上の役員賞与の取り扱いが、利益処分から費用処理に変更されたことを受けて、事前確定届出給与が認められた経緯があるためです。

ここで、賞与について「従業員」と「役員」とに分けて確認してみましょう。従業員賞与の場合、前事業年度下期の業績を反映した賞与が翌事業年度6月に支給されるのが一般的です。従来の役員賞与も従業員賞与と同様、前事業年度の業績を反映して、翌事業年度に支給されていました。両者の違いは、従業員賞与が経費処理、役員賞与は利益処分である点でした。

そこで、事前確定届出給与を活用して、役員賞与を従業員賞与のように「課税所得の計算上、損金の額に算入できるようにしよう」という考えが出てきました。しかし、前事業年度の業績を反映した従来の役員賞与の考えの場合は通用しません。なぜなら、事前確定届出給与の位置付けは、従来の役員賞与というよりも従来の役員報酬に近いものだからです。分かりやすく説明すると、事前確定届出給与は役員報酬を12等分して毎月同額支給するのではなく、役員報酬を14等分して6月と12月に14分の2を支給するといったものです。

こうした考えは、事前確定届出給与は要件を満たせば、課税所得の計算上、損金の額に算入できることが前提にあるためです。

事前確定届出給与が従来の役員報酬に近いものだと分かるのが、「四半期支給など定時同額に支給する額」を納税地の所轄税務署長に届け出る場合です。定期同額給与を支給している役員には「定期同額給与に加えて支給する額」を、定期同額給与を支給していない役員に対しては、「四半期支給など定時同額に支給する額」を納税地の所轄税務署長に届け出ます。なお、「四半期支給など定時同額に支給する額」について、非同族会社の場合には届け出は不要です。

次の「定期同額給与+事前確定届出給与」と「事前確定届出給与のみ(四半期支給)」の図表を見れば、「四半期支給など定時同額に支給する額」は従来の役員賞与ではなく、役員報酬であることが分かるでしょう。

定期同額給与+事前確定届出給与

事前確定届出給与のみ(四半期支給)

事前確定届出給与について次のことを覚えておきましょう。

  1. 前事業年度の業績を反映し支給するものではないこと
  2. 当該事業年度の課税所得の計算上、損金算入できること
  3. 損金に算入するためには支給額や支給時期などを、事前に納税地の所轄税務署長に届け出なければならないこと
  4. 税務上の運用は厳格で、支給額が異なるなどの際には、その全額が損金不算入になること(ただし、全く支給されない(ゼロの)場合で一定のものを除く)

なお、事前確定届出給与において、企業(法人)の利益調整などは可能な限り排除される傾向にあるため、事前確定届出給与の運用には留意が必要です。事前確定届出給与を導入する際は、税理士などの専門家の意見を聞くか、納税地の所轄税務署に問い合わせましょう。

以上(2026年6月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

pj30100
画像:Akio Mic-Adobe Stock

【書籍ダイジェスト】『秀吉と秀長』

本書では、史料も少なく一般的に知られていない秀長の実像について、同時代の史料をひもときながら描出している。
秀吉より3~4歳下とみられる秀長は、「弟」という立場からだけでなく、その「才覚」を発揮し秀吉の期待に十分に応えることによって絶大な信頼を得ていたという。例えば政治的後見である「指南」役を担い、秀吉に臣従したそうそうたる武将との関係性を築いたり、それを維持する要となっていたりしたようだ。

書籍ダイジェストは、こちらからお読みいただけます。pdf

【賃金データ集】役員報酬のモデル支給額

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「役員報酬」です。

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 役員報酬の概要

企業と従業員が「労働契約」を交わしているのに対し、企業と取締役(以下「役員」)は「委任契約」を交わしています。労働契約と委任契約ではその性質が大きく異なるため、それぞれに支給される金銭の意味合いも違ったものになります。

従業員に支給される賃金は労働の対償であり、就業規則(賃金規程)で計算方法や支給額を定めますが、役員に支給される「報酬等」(役員報酬、役員賞与、役員退職慰労金等)は職務執行の対価であり、定款または株主総会の決議により、報酬等の額が確定しているものについてはその額、報酬等の額が確定していないものについては、その算定方法などを定めます。

定款または株主総会の決議によって、報酬等の額やその計算方法を定めるのは、いわゆる「お手盛り」を防ぐためですが、実際は株主総会において幅を持たせた枠を決め、具体的な支給額などについては取締役会に一任している企業が少なくありません。しかし、特に上場企業の場合、役員報酬が高額になると、その分企業の利益が減少し株主配当が低くなる恐れがあるため、報酬額の決定については慎重な判断が求められます。なお、企業は役員ごとに、提出会社と連結子会社の役員としての報酬等(連結報酬等)の総額・連結報酬等の種類別の額等を、有価証券報告書に開示しなければなりません(報酬の総額が1億円以上の役員に限ることができる)。

2 国税庁の統計資料によるモデル支給額

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3 人事院の統計資料による役位別に見た年間報酬額

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4 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は次の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■民間給与実態統計調査■
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/top.htm

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■民間企業における役員報酬(給与)調査■
https://www.jinji.go.jp/toukei/0321_yakuinhousyu/0321_yakuinhousyu_ichiran.html

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以上(2026年5月更新)

pj17912
画像:ChatGPT

【朝礼】管理職に伝えたい「ありがとう」の意味

【ポイント】

  • 管理職になると褒められる機会が減るが、それは求められるレベルが上がった証拠
  • 管理職の仕事は、部下を成長させ、組織として成果を上げること
  • 部下がやるべき仕事を管理職がやるのは、部下の成長の機会を奪うことになる

先日、経営者が集まる勉強会に参加したときのことです。テーマは、「頼れる管理職を育成するにはどうすればよいか」というものでした。さまざまな事例や意見が出ましたが、私が印象に残っているのは、ある経営者の「管理職に対しては、どんなささいなことでも感謝の気持ちを伝えているし、皆の前で褒めるようにしている。そうすると管理職は喜んでくれるし、やる気にもなるものだ」という言葉です。

正直に言えば、私はこの話に共感することができませんでした。もちろん、私は日ごろ、管理職を含め、皆さん一人ひとりに感謝をしています。しかし、管理職に対してささいなことで感謝を伝えたり褒めたりするのは、内容にもよりますが、「逆に管理職を過小評価していることになる」と私は考えています。私が皆さんに「ありがとう」と伝えるのは、その人にとって困難なことにチャレンジしてくれたときや面倒なことをやってくれたとき、そして期待するレベルを超えてくれたときです。

皆さんの中には、「管理職になってから、感謝されたり褒められたりしなくなった」と感じている人がいるかもしれません。気持ちが沈んだり、モヤモヤしたりするのは分かります。ただ、それはむしろ、皆さんがそれだけ難しい仕事を任されるようになった証だと、私は思っています。そして、もう一つ大切な理由は、管理職である皆さん自身が、部下に対して感謝を伝え、褒めるという立場に立ったからなのです。管理職が考えるべきなのは、自分が「ありがとう」と言ってもらえるかどうかではありません。部下に「ありがとう」をしっかり伝えること、そして部下が私や管理職から「ありがとう」と言われる機会をつくり、増やすことです。

管理職の仕事は、実際に自分が手を動かすことではありません。部下に手を動かしてもらい、部下を成長させ、組織として成果を上げることです。もし、部下がやるべき仕事を管理職がやっているなら、それは部下の成長する機会を奪っていると認識してください。皆さんの部下が、たくさんの人から「ありがとう」と言われるようになったときこそ、私は皆さんに心から伝えます。「育ててくれてありがとう」と。

              

以上(2026年6月作成)

pj16915
画像:Mariko Mitsuda

技能実習制度は「育成就労制度」へ 外国人雇用はどう変わる?

1 「国際交流」から「人材確保」にシフトした新制度が開始

人手不足が深刻化する中、日本で働く外国人の数は増加を続け、2025年10月末時点で過去最高の257万1037人となりました。このうち49万9334人(19.4%)は「技能実習」の在留資格を持つ外国人、技能実習生です(厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況」)。技能実習制度は、技能実習生が日本企業の下で実習を受け、母国で身に付けにくい技能の習得を図る制度ですが、「企業が技能実習生に、技能の習得に関係ない単純労働をさせる」などの問題が頻発し、

2027年4月1日より、技能実習制度に代わり、新たに「育成就労制度」が開始

されることになりました。

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育成就労制度は、「育成就労」という在留資格を設け、外国人を原則3年間で一定以上の技能を持つ「特定技能」に育成する制度です。根拠法は、「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(育成就労法)」になります。

技能実習制度と似ていますが、

  • 技能実習制度は、外国人が日本で習得した技能を、将来母国に持ち帰ることを想定した「国際協力」のための制度(特定技能への移行も可能だが、制度上は「帰国」が原則)
  • 育成就労制度は、外国人が技能の習得後も、日本企業の戦力として活躍することを想定した「人材確保」のための制度(帰国せず、日本に「在留」することが原則)

であり、目的が異なります。

育成就労制度は、外国人が日本に残って働くことが前提なので、受け入れ企業は外国人を将来の戦力にすべく、大切に育成するでしょう。前述した、企業が「技能の習得に関係ない単純労働をさせる」という問題の解決につながることも期待されます。

施行は2027年4月1日ですが、時間をかけて外国人を戦力化していく制度なので、人手不足解消の打ち手を外国人に期待している企業は、早めに準備をしておいたほうがよいかもしれません。以降で制度の概要を簡単に紹介するので、今のうちにイメージを押さえておきましょう。

なお、育成就労について詳しく知りたい場合、次のURLも併せてご確認ください。

■出入国在留管理庁「育成就労制度」■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/index_00005.html
■育成就労制度の制度概要・関係法令■
https://www.moj.go.jp/isa/03_00163.html
■e-Gov「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」■
https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC0000000089/20270620_506AC0000000060

2 育成就労制度は、特定技能制度の「前段階」

育成就労制度の紹介に入る前に、先ほども軽く触れた「特定技能制度」について説明します。

特定技能制度とは、国内での人材確保が困難な「特定産業分野」において、一定の技能レベルを持つ外国人を受け入れることを目的とした制度

です。在留資格は、業務に必要とされる技能レベルに応じて「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類に分けられます。2号のほうが1号よりもレベルの高い技能を必要とします。

  • 特定技能1号:相当程度の知識または経験を要する業務に従事する外国人
  • 特定技能2号:熟練した技能を要する業務に従事する外国人

2026年1月23日の閣議決定により、特定技能1号の特定産業分野は、「介護」「ビルクリーニング」「リネンサプライ」「工業製品製造業」「建設」「造船・舶用工業」「自動車整備」「航空」「宿泊」「自動車運送業」「鉄道」「物流倉庫」「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」「林業」「木材産業」「資源循環」の19分野となっています。特定技能2号の特定産業分野は、この19分野から「介護」「リネンサプライ」「自動車運送業」「鉄道」「物流倉庫」「林業」「木材産業」「資源循環」を除いた11分野です(見直しの可能性あり)。

特定技能の外国人を雇用できれば、企業にとっての「即戦力」になりますが、それだけの人材を確保するのはハードルが高く、この点をクリアするための制度が育成就労制度です。

育成就労の外国人は、在留資格を取得した当初は特別な技能を持っていませんが、

1.原則3年間の育成就労で技能レベルを高め、特定技能1号の在留資格を取得させる

2.特定技能1号の在留期間中(上限は5年間)に、よりレベルの高い技能を身に付けさせる

3.特定技能2号の在留資格を取得させる(特定技能2号の対象外となる分野を除く)

という流れで、段階的に戦力化が図れます。

なお、特定技能1号には在留期間の上限(5年間)がありますが、特定技能2号には上限がない(在留資格の更新は定期的に必要)ので、2号まで取得させることができれば、長期的に企業の戦力として活躍してもらうことが期待できます。

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3 技能実習制度との違いとは?

1)対象としている産業分野・職種が違う

育成就労制度は、特定技能制度の「前段階」という位置付けなので、対象としている産業も同じく、特定産業分野が基本になります。正確に言うと特定産業分野のうち、

就労を通じて技能を修得させることが相当とされる「育成就労産業分野」

が対象になります。具体的には

特定産業分野のうち「航空」「自動車運送業」を除く17分野

がそうです。

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一方、技能実習制度では、技能実習2号・技能実習3号については従事させられる職種が省令で定められています(技能実習1号については特に定めなし)。

両者が対象としている産業分野・職種は若干異なっていて、技能実習2号移行対象職種のうち、

  • クリーニング職種(一般家庭用クリーニング作業)
  • 空港グランドハンドリング職種
  • ボイラーメンテナンス職種(ボイラーメンテナンス作業)

は育成就労産業分野の対象にならないとされています。技能実習2号移行対象職種については、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧(令和8年4月10日時点 94職種171作業)■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html

また、下記の技能実習生については、技能実習制度の下で受け入れを続けることができます。該当しない場合、技能実習生として再度入国することはできませんが、技能実習の内容によっては、育成就労計画の認定を受ければ育成就労外国人として入国できる可能性があります。

  • 施行日(2027年4月1日)の時点ですでに技能実習生として来日している者
  • 2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請済みで、2027年6月30日(原則)までに技能実習を開始する者

2)計画の認定手続きは基本的に同じ(ただし、育成就労制度のほうが手間が少ない)

育成就労制度では、外国人の受け入れ企業が「育成就労計画」を作成し、「監理支援機関」の認定を受ける必要があります。育成就労計画には

外国人に従事させる業務、業務に必要な技能、育成就労の目標(例:日本語能力)など

を定めます。

技能実習制度の場合も、受け入れ企業が技能実習計画を作成して監理団体の認定を受ける必要があり、このあたりの流れはどちらの制度も基本的に同じです。

  • 技能実習制度では「技能実習1号」「技能実習2号」「技能実習3号」のそれぞれの段階で計画の認定を受ける必要がある(最大3回、認定を受ける必要がある)
  • 育成就労制度では、当初から外国人労働者のキャリアアップを視野に入れて、3年間の計画の認定を受ければよい(1回、認定を受ければよい)

という具合に、育成就労制度のほうが認定手続きにかかる手間は少なくなっています。

3)就労開始前の日本語教育がマストに

技能実習制度では、日本語能力の要件は原則ありません(「介護」分野を除く)。一方、育成就労制度では、外国人が就労を始める前までに、日本語能力「A1」相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格すること、またはそれに相当する日本語講習を認定日本語教育機関などで受講することが求められます。

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外国人に日本語講習の受講機会を提供するのは、受け入れ企業の義務です。具体的には、

  • 入国時に「A1」に相当する講習を100時間以上受講させる義務(A1は、相手がゆっくり、はっきりと話して、助け船を出してくれれば簡単なやり取りができるレベル)
  • 就労開始後に「A2」を目標とした講習を100時間以上受講させる義務(A2は、簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応じることができるレベル)

を負います。費用は企業負担です。ただし、A1・A2相当の試験に事前に合格している場合は、受講不要です。

4)一定の状況を満たせば転籍も可能に

育成就労制度では、技能実習制度よりも「転籍(企業との労働契約を解消し、別の企業と労働契約を結ぶこと)」の要件が緩和されます。

この背景として、技能実習制度では技能実習生の失踪が多いことが挙げられます。2024年の失踪者数は6510人にも上ります(出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数(速報値)」)。出入国在留管理庁によると、失踪の主な原因としては「賃金の不払いなど、受け入れ企業の不適切な取り扱い」も多いようです。

そして、この問題の温床になっていると指摘されてきたのが、技能実習生に対する「転籍」の制限です。技能実習制度では転籍の制限が厳しく、技能実習生は受け入れ企業の労働条件が悪質でも他社に移ることができず、失踪しか選択肢がない状況に追い込まれやすかったのです。

育成就労制度では、この点が改善され、

  • 人権侵害(パワハラや暴力)を受けたなどの「やむを得ない事情」がある場合
  • 同一業務区分内(転籍前とほぼ同じ業務に従事し)、就労期間・技能等の水準・転籍先の適正性に係る一定の要件(転籍制限期間(1年以上2年以下)の経過、技能・日本語能力の修得、転籍先が優良認定を受けていること等)を満たす場合人

については、本人の意向がある場合、転籍が認められることになりました。ただし、分野別に最終調整中のため、今後の動向に注視してください。

以上(2026年7月更新)

pj00730
画像:ChatGPT

【事業承継】これだけ押さえて! 中小企業の事業承継

1 なぜ、事業承継が必要なのか?

事業承継とは、

事業を後継者に承継して会社を存続させること

です。日本ではかつてないほど事業承継の話題が盛んですが、それは、

経営者の高齢化と後継者不足が進んでいるから

に他なりません。帝国データバンクが毎年公表している「全国社長年齢分析」によると、2025年時点の社長の平均年齢は60.8歳となりました。人は必ず年をとるので、平均年齢が上がるのは当然です。となると、事業承継で社長の若返りを図るしかありません。しかし、社長の交代率は3.84%と低水準にとどまります。この主な要因は後継者不足です。

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統計によって異なりますが、日本の約340万社の会社のうち、99%以上は中小企業とされています。日本経済を支える中小企業が、経営者の高齢化と後継者不足で廃業を余儀なくされれば、日本経済に与える影響は計り知れません。

今、一社一社の取り組みが重要な局面にきています。「事業承継」という多分野の取り組みで、経営者は何を意識すればよいのかをご紹介します。

2 事業承継が必要なものは3つ

事業承継が必要なものは「人(経営)、資産、知的資産」の3つです。

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1)人(経営)の承継

後継者を決定し、教育して経営権を承継します。誰を後継者にするかについては、「1.子どもなどへの親族内承継」「2.役員や従業員への親族外承継」「3.M&Aによる第三者への親族外承継」があります。これらは次章で紹介します。

2)資産の承継

自社株、土地などの不動産、設備などの動産などを後継者に引き継ぎます。このうち、自社株については評価が重要です。事業承継時は評価を下げたいはずですから、そうした方法を専門家に相談します。ここでは後継者の資力も問題になります。後継者に自社株の買い取り資金がないケースや、贈与や相続の問題が出てくることもあります。とはいえ、後継者の持株比率を薄めることは得策ではありません。この点は十分に認識すべきです。

また、承継されるのは資産だけではないことにも注意が必要です。例えば、会社が金融機関などからの借り入れ、つまり借金をしていれば、それも承継されます。つまり、貸借対照表(BS。Balance Sheet)が承継されるイメージを持っておくとよいでしょう。

3)知的資産の承継

知的資産は、自社の価値の源泉を承継することです。最上位の概念としては経営理念を承継することになります。経営者の中には「経営理念の承継こそが事業承継である」という人がいるくらい重要なものです。また事業承継を手伝う支援機関も、現経営者へのインタビューを通じて「思い」を言語化し、後継者候補などに伝えたりします。

この他、取引先、さまざまな人脈、技能、知的財産権、許認可など会社経営をするために不可欠なものを承継します。

3 後継者選びの選択肢

事業承継において、最も重要なのは「人(経営)の承継」だといえるでしょう。前述した通り、誰に承継するかの選択肢は、

1.子供などへの親族内承継

2.役員や従業員への親族外承継

3.M&Aによる第三者への親族外承継

の3つに大別されます。かつては子供などへの親族内承継が圧倒的に多かったですが、時代とともに役員・従業員への親族外承継が増えてきています。

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子どもなどに承継する親族内承継でも、これまでの事業をそのまま続けるのではなく、後継者の新しい発想でベンチャー企業のように新規事業にチャレンジするケースも増えています。

また、親族や役員・従業員に適した後継者候補がいない会社などでは、社外からの登用(第三者への承継)も増えています。昨今は「後継者を求める会社」と「経営者になりたい人」をマッチングさせるサービスも多く、多様な候補の中から後継者を選べることができます。とはいえ、実際に事業承継をした経営者の中には、「安易なM&Aをすべきではない」と警鐘を鳴らす人もいます。特にオーナー企業の経営者にとって、会社は自分自身と一体であり、さまざまな思いが込められています。第三者に承継する場合は、本当に慎重な判断が必要です。

4 事業承継を誰に相談するか?

いざ事業承継を進めるとして、誰に相談すればよいのか迷います。これには幾つかの候補があるので紹介します。

なお、中小企業庁では、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するために、M&A支援機関(フィナンシャル・アドバイザー(FA)やM&A仲介会社)に係る登録制度を実施しています。中小企業にとってのメリットは、

登録を受けたM&A支援機関を利用すると、必要な手数料の一部が補助され、金銭的な負担が軽減される

ことです。

1)事業承継・引継ぎ支援センター、商工会議所

中小機構が設置している事業承継を相談できる公的な窓口として、

事業承継・引継ぎ支援センター

があります。各都道府県に設置され、事業承継に関する専門的なアドバイスが受けられます。

公的な窓口なので安心感があり、相談も無料です。ただし、具体的な取り組みを支援してくれるわけではなく、話が進むと弁護士などの専門家に有料で相談することになります。以上から、検討初期の相談に適しているといえるでしょう。

商工会議所でも、独自に事業承継のサポートを行っています。商工会議所の会員になっていることが前提ですが、一度、相談してみるのもよいでしょう。

2)銀行、生命保険会社、損害保険会社など

取引のある銀行や生命保険会社、損害保険会社なども事業承継の相談先となります。特に銀行は経営計画などの提出を受けていることもあり、会社の状況をよく知っているはずなので、良い相談相手になってくれる可能性があります。また、事業承継をする場合は銀行に相談することになるので、この手間も省けます。

ただし、銀行が事業承継の全てに対応するわけではなく、話が進むと専門家に相談することになります。M&Aを検討している場合、銀行が提携するM&A仲介業者などを紹介してくれますが、客観的に自社に適しているM&A仲介業者かどうかは分かりません。そのため、独自に探してみるべきでしょう。

銀行ほど会社の経営に踏み入ってはいませんが、基本的な考え方は生命保険会社や損害保険会社についても同じです。生命保険会社は税制に強い(税理士などと連携している)ため、贈与や相続などについても相談できるでしょう。

銀行などの金融機関は、間接的なビジネスとして事業承継のサポートを行っており、最近は特に力を入れています。ただし、自ら事業承継に関わる各分野に専門的な知識を有しているとは限らず、どちらかといえば専門機関への引き継ぎを担うイメージかもしれません。

3)税理士、弁護士など

税理士は中小企業にとって最も身近な専門家です。日ごろの付き合いの中で会社のこともよく分かっています。税制に関する相談相手としては最適ですが、クオリティーのバラツキが大きいということと、自身の関与先の事例しか持ち合わせていないことが問題です。

弁護士は法的な見地からアドバイスを受けることができます。ただし、中小企業の事業承継で関わるのは税理士などが多く、弁護士の出番はあまりないのが実情ですが、資本政策が複雑になりそうなケースなどでは頼れる相談相手となります。

4)M&A仲介業者など

事業承継でM&Aを選択する場合に相談できます。M&A仲介業者やM&Aアドバイザー、M&Aコンサルティングなどの名称となりますが、基本的な違いはないでしょう。対象とするM&Aの規模によってはサポート対象外となることもあります。まずは銀行などからM&A仲介業者を紹介してもらい、そこで聞いた話を一つの基準に他の業者にも話を聞いてみるとよいかもしれません。

また最近は、

  • 後継者を求める会社と経営者になりたい人のマッチングプラットフォームの登場
  • 中小企業に幅広いネットワークを有する経営者が、知り合い同士をつなげる
  • 元ベンチャーキャピタリストなどが、知り合い同士をつなげる

などの動きもあり、相談先は多様化しています。

以上(2026年7月更新)

pj80110
画像:Mariko Mitsuda