手間のかかる不動産登記の取得業務を効率化する方法を解説

不動産業に従事されている方は、「登記情報提供サービス」から不動産登記を取得するケースがあると思います。しかし、不動産登記を取得するのは手間がかかるので面倒だと感じていらっしゃる方が多いでしょう。

そこで今回は、不動産登記の取得方法とその取得方法により生じる課題に触れながら、不動産登記取得業務をより効率化する方法について解説します。

不動産登記の取得方法

不動産登記の取得方法

不動産登記を取得する主な方法は以下の3つです。

  • 法務局の窓口で交付請求
  • 郵送による交付請求
  • オンラインで閲覧・取得

ここでは取得方法ごとの特徴を解説します。

法務局の窓口で交付請求

最寄りの法務局に出向けば不動産登記を取得できます。平日の午前8時30分~17時15分の間に、所定の申請書に必要事項を記入して、窓口に提出すれば取得可能です。

本人確認不要かつ事前の準備なしで不動産登記を取得できる点がメリットといえます。

ただし、開庁時間内に法務局に行って申請しなくてはならない点が手間になります。不動産業に従事されている方が業務時間中に取得に行く場合、業務が忙しくなかなか出向くこができないケースもありそうです。

郵送による交付請求

必要事項を記入した申請書を最寄りの法務局や地方法務局へ郵送して不動産登記の交付請求を行います。登記簿謄本を郵送してもらうため、切手を貼った返信用封筒を同封することも必要です。

申請書は法務局のホームページでダウンロード、収入印紙は郵便局やコンビニで購入できるため、法務局に行かずとも不動産登記を取得できます。

とはいえ、登記簿謄本が郵送されてくるまでには1週間ほどかかるため、活用するタイミングを踏まえ、計画的に申請することが必要です。すぐに営業活動に使いたい場合などには向いていません。

オンラインで閲覧・取得

「登記情報提供サービス」は、Web上で不動産登記をリアルタイムで閲覧、取得できるサービスです。

登記情報提供サービスとは

運営 ・法務局
取得できる主な情報 ・不動産登記情報の全部事項、所有者事項
・地図や地図に準じる図面の情報
・土地所在図や地積測量図、地役権図面、建物図面、各階平面図の情報
・商業・法人登記に関する情報
・動産譲渡登記事項概要ファイルの情報
・債権譲渡登記事項概要ファイルの情報
主な利用料金 ・不動産登記情報や商業・法人登記情報の全部事項:331円
・所有者事項:141円
・地図・図面:361円
・動産譲渡登記事項や債権譲渡登記事項の概要ファイル:141円
利用時間 ・平日は午前8時30分~午後11時まで
・土日祝日は午前8時30分~午後6時まで
(※地図・図面情報は平日の午前8時30分~午後9時まで)
・12月29日~1月3日までは休み

現在ではほとんどの方がこちらのサービスを利用しているのではないでしょうか。

「登記情報提供サービス」を利用すれば、法務局まで出向かなくても、不動産登記を取得できます。また、書面で取得する場合に比べて費用を抑えられることも利点です。また、住宅地図に地番の情報を重ね合わせたブルーマップを無料で利用することができます。

ただし、利用するにはIDの登録、取得が必要となります。IDを持っていない場合、申請から取得まで1か月ほどかかるケースもあります。また、不動産登記を取得する際には住居表示(住所)から地番や家屋番号を一つひとつ調べる必要があります。

「登記情報提供サービス」の課題

「登記情報提供サービス」の課題

上記で紹介した中では「登記情報提供サービス」がもっとも便利ですが、手間に感じる部分があるのも事実です。例えば、以下のような課題が挙げられます。

【登記情報提供サービスの主な課題2つ】

  • 住居表示(住所)と地番の照合は一つひとつ行わなければならず、件数が多い場合など手間がかかる
  • 取得した不動産登記はPDFのため、活用しづらい

以下で詳しく説明します。

住居表示(住所)から地番を一つひとつ調べるのが大変

不動産登記を取得するには、住居表示(住所)から地番・家屋番号を調べる必要がありますが、「登記情報提供サービス」では、住宅地図に地番の情報を重ね合わせたブルーマップを無料で利用することができます。しかし、住居表示(住所)から地番を調べる場合、一つひとつ調べる必要があり、すべてを調べるには大変な労力がかかります。

例えば、地図上で目星をつけたエリアすべてにDMを送りたい場合、該当エリアにて、ブルーマップを一つひとつクリックしていく必要があり、その件数は最大200件までとなります。

取得した不動産登記はPDFのため、活用しづらい

「登記情報提供サービス」から取得した不動産登記はPDFファイルのため、閲覧するだけなら良いのですが、DMやターゲットリストを作成する場合、手作業でExcelなどに入力する必要があります。件数が多い場合、大変な労力がかかることになります。

登記情報取得業務をより効率化するには?

登記情報取得業務をより効率化するには?

このように不動産登記の取得、活用には大変な手間と時間がかかります。これらを効率化する方法としては、「登記情報取得代行・データベース化サービス」の利用がおすすめです。

「登記情報取得代行・データベース化サービス」を活用すれば、住居表示(住所)をExcelデータなどにまとめて入稿するだけで、不動産登記の取得からデータ化までをワンストップで行ってくれるので手間が一切かかりません。

また、もし、住居表示(住所)がわからなかったとしても地図などでエリアを指定すれば、住居表示(住所)がわからなくても不動産登記の取得・データ化、活用が可能です。

さらに、「登記情報取得代行・データベース化サービス」では、一度に数千件、数万件といった大量の登記情報取得、データ化も可能です。このサービスでは、ほとんどのオペレーションをシステムが行うため、手作業による見間違い、入力ミスなどを防止でき、登記情報の取得・データ化にかかる業務時間を大幅に短縮することができます。

このように登記情報取得業務の効率化を図ることで、不動産営業に従事されている方の本来の業務、お客さまと向き合う時間を創出できます。

まとめ

不動産業に従事されている方の中には、不動産登記を営業活動の一環として活用したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。不動産登記を営業活動に活用するためには、不動産登記取得の手間の削減とデータ化が欠かせません。

インターネット上の各種サービスを活用すれば、不動産登記を取得できますが、取得するまでに多くの手間や時間がかかります。また、取得した不動産登記をデータ化するにはさらに大変な手間と労力が必要となります。

そこで登記情報の取得にかかる業務を効率化するために「登記情報取得代行・データベース化サービス」を活用してみてはいかがでしょうか。住居表示(住所)がわかれば、不動産登記の取得からデータ化までをワンストップで行ってくれますし、住居表示(住所)がわからなくても、地図などでエリアを指定すれば、不動産登記の取得・データ化、活用が可能です。

登記情報の取得・データ化業務の効率化を図ることで、不動産営業に従事されている方の本来の業務、お客さまへアプローチする時間を増やすことができ、よりよい提案ができるようになることでしょう。

煩雑な登記情報の取得業務の効率化はもちろん、効果的なアプローチを実現したいと考えているなら、ぜひ利用を検討してみてください。

サービスについて詳しくは、こちらをご覧ください。

(出典:ホームズメディア)

不動産担保評価を効率化するには|課題を踏まえてポイントと成功事例を解説

金融機関で融資業務に携わっている方にとって欠かせないのが「不動産担保評価」です。しかし、必要な情報の収集や書類作成には手間と時間がかかり、ミスが発生するリスクも避けられません。特に経験の浅い担当者にとっては、業務負担の大きさに悩まされる場面も多いのではないでしょうか。

今回は、不動産担保評価の基本から業務効率化のポイントを解説します。実際に効率化に成功した事例も紹介しているので、より短時間で正確な不動産担保評価を行いたい方はぜひ最後までご覧ください。

不動産担保評価とは

不動産担保評価とは

不動産担保評価とは、金融機関が不動産を担保として融資を行う際に、その不動産の価値を査定する業務のことです。ここでは、不動産担保評価の目的と方法を詳しく解説します。

不動産担保評価の目的と概要

不動産担保評価には、融資実行前に担保物件の価値を適切に見積もることで、融資金額に見合った担保価値が確保されているか確認し、貸し倒れリスクを抑える目的があります。評価は通常、不動産の所在地や面積、権利関係などの基本情報に加え、周辺の地価や市場動向を踏まえて行われます。

不動産担保評価の方法

次に、不動産担保評価の具体的な方法をみていきましょう。

評価に必要な基本情報の収集

不動産担保評価を行う際には、さまざまな情報を収集して所定の計算式に当てはめるのが一般的です。例えば、対象土地の路線価(国税庁が公表する基準値)や公示地価(国土交通省が公表する標準価格)を調べ、近隣の売買事例(取引事例)やその土地の用途地域(都市計画上の区分)などを確認します。

登記情報の確認と担保評価額の算出

収集した情報をもとに、登記事項証明書など登記情報から得られる土地・建物の詳細(面積や権利関係)を加味し、評価基準に従って担保評価額を算出します。通常、このような評価作業は本部の専門部署へ依頼して行うケースが多く、正式な評価結果が出るまでに数日を要することもあります。

なお、不動産担保評価には営業店で行う簡易評価と、本部の専門部署や不動産鑑定士が行う詳細評価があります。営業店で事前に概算額を把握できれば、本部への正式な評価依頼の効率化につながり、審査を迅速に進められます。

不動産担保評価における3つの課題

不動産担保評価における3つの課題

次に、金融機関の不動産担保評価業務において、課題になりやすいポイントを3つ解説します。

課題1|業務にかかる時間と手間の問題

まずあげられる課題が、業務に時間がかかることです。評価に必要な情報は多岐にわたり、それぞれ別のシステムや資料から手作業で収集する必要があります。その結果、書類作成やデータ入力に手間がかかってしまうのです。さらに担当者の知識や経験が浅い場合には不備やミスが生じるリスクも高まります。

課題2|紙ベース作業による負担

紙ベースの作業負担も大きな課題です。不動産の登記情報や評価書類を紙で管理し、手書き・手入力で作成している場合、営業店の負担は大きくなります。こうした作業に時間を取られることで本来注力すべき営業活動の時間が圧迫されるという問題もあります。

課題3|営業店と本部間の連携の煩雑さ

さらに、営業店と本部の連携の煩雑さも指摘されています。営業店で収集・作成した書類を本部の審査部署に送付し、そこでチェックや評価が行われますが、入力ミスや情報不足があると差し戻しが発生し、修正・再提出に時間を要します。このやり取りにより評価完了までに日数がかかり、案件の規模に関わらずお客さまをお待たせしてしまう状況が生じてしまうのです。特に融資を急ぐお客さまにとって、不動産担保評価に時間がかかることは大きなストレスになります。

不動産担保評価を効率化するためのポイント

不動産担保評価を効率化するためのポイント

上記の課題を解決し、不動産担保評価の効率化を進めるには、業務プロセスの見直しとデジタル技術の活用が有効です。ここでは、いくつかの具体的なポイントを紹介します。

情報収集のデジタル化を進める

各種の情報を紙ではなくデジタルデータとして入手・共有することで、情報収集の手間を削減できます。例えば、路線価や公示地価などの公的データはWeb上で公開されています。また、法務局の提供する「登記情報提供サービス」を利用すれば、不動産の登記情報(登記事項証明書)をオンラインで即座に取得することが可能です。

評価の自動化と情報共有の最適化を図る

さらには、情報収集後の評価フローの自動化と、部署間の情報共有の最適化も欠かせません。例えば、AIツールを活用すれば、不動産の基本情報をツール上で入力することで、担保評価額を瞬時に自動で算定するといったことが可能です。また、クラウドプラットフォームを使用すれば、複数の部署・担当者間で情報をリアルタイムで共有できるでしょう。

「オンライン登記情報システム」を活用する

上記を包括的に行えるのが、ホームズの「オンライン登記情報システム」です。これは、不動産の登記簿情報をオンラインで取得すると同時にAIでデータ化し、他の業務システムと連携できるようにする仕組みです。

オンライン登記情報システム」では、取得した登記情報を即座に解析・データベース化し、さらに行内で共有することで、二重取得を防ぎつつ既存の担保評価システムへ自動連携できます。従来は手動で行っていた「評価帳票への入力作業」の大幅削減につながり、登記情報の判読や担保台帳の作成もAIが自動で行うため、複雑な権利関係の読み取りミスや入力ミスの防止も期待できます。担保評価業務全体のスピードアップと精度向上に役立てられるサービスです。

不動産担保評価の効率化事例《3選》

ここでは、実際に「オンライン登記情報システム」を活用して担保評価業務を効率化した金融機関の事例を紹介します。

事例1|営業負担90%削減を実現した不動産担保評価DX

A銀行様では、従来の紙ベースによる不動産評価業務をデジタル化し、業務コスト削減を実現しました。

【導入前の課題】

  • 紙中心の評価業務による非効率性
  • 営業店での担保評価関連業務の重い負担
  • 評価結果の回答までの長時間化

【導入成果】

  • 営業店での担保評価関連業務負担を約90%削減
  • 年間1万時間相当の業務時間短縮を実現
  • 本部集中審査部署の担保評価業務効率が50%向上
  • 登記情報二重取得防止により年間335万円のコスト削減
  • 評価結果の回答時間を8営業日から最短当日中に短縮

事例2|司法書士依存からの脱却で業務スピード向上

B銀行様では、従来の司法書士への登記情報取得依頼から、自社システムによる迅速な情報収集へと、大きな転換に成功しました。

【導入前の課題】

  • 登記情報取得を司法書士依頼することによる1日以上のタイムラグ
  • 住居表示から地番を特定する作業の長時間化
  • 手入力の契約書作成による工数圧迫と入力ミス

【導入効果】

  • 担保評価業務を年間で約800時間削減(「ホームズ地図システム」を活用)
  • 契約書作成を効率化し約70%を削減(「契約書自動作成システム」を活用)
  • 司法書士手数料の削減に加え、二重取得防止機能や登記情報の全店共有により、年間経費1,500万円のコストカットに成功

事例3|多面的なシステム連携により包括的に効率化

C銀行様では、不動産評価業務における複数の課題を、統合的なシステム導入により解決しました。

【導入前の課題】

  • 登記情報の行内共有不備による二重取得の発生
  • 住居表示から地番を特定する作業における時間的ロス
  • 手入力による契約書作成の非効率性
  • 人的チェック工程の多重化

【導入効果(見込み)】

  • 登記情報取得件数を10〜15%削減できる見込み(「オンライン登記情報システム」の二重取得防止機能を活用)
  • 住所から地番を特定する作業を年間約1,000時間削減できる見込み(「ホームズ地図システム」を活用)
  • 契約書作成業務を年間約5,000時間短縮できる見込み(「契約書自動作成システム」を活用)

まとめ

不動産担保評価は金融機関の融資業務において欠かせない重要なプロセスですが、多大な手間と時間を要し、ミスが起こりがちな側面もあります。そこでオンライン登記情報システムのようなツールを導入すれば、情報収集から評価算出までのプロセスの自動化や、人手による作業を減らすことでミスの削減が見込めます。

不動産担保評価を短時間で効率的に行う鍵は、「正確な情報を迅速に入手し、システムで処理する」ことにあります。今後ますますデジタル化が進む中で、これらの手法を取り入れることで業務効率化とサービス向上の両立を目指しましょう。

(出典:ホームズメディア)

【助成金(人材育成編)】DX人材などの育成で最大1億円!

1 人材開発支援助成金を使いながら人材育成!

DX(デジタル・トランスフォーメーション)や新事業展開をもっと推し進めたい。でも、そのための人材を育てるにはお金がかかる……。こうした悩みをお持ちの経営者の方、

DX人材などを育成する一定の訓練等を実施した場合に、最大1億円が支給

されるのをご存じですか。この記事で紹介する人材開発支援助成金がそうです。ビジネス環境が複雑化し、上記のような人材の育成はますます重要になっています。以降では、人材開発支援助成金のうち主要なものを4つ取り上げ、制度概要と申請上のポイントを専門家が解説します。

なお、助成金の内容は2026年4月10日時点のもので、将来変更される可能性があります。また、申請書の書き方や添付書類については、全コースまとめてこちらに記載されていますので、ご確認ください。

厚生労働省「人材開発支援助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

2 事業展開等リスキリング支援コース(最大1億円)

1)事業展開等リスキリング支援コースとは?

新規事業の立ち上げのような事業展開等に伴い、雇用保険の被保険者である自社の社員に対し新たな分野で必要となる知識・技能を習得させるための訓練等を実施した場合、助成金を受け取れるコースです。

2)助成金を受け取るには?

10時間以上のOFF-JT(会社の事業活動と区別して行われる訓練。これと反対に、事業活動と区別せずに行われる訓練がOJT)で、次のいずれかに該当する、職務に関連した訓練を実施することが必要です。

  • 会社が事業展開を行うに当たり、新たな分野で必要となる専門的な知識・技能の習得をさせるための訓練(事業展開については、訓練開始日から3年以内に実施予定、または6カ月前までに実施したものに限る)
  • 事業展開は行わないが、社内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるに当たり、関連業務に従事させる上で必要な専門的な知識・技能を習得させるための訓練
  • 社内の人事・人材育成に関する計画に基づき、今後従事することが予定される職務(訓練開始日から3年以内)に必要な訓練

また、実施に当たっては、まず事業展開等の内容を記載した「事業展開等実施計画(様式が決まっています)」を作成し、訓練の内容やスケジュールを記載した「職業訓練実施計画(同じく様式が決まっています)」と一緒に都道府県労働局に届け出る必要があります。

3)受け取れる金額はいくら?

図表1の額を受け取れます。

事業展開等リスキリング支援コース

要件を満たした場合、1年度につき最大1億円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

職業訓練実施計画を作成した場合、必要書類とともに訓練開始日の6カ月前から1カ月前までの間に都道府県労働局に提出する必要があります。提出後、訓練を実施することになりますが、

訓練終了日の翌日から2カ月以内に支給申請をしないと、助成金が受け取れなくなる

ので注意しましょう。

なお、e-ラーニング、通信制、定額制サービスによる訓練・育児休業中の訓練については、経費助成のみとなります(定額制サービスによる訓練に対する経費助成は、1人当たり月額2万円)。

3 人材育成支援コース(最大1000万円)

1)人材育成支援コースとは?

雇用保険の被保険者である自社の社員に対し、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練等を実施した場合、助成金を受け取れるコースです。

2)助成金を受け取るには?

このコースは「人材育成訓練」「認定実習併用職業訓練」「有期実習型訓練」「中高年齢者実習型訓練」に分かれていて、いずれも事業展開等リスキリング支援コースと同じく、職業訓練実施計画の届け出が必要です。なお、「認定実習併用職業訓練」については厚生労働大臣の認定を、「有期実習型訓練」についてはキャリアコンサルタント等による面接を事前に受ける必要があります。

1.人材育成訓練

10時間以上のOFF-JT訓練が対象です。職業訓練実施計画に基づき事業内訓練を実施するか、対象者が事業外訓練を受講する必要があります。

  • 事業内訓練(会社自らが企画・主催・運営する訓練計画により行う訓練等)
  • 事業外訓練(社外の教育訓練機関等に受講料を支払い受講させる訓練等)

2.認定実習併用職業訓練

新卒者等のために実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練が対象です。訓練開始日において、15歳以上45歳未満であることが条件とされています。職業訓練実施計画に基づき、OJTとOFF-JTを受講し、訓練終了後にジョブ・カードによる対象者の評価を実施する必要があります。

3.有期実習型訓練

有期雇用者等の正社員転換を目的として実施する、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練が対象です。職業訓練実施計画に基づき、OJTとOFF-JTを受講し、訓練終了後にジョブ・カードによる対象者の評価を実施し、対象者を正社員化する必要があります。

4.中高年齢者実習型訓練

45歳以上の社員を対象とした、実践的なスキルを習得させるためのOFF-JTとOJTを組み合わせた訓練(2カ月以上)が対象です。職業訓練実施計画に基づき、OJTとOFF-JTを受講し、訓練終了後にジョブ・カードによる対象者の評価を実施する必要があります。

3)受け取れる金額はいくら?

訓練それぞれについて、図表2~4の額を受け取れます。

人材育成支援コース

人材育成支援コース

人材育成支援コース

要件を満たした場合、1年度につき最大1000万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

事業展開等リスキリング支援コースと同じく、支給申請のスケジュールに注意が必要です。なお、有期実習型訓練については、原則として支給申請期間(訓練終了日の翌日から2カ月以内で支給申請日まで)の間に対象者の正社員転換を果たす必要がありますが、結果的に正社員転換が実施されなかった場合も、次の要件を満たすと助成を受けられるようになっています。

  • 職業能力開発推進者を選任していること
  • 事業内職業能力開発計画を策定・周知していること
  • 定期的なキャリアコンサルティングの機会の確保等について定めていること

4 人への投資促進コース(最大3500万円)

1)人への投資促進コースとは?

雇用保険の被保険者である自社の社員に対するデジタル人材・高度人材を育成する訓練、社員が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合、助成金を受け取れるコースです。

2)助成金を受け取るには?

このコースは、「高度デジタル人材訓練」「成長分野等人材訓練」「情報技術分野認定実習併用職業訓練」「定額制訓練」「自発的職業能力開発訓練」「長期教育訓練休暇等制度」に分かれています。

「高度デジタル人材訓練」「成長分野等人材訓練」「情報技術分野認定実習併用職業訓練」「定額制訓練」「自発的職業能力訓練」については、「職業訓練実施計画届(様式が決まっています)」を作成し、都道府県労働局に届け出た上で、

  • 事業内訓練(会社自らが企画・主催・運営する訓練計画により行う訓練等)
  • 事業外訓練(社外の教育訓練機関等に受講料を支払い受講させる訓練等)

のいずれかを、原則としてOFF-JTにより実施する必要があります。なお、「高度デジタル人材訓練」「情報技術分野認定実習併用職業訓練」以外は事業外訓練のみが対象です。

また、「情報技術分野認定実習併用職業訓練」に関しては、「職業実施計画届」とは別に厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。

一方、「長期教育訓練休暇等制度」については、「制度導入・適用計画届(こちらも様式が決まっています)」を作成し、都道府県労働局に届け出た上で、

  • 長期教育訓練休暇制度
  • 教育訓練短時間勤務等制度

のいずれかを新たに導入し(既に導入している場合も対象)、計画期間内に各制度に基づいた制度を一定回数適用させることが必要となります。なお、長期教育訓練休暇制度については、当該休暇を取得する社員に代わって業務を代替する者への手当支給等の取り組みや代替要員の新規採用(派遣の受け入れを含む)を実施した場合に対しても助成を受けることができます。

1.高度デジタル人材訓練

高度デジタル人材訓練は、高度デジタル人材(ITSS(ITスキル標準)・DSS-P(DX推進スキル標準)レベル3・4となる訓練または大学への入学(情報工学・情報科学)等)を育成するための訓練が対象です。

2.成長分野等人材訓練

成長分野等人材訓練は、成長分野等(デジタル、クリーンエネルギー、人工知能、量子、バイオ、宇宙等の成長が期待される分野等)に関する、海外を含む大学院での訓練が対象です。

3.情報技術分野認定実習併用職業訓練

IT分野未経験者の即戦力化のためのOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練が対象です。訓練開始日において、社員が15歳以上45歳未満であることが要件とされています。

4.定額制訓練

サブスクリプション型の研修サービスによる訓練が対象です。

5.自発的職業能力開発訓練

社員が自発的に受講した訓練で、会社が訓練費用を負担するものが対象です。

6.長期教育訓練休暇制度

働きながら訓練を受講するための長期教育訓練休暇制度や短時間勤務等制度(所定労働時間の短縮・所定外労働時間の免除)を導入し、社員がそれらを利用して訓練を受けた場合に助成を受けられます。なお、既に制度を導入している場合でも助成の対象となります。

また、長期教育訓練休暇制度については、休暇取得に伴う人員不足の補填に対する追加助成を受けることができます。

3)受け取れる金額はいくら?

図表5~7の額を受け取れます。

人への投資促進コース

人への投資促進コース

人への投資促進コース

要件を満たした場合、1年度につき最大3500万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

長期教育訓練休暇等制度を除く訓練等は、図表5、6の通り1年度当たりの受講回数が決まっています。また、賃金助成については、次のように限度時間が決められています。

  • 高度デジタル人材訓練:原則1200時間(大学院、大学、専門実践教育訓練は1600時間)
  • 情報技術分野認定実習併用職業訓練:1200時間
  • 成長分野等人材訓練:原則1200時間(大学院、大学、専門実践教育訓練は1600時間)
  • 長期教育訓練休暇等制度:1600時間(中小企業以外は1200時間)

なお、このコースでは職業訓練実施計画届や制度導入・適用計画を届け出てから訓練等を実施しますが、

計画を届け出る前に訓練を実施したり、制度を導入したりすると、助成対象外になる

ので注意が必要です。また、届け出後に計画内容に変更が生じた場合、所定期日までに変更届を提出しなければなりません。

5 教育訓練休暇等付与コース(最大36万円)

1)教育訓練休暇等付与コースとは?

有給の教育訓練休暇制度(3年間で5日以上の取得が可能な制度)を導入し、対象者が当該休暇を取得して教育訓練等を受けた場合、助成金を受け取れるコースです。

人への投資促進コースの長期教育訓練休暇等制度は、長期の教育訓練休暇を対象としていますが、こちらは短期の教育訓練休暇を想定しています。

2)助成金を受け取るには?

人への投資促進コース(長期教育訓練休暇等制度コース)と同じく、事前に制度導入・適用計画を届け出た上で、有給の教育訓練休暇制度(3年間で5日以上の取得が可能な制度)を導入し、対象者が実際に休暇を取得して訓練を受ける必要があります。

なお、制度を導入するだけでなく、就業規則等への規定及び監督署への届け出(10人未満の場合は、申立書の提出)が必要となります。

3)受け取れる金額はいくら?

図表8の額を受け取れます。

教育訓練休暇等付与コース

1社につき1回までの支給となりますが、要件を満たした場合、最大36万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

人への投資促進コースと同じく、制度導入・適用計画を届け出る前に制度を導入すると、助成対象外になる点に注意が必要です。

また、就業規則の届け出義務がある場合は、就業規則において規定した制度施行日までに監督署に届け出していない場合についても助成対象外となります。

なお、3年間で5日以上の休暇を取得させることが助成の要件となっているため、申請は原則として制度導入日から3年が経過した日から2カ月以内とされていますが、それを待たずに要件を満たした場合、3年が経過する前であっても申請が可能とされています。ただし、制度導入日から6カ月間は申請をすることができません。

以上(2026年5月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:日本情報マート

残業削減の3ステップ「ターゲット決め・実態調査・目標設定」

1 足元で増加中の残業時間

厚生労働省によると、残業(所定外労働時間)の月平均は、直近5年間では10時間前後で推移しています。

1カ月当たりの実労働時間の推移

人材不足の問題もありますが、残業削減は変わらぬ経営の重要課題です。ただ、注意しなければならないのは、

業務量を調整せず、ただ「定時で帰れ」と命令しても残業は減らないし、むしろ持ち帰り残業を誘発したり、パワハラと指摘されたりするリスクがある

ということです。これを踏まえて社員が健康で働きやすい環境を整えなければなりません。

具体的に残業削減を成功させるステップは次の3つですので、この記事で紹介します。

  • (ターゲット決め) 誰の残業を削減するかを決める: 定量的な実績に基づいて決める
  • (実態調査)本当に残業するほど業務が多いのかを探る: ヒアリングして理由を聞く
  • (目標設定)目標を設定してやりきる: 中間目標と最終目標を決めフォローアップする

2 (ターゲット決め) 誰の残業を削減するかを決める

優先的に残業を削減すべき社員は、

  • 36協定の上限時間に抵触しそうな社員
  • 業務内容の割に残業が多い社員

です。

36協定の上限時間は、労働基準法の「時間外労働の上限規制」の範囲内で設定しなければなりません。時間外労働の上限規制とは、社員に時間外・休日労働を命じる際、会社が守らなければならないルールで、違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

2024年4月1日からは、時間外労働の上限規制の適用範囲が拡大され、「新技術・新商品等の研究開発業務」を除くほぼ全ての業種・業務が対象となっています。

時間外労働の上限規制

例えば、図表2の「通常」の会社に勤める社員の場合、図表3のような働き方をしていると、時間外労働の上限規制に抵触します。

時間外労働の上限規制に抵触する働き方の例

なお、社員の残業時間を確認する際には、「そもそも労働時間を正確に管理できているのか」という点にも注意しましょう。例えば、会社から「残業が多い」と叱責されたくないために、タイムカードを定時で打刻する社員というのは少な好くないいます。このあたりは、打刻後に就業している社員がいないか、上司が現場を確認するなどして対応しましょう。

3 (実態調査)本当に残業するほど業務が多いのかを探る

優先的に残業を削減すべき社員を決めたら、その社員に残業する理由を聞いてみます。最初、多くの社員は「業務量が多いから」と答えるでしょうが、その背景には、

  • 非効率な進め方をしているが、自分で気付いていない
  • 実は残業代を当てにしている

といった問題があります。この辺りを明らかにするために、事前に業務内容の詳細を報告してもらい、ある程度、会社側で当たりをつけた上で、

  • やらなくてよい業務はあるか?
  • アウトソーシングできないか?
  • やめられないが、改善できそうな業務はあるか?

と質問してみましょう。その際、対象となる社員を批判するのではなく、冷静に状況を分析・改善する姿勢を崩してはいけません。そうして場を和ませつつ、残業代を当てにしていそうな社員にはその背景を聞いてみます。

こうして質問を繰り返していくと、残業削減の方向性が見えてきます。

残業削減の方法

4 (目標設定)目標を設定してやりきる

残業削減の方法が決まったら、目標設定をしましょう。例えば、

  • 現時点の状況(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間
  • 中間目標1(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間 (○時間削減)
  • 中間目標2(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間(○時間削減)
  • 最終目標(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間(○時間削減)

といった具合に、中間目標、最終目標を設定します。中間目標を設定するのは、思ったより残業削減の効果が上がらない場合に、軌道修正を図りやすくするためです。

目標設定の後は、中間目標の達成期限ごとに残業削減の実績 (何時間削減できたか)を確認し、中間目標に届いていない場合、社員にその理由をヒアリングします。考えられる理由としては次のようなものがあります。

  • 業務配分の見直しや各部署(部門) の配置の検討が十分ではなかった
  • 社員が真剣に取り組まなかった
  • 残業削減の方法が現実的でなかった
  • 中間目標の設定後に新しい業務が割り振られた

このサイクルを繰り返しても、残業削減が想定通りに進まなければ、社員個人のレベルでは、残業削減を進めるのが難しい可能性があります。その場合、

  • 事業の一部のアウトソーシング
  • 定時以降の取引が必要なクライアントとの取引縮小
  • 新たな人員の補充

など、会社レベルでの施策の実施を検討する必要も出てくるでしょう。

以上(2026年4月更新)

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【規程・文例集】「36協定」のひな型

1 36協定の更新忘れにご注意を!

会社は本来、労働基準法(以下「労基法」)の法定労働時間(休憩時間を除き、原則1日8時間、1週40時間)を超えて社員を働かせることができません。これは、違反すると6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられるという罰則付きのルールですが、

会社が社員の代表と「時間外労働・休日労働に関する協定(通称「36協定」)」を締結し、会社の住所を管轄する労働基準監督署に届け出る

と罰則が適用されなくなり(免罰的効果)、時間外労働(法定労働時間を超える労働)や休日労働(法定休日の労働)を社員に命じられるようになります。なお、36協定と呼ばれる理由は、この協定が労基法第36条に基づく労使協定(過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定)だからです。

ちなみに、

36協定の有効期間は「最長1年」で、毎年更新が必要

です。36協定を更新せずに時間外労働や休日労働を命じるのは違法ですから、有効期間は必ず確認しておきましょう。また、同じ内容の36協定を毎年使い回せばそれでいいというわけではありません。例えば、現在政府内では、労基法を改正し、

  • 13日を超える連続勤務を禁止すること
  • 勤務間インターバル制度の実施を義務化すること(休息時間は11時間を想定)
  • 法定労働時間の特例措置(週44時間)を撤廃すること

などが検討されており、こうした法改正への対応ができているかも都度チェックする必要があります。

以降で、36協定のポイントやひな型を紹介するので、確認していきましょう。

2 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)のポイント

1)時間外労働・休日労働の時間数の上限は決まっている

会社は、社員に時間外労働や休日労働を命じる場合、次の内容を守らなければなりません。これを「時間外労働の上限規制」といい、これに違反する36協定は無効となります。

2024年4月1日からは、時間外労働の上限規制の適用範囲が拡大され、「新技術・新商品等の研究開発業務」を除くほぼ全ての業種・業務が対象となっています。

時間外労働・休日労働の時間数の上限

通常、36協定に定められる時間外労働の時間数は、どの業種・業務も原則「1カ月45時間まで、1年360時間まで」です。これを「限度時間」といい、限度時間の範囲内で時間数を定めたものを「一般条項」といいます。

ただし、臨時的な特別な事情がある場合に限り、36協定に「特別条項」を設けることで、限度時間を超える時間外労働を社員に命じることが認められます。

特別条項とは、「納期が著しく逼迫して限度を超える時間外労働をしなければ対応できない」など、特別で臨時的な事態を想定した定め

です。特別条項を設けた場合、会社は限度時間を超える時間外労働を定められますが、1カ月の限度時間(原則45時間まで)を超えられるのは、1年に6回までです(自動車運転業務、医師を除く)。また、限度時間を超える場合も、図表の「臨時的な特別な事情がある場合」の時間数を遵守しなければなりません。これに違反すると、労基法の罰則の対象になります。

2)特別条項を設ける場合、「健康確保措置」を定める必要がある

特別条項を設ける会社は、社員の健康・福祉を確保するための措置(健康確保措置)を36協定に定める必要があります。次のいずれかから措置を選択するのが望ましいとされています。

  • 医師による面接指導
  • 深夜業(原則として午後10時から午前5時までの労働)の回数制限
  • 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  • 代償休日・特別な休暇の付与
  • 健康診断
  • 連続休暇の取得
  • 心とからだの相談窓口の設置
  • 配置転換
  • 産業医等による助言・指導や保健指導

なお、医師の場合は上記の健康確保措置に加え、医療法等に基づく「追加的健康確保措置」を定める必要があります。追加的健康確保措置の内容についてはこちらをご確認ください。

厚生労働省「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000677260.pdf

3)厚生労働省ウェブサイトの「36協定届」に追記して「36協定」とする

36協定は定められた様式で届け出る必要があります。限度時間の範囲内で時間外労働を命じる場合は一般条項の36協定届、限度時間を超える時間外労働を命じる場合は、特別条項付きの36協定届を使用します。次のURLからダウンロードできます。

厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html

また、実務上はこれらの様式に必要な事項を書き加えて、36協定にするのが一般的です。次章では、必要な事項を書き加えた36協定のひな型を紹介します。

なお、36協定はあくまでも労基法上の免罰的効果があるだけなので、実際に社員に時間外労働や休日労働を命じるには、就業規則等にもその旨を定めておく必要があります。

3 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした協定を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)のひな型】

株式会社○○○○(以下「甲」)と従業員の過半数代表者△△△△(以下「乙」)は、労働基準法第36条第1項に基づき、法定労働時間を超える勤務(以下「時間外労働」)および法定休日における勤務(以下「休日労働」)に関して下記の通り協定する。なお、甲は時間外労働および休日労働が従業員の健康状態や家庭生活に与える影響に配慮し、時間外労働および休日労働が最小限のものとなるように努めるものとする。

第1条(具体的事由)

甲が従業員に就業規則第○条の規定に基づき時間外労働および休日労働を命じることができる具体的な事由は次の通りとする。

  • 需要の増大・納期集中により、緊急増産が必要なとき。
  • 急激な販売量増加により、営業業務並びに発送業務が必要なとき。
  • 機械など製造設備が故障したとき。

第2条(時間外労働または休日労働を必要とする業務の種類および従業員数)

時間外労働および休日労働を必要とする業務の種類および従業員数は次の通りとする。

  • 製品の組み立て、検査、梱包。従業員数( 名)。
  • 販売。従業員数( 名)。
  • 製造・販売のサポート業務。従業員数( 名)。
  • 業務遂行のための企画・立案業務。従業員数( 名)。

第3条(延長することができる時間および起算日)

1)時間外労働時間の限度は次の通りとする。

  • 1日につき8時間以内。
  • 1カ月間につき45時間以内(起算日:毎月1日)。
  • 1年間につき360時間以内(起算日:4月1日)。

2)所定休日(時間外労働)および法定休日(休日労働)の労働時間の範囲は次の通りとする。ただし、業務の都合によりやむを得ない場合は午後10時00分まで延長することができる。

  • 午前8時00分から午後5時00分までの間で実働8時間以内。

3)前2項の延長時間は、時間外労働時間数の上限を示すものであり、常に当該時間まで時間外労働を命じるものではない。

第4条(休日労働の日数)

休日労働は1カ月につき4日以内とし、事前に甲および乙の協議を経た上で実施するものとする。

第5条(特別条項)

1)第3条にかかわらず、予測不能な機械等の故障、納期の著しい逼迫など臨時の必要がある場合は、甲および乙の協議を経た上で、1年につき6回を限度に時間外労働時間の限度を1カ月につき80時間(休日労働を含む)、1年につき720時間(休日労働を含まない)まで延長することができる。ただし、時間外労働および休日労働の合計時間は、2カ月から6カ月までの平均でいずれも1カ月当たり80時間を超えないものとする。

2)前項において時間外労働および休日労働を必要とする業務の種類および従業員数は次の通りとする。

  • 製品の組み立て、検査、梱包。従業員数( 名)。
  • 販売。従業員数( 名)。
  • 製造・販売のサポート業務。従業員数( 名)。
  • 業務遂行のための企画・立案業務。従業員数( 名)。

3)第1項の延長時間は、特別な事情がある場合における時間外労働時間数の上限を示すものであり、常に当該時間まで時間外労働を命じるものではない。

4)会社および従業員は、常に業務遂行に要する時間に注意を払い、1カ月当たり60時間を超える時間外労働(休日労働を含む)が生じないよう配慮する。

第6条(従業員に対する健康および福祉を確保するための措置)

前条により時間外労働の範囲を延長する場合において、甲は従業員に対する健康および福祉を確保するために次の措置を実施する。

  • 対象従業員に対する医師による面接指導。
  • 対象従業員に対する11時間の勤務間インターバルの設定。

第7条(割増賃金率)

1)時間外労働における割増賃金率は、次の各号の率とする。

  • 1カ月45時間以内の時間外労働:25%。
  • 1カ月45時間を超える時間外労働:25%。
  • 1カ月60時間を超える時間外労働:50%。

2)休日労働における割増賃金率は、一律35%とする。

第8条(有効期間)

本協定の有効期間は○年○月○日から1年間とする。

締結日 ○年○月○日

甲 株式会社○○○○
代表取締役 ○○○○

乙 株式会社○○○○
従業員代表 △△△△

以上(2026年4月更新)

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自社のウェブサイトが改ざんされないためのセキュリティ対策とは

1 加害者にもなりかねない「ウェブサイトの改ざん」

「ウェブサイトの改ざん」は、ウェブサイトの脆弱性を突かれて、コンテンツやデザイン、機能が不正に書き換えられてしまうもので、例えば、次のような危険があります。

  • リンクが不正に書き換えられ、クリックするとフィッシングサイトに誘導される
  • 悪意のあるスクリプトが埋め込まれ、アクセスするとマルウェアに感染してしまう
  • 悪意のあるスクリプトが埋め込まれ、入力フォームに記入した情報が窃取されてしまう

自社が運営するウェブサイトが改ざんされてしまうと、自分たちは被害者なのにもかかわらず、ウェブサイトを訪れた人たちに対する加害者になってしまう恐れがあります。

安全にウェブサイトを運用管理するためには、ウェブアプリケーション、ウェブサーバー、ネットワークなどについて、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。

IPA(情報処理推進機構)の「ウェブサイトのセキュリティ対策のチェックポイント20ケ条」を基に、対策が実施できているか確認してみましょう。次のページからチェックリスト(エクセルファイル)をダウンロードできます。

IPA「ウェブサイトのセキュリティ対策のチェックポイント20ケ条」
https://www.ipa.go.jp/security/vuln/websecurity/sitecheck.html

2 ウェブサイトのセキュリティ対策のチェックポイント

ここでは、IPA「ウェブサイトのセキュリティ対策のチェックポイント20ケ条」を、順に、少し解説を足して紹介します。

1)ウェブアプリケーションのセキュリティ対策

1.公開すべきでないファイルを公開していませんか?

個人情報や機密情報の記載されたファイル、「.htaccess」などのシステムファイルなどは、公開すべきでないファイルです。誤って公開してしまっていた場合、単に非公開にするだけでは検索エンジンのキャッシュとして残っている恐れもあります。

例えば、所有するウェブサイトの情報をGoogle検索結果から削除しようとする場合、Google Search Consoleを通じて手続きできます。

Google Search Consoleヘルプ「ウェブサイトの情報を Google から削除する」
https://support.google.com/webmasters/answer/7479439

2.不要になったページやウェブサイトを公開していませんか?

不要になったウェブサイトを公開したまま放置していると、管理が及ばず、脆弱性が発覚した際に影響を受ける恐れがあります。期間限定のページなどは、公開期間が終了になった際に非公開にするようにします。

3.「安全なウェブサイトの作り方」に取り上げられている脆弱性への対策をしていますか?

後述の第3章でもう少し詳しく触れますが、IPA「安全なウェブサイトの作り方(改訂第7版)」では、ウェブアプリケーションの脆弱性のうち、届出件数が多い脆弱性や攻撃による影響度が大きい脆弱性を取り上げ、概要や対策方法を解説しています。必ず確認し、対策を実施しましょう。

4.ウェブアプリケーションを構成しているソフトウェアの脆弱性対策を定期的にしていますか?

ウェブアプリケーションは様々なソフトウェアやフレームワーク、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)などで構成されています。これらに脆弱性が発見された場合、都度、セキュリティパッチを当てたり、バージョンアップしたりするといった対策が必要です。

5.不必要なエラーメッセージを返していませんか?

ウェブアプリケーションのエラーメッセージから、ウェブサイトの設定情報などが漏えいし、攻撃に悪用されることがあります。攻撃者に余計な情報を与えないためにも、エラーメッセージの内容は必要最低限にします。

6.ウェブアプリケーションのログを保管し、定期的に確認していますか?

ログ情報は、不正アクセスやその兆候、故障などの事故があった際、原因を追究するために必要な情報源です。必要な期間、ログを保管し、正しく取得できているか定期的に確認しましょう。

7.インターネットを介して送受信する通信内容の暗号化はできていますか?

ウェブアプリケーションと利用者の間で交わされる通信は、盗聴や改ざん、なりすましなどの被害を受ける恐れがあります。通信内容を暗号化(HTTPS化)すれば、仮に盗聴などの被害を受けても重要情報が不正に取得されることを防止できます。

ウェブサイトを運営するときは、第三者機関からサーバー証明書を取得し、TLS(現在の主流はTLS1.2およびTLS1.3)を設定することが安全性の担保につながります。

8.不正ログインの対策はできていますか?

別のウェブサイトやサービスから漏えいしたIDやパスワードを使った不正ログインは後を絶ちません。ログイン機能のあるウェブサイトでは、利用者に対して、「複雑で推測されにくいパスワードを設定する」「パスワードを使いまわさない」という基本対策をアナウンスするとともに、IDやパスワードの入力を一定回数間違った場合にアカウントをロックする機能の実装や、多要素認証の導入などを検討しましょう。

2)ウェブサーバーのセキュリティ対策

9.OSやサーバーソフトウェア、ミドルウェアをバージョンアップしていますか?

OSやサーバーソフトウェア、ミドルウェアのバージョンアップは、セキュリティ対策の基本です。ただし、バージョンアップをすることで、今まで動作していたウェブアプリケーションが正常に動作しなくなる場合もあるため、事前に検証することが重要です。

10.不要なサービスやアプリケーションがありませんか?

ウェブサーバー上で不要なサービスが起動している場合、そのサービスが悪用されることがあるため、最低限必要なもの以外は、停止します。不要になったアプリケーションも削除します。

11.不要なアカウントが登録されていませんか?

ウェブサーバーやウェブサーバーを管理する端末に不要なアカウントが登録されている場合、悪用される恐れがあります。最低限必要なアカウント以外は削除しましょう。特に、開発工程やテスト環境で使用したアカウントが残っていないか注意しましょう。

12.推測されやすい単純なパスワードを使用していませんか?

推測されやすい単純なパスワードを設定している場合、アカウントを乗っ取られ、悪用される恐れがあるため、推測されにくい複雑なパスワードを設定・使用するようにします。特に管理者権限を持ったアカウントやリモート管理ソフトなどのアプリケーションは注意が必要です。

13.ファイル、ディレクトリへの適切なアクセス制御をしていますか?

サーバー上に配置されているファイル、ディレクトリに適切なアクセス制限がされていない場合、非公開のはずのファイルを第三者に見られたり、不正なプログラムを設置されて実行されたりする恐れがあります。

14.ウェブサーバーのログを保管し、定期的に確認していますか?

ウェブサーバーのログ(「システムログ」「アクセスログ」「データベース操作ログ」など)は不正アクセスなどがあった際、原因を追究するために必要な情報源です。必要な期間、ログを保管し、正しく取得できているか定期的に確認しましょう。

3)ネットワークのセキュリティ対策

15.ルータなどを使用してネットワークの境界で不要な通信を遮断していますか?

境界ルータなどのネットワーク機器を使用して、不要な通信を遮断することで、攻撃の糸口を減らすことができます。運用上、外部から内部ネットワークへの通信が必要な場合は、情報を秘匿するためVPNなどを利用することを検討します。内部の通信の場合でも、不要な通信を遮断することで、万が一、侵入された場合の被害を軽減できる可能性があります。

16.ファイアウォールを使用して、適切に通信をフィルタリングしていますか?

ファイアウォールを設置していても、適切なフィルタリング設定がなされていない場合、防御することができません。「どのサーバー」の「どのサービス」に「どこから」のアクセスを許可する(許可しない)のか、設定を見直しましょう。

17.ウェブサーバー(または、ウェブアプリケーション)への不正な通信を検知または、遮断していますか?

IDS(Intrusion Detection System:不正侵入検知システム)、IPS(Intrusion Prevention System:不正侵入防止システム)、WAF(Web Application Firewall:ウェブアプリケーションファイアウォール)を導入することで、ウェブサイトと利用者の間の通信を検査し、自動的に検知、遮断をすることができます。

18.ネットワーク機器のログを保管し、定期的に確認していますか?

ネットワーク機器のログは不正アクセスなどがあった際、原因を追究するために必要な情報源です。必要な期間、ログを保管し、正しく取得できているか定期的に確認しましょう。

4)その他のセキュリティ対策

19.クラウドなどのサービス利用において、自組織の責任範囲を把握した上で、必要な対策を実施できていますか?

クラウドやホスティングのサービスを利用してウェブサイトを運営している場合、サービス提供事業者側がセキュリティ対策を実施しているケースも少なくありません。サービス提供事業者側の責任範囲を把握した上で、不足する対策は自社で対応することを検討します。

20.定期的にセキュリティ検査(診断)、監査していますか?

セキュリティ対策を実施しているか、自社内で確認した上で、第三者機関による脆弱性診断やセキュリティ監査を受けることは、対策漏れなどを洗い出すために効果的な手段です。

3 ウェブサイト改ざんにつながる代表的な脆弱性

IPA「安全なウェブサイトの作り方(改訂第7版)」では、ウェブサイト改ざんにつながる11種類の脆弱性を取り上げ、脆弱性の原因そのものをなくす根本的な解決策などが解説されています。

IPA「安全なウェブサイトの作り方(改訂第7版)」
https://www.ipa.go.jp/security/vuln/websecurity/about.html

これらは、よく知られている脆弱性であり、全てに対応が必要です。ここでは代表的な3つの脆弱性を取り上げて紹介します。

1)SQLインジェクション

SQLインジェクションは、ウェブアプリケーションのSQL文(データベースへの命令文)の組み立て方の脆弱性を突き、不正なSQL文を実行させてデータベース内の情報を窃取・改ざん・消去するものです。

運営主体やウェブサイトの性質を問わず、データベースを利用するウェブアプリケーションを設置しているウェブサイトに存在しうる問題です。

根本的な解決策として、次が挙げられます。

  • SQL文の組み立ては全てプレースホルダで実装する。
  • SQL文の組み立てを文字列連結により行う場合は、エスケープ処理等を行うデータベースエンジンのAPIを用いて、SQL文のリテラルを正しく構成する。
  • ウェブアプリケーションに渡されるパラメータにSQL文を直接指定しない。

2)クロスサイトスクリプティング(XSS:Cross-Site Scripting)

クロスサイトスクリプティング(XSS)は、ウェブアプリケーションの出力処理(画面への表示)の脆弱性を突き、不正なスクリプトを埋め込んで、ウェブサイトにアクセスした利用者のブラウザ上で実行するものです。「XSS」と略すのは、スタイルシート言語(Cascading Style Sheets)で使用されている「CSS」と混同しないようにするためです。

運営主体やウェブサイトの性質を問わず、あらゆるサイトにおいて注意が必要な問題です。Cookieを用いたセッション管理を行っているサイトや、フィッシング詐欺の標的になりやすいログイン画面や個人情報の入力画面などを持つサイトは、特に注意が必要です。

根本的な解決策として、次が挙げられます。

  • ウェブページに出力する全ての要素に対して、エスケープ処理を施す。
  • URLを出力するときは、「https://」で始まるURLのみを許可する。
  • <script>…</script> 要素の内容を動的に生成しない。
  • スタイルシートを任意のサイトから取り込めるようにしない。

3)クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)

クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)は、ウェブアプリケーションのセッション管理(リクエストの正当性確認)の脆弱性を突き、ログイン中の利用者に不正なリンクを踏ませるなどして、あたかもその利用者が操作をしたかのようにウェブアプリケーションに不正なリクエストを送信し、実行させるものです。

Cookieを用いたセッション管理や、Basic認証、SSLクライアント認証を実装しているウェブサイトは、CSRFによる影響を受ける可能性があります。

根本的な解決策として、次が挙げられます。

  • 処理を実行するページをPOSTメソッドでアクセスするようにし、その「hiddenパラメータ」に秘密情報が挿入されるよう、前のページを自動生成して、実行ページではその値が正しい場合のみ処理を実行する。
  • 処理を実行する直前のページで再度パスワードの入力を求め、実行ページでは、再度入力されたパスワードが正しい場合のみ処理を実行する。
  • Refererが正しいリンク元かを確認し、正しい場合のみ処理を実行する。

4 ウェブサイトの改ざんの被害に遭ってしまったら

警察庁は、ウェブサイト改ざんの被害に遭った場合、アクセスログ等の資料を持参して、最寄りの警察署またはサイバー犯罪相談窓口に通報・相談するように呼びかけています。

e-Gov電子申請(デジタル庁が運営する電子申請のポータルサイト)からオンラインで「サイバー事案に関する通報等」を行うこともできますが、e-Govアカウントの取得やアプリのインストールなどが必要です。いざというときに備えて、事前に対応しておくとよいでしょう。

警察庁「ウェブサイト改ざん対策」
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/countermeasures/hacked-website.html

以上(2026年4月作成)

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経営のヒントとなる言葉(大久保利通)

「我一人ヲ以國家ヲ維持スルノ境界ナクテハ堅忍耐久志業ヲ成スコト能ハサルヘシ」(*)

出所:「大久保利通文書6」(東京大学出版会)

冒頭の言葉は、

「自分一人で国家を維持するほどの器(力量)がなければ、つらさや苦しみに耐え忍んで志を果たすことはできない」

ということを表しています。

幕末、幕府の威力が衰えて倒幕の機運が高まると、土佐藩脱藩浪士の坂本龍馬(さかもとりょうま)の仲介により、反目していた長州藩と手を結び、1866年に薩長同盟が成立しました。薩長同盟によって倒幕への流れは大きく加速し、王政復古の大号令によって幕府が倒され、1868年に明治新政府が成立しました。

政府の要職に就いた大久保氏は、政府の使節団として欧米を訪問し、諸国における近代産業の発展や整備された国家制度を目の当たりにして、日本の国内基盤の整備が急務であることを痛感しました。

しかし、大久保氏が帰国すると、政府は2つの派閥に割れて紛糾していました。当時、鎖国状態にあった朝鮮に出兵して開国を迫る「征韓論」を主張する派閥と、それに反対する派閥が対立していたのです。そして、征韓論派の中心とされていたのは、大久保氏の長年の盟友であった西郷隆盛氏でした。

国内基盤の整備を最優先課題としていた大久保氏は、征韓論に反対しましたが、西郷氏も自身の主張を譲りませんでした。結局、大久保氏らの働きかけによって西郷氏の朝鮮派遣は取り消され、これにより、西郷氏をはじめとする征韓論派は政府を去ることとなります。

その後、1876年に廃刀令および秩禄処分が施行され、華族や士族の俸禄(家禄)制度および身分的特権が廃されることとなりました。これをきっかけとして、かねてより政府に不満を持っていた旧武士階級の反発が高まり、全国各地で不平士族の反乱が相次ぎました。そしてついに、1877年には鹿児島県で西郷氏を中心とした不平士族が大規模な反乱を起こし、西南戦争がぼっ発しました。

大久保氏にとって、薩摩軍と戦うことは耐えがたいことでしたが、新しい国家を創造するためにやむなく討伐を決意し、政府軍は薩摩軍を破って西南戦争に勝利しました。これによって日本における内乱は終結し、日本の近代国家としての歩みが本格的に始まることとなります。

大久保氏は、日本の国家づくりに要する期間を30年間とみて、その過程を細かく計画していました。国家づくりに臨むに際して、大久保氏は次のような言葉を遺しています。

「凡(およ)そ国家の事は深謀遠慮自然の機に投じて図(はか)るにあらざれば成す事能(あた)はざるや必せり」(**)
(国家の運命を左右するような重大な事柄は、将来のことまでよく考え、計画を立て、機会をみて行わなければ成し遂げることができない)

大久保氏は、西南戦争で長年の盟友であった西郷氏をはじめとする薩摩軍を敵として戦いました。こうした過酷な状況にあっても志を曲げなかったのは、近代国家としての日本を創造するという壮大な目標があったからです。

大きな物事を成し遂げるには、長期的展望に立った綿密な計画が重要です。そしてなにより、「たとえ自分一人の力だけでも、それを必ずやり遂げてみせる」という強い決意が必要となるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

おおくぼとしみち(1830~1878)。薩摩国(現鹿児島県)生まれ。青年期より同郷の西郷隆盛氏とともに藩政改革を志し、後に薩摩藩を倒幕に導く。1871年、大蔵卿就任。1873年、内務卿就任。

【参考文献】

(*)「大久保利通文書6」(日本史籍協会(編)、東京大学出版会、1983年10月)

(**)「【次代への名言】8月10日・大久保利通(産経新聞 東京朝刊(2009年8月10日付))」(産経新聞社、2009年8月)

「大久保利通」(笠原英彦、吉川弘文館、2005年5月)

以上(2026年4月更新)

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画像:日本情報マート

【助成金(育児サポート編)】仕事と育児の両立支援で最大1342万円!

1 両立支援等助成金で社員の子育てをサポート!

「育児休業」(以下「育休」)等をはじめ、子育てをする社員の支援制度は近年ますます手厚くなっています。社員にとっては嬉しい一方、人手不足の中小企業にとっては、「育休等を取得する社員が増えたら、仕事が回らなくなる……」という不安があるかもしれません。

ですが、

休業する社員の業務をカバーする他の社員に手当等を支給したり、代替要員を新たに雇ったりすると、最大で1342万円が支給

されるのをご存じでしょうか。この記事で紹介する両立支援等助成金がそうです。「働きやすさ」が社会的にも求められている昨今、会社に「子育てなどと仕事の両立」を求める社員もいるでしょう。このニーズに応える上で、この助成金はとても重要です。以降で、制度概要と申請上のポイントを専門家が解説します。

なお、助成金の内容は2026年4月8日時点のもので、将来変更される可能性があります。また、申請書の書き方や添付書類については、全コースまとめてこちらに記載されていますので、ご確認ください。

■厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html

2 育休中等業務代替支援コース(最大1342万円)

1)育休中等業務代替支援コースとは?

社員が育休を取得したり、短時間勤務制度を利用したりしている間、その社員の業務をカバーする他の社員に手当等を支給したり、代替要員を新たに雇ったりした場合に助成金を受け取れるコースです。

2)助成金を受け取るには?

このコースは「手当支給等(育児休業)」「手当支給等(短時間勤務)」「新規雇用(育児休業)」に分かれていて、次の要件などを満たす必要があります。

1.手当支給等(育児休業)

社員が7日以上の育休(産後パパ育休を含む)を取得し、その業務をカバーする他の社員に対し、会社が手当等を支給する必要があります。手当等の内容は事前に就業規則等で定めなければなりません。

2.手当支給等(短時間勤務)

社員が短時間勤務制度(3歳未満の子を養育する社員を対象とするもの)の措置を受けられる制度を1カ月以上利用し、その業務をカバーする他の社員に対し、会社が手当等を支給する必要があります。手当等の内容は、事前に就業規則等で定めなければなりません。

3.新規雇用(育児休業)

社員が7日以上の育休(産後パパ育休を含む)を取得し、その業務をカバーする他の社員を、会社が新たに雇用し(または派遣で受け入れ)、実際に業務を代替させる必要があります。

3)受け取れる金額はいくら?

手当支給等(育児休業)・手当支給等(短時間勤務)・新規雇用(育児休業)それぞれについて、図表1の額を受け取れます。その他、

  • 育休取得者(または短時間勤務利用者)が有期雇用の場合、業務代替期間が1カ月以上であれば「有期雇用労働者加算」
  • プラチナくるみん認定を受けている場合、「プラチナくるみん認定事業主への加算」
  • 育休の取得状況を厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で公表した場合、「育休等に関する情報公表加算」

を受けられます。

■厚生労働省「両立支援のひろば」■
https://ryouritsu.mhlw.go.jp/

育休中等業務代替支援コース

支給額の計算がややこしいですが、仮に手当支給等(育児休業)を1年度10人まで申請した場合、加算も含めると最大1342万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

子育てをする社員へのサポートに注力するあまり、その業務をカバーする周囲の社員へのフォローが手薄になり、「制度を利用する人だけが優遇されている」といった不平不満が職場から上がるケースは珍しくありません。支援制度は、対象となる社員だけでなく、その業務を引き受ける同僚にも目を配ってこそ、職場全体で納得感をもって運用できるものです。助成金額と照らし合わせつつ、手当等がカバーに回る社員の負担を考慮した額になるよう制度を設計しましょう。

また、このコースは1年度につき10人までが支給対象になるという手厚い内容ではありますが、「手当支給等(育児休業)」「手当支給等(短時間勤務)」「新規雇用(育児休業)」を合わせて10人なので、どの方法で社員の負担を軽減していくのかを計画的に決めましょう。

くるみん認定・トライくるみん認定を受けている事業主については特例があり、2031年3月31日までに1事業主当たり延べ50人までの申請が可能です。認定取得済み、あるいは取得予定の企業にとっては、さらに活用余地が広がります。

なお、コース共通の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。申請日が行動計画期間内であることも条件となっていますので、ギリギリで動くのではなく余裕を持った対応が求められます。(プラチナくるみん認定を受けている場合、行動計画の策定・届出がなくても支給対象)。

3 柔軟な働き方選択制度等支援コース(最大197万円)

1)柔軟な働き方選択制度等支援コースとは?

3歳以上小学校就学前の子を養育する社員のために、短時間勤務などの柔軟な働き方に関する制度等を複数導入した上で、実際に対象者に利用させた場合に助成金を受け取れるコースです。

2)助成金を受け取るには?

このコースでは、「柔軟な働き方選択制度」という図表2の制度等を、最低でも3つ以上導入する必要があります(就業規則等への規定も必須です)。制度等を導入した上で、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」という、社員の柔軟な働き方をサポートするための計画を策定します。その計画に基づいて社員が利用開始から6カ月間のうちに、制度等を一定基準以上利用すると、助成金を受け取れます。助成対象は中小企業のみです。

柔軟な働き方選択制度

3)受け取れる金額はいくら?

次の2つの場合に、図表3の額を受け取れます。

  • (制度等を導入し、対象者が利用)柔軟な働き方選択制度を3つ以上導入し、社員が1つ以上制度を利用した場合
  • (子の看護等休暇制度有給化支援)子の看護等休暇を有給化し、社員が利用した場合

また、「育休等に関する情報公表加算」の他、柔軟な働き方選択制度の全てまたは子の看護等休暇(有給)を、次の子を養育する社員が利用できるようにした場合にも、次の加算を受けられます。

  • (制度利用期間延長加算)3歳以上中学校修了前の子を養育する社員が対象
  • (障害児等要配慮支援加算)18歳到達年度の末日(3月31日)までまたは高等学校等を修了する年の末日(3月31日)までの障害児等を養育する社員が対象

柔軟な働き方選択制度等支援コース

制度等を4つ以上導入して1年度に社員5人が利用し、さらに子の看護等休暇を有給化した場合、加算も含めると最大197万円を受け取れる計算になります。

4)専門家からのワンポイントアドバイス

このコースは、育児・介護休業法の「柔軟な働き方を実現するための措置等」との関連性が深いです。会社は2025年10月1日から、図表2で紹介した「始業時刻の変更」など5つの制度から2つ以上を選択して実施する義務を負っています。

このコースも、受給の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。

4 出生時両立支援コース(最大127万円)

1)出生時両立支援コースとは?

会社(実際は支店等の事業場単位)が、「男性社員」が育休を取得するための雇用環境や業務体制を整備し、男性社員が実際に育休を取得した場合、助成金を受け取れるコースです。「子育てパパ支援助成金」とも呼ばれます。

2)助成金を受け取るには?

このコースは「男性労働者の育児休業取得」「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」に分かれていて、次の要件などを満たす中小企業が対象となります。

1.男性労働者の育児休業取得

一定の「雇用環境整備措置」を講じた上で、就業規則等に基づいて引き継ぎなどの業務体制を整備し、男性社員が産後8週間以内に連続5日以上の育休(産後パパ育休を含む)を取得する必要があります(2人目の取得者は10日以上、3人目の取得者は14日以上)。この他、休業期間中に含まれる所定労働日数に関する日数条件もあります。

雇用環境整備措置とは、次の5つです。育休取得者の数などに応じて、2~5つの措置を講じなければなりません。

  • 育休に係る研修の実施
  • 育休に関する相談体制の整備
  • 育休の取得に関する事例の収集・提供
  • 育休に関する制度・育休の取得の促進に関する方針の周知
  • 育休の取得が円滑に行われるようにするための業務配分や人員配置の見直し

2.男性労働者の育児休業取得率の上昇等

男性社員の育休取得率が、一定の要件を満たす必要があります。また、「男性労働者の育児休業取得」と同じく雇用環境や業務体制の整備に関する要件もあります。

3)受け取れる金額はいくら?

「男性労働者の育児休業取得」「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」それぞれについて、図表4の額を受け取れます。また、育休中等業務代替支援コースと同じく、「プラチナくるみん認定事業主への加算(「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」のみ)」「育休等に関する情報公表加算」も受けられます。

出生時両立支援コース

「男性労働者の育児休業取得(3人分)」と「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」、さらに加算を含めると、最大127万円を受け取れる計算になります。ただし、第1種と第2種を、同一年度内に申請することはできません。

4)専門家のワンポイントアドバイス

このコースも、受給の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。

「男性社員の育休取得」を後押しするものですが、制度を整えるだけでは取得は進みません。特に中小企業では、「自分が休んだら現場が回らない」「上司や同僚に迷惑がかかる」と感じて取得をためらう男性社員が少なくありません。雇用環境整備措置の中でも「研修の実施」や「事例の収集・提供」を通じて、「取得して当たり前」という空気をつくることが大切です。

5 育児休業等支援コース(最大122万円)

1)育児休業等支援コースとは?

社員(男性・女性を問わない)の育休の取得・職場復帰が円滑に進むよう、会社が一定の取り組みをした場合、助成金を受け取れるコースです。

2)助成金を受け取るには?

このコースは「育休取得時」「職場復帰時」に分かれていて、次の要件などを満たす中小企業が対象です。

1.育休取得時

「育休復帰支援プラン」という、育休(産後パパ育休を含む)の取得・職場復帰をサポートするための計画書を策定する必要があります。まず、育休復帰支援プランを使って、育休の取得・職場復帰をサポートする旨を社内に周知し、育休取得者のプランを本人との面談を通して作成します。その上で、本人に連続3カ月以上の育休を取得させる必要があります。

2.職場復帰時

1.の育休取得者の休業終了時に、本人と面談をして原職等に復帰させ、6カ月以上継続雇用する必要があります。「育休取得時」の助成金を受給していないと申請できません。また、育休取得者を継続雇用する際は、本人が雇用保険の被保険者である必要があります。

3)受け取れる金額はいくら?

育休取得時・職場復帰時それぞれについて、図表5の額を受け取れます。どちらも社員2人(無期雇用1人、有期雇用1人)まで受給可能です。また、「育休等に関する情報公表加算」なども受けられます。

育児休業等支援コース

育休取得時(2人分)と職場復帰時(2人分)、さらに加算を含めると、最大122万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

支給要領では、育休復帰支援プランを策定する場合、少なくとも育休取得者の、

  • 業務の整理、引き継ぎに関する措置
  • 休業中の業務内容等に関する情報提供に関する措置

について定めなければならないとされています。厚生労働省ウェブサイトでは、プランの様式や、職場の状況(代替要員の確保が難しい、残業が多いなど)に応じたモデルプランを記載したマニュアルが公表されているので、参考にしながら策定を進めてください。

■厚生労働省「育休復帰支援プラン策定のご案内」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000067027.html

このコースも、受給の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。

6 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース(最大90万円)

1)不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースとは?

女性社員が不妊治療と仕事を両立したり、健康課題(月経や更年期)に対応したりするため、休暇制度などを導入し、実際に対象者に利用させた場合に助成金を受け取れるコースです。

なお、不妊治療部分は男女問わず対象となりますが、月経・更年期対応は女性社員が対象です。

2)助成金を受け取るには?

このコースは「不妊治療」「女性の健康課題対応(月経)」「女性の健康課題対応(更年期)」に分かれていますが、大まかな要件は共通しています。次の制度のいずれかを導入し、1年間に5日以上、対象者に利用させる必要があります。助成の対象は中小企業のみです。

  • 休暇制度(不妊治療や女性の健康課題に対応するための特別休暇。多様な目的で利用できるものも可)
  • 短時間勤務制度(1日の所定労働時間を1時間以上短縮する制度。ただし、利用しても1時間当たりの基本給等の水準の引き下げや雇用形態の変更がされないことが条件)
  • 所定外労働制限(残業免除)、時差出勤制度、フレックスタイム制度、在宅勤務等

さらに、本コースの特徴として他コースのような上司面談ではなく、「両立支援担当者」の選任と相談対応体制の整備が申請要件となっています。

3)受け取れる金額はいくら?

不妊治療・女性の健康課題対応(月経)・女性の健康課題対応(更年期)それぞれについて、図表6の額を受け取れます。加算は特にありません。

不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

それぞれについて支給要件を満たした場合、最大90万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

このコースでは、休暇制度や短時間勤務制度を1年に5日以上対象者に利用させる必要がありますが、不妊治療や女性の健康課題対応が目的であることが明確でない場合、利用しても日数にカウントされません。

例えば、休暇制度を設ける場合、女性社員が利用しやすいよう「ファミリーサポート休暇」などの名称にすることがあります。ただし、助成金の受給を考えるのであれば、「休暇申請書などの際に利用目的を記載する欄を作ること」などを検討する必要があるかもしれません。ただ、その場合、労務担当者が男性だと申請しにくい女性社員もいるでしょう。制度の運用をスムーズにするためにも、「両立支援担当者」を男女混合の少人数チームで構成するなどの配慮も検討しましょう(両立支援担当者の選任は、本コースの要件でもあります)。

以上(2026年5月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

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【管理会計】部門や支店が増えた場合に役立つ「貢献利益」による業績評価

1 質問:部門ごとの利益を把握していますか?

店舗販売部門、外商部門、卸売部門の3つの部門を持つA社。会社全体の利益はすぐに出てくるものの、部門ごとの利益は売上総利益(売上-売上原価)までしか把握できていません。

創業当初はシンプルだった組織も、事業規模が拡大していくにつれ、さまざまな部門が設置され、営業所なども増えてきます。ここで問題となるのが、部門や営業所ごとの業績が見えにくくなることです。こうした状況に直面した場合における判断の基準をご紹介します。

2 部門などごとに「貢献利益」を算出する

貢献利益とは、限界利益(売上高から変動費を引いた値)から管理可能固定費を引いた値です。管理可能固定費とは、各部門でコントロールできる固定費をいいます。

貢献利益は次のように計算します。

  • 限界利益=売上高-変動費
  • 貢献利益=限界利益-管理可能固定費

貢献利益のイメージ

管理会計では、費用は売上高の増減に合わせて変動する「変動費」と、売上高の増減に関係なく発生する「固定費」とに分けられます。売上高が伸びると変動費は増えますが、固定費は一定です。

例えば小売業の場合、売上原価などは売上高に合わせて増減する変動費になります。一方、人件費や減価償却費、賃借料などが固定費となり、その中には各部門で管理可能(コントロール可能)なものと管理不能(コントロール不能)なものがあります。

各部門で決裁権のある費用は管理可能固定費となります。例えば、消耗品費、会議費、交際費などについて、各部門や支店での判断が可能ならばコントロール可能な固定費となります。

部門や支店の要請で人員補充が行われる場合、人件費も管理可能固定費とします。一方、支店、営業所、工場などの開設に伴う賃借料や減価償却費、支払利息のように経営者の経営判断によるものは、各部門にとっては管理不能固定費とします。

3 事例を用いた「貢献利益」の計算例

1)事例前提条件

A社には、店販部門、外商部門、卸売部門の3つの販売部門があります。また、自社ビルを保有し、その中にこの3部門が設置されています。

A社の部門別売上高と費用

店舗販売部門は、自社ビル内の店舗で小売販売をしています。店販部門の売上高は10億円です。商品の値入率は55%(原価率45%)です。管理可能固定費は、人件費1億4400万円(480万円×30人)とします。

外商部門は、会員顧客(年間に一定金額以上を購入する優良顧客)向けに訪問販売と通信販売を行っています。掛率(小売価格に対する販売価格の割合)は90%です。管理可能固定費は、人件費7200万円(480万円×15人)、車両費・物流費4200万円(営業車7台分の減価償却費・管理費・燃料費700万円+代金引換を含む小口配送費用3500万円)とします(便宜上、配送費用は管理可能固定費に含めています)。

卸売部門は、百貨店等の大規模小売店や専門店に対して商品を卸売りしています。掛率は65%です。管理可能固定費は、人件費7200万円(480万円×15人)と交通費・物流費2700万円(営業交通費200万円+商品配送費用2500万円)とします。商品配送費用は、売上高に応じて変動する性質の費用ですが、ここでは管理可能固定費としています。

2)店販部門の貢献利益

店販部門の売上高は10億円、商品の値入率が55%なので、売上原価と限界利益は次のように算出することができます。

  • 売上原価=売上高10億円×売上原価率45%=4億5000万円
  • 限界利益=売上高10億円-売上原価4億5000万円=5億5000万円

店販部門の管理可能固定費は、人件費1億4400万円なので、貢献利益は次のように算出することができます。

  • 貢献利益=限界利益5億5000万円-管理可能固定費1億4400万円=4億600万円
  • 従業員1人当たり貢献利益=貢献利益4億600万円/従業員数30人=1353万3300円

3)外商部門の貢献利益

外商部門の売上高は6億円、店販部門の販売価格に対して掛率90%で販売しているので、売上原価と限界利益は次のように算出することができます。

  • 売上原価=売上高6億円/90%×売上原価率45%≒3億円
  • 限界利益=売上高6億円-売上原価3億円=3億円

外商部門の管理可能固定費は、人件費7200万円と車両費・物流費4200万円なので、貢献利益は次のように算出することができます。

  • 貢献利益=限界利益3億円-管理可能固定費1億1400万円=1億8600万円
  • 従業員1人当たり貢献利益=貢献利益1億8600万円/従業員数15人=1240万円

4)卸売部門の貢献利益

卸売部門の売上高は10億円、店販部門の販売価格に対して掛率65%で販売しているので、売上原価と限界利益は次のように算出することができます。

  • 売上原価=売上高10億円/65%×売上原価率45%=6億9200万円
  • 限界利益=売上高10億円-売上原価6億9200万円=3億800万円

卸売部門の管理可能固定費は、人件費7200万円と交通費・物流費2700万円なので、貢献利益は次のように算出することができます。

  • 貢献利益=限界利益3億800万円-管理可能固定費9900万円=2億900万円
  • 従業員1人当たり貢献利益=貢献利益2億900万円/従業員数15人≒1393万3300円

5)各部門の比較

A社の部門別貢献利益を一覧で示すと次の通りです。

A社の部門別貢献利益

3部門で貢献利益が最も大きいのが店販部門で、他2部門を大きく上回っています。次いで卸売部門、外商部門となっています。

店販部門は、売上高が大きく限界利益率が高いことが特徴です。卸売部門は、限界利益率は低いものの、それを売上高でカバーしている状況です。

従業員1人当たり貢献利益では、卸売部門が最も大きく、次いで店販部門、外商部門という結果になっています。

実際には、部門別に時系列で比較し、各事業部門の貢献利益の増減を比較評価するのが効果的な方法です。

4 貢献利益を運用する際の注意点

1)目に見えないもう1つの貢献利益

部門別の貢献利益によって、部門や支店ごとの業績が把握できます。活用方法はさまざまで、例えば賞与の査定に差をつけることもできます。

ただし、慎重に運用しなければなりません。なぜなら、各部門は独立した組織であるようでいて他部門から少なからず影響を受けているものであり、各部門からのアシストについても考慮する必要があります。

各部門の貢献利益を比較する場合、他部門からの好影響(創業からの貢献度合いやブランド価値など)も考えなければなりません。これを考えずに、部門別貢献利益を他部門との比較のために用いると、部門間にあつれきが生じる危険があります。

2)適正な売上管理や労務管理が大前提

管理可能固定費というのは、各部門でコントロールが可能な費用です。部門別業績評価をする場合、各部門の売上管理や労務管理等が適正に行われていることが不可欠です。

例えば、各部門に未払いの残業代があるなどの場合が問題です。もし、部門内でサービス残業が常習化しているような場合、それを管理可能固定費に加味すると貢献利益は異なってきます。また、評価基準を利益に重きを置きすぎたときに生じる売上の粉飾もあります。不正へのきっかけとならないためにも、社員教育の徹底や管理体制の整備も同時に行っていきましょう。

5 練習問題

1.(問題1)

A事業部の売上高は5000万円(変動費率55%)、管理可能固定費は1500万円です。A事業部の貢献利益はいくらですか?

(問題1の回答)

A事業部の限界利益は、売上高の5000万円から変動費の2750万円を引いた2250万円となります。貢献利益は限界利益から、管理可能固定費を引いた利益なので750万円(2250万円-1500万円)となります。

問題1の答え:750万円

2.(問題2)

A事業部に係る費用項目は次の通りです。A事業部の管理可能固定費はいくらですか?

接待交際費180万円、福利厚生費30万円、器具備品の減価償却費80万円、

オフィス賃借料850万円、光熱費100万円、広告宣伝費130万円、旅費交通費200万円、

A事業部の役員給与1000万円、A事業部の従業員給与8640万円

(問題2の回答)

管理可能固定費とは、A事業部がコントロールできる費用です。上記の中では、接待交際費、福利厚生費、光熱費、広告宣伝費、旅費交通費、A事業部の従業員給与となります。なお、役員給与は株主総会(役員個人の給与額については取締役会または代表取締役)の決議事項であるため、管理不能固定費に該当します。

問題2の答え:9280万円

以上(2026年4月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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【朝礼】意見される人になろう

【ポイント】

  • 周囲の人は、「この人にもっと能力を発揮してもらいたい」と考え、意見を言う
  • 意見されるには、周囲の人が意見を言いやすい環境づくりが必要
  • 立場にかかわらず、意見してくれた人には感謝の気持ちを伝える

今朝は、いつも周囲の人から「意見される人」についてお話ししようと思います。周囲の人からいつも意見される人と聞くと、おっちょこちょいで、いつも失敗ばかりしている人や、思慮が足りず周囲から注意される人といった、マイナスの印象を与える人を思い浮かべるかもしれません。一方で、周囲の人は、「この人にもっと能力を発揮してもらいたい」「意見する価値がある人だ」と考え、意見を言います。周囲の人の意見には、自分だけではなかなか気づくことのなかったたくさんのアイデアや視点が含まれています。意見される人は、こうした意見をうまく自分の仕事に反映し、成果を得ているはずです。

豊臣秀吉と竹中半兵衛、本田宗一郎と藤沢武夫といったように、偉人や名経営者と呼ばれる人の隣には名参謀がいます。偉人や名経営者と呼ばれる人も自分だけの能力ではなく、自分に意見してくれる人材、参謀に恵まれたからこそ、十分な力を発揮することができたといえるでしょう。

それでは、周囲の人からいつでも意見される人であるには、どうすればよいのでしょうか。私は「日ごろから相手と意思疎通を図っておく」「いかなる場合も人の話に耳を傾ける」といった、周囲の人が意見を言いやすい環境づくりが必要だと思います。例えば、部下から上司に対して意見があったとしても、忙しそうにしていて話を聞いてもらえる様子がなかったり、以前に意見したときに全く取りあってもらえなかったとすれば、その部下は上司に意見を言うことはないでしょう。

従って、部下を持つ上司は、常日ごろから部下に声をかけたり、意見を求めたりすることが大切です。そして、立場にかかわらず、意見してくれた人には、感謝の気持ちを伝えましょう。時には、耳の痛い意見や、意に沿わない意見もあるかもしれません。しかし、そうした意見を言ってくれる人こそ、あなたのことを真剣に考えてくれている場合が多いものです。

一般的に、担当する仕事量が増えて忙しくなったり、役職が上がって部下の人数が増えたりするといった状況になると、人から意見されにくくなります。どのような状況にあっても、周囲の人から意見される人であるよう、周囲の人が意見を言いやすい環境づくりを忘れないように心がけ、人の意見をうまく取り入れて、自らの糧としていきましょう。

              

以上(2026年4月作成)

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画像:Mariko Mitsuda