1 「地政学的リスク」とは? うちの会社に関係あるの?
「地政学的リスク」とは、
政治的・軍事的な緊張関係や地域紛争など、地理的条件に基づく国際関係の変動によって生じるリスク
を指します。地政学的リスクに起因するサイバー攻撃は、国家が直接的または間接的に関与する高度な攻撃で、最新技術に通じた専門のハッカー集団などによって行われます。
「うちの会社に関係あるの? 外国のハッカー集団に狙われるような情報なんて持ってないよ」と思うかもしれませんが、彼らの狙いは基本的に、会社が保有する情報ではありません。
政府機関や大企業などへのサイバー攻撃に使える「踏み台」として中小企業を利用する
のです。例えば、大企業のサプライチェーンに組み込まれていて、セキュリティ対策が手薄な中小企業が、大企業への侵入経路として狙われることなどがあります。
日本では、ロシア、中国、北朝鮮などの国家をバックグラウンドとするハッカー集団による機密情報の窃取、重要インフラの機能停止、政治的・軍事的優位性の確保、経済的損害などを目的とした活動が観測されています。
IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威2026」では、「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む)」が第6位としてランクイン
しました(初選出の2025年から2年連続2回目)。
この記事では、システム的な脆弱性や、社員の心理的な隙を突かれて、知らぬ間にサイバー攻撃の「踏み台」にならないための対策をお伝えします。
なお、高度な独自技術を保有していたり、防衛・インフラ・通信に関わる重要な部品を製造していたりする場合、データそのものを狙われる恐れもあるので、より一層の注意が必要です。
2 IPA「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」でチェック
孫子の兵法に、「彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆(あや)うし」という一節があります。敵情を知らず、味方の事情も知らないのでは戦うたびに必ず危機に陥るという意味です。
敵(外国のハッカー集団や産業スパイ)の事情は計り知れませんが、その狙いが政府機関や大企業などへのサイバー攻撃に使える「踏み台」であることは事実と考えられます。そうすると、私たちがまずやるべきことは「己を知る」ことです。
ここで、試していただきたいのが、IPAが提供している「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」です。これは、中小企業・小規模事業者の方向けのセルフチェックツールで、25問の質問に回答し、採点結果(100点満点)を基に対策を検討するという流れになっています。
こちらからエクセル形式の質問表をダウンロードできます。
■IPA「5分でできる!情報セキュリティ自社診断Excel版」■
https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/ug65p90000019cbk-att/5minutes.xlsx
スコアを100点に近づけていくための対策を講じることで、自ずとシステム的な脆弱性を減らしていくことができるはずです。
3 心理的な隙が狙われる!
最近は、陸上自衛隊でマルウェアに感染したUSBメモリの使用が続いていたことが発覚し、それを発端とした全国の地方自治体への影響・調査で、禁止されていた私物USBメモリの使用や調達過程でのセキュリティ不備が見つかったという報道もありました。
「国や地方自治体には厳しいルールがあるはずなのに、どうして?」と思うのも当然ですが、結果的に言えるのは、
いくら厳しいルールを作っても、人間である以上「うっかりミス」や「これくらい大丈夫だろうという油断」を100%なくすことは不可能
ということです。
また、2026年7月に放送されたNHKのドキュメンタリー番組では、関係者(日本の会社員や研究者など)への取材を基に、外国の産業スパイが、
SNSでのやり取りや、何気ない会食をきっかけに信頼関係を築き、相手の承認欲求や不安、悩みにつけ込みながら協力者へと取り込んでいく
という巧妙な手口が明らかにされました。
例えば、どこかの展示会でノベルティとして「USBメモリ」をもらったり、行きつけの飲食店で知り合った顔見知りの人にプレゼントをもらったりしたことはないでしょうか? 日常シーンでありそうな出来事が、国家規模のハッカー集団や産業スパイの活動につながる可能性を疑わないといけない、そんな時代であることも頭の片隅においておくとよいでしょう。
4 組織と情報を守るチェックリスト
1)経営者・マネジメント層向け
| チェック項目 | 済 |
|---|---|
| 重要データの「アクセス権限」を最小限に絞っているか | □ |
| 退職者のアカウントやIDを「即座に削除」しているか | □ |
| 万が一の「データ破壊」に備えて、物理的に切り離したバックアップを取っているか | □ |
| USBメモリは原則禁止(会社支給の「セキュリティ専用USBメモリ」のみ使用可)としているか | □ |
2)従業員向け
| チェック項目 | 済 |
|---|---|
| LinkedInやFacebookなどでの「見知らぬ人からのアプローチ」を警戒しているか | □ |
| 会食や異業種交流会で、自社の「未公開技術や愚痴」を話していないか | □ |
| 取引先や上司からの「急ぎの指示メール(URL・添付ファイル)」を鵜呑みにしていないか | □ |
| 私物のUSBメモリを業務に利用していないか | □ |
以上(2026年7月作成)
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画像:日本情報マート



















