近年、カスタマーハラスメントを巡る法制度は国・自治体レベルで整備が進み、企業には従業員保護を前提とした対応が求められています。しかし、従来のクレーム対応との違いや実務対応の整理が十分でない企業も少なくありません。
そこで本稿では、指針の内容を踏まえ、事前の体制構築からトラブル発生時の具体的対応までを実務的に解説します。
ビジネス文書・法令文書 今月の特集は、こちらからお読みいただけます。
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近年、カスタマーハラスメントを巡る法制度は国・自治体レベルで整備が進み、企業には従業員保護を前提とした対応が求められています。しかし、従来のクレーム対応との違いや実務対応の整理が十分でない企業も少なくありません。
そこで本稿では、指針の内容を踏まえ、事前の体制構築からトラブル発生時の具体的対応までを実務的に解説します。
ビジネス文書・法令文書 今月の特集は、こちらからお読みいただけます。
目次
2026年度に入り、厚生労働省からさまざまな助成金の情報が公表されています。ここ数年は助成金の制度拡充が続いていて、中小企業にとっては魅力的ですが、数が多くて分かりにくいという声も……。そこで、助成金を採用・育成・育児サポートなど6つにカテゴリ分けし、活用方法と「最大でいくらもらえるのか」をまとめました。
この記事で紹介している助成金は次の通りです。
本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。
この記事で紹介している助成金は次の通りです。
本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。
この記事で紹介している助成金は次の通りです。
本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。
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本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。
この記事で紹介している助成金は次の通りです。
本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。
以上(2026年5月作成)
pj00821
画像:日本情報マート
目次
「人に伝えて、動いてもらう」ことは社長の重要な仕事です。その手段の1つがスピーチなので、社長はスピーチの腕を磨こうとします。交流会や講演会などで上手なスピーチを聞くと、「すごい! 自分もあのように話したい」とエッセンスを学びますし、下手なスピーチを聞いたときも、自分のスピーチと比較して顧みます。
しかし、こうした努力をしていてもスピーチは簡単ではなく、
自分の話が社員に全く伝わらない
と感じてしまうことが多いです。筆者もその一人で、スピーチのテクニック本を読んでは実践しますが、やはり手応えがありません。ただ、そうした経験を重ねていくと、
伝わるスピーチの条件
がぼんやりと見えてくることもあります。この記事では、筆者の泥臭い経験から分かってきた「伝わるスピーチの条件」をご説明していきます。少しでも皆さまのヒントになれば幸いです。
筆者はセミナーやプレゼンテーション(プレゼン)のような「説明系」スピーチは得意ですが、組織を鼓舞し、人を動かすような「伝導系」スピーチには苦手意識があります。
以前、中期経営計画を社員に熱く説明したときのことです。説明の自己評価は上出来で、組織が向かうべき方向をしっかりと共有できたと思いました。しかし、社員の反応は薄く、1つも質問が出ませんでした。そのことを社長仲間に話すと、「それだけ【説明】が上手だったということじゃない?」と半ば冗談交じりに言われ、落ち込んだものです。

ところが、後日、伝わるべき社員にはしっかり伝わっていたことが分かりました。明らかにやる気を出している社員がいるのです。声をかけてみると、「社長が説明してくれた中期経営計画を達成するために、営業活動を進めています」と話してくれました。
別の経験もあります。グループの親会社に予算の承認を得るためのプレゼンをしたときのことでした。説明はたどたどしく、言葉がうまく出てこないところもあり、我ながら「ひどい内容だ」と落胆していました。
大失敗と思っていたのですが、反対にその会の参加者の中で私のことが良い意味で噂になっていました。「経営者としての覚悟がひしひしと伝わってきた」というもので、私の株が上がったようなのです。
これら2つの経験から分かったのは、
スピーチが伝わったかどうかの自己評価は、意外と当てにならない
ということです。自己評価が外れてしまうのは、
自身が考える「上手なスピーチの基準に当てはめて採点しているから」
に他なりません。スピーチをするのは自分ですから、自分が思う「上手なスピーチ」をしなければ相手に伝わらないと考えるのは当然です。しかし、スピーチは聞き手ありきですから、そこも意識しなければなりません。次章で別の事例を挙げながらさらに深掘りしていきます。
唐突ですが、幼稚園児など小さな子どもが運動会で開会の挨拶をするシーンを想像してみてください。子どもは、「先生、お父さん、お母さん、ありがとう!」「けがをしないように頑張ります!」といったシンプルなメッセージを伝えてきます。途中でつかえたり、内容を忘れて先生に助けてもらったりすることもあります。
「上手なスピーチ(挨拶)」の一般的な基準で評価すれば、こうした子どもの挨拶の点数は低いです。それなのに、聞いている保護者が涙ぐむほど心の琴線に触れています。知らない子どもの挨拶でさえ心を打たれます。このような状態になるのは、
聞き手側の「聞く準備」がしっかりと整っているから
です。
宗教の話をしたいわけではなく1つの例として挙げるのですが、仏教には「対機説法(たいきせっぽう)」という考え方があります。これは、
相手の理解力・経験・心の状態・置かれている状況に合わせて、伝える内容や伝え方を変える
というものです。「仏教の教えはそれを求めている人にしか伝わらない」とも言われ、そのことは対機説法と関連していて、
言葉そのもの(「音」としての言葉)は誰にでも届くが、その意味が「自分ごと」として心に染み入るのは、本人に内容を受け取る準備や必要性があるときだけ
ということになります。
先ほどの小さな子どもの例で言えば、保護者は、
ということになります。聞き手である保護者に、小さな子どもの挨拶を受け取る準備と必要性は十分にあるということです。
冒頭で紹介した中期経営計画の例についても同様です。
といった状況です。
次章では、「受け取る準備」についてもう少し詳しくご説明します。
筆者には、お師匠さまと呼べる方が3人います。もとの上司、人としての生きざまを示してくれる社外上司、私に社長たる者の在り方を教えてくれた社長仲間です。これらお師匠さまの言葉は、いつ何時でも、私の心に響きます。表現を変えると、
私には常に、お師匠さまの言葉を受け取る準備と必要性が十分にある
ということです。とはいえ、この3人は最初からお師匠さまだったわけではありません。それなりに長いお付き合いの中で、「この人はすごい。いつも私に真摯に向き合ってくれて、道を示してくれる」と何度も感じたからこそ、お師匠さまになったのです。
社員とこうした関係を作ることができれば、伝わるスピーチがしやすくなります。社員にお師匠さまとまで尊敬される必要はないでしょうが、仕事はもちろん人間性においても「社長はすごい!」と感じてもらえたら理想的です。

先ほど、私は「説明系」スピーチは得意ですが、「伝導系」スピーチが苦手であるとお伝えしました。このことを2人の社員に打ち明けたことがありますが、反応は全く違いました。1人は「そうですか? しっかり伝わっていますよ」と笑顔を見せてくれました。もう1人は「そうですね。確かにそうかも」と納得していました。私はどちらの社員にも「伝導系」スピーチをしてきましたが、前者の社員のほうが良い関係を作れていたのかもしれません。もちろん、私を慮ってのこともあると思いますが。
伝わる社員には伝わるし、伝わらない社員には伝わりません。ですから、「伝わりやすい関係を社員と築くこと」が大切なのです。
注意したいのは、聞き手に受け取る準備や必要性があっても、それが一瞬で失われることがあるということです。
以前、社員を連れてある講演会に参加したときのことです。登壇者は、いわゆる昭和的なノリで話し始めました。冒頭のつかみも、今の時代では「不適切」と受け取られかねない内容でした。ただ、話を聞き続けていると話し手には情熱があり、響くものもあります。しかし、同行した社員は、冒頭数秒の不適切なつかみで「この人は違う」「嫌いだ」と感じてしまい、その後の話を一切受け入れられなくなっていました。
ここで学ぶべきことは、せっかく相手に受け取る準備や必要性があっても、話し手のちょっとしたミスで一瞬にして嫌われ、心を閉ざされてしまうこともあるという事実です。今回のミスは「不適切なつかみ」でしたが、その他にも「話し方、声、ジェスチャー、服装」など、相手が聞く気を失ってしまうことはたくさんあります。一般的な内容でありますが、スピーチで注意したほうがよいことを巻末に一覧表でまとめているのでご確認ください。
最後に、最も大切なことをお伝えします。それは、
受け取る準備と必要性が大きければ大きいほど、伝わり方は強くなるし、伝わらないときの落胆度合いも大きくなる
ということです。
筆者は、このことで大切な社員を失った経験があります。相手は人生をかけて、私に今後の会社の方針を尋ねてきました。その社員は幹部で、受け取る準備と必要性は十分過ぎるものでした。私も真摯に向き合わなければと思い、会社の成長性と戦略について数字を交えて説明しました。しかし、その幹部社員には全く響かず、結局、離職してしまいました。
今にして思えば、その幹部社員は「自分の存在意義」を確認したかったのだと思います。当時、その幹部社員はナンバー2でしたが、ナンバー3が台頭してきたこともあり、寂しさと、やりにくさを感じていたはずです。そのひっかかりさえ解消できれば、その幹部社員はたとえ会社の状態がどれだけ厳しくなっても私を支えてくれたことでしょう。私はその幹部社員に、「あなたは会社にとってなくてはならない存在である」ことをもっとダイレクトに伝えるべきだったです。
相手に伝えるときの基本として、
相手が求めていることを話して期待を裏切らない
ということも忘れてはならないのです。
最後に、一般的なスピーチのチェックポイントを紹介するので、参考にしてください。
(図表)【「上手なスピーチの基準」の例】
| 要素 | 定義 | 主なチェックポイント | 熱量への影響 | 改善のポイント | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 話し方 | どのように伝えるか | 声量、スピード、抑揚、間、視線、表情、身振り | 第一印象と感情伝達を大きく左右する | 重要箇所の前に間を置く、抑揚をつける、視線を配る |
| 2 | 話す内容 | 何を伝えるか | 主張、目的、背景、結論、行動喚起 | 話の軸がぶれると熱量が伝わりにくい | 結論→理由→具体例→行動の順で整理する |
| 3 | 話す言葉 | どの言葉を選ぶか | 具体語、感情語、断定表現、短いフレーズ | 言葉選びで温度感と説得力が決まる | 抽象語を減らし、短く強い言葉を使う |
| 4 | 話す場所 | どこで話すか | 会議室、ホール、現場、オンライン | 場の空気が言葉の重みを増幅する | テーマに合う場所を選ぶ |
| 5 | 話すタイミング | いつ話すか | 危機時、節目、成功直後、朝礼、キックオフ | 同じ内容でも刺さり方が変わる | 相手の感情が高まる瞬間に合わせる |
| 6 | 話す人の見た目 | 誰がどう見えるか | 服装、姿勢、清潔感、表情、立ち方 | 信頼感と覚悟が伝わる | 場に合わせた服装、姿勢を整える |
| 7 | 聞き手との関係性 | 誰に向けて話すか | 社員、顧客、経営層、取引先 | 言葉の距離感と共感度に影響する | 相手の立場に合わせて言葉を変える |
(出所:日本情報マート作成)
これらはスピーチにおいて大切な基本です。これらを踏まえることは言うまでもないですが、その前段として、
日頃から社員と真摯に向き合い、「社長の話を聞きたい」と思ってもらえること
が重要です。こうした関係性さえ築けていれば、相手に十分に伝わります。つまり、スピーチの成否は「実は話し始める前から決まっている」ともいえるのです。
以上(2026年5月作成)
pj10099
画像:日本情報マート
接客の仕事に従事していれば、誰しも一度は「迷惑なお客」に出会ったことがあるでしょう。ある程度は我慢するとしても限度はあり、なかには
「出禁」(迷惑行為をしたお客に対して、今後の入店を断る対応)にしたい相手
もいるかもしれません。
「出禁ってそもそも法的にどういう扱いなの?」と疑問に思う人もいると思いますが、結論から言うと、実は出禁のルールは、法律で明確に定められているわけではありません。民法には「契約自由の原則」というものがあって、
「どの程度の迷惑を被ったら出禁にするのか」は、基本的にはお店側の裁量で決めてしまって問題ない
とされているのです。もちろん、性別や国籍などを理由とする不当な差別は問題になりますし、医療やインフラ関係など公共性が極めて高い分野では、正当な理由なく応対を拒否することが法律で禁じられていますが、そうした例外を除くと、出禁にする(しない)は、基本的にお店の自由なのです。
とはいえ、お店側に裁量が認められるとしても、「そうは言っても、お客はお客だし……」「逆恨みされたら面倒だなあ」と、気がとがめる部分もあるはずです。となると、やはり気になってくるのは、
実際に出禁を行ったお店のリアルな声
でしょう。
今回は、実際にお客を出禁にしたことのある飲食店や美容院に、
という項目で、聞き取り調査を行いました。「出禁」の事例としてご紹介しますので、参考にしてください。また、第3章では最近の出禁措置ツールとしてどんなものが存在するのかについても、併せてご紹介します。
ここでは、3つの聞き取り調査の結果を紹介します。出禁にした理由も方法も、店にとってさまざまですので、ぜひ参考にしてみてください。
「当店では、会社さまの接待交際費の上限を考えて、コース+ドリンクの料金を設定しているのですが、あるお客さまが、酒類をたくさん飲み、予算をオーバーしました。そのお客さまは、会計の際に『これじゃあ、接待交際費に収まらない。次も来てあげるから、今日は1万5000円以内に負けてくれ』と言い、何度断っても引き下がりませんでした。言い合いが白熱してきたので、その場は他のお客さまへの影響も考え、接待交際費の範囲内で領収書を切りましたが、同じことを繰り返されては困るので、出禁にさせていただきました」
「会計の際に名刺をいただき、『このお客さまから電話がかかってきたら断るように』と従業員に共有しました。その後も、同じお客さまから予約の打診が続きました。断るたびに怒ってきたため、最終的には角が立たないよう、『会社さんごとお断りしています』と告げました」
「『会社さんごとお断りしています』と告げて以降、そのお客さまは店に現れていません。言い合いなどに時間を取られることがなくなり、他のお客さまも安心して過ごせるようになったので、そこは良かったです。ただ、『会社ごとお断りしている』と告げたことついては、相手が大きな会社ということもあって、今後同じ会社のお客さまの予約が減るかもしれないと、少し気にしています。」
「当店では、常連のお客さまに限り、ツケ(その場で支払いせず、後々まとめて支払うこと)を認めています。しかし、あるお客さまの中に、ツケを繰り返すも、一向に料金を支払ってくれない方がいらっしゃいました。その方は出禁にさせていただきました」
「そのお客さまが来店した際、『(ツケを支払っていないので)お帰りください』と告げ、退店していただきました」
「その後、ツケの回収には成功しました。その常連さまとは疎遠になり、連絡も取らなくなりました。たまに安否が気になりますね」
「⾧時間かかる施術メニューで予約をしていたにもかかわらず、当日に無断で予約をキャンセルするお客さまがいました。無断キャンセルでない場合も、『今月はお金がないのでキャンセルしてください』とドタキャンされることが多く、困っていました」
「当日に無断キャンセルをされた際、キャンセル料をいただきました。すると、その後は予約の連絡が来なくなりました。今後、仮に同じお客さまから予約の電話があったとしても、お断りする方針でいます」
「スタッフのストレスが軽減され、無断キャンセルなどによる機会損失(時間やコストが無駄になる)がなくなりました」
最後に、出禁にはしていないものの、困っているという美容院の事例を紹介します。
「⾧年の常連さんが認知症になってしまい、予約したのを忘れてしまい当日に来店しなかったり、逆に予約をしていないのにふらっと現れて『髪を切って欲しい』と言ったりして、困っています」
「常連さんなので、できれば出禁にはしたくないです。来店された際に席と時間の空きがあれば対応するくらいしかできませんが、『今後の予約の受付については対応を考えなければいけないな』とは思っています」
ここまで紹介した事例からも分かるように、出禁の判断や実行は、現場スタッフにとって少なからず精神的な負担を伴いますが、最近ではテクノロジーを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の手法で、よりスマートに出禁の管理を行えるようになっています。
特に飲食店などは、昔ながらの予約台帳や店主の裁量で顧客の管理を行っていることも多いですが、出禁の管理をDX化することで属人的な判断によるトラブルを防ぎ、現場の負担も減らすことができます。システム導入を検討してみるのも一手でしょう。
例えば、次のような対応が考えられます。
過去にトラブルを起こした人物をデータベースに登録しておくことで、当該人物が入店した際にスタッフの端末へ通知が飛びます。
系列店舗やツールの利用店舗全体でトラブル情報をリアルタイム共有し、予約段階でブロックします。
迷惑行為時の出禁措置を明文化し、チェックを入れることで法的な合意形成を行います。
音声付きの鮮明な映像をクラウドに保存し、警察や弁護士への証拠提出を迅速化します。
以上(2026年5月作成)
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画像:日本情報マート
目次
事業承継税制とは、
中小企業の後継者が先代経営者などから自社株式を贈与または相続などによって取得した場合、その自社株式に係る相続税・贈与税の納税が猶予・免除される制度
です。事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」があります。特例措置のほうが次のように税負担を減らす効果が高いので中小企業にとって有利です。
なお、令和8年度税制改正により、
特例措置を受けるために必要な特例承継計画の提出期限は2027年9月30日までに延長
されました(改正前は2026年3月31日まででした)。事業承継税制には法人版と個人版がありますが、この記事では法人版事業承継税制について解説しています。
事業承継税制の特例措置を受けるには、
2027年9月30日までに、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「円滑化法」)に基づき、特例承継計画を都道府県知事に提出
し、確認してもらわなければなりません。
次に、自社株式について贈与税・相続税の納税猶予および免除の特例の適用を受けるには、
贈与税は贈与した年の翌年1月15日まで、相続税は相続開始後8か月以内に、円滑化法に基づき、特例認定承継会社として認定
を受けなければなりません。認定を受けるには、必要書類を添付して、主たる事務所(本社など)の所在地の都道府県知事に申請しなければなりません。また、期限内申告を行い、かつ担保(納税猶予の対象となる自社株式など)の提供が必要になります。
対象会社の主な要件は、
です。なお、円滑化法で定義する中小企業者は次の通りです。

先代経営者の主な要件は、
です。
後継者の要件は、贈与・相続共通の要件と、それぞれ異なる要件があり、
です。
自社株式について相続税の納税猶予および免除の特例を受けるには、所定の書類を添付した相続税の申告書に、納税猶予の特例措置を受けようとする旨を記載します。これにより要件を満たし続ければ納税猶予が継続し、後継者が死亡したときなどに納税が免除されます。
同様に、自社株式について贈与税の納税猶予及び免除の特例を受けるには、所定の書類を添付した贈与税の申告書に、納税猶予の特例を受けようとする旨を記載します。これにより贈与者である先代経営者が死亡するまで納税が猶予されます。
贈与者である先代経営者が死亡した場合、贈与を受けた自社株式は後継者が相続したものとみなされます。ただし、自社株式の価額は贈与を受けた時点の価額とされます。この相続の際、相続税の申告書に「非上場株式等の特例贈与者(先代経営者)が死亡した場合の相続税の納税猶予および免除の特例」の適用を受けようとする旨を記載します。これにより、相続人である後継者が死亡するまで相続税の納税が猶予され、後継者が死亡したときも納税が免除されます。
納税の猶予を受けるには、相続税・贈与税の申告書の提出期限までに、納税猶予分の相続税額・贈与税額に相当する担保を提供しなければなりません。担保となるのは、不動産、国債・地方債、一定の有価証券などですが、納税猶予の対象となるオーナー企業の自社株式の全部を提供することで、必要な担保の提供があったものとみなされます。
贈与税・相続税申告後の納税猶予期間中、引き続き納税猶予制度の適用を受けるためには、5年間、毎年一定の書類を添付した「継続届出書」を税務署に、「年次報告書」を都道府県知事に提出し続けます。また、5年経過後は3年ごとに「継続届出書」を所轄の税務署に提出します。
次の場合、納税が猶予されている贈与税か相続税の一部または全部を納付しなければなりません(一定の場合には、納税猶予額に加えて利子税も併せて納付する必要があります)。
特例経営承継期間(原則、この制度の適用を受ける贈与税・相続税の申告期限の翌日から5年がすぎるまでの期間)が過ぎた後に事業の継続が困難な一定の事由が生じ、自社株式を譲渡等した場合、
猶予されていた相続税・贈与税の納税額は、当初の納税猶予額ではなく、譲渡等の対価の額(解散の場合は解散時の相続税評価額)を基に再計算
されます。また、譲渡前5年以内に後継者やその家族など(「同族関係者」という)に支払われた配当や高すぎる役員報酬に相当する額(以下「直前配当等の額」)については、再計算した相続税額・贈与税額に加えなければなりません。
再計算した相続税額・贈与税額に直前配当等の額を加えた金額が、当初の納税猶予額を下回った場合、その差額は納税を免除され、免除された部分以外は利子税を添えて納付します。ただし、免除される金額は、対象会社の相続税評価額の1/2に相当する金額に基づいて計算した金額までとなっています。
譲渡等の対価の額が、対象となる会社の相続税評価額の1/2相当額を下回る場合でも、担保の提供を条件に、譲渡等をしたときに再計算した納税額は一旦猶予されます。そして、譲渡等をした後、2年を経過する日まで事業が継続しており、かつ譲渡等の際に雇用していた社員数(常時使用従業員)の半分以上をキープしている場合、特例措置が受けられます。
特例措置を受けられる金額は、譲渡等の対価の額を基に再々計算した相続税額・贈与税額に、直前配当等の額を加えた金額が相続税・贈与税の納税額となり、差額が免除されます。

最後に、参考として事業承継税制の一般措置と特例措置の主な違いをまとめた表を紹介します。

以上(2026年5月更新)
(監修 税理士 石田和也)
pj30044
画像:Mariko Mitsuda
目次
非正規社員(パート等)の待遇改善や社会保障の強化に向けて、
社会保険に加入できる短時間労働者の範囲の拡大(社会保険の適用拡大)
などが進められています。国を挙げて正社員と非正規社員の格差の是正が推し進められる中、会社でも非正規社員の待遇の見直しが必要になってきています。とはいえ、賃上げや就業規則等の変更にはコストがかかるもの。そこでおすすめしたいのが
非正規社員のために一定の取り組み、所定の要件を満たした場合に受け取れる「キャリアアップ助成金」
を活用することです。以降で、制度概要と申請上のポイントを専門家が解説します。この以降で出てくる言葉の定義は次の通りです。
なお、助成金の内容は、2026年4月8日時点のもので、将来変更される可能性があります。申請書の書き方や添付書類などについては、次のURLをご参照ください。
就業規則等に基づき、非正規社員(有期雇用労働者または無期雇用労働者)を正社員に転換し、転換後に一定以上賃金を増額した場合、助成金を受け取れるコースです。
この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。
なお、「キャリアアップ計画」とは、
非正規社員のキャリアアップを図る上での目標や会社の取り組みに関する計画のこと
です。キャリアアップ助成金ではどのコースでも、この計画書の提出が必須となります。
また、「重点支援対象者」とは、次のa~cのいずれかに該当する人を指します。
a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者
b:雇入れから3年未満で、次のいずれにも該当する有期雇用労働者
c:派遣労働者、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
次の額を定額で受け取れます。

仮に中小企業が重点支援対象者に該当する有期雇用労働者20人を正社員化し、正社員転換制度・多様な正社員制度・情報公表に関する加算要件も満たした場合、1年度・1事業所当たり最大1680万円を受給できる計算です。ただし、これらの加算はそれぞれ1事業所1回限りであるため、毎年度同じ加算額を受け取れるわけではありません。
重点支援対象者については、助成金の支給が手厚くなるので、社内の有期雇用労働者に該当者がいないか確認してみましょう。派遣労働者を正社員化する場合にも使える助成金です。ただし、新規学卒者で雇入れ日から雇用期間が1年未満の者については、正社員化した場合であっても支給対象外となります。
また、本コースは就業規則の不備による不支給が起こりがちですので、
を必ず確認してください。「賞与は支給しない。ただし、業績によっては支給することがある」といった曖昧な規定では支給対象外となります。
なお、正社員化時に試用期間を設ける場合、「試用期間中は正社員化が完了したとみなされない」ため、賃金3%増額の起算日が試用期間終了日の翌日となる点に注意が必要です。トラブルを避けるためには、「有期雇用または無期雇用から転換した者には試用期間を設けない」旨を就業規則に明記しておくとよいでしょう。
有期パート等の基本給を3%以上増額するように賃金規定等を改定し、その規定を適用させた場合、賃上げをした有期パート等の人数に応じ、助成金を受け取れるというものです。
まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。「キャリアアップ計画」は、有期パート等のキャリアアップを図る上での目標や会社の取り組みに関する計画、「賃金規定等」は、就業規則の賃金規定、賃金テーブル、賃金一覧表等のことをいいます。
なお、助成金は賃上げをした有期パート等の人数(1年度1事業所当たり100人が上限)に応じて支給されますが、対象となるのは、
雇用保険の被保険者で、賃金規定等の改定の3カ月以上前から勤務している有期パート等だけ(助成金の申請時点で離職している者等を除く)
なので注意が必要です。ちなみに、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、雇用期間の見込みが31日以上ある人が、雇用保険の被保険者になります。
会社も有期パート等も要件を満たしている場合、6カ月分の賃金を支給した日の翌日から2カ月以内に都道府県労働局に申請をすれば、助成金を受け取れます。
「賃上げ率に応じた支給額」を定額で受け取れます。また、職務評価(職務の大きさを相対的に把握すること)を実施し、適正に有期パート等の賃金規定等に反映した場合、別途加算が受けられます。

仮に中小企業が1年度・1事業所当たり100人に対して6%以上の賃上げを実施し、職務評価加算と昇給制度加算の要件も満たした場合、最大740万円を受給できる計算です。
賃金規定等を3%以上増額改定する場合でも、
基本給以外の諸手当等を減額している場合は、支給対象とならない
ので注意が必要です。
また、賃上げの実施前にキャリアアップ計画を作成・提出しないと、この助成金は受け取れません。また、労働保険料の未納や労働関係法令の違反がある会社は、助成金の対象から外れる恐れがあります。なお、
「業務改善助成金」の賃上げ対象にした社員は、賃金規定等改定コースの対象にカウントすることができない
ので注意が必要です。業務改善助成金については、こちらの記事をご確認ください。
いわゆる「年収の壁」対策を目的としたコースです。社会保険の適用要件を満たすよう、短時間労働者の週所定労働時間を延長し、賃金も増額する等の処遇改善を行う会社を支援します。
次の要件などを満たす必要があります。
次の額を定額で受け取れます。支給申請人数の上限はありません。

要件を満たした場合、小規模企業では1人当たり最大75万円を受給できる計算です。なお、1年目と2年目の取組内容、企業規模によって支給額は異なります。
本コースは、単年の取り組みによる申請が原則ですが、すぐに支給要件を満たす事が難しい会社については、複数年かけて支給要件を満たした場合による申請が認められています。ただし、その場合、キャリアアップ計画書で定める「キャリアアップ計画期間」(3年以上5年以内の期間で任意で設定)内で取り組みを実施する必要があるため、余裕を持ってキャリアアップ計画書を提出しておく必要があります。
また、本コースの前身にあたる「社会保険適用時処遇改善コース」は2026年3月31日をもって暫定措置が終了しました。すでに旧コースで取り組みを進めていた会社でも、まだ支給申請をしていない労働者については、本コースへの切り替え申請が認められる場合があるため、該当する会社は管轄の労働局またはハローワークに早めに確認しましょう。
非正規社員について、正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成して適用した場合に助成を受けられるコースです。
会社が次の要件などを満たす必要があります。
次の額を定額で受け取れます。

中小企業の場合、60万円を受け取れます。
正社員が月給制、非正規社員が時給制の場合、非正規社員の賃金規定等を正社員と共通化するに当たって、「正社員の月給の時給換算額 ≦ 非正規社員の時給」になるように賃金テーブル等を作成する必要があります。時給換算のイメージは次の通りです。
正社員の月給 ÷ 正社員の月の労働時間数(注) ≦ 有期雇用労働者等の時給
(注)正社員の1日の所定労働時間×月平均労働日数(週の所定労働日数×52÷12)
なお、共通化する賃金規定等については、それぞれ3区分(等級)以上を設け、そのうち共通する区分が2区分以上である必要があります。
また、賃金規定等の共通化に当たっては、「適用前と比べて基本給および定額で支給されている諸手当を減額していないこと」が要件となります。共通化を機に正社員側の賃金体系を見直すと、結果的に減額となってしまい支給対象外となるケースがあるため、共通化の設計には慎重を期す必要があります。
全ての非正規社員を対象とする賞与・退職金制度を導入し、支給または積み立てを実施した場合に助成を受けられるコースです。
会社が次の要件などを満たす必要があります。
次の額を定額で受け取れます。

中小企業の場合、最大56.8万円を受け取れます。
退職金については制度導入に際して、
積立・拠出費用を事業主(会社)が負担する制度であることを明記
する必要があります。なお、定年の適用を受けない有期雇用労働者については、年齢に関係なく退職金制度の対象とする制度でなければなりません(非常に短期間の雇用契約である場合は除きます)。ただし、定年の適用を受ける無期雇用労働者については、定年年齢までで構いません。
また、過去に「旧諸手当制度共通化コース」「旧諸手当制度等共通化コース」の助成金の支給を受けている場合は、本コースの支給対象外となります(健康診断制度を新たに設け、実施した場合の助成のみを受けている場合を除きます)。
以上(2026年5月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)
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目次
物価高の影響等から、賃上げ(定期昇給やベースアップ)に向けた動きが活発になっています。2026年春闘の動向を見ても、賃上げ率は2024年・2025年に引き続き、「5%以上(定期昇給相当分を含む)」と高水準です。
一方で、多くの経営者は「先行きが不透明で、簡単には賃上げができない……」と不安を抱えています。一度賃金を引き上げてしまうと簡単には引き下げることができないのが現状です。賃上げは簡単でも、賃下げは「労働条件の不利益変更」等の問題が絡み、経営者の一存での対応は非常に難しいので、不安になるのも無理はありません。
そこでご提案したいのが、助成金を上手に活用し、賃上げによるコストアップの補填に充てることです。例えば、中小企業の場合、
有期パート等(契約期間の定めがある非正規雇用の社員)の基本給を3%以上増額すると、最大740万円を受け取れる
のをご存じでしょうか。これは「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)」というものですが、他にも賃上げに関する助成金があります。
以降で、中小企業(雇用保険の適用事業主であることを前提とする)向けの助成金を取り上げ、支給額や要件等の情報に加え、専門家のワンポイントアドバイスも併せて紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。
なお、助成金の内容は、2026年4月22日時点のもので、将来変更される可能性があります。申請書の書き方や添付書類等については、各章で紹介しているURLをご参照ください。また、いわゆる「賃上げ促進税制」については、こちらのコンテンツをご確認ください。
有期パート等の基本給を3%以上増額するように賃金規定等を改定し、その規定を適用させた場合、賃上げをした有期パート等の人数に応じ、助成金を受け取れるというものです。
まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。「キャリアアップ計画」は、有期パート等のキャリアアップを図る上での目標や会社の取り組みに関する計画、「賃金規定等」は、就業規則の賃金規定、賃金テーブル、賃金一覧表等のことをいいます。
ちなみに、既存の賃金規定等を改定した場合だけでなく、新たに規定を作成した場合であっても、過去3カ月の賃金実績と比較し3%以上増額していれば助成の対象となります。
なお、助成金は賃上げをした有期パート等の人数(1年度1社当たり100人が上限)に応じて支給されますが、対象となるのは、
雇用保険の被保険者で、賃金規定等の改定の3カ月以上前から勤務している有期パート等だけ(助成金の申請時点で離職している者等を除く)
なので注意が必要です。ちなみに、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、雇用期間の見込みが31日以上ある人が、雇用保険の被保険者になります。
会社も有期パート等も要件を満たしている場合、6カ月分の賃金を支給した日の翌日から2カ月以内に都道府県労働局に申請をすれば、助成金を受け取れます。
「賃上げ率に応じた支給額」(具体的には図表1の額)を定額で受け取れます。また、職務評価(職務の大きさを相対的に把握すること)を実施し、適正に有期パート等の賃金規定等に反映した場合、別途加算が受けられます。

仮に中小企業が100人に対し、6%以上の賃上げを実施した場合、加算額も含めると、1年度につき最大740万円を受け取れる計算になります。
賃金規定等を3%以上増額改定する場合でも、
基本給以外の諸手当等を減額している場合は、支給対象とならない
ので注意が必要です。なお、増額改定とする制度設計は、申請者だけでなく、原則として全ての有期パート等を対象とする必要があります(ただし、合理的な理由があれば、一部に限定した改定・昇給であっても対象と認められるとされています)。
また、賃上げの実施前にキャリアアップ計画を作成・提出しないと、この助成金は受け取れません。また、労働保険料の未納や労働関係法令の違反がある会社は、助成金の対象から外れる恐れがあります。なお、
第3章で紹介する「業務改善助成金」の賃上げ対象にした社員は、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の対象にカウントすることができない
ので注意が必要です。
会社(実際は支店等の事業場単位)が事業場内最低賃金(最も賃金が低い社員の時給)を50円以上引き上げ、生産性を向上させるための設備投資等を行った場合、その費用の一部について助成金を受け取れるというものです。こちらは中小企業・小規模事業者だけが対象です。
まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。
要件を満たしている場合、「賃上げの計画」「設備投資等の計画」を作成し、都道府県労働局に提出します。交付が決定されたら、計画に沿って賃上げと設備投資等を実施し、都道府県労働局に結果を報告すれば、助成金を受け取れます。
なお、賃上げの対象は雇用保険被保険者に限定され、助成金の対象になる設備投資等の例としては、次のようなものが挙げられます。
「助成上限額」までの範囲内で、「設備投資等の費用×助成率」で計算した額(具体的には図表2の額)を受け取れます。なお、「社員数30人以上」か「社員数30人未満」によって、助成上限額が一部異なる場合があります(図表2の赤字部分参照)。

要件を満たす場合、最大600万円を受け取れる計算になります。
業務改善助成金における賃上げとは、全ての賃金の合計額をみて、所定の額以上の引き上げがされているものをいいます。そのため、
手当等を減額して基本給を引き上げた場合でも、ただちに助成金の対象から除外されるものではない
とされています。キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)とは、賃上げの考え方が少し異なるため、注意が必要です。
事業場内最低賃金の計算に含まれるのは、「毎月支払われる基本給と諸手当(職務手当、役職手当、住宅手当等)」だけで、時間外勤務手当(残業代)や賞与、通勤手当、家族手当などは対象外です(地域別最低賃金と同じ)。
ただし、事業場内最低賃金の計算の基礎に含まれないからと言って、通勤手当や家族手当などを減額や廃止するのは考えものです。その分の額を基本給などの引き上げに回したとしても、賃金全体の総額で見た場合に各コース所定の引き上げ額を下回っていると、賃上げとは認められません。
助成金の申請時に、賃上げ対象となる社員(必要がある場合は他の社員も)について、賃金台帳を基に実際の支給状況を確認されることがあるので、自社の賃金形態をあらかじめ確認しておきましょう。
なお、2026年度の交付申請は、2026年9月1日からスタートしますが、
締切は地域別最低賃金の発効日(2026年10月1日以降、各都道府県で随時発効。2026年11月30日以降の発効になる場合は、11月30日が締切)となっていて、申請期間が短い
です。また、
賃上げは、2026年9月1日から地域別最低賃金の発効日の前日までの間に行う
必要があるので、申請前に賃上げを実施してしまわないよう注意しましょう。
社員の離職率を低下させるために、
の措置のいずれかを実施し、離職率が低下した場合に助成金を受け取れるというものです。
まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。「雇用管理制度等整備計画」は、雇用管理制度や業務負担軽減機器等の導入に関する計画のこと、「評価時離職率算定期間」は、計画期間終了から1年経過するまでの期間のことで、この期間に離職率の変化を評価します。
上記の要件を満たした上で、評価時離職率算定期間が終了してから2カ月以内に、都道府県労働局に結果を報告すれば、助成金を受け取れます。
雇用管理制度については「制度の内容に応じて定められた額」を定額で、雇用環境整備については、「対象経費の2分の1に相当する額」を受け取れます(いずれも上限額あり)。
また、このコースでは計画期間中に、雇用管理制度・雇用環境整備の対象者について、「毎月決まって支払われる賃金を5%以上(一定の要件を満たす場合は3%以上)賃上げ」すると、加算が受けられます。なお、雇用環境整備に限り、7%以上の高い賃上げを実施した場合は更に高額な加算を受けることができます。

雇用管理制度・雇用環境整備の措置を両方実施し、なおかつ、賃金要件も満たした場合、最大325万円を受け取れる計算になります。
助成の要件として、計画開始日6カ月前から計画期間の末日までにおいて、雇用保険被保険者を会社都合で解雇等していないことが含まれています。助成の獲得を狙うのであれば、計画の達成だけに注視するのではなく、日常的な運営にも留意する必要があります。
賃金要件を満たすためには、雇用管理制度等整備計画の認定申請後、
雇用管理制度・雇用環境整備の措置の実施日から、計画期間の末日までに賃上げ
を行う必要があります。また、社員それぞれの「毎月決まって支払われる賃金」について、
賃上げ前3カ月間の合計額と、賃上げ後3カ月間(賃上げした月を含む)の毎月決まって支払われる賃金の合計額を比較して、原則5%以上増加
していることが必要です。
以上(2026年5月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)
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労働基準法には、会社の「年休の時季指定義務」が定められています。これは、
年10日以上の年次有給休暇(以下「年休」)が付与されている社員には、社員の意見を聴取した上で、会社が時季を指定して年5日の年休を取得させる
という義務で、違反すると30万円以下の罰金の対象となります。
仕事ばかりで休もうとしない社員や、周囲に遠慮して休みたいと言えない社員もいます。しかし、年休の取得は、社員の心身のリフレッシュや仕事の効率に繋がることから、この義務に真摯に向き合って確実に年休を取らせていくことは大切です。
それに、社員の年休取得を促進する取組は、助成金の対象にもなります。具体的には、
「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」で、最大1020万円を受給できる可能性がある
のです。助成金を受給するには、所定の「交付申請書」を事業実施計画書などとともに、所轄都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。
2026年度の申請期限は、2026年11月30日まで
ですので、詳細を確認してみてください。助成金の概要は次の通りで、赤字の部分が年休に関連する内容です。

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)を受給するには、年5日の年休取得について就業規則等を整備する必要があります。定めるべきポイントは次の通りです。
就業規則等の規定例は次の通りです。
【規定例】
第○条(年次有給休暇の時季指定)
会社は年次有給休暇を年10日以上付与する社員に対して、付与日から1年以内に、付与日数のうち5日について、会社が社員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、社員が本人による時季指定または第○条で定める計画的付与により年次有給休暇を取得した場合、取得した日数分を5日から控除する。
なお、就業規則等を整備するだけでなく、運用面においても注意が必要です。具体的には、
社員ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存する
ことが義務付けられています。また、社員数が常時10人未満の会社(事業場)が働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)を受給する場合、就業規則に代えてこの年次有給休暇管理簿の添付で代替可能とされています。社員数が常時10人以上の場合も、万が一提出を求められた際にきちんと対応できるよう、準備をしておきましょう。
年休をなかなか取ろうとしない社員がいる場合は、計画的付与が有効です。計画的付与とは、
労使協定で定めた日に年休を与えられる制度
です。年休の時季指定義務との大きな違いは、
年休を与えるに当たって、社員の意見を聴取しなくてもよい
という点です。計画的付与では、会社全体で一斉に付与することも、チームや個人単位での交代制にすることもできます。導入するには「労使協定」(事業場の過半数労働組合、それがない場合は労働者の過半数代表との書面による協定)の締結が必要になります。
計画的付与の対象は、付与日数のうち5日を超える部分です。例えば、年休の付与日数が10日の社員の場合は5日まで、20日の社員の場合は15日までです。逆に言うと、年休の付与日数が5日以下の社員には、計画的付与を適用できません。また、計画年休に充てるべき休暇日数が不足する社員を含めて計画的に付与する場合には、年休の付与日数を増やす等の措置が必要となります。
図表2が年休の付与日数の一覧で、赤字が年休の時季指定義務の対象になる社員、網掛けにしているのが計画的付与を適用できない社員です。

半日単位年休や時間単位年休を導入すると、
といったメリットにより、社員が年休を取得しやすくなることが期待できます。社員が出張先で仕事をした後、空いた時間で観光を楽しむ「ブリージャー(出張休暇)」なども取りやすくなるかもしれません。
なお、半日単位年休と時間単位年休は似ていますが、実は次のように大きな違いがあります。

注意していただきたいのは図表3の赤字部分、「5.年休の時季指定義務との関係」「6.働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)との関係」です。
以上(2026年4月更新)
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コロナ禍で停滞していた観光関連の需要は、数年間で急速に回復しています。街を歩いていて、「コロナ前よりも観光客が多いのでは……?」と感じている人も多いはずです。実際、
2025年の年間訪日外国人旅行者数は、史上初の4000万人を突破し、過去最多の4268万人
を記録しました(観光庁「訪日外国人旅行者数・出国日本人数」)。
一方、多くの中小観光事業者では、急増する観光客の受け入れ体制が十分に整っていないようです。特に大きな課題は、
DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れ
です。

観光業を含む分野(宿泊・飲食業)で、DXに既に取り組んでいる企業の割合は、
2024年でも14.0%にとどまっており、他業界と比べても低い水準
です。「取り組みを検討している」「必要だと思うが取り組めていない」の合計が、2023年(48.0%)から2024年(54.0%)にかけて6ポイント増加していることから、
DXの必要性を理解していながらも、踏み切れない状況にある
ことがうかがえます。ちなみに、業種全体で見た場合、「取り組みを検討している」「必要だと思うが取り組めていない」のどちらの企業においても、次のことが大きな課題のようです。
観光業に関わる企業は、予約管理や接客などの分野で、いまだにアナログ対応に頼っているケースも少なくありません。結果として、現場の負担が増え、人手不足がより深刻化するという悪循環に陥りがち。とはいえ、人手不足や規制の煩雑さなど、自分たちだけでは解決しようがない問題があるのも現状です。
こうした状況を踏まえ、国土交通省観光庁は2022年から、
「観光DX推進事業」(正式名称は「観光振興事業費補助金」)を実施し、観光地や観光産業におけるデジタルツール導入などを支援
しています。予約・決済システム、顧客管理、データ活用など、現場の課題に直結する取り組みが対象となる点が特徴ですので、活用してみるのも一手です。
次章で、2026年度の制度概要を紹介しますので、業務の見直しやデジタル化に取り組む際に活用をご検討ください。ただし、
と、スケジュールがかなりタイトなので、手続きをされる場合はお早めに!
2026年4月17日に、2026年度の公募内容が公開されました。
補助金を利用する用途によって、
の、3つの事業区分が設けられています。事業区分ごとの概要(対象、内容、補助率・補助上限額、要件)は次の通りです。



「(1)観光地の販路拡大・マーケティング強化)」「(2)観光産業の収益・生産性向上)」の2026年度の公募要領は、こちらをご確認ください。
「(3)専門人材による伴走支援」の2026年度の公募要領は、こちらをご確認ください。
なお、
(1)観光地の販路拡大・マーケティング強化、(2)観光産業の収益・生産性向上は、同じ事業者が同時に申請することはできない
ので、注意が必要です。一方、(3)専門人材による伴走支援との同時申請は可能なので、内容をよく確認した上で事業区分を選択するようにしましょう。
観光DX推進事業の、申請から精算までの流れは次の通りです。
公式ウェブサイトの登録フォームに必要事項を入力し、参加申込を行います。
事務局からメールで送られてくる案内に従い、特設ウェブサイトのマイページにログインしたあと、フォームから計画申請(事業計画の提出)を行います。
観光庁および事務局において事業計画を審査の上、計画申請主体または補助対象事業者に対して審査結果が通知されます。採択となっても、この時点では、まだ補助事業に着手すること(契約・納品・発注先への支払い等)はできません。
採択の通知を受けた補助対象事業者(以下「採択事業者」)が、交付申請フォームから交付申請を行います。
事務局にて交付申請を審査のうえ、採択事業者に対して交付決定が通知され、補助事業を実施することができるようになります。なお、交付決定の通知前に実施した事業に係る経費は補助対象経費として認められません。また、交付決定額は、補助額を確定するものではありません。
補助事業者が、交付決定を受けた事業計画に基づき、補助事業を実施します。
補助事業終了後、完了実績報告フォームから完了実績報告を行い、実施した補助事業の結果を報告するとともに、精算に係る書類を事務局に提出します。
事務局が完了実績報告を審査し、補助事業者が受け取ることが出来る補助額を確定し、通知します。補助対象経費に該当する費用について補助を受けることができます。
補助額の確定の通知を受け取った後、補助金請求書を提出します。
補助金請求書に基づき、事務局から銀行振込にて補助金が交付されます。
審査項目は、事業区分によって違います。また、公募内容は年度ごとに異なるため、次の年も同様の事業区分が公募されるとは限りません。ここでは、2026年度の公募要領における主な審査項目をご紹介します。

最後に参考情報として、各自治体で過去に実施された観光DX推進の事例をご紹介します。
⾧野県山ノ内町(志賀高原)は、地域全体の持続的な収益確保を目指して、
旅行者がオンライン上で情報収集や予約等をシームレスに実施できる「観光プラットフォーム(地域サイト)」を構築
しました。かつて旅行代理店に依存していた予約窓口を地域自前のプラットフォームに移行させ、会員向けの柔軟なクーポン発行機能などを実装しました。これにより、
観光プラットフォームへの誘引、さらに宿泊予約へとつなげることができるようになり、売上向上などの成果が出た
そうです。また、公式SNSのフォロワー数が増加し、個々の顧客に合わせた最適なプランを提案できる、精度の高いマーケティングが可能になりました。
兵庫県豊岡市(城崎温泉)は、「まち全体が一つの温泉旅館」というコンセプトの下、
町内の宿泊施設間で宿泊管理システム(PMS)を連携・一元化
し、宿泊客の周遊データや消費行動を地域全体で可視化することに成功しました。これにより、
データが可視化されて滞在価値を高める施策(外湯巡りの利便性向上など)を打てるようになり、宿泊客単価が2万3580円から3万2438円へと大幅に上昇
しました。さらに、リピーター率も目標を超える41.4%に達するなどの成果を上げました。
神奈川県足柄下郡箱根町では、車で箱根を訪れる旅行者のオーバーツーリズム対策のため、
「箱根観光デジタルマップ」を構築し、リアルタイムの渋滞予測や駐車場・店舗の混雑状況を可視化
しました。これにより、箱根を訪れる旅行者の間で、マップ情報を参考に目的地や訪問時間を変更する行動変容が起こり、月1万回以上の閲覧を記録。デジタルマップの構築により、人流の分散化に成功しました。なお、このプロジェクトは今後、箱根特有の課題である火山災害の防止などにも役立てられる予定です。
以上(2026年4月更新)
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管理職は、部下の指導について多くの悩みを抱えています。部下との意思疎通をうまく図れない、部下がついてきてくれない、部下が思うように成長しない、部下が何を考えているか分からない……。こうした現状に疲弊している管理職は少なくありません。
さらに近年は、「何かを言うとパワハラと言われるかもしれない」「部下に踏み込みすぎて嫌われたくない」といった不安から、指導そのものを躊躇する管理職も増えています。自信を持って部下と向き合えずにいる、そんな管理職が多いのが現状です。
管理職の話を聞き、励ますのは、経営者の大切な仕事です。特に、組織を率いる立場の経営者から語りかけるメッセージは、管理職の「行動指針」にもなるでしょう。この記事では、「迷い」「視点」「行動」というテーマでそのようなメッセージを紹介します。
管理職の中には、「自分は管理職に向いていない」「どう接すればよいのか分からない」と感じ、自己否定に陥っている人もいます。部下指導への不安が積み重なり、次第に部下から距離を置くようになるーーそういった悪循環に陥りがちです。
経営者は、こうした管理職に「迷っていること自体は悪いことではない」と伝えましょう。その際、米国の研究者でリーダーシップ論の第一人者であるブレネー・ブラウン氏の次の言葉が参考になります。
「私たちは日々、不確実性やリスク、危険に生身がさらされるような場に直面する。そうなるのは不可抗力だが、それにどう関わるかは選ぶことができる」(*)
ブラウン氏は20年以上にわたって「脆弱性(vulnerability)」をテーマに研究を続けてきました。彼は、「自分をさらけ出すことへの恐れを持ちながらも、それでも踏み出す姿勢こそがリーダーに求められる本物の勇気だ」と言っているのです。
この考え方は、管理職にも当てはまります。迷いや不安を感じながら部下と向き合おうとしている管理職は、むしろリーダーとして誠実な姿勢を持っている証拠ともいえます。大切なのは、迷いを消すことではなく、迷いを抱えながらも部下の前に立ち続けることです。
経営者は、ブラウン氏の言葉を借りて、「あなたが迷っているのは、部下を真剣に考えているからだ」と管理職に伝え、自己否定から脱却する後押しをしましょう。
管理職の中には、部下指導で「できないところを直させる」ことに注力しすぎて、かえって部下との関係が悪化してしまう人がいます。「なぜこれができないのか」「もっとこうすべきだ」という指摘が続くと、部下は委縮し、管理職への信頼も失われかねません。
経営者は、「部下を育てる」という視点を、「部下の強みを引き出す」という視点に転換するよう促しましょう。その際、経営学の父と称されるピーター・ドラッカー氏の次の言葉が参考になります。
「成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない」(**)
ドラッカー氏はその著書の中で、「弱みを基盤にしてはならない(できないことからスタートしてはならない)」と述べています。重要なのは、一人ひとりの強みを見極め、それをチームの成果につなげる仕組みをつくることだというのがドラッカー氏の一貫した主張です。
部下一人ひとりには、それぞれ異なる得意分野があります。「なぜできないのか」ではなく「何ならできるのか」を問い続ける管理職こそが、チームを本当の意味で強くします。弱みに目を向けることをやめるわけではありませんが、それよりも強みを活かす視点を持つことが、部下の成長と組織の活性化につながります。
経営者は、ドラッカー氏の言葉を借りて、「部下の足りない部分ではなく、できることを見よ」と管理職の視点を切り替えさせることが大切です。
部下の指導に真面目に取り組んでいる管理職ほど、悩みは深いものです。部下が思うように成長しないことに苛立ち、落胆し、つい「自分でやったほうが早い」と手を出してしまうーーこれは管理職の“あるある”といってもよいでしょう。
しかし、根本的な問題は、「部下が育たないこと」ではなく、「育てようとする行動が継続しないこと」にあります。経営者は、管理職に対して「気合いで続けろ」ではなく、「続けられる仕組みをつくれ」と伝えましょう。その際、習慣形成の専門家として世界的に知られるジェームズ・クリアー氏の次の言葉が参考になります。
「結果は設定した目標とはほとんど関係なく、取り入れた仕組みに左右される」(***)
クリアー氏は著書の中で、目標設定よりもそこに至る日々の「仕組み(システム)」の設計こそが成果を左右すると説いています。やる気が出たときだけ動くのではなく、やる気がなくても動けるような環境と習慣を整えることが、継続の本質だという考え方です。
これは部下指導においても同じです。「今日は時間があるから指導する」「気が向いたのでフィードバックする」という偶発的なアプローチでは、部下の成長は安定しません。定期的な1on1の時間を設ける、週に一度フィードバックを行う日を決めるなど、管理職自身が「仕組み」をつくることが重要です。
経営者は、クリアー氏の言葉を借りて、「あきらめるな」と精神論を語るのではなく、「続けられる仕組みをつくれ」という実践論で管理職を支援しましょう。経営者自身も、管理職が実行しやすい環境をつくることで、その仕組みづくりを後押しすることが肝要です。
【参考文献】
(*)「本当の勇気は『弱さ』を認めること」(ブレネー・ブラウン著、門脇陽子訳、サンマーク出版、2013年8月)
(**)「経営者の条件」(P・F・ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社、2006年11月)
(***)「複利で伸びる1つの習慣」(ジェームズ・クリアー著、牛原眞弓訳、パンローリング社、2019年10月)
以上(2026年4月更新)
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