目次
1 「均等待遇・均衡待遇」の理解が第一歩
パート等(パートやフルタイムの契約社員)の労働条件を考える上で無視できない「同一労働同一賃金」。
2026年10月1日から、「同一労働同一賃金ガイドライン」や関連する省令・指針が改正
されました。今後は、パート等の労働条件について一層チェックが厳しくなることが予想されます。改正の主な内容は次の通りです。
- パート等を雇い入れる際(有期労働契約の更新時を含む)に、「正社員との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」の明示が必要になる(違反すると10万円以下の過料)
- 同一労働同一賃金ガイドラインに、退職手当、家族手当・住宅手当、無事故手当、夏季冬季休暇、褒賞について、どのような待遇差が不合理となりうるかが新たに追加され、賞与や病気休職(療養専念を目的とする病気休暇を含む)についても記載が充実した
- 待遇差は、正社員の待遇を引き下げるのではなく、パート等の待遇を改善して解消することが求められる旨などが明確化された
- 雇用管理指針も改正され、待遇差の説明方法や、パート等の意見を聴く機会の確保などが示された
なお、「雇い入れ」には有期労働契約の更新も含まれるため、新しい明示事項は、10月1日以降に新規採用するパート等だけでなく、すでに雇用しているパート等の契約更新時にも必要です。労働条件通知書(雇用契約書)のひな型は、厚生労働省が公開している改正後のモデル労働条件通知書に合わせて早めに見直しておきましょう。
■厚生労働省「モデル労働条件通知書」■
https://www.mhlw.go.jp/content/001696984.pdf
同一労働同一賃金のポイントは「均等待遇・均衡待遇」です。
1.均等待遇
パート等と正社員との間で、「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ(2.については、雇い入れから雇用関係が終了するまでの全期間を通じて同じ範囲で変更されると見込まれる)場合、パート等であることを理由とした差別的取扱いを禁止することをいいます。なお、同じ取扱いのもとで、能力・経験等の違いにより差がつくのは構いません。
2.均衡待遇
パート等と正社員との間で、「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更の範囲」「3.その他の事情」を考慮して不合理な待遇差を禁止することをいいます。「3.その他の事情」には、職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行などが含まれます。
以降で、均等待遇・均衡待遇を実現できているかを確認するためのチェックリストを紹介します。チェックリストには、2026年10月の改正内容も反映しています。早速見ていきましょう。
2 チェック1:パート等の状況はどうなっているか?
パート等が「均等待遇・均衡待遇」の対象になるかを確認します。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。なお、このチェックリストは転勤のない場合を想定しています。

「○」「×」の見方は次の通りです。この確認が終わったら、次章に進んでください。
- 全て「○」:均等待遇の対象
- 1~5のいずれかが「×」:均衡待遇の対象
図表1の「人事異動や役割の変化の範囲」は、現時点の実態だけでなく、雇い入れから雇用関係が終わるまでの全期間を通じて見込まれる範囲で比べます。この見込みは会社の主観ではなく、就業規則などの文書や、実際に転勤・配置転換が行われてきた慣行といった客観的な事情で判断されます。
例えば、正社員には定期的な転勤があり、特定のパート等にはこれまで転勤がなかったという場合でも、その人だけを見て形式的に判断するのではなく、同じ職務の他のパート等に転勤等があるかといった「可能性」の実態から、具体的な見込みがあるかどうかで判断します。
3 チェック2:賃金などに待遇格差はあるか?
次に、正社員とパート等の待遇を比較します。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。なお、図表2の待遇は一例ですので、自社の内容に置き換えてお使いください。対象となるのは、正社員とパート等に対する全ての待遇(基本給、賞与、手当、退職金、福利厚生、教育訓練、安全管理など)です。図表2には、2026年10月の改正ガイドラインで新たに具体例が示された退職手当、各種手当(家族手当・住宅手当・無事故手当など)、休暇・休職、福利厚生(褒賞、福利厚生施設など)も加えています。

「○」「×」の見方は次の通りです。待遇格差がある場合、次章に進んでください。待遇格差がない場合、御社は同一労働同一賃金に対応できています。
- 全て「○」:待遇格差はない。同一労働同一賃金に対応できています!
- 各待遇の2項目(1と2、3と4、5と6など)がともに「○」:その待遇に待遇格差はない
- 各待遇の2項目のいずれかが「×」:その待遇に待遇格差があり、検証が必要
各待遇については、改正ガイドライン上「正社員と同一の支給・付与」が求められる待遇でも、所定労働時間の短いパート等について、常に正社員と全く同じにしなければならないわけではありません。その待遇の性質・目的が労働時間の長短にかかわらず当てはまるかといった観点から検討して決めることになります(労使で十分に話し合うことが望ましい)。
家族手当や病気休職中の給与保障で問われる「相応に継続的な勤務が見込まれる」かどうかは、本人の契約期間や更新回数に加え、社内の他の有期社員の契約期間や更新回数なども踏まえて個別に判断します。配偶者の収入要件がある「配偶者手当」は、パートの就業調整の要因になっていると指摘されており、労使の話し合いで働き方に中立的な制度への見直し(収入要件の撤廃など)を進めることが望まれています。
なお、給食施設・休憩室・更衣室の3つは、正社員に利用させている場合はパート等にも利用の機会を与える義務があります。駐車場や保養施設などその他の施設についても、改正雇用管理指針で利用の便宜を図るよう配慮する義務が明記されました。また、これらの施設の利用料金や割引率などの利用条件に不合理な差を設けることも認められません。
4 チェック3:待遇格差に合理性はあるか?
チェック3はとても重要です。正社員とパート等の間に待遇格差がある場合、それが合理的かどうか、つまり同一労働同一賃金に対応できているかどうかを確認する内容になるからです。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。図表3には、2026年10月の改正ガイドラインで明確化された考え方(「正社員の人材確保・定着」や「定年後の継続雇用」だけを理由にしないこと、パート等の意向を考慮すること、待遇差を説明できるようにしておくことなど)を反映しています。

「○」「×」の見方は次の通りです。是正が必要な待遇格差がある場合、次章に進んでください。是正が必要な待遇格差がない場合、御社は同一労働同一賃金に対応できています。
- 全て「○」:待遇格差は合理的、同一労働同一賃金に対応できています!
- 1~4のいずれかが「×」:待遇格差が不合理と判断される恐れがあり、是正が必要
- 5が「×」:待遇格差の内容・理由を説明できるよう、資料などの準備が必要
なお、チェック1で「均等待遇」の対象となったパート等(図表1の項目が全て「○」だったパート等)の場合、そもそも全ての待遇について、パート等であることを理由とする差別的取扱いが禁止されている(正社員と同じ基準・ルールで待遇を決める必要がある)ので、このチェックをするまでもなく、速やかに正社員と同じ取扱いにするための検討を行う必要があります。
図表3の5の「説明」は、改正雇用管理指針で「資料を活用して口頭で説明する」か「説明事項を全て記載した分かりやすい資料を交付する」のいずれかの方法によることとされ、口頭で説明する場合も、使った資料を交付することが望ましいとされました。
また、パート等から求めがなくても、契約更新時などに待遇差の内容・理由を記した資料を交付したり、説明を求めることができる旨を周知したりすることが望ましいとされています。説明が不十分だった事実や、パート等の意向を十分に考慮せず一方的に待遇を決めた事実は、待遇差が不合理と判断される方向の事情として考慮され得る点にも注意が必要です。
なお、都道府県労働局は事業主に報告を求め、助言・指導・勧告を行うことができ、勧告に従わない場合は企業名が公表されることがあります。対応に迷う場合は、労働局の雇用環境・均等部(室)や、社会保険労務士などが無料で相談に応じる「働き方改革推進支援センター」を活用するとよいでしょう。
■働き方改革推進支援センター■
https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/top/consultation/
5 チェック4:待遇格差の是正は進んだ?
最後のチェックです。ここまで進んできたということは、御社には是正すべき待遇格差があるということです。実際に待遇格差の是正を行った上で、次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。図表4には、2026年10月の改正を踏まえ、パート等の待遇改善による是正や、労働条件通知書の見直しなどの確認項目を加えています。

全て「○」になったら、ひとまず同一労働同一賃金の対応は完了です。パート等の人数などによっては対応までに時間がかかることもあるでしょうが、同一労働同一賃金に対応しようとする会社の姿勢を社員に示すことはとても重要です。
待遇差の是正に当たり、正社員の手当を廃止・減額してパート等の待遇改善の原資に充てる方法は、就業規則の不利益変更に当たります。この場合、労働者との合意か、変更の合理性(不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉状況など)が必要です。改正ガイドラインでも、正社員の待遇引下げによる解消は基本的に望ましくないとされています。パート等の賃金規定を正社員と共通化したり、パート等向けの賞与・退職金制度を新たに設けたりする場合は、キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コースなど)の対象になることがあるため、制度変更に着手する前に最新の支給要件を確認しておくとよいでしょう。
■厚生労働省「キャリアアップ助成金」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
■厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
以上(2026年11月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)
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