少しだけ未来を見る、経営者のための月次ニュースレターです。2026年11月、経営者が押さえておきたい法令・イベント・統計・政策の動きなどを紹介します。
1 制度改正編
11月に予定されている制度改正のうち、中小企業経営者が特に注意すべき2件を紹介します。
1)「飲食料品の消費税減税・就業者負担軽減支援金法案」の審議本格化
国会では、中低所得層の負担軽減を目的とした「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」の本格的な審議が進められています。この法案の柱は、2027年4月から2年間限定で飲食料品の消費税率を8%から1%へ引き下げることと、その後の本格導入を見据えた中低所得の働く人を対象とする「就業者負担軽減支援金」の新設です。
経営者や総務・経理部門にとって直接的な影響が出るのは2027年春以降ですが、飲食料品を取り扱う小売・飲食業や関連するサプライチェーン企業では、複数税率(1%と10%)に対応するためのレジシステムや受発注システムの改修計画を早期に見据える必要があります。
また、給与所得に応じた支援金の仕組みや、対象となる所得水準(年収の目安など)の議論の行方は、今後の賃上げ交渉や従業員のライフプラン・手取り額にも関わる重要な要素となります。
→ 経営者のTo Do
- 自社が飲食料品の製造・販売・卸売等に関わっている場合、2027年4月の消費税率1%化に向けた会計・受発注システムの改修スケジュールを確認する
- 従業員から制度に関する質問が出た場合に備え、減税期間(2年間)や給付の仕組みに関する政府の審議動向を総務担当者と共有しておく
- 支援金の対象水準や「年収の壁」に関する今後の法改正の議論を注視し、自社の賃金体系やパート・アルバイトの働き方の設計に備える
■内閣官房「『飲食料品に係る消費税率の引下げ』及び『給付付き税額控除』について」■
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shouhizei_zeigakukoujo/
2)インバウンド向け消費税の免税制度が「リファンド方式」に(2026年11月1日~)
外国人観光客などを対象とした免税販売制度が、2026年11月1日より大きく変わります。従来の「店頭で最初から消費税を差し引いて販売する方式(即時免税)」から、購入時には一旦消費税込みの価格で支払い、出国時に空港等の税関で確認を受けた後に消費税相当額の還付を受ける「リファンド方式(後払い方式)」へと完全に移行します。
この改正は、購入した免税品が国内で不当に転売され、消費税が不正に免れられる問題を防止することを主な目的としています。免税店(輸出物品販売場)の許可を受けている小売店や飲食・サービス事業者にとっては、店頭でのレジ運用や決済端末の仕様変更、外国人客への制度説明の徹底など、実務面のアップデートが求められます。
→ 経営者のTo Do
- 自社レジシステムや決済端末が「リファンド方式」に対応した仕様変更・改修を完了しているか確認する
- 店頭での外国人客向け案内ポスターやPOPを新しい免税手続き(購入時の税込み支払い・空港での還付)に沿った表記へ更新する
- レジ担当者や接客スタッフに対し、トラブル防止のための外国語対応マニュアルや説明手順を共有・周知する
■国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」■
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/menzei/201805/format/002.htm
■経済産業省「外国人旅行者向け消費税免税制度に関する免税店への『リファンド方式移行の準備ガイド』を作成しました」■
https://www.meti.go.jp/press/2026/09/20260917002.html
2 イベント編
1)2026年米国中間選挙(日本時間11月4日)―今後の経済・通商政策を占う政治の節目
4年に1度の大統領任期の中間に行われる米国の連邦議会選挙が、11月3日(日本時間11月4日)に投開票を迎えます。下院の全435議席および上院の約3分の1の35議席が改選されるこの選挙は、トランプ政権に対する中間評価としての意味合いを持つだけでなく、今後の米国における財政・エネルギー政策、そして世界経済に直結する通商・関税政策の行方を左右する極めて重要なイベントです。
選挙結果次第では、為替市場(ドル円の動き)やエネルギー価格、さらには対外関税の引き上げ圧力などに大きな変動が生じる可能性があります。米国や海外市場と取引のある企業はもちろん、原材料や部品の輸入を海外に頼る中小製造業にとっても、今後の経営戦略や調達リスクを考える上で見逃せないトピックとなります。
■日本貿易振興機構(ジェトロ)「2026年米国中間選挙の動向」■
https://www.jetro.go.jp/biznews/feature/usmidterm2026.html
2)DX総合EXPO 2026 秋 / ビジネスイノベーションJapan 2026 秋
11月4日(水)~6日(金)まで、幕張メッセ(千葉県)で開催される、企業の業務効率化や働き方改革を推進する国内最大級のDX(デジタルトランスフォーメーション)総合展示会です。
経理・財務・人事労務の自動化ツールや、企業の生産性向上に直結する最新のSaaS、バックオフィス向けの生成AI活用ソリューションなどが出展します。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応、さらに度重なる法改正や人手不足に直面する中小企業にとって、自社の業務効率化のヒントや具体的なツール選定を行う絶好の機会となります。
■DX総合EXPO 2026 秋■
https://www.bizcrew.jp/expo/dx-tokyo
■ビジネスイノベーションJapan 2026 秋■
https://www.bizcrew.jp/expo/bij-tokyo
3)APEC首脳会議(11月18日~11月19日)
アジア太平洋地域の21の国と地域が参加する「APEC第33回首脳会議」が、11月18日(水)~19日(木)にかけて中国・深センで開催されます。今年のAPECでは「アジア太平洋共同体を築き、共に繁栄する」をテーマに、「開放・イノベーション・協力」が重点分野に掲げられており、首脳会議の前後には、閣僚会議やビジネス界のリーダーが参加する「APEC CEO Summit 2026」なども行われます。
AIやデジタル経済の活用、強靭なサプライチェーンの構築、自由貿易の推進など、中小企業の海外展開やグローバルな部品調達に直結する重要な方針やルールが議論されます。アジア市場や海外との取引を持つ企業にとって、今後のマクロ経済の方向性を読み解く上で見逃せない国際イベントです。
■外務省「APEC 2026」■
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/apec/pagew_000001_02381.html
3 統計・政策情報編
2026年11月は、日本銀行の「金融政策決定会合における主な意見(10月29・30日分)」、内閣府経済社会総合研究所の「四半期別GDP速報2026年7-9月期(1次速報)」などが公表される予定です。

1)金融政策決定会合における主な意見(10月29・30日分)
日本銀行の「金融政策決定会合における主な意見」は、原則として金融政策決定会合の6営業日後に公表されます。
2026年10月29日・30日に開催される日本銀行の金融政策決定会合では、2013年の共同声明導入以来、約14年越しとなる「基調的な物価上昇率が2%の物価安定の目標に到達した」との判断を示すか否かが最大の焦点となっています。
仮に、「2%到達」の判断が下された場合、追加利上げ(年内12月や来春など)を見越した借入金利(短期・長期プライムレート)の上昇が避けられません。また、「物価上昇率2%」が社会全体の前提となります。人材確保のための継続的な昇給原資の確保、自社の製品・サービス価格の適切な改定を継続することが不可欠になります。
■日本銀行「金融政策決定会合の運営」■
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/
■日本銀行「金融政策決定会合における主な意見 2026年」■
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2026/
2)四半期別GDP速報2026年7-9月期(1次速報)
「四半期別GDP速報」は、日本の景気動向をいち早く把握するために、内閣府経済社会総合研究所が四半期毎に発表する国内総生産(GDP)の早期統計データです(1次速報と2次速報があるため、公表回数は年8回となります)。
2026年7-9月期分(1次速報)で特に注目されるのは次の3点です。
1.個人消費(家計最終消費支出)
春闘での賃上げ効果が実際に家計を押し上げたか、あるいは高止まりする食品・エネルギー価格の影響で「節約志向」が勝ったかが最大の分岐点です。また、7~8月の猛暑によるエアコン・冷感グッズ・飲料などの特需があった一方で、外出控えや実質賃金の伸び悩みによる消費抑制効果がどう影響したかが注目されます。
2.設備投資(企業設備投資)
人手不足を背景とした省力化・省人化投資や、DX(IT基盤・生成AI導入)投資、脱炭素(GX)関連投資が堅調を維持できているかが注目されます。
3.外需(輸出マイナス輸入)
訪日外国人客による消費(インバウンド)は個人消費ではなく「サービス輸出」に分類されるため、外需の押し上げ要因として大きく寄与したかどうかが注目されます。
なお、デジタル庁が内閣府と協力して「GDPの四半期別速報に関するダッシュボード」を公開しています。これを使えば、過去からの推移や、どの項目が景気を引っ張っているのか(寄与度)をヒートマップやグラフで簡単に確認することができます。
■内閣府「四半期別GDP速報(公表予定)」■
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kouhyou/kouhyou_top.html
■デジタル庁「GDPの四半期別速報に関するダッシュボード」■
https://www.digital.go.jp/resources/japandashboard/gdp-quarterly-estimates
4 話題のタネ
訪問時の雑談のきっかけに。11月ならではのトピックを集めました。
1)日米中の巨大商戦対決――「独身の日」と「ブラックフライデー」はどう違う?
11月は世界的な消費の波が押し寄せる月です。その二大巨頭とも言えるのが、中国発の「独身の日(11月11日)」と、米国発の「ブラックフライデー(11月第4金曜日・2026年は11月27日)」です。どちらも世界的な大型商戦ですが、その発祥やビジネスの背景には面白い対比があります。
- 独身の日:ネットから生まれたデジタル巨大商戦
もともとは中国の大学生が始めた、1が4つ並ぶ11月11日を光棍節(光棍は独身者を意味するスラング)として祝うインターネット上のジョークから始まり、アリババなどの大手ECプラットフォームが一大ショッピングフェスへ進化させました。実質的に「EC主導・オンライン完結型」のイベントであり、中国をはじめとするアジア圏の越境ECやデジタルマーケティングの勢いを測る指標となっています。
- ブラックフライデー:リアル店舗と感謝祭文化から生まれた伝統商戦
米国の伝統的な祝日「感謝祭(11月第4木曜日)」の翌日、クリスマス商戦のスタートとなる日です。名前の由来には、買い物客による大混雑を指したフィラデルフィア警察の呼び名とする説が有力で、『小売店が黒字(ブラック)になる日』という説明も広く知られています。現在ではECにも大きく広がっていますが、実社会の季節行事や帰省・年末年始の消費動向と強く結びついているのが特徴です。
「11月前半はアジアのEC市場の熱気、後半は欧米のクリスマス商戦の動き」という視点で両者を捉えると、自社製品の海外需要や国内消費の波を予測する好材料になります。
2)ボジョレー・ヌーヴォー解禁――日本が世界で一番早く楽しめる理由
毎年11月の第3木曜日と世界共通で定められている「ボジョレー・ヌーヴォー」の解禁。フランス・ブルゴーニュ地方のボジョレー地区でその年に収穫されたブドウを使って造られる「新酒」のワイン(赤またはロゼ)を、現地や欧州諸国よりもいち早く味わえるのが日本です。
その理由は、地球の「時差」と「日付変更線」です。現地フランスの解禁時間は「11月の第3木曜日の午前0時」と厳格に決まっていますが、これを日本時間に換算すると、時差の関係で約8時間、日本の方が早くその瞬間を迎えることになります(日付変更線に近いため)。
かつては空港で争奪戦が繰り広げられ「日本人だけが騒いでいる」と揶揄されることもありましたが、「地球上で最も早くボジョレー・ヌーヴォーの出来、その年のブドウの収穫と大地の恵みを祝うことができる国」として、日本が一目置かれる存在なのは変わりありません。
以上(2026年10月作成)
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画像:日本情報マート
















