労務トラブルは急に起こるものであり、正しい労務管理をしないと、思わぬことで訴訟に発展する場合があります。労働問題では判例の判断枠組みが解決に役立つので、トラブル防止の観点から、管理職なら知っておきたい重要労働判例を厳選して紹介します。本冊子は、重要労働判例を解説する企画の第4弾です。2018年10月号、2020年11月号および2024年12月号の労働判例に続き、2025年の最新判例を中心に特に知っておくべきものを10件セレクトしました。
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労務トラブルは急に起こるものであり、正しい労務管理をしないと、思わぬことで訴訟に発展する場合があります。労働問題では判例の判断枠組みが解決に役立つので、トラブル防止の観点から、管理職なら知っておきたい重要労働判例を厳選して紹介します。本冊子は、重要労働判例を解説する企画の第4弾です。2018年10月号、2020年11月号および2024年12月号の労働判例に続き、2025年の最新判例を中心に特に知っておくべきものを10件セレクトしました。
辻信太郎(つじしんたろう)氏は、サンリオの創業者であり、ハローキティ(以下「キティ」)をはじめ、多くのキャラクターを世に送り出してきた経営者です。NHKの連続テレビ小説「あんぱん」(2025年度前期放送)にも辻氏をモデルにした人物が登場し、話題となりました。
冒頭の言葉「みんななかよく」は、サンリオの企業理念です。サンリオらしいユニークさですが、これには、「カワイイ」という言葉だけでは片付けられないような、辻氏の平和への想いと、企業・サンリオの経営哲学が詰まっています。
辻氏は大学生の頃、故郷・甲府で空襲を経験しました。実家も街も燃え、多くの人々が苦しむ姿を目にしましたが、周りの大人は「戦争だからしょうがない、相手を倒して生き残るしかない」と言うばかり。辻氏はこれに反発し、「人と人がなかよくなる仕事をしたい」と情熱を燃やすようになります。それがサンリオ創業の原点でした。
辻氏の哲学が実際の事業に現れている例として、キティをはじめとしたサンリオのキャラクターたちと異業種の「コラボレーション」が挙げられます。あるときはロックバンド、またあるときは他会社のアニメキャラクター、そして2025年の大阪・関西万博では、日本館にて「藻(も)」のコスプレをしたキティまで登場しました。
「なぜ、変わったコラボレーションばかり?」と思うかもしれませんが、辻氏はこう言います。「企業は競争ばっかりしてるでしょ。でもよい商品やよいサービスはみんなでけんかして競争するんじゃなくて助け合ってやってったらいいじゃないかと思うんです」と。辻氏いわく、「サンリオはキャラクターの会社ではなく、コミュニケーションの会社」。キティたちは企業同士にとっての「なかよしの象徴」であり、皆が手を取り合って発展していくための大切なキーパーソンなのです。
ビジネスに競争はつきものですが、「相手を倒すこと」が競争の目的になってしまうと、その企業は次第に進むべき道を見失っていきます。大切なのは、企業として社会で何を実現したいのか。「あの企業に負けるな、倒せ」としか言わない経営者よりも、「もしもあの企業と手を組んだら、もっと面白いことができるかもしれない」と言える器の大きい経営者のほうが、社員にとって魅力的ですよね。
「みんななかよく」の精神の下、サンリオのキティたちが実現した数々のコラボレーションは、私たちに「そんなことができちゃうの?」という、一種の“ワクワク感”を与えてくれています。2025年は、サンリオの機関誌「いちご新聞」が50周年を迎えましたが、辻氏は今なおコラムを連載し、平和の大切さを発信し続けているそうです。キティたちが「カワイイ」の象徴として、世界中の人々をつなぐ架け橋となっていることからも、サンリオが実践し続ける理念が、平和な世界へと向かう確かな一助となっているのがうかがえます。
出典:「企業理念」(サンリオ公式ウェブサイト)
以上(2025年11月作成)
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我が国においては、少子高齢化の進行により労働力人口が急速に減少し、慢性的な人手不足が深刻化しています。総務省のデータによると、令和6年10月1日現在の生産年齢人口(15歳以上64歳以下の人口)は、7,373万人で、平成7年のピーク時(8,716万人)から1,343万人減少しています。そして、社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、20年後の2045年には5,832万人、さらに40年後の2065年には4,809万人まで減少すると推計されています。そのような中で、特に中小企業や地方の製造業、介護、建設、農業、サービス業などでは若年層の採用が難しく、外国人労働者への依存が高まっています。
厚生労働省発出の「外国人雇用状況の届出状況のまとめ」によると、令和6年10月末日現在、我が国における外国人労働者の数は、2,302,587人(前年比 253,912 人増)と過去最高を更新し、今後もさらに増加していくことが見込まれています。
今回は、主に現場で働く外国人労働者を雇用するにあたって押さえておきたい「在留資格」について、外国人労働者との労働契約の注意点、社会保険料の徴収、所得税の源泉徴収の実務、そして、新しく始まる育成就労制度に向けた対応についてご説明します。
特定技能制度とは、深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れる制度で、平成31年に創設されました。特に、国内で充分な人材が確保できない分野を「特定産業分野」と位置づけ、特定産業分野に限って外国人が現場作業等で就労できるようになりました。令和6年10月末日現在、206,995人となっており、昨年対比で約68,000人(49.4%)増と大幅に増加しています。現在は介護業、建設業、宿泊業、農業、飲食料品製造業、外食業など16の業種が該当します(今後、リネンサプライ、資源循環、物流倉庫といった業務区分、分野の追加が予定されています。)。
特定技能には、「特定技能1号」と「特定技能2号」という2種類の在留資格があり、特定技能1号の期間は上限5年間ですが、特定技能2号になると期間の上限なく在留することができるようになり、家族帯同(配偶者と子)も認められることになります。そして、最大の特徴は、条件付きですが、外国人の意志で転職が可能となっています。まとめると以下の表のようになります。

現状は、後述の「技能実習2・3号」の修了者が、「特定技能」に在留資格を変更するケースが最も多いのですが、昨今最初から特定技能1号評価試験を受けて来日するケースも増えてきました。なお、会社は、特定技能の外国人に対して、出入国時の空港等への送迎などの10項目の支援を行わなければなりませんが、特定技能の外国人を雇用する際、人材紹介会社を経由するのが一般的となっており、この人材紹介会社が「登録支援機関」として会社の代わりに、行うべき支援の全部または一部を行っていることが多くあります。
直近の制度改正では、「特定技能1号」から「特定技能2号」へ移行するときには試験に合格する必要がありますが、もし試験に合格できなかった場合、一定の要件(得点が合格基準点の8割以上の場合等)を満たしている場合は、最長で1年間「特定技能1号」の期間を延長できることとされました。
外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術または知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的として創設されました。令和6年10月末日現在、470,725人となっており、昨年対比で約58,000人(14.1%)増となっています。
技能、技術等の習得段階によって「技能実習1号」(1年目)、「技能実習2号」(2年目~3年目)、そして「技能実習3号」(4年目~5年目)の区分に分かれて在留資格が存在し、「技能実習3号」については、実習実施者(受入企業)、監理団体(技能実習生を実習実施者に斡旋し、実習実施者の支援を行う)が共に優良認定を受けている必要があります。また、受け入れ人数も会社の規模によって上限が定められ、技能実習生の業務内容も、あらかじめ認定を受ける「技能実習計画」に書かれている業務しか行うことはできません。そして、技能実習制度の最大特徴は、技能実習1号及び2号の期間(計3年間)は原則、技能実習生本人の希望による企業の変更、転籍は認められていません。認められているのは止むを得ない場合(会社が重大な法律違反を行っている場合や、会社からハラスメントを受けている場合等)に限られています。
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企業の財政状態を数字で把握する際は、決算書(損益計算書、貸借対照表)を確認するのが通常ですが、より詳細に足元の状態を確認したいときは、合計残高試算表(以下「試算表。T/B : Trial Balanceとも呼ばれる」)を活用します。試算表は、全ての勘定科目の残高や合計額を一覧にまとめた資料で、決算書とは次のように異なります。

試算表のメリットは次の通りです。
金融機関と良好な関係を築いている経営者は、「月次」で試算表を作成し、それを金融機関に提出していることが少なくありません。「隅から隅まで、赤裸々な今の企業の状態を示す試算表」を共有しているわけですから、金融機関も企業の状態を把握しやすいのです。
皆さんの会社はいかがでしょうか。「試算表を作ってはいるけれど、担当者に任せきりで、自分は細かく読んでいない」「そもそも自社では、試算表を作成していない」という経営者は、ぜひ、試算表の作成を検討してみてください。自社の「今」の状態が把握できることはもちろん、金融機関に提出すれば、今よりも良好な関係を築く一助になるはずです。
以降では、「試算表は決算書とどのように違うのか」「試算表を見ていくことで、どのような情報が分かるのか」を、イメージの図表付きで理解しやすく解説していきます。
なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。
試算表に決まったフォーマットがあるわけではなく、決算書(損益計算書や貸借対照表)のように作成することもありますが、特徴は、
「借方合計」「貸方合計」と「借方残高」「貸方残高」の両方を確認できる
ことです。
厳密には、勘定科目ごとの借方の合計値、貸方の合計値のみを記載した「合計試算表」と、勘定科目ごとの借方と貸方の差額である残高のみを記載した「残高試算表」があります。
合計試算表や残高試算表は作成の手間がかかりませんが、その代わり、総勘定元帳(企業が行った全ての取引を「勘定科目」ごとに分類して記録したもの)から試算表を作成する際、転記ミスや漏れがあっても気づきにくいというデメリットがあります。そのため、実務では2つの表を組み合わせた合計残高試算表が使われることが多いです。
決算書では5つの利益ごとに勘定科目とその金額のみが掲載されます。試算表では、これらが「前残高」「借方」「貸方」「当月残高」の4つに分けられます。

試算表(損益計算書)では、まずは売上高を確認してみましょう。単月の試算表で見ると、
に当たります。目標と実績との差額を比較して、どの程度差分があるのかを確認し、その要因を分析すると、軌道修正の道筋を見つけられます。
その他にも、前年同期比(時季)や直近3カ月平均比(直近の経営環境)などを用いて、時季や直近の経営環境を前提としたずれの分析を行うことで、より綿密に現状を把握できるようになります。
試算表(損益計算書)の経常利益は、企業全体の継続的なもうけを表す利益です。目標と実績の比較や前年同期比を用いることで、自社の全体的な業績の動向を把握できます。企業の収益力を確認するための経営指標である、
売上高経常利益率(=経常利益/売上高×100)
を計算し、比較分析を行うようにしましょう。
経常利益を使った多角的な比較分析は、単に利益が多いか少ないかを見るためだけではありません。
どの科目(売上原価、販管費・営業収益/費用・営業外収益/費用)に問題があるのかを見つけるための大枠のチェックポイント
でもあります。もし、利益率が低くなっている場合には、売上原価や販管費の変動、構成割合をチェックするなど、コスト管理への関心を高めるようにしましょう。
決算書では、左側の「資産の部」が資金の運用状況を表し、右側の「負債の部」「純資産の部」が資金の調達状況を表しています。試算表では、これらが「前残高」「借方」「貸方」「当月残高」の4つに分けられます。

現金・預金は企業にとって最も重要な科目なので、増減と残高を高い頻度で確認しましょう。
例えば、売上に特段変わった様子はないものの、現金・預金が数カ月にわたって減少し続けているようであれば、後述する売掛金を適切に回収できていない可能性があります。このような状況下で起きた資金不足は、最悪の場合、黒字倒産(黒字であっても、仕入代金や人件費などの必要な支払いができず倒産すること)につながる恐れがあります。そうならないためにも、自社に必要な運転資金を現金・預金で賄うことができるかを確認しておく必要があります。
運転資金は、企業が日々の営業活動を回すために必要な資金で、貸借対照表の次の科目を用いて計算できます。なお、一般的な運転資金の目安は、月商(1カ月間の売上高)の3カ月分以上とされています。
運転資金=売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産-仕入債務(買掛金・支払手形)
試算表(貸借対照表)の資産の部(借方残高)にある売掛金や受取手形は、売上として計上されたものの、まだ現金化されていない金額です。そのため、売掛金や受取手形を見る際には、売上高とのバランスを確認することが大切です。
例えば、売上高が横ばいにもかかわらず、前年同期や直近3カ月平均値など過去の数値と比べて、売掛金の残高が大きく増えているときは、売掛金が滞留している(適切に回収できていない)可能性があります。売掛金・受取手形の増減は資金繰りに直結しますから、回収が遅れている場合は、即座に取引先への確認や回収策を検討しましょう。
試算表(貸借対照表)の負債の部(貸方残高)にある買掛金や支払手形は、仕入れとして計上されたものの、まだ支払いが完了していない金額です。そのため、買掛金や支払手形を見る際には、仕入高とのバランスを見ることが大切です。
例えば、仕入高が横ばいにもかかわらず、前年同期や直近3カ月平均値など過去の数値と比べて、買掛金の残高が大きく増えているときは、取引先への支払い遅延が発生している可能性があります。支払い遅延を頻繁に起こしたり、長期化したりすると、取引先との関係に悪影響が出ます。単に支払期限に間に合わせるだけでなく、企業の資金状況や取引先との関係を踏まえた支払い管理をすることが大切です。
貸借対照表では、これらの割合を確認することで、企業の財政状態を大まかに把握できます。ここでは、代表的な3つのパターンを紹介します。
借方の流動資産と貸方の純資産が占める割合が高く、貸方の負債が占める割合が低い場合は、借り入れなどが少なく、優良で安定している状態といえます。

現金・預金を含めた流動資産が占める割合が、流動負債を上回っている状態を指します。貸方の中で、純資産が占める割合が大きい場合は倒産リスクが低いですが、純資産が占める割合が小さい場合は、少しの損失でも債務超過に陥る恐れがあります。

企業が抱えている負債の総額が、資産の総額を超えている状態を指します。全ての資産を売却したとしても、返済できない借入金が残ってしまい、企業の存続が困難になります。
債務超過の解消策は企業の利益を上げて資産を増やすことですが、いきなりは難しいため、売上原価や人件費の見直し、休資産や不動産の売却検討などの短期的な対策と併せて、中長期的な経営体質の改善が必要です。

企業における会計処理には、次の3つの考え方があります。
現金主義は、商品やサービスを提供済みであっても、代金の支払いがあるまでは費用と収益を計上することができません。そのため、帳簿上ではもうけや未入金、未払いを把握することが難しくなります。
そのため、掛仕入や未払金の処理の際には、取引が発生した時点で費用と収益を計上する、発生主義での会計処理が向いています。
一方で、取引が発生した時点での会計処理となると、取引額が変わったり代金が確実に支払われたりしないリスクもあるため、収益に関しては、費用や利益の実現が確定した時点で費用と収益を計上する、実現主義を採用すると、より正確に損益を計算できます。
減価償却費(固定資産の購入費用を耐用年数にわたり、分割して費用計上するための勘定科目)を毎月計上することも大切です。減価償却費が高額のため、本決算で大きく損益がぶれないよう減価償却費の年間の見込み金額を12カ月で割り、毎月の月次決算に計上しましょう。
当月までの正しい利益を算出するには、在庫の計上も欠かせません。一方で、物理的に在庫を確認する実地棚卸しでは、営業を止めて手動で在庫を数えるなど大掛かりな作業となってしまうため、在庫管理システムや、帳簿に記録されたデータを基にする帳簿棚卸で、在庫を把握するとよいでしょう。毎月が難しい場合には、四半期に1回、半期に1回など、期中で把握できる仕組みを作るのもよいと思います。
決算期にかかわらず、月次や四半期などのタイミングで試算表を作ることで、自社の業績を小まめに確認できるので、より早いタイミングで作成するとよいでしょう。一般的には、月初めから10日程度で試算表を作成するのが理想的です。
そのためには、試算表を作るための基となる仕訳に関しても、取引が発生したその日のうちに計上して、なるべくため込まないようにしましょう。
試算表は最終的に借方と貸方の数値が一致しなければなりません。もし、この2つが一致しない場合は、作成段階でのミスが発生していることが考えられます。次のような箇所に問題がないかを確認してみましょう。
以上(2025年12月作成)
(監修 税理士 石田和也
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今年も忘年会の季節がやって来ました! 多忙な経営者にとって、忘年会は普段交流の少ない社員と話したり、仕事を頑張ってくれている感謝を改めて伝えたりするための大切な場です。シンプルに「社員と膝を突き合わせて飲むのが楽しみ」な経営者も多いでしょう。ところで、
最近はネットなどで、「若い世代が、忘年会に行きたがらない」という類の記事や投稿をよく目にします。実際のところ、どうなのでしょうか?
今回は中小企業の若手・中堅社員(20代・30代)182人にアンケートを実施し、「忘年会は楽しいか、楽しくないか?」「楽しくないなら、その理由は?」「どんな忘年会だったら楽しい?」「忘年会について言いたいこと(自由回答)」などを、ホンネで答えてもらいました。ぜひ、これからの忘年会を考える上でのヒントにしていただけますと幸いです。
また、経営者322人にも、若手・中堅社員と同じ質問をし、その結果を掲載しています。
経営者と若手・中堅社員の、忘年会に対する認識のギャップが浮き彫り
になりましたので、併せてご確認ください。
経営者、若手・中堅社員ともに、アンケートは2025年11月に、インターネットを通じて行いました。回答の中で、明らかに誤字と思われる表記などは修正しています。
最初に、回答者全504人(経営者322人、若手・中堅社員182人)に、「忘年会の開催頻度」を聞いたところ、次のような結果になりました。

忘年会を「毎年行っている」会社は34.5%、「時々行っている」会社は18.7%、「行っていない」会社は46.8%でした。
さて、以後の質問は、忘年会を「毎年行っている」「時々行っている」会社の方を対象にお聞きしています。忘年会について詳しく掘り下げていくにあたり、まず聞いてみたいのは
「忘年会」というイベントについての、経営者と若手・中堅との認識のギャップ
です。そこで、経営者154人に「なぜ忘年会を行うのか?」、若手・中堅社員114人に「会社が忘年会を行う理由は何だと思うか?」を聞いてみたところ、次のような結果になりました。

経営者、若手・中堅社員ともに、1位は「1年間の苦労をねぎらうため」ですが、その割合は経営者が55.8%、若手・中堅社員36.0%と、19.8ポイントの差があります。また、若手・中堅社員の18.4%は「(忘年会が)慣習で続いている」と考えています。
経営者の多くは「社員を労いたい」という思いを持っているのに、若手・中堅社員の多くは忘年会を「形式的なもの」と思っている
ようです。加えて、若手・中堅社員の7.9%については、忘年会を行う理由が「分からない/答えられない」という結果が出ました。何だか世知辛いですね……。
さて、次に気になってくるのは、
はたして若手・中堅社員は忘年会を楽しんでいるのか?
です。経営者154人に「自社の若手・中堅社員は忘年会を楽しんでいると思うか?」、若手・中堅社員114人に「自分自身が忘年会を楽しんでいるか?」を、聞いてみたところ、次のような結果になりました。

「楽しんでいる」「どちらかと言えば楽しんでいる」は、経営者が計63.0%、若手・中堅社員は計53.5%でした。この部分についてはそこまでのギャップはなく、
忘年会を楽しんでいる若手・中堅社員は意外と多い
ようです。ただ、無視できないのは
「楽しんでいない」「どちらかというと楽しんでいない」が計37.7%いること。この層の社員にどう向き合うかがこれからの忘年会の課題
です。次は、「若手・中堅社員たちが忘年会を楽しんでいない理由」を赤裸々に紹介します。
今度は前章で「楽しんでいない」「どちらかというと楽しんでいない」を選んだ経営者15人と、若手・中堅社員50人に質問をぶつけました。経営者に「若手・中堅社員が忘年会を楽しめない理由は何だと思うか?」、若手・中堅社員に「自分が忘年会を楽しめない・忘年会に行かない理由は何か?」を聞いてみたところ、次のような結果になりました(どちらも複数回答)。

経営者が考える「若手・中堅社員が忘年会を楽しめない理由」の1位は「仕事の話が多くなりがち(73.3%)」でしたが、若手・中堅社員のほうでは5位(22.0%)となっています。
仕事の話が苦手な若手・中堅社員は一定数いるものの、経営者が思うほど多くはない
ようです。ちなみに、若手・中堅社員の「自分自身が忘年会を楽しめない理由」の1位は「拘束時間が長い/終わりが遅い(40.0%)」でした。
若手・中堅社員が忘年会を楽しめない理由は何となく分かったけど、結局どうすりゃいいんだ! ということで、今度は経営者154人と若手・中堅社員114人それぞれに
の中から「一番楽しいと思う忘年会」を選んでいただきました。結果は次のようになりました。

経営者、若手・中堅社員ともに、1位は「会話重視(居酒屋などでの、和気あいあいとした忘年会)」ですが、その割合は経営者が59.1%、若手・中堅社員28.9%と、30.2ポイントの差があります。
また、注目すべきは、若手・中堅社員の中に「時間帯重視(業務時間内(ランチタイムなど)に行う、飲酒なしの忘年会)」を希望する人が23.7%もいることです。前章では、若手・中堅社員の「忘年会を楽しめない理由」の1位が「拘束時間が長い/終わりが遅い(40.0%)」でしたが、その裏返しでしょうか。経営者からしたら少し寂しい気もしますが、
「早めに始めてサクッと終わる」忘年会を希望する若手・中堅社員が少なくない
ようです。
ちなみに、経営者の中には「その他」と答えた人がいましたが、その人たちは、
など、オリジナリティあふれるアイデアを回答してくれました。
最後に、経営者、若手・中堅社員の両方に、「忘年会について言いたいこと」を主張してもらいました!
「1年間の労苦を労いたい。そして、これからも真摯に目的に向かって邁進しようというのがホンネ」
「今年1年ご苦労様です。来年も一人一人目標を持ち充実した1年になるよう努めてください」
「気持ちよく参加出来るよう心がけたい」
「交流を深める会なので参加してほしい」
「1年間のねぎらいのために、景品など工夫もしています」
「やめたほうがいいのか聞きたい」
「会社内の親睦と社員の慰労のためにぜひ参加してほしい」
「いちいち不満そうな態度を出すな」
「楽しめ!!!」
「もっともっと楽しもう!」
「この1年間皆で良い仕事が出来た事など色々な話をしたいと思います。そして来年も良い方向性で良い仕事が出来るように」
「無理せず楽しんでほしい」
「1年を振り返って楽しんでほしい」
「今年の反省点を来年の成果に繋げるようにしてほしい」
「補助を出してほしい」
「時間厳守 お酒を強要しない」
「長期、短期での先の見通しを教えてほしい」
「やるなら、費用は会社負担」
「忘年会費用を出してほしい」
「強制するな!」
「完全廃止にしてほしい」
「参加しなければならない風潮や翌日のお礼の面着が気に入らない」
「人数が多すぎて会場を探すのが大変なので、2回に分けてもいいなど妥協案を出してほしい」
「忘年会にかけるお金を給料で還元してほしい」
「30分にしてほしい」
「強制で参加しないといけないので、そこは参加したい人だけにしてほしい」
「お酒飲むならタクシーチケットが欲しい」
「時短でお願いします。会費の会社負担をもっと増やせ~~」
以上(2025年11月作成)
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税金の納付は期末の決算後だけではありません。年度の途中にも中間申告・納付があって、これが資金繰りに直結する問題になることがあります。注意したいのは、
中間申告・納付は税金の種類ごとに、また確定納付額などで納付時期や回数が異なるため、前期どおりと考えてはいけない
ということです。中間納付額は、当期末に算出される確定納付額から精算されます。仮に中間納付額が当期の確定申告分より多ければ、翌期に還付されるものの、それまでの間は、その資金は事業活動には使えません。
中間納付額の計算方法は、
の2つです。例えば、前期に不動産売却があって臨時的に所得が大きく生じた場合などは、
前期の実績に基づく計算方法ではなく、仮決算(詳細は後述)に基づく計算方法を採用して、実態に合った中間納付額を申告・納付する
などの対策が必要になります。ただ、こうした対策を講じるためには、中間申告・納付に関する基本を押さえておくことが前提となります。そこで、この記事では経営者も押さえておきたい中間申告・納付の基本を紹介します。
法人はその事業年度が6カ月を超えるときは、原則として、その事業年度開始の日から6カ月を経過した日から2カ月以内(例えば、3月末決算法人の場合は11月末まで)に、法人税の中間申告・納付をしなければなりません。
ただし、次の法人については中間申告・納付の義務はありません。
なお、法人税の申告期限の延長の特例申請の承認を受けていても、中間申告の申告期限の延長はないので要注意です。
中間納付額の計算方法には、
の2つがあります。
前期実績に基づく計算方法は、原則として前期の法人税額の半分を納めるという簡便な方法で、
前期の法人税額÷前期の月数(通常は12)×6=中間納付額
の算式で計算されます。
仮決算に基づく計算方法は、事業年度開始の日から6カ月間を一事業年度とみなして、決算(仮決算)を行う方法で、
一事業年度とみなした期間について、通常の確定申告書を作成するときと同様の税額計算
を行います。
もし、中間申告書の提出期限までに確定申告書の提出をしなかった場合、その提出期限において、前期実績に基づく計算方法による申告書の提出があったものとみなされます(みなし申告)。したがって、仮決算に基づく計算方法による中間申告を行おうとするときには、必ずその申告期限までに中間申告書を提出しなければなりません。
その他、法人税の中間申告書を提出する法人は、地方法人税についても同時に申告・納付をする必要があります。
法人の事業活動に関係する主な地方税には、
都道府県民税・市町村民税(以下「住民税」)、事業税、事業所税、固定資産税(償却資産税)など
があります。これらのうち、住民税、事業税は、法人税の中間申告制度(申告の対象となる法人や、中間納付額の計算方法、みなし申告)と同様の取り扱いになります。
また、事業所税や固定資産税(償却資産税)には、中間申告制度に関する規定はなく、年1回の申告・納付や年4回の賦課決定納付(自治体から納付額の通知を受けること)など、定められた納付期日(回数)により納付手続きを行います。
消費税の中間納付は、前期に納めた消費税額(以下「前期の確定消費税額」)によって中間申告の回数が異なります。
法人は、原則、前期の確定消費税額の区分ごとに決められている課税期間の末日の翌日から2カ月以内に消費税の中間申告・納付を行わなければなりません。

なお、次の法人については中間申告・納付の義務はありません。
なお、中間申告の義務がない法人でも、自身で選択して、年2回に分けて納付ができる「任意の中間申告制度」があります。
中間納付額の計算方法には、
の2つがあります。
前期の確定消費税額に基づく計算方法は、図表1で紹介した
中間申告の回数に応じて、前期の確定消費税額の6カ月相当額、3カ月相当額、1カ月相当額を中間納付額として計算する方法
です。この場合、前期の確定消費税額による中間納付額が記載された中間申告書および納付書が、所轄税務署長から送付(e-Taxを利用している場合にはメッセージ通知)されてきます。
仮決算に基づく計算方法は、図表1で紹介した
中間申告の回数に応じた中間申告対象期間を、一課税期間とみなして仮決算を行う方法
です。この計算方法を選択する場合は法人税の中間申告と同じく、提出期限までに中間申告書を提出しなければなりません。なお、仮決算によって控除不足額(還付額)が生じても、中間申告時点では還付が行われません。
その他、中間申告書の提出期限までにその提出がなかった場合には、法人税と同様に、前期実績に基づく計算方法による申告書の提出があったものとみなされます。
前期の確定消費税額が48万円以下の法人が任意の中間申告を希望する場合は、「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を所轄の税務署長に提出します。これにより、毎年、年1回の中間申告が行えます。また、任意の中間申告をやめる場合には、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出しなければなりません。
なお、届出をした法人が、提出期限までに中間申告書を提出しなかった場合は、その法人は、任意の中間申告書を提出することの取りやめに関する届出書の提出があったものとみなされます。よって、万が一、提出期限までに中間申告書の提出がなかったときでも、延滞金は発生しません。

以上(2025年11月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
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目次
パワハラ(職場におけるパワーハラスメント)とは、
職場の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた(行き過ぎた)言動により、就業環境が害される(仕事に支障を来す)こと
です。「職場の優越的な関係」の典型的なパターンは「上司と部下」で、一般的な行為類型は次の6つです(通称:パワハラの6類型)。

ただ、実は上司が明確な悪意を持ってパワハラをするケースはあまり多くありません。むしろ、部下のほうに問題(指示したことができない、同じミスを繰り返すなど)があって、
上司が「良かれと思って」指導をした結果、そのやり方が行き過ぎてパワハラになる
というケースが多いのです(指導中、感情がヒートアップして暴言を吐いてしまうなど)。
部下の指導は上司の役目であり、そこに臆病になる必要はありません。ただ、
指導が「業務上必要かつ相当な範囲」を超えないよう、自己分析をすることは大切
です。この記事では、日本ハラスメントカウンセラー協会の顧問として数々の会社のハラスメント対策に向き合ってきた弁護士(筆者)が、「パワハラ予備軍」とでも呼ぶべき上司のタイプを次のように分け、その指導をどう改善していけばよいかを解説します。
「価値観押し付けタイプ」の上司は、
「〇〇すべき」「仕事はこういうもの」といった昔ながらの価値観を、部下にも強制してしまうタイプ
です。上司自身も若い頃、自分の上司からその価値観を押し付けられ、時には暴言にさらされるような環境で過ごしてきたため、今の部下に対して同じような態度で接してしまいます。
具体的には、
といった特徴が見られます。
上司側は“愛の鞭”のつもりでも、部下に対して「お前はばかだ」「新入社員以下だ」など、
名誉や人格を著しく傷付ける言動を繰り返すと、「精神的な攻撃」
になります。部下が暴言により精神を病み、休職や退職に追い込まれるケースは少なくなく、裁判で高額の損害賠償(自殺事案だと数千万円以上、自殺事案でなくても100万円以上)が認められたパワハラ判決の多くは、このタイプの上司による事案です。
価値観の合わない部下に異様に冷たく接する、ミーティングに参加させないといったように、
個人を疎外する行為は、程度によっては「人間関係からの切り離し」
になります。期待通りの働きができない部下に単純作業だけを命じるなど、
仕事を取り上げる行為は、業務上の合理性を欠くと「過小な要求」
になります。
なお、パワハラ全般に言えることですが、上司の言動がパワハラと認定されるのは、
原則として問題のある言動が「何度も、継続的」に行われた場合です。ただ、頻度や継続性に関係なく、1回の言動でパワハラ(一発アウト)になるケースも存在
します。例えば、他の社員のいる状況で「お前の働きぶりをご両親に報告してやろうか」など、家族に言及しさらし者にする行為は、侮辱的な言動として一発アウトになる可能性が高いです。カッとなってゴミ箱を投げ付けるなどの「身体的な攻撃」も、原則として一発アウトです。
次章以降で紹介するタイプにも言えることですが、筆者の経験上、
パワハラの加害者は、人格価値と関連のない属性(職務上の上下関係、男性・女性、勤務成績、年齢、容姿など)に基づいて、相手を軽く扱う傾向がある
と感じます。当たり前のことですが、職務上の上下関係はあくまで組織の指揮系統であって、上司だから部下を軽んじていいなんてことは決してありません。ですから、
まず大切なのは、部下を個人として尊重した振る舞いをすること
です。例えば、自分よりも上位の役職者や同僚には到底使えないような言葉を部下にぶつけていないか、取引先などが相手なら絶対しないような態度で部下に接していないかを確認します。
ジェネレーションギャップへの対応、つまり、
昭和・平成時代は良しとされた(黙認された)価値観や言動が、令和の時代では必ずしも通じないと自覚すること
も大切です。「若い頃に厳しく鍛えられたから今の自分がある」「今さら自分を変えるなんて難しい」という上司もいるでしょうが、社会の変化を感じ取って指導の仕方を修正しないと、パワハラで糾弾されるリスクからは逃れられません。
部下の指導は上司の役目ですから、指摘すべき点は毅然と指摘すべきですが、
指導する際は業務上の問題点に焦点を絞り、人格に踏み込まないこと
が大切です。「〇〇の部分ができていない」と事実ベースで問題点を指摘するなどしましょう。人格に踏み込む発言はパワハラになりやすいだけでなく、部下のほうも「自分を否定された」という印象ばかりが残り、肝心の指導内容が頭に入っていきにくいです。
部下を指導する際、つい感情的になってしまうという人は、
自分の感情を意識しながら指導すること(アンガーマネジメント)を心掛ける
ようにしましょう。例えば、不手際に接してイラッとした場合に、「ああ、自分はいらついているんだな」と、自分の感情を客観的に見つめる癖を付けると、意外と冷静になれるものです。
「正論押し付けタイプ」の上司は、
感情に左右されず、論理的に指導をするが、その論理から外れた行動をする部下に異常に厳しいタイプ
です。なお、「論理的に指導をしている」というのはあくまで上司自身の認識で、実際は部下の力量や経験、他の業務の状況などを正しく把握できておらず、的外れな指導をしてしまうケースも多いです。自分に自信がある分、意外と周りが見えていないタイプともいえるでしょう。
具体的には、
といった特徴が見られます。
部下のミスに対して、指導する時と場所を選べるにもかかわらず、
周囲に他の社員がいる状況で長時間の叱責をすると、正論であっても「精神的な攻撃」
になります。
キャパオーバーの業務を振り、部下が難色を示しても取り合わないのは、
振った業務が明らかに遂行不可能なものであれば、「過大な要求」
になります。部下の言い分を聞いて軌道修正を図るならよいですが、「言い訳する暇があったら先に進もうよ」などと言って、取り合わないのはNGです。
正論押し付けタイプの上司に接すると、部下は逃げ場がなくなってしまい、ストレスの蓄積により精神を病んでしまうことがあります。パワハラによるストレスだけで精神を病んだとはいえなくても、他のストレス(困難な業務による精神的負担や長時間の勤務などによるストレス)が合わさって、メンタルヘルス不調になったと判断されることがあるので注意が必要です。
正論押し付けタイプは、部下が相談を持ちかけても、上司側の正論で一刀両断してしまうため、部下にとっては「取り付く島もない」状態になることもあります。上司にとっては「相談するまでもないこと」でも、部下にとってはそうではありません。
まずは上司が部下の話によく耳を傾けること、つまり「傾聴」
が大切です。上司が話を聞いてくれれば、部下は言葉に出しながら自らの問題点や課題を整理でき、解決の糸口を見つけられます。部下の発言が、上司側の正論から外れたものであったとしても、まずは
「部下には部下の言い分があるのだろう」と肯定的に受け止めましょう。
また、価値観押し付けタイプの上司にも言えることですが、正論押し付けタイプの上司には、自身の誤りを認めることが得意でない人がいます。部下の納得を得るためにも、
上司の指示や指導に落ち度があれば、素直に認めること
が大切です。これは「謝るべきは謝り、過大な謝罪要求は毅然とお断りする」という、カスタマーハラスメントなどと同様の対応です。
「過干渉タイプ」の上司は、
部下がちゃんと働いているかが気になって、過剰に干渉してしまうタイプ
です。業務の進捗を管理するのは上司の役目ですが、その管理が行き過ぎることで、かえって仕事に支障を来してしまうのです。
具体的には、
といった特徴が見られます。
部下の業務の進捗管理については、
休日や深夜などの時間帯にまで連絡を入れて報告を求めると、「過大な要求」
になります。テレワークをしている部下に、勤務時間中はオンライン会議システムのカメラを常にオンにしておくように命じたり、頻繁に点呼を取ったりするのも、場合によっては「過大な要求」になります。
期待通りの働きをしていない部下に、「普段の生活態度が仕事に影響してくるんだ」などと、
私生活にまで言及して叱責するのは、「精神的な攻撃」または「個の侵害」
になります。毎日定時で帰る部下に「そういう甘い考え方だから仕事も中途半端になるんだ。考えを改めよう」と叱責したりするケースなども同様です。一方、
育児や介護をしている部下について、業務量を調節するために家族の事情について質問する場合などは、基本的にパワハラにはならない
と考えられます。とはいえ、根掘り葉掘り質問をして、部下が「個人的なことですから」と、話したくない態度を示したのにしつこく質問すると、「個の侵害」になる恐れがあります。
「部下が大変そうだから」「定時で帰らせたいから」と、
部下に任せた仕事を引き取るのは、行き過ぎると「過小な要求」
になります。業務負担の偏りや納期などの事情に配慮して、部下の仕事を引き取ることは業務上必要なことなので、本来パワハラにはなりませんが、簡単な仕事しか与えない状況が常態化している場合などは話が変わってきます。
目の届かない所で仕事をしている部下が心配なのは分かりますが、上司の目の前で仕事をしている社員が成果を上げているとは限りませんし、その逆もしかりです。まずは、
上司として、ある程度部下を信頼して任せる態度を取ること
が大切です。監視・干渉しなくても、業務管理できるシステムの導入などを検討しましょう。
また、上司と部下の間で、
1日の中で業務の定期連絡をするタイミングを決めておき、メールやチャットの場合、上司が勤務時間外に送信しても、部下は勤務時間中の返信可能なときに返信すればよい
という具合に、連絡に関するルールを共有しておくのもよいでしょう。ただ、勤務時間外に繰り返し上司からメールやチャットが送信されるようだと、部下が「自分も早く返信しなければ」と圧を感じることがありますから、勤務時間外の送信は最低限にしておきましょう。
一度部下に任せた仕事を引き取るのは、業務負担の偏りや納期などを考慮して、
どうしても必要な場合だけにとどめ、上司が仕事を引き取る状況を当たり前にしない
ように注意しましょう。「一度仕事を任せた以上は、部下にやらせる」という意識を持たないと、部下はいつまでたっても成長しませんし、上司の負担も増えます。なお、仕事を引き取る際は、上司の意図が部下に正しく伝わらないと、部下は「経験を積みたいのに、自分は嫌われているのだろうか」などと不安に感じますから、引き取る理由を明確に伝えましょう。
「丸投げタイプ」の上司は、
ハラスメントと言われるのが怖かったり、管理職になりたてで指導に自信がなかったりして、部下とコミュニケーションをあまり取らないタイプ
です。言葉を選ばずに言うと、部下を指導する上司の役目を放棄している人たちです。
具体的には、
といった特徴が見られます。
部下が新入社員だったり、異動直後だったりと、
明らかにサポートを必要としている状況にもかかわらず、指導や相談対応をしない場合、部下の負担の大きさによっては「過大な要求」
になります。また、私傷病休職から復帰した直後の部下なども、心身が十分に回復しておらずケアが必要な場合がありますが、こうしたケースで部下に配慮をせず、
休職前と変わらない業務を担当させ、「パフォーマンスが悪い」などと叱責すると、「精神的な攻撃」や「過大な要求」
になります。
丸投げタイプの上司の場合、まずは自身がマネジャーであることを意識すること、つまり、
「部下を指導するのは上司の役目」という自覚を持つこと
が大切です。とはいえ、ハラスメントと言われるのが怖い、新任管理職なので指導に自信がないという上司の心情も理解できます。このあたりは、経営者などが「指導そのものはハラスメントにはならない」ということを明確に伝えたり、上司の上位者(部長クラスなど)が、必要に応じて指導の相談に乗ったりすることも大切です。
なお、上司がマネジメント業務を怠ると、
それが上司と部下だけでなく、会社全体の問題に発展してしまうケースがあることも認識
しておきましょう。実際にあったケースで、社内で発生したハラスメント問題(部下が被害者)について、上司が「見て見ぬふり」をしてしまい、ハラスメントがエスカレートしてしまった事案があります。会社は社員に対して「安全配慮義務」(労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務)を負っています。実際の裁判でも、
上司は会社の安全配慮義務の「履行補助者」である
として、上司が部下の安全が害されていると知りながら放置した場合、会社の安全配慮義務違反を認定するケースがありますから、マネジメント業務をおろそかにしてはいけません。
以上(2025年10月更新)
(執筆 東京エクセル法律事務所 弁護士 坂東利国)
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目次
解雇に関するトラブルは多く、裁判で解雇が無効(不当解雇)となるケースも少なくありません。その場合、
会社は社員に対し、解雇期間中の賃金(バックペイ)を支払わなければならない
ことになります。通常、会社が社員を解雇すれば、労働契約は終了し、賃金を支払う義務はなくなります。ですが、解雇が無効になると、労働契約は終了しなかったことになるので、解雇期間中(会社が社員を解雇してから、社員が職場に復帰するまで)の賃金を支払う必要が出てくるのです。解雇した時点に遡って賃金を支払うことから、「バックペイ」と呼ばれています。

解雇期間中、社員は働きません。そのため、会社は社員が働いていないのに賃金を支払わなければならず、裁判が長引けば長引くほど、その金額も大きくなってしまいます。
逆に、バックペイのルールをしっかり理解しておけば、
「解雇が無効になったら、どのぐらいの額の支払いが必要になるのか」をシミュレートし、裁判が長引きそうな場合、和解などで解決を図る
といった対策を講じることができます。以降でポイントを確認していきましょう。
前述した通り、解雇が無効になると、会社は働いていない社員に賃金を支払う必要があります。それは、民法第536条第2項に、
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受けることができる
と定められているからです。これを解雇トラブルに当てはめると、次のようになります。
つまり、会社が社員を不当解雇したせいで、社員が労務を提供できなくなった場合、会社は賃金の支払いを拒めないとなるわけです。ただし、社員が会社に対し、労務を提供する(債務を履行する)意思があることがこのルールの前提なので、例えば、
社員が「会社に戻るつもりはないけれど、解雇自体には納得がいかない!」と訴訟を起こした場合などは、バックペイの支払いは不要(不当解雇に関する損害賠償などは別)
です。ちなみに、社員が解雇期間中、別の仕事に就いていた場合に、会社に復帰する意思があるといえるのかどうかがよく問題になりますが、この点については第5章で説明します。
バックペイの対象となる期間を、日給月給制(1カ月単位で賃金を計算し、働いていない時間分は控除する)の場合で考えてみます。会社が社員を解雇し、その後裁判で解雇が無効になった場合、その社員は、
となります。就労できなかったであろう期間とは、
などです。

バックペイとして支払う賃金は、原則として
社員が解雇されなかった場合、確実に支払われたであろう賃金
です。ですから、毎月、固定給として支給される基本給はもちろん、諸手当(役職手当、家族手当、住宅手当など)についても確実に支払わなければなりません。一方、過去の裁判例の中には、
賃金の一部(通勤手当、残業代、賞与など)は、バックペイに含まなくてもよい
と判断したものがあります。
通勤時の交通費を補てんするために支給される通勤手当については、
交通費の実費弁償的な性質があるので、実際に就労していなければ請求できない
と判断した裁判例(名古屋高裁昭和56年4月30日判決など)があります。
時間外勤務の実績に応じて支払われる残業代については、
時間外勤務を命じられて現実に勤務をして初めて発生するため、実際に時間外勤務をしていなければ請求できない
と判断した裁判例(東京地裁平成7年12月25日判決など)があります。ただし、固定残業代のように、残業時間に関係なく定額で支給する残業代については、バックペイの対象になります。
半年に1回など、通常の賃金とは別に支給される賞与については、
業務成績等を個別に査定した上で賞与を支給する場合、実際に査定を受けていなければ請求できない
と判断した裁判例があります(東京地裁平成18年1月23日判決)。逆に、個別の査定を行わずに賞与を支給する場合、バックペイの対象になると判断した裁判例もあります(福岡地裁平成21年6月18日判決)。
このように賃金の一部はバックペイから除外できる可能性がありますが、注意が必要なのが
バックペイの総額は、「平均賃金×60%以上×解雇期間中の所定労働日数(解雇されなかった場合、就労できたであろう日数)」を下回ってはならない
という点です。これは、労働基準法第26条の「休業手当(会社都合で社員を休業させる場合に支払う手当)」のルールをバックペイに適用したものです。平均賃金は、
解雇期間初日の直前3カ月間の賃金総額÷直前3カ月間の総日数
で計算しますが、この場合の賃金総額には、通勤手当や残業代も含まれるので注意が必要です(3カ月を超える期間ごとに支給する賞与は賃金総額に含めない)。
第2章で、バックペイの前提は、その社員が会社に復帰する意思があることだと説明しました。では、解雇期間中に社員が他の仕事に就いていたらどうなるのでしょうか。これについては、
解雇期間中の収入が解雇前に比べて低く、また他の仕事に就く前から一貫して解雇の無効を訴えていることなどから、復帰の意思がある
と判断した裁判例(東京高裁平成31年3月14日判決)や、
他社に就職しつつも、解雇前の会社に復帰できるよう住所を維持していたり、再就職した会社をすぐに退職することが可能と証言していたりすることから、復帰の意思がある
と判断した裁判例(東京地裁令和4年3月16日判決)などがあります。
つまり、解雇期間中に他の仕事に就いていても、会社への復帰の意思が即座に否定されるわけではないとうことです。ただし、社員が
解雇期間中に収入を得ていた場合、その額をバックペイの額から控除することは可能
です。もっとも、前述した通り、バックペイの総額は「平均賃金×60%以上×解雇期間中の所定労働日数」を下回ってはいけないので、控除額には限界があります。また、仕事による収入の控除は認められますが、社員が在職中、雇用保険に加入していた場合、
雇用保険の「失業手当」などの給付額は、バックペイの額から控除できない
ので注意が必要です。
以上(2025年11月更新)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)
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「管理職には残業代を支払う必要がない」。これは半分正解で、半分不正解です。労働基準法(以下「労基法」)上、残業代が不要な管理職と、そうでない管理職がいるからです。
労基法上、管理監督者には労働時間・休憩・休日の規定が適用されないので、そもそも残業という考え方がなく、残業代を支払わなくてもよいとされています(深夜労働の残業代を除く)。
「それなら、うちの管理職に残業代を支払う必要はない」と考える経営者の方もいそうですが、そう簡単ではありません。なぜなら、管理監督者と認められる要件が非常に厳しいからです。まずは図表1を見て、具体的な社員をイメージしながら◯×を付けてみてください。

いかがでしょうか。1つでも「×」が付いたら、管理監督者ではないと判断される恐れがあります。そして、管理監督者でないと判断された場合、その社員には残業代を支払わなければなりません。
働き方改革などで、社員の労働に対する権利意識は高まってきています。不要な労務トラブルを避けるためにも、このタイミングで管理監督者の要件を確認していきましょう。
管理監督者には、労基法の次の規定が適用されません。
つまり、管理監督者は
就業時間(始業から終業まで)と休憩時間、労働日と休日などの区別がない状態で働き、時間外・休日労働といった考え方がない
ということです。
ただし、深夜労働の規定は適用されるので、22時から翌日5時までの間に残業した場合は残業代の支払いが必要です。勤続年数に応じた年次有給休暇の付与については、管理監督者も対象となります。
また、労働安全衛生法の「労働時間の把握義務」は管理監督者にも適用されるので、
あくまで時間外・休日労働などの規制から外れるだけで、労働時間管理自体は必須
である点に注意が必要です。
一方、肩書きはあるが管理職の権限や実態がなく、残業代が支払われないなど待遇が不十分という社員は、名ばかり管理職です。このような社員は、管理監督者とは認められないので、時間外・休日労働、深夜労働全ての残業代を支払わないといけません。また、いわゆる「時間外労働の上限規制」(原則として月45時間、年360時間など)も適用されます。
法令上、管理監督者とは、
労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある人
のことです。具体的には次の3つの要素を基に、管理職が経営者と一体的な立場にあるか(管理監督者性)を判断します。実態で判断するので、課長などの役付者であるかは関係ありません。

それぞれの要素について、重要なポイントを見ていきましょう。
管理職が、経営者が主催する幹部会などへの参加、社員の採用、労働時間管理、人事考課など、経営上重要な職務に携わっている必要があります。ただし、経営者から指示を受けて職務を遂行するだけでは不十分で、次のように一定の責任・権限を与えなければなりません。
中小企業の場合、管理職の多くは現場の職務とマネジメントを兼務する「プレイングマネジャー」です。マネジメントの比重が小さいと、管理監督者として認められにくくなるので、その場合はマネジメントの比重を上げる必要があります。
時間帯や休日に関係なく経営上の判断や対応を求められるなど、イレギュラーな働き方をしている必要があります。ただし、イレギュラーな働き方をさせる以上、労働時間については管理職が自由に決められるようにしなければなりません。
具体的には、出退勤はもちろん、中抜けの自由も認め、遅刻、早退、中抜けなどによる減給がないようにします。ただし、管理監督者だからといって過重労働は認められません。健康管理や深夜労働の管理のためにも、出退勤時刻の把握は必須です。
賃金について、管理職と一般社員との間に相応の待遇格差を付ける必要があります。管理職の場合、基本給が高く、役職手当なども支払われるので、通常の賃金は、
管理職の基本給や手当>一般社員の基本給や手当
となります。しかし、一般社員に残業代などが支払われると、
管理職の基本給や手当<一般社員の基本給や手当+残業代など
といった逆転現象が起きることがあります。
そのため、管理職の賃金については、各社員の労働時間や残業代などを考慮した上で、一般社員と比較して高い水準を確保できるよう配慮しなければなりません。
ここまでが、管理監督者の要件に関する基本的な考え方です。
多店舗展開する小売業や飲食業の店長などの場合、特に注意が必要です。名ばかり管理職の問題が起きやすいため、管理監督者の要件を本当に満たしているか、より厳しくチェックされる傾向があります。
厚生労働省からも、これらの業種について、前述した3つの要素「1.職務内容と責任・権限」「2.勤務態様」「3.待遇」それぞれについて、「管理監督者性を否定する要素」を示す通達が出されています(平成20年9月9日基発第0909001号)。簡単に言うと、管理職として取り扱っていたとしても、これらの要素に該当する場合、管理監督者ではないと判断されてしまう恐れがあるということです。第3章で紹介した内容と一部重なる部分もありますが、確認していきましょう。

以上(2025年11月更新)
pj00217
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2025年12月15日、きらやか銀行は、山形県の後援を受け、キャプラスクインターナショナル合同会社との共催で「やまがた未来(みら)くる人材&外国人材活用セミナー」を開催します。
このセミナーでは、副業・兼業プロ人材マッチング支援の状況や、全国でも年々拡大している外国人材受け入れの事例、鍵となるポイントは何か、人口減少時代にどのように対応していくかなどを紹介いたします。
このページの最後に、外国人材活用に役立つコンテンツも紹介しますので、ぜひご覧ください!
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お申し込み締め切りは2025年12月8日(月)17:00です。
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