「睡眠不足」の経済損失は18兆円!? 心地よく眠れる8つのポイント

1 社員の健康なくして生産性の向上なし

近年、企業の持続的な成長を支える戦略として、従業員の健康管理やウェルビーイングへの関心が急速に高まっています。その中で、特に重要視されている分野の一つが従業員の「睡眠」です。人間にとって睡眠は、日中に疲労が蓄積した脳や体をしっかりと休ませ、心身のバランスを整えるために欠かせない生命活動です。また、成長ホルモンの分泌を促して体の成長を支えたり、免疫力を高めたり、精神を安定させたりする重要な役割も担っています。

現代の日本では成人の5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えており、睡眠不足による生産性の低下などにより、年間18兆~20兆円の経済損失との試算もあります。企業経営において労働生産性の向上は喫緊の課題ですが、その根底にある睡眠の課題は見過ごせません。

この記事では、睡眠不足がビジネス環境にもたらすリスクに加え、最新の睡眠科学、高機能枕やリカバリーウェア、機能性表示食品といった最新アイテムの活用法について、分かりやすく解説します。

2 睡眠不足が企業とビジネスパーソンにもたらす深刻なリスク

1)睡眠不足が企業活動に与える多大な悪影響

睡眠不足は脳の働きを鈍らせ、身体能力を低下させることが分かっています。パフォーマンスが悪くなったり、作業ミスをしがちになったりするのは典型例です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」のベースとなった研究などでは、人間が十分に覚醒して作業を行うことができるのは起床後12~13時間が限界であり、起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下するとしています。また、睡眠不足が6~7日間続いた場合、その後3日間十分な睡眠を取っても日中の作業能率は元に戻りません。毎日十分な睡眠を取ることが重要です。

2)ストレスチェック制度の義務化と睡眠

従業員50人以上の事業所にはストレスチェックの実施が義務付けられており(50人未満の事業所の場合、2028年3月末までは努力義務)、メンタルヘルス不調の未然防止を図ることが求められます。標準の57の質問には「よく眠れない」という項目が含まれています。不眠症状とうつ病は密接に関連しているため、従業員の睡眠にも気を配ることは重要です。

3 注目される「オレキシン」と睡眠の科学

近年、睡眠研究の分野において世界的な注目を集めているのが、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳澤正史教授らの研究チームによる「オレキシン」の発見です。オレキシンは、脳の視床下部で作られる神経伝達物質であり、私たちが「起きていようとする覚醒状態」を安定して維持するために極めて重要な役割を果たす物質です。

人間の脳内には、「起きていようとする覚醒システム」と「眠ろうとする睡眠システム」が存在し、互いにバランスを取り合っています。柳澤教授らは1998年に、この覚醒を保つためのスイッチとして働くオレキシンを世界で初めて発見しました。このオレキシンの働きが先天的に欠乏してしまうと、日中に突然耐え難い強い眠気に襲われる睡眠障害「ナルコレプシー」を発症することが明らかになりました。

さらに、この基礎研究の成果は実際の臨床現場や創薬にも大きな変革をもたらしました。従来の睡眠薬の多くは脳全体を強制的に鎮静させるアプローチが主流でしたが、オレキシン研究の進展によって「脳の覚醒スイッチであるオレキシンの働きを一時的にブロックし、自然な睡眠への移行を促す」という受容体拮抗薬が開発されました。この功績により、柳澤教授は世界最高峰の賞である「アルバート・ラスカー基礎医学研究賞」を受賞し、将来のノーベル賞の有力候補として期待されています。最先端の睡眠科学の知見は、生活習慣を見直す大きな羅針盤となります。

4 押さえておきたい「快眠のための8つのポイント」

日々の睡眠の質を高めるための8つのポイントを確認していきましょう。人によって効果は異なるため、自分に合った方法を見つけましょう。

1)規則正しい生活習慣を維持する

毎日同じ時刻に眠り決まった時間に起きることで体内に睡眠のリズムがつくられ、休日もリズムを崩さないことが大切です。睡眠のリズムが狂っている場合は、太陽の光を浴びるとよいでしょう。

2)朝食をしっかりと摂取する

朝食は覚醒後のエネルギーとして利用され、抜くと体に負担がかかります。食事を3度きちんと取ると睡眠リズムが回復します。

3)寝る前にはぬるめのお風呂にゆっくりと浸かる

20~30分ほどぬるめのお湯にゆっくり浸かることで心臓に負担をかけず心身をリラックスさせられます。入浴剤や音楽の活用も効果的です。

4)適度な運動を日課にする

適度な運動は熟睡を促しますが、寝る前の過剰な運動は心身を活発にするため控えましょう。

5)日中に適切な昼寝を取り入れる

13~15時の間に15~20分程度の昼寝をすることで午後の活動が活性化し夜の熟睡につながります。1時間以上寝ると逆効果です。

6)カフェインの量を減らす

寝る前のカフェイン摂取は不眠の原因になり、過剰摂取は頭痛やめまいなどを引き起こすため注意が必要です。

7)睡眠環境を改善する

枕の高さや硬さ、ベッド、間接照明、リラックスできる音楽など、自分の体に合う睡眠環境を工夫しましょう。

8)「眠らなければならない」と意識し過ぎない

「眠らなければならない」と強く意識し過ぎると、自己暗示となり、かえって眠れなくなるため、横になったら音楽を聴くなどしてリラックスすることが大切です。

5 睡眠環境とコンディションを底上げする

日々の生活習慣の改善に加えて、近年は睡眠の質や日中のコンディションを物理的・生理的に高める高機能アイテム(枕やマットレスなどの寝具、リカバリーウェア)や機能性表示食品の活用が大きな注目を集めています。

例えば、「ブレインスリープ」などの高機能枕は抜群の通気性と高い放熱性を備えており、睡眠中の頭部の温度上昇や蒸れを防ぎます。人間は脳や頭部の温度が下がることでスムーズに入眠初期の深い睡眠に入りやすくなるため、熱をこもらせない枕は有効なアプローチです。

また、「BAKUNE」などのリカバリーウェアは、特殊繊維が身体から発せられる遠赤外線を輻射し、血行を促進することで筋肉のコリを和らげ、疲労回復をサポートします。

さらに、多忙なビジネスパーソンの間で広く活用されているのが、「ヤクルト1000」などの機能性表示食品です。一部の乳酸菌やGABAなどの成分には、一時的な精神的ストレスがかかる状況におけるストレス緩和や、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を高める機能があることが報告されています。そうした成分を含む製品が多く販売されており、日々のプレッシャーにさらされがちなビジネスパーソンにとって、手軽なセルフケア手段として大きな支持を集めています。

6 従業員の健康管理と生産性向上に向けて

従業員の睡眠の質的向上は、個人の健康を守るだけでなく企業全体の生産性を高める重要な基盤です。

睡眠不足が続くと生産性や判断力が鈍るため睡眠薬を使用するビジネスパーソンもいますが、使用法を誤ると心臓や血管への負担や依存症のリスクがあります。使用の際は必ず医師に相談し、自己判断で量を増やしたりアルコールと一緒に服用したりしないよう注意しましょう。

また、良かれと思ってやりがちな「寝酒」も要注意です。アルコールの作用で寝付きは良くなりますが、眠りが浅くなってしまいます。浅い睡眠は睡眠の質の低下を意味し、二日酔いの朝に早く目が覚めてしまうのもアルコールによる覚醒作用のためです。「寝付けないから寝酒」という行為は実は逆効果です。

最先端の睡眠科学の知見や、高機能アイテム・機能性表示食品の活用、そして日々の生活習慣の改善を通じて、組織全体のパフォーマンス向上に向けた取り組みを一歩前進させてみてはいかがでしょうか。

以上(2026年10月更新)

pj60108
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その指導、パワハラかも……? 弁護士が教える、危うい上司4タイプ!

1 上司に悪気がないからこそ厄介なパワハラ

パワハラ(職場におけるパワーハラスメント)とは、

職場の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた(行き過ぎた)言動により、就業環境が害される(就業する上で看過できない程度の支障が生じる)こと

です。「職場の優越的な関係」の典型的なパターンは「上司と部下」で、一般的な行為類型は次の6つです(通称:パワハラの6類型)。

パワハラの6類型

ただ、実は上司が明確な悪意を持ってパワハラをするケースはあまり多くありません。むしろ、部下のほうに問題(指示したことができない、同じミスを繰り返すなど)があって、

上司が「良かれと思って」指導をした結果、そのやり方が行き過ぎてパワハラになる

というケースが多いのです(指導中、感情がヒートアップして暴言を吐いてしまうなど)。

部下の指導は上司の役目であり、そこに臆病になる必要はありません。ただ、

指導が「業務上必要かつ相当な範囲」を超えないよう、自己分析をすることは大切

です。この記事では、日本ハラスメントカウンセラー協会の顧問として数々の会社のハラスメント対策に向き合ってきた弁護士(筆者)が、「パワハラ予備軍」とでも呼ぶべき上司のタイプを次のように分け、その指導をどう改善していけばよいかを解説します。

  • 部下を精神的に追い込む「価値観押し付けタイプ」
  • 論理的だが話を聞かない「正論押し付けタイプ」
  • 部下にかまいすぎる「過干渉タイプ」
  • 部下に任せきりで指導をしない「丸投げタイプ」

2 部下を精神的に追い込む「価値観押し付けタイプ」

価値観押し付けタイプ

1)どういうタイプ?

「価値観押し付けタイプ」の上司は、

「〇〇すべき」「仕事はこういうもの」といった昔ながらの価値観を、部下にも強制してしまうタイプ

です。上司自身も若い頃、自分の上司からその価値観を押し付けられ、時には暴言にさらされるような環境で過ごしてきたため、今の部下に対して同じような態度で接してしまいます。

具体的には、

  • 部下に対する言葉がキツくなり、「お前はばかだ」「新入社員以下だ」など暴言を吐いてしまう
  • 部下のことを「常識がない」などと決めつけ、その部下に異様に冷たく接してしまう。ミーティングに参加させなかったり、仕事を取り上げたりする

といった特徴が見られます。

2)どういう指導がパワハラになる?

上司側は“愛の鞭”のつもりでも、部下に対して「お前はばかだ」「新入社員以下だ」など、

名誉や人格を著しく傷付ける言動を繰り返すと、指導する業務上の必要性があったとしても、その態様が社会通念上相当な範囲を超えた言動(「精神的な攻撃」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。部下が暴言により精神を病み、休職や退職に追い込まれるケースは少なくなく、裁判で高額の損害賠償(自殺事案だと数千万円以上、自殺事案でなくても100万円以上)が認められたパワハラ判決の多くは、このタイプの上司による事案です。

価値観の合わない部下に異様に冷たく接する、ミーティングに参加させないといったように、

個人を疎外する行為は、業務上の必要性に照らして社会通念上相当な範囲を超えたものであれば、パワハラ(「人間関係からの切り離し」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。期待通りの働きができない部下に単純作業だけを命じるなど、

仕事を取り上げる行為は、業務上の合理性を欠いた言動(「過小な要求」型のパワハラ)

になります。

なお、パワハラ全般に言えることですが、上司の言動がパワハラと認定されるのは、

原則として問題のある言動が「何度も、継続的」に行われた場合です。ただ、頻度や継続性に関係なく、1回の言動でパワハラ(一発アウト)になるケースも存在

します。例えば、他の社員のいる状況で「お前の働きぶりをご両親に報告してやろうか」など、家族に言及しさらし者にする行為は、侮辱的な言動として一発アウトになる可能性が高いです。カッとなってゴミ箱を投げ付けるなどの「身体的な攻撃」も、原則として一発アウトです。

3)指導の改善のポイントは?

次章以降で紹介するタイプにも言えることですが、筆者の経験上、

パワハラの加害者は、人格価値と関連のない属性(職務上の上下関係、男性・女性、勤務成績、年齢、容姿など)に基づいて、相手を軽く扱う傾向がある

と感じます。当たり前のことですが、職務上の上下関係はあくまで組織の指揮系統であって、上司だから部下を軽んじていいなんてことは決してありません。ですから、

まず大切なのは、部下を個人として尊重した振る舞いをすること

です。例えば、自分よりも上位の役職者や同僚には到底使えないような言葉を部下にぶつけていないか、取引先などが相手なら絶対しないような態度で部下に接していないかを確認します。

ジェネレーションギャップへの対応、つまり、

昭和・平成時代は良しとされた(黙認された)価値観や言動が、令和の時代では必ずしも通じないと自覚すること

も大切です。「若い頃に厳しく鍛えられたから今の自分がある」「今さら自分を変えるなんて難しい」という上司もいるでしょうが、社会の変化を感じ取って指導の仕方を修正しないと、パワハラで糾弾されるリスクからは逃れられません。

部下の指導は上司の役目ですから、指摘すべき点は毅然と指摘すべきですが、

指導する際は業務上の問題点に焦点を絞り、人格に踏み込まないこと

が大切です。「〇〇の部分ができていない」と事実ベースで問題点を指摘するなどしましょう。人格に踏み込む発言はパワハラになりやすいだけでなく、部下のほうも「自分を否定された」という印象ばかりが残り、肝心の指導内容が頭に入っていきにくいです。

部下を指導する際、つい感情的になってしまうという人は、

自分の感情を意識しながら指導すること(アンガーマネジメント)を心掛ける

ようにしましょう。例えば、不手際に接してイラッとした場合に、「ああ、自分はいらついているんだな」と、自分の感情を客観的に見つめる癖を付けると、意外と冷静になれるものです。

3 論理的だが話を聞かない「正論押し付けタイプ」

正論押し付けタイプ

1)どういうタイプ?

「正論押し付けタイプ」の上司は、

感情に左右されず、論理的に指導をするが、その論理から外れた行動をする部下に異常に厳しいタイプ

です。なお、「論理的に指導をしている」というのはあくまで上司自身の認識で、実際は部下の力量や経験、他の業務の状況などを正しく把握できておらず、的外れな指導をしてしまうケースも多いです。自分に自信がある分、意外と周りが見えていないタイプともいえるでしょう。

具体的には、

  • 「私の言うこと、間違っている?」「この通りにやれば成果が出るはずなのに、なぜやらない?」などの言い方で、部下を追い詰めて萎縮させる
  • 「私の言うやり方ならできるはずだ」と、部下の力量や経験、他の業務の状況などを考えず、キャパオーバーの業務を振り、部下が難色を示しても取り合わない

といった特徴が見られます。

2)どういう指導がパワハラになる?

部下のミスに対して、指導する時と場所を選べるにもかかわらず、

周囲に他の社員がいる状況で長時間の叱責をすると、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「精神的な攻撃」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。

キャパオーバーの業務を振り、部下が難色を示しても取り合わないのは、

明らかに遂行不可能な業務を振るなど業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであれば、パワハラ(「過大な要求」型のパワハラ)

になります。部下の言い分を聞いて軌道修正を図るならよいですが、「言い訳する暇があったら先に進もうよ」などと言って、取り合わないのはNGです。

正論押し付けタイプの上司に接すると、部下は逃げ場がなくなってしまい、ストレスの蓄積により精神を病んでしまうことがあります。パワハラによるストレスだけで精神を病んだとはいえなくても、他のストレス(困難な業務による精神的負担や長時間の勤務などによるストレス)が合わさって、メンタルヘルス不調になったと判断されることがあるので注意が必要です。

3)指導の改善のポイントは?

正論押し付けタイプは、部下が相談を持ちかけても、上司側の正論で一刀両断してしまうため、部下にとっては「取り付く島もない」状態になることもあります。上司にとっては「相談するまでもないこと」でも、部下にとってはそうではありません。

まずは上司が部下の話によく耳を傾けること、つまり「傾聴」

が大切です。上司が話を聞いてくれれば、部下は言葉に出しながら自らの問題点や課題を整理でき、解決の糸口を見つけられます。部下の発言が、上司側の正論から外れたものであったとしても、まずは「部下には部下の言い分があるのだろう」と肯定的に受け止めましょう。

また、価値観押し付けタイプの上司にも言えることですが、正論押し付けタイプの上司には、自身の誤りを認めることが得意でない人がいます。部下の納得を得るためにも、

上司の指示や指導に落ち度があれば、素直に認めること

が大切です。これは「謝るべきは謝り、過大な謝罪要求は毅然とお断りする」という、カスタマーハラスメントなどと同様の対応です。

4 部下にかまいすぎる「過干渉タイプ」

過干渉タイプ

1)どういうタイプ?

「過干渉タイプ」の上司は、

部下がちゃんと働いているかが気になって、過剰に干渉してしまうタイプ

です。業務の進捗を管理するのは上司の役目ですが、その管理が行き過ぎることで、かえって仕事に支障を来してしまうのです。

具体的には、

  • 必要以上に連絡を取ろうとし、ある程度経験がある部下が相手でも、細かく仕事の進め方を決めないと気が済まない
  • 部下が期待通りの働きをしていない場合、「普段の生活態度が仕事に影響してくるんだ」などと、部下の私生活にまで言及してしまう
  • 「部下が大変そうだから」「定時で帰らせたいから」と、任せた仕事を引き取ってしまう

といった特徴が見られます。

2)どういう指導がパワハラになる?

部下の業務の進捗管理については、

休日や深夜などの時間帯にまで連絡を入れて報告を求めると、連絡する業務上の必要性があったとしても、その態様が社会通念上相当な範囲を超えたものとして、パワハラ(「過大な要求」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。テレワークをしている部下に、勤務時間中はオンライン会議システムのカメラを常にオンにしておくように命じたり、頻繁に点呼を取ったりするのも、業務上の必要性に照らして社会通念上相当な範囲を超えたものであれば、パワハラ(過大な要求)と評価される可能性があります。

期待通りの働きをしていない部下に、「普段の生活態度が仕事に影響してくるんだ」などと、

私生活にまで言及して叱責するのは、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「精神的な攻撃」型または「個の侵害」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。毎日定時で帰る部下に「そういう甘い考え方だから仕事も中途半端になるんだ。考えを改めよう」と叱責したりするケースなども同様です。一方、

育児や介護をしている部下について、業務量を調節するために家族の事情について質問する場合などは、業務上の必要性や相当性が認められ、基本的にパワハラにはならない

と考えられます。とはいえ、根掘り葉掘り質問をして、部下が「個人的なことですから」と、話したくない態度を示したのにしつこく質問すると、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「個の侵害」型のパワハラ)と評価される可能性があります。

「部下が大変そうだから」「定時で帰らせたいから」と、

部下に任せた仕事を引き取るのは、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「過小な要求」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。業務負担の偏りや納期などの事情に配慮して、部下の仕事を引き取ることは業務上必要なことなので、本来パワハラにはなりませんが、簡単な仕事しか与えない状況が常態化している場合などは話が変わってきます。

3)指導の改善のポイントは?

目の届かない所で仕事をしている部下が心配なのは分かりますが、上司の目の前で仕事をしている社員が成果を上げているとは限りませんし、その逆もしかりです。まずは、

上司として、ある程度部下を信頼して任せる態度を取ること

が大切です。監視・干渉しなくても、業務管理できるシステムの導入などを検討しましょう。

また、上司と部下の間で、

1日の中で業務の定期連絡をするタイミングを決めておき、メールやチャットの場合、上司が勤務時間外に送信しても、部下は勤務時間中の返信可能なときに返信すればよい

という具合に、連絡に関するルールを共有しておくのもよいでしょう。ただ、勤務時間外に繰り返し上司からメールやチャットが送信されるようだと、部下が「自分も早く返信しなければ」と圧を感じることがありますから、勤務時間外の送信は最低限にしておきましょう。

一度部下に任せた仕事を引き取るのは、業務負担の偏りや納期などを考慮して、

どうしても必要な場合だけにとどめ、上司が仕事を引き取る状況を当たり前にしない

ように注意しましょう。「一度仕事を任せた以上は、部下にやらせる」という意識を持たないと、部下はいつまでたっても成長しませんし、上司の負担も増えます。なお、仕事を引き取る際は、上司の意図が部下に正しく伝わらないと、部下は「経験を積みたいのに、自分は嫌われているのだろうか」などと不安に感じますから、引き取る理由を明確に伝えましょう。

5 部下に任せきりで指導をしない「丸投げタイプ」

丸投げタイプ

1)どういうタイプ?

「丸投げタイプ」の上司は、

ハラスメントと言われるのが怖かったり、管理職になりたてで指導に自信がなかったりして、部下とコミュニケーションをあまり取らないタイプ

です。言葉を選ばずに言うと、部下を指導する上司の役目を放棄している人たちです。

具体的には、

  • 指導を嫌がる。部下に「分からないことがあったら聞いて」と言っておきながら、いざ相談されたら「少しは自分で考えろ」と言って突き放す
  • 「プレーヤー」としての自分の仕事以外の「マネジャー」的な仕事をしたがらない

といった特徴が見られます。

2)どういう指導がパワハラになる?

部下が新入社員だったり、異動直後だったりと、

明らかにサポートを必要としている状況にもかかわらず、指導や相談対応をしない場合、部下の負担の大きさによっては、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「過大な要求」型のパワハラ)

になります。また、私傷病休職から復帰した直後の部下なども、心身が十分に回復しておらずケアが必要な場合がありますが、こうしたケースで部下に配慮をせず、

休職前と変わらない業務を担当させ、「パフォーマンスが悪い」などと叱責すると、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「精神的な攻撃」または「過大な要求」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。

3)指導の改善のポイントは?

丸投げタイプの上司の場合、まずは自身がマネジャーであることを意識すること、つまり、

「部下を指導するのは上司の役目」という自覚を持つこと

が大切です。とはいえ、ハラスメントと言われるのが怖い、新任管理職なので指導に自信がないという上司の心情も理解できます。このあたりは、経営者などが「指導そのものはハラスメントにはならない」ということを明確に伝えたり、上司の上位者(部長クラスなど)が、必要に応じて指導の相談に乗ったりすることも大切です。

なお、上司がマネジメント業務を怠ると、

それが上司と部下だけでなく、会社全体の問題に発展してしまうケースがあることも認識

しておきましょう。実際にあったケースで、社内で発生したハラスメント問題(部下が被害者)について、上司が「見て見ぬふり」をしてしまい、ハラスメントがエスカレートしてしまった事案があります。会社は社員に対して「安全配慮義務」(労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務)を負っています。実際の裁判でも、

上司は会社の安全配慮義務の「履行補助者」である

として、上司が部下の安全が害されていると知りながら放置した場合、会社の安全配慮義務違反を認定するケースがありますから、マネジメント業務をおろそかにしてはいけません。

以上(2026年11月更新)
(執筆 東京エクセル法律事務所 弁護士 坂東利国)

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画像:ChatGPT

現場の業務をDXで効率化!「ブルーカラー」の働き方改革を促す現場改善テック

1 「現場」にこそDXによる業務効率化が必要

御社の現場では、次のような課題を抱えてはいないでしょうか?

  • 紙によるアナログな管理で、情報の閲覧や検索が困難になっている
  • 社員各々の経験に業務を頼っていて、ノウハウが共有されていない
  • 社員が現場に1人で出ており、情報共有や社員間の連携がうまくいかない

こうした課題を解決できるのが、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。例えば、紙による資料管理をデジタル化するだけでも記録ミスの削減や社員の作業負担が軽減され、残業時間の削減が期待できます。一方で、DXを進めるために市販の外部システムを使おうとすると、中小企業の規模では必要のない機能が含まれていたり、コスト面の負担が大きかったりして、一歩を踏み出せないケースもあります。

そこで、この記事では、これからDXを進めようとしている企業の参考になるよう、システムを自社開発することでDXを実現した企業の事例や、具体的にDXを進めていく際の参考情報を紹介します。

2 自社開発による「現場改善テック」事例

1)作業日報をアプリで見える化:サンコー技研(大阪府東大阪市)

1.取り組み内容

プリント基板や光学部品、フィルム部材製作などを手掛ける同社では、日報・生産管理アプリの「スマファク!」を自社開発・外販しています。利用者は、個人別に作成されたQRコードをスマートフォンのアプリで撮影することで、その日の作業記録を入力できるだけでなく、1日ごとや案件ごとにグラフ形式で作業時間を確認できます。

2.取り組みのきっかけ

これまで同社では、生産実績やトラブルなどの記録を手書きの日報で作成しており、その作業自体に負担がかかることや、過去の情報を見直しづらいことを課題としていました。そのため、作業日報のデジタル化を検討したものの、既存のシステムでは必要のない機能も含まれている上、ライセンスコストの負担が大きかったことから自社開発に至ったといいます。開発に当たっては、大阪府IoT推進ラボが運営する「IoTマッチング」を使ってサン・エンジニアリング(大阪府大阪市)と協働し、アプリ開発に取り組みました。

3.取り組みの成果など

日報が手書きからモバイル端末での入力に変わったことで、記録業務の手間や記録ミスの削減、工程ごとの正確な時間管理ができるようになったといいます。

また、スマファク!は中小の町工場に限らず、大手企業からの引き合いもあるといいます。

■スマファク!■
https://sankogiken.com/smafac/

2)納期管理や進捗管理を見える化:日本ツクリダス(大阪府堺市)

1.取り組み内容

町工場向けの生産管理システムの開発・提供、印刷物・ウェブサイトなどのデザイン制作を手掛ける同社では、納期管理・進捗管理システムの「エムネットくらうど」を自社開発・外販しています。仕事の優先順位や進み具合を知るための納期管理・進捗管理を重視したシステムで、紙の図面の情報をシステムに入力し、発行したバーコードを貼り付けて管理する仕組みです。

「エムネットくらうど」メニュー画面のイメージ図

2.取り組みのきっかけ

町工場での納期管理・進捗管理はホワイトボードや経営者の頭の中だけで把握していることが多く、情報共有が難しいという課題がありました。

また、既存の製造業向けの生産管理システムは、町工場で使うには複雑で必要のない機能も入っており、導入コストも高いことから、必要な機能だけをそろえたシステムを自社開発することに至ったといいます。

3.取り組みの成果など

工程の進捗状況が誰でも見られるようになったことで、クライアントからの進捗確認の問い合わせに対して、作業現場まで聞きに行かずとも素早く回答できるようになり、クライアントからの信頼度が向上したそうです。また、作業効率が上がったことで完全週休2日制も実現できたといいます。

また、「エムネットくらうど」を導入したユーザーでは、売上高の向上や人件費削減を実現したケースもあるといいます。

■エムネットくらうど■
https://mnet.netkojo.biz/

3)顧客管理ツール開発でDX化を実現:三和鍍金(群馬県高崎市)

1.取り組み内容

メッキ、塗装、研磨などの金属表面処理を手掛ける同社では、顧客管理ツールの「見積り案件管理表」を自社開発し、運用しています。

見積り案件管理表のイメージ図

2.取り組みのきっかけ

紙ベースでの管理方法では、必要なデータをすぐに引き出せない、資料を保管するスペースが圧迫される、火災などが起きたときに紛失する危険があるなどの課題がありました。

一度は有料の販売管理システムを導入したものの、社員数などの会社全体の規模感が見合わなかったり、管理項目が難解だったりすることを理由に数カ月で利用を取りやめ、自社開発に至ったといいます。

3.取り組みの成果など

同社代表の武藤篤氏は、「身の丈に合った丁度いいシステムになっているので、何よりも継続的に使用するにあたってストレスが限りなくゼロに近いというメリットがある。自社開発だからこそ実現できたと考えている」と語ります。

また、システムを導入することで、1カ月あたりおよそ40~50件の新規お問い合わせに対して、営業2人で管理ができる体制が構築されました。案件の共有も即座にでき、また過去データ(図面・処理内容・見積り単価等)を確認することも容易であるため、営業と事務間のコミュニケーションが円滑化され、生産管理の効率が飛躍的に上昇したといいます。

■三和鍍金■
https://sanwamekki.com/

4)社内向けポータルサイトでDXを実現:NISSYO(東京都羽村市)

1.取り組み内容

業務用トランス・リアクトル・制御盤の設計・製造などを手掛ける同社では、自社制作したクラウド型のポータルサイトの「アスヨクDX」を用いたデータドリブン経営(データを活用してビジネス上の意思決定を行う経営手法)に取り組んでいます。全社員にiPadを配布し、残業時間の確認、社内規定、Q&Aなどのデータを集め、Looker Studio(GoogleのBIサービス)でデータの見える化を図っています。

2.取り組みのきっかけ

2017年に発表した経営計画の社長コメントで、バックヤードをデジタル化で簡素化していくことを宣言したこと、売り上げの増加に伴い、業務量が増えたことで慢性的な人材不足になっていたことをきっかけに、iPadを正社員全員に配布し、ペーパーレス化やクラウド上に社内のデータを集める取り組みを始めました。

3.取り組みの成果など

クラウド上に図面データをアップロードし、各自が持っているiPadで見るという取り組みによって、年間約60万枚のペーパーレスを実現しているといいます。

また、同社はDX推進の準備が整っていることを国が認定する「DX認定事業者」に認定されている他、日本の中小企業の規範となるDX推進態勢を構築したとして、2022年のITコーディネータ協会表彰で優秀賞(独立行政法人情報処理推進機構理事長賞)を受賞しています。

■NISSYO■
https://www.nissyo.tokyo/

5)トレーサビリティで製造工程を管理:三行合成樹脂(新潟県見附市)

1.取り組み内容

プラスチック射出成形を手掛ける同社では、金型や製品の情報をすべてデジタルで管理しています。二次元コードを活用したトレーサビリティ管理を導入し、成形機の稼働状況をリアルタイムで監視して、異常を早期に発見できる体制を整えました。

2.取り組みのきっかけ

人手不足が社会的な課題となる中、属人的な技能や経験に頼らない経営基盤を築くことを目指し、町工場からスマートファクトリーへの変革に取り組んだといいます。

3.取り組みの成果など

社員の有給取得率の向上やクレーム件数の減少などの働き方改革を実現しています。また、全工程のデジタル管理や製造工程のリアルタイム監視が評価され、「DXセレクション2026」で新潟県の企業として初めて準グランプリを受賞しています。

■三行合成樹脂■
https://sanko-pla.jp/

6)AIとの対話で業務アプリを内製し、現場を楽に:岡田研磨(石川県金沢市)

1.取り組み内容

建設機械などの部品を製造する同社では、現場社員全員へのタブレット配布や全工作機械の稼働状況を把握するシステムの導入に加え、AIを用いて業務アプリを内製しています。

図面はPDF化してタブレットで検索できるようにし、生産管理や在庫管理、クレーム管理などの情報を一元化した「OKADA Board」として、全社員が閲覧できる体制を整えています。

2.取り組みのきっかけ

同社専務の岡田雄太氏によると「あらゆるものが紙で管理され、業務の無駄の多い現場を目の当たりにした」ことがきっかけといいます。DX推進に当たっては、管理する側の都合ではなく「現場が楽になること」を軸に据えて進めたとしています。

3.取り組みの成果など

月400~500時間程度の作業時間の削減、クライアントへの価格改定資料の作成時間の90%短縮、月間約6000枚の紙の使用量の削減などを実現しています。また、仮に、同様のシステムを外部ベンダーに開発・運用を委託した場合は1億円規模になると試算されています。

■岡田研磨■
https://www.okadakenma.com/

7)塗装工程をデジタルで見える化し、熟練技能を伝承:ヒバラコーポレーション(茨城県東海村)

1.取り組み内容

重電機器や車両制御システムなどの金属塗装を手掛ける同社は、生産状況や工程の進捗を可視化する生産管理システム「HIPAX」を自社開発しました。入荷時に1品ごとの塗装仕様やサイズ、写真をスマートフォンで入力し、作業者が工程ごとに開始・終了時間を記録することで、進捗をリアルタイムで確認できる仕組みです。この進捗は顧客にも開示しています。

2.取り組みのきっかけ

工業塗装業界が抱える、熟練技能者の高齢化や若手人材の確保難、それに伴う品質の不安定化という課題に対して、社内のシステム開発部門の強みを活かした取り組みをしたいことがきっかけといいます。

3.取り組みの成果など

HIPAXの導入により、同じ人員体制で生産能力を25~30%伸ばせるようになったとしています。進捗を顧客に開示する仕組みは、問い合わせ対応の負担軽減や顧客からの信頼向上にもつながったとしています。また、「DXセレクション2025」では準グランプリを受賞しています。

■ヒバラコーポレーション■
https://kougyoutosou.com/

3 参考:DX導入に役立つ情報

1)独立行政法人情報処理推進機構(IPA):DX SQUARE

DXに関する情報を発信するウェブサイトです。DXの基礎知識や用語集をはじめ、自社のDXレベルを測るための指標、業種ごとのDX推進事例などを紹介しています。

■DX SQUARE■
https://dx.ipa.go.jp/

2)IPA:マナビDX

デジタルスキルに関する学習コンテンツを紹介するウェブサイトです。DXの基礎的な講座をはじめ、社員のキャリアアップや企業研修に活用できる講座の情報をまとめています。

■マナビDX■
https://manabi-dx.ipa.go.jp/

3)中小企業基盤整備機構:ここからアプリ

中小企業がDX推進に関して、導入しやすい業務用アプリを紹介するウェブサイトです。アプリの概要だけでなく、実際の企業による導入事例なども紹介しています。

■ここからアプリ■
https://digiwith.smrj.go.jp/cocoapp/

4)経済産業省:DXセレクション

中堅・中小企業などのモデルケースとなるような優良事例を「DXセレクション」として紹介する取り組みです。優良事例を選定・公表することで、地域内や業種内での横展開をはじめ、中堅・中小企業などにおけるDXの推進や取り組みの活性化につなげていくことを目的としています。

■DXセレクション■
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-selection/dx-selection.html

以上(2026年11月更新)

pj40069
画像:ChatGPT

AI活用で進化する税務調査。5種類の「税務調査」の調査方法と新たな基幹システム「KSK2」

1 会社で行われるだけじゃない、様々な税務調査の調査方法

税務調査は、税務署の調査官が実際に会社に来て調べるだけではなく、

取引先や金融機関への問い合わせなど様々な方法

で行われます。これは、帳簿や書類だけではなく、様々な視点から取引の実態や会社の税務管理体制を把握するためです。

日々の記帳や経費の処理、売上の計上など正確に行っていても、「何かあるかもしれない」と不安を覚えるのが税務調査です。自分の会社に税務調査が入るとなった場合、税務署はどのような情報を持っているのか。税務調査時に適切な対応を取るためにも、税務調査の調査方法を押さえておきましょう。以降では、次の5つの税務調査と、2026年秋に導入されるKSK2(AIを活用した国税庁の基幹システム)の動向について紹介していきます。

  • 机上調査
  • 内観・外観調査
  • 実地調査
  • 反面調査
  • 金融機関調査
  • AI・データ活用の基幹システム「KSK2」に基づく調査

2 税務署内で確認する「机上調査」

机上調査とは、

会社が提出した申告書や帳簿資料を税務署内で確認する

調査方法です。調査官が現場に訪問する前段階の調査として行われ、書類の整合性や不備をチェックすることが主な目的です。

この机上調査を通じて、申告内容に矛盾や不自然な点がないかを確認します。もし疑問点が見つかった場合、軽微なものに関しては、この段階で税務署からの問い合わせや追加資料の提出依頼の連絡がくることもあります。問い合わせなどだけでは、足りないような不明点がある場合には、後述する実地調査へと進展します。

3 店舗などの営業状況や外観を調べる「内観・外観調査」

内観調査とは、

税務署の調査官が店舗などを直接訪れ、実際の客として通常の運営状況を観察する

調査方法です。この調査も、一般的に調査官が現場に訪問する前段階の調査として行われ、例えば、

  • 店内での顧客数や客単価はいくらか
  • 注文の処理方法やレジ打ちが適切に行われているか

などを観察し、申告内容との整合性を確認します。主に、現金取引の多い飲食店などに対して行われることが多いといわれます。

外観調査とは、

オフィスや店舗などの外観を観察し、立地や事業規模、客の入り具合などを確認する

調査方法です。この調査は、事前に行われる場合もあれば、現地に訪問して実地調査をする際に行われる場合もあり、例えば、

  • 店舗の外から観察した客の出入りと、申告された売上高が釣り合っているか
  • 会社の工場や倉庫の規模と、申告された売上高や在庫の規模と釣り合っているか

など、申告内容との整合性を確認します。また、社長の自宅の外観を観察して、申告された役員報酬の金額に違和感はないか(かなり豪華な自宅や複数の高級車所有にもかかわらず、役員報酬が極端に低いなど)を、確認するためにも行われることがあります。

また、近年では、ネット上の情報チェックも重要視されており、企業のホームページやソーシャルメディアの投稿を確認することも行われています。

4 対象会社のオフィスなどで行われる「実地調査」

実地調査とは、

税務署の調査官が対象会社のオフィスや工場、倉庫などを直接訪問し、帳簿や証憑(しょうひょう)書類(契約書や請求書など)や実物を見ながら、取引の実態を確認する

調査方法です。これは税務調査の中でも最も一般的な調査方法で、通常は事前に通知されます。顧問税理士がいる場合には、税理士に連絡があります。

基本的に、

  • 会社の財務担当者や経営者に対して質問
  • 申告書には添付されていない書類で確認が必要な書類の請求
  • オフィスの状況(出社人数や会社、工場などの固定資産の状況など)の確認
  • 調査結果の報告

などが行われます。

実地調査は数日から1週間程度かかることが多く、机上調査などで矛盾や不自然な点のあった箇所を重点的に調べたり、ミスの多い一般的な論点(会議費・福利厚生費・交際費の混同や役員報酬、減価償却費など)をまんべんなく調べたりと、調査ごとに異なります。

5 取引先などに出向いて調べる「反面調査」

反面調査とは、

調査対象である会社ではなく、取引先など関係先への文書や電話での問い合わせや、場合によっては直接出向いて契約書、請求書、受注書、発注書などを確認する

調査方法です。主に実地調査後に行われ、具体的には、

  • 必要な書類をなくしたり、廃棄したりしており、データがそろっていない場合
  • 嘘偽りを疑わせる応答があった場合
  • 重要な書類の提出を拒否したり、調査に対し協力的でなかったりした場合
  • 取引先や関連会社との取引に不明点がある場合
  • 受け答えの内容に不明確な部分があり、その裏付けが必要な場合
  • 所得隠しや不正な取引(架空取引など)が疑われる場合

に、実施される可能性があります。

反面調査は、通常の税務調査のような事前通知を行うことを定めた法令上の規定はありません。国税庁のFAQ等においても、運用上、原則としてあらかじめ対象者へ連絡することとされています。しかし、実際には調査対象の会社と取引先の間での口裏合わせや証拠隠滅などを防ぐ観点から、調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断され、事前連絡なしに突然行われるケースも少なくありません。反面調査があった時点で、税務署から疑われているというマイナスの印象を持たれかねず、自社に対する信用低下にもつながります。このことからも、実地調査は誠実に対応するよう心掛けましょう。

6 金融機関に直接連絡する「金融機関調査」

金融機関調査は、

税務署の調査官が金融機関に直接問い合わせて、銀行口座や証券口座の取引内容を確認する

調査方法です。金融機関調査は、前述した反面調査の一部で、その会社が口座を通じて、

  • 異常な金銭の動きがないか、
  • 送金先と入金先はまっとうか

などを確認し、申告内容と実際の取引内容に不一致がないかを検証するために行われます。また、会社名義の口座だけでなく、役員や親族名義の個人口座も対象に行われ、申告された役員報酬との整合性や、親族への不自然な送金や入金の有無などを調べることもあります。

7 AI・データ活用の基幹システム「KSK2」に基づく調査

ここまで紹介してきた5つの調査方法に加え、最近では、調査対象の選定にAI(人工知能)が活用されるようになっています。2026年9月24日には、国税庁の基幹システムが約25年ぶりに刷新され、「KSK2(次世代国税総合管理システム)」が本格稼働する予定です。KSK2とは、

全国の国税局・税務署をネットワークで結び、申告や納税に関するデータを一元管理する、国税庁の基幹システム

です。現行のシステム(KSK)から刷新されることで、主に次の3点が変わるといわれています。

  • 法人税・所得税・消費税・相続税など、これまで税目ごとにバラバラに管理されていた情報が、一体的に確認できるようになる(例えば、会社が申告した役員報酬の額と、社長個人の所得税申告の内容に食い違いがないかなどが確認しやすくなる)
  • 調査官が、調査先の会社にいながら、その場でシステムのデータを確認できるようになる
  • 金融機関への照会や地方税当局とのデータ連携など、外部の情報も取り込みやすくなる

誤解されやすいのですが、KSK2自体は「AIが自動で調査を行うシステム」ではなく、あくまでデータを一元管理するための基盤システムのようです。AIによる異常値の分析や絞り込みが行われるとしても、実際に調査を行うかどうかの最終判断は、これまでどおり調査官が行います。

とはいえ、税目をまたいだ情報の食い違いや日々の取引の不自然な点が、見つかりやすくなることは間違いありません。特別な対策をする必要はありませんが、日頃から正確な記帳を行い、請求書や領収書などの証憑をきちんと整理・保存しておくこと、そして役員報酬や経費の処理などについて公私の区別を明確にしておくことが、これまで以上に求められます。

以上(2026年9月更新)
(監修 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

pj30217
画像:ChatGPT

【朝礼】本当に相手の気持ちが分かっていますか

【ポイント】

  • お客さまを頻繁に訪問したことで、判断を急かすだけでなく、時間も奪ってしまった
  • 営業の「足」は、直接訪問することではなく、お客様との接点を増やすことを意味する
  • 相手と仲良くなろうと思ったら、自分と相手との違いがどこにあるのか意識してみる

みなさんはよく、「相手の気持ちになって考えなさい」とか、「相手の立場に立って考えれば、相手が何を必要としているか分かる」という言葉を聞きませんか? 今日は、相手の気持ちを考えるということがどういうことなのかをお話ししたいと思います。

「営業は足で稼ぐ」という言葉があります。私は入社したてのころ、その言葉通りに、とにかくお客様を足しげく訪問することが大切だと考えていました。お客様と初めての商談が始まることになり、私は毎日のようにお客様を訪問しました。それが熱心さの表れだと思っていたのです。しかし、しばらくしてお客様から「他社製品に決めたので、この話はなかったことにしてほしい」と言われてしまいました。そこで、思い切って私の何が悪かったのかを聞いてみました。返ってきた答えは、「急かされているように感じ、時間をかけて検討できないと思ったから」でした。他社の営業は私よりも頻繁ではなく、必要なときにだけお客様を訪問していたようです。私はここで初めて、お客様の気持ちを分かっていないことに気付いたのです。頻繁に訪問したことで、お客様を気分的に急かしただけではなく、相手の時間も奪っていたのだと分かりました。

電話やメールなら数分で済む用事も、訪問すれば倍の時間がかかります。ですから、普段は電話やメールで情報提供をした上で、本当に必要なときにだけ訪問して、お客様からいただく時間を最小限にするべきだったのです。当時の私は、営業の「足」は直接訪問することではなく、お客様との接点を増やすのだということが分からず、独りよがりにお客様の気持ちに踏み込んでしまっていたのです。私のような失敗をしないためには、まず「他人の気持ちは簡単には分からない」と思う気持ちが大切ではないでしょうか。生まれも育ちも違う人であり、社風も違う組織なのですから、時には自分の常識が他人の非常識となることもあるでしょう。相手と仲良くなろうと思ったら、まずは自分と相手との違いがどこにあるのか意識を払ってみましょう。立場や考え方の違いが分かれば、相手が何を考え、何を求めているかのヒントとなるはずです。私は、相手の気持ちになって考えるということは、自分との違いを理解し、それを受け入れることから始まるのだと思います。

以上

pj16521
画像:Mariko Mitsuda

AI分析×新システム(KSK2)稼働! 変わる「税務調査」の始まりから、終わりまでを徹底解説!

1 経営者が税務調査の全体像を知る必要性とは

多くの会社は数年に一度、税務署などによる税務調査を受けますが、

「いつ、どんな基準で調査対象に選ばれるのか」

「調査では何をされるのか」

「指摘を受けたらどうなるのか」

「指摘に納得できない場合はどうすればよいのか」

「結局、追加でどのくらいの税金がかかるのか」

といった全体像を理解している経営者は多くありません。

しかも近年、税務調査のあり方は変わりつつあります。税務当局では、申告内容やさまざまな資料を分析する際にAIの活用が進んでおり、調査対象の選定や申告内容の確認にもデータ分析が活用されています。さらに、2026年9月には、納税者に関するさまざまな情報を管理する基盤システム「KSK2(次世代国税総合管理システム)」の稼働が開始されます。こうしたデジタル化によって、税務調査もよりデータを重視したものへと変貌しつつあります。

税務調査はどんな経営者であっても多少なりに身構えてしまうものです。しかし、あらかじめ全体像をつかんでおくことで、実際に税務調査の連絡が来たときも、落ち着いて対応できるようになります。

本稿では、税務調査の「入口」(調査対象の選定)から「出口」(修正申告や更正、附帯税の確定)まで、一連の流れに沿って解説します。

2 税務調査は、どのように始まり、進むのか

税務調査は、会社から提出された申告書などに記載されている金額が正確かどうかを、税務署などの職員(以下「調査職員」)が判断するために行う一連の調査です。一般的に「税務調査」という場合、オフィスや工場などに調査職員が出向いて行う「実地調査」を指すことが多いですが、このほかにも、電話や文書での問い合わせ、取引先への「反面調査」など、納税者と直接接触しない形で行われる調査も含まれます。

税務調査は、大きく次の流れで進みます。

税務調査手続きの流れ

1)調査対象法人の選定

課税当局(国税庁・国税局・税務署)は、申告内容や各種資料情報を蓄積した「KSKシステム」と呼ばれるシステムを活用し、その事務年度(7月から翌年6月までの1年間)における重点調査業種に該当しているかどうかや、業種・業態・事業規模といった観点から、調査対象の会社を選定しています。給与所得の源泉徴収票や支払調書など法令上、提出が義務付けられている資料の他、過去の税務調査で把握した情報なども活用されます。

近年は、こうした膨大な申告データや資料情報をAIで分析し、申告内容に不自然な点がないか、同業他社と比べて大きく異なる点がないかなどを分析して、税務調査対象法人を選定する取り組みも進んでいます。

さらに2026年9月には、約25年ぶりに刷新される「KSK2(次世代国税総合管理システム)」の本格稼働が始まります。

KSK2では、法人税・所得税・消費税・相続税など税目ごとにバラバラだった情報が一体的に確認できるようになる他、調査職員が調査先にいながらその場でデータを確認できるようになる

など、調査の精度とスピードが増すとみられています。

なお、KSK2自体はあくまでデータを一元管理する基盤システムであり、「AIが自動で調査を行うシステム」ではありません。調査を行うかどうかの最終判断は、これまでどおり調査職員が行います。納税者側に、特別な対策は不要ですが、日頃からの正確な記帳と証憑の整理・保存が、これまで以上に重要になります。

2)書面添付の有無

税理士に税務申告を依頼していて、申告書に「書面添付」がされている場合は、税務調査の進め方が少し異なります。

書面添付とは、税理士が申告書を作成する際に、どのような資料を確認したのか、どのような計算や税務上の判断をしたのかなどを記載した書面(税理士法第33条の2に規定される書面)を、申告書と一緒に税務署へ提出する制度です。

書面添付がある場合、税務署は、いきなり会社に税務調査を行うのではなく、まず申告を担当した税理士に内容について確認する「意見聴取」を行います。そこで税務署が疑問に思っていた点が解消され、調査の必要がないと判断されれば、会社への実地調査は行われません。

一方、意見聴取を行っても確認が必要と判断された場合は、税理士にその旨が伝えられたうえで、通常の税務調査に進むことになります。

3)事前通知

税務調査が入るときは、原則として、課税当局から納税者(税務代理権限証書を提出している場合は顧問税理士)に対して、実地調査を行う旨や調査開始日時、調査の対象となる税目・期間など、次のような事項があらかじめ通知されます。

  • 実地調査を行う旨、調査開始日時、調査を行う場所、調査の目的
  • 調査の対象となる税目、期間、帳簿書類その他の物件
  • 納税者の氏名・住所、調査を行う調査職員の氏名・所属官署 など

ただし、申告内容や過去の調査結果、営む事業の内容などから、違法・不当な行為の疑いが強く、資料収集や適正な調査が困難と認められる場合に限り、事前通知なく調査が実施されることもあります。

4)実地調査

実地調査では、調査職員が「質問検査権」に基づいて、会社などで質問や検査を行います。質問検査権は「調査について必要があるとき」に認められるものであり、納税者は明らかに必要のない質問に応じる義務はありません。もっとも、必要な帳簿書類等の提出を求められた際に、正当な理由なく答えない、または偽りの答弁をした場合には、

1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性

があります。

実地調査で確認される帳簿書類には、仕訳帳や総勘定元帳の他、取引先から受け取った注文書・契約書・領収書、棚卸表、貸借対照表・損益計算書などがあります。また、会議の議事録や稟議書、給与データ、電子メールなどのデジタル記録、固定資産台帳も対象となり、必要に応じて工場や営業所での現物確認が行われることもあります。

これらの書類や物品は速やかに提出する必要があり、必要と認められる場合には、調査職員が課税当局の庁舎に持ち帰る「留置き」が行われることもあります(納税者の理解と協力の下で行われ、預かり証が交付されます)。

5)取引先等調査(反面調査)

調査職員は、税務調査において必要と合理的に判断される場合には、取引先や雇用主などに対しても質問・検査を行うことができます。これを「反面調査」(取引先等調査)といいます。

6)調査結果説明、そしてその後の分岐

実地調査や反面調査の結果について、調査職員から納税者に対し、その内容・金額・理由が説明されます(多くの場合、口頭で行われます)。その後の流れは、大きく2つに分かれます。

  • 誤り・訂正がない場合:
    課税当局は、更正または決定をすべきと認められない旨を「書面」で通知します
  • 誤り・訂正がある場合:
    調査職員は、納税者に対し「修正申告」または「期限後申告」を行うよう勧奨します。課税当局が職権で更正・決定することも可能ですが、納税者が自ら理解して是正することが、申告納税制度の趣旨にかなうと考えられているためです

ここから先、指摘を受けた内容に「納得できる場合」と「納得できない場合」とで、手続きが分かれます。

3 指摘を受けたとき、どう対応するか

もし、税務署の調査官から申告の誤りを指摘された際、納税者がその指摘に納得する場合と、納得できない場合とで、その後の手続きが違ってきます。

1)納得する場合:「修正申告」「期限後申告」

指摘を受けた内容に納得する場合には、次のいずれかの申告書(以下「修正申告書等」)を提出し、追加で納税をすることで、税務調査は終了します。

  • 修正申告:当初の申告税額よりも税額を増額する内容の申告書
  • 期限後申告:期限内申告書を提出していなかった納税者が、課税当局が決定するまでの間に提出する申告書

修正申告書等を提出した場合には、後述する「再調査の請求」や「審査請求」はできなくなります。ただし、

税額を減額する「更正の請求」を行い、追徴税額の減額を求めることは可能

です。

なお、消費税の申告誤りにより消費税の追徴課税が生じ、他に指摘事項がないときは、損金(消費税の納税額は租税公課として損金に算入できる)が増えることで法人税額が減少することがあります。この場合、消費税は「修正申告書等」を提出し、法人税は「更正の請求」が必要となるようにも思えますが、実務上は、調査職員が法人税について減額の「更正」職権で行ってくれることが多いようです。

2)納得できない場合:不服申立てと税務訴訟

指摘を受けた内容に納得できない場合の手続きの流れは、次の通りです。

法人税の申告の誤りを指摘された場合の手続きの流れ(納得できない場合)

1.更正

修正申告等に納得できない場合、調査職員は「更正」を行い、納税者のもとに更正通知書が送られてきます。追徴税額は、確定してから納税すると延滞税等がかかるため、納得できない場合でも、いったん納税しておくことが望ましいとされています。

2.税務署に対する「再調査の請求」

更正通知書の内容に納得できない場合、

通知を受けた日の翌日から3カ月以内

に、所轄の税務署に対して「再調査の請求」をすることができます。税務当局はその内容を再検討し、結果(決定)を通知します。

3.国税不服審判所に対する「審査請求」

「決定」を受けてもなお納得できない場合には、

決定の通知を受けた日の翌日から1カ月以内

に、国税不服審判所に対して「審査請求」をすることができます。「再調査の請求」を経ずに、直接「審査請求」をすることも可能です。国税不服審判所は内容を審査し、結果(裁決)を納税者と税務署長に通知します。

4.税務訴訟

「裁決」を受けてもなお納得できない場合には、

裁決の通知を受けた日の翌日から6カ月以内

に、裁判所に訴訟を起こすことができます。判決によって、指摘内容の有無が確定します。

5.統計に見る、指摘事項を覆せる可能性

税務調査で税務署から指摘を受けた場合でも、「税務署の判断が必ず正しい」とは限りません。申告内容や取引の事実関係について、税務署と会社の認識が異なる場合には、その判断について争うこともできます。

国税庁および国税不服審判所が公表している「国税庁レポート2026」によると、2025年度の状況は次のとおりです。

指摘事項を覆せる可能性

いずれも、納税者の主張が認められる割合は決して高くありません。とはいえ、審査請求では約14件に1件の割合で、納税者の主張が全部または一部認められています。

税務調査で指摘を受けても、内容に明らかな誤りがある場合や、「その取引は実際にはこうだった」など事実関係について税務署と認識が食い違っている場合には、すぐに受け入れる必要はありません。まずは税理士などの専門家に相談し、指摘の根拠や会社側の主張を整理したうえで、不服申立てを行うかどうかを検討するとよいでしょう。

3)「更正」の期限・「修正申告書」の提出期限

税務当局による「更正」は、次の期間を超えて行うことができません。

  • 原則:法定申告期限から5年
  • 法人税の欠損金に係るもの:法定申告期限から10年(2018年3月31日以前に開始する事業年度で生じた欠損金は9年)
  • 偽りその他の不正の行為等によるもの:法定申告期限から7年

一方、「修正申告書」の提出には期限がないため、税務当局による「更正」を受けるまでは、どの年度分でも提出できます。なお、課税当局による「更正」の期限は上記のとおり定められているため、それより前の事業年度に遡って自ら「修正申告書」を提出する必要は実質的になしということになります。

4 修正申告書等を提出した場合にかかる附帯税(法人税等)

その誤りに対して課される税金(附帯税)も、誤りの種類によってさまざまです。法人税等(国税)に係る附帯金は次の通りです。

附帯税(法人税等)

1)加算税

1.過少申告加算税

過少申告加算税とは、

本来納めるべき税額より少ない金額で申告していたことが分かった場合に、追加で課される税金

です。税務調査などで申告漏れや計算ミスが見つかり、修正申告などによって追加の税金を納める場合に、その追加税額に対して課されます。

原則として、追加で納める税額(以下「追徴税額」)の10%が課されます。ただし、追徴税額が「当初の申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額を超える場合、その超えた部分については15%となります。

一方、税務署から税務調査の通知を受けた後でも、税務調査で申告内容を修正されることを予想していない段階で自主的に修正申告をした場合には、税率が5%(追徴税額が「当初の申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額を超える場合、その超えた部分については10%)に軽減されます。また、税務署から調査の通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば、原則として過少申告加算税は課されません。

2.無申告加算税

無申告加算税とは、

申告期限までに申告しなかった場合に課される税金

です。期限を過ぎてから申告(期限後申告)した場合や、税務署から申告するよう指摘を受けた場合などが対象になります。

原則として、追徴税額に対して15%が課されます。ただし、追徴税額のうち50万円を超え300万円以下の部分は20%、300万円を超える部分は30%となります。

税務署から調査の通知を受けた後でも、税務調査によって申告漏れを指摘されることを予想していない段階で自主的に申告した場合は、税率が10%(50万円超300万円以下の部分は15%、300万円超の部分は25%)に軽減されます。

なお、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合には、通常よりも重い税率25%(追徴税額が50万円超300万円以下の部分は30%、300万円を超える部分は40%)が適用されます。

3.不納付加算税

不納付加算税とは、

従業員の給与などから預かった所得税(源泉所得税)を、期限までに納付しなかった場合に課される税金

です。

原則として、期限を過ぎて納付した源泉所得税額の10%が課されます。ただし、税務署から指摘を受ける前に自主的に納付するなど、一定の条件を満たす場合は5%に軽減されます。

4.重加算税

重加算税とは、

単なる計算ミスや申告漏れではなく、税金を少なくするために、事実を隠したり、実際とは違う内容に見せかけたりした場合に課される、特に重いペナルティーとなる税金

です。

たとえば、売上を意図的に帳簿から外したり、実際には存在しない経費を計上したりするなど、意図的な「隠ぺい」や「仮装」があった場合が対象となります。

過少申告加算税や不納付加算税に代わって課される場合は追徴税額の35%、無申告加算税に代わって課される場合は追徴税額の40%です。さらに、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合には、税率が45%(無申告加算税の場合には50%)に引き上げられます。

2)過怠税

過怠税とは、

印紙税がかかる契約書などに、必要な収入印紙を貼っていなかった場合に課される税金

です。

原則として、本来納めるべきだった印紙税額の3倍に相当する金額が課されます。

3)延滞税

延滞税とは、

税金の納付が期限に遅れた場合に、遅れた日数に応じてかかる利息のような税金

です。税務調査で追加の税金を納めることになった場合だけでなく、本来の納期限までに税金を納めていなかった場合にも発生します。

延滞税の割合は、納付が遅れた期間によって異なります。

  • 納期限の翌日から2カ月を経過する日まで

「年7.3%」と「延滞税特例基準割合((銀行の新規の短期貸出約定平均金利を基礎として計算した割合)+年1%」とのいずれか低い割合(2026年は2.8%)

  • 上記以降

「年14.6%」と、「延滞税特例基準割合+年7.3%」とのいずれか低い割合(2026年は9.1%)

なお、延滞税特例基準割合は毎年更新され、国税庁のウェブサイトで確認することができます。

5 修正申告書等を提出した場合にかかる附帯金(地方税)

地方税に係る附帯金は次の通りです。地方税についても、法人税等と同様に、「修正申告等」や「更正」の手続きがあります。ただし、住民税には、過少申告加算金・不申告加算金および重加算金は課されません。

なお、各附帯税の意味合いは、法人税等と同じになるため、ここでは税額の算出方法のみを紹介します。

附帯税(地方税)

1)加算金

1.過少申告加算金

過少申告加算金は、原則として、追加で納める法人事業税(追徴税額)の10%が加算されます。ただし、追徴税額が当初の申告税額または50万円のいずれか多い金額を超える場合、その超えた部分については15%となります。

なお、税務署などから指摘を受ける前に自主的に申告内容を修正した場合など、一定の条件を満たせば、過少申告加算金は課されません。

2.不申告加算金

不申告加算金は、原則として、追加で納める法人事業税(追徴税額)の15%が加算されます。ただし、追徴税額のうち50万円を超え300万円以下の部分の税率は20%、300万円を超える部分の税率は30%となります。

また、税務当局から指摘を受ける前に自主的に申告するなど、一定の条件を満たす場合は、税率が5%に軽減されます。

なお、過去5年以内に不申告加算金または重加算金を課されたことがある場合は、通常よりも重い税率が適用され、追徴税額の25%(50万円超300万円以下の部分は30%、300万円を超える部分は40%)となります。

3.重加算金

重加算金は、法人事業税の追徴税額に対して35%が加算されます。申告そのものをしていなかった場合は40%となります。

なお、過去5年以内に不申告加算金または重加算金を課されたことがある場合には、通常よりも重い税率が適用され、税率が45%(無申告の場合は50%)に引き上げられます。

2)延滞金

延滞金は、納付が遅れた期間によって異なります。

  • 納期限の翌日から1カ月を経過する日まで

「年7.3%」と「延滞税特例基準割合+年1%」とのいずれか低い割合(2026年は2.8%)

  • 上記以降

「年14.6%」と「延滞税特例基準割合+年7.3%」とのいずれか低い割合(2026年は9.1%)

6 いわゆる「所得隠し」があった場合

税務調査によって、事実の仮装・隠蔽の行為による申告漏れ(いわゆる「所得隠し」)の指摘を受けた場合には、追徴税額や上記の重加算税などの他、青色申告の取り消し処分も受けます。青色申告の取り消しは、過去の事業年度に遡って行われるため、税額控除などの青色申告の特典を受けていた場合には、適用を受けていない場合との差額について追徴税額が生じます。

また、法人の代表者等が刑事罰の対象ともなり、10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金が科されることもあります。さらには、こうした事実を報道されることなどによって、法人の社会的信用が下落するなど経営に与える悪影響は計り知れません。

以上(2026年9月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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「同一労働同一賃金」チェックリスト 御社の対応は本当に大丈夫?

1 「均等待遇・均衡待遇」の理解が第一歩

パート等(パートやフルタイムの契約社員)の労働条件を考える上で無視できない「同一労働同一賃金」。

2026年10月1日から、「同一労働同一賃金ガイドライン」や関連する省令・指針が改正

されました。今後は、パート等の労働条件について一層チェックが厳しくなることが予想されます。改正の主な内容は次の通りです。

  • パート等を雇い入れる際(有期労働契約の更新時を含む)に、「正社員との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」の明示が必要になる(違反すると10万円以下の過料)
  • 同一労働同一賃金ガイドラインに、退職手当、家族手当・住宅手当、無事故手当、夏季冬季休暇、褒賞について、どのような待遇差が不合理となりうるかが新たに追加され、賞与や病気休職(療養専念を目的とする病気休暇を含む)についても記載が充実した
  • 待遇差は、正社員の待遇を引き下げるのではなく、パート等の待遇を改善して解消することが求められる旨などが明確化された
  • 雇用管理指針も改正され、待遇差の説明方法や、パート等の意見を聴く機会の確保などが示された

なお、「雇い入れ」には有期労働契約の更新も含まれるため、新しい明示事項は、10月1日以降に新規採用するパート等だけでなく、すでに雇用しているパート等の契約更新時にも必要です。労働条件通知書(雇用契約書)のひな型は、厚生労働省が公開している改正後のモデル労働条件通知書に合わせて早めに見直しておきましょう。

■厚生労働省「モデル労働条件通知書」■
https://www.mhlw.go.jp/content/001696984.pdf

同一労働同一賃金のポイントは「均等待遇・均衡待遇」です。

1.均等待遇

パート等と正社員との間で、「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ(2.については、雇い入れから雇用関係が終了するまでの全期間を通じて同じ範囲で変更されると見込まれる)場合、パート等であることを理由とした差別的取扱いを禁止することをいいます。なお、同じ取扱いのもとで、能力・経験等の違いにより差がつくのは構いません。

2.均衡待遇

パート等と正社員との間で、「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更の範囲」「3.その他の事情」を考慮して不合理な待遇差を禁止することをいいます。「3.その他の事情」には、職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行などが含まれます。

以降で、均等待遇・均衡待遇を実現できているかを確認するためのチェックリストを紹介します。チェックリストには、2026年10月の改正内容も反映しています。早速見ていきましょう。

2 チェック1:パート等の状況はどうなっているか?

パート等が「均等待遇・均衡待遇」の対象になるかを確認します。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。なお、このチェックリストは転勤のない場合を想定しています。

正社員とパート等の職務の内容などを比較しよう

「○」「×」の見方は次の通りです。この確認が終わったら、次章に進んでください。

  • 全て「○」:均等待遇の対象
  • 1~5のいずれかが「×」:均衡待遇の対象

図表1の「人事異動や役割の変化の範囲」は、現時点の実態だけでなく、雇い入れから雇用関係が終わるまでの全期間を通じて見込まれる範囲で比べます。この見込みは会社の主観ではなく、就業規則などの文書や、実際に転勤・配置転換が行われてきた慣行といった客観的な事情で判断されます。

例えば、正社員には定期的な転勤があり、特定のパート等にはこれまで転勤がなかったという場合でも、その人だけを見て形式的に判断するのではなく、同じ職務の他のパート等に転勤等があるかといった「可能性」の実態から、具体的な見込みがあるかどうかで判断します。

3 チェック2:賃金などに待遇格差はあるか?

次に、正社員とパート等の待遇を比較します。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。なお、図表2の待遇は一例ですので、自社の内容に置き換えてお使いください。対象となるのは、正社員とパート等に対する全ての待遇(基本給、賞与、手当、退職金、福利厚生、教育訓練、安全管理など)です。図表2には、2026年10月の改正ガイドラインで新たに具体例が示された退職手当、各種手当(家族手当・住宅手当・無事故手当など)、休暇・休職、福利厚生(褒賞、福利厚生施設など)も加えています。

正社員とパート等の待遇を比較しよう

「○」「×」の見方は次の通りです。待遇格差がある場合、次章に進んでください。待遇格差がない場合、御社は同一労働同一賃金に対応できています。

  • 全て「○」:待遇格差はない。同一労働同一賃金に対応できています!
  • 各待遇の2項目(1と2、3と4、5と6など)がともに「○」:その待遇に待遇格差はない
  • 各待遇の2項目のいずれかが「×」:その待遇に待遇格差があり、検証が必要

各待遇については、改正ガイドライン上「正社員と同一の支給・付与」が求められる待遇でも、所定労働時間の短いパート等について、常に正社員と全く同じにしなければならないわけではありません。その待遇の性質・目的が労働時間の長短にかかわらず当てはまるかといった観点から検討して決めることになります(労使で十分に話し合うことが望ましい)。

家族手当や病気休職中の給与保障で問われる「相応に継続的な勤務が見込まれる」かどうかは、本人の契約期間や更新回数に加え、社内の他の有期社員の契約期間や更新回数なども踏まえて個別に判断します。配偶者の収入要件がある「配偶者手当」は、パートの就業調整の要因になっていると指摘されており、労使の話し合いで働き方に中立的な制度への見直し(収入要件の撤廃など)を進めることが望まれています。

なお、給食施設・休憩室・更衣室の3つは、正社員に利用させている場合はパート等にも利用の機会を与える義務があります。駐車場や保養施設などその他の施設についても、改正雇用管理指針で利用の便宜を図るよう配慮する義務が明記されました。また、これらの施設の利用料金や割引率などの利用条件に不合理な差を設けることも認められません。

4 チェック3:待遇格差に合理性はあるか?

チェック3はとても重要です。正社員とパート等の間に待遇格差がある場合、それが合理的かどうか、つまり同一労働同一賃金に対応できているかどうかを確認する内容になるからです。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。図表3には、2026年10月の改正ガイドラインで明確化された考え方(「正社員の人材確保・定着」や「定年後の継続雇用」だけを理由にしないこと、パート等の意向を考慮すること、待遇差を説明できるようにしておくことなど)を反映しています。

正社員とパート等の待遇格差が不合理なものかを検証しよう

「○」「×」の見方は次の通りです。是正が必要な待遇格差がある場合、次章に進んでください。是正が必要な待遇格差がない場合、御社は同一労働同一賃金に対応できています。

  • 全て「○」:待遇格差は合理的、同一労働同一賃金に対応できています!
  • 1~4のいずれかが「×」:待遇格差が不合理と判断される恐れがあり、是正が必要
  • 5が「×」:待遇格差の内容・理由を説明できるよう、資料などの準備が必要

なお、チェック1で「均等待遇」の対象となったパート等(図表1の項目が全て「○」だったパート等)の場合、そもそも全ての待遇について、パート等であることを理由とする差別的取扱いが禁止されている(正社員と同じ基準・ルールで待遇を決める必要がある)ので、このチェックをするまでもなく、速やかに正社員と同じ取扱いにするための検討を行う必要があります。

図表3の5の「説明」は、改正雇用管理指針で「資料を活用して口頭で説明する」か「説明事項を全て記載した分かりやすい資料を交付する」のいずれかの方法によることとされ、口頭で説明する場合も、使った資料を交付することが望ましいとされました。

また、パート等から求めがなくても、契約更新時などに待遇差の内容・理由を記した資料を交付したり、説明を求めることができる旨を周知したりすることが望ましいとされています。説明が不十分だった事実や、パート等の意向を十分に考慮せず一方的に待遇を決めた事実は、待遇差が不合理と判断される方向の事情として考慮され得る点にも注意が必要です。

なお、都道府県労働局は事業主に報告を求め、助言・指導・勧告を行うことができ、勧告に従わない場合は企業名が公表されることがあります。対応に迷う場合は、労働局の雇用環境・均等部(室)や、社会保険労務士などが無料で相談に応じる「働き方改革推進支援センター」を活用するとよいでしょう。

■働き方改革推進支援センター■
https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/top/consultation/

5 チェック4:待遇格差の是正は進んだ?

最後のチェックです。ここまで進んできたということは、御社には是正すべき待遇格差があるということです。実際に待遇格差の是正を行った上で、次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。図表4には、2026年10月の改正を踏まえ、パート等の待遇改善による是正や、労働条件通知書の見直しなどの確認項目を加えています。

正社員とパート等の待遇格差がどの程度是正されたか確認しよう

全て「○」になったら、ひとまず同一労働同一賃金の対応は完了です。パート等の人数などによっては対応までに時間がかかることもあるでしょうが、同一労働同一賃金に対応しようとする会社の姿勢を社員に示すことはとても重要です。

待遇差の是正に当たり、正社員の手当を廃止・減額してパート等の待遇改善の原資に充てる方法は、就業規則の不利益変更に当たります。この場合、労働者との合意か、変更の合理性(不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉状況など)が必要です。改正ガイドラインでも、正社員の待遇引下げによる解消は基本的に望ましくないとされています。パート等の賃金規定を正社員と共通化したり、パート等向けの賞与・退職金制度を新たに設けたりする場合は、キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コースなど)の対象になることがあるため、制度変更に着手する前に最新の支給要件を確認しておくとよいでしょう。

■厚生労働省「キャリアアップ助成金」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
■厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

以上(2026年11月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

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丁寧な接客で初心者を取り込む! ボードゲームカフェの動向

1 ボードゲームカフェは「初心者にも優しい」が売り

ボードゲームカフェは

飲食と併せて、世界中のさまざまな種類のボードゲームを楽しめる施設

です。

ボードゲームカフェが人気を博している理由には、次の要因があるとされています。

  • 個人での入手が難しかったり、保管場所を取ったりするボードゲームも、パックなどの時間料金で気軽に楽しめる。
  • 店舗スタッフがお客さんの人数や好みに合わせておすすめのゲームを提案したり、ルール説明も行ったりするので、慣れていない人でもボードゲームを楽しめる。
  • ボードゲームは通常、2人以上のグループで遊ぶことが想定されているが、店舗によっては相席イベントを開催しており、スタッフが仲介してその場で一緒になったお客さん同士でゲームを楽しめるので、1人で店舗に行ける場合もある。

一方で、ボードゲームに興味があり、これからボードゲームカフェを始めてみたいと考えている人にとっては、次のようなことを疑問に感じるかもしれません。

  • 飲食店などと比べて初期投資が低く、参入しやすいと言われているが、開業のきっかけや費用の目安はどのくらいなのか
  • 毎月、多くの新作ボードゲームが発売されているが、ボードゲームカフェではどこから、何を基準にしてボードゲームを揃えているのか
  • レンタルスペースやカラオケなどでもボードゲームの貸し出しサービスがあり、ボードゲームを遊べる場所は増えている中で、ボードゲームカフェとして他店と差異化するためのポイントは何なのか

この記事では、新規開業を検討する事業者の参考となるよう、ボードゲームについての前提知識や実際の店舗にヒアリングした開業と店舗運営の勘所を紹介します。事例を先に知りたい人は、第3章をご確認ください。

2 ボードゲームについての前提知識

1)ボードゲームの種類は?

ボードゲームの種類はさまざまなものがありますが、ボードゲームの総合情報サイト「ボドゲーマ」などのウェブサイトによると、例えば次のようなものがあります。

■「ボドゲーマ」■
https://bodoge.hoobby.net/

1.セットコレクション

特定の色・数字・種類などのカードやアイテムを「特定の組み合わせ(役)」で集めることで得点や特殊な効果を得る仕組みです。麻雀やポーカーの役作りに似た仕組みとなっています。

ゲームの例:宝石の煌き、カタン

セットコレクションのイメージ

2.タイル・カード配置

地形や建造物などのタイルを、決められたルールやエリアに従って盤面に並べていくゲームです。タイルの繋がりや配置によって得点が発生し、その得点を競い合います。

ゲームの例:カルカソンヌ、ブロックス、枯山水

タイル・カード配置のイメージ

3.推理

探偵や脱出などのテーマで、様々なヒントによって犯人を当てたり、答えを導き出したりするゲームです。犯人の特定や暗号解読、他プレイヤーの隠された役割を暴くなど、仮説と検証を繰り返すプロセスを楽しめます。

ゲームの例:スコットランドヤード、正体隠匿

推理のイメージ

4.ブラフ

自分の正体や手札の情報を隠し、嘘やハッタリを交えて相手を騙す心理戦を行うゲームです。推理や情報開示のタイミング、相手の発言や動向を見破りながら自分にとって有利な状況を作ることがポイントです。

ゲームの例:ブラックホワイトハウス、海鮮魚ーず

ブラフのイメージ

5.エリアマジョリティ(陣取り)

各エリアに配置したコマの数や影響力を競い、最も優勢(過半数など)なプレイヤーが得点を得る仕組みです。特定の領域での優位を巡る直接的な相殺や介入の攻防が魅力です。

ゲームの例:カルカソンヌ、ブロックス

エリアマジョリティのイメージ

2)ボードゲームカフェの店舗数は?

ボードゲームの総合情報ウェブサイト「ボドゲーマ」によると、都道府県ごとのボードゲームカフェの店舗数は次の通りです。

■「ボドゲーマ」■
https://bodoge.hoobby.net/

都道府県ごとのボードゲームカフェの店舗数

2026年10月15日時点で全国のボードゲームカフェ・プレイスペースは643店舗に達しており、最も店舗数が多いのは東京都の152店舗となっています。次点で大阪府の70店舗、愛知県の46店舗、神奈川県の37店舗と続き、大都市に店舗が集中していることが分かります。

また、こうした地域では、公民館・レンタルスペース・ボードゲームカフェなどの場所を利用して、ボードゲーム好きな主催者や参加者の私物を持ち込み、参加者が会費を払って遊ぶ「ボードゲーム会」と呼ばれるイベント開催も盛んとされています。

3)ボードゲームの仕入れ方法は?

ボードゲームカフェがボードゲームを仕入れる方法には、次のようなものがあります。

1.卸売業者や代理店から仕入れるケース

卸売業者や代理店から仕入れる方法で、仕入れ先には次のような企業があります。国内外のボードゲームを幅広く仕入れられる反面、「実店舗がある事業者のみが取引対象」といった条件もあるため、取引条件には注意が必要です。

■ホビージャパン(東京都渋谷区)■
https://hobbyjapan.games/
■アークライト(東京都千代田区)■
https://www.arclight.co.jp/
■ジーピー(東京都新宿区)■
https://www.gp-inc.jp/corporate.html
■すごろくや(東京都中野区)■
https://sugorokuya.jp/
■Engames(富山県富山市)■
https://engames.jp/

2.オンラインサイトでの購入

ボードゲーム専門店やオンラインサイトで、一般価格で購入する方法です。例えば、前述のボードゲームの総合情報ウェブサイト「ボドゲーマ」では、通販ストアのページもあり、対象年齢や人数、プレイ時間などに合わせてボードゲームを選ぶことができます。

3.クラウドファンディング

ボードゲーム制作者向けのクラウドファンディングサイトで、新作のボードゲームを支援者として仕入れる方法です。クラウドファンディングの例として「ボドゲーマ」の運営元である、オーバードライブ(東京都新宿区)が手掛ける、ボードゲーム制作者向けのクラウドファンディング「ボドファン」があります。

■ボドファン■
https://bodoge.hoobby.net/columns/bodofun-entry

4.イベント経由

新作ゲームの発表、販売、試遊イベントでボードゲームを探す方法です。イベントの例として、アークライト(東京都千代田区)が運営を手掛ける国内最大級のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」があります。新作ボードゲームの発表や同人クリエイターの出展が多く集まっており、店舗が取り扱うゲームの多様化や、新作を目当てにした来店需要の創出にもつながっているとされています。

■ゲームマーケット■
https://gamemarket.jp/

4)ボードゲームの商用利用について

一般的には、ボードゲームのルールそのものはアイデアとみなされており、著作権で保護されないとしています。また、販売店から購入したボードゲームを店舗内でお客さんに遊んでもらう形であれば、著作物の使用という扱いになり著作権者への許諾は不要とされています。

ただし、販売店によっては商品の2次利用やイベントでの使用にガイドラインを設けているところもあります。例えば、商品のパッケージを編集、加工して告知画像に使用したり、参加費などで運営にかかる費用以上の収益を得るためにイベントを開催したりする際は、販売店への事前確認が必要な場合があるため注意が必要です。

5)その他の注意点

風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)に関しては、ボードゲームカフェへのヒアリングによると、「風営法上の許可を取得せずに運営しており、スタッフの接客は受付やゲームのルール説明に留めるケースが多い」とされています。一方で、風営法の許可を取得すれば、スタッフがお客さんと一緒にボードゲームを遊ぶといった、踏み込んだ接客も可能になります。また、お客さん同士がゲームの勝敗に応じて金銭を賭けることは、刑法の賭博罪に当たるため認められません。

3 実際の店舗に聞く 開業と店舗運営の勘所

ここでは、ボードゲームカフェの立地選定や接客、他店との差異化策といった開業・店舗運営の勘所を、実際のボードゲームカフェにヒアリングした結果を紹介します(取材を受けていただいた順番で掲載しています)。

1)キウイゲームズ新大阪南方店(大阪府大阪市)

キウイゲームズ新大阪南方店の内観

JR・地下鉄御堂筋線の新大阪駅や西中島南方駅からアクセスできるボードゲームカフェです。

360種類のボードゲームを楽しめるだけでなく、ボードゲームも販売しています。また、一般の利用に限らず、婚活パーティーや企業内サークルの貸し切り利用も多いといいます。

■キウイゲームズ新大阪南方店■
http://kiwigames-som.jp/

開業のきっかけ

  • 「キウイゲームズ本店」(現在は閉店)へのFC加入で開業した形になります。本業でゲームシナリオライターを手掛けており、制作会社の立ち上げにあたり、事務所兼副業としてボードゲームカフェを開店しました。初期投資は約400万円で、内訳は内装、水道工事系で300万円、ボードゲームや家具類で約100万円です。

立地の選定基準

  • 「新大阪 ボードゲーム」で検索して店舗を見つけてくれるお客さんが多いです。例えば、京都、滋賀、兵庫など、隣接する地域の友人同士が集合して遊ぼうとしたときに、新大阪は交通の便が良くて集まりやすいというのはポイントかもしれません。

ボードゲーム仕入れの基準

  • 実際に自分で遊んでみたり、評判や宣伝を聞いたりして「面白い」と確信できたものを店舗に置くようにしています。たとえ有名なゲームであっても、自分が楽しめないとお客さんにもおすすめしにくいからです。また、常連のお客さんの人数に合わせて、5~6人で楽しめるゲームを置いています。

接客・リピーターの確保策

  • ゲームのプレイ時間と、楽しみ方(勝ち負けを競いたいか/協力したいか/とにかく盛り上がりたいか)をヒアリングすることで、おすすめするゲームを決めています。また、お客さん同士で盛り上がっているときは話しかけず、邪魔をしないことを徹底しています。中には入退店のときしか挨拶しないこともありますが、退店時に遊んでもらったゲームの感想を一言聞くことで、コミュニケーションを取りつつ、お客さんの印象に残るようにすることが大切かもしれません。

差異化のポイント

うまく続いている店舗の特徴は、

  • 新作のボードゲームを途切れなく入荷し続けている
  • 漫画家や小説家などが副業として店舗を運営しており、本業の知名度を活かして顧客を確保している
  • 風営法上の許可を取得し、スタッフがお客さんと一緒にボードゲームを遊んでいる
  • お手洗いや内装の清潔感を重視し、男女ともに入りやすい雰囲気がある

などが挙げられます。

2)U-cafe(東京都台東区)

U-cafeの内観

みんなの「好き」が集まる場所をコンセプトに、カフェ・ボードゲーム・ダイニング・コワーキングなど多目的に過ごせる空間を提供しているボードゲームカフェです。2000種類以上のボードゲームを常備しており、フードやドリンクメニューにも力を入れていることが特徴です。

■U-cafe(東京都台東区)■
https://u-cafe.tokyo/

開業のきっかけ

  • 元々別のブランドでボードゲームカフェの運営経験があり、既存の店舗に隣接する場所で新業態のボードゲームカフェを開業しました。既存のボードゲームカフェはドリンクのみの提供でしたが、新業態ではフードメニューに力を入れ、さらに、コワーキングスペースや結婚式の2次会などのイベントスペースとして使える空間にすることで、既存顧客の流入と新規顧客の獲得を狙いました。

立地の選定基準

  • お客さんは検索で調べた上で来てくれるので、そもそも検索されにくい辺鄙(へんぴ)な駅名の立地では店舗を見つけてもらいにくくなります。ターミナル駅付近で交通の便が良ければ、一等地を選ぶ必要がないことがこのビジネスでは強みになると思います。

ボードゲーム仕入れの基準

  • お客さんのほとんどはライト層のお客さんになるので、カタンやitoなど、知名度があり今日初めてボードゲームを遊ぶという人でも楽しめる品揃えを意識しています。一方で、ボードゲームを目的に来る人にはコア層のお客さんもいるので、1年に1度遊ばれるかどうかといったようなマニアックなゲームも置いています。
■カタン■
https://www.gp-inc.jp/catalog_catan.html
■ito■
https://arclightgames.jp/product/ito/

接客・リピーターの確保策

  • 店舗のコンセプトが「コミュニケーションの場を作ること」なので、ボードゲームありきではなく、あくまで補助ツールとして考えています。ボードゲーム利用の人に限らず、カフェ利用やイベント参加などで来た人も居心地が良い場所になるような雰囲気づくりをしています。

差異化のポイント

  • 新規開業で意識しておかなければいけないのは、ボードゲームカフェは狭い業界で、差異化によって既にファンが付いている店舗から顧客を奪うというのが基本になることです。ボードゲームのプロであったり、コミュニティーに属したりしているわけではない人が、ただボードゲームが好きという気持ちだけで続けていくのは難しいかもしれません。ボードゲームカフェは、個人店が多くあります。ただ、複数店舗を展開する方が少ないのが現状です。

3)ボードゲームと珈琲豆 新宿店(東京都新宿区)

ボードゲームと珈琲豆 新宿店の内観

スペシャルティコーヒーの専門店「堀口珈琲」の珈琲を飲みながら世界中のボードゲームで遊べるカフェです。ボードゲームは約500種類を取り揃えています。大人同士での利用に限らず、日中の学生のお客さんも多いといいます。

■ボードゲームと珈琲豆 新宿店■
https://boardgames-coffeebeans.com/

開業のきっかけ

  • ボードゲームは趣味として楽しんでいました。元々は小売業やITでの営業、経営企画の仕事をしていたのですが、経営学を勉強していたのと、事業経営に興味があり、新規開業に踏み切りました。初期投資としては1000万円程度で、内装工事・備品で600~800万円、物件の敷金関係で300~400万円という内訳です。

立地の選定基準

  • 一番は複数の地域から集まりやすいという交通の利便性です。2~5人のグループのお客さんが多いので、距離の離れた友人同士でも集まりやすい場所にあることが大切だと考えています。また、検索で見つかりやすいように、SNSでの情報発信やSEO(Googleなどの検索結果で、ウェブサイトを検索の上位に表示させるための取り組み)にも注力しました。

ボードゲーム仕入れの基準

  • 初心者~中級者をメイン層としているので、そうした人が遊びやすい品揃えとしています。ボードゲームに慣れていない人は、種類が多過ぎると、かえって何で遊んでいいか分からなくなってしまうので、物量と選びやすさのバランスは意識しています。また、初心者のお客さんが誤って難易度の高いボードゲームを選んでしまわないように、ルールの覚えやすさやプレイ時間などを目安に、3段階の難易度に分けています。

接客・リピーターの確保策

  • 難易度やジャンルなどを基に、複数のボードゲームを勧めてみて反応が良かったものを遊んでもらっています。何より「店舗に来て良かった」という体験を提供することを大切にしています。LINEの友達追加でも定期的に情報発信をしており、リピーターの確保につなげています。また、初心者を誘いやすい場所であることも意識しており、席同士の間隔を広めに取り、窮屈さのない空間を提供することも大切にしています。

差異化のポイント

  • 自分がボードゲームを楽しみたいからではなく「どのような人をお客さんにしたいか」の視点が大切だと思います。例えば、「初心者をお客さんにしたいのに、入りづらい場所にあったり、扱うゲームがコア層向けになっていたりする」など、店舗のコンセプトと求めるお客さんとの整合性が取れていないと、続けていくのは難しいかもしれません。また、お客さんの滞在時間が1組当たり5~6時間(土日の場合)と長く、回転率は低いので、収益性が高くないのは意識しておかなければいけません。

4 まとめ:ボードゲームカフェ開業・運営のポイントは?

3店舗のヒアリングから見えてきた開業・運営のポイントを整理すると、次の通りです。

  • 開業のきっかけは、ゲームシナリオライターや既存店運営者など、ボードゲームに慣れ親しんだ人によるキャリアの延長・多角化がほとんどで、初期投資は内装・備品中心に400万~1000万円程度が目安となる
  • 立地は「一等地の路面店」である必要はなく、ターミナル駅からの交通の便や、Google検索で見つけてもらいやすいことが優先される
  • ボードゲームの選定は、店主自身が「面白い」と確信できるかを軸にしつつ、お客さんの主なレベル(初心者中心か、コア層も含むか)に応じて品揃えの幅や難易度表示を調整している
  • 接客は「ゲームを勧めて終わり」ではなく、プレイの好み(勝敗重視か、盛り上がり重視か)のヒアリングや、退店時の一言コミュニケーションなど、少ない接点でも印象に残す工夫が共通する
  • 長続きする店の条件は、明確なターゲット像(初心者向けか、コア層も含むかなど)と、立地・品揃え・接客の一貫性があるかどうかに集約される

以上(2026年10月作成)

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スマホアプリが侵入口? 企業が今、直視すべきセキュリティの盲点【経営者とっておきニュース】

2026年10月、個人情報保護委員会や情報処理推進機構(IPA)、JPCERT/CC、国家サイバー統括室などの政府機関が、相次ぐ国内組織での不正アクセスや大規模な情報漏えい事案に関する緊急注意喚起を行いました。特に情報通信研究機構(NICT)の発表では、公開されているスマホアプリの内部プログラムを解析し、接続先サーバーの脆弱性を突く「A2B(App-to-Backend)攻撃」が確認されました。ユーザーの端末感染を伴わず、アプリの仕組みを悪用してサーバーから直接データを奪う点が大きな特徴です。

こうした背景には、攻撃者がAI(人工知能)を活用し、アプリの内部構造解析やサーバーの脆弱性探索を自動化・高速化している実情があります。これまで高度な技術が必要だった攻撃が短時間かつ低コストで実行可能となり、あらゆるシステムが常に網羅的な攻撃試行に晒される状況が生み出されています。

この事態は、自社開発アプリや業務Webシステムを運用する企業はもちろん、外部のサービスを利用する中小企業にとっても重大な影響を及ぼします。自社のセキュリティ対策が十分であっても、利用しているアプリや取引先のシステムに潜む脆弱性が突破口となれば、機密情報や顧客データの流出に直結します。特に中小企業は大手企業と比べてセキュリティへの投資や人材が不足しがちで、「自社のような小規模事業者は狙われない」という無関心や油断が広がりやすい傾向にあります。しかし、サプライチェーンの一角として大手取引先と連携している場合、一箇所の弱点がビジネス全体の信頼失墜や取引停止を招くリスクを孕んでいます。

今後、AIを用いた攻撃手法の進化により、企業のシステム規模に関わらず絶え間ない脆弱性探索が行われることが当たり前の環境となります。「システム開発は専門業者に任せている」「公式ストアのアプリを使っているから大丈夫」と、安全性を外部に依存しきってはいないでしょうか。自社が提供・利用するアプリや連携サーバーに対し、「万が一、連携先やバックエンドの仕組みからデータが漏えいした場合、誰がどうレスポンスし、自社の事業継続を守るのか」という責任と対策の具体像を、経営のレベルで議論できているでしょうか。システムの構築だけでなく、運用・利用におけるセキュリティの主体的な管理体制を問うことが求められています。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■国家サイバー統括室「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえた各機関による注意喚起等について」■
https://www.cyber.go.jp/news/20261014.html
■情報通信研究機構「【注意喚起】 相次ぐ情報漏えい、その原因の一つは『アプリ解析からのサーバ攻撃』」■
https://www.nict.go.jp/press/2026/10/13-1.html

以上(2026年10月作成)

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画像:terovesalainen-Adobe Stock

中小企業における「生成AI活用」の現在地と課題【経営者とっておきニュース】

日本商工会議所は2026年8月、LOBO(早期景気観測)調査の付帯調査で「生成AIの活用状況」についてヒアリングを行いました。その結果によると、全国の中小企業1,920社のうち54.4%が生成AIを「活用している」と回答。2025年11月の前回調査(36.0%)から18.4ポイント大幅に増加し、検討中を含めると約8割が活用に前向きとなっています。

生成AIの用途は「文書作成・要約」が81.7%で最多ですが、画像生成やデータ分析など多角化が進んでいます。導入効果として66.3%が「業務時間の削減・効率化」を挙げる一方、社内ルールの未整備が53.2%にのぼり、環境整備の遅れが浮き彫りとなりました。

生成AIの活用が急速に拡大した背景には、人手不足の深刻化に伴う業務効率化への強いニーズと、生成AI技術の使いやすさの向上が挙げられます。文章作成などの定型業務だけでなく、専門ノウハウが必要だった業務の平準化や、SNSを活用したプロモーションなど、中小企業における活用範囲は確実に広がりを見せています。属人化していた専門業務をAIで代替することで、人材難に悩む現場での業務継続が可能となり、販路開拓のスピードも向上しています。

しかし、生成AIの急速な普及の陰には深刻なリスクが潜んでいます。調査では過半数の企業がガイドラインを整備できておらず、「何を参考にすべきか分からない」といった困惑の声が目立ちます。ガバナンスが追いつかないまま個人任せで活用が進む状況は、サプライチェーン全体を揺るがすセキュリティ事故の温床になりかねません。

今後、生成AI活用は「お試し導入」の段階を過ぎ、業務プロセス全体の再構築を伴う本格的な活用期へと移行していきます。

ここで懸念される「落とし穴」は、ガバナンス不在のまま便利さだけを追求することです。社内ルールがない状態での機密情報入力や著作権侵害は、一瞬で企業の信用を失墜させます。また、明確な活用戦略を持たずに「他社が使っているから」と導入を急ぐと、ツールの形骸化や現場の混乱を招くだけです。「何のために活用するか」という明確な目的と「守るべきルール」をセットで構築しない取り組みは、かえって自社を窮地に追い込む大きなリスクとなります。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■日本商工会議所「LOBO付帯調査 8月のトピックス」■
https://ab.jcci.or.jp/article/131261/

以上(2026年10月作成)

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