1 迷惑なお客を「出禁」にしていい?
接客の仕事に従事していれば、誰しも一度は「迷惑なお客」に出会ったことがあるでしょう。ある程度は我慢するとしても限度はあり、なかには
「出禁」(迷惑行為をしたお客に対して、今後の入店を断る対応)にしたい相手
もいるかもしれません。
「出禁ってそもそも法的にどういう扱いなの?」と疑問に思う人もいると思いますが、結論から言うと、実は出禁のルールは、法律で明確に定められているわけではありません。民法には「契約自由の原則」というものがあって、
「どの程度の迷惑を被ったら出禁にするのか」は、基本的にはお店側の裁量で決めてしまって問題ない
とされているのです。もちろん、性別や国籍などを理由とする不当な差別は問題になりますし、医療やインフラ関係など公共性が極めて高い分野では、正当な理由なく応対を拒否することが法律で禁じられていますが、そうした例外を除くと、出禁にする(しない)は、基本的にお店の自由なのです。
とはいえ、お店側に裁量が認められるとしても、「そうは言っても、お客はお客だし……」「逆恨みされたら面倒だなあ」と、気がとがめる部分もあるはずです。となると、やはり気になってくるのは、
実際に出禁を行ったお店のリアルな声
でしょう。
今回は、実際にお客を出禁にしたことのある飲食店や美容院に、
- 出禁にした理由は?
- どうやって出禁にした?
- 出禁にした影響は?
という項目で、聞き取り調査を行いました。「出禁」の事例としてご紹介しますので、参考にしてください。また、第3章では最近の出禁措置ツールとしてどんなものが存在するのかについても、併せてご紹介します。
2 無断キャンセル、ツケの滞納……「出禁」のリアル事例
ここでは、3つの聞き取り調査の結果を紹介します。出禁にした理由も方法も、店にとってさまざまですので、ぜひ参考にしてみてください。
1)飲食店A(電話か来店での予約のみ、接待利用中心のレストラン)
1.出禁にした理由は?
「当店では、会社さまの接待交際費の上限を考えて、コース+ドリンクの料金を設定しているのですが、あるお客さまが、酒類をたくさん飲み、予算をオーバーしました。そのお客さまは、会計の際に『これじゃあ、接待交際費に収まらない。次も来てあげるから、今日は1万5000円以内に負けてくれ』と言い、何度断っても引き下がりませんでした。言い合いが白熱してきたので、その場は他のお客さまへの影響も考え、接待交際費の範囲内で領収書を切りましたが、同じことを繰り返されては困るので、出禁にさせていただきました」
2.どうやって出禁にした?
「会計の際に名刺をいただき、『このお客さまから電話がかかってきたら断るように』と従業員に共有しました。その後も、同じお客さまから予約の打診が続きました。断るたびに怒ってきたため、最終的には角が立たないよう、『会社さんごとお断りしています』と告げました」
3.出禁にした影響は?
「『会社さんごとお断りしています』と告げて以降、そのお客さまは店に現れていません。言い合いなどに時間を取られることがなくなり、他のお客さまも安心して過ごせるようになったので、そこは良かったです。ただ、『会社ごとお断りしている』と告げたことついては、相手が大きな会社ということもあって、今後同じ会社のお客さまの予約が減るかもしれないと、少し気にしています。」
2)飲食店B(予約なしの常連客が多いオーセンティックバー)
1.出禁にした理由は?
「当店では、常連のお客さまに限り、ツケ(その場で支払いせず、後々まとめて支払うこと)を認めています。しかし、あるお客さまの中に、ツケを繰り返すも、一向に料金を支払ってくれない方がいらっしゃいました。その方は出禁にさせていただきました」
2.どうやって出禁にした?
「そのお客さまが来店した際、『(ツケを支払っていないので)お帰りください』と告げ、退店していただきました」
3.出禁にした影響は?
「その後、ツケの回収には成功しました。その常連さまとは疎遠になり、連絡も取らなくなりました。たまに安否が気になりますね」
3)美容院A(ネット・電話予約または来店時に予約可能、個人経営で小規模)
1.出禁にした理由は?
「⾧時間かかる施術メニューで予約をしていたにもかかわらず、当日に無断で予約をキャンセルするお客さまがいました。無断キャンセルでない場合も、『今月はお金がないのでキャンセルしてください』とドタキャンされることが多く、困っていました」
2.どうやって出禁にした?
「当日に無断キャンセルをされた際、キャンセル料をいただきました。すると、その後は予約の連絡が来なくなりました。今後、仮に同じお客さまから予約の電話があったとしても、お断りする方針でいます」
3.出禁にした影響は?
「スタッフのストレスが軽減され、無断キャンセルなどによる機会損失(時間やコストが無駄になる)がなくなりました」
4)番外編:美容院B(ネット・電話予約または来店時に予約可能、個人経営で小規模)
最後に、出禁にはしていないものの、困っているという美容院の事例を紹介します。
1.何に困っている?
「⾧年の常連さんが認知症になってしまい、予約したのを忘れてしまい当日に来店しなかったり、逆に予約をしていないのにふらっと現れて『髪を切って欲しい』と言ったりして、困っています」
2.どうして出禁にしない?
「常連さんなので、できれば出禁にはしたくないです。来店された際に席と時間の空きがあれば対応するくらいしかできませんが、『今後の予約の受付については対応を考えなければいけないな』とは思っています」
3 今どきは「出禁」もDX化
ここまで紹介した事例からも分かるように、出禁の判断や実行は、現場スタッフにとって少なからず精神的な負担を伴いますが、最近ではテクノロジーを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の手法で、よりスマートに出禁の管理を行えるようになっています。
特に飲食店などは、昔ながらの予約台帳や店主の裁量で顧客の管理を行っていることも多いですが、出禁の管理をDX化することで属人的な判断によるトラブルを防ぎ、現場の負担も減らすことができます。システム導入を検討してみるのも一手でしょう。
例えば、次のような対応が考えられます。
1.AIカメラや顔認証システムによる不審者・迷惑客の自動検知
過去にトラブルを起こした人物をデータベースに登録しておくことで、当該人物が入店した際にスタッフの端末へ通知が飛びます。
2.顧客管理システムでのブラックリスト共有
系列店舗やツールの利用店舗全体でトラブル情報をリアルタイム共有し、予約段階でブロックします。
3.オンライン予約時の「利用規約」への同意
迷惑行為時の出禁措置を明文化し、チェックを入れることで法的な合意形成を行います。
4.迷惑行為のクラウド録画
音声付きの鮮明な映像をクラウドに保存し、警察や弁護士への証拠提出を迅速化します。
以上(2026年5月作成)
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画像:日本情報マート


















