(5月22日締切!)多分野で活用可能な「観光DX推進事業」

1 今こそ観光DXに踏み出すとき

コロナ禍で停滞していた観光関連の需要は、数年間で急速に回復しています。街を歩いていて、「コロナ前よりも観光客が多いのでは……?」と感じている人も多いはずです。実際、

2025年の年間訪日外国人旅行者数は、史上初の4000万人を突破し、過去最多の4268万人

を記録しました(観光庁「訪日外国人旅行者数・出国日本人数」)。

一方、多くの中小観光事業者では、急増する観光客の受け入れ体制が十分に整っていないようです。特に大きな課題は、

DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れ

です。

各業界のDX取り組み状況(n=1,000、単一回答)

観光業を含む分野(宿泊・飲食業)で、DXに既に取り組んでいる企業の割合は、

2024年でも14.0%にとどまっており、他業界と比べても低い水準

です。「取り組みを検討している」「必要だと思うが取り組めていない」の合計が、2023年(48.0%)から2024年(54.0%)にかけて6ポイント増加していることから、

DXの必要性を理解していながらも、踏み切れない状況にある

ことがうかがえます。ちなみに、業種全体で見た場合、「取り組みを検討している」「必要だと思うが取り組めていない」のどちらの企業においても、次のことが大きな課題のようです。

  • DX推進に関わる人材が足りない
  • ITに関わる人材が足りない
  • 予算の確保が難しい
  • 具体的な効果や成果が見えない

観光業に関わる企業は、予約管理や接客などの分野で、いまだにアナログ対応に頼っているケースも少なくありません。結果として、現場の負担が増え、人手不足がより深刻化するという悪循環に陥りがち。とはいえ、人手不足や規制の煩雑さなど、自分たちだけでは解決しようがない問題があるのも現状です。

こうした状況を踏まえ、国土交通省観光庁は2022年から、

「観光DX推進事業」(正式名称は「観光振興事業費補助金」)を実施し、観光地や観光産業におけるデジタルツール導入などを支援

しています。予約・決済システム、顧客管理、データ活用など、現場の課題に直結する取り組みが対象となる点が特徴ですので、活用してみるのも一手です。

次章で、2026年度の制度概要を紹介しますので、業務の見直しやデジタル化に取り組む際に活用をご検討ください。ただし、

  • 参加申込の受付は、2026年5月22日(金)17時まで
  • 計画申請の受付は、2026年5月29日(金)17時まで

と、スケジュールがかなりタイトなので、手続きをされる場合はお早めに!

2 2026年度の観光DX推進事業の概要(参加申込は5月22日まで)

1)観光DX推進事業の概要

2026年4月17日に、2026年度の公募内容が公開されました。

■観光DX推進事業 公式ウェブサイト■
https://kanko-dx-hojo.go.jp/

補助金を利用する用途によって、

  • 観光地の販路拡大・マーケティング強化
  • 観光産業の収益・生産性向上
  • 専門人材による伴走支援

の、3つの事業区分が設けられています。事業区分ごとの概要(対象、内容、補助率・補助上限額、要件)は次の通りです。

観光地の販路拡大・マーケティング強化

観光産業の収益・生産性向上

専門人材による伴走支援

「(1)観光地の販路拡大・マーケティング強化)」「(2)観光産業の収益・生産性向上)」の2026年度の公募要領は、こちらをご確認ください。

■観光DX推進事業ウェブサイト「令和8年度 公募要領(第1.1版)」■
https://kanko-dx-hojo.go.jp/wp-content/uploads/2026/04/20260423_koboyoryo_1_2.pdf

「(3)専門人材による伴走支援」の2026年度の公募要領は、こちらをご確認ください。

■観光DX推進事業ウェブサイト「令和8年度 公募要領(第1版)」■
https://kanko-dx-hojo.go.jp/wpcontent/uploads/2026/04/20260417_koboyoryo_3.pdf

なお、

(1)観光地の販路拡大・マーケティング強化、(2)観光産業の収益・生産性向上は、同じ事業者が同時に申請することはできない

ので、注意が必要です。一方、(3)専門人材による伴走支援との同時申請は可能なので、内容をよく確認した上で事業区分を選択するようにしましょう。

2)申請の流れ

観光DX推進事業の、申請から精算までの流れは次の通りです。

1.参加申込(2026年5月22日(金)17時まで)

公式ウェブサイトの登録フォームに必要事項を入力し、参加申込を行います。

2.計画申請(事業内容の提出)(2026年5月29日(金)17時まで)

事務局からメールで送られてくる案内に従い、特設ウェブサイトのマイページにログインしたあと、フォームから計画申請(事業計画の提出)を行います。

3.計画採択

観光庁および事務局において事業計画を審査の上、計画申請主体または補助対象事業者に対して審査結果が通知されます。採択となっても、この時点では、まだ補助事業に着手すること(契約・納品・発注先への支払い等)はできません。

4.交付申請(計画採択後、1カ月程度以内に申請)

採択の通知を受けた補助対象事業者(以下「採択事業者」)が、交付申請フォームから交付申請を行います。

5.交付決定

事務局にて交付申請を審査のうえ、採択事業者に対して交付決定が通知され、補助事業を実施することができるようになります。なお、交付決定の通知前に実施した事業に係る経費は補助対象経費として認められません。また、交付決定額は、補助額を確定するものではありません。

6.補助事業実施(契約・納品・発注先への支払い等が可能)

補助事業者が、交付決定を受けた事業計画に基づき、補助事業を実施します。

7.完了実績報告(2027年1月8日(金)まで)

補助事業終了後、完了実績報告フォームから完了実績報告を行い、実施した補助事業の結果を報告するとともに、精算に係る書類を事務局に提出します。

8.補助額の確定

事務局が完了実績報告を審査し、補助事業者が受け取ることが出来る補助額を確定し、通知します。補助対象経費に該当する費用について補助を受けることができます。

9.補助金請求書の提出(2027年2月19日(金)まで)

補助額の確定の通知を受け取った後、補助金請求書を提出します。

10.補助金の交付

補助金請求書に基づき、事務局から銀行振込にて補助金が交付されます。

3)審査項目

審査項目は、事業区分によって違います。また、公募内容は年度ごとに異なるため、次の年も同様の事業区分が公募されるとは限りません。ここでは、2026年度の公募要領における主な審査項目をご紹介します。

審査項目と審査の観点

3 観光DX推進の事例

最後に参考情報として、各自治体で過去に実施された観光DX推進の事例をご紹介します。

1)⾧野県山ノ内町(志賀高原)

⾧野県山ノ内町(志賀高原)は、地域全体の持続的な収益確保を目指して、

旅行者がオンライン上で情報収集や予約等をシームレスに実施できる「観光プラットフォーム(地域サイト)」を構築

しました。かつて旅行代理店に依存していた予約窓口を地域自前のプラットフォームに移行させ、会員向けの柔軟なクーポン発行機能などを実装しました。これにより、

観光プラットフォームへの誘引、さらに宿泊予約へとつなげることができるようになり、売上向上などの成果が出た

そうです。また、公式SNSのフォロワー数が増加し、個々の顧客に合わせた最適なプランを提案できる、精度の高いマーケティングが可能になりました。

2)兵庫県豊岡市(城崎温泉)

兵庫県豊岡市(城崎温泉)は、「まち全体が一つの温泉旅館」というコンセプトの下、

町内の宿泊施設間で宿泊管理システム(PMS)を連携・一元化

し、宿泊客の周遊データや消費行動を地域全体で可視化することに成功しました。これにより、

データが可視化されて滞在価値を高める施策(外湯巡りの利便性向上など)を打てるようになり、宿泊客単価が2万3580円から3万2438円へと大幅に上昇

しました。さらに、リピーター率も目標を超える41.4%に達するなどの成果を上げました。

3)神奈川県足柄下郡箱根町

神奈川県足柄下郡箱根町では、車で箱根を訪れる旅行者のオーバーツーリズム対策のため、

「箱根観光デジタルマップ」を構築し、リアルタイムの渋滞予測や駐車場・店舗の混雑状況を可視化

しました。これにより、箱根を訪れる旅行者の間で、マップ情報を参考に目的地や訪問時間を変更する行動変容が起こり、月1万回以上の閲覧を記録。デジタルマップの構築により、人流の分散化に成功しました。なお、このプロジェクトは今後、箱根特有の課題である火山災害の防止などにも役立てられる予定です。

以上(2026年4月更新)

pj40074
画像:日本情報マート

経営者から管理職へ 「名言」で伝える心構え

1 管理職に対してこそ必要な「メッセージ」

管理職は、部下の指導について多くの悩みを抱えています。部下との意思疎通をうまく図れない、部下がついてきてくれない、部下が思うように成長しない、部下が何を考えているか分からない……。こうした現状に疲弊している管理職は少なくありません。

さらに近年は、「何かを言うとパワハラと言われるかもしれない」「部下に踏み込みすぎて嫌われたくない」といった不安から、指導そのものを躊躇する管理職も増えています。自信を持って部下と向き合えずにいる、そんな管理職が多いのが現状です。

管理職の話を聞き、励ますのは、経営者の大切な仕事です。特に、組織を率いる立場の経営者から語りかけるメッセージは、管理職の「行動指針」にもなるでしょう。この記事では、「迷い」「視点」「行動」というテーマでそのようなメッセージを紹介します。

2 「迷い」を力に変えるための言葉

管理職の中には、「自分は管理職に向いていない」「どう接すればよいのか分からない」と感じ、自己否定に陥っている人もいます。部下指導への不安が積み重なり、次第に部下から距離を置くようになるーーそういった悪循環に陥りがちです。

経営者は、こうした管理職に「迷っていること自体は悪いことではない」と伝えましょう。その際、米国の研究者でリーダーシップ論の第一人者であるブレネー・ブラウン氏の次の言葉が参考になります。

「私たちは日々、不確実性やリスク、危険に生身がさらされるような場に直面する。そうなるのは不可抗力だが、それにどう関わるかは選ぶことができる」(*)

ブラウン氏は20年以上にわたって「脆弱性(vulnerability)」をテーマに研究を続けてきました。彼は、「自分をさらけ出すことへの恐れを持ちながらも、それでも踏み出す姿勢こそがリーダーに求められる本物の勇気だ」と言っているのです。

この考え方は、管理職にも当てはまります。迷いや不安を感じながら部下と向き合おうとしている管理職は、むしろリーダーとして誠実な姿勢を持っている証拠ともいえます。大切なのは、迷いを消すことではなく、迷いを抱えながらも部下の前に立ち続けることです。

経営者は、ブラウン氏の言葉を借りて、「あなたが迷っているのは、部下を真剣に考えているからだ」と管理職に伝え、自己否定から脱却する後押しをしましょう。

3 「視点」を変えるための言葉

管理職の中には、部下指導で「できないところを直させる」ことに注力しすぎて、かえって部下との関係が悪化してしまう人がいます。「なぜこれができないのか」「もっとこうすべきだ」という指摘が続くと、部下は委縮し、管理職への信頼も失われかねません。

経営者は、「部下を育てる」という視点を、「部下の強みを引き出す」という視点に転換するよう促しましょう。その際、経営学の父と称されるピーター・ドラッカー氏の次の言葉が参考になります。

「成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない」(**)

ドラッカー氏はその著書の中で、「弱みを基盤にしてはならない(できないことからスタートしてはならない)」と述べています。重要なのは、一人ひとりの強みを見極め、それをチームの成果につなげる仕組みをつくることだというのがドラッカー氏の一貫した主張です。

部下一人ひとりには、それぞれ異なる得意分野があります。「なぜできないのか」ではなく「何ならできるのか」を問い続ける管理職こそが、チームを本当の意味で強くします。弱みに目を向けることをやめるわけではありませんが、それよりも強みを活かす視点を持つことが、部下の成長と組織の活性化につながります。

経営者は、ドラッカー氏の言葉を借りて、「部下の足りない部分ではなく、できることを見よ」と管理職の視点を切り替えさせることが大切です。

4 「行動」を継続するための言葉

部下の指導に真面目に取り組んでいる管理職ほど、悩みは深いものです。部下が思うように成長しないことに苛立ち、落胆し、つい「自分でやったほうが早い」と手を出してしまうーーこれは管理職の“あるある”といってもよいでしょう。

しかし、根本的な問題は、「部下が育たないこと」ではなく、「育てようとする行動が継続しないこと」にあります。経営者は、管理職に対して「気合いで続けろ」ではなく、「続けられる仕組みをつくれ」と伝えましょう。その際、習慣形成の専門家として世界的に知られるジェームズ・クリアー氏の次の言葉が参考になります。

「結果は設定した目標とはほとんど関係なく、取り入れた仕組みに左右される」(***)

クリアー氏は著書の中で、目標設定よりもそこに至る日々の「仕組み(システム)」の設計こそが成果を左右すると説いています。やる気が出たときだけ動くのではなく、やる気がなくても動けるような環境と習慣を整えることが、継続の本質だという考え方です。

これは部下指導においても同じです。「今日は時間があるから指導する」「気が向いたのでフィードバックする」という偶発的なアプローチでは、部下の成長は安定しません。定期的な1on1の時間を設ける、週に一度フィードバックを行う日を決めるなど、管理職自身が「仕組み」をつくることが重要です。

経営者は、クリアー氏の言葉を借りて、「あきらめるな」と精神論を語るのではなく、「続けられる仕組みをつくれ」という実践論で管理職を支援しましょう。経営者自身も、管理職が実行しやすい環境をつくることで、その仕組みづくりを後押しすることが肝要です。

【参考文献】

(*)「本当の勇気は『弱さ』を認めること」(ブレネー・ブラウン著、門脇陽子訳、サンマーク出版、2013年8月)

(**)「経営者の条件」(P・F・ドラッカー著、上田惇生訳、ダイヤモンド社、2006年11月)

(***)「複利で伸びる1つの習慣」(ジェームズ・クリアー著、牛原眞弓訳、パンローリング社、2019年10月)

以上(2026年4月更新)

pj10002
画像:pixabay

ヒント 9[職場 1]:“ウェルカムな職場”は人が辞めない/武田斉紀の『人が辞めない会社、10のヒント』(10)

1 一日も早く「仕事の手応え」や「仕事を通した貢献や成⾧」を感じられるように

今シリーズの狙いは、経営者、人事担当者、現場の皆さんのお悩みである「社員を採ってもすぐに辞めてしまう上に、そもそも採れない」という課題を解決することです。『人が辞めない会社、10のヒント』と題して、毎回1つずつご紹介していきます。

『人が辞めない会社』に変わるための課題、その原因と解決策は会社によってさまざまです。

今回ご提示するヒントが皆さんの抱える原因に明らかに当てはまらない場合は、読み飛ばしてくださって結構です。ですが、ヒントの1~9までが該当しなくても、10が当てはまるかもしれません。

全社共通の原因もあれば、部署ごとの固有の原因も存在することでしょう。原因が1つだけというケースは少ないので、何回分か読んでいただければ「これはうちにも当てはまるな」というものを見つけていただけるのではと思います。

『人が辞めない会社』に変わるために、前回の第9回では、人は「自分は今の仕事で大事な戦力なのだ」と思えれば簡単には辞めない、というお話をしました。

本人が仕事を通して十分な「仕事の手応え」や「仕事を通した貢献や成⾧」を感じられている間は、もっとここで頑張りたい、もっとここで役に立ちたいと思えるからです。

まずは新たに入社した人材が、早く職場になじめるように上司や既存社員のほうから働きかけ、一日も早い戦力化を目指しましょう。

その際に上司が取るべき行動は、一方的に指示命令をしてやらせるのではなく、彼らに徐々に「仕事を任せ」ていくことです。自分で自律的に考えてやらせてみて、一緒に「振り返る」のです。

初めての業務で分からない場合などは、これまでの自社のやり方を示して一度は試してもらいつつも、改善点や新たな提案があれば積極的に受け止める姿勢を見せましょう。

同時に「新戦力としての期待」や「本人ならではの経験、知識、スキル、アイデアを期待していること」も伝えましょう。そうすれば、誰もが少なからず”存在価値” や”存在意義”を感じられるはずです。

新戦力である彼らは、失敗をしながらも小さな成功体験を積み重ねることで、「仕事の手応え」や「仕事を通した貢献や成⾧」を感じられるようになっていくことでしょう。

2 「若手やよそ者に冷たい会社」と、「ウェルカムな会社」

さて、第10回からは、[仕事]に代わって、職場環境としての[組織]についてのヒントをご紹介します。今回は、「”ウェルカムな職場”は人が辞めない」というお話です。

世の中には、「若手やよそ者に冷たい会社」と、「ウェルカムな会社」が存在します。

「若手やよそ者に冷たい会社」は、新たに新卒や中途社員が入社してきても歓迎の意思を示しません。

恐らくまず、トップや幹部、人事の人たちが人に対して冷たいのでしょう。その影響もあって現場の各部署も人に冷たい。どちらも新しい人材への期待が薄く、両者の連携もなく、迎える準備ができていないのです。

極端なケースで言えば、「入社に向けた手続きの案内が適当」だったり「入社式が適当」だったり。さらには「配属部署での歓迎セレモニーがない」「部署全体やメンバーへの紹介がない」「歓迎会のような懇親会もやらない」など。

挨拶やセレモニーだけではありません。些事に思えるかもしれませんが、「配属初日に何をやるかが決まっていない」「仕事に必要な本人用の備品が用意されていない」。それだけで本人は、「自分は大事にされていない」「この会社は社員を大事にしていない」と感じるものです。

また、「入社後研修がない」。定期的にまとまった人数の新卒採用をしている会社なら新入社員研修はあるでしょうが、中途社員向けはどうでしょうか。さらには、「困ったときに相談しやすい相手(メンター)も用意されていない」。

「若手やよそ者にウェルカムな会社」は、「冷たい」会社の真逆です。

トップ、幹部、人事も新しい人材に大いに期待し、大切に思っている。その意思が現場にも伝わっていて、新しい人材をいかにウェルカムするかを部署内で真剣に話し合い、十分な準備をして入社当日を楽しみに迎えているのです。

「入社に向けた手続きの案内が丁寧」で、「入社式には社⾧や幹部から期待を伝えるなど、力を入れているのが分かる」。「配属部署に行くと、歓迎セレモニーがあり」「部署全体やメンバーへ丁寧に紹介してくれる」。迎えるほうは1人が相手でも、本人はたくさん覚える人がいますから、写真入りのメンバー紹介などがあればかなり助かります。

「歓迎会のような懇親会がある」。別に夜にお店で飲み会を開かなくても構いません。既存社員と気軽に話し、交流できる場でさえあれば、例えば職場の会議室や食堂でお酒抜きかつ短い時間でもいいのです。

入社後研修は何日もかけて⾧ければ充実しているというわけでもなく、内容が肝心です。数人の中途入社者相手であれば、お決まりの内容よりも当人の状況にカスタマイズした個別研修のほうがありがたいでしょう。

3 「ウェルカムな会社」は、戦力化までみんなでフォローする

「ウェルカムな会社」は、会社とメンバー一人ひとりが入社時に歓迎の意思を示すだけでなく、戦力化までみんなでフォローします。

第9回でも言及しましたが、採用した人材の最初のゴールは「戦力に育てる(戦力化する)」ことです。

本人が「自分は大事な戦力なのだ」と信じられてこそ、自身の”存在価値” や”存在意義”を感じて組織の大切な一員として頑張れるからです。

新卒にしても中途にしても、入社後研修を終えればすぐに戦力になるわけではありません。その後はOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング、職場業務を通した訓練)を通して学んでいくことになります。その際、日々の疑問点や悩みを解決できる環境を用意しておくことが肝要です。

皆さんの会社の中にも、「メンター制度」(直属の上司や先輩以外の相談相手を予め用意しておく制度)を導入しているケースがあるでしょう。

プライベートでもそうですが、相談内容によって親兄弟、恋人やパートナーに相談したいときもあれば、親友や詳しい知人に相談したいこともあるはずです。いくら上司がウェルカムな人で、相談しやすい相手であったとしてもそれは変わりません。

ただでさえ、入社したばかりでとまどいの連続の毎日です。彼らの疑問点や悩みはできるだけ早く、その日のうちに解決するのがベスト。翌日に向けて前向きな心の準備ができます。

上司や先輩、同僚など身近な人に相談しにくい場合、直接利害関係のない他部署のメンターがいれば心強いでしょう。人間同士の相性もあるでしょうから、メンターも入社者1人に複数人設定しておくといいかもしれませんね。

当然ですが、メンターの選抜には配慮が必要です。

相談すれば断らずに話を最後まで聞いてくれて、気持ちも含めて一旦受け止めてくれる人。その上で、問題解決のために社内人脈も活かして適切に対処してくれる人。本人を甘やかすのではなく、一日も早く戦力になれるように支援してくれる人です。

また、中途入社者の場合、入社同期を作ってあげることも有効です。

中途の場合、年齢や経験・スキルも全く異なるどうしで、新卒のような同期意識は少ないかもしれません。ですが、ベテランであっても、よそ者が一人で入社するのは孤独なものです。同じくらいの時期に入社した”同期”がいれば、悩みを打ち明けられるよき相談相手になれるかもしれません。

私は中途入社者に直接聞いたことがありますが、互いに年齢や経験によらず”中途入社同期”が一人いるだけでも心強いそうです。入社時期が少しずれる場合は、研修を一緒に行うだけでも”中途入社同期”の感覚が芽生えるようですよ。

4 「ウェルカム」を、会社の文化に育てる

私が新卒で入社したリクルート社にも数十年も前から「メンター制度」に近いものがあり、ありがたかったのですが、

最もありがたかったのは「誰に相談しても必ず相談に乗ってくれる、人を育てる文化」でした。

上司だったか先輩だったか忘れましたが、入社後に教えてくれました。「何でも相談したいことがあれば、誰に相談してもいいんだよ。課⾧を飛ばして部⾧や他部署の人に直接聞きに行ってもいいし、必要なら役員や社⾧に聞いたっていい。そういう会社だから」と。

それは本当のことでした。しかも、相談に行くと誰一人断らないのです。こちらの思いをちゃんと伝えれば、たとえ初対面でも笑顔で「いいよ」と気さくに声をかけてくれました。そのとき忙しければ、「分かった。今無理だけど、〇時くらいでも大丈夫?」とわざわざ時間を取ってくれるのです。

「仕事の報酬は仕事」というのも同社の文化で、仕事のできる人には新しい仕事がどんどん舞い込んできます。そういう人は目立つし頼りにもなるので、若手だけでなく先輩や他部署からも相談されやすい。でも、どんなに忙しくても基本的に断らないのです。

「相談内容の資料があったら事前に読んでおくから送っておいて」と言って、時間になって相談に行くとすでに目を通していて、的確なアドバイスをくれました。あるいは、「これね、自分じゃなくて□□部の〇〇さんの事例が使えるよ。つないであげるよ」と目の前で連絡してくれるのです。

それを見た私は、「自分もいつかこうして誰かに相談され、力になれる人間になりたい」と強く心に刻んだものです。そんな思いが循環して、会社全体の文化になっていたのかもしれません。

上司によっては、部下が事前に断りなく自分を飛ばして、上の上司や他部署の管理職、ましてや役員、社⾧に相談に行くことをよく思わない人もいそうです。しかし、同社では「本人がその人に相談したかったのだ。それで問題が解決したのならオッケー、何の問題もない」という考え方が浸透していたのです。

5 「ウェルカム」は「甘い」のではない、互いが”プロ”を求める

人に対して「ウェルカム」なのと、人に対して「甘い」のとは異なります。

新しい人を「ウェルカム」に迎えるのは、彼らに大いに期待しているから。互いの成⾧と会社の発展のためにも、「一日も早く戦力になってもらい、同じ”プロ”として一緒にいい仕事をする」ことを目指すのです。

「ウェルカム」の根底にはDEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包摂性)の、特にInclusionの考え方があります。「企業理念など中心となる価値観を共有できるか否かは譲れないが、それ以外の属性は問わない、むしろ違いを歓迎する」という思想です。

生物の種が強くあるためには、均一のDNAではなく、外部環境の変化やウィルスなどに抗えるDiversity:多様性が不可欠です。そのためにはEquity:公平性を持って違いを受け入れる=Inclusion:包摂性が前提となる、会社もそれと同じです。

新卒や中途社員は自社をさらに強くしてくれる存在であり、「ウェルカム」の気持ちで受け入れて、同じ”プロ”としての戦力の一員になってもらえるように会社と社員が努力するべきなのです。

一日も早く戦力になってもらいたければ、入社時には大歓迎し、大いに期待していることをトップから現場まで会社全体で伝えましょう。

入社までの準備や手続き、当日の準備を怠りなく。職場に来たらメンバーを丁寧に紹介し、早く環境に慣れてもらうために既存社員との交流の場を作るのです。

新卒、中途に限らず入社後研修を実施し、OJTに移ってからも直接の教育担当でなくても随時声をかけ、積極的に相談に乗る。「メンター制度」や入社同期のつながりを作り、自身の職場以外でも相談しやすい環境も用意してあげる。

これら全ては、「一日も早く戦力になってもらい、同じ”プロ”として一緒にいい仕事をする」ための布石です。

もちろん新卒と中途、また中途の中でもスキルやキャリアによっても戦力化までにかかる時間は違います。必要以上に急かすのは逆効果。優秀な人材、期待の大きい人材ほどプレッシャーになってしまいます。

各々の新しい環境への適用度合いを確認しつつ、「早く同じ立場で一緒に働きたい」気持ちと、「そのためには協力は惜しまないし、いつでも相談に乗りますよ」という気持ちで接していけばいいでしょう。

会社としてこの人材を採用したいと決めた以上、受け入れる側が戦力化することを途中であきらめないことです。

第10回を最後までお読みいただきありがとうございました。次回はいよいよ『人が辞めない会社、10のヒント』の最後の1つです。今回と同じく職場環境としての[組織]についてのヒントをご紹介します。

毎回ご紹介するヒントを参考にしながら、自社を退職する一人ひとりの「辞める理由」と、働いている一人ひとりの「辞めない理由」を丁寧に拾ってみましょう。見えてきた自社ならではの“課題”を解消し“強み”を活かせれば、『人が辞めない会社』へと変われるはずです。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mailto:brightinfo@brightside.co.jp
https://www.brightside.co.jp/

※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。

『新スペシャリストになろう!』
https://amzn.asia/d/e8GZwTB
『なぜ社長の話はわかりにくいのか』
https://amzn.asia/d/8YUKdlx

以上(2026年4月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

pj90283
画像:VectorMine-Adobe Stock

健康保険の被扶養者の年収判断

健康保険の被扶養者の認定基準の一つに、年間収入に関する基準があります。これまで、この年間収入は「今後1年間の収入見込み」によって判断されていましたが、4月からは「労働条件通知書から見込まれる年収」に基づいて判断する取扱いに変わりました。本稿では、この変更についてお伝えします。

この記事は、こちらからお読みいただけます。pdf

健康保険の被扶養者の年収判断

健康保険の被扶養者の認定基準の一つに、年間収入に関する基準があります。これまで、この年間収入は「今後1年間の収入見込み」によって判断されていましたが、4月からは「労働条件通知書から見込まれる年収」に基づいて判断する取扱いに変わりました。本稿では、この変更についてお伝えします。

1 健康保険の被扶養者の認定

健康保険の被扶養者になるためには、次の年収に関する基準を満たす必要があります。この点は以前と変わりません。

年収が130万円(※1)未満で

  1. 被保険者と同居の場合には、被保険者の年収の2分の1未満
  2. 被保険者と別居の場合には、被保険者からの仕送り額未満

(※1)19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く)は150万円。60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度のある人は180万円

今年3月まで、年収130万円未満かどうかは、過去の収入や現時点の収入などから、今後1年間の収入を見込んで判断していました。

4月1日以降は、労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入で判断することになりました。その際は、労働条件通知書等の労働契約の内容が分かる書類により、年収130万円未満かどうかを確認します。

年収の計算は、労働条件通知書等に規定された時給、労働時間、労働日数などを基に行います。諸手当や賞与も、労働条件通知書等に記載されていれば計算に含めます。

労働契約書等に明確な定めがなく、契約段階で金額を見込みにくい時間外労働に対する賃金等は、年間収入の見込額に含まないこととなります。そのため、給与明細書や課税(非課税)証明書等で結果的に年収が扶養認定基準を上回っていても、残業代等が「社会通念上妥当な範囲」であれば扶養認定を取り消す必要はないとされています。

今年3月までは、残業代を含めて年収を見込んでいました。このため、パート・アルバイトで働く人は、毎年秋ごろになると、年収が130万円以上にならないように労働時間を減らさざるを得ませんでした。こうした働き控え(就業調整)が行われると、繁忙期に人手が不足するため、企業にとっても痛手でした。今回の見直しは、こうしたマイナス面に対処する取り組みとなっています。

2 実務面の注意事項

従業員の家族を被扶養者にする場合、企業はその届を保険者(※2)に提出します。保険者はこの届をもとに、被扶養者にするかどうかを判断します。

(※2)全国健康保険協会(協会けんぽ)や各健康保険組合のこと。協会けんぽに加入している企業は、年金事務所に健康保険被扶養者(異動)届」を提出する。

全国健康保険協会の届を例に挙げると、企業の担当者は「健康保険被扶養者(異動)届」を書く際、労働条件通知書等から見込み年収を確認し、「収入(年収)」欄に記載します。また、異動届の「扶養に関する申立書」欄に、対象者が給与収入のみである旨を書きます。

労働条件通知書等で年収を確認するのは、対象者が給与収入のみのケースです。給与収入のほかに、年金収入や事業収入があるときには、従来通り、給与明細書や、自治体が発行する課税(非課税)証明書などにより年収を判定します。

また、労働条件通知書等で見込み年収が計算できないことがあります。例えば「シフト制」で労働時間がはっきりしない方や、契約期間が1年に満たない方などです。このようなケースも、給与明細書や課税(非課税)証明書などにより見込み年収を計算します。労働条件通知書がない場合も同様です。

3 さいごに

本稿制作時点では、厚生労働省の通知やQ&Aにより、基本的な取扱いは示されています。実際の手続きや必要書類の案内は保険者によって異なる場合があるため、日本年金機構や加入先の健康保険組合等のホームページなどで最新情報を確認しておきましょう。

また、企業は保険者から年1回、被扶養者の収入確認を求められます。その際も、給与収入のみの被扶養者については、労働条件通知書で年収を確認します。

※本内容は2026年4月10日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

sj09174

画像:photo-ac

目的で異なる3つの会計。 財務会計・税務会計・管理会計はどのように違うのか?

1 経営者が意識する3つの会計

会計は、法令に基づく「制度会計」と「管理会計」とに大別され、さらに制度会計は「財務会計」と「税務会計」とに分かれます。それぞれを簡単に説明すると、

  • 財務会計:制度会計の1つ。株主など社外の関係者に経営状況を説明するための会計
  • 税務会計:制度会計の1つ。税金を正しく計算、納税するための会計
  • 管理会計:投資判断やコスト管理など、経営者などが経営判断をするための会計

といった具合になります。また、気になるこれらの関係性は次の通りです。

3つの会計の関係(イメージ)

中小企業には、上場企業のように財務諸表を外部に開示する義務がありません。一方、納税義務はあるので、財務諸表は財務会計(会社法や企業会計原則など)ではなく、税務会計(法人税法など)に基づいて作成されるなど、税務会計に偏りがちです。

しかし、金融機関などに業績を説明する際、税務会計に基づく財務諸表だけだと内容が不十分なことがあります。それに、管理会計によって、定量的な指標から意思決定をすることも大切です。大切なのは、それぞれの会計の使い分けなので、この記事でそれぞれの特徴を分かりやすく説明していきます。

2 財務会計とは

財務会計は、

会社法・金融商品取引法(上場会社のみ)・会計基準などの法律や規則に基づいて実施

されます。そのため、財務会計に基づいて作成された財務諸表は他社と比較することができ、株主にとっては投資の参考資料、取引先などにとっては取引の判断材料になります。

財務会計では、会社の活動を「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」に区分して財務諸表を作成します。このうち資産・負債・純資産は「貸借対照表」に集計され、ある時点の会社の財産の状態を表します。また、収益・費用は「損益計算書」に集計され(収益と費用の差額が利益(または損失))、一定期間の業績を表します。

貸借対照表と損益計算書以外にも、会社のキャッシュの流れを表す「キャッシュフロー計算書」や、純資産の増減内容を表す「株主資本等変動計算書」などが作成されます。

3 税務会計とは

税務会計は、

法人税法・地方税法などに基づいて実施

されます。正しく納税額を計算して、申告期限までに確定申告書を税務署などに提出します。

税務会計では、財務会計で計算された当期純利益に一定の調整を加え、納税額を計算するための基礎となる所得を導きます。なお、財務会計の「収益・費用・利益」は、税務会計の「益金・損金・所得」と言い換えられますが、一部で取り扱いが異なります。そのため、税務会計の所得を計算する際は、次の4つの調整をします。

税務会計上の調整

なお、中小企業の制度会計は、上述の通り税務に偏っているのが実情であり、多くの中小企業では、税務上の益金・損金の基準に合わせて決算書を作成しています。例えば、財務会計上は認識すべき退職給付引当金について、税務上は損金不算入となるため費用計上しないといったことが生じます。その結果、貸借対照表、損益計算書に会社の財務状況が正しく反映されていないケースが多いことに留意が必要です。

4 管理会計とは

管理会計は、

法令上の決まりなどはなく、会社の考えに従って実施

されます。社内で利用するために管理会計の代表的な分析方法にCVP分析(損益分岐点分析)があります。CVP分析では、まず、財務会計上の費用(製造などに係るもの)を、

  • 変動費:売上の増減に比例して発生する費用。材料費、外注費など
  • 固定費:売上の増減に関係なく発生する費用。地代家賃、水道光熱費、交際費など

に分けます。そして、損益分岐点を計算するのですが、損益分岐点とは、

売上高から変動費を引いた「限界利益」と固定費が同額になる状態

であり、限界利益が固定費を上回ったら黒字です。損益分岐点の計算式は次の通りです。

損益分岐点=固定費/(1-(変動費/売上高))

5 それぞれの会計の処理と利益の違い

それぞれの会計の処理の違いを比べてみましょう。分かりやすく示すために、交際費を年間1000万円とします。

  • 収益:10億円
  • 費用:9億8000万円(材料費5億8000万円、労務費3億円、経費1億円(交際費1000万円))
  • 資産:3億円
  • 負債:2億5000万円
  • 純資産:5000万円
  • 1年決算法人

1)財務会計における取り扱い

財務会計では、交際費は損益計算書の費用になります。この場合の貸借対照表と損益計算書は次の通りです。

前提要件を集計した貸借対照表および損益計算書

2)税務会計における取り扱い

税務会計では、原則として、交際費は全額が損金不算入とされます。ただし、会社規模に応じた一定の措置が設けられています。期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下であるなどの場合、損金不算入額は次のいずれかの金額を選択できます。

  • 交際費(全額接待飲食費に該当する場合)の50%相当を超える部分の金額
  • 年間800万円に事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額(定額控除限度額)を超える部分の金額

交際費が年間1000万円の場合の損金不算入額および所得は、次のようになります。

交際費(全額接待飲食費に該当する場合)

3)管理会計における取り扱い

管理会計でCVP分析を行う場合、交際費は固定費に分類します。前提要件に基づいて作成する管理会計(CVP分析)上の損益計算書は次の通りです。

管理会計(CVP分析)上の損益計算書

限界利益は4億2000万円で、固定費の4億円を上回っているので2000万円の利益が出ています。

ここで、CVP分析により、翌期に3000万円の利益を出すために必要な売上高を考えてみましょう。変動費率は今期と同じ58%(5億8000万円/10億円)、固定費は今期より2000万円増えて、4億2000万円になる予定です。この場合、来期に必要な売上高は次のように計算することができます。

(固定費+必要利益)/(1-変動費率)
=(4億2000万円+3000万円)/(1-0.58)
≒10億7143万円

以上(2026年4月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

pj35054
画像:photo-ac

周りに遠慮して休まない社員に上手に休暇を取らせる方法とは?

1 仕事をしながら休暇を取ってもいい!

適度に休み、心身のコンディションを整えて仕事のパフォーマンスを上げる。何の異論もないところですが、なぜか休まない社員がいます。どうやら、

  • 周囲が忙しそうなのに自分だけ休めない
  • 休むといっても引き継ぎをするのが面倒

などと考えているようなのです。こうした社員は、

この会社は、いざというときに周囲のサポートを当てにできない

と考えており、ちょっとした気持ちの変化で文句を言ったり、ライフイベント(結婚や出産、介護など)の発生によって転職を決意したりします。そうならないために、

  • 雰囲気づくり:休暇を歓迎し、上司も快く部下の休暇を承認する
  • 休暇制度の見直し:半日休暇などを検討する

を進めることをご提案します。なお、休暇取得を促進するのは、決して甘い組織をつくりたいわけではなく、メリハリのある働き方の実現するためです。

2 休暇を取りやすい雰囲気づくり

1)休暇は楽しい!

「休暇は楽しい!」という雰囲気をつくりましょう。「え、そんなことでいいの?」と思われるかもしれませんが、とにかく休暇を取得する社員には明るく接し、プライベートに深入りしない程度に「いいね! どこに行くの?」「何の映画を見るの?」など、休暇を歓迎します。

もちろん、経営者自身も休みを取りましょう。差し支えなければ、自分の休暇の過ごし方をみんなに話して、

仕事もプライベートも大切にする会社であることをアピール

します。

2)上司(管理職)を巻き込む

休暇を申請したら上司がいい顔をしなかった。あるいは、上司がいつも残業しているのに自分だけ休むのは気が引ける……。こんな職場では部下は畏縮して休暇を取得できません。

そこで、経営者は、上司に部下の休暇取得を促進するように指示します。人事考課の中に、

部下の年休(年次有給休暇)の取得率を対前年度比で◯%向上させる

ことを加えるのもよいでしょう。

また、部下が遠慮しないで済むよう、上司自身にも休暇を取らせましょう。例えば、マネジメントが苦手で1人で仕事を抱え込んでしまう上司には、「それは君がやる仕事ではない」と伝え、部下に振るよう指導します。そうすれば、休暇のための時間は案外簡単に捻出できるものです。

3 休暇制度の中身を見直す

1)半日単位・時間単位の休暇にしてみる

半日単位や時間単位の休暇は、比較的、取得しやすいです。仕事とプライベートの用事(子どもの送り迎えや家族の介護など)を交互にこなす社員は多いですし、旅行先でレジャーを楽しみながら合間に仕事をしたい社員にとってもうれしいものです。

年休については半日単位で付与できますし、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)と労使協定を締結すれば1時間単位でも付与できます。会社が独自に就業規則等で定める特別休暇についても、内容によっては半日単位・時間単位を検討してみましょう。

2)休暇取得日をあらかじめ指定する

休暇取得日をあらかじめ指定するのも一策です。年休の場合、

付与日数が年10日以上の社員(基本は正社員)については、そのうち5日まで会社が休暇取得日を指定して取得させる義務

があります。会社命令であれば、社員も周囲に遠慮せず休むことができます。

また、会社が年休取得日を計画的に割り振る「計画的付与」という制度もあります(労使協定の締結が必要)。社員が休暇を取得する日が事前に分かるので、同僚は協力してフォローすることができます。ただし、一度割り振った休暇取得日を後から変更することはできません。

休暇取得日を指定する場合は、ゴールデンウイークや夏季休暇、年末年始などに合わせて長期休暇を実現させるのもよいでしょう。例えば“年末年始が10連休以上”となれば、社員はそれを1つのゴールとして頑張ることができます。なかなか休暇が取得できない社員でも、夏季休暇や年末年始などであれば休みを取りやすいでしょう。

3)取得時季や目的が明確な特別休暇を利用する

休暇には、法令で定められている「法定休暇」と、会社が独自に設定する「特別休暇」があります。特別休暇は、取得時季や取得目的が明確な場合が多いことが特徴です。原則としていつでも取得できる年休よりも、特別休暇のほうが取得しやすいという社員も少なくないようです。

例えば、次のような特別休暇があります。

特別休暇の例

ちなみに、図表の赤字の休暇は、「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」という助成金と関わりがあります。

図表の赤字の休暇のいずれか(有給のものに限る)を導入し、就業規則等で前述した「年休の5日取得」の規定を整備するなど一定の取り組みをすると、最大1020万円

を受給できる可能性があります(なお、図表の赤字以外にも、助成金の対象となる特別休暇があります)。興味のある人は、厚生労働省のウェブサイトをご確認ください。なお、2026年度の助成金の申請期限は、2026年11月30日までです。

■厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html

以上(2026年4月更新)

pj00373
画像:pixabay

令和7年の交通事故の発生状況(2026/5号)【交通安全ニュース】

※ボタンを押すとSOMPOリスクマネジメント(株)のサイトへ移動します。

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

警察庁より「令和7年における交通事故の発生状況について」が公表されました。

今号では、近年の交通事故の発生状況とその対策をまとめました。

1 交通事故死者数・重傷者数の推移

令和7年の交通事故死者数は2,547人で、昨年から116人減少し、過去最少を記録しました。

うち、65歳以上の高齢者の死者数は1,423人で昨年より90人減少したものの、全体の55.9%を占めています。(図1)

図1.死者数の推移

交通事故死者数・重傷者数の推移

一方、重傷者数は27,563人で、昨年から278人増加しました。

命に別状はなくとも、身体に長期的な影響を及ぼす重大な事故は減っていないことが浮き彫りになっています。(図2)

図2.重傷者数の推移

重傷者数

出典:図1、図2とも、警察庁「令和7年における交通事故の発生状況について」から当社作成

政府が策定した「第11次交通安全基本計画」では、令和7年までに交通事故による死者数を2,000人以下、重傷者数を22,000人以下にするという目標を掲げていましたが、達成することはできませんでした。

2 主な交通事故におけるドライバーの対策

1.歩行者との事故

【特徴】

  • 歩行中の死者の約7割が高齢者(図3)
  • 高齢者の事故は、横断歩道ではない場所を渡っている時が半分近くを占める
  • 歩行中の事故の約6割は、横断違反などのルール 違反が原因

図3.年齢別歩行中死者数

歩行者との事故

【対策】

  • 歩行者が多い住宅街などでは、時速30km以下でゆっくり走行
  • 危険が予測される場面では、いつでもブレーキを踏めるように準備しておく(構えブレーキ)

2.携帯電話を使いながらの運転の事故

【特徴】

  • 罰則が厳しくなったにもかかわらず事故は近年増加傾向(図4)
  • 携帯電話を使っていると死亡事故を起こす確率が約3.4倍も高くなる(図5)

※例えば、時速60kmで2秒よそ見をすると、車は約33mも進んでしまう

図4.携帯電話等使用による死亡・重傷事故件数の推移

携帯電話を使いながらの運転の事故

図5.携帯電話等使用有無別死亡事故率の比較

携帯電話を使いながらの運転の事故

出典:図3~図5とも、警察庁「令和7年における交通事故の発生状況について」から当社作成

【対策】

  • 運転中は携帯電話の電源を切るか、ドライブモードに設定
  • 携帯電話を操作する必要がある場合は、安全な場所に車を停めてから利用

3 交通事故のない社会を目指して

統計数値だけを見ると、事故は減少傾向にあるように見えます。しかし、悲惨な事故は後を絶たず、尊い命や人々の生活が失われているという現実は依然として存在します。

政府は、「第12次交通安全基本計画」において、「令和12年までに交通事故による死者数を1,900人以下、重傷者数を20,000人以下にする」という目標を掲げています。

この目標を達成するためには、私たち一人ひとりが運転者としての高い安全意識を持ち、安全運転を心がけることが不可欠です。

以上(2026年5月)

sj09175
画像:amanaimages

※ボタンを押すとSOMPOリスクマネジメント(株)のサイトへ移動します。

経営のヒントとなる言葉(野口英世)

「モノマネから出発して、独創にまでのびていくのが、我々日本人のすぐれた性質であり、たくましい能力でもあるのです」(*)

出所:「20世紀名言集 科学者/開発者篇」(情報センター出版局)

冒頭の言葉は、

「たとえ最初はモノマネであっても、志を持ってたゆまぬ努力を続けることで、それは独創にまで成長する」

ということを表しています。

野口氏は、幼い頃に誤っていろりに落ち、左手に障がいを持っていましたが、このハンディキャップにも負けず、小学校では熱心に勉学に励みました。そして、その後は恩師の援助を受けて高等小学校に進学しました。

高等小学校でも、野口氏は優秀な成績をおさめていましたが、障がいを案じて将来を悲観していました。その心境に心を打たれた教師や同級生は、費用を出し合い、手術によって野口氏の手を治すことを提案しました。こうして、海外で西洋医学を学んだ外科医渡部鼎(わたなべかなえ)氏の手術を受けたことによって、野口氏の左手は物をつかんだり握ったりできるようになりました。このとき、野口氏は、医師になって多くの人々を救うことを決心しました。

その後、野口氏は、渡部氏のもとで書生として働き、医学の基礎を学びました。書生としての生活は、客の取り次ぎや下働き、さまざまな雑用などで多忙を極めましたが、野口氏はわずかな時間も惜しみ、毎日の睡眠時間も削って勉学に励みました。

こうした中、野口氏は運命的な出会いを果たします。当時、東京の高山歯科医学院(現東京歯科大学)で幹事を務めていた血脇守之助(ちわきもりのすけ)氏が渡部氏のもとを訪れていました。血脇氏は、野口氏の医学に関する優れた才能を認め、東京で勉強することを勧めました。これを受けて、野口氏は上京し、高山歯科医学院で働きながら医学を学び、1897年には医術開業後期試験にも合格し、ついに医師となることができました。

その後、野口氏は米国に渡り、さまざまな大学で細菌学の研究に没頭しました。そして梅毒の原因となるスピロヘータや黄熱病病原体の研究などを通じて、日本のみならず世界の医学界に大きく貢献しました。

野口氏が偉業を成し遂げることができた背景には、たゆまぬ努力がありました。貧しさや障がいなど、野口氏は大きなハンディキャップを抱えていましたが、常にそれらをバネにして困難に立ち向かいました。

上京する際、野口氏は生家の柱に次のような言葉を刻んでいます。

「志(こころざし)を得ざれば再び此地(このち)を踏まず」(**)

これは、「志を達成するまでは、決して故郷には戻らない」という、野口氏の不退転の決意を表すものです。

明治維新後の日本の医学は、西洋医学をそのまま移入したものにすぎませんでした。しかし、野口氏をはじめとする明治時代の研究者たちは日々努力を重ね、やがては単なるモノマネを超えた独創的な研究結果を勝ち得ました。

「学ぶ」の語源は「まねる」であるといわれるように、何事も、まずは自分でまねてみることが重要です。しかし、そのままではそこから先に進むことはできません。ビジネスにおいても、優れた経営者がたどった軌跡をまねるだけでなく、そこに自分自身の新たな「気付き」を加えることで、自分自身にしか得られない成功を獲得することができます。「必ず志を達成する」という強い意志と、その実現に向けたたゆまぬ努力こそが、単なるモノマネを独創に変えるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

のぐちひでよ(1876~1928)。福島県生まれ。猪苗代高等小学校卒。1897年、医師資格取得。梅毒の原因となるスピロヘータや黄熱病病原体の研究により世界の医学界に貢献。

【参考文献】

(*)「20世紀名言集 科学者/開発者篇」(ビジネス創造力研究所(編)、造事務所(編著)、情報センター出版局、2000年11月)

(**)「野口英世伝」(野口英世記念会、1963年11月)

「正伝野口英世」(北篤、毎日新聞社、2003年2月)

以上(2026年4月更新)

pj15082
画像:日本情報マート

【助成金(健康経営編)】残業削減などに取り組むと1370万円!

1 働き方改革推進支援助成金を活用しよう!

働き方改革やSDGsの観点から、社員の「健康」維持が大きく注目されています。残業を減らす、休暇や休日を増やすなど、アプローチの方法はさまざまです。就業規則の整備や設備導入にはコストがかかるため、助成金を活用しながら取り組みを進めることをお勧めします。

例えば、

建設業など特定の業種が時間外労働の削減などに取り組み、一定の成果目標を達成した場合に最大1370万円が支給

されるのをご存じですか。具体的には「働き方改革推進支援助成金」という助成金がそうです。以降では、それぞれの制度概要と申請上のポイントを専門家が解説します。

なお、助成金の内容は2026年4月13日時点のもので、将来変更される可能性があります。また、申請書の書き方や添付書類については、全コースまとめてこちらに記載されていますので、ご確認ください。

厚生労働省「働き方改革推進支援助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html#h2_free3

2 業種別課題対応コース(最大1370万円)

1)業種別課題対応コースとは?

建設業、運送業等、病院等、砂糖製造業、情報通信業、宿泊業の中小企業が生産性を向上させ、時間外労働の削減などに取り組んだ場合に助成を受けられるというものです。なお、砂糖製造業は、「鹿児島県・沖縄県の事業者のみ」が対象です。

2)助成金を受け取るには?

中小企業で、申請時点において一定の要件(年5日の年休(年次有給休暇)の取得に向けた就業規則等を整備している、法的要件を満たした36協定を締結し、届け出ている等)を満たしている会社が、「成果目標」を設定し、成果の達成に向けて「支給対象となる一定の取り組み」を実施する必要があります。

具体的な「成果目標」となるのは次の7つで、1つ以上を選択する必要があります。

  • 月60時間超の36協定の時間外・休日労働時間数の縮減
  • 所定外労働時間数の削減(1.との同時選択は不可)
  • 年休の計画的付与制度の導入
  • 時間単位年休+1つ以上の特別休暇(注1)の導入
  • 勤務間インターバル制度の導入
  • 4週における所定休日の1日以上の増加(建設業のみ)
  • 「医師の働き方改革の推進(注2)」の実施(病院等のみ)

(注1)病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇等が対象です。

(注2)労務管理体制の構築(労務管理責任者の設置等、副業・兼業を行う医師の労務管理体制の整備、労働時間管理に関する研修の実施)、医師の労働時間の実態把握を指します。

「支給対象となる取り組み」は次の7種類です。

  • 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの、業務研修を含む)
  • 社員に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取り組み
  • 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(注)
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(注)

(注)原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。

3)受け取れる金額はいくら?

取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表1の額)を受け取れます。なお、指定する社員について、

  • 賃上げの実施を成果目標に加え、実施を達成した場合は「賃上げに関する加算」
  • 割増賃金の引上げを成果目標に加え、実際に達成した場合は「割増賃金率の引上げに関する加算」

が受けられます(次章以降の「労働時間短縮・年休促進支援コース」「勤務間インターバル導入コース」にも一部、同様の制度があります)。

業種別課題対応コース

要件を満たし、選択した成果目標の達成や各種加算の適用条件を満たした場合、最大で次の額の助成を受けられる計算になります。

  • 建設業:1370万円
  • 運送業等:1290万円
  • 病院等:1340万円
  • 砂糖製造業:1270万円
  • 情報通信業、宿泊業:1270万円

4)専門家のワンポイントアドバイス

働き方改革推進支援助成金は全部で5つのコースがありますが、いずれも

2026年度の「交付申請書」の申請期限は、2026年11月30日まで(予算の制約により11月30日以前に締め切られる場合があるので注意)

となっているので、早めに準備を進める必要があります。加えて、時間外労働の削減などの各種取り組みについても、

交付決定後、2027年1月31日までに提出した計画に沿って取り組みを実施した上で、支給申請期限までに都道府県労働局に支給申請をしなければならない

ので、交付申請書の提出時期によっては非常にタイトなスケジュールになります。期限内に提出するためにも、余裕を持って計画的にプロジェクトの立案等を進めるようにしてください。

このコースは選択肢が多い分、「自社の業種で、どの成果目標を組み合わせれば最大効果を狙えるか」を考えることが肝要です。特に注意すべきは、

成果目標1(36協定の縮減)と成果目標2(所定外労働時間数の削減)は同時選択できない

という制約がある点です。

賃上げ加算は、「常時30人以下」の事業主の場合、1人当たりの加算額が2倍になるため、小規模の会社ほど相対的にメリットが大きい仕組みです。自社の規模を踏まえて、賃上げ対象人数を戦略的に設定しましょう。

3 労働時間短縮・年休促進支援コース(1020万円)

1)労働時間短縮・年休促進支援コースとは?

生産性を向上させ、時間外労働の削減、年休や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組んだ場合に助成を受けられるというものです。

2)助成金を受け取るには?

中小企業で、申請時点において一定の要件(年5日の年休(年次有給休暇)の取得に向けた就業規則等を整備している等)を満たしている会社が、「成果目標」を設定し、成果の達成に向けて「支給対象となる一定の取り組み」を実施する必要があります。

具体的な「成果目標」となるのは次の3つで、1つ以上を選択する必要があります。

  • 月60時間超の36協定の時間外・休日労働時間数の縮減
  • 年休の計画的付与制度の導入
  • 時間単位年休+1つ以上の特別休暇(注)の導入

(注)病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇等が対象です。

「支給対象となる取り組み」は次の7種類です。

  • 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの、業務研修を含む)
  • 社員に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取り組み
  • 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(注)
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(注)

(注)原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。

3)受け取れる金額はいくら?

取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表2の額)を受け取れます。

労働時間短縮・年休促進支援コース

要件を満たした場合、最大1020万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

このコースは、残業削減を掲げるだけでなく、年休の計画的付与や時間単位年休と特別休暇の新規導入など、制度整備を伴う成果目標が中心です。就業規則の整備や年休管理簿の作成が要件に含まれるため、申請前に社内規程と運用実態を点検しておくとスムーズです。

その他の基本的な注意点は、業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年1月31日までとなります。

4 勤務間インターバル導入コース(最大970万円)

1)勤務間インターバル導入コースとは?

勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設ける勤務間インターバル制度の導入などを行った場合に助成を受けられるというものです。

2)助成金を受け取るには?

中小企業で、申請時点において一定の要件(36協定を締結しており、過去2年間に月45時間超の時間外労働の実態がある、年5日の年休(年次有給休暇)の取得に向けた就業規則等を整備している等)を満たしている会社が、「成果目標」を設定し、成果の達成に向けて「支給対象となる一定の取り組み」を実施する必要があります。

具体的な「成果目標」となるのは次の3つで、1つ以上を選択する必要があります。

  • 新規導入(所属社員の1/4超を対象とする勤務間インターバルを新たに導入する)
  • 適用範囲の拡大(勤務間インターバルの適用範囲を所属社員の1/4または1/2超とする)
  • 時間延長(所属社員の1/4または1/2超とする勤務間インターバルの休息時間数を、2時間以上延長して9時間以上とする)

「支給対象となる取り組み」は次の7種類です。

  • 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの、業務研修を含む)
  • 社員に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取り組み
  • 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(注)
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(注)

(注)原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。

3)受け取れる金額はいくら?

取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表3の額)を受け取れます。

勤務間インターバル導入コース

要件を満たし、成果目標の達成に加えて賃上げ加算や割増賃金率引上げ加算の適用条件も満たした場合、最大970万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

成果目標は支給要領の別表に基づいて上限額が変わるため、申請前に対象人数と休息時間数の組み合わせを確認し、賃上げ加算や割増賃金率加算を組み合わせるかも含めて計画することが重要です。

また、制度導入に当たっては、

単に「○時以降の残業禁止、○時以前の始業禁止」と定めるだけでは対象にならない

ので注意してください。就業規則等で「終業から次の始業までの休息時間を確保する」旨を明記する必要があります。

なお、2026年度の改正で、11時間以上の休息時間を新規導入する場合の上限額が150万円に引き上げられました(2025年度は120万円)。可能であれば11時間以上を目指すことで、助成額を最大化できます。

その他の基本的な注意点は、業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年1月31日までとなります。

5 団体推進コース(最大500万円)

1)団体推進コースとは?

事業主団体等(中小企業の団体やその連合団体等で1年以上の活動実績があるものなど)が、傘下の構成事業主(社員を雇用する会社)の社員について、労働条件を改善するため、時間外労働の削減や賃上げに向けた取り組みを実施した場合に助成を受けられるというものです。

2)助成金を受け取るには?

課題対応の「成果目標」として

事業主団体等が事業実施計画に基づき、時間外労働の削減・賃上げに向けた改善事業の取り組みを行い、構成事業主の2分の1以上にその取り組みまたは取り組み結果を活用

する必要があります。

支給対象となる取り組みは、次の10種類です。いずれも成果目標の達成に向けて実施する必要があります。

  • 市場調査
  • 新ビジネスモデルの開発、実験
  • 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)
  • 取引適正化への理解促進など、労働時間などの設定の改善に向けた取引先との調整
  • 販路の拡大などの実現を図るための展示会開催および出展
  • 好事例の収集、普及啓発
  • セミナー(勤務間インターバル制度に関する事項を含む)の開催など
  • 巡回指導、相談窓口の設置など
  • 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
  • 人材確保に向けた取り組み

3)受け取れる金額はいくら?

取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表4の額)を受け取れます。

働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

要件を満たした場合、最大500万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

前述した通り、このコースでは、団体自身が取り組みを実施するだけでは足りず、構成事業主の2分の1以上にその取り組みまたは取り組み結果を活用させる必要があります。そのため、

申請段階から「誰に、どう横展開するか」を具体化しておく

ことが肝要です。事業計画の策定段階から、構成事業主への事前説明・参加意向の確認を丁寧に行い、「計画倒れ」にならない体制を整えましょう。

その他の基本的な注意点は、業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年2月14日までとなります。

6 取引環境改善コース(最大100万円)

1)取引環境改善コースとは?

荷主集団等が、トラックドライバーの時間外労働の削減等のために、荷待ち・荷役時間の短縮に向けた取引環境整備の取り組みを実施した場合に助成を受けられるというものです。

2)助成金を受け取るには?

この助成金は、次の要件などを満たす荷主集団等を対象としています。

  • 荷主集団等を代表して、本助成金の申請に係る事務等を行う事業者(代表事業主)および構成員を合わせて3者以上で構成された組織であること
  • 代表事業主を含め、少なくとも1以上の荷主もしくは倉庫事業者および1以上の運送事業者で構成されていること
  • 組織として現に活動しているまたは今後具体的に活動することが見込まれる荷主集団であること
  • 中小企業事業主の占める割合が、構成員たる運送事業者の1/2を超えていること

荷主集団等は、

事業実施計画で定める改善事業を行い、運送事業主の1/2以上に対して荷待ち・荷役時間および労働時間の短縮に効果を上げる

という成果目標を達成する必要があります。

支給対象となる取り組みは、次の5種類です。いずれも成果目標の達成に向けて実施する必要があります。

  • 取引適正化への理解促進など、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整
  • 好事例の収集、普及啓発
  • セミナー(勤務間インターバル制度に関する事項を含む)の開催など
  • 巡回指導、相談窓口の設置など
  • 運送事業者等が利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新

この他、代表事業主が法人格を有すること、代表事業主および全構成員が同一の企業グループに属していないことなども要件に含まれます。

3)受け取れる金額はいくら?

取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表5の額)を受け取れます。

働き方改革推進支援助成金(取引環境改善コース)

要件を満たした場合、最大100万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

他の4コースとは異なり、個社の中小企業事業主ではなく「荷主集団等」が申請主体となります。荷主集団等の構成要件を満たすことに加え、構成員である運送事業者の2分の1以上に対して、荷待ち・荷役時間や労働時間の短縮効果を上げる必要があります。そのため、申請時にはどの取引工程を見直し、どのような効果を見込むかまで具体化しておくことが重要です。

その他の基本的な注意点は業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年2月14日までとなります。

以上(2026年5月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

pj00755
画像:日本情報マート