【管理会計】見えない人件費、役割に付随する仕事も想定して判断せよ!

1 質問:売上高より低い人件費なら“お得な採用”?

年間売上高が600万円の新規取引先を獲得しました!

人手が足りなくなるので、「年収480万円(月額給与30万円×12ヵ月+賞与60万円×2回)」で人材を採用しようと考えています。単純に、

600万円-480万円で120万円のプラスである

ということで、採用を進めてよいでしょうか。こうしたシーンに直面することはよくあるので、判断の基準をご紹介します。

2 「見えない人件費」とその正体

人件費には、社員が認識していない「見えない人件費」があります。例えば、法定福利費(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料など)や、法定外福利費(通勤手当や住宅手当など)、教育訓練費などがあります。これらをすべて合計した人件費を総額人件費と呼び、

総額人件費の目安は年間給与の1.5~2倍程度

といわれます。年収480万円の社員の総額人件費は720万円以上です。

総額人件費の内訳

3 売上の全てが利益になるわけではない

利益の「中身」に注目しましょう。経営判断において重要なのは、売上高そのものではなく、そこから原材料費や外注費などの変動費(売上の増減に合わせて変わる費用)を差し引いた「限界利益(げんかいりえき)」です。

人件費は、売上の増減に関わらず発生する固定費(売上に関係なくかかる費用)の代表格であり、この「限界利益」の中から支払われるからです。

したがって、

新たに採用した人が生み出す限界利益 > その人の総額人件費

という関係が成り立たなければ、採用すればするほど会社は赤字になります。

例えば、総額人件費が720万円、限界利益率(売上高に対する限界利益の割合)が60%と仮定した場合、

1200万円=720万円/0.6

という計算になります。これは、その人の人件費を賄うためだけに、最低でも年間1200万円の売上を上げなければならないことを意味しています。このライン (損益分岐点)を超えて初めて、会社に本当の利益が残るのです。

4 ABCで人件費を配賦する

「配賦」についても知っておきましょう。例えば、製品Aの販売を担当する社員の人件費は、全額が製品Aの販売に振り向けられるわけではありません。通常、他の商品の販売や事務作業などもしているからです。

配賦とは、

複数の部門・製品・業務などにまたがって発生する費用を、各部門・製品・業務などに適正に費用配分すること

であり、原価計算ではある基準を持って行われます。いくつかの方法がありますが、知っておいてほしいのはABC (活動基準原価計算)です。

ABCとは、アクティビティ (活動)を基準として原価を計算する手法です。例えば、検品作業にかかる費用は次の算式で算出します。

検品作業の費用=1時間当たりの人件費×製品1個当たりの時間×出荷個数

1時間当たりの人件費を3000円、製品1個当たりの時間では検品作業が15分、その他作業が10分の場合、出荷個数が100個(例1) と50個 (例2) の計算は次の通りです。

ABCの計算例

ここでは話を単純にしていますが、人件費に限らず原価を配賦するためのイメージがつくかと思います。

5 練習問題

1)(問題1)

年間給与などが500万円の人の総額人件費を賄える売上はどのくらいですか? なお、総額人件費は年間給与の1.5倍、売上高に対する限界利益率が50%とします。

2)(問題1の回答)

総額人件費は「500万円×1.5」で計算します。また、総額人件費を賄うことができる売上は、「750万円/50%」 で計算します。

問題1の答え:1500万円=750万円/0.5

上の数式の「0.5」は、本ケースの売上総利益率です (50%(1-0.5))。

3)(問題2)

製品Aの販売にかかる利益を算出するため、ABCに基づいて人件費の配賦を行います。どのような情報が必要ですか?

4)(問題2の回答)

この記事で紹介してきた内容に基づくと、

  • 販売に関するアクティビティ

と、各アクティビティに関する、

  • 1時間当たりの人件費
  • 製品1個当たりの時間
  • 出荷個数

となります。なお、この例では「製品1個当たり」を基準にしていますが、「製品10キログラム当たり」など、費用の発生実態に合わせて基準を変更しましょう。

以上(2026年4月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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中小企業も要注目! 取引先から選ばれる条件「脱炭素経営」してますか?

1 「脱炭素」を経営の中心に据える

「GX(グリーン・トランスフォーメーション)とか、脱炭素って言うけれど、うちのような中小企業には関係ないのでは?」。もしそう思ったなら、それは危うい考えかもしれません。製造業や建設業を中心に、「脱炭素経営」は単なる環境貢献ではなく、「取引先として選ばれるための絶対条件」へと変わってきているからです。

現在、大手メーカーやゼネコン(発注元)は、自社だけの温室効果ガス排出量削減だけでなく、サプライチェーン全体 (Scope 3) での削減を強く求められています。つまり、取引先である皆さんが「脱炭素に取り組んでいない」という事実は、発注元にとって見過ごすことのできない「リスク」となってしまうのです。

逆に言えば、いち早く「脱炭素経営」に向けてかじを切ることは、競合他社に対する優位性につながります。「あの会社に頼めば、我々のCO2排出量も減らせる」。そう思わせることが、今後の受注を勝ち取る最強の営業ツールにもなり得るのです。

中小企業の経営者の皆さんが今すぐ行うべきなのは、脱炭素を「コスト」としてではなく、「受注を守り、生き残るための投資」と再定義することです。

この記事では、「何をやればよいか分からない」 「投資に回せるほど余裕はない」と悩む経営者の皆さんに、国や自治体の支援施策をうまく利用しながら、いかにしてこの厳しい状況をチャンスに変えるか、経済産業省 (資源エネルギー庁) が主導する事業者向けの支援施策を中心に具体的な道筋を解説します。

2 出費を抑え、支援施策を戦略的に活用する「3ステップ」

「『脱炭素』の重要性は分かるけれど、具体的にどうすれば?」 というのが本音でしょう。だからこそ、国や自治体の支援施策を戦略的に活用する次の3ステップをおすすめします。

1)ステップ1:まずは「見える化」で現状を把握

まずは自社の「エネルギー使用量」や「CO2排出量」がどれくらいなのか、基礎データを「見える化」することから始めます。中心的な役割を果たすのが「省エネ診断」です。「省エネ診断」は、専門家が無料で現場を訪れ、どの設備がエネルギーを浪費しているか、どこをどうすれば消費電力を抑えられるかなどを数値化してくれる支援施策です。

足元では、前年度に続いて、省エネルギーセンターが、令和8年度「中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費 (エネルギー利用最適化診断等事業)」の補助事業者として採択されました。詳しくは令和8年度予算の成立後になりますが、省エネルギーセンターのウェブサイトを通じて発信される最新情報をチェックし、申し込みのタイミングを逃さないようにしましょう。

■省エネルギーセンター■
https://www.eccj.or.jp/
■省エネルギーセンター 「省エネ・節電ポータルサイト」 ■
https://www.shindan-net.jp/

なお、令和7年度補正予算案では、省エネ診断後の改善提案の実現に向けて、ソリューションを提供する企業(リース会社、メーカー、金融機関、省エネ診断機関など)と中小企業をつなぐマッチングプラットフォームを創設するとされています。こうした動きにも注目です。

2)ステップ2:補助金を活用し、設備を「最新鋭」に

省エネ診断結果に基づき、老朽化したコンプレッサー、ボイラー、工作機械、あるいは現場の照明(LED)などを更新するとき、重要なのが「補助金」の活用です。ここでは2つの補助金を紹介します。

1.省エネ・非化石転換補助金

「省エネ・非化石転換補助金」は、エネルギーコスト高対応と、カーボンニュートラルに向けた対応を同時に進めていくための、企業の投資を後押しするものです。

令和7年度補正予算案では、従来の4つの類型(工場全体の省エネ (I)、製造プロセスの電化・燃料転換(II)、リストから選択する機器への更新(III)、エネルギーマネジメントシステムの導入 (IV))に加え、「GX III類型」を創設するとされています。

GX III類型は、次のように「メーカー強化枠」と「トップ性能枠」の2つの枠組みがあります。

  • メーカー強化枠: 従来のIII類型補助対象設備のうち、次期GXリーグ (注) への参加、企業の成長に対する今後の方針を定めるといった「GX要件」にコミットするメーカーが製造する設備について、これまでの予算枠とは別枠で、上限額等を増額した上で、支援するものです。
  • トップ性能枠: 従来の省エネ水準を大きく超える省エネ性能を有する設備について、設備更新における補助率を強化するとともに、これまで支援対象ではなかった新設についても補助対象とするものです。

(注)GXリーグ (https://gx-league.go.jp/)は、2050年のカーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXへの挑戦を行い、現在および未来社会における持続的な成長の実現を目指す企業が、同様の取り組みを行う企業群や官・学と共に協働する場です。

令和7年度補正予算による補助の詳細は、環境共創イニシアチブのウェブサイトを通じて発信される最新情報をチェックしましょう。

■令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(工場・事業場型)
https://sii.or.jp/koujou07r/
■令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)
https://sii.or.jp/setsubi07r/

2.新事業進出・ものづくり補助金

「新事業進出・ものづくり補助金」は、従前は別々だった「新事業進出補助金」と「ものづくり補助金」を統合し、2026年度からスタートする補助金です。

GXに資する革新的な製品・サービスの開発や既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓(輸出) に向けた国内の輸出体制の強化に係る設備投資等を支援するもので、新たな製造プロセスの導入など、攻めの投資に対して手厚い補助があります。

なお、「新事業進出・ものづくり補助金」は、「ものづくり商業サービス省力化・革新的開発・新事業・海外展開促進事業」の一環として中小企業基盤整備機構が運営を担います。

これらの補助金を活用できれば、出費を抑えて最新鋭の設備が手に入り、さらに毎月の電気代・燃料費も削減できるという「二重のメリット」を最終的に得られるかもしれません。

3)ステップ3:優遇税制で収益を確保

企業の脱炭素投資を後押しするため、生産工程を効率化するなどの炭素生産性を向上させる設備を導入するときに活用できるのが「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」です。令和8年度税制改正大綱(2025年12月26日閣議決定)で、炭素生産性の向上率の基準が引き上げられるとともに、適用期限が2年間延長されました。

2028年3月31日までに産業競争力強化法のエネルギー利用環境負荷低減事業適応計画の認定を受け、その認定を受けた日から同日以後3年を経過する日まで、計画認定制度に基づく生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備の導入に対して、最大10%の税額控除 (中小企業者等の場合)または30%の特別償却が受けられます。

また、特定大企業がサプライチェーン上の中小企業のCO2排出削減を支援した場合、従来通りの向上率基準を適用するなどの配慮も盛り込まれています。

炭素生産性の相当程度の向上と措置内容(改正前後比較)

3 なぜ急に「脱炭素経営」が求められるようになってきたのか?

背景にあるのは、2023年に施行された「GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)」です。これにより、日本全体で、今後10年間で150兆円を超える官民投資が動き出しました。

2026年4月施行の「改正GX推進法」では、CO2の直接排出量が一定規模以上の事業者に対して、排出量取引制度への参加が義務付けられるなど、発注元やサプライチェーンの川上の企業を中心に「脱炭素経営」が以前にも増して注目されるようになっています。

1)サプライチェーンの「選別」が始まっている

自動車産業や建設業界では、既に主要メーカーが取引先に 「2030年までに○%削減」という具体的な数値目標を提示し始めています。対応できない企業は、たとえ技術力が高くても、将来的なサプライチェーンから外されるリスクに迫られることが現実のものとなっています。

2)「カーボンプライシング」の足音

2028年度からは、化石燃料に対して課金される仕組み (化石燃料賦課金)が本格化します。これは、対応が遅れると、電気代や燃料代という形で「罰金のようなコスト」を払い続けなければならなくなることを意味します。早めに脱炭素化を済ませておくことは、将来的な固定費の増加を防ぐ「攻めの防御策」となります。

4 「脱炭素経営」は合理的な経営戦略

脱炭素経営は、単なる「お作法」ではありません。「最新設備を、補助金を利用して導入し、ランニングコストを下げ、取引先からの信頼を勝ち取る」という、極めて合理的な経営戦略です。中東情勢の緊迫化による原油価格高騰、エネルギー価格の不安定化に対応する意味でも「おカネがないからできない」のではなく、「おカネを引っ張ってくるために、脱炭素を旗印にする」。この発想の転換がカギです。

補助金の申請は整えるべき書類も多く、確かに複雑です。しかし、最近は商工会議所や金融機関、さらには設備を納入するメーカーが申請サポートを行ってくれるケースも増えています。一人で悩まず、「補助金を使って更新したい」と周囲に相談することから始めてください。

小規模な建設・製造現場でも効果はあります。特に製造業のコンプレッサー更新や、建設業の重機・車両の電動化 (ハイブリッド化)は、目に見えて燃料費が変わります。また、昨今の求人難において「環境意識の高い会社」というイメージは、若手人材の採用においてもプラスに働くでしょう。

以上(2026年4月作成)

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経営のヒントとなる言葉(徳川家康)

「小身者は、朋友切磋の道あり。故にその過(あやまち)知り易し、これ小身者の益なり。大身者はそれと違ひ、朋友の交はり切磋の益なければ、実の過を知ることなし」(*)

出所:「名将名君に学ぶ 上司の心得」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

「間違いを指摘してくれる人がいないからこそ、リーダーは厳しく自分を律する必要がある」

ということを表しています。

織田信長、豊臣秀吉といった独創的なアイデアに富み、世の中を変革した武将と結びながら、着々と力を蓄えていった家康は、関ヶ原の合戦の後、天下統一を成し遂げます。

家康は天下統一を成し遂げただけでなく、265年間続いた江戸幕府の礎を築きました。長期間にわたって徳川家による安定した政権を築いたという点で、家康は組織づくりの達人といえるのではないでしょうか。

それを示すエピソードとして、天下統一を成し遂げる以前の三河の地を治めていた頃のものがあります。家康は、三河の内政に当たらせる3人の奉行を置きました。民衆はこの3人の奉行について、「仏高力、鬼作左、どちへんなしの天野三兵」と評していたといいます。

家康は、仏のように慈悲深い高力清長(こうりききよなが)、気性が激しく、鬼のように怖い本多重次(ほんだしげつぐ。通称「作左衛門(さくざえもん)」)、仏でもなく鬼でもない、中立の立場である天野康景(あまのやすかげ。通称「三郎兵衛(さぶろべえ)」)という、三者三様の人物を奉行に任じました。それぞれの長所・短所を補うような、バランスの取れた人選とすることで、安定した内政の運営が可能になったのです。

その後、家康は江戸幕府においても、老中などのさまざまな役職を複数人で務めるような体制を整えています。権力を一点に集中させて謀反を防ぐという意義もあるでしょうが、個の力の組み合わせによって、より大きな力を発揮できるという点からも、家康は組織づくりを重視していたのではないでしょうか。

次の言葉からは、組織におけるリーダーが果たすべき役割について、家康がどのような考えを持っているのかを知ることができます。

「『井戸掘り経営』『家計簿経営』『千切り経営』が3大経営手法である」(**)

信長、秀吉といった、強烈な個性を発揮したリーダーに比べると、個人としての家康は地味な印象が否めません。

もしかすると、家康自身が自らの資質に負い目を感じていたからこそ、組織として大きな力を発揮するための方法について、考え抜いたのかもしれません。

そして、リーダーとしての求心力を発揮できたのは、冒頭の言葉にあるように、家康が厳しく自分を律することを心掛けていたからでしょう。

若かりし頃、家康は武田信玄(たけだしんげん)に大敗した三方ヶ原の戦いの後、絵師を呼び、自らのみじめな姿を描かせました。家康はそれを巻き物にして常に傍らに置き、慢心の気が起きそうになると、その巻き物を開いて自分を戒めていたのです。自分に厳しい家康であったからこそ、部下たちは尊敬の念を抱き、家康に認められたいと力を発揮したのではないでしょうか。

部下が力を発揮できるような適所を与えることは、リーダーの仕事です。それだけでは、組織としての大きな力を結集することはかないません。

リーダーには、組織が目指すべき方向を示して、一つにまとめ上げることが求められます。そのためには、リーダーが言葉で目指すべき方向を示すことはもとより、部下を背中で引っ張る力強さも求められます。

そうしたリーダーの姿に対して、部下は尊敬の念を持つでしょうし、また意欲にあふれる部下の中には、リーダーの背中を追い抜くほどに成長したいという気持ちが芽生え、仕事に邁進してくれるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

とくがわいえやす(1542~1616)。三河(みかわ)国(現愛知県)生まれ。豊臣秀吉(とよとみひでよし)没後に関ヶ原の合戦において東軍を率いて、石田三成(いしだみつなり)と対戦し、勝利。征夷大将軍に任じられ、江戸幕府を開く。

【参考文献】

(*)「名将名君に学ぶ 上司の心得」(童門冬二、PHP研究所、2007年5月)
(**)「戦国武将のひとこと」(鳴瀬速夫、丸善、1993年6月)

以上(2026年4月更新)

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画像:日本情報マート

【賃金データ集】初任給のモデル支給額

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「初任給」(基本給が中心)です。

初任給

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 初任給のトレンド

前年からの初任給を引き上げたと回答した企業は、2021年時点で29.9%(前年比12.7ポイント減)となっています。

初任給のトレンド

基本給の体系によって異なるものの、一般的な賃金カーブでは、50歳頃まで賃金支給額が緩やかに増加し、その後は減少に転じます。加えて、60歳以降は定年退職する従業員もいて人数が減るため、企業の賃金負担は軽くなります(退職給付を除く)。

賃金カーブ

初任給の決定状況については次の通りです。

初任給の決定状況

2 厚生労働省と日本経済団体連合会の統計資料によるモデル支給額

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3 地域の状況(東京)

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4 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は次の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■新規学卒者決定初任給調査結果■
http://www.keidanren.or.jp/policy/index09.html

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■賃金構造基本統計調査■
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

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■中小企業の賃金・退職金事情
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/toukei/koyou/chingin/

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以上(2026年5月更新)

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すだちワーキングホリデーが生んだ「行動変容」の地域創生

1 「呼び込み」の先にある、地域創生の真の課題

「地域創生」という言葉が浸透した今、イベントや様々な取り組みに、積極的にチャレンジする地域も多く見られるようになりました。一方で、地域創生に取り組む多くの人たちが、「自分たちの取り組みは本当に地域創生につながっているのか?」という不安を抱えながら活動をしています。SNSを駆使した宣伝、工夫を凝らしたイベント、地域の人々の熱意……結果的に想定以上の人を呼ぶことができても、そこから先がない。参加者・地域にこれといった変化が起きず、「一時的に成果が出ただけで終わってしまう」ケースは少なくありません。

今後の地域創生を語る上での大きな課題は、

「イベントでできた関わりを、どう維持するのか」「イベントの参加者や地域が、イベント終了後にどんな行動変容を起こすのか」

です。

この記事では、イベント終了後も参加者・地域の「行動変容」が続いている例として、徳島県名西郡神山町の「すだちワーキングホリデー」を紹介します。主催者と参加者の両者にインタビューを行い、「一過性のイベントで終わらない取り組みのポイント」もお聞きしました。

2 インタビュー:「すだちワーキングホリデー」の仕掛け人と参加者が語る「行動変容」

すだちワーホリキービジュアル(提供:神山つなぐ公社)

「すだちワーキングホリデー」とは、2024年度から神山つなぐ公社が企画・運営し、自治体・ハローワーク・農家と協力して実施している、同町の名産品・すだちの収穫を手伝う農業体験プログラムです。この取り組みの主な特徴として、

  • 9泊10日(2025年度は約3週間の長期コースも実施)のプログラムであること
  • ボランティアではなく、報酬が出る「仕事」であること
  • 参加者は、皆が同じ民家でシェアハウスをして過ごすこと
  • 参加者は様々なすだち農園を、ローテーションで回って収穫作業を手伝うこと

が挙げられます。

神山町はいかにしてこの取り組みを成功させ、どんな行動変容を生んだのか。「すだちワーキングホリデー」の企画・主催を担う神山つなぐ公社の代表理事(取材当時、現在は神山町役場まちづくり戦略課)、馬場達郎さんと、初年度に同プログラムに参加してから大きな行動変容を起こした、徳島大学総合科学部の渡邉柚希さんに話を聞きました。

1)アイデンティティーとしての「すだち」と危機感

前列左端が馬場さま、中央が渡邉さま(提供:神山つなぐ公社)

「すだちは、ただの”特産品”じゃない。神山町を象徴する、大切なものなんです」

と、馬場達郎さんは語ります。

神山町のすだち(提供:神山つなぐ公社)

風景の中にすだちがあり、人々の生活の中にすだちがある。それが、神山町のアイデンティティーです。しかし、農家さんの高齢化が進む中、収穫期の人手不足が喫緊の課題になっていました。そこで2年前、神山町とハローワーク、そして農家さんと連携して立ち上げたのがこのプログラムだそうです。

しかし、目的は労働力の確保だけではありません。

「どうせやるなら、神山というまちを知ってもらい、若者と地域が深く関わる『新しい入り口』をつくりたい」

という思いから生まれたのが、この一風変わった体験プログラムでした。

徳島大学総合科学部の3年生である渡邉さんは、「すだちワーキングホリデー」の記念すべき第1回の参加者。参加のきっかけは、大学の先輩からの紹介だったそうです。

「最初は参加しようかかなり迷っていたのですが、応募期限ぎりぎりに思い切って申し込みました。そこからは緊張はしませんでした。当日まで、わくわくとした気持ちで過ごしたのを今でもよく覚えています」

渡邉さんは、すだちワーキングホリデーに参加したことで、大きな行動変容をした当事者の1人です。

この9泊10日のプログラムには、なぜ、多くの人の心を動かす力があるのでしょうか? その秘密は、「横のつながり」を創出する基本的なシステムにありました。

2)「共同生活」と「ローテーション」が生む、多層の「つながり」

「すだちワーキングホリデー」というプログラムの特色として挙げられるのは、

  • 共同生活(プログラム中、参加者全員が、同じ屋根の下でシェアハウスをする)
  • ローテーションシステム(数日ごとに、農家さんと参加者の組み合わせをローテーションする)

の2つです。

「共同生活については、たくさんの個室が用意できなかった、という物理的な理由もありますが、それ以上に、”農家さんと特定の参加者のみにコミュニティーを限定したくない”という目的が大きかったです」

仮に共同生活でなく、参加者が別々の部屋に滞在するプログラムだった場合、プライベートも守られ、生活のペースを保つことができ、快適に過ごせるでしょう。しかし、そうなると参加者が「気持ちを分かち合う」機会は失われ、独りの世界に閉じ籠もってしまうことになります。

参加者同士がその日の苦労や発見を分かち合う「コミュニティー」が形成されれば、慣れない農作業の疲れや、大変だったことを分かち合える。仲間がいれば、大変なことがあっても共有して、笑い話に変えられる。主催側の、ある種の「逃げ場」をつくる気遣いが、結果的に地域へのポジティブな記憶を定着させるシステムになったのではないかと、馬場さんは語ります。

実際に参加して共同生活をした渡邉さんは、

「共同生活は初めての経験でしたが、とても楽しかったです。その日あったことを話したり、川遊びをしたり、皆でご飯を作ったり……本当に、思い出がたくさんあります。プログラムの期間を通して、人との対応力という点でも、自分の成長を感じられました」

と、語ります。参加者にとって、神山町は「仲間たちとの思い出が詰まった場所」として、愛される存在になったのでしょう。

また、「コミュニティーをひとつに限定しない」気遣いは、プログラム実施中のローテーションシステムにも表れています。

「”技術の蓄積”という面では、1カ所の農家さんに専属の参加者を付けたほうがよいのは確かです。しかし、参加者には多様な収穫方法や、それぞれの農家さんの考え方に触れてほしかった。もし、1カ所の農家さんとの相性が良くなかったとしても、また新たな出会いがあるというリスクヘッジでもあります」

と、馬場さんは語ります。

一口に「すだち栽培」と言っても、農家さんによって栽培の方法や、収穫の方法はバラバラ。農家さんとしても、参加者としても、全日程同じ農園で作業を行ったほうが、効率が良いと感じるはずです。しかし、「すだちワーキングホリデー」では、あえて「ローテーション」という形を取りました。そのシステムの魅力について、渡邉さんは次のように語ります。

「多様な視点に触れることで、農業という営みを立体的に捉えることができました。1カ所の『作業』で終わらず、神山という『地域全体』とつながっている感覚を持てたのだと思います」

「農家さんたちが、仕事を教えてくれるだけではなく、さまざまなお話を聞かせてくださったのも、とても良い経験になりました。農家さんたちはそれぞれ個性豊かで、目指しているものも違います。けれど、『すだち愛』『神山愛』だけは一貫している。それに触れるうちに、自分もただの労働力ではなく、その思いをつなぐ一人になりたいと思うようになりました」

レジャーの様子(提供:神山つなぐ公社)

様々な人とつながるシステムが、「当事者意識」を芽生えさせる大切な鍵になっていた、ということなのかもしれません。

3)広がっていくつながりと、それぞれの行動変容

「すだちワーキングホリデー」を通して、神山町には様々な行動変容が生まれました。

「すだちワーキングホリデーを契機に、様々な”つながり”が生まれているのが、一番の収穫なのかもしれません」

と、馬場さんは語ります。

すだちワーキングホリデーが始まってからは、農家さん同士のコミュニティーも活性化したそうです。

  • 「収穫を体験したいから農家さんを紹介してくれないか」と依頼された
  • 「ここの民家が空いているから、宿舎に使ったら良いんじゃないか」と紹介された

など、すだちワーキングホリデーを1つのハブとして、人脈が根を張り、神山町の地盤が強靭になりつつあるのを少しずつ感じている、とのことです。

また、参加者にも行動変容がありました。渡邉さんは農家さんと継続的に連絡を取り、ワーキングホリデーが終わってからも、定期的に収穫の手伝いをしに、神山町を訪れています。

収穫作業の様子(提供:神山つなぐ公社)

「農家さんが困っている姿を放っておけないのもありますが、それ以上に収穫はやりがいがある仕事です。大学の授業が始まる前に車を飛ばして神山まで来て、収穫を手伝ってからまた市内に戻るなど、楽しくやらせてもらっています。農家さんが神山から市内にいらっしゃるときは、ご飯に誘ってもらうこともあります。将来は公務員になりたいと思っているので、地域の方との深いつながりは学びも多く、貴重な体験です」

渡邉さんの他にも、東京のアンテナショップですだち販売を行う際、積極的に手伝いを申し出た参加者の方もいるそうです。

最後に、「地域創生の取り組みへと踏み出したい方」に向けて、馬場さんと渡邉さんそれぞれにいただいたメッセージを紹介します。

「すだちワーキングホリデーを主催するに当たって、魔法のような特別なことは何もしていません。大切にしているのは、こまやかな気配りと、愛情を持って事業に向き合うこと。参加者に対しても、農家さんに対しても、一人の人間として向き合い、何に困っているのかを丁寧に考え続ける。ひたすら、やれることをやっていく。その泥臭い積み重ねが、信頼関係というインフラを築いていくのだと考えています」(馬場さん)

「神山は先進的な取り組みを行っている自治体ではありますが、僕たち参加者が惹かれ、神山に戻ってくる理由は、そこではなくて神山に住む人々の”人柄”だと感じています。交流する中でできた人と人とのつながりが、僕たちの”行動変容”のきっかけになったのだと実感しています」(渡邉さん)

神山町全景(提供:神山つなぐ公社)

すだちワーキングホリデーの約10日間で得た「つながり」は、プログラムが終わってなお、参加者と地域、ひいては地域と人とをつなぎ続けています。

3 行動変容の波紋を、神山から全国へ

集合写真(提供:神山つなぐ公社)

すだちワーキングホリデーは、単に「不足した労働力を補う」という目的を超えて、地域内に多層的なネットワークを生み出しました。自治体と農家、農家と若者という直接的な線引きにとどまらず、プログラムを介して農家同士が情報交換を始め、さらには他業種とのつながりへと発展しています。

このつながりが、地域全体のレジリエンス(回復力)を高め、神山のアイデンティティーを次世代へとつなぐ強固なインフラとなっています。

また、参加者たちがプログラム終了後も、自発的に神山町に関わり続けているという事実は、

彼らにとって神山町が、「消費する観光地」から「愛すべき大切な場所」へと変容した

ことを物語っています。特別なシステムではなく、運営側や農家が注いだ「こまやかな気配り」と「愛情」が、若者の価値観を根底から揺り動かしたのです。

神山町で土に触れ、農家の思いに触れた若者たちが体験したこの「行動変容」は、決して神山町という一地域の中だけで完結するものではありません。

ここで学んだ「現場を大切にする姿勢」や「人と深く関わることの喜び」は、彼らが人生を生き抜いていく過程で、それぞれの場所へと伝播していくはずです。神山町から始まった小さな波紋はやがて全国へと広がり、これからの日本を支える新しい力となっていくでしょう。

一過性の賑わいではなく、一人の人間の生き方を変えること。それこそが、真の地域創生につながっていくのです。

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以上(2026年4月作成)

pj10098
画像:日本情報マート

【朝礼】「いわれたことしかやらない人」に効く薬

【ポイント】

  • 仕事を依頼するときは、依頼した相手の能力や経験値などを考慮して指示を出したか
  • 相手の仕事のスタイルも考えて、気を配って仕事を依頼しなければいけない
  • 「言われたことしかやらない人」を脱するには、その仕事の目的を考えさせることが必要

「あの人は、頼んだこと、言ったことしかやってくれない……」仕事をしていると、こんな不満を感じることがあるはずです。例えば、お客様に渡す価格表の作成を依頼したら、エクセルの初期設定のフォーマットに金額を入力しただけの価格表を作成してくるケースです。これでは、見やすさやレイアウトなど、お客様に提供する資料としての工夫はみられません。ここで文句を言いたい気持ちは分かります。しかし、仕事を依頼した人は、依頼した相手の能力や経験値などを考慮して指示を出したでしょうか。

また、相手の仕事のスタイルも考えてください。良しあしは別にして、そのスタイルは、今に始まったことではないはずです。それを知っている上で仕事を依頼するのであれば、きめ細かに説明をしなければなりません。こうした点にまで気を配って仕事を依頼しなければ、期待した成果を得ることはできないでしょう。最も大切なことは、仕事の目的を正しく把握させて、仕事に当たる姿勢を取らせるということです。

以前あった話です。ある人に「役員会用の業績資料を作成してほしい」という依頼をしました。依頼を受けた人は、その資料をA4で1ページにまとめました。内容に問題は無かったのですが、数値の文字サイズが小さく、読み取るのに苦労するほどでした。これは、仕事の目的を「資料を作成すること」、つまり「頼まれたことだけをやること」と考えている人の典型的な仕事です。この仕事の目的は、「会社の現状を把握し、意思決定を行うために必要な情報を、役員に提供すること」です。役員は年配の人が多く、細かな文字は読みにくいという人が多いと想像できます。ですから、文字が読みやすくなるような配慮が必要です。

「言われたことしかやらない人」には、安心して仕事を任せることはできません。部下が、なぜ自分には大きな仕事を任せてもらえないのかと不満を抱いているとしたら、自分のしてきた仕事を振り返らせ、想像力不足で期待通りの仕事をできていないと分からせてください。「言われたことしかやらない人」から脱するには、その仕事の目的を考えさせ、分からなければ依頼した人に確認することを習慣付けることです。それだけで、仕事の成果に大きな違いが出てきます。

              

以上(2026年4月作成)

pj16767
画像:Mariko Mitsuda

Z世代が部下を持つ。これからの組織を引っ張る「Z上司」への指導法

1 Z世代も上司になる時代がやってきた

「Z世代(1990年代中盤から2010年代序盤に生まれた世代)」が管理職になって、部下を育てる時代になりました。「あのZ世代に上司が務まるの?」と不安を覚えている場合ではありません。これからの企業を支えていくのはZ世代、あるいはそれよりもさらに若い世代なのですから、その成長を温かく支援したいものです。

Z世代は、デジタルネイティブと呼ばれます。AIなくして経営を語れない時代にあって、Z世代のこうした特徴は、上司としての長所になり得ます。また、丁寧な説明(物事の「意味」)を求める点も、裏を返せば「Z世代は部下に丁寧に説明をする」ということにもなります。Z世代を一括りにするべきではありませんが、広い特徴としてこれらを捉えてうまく指導していきたいものです。

デジタルネイティブ

以降では、Z世代上司の成長を見守る社長、直接指導する管理職のヒントとなる具体的な情報をお伝えしていきます。例えば、Z世代上司に、

「何かあれば相談して」

と声がけするのは大切ですが、もっと効果的な言い換えがあるので、以降で紹介します。巷では、入社初日の午前で退職代行に駆け込む「4時間退職」も起こっています。ある意味、Z世代以上に手強い新人とうまくやっていけるのはZ世代上司かもしれません。

2 Z世代上司の特徴を、長所として理解する

Z世代については、「承認欲求が強い」「自分で考えるよりも先に答えを求める」といった特徴が挙げられることがあります。これらをネガティブな特性とばかりはいえず、育ってきた環境が生んだ傾向です。その背景を理解すれば、上司としての強みに転じる側面が見えてきます。

例えば、Z世代はキャリアの初期から、情報過多の環境にいます。仕事の進め方も、評価のされ方も、先輩の姿を見て自然に学ぶより、検索や動画で自ら調べる習慣が身に付いています。

また、コロナ禍でテレワークが当たり前になったタイミングで社会人になった層も多く、「職場の空気を読んで覚える」より、「明確な基準や指標を持ってそれを拠りどころにする」傾向にあります。

こうした背景を考慮すると、Z世代の特徴としては、下記が言えそうです。あなたの職場にも当てはまるのではないでしょうか。こうしたZ世代の特徴は、マイナスではなく、むしろ上司としてチームを動かすときに直接活きる特性です。

  • 目的と基準が明確なら、主体的に動ける
  • 情報を素早く収集・整理できる
  • 複数の選択肢をフラットに比較できる

一方で、報告・連絡・相談の習慣、締め切りを守ること、責任をとること。こうした仕事の基本は、世代や年齢などに関係なく求められます。「Z世代の特性だから仕方ない」と容認することは、本人のためにも組織のためにもなりません。「変わらない大切な仕事の基本は基本として明確に伝える」「できていなければ厳しく指摘する」が、Z世代を上司に育てる第一歩です。

3 Z世代上司が最初につまずきやすい3つのポイント

Z世代を初めて管理職・リーダー職に就けたとき、どこで詰まるかを知っておくと、先手を打てます。よくある壁は次の3つです。これらはZ世代に限った特徴とは言い切れないでしょうが、特にZ世代上司が最初につまずきやすい点かもしれません。

1)年上の部下への指示に躊躇する

Z世代は、自分より年上、あるいは社歴が長い社員に指示を出すことに、強いストレスを感じるケースが少なくありません。「生意気だと思われないか」「反発されたらどうしよう」という不安から、曖昧な指示になったり、言うべきことを言えなかったりします。

ここで経営者や上長がやるべきは、「年上が相手でも指示を出しなさい。それがあなたの役割であり、あなたにその役割を担ってもらうのが会社としての決定事項だ」と明言することです。そして、年上の部下にも「あなたはこの上司に従う必要がある」と伝えなければなりません。役割の正当性を組織として示さなければ、Z世代上司は一人で戦うことになります。

2)「叱る」「注意する」ができない

Z世代は、高圧的な指導を受けた経験が比較的少ない世代です。そのため、部下を叱る・注意するという行為に慣れておらず、問題を見て見ぬふりをしてしまうことがあります。「嫌われたくない」「摩擦は面倒だから回避したい」という感情が、判断より先に来るのです。

対策は、「注意の仕方」を具体的に教えることです。感情的に言うのではなく、「この点が、この基準に照らして、こう問題がある」と事実ベースで伝える方法を、ロールプレイングなどを通じて、Z世代上司に身に付けさせましょう。「叱り方」ではなく、「伝え方」の技術として教えることがポイントです。

3)「答え」を持っていないと感じて委縮する

「上司たるもの、答え(正解)を持っていなければならない」と思い込み、分からないことを聞かれたときに焦る。あるいは、部下の相談に対して「自分にはまだ分からない」と感じるものの部下の前で格好つけてしまい、後から自己嫌悪に凹む。こうしたパターンもよく見られます。

経営者や上長は、「答えを持っている上司」より「一緒に考えられる上司」の方が、今の職場では機能することを伝えましょう。そして、「答えが出ないときは経営者や上長に相談していい」という逃げ道を明示しておくことも大切です。

4 力を引き出すための経営者や上長の関わり方

経営者や上長が、Z世代上司の力を引き出すために何ができるか。現場で機能する3つのアプローチは次の通りです。

1)「役割」ではなく「権限」を渡す

Z世代上司を「チームリーダーに任命する」だけでは不十分です。何を決めていいのか、どこまで自分で判断してよいのかが曖昧なまま役割だけ与えると、Z世代上司は動けなくなります。

「採用面接の一次選考は任せる」「チームの業務分担は自分で決めていい」「予算10万円以内の発注は決裁不要」など具体的な権限の範囲を明示することで、初めて「自分の仕事」として動けるようになります。特に明確な基準や指標を持っていたいZ世代上司の場合、具体的でない曖昧な権限は、判断ミスへの恐怖を生んでしまうでしょう。

2)週1回、15分の「壁打ち」を設ける

「困ったことがあれば相談しろ」と言っても、おそらくZ世代上司はなかなか来ません。「こんなことを相談したら頼りないと思われる」と誤解していたり、「忙しそうで声をかけにくい」という遠慮が先に立ったりしがちだからです。

そこで経営者や上長は、週に1回、15〜30分程でいいので、定期的にZ世代上司と話す時間を設けてみましょう。「最近どんなことで困ったか」「部下との関係で気になることはあるか」などを引き出します。「経営者や上長が聞いてくれる」という仕組みを作ることで、Z世代上司には話す機会ができ、問題を一人で抱え込みにくくなります。

3)「うまくいったこと」を言語化させる

Z世代は、失敗への感度が高い一方で、成功体験を自分の力として積み上げるのが苦手な場合があります。人にもよりますが、うまくいっても「たまたまだ」「自分の実力じゃない」と流してしまい、自信につながりにくいかもしれません。

経営者や上長は「先週、あの部下の案件がうまく進んだのはなぜだと思う?」と問い、自分の言葉で語らせる。具体的に言語化させることで、経験が「再現可能なスキル」になります。具体的に「何がよかったか」を一緒に分解する習慣が、Z世代上司の成長を加速させるでしょう。

力を引き出すための経営者や上長の関わり方

5 育てる側の覚悟

Z世代上司が失敗したとき、「やっぱり無理だった」と結論づけるのは早計です。失敗の原因は「権限が曖昧だった」「フォローの仕組みがなかった」「基準を明確に、かつ具体的にしていなかった」という場合も少なくありません。

「Z世代」とひとくくりにするのはナンセンスですが、若い世代の社員を上司にするためには、組織側もある程度変わり、進化していくことが求められます。これまで「見て覚えろ」「背中で示せ」で機能してきた部分を、言語化・仕組み化していく、といった具合です。言語化・仕組み化は、Z世代上司のためだけでなく、結果的に組織全体を底上げしてくれるでしょう。

これから、Z世代上司がますます増えていきます。彼らが上司として育つかは、育てる側の関わり方でも変わってきます。ある意味、Z世代上司の成長は、組織の鏡ともいえるでしょう。

6 「Z世代上司が育つ言葉」に言い換えてみよう

経営者や上長からのZ世代上司への声掛けは、ちょっとした言い方の差で、受け取り方が大きく変わります。「✕:悪い例」を「◎:よい例」に言い換える例をご紹介します。


「何かあれば相談して」


「毎週○曜日の午前中、15分話す時間をとろう」


「自分で考えて動いて」


「この範囲は任せる。迷ったときは声をかけて」


「なんでそんなことも言えないの」


「言いにくかったと思うけど、どう伝えようとした?」


「答えくらい自分で出して」


「一緒に整理しよう。まず何が引っかかる?」


「あの件、うまくいったね」


「あの件、なぜうまくいったと思う?自分の言葉で言ってみて」


「年上の部下が言うことを聞かないのは、あなたが悪い」


「あなたがリーダーなのは会社が決めたこと。私が後ろにいる」


「もっと自信を持って」


「先週のあの判断はよかった。なぜそうしたか聞かせて」

以上(2026年4月作成)

pj10097
画像:日本情報マート

過去の決算にミスがあったとき、 社長が選択すべき対応とは?

1 過年度分の修正が必要と言われたら?

中小企業の経営者の皆様の中には、決算の確認や経理資料の整理を進める過程で、税理士から、次のような指摘を受けた経験がある方もいるかもしれません。

「過去の処理を確認していて、誤りが見つかりました。過年度分の修正が必要です」

突然こう言われると、「税務調査につながるのではないか」「追加で税金を払うことになるのか」「銀行への説明は必要なのか」と、様々な不安や疑問が頭をよぎるものです。

もっとも、会社の経理は人が行う以上、ミスが起きる可能性はゼロではありません。請求書の計上漏れや資料の提出漏れ、確認不足など、社内の経理体制の中で生じた小さなミスが、後から見つかるケースは決して珍しくないのです。

大切なのは、ミスが見つかったときにどう対応するかです。放置したり先送りしたりすると、後になって負担が大きくなる可能性があります。実は、

税務署に指摘される前に自ら申告を修正するのと、税務調査で指摘されてから修正するのとでは、負担するペナルティー(罰金)の金額が大きく変わる

ことがあります。

この記事では、過去の決算ミスが見つかった場合に経営者が知っておきたい、会計と税務の修正手続きやペナルティの仕組みについて、実務の流れに沿って解説します。

2 「会計(帳簿)」と「税務(申告書)」は直し方が違う

まず知っておきたいのは、会社の数字を修正するといっても、会計(帳簿)と税務(申告書)では、次のように修正方法が大きく異なる点です。

  • 会計(帳簿)の直し方:過去の帳簿は書き換えない
  • 税務(申告書)の直し方:過去に遡ってやり直す

1)会計(帳簿)の直し方:過去の帳簿は書き換えない

過去の決算書(貸借対照表や損益計算書など)は、株主総会で承認され、すでに確定したものです。そのため、原則として過去に遡って帳簿を書き換えることはしません。そのため、中小企業では通常、現在の会計年度の帳簿で調整します。

例えば、3年前の売上が100万円計上漏れになっていたら、3年前の帳簿を書き換えるのではなく、

今年度の帳簿に前期損益修正益(ぜんきそんえきしゅうせいえき/過去の利益の訂正分)

という項目を設け、今年の収益として計上します。

つまり、会計上は、

過去のミスを、今年度の出来事として処理する

という考え方をとるのが一般的です。

2)税務(申告書)の直し方:過去に遡ってやり直す

一方、税金の計算では1)の方法は認められません。税務署の考え方は非常にシンプルで、

3年前の税金は、3年前のルール(税制や税率など)で計算し直すべき

というものです。

そのため、税務担当者は過去の年度の申告書を作り直し、税務署に再提出する必要があります。この手続きは、状況によって、

  • 修正申告
  • 更正の請求

に分かれます。

3 税務上の手続き:「修正申告」と「更正の請求」

1)税金を少なく払っていた場合:「修正申告」

売上の計上漏れや、本来経費にできないものを経費として処理していた場合などは、

修正申告書(申告内容を訂正する書類)

を税務署に提出し、本来納めるべき税金との差額を追加で支払う必要があります。

追加の税金は、修正申告書を提出した日が納付期限となるため、通常は提出と同時に納付します。なお、税務署から調査の連絡(事前通知)が来る前に、自らミスに気づいて自主的に修正申告を行えば、ペナルティである過少申告加算税(かしょうしんこくかさんぜい)は1円もかかりません。支払うのは利息にあたる延滞税(えんたいぜい)のみとなります。

2)税金を払いすぎていた場合:「更正の請求」

先ほどとは逆に、売上を二重計上していた、計上できる経費を漏らしていたといった場合には、

更正の請求(払いすぎた税金の返還を求める手続き)

を行い、多く払いすぎている税金の還付を受けることになります。

原則として、

申告期限から5年以内

であれば請求することができます。

この手続きは「払いすぎた税金を返してほしい」というものなので、ペナルティは発生しません。ただし、税務署による内容確認が行われるため、請求書や領収書などの証拠資料の提示が求められることがあります。

4 修正申告の場合のペナルティ(附帯税)は?

経営者として最も気になるのは、「結局いくら余計に払うことになるのか」という点でしょう。税金が足りなかった場合(修正申告)には、本来の税金に加えて、附帯税(ふたいぜい/いわゆる罰金や利息)が発生する可能性があります。

1)延滞税(えんたいぜい/税金の遅れに対する利息)

本来の納付期限から支払いまでの期間に応じて、利息のような形で課される税金です。税率は年度によって変わりますが、目安として、

年2.4~8.7%程度

です。当然ながら、修正までの期間が長いほど金額は大きくなります。

2)過少申告加算税(かしょうしんこくかさんぜい/申告額が少なかったことへの罰金)

本来より少ない税額で申告していた場合に課される税金です。一般的には、

追加税額の10%(一定額を超える部分は15%)

となります。ただし、税務調査の通知が来る前に自主的に修正申告を行った場合には、この税金が免除されます。その意味でも、ミスに気づいた段階で早く対応することが重要です。

3)重加算税(じゅうかさんぜい/意図的な隠蔽への罰金)

最も重いペナルティです。単なるミスではなく、

仮装・隠蔽(かそう・いんぺい/書類改ざんや売上の意図的な隠しなど)

と税務署などに判断された場合に課される税金です。税率は、

追加税額の35~40%

と非常に重く、会社の信用にも大きな影響を与えます。また、2024年(令和6年)からは、電子データ(ネット上の領収書など)を改ざんして不正を行っていた場合、この重加算税が、さらに10%上乗せされる(最大50%)というルールも始まっています。

5 過年度修正を行う際、税金以外で注意すべき実務ポイント

1)金融機関への説明

融資を受けている場合、融資元の金融機関には決算書を提出しているはずです。もし修正によって利益が大きく変わる場合は、銀行の信用格付け(企業の評価ランク)に影響する可能性があります。

そのため、修正申告が終わってから報告するのではなく、

「経理の確認の中で過去の処理ミスが見つかりました。現在修正手続きを進めています」

などといった形で、事前に説明しておくのが望ましいでしょう。マイナス評価になるのは、「隠していた」と受け取られることです。

2)原因を特定し、再発防止を行う

修正して終わりにしてはいけません。

  • 売上の計上漏れはなぜ起きたのか
  • 資料の確認体制に問題はなかったのか
  • 経理と税理士の情報共有は十分だったのか

など原因を整理し、その上で、

  • ダブルチェックの導入
  • 月次確認の徹底
  • 資料提出ルールの整備

といった再発防止策を作ることが重要です。これは金融機関に説明する際にも、「同じ問題は繰り返さない」という説得力のある材料になります。

以上(2026年4月作成)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

pj30238
画像:ipuwadol-Adobe Stock

中小企業を狙う「ランサムウェア」から会社を守る3つの鉄則

1 サイバー攻撃は「対岸の火事」ではない

2025年秋、アサヒビールの親会社アサヒグループホールディングス(アサヒグループHD)、通販大手のアスクルを襲ったサイバー攻撃によるシステム障害。受注・出荷業務の停止、飲食店や小売店への商品供給が長期にわたって滞るなど、サプライチェーンに深刻な影響を及ぼしました。これらはランサムウェア(身代金要求型ウイルス)に感染したことが原因です。

こうしたランサム攻撃は、従来のように「データを元に戻してほしければ金を払え」と脅すだけでなく、「金を払わなければ盗んだ機密情報・個人情報を公開するぞ」と脅す二重、三重の恐喝が主流

となっています。

「サイバー攻撃といっても、うちは中小企業で、狙われるような機密情報もないし、大丈夫だろう」と、仮にあなたがそう考えているのであれば、すぐ認識を改める必要があります。警察庁「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」によると、2025年の1年間で報告されたランサムウェアの被害件数は226件、そのうち、中小企業が143件(約6割)を占めています。

サイバー攻撃の対象は無作為で選ばれ、大企業のみならず、中小企業が狙われることもあります。決して「対岸の火事」ではない

のです。

大企業に対する攻撃の踏み台として、「取引先である中小企業」が標的にされることもあります。自社が踏み台にされ、大切な取引先に多大な迷惑をかけてしまう。さらに、賠償責任や社会的信用の失墜により、再起不能なダメージを受ける恐れがあります。

この記事では、難しい技術の話は抜きにして、これだけはやってほしいアクションを「3つの鉄則」として紹介します。

2 今日から始める「3つの鉄則」

1)「怪しいメール」の添付ファイルやURLリンクを開かない

サイバー攻撃の入り口の多くは、依然として「人の不注意」を突くメールです。見覚えのない差出人からのメールはもちろん、知っている差出人でも、

件名や本文の内容に違和感(「至急」「未払い」「請求書」など)があれば、添付ファイルやURLリンクは開かない

ようにしてください。

URLリンクは画像などに仕込まれている場合もあるので、

文字列だけでなく、画像などもクリック/タップしない

ように注意が必要です。また、本文に記載された電話番号なども偽装されている恐れがあります。その番号に電話をかけてはいけません。

2)「パスワードの使い回し」を即刻やめる

パスワードは、容易に推測できないよう、

大小英字・数字・記号を混ぜた複雑なものにして、他のサービスと同じものは使わない

ようにしてください。パスワードを使い回ししていると、一つのアカウント情報が漏洩してしまったとき、他のウェブサービスやアプリにも不正アクセスされて、芋づる式にアカウントを乗っ取られる恐れがあるからです。

3)オフラインの「バックアップ」を確保する

重要なデータは定期的に、

ネットワークから切り離した「物理的な外付けハードディスク」や「専用のクラウド」に保存する体制を構築

します。ランサムウェアは、ネットワーク上の全てのデータを暗号化して使えなくします。物理的に隔離されたバックアップさえあれば、労力・時間はかかるとしても、自力で復旧できる可能性があります。

3 ランサム攻撃は「ビジネス」として横行している

IPA(情報処理推進機構)が毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威」では、「ランサム攻撃による被害」が、初出の2016年から11年連続で組織向け脅威として取り上げられており、2021~2026年の6年連続で第1位となっています。

こうした背景には、ランサム攻撃が「ビジネス」として横行している現実があります。ダークウェブ(一般的な方法ではアクセスできず、Googleなどの検索エンジンで見つけることも不可能なウェブサイト)には、サービスとしてのランサムウェア(RaaS: Ransomware as a Service)が存在し、サブスクリプション(月額制)や利益の分配など、複数の収益モデルが成立しているといいます。つまり、

専門知識がなくてもツールを「購入」して、ランサム攻撃を実行できる仕組みが世界中に普及している

のです。

4 もし「おかしい」と思ったら

どれだけ対策をしても、ランサム攻撃を100%防ぐことは不可能です。大切なのは、「ランサムウェアに感染したかもしれない」と思ったときの初動です。

他のPCへの感染拡大を防ぐため、

まずは物理的にネットワークから切り離します。LANケーブルでネットワークに接続しているなら、LANケーブルを抜く。Wi-Fiでネットワークに接続しているならWi-Fiを切る

といった対応が必要です。その際、PCの電源を切る必要はありません。

そして、情報システムの担当者・責任者に、すぐに報告します。

自分のミスを責められるのを恐れて隠すのが一番の悪手、「おかしい」と思ったら即報告

です。

サイバー攻撃から会社を守るためには、情報システムの担当者・責任者だけの力では限界があります。経営者の皆さんの強いリーダーシップと、全従業員の「自分事」としての意識改革が何よりも求められます。

5 参考

■政府広報オンライン「中小企業で被害多数 ランサムウェア」■
https://www.gov-online.go.jp/useful/202506/video-298784.html
■警察庁「ランサムウェア被害防止対策」■
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/countermeasures/ransom.html

以上(2026年4月作成)

pj60381
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ガイドライン改正で変わる? 中小企業が注意すべき同一労働同一賃金の対応ポイント

今回の改正を貫く原理は、たった一つの命題に集約されます。「全ての待遇について、その性質・目的に照らして実態で判断する」。難しい制度も原理を押さえれば理解は簡単です。この命題を正面から受け止め、「なぜこの待遇を設けているのか」「その目的は非正規社員にも当てはまるのか」「実態はどうなっているのか」を一つずつ点検していくことが、最も確実な対応策です。
令和8年10月の施行まで、残された時間は多くありません。

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