知らないと恥ずかしいレベルの「労働時間」

1 自由な労働時間制度は会社の魅力

9時に出社して18時に退社する。変わりつつあるものの、未だにこれが労働時間の基本です。ところで、法定労働時間、所定労働時間、時間外労働など、労働時間にはさまざま取り決めがありますが、皆さんはどれだけ基本を押さえていますか?

この記事では、労務担当者でなくてもこれくらいは知っておきたいというレベルで、労働基準法(以下「労基法」)で定められている労働時間の基本を、分かりやすく説明します

2 法定労働時間:法律で定める労働時間の基本

法定労働時間とは、

労基法で定められている労働時間の上限で、原則として1日8時間、1週40時間(休憩時間を除く)

です。ただし、特例措置対象事業場(社員が常時10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業)は、1日8時間、1週44時間(休憩時間を除く)です。

ちなみに、休憩時間とは、

社員が自由に利用できる時間(単なる手待ち時間などは含まれない)のことで、1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は60分以上

与えなければなりません。

3 所定労働時間:会社が決める労働時間

所定労働時間とは、

会社が就業規則等で定める労働時間(ただし、法定労働時間を超えてはいけない)

です。例えば、所定労働時間が1日7時間なら問題ないですが、1日10時間だと違法です。つまり、

原則として、会社は法定労働時間を超えて社員を働かせることができない

ということです。

ただし、通称「36協定(さぶろく協定)」と呼ばれる労使協定を締結して所轄労働基準監督署に届け出ると、この後に紹介する時間外労働や休日労働を、社員に命じることができます。ちなみに、労使協定とは、

過半数労働組合(社員の過半数で組織する労働組合)、過半数労働組合がない場合は過半数代表者(社員の過半数を代表する者)との書面による協定

です。

4 時間外労働:いわゆる「残業」

時間外労働とは、

法定労働時間を超える労働(いわゆる「残業」)

のことです。例えば、9時始業で18時終業(休憩時間が1時間)の会社で、社員が9時から21時まで働いた場合、時間外労働は3時間(11時間-8時間)です。

時間外労働のイメージその1

また、法定労働時間は1週40時間ですから、通常、出勤は週5日になります。つまり、

8時間×5日=40時間

ということですから、社員が土曜日に出勤して8時間働くと、それは時間外労働となります。

時間外労働のイメージその2

会社は、時間外労働に対して割増賃金を支払わないといけません。また、1カ月当たりの割増率は時間外労働の長さによって次のように変わります。

  • 60時間以下:25%以上の割増
  • 60時間超:50%以上の割増

5 休日労働:土曜日と日曜日で違う?

休日労働とは、

法定休日(就業規則等で定める、毎週1日または4週間を通じ4日以上の休日)の労働

のことです。例えば、日曜日を法定休日とした場合、日曜日の労働は労働時間に関係なく全て休日労働になります。

会社は、休日労働に対して割増賃金を支払わないといけません。

  • 休日労働:35%以上の割増

なお、法定外休日(法定休日以外の休日)に働いても、休日労働にはなりません。例えば、土曜日と日曜日が休日の会社が、日曜日を法定休日とした場合、土曜日は法定外休日です。法定外休日の労働は、第4章で紹介した通り、法定労働時間を超える部分が時間外労働になります。その場合、会社は法定外休日の労働に対して割増賃金を支払わないといけません。

  • 法定外休日の労働(時間外労働になる場合):25%以上の割増

6 深夜労働:深夜というわりに早い?

深夜労働とは、

原則として22時から翌日5時までの労働

です。

会社は、深夜労働に対して割増賃金を支払わないといけません。

  • 深夜労働:25%以上の割増

7 割増率:要素のコンボで高くなる

時間外労働、休日労働、深夜労働の賃金は割増されますが、これは足し算されます。

  • 時間外労働が深夜に及んだ場合:50%(25%+25%)
  • 時間外労働が深夜に及び、1カ月60時間を超えた場合:75%(50%+25%)
  • 休日労働が深夜に及んだ場合:60%(35%+25%)

なお、「休日労働の時間外労働」という概念はありません。

8 時間外労働の上限規制

社員に時間外労働を命じる場合、会社は第3章で紹介した36協定に具体的な時間数を定めます。36協定の時間数の範囲内までなら、時間外労働を命じても違法にはなりません。ただし、

36協定に定められる時間数には上限があり、これを超える時間外労働は違法

になります。このルールを「時間外労働の上限規制」といいます。

時間外労働の上限規制は、2019年4月1日から(中小企業は2020年4月1日)から適用が開始され、さらに2024年4月1日から、適用が猶予されていた4つの業種・業務が対象に加わりました。どの業種・業務も、時間外労働は原則として「1カ月45時間まで、1年360時間まで」とされていますが、臨時的な特別な事情があり、かつ労使の合意がある場合については、それぞれ上限のルールが異なります。

時間外労働の上限規制

2024年4月1日からは、ほぼ全ての業種・業務が時間外労働の上限規制の適用を受けることになりましたが、唯一「新技術・新商品等の研究開発業務」は、適用除外とされています。

9 時差出勤:最も手軽な働き方改革

ここまで労働時間の基本をお話ししてきましたが、近年は柔軟な働き方を実現しようと、労働時間のルールを工夫している会社が増えてきています。ここでは、比較的少ない手間で取り組める「時差出勤」を紹介します。

時差出勤とは、

所定労働時間を変更せず、始業・終業時刻を変更する制度

です。9時始業で18時終業の会社が時差出勤を導入すると、例えば、10時始業で19時終業にすることができます。

時差出勤のイメージ

時間外労働などについて時差出勤特有のルールはないので、この記事の内容を守っていれば問題ありません。必要な手続きは、就業規則の変更と届け出です。具体的には次の通りです。

導入の手続き:時差出勤

以上(2025年11月更新)

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画像:Dhammarat Nunart-shutterstock

2025年 年金法改正がもたらす影響と実務対応

特に短時間労働者の適用拡大の対象となる会社で、保険料調整の特例措置を受ける場合には、給与計算等の事務処理が面倒になることが予想されます。
また、在職しながら、年金を受給している人にとっては有利になりますが、高所得者(標準報酬月額の上限該当者)にとっては、少し負担が増えることになります。

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人材採用・定着に貢献する福利厚生制度「iDeCoプラス」とは?

個人型確定拠出年金(通称:iDeCo)に企業が掛け金を上乗せして補助する福利厚生制度「iDeCoプラス」が注目を集めています。
従業員がメリットをストレートに実感しやすい福利厚生制度で、企業における人材採用・定着に大きく貢献する可能性を秘めているiDeCoプラスについて解説します。

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知らなかったでは済まされない!オンラインカジノ問題と企業の対応策

オンラインカジノに接続して「賭博」を行うことは、犯罪です。
従業員のオンラインカジノ行為は、通常、従業員のプライベートな行動の範疇の行為ですから、企業がオンラインカジノ行為に関する直接責任を負うことは原則としてありません。ただし、企業には相応のリスクや責任が求められます。

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経営改善・事業再構築を後押しする専門家支援制度のご紹介

経営課題に向き合う中で、「誰に相談すればよいかわからない」「自社だけでは打開策を見いだせない」と感じたときに頼りになるのが、専門家によるハンズオン支援です。
経営改善や事業再構築を本格的に進めたい中小企業にとって、ハンズオン支援は現状打破と持続的成長を実現するための有効な手立てとなるでしょう。

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【税の勘所】押さえておきたい税金の「金額」

1 押さえておきたい税金の「金額」

この記事では、主な税金(法人税・所得税・消費税・相続税・贈与税)に関する「金額」を整理します。

主な税金

2 5億円超:消費税

5億円超は、消費税で一部の仕入税額控除が認められなくなる課税売上高です。

消費税の納税額は次のように計算されます(簡易課税制度の場合を除く)。

計算式

課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を差し引くことを仕入税額控除といいます。消費税の仕入税額控除の計算方法には、

  1. 全額控除方式:課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除
  2. 個別対応方式:課税仕入れ等に係る消費税額の一部を控除
  3. 一括比例配分方式:課税仕入れ等に係る消費税額の一部を控除

の3つがあり、全額控除方式を利用できるのは、

課税期間における課税売上割合が95%以上で、かつ課税売上高が5億円以下の事業者

に限られます。課税売上割合とは、全体の売上高のうち、課税売上高(消費税が課される売上高)が占める割合です。

そのため、課税期間における課税売上割合が95%未満の場合、または課税売上高が5億円超の場合は、個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかを利用することになり、課税仕入れ等に係る消費税額が一部控除できなくなります。

3 1億6000万円:相続税

1億6000万円は、相続税の配偶者に相続税がかからない取得財産の金額です。

配偶者が財産を相続する場合、同一世代間における財産の移転の場合が多いことや、配偶者は被相続人の遺産形成に貢献していること、また、被相続人が死亡した後の配偶者の生活水準を保つなどの理由から、相続税を軽減する措置が設けられています。

そのため、配偶者が財産を相続した場合、その財産の額が次のいずれか多い金額までは配偶者に相続税はかかりません。

  • 1億6000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額(相続人が配偶者と子の場合は、遺産の2分の1相当額)

4 1億円以下:法人税

1億円以下は、法人税の優遇措置を利用できる中小企業者等の判定に関する金額です。

法人税には、中小企業者等が利用できるさまざまな優遇措置があります。主な優遇措置は次の通りで、いずれも資本金が1億円以下でなければ利用できません。

  1. 法人税の軽減税率
  2. 交際費等の損金不算入制度における定額控除限度額(年800万円)
  3. 欠損金の繰越控除
  4. 欠損金の繰戻還付
  5. 貸倒引当金の法定繰入率
  6. 特定同族会社における留保金課税の不適用
  7. 少額減価償却資産の取得価額の損金算入
  8. 賃上げ促進税制(中小企業向け)の適用

ただし、注意点があります。上記1.~6.は、資本金が1億円以下でも、資本金が5億円以上の法人と完全支配関係にある場合は利用できません。

また、上記7.~8.については、資本金が1億円以下でも、大規模法人に発行済株式の2分の1以上を所有されている場合、または2以上の大規模法人に発行済株式の3分の2以上を所有されている場合などは利用できません。なお、大規模法人とは、資本金が1億円を超える法人、資本もしくは出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1000人を超える法人、又は大法人(資本金が5億円以上である法人)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人をいいます。

5 5000万円以下:消費税

5000万円以下は、消費税の「簡易課税制度」が選択できる課税売上高です。

簡易課税制度は、事業の種類に応じ、課税売上高に一定割合を乗じて仕入税額控除を計算する方法で、

小規模事業者だけ

が利用できます。原則的な消費税の計算方法は複雑なので、簡易課税制度で小規模事業者の負担を軽減しています。簡易課税制度は、その課税期間の前々年または前々事業年度における課税売上高が5000万円以下で、「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出している事業者が利用できます。

6 2000万円超:所得税

2000万円超は、所得税の確定申告をしなければならない給与の年間収入です。

給与所得者は年末調整をするので、ほとんどの人は確定申告をする必要はありません。しかし、当該給与所得以外にも所得がある場合や給与の年間収入金額が2000万円を超える場合は、年末調整の対象外となるので、自身で所得税の確定申告をしなければなりません。

7 2000万円超:所得税

2000万円超は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)が受けられない合計所得金額です。

住宅借入金等特別控除とは、個人が住宅ローンを利用して、マイホームの取得や増改築した場合に、その住宅ローンの年末残高を基に計算した一定額を住み始めた年分以後の各年分の所得税額から控除できる制度です。住宅借入金等特別控除は、適用する年の合計所得金額が2000万円を超える年分については対象外となります。

8 2000万円以下:贈与税

2000万円以下は、住宅取得資金贈与を受けるための受贈者の要件の1つとなる金額です。

投資や賃貸用ではなく、自身の住宅を取得するため、直系尊属である父母や祖父母などから贈与により金銭を取得した場合、一定の金額までは贈与税がかかりません。この特例を受けるには、贈与を受けた年の受贈者(贈与を受ける人)の合計所得金額が原則2000万円以下であるなどの要件を満たす必要があります。

9 1000万円以下:消費税

1000万円以下は、消費税の納税義務が免除される基準期間の課税売上高です。

事業者は、国内において行った資産の譲渡や貸付け、役務の提供について、消費税を納めなければなりません。ただし、基準期間の課税売上高が1000万円以下の場合、一定の場合を除き、消費税の納税義務が免除されます。

10 1000万円未満:消費税

1000万円未満は、消費税の納税義務が免除される基準期間が無い場合の資本金の額です。

新規に設立された法人は基準期間がありません。そのため、その事業年度開始の日における資本金が1000万円未満なら、一定の場合を除き、消費税の納税義務が免除されます。

11 850万円超:所得税

850万円超は、所得税の給与所得控除の上限となる収入金額(195万円控除)です。

給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて計算し、上限は195万円です。

給与所得控除額

12 800万円:法人税

800万円は、中小法人における交際費等の損金算入限度額の1つとなる金額です。

原則として交際費等は損金算入できませんが、資本金が1億円以下の法人(中小法人)は、特例として、年800万円(定額控除限度額)まで交際費等を損金算入できます。ただし、資本金が1億円以下でも、資本金が5億円以上の法人と完全支配関係にある場合は対象外です。

なお、交際費等のうち、接待飲食の費用の50%相当額は損金算入できるので、年800万円と比較して有利なほうを選択しましょう。

13 800万円以下:法人税

800万円以下は、中小法人が法人税の軽減税率を受けられる所得金額です。

普通法人の場合、各事業年度に適用される税率は次の通りです。中小法人の場合、年800万円以下の所得金額部分については、通常よりも低い税率(軽減税率)が適用されます。ただし、資本金が1億円以下でも、資本金が5億円以上の法人と完全支配関係にある場合、軽減税率が適用されません。

適用される税率

14 300万円以下:法人税

300万円以下は、中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を全額損金算入できる限度額です。

中小企業者等が、取得価額が30万円未満である少額減価償却資産を取得した場合、取得価額の全額を損金算入できます。ただし、1事業年度に損金算入できる限度は300万円以下です。事業年度が1年未満の場合は、月数で按分します。

15 110万円以下:贈与税、相続税

110万円以下は、贈与税(暦年課税)および相続時精算課税の基礎控除額です。

贈与税は個人が個人から財産をもらったときに課される税金ですが、個人がその年の1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計が110万円以下なら贈与税はかかりません。これを「基礎控除」といいます。基礎控除は、贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人ごとに1年間で110万円となります。なお、死亡日以前7年間(2023年12月31日以前の贈与については3年間)の分については、基礎控除分であっても、相続財産に加えることになっており、相続税の対象になります。

また、2024年1月以降は、相続時精算課税(贈与税については2500万円までの特別控除が受けられるが、贈与した財産については相続時にまとめて相続税が課せられる制度)の適用を選択した場合でも、毎年110万円の基礎控除が設けられるようになりました。以前は、相続時に生前贈与した財産の全額が相続税の課税対象となっていましたが、2024年1月以降の贈与については、毎年110万円を控除した残額の合計が相続税の課税対象とります。

16 1万円以下:法人税

1万円以下は、交際費等から除かれる一定の飲食代の1人当たりの金額です。

飲食等の費用のうち、1人1万円以下までなら損金算入できます。1万円の判定は、法人が適用している消費税等の経理処理(税抜経理方式または税込経理方式)に応じて行われます。

なお、経営者や社員、その親族の接待で使った飲食代は、1万円以下でも損金算入できません。

以上(2025年11月更新)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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画像:Charnchai saeheng-Adobe Stock

【ハラスメント対策】ハラスメントの再発防止 情報開示や研修のポイントは?

1 全社員に当事者意識を持たせる。ただし情報開示は慎重に

ハラスメントが発生した場合、2度と同じような事案が起きないよう、再発防止策を講じなければなりません。

大切なのは、社員に「自分もハラスメントの行為者になるかもしれない」という当事者意識を持ってもらうことです。そのために必要なのが、

発生したハラスメントについて社内に情報を開示すること

です。開示する(しない)情報のイメージは次の通りです。

  • 開示する情報:社内でハラスメントが発生したこと、ハラスメントの類型など
  • 開示しない情報:行為者や被害者の名前、具体的な言動、行為者の処分内容など

行為者や被害者の名前などを伏せるのは、関係者のプライバシーへの配慮です。ただ、中小企業の場合、名前などを伏せても何となく誰のことなのかが分かってしまい、それによって被害者が傷付くことがあります。こうした場合は、そもそも情報を開示しない、ある程度期間が経ってから詳細を隠して開示するなどの対応を検討する必要があります。

2 ハラスメント防止方針を再周知する

次に、全社員に対して、「ハラスメント防止方針」の内容を再周知します。ハラスメント防止方針とは、ハラスメントに対する会社の姿勢を示す方針で、主に次の9つの項目を定めます(ハラスメント防止規程など、就業規則の中に定めることもあります)。

  • 基本的な考え方(ハラスメントを?ってはならない旨)
  • ハラスメントに当たる言動
  • 方針の対象(全社員)
  • ハラスメントに当たる言動を取った者への処分
  • ハラスメントに関する相談窓口
  • 相談者・事実関係の確認への協力者等への不利益な取扱いの禁止
  • 被害者に対する配慮のための措置・行為者に対する措置
  • 制度等の利用(就業規則等に従い、育児休業等の制度を正当に利用できる旨)
  • ハラスメント防止研修・講習

再発防止の観点で考えると、特に「1.基本的な考え方」「2.ハラスメントに当たる言動」「4.ハラスメントに当たる言動を取った者への処分方針」を重点的に再周知するのがよいでしょう。

また、ハラスメントを受けた経験の有無やその内容について、社内アンケートを実施するのも効果的です。厚生労働省・あかるい職場応援団「ハラスメント関係資料ダウンロード」では、「過去3年間にパワハラを受けたと感じたことはあるか?」など、パワハラ(パワーハラスメント)に関する社内アンケートの例を示しているので参考になります。

■厚生労働省・あかるい職場応援団「ハラスメント関係資料ダウンロード」■
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/jinji/download/

3 ハラスメント防止研修

ハラスメント防止方針を周知するのと合わせて、社員にハラスメントに関する正しい知識・意識を持ってもらうために、ハラスメント防止研修や講義も実施します。弁護士事務所やコンサルタントなどの外部の専門機関などに研修を依頼するのが一般的です。

研修の内容としては、例えば次のようなものがあります。どのような内容にするにしても、「なぜこの研修を実施するのか」という経営者のメッセージを伝え、可能な限り社員全員に受講させることが大切です。

  • ハラスメントの種類(パワハラ、セクハラなど)
  • ハラスメントに当たる具体的な言動
  • ハラスメントを起こしやすい人の行動特性
  • ハラスメントにならないためのコミュニケーションのポイント
  • ハラスメントを起こした場合のリスク
  • ハラスメントに関する法規制、裁判事例
  • ハラスメント対策の進め方(相談窓口の設置、社内規程の整備など)
  • ハラスメント対応の実務のポイント(相談受付、社内処分、被害者への対応など)

以上(2025年10月更新)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)

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【かんたん消費税(5)】海外と取引する際に必要な消費税の知識

1 輸出と輸入では全く違う消費税の取り扱い

海外取引をする会社が知っておきたいのは、輸出と輸入とで消費税の取り扱いが全く違うということです。

  • 輸出:消費税が課されない
  • 輸入:消費税が課される

このような違いがあるのは、「消費税は日本国内の消費に対して課する」という考えがあるためです。つまり、

  • 物を海外に輸出したら、その物の消費地は「海外」になるので消費税は課されない
  • 物を日本に輸入したら、その物の消費地は「日本国内」になるので消費税が課される

ということです。

このように輸出と輸入では消費税の取り扱いが全く違うのに、その理解を誤ると、物を輸出した際に得意先に消費税を請求してしまうなどのトラブルが発生します。この記事では、輸出取引と輸入取引に対する消費税の取り扱いの概要と注意点を解説します。

2 輸出した際の消費税の取り扱い

1)輸出の考え方

物を輸出した場合は消費税が課されません。これを、

「免税取引(輸出免税)」

と呼びますが、同じように消費税が課されない取引として「非課税取引」があります。両取引は「消費税が課されない」という点で共通していますが、消費税の「納税額」を計算する際の取り扱いは全く違います。

具体的には、

  • 非課税:本来は課税対象だけど、例外的に課税しないこととしている
  • 免税:消費税は課税されているが、税率が0%(=免除)になっている

と考えるのです。つまり、「消費税が課税されない(=非課税)」のか「消費税は課税されているが、結果としてゼロになる(=免税)」のかということです。そして、このちょっとした違いが、納税額の計算方法に大きな影響を与えます。この点の詳細は後述します。

2)免税となる輸出の範囲と注意点

免税となる「輸出」の代表例は、「物の輸出」です。

免税となる輸出の範囲と注意点

「物の輸出」は輸出免税とされる典型的な例ですが、この場合でも、

輸出許可証(税関長が証明した書類)を保存

しておかないと輸出免税として取り扱われません。税務調査では、この輸出許可証の提示を求められることがあるので注意しましょう。

また、「物の輸出」以外にも、非居住者に対して工業所有権(特許権や意匠権など)を貸し付けて貸付料を受け取ったり、「非居住者」に対するコンサルティングなどの役務提供を行って対価を受け取ったりする取引も輸出免税として取り扱われます。目に見えないサービスを海外に輸出していると考えるためです。

輸出免税

この場合、輸出許可証などの保存は必要ない代わりに、次の事項が記載されている契約書その他の書類を保存しておかなければなりません。

  1. 役務の提供等をした側(つまり読者の皆さん)の氏名又は名称及び住所
  2. 取引を行った年月日
  3. 役務の提供等の内容
  4. 対価の額
  5. 相手側の氏名又は名称及び住所

なお、「非居住者」の詳細は、「外国為替及び外国貿易法(外為法)」という法律で定められています。その内容は多岐にわたりますが、主に、

取引相手先の事務所がどこにあるか

が判断の目安になるので、海外に事務所を構えている相手先に役務提供を行ったら輸出免税となります。ただし、外国法人でも、その法人の日本支店への役務提供は輸出免税にはなりません。

3)輸出免税がある場合の消費税計算の注意点は?

先ほど、非課税取引と免税取引との違いは、「消費税が課税されない(=非課税)」のか、「消費税は課税されているが、結果としてゼロになる(=免税)」のかの違いであるとお伝えしました。実はこのちょっとした違いが、消費税の納税額の計算方法に大きな影響を与えます。

具体的には、

仕入税額控除の金額が変わってくる

のです。

仕入税額控除とは、

預かった消費税(仮受消費税)から支払った消費税(仮払消費税)を差し引くこと

です。

仕入を行ったときに支払う消費税は、どんなときでも仕入税額控除が取れるわけではなく、

課税される売上に対応する仕入に掛かった消費税しか仕入税額控除は取れない

のです。そのため、

売上が非課税の場合、その仕入に掛かった消費税で仕入税額控除は取れない

ことになります。

仕入税額控除

「免税取引」なのに、誤って「非課税取引」として処理した場合、本来は消費税が還付されるべきなのに、還付される消費税がゼロと計算されてしまいます(図表3の計算に置き換えると、仮払消費税が0円となってしまうため)。

経営者の方は消費税の細かい計算方法まで理解する必要はありませんが、同じ「消費税が課されない取引」であっても、

「免税取引」と「非課税取引」の区分を誤ると納税額(還付額)に大きな影響が出る

ということをしっかり理解しておきましょう。

3 輸入した際の取り扱い

1)輸入の考え方

海外で商品を購入しても、その時点で日本の消費税は課されません。しかし、その商品を日本国内に輸入する際は消費税が課されます。具体的には、

保税地域から商品を引き取った際に消費税が課される

ことになります。保税地域とは、

税関の輸入許可がまだ下りていない外国貨物を一時的に保管する場所

のことです。

海外で購入した商品を自由に日本国内に持ち込むことはできないため、まずは保税地域で保管されます。この商品を最終的に引き取る(日本国内に持ち込む)までの一般的な流れは次の通りです。

  1. 関税及び消費税の計算を行い、税関に対して「輸入申告」を行う
  2. 計算した関税及び消費税を納付する
  3. 税関より「輸入許可通知書」が発行される
  4. 商品を引き取る

2)輸入消費税がある場合の消費税計算の注意点は?

輸入申告を行った際に納付する消費税を、一般的に「輸入消費税」と呼びます。この輸入消費税も、日本国内で仕入をした際の仮払消費税と同様に、

仕入税額控除の対象

となります。ただし、仕入税額控除を取るには、

「輸入許可通知書」を保存しておく必要

があります。商品を引き取ったからといって書類を廃棄せずに保存しておきましょう。

なお、日本国内で仕入を行う際は、仕入価格に税率(10%)を掛ければ消費税額が計算できますが、輸入消費税の計算は少し複雑で、単に仕入価格に税率を掛けても計算はできません(具体的な計算方法は割愛)。そうしたこともあり、輸入取引について会計処理を行う際は、

一般的な仮払消費税と輸入消費税は別の勘定科目を使用する

ようにすると、消費税の申告作業時に必要な数値を集計したりするのに便利です。

以上(2025年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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【規程・文例集】株式交付計画書のひな型

1 株式交付計画書に定めるべき内容

株式交付は、2021年3月に施行された改正会社法によって認められた比較的新しいスキームということもあり、中小企業のM&Aのスキームとしてまだあまり採用されているケースは見受けられません。もっとも、今後、

  • 買収したい会社の経営者が、引き続き、一部の株式を持ち続けたいという希望を持っている状況で当該会社を子会社化していきたい場合
  • 自社株を用いて、譲渡会社を子会社化したい場合

に株式交付のスキームが採用されることもあるのではないかと思われます。なお、類似のスキームとして株式交換というスキームがありますが、このスキームは株式すべてを交換し取得されることを想定していますので完全親子会社化が前提になります。そのため、株式の一部取得にとどまることが可能な株式交付とは異なるものといえます。

株式交付を行うときには、株式交付計画書を作成する必要があり、次の事項(法定記載事項)を定めなければなりません(会社法第774条の3)。なお、新株予約権を発行している場合などには別途追加で定めるべき事項がありますが、この記事では省略します。

  • 株式交付子会社の商号および住所(第1条)
  • 株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数(第2条)
  • 株式交付子会社の株式の譲渡人に対して交付する対価の内容等および割当てに関する事項(第3条)
  • 効力発生日(第7条)

2 株式交付計画書のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際に就業規則を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【株式交付計画書のひな型】

株式会社○○(以下「甲」という。)は、甲を株式交付親会社、株式会社○○(以下「乙」という。)を株式交付子会社とする株式交付(以下「本株式交付」という。)を行うにあたって、次のとおり株式交付計画(以下「本計画」という。)を作成する。

第1条(株式交付子会社の商号及び住所)

乙の商号及び住所は、次のとおりである。

商号:○○

住所:○○

第2条(株式交付親会社が本株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数の下限)

甲が本株式交付に際して譲り受ける乙の普通株式の数の下限は、○○株とする。

第3条(本株式交付に際して株式交付子会社の株式の譲渡人に対して交付する株式及び金銭並びにそれらの割当て)

1)甲は、本株式交付に際して、乙の普通株式の譲渡人に対して、当該普通株式の対価として、その譲渡する乙の普通株式の合計数に○○を乗じて得た数の甲の普通株式を交付する。

2)甲は、本株式交付に際して、乙の普通株式の譲渡人に対して、その譲渡する乙の普通株式1株につき、甲の普通株式○○株を割り当てる。

3)前二項の規定に従い、甲が乙の普通株式の譲渡人に対して交付する甲の普通株式の数に1株に満たない端数があるときは、甲は、会社法第234条その他関係法令の規定に従い、処理する。

第4条(株式交付親会社の資本金及び準備金の額)

本株式交付により増加すべき甲の資本金及び準備金の額は以下のとおりとする。

1.資本金の額 金0円

2.資本準備金の額 会社計算規則第39条の2に従い甲が別途定める額

3.利益準備金の額 金0円

第5条(株式交付子会社の株式の申込みの期日)

乙の普通株式申込みの期日は、○○年○○月○○日とする。

第6条(株式交付計画の承認決議)

甲は、効力発生日の前日までに、本計画の承認及び本計画に必要な事項に関する機関決定を行う。

第7条(本株式交付がその効力を生ずる日)

本株式交付が効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)は、○○年○○月○○日とする。ただし、本株式交付の手続進行上の必要性その他の事由により必要がある場合には、甲は、これを変更することができる。

第8条(本計画の変更及び本株式交付の中止)

本計画作成日から効力発生日までの間において、本株式交付の実行に重大な支障となる事象が生じたこと等により本株式交付の目的を達成することが困難となった場合には、甲は、本計画の内容を変更し又は本株式交付を中止することができる。

第9条(株式交付計画の効力)

本計画は、第6条に定める甲の適法な機関決定が得られないときは、その効力を失うものとする。

第10条(規定外事項)

本計画に定める事項のほか、本株式交付に関する事項は、本株式交付の趣旨に従って、甲がこれを決定する。

○○年○○月○○日

株式会社○○

代表取締役 ○○

以上(2025年9月作成)
(執筆 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【2025年最新】 仕事中に事故に遭った場合の労災保険などの給付一覧!

1 業務中や通勤中の事故などに対応する保険給付は?

会社は日ごろから、社員が労働災害(業務上の事由または通勤途上により発生した事故など)に遭わないよう、目を光らせる必要があります。それでもけがや病気のリスクをゼロにすることはできませんから、「万が一」に備え、社員が働けなくなった場合の生活保障や、亡くなってしまった場合の遺族に対する保障などについて、事前にしっかりと考えておく必要があります。

会社の制度(見舞金や弔慰金)や民間の保険などの「備え」をする会社もありますが、その前に押さえておきたいのが、法律で定められた保険給付(社会・労働保険の給付)です。

この記事では、労働災害(業務上の事由または通勤途上により発生した事故など)が起きた場合に支給されるものとして、

労災保険と国民年金・厚生年金保険の給付(傷病、障害、死亡に対するもの)

を紹介します。「療養が必要か」「休業が必要か」など、給付の特徴に注目したチャート図も載せているので、「保険給付って何だか種類が多くて苦手……」という人もぜひご一読ください。

なお、この記事の社員は、65歳未満で国民年金・厚生年金保険の加入要件を満たしていて(保険料の未納もなし)、労災保険の適用事業の会社に勤務しているものとします。

また、プライベートで起こした事故など(労災認定されなかった業務中の事由や通勤途上により発生した事故など)による傷病、障害、死亡に対する給付については、次の記事をご確認ください。

(注)以降で紹介する給付の内容は2025年10月時点のもので、将来変更される可能性があります。

2 傷病に対する主な給付(労働災害編)

1)給付の種類を整理しよう

社員が労働災害により傷病を負った場合、労災保険の給付を受けられます。社員が受けられる主な給付は図表1の通りです。なお、傷病がもとで障害を負った場合の給付については第3章を、亡くなった場合の給付については第4章をご参照ください。

給付の種類

なお、労災保険の給付は、業務災害(業務上の事由によって発生した事故など)の場合と通勤災害(通勤途上に発生した事故など)の場合とで名称が変わります。

  • 業務災害:療養補償給付、傷病補償年金、介護補償給付(名称に「補償」がつきます)
  • 通勤災害:療養給付、傷病年金、介護給付

また、以降では「治癒」という言葉が頻繁に出てきますが、

  • 「治癒」という言葉には、「傷病が完治した」という意味の他に、「症状が固定された(症状の回復・改善が期待できなくなった)」という意味もあります

ので、ご注意ください。

2)給付の支給要件、支給額、支給期間を知ろう

1.療養(補償)給付

社員が診察、薬剤等の支給、治療などを受けた場合に支給されます。

通常は現物給付なので、支給額という考え方はありません。社員は労災病院や労災保険指定医療機関・薬局等(以下「指定医療機関等」)にて、

療養の給付(無料の診察、薬剤等の支給、治療など)

を受けられます。ただし、やむを得ない事情により指定医療機関等以外で療養を受けた場合は、

療養費(療養にかかった費用)

が支給されます。その場合、一旦窓口で全額払いをし、後日、還付される流れとなります。

支給期間という考え方はなく、傷病が治癒するまで、診察、薬剤等の支給、治療などを受けるたびに支給されます。

2.休業(補償)給付

社員が療養のために働けず、3日以上(連続しなくても可。公休日等を含む)休んだ場合、4日目以降から支給されます。なお、業務災害の場合、最初の3日間については、会社が補償しなければなりません(副業中の業務災害や通勤災害の場合については、補償義務はありません)。

休業(補償)給付をはじめ、労災保険の給付の多くは、支給額の算定に「給付基礎日額」を用います。給付基礎日額は、原則として次のように算定されます(実際は、賃金水準の変動などによって金額が調整されることがあります)。なお、副業により、複数の事業場で就業する社員の場合は、原則として各事業場の賃金額を基に給付基礎日額が算出されます。

給付基礎日額=算定事由発生日(注)以前の直近3カ月間の賃金総額(賞与等を除く)÷算定事由発生日以前の直近3カ月間の総日数 ※最低保障額は4250円

(注)算定事由発生日とは、事故が発生した日や診断によって疾病の発生が確定した日のことです。賃金締切日が定められている場合は、その直前の賃金締切日を起算日とします。

支給額は、休業(補償)給付の場合、次のように算定されます。

支給額(日額)=給付基礎日額×0.6

なお、実際は休業(補償)給付だけでなく、これに係る特別支給金として、

休業特別支給金(日額):給付基礎日額×0.2

が上乗せ支給されます。

支給期間の制限はありません。傷病が治癒するなど、支給要件を満たさなくなるまで支給されます。ただし、社員が療養を開始してから1年6カ月が経過し、後述の傷病(補償)年金の支給を受けるようになった場合は支給が停止されます。

3.傷病(補償)年金

社員が療養を開始してから1年6カ月が経過し、傷病が治癒しておらず、障害の程度が労災保険の傷病等級1~3級に該当する場合に支給されます。

支給額(1年当たりの額)は、労災保険の傷病等級に応じて、給付基礎日額を基に、次のように算定されます。

(1級)支給額(年額)=給付基礎日額×313日分

(2級)支給額(年額)=給付基礎日額×277日分

(3級)支給額(年額)=給付基礎日額×245日分

なお、実際は傷病(補償)年金だけでなく、これに係る特別支給金として、傷病等級に応じた

傷病特別支給金(一時金):(1級)114万円、(2級)107万円、(3級)100万円

傷病特別年金(年金、算定基礎日額×右の日数分):(1級)313日分、(2級)277日分、(3級)245日分

が上乗せ支給されます。「算定基礎日額」は給付基礎日額と似ていますが、こちらは算定事由発生日以前の1年間に支払われた特別給与(ボーナスなど)をベースに算定するものになります。なお、副業により複数の事業場で就業する社員の場合については、給付基礎日額の算定方法と同じく各事業場の特別給与額を基に算出されます。

支給期間の制限はありません。支給開始日から傷病が治癒する、あるいは社員の傷病の程度が労災保険の傷病等級3級に満たなくなるなど、支給要件を満たさなくなるまで支給されます。

4.介護(補償)給付

社員が前項の傷病(補償)年金または後述の「障害(補償)年金」の受給権者で、一定程度の障害に該当し、常時または随時介護が必要な場合に支給されます。ただし、病院や障害者支援施設などに入院・入所している場合は支給されません。

支給額は、親族等に介護を受けているか、介護サービスを利用しているかなどによって、次のように算定されます。

【親族等による介護なし、介護サービスの利用あり】

常時介護が必要)支給額(月額)=介護サービスの費用 ※上限は18万6050円

(随時介護が必要)支給額(月額)=介護サービスの費用 ※上限は9万2980円

【親族等による介護あり、介護サービスの利用なし】

(常時介護が必要)支給額(月額)=8万5490円

(随時介護が必要)支給額(月額)=4万2700円

【親族等による介護あり、介護サービスの利用あり】

(常時介護が必要)支給額(月額)=8万5940円(注)

(随時介護が必要)支給額(月額)=4万2700円(注)

(注)介護サービスの費用が8万5940円(4万2700円)を超える場合は、その費用が支給されます。ただし、常時介護を要する場合は18万6050円、随時介護を要する場合は9万2980円が上限です。

支給期間の制限はありません。ただし、社員が傷病(補償)年金または障害(補償)年金の受給権者でなくなった場合や、常時または随時介護が必要な状態でなくなった場合、病院や障害者支援施設に入院・入所した場合は、支給されません。

3 障害に対する主な給付(労働災害編)

1)給付の種類を整理しよう

社員が労働災害により障害を負った場合、労災保険、国民年金・厚生年金保険の給付を受けられます。主な給付は図表2の通りです。

主な給付

なお、労災保険の給付は、業務災害の場合と通勤災害の場合とで名称が変わります。

  • 業務災害:障害補償年金、障害補償一時金、介護補償給付(名称に「補償」がつきます)
  • 通勤災害:障害年金、障害一時金、介護給付

また、同一の事由により、労災保険給付と障害厚生年金や障害基礎年金を受給できる場合、併給調整により、労災保険給付が一部減額となります(一時金は減額の対象外とされています)。詳しくは、お近くの労働基準監督署にお問い合わせ下さい。

2)給付の支給要件、支給額、支給期間を知ろう

1.障害(補償)年金

社員の傷病が治癒し、労災保険の障害等級1~7級に該当する場合に支給されます。

支給額は、労災保険の障害等級に応じて、給付基礎日額を基に、次のように算定されます。

(1級)支給額(年額)=給付基礎日額×313日分

(2級)支給額(年額)=給付基礎日額×277日分

(3級)支給額(年額)=給付基礎日額×245日分

(4級)支給額(年額)=給付基礎日額×213日分

(5級)支給額(年額)=給付基礎日額×184日分

(6級)支給額(年額)=給付基礎日額×156日分

(7級)支給額(年額)=給付基礎日額×131日分

なお、実際は障害(補償)年金だけでなく、これに係る特別支給金として障害等級に応じた

  • 障害特別支給金(一時金):(1級)342万円、(2級)320万円、(3級)300万円、(4級)264万円、(5級)225万円、(6級)192万円、(7級)159万円
  • 障害特別年金(年金、算定基礎日額×右の日数分):(1級)313日分、(2級)277日分、(3級)245日分、(4級)213日分、(5級)184日分、(6級)156日分、(7級)131日分

が上乗せ支給されます。

支給期間の制限はありません。ただし、社員が労災保険の障害等級7級に満たなくなった場合は支給が停止されます。

2.障害(補償)一時金

社員の傷病が治癒し、労災保険の障害等級8~14級に該当する場合に支給されます。

支給額は、労災保険の障害等級に応じて、給付基礎日額を基に、次のように算定されます。

  • (8級)支給額(一時金)=給付基礎日額×503日分
  • (9級)支給額(一時金)=給付基礎日額×391日分
  • (10級)支給額(一時金)=給付基礎日額×302日分
  • (11級)支給額(一時金)=給付基礎日額×223日分
  • (12級)支給額(一時金)=給付基礎日額×156日分
  • (13級)支給額(一時金)=給付基礎日額×101日分
  • (14級)支給額(一時金)=給付基礎日額×56日分

なお、実際は障害(補償)年金だけでなく、これに係る特別支給金として障害等級に応じた

  • 障害特別支給金(一時金):(8級)65万円、(9級)50万円、(10級)39万円、(11級)29万円、(12級)20万円、(13級)14万円、(14級)8万円
  • 障害特別一時金(一時金、算定基礎日額×右の日数分):(8級)503日分、(9級)日391日分、(10級)302日分、(11級)223日分、(12級)156日分、(13級)101日分、(14級)56日分

が上乗せ支給されます。

支給期間という考え方はなく、1回のみ支給されます。

3.介護(補償)給付

第2章をご参照ください。

4.障害厚生年金

5.障害基礎年金

6.障害手当金

障害厚生年金、障害基礎年金、障害手当金は、国民年金・厚生年金保険の給付で、労災の場合もプライベートの事故などの場合もどちらでも利用できます。ただし、障害手当金については、労災保険から障害(補償)年金や障害(補償)一時金を受給できる場合、支給されません。

給付の内容については、こちらの記事の「3 障害に対する主な給付(プライベート編)」をご確認ください。

4 死亡に対する主な給付(労働災害編)

1)給付の種類を整理しよう

社員が労働災害により亡くなった場合、労災保険・国民年金・厚生年金保険の給付を受けられます。社員が受けられる主な給付は図表3の通りです。

主な給付

なお、労災保険の給付は、業務災害の場合と通勤災害の場合とで名称が変わります。

  • 業務災害:葬祭料、遺族補償年金、遺族補償一時金
  • 通勤災害:葬祭給付、遺族年金、遺族一時金

また、同一の事由により、労災保険給付と遺族厚生年金(遺族基礎年金)を受給できる場合、併給調整により、労災保険給付が一部減額となります。詳しくは、お近くの労働基準監督署にお問い合わせ下さい。

2)給付の支給要件、支給額、支給期間を知ろう

1.葬祭料(葬祭給付)

社員が亡くなった際、葬儀を執り行う者に支給されます。一般的には、葬儀を執り行う遺族に支給されますが、遺族がなく会社が社葬を行った場合には会社に支給されることもあります。

支給額は、亡くなった社員の給付基礎日額を基に、次の2つの方法で算定され、高いほうの額が支給されます。

  • 支給額(一時金)=給付基礎日額×30日分+31万5000円
  • 支給額(一時金)=給付基礎日額×60日分

支給期間という考え方はなく、1回のみ支給されます。

2.遺族(補償)年金

社員が亡くなった際、社員により生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹に支給されます。妻以外については、原則として次の要件を満たす必要があります。

  • 子・孫:18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していないこと、または一定の障害の状態にあること
  • 夫・父母・祖父母:60歳以上であること、または一定の障害の状態にあること
  • 兄弟姉妹:18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していないか、60歳以上であること、または一定の障害の状態にあること

上記に該当する遺族がいない場合でも、夫・父母・祖父母・兄弟姉妹が55歳以上60歳未満であれば受給権者になることができます。

なお、該当する遺族が複数いる場合、受給権者となる順位が決められており、上の要件を満たす遺族同士の場合、妻の優先順位が最も高くなります。

支給額は、支給を受ける遺族と、その遺族と生計を同じくする遺族(上の要件を満たす者)の合計人数に応じて、次のように算定されます。

  • (1人)支給額(年額)=給付基礎日額×153日分(注)
  • (2人)支給額(年額)=給付基礎日額×201日分
  • (3人)支給額(年額)=給付基礎日額×223日分
  • (4人以上)支給額(年額)=給付基礎日額×245日分

(注)遺族が、55歳以上の妻または一定の障害の状態にある妻の場合は175日分となります。後述の遺族特別年金も同じです。

なお、実際は遺族(補償)年金だけでなく、これに係る特別支給金として遺族数などに応じた

  • 遺族特別支給金(一時金):300万円
  • 遺族特別年金(年金、算定基礎日額×右の日数分):(遺族が1人)153日または175日分、(遺族が2人)201日分、(遺族が3人)223日分、(遺族が4人以上)245日分

が上乗せ支給されます。

支給期間の制限はありません。支給を受ける遺族が亡くなった場合や、一定の年齢または一定の障害の状態に該当しなくなった場合など、受給権者に該当しなくなったときは、その者に対する支給はされなくなりますが、次順位の受給資格者が受給権者となります(これを「転給」といいます)。

3.遺族(補償)一時金

社員の死亡当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合、配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹に対して支給されます。

該当する遺族が複数いる場合、優先順位が決められており、配偶者の優先順位が最も高くなります。

支給額は、社員の給付基礎日額を基に、次のように算定されます。

支給額(一時金)=給付基礎日額×1000日分

なお、実際は遺族(補償)年金だけでなく、これに係る特別支給金として遺族数などに応じた

  • 遺族特別支給金(一時金):300万円
  • 遺族特別一時金(一時金):算定基礎日額×1000日分

が上乗せされます。支給期間という考え方はなく、1回のみ支給されます。

また、なかには次のようなケースもあります。社員の死亡当時、遺族(補償)年金の支給を受ける遺族がいたが、その遺族が遺族(補償)年金の受給権を失い(亡くなった場合など)、結果として支給を受ける遺族がいなくなった場合、次のように算定し支給されます。

支給額(一時金)=給付基礎日額×1000日分-すでに支給された遺族(補償)年金の総額

  • 遺族特別支給金(一時金):なし
  • 遺族特別一時金(一時金):算定基礎日額×1000日分-すでに支給された遺族特別年金額

4.遺族厚生年金

5.遺族基礎年金

遺族厚生年金、遺族基礎年金は、国民年金・厚生年金保険の給付で、労災の場合もプライベートの事故などの場合もどちらでも利用できます。

給付の内容については、こちらの記事の「4 死亡に対する主な給付(プライベート編)」をご確認ください。

以上(2025年10月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:ChatGPT