ITで「心」を変える――企業変革に挑むDXコンサルタントの哲学

デジタルでしがらみを断ち、企業を次のステージへ

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が広く知られるようになった今、その本質を丁寧に紐解きながら、現場で静かに革命を起こしている人がいます。今回は、

「ITを使って、新しい会社の”幕開け”を支援すること。それが私たちの事業です。」

と語る、企業のDX化を支援するコンサルティング企業「株式会社i-SHIn(アイシン)ビジネス」の代表 関戸 紀仁氏にインタビューを行いました。

関戸社長01

■株式会社i-SHInビジネス■
「とくぎんDX・ICTサポート(※)」の提携パートナー企業。関戸 紀仁が代表取締役を勤める。中小企業を中心としたDXコンサルティング、経営改革、生産性向上支援等を行っている。
【株式会社i-SHInビジネスの想い】
・維新:様々なことを改めて、会社の幕開けを支援します。
・i-SHIn:愛情を持って最後までお客様と接する意味の「i」と、「IT」の「i」で新たな(SHIn)ビジネスを支援します。
・SHI:「士」をもって「志」を遂げます。
(※)地域の中小企業のみなさまのDX・ICT化を支援するため2023年6月にスタートした、当行のサービス。お客さまの課題解決や企業価値向上をご支援するとともに、地域のDX推進にさまざまな取り組みを積極的に行っている。

■DXとはズバリ言うとなんですか?

DXとは「デジタルを使って、しがらみを切ること」です。ちょっとわかりづらいので言い換えると、「デジタルを使って、新しいビジネスをやっていきましょう」ということです。しがらみを切るというのは、例えばAIを使って皆さんの業務を変えていきましょうとなった時、「仕事を奪われる」と感じる人がいます。その心理的抵抗が会社から見るとしがらみなんです。

このしがらみをどう切って、次のステージに行くかっていうのを、その仕事を取られる人が「嫌な気持ちなくやっていく」という活動を行っています。その人の仕事を否定するのではなく、時間的余裕を生み出し、その人がより価値ある仕事を担えるような「場づくり」が不可欠です。AIが無駄を取ってくれて、その分で人間がもっとクリエイティブなことに挑戦できる。そういう考え方なら、誰も傷つけずにDXが進められます。

■例えば銀行業も、スマホで全ての手続きが出来るなら、物理的な店舗は必要なくなるかもしれませんね。しかしそれでは、既存の役割が否定されるように感じる方も複数いらっしゃるかもしれません。「DX=ポジションの喪失」と捉えられかねない気がします。

それにこそ、しがらみがあります。役割の再定義、評価指標の見直し、人材の活用設計。DXとは、技術だけでなく、人間の価値を見直す作業でもあります。

人口減少が進む日本において、人材は貴重な資産です。DXは”人を減らす”手段ではなく、”人の力を最大化する”手段であるべきです。傷つけずに乗り越えるには、会社がその意義を丁寧に伝え、共に設計することが求められます。

僕自身も、「関戸さんの仕事、AIでもできますよね」なんて言われたら傷つきます。でも、僕もその一部はAIに任せています。それで空いた時間を、次の価値づくりに使うことが出来ます。変革とは”過去を否定”することではなく、”未来の可能性を信じる”ことです。iSHInのDX支援は、企業の中の一人一人の心に寄り添いながら、次のステージへ導いていきます!

■DX化を進めていくと、どのようなことが起こりますか?

DX化を進めていくことは人口減少に向けた“未来への準備”だと考えています。

人口減少により、10人必要な職場に6人しか集まらない時代が確実に来る。その未来に備えるには、今の社員で”2倍の生産性”を目指すしかない。構造DXとは、そのための布石でもあります。

今ならまだ間に合います。ITやデータに慣れていないと、将来の人出不足に対応できない。中小企業でもやれる仕組みを今のうちに整えていただきたいです。

あらゆる日常がログとして蓄積され、それが次のビジネスへとつながっていく。DXとは、デジタルによって”人間の行動を見える化”し、”未来を予測できる状態”へと進化させる挑戦なのです。

■2023年から当行と連携し、日々活動をしてくださっていますが、具体的にどのような活動をされていますか?

例えば、ものすごく危機感を感じている人はどんどんDX化を進めていて、ものすごく差が開いています。銀行の担当者、安友さんと「この技術で、今皆さんがやられている業務を電子化するとこうなります。」という話とともに、「組織のフラット化をし、ワークショップを開いたりして、役職に関係なくお互いの意見をぶつけ合える環境を作りましょう。」という活動をしています。

■先日の「DXワークショップ」でも、実務担当の方だけでなく、役員の方も参加されていましたね。

あの環境がいいんです。様々な部署の担当者の人が来られていて、すごく若い人からベテランの人もいらっしゃった。みなさんたくさん意見をしていたのが役員の方に直接届いていました。あのように、若い人や今まで喋ったことのない人からアイデアを集めるっていうのが今大事なんです。世の中の変化が激しいってよく言われるじゃないですか。激しすぎちゃって、自分が得意な分野しか追い付かないんですよ。得意な分野と仕事を合わせるために、いろんなアイデアを出すための場をつくるという活動を行っています。

関戸社長02

■この記事を読んでくださっている、とくぎんサクセスクラブ会員さまへメッセージをお願いいたします。

DX・ICTサポートと一緒に新しい一歩を踏み出しましょう!

■関戸さんとともに活動している、安友 義人さんにコメントをもらいました!

安友さんコメント

以上(2025年8月作成)

画像:徳島大正銀行

【DXワークショップ受講】サヌキ畜産フーズ株式会社 増田社長にインタビュー

事業ビジョンテーマ:すべては「本物のおいしさ」がもたらす、「人々の笑顔」を創造するために ~笑顔創造業~


「本物のおいしさで笑顔をつくる。」

香川県三豊市に本社を構えているサヌキ畜産フーズ株式会社は、冷凍トンカツをはじめとする食肉加工品の製造を通じて、”日本一のトンカツ工場”を目指していらっしゃいます。

事業ビジョンとして掲げる「笑顔創造業」という思いを軸に、OEM事業を中心に全国へと展開されています。

今回は、代表取締役社長 増田 浩氏にお話を伺い、食への情熱や企業としての哲学を感じる言葉の数々に触れることが出来ました。

増田社長01

■「トンカツで日本一へ」38歳の社長が導かれた15年間の挑戦と成長

「トンカツをつくっています」

そう語る増田社長の背後には、日本一のトンカツメーカーを目指した15年の奮闘と戦略がございます。

社長に就任されたのは2010年。当時38歳でいらっしゃった増田社長は、売上高40数億円規模の会社において「グループで100億円を目指す」という目標を掲げられ、周囲の懐疑的な声にも屈することなく、ビジョンを形にしてこられました。実際、2025年6月期には109億円を達成され、全国トップクラスの実績を誇る企業へと成長されました。

工場の新設や改修を経て、現在の冷凍トンカツ類の生産力は月間600トン(工場全体で月間1200トン)。競合他社の700トンに迫る水準となっており、今秋以降には720トンの達成を目指しておられます。驚くべきことに、この挑戦は「残業時間の削減」という制約の中で計画されております。

■雇用と賃金へのご対応

採用に対しては多額の予算を投じてこられましたが、成果はハローワーク経由の採用に軍配が上がっております。「求人広告は広告ではなく、採用ブランディングであるべき」とお話になり、最低賃金引上げの議論にも積極的な姿勢を示していらっしゃいます。

「利益を出した分だけ社員に還元する」という方針のもと、経常利益の一定割合を賞与として分配されており、賃上げについても継続的な取り組みを続けておられ、社員の定着率向上やブランド力強化を目指されております。

■業界を牽引する存在へ

近隣のトンカツメーカーを加えた冷凍トンカツ類の製造数は全国の約3割となり、地域とともに成長されながら業界全体の活性化を使命として取り組まれています。「自分たちがリードしなければ業界は動かない。だからこそ挑戦し続けたい」と語られるその姿勢からは、確固たる信念と責任感がうかがえます。


変化の時代を生き抜くために ――地方からのDX挑戦

■「任せる」経営と熱意が導くデジタル改革の現場

「怖いからといって避ける時代ではない。やることがあるって、実は会社にとっては”いいこと”なんですよ。」

増田社長が熱く語られるのは、デジタルの可能性と現場への信頼です。ご自身で最先端の情報を取り入れられ、DXワークショップを開催された背景には、会社を”次の段階”へ進めたいという明確な意志が感じられました。

「経営は”任せる”ことが重要」と語られる社長は、現場に自由度を与え、自律的な取り組みを支援することで、無理なくデジタル化を推進されています。

その一方で、「放任ではなく、信頼して任せること」への葛藤や工夫も感じられます。「やることが立派なら、黙って応援する。部下にも任せているし、細かく言わなくてもわかってくれる」とのお言葉からは、現場との信頼関係がDX推進の土台であるとお考えであることがわかります。

「メールの書き方ひとつでも、必要かどうか考えることがある。社外の方へメールで”お世話になります”や社内へのメールでの”お疲れさまです”という挨拶言葉はメールの冒頭には必要かもしれないが、それを簡素化できないか?しかし、その反面挨拶はきっかけとして重要である。そういう意味では挨拶を通じた関係づくりというのは、DXにもつながっているんじゃないかな」(増田社長)

社長のお言葉には、人と人との関係性をデジタルと融合させようとされる姿勢が感じられました。

増田社長02

「AIやロボットで資格や仕事が変わって、様々なことが便利になっても、トンカツのおいしさは変わらない。味覚や食感など人が感じるおいしさはずっとアナログであり、10年後も美味しいトンカツは、きっとおいしいまんまなんです。」(増田社長)

最先端技術と普遍的な価値を融合させながら、食品業界の未来に挑んでおられるお姿に、多くの企業が共感されつつあります。

以上(2025年8月作成)

画像:徳島大正銀行

現場で感じた変革の芽――DXワークショップ開催レポート

会員企業さまの課題に寄り添う、実践型の取り組み

7月23日、弊行のDX推進チームが、サヌキ畜産フーズ株式会社(香川県三豊市)さまを訪問し、現場密着型のワークショップを開催しました。

今回は、サクセスクラブ事務局も同行し、撮影を行わせていただきました。

今回のテーマは「日常業務の中のセキュリティリスク気づきワークショップ」。

単なる意見交換にとどまらず、参加者それぞれの視点が交差し、新たな気づきや可能性を引き出す対話が生まれました。今回のワークショップが、会員企業さまのさらなる飛躍につながることを心より願っております。

ワークショップの概要

2つの事例をとおして行われたワークショップは、日常業務に潜むリスクへの気づきから、その対策の立案、継続的な改善のポイントまで、包括的に学べるスケジュールで構成されました。


■ケースごとのグループディスカッションを通じて、多角的な視点が交わり、新たなリスクが把握することが出来ました。

ワークショップの様子1

■見学に来ていた社長もディスカッションに参加され、部署の垣根を越えたメンバーと真剣に意見交換を行われました。

ワークショップの様子2

ワークショップの様子3


■本件の担当者 安友 義人さんにコメントをもらいました!

安友さんコメント


本件に係るお問合わせについて
とくぎんサクセスクラブでは、DX担当者と連携し、会員さまのお役に立てるよう尽力してまいります。ご興味のある方は、下記の電話番号またはサイト内のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
お電話:088-656-1125(担当:安友)

以上(2025年8月作成)

画像:徳島大正銀行

細かな管理を止めたら「隠れ残業」が減るって本当?

1 管理、管理の「北風政策」では隠れ残業は減らない?

「隠れ残業」とは、

定時で退勤打刻し仕事を終えたように見せかけて、実はその後も仕事を続けること

です。いわゆる「サービス残業」ですが、隠れ残業には「会社に隠れてこっそり残業する」といったニュアンスがあります。

隠れ残業をする社員の言い分は、おそらく図表のようなイメージでしょう。

隠れ残業をする社員の言い分

一方、会社は社員の労働時間を管理する義務を負っていて、だからこそ多くの会社が残業を許可制にしているわけです。残業削減は社員の健康のためでもありますから、経営者は、

社員が残業のルールを守らないなら、もっと厳しく管理するしかない!

と考えます。これは至極当然の考え方ですが、長年、このアプローチを続けてもなかなか隠れ残業がなくならないのも事実です。

そこで、この記事では、

厳しく管理するという「北風政策」ではなく、「許可制を廃止し、ある程度社員の自主性に任せて残業を認めるという、いわば『太陽政策』で隠れ残業をなくす」考え方

をご提案します。ただし、「そもそも仕事が多すぎ! 『残業はダメ!』なんて言われても無理だよ……」といったケースは、業務効率化や人材採用の問題なので、この記事で提案する方法では事態が悪化する恐れがあります。

2 隠れ残業で会社に生じるリスクを確認

まずは、隠れ残業がなぜ問題になるのかを簡単におさらいしましょう。

会社は、36協定(労働基準法第36条に基づく労使協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ることで、36協定に定めた範囲内で社員に残業を命じることができます。残業を許可制にしている場合、社員が残業を申請し、上司がそれを承認します。

明確な申請と承認がなければ残業は発生しないように思えますが、実は「黙示の指示」があれば残業を命じたとみなされることがあります。黙示の指示とは、

  • 残業しないと終わらない量の業務を社員に命じている場合
  • 社員が残業をしていることを知りながら放置している場合

などのことです。隠れ残業が法的に労働時間と判断されると、会社が把握していない残業が出てきます。その影響で社員の残業時間が36協定の時間数を超えると労働基準法違反となります。もちろん、残業手当の支払いも必要です。

また、隠れ残業によって過重労働となれば、

社員が心身の健康を害してしまう

恐れがあります。そうなると、会社が安全配慮義務(社員が心身の安全を確保しつつ働けるような配慮する義務)違反を問われることにもなります。

3 許可制を廃止しつつ、残業を必要最小限にとどめる!

1)残業時間の上限を社員ごとに設定する

隠れ残業が引き起こすリスクを回避するために、会社は残業の許可制を導入するなどして管理しようとするのですが、なかなかうまくいきません。であれば、いっそ許可制をやめてしまうというのがこの記事の提案です。

具体的には、残業の許可制を廃止する代わりに

ことにします。その際、残業時間の上限(1日○時間、1カ月□時間など)を社員ごとに設定し、月初などに本人と上司に通知します。上限は業務量や経験、職種などに応じて判断します。

例えば、明らかに業務量が多い社員や、新商品の開発など重要かつ時間が読みにくい業務に従事する社員は、36協定の範囲内で残業を認めます。一方、他の社員のサポートが主な業務である社員などは、実績に応じた時間を設定します。新入社員など残業をするほどの業務がなければ、残業を禁止します。

なお、36協定自体が法律に違反していないかもチェックが必要です。36協定で定める残業時間には、「原則1カ月45時間、1年360時間まで」などの上限があります。労働基準法の「時間外労働の上限規制」といわれるものです。

2)残業時間と社員の健康状態は常にチェックする

上限設定後も、社員がその枠内で安全に働いているかは定期的に確認します。上司は部下の日々の残業時間を把握し、残業が多い人がいたら、声をかけ状況を聞きます。必要な残業であれば認めますし、臨機応変にフォローもします。また、状況確認の結果に応じて設定する残業時間の上限を見直すようにします。

残業の許可制を廃止する際、特に注意が必要なのは社員の健康管理です。許可制なら体調不良の社員が残業を申請してきても、上司がストップすることができます。しかし、許可制を廃止すると社員の健康状態が分からないため、日ごろのコミュニケーションが大切になります。上司が相談しやすい雰囲気を作り、仕事の遅れや体調不良を早めに共有できるような仕組みを整える必要があるでしょう。

4 社員を尊重し、信じる「太陽政策」を進める

この記事で提案しているのは、残業の仕方について社員の自主性を尊重し、申告(勤怠管理システムの打刻など)を信じる仕組みです。社員が申告した時間に基づいて残業手当を支払うため、いわゆる「固定残業代」とは違います。

一定期間内の残業時間の上限を決めますが、それは個々の社員と向き合い、その仕事の状況を把握した結果です。全体を管理するための「申請制度」よりも、一歩も二歩も社員と向き合うことになるため、会社の負担は増えるかもしれません。しかし、会社と社員の双方がルールを守ることによって新しい残業制度となるでしょう。

5 許可制を廃止しても法的な問題はないのか?

最後に補足すると、残業の許可制を廃止すること自体に法令上の問題はありません。ただし、

  • 36協定の締結・届け出をし、その範囲内で残業を認める
  • 労働時間を適切に把握する
  • 設定した枠よりも長い残業をした場合は、その分の残業手当をきちんと支払う
  • 設定した枠内であっても、休日や深夜の残業には法定以上の割増率で残業手当を支払う

ことには注意が必要です。

また、実態を正確に把握したいならば、パソコンの使用時間のログを出力し、勤怠管理システムなどの打刻内容と乖離(かいり)がないか定期的に調査する方法もあります。

以上(2025年9月更新)

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画像:Elnur-Adobe Stock

地域とともに舞うー『とくぎん連』阿波おどりレポート

夏の夜、鳴り物の音に誘われて街がひとつになる瞬間、それが阿波おどりです。

8月13日、今年も当行は『とくぎん連』として参加者110名に、『はなしか連』さま20名が加わり阿波おどりに参加しました。行員有志による連は、日頃の業務とは一味違う熱気と笑顔に包まれ、お客さまや地域の皆さまと心を通わせる貴重なひとときとなりました。

その様子をとくぎんサクセスクラブ事務局よりレポートとしてご紹介します!

阿波おどりの様子01

踊りの練習は7月初旬からスタートしました。

練習は業務終了後に行われ、「とくぎん阿波おどりクラブ」(※)に所属している行員の主導による練習が続きました。踊り手は、入行1年目の行員から、支店長、役員まで幅広く参加しており、部署・支店・年齢を越えた交流が生まれました。互いに励まし合い、少しずつ息の合った連へと成長していく過程は、まさにチームワークの結晶でした。

(※)とくぎん阿波おどりクラブ
当行に勤務しているメンバーで構成されており、今年で結成7年を迎えます。阿波おどりを通じた地域貢献や活性化に繋がる活動を行っており、取引先の慰問や各種イベント等に参加して阿波おどりを披露しています。

阿波おどりの様子02

いよいよ阿波おどり当日、本店ホールに『とくぎん連』、『はなしか連』が集結。

板東頭取の挨拶とともに出陣の熱が高まり、演舞への期待が膨らんでいきました。

阿波おどりの様子03

その後、会場を本店東側駐車場へと移し、演舞がスタート。阿波おどりの衣装に身を包んだ行員たちが「ヤットサー!」の掛け声とともに、笑顔で踊りの輪を広げました。時間が経つにつれて、踊り手たちの足取りは力強さを増していきます。ひとりひとりの動きが次第にひとつの“連”としてまとまっていく様子が見られました。

阿波おどりの動画は、こちらからご覧いただけます!
(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


本店東側駐車場での演舞を皮切りに、紺屋町演舞場、南内町演舞場、そして両国本町演舞場へと舞台を移し、それぞれの会場にて心を込めた踊りを披露しました。

各演舞場では、桟敷席、沿道の皆さまから温かい拍手と声援をいただき、大きな励みとなりました。

阿波おどりの様子05

阿波おどりの様子06

阿波おどりの様子07

今回の阿波おどりを通じて、地域の皆さまと心を通わせる貴重な機会をいただきました。

来年もまた、あの熱気の中で皆さまとお会いできることを楽しみにしています。

引き続き、温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

【今回とくぎん連に参加した、とくぎんサクセスクラブ事務局の杉綾香さん、泉はる香さん、法人推進部の宮本波太郎さんに感想を聞いてみました!】

阿波おどりの様子08

【関連コンテンツ】

以上(2025年8月作成)

動画:ST企画 提供

画像:徳島大正銀行 谷本真二 提供

「ワーケーション」の労務管理は業務とプライベートの線引きが重要!

1 旅行先でテレワークをする「ワーケーション」

ワーケーション(Workation)とは、「ワーク(Work)=仕事」と「バケーション(Vacation)=休暇」を組み合わせた造語です。例えば、

旅行先でテレワークを行いながら、空いた時間に休暇を楽しむという柔軟な働き方

を指します。働き方改革や地域おこしにつながるという理由から、各自治体もワーケーションの普及・啓発に取り組んでいます。

ただ、旅行先で「仕事も遊びも両方する」という働き方なので、

業務とプライベートの境界をしっかり分けて労務管理

をしないと、「労働時間管理」「労災(労働災害)の判断」「ワーケーションの費用負担」などで思わぬトラブルに遭遇します。以降でポイントを確認していきましょう。

2 「始業・中断・終業」のタイミングはこまめに把握する

業務とプライベートの境界が曖昧だと、労働時間を正確に算定できないだけでなく、労災の判断や、ワーケーションに掛かる費用負担の判断なども難しくなります。

問題は、ワーケーションでは次の図表のように、1日の中で業務と観光が交互に発生したり、日によって労働時間が変わったりすることです。

ワーケーション

こうした問題を解決するには、

業務の「始業・中断・終業」のタイミングをこまめに把握すること

が大切です。社員から都度チャットツールで連絡を入れてもらう、あるいは1日に複数回の打刻ができる勤怠管理システムを使う方法があります。また、業務時間が長くなりすぎると社員が休暇を楽しめないので、「1日当たりの業務時間の上限」を事前に決めておくとよいでしょう。

次の問題は、賃金の取り扱いです。上の図表の場合、所定労働時間中に、1日目は5時間(8時間-3時間)、2日目は3時間(8時間-5時間)の不就労時間(働かなかった時間)があります。完全月給制の場合などを除き、不就労時間の賃金は控除できますが、ワーケーションを強く推進したいのであれば、

「半日単位」や「時間単位」の年休(年次有給休暇)の活用

を促すのが望ましいです。ちなみに、

  • 半日単位年休:導入する場合、就業規則への定めが必要
  • 時間単位年休(年5日まで):導入する場合、就業規則への定め、労使協定の締結が必要

です。なお、半日単位年休も時間単位年休も、計画的付与(会社が年休の取得日の計画を立て、日にちを指定すること)の対象にはならないので、取得はあくまで社員の意思に委ねられます。

この他、ワーケーションの開始前に、期間中の行動計画、予定表などを作成し、社員と共有しておくのも有効です。

3 業務中と自宅・ホテル間の移動中の被災は労災になり得る

労災には、業務上の事由による「業務災害」、通勤上の事由による「通勤災害」があります。

1)業務災害の考え方

業務災害は、

  • 業務遂行性(社員が会社の支配下にあるときに被災したこと)
  • 業務起因性(業務と被災との間に因果関係があること)

の両方を満たすと労災として認定されます。業務に従事しているときや、業務に付随する行為をしているときに被災すると、「業務遂行性」が認められます。

2)通勤災害の考え方

通勤災害は、

  • 自宅と就業場所
  • 就業場所と他の就業場所
  • 帰省先と赴任先と就業場所の三者間(やむを得ない事情がある場合)

のいずれかを、合理的な経路・方法で移動していて被災した場合に労災として認定されます。ただし、合理的な経路を逸脱(不要な遠回りなどをした場合)した場合や、移動を中断した場合(通勤と関係ない行為をした場合。ただし日用品の購入などは可)は、労災になりません。

3)具体的には?

ワーケーションで想定される事故と労災の判断の例は次の通りです。ただし、細かい判断は個別の案件ごとに異なるので、必ず所轄労働基準監督署などに確認をしてください。

【自宅と就業先であるホテルの往復中に負傷した場合】

→自宅と就業場所の間を移動しているので、労災になる可能性が高い

【就業先のホテルや、ホテルへ移動する機内等で業務をしていて負傷した場合】

→業務中の負傷なので、労災になる可能性が高い

【就業先のホテルで、業務の準備や休憩(トイレに行くなど)をしていて負傷した場合】

→業務に付随する行為なので、労災になる可能性が高い

【業務終了後、就業先のホテルから飲食店に移動していて負傷した場合】

→飲食は業務(出張)に付随する行為なので、労災になる可能性が高い

【業務終了後、飲食店で飲酒をして酔っ払い、ホテルに戻る際に負傷した場合】

→酔っ払うのは業務(出張)に付随する行為とはいえず、労災にならない可能性が高い

【観光施設に行った後、ホテルに戻ろうとして負傷した場合】

→自分の意思で観光施設に行っている場合、業務(出張)に付随する行為とはいえないので、労災にならない可能性が高い

4 業務に関する費用以外は個人負担としても差し支えない

ワーケーションで発生する費用としては、自宅とホテル間の交通費や宿泊費、通信費などが考えられます。結論から言うと、

通信費など業務に関する費用は会社が負担し、それ以外の旅行費用は本人負担とする

のが一般的です。

自宅とホテル間の交通費や宿泊費は、出張や社内研修のように会社命令に基づくものであれば、会社負担とするのが妥当です。ただ、会社命令ではなく社員自身の意思で就業場所を選択している場合は、個人負担としても差し支えないでしょう。

通信費については、会社がパソコンなどを貸与する場合、会社負担とします。社員が私物のパソコンなどを使って業務を行う場合も、業務に要した分については会社負担とするのが妥当でしょう。

この他、最近は、社員がホテルなどでワーケーションを行いながら、人間ドックや保健指導、運動指導などを受けられるサービスも登場しています。社員がこうしたサービスを受ける可能性がある場合、福利厚生として会社負担にするのか、社員の意思に任せて個人負担にするのかも決めておきましょう。

なお、会社の命令によらないプライベートの旅行の途中で一部業務を行う場合、

旅行に係る交通費を会社が負担すると、その費用が従業員への給与として課税される可能性がある

と観光庁のQ&Aで指摘されています。旅費や宿泊費をどのように扱うかは、税務上の取扱いも踏まえて検討しましょう。

■観光庁「労災や税務処理に関するQ&A」■
https://www.mlit.go.jp/kankocho/workation-bleisure/corporate/qa/

5 必要に応じて就業場所や対象者、使用機器などを制限する

ワーケーションの就業場所は、

原則として社員が自由に選択できるようにしつつ、「集中できなかったり、セキュリティーに問題があったりする場所は認めない」というのが基本

です。例えば、不特定多数が出入りし、パソコンの画面を見られる恐れがある場所は不適切です。どこまでやるかは会社次第ですが、参考として紹介すると、

始業前に就業場所の状況を映せるコミュニケーションツールを使用して、上司の承認を得ている会社

もあります。

また、ワーケーションの対象となるのは、

ある程度自立して業務を遂行できる社員

です。このあたりも会社次第になりますが、例えば、就業規則で「能力や勤務態度を考慮して、所属長が承認した者を対象とする」などと定めておき、事前にワーケーションの就業場所や期間を申請してもらう形にすると、管理がしやすくなります。

ワーケーション中に使用する機器については、会社が貸与するパソコンやWi-Fi端末を利用させるのが基本です。私物のパソコンなどの利用を認める場合は、

  • 会社指定のセキュリティーソフトをインストールさせる
  • フリーのWi-Fiには接続させないようにする

などの対策を取りましょう。Wi-Fi環境を整備しているホテルなどは多くありますが、セキュリティーの強度が異なるので、社員には会社から貸与したモバイルルーターなどを使用させるのが無難です。対策の詳細については、総務省の資料などが参考になります。

総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)(令和3年5月)」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/telework/

以上(2025年9月更新)
(監修 監修 弁護士 田島直明)

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画像:pixabay

改正が見込まれる 暗号資産に関する税金の取り扱い

1 改正議論が本格化。暗号資産に係る税制の改正

資産形成の選択肢の1つ、暗号資産(ビットコインなどの仮想通貨)。ただ、興味はあるものの、「税金の取り扱いが難しそう」「他の金融商品に比べて税率が高い」といった理由で、なかなか投資に踏み出せない方も多いのではないでしょうか。

確かに、現状の暗号資産は、税金の取り扱いが株や債券といった通常の金融商品と異なり、課税のタイミングなどについて誤解が生じやすかったり、税率が高かったりします。しかし、近年は暗号資産を金融商品として位置付けるための税制の改正や、税務上の取り扱いについて見直しの議論が進んでいます。

  • 金融庁が暗号資産に関連する制度の在り方等の検証資料を2025年4月と6月に公開
  • 令和7年度税制改正大綱において、見直しの検討が明記される

この記事では、現状の暗号資産に関する所得税のルールから、今後、改正がされた場合に想定される取り扱いまでを解説します。

2 暗号資産に関する所得税の現状ルール

1)暗号資産は利益が大きくなるほど税率が高くなる(最大55%)

現状、暗号資産の利益は原則として、

「雑所得」に分類

され、給与所得や事業所得など他の所得と合算される、

「総合課税」の対象

となります。これにより、利益が大きくなるほど税率も高くなる累進課税が適用され、

最大で55%(所得税45%+住民税10%)

の税金がかかる可能性があります。株式投資の利益が通常20.315%の申告分離課税(他の所得と合算しないで税額計算する課税方式)であることを考えると、これは非常に高い税率であり、特に高所得者にとっては大きな負担となります。

累進課税の税率

2)5パターンもある課税されるタイミング

暗号資産に係る課税のタイミングは、日本円に換金したときだけでなく、様々な取引で発生します。なお、下記2.~5.の課税については、現金が手元に入らないにもかかわらず税金が発生するため、特に注意が必要です。

1.暗号資産を売却(日本円に換金)したとき

保有する暗号資産を日本円に換金し、売却益が出た場合、課税対象となります。

2.暗号資産で商品やサービスを購入したとみなされたとき

暗号資産を支払い手段として利用した場合、その暗号資産を一度売却し、商品やサービスを購入したとみなされ、利益が出ていれば課税対象となります。

3.暗号資産同士を交換したとき

例えば、ビットコインでイーサリアムを購入するなど、異なる暗号資産同士を交換した場合も、売却した暗号資産に利益が出ていれば課税対象となります。日本円に換金していなくても税金がかかる点に注意が必要です。

4.マイニング、ステーキング、レンディングなどで暗号資産を取得したとき

これらの活動によって新たに暗号資産を取得した場合、その取得時点での時価が所得として課税対象となります。

5.暗号資産を寄附したとき

寄附時点の時価と取得価額との差額が利益とみなされ、課税対象となります。

3 今後はどうなる? 税制改正議論の動向

現時点(2025年7月)では、暗号資産について、具体的な税制改正の内容が明示されているわけではありません。ただし、暗号資産の法律上の位置付けの改正については、具体的な議論が進んでいます。

【現状】は支払い手段として資金決済法の下に位置付けられていますが、【改正案】では投資対象として金融商品取引法の下

に位置付けられ、決済手段の1つとしての取り扱いから、金融商品としての取り扱いに変わると見込まれています。この改正が実現した場合、税務上最も大きな影響があるのは、課税方式と税率です。

暗号資産に係る税金の取り扱い

現状の総合課税かつ累進課税(所得が大きくなるにつれ税率が高くなる)の下では、合算する他の所得のバランスを取りながら、暗号資産の売却を考えなければならないなど、税金が投資の足かせ要因の1つともいわれています。そのため、今後の改正により、他の所得とは区別して課税される申告分離課税、かつ一律20.315%となれば、

売却時の懸案事項が減り投資の促進にもつながる

とみられています。

以上(2025年8月作成)
(監修 税理士 石田和也)

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ヒント2[採用2]:会社が“目指すこと”、“大切にしたいこと”を明示する/武田斉紀の『人が辞めない会社、10のヒント』(3)

1 “自社を必要以上に大きく見せる”ことなく、採用したい人に応募してもらう

今シリーズの狙いは、経営者、人事担当者、現場の皆さんのお悩みである「社員を採ってもすぐに辞めてしまう上に、そもそも採れない」という課題を解決することです。

『人が辞めない会社、10のヒント』と題して、「時系列」で毎回1つずつご紹介しています。

「社員を採ってもすぐに辞めてしまう上に、そもそも採れない」という課題の原因と解決策は会社によってさまざまです。

今回ご提示するヒントが皆さんの抱える原因に明らかに当てはまらない場合は、読み飛ばしてくださって結構です。ですが、ヒントの1~9までが該当しなくても、10が当てはまるかもしれません。

全社共通の原因もあれば、部署ごとの固有の原因も存在することでしょう。原因が1つだけというケースは少ないので、何回分か読んでいただければ「これはうちにも当てはまるな」というものを見つけていただけるのではと思います。

前回、ヒント1として社員の入り口となる採用について触れました。募集時に“自社を必要以上に大きく見せていませんか?”と、皆さんに疑問を投げかけました。

社員が早期退職してしまう事例として、「普通に募集しても応募者が集まらないから」「もっと優秀な人を集めたいから」と、募集段階で“自社を必要以上に大きく見せてしまう”ケースが後を絶ちません。

募集広告の内容を信じて応募し入社した本人が、「聞いていた話と違う」となって、早期退職につながってしまうのです。

“だって自社を大きく見せないと、うちみたいな会社には応募者が来てくれないじゃないか”という声が聞こえてきそうです。

そこで今回と次回で、本人が「聞いていた話と違う」となることなく、「自社が本当に採用したい人に応募してもらう」方法を、事例と合わせてご紹介します。

2 会社の「求める人材像」が明確で、採用基準となっていますか?

採用に関わったことのある人であれば、「求める人材像」という言葉はご存じでしょう。文字通り「会社がどんな人材を求めているか、その条件を定めたもの」です。

あなたの会社の「求める人材像」は明確ですか。「求める人材像」を基準に募集や面接を進めて、採用者を決定できていますか。できていないとすれば、それが「社員を採ってもすぐに辞めてしまう上に、そもそも採れない」ことの原因の1つである可能性が高いです。

「求める人材像」という言葉を初めて聞いたという人は、「そんなものを提示したところで、会社が採用したいのは、学生でいえば偏差値の高い大学の出身者や、働く意欲や向上心の高い学生なのではないか」と考えるでしょうか。

一方、「求める人材像」を定めているという会社でも、それを基準に採用活動ができているとはいえない。そもそも採用基準にすることに懐疑的なところも少なくないようです。

理由として、先ほどのように「定めてはいるけれど、他社と大差ないと思うので結局はあまり意識せず採用している」や「人事レベルでは採用基準としているが、最終判断する役員や社長が意識しているとは思えない」など、いろいろな状況があるようです。

「求める人材像」なら知っているよという方に聞きます。「求める人材像」にはどんな要素が含まれるでしょうか。

何かの法則のように明確に定義されているわけではないのですが、さまざまな文献や専門家の意見、私の実感も含めて整理すると、大きくは「(1)適性」と「(2)意欲」に分けられるようです。それぞれには次のような要素を含んでいると考えられます。

(1)適性 ①価値観/資質・性格  ②経験/スキル(知識・能力)
(2)意欲 ③興味関心 ④将来像

先に申し上げておくと、(2)意欲①興味関心については、本人がすでに持っている部分はあるものの、会社からの情報提供により仕事や会社への理解が進むにつれて高まっていくものといえます。

同じく(2)意欲④将来像についても、本人が具体的な将来像を描けているか、それが会社の求めるものと一致するかは、仕事や会社への理解次第でしょう。

すなわち、(2)意欲については、会社の求める(1)適性との一致を確認した後で、“会社からの働きかけ次第”でいかようにも変えられる部分なのです。

ということで(1)適性のほうを掘り下げてみましょう。

3 企業が応募者に求める資質やスキルは共通? では価値観はどうか

2022年に経団連がまとめた「採用と大学改革への期待に関するアンケート」結果によれば、「採用の観点から、大卒者に特に期待する資質・能力・知識」として、次のような点が挙げられています。

上記(1)①に含まれる「資質」として特に期待するのは「主体性」「チームワーク・リーダーシップ・協調性」で、回答企業の約8割が指摘しています。次に変化の激しい人生100年時代を迎えて、「学び続ける力」も4割近くが求めています。

上記(1)②に含まれるスキルの「知識」として最も期待するのは、「文系・理系の枠を超えた知識・教養」。「能力」の上位は、「課題設定・解決能力」「論理的思考力」「創造力」とのことです。

多くの企業で新卒採用での「求める人材像」(1)の①資質・性格や②スキル(知識・能力)が似通っている点は否めません。

ちなみに、これらの項目は、ここ数年でもあまり変化していないようです。

これから就職活動を始める学生さんや若手社員の皆さんには、これらの「資質」「知識能力」を意識して鍛えていただければと思います。ただ会社側にも知っておいていただきたいのは、①資質・性格は簡単ではないですが、

少なくとも②スキル(知識・能力)は入社後でも十分に鍛え得るという点です。

少し想像すれば分かりますが、これらの条件を全て満たしている学生など、ほんの一握りでしょう。

一定基準では満たしていてほしいところですが、採用時点で多くを求めれば求めるほど自社の採用の可能性を狭めてしまいそうです。

では、残った(1)①の「価値観」についてはどうでしょうか。皆さんの会社が社員に求めている「価値観」とは何ですか?

「求める人材像」の(1)①「価値観」が明確ではないという方は、次の質問を自社に問うてみてください。

Q.会社が「これだけは譲れない」と大切にしてきた価値観は何ですか

経営トップが「こういう社員を大事にしたい」「こういう社員は許さない」と繰り返し求めていれば、それも会社として「大切にしたい価値観」の1つといえるでしょう。以上を含めて複数ある場合は、優先順位をつけて並べてみてください。

「大切にしたい価値観」が10も20もたくさんあるという会社もあるかもしれませんが、求める数が増えるほど採用できる対象者がどんどん少なくなってしまいます。

また、あらゆる価値観が一致する同質な人材だけを集めても、会社の強みや魅力は広がりませんし、世の中の変化にも対応できなくなります。

理想としてはこれだけは譲れないものを、優先順位の高い順にできれば3つ程度、せいぜい5項目くらいまでに絞ってみてください。他社は必ずしも優先しなくとも、自社としては優先的に採用したい価値観を共有できる人材が集まってくれる可能性が高いでしょう。

会社と価値観を共有できている人材は、入社してから簡単には辞めません。

4 “目指すこと”、“大切にしたいこと”の明示が、人を強く引き寄せる!

会社が“大切にしたいこと”=価値観が明確になったら、同時に会社が“目指すこと”=目的も、併せて言葉にしてみましょう。

会社が目指す目的は、企業理念を言葉にまとめている会社であれば、その中に書いてあるはずです。会社が目指す理想の姿としてどうなりたいのか、それが目指す目的です。

最近よく耳にする「パーパス(英語で目的、そこから派生して存在意義と訳しているケースもあります)」はこれに当たります。社会的存在としての目的のようにいわれていますが、自社が本気で目指していることであれば社会的存在としての云々でなくとも私はいいと捉えています。

さて、本人が「聞いていた話と違う」となることなく、「自社が本当に採用したい人に応募してもらう」方法の1つは、採用時に会社が“目指すこと”、“大切にしたいこと”を明示することです。

そんなものを明示したところで、応募者を引きつけられるものだろうか。中小企業や不人気の業界に応募者が増えるのだろうかと、不安に思われるでしょうか。

身近な例で考えてみましょう。あなたに“推し”たい(大好きな)対象がいて、でもすごくマイナーな存在だったとしましょう。

ジャンルは皆さんが趣味としているもので構いません。アーティストやアイドル、スポーツ選手やチーム、アニメや漫画のキャラ、敬愛する歴史上の人物、昔のクルマやバイク。何でもいいので世の中としてはマイナーな“推し”を、1つ(1人)思い浮かべてみてください。

マイナー過ぎて公言することには気後れしていたかもしれませんが、ここは思い切ってSNSでカミングアウトしてみましょう。SNSの素晴らしさは、一瞬で世界中の人とつながれることですよね。すると、同じように「こんな対象を“推す”人なんていないだろう」と思っていた人があなたを見つけて反応してくれます。

彼らからすればどうでしょう。「やった、同じ目的や価値観を共有できる仲間が見つかった!」となるはずです。世界中のあまたの人の中に、自分にとって本当に心を許せる友を見つけたような喜び。その人にとって、こんなに魅力的なことがあるでしょうか。

それらの“推し”は、ある意味で知る人ぞ知る中小企業(ほとんどの人は知らない)と同じです。「うちの会社の目的や価値観は、かなり特殊だから」と心配でしょうか。むしろそれくらいでいいのです。だからこそ強烈に共感して“推し”てくれる人材が見つかります。

5 上場後に幹部が一斉退職したA社を救ったのは、価値観を共有して入社した若手だった

私がかつて採用をご支援したA社の事例を紹介します。

A社はB社長が創業したレストランチェーンで、まだ店舗数も限られた中小企業でした。数年以内には株式上場を果たし、一気に規模も大きくしたいということで、まとまった数の新卒採用を成功させたいとのことでした。

私は取材を進めながら、オーナーであるB社長が“目指すこと”、“大切にしたいこと”を打ち出して、共感してくれる学生を集めましょうとご提案しました。

例えばこんな感じです。価値観はまずまず独特ですよね。

・目的/誰もが楽しめて感動できるレストランを作る
・価値観/結果次第で社長の給料さえ超えられるが、降格もある
 価値観/自分で手を挙げない限り昇給も昇格もできない
 価値観/会議では社長も店長も同じ1票
 価値観/上司を見るより、お客様を見ろ

これらの考え方を分かりやすく解説した冊子を用意して、広告やホームページで告知し、読んで共感した人は社長宛に手紙を書いて送ってほしいという形で募集をかけました。その代わり、送ってくれた全員に社長が直接会うという約束をして。

結果、学生の売り手市場の中、予想を大きく上回る数の熱い気持ちのこもった手紙が集まりました。社長は約束通り全員と会って話を聞き、その中から特に共感してくれた学生を中心に採用を決めました。

その後、A社は無事に株式上場を果たします。ところが、とんでもない事態が起こります。事前に経営幹部にも会社の株の一部を持ってもらっていたところ、彼らのほとんどが、株を売って独立し、会社を去ってしまったのです。一国一城の主を目指す人たちが集まる業界とはいえ、上場してこれからというタイミング。B社長は頭を抱えました。

すると、その姿を見ていた若手の店長たちが、B社長のところに来てこう言ったそうです。「社長、僕らは辞めません。社長の考え方に強く共感してこの会社を選んだのですから。大丈夫ですよ、僕らに任せてください!」彼らはあのときに採用した新卒たちでした。

その後若手の店長たちは幹部が抜けた穴を見事に埋め、成長しながら危機を乗り切ってくれたそうです。

ネットやSNSの時代には、会社が“目指すこと”=目的と“大切にしたいこと”=価値観を分かりやすく明示できれば、本当に共感してくれる人材に届けることができます。彼らは自分の目的と価値観に一致する会社を見つけて、「ここしかない」と思って応募してくれるはずです。

第3回を最後までお読みいただきありがとうございました。

ご紹介するヒントを参考にしながら、自社を退職する一人ひとりの「辞める理由」と、働いている一人ひとりの「辞めない理由」を丁寧に拾ってみましょう。見えてきた自社ならではの“課題”を解消し“強み”を活かせれば、『人が辞めない会社』へと変われるはずです。

次回も引き続き『人が辞めない会社、10のヒント』をご紹介していきます。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mailto:brightinfo@brightside.co.jp
https://www.brightside.co.jp/

※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。

『新スペシャリストになろう!』
https://amzn.asia/d/e8GZwTB
『なぜ社長の話はわかりにくいのか』
https://amzn.asia/d/8YUKdlx

以上(2025年9月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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【賃金データ集】 退職金のモデル支給額

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「退職金」(退職給付等の費用)です。

退職給付等の費用

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 退職金の位置付けと退職金制度の概要

1)退職金の位置付け

退職金とは、在職中の従業員の功労に対する報償や賃金の後払いといった意味合いで、企業が退職した従業員に支払う金銭です。退職金制度は、支払い形態、算定の考え方、掛け金の積立形態などによって幾つかの種類に分類されます。退職金制度の導入は企業の義務ではないものの、多くの企業が実施しています。

2)退職金制度の概要

主な退職金制度の種類は次の通りです。

退職金の位置付け

1.支払い形態

支払い形態は、次のように大別されます。

  • 退職一時金:退職金を一括で支給
  • 退職年金:退職金を年金として支給(「企業年金」とも呼ばれる)

2.算定の考え方

退職一時金の算定の考え方は、次のように大別されます。

  • 基本給連動型:算定基礎額(退職金を計算する基礎となるもの)を基本給とする制度で、一般的には、「退職時の基本給×勤続年数別係数×退職事由別係数(会社都合退職と自己都合退職)」によって退職金を算定するもの
  • 基本給非連動型:算定基礎額を基本給以外とする制度で、代表的なものは「ポイント制退職金制度」や「別テーブル方式(第二基本給)」など

 退職年金の算定の考え方は、「確定給付型:あらかじめ将来の年金支払額が決まっている制度」と、「確定拠出型:あらかじめ掛け金の額が決まっている制度」に大別されます。

3.積立形態

積立形態はさまざまで、それぞれ特徴があります。

積立形態

2 退職金制度の潮流

1)退職金制度の3つの機能

退職金制度は功労に対する報奨や賃金の後払いといった機能を持ちながら、終身雇用・年功序列の人事制度に組み入れられ、定着してきました。

現在有力とされている退職金制度の機能を整理すると次の3つになります。

  • 功労報奨:従業員の長年の勤務を慰労する
  • 賃金後払い:若年時の低い賃金を補償する
  • 生活保障:退職後の労働者の生活を援助する

2)これからの退職金制度

かつての退職金制度は、年功主義の下で賃金の後払い機能を持ち、従業員の定着率向上に寄与しました。しかし、定年まで1社に勤め続ける従業員が減った昨今では、こうした考え方は必ずしも実情に合わなくなってきており、実際、退職金制度の見直し(廃止も含む)を実施・検討している企業が少なくありません。

例えば、企業の負担軽減という視点で、前述の確定給付企業年金と確定拠出年金について考えてみましょう。確定給付企業年金は企業(基金)が将来の給付額を加入者に約束するという仕組みです。仮に予定通りの運用ができなかった場合、企業は追加拠出をして加入者を保護する必要があります。一方、確定拠出年金ではあらかじめ掛け金は決まっていますが、将来の年金給付額は運用期間中の従業員の運用成績によって決まるため、運用成績に対する企業の責任が軽くなります。退職金に係る企業の負担を軽減したいと考えている企業にとっては、確定拠出年金のほうが適しているといえるかもしれません。

また、従業員の多くは、「退職後の生活のために、ある程度の資産が欲しい」と少なからず考えています。退職後の生活を考えるためには、退職金の具体的な支給額を知りたいところですが、実際の退職金制度は、退職時まで支給額の実態が分からないなど、制度内容がブラックボックス化しているケースが少なくありません。こうした場合は、確定拠出年金のように、従業員が在職中に自らの裁量で利用して、資産を運用できる退職金制度にするのも1つの方法です。

ちなみに、退職金制度ではありませんが、従業員が自分で掛け金を決めて運用する「個人型確定拠出年金」(通称「iDeCo(イデコ)」)には、従業員の掛け金に追加して、企業が掛け金を拠出することができる「中小事業主掛金納付制度」(通称「iDeCo+(イデコプラス)」)という制度があります。退職金に充てる原資の一部を企業が拠出する掛け金に充てることなどで、従業員の資産形成のサポートが可能になります。

3 厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

4 日本経済団体連合会等の統計資料によるモデル支給額

日本経済団体連合会等の統計資料によるモデル支給額

5 東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

6 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は以下の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■就労条件総合調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/11-23.html

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■退職金・年金に関する実態調査結果■
https://www.keidanren.or.jp/policy/index09.html

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■中小企業の賃金・退職金事情■
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/toukei/koyou/chingin/

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以上(2025年8月更新)

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画像:ChatGPT

「内輪差・外輪差」を意識した安全運転(2025/9号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

日ごろの車の運転で「内輪差・外輪差」を意識していますか。例えば左折する際は、車両の左後方を走る二輪車の巻き込みや縁石への乗り上げなどに注意することが「内輪差」も意識した運転になります。

車が曲がる時の「内輪差・外輪差」を理解し、事故を起こさないための安全運転について考えます。

内輪差・外輪差

1 「内輪差・外輪差」とは

「内輪差・外輪差」とは、図1に示すように、車両が曲線を描くときの前輪と後輪の走行半径の差です。

図1.内輪差・外輪差

「内輪差・外輪差」は、計算ができます。ある乗用車を例に「内輪差」を計算すると次のようになります 。

ホイールベース:2.6m、トレッド:1.5m、最小回転半径:5mの場合、内輪差は、約1.03mとなります。

実際に運転をしているときの「内輪差」の目安は、ホイールベースの1/3といわれています。ホイールベースが2.6mであれば、内輪差は、約0.9mとなります。このように乗用車であっても、内輪差は1m程度あり、内側に二輪車が走行している場合には、空間を塞ぐ幅となります。

≪右振り左折に注意≫

「内輪差」を意識するあまり、生活道路などの狭い道で、図2のように、車の頭を右側に振って左折をするドライバーを見かけます。このような運転は、対向車との衝突や後続車からの追突のリスクがあります。

図2.右振り左折

2 駐車場での事故例

狭い駐車場は「内輪差・外輪差」に起因する事故が発生しやすい場所となります。

駐車出庫

バック入庫

次の点に注意して運転操作をしましょう。

  • スピードをしっかり落とす
  • 適切な位置まで前進・後進し、ハンドルをしっかり切り小回りをする
  • 左右のドアミラーも活用しながら周囲を確認する(巻き込み・外側突出部分の接触)

3 周囲を走る大きな車を意識した気配り

車体が大きい車は、図3に示す「オーバーハング」(バンパーや荷台など、タイヤからはみ出した車体の部分)が、曲がる際に周囲と接触するリスクがあります。

オーバーハング

そのため、車体が大きい車の周囲を走るときは、走行の妨害になったり、接触したりしないように気配りをすることが大事です。注意すべき事項を次に例示します。

交差点停止時

交差点直進時

カーブ走行時

大きな車を意識した周囲への気配りが、事故を起こさないための安全運転となります。

以上(2025年9月)

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画像:amanaimages