カスハラ対策を支援! 東京都のカスハラ防止対策奨励金のご紹介

奨励金とは、国や自治体などが事業主に対して、職場環境の整備、雇用の促進、企業立地など、特定の取り組みや行動を後押しする目的で支給する報奨的な性格を持つ支援金です。奨励金は一定の行動や取り組みを実施したことを要件としており、要件に該当すれば支給を受けられる可能性が比較的高い点が特徴です。

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正味現在価値法と内部利益率法の考え方/設備投資の成果チェック(5)

1 投資判断の精度を一段引き上げられる2指標

投資評価の判断で使う主な指標には、

  • 回収期間法
  • 投資利益率法
  • 正味現在価値法
  • 内部利益率法

の4つがあります。

前回(第4回)解説した回収期間法は「安全性」やどれだけ早く元が取れるかという「時間的な価値」に着目した指標であり、投資利益率法はどれだけ儲かるかという「収益性」に着目した指標でした。つまり、回収期間法では収益性が考慮されず、投資利益率法では安全性や時間的な価値が反映されません。

シリーズ最終回となる今回は、正味現在価値法と内部利益率法を解説します。いずれも

時間的な価値と収益性の両方を考慮した指標

で、投資判断の精度を一段引き上げてくれます。前回(第4回)と同じシミュレーション例(A案・B案・C案)を使いながら、考え方と計算の流れ、そして実務で使えるExcel関数までを整理していきます。

2 「時間的な価値」と「収益性」を両立した正味現在価値法

正味現在価値法は、

資金調達コストを基準に、将来得られるキャッシュ・フロー(回収額)を今の価値(現在価値)に直し、その合計が当初の投資額をどれだけ上回るかを見る指標

です。

時間的な価値を考慮するというアプローチは、キャッシュ・フローを得られるのが早いほうがいいという考え方に立っています。同じ1万円でも、「今すぐ手に入る1万円」と「1年後にもらえる1万円」では、どちらの価値が高いでしょうか。多くの人は、今すぐ手に入る1万円のほうがありがたいと感じるはずです。この感覚を数字で表したものが、割引計算です。

例えば、利率が5%とすると、今の1万円は、1年後には利息500円分増えて1万500円になります。つまり、今の1万円と1年後の1万500円は同じ価値だといえるのです。計算式にすると

1万円×(1+0.05)=1万500円

となります。これは、今の1万円を1年後の価値に直した計算です。

では逆に、1年後にもらえる1万円を、今の価値ではいくらかを考えてみましょう。この場合は、1万円を(1+0.05)で割ります。

1万円/(1+0.05)=約9524円

になります。2年後、3年後……の1万円も、年数分だけ割り引いていきます。例えば、5年後の1万円の計算は(1+0.05)で5回割り、

1万円÷(1+0.05)÷(1+0.05)÷(1+0.05)÷(1+0.05)÷(1+0.05)=約7835円

です。

5年後の1万円の計算

このように求めた今の価値を、正味現在価値(Net Present Value。通称「NPV」)といいます。なお、ここでは預金利息を使いましたが、企業の場合は借入金利などの資金調達コストを使うのが一般的です。なぜなら、少なくともその資金調達コストを超える分を、必ず稼がないといけないからです。

早速、次の事例(A案・B案・C案)を使って現在価値を計算し、比べてみましょう。ここでは、資金調達コストを10%とします。

NPVの計算

A案で見てみましょう。具体的には次のような数字になります。

-100+25/(1+0.1)+35/(1+0.1)2+50/(1+0.1)3+30/(1+0.1)4+35/(1+0.1)5
=-100+22.7+28.9+37.6+20.5+21.7(小数点第一位未満四捨五入で表記)
=-100+131.4
=31.4

ここで見ていただきたいのは、キャッシュ・フローの単純合計(割引計算をしない各年のキャッシュ・フローの合計)はC案のほうが大きいですが、正味現在価値(NPV)ではA案のほうが大きくなっています。これは、C案のキャッシュ・フローが4年目と5年目に多く、時間的な価値を考慮するとA案の方が有利であることを示しています。

正味現在価値法は、「収益性(どれだけ大きいか)」だけでなく、「時間的な価値(どれだけ早いか)」も合わせて評価できる点が特徴です。また、「大きさ」に時間調整は必要ですが、合計した数値で有利かどうかを判断できる点も、直感的で理解しやすいと言えます。

3 もう1つの重要指標「内部利益率法」

内部利益率法は、

回収額の正味現在価値の合計と当初の投資額が一致する利率を求める指標

で、Internal Rate of Return(インターナル レイト オブ リターン)、頭文字からIRRと呼ばれます。考え方は、先ほどの正味現在価値法と似ていますが、利率そのものを答えとして求める点が異なります。

事例(A案)を使って内部利益率法の式を書くと次のようになり、xを求めることになります。

-100+25/(1+x)+35/(1+x)2+50/(1+x)3+30/(1+x)4+35/(1+x)5=0

この「x」はどのように求めればよいのか。結論から言うと、実務ではExcelを使って計算するしかありません。正味現在価値は手計算できないこともありませんが、内部利益率を手計算で求めることは一般的には難しいです。実務では、ExcelのIRR関数(内部利益率を求めるための関数)を使うのが前提になります。IRR関数については、第5章で紹介します。

早速、事例(A案・B案・C案)を使って計算した内部利益率を比べてみましょう。

IRRの計算

ここでも、先ほどと同様、A案が最も利益率が高い(A案21.1>C案17.5>B案12.4)ため、A案が有利であることを示しています。

内部利益率法は、将来に入ってくるキャッシュ・フローを全て同じ重みで扱うのではなく、回収までに時間がかかるほど割引は大きくなる仕組みになっています。そのため、資金の回収が早い投資ほど有利に評価されやすく、同時に、投資全体の利回りも確認できるので収益性も加味されています。このことから、内部利益率法は「時間的な価値」と「収益性」の両方を1つの数値で判断できる指標といえます。

4 特徴が似た2つの指標の使い分けと投資効率の判断基準

正味現在価値法も内部利益率法いずれも、「時間的な価値」「収益性」両方を含めて評価できる指標です。この2つの指標がそれぞれ向いているのは、

  • 正味現在価値法は、投資額が同じか、または近い案件を比較するケース
  • 内部利益率法は、投資額の大きさが異なる案件を比較するケース

です。

なお、投資効率の目安としては、経済産業省が公表した『伊藤レポート2014』で示された ROE8%以上というものがあります。この数値を、資本効率改善の最低基準として参考にすることで、個別の投資案件が一般的に求められる利益水準と比べて十分かどうかを確認することができます。中小企業においても、この数値を一つの基準としておくと、投資判断がしやすくなります。

5 ダウンロードした実務で使えるExcel例とその解説

1)正味現在価値法

実務では、Excelを活用することがおすすめです。次のExcelでは、年ごとのキャッシュ・フロー(CF_青色背景の箇所)と割引率(下図のD5セル)を入力して正味現在価値を計算します。なお、Excelには、本リポートの計算例で使用した事例(A案・B案・C案)の数値を入れております。

【図表ダウンロード_WS:4投資評価の例 (現在価値)】

前述したように、手計算ではそれぞれの年度のキャッシュ・フローを現在価値に直し、全ての数字を合計します。しかし、Excelでは、NPV関数(正味現在価値を計算するための関数。A案の場合はC5セル)を使って一発でNPVの合計額(A案の場合は、D3からH3までの各CFを、D5に入力した割引率で割り引いた正味現在価値の合計額)が算出できます(A案の場合はC5セル)。複製する場合にはご参考ください。

=C3+NPV(D5,D3:H3)

2)内部利益率法

【図表ダウンロード_WS:5投資評価の例 (内部利益率)】

内部利益率法は、Excelを使うことが必須です。前述の通り、IRR関数を使っています(A案の場合はC6セル)。複製する場合にはご参考ください。

=IRR(C3:H3)

6 4指標が計算できるシミュレーション用Excelシート

最後に、これまで解説してきた4指標に加え損益計算やキャッシュ・フロー計算が計算できるExcelシートをご提供します(ダウンロードしてお使いください)。各項目の前提条件を変えることで、複数のパターンを試算することができます。また、各指標の計算式も入力されているので、シミュレーションごとの指標計算も自動で行えます。

【図表ダウンロード_WS:6】

以上(2026年1月作成)

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画像:apinan-Adobe Stock

2026年2月25日開催! 終活を見据えた資産承継・事業承継セミナー開催のご案内

2026年2月25日、きらやか銀行主催で「終活を見据えた資産承継・事業承継セミナー」を開催します。

参加費は無料です。ぜひご参加ください。

このセミナーでは、終活への備えと、民事信託を活用した資産承継・事業承継の手法について講演いたします。

このページの最後に、事業承継に役立つコンテンツも紹介しますので、ぜひご覧ください!

お申し込み締め切りは2026年2月20日(金)17:00です。
※定員は50名です。定員になり次第締め切る場合があります。

お申し込みフォームはこちらから(外部サイトへリンク)(先着順)


↑クリックで拡大表示↑

開催概要

  • 日時: 2026年2月25日(水)15:00~17:00(14:30受付開始)
  • 会場: きらやか銀行本社 3階大会議室
  • 参加費: 無料
  • 定員: 50名

プログラム

  • 14:30 受付開始
  • 15:00 開会挨拶 きらやか銀行 取締役頭取 西塚 英樹
  • 15:10 講演「終活への備えと民事信託を活用した資産承継・事業承継について」
    講師 株式会社クオリティ・トラスト 代表取締役 今泉 洋一氏
  • 17:00 セミナー終了予定

【本件に関するお問い合わせ先】

きらやか銀行 法人サポート部 担当:五十嵐・鈴木(陵)TEL:023-628-3822

きらやか情報ステーションでは、事業承継に役立つコンテンツも公開しています。ぜひご覧ください!

「仕事でやらかした人」が真っ先にやるべきこと

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【沈黙が正解】会議で手応えを感じたら、もう話さないほうがいい

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コーヒーはいつ飲むべき?「血糖値の乱高下」「睡眠不足」を招くNGタイミングとは

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税制改正で3年延長、中小企業の「企業版ふるさと納税」活用法

1 利用額増加により、3年延長された企業版ふるさと納税

税金負担の軽減効果が高いのに、多くの企業がまだ活用していない制度があります。それが 「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」 です。個人が対象のふるさと納税(個人版ふるさと納税)に比べ、知名度の低い企業版ふるさと納税ですが、年々利用が増えており、その実績を踏まえて、当初2024年度までだった適用期限が、2027年度まで3年延長されています。

ふるさと納税寄付額の推移

企業版ふるさと納税は、自治体が実施する認定事業に対して企業が寄附を行うことで、税金の負担を軽減できる制度で、

  • 寄附額の最大90%の節税効果がある(実質負担は約1割)
  • 地域貢献を通じて企業の信用力が向上する
  • 自治体との関係づくりから、新規事業や販路拡大につながりやすい

という、非常に費用対効果の高い仕組みです。特に、広告宣伝や新規事業開発に大きな予算を割きにくい中小企業にとっては魅力的です。

この記事では、「制度の仕組み・税金がどう軽減されるか」「活用するメリット」「注意点」を分かりやすく解説します。

2 実質、企業負担は1割で済む税制優遇のカラクリ

企業版ふるさと納税が注目を集める理由の1つが、寄附額の最大90%の税額控除等がある点です。損金算入と税額控除という2段階の税制優遇により、税金負担が軽減される仕組みです。

税金負担が軽減

まず、寄附した金額は損金(税務上の費用)算入できるため、その法人税の負担(約30%)が軽減できます。

さらに、残る部分については、法人住民税・事業税(一定の場合は法人税も対象)で税額控除(納めるべき税金そのものから寄附額の一部を直接差し引くことができる仕組み)が適用され、最大60%の負担が軽減されます。この2つを合わせると寄附額の最大90%が戻り、企業の実質負担はわずか約1割に抑えられるのです。

3 税制優遇以外にも3つのメリットが!

企業版ふるさと納税は多くの中小企業にとって、単なる寄附制度にとどまらない幅広いメリットをもたらします。

1.社会的信用やブランド価値が向上する

自治体の広報などで紹介される機会が増えるため、CSR(企業の社会的責任)に積極的に取り組む企業としての社会的信用やブランド価値が向上します。

2.新規事業や販路拡大につながる

自治体との関係構築を通じて、新しい市場との接点が生まれやすくなります。例えば地域産業との共同事業、6次産業化のサポート、自治体のDX推進など、連携をきっかけに、新規事業や販路拡大のチャンスが巡ってくるケースは少なくありません。

3.負担を抑えて地域貢献などができる

企業内部の資源を有効に活用できる点も大きな特徴です。企業版ふるさと納税は金銭による寄附だけでなく、

物納や人材派遣型による寄付(人件費相当額の寄附)も認められているので、在庫を寄附として提供したり、専門知識を持つ社員を派遣して地域課題の解決に貢献したりと、直接の現金支出を伴わずに地域貢献ができる

仕組みが整っています。これによって、企業にとって負担の少ない形で活動の幅が広がります。

4 経営者が気を付けるべき「落とし穴」

ただし、制度の優遇が大きい分、遵守すべきルールも明確です。特に、

寄附の見返りとして経済的な利益を受けることは禁止

されています。返礼品はもちろんのこと、寄附を条件とした受注や補助金の取得、商取引の優遇も認められていません。これに違反すると、税制優遇が取り消されるだけでなく、企業の信用を大きく損なうリスクがあります。

また、

本社が所在する自治体には寄附できない

点にも注意が必要です。さらに、寄附後に自治体と共同事業を行う場合でも、寄附がその対価とみなされないよう、手続きや契約内容の透明性を確保しなければなりません。

その他にも、

  • 自治体が実施する認定事業に対する寄附のみが対象で、企業側の選択自由度が低い
  • 寄附額は最低10万円以上でなければ認められない

といった点に注意が必要です。これらのルールと寄附の目的は地域貢献であるという本質を理解した上で、慎重に検討・活用することが不可欠です。

5 制度活用をおすすめしたい中小企業とは?

この制度との相性が良いのは、次のような企業です。

  • 地域での知名度を高めたい企業
  • 新規事業の開拓を検討している企業
  • IT・マーケティング・財務など、専門性の高い人材を抱える企業
  • 過剰在庫を抱える製造業・小売業

ただし、寄附先の選定では「自社との相性」が何より重要です。例えば、IT企業であれば自治体のデジタル化支援、製造業であれば環境や地域産業の振興など、自社の強みが活かせる分野を選ぶことで、寄附が単なる支出ではなく、未来の事業創造につながる投資となり得ます。

以上(2025年12月)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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退職金制度のお悩み5選 「昔に定めた退職金額が高すぎる」など

退職金制度は日本企業に古くから存在する制度ですが、社員の働き方が大きく変化する中(定年まで1つの会社に勤め続けることが減った、社員以外にも働き方の選択肢が増えたなど)、退職金制度の運用に悩んでいる経営者は少なくありません。

この記事では、社労士監修のもと、中小企業にありがちな「退職金制度のお悩み」5選と、その解決のヒントをご紹介します。

1 (お悩み1)昔に定めた退職金額が高すぎる

最初に紹介するのは中小企業から特に寄せられやすいお悩み、「昔に定めた退職金額が高すぎる」というものです。例えば、

バブル期(好景気の頃)に退職金規程を作り、今の水準に照らすと「高すぎる」退職金額を設定したが、その後は長期不況が続き、昔に定めた額での支払いが負担になっている

というケースなどがあります。経営者からすると

  • 資金繰りにも影響が出るような状態は一刻も早く脱したい
  • でも、社員からの反発や労働基準監督署の目が心配で、退職金規程に手をつけにくい

というのが心情でしょう。この「高すぎる退職金」問題、はたしてどのように向き合えばいいのでしょうか?

【解決のヒント】

バブル期の水準で退職金を支払い続けるのが厳しい場合、例えば、

退職金規程を変更し、会社にとって負担の少ない制度を新たに導入する

というアプローチが考えられます。

とはいえ、社員に対する支給額が下がるのであれば、それは「労働条件の不利益変更」になり得ます。退職金規程(就業規則)の変更によって退職金額を減額する場合、

社員に対して変更が必要な経営上の理由を十分に説明し、支給対象者から個別の同意(注)を得て変更に踏み切る

必要があります。

(注)一応、合理的な理由・対応であれば、個別の同意がなくても過半数労働組合(または過半数代表者)の意見を聴いた上で変更が可能ですが、退職金制度でこれを行うのはかなりリスキーです。

ただ、個別の同意を得るとしても、社員側は退職金を見越して将来に向けた生活設計をしていたり、高額な住宅ローンを組んでいたりする可能性もあり、高齢社員などを中心に、受け取れるはずだった退職金を急に減額されることに反発する社員は少なくないはずです。会社の状況によってアプローチの方法は異なりますが、平和的な解決を目指すのであれば、

既存の社員については今の退職金制度をそのまま適用し、新たに採用する社員については新制度を適用する

という方法はいかがでしょうか? この方法であれば、既存の社員が不利益を被ることはなくなります。

2 (お悩み2)退職金と賃金、どちらを充実させるべき?

転職が当たり前になり、定年まで勤める社員が減った昨今では、退職金制度を廃止する会社が少なくありません。実際、中小企業の退職金制度の導入率は、2024年時点で64.2%。2014年は78.9%で、10年間で14.7ポイント低下しています(東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」)。そして、退職金制度を廃止する場合、一般的な退職金原資の使い道として、時には廃止に伴う労使間交渉の代替案として、「毎月の賃金に上乗せすること」が考えられます。

ところで、退職金をなくし、毎月の賃金に上乗せすることについて、社員はどう考えているのでしょうか? パーソル総合研究所が20~64歳の正社員2500人に対して実施した調査によると、「退職金を賃金に上乗せすることに肯定的(否定的)な人の割合」は、

  • 20代(488人):肯定33.2% > 否定26.4%
  • 30代(577人):肯定27.7% > 否定27.2%
  • 40代(652人):肯定24.7% < 否定32.2%
  • 50代(641人):肯定18.6% < 否定33.7%
  • 60代(142人):肯定19.7% < 否定38.0%

となっています(パーソル総合研究所「賃上げと就業意識に関する定量調査(2025年11月13日)」)。20~30代は退職金を賃金に上乗せすることについて肯定的な人が多い一方、40代以上は否定的な人が多いようです。退職金と賃金、はたしてどちらを充実させるべきなのでしょうか?

【解決のヒント】

若手社員が「はるか先の退職金よりも目の前の賃金を上げてもらいたい」と考えるのは無理からぬことですし、高齢社員が「もうすぐ退職なのに、このタイミングで退職金を下げられるのはちょっと……」と考えるのも理解できます。この場合、折衷案的なアプローチとして、

賃上げと退職金制度の実施を同時に行う

という方法が考えられます。

例えば、企業型DCを導入している場合、

賃金の一部を、引き続き賃金(手当など)として受け取るか、企業型DCの掛金にするかを社員が選択できる「選択制DC」

という制度があります。今の収入を多くしたい社員などは賃金として受け取り、将来に備えたい社員などは掛金にすることを選択するというものです。

選択制DC

賃金として受け取力を選択した場合、今の収入は増えますが、

賃金の上げ幅によっては、社会保険の標準報酬月額(月例賃金を一定の金額幅で区分したもの)が上がり、社員と会社の社会保険料負担が増える

可能性があります。逆に、掛金にすることを選択した場合、当然賃金は減りますが、その分、社会保険料負担なども下がる可能性があります。また、

掛金として受け取る場合、拠出時・運用時・受給時にさまざまな税制優遇が受けられるのに対し、賃金として受け取る場合、その分の金額は「給与所得」として課税対象になる

という違いがあるので、このあたりも社員に丁寧に説明した上で、どちらで受け取るのかを選択してもらうのがよいでしょう。

3 (お悩み3)社内積立と社外積立、どちらがいい?

退職金の積立形態は、大きく

  • 社内積立:銀行預金などで、退職金の支払い原資を積み立てる方法
  • 社外積立:生命保険商品(養老保険など)や中退共(中小企業退職金共済)、企業型DCなどを活用して、社外で退職金を積み立てる方法

に分けられます。

自由度が高いという理由から社内積立で対応している中小企業は多いですが、一方で自由度が高い分、「会社の資金繰りが苦しくなったときに退職金の原資に手を付けてしまう」などの問題が起こるリスクもあります。そう考えた場合、社外積立に切り替えるべきでしょうか?

【解決のヒント】

社内積立と社外積立のメリット・デメリットを整理すると、おおむね次のようになります。

社内積立と社外積立のメリット・デメリット

簡単にまとめると、

  • 社内積立は、制度の柔軟性が高い代わりに、設備投資などで原資を使ってしまって「資金不足」などになりやすい
  • 社外積立は、「(退職金)を支払うべきときに払える」状態をつくりやすく、税金上のメリットも大きい代わりに、制度の柔軟性は低く、法改正などにも常に気を配る必要がある

といえます。どちらを選ぶかは会社次第ですが、両方のメリットを活かすために、社内積立と社外積立を併用するケースもあります。

4 (お悩み4)社員がすぐに退職し、中退共の掛金が戻らない

退職金を支給するに当たって、「一定の勤続年数」を支給要件としている会社は少なくありません。例えば、入社3年未満の社員が自己都合で退職した場合は、支給率を「0」とし、退職金を支給しないといった具合です。

ただ、退職金を支払わない場合でも、その退職金のために積み立てたお金が会社に戻ってこないケースがあります。社内積立であれば基本的には問題ありませんが、例えば、

中退共の場合、社員が加入後1年未満で退職すると、退職金は支給されず、掛金も事業主に戻らない(1年を超えて退職金が支払われた際、退職金額が掛金納付額を下回っていても、その差額は戻ってこない)

というルールがあります。そうなると、掛金は掛け捨てにするしかないのでしょうか?

【解決のヒント】

中退共は共済制度(プール方式)なので、会社に掛金が戻ってくるケースは、事務上のミス(過払い、重複加入など)があった場合などに限定されます。基本的に掛金は戻ってこないと考えたほうがよいです(他の長期加入者への退職金原資に組み込まれるという対応が取られる)。

一方、例えば企業型DCの場合、その年金規約の内容によっては「事業主返還」が適用される可能性があります。

事業主返還とは、規約に定めた要件(勤続3年未満での退職など)に該当する退職社員のDC資産が、会社が負担した掛金額を限度として返還される制度

のことです。社員の平均勤続年数などに照らして、掛金が無駄にならない制度に切り替えたいのであれば、移行を検討するのもよいかもしれません。もっとも事業主返還については、

  • 年金規約に定めがない場合は実施されない
  • DC加入期間が3年未満でも勤続年数が3年以上の場合など、対象外になるケースがある

といった注意点があります。事業主返還の対象期間や返還資産額の算定方法なども会社ごとに異なるため、事前に年金規約の内容を確認することをおすすめします。

5 (お悩み5)パート等にも退職金を支払わないとダメ?

退職金について「正社員には支給するが、パート等には支給しない」という運用をしている会社は、以前は少なくありませんでした。しかし、現在はパートタイム・有期雇用労働法などにより

同一労働同一賃金(正社員でもパート等でも「同じ働き方をしているなら、同じ待遇にしなければならない」)

が法制化され、こうした対応は難しくなっています。とはいえ、退職金の支給対象者が増えると、コスト面が心配なのも事実。何か対策はあるのでしょうか?

【解決のヒント】

同一労働同一賃金の基本は、

  • 仕事の内容などが同じなのに、パート等であるという理由だけで正社員よりも低い労働条件にすることはできない(均等待遇)
  • ただし、成果や能力に基づく待遇格差は、合理的なものであれば問題ない(均衡待遇)

です。具体的には、正社員とパート等の間で「職務の内容」「職務の内容・配置の変更範囲」「その他の事情(成果、能力、経験など)」を勘案して待遇を決定します。つまり、退職金の支給対象者の増加による会社負担が心配であれば、まずは

パート等の仕事の内容、成果、能力などを洗い出し、適正な退職金額を検討する

というのが基本的なアプローチになります。いくらが適正な退職金額かは判断が難しいですが、少なくとも「パート等だから一律で退職金を支給しない」という運用は、違法になるリスクが高いといえます。

もう1つ、会社負担を軽減する方法として、

キャリアアップ助成金の「賞与・退職金制度導入コース」を活用する

というものが考えられます。これは全てのパート等(非正規社員)を対象とする賞与・退職金制度を導入し、支給または積み立てを実施した場合に受け取れる助成金で、次の額を定額で受け取れます。

賞与・退職金制度導入コース

要件としては、

  • コースの実施日の前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局に提出する
  • 全てのパート等を対象とする退職金制度を新たに設ける
  • パート等を3カ月以上雇用し、制度の新設後、さらに6カ月以上継続雇用する
  • 退職金については、1カ月分相当として3000円以上を6カ月分または6カ月分相当として1万8000円以上積み立てる
  • 退職金の積み立て後6カ月目の賃金支給日の翌日から2カ月以内に支給申請する

などが挙げられます。申請書の書き方や添付書類などについては、こちらをご確認ください。

厚生労働省「キャリアアップ助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

以上(2026年1月作成)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:琢也 栂-Adobe stock

【かんたん消費税(10)】価格の表示ルール守っていますか? 消費税の総額表示義務

1 知っていますか。価格の表示ルール

消費税については、商品やサービスの価格の表示ルールが決まっています。これを「総額表示義務」といい、事業者が消費者に価格を表示する場合は、

消費税額を含めた価格(税込価格)で表示しなければならない

ことになっています。

総額表示義務は、消費者が、

  • 会計するまで実際に支払う金額が分かりにくい
  • 全く同じ商品でも、お店によって税抜表示だったり税込表示だったりした場合、金額の比較をするときに誤解される可能性がある

ことから、設けられたルールです。

総額表示をしないで税抜表示のままにしていても消費税法の罰則はありませんが、景品表示法という別の法律に違反している場合があります(この場合には罰金が科されることがあります)。また、消費者からの信頼を損なう原因にもなりますので、もし税抜表示のままにしている場合には、すぐに総額表示で対応するようにしましょう。

2 値札だけではない総額表示の対象

1)総額表示の対象となる媒体は?

消費者に対して価格の表示をする場合は、どのような形態の媒体でも総額表示の対象になります。

一番代表的なものは、商品に貼られている値札や陳列棚に記載されている価格などですが、その他にも次のようなものが挙げられます。

総額表示の対象となる媒体

2)総額表示の対象とならない取引はあるの?

総額表示が義務付けられているのは、

事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合

です。つまり、

不特定多数の人に対して価格を表示するときが対象となるため、事業者と事業者との間の取引(事業者間取引)は対象にならない

のです。また、特定の人を対象に作成される「見積書」「契約書」「請求書」なども対象とはなりません。

ただし、

「見積り例」としてホームページで公開する場合

などは、不特定多数の人に向けたもののため、総額表示の対象となるので注意しましょう。

3)具体的にはどうやって表記すればいいの?

総額表示義務は、商品の税込価格を表示することを「義務付けている」ものです。そのため、記載されている金額は税込価格であることが前提ですので、

価格を記載するときに「税込」などと表示する義務はない

ことになります。しかし、全てのお客様に総額表示義務の知識が浸透しているとは言い切れないため、トラブルを避ける意味では「税込」と表示しておいた方がよいでしょう。また、税込価格が表示されていれば、「税抜価格」「消費税額等」「消費税率」などを併記しても構いません。しかし、

  • 税抜価格を強調し、税込価格は小さく表示する
  • 税抜価格を強調し、税込価格は薄く表示する

といったことは、総額表示義務を果たしているとはいえません。お客様との無用なトラブルを避けるためにも、誤解を招く表示はやめましょう。それぞれ総額表示OKの例とNGの例を紹介しますので、ご参考ください。

総額表示OKの例

総額表示NGの例

3 ケースで解説。消費税の表示ルール

1)テイクアウトも行っている飲食店ではどのように表示すればいいの?

飲食店などの中には、店内飲食とテイクアウトの両方を提供している店舗もあると思います。

店内飲食の場合は消費税率が10%、テイクアウトの場合は消費税率が8%になるので、税抜価格は同額でも、税込価格では価格に差が出ます。いずれの場合も税込価格を表記する必要がありますので、このような場合は、

  • 店内飲食用のメニューとテイクアウト用のメニューを分けて作成する
  • 店内飲食用とテイクアウト用の税込価格を、メニューに分かりやすく併記する

ようにしましょう。

店内飲食とテイクアウトの併記例

2)「メーカー希望小売価格」はどのように表示すればいいの?

製造業者や輸入総代理店などの小売業以外の業者が、自社の供給する商品について、いわゆる「希望小売価格」を設定し、商品カタログなどに表示している場合があります。

この「希望小売価格」の表示は、

小売店が消費者に対して行う価格表示ではない

ため、「総額表示義務」の対象にはなりません。しかし、小売店が、

「希望小売価格」をそのまま自社の販売価格にしている場合は「総額表示義務」の対象になる

ので注意しましょう。もし、希望小売価格が税抜価格になっている場合には、陳列棚の値札や店内POPなどによって税込価格を分かりやすく表記するようにしましょう。

3)商品本体のパッケージなどに税抜価格が表示されている場合にはどうするの?

総額表示が義務付けられているのは、消費者が商品などを購入する際、

「消費税額を含む価格(支払総額)」が一目で分かるようにするため

のものです。

そのため、個々の商品本体に印刷されている価格が税抜価格のみの表示になっていたとしても、陳列棚の値札や店内POPなどによって、

商品の「税込価格」が一目で分かるようにしておく

ことによって、問題になることはありません。このようなケースの対応例を挙げておきますので、ご参考ください。

パッケージなどに税抜価格が表示

4)値引き販売をするときの表示はどうすればいいの?

自社の商品などを値引き販売する際、表示価格の「〇割引」あるいは「〇円引き」と表記することがありますが、この表記自体は「総額表示義務」の対象とはなりません。

しかし、値札などに、「表示されている値引き前の価格」や、「値引き後の価格を表示する」場合には、価格を「総額表示」としておく必要があるので注意しましょう。

以上(2025年12月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:kai-Adobe Stock

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以上(2026年1月更新)

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画像:日本情報マート