【分かりやすい原価計算(4)】 固定費の配賦と直接原価計算~固定費を製品に割り当てるのは難しい~

書いてあること

  • 主な読者:これから原価計算を勉強する中小企業の経営者や従業員
  • 課題:製品と直接紐づけできない固定費の配賦は難しく、また製造数量が変化すると1個当たりの製造原価が変わってしまう
  • 解決策:価格を決めるときは、製造原価のうちの変動費だけを集計して、製品の原価を計算する「直接原価計算」を活用する

1 変動費は製品に紐づけできるけど、固定費は紐づけできない

今回は、

固定費の配賦:製品との紐づきが明らかではない費用を、何らかの基準で割り当てること

における実務の難しさを見ていきます。なお、本シリーズでは「変動費と直接費」「固定費と間接費」を、それぞれ同じものとして扱います。

変動費/固定費、直接費/間接費の分け方については、次の記事をご確認ください。

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このケースのPLを作成すると、前回紹介した財務会計PLと管理会計PLになります。

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ここで、1箱当たりの製造原価を考えてみましょう。

1箱当たりの変動費は、製品に紐づけできます。直接材料費が1500円、外注費が500円となり、変動製造原価は2000円となります。

次に固定費を考えてみます。工場の従業員の給料、工場の地代家賃や機械の減価償却費などの固定製造原価が年間1200万円かかります。これらは、製品との関係が明らかではなく、紐づきが間接的にしか分からないような費用です。このため、利用度に応じた配賦基準が必要となります。ここでは、

製造数量を配賦基準

に考えてみましょう。5000箱を製造したので、

1200万円÷5000箱=2400円

となります。1箱当たりの製造原価は、変動製造原価+固定製造原価なので、

2000円+2400円=4400円

となります。

2 1箱当たりの製造固定費は製造数量で変わる

次に、8000箱を製造して販売した場合を考えてみましょう。損益計算書はこのようになります。

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そして、1箱当たりの変動費は5000箱を製造して販売した場合と同じで、変動製造原価は2000円となります。

次に固定費です。先ほどと同様、製造数量を基準に配賦すると、

1200万円÷8000箱=1500円

となります。1箱当たりの製造原価は、変動製造原価+固定製造原価なので、

2000円+1500円=3500円

となります。

このように固定費を製造数量で割り当てると、製造数量が増えるほどに1箱に割り当てられる固定費が減って、原価が安くなります。これが、経済学の「規模の経済」につながります。図にすると、このようになります。数量が増えれば1箱に割り当てられる固定費の金額が下がるのをイメージしてください。

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増産すれば「規模の経済」が働くというのは、感覚的に分かりやすいかなと思います。ただ、1箱当たりの製造原価が、製造数量によってころころ変わってしまうと困るのではないかと考えられた方もいるかもしれません。

その通りで、1箱当たりの製造原価から販売価格を決めようとする場合には、使い物にならない、また、使っても毎年変わってしまうのではないか心配になってしまいます。そんな状況では、価格なんか決められないですよね。

ここで、製品の販売価格の決め方について見ておきます。販売価格の決め方には、マーケット・アプローチとコスト・アプローチとがあります。マーケット・アプローチは、顧客が自社製品に対してどれだけの価値を認めて、どれだけの金銭を払ってくれるかという視点から価格を決める方法です。

一方、コスト・アプローチは、経費を積み上げて製造原価を計算して、そこに儲けたい利益を上乗せして価格を決める方法です。いずれの方法もどちらか一方というわけではなく、両方の視点から考えるのが経営者の見方ではないでしょうか。

具体的には、マーケット・アプローチによって価格を決めたとしても、そこで出てきた価格が自社の製造原価で適正な利益を出せるかどうか検討する必要があります。利益が出ないのであれば、製造・販売するわけにはいきません。このため、製造原価が製造数量によって変わってしまうことは、やはり問題となります。それではどうすればいいのでしょうか。経営では、

目標となる製造数量をイメージしておく

必要があります。そこで、会社としての通常の製造数量で固定費を配賦したケースを考えながら、価格を決めていくなどの工夫をしていくというのが実務といえます。

製造原価を正しく計算することの難しさを感じていただけたでしょうか。

そして、右肩上がりの時代であれば、増産により「規模の経済」が働き製造原価が下がるため、固定費はあまり意識する必要なく過ごせます。しかし、これからの低成長時代や、新型コロナウイルス感染症の拡大などのように、製造数量が減少する局面で利益を見誤ったり、価格設定を間違えたりしないためにも、固定費の配賦が大事ということを押さえておいてください。

3 固定費の配賦をしない原価計算「直接原価計算」

このように固定費を製品に配賦することには難しさがあります。そこで、固定費の配賦をやめてしまおうと考えたのが「直接原価計算」と呼ばれるものです。ここでは、直接原価計算の概念を見ていきましょう。

今まで見てきた

変動費だけでなく固定費も製品に配賦し、全ての製造原価を集計して、製品の原価を計算する方法を「全部原価計算」

と呼びます。一方、

製造原価のうちの変動費だけを集計して、製品の原価を計算する方法を直接原価計算

と呼びます。全部原価計算による損益計算書と直接原価計算による損益計算書を見てみましょう。

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そうです。全部原価計算による損益計算書は財務会計の損益計算書、直接原価計算の損益計算書は管理会計の損益計算書と同じになります。

先ほどの例で考えると、5000箱製造しても、8000箱製造しても変動製造原価は、直接材料費が1500円、外注費が500円の2000円です。これを製品の原価とするということです。製品と紐づけができない固定費は計算に含めないため、とてもシンプルな計算になります。

ただ、税務申告や外部報告のために決算書を作成する場合には、全部原価計算が前提とされています。このため、直接原価計算で計算をした場合は、製品の原価が少なく計算され、その金額をそのまま使うわけにはいきません。

また、前回も説明したように、変動費と固定費の分け方に100点満点はあり得ません。このため、人によって変動費と固定費の区分が違ったり、準変動費と準固定費といったものが含まれたりすることによって、結局1箱当たりの製造原価には恣意的な部分が残ってしまいます。

このように原価計算には絶対的な正解がないということを理解しつつ、経営者の経営判断に役立つという大事な目的を第一に置いて、まずはやってみるという考えで取り組んでいただけたらと思います。

以上(2024年2月更新)

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【分かりやすい原価計算(3)】管理会計PLとCVP分析~原価計算に特有の費用の分け方~

書いてあること

  • 主な読者:これから原価計算を勉強する中小企業の経営者や従業員
  • 課題:財務会計PLだけでは、自社の体質などは分析できない
  • 解決策:管理会計PLをもとに、CVP分析・損益分岐点分析を行い、自社の売上と利益の関係などを把握する

1 「変動費」と「固定費」を分ける管理会計PLのカタチ

今回は、管理会計の損益計算書(以下「管理会計PL」)を見ていきます。管理会計PLと聞いて身構える必要はありません。なぜなら、管理会計PLの話は前回から始まっています。変動費と固定費を分けた損益計算書のカタチが、管理会計PLです。

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普段見慣れている財務会計の損益計算書(以下「財務会計PL」)からおさらいしていきましょう。まず、売上高、そこから製造活動の費用である売上原価を引いて、売上総利益を出します。この売上総利益は粗利(アラリ)とも呼ばれ、経営者が気にする代表的な利益の一つです。粗利から販売費及び一般管理費(以下「販管費」)を引いて、営業利益を出します。

次に、管理会計PLです。

管理会計PLでは、売上高から引く売上原価と販管費を変動費と固定費に分ける

というのが特徴です。そして最初に、売上高から変動製造原価と変動販管費といった変動費を引いて、限界利益を出します。

この限界利益から固定製造原価、固定販管費といった固定費を引いて、営業利益を出します。売上高と営業利益は財務会計PLと同じ金額になります。実務的なコツとして、

限界利益によって固定費を回収する感覚

を持っていただくと良いでしょう。固定費というのは売上高が増えても減っても変わらないので、決まった額が発生します。それを売上高に連動する限界利益で回収していきます。限界利益で固定費を全額回収すれば、その先の売上で利益が発生していくのです。

この管理会計PLの例で、変動費1500万円を売上高4000万円で割ると、0.375。この会社の売上に対する変動費の割合(変動費率)は37.5%となります。

また、限界利益2500万円を売上高4000万円で割ると、0.625。売上に対する限界利益の割合(限界利益率)は62.5%となります。

管理会計PLは、費用を変動費と固定費とに分けて、売上高から変動費を先に引いて、限界利益を出すというのが肝になってくるのですね。

上記のケースでは、次のことがいえます。

  • 「限界利益率が62.5%ということは、売れて手元に残るのは約6割だけ」
  • 「固定費が1700万円ということは、これを必ず回収しなくてはいけない」

自社の変動費と固定費を計算し、管理会計PLを作るだけではもったいないので、ぜひ、

その先にある数字の「意味合い」にまで落とし込むこと

が、会計の活用につながります。

2 CVP分析で売上高の変動に対する利益の変動が分かる

続いて、変動費と固定費を分けることによってできる「分析」について説明していきます。皆さんは、「CVP分析」や「損益分岐点分析」という言葉を聞いたことがあると思います。どちらもほぼ同じ意味であることが多く、ここでは「CVP分析」と呼ぶことにします。

CVP分析は自分の会社の「体質」を把握することに役立ちます。特に、会社の利益が出るか出ないかが容易に分かる損益分岐点売上高を求めることができます。損益分岐点売上高とは、

売上高と費用が一致して、利益がプラスマイナス0、トントンになる売上高

のことをいいます。さらには、売上が上がったり下がったりした場合に、利益への影響がどのくらいあるかということもCVP分析を通じて分かります。

例えば、A社とB社の売上が、ともに10%下がったにもかかわらず、A社の利益は25%も下がり、B社の利益は15%だけ落ちていました。なぜこのようなことが起こるのかを知るにも、CVP分析は役立つのです。

自分の会社はA社とB社のどちらに近いのかをあらかじめ把握しておくことはとても大事です。つまりは、売上高が減少した場合に、利益がどれだけ減ってしまうかを把握すると言い換えることもできます。

3 どっちが利益を出しやすい体質か?

CVP分析は、ざっくりいえば、

費用、売上高、利益の3つの関係を把握して、将来の予測をしましょう

ということです。費用、売上高(営業量)、利益を英語でいうとCost(コスト)、Volume(ボリューム)、Profit(プロフィット)となります。この頭文字を取って「CVP分析」と呼びます。まずは、前提知識のおさらいです。

  • 利益=売上高-費用 
  • 費用=変動費(※)+固定費 ※変動費は、変動費率×売上高

利益は、売上高から費用を引くことで求められます。この費用を売上高に連動する変動費と、売上高に連動しないで決まった額が発生する固定費とに分けます。そして、変動費は「変動費率×売上高」として表し、これに固定費を足すと費用になります。ここでいう変動費率とは、売上高に対する変動費の割合のことをいいます。

それでは、イメージ図を見てみましょう。

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横軸を売上高、縦軸を金額とします。ここに、売上高と費用の線を引いています。これがCVP分析のイメージ図になります。

まず、斜め45度の線が、売上高線となります。横軸の売上高1に対して、縦軸の売上高の金額も1になるので、角度が45度の直線で表されます。

次に費用を見ていきます。売上高が0のところでも発生している部分が固定費になります。固定費は売上高0円でも1000万円でも、同じだけ発生します。これに対して、変動費は売上高が増えれば連動して増加します。このため、固定費の上に「売上高×変動費率」で計算される変動費が乗っかるように引かれた斜めの線が、費用線となります。

売上高が1増えるのに対して増加する変動費の割合が変動費率になり、費用線の傾きになります。例えば、売上高100に対して仕入などの変動費が35のときは、変動費率が35.0%となり、費用線の傾きは35度となります。

この売上高線と費用線が交わるところが損益分岐点売上高です。売上高と費用が同じ額になり、損益がトントンになる売上高を表します。

ここでポイントとなるのは、変動費は売上高との比率(%)で見るのですが、固定費は額でみるところです。変動費と固定費のバランスがどのように利益に影響するのか、次の2つの特徴を理解しておきましょう。

  • 変動費の割合が高い場合、固定費が少ない分、少ない売上でも利益が出ます。しかし、損益分岐点売上高を超えても、変動費が多くかかるので、売上が増加する割に、利益はあまり増えなくなります。
  • 固定費の割合が高い場合、固定費が多い分、多くの売上を上げないと利益が出ません。しかし、損益分岐点売上高を超えると、変動費が少ないので、利益が大きく増えていきます。

具体的に考えてみましょう。グラフのA社とB社は、現在、同じ売上高と同じ利益を出しています。

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しかし、グラフの(1)を見ると、固定費の金額を表す切片(左側の縦軸と直線が交わる点)がA社の方が上にあることから、固定費はA社の方がB社よりも高いことが分かります。一方、2本の直線の傾き(グラフの(2))を見ると、A社の傾きの方が緩やかなので、傾きが示す変動費率は低いことが分かります。

このことが示す意味合いはとても大事ですので、ぜひ理解してください。

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まず、固定費が高額で変動費率が低いA社は、売上が少ないうちは利益がなかなか出ません。グラフからも、売上を示す直線が下方向に遠く離れていることで、損失が多いことが分かります。一方、売上が増え、損益分岐点売上高を超えてからは逆です。今度はA社の直線よりも売上の直線は上方向に遠く離れますので、利益が多く上がるようになるのです。

つまり、A社は固定費が多い分、初めは利益を出しづらいのですが、売上が増えてくると一転して、利益が出やすい体質となります。

B社は逆です。固定費が少ないため、初めから利益が出やすいのはうれしいものの、売上が増えてくると、利益がA社に比べて伸びないのです。

4 固定費と変動費では同じ経費削減でも効果が違う?

ここで費用を削減した場合の、CVP分析のイメージ図を見てみましょう。

1)固定費を削減した場合

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固定費を削減した場合は、費用線がその分だけ下に動きます。このため、損益分岐点売上高も下がり、縦軸で表される利益も、固定費の削減額だけ増えます。例えば、現状では、工場の敷地に余分なスペースがある場合に、適切な広さのところに引っ越すというようなことが考えられます。

2)変動費を削減した場合

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変動費を削減した場合は、売上高に対する変動費の割合、変動費率が下がります。このため、費用線の傾きが緩やかになります。これにより、やはり損益分岐点売上高が下がります。そして、売上を増やすほどにその効果は上がっていきます。例えば、比較的安価な海外メーカーの材料に切り替えるなどが当てはまります。

このように、CVP分析のグラフを見ると、変動費の削減と固定費の削減はそれぞれ違った意味合いを持つことが分かります。

以上(2024年2月更新)

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【分かりやすい原価計算(2)】原価の区分~原価計算特有の費用の分け方

書いてあること

  • 主な読者:これから原価計算を勉強する中小企業の経営者や従業員
  • 課題:原価計算特有の費用の分け方は、「直接費と間接費」「変動費と固定費」の2つ
  • 解決策:中小企業の原価計算・管理会計において、「直接費と変動費」「間接費と固定費」は同じと考えてもよい

1 原価を分解すると見えてくる利益のカタチ

それでは前回と同様に、回転寿司店で利益や1皿当たりの原価を考えてみましょう。まず、月の利益がトントンになる売上高・販売数量(皿)はどれくらいでしょうか。考える際の前提条件は以下の通りです。

  • 販売単価(皿当たり):100円
  • 材料費(皿当たり):ネタは65円、シャリは5円
  • その他、料理人の人件費(1カ月当たり):21万円
  • 寿司ロボットのリース代(1カ月当たり):24万円

1皿食べてくれる(売れる)と、材料費を引いて、いくらもうかるでしょうか?

販売単価100円-材料費(65円+5円)=30円

何皿食べてくれると、人件費・家賃が賄えるでしょうか?

(人件費21万円+リース代24万円)÷1皿当たりの利益30円=15000皿

15000皿×100円=150万円

この150万円が月の利益がトントンになる売上高、いわゆる「損益分岐点売上高」です。仮に、1家族4人で、1人が10皿ずつ食べてくれるとすると、1家族40皿となり、

15000皿÷40皿=375家族

と計算できます。つまり、1日で、12家族(≒375家族÷31日)が来店してくれると利益がトントンになるということになります。

2 販売数で変わる1皿当たりの原価

1)15000皿売れた場合の、1皿当たりの原価

ネタやシャリの材料費は、1皿当たり(70円=ネタ65円+シャリ5円)がはっきり分かります。

しかし、人件費やリース代はそう簡単にはいきません。人件費は1カ月当たり21万円、リース代は1カ月24万円かかります。これらの費用は、お寿司の売れ行きに関係なく、つまり何皿売れたかにかかわらず決まった額が発生します。このため、1皿当たりどれだけの費用がかかったかは正確には分かりません。

では、どうするかというと、ここでは1カ月15000皿売れれば利益がトントンになるということなので、この販売数で1カ月の人件費とリース代を割って、1皿当たりの費用を出すことにします。

  • 人件費(1皿当たり)は、21万円÷15000皿=14円
  • リース代(1皿当たり)は、24万円÷15000皿=16円

これで全ての原価について、1皿当たりの計算ができました。このように、原価計算や管理会計では、もともとある数値を目的に合わせて基準を設定し、加工することが必要になります。1カ月15000皿売れた場合の1皿当たりの原価は、

材料費70円+人件費14円+リース代16円=100円

となります。

2)30000皿売れた場合の、1皿当たりの原価

ネタやシャリの材料費(1皿当たり)は、30000皿のときも同じで、65円+5円=70円です。人件費とリース代は、それぞれ、

  • 人件費(1皿当たり)は、21万円÷30000皿=7円
  • リース代(1皿当たり)は、24万円÷30000皿=8円

となります。

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このように、販売数によって1皿当たりの原価は変わってきます。そして、販売数が増えるほどに、1皿への割り当てられる費用が減って、原価が安くなります。これが、経済学の「規模の経済」につながる話です。

3 原価計算で使う費用の分け方1:直接費と間接費

上記を見ていただいて気付かれた方もいらっしゃるかもしれません。費用によって1皿当たりへの割り当て方が違ってきます。実は、原価計算を行うため、また、管理会計の手法を活用していくための準備として、それぞれの費用を大きく2つに分ける必要があります。

まず、製品との関係が直接紐づく費用です。これを、「直接費」と呼びます。もう1つは製品との関係が分かりづらく、紐づきが間接的にしか分からないような費用があります。これを「間接費」と呼びます。

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原価を計算する場合、直接費は製品に直接割り当てることができます。これを、直課と呼びます。回転寿司の原価でいえば、ネタ、シャリが直接費に当たります。これらは、1皿ごとに費用を割り当てることができます。

一方で、間接費は製品との紐づきが明らかではないので、何かしらの基準で割り当てるしかありません。これを配賦と呼びます。回転寿司の原価でいえば、人件費やリース代がこれに当たります。先ほどは、販売皿数で1皿ごとに割り当てていきました。

人件費やリース代のいずれも、販売皿数には連動しないで決まった額が費用としてかかっています。このため、販売皿数によって1皿ごとの費用が変わってくるのです。

4 原価計算で使う費用の分け方2:変動費と固定費

もう1つ原価計算、管理会計に特有の費用の分け方があります。具体的には、費用について「売上と連動するかどうか」という点に注目します。

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まず、売上が増えたり減ったりすれば、それに連動して同じように増えたり減ったりする費用を「変動費」と呼びます。もう1つは、売上に連動しない費用です。つまり、売上が増えても減っても関係なく、決まった額だけかかってしまうような費用を「固定費」と呼びます。実務でも比較的使われる言葉ですので、皆さんも一度は聞いたことがあるかもしれません。

また、先ほどの直接費と間接費と似たような感じをうけられた方もいるかもしれません。このシリーズでは学問的な正確性は置いておいて、中小企業の原価計算・管理会計において、直接費と変動費、間接費と固定費は、同じと考えていきましょう。

5 変動費と固定費を分けるのは手間がかかる?

それでは、会社の損益計算書から費用を変動費と固定費に分ける方法を見ていきましょう。これには主に2つの方法があり、「勘定科目法」と呼ばれる方法と、「最小二乗法」と呼ばれる統計的な方法とがあります。

ここでは、基本であり、手間が少ない勘定科目法を見ていきます。なお、もう1つの統計的な方法は、エクセルで簡単にできて実務での使い勝手も良いものです。すでに勘定科目法に取り組んでいる方は、トライしてみるのもお勧めです。

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勘定科目法は、試算表の中で、勘定科目によって、これは変動費、あれは固定費かなというふうに分けていく方法です。なかには同じ科目の中に売上に連動する項目と、連動しないで決まった額が発生するものの両方が含まれていることもあります。その場合は、さらに細かく、総勘定元帳まで遡って見ていくこととなります。

6 業種別の勘定科目の情報がとても参考になる

勘定科目法を使うにあたって、事業内容が理解できているベテランの方であれば、比較的簡単に変動費と固定費を分けていけるのではないでしょうか。ただ、経理経験の浅い方や事業内容の理解がまだまだであると、判断に迷ってなかなか作業が進まないことにもなりかねません。

そのようなときには、中小企業庁が出している変動費と固定費の分解の情報が参考になります。

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製造業、卸・小売業、建設業という3つの業種別に、勘定科目ごとに変動費と固定費に分けられています。

例えば、卸・小売業の場合に、売上原価は変動費、販売員給料手当は固定費となっています。また、卸売業では車両燃料費は50%が変動費で、残り50%が固定費というように、勘定科目の中に変動費と固定費が混在しているものにも対応しています。

さらに、これを見ると同業種の勘定科目ごとの変動費・固定費の傾向が分かるので、比較することで自分の会社の特徴が理解できるようになります。

7 100点満点はあり得ない。悩まずにやってみる!

ここで1つ大事なのが、変動費と固定費の分解はあまり悩みすぎないということです。

そもそも変動費と固定費というのは、100点満点の正解があるわけではないからです。例えば、工場の電気代や水道代なんかも、普通、製造量が拡大すれば増えていくはずです。しかし、実際は基本料金のようなものも含まれていて、決まった額発生する部分と、売上や製造活動と連動する部分に分かれています。これを準変動費と呼びます。

また、固定費の中にも、ある一定水準までは定額だけれど、それを超えると、もう1ランク上の金額で定額になるというような準固定費と呼ばれるものがあります。

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「まずはあまり悩まないでやってみる」というのが、中小企業の実務を知る立場からのアドバイスです。まずは分けてみて、実際に使ってみて、役に立つかどうか。活用した後で、調整していく進め方で十分といえます。

以上(2024年2月更新)

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【分かりやすい原価計算(1)】原価の範囲~赤字覚悟!? どこまでが原価に含まれているの?

書いてあること

  • 主な読者:これから原価計算を勉強する中小企業の経営者や従業員
  • 課題:原価計算の書籍には、中小企業の現場では使わない論点も数多く掲載されている
  • 解決策:まずは、原価とは何か、どのようなものが該当するのかを知る

1 原価計算は何のためにするもの?

原価計算は、モノやサービスを作るのにいったいどれだけ費用がかかったかを知る手法で、会計などの分野にも必要な考え方です。会計は目的ごとに、

  • 税務会計:納税額を計算
  • 財務会計:株主などに向けて会社の状態や業績などを報告
  • 管理会計:自社の将来の意思決定のための資料

の3つに分かれ、いずれも原価計算が関わってきます。

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税務会計と財務会計では、決算期末の仕掛品などの在庫を決算書に計上するために必要となります。この在庫を基に売上原価が計算され、その後の利益計算が行われていきます。

一方、将来を予測し、将来を変える会計といわれる管理会計でも、原価計算の考え方は重要です。例えば、経営者は「物価高による解約で売上が2割落ちる見込みだが、利益はいったいいくらになるのか」「資金繰りは大丈夫なのか」といったことが心配になります。これらの疑問に答えるのに、自社のモノやサービスにいったいどれくらいお金がかかっているのかが全く分からないというのでは話になりません。原価計算の考え方を通して、将来の活動の方向性を示していくことができるように、会社の体質を把握していかなければなりません。

この会社の体質を、経営者、経理や財務だけでなく、あまり全体の数字には携わっていない営業担当者や製造担当者とも共有しておくことが大事です。各現場で全社として正しい判断ができるようになるでしょう。

書店に行くと、原価計算の体系化された書籍や新しい知識が盛り込まれた書籍が数多くあります。しかし、その中には中小企業の現場では使わない論点も数多くあるように感じます。本シリーズでは、このような膨大な情報の中から、中小企業の経営者や従業員が現場に落とし込むのに必要な情報を抜き出し、紹介していきます。

2 本当に赤字覚悟か? 原価で見るモノやサービスの値段

街中の飲食店で「赤字覚悟!」とうたい、スペシャルメニューの大盛りラーメン、ステーキやお寿司などを提供しているのを見たことがあると思います。お店が赤字になるぐらいギリギリの値段で、お客さんにはとてもお得というような宣伝文句として使われます。

この場合の赤字(その反対は黒字)には、どのような意味があるでしょうか。赤字・黒字というのは、利益のあるなしを示す言葉です。経営では、まず会社のもうけを増やすことを考えます。このもうけ、つまり利益は、

売上−費用=利益

の計算式で表すことができます。この費用の中に、

モノやサービスを作るための「原価」が含まれているのです。

少し身近な例(回転寿司店)で原価の範囲を考えてみましょう。回転寿司のお寿司の原価には何が含まれるかイメージしてみてください。ざっくり次のようなものがイメージできるのではないでしょうか。なお、次章の解説につなげるため、グループ分けしています。

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赤字覚悟と言われると、売上からネタやシャリなど材料費だけを引いたものが赤字スレスレとなっていると感じるかもしれませんが、実際は違います。なぜなら、材料費だけではなく料理人の給料や店舗家賃、電気代などの水道光熱費もかかっているからです。数字の仕事をされている方は、ちょっと立ち止まって、

どこまでの原価を費用に入れて赤字覚悟なのだろうか

と考えてみるのもよいでしょう。

3 決算書から読める原価はどれ?

原価のイメージができたところで、さっそく決算書(損益計算書と製造原価報告書)を見ていきましょう。

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損益計算書の「売上原価」に含まれている項目(製造原価報告書の当期製品製造原価)が、モノやサービスを作るための原価です。なお、製造原価報告書とは、原価を集計し、当期に完成した製品の原価(製造原価)を計算する決算書をいいます。売上原価には、材料費、労務費、外注費、経費といったモノやサービスを作るためにかかった費用が含まれます。図表2でいえば、1から8までが売上原価になります。

また、これ以外に本社の人件費や広告宣伝費といった販売や管理をするための費用として販売費及び一般管理費(以下「販管費」)があります。図表2でいえば、9と10が販管費になります。

原価計算では、狭い意味での原価としてモノやサービスを作るためにかかった「売上原価」、広い意味での原価として、さらに販売や管理にかかった費用を加えた「売上原価+販管費」と表現します。

損益計算書の営業外収益・営業外費用、特別利益・特別損失は、原価計算の対象にはなりません。これらは、モノやサービスを作るためや販売・管理をするための費用、つまり営業活動にかかる費用ではないからです。

以降では、モノやサービスを作るための直接的な費用である「売上原価」を原価(狭い意味での原価)として説明していきます。

4 原価は3つ+αで構成される

原価は、何のために使った費用かということで、まず材料費、労務費、経費の3つに分類されます。

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さらに、経費の中に含まれる外注費は別枠で把握していきます。外注費というのは、自分の会社ではできないことを、他の会社や人に依頼してやってもらう場合に発生する費用です。自分の会社ではできないというのは、技術がなくてできないケースもあれば、まさに自社の本業だけれども、仕事の依頼が多すぎて人が足りないためできないというケースもあります。

自社のみで仕事を回すほうが、一般的に利益率は高くなります。このため、損益予測をしたり、決算分析で前期比較や予算比較をしたりする場合も、外注費がどれくらいかかっているかというのは重要になってきます。

例えば、建設業で前期よりも売上は20%上がったが、利益率が落ちているというケースで考えてみましょう。経営者は、仕事の効率が落ちてしまっているのかと心配になるかもしれません。そのときに見てもらいたいのは、外注費が多くなっていないかということです。仕事が会社のキャパ(許容範囲)よりも多くなってしまうと、どうしても外注に回す必要があります。外注する場合、自社だけで仕事を回すよりも一般的には利益率は落ちてしまいます。なので、自社で仕事をした分の効率が落ちていなければ、外注に回した仕事が増えたことによって全体の利益率が落ちることは問題ありません。

このように外注費は個別に把握すべき費目といえるので、

原価は材料費、労務費、外注費、経費という区分で考える

ことが大切なのです。

以上(2024年2月更新)

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【回答付き】東京-新大阪間の新幹線でコーヒーはどれだけ売れる? フェルミ推定でざっくりつかむ

書いてあること

  • 主な読者:数字によって判断ができるようになりたい営業担当者、若手社員
  • 課題:数字による判断といっても、どのような方法があるのか分からない
  • 解決策:フェルミ推定と原価計算の方法を押さえることで、ビジネスプランの精度が高まる

1 見えない答えを探す前にイメージしてみよう

営利法人である以上、もうけなければ意味がありません。そのため、

もうかりそうなビジネスをいち早く見つけて試してみることが大切

です。やってみなければ分からないのはリスクですが、時間をかけすぎれば競合他社に先を越されてしまうかもしれません。そこで、

本当に初期の検討では、「ニーズはどれくらいありそうか?」をざっくりと検討し、いけそうなら解像度を高めていくアプローチ

が必要です。

そして、本当に初期の検討で役立つのが「フェルミ推定」です。フェルミ推定とは、

正確な値を導き難いことについて、実際に把握できている値を基に推計すること

です。フェルミ推定は有名なIT企業などが採用面接で使ったことなどで話題になり、知られるようになりました。フェルミ推定の例として挙げられる問題は色々ありますが、例えば、

東京-新大阪間の新幹線でワゴン販売のコーヒーは何杯売れるか?

というのもそうです。実は、2023年10月をもって東海道新幹線のワゴン販売は終了しているのですが、興味深い問題であることに変わりはありませんし、何より筆者がワゴン販売のパーサーに聞いた答えがあるので、この問題を紹介します。なお、答えは最後に紹介しているので、皆さんの推定との違いを確認してみてください。

さて、話を戻します。こうした「答えようがない」と感じる問題について、関連するデータを使って論理的に答えを考えるフェルミ推定の癖がつけば、ビジネスの意思決定がスピードアップしますし、把握しなければならない大切なパーツも分かってきます。そして、ある程度情報が固まってきたところで、原価計算などをして精緻化していけばよいのです。

この記事では、御社の意思決定のスピードアップと精度向上を図るために、フェルミ推定と原価計算の考え方を紹介します。

2 東京-新大阪間でコーヒーは何杯売れる?

ここではコロナ禍の影響を考慮せずに、「東京-新大阪間の新幹線でワゴン販売のコーヒーは何杯売れるか?」を考えてみましょう。この質問に対して、

  • JRの社員でないと分からない
  • 気温などの条件によるから一概に答えられない
  • 何となく100杯!

などと答えているようでは失格です。実際に把握できている値から答えを考えるのがフェルミ推定だからです。

早速、入手できる情報などを組み立てて、それなりに根拠のある数字を導いてみましょう。この問題で、座席数、乗車数、購入率は重要そうな値です。この中ではっきり分かるのは座席数で、残りは予想するイメージです。例えば、ざっくりと次のような感じでしょうか。

  • 座席数:1360席(85席(縦17列×横5席)×16号車)
  • 乗車数:1088人(1360席×80%)※乗車率を80%とした場合
  • 購入率:15%

となると、東京-新大阪間の新幹線で販売されるワゴン販売のコーヒーは、

163.2杯(1088人×15%)

となります。コーヒー1杯を300円とすると、東京-新大阪間でワゴン販売のコーヒーは、

4万8960円(163.2杯×300円)

売れることになります。ここに新幹線の運行本数を掛けたり、他の商品もフェルミ推定したりすることで、「新幹線におけるワゴン販売市場」のイメージが湧いてきます。もちろん、本格的に市場調査をする場合は、天候(暑ければホットコーヒーは売れない?)や運行時間(平日の朝はコーヒーが売れる可能性が高い?)などの条件を考慮していきます。

なお、この事例のように小さな数字を積み重ねていくアプローチだと、実際の数字との乖離(かいり)が生じやすいので、乗車率や購入率などの重要なポイントは、ヒアリングやアンケートによって妥当性を確認するようにしましょう。

3 原価計算の考え方で原価を推定する

1)原価計算の考え方

フェルミ推定によって、ざっくりとビジネスの規模をつかむことができます。こうして理解が進んできたら、次はより細かい部分に突っ込んでいきます。フェルミ推定の結果、東京-新大阪間におけるコーヒーのワゴン販売の収益は4万8960円でしたが、原価はどれくらいかかっているのでしょうか?

ワゴンではコーヒー以外にもさまざまな商品を販売しているため、コーヒーの販売に関連する原価だけを抽出するのは簡単ではありません。また、原価の種類もさまざまです。そこで登場するのが原価計算です。原価計算には難しいイメージがありますが、ここでは基本的な考え方を紹介します。

原価計算では、原価を材料費、労務費、経費に大きく区分します。これを商品(製品)・サービスの製作や提供に対し直接的に発生しているか否かにより直接費と間接費に区分します。最後に、区分した原価群を直接費は直課し、間接費は一定の基準に従って按分(あんぶん)します。原価の種類のイメージは次の通りです。こうすると、ビジネスで発生している原価を俯瞰(ふかん)することができます。

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なお、費用別(材料費、労務費、経費)の原価は厳密にはさらに細かく分けられます。具体的には、

  • 材料費:原料費、買い入れ部品費など
  • 労務費:賃金、賞与、福利厚生費など
  • 経費:光熱費、減価償却費、保険料など

といった具合です。また、間接費の按分基準については、間接費の発生の要因に応じて色々と考えられます。コーヒーのワゴン販売の事例では、

販売員のコーヒーの販売にかかる時間や販売回数

などが考えられます。

2)コーヒーのワゴン販売における原価の考え方

では、東京-新大阪間におけるコーヒーのワゴン販売の原価を考えていきましょう。まず、コーヒー豆、カップ、ポットが直接材料費となります。販売員の労務費はコーヒーの販売だけで発生するわけではないので、直課できない間接労務費となります。この他、販売員の制服代やワゴン代が間接経費となります。これらの間接費は、何らかの基準に従っての按分が必要です。

ここでは、原価の大部分は直接材料費と間接労務費で構成されると考えます。

コーヒーの原価は販売価格の10~20%程度といわれます。ここでは15%と仮定して、

7344円(4万8960円×15%)

とします。また、間接労務費は時給1000円のパートが4時間稼働して4000円、その50%を配賦すると、

2000円(1000円×4時間×50%)

となります。

販売員の4時間稼働は、東京-新大阪間の運行時間である2時間30分に、ワゴンへの商品の積み込みなどの準備時間を見込んだからです。また、50%を配賦したのはワゴン販売回数全体に占めるコーヒー販売の回数を50%の比率と予想したからです。計算された原価は9344円(7344円+2000円)となり、東京-新大阪間におけるコーヒーのワゴン販売は3万9616円(4万8960円-9344円)の利益を生むことになります。

4 回数を重ねて精度を高める

限られた情報の中でも、一定の根拠をもってもうかるか否かを素早く判断する。この力を養うために、フェルミ推定と原価計算を紹介してきました。これを実践することで、難しそうな原価計算も少し身近になるでしょう。

とはいえ、根拠のない思い込みでフェルミ推定をしても意味がありません。世界と日本の人口やGDPの比較、主要産業の規模や話題の数字などはその都度確認し、フェルミ推定で使えるようにする必要があります。また、新聞やニュースで気になったことを題材にフェルミ推定を行い、答え合わせをすることでスキルが向上します。

いかがでしょうか。事業計画を練るには、最終的に細かな原価計算が必要です。しかし、いきなり細かくて骨の折れる原価計算をするより、フェルミ推定で当たりをつけて、その答え合わせをするように原価計算を行うほうが楽しいのではないでしょうか。

5 答えは何杯?

筆者が2023年5月に、実際に東海道新幹線のワゴン販売のパーサーに聞いたところ、

乗車率100%の場合、東京から新大阪までの間で60~70杯のコーヒーが売れる

ということでした。もちろん、天候や時間帯などの要素もあるでしょうが、そうしたことを無視すれば、購入率は約5%(座席数を1360席の場合)となり、この記事の推定の3分の1だったということになります。

なお、ワゴン販売の終了はパーサーの人手不足の問題も大きいようでした。パーサーが足りなければ、新幹線内を往復できる回数が減り、結果として販売機会を失ってしまいます。この辺りまで考慮してフェルミ推定をした方がいたら、すごいです!

以上(2024年2月更新)

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画像:pixabay

【中堅社員のスピーチ例】自動車が進化しても人力車は残り続ける

今どきはさまざまな分野のテクノロジーが、めまぐるしい勢いで進化しています。例えば、自動車の分野では、二酸化炭素を出さない電気自動車の開発や、交通事故を防ぐための自動運転技術の研究が進んでいます。

こうしたテクノロジーの進化は、社会に必要不可欠で歓迎すべきものですが、一方でこうした話につきものなのが「新しいものが出てきたら、古いものの価値はなくなってしまうのか」という問題です。最近、これについて考えさせられた出来事があったのでお話しします。

先週の休日、私は人生で初めて人力車に乗りました。客が乗るための台座に2つの大きな車輪がついていて、台座とつながれた柄を俥夫(しゃふ)というドライバーが引いて進む、あの人力車です。

ちょうど観光地にいたため、試しに乗ってみたのですが、これがとても乗り心地がいい! 台座の座席はフカフカですし、人が引いて走るがゆえに、ちょうど心地よい速さの風を浴びることができます。台座から観光地の景色を眺めながら、俥夫の人が観光名所のガイドをしてくれますし、名所に着いたら人力車に乗った状態で写真まで撮ってくれました。

俥夫の人が言うには、最近は新型コロナに対する規制が解除されてインバウンドも増えた影響で、人力車の客足が大きく伸びていて、海外から来た人にも慣れない英語を使いながら、観光を楽しんでもらっているそうです。

人力車が発明されたのは、明治時代。江戸時代に用いられた籠(かご)よりも速く、一方で馬車よりもコストを抑えられる乗り物として注目を集めました。鉄道や自動車が普及するにつれて、その活躍の場は狭まっていきましたが、明治時代に登場してから150年以上が経過しているのに、今なお人力車は世に残り続けています。なぜでしょうか。それは、人力車の提供する価値が「速さ」から「楽しさ」に変わったからだと思います。

さっきもお伝えした通り、人力車ではドライバーさんが客である自分だけのために車を引き、観光名所のガイドや写真撮影をしてくれます。今回、私は利用しませんでしたが、最近ではアイドルを特別な俥夫として招き、そのアイドルのファンを客として乗せるサービスもあるそうです。人力車に乗るのは数十分から長くて数時間程度ですが、その短い時間の中で味わえる「特別感」により、人力車は今も愛され続けているのです。

私たちは、新しいものを吸収する傍ら、古いものを「悪いこと」のように見る傾向があります。もちろん、古いものに固執するのは良くありませんが、1つの価値尺度だけで古いものを断罪してしまうのも、それはそれで視野が狭すぎます。私たちの提供する商品・サービス、あるいは仕事を進めるためのツールなどの中にも、今はあまり使われていなくても、戦うフィールドを変えれば新たな価値を見いだせるものが、まだまだたくさん眠っているはずです。

以上(2024年2月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

17次公募は令和6年2月13日から申請受付開始!ものづくり補助金のご紹介

中小企業等を支援する国や自治体の補助金・助成金事業では、雇用・人材開発・IT補助・コロナ支援など幅広いジャンルの支援があります。
本レポートでは、おすすめの補助金・助成金について支援の内容や対象条件、申請方法等についてわかりやすく紹介します。

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なぜ、解雇した社員の賃金を支払わなければならないのか? 不当解雇で発生する「バックペイ」のリスク

書いてあること

  • 主な読者:解雇が無効となった場合に発生する「バックペイ」について知りたい経営者、人事労務担当者
  • 課題:いつからいつまでの賃金なのか、金額はどれくらいなのか?
  • 解決策:解雇が無効となった場合、「解雇してから、その社員が職場に復帰するまで」の賃金が発生。裁判が長引きそうなら和解などでの解決も検討

1 解雇が無効になった場合に発生する「バックペイ」

解雇に関するトラブルは多く、裁判で解雇が無効(不当解雇)となるケースも少なくありません。その場合、

会社は社員に対し、解雇期間中の賃金(バックペイ)を支払う義務

を負います。通常、会社が社員を解雇した時点で労働契約は終了するので、賃金を支払い義務はなくなります。しかし、解雇が無効になると、労働契約は終了しなかったことになるため、解雇期間中(会社が社員を解雇してから、社員が職場に復帰するまで)の賃金を支払う必要が出てくるのです。解雇した時点に遡って賃金を支払うことから、「バックペイ」と呼ばれます。

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解雇期間中、社員は働きません。そのため、会社は社員が働いていないのに賃金を支払わなければならず、裁判が長引けば金額も大きくなってしまいます。

逆に、バックペイのルールをしっかり理解しておけば、

「解雇が無効になったら、どのぐらいの額の支払いが必要になるのか」をシミュレートし、裁判が長引きそうな場合、和解などで解決を図る

といった対策を講じることができます。以降でポイントを確認していきましょう。

2 バックペイの根拠は民法にあり

前述した通り、解雇が無効になると、会社は働いていない社員に賃金を支払う必要があります。それは、民法第536条第2項に、

債権者の責めに帰すべき事由により、債務者が債務を履行できなくなった場合、債権者は反対給付(債務者に対する給付)を拒めない

という旨の定めがあるからです。バックペイの場合、次のような関係になります。

  • 債権者=会社
  • 債務者=社員
  • 債権者の責めに帰すべき事由=不当解雇
  • 債務の履行=労務の提供
  • 反対給付=賃金の支払い

つまり、会社が社員を不当解雇したせいで、社員が労務を提供できなくなった場合、会社は賃金の支払いを拒めないとなるわけです。ただし、社員が会社に対し、労務を提供する(債務を履行する)意思があることがこのルールの前提なので、例えば、

社員が「会社に戻るつもりはないが、解雇自体は不服だ!」といって訴訟を起こした場合などは、バックペイの支払いは不要(不当解雇に関する損害賠償などは別)

です。ちなみに、社員が解雇期間中、別の仕事に就いていた場合に、会社に復帰する意思があるといえるのかどうかがよく問題になりますが、この点については第5章で説明します。

3 解雇期間中の全期間で賃金が発生するのが原則

バックペイの対象となる期間を、日給月給制(1カ月単位で賃金を計算し、働いていない時間分は控除する)の場合で考えてみます。会社が社員を解雇し、その後裁判で解雇が無効になった場合、その社員は、

  • 原則:解雇期間中の全労働日を出勤したとみなし、賃金の支払いが必要
  • 例外:解雇されなくても就労できなかったであろう期間は、賃金の支払いは不要

となります。就労できなかったであろう期間とは、

  • 私傷病により療養していた期間
  • 産後8週間の期間(母体保護のため、労働が原則として禁止されている期間)

などです。

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4 通勤手当や賞与など、一部は支払わなくてもよい

バックペイとして支払う賃金は、原則として

社員が解雇されなかった場合、確実に支払われたであろう賃金

です。ですから、毎月、固定給として支給される基本給はもちろん、諸手当(役職手当、家族手当、住宅手当など)についても確実に支払わなければなりません。一方、過去の裁判例の中には、

賃金の一部(通勤手当、残業代、賞与など)は、バックペイに含まなくてもよい

と判断したものがあります。

1.通勤手当

通勤時の交通費を補てんするために支給される通勤手当については、

交通費の実費弁償的な性質があるので、実際に就労していなければ請求できない

と判断した裁判例(名古屋高裁昭和56年4月30日判決など)があります。

2.残業代

時間外勤務の実績に応じて支払われる残業代については、

時間外勤務を命じられて現実に勤務をして初めて発生するため、実際に時間外勤務をしていなければ請求できない

と判断した裁判例(東京地裁平成7年12月25日判決など)があります。ただし、固定残業代のように、残業時間に関係なく定額で支給する残業代については、バックペイの対象になります。

3.賞与

半年に1回など、通常の賃金とは別に支給される賞与については、

業務成績等を個別に査定した上で賞与を支給する場合、実際に査定を受けていなければ請求できない

と判断した裁判例があります(東京地裁平成18年1月23日判決)。逆に、個別の査定を行わずに賞与を支給する場合、バックペイの対象になると判断した裁判例もあります(福岡地裁平成21年6月18日判決)。

このように賃金の一部はバックペイから除外できる可能性がありますが、注意が必要なのが

バックペイの総額は、「平均賃金×60%以上×解雇期間中の所定労働日数(解雇されなかった場合、就労できたであろう日数)」を下回ってはならない

という点です。これは、労働基準法第26条の「休業手当(会社都合で社員を休業させる場合に支払う手当)」のルールをバックペイに適用したものです。平均賃金は、

解雇期間初日の直前3カ月間の賃金総額÷直前3カ月間の総日数

で計算しますが、この場合の賃金総額には、通勤手当や残業代も含まれるので要注意です(3カ月を超える期間ごとに支給する賞与は賃金総額に含めない)。

5 解雇期間中に他社で働いていたらどうなるの?

第2章で、バックペイの前提は、その社員が会社に復帰する意思があることだと説明しました。では、解雇期間中に社員が他の仕事に就いていたらどうなるのでしょうか。これについては、

解雇期間中の収入が解雇前に比べて低く、また他の仕事に就く前から一貫して解雇の無効を訴えていることなどから、復帰の意思がある

と判断した裁判例(東京高裁平成31年3月14日判決)や、

他社に就職しつつも、解雇前の会社に復帰できるよう住所を維持していたり、再就職した会社をすぐに退職することが可能と証言していたりすることから、復帰の意思がある

と判断した裁判例(東京地裁令和4年3月16日判決)などがあります。つまり、解雇期間中に他の仕事に就いていても、会社への復帰の意思が即座に否定されるわけではないとうことです。ただし、社員が

解雇期間中に収入を得ていた場合、その額をバックペイの額から控除することは可能

です。もっとも、前述した通り、バックペイの総額は「平均賃金×60%以上×解雇期間中の所定労働日数」を下回ってはいけないので、控除額には限界があります。また、仕事による収入の控除は認められますが、社員が在職中、雇用保険に加入していた場合、

雇用保険の「失業手当」などの給付額は、バックペイの額から控除できない

ので注意が必要です。

以上(2024年2月作成)
(監修 弁護士 田島直明)

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画像:taa22-Adobe Stock

【健康経営】男性も注意の「更年期障害」。産業医が教える中高年世代へのアプローチ法

書いてあること

  • 主な読者:中高年世代の社員の「更年期障害」が気になっている経営者・労務担当者
  • 課題:更年期障害になるとどうなる? 会社としてどう対応すればいい?
  • 解決策:加齢により性ホルモンの分泌量が減り、体やメンタルに不調を来す。更年期障害の正しい知識を社内に周知しつつ、産業保健や福利厚生などのサポート体制を整える

1 温厚だった社員が突然、感情的に?

温厚だった社員が急に怒りやすくなったり、強い口調になったりして、びっくりしたことはありませんか? なかには、他の社員に暴言を吐いてパワハラになりかけたなんて事例も……。こうした事態の原因の1つかもしれないのが「更年期障害」です。

更年期障害とは、簡単に言うと

加齢により性ホルモンの分泌量が減ることで起きる、体やメンタルの不調のこと

です。症状はさまざまですが、ささいなことで反射的に怒ったり、唐突に感情が昂ぶって涙を流したりするなど、精神が不安定になるというものがあります。更年期障害の症状は、

早ければ40歳を過ぎたころから顕在化し、女性だけではなく男性もなり得る

もので、女性のピークが50代前半、男性のピークは50代後半といわれています。会社は社内の男女比率に関係なく、対策を講じる必要があるでしょう。

具体的には、

  • 更年期障害の正しい知識を社内に周知すること
  • 産業保健や福利厚生などのサポート体制を整えること

が大切です。更年期障害に詳しい現職の産業医がポイントを解説します。

2 更年期障害の正しい知識を社内に周知する

1)更年期障害の原因と主な症状

前述した通り、更年期障害は加齢により性ホルモンの分泌量が減少することで発症します。女性の場合、「エストロゲン」という女性ホルモンが、閉経の前後数年間(40代~50代ごろ)に急激に減ることで症状が表れます。一方、男性の場合、「テストステロン」という男性ホルモンが、30代ごろから緩やかに減ることで症状が表れます。

性ホルモンが減少すると、「幸せホルモン」といわれるセロトニンなども不足し、精神の安定が崩れてイライラするようになります。また、メンタルだけでなく、体温が上がりやすくなり、だるさも強くなるなど、体にも不調を来します。主な症状は図表1の通りです。

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性機能障害(ED)、生理不順以外の症状は男性・女性で共通する症状が多いですが、

  • 女性の場合、「のぼせや顔の火照り」「異常な発汗」などに悩まされやすい
  • 男性の場合、「抑うつ」「性欲の低下」などに悩まされやすい

という傾向があります。

2)更年期障害の治療法の例

更年期障害の疑いがあって医療機関を受診する場合、女性の場合は「婦人科」の更年期外来、男性の場合は「内科」や「泌尿器科」の男性更年期外来などが窓口になるでしょう。また、メンタルの不調が主な悩みであれば、「心療内科」や「精神科」も選択肢となり得ます。

更年期障害の治療法は、症状に応じた薬剤の投与や生活習慣の改善指導など、さまざまあります。薬物療法の場合、代表的な治療法が「ホルモン補充療法」です。女性の場合はエストロゲン、男性の場合はテストステロンを補充するというもので、通常、

  • 問診(困っている症状、嗜好品などの生活習慣、女性の場合は月経の有無なども)
  • 検査(血圧・身長・体重測定、血液検査、症状に応じた検査なども)
  • 薬剤の投与(女性の場合、内服薬・貼り薬・塗り薬など。男性の場合、筋肉注射など)

という流れで治療が進みます。

個人の状況によって異なりますが、通常、検査を含む診察にかかる時間は1回の受診につき1~2時間ほど、通院頻度は月に1~2回ほどでしょう。また、治療期間については、薬剤投与を開始してから最低数カ月経過してから効果が見られ始めますが、その後も経過を見つつ、何年もかけて治療するケースがあります。

ホルモン補充療法以外には、例えば、抑うつや不眠などの症状が見られる場合に「向精神薬」や「睡眠薬」を投与する、のぼせや顔の火照り、異常な発汗などの症状が見られる場合に「漢方薬」を投与するといった対応が考えられます。個人の症状や環境に応じて最適な治療法が選ばれ、その内容に応じて通院頻度や治療期間も変わってきます。

3)更年期障害の状況(年代別)

厚生労働省が、2022年に全国の20~64歳の男女(計5000人)に対して実施したアンケート調査では、更年期障害の状況(年代別)について図表2のような結果が出ています。

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女性の場合、40~49歳の3.6%、50~59歳の9.1%が「医療機関への受診により、更年期障害と診断されたことがある/診断されている」ことが分かります。また、40歳~49歳の28.3%、50~59歳の38.3%が「更年期障害の可能性があると考えている」となっています。更年期障害と診断されずとも、その可能性に悩まされている人はかなり多いようです。

男性の場合、「医療機関への受診により、更年期障害と診断されたことがある/診断されている」「更年期障害の可能性があると考えている」割合は、女性に比べると全体的に低めです。しかし、実は

男性は女性に比べ、性ホルモンの減少スピードが緩やかで、更年期障害に気付きにくい

という傾向があります。本人が自覚していないだけで、実際は男性更年期障害である可能性が残されている点に留意する必要があります。

3 産業保健や福利厚生などのサポート体制を整える

更年期障害やその疑いがある社員に対応する際、必要となる心構えやサポート体制の内容について紹介します。

1)みんなが「誰もが更年期障害になり得る」という意識を持つ

社員の誰かが急に怒りやすくなったり、強い口調になったりすると、周囲はネガティブに受け取ってしまいます。しかし、こうした変化を短絡的に性格の問題にしたり、無遠慮に「更年期障害なんじゃない?」とからかったりすると、本人をさらに傷つけ、問題が複雑化します。

更年期障害になった本人は、心のゆとりを失い、人に相談できずに自分を責めるなどとてもつらい状態にありますから、社員1人1人が

「誰もが更年期障害になり得る」という意識を持ち、思いやりを持って接すること

が大切です。ただ、社員の自助努力に期待するだけでは、こうした意識はなかなか育ちません。そのため、例えば、

専門家を講師に招いて「更年期障害に関する社内セミナー」を開催し、加齢によって体やメンタルに起きる変化、更年期障害の人との向き合い方などを丁寧に指導してもらう

のがよいと思います。講師は産業医や保健師、あるいは健康経営や女性活躍の支援をしている会社などに依頼するとよいでしょう。なお、前述した通り、特に男性は「自分が更年期障害である」ということに気付きにくい傾向がありますが、こうしたセミナーはそんな社員に気付きを促し、医療機関の受診につなげる良いきっかけにもなります。

2)更年期障害に関する相談窓口を設置する

図表2で、「自分が更年期障害かもしれない」と悩んでいる人は、女性を中心に相当数いるというデータを紹介しました。こうした人たちのために、

更年期障害について相談できる窓口を設置すると、症状が軽いうちに対処できる可能性

があります。

大企業では社内に産業医が常駐しており、保健師の相談窓口も設置されているケースも多いのですが、社内にそうした医療専門職がいない中小企業でも、外部の産業医や保健師に委託し、月に数回会社に来てもらって、社員の健康相談に乗ってもらうことが可能です。

なお、社員が「自分は更年期障害である」と気付いていない場合については、経営者や上司が本人の状況(症状の内容など)を見て、相談窓口や医療機関の情報提供をすることも効果的でしょう。その際は、「君は更年期障害だろうから、相談(受診)しなよ」などと決め付けるのではなく、「もしも、この先つらい状況が続くなら、一度、相談(受診)してみてもいいかもしれないね」など、本人の意思を尊重した言い方を心掛けることが大切です。

3)特別休暇やオンライン診療などの福利厚生を検討する

可能な範囲で、更年期障害の社員向けの福利厚生を検討するのもよいでしょう。

例えば、分かりやすいのは、

医療機関を受診する際などに利用できる、会社独自の「特別休暇」を導入

することです。ホルモン補充療法の場合であれば、時間単位や半日単位の休暇を複数回取得できるような制度設計にしておくとよいでしょう。休暇を有給にしたり、受診費用の一部を会社が負担したりすることも併せて検討すれば、社員が更年期障害の治療により前向きになってくれる可能性もあります。

この他、

社員が福利厚生でオンライン診察を受けられる「オンライン社内診療所」を導入

するという方法もあります。サービスごとに異なりますが、症状の悩み、病歴や薬剤の服用歴歴、アレルギーの有無などを事前問診で確認し、チャットやビデオ診察の後、処方・送薬までが可能です。当社でも企業の福利厚生プランとして、更年期障害に対する漢方の処方を含むオンライン診療サービスを提供しています。

社員の中には、自分が更年期障害かもしれないと思っても「医療機関に行く時間がない」「年単位で治療を継続することに気が進まない」などと考え、通院をためらってしまう人がいますが、「いつでも・どこでも」のオンライン診療であれば、こういった課題は解決されるため、必要な医療へつながる第一歩となることを期待します。

以上(2024年2月作成)
(執筆 株式会社フェアワーク 吉田健一)

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画像:maroke-Adobe Stock

リファラル採用の概要と留意点

人手不足の問題は、年々深刻化しています。株式会社帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)」によると、正社員の人手不足を感じている企業の割合は52.1%となっており、コロナ禍以前の高水準に戻っています。

今後も労働力人口の減少が見込まれる中でいかに優秀な人材を確保するかは、企業にとって大きな課題と言えます。

本稿では、会社を存続させていく上で、とても重要な「優秀な人材の確保」について、その具体策の一つである「リファラル採用」についてご紹介してまいります。

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