企業年金や職場つみたてNISAなど、社員自身が運用できる資産形成の制度

書いてあること

  • 主な読者:現在の退職金制度を見直したい経営者、労務担当者
  • 課題:退職一時金だと、社員が退職時まで制度の存在を意識しないので、在職中は制度のありがたみが伝わらず、人材定着につながらない
  • 解決策:社員が「自分で資産を運用できる制度」を導入する。企業年金の他、退職金制度以外の資産形成(iDeCo、財形貯蓄制度、職場つみたてNISAなど)にも着目する

1 社員にとって“身近”な「自分で資産を運用できる制度」

多くの会社の退職金制度は、長く勤めた分だけ支給額が多くなる年功型の制度設計になっています。昔は、こうした制度の存在が人材定着に一役買っていたのですが、最近では「もう社員が定年まで働く時代じゃないから」と、制度自体を廃止する会社が少なくありません。

ただ、もしかしたら、退職金制度が人材定着につながりにくいのは、

そもそも制度自体が、社員にとってあまり“身近”でないから

かもしれません。中小企業の多くは、退職一時金(退職金を一括で支払う制度)を導入していますが、実際に退職するタイミングになって初めて支給額が分かるケースが多く、在職中の社員はなかなか制度の存在を意識しません。逆に言うと、社員が日ごろから存在を意識するような制度設計になっていれば、あるいは今の会社で長く働くモチベーションになるかもしれません。

そこで、この記事では、退職金制度を社員にとってより“身近”なものにするために、

社員が「自分で資産を運用できる制度」を導入すること

をご提案します。「自分で資産を運用できる」とは、一定のルールの範囲内で、拠出を増やしたり、希望する時期に資産を引き出したりできるという意味です。

退職金制度では企業年金(DB、企業型DC)がこれに該当しますが、退職金制度以外にもiDeCo、財形貯蓄、職場つみたてNISAなど、自分で資産を運用できる制度がある

ので、併せて紹介します。

「人生100年時代」といわれるほどの高齢化社会や、先行き不透明な経済情勢の中で、将来の生活に不安を抱えている社員は多いですから、こうした制度のニーズは一定以上あるはずです。特に職場つみたてNISAは、2024年1月の制度改正でより社員が使いやすい制度に変わりますので、この機会にご確認ください。

2 企業年金で資産形成

企業年金は、退職金を年金形式で支払う制度のことで、広く知られているのは「DB(確定給付企業年金)」「企業型DC(企業型確定拠出年金)」です。ちなみに、確定給付は「給付額が決まっている」、確定拠出は「掛金が決まっている」という意味です。なお、この他に「厚生年金基金」という企業年金もありますが、現在は実質廃止されているのでここでは割愛します。

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DBも企業型DCも、会社が掛金を積み立て(社員が追加拠出することも可)、運用に応じて拠出時・運用時・受給時に税制優遇を受けられる制度です。大きな違いは給付額のルールで、

  • DBは、給付額があらかじめ決まっているので、予定通りの運用ができない場合、会社が追加の拠出をしなければならない。社員にとっては安心だが、会社の負担が大きくなるリスクもある
  • 企業型DCは、給付額が社員の運用成績で決まるので、予定通りの運用ができなくても、会社は責任を負わない。社員は運用に成功すれば退職金を増やせるが、失敗すれば元本割れで減るリスクもある

という違いがあります。

どちらも難点なのは、資産を引き出せるのが原則60歳以降で、資産の流動性があまり高くない点です。途中引き出しは認められていますが一定の要件を満たさなければならず、また60歳以降に引き出す場合と違って、受給時の税制優遇が受けられないというデメリットがあります。

3 iDeCoで資産形成

iDeCo(イデコ)は、社員が自分で掛金を拠出して運用し、60歳以降に受け取る個人型の確定拠出年金です。また、iDeCoの中には、

拠出限度額の範囲内(月額5000円以上、2万3000円以下)で、iDeCoに加入する社員の掛金に追加して、会社が掛金を拠出できる「iDeCo+(イデコプラス)」

という制度があります(正式名は「中小事業主掛金納付制度」)。

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iDeCoも企業年金と同じく、拠出時・運用時・受給時に税制優遇が受けられます。これに加えてiDeCo+も利用できる場合、会社が掛金を拠出してくれるので、社員は自身の出費を抑えながら、資産形成を図れます。

また、会社のほうは、iDeCo+で拠出した会社負担分の掛金を全額損金に算入できます。個人の運用をサポートする制度なので、事務負担も通常の退職金制度より軽減できます。ただし、

  • 対象は、社員(厚生年金の被保険者)が300人以下で、企業年金(DB、企業型DC、厚生年金基金)を実施していない中小企業に限定される
  • 導入するには、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の同意が必要になる
  • 会社が、掛金(社員拠出分と会社拠出分)をまとめて実施機関に納付する必要がある(社員拠出分の掛金は、給与天引き)

といった点に注意が必要です。

iDeCo(iDeCo+)も企業年金と同じく、資産の流動性が高くないのが難点です。途中引き出しは原則不可で、基本的に60歳以降にならないと資産を引き出せません。途中引き出しに重点を置くのであれば、この後に紹介する財形貯蓄制度や職場つみたてNISAは、基本的にいつでも資産を引き出せるのでお勧めです。

4 財形貯蓄制度で資産形成

財形貯蓄制度は、毎月一定の額を給与天引きなどで積み立て、社員が目的に応じて、積み立てたお金を任意のタイミングで払い出す制度です。一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3種類があります。

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一般財形貯蓄は、使用目的も引き出し時期も自由なので、社員にとっては利用しやすい制度です。一方、税制優遇の面では財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄のほうがメリットは大きいですが、この2種類は制度としての柔軟性には欠けます。

なお、社員の転職時などには、積み立てを停止して払い出す必要がありますが、転職先の会社でも同じ財形貯蓄制度を運用していれば、転職先の財形貯蓄制度に資産を引き継げます。

5 職場つみたてNISAで資産形成

NISAは、「NISA口座」と呼ばれる口座を使って個人が株式投資などを行った際、一定の範囲内で得た利益が非課税になる制度です。通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で投資すれば税金はかからなくなり、その分のお金で資産形成ができます。

このNISAの中に、会社が社員のNISA口座の開設や株式などの購入手続きを支援する「職場つみたてNISA」という制度があります。職場つみたてNISAでは、会社と契約したNISA取扱業者が選定する金融商品の中から、社員が投資対象を指定して投資を行います(金融商品は毎月同額購入、投資資金は給与天引きなどで支払い)。2024年1月から投資の非課税限度額(年間)などのルールが大きく変わるので、制度改正前後を比較しながら、概要を確認してみましょう。

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現行の職場つみたてNISAは、上場株式、ETF、投資信託、REIT等を運用対象とする「一般NISA」と金融庁が厳選した一定の投資信託を運用対象とする「つみたてNISA」について、年間160万円の範囲内で、投資の運用益が非課税になります。2024年1月からは、それぞれ名称が「成長投資枠」「つみたて投資枠」と変わり、上限額が年間360万円と大幅に増えます。

運用面では、元々いつでも資産を引き出せるというメリットがありましたが、今回の制度改正で最長20年間とされていた運用期間が「無期限」に変更され、より利用しやすくなります。

以上(2023年12月更新)
(監修 社会保険労務士法人AKJパートナーズ)

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画像:FancyCrave

痴漢で逮捕された問題社員をすぐに解雇できるのか?  

書いてあること

  • 主な読者:逮捕された社員の処分をする経営者
  • 課題:どの程度の処分にするか迷っている
  • 解決策:就業規則に懲戒事由があるかを確認し、犯罪の動機や裁判例などによって処分の内容を決める

1 判断が難しい「犯罪行為」の懲戒処分

懲戒処分とは、

職場規律や企業秩序に違反した社員に対し、会社が行う制裁(戒告、減給、懲戒解雇など)

です。会社があらかじめ就業規則で「懲戒事由」を定めていて、社員がその懲戒事由に該当した場合、就業規則に従って懲戒処分を課すことが認められています。

ただし、労働契約法では

社員が起こした違反行為に比して、重すぎる懲戒処分は課せない

と定められています。特に痴漢や飲酒運転のような犯罪行為の場合は要注意。「犯罪に手を染める社員なんてけしからん! 懲戒解雇だ!」と重い処分に傾きがちですが、裁判ではそうした懲戒処分が「重すぎる」として無効になったケースが少なくないのです。

この記事では、犯罪行為をした社員の懲戒処分を検討する際のポイントとして、

  1. 就業規則の懲戒事由を確認する
  2. 懲戒処分の種類と考慮要素を押さえる
  3. 犯罪行為の懲戒処分に関する裁判例を知る

の3つを紹介します。

2 就業規則の懲戒事由を確認する

大前提として、就業規則や社員との労働契約に懲戒事由に関する定めがない場合、懲戒処分は認められません。また、定めがあっても、社員の違反行為と合致する内容になっていなければ、やはり認められません。これは、労働契約法に「合理的な理由がなく、相当ではない懲戒処分は無効とする」という定めがあるからです。

犯罪行為に対して懲戒処分を課す場合、懲戒事由の書き方の例は次の通りです。

  • 暴行、脅迫、傷害その他犯罪行為によって著しく社内の秩序を乱したとき
  • 不正不義の行為によって会社の名誉・体面を汚したとき
  • 刑罰に触れる行為をしたとき

会社によっては、「刑事裁判において有罪判決を受けたとき」と定めている場合がありますが、この書き方だと、社員が全面的に罪を認めていても、実際に有罪判決を受けるまでは懲戒処分を課すことができないので好ましくありません。

なお、就業規則を確認する際は、懲戒事由と併せて、

「懲戒処分を検討する際、社員に弁明の機会を与える」旨の規定があるか

もチェックしておきましょう。適正な手続きを踏んでいない懲戒処分は、「相当ではない」として無効になる恐れがあるからです。

3 懲戒処分の種類と考慮要素を押さえる

一般的に、懲戒処分には次の7種類があります。1.の戒告が最も軽い処分、7.の懲戒解雇が最も重い処分です。

  1. 戒告:厳重注意を言い渡す
  2. けん責:始末書を提出させ、将来を戒める
  3. 減給:一定期間、賃金支給額を減額する
  4. 出勤停止:数日間、出勤することを禁じ、その間は無給とする
  5. 降格:役職の罷免・引き下げ、または資格等級の引き下げを行う
  6. 諭旨解雇:退職届の提出を勧告した上で、退職届の提出がなければ解雇とする
  7. 懲戒解雇:即時に解雇する

前述した通り、社員の違反行為に対して、重すぎる懲戒処分は課せません。犯罪行為に対する懲戒処分の内容が妥当かどうかは、次のような要素に照らして判断されます。

  • 当該行為の動機、内容、結果(犯罪行為の種類や程度、故意または過失の度合い、被害の重大性など)
  • 業務への影響(免許取り消しで運転業務が行えず、他の社員の負担が増したなど)
  • 社員の勤務歴、過去の処分歴、反省の様子
  • 当該行為に関する会社側の要因の有無 など

犯罪行為の場合、こうした要素に照らして判断しますが、難しいのが「私生活上の犯罪行為」です。会社は本来、社員のプライベートには介入できないため、原則として懲戒処分は行えません。ただし、例外として、

会社の社会的評価に重大な悪影響を与える場合に限り、私生活上の犯罪行為であっても懲戒処分は可能

とされています(最高裁第二小法廷昭和49年3月15日)。社会的評価に重大な評価を与えるかどうかは、次のような要素に照らして判断されます。

  • 会社の事業の種類・態様・規模
  • 会社の経済界に占める地位、経営方針
  • 社員の会社における地位・職種 など

4 犯罪行為の懲戒処分に関する裁判例を知る

1)痴漢行為

1.懲戒解雇(有効)

鉄道会社の職員が、電車内で痴漢行為をして懲戒解雇された事案(東京高裁平成15年12月11日判決)では、次の点などから「懲戒解雇は妥当である(有効)」と判断されました。

  • 職員は本来、電車内の迷惑行為を防止する立場にあった
  • 本事案の半年前にも、痴漢行為で罰金刑に処せられ、昇給停止・降職の処分を受けていながら、再び痴漢行為に及んだ

2.諭旨解雇(無効)

鉄道会社の職員が、電車内で痴漢行為をしたとして諭旨解雇された事案(東京地裁平成27年12月25日判決)では、次の点などから「諭旨解雇は重すぎる(無効)」と判断されました。この裁判例の事案では、自社の電車内で痴漢行為を行った事案であることから、結論に批判もありますが、諭旨解雇が無効になる場合があるという点について参考となります。

  • 職員の勤務態度に問題はなく、過去に懲戒処分を受けたこともなかった
  • 事件の報道や社外からの苦情等の事実が認められず、会社の社会的評価に大きな影響を与えたとはいえない

2)飲酒運転

1.懲戒解雇(有効)

貨物自動車運送業のセールスドライバーが、業務終了後に飲酒運転をして懲戒解雇された事案(東京地裁平成19年8月27日判決)では、次の点などから「懲戒解雇は妥当である(有効)」と判断されました。

  • 会社は大手の貨物自動車運送業者であり、飲酒運転が社会的評価に及ぼす影響は大きい
  • 会社の業種に照らすと、率先して交通事故防止に努力するという企業姿勢を示すために、飲酒運転に懲戒解雇という重い処分を課すことには妥当性がある

2.懲戒免職(無効)

市の職員が、休日に飲酒運転をして懲戒免職された事案(大阪高裁平成21年4月24日判決)では、次の点などから「懲戒免職は重すぎる(無効)」と判断されました。

  • 検知されたアルコールの量が道路交通法違反となる水準としては最下限で、運転時間も走行距離もごく短く、事故なども起こしていないため悪質性が高いとはいえない
  • 100名を超える市民から嘆願書が提出されており、公務員への信頼という観点からして地域社会に与えた悪影響も多大とまではいえない
  • 職員の勤務態度に問題はなく、過去に懲戒処分を受けたこともなかった
  • 飲酒運転の事実を、翌日すぐに職場に報告しているなど、反省が見られる

以上(2023年12月更新)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:BortN66-shutterstock

経理担当者の疑問にズバリ回答!現場のための電子帳簿保存法Q&A

書いてあること

  • 主な読者:電子帳簿保存法への対応を進めている経営者と経理担当者
  • 課題:電子帳簿保存法は改正が多く、現場の対応で悩むケースが多い
  • 解決策:「紙から紙」か「紙・電子データから電子データ」を選択する。電子データで保存する場合、電子帳簿保存法を順守しつつ、漏洩防止やデータ消失に注意する

1 2024年1月1日以降、受け取った請求書の取り扱い方

テレビCMなどでも頻繁に聞くようになった電子帳簿保存法。いよいよ2024年1月1日から皆さんの会社でもその対応が始まります。紙ではなく、電子データで受け取った請求書や領収書など(以下「請求書」)については、2024年1月1日以降は、電子データのままで保存することが義務付けられます。

では、紙で受け取った請求書はどのように扱えばよいのでしょうか。具体的には、請求書を以下のいずれかの方法で保管しなければなりません。

  • 紙で受け取った請求書の原本を紙で保存
  • 紙で受け取った請求書をスキャンして、電子データで保存。この場合、データの改ざんなどを防ぐためタイムスタンプが必要であったり、データ化するまでの期限などが決まっていたりする

つまり、「紙から紙」か「紙・電子データから電子データ」を選択するということですが、現場ではこまごまとした疑問が生じると思いますので、この記事で紹介します。

2 スキャナ保存した請求書の原本はすぐに捨ててよい?

請求書をスキャナで読み取り、見切れがないことや、折れ曲がりがないことを確認したら、紙の請求書は即時に廃棄できます。ただし、内部統制の一環として定期的な社内検査を行うなど、会社独自のルールがある場合には、それに従うようにしましょう。

3 私物のスマホでスキャンしてもよい?

解像度などの要件を満たしていれば、私物のスマートフォンなどをスキャナ機器として利用して問題ありません。一方、電子帳簿保存法とは関係ありませんが、情報漏洩防止の観点から、社内のBYOD(Bring Your Own Device)のルールを確認しておく必要があります。

4 スキャナ保存の要件を満たしていないとどうなる?

スキャナ保存の要件を満たさないと、「税法で決まっている書類を保存していない」のと同じ状態になります。そのため、法人税であれば青色申告の承認の取り消しや、消費税であれば仕入税額控除が認められなくなる事態が想定されるので要注意です。

5 電子データで受け取った請求書を紙で保存できるの?

2024年1月1日以降、電子データで受け取ったなら、電子データによる保存が「義務」なので、災害その他のやむを得ない事情がなければ、守らなければなりません。やむを得ない事情がないのに紙で保存していると、青色申告の承認の取り消しや、税務調査において重加算税(通常の罰金よりさらに重い罰金)が課されることもあり得ます。

6 パスワード付きの電子データのPASSを外して保存してよい?

請求書がパスワード付きの電子データについて、パスワードを外して保存すること自体には問題ありません。ただし、パスワードを外した後の情報セキュリティ(内容改ざんなど)については注意する必要があります。

7 ファイル形式を変換して保存してよい?

例えば、請求書をxlsx(エクセル)やdocx(ワード)の形式で受領した場合、電子データの形式をpdf形式などに変換することに問題はありません。

8 電子データの保存期間は?

電子データの保存期間は7年間です。ただし、欠損金が生じた事業年度分については10年間の保存が必要なので要注意です。

9 電子データと紙の両方で発行された請求書はどうする?

電子データと紙の内容が全く同じであり、かつ、社内で「紙を正本とする」ことを取り決めている場合には、紙の保存で大丈夫です。

ただし、紙で受領した請求書の内容を補完するような情報が電子データに含まれているなど、内容が全く同じでない場合には、 紙と電子データの両方を保存する必要があるので注意しましょう。

10 電子データが不用意に消えてしまったらどうする?

電子データで保存している場合、パソコンの故障などによって電子データが消滅してしまう恐れがあります。災害などやむを得ない事情があった場合、即座に罰則が科される可能性は低いでしょうが、データ復旧の努力を求められる可能性は高いです。

データのバックアップは電子帳簿保存法の義務ではありませんが、電子データが消滅するリスクを考慮し、日頃からバックアップを取っておくことが理想です。なお、バックアップは「定期的に」「適切な保存場所へ」行うことが重要です。

以上(2023年12月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:mari-Adobe Stock

ChatGPTなど生成AIでも注目される著作権制度。2024年以降の法改正で何が変わる?

書いてあること

  • 主な読者:2024年1月1日から随時施行される改正著作権法が気になっている経営者
  • 課題:どういう改正なの? 自社には関係なさそうだけど放っておいてもいい?
  • 解決策:DX時代に対応した著作権制度の見直しがテーマ。対象者は限られるが、著作権制度は情報を発信する全ての人に関わりがあるので、一般常識として押さえておく

1 押さえておくべき改正内容は3つ

著作権法では、書籍、楽曲、映画、ソフトウェアなどの「著作物」を創作した著作者には、

  • 著作権(著作財産権):著作物を勝手に複製されたり、配信されたりしない権利
  • 著作者人格権:著作物を勝手に公表されたり、内容を変更されたりしない権利

が認められます(著作権(著作財産権)については、著作者以外への譲渡も可)。また、著作者ではないものの、著作物を伝達する上で重要な役割を担うレコード製作者や放送事業者には、

  • 著作隣接権:著作物を複製したり、二次使用料を受けたりできる権利

が認められます。これらをまとめて「著作権等」、その権利者を「著作権者等」といいます。

まだインターネットがなかった昔、著作権等に関わりがあるのは、基本的にレコード製作者や放送事業者などの「プロ」だけでした。ですが、今はウェブサイトやSNSで誰もが簡単に情報を発信でき、誰もが著作権等の当事者になり得ます。

一方、最近はChatGPTなど、いわゆる「生成AI」が登場したことで、「AIが作った生成物に著作権等は認められるのか」「既存のイラストなどをベースにAIが画像を生成した場合、著作権等の侵害にならないか」など、新しい議論が起きています。著作権等の内容は、時代とともに複雑化しているのです。

そのような中、「デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度の見直し」というテーマで、2023年5月26日に改正著作権法(以下「改正法」)が公布されました。改正内容は次の3つで、2024年1月1日から随時施行されます。対象者が限られる法改正もありますが、一般常識として動向を押さえておいたほうがよいでしょう。以降で概要を紹介します。

  1. 海賊版被害による損害賠償額の算定方法が見直される(2024年1月1日施行)
  2. 立法・行政組織の内部で著作物の公衆送信等が可能になる(2024年1月1日施行)
  3. 著作物の二次利用に関する新制度が創設される(2023年5月26日から3年以内に施行)

2 海賊版被害による損害賠償額の算定方法が見直される

2024年1月1日から、海賊版(著作隣接権者でない者が、著作物を無断で複製したもの)被害に遭った場合における、侵害者(海賊版サイトの運営者等)に対する損害賠償額の算定方法が変わります。

現行法では、海賊版被害の損害賠償額は

「1.侵害者が販売した数量」×「2.著作権者等が正規品を販売した場合の1個当たり利益」

で算定されます。ですが、この計算式には、

著作権者等の販売等の能力を超える数量は、「1.侵害者が販売した数量」に含まれない

というルールがあります。例えば、侵害者によって映画やソフトウェアの海賊版が100点複製されたとしても、もともと著作権者等に10点しか販売する能力がなければ、90点分については損害賠償を請求できないのです。そのため、海賊版サイト等による被害が深刻化している実態に対し、実際に認定される損害賠償額が低くなりやすいという問題がありました。

この点を踏まえ、2024年1月1日以降は

現行法のルールで算定した損害額に、著作物のライセンス料(使用料)相当額を加算して損害賠償を請求できる

ようになります。例えば、著作権者等に著作物を10点しか販売する能力がなくても、海賊版が100点複製されているなら、90点分についてライセンス料相当額を請求できるイメージです。

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なお、このライセンス料相当額ですが、改正法では、損害賠償の際に著作権が侵害された事実を請求額の考慮に入れることができる旨が明示されています。簡単に言うと、

著作権侵害があったことを前提に、ライセンス料相当額を通常の額(著作権侵害がなかった場合の額)より高く設定してもよい

ということです。具体的にどの程度の増額が認められるのかなどについてはまだ不明瞭ですが、著作権者等にとっては法改正前よりも有利な損害賠償請求が可能になります。

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3 立法・行政組織の内部で著作物の公衆送信等が可能になる

2024年1月1日から、立法・行政組織での内部資料として必要な場合に限り、一定の範囲内で著作物の公衆送信等が認められるようになります。

著作権(著作財産権)の1つに、著作権者が著作物を自分の意思で公衆(不特定多数または特定多数の人)に送信する「公衆送信権」というものがあります。現行法では、第三者が公衆に著作物を送信する場合、著作権者の許諾が必要です。ですが、クラウド保存やオンライン会議での共有などを利用してスピーディーに情報をやり取りしたい場合、許諾の手続きがその妨げになってしまうことがあります。

この点を踏まえ、2024年1月1日以降は、

立法・行政組織での内部資料として必要な場合に限り、必要な範囲に限って、著作権者の許諾がなくても、著作物のクラウド保存、オンライン会議での共有などが認められる

ようになります。具体的には、行政機関における法律案・予算案の審議、施策の企画、立案などの場面で用いられます。ただし、著作物の一部しか必要とされていないのに全部を共有・送信するなど、必要な範囲を超えた運用は認められません。

この改正は立法・行政組織のみを対象としたものです。民間の会社が、第三者の著作物を公衆に送信する場合については、引き続き著作権者の許諾が必要となるので注意が必要です。

4 著作物の二次利用に関する新制度が創設される

2023年5月26日(改正法の公布日)から3年以内に、著作物の二次利用の可否などについて、著作権者等が不明である場合や著作権者等の意思が確認できない場合、一定の手続きを経て、補償金を支払うことによりこれを利用できるようにする新制度が創設されます。施行の具体的な日付は未定です。

現行法では、インターネット上などにある著作物を利用したいものの、「著作権者等が誰か分からない」「どこにいるのか分からない」といった場合、文化庁長官の裁定を受けることでこれを利用することが認められています。ですが、申請してから裁定を受けるまでに約2カ月かかる上に、著作権情報センターウェブサイトに権利者に関する情報提供を求める記事の掲載を依頼しなければならないなど手続きも複雑です。

この点を踏まえ、法改正後は

文化庁長官指定の民間の窓口組織を新設し、利用者はそこに「補償金を供託」することで、合法的かつ迅速に著作物を二次利用できる

ようになります。補償金を「著作物のライセンス料(使用料)」と考えるとイメージしやすいでしょう。先に民間の窓口組織に補償金を払って著作物を利用させてもらい、後になって著作権者等から「自分の著作物が勝手に使われている」と申し出があったら、それまでの利用期間のライセンス料として補償金を支払うというものです。

なお、著作物を利用できるのは最長3年間(再申請することで更新は可能)で、著作権者から申し出があったら、そこから先の二次利用については著作権者と交渉する必要があります。

また、裁定制度の申請受付や要件確認、補償金額の決定に関する事務の一部も民間機関に一元化される予定なので、法改正前よりも利用に係る手続きは簡便かつスピーディーになることが期待されています。

以上(2023年12月作成)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:78art-Adobe Stock

社内資料の共有やソフトウエアのライセンスに要注意! 著作権を侵害しないためのポイント

書いてあること

  • 主な読者:リモートワークをしている会社やペーパーレス化を進めている会社の経営者
  • 課題:勝手な思い込みが原因で意図せず著作権を侵害している恐れがある
  • 解決策:利用形態などに合わせて著作権者から許可(ライセンス)を得る

1 雑誌記事などをスキャンして共有したらアウト!

リモートワークをしている会社やペーパーレス化を進めている会社では、日常的にさまざまな資料をデータで共有しているでしょう。しかし、雑誌記事や新聞記事は、著作物です。例えば、営業活動に使用するために、雑誌記事や新聞記事を著作権者の許可なくスキャンして、そのデータを社内で回覧していたら、それは違法行為です。目的が営業活動以外の非営利目的であってもです。

「定期購読している雑誌を回し読みしているのと同じだから問題ない」と考える人もいるでしょう。しかし、私的利用の範囲を超えてスキャンデータを作成することは、著作権の1つである複製権(スキャンやコピーなどをする権利)の侵害になります。また、社内イントラネットなどにアップロードして複数人で共有することは、著作権の1つである公衆送信権の侵害になる恐れもあります。会議で使用するために、複数人に配布する場合も同様です。

こうした著作権の侵害をしないためには、雑誌社・新聞社などに、

  1. スキャンデータを作成すること
  2. オンライン上にアップロードして共有すること

について、それぞれ許可を得る必要があります。

雑誌社・新聞社などの多くは、日本複製権センター(JRRC)などの団体に、スキャンデータの作成や社内イントラネット上へのアップロードなどの許諾に関する管理業務を委託しているので、手続きや費用について確認しましょう。

■日本複製権センター(JRRC)■

https://jrrc.or.jp/

■新聞著作権協議会(CCNP)■

https://www.ccnp.jp/

■学術著作権協会(JAC)■

https://www.jaacc.org/

雑誌社・新聞社などが提供する電子版サービスを利用して、記事をクリッピング(雑誌や新聞の記事を切り抜いて保管すること)して社内で共有する場合も著作権侵害に注意が必要です。著作権者の許諾なしにコピーや転載、要約をすることは違法行為です。

電子版サービスの利用規約などを確認し、ライセンス違反にならないようにしましょう。なお、1IDにつき1人の利用が基本ですが、グループでの利用を想定した割安のオプションライセンスが用意されている場合もあります。

2 シーンは限定的だが「引用」であれば問題なし

著作物の利用が「引用」の範囲であれば、著作権者の許諾を得る必要はありません。次の条件を満たすと「引用」として認められる可能性があります。

  1. 公表されている著作物であること
  2. 「公正な慣行」に合致すること
  3. 報道、批評、研究その他の目的上「正当な範囲内」であること

「公正な慣行」に合致するか、「正当な範囲内」であるかについては、次の点から判断されます(ただし、論者によって整理の仕方は異なります)。

  1. 主従関係:引用する側を主、される側を従とし、質的・量的に主従の関係であること
  2. 明瞭区分性:他人の著作物とそれ以外が明瞭に区別されていること
  3. 必然性:なぜ、それを引用しなければならないのかの必然性があること
  4. 出所を明示すること

例えば研修で、他人が作成した著作物を研修資料に無断で掲載した場合、その他人の著作物のほうが主役であると評価されれば、引用は認められません。一方、上の引用の条件を満たした上で、他人の著作物であるイラストや文章だけをスクリーンに投映して、研修内容を口頭で説明するのであれば、許容されます。ただし、研修が終わった後に、他人の著作物だけをキャプチャーして自社のウェブサイトに掲載することは複製権や公衆送信権の侵害になる恐れがあり、著作権者に許可を得なければなりません。

なお、他人の著作物につき許可を得ずに利用する場合があったとしても、無断で表記を修正したり、トリミングを行ったりすることは、同一性保持権の侵害になる恐れがあり、認められません。

3 社有PCのソフトを社員の私有PCにもインストールする場合

社有PCの台数が不足しているなどの理由で、私有PCの業務利用(BYOD)を認めるケースがあります。その際、社有PCと私有PCの作業環境を同等にするために、社有PCで使っているパッケージソフトを私有PCにもインストールすることがあります。

しかし、パッケージソフトのインストールも、著作権法上「複製」に当たり得ます。通常、パッケージソフトの法人向けライセンス契約では、インストール可能な端末の台数や、その他使用範囲が制限されています。すなわち、複製が認められる範囲が限定されています。これに反して、ソフトをインストールすることは、著作権法に違反することになります。私有PCにインストールする場合、インストール数が購入済みのライセンス数を超えないことや、その他ライセンス契約の条件(許諾範囲)に違反しないことを確認する必要があります。

もし、ライセンス数や許諾範囲などを超えてしまう場合、パッケージソフトのライセンスの追加購入や、1人のユーザーに複数端末でのソフトの利用を認めるサブスクリプション型のライセンス契約への切り替えを検討しましょう。

以上(2023年12月更新)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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【朝礼】辰年の「愛され人」は、小言をもらった数だけ昇る!

皆さん、おはようございます。12月になり、今年も残すところあとわずかです。少し気が早いですが、来年の干支は「辰」です。辰年は「大きな出来事が起きる激動の年」として知られます。動乱のイメージもある辰年ですが、一方で2012年のスカイツリーのオープンなど、世の中に大きな夢を与える明るい出来事も数多く起きています。

そんな辰年に、皆さんの努力が大きく花開くよう、大切な心構えを伝えます。

さて、年の瀬のこの時期、「細かいことを指摘されることが増えた」と感じている人はいないでしょうか。細かいことを指摘されると、「細かすぎる……」とげんなりしたり、「そんなことを指摘されるほど自分は仕事ができないのか……」と落ち込んだりします。中には、ムカッとして、「そんなことは分かっています!」と相手の話を遮ってしまうこともあるでしょう。

しかし、こうしたマイナスの感情はすべて誤解からくるものです。細かなことを指摘されている人は、実は大きく成長するためのチャンスをつかみかけています。大切なことをお伝えします。

まず、「細かな部分の調整は、物事がゴールに近づいてきたタイミングで行われる」ということです。何事もそうですが、例えば料理をする場合であれば、いきなり細かな塩加減を調整する人はいません。最後の味見をしたときに、「ちょっと味が薄いな」と感じたら、最終調整をしようとひとつまみの塩を振って仕上げます。

皆さんが受けている細かな指摘は、これに近いのです。「神は細部に宿る」といいますが、皆さんが最後の仕上げまで手を抜かずに集中し、良い仕事をしようとしている証です。つまり、細かな指摘を受けた仕事は、ゴールに近づいていると考えてよいのです。しかも、この節目の12月に指摘を受けているなら、この1年の皆さんの頑張りが、まさに花開こうとしているということです。

もう一つ、大切なことがあります。それは「人は誰にでも細かな指摘をするわけではない」ということです。細かな指摘をすれば、相手が気分を害する恐れがあることを、指摘する側も分かっています。にもかかわらず、細かな指摘をするのは、皆さんに期待を寄せているからであり、応援しているからなのです。

皆さんが受けている指摘は、「口うるさいと嫌われるかもしれないが、あなたの仕事がより良いものとして仕上がるために伝えます」という、愛にあふれた言葉ということです。

いかがですか。細かな指摘に対するイメージが大きく変わったはずです。最後にもう一つ付け加えます。指摘が的外れなこともあるでしょう。それでも、「分かっていないな!」と突き放さず、指摘されたことを感謝する余裕を持ってください。そのときは的外れでも、次に素晴らしい指摘をしてもらえるかもしれません。細かな指摘をしてくれる人をたくさん持つことが、皆さんの成長につながります。

以上(2023年12月)

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画像:Mariko Mitsuda

『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』その2は「褒める」/武田斉紀の『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』(6)

書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:最近話題のZ世代(1990年代後半以降生まれで会社においては20代前半くらいまで)だけでなく、それ以前の平成生まれ(30代前半くらいまで)の世代と、現在経営や管理職を担っている昭和世代との世代間ギャップが注目されています。それは価値観の違いやコミュニケーションの違いとして表れ、変化や多様性が求められる昨今、日本企業において深刻な経営の足かせとなりつつあるようです。
  • 解決策:まず会社においてZ世代を含む平成生まれと昭和生まれの世代背景を整理しながら、ギャップを埋めるための「価値観の変化」を明らかにします。その上で、筆者が多くの講演や企業研修で紹介してきた『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』を実践的に指南します。

1 『傾聴』はグローバル化の基本的価値観の1つ「インクルージョン」でもある

今シリーズでは、昭和生まれの管理職・リーダー世代と、平成生まれ、とりわけ「Z世代」との価値観に、ここ10年ほどで“真逆”といえるほどのギャップが生まれていることを取り上げています。

世界のビジネス上の価値観は、平成生まれや「Z世代」の価値観のほうに寄っており、会社の成長を今後も目指すためには管理職・リーダー側の皆さんが、価値観やコミュニケーション習慣を見直す必要に迫られているのです。

第3~5回では、『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』その1として『傾聴』を取り上げ、その基本“姿勢”と“技術”を紹介してきました。

気持ちに寄り添って相手の話を一旦全て受け留める『傾聴』は、グローバル化の基本的価値観とされる「DEI=Diversity, Equity, Inclusion)」の「I:インクルージョン」にも当たるといえるでしょう。

さて今回から、『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』その2として、「褒める」についてお話しします。

2 「日本人は褒めない、褒めるのが下手、苦手」の背景に3つの誤解

「褒める」の話をしようとすると、身構える日本人が多いのはなぜでしょう。「日本人は褒めない」「褒めるのが下手、苦手」という自覚があるからでしょうか。私は、背景に3つの誤解があるからと考えています。順にその誤解を解いていきましょう。

【誤解①】「褒める」なんて自分には無理と思い込んでいる

人を「褒める」なんて照れ臭いし、自分はそんなキャラじゃない、勘弁してくれと避けている人が多いようです。

挙げ句、私が「皆さん、もっと周りの人を褒めましょう」と言うと、「ふたこと目には褒めろという風潮がおかしい、何でも褒めりゃいいってものじゃない」と反論されることもあります。

しかしながら、すでに若い世代とのギャップについてお話ししたように、彼らは褒められて育ってきましたし、叱られることに慣れていません。同時にグローバルのインクルージョンの考え方も互いをリスペクト(尊敬)し合い、認め合うことを求めています。

無理とか、苦手と言ってずっと逃げてばかりいると、気が付けばあなたの周囲には誰も近寄ってこなくなっているかもしれません。「そんなこと言われても、無理なものは無理」でしょうか。

実はかくいう私も、かつては極端な“褒め下手”でした。

「自分が心からすごいと思っていないのに褒めるなんてできない」「お世辞すら言えない性分なのだからしょうがない」と考えていたのです。

時を経て現在。私が講演や研修の講師を務めていると、受講者や先方のスタッフから、「武田さんは参加者を褒めるのが本当に上手ですね」と言っていただけるようになりました。「昔はものすごく“褒め下手”だったのですよ」と告げると、意外な顔をされます。

お世辞が言えないのは今でも変わりません。ただ少しだけ勇気を出して、最初の一歩を踏み出してみただけなのです。

試しに身近な誰かに、相手の普段からいいなと心で思っていることを言葉にして褒めてみました。そんな私を見たことがない相手は、一瞬ぎょっとして気持ち悪がります。それでもめげずに繰り返し、他の人にも同じようによいと思っているところを言葉にして伝えてみました。

するとどうでしょう。私から褒められることにみんな慣れてきました。そして少し照れ臭そうにしながらも、素直なお礼の反応が返ってくるようになったのです。なぜでしょうか?

基本的に「褒められてうれしくない人はいない」からです。

中には「恥ずかしいので人前で褒めないでください」と言ってくる部下もいるかもしれません。ならば1on1ミーティングなど、1対1の機会に褒めてあげればいいでしょう。褒められることを拒否しているわけではありません。褒められること自体はみんなうれしいのです。

同じ点を何度も褒めてもいいのです。「〇〇さんは、いつも笑顔が素敵ですね」「〇〇さんはいつも気が利くなあ」。相手は「はいはい、前にも聞きましたよ」と言いながら、決して嫌がってはいないはずです。

そして、私は気が付いたのです。自分が周りの人を褒めれば褒めるほど、相手だけでなく自分も幸せな気持ちになれることに。チームの関係もぎくしゃくせず、一人ひとりが笑顔になり、どんどん元気になっていくことに。

何だってやってみるまでは、誰もが下手で、苦手なものです。お世辞でなくていいのです。まずあなたが周囲の人の普段からいいなと心で思っていることを、少しだけ勇気を出して言葉にして褒めてあげてみてください。

仲間たちも少しずつ慣れてきて、いずれは照れ臭そうにしながらもあなたに感謝の言葉を返し、あなたのまねをしてくれるようになります。その頃には、チームの雰囲気もすっかり変わっていると思います。そんな景色を見たくないですか?

3 他人を「褒める」と、自分はむしろ得をする

【誤解②】他人を「褒める」と、その分自分が損をする

これは褒めたがらない人が心の奥に秘めた本音ではないでしょうか。私も以前はそう考えていました。「なんでわざわざ人を褒めなきゃいけないの。相手を褒めたら、褒められていない自分が相対的に下がってしまい損をするだけなのに」と。

「褒める」のに損得勘定を持ち出すのは打算が過ぎるかもしれませんが、ただでさえ「褒める」ことに慣れていない人からすれば、わざわざ行動する気持ちになれない理由となり得るでしょう。相手がすごいなと思っても、自分が損をするかもと思えば素直に「すごいね」とは言いづらい。

ところが、実際はそんなことはないのだと私は知ってしまったのです。目からうろこが落ちるとはこのことでした。

他人を「褒める」と自分はむしろ得をすると分かったのです。

講演や研修の場で、私は会場の前のほうに座っている何人かをよく観察しておいて、心から素敵だなと思った点をその場で会場の皆さんに褒めて見せます。各々いきなり褒められて照れ臭そうですがうれしそうです。そこで会場の皆さんに質問します。

「さて皆さん、人を褒めている私を見ていてどんな印象でしたか。私の評価が下がったなと思いましたか? むしろ、武田さんていい人だなって思いませんでしたか?」。皆さん笑ってうなずいています。

読者の皆さんの職場ではどうでしょうか。

部下をよく「褒める」人、「褒める」のが上手な上司や社長を見たらどう思いますか? 人を褒めている分、本人の評価が下がっていると感じるでしょうか。むしろ評価はどんどん上がっているのではないでしょうか。

「あの人は、みんなを褒めて笑顔にしてくれる」「あの人は部下を褒めて伸ばすのがうまい」

他人を「褒める」とその分自分が損をするというのは単なる思い込みか、誤解であると分かっていただけたでしょうか。

4 多くの人は褒めても天狗(てんぐ)にはならない。なったら一言添えればいい

【誤解③】「褒める」と相手が慢心して天狗になってしまう

とりわけ謙虚な人が多い日本人は、少々褒めたくらいでは慢心したり、天狗になったりはしません。

プロのアスリートなど、道を究めている人に「今日はすごかったですね!」と声をかけるとこう答えるはずです。「ありがとうございます。でも、まだまだです。もっと、もっと上を目指したいので」と。

優秀な人ほど、理想は高く、それに対して自分の現在地がどのあたりかをちゃんと知っているからです。

とはいえ、中には小さな成功体験で天下を取ったくらいに捉えてしてしまう人もいるでしょう。本人は頑張って結果も出したというのに、そこで「天狗になってるんじゃないよ」と水を差すのもどうでしょうか。せっかく褒めたのに、本人に「あれは嘘だったのか」と思われてしまっては残念です。

そんなときは、褒めた後に次のような一言を添えてはどうでしょう。

「頑張ったね、おめでとう! でも〇〇さんの力はこんなものじゃない、もっとできるでしょう。楽しみだな。期待していますよ!」

まずは本人に「次はいつまでに何をやるか」を考えてもらいましょう。設定目標が十分でなければこちらの期待度を伝えて話し合って調整するといいでしょう。実現への方法論やプロセスが甘いと思えば、助言しながら一緒に考えてあげてください。

そして、また本人の頑張りをプロセスで、結果で「褒める」。これを繰り返していくことで、気が付けば自ずと本人は成長していると思います。

今回は「褒める」に関してのありがちな3つの誤解について解説してきました。いかがでしょう、誤解は解けましたか?

これからの時代は、「褒める」とみんなも自分もハッピーになれるし、人も育つのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。次回は、「相手の【何を】褒めればいいか」をテーマにお話ししていきたいと思います。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mail to: brightinfo@brightside.co.jp

以上(2023年12月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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【経理人材の育成(8)】経理人材に身につけさせる4つのスキル

書いてあること

  • 主な読者:経理人材の育成や、経理部全体の効率化に悩む中小企業のマネジメント職
  • 課題:経理人材の育成に取り組んでいるものの、最終的なゴールがどこにあるか分からない
  • 解決策:会計知識、自社知識、業務設計力、コミュニケーション力の4つのスキルを身につけることが、経理人材育成のゴールといえる

1 会計知識

実際に経理実務を進めたり、経理人材の育成を行ったりするためには、漠然と会計知識を捉えるだけでは不十分です。具体的にその中身を理解しておく必要があります。

経理の仕事の中心はやはり決算です。月次でも年次でも決算を締めるために必要になる実務のための会計知識は、

  • 会計基準
  • 財務諸表論
  • 会計技術

の3つに分類できます。

「会計基準」は、仕訳を切るときの拠り所になる会計ルールのことで、税法も含まれます。この知識が必要なことを疑う方はいないでしょう。しかし、経理パーソンとして活躍するには、これだけでは不十分です。というのも、新しい取引や事柄などが出てきたときに、中身を理解して判断するには、もととなる考え方も押さえておかなければならないからです。

「財務諸表論(会計基準の体系や内容、その考え方を学ぶ学問)」がこれに該当します。財務諸表論はいわば、会計の憲法のような存在であるため、財務諸表論を理解することが会計上の判断をする際に非常に重要になってきます。経理パーソンは、簿記の勉強経験や資格をお持ちの方が非常に多いので、会計処理について問題になることは少ないようです。その一方で、財務諸表論を勉強する機会はほとんどないため、ベテランでも弱い方が多い印象があります。財務諸表論が分かると、会計の本質(なぜその処理が必要なのかといった理由付け)が分かり、実務に役立つ経理のセンスが身につきます。管理職の皆さんが財務諸表論も絡めて会計基準の説明をすることができれば、メンバーにとっても財務諸表論を学ぶきっかけになるかもしれません。なお、財務諸表論といっても、簡単な本を一冊読むだけでも違います。財務諸表論を押さえると、会計専門家の質問が予想でき、決算や監査時に振り回されることが減ります。

実務を回すには、上記のような理論だけではできません。会計システムやエクセルを皆さんの業務でも多用しているはずですので、これらのテクニックも身につけておく必要があります。例えば、何か数字を調べたいときにどのくらい時間がかかるかは、これらのテクニックの習得具合によって大きく変わります。これらテクニックに代表される「会計技術」は、実務の作業効率を大きく左右するのです。

なお、ある程度の規模の会社でもし監査を受けている場合には、「開示作成」や「監査対応」も、それぞれ独立した別のスキルです。少し応用的な内容になるので、まずは、決算を締めるための前述の3つのスキルに集中すると、効率的な人材育成となるでしょう。

2 自社知識

経理部門の育成というと、とかく会計面に目が行きがちです。しかし、日常の実務を回すためにより必要なのは、自社に関する知識だと断言できます。そもそも会計は自社の取引を記録するものですので、取引自体の情報をちゃんと入手できないと始まらないのです。

自社知識といっても、はじめは、経理に近いところからスタートさせるといいでしょう。例えば、事業ごとのおおよその売上金額やこの3年の推移を、メンバーの方はそらで言えますでしょうか? 損益計算書の売上は最も大事な勘定科目ですが、実際に質問すると答えられないことが多いものです。このようにして、決算書の主な勘定科目ごとに、大まかに説明ができることを最初の目標にするといいでしょう。

自社の次は、顧客です。例えば、顧客得意先トップ5の社名と年間の取引額は先ほどの決算書周りの理解と同様です。さらに、その得意先の顧客は誰なのかまで理解すると、商流が分かります。

最後は、業界や競合企業について把握しましょう。ここでも、自社の売上シェア、他社との利益額・利益率比較などの方法を通じると、経理パーソンの方にはなじみやすいでしょう。

経営学では、経営戦略を考える際に、3C(自社、顧客、競合)という枠組みを用います。会計が経営者に役立つ情報になるためには、会計だけでなく経営も最低限理解した経理パーソンを育てることが必須なのです。

会社全体に加えて、業務を行っている各部門についての理解は、日常業務の進捗に大きな差を生みます。私自身も経験がありますが、正しい部門や担当者にコンタクトしないと、いつまでたっても情報が出てこないため、業務が進みません。特に、経理は決算という期限がある場合が多いので、他の部門以上に社内の情報入手先がどこかということに敏感になる必要があるのです。

具体的には、各部門の業務内容をまず押さえましょう。その上で、経理と関係が深い部門については、各人の担当範囲をおおよそでいいので知っておくといいでしょう。あるいは、各人の担当範囲に詳しい各部門のキーパーソンを知っておくのも非常に有用です。経理実務には膨大な知識が必要になるので、情報の内容を押さえる代わりに、

「情報のありか」を知っておく

ことも手です。管理職の方であれば、ご自身の経験から身につけたこのような経験則を、言葉にして伝えることもポイントです。

担当者を知るだけでなく、関係性を深めることができれば、情報の入手はさらに容易になります。そのためには、各部門の繁忙時期を知り、それを避けて連絡するようにしましょう。また、同じ会社でも、実は部門によって、メール、チャット、電話、対面と日常よく使うコミュニケーション手段はさまざまです。できる限り相手に合わせた手段を用いたほうが、早く連絡が取れます。さらに、接している中で、その部門独自の用語が出てきたら、意味を理解して、説明に使えるようにすると、印象がかなり良くなります。経理は情報や書類が出てきてはじめて業務が進む仕事ですので、工夫すべきポイントだといえます。

3 業務設計力

前述の知識をもとに、実際に経理業務を行うには、業務設計力が必要になります。直近ではインボイス制度もそうでしたが、新たに仕組みを整えるなど、対応しなくてはいけない変化が経理周りにはしばしば発生します。そのときに、実際の仕組みや業務の流れに落とし込める能力が、業務設計力といえます。

業務設計力は、

  • 業務の把握
  • 問題の発見
  • 方法の提案

の3つのステップから構成されます。

業務の把握というのは、求められていることを適切に理解し、影響範囲を特定することです。インボイス制度であれば、消費税の税率ごとの集計と記載という趣旨を理解して、得意先への請求書の書式や、仕入先の登録状況、会計システムなどの経理の業務手順、社内への説明など、自社への影響の範囲を特定します。

次に、問題の発見は、特定された影響範囲の中で、どのような問題が起こりそうかを想像し、それを踏まえたスケジュールや進め方を考えます。

その後、具体的な方法を考えるのが、方法の提案です。ここでは、自社の実態に合った現実的な方法を考える必要があります。そのためには、他社事例などの情報収集も欠かせません。

皆さんがご存じの通り、税法や会計基準など従わざるを得ない変化が起こるのは経理の世界では珍しいことではありません。さらに、最近ではテクノロジーの変化と人材不足が相まって、業務の見直しが求められる会社も多いことでしょう。そう考えると、業務を設計から見直す機会というのはますます増えていくはずです。

このような変化に対応するには、前述の3つのステップを全うする力に加えて、変化を恐れないマインドもとても重要だと感じます。「経理部門の生産性を上げたいが、管理職が業務の見直しを嫌がっている。なぜこれほど保守的なのか」と、経営者から質問されたことが何度かあります。確かに、この一連の流れは正直なところ、骨が折れます。しかしながら、管理職自身も、経理を取り巻く状況を今一度理解して、スキルのみならずマインドを変える必要があるのかもしれません。

4 コミュニケーション力

どのような職種にも、コミュニケーション力は不可欠ですが、経理の場合、その必要性はさらに高いものです。なぜなら、経理業務には守らなくてはいけないルールがあるため、どうしても各部門などと意見の相違が起こりやすいからです。例えば、売上を上げるために取引をしたい営業部門と、ルールを守りリスクを避け期日どおり決算を締めたい経理部門とが対立しやすいのは、それぞれの役割を考えると仕方がない側面もあります。

経理部門にとって大事なことは、この立ち位置の難しさを理解した上で、場面や事柄に応じたコミュニケーションを取ることです。つまり、

言うべきときは言い、引くときは引く。

それには、経理業務の中で起きるトラブルや取り組みに関して、ことの重大さを正しく測ることが必要になります。私自身が管理職だった際に痛感したのは、ことの重大さを正しく測るのは、メンバーにとっては難易度が高いということでした。皆さんも、大したことはないと判断したメンバーからの報告が遅れ、事後の対処が大変になった経験をお持ちかもしれません。このことは、裏を返せば、ことの重大さの認識をメンバーとすり合わせることができれば、大きな問題が生じにくいともいえます。管理職の皆さんは、メンバーに対して、業務内で発生する事例を通じ、どのようなことが重大なのか判断してコミュニケーションを取る一連の過程を見せつつ、必要に応じて説明するとよいと思います。

さらに、対立した場合には、相手がなぜそのように主張するのかなど、相手のニーズを把握して、お互いの妥協点を見つけるのも、経理に求められるコミュニケ―ションの1つです。まず、相手のニーズをつかむには、前述のように各部門の業務を理解し、ある程度の関係性を作ることは欠かせないでしょう。また、妥協点を見つけるのが苦手という声を経理部門の管理職の方からもよく聞きますが、これは前述の会計技術同様、テクニックと割り切るといいと思います。初歩的なもので構いませんので、交渉術の本を一冊読んで自分にできそうな技を実践するだけでも、少しは話し合いが進めやすくなります。

今回ご紹介したこれら4つのスキルをバランスよく身につけることができれば、経理パーソンとして十分独り立ちして成果を出し会社に貢献することができるはずです。このゴールを達成するまでのルートは1つではありません。これまでの回で紹介してきた色々な事例や方法は、そのルートに当たるものでした。方法は、どの会社にも合った最適解というのはありません。管理職の皆さん自身やチームメンバー、会社や経理部の置かれた環境に合った方法を見つけることが最大のポイントです。

例えば、私の場合は、チームが若いメンバーの場合にはハレ感を大事に、月次決算の大事な日には部内全員で同じ色の服を着てくる、数字が無事に締まったら打ち上げをするなど、お祭り的な取り組みをしていたこともありました。また、キャリアを大事にするメンバーが多いときには、新しく取り組んでもらった業務は、職務経歴書上でどのように表現することができ、市場価値がどう変わるのかを1on1で助言しました。さらに、次の管理職のステップにつながるよう本質を捉えるスキルを身につけるべく、付箋と模造紙を使ったオフサイトミーティングを半日かけてやっていたこともあります。このような経験を通じて、やはり、メンバーの希望を最大限踏まえつつ、管理職である私自身の強みを生かせたときに、最も効果が出やすかったと感じます。

メンバーの人材育成のためには、まずは、ご自身の得意なことは何かを棚卸してみるのもとてもおすすめです。それを拠り所にして、会社とメンバーに合った人材育成を考えてみてください。つまり、ご自身のキャリア形成、メンバーの人材育成、会社の業務改善は、三位一体で進めることも十分可能なのです。

経理管理職の皆さんにとって、この連載が人材育成のヒントに少しでもなればこんなにうれしいことはありません。

以上(2023年12月作成)

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外国人労働者の雇用の必要性と、外国人雇用に関する利点と課題について

主な読者:人手不足に悩む経営者の皆様

ポイント:

  • 技能実習生の平均賃金は10年前の1.4倍となり、日本人の若者との格差は縮小
  • 言語や文化の違いもあり、外国人労働者の労災発生割合は過去10年で2倍
  • 外国人労働者の雇用に関する法改正で雇用機会が拡大
  • 利点と課題を踏まえたリスクコントロールが必要

1 外国人労働者の必要性とリスクについて

日本は少子高齢化による人手不足で、多くの企業が従業員の採用・雇用に苦戦していますが、その対策の一つとして、外国人労働者の受け入れが考えられます。しかし、外国人労働者の受け入れは、様々なメリット・デメリットがあり、リスク管理上の課題もあるため、慎重に検討することが必要です。

厚生労働省によると、外国人労働者は2022年10月末時点で約182万人と10年前の2.7倍に増えており、製造業や卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業などに多くなっています。また、ものづくりや1次産業などの現場で働く人材へのニーズも強く、技能実習(34万3千人)や留学生のアルバイト(25万9千人)といった形で労働力を確保しています。特に日本人が集まりにくい業種を中心に採用のニーズは強く、技能実習生の平均賃金は10年前の1.4倍となり、日本人の若者との格差は縮小しています。

今後は新興国の賃金上昇で、海外の若者が期待する水準も上がることが想定される中で、生産性を高め日本国内で賃上げを進めなければ外国人材の確保は非常に厳しくなると想定されます。日本の人手不足が深刻化する中、外国人が日本の産業や経済、地域社会を支える担い手として共生できる社会、日本で働く外国人が能力を最大限に発揮できる多様性に富んだ活力ある社会を実現するためには、外国人を適正に受け入れ、技能実習制度や特定技能制度が直面する様々な課題を踏まえた新制度が必要と考えられます。

また、外国人労働者の労災発生割合は日本人を含めた全労働者よりも高く、増加傾向にあり、過去10年で2倍にまで増えています。最も労災発生率が高いのは、「技能実習」の3.79であり、労働者全体の1.6倍、外国人全体の1.4倍もの数値となっています。このように外国人雇用は必要不可欠ですが、一方では円安で日本の賃金水準の魅力が低下し、外国人雇用に関するリスクがどんどん高まっているため注意が必要です。

外国人雇用状況

(出所:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和2年10月末現在)」)

2 外国人労働者の雇用に関する法改正の方向性について

そのような中で、政府の有識者会議は外国人雇用に関する技能実習と特定技能の両制度の見直しを議論しています。現行制度はトラブルが絶えないため、人権保護を重視した待遇改善が中心的なテーマですが、新制度のポイントは大きく5つと考えられます。

1つ目は「在留期間」であり、従来は5年間で、特定技能への移行は限定的でしたが、新制度では基本3年ですが、特定技能に移行することで延長を可能にする予定です。
2つ目は「制度の目的」であり、従来は「人材育成を通じた国際貢献」でしたが、新制度では「人材確保と人材育成」を目的とする予定です。
3つ目は「転職」ですが、従来は原則不可でしたが、同一企業で1年超の就労などの要件を満たせば本人の意向による転職を可能にします。
4つ目が「日本語能力」であり、従来は要件がありませんでしたが、就労開始前に基礎的能力を付けることを要件とするようです。
最後の5つ目が「特定技能への移行」であり、従来は移行できない職種がありましたが、新制度では全ての職種で移行を可能にする予定です。

今回の新制度への移行によって、外国人労働者を雇用し易くなる一方で、外国人雇用に関わるリスクによって企業側の責任が重くなり、外国人雇用のコストが一段と増す可能性があるため、人材確保に向けた生産性の向上が必要不可欠になると考えられます。また、日本企業側の問題点として、外国人労働者が労働環境を求めない安価な労働力という勘違いや、住宅・携帯等の手配や銀行口座の開設などの支援体制の不備、暴力的な指導・暴言や差別用語による精神的な攻撃や宗教上の行為を不当に制限するなどのパワハラや暴力行為等の人権侵害や差別、それらの精神的なケアが不十分な現状も残っているため、新制度に移行してもその辺りの認識を改めなければ国際的な人材獲得競争で不利になると考えられます。

外国人技能実習制度と新制度の比較

(出所:サクセスネット事務局作成)

3 外国人雇用の利点と課題について

外国人を採用する利点としては、人手不足の解消や若くて優秀な人材の確保、社内のグローバル化と活性化や新しいアイデア創出の可能性、求人広告費用等のコスト改善や助成金の活用等がありますが、課題としては、コミュニケーションの問題や価値観・慣習・文化の違い、在留資格の確認の必要性や外国人労働者特有の雇用に関する手続きや労務管理の煩雑さ等が挙げられるため、これらの利点と課題を踏まえた判断が求められます。

尚、外国人労働者であっても、日本で働く以上は、日本の労働基準法や労働社会保険関係法令が適用されるため、日本人を採用する場合と同等の義務と責任が生じますが、外国人の場合は、それに加えて、日本で働く資格を持たない人に就労させた場合は「不法就労助長罪」として3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科され、雇用対策法に基づき外国人労働者の雇入れ及び離職の際に必要となる外国人雇用状況の届出義務に違反があった場合も30万円以下の罰金が科されるというリスクも生じます。

また、業務上のリスクとしては前述の労働災害が考えられますが、外国人労働者は日本語能力が不十分で安全衛生における業務指示や標識などの理解が難しいために労働災害に繋がるというケースもあり、安全配慮義務を果たしていくためには日本人社員以上に安全衛生教育に取り組む必要があります。また、日本語によるコミュニケーションが不十分で、雇用に関する価値観などが異なると、労使間や従業員同士の衝突が起こり、ハラスメントや差別的行為、人権侵害等の雇用慣行に関わるリスクも高くなるので注意が必要です。

4 外国人雇用に対するリスク対策

上記のようなリスクをコントロールして外国人労働者を雇用するには、先ずは外国人労働者雇用についての正しい知識を得ることが必要です。不法就労になるケースや適用される労働関連法令、雇用対策法における必要な手続き、外国人労働者への正しい接し方(異文化コミュニケーションなど) といった知識を、現場含めて事前に勉強しておく必要があるでしょう。但し、知識を得ると言っても自社だけでは限界があるため、労働関連法令や外国人雇用に関する専門知識を有している社会保険労務士や外国人労働者を専門とする人材紹介サービス会社を活用して、コンサルティングや受け入れ態勢の構築支援を受けることでリスクをコントロールすることも有用と考えられます。

また、外国人雇用の業務的リスクへの対応については、コミュニケーション方法や雇用に関する価値観の違いから労災事故や雇用トラブルも日本人の場合よりも起こりやすいという特徴がありますので、より厳格に労働社会保険関係諸法令を遵守すると共に、安全配慮義務や職場環境配慮義務を果たしていく必要がありますが、それらを守っていても外国人労働者とのトラブルを100%なくすことは困難と考えられます。

そのため、それらのリスクに備えた財務的な備えは必要不可欠であり、労働災害に備えた上乗せの労災保険や使用者賠償責任保険、雇用慣行に関わるリスクに備えた雇用慣行賠償責任保険等を活用することが求められます。また、人権問題が重要視される中でそのような事故や事件が発生した場合、株主代表訴訟等に発展し、会社や取締役が賠償請求される可能性もあるため、それらを補償する会社役員賠償責任保険(D&O)等を検討することも必要となるでしょう。

外国人労働者のメリット・デメリット

(出所:ARICEホールディングスグループ作成)

以上(2023年12月)

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提供:ARICEホールディングスグループ( HP:https://www.ariceservice.co.jp/
ARICEホールディングス株式会社(グループ会社の管理・マーケティング・戦略立案等)
株式会社A.I.P(損保13社、生保15社、少額短期3社を扱う全国展開型乗合代理店)
株式会社日本リスク総研(リスクマネジメントコンサルティング、教育・研修等)
トラスト社会保険労務士法人(社会保険労務士業、人事労務リスクマネジメント等)
株式会社アリスヘルプライン(内部通報制度構築支援・ガバナンス態勢の構築支援等)

なぜ、隣のお店は繁盛しているのか?データを使えば見えてくる顧客が本当に求めていること!

書いてあること

  • 主な読者:効率よく営業や販促などを行いたい営業担当者。営業DXを進めたい経営者
  • 課題:場当たり的で属人的な営業や販促が多く、時間と手間がかかる。社内にノウハウが蓄積されていかない。見当違いな営業をしたくない。
  • 解決策:データを使って「相手をよく知る」ことが営業効率化の第一歩。何より、営業担当者自身が、データを使って営業することが面白くなるはず!

1 データを使った営業活動は、効率的で何より “面白い”

「データを使った営業活動」とは、地図上の商圏データや、検索キーワード・閲覧ログ・購買履歴・人流などの行動データ、ユーザーが回答するアンケートデータなどを活かして「営業・販促・マーケティング」(この記事ではまとめて「営業活動」)を進めることです。もっと分かりやすく言うと、次のようなことです。

データを使って、相手のことをよく知ったり、相手にどのようなニーズや困りごとがあるか仮説を立てたりして、営業活動に取り組むこと

こうしたデータを使った営業活動は、的を射た営業、いわば“すべらない営業”を実現する可能性を高めるため、次のような課題の解決につながります。

  • 人手不足なので、営業活動の効率化を図りたい
  • 場当たり的なものではなく、確率の高い営業活動を行いたい
  • 営業活動を「見える化」して、ノウハウを社内で蓄積したい
  • 営業DX化を進めたいので、まずはその第一歩を踏み出したい
  • 失敗を怖がる若手営業担当者に、少しでもヒントを持たせたい

現在、「SalesTech(セールステック。営業×テクノロジー)」と呼ばれる、ITを活用して営業活動の効率化を図るツールがたくさん登場しています。この記事では、SalesTechのうち、データを使った営業活動の事例をいくつか紹介しますので、活用を検討してみてください。

データを使った営業活動は、何より「この人の属性や行動を考えると、この点にニーズがあるのかも」と仮説を立てられる点が、ワクワクして面白いのです。特に営業担当者の皆さんは、この面白さがよく分かるでしょう。きっと今日からあなたの営業活動が変わります!

2 データ×営業活動にはどのようなものがあるか?

データ×営業活動(データを使った営業活動)にはさまざまなものがあります。一部の事例をまとめたのが、以下のポジショニングマップです。分類の仕方は人によりますが、この記事では、次の4象限に分類しています(一部、象限が複数にわたるものもあります)。

横軸:「行動・購買」など人の行動を表すもの、「属性・嗜好」など人となりを表すもの

縦軸:「客観的」な数値やログで現れるもの、アンケート回答のような「主観的」なもの

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1)当たりそうな販促(後ほど具体的な事例をご紹介)

「どのような人が住んでいるか(世帯の種類など)」「どのような店舗があるか」といった地図上の商圏データを使って、どのエリアで、どのような販促方法が当たりそうかなどを予測・分析している例です。このデータ活用方法が、まずは一番イメージしやすいかもしれません。

2)当たりそうなニーズ(後ほど具体的な事例をご紹介)

ネットの検索キーワードや閲覧ログデータから、「こういうニーズがありそうだ」などを予測・分析している例です。ネット検索データの分析はもはや一般的で、今は「検索キーワード×他のデータ、独自の分析・コンサル」など、さらに付加価値を付けたものが登場しています。

3)組み合わせて予測

天候や属性といった「属性的」データと、購買POSデータや人流データという「行動的」なデータを組み合わせて、「どんな天気・気温のときに何が売れるか」「どの観光地にどんな人がどれくらい来そうか」などを予測・分析している例です。

4)評価アンケート

顧客にアンケートして、満足度などの回答を数値化。営業活動に加え、既存商品の向上、新商品の開発などにも活かしている例です。例えば、顧客が見ているウェブサイトの文章や画像に対して、ごく簡単にラジオボタンなどで評価をアンケートする方法もあります。

5)理由アンケート

顧客にアンケートして、購入した理由などの回答をデータ化。顕在・潜在ニーズの両方を分析して営業活動、商品開発に活かしている例です。パーティーグッズ購入理由の回答「一人で過ごすと思われたくなかったから」など、意外な潜在ニーズが判明した例もあります。

6)動画からも見える化

いまどきは、動画から、AIを使って「感情」という超主観的なものをデータ化することも可能になりつつあります。例えば、オンライン商談のレコーディングデータから「誰がいつポジティブ発言をしたか」が分かり、どの営業トークが効果的だったかなどを分析する例があります。

3 データ×営業活動の具体的事例

データを提供している側の企業へのヒアリングに基づき、具体的な事例をご紹介します。小さな企業や店舗でもイメージしやすい「商圏データを使った営業活動」と、今の時代に合った「検索キーワードなど行動履歴から興味・関心・ニーズを把握した上での営業活動」の事例です。

1)地図上の商圏データを使った事例:ゼンリンマーケティングソリューションズ

ゼンリンマーケティングソリューションズが提供しているのは、主に商圏データです。地図上で、駅ごとに住んでいる人の世帯の種類や年収などの属性、競合も含め他店舗の出店状況なども分かります。

2020年4月設立の同社は2023年に4年目を迎えており、「データを使った営業活動がしたい」との問い合わせは年々増えているそうです。月間約30件、1日に1件ペースで問い合わせがあり、大企業から中小企業、小規模店舗まで幅広い顧客がいます。現在、横須賀商工会議所など商工団体の黒子として、商圏データの提供や販促支援などの小規模事業者支援も行っています。

1.ゼンリンマーケティングソリューションズの商圏データの特徴

株主のゼンリンによる全国津々浦々にわたる地図データをはじめ、公的統計データや民間で生成されたデータの活用が、何と言っても大きな特徴です。また、単に統計データをそのまま使っているわけではなく、独自のデータの組み合わせや分析で、商圏データをつくっています。例えば、「住んでいる人の年収」は、住宅土地統計や家計調査、課税状況といった統計をベースに、家(部屋)の面積なども組み合わせた上、独自の分析を加えて推計しています。

2.商圏データの活用事例

例えば、静岡県の八百屋さんの事例があります。もともとは大手スーパーの近所に店舗があり、スーパーには無い商品を取り扱うなどして上手に集客していましたが、八百屋さん自身が移転。スーパーと離れてしまったことで、客数も減ってしまいました。

そこで、どうにか集客を増やそうと、商圏データを使って、ターゲットとしている20~30代の核家族がどのあたりに住んでいるかを把握。そのエリアに一極集中し、必ず目に止まるよう5000部のポスティングを2回実施したそうです。

このポスティングチラシの内容も工夫しました。野菜や果物は、まとまって買うと重たくなります。そこで、「宅配の定期便」を始め、チラシに記載したのです。それが奏効し、実際に問い合わせ・成約もありました。ゼンリンマーケティングソリューションズでは、このとき、チラシの作成やポスティングも行っています。商圏データを提供するだけでなく、実際に相談に乗る、チラシの作成やポスティングをするといった「実働」を行ってくれるのは、人手が少ない店舗側からしてみると、実効性のある「データ×営業活動」といえるでしょう(チラシの作成やポスティングは、別途費用が発生します)。

ゼンリンマーケティングソリューションズによると、「老舗のベーコン屋さんが高級ベーコンを訴求するために富裕層エリアを発見。そこに絞ってプロモーションを行った事例」「複数店舗を持つ中堅ローカルスーパーで、異動してきた店長がその地域の特徴(どのような人が住んでいるのか)を知るために使っている事例」など、この他にも事例はさまざまです。

3.中小企業や小規模店舗がデータをうまく営業活動に使うコツ

ゼンリンマーケティングソリューションズによると、データ×営業活動のメリットは、「成功の確度を上げ、失敗のリスクを減らす」点にあります。そして、うまくデータを活用するコツとしては、「比較が大事」としています。

例えば、ターゲットにしているエリアが自分のよく知っているエリアと比べてどうか(住んでいる人、乗降客数、駅周りの店舗など)。隣の駅と比べてどうか。また、店舗であれば、ベンチマークとしているお店と比べてどうか。こうした「比較」は、データを集めた後、自分でデータを分析し、判断するときに大いに役に立つと思われます。

ゼンリンマーケティングソリューションズの商圏データの詳細などは、こちらから閲覧&お問い合わせすることができます。

■ゼンリンマーケティングソリューションズ■

https://www.zenrin-ms.co.jp/

2)企業の興味・関心・ニーズをピンポイントに把握する事例:Sales Marker

Sales Marker(セールスマーカー)社が提供しているのは、社名と同じ「Sales Marker」というSaaSのサービスです。これは、ネット上での検索キーワードやフレーズなど相手(営業対象となる企業の担当者)の行動履歴データからニーズを把握・分析し、営業活動を行うもので、この営業手法を「インテントセールス」といいます。

インテントセールスは、日本ではその言葉自体がまだ新しく、Sales Marker社が日本初といわれています。同社によると、サービスリリースから1年半少しで導入社数は270社以上、最近では1日に1社は受注しているほどニーズが増えているそうです(実績は2023年11月時点)。

1.Sales Markerによるインテントセールスの特徴

インテントセールスは、何と言っても「インテント=意図、目的」の言葉通り、検索キーワードやフレーズなどの顧客の行動履歴データからニーズが把握でき、その「ニーズがある状態」で営業活動できるのが特徴です。手当たり次第、ローラー作戦、といった手法とは真逆で、言ってみれば「ニーズがありそうだと分かっている相手(企業)」にアプローチすることになるので、効率的で的を射た営業活動になります。

また、Sales Markerは、その企業の関心データ(インテントデータ)に、約500万法人の企業データベース(部署や担当者といったデータ)を掛け合わせているのも大きな特徴です。そのため、新規先であっても、「(自社に対して)ニーズがありそうな企業」の「どの部署の誰にアプローチすればいいか」が分かるわけです。まさに的を射た、効率的で新しい営業活動です。ちなみに、Sales Marker社によると、アプローチに必要な部署や担当者情報は、各企業のプレスリリースや人事異動情報などから随時更新されているそうです。

2.Sales Markerの活用事例

例えば、大阪府のデザイン会社の事例があります。なんとこのデザイン会社では、本業がデザイナーである1名が、Sales Markerを使って営業活動を行って成果を上げているそうです。つまり、営業やマーケティングが担当ではない「兼任」にもかかわらず、1名で成果を上げられていることになります。Sales Marker社によると、この状況は、「一般的な企業で言えば、新人の営業担当が一人で成果を上げられるようなイメージ」ということです。

このデザイン会社の事例は、Sales Markerのウェブサイトにも詳しく掲載されています。それによると、Sales MarkerのUIが分かりやすく使いやすいことに加え、日常的にSales Marker社のインテントセールスコンサルタントとアポ獲得率・商談率・受注率向上のための目線合わせをしていることも成功要因の一つといえるそうです。このおかげで、ターゲットに対するアプローチの仕方など営業的な進め方を相談しつつ、Sales Markerを運用していけるようです。

Sales Markerの事例の特徴は、営業活動の相手にも喜んでもらえるという点かもしれません。何しろ、その検索キーワードやフレーズを使ってネット上で検索していた相手からすれば、「ちょうど今、探していた(検索していた)ものを持っているところがアプローチしてくれた」ことになるからです。そして、相手に喜んでもらえると、営業活動が楽しく面白いものに感じられるでしょう。

3.中小企業などがインテントデータをうまく営業活動に使うコツ

Sales Marker社によると、インテントデータをうまく使うコツとしては、やはりコンサルティングを活用することだといいます。

Sales MarkerのUIが分かりやすいとはいえ、導入時も、導入後もすぐに使いこなせるとは限りません。また、中には、リソース不足で営業未経験の担当者がインテントデータを運用する場合もあるでしょう。特に、中小企業の場合はなおさらです。そうしたときも、インテントデータをただ発見するだけでなく、一緒に営業戦略からアプローチするメールの文面まで、コンサルタントに上手に相談しながら運用していくのがよいと思われます。

Sales Markerの詳細などは、こちらから閲覧&お問い合わせすることができます。

■Sales Marker社「Sales Marker」■

https://sales-marker.jp/

4 大事なのは「分析」と「出口」、そして「答え合わせ」

データ×営業活動は、これまで紹介した例の他にもさまざまです。そして、今後も、色々なデータ活用方法が出てくるでしょう。いずれの場合も、データ×営業活動で大事なのは、データを集めることではなく集めた後です。

「で、どうなの?」という分析

「で、どうする?」という出口

この2つをしっかり実践していかなければなりません。集めたデータを見て、次のように進めていくことが必要です。

「分析」の例:この人はこの検索キーワード、フレーズを使っているから、こういうニーズがあると思われる。しかも属性が経営者だから、このニーズは強い

「出口」の例:このエリアに住んでいる人は中高年者が多いから、この商品の訴求メリットはこの点にして、手に取ってもらいやすいポスティングを、来月から実行しよう

そして、忘れてならないのは「答え合わせ」です。データから見えた分析の結果は、何%くらい合っていたのか。出口で実践したこと(実際の営業活動)は、目標に対して何%くらい成果を上げることができたのか。こうした「データ×営業活動の結果データ」を蓄積し、泥臭く次の運用に活かしていくことが、何よりも大切です。

以上(2023年12月作成)

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画像:Irene-Adobe Stock