1 拡大する古着市場で無人店舗が選ばれる理由
日本のリユース市場は現在、かつてないほどの盛り上がりを見せています。リユース業界の専門紙「リユース経済新聞(旧リサイクル通信)」の調査によると、2024年の国内リユース市場規模は前年比4.5%増の3兆2628億円に達し、集計開始以降15年連続での拡大を記録しました。
中でも、市場の成長を力強く牽引しているのが「衣料・服飾品」です。これはバッグや靴などの「ブランド品」を除くいわゆる「古着」を中心とするカテゴリーで、直近5カ年の推移を見ると、2020年時点では約4010億円であった「衣料・服飾品」の市場規模は、2021年に4587億円(前年比14.4%増)、2022年に5119億円(同11.6%増)、2023年に5913億円(同15.5%増)と毎年成長を記録。最新の2024年推計では6392億円(同8.1%増)にまで拡大し、リユース市場の中核を担う存在となっています。
長引く物価上昇に伴う生活防衛意識の高まりから、新品よりも割安な古着へ注目が集まっていることが、この継続的な成長の追い風です。このような成長市場において、新たな出店モデルとして注目を集めているのが「無人店舗」です。
スタッフが店舗に常駐せず、利用客が24時間365日自由に買い物を楽しむことができる無人古着店は、省力化による人材不足の解決や、有人店舗では心理的なハードルを感じていた新規顧客層を取り込む場として機能し始めています。実際に無人古着店を運営する事業者へのヒアリングでも
- 古着に興味はあるものの、有人店舗に対して「何となく敷居が高い」「接客が鬱陶しい」と感じるライトな客層を取り込める
- 24時間365日営業によって、深夜帯や早朝など有人店舗では実現できなかった需要を掘り起こせている
といったコメントが挙げられています。

さらに、無人古着店は、無人ならではの店舗管理の手軽さや、古着という商品の扱いやすさから、既に古着事業を手掛ける事業者が多角化として参入するだけでなく、異業種からの新規参入もあります(詳細な事例は後述)。
この記事では、無人での店舗出店を検討する事業者への参考となるように、無人古着店を題材に、有人店舗との比較や事例を取り上げていきます。
2 無人古着店、その特徴とは?
1)有人店舗との違い―「接客なし」が武器になる
有人店舗と無人店舗を比較すると、次の通りです。立地や顧客層、接客の有無で有人店舗と大きく異なります。

2)価格を分かりやすく伝えるハンガーの色分け
無人古着店では、来店客自身で会計して商品を購入してもらうため、価格帯をハンガーの色分けで、ひと目で分かるようにしていることが特徴です。販売から日数が経過して価格を見直す際には、ハンガーを差し替えるだけで済みますし、顧客にとっては、「少し待てば安くなるかもしれないが、今買わないと売り切れるかもしれない」という購買意欲を刺激するきっかけにもなります。
3)来店客の声を取り込む「顧客ノート」
無人店舗では、接客がない分、顧客対応の限界が課題です。そこで、店舗によっては、「顧客ノート」を置いて、品ぞろえのリクエストや店舗への要望を来店客に書いてもらい、都度改善を図るといったところもあります。
4)必要不可欠な万引き対策
無人店舗運営における大きな課題に、万引き対策があります。無人古着屋では、スタッフが常駐せずに人の目がない分、商品が万引きされてしまう報道も後を絶ちません。
一般的には、次のような対策が挙げられます。
- 防犯カメラの設置
- ICタグ(RFID)導入による商品管理と不正決済防止
- 顔認証による会員制入退店システム
- LINE・QRコードを使った入店管理
また、防犯カメラの録画映像を来店客からも見えるように掲示したりすることも抑止力になるといいます。
5)買い負け=機会損失
古着の一般的な仕入れルートには、「古着卸業者(1点ずつ選べるが最低購入金額の制限あり)」「国内リサイクルショップ・フリマアプリ(手軽だが目利きが必要)」「海外買い付け(珍しい古着を探せるが総コストが高くなりがち)」などがありますが、これらは有人店舗でも無人店舗でも共通のプロセスです。
問題となるのは、競合他社との仕入れ競争で買い負けてしまうと、店舗の売場に魅力的な商品が並ばず、そのまま機会損失につながってしまう点です。安定的な仕入れルートをいかに確保し続けるかが、運営上の大きな壁となります。
3 無人古着店の参入事例
無人古着店は、既に有人の古着店やアパレル事業を手掛ける企業が、販売機会の拡大や顧客の間口を広げるために参入するケースがありますが、それだけではなく、異業種参入の動きもあります。接客ノウハウの蓄積や販売スタッフの教育・シフト管理などが不要な手軽さが、他業種にとっては参入障壁の低さにつながっているようです。
図表3は、以降で紹介する事例を「無人古着店専業での参入」「異業種からの参入」「特定地域での出店」「広域で出店」で整理したものです。

1)JAM TRADING(大阪府大阪市)
海外古着専門店「古着屋JAM VINTAGE&SELECT」などの店舗名で有人の古着屋を手掛けている企業で、無人古着店の「STOPY(ストッピー)」を運営しています。
STOPYは、
「これまで古着店を利用したことのない方にも、より気軽に海外古着を楽しんでいただける場所をつくりたい」
という想いがきっかけで始めた店舗だといいます。有人店舗と無人店舗では、出店エリアや店舗としての役割を分けているのも大きな特徴です。
有人店舗はアメリカ村や原宿、下北沢などのいわゆる古着の街エリアかつ、広いエリアからの集客を想定した出店が中心です。スタッフが来店客との会話を通じて商品の魅力や背景を伝えたり、コーディネートを提案したりすることで、単価の高い商品でも価値を伝えて売ることができるのが強みで、古着の魅力やブランドの世界観を伝える場所と位置づけています。
一方で、STOPYは駅前、住宅地や商店街など、日常生活により近い場所での出店が中心となっています。近隣住民が、スーパーやコンビニに立ち寄るような感覚で古着を探す、というコンセプトです。海外古着をより身近に感じてもらうための入口と位置づけ、購入しやすい価格帯と気軽に立ち寄れる立地を生かし、一定量の商品を効率よく販売することを特徴としています。
また、同社へのヒアリングによると、無人店舗の運営には次のような点に注意が必要といいます。
無人店舗はスタッフが常駐しないため、人件費を抑えながら長時間営業できることがメリットです。ただし、無人だからコストがかからないわけではありません。家賃や光熱費、防犯設備、キャッシュレス決済の手数料はかかりますし、商品の補充や整理、清掃などの日常的な業務は必要です。加えて、スタッフの目が届かない分、売場の乱れや万引きへの対策、商品の見せ方など、無人店舗ならではの課題に対応する必要もあります。
2)AVEND(東京都新宿区)
フランチャイズで無人古着店の「SELFURUGI」と「NOTIME」を全国展開する企業です。
- 商品の価格帯は1000円~5000円が中心
- 人件費を削減することで、ブランド品を低価格で販売することを実現できている
- 一部、時間帯によってスタッフがいる店舗があり、接客を受けることもできる
同社のフランチャイズの加盟では、本部が商品の仕入れを代行したり、SNSを用いた集客をサポートしたりしているため、古着事業の経験者ではないオーナーでも、販売だけに集中できる体制が整っている点が強みとなっています。
時間帯によって有人、無人の両方で営業する「NOTIME 下北沢店」で店舗の特徴などをヒアリングした結果は次の通りです。

店内は常時2000着程度の古着を揃えています。店舗は2階建てで、2階は高額商品もあるので、20時ごろのスタッフの退勤に合わせて閉めていますが、1階は24時間営業をしています。深夜の時間帯でも来店があり、お客さんが1~3人でふらっと立ち寄ってくれている印象です。
インバウンドの来店もあり、特に、アニメのTシャツを探しに来るお客さんも最近は増えています。
3)ザ・カンパニー(東京都渋谷区)
ブランディングやデザインを本業とする企業で、東京都杉並区で「古着屋ジャンボデンキ」を手掛けています。
開業のきっかけは、1970年から約50年に渡って営業し、2020年に閉業した家電小売店「ジャンボデンキ」との出会いで、2023年3月にデジタルとリアルの横断を模索する「実験店」としてオープンしました。
地域に愛された店名と内外装をほぼそのまま引き継ぎ、無人の古着屋として生まれ変わらせることで、「町の記憶を残しながら新しい体験をつくる」ことに挑戦したい
想いがあったといいます。

その上で、開業に当たって注意した点が主に2つあるといいます。一つは無人運営に伴う防犯と現金管理の設計(会計ボックス・両替機の設置、見守りの仕組みづくり)。もう一つが、地域・商店会との関係づくりです。地域に愛された屋号を借りる以上は、地域に開かれた店であることを最優先にしているといいます。
地域密着の商店街に立地しているため、客層は地元住民が中心です。また、メディアやSNSをきっかけに遠方から来る古着ファンの方もいるそうです。
通勤・通学の行き帰りやお買い物の途中にふらりと立ち寄るだけでなく、金・土曜は24時間営業としており、深夜・早朝の時間帯の来店や購入もあります。特に夜間の売れ行きは好調で、有人店舗では対応が難しい深夜・早朝の需要を取り込めることは、無人×24時間営業ならではの強みといえます。
また、接客には、
ChatGPTと音声対話システムを組み合わせた独自開発のAI接客キャラクター「ジャンボくん」を用いています。
入荷商品の紹介に限らず、商店街の最新情報、季節イベントなどの情報も来店客に提供しています。

同社へのヒアリングによると、無人古着店の運営で本業につながったのが次の点です。
ジャンボくんの開発・運用を通じて、生成AIの実装・プロンプト設計・運用改善のノウハウを社内に蓄積してきました。このノウハウが本業のデザイン・コンサルティング事業にも直結しています。
例えば、打ち合わせから提案書作成までをAIで高速化するワークフローの構築や、業種特化型のDX支援サービスの事業化につながっています。また、店舗のSNS運用で得た知見も、クライアントのSNS・プロモーション支援に還元しています。
4)テン・カラーズ(岐阜県大垣市)
放課後等デイサービスや児童発達支援などの障害福祉事業を本業とする企業で、岐阜県岐阜市と大垣市で無人古着店の「コノハナアーツ」を手掛けています。
経営者が古着好きだったことが新規参入のきっかけといいます。品揃えを海外仕入れのスポーツ系古着に特化しており、この分野を専門にする店舗が周りに少ないことを意識しているそうです。
お客さんは30~40代のバイク乗りが中心で、女性でも着られるようなぴったり目のサイズ感で品揃えをしています。1日当たり、多い時で30~40着の古着が売れています。
運営の特徴が
古着のメンテナンス作業を系列の生活介護事業所や就労支援事業所のスタッフが担っている
点です。
同社へのヒアリングによると、
- メンテナンス作業を通じて一般就労や自立に向けたスキル獲得を目指してもらいたい
- 古着特有の時代背景や文化に関心を持ってもらうことで外出意欲を高め、社会参加の幅を広げてほしい
という想いがあるといいます。
5)UPBEAR(大阪府大阪市)
アパレル、美容サロン、飲食、結婚相談所を手掛ける企業で、大阪府を中心に無人古着店の「RELOOP STORE」を運営しています。
物価高騰で洋服が贅沢品になりつつある中、「お手頃な価格で気軽におしゃれを楽しんでほしい」という想いが開業のきっかけといいます。無人化によって人件費などの運営コストを極限まで抑え、その分を商品価格の手ごろさという形で還元する発想が特徴です。
客層は近隣のファミリー層から学生、社会人まで幅広く、年代は20~30代が中心。無人店舗ならではの「店員の目を気にせず自分のペースでじっくり選べる」利点を生かし、仕事終わりや買い物のついで、休日の散歩など、日常のすき間時間に気軽に立ち寄れることを強みとしています。
また、店舗はFC展開をしており、同社にヒアリングした開業のポイントは次の通りです。
- 物件選定では、家賃10万円前後・7坪以上という、小商圏でも十分に成立する物件基準を設定しています。低コスト開業を売りにしている以上、内装費用の見積もりにも細心の注意を払っています。
- 運営体制では、日常的な作業を1日10分ほどの清掃・簡単な整頓・補充で済む仕組みを構築しており、1店舗につき実質1名(オーナー自身、またはアルバイト・パート1名)でまかなえる体制となっています。

4 まとめ:無人古着店への新規参入のポイントは?
ここまでの事例から見えてきたのは、無人古着店が単なる「省人化ビジネス」ではないということです。スタッフの採用・教育が要らない分、参入しやすい業態である一方、有人店舗とは異なる戦略が欠かせません。整理すると、次の通りです。
- 出店戦略として、古着の街ではなく住宅街・商店街という「日常の動線」を狙う
- 有人店舗を既に運営している場合は、有人と無人とで役割を分け、高単価の有人店舗に対して、無人店舗が「たくさん売る」入口として機能する
- 初期投資は、居抜き物件の確保、防犯カメラ・センサー・会計ボックスなどのセキュリティ設計、キャッシュレス決済端末の導入
- 主な運営コストは家賃・光熱費に加え、キャッシュレス決済手数料、商品の補充・整理・清掃にかかる人件費や業務委託費など
- 無人特有の店舗設計には、万引き対策、売場の乱れへの対応、スタッフの説明なしでも価格・サイズ・買い方が伝わる売場づくりが必要
加えて、市場環境という視点で見ても、無人古着店には追い風が吹いていると言えそうです。サステナブル消費への関心の高まりや、キャッシュレス決済・防犯カメラ・AI接客といった技術の進歩が、無人でも安心して運営できる土台を後押ししています。一方で、スタッフ教育が不要な分、参入障壁が低いということは、裏を返せば競合も増えやすいということ。品揃えや立地、ブランドの世界観といった「無人でも伝わる差別化」が、これから一段と問われることになりそうです。
以上(2026年8月作成)
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画像:日本情報マート