4月になると、多くの会社に新入社員が入社してきます。経理・人事・総務部門も新入社員や、あるいは他部署からの異動で新しいスタッフを迎え入れることが少なくないでしょう。
未経験者が早く仕事に慣れるには、全体の流れをつかむことが肝要です。そこで、中小企業の経理・人事・総務を担当する人が会社のなかで担っている役割と、主にどのような業務をするのか、毎月の仕事と留意点についてまとめます。
※本冊子は、3月決算法人を想定したスケジュールに基づいています。
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4月になると、多くの会社に新入社員が入社してきます。経理・人事・総務部門も新入社員や、あるいは他部署からの異動で新しいスタッフを迎え入れることが少なくないでしょう。
未経験者が早く仕事に慣れるには、全体の流れをつかむことが肝要です。そこで、中小企業の経理・人事・総務を担当する人が会社のなかで担っている役割と、主にどのような業務をするのか、毎月の仕事と留意点についてまとめます。
※本冊子は、3月決算法人を想定したスケジュールに基づいています。
さて、今回はPART.5ということで、「戦わない人材採用のススメ」シリーズの最終回となります。今までお付き合いくださりありがとうございました。今回のテーマは「リファラル採用の活用」です。リファラル採用という言葉ご存じでしょうか?近頃、まあまあ聞くようになった言葉かな?と思います。
採用環境が厳しくなるにつれ、従来通りの採用(求人サイトなどを利用した採用=オーディション型採用)ではなかなか良い人材が採用できない、また、前回お話ししました不適格人材を誤って採用してしまうリスクが避けられないなどの背景から注目を浴びているものです。加えて、後ほど詳しくご紹介しますが、リファラル採用に続き、最近注目されているのが「アルムナイ採用」です。これは簡単に言うと、自社を過去に退職した人材を改めて採用するものです。例えば、転職した社員と転職後も一定の関係を持ち続けて、何年か後に改めて採用するようなケースです。この二つの採用方法に共通している最大のメリットは、「どんな人物か事前にわかっている」点にあります。繰り返しですが、不適格人材を採用してしまうと最悪の場合、会社が組織崩壊することもあり得ます。前回は、そのようなリスクを回避する採用面接の方法として、「できるだけ多くの人の目で見ること」「適性検査やリファレンスチェックの活用」などについてお伝えしましたが、(お伝えしておいてこんなこと言うのも何ですが…)これらを確実に実行したとしても、リスクを0にすることはできません。しかしながら、今回ご紹介するこの二つの方法であれば、少なくとも「不適格人材ではない」ということは断言できます。そこが最大の強みということになります。それでは、まずはリファラル採用についてみていきたいと思います。
(出典:2023年度 リファラル採用 従業員規模別統計レポート TalentX社)
リファラル(referral)という単語は、「紹介」「推薦」という意味を持っています。リファラル採用とは、自社の社員や自社のことをよく理解している友人や知人などの紹介から行う採用手法です。それって「縁故採用」のことでは?と思われた方もいらっしゃるかもですが、縁故採用は社長や役員などの親族や知人などからいわゆる裏口入社的な形での採用であるのに対し、リファラル採用は自社の関係者からの紹介という点では同じですが、自社の採用基準を満たした方のみを採用する(基準を満たさない場合は採用しない)という点が大きく異なります。それではリファラル採用のメリット、デメリットについて見ていきましょう。
中小企業における採用の失敗は大きな経営リスクです。採用できても半年や1年などの短期で退職してしまうケースや不適格人材を誤って採用してしまうなどは絶対に避けなければなりません。求人サイトなどからの応募者はどんな方か分からないのに対し、リファラル採用の応募者は自社の関係者の誰かがよく知る人物ですので、間違っても不適格人材の可能性はないと言えます。この点が最大のメリットです。
前記①とつながる部分ですが、応募する前や入社を決める前に、自社の関係者が応募者に対して自社の正確な情報を丁寧に伝えているため、入社後に「こんなはずじゃなかった」というミスマッチが起こりにくく、その結果、定着につながります。
通常、求人サイト等から応募してくる応募者はすでに転職市場に出てしまっている人です。他社にも応募している可能性もあり、他社が自社よりも良い条件を出している場合は、採用したいと思ったとしても他社にいってしまうことも大いにありえます。その反面、リファラル採用の応募者については、転職市場に出る前の人ですので、基本的に競合他社は存在しません。「戦わない人材採用」の観点となります。
そもそもコスト削減のために行うものではありませんが、結果的に求人媒体や人材紹介などの業者を利用せずに採用活動ができるため、コスト削減につながります。ただし、詳しくは制度設計のところでお話ししますが、紹介者に対するインセンティブ(報酬)を支払う場合はその分の新たなコストが発生しますし、社員と応募者の会食代を負担するなどのコストも発生しますので注意が必要です。
今、他の会社などで活躍している人を採用するわけですので、すぐにというわけにはいきません。現在勤めている会社を辞めるのに一定の期間が必要ですし、アプローチした方が転職を考えていない場合には、その気になってもらうのにある程度の期間が必要となります。時には、初めてアプローチしてから1年がかり、2年がかりなんてこともあります。「人が足らないので今すぐにでも雇い入れたい」などの場合には不向きな手法と言えます。
自社の社員からの紹介であった場合、大きな会社であれば全く違う部署に配置することも可能でしょうが、中小企業の場合、紹介者の近くに配置せざるを得ないケースも考えられます。業務でわからないことを質問しやすいなど、それはそれで良い面でもあるわけですが、もともとの知り合いなのでかえってやりづらかったりするかも知れません。また、プライベートでの関係性が仕事に影響を与えることもあるかも知れません。さらに、紹介してもらった応募者が採用となれば良いですが、採用基準を満たさずに不採用となった場合は、紹介者と応募者の関係性に相当の配慮が必要になります。
メリット、デメリットについてしっかりと理解したうえで、仕組みづくりに入ります。リファラル採用を成功させるためにはしっかりとした仕組みづくりが重要になります。紹介があった場合のインセンティブを決めるだけでは不十分です。まずは、社員に対して、自社の経営ビジョンや求める人物像をしっかりと伝え、紹介する側、される側の双方にとって分かりやすい制度にすることがスムーズな運用のためのポイントとなります。具体的には、採用条件や応募方法などの情報を社内イントラに掲載するなどして簡単に確認できるようにする。また、実際の社員の紹介活動や採用状況を目に見える形で伝えられるような仕組みもあった方がうまくいく確率がぐんと上がります。
これらすべてを独自に作り上げるのは相当な労力が必要になりますが、リファラル採用に特化した活動促進サービス(※)もありますので利用を検討されてみてはいかがでしょうか?その他、特にはっきりと決めておいた方が良い点は以下の二つです。
一般的には、採用決定時に1人当たり5万円~20万円程度の報酬を支給しているケースが多いと思いますが、職種や採用難易度、企業の採用ひっ迫度などに応じて金額を設定します。また、採用決定時ではなく応募獲得時に何かしらのインセンティブを設定する場合や、報酬を金銭以外のものに設定している場合もあり、会社の風土、文化、スタイルに合わせて制度設計します。
ここからは私の考えですが、インセンティブは高額にしない方が良いと思いますし、できれば「なし」とするか「お金以外」にした方が良いと思います。なぜなら、応募し採用された社員が、入社後に高額なインセンティブがあることを知った場合、「お金目当てで紹介したのか」と思われてしまう危険性があるからです。また、金額の多い少ないと紹介数は必ずしも連動しないので、(紹介していただいた方に感謝の気持ちを「形」で示すことは大切ですが)お金ではなく、リファラル採用の活動を行うことが会社に貢献しているんだという意義を感じていただくことの方が効果は高まると思います。そのためには制度導入にあたって、トップが社員に向けて制度導入の目的や意義をしっかりと伝えていただくことも重要なポイントとなります。
候補者との会食費用を支給することで、社員が候補者に対して声を掛けるハードルを下げることができます。具体的には、カフェやランチ、夜の会食代を支給するなど、会食シーンや支給する費用は、それぞれの会社のスタンスに合わせて設定します。紹介者である自社社員の費用だけでなく、友人・知人の会食費も支給対象とすることで社員が友人を誘いやすくなり、リファラル採用を促進できます。
ただし、安易に会食制度を設計すると、単に会食することが目的となってしまって、会食の数は増えるが紹介は全く進まないなどの可能性もあります。よって、例えば会食費の申請は事前申請を必須にすることや、誰と会食を行ったのか、どんな内容だったのかについて報告させるなど、リファラル採用の成果につながるルール設定をすることが重要です。
アルムナイとは、「卒業生」「同窓生」を意味する単語ですが、そこから派生して「退職者」という意味で使われています。アルムナイ採用とは、一度退職した社員を再び雇い入れる採用手法です。アルムナイは社内事情や企業文化を理解しているので、ミスマッチのリスクが低いことが最大の特徴です。また、外部での経験を経て視野が広がった人材が自社に加わることで、新たな気づきが組織の成長につながることも期待できます。それではアルムナイ採用についてのメリット、デメリットを見てみましょう。
前述のとおり、すでに自社での勤務経験のある人材を雇い入れるため、即戦力としての活躍を期待できます。また、自社の退職後に得た知識や経験を生かして、業務フローを見直すことで業務効率をアップさせることや、新しいアイデアを取り入れることで競争力の強化につなげることなどが期待できます。
リファラル採用同様に求人媒体や人材紹介会社を利用する必要がほぼないため、採用コストを削減できます。また、アルムナイはすでに企業文化や社内制度、業務内容を把握しているため、研修や教育にかかる時間と費用も抑えられます。
アルムナイ採用制度があると「退職しても戻れる」という安心感から、既存社員の退職に対するハードルを下げてしまう可能性があります。この心理が原因で離職率が高まり、結果的に、会社全体の定着率が低下し、人材の流出につながるかも知れません。既存社員のむやみな退職を防ぐには、アルムナイとして再雇用されるためには一定の条件があることを示し、この制度は無条件に利用できるものではないことを社員に周知します。具体的には、在職中の成績や評価、スキル要件等を明確にし、また、再雇用に際しても求められる基準があり必ず採用されるとは限らないとするなど、制度の利用について制約を設けることなどが考えられます。
アルムナイ社員の知識やスキルが、現在の自社が求める基準を満たさない可能性があります。特に、退職後の期間が長い場合は、時代の変化によりアルムナイ社員の持っている知識やスキルが時代遅れになっている可能性が高いです。このような場合は、アルムナイの再雇用にあたり、スキルや経験の現状をしっかりと確認し、必要に応じて研修を行うなどが必要となります。
アルムナイ採用を成功させるには、具体的なルール設定や社内体制の整備、退職者との関係構築など、綿密な準備が必要となります。
アルムナイ採用を導入する際は復職条件を設定して、どんな場合でも再雇用が認められるわけではないことを示すことが重要です。例えば、「一定期間以上の勤務経験があること」「役職等のランクが基準以上であること」「特定の退職理由(懲戒解雇など)ではないこと」など、具体的な条件を設定することで、採用基準が明確になり、既存社員の納得を得やすくなります。また、これらの制約がむやみな退職を防ぐことにもつながります。
アルムナイ採用を機能させるためには、既存社員へ制度の存在を周知することが重要です。また、退職者には退職時の面談で再雇用制度について説明し、希望する場合の手続き等を明確に示すことにより、復職への心理的なハードルを下げることができます。
制度の利用を促進するためには、退職者と定期的に接点を持ち続けることが大切です。退職後の会社の状況が全く分からなくては、再度入社したいとの動機の形成が難しくなります。よって、退職者を含めた懇親会などのイベントを開催したり、SNSを活用してこまめに情報提供を行うことなどにより、会社の最新状況が分かることによって応募の動機形成につなげることができます。
いかがでしたでしょうか?今回はリファラル採用、アルムナイ採用について見てきました。いずれも企業規模に応じた制度設計が必要になりますし、一定規模以上の企業についてはアナログでの制度運用は難しいと思いますので、専用のサポートサービスなどの利用をお勧めします。
最後になりますが、採用環境はますます厳しくなる一方です。現時点では、人材採用には特に困っていない会社であっても、何年か後には必ず必要になるはずです。ただ、その頃は今とは比べ物にならないくらい厳しい状況になっていることも考えられます。よって、仮に今は困っていなくても、まずはできることから取り掛かっていただくべきだと思っています。そのために、この「戦わない人材採用のススメ」シリーズが何かしら皆さんのお役に立てる情報提供になれば幸いです。
以上(2025年4月作成)
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画像:photo-ac
令和7年4月1日から、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」が縮小され、最大15%の支給率が10%に下がります。高年齢雇用継続給付は、企業で働く高齢者を給与面で支援するための給付金です。中小・零細企業でも、受給者がいると思います。本稿では、高年齢雇用継続給付の支給率縮小について、概要をお伝えします。
高年齢雇用継続給付は、60歳になった時点と比べて、賃金が75%未満に下がった状態で働き続ける高齢者に支給されます。高齢者とは、60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者を指します。60歳以降は一般的に、50歳代の時と比べて給与が下がります。そこで、給付金を支給して補填するのです。
令和7年3月31日までのルールでは、月の賃金が、60歳になった時点と比べて61%以下となった人に、下がった賃金の15%の給付金が支給されます。15%が最大の支給率です。60歳になった時点と比べて、75%以上の賃金がもらえる人には、給付金は支給されません。
例えば、60歳になった時点の賃金が月30万円の人が、60歳以降、賃金が下がった状態で働き続ける場合、給付金は以下のようになります。
令和7年4月1日からは、月の賃金が、60歳になった時点と比べ64%以下になると、下がった賃金の10%相当の給付金がもらえます。10%が最大の支給率となります。
※厚生労働省のリーフレット「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」より
例えば、60歳になった時点の賃金が月30万円の人が、60歳以降、賃金が下がった状態で働き続ける場合、給付金は以下のようになります。
新しい支給率(最大10%)が適用されるのは、令和7年4月1日以降に60歳になる人です。従って、令和7年3月31日以前に60歳になる人は、古い支給率(最大15%)が適用されます。雇用保険では、「60歳になる日」は「60歳の誕生日の前日」のことです。
高年齢雇用継続給付は、平成7年4月に創設され、当時の支給率は最大25%でした。その後、政府の高齢者雇用法制の見直しもあって、65歳までの雇用が一般化してきたことから、平成15年5月に最大15%に引き下げられました。政府は今後、この給付金の廃止も検討しています。ただ、当面、この給付金は続きます。給付金の支給申請は、原則として企業がハローワークに対して行います。中小・零細企業も無関係ではありません。
※本内容は2025年3月10日時点での内容です。
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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画像:photo-ac
新年度を迎える春は、人事労務担当者の皆さまにとって、1年のなかでも特に手続き業務が増える時期であると思います。その中心となるのが、入社と退社に関する手続きではないでしょうか。
中小企業では、採用計画に沿った人材確保が困難になってきているなか、厚生労働省が2月に公表した最新の人口動態統計速報では、昨年の出生数が720,988人と過去最少を記録しました。今後も少子高齢化による深刻な人手不足の流れが続くと予想され、それを裏付けるように2024年の人手不足倒産は、累計で342件発生したというショッキングなデータを帝国データバンクが公表しています。この数値は、調査開始以降過去最多であり、2年連続で大幅に更新したとされています。
このように、会社の存続にも影響を及ぼしかねない厳しい採用難の時代において、法令遵守のできていない企業に対する求職者からのエントリーは、今後より一層見通しづらくなるでしょう。まずは、皆さまの会社に入社された社員が安心して働き続けられるよう、正しい手続きを適切に行うことで、会社の土台をしっかりと固めていきたいものです。
そこで今回は、適切な手続きについて皆さまとともに確認しながら、この春、特に気を付けておきたいポイントについてもご紹介いたします。
人手不足でエントリー数自体が減少している昨今、これまでよりも選考基準を引き下げざるを得ないという声も聞こえてきています。採用判断の際、業務適性や定着率等を客観的に判断できる資料となり得る適性検査を実施するケースも増えており、当日中に結果が分かるものもありますので導入してみるのもよいでしょう。
さまざまなステップを経て採用内定を決定したあとは、採用内定通知を交付することが多いと思います。書面で採用選考結果を通知するとともに、入社日の案内や、マイナンバー等の提出内容を記載したり、内定誓約書の返送を求めたりするものが一般的です。
内定誓約書は、内定者が就職を承諾するとともに、他社への就職をしない旨を約束させたり、卒業できなかったときや、採用試験の過程に重大な偽りがあった等の内定取り消し事由に該当したりした場合の取り扱いについても記載することが多いです。内定については、法的に「解約権留保付労働契約」が成立したものと解釈されており、内定取り消し事由以外での内定取り消しは難しく、解雇同等の取り扱いとなりますので注意が必要です。
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画像:photo-ac
1 2年連続で賃上げする企業は87.8%!
2 賃上げを実施するか否か、何を基準に判断する?
3 賃上げする企業が求めている情報は?
4 どうやって、どの程度の賃上げをする?
5 賃上げ「しない企業」の経営者が考えていることは?
春闘をはじめ、「賃上げ」に関する話題が今年も世間を賑わせています。そこで、昨年に引き続き、経営者315人を対象に、賃上げに関する緊急アンケートを行いました(2025年3月19日から3月27日まで)。前回のアンケート結果については、こちらをご確認ください。
今回は、「2025年度に賃上げを実施する」という企業が全体の36.5%、そのうち
「2年連続(2024年度・2025年度)」で賃上げを実施するという企業が、なんと87.8%
もいました。ちなみに、2年連続で賃上げすると答えた企業の2024年度(昨年度)の賃上げ率は、「3%以上」が最も多かったです。
ここからは、2025年度の賃上げの方針についての回答結果を紹介します。
まずは、賃上げをするか否かを判断するために重視する情報についてですが、「自社の業績」が圧倒的に多くなっています。
では、具体的にどれだけの企業が賃上げをするのでしょうか?
2025年度に賃上げを実施する企業は36.5%(このうち87.8%が2年連続での実施)で、2〜3年以内に実施するという企業は14.0%となっています。賃上げする企業が求めている情報は、助成金などに関する情報、社会保険料への影響に関する情報でした。少しでも賃上げの負担を軽減したいというところでしょう。
また、経営者が賃上げについて相談する相手は、顧問の税理士が最も多く、自社の取締役がこれに続きます。
賃上げを検討する際に参考となるリポートは以下の通りです。
賃上げの手法や賃上げ率はどうでしょうか。
賃金の範囲としては、「基本給のみ」が最も多く、基本給の他に手当や賞与も上げるという企業が続きます。かつては、基本給は上げず、手当や賞与を上げて対応する企業が多かったですが、2025年はそれよりも踏み込んだ賃上げを検討する企業が増えています。
具体的な賃上げ率は、「3%以上」が最も多いですが、その次は「5%以上」となっており、賃上げに対する企業の意気込みがうかがえます。
賃上げの手法については、ベースアップで実施する企業が最も多く、定期昇給が続きます。両方を行うという企業も多く、やはり賃上げに本気で取り組む企業が増えている状況を垣間見ることができます。
これまでとは逆に、賃上げをしない企業の状況を紹介します。
なぜ、賃上げをしないのかについては、「業績の先行きが不透明だから」が圧倒的に多くなっています。前述した通り、賃上げをするか否かを判断するために最も重視される情報は「自社の業績」でした、やはり、業績が伴わない賃上げは難しいということでしょう。
どうなったら賃上げをするのかについては、これまで同様に業績が重視されていて、「業績好調が続くと確信できたとき」が圧倒的に多くなっています。
以上(2025年3月作成)
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画像:Mariko Mitsuda
毎年春闘の時期になると、賃上げに関する話題を耳にする機会が増えます。例えば、
2025年春闘では、「みんなでつくろう!賃上げがあたりまえの社会」をスローガンに、昨年に引き続き、賃上げ目標を「5%以上(定期昇給相当分を含む)」とする方針
が打ち出されています。
どこまで賃上げに取り組むかは経営者次第ですが、人件費の負担を考えるのであれば、
賃上げを検討する前に、自社の人件費が適正な水準にあるのかを「労働分配率」で確認
しておく必要があります。労働分配率の計算方法はさまざまで、適正な数値は業種や業態によって異なります。ここでは労働分配率を求めるための計算式を紹介します。実際に、自社の適正水準を検討する際は、社会保険労務士や会計士・税理士などに相談してみるとよいでしょう。
労働分配率=人件費÷付加価値
平均的な労働分配率や付加価値を知りたい場合、経済産業省「企業活動基本調査」の業種別データが参考になります。自社の過去3~5年程度の労働分配率を計算して、適正と思われる利益を出していた年度を基準にするとよいでしょう。
■経済産業省「企業活動基本調査」■
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/index.html
以降では、賃上げの種類、賞与や退職金への影響を回避する方法などを紹介します。ここまでの内容を踏まえた上で賃上げを検討する場合は、ぜひご確認ください。
定期昇給とは、
企業の定める賃金テーブル(賃金表)に基づき、賃金が従業員の年齢や勤続年数に応じて自動的に昇給(自動昇給)すること
です。査定昇給(人事考課などに基づいて昇給を行うこと)も、定期的に実施する場合は定期昇給に含まれますが、自動昇給とは異なります。企業の中には、能力や成果をもっと賃金に反映させようと、自動昇給の見直しに取り組んでいるところが少なくありません。
ベースアップとは、
賃金テーブルを書き換え、全従業員の賃金水準を一斉に引き上げること
です。賃金テーブルが書き換えられるため、能力や成果が低い従業員も昇給(賃上げ)の対象となります。昇給は賃金規程で定められているもの、ベースアップは業績などに応じて臨時的に実施されるものです。
賃上げをした場合、毎月の賃金だけでなく、賞与や退職金の負担も増えることがあります。それは、
基本給を賞与や退職金の計算基礎とする「基本給連動型」の制度
を導入している場合です。基本給連動型は、基本給に一定の支給率を掛けて賞与や退職金を計算するなど、シンプルな運用が可能ですが、基本給が支給額のベースになるため、賃上げの影響を受けやすくなります。賃上げの影響を回避したい場合、
基本給を賞与や退職金の計算基礎としない「基本給非連動型」の制度
を導入するという方法があります。
以降で、基本給非連動型の賞与・退職金制度の例を紹介します。なお、賞与・退職金制度を従前のものから変更する際は、「労働条件の不利益変更」に注意する必要があります。
ここでは、基本給非連動型の賞与制度の例として、「業績連動型」を紹介します。
業績連動型は、企業が重視する業績指標、勤務成績などを基に支給率を決め、賞与原資にその支給率を掛けて賞与を計算する仕組みです。業績指標については営業利益や経常利益などが、勤務成績については部門業績や人事考課の結果などがよく用いられます。
ここでは、基本給非連動型の退職金制度の例として、「定額制」「別メニュー方式」「ポイント制」を紹介します。
定額制は、勤続年数に応じて定額を定め、退職金を支給する仕組みです。例えば、20年勤続で退職した従業員の退職金は400万円、30年なら600万円といった具合です。
別メニュー方式は、退職時の役職に応じて定額を定め、勤続年数別の支給率を掛けて退職金を計算する仕組みです。基本給連動型(退職時の基本給を退職金の基礎とする制度)と定額制を混合したようなイメージです。
ポイント制は、一定のルールに基づいて従業員にポイントを付与し、退職時の累計ポイント数に単価を掛けて退職金を計算する仕組みです。ポイントには、勤続年数に応じて付与する「勤続ポイント」、資格等級などに応じて付与する「等級ポイント」、人事考課の結果などに応じて付与する「個人ポイント」などがあり、一般的に複数のポイントを組み合わせて運用します。
労働保険料(労災保険料と雇用保険料)は、毎月の賃金の総支給額に保険料率を掛けて計算します。そのため、残業代などで賃金が変動すると保険料も異なってきます。また、賃上げの場合も保険料に影響します。
社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)は、4~6月に支給した賃金の平均額をベースに決まります。そして、その年の9月から翌年の8月までは原則固定となります。この手続きを「定時決定」といい、算定基礎届を毎年7月初旬に年金事務所に届け出ます。
ただし、固定的賃金(稼働実績に関係なく支給されるもの)が変動し、連続する3カ月間の賃金の平均額が2等級以上変わると、4カ月目から社会保険料が改定されます。これを「随時改定」といい、月額変更届を固定的賃金が変動した月から起算して4カ月目に速やかに届け出ます。
なお、7月から9月までのいずれかの月に随時改定をした場合、定時決定は行いません。4月から賃上げをする場合などは、随時改定の要件に該当しても定時決定として扱い、9月分の保険料から改定してしまうことがありますが、これは誤った運用です。
ベースアップをした場合、以降の人件費が増大します。将来的に企業の業績が悪化しても、賃下げは労働条件の不利益変更になるので、簡単に行うことができません。そのため、足元の業績好調を理由に、利益分配の目的で賃上げを検討しているのであれば、ベースアップではなく、賞与で賃上げをしたほうが無難という考え方もできます。これであれば、翌年度の業績に応じて柔軟に賞与の支給額を決められます。
頑張っている従業員に報いたいというのは、経営者の変わらぬ思いです。そうした意味で、賃上げは従業員に感謝の気持ちを伝える重要な取り組みです。ただし、事前に賃上げのメリットとデメリットを把握し、業績などに見合った適切な方法を選択しましょう。
以上(2025年3月更新)
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画像:Team Oktopus-shutterstock
新年度を迎えて、新しい目標を立てた人もいるでしょう。これまでの私であれば、「新年度に目標を立てて取り組むことは、とても良いことです。努力をして、ぜひ、目標を達成できるようにがんばってください」と言って、皆さんを叱咤(しった)激励してきました。
しかし、今回は、冒頭に「新年度に」という言葉を付けるのをやめて、「目標を立てて取り組むことは、とても良いことです。努力をして、ぜひ、目標を達成できるようにがんばってください」としました。その理由は、「年度」という縛りから解放されてほしいからです。
もちろん、新年度に目標を立てるのは悪いことではありません。会社も、皆さんに年度単位で目標を立ててもらい、その達成度を評価します。私自身も経営者として1年間の「業績」という結果に基づいて評価を受けます。そのため、年度という期間を全く無視していいわけではありませんが、過度に年度という単位に縛られることは良くないと思っています。
理由は至ってシンプル、「日々のビジネス活動は、年度単位では動いていないから」です。私たちが考えなければならない市場環境、競合他社、お客様のニーズなどは、日々変わります。その変化に応じて、年度にとらわれることなく即行動、そんな姿勢を持ってもらいたいと思っています。
実は、年度と同じように、私たちの思考や行動を縛っているものはたくさんあります。私は、こうした「見えない呪縛」が成長しようとしている会社や皆さんの障害になっていると思っています。
身近な例でいえば「担当業務」がそうです。担当業務の内容や手順は、「必ず守るべきもの」と思い込みがちです。しかし、より効率的な方法やミスが発生しない方法があれば、すぐに変更できるようなスピーディーかつ柔軟な組織になってほしいと思っています。
そのための大切なことは2つあります。1つは、目の前にあるルールの意味を考えることです。もう1つは、もし、考えても自分が納得できなければ、「なぜ、こうなっているのですか?」と声を上げることです。そのひと声が、皆で考え、ルールを良い方向に変えていくきっかけになるはずです。
こうしたことの積み重ねが、会社の成長のために、一番必要だと肝に銘じてください。
以上(2025年3月作成)
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画像:Mariko Mitsuda
「入社1年目の教科書」シリーズでは、皆さんに今のうちから身に付けてほしい社会人の基礎を分かりやすくまとめたものです。服装・挨拶のマナーや電話の出方など初歩的な内容から、契約のルールなど少し専門的な内容まで、幅広く紹介していますので、参考にしてください。
社会人になって皆さんが最初に接する相手は、会社の上司や先輩です。上司や先輩は新たに仲間となった皆さんを優しく出迎えてくれるでしょうが、その優しさに甘え過ぎず、社会人の常識やマナー、ルールを守って「大人として」行動することが大切です。
フレンドリーな雰囲気の会社、服装などのルールが比較的緩い会社などはたくさんありますが、どんな会社であっても「会社の一員である」という自覚を持って仕事をしないといけないのは同じです。社会人の常識や服装・挨拶のマナーを紹介します。
会社の「就業規則」には、就業時間やお給料の計算方法など、働く上での基本的なルールが定められています。皆さんがまず押さえるべきは「服務規律」です。服務規律には「就業時間中は仕事に専念しなければならない」など、仕事をする上での基本的な心構えが書かれています。
一般的な就業規則の項目や、服務規律の内容を紹介します。
電話やメールは、ビジネスの基本ツールです。最初は使い方に戸惑うかもしれませんが、マナーなどを早めに押さえておくと、電話やメールの内容(商品やサービスに関する具体的な話)に気を回す余裕が出てきて、仕事への理解が深まります。取引先を訪問したり、議事録を作成したりするときも、同じようにポイントを押さえて臨むことで、会話の内容に集中できます。
電話応対では、「取り次ぎのために自社の商品名や部署、担当者を覚えられる」「リアルなビジネストークを、敬語を交えながら体験できる」といった、ビジネスの基礎体力が身に付きます。怖がらずに電話に出るためのコツを紹介します。
パソコンのキーボード操作に慣れていないと、見慣れない配列に悪戦苦闘。やたらに力強くキーを押してしまうので、タイピング音がうるさくなりがちです。大切なのは正しい姿勢なので、パソコンを使うときの視線の高さや、キーボード操作で指を置く基本位置を紹介します。
メールは今でもビジネスにおける主力の連絡手段です。メールは長く使われてきたツールなだけに、宛先(TO、CCなど)や言い回しについて独特の「お作法」があるので、正しいマナーを身に付けましょう。メールの送り方や誤送信時の対応のポイントを紹介します。
初めて取引先などを訪問するときというのは誰でも緊張しますが、「時間を取ってくれた相手に感謝し、決して準備を怠らないこと」を忘れなければ基本的には大丈夫です。取引先などを訪問する際の準備やマナーを紹介します。
席次の基本は、偉い人が座る「上座」が、出入口とは反対の奥の席です。応接室、会議室、自動車、列車、エレベーターにも席次がありますが、時と場合によることもあります。席次についてのマナーを紹介します。
議事録の作成と聞くと、会議の進行と同時に会話をまとめていく「速記」をイメージする人がいますが、実は違います。必要なのは、アジェンダの事前共有、会議中の要点のまとめ、会議後の確認です。議事録作成のポイントを紹介します。
ビジネスでは、商品やサービスを売ったり、必要な備品や設備を買ったりと、さまざまなお金の流れがあります。皆さんの「お給料の支払い」も、そうした流れの1つといえるでしょう。自社のお金の流れを見れば、例えば「自社が今、どのような活動に注力しているのか」などが、他社のお金の流れを見れば、例えば「今後も取引関係を継続できそうか」などが分かります。
社会人になると、仕事のために会社のお金を使うようになります。そのときに大切なのは、自分のお金と会社のお金を明確に分けることです。お金に関する基本的なルールを紹介します。
お給料はもらうと、とてもうれしいものです。ただ、社会保険料や税金など、お給料から引かれる金額があることをご存じでしょうか。お給料の額や内訳などを示す「給与明細」の仕組みを紹介します。
年末年始に配られる「源泉徴収票」には、その年(前年)のお給料の合計額、差し引かれた社会保険料や税金の情報などが書かれています。これは、皆さんが家や車を買うときなどにも必要になる大切な書類なので、しっかり内容を確認しましょう。
財務諸表は会社のお金の流れを表す重要な書類で、社会人はこれが読めて初めて一人前といわれます。会社がもうかったか損をしたかを示す「損益計算書」、会社がどのようにお金を調達し何に使っているかを示す「貸借対照表」、会社の現金の流れを示す「キャッシュフロー計算書」の読み方を紹介します。
稼いだお金を株式や投資信託などの金融商品に投資する資産形成。今では、高校の授業にも「金融教育」が組み込まれています。ただ、具体的に何をしたらよいのか分からないこともあります。そこで、資産形成の基本について紹介します。
入社したての頃は、上司や先輩が皆さんに付いて仕事を教えてくれますが、ある程度時間がたつと、やがて1人で仕事をするようになります。そのときに注意しなければならないのが、契約違反、情報の取り扱い、取引先への営業などで、知らず知らずのうちに法律に違反してしまうことです。
仕事は、相手とさまざまな「契約」をしながら進めます。契約は相手との約束であり、守らなかった場合はペナルティーがあるので注意が必要です。契約の基本的なルールを紹介します。
ビジネス文書は、誠実にトラブルなくビジネスを進めるために必要なものです。納品書、検収書、注文書、見積書などさまざまなビジネス文書があって最初は混乱しますが、「何のために作成されるのか」を意識していれば、トラブルなく使いこなすことができます。ビジネス文書の種類や使用目的などを紹介します。
仕事をしているとたくさんの情報を取り扱いますが、どんな情報であっても慎重に取り扱い、相手の会社や個人、取引内容を特定できるような情報は話さないのが基本です。情報の取り扱いに当たって押さえておくべき6つの注意事項を紹介します。
商品やサービスを売りたいからといって、話を盛り過ぎるような不当なセールストークなどをするのは法律違反です。営業で必要なのは、相手のニーズを捉え、正しい情報を魅力的に伝える力です。法律に違反しないセールストークなどのポイントを紹介します。
ビジネスでは、こちらが有利な立場(発注する側など)にあるときほど、無理なお願いをしがちです。取引内容に注意しないと、「下請法」という法律に抵触し、自社の社会的な信用を傷つけてしまう恐れがあります。皆さんが守らなければならない義務や禁止事項を紹介します。
プレゼン資料やチラシを作るとき、ネット上で公開されている動画や画像を無断で使用すると、著作権の侵害になることがあります。動画や画像を使用する際のルールを紹介します。
仕事熱心なのは良いことですが、働き過ぎで体を壊してしまっては意味がありません。残業は必要最低限にして、休みを取り、健康診断も受けましょう。自分の健康をコントロールできてこそ、一人前の社会人といえるのです。
労働時間は、「原則1日8時間、1週40時間までが上限」と決められています。どうしても仕事が終わらないときは残業が認められますが、必ず事前に許可を得ることが大切です。残業の定義や申請するときのマナーを紹介します。
会社には、入社後6カ月以上勤務すると、お給料をもらいつつ休みを取れる「年次有給休暇(年休)」という制度があります。正社員の場合、1年間に5日の年休を取るのが決まりなので、積極的に取得しましょう。年休のルールや申請するときのマナーを紹介します。
会社には、社員が病気やけがをせずに安心して働けるように配慮をする義務があり、社員には自ら健康管理に取り組む義務があります。健康診断もこの一環です。皆さんが守るべき健康管理のルールを紹介します。
以上(2025年2月更新)
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画像:Mariko Mitsuda
正社員よりも労働時間の短い社員のことを、一般的に「パートタイマー」といいます。ただ、業務内容(専門的な業務か、正社員の補助的な業務か)、契約期間(有期か、無期か)、社会保険(被保険者になるか、ならないか)など、ひとえにパートタイマーといってもさまざまな違いがあります。
通常、労働条件は「就業規則」か「労働契約」で定めますが、
という問題があります。これを解決するには、
画一的に決められる労働条件は就業規則で定め、それ以外は労働契約で定める
のがポイントです。
次章で、パートタイマー用の就業規則のひな型を紹介します。ここまでの内容を踏まえた上で、自社の就業規則の見直しにご活用ください。なお、すでに施行済みの内容ではありますが、2024年4月1日からは、労働契約を締結する際、
を労働条件通知書などで明示しなければならなくなっています(労働基準法施行規則)。こちらも、画一的に決められる労働条件については、確実に就業規則に定めておきましょう。
以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容は異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
なお、前述した労働条件の明示に関する定めについては、第4条(労働条件の明示)に記載しています。
【パートタイマー用就業規則のひな型】
第1章 総則
第1条(目的)
この就業規則(以下「本規則」)は、株式会社○○○○(以下「会社」)の従業員の労働条件、服務規律、その他就業に関して必要な事項について定めたものである。会社と従業員は本規則を遵守し、会社の発展に寄与するものとする。なお、本規則に定めのない事項は、労働基準法およびその他の関係法令によるものとする。
第2条(適用範囲および均衡待遇)
1)本規則の適用を受ける従業員は、第5条および第6条の手続きを経て、会社と期間の定めのある労働契約を交わした従業員で、1週間の所定労働時間が一般の従業員よりも短い短時間勤務従業員(以下「パートタイマー」)とする。
2)会社は、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」を遵守し、パートタイマーの待遇を就業の実態から判断して決定するものとし、一般の従業員との均衡を図るよう努めるものとする。
3)本規則に規定する「無期労働契約への転換」によって無期労働契約に転換したパートタイマーについては、転換後も本規則を適用とする。
第3条(労働契約の期間等)
1)会社は、労働契約の締結に当たって期間の定めをする場合には、3年(満60歳以上のパートタイマーとの契約については5年)の範囲内で、契約時に本人の希望を考慮の上各人別に決定し、別紙の労働条件通知書で示す。
2)当該契約について更新する場合またはしない場合の判断の基準は、次の通りとする(あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く)。
3)労働契約の締結時と更新時に、有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限を労働条件通知書で示す。
第4条(労働条件の明示)
1)会社は、パートタイマーとの労働契約の締結に際し、労働契約書を取り交わすとともに、労働条件通知書および本規則(付属する諸規程等を含む)を交付し、就業場所、従事すべき業務、労働時間、賃金、退職、契約更新の基準(更新上限)、無期労働契約への転換(第64条)の申込機会および転換後の労働条件(通算契約期間が5年を超えるパートタイマーの場合)、その他の労働条件を明示する。
2)前項の明示事項の他、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律に基づき昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口についても、労働条件通知書に記載し、あわせて明示するものとする。
3)第1項の労働条件通知書において、就業場所および従事すべき業務の項目については当該労働契約期間における変更の範囲を併記して定めるものとする。なお、本通知書は当該パートタイマーが希望する場合、メール、SNS等により送ることができる。
第2章 採用、異動
第5条(採用の手続き)
会社は、就職を希望する者の中で、次の各号に定める書類を提出した者の中から、面接その他一定の選考試験により採用者を決定する。会社はパートタイマーを採用するに当たり、労働契約の締結時、あるいは労働契約の更新時に、その後労働契約を更新する可能性があるか否かをパートタイマーに書面により通知する。ただし、状況により、会社はその一部の書類の提出を求めないことがある。
第6条(採用時の提出書類)
1)パートタイマーとして採用された者は、採用日から2週間以内に次の各号に定める書類を提出しなければならない。ただし、状況により、会社はその一部の書類の提出を求めないことがある。
2)前項の提出書類の記載内容に変更があったときは、速やかに所属長に届け出なければならない。
3)会社は、第1項の提出書類を人事労務に関する手続きおよび人事労務管理のために利用するものとし、その他のために利用する場合にはパートタイマーから同意を得るものとする。
4)前各項の規定にかかわらず、個人番号(マイナンバー)および個人番号(マイナンバー)をその内容に含む個人情報(以下「特定個人情報等」)の利用目的や取り扱いは、別途定める「マイナンバー(特定個人情報)取扱規程」(省略)によるものとする。
第7条(試用期間)
1)採用日から2週間を試用期間とし、業務の適性などを総合的に判断し、本採用の有無を決定する。この決定は試用期間の途中または満了日に行う。会社が適当と認めたときは試用期間を短縮または延長することがある。なお、延長の場合は2週間の範囲内とする。
2)前項の試用期間内に業務の適性が認められないと判断される場合には、当該労働契約期間で終了となる。
第3章 服務規律
第8条(服務規律の基本原則)
パートタイマーは、会社の指揮命令に従い、職務上の責任を自覚し、互いに協力して誠実に職務を遂行するとともに、職場の秩序の維持に努めなければならない。
第9条(服務心得)
1)パートタイマーは、次の各号に定める事項を遵守しなければならない。
2)パートタイマーが会社施設内において政治活動、宗教活動、集会、演説、放送をし、または文書の配布、掲示をしようとする場合は、事前に会社の許可を受けなければならない。
第10条(機密保持)
パートタイマーは、自己の担当であるか否かを問わず、業務上知り得た機密を第三者に開示または漏洩もしくは自らのために利用してはならない。退職後も同様とする。
第11条(ハラスメントの禁止)
全てのパートタイマーは、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、職務上の地位・権限・職権、雇用形態に関係なく、職場において相手の人格や尊厳を尊重し、ハラスメント(セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント、パワーハラスメントなど)並びにそれらと疑われる行為をしてはならない。ハラスメントの防止については別途定める「ハラスメント防止規程」(省略)によるものとする。
第4章 労働時間、休憩、休日・休暇
第12条(労働時間および休憩)
1)パートタイマーの労働時間は1日6時間以内とする。始業および終業の時刻並びに休憩時間は次の通りとし、各人別に定める。ただし、パートタイマーの都合により以下の労働時間により難い場合は、個別の労働契約で定める。
2)前項にかかわらず、業務の都合その他、やむを得ない事情により始業および終業の時刻並びに休憩時間を変更することがある。ただし、1日の労働時間は6時間を超えないようにする。
第13条(休憩時間の自由)
パートタイマーは、休憩時間を自由に使用することができる。
第14条(出勤、退社)
1)パートタイマーは、始業時刻に所定の方法に従ってその時刻を記録しなければならない。
2)退社は終業時刻に自己の管理する物品を整理整頓した後、所定の方法に従ってその時刻を記録しなければならない。
第15条(遅刻、早退、欠勤)
1)パートタイマーは、遅刻、早退、欠勤しようとするときは、その前日までに所属長の承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない事由により事前に所属長の承認を得ることが困難な場合は、当日の始業時刻までに電話などにより連絡し、出勤後に速やかに承認を得なければならない。
2)私傷病による欠勤が連続して3日を超える場合、会社はパートタイマーに医師の診断書などの提出を求めることがある。
第16条(私用外出)
勤務時間中に私用による外出を希望するパートタイマーは、あらかじめ所属長の承認を得なければならない。
第17条(公民の権利)
パートタイマーが、選挙権の行使や裁判員としての職権行使その他、公民としての権利を行使するために必要な時間を請求するときは、会社は公民権行使に必要な時間を与えるものとする。ただし、業務上の理由により、権利の行使を妨げない限度においてパートタイマーが請求した時間を変更することがある。
第18条(年次有給休暇)
1)会社は、6カ月以上継続勤務し、所定労働日の80%以上出勤したパートタイマーに対して、次の表の通り勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を付与する。この休暇期間中については、所定労働時間を労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。
2)年次有給休暇を付与する基準日は、入社日から起算して6カ月が経過した日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日とする。
3)年次有給休暇を請求するパートタイマーは、原則として3日前までに所属長に、別に定める「年次有給休暇の取得願」(省略)を提出しなければならない。
4)年次有給休暇は、原則としてパートタイマーが指定した時季に付与する。ただし、事業の正常な運営に支障があるときは、会社はパートタイマーの指定した時季を変更することがある。
5)会社は、労働基準法第39条第7項に基づき、第1項の付与日数が10日以上のパートタイマーに対して、時季を指定して年次有給休暇を付与することがある。
6)第1項の出勤率の算定に当たっては、年次有給休暇を取得した期間、産前産後の休業期間、育児休業期間、介護休業期間および業務上の傷病による休業期間は出勤したものとして取り扱う。ただし、育児休業および介護休業については、パートタイマーがこれを取得する権利を有し、現に取得した場合に限る。
7)年次有給休暇は、権利発生から2年の間において取得することができる。
第19条(休日)
1)休日は次の各号に定める通りとする。
2)休日は1週間を通じ、1日を下回ることはない。
第20条(時間外労働、休日労働、深夜労働)
1)会社は、原則としてパートタイマーに時間外労働、休日労働、深夜労働(午後10時から午前5時までの間の労働。以降、同じ)を命じることはない。ただし、業務上必要がある場合は、時間外労働、休日労働、深夜労働を命じる場合がある。
2)法定労働時間を超える時間外労働および休日労働は、従業員の過半数を代表する者との労使協定の範囲とする。
3)第2項に定める時間外労働および休日労働は、労働基準法およびその他の関係法令における時間外労働および休日労働の上限を超えることはない。
第21条(災害など非常時の特別措置)
火災・地震・暴風雨・洪水、設備の爆発などの事故、感染症の流行その他避けることのできない事由により臨時の労働の必要がある場合は、会社は第20条にかかわらず労働基準監督署の許可を受けて、妊娠中および産後1年を経過しない女性パートタイマー(以下「妊産婦」)を除く全てのパートタイマーに時間外労働、休日労働、深夜労働を命じることがある。
第22条(産前産後の休業)
1)6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性パートタイマーから請求があったときは、産前休暇を与える。
2)産後8週間を経過しない女性パートタイマーは就業させない。ただし、産後6週間を経過した女性パートタイマーが請求した場合において、当該女性パートタイマーについて医師が支障ないと認めた業務に就かせることができる。
3)前各項の休業期間は無給とする。
4)妊娠中の女性パートタイマーが請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させる。ただし、業務に適する軽易な業務がないときには請求しても応じないことがある。
第23条(母性健康管理のための時間内通院)
1)妊産婦が母子保健法に定める健康診査または保健指導を受けるために請求した場合、会社は次の各号に定める範囲において母性健康管理のため、時間内通院を認める。
2)母性健康管理のため勤務していない時間は無給とする。
第24条(通勤緩和)
1)妊産婦が通勤による心身の負担を軽減するために請求した場合、会社は出社時および退社時について、各々30分の遅出および早退を認める。
2)通勤緩和の時間は無給とする。
第25条(疲労回復のための休憩)
1)妊産婦が業務による疲労回復のために請求した場合、会社は第12条第1項の他に適宜休憩をとることを認める。
2)業務による疲労回復のための休憩は無給とする。
第26条(医師などの指導による措置)
1)妊産婦が医師などから勤務状態が健康に支障を及ぼすとの指導を受けた場合であって、妊産婦より申し出があった場合は、会社は当該妊産婦の意見を聴いた上で、次の各号に定める措置を講じる。
2)前項第4号の休業は無給とする。
3)所定労働時間の短縮の適用を受ける期間については、第5章の定めに基づく基本給を時間換算した額を基礎とした実労働時間分の基本給を支給する。
第27条(育児時間)
1)生後満1年に満たない生児を育てる女性パートタイマーは、あらかじめ所属長に申し出て、勤務時間中に1日について2回、1回につき少なくとも30分の育児時間を受けることができる。
2)前項にかかわらず、1日の労働時間が4時間以内のパートタイマーは、1日について1回の育児時間とする。
3)育児時間は無給とする。
第28条(生理日の休暇)
1)生理日の就業が著しく困難な女性パートタイマーから請求があったときは、必要な期間の生理日の休暇を与える。
2)生理日の休暇は無給とする。
第29条(育児休業および介護休業)
会社は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に基づき、育児休業および介護休業、その他の両立支援策を講じる。育児休業および介護休業、その他の両立支援策については、別途定める「育児休業等に関する規程」(省略)および「介護休業等に関する規程」(省略)によるものとする。
第30条(特別休暇)
1)家族の慶弔など、特別の事情が生じた場合は、パートタイマーの請求により会社が認める日数の慶弔休暇を与えることがある。
2)特別休暇は無給とする。
第5章 賃金、賞与、退職金
第31条(賃金体系および賃金形態)
1)賃金は基本給、通勤手当および割増賃金とする。
2)賃金の形態は時給制とする。
第32条(賃金の計算期間、支払日)
賃金の計算期間は、前月1日より前月末日までとし、当月△△日に支払う。ただし、支払日が休日に当たるときは、その前日に支払う。
第33条(休業手当)
会社の責に帰すべき事由によりパートタイマーが休業した場合、休業1日につき労働基準法に基づき算出した平均賃金の60%を支払う。
第34条(不就労時の取り扱い)
パートタイマーが早退、遅刻などにより、所定労働時間の全部または一部を休業した場合は、その時間に相当する基本給は支払わない。
第35条(賃金の支払方法)
賃金はパートタイマーに対して、直接、通貨をもって支払う。ただし、パートタイマーが希望した場合は、当該パートタイマーが指定する金融機関口座への振り込みにより賃金を支払うことができる。
第36条(賃金の控除)
賃金支払いの際、次の各号に定めるものは控除することができる。
第37条(臨時および非常時払い)
会社は次の各号に該当する場合、第32条にかかわらず既往の労働に対する賃金を支払う。
第38条(昇給)
昇給は会社の業績および本人の技能、勤務成績、勤務態度等を勘案の上、原則として労働契約の更新時に行うものとする。なお、昇給を行わない場合もある。
第39条(昇給の対象者)
昇給は、入社から3カ月以上勤務しているパートタイマーを対象とする。
第40条(賞与)
賞与の支給については、パートタイマーの経験や職務内容などを総合的に考慮し、労働契約において決定する。
第41条(退職金)
退職金の支給については、パートタイマーの経験や職務内容などを総合的に考慮し、労働契約において決定する。
第6章 退職、解雇
第42条(雇い止め)
労働契約の期間が満了し、これを更新しないこととなったときは、会社は少なくとも期間満了の30日前までにパートタイマーに雇い止めの予告をする。パートタイマーが雇い止めの理由に関する証明書の交付を請求した場合は、会社は雇い止めの予告の前後を問わず、遅滞なくこれを交付するものとする。
第43条(退職)
1)パートタイマーが次の各号のいずれかに該当する場合は、次の各号に定める日を退職の日とする。
2)自己の都合により退職を申し出るパートタイマーは、退職希望日の14日前までに、総務部に別途定める「退職願」(省略)を提出しなければならない。会社の承認を受けるまでの間、パートタイマーは従前の業務に従事しなければならない。
第44条(普通解雇)
会社は、パートタイマーが次の各号のいずれかに該当した場合に解雇することがある。
第45条(解雇予告)
パートタイマーを解雇する場合、会社は労働基準法に基づき30日前に予告をするか、または予告に代えて平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う。ただし、労働基準監督署長の認定を受けた場合、および次の各号のいずれかに該当するパートタイマーを解雇する場合はこの限りではない。
第46条(解雇理由の証明書)
会社は、解雇するパートタイマーから請求があった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。
第47条(解雇の制限)
会社は、次の各号に定める期間中はパートタイマーを解雇しない。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合で労働基準監督署長の認定を受けた場合は除く。
第48条(退職または解雇時の義務)
1)退職または解雇されたパートタイマーは、会社の指示する期間内に速やかに後任者に業務の引き継ぎを行わなければならない。
2)退職または解雇されたパートタイマーは、身分証明書、社員記章など会社からの貸与品を直ちに返納しなければならない。また、会社に債務のあるときは退職または解雇の日までに完済しなければならない。
3)退職または解雇されたパートタイマーは、退職または解雇の日以後、在職中に知り得た業務上の機密事項を他に漏らしてはならない。
第7章 賞罰
第49条(表彰)
パートタイマーが次の各号のいずれかに該当する場合は、会社はその都度審査の上で表彰することがある。表彰は賞状の他、賞品または賞金を授与して行う。
第50条(懲戒の種類)
懲戒はその情状により、次の各号の区分に従って行う。
第51条(懲戒の事由)
会社は、パートタイマーが次の各号のいずれかに該当する場合は、その程度に応じて、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇に処する。
第52条(懲戒解雇)
1)会社は、パートタイマーが次の各号のいずれかに該当する場合は懲戒解雇に処する。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、諭旨解雇または降格にとどめることがある。
2)会社は、諭旨解雇または懲戒解雇事由に該当し、実際に諭旨解雇または懲戒解雇になるおそれがあるパートタイマーに対し、原則として事前に弁明の機会を与える。
第8章 安全衛生
第53条(安全衛生の遵守事項)
会社は、パートタイマーの安全衛生の確保および改善を図り、快適な職場の形成のため必要な措置を講ずる。職場の安全衛生については、別途定める「安全衛生管理規程」(省略)によるものとする。
第54条(就業禁止)
1)会社は、次の各号のいずれかに該当するパートタイマーの就業を禁止する。
2)会社は、前項の定めにより就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、会社が指定する医師の意見を聴くものとする。また、パートタイマーは、第1項に該当するおそれがあるときは、直ちに会社に届け出なければならない。
3)第1項の定めにより就業を禁止された期間は、無給とする。
第55条(健康診断)
1)会社は、常時雇用されるパートタイマーであって、週所定労働時間が一般の従業員の4分の3以上である者に対し、入社時および毎年1回定期的に健康診断を行う。
2)会社は、前項の健康診断の結果を本人に速やかに通知する。結果に異常の所見があり、会社が必要と認めるときは、就業の禁止、配置の転換、その他必要な措置を命ずることがある。
第56条(医師による面接指導の実施)
1)会社は、第20条の時間外労働および休日労働の合計が1カ月当たり80時間を超えたパートタイマーから申し出があった場合には、医師の面接指導を受けさせるものとする。
2)前項の他、労働安全衛生法およびその他の関係法令において必要とされる場合、医師が必要と認めた場合、会社が必要と判断した場合等において、面接指導を実施することがある。
第9章 災害補償
第57条(災害補償)
パートタイマーが業務上の事由または通勤途中に負傷し、疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償や保険給付については、別途定める「災害補償規程」(省略)によるものとする。
第10章 個人情報の取り扱い
第58条(パートタイマー個人情報の取り扱い)
1)会社は、適正な雇用管理を行うために必要な範囲において、パートタイマーおよびその家族から適正な方法で入手した情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。以下「パートタイマー個人情報」)を利用し、または法令の範囲内において第三者に開示する。
2)前項にかかわらず、特定個人情報等の取り扱いは、別途定める「マイナンバー(特定個人情報)取扱規程」(省略)によるものとする。
第59条(パートタイマー個人情報の管理責任者)
パートタイマー個人情報の管理責任者は総務部長とする。
第60条(パートタイマー個人情報の開示請求)
1)パートタイマーは、会社に対して自らのパートタイマー個人情報の開示を求めることができる。
2)会社は、パートタイマーからパートタイマー個人情報の開示を求められたときは、速やかにこれを開示する。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、パートタイマー個人情報の全部または一部の開示を拒否することができる。
3)パートタイマー個人情報が開示された結果、当該パートタイマー個人情報に誤りがあることが判明した場合、会社は当該パートタイマーに通知し、同意を得た上でパートタイマー個人情報を修正する。
第61条(パートタイマーが退職などをした際のパートタイマー個人情報の取り扱い)
退職などの事由により、会社とパートタイマーの雇用関係が消滅した場合、会社は法令で定められている期間において、当該パートタイマーのパートタイマー個人情報を管理し、その後は検証可能な方法による完全な廃棄処分を行う。
第62条(顧客個人情報の取り扱い)
1)会社が保有するパートタイマー個人情報以外の情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)を「顧客個人情報」という。
2)パートタイマーは、別途定める「個人情報保護規程」(省略)を遵守して、適切に顧客個人情報を利用しなければならない。
第11章 一般の従業員への転換など
第63条(一般の従業員への転換)
1)1年以上勤続し、一般の従業員への転換を希望するパートタイマーについては、次の各号の要件を満たす場合、一般の従業員として採用し、労働契約を締結するものとする。
2)第18条で定める年次有給休暇の付与日数の算定において、パートタイマーとしての勤続年数を通算する。
3)一般の従業員に転換する場合の転換時期は、毎年○月○日とする。
第64条(無期労働契約への転換)
1)通算契約期間が5年を超えるパートタイマーは、別途定める「無期労働契約転換申込書」で申し込むことにより、現在締結している有期労働契約の契約期間の末日の翌日から、無期パートタイマーでの雇用に転換することができる。
2)前項の無期転換の申し込みは、原則として、現在の労働契約期間が満了する1カ月前までに行うものとする。
3)第1項の通算契約期間は、2013年4月1日以降に開始した有期労働契約の契約期間を通算するものとし、現在締結している有期労働契約については、その末日までの期間とする。ただし、労働契約が締結されていない期間が連続して6カ月以上あるパートタイマーについては、それ以前の契約期間は通算契約期間に含めない。なお、労働契約が締結されていない期間以前の通算契約期間が1年未満の場合に当該契約期間の通算の可否については、労働契約法およびその他の関係法令に従うものとする。
4)この規則に定める労働条件は、第1項の規定により期間の定めのない労働契約での雇用に転換した後も引き続き適用する。
5)無期労働契約へ転換したパートタイマーに係る定年は、満60歳とする。ただし、満60歳を超えて無期労働契約へ転換したパートタイマーの定年は満65歳とする。
6)無期労働契約へ転換したパートタイマーで定年を迎えた者が希望し、解雇事由または退職事由に該当しないときは、会社が別途定める「労働条件」(省略)により満65歳まで継続雇用する。なお、前項ただし書きのパートタイマーに対する定年後の継続雇用については、都度決定をする。
第12章 雑則
第65条(福利厚生)
パートタイマーは、一般の従業員と同様に福利厚生施設を利用することができる。
第66条(教育訓練)
会社は、職務遂行に必要な能力を付与・向上させるための教育訓練について、一般の従業員と同様にパートタイマーにも実施する。
第67条(損害賠償)
パートタイマーが故意または過失によって会社に損害を与えた場合、会社はその全部または一部の賠償を求めることがある。パートタイマーの退職後に、その者の行為が故意または過失によって会社に与えた損害の原因であると判明した場合も、その損害の全部または一部の賠償を求めることがある。
第68条(改廃)
本規則の改廃は、取締役会において行うものとする。
附則
本規則は、○年○月○日より実施する。
■無期労働契約転換申込書■
以上(2025年3月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)
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就業規則とは、賃金や労働時間などの労働条件、職場内の規律などについて定めた会社のルールブックで、常時10人以上の社員が働く事業場では作成・届け出が義務付けられています。本来は「法改正、社員数の増加、働き方改革」など、自社の状況や制度の変化に応じてブラッシュアップしていく必要があるのですが、実際は、
といった理由から、古い就業規則をそのまま使っている会社が少なくありません。ただ、こうした運用は、大きなトラブルが起きた場合にリスクです。
就業規則の記載事項は次の3つに分かれており、特に「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」が、最新の法令に基づく内容で漏れなく定められているかを確認するのが先決です。
次章では、就業規則のひな型を紹介します。ここまでの内容を踏まえた上で、自社の就業規則の見直しにご活用ください。
なお、2025年4月1日からは、
定年再雇用者に対する65歳までの雇用確保措置が完全義務化
されます(高年齢者雇用安定法)。改正前は労使協定(2012年度以前に締結されたものに限る)により、一部の社員を対象から除外すること(雇用確保義務に対する経過措置)が認められていましたが、今後は認められなくなりますので、就業規則内にその旨の定めをしている場合については、修正対応が必要となります。
以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際に就業規則を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
なお、前述した65歳までの雇用確保措置に関する定めは、第45条(定年および再雇用)に記載しています。
【就業規則のひな型】
第1章 総則
第1条(目的)
この就業規則(以下「本規則」)は、株式会社○○○○(以下「会社」)の従業員の労働条件、服務規律、その他就業に関して必要な事項について定めたものである。会社と従業員は本規則を遵守し、会社の発展に寄与するものとする。なお、本規則に定めのない事項は、労働基準法およびその他の関係法令によるものとする。
第2条(適用範囲)
本規則の適用を受ける従業員は、第3条および第4条の手続きを経て、会社と期間の定めがない労働契約を交わした従業員とする。期間に定めのある労働契約を交わした短時間勤務従業員は別途定める「パートタイマー就業規則」(省略)、期間に定めのある労働契約を交わした従業員は別途定める「契約従業員用就業規則」(省略)の適用を受けるものとする。また、パートタイマー就業規則および契約従業員用就業規則で規定する「無期労働契約への転換」によって無期労働契約に転換した従業員は、本規則の適用を受けず、転換後も各々の規則を適用とする。
第2章 採用、異動
第3条(採用の手続き)
会社は、就職を希望する者の中で、次の各号に定める書類を提出した者の中から、面接その他一定の選考試験により採用者を決定する。ただし、状況により、会社はその一部の書類の提出を求めないことがある。
第4条(採用時の提出書類)
1)従業員として採用された者は、採用日から2週間以内に次の各号に定める書類を提出しなければならない。ただし、状況により、会社はその一部の書類の提出を求めないことがある。
2)前項の提出書類の記載内容に変更があったときは、速やかに所属長に届け出なければならない。
3)会社は、第1項の提出書類を人事労務に関する手続きおよび人事労務管理のために利用するものとし、その他のために利用する場合には従業員から同意を得るものとする。
4)前各項の規定にかかわらず、個人番号(マイナンバー)および個人番号(マイナンバー)をその内容に含む個人情報(以下「特定個人情報等」)の利用目的や取り扱いは、別途定める「マイナンバー(特定個人情報)取扱規程」(省略)によるものとする。
第5条(試用期間)
1)会社が新たに採用した従業員については、採用日から3カ月間を試用期間とする。
2)採用過程や入社後の業務遂行状況等を考慮し、会社が適当と認めたときは試用期間を短縮または延長することがある。なお試用期間の延長は、3カ月を限度とする。
3)試用期間は勤続期間に算入する。ただし、賞与の算定対象期間には含まれない。
4)パートタイマー就業規則に規定する一般従業員への転換(正社員転換)制度により、本規則が適用となる従業員については、試用期間はなしとする。
第6条(採用取消事由)
1)試用期間中の従業員が次の各号のいずれかに該当し、本採用が適当でないと認めるときは、会社は本採用を行わない。ただし、改善の余地がある等、特に必要と認めた場合に限り、会社は試用期間を延長し、採用の取り消しを留保することがある。
2)採用の日から14日を経過した者の採用の取り消しについては、第48条(解雇予告)の規定を準用する。
第7条(異動)
1)業務上の必要がある場合は、会社は従業員に人事異動を命じることがある。人事異動を命じられた従業員は正当な理由なくこれを拒むことはできない。
2)人事異動の種類は次の各号に定める通りとする。
1.配置転換
同一事業場内における所属部門や担当業務等の異動をいう。
2.転勤
勤務地の変更を伴う所属部門や担当業務等の異動をいう。
3.出向
会社の従業員が社命によって関係会社その他で勤務することをいう。出向については、別途定める「出向者取扱規程」(省略)に基づくものとする。出向先での労働条件等については個別に定める。
4.転籍
会社の従業員が社命によって関係会社その他へ籍を移し、勤務することをいう。転籍は、本人の同意を得るものとする。転籍先での労働条件等については個別に定める。
第8条(赴任)
異動を命じられた従業員は、次の各号に定める期間内に赴任しなければならない。
1.住居の移転を伴う異動
発令日より原則として2週間以内
2.住居の移転を伴わない異動
発令日より原則として1週間以内
第9条(業務の引き継ぎ)
異動を命じられた従業員は、会社が指示する期間内に速やかに後任者に業務の引き継ぎを行わなければならない。後任者がいないとき、あるいは後任者の着任が遅れるときは、速やかに所属長に業務の引き継ぎを行うものとする。
第3章 服務規律
第10条(服務規律の基本原則)
従業員は、会社の指揮命令に従い、職務上の責任を自覚し、互いに協力して誠実に職務を遂行するとともに、職場の秩序の維持に努めなければならない。
第11条(服務心得)
1)従業員は、次の各号に定める事項を遵守しなければならない。
2)従業員が会社施設内において政治活動、宗教活動、集会、演説、放送をし、または文書の配布、掲示をしようとする場合は、事前に会社の許可を受けなければならない。
第12条(機密保持)
従業員は、自己の担当であるか否かを問わず、業務上知り得た機密を第三者に開示または漏洩もしくは自らのために利用してはならない。退職後も同様とする。
第13条(副業・兼業)
1)従業員は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2)従業員は、前項の業務に従事するときは、事前に会社に届け出を行うものとする。手続きの方法等については別途定める「副業・兼業取扱規程」(省略)によるものとする。
3)会社は、従業員が第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止または制限することができる。
第14条(ハラスメントの禁止)
従業員は、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、職務上の地位・権限・職権、雇用形態に関係なく、職場において相手の人格や尊厳を尊重し、ハラスメント(セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント、パワーハラスメントなど)並びにそれらと疑われる行為をしてはならない。ハラスメントの防止については別途定める「ハラスメント防止規程」(省略)によるものとする。
第4章 労働時間、休憩、休日・休暇
第15条(勤務時間、休憩)
1)1週の労働時間は40時間、1日の労働時間は8時間とする。
2)始業時刻、終業時刻および休憩時間は次の通りとする。ただし、業務上やむを得ない事由がある場合には、労働時間が8時間を超えない範囲で、始業時刻、終業時刻、または休憩時間を変更することができる。
第16条(休憩時間の自由)
従業員は、休憩時間を自由に使用することができる。
第17条(出勤、退社)
1)従業員は、始業時刻に所定の方法に従ってその時刻を記録しなければならない。
2)退社は終業時刻に自己の管理する物品を整理整頓した後、所定の方法に従ってその時刻を記録しなければならない。
第18条(遅刻、早退、欠勤)
1)従業員は、遅刻、早退、欠勤しようとするときは、その前日までに所属長の承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない事由により事前に所属長の承認を得ることが困難な場合は、当日の始業時刻までに電話などの方法により連絡し、出勤後に速やかに承認を得なければならない。
2)私傷病による欠勤が連続して3日を超える場合、会社は従業員に医師の診断書などの提出を求めることがある。
第19条(私用外出)
勤務時間中に私用による外出を希望する従業員は、あらかじめ所属長の承認を得なければならない。
第20条(公民の権利)
従業員が、選挙権の行使や裁判員としての職権行使その他、公民としての権利を行使するために必要な時間を請求するときは、会社は公民権行使に必要な時間を与えるものとする。ただし、業務上の理由により、権利の行使を妨げない限度において従業員が請求した時間を変更することがある。
第21条(休日)
1)休日は次の各号に定める通りとする。
2)前項の休日のうち、法定休日を上回る休日は所定休日とする。
3)業務上、その他必要があるときは、第1項第1号については、休日を週1日確保した上で、事前に通知指定した日と振り替えることがある。
第22条(時間外労働)
1)業務上必要がある場合は、所定労働時間を超えて労働を命じることがある。
2)法定労働時間を超える時間外労働は、従業員の過半数を代表する者との労使協定の範囲とする。
3)第2項に定める時間外労働は、労働基準法およびその他の関係法令における時間外労働の上限を超えることはない。
4)満18歳未満の従業員に対しては、原則として時間外労働を命じることはない。
第23条(代替休暇)
会社は、1カ月(別途定める「賃金規程」(省略)による賃金の計算期間)の時間外労働が60時間を超えた従業員に対して、従業員の過半数を代表する者との労使協定に基づき、次の各号に定める代替休暇を与えるものとする。
第24条(休日労働)
1)業務上必要がある場合は、休日に労働を求めることがある。
2)法定休日の労働は、従業員の過半数を代表する者との労使協定の範囲とする。
3)第2項に定める休日労働は、労働基準法およびその他の関係法令における休日労働の上限を超えることはない。
4)満18歳未満の従業員に対しては、原則として休日労働を命じることはない。
第25条(災害など非常時の特別措置)
火災・地震・暴風雨・洪水、設備の爆発などの事故、感染症の流行その他避けることのできない事由により臨時の労働の必要がある場合は、会社は第22条および第24条にかかわらず労働基準監督署の許可を受けて、妊娠中および産後1年を経過しない女性従業員(以下「妊産婦」)を除く全ての従業員に時間外労働、休日労働、深夜労働(午後10時から午前5時までの間の労働。以降、同じ)を命じることがある。
第26条(割増賃金)
時間外労働、休日労働、深夜労働に対して、「賃金規程」(省略)により割増賃金を支払う。
第27条(妊産婦の特例)
妊産婦が請求した場合には、会社は時間外労働、休日労働、深夜労働を命じることはない。
第28条(出張等の勤務時間および旅費)
1)従業員が、会社の命令により出張その他社外で勤務する場合において、勤務時間を算定し難いときは、原則として第15条に定める時間を勤務したものとみなす。ただし、所属長があらかじめ別段の指示をしたときはこの限りではない。
2)前項の業務が所定労働時間外に及ぶ場合は、当該業務の遂行に通常必要とされる時間を勤務したものとみなす。
3)従業員が社用により出張する場合は、別途定める「出張旅費規程」(省略)により旅費を支給する。
第29条(年次有給休暇)
1)会社は、6カ月以上継続勤務し、所定労働日の80%以上出勤した従業員に対して、次の表の通り勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を付与する。この休暇期間中については、所定労働時間を労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。
2)年次有給休暇を付与する基準日は、入社日から起算して6カ月が経過した日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日とする。
3)年次有給休暇は、原則として労働日単位で付与する。ただし、従業員の過半数を代表する者との労使協定に基づき、一つの年度について5労働日分を限度に、1時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」)を付与する。時間単位年休の場合、1労働日を8時間と計算し、5労働日分で40時間とする。
4)年次有給休暇(時間単位年休を含む。以下、この条において同じ)を請求する従業員は、原則として3日前までに所属長に、別途定める「年次有給休暇の取得願」(省略)を提出しなければならない。
5)年次有給休暇は、原則として従業員が指定した時季に付与する。ただし、事業の正常な運営に支障があるときは、会社は従業員の指定した時季を変更することがある。
6)会社は、労働基準法第39条第7項に基づき、従業員に対して、時季を指定して年次有給休暇を付与することがある。
7)第1項の出勤率の算定に当たっては、年次有給休暇を取得した期間、産前産後の休業期間、育児休業期間、介護休業期間および業務上の傷病による休業期間は出勤したものとして取り扱う。
8)年次有給休暇は、権利発生から2年の間において取得することができる。
第30条(産前産後の休業)
1)6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性従業員から請求があったときは、産前休暇を与える。
2)産後8週間を経過しない女性従業員は就業させない。ただし、産後6週間を経過した女性従業員が請求した場合において、当該女性従業員について医師が支障ないと認めた業務に就かせることができる。
3)第1項および第2項の休業期間は無給とする。
4)妊娠中の女性従業員が請求した場合、他の軽易な業務に転換させる。ただし、業務に適する軽易な業務がないときには請求しても応じないことがある。
第31条(母性健康管理のための時間内通院)
1)妊産婦が母子保健法に定める健康診査または保健指導を受けるために請求した場合、会社は次の各号に定める範囲において母性健康管理のため、時間内通院を認める。
2)母性健康管理のために勤務していない時間は無給とする。
第32条(通勤緩和)
1)妊産婦が通勤による心身の負担を軽減するために請求した場合、会社は出社時および退社時について、各々30分の遅出および早退を認める。
2)通勤緩和の時間は無給とする。
第33条(疲労回復のための休憩)
1)妊産婦が業務による疲労回復のために請求した場合、会社は第15条第2項第2号の他に適宜休憩を取ることを認める。
2)業務による疲労回復のための休憩は無給とする。
第34条(医師などの指導による措置)
1)妊産婦が医師などから勤務状態が健康に支障を及ぼすとの指導を受けた場合であって、妊産婦より申し出があった場合は、会社は当該妊産婦の意見を聴いた上で、次の各号に定める措置を講じる。
2)前項第4号の休業は無給とする。
3)所定労働時間の短縮の適用を受ける期間については、賃金規程に基づく基本給を時間換算した額を基礎とした実労働時間分の基本給を支給する。
第35条(育児時間)
1)生後満1年に満たない生児を育てる女性従業員は、あらかじめ所属長に申し出て、勤務時間中に1日について2回、1回につき少なくとも30分の育児時間を受けることができる。
2)育児時間は無給とする。
第36条(生理日の休暇)
1)生理日の就業が著しく困難な女性従業員から請求があったときは、必要な期間の生理日の休暇を与える。
2)生理日の休暇は無給とする。
第37条(育児休業および介護休業)
会社は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に基づき、育児休業および介護休業、その他の両立支援策を講じる。育児休業および介護休業、その他の両立支援策については、別途定める「育児休業等に関する規程」(省略)および「介護休業等に関する規程」(省略)によるものとする。
第38条(特別休暇)
1)会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は特別休暇を与える。特別休暇に対して、会社は所定労働時間を労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。
2)会社は、必要に応じて前項に定める事由を確認するための書類の提出を求める場合がある。
第5章 賃金、賞与、退職金
第39条(賃金および昇給、賞与)
賃金および昇給、賞与は、「賃金規程」(省略)によるものとする。
第40条(退職金)
退職金は、別途定める「退職金規程」(省略)によるものとする。
第6章 休職、退職、解雇
第41条(休職)
1)会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当する場合に休職を命じることがある。
2)試用期間中の者、嘱託社員については、休職は適用しない。
第42条(休職期間)
1)休職期間は次の各号に定める通りとする。
1.第41条第1項第1号および第2号による休職
勤続期間が2年未満の者:6カ月
勤続期間が2年以上5年未満の者:1年
勤続期間が5年以上の者:1年6カ月
2.第41条第1項第3号による休職
出向している期間
3.第41条第1項第4号による休職
会社が必要と認める期間
2)前項第1号の勤続期間は、雇用期間の定めのない従業員としての勤続期間とする。ただし、試用期間は含まれない。
3)休職期間は、原則として、賞与、退職金等の算定対象となる勤続期間に通算されない。ただし、第29条に定める年次有給休暇の付与に関する勤続期間には通算する。
第43条(休職中の賃金)
1)休職期間中は無給とする。
2)住民税、社会保険料は休職中でも発生するため、従業員は、毎月末日までに所定の金額を会社が指定する金融機関口座へ振り込みにて支払うものとする。振込金額等の詳細については、休職開始前に従業員に通知する。
第44条(復職)
1)休職期間の満了前に休職事由が消滅した場合には、従業員は速やかに総務部に、別途定める「復職願」(省略)を提出しなければならない。会社は、復職願を受け取るに当たり、必要に応じて会社の指定した医師による診断結果の提出を命ずることがある他、診断書を発行した医師に対する面談を求めることがある。
2)会社は、復職願を受理し、休職期間中に休職事由が消滅したと確認できたときは、原則として前職務に復職させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難または不適当な場合には前職務と異なる職務に配置することがある。なお、職務の変更に応じ、労働条件も変更する場合がある。
3)第41条第1項第1号および第2号により休職した者が復職し、その後6カ月以内に同一または類似の事由により再び休職した場合には、休職期間は引き続いているものとみなす。
4)休職期間の満了までに復職できない従業員は、休職期間満了の日をもって自動退職とする。
第45条(定年)
1)従業員の定年は満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。ただし、従業員が希望し、解雇事由または退職事由(第46条第1項第1号を除く)に該当しないときは、会社が別途定める「労働条件」(省略)にて満65歳まで再雇用する。
2)前項の定めは、2025年4月1日以降、従業員の過半数を代表する者との労使協定(○年〇月〇日締結)に基づき、再雇用の対象から除外することとされている従業員についても等しく適用する。
第46条(退職)
1)従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は、次の各号に定める日を退職の日とする。
2)自己の都合により退職を申し出る従業員は、退職希望日の14日前までに、総務部に別途定める「退職願」(省略)を提出しなければならない。会社の承認を受けるまでの間、従業員は従前の業務に従事しなければならない。
第47条(普通解雇)
会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当した場合に解雇することがある。
第48条(解雇予告)
従業員を解雇する場合、会社は労働基準法に基づき30日前に予告をするか、または予告に代えて平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う。ただし、労働基準監督署長の認定を受けた場合、および次の各号のいずれかに該当する従業員を解雇する場合はこの限りではない。
第49条(解雇理由の証明書)
会社は、解雇する従業員から請求があった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。
第50条(解雇の制限)
会社は、次の各号に定める期間中は従業員を解雇しない。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合で労働基準監督署長の認定を受けた場合は除く。
第51条(退職または解雇時の義務)
1)退職または解雇された従業員は、会社の指示する期間内に速やかに後任者に業務の引き継ぎを行わなければならない。
2)退職または解雇された従業員は、身分証明書、社員記章、携帯電話など会社からの貸与品を直ちに返納しなければならない。また、会社に債務のあるときは退職または解雇の日までに完済しなければならない。
3)退職または解雇された従業員は、退職または解雇の日以後、在職中に知り得た業務上の機密事項を他に漏らしてはならない。
第7章 賞罰
第52条(表彰)
従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は、会社はその都度審査の上で表彰することがある。表彰は賞状の他、賞品または賞金を授与して行う。
第53条(懲戒の種類)
懲戒はその情状により、次の各号の区分に従って行う。
1.けん責
始末書を提出させ、将来を戒める。
2.減給
始末書を提出させ、減給する。減給は1回の額が平均賃金の1日分の50%を超えることはなく、また減給の総額が賃金規程による一つの賃金の計算期間における賃金総額の10%を超えることはない。
3.出勤停止
始末書を提出させ、出勤停止を命ずる。出勤停止は7日間を限度とし、その間は無給とする。
4.降格
始末書を提出させ、役職の罷免・引き下げ、資格等級の引き下げのいずれか、または両方を行う。この場合の賃金は、賃金規程に従い、降格後の役職、資格等級に対応した金額となる。
5.諭旨解雇
退職願の提出を勧告する。ただし、応じない場合は懲戒解雇に処する。情状に応じて退職金の全部または一部を支給しないことがある。
6.懲戒解雇
即時に解雇する。原則として退職金の全部を支給しない。この場合、労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当を支給しない。
第54条(懲戒の事由)
会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は、その程度に応じて、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇に処する。
第55条(懲戒解雇)
1)会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は懲戒解雇に処する。懲戒解雇された従業員には、原則として退職金の全部を支給しない。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、諭旨解雇または降格にとどめることがある。
2)会社は、諭旨解雇または懲戒解雇事由に該当し、実際に諭旨解雇または懲戒解雇になる恐れがある従業員に対し、原則として事前に弁明の機会を与える。
第8章 安全衛生
第56条(安全衛生の遵守事項)
会社は、従業員の安全衛生の確保および改善を図り、快適な職場の形成のため必要な措置を講ずる。職場の安全衛生については、別途定める「安全衛生管理規程」(省略)によるものとする。
第57条(就業禁止)
1)会社は、次の各号のいずれかに該当する従業員の就業を禁止する。
2)会社は、前項の定めにより就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、会社が指定する医師の意見を聴くものとする。また、従業員は、前項に該当する恐れがあるときは、直ちに会社に届け出なければならない。
3)第1項の定めにより就業を禁止された期間は無給とする。
第58条(健康診断)
1)会社は、従業員に対し、入社時および毎年1回定期的に健康診断を行う。
2)会社は、前項の健康診断の結果を本人に速やかに通知する。結果に異常の所見があり、会社が必要と認めるときは、就業の禁止、配置の転換、その他必要な措置を命ずることがある。
第59条(医師による面接指導の実施)
1)会社は、第22条の時間外労働および第24条の休日労働の合計が1カ月当たり80時間を超えた従業員から申し出があった場合には、医師の面接指導を受けさせるものとする。
2)前項の他、労働安全衛生法およびその関係法令において必要とされる場合、医師が必要と認めた場合、会社が必要と判断した場合等において、面接指導を実施することがある。
第9章 災害補償
第60条(災害補償)
従業員が業務上の事由または通勤途中に負傷し、疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償や保険給付については、別途定める「災害補償規程」(省略)によるものとする。
第10章 個人情報の取り扱い
第61条(従業員個人情報の取り扱い)
1)会社は、適正な雇用管理を行うために必要な範囲において、従業員およびその家族から適正な方法で入手した情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。以下「従業員個人情報」)を利用し、または法令の範囲内において第三者に開示する。
2)前項にかかわらず、特定個人情報等の取り扱いは、別途定める「マイナンバー(特定個人情報)取扱規程」(省略)によるものとする。
第62条(従業員個人情報の管理責任者)
従業員個人情報の管理責任者は総務部長とする。
第63条(従業員個人情報の開示請求)
1)従業員は、会社に対して自らの従業員個人情報の開示を求めることができる。
2)会社は、従業員から従業員個人情報の開示を求められたときは、速やかにこれを開示する。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、従業員個人情報の全部または一部の開示を拒否することができる。
3)従業員個人情報が開示された結果、当該従業員個人情報に誤りがあることが判明した場合、会社は当該従業員に通知し、同意を得た上で従業員個人情報を修正する。
第64条(従業員が退職などをした際の従業員個人情報の取り扱い)
退職などの事由により、会社と従業員の雇用関係が消滅した場合、会社は法令で定められている期間において、当該従業員の従業員個人情報を管理し、その後は検証可能な方法による完全な廃棄処分を行う。
第65条(顧客個人情報の取り扱い)
1)会社が保有する従業員個人情報以外の情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)を「顧客個人情報」という。
2)従業員は、別途定める「個人情報保護規程」(省略)を遵守して、適切に顧客個人情報を利用しなければならない。
第11章 雑則
第66条(慶弔見舞金)
会社は、従業員の慶弔、被災の際は別途定める「慶弔見舞金規程」(省略)により、それぞれ祝金、弔慰金、見舞金を支給する。
第67条(損害賠償)
従業員が故意または過失によって会社に損害を与えた場合、会社はその全部または一部の賠償を求めることがある。従業員の退職後に、その者の行為が故意または過失によって会社に与えた損害の原因であると判明した場合も、その損害の全部または一部の賠償を求めることがある。
第68条(改廃)
本規則の改廃は、取締役会において行うものとする。
附則
本規則は、○年○月○日より実施する。
以上(2025年3月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)
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