1 2027年4月に始まる消費税率1%減税の影響と対応を考える
2026年9月に与党がまとめた税制改正大綱により、2027年4月から食品の消費税率が大きく引き下げられます。一見「減税=朗報」に見えるこの改正は、実は中小企業(特に食品を取り扱う業種)にとって、
- 会社の資金繰り
- レジや会計システムなどの設定変更
- 申告方式の選び直し(消費税の簡易課税制度の適用を受けている事業者)
といった、待ったなしの実務対応を迫るものです。
この記事では、「知らなかった」では済まされない改正の中身とスケジュール、事業者が今から準備すべきことを整理します。
2 今回の税制改正の内容とスケジュール
今回の税制改正大綱は、物価高対策として、現在8%(軽減税率対象)となっている食品(酒類・外食を除く飲食料品)の消費税率を、
2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間限定で「1%」に引き下げる
というものです。
あわせて、中低所得の働く世代の手取りを増やすため、「就業者負担軽減支援金」という新しい給付制度も2027年4月から始まります。これは飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲内で、所得に応じて個人に給付金として届ける仕組みで、2029年度以降に本格的な「給付付き税額控除」制度へ移行する予定です。つまり、今回の1%への引き下げは恒久的な減税ではなく、次の制度に移るまでの「つなぎ」の位置づけです。
なお、2029年4月からは税率が元の8%に戻ることも、あらかじめ決まっています。
3 事業者への影響―確認すべき3つのポイント

1)資金繰りへの影響を考える
中小企業の経営者にとって、今回の改正で特に注意したいのが、消費税の計算と資金繰りです。飲食料品を販売する事業者の場合、飲食料品の売上にかかる消費税は1%まで下がります。一方、店舗の家賃、水道光熱費、資材・包装材など、事業で使うものの中には10%の消費税がかかり続けるものがあります。
その結果、お客さんから預かる消費税よりも、仕入れや経費の支払いに含まれる消費税のほうが多くなることがあります。この場合、本則課税(原則課税)の事業者であれば、その差額が還付されることになります。
ただし、還付されるからといって、資金繰り上の問題がなくなるわけではありません。
いったん仕入れや経費の支払いで資金が出ていき、還付金を受け取るまでには一定の時間がかかる(次の確定申告書を提出してから1~2カ月程度)
ためです。
そこで、本則課税を選択している事業者では、還付金をいつ受け取れるのかまで含めて資金繰りを考えることが重要になります。
例えば、課税期間を1か月または3か月ごとに短縮すれば、通常より早く還付申告を行うことができます。売上規模が大きい事業者や、仕入れ・経費の支払いが多い事業者では、課税期間の短縮が資金繰り対策の一つになる可能性があります。
さらに、中間申告にも注意が必要です。前年の実績をもとに計算すると、8%の税率を前提とした中間申告税額が過大になる可能性があります。そこで今回の改正では、2027年4月1日以後に開始する中間申告対象期間について、直前の課税期間の飲食料品に係る取引に1%の税率が適用されていたものとみなして再計算した金額を中間申告税額として記載できる特例が設けられます(記載に当たっては、仮決算による中間申告書の様式を使用します)。そのため、仮決算による中間申告を行う必要があるかどうか、検討する必要があります。
2)税率変更に向けて、レジ・会計システムの準備も必要
税率が変わると、税務処理だけでなく、日々の販売や経理業務にも影響が及びます。
POSレジ、販売管理システム、会計ソフト、ECサイトなどについて、1%の税率を登録したり、レシートや請求書に記載する消費税額を変更したりする必要があります。
なお、システム改修に係る費用については、税率変更への対応だけを目的とした作業であることが作業指図書などから明確になっていれば、資産として計上する「資本的支出」ではなく、費用として処理する「修繕費」として扱える場合があります。また、税制改正大綱では、スマートレジの導入やシステム改修について中小企業等への支援を行う方針(詳細は今後公表される見込み)が示されており、利用できる支援策がないか確認しておきましょう。
消費税率が変わると、値札やレジの設定を変更するだけでなく、経理処理にも注意が必要です。特に気を付けたいのが、税率変更の前後に行われる取引です。値札の貼り替えなどが間に合わない事業者については、消費者に誤解を与えないための対応を行うことを条件に、2027年2月1日から5月31日まで、2029年2月1日から5月31日までの一定期間、変更前または変更後の税率に基づく税込価格を表示し続けられる経過措置が設けられています。
また、飲食料品の定期供給契約(不特定かつ多数の者に定期的に継続して供給する契約)や通信販売では、契約や申込みの時期によって8%の税率が引き続き適用される場合があります。例えば、
- 2026年12月31日以前に締結した定期供給契約で2027年3月31日までに代金を受け取っている取引
- 2026年12月31日以前に条件を提示し、2027年3月31日までに申込みを受けた通信販売
などが対象です(当初から特例税率1%が適用されることを前提として締結された契約や条件提示については、この特例から除外され、予定通り1%が適用される)。
そのため、
定期便や通信販売を行っている事業者は、過去の契約や申込みの中に、8%の税率が適用される取引が残っていないかを事前に確認
する必要があります。
経理処理でも、「請求した月」や「支払った月」だけを見て税率を判断するのは危険です。同じ月に請求した商品であっても、取引の内容や実際の取引日によって、1%、8%、10%と適用される税率が異なる可能性があります。
税率変更後の混乱を防ぐには、請求書や領収書を処理する際に、「いつの取引なのか」「どの税率が適用されるのか」を取引ごとに確認できる仕組みを整えておくことが大切です。販売・請求を担当する部署だけでなく、経理担当者にも税率変更のルールを共有しておきましょう。
3)簡易課税を選択している会社は、税負担だけでなく制度選択も確認
注意したいのが、簡易課税制度を利用している事業者です。
簡易課税では、実際に支払った仕入れや経費に含まれる消費税をそのまま差し引くのではなく、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使って納付税額を計算します。そのため、飲食料品の消費税率が1%に下がった場合でも、仕入れに含まれる10%の消費税をそのまま控除できるわけではありません。
そこで今回の改正では、飲食料品の売上に対応する仕入税額について、売上にかかる消費税額と同額とみなす特例が設けられます。これにより、飲食料品の売上については納税額が発生しない仕組みとなります。インボイス制度における2割特例・3割特例の適用事業者についても同様の措置が講じられます。
一方で、
仕入れや経費に含まれる消費税の還付を直接受けたい事業者は、本則課税への移行を検討
することも考えられます。
今回の改正では、本則課税への変更に必要となる届出について、2027年4月1日を含む課税期間の末日まで提出できる特例が設けられる他、簡易課税を選択した場合に原則として必要となる「2年間の継続適用」の制限を解除する措置も講じられます(いずれも飲食料品の譲渡を行う事業者に限定されています)。
ただし、免税事業者が消費税の還付を受けるためには、課税事業者になる必要があります。課税事業者選択届出書の提出や、インボイス登録などが必要になるため、単純に「還付を受けられるから課税事業者になればよい」と判断するのは避けましょう。
自社の売上構成や仕入れ・経費の金額をもとに、どの制度を選ぶと資金繰りや納税額にどのような影響が出るのかを事前に比較することが大切です。
以上(2026年9月作成)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)
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画像:日本情報マート













