【賃金データ集】 退職金のモデル支給額

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「退職金」(退職給付等の費用)です。

退職給付等の費用

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 退職金の位置付けと退職金制度の概要

1)退職金の位置付け

退職金とは、在職中の従業員の功労に対する報償や賃金の後払いといった意味合いで、企業が退職した従業員に支払う金銭です。退職金制度は、支払い形態、算定の考え方、掛け金の積立形態などによって幾つかの種類に分類されます。退職金制度の導入は企業の義務ではないものの、多くの企業が実施しています。

2)退職金制度の概要

主な退職金制度の種類は次の通りです。

退職金の位置付け

1.支払い形態

支払い形態は、次のように大別されます。

  • 退職一時金:退職金を一括で支給
  • 退職年金:退職金を年金として支給(「企業年金」とも呼ばれる)

2.算定の考え方

退職一時金の算定の考え方は、次のように大別されます。

  • 基本給連動型:算定基礎額(退職金を計算する基礎となるもの)を基本給とする制度で、一般的には、「退職時の基本給×勤続年数別係数×退職事由別係数(会社都合退職と自己都合退職)」によって退職金を算定するもの
  • 基本給非連動型:算定基礎額を基本給以外とする制度で、代表的なものは「ポイント制退職金制度」や「別テーブル方式(第二基本給)」など

 退職年金の算定の考え方は、「確定給付型:あらかじめ将来の年金支払額が決まっている制度」と、「確定拠出型:あらかじめ掛け金の額が決まっている制度」に大別されます。

3.積立形態

積立形態はさまざまで、それぞれ特徴があります。

積立形態

2 退職金制度の潮流

1)退職金制度の3つの機能

退職金制度は功労に対する報奨や賃金の後払いといった機能を持ちながら、終身雇用・年功序列の人事制度に組み入れられ、定着してきました。

現在有力とされている退職金制度の機能を整理すると次の3つになります。

  • 功労報奨:従業員の長年の勤務を慰労する
  • 賃金後払い:若年時の低い賃金を補償する
  • 生活保障:退職後の労働者の生活を援助する

2)これからの退職金制度

かつての退職金制度は、年功主義の下で賃金の後払い機能を持ち、従業員の定着率向上に寄与しました。しかし、定年まで1社に勤め続ける従業員が減った昨今では、こうした考え方は必ずしも実情に合わなくなってきており、実際、退職金制度の見直し(廃止も含む)を実施・検討している企業が少なくありません。

例えば、企業の負担軽減という視点で、前述の確定給付企業年金と確定拠出年金について考えてみましょう。確定給付企業年金は企業(基金)が将来の給付額を加入者に約束するという仕組みです。仮に予定通りの運用ができなかった場合、企業は追加拠出をして加入者を保護する必要があります。一方、確定拠出年金ではあらかじめ掛け金は決まっていますが、将来の年金給付額は運用期間中の従業員の運用成績によって決まるため、運用成績に対する企業の責任が軽くなります。退職金に係る企業の負担を軽減したいと考えている企業にとっては、確定拠出年金のほうが適しているといえるかもしれません。

また、従業員の多くは、「退職後の生活のために、ある程度の資産が欲しい」と少なからず考えています。退職後の生活を考えるためには、退職金の具体的な支給額を知りたいところですが、実際の退職金制度は、退職時まで支給額の実態が分からないなど、制度内容がブラックボックス化しているケースが少なくありません。こうした場合は、確定拠出年金のように、従業員が在職中に自らの裁量で利用して、資産を運用できる退職金制度にするのも1つの方法です。

ちなみに、退職金制度ではありませんが、従業員が自分で掛け金を決めて運用する「個人型確定拠出年金」(通称「iDeCo(イデコ)」)には、従業員の掛け金に追加して、企業が掛け金を拠出することができる「中小事業主掛金納付制度」(通称「iDeCo+(イデコプラス)」)という制度があります。退職金に充てる原資の一部を企業が拠出する掛け金に充てることなどで、従業員の資産形成のサポートが可能になります。

3 厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

4 中央労働委員会の統計資料によるモデル支給額

中央労働委員会の統計資料によるモデル支給額

中央労働委員会の統計資料によるモデル支給額

5 日本経済団体連合会等の統計資料によるモデル支給額

日本経済団体連合会等の統計資料によるモデル支給額

6 東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

6 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は以下の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■就労条件総合調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/11-23.html

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■賃金事情等総合調査■
https://www.mhlw.go.jp/churoi/chingin/

画像19

■退職金・年金に関する実態調査結果■
https://www.keidanren.or.jp/policy/index09.html

画像20

■中小企業の賃金・退職金事情■
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/data/koyou/chingin

画像21

以上(2026年7月更新)

pj17911
画像:ChatGPT

【外国人雇用】 在留資格の一覧! 自社が雇用できる外国人は?

1 押さえるべきは「在留資格」

日本で働く外国人の数は、2025年10月末日時点で、過去最多の257万1037人になりました(厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況」)。外国人雇用を検討する会社は今後ますます増えると思われますが、その際、注意が必要なのが「在留資格」です。

在留資格とは、

外国人が日本で行うことができる活動等を類型化したもので、法務省(出入国在留管理庁)が外国人に対する上陸審査・許可の際に付与する資格

のことをいいます。在留資格ごとに就労できる職種や在留期間が異なるため、正しく把握しておかなければ、不法就労などのトラブルを招きかねません。

大切なのは、

  • 職種の制限:制限があるかないか
  • 在留期間の期限:制限があるかないか(一部は無期限)
  • 労働時間の上限:日本人と同じか否か

を確認することです。

まずは、日本で就労する外国人の区分を見てみましょう。

画像1

上記の図表1を踏まえると、一般的に、多くの外国人は、

  • 職種の制限:あり
  • 在留期間の期限:あり
  • 労働時間の上限:日本人と同じ

となりますが、就労できる職種や在留期間の細かいルールは在留資格ごとに異なります。以降で図表1の区分ごとに、在留資格の概要を紹介します。

2 身分に基づき在留する者

活動内容に関係なく日本に滞在する外国人が該当します。

画像2

就労に関する特徴は次の通りです。

  • 職種の制限:なし。単純労働なども可
  • 在留期間の期限:永住者は無期限。その他の在留資格は期限あり
  • 労働時間の上限:日本人と同じ

どの在留資格についても職種の制限は特になく、労働時間の上限も日本人と同様ですが、在留期間について注意する必要があります。

ただし、永住者の場合は在留期間も無期限ですので、基本的に日本人と同じように雇用することができます。

3 就労目的で在留が認められる者

特定の知識・スキルを活かした職業に就く外国人が該当します。

画像3

就労に関する特徴は次の通りです。

  • 職種の制限:それぞれの在留資格で認められた範囲内でしか活動できない
  • 在留期間の期限:高度専門職2号は無期限。その他の在留資格は期限あり
  • 労働時間の上限:日本人と同じ

「高度専門職2号」を除き、どの在留資格も在留期間に期限があります。

「高度専門職1号」の在留資格は、日本の学術研究や経済の発展に寄与することが見込まれる高度の専門的な能力を持つ外国人の受入れをより一層促進するため、他の一般的な就労資格よりも活動制限を緩和した在留資格として設けられたものです。高度人材ポイント制において、学歴・職歴・年収等の項目ごとにポイントを付け、その合計が一定点数以上に達した人に許可されます。

「高度専門職2号」の在留資格は、日本の学術研究や経済の発展に寄与することが見込まれる高度の専門的な能力を持つ外国人の受入れをより一層促進するため、「高度専門職1号」の在留資格をもって一定期間在留した者を対象に、在留期限を無期限とし、活動制限を大きく緩和した在留資格として設けられたものです。これらの外国人の中で、高度人材ポイント制において、学歴・職歴・年収等の項目ごとにポイントを付け、その合計が一定点数以上に達した人に許可されます。

4 技能実習

外国人技能実習制度における技能実習生が該当します。

外国人技能実習制度とは、技能実習生が日本で実習を行う会社(実習実施者)の下で働き、母国では得がたい技能の修得などを図るための制度です。

画像4

就労に関する特徴は次の通りです。

  • 職種の制限:技能実習2号、3号に移行が可能な職種・作業は省令で定められている
  • 在留期間の期限:あり
  • 労働時間の上限:日本人と同じ

外国人技能実習制度は、まず技能実習1号からスタートし、所定の試験を受けることで技能実習2号、3号へと移行していく仕組みになっています。ただし、技能実習2号、3号に移行が可能な「職種」と各職種にひもづく「作業」が、省令で細かく定められています。

例えば、

「耕種農業」という職種には、「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」という作業がひもづくといった具合に、2026年4月10日時点で94の職種と171の作業(下記URL参照)

が定められています。

技能実習1号には職種・作業の制限はありませんが、技能の修得などに関係ない業務(単純労働など)に従事させることはできません。

■厚生労働省「技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験試験基準」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/002.html

なお、外国人技能実習制度については、技能の習得という本来の制度趣旨に反して、「会社が技能実習生に、技能の習得に関係ない単純労働をさせる」などの問題が頻発していることに加え、日本の労働環境においても、団塊世代の大量離職などによる将来的な人材不足が深刻さを増している状況に鑑み、

2027年4月1日より、外国人技能実習制度に代わり、新たに「育成就労制度」が開始されることになっています。

育成就労制度は、「育成就労」という在留資格を設け、外国人を原則3年間で一定以上の技能を持つ「特定技能」に育成する制度です。外国人技能実習制度と似ていますが、

  • 外国人技能実習制度は、外国人が日本で習得した技能を、将来母国に持ち帰ることを想定した「国際協力」のための制度(特定技能への移行も可能だが、制度上は「帰国」が原則)
  • 育成就労制度は、外国人が技能の習得後も、日本企業の戦力として活躍することを想定した「人材確保」のための制度(帰国せず、日本に「在留」することが原則)

であり、目的が異なります。

また、その他にも、外国人技能実習制度とは、対象としている産業分野・職種が異なる、就労開始前の日本語教育が必須といった特徴があります。

■出入国在留管理庁「育成就労制度」■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/index_00005.html

5 資格外活動

就労するための在留資格を持っていないものの、法務大臣から資格外活動(在留資格の範囲外の活動)の許可を与えられた外国人が該当します。

画像5

就労に関する特徴は次の通りです。

  • 職種の制限:資格外活動の許可を受けた場合には、本来の在留資格に属する活動を阻害しない範囲であれば、基本的になし(ただし、風俗営業等への就労は不可)
  • 在留期間の期限:あり
  • 労働時間の上限:日本人より短い(原則1週28時間まで)

労働時間については、日本人の場合、原則1日8時間、1週40時間が上限ですが、資格外活動を行う外国人の場合、原則1週28時間までとされています。

1日当たりの上限は特に定められていませんが、どの曜日から起算しても1週28時間以内になるようにしなければならない

ため、注意が必要です。

ただし、

例外として、在留資格の本来の活動に影響がない期間に限り、労働時間の上限が1日8時間、1週40時間まで延長

することができます。留学生のアルバイトを例にすると、勉強の妨げになりにくい大学の夏休み期間などがそれに該当します。

6 特定活動

特定活動(法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動)を行う外国人が該当します。

画像6

就労に関する特徴は次の通りです。

  • 職種の制限:在留資格に該当しない活動を行う場合、法務大臣から個々の指定を受ける必要がある(ただし、ワーキング・ホリデーの場合は、風俗営業等以外であれば制限なし)。
  • 在留期間の期限:あり
  • 労働時間の上限:日本人と同じ

特定活動の場合、外国人のパスポートに添付される「指定書」という書類に、「活動類型」(ワーキング・ホリデー、EPAなど)が記載されており、その内容に応じて就労できる職種が変わってきます。

以上(2026年7月更新)
(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 曽田駿希)

pj00297
画像:metamorworks

【書籍ダイジェスト】『サボテンは世界をつくり出す』

本書は、日本で唯一のサボテン学者である著者が、フィールドワークや研究室でのエピソードを交えつつ、サボテンの特殊な生態や能力について詳述している。
サボテンは水を大量に含むことから、家畜の飼料として与えると家畜の飲水量が減り、節水効果があるという。また、サボテンはCO2をシュウ酸カルシウムとして体内に蓄積する能力を持っており、枯死後も100年から100万年という長いスパンでCO2を土壌に固定できる。さらに、重金属による土壌汚染を植物によって浄化する「ファイトレメディエーション」への応用も期待されている。

書籍ダイジェストは、こちらからお読みいただけます。pdf

【朝礼】「土用の丑の日にうなぎを食べる」を文化にした平賀源内のアイデア

【ポイント】

  • 平賀源内は、うなぎの「う」と丑の日を結びつけ、夏のうなぎ商戦の文化を生み出した
  • アイデアとは、ゼロから何かを生み出すことと思われがちだが、そうではない
  • すでにあるものについて、「これとあれは、つながらないか」と模索することが大切

皆さん、おはようございます。突然ですが、今年の7月26日は、土用の丑の日(どようのうしのひ)です。うなぎ、好きな方も多いと思います。「土用の丑の日にうなぎを食べる」というこの習慣、実は、江戸時代の発明家・平賀源内(ひらがげんない)が広めたといわれています。

当時、うなぎは夏に売れない食べ物でした。脂が乗る旬は秋から冬で、夏場は客足が落ちてしまいます。困ったうなぎ屋が、源内に相談を持ちかけたところ、源内が考えたのが「本日は土用の丑、鰻食うべし」と書いた一枚の看板でした。「丑の日には『う』のつく食べ物を食べると夏負けしない」という言い伝えを活用したのです。うなぎの「う」と丑の日を結びつけた、一種のコピーライティングです。これが大当たりし、夏のうなぎ商戦という文化が生まれました。

源内はもともと博物学者であり、発明家でした。エレキテルの復元や、石綿で作った「火浣布(かかんぷ)」の製作など、当時の日本ではまったく前例のない挑戦を次々と行いました。彼の発想の根っこにあったのは、1つの問いです。「これとあれは、つながらないか」。異なる分野の知識を組み合わせ、誰も思いつかなかった答えを出す。それが源内の真骨頂でした。

私たちの仕事でも、同じことが言えると思います。行き詰まったとき、「全く新しいものを生み出さなければ」と考えると、どこから手をつければいいか分からなくなりがちです。でも源内がやったのは、すでにある知識と知識を「結びつける」ことでした。うなぎという食材は変えていない。丑の日という言い伝えも変えていない。ただ、その2つをつないだだけです。

アイデアとは、ゼロから何かを生み出すことと思われがちですが、そうではありません。すでにあるものを、新しい組み合わせで見せることなのです。今日一日、仕事の中で行き詰まりを感じたときは、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。「これと何かをつなげられないか」と。その小さな問いが、思わぬ突破口になるはずです。頑張っていきましょう。

以上(2026年7月作成)

pj17253
画像:Mariko Mitsuda

中小企業の株式に増税? 60年ぶりに改正議論が始まった非上場株の相続税評価

1 非上場株の評価額が上がる可能性も……改正議論が開始

60年ぶりとも言われる非上場株の相続税評価の見直し議論が始まっています。この動向は、中小企業の経営者にとって他人事ではありません。改正後に評価額が上がれば、事業承継時の税負担が増え、後継者が引き継ぎを断念するケースも出てくる可能性があるからです。

2026年4月、国税庁が「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を立ち上がり、2026年6月時点で3回開催されています。

見直しの方向性はまだ確定していませんが、関係者の多くが「評価額が上がる可能性が高い」

と見ています。「改正が決まってから考えよう」では遅いかもしれません。今、何が起きているのかを理解し、早めに備えることが経営者としての責任です。重要なのは「改正が決まってから動く」のではなく、今の評価額を把握し、選択肢を整理しておくことです。

2 そもそも「非上場株の評価」とは何か

株式市場に上場している会社の株は、市場で毎日売買されているので、その日の値段(株価)がすぐに分かります。しかし、中小企業などの非上場株は市場で取引されないため、「この株はいくらか」を計算するルールが必要です。

相続や贈与が起きたとき、非上場株の価格は国税庁が定めた通達(ガイドライン)に沿って計算されます。この評価額をもとに相続税・贈与税が計算されるため、評価額が高くなると税負担も重くなります。現在の主な評価方法は次の2つです。

非上場株式の主な評価方法

実際には、会社の規模に応じていずれかの評価方法、もしくはこの2つを併用する評価方法が使われます。大きな会社ほど1.の「類似業種比準方式」の影響が強く、小さな会社ほど2.の「純資産価額方式」の影響が強くなります。

3 なぜ今、改正議論が始まったのか

きっかけは、2024年に会計検査院(国のお金の使われ方などをチェックする機関)が公表した調査(会計検査院「令和5年度決算検査報告」)です。その報告書で、現在の評価方法には大きな問題があると指摘されました。

最大の問題は、

「類似業種比準方式」による評価額と「純資産価額方式」による評価額の間に、あまりにも大きなギャップが生じているケースがある

という点です。

例えば、ある事例では類似業種比準方式で算出した評価額が、M&A(会社の買収)による実際の売却価格のわずか8%程度にしかなっていなかったことが明らかになっています。これは極端な例ですが、評価額と実態の間に何倍もの差が開いているケースが珍しくないのです。

また、こうしたギャップを悪用した「節税スキーム」の横行も問題視されています。例えば、意図的に利益を圧縮したり、会社を分割して資産を子会社に移したりすることで、評価額を人為的に引き下げ、税負担を極端に減らす行為が増えているのです。

さらに、近年の裁判例でも、通達に基づく評価額と実態があまりにも乖離している場合、税務当局が「通達によらない評価」を行って課税するケースが増えており、納税者との間でトラブルが相次いでいます。

4 想定される改正スケジュール

現時点での見通しは次の通りです。ただし、議論の結果次第で変わる可能性があります。

想定される改正スケジュール

  • 2026年4月~(有識者会議の開始):国税庁により「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」が設置され、2026年4月20日に初会合(第1回)が開催されました。
  • 2026年秋~冬(議論の取りまとめ):これまでの議論(第1回$301C第3回など)を踏まえ、有識者会議としての評価制度の見直し案が策定・公表される予定です。
  • 2026年12月~2027年1月(税制改正大綱へ反映):取りまとめられた見直し方針が、2027年度税制改正大綱に記載される見通しです。
  • 2027年4月頃(パブリックコメントの実施):大綱に示された方針に基づき、具体的な「財産評価基本通達」の改正案について一般からの意見公募(パブリックコメント)が行われます。
  • 2028年1月1日(新たな評価ルールの適用開始(予定)):一部報道や国税庁資料に基づくと、早ければこのタイミングから新しい評価方法による申告が必要になると予測されています。

5 有識者会議ではどんな議論が行われているか

国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」は、2026年4月の第1回を皮切りに、5月・6月と続けて開催されています。法律・会社法・M&A実務・会計学などの専門家や、日本商工会議所・日本税理士会連合会も参加し、さまざまな立場から意見が交わされています。

■国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」■
https://www.nta.go.jp/about/council/kenkyu.htm#nai-hyoka

議論の焦点は大きく4つです。

1)評価額が大きく変わる「評価の崖」をなくす

現在の非上場株式の評価制度では、会社の規模や評価方法の違いによって、株価が大きく変わるケースがあります。このような極端な差は「評価の崖」と呼ばれ、公平性の観点から問題視されています。

実際に、会計検査院が2024年に公表した調査では、「類似業種比準方式」(同業他社の株価を参考にする方法)で計算した株価は、「純資産価額方式」(会社の資産や負債を基に計算する方法)で算出した株価の約4分の1にとどまっていました(会計検査院「令和5年度決算検査報告」)。

また、会社の規模が大きいほど株価が低く評価される傾向も見られます。そのため、事業内容や収益力が似ていても、会社規模の判定基準(従業員数や取引金額など一定の基準)をわずかに超えただけで、適用される評価ルールが変わり、株価が急激に上昇することがあります。今後の見直しでは、このような不自然な段差をなくし、よりなだらかで公平な評価制度にすることが検討されています。

2)評価額の恣意的な操作を防ぐ

現行の評価制度は計算ルールが明確である一方、その仕組みを利用して株価を意図的に低くする対策が行われるケースもあります。

代表的な例が配当金の調整です。株価計算の要素の一つに配当金額が含まれているため、あえて配当を出さないことで株価を下げる手法が利用されています。国税庁の分析では、評価の対象となった企業の8割超が、評価前の2年間に配当を実施していませんでした。

この他にも、

  • 親会社の資産を子会社へ移して親会社の株価を下げる方法
  • 創業者に議決権のない株式を持たせることで、後継者側の評価額を低くする方法
  • 高額な役員退職金を支払い、利益を一時的に減らす方法

など、さまざまな税負担を下げるスキームが指摘されています。

現在は、こうしたケースに対して税務当局が個別に判断する「総則6項」という特別なルールで対応しています。しかし、どのような場合に適用されるのか分かりにくく、予測が難しいという課題があります。そのため、個別対応に頼るのではなく、評価ルール自体を見直すべきだという議論が進められています。

3)実態を反映した評価へ見直す

現在の株価評価では、会社を解散した場合に残る資産価値を重視する「純資産価額方式」が大きな役割を担っています。

しかし、実際の会社の価値は、保有している資産だけで決まるものではありません。将来どれだけ利益を生み出せるかという「収益力」も重要な要素です。

例えば、会社法上の株価評価をめぐる裁判では、将来の利益やキャッシュフロー(事業活動で生み出すお金)を基に企業価値を算定する方法が広く使われています。一方、純資産価額は最低限の価値を示す指標として扱われることが多く、税務上の評価との違いが指摘されています。

また、専門家からは、研究開発力や人材力、ブランド力といった、貸借対照表には表れにくい価値も企業価値に反映すべきだという意見が出ています。

経済団体からも、「事業を継続している会社を、解散を前提とした価値だけで評価するのは実態に合わない」との声が上がっており、今後は収益力をより重視した評価方法が検討される可能性があります。

4)M&A・第三者承継の実態を反映する

近年、中小企業の事業承継では、親族への引き継ぎだけでなく、第三者へのM&A(企業の売却・買収)が急速に増えています。

M&Aの現場では、会社が保有する資産だけでなく、顧客基盤や技術力、ブランド力、将来の収益力なども考慮して企業価値が決まります。そのため、税務上の株価評価と実際の売買価格に大きな差が生じることがあります。

実際の裁判例では、税務上の評価額がM&Aによる買収価格の1割にも満たなかったケースもあり、現行制度が企業の実態を十分に反映していないとの指摘があります。

こうした背景から、今後の制度改正では、M&Aで使われる企業価値評価の考え方を税務評価にどこまで取り入れるかが重要な論点となっています。

ただし、M&Aの価格には買い手ごとの事情や期待される相乗効果(シナジー)が反映されるため、その価格をそのまま相続税や贈与税の評価額に使うべきではないという慎重な意見もあります。そのため、事業承継を妨げないよう配慮しながら、どのような評価方法が適切なのかが議論されています。

6 改正の方向性が固まっていない今、経営者がやるべきこと

1)ステップ1:自社株の現在の評価額を把握する

制度改正への対応を考える上で最初に行うべきことは、自社株が現在どのように評価されているのかを把握することです。

非上場株式の評価方法は会社規模によって異なります。まずは、自社が「大会社」「中会社」「小会社」のどれに該当し、どの評価方法が適用されているのかを確認しましょう。これまでにもあるように、現在は、「類似業種比準方式(上場企業の株価を参考にする方法)」が適用される会社ほど、株価が低く評価される傾向があります。

まずは現状の評価額を把握し、自社がどの程度現行ルールの恩恵を受けているのか確認することが重要です。

2)ステップ2:後継者への株式移転を急ぐかどうか検討する

今回の見直しでは、自社株の評価額が引き上げられる可能性が高いとみられています。評価額が上がれば、贈与税や相続税の負担も増えることになります。

そのため、後継者への株式移転を予定している場合は、現行ルールのうちに実行した方がよいかどうかを検討が必要です。

特に注目されているのが「相続時精算課税制度」です。この制度を利用して株式を贈与した場合、将来相続が発生した際も、原則として贈与時点の評価額を基準に税額を計算します。つまり、制度改正によって将来株価が上昇したとしても、その影響を受けにくくなる可能性があります。

ただし、この制度には一度選択すると原則として元に戻せないなどの注意点もあります。利用するかどうかは、将来の相続税や贈与税を含めた総合的なシミュレーションを行った上で判断することが大切です。

3)ステップ3:事業承継税制の活用を改めて検討する

事業承継税制の活用も改めて確認しましょう。事業承継税制は、一定の条件を満たした場合に、後継者が取得した自社株にかかる贈与税や相続税の納税を猶予できる制度です。

現在、専門家や経済団体の間では、今後の株価評価の見直しに合わせて、この制度をさらに使いやすくするべきだという議論も行われています。

そのため、株価評価の改正だけを見るのではなく、事業承継税制が今後どのように見直されるのかについても継続的に情報収集することが重要です。

4)ステップ4:顧問税理士と定期的に情報共有する

今回の見直しは法律改正ではなく、国税庁が定める評価ルールの見直しとして進められています。そのため、国会での法改正を待たずに制度内容が変更される可能性があります。今後、有識者会議による議論や税制改正大綱などを通じて具体的な方向性が明らかになっていく見込みです。

また近年は、株価を極端に引き下げる対策に対して、税務当局が通常の評価ルールとは異なる方法で課税するケースも増えています。「これまで問題なかった対策だから大丈夫」と考えるのではなく、現在行っている株価対策にリスクがないかを、顧問税理士などの専門家を通して定期的に確認することが重要です。

以上(2026年7月作成)
(監修 税理士 石田和也)

pj80201
画像:日本情報マート

相続から考える事業承継 事業承継で押さえるべき税務ポイント

事業承継では、自社株式や会社への貸付金など、事業の継続に必要な財産をどのように承継するかが重要な課題となります。特に自社株式は評価額が高額となることもあり、相続税や贈与税、事業承継税制の活用などを含めた検討が欠かせません。

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なぜ今『取適法』なのか!中小受託事業者等(受注者)の「取適法」の使い方

「取適法」について、改正前の法律である「下請法」から紐解いてその趣旨や目指すところを概観しつつ、その内容を解説し、そのうえで主に中小受託事業者等(受注者)側がどのようにこの「取適法」を活用すべきか、その在り方について考えてみたいと思います。

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制度改正に注目! 2026年度地域企業経営人材確保支援事業給付金の最新情報

人手不足が深刻化する中、経営人材や専門人材の確保は、多くの地域企業にとって重要な経営課題となっています。一方で、大企業で経験を積んだ優秀な人材を採用するには、待遇面のコストなどが壁となるケースも少なくありません。地域企業経営人材確保支援事業給付金は、こうした負担を軽減し、地域企業が高度な知識や経験を持つ人材を迎え入れることを後押しする制度です。

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相続人を悩ませる資料収集に備える! 16種類の「相続資料」一覧 (チェックリスト付き)

1 今のうちから進めておこう、相続資料の準備

相続は、そう何度も経験することではありません。だからこそ、いざ相続が発生すると、必要な資料や手続きの進め方が分からず、戸惑う方も少なくありません。相続に必要な資料は被相続人(亡くなった人)の生き方や財産状況によって異なります。加えて、近年は預貯金がネットバンキング、証券がネット証券で管理されるケースも増え、デジタル上にしか跡が残っていないことも珍しくありません。

相続財産や債務を最も正確に把握しているのは被相続人ですが、当事者が亡くなってから資料を集めるのは簡単ではなく、想像以上に手間がかかります。だからこそ、生前のうちに、将来の相続人(相続財産などを引き継ぐ人)が基本的な資料を把握しておくことが大切です。

相続資料(自治体や金融機関などに申請や連絡が必要なもの)は多岐にわたりますが、

戸籍関係・相続財産関係・債務関係に分けて考える

と、整理しやすくなります。次のチェックリストを確認しながら必要な資料を確認していきましょう

ダウンロードボタンをクリックすると、エクセル形式の一覧表がダウンロードできます。

こちらからダウンロード

(注)エクセルはMicrosoft365、Excel2024以降に対応しています。チェックボックスは、TRUEとFALSEの値で構成され、チェックボックスの書式設定が行われます。
オフになっているチェックボックスの値はFALSEです。チェックを入れるとチェックボックスの値はTRUEになります。数式でチェックボックスセルを参照すると、TRUEまたはFALSEがその数式に渡されます。

収集資料一覧表

2 主な戸籍関係の相続資料(4種類)

1)被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式

【目的】法定相続人を明らかにする、各種相続財産の名義変更手続きなどのため
【取得】相続人が、最寄りの役所の戸籍窓口で請求・取得

2024年3月1日以降は、戸籍謄本を1つの役所の窓口で一括して申請・取得できます(広域交付制度)。転籍の状況や、市区町村の事情(ネットワーク共有ができていない)などにより異なる場合もありますが、一般的に即日発行されます。

また、戸籍謄本一式を集めたら、法務局の「法定相続情報証明制度」を利用することをおすすめします。これは、戸籍謄本一式の内容に基づき、法定相続人が誰であるかを登記官が確認したうえで証明してくれる書類で、無料で必要な通数を発行してもらえます。交付される一覧図の写しがあれば、不動産の相続登記だけでなく、金融機関での預貯金の名義変更や、税務署、年金事務所での手続きなど、複数の窓口に戸籍謄本一式を何度も出し直す必要がなくなり、相続手続き全体を効率よく進められます。

2)被相続人の住民票の除票

【目的】不動産を相続した場合の相続登記(名義変更)や、各種相続財産の名義変更手続きなどのため
【取得】相続人が、被相続人が最後に住んでいた市区町村の役所の戸籍窓口(上記の広域交付制度には対応していないので注意)、または被相続人が最後に住んでいた市区町村の役所へ郵送のいずれかで請求・取得

一般的に申請から1週間程度で発行されます。届出の処理状況によっては即日発行もできる場合もあるようです。

3)相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本

【目的】自身が被相続人の相続人であることを明らかにするためや、各種相続財産の名義変更手続きなどのため
【取得】相続人が最寄りの役所の戸籍窓口、本籍地の役所へ郵送、または最寄りのコンビニ(コンビニ交付サービスに対応している市区町村に限る)のマルチコピー機のいずれかで請求・取得

郵便で請求した場合を除き、一般的に即日発行されます。郵便の場合は、1週間程度で送付されます。

4)相続人全員の住民票の写し、印鑑証明書

【目的】遺産分割協議書の作成や不動産を相続した場合の相続登記(名義変更)などのため
【取得】相続人が、最寄りの役所の戸籍窓口、本籍地の役所への郵送、または最寄りのコンビニ(コンビニ交付サービスに対応している市区町村に限る)のマルチコピー機のいずれかで請求・取得)

郵便で請求した場合を除き、一般的に即日発行されます。郵便の場合は、1週間程度で送付されます。

3 主な相続財産関係の相続資料(8種類)

1)預貯金口座の残高証明書と取引履歴

【目的】相続財産の把握、生前贈与の有無や預貯金の払戻し手続きなどのため
【取得】相続人が、金融機関に相続発生の連絡をし、指定の必要書類(被相続人の戸籍謄本や相続人の戸籍謄本、本人確認書類など)を窓口または郵送にて提出することで取得

金融機関ごとに詳細な手続きフローは異なりますので、事前にウェブサイトを確認しましょう。なお、個々の状況によって違いますが、手続きには3週間程度かかります。

また、被相続人名義の口座への入金や、公共料金などの引き落としは、原則できなくなりますので、金融機関の連絡に併せて、入金先や引落先への連絡や、入金・引落口座の変更手続きも進めていく必要があります。被相続人が生前に作成した口座一覧表があればそれを基にしますが、ない場合は確定申告書や手元に残された通帳・封筒等から取引先を推測します。

その他の調査手段として、2025年4月より、口座管理法に基づく「相続時口座照会制度」が開始されています。これは、預金保険機構のシステムを通じて、被相続人がマイナンバーを紐づけていた預貯金口座の所在(金融機関名や支店名)を公的に照会できる仕組みです。

ただし、注意点が2つあります。

  • この制度で確認できるのは「どの金融機関に口座があるか(口座の有無・所在)」のみであり、預金残高までわかるわけではありません。所在が判明した後、改めて各金融機関に個別の照会や残高証明書の請求を行う必要があります
  • 対象となるのはマイナンバーが紐づけられている口座のみであるため、登録されていない金融機関の口座については、引き続き個別の調査を行う必要があります

2)金融商品に関する残高証明書、顧客勘定元帳、配当金通知書

【目的】相続財産の把握や相続人の口座への移管手続きなどのため
【取得】相続人が、証券会社等に相続発生の連絡をし、指定の必要書類(被相続人の戸籍謄本や、相続人の戸籍謄本、本人確認書類など)を提出することで取得

金融機関ごとに詳細な手続きフローは異なりますので、事前にウェブサイトを確認しましょう。また、個々の状況によって違いますが、手続きには3週間程度かかります。

金融商品については、上記の手続きの前に、開設している証券口座の把握が必要です。相続人が、生前、証券口座の一覧表を作成していれば、それをたどればよいのですが、もし一覧表などがない場合には、証券保管振替機構リンクに対して、信用情報の開示の申し込みが必要になります。開示申し込みの手続きは、それぞれの機関のウェブサイトをご参照ください。

また、遺産分割協議後に、それぞれの相続人への名義変更が必要になりますが、相続人が証券用の口座を持っていない場合には、被相続人と同様の金融機関で新規口座開設が必要になる点に注意しましょう。

3)不動産の登記簿謄本、公図・地積測量図(土地の場合)

【目的】相続財産の把握や相続人への名義変更手続きなどのため
【取得】相続人が、不動産の所在地を管轄する法務局の窓口、不動産の所在地を管轄する法務局への郵送、登記情報提供サービスを利用してオンライン申請のいずれかで請求・取得

窓口の場合は即日発行、オンライン申請の場合は数日程度で郵送されます。

4)名寄帳または固定資産評価証明書

【目的】相続財産の把握や相続人への名義変更手続きなどのため
【取得】相続人が、不動産のある市区町村の役所の窓口、不動産のある市区町村の役所への郵送のいずれかで請求・取得

窓口の場合は即日発行、郵送の場合は1週間程度を要します。

不動産の相続については、1)と2)のように外部に請求する書類以外にも、被相続人が保管しているさまざまな書類が必要になります。主な資料には、次のものがあります。保管場所などを生前に把握しておくことが大切です。

  • 土地の実測図
  • 土地、建物の固定資産税課税明細書
  • 土地、建物の売買契約書など(取得の場合)
  • 土地、建物の不動産賃貸借契約書(賃貸、借地の場合)

5)生命保険の支払通知書、保険証書、解約返戻金計算書

【目的】相続財産の把握や保険金の支払い請求手続きなどのため
【取得】支払通知書と解約返戻金計算書は、保険金受取人が、契約している保険会社に連絡し、指定の必要書類(支払請求書、被保険者の住民票、保険金受取人の戸籍謄本・印鑑証明書など)を提出することで取得

支払通知書は、保険金の支払い後、郵送等されます。生命保険会社ごとに詳細な手続きフローは異なりますので、事前にウェブサイトを確認しましょう。保険証書は、基本的に被相続人が保管していますので、保管場所などを生前に把握しておくことが大切です。

生命保険については、上記の手続きの前に、契約している生命保険の把握が必要です。相続人が、生前、契約していた生命保険の一覧表を作成していれば、それをたどればよいのですが、もし一覧表などがない場合には、生命保険契約照会制度を利用して調査することができます。この制度は、生命保険協会を通じて、生命保険会社41社へ保険契約の有無を一括で照会できるもので、オンラインや郵送で調査依頼が可能です。

6)死亡退職金の支払明細書(支払調書)

【目的】相続財産の把握などのため
【取得】勤務先の会社などから交付

支払明細書が見当たらない場合には、勤務先の会社などに問い合わせるようにしましょう。

7)自動車の車検証、ゴルフ会員証書、骨董・貴金属などの査定書

【目的】相続財産の把握や名義変更などのため
【取得】基本的に被相続人が保管している(保管場所などを生前に把握しておく)

骨董・貴金属など購入価額が高額なものは、専門家による鑑定により評価額を算定する必要があります。

8)給与やアパート経営に伴う受取家賃などの未収となっている収入関連の各種契約書

【目的】相続財産の把握や名義変更などのため
【取得】基本的に被相続人が保管している(生前にどのような収入があるのか、保管場所などを生前に把握しておく)

相続時点で未収となっているものも、相続税の課税対象となるため、漏れのないよう、早めに情報を整理しておきましょう。

4 主な債務関係の相続資料(4種類)

1)借入金残高証明書・返済予定明細書

【目的】相続財産の把握などのため
【取得】相続人が、金融機関に相続発生の連絡をし、金融機関から指定された必要書類(被相続人の戸籍謄本や相続人の戸籍謄本、本人確認書類など)を窓口または郵送にて提出することで取得

金融機関ごとに詳細な手続きフローは異なりますので、事前にウェブサイトを確認しましょう。また、個々の状況によって違いますが、手続きには3~4週間程度を要します。

借入金については、上記の手続きの前に、借入金契約を把握しておくことが重要です。被相続人が、生前、契約していた借入金の一覧表を作成していれば、それをたどればよいのですが、もし一覧表などがない場合、指定信用情報機関である日本信用情報機構(JICC)、クレジット インフォメーション センター(CIC)、全国銀行協会のいずれかに対して、信用情報の開示の申し込みが必要になります。開示申し込みの手続きは、各機関のウェブサイトをご参照ください。

2)医療費の請求書・領収書

【目的】相続財産の把握や立て替えた相続人の所得税の医療費控除などのため
【取得】治療を受けていた病院から発行

被相続人の医療費については、誰が、いつ支払ったかを明確にしておくようにしましょう。被相続人が死亡した日までに本人が支払ったものは、

その被相続人の準確定申告(亡くなった年の1月1日から、亡くなった日までの所得税の確定申告)における医療費控除の対象

になります。

一方、被相続人が死亡した後に相続人(被相続人と生計が一緒であった場合に限る)が支払ったものは、

負担した相続人の確定申告における医療費控除の対象

になります。また、立て替えた医療費については、相続財産から債務としてマイナスすることができます。

3)葬式費用の請求書・領収書

【目的】相続財産の把握のため
【取得】葬儀会社などから発行

寺院に支払ったお布施・読経料・戒名料などは通常、領収書などの発行がない場合は、支払日、支払先、支払金額などのメモを残しておくようにしましょう。

葬式費用(墓石・墓地の買入費用や香典返しなど一定のものは除く)については、相続財産から債務としてマイナスすることができます。

4)公共料金などの請求書・領収書

【目的】相続財産の把握や契約解除などのため
【取得】被相続人が生前利用していた水道、ガス、電気会社などから発行

公共料金以外にも、スマートフォンや各種定期サービスについても、それぞれ請求書・領収書を保存しておきましょう。

これら公共料金や電話料金については、相続財産から債務としてマイナスすることができます。ただし、支出の内容によっては相続財産からマイナスできないものもあるため、税理士などの専門家にご相談ください。

以上(2026年7月更新)
(監修 税理士 石田和也)

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画像:Jumpei-Adobe Stock

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