幹部の成長は企業の成長! 幹部が育つ社長の対話メソッド

1 社長と幹部社員は異なる世界線にいる

【幹部社員】の活躍なくして企業の成長はあり得ません。そのため社長は、幹部社員と対話を通じてその成長を図ります。しかし、幹部社員と「企業の将来」など抽象度が高い話をしたときは特に「どうも噛み合わない」と、モヤモヤすることはありませんか?

残念ながら、社長の話は「社長の考えと同じレベル」で幹部社員に伝わっていないことが多いです。例えば、社長が「何としても会社を成長させたい!」と話せば、幹部社員も「いいですね!」と賛同します。一見、噛み合っていそうですが、それぞれの内心は、

  • 社長:企業の未来や新規事業について自由に議論したい
  • 幹部社員:企業の成長ってどれくらい? 今の業務で手一杯で新規事業は手が回らない

といったように違っています。この状態で会話を続ければ、社長が「あれ、伝わっていないかも?」とモヤモヤするのは当然です。社長と幹部社員は同じテーブルに座りつつも、異なる世界線にいるようなものですから。

2 中小企業の幹部社員とは何者か?

こうした違いが生じる背景には、幹部社員が歩んできたキャリアも関係しています。多くの場合、中小企業の幹部社員は、

自社の事業に精通し、人材を育成しながらその事業を拡大できる社員であり、役職としては「部長」以上(場合によっては上位の課長も含まれる)

です。勤続年数も長く、「企業内・既存事業の範囲内・部下に対して」という枠の中では十分に力を発揮できます。しかし、その枠を一歩でも飛び出すと、たちまち仕事のイメージができなくなってしまいます。枠から飛び出して修行しなかった幹部社員が悪い。そう言うのは簡単ですが、今いる場所の居心地がよく、変化を好まないのは人間の性です。それに、その状況を放置してきた社長にも責任があります。

ビジネスを取り巻く環境は、生成AIの登場や人材不足など、かつてないほど変化しています。ここを乗り越えていくには、やはり幹部社員の力が必要です。ですから社長は、改めて幹部社員の育成に力を注がなければならず、その際は

「幹部社員が社長の視座や考え方に近づける」ように対話をすること

が重要になってきます。

この記事では、社長が幹部社員を育成するために適した対話の「型」を紹介します。なお、「型」を使った社長の語りかけの例は次のコンテンツで紹介しています。

3 幹部社員の視座を高める対話の「型」

基本的な対話の進め方は次の通りです(相手、状況によって異なります)。

  • 抽象的な「夢(あるべき姿)」を掲げ、具体化していく
  • 解釈次第で景色が変わることを理解してもらう
  • 自分や仲間を信じるマインドを持ってもらう

1)抽象的な「夢(あるべき姿)」を掲げ、具体化していく

まず幹部社員の思考をストレッチしましょう。

真面目な幹部社員ほど、自身が担当する業務に一生懸命です。有難いことですが、一方で視野が狭くなり、業務効率化といったレベルでしかビジネスを考えられなくなってしまいます。

こうした幹部社員の思考をストレッチするために、幹部社員が

担当業務から飛び出して、自由な発想でビジネスの「夢(あるべき姿)」を描ける

ように対話をします。ただ、いきなりの「Aさん(幹部社員)が描くビジネスの夢(あるべき姿)は何ですか?」を聞いても、幹部社員はポカンとして黙り込んでしまうか、「何か答えないとまずい」と考えて取り繕った発言をするかになってしまうので、意味がありません。

そこで、社長のほうが幹部社員の思考に寄り添って質問をしてみます。例えば、

  • Aさん(幹部社員)が担当している業務は、どうなったら理想的?
  • その理想が達成されたら、Aさんの部下やお客様には、どんな「いいこと」がある?
  • その「いいこと」が達成できたら、Aさんはワクワクする(うれしい)?
  • 今の業務に縛られず、Aさんが仕事上で「実はこうなったらいいな」と考えていることはある?

といったように質問をして、少しずつ抽象度を上げたり、それを具体的にしたりといったことを繰り返すのです。

2)解釈次第で景色が変わることを理解してもらう

「夢(あるべき姿)」を実現するには、幹部社員は居心地のよい現在地から一歩踏み出さなければなりません。その手助けとして、社長は幹部社員が重い一歩を踏み出せるよう、背中を押してあげましょう。

幹部社員の背中を押す際は、

「夢(あるべき姿)」が実現された世界の具体的なイメージを持ち、そこに向かう気持ちを高めてもらう

ことが大切です。例えば、

  • 「夢(あるべき姿)」が実現された状況をイメージしてみて。そこには誰がいて、どんな話をしている? そこにいるAさんは楽しそう?
  • 「夢(あるべき姿)」を実現したいという気持ちは、100点満点で何点くらい? 何ができたら100点に近づきそう?

といった質問をします。

居心地のよい現在地から一歩踏み出すには、「夢(あるべき姿)」が実現された世界のほうが現在地よりも魅力的であることを具体的にイメージできる必要があります。そのために「夢(あるべき姿)」が実現された世界について質問を重ね、具体的にしていくのです。

同時に、幹部社員が一歩踏み出すことができない理由(障壁)を明確にし、それを解決していきます。幹部社員にとっては難しい課題でも、社長ならその場で解決できること(人員の配置や予算など)も多いです。「できない理由はないのだから、やるより他はないでしょ!」と逃げ道を塞ぐのではなく、あくまでも、

一緒に課題を解決しながら進めていこう

という姿勢で対話をしましょう。

3)自分や仲間を信じるマインドを持ってもらう

最後に、幹部社員が

「自分なら(この会社なら)、夢(あるべき姿)を実現できる!」と自信を持ける

ようにします。社長が「Aさんならできる! 大丈夫!!」と声をかけることも大切ですが、こうした言葉は、一晩たつと「社長はあのように言ってくれたけれど、やはり自信がない」と萎んでしまいがちです。

重要なのは、具体的な行動が伴う形で幹部社員の自信を高めていくことです。そのために社長は、

  • 「夢(あるべき姿)」を実現したいという確信度合いは、100点満点で何点?
  • その点数を上げるために、最も効果的な取り組みは何だろう?
  • その取り組みを、いつから始める?

といったように質問します。確信度合いは、無理に100点にする必要はなく、あくまでも今、最も効果的な取り組みを考え、行動するタイミングを決め、実際に行動することが大切です。こうして動き始めると、

「行動の積み重ね」が自信につながるだけではなく、ここまで自分は頑張ってきた。諦めてしまうのはもったいない

という感情が働き、取り組みが継続されやすくなります。

4 幹部社員と話すタイミングを図る

幹部社員と話すタイミングも重要です。社長は幹部社員にしっかりと考えてもらいたい場合、金曜日や大型連休(ゴールデンウィークや年末年始休暇など)の前に伝えることがあります。これは「休み中にしっかりと考えてください」という意図があってのことです。

確かに社長に近いマインドを持っている上位の幹部社員でならば、休み前に伝えるのが良いでしょう。こうした幹部社員は、日ごろなかなか時間が取れないので、休み中のまとまった時間で集中して考えようとします。

ただ、このような幹部社員は少ないものです。そうではない幹部社員に休み前に話をすると、

休みの日まで仕事のことを考えなければいけないのか……今どきっぽくないな

と不満を持ちます。であれば、休み明けで心身ともにリフレッシュしたタイミングのほうが社長のメッセージが届きやすく、前向きに捉えてもらいやすくなります。これは心理学でいう「気分一致効果」というもので、そのときの気分と一致した情報を受け入れやすいというものです。つまり、

リフレッシュして気分が前向きになっていれば、会社の将来や自身が置かれている環境についても前向きに捉えやすくなる

ということです。

以上(2026年5月作成)

pj10101
画像:日本情報マート

社長から幹部に伝えたい! 名言を使ったメッセージ

社長が、特に「企業の未来」のような型にはまらない話を幹部社員とする場合、「どうも噛み合わない」とモヤモヤします。その理由は、社長の話は抽象度の幅が広く、瞬時にいろいろなレベルを行き来できるのに対し、幹部社員は基本的に抽象度の低い具体的な話に終始するからです。この問題を解決できる対話の「型」は、

  • 抽象的な「夢(あるべき姿)」を掲げ、具体化していく
  • 解釈次第で景色が変わることを理解してもらう
  • 自分や仲間を信じるマインドを持ってもらう

であり、詳しくは次のコンテンツで紹介しています。

この記事では、実際に「型」を使った社長からの投げかけの例を紹介します。幹部社員との対話の参考にしてください。

1 「我々は月に行くことを選択する」

【狙い】

Aさん(幹部社員)の思考をストレッチしながら、ビジネスにおけるAさんの「夢(あるべき姿)」を明らかにする。

【社長からの語りかけの例】

Aさん、日頃から会社のために尽力してくれて本当にありがとう。Aさんの働きがなければ、今の会社の成長はなかったと断言できますし、心から感謝しています。

今日は、Aさんにとっても会社にとって、非常に重要な話があって、この時間を設けました。Aさんが担当している事業は、現時点では安定しています。しかし一方で、生成AIの進化や人材の枯渇といった大きな環境変化により、これから先の事業環境は決して楽観視できるものではありません。むしろ、不確実性の高い時代に入っています。

こうした状況を乗り越えていくためには、既存事業をこれまでの延長線で捉えるのではなく、新しい発想で見直していく必要があります。そして同時に、新規事業の開発にも踏み出していかなければなりません。

Aさんはこれまで、自身の担当事業について「もっとこうしたい」という理想を持ち、改善を積み重ねてきたはずです。その積み重ねがあるからこそ、お客様からの評価も高く、チームの雰囲気も良いのだと思います。

ビジネスにおいて「理想」を持つことは極めて重要です。理想があるからこそ、やるべきことが明確になり、困難に直面しても前に進む力が湧いてきます。だからこそ私は、Aさんと一緒に、今の事業の枠にとらわれず、会社の未来に向けた理想の姿を描いていきたいと考えています。

これまであえて深く聞いてこなかったのですが、Aさんがこの会社で本当に成し遂げたい「夢(あるべき姿)」は何でしょうか。ぜひ、率直に聞かせてください。私がこの問いを投げかけるとき、いつも思い浮かべる言葉があります。

「我々は月に行くことを選択する」(*)

これは、1962年に米国大統領ジョン・F・ケネディがライス大学で行った演説の一節です。当時、米国は宇宙開発でソ連(当時)に遅れを取っており、その状況を打破するためにこの言葉を掲げました。

結果として、この壮大な目標は約7年後、アポロ11号によって実現されました。ただし、この演説当時においては、その実現性に懐疑的な声も多く、決して確実な未来ではなかったはずです。それでも「月に行く」という明確で大きな目標を掲げ、一つひとつ課題を分解し、解決し続けたからこそ実現できたのです。

ビジネスも同じです。最初は「月に行く」くらい大胆なテーマで構いません。Aさんの描く「夢(あるべき姿)」を、まずは大きく掲げてほしいのです。そして、それを具体化しながら、一緒に会社の未来をつくっていきましょう。

2 「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」

【狙い】

「夢(あるべき姿)」を実現するには、居心地のよい現在地から一歩飛び出す必要がある。変化を拒むか、受け入れるか。解釈によって世界が変わることを知ってもらう。

【社長からの語りかけの例】

Aさんの「夢(あるべき姿)」、とてもいいですね。その夢が実現した世界を、少し具体的に想像してみてください。そこには誰がいて、どんな表情をしていて、どんな会話が交わされているでしょうか。きっと、メンバーは前向きに仕事に取り組み、笑顔があふれているはずです。会社も確実に成長していますよね。

では、その「夢」が実現したいという気持ちをどれだけ強く持てているだろうか。100点満点で表すと、何点くらいになる?

私は無理に「100点」と言ってほしいわけではありません。むしろ大事なのは、その点数を下げている要因、つまりストッパーになっているものを明らかにすることです。それを一つひとつ解消していくことが、夢の実現につながります。

ここで1つ、重要な考え方を共有したいと思います。ドイツの哲学者であるフリードリッヒ・ニーチェの言葉です。

「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」(**)

これは、ビジネスにおいて非常に示唆に富んだ言葉です。例えば、「今の環境は安定していて居心地がいい」と捉える人もいれば、「同じことの繰り返しで成長が止まっている」と捉える人もいます。どちらが正しいという話ではなく、すべては【解釈】なのです。

Aさんが感じている不安や課題も、見方を変えれば意味が変わります。これまで「できていないこと」「足りないこと」と捉えていた部分は、別の見方をすれば、「これから成長するための具体的なテーマが見えている状態」とも言えます。つまり、未来へのチケットのようなものなのです。

変化を避けるか、それとも受け入れて前に進むか。その分かれ道は、事実ではなく【解釈】によって決まります。

3 「この道より、我を生かす道はなし。この道を歩く」

【狙い】

一歩を踏み出すときは、「自分ならできる!」という勇気と自信を持ちたい。幹部社員の背中を最後に一押しして、自信を持って具体的な行動につなげてもらう。

【社長からの語りかけの例】

Aさんの「夢」と、それを実現したいという強い思いはしっかり伝わってきました。その夢が実現すれば、Aさん自身の成長にも、会社の成長にも確実につながります。だからこそ、自信を持って取り組んでほしい。

改めて聞きますが、その夢が実現できる確信度を100点満点で表すと、今は何点でしょうか。そして、その点数を引き上げるために、最も効果的な行動は何でしょうか。その行動を、これから一緒に取り組んでいきましょう。実際に動きながら、確信度を高めていけばいいのです。

もちろん、不安や迷いが出ることもあるでしょう。そんなときに思い出してほしい言葉があります。

「この道より、我を生かす道はなし。この道を歩く」(***)

これは、武者小路実篤の言葉です。かつては「石の上にも三年」や「量質転化」といった言葉に励まされながら、苦しい下積みの時代を乗り越えてきました。それができたのは、「今歩んでいる道こそが自分を成長させる」と信じていたからです。

私がAさんに期待しているのは、既存の枠にとらわれず、外から新しい視点を持ち込み、ときには私と衝突することも恐れずに進んでいくことです。そして、「PDCA」を回すのではなく、「pDDDDDca」というくらいのスピード感で、圧倒的な行動量を積み重ねてほしいのです。

それをやり遂げる胆力がAさんにはあると信じています。

さあ、一緒に新しい会社の未来を切り拓いていきましょう!

【参考文献】

(*)「Address at Rice University on the Nation’s Space Effort」(ジョン・F・ケネディ、1962年9月12日)

(**)「権力への意志(上・下)」(フリードリッヒ・ニーチェ著、原佑訳、ちくま学芸文庫、1993年12月)

(***)「武者小路実篤――理想に向かい歩み続けた人生に学ぶ」(伊藤陽子、致知出版社、2024年10月)

以上(2026年5月作成)

pj10102
画像:日本情報マート

経営のヒントとなる言葉(本田宗一郎)

「人生は『得手に帆あげて』生きるのが最上だと信じている」

出所:「得手に帆あげて 本田宗一郎の人生哲学」(三笠書房)

冒頭の言葉は、

「最も得意な分野で働くことが、その人の価値を最大限に発揮できる」

ということを表しています。

本田氏は、生涯「得手(得意なこと)」にこだわり、機会があるごとに若い社員に対して「一刻も早く自分の『得手』を発見しなくてはならない」と言い続けました。「好きこそものの上手なれ」の言葉にもあるように、好きなことを一生懸命にやることで、それが「得手」になります。そして、そのことは自信につながり、さらに大きな「得手」となるのです。

幼少のころから機械いじりが好きであった本田氏は、経営者になってからも研究所で若手のエンジニアたちと一緒に機械いじりに熱中していました。しかし、もちろん、経営者が不得手なことを一切やらないということは、実際には不可能です。本田氏は次のように述べています。

「会社の上役は、下の連中が何が得意であるかを見極めて、人の配置を考えるのが経営上手というものだ」

本田技研の場合、副社長の藤沢武夫氏が本田氏のパートナーとして財務・販売など、経営に関する一切を担当しました。藤沢氏は、経営に関する非凡な手腕を買われて本田技研に入社して以来、長きにわたり本田氏のよきパートナーとして本田技研の経営全般を担当しました。当時広くいわれていた「技術の本田、経営の藤沢」という言葉は、この2人の協力体制をうまく表しています。

あくまでも一技術者であろうとした本田氏は、藤沢氏が経営に「得手」であることを見極め、深い信頼を寄せてすべてを任せたのです。

企業にはさまざまな「得手」と「不得手」を持った社員がいます。自身の「得手」と部下の「得手」を正しく把握し、人材を最大限に生かすことが、経営者や上司にとっての重要な役割だといえるでしょう。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

ほんだそういちろう(1906~1991)。静岡県生まれ。二俣尋常高等小学校卒。1946年、本田技術研究所(現本田技研工業株式会社。本稿では「本田技研」)設立。

【参考文献】

「得手に帆あげて 本田宗一郎の人生哲学」(本田宗一郎、三笠書房、1992年4月)

「本田宗一郎 夢を力に 私の履歴書」(本田宗一郎、日経ビジネス人文庫、2001年7月)

以上(2026年5月更新)

pj15004
画像:日本情報マート

【ビジネス文書・法令文書】指針を踏まえたカスハラ対策 事前の体制構築とトラブル発生時の対応

近年、カスタマーハラスメントを巡る法制度は国・自治体レベルで整備が進み、企業には従業員保護を前提とした対応が求められています。しかし、従来のクレーム対応との違いや実務対応の整理が十分でない企業も少なくありません。
そこで本稿では、指針の内容を踏まえ、事前の体制構築からトラブル発生時の具体的対応までを実務的に解説します。

ビジネス文書・法令文書 今月の特集は、こちらからお読みいただけます。pdf



【2026年度最新】知って得する助成金 採用・育成・育児サポートまで!

2026年度に入り、厚生労働省からさまざまな助成金の情報が公表されています。ここ数年は助成金の制度拡充が続いていて、中小企業にとっては魅力的ですが、数が多くて分かりにくいという声も……。そこで、助成金を採用・育成・育児サポートなど6つにカテゴリ分けし、活用方法と「最大でいくらもらえるのか」をまとめました。

1 採用活動編(最大240万円)

この記事で紹介している助成金は次の通りです。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース):最大240万円
  • 特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース):最大60万円
  • 早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース):最大40万円
  • トライアル雇用助成金(一般トライアルコース):最大15万円

本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。

2 人材育成編(最大1億円)

この記事で紹介している助成金は次の通りです。

  • 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース):最大1億円
  • 人材開発支援助成金(人への投資促進コース):最大3500万円
  • 人材開発支援助成金(人材育成支援コース):最大1000万円
  • 人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース):最大36万円

本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。

3 育児サポート編(最大1342万円)

この記事で紹介している助成金は次の通りです。

  • 両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース):最大1342万円
  • 両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース):最大197万円
  • 両立支援等助成金(出生時両立支援コース):最大127万円
  • 両立支援等助成金(育児休業等支援コース):最大122万円
  • 両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース):最大90万円

本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。

4 賃上げ編(最大740万円)

この記事で紹介している助成金は次の通りです。

  • キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース):最大740万円
  • 業務改善助成金:最大600万円
  • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース):最大325万円

本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。

5 健康経営編(最大1370万円)

この記事で紹介している助成金は次の通りです。

  • 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース):最大1370万円
  • 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース):最大1020万円
  • 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース):最大970万円
  • 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース):最大500万円
  • 働き方改革推進支援助成金(取引環境改善コース):最大100万円

本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。

6 パート雇用編(最大1680万円)

この記事で紹介している助成金は次の通りです。

  • キャリアアップ助成金(正社員化コース):最大1680万円
  • キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース):最大740万円
  • キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース):最大75万円
  • キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース):最大60万円
  • キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース):最大56.8万円

本編で、2026年度の支給内容や専門家のワンポイントアドバイスを紹介しています。

以上(2026年5月作成)

pj00821
画像:日本情報マート

社長の「最強スピーチ術」〜経験から学んだAIも知らない伝わる条件

1 伝わるスピーチの絶対的な条件とは?

「人に伝えて、動いてもらう」ことは社長の重要な仕事です。その手段の1つがスピーチなので、社長はスピーチの腕を磨こうとします。交流会や講演会などで上手なスピーチを聞くと、「すごい! 自分もあのように話したい」とエッセンスを学びますし、下手なスピーチを聞いたときも、自分のスピーチと比較して顧みます。

しかし、こうした努力をしていてもスピーチは簡単ではなく、

自分の話が社員に全く伝わらない

と感じてしまうことが多いです。筆者もその一人で、スピーチのテクニック本を読んでは実践しますが、やはり手応えがありません。ただ、そうした経験を重ねていくと、

伝わるスピーチの条件

がぼんやりと見えてくることもあります。この記事では、筆者の泥臭い経験から分かってきた「伝わるスピーチの条件」をご説明していきます。少しでも皆さまのヒントになれば幸いです。

2 スピーチの自己評価は当てにならない

筆者はセミナーやプレゼンテーション(プレゼン)のような「説明系」スピーチは得意ですが、組織を鼓舞し、人を動かすような「伝導系」スピーチには苦手意識があります。

以前、中期経営計画を社員に熱く説明したときのことです。説明の自己評価は上出来で、組織が向かうべき方向をしっかりと共有できたと思いました。しかし、社員の反応は薄く、1つも質問が出ませんでした。そのことを社長仲間に話すと、「それだけ【説明】が上手だったということじゃない?」と半ば冗談交じりに言われ、落ち込んだものです。

スピーチの自己評価は当てにならない

ところが、後日、伝わるべき社員にはしっかり伝わっていたことが分かりました。明らかにやる気を出している社員がいるのです。声をかけてみると、「社長が説明してくれた中期経営計画を達成するために、営業活動を進めています」と話してくれました。

別の経験もあります。グループの親会社に予算の承認を得るためのプレゼンをしたときのことでした。説明はたどたどしく、言葉がうまく出てこないところもあり、我ながら「ひどい内容だ」と落胆していました。

大失敗と思っていたのですが、反対にその会の参加者の中で私のことが良い意味で噂になっていました。「経営者としての覚悟がひしひしと伝わってきた」というもので、私の株が上がったようなのです。

これら2つの経験から分かったのは、

スピーチが伝わったかどうかの自己評価は、意外と当てにならない

ということです。自己評価が外れてしまうのは、

自身が考える「上手なスピーチの基準に当てはめて採点しているから」

に他なりません。スピーチをするのは自分ですから、自分が思う「上手なスピーチ」をしなければ相手に伝わらないと考えるのは当然です。しかし、スピーチは聞き手ありきですから、そこも意識しなければなりません。次章で別の事例を挙げながらさらに深掘りしていきます。

3 相手に聞く「器」があるか

唐突ですが、幼稚園児など小さな子どもが運動会で開会の挨拶をするシーンを想像してみてください。子どもは、「先生、お父さん、お母さん、ありがとう!」「けがをしないように頑張ります!」といったシンプルなメッセージを伝えてきます。途中でつかえたり、内容を忘れて先生に助けてもらったりすることもあります。

「上手なスピーチ(挨拶)」の一般的な基準で評価すれば、こうした子どもの挨拶の点数は低いです。それなのに、聞いている保護者が涙ぐむほど心の琴線に触れています。知らない子どもの挨拶でさえ心を打たれます。このような状態になるのは、

聞き手側の「聞く準備」がしっかりと整っているから

です。

宗教の話をしたいわけではなく1つの例として挙げるのですが、仏教には「対機説法(たいきせっぽう)」という考え方があります。これは、

相手の理解力・経験・心の状態・置かれている状況に合わせて、伝える内容や伝え方を変える

というものです。「仏教の教えはそれを求めている人にしか伝わらない」とも言われ、そのことは対機説法と関連していて、

言葉そのもの(「音」としての言葉)は誰にでも届くが、その意味が「自分ごと」として心に染み入るのは、本人に内容を受け取る準備や必要性があるときだけ

ということになります。

先ほどの小さな子どもの例で言えば、保護者は、

  • 運動会に参加し、子どもの挨拶を「受け取る準備」がある
  • 自分の子どもを愛し、その健やかな成長を願っているので、聞く「必要性」がある
  • だから、挨拶する子どもを知らなくても、同じ幼稚園に通う子どもなら応援したい

ということになります。聞き手である保護者に、小さな子どもの挨拶を受け取る準備と必要性は十分にあるということです。

冒頭で紹介した中期経営計画の例についても同様です。

  • 全体会合に参加し、私のスピーチを「受け取る準備」がある
  • 会社が好きで、その成長を強く望んでいるので、聞く「必要性」がある
  • だから、社長が「説明系」スピーチをしても、自身の思いが乗って自分ごととなる

といった状況です。

次章では、「受け取る準備」についてもう少し詳しくご説明します。

4 相手に「器」をつくるのも話し手の仕事

筆者には、お師匠さまと呼べる方が3人います。もとの上司、人としての生きざまを示してくれる社外上司、私に社長たる者の在り方を教えてくれた社長仲間です。これらお師匠さまの言葉は、いつ何時でも、私の心に響きます。表現を変えると、

私には常に、お師匠さまの言葉を受け取る準備と必要性が十分にある

ということです。とはいえ、この3人は最初からお師匠さまだったわけではありません。それなりに長いお付き合いの中で、「この人はすごい。いつも私に真摯に向き合ってくれて、道を示してくれる」と何度も感じたからこそ、お師匠さまになったのです。

社員とこうした関係を作ることができれば、伝わるスピーチがしやすくなります。社員にお師匠さまとまで尊敬される必要はないでしょうが、仕事はもちろん人間性においても「社長はすごい!」と感じてもらえたら理想的です。

相手に「器」をつくるのも話し手の仕事

先ほど、私は「説明系」スピーチは得意ですが、「伝導系」スピーチが苦手であるとお伝えしました。このことを2人の社員に打ち明けたことがありますが、反応は全く違いました。1人は「そうですか? しっかり伝わっていますよ」と笑顔を見せてくれました。もう1人は「そうですね。確かにそうかも」と納得していました。私はどちらの社員にも「伝導系」スピーチをしてきましたが、前者の社員のほうが良い関係を作れていたのかもしれません。もちろん、私を慮ってのこともあると思いますが。

伝わる社員には伝わるし、伝わらない社員には伝わりません。ですから、「伝わりやすい関係を社員と築くこと」が大切なのです。

5 一瞬で嫌われることもある

注意したいのは、聞き手に受け取る準備や必要性があっても、それが一瞬で失われることがあるということです。

以前、社員を連れてある講演会に参加したときのことです。登壇者は、いわゆる昭和的なノリで話し始めました。冒頭のつかみも、今の時代では「不適切」と受け取られかねない内容でした。ただ、話を聞き続けていると話し手には情熱があり、響くものもあります。しかし、同行した社員は、冒頭数秒の不適切なつかみで「この人は違う」「嫌いだ」と感じてしまい、その後の話を一切受け入れられなくなっていました。

ここで学ぶべきことは、せっかく相手に受け取る準備や必要性があっても、話し手のちょっとしたミスで一瞬にして嫌われ、心を閉ざされてしまうこともあるという事実です。今回のミスは「不適切なつかみ」でしたが、その他にも「話し方、声、ジェスチャー、服装」など、相手が聞く気を失ってしまうことはたくさんあります。一般的な内容でありますが、スピーチで注意したほうがよいことを巻末に一覧表でまとめているのでご確認ください。

最後に、最も大切なことをお伝えします。それは、

受け取る準備と必要性が大きければ大きいほど、伝わり方は強くなるし、伝わらないときの落胆度合いも大きくなる

ということです。

筆者は、このことで大切な社員を失った経験があります。相手は人生をかけて、私に今後の会社の方針を尋ねてきました。その社員は幹部で、受け取る準備と必要性は十分過ぎるものでした。私も真摯に向き合わなければと思い、会社の成長性と戦略について数字を交えて説明しました。しかし、その幹部社員には全く響かず、結局、離職してしまいました。

今にして思えば、その幹部社員は「自分の存在意義」を確認したかったのだと思います。当時、その幹部社員はナンバー2でしたが、ナンバー3が台頭してきたこともあり、寂しさと、やりにくさを感じていたはずです。そのひっかかりさえ解消できれば、その幹部社員はたとえ会社の状態がどれだけ厳しくなっても私を支えてくれたことでしょう。私はその幹部社員に、「あなたは会社にとってなくてはならない存在である」ことをもっとダイレクトに伝えるべきだったです。

相手に伝えるときの基本として、

相手が求めていることを話して期待を裏切らない

ということも忘れてはならないのです。

6 伝わるスピーチをするためのチェック事項

最後に、一般的なスピーチのチェックポイントを紹介するので、参考にしてください。

(図表)【「上手なスピーチの基準」の例】

要素 定義 主なチェックポイント 熱量への影響 改善のポイント
1 話し方 どのように伝えるか 声量、スピード、抑揚、間、視線、表情、身振り 第一印象と感情伝達を大きく左右する 重要箇所の前に間を置く、抑揚をつける、視線を配る
2 話す内容 何を伝えるか 主張、目的、背景、結論、行動喚起 話の軸がぶれると熱量が伝わりにくい 結論→理由→具体例→行動の順で整理する
3 話す言葉 どの言葉を選ぶか 具体語、感情語、断定表現、短いフレーズ 言葉選びで温度感と説得力が決まる 抽象語を減らし、短く強い言葉を使う
4 話す場所 どこで話すか 会議室、ホール、現場、オンライン 場の空気が言葉の重みを増幅する テーマに合う場所を選ぶ
5 話すタイミング いつ話すか 危機時、節目、成功直後、朝礼、キックオフ 同じ内容でも刺さり方が変わる 相手の感情が高まる瞬間に合わせる
6 話す人の見た目 誰がどう見えるか 服装、姿勢、清潔感、表情、立ち方 信頼感と覚悟が伝わる 場に合わせた服装、姿勢を整える
7 聞き手との関係性 誰に向けて話すか 社員、顧客、経営層、取引先 言葉の距離感と共感度に影響する 相手の立場に合わせて言葉を変える

(出所:日本情報マート作成)

これらはスピーチにおいて大切な基本です。これらを踏まえることは言うまでもないですが、その前段として、

日頃から社員と真摯に向き合い、「社長の話を聞きたい」と思ってもらえること

が重要です。こうした関係性さえ築けていれば、相手に十分に伝わります。つまり、スピーチの成否は「実は話し始める前から決まっている」ともいえるのです。

以上(2026年5月作成)

pj10099
画像:日本情報マート

ヤバいお客を「出禁」にしたい! リアル事例で分かる出禁の効果

1 迷惑なお客を「出禁」にしていい?

接客の仕事に従事していれば、誰しも一度は「迷惑なお客」に出会ったことがあるでしょう。ある程度は我慢するとしても限度はあり、なかには

「出禁」(迷惑行為をしたお客に対して、今後の入店を断る対応)にしたい相手

もいるかもしれません。

「出禁ってそもそも法的にどういう扱いなの?」と疑問に思う人もいると思いますが、結論から言うと、実は出禁のルールは、法律で明確に定められているわけではありません。民法には「契約自由の原則」というものがあって、

「どの程度の迷惑を被ったら出禁にするのか」は、基本的にはお店側の裁量で決めてしまって問題ない

とされているのです。もちろん、性別や国籍などを理由とする不当な差別は問題になりますし、医療やインフラ関係など公共性が極めて高い分野では、正当な理由なく応対を拒否することが法律で禁じられていますが、そうした例外を除くと、出禁にする(しない)は、基本的にお店の自由なのです。

とはいえ、お店側に裁量が認められるとしても、「そうは言っても、お客はお客だし……」「逆恨みされたら面倒だなあ」と、気がとがめる部分もあるはずです。となると、やはり気になってくるのは、

実際に出禁を行ったお店のリアルな声

でしょう。

今回は、実際にお客を出禁にしたことのある飲食店や美容院に、

  • 出禁にした理由は?
  • どうやって出禁にした?
  • 出禁にした影響は?

という項目で、聞き取り調査を行いました。「出禁」の事例としてご紹介しますので、参考にしてください。また、第3章では最近の出禁措置ツールとしてどんなものが存在するのかについても、併せてご紹介します。

2 無断キャンセル、ツケの滞納……「出禁」のリアル事例

ここでは、3つの聞き取り調査の結果を紹介します。出禁にした理由も方法も、店にとってさまざまですので、ぜひ参考にしてみてください。

1)飲食店A(電話か来店での予約のみ、接待利用中心のレストラン)

1.出禁にした理由は?

「当店では、会社さまの接待交際費の上限を考えて、コース+ドリンクの料金を設定しているのですが、あるお客さまが、酒類をたくさん飲み、予算をオーバーしました。そのお客さまは、会計の際に『これじゃあ、接待交際費に収まらない。次も来てあげるから、今日は1万5000円以内に負けてくれ』と言い、何度断っても引き下がりませんでした。言い合いが白熱してきたので、その場は他のお客さまへの影響も考え、接待交際費の範囲内で領収書を切りましたが、同じことを繰り返されては困るので、出禁にさせていただきました」

2.どうやって出禁にした?

「会計の際に名刺をいただき、『このお客さまから電話がかかってきたら断るように』と従業員に共有しました。その後も、同じお客さまから予約の打診が続きました。断るたびに怒ってきたため、最終的には角が立たないよう、『会社さんごとお断りしています』と告げました」

3.出禁にした影響は?

「『会社さんごとお断りしています』と告げて以降、そのお客さまは店に現れていません。言い合いなどに時間を取られることがなくなり、他のお客さまも安心して過ごせるようになったので、そこは良かったです。ただ、『会社ごとお断りしている』と告げたことついては、相手が大きな会社ということもあって、今後同じ会社のお客さまの予約が減るかもしれないと、少し気にしています。」

2)飲食店B(予約なしの常連客が多いオーセンティックバー)

1.出禁にした理由は?

「当店では、常連のお客さまに限り、ツケ(その場で支払いせず、後々まとめて支払うこと)を認めています。しかし、あるお客さまの中に、ツケを繰り返すも、一向に料金を支払ってくれない方がいらっしゃいました。その方は出禁にさせていただきました」

2.どうやって出禁にした?

「そのお客さまが来店した際、『(ツケを支払っていないので)お帰りください』と告げ、退店していただきました」

3.出禁にした影響は?

「その後、ツケの回収には成功しました。その常連さまとは疎遠になり、連絡も取らなくなりました。たまに安否が気になりますね」

3)美容院A(ネット・電話予約または来店時に予約可能、個人経営で小規模)

1.出禁にした理由は?

「⾧時間かかる施術メニューで予約をしていたにもかかわらず、当日に無断で予約をキャンセルするお客さまがいました。無断キャンセルでない場合も、『今月はお金がないのでキャンセルしてください』とドタキャンされることが多く、困っていました」

2.どうやって出禁にした?

「当日に無断キャンセルをされた際、キャンセル料をいただきました。すると、その後は予約の連絡が来なくなりました。今後、仮に同じお客さまから予約の電話があったとしても、お断りする方針でいます」

3.出禁にした影響は?

「スタッフのストレスが軽減され、無断キャンセルなどによる機会損失(時間やコストが無駄になる)がなくなりました」

4)番外編:美容院B(ネット・電話予約または来店時に予約可能、個人経営で小規模)

最後に、出禁にはしていないものの、困っているという美容院の事例を紹介します。

1.何に困っている?

「⾧年の常連さんが認知症になってしまい、予約したのを忘れてしまい当日に来店しなかったり、逆に予約をしていないのにふらっと現れて『髪を切って欲しい』と言ったりして、困っています」

2.どうして出禁にしない?

「常連さんなので、できれば出禁にはしたくないです。来店された際に席と時間の空きがあれば対応するくらいしかできませんが、『今後の予約の受付については対応を考えなければいけないな』とは思っています」

3 今どきは「出禁」もDX化

ここまで紹介した事例からも分かるように、出禁の判断や実行は、現場スタッフにとって少なからず精神的な負担を伴いますが、最近ではテクノロジーを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の手法で、よりスマートに出禁の管理を行えるようになっています。

特に飲食店などは、昔ながらの予約台帳や店主の裁量で顧客の管理を行っていることも多いですが、出禁の管理をDX化することで属人的な判断によるトラブルを防ぎ、現場の負担も減らすことができます。システム導入を検討してみるのも一手でしょう。

例えば、次のような対応が考えられます。

1.AIカメラや顔認証システムによる不審者・迷惑客の自動検知

過去にトラブルを起こした人物をデータベースに登録しておくことで、当該人物が入店した際にスタッフの端末へ通知が飛びます。

2.顧客管理システムでのブラックリスト共有

系列店舗やツールの利用店舗全体でトラブル情報をリアルタイム共有し、予約段階でブロックします。

3.オンライン予約時の「利用規約」への同意

迷惑行為時の出禁措置を明文化し、チェックを入れることで法的な合意形成を行います。

4.迷惑行為のクラウド録画

音声付きの鮮明な映像をクラウドに保存し、警察や弁護士への証拠提出を迅速化します。

以上(2026年5月作成)

pj10100
画像:日本情報マート

【事業承継】贈与税・相続税が猶予・免除される「事業承継税制」

1 特例承継計画の提出期限は2027年9月30日に延長

事業承継税制とは、

中小企業の後継者が先代経営者などから自社株式を贈与または相続などによって取得した場合、その自社株式に係る相続税・贈与税の納税が猶予・免除される制度

です。事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」があります。特例措置のほうが次のように税負担を減らす効果が高いので中小企業にとって有利です。

  • 対象となる株式が全株式(一般措置の場合は、総株式数の最大3分の2まで)
  • 自社株式に係る納税額すべてが猶予・免除される(一般措置の場合の納税猶予割合は、贈与税100%、相続税80%)

なお、令和8年度税制改正により、

特例措置を受けるために必要な特例承継計画の提出期限は2027年9月30日までに延長

されました(改正前は2026年3月31日まででした)。事業承継税制には法人版と個人版がありますが、この記事では法人版事業承継税制について解説しています。

2 特例措置を受けるための手続きと、主な要件は?

1)特例措置を受けるための手続き

事業承継税制の特例措置を受けるには、

2027年9月30日までに、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「円滑化法」)に基づき、特例承継計画を都道府県知事に提出

し、確認してもらわなければなりません。

次に、自社株式について贈与税・相続税の納税猶予および免除の特例の適用を受けるには、

贈与税は贈与した年の翌年1月15日まで、相続税は相続開始後8か月以内に、円滑化法に基づき、特例認定承継会社として認定

を受けなければなりません。認定を受けるには、必要書類を添付して、主たる事務所(本社など)の所在地の都道府県知事に申請しなければなりません。また、期限内申告を行い、かつ担保(納税猶予の対象となる自社株式など)の提供が必要になります。

2)納税猶予の特例を受けるために必要な3要件

1.対象会社の要件

対象会社の主な要件は、

  1. 円滑化法で定義する中小企業者であること
  2. 風俗営業会社でないこと
  3. 資産保有型会社または資産運用型会社でないこと(一定のものを除く)
  4. 総収入金額(営業外収益及び特別利益以外のものに限ります)が0の会社や従業員数が0の会社(一定の場合には5人未満の会社)ではないこと

です。なお、円滑化法で定義する中小企業者は次の通りです。

円滑化法で定義する中小企業者

2.先代経営者の要件

先代経営者の主な要件は、

  1. 会社の代表取締役であったこと
  2. 贈与・相続の直前に、先代経営者一族(親族など特別な関係がある人々)で総議決権数の過半数を保有し、かつその一族の中(特例の適用を受ける後継者を除く)でも最も多くを保有している株主であったこと

です。

3.後継者の要件

後継者の要件は、贈与・相続共通の要件と、それぞれ異なる要件があり、

  1. (贈与・相続共通)相続・贈与の直前において、先代経営者一族で総議決権数の過半数を保有し、かつ、その一族の中で最も多くを保有している株主となること(後継者が複数の場合には、各後継者が10%以上の議決権を保有し、かつ各後継者が一族内の他の者が有する議決権を下回らないこと)
  2. (贈与の場合)贈与の直前において、会社の役員であること
  3. (贈与の場合)贈与時に会社の代表取締役になっていること
  4. (相続の場合)相続の直前に会社の役員であること
  5. (相続の場合)相続開始の日の翌日から5カ月以内に代表取締役になること

です。

3 特例措置を受けた後の諸手続きも肝心!

1)相続時・贈与時の手続き

自社株式について相続税の納税猶予および免除の特例を受けるには、所定の書類を添付した相続税の申告書に、納税猶予の特例措置を受けようとする旨を記載します。これにより要件を満たし続ければ納税猶予が継続し、後継者が死亡したときなどに納税が免除されます。

同様に、自社株式について贈与税の納税猶予及び免除の特例を受けるには、所定の書類を添付した贈与税の申告書に、納税猶予の特例を受けようとする旨を記載します。これにより贈与者である先代経営者が死亡するまで納税が猶予されます。

贈与者である先代経営者が死亡した場合、贈与を受けた自社株式は後継者が相続したものとみなされます。ただし、自社株式の価額は贈与を受けた時点の価額とされます。この相続の際、相続税の申告書に「非上場株式等の特例贈与者(先代経営者)が死亡した場合の相続税の納税猶予および免除の特例」の適用を受けようとする旨を記載します。これにより、相続人である後継者が死亡するまで相続税の納税が猶予され、後継者が死亡したときも納税が免除されます。

2)担保の提供

納税の猶予を受けるには、相続税・贈与税の申告書の提出期限までに、納税猶予分の相続税額・贈与税額に相当する担保を提供しなければなりません。担保となるのは、不動産、国債・地方債、一定の有価証券などですが、納税猶予の対象となるオーナー企業の自社株式の全部を提供することで、必要な担保の提供があったものとみなされます。

3)贈与税・相続税申告後の納税猶予期間中の手続き

贈与税・相続税申告後の納税猶予期間中、引き続き納税猶予制度の適用を受けるためには、5年間、毎年一定の書類を添付した「継続届出書」を税務署に、「年次報告書」を都道府県知事に提出し続けます。また、5年経過後は3年ごとに「継続届出書」を所轄の税務署に提出します。

4)納税猶予が認められない事由が生じた場合

次の場合、納税が猶予されている贈与税か相続税の一部または全部を納付しなければなりません(一定の場合には、納税猶予額に加えて利子税も併せて納付する必要があります)。

  • 事業承継税制の適用を受けた自社株式についてその一部を譲渡などした場合
  • 後継者が会社の代表権を有しなくなった場合(特例経営承継期間の経過後を除く)
  • 会社が資産管理会社に該当した場合(一定の要件を満たす会社を除きます)

4 事業の継続が困難な場合の納税猶予税額の免除

1)原則:譲渡等の際の納税猶予額の免除

特例経営承継期間(原則、この制度の適用を受ける贈与税・相続税の申告期限の翌日から5年がすぎるまでの期間)が過ぎた後に事業の継続が困難な一定の事由が生じ、自社株式を譲渡等した場合、

猶予されていた相続税・贈与税の納税額は、当初の納税猶予額ではなく、譲渡等の対価の額(解散の場合は解散時の相続税評価額)を基に再計算

されます。また、譲渡前5年以内に後継者やその家族など(「同族関係者」という)に支払われた配当や高すぎる役員報酬に相当する額(以下「直前配当等の額」)については、再計算した相続税額・贈与税額に加えなければなりません。

再計算した相続税額・贈与税額に直前配当等の額を加えた金額が、当初の納税猶予額を下回った場合、その差額は納税を免除され、免除された部分以外は利子税を添えて納付します。ただし、免除される金額は、対象会社の相続税評価額の1/2に相当する金額に基づいて計算した金額までとなっています。

2)特例:相続税評価額の2分の1未満の対価で譲渡等した場合の再々計算

譲渡等の対価の額が、対象となる会社の相続税評価額の1/2相当額を下回る場合でも、担保の提供を条件に、譲渡等をしたときに再計算した納税額は一旦猶予されます。そして、譲渡等をした後、2年を経過する日まで事業が継続しており、かつ譲渡等の際に雇用していた社員数(常時使用従業員)の半分以上をキープしている場合、特例措置が受けられます。

特例措置を受けられる金額は、譲渡等の対価の額を基に再々計算した相続税額・贈与税額に、直前配当等の額を加えた金額が相続税・贈与税の納税額となり、差額が免除されます。

納税免除

5 事業承継税制の一般措置と特例措置の主な違い

最後に、参考として事業承継税制の一般措置と特例措置の主な違いをまとめた表を紹介します。

一般措置と特例措置の主な違い

以上(2026年5月更新)
(監修 税理士 石田和也)

pj30044
画像:Mariko Mitsuda

【助成金(パート雇用編)】正社員化などで最大1680万円!

1 キャリアアップ助成金で非正規社員の待遇改善!

非正規社員(パート等)の待遇改善や社会保障の強化に向けて、

社会保険に加入できる短時間労働者の範囲の拡大(社会保険の適用拡大)

などが進められています。国を挙げて正社員と非正規社員の格差の是正が推し進められる中、会社でも非正規社員の待遇の見直しが必要になってきています。とはいえ、賃上げや就業規則等の変更にはコストがかかるもの。そこでおすすめしたいのが

非正規社員のために一定の取り組み、所定の要件を満たした場合に受け取れる「キャリアアップ助成金」

を活用することです。以降で、制度概要と申請上のポイントを専門家が解説します。この以降で出てくる言葉の定義は次の通りです。

  • 非正規社員:正社員以外の社員
  • 短時間労働者:非正規社員のうち、週の所定労働時間が正社員より短い者
  • 有期雇用労働者:非正規社員のうち、雇用期間の定めがある者
  • 無期雇用労働者:非正規社員のうち、雇用期間の定めがない者

なお、助成金の内容は、2026年4月8日時点のもので、将来変更される可能性があります。申請書の書き方や添付書類などについては、次のURLをご参照ください。

■厚生労働省「キャリアアップ助成金」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

2 正社員化コース(最大1680万円)

1)正社員化コースとは?

就業規則等に基づき、非正規社員(有期雇用労働者または無期雇用労働者)を正社員に転換し、転換後に一定以上賃金を増額した場合、助成金を受け取れるコースです。

2)助成金を受け取るには?

この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。

  • コースの実施日の前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局に提出する
  • 賃金の額または計算方法が正社員と異なる雇用区分の就業規則等を、6カ月以上適用された有期雇用労働者または無期雇用労働者を正社員に転換する
  • 正社員転換後の6カ月間(第1期)の賃金(基本給および定額支給の諸手当。ただし、時間外手当・通勤手当・歩合給等は除く)を、転換前6カ月間の賃金と比較して3%以上増額し、支給対象期分の賃金支給日の翌日から2カ月以内に支給申請する
  • 重点支援対象者(後述)である場合、第1期後の6カ月間の賃金を、第1期の賃金と比較して合理的な理由なく引き下げずに支給した上で、支給対象期分の賃金支給日の翌日から2カ月以内に支給申請する

なお、「キャリアアップ計画」とは、

非正規社員のキャリアアップを図る上での目標や会社の取り組みに関する計画のこと

です。キャリアアップ助成金ではどのコースでも、この計画書の提出が必須となります。

また、「重点支援対象者」とは、次のa~cのいずれかに該当する人を指します。

a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者

b:雇入れから3年未満で、次のいずれにも該当する有期雇用労働者

  • 過去5年間に正社員であった期間が合計1年以下
  • 過去1年間に正社員として雇用されていない

c:派遣労働者、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者

3)受け取れる金額はいくら?

次の額を定額で受け取れます。

正社員化コース

仮に中小企業が重点支援対象者に該当する有期雇用労働者20人を正社員化し、正社員転換制度・多様な正社員制度・情報公表に関する加算要件も満たした場合、1年度・1事業所当たり最大1680万円を受給できる計算です。ただし、これらの加算はそれぞれ1事業所1回限りであるため、毎年度同じ加算額を受け取れるわけではありません。

4)専門家のワンポイントアドバイス

重点支援対象者については、助成金の支給が手厚くなるので、社内の有期雇用労働者に該当者がいないか確認してみましょう。派遣労働者を正社員化する場合にも使える助成金です。ただし、新規学卒者で雇入れ日から雇用期間が1年未満の者については、正社員化した場合であっても支給対象外となります。

また、本コースは就業規則の不備による不支給が起こりがちですので、

  • 正社員には「賞与または退職金制度」と「昇給制度」が就業規則上で確実に適用される規定になっているか
  • 非正規社員用の就業規則が別途存在し、正社員と賃金体系が明確に区別されているか

を必ず確認してください。「賞与は支給しない。ただし、業績によっては支給することがある」といった曖昧な規定では支給対象外となります。

なお、正社員化時に試用期間を設ける場合、「試用期間中は正社員化が完了したとみなされない」ため、賃金3%増額の起算日が試用期間終了日の翌日となる点に注意が必要です。トラブルを避けるためには、「有期雇用または無期雇用から転換した者には試用期間を設けない」旨を就業規則に明記しておくとよいでしょう。

3 賃金規定等改定コース(最大740万円)

1)キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)とは?

有期パート等の基本給を3%以上増額するように賃金規定等を改定し、その規定を適用させた場合、賃上げをした有期パート等の人数に応じ、助成金を受け取れるというものです。

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。「キャリアアップ計画」は、有期パート等のキャリアアップを図る上での目標や会社の取り組みに関する計画、「賃金規定等」は、就業規則の賃金規定、賃金テーブル、賃金一覧表等のことをいいます。

  • コースの実施日(賃金規定等の改定日)の前日までに、キャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局に提出すること
  • 有期パート等の基本給を3%以上増額するように賃金規定等を改定すること
  • 改定後の規定に基づき、増額した賃金を6カ月間支給していること

なお、助成金は賃上げをした有期パート等の人数(1年度1事業所当たり100人が上限)に応じて支給されますが、対象となるのは、

雇用保険の被保険者で、賃金規定等の改定の3カ月以上前から勤務している有期パート等だけ(助成金の申請時点で離職している者等を除く)

なので注意が必要です。ちなみに、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、雇用期間の見込みが31日以上ある人が、雇用保険の被保険者になります。

会社も有期パート等も要件を満たしている場合、6カ月分の賃金を支給した日の翌日から2カ月以内に都道府県労働局に申請をすれば、助成金を受け取れます。

3)受け取れる金額はいくら?

「賃上げ率に応じた支給額」を定額で受け取れます。また、職務評価(職務の大きさを相対的に把握すること)を実施し、適正に有期パート等の賃金規定等に反映した場合、別途加算が受けられます。

賃金規定等改定コース

仮に中小企業が1年度・1事業所当たり100人に対して6%以上の賃上げを実施し、職務評価加算と昇給制度加算の要件も満たした場合、最大740万円を受給できる計算です。

4)専門家のワンポイントアドバイス

賃金規定等を3%以上増額改定する場合でも、

基本給以外の諸手当等を減額している場合は、支給対象とならない

ので注意が必要です。

また、賃上げの実施前にキャリアアップ計画を作成・提出しないと、この助成金は受け取れません。また、労働保険料の未納や労働関係法令の違反がある会社は、助成金の対象から外れる恐れがあります。なお、

「業務改善助成金」の賃上げ対象にした社員は、賃金規定等改定コースの対象にカウントすることができない

ので注意が必要です。業務改善助成金については、こちらの記事をご確認ください。

4 短時間労働者労働時間延長支援コース(最大75万円)

1)短時間労働者労働時間延長支援コースとは?

いわゆる「年収の壁」対策を目的としたコースです。社会保険の適用要件を満たすよう、短時間労働者の週所定労働時間を延長し、賃金も増額する等の処遇改善を行う会社を支援します。

2)助成金を受け取るには?

次の要件などを満たす必要があります。

  • コースの実施日の前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局に提出する。具体的には、社会保険加入日の前日(例:2026年4月1日加入の場合、3月31日)
  • 短時間労働者を6カ月以上雇用した上で、社会保険に加入させる
  • [第1期分の申請]
    ・社会保険加入に当たり、短時間労働者の週所定労働時間を2時間以上延長して基本給を一定以上増額するか、もしくは週所定労働時間を5時間以上延長する
    ・社会保険に加入後、その社員を継続して6カ月以上雇用し、6カ月目の賃金支給日の翌日から2カ月以内に支給申請する
  • [第2期分の申請]
    ・第1期支給対象期における週所定労働時間の延長等の実施後、第2期支給対象期の開始日(社会保険加入日から12カ月経過後)までに、2時間以上の所定労働時間の延長、5%以上の基本給の増額、賞与や退職金制度への適用等の措置を講じる
    ・第2期支給対象期の開始日から起算して6カ月目の賃金支給日の翌日から2カ月以内に支給申請をする

3)受け取れる金額はいくら?

次の額を定額で受け取れます。支給申請人数の上限はありません。

短時間労働者労働時間延長支援コース

要件を満たした場合、小規模企業では1人当たり最大75万円を受給できる計算です。なお、1年目と2年目の取組内容、企業規模によって支給額は異なります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

本コースは、単年の取り組みによる申請が原則ですが、すぐに支給要件を満たす事が難しい会社については、複数年かけて支給要件を満たした場合による申請が認められています。ただし、その場合、キャリアアップ計画書で定める「キャリアアップ計画期間」(3年以上5年以内の期間で任意で設定)内で取り組みを実施する必要があるため、余裕を持ってキャリアアップ計画書を提出しておく必要があります。

また、本コースの前身にあたる「社会保険適用時処遇改善コース」は2026年3月31日をもって暫定措置が終了しました。すでに旧コースで取り組みを進めていた会社でも、まだ支給申請をしていない労働者については、本コースへの切り替え申請が認められる場合があるため、該当する会社は管轄の労働局またはハローワークに早めに確認しましょう。

5 賃金規定等共通化コース(最大60万円)

1)賃金規定等共通化コースとは?

非正規社員について、正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成して適用した場合に助成を受けられるコースです。

2)助成金を受け取るには?

会社が次の要件などを満たす必要があります。

  • コースの実施日の前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局に提出する
  • 非正規社員を3カ月以上雇用した上で、賃金規定等を正社員と共通化する
  • 改定後の規定に基づき、増額した賃金を6カ月間支給し、6カ月目の賃金支給日の翌日から2カ月以内に支給申請する

3)受け取れる金額はいくら?

次の額を定額で受け取れます。

賃金規定等共通化コース

中小企業の場合、60万円を受け取れます。

4)専門家のワンポイントアドバイス

正社員が月給制、非正規社員が時給制の場合、非正規社員の賃金規定等を正社員と共通化するに当たって、「正社員の月給の時給換算額 ≦ 非正規社員の時給」になるように賃金テーブル等を作成する必要があります。時給換算のイメージは次の通りです。

正社員の月給 ÷ 正社員の月の労働時間数(注) ≦ 有期雇用労働者等の時給

(注)正社員の1日の所定労働時間×月平均労働日数(週の所定労働日数×52÷12)

なお、共通化する賃金規定等については、それぞれ3区分(等級)以上を設け、そのうち共通する区分が2区分以上である必要があります。

また、賃金規定等の共通化に当たっては、「適用前と比べて基本給および定額で支給されている諸手当を減額していないこと」が要件となります。共通化を機に正社員側の賃金体系を見直すと、結果的に減額となってしまい支給対象外となるケースがあるため、共通化の設計には慎重を期す必要があります。

6 賞与・退職金制度導入コース(最大56.8万円)

1)賞与・退職金制度導入コースとは?

全ての非正規社員を対象とする賞与・退職金制度を導入し、支給または積み立てを実施した場合に助成を受けられるコースです。

2)助成金を受け取るには?

会社が次の要件などを満たす必要があります。

  • コースの実施日の前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局に提出する
  • 全ての非正規社員を対象とする賞与・退職金制度を新たに設ける
  • 非正規社員を3カ月以上雇用し、制度の新設後、さらに6カ月以上継続雇用する
  • 賞与については、6カ月分相当として対象者1人当たり5万円以上を支給する。退職金については、1カ月分相当として3000円以上を6カ月分または6カ月分相当として1万8000円以上積み立てる
  • 初回の賞与支給日または退職金の積み立て後6カ月目の賃金支給日の翌日から2カ月以内に支給申請する

3)受け取れる金額はいくら?

次の額を定額で受け取れます。

賞与・退職金制度導入コース

中小企業の場合、最大56.8万円を受け取れます。

4)専門家のワンポイントアドバイス

退職金については制度導入に際して、

積立・拠出費用を事業主(会社)が負担する制度であることを明記

する必要があります。なお、定年の適用を受けない有期雇用労働者については、年齢に関係なく退職金制度の対象とする制度でなければなりません(非常に短期間の雇用契約である場合は除きます)。ただし、定年の適用を受ける無期雇用労働者については、定年年齢までで構いません。

また、過去に「旧諸手当制度共通化コース」「旧諸手当制度等共通化コース」の助成金の支給を受けている場合は、本コースの支給対象外となります(健康診断制度を新たに設け、実施した場合の助成のみを受けている場合を除きます)。

以上(2026年5月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

pj00793
画像:日本情報マート

【助成金(賃上げ編)】基本給の増額などで最大740万円!

1 賃上げの不安は、助成金を上手に活用して払拭する

物価高の影響等から、賃上げ(定期昇給やベースアップ)に向けた動きが活発になっています。2026年春闘の動向を見ても、賃上げ率は2024年・2025年に引き続き、「5%以上(定期昇給相当分を含む)」と高水準です。

一方で、多くの経営者は「先行きが不透明で、簡単には賃上げができない……」と不安を抱えています。一度賃金を引き上げてしまうと簡単には引き下げることができないのが現状です。賃上げは簡単でも、賃下げは「労働条件の不利益変更」等の問題が絡み、経営者の一存での対応は非常に難しいので、不安になるのも無理はありません。

そこでご提案したいのが、助成金を上手に活用し、賃上げによるコストアップの補填に充てることです。例えば、中小企業の場合、

有期パート等(契約期間の定めがある非正規雇用の社員)の基本給を3%以上増額すると、最大740万円を受け取れる

のをご存じでしょうか。これは「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)」というものですが、他にも賃上げに関する助成金があります。

以降で、中小企業(雇用保険の適用事業主であることを前提とする)向けの助成金を取り上げ、支給額や要件等の情報に加え、専門家のワンポイントアドバイスも併せて紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

なお、助成金の内容は、2026年4月22日時点のもので、将来変更される可能性があります。申請書の書き方や添付書類等については、各章で紹介しているURLをご参照ください。また、いわゆる「賃上げ促進税制」については、こちらのコンテンツをご確認ください。

2 キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)(最大740万円)

1)キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)とは?

有期パート等の基本給を3%以上増額するように賃金規定等を改定し、その規定を適用させた場合、賃上げをした有期パート等の人数に応じ、助成金を受け取れるというものです。

厚生労働省「キャリアアップ助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。「キャリアアップ計画」は、有期パート等のキャリアアップを図る上での目標や会社の取り組みに関する計画、「賃金規定等」は、就業規則の賃金規定、賃金テーブル、賃金一覧表等のことをいいます。

  • コースの実施日(賃金規定等の改定日)の前日までに、キャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局に提出すること
  • 有期パート等の基本給を3%以上増額するように賃金規定等を改定すること
  • 改定後の規定に基づき、増額した賃金を6カ月間支給していること

ちなみに、既存の賃金規定等を改定した場合だけでなく、新たに規定を作成した場合であっても、過去3カ月の賃金実績と比較し3%以上増額していれば助成の対象となります。

なお、助成金は賃上げをした有期パート等の人数(1年度1社当たり100人が上限)に応じて支給されますが、対象となるのは、

雇用保険の被保険者で、賃金規定等の改定の3カ月以上前から勤務している有期パート等だけ(助成金の申請時点で離職している者等を除く)

なので注意が必要です。ちなみに、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、雇用期間の見込みが31日以上ある人が、雇用保険の被保険者になります。

会社も有期パート等も要件を満たしている場合、6カ月分の賃金を支給した日の翌日から2カ月以内に都道府県労働局に申請をすれば、助成金を受け取れます。

3)受け取れる金額はいくら?

「賃上げ率に応じた支給額」(具体的には図表1の額)を定額で受け取れます。また、職務評価(職務の大きさを相対的に把握すること)を実施し、適正に有期パート等の賃金規定等に反映した場合、別途加算が受けられます。

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

仮に中小企業が100人に対し、6%以上の賃上げを実施した場合、加算額も含めると、1年度につき最大740万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

賃金規定等を3%以上増額改定する場合でも、

基本給以外の諸手当等を減額している場合は、支給対象とならない

ので注意が必要です。なお、増額改定とする制度設計は、申請者だけでなく、原則として全ての有期パート等を対象とする必要があります(ただし、合理的な理由があれば、一部に限定した改定・昇給であっても対象と認められるとされています)。

また、賃上げの実施前にキャリアアップ計画を作成・提出しないと、この助成金は受け取れません。また、労働保険料の未納や労働関係法令の違反がある会社は、助成金の対象から外れる恐れがあります。なお、

第3章で紹介する「業務改善助成金」の賃上げ対象にした社員は、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の対象にカウントすることができない

ので注意が必要です。

3 業務改善助成金(最大600万円)

1)業務改善助成金とは?

会社(実際は支店等の事業場単位)が事業場内最低賃金(最も賃金が低い社員の時給)を50円以上引き上げ、生産性を向上させるための設備投資等を行った場合、その費用の一部について助成金を受け取れるというものです。こちらは中小企業・小規模事業者だけが対象です。

厚生労働省「業務改善助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。

  • 中小企業・小規模事業者であること
  • 事業場内最低賃金が、2026年度の地域別最低賃金未満であること
  • 解雇や賃金引き下げ等の不交付事由に該当しないこと

要件を満たしている場合、「賃上げの計画」「設備投資等の計画」を作成し、都道府県労働局に提出します。交付が決定されたら、計画に沿って賃上げと設備投資等を実施し、都道府県労働局に結果を報告すれば、助成金を受け取れます。

なお、賃上げの対象は雇用保険被保険者に限定され、助成金の対象になる設備投資等の例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 設備投資(例:POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮)
  • コンサルティング(例:専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上)
  • その他(例:店舗改装による配膳時間の短縮)

3)受け取れる金額はいくら?

「助成上限額」までの範囲内で、「設備投資等の費用×助成率」で計算した額(具体的には図表2の額)を受け取れます。なお、「社員数30人以上」か「社員数30人未満」によって、助成上限額が一部異なる場合があります(図表2の赤字部分参照)。

業務改善助成金

要件を満たす場合、最大600万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

業務改善助成金における賃上げとは、全ての賃金の合計額をみて、所定の額以上の引き上げがされているものをいいます。そのため、

手当等を減額して基本給を引き上げた場合でも、ただちに助成金の対象から除外されるものではない

とされています。キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)とは、賃上げの考え方が少し異なるため、注意が必要です。

事業場内最低賃金の計算に含まれるのは、「毎月支払われる基本給と諸手当(職務手当、役職手当、住宅手当等)」だけで、時間外勤務手当(残業代)や賞与、通勤手当、家族手当などは対象外です(地域別最低賃金と同じ)。

ただし、事業場内最低賃金の計算の基礎に含まれないからと言って、通勤手当や家族手当などを減額や廃止するのは考えものです。その分の額を基本給などの引き上げに回したとしても、賃金全体の総額で見た場合に各コース所定の引き上げ額を下回っていると、賃上げとは認められません。

助成金の申請時に、賃上げ対象となる社員(必要がある場合は他の社員も)について、賃金台帳を基に実際の支給状況を確認されることがあるので、自社の賃金形態をあらかじめ確認しておきましょう。

厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/newpage_43898.html

なお、2026年度の交付申請は、2026年9月1日からスタートしますが、

締切は地域別最低賃金の発効日(2026年10月1日以降、各都道府県で随時発効。2026年11月30日以降の発効になる場合は、11月30日が締切)となっていて、申請期間が短い

です。また、

賃上げは、2026年9月1日から地域別最低賃金の発効日の前日までの間に行う

必要があるので、申請前に賃上げを実施してしまわないよう注意しましょう。

4 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)(最大325万円)

1)人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)とは?

社員の離職率を低下させるために、

  • 雇用管理制度(賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度)
  • 雇用環境整備(業務負担軽減機器等の導入(社員の業務負担の軽減が図られる機器・設備等の導入))

の措置のいずれかを実施し、離職率が低下した場合に助成金を受け取れるというものです。

厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199292_00005.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。「雇用管理制度等整備計画」は、雇用管理制度や業務負担軽減機器等の導入に関する計画のこと、「評価時離職率算定期間」は、計画期間終了から1年経過するまでの期間のことで、この期間に離職率の変化を評価します。

  • 雇用管理制度等整備計画を作成し、都道府県労働局に提出して「認定」を受けること
  • 計画の認定申請日から計画期間末日までの間、同一の社員(最低1人)を計画の適用対象者として継続雇用すること
  • 雇用管理制度または業務負担軽減機器等を新たに導入し、適用対象者の2分の1以上に制度・機器等を適用し、さらに、制度・機器等を評価時離職率算定期間の末日まで運用すること
  • 離職等について一定の要件を満たし、評価時離職率算定期間が終了するまで(計画期間終了から1年経過するまで)の離職率を、計画提出前1年間よりも原則として1%ポイント以上低下させること(雇用保険被保険者数が10人未満である場合は、要件緩和あり)

上記の要件を満たした上で、評価時離職率算定期間が終了してから2カ月以内に、都道府県労働局に結果を報告すれば、助成金を受け取れます。

3)受け取れる金額はいくら?

雇用管理制度については「制度の内容に応じて定められた額」を定額で、雇用環境整備については、「対象経費の2分の1に相当する額」を受け取れます(いずれも上限額あり)。

また、このコースでは計画期間中に、雇用管理制度・雇用環境整備の対象者について、「毎月決まって支払われる賃金を5%以上(一定の要件を満たす場合は3%以上)賃上げ」すると、加算が受けられます。なお、雇用環境整備に限り、7%以上の高い賃上げを実施した場合は更に高額な加算を受けることができます。

人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)

雇用管理制度・雇用環境整備の措置を両方実施し、なおかつ、賃金要件も満たした場合、最大325万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

助成の要件として、計画開始日6カ月前から計画期間の末日までにおいて、雇用保険被保険者を会社都合で解雇等していないことが含まれています。助成の獲得を狙うのであれば、計画の達成だけに注視するのではなく、日常的な運営にも留意する必要があります。

賃金要件を満たすためには、雇用管理制度等整備計画の認定申請後、

雇用管理制度・雇用環境整備の措置の実施日から、計画期間の末日までに賃上げ

を行う必要があります。また、社員それぞれの「毎月決まって支払われる賃金」について、

賃上げ前3カ月間の合計額と、賃上げ後3カ月間(賃上げした月を含む)の毎月決まって支払われる賃金の合計額を比較して、原則5%以上増加

していることが必要です。

以上(2026年5月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

pj00702
画像:日本情報マート