(山形県)製造業の未来を拓く「リスキリング推進セミナー」【経営者とっておきニュース】

やまがた産業支援機構は、2026年11月13日に山形県高度技術研究開発センターにて、「リスキリング推進セミナー」を開催します。対象は県内ものづくり企業の経営者、事業戦略担当者、人事担当者であり、定員は20名、参加費は無料です。申込期限は2026年11月4日となっています。

本セミナーは、労働人口の減少に伴う人手不足や、AI・ロボット等のデジタル技術の急速な進歩に対応するため、生産性の向上や新たな付加価値を生み出すリスキリング(学び直し)の重要性を伝えることを目的としています。

現在、多くの道府県では、少子高齢化の進行や若年者層の流出によって深刻な労働人口の減少が起きており、人手不足が喫緊の課題となっています。一方で、デジタル技術の進化により、ものづくり産業においてはAIやロボットの活用など、革新的な技術導入が進む環境にあります。こうした背景から、企業が従来の事業を維持・継続し、さらに持続的な成長を遂げるためには、従業員のスキル刷新、すなわちリスキリングが不可欠となっています。

労働環境や人材の流動性が激しく変化する現代において、リスキリングに積極的に取り組む企業は、優秀な人材の確保や定着においても大きなメリットを享受できる一方、対応が遅れた企業は生産性の低下や人材流出という大きな課題に直面することになります。

今後、地域ものづくり産業におけるAIやデジタル技術の導入スピードはさらに加速し、求められるスキルセットもより高度化していくことが予想されます。単発のセミナー参加にとどまらず、企業が組織全体で継続的な学習環境を整えられるかどうかが、企業の浮沈を分ける分水嶺となるでしょう。

人口減少とデジタル化の波は全国共通の課題です。自社の業務プロセスを見直し、自動化できる部分と人間が創造性を発揮すべき部分を明確に切り分けた上で、従業員が主体的に新しいスキルを学べる仕組みをいかに構築するかを検討することが重要です。リスキリングは、もはや「あれば望ましいもの」ではなく、企業の存続を左右する必須の経営戦略と言えます。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■やまがた産業支援機構「『リスキリング推進セミナー』のご案内」■
https://www.ynet.or.jp/2026/09/post-59.html

以上(2026年10月作成)

pj10198
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石綿対策パトロール:中小企業が確認すべき法令遵守ポイント【経営者とっておきニュース】

厚生労働省は、国土交通省および環境省と合同で、2026年10月から11月頃まで「石綿対策に係る全国一斉パトロール」を実施すると発表しました。近年、石綿(アスベスト)含有建材を使用した建築物などの解体工事等の増加が見込まれています。これに伴い、労働者への健康被害を防止するため、関係省庁が連携して現場指導や監視の目を一層強める方針です。

本パトロールでは、建築物や工作物の解体工事における事前調査の有資格者による実施義務の徹底をはじめ、粉じん発散防止措置や、再生砕石への石綿含有産業廃棄物の混入防止といった法令の遵守状況が総合的に確認されます。

この全国一斉パトロールの背景には、数多くの建築物が老朽化し、解体・改修工事が本格化している社会的実態があります。石綿はかつて多くの建材に使用されていましたが、その深刻な健康被害から現在は使用が厳しく制限されており、解体時の飛散防止が不可欠です。

こうした現場における安全徹底は、業界全体の健全化を目指す「取適法(中小受託取引適正化法)」の理念とも深く通じています。発注側である「委託事業者」と、施工を担う「中小受託事業者」の双方が対等な立場で法令を遵守する体制づくりが求められています。

委託事業者だけでなく、中小受託事業者に対しても厳格な事前調査や有資格者の配置が義務付けられる中、体制構築の遅れは事業継続に関わる致命的なリスクになり得ます。一方で、適正なコストや工期を確保しつつ安全管理を徹底する企業は、取引先からの厚い信頼を獲得し、持続的な成長を実現できるというメリットがあります。

今後、労働安全や環境保全、さらに公正な取引を求める法規制の網は、ますます厳しくなっていくことが確実視されています。コンプライアンスの軽視や不徹底は、企業の存続を揺るがす重大な経営リスクです。

建設・不動産業界に限らず、「法令や社会要請の変化を後追いするのではなく、先回りして組織体制を整える」という能動的な経営姿勢が重要です。自社の業務に関わる最新の法改正動向や取引適正化の潮流を定期的にキャッチアップし、現場のオペレーションに落とし込む仕組みを再点検してみましょう。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■厚生労働省「石綿対策に係る全国一斉パトロールを実施します」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76403.html

以上(2026年10月作成)

pj10197
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トラック・物流Gメンが監視強化! 10・11月は集中監視月間へ【経営者とっておきニュース】

国土交通省、公正取引委員会、中小企業庁は、2026年10月および11月を荷主や元請事業者に対する「集中監視月間」と位置付けました。これに伴い、「トラック・物流Gメン」が全トラック事業者や倉庫業者に対する実態調査などを活用し、適正な取引を阻害するおそれのある行為を行う荷主等に対する監視を強力に強化し、是正指導を実施します。

今回は、地方レベルでの公正取引委員会や中小企業庁との連携に加え、違法な「白トラ」への有償運送委託を防ぐため警察とも連携した取り組みが行われる点が大きな特徴です。また、10月16日にはハイブリッド形式での特別説明会も開催されます。

なぜ今、このような大規模な監視強化が打ち出されたのでしょうか。その背景には、物流業界における深刻な人手不足や、持続可能な物流体制の構築が急務であるという社会的要請があります。これまで、荷主や元請事業者による長時間の荷待ちや、契約にない附帯業務、運賃の不当な据置き、無理な運送依頼などが、現場のトラック事業者に大きな負担を強いてきました。

今回の集中監視では、こうした「トラック法に基づく違反原因行為」だけでなく、取引適正化法(取適法)に違反するおそれのある支払遅延や代金の減額、買いたたきといった行為も重点的に監視されます。これにより、サプライチェーン全体で公正かつ適正な取引環境の実現が促されます。荷主企業にとっての影響は小さくありません。これまで慣習的に行われてきた非効率な荷役作業や価格交渉への姿勢が厳しく問われることになり、コンプライアンスの徹底が急務となります。

一方で、適正な運賃や荷役料の支払いが進むことで、物流インフラが安定し、中長期的には地域経済全体の持続可能性が高まるという大きなメリットも期待されます。

今後、行政による監視や是正指導はさらに実効性を増していくことが予想されます。単なる一時的な取り締まりにとどまらず、公正取引委員会や中小企業庁、警察といった関係省庁が一体となった横断的な監視体制が定着していくでしょう。

荷主企業にとっては、自社の業務プロセスを改めて見直し、無駄な荷待ち時間や無理な発注がないか点検することが、企業の信頼性と競争力を守るカギとなります。法令の遵守はもちろん、物流事業者と対等なパートナーシップを築く姿勢こそが、これからの持続可能なビジネスにおいて不可欠です。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■国土交通省「荷主等に対する集中監視月間を設け、『トラック・物流Gメン』が重点的に監視を強化します」■
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000367.html

以上(2026年10月作成)

pj10196
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ビールが値下げ? 2026年酒税改正とメーカー各社の「先読み」の姿勢【経営者とっておきニュース】

2026年10月、平成29年度税制改正に基づく酒税法の段階的な見直しが最終局面を迎え、ビール、発泡酒、新ジャンル商品の税率が1キロリットルあたり15万5000円(350ミリリットル換算で54.25円)に一本化されました。これにより、ビールは350ミリリットル缶あたり約9.1円の減税となる一方、発泡酒や新ジャンル、さらに缶チューハイ等の発泡性酒類は増税となりました。

国内のビール系飲料市場は、1994年のピーク時から約半分に落ち込み、需要が厳しい状況が続いています。そうした中、かつての税率差を背景にしたビールメーカーの商品開発、販売戦略は大きな転換点を迎えています。実際に大手各社は、発泡酒や新ジャンルの主力ブランドをビールカテゴリーへリニューアルする動きを加速させています。

この税率の一本化による生活者の家計への影響も小さくありません。ビールは値下げされる一方、発泡酒や新ジャンル、缶チューハイは値上げとなるため、生活防衛意識から全体の消費停滞が懸念されます。また、地域の小売店や飲食店にとっても、価格改定への対応や顧客の買い控えを防ぐための販売戦略の見直しが喫緊の課題となっています。

今後は「安さ」に依存した競争から、本物の味わいや品質を重視した高付加価値路線へのシフトが加速します。この潮流は地域に根差す中小ブルワリーが手がける「クラフトビール」市場にとっても大きな追い風となります。これまで価格面で敬遠されがちだった本格的なビールや多彩な味わいのクラフトビールが減税によって身近な存在となり、消費者の「味の好み」を基準にした選択が一段と広がっていくでしょう。

ここで特筆すべきは、ビールメーカー大手各社が見せた長期的視野に基づく「先読みの姿勢」です。各社は数年スパンでロードマップを描き、増減税のタイミングを見据えたブランドの再構築や、新ジャンルからビールへのスムーズな移行準備を進めてきました。変化が起きてから動くのではなく、制度変更のスケジュールを逆算して自社リソースを最適配分し続けた点に、企業の優れた戦略性が見て取れます。

他業種のビジネスパーソンにとっても、この動向は示唆に富んでいます。外部環境の不可避な変化を脅威で終わらせず、中長期の成長軌道を描く設計図に組み込む視点こそが、不確実性の高い現代を生き抜く鍵となります。将来のルール変更を先回りして事業基盤を点検する姿勢を強く意識していきましょう。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■財務省「酒税に関する資料」■
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d08.htm

以上(2026年10月作成)

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パート・アルバイトの保険料負担を軽くする「保険料調整制度」とは【経営者とっておきニュース】

日本年金機構が2026年10月から開始した「保険料調整制度」は、新たに健康保険や厚生年金保険の加入対象となるパート・アルバイトなどの短時間労働者が、いわゆる「年収の壁」を意識して就業調整を行わずに働ける環境を整えるためのものです。

対象となる事業所の事業主が、被保険者である短時間労働者の保険料の一部を一時的に追加負担することで、通算3年間にわたりその保険料負担を軽減します。事業主が一時負担した保険料は後日還付されるため、事業主側の最終的な負担が増えない仕組みとなっています。

近年、社会保険の適用拡大が進む中、短時間労働者の間で「一定の収入を超えると保険料負担により手取りが減るのではないか」という懸念から、就業時間を制限する動き、いわゆる「年収の壁」が課題となっていました。特に地方の中小企業や小売・飲食・サービス業などでは、深刻な人手不足が続く中で、年末にかけて従業員が「働き控え」をせざるを得ないことが、事業運営上の大きなボトルネックとなっていました。

この「保険料調整制度」の導入によって、短時間労働者は最初の数年間、本来より少ない保険料負担で社会保険に加入できるようになります。それにより、手取り減少への不安が和らぎ、より積極的に就労できるようになることが期待されます。

事業主側にとっても、短時間労働者の労働時間制限が緩和されることで、シフトの安定確保や生産性向上が期待できます。ただし、事業主側は制度の開始にあたり「保険料調整開始申出書」の提出や、資金繰り・事務手続きの管理が必要となる点には注意が必要です。一時的な立替払いに伴うキャッシュフロー管理や、複雑化する社会保険手続きへの適応力が求められます。経営者や人事担当者は、単なる制度対応にとどまらず、これを契機とした人材定着や働き方の多様化を推進することが重要です。

多くの対象事業所において適用拡大への対応や社内周知が急務となります。自社の短時間労働者の労働時間実態と希望を再確認し、新制度の活用が自社の戦力強化にどうつながるかを早期にシミュレーションすることをお勧めします。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■日本年金機構「保険料調整制度のご案内」■
https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/hokenryochosei.html

以上(2026年10月作成)

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日本スタートアップ大賞2026:革新が拓く未来【経営者とっておきニュース】

経済産業省をはじめとする関係各省は、2026年9月25日に「日本スタートアップ大賞2026」の表彰式を総理大臣官邸で開催しました。次世代のロールモデルとなる革新的な事業を創出したスタートアップを表彰し、社会全体のチャレンジ精神を高めることを目的としています。

今回の最高賞である内閣総理大臣賞には、独自のフィジカルAIを活用して製造・物流現場の自動化を実現するMujinが選出されました。また、経済産業大臣賞のリージョナルフィッシュをはじめ、農業や医療、情報通信など各分野を牽引する計10社の優れたスタートアップが表彰され、大きな注目を集めています。

なぜ今、これらスタートアップの動きがこれほど重視されているのでしょうか。その背景には、少子高齢化に伴う深刻な労働力不足や、グローバルな市場競争の激化があります。従来型の労働集約的なモデルでは持続可能性が揺らぐ中、AIやロボティクス、ゲノム編集といった先端技術を駆使して構造的な課題を解決するアプローチが不可欠となっています。

この動きは、大企業やサプライチェーン、そして地域経済にも多大な影響を与えています。例えば、農業分野で受賞したOishii Farmは、AIを活用した植物工場により高品質な農作物の安定生産を実現し、海外展開も果たしています。

このような先進企業の台頭は、地方における新たな産業創出や雇用拡大のチャンスを生み出す一方、デジタル化や技術導入に出遅れた既存企業との間に競争力の格差を生む課題も孕んでいます。サプライチェーン全体で見れば、効率化や強靭化が進むメリットがある反面、中小企業はパートナーとしての技術適応力を早急に求められる状況にあります。

今後、スタートアップが持つ尖った技術と、中小企業が持つ現場の知見やネットワークが融合する動きはさらに加速すると予想されます。地域経済においても、人口減少に耐え忍ぶ縮小均衡から、先端技術を活用した高付加価値型モデルへの転換が生存の必須条件となるでしょう。

「自社のリソースだけで完結させず、外部の先進的な知見やテクノロジーをいかに自社のバリューチェーンに接続するか」というオープンイノベーションの視点を持つことが重要です。自社単体の業務効率化にとどまらず、外部パートナーとの連携可能性を模索する視点を意識することが、変化の激しい時代を生き抜くカギとなります。


【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。

■経済産業省「『日本スタートアップ大賞2026』の表彰式を行いました」■
https://www.meti.go.jp/press/2026/09/20260925002.html

以上(2026年10月作成)

pj10193
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【労基署の臨検】監督官は36協定や労働条件通知書のどこを見る?

1 労働基準監督署は会社の何をチェックする?

会社が労働基準関係法令に違反していないかをチェックする

労働基準監督署(以下「労基署」)の臨検監督(以下「臨検」)

は、年に17万9240件実施されています(厚生労働省「令和7年監督業務実施状況(速報値)」)。

臨検では、労働基準監督官(以下「監督官」)が会社を訪問するなどして、36協定、出勤簿、賃金台帳、就業規則などさまざまな書類をチェックします。できれば、臨検が入る前にセルフチェックをしておきたいところですが、

監督官が書類のどこを見るか分からないので、対応ができない

という会社がほとんどでしょう。そこで、この記事では社会保険労務士監修のもと、労基署の臨検で指摘を受けやすい書類と、そのチェックポイントを紹介します

2 労基署の臨検で指摘を受けやすい書類は?

2025年に実施された臨検では、定期監督等と申告監督について、主に次のような違反が指摘されています。

定期監督等における法令違反の項目上位5つ(2025年)

申告監督における法令違反の項目上位5つ(2025年)

これらの違反は、主に監督官が次のような書類をチェックする過程で見つかります。

  • 36協定(社員に時間外・休日労働を命じる場合に必要な労使協定)
  • 労働条件通知書(社員と労働契約を締結する際、労働条件を明示するための書類)
  • 就業規則(社員数10人以上の場合、作成が義務付けられている職場のルールブック)
  • 法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)、年次有給休暇管理簿、健康診断関連の書類(健康診断結果、医師の意見書など)

3 36協定のチェックポイントは?

36協定は、会社と社員側の代表(過半数労働組合や過半数代表者)が締結し、労基署に届け出ることで初めて効力を生じます。この社員側の代表についてですが、労基署の臨検では

監督官が一般の社員に対し、「誰が社員側の代表ですか?」「どうやって代表を選出しましたか?(例:多数決)」などと、抜き打ちで質問をするケース

があります。ですから、自社の36協定について正しい情報を社内に周知徹底しておきましょう。また、協定の有効期間は1年間ですので、更新を忘れていないかも要チェックです。この他、1年間の変形労働時間制を導入している会社の場合は労働時間のカレンダーなどについて、運送業の会社の場合は改善基準告示に係る労使協定(拘束時間などについて定めたもの)などについても提出を求められることがあります。

また、2024年4月からは建設業などにも時間外労働の上限規制が適用されています。上限規制に違反する36協定の締結や残業命令は認められないので注意が必要です(図表2)。

時間外労働の上限規制(2024年4月1日~)

なお、上限規制は、単に協定上の時間数を守っていればよいというものではありません。厚生労働省によると、監督指導を実施した2万6512事業場のうち、1万1230事業場(42.4%)で違法な時間外労働が確認され、そのうち約半数(48.7%)は時間外・休日労働が月80時間を超えていました。特別条項付きの36協定を締結していても、実際の運用がそれを超えていれば摘発の対象になるわけです。

■厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59983.html

一方、2026年9月からは、労基署の指導方法の運用そのものが見直されています。これまでのように、時間外・休日労働といった労働時間のみに着目して一律「月45時間以内」に削減させる画一的な指導は改め、各事業場が36協定で定めた「健康・福祉確保措置」(医師の面接指導など)がきちんと機能しているかを重点的に確認し、状況に応じた指導を行う方針に転換されました。ただし、過重労働による健康障害の恐れがある事業場には、引き続き厳正な指導が行われます。

■厚生労働省「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75454.html

4 労働条件通知書のチェックポイントは?

労働条件通知書は、社員を雇い入れる際などに必ず書面で交付する必要があります(ただし、社員が希望した場合はメールも可)。また、2024年4月からは、次の内容を明示することが義務付けられています。施行から2年以上が経過した今も、労働基準法第15条(労働条件の明示)違反は定期監督における違反の上位に位置しており(図表1)、周知が行き届いていない会社が少なくないのが実情です。

  • 「契約更新に関する事項」を記載する際、「更新上限」についても明示する
  • 「無期転換に関する事項(新設)」を記載する際、無期転換の「申込機会」「転換後の労働条件」について明示する(通算契約期間が5年超のパート等が対象)
  • 「就業場所」「業務内容」を記載する際、契約締結時の内容だけでなく、配置転換等の際の「変更範囲」も明示する

古い労働条件通知書のフォーマットを使い回している場合、早期に修正が必要です。なお、フォーマットを見直す際は、念のため次のような内容についても確認しておきましょう。

  • 時間外労働が1カ月60時間を超える場合の割増賃金率が正しいか(2023年4月から、中小企業も「25%以上」から「50%以上」に引き上げられている)
  • パート等の場合、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」も明示しているか(労働基準法ではなく、パートタイム・有期雇用労働法に基づく明示。なお、2026年10月からは「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」を明示することが新たに義務付けられる)

5 就業規則のチェックポイントは?

まず、社員が10人以上の会社なのに、就業規則がない(または作成しているが、労基署に届け出ていない)のは違法です。また、就業規則は社内に周知して初めて効力を生じるので、

テレワークの社員がいるのに、就業規則はオフィスに紙の状態でしか置いておらず、実際にアクセスできる状態で周知されていない

というのもNGです。

加えて、労基署の臨検では、

法改正があったタイミングで、就業規則の変更と届け出がちゃんと行われているか

が厳しくチェックされます。法改正への対応が届け出も含めてなされているかを確認しておきましょう。

なお、就業規則を変更する際は、「就業規則本体」に加えて、「変更届」「社員側の代表(過半数労働組合や過半数代表者)の意見書」を労基署に届け出ます。これらについても労基署が受理の押印をした会社控えがあるか、確認しておきましょう。

6 法定三帳簿等のチェックポイントは?

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の3つは「法定三帳簿」と呼ばれており、最近はこれに年次有給休暇管理簿を加え、「法定四帳簿」と呼ぶことがあります。いずれも、法令で定められた項目を記載の上、5年間保存することが義務付けられています(当面の間は3年間)。労基署の臨検では、

ほぼ必ず提出を求められる重要書類で、法令上必須の項目が記載されていないと、是正勧告の対象になる可能性が高い

ので注意が必要です。提出する帳簿間での整合性も確認しておきましょう

法定四帳簿等の記載事項(法令上必須)

加えて、賃金台帳と出勤簿については、次のような点にも要注意です。

(賃金台帳)

  • 長時間労働が続いているのに、「固定残業代だから」と残業代を一律支給にしているなど、違和感がある賃金台帳が提出されると、監督官から指摘が入ることがある
  • 賃金から「積立金」「社宅料」などを控除している場合、労使協定の締結について指摘が入ることがある
  • パート等を含め、時給が最低賃金を下回る社員がいないか確認されることがある(都道府県ごとの「地域別最低賃金」は毎年引き上げられている。基本給や固定残業代の時間単価が、知らないうちに最低賃金を下回っていないかは要注意)
  • 固定残業代を導入している場合、実際の残業時間が見合い時間を超えているのに差額を精算していない、または割増賃金の算定基礎から役付手当等を不当に除外しているケースでは、是正勧告の上、報告を求められることがある(最終的には書類送検されることもある)

(出勤簿)

  • 「始業・終業時刻や休憩時間が一律」など、違和感がある出勤簿が提出されると、監督官から指摘が入ることがある(パソコンのログとの照合を求められることも)
  • 始業前などに「清掃」や「制服への着替え」が必要な場合、その時間が労働時間に含まれているか確認されることがある

7 健康診断関連の書類のチェックポイントは?

会社は、社員を雇用した際の雇入時健康診断や、年1回の定期健康診断などを実施しなければなりません。労基署の臨検では、

  • 各社員の健康診断結果を作成し、一定期間保存しているか(原則5年間)
  • 「異常の所見」があった場合、健康診断をしてから3カ月以内に、就業上必要な措置(時間外労働の制限など)について医師等の意見を聴取しているか
  • 社員数が50人以上の場合、定期健康診断結果報告書を提出しているか

などをチェックされる可能性があります。また、深夜業に常時従事する社員がいる会社の場合などは、労働安全衛生法に基づき、年2回(6カ月ごとに1回)の健康診断をしているかもチェックされます。

ちなみに、これまで社員数50人以上の事業場にのみ義務付けられ、50人未満は努力義務にとどまっていた「ストレスチェックの実施」について、すべての事業場に義務化する労働安全衛生法の改正がすでに成立しており、2028年4月1日から施行される予定です。少し先の話ではありますが、50人未満の中小企業では実施体制が整っていないケースも多いため、早めに準備を始めておくと安心です。加えて「産業医や衛生管理者の選任」「衛生委員会の設置」など、社員数50人以上で必要になる安全衛生関連の実務も、引き続きチェック対象になり得ます。社員数10人以上50人未満の場合も、「衛生推進者の選任」義務があります。

また、2026年4月からは、高年齢労働者の労働災害を防止するための作業環境の改善(照度の確保、段差の解消等)や作業管理の実施が、事業主の努力義務として新たに定められています。高齢の社員を雇用している会社は、こちらも念頭に置いておきましょう。

8 書類以外も何かチェックされる?

ここまで、労基署の臨検でチェックされる可能性のある書類についてお話ししてきましたが、実際の臨検では、書類以外についても監督官のチェックが入る可能性があります。

例えば、建設業や製造業などの場合、工事現場や工場などの現場確認が行われることがあります。現場確認では、重機や手すりといった各種設備が労働安全衛生法の基準にのっとったものであるかなどについて確認されます。

また、サービス業のようなホワイトカラーでも、申告監督などの場合は、会社の提出した書類と従業員の実態に乖離(かいり)がないかを確かめるため、監督官から社員に対してヒアリングが行われるケースもあるようです。例えば、「1カ月のうち時間外労働がどの程度あるか?」「最近、労働災害に遭った人はいないか?」といった質問が考えられます。

なお、2026年4月からは、同じ作業場所で働くフリーランスや一人親方などの個人事業者に対しても、元方事業者が安全衛生上の措置を講じることが義務付けられています。自社の直接雇用の社員だけでなく、同じ現場にいる請負・委託先の作業者を含めた安全管理体制になっているか、確認しておきましょう。

以上(2026年10月更新)
(監修 社会保険労務士事務所デバイスアニュー代表 山中隆史)

pj00336
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【債権回収】担保権の実行など訴訟ではない方法で債権を回収する

1 訴訟によらない債権回収

債権回収の1つの分かれ目は法的手段を取るか否かですが、この判断をする際は、

スピード回収、コスト、回収可能性

の3つを考慮してください。訴訟には時間とコストがかかりますが、通常、時間がたつほど債権回収は難しくなります。また、取引先に資産がなければ、コストをかけたわりに多くを回収できません。

このような場合は、訴訟によらない債権回収を検討することになります。具体的には、担保権の実行、仮差押えや仮処分のような民事保全などとなります。それぞれのメリットとデメリットを確認していきましょう。

自社の債権回収の方法

2 担保権の実行の概要

担保権とは、

債権者が債務者に対して有する債権を担保するために、債務者または第三者の財産に対して、その財産から強制的に弁済を受けることができる権利

です。取引先が約束通りに支払わない場合、契約で担保権の設定を受けているときは、それを実行して債権回収をします。メリットは次の通りです。

  • 確定判決などの「債務名義」が不要である
  • 強制執行に比べて迅速かつ低コストで行うことができる
  • 倒産手続においても優先されるものがある
  • 法律上当然に発生するものがある

担保権には、契約締結によって成立する担保権(約定担保権)だけではなく、法律上当然に発生する担保権(法定担保権)があります。そのため、契約で担保権を設定していなくても成立している可能性があります。

また、担保権の実行には債務名義が不要です。債務名義とは、簡単に言うと、

強制執行をする根拠となる文書であり、債権債務の存在を公に認めるもの

です。そのため、訴訟や支払督促などの手続を経ることなく、低コストかつスピーディーに債権回収を行うことができます。

ただし、約定担保権を実行するには、事前に取引先と契約を交わしておく必要があります。また、法定担保権については、知らないと見逃してしまう恐れがあるため、日ごろの債権管理で確認しなければなりません。

3 担保権の実行の流れ

1)抵当権・根抵当権を実行

不動産は財産の中でも安定性があり、登記制度による対抗力があるため、担保としてよく用いられています。不動産に設定されるのは、抵当権(根抵当権を含む)が多いです。取引先が支払いを遅延した場合、債権者は抵当権を実行して不動産を競売にかけ、その売却代金を債権に充当することができます。これを、担保不動産競売といいます。主な流れは次の通りです。

担保不動産競売の主な流れ

競売手続は順調に進んだとしても、申立てから配当までに半年以上かかります。また、物件にもよりますが、競売手続で売却される金額は市場価格の7~8割程度になることが多いとされています。そのため、直ちに競売を申し立てるのではなく、取引先に対して不動産の任意売却を促すことも検討しましょう。

この他、抵当権の実行方法として「担保不動産収益執行」があります。担保不動産収益執行とは、簡単に言うと、

当該不動産から生じる賃料などを債権者に配当すること

です。そのため、担保不動産収益執行は、目的となる不動産が賃貸物件で、毎月賃料収入があるような場合に限られます。

2)動産売買先取特権を実行

商品などの動産を売買した場合、当該動産の代金が未払いであれば、売却した動産の上に「動産売買先取特権」が成立します。これは、取引先と担保に関する契約を交わしていなくても発生する法定担保権です。

売却した動産が取引先の手元にある場合、動産競売の申立てができます。動産競売の申立ては、

裁判所の執行官が債務者の住居や占有する場所に立ち入って目的物を差押え、当該目的物を売却して、配当を行う

という流れになります。債権者は、売却代金から配当を受けて債権に充当することができます。

しかし、取引先が既に当該動産を第三者に転売していた場合、動産競売の申立てはできないのですが、第三者から取引先への支払いが未了であれば、取引先が第三者に対して有する転売代金債権を差し押さえて、債権を回収することが可能です。

3)留保所有権を実行

売買契約において、

売買代金が支払われるまでの間、目的物の所有権を売主のもとにとどめておく

という条件を付すことがあります(所有権留保)。この場合、取引先が代金の支払いを怠ったときは、債権者は所有権に基づいて売買目的物を取り戻し、売買代金に充当することができます。

ただし、取引先が倒産手続に入った場合、あらかじめ取引先から「占有改定」などの方法により、対抗要件を備えておく必要があります。占有改定とは、

民法が定める引渡し方法の一つであり、現実の所持は買主のまま、目的物の買主と売主の合意によって、売主が占有を取得する

というものです。

4)譲渡担保権を実行

取引先の商品や機械などの動産に譲渡担保権を設定している場合、裁判所を介することなく、実行手続を進めることができます。債権者は取引先に譲渡担保権を実行する旨を通知した上で、担保の目的となっている動産を引き揚げ、自ら換価して回収することもできます。

ただし、取引先に無断で倉庫に立ち入って商品や機械を引き揚げることは、建造物侵入や窃盗に該当するため、引き揚げに当たっては、取引先の同意を得る必要があります。また、担保権が実行される前に取引先が担保目的物を処分してしまう恐れがある場合、動産の処分禁止の仮処分を申し立てることも考えられます。

4 仮差押え・仮処分の概要と流れ

1)仮差押え・仮処分の概要

仮差押えと仮処分は「民事保全」と呼ばれます。まず、仮差押えとは、

売上債権などの金銭債権を保全するために、取引先の保有している財産を暫定的に差押える制度

です。仮差押えは金銭債権を対象としています。一方、仮処分とは、

仮差押えと異なり、取引先に対して有する金銭債権以外の権利を保全する制度

です。例えば、譲渡担保権を設定している取引先の物件が第三者に譲渡される恐れがある場合、それを阻止するために利用されます。

民事保全による債権回収には、次のようなメリットがあります。

  • 判決が出るまでの間、取引先の財産や自身の権利を保全することができる
  • 取引先にプレッシャーをかけて、任意の支払いを促すことができる

民事保全では、判決が出るまでの間、取引先の財産や行動に制限をかけることになります。そのため、

申立てをする債権者は担保金を供託

しなければなりません。担保金は、

一般的に被保全権利の2割から3割程度の金額となることが多い

ようです。また、担保金は、勝訴するまで供託したままですし、敗訴した場合は相手への損害賠償に充てられてしまう可能性もあります。

注意が必要なのは、仮差押えや仮処分には、

取引先が破産などの法的倒産手続を開始した場合は効力を失う

というデメリットがあることです。そのため、破産の恐れがある取引先に対して、費用をかけて民事保全手続を行うのは得策ではありません。取引先に資産があり、処分や隠匿の恐れがないようならば、仮差押えなどを申し立てず、訴訟を提起したほうがよいかもしれません。

2)仮差押え・仮処分の流れ

仮差押えの申立人は、

自らが取引先に対して有する売掛金請求権などの金銭債権(被保全権利)の存在と、判決を待っていたのでは強制執行をすることができなくなる恐れ(保全の必要性)を主張して、仮差押命令の申立て

を行います。裁判所は、申立人の主張と提出する証拠書類だけを見て、取引先の主張を聞かずに判断します。

仮差押えの対象となる財産に制限はないため、取引先が所有している不動産、動産、債権その他の財産に対して仮差押えを行うことができます。また、仮差押えの申立てに当たり、裁判所から担保金の供託を命じられたら、すぐに供託できるように事前に準備しておく必要があります。

仮処分の流れも仮差押えと同様です。やはり、裁判所から担保金の供託が命じられますので、事前に担保金を準備しておかなければなりません。

5 保証人からの回収の概要と流れ

1)保証人からの回収の概要

保証人からの回収とは、

取引先との契約において、代表取締役その他第三者との間で保証契約を交わしている場合、保証人から債権を回収すること

です。

保証には、普通保証(単純保証)、連帯保証、根保証などがあり、それぞれ保証人の権利や負担する義務が異なります。また、いずれも保証人との間であらかじめ保証契約を交わす必要があります。資力のある保証人と保証契約を交わしておくことで、取引先に代わって債権回収ができます。

なお、保証人が個人である場合、事業性のある貸金等債務を保証するときは、公正証書を作成する必要があります。また、保証契約締結前に、公正証書により保証債務を履行する意思を確認しなければ、保証契約は無効です。なお、この公正証書は、契約締結の日前1か月以内に作成する必要があります。

ただし、次の者が保証をするときは、公正証書を作成する必要はありません。

  • 主債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役等
  • 主債務者が法人である場合の総株主の議決権の過半数を有する者等
  • 主債務者が個人である場合の共同事業者又は主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者

2)保証人からの回収の流れ

まずは保証人に対して、請求書を内容証明郵便等で送付します。これに対して、保証人が任意に支払いに応じない場合は、取引先に対する債権回収と同様に、訴訟や民事保全などの法的手続を検討することになります。

以上(2026年9月更新)
(監修 TMI総合法律事務所 弁護士 池田賢生)

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画像:Mariko Mitsuda

【人事はつらいよ】社員が2週間の無断欠勤……音信不通なのに解雇不可ってどういうこと?

1 2週間以上も無断欠勤しているのに解雇できないの?

A社の社長は悩んでいます。これまで真面目に働いてくれていた社員のBさんが、ここ数日、無断欠勤をしているのです。電話をしても応答がなく、自宅にも行ってみましたが留守でした。遠方に住んでいるBさんの家族にも連絡しましたが、誰も行方を知りません……。

2週間たっても連絡が取れず、限界と判断した社長は、就業規則にのっとってBさんを解雇することに決め、解雇通知書(解雇する旨を社員に通知する書類)を作成しました。ですが、ここで問題が……。Bさんの行方が分からないので解雇通知書を本人に届けられません。そこで、社長はBさんの家族を頼ることにしました。

「申し訳ありませんが、Bさん本人と連絡が取れないため、この解雇通知書をご家族にお預けします。もしもBさんから連絡がありましたら、本人にお渡しください」

Bさんの家族に何とか了承してもらい、これで一段落かと思われましたが、しばらくしてA社に一本の電話が入りました。電話の主は、Bさんの代理人を名乗る弁護士。どうやら家族の前に現れたBさんが、解雇通知書を渡されて憤慨し、弁護士に相談したようです。弁護士が言うには、「Bさんの家族に解雇通知書を預けても、Bさん本人に通知したことにはならない。だから解雇は無効だ」とのこと。社長は釈然としません。

「Bさんと連絡が取れないから家族に頼んだのに、『本人に通知しなければ解雇できない』とはどういうことだ? 本人と連絡が取れるまでずっと待っていないといけないのか?」

2 「客観的合理性」と「社会的相当性」がカギ

労働契約法により、会社が社員を解雇する(労働契約を一方的に解消する)には、

1.客観的に見て解雇はやむを得ないといえるだけの理由がある(客観的合理性)

2.社員の行為に照らして、解雇を選択することが適当であるといえる(社会的相当性)

の2つの要件を満たさなければなりません。過去の裁判例(東京地裁平成12年10月27日判決)では、このルールを無断欠勤に当てはめた上で、

事前の届けがなかった等の諸般の事情を考慮した上で、2週間にわたる欠勤は、正当な理由のある欠勤であったと認めることはできない

という判断がされており、多くの会社がこれにならって就業規則などを整備しています。ただ、実際は無断欠勤が2週間以上続いていても、解雇が無効になるケースがあります。例えば、会社が社員に精神疾患があるとの疑いをもっていたのに、精神科医による健康診断を実施して、その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応をとることなく解雇した場合などがそうです(最高裁第二小法廷平成24年4月27日判決)。

また、

解雇予告や解雇予告手当の支払いなど、解雇の手続にも注意

が必要です。労働基準法には、社員を解雇する場合、少なくとも解雇する日の30日前に解雇予告をする必要があり、30日を待たずに解雇する場合、短縮する日数分の解雇予告手当を支払わなければならないというルールがあります(ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、社員の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合を除く)。

解雇予告期間と解雇予告手当の関係

難しいのは、

解雇予告や解雇予告手当の支払いは、原則として社員本人に通知しなければ、効力を生じない

ことです。無断欠勤の場合、欠勤開始から2週間が経過した後に解雇予告などを行うため、

  • 解雇予告手当を支払わなければ、欠勤開始から44日(2週間+30日)後
  • 解雇予告手当を支払えば、最短で欠勤開始から14日(2週間)後

に解雇が成立することになります。しかし、解雇を成立させるには、社員を解雇するという会社の意思表示を、書面などで社員本人に到達させなければなりません。

冒頭の事例では、A社の社長が、Bさん本人と連絡がつかないという理由で、遠方に住んでいるBさんの家族に解雇通知書を預けていますが、解雇を成立させる前提として、社員本人が家族と同居していることが明らかであることなどが必要になります。

実際は解雇予告・解雇予告手当がない解雇であっても、客観的に合理的理由があり、社会的相当性が認められる解雇であれば、社員本人に書面が到達していなくても、解雇自体は有効と判断されるケースが多いです。ただ、解雇をめぐってトラブルになった際のリスクを減らすためにも、上記のルールは覚えておきましょう。

3 連絡が取れなければ、公示送達や内容証明郵便を使おう

では、社員本人と連絡が取れるまで解雇は一切認められないのかというと、そうではありません。こうした場合の対策として、

公示送達や内容証明郵便を使って解雇を通知する

という方法があります。

公示送達は、相手の所在が不明で意思表示が到達しない場合、簡易裁判所に意思表示の公示送達の申立てを行って裁判所の掲示板に掲示し、その旨を官報などに掲載すれば、意思表示が相手に到達したとみなされる制度です。社員を解雇する場合の公示送達の流れは次の通りです。

社員を解雇する場合の公示送達の流れ

内容証明郵便は、郵便を出した内容や発送日、相手が受け取った日付などを郵便局が証明するサービスです。無断欠勤が続く社員の自宅に解雇通知書などを内容証明郵便で送れば、社員が受け取った時点で、社員を解雇するという会社の意思表示が到達したとみなされます。なお、過去の判例には、

内容証明郵便が本人不在で届かず、留置期間の経過により戻ってきたとしても、不在配達通知書の記載等から通知の内容が十分推知できたり(内容の推知可能性)、受領しようとすれば内容証明郵便を受領できたり(郵便物の受領可能性)する場合、遅くとも留置期間の満了時点で意思表示が到達したと認められる

としたものがあります(最高裁第一小法廷平成10年6月11日判決)。とはいえ、それなりに条件が厳しいので、状況にもよりますが、自宅訪問、電話、ショートメール、SNS、住民票調査(弁護士に依頼)など、可能な限り連絡を試みるのがよいでしょう。

4 無断欠勤の理由によっては解雇が無効になることもある

社員側に無断欠勤が続いてもやむを得ない正当な理由がある場合、解雇の手続が適正に行われていても無効になることがあります。具体的には、

  • 傷病にかかっている、逮捕されているなどの理由で、欠勤の連絡ができない
  • 社内でハラスメントなどの被害を受けていて、出勤が苦痛になっている

といったケースです。

社員の事情を正確に推し量るのは難しいですが、社員の同僚や上司、家族などに「最近、変わったことがなかったか」をヒアリングするなどして、可能な限り情報を収集するようにしましょう。仮に、社員が上のようなケースに該当する可能性が高い場合、解雇通知を出さずに休職制度を適用するなどして様子を見ます。

また、公示送達などを使って解雇を通知した後で、音信不通になっていた社員と連絡が取れるようになった場合、無断欠勤の理由を確認し、その理由によっては解雇の撤回を検討します。会社が解雇の意思表示を一方的に取り消すことはできませんが、社員が同意した場合については撤回が認められています。

解雇はトラブルが起きやすい分野です。特に無断欠勤の場合、社員とコミュニケーションが取れない関係で一層トラブルのリスクが高まりますが、「会社としてやるべきことはやった」と言えるよう、手続のポイントを押さえておきましょう。

以上(2026年10月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 小出雄輝)

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画像:metamorworks-shutterstock

「経営者より先に一歩を踏み出し、道をひらき、そして一緒に登る」―社名を「株式会社みちひらき」へ。“やりたい”を止めない世界にする

Kalep,中小企業事例集は、読者の皆さまの経営にお役立ていただけるような中小企業、ベンチャー企業の事例をご紹介するシリーズです。経営者へのインタビューを通して、AIに聞いても分からない企業の取り組みや、人物の魅力に迫っていきます。

今回は、2026年10月1日に社名を「株式会社みちひらき」(旧 株式会社おしごとマーケティング)に新しく変更された、代表の齋藤 正秋(さいとう まさあき)さんにお話を伺いました。

新しい社名に込めた思いと、そこにつながるこれまでの歩み。例えば、大学生時代からすでに今の取り組みの原点となるような「就活生に情報提供していた」お話、そして採用・教育研修会社の起業、日本初・民間の託児所付きコールセンターの立ち上げ、オンライン商談システム「meet in(ミートイン)」の経営など。

数々の事業を実現し、推進されてきた齋藤さん。今回、普段はほとんど語ることのない、これまでの歩みからお話していただきました。過去からつながって今、社名が変わることで、ご自身のやりたいこと、未来に向けてやるべきことがより明確になったといいます。痺れるような泥臭いお話もありました!

1 なぜ今、社名を変えるのか

――最初に、これまでの「おしごとマーケティング」という社名に込めていた思いを教えてください。

「おしごとマーケティング」を登記したのは2017年10月2日です。いわゆる「HR(Human Resources(ヒューマン リソーシーズ))」の領域で、採用の支援や新人・マネージャー研修などを行なっていました。社名には、

人が成長し、活躍できる場(仕事)をマーケティングし続けたい

という思いを込めていました。

しかし、社名に「マーケティング」というワードが入っていると、名刺交換をする度に「Webマーケティングの会社ですか?」と勘違いされます。また、AIで検索してみると「人材紹介・派遣会社」としてヒットしてしまいます。

「webマーケティングの会社ではない」と言っても伝わらない。「いわゆる人材紹介系ではありません」と説明を始めると、それだけで自己紹介が終わってしまう。

こうした状況でしたので、2023年に前職を離れてからおよそ3年がたった今、現在やっていることに社名を合わせようと決めました。それが「株式会社みちひらき」です。

株式会社みちひらき 代表 齋藤 正秋さん

2 「みちひらき」の由来と、ロゴマークに込めた思い

――「株式会社みちひらき」という社名は、どのように決まったのでしょうか?

本当に悩みました。横文字ではなく日本語がいい。漢字よりも、日本特有で自由自在のひらがながいい。こうした字面についてはもちろんのこと、それ以上に自分のやっていることを一言で表すと何なのか、について深く考えました。

元来、私は「人の役に立ちたい(認められたい)」という思いが強いです。それに、「自ら動き」勝手に領域を広げていってしまう性格です。新卒で採用支援の仕事をしていたときも、単に求人広告を売るだけではなく、広告の書き方のコツを教えたり、採用した人が辞めないように採用後の研修をしたりしました。頼まれていないのに、その会社の事業拡大に役立ちそうな人を紹介したりもしました。

ここで再認識したのは、

採用しただけではだめで、その後、活躍しないと意味がない。もちろん、会社も成長しなければならない。一つの断面だけではなく、物事の本質にアプローチし、伴走し、一緒に事業を推進していく。これが私のしてきたことだ!

ということです。例えるなら、険しいジャングルに先頭で分け入り、「成長のヒント」を見つけ、仕掛ける存在です。これだと思いました。

まず動いて道をひらく。それなら「みちひらき」だと。

そして、「ひらく」は、次のように連なっていきます。

会社の未来をひらく

社員の心をひらく

お客様の心もひらく

株式会社みちひらきのホームページ

(出所:株式会社みちひらきのホームページより抜粋)

――確かに、齋藤さんと一緒に仕事をして、道がひらけていく感覚を覚えます。「また改めて会議しましょう」ではなく、「週に1度ミーティングをしましょう」「営業先として、△△さんに声をかけましょう」「金額は○万円にしましょう」と、一つひとつが非常に明確で具体的です。しかも、答えを与えるのではなく、相手の中に入っていかれますよね。

そうです。例えて表現すると、

相手の中に具体的な火種をつくる。そして、その火を消さない。

ということだと思います。

――ロゴマークにはどのような意味があるのでしょうか?

ロゴは記号ではなく、ひとつの情景というイメージで作りました。

経営者の前にあるのは、閉じた扉というより、その先が見えていない状態です。やりたいことはある。けれど、そこへ至る道がまだない。山やジャングルと同じで、はじめから道なんてありません。

ロゴで表現している情景は、扉がひらいて、奥に光が見えて、足元からその光へ道が伸びていく。光と、まだ誰も歩いていない場所。これから道を切り拓いていく。道はまっすぐではなくうねりながら、足元から奥の光へ向かって伸びていきます。

歩いた分だけ、そこが道になる。

そうした思いを込めています。

株式会社みちひらきのロゴマーク

(出所:齋藤さんよりご提供)

3 「とにかく真剣に勉強した」大学デビュー

――ここからは、齋藤さんのこれまでの歩みを振り返っていきたいと思います。どのような学生時代を過ごしたのですか?

過去のことを人に話す機会はあまりないのですが、改めて振り返ってみると、全部が「今」につながっている、と分かるかもしれませんね。

大学受験はうまくいかなかったのです。模試では合格圏だった志望校に落ちてしまい、何とか「滑り止めの滑り止め」に合格しました。

そのころ、高校時代の友人が病気で亡くなったという知らせが届きました。人生で初めてお葬式に参列し、とても衝撃を受けました。

それまでの私はのらりくらりとなんとなく生きていましたが、友人のことがあり、

これではダメだ、頑張らないといけないと思ったのです。

そこからは「大学デビュー」で、真剣に勉学に励みました。

第二外国語は、他の学生が英語やフランス語、中国語を選ぶ中、当時、誰も選ばなかったハングルを選びました。学年トップになって先生に褒められたりして、「勉強って面白いな」と初めて思いました。そうして、大学2年生の時には卒業に必要な単位を取得し終えていました。

――就職活動はいかがでしたか?

就職氷河期だったこともあり、大学3年生から活動を始めました。景気に左右されない業界、ビジネスは何かと考えた結果、製薬メーカーを目指しました。誰もが知る外資系製薬会社から無事に内定をいただくことができたのですが、内定式に行くと有名大学卒の人ばかりです。内定者と会話をした瞬間「ここではない」と感じました。もっとがむしゃらに成長できる場に身を置かなければと思って内定を辞退しました。せっかくいただいた内定を断った私に、父がこう言ってくれたのを覚えています。

「自分の好きな道を選べばいい。やりたいことをやりなさい。」

ところで、私は内定を7社ほどいただいていたこともあり、就職できずに悩んでいる友人知人に、「内定をもらうコツ」をアドバイスしていました。そのときの友人知人の中には、某航空会社のキャビンアテンダントになった人や、倍率の非常に高い有名企業に入社した人もいました。

――すごいですね。どのようなアドバイスをされていたのですか?

例えば、自己紹介文を書くときは結論から書いて、その後に理由を書く。また、強みを書くときは、安易に「コミュニケーション能力」などとせず、自分のしてきたことをしっかり棚卸ししてみることです。そうすると、

アルバイトや部活、サークルの経験の中に、本人も気づいていない強みがあるものです。

例えば、野球部で補欠だった人にベンチで何をしていたかを聞くと、メンバーがいつでも活躍できるように掃除や準備をしていたりする。「レギュラーじゃなかったから強みではない」と考えがちですが、実は縁の下の力持ちでチームを支える献身的な姿は会社に受けがいいものなのです。

こうした「内定をもらうコツ」をアドバイスしたりする取り組みが面白くなり、「人」にかかわる仕事や就職に携わる仕事をしようと決めました。そこで選んだのは、当時、インターネット上で「ブラック企業ランキング」の上位に入っていた採用支援のベンチャー企業です。

――なぜ、あえてブラック企業を選んだのですか?

高校までの私は、何かをやりきったことがありませんでした。初めてやりきったのが大学での勉学ですが、それでは過去の負債は返せないと考えました。

他の人に追いつくためには、厳しいところ(会社)に入らないといけないと思いました。

亡くなった高校時代の友人のことは、その後もずっと心の支えでした。楽なほうに逃げそうになると、そばにいて叱咤激励してくれているような気がして背筋が伸びる。就職して数年後、入社した会社でナンバー1になれたことを、その友人のご家族に報告しました。「本当に頑張れる心の支えになっています」とお伝えしまして、とても喜んでくださいました。本当に有り難いことです。

その友人のおかげで、本当に道がひらけたと思います。

インタビューに答える齋藤 正秋さん

4 トップ営業、24歳での起業、そしてリーマンショック

――入社したブラック企業では、どのように働かれたのですか?

入社してみると、有名大学卒業の人たちがたくさんいました。頭もよく運動もできる人たちばかりで、大学の偏差値では自分が一番下でした。

だからこそ、とにかく誰よりも働こうと。

「人が寝ているときほど頑張る」という気持ちで、ひたすら働きました。

営業でトップの実績も上げました。2年目で課長代理になりましたので、個人としてトップを取っただけでなく、5、6人のチームとしてもトップを取ることができました。

――そこから24歳で研修会社を起業されたのですよね。どのような経緯で起業されたのですか?

採用支援の会社では、3年間で100社ほどの採用を支援しました。すると、採用しても辞めていく人が多いことに気づきました。あれほど頑張って採用したにもかかわらず、採用したほとんどの人が辞めてしまう現実があります。

採用した人の入社後が気になって、「採用の先」を見たくなりました。

そこで、採用だけでなく、教育研修も手がける会社を先輩と立ち上げたのです。

――どのような教育研修だったのですか?

山にこもって2泊3日、睡眠時間をけずり、たくさん食べて、たくさん動く。体力も頭も限界まで追い込むという、今なら賛否両論のある研修です。しかし当時は、この研修を耐えた新人の離職率は低く、活躍してくれるとクライアントからは好評でした。「あの厳しい研修に比べたら、現場の仕事のほうがマシ」という声もあったほどです。

またそのとき、一つの大切な気づきを得ました。参加者から嫌われてしまう研修講師は、口で言うだけで自分は厳しい環境に身を置いていなかったのです。参加者からすると「あの講師は言うだけでいいから楽なものだ」ということです。

そこで、私は講師でありながら参加者と一緒に走る、食べる、睡眠時間も短く

を実践しました。そうすると参加者にこちらの本気度が伝わり、より真剣かつ前向きに研修メニューに取り組んでくれました。

小手先のテクニックではない。本当に「皆で成長しよう」という本気の気持ちが伝わることが大事なのだ、そう思いました。

――講師も走る、食べる、睡眠時間を削るというのはすごいですね。その後、リーマンショックが起きます。どのような状況でしたか?

当時は、都内にマンションを保有し、高級時計を何本も持ち、高級な車もバイクもある。メディアにも取り上げてもらって、自分を勝ち組だと完全に勘違いしていました。

ところがリーマンショックが襲ってきます。不動産や金融関係のクライアントが倒産したり、採用をやめてしまったり、8割程のクライアントがいなくなりました。マンションも車もバイクも全部売り払い、残ったのは数百万円の借金。ボロボロの六畳一間のアパートに引っ越しせざるを得ず、手取りも数万円で、食べるお金にも困るくらいになりました。

――かなりの変化ですね。その落差を、どう受け止めたのですか?

恥ずかしい話ですが、泣いていました。シャワーを浴びながら叫んでいました。どこに吐き出したらいいか分かりませんでした。

そこから、小さなIT企業に入れていただいて、テレアポ(テレフォンアポインター。電話で商談や訪問のアポイントを取る仕事)からやり直しました。そこで恩師との出会いがありました。年齢は2~3歳しか変わらないのですが、視座が高く、視野も広い。最初のころは、私が未熟すぎて全く会話になりませんでした。その恩師に、こう言われました。

「今持っているものは、全部切り離したほうがいい」

根本から叩き直してもらいました。天狗になっていた鼻を根元からポキッと折ってもらったのです。この経験は本当にかけがえのないもので、本当に感謝しています。

その後、その恩師が独立・起業することになりました。当然、恩師に着いていくつもりだったのですが、こう言われてしまいました。

「お前は来るな。お前は自分でできるから」

正直、寂しい気持ちがありました。しかし、今思えば、いろいろと考えてくれていたのだと思います。それで、もう一度起業することになりました。

5 「業界を変えたい」――採用から教育、定着まで

――再び、採用と教育の世界に戻って来られたのですね。

IT企業を辞めた後、元大手企業の人事責任者だった方と共同で会社を立ち上げました。そこから7年間、採用から教育研修までを手がけました。

再び人材業界に戻ってきたのは、人材業界を変えたかったからです。

この業界に携わる人の多くは、実は人事を知りません。人を採用したことも、育てたこともない人たちが、「こうしたほうがいいですよ」と提案したりしています。

しかも、人が辞めれば辞めるほど儲かるビジネスになっている。

この構図に痛烈な違和感を覚えていました。そこで、「この業界を変えたい!」という強い思いで7年間走り続けました。おかげさまでクライアントは増え、リピート率も高かったです。10人ほどの会社で、30~40社のクライアントを全力で支援しました。

しかし、業界は何一つ変わりませんでした。

そこに私は打ちひしがれていました。

6 病気の発覚と、ゼロからの新規事業立ち上げ

――そのようなときに、大きな転機が訪れたのですね。

はい。34歳のとき、結婚して子どもを授かりました。これからが大事と人間ドックを受けたところ病気が見つかりました。早期発見だったので手術をして根治したのですが、あのときは亡くなった高校時代の友人のことも思い出し、死を意識しました。

そのとき、

「今のままではダメだ」

と思い、共同経営していた会社の役員を退任して1人で「株式会社おしごとマーケティング」を立ち上げたのです。

――その後、すぐに別の会社に入られますね。

最初は1人社長として公私ともに充実した日々を過ごしていたのですが、半年ほど事業を進めていくうちに強烈な危機感が襲ってきました。「このままでは、ワガママになり価値のない存在になってしまうのではないか」と考えるようになりました。前述した恩師にそのことを相談すると、

「それ正解だよ」

と言われました。

それで武者修行に出ることを決意します。修行の行き先は、新卒で入った会社の同期が社長を務める営業支援の会社です。本気で上場を目指していて、これはとても修行になると思いました。

――そこで任されたのが、託児所付きのコールセンターですね。

はい。当時、社長は「社会的意義のある仕事をしたい」という私の思いをよく理解していて、「これは齋藤さんにしかできない」と、託児所付きのコールセンターを任せてくれたのです。

待機児童を抱えて働けない人たちが、働けるようにしたい。

そうした思いもありました。

場所は待機児童が多かった埼玉県さいたま市です。文字通り「ゼロからのスタート」はとにかく大変で、駅前のカフェで200人を面接したり、オープン前日に徹夜で椅子やテーブルを組み立てたりして、なんとかオープンに間に合わせました。

――すごい状況ですね。オープン後はいかがでしたか?

大盛況でした。ただ、100人ほどのお母さんたちが一気に集まると、子どものしつけ方も考え方が違う。派閥もできます。その間に挟まれての調整が人生最大級の困難でした。

――どのように乗り越えたのですか?

挨拶する、目を見て話す、感謝する。

こうした基本の行動ルールを決め、これが守れない人は辞めてもらいました。また、意外だったのですが、2~3割の人は目立って意見を言うわけではないのですが、この場所を良くしたいという強い気持ちを持っていることが分かりました。こうした人たちと一緒に再度組織を作り上げ、1年でなんとか安定させることができました。

インタビューに答える齋藤 正秋さん(2)

7 「日本初」「日本一」を生んだ取り組み

――そこから、オンライン商談システム「meet in(ミートイン)」の事業にもつながるわけですね。

はい。コールセンターが安定したので、そこをmeet inのマーケティングセンターにしました。お母さんたちが電話で月に200~300件の経営者のアポイントを取ってくれますので、そこにひたすら営業します。パソコンに不慣れな人でも使えるオンラインツールというのが、当時はまだ珍しかったのです。meet inの社長は、約6年ほど務めました。

――齋藤さんが手がけられた事業には、「日本初」「日本一」がいくつもありますよね。

有り難いことに、このmeet inは、実質的に日本最大級の規模でした。

託児所付きのコールセンターもそうです。民間で託児所付きのコールセンターを立ち上げて収益化したのは、日本で初めてだったと思います(他は補助金で運営されていて赤字と聞いています)。大手企業もよく視察に来てくれていました。

もう一つが、経営者交流会の「CXOサミット」です。コロナ禍でリアルな交流会が難しかった2022年ごろに、月に1回100~150名、年に1回500名規模、年間で2000名以上の経営者が集まる交流会になりました。

当時としては日本一の規模でした。

――しかもコロナ禍に。どのようにして、そこまで人を集めたのですか?

実は、クレーム解消のための苦肉の策でもありました。

当時は別事業部の責任者を兼任していたのですが、規模が大きい分、クレームも多く寄せられていました。そこで、クレームをくださったお客さまに「お食事にご招待します。その場でご縁をおつなぎしますので、ぜひ来てください」とお声がけをして、交流会を開催したのです。この交流会はかなり評判が良かったです。

さらに、パフォーマンスマネジメントシステム「コレドウ」の立ち上げです。パフォーマンスマネジメントという考え方自体が、日本ではまだあまり定着していません。このマネジメントシステムは日本初であり、今のところ日本一です。

8 「みちひらき」で目指すこと

――いよいよ「みちひらき」がスタートですね。何をやっていかれたいですか?

さまざまな経験を通じ、今、改めて実感していることは「やればできる」ということです。

世の中には、素晴らしいビジネスアイデアがありますし、改善するためのツールもある。それなのに、一歩を踏み出すきっかけがなくてストップしている。

私は、そうしたビジネスを止めたくない。誰かが動けないときに、代わりに動かしたいと思います。振り返ってみると、自分はそれを動かしてきた人生です。

ただし、一緒に進んでいくのは、志のある人や良いことをやろうとしている人です。「もっとお金を稼ぎたい」というだけの人、努力しない人には協力しないと決めています。

――ご自身を一言で表すと、どんな存在でしょうか?

経営者をお助けしたいと思っています。ただ、一人でやろうとは思っていません。ブランディングや企画、カスタマーサクセス、人事と、それぞれに信頼できる仲間がいます。チームですね。

何かあったら、困ったときの「お助け隊」。そうしたイメージです。

仲間を選ぶときに大事にしているのは、その人がどこを向いているかです。矢印がどこに向いているか。自分に矢印が向いていたり、自分が目立ったりすることではなく、相手のため、相手の組織がどうなるかに向いている人。自分に矢印が向いている人をよくないと思っているわけではありません。それはそれで考え方ですので。

ただ、目線が相手に向いている人と一緒に進めたいです。

――物事を判断するときに大切にしていることはありますか?

頭で考えるより、心で感じてから頭で考えます。

心は嘘をつかないからです。

頭で考えると、いろいろな理屈づけや理由づけをして、真実をねじ曲げてしまうことがあります。

「なにか引っかかる」「なにかが違う」という違和感は真実なので、それを大事にします。

――お忙しい中、どのようにインプットをされているのですか?

移動時間に、本やYouTubeです。

例えば、今、気になっているのは国際情勢です。世界の中に日本があって、日本の中に経済や政治があって、その中に私たちがいる。大元を見落としてはいけないと思っています。

9 「空を見て仕事がしたい」

――これまでのお話をお聞きしてきて、波乱万丈の人生、思いを共有していただいたと感じています。齋藤さんという人を形づくってきたものは何でしょうか?

おそらく両親です。母は専業主婦で、とても面倒見が良く、捨て猫を拾ってきては父に「また猫が増えた」と言われていました。猫だけではなく動物全般です。放っておけない、そういう性分です。

父は路線バスの運転手で、いつも一緒に遊んでくれました。あるとき、母に「危ないからバイクは絶対に乗らないように」と言われていたのに、父は私を連れ出してバイクを買ってしまい、一緒に母に怒られたり(笑)。

そういう父には名言があります。もともと父はテレビ局関係の編集でスタジオに篭って仕事をしていたそうです。そのときに、こう思ったそうです。

「空を見て仕事がしたい」

そして、長距離トラックのドライバーになりました。その後、家族のために必ず家に帰れる路線バスの運転手になり、35年ほど勤めました。父は「バス運転手以上のものはない」と言っていました。地域のお客さまとも触れ合いができて、いつも日が当たるところで働ける、そして家族との時間も大事にできるから、と。

「空を見て仕事がしたい」という父の言葉には、父の生き方が凝縮されていると思います。

私の家はずっと、やりたいことをやってきた家族です。

気づけば、私も父に似てきました。妻に「たくさんあるから、これ以上ぬいぐるみを増やさないように」と言われたのに、私は娘を連れ出してUFOキャッチャーでぬいぐるみを増やしてしまい、妻に怒られるという(笑)。

「空を見て仕事がしたい」

10 経営者へのメッセージ

――最後に、経営者へのメッセージをお願いします。

「”やりたい”を止めないでほしい」

これが伝えたいことです。「あきらめないでほしい」とも思います。

――齋藤さんは、とにかく飛び込んで、やりきるところまでやりますよね。

はい。もちろん、やりきってダメだと思ったら、やめます。

しかし、1度はしっかりやってみる。

昔からそうです。やってもいないのに「怪しいな」と言う人がいますよね。私は、皆が怪しいと言う場所にも実際に行ってみます。やってみます。本当に怪しいこともありますが、怪しくないこともあって驚きます。

飛び込んでみて、自分の目で見る。それでも怪しかったら、怪しい。

それでいいと思っています。

まずは、やってみること。

やりたいことがあるなら、止めないでほしいです。

「みちひらき」という名前に込めた想い(株式会社みちひらきのホームページより)

(出所:株式会社みちひらきのホームページより抜粋)

【編集後記】

「まずはやってみる」「やりたいことがあるなら止めないでほしい」。とても勇気が出る言葉をいただきました。

齋藤さんは、答えを与える人ではありません。相手の中に入っていって、「週に1回集まりましょう」「あの人に声をかけましょう」と、最初の一歩を具体的に一緒に踏み出してくれる人です。

そして、つけた火を消さない。山の研修で参加者と一緒に走っていたころから、その姿勢は変わっていないのだと思います。

リーマンショックですべてを失ったときも、病気が見つかったときも、齋藤さんはあえて難しい方、厳しい方を選んで進んできている印象です。

富士山を一緒に登り、経営者の先に立って、そして一緒に太陽を見に行く。「みちひらき」という社名は、齋藤さんがこれまで歩んできた道そのものです。やりたいことがあるのに最初の一歩が踏み出せないときは、まず齋藤さんに話してみるのがいいと思いました。

齋藤さんはまず自分で動く。やってみる。やりきる。これはなかなかできることではありません。そしてまっすぐに筋を通す。厳しくも温かい。温かいからこそ厳しい。そんな齋藤さんが、きっと、経営者の、組織の、働く人の心に、消えない火をつけてくれるはずです。

以上(2026年10月作成)
(聞き手 日本情報マート 代表取締役 松田泰敏)

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画像:日本情報マート