技能実習制度は「育成就労制度」へ 外国人雇用はどう変わる?

1 「国際交流」から「人材確保」にシフトした新制度が開始

人手不足が深刻化する中、日本で働く外国人の数は増加を続け、2025年10月末時点で過去最高の257万1037人となりました。このうち49万9334人(19.4%)は「技能実習」の在留資格を持つ外国人、技能実習生です(厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況」)。技能実習制度は、技能実習生が日本企業の下で実習を受け、母国で身に付けにくい技能の習得を図る制度ですが、「企業が技能実習生に、技能の習得に関係ない単純労働をさせる」などの問題が頻発し、

2027年4月1日より、技能実習制度に代わり、新たに「育成就労制度」が開始

されることになりました。

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育成就労制度は、「育成就労」という在留資格を設け、外国人を原則3年間で一定以上の技能を持つ「特定技能」に育成する制度です。根拠法は、「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(育成就労法)」になります。

技能実習制度と似ていますが、

  • 技能実習制度は、外国人が日本で習得した技能を、将来母国に持ち帰ることを想定した「国際協力」のための制度(特定技能への移行も可能だが、制度上は「帰国」が原則)
  • 育成就労制度は、外国人が技能の習得後も、日本企業の戦力として活躍することを想定した「人材確保」のための制度(帰国せず、日本に「在留」することが原則)

であり、目的が異なります。

育成就労制度は、外国人が日本に残って働くことが前提なので、受け入れ企業は外国人を将来の戦力にすべく、大切に育成するでしょう。前述した、企業が「技能の習得に関係ない単純労働をさせる」という問題の解決につながることも期待されます。

施行は2027年4月1日ですが、時間をかけて外国人を戦力化していく制度なので、人手不足解消の打ち手を外国人に期待している企業は、早めに準備をしておいたほうがよいかもしれません。以降で制度の概要を簡単に紹介するので、今のうちにイメージを押さえておきましょう。

なお、育成就労について詳しく知りたい場合、次のURLも併せてご確認ください。

■出入国在留管理庁「育成就労制度」■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/index_00005.html
■育成就労制度の制度概要・関係法令■
https://www.moj.go.jp/isa/03_00163.html
■e-Gov「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」■
https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC0000000089/20270620_506AC0000000060

2 育成就労制度は、特定技能制度の「前段階」

育成就労制度の紹介に入る前に、先ほども軽く触れた「特定技能制度」について説明します。

特定技能制度とは、国内での人材確保が困難な「特定産業分野」において、一定の技能レベルを持つ外国人を受け入れることを目的とした制度

です。在留資格は、業務に必要とされる技能レベルに応じて「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類に分けられます。2号のほうが1号よりもレベルの高い技能を必要とします。

  • 特定技能1号:相当程度の知識または経験を要する業務に従事する外国人
  • 特定技能2号:熟練した技能を要する業務に従事する外国人

2026年1月23日の閣議決定により、特定技能1号の特定産業分野は、「介護」「ビルクリーニング」「リネンサプライ」「工業製品製造業」「建設」「造船・舶用工業」「自動車整備」「航空」「宿泊」「自動車運送業」「鉄道」「物流倉庫」「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」「林業」「木材産業」「資源循環」の19分野となっています。特定技能2号の特定産業分野は、この19分野から「介護」「リネンサプライ」「自動車運送業」「鉄道」「物流倉庫」「林業」「木材産業」「資源循環」を除いた11分野です(見直しの可能性あり)。

特定技能の外国人を雇用できれば、企業にとっての「即戦力」になりますが、それだけの人材を確保するのはハードルが高く、この点をクリアするための制度が育成就労制度です。

育成就労の外国人は、在留資格を取得した当初は特別な技能を持っていませんが、

1.原則3年間の育成就労で技能レベルを高め、特定技能1号の在留資格を取得させる

2.特定技能1号の在留期間中(上限は5年間)に、よりレベルの高い技能を身に付けさせる

3.特定技能2号の在留資格を取得させる(特定技能2号の対象外となる分野を除く)

という流れで、段階的に戦力化が図れます。

なお、特定技能1号には在留期間の上限(5年間)がありますが、特定技能2号には上限がない(在留資格の更新は定期的に必要)ので、2号まで取得させることができれば、長期的に企業の戦力として活躍してもらうことが期待できます。

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3 技能実習制度との違いとは?

1)対象としている産業分野・職種が違う

育成就労制度は、特定技能制度の「前段階」という位置付けなので、対象としている産業も同じく、特定産業分野が基本になります。正確に言うと特定産業分野のうち、

就労を通じて技能を修得させることが相当とされる「育成就労産業分野」

が対象になります。具体的には

特定産業分野のうち「航空」「自動車運送業」を除く17分野

がそうです。

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一方、技能実習制度では、技能実習2号・技能実習3号については従事させられる職種が省令で定められています(技能実習1号については特に定めなし)。

両者が対象としている産業分野・職種は若干異なっていて、技能実習2号移行対象職種のうち、

  • クリーニング職種(一般家庭用クリーニング作業)
  • 空港グランドハンドリング職種
  • ボイラーメンテナンス職種(ボイラーメンテナンス作業)

は育成就労産業分野の対象にならないとされています。技能実習2号移行対象職種については、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧(令和8年4月10日時点 94職種171作業)■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html

また、下記の技能実習生については、技能実習制度の下で受け入れを続けることができます。該当しない場合、技能実習生として再度入国することはできませんが、技能実習の内容によっては、育成就労計画の認定を受ければ育成就労外国人として入国できる可能性があります。

  • 施行日(2027年4月1日)の時点ですでに技能実習生として来日している者
  • 2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請済みで、2027年6月30日(原則)までに技能実習を開始する者

2)計画の認定手続きは基本的に同じ(ただし、育成就労制度のほうが手間が少ない)

育成就労制度では、外国人の受け入れ企業が「育成就労計画」を作成し、「監理支援機関」の認定を受ける必要があります。育成就労計画には

外国人に従事させる業務、業務に必要な技能、育成就労の目標(例:日本語能力)など

を定めます。

技能実習制度の場合も、受け入れ企業が技能実習計画を作成して監理団体の認定を受ける必要があり、このあたりの流れはどちらの制度も基本的に同じです。

  • 技能実習制度では「技能実習1号」「技能実習2号」「技能実習3号」のそれぞれの段階で計画の認定を受ける必要がある(最大3回、認定を受ける必要がある)
  • 育成就労制度では、当初から外国人労働者のキャリアアップを視野に入れて、3年間の計画の認定を受ければよい(1回、認定を受ければよい)

という具合に、育成就労制度のほうが認定手続きにかかる手間は少なくなっています。

3)就労開始前の日本語教育がマストに

技能実習制度では、日本語能力の要件は原則ありません(「介護」分野を除く)。一方、育成就労制度では、外国人が就労を始める前までに、日本語能力「A1」相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格すること、またはそれに相当する日本語講習を認定日本語教育機関などで受講することが求められます。

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外国人に日本語講習の受講機会を提供するのは、受け入れ企業の義務です。具体的には、

  • 入国時に「A1」に相当する講習を100時間以上受講させる義務(A1は、相手がゆっくり、はっきりと話して、助け船を出してくれれば簡単なやり取りができるレベル)
  • 就労開始後に「A2」を目標とした講習を100時間以上受講させる義務(A2は、簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応じることができるレベル)

を負います。費用は企業負担です。ただし、A1・A2相当の試験に事前に合格している場合は、受講不要です。

4)一定の状況を満たせば転籍も可能に

育成就労制度では、技能実習制度よりも「転籍(企業との労働契約を解消し、別の企業と労働契約を結ぶこと)」の要件が緩和されます。

この背景として、技能実習制度では技能実習生の失踪が多いことが挙げられます。2024年の失踪者数は6510人にも上ります(出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数(速報値)」)。出入国在留管理庁によると、失踪の主な原因としては「賃金の不払いなど、受け入れ企業の不適切な取り扱い」も多いようです。

そして、この問題の温床になっていると指摘されてきたのが、技能実習生に対する「転籍」の制限です。技能実習制度では転籍の制限が厳しく、技能実習生は受け入れ企業の労働条件が悪質でも他社に移ることができず、失踪しか選択肢がない状況に追い込まれやすかったのです。

育成就労制度では、この点が改善され、

  • 人権侵害(パワハラや暴力)を受けたなどの「やむを得ない事情」がある場合
  • 同一業務区分内(転籍前とほぼ同じ業務に従事し)、就労期間・技能等の水準・転籍先の適正性に係る一定の要件(転籍制限期間(1年以上2年以下)の経過、技能・日本語能力の修得、転籍先が優良認定を受けていること等)を満たす場合人

については、本人の意向がある場合、転籍が認められることになりました。ただし、分野別に最終調整中のため、今後の動向に注視してください。

以上(2026年7月更新)

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画像:ChatGPT

【事業承継】これだけ押さえて! 中小企業の事業承継

1 なぜ、事業承継が必要なのか?

事業承継とは、

事業を後継者に承継して会社を存続させること

です。日本ではかつてないほど事業承継の話題が盛んですが、それは、

経営者の高齢化と後継者不足が進んでいるから

に他なりません。帝国データバンクが毎年公表している「全国社長年齢分析」によると、2025年時点の社長の平均年齢は60.8歳となりました。人は必ず年をとるので、平均年齢が上がるのは当然です。となると、事業承継で社長の若返りを図るしかありません。しかし、社長の交代率は3.84%と低水準にとどまります。この主な要因は後継者不足です。

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統計によって異なりますが、日本の約340万社の会社のうち、99%以上は中小企業とされています。日本経済を支える中小企業が、経営者の高齢化と後継者不足で廃業を余儀なくされれば、日本経済に与える影響は計り知れません。

今、一社一社の取り組みが重要な局面にきています。「事業承継」という多分野の取り組みで、経営者は何を意識すればよいのかをご紹介します。

2 事業承継が必要なものは3つ

事業承継が必要なものは「人(経営)、資産、知的資産」の3つです。

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1)人(経営)の承継

後継者を決定し、教育して経営権を承継します。誰を後継者にするかについては、「1.子どもなどへの親族内承継」「2.役員や従業員への親族外承継」「3.M&Aによる第三者への親族外承継」があります。これらは次章で紹介します。

2)資産の承継

自社株、土地などの不動産、設備などの動産などを後継者に引き継ぎます。このうち、自社株については評価が重要です。事業承継時は評価を下げたいはずですから、そうした方法を専門家に相談します。ここでは後継者の資力も問題になります。後継者に自社株の買い取り資金がないケースや、贈与や相続の問題が出てくることもあります。とはいえ、後継者の持株比率を薄めることは得策ではありません。この点は十分に認識すべきです。

また、承継されるのは資産だけではないことにも注意が必要です。例えば、会社が金融機関などからの借り入れ、つまり借金をしていれば、それも承継されます。つまり、貸借対照表(BS。Balance Sheet)が承継されるイメージを持っておくとよいでしょう。

3)知的資産の承継

知的資産は、自社の価値の源泉を承継することです。最上位の概念としては経営理念を承継することになります。経営者の中には「経営理念の承継こそが事業承継である」という人がいるくらい重要なものです。また事業承継を手伝う支援機関も、現経営者へのインタビューを通じて「思い」を言語化し、後継者候補などに伝えたりします。

この他、取引先、さまざまな人脈、技能、知的財産権、許認可など会社経営をするために不可欠なものを承継します。

3 後継者選びの選択肢

事業承継において、最も重要なのは「人(経営)の承継」だといえるでしょう。前述した通り、誰に承継するかの選択肢は、

1.子供などへの親族内承継

2.役員や従業員への親族外承継

3.M&Aによる第三者への親族外承継

の3つに大別されます。かつては子供などへの親族内承継が圧倒的に多かったですが、時代とともに役員・従業員への親族外承継が増えてきています。

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子どもなどに承継する親族内承継でも、これまでの事業をそのまま続けるのではなく、後継者の新しい発想でベンチャー企業のように新規事業にチャレンジするケースも増えています。

また、親族や役員・従業員に適した後継者候補がいない会社などでは、社外からの登用(第三者への承継)も増えています。昨今は「後継者を求める会社」と「経営者になりたい人」をマッチングさせるサービスも多く、多様な候補の中から後継者を選べることができます。とはいえ、実際に事業承継をした経営者の中には、「安易なM&Aをすべきではない」と警鐘を鳴らす人もいます。特にオーナー企業の経営者にとって、会社は自分自身と一体であり、さまざまな思いが込められています。第三者に承継する場合は、本当に慎重な判断が必要です。

4 事業承継を誰に相談するか?

いざ事業承継を進めるとして、誰に相談すればよいのか迷います。これには幾つかの候補があるので紹介します。

なお、中小企業庁では、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するために、M&A支援機関(フィナンシャル・アドバイザー(FA)やM&A仲介会社)に係る登録制度を実施しています。中小企業にとってのメリットは、

登録を受けたM&A支援機関を利用すると、必要な手数料の一部が補助され、金銭的な負担が軽減される

ことです。

1)事業承継・引継ぎ支援センター、商工会議所

中小機構が設置している事業承継を相談できる公的な窓口として、

事業承継・引継ぎ支援センター

があります。各都道府県に設置され、事業承継に関する専門的なアドバイスが受けられます。

公的な窓口なので安心感があり、相談も無料です。ただし、具体的な取り組みを支援してくれるわけではなく、話が進むと弁護士などの専門家に有料で相談することになります。以上から、検討初期の相談に適しているといえるでしょう。

商工会議所でも、独自に事業承継のサポートを行っています。商工会議所の会員になっていることが前提ですが、一度、相談してみるのもよいでしょう。

2)銀行、生命保険会社、損害保険会社など

取引のある銀行や生命保険会社、損害保険会社なども事業承継の相談先となります。特に銀行は経営計画などの提出を受けていることもあり、会社の状況をよく知っているはずなので、良い相談相手になってくれる可能性があります。また、事業承継をする場合は銀行に相談することになるので、この手間も省けます。

ただし、銀行が事業承継の全てに対応するわけではなく、話が進むと専門家に相談することになります。M&Aを検討している場合、銀行が提携するM&A仲介業者などを紹介してくれますが、客観的に自社に適しているM&A仲介業者かどうかは分かりません。そのため、独自に探してみるべきでしょう。

銀行ほど会社の経営に踏み入ってはいませんが、基本的な考え方は生命保険会社や損害保険会社についても同じです。生命保険会社は税制に強い(税理士などと連携している)ため、贈与や相続などについても相談できるでしょう。

銀行などの金融機関は、間接的なビジネスとして事業承継のサポートを行っており、最近は特に力を入れています。ただし、自ら事業承継に関わる各分野に専門的な知識を有しているとは限らず、どちらかといえば専門機関への引き継ぎを担うイメージかもしれません。

3)税理士、弁護士など

税理士は中小企業にとって最も身近な専門家です。日ごろの付き合いの中で会社のこともよく分かっています。税制に関する相談相手としては最適ですが、クオリティーのバラツキが大きいということと、自身の関与先の事例しか持ち合わせていないことが問題です。

弁護士は法的な見地からアドバイスを受けることができます。ただし、中小企業の事業承継で関わるのは税理士などが多く、弁護士の出番はあまりないのが実情ですが、資本政策が複雑になりそうなケースなどでは頼れる相談相手となります。

4)M&A仲介業者など

事業承継でM&Aを選択する場合に相談できます。M&A仲介業者やM&Aアドバイザー、M&Aコンサルティングなどの名称となりますが、基本的な違いはないでしょう。対象とするM&Aの規模によってはサポート対象外となることもあります。まずは銀行などからM&A仲介業者を紹介してもらい、そこで聞いた話を一つの基準に他の業者にも話を聞いてみるとよいかもしれません。

また最近は、

  • 後継者を求める会社と経営者になりたい人のマッチングプラットフォームの登場
  • 中小企業に幅広いネットワークを有する経営者が、知り合い同士をつなげる
  • 元ベンチャーキャピタリストなどが、知り合い同士をつなげる

などの動きもあり、相談先は多様化しています。

以上(2026年7月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

事業承継で詐欺被害者にならないためにM&A詐欺の手口と対策

1 そのM&A、本当に安全ですか?

少子高齢化による後継者不足を背景に、M&Aを使った事業承継が急速に広がっています。国も補助金や相談窓口を整備してM&Aを後押ししており、今では、中小企業の間でも「会社を将来につなぐための現実的な選択肢」になりつつあります。

一方で、悪質な業者により、M&Aを検討する中小企業の経営者が、深刻な被害に遭うケースも起きています。例えば、2024年には、

買収後に会社の資金などを抜き取り、経営者保証(社長個人の借金保証)も解除しないまま倒産させる

という事件が大きく報道されました。会社を売却した経営者は、会社を失っただけではなく、会社の借金だけが個人保証として残り、数億円規模の返済を背負うケースもあったそうです。

本来、M&Aは「会社と従業員を守るための手段」のはずです。しかし現実には「後継者問題を何とかしたい」「従業員の雇用だけは守りたい」という経営者の切実な思いにつけ込み、不安や焦りを利用する悪質な業者もいるのです。だからこそ、中小企業の経営者には、

「M&Aを進めるかどうか」だけでなく、「誰と進めるか」を慎重に見極める視点

が欠かせないのです。

自身が事業承継で詐欺被害者にならないために、この記事では、M&A詐欺の代表的な手口や、悪質な買い手・仲介業者を見分けるポイント、被害を防ぐために経営者が押さえておきたい実務上の注意点を紹介します。

2 M&A詐欺の主な手口 ─ 売り手が狙われる5つのパターン

1)資産の抜き取り+経営者保証の放置

冒頭でも紹介したケースで、被害がとりわけ深刻化しやすい手口です。

「あなたの会社を買い取って発展させます」と持ちかけて経営権を移転させた後、会社の預貯金や売掛金、有価証券などの価値ある資産を、自分たちが支配する別の会社などへ速やかに移します。資産を抜き取られた会社は資金繰りが行き詰まり、倒産に追い込まれます。

さらに、売買契約の段階で「銀行借入の連帯保証(社長個人の借金保証)は、会社を引き継いだ後にこちらで外します」と約束していても、会社が倒産した後にその約束が履行されることはありません。

経営者保証の解除は、お金を貸している銀行が同意しなければ、いくら譲渡(売却して経営権を渡すこと)の契約書に「保証を外す」と書いてあっても法的な効力は生じません。

結果として、会社を失った元の経営者の手元には、巨額の個人債務だけが残される

ことになります。

このような被害は、連帯保証を外すことを株式譲渡の前提条件にすることで回避することができます。M&Aの契約において、通常盛り込むべき条項をしっかりと盛り込んでいくことが重要です。

2)対価(売却代金)の未払い・踏み倒し

会社の経営権や株式を引き渡したにもかかわらず、約束されていた売却代金が支払われない手口です。「手続きの都合上、先に会社の譲渡手続きを行ってください。代金は来月に一括で支払います」といった条件や、分割払いの提案を持ちかけてきます。

売り手側が相手を信用して先に会社を引き渡してしまうと、譲渡が完了した途端に相手の態度が変わり、「後払い」の期日が来ても言い訳を繰り返して引き延ばしたり、音信不通になったりします。分割払いのケースでは、最初の1〜2回だけは支払い、油断させたところで支払いを止めて連絡を絶つという事例も見られます。

一度、会社の所有権や預金口座の印鑑などを渡してしまうと、法的な手続きで会社を取り戻すには膨大な時間と費用がかかります。その間に会社の中身が毀損されてしまうため、

代金を受け取る前に会社を渡すことは絶対に避ける

ようにしてください。

代金の支払条件についても、株式譲渡契約において明確に定め、対価の支払を受けた後に銀行預金通帳や実印などを引き渡すことが重要になります。

3)機密情報の抜き取り

最初から会社を買い取る意思がないのに、買い手を装って近づいてくる手口です。M&Aの交渉過程では、売り手は会社の経営状況や強みを説明するために、財務諸表(会社の経営成績や資産状況をまとめた書類)だけではなく、顧客リスト、技術情報、製造ノウハウ、従業員の個人情報といった最重要な機密データを開示することになります。

こうした開示されたデータそのものを目的として近づき、書類を一通り集めた後に「精査(詳しく調査)した結果、今回は買収を見送らせていただきます」と理由をつけて辞退します。

この手口には、ライバル関係にある同業他社が、自社の情報を盗み出すために偽の買収話を持ちかけてくるケースも含まれます。

盗まれた顧客リストを使って営業をかけられたり、技術を模倣されたりして、自社の市場価値を大きく落とされる危険

があります。

M&Aの情報を開示する場合には、秘密保持契約を取り交すことが不可欠です。また、重要な顧客情報に関しては、基本合意書(買収価格や取引手法などの基本的な条件について、当事者間で現時点の合意内容を確認するための文書)を取り交わした後に開示するなど、情報管理が重要となります。

4)仲介会社による不当な高額手数料

M&Aの手続きをサポートする仲介会社の中にも、不適切な業務を行う業者が存在します。健全な仲介会社であれば、売り手と買い手のマッチングを行い、無事に契約が成立した際に売買金額に応じた成功報酬を受け取ります。しかし悪質な業者の目的は、成約ではなく途中のプロセスで発生する手数料を得ることです。

具体的には、「あなたの会社を高く買いたいという候補者がいます」と提案し、

交渉を始めるための着手金として高額な費用を請求

します。その後は「買い手側が資料を検討中です」などと言い訳をして引き延ばし、進展がないまま毎月の定額費用(月額顧問料)を請求し続けます。

売り手側が不審に思い解約を申し出ると、契約書に小さく書かれた条項を盾に、

高額な違約金や中途解約手数料を請求

してきます。実在しない、あるいは買う気のない買い手を見せ球にして、手数料だけを徴収する手法です。様々な仲介会社が活動していますので、どの仲介会社と話を進めるのかを見極めることも重要となります。

5)M&Aブローカーによる詐欺

M&Aブローカーとは、自分たちでは専門的な仲介業務や法律の手続きを行わず、売り手や買い手の情報を集めて別の仲介会社に横流しし、紹介料を得る業者のことです。現在、M&Aの仲介業には特別な資格や免許が必須でないため、専門知識のない個人や不適切な目的を持つ者が参入しやすい環境にあります。

典型的な手口は、経営者に「私の人脈の中に、あなたの会社を今すぐ買いたがっている資産家がいる」などと持ちかけることです。そして、

「資産家と面会するためのセッティング費用」や「情報提供料」という名目で、最初に現金を要求

してきます。そして、お金を支払った後、ブローカーは「相手の都合が悪くなった」などと引き延ばしを始め、最終的には連絡が取れなくなります。

3 悪質な相手を見極める4つのチェックポイント

1)仲介会社は中小企業庁の登録機関か

中小企業庁は、悪質な業者の排除と健全な取引を推進するために「M&A支援機関登録制度」を設けています。これは、国の定めたルールや倫理基準を守ることを遵守事項とした仲介会社をデータベースに登録し、一般に公開しているものです。

検討している仲介会社がこの登録機関であるかどうかは、中小企業庁の公式ウェブサイトで検索できます。登録されている業者は、強引な勧誘の禁止や手数料の事前説明などが義務付けられているため、一定の信頼性の目安になります。ただし、登録されているからといって完全に安全とは言い切れないため、あくまで最低限の確認として活用してください。

2)買い手企業は実在するか・資金力はあるか

買い手候補が現れたら、その会社の実態を客観的に確かめる必要があります。会社の名前と住所を確認し、法務局で「商業登記簿謄本(会社の設立日や役員、目的などが書かれた公的な書類)」を取得してください。

もし設立されたばかりの会社であったり、住所がバーチャルオフィス(住所や電話番号をレンタルするサービス)であったりした場合は、実体のないペーパーカンパニーの可能性があります。また、決算書の開示を正当な理由なく拒む相手も、買い取るための資金力がない可能性が高いため注意が必要です。特に「代金は後で払うので、先に経営権を譲ってほしい」という要求は、絶対に受け入れてはいけません。

3)手数料の内訳と支払いタイミングが書面で示されているか

信頼できる仲介会社は、費用に関する説明を事前に行います。着手金、月額費用、そして契約が成立したときの成功報酬がそれぞれいくらになるのか、またどのような計算根拠でその金額になるのかを、最初の仲介契約書などにすべて明記します。

「費用は会社が売れた後でいいですから、まずは進めましょう」と口頭で説明しながら、書面にその旨の記載がない場合は注意が必要です。後から「業務に要した実費」などとして身に覚えのない請求をされる恐れがあります。また、実績や具体的な提案が示されていない段階で、最初に高額な着手金を要求してくる場合も要注意です。

4)「急かす・煽る」言葉が出てきたら立ち止まる

不適切な取引を迫る業者に共通する特徴は、売り手に冷静な思考時間を与えない点です。

  • 「今すぐ決断しないと、この買い手は他の会社に行ってしまう」
  • 「この買収金額を提示できるのは、今週中だけである」
  • 「情報の漏洩を防ぐため、他の専門家や家族にはこの話を一切秘密にしてほしい」

このような、決断を急がせたり、外部から孤立させようとしたりする文言が出た場合は、一度交渉を中断してください。M&Aは、雇用や経営権が関わる慎重な取引です。売り手側が、弁護士や税理士、中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格)といった外部の専門家に相談することを拒むような業者は信用できません。

4 被害に遭わないための4つの対策

1)弁護士を必ず起用する

M&Aの交渉を進めるにあたり、企業の法律問題に精通した弁護士を最初から自社の味方として起用することが、最大の防衛策となります。M&Aの取引では膨大なページ数の契約書が交わされますが、詐欺を働く業者は一般の経営者が見落としがちな細かい文言の隙間に、売り手が不利になる抜け穴を忍ばせています。

専門の弁護士をチームに迎えることで、契約書に隠されたリスクを徹底的に洗い出すことが可能です。例えば、経営者保証を確実に外すための条件交渉や、売却代金が支払われなかった場合の法的処置、機密情報が漏洩した際の損害賠償の取り決めなど、売り手の権利を守るための厳格な契約書へと修正させることができます。

「弁護士費用が高そうだから」と躊躇(ちゅうちょ)される方もいらっしゃいますが、万が一会社や資産を騙し取られた場合の計り知れない損失と比較すれば、必要な安全コストとして判断することが賢明です。

2)買い手の決算書を事前に確認する

M&Aでは通常、買い手側が売り手の会社を調査するデューデリジェンス(買い手が売り手の財務や法務のリスクを詳しく調べること)が行われます。しかし、「相手を調査する権利は、売り手側にも当然ある」という視点を見落としてはいけません。

買い手に資金力があるか不安な場合は、基本合意(売買の大枠についてお互いに合意する段階)に進む前の段階で、弁護士や公認会計士を通じて、民間信用調査会社に買い手企業の与信調査を依頼しましょう。また、金融機関を交えたスキームであれば、銀行が買い手の属性を事前に審査するため、詐欺被害を防ぐ強力なフィルターとなります。

前述のような専門家や金融機関を介す前に、前もって自身で取引の安全性を確かめる手段としては、買い手企業に対して直近2〜3期分の決算書の提示を求めてください。健全な経営を行っている買い手であれば、買収資金の裏付けを示すために財務状況の開示を拒むことはありません。もし相手が決算書の提示を頑なに拒んだり、「設立したばかりでまだ決算書がない」と言い訳をしたりする場合は、買収資金を持っていないか、実体のないペーパーカンパニー(中身のない形だけの会社)である可能性が高いと判断できます。

3)経営者保証の解除を「書面+銀行の同意」で確認する

手口の項目でも触れた通り、会社の連帯保証を外すためには、売り手と買い手の二者間でいくら約束しても意味がありません。必ず融資を受けている金融機関を交えた三者間での合意手続きを進める必要があります。

実務上の確実な対策としては、クロージング(譲渡代金の支払いと経営権の移転を行い、取引を完了させること)の日を、銀行から経営者保証の解除について正式な同意が得られた後、あるいは同時に設定することです。

「会社を譲渡した後に、買い手と一緒に銀行へ行って手続きをしましょう」という買い手側の提案に応じてはいけません。金融機関が同意するまでは経営権を渡さないという条件を売買契約書に明記して、確実なステップを踏むことが必要です。

4)「特定事業者リスト」を活用する

近年多発する不適切なM&A取引に対抗するため、業界団体や行政も対策を強化しています。その一環として、M&A支援機関協会(M&Aに関わる専門業者が集まる団体)が「特定事業者リスト」の運用を行っています。

このリストには、過去にM&Aの現場で著しく不適切な行為や詐欺的な行為を行ったと認定された企業の情報が蓄積されており、交渉を始める前に相手企業が登録されていないかを照合することができます。また、国の中小企業庁の公式ウェブサイトでも、悪質な事例の傾向や注意喚起の情報を随時更新して発信しています。

これらの公的な情報やリストを事前に確認し、少しでも不審な点がある業者とは最初から接触を持たないように心がけることで、トラブルに巻き込まれるリスクを大幅に下げることができます。

以上(2026年7月作成)
(監修 日比谷タックス&ロー弁護士法人 弁護士 福崎剛士)

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実践できるメニュー例付き! 夏バテ・熱中症を防ぐランチ術

1 夏バテ・熱中症対策は毎日の食事から!

近年の夏は毎年が猛暑。本格的に暑くなってくると、体がだるい、食欲がない……といった不調を感じることも。ですが、その不調は日々の「食事の摂り方」で、少しずつ改善していけるかもしれません。

そもそも、「夏バテ」「熱中症」はどのような仕組みによって引き起こされているのか、簡単に説明すると、

  • 夏バテ:炭水化物をエネルギーに変換するための「ビタミン類」が不足し、エネルギー代謝がうまく機能しなくなる
  • 熱中症:大量の汗とともに「水分」「塩分」が失われ、血流が滞り、脳や筋肉に必要な酸素や栄養が行き渡らなくなる

となります。どちらの症状も、栄養が深く関わっているのです。

そこでこの記事では、

  • 何を食べれば夏バテ・熱中症の対策に効果的なのか
  • 外食、コンビニやスーパー、自炊などシチュエーション別のおすすめ献立

を、具体例を出しつつ分かりやすく紹介します。

ビジネスパーソンにとって、夏場のコンディション管理は仕事のパフォーマンスに直結する重要な課題です。本格的な暑さが訪れる前に、「夏バテしづらい・熱中症になりづらい」食事のポイントを確認しておきましょう。

2 夏バテ・熱中症にならないための食材整理

1)積極的に取りたい栄養素と食材

ここでは、夏バテ・熱中症の対策として食事に取り入れたい栄養素と、それを含む食材を紹介します。

1.ビタミンB1(豚肉、うなぎや鮭などの魚、大豆、玄米、ごまなど)

ビタミンB1

ビタミンB1は、炭水化物(ブドウ糖)をエネルギーに変換するために必要な栄養素です。夏バテはビタミンB1が不足していることで引き起こされることが多いため、積極的に摂取するのをおすすめします。また、

ビタミンB1はアリシン(ニンニク、ニラ、玉ねぎなどに含まれる栄養素)と一緒に摂ると、効率よく摂取できる

ことが知られています。肉や魚を食べる際は、アリシンを含む食材を意識的にトッピングしたり、合わせたりすることで、エネルギー不足を防ぐことができるでしょう。

2.カリウム(パセリ、ブロッコリー、ほうれん草、アボカド、バナナ、海藻類など)

カリウム

次は、「暑くなると頻繁に足がつる!」という方。心当たりのある方は、汗をかくことによって失われがちな栄養素「カリウム」が不足している可能性があります。カリウムは、細胞の浸透圧を調節する役割を持っており、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルとバランスよく摂ることで、足がつるなどの筋肉トラブルや脱力感の予防に役立つと考えられています。日々の食事で意識的に摂ることが、熱中症対策として効果的です。

3.ビタミンC(赤・黄パプリカ、ブロッコリー、ゴーヤ、レモン、アセロラなど)

ビタミンC

ビタミンCは、ストレスに対抗するホルモンの合成を助けるビタミンです。しかし、夏は気温差や寝苦しさなどのストレスが多く、紫外線によるダメージの緩和にもビタミンCが消費されるため、体内ではこのビタミンが不足しがちです。しかも、

ビタミンCは、体内で合成することができない

ので、自主的に摂取しなければどんどん体内から減っていきます。夏場は積極的にビタミンCを摂取することを意識していきましょう。

4.粘り成分(山芋、オクラ、なめこ、モロヘイヤ、納豆、れんこんなど)

粘り成分

山芋やオクラなどの粘り成分の正体は、日本では慣用的に「ムチン」と呼ばれることがありますが、正確には「ムチレージ」と呼ばれる多糖類で、動物由来のムチン(糖タンパク質)とは異なる成分です。ムチレージは水溶性食物繊維の一種として腸内環境を整える働きが期待されており、夏場の食事に取り入れたい食材です。

2)夏バテ・熱中症を回避するために、なるべく避けるべき食材は?

1.麺類「単品」、冷たくて甘い物

食欲のない夏場、せめて何か食べなくては……! と思ったとき、真っ先に思いつくのはそうめんやうどんなど、口当たりの良い麺類。しかし、肉類や魚類などのトッピングなしで、麺類だけで済ませるのは避けたいところです。前述の通り、炭水化物だけの食事はエネルギー不足を招き、夏バテを加速させてしまうのです。また、アイスクリームなどの冷たいものは胃腸を直接冷やし、消化機能を低下させる原因になります。

2.スポーツドリンクの常飲

また、熱中症対策にスポーツドリンクは有効ですが、日常生活で水の代わりに飲むのは控えましょう。多くの製品にはかなりの糖分が含まれており、過剰摂取は血糖値の急上昇を招いてしまいます。

3 シチュエーション別おすすめ献立

ここでは、外食、自炊、コンビニやスーパーで買うとき……など、細かなシチュエーションに合わせておすすめの献立をご紹介します。

1)定食屋・和食屋など

定食屋・和食屋

定食屋・和食屋などは、副菜や汁物なども合わせて栄養バランスの良い食事を摂取できるので、ランチの選択肢としては最適です。例えば、

ビタミンB1を多く摂取できる豚の生姜焼き、カツオのたたき、レバニラ炒め

などをおかずにすると、夏バテ対策が期待できます。

また、定食についてくるお味噌汁は、ナトリウムなどのミネラルが豊富に含まれているため熱中症対策に効果バツグンです。暑い時期ですが、欠かさず飲むようにするのがよいでしょう。

2)蕎麦屋・うどん屋

蕎麦屋・うどん屋

食欲がないときでも、時間がないときでも気軽に入れるお蕎麦屋さん、あるいはうどん屋さんは夏の暑い時期に重宝している人も多いはず。しかし、シンプルすぎるお蕎麦・うどんは夏バテを加速させる恐れも……。

夏バテ・熱中症対策になるトッピングの選び方としては、

  • 粘り成分とアミノ酸を摂取できる月見とろろ
  • タンパク質を摂取できる油揚げに、カリウムが豊富なワカメを追加
  • 消化酵素で胃腸に優しいなめこおろし

などがおすすめです。

3)コンビニやスーパーでの組み合わせ術

コンビニやスーパーでの組み合わせ術

時間がない時の味方であるコンビニやスーパーのお惣菜。「単品」で済ませず、栄養素をパズルのように組み合わせるのがコツ。おすすめの組み合わせは、たとえば以下の通りです。

1.豚しゃぶ冷やしうどん+納豆

冷たい麺だけでは炭水化物に偏りますが、豚肉と納豆(植物性タンパク質+ビタミンB1)を合わせることで、糖質をエネルギーへ効率よく変換できるようになります。

2.ネバネバ具材の冷やしそば+サラダチキン

そばのビタミンB群に、サラダチキンのイミダゾールジペプチド(疲労回復物質)をプラス。オクラやめかぶは水溶性食物繊維が豊富で、腸内環境を整える働きが期待できます。

3. 穴子や鰻の押し寿司やおにぎり+バナナ(またはカットフルーツ)

穴子や鰻はビタミンA・B1を豊富に含んでいます。デザートのバナナで大量のカリウムを補うことで、夏場の足のつりや脱力感を防ぎます。

4)自炊

自炊

忙しいときの自炊は、簡単なものに頼りがち。なるべく手をかけずに、必要な栄養が摂れる組み合わせを紹介します。

1.「豚肉×香味野菜」

豚肉とネギやニラの組み合わせで、ビタミンB1とアリシンを同時に摂取できます。レシピによっては電子レンジでの加熱のみで出来るものもあります。

2.「厚揚げ×ネバネバ食材」

厚揚げは調理不要で、白米の糖質を燃やすビタミンB1とタンパク質が含まれています。納豆やオクラに豊富な水溶性食物繊維が、腸内環境を整え、夏場の胃腸ケアをサポートします。

3.「アボカド×発酵食品」

アボカドに含まれるカリウムが、細胞の水分バランスを整えます。キムチ等の発酵食品と合わせることで、夏場に崩れやすい腸内環境(免疫の要)を整え、夏風邪の予防にも繋がります。

4.「サバ缶×夏野菜」

サバ缶に豊富に含まれるEPA・DHAには、血液の流動性を改善する働きがあることが知られています。血流が良好に保たれることで、体全体への栄養や酸素の供給が滞りにくくなり、夏場のコンディション維持に役立つと考えられます。

5)どうしても食べる時間がない時は……

どうしても食べる時間がない時

とはいえ時間がなくて食べられない!という方のために、熱中症対策の基本である「水分・塩分補給」を食事から実現する最小単位のメニューも紹介します。

1.梅干しおにぎり+枝豆+カップ味噌汁

おにぎりの糖質(エネルギー)と梅干しの塩分・クエン酸は、経口補水液を固形にしたような、熱中症予防の理想的な組み合わせです。さらに、自然解凍で食べられる枝豆をプラスすることで、代謝を助けるビタミンB1とタンパク質を補給できます。また、お湯を注ぐだけで食べられるカップのお味噌汁でミネラルも補給しましょう。調理時間ゼロで作業しながらでも食べられるスタミナ食です。

2.ビタミンB群配合のゼリー飲料+100%グレープフルーツジュース

なるべくは避けたいですが、喉を通らない時はゼリー飲料が頼りになります。そんなときは、必ず成分表を見て「ビタミンB1」「ビタミンB12」などが含まれているものを選んでください。単なるエネルギー補給よりも、それを燃やすための「着火剤」となるビタミンB群が重要だからです。

また、グレープフルーツには、苦味成分である「ナリンギン」をはじめとするポリフェノールが含まれています。苦味成分一般には胃酸の分泌を促す働きが知られており、食欲が落ちているときに酸味や苦味のある食品を取り入れることは、消化を助ける観点から理にかなっていると考えられます。ただし、ナリンギン自体の食欲促進効果については現時点では明確な根拠がなく、むしろ食欲を抑制する方向に働く可能性も指摘されています。グレープフルーツジュースはあくまで水分・ビタミンCの一時的な補給手段として少量にとどめ、食欲が戻り次第、しっかりとした食事に切り替えるようにしましょう。

3.冷やし茶碗蒸し+冷やし味噌汁(カップ)

固形物を食べることが難しい場合、コンビニやスーパーで手に入る「冷やし茶碗蒸し」が非常に有効です。卵の良質なタンパク質を、胃腸に負担をかけずに吸収できます。さらに、カップの味噌汁を冷たい水で溶いて(あるいは氷を入れて)飲むことで、大量の発汗で失われたナトリウムをはじめとするミネラルを手軽に補給できます。本格的な熱中症が疑われる場合は医療機関を受診する必要がありますが、軽度の水分・塩分補給の手段として有効です。

以上(2026年6月作成)

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画像:日本情報マート

【賃金データ集】時間外労働手当などのモデル支給額

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「時間外労働手当など」です。

時間外労働手当などの位置付け

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 時間外労働手当などの位置付け

時間外労働手当などとは、労働基準法(以下「労基法」)で定める時間外労働などに対して支給する「割増賃金」のことです。近年は時間外労働の上限規制、割増賃金に関する中小企業の猶予措置の廃止などが定められ、時間外労働手当などのマネジメントが求められています。

2 時間外労働手当などの潮流

企業は、「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」に対して、時間外労働手当などの割増賃金を支給しなければなりません。割増率は、1カ月当たりの時間外労働の時間数や企業規模などによって決定される仕組みです。その概要は図表2.の通りです。

時間外労働手当などの潮流

なお、月60時間以内の時間外労働に関しては、例えば、

  • 月60時間以内の時間外労働に対する割増賃金率を25%
  • 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率を50%

とした場合、月60時間超の時間外労働に適用される割増賃金率のうち通常(月60時間以内)の割増賃金率に上乗せされた25%(50%-25%)については、割増賃金の代わりに「代替休暇」を与えることも可能です(導入には労使協定の締結が必要)。

3 厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

4 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は次の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■毎月勤労統計調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1.html

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■賃金構造基本統計調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

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以上(2026年7月更新)

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画像:ChatGPT

経営のヒントとなる言葉(ジョン・F・ケネディ)

「われわれは、月へ行くことを選択します(We choose to go to the Moon.)」(*)

出所:「HISTORIC SPEECHES(The John F. Kennedy Presidential Library and Museum)」

冒頭の言葉は、

「自分たちは、困難かつ大きな夢にチャレンジし、成功させることを宣言する」

ということを表しています。

第35代米国大統領、ジョン・F・ケネディ氏が演説でこの言葉を発したとき、観衆は大きな喝采を送りました。ケネディ氏が、「月へ行く」という壮大な夢の実現を力強く宣言したことが、観衆を大いに感動させたのです。

ケネディ氏はこの壮大な夢について、冒頭の言葉に続けて、「簡単だからではない。むしろ困難であるからだ」と述べています。困難であるからこそ、実現に向けてチャレンジすることに大いなる価値があると伝え、人々を鼓舞したかったのでしょう。

時として経営者にも、社員を鼓舞することが求められます。年度替わりなどの節目の他、特に新規事業を立ち上げる、会社の変革に取り組むなど、これまでにないチャレンジをする際には、社員一人ひとりが驚くような夢を“打ち上げる”ことが必要です。

そこで経営者は、ケネディ氏の「月へ行くことを選択します」のような、「ほら吹き」と言われるくらいのメッセージを力強く発しましょう。ただし、こうしたメッセージを発する際には、忘れてならないことが3つあります。

1つ目は、ケネディ氏の宣言「月へ行く」と同じように、社員にとって「大きくて分かりやすい夢であること」です。例えば、「我が社は世界シェアナンバーワンを取る」という宣言でもよいでしょう。

2つ目は、「社員が誇れる夢にすること」です。社員がワクワクし、家族や社外の人に胸を張って言える夢であれば、たとえ成功への道のりがつらくても、社員にとって大きな原動力となるでしょう。

そして3つ目は、「社員に『自分事』として捉えてもらうこと」です。新規事業や会社の変革に対する経営者の思いを理解できず、目の前の仕事を優先する社員は少なくありません。そうしたとき、経営者にとって参考になるのが、ケネディ氏の次の言葉です。

「あなたの国があなたのために何ができるかを問わないでほしい。あなたがあなたの国のために何ができるかを問うてほしい」(**)

これは、ケネディ氏が大統領就任演説で述べた言葉です。人々に対して、「自己利益を超えて、自らが自分の国のために働くよう促した」として、有名な一節となりました。経営者が社員に「自分事」として捉えてもらうためのメッセージも、これに通じます。

新規事業や会社の変革とは、経営者が1人で実現するわけでも、会社がなんとかしてくれるわけでもありません。社員一人ひとりが自ら試行錯誤することでこそ、実現できるのです。経営者はそうしたことを、社員に繰り返し伝えなければなりません。

大きな夢を“打ち上げる”ことで社員を鼓舞し、同時に、社員一人ひとりに「あなたは、あなたの働く会社の未来のために何ができるのか」を問い続ける。この両方のメッセージを発し続けることで、経営者は新しい会社の姿を築いていくことができるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

ジョン・F・ケネディ(1917~1963)。第35代米国大統領。米国史上最年少で大統領に就任した。

【参考文献】

(*)「HISTORIC SPEECHES(The John F. Kennedy Presidential Library and Museum)」
(**)「ジョン・F・ケネディ大統領就任演説」(ジョン・F・ケネディ、1961年1月)

以上(2026年5月作成)

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画像:日本情報マート

業界分析・競合分析に使える「有価証券報告書」の読み方

1 サステナビリティや人的資本などの記載が義務化!

有価証券報告書は、金融商品取引法に基づいて公開されるもので、投資家の判断材料として企業情報や決算書類などが開示されます。有価証券報告書は、決算日後3カ月以内(3月末決算の企業の場合は、6月末日まで)に開示され、企業のウェブサイトやEDINETに公開されます。

有価証券報告書には、

サステナビリティ(持続可能性)や人的資本(人材の多様性を含む)に関する情報

などの開示も義務付けられています。これらの情報は、

その企業が環境問題に対してどう取り組むのか、人材をどのように育成するかといった姿勢

を把握することができます。有価証券報告書を使った業界分析や競合分析をしていく際には、それを踏まえる必要があります。

有価証券報告書の構成は図表1の通りです。

有価証券報告書の構成

この記事では、ビジネスで活用できる有価証券報告書「第一部 企業情報」の「第1 企業の概況」~「第5 経理の状況」で記載されている内容のポイントを解説します。

なお、有価証券報告書と似た資料に「決算短信」があります。決算短信は、法律ではなく証券取引所の要請に基づいて作成されます。簡単にいうと、

  • 決算短信は「速報」
  • 有価証券報告書は「確報」

です。速報である決算短信は、決算日から45日以内と有価証券報告書よりも早いタイミングで開示されます。その分、決算短信は有価証券報告書よりも情報量が少なく、数値の正確性も低くなります。あくまでもスピード重視ということです。

2 「企業の概況」に記載されていること

企業の概況では、

主要な経営指標等の推移、沿革、事業の内容、関係会社の状況

といった、基本情報が記載されています。企業の概況から、企業の主な事業内容や実績、規模、などが読み取れます。

企業の概況の記載内容

3 「事業の状況」に記載されていること

事業の状況には、

経営方針・経営環境及び対処すべき課題等、サステナビリティに関する考え方及び取組、事業等のリスク、経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、経営上の重要な契約等、研究開発活動

が記載されています。事業の状況から、企業の経営状況や今後の事業方針、リスクや問題点などが読み取れます。

事業の状況の記載内容

4 「設備の状況」に記載されていること

設備の状況には、

設備投資等の概要、主要な設備の状況、設備の新設・除却等の計画

が記載されています。設備と聞くと、製造業が思い浮かびますが、IT企業などにおけるソフトウエア投資も含まれます。設備の状況から、この企業がどのような分野に重きを置いているのかが読み取れます。

設備の状況の記載内容

5 「提出会社の状況」に記載されていること

提出会社の状況では、

株式等の状況、自己株式の取得等の状況、配当政策、コーポレート・ガバナンスの状況、従業員の状況等

が記載されています。「提出会社の状況」から、企業の株主構成(株主に国内企業が多いか、国外企業が多いかなど)や、その企業の意思決定に与える影響度の大きい株主、会社の人材戦略などが読み取れます。

提出会社の状況の記載内容

6 「経理の状況」に記載されていること

経理の状況では、

連結財務諸表とその注記事項(子会社等のない会社においては作成されません)、個別財務諸表とその注記事項など

が記載されています。「経理の状況」は財務情報の肝となる章で、企業の財務状況や業績に関する情報が読み取れます。

連結財務諸表は、子会社なども含めた企業グループの財務諸表で、企業の実態を知る上では個別財務諸表よりも重要視されています。例えば、「企業の概況-主要な経営指標等の推移」からざっくりとした変化を読み取り、詳細をそれぞれの連結財務諸表から分析することができます。なお、この記事では、連結財務諸表および個別財務諸表の見方についての詳細な説明は割愛します。

経理の状況の記載内容

連結(個別)貸借対照表からは、企業グループ(企業)の財政状態が分かり、

企業に十分な資金があるか、過大な借金を抱えていないかなど、財務的な健全性などを確認する

ことができます。

連結(個別)損益計算書からは、企業グループ(企業)の経営成績が分かり、

売上高、営業利益、経常利益、当期純利益などの指標から、特に前期と比べて当期に増加したか、減少したかなど、財務的な成長性などを確認する

ことができます。

連結(個別)損益計算書上は黒字の企業グループ(企業)であっても、資金収支はマイナスで資金繰りが厳しい場合もあるので、連結(個別)キャッシュ・フロー計算書から、

企業グループ(企業)の資金収入、資金支出を把握し、企業グループ(企業)の実態を読み取る

必要があります。

また、連結(個別)財務諸表等に関する注記が充実している点は、有価証券報告書の特徴の1つです。会計になじみのない人にはハードルが高いかもしれませんが、連結(個別)財務諸表についてより詳細な内容を知りたい場合は、注記を読むことで非常に詳細な情報を得ることができます。

財務会計を勉強し自信がついたら注記を読んでみてください。もし、書いてある意味が分からない項目があれば、その項目に関する分野を勉強すると知識が豊富になっていきます。

財務諸表を読む際のポイントは、

前期との比較で見ること(改善しているか否か)、同業他社との比較で見ること(業種によって財務諸表の数値の意味がかなり異なります)

です。

以上(2026年6月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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【2026年最新】仕事中に事故に遭った場合の労災保険などの給付一覧!

1 業務中や通勤中の事故などに対応する保険給付は?

会社は日頃から、社員が労働災害(業務上の事由または通勤途上により発生した事故など)に遭わないように細心の注意を払っていますが、万一の備えとなるのが労災保険と国民年金・厚生年金保険の給付です。給付の種類は多岐にわたりますが、この記事では、労働災害(業務上の事由または通勤途上により発生した事故など)が起きた場合に支給されるものとして、

労災保険と国民年金・厚生年金保険の給付(傷病、障害、死亡に対するもの)

について紹介します。なお、この記事で対象とする社員は、65歳未満で国民年金・厚生年金保険の加入要件を満たしていて(保険料の未納もなし)、労災保険の適用事業の会社に勤務しているものとします。

また、プライベートで起こした事故など(労災認定されなかった業務中の事由や通勤途上により発生した事故など)による傷病、障害、死亡に対する給付については、次の記事をご確認ください。

(注)以降で紹介する給付の内容は2026年6月時点のもので、将来変更される可能性があります。

2 傷病に対する主な給付(労働災害編)

1)給付の種類を整理しよう

社員が労働災害により傷病を負った場合、社員が受けられる労災保険の主な給付は図表1の通りです。なお、傷病がもとで障害を負った場合の給付については第3章を、亡くなった場合の給付については第4章をご参照ください。

傷病に対する主な給付(労働災害編)

なお、労災保険の給付は、業務災害(業務上の事由によって発生した事故など)の場合と通勤災害(通勤途上に発生した事故など)の場合とで名称が変わります。

  • 業務災害:療養補償給付、傷病補償年金、介護補償給付(名称に「補償」がつきます)
  • 通勤災害:療養給付、傷病年金、介護給付

また、以降では「治癒」という言葉が頻繁に出てきますが、

「治癒」という言葉には、「傷病が完治した」という意味の他に、「症状が固定された(症状の回復・改善が期待できなくなった)」という意味もあります

ので、ご注意ください。

2)給付の支給要件、支給額、支給期間を知ろう

各給付の支給要件、支給額、支給期間は次の通りです。

1. 療養(補償)給付
支給条件 診察・薬剤の支給・治療などを受けた場合に支給
支給内容 通常は現物給付(無料の診察・薬剤等・治療)。指定外医療機関を利用した場合は療養費(実費)を後日還付
※労災病院または労災保険指定医療機関・薬局等での受診が原則
支給期間 傷病が治癒するまで、受診のたびに支給(期間制限なし)
2. 休業(補償)給付
支給条件 療養のため3日以上休んだ場合、4日目以降から支給(連続不要・公休日含む)
※業務災害の最初の3日間は会社が補償義務。副業中の業務災害・通勤災害は補償義務なし
支給額 給付基礎日額 = 直近3カ月の賃金総額(賞与除く) ÷ 直近3カ月の総日数
  ↓
休業(補償)給付(日額) = 給付基礎日額 × 0.6
  ↓
+ 休業特別支給金(日額) = 給付基礎日額 × 0.2
  ↓
【合計(日額)= 給付基礎日額 × 0.8】 ※手取りの目安
※給付基礎日額の最低保障額:4,250円。副業等の場合は各事業場の賃金額を合算して算定します
支給期間 支給要件を満たす間、継続(期間制限なし)
※療養開始から1年6カ月経過後に傷病(補償)年金を受け始めた場合は支給停止
3. 傷病(補償)年金
支給条件 療養開始から1年6カ月経過後も傷病が治癒せず、傷病等級1~3級に該当する場合
支給額 等級 年金額(年額) 傷病特別支給金(一時金)
1級 給付基礎日額 × 313日分 114万円
2級 給付基礎日額 × 277日分 107万円
3級 給付基礎日額 × 245日分 100万円
※上記に加え、傷病特別年金(算定基礎日額×各等級の日数分)も上乗せ支給されます
算定基礎日額 = 事故発生日(または疾病確定日)以前1年間の特別給与総額÷ 365日
支給期間 支給要件を満たす間、継続(期間制限なし)
※傷病が治癒した場合、傷病等級3級に満たなくなった場合などは支給停止
4. 介護(補償)給付
支給条件 傷病(補償)年金または障害(補償)年金の受給権者で、常時または随時介護が必要な場合
※病院・障害者支援施設等に入院・入所中は不支給
支給額 介護の状況 常時介護(月額) 随時介護(月額)
サービス利用あり・親族介護なし 実費(上限 186,050円) 実費(上限 92,980円)
親族介護あり・サービス利用なし 85,490円 42,700円
親族介護あり・サービス利用あり 85,940円(注) 42,700円(注)
※サービス費用がこの額を超える場合はその費用が支給(上限:常時186,050円・随時92,980円)
支給期間 支給要件を満たす間、継続(期間制限なし)

3 障害に対する主な給付(労働災害編)

1)給付の種類を整理しよう

社員が労働災害により障害を負った場合、労災保険、国民年金・厚生年金保険の給付を受けられます。主な給付は図表2の通りです。

障害に対する主な給付(労働災害編)

なお、労災保険の給付は、業務災害の場合と通勤災害の場合とで名称が変わります。

  • 業務災害:障害補償年金、障害補償一時金、介護補償給付(名称に「補償」がつきます)
  • 通勤災害:障害年金、障害一時金、介護給付

また、同一の事由により、労災保険給付と障害厚生年金や障害基礎年金を受給できる場合、併給調整により、労災保険給付が一部減額となります(一時金は減額の対象外とされています)。   詳しくは、お近くの労働基準監督署にお問い合わせ下さい。

2)給付の支給要件、支給額、支給期間を知ろう

各給付の支給要件、支給額、支給期間は次の通りです。

1. 障害(補償)年金
支給条件 傷病が治癒し、障害等級1~7級に該当する場合
支給額 等級 年金額(年額) 障害特別支給金(一時金)
1級 給付基礎日額 × 313日分 342万円
2級 給付基礎日額 × 277日分 320万円
3級 給付基礎日額 × 245日分 300万円
4級 給付基礎日額 × 213日分 264万円
5級 給付基礎日額 × 184日分 225万円
6級 給付基礎日額 × 156日分 192万円
7級 給付基礎日額 × 131日分 159万円
※上記に加え、障害特別年金(算定基礎日額×各等級の日数分)も上乗せ支給されます
支給期間 支給要件を満たす間、継続(期間制限なし)
※障害等級7級に満たなくなった場合は支給停止
2. 障害(補償)一時金
支給条件 傷病が治癒し、障害等級8~14級に該当する場合
支給額 等級 一時金 障害特別支給金(一時金)
8級 給付基礎日額 × 503日分 65万円
9級 給付基礎日額 × 391日分 50万円
10級 給付基礎日額 × 302日分 39万円
11級 給付基礎日額 × 223日分 29万円
12級 給付基礎日額 × 156日分 20万円
13級 給付基礎日額 × 101日分 14万円
14級 給付基礎日額 × 56日分 8万円
※上記に加え、障害特別一時金(算定基礎日額×各等級の日数分)も上乗せ支給されます
支給期間 1回のみ支給

4 死亡に対する主な給付(労働災害編)

1)給付の種類を整理しよう

社員が労働災害により亡くなった場合、労災保険・国民年金・厚生年金保険の給付を受けられます。社員が受けられる主な給付は図表3の通りです。

死亡に対する主な給付(労働災害編)

なお、労災保険の給付は、業務災害の場合と通勤災害の場合とで名称が変わります。

  • 業務災害:葬祭料、遺族補償年金、遺族補償一時金
  • 通勤災害:葬祭給付、遺族年金、遺族一時金

また、同一の事由により、労災保険給付と遺族厚生年金(遺族基礎年金)を受給できる場合、併給調整により、労災保険給付が一部減額となります。詳しくは、お近くの労働基準監督署にお問い合わせ下さい。

2)給付の支給要件、支給額、支給期間を知ろう

各給付の支給要件、支給額、支給期間は次の通りです。

1. 葬祭料(葬祭給付)
支給対象 葬儀を執り行う者(通常は遺族。遺族がおらず、会社が社葬を行った場合は会社も対象)
支給額 ① 給付基礎日額 × 30日分 + 315,000円
② 給付基礎日額 × 60日分
※①と②のいずれか高いほうを支給
支給期間 1回のみ支給
2. 遺族(補償)年金
支給条件 社員により生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹(受給権者となる順位は次の通り)
①妻または60歳以上か一定の障害状態にある夫
②18歳到達年度末日以前または一定の障害状態にある子
③60歳以上か一定障害の父母
④18歳到達年度末日以前または一定の障害状態にある孫
⑤60歳以上か一定障害の祖父母
⑥18歳到達年度末日以前または一定の障害状態にある兄弟姉妹
⑦55歳以上60歳未満の夫
⑧55歳以上60歳未満の父母
⑨55歳以上60歳未満の祖父母
⑩55歳以上60歳未満の兄弟姉妹
支給額 受給遺族の人数 年金額(年額)
1人 給付基礎日額 × 153日分(※)
2人 給付基礎日額 × 201日分
3人 給付基礎日額 × 223日分
4人以上 給付基礎日額 × 245日分
※55歳以上または一定の障害状態にある妻の場合は175日分。上記に加え、遺族特別支給金300万円(一時金)と遺族特別年金(算定基礎日額×各人数分)が上乗せ支給
支給期間 受給権者に該当する間、継続(期間制限なし)
※受給権者が亡くなった場合等は次順位者へ「転給」されます
3. 遺族(補償)一時金
支給条件 死亡当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合に配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹に支給(受給権者となる順位は次の通り)
①配偶者
②死亡当時、社員により生計を維持されていた子・父母・孫・祖父母
③その他の子・父母・孫・祖父母
④兄弟姉妹
支給額 遺族(補償)一時金 = 給付基礎日額 × 1,000日分
  ↓
+遺族特別支給金300万円(一時金) + 遺族特別一時金(算定基礎日額×1,000日分)
すでに遺族(補償)年金が支給されていた後に受給権者が途絶えた場合:
・遺族(補償)一時金:給付基礎日額×1,000日分-すでに支給された遺族(補償)年金の総額
・遺族特別支給金(一時金):なし
・遺族特別一時金(一時金):算定基礎日額×1000日分-すでに支給された遺族特別年金額
支給期間 1回のみ支給

遺族厚生年金、遺族基礎年金は、国民年金・厚生年金保険の給付で、労災の場合もプライベートの事故などの場合もどちらでも利用できます。

給付の内容については、こちらの記事の「4 死亡に対する主な給付(プライベート編)」をご確認ください。

以上(2026年6月更新)

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画像:ChatGPT

【2026年最新】プライベートで事故に遭った場合の健康保険などの給付一覧!

1 プライベートでの事故などに対応する保険給付は?

社員がけがや病気をすると、医療費や仕事を休んでいる間の生活費など、さまざまな出費がかさみます。けがや病気が重くて障害が残った場合は、より手厚い生活保障が求められますし、亡くなった場合は、社員の遺族に対する保障も必要になってきます。

会社の制度(見舞金や弔慰金)や民間の保険などの「備え」をする会社もありますが、まず押さえておきたいのが、法律で定められた保険給付(社会・労働保険の給付)です。

この記事では、プライベートでの事故など(労災認定されなかった業務中や通勤中の事故などを含む)が起きた場合に支給されるものとして、

健康保険と国民年金・厚生年金保険の給付(傷病、障害、死亡に対するもの)

を紹介します。「療養が必要か」「休業が必要か」など、給付の特徴に注目したチャート図も載せているので、「保険給付って何だか種類が多くて苦手……」という人もぜひご一読ください。

2028年4月施行の「遺族厚生年金」「遺族基礎年金」の支給ルール改正

についても第4章で触れています。

なお、この記事の社員は、65歳未満で健康保険、国民年金・厚生年金保険の加入要件を満たしている人です(保険料の未納もなし)。健康保険の保険者は、全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」)とします。

また、労働災害(業務上の事由または通勤途上により発生した事故など)による傷病、障害、死亡に対する給付については、こちらをご確認ください。

(注)以降で紹介する給付の内容は2026年6月時点のもので、将来変更される可能性があります。

2 傷病に対する主な給付(プライベート編)

1)給付の種類を整理しよう

社員がプライベートの事故などで傷病を負った場合、健康保険の給付を受けられます。主な給付は図表1の通りです。なお、傷病がもとで障害を負った場合の給付については第3章を、亡くなった場合の給付については第4章をご参照ください。

傷病に対する主な給付(プライベート編)

2)給付の支給要件、支給額、支給期間を知ろう

各給付の支給要件、支給額、支給期間は次の通りです。

1. 療養の給付
支給条件 診察・薬剤の支給・治療などを受けた場合に支給
支給内容 通常は現物給付。社員は保険医療機関等に一部負担金(原則として費用の3割)を支払う。やむを得ず自費受診した場合は療養費(基準額から一部負担金を引いた額)を後日還付
支給期間 診察・薬剤等の支給・治療などを受けるたびに支給(期間制限なし)
2. 傷病手当金
支給条件 療養のため連続3日以上休んだ場合、4日目以降から支給(公休日・有給休暇取得日等を含む)
支給額 日額 = 支給開始日以前直近12カ月間の各月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3
支給期間 支給開始日から通算最大1年6カ月
※出勤等で不支給となる期間を除いて通算1年6カ月。1年6カ月を超えると支給停止
※障害厚生年金・障害手当金の支給を受けるようになった場合、全部または一部が支給停止
3. 入院時食事療養費
支給条件 保険医療機関に入院した場合、入院中の食費について支給
支給額 (1食につき)厚生労働大臣の算出基準による食事療養費-標準負担額
※標準普段額:原則550円/食。社員は標準負担額のみを入院先に支払う(給付は入院先の医療機関に直接支給)
支給期間 入院して食事の提供を受ける期間
4. 入院時生活療養費
支給条件 65歳以上の社員が医療療養病床(長期療養が必要な患者のための病床)に入院した場合、食費・居住費について支給
支給額 (1食または1日につき) 厚生労働大臣の算出基準による生活療養費-標準負担額
※標準負担額:食費は原則550円/食(管理栄養士等がいない病院では510円/食)、居住費は原則430円/日。社員は標準負担額のみ支払う
支給期間 入院して食事の提供などを受ける期間
5. 保険外併用療養費
支給条件 「評価療養」(先進医療など)または「選定療養」(特別の療養環境など)を受けた場合、通常の治療と共通する部分の医療費について支給
支給額 通常の治療と共通する部分の医療費-その部分の一部負担金(原則として3割)
※通常の治療と共通しない部分(先進医療費用等)は全額自己負担。
支給期間 評価療養または選定療養を受けるたびに支給(期間制限なし)
6. 高額療養費
支給条件 同じ月(1日~月末)に支払った医療費の自己負担額が自己負担限度額を超えた場合に支給
※自己負担額は世帯で合算可(70歳未満は21,000円以上のものに限る)
支給額 月額= 同じ月に支払った医療費の自己負担額-自己負担限度額
※自己負担限度額は年齢・所得に応じて細かく区分
※3カ月以上高額療養費の支給を受けた場合、4カ月目から「多数該当」で限度額が軽減
(例)70歳未満・標準報酬月額28万~50万円の場合:
   自己負担限度額 = 80,100円 +(総医療費-267,000円)× 0.01
支給期間 同一月に支払った自己負担額が自己負担限度額を超えるたびに支給(期間制限なし)
※限度額適用認定を利用すると窓口での支払いを自己負担限度額に抑えられる。

3 障害に対する主な給付(プライベート編)

1)給付の種類を整理しよう

社員がプライベートで起こした事故などで障害を負った場合、国民年金・厚生年金保険の給付を受けられます。主な給付は図表2の通りです。

障害に対する主な給付(プライベート編)

なお、以降では「治癒」という言葉が頻繁に出てきますが、

「治癒」という言葉には、「傷病が完治した」という意味の他に、「症状が固定された(症状の回復・改善が期待できなくなった)」という意味もあります

ので、ご注意ください。

2)給付の支給要件、支給額、支給期間を知ろう

各給付の支給要件、支給額、支給期間は次の通りです。

1. 障害厚生年金
支給条件 初診日から1年6カ月が経過した日(それまでに治癒した場合はその日)の時点で、厚生年金保険の障害等級1~3級に該当する場合
※初診日時点で厚生年金保険に加入し、保険料納付要件を満たしていること
支給額 等級 年金額(年額)
1級 報酬比例部分の年金額 × 1.25 + 配偶者加給年金額(243,800円)
2級 報酬比例部分の年金額 + 配偶者加給年金額(243,800円)
3級 報酬比例部分の年金額 
※最低保障額:635,500円
(※)配偶者加給年金は、配偶者が老齢厚生年金等の受給権を持つ場合や障害年金受給中は支給停止になることがあります
支給期間 支給要件を満たす間、継続(期間制限なし)
※障害等級3級に満たなくなった場合は支給停止
※社員が「老齢厚生年金」など他の年金の支給も受けられるようになった場合は、どちらの年金を受け取るかを選択しなければならないケースがある
2. 障害基礎年金
支給条件 初診日から1年6カ月が経過した日(それまでに治癒した場合はその日)の時点で、国民年金の障害等級1~2級に該当する場合
※初診日時点で国民年金に加入し、保険料納付要件を満たしていること
支給額 等級 年金額(年額)
1級 1,059,125円 + 子の加算
2級 847,300円 + 子の加算
※子の加算は、第2子までは子1人につき243,800円、第3子以降は子1人につき81,300円が加算されます。子は18歳到達年度末日以前、または20歳未満で障害等級1~2級に該当する子に限ります
支給期間 支給要件を満たす間、継続(期間制限なし)
※障害等級2級未満になった場合は支給停止
※社員が「老齢厚生年金」など他の年金の支給も受けられるようになった場合は、どちらの年金を受け取るかを選択しなければならないケースがある
3. 障害手当金
支給条件 初診日から5年以内に傷病が治癒し、障害等級3級よりやや軽い障害が残った場合
※初診日時点で厚生年金保険に加入し、保険料納付要件を満たしていること
支給額 支給額(一時金)= 報酬比例部分の年金額 × 2
※最低保障額 1,271,000円
支給期間 1回のみ支給

4 死亡に対する主な給付(プライベート編)

1)給付の種類を整理しよう

社員がプライベートで起こした事故などで亡くなった場合、健康保険、国民年金・厚生年金保険の給付を受けられます。主な給付は図表3の通りです。

死亡に対する主な給付(プライベート編)

2)給付の支給要件、支給額、支給期間を知ろう

各給付の支給要件、支給額、支給期間は次の通りです。

1. 埋葬料(埋葬費)
支給対象 社員により生計を維持されていた人で埋葬を行う者
上記に該当する人がいない場合、埋葬を行った者
支給額 社員により生計を維持されていた人で埋葬を行う者 → 埋葬料(5万円)
上記に該当する人がいない場合、埋葬を行った者 → 埋葬費(埋葬に要した費用、上限5万円)
支給期間 1回のみ支給
2. 遺族厚生年金
支給条件 社員により生計を維持されていた配偶者・子 ・父母・ 孫・ 祖父母に支給(受給権者となる順位は次の通り)
①子のある配偶者
②18歳到達年度末日以前、または20歳未満で障害等級1~2級の子
③子のない配偶者(夫の場合は55歳以上)
④55歳以上の父母
⑤18歳到達年度末日以前、または20歳未満で障害等級1~2級の孫
⑥55歳以上の祖父母
支給額 支給額(年額)= 報酬比例部分の年金額 × 3/4 + 中高齢寡婦加算額635,500円(妻のみ)
※中高齢寡婦加算は要件を満たす妻に40歳~65歳の間加算
支給期間 受給権者に該当する間、継続(原則として期間制限なし)
※子のない30歳未満の妻は5年間のみ。夫・父母・祖父母の受給開始は60歳から
※【2028年4月改正】60歳未満は原則5年間の有期給付、60歳以上は無期給付(男女共通)に変更(20年かけて段階的に引き上げ)
3. 遺族基礎年金
支給条件 亡くなった社員の収入によって生計を維持していた「子のある配偶者」または「子」に支給
※子:18歳到達年度末日以前、または20歳未満で国民年金の障害等級1~2級に該当する子
支給額 支給額(年額)= 847,300円 + 子の加算
※第1・2子は子1人につき243,800円、第3子以降は子1人につき81,300円が加算
※子が受給する場合は第2子以降が加算対象
支給期間 受給権者に該当する間、継続(原則として期間制限なし)
※配偶者または子が死亡した場合、子が18歳到達年度末日を迎えた場合などは支給停止
※【2028年4月改正】子に生計を同じくする父または母がいる場合でも、要件に該当すれば受け取れるようになる

さて、遺族厚生年金については、少し先の話しにはなりますが、2028年4月以降に支給ルールの改正があります。上記の通り、現行のルールでは、子のない配偶者が遺族厚生年金を受け取る場合、

  • 妻:配偶者の死亡時、30歳未満である場合は5年間の有期給付、30歳以上は無期給付
  • 夫:配偶者の死亡時、55歳未満である場合は給付なし、55歳以上は原則60歳から無期給付

というルールがありますが、女性の就業率向上など社会的変化に加え、男女差をなくすために

どちらも60歳未満は原則5年間の有期給付、60歳以上は無期給付

という運用に変わります。夫の場合は改正法の2028年4月から、妻の場合はまず40歳未満までを2028年4月から有期給付の対象とし、以後20年かけて段階的に年齢の引き上げを行います。

画像4

また、子の遺族基礎年金に関する要件が緩和され、

生計を同じくする父または母がいても、一定の条件下で子が遺族基礎年金を受給できる

ようになります。

以上(2026年6月更新)

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画像:ChatGPT

「分かりやすい指示」が出せない上司に共通する致命的な勘違い

1 指示のポイントは上司が部下に合わせること

「何でこんなことも分からないの?」。意図した通りに部下に指示が伝わらず、イライラすることはありませんか? 上司と部下でありがちなこの問題。解決のコツは、

部下が求める内容を、部下が理解できるレベルに合わせて伝えること

にあります。こう言うと、

上司が部下に合わせたらレベルが下がるだけ

と指摘されそうですが、これは勘違いです。上司の皆さんは長い経験を積み、勉強もしてきたわけですから、その時点で部下とはビジネスパーソンとしての実力が大きく違います。実力が離れた上司の指示を受け入れている部下は、よほど優秀なのか、部分的に理解しているのか、分かったふりをしているのかのどれかでしょう。

上司が上司の言葉で伝えても伝わらないのは、ある意味で当たり前のことです。ですから、上司は、部下にとって分かりやすい指示とは何かを考え、実践する必要があるのです。

2 「自分基準」の減点主義をやめる

部下が求める内容を、部下が理解できるレベルに合わせて伝えるために、上司は「自分ならこう考えるのに、何で部下は……」「自分ならこう動くのに、何で部下は……」という、自分基準で部下を減点していくのをやめましょう。その上で部下を認めます。具体的には、

部下は部下なりに上司の指示を解釈し、工夫した結果、上司の指示と異なる進め方になったのかもしれない

というようにです。そして、穏やかに、部下の言動で改善すべきところを伝えていきましょう。

たったこれだけのことで、見違えるほど上司と部下のコミュニケーションが良くなることを実感できると思います。ただ、こうしたコミュニケーションを取るためには、上司にも相応の時間がかかります。改善前は、

自分の考えを示す

という、いわば一方通行のコミュニケーションでしたが、改善後は、

自分の考えを示し、相手の言動を理解し、差分を整理して伝える

ということになるからです。ですから、ある程度、部下の性格や成長に応じて接し方を変えていく必要があるでしょう。

3 伝えるためのテクニック

上司は、部下に5W2Hの報連相を要求しますが、同様に上司も5W2Hで指示を出しましょう。5W2Hとは、次のことを指します。

  • When:いつ。◯月◯日◯時まで落とし込む
  • Where:どこで。具体的な場所を示す。最近はオンラインもある
  • Who:誰が。中小企業の場合、部署よりも担当する「個人」を示す
  • What:何を。何に向き合っているのかを明確にする
  • Why:なぜ。その取り組みをする理由を明確にする
  • How:どうやって。方法論を明確にする
  • How much:いくらで。コストを明確にする。社内コストは軽視されがちなので注意

その上で、部下の理解度を確認するために、部下に指示の内容をメモ帳やホワイトボードに書き出し、説明してもらいます。書き出して説明してもらうことで、誤解や、理解が不十分な部分が明らかになります。

また、業務の内容によっては言葉で表現するのが難しかったり、伝わりにくかったりするものがあります。そこで、見本や参考になる資料を用意して、「資料Aに掲載されているデータを最新版に更新してほしい。グラフの体裁は資料Bと同じにしてほしい」などのように、部下とイメージを共有します。

4 「伝えた」と「伝わった」は別物と心得る

上司が陥りがちな最も根深い勘違いの1つが、「言ったから伝わっているはず」という思い込みです。上司の立場では「説明した=完了」と感じやすいのですが、指示とはコミュニケーションである以上、受け取り手の理解が成立して初めて完結します。

「伝えた(送信側の完了)」と「伝わった(受信側の理解)」は、全く別のことです。この2つを混同しているうちは、部下の誤解や手戻りが繰り返されても「なぜ分からないのか」という疑問に終始し、根本的な改善には至りません。

指示を出した後に「何か分からないことはある?」と聞くだけでは不十分な場合があります。部下は「大丈夫です」と答えながらも実は理解しきれていないケースが少なくありません。前述した「指示内容を書き出して説明させる」方法と組み合わせ、理解が届いているかを客観的に確認する仕組みを持つことが大切です。

5 指示には「優先順位」と「完成イメージ」を必ず添える

5W2Hで要素を網羅することに加え、実務上とりわけ混乱を招きやすい2点を補足します。

1つ目は「優先順位」です。複数の業務を抱える部下に複数の指示を出す場合、どれから手をつければよいかが明示されていないと、部下は自己判断で動くことになります。その判断が上司の期待とずれていれば、締め切りを守れない・重要業務が後回しになるといった問題が生じます。指示を出す際には、「まずAを先に仕上げてほしい。Bはその後でよい」など、処理の順番を明言しましょう。

2つ目は「完成イメージ(品質基準)」です。「この資料をまとめておいて」と言われても、どのレベルまで仕上げればよいかが分からなければ、部下は過剰に作り込むか、逆に荒削りなまま持ってくるかのどちらかになりがちです。「A4で1枚、箇条書きでポイントだけまとめてくれればいい」「過去に提出したBの資料と同じ体裁で」など、ゴールの具体像を示すことが、余分な手戻りを防ぐ最短の方法です。

6 指示後のフォローアップ――中間確認の習慣を持つ

指示の分かりやすさは、「指示を出す瞬間」だけで決まるわけではありません。長めのタスクや、複数のステップを経る業務では、「着手した時点では理解できていたが、進めるうちに方向がずれていく」という現象が起きやすいものです。

こうした事態を防ぐには、指示を出す段階であらかじめ中間確認のタイミングを決めておくことが有効です。「3日後の午前中に、途中経過を一度見せてほしい」「半分まで進んだら声をかけて」といった形で、フォローアップの機会を指示に組み込みましょう。

中間確認は、単なる進捗管理ではありません。部下が「途中で詰まっても相談できる」という安心感を持てると、問題が大きくなる前に早期発見・修正ができます。上司にとっても、指示内容の伝わり方を診断する場として活用できます。

7 「質問しやすい雰囲気」が指示の質を底上げする

どれほど丁寧に指示を出しても、部下が「分からない」「確認したい」と言い出せない職場環境では、伝達ミスや手戻りはなくなりません。上司の指示の分かりにくさと、部下の発言しにくさは、表裏一体の問題です。

「こんなことも分からないのか」「前にも言ったよね」という反応が続けば、部下はやがて確認することをやめます。その結果、誤解を抱えたまま業務を進め、完成物が大きくずれてしまうという悪循環に陥ります。

第2章で述べた「自分基準の減点主義をやめる」ことは、こうした心理的安全性の土台にもなります。部下が「何でも聞ける」と感じられるような関係を意識的につくることが、分かりやすい指示を実効あるものにする最後のひと押しになります。上司と部下のコミュニケーションは双方向であることを忘れないようにしましょう。

以上(2026年6月更新)

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