「暑い派」VS「寒い派」エアコンバトル! 平和的解決のカギは?

1 「暑い派」VS「寒い派」バトルが夏と共にやってくる!

暑くなってきたこの時期に従業員がオフィスに集まると、 “あの”問題が勃発します。それは、

エアコン温度の「暑い」vs「寒い」バトル

です。こっそりエアコンの設定温度を下げた暑がりの従業員を、寒がりの従業員が背後からじっと見ていたり、寒がりの従業員に気をつかって暑がりの従業員が汗だくになりながらやせ我慢をしていたり……皆さんも、一度は経験があるのではないでしょうか。

今年も去年に引き続き猛暑となる予想ですが、オフィスでは一人ひとりの好みに合わせた室温の調整が難しいので、企業としては、エアコンが本格稼働する前に、何とかこのバトルの対策を講じておきたいところです。また、

快適に働くための環境づくりは、業務の生産性向上という面でもとても大切

でしょう。

そこでこの記事では、オフィスにおける適温や、「暑い派」「寒い派」それぞれへのケア方法など、猛暑の中でも従業員が快適に働けるようにするポイントを紹介していきます。

ちょっとした工夫や心掛けで業務中の快適さは一気に変わりますので、今一度オフィス環境について振り返ってみましょう。

2 「快適さ」はさまざまな要素で出来ている

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1)快適さでオフィスの生産性も変わる!

空気調和・衛生工学会(暖冷房・換気や給水・排水など、生活に密着した設備を専門に研究する学会)の研究によると、室温の変化がオフィスでの生産性も影響することが明らかになっています。同学会の研究者らが発表した論文によると、

空気温度が26.5度を超えると生産性が大きく低下する

そうです。こうしてみると、オフィスでの快適な環境を用意することは、従業員の生産性向上、ひいては企業の業績アップにもつながるといえるでしょう。

2)バトルの原因の名は「PMV」

まずは、快適なオフィス環境を整えるために知っておくと良い知識、

「PMV(Predicted Mean Vote)、予測平均温冷感申告」

についてご紹介します。PMVとは「快適さを表す国際規格」で、

  • 室温
  • 湿度
  • 着衣量
  • 放射(日当たりや熱からの距離)
  • 気流(直接エアコンの風が当たるかどうか)
  • 活動量(体を動かしているか)

によって、その数値が左右されます。

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「PMV」では、暑さ・寒さの度合いを「-3~+3」の値で示します。そして国際的な基準(ISO:国際標準化気候)では、約9割の人にとって「快適」な数値は、上図のように「-0.5~+0.5」と、かなり狭い範囲。オフィスで仕事をする大多数が快適と感じるには、PMVをこの狭い範囲に収める必要があります。

つまり、同じオフィスで働いていても、人によって感じる暑さ・寒さは異なるということです。これが「暑い派」vs「寒い派」のバトルの原因で、

快適なオフィス環境を整えるためには、エアコンの温度設定だけでなく、「PMV」を構成する指標のさまざまな要素を捉えて対策する必要がある

といえるでしょう。

3)バトル鎮火のためのロードマップ

次に、この「PMV」を快適温度範囲に近い数値で平均化するために、経営者が従業員のためにできることを紹介します。

ポイントは、次の3段階でオフィス環境を調整することです。

  • 【対・全体】まずは部屋全体で「室温」「湿度」の最低限の環境を整える
  • 【対・陣営ごと】次に「暑い派」「寒い派」それぞれの陣営の従業員について、体感温度に合わせて席の移動を許可することで、「気流」「放射」を調整する
  • 【対・個人】最後に個人の「着衣量」に柔軟に対応することで、「活動量」や個人の代謝の差に対して微調整をかける

次章以降で、1,から3.の各要素をコントロールする方法を解説していきます。

3 【対・全体】「室温」「湿度」をコントロール

一番に整えておかなければいけないのが、対・全体の環境。すなわち、エアコンや除湿機で直接コントロールできる「室温」「湿度」です。

オフィスの衛生管理を定めた法令「事務所衛生基準規則」では、室内にエアコンなどの空調設備がある場合「室の気温が18度以上28度以下、相対湿度が40%以上70%以下になるよう努めなければならない」と定められています。

ただし、これはエアコンの設定温度の話ではなく、オフィスの「室温」や「湿度」の基準

です。

たとえエアコンの設定温度が28度でも、人が多いと体温で室温が上がるため、実際の体感温度は従業員の人数などによっても大きく左右されます。そのため、設定温度だけに頼らず、実際の室温・湿度を計測したうえで対策することが大切です。温度計や湿度計の用意を検討してみるのもよいでしょう。

また、近年記録的な猛暑が確認されていますので、「室温28度、湿度70%以下を基準にしているから大丈夫」と安易に判断するのではなく、気象情報などを見ながら柔軟な対応を心がけましょう。

4 【対・陣営ごと】フリーアドレスで「気流」「放射」を操る

オフィス全体の温度・湿度を整えるだけでは、「暑い派」VS「寒い派」の根本的な解決には至りません。そこで、

この夏は、フリーアドレスで放射・気流を調整

してみましょう。フリーアドレスとは、「席を固定せず、空いている席を自由に使う働き方」のことです。

例えば、窓際は放射熱で他の席よりも暖かくなるため、寒がりの従業員に向いています。

「寒い派」陣営が窓の近くのデスクに、「暑い派」陣営が日陰のデスクに移動することで、2つの陣営に「放射」の差をもたらす

ことができます。なお、紫外線の問題もあるので、基本的には夏場のブラインドは下げておくのがベターです。

また、

「暑い派」陣営はエアコンの風が当たる場所に、「寒い派」陣営はエアコンの風が当たらない場所に移動することで、「気流」も調節可能

です。改めて天井を見上げ、エアコンの位置や風がよく当たる席を確認してみるのもよいでしょう。

業務上の都合でフリーアドレスを取り入れることができない場合、次のような方法で気流を調整できます。

  • エアコンにアクリル板を取り付け、「寒い派」の従業員に直接風が当たらないようにする
  • サーキュレーターを設置し、エアコンの冷たい空気を分散させる

5 【対・個人】「着衣量」を柔軟に! 個人差を調節

夏場のエアコン問題は、「暑い派」VS「寒い派」の小競り合いだけでは済まないことがあります。「暑い派」「寒い派」陣営のみに着目し、個々へのケアを怠ると、

  • 暑い派陣営の中でも一番の暑がりは「熱中症」
  • 寒い派陣営の中でも一番の寒がりは「冷房病(クーラー病、体が急激な温度差についていけず、自律神経に異常をきたす症状)」

などになってしまう恐れがあるのです。

また、「暑い」「寒い」の感じ方は、活動量や代謝など、エアコンでは調整できない個人差にも左右されます。そこで有効なのが、個々の「着衣量」で体感温度を調整するという方法です。

身近で分かりやすい例は、「クールビズ」。軽装にすることで体感温度を下げる取り組みで、ネクタイを外すだけでも体感が変わるといわれています。全員が同じ快適さを感じることは難しくても、各人ができる限り快適さと健康をかなえられるよう、ネッククーラー・ブランケットの使用を許可するなど、従業員一人ひとりが体調を整えやすい環境づくりを目指しましょう。

また、オフィスワークでは喉の渇きを感じにくいため、無自覚に脱水が進む「かくれ脱水」のリスクがあります。涼しく感じるオフィスでも、定期的に水分補給をするよう呼びかけましょう。こちらのコンテンツでは最新の熱中症対策グッズを紹介していますので、ぜひご確認ください。

以上(2026年6月更新)

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画像:日本情報マート

【役員報酬】役員報酬の損金算入 「定期同額給与」と「事前確定届出給与」

1 役員報酬の額を決める際の視点

役員報酬の額を考える際、多くの会社は「企業業績」「従業員賃金とのバランス」「世間相場」の3つの要素を重視します。従業員賃金とのバランスが重視されるのは、中小企業の場合、多くの役員が従業員から出世するので、従業員賃金の延長線上に役員報酬があるためです。

一方、別の視点から考えた場合、

役員報酬の損金への算入

も非常に重要です。役員報酬は高額なので、損金に算入できるか否かで法人税等の負担が大きく変わってきます。この記事で、役員報酬を損金に算入するために導入する「定期同額給与」と「事前確定届出給与」の仕組みを紹介します。

2 定期同額給与とは

定期同額給与とは、

支給時期が1カ月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの(以下「定期同額給与」)。その他これに準ずるものとして政令で定める給与

です。定期同額給与は、役員報酬として支給する際の基本形で、後述する事前確定届出給与のような届け出は不要です。

3月決算の場合、当事業年度4月から翌事業年度3月までの12カ月の支給時期における支給額が同額である役員報酬が該当します。例えば、当事業年度4月から翌事業年度3月までの12カ月において毎月100万円支給するイメージです。

また、これに準ずるものとして政令で定める役員報酬とは、3月決算の場合、6月30日までに改定されて支給される役員報酬です。役員の報酬等は株主総会の決議事項であり、株主総会で役員報酬の支給枠が変更される場合に対応したルールです。

3月決算の場合、定期同額給与の基本形と定期同額給与に準ずるものは次の通りです。

定期同額給与の基本形

定期同額給与に準ずるもの

これ以外にも、定期同額給与の額の改定は臨時改定事由や業績悪化改定事由により認定されます。例えば、業績悪化改定事由に該当するのは次の通りです。

  1. 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  2. 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  3. 業績や財務状況または資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

3 事前確定届出給与とは

事前確定届出給与とは

その役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与および一定の業績連動給与を除く)で、決められた日までに納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届け出をしているもの

です。

事前確定届出給与には役員賞与のイメージがあります。かつて、会計上の役員賞与の取り扱いが、利益処分から費用処理に変更されたことを受けて、事前確定届出給与が認められた経緯があるためです。

ここで、賞与について「従業員」と「役員」とに分けて確認してみましょう。従業員賞与の場合、前事業年度下期の業績を反映した賞与が翌事業年度6月に支給されるのが一般的です。従来の役員賞与も従業員賞与と同様、前事業年度の業績を反映して、翌事業年度に支給されていました。両者の違いは、従業員賞与が経費処理、役員賞与は利益処分である点でした。

そこで、事前確定届出給与を活用して、役員賞与を従業員賞与のように「課税所得の計算上、損金の額に算入できるようにしよう」という考えが出てきました。しかし、前事業年度の業績を反映した従来の役員賞与の考えの場合は通用しません。なぜなら、事前確定届出給与の位置付けは、従来の役員賞与というよりも従来の役員報酬に近いものだからです。分かりやすく説明すると、事前確定届出給与は役員報酬を12等分して毎月同額支給するのではなく、役員報酬を14等分して6月と12月に14分の2を支給するといったものです。

こうした考えは、事前確定届出給与は要件を満たせば、課税所得の計算上、損金の額に算入できることが前提にあるためです。

事前確定届出給与が従来の役員報酬に近いものだと分かるのが、「四半期支給など定時同額に支給する額」を納税地の所轄税務署長に届け出る場合です。定期同額給与を支給している役員には「定期同額給与に加えて支給する額」を、定期同額給与を支給していない役員に対しては、「四半期支給など定時同額に支給する額」を納税地の所轄税務署長に届け出ます。なお、「四半期支給など定時同額に支給する額」について、非同族会社の場合には届け出は不要です。

次の「定期同額給与+事前確定届出給与」と「事前確定届出給与のみ(四半期支給)」の図表を見れば、「四半期支給など定時同額に支給する額」は従来の役員賞与ではなく、役員報酬であることが分かるでしょう。

定期同額給与+事前確定届出給与

事前確定届出給与のみ(四半期支給)

事前確定届出給与について次のことを覚えておきましょう。

  1. 前事業年度の業績を反映し支給するものではないこと
  2. 当該事業年度の課税所得の計算上、損金算入できること
  3. 損金に算入するためには支給額や支給時期などを、事前に納税地の所轄税務署長に届け出なければならないこと
  4. 税務上の運用は厳格で、支給額が異なるなどの際には、その全額が損金不算入になること(ただし、全く支給されない(ゼロの)場合で一定のものを除く)

なお、事前確定届出給与において、企業(法人)の利益調整などは可能な限り排除される傾向にあるため、事前確定届出給与の運用には留意が必要です。事前確定届出給与を導入する際は、税理士などの専門家の意見を聞くか、納税地の所轄税務署に問い合わせましょう。

以上(2026年6月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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画像:Akio Mic-Adobe Stock

【書籍ダイジェスト】『秀吉と秀長』

本書では、史料も少なく一般的に知られていない秀長の実像について、同時代の史料をひもときながら描出している。
秀吉より3~4歳下とみられる秀長は、「弟」という立場からだけでなく、その「才覚」を発揮し秀吉の期待に十分に応えることによって絶大な信頼を得ていたという。例えば政治的後見である「指南」役を担い、秀吉に臣従したそうそうたる武将との関係性を築いたり、それを維持する要となっていたりしたようだ。

書籍ダイジェストは、こちらからお読みいただけます。pdf

【賃金データ集】役員報酬・退職慰労金のモデル支給額

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「役員報酬・退職慰労金」です。

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 役員報酬・退職慰労金の概要

企業と従業員が「労働契約」を交わしているのに対し、企業と取締役(以下「役員」)は「委任契約」を交わしています。労働契約と委任契約ではその性質が大きく異なるため、それぞれに支給される金銭の意味合いも違ったものになります。

従業員に支給される賃金は労働の対償であり、就業規則(賃金規程)で計算方法や支給額を定めますが、役員に支給される「報酬等」(役員報酬、役員賞与、役員退職慰労金等)は職務執行の対価であり、定款または株主総会の決議により、報酬等の額が確定しているものについてはその額、報酬等の額が確定していないものについては、その算定方法などを定めます。

定款または株主総会の決議によって、報酬等の額やその計算方法を定めるのは、いわゆる「お手盛り」を防ぐためですが、実際は株主総会において幅を持たせた枠を決め、具体的な支給額などについては取締役会に一任している企業が少なくありません。しかし、特に上場企業の場合、役員報酬が高額になると、その分企業の利益が減少し株主配当が低くなる恐れがあるため、報酬額の決定については慎重な判断が求められます。なお、企業は役員ごとに、提出会社と連結子会社の役員としての報酬等(連結報酬等)の総額・連結報酬等の種類別の額等を、有価証券報告書に開示しなければなりません(報酬の総額が1億円以上の役員に限ることができる)。

2 国税庁の統計資料によるモデル支給額

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3 人事院の統計資料による役位別に見た年間報酬額

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4 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は次の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■民間給与実態統計調査■
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/top.htm

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■民間企業における役員報酬(給与)調査■
https://www.jinji.go.jp/toukei/0321_yakuinhousyu/0321_yakuinhousyu_ichiran.html

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以上(2026年5月更新)

pj17912
画像:ChatGPT

【朝礼】管理職に伝えたい「ありがとう」の意味

【ポイント】

  • 管理職になると褒められる機会が減るが、それは求められるレベルが上がった証拠
  • 管理職の仕事は、部下を成長させ、組織として成果を上げること
  • 部下がやるべき仕事を管理職がやるのは、部下の成長の機会を奪うことになる

先日、経営者が集まる勉強会に参加したときのことです。テーマは、「頼れる管理職を育成するにはどうすればよいか」というものでした。さまざまな事例や意見が出ましたが、私が印象に残っているのは、ある経営者の「管理職に対しては、どんなささいなことでも感謝の気持ちを伝えているし、皆の前で褒めるようにしている。そうすると管理職は喜んでくれるし、やる気にもなるものだ」という言葉です。

正直に言えば、私はこの話に共感することができませんでした。もちろん、私は日ごろ、管理職を含め、皆さん一人ひとりに感謝をしています。しかし、管理職に対してささいなことで感謝を伝えたり褒めたりするのは、内容にもよりますが、「逆に管理職を過小評価していることになる」と私は考えています。私が皆さんに「ありがとう」と伝えるのは、その人にとって困難なことにチャレンジしてくれたときや面倒なことをやってくれたとき、そして期待するレベルを超えてくれたときです。

皆さんの中には、「管理職になってから、感謝されたり褒められたりしなくなった」と感じている人がいるかもしれません。気持ちが沈んだり、モヤモヤしたりするのは分かります。ただ、それはむしろ、皆さんがそれだけ難しい仕事を任されるようになった証だと、私は思っています。そして、もう一つ大切な理由は、管理職である皆さん自身が、部下に対して感謝を伝え、褒めるという立場に立ったからなのです。管理職が考えるべきなのは、自分が「ありがとう」と言ってもらえるかどうかではありません。部下に「ありがとう」をしっかり伝えること、そして部下が私や管理職から「ありがとう」と言われる機会をつくり、増やすことです。

管理職の仕事は、実際に自分が手を動かすことではありません。部下に手を動かしてもらい、部下を成長させ、組織として成果を上げることです。もし、部下がやるべき仕事を管理職がやっているなら、それは部下の成長する機会を奪っていると認識してください。皆さんの部下が、たくさんの人から「ありがとう」と言われるようになったときこそ、私は皆さんに心から伝えます。「育ててくれてありがとう」と。

              

以上(2026年6月作成)

pj16915
画像:Mariko Mitsuda

技能実習制度は「育成就労制度」へ 外国人雇用はどう変わる?

1 「国際交流」から「人材確保」にシフトした新制度が開始

人手不足が深刻化する中、日本で働く外国人の数は増加を続け、2025年10月末時点で過去最高の257万1037人となりました。このうち49万9334人(19.4%)は「技能実習」の在留資格を持つ外国人、技能実習生です(厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況」)。技能実習制度は、技能実習生が日本企業の下で実習を受け、母国で身に付けにくい技能の習得を図る制度ですが、「企業が技能実習生に、技能の習得に関係ない単純労働をさせる」などの問題が頻発し、

2027年4月1日より、技能実習制度に代わり、新たに「育成就労制度」が開始

されることになりました。

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育成就労制度は、「育成就労」という在留資格を設け、外国人を原則3年間で一定以上の技能を持つ「特定技能」に育成する制度です。根拠法は、「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(育成就労法)」になります。

技能実習制度と似ていますが、

  • 技能実習制度は、外国人が日本で習得した技能を、将来母国に持ち帰ることを想定した「国際協力」のための制度(特定技能への移行も可能だが、制度上は「帰国」が原則)
  • 育成就労制度は、外国人が技能の習得後も、日本企業の戦力として活躍することを想定した「人材確保」のための制度(帰国せず、日本に「在留」することが原則)

であり、目的が異なります。

育成就労制度は、外国人が日本に残って働くことが前提なので、受け入れ企業は外国人を将来の戦力にすべく、大切に育成するでしょう。前述した、企業が「技能の習得に関係ない単純労働をさせる」という問題の解決につながることも期待されます。

施行は2027年4月1日ですが、時間をかけて外国人を戦力化していく制度なので、人手不足解消の打ち手を外国人に期待している企業は、早めに準備をしておいたほうがよいかもしれません。以降で制度の概要を簡単に紹介するので、今のうちにイメージを押さえておきましょう。

なお、育成就労について詳しく知りたい場合、次のURLも併せてご確認ください。

■出入国在留管理庁「育成就労制度」■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/index_00005.html
■育成就労制度の制度概要・関係法令■
https://www.moj.go.jp/isa/03_00163.html
■e-Gov「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」■
https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC0000000089/20270620_506AC0000000060

2 育成就労制度は、特定技能制度の「前段階」

育成就労制度の紹介に入る前に、先ほども軽く触れた「特定技能制度」について説明します。

特定技能制度とは、国内での人材確保が困難な「特定産業分野」において、一定の技能レベルを持つ外国人を受け入れることを目的とした制度

です。在留資格は、業務に必要とされる技能レベルに応じて「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類に分けられます。2号のほうが1号よりもレベルの高い技能を必要とします。

  • 特定技能1号:相当程度の知識または経験を要する業務に従事する外国人
  • 特定技能2号:熟練した技能を要する業務に従事する外国人

2026年1月23日の閣議決定により、特定技能1号の特定産業分野は、「介護」「ビルクリーニング」「リネンサプライ」「工業製品製造業」「建設」「造船・舶用工業」「自動車整備」「航空」「宿泊」「自動車運送業」「鉄道」「物流倉庫」「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」「林業」「木材産業」「資源循環」の19分野となっています。特定技能2号の特定産業分野は、この19分野から「介護」「リネンサプライ」「自動車運送業」「鉄道」「物流倉庫」「林業」「木材産業」「資源循環」を除いた11分野です(見直しの可能性あり)。

特定技能の外国人を雇用できれば、企業にとっての「即戦力」になりますが、それだけの人材を確保するのはハードルが高く、この点をクリアするための制度が育成就労制度です。

育成就労の外国人は、在留資格を取得した当初は特別な技能を持っていませんが、

1.原則3年間の育成就労で技能レベルを高め、特定技能1号の在留資格を取得させる

2.特定技能1号の在留期間中(上限は5年間)に、よりレベルの高い技能を身に付けさせる

3.特定技能2号の在留資格を取得させる(特定技能2号の対象外となる分野を除く)

という流れで、段階的に戦力化が図れます。

なお、特定技能1号には在留期間の上限(5年間)がありますが、特定技能2号には上限がない(在留資格の更新は定期的に必要)ので、2号まで取得させることができれば、長期的に企業の戦力として活躍してもらうことが期待できます。

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3 技能実習制度との違いとは?

1)対象としている産業分野・職種が違う

育成就労制度は、特定技能制度の「前段階」という位置付けなので、対象としている産業も同じく、特定産業分野が基本になります。正確に言うと特定産業分野のうち、

就労を通じて技能を修得させることが相当とされる「育成就労産業分野」

が対象になります。具体的には

特定産業分野のうち「航空」「自動車運送業」を除く17分野

がそうです。

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一方、技能実習制度では、技能実習2号・技能実習3号については従事させられる職種が省令で定められています(技能実習1号については特に定めなし)。

両者が対象としている産業分野・職種は若干異なっていて、技能実習2号移行対象職種のうち、

  • クリーニング職種(一般家庭用クリーニング作業)
  • 空港グランドハンドリング職種
  • ボイラーメンテナンス職種(ボイラーメンテナンス作業)

は育成就労産業分野の対象にならないとされています。技能実習2号移行対象職種については、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧(令和8年4月10日時点 94職種171作業)■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html

また、下記の技能実習生については、技能実習制度の下で受け入れを続けることができます。該当しない場合、技能実習生として再度入国することはできませんが、技能実習の内容によっては、育成就労計画の認定を受ければ育成就労外国人として入国できる可能性があります。

  • 施行日(2027年4月1日)の時点ですでに技能実習生として来日している者
  • 2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請済みで、2027年6月30日(原則)までに技能実習を開始する者

2)計画の認定手続きは基本的に同じ(ただし、育成就労制度のほうが手間が少ない)

育成就労制度では、外国人の受け入れ企業が「育成就労計画」を作成し、「監理支援機関」の認定を受ける必要があります。育成就労計画には

外国人に従事させる業務、業務に必要な技能、育成就労の目標(例:日本語能力)など

を定めます。

技能実習制度の場合も、受け入れ企業が技能実習計画を作成して監理団体の認定を受ける必要があり、このあたりの流れはどちらの制度も基本的に同じです。

  • 技能実習制度では「技能実習1号」「技能実習2号」「技能実習3号」のそれぞれの段階で計画の認定を受ける必要がある(最大3回、認定を受ける必要がある)
  • 育成就労制度では、当初から外国人労働者のキャリアアップを視野に入れて、3年間の計画の認定を受ければよい(1回、認定を受ければよい)

という具合に、育成就労制度のほうが認定手続きにかかる手間は少なくなっています。

3)就労開始前の日本語教育がマストに

技能実習制度では、日本語能力の要件は原則ありません(「介護」分野を除く)。一方、育成就労制度では、外国人が就労を始める前までに、日本語能力「A1」相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格すること、またはそれに相当する日本語講習を認定日本語教育機関などで受講することが求められます。

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外国人に日本語講習の受講機会を提供するのは、受け入れ企業の義務です。具体的には、

  • 入国時に「A1」に相当する講習を100時間以上受講させる義務(A1は、相手がゆっくり、はっきりと話して、助け船を出してくれれば簡単なやり取りができるレベル)
  • 就労開始後に「A2」を目標とした講習を100時間以上受講させる義務(A2は、簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応じることができるレベル)

を負います。費用は企業負担です。ただし、A1・A2相当の試験に事前に合格している場合は、受講不要です。

4)一定の状況を満たせば転籍も可能に

育成就労制度では、技能実習制度よりも「転籍(企業との労働契約を解消し、別の企業と労働契約を結ぶこと)」の要件が緩和されます。

この背景として、技能実習制度では技能実習生の失踪が多いことが挙げられます。2024年の失踪者数は6510人にも上ります(出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数(速報値)」)。出入国在留管理庁によると、失踪の主な原因としては「賃金の不払いなど、受け入れ企業の不適切な取り扱い」も多いようです。

そして、この問題の温床になっていると指摘されてきたのが、技能実習生に対する「転籍」の制限です。技能実習制度では転籍の制限が厳しく、技能実習生は受け入れ企業の労働条件が悪質でも他社に移ることができず、失踪しか選択肢がない状況に追い込まれやすかったのです。

育成就労制度では、この点が改善され、

  • 人権侵害(パワハラや暴力)を受けたなどの「やむを得ない事情」がある場合
  • 同一業務区分内(転籍前とほぼ同じ業務に従事し)、就労期間・技能等の水準・転籍先の適正性に係る一定の要件(転籍制限期間(1年以上2年以下)の経過、技能・日本語能力の修得、転籍先が優良認定を受けていること等)を満たす場合人

については、本人の意向がある場合、転籍が認められることになりました。ただし、分野別に最終調整中のため、今後の動向に注視してください。

以上(2026年7月更新)

pj00730
画像:ChatGPT

【事業承継】これだけ押さえて! 中小企業の事業承継

1 なぜ、事業承継が必要なのか?

事業承継とは、

事業を後継者に承継して会社を存続させること

です。日本ではかつてないほど事業承継の話題が盛んですが、それは、

経営者の高齢化と後継者不足が進んでいるから

に他なりません。帝国データバンクが毎年公表している「全国社長年齢分析」によると、2025年時点の社長の平均年齢は60.8歳となりました。人は必ず年をとるので、平均年齢が上がるのは当然です。となると、事業承継で社長の若返りを図るしかありません。しかし、社長の交代率は3.84%と低水準にとどまります。この主な要因は後継者不足です。

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統計によって異なりますが、日本の約340万社の会社のうち、99%以上は中小企業とされています。日本経済を支える中小企業が、経営者の高齢化と後継者不足で廃業を余儀なくされれば、日本経済に与える影響は計り知れません。

今、一社一社の取り組みが重要な局面にきています。「事業承継」という多分野の取り組みで、経営者は何を意識すればよいのかをご紹介します。

2 事業承継が必要なものは3つ

事業承継が必要なものは「人(経営)、資産、知的資産」の3つです。

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1)人(経営)の承継

後継者を決定し、教育して経営権を承継します。誰を後継者にするかについては、「1.子どもなどへの親族内承継」「2.役員や従業員への親族外承継」「3.M&Aによる第三者への親族外承継」があります。これらは次章で紹介します。

2)資産の承継

自社株、土地などの不動産、設備などの動産などを後継者に引き継ぎます。このうち、自社株については評価が重要です。事業承継時は評価を下げたいはずですから、そうした方法を専門家に相談します。ここでは後継者の資力も問題になります。後継者に自社株の買い取り資金がないケースや、贈与や相続の問題が出てくることもあります。とはいえ、後継者の持株比率を薄めることは得策ではありません。この点は十分に認識すべきです。

また、承継されるのは資産だけではないことにも注意が必要です。例えば、会社が金融機関などからの借り入れ、つまり借金をしていれば、それも承継されます。つまり、貸借対照表(BS。Balance Sheet)が承継されるイメージを持っておくとよいでしょう。

3)知的資産の承継

知的資産は、自社の価値の源泉を承継することです。最上位の概念としては経営理念を承継することになります。経営者の中には「経営理念の承継こそが事業承継である」という人がいるくらい重要なものです。また事業承継を手伝う支援機関も、現経営者へのインタビューを通じて「思い」を言語化し、後継者候補などに伝えたりします。

この他、取引先、さまざまな人脈、技能、知的財産権、許認可など会社経営をするために不可欠なものを承継します。

3 後継者選びの選択肢

事業承継において、最も重要なのは「人(経営)の承継」だといえるでしょう。前述した通り、誰に承継するかの選択肢は、

1.子供などへの親族内承継

2.役員や従業員への親族外承継

3.M&Aによる第三者への親族外承継

の3つに大別されます。かつては子供などへの親族内承継が圧倒的に多かったですが、時代とともに役員・従業員への親族外承継が増えてきています。

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子どもなどに承継する親族内承継でも、これまでの事業をそのまま続けるのではなく、後継者の新しい発想でベンチャー企業のように新規事業にチャレンジするケースも増えています。

また、親族や役員・従業員に適した後継者候補がいない会社などでは、社外からの登用(第三者への承継)も増えています。昨今は「後継者を求める会社」と「経営者になりたい人」をマッチングさせるサービスも多く、多様な候補の中から後継者を選べることができます。とはいえ、実際に事業承継をした経営者の中には、「安易なM&Aをすべきではない」と警鐘を鳴らす人もいます。特にオーナー企業の経営者にとって、会社は自分自身と一体であり、さまざまな思いが込められています。第三者に承継する場合は、本当に慎重な判断が必要です。

4 事業承継を誰に相談するか?

いざ事業承継を進めるとして、誰に相談すればよいのか迷います。これには幾つかの候補があるので紹介します。

なお、中小企業庁では、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するために、M&A支援機関(フィナンシャル・アドバイザー(FA)やM&A仲介会社)に係る登録制度を実施しています。中小企業にとってのメリットは、

登録を受けたM&A支援機関を利用すると、必要な手数料の一部が補助され、金銭的な負担が軽減される

ことです。

1)事業承継・引継ぎ支援センター、商工会議所

中小機構が設置している事業承継を相談できる公的な窓口として、

事業承継・引継ぎ支援センター

があります。各都道府県に設置され、事業承継に関する専門的なアドバイスが受けられます。

公的な窓口なので安心感があり、相談も無料です。ただし、具体的な取り組みを支援してくれるわけではなく、話が進むと弁護士などの専門家に有料で相談することになります。以上から、検討初期の相談に適しているといえるでしょう。

商工会議所でも、独自に事業承継のサポートを行っています。商工会議所の会員になっていることが前提ですが、一度、相談してみるのもよいでしょう。

2)銀行、生命保険会社、損害保険会社など

取引のある銀行や生命保険会社、損害保険会社なども事業承継の相談先となります。特に銀行は経営計画などの提出を受けていることもあり、会社の状況をよく知っているはずなので、良い相談相手になってくれる可能性があります。また、事業承継をする場合は銀行に相談することになるので、この手間も省けます。

ただし、銀行が事業承継の全てに対応するわけではなく、話が進むと専門家に相談することになります。M&Aを検討している場合、銀行が提携するM&A仲介業者などを紹介してくれますが、客観的に自社に適しているM&A仲介業者かどうかは分かりません。そのため、独自に探してみるべきでしょう。

銀行ほど会社の経営に踏み入ってはいませんが、基本的な考え方は生命保険会社や損害保険会社についても同じです。生命保険会社は税制に強い(税理士などと連携している)ため、贈与や相続などについても相談できるでしょう。

銀行などの金融機関は、間接的なビジネスとして事業承継のサポートを行っており、最近は特に力を入れています。ただし、自ら事業承継に関わる各分野に専門的な知識を有しているとは限らず、どちらかといえば専門機関への引き継ぎを担うイメージかもしれません。

3)税理士、弁護士など

税理士は中小企業にとって最も身近な専門家です。日ごろの付き合いの中で会社のこともよく分かっています。税制に関する相談相手としては最適ですが、クオリティーのバラツキが大きいということと、自身の関与先の事例しか持ち合わせていないことが問題です。

弁護士は法的な見地からアドバイスを受けることができます。ただし、中小企業の事業承継で関わるのは税理士などが多く、弁護士の出番はあまりないのが実情ですが、資本政策が複雑になりそうなケースなどでは頼れる相談相手となります。

4)M&A仲介業者など

事業承継でM&Aを選択する場合に相談できます。M&A仲介業者やM&Aアドバイザー、M&Aコンサルティングなどの名称となりますが、基本的な違いはないでしょう。対象とするM&Aの規模によってはサポート対象外となることもあります。まずは銀行などからM&A仲介業者を紹介してもらい、そこで聞いた話を一つの基準に他の業者にも話を聞いてみるとよいかもしれません。

また最近は、

  • 後継者を求める会社と経営者になりたい人のマッチングプラットフォームの登場
  • 中小企業に幅広いネットワークを有する経営者が、知り合い同士をつなげる
  • 元ベンチャーキャピタリストなどが、知り合い同士をつなげる

などの動きもあり、相談先は多様化しています。

以上(2026年7月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

事業承継で詐欺被害者にならないためにM&A詐欺の手口と対策

1 そのM&A、本当に安全ですか?

少子高齢化による後継者不足を背景に、M&Aを使った事業承継が急速に広がっています。国も補助金や相談窓口を整備してM&Aを後押ししており、今では、中小企業の間でも「会社を将来につなぐための現実的な選択肢」になりつつあります。

一方で、悪質な業者により、M&Aを検討する中小企業の経営者が、深刻な被害に遭うケースも起きています。例えば、2024年には、

買収後に会社の資金などを抜き取り、経営者保証(社長個人の借金保証)も解除しないまま倒産させる

という事件が大きく報道されました。会社を売却した経営者は、会社を失っただけではなく、会社の借金だけが個人保証として残り、数億円規模の返済を背負うケースもあったそうです。

本来、M&Aは「会社と従業員を守るための手段」のはずです。しかし現実には「後継者問題を何とかしたい」「従業員の雇用だけは守りたい」という経営者の切実な思いにつけ込み、不安や焦りを利用する悪質な業者もいるのです。だからこそ、中小企業の経営者には、

「M&Aを進めるかどうか」だけでなく、「誰と進めるか」を慎重に見極める視点

が欠かせないのです。

自身が事業承継で詐欺被害者にならないために、この記事では、M&A詐欺の代表的な手口や、悪質な買い手・仲介業者を見分けるポイント、被害を防ぐために経営者が押さえておきたい実務上の注意点を紹介します。

2 M&A詐欺の主な手口 ─ 売り手が狙われる5つのパターン

1)資産の抜き取り+経営者保証の放置

冒頭でも紹介したケースで、被害がとりわけ深刻化しやすい手口です。

「あなたの会社を買い取って発展させます」と持ちかけて経営権を移転させた後、会社の預貯金や売掛金、有価証券などの価値ある資産を、自分たちが支配する別の会社などへ速やかに移します。資産を抜き取られた会社は資金繰りが行き詰まり、倒産に追い込まれます。

さらに、売買契約の段階で「銀行借入の連帯保証(社長個人の借金保証)は、会社を引き継いだ後にこちらで外します」と約束していても、会社が倒産した後にその約束が履行されることはありません。

経営者保証の解除は、お金を貸している銀行が同意しなければ、いくら譲渡(売却して経営権を渡すこと)の契約書に「保証を外す」と書いてあっても法的な効力は生じません。

結果として、会社を失った元の経営者の手元には、巨額の個人債務だけが残される

ことになります。

このような被害は、連帯保証を外すことを株式譲渡の前提条件にすることで回避することができます。M&Aの契約において、通常盛り込むべき条項をしっかりと盛り込んでいくことが重要です。

2)対価(売却代金)の未払い・踏み倒し

会社の経営権や株式を引き渡したにもかかわらず、約束されていた売却代金が支払われない手口です。「手続きの都合上、先に会社の譲渡手続きを行ってください。代金は来月に一括で支払います」といった条件や、分割払いの提案を持ちかけてきます。

売り手側が相手を信用して先に会社を引き渡してしまうと、譲渡が完了した途端に相手の態度が変わり、「後払い」の期日が来ても言い訳を繰り返して引き延ばしたり、音信不通になったりします。分割払いのケースでは、最初の1〜2回だけは支払い、油断させたところで支払いを止めて連絡を絶つという事例も見られます。

一度、会社の所有権や預金口座の印鑑などを渡してしまうと、法的な手続きで会社を取り戻すには膨大な時間と費用がかかります。その間に会社の中身が毀損されてしまうため、

代金を受け取る前に会社を渡すことは絶対に避ける

ようにしてください。

代金の支払条件についても、株式譲渡契約において明確に定め、対価の支払を受けた後に銀行預金通帳や実印などを引き渡すことが重要になります。

3)機密情報の抜き取り

最初から会社を買い取る意思がないのに、買い手を装って近づいてくる手口です。M&Aの交渉過程では、売り手は会社の経営状況や強みを説明するために、財務諸表(会社の経営成績や資産状況をまとめた書類)だけではなく、顧客リスト、技術情報、製造ノウハウ、従業員の個人情報といった最重要な機密データを開示することになります。

こうした開示されたデータそのものを目的として近づき、書類を一通り集めた後に「精査(詳しく調査)した結果、今回は買収を見送らせていただきます」と理由をつけて辞退します。

この手口には、ライバル関係にある同業他社が、自社の情報を盗み出すために偽の買収話を持ちかけてくるケースも含まれます。

盗まれた顧客リストを使って営業をかけられたり、技術を模倣されたりして、自社の市場価値を大きく落とされる危険

があります。

M&Aの情報を開示する場合には、秘密保持契約を取り交すことが不可欠です。また、重要な顧客情報に関しては、基本合意書(買収価格や取引手法などの基本的な条件について、当事者間で現時点の合意内容を確認するための文書)を取り交わした後に開示するなど、情報管理が重要となります。

4)仲介会社による不当な高額手数料

M&Aの手続きをサポートする仲介会社の中にも、不適切な業務を行う業者が存在します。健全な仲介会社であれば、売り手と買い手のマッチングを行い、無事に契約が成立した際に売買金額に応じた成功報酬を受け取ります。しかし悪質な業者の目的は、成約ではなく途中のプロセスで発生する手数料を得ることです。

具体的には、「あなたの会社を高く買いたいという候補者がいます」と提案し、

交渉を始めるための着手金として高額な費用を請求

します。その後は「買い手側が資料を検討中です」などと言い訳をして引き延ばし、進展がないまま毎月の定額費用(月額顧問料)を請求し続けます。

売り手側が不審に思い解約を申し出ると、契約書に小さく書かれた条項を盾に、

高額な違約金や中途解約手数料を請求

してきます。実在しない、あるいは買う気のない買い手を見せ球にして、手数料だけを徴収する手法です。様々な仲介会社が活動していますので、どの仲介会社と話を進めるのかを見極めることも重要となります。

5)M&Aブローカーによる詐欺

M&Aブローカーとは、自分たちでは専門的な仲介業務や法律の手続きを行わず、売り手や買い手の情報を集めて別の仲介会社に横流しし、紹介料を得る業者のことです。現在、M&Aの仲介業には特別な資格や免許が必須でないため、専門知識のない個人や不適切な目的を持つ者が参入しやすい環境にあります。

典型的な手口は、経営者に「私の人脈の中に、あなたの会社を今すぐ買いたがっている資産家がいる」などと持ちかけることです。そして、

「資産家と面会するためのセッティング費用」や「情報提供料」という名目で、最初に現金を要求

してきます。そして、お金を支払った後、ブローカーは「相手の都合が悪くなった」などと引き延ばしを始め、最終的には連絡が取れなくなります。

3 悪質な相手を見極める4つのチェックポイント

1)仲介会社は中小企業庁の登録機関か

中小企業庁は、悪質な業者の排除と健全な取引を推進するために「M&A支援機関登録制度」を設けています。これは、国の定めたルールや倫理基準を守ることを遵守事項とした仲介会社をデータベースに登録し、一般に公開しているものです。

検討している仲介会社がこの登録機関であるかどうかは、中小企業庁の公式ウェブサイトで検索できます。登録されている業者は、強引な勧誘の禁止や手数料の事前説明などが義務付けられているため、一定の信頼性の目安になります。ただし、登録されているからといって完全に安全とは言い切れないため、あくまで最低限の確認として活用してください。

2)買い手企業は実在するか・資金力はあるか

買い手候補が現れたら、その会社の実態を客観的に確かめる必要があります。会社の名前と住所を確認し、法務局で「商業登記簿謄本(会社の設立日や役員、目的などが書かれた公的な書類)」を取得してください。

もし設立されたばかりの会社であったり、住所がバーチャルオフィス(住所や電話番号をレンタルするサービス)であったりした場合は、実体のないペーパーカンパニーの可能性があります。また、決算書の開示を正当な理由なく拒む相手も、買い取るための資金力がない可能性が高いため注意が必要です。特に「代金は後で払うので、先に経営権を譲ってほしい」という要求は、絶対に受け入れてはいけません。

3)手数料の内訳と支払いタイミングが書面で示されているか

信頼できる仲介会社は、費用に関する説明を事前に行います。着手金、月額費用、そして契約が成立したときの成功報酬がそれぞれいくらになるのか、またどのような計算根拠でその金額になるのかを、最初の仲介契約書などにすべて明記します。

「費用は会社が売れた後でいいですから、まずは進めましょう」と口頭で説明しながら、書面にその旨の記載がない場合は注意が必要です。後から「業務に要した実費」などとして身に覚えのない請求をされる恐れがあります。また、実績や具体的な提案が示されていない段階で、最初に高額な着手金を要求してくる場合も要注意です。

4)「急かす・煽る」言葉が出てきたら立ち止まる

不適切な取引を迫る業者に共通する特徴は、売り手に冷静な思考時間を与えない点です。

  • 「今すぐ決断しないと、この買い手は他の会社に行ってしまう」
  • 「この買収金額を提示できるのは、今週中だけである」
  • 「情報の漏洩を防ぐため、他の専門家や家族にはこの話を一切秘密にしてほしい」

このような、決断を急がせたり、外部から孤立させようとしたりする文言が出た場合は、一度交渉を中断してください。M&Aは、雇用や経営権が関わる慎重な取引です。売り手側が、弁護士や税理士、中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格)といった外部の専門家に相談することを拒むような業者は信用できません。

4 被害に遭わないための4つの対策

1)弁護士を必ず起用する

M&Aの交渉を進めるにあたり、企業の法律問題に精通した弁護士を最初から自社の味方として起用することが、最大の防衛策となります。M&Aの取引では膨大なページ数の契約書が交わされますが、詐欺を働く業者は一般の経営者が見落としがちな細かい文言の隙間に、売り手が不利になる抜け穴を忍ばせています。

専門の弁護士をチームに迎えることで、契約書に隠されたリスクを徹底的に洗い出すことが可能です。例えば、経営者保証を確実に外すための条件交渉や、売却代金が支払われなかった場合の法的処置、機密情報が漏洩した際の損害賠償の取り決めなど、売り手の権利を守るための厳格な契約書へと修正させることができます。

「弁護士費用が高そうだから」と躊躇(ちゅうちょ)される方もいらっしゃいますが、万が一会社や資産を騙し取られた場合の計り知れない損失と比較すれば、必要な安全コストとして判断することが賢明です。

2)買い手の決算書を事前に確認する

M&Aでは通常、買い手側が売り手の会社を調査するデューデリジェンス(買い手が売り手の財務や法務のリスクを詳しく調べること)が行われます。しかし、「相手を調査する権利は、売り手側にも当然ある」という視点を見落としてはいけません。

買い手に資金力があるか不安な場合は、基本合意(売買の大枠についてお互いに合意する段階)に進む前の段階で、弁護士や公認会計士を通じて、民間信用調査会社に買い手企業の与信調査を依頼しましょう。また、金融機関を交えたスキームであれば、銀行が買い手の属性を事前に審査するため、詐欺被害を防ぐ強力なフィルターとなります。

前述のような専門家や金融機関を介す前に、前もって自身で取引の安全性を確かめる手段としては、買い手企業に対して直近2〜3期分の決算書の提示を求めてください。健全な経営を行っている買い手であれば、買収資金の裏付けを示すために財務状況の開示を拒むことはありません。もし相手が決算書の提示を頑なに拒んだり、「設立したばかりでまだ決算書がない」と言い訳をしたりする場合は、買収資金を持っていないか、実体のないペーパーカンパニー(中身のない形だけの会社)である可能性が高いと判断できます。

3)経営者保証の解除を「書面+銀行の同意」で確認する

手口の項目でも触れた通り、会社の連帯保証を外すためには、売り手と買い手の二者間でいくら約束しても意味がありません。必ず融資を受けている金融機関を交えた三者間での合意手続きを進める必要があります。

実務上の確実な対策としては、クロージング(譲渡代金の支払いと経営権の移転を行い、取引を完了させること)の日を、銀行から経営者保証の解除について正式な同意が得られた後、あるいは同時に設定することです。

「会社を譲渡した後に、買い手と一緒に銀行へ行って手続きをしましょう」という買い手側の提案に応じてはいけません。金融機関が同意するまでは経営権を渡さないという条件を売買契約書に明記して、確実なステップを踏むことが必要です。

4)「特定事業者リスト」を活用する

近年多発する不適切なM&A取引に対抗するため、業界団体や行政も対策を強化しています。その一環として、M&A支援機関協会(M&Aに関わる専門業者が集まる団体)が「特定事業者リスト」の運用を行っています。

このリストには、過去にM&Aの現場で著しく不適切な行為や詐欺的な行為を行ったと認定された企業の情報が蓄積されており、交渉を始める前に相手企業が登録されていないかを照合することができます。また、国の中小企業庁の公式ウェブサイトでも、悪質な事例の傾向や注意喚起の情報を随時更新して発信しています。

これらの公的な情報やリストを事前に確認し、少しでも不審な点がある業者とは最初から接触を持たないように心がけることで、トラブルに巻き込まれるリスクを大幅に下げることができます。

以上(2026年7月作成)
(監修 日比谷タックス&ロー弁護士法人 弁護士 福崎剛士)

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画像:thatinchan-Adobe Stock

実践できるメニュー例付き! 夏バテ・熱中症を防ぐランチ術

1 夏バテ・熱中症対策は毎日の食事から!

近年の夏は毎年が猛暑。本格的に暑くなってくると、体がだるい、食欲がない……といった不調を感じることも。ですが、その不調は日々の「食事の摂り方」で、少しずつ改善していけるかもしれません。

そもそも、「夏バテ」「熱中症」はどのような仕組みによって引き起こされているのか、簡単に説明すると、

  • 夏バテ:炭水化物をエネルギーに変換するための「ビタミン類」が不足し、エネルギー代謝がうまく機能しなくなる
  • 熱中症:大量の汗とともに「水分」「塩分」が失われ、血流が滞り、脳や筋肉に必要な酸素や栄養が行き渡らなくなる

となります。どちらの症状も、栄養が深く関わっているのです。

そこでこの記事では、

  • 何を食べれば夏バテ・熱中症の対策に効果的なのか
  • 外食、コンビニやスーパー、自炊などシチュエーション別のおすすめ献立

を、具体例を出しつつ分かりやすく紹介します。

ビジネスパーソンにとって、夏場のコンディション管理は仕事のパフォーマンスに直結する重要な課題です。本格的な暑さが訪れる前に、「夏バテしづらい・熱中症になりづらい」食事のポイントを確認しておきましょう。

2 夏バテ・熱中症にならないための食材整理

1)積極的に取りたい栄養素と食材

ここでは、夏バテ・熱中症の対策として食事に取り入れたい栄養素と、それを含む食材を紹介します。

1.ビタミンB1(豚肉、うなぎや鮭などの魚、大豆、玄米、ごまなど)

ビタミンB1

ビタミンB1は、炭水化物(ブドウ糖)をエネルギーに変換するために必要な栄養素です。夏バテはビタミンB1が不足していることで引き起こされることが多いため、積極的に摂取するのをおすすめします。また、

ビタミンB1はアリシン(ニンニク、ニラ、玉ねぎなどに含まれる栄養素)と一緒に摂ると、効率よく摂取できる

ことが知られています。肉や魚を食べる際は、アリシンを含む食材を意識的にトッピングしたり、合わせたりすることで、エネルギー不足を防ぐことができるでしょう。

2.カリウム(パセリ、ブロッコリー、ほうれん草、アボカド、バナナ、海藻類など)

カリウム

次は、「暑くなると頻繁に足がつる!」という方。心当たりのある方は、汗をかくことによって失われがちな栄養素「カリウム」が不足している可能性があります。カリウムは、細胞の浸透圧を調節する役割を持っており、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルとバランスよく摂ることで、足がつるなどの筋肉トラブルや脱力感の予防に役立つと考えられています。日々の食事で意識的に摂ることが、熱中症対策として効果的です。

3.ビタミンC(赤・黄パプリカ、ブロッコリー、ゴーヤ、レモン、アセロラなど)

ビタミンC

ビタミンCは、ストレスに対抗するホルモンの合成を助けるビタミンです。しかし、夏は気温差や寝苦しさなどのストレスが多く、紫外線によるダメージの緩和にもビタミンCが消費されるため、体内ではこのビタミンが不足しがちです。しかも、

ビタミンCは、体内で合成することができない

ので、自主的に摂取しなければどんどん体内から減っていきます。夏場は積極的にビタミンCを摂取することを意識していきましょう。

4.粘り成分(山芋、オクラ、なめこ、モロヘイヤ、納豆、れんこんなど)

粘り成分

山芋やオクラなどの粘り成分の正体は、日本では慣用的に「ムチン」と呼ばれることがありますが、正確には「ムチレージ」と呼ばれる多糖類で、動物由来のムチン(糖タンパク質)とは異なる成分です。ムチレージは水溶性食物繊維の一種として腸内環境を整える働きが期待されており、夏場の食事に取り入れたい食材です。

2)夏バテ・熱中症を回避するために、なるべく避けるべき食材は?

1.麺類「単品」、冷たくて甘い物

食欲のない夏場、せめて何か食べなくては……! と思ったとき、真っ先に思いつくのはそうめんやうどんなど、口当たりの良い麺類。しかし、肉類や魚類などのトッピングなしで、麺類だけで済ませるのは避けたいところです。前述の通り、炭水化物だけの食事はエネルギー不足を招き、夏バテを加速させてしまうのです。また、アイスクリームなどの冷たいものは胃腸を直接冷やし、消化機能を低下させる原因になります。

2.スポーツドリンクの常飲

また、熱中症対策にスポーツドリンクは有効ですが、日常生活で水の代わりに飲むのは控えましょう。多くの製品にはかなりの糖分が含まれており、過剰摂取は血糖値の急上昇を招いてしまいます。

3 シチュエーション別おすすめ献立

ここでは、外食、自炊、コンビニやスーパーで買うとき……など、細かなシチュエーションに合わせておすすめの献立をご紹介します。

1)定食屋・和食屋など

定食屋・和食屋

定食屋・和食屋などは、副菜や汁物なども合わせて栄養バランスの良い食事を摂取できるので、ランチの選択肢としては最適です。例えば、

ビタミンB1を多く摂取できる豚の生姜焼き、カツオのたたき、レバニラ炒め

などをおかずにすると、夏バテ対策が期待できます。

また、定食についてくるお味噌汁は、ナトリウムなどのミネラルが豊富に含まれているため熱中症対策に効果バツグンです。暑い時期ですが、欠かさず飲むようにするのがよいでしょう。

2)蕎麦屋・うどん屋

蕎麦屋・うどん屋

食欲がないときでも、時間がないときでも気軽に入れるお蕎麦屋さん、あるいはうどん屋さんは夏の暑い時期に重宝している人も多いはず。しかし、シンプルすぎるお蕎麦・うどんは夏バテを加速させる恐れも……。

夏バテ・熱中症対策になるトッピングの選び方としては、

  • 粘り成分とアミノ酸を摂取できる月見とろろ
  • タンパク質を摂取できる油揚げに、カリウムが豊富なワカメを追加
  • 消化酵素で胃腸に優しいなめこおろし

などがおすすめです。

3)コンビニやスーパーでの組み合わせ術

コンビニやスーパーでの組み合わせ術

時間がない時の味方であるコンビニやスーパーのお惣菜。「単品」で済ませず、栄養素をパズルのように組み合わせるのがコツ。おすすめの組み合わせは、たとえば以下の通りです。

1.豚しゃぶ冷やしうどん+納豆

冷たい麺だけでは炭水化物に偏りますが、豚肉と納豆(植物性タンパク質+ビタミンB1)を合わせることで、糖質をエネルギーへ効率よく変換できるようになります。

2.ネバネバ具材の冷やしそば+サラダチキン

そばのビタミンB群に、サラダチキンのイミダゾールジペプチド(疲労回復物質)をプラス。オクラやめかぶは水溶性食物繊維が豊富で、腸内環境を整える働きが期待できます。

3. 穴子や鰻の押し寿司やおにぎり+バナナ(またはカットフルーツ)

穴子や鰻はビタミンA・B1を豊富に含んでいます。デザートのバナナで大量のカリウムを補うことで、夏場の足のつりや脱力感を防ぎます。

4)自炊

自炊

忙しいときの自炊は、簡単なものに頼りがち。なるべく手をかけずに、必要な栄養が摂れる組み合わせを紹介します。

1.「豚肉×香味野菜」

豚肉とネギやニラの組み合わせで、ビタミンB1とアリシンを同時に摂取できます。レシピによっては電子レンジでの加熱のみで出来るものもあります。

2.「厚揚げ×ネバネバ食材」

厚揚げは調理不要で、白米の糖質を燃やすビタミンB1とタンパク質が含まれています。納豆やオクラに豊富な水溶性食物繊維が、腸内環境を整え、夏場の胃腸ケアをサポートします。

3.「アボカド×発酵食品」

アボカドに含まれるカリウムが、細胞の水分バランスを整えます。キムチ等の発酵食品と合わせることで、夏場に崩れやすい腸内環境(免疫の要)を整え、夏風邪の予防にも繋がります。

4.「サバ缶×夏野菜」

サバ缶に豊富に含まれるEPA・DHAには、血液の流動性を改善する働きがあることが知られています。血流が良好に保たれることで、体全体への栄養や酸素の供給が滞りにくくなり、夏場のコンディション維持に役立つと考えられます。

5)どうしても食べる時間がない時は……

どうしても食べる時間がない時

とはいえ時間がなくて食べられない!という方のために、熱中症対策の基本である「水分・塩分補給」を食事から実現する最小単位のメニューも紹介します。

1.梅干しおにぎり+枝豆+カップ味噌汁

おにぎりの糖質(エネルギー)と梅干しの塩分・クエン酸は、経口補水液を固形にしたような、熱中症予防の理想的な組み合わせです。さらに、自然解凍で食べられる枝豆をプラスすることで、代謝を助けるビタミンB1とタンパク質を補給できます。また、お湯を注ぐだけで食べられるカップのお味噌汁でミネラルも補給しましょう。調理時間ゼロで作業しながらでも食べられるスタミナ食です。

2.ビタミンB群配合のゼリー飲料+100%グレープフルーツジュース

なるべくは避けたいですが、喉を通らない時はゼリー飲料が頼りになります。そんなときは、必ず成分表を見て「ビタミンB1」「ビタミンB12」などが含まれているものを選んでください。単なるエネルギー補給よりも、それを燃やすための「着火剤」となるビタミンB群が重要だからです。

また、グレープフルーツには、苦味成分である「ナリンギン」をはじめとするポリフェノールが含まれています。苦味成分一般には胃酸の分泌を促す働きが知られており、食欲が落ちているときに酸味や苦味のある食品を取り入れることは、消化を助ける観点から理にかなっていると考えられます。ただし、ナリンギン自体の食欲促進効果については現時点では明確な根拠がなく、むしろ食欲を抑制する方向に働く可能性も指摘されています。グレープフルーツジュースはあくまで水分・ビタミンCの一時的な補給手段として少量にとどめ、食欲が戻り次第、しっかりとした食事に切り替えるようにしましょう。

3.冷やし茶碗蒸し+冷やし味噌汁(カップ)

固形物を食べることが難しい場合、コンビニやスーパーで手に入る「冷やし茶碗蒸し」が非常に有効です。卵の良質なタンパク質を、胃腸に負担をかけずに吸収できます。さらに、カップの味噌汁を冷たい水で溶いて(あるいは氷を入れて)飲むことで、大量の発汗で失われたナトリウムをはじめとするミネラルを手軽に補給できます。本格的な熱中症が疑われる場合は医療機関を受診する必要がありますが、軽度の水分・塩分補給の手段として有効です。

以上(2026年6月作成)

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画像:日本情報マート

【賃金データ集】時間外労働手当などのモデル支給額

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「時間外労働手当など」です。

時間外労働手当などの位置付け

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 時間外労働手当などの位置付け

時間外労働手当などとは、労働基準法(以下「労基法」)で定める時間外労働などに対して支給する「割増賃金」のことです。近年は時間外労働の上限規制、割増賃金に関する中小企業の猶予措置の廃止などが定められ、時間外労働手当などのマネジメントが求められています。

2 時間外労働手当などの潮流

企業は、「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」に対して、時間外労働手当などの割増賃金を支給しなければなりません。割増率は、1カ月当たりの時間外労働の時間数や企業規模などによって決定される仕組みです。その概要は図表2.の通りです。

時間外労働手当などの潮流

なお、月60時間以内の時間外労働に関しては、例えば、

  • 月60時間以内の時間外労働に対する割増賃金率を25%
  • 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率を50%

とした場合、月60時間超の時間外労働に適用される割増賃金率のうち通常(月60時間以内)の割増賃金率に上乗せされた25%(50%-25%)については、割増賃金の代わりに「代替休暇」を与えることも可能です(導入には労使協定の締結が必要)。

3 厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

4 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は次の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■毎月勤労統計調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1.html

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■賃金構造基本統計調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

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以上(2026年7月更新)

pj17906
画像:ChatGPT