【朝礼】「いわれたことしかやらない人」に効く薬

【ポイント】

  • 仕事を依頼するときは、依頼した相手の能力や経験値などを考慮して指示を出したか
  • 相手の仕事のスタイルも考えて、気を配って仕事を依頼しなければいけない
  • 「言われたことしかやらない人」を脱するには、その仕事の目的を考えさせることが必要

「あの人は、頼んだこと、言ったことしかやってくれない……」仕事をしていると、こんな不満を感じることがあるはずです。例えば、お客様に渡す価格表の作成を依頼したら、エクセルの初期設定のフォーマットに金額を入力しただけの価格表を作成してくるケースです。これでは、見やすさやレイアウトなど、お客様に提供する資料としての工夫はみられません。ここで文句を言いたい気持ちは分かります。しかし、仕事を依頼した人は、依頼した相手の能力や経験値などを考慮して指示を出したでしょうか。

また、相手の仕事のスタイルも考えてください。良しあしは別にして、そのスタイルは、今に始まったことではないはずです。それを知っている上で仕事を依頼するのであれば、きめ細かに説明をしなければなりません。こうした点にまで気を配って仕事を依頼しなければ、期待した成果を得ることはできないでしょう。最も大切なことは、仕事の目的を正しく把握させて、仕事に当たる姿勢を取らせるということです。

以前あった話です。ある人に「役員会用の業績資料を作成してほしい」という依頼をしました。依頼を受けた人は、その資料をA4で1ページにまとめました。内容に問題は無かったのですが、数値の文字サイズが小さく、読み取るのに苦労するほどでした。これは、仕事の目的を「資料を作成すること」、つまり「頼まれたことだけをやること」と考えている人の典型的な仕事です。この仕事の目的は、「会社の現状を把握し、意思決定を行うために必要な情報を、役員に提供すること」です。役員は年配の人が多く、細かな文字は読みにくいという人が多いと想像できます。ですから、文字が読みやすくなるような配慮が必要です。

「言われたことしかやらない人」には、安心して仕事を任せることはできません。部下が、なぜ自分には大きな仕事を任せてもらえないのかと不満を抱いているとしたら、自分のしてきた仕事を振り返らせ、想像力不足で期待通りの仕事をできていないと分からせてください。「言われたことしかやらない人」から脱するには、その仕事の目的を考えさせ、分からなければ依頼した人に確認することを習慣付けることです。それだけで、仕事の成果に大きな違いが出てきます。

              

以上(2026年4月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

Z世代が部下を持つ。これからの組織を引っ張る「Z上司」への指導法

1 Z世代も上司になる時代がやってきた

「Z世代(1990年代中盤から2010年代序盤に生まれた世代)」が管理職になって、部下を育てる時代になりました。「あのZ世代に上司が務まるの?」と不安を覚えている場合ではありません。これからの企業を支えていくのはZ世代、あるいはそれよりもさらに若い世代なのですから、その成長を温かく支援したいものです。

Z世代は、デジタルネイティブと呼ばれます。AIなくして経営を語れない時代にあって、Z世代のこうした特徴は、上司としての長所になり得ます。また、丁寧な説明(物事の「意味」)を求める点も、裏を返せば「Z世代は部下に丁寧に説明をする」ということにもなります。Z世代を一括りにするべきではありませんが、広い特徴としてこれらを捉えてうまく指導していきたいものです。

デジタルネイティブ

以降では、Z世代上司の成長を見守る社長、直接指導する管理職のヒントとなる具体的な情報をお伝えしていきます。例えば、Z世代上司に、

「何かあれば相談して」

と声がけするのは大切ですが、もっと効果的な言い換えがあるので、以降で紹介します。巷では、入社初日の午前で退職代行に駆け込む「4時間退職」も起こっています。ある意味、Z世代以上に手強い新人とうまくやっていけるのはZ世代上司かもしれません。

2 Z世代上司の特徴を、長所として理解する

Z世代については、「承認欲求が強い」「自分で考えるよりも先に答えを求める」といった特徴が挙げられることがあります。これらをネガティブな特性とばかりはいえず、育ってきた環境が生んだ傾向です。その背景を理解すれば、上司としての強みに転じる側面が見えてきます。

例えば、Z世代はキャリアの初期から、情報過多の環境にいます。仕事の進め方も、評価のされ方も、先輩の姿を見て自然に学ぶより、検索や動画で自ら調べる習慣が身に付いています。

また、コロナ禍でテレワークが当たり前になったタイミングで社会人になった層も多く、「職場の空気を読んで覚える」より、「明確な基準や指標を持ってそれを拠りどころにする」傾向にあります。

こうした背景を考慮すると、Z世代の特徴としては、下記が言えそうです。あなたの職場にも当てはまるのではないでしょうか。こうしたZ世代の特徴は、マイナスではなく、むしろ上司としてチームを動かすときに直接活きる特性です。

  • 目的と基準が明確なら、主体的に動ける
  • 情報を素早く収集・整理できる
  • 複数の選択肢をフラットに比較できる

一方で、報告・連絡・相談の習慣、締め切りを守ること、責任をとること。こうした仕事の基本は、世代や年齢などに関係なく求められます。「Z世代の特性だから仕方ない」と容認することは、本人のためにも組織のためにもなりません。「変わらない大切な仕事の基本は基本として明確に伝える」「できていなければ厳しく指摘する」が、Z世代を上司に育てる第一歩です。

3 Z世代上司が最初につまずきやすい3つのポイント

Z世代を初めて管理職・リーダー職に就けたとき、どこで詰まるかを知っておくと、先手を打てます。よくある壁は次の3つです。これらはZ世代に限った特徴とは言い切れないでしょうが、特にZ世代上司が最初につまずきやすい点かもしれません。

1)年上の部下への指示に躊躇する

Z世代は、自分より年上、あるいは社歴が長い社員に指示を出すことに、強いストレスを感じるケースが少なくありません。「生意気だと思われないか」「反発されたらどうしよう」という不安から、曖昧な指示になったり、言うべきことを言えなかったりします。

ここで経営者や上長がやるべきは、「年上が相手でも指示を出しなさい。それがあなたの役割であり、あなたにその役割を担ってもらうのが会社としての決定事項だ」と明言することです。そして、年上の部下にも「あなたはこの上司に従う必要がある」と伝えなければなりません。役割の正当性を組織として示さなければ、Z世代上司は一人で戦うことになります。

2)「叱る」「注意する」ができない

Z世代は、高圧的な指導を受けた経験が比較的少ない世代です。そのため、部下を叱る・注意するという行為に慣れておらず、問題を見て見ぬふりをしてしまうことがあります。「嫌われたくない」「摩擦は面倒だから回避したい」という感情が、判断より先に来るのです。

対策は、「注意の仕方」を具体的に教えることです。感情的に言うのではなく、「この点が、この基準に照らして、こう問題がある」と事実ベースで伝える方法を、ロールプレイングなどを通じて、Z世代上司に身に付けさせましょう。「叱り方」ではなく、「伝え方」の技術として教えることがポイントです。

3)「答え」を持っていないと感じて委縮する

「上司たるもの、答え(正解)を持っていなければならない」と思い込み、分からないことを聞かれたときに焦る。あるいは、部下の相談に対して「自分にはまだ分からない」と感じるものの部下の前で格好つけてしまい、後から自己嫌悪に凹む。こうしたパターンもよく見られます。

経営者や上長は、「答えを持っている上司」より「一緒に考えられる上司」の方が、今の職場では機能することを伝えましょう。そして、「答えが出ないときは経営者や上長に相談していい」という逃げ道を明示しておくことも大切です。

4 力を引き出すための経営者や上長の関わり方

経営者や上長が、Z上司の力を引き出すために何ができるか。現場で機能する3つのアプローチは次の通りです。

1)「役割」ではなく「権限」を渡す

Z世代上司を「チームリーダーに任命する」だけでは不十分です。何を決めていいのか、どこまで自分で判断してよいのかが曖昧なまま役割だけ与えると、Z世代上司は動けなくなります。

「採用面接の一次選考は任せる」「チームの業務分担は自分で決めていい」「予算10万円以内の発注は決裁不要」など具体的な権限の範囲を明示することで、初めて「自分の仕事」として動けるようになります。特に明確な基準や指標を持っていたいZ世代上司の場合、具体的でない曖昧な権限は、判断ミスへの恐怖を生んでしまうでしょう。

2)週1回、15分の「壁打ち」を設ける

「困ったことがあれば相談しろ」と言っても、おそらくZ世代上司はなかなか来ません。「こんなことを相談したら頼りないと思われる」と誤解していたり、「忙しそうで声をかけにくい」という遠慮が先に立ったりしがちだからです。

そこで経営者や上長は、週に1回、15〜30分程でいいので、定期的にZ世代上司と話す時間を設けてみましょう。「最近どんなことで困ったか」「部下との関係で気になることはあるか」などを引き出します。「経営者や上長が聞いてくれる」という仕組みを作ることで、Z世代上司には話す機会ができ、問題を一人で抱え込みにくくなります。

3)「うまくいったこと」を言語化させる

Z世代は、失敗への感度が高い一方で、成功体験を自分の力として積み上げるのが苦手な場合があります。人にもよりますが、うまくいっても「たまたまだ」「自分の実力じゃない」と流してしまい、自信につながりにくいかもしれません。

経営者や上長は「先週、あの部下の案件がうまく進んだのはなぜだと思う?」と問い、自分の言葉で語らせる。具体的に言語化させることで、経験が「再現可能なスキル」になります。具体的に「何がよかったか」を一緒に分解する習慣が、Z世代上司の成長を加速させるでしょう。

力を引き出すための経営者や上長の関わり方

5 育てる側の覚悟

Z世代上司が失敗したとき、「やっぱり無理だった」と結論づけるのは早計です。失敗の原因は「権限が曖昧だった」「フォローの仕組みがなかった」「基準を明確に、かつ具体的にしていなかった」という場合も少なくありません。

「Z世代」とひとくくりにするのはナンセンスですが、若い世代の社員を上司にするためには、組織側もある程度変わり、進化していくことが求められます。これまで「見て覚えろ」「背中で示せ」で機能してきた部分を、言語化・仕組み化していく、といった具合です。言語化・仕組み化は、Z世代上司のためだけでなく、結果的に組織全体を底上げしてくれるでしょう。

これから、Z世代上司がますます増えていきます。彼らが上司として育つかは、育てる側の関わり方でも変わってきます。ある意味、Z世代上司の成長は、組織の鏡ともいえるでしょう。

6 「Z世代上司が育つ言葉」に言い換えてみよう

経営者や上長からのZ世代上司への声掛けは、ちょっとした言い方の差で、受け取り方が大きく変わります。「✕:悪い例」を「◎:よい例」に言い換える例をご紹介します。


「何かあれば相談して」


「毎週○曜日の午前中、15分話す時間をとろう」


「自分で考えて動いて」


「この範囲は任せる。迷ったときは声をかけて」


「なんでそんなことも言えないの」


「言いにくかったと思うけど、どう伝えようとした?」


「答えくらい自分で出して」


「一緒に整理しよう。まず何が引っかかる?」


「あの件、うまくいったね」


「あの件、なぜうまくいったと思う?自分の言葉で言ってみて」


「年上の部下が言うことを聞かないのは、あなたが悪い」


「あなたがリーダーなのは会社が決めたこと。私が後ろにいる」


「もっと自信を持って」


「先週のあの判断はよかった。なぜそうしたか聞かせて」

以上(2026年4月作成)

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画像:日本情報マート

過去の決算にミスがあったとき、 社長が選択すべき対応とは?

1 過年度分の修正が必要と言われたら?

中小企業の経営者の皆様の中には、決算の確認や経理資料の整理を進める過程で、税理士から、次のような指摘を受けた経験がある方もいるかもしれません。

「過去の処理を確認していて、誤りが見つかりました。過年度分の修正が必要です」

突然こう言われると、「税務調査につながるのではないか」「追加で税金を払うことになるのか」「銀行への説明は必要なのか」と、様々な不安や疑問が頭をよぎるものです。

もっとも、会社の経理は人が行う以上、ミスが起きる可能性はゼロではありません。請求書の計上漏れや資料の提出漏れ、確認不足など、社内の経理体制の中で生じた小さなミスが、後から見つかるケースは決して珍しくないのです。

大切なのは、ミスが見つかったときにどう対応するかです。放置したり先送りしたりすると、後になって負担が大きくなる可能性があります。実は、

税務署に指摘される前に自ら申告を修正するのと、税務調査で指摘されてから修正するのとでは、負担するペナルティー(罰金)の金額が大きく変わる

ことがあります。

この記事では、過去の決算ミスが見つかった場合に経営者が知っておきたい、会計と税務の修正手続きやペナルティの仕組みについて、実務の流れに沿って解説します。

2 「会計(帳簿)」と「税務(申告書)」は直し方が違う

まず知っておきたいのは、会社の数字を修正するといっても、会計(帳簿)と税務(申告書)では、次のように修正方法が大きく異なる点です。

  • 会計(帳簿)の直し方:過去の帳簿は書き換えない
  • 税務(申告書)の直し方:過去に遡ってやり直す

1)会計(帳簿)の直し方:過去の帳簿は書き換えない

過去の決算書(貸借対照表や損益計算書など)は、株主総会で承認され、すでに確定したものです。そのため、原則として過去に遡って帳簿を書き換えることはしません。そのため、中小企業では通常、現在の会計年度の帳簿で調整します。

例えば、3年前の売上が100万円計上漏れになっていたら、3年前の帳簿を書き換えるのではなく、

今年度の帳簿に前期損益修正益(ぜんきそんえきしゅうせいえき/過去の利益の訂正分)

という項目を設け、今年の収益として計上します。

つまり、会計上は、

過去のミスを、今年度の出来事として処理する

という考え方をとるのが一般的です。

2)税務(申告書)の直し方:過去に遡ってやり直す

一方、税金の計算では1)の方法は認められません。税務署の考え方は非常にシンプルで、

3年前の税金は、3年前のルール(税制や税率など)で計算し直すべき

というものです。

そのため、税務担当者は過去の年度の申告書を作り直し、税務署に再提出する必要があります。この手続きは、状況によって、

  • 修正申告
  • 更正の請求

に分かれます。

3 税務上の手続き:「修正申告」と「更正の請求」

1)税金を少なく払っていた場合:「修正申告」

売上の計上漏れや、本来経費にできないものを経費として処理していた場合などは、

修正申告書(申告内容を訂正する書類)

を税務署に提出し、本来納めるべき税金との差額を追加で支払う必要があります。

追加の税金は、修正申告書を提出した日が納付期限となるため、通常は提出と同時に納付します。なお、税務署から調査の連絡(事前通知)が来る前に、自らミスに気づいて自主的に修正申告を行えば、ペナルティである過少申告加算税(かしょうしんこくかさんぜい)は1円もかかりません。支払うのは利息にあたる延滞税(えんたいぜい)のみとなります。

2)税金を払いすぎていた場合:「更正の請求」

先ほどとは逆に、売上を二重計上していた、計上できる経費を漏らしていたといった場合には、

更正の請求(払いすぎた税金の返還を求める手続き)

を行い、多く払いすぎている税金の還付を受けることになります。

原則として、

申告期限から5年以内

であれば請求することができます。

この手続きは「払いすぎた税金を返してほしい」というものなので、ペナルティは発生しません。ただし、税務署による内容確認が行われるため、請求書や領収書などの証拠資料の提示が求められることがあります。

4 修正申告の場合のペナルティ(附帯税)は?

経営者として最も気になるのは、「結局いくら余計に払うことになるのか」という点でしょう。税金が足りなかった場合(修正申告)には、本来の税金に加えて、附帯税(ふたいぜい/いわゆる罰金や利息)が発生する可能性があります。

1)延滞税(えんたいぜい/税金の遅れに対する利息)

本来の納付期限から支払いまでの期間に応じて、利息のような形で課される税金です。税率は年度によって変わりますが、目安として、

年2.4~8.7%程度

です。当然ながら、修正までの期間が長いほど金額は大きくなります。

2)過少申告加算税(かしょうしんこくかさんぜい/申告額が少なかったことへの罰金)

本来より少ない税額で申告していた場合に課される税金です。一般的には、

追加税額の10%(一定額を超える部分は15%)

となります。ただし、税務調査の通知が来る前に自主的に修正申告を行った場合には、この税金が免除されます。その意味でも、ミスに気づいた段階で早く対応することが重要です。

3)重加算税(じゅうかさんぜい/意図的な隠蔽への罰金)

最も重いペナルティです。単なるミスではなく、

仮装・隠蔽(かそう・いんぺい/書類改ざんや売上の意図的な隠しなど)

と税務署などに判断された場合に課される税金です。税率は、

追加税額の35~40%

と非常に重く、会社の信用にも大きな影響を与えます。また、2024年(令和6年)からは、電子データ(ネット上の領収書など)を改ざんして不正を行っていた場合、この重加算税が、さらに10%上乗せされる(最大50%)というルールも始まっています。

5 過年度修正を行う際、税金以外で注意すべき実務ポイント

1)金融機関への説明

融資を受けている場合、融資元の金融機関には決算書を提出しているはずです。もし修正によって利益が大きく変わる場合は、銀行の信用格付け(企業の評価ランク)に影響する可能性があります。

そのため、修正申告が終わってから報告するのではなく、

「経理の確認の中で過去の処理ミスが見つかりました。現在修正手続きを進めています」

などといった形で、事前に説明しておくのが望ましいでしょう。マイナス評価になるのは、「隠していた」と受け取られることです。

2)原因を特定し、再発防止を行う

修正して終わりにしてはいけません。

  • 売上の計上漏れはなぜ起きたのか
  • 資料の確認体制に問題はなかったのか
  • 経理と税理士の情報共有は十分だったのか

など原因を整理し、その上で、

  • ダブルチェックの導入
  • 月次確認の徹底
  • 資料提出ルールの整備

といった再発防止策を作ることが重要です。これは金融機関に説明する際にも、「同じ問題は繰り返さない」という説得力のある材料になります。

以上(2026年4月作成)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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中小企業を狙う「ランサムウェア」から会社を守る3つの鉄則

1 サイバー攻撃は「対岸の火事」ではない

2025年秋、アサヒビールの親会社アサヒグループホールディングス(アサヒグループHD)、通販大手のアスクルを襲ったサイバー攻撃によるシステム障害。受注・出荷業務の停止、飲食店や小売店への商品供給が長期にわたって滞るなど、サプライチェーンに深刻な影響を及ぼしました。これらはランサムウェア(身代金要求型ウイルス)に感染したことが原因です。

こうしたランサム攻撃は、従来のように「データを元に戻してほしければ金を払え」と脅すだけでなく、「金を払わなければ盗んだ機密情報・個人情報を公開するぞ」と脅す二重、三重の恐喝が主流

となっています。

「サイバー攻撃といっても、うちは中小企業で、狙われるような機密情報もないし、大丈夫だろう」と、仮にあなたがそう考えているのであれば、すぐ認識を改める必要があります。警察庁「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」によると、2025年の1年間で報告されたランサムウェアの被害件数は226件、そのうち、中小企業が143件(約6割)を占めています。

サイバー攻撃の対象は無作為で選ばれ、大企業のみならず、中小企業が狙われることもあります。決して「対岸の火事」ではない

のです。

大企業に対する攻撃の踏み台として、「取引先である中小企業」が標的にされることもあります。自社が踏み台にされ、大切な取引先に多大な迷惑をかけてしまう。さらに、賠償責任や社会的信用の失墜により、再起不能なダメージを受ける恐れがあります。

この記事では、難しい技術の話は抜きにして、これだけはやってほしいアクションを「3つの鉄則」として紹介します。

2 今日から始める「3つの鉄則」

1)「怪しいメール」の添付ファイルやURLリンクを開かない

サイバー攻撃の入り口の多くは、依然として「人の不注意」を突くメールです。見覚えのない差出人からのメールはもちろん、知っている差出人でも、

件名や本文の内容に違和感(「至急」「未払い」「請求書」など)があれば、添付ファイルやURLリンクは開かない

ようにしてください。

URLリンクは画像などに仕込まれている場合もあるので、

文字列だけでなく、画像などもクリック/タップしない

ように注意が必要です。また、本文に記載された電話番号なども偽装されている恐れがあります。その番号に電話をかけてはいけません。

2)「パスワードの使い回し」を即刻やめる

パスワードは、容易に推測できないよう、

大小英字・数字・記号を混ぜた複雑なものにして、他のサービスと同じものは使わない

ようにしてください。パスワードを使い回ししていると、一つのアカウント情報が漏洩してしまったとき、他のウェブサービスやアプリにも不正アクセスされて、芋づる式にアカウントを乗っ取られる恐れがあるからです。

3)オフラインの「バックアップ」を確保する

重要なデータは定期的に、

ネットワークから切り離した「物理的な外付けハードディスク」や「専用のクラウド」に保存する体制を構築

します。ランサムウェアは、ネットワーク上の全てのデータを暗号化して使えなくします。物理的に隔離されたバックアップさえあれば、労力・時間はかかるとしても、自力で復旧できる可能性があります。

3 ランサム攻撃は「ビジネス」として横行している

IPA(情報処理推進機構)が毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威」では、「ランサム攻撃による被害」が、初出の2016年から11年連続で組織向け脅威として取り上げられており、2021~2026年の6年連続で第1位となっています。

こうした背景には、ランサム攻撃が「ビジネス」として横行している現実があります。ダークウェブ(一般的な方法ではアクセスできず、Googleなどの検索エンジンで見つけることも不可能なウェブサイト)には、サービスとしてのランサムウェア(RaaS: Ransomware as a Service)が存在し、サブスクリプション(月額制)や利益の分配など、複数の収益モデルが成立しているといいます。つまり、

専門知識がなくてもツールを「購入」して、ランサム攻撃を実行できる仕組みが世界中に普及している

のです。

4 もし「おかしい」と思ったら

どれだけ対策をしても、ランサム攻撃を100%防ぐことは不可能です。大切なのは、「ランサムウェアに感染したかもしれない」と思ったときの初動です。

他のPCへの感染拡大を防ぐため、

まずは物理的にネットワークから切り離します。LANケーブルでネットワークに接続しているなら、LANケーブルを抜く。Wi-Fiでネットワークに接続しているならWi-Fiを切る

といった対応が必要です。その際、PCの電源を切る必要はありません。

そして、情報システムの担当者・責任者に、すぐに報告します。

自分のミスを責められるのを恐れて隠すのが一番の悪手、「おかしい」と思ったら即報告

です。

サイバー攻撃から会社を守るためには、情報システムの担当者・責任者だけの力では限界があります。経営者の皆さんの強いリーダーシップと、全従業員の「自分事」としての意識改革が何よりも求められます。

5 参考

■政府広報オンライン「中小企業で被害多数 ランサムウェア」■
https://www.gov-online.go.jp/useful/202506/video-298784.html
■警察庁「ランサムウェア被害防止対策」■
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/countermeasures/ransom.html

以上(2026年4月作成)

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ガイドライン改正で変わる? 中小企業が注意すべき同一労働同一賃金の対応ポイント

今回の改正を貫く原理は、たった一つの命題に集約されます。「全ての待遇について、その性質・目的に照らして実態で判断する」。難しい制度も原理を押さえれば理解は簡単です。この命題を正面から受け止め、「なぜこの待遇を設けているのか」「その目的は非正規社員にも当てはまるのか」「実態はどうなっているのか」を一つずつ点検していくことが、最も確実な対応策です。
令和8年10月の施行まで、残された時間は多くありません。

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労働基準法「最大の転換点」に備える中小企業のための法改正対応

法改正の施行時期は確定していませんが、2026年通常国会への法案提出は見送られ、日本成長戦略会議での再検討を経た上で改めて法案化が図られる見通しです。改正そのものが白紙に戻ったわけではなく、方向性が固まれば比較的短期間で法制化が進む可能性もあるため、今から検討を始めることをお勧めします。

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地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業のご紹介

観光庁では、訪日外国人旅行者が日本各地を安心して旅行できる環境の整備を進めるとともに、地方へのさらなる誘客促進を図るため、「地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業」を実施しています。
本事業では、観光施設や観光地における事業所、医療機関、地方公共団体等が行うインバウンドの安全・安心対策の取り組みを支援します。災害対策の強化や多言語対応の推進、医療機関における外国人患者受入体制の整備などを後押しし、訪日外国人旅行者が地方を含む日本各地を安心して訪れることができる環境づくりを推進します。

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経営のヒントとなる言葉(竹中半兵衛)

「要害がいかように堅固であっても、人の心が一つでなければ、要害堅城も物の用をなさない。それを分かって欲しく、稲葉山城を乗っ取ったまでで、御殿に御諫言の上、お返しする心づもりでござる」

出所:「戦国武将名言録」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

「組織の要は人にあり、リーダーはその点を忘れてはならない」

ということを表しています。

豊臣秀吉に仕える以前、半兵衛は美濃国の斎藤龍興(さいとうたつおき)に仕えていました。半兵衛は日ごろから物静かな上、細身で色白であるなど女性的なたたずまいから、龍興や他の家臣たちは、半兵衛のことをからかい、軽んじていたといわれています。

また、龍興は寵臣の意見ばかりに耳を傾けていたため、家臣の中には不公平感が高まっており、失政により領民からの支持も失っていました。半兵衛は龍興に対して諫言を呈することもありましたが、龍興が耳を貸すことはなかったようです。

こうした中、半兵衛は龍興の居城である稲葉山城に少数の家臣を率いて登城し、龍興を追放して、稲葉山城を奪取しました。稲葉山城を奪取した理由については、「新年の宴の際に、龍興の寵臣が半兵衛を侮辱したため」「龍興の家臣と半兵衛の舅が争い、これを救うため」「龍興の愚行を戒めるため」など諸説があるようです。

この事態を聞き付けた、尾張国(現愛知県)の織田信長は、半兵衛に美濃半国を与えることを条件に、稲葉山城を明け渡すように求めました。信長は再三にわたって美濃国を攻めていましたが、いずれも撃退されていた経緯がありました。この信長の申し出に対して、半兵衛は冒頭の言葉を述べたといわれています。

その後、半兵衛は龍興に稲葉山城を返して、隠居生活に入ります。しかし、半兵衛のことを高く評価した秀吉が何度も足を運び、信長の家臣になるように説得しました。半兵衛はその熱意に打たれて、秀吉の与力になったといわれています。

秀吉の下で、「羽柴(秀吉)の二兵衛(にひょうえ)」といわれる黒田官兵衛と共に、半兵衛は参謀としての才能を発揮し、活躍しましたが、播磨三木城を攻囲中に持病が悪化し、その生涯を閉じました。

半兵衛が亡くなった際、秀吉は人目もはばからず遺体にすがりついて号泣したというエピソードが伝わっています。秀吉がこれほどまでに半兵衛を重用したのは、半兵衛の軍師としての才能を高く評価していたからでしょう。

それは、兵法に明るいといった学問的な知識だけに留まらず、「稲葉山城のような堅城であっても、主と家臣の間の信頼関係がなければ無意味である」といった組織観に見られるように、物事の本質を突く鋭い視点などが含まれるのではないでしょうか。

半兵衛が持つ、物事の本質を突く鋭い視点とは、「本質を突いた質疑応答がされなければ、良いテーマを取り上げても議論は深まらない」といった主旨として理解することができる、次の言葉からも感じ取ることができます。

「人みな合戦のことを問ふに、その問ふべき要領は問はず、問はですむべきことを多く尋ぬる故、重ねての功にならざるなり。答ふる者もまた然(しか)り。されば良話も用に立たざること甚だ多し」(**)

半兵衛が仕えた二人の主を例に取れば、龍興は寵臣ばかりを重用し、女性的なたたずまいであることなどを理由に半兵衛を軽んじ、その諫言に耳を貸すことはありませんでした。

一方、秀吉は後に天下人となりますが、その成功には、半兵衛の他にも多数の才能ある臣下を次々と引き立て、その才能を自身の政治に生かしたことにあったといえます。

多くの経営者は、「自分はたたずまいの好き・嫌いで才能ある人を遠ざけるようなことはしない」と考えるかもしれません。しかし、人は自分の価値観にそぐわない人を避けてしまいがちであることに注意しなければなりません。

また、一般的には、社員は遠慮から経営者に意見をしにくいものです。そのため、注意しなければ、経営者の周囲には経営者と同じような考え方を持つ人材や、イエスマンばかりが集まることになります。時には耳の痛い意見を言う人や、経営者とは違った視点から意見する人を意識的に周囲に置き、自社の課題に対して本質を突いた、自由闊達な意見を議論し合える環境づくりを心掛けなければなりません。

自由な意見を言い合える環境は、経営者と社員の信頼関係を構築する礎としても寄与するはずです。こうした経営者のスタンスが風通しの良い組織をつくり、才能ある人材が活躍できる場を生むのです。

 

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

たけなかはんべえ(本名:竹中重治(たけなかしげはる))(1544~1579)。美濃国(現岐阜県)生まれ。黒田官兵衛らとともに豊臣秀吉の参謀として、活躍。

【参考文献】

(*)「戦国武将名言録」(楠戸義昭、PHP研究所、2006年7月)
(**)「先人たちの名語録 童門冬二 愚将の機嫌とり軍議なんて(東京新聞 朝刊(2010年8月21日付))」(中日新聞社、2010年8月)
「垂井町文化財アーカイブ」(岐阜県垂井町)
「三木市公式ホームページ」(兵庫県三木市)

以上(2026年4月更新)

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【規程・文例集】 「賃金規程」のひな型

1 賃金規程の記載事項にヌケモレはないですか?

賃金規程とは、

就業規則のうち、賃金に関する基本事項を本則と別に定めたルールブック

です。物価高の影響などで賃上げに向けた動きが活発化する中、賃金テーブルの見直しなどで規程に目を通す機会も多いでしょうが、その前に1つ質問です。御社の賃金規程は、法律上記載すべき事項を全て網羅していますか?

労働基準法(以下「労基法」)には、就業規則に記載すべき事項として、

  • 絶対的必要記載事項:必ず記載しなければならない事項
  • 相対的必要記載事項:定めがある場合に記載しなければならない事項

が定められています。賃金規程についても、図表1の通り記載すべき事項が決まっていて、なおかつそれぞれの項目について、法律上守らなければならないルールがあります。

賃金規程に記載すべき事項

この記事では、

  • 賃金規程に関連する法律上のルールや定め方のポイント(第2章、第3章)
  • 専門家が監修した「賃金規程」のひな型(第4章)

を紹介します。

2 必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)

1)賃金(臨時のものは除く)の決定・計算方法

1.賃金規程の適用範囲

賃金規程を適用する社員を定めます。例えば、正社員とパート等とで賃金のルールが異なる場合、正社員の賃金は「賃金規程」、パート等の賃金は「パートタイマー用就業規則」で定めるのが一般的です。

2.賃金体系

基本給や手当など自社の賃金体系を整理し、賃金規程に定めます。

一般的な賃金体系のイメージ

手当については労基法上、割増賃金の計算基礎に含まれる「基準内賃金」と、計算基礎に含まれない「基準外賃金」に分けられます。基準内賃金は、主に「労働の対価」として、「毎月継続して」支給されるものが対象になります。

【基準内賃金】

  • 基本給(賃金の基本となる部分)
  • 役職手当(部長、課長、工場長など役職に対して支給されるもの)
  • 職能手当(従業員のスキルに応じて支給されるもの)
  • 資格手当(簿記など業務に関連する特定の資格保有者に支給されるもの)

労働基準法第37条および施行規則により、割増賃金の算定基礎には原則として全ての賃金を含めますが、例外として下記の7つのみ除外が認められています。これらは業務とは関係なく個人の事情によって異なる手当です。

【基準外賃金】

  • 家族手当(扶養家族の人数に応じて支給されるものに限る)
  • 通勤手当(通勤距離や通勤費用に応じて支給されるものに限る)
  • 住宅手当(住宅に要する費用に応じて支給されるものに限る)
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

なお、家族手当や通勤手当を扶養人数や移動距離に関係なく「一律支給」にしている場合、法律上は算定基礎に算入しなければなりません。

3.賃金形態

時給制、日給制、月給制など、賃金形態を定めます。

主な賃金形態と特徴

4.賃金からの控除

賃金は全額払いが原則ですが、法令や労使協定で別段の定めがある場合、控除して支払うことができます。次のように控除する項目を定めます。

  • 法令:所得税、住民税、社会保険料など
  • 労使協定:組合費、レクリエーション費など

なお、労使協定により控除できるのは、内容が明白なものだけなので、例えば「控除が必要と会社が判断したもの」など、曖昧な定めは認められません。また、「社員が備品を紛失した場合、その代金」などと定めて、会社の持つ債権と賃金を相殺することも禁止されています(ただし、社員が自らの意思で同意した場合は、控除が認められます)。

5.賃金の支給額

基本給、手当などの支給額を定めます。また、時間外労働(法定労働時間を超える労働)、休日労働(法定休日の労働)、深夜労働(原則22時から翌日5時までの労働)の残業手当の計算方法についても、次の割増賃金率に違反しないよう注意します。

  • 時間外労働:25%以上。時間外労働が60時間超の場合、超過時間分については50%以上
  • 休日労働:35%以上
  • 深夜労働:25%以上
  • 休日労働かつ深夜労働の場合は60%(35%+25%)

2)賃金の支払方法

賃金は金融機関振り込みが一般的ですが、労基法上は通貨で直接本人に支払う(手渡し)のが原則です。金融機関振り込みにする場合、必ず社員の同意を取得した上で行います。

3)賃金の締切り・支払時期

1.通常の支払い

賃金は毎月1回以上、一定の期日に支払うのが原則なので、次のように計算期間と支払日を定めます。支払日が「毎月第4金曜日」のような定め方は、月によって日付が変動するため、原則として認められません。なお、賃金の支払日が土・日・祝日の場合、その前日に支払うのが一般的です。

  • 賃金の計算期間:毎月1日から月末まで
  • 賃金の支払日:翌月10日(前月の賃金締切り分)

2.臨時払い

社員が死亡や退職などをした場合の賃金の支払いについて定めます。こうした場合、社員や遺族からの請求に応じて7日以内に、会社はそれまでの労働に対する賃金を支払わなければなりません。

3.非常時払い

出産、疾病、災害など非常時の賃金の支払いについて定めます。社員が非常時の費用に充てるために賃金の支払いを請求してきた場合、会社はそれまでの労働に対する賃金を支払わなければなりません。

4)昇給に関する事項

昇給の算定期間や時期などを定めます。昇給は人事考課などに基づいて、毎年1回定期に行うのが一般的です。ただし、会社の業績が悪化した場合なども考え、昇給を行わないケースについても明らかにします。

また、社員とのトラブル防止のため、降給の基準も定めておきます。降給は労働条件の不利益変更にあたるため、就業規則本体の懲戒規定や人事評価制度と明確に連動させ、客観的な基準(例:評価ランクが○以下を2回継続など)を持たせてください。

3 定めがある場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)

1)臨時の賃金(賞与)

賞与を支給するかしないかは会社の自由ですが、一度賃金規程に定めを設けたら、その定めに従って支給しなければなりません。賞与については労基法上、賃金規程に何を記載すべきかが特に決まっていませんが、次のような内容を定めておくとよいでしょう。

1.賞与の支給時期と支給回数

「夏季と冬季に年2回支給する」など、賞与の支給時期と支給回数を定めます。ただし、会社の業績が悪化した場合なども考え、賞与を支給しないケースについても明らかにしておきます。

2.賞与の支給額と対象期間

賞与の支給額の決定方法を定めます。賞与は一般的に、社員の業務成績・勤務態度の考課結果などに応じて決定します。その際、考課の対象期間を賞与の種類(夏季賞与、冬季賞与など)ごとに明らかにします。

3.賞与の支給対象者

賞与を支給する社員、支給しない社員を定めます。一般的に、考課の対象期間内に勤務実績があって、支給日に在籍している社員を対象とします。

2)最低賃金額

最低賃金額(賃金の最低保障額)が決まっている場合、その金額を定めます。ただし、最低賃金法を下回る金額は設定できません。最低賃金には、

  • 地域別最低賃金:都道府県ごとに設定されている最低賃金
  • 特定最低賃金:特定の産業について設定されている最低賃金

の2種類があり、両方が適用される会社の場合、いずれか高額なほうが最低賃金となります。地域別最低賃金と特定最低賃金の金額などは、厚生労働省ウェブサイトから確認できます。

■厚生労働省「賃金(賃金引上げ、労働生産性向上)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/index.html

4 賃金規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【賃金規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、就業規則第○条の賃金に関する事項について定めたものである。

第2条(適用範囲)
本規程に定める賃金は、就業規則第○条の従業員に適用するものとする。就業規則第○条の短時間勤務従業員の賃金は別途定める「パートタイマー就業規則」(省略)によるものとする。

第3条(賃金体系と形態)
1)賃金の体系は次に定める通りとする。

賃金体系表

2)賃金の形態は日給月給制とする。

第4条(基本給)
基本給は年功給、職能資格給、技能給とする。

1.年功給
 従業員の年齢および勤続年数に応じて、別途定める「賃金別表1」(省略)の区分により支払う。

2.職能資格給
 従業員の職務遂行能力および勤務成績に応じた職能等級に基づき、別途定める「職能資格給基準表」(省略)の区分に基づき支払うものであり、経営企画部、総務部、経理・財務部、営業部に所属する従業員に適用する。

3.技能給
 従業員の職務遂行能力、経験に基づき、別途定める「技能給基準表」(省略)の区分に基づき支払うものであり、製造部に所属する従業員に適用する。

第5条(手当)
手当は役職手当、地域手当、テレワーク手当、家族手当、通勤手当、住宅手当とする。

1.役職手当
 従業員のうち役職者に対しては、別途定める「役職手当」(省略)の区分により役職手当を支払う。

2.地域手当
 従業員が、会社が定める地域で勤務するときは、別途定める「地域手当」(省略)の区分により地域手当を支払う。

3.テレワーク手当
 就業規則第○条のテレワークに従事する従業員については、テレワーク手当として月額1万円を、テレワークの日数にかかわらず一律で支給する。

4.家族手当
 従業員に扶養家族があるときは、本人の申請により別途定める「家族手当」(省略)の区分により家族手当を支払う。なお、扶養家族とは健康保険法上の被扶養者である配偶者および子供をいう。

5.通勤手当
 最短かつ最適な通勤経路が片道2キロメートル以上の従業員に対して、本人の申請により別途定める「通勤手当」(省略)の区分に応じて通勤手当を支払う。ただし、月額2万円を上限とする。

6.住宅手当
 従業員が世帯主として自ら居住する住宅を借り受けているときは、本人の申請により別途定める「住宅手当」(省略)の区分により住宅手当を支払う。

第6条(割増賃金等)
1)割増賃金等の計算方法は次に定める通りとする。

1.所定労働時間外(ただし、法定労働時間を超える労働を除く)の労働に対する賃金
 基準単価×100%×時間数

2.法定労働時間外の労働に対する割増賃金
 (1カ月45時間までの時間外労働)基準単価×125%×時間数
 (1カ月45時間を超え60時間までの時間外労働)基準単価×125%×時間数
 (1カ月60時間を超える時間外労働)基準単価×150%×時間数
 なお、この場合の1カ月間は前月〇〇日から当月〇〇日までとする。

3.法定休日の労働に対する割増賃金
 基準単価×135%×時間数

4.深夜(午後10時から午前5時までの間)の労働に対する割増賃金
 基準単価×25%×時間数

2)第1項各号の基準単価の計算方法は次の通りとする。

基準単価=基準内賃金÷(年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12)

3)第1項各号の割増賃金等(第1項第4号を除く)は、労働基準法第41条第2号に該当する管理・監督の地位にある者に対しては支払わない。ただし、深夜労働(午後10時から午前5時までの間)については、この限りではない。

第7条(賃金の計算期間、支払日)
賃金の計算期間は、前月○○日より当月○○日までとし、当月△△日に支払う。ただし、支払日が休日に当たるときは、その前日に支払う。

第8条(端数処理)
1)不就労時などの控除額の計算に当たり、1円未満の端数が生じたときは、端数を切り捨てて計算する。

2)割増賃金などの支給額の計算に当たり、1円未満の端数が生じたときは、端数を切り上げて計算する。

3)1カ月間の賃金支払額に100円未満の端数が生じたときは、端数を切り上げて計算する。

第9条(休業手当)
会社の責に帰すべき事由により従業員を休業させた場合、休業1日につき労働基準法に基づき算出した平均賃金の60%を支払う。会社の責に帰すべき事由により1日のうち一部を休業させた場合、その日の賃金が平均賃金の60%に満たないときは、その差額を休業手当として支払う。

第10条(不就労時の取り扱い)
1)従業員が欠勤、遅刻、早退、私用外出等により所定労働時間の全部または一部において不就労であった場合は、当該時間に対する賃金は支払わない。

2)賃金計算期間の中途において入社、退社、休職、復職した者の当該賃金計算期間の賃金は出勤した日数に対して支払う。

第11条(休暇等の賃金)
1)年次有給休暇を取得した場合は、所定労働時間を勤務したものとして賃金を支払う。

2)生理日の休暇、子の看護休暇、介護休暇を取得した場合は、賃金を支払わない。

3)特別休暇を取得した場合は、所定労働時間を勤務したものとして賃金を支給する。ただし、無給の定めをした休暇については、賃金を支払わない。

4)就業規則第○条に定める休職期間、業務上または通勤途上の傷病による休業期間、産前産後の休業期間、育児休業期間、介護休業期間、母性健康管理のための時間内通院の時間、育児時間については、賃金を支払わない。

第12条(賃金の支払い方法)
賃金は従業員に対して、直接、通貨で支払う。ただし、従業員が希望した場合は、当該従業員が指定する金融機関口座への振り込みにより賃金を支払うことができる。

第13条(賃金の控除)
賃金支払いの際、次の各号に定めるものは控除するものとする。

  • 源泉所得税
  • 住民税
  • 社会・雇用保険の被保険者負担分の保険料
  • 従業員の過半数を代表する労働組合との書面による協定により定めたもの

第14条(退職時および非常時払い)
会社は次の各号に該当する場合、本規程第7条にかかわらず既往の労働に対する賃金を支払う。

  • 従業員が死亡または退職した場合において、本人または遺族の請求があったときは、7日以内に既往の労働に対する賃金を支払う。従業員の遺族の範囲は労働基準法施行規則第42条から第45条によるものとする。
  • 従業員または従業員の収入により生計を維持する者から、出産、疾病、災害、その他非常の場合の費用に充当するために請求があったときは、既往の労働に対する賃金を支払う。

第15条(昇降給・昇降格)
1)昇給・降給は、勤務成績その他別に定める基準に基づく人事考課により、毎年4月1日付をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、昇給を行わないことがある。

2)顕著な業績が認められた従業員については、第1項の規定にかかわらず特別昇給を行うことがある。

3)昇給額・降給額は、従業員の勤務成績等を考慮して別途定める「昇給・降給基準」(省略)に基づき人事考課により決定する。

4)昇格・降格は、別途定める「昇格・降格基準」(省略)に基づき人事考課により決定する。この場合、昇格・降格後の役職と職務等級に基づき賃金を決定する。

5)懲戒処分による降格および勤務成績不良等、職務不適格事由による人事権の行使としての降格の場合も、降格後の役職と職務等級に基づき賃金を決定する。

第16条(賞与の支給)
会社は、会社の業績を勘案し、賞与の支給対象期間における従業員の業務成績・勤務態度の考課結果に応じて、夏季と冬季の年2回、従業員に賞与を支給するものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、賞与を支給しないことがある。

第17条(賞与の支給額および対象期間)
1)賞与の支給額は、会社の業績を勘案し、賞与の支給対象期間における従業員の業務成績・勤務態度の考課結果に応じて、その都度決定するものとする。

2)賞与の支給対象期間は次に定める通りとする。

  • 夏季:前年10月1日より当年3月31日まで。
  • 冬季:当年4月1日より当年9月30日まで。

第18条(賞与の支給対象者)
賞与は、賞与の支給対象期間に会社に勤務し、かつ支給当日に在籍している従業員を対象とする。ただし、次の各号に該当する者には原則として支給しない。

  • 休職期間中の者。
  • 勤務成績・業務成績不芳の者。
  • その他賞与を支給することが不適当と認められる者。

第19条(罰則)
従業員が故意または重大な過失により本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第20条(改廃)
本規程の改廃は、会社の状況および業績等の変化により必要のあるときは、従業員代表との協議の上、改正または一部廃止することがある。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2026年4月更新)
(監修 社会保険労務士 三原明日香)

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画像:ESB Professional-shutterstock

プラネタリウム施設で結婚式? 新たな顧客体験を生む「星」の世界

1 可能性が広がり続けるプラネタリウムの世界

星空を室内に再現するプラネタリウム・・・・・・。かつて「子どもの社会科見学」のイメージが強い施設でしたが、今は状況が変わりつつあります。

公立・民間を問わず多くの施設が運営されているプラネタリウムは、近年

「没入型アート」「ヨガ」「ライブ演奏」「ウエディング」など、多彩なサービスとの掛け合わせによって新たな顧客体験

を生み出しています。デジタルアート施設やVR体験施設といった強力な競合が台頭する中、プラネタリウム業界は「星空を見る場所」という枠を超え、「非日常体験」や「癒やし」を提供する空間へと進化しているのです。

この記事では、プラネタリウム業界の競争環境や注目の事例、業界の課題を整理し、新しいビジネスの可能性を探ります。前述した顧客体験の事例の話だけを先に見たい人は、第5章に飛んでください。

2 プラネタリウムの分類

プラネタリウムの定義はいくつかありますが、日本プラネタリウム協議会では次のように定義しており、この記事では本定義を基に動向などの調査を行っています。

様々な時間や場所における星空および天体の運動を、観覧者を覆うドーム型スクリーンに再現する装置のこと (日本プラネタリウム協議会 「プラネタリウムデータブック2020」)

一般的に、プラネタリウムは「投影方式」「設置方式」によって、次のように分類されます。

1)投影方式

1.光学式プラネタリウム

ガラスや金属の板に星の位置を刻印した原板を投影機に固定した上で、その前後に光源とレンズを組み合わせ、スクリーンに光の点を映し出すことによって、星空を再現する方式の投影機です。

2.デジタル式プラネタリウム

コンピューターで計算された星空を、グラフィック映像として投影します。ドーム中央、または壁面に設置されたプロジェクターを組み合わせて、スクリーン全体に任意の時間や場所からの星空を再現する方式の投影機です。デジタル式は星空だけでなく、文化財の解説動画や風景などのコンテンツも投影することができます。

2)プラネタリウムの分類(設置方式)

1.常設型

科学館、博物館、商業施設などに併設されている施設を指します。常設型では、ドームスクリーンや音響システム、リクライニングシートなどの周辺機器も一体となって施設が設計されるため、没入感のある体験を味わえるのが特徴です。

2.移動式(モバイルプラネタリウム)

ドームも投影機も移動式で、場所を変えて運用できるプラネタリウムです。科学教育の一環やイベントとして、学校や商業施設などで利用されています。ドームスクリーンは持ち運びがしやすいように、空気を入れて膨らませるエアドーム方式のものが多く使われています。

3 プラネタリウム施設の状況

日本プラネタリウム協議会 「プラネタリウム施設一覧 2025」によると、2025年12月時点で、

常設型のプラネタリウムが全国で486施設あり、そのうち298施設が稼働中

となっています。なお、稼働中の施設数には、改修中の建物や設備も含まれます。

プラネタリウム施設の状況

4 プラネタリウムの競争環境分析とニーズの競合

1)ファイブフォース分析

ここでは、ビジネスフレームワークの「ファイブフォース分析」などを使いながら、競争環境や競合となり得るサービスについて考えていきます。

プラネタリウムの競争環境分析

プラネタリウムの競合や代替サービスを考える際、単に「星を見る場所」という視点だけでなく、「顧客がその時間やお金を使って何を得たいのか」というニーズ別に分類すると、ビジネス上の競合関係が鮮明になります。

2)ニーズの競合

1.「非日常的な体験」ニーズの競合

仕事帰りやデートでの利用など、「リラックスしたい」「日常を忘れたい」というニーズが競合するケースです。例えば、次のような施設、サービスが挙げられます。

  • 没入型(イマーシブ)アート展示:「チームラボ」などのデジタルアート施設です。360度映像に包まれる体験は、プラネタリウムの「没入感」という、最大の武器に対する強力な代替サービスとなっています。
  • 夜景展望台:「ロマンチックな雰囲気で空を眺める」という目的において、本物の夜景が見える展望台は常に強力なライバルです。

2.「教育・知的好奇心」ニーズの競合

ファミリー層や子どもたちの「学び」や「体験」というニーズが競合するケースです。例えば、次のような施設、サービスが挙げられます。

  • 科学館・博物館の特別展:プラネタリウム以外の展示(恐竜、ロボット、AI等)が魅力的であれば、顧客はそちらに流れます。
  • 天体観測会(リアル):キャンプ場や地方自治体が主催する観望会。本物の星空を見ることには、映像技術では勝てない「体験の重み」があります。

3.「映像エンターテインメント」ニーズの競合

「座って映像を楽しみたい」というニーズが競合するケースです。例えば、次のような施設、サービスが挙げられます。

  • プレミアム映画館(IMAX、4DX):巨大スクリーンと高音質という点では共通していますが、ストーリー性や話題性では映画が勝ることが多く、強い代替となります。
  • VR(バーチャルリアリティー)施設:VRゴーグルを使用すれば、ドームという巨大な建築物がなくても、一人ひとりが宇宙旅行を体験できてしまいます。

5 プラネタリウム×他サービスを組み合わせた事例

1)プラネタリウム×快適な鑑賞スタイル

座席を「椅子」ではなく、「家具」や「プライベート空間」として再定義する動きです。例えば、コニカミノルタプラネタリウム「満天」(東京都豊島区)では、プレミアムシート(ペアシート・寝転び席)、雲のようなふわふわのソファ(雲シート)や、芝生に寝転び、実際に星空観察をしている感覚を楽しめるエリア(芝シート)などを備えています。

コニカミノルタプラネタリウム「満天」
https://planetarium.konicaminolta.jp/manten/

2)プラネタリウム×アロマ

視覚以外の感覚に訴えかけることで、没入感を高めるものです。例えば、コニカミノルタプラネタリウム「天空」(東京都墨田区)では、ヒーリング・アロマ上映として、プラネタリウムの上映中、シーンに合ったオリジナルアロマの香りが楽しめるプログラムを用意しています。

プラネタリウムとアロマを組み合わせて、リラックスしながら星空を楽しめる体験は、「夢と学びの科学体験館」(愛知県刈谷市)や子ども科学館(神奈川県厚木市)など、科学館に併設されたプラネタリウムでも取り組みが広まっています。ただし、アロマを用いる場合は、安全性の観点から、対象を中学生以上からとしているところも多いようです。

コニカミノルタプラネタリウム「天空」
https://planetarium.konicaminolta.jp/tenku/
夢と学びの科学体験館
https://www.city.kariya.lg.jp/yumemana/index.html

3)プラネタリウム×ライブ演奏

星空の下でアーティストが演奏する「星空ライブ」といった取り組みがあります。例えば、コニカミノルタが提供する「LIVE in the DARK」では、プラネタリウムとアーティストのライブを組み合わせて、暗闇の中でプラネタリウムが映し出す満天の星とともに生演奏を楽しめる、非日常のライブとなっています。

似たような事例には、第2章で紹介した国際文化交友会 月光天文台(静岡県田方郡)の「星空コンサート」などがあります。

LIVE in the DARK
https://planetarium.konicaminolta.jp/livedark/archive/

4)プラネタリウム×声優・朗読

プラネタリウムのナレーションに声優を起用したり、朗読劇を行ったりするイベントがあります。例えば、声優星空プラネタリウム朗読会の「ほし×こえ」は、星や宇宙をコンセプトに、有名声優による朗読会を各地のプラネタリウムで展開しています。

ほし×こえ
https://hoshikoe.jp/

5)プラネタリウム×ヨガ

プラネタリウムのリラックス効果や、癒やしをもたらす空間を利用して、ヨガ体験を提供する施設もあります。例えば、千葉市科学館(千葉県千葉市)や名古屋市科学館(愛知県名古屋市)では、ヨガ講師を招いて座席に座って行うヨガと、科学館スタッフによる星空の解説を組み合わせたプログラムを提供しています。

千葉市科学館
https://www.kagakukanq.com/
名古屋市科学館
https://www.ncsm.city.nagoya.jp/

6)プラネタリウム×カフェ・ダイニング

飲食をしながら星空やアニメーション番組も楽しむことができる施設もあります。例えば、羽田空港の第3ターミナル(東京都大田区)内にある施設「PLANETARIUM Starry Café」では、カフェの天井がプラネタリウムとなっており、飲食をしながら日常では見られない4000万個の星を楽しめるプラネタリウムを鑑賞できます。

PLANETARIUM Starry Café
https://tokyo-haneda.com/shop_and_dine/detail/tenant_00050.html

7)プラネタリウム×ウエディング

プラネタリウム施設でフォトウェディング(挙式や披露宴を行わず、ドレスや和装を着用して写真撮影を行う結婚式)や結婚式場でプラネタリウムの演出を行う事例もあります。

例えば、「コニカミノルタプラネタリア TOKYO」(東京都千代田区)では、プラネタリウムのドームを撮影場所として、和装による写真や動画撮影ができるフォトウェディングプランを販売しています。

他にも、結婚式場の「セレス高田馬場」(東京都新宿区)では、「星空挙式」の名前で、星空を天井に映し出す演出を取り入れています。

コニカミノルタ プラネタリアTOKYO:星空×和婚のフォトウェディングプラン
https://planetarium.konicaminolta.jp/event/wedding_photo_wakon_style/
セレス高田馬場
https://celes-takadanobaba.com/

8)プラネタリウム×睡眠

「寝てもいいプラネタリウム」として、あえて眠りを誘う解説やBGMを流すイベントです。2011年の勤労感謝の日に明石市立天文科学館(兵庫県明石市)が「熟睡プラ寝たリウム」として始めた取り組みです。今では全国各地のプラネタリウム施設で、枕やパジャマの持ち込みOK、ポインターなしの星空解説、BGMだけの星空観賞、BGM抜きの星空解説などが行われています。

明石市立天文科学館
https://www.am12.jp/

6 プラネタリウム運営の課題と業界団体の動き

1)日本プラネタリウム協議会へのヒアリング結果

日本のプラネタリウム施設、団体、および関連する個人が参加し、会員相互の交流と連携を通じて、プラネタリウム発展のために活動をしている「日本プラネタリウム協議会」に、プラネタリウム運営の動向などをヒアリングした結果は次の通りです。

  • 日本のほとんどのプラネタリウムは公立施設となっており、施設を維持、運営、あるいは改修する際の予算不足が課題に上がっている。観覧料の収入だけでは、そうした施設維持のための費用を賄えない状況である
  • 学校の授業としてプラネタリウムを観覧する場合は、設備が整っていることや、観覧料の面から、公立施設のプラネタリウムが選ばれるケースも多い
  • 移動式のモバイルプラネタリウムは、プラネタリウム施設がない地域や、商業施設などでの一次的なイベント利用での需要が目立っている。民間事業者が運営するケースが多いため、活動が目立ちやすい側面もある
日本プラネタリウム協議会
https://planetarium.jp/

2)2026年にプラネタリウムの国際会議を開催

世界最大のプラネタリウム関係者団体IPS(The International Planetarium Society:国際プラネタリウム協会)の2026年国際会議が福岡で開催されます。日本での開催は1996年の大阪大会以来で、30年ぶりとなっています。

2026年6月21~26日が会期となっており、福岡市科学館、福岡国際センター、福岡国際会議場が会場となります。出展者による技術発表や、子どもが世界各国のプラネタリウム関係者や、天文学・映像制作の専門家と交流できるイベントなどが企画されています。

プラネタリウムの今後の展開を考えるヒントになるかもしれません。

IPS2026
https://www.ips2026fukuoka.com/jp/index.html

以上(2026年4月作成)

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画像:Scoopy-Adobe Stock