【規程・文例集】「出張旅費規程」のひな型

1 出張旅費規程とは

業務を進める上で、顧客との商談や支社などでの会議や打ち合わせ、研修などで出張する場合があります。出張旅費規程は出張に関わる旅費(交通費・宿泊を伴う出張の宿泊費・日当)の支給などについて定めるものです。支給する旅費の額などは企業によって異なりますが、職位ごとに支給する旅費の額を定めておくのが一般的です。

出張旅費規程を定める際のポイントとしては、主に次の2点が挙げられます。

  • 支給する旅費の額は、実際の交通機関の料金や宿泊料金の相場などを考慮した上で、分かりやすく一覧表にして明示する
  • 旅費の支給に関するルールを明示する

上記のうち、2.については、例えば「交通費は最短の経路で計算すること」「ハイヤーなどは会社が必要と認めた場合にのみ利用できること」「出張から帰ったら旅費の精算をするための手続きを行うこと」などが挙げられます。

また、人事異動で従業員やその家族が新任地に向かうための引っ越し費用(交通費や家財道具の荷造り、運送に関わる費用など)について、出張旅費規程で定める場合があります。例えば、「会社が引っ越しに関わる費用をどこまで負担するか」などは定めておいたほうがよい項目です。ピアノなど、いわゆるぜいたく品などは運送費が高額になるため、企業と従業員とでトラブルになりやすいといわれるからです。以降で紹介する出張旅費規程では省略していますが、「ピアノについては1台分までは会社が負担する」「高額な骨董(こっとう)品は本人負担とする」などのように、別途内規を設けて詳細に定めておいたほうがよいでしょう。

この他、企業によっては国内だけではなく、海外へ出張する場合があります。以降で紹介する出張旅費規程のひな型では紹介していませんが、業務内容によっては、海外出張についても定めておく必要があります。

2 出張旅費規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【出張旅費規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、役員および従業員(以下「従業員等」)が会社の業務のために出張する場合の手続きおよびその旅費、並びに転勤のために居住地を変更する場合の交通費等の支給について定める。

第2条(出張の定義)
本規程で定める出張とは、会社の出張命令による国内出張をいう。

第3条(出張の区分)
1)出張の区分は次の通りとする。

1.日帰り出張
 出張する従業員等(以下「出張者」)の勤務地より片道150キロメートル以上かつ片道2時間以上の地域で出発の当日帰着できる出張。

2.宿泊出張
 通常、宿泊を必要とする地域への出張として会社が認めた地域への出張。

2)日帰り出張であっても、業務の都合上または交通不便等のため日帰りが困難な場合は宿泊出張として取り扱うことがある。

第4条(旅費の種類)
本規程で定める旅費の種類は次の通りとする。

1.交通費
2.宿泊費
3.日当

第5条(出張中の傷病・災難)
出張中の傷病(ただし業務外を除く)のため、または不慮の災難等によりやむを得ず出張した地域へ滞在したときは、医師の診断書、または事実の証明のある場合に限り、原則として7日以内において別表第1「旅費」(以下「別表第1」)に定める日当および宿泊費を支給する。

第6条(出張中の勤務)
出張中の勤務に関しては、特別の事情がある場合を除いて就業規則に定める所定労働時間を勤務し、休日に休務したものとみなす。ただし、業務の都合によりやむを得ず出発の日が休日となる場合または出張期間内に休日がある場合の旅費の取り扱いは次の通りとする。

1.宿泊費
 休日の宿泊費は別表第1に定める宿泊費を支給する。

2.日当
 休日勤務の場合の日当は別表第1に定める日当を支給する。
 移動のみの場合の日当は別表第1に定める日当の50%を支給する。
 完全休日の場合の日当は支給しない。

第7条(旅費の計算)
旅費の計算は最短の経路または時間によらなければならない。ただし、天災その他やむを得ない事由で順路を変更した場合は、実際の経路により旅費を計算し支給する。

第8条(タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等の利用)
タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等は緊急または特別の必要のある場合において所属長の許可を受けて利用できるものとし、航空機については会社が認める航空会社の航空機を利用するものとする。

第9条(交通費)
1)交通費のうち、鉄道運賃、船舶運賃、航空運賃については、別表第1に定める職位に応じた等級の額を支給する。
2)バス運賃についてはその実費を支給する。
3)社有自動車を利用した場合、あるいは他社の自動車に便乗した場合、交通費は支給しない。ただし、燃料費、通行料、駐車料等は実費を支給する。
4)タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等の利用については第8条に基づいて会社が必要と認めた場合であって、第14条第1項および第2項に定める手続きを行う際に領収書を添付したときには実費を支給する。
5)出張区間と通勤手当の認定区間が重複する場合には、それに該当する区間の交通費は支給しない。ただし、特に会社が必要と認めた場合にはこの限りではない。

第10条(宿泊費)
1)宿泊費は宿泊した夜数(午前0時を過ぎるごとに1夜とする)に応じて別表第1に定める額を上限とする実費を支給する。
2)宿泊研修等で宿泊費込みの受講料を会社が負担している場合は、宿泊費を支給しない。

第11条(日当)
1)日当は出張の初日から最終日まで、暦日により出張日数に応じて別表第1に定める額を支給する。ただし、午後出発の場合および午前帰着の場合には、その日については別表第1に定める日当の50%を支給する。
2)第3条第1項第1号の日帰り出張の場合は、その日について別表第1に定める日当の50%を支給する。

第12条(出張の手続き)
出張者は、出発の前日までに出発の日時、行き先、訪問先および用件について、別途定める「出張承認申請書」(省略)を所属長に提出し、承認を得なければならない。この手続きをしない者に対しては、旅費の支給をしないことがある。

第13条(旅費の仮払い)
出張者は、第12条に定める承認を得た場合には、出発前に別途定める「仮払申請書」(省略)を所属長に提出し、承認を得た上で旅費の仮払いを受けることができる。

第14条(帰社の報告および旅費の精算)
1)出張者が出張先から帰着したときは、3営業日以内に別途定める「旅費請求書」(省略)および「出張報告書」(省略)を所属長に提出し、承認を得た上で旅費の精算をしなければならない。
2)出張先からの帰着が予定より遅延するときは、電話その他によりその旨を所属長に報告しなければならない。
3)第14条第1項および第2項に定める手続きをしない者に対しては、旅費の支給をしないことがある。

第15条(転勤旅費の種類)
本規程で定める転勤旅費の種類は次の通りとする。

1.本人交通費
 会社から転勤を命ぜられ転勤する者(以下「転勤者」)の旧任地から新任地までの交通費。
2.荷造り運送費
 家財道具等の荷造り、運送に要する費用。
3.家族交通費
 転勤者の家族の旧任地から新任地までの交通費。
4.宿泊費
 転勤者及びその家族の新任地における宿泊費。

第16条(転勤者本人の交通費)
転勤者には、第9条に定める交通費を支給する。

第17条(荷造り、運送費等)
赴任および帰任に伴う荷造り、運送などの費用は会社が実費を支給する。

第18条(家族の交通費)
1)転勤者が配偶者、転勤者の父母および子を帯同するときは、帯同する家族1人につき、転勤者本人と同等の交通費の実費を支給する。ただし、子については、12歳未満の者は半額、6歳未満の者には支給しない。
2)転勤者が赴任した後、3カ月を経ても移転しない家族に関する交通費は、原則として支給しない。

第19条(転勤者の宿泊費)
転勤者およびその家族が、新任地に赴任してから新しい住居に入居するまでは、会社が認める宿泊施設に宿泊するものとし、その宿泊費は会社が負担する。

第20条(罰則)
役員および従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第21条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

■別表第1「旅費」■

旅費

以上(2026年4月更新)
(監修 税理士 石田和也)

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画像:ESB Professional-shutterstock

5月開始の「企業価値担保権」 土地がなくても融資の対象に?

1 2026年5月スタート! 企業価値担保権

新事業を始めたいけれど、土地や建物がなくて融資が受けられない。かといって経営者保証に頼ると思い切った投資はしにくいし、事業承継にも差し支えるかも・・・・・・。多くの中小企業が抱える悩みです。そんな中小企業の経営者に紹介したいのが、2026年5月25日から始まる「企業価値担保権」です。企業価値担保権とは、

企業が金融機関から融資を受ける際に、信託という仕組みを通じて、有形資産(土地や建物)だけでなく、無形資産(ノウハウや顧客基盤) も含む 「企業の総財産」を担保にできる制度

です(根拠法は「事業性融資の推進等に関する法律」)。

企業価値担保権

これまでの融資は、決算書の数値と不動産の担保価値が審査の中心で、有形資産に乏しい企業、経営者保証が課されることにより事業承継や思い切った事業展開をためらっている企業は、資金調達の選択肢が限られてしまうのが課題でした。しかし、企業価値担保権が開始されることで、

事業の実態や将来性に着目した融資 (事業性評価に基づく融資)を受けやすくなる

のです。一方、その特性故に、融資を利用する経営者には、

金融機関に対し、自社の事業の継続性や収益性、事業計画などを説明するプレゼン力

が一層求められることになります。

そこで、この記事では、

  • 企業価値担保権のポイント
  • 自社の事業を金融機関に説明するポイント

を紹介します。新年度、さらなる事業展開を検討している経営者の方はぜひご一読ください。

なお、企業価値担保権についてより詳しく知りたい方は、こちらをご確認ください。

金融庁「企業価値担保権(旧:事業成長担保権)について」
https://www.fsa.go.jp/policy/kigyoukachi-tanpo/index.html

2 企業価値担保権をざっくり解説!

1)従来の担保権との違い

従来の担保権と企業価値担保権の違いを比較表としてまとめました。

従来の担保権と企業価値担保権の違い

前述した通り、

企業価値担保権の担保対象は「企業の総財産」

です。現在保有している財産だけでなく、将来取得する財産も含まれますし、現預金や設備だけでなく、

  • 独自の技術やノウハウ
  • 顧客基盤・取引先との関係
  • ブランドカ

といった、貸借対照表に載らない無形資産も評価の対象です。

また、従来の担保権とのもう1つの大きな違いが「評価の視点」です。従来の担保権は、万が一返済できなくなった場合に「担保物を売っていくらで回収できるか」という処分価格で評価されていましたが、企業価値担保権では、「この事業が将来どれだけのキャッシュフローを生み出せるか」という事業継続価値を重視します。つまり、

過去の実績や現在の資産だけでなく、これからの成長の可能性が評価の対象

になるのです。

2)「企業」「金融機関」「企業価値担保権信託会社」の三者で運営する

企業価値担保権は、企業(借り手)と金融機関(貸し手)の間に、法律に基づき新設される「企業価値担保権信託会社(担保権者)」が入る仕組みになっています。

おおまかなスキームのイメージは図表3の通りです。

「企業」「金融機関」「企業価値担保権信託会社」の三者で運営

1.企業(借り手)

企業は企業価値担保権信託会社(担保権者)と信託契約を結び、企業価値(自社の総財産)を担保目的財産として提供します。企業価値担保権は商業登記簿への登記によって設定されますが、設定後も企業は通常の事業活動の範囲において、財産の処分を自由に行うことができるので、取引が制限されることはありません。

なお、企業価値担保権のルールでは、借り手となれるのは株式会社・持分会社だけです。

2.金融機関(貸し手)

企業価値を担保として融資を実行します。企業からの返済が滞る場合、企業価値担保権信託会社を通じて債権回収を行います。

なお、金融機関は金融庁の免許を取得した場合、企業価値担保権信託会社を兼任することが可能です。

3.企業価値担保権信託会社(担保権者)

企業から金融機関に対する債務の弁済が滞った場合、裁判所に申立てを行います。裁判所は事業の経営等を担う「管財人」を選定し、管財人は事業の経営等をしながら、スポンサーへの事業譲渡などを行い、その対価が金融機関への弁済に充てられることになります。

「事業を解体」して資産を売るのではなく、事業全体を維持したまま次の担い手に引き継ぐ「事業譲渡」などで対応するため、取引関係や従業員の雇用は維持される

というのが特徴です。

3)経営者保証は原則不要になる

企業価値担保権を設定する場合、

経営者個人の連帯保証は原則として制限

されます。事業全体の価値を担保として評価するため、経営者個人の資産に頼る必要がなくなるという考え方です。これにより、経営者は個人資産を失うリスクを恐れず、より積極的な事業展開に踏み切れるようになると期待されています。

ただし、経営者が意図的に粉飾決算を行った場合や、企業の資産を不正に流用した場合は例外です。

3 自社の事業をきちんと金融機関に説明するには?

前述した通り、企業価値担保権を活用した融資を利用する場合、経営者には「金融機関に対し、自社の事業の継続性や収益性、事業計画などを説明するプレゼン力」が一層求められます。ここでは、金融機関の元融資担当者にヒアリングした、経営者がプレゼン力を身に付けるために押さえておきたいポイントを紹介します。

1)経営者がハマりやすい3つの落とし穴

新事業などやりたいことが明確にあるのに、融資を断られてしまう・・・・・・。そうした経営者の多くには、陥りがちな落とし穴が3つあります。

1.自社を客観視できていない

自社の技術や商品に対する自信は大切ですが、経営者が「ウチには立派な技術や商品がある!」と力説するだけでは、融資の許可は下りません。融資担当者が重視するのは「客観的な根拠」です。市場ニーズや競合との比較分析が欠けていると、業績悪化時の立て直し能力にも疑問を持たれかねません。

2.根拠のない計画を立てる

売上や利益が常に右肩上がりになっているものの、「なぜその数字が達成できるのか」という裏付けがないケースも多いです。融資の担当者は、計画の数字の整合性を必ず検証します。「どの施策が売上につながるのか」「根拠となるデータは何か」まで、事業計画書に落とし込むことが大切です。

3.計画を言語化して説明できない

外部の専門家や財務担当者に事業計画書の作成を任せきりにし、経営者自身が計画の中身を説明できないケースも少なくありません。作成を専門家などに任せること自体は問題ありませんが、肝心の経営者自身が中身を説明できなければ、事業への理解が低いと判断され、計画の実現可能性そのものを疑われます。

2)伝わらないNGな説明を知る

融資担当者との面談は、書面だけでは伝え切れない熱意を補足できる絶好の機会です。以下のNGパターンを避け、担当者に確実に伝わる説明を心がけましょう。

1.具体性のない言葉に頼る

「革新的」「先進的」といった抽象的な表現では、担当者に事業の魅力が伝わりません。担当者はあらゆる業界の専門家ではないため、自社のビジネスモデルを具体的にイメージできる説明が不可欠です。

2. リスクや課題に触れていない

自社の強みだけをアピールし、競合参入やコスト高騰などのリスクに触れない説明は、「リスクを考慮していない」または「都合の悪い情報を隠している」という不信感を招きます。リスクと対策をセットで提示することが危機管理能力の証明になり、信頼感も高まります。

3.競合との違いが説明できない

自社と競合の違いを、単に「(ウチのほうが)品質が高い、サービスが丁寧」と力説しても、そうした曖昧な表現では融資担当者は納得しません。金融機関が求めているのは、自社の強みがどのような競争優位性を生み、事業の持続につながるのか、というつながりです。現時点で直接の競合がいない場合でも、今後の参入可能性を想定した見通しは必須です。競合調査が不十分だと、「市場のニーズ自体を把握できていない」と見なされかねません。

3)融資担当者が納得する説明のポイント

融資担当者は経営者の説明を基に、社内で融資の稟議(りんぎ)を通さなければならない立場です。上位者を納得させる稟議書を書けるよう、

担当者に「武器」を渡す意識を持つ

ことがポイントだそうです。

1.計画にデータを添える

事業計画の目標には、実績データに基づく根拠を添えましょう。担当者は「なぜその数字が達成できるのか」を上位者に説明する必要があるため、エビデンスのある資料は担当者の武器になります。例えば、

  • 売上目標であれば、直近の平均月商や前年度対比での推移
  • 顧客満足度であれば、アンケート結果や実際のリピート率

などの資料を添えるとよいでしょう。

融資担当者も、上位者への報告で活用できるレベルのデータがそろっている案件は、自信を持って説明ができますし、完成度の高い計画を提出してもらったなら、期待に応えたいという気持ちが高まるそうです。

2.収支計画はリスクも織り込む

収支計画は、売上・費用・利益の各項目が論理的につながり、「この前提なら達成可能」と担当者が納得できる水準に仕上げることが大切です。希望的観測より、堅実な根拠に基づく計画のほうが信頼を得られます。

審査では計画未達時のリスクシナリオも検証されます。返済を続けられる財務基盤や、経費削減などの経営判断ができることを計画に織り込んでおくことで、担当者からの信頼がより高まります。

以上(2026年4月作成)
(監修 石原法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:日本情報マート

【中小企業向け】税理士が厳選! 2026年度に使える主な税制

1 税制改正大綱の内容はいつから実行される?

毎年年末に税制改正大綱が公表されますが、その内容は今すぐに実行されるわけではありません。税制改正大綱の内容を実行するための法令は、年明け1~3月に国会で審議されますし、そもそも税制改正大綱には、

その翌年度の改正だけでなく、翌々年度以降の改正

も含まれているのです。

となると、経営者や実務担当者は、税制改正大綱の内容が、いつから実行されるのかを意識しておく必要があります。そういう意味でいえば、直近の税制改正大綱の内容はどうなのでしょうか。皆さんが注目している税制が、実はまだ先のことだったら困りますよね。

そこで、この記事では、近年話題になっている様々な税制の中から、

中小企業が2026年度に使える税制

について紹介していきます。具体的には、

設備投資、研究開発、賃上げ、寄附

をした、または検討している中小企業の経営者や実務担当者は確認してみてください。

この記事で紹介している設備投資、研究開発、賃上げに関する税制は、中小企業者等を対象としています。中小企業者等とは、

資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人(同一の大規模法人から、発行済株式の総数または出資の総額の2分の1以上を所有されている法人などを除く)など

をいいます。

なお、この記事で紹介している税制の内容は、2026年3月26日時点のもの(令和8年度税制改正大綱で定められた内容については予算審議中のもの)で、将来変更される可能性があります。

2 【設備投資】中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、

生産性の向上を目的に、一定の設備投資やソフトウエアを購入した場合に、その投資額の一部を税額控除か、特別償却(通常の減価償却費のかさ増し)のいずれかを選択して適用できる制度

です。ただし、資本金3000万円超の中小企業者等については特別償却しか適用できません。

中小企業投資促進税制の概要

例えば、生産性の向上を目的に200万円の機械装置を購入して税額控除を選択した場合、14万円(=200万円×7%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、購入した設備ごとに購入金額や重量などの下限が決められています。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。

この税制は、事前の申請などは必要なく、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類を添付することで適用を受けられます。

1.特別償却の場合

  • 特別償却の償却限度額の計算に関する付表(以下「付表」)
  • 適用額明細書

2.税額控除の場合

  • 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
  • 適用額明細書

3 【設備投資】中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、

中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて、新たな設備投資をした場合に、その投資額の一部を税額控除か、全額を即時償却のいずれかを選択して適用できる制度

です。要件は4つのタイプに分かれており、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。なお、C類型は2025年4月1日をもって廃止となっています。

中小企業経営強化税制の概要

例えば、150万円のシステム投資を行って税額控除を選択した場合、15万円(=150万円×10%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、中小企業投資促進税制と同様、購入した設備ごとに購入金額の下限が決められているので注意が必要です。一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は対象外なので、自社の業種が指定事業に含まれるか確認しましょう。

また、この税制を受けるためには、事前に経営力向上計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定までおおよそ3カ月はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(認定計画の申請書および認定書の写しや別表または付表、適用額明細書)を添付しなければなりません。

4 【設備投資】中小企業防災・減災投資促進税制

中小企業防災・減災投資促進税制は、

中小企業等経営強化法の認定を受けた事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画に基づいて、企業の防災・減災目的の設備投資をした場合(認定を受けた日以後1年以内に対象設備を取得して、事業用として使用した場合に限る)に、特別償却を適用できる制度

です。

中小企業防災・減災投資促進税制の概要

例えば、150万円の耐震設備を取得した場合、24万円(=150万円×16%)を特別償却として損金に計上できます。

また、この税制は、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(付表と適用額明細書)を添付することで、適用を受けられます。

この税制を受けるためには、事前に事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定まで、不備がない状態でおおよそ45日はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(付表と適用額明細書)を添付しなければなりません。

5 【設備投資】少額減価償却資産

少額の備品などを購入した際、資産計上をすることなく、即時に全額を損金に算入できる少額減価償却資産について、

2026年度より、対象になる取得価額が40万円未満(改正前は30万円未満)に引き上げ

られています。

なお、この特例は、

事業年度終了の日において常時使用する従業員の数が400人以下(改正前は500人以下)の法人が適用対象

になります。

6 【設備投資】固定資産税の特例

固定資産税の特例は、

中小企業等経営強化法の認定を受けた認定先端設備等導入計画に基づいて、新たな設備投資をし、かつ一定率以上の賃上げを表明した場合に、固定資産税の一部が3年間または5年間減免される制度

です。

固定資産税の特例の概要

例えば、機械装置200万円を購入した場合、約14万円(≒200万円×1.4%×1/2。一般要件のみを満たした場合の購入初年度ケースです)の固定資産税の減免を受けられます。

この税制を受けるためには、事前に先端設備等導入計画を作成し、市区町村から認定(東京都特別区の場合は、計画申請・認定は特別区が、課税は東京都が行います)を受けなければなりません。設備投資については、認定後に行うことが必須です。なお、先端設備等導入計画の作成には1カ月程度はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、償却資産の申告の際に、一定の書類(先端設備等導入計画に係る固定資産税の課税標準の特例適用申請書や認定書の写しなど)を添付しなければなりません。

7 【研究開発】中小企業技術基盤強化税制

中小企業技術基盤強化税制は、

中小企業が行う研究開発(試験研究)について、その試験研究費の一部を税額控除できる制度

です。

中小企業技術基盤強化税制の概要

例えば、3000万円の試験研究費が計上された場合、360万円(3000万円×12%)の税額控除を受けられます。ただし、控除できる金額は原則として法人税額の25%が上限となります。

なお、2026年度の税制改正では、適用期間が3年間延長されるとともに、控除しきれなかった税額を3年間繰り越せる制度(繰越税額控除制度)が追加されました。これにより、

  • 当期が赤字で法人税が発生しない場合
  • 控除額が法人税額25%を上回る場合

であっても、将来の黒字年度で控除を活用できるようになります。ただし、「その年度の試験研究費が比較試験研究費(過去3年間の平均額)を超えていること」という条件がある点には注意が必要です。

この税制は、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(別表や適用額明細書)を添付することで、適用を受けられます。

8 【賃上げ】賃上げ促進税制

賃上げ促進税制は、

中小企業者等が、前年度よりも給与などを増やした場合に、その増加額の一部が税額控除できる制度

です。通常要件に加え、上乗せ措置があり、それぞれの要件を満たすごとに、一定の税額控除率が加算されます。昨年度(2025年度)に引き続き制度自体は継続されていますが、

2026年度は教育訓練費に係る税額控除率(10%)の上乗せ措置が廃止

され、最大控除率が35%(昨年度は45%)に縮小しています。

中小企業の賃上げ促進税制の概要

例えば、給与の合計額を前年度から500万円増やした場合、75万円(=500万円×15%)を法人税額から控除できます(通常要件のみを満たした場合のケースです)。

この税制の適用を受けるためには、法人税の申告の際に、確定申告書に、税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額と、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

なお、賃上げ促進税制は税額控除であるため、

  • 法人税が発生しない赤字の会社
  • 黒字であっても、納税額が控除額より少ない会社

は要件を満たしても、その年度にメリットの全部または一部を受けられません。そのような会社には、最大5年間, 控除しきれなかった額を繰り越して税額控除を受けられる措置があります。

また、2026年度の税制改正で、

  • 中堅企業(資本金1億円超で、従業員2000人以下)は、2027年3月31日をもって廃止
  • 大企業(中小企業者等、中堅企業以外の企業)は、2026年3月31日をもって廃止

が決まっています。中小企業者等においては、「期限到来時(2027年3月31日)の状況を踏まえて必要な見直しを検討する」という表現にとどめられ、継続か廃止かの明確な判断は来年度以降の税制改正の議論にて行われる見込みです。

9 【寄附】企業版ふるさと納税

企業版ふるさと納税は、

会社が自治体に寄附すると、税負担を軽減することができる制度

です。

軽減効果は、寄附額の最大9割とされており、内訳は、

  • 法人住民税と法人税の税額控除が4割
  • 法人事業税の税額控除が2割
  • 法人税の損金算入で約3割

です。寄附額の下限金額は10万円で、本社が所在する自治体などへの寄附は対象外となっています。寄附を募っている自治体や事業については、内閣府「企業版ふるさと納税ポータルサイト」で確認してみましょう。

■内閣府「企業版ふるさと納税ポータルサイト」■
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html

企業版ふるさと納税の税負担の軽減効果

なお、企業版ふるさと納税には、個人版と異なり返礼品はありません。そのため、会社の社会貢献活動や自治体とのパートナーシップ構築などを目的に行われています。

この税制を受けるためには、確定申告時に、企業版ふるさと納税の適用がある寄附を行ったことを申告するとともに、受領証の写しを提出(法人税の申告にあっては保管)しなければなりません。

以上(2026年5月作成)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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画像:日本情報マート

ビジネスで差がつく「花の贈り方」~自分を売り込むチャンス!

1 「花」はオフラインメディアである

誰もが知っている大企業勤めならいざしらず、中小企業の場合、社長も一介の営業担当者も、まずは相手に「自分」を覚えてもらうことからビジネスが始まります。正方形の名刺、個性的な服装、つかみのトークなど、これらは全て「個」として自分を覚えてもらうための工夫です。

筆者は以前、1日に何件もアポイントが入る地方銀行系シンクタンクの名物執行役員に、一度で顔と名前を覚えてもらい、何度も連絡を取り合う仲になりました。残念ながら自社のビジネスにはつながりませんでしたが、代わりに多くの人を紹介したり、紹介してもらったりしましたし、通常は知り得ない金融機関の裏話も聞けました。

また、知人が東京の赤坂でカラオケスナックを開店したとき、ほとんど店に行けなかったにも関わらず、とても感謝され「あなたの開店祝いが一番良かった!」と絶賛されたことがあります。

どちらのケースも、私が一体何をしたかというと、

花を贈った。ただそれだけ

です。ポイントは相手のことを考え、ちょっとだけ工夫したことです。さて、ここでクイズです。私がしたちょっとした工夫とは、次の3つのうちどれだと思いますか?

クイズ1.「地方銀行系シンクタンク」向けの工夫は?

  • 自分をアピールするために、10鉢の胡蝶蘭を贈った
  • ストーリー性を持たせるために、自分で新幹線に乗って胡蝶蘭を運んだ
  • あえて「立札(送り主の名前が記された札)」を付けなかった

答えを知りたい人はこちらをクリック(ログイン後)

クイズ2.「赤坂でカラオケスナック」向けの工夫は?

  • サプライズとして、開店時間ぴったりに胡蝶蘭を届けた
  • 空間演出ができるよう、香りの強い花を贈った
  • 小さなプリザーブドフラワーを3基贈った

答えを知りたい人はこちらをクリック(ログイン後)

花は一定期間、空間に飾られて視覚的に強い印象を残しますし、

立札に自社名を記せば「オフラインメディア」のような宣伝効果

が期待できます。4月は開業・開店、異動や昇進などが重なる時期ですから、花を贈って自分を覚えてもらう絶好の機会です!

この記事では、ビジネスで花を贈る際の基本マナーや、一歩進んだ「印象に残る贈り方」を紹介しています。花を贈って新年度の営業に弾みをつけましょう!

花の贈り方

2 【シーン別】花の贈り方の基本マナー

ビジネスで花を贈るシーンを想定し、予算やタイミングなどをまとめます。予算などは相手との関係によりますので、その辺りはうまく調整してください。

(図表)【花の贈り方の基本マナー】

シーン 予算の目安 贈るタイミング 贈る場所 注意点・マナー
開業・開店 1万~5万円 オープン前日~当日朝 店舗・事務所 赤い花やラッピングは「火事」を連想させるため避けたほうが無難。開店時は多忙なので世話がかからない花が理想的
移転祝い 1万~3万円 移転完了後~2週間以内 新事務所・新店舗 先方の片付けが落ち着く大安などの吉日を選ぶのが理想的。あえてタイミングをずらすと印象に残りやすいことも
栄転・昇進 5千~3万円 辞令公表後~1週間以内 勤務先または自宅 人事のことなので慎重に進め、必ず正式な辞令が出てから贈ること。会社に届ける際はサイズに注意
退職・送別 3千~1万円 送別会当日・最終出勤日 送別会場・勤務先 持ち帰る際の負担にならないサイズとし、持ち帰り用の袋を用意すると丁寧。定年退職には華やかな花束が良い
お見舞い 3千~5千円 入院後、容体が安定してから 病院(許可が必要) 鉢植えは「根付く=寝付く」を連想させるため厳禁。香りが強い花、落ちる花も避けるのが通常
お悔やみ 1万~2万円 お通夜・告別式まで 斎場・自宅 宗教により花の種類が異なること、斎場の広さによって受け入れられる献花に限りがあるため、必ず葬儀社に確認する

(出所:日本情報マート作成)

3 筆者が行った小さな工夫

ここからは「印象に残る花の贈り方」を紹介します。といっても、その方法はさまざまで、

  • ワントーンにアレンジしたり、季節の花を加えたりして目立たせる
  • 鮮やかなプリザーブドフラワーを送り、世話をせずに鑑賞できるようにする
  • 小型の盆栽を贈って、鑑賞だけではなく育てることも楽しんでもらう
  • QRコード付きカードで、読み込むと動画メッセージが観られるようにする

などが考えられます。どういった方法がいいかは、相手の状況によって変わってきます。

つまり、

お決まりの行為として花を贈るのではなく、いかに相手のことを知り、その状況に合わせて工夫するか

が大切になります。冒頭でお出ししたクイズの答えもまさにこれに通じます。答えは以下の通りです。

クイズ1.「地方銀行系シンクタンク」向けの工夫は?

(答え)3.あえて「立札(送り主の名前が記された札)」を付けなかった

今回の場合、オフィス移転といっても、近隣のテナント入居先から銀行本体の一室に移動するというものでした。私は、たまたま執行役員から移転のことを聞いていましたが、私以外の外部の人間で知っている人はほとんどいないとのことでした。
移転のお祝いに胡蝶蘭を贈ったのですが、あえて立札はつけませんでした。なぜかというと、

取引関係にない私が、なぜ、移転のことを知っていて、花まで贈ってくれるのか?(執行役員はこの相手に便宜を図るつもりか?)

とつまらない詮索を受けて、執行役員に迷惑をかけたくなかったのです。

結局、届いた花は私が贈った1鉢だけだったとのことで、それなりに目立ったようです。また、これは想定外だったのですが、立札がないため、執行役員が花の送り主である当社のことを説明してくれて、会社名と私の名前が内部で広まりました。もちろん、健全な関係であることも内部で理解されました。

このこともあり、執行役員との仲が深まっていきました。執行役員曰く「自分の立場に配慮した私の姿勢」を評価してくれたとのことでした。

クイズ2.「赤坂でカラオケスナック」向けの工夫は?

(答え)3.小さなプリザーブドフラワーを3基贈った

カラオケスナックをオープンした知人はビジネススクールの学友で、開店のことは事前に相談されていました。出店場所やお店の広さは聞いていましたし、ワンオペで回すということも知っていました。開店祝いの花といえば胡蝶蘭が定番ですが、恐らく飾っておくスペースがないですし香りも気になります。また、ワンオペで店を回すとなると、花の世話もできないと考えました。

そこで私は、カウンターにおける大きさでテイストの異なるプリザーブドフラワーを3基贈ることにしました。なぜなら、

3基のプリザーブドフラワーを順番に飾るだけで、手間をかけずに雰囲気を変えられる

と思ったからです。

当時、私は仕事が忙しくて、ほとんど店に行けなかったのですが、「店内が明るくなって、変化も出せる」と、とても感謝されました。

花の贈り方

2つのケースで共通するのは、

事前に相手の状況を把握できていた

ことです。花を贈るとインパクトがありますが、一方ではスペースが必要だったり、飾る順番について相手に気を遣わせたり、世話をしなければならなかったりという側面もあります。状況はそれぞれですが、事前の情報でこうしたマイナス要因を排除すれば相手は喜び、印象に残りやすいのだと思います。

以上(2026年3月作成)

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画像:日本情報マート

4月開始「自転車の青切符」 スマホ使用や放置駐車にも反則金が?

1 2026年4月から「青切符」導入、自転車の規制はどうなる?

自転車の交通違反があった場合、指導警告のほか、これまでは

いわゆる「赤切符」の交付などの刑事手続き(有罪となった場合は前科がつく)

により処理されていました。

ただ、赤切符による処理は、反則金を納めれば刑事罰が免除される「交通反則通告制度」(いわゆる「青切符」)が導入されている自動車の交通違反と比べて時間的・手続き的な負担が大きく、検察に送致されても不起訴とされるケースが少なくありませんでした。そこで、悪質・危険な交通違反を迅速かつ適切に処理できるよう、

2026年4月から、自転車の交通違反についても、自動車と同じく「青切符」による取り締まりが行われる

ことになりました。

2 青切符を切られるケースと反則金の一覧

青切符は2026年4月以降、

  • 16歳以上の全ての自転車利用者(自動車運転免許の有無は問わず)を対象に、比較的軽微な交通違反を犯した場合に交付されます。
  • 違反行為に応じた反則金を納付した場合、刑事罰が免除されます。

「反則行為」という軽微な違反行為(信号無視、一時不停止など)については、交通反則通告制度(青切符)で対応されることになります。一方、「非反則行為」という重大な違反行為(酒酔い運転など)については、これまで通り赤切符での対応になります。

2026年4月以降、自転車で交通違反があった場合の流れ

具体的には、図表2の反則行為が、反則金を支払うことで刑事罰を免除されることになります。

2026年4月以降の反則金一覧

自転車への青切符導入については、警察庁から基本的な交通ルールと警察の交通違反の指導取締りの基本的な考え方についてとりまとめた自転車ルールブックが発表されています。警察庁「自転車ポータルサイト」からダウンロードできますので、こちらも併せてご確認ください。

■警察庁「自転車ポータルサイト」■
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/portal/rule.html

3 自動車の運転時にも注意が必要

自動車等が自転車等の右側を通過する場合(追い越す場合を除く)に十分な間隔がないとき、自転車等はできる限り道路の左側端に寄って通行しなければなりません。これに違反した場合、図表2の「被側方通過車義務違反」に当該します。

一方、自動車等は、自転車等との「間隔に応じた安全な速度」で進行しなければなりません。警察庁から、この場合の「間隔に応じた安全な速度」について、

  • できる限り間隔を空ける(少なくとも1m程度間隔を空ける)
  • 自転車と1m程度の間隔を確保できない場合には、時速20kmから30km程度で運転する

という目安が示されています。これに違反した場合、3カ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金、反則金(普通車7000円)、違反点数2点が課せられる恐れがあります。

具体的な走行状況、道路状況や交通状況により異なりますが、自動車を運転していて、自転車の右側を通過する場合、これまで以上に注意が必要です。

4 参考:自転車事故の予防と備えを忘れずに

1)「自転車指導啓発重点地区・路線」を確認しよう

警察庁によると、自転車関連事故(自転車が第1当事者または第2当事者となった交通事故)の件数は減少傾向にありますが、2024年の事故件数は約6万7531件と、依然として多くの事故が起きている状況にあります。

■警察庁「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~」■
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/info.html

警視庁および各道府県警察は、管内の交通量が多い道路や、生活道路などで自転車が関係する違反や事故が多いエリアを「自転車指導啓発重点地区・路線」として、ウェブサイト上で公表しています。日常生活で自転車をよく利用する社員に、居住地や会社周辺の「自転車指導啓発重点地区・路線」を確認するよう、周知するのも自転車事故防止につながるでしょう。

2)ヘルメット着用を検討しよう

2023年4月1日に施行された改正道路交通法によって、全ての自転車利用者に対し、乗車用ヘルメット着用が努力義務化されました。

自転車乗用中の交通事故で死亡した人の約5割が、頭部に致命傷を負っています(2020年から2024年の合計)。

ヘルメット着用はあくまで努力義務であり、罰則はありませんが、自転車乗用中の交通事故において主に頭部を負傷した死者・重傷者の割合では、

ヘルメットをしていなかった人の割合は、ヘルメットをしていた人と比べ約1.7倍

にも膨れ上がります。社員にヘルメットの着用を勧めることで、「もしものとき」の大きなケガを防ぐことができます。

■警察庁「頭部の保護が重要です~自転車用ヘルメットと頭部保護帽~」■
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/toubuhogo.html

3)自転車向けの損害保険の加入も検討しよう

自転車で交通事故を起こした場合には、運転者に刑事上の責任も問われます。さらに、重大な過失によって人を死傷させた場合には、「重過失致死傷罪」に問われる恐れもあります。被害者に対しては、民事上の損害賠償責任も発生します。

交通ルールをしっかり守って運転しなければならないことを、いま一度、社員に徹底させましょう。また、自転車向けの損害保険の加入も検討するとよいでしょう。

■日本自動車連盟「[Q]自転車で道交法違反をした場合は?」■
https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-accident/subcategory-traffic-violation/faq286
■日本損害保険協会「自転車事故と保険」■
https://www.sonpo.or.jp/about/useful/jitensya/

以上(2026年4月更新)

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画像:日本情報マート

【PDFで印刷可能】総務のお仕事 12カ月 一目で分かる「月別実務リスト」

人事部、経理部、法務部など、バックオフィス専門の部署がないことが多い中小企業では、経営者や管理職も例外なくこうした実務を行います。しかし、不慣れな上に、片手間で処理することが多いので、どうしても抜け漏れが生じがちです。

一方、こうした実務は法令で定められたものが多く、放置しておくと思わぬペナルティを受けることがあります。

これを避けるために、

「人事労務」「会計・税務」 「法務・その他総務」の主なお仕事を月別にリスト化した「月別実務リスト」

を作成しました。下記からPDFでダウンロードできますので、印刷してご活用ください。


こちらからダウンロード

なお、このPDFは次のコンテンツを再編したものです。興味のある月の業務だけを知りたい場合、こちらをご確認ください。

以上(2026年4月作成)

pj00815
画像:日本情報マート

総務のお仕事 12カ月 一目で分かる「月別実務リスト」

1 実務の抜け漏れを防止するには?

人事部、経理部、法務部など、バックオフィス専門の部署がないことが多い中小企業では、経営者や管理職も例外なくこうした実務を行います。しかし、不慣れな上に、片手間で処理することが多いので、どうしても抜け漏れが生じがちです。

一方、こうした実務は法令で定められたものが多く、放置しておくと思わぬペナルティを受けることがあります。これを避けるために、この記事では「3月末決算の中小企業」を対象に、

「人事労務」「会計・税務」 「法務・その他総務」の主なお仕事を月別にリスト化

しました。

また、印刷してお使いいただけるPDF版も用意していますので、よろしければこちらもご活用ください。

2 総務のお仕事リスト(対象:3月末決算の中小企業)

以降では、4月から順にリストを紹介しつつ、重要な実務 (各リストの赤字部分)については別途ポイントを説明します。なお、リストの内容は中小企業における一例です。また、便宜上、社会保険の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ) とします。

1)4月のお仕事

4月のお仕事

1.入社手続き (4月入社の場合)

社員が入社したら、「労働条件通知書の交付」 「社会保険や雇用保険の資格取得手続き」「雇入時健康診断の実施」などの手続きが必要です。なお、全国健康保険協会における保険料率が変更になる可能性がありますので、必ず確認するようにして下さい。

2.決算書の作成

1年分の取引に関する仕訳に、決算整理仕訳(売上原価の算定、収益費用の見越し・繰延べ、減価償却の計上など)を加えて集計し、それぞれの勘定科目を決算日時点の数値に確定します。確定した数値を基に、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュフロー計算書(中小企業の場合、作成は義務ではありません)、個別注記表を作成します。

3.3月決算法人の税務申告書の作成

2. で作成した決算書などの数値を基に、法人税 (地方法人税を含む)、法人住民税、法人事業税、消費税(地方消費税を含む)の「税務申告書」を作成します。

法人税と消費税の申告書の作成が中心となります。法人税については、決算書の利益から法人税法上の所得を計算するので、さまざまな調整や税額計算が必要です。消費税については、消費税が課税されている売上・仕入かどうかなど、消費税独自の税額計算を行います。

2)5月のお仕事

5月のお仕事

1.3月決算法人の確定申告

原則事業年度終了の日から2カ月が経過する日 (3月末決算の場合は、5月31日)までに、作成した「確定申告書」を、各提出先に提出します。「国税電子申告・納税システム (e-Tax)」や「地方税ポータルシステム (eLTAX)」を利用していれば、システム上での電子申告が可能です。

2. 確定申告による法人税等および消費税の納付

原則事業年度終了の日から2カ月が経過する日までに、1.で申告した納税額を、各納税先に納める必要があります。e-TaxやeLTAXを利用していれば、ダイレクト納付 (口座振替) やインターネットバンキングなどを利用した電子納税が可能です。

3)6月のお仕事

6月のお仕事

1.夏季賞与の支給、被保険者賞与支払届の提出

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者に賞与を支給した場合、支給日から5日以内に、「被保険者賞与支払届」を所轄の日本年金機構事務センターに届け出ます。支給予定であるにも関わらず支給しなかった場合についても、「賞与不支給報告書」を同じく所轄の日本年金機構事務センターに届け出ます。

なお、賞与保険料は、通常の給与の社会保険料と併せて支給月の翌月末に納付します。賞与を年2回または3回支給している場合、支給のたびに同じ手続きが必要です(年4回以上支給している場合は対象外)。

2.定時株主総会の開催

中小企業の多くは「非公開会社 (全株式の譲渡について会社の承認が必要となる旨を定款に定めている会社)」です。非公開会社は、定時株主総会開催の1週間前までに、「招集通知」を株主に送付します。ただし、議決権を行使できる全株主が同意した場合は省略できます。

また、総会後は、「議事録の作成」 「決議通知書の発送」 「計算書類の公告」などの他、取締役の変更などがあった場合、2週間以内に、所轄の法務局に「変更登記の申請」をします。

4)7月のお仕事

7月のお仕事

1.算定基礎届の提出

毎年7月10日までに、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者の4、5、6月支給給与額を記載した「算定基礎届」を、所轄の日本年金機構事務センターに届け出ます。これにより9月分以降の社会保険料が改定されます(定時決定)。社会保険料は翌月末に納付するのが原則ですので、定時決定で標準報酬月額が変わった場合は、10月に支給する給与から社会保険料の控除額を変更します。

なお、定期昇給などで固定給が変わり、標準報酬月額が2等級以上変動した社員がいた場合、その社員については、変動月から起算して4カ月目から社会保険料が改定されます(随時改定)。例えば、給与が毎月末日締め、翌月払いの会社が、4月に定期昇給(昇給が反映された給与を支払うのは5月から)を行った結果、2等級以上の変動があった社員がいた場合、5、6、7月の給与支払い後、速やかに「月額変更届」を所轄の日本年金機構事務センターに届け出ます。この場合、随時改定が定時決定に優先し、昇給月から起算して4カ月目である8月から標準報酬月額が変わり、社会保険料の控除額を9月支給の給与から変更します。

算定基礎届の記載に当たり、支払基礎日数が17日未満の月は算定対象から除外されます(短時間労働者は11日未満で除外)。4~6月に欠勤が多かった社員がいる場合、ミスが起きやすいポイントなので注意しましょう。

2.労働保険年度更新申告書の提出

毎年7月10日までに、「労働保険年度更新申告書」を所轄の労働基準監督署に届け出ます(労働局への提出や電子申請も可能)。この申告書には、労働保険(雇用保険・労災保険)の前年度の確定保険料と当該年度の概算保険料を記載します。

また、当該年度の概算保険料も原則7月10日までに納付します(前年度に納付した概算保険料と確定保険料との間に過不足があれば、過不足を調整した額を納付します)。ただし、事前に保険料の口座振替の申し込みをしている場合、9月6日(土日祝の場合は翌営業日) に引き落とされます。なお、労働保険料は「概算保険料が40万円以上」など所定の要件を満たす場合、3回まで分割納付が可能です。

5)8月のお仕事

8月のお仕事

1.夏季休暇などの取得予定の確認

夏季休暇は法令で定められた休暇ではなく、会社が就業規則等で独自に設定する「特別休暇」の1つです。例えば、「7、8、9月の3カ月間で3日まで取得可」といった具合に定めるのですが、業務が多忙だと、周囲に遠慮して社員がなかなか休暇を取れないケースがあります。そのため、会社のほうから各社員に取得予定を確認するなどの配慮をするとよいでしょう。

2.建物、設備、社有車などの点検

夏季休暇などで休みを取る社員が増える間、建物、設備、社有車などの点検がおろそかにならないよう注意します。特に、建築基準法、電気事業法、道路運送車両法などで定められている「法定点検」については、所定の期限までに必ず実施します。

6)9月のお仕事

9月のお仕事

1.定期健康診断、ストレスチェックの実施 (9月実施の場合)

社員を雇用する全ての会社は、定期健康診断を1年以内に1回以上実施します。社員数が常時50人以上の場合、ストレスチェックの実施義務もあり、こちらも1年以内に1回以上実施となります(注)。

なお、社員数が常時50人以上の会社は、定期健康診断実施後に「定期健康診断結果報告書」を、ストレスチェック実施後に「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を、すみやかに所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

(注)ストレスチェックについては、2025年5月14日から3年以内に政令で定める日より、50人未満の会社にも実施義務が課せられます。

2.防災訓練の実施、BCPや備蓄の確認など

9月1日の「防災の日」に防災訓練をする会社は多いです。テレワークをしている会社も、災害伝言板やSNSを使った安否確認訓練を実施するなどして、緊急時に備えましょう。また、BCP(事業継続計画)の内容が古くないか、災害用品の備蓄 (水・食料、ヘルメット、救急セットなど)に問題がないかなども、併せて確認しましょう。

7)10月のお仕事

10月のお仕事

1.年次有給休暇の付与 (4月入社の場合)

労働基準法により、「入社後6カ月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤した社員」には、年次有給休暇(以下「年休」)を付与します。例えば、4月1日入社の正社員の場合、10月1日付で10日の年休を付与します。以降1年ごとに労働基準法に基づく日数を付与しますが、年休は付与日から2年を経過すると時効により消滅するので、日数の管理に注意しましょう。また、10日以上の年休が付与される社員については、年5日以上の年休取得義務が課されますので、付与をする際にそのルールを共有化しておくのも重要です。

2.地域別最低賃金(毎年10月改定)の確認

最低賃金には、都道府県ごとに定められる「地域別最低賃金」、特定の産業について定められる「特定最低賃金」があり、このうち地域別最低賃金が毎年10月に改定されます(特定最低賃金は不定期改定)。地域別最低賃金は年々引き上げられていて (2025年10月時点で、全国加重平均で1121円)、社員(特にパート等)がこれを下回らないよう注意します。

8)11月のお仕事

11月のお仕事

1.長時間労働の実態把握、改善

厚生労働省では毎年11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施していて、キャンペーン中は労働基準監督署による長時間労働に対する監督指導が強化されます。長時間労働の改善は本来、継続的にやるべきものですが、特に11月は「勤怠打刻と実際の労働時間が乖離 (かいり)していないか」などをしっかり確認しましょう。

2.中間申告による法人税等および消費税の納付

確定申告時の税額が一定額以上である場合などは、期中に複数回の納付が発生します。これを「中間申告・納付」といいます。税金ごとに、制度が異なります。

法人税、法人住民税、法人事業税については、その事業年度が6カ月を超えるとき、原則、その事業年度開始の日から6カ月を経過した日より2カ月以内(例えば、3月末決算法人の場合は11月末まで)に、中間申告・納付をします。

消費税については、確定申告時の消費税額によって中間申告の回数(なし、年1回、3回、11回)が変わってきます。この記事では、年1回のケースをモデルとしているため、11月末に消費税の中間申告・納付が必要です。

9)12月のお仕事

12月のお仕事

1.年次有給休暇の取得推進

年末年始を休業とする会社は多いですが、仮に本来の予定よりも仕事納めを前倒しできそうであれば、前倒しする日数分、社員に年休の取得を推奨するのもよいでしょう。法律上、年10日以上の年休が付与される社員(主に正社員)については、社員の意見を尊重した上で、会社が時季を指定して年5日の年休を取得させます。業務が多忙で年休取得が滞っている社員については、この時季にまとまった日数を取得してもらうよう働きかけます。

2.年末調整

年末調整は、社員の源泉所得税の最終調整を行うものです。社員全員に

  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(扶養控除等申告書)

を提出してもらい、その年分に受けられる所得控除などを社員ごとに集計し、正確な源泉所得税の金額を算定します。すでに源泉徴収している金額と差額がある場合、12月または1月支給給与で精算します。

10)1月のお仕事

1月のお仕事

1.法定調書の提出

毎年1月31日までに、前年(1~12月)に行った一定の支払いごとの金額や内容を記載した「法定調書」を所轄の税務署に提出します。法定調書は全部で60種類あります。例えば、社員に支払った給与については「給与所得の源泉徴収票」、税理士など特定の人に支払った報酬については「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」などがあります。

2.償却資産の固定資産税の申告

毎年1月31日までに、当該年の1月1日時点で所有している償却資産について記載した「償却資産申告書」を各市区町村に提出します。償却資産とは、土地・建物以外の事業に使用するための資産で、法人税の計算上、減価償却の対象となる資産をいいます。

11)2月のお仕事

2月のお仕事

1.賃上げに関する情報収集

毎年2月ごろになると春闘が始まり、賃上げ(定期昇給やベースアップ)に関する話題を耳にする機会が増えます。他社の動向に注視しつつ、自社の人件費負担なども考慮して、最終的にどの程度賃上げに取り組むのかを判断します。待遇の改善は、人材確保の観点からも重要な要素の1つです。

2.新年度の予算編成

新年度の利益目標を定め、売上と費用に計上する金額を決めます。当年度業績の着地見込みや、経営者の意向、担当者からのヒアリングなどを基に具体的な数値に落とし込むとよいでしょう。作成した予算は全社で共有し、毎月の予算管理(目標達成度合いの把握や、予算と実績の差額分析など)を実施していきます。

12)3月のお仕事

3月のお仕事

1.退職手続き (3月退職の場合)

社員が退職した場合、健康保険法、労働基準法などにより「社会保険や雇用保険の資格喪失手続き」「退職証明書の交付(必要な場合)」といった手続きが必要です。制度がある場合は、退職金の支払いも必要です。

2.36協定の締結・届け出 (4月起算の場合)

会社が社員に時間外労働や休日労働を命じるには、過半数労働組合 (ない場合は過半数代表者)と労働基準法第36条に基づく労使協定(通称「36協定」)を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ます。36協定は、1月や4月を起算日として1年間の有効期間を定めるケースが多く、有効期間が切れた状態で社員に時間外労働や休日労働を命じるのは違法です。必ず有効期間が切れる前に内容を更新し、締結・届け出た上で、社員に周知しなければなりません。また、36協定で締結した内容を超える時間外労働や休日労働を命じる事も違法となりますので、協定内容を十分検討した上で締結する様にしてください。

3.期末棚卸の実施

期末時点の在庫を確定するため、帳簿記録に基づき調査を行う帳簿棚卸と、現物を実際にカウントする実地棚卸を実施します。期末棚卸をして、在庫を確定することで決算書に計上する売上原価が算定されます。

以上(2026年4月更新)
(監修 税理士 石田和也)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

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画像:beeboys-Adobe Stock

経営のヒントとなる言葉(松下幸之助)

「雨が降れば傘をさす」(*)

出所:「功のために大切なこと 松下幸之助が直接語りかける」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

「ビジネスにおいては、その時々の状況に応じて、当たり前のことをしっかりと行うことが重要である」

ということを表しています。

あるとき、松下氏は、新聞記者から事業の成功の秘訣について尋ねられました。その際に答えたのが、この「雨が降れば傘をさす」という言葉です。

人間は誰でも、雨が降ってくれば傘をさし、寒くなれば厚着をするものです。こうした当たり前のことを、松下氏は「天地自然の法則」と呼んでいます。

これをビジネスに当てはめると、「仕入れた(もしくは製造した)商品に適正な利益を乗せて販売し、その代金を顧客から回収する」ということになります。しかし、ことビジネスとなると、この当たり前のことが行われていないこともしばしばみられます。

例えば、「売り掛けで商品を販売したものの、顧客がなかなか代金を支払わない」といった場合、「『代金の支払いを督促すると相手の機嫌を損ねてしまい、今後の取引によくない影響を及ぼすのではないか』と考えて支払いの督促をしなかった」「他社との競争に勝つために無理な値下げをした結果、企業としての体力を著しく消耗してしまった」といったケースは少なくありません。

こうしたことに対し、松下氏は、「自身がビジネスに対して強い信念を持っていれば、常に当たり前のことを行うことができる」と述べています。

一般的に、顧客に商品を買ってもらう企業は、顧客よりも弱い立場にあると考えられがちです。だからこそ、先に述べたように代金の督促をためらったり、顧客が他社に流れないように無理な値下げを行ったりします。

しかし、自身がビジネスに対して強い信念を持っていれば、「自社の商品やサービスを買うことによって、顧客にはこのようなメリットがある」ということを、顧客に対して自信を持って伝えることができます。つまり、ビジネスに確固たる信念があれば、顧客と対等な立場で、そして他社の動向を過度に気にすることなく、当たり前のことを行うことができるのです。

1929年、松下氏は松下電気器具製作所の経営理念を次のように定めました。

「産業人タルノ本分ニ徹シ社會(しゃかい)生活ノ改善ト向上ヲ圖(はか)リ世界文化ノ進展ニ寄與(きよ)センコトヲ期ス」(**)

すなわち、同社では、自社の役割は「生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与すること」であるとしています。

その後、同社はパナソニック株式会社となりますが、現在に至るまで、常にこの考え方を基本に置いて事業を進めてきました。このような揺るぎない信念に基づき、当たり前のことをきちんと行っていくことこそが、大きな成功につながるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

まつしたこうのすけ(1894~1989)。和歌山県生まれ。尋常小学校中退。1918年、松下電気器具製作所(現パナソニック株式会社)設立。

【参考文献】

(*)「成功のために大切なこと 松下幸之助が直接語りかける」(松下幸之助(述)、

PHP総合研究所経営理念研究本部(編著)、PHP研究所、2009年3月)

(**)パナソニック株式会社ウェブサイト」(パナソニック株式会社)

「私の履歴書 経済人1」(五島慶太、杉道助、堤康次郎、新関八洲太郎、原安三郎、

松下幸之助、山崎種二、石坂泰三、出光佐三、伊藤忠兵衛、大谷竹次郎、高碕達之助、遠山元一、日本経済新聞社、2004年6月)

「雨が降れば傘をさす 松下幸之助に学ぶ本物の経営」(中博、アチーブメント出版、2009年3月)

以上(2026年3月更新)

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画像:日本情報マート

新入社員のための「給与&社会保険」の基礎知識(2026年4月号)

新入社員として働き始め、最初の給与が振り込まれたとき、すべての人が「給与明細」を受け取ります。給与明細を見る際、最初に目を向けるのはいわゆる「手取り額」でしょう。「手取り額」を見ると「思っていたより少ない」「なぜこんなに引かれているのか」といった違和感を覚える人も少なくありません。その理由は、これまでに給与明細の見方や、税金・社会保険について詳しく学ぶ機会がほとんどなかったからです。本冊子では、新入社員に向けて給与明細の全体像を中心に、税金や社会保険について解説します。

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2026年「賃上げ」に対する経営者300人の本音。御社はどうする?

1 2年連続で賃上げする企業は86.0%!

今年も「賃上げ」に関する話題が世間を賑わせています。足元では「春闘の賃上げ率が3年連続で5%超」となる見込みですが、一方で「中小企業の賃上げ疲れ」を指摘する声もチラホラ……世の経営者はどのように考えているのでしょうか?

昨年に引き続き、経営者289人を対象に、賃上げに関する緊急アンケートを行いました(2026年3月17日から3月24日まで)。前回のアンケート結果については、こちらをご確認ください。

今回は、「2026年度に賃上げを実施する」という企業が全体の37.0%、そのうち

「2年連続(2025年度・2026年度)」で賃上げを実施するという企業が、なんと86.0%

もいました。

ちなみに、2年連続で賃上げすると答えた企業の2025年度(昨年度)の賃上げ率は、「3%以上」が最も多かったです。

2年連続で賃上げを実施する?

2 賃上げを実施するか否か、何を基準に判断する?

ここからは、2026年度の賃上げの方針についての回答結果を紹介します。

まずは、賃上げをするか否かを判断するために重視する情報についてですが、「自社の業績」が圧倒的に多くなっています。「物価高など社員の生活」「最低賃金の改定」を気にする企業も多く見受けられました。

判断基準となる情報は?

3 賃上げする企業が求めている情報は?

では、具体的にどれだけの企業が賃上げをするのでしょうか?

具体的にどれだけの企業が賃上げをするのか?

「2026年度に賃上げを実施する」という企業は37.0%(このうち86.0%が2年連続での実施)で、「2〜3年以内に実施する」という企業は12.1%となっています。

また、賃上げする企業が、賃上げの原資を確保するために実施している施策としては、「値上げ(価格転嫁)などによる収益向上」が最も多く、さらに「業務効率化などによるコスト削減」が続きます。

賃上げする企業が求めている情報は、「社会保険料への影響に関する情報」「助成金や賃上げ促進税制」に関する情報でした。少しでも賃上げの負担を軽減したいというところでしょう。

また、経営者が賃上げについて相談する相手は、「自社の取締役」が最も多く、「顧問の税理士」がこれに続きます。

4 どうやって、どの程度の賃上げをする?

賃上げの手法や賃上げ率はどうでしょうか?

賃上げの手法や賃上げ率は?

賃金の範囲としては、「基本給のみ」が最も多いですが、基本給の他に手当や賞与も上げるという企業が続きます。かつては、基本給は上げず、手当や賞与を上げて対応する企業が多かったですが、2026年はそれよりも踏み込んだ賃上げを検討する企業が増えています。

具体的な賃上げ率は、「2%以上」が最も多いですが、「5%以上」と答えた企業も少なからずいて、賃上げに対する意気込みがうかがえます。

賃上げの手法については、ベースアップで実施する企業が最も多く、定期昇給が続きます。両方を行うという企業も多いようです。

5 賃上げ「しない企業」の経営者が考えていることは?

これまでとは逆に、賃上げをしない企業の状況を紹介します。

賃上げをしない企業の状況は?

なぜ、賃上げをしないのかについては、「業績の先行きが不透明だから」が圧倒的に多くなっています。前述した通り、賃上げをするか否かを判断するために最も重視される情報は「自社の業績」でした、やはり、業績が伴わない賃上げは難しいということでしょう。

どうなったら賃上げをするのかについては、これまで同様に業績が重視されていて、「業績好調が続くと確信できたとき」が圧倒的に多くなっています。

以上(2026年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda