経済産業省では、従業員のストレスや不調の予防・改善に課題を抱える中小企業を対象に、「先端技術活用メンタルヘルスサービス開発支援事業費補助金」を実施し、先端的なメンタルヘルスサービスを導入する際のサービス利用料の一部を補助しています。
ハローワークインターネットサービスと民間採用ツールの上手な使い方
労働人口の減少や若年層の就労意識の多様化、さらにオンライン化による採用チャネルの拡大など、従来の手法だけでは人材確保が難しくなっています。本レポートでは、必要とする人材像を明確にし、ハローワークと民間採用ツールを上手く活用しながら、両者を効果的に使い分けるためのポイントを整理していきたいと思います。
外国人労働者の社会保障制度と労務管理
主に現場で働く外国人労働者を雇用するにあたって押さえておきたい「在留資格」について、外国人労働者との労働契約の注意点、社会保険料の徴収、所得税の源泉徴収の実務、そして、新しく始まる育成就労制度に向けた対応についてご説明します。
回収期間法と投資利益率法の考え方/設備投資の成果チェック(4)
目次
1 勘や感覚ではなく、指標を使った客観的な判断を
設備投資の判断を「なんとなく」といった勘や感覚で決めていませんか? お金をかける以上、その投資がいつ回収できて、どれだけ利益を生むのかを数字で確かめることが大切です。会社にとって資金は最重要のリソースです。だからこそ、指標を使うだけで勘や感覚だけに頼らない客観的な判断が求められます。投資評価の判断で使う主な指標には、
- 回収期間法
- 投資利益率法
- 現在価値法
- 内部利益率法
の4つがあります。今回はこれらのうち、回収期間法と投資利益率法の2つについて、考え方やシミュレーション例を用いた計算方法を整理します。末尾に実務でそのまま使えるExcel(ダウンロード用)も用意しています。Excel内で使われている関数についても解説しておりますので、ご活用ください。
2 収支がトントンになる指標「回収期間法」
回収期間法は、
投資したお金が何年で戻ってくるかという「回収期間」を使って、投資のリスクの大きさを測る指標
です。金利の低い時代には、中小企業で最もよく使われてきたシンプルな指標になります。回収期間は、ざっくり言えば「投資後、何年たったら収支がトントンになるのかを予想した期間」です。例えば、新しい工場を建てるための投資の回収期間が2年と予測されるなら、順調にいけば2年後には、投資で出ていった金額と同じ金額が入ってくる(元がとれる)という意味です。
ここでいう「回収」とは、支払ったお金が回収できること、つまり、収支がトントンになることです。管理会計上の有名な指標に「損益分岐点売上高(損益計算書上の収支がトントン、つまり利益がゼロになる売上高のこと)」がありますが、回収期間を「投資版の損益分岐点売上高」と考えると分かりやすいかもしれません。
判断の仕方は、とてもシンプルです。例えば、回収期間が2年と4年の案があった場合には、当然回収期間が短い2年のほうが良いとされます。この数年の間(コロナ禍や紛争などを要因とした経済環境の変化)で痛感した方も多いと思いますが、遠い将来ほど予測することは難しいものです。回収期間においても、先は分からないので、長くないほうが安全という考え方がベースにあります。
では、一般的にどのくらいの回収期間が良いのか。これは、業種が回収期間の判断に大きな影響を与えます。製造業で設備投資が大きな業種であれば10年を超えても良いケースもあります。一方で、AIなど新しく移り変わりの早い業界であれば2、3年で回収したいと考えることも合理性があります。また、小売業など店舗を持つ業態は、賃貸借契約に合わせて5、6年を目安にしているようです。
早速、次の事例(A案、B案、C案)を使って回収期間を計算し、比べてみましょう。

A案の場合の計算式を解説すると、機械の購入代金、つまり投資額(-100)に、回収額を1年目から順に足していくと(25+35+50)、3年目でプラス(10>0)になります。もし、比較する案件の中でプラスになる年目が同じであれば、小数点以下の端数をみて判断する必要があるため、追加の計算が必要になります。
最初の2年と、3年目は40だけあれば良いので、40を1年分の50で割って0.8年…との合計(2+(50-10)/50=2.8)で、この投資の回収期間は2.8年となります。
このようにA~C案の回収期間を計算すると、最も回収期間が短くなるA案が良い案であると判断できます。
3 どれだけ効率良く稼ぐかが分かる指標「投資利益率法」
投資利益率法は、
投資額に対してどれだけの見返りがあるか(追加のキャッシュ・フローが生まれたか)を示す指標
です。英語ではReturn on Investment(リターン オン インベストメント)、略称をROI(アールオーアイ)といい、実務では非常によく使われる指標です。具体的には、
年間のキャッシュ・フロー÷投資額
の算式で計算します。計算結果は%で表され、投資に対してどれだけの追加のキャッシュ・フローが生まれたか、投資の効率が良いかどうかを一目で確認できます。
判断の仕方は、例えば投資利益率が4%と6%の案があった場合には、6%のほうが大きなリターンがあることを示しているため良いとされます。
では、一般的に投資利益率は何%以上であれば良いのか。まず大前提として、自社の資金調達コスト(借入金の金利など)を必ず上回っていなければなりません。さらに、全社の利益率を下げないようにするためには、現在の利益率との比較も欠かせません。
中小企業の利益率は、一般的に5%前後といわれているので、このあたりを基準として設定しておくのが良いでしょう。筆者の感覚で言うと、投資計画段階では10%を見込めるような投資案件でなければ、なかなか踏み出せないというのが経営者の本音ではないでしょうか。
早速、次の事例(A案・B案・C案)を使って投資利益率を計算し、比べてみましょう。

A案の場合、まず、期間全体の合計キャッシュ・フローを出します。-100+25+35+50+30+35=75です。そして、年あたりのキャッシュ・フローを計算するため、効果が出る年数(5年)で割ります。75÷5で15と計算されます、これを投資額100で割ると、15/100=15%と投資利益率を求めることができます。
このようにA~C案の投資利益率を計算すると、最も投資利益率が大きくなるC案が良い案であると判断できます。
4 回収期間法と投資利益率法の合わせ技で、判断の精度が高まる
ここまで見てきたように、回収期間法は「どれだけ早く元がとれるか」という安全性や時間的な価値を重視した指標であり、投資利益率法は「投資がどれだけ儲かるか」という収益性に焦点を当てた指標です。言い換えると、回収期間法では収益性が考慮されず、投資利益率法では安全性や時間的な価値が反映されません。このため、どちらか一方だけの方法を用いて判断するには不十分なケースもあり、両者は組み合わせることで、「早く回収できて、かつ儲ける投資かどうか」をバランス良く評価できるようになります。
投資は一度決めると後戻りが難しいからこそ、複数の視点で評価することがリスク管理につながるのです。次回は、時間的な価値と収益性の両方を考慮した指標を紹介したいと思います。
5 ダウンロードして実務で使えるExcelとその解説
1)回収期間法
実務では、エクセルを活用することがおすすめです。次のExcelでは、各期間のキャッシュ・フロー(CF。青色背景の箇所)を入力すると、その他のマスは自動計算になっています。なお、Excelには、本リポートの計算例で使用した事例(A案、B案、C案)の数値を入れております。
【図表ダウンロード_WS:3(DL対応)投資評価の例 (回収期間)】
このExcelでは累計キャッシュ・フロー(累計CF)が翌年にマイナスからプラスに転じる年目を特定し、それに端数部分(プラスに転じるのに必要なキャッシュ・フロー÷その年のキャッシュ・フロー)を合算することで回収期間が求められます。
Excel関数上のポイントは、累計CFがプラスに転じる年を確認できる回収期間のセル(A案の場合はF5セル)にあります。複製する場合にはご参考ください。

(注1)AND(G4>0,F4<0),F2
翌年の累計キャッシュ・フロー(G4)がプラスで、当年の累計キャッシュ・フロー(F4)がマイナスなら、当年の年数を表示
(注2)IF(AND(ISNUMBER(E5),E5=E2),(F3-F4)/F3,””
そうでない場合は、前年の回収期間に数値が入っていて、それが前年の年目と同じであれば、 当年CFから累計CFを引いた金額を当年CFで割る
2)投資利益率法
【図表ダウンロード_WS:4(DL対応投資評価の例 (投資利益率法)】
投資利益もエクセルで計算しましょう。キャッシュ・フローの合計を年数で割ります。
Excel関数上のポイントは、期間に含まれるデータ個数を数えるのにCOUNT関数を使っています(A案の場合はC6セル)。複製する場合にはご参考ください。
‘=I3/(COUNT(C3:H3)-1)/(-C3)
ここで、0年目、投資年の1年分を引いているところを注意してください。5年間にわたって効果があるので5で割ります。その結果を、0年目のキャッシュ・フロー、つまり投資額で割ると、投資利益率が計算されます。
以上(2025年12月作成)
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「社長の離婚問題」弁護士が教えるお金のリスク
目次
1 何も知らないと大ごとになるのが社長の離婚
「結婚した3組に1組が離婚する」と言われる現代、知り合いや家族から離婚をした、もしくは離婚の危機にあるという話を聞く機会もあるでしょう。
社長の離婚の場合、
離婚に際して夫婦間で決めるべき条件(別居中の婚姻費用、財産分与の対象や割合、親権者の指定、養育費など)をめぐり、長期間にわたってこじれがち
です。社長の離婚特有の「お金」に関する問題を知らないがゆえに、その都度、大ごとになってしまうからです。
例えば、財産分与は夫婦の資産を合算して(基本的に)互いに2分の1ずつ分け合うのですが、
婚姻後に築いた個人名義の資産は全て財産分与の対象となる
というルールがあります。婚姻後に購入した個人名義の土地に自社ビルなどが建っている場合などは、その評価額は高くなり、財産分与で支払う額も莫大なものになってしまいます。一方、会社名義の資産は財産分与の対象にならないので、このことを知っていれば事前に対策を講じることができます。
離婚は、社長にとっても身近なリスクです。仮に今、夫婦関係が円満であっても、先々のリスク管理の一つとしてこうした情報を知っておくに越したことはないでしょう。
この記事では、社長の離婚問題に詳しい弁護士監修の下、特にこじれがちな
別居中の婚姻費用、財産分与、親権者の指定、養育費
について分かりやすく解説し、どうすればリスクを抑えられるかも紹介します。
この記事を読むことで、自身のリスクに備えるだけでなく、離婚のリスクを抱えている社長仲間や親しい取引先に対して、有用なアドバイスをしたり、理解ある相談者になったりすることもできるでしょう。
2 財産分与……の前に別居の問題が立ちはだかる
1)別居期間中に相手の生活費を支払わなければならない
社長の離婚で大きな問題として取り上げられるのは財産分与なのですが、これはあくまで法的に婚姻関係を解消するに至った段階の問題です。実はその前、離婚に至るまでの段階で大きな問題となるのが、
別居期間中の婚姻費用の支払い
です。
婚姻費用とは夫婦がお互いに分担し合うべき生活費のことです。民法では「夫婦はお互いに扶助し合わなければならない」と定めており、それは別居期間中にも適用されます。
具体的な金額はお互いの合意の上で決められるのですが、裁判所が相場を発表しています。
■裁判所「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究 標準算定方式・算定表(令和元年版)」■
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/
例えば、子どもがいない夫婦で妻が専業主婦などで収入はゼロ、夫が役員報酬として2000万円もらっているケースだと、妻には月30万円程度の婚姻費用を支払うことになります。年間にすると360万円、別居期間が3年以上になれば1000万円を超えます。
離婚におけるお金の問題というと財産分与を真っ先にイメージしがちですが、その前に、長い別居期間中の経済的負担も大きいことを知っておく必要があります。
2)社長は別居期間が長くなりがち
弁護士へのヒアリングによると、
「協議離婚(夫婦が話し合いにより、離婚に合意する)でない場合、調停離婚や裁判離婚になる。調停離婚であれば半年から1年程度で離婚が成立することも多いが、社長の場合、調停では解決せず、離婚が成立するまで5~6年掛かるケースも珍しくない(それ以上の時間がかかることもある)」
とのことです。
ここまで長引く理由は、後述する財産分与の手続きに時間が掛かるというのもあるのですが、一番は別居期間が長くなるそうです。
「相手側からすれば、離婚時の財産分与に加え、別居期間が長ければ長いほど婚姻費用を多く受け取れる。社長が男性の場合、妻が専業主婦というケースが多く、婚姻費用も多額になりやすい。だから、妻は別居して生活費をもらい続けるほうが有利と判断し、離婚をせずに別居期間を長引かせる選択をすることが多い」
押さえておきたいのは、夫側が早く離婚したいと思っても、
簡単には離婚できない(妻が協議離婚に応じてくれない)
ということです。
基本的に、離婚はお互いの合意がないとできません。一方が離婚に応じなければ「調停」、それでも合意に至らなければ「裁判」をすることになりますが、裁判になっても、法律上に定められている離婚事由がないと認められません。
また、不貞を働いたり暴力を働いたりすると、その人は「有責配偶者」とみなされます。そうすると、有責配偶者からの離婚申し立ては基本的に認められません。
そのため、夫側に有責の疑いがある場合、探偵を雇って不貞の証拠を集めて夫を有責配偶者であることを明白にすることで夫側からの離婚申し立てをできなくさせ、別居期間を長引かせるケースも多いようです。
弁護士へのヒアリングによると、
「消極的な理由により、気が付けば結果的に長い別居を選択していたという社長も一定数いる」
とのことです。消極的な理由としては、次のようなものが挙げられるそうです。
- 離婚による財産分与で現状の資産を減少することは避けたい
- 持ち株などがあり、財産分与によって会社の経営に影響が出ることは避けたい
- 別居して婚姻費用を払い続けるほうが、離婚するよりは世間体的にいい
- 長くて面倒な調停、裁判をするぐらいなら、現状維持でいい
3)「離婚後に近い状態」を早めに作るのがポイント
2)で紹介したものの他、同居のままだったり、生活費などを全て社長が支払っていたりするために、妻が離婚後の生活をイメージできず、とりあえず現状維持(離婚しない)を選択するというケースも多いようです。
弁護士へのヒアリングによると、
「弁護士としての経験上、明確な離婚事由がない場合などは、社長に対し、まず『離婚後に近い状態』にするよう勧めることが多い」
とのことです。
「例えば、同居中はライフラインや通信費などの支払いを社長名義のクレジットカードや口座から行っていることが多いので、それをやめる。そして、すみやかに別居するとともに、婚姻費用を支払い、自分の支払いは自分でしてもらうようにする。こうすることで、離婚事由となる別居期間を稼ぐとともに、離婚を受け入れられない相手に『離婚後の状態に慣れてもらう』」
4)婚姻費用を低く抑えようとする際には注意が必要
別居期間中の婚姻費用は、社長側の収入に左右されます。そのため婚姻費用を抑えようと自身の役員報酬を下げようと考えることがあります。ですが、そういった、婚姻費用を下げる目的での収入の操作は裁判所では認められないケースがあるようです。
一方、会社の資産状況などでやむを得ないと認められるケースもあり、ここは一概にはいえない複雑な問題があります。一度税理士や弁護士に相談するのがいいでしょう。
3 財産分与で揉めないための注意点
1)会社名義の資産は財産分与の対象外
別居期間を経て、離婚の条件を詰める段階になると、いよいよ財産分与の問題が浮き彫りになります。
財産分与は、
夫婦どちらの名義の資産であっても、婚姻後に築いた個人の名義のものは合算して対象になるが、会社名義のものは対象外になる
というのが基本です。
会社名義の資産は社長個人のものとは別で会社のもの、とみなされますが、
会社名義の資産ではあるが、実質は家族のために使うなどして個人と会社の区別が曖昧
といった場合には、夫婦の共有財産であるとして財産分与の対象になる場合もあるので、迷ったらその都度弁護士に相談したほうがいいでしょう。
2)揉めがちなのは財産分与の対象の特定と評価額
財産分与の対象になるのは、預貯金や不動産(自宅の土地・建物など)の他、株、保険といった資産などです。自動車・家具・貴金属類・絵画といった動産についても婚姻中に築いたものは共有資産としてみなされるので、対象は多岐にわたります。
これらの時価などを評価した上で分与することになるのですが、この財産分与の対象物を特定し、評価するのがまず一苦労で、かなりの時間を要します。
その上で、
特に評価で時間を要するのが非上場株式
です。
上場企業の株式であれば離婚時の時価を評価額にすることができますが、非上場会社の株式の場合は市場で取引されていないので、評価自体が難航したり、評価方法をめぐって揉めたりするケースもあります。
3)自社株も2分の1を渡さないといけない?
社長が保有する自社株も、個人名義のものであれば財産分与の対象となります。そうなると財産分与によって2分の1の株式を譲渡してしまっては会社の経営権に影響が出てしまいます。
そのため、現実には、
社長が自社株を100%保有する代わりに、自社株の評価額の2分の1に相当する金銭を支払う
という合意をするケースがほとんどです。
中小企業は基本的に非上場会社なので、相手側としても、買い主を見つけるのも大変な株式よりも、現金でもらったほうがいいという判断になるからです。
相手が役員などで自社株を保有している場合も、それをすべてこちらがもらう代わりに対価を支払うということになります。
弁護士へのヒアリングによると、
「相手が妻の場合、例えば子どもが小さければ離婚後もずっと養育費をもらっていかなければならないので、夫の会社には安泰でいてほしい。また、妻自身が、離婚後に夫の会社と関わることも望まない。そのため、夫の株主比率が下がることを望む人はほとんどおらず、株式の譲渡自体で揉めることはほぼない」
とのことです。
仮に自社株の評価額が高くなり、その他の資産の評価額以上になって2分の1を現金で工面するのが難しい場合は、足りない分を分割で支払うことになります。
なお、財産分与における株式の評価額は、
別居開始日の保有株数×離婚成立日の評価額
となるので注意が必要です。
4)財産分与の割合でも揉めがち
財産分与の割合は「夫婦で2分の1ずつ」が妥当というのが原則です。
しかし、相手が専業主婦(主夫)の場合、「妻(夫)は家にいるだけで資産形成に貢献していない」といった理由で、社長が財産分与の割合を修正することを求めるケースがあります。
確かに、例えばスポーツ選手や特殊技能を持った職人など、本人の特殊な資質によって高額な所得を得て資産を築いた場合などは、相手方への財産分与の割合が減らされることもあります。
ただし、この寄与度(貢献度)については双方で揉め、調停・裁判が長引くことが多いです。また、「夫婦で2分の1ずつ」の原則により認められないケースも多々あります。この点も、迷ったら弁護士に相談するようにしましょう。
5)財産分与の対象から外すのは円満なときに
財産分与の対象となる資産を減らそうと、別居前に慌てて個人名義の資産を売却したり、会社の名義にしたりしても、その資産が財産分与の対象とされてしまうことがあります。
弁護士へのヒアリングによると、
「裁判になると、別居と財産分与を見越し、財産分与の対象となる財産から外すために財産を隠したり名義を変更したりするなどしたと評価されるものは、対象内に戻されるという例外が起こる場合がある。社長の場合、財産分与によって会社経営に影響を与えることを避ける方法を日ごろから検討、対策しておくのがベスト」
とのことです。
また、次のようなコメントもいただきました。
「別居後の稼ぎで作った財産は夫婦共有財産とはされないのが原則なので、稼ぎが多い場合、すみやかに別居して財産を増やし、それを離婚時の財産分与に上乗せする『解決金』の原資にするという考え方もできる」
4 配偶者が会社で働いている場合、離婚で解雇はできない
配偶者を役員にして役員報酬を払っていたり、事務員として雇用したりしているケースは多いでしょう。その場合、離婚を理由に解任・解雇はできません。
役員の場合、別居した時点で実質その役割を果たさないという理由で解任したいと考えても、基本的には任期があるので、任期満了を待ってそこで解任することになります。
雇用している場合でも、解雇するには会社に多大な損害を与えたり、長期にわたる無断欠勤をしたりなど、合理的な理由が必要です。どうしても解雇したい場合は、退職金を提示するなどして、合意の上で退職してもらうことになります。
5 親権問題で揉めがちなのは子どもとの面会交流
1)親権問題は妻側が有利になりやすい
夫が社長の場合、経済力の高さから子どもの親権獲得に有利に思われがちですが、実際は妻側が有利になりやすいといわれます。
裁判所は、次の点を重視してどちらが親権者にふさわしいかを判断するからです。
- これまで(同居中)どちらが主に子どもの面倒を見ていたか
- 現在(別居時)どちらが子どもの面倒を見ているか
多忙な社長は、あまり家におらず、帰りが遅いことも多いため、子と関わる時間が持てず、親権問題だと一般社員よりも認められない可能性が高いといわれます。
2)面会交流は相手が合意すれば自由にできるが……
親権者の指定については、双方で合意ができ、あまり揉めることはないようです。一方で揉めやすいのが、離婚後に子どもと非親権者が会う面会交流についてです。
離婚裁判まで進んだ場合、一般的に裁判所は「月1回数時間」程度の面会交流しか認めないといわれます。
しかし、社長の場合、
- 家族での会合が多く、そこに子どもを連れて行きたい
- 海外や国内への数泊の旅行へ一緒に行きたい
といった要望がかなり多いそうです。この場合、
親権者と子どもが合意すれば面会交流は自由
にできます。
ただし、離婚に至るほど夫婦関係が悪化し、また調停や裁判を経てさらに険悪になっている場合、親権者側が面会交流を認めなかったり、慎重になったりするケースがほとんどです。
こうしたとき、面会交流で揉めないためのポイントの一つが、養育費です。詳しくは次の章で解説します。
6 養育費は子どもの学費問題
養育費の金額は、第2章で紹介した算定表が目安になります。例えば0歳~14歳の子どもが1人いて妻の収入はゼロ、夫が役員報酬として2000万円もらっているケースだと、妻には月25万円程度の養育費を支払うことになります。
ここで揉めがちなのが、妻側がこれでは足りないと要望するケースです。主な理由として多いのが、子どもの学費です。
算定表はもともと公立学校に通わせることを念頭に算出されていますが、夫が社長の場合、妻は私学や習い事、海外留学などに年間数百万円超を掛けることも少なくありません。
弁護士へのヒアリングによると、社長の離婚ではこの学費問題で揉めるケースがかなり多いようです。
「社長が、自力でここまで来たという感覚があり、ある程度の学費は出すが後は子どもの自己判断でというマインドを持っている場合、習い事や留学など、際限なく良い教育を受けさせたいという妻側との教育観の違いが浮き彫りになり揉めてしまう」
現実としてこの養育費で揉めてしまうと、その後の面会交流の交渉で妻側が慎重になってしまう場合があります。
弁護士へのヒアリングによると、
「最終的には学費を含めて算定表よりも多めに養育費を払うというところに落ち着くことが多い」
とのことです。
学費の心配がなくなることで子どもとの関係が円満になったり、成長したときに非親権者の家から学校に通ったり、面会交流も制限なく自由にできるようになったりするケースも多いようです。
7 結婚する前なら夫婦財産契約という選択肢も
こうした社長特有の離婚リスクに備え、これから結婚する若い社長の中には夫婦財産契約(婚前契約、プレナップとも)を結ぶ人が増えています。
夫婦財産契約とは、
離婚時の財産分与で揉めることがないように資産の帰属などを決めておく契約書
です。
この契約は、「婚姻後に取得した株式も財産分与の対象外とする」といった内容を定めることもできます。
ただし、夫婦財産契約は当然、お互いの合意が必要になります。婚姻前に離婚を前提とした取り決めをするというのは、感情的に受け入れられないかもしれません。
実際に契約を結んでいるケースでは、
社長の結婚は家族だけでなく会社経営にも大きく関わる出来事なので、会社のリスク管理のためにも結んでおきたい
と切り出すことが多いようです。
なお、夫婦財産契約は婚姻後に結ぶことはできません。また、結んだ後に契約内容を変更することも基本的にはできないので、その点は留意しておきましょう。
また、夫婦財産契約は会社の規模や目的によって内容も大きく変わってくるので、結ぶ際は弁護士に相談するのがいいでしょう。
以上(2025年12月更新)
(監修 弁護士 坂東利国)
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脱税と節税の違いを誤ると会社は奈落の底に… その境界線とは?
1 会社にお金を残したくても「脱税」はダメ!
「脱税」という言葉に、どのようなイメージを抱くでしょうか。普段意識している節税の仕方をちょっと間違えたくらいのものと軽く考えているのであれば、考えを改めなければなりません。
脱税は犯罪行為であり、最悪逮捕され、刑事罰をうける恐れがあるものです。
会社にお金を残したいのは当然ですが、税金対策も度を越えると脱税になって取り返しのつかないことになります。経営者は、税務上の善悪(節税と脱税)の線引きをしっかり持ちましょう。また、経営陣が知らないところで、従業員がごまかし程度の感覚で脱税につながる行為をしていたり、社内の手続きミスが脱税とみなされたりするケースもあるので、会社全体として税務上の善悪の意識を持ちましょう。
では、具体的に税務上の善悪の線引きがどこにあるのかについて紹介していきますので、経営者自身が理解することはもちろん、従業員にも周知徹底しましょう。
2 悪質な脱税には1000万円以下の罰金が科されることも
節税と脱税の違いは、
- 節税:税法のルールの範囲内で納税額を低くする行為
- 脱税:税法のルールを無視、あるいは自分に都合よく解釈して納税額を低くする行為
といったように明確に違います。節税は経営努力であり、積極的に取り入れることで会社の資金繰りも楽になります。一方、脱税は犯罪であり、脱税と判断された場合は、次の税が追加で課されます(税務署が判断する悪質度合いなどにより課される加算税の種類は変わる)。

より悪質であったり、金額が大きかったりする重大な脱税の場合、刑事罰(10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方)の対象となる恐れもあります。
なお、節税と脱税以外に税務のグレーゾーンと呼ばれる処理があります。これは、節税と脱税の間に位置する処理で、ルールに従って処理しているつもりであるものの、税務調査で認められる可能性もあれば、認められない可能性もあるという曖昧な部分をいいます。税務のグレーゾーンについては、以下の記事で解説しているので参考にしてください。
3 脱税と判断される代表的な10の取引
1)架空経費を計上する
主な例は次の通りです。
- 業務目的でない支払いの領収書など集めて、会社の経費として計上する
- 人件費を水増しして(実際に支給している金額と異なる金額を)計上する
- 実在しない会社に対する架空の外注費を計上する
- 実際の請求書を偽造・複製するなどして、架空の支払い費用を計上する
2)売り上げを過少に見せかける・除外する
主な例は次の通りです。
- 現金売り上げを計上していない
- 継続しない単発的な取引に関する売り上げを計上していない
- 特定の口座に入金されている売り上げを計上していない
3)在庫を過少に見せかけて、売上原価を過大に計上する
主な例は次の通りです。
- 在庫の紛失など現場担当者が自身のミスを隠すため、実地棚卸の数字を調整する
- 仕掛りの製品などについて、製作に要している材料費・労務費・経費などを在庫として計上していない
- 翌期の売り上げのために決算日にすでに出荷している、いわゆる「トラック在庫」を計上していない
これらの行為は、税務調査により、必ず明らかになります。税務調査では、税務上の取り扱いやお金の流れに不可解な点を見つけるために、その会社に訪問して調査する実地調査だけでなく、取引先や金融機関へ問い合わせを行う反面調査など、様々な調査が行われます。税金を低く抑えることに執着しすぎたり、脱税行為を軽く見すぎたりしないよう、経営者自身だけでなく、従業員に対しても正しい認識を持つよう周知徹底しましょう。
以上(2025年11月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
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税務のグレーゾーン 経営者が押さえておくべき勘所
目次
1 グレーゾーンを把握して、税務の勘所を高めよう
経営をしていると、税務処理を選択しなければならない機会が結構あります。問題は白黒がはっきりしていない、つまり場合によっては課税リスクが高まるかもしれないケースがあることです。税務処理の選択による課税リスクは、「白・黒・グレー」の3色で表現され、それぞれ次のような意味合いで使われます。

経営者が税務の勘所を高めるために重要なのは、グレーゾーンの考え方を知ることです。グレーゾーンは解釈次第で税務署側の取り扱いが変わることがあるためです。グレーゾーンは「〇〇円未満なら白で、それ以上は黒」といったように、文字通り、金額で白黒はっきりするようなものではなく、法令でも、
「不相当に高額」「通常要する費用」「専ら」
などという言葉で表現されます。これらが具体的にどのようなことを示しているのでしょうか。税務調査で指摘を受けやすいグレーゾーンとして、
- 「不相当に高額」な役員報酬
- 「不相当に高額」な役員退職金
- 「通常要する費用」としての交際費
- 「専ら」従業員のために行われる福利厚生費
について解説していきます。
2 「不相当に高額」な役員報酬
1)「不相当に高額」と判断される一般的な基準(考え方)とは
役員報酬については、定期同額(毎月一定の額など)で支給されているなどの条件を満たしていれば基本的に損金(税務上の費用)とすることができます。しかし、その支給金額が「不相当に高額」な場合、その高額と判断された部分については損金と認められません。
役員報酬について「不相当に高額かどうか」を判断する基準には、
- 形式基準
- 実質基準
の2つがあります。
形式基準とは、
定款や株主総会の決議で決めた役員報酬の限度額と照らし合わせて判断するもの
です。つまり、あらかじめ決定した限度額を超えて支給した場合は、超過額部分については損金とされないことになります。
実質基準とは、
役員の職務の内容や会社の収益状況、従業員に対する給与の支給状況、あるいは、同業他社との比較などで「不相当に高額かどうか」を判断するもの
です。そのため、
- 実質的に何もしていない役員(名前だけの役員)に役員報酬を支給している場合
- 売上・利益が減少していて、従業員のボーナスなどもカットしているのに、役員報酬だけ増加傾向にある場合
には、税務調査で指摘されることが多いです。
2)現場レベルで注意すべき点は
形式基準は、定款や株主総会の議事録などで確認できます。もし実際の支給額と限度額の金額が近い場合には、次の株主総会で限度額の増額を決定しておくようにしましょう。
また、役員報酬を決定するときには、会社の利益の状況などを踏まえた上で決定することとし、「なぜその金額に決定したの?」という調査官からの問いかけに対して、合理的に説明できる資料を書面で準備しておくことが重要です。特に役員報酬を増額する際にはその理由を明確にしておきましょう。
3 「不相当に高額」な役員退職金
1)「不相当に高額」と判断される一般的な基準(考え方)とは
役員退職金は基本的に損金とすることができるのですが、その支給金額が「不相当に高額」な場合、その高額と判断された部分については損金と認められません。
役員退職金は、職務に従事していた期間や退職の事情や、同業他社の支給状況などを総合的に勘案して判断されます。よく利用される基準に「功績倍率法」というものがあります。これは、次の算式に当てはめて役員退職金の額を決定する方法です。
退職直前の役員報酬の月額 × 勤続期間 × 職責に応じた倍率
必ずしも功績倍率法で計算すれば税務上認められるわけではありませんが、支給額を決定する際の参考にするとよいでしょう。
なお、
- 実質的に何もしていない役員(名前だけの役員)に退職金を支給した場合
- 退職直前に極端に役員報酬を増額し、功績倍率法の計算結果を意図的に増やした場合
には、税務調査で指摘されることが多いので注意しましょう。
3)現場レベルで注意すべき点は
役員報酬と同じで、支給した役員退職金について「なぜその金額に決定したの?」という調査官からの問いかけに対して合理的に説明できる資料を書面で準備しておくことが重要です。
また、功績倍率法を使用する場合は役員退職金規程を整備するとともに、役員報酬については会社の利益の状況などを鑑みつつ、計画的に増額するようにするとよいでしょう。
4 「通常要する費用」としての交際費
1)「通常要する費用」と判断される一般的な基準(考え方)とは
中小企業の場合、損金として認められる交際費は「年間800万円まで」と決まっています。そのため、飲食費だからといってなんでも交際費にしてしまうと、損金として認められない交際費が出てくる可能性があります。
一般的に交際費となりそうな費用であっても、「通常要する費用」の範囲内であれば交際費としなくてもよいケースがあります。
一般的に多く見られる事例としては、
会議に関連して、茶菓、弁当等の飲食物を供与するために通常要する費用
があります。つまり、会議で提供された飲食関連の費用であっても「通常要する費用」の範囲内であれば交際費とせず、会議費(金額基準に関係なく損金とすることができる)として処理することができます。
通常要する費用とは、
- 必要があって支出したもので、
- 一般的・常識的な範囲内であるもの
ということになります。そのため、会議時に提供されたお弁当の金額が1000円から3000円くらいの範囲内であればさほど問題になるケースは多くないものと考えられますが、フレンチのフルコースなど、会議というより接待が主になると思われるようなものは交際費とされる可能性が高くなります。
また、月に数回程度の会議であれば問題ありませんが、ほぼ毎日会議を行い、お弁当を食べている場合には「必要外のもの」と判断されて交際費とされることもあります。いずれにしても「常識の範囲内」というのが判断基準になります。
2)現場レベルで注意すべき点は
会議費などで飲食を伴った場合には、まず「金額が大きくなりすぎていないか」について敏感になる必要があります。この金額についての判断が現場担当者の間で曖昧になるようであれば、社内規程などを設け、会議飲食費としての金額範囲などを決めてしまうのも一方法です。また、会議を行った場合は、
「本当に会議が存在したこと」を証明するため、議事録などは必ず作成する
ようにしておきましょう。
5 「専ら」従業員のために行われる福利厚生費
1)「専ら」と判断される一般的な基準(考え方)とは
「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」については交際費とせず、福利厚生費(金額基準に関係なく損金とすることができる)として費用処理することができます。
「専ら」とは、
必ずしも100%である必要はないものの、80%から90%は該当するような状態
と言われています。例えば忘年会などの催し事の場合、全従業員を対象として開催しつつも、業務の都合で参加できない人が出てくる可能性がありますが、最終的に80%から90%の人が参加すれば福利厚生費として処理されます。そのため、
- 特定の役職者のみを対象とした飲み会
- 役員のみを対象とした慰安旅行
については、税務調査で交際費に該当すると指摘されたり、給与として源泉徴収すべきと指摘されたりするので注意しましょう。
2)現場レベルで注意すべき点は
福利厚生費として処理すべき年間行事はさほど頻繁に行われるものではありませんので、行事の内容や参加者(人数)、費用の総額などを一覧にし、税務調査で指摘された際には明確な説明できるような書類を準備するようにしておきましょう。
以上(2025年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)
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「取適法」で会社を守る交渉術! 弁護士が教える4つのステップ
目次
1 力関係にかかわらず、フェアな取引を!
下請取引では、発注者(依頼をする側)が大企業、受注者(依頼を受ける側)が中小企業であることが多く、その「力関係の差」から、受注者(中小企業)が、
- 不当な値下げを要求される
- いつまでたっても代金を支払ってもらえない
などの不利益を被るケースが少なくありません。
このようなときに受注者を守ってくれるのが、下請取引で発注者がやってはいけない禁止行為などを定めた「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」。簡単に言うと、
発注者と受注者が力関係にかかわらず、フェアな取引をするための法律
です。2026年1月からは「中小受託取引適正化法(取適法(とりてきほう))」という名称に変わり、発注者の禁止行為が追加されるなど、受注者の保護が強化されます(以降、「取適法」で統一します)。
この記事では、受注者が取適法を活用しながら発注者と交渉する際のポイントを、4つのステップに分けて紹介します。なお、取適法の改正内容(2026年1月施行)については、次のコンテンツをご確認ください。
(注)この記事では便宜上、下請法(取適法)の用語である親事業者(発注者)を「発注者」、下請事業者(中小受託事業者)を「受注者」、下請代金(製造委託等代金)を「代金」と呼びます。
2 (ステップ1)取適法で禁止されている行為を理解する
まずは、取適法の対象となる不当な行為の類型を理解しておくことが大切です。発注者から無理な要求を受けたときに、「これは法律で禁止されている行為」だと判断できれば、冷静に対応・交渉したり、専門機関に相談したりできます。
取適法では、発注者がやってはいけない禁止行為が11項目定められています。そのうち、中小企業が受注者側の場合によく直面する禁止行為としては、次のようなものが挙げられます。
(図表1)【発注者の禁止行為(中小企業がよく直面するもの)の例】
| 禁止行為 | 行為の例 |
|---|---|
| 受領拒否 | 発注した成果物の受領を理由なく拒否する |
| 代金の支払遅延 | 受注者が成果物を納品してから3カ月たっても代金を支払わない |
| 代金の減額 | 納品後に「単価を下げてほしい」と受注者に要求する |
| 買いたたき | 市場価格より、著しく低い価格を受注者に強要する |
| 不当なやり直し等 | 受注者に責任がないにもかかわらず、無償でやり直しを依頼する |
| 協議に応じない一方的な代金決定(注) | 原材料の高騰に際し、受注者が代金の額の引き上げについて協議を求めたのに、協議に全く応じず、価格を据え置きする |
(出所:筆者作成)
(注)「協議に応じない一方的な代金決定」は、2026年1月から(下請法が取適法に名称変更されてから)追加される禁止行為です。
3 (ステップ2)取引の「現状」を整理する
発注者から無理な要求を受けた場合や、その他に取引で「おかしいな」と思う点があった場合、(ステップ1)に沿ってその内容が取適法の禁止行為に当たらないかを確認します。
禁止行為に当たる可能性がある場合、受注者は取引の「現状」を整理しましょう。次のように項目別にまとめると、状況が整理しやすくなります。
(図表2)【取引の「現状」について受注者が整理すべき項目】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取引内容 | 発注者とは、どのような取引をしているか? ・例:メーカーが販売する自動車部品の製造を受注 |
| 行為内容 | 発注者から、どのような内容の不当な行為を受けたのか? ・例1:納品後に単価の減額を求められ、応じるまで支払ってもらえない ・例2:原材料の高騰に伴って値上げの協議を求めたが無視された |
| 5W1H | 具体的にいつ?(日時)、どこで?(場所、出席者)、誰が?(担当者の部署、氏名)、何を?(対象)、なぜ?(理由)、どうやって?(メール、会議、口頭など) |
| 証拠となる資料 | 取引に関するメールのやり取り、議事録、発注書など証拠を確認。開始前の価格交渉であれば、原材料やエネルギーコストの上昇に関するエビデンス資料を用意 |
(出所:筆者作成)
発注書などの書面は、御社を守る重要な証拠となります。発注者には、
発注時に取引内容を記載した書面(メールなどの電磁的記録を含む)を交付することが義務付けられている
ので、仮に発注者とのやり取りが口頭だった(書面が交付されていない)場合でも、受注者から改めて書面の交付を求めることが可能です。
また、メールやチャットのやり取りも重要な証拠となります。電話や口頭でのやり取りであっても、次のように別途メールなどを送ることを習慣にしましょう。
- 送信:「先ほどはありがとうございました。念のため確認ですが……。」
- 返信:「確認しました。よろしくお願いいたします。」
少々面倒かもしれませんが、こうした一手間を加えることで交渉過程が形として残り、いざトラブルが生じた際に、交渉経緯を裏付ける重要な証拠になるのです。
4 (ステップ3)発注者に「書面」で交渉を申し出る
(ステップ2)に沿って「現状」の整理ができたら、次は実際の交渉に移ります。口頭での交渉だと、発注者から「そんな話はしていない」「その条件で合意した覚えはない」と一蹴されてしまう恐れがあるので、
口頭での交渉は避け、必ず書面やメールなど、記録に残る形で交渉を申し出る
ようにしましょう。交渉の際、記録に残すべき事項は次の通りです。
(図表3)【交渉の際、記録に残すべき事項】
| 項目 | 書面やメールに残すときの記載例 |
|---|---|
| 問題となっている事象 | ・例1:「〇月〇日付の発注案件について、代金の支払いが〇カ月遅延しております。」 |
| ・例2:「〇月〇日に、御社との取引に関し、原材料の高騰に伴う価格改定をご相談いたしましたが、何ら協議に応じていただけず、現状維持とされました。」 | |
| 取適法の根拠 | ・例1:「これは、取適法第5条第1項第2号『下請代金の支払遅延の禁止』に抵触する可能性がございます。」 |
| ・例2:「これは、取適法第5条第2項第4号『協議に応じない一方的な代金決定の禁止』に該当するのではないかと考えます。」 | |
| 受注者から要求する是正策 | ・例1:「つきましては、〇月〇日までに代金をお支払いいただきたく、ご連絡申し上げます。」 |
| ・例2:「つきましては、原材料の高騰に関する資料を添付いたしますので、改めて協議の場を設けることを申し入れます。」 | |
| 穏便な解決を求める姿勢 | ・例:「今後とも貴社との良好な関係を継続したいと存じます。何卒、ご対応のほどよろしくお願い申し上げます。」 |
(出所:筆者作成)
(ステップ2)の話とも重なりますが、書面やメールなど形に残る交渉の記録は、次の(ステップ4)で紹介するように、専門機関に相談する際にも有力な証拠になります。それに、交渉内容を「見える化」して社内で共有しておけば、今後、同じようなトラブルが起きた際の参考にすることもできます。
また、公正取引委員会のウェブサイトでは、受注者が発注者に対して、労務費の転嫁の交渉を申し込む際の一例として、見積書のひな型を公表しています。発注者との価格交渉を行う際には、このようなひな型も参考にするとよいでしょう。
■公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」■
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/romuhitenka.html
ただし、交渉はけんかではありません。法律を盾にしつつ、あくまで柔らかい言い回しで伝えることが大切です。重要な取引先との関係を損なってしまうことは、会社としても本意ではないはずです。
5 (ステップ4)交渉がうまくいかなかったら……
(ステップ3)までを経ても、発注者との交渉がまとまらない場合、次の機関に相談しましょう。
1)公正取引委員会・中小企業庁
取適法は、公正取引委員会・中小企業庁が所管しており、取引に関する相談窓口を設けています。もしも、発注者が交渉に応じてくれなかったり、取適法に違反する取引を強要されたりした場合には、これらの窓口に相談しましょう。
「発注者から取引を打ち切られたらどうしよう……」などの心配から、相談をちゅうちょしてしまうかもしれませんが、取適法では、
受注者が発注者の違法行為などを申告したことを理由に、発注者が受注者に対して不利益な取扱い(取引数量を減じる、取引を停止するなど)をすることを禁止
しています(報復措置の禁止)。仮に発注者から不利益な取扱いを受けた場合、その旨も相談してみるとよいでしょう。
ただし、公正取引委員会・中小企業庁は、相談に応じたり、違法行為の調査・指導を行ったりはしてくれますが、
発注者と受注者のトラブルを仲裁する権限は持っていない
のでご注意ください。
2)下請かけこみ寺
中小企業庁が実施している「下請かけこみ寺」では、専門の相談員や弁護士が無料で中小企業の取引上のトラブルに関する相談に応じてくれます。こちらは、
裁判外での紛争解決手続(ADR)を提供しているので、発注者と受注者の具体的なトラブル解決が可能
です。解決方法は弁護士による調停で、裁判と異なり非公開で行われるため、当事者以外には秘密が守られますし、調停場所や時間なども融通が利きやすくなっています。
以上、受注者が取適法を活用しながら発注者と交渉する際のポイントを紹介しました。発注者からの無理な要求に対して、「従わないと取引してもらえない」「こちらが少し無理をすればなんとかなる」と諦める前に、まずはこの記事で紹介したステップを試してみてください。取適法をしっかり理解して行動に移すことが、会社を守る力になります。
以上(2025年12月作成)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)
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【解決編】円満退職したはずの社員と裁判で争うことになるなんて……
この記事は、退職者から未払賃金の請求が来た場合の対応を紹介するコンテンツの後編です。前編はこちらをご確認ください。
1 主張が相いれない場合の解決方法
シーン:退職者側の弁護士との任意交渉、そして訴訟へ
会社の顧問弁護士であるC弁護士が、Xの代理人であるB弁護士と面談をしました。Xの主張は
タイムカードの打刻後もサービス残業をしていて、未払賃金が発生している(未払賃金の計算は、Xが自ら記録していた手帳・日記の記載によるもの)
というものでした。
社長は、在職時のXの上司に聞き取り調査を行いました。しかし、Xのサービス残業があったことは確認できず、証拠に客観性が乏しい状況です。そこで、A社長はC弁護士に対し、
直ちにXが主張する未払賃金を支払うのではなく、未払賃金の額を争う方針での任意交渉
を依頼しました。
こうして弁護士間での任意交渉が始まりました。
- C弁護士:手帳・日記はXが作成したものであり、根拠としては不十分である
- B弁護士:他にも客観的資料を確認している
双方の主張は平行線となりました。C弁護士は、客観的な証拠があれば和解も検討するつもりでしたが、最終的にB弁護士から資料の開示について難色を示されたため、任意交渉は決裂。その後、Xから会社に対しての訴訟が提起されました。
Q1:紛争を解決する方法にはどのようなものがある?
紛争を解決する方法としては、主に次の3つがあります。
1.任意交渉
法的手続によらず話し合いによって解決を図ります。裁判や労働審判などの法的手続の場合、解決までに時間がかかりますが、任意交渉は、スムーズに進めば、早期に紛争を解決できます。
2.訴訟
この記事の事案では、未払賃金の支払いを求める訴訟を指します。事案や争点にもよりますが、多くの訴訟では、第一審の判決までに1年から1年半ほどの時間がかかります。
3.労働審判
訴訟と同じく裁判所による法的手続です。「原則3回以内」という短い期日で集中的に審理を行うため、訴訟よりも迅速に手続が進みます。ただし、「事実関係が複雑」「法的な判断が難しい(退職者の管理監督者性など)」など、審理に時間がかかる複雑な事案の解決には不向きです。労働審判手続を行うことが適当でない場合、訴訟手続に移行することがあります。
Q2:解決方法を選択するポイントは?
一般的には、
まずは任意交渉によって解決を試み、任意交渉では双方の折り合いがつかない場合、訴訟や労働審判による解決を考える
ことになります。具体的には、
- 未払賃金の算定根拠が乏しく、会社として支払いに妥協できない場合
- 法的な判断が求められる上に、他の社員にも影響する内容(労働時間管理の方法、退職者の管理監督者性など)について、会社側と退職者側双方の主張が対立している場合
などに、裁判所の判断を仰ぐことを検討します。ただし、訴訟の場合は、労働審判と異なり、付加金の支払いが求められる可能性があり、注意する必要があります。
2 退職者側との交渉の落としどころは?
シーン:訴訟から1年が経過、そして和解へ
訴訟では、Xの主張する残業時間について争われましたが、両者の主張は平行線のまま、約1年間が経過しました。証人尋問が終わった後、裁判長は会社側に対し、和解による解決の可能性がないかを尋ねました。これを受けて、C弁護士はA社長に今後の方向性を相談しました。
C弁護士:A社長、Xさんの手帳・日記の他に、ビルの入退館記録やPASMOの記録が証拠として提出されています。これらの証拠を見て、裁判所はXさんの主張には一定の理由があると考えているようです。
A社長:Xの主張する額が全額認められるわけではないですよね? だったら、引き続き裁判で争い、判決を待つという対応でもいいんじゃないですか?
C弁護士:判決となった場合、未払賃金に加えて、遅延損害金や付加金を支払わなければならない恐れがあります。それに、Xさんと同じ労働条件で働いている他の社員から同様の請求を受けてしまうかもしれません。
A社長:うーん、そういう事態は避けたいなぁ……。
C弁護士:和解であれば、遅延損害金や付加金の支払免除を求めることができるかもしれません。それにXさん側の条件を聞くことで、御社の労働時間管理を見直す良い機会にもなるのではないですか?
A社長はこの考えに同意し、C弁護士に和解による解決を依頼しました。そして、最終的にXの主張する未払賃金の一部を支払うことで和解が成立しました。
Q3:交渉の決着方法にはどのようなものがある?
訴訟になったからといって、必ずしも判決による解決がなされるわけではなく、裁判所の関与の下、和解による解決がなされることも多くあります。
1.判決
裁判所が会社側と退職者側双方の主張を基に事実を認定し、未払賃金の額を判断します。
- (会社側の主張が合理的で、退職者側の立証が不十分であると判断された場合)退職者側の請求を棄却する判決
- (退職者側の主張の一部または全部が正しいと認められる場合)会社側に未払賃金(裁判所が事実認定によって判断した額)の支払いを求める判決
がなされます。
2.和解
裁判所の関与の下、会社側と退職者側双方の要望を盛り込んだ和解条項を作成します。和解条項には、
遅延損害金や付加金の支払免除、退職者の守秘義務(トラブルの存在や和解内容を他言しない旨)など
を盛り込みます。
Q4:どのような場合に和解を選択する?
和解を検討するのは、
敗訴する可能性が高い場合や、可能性が低くても敗訴したときの影響が大きい場合など
です。
判決での解決になると遅延損害金が発生する上に、事案によっては裁判所から付加金の支払いを命じられることもあります。そのため、裁判所が会社にとって不利な心証を抱いていると考えられる場合(退職者側が提出した証拠が合理的な場合など)には、遅延損害金などの負担を避けるため、和解を選択することが考えられます。
さらに、会社としては、他の社員との関係にも注意する必要があります。万が一、判決によって会社側が敗訴すると、退職者と同じような労働条件にあった他の社員からも、同様の請求を受けてしまう恐れがあります。こうした場合の対策として、
和解条項に守秘義務を設けることで、他の社員からの請求を回避する
ことも考えられます。
以上(2025年11月更新)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)
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【勃発編】円満退職したはずの社員が未払賃金を請求してきた!?
1 円満退職したはずの社員が未払賃金を請求してきた
シーン:弁護士名義の内容証明郵便
社長室でくつろぐA社長。そこに、人事部長が1通の郵便物を持って駆け込んできました。その郵便物は、差出人を「X代理人弁護士B」とする内容証明郵便。Xは、先月に退職した社員です。書面の内容は、
「2022年4月1日から2025年3月31日までの3年分の未払賃金として、200万円を支払え」
というものでした。「Xは円満退職じゃなかったのか?」と、ショックを隠せないA社長でした。
Q1:そもそも、なぜ未払賃金が発生する?
・管理監督者の誤認
「課長職だから」という理由で割増賃金を支払っていなかったが、実は労働基準法上の管理監督者に該当しなかった。
・サービス残業の見落とし
タイムカードで労働時間を管理していたが、実は社員がタイムカードを打刻した後、サービス残業を行っており、割増賃金の一部が支払われていなかった。
・固定残業代の誤認
「固定残業代制度を導入しているから」という理由で割増賃金を支払っていなかったが、ルールの整備や固定時間の設定が誤っていた。
・テレワークの労務管理の不備
テレワークの社員について、日々の労働時間を本人からの自己申告で把握していたが、申告漏れがあった場合は、実態を確認せずに「所定労働時間を働いたもの」として扱っていた。その結果、実際は残業しているのに割増賃金が支払われないことがあった。
Q2:未払賃金は、どのような方法で請求される?
未払賃金の請求は、
退職者が依頼した代理人弁護士から内容証明郵便の形式で受けるケース
が多いです。
また、労働組合との団体交渉によって、未払賃金の支払いを求められることもあります。
社内に労働組合のない会社であっても、退職者が個人でユニオン(合同労働組合)に加入し、そのユニオンが会社に団体交渉を申し込んでくるケース
があります。
Q3:請求された未払賃金は、全額支払わなければならない?
会社が未払賃金を支払わなければならないのは、本来支払うべき額を正しく支払っていなかったときだけです。ですから、退職者から未払賃金を請求されたとしても、
請求された額が正しくない場合(計算間違いなど)、請求通りに全額を支払う必要はない
ということになります。なお、未払賃金の時効は、
本来の支払期日から5年間(当面の間は3年間)
です。
Q4:未払賃金が発生した場合の制裁(ペナルティー)は?
1.遅延損害金
未払賃金が発生した場合、支払いがなされるまでの間、
未払賃金に一定の利率を掛けた遅延損害金が発生
します。退職者の場合、遅延損害金の利率は、
- 在籍していた期間については、年利3%
- 退職日の翌日以降については、年利14.6%
となります。つまり、未払賃金の支払いをめぐって会社と退職者がトラブルになった場合、争いが長期化した分、遅延損害金の負担も大きくなるということです。
2.付加金
退職者が請求した場合、
裁判所は会社に対して、未払賃金と同額の付加金の支払いを命じることが可能
です。裁判所が常に付加金の支払いを命じるとは限りませんが、退職者側の弁護士は、訴訟になれば必ず付加金も併せて請求してきます。
2 請求が来たら会社は何をすべき?
シーン:請求内容を確認の上、弁護士に相談
A社長は、まず、Xの未払賃金を確認することにしました。賃金規程を確認した上で、賃金台帳とタイムカードを照合して、X代理人弁護士Bが請求する額と照らし合わせました。
しかし、A社長が確認したところ、Xへの割増賃金は全て支払い済みで、未払賃金は存在しないようです。内容証明郵便には「回答期限が10日以内」「回答がない場合には法的措置を取る」と書かれていたため、A社長は、会社の顧問弁護士であるC弁護士に相談しました。
Q5:請求が来たら、まず何をすべき?
未払賃金の請求が来た場合、
未払賃金の請求根拠と、退職者が請求する額が正しいかを確認
しましょう。労働基準法により、会社は、
賃金台帳やタイムカードなどの重要な書類を5年間(当面の間は3年間)保管する義務
があります。そのため、会社に保管されているこれらの書類に基づいて、退職者が請求する額が正しいかを確認します。
Q6:請求が来た際にやってはいけないNG行動は?
未払賃金の請求が来た際、
退職者に請求の取下げを迫ったり、請求を放置したりするのはNG
です。このような行動を取ると、退職者が労働基準監督署に通報し、会社に調査や指導が入る恐れがあります。さらに、訴訟や労働審判になった場合、不利に扱われて、付加金の支払いを命じられてしまう可能性もあります。
また、
未払賃金の請求を受けたことを他の社員に話したり、公開したりするのも避けるべき
です。会社には、請求を行った退職者と同じ労働条件で勤務する社員が在籍していると思います。そのため、特定の退職者から未払賃金の支払請求を受けたことが公になってしまうと、他の社員からも同様の請求を受けてしまうことがあります。
Q7:弁護士に相談するタイミングは? 用意すべき資料は?
いったん訴訟が提起されてしまうと、退職者との間で円満に解決することは難しくなります。また、争いが長期化するだけで遅延損害金が発生してしまいます。そのため、未払賃金のトラブルになった場合には、できるだけ早く弁護士に相談すべきです。今回の事案でいえば、
内容証明郵便が来た時点で弁護士に相談するのがよい
でしょう。
また、弁護士に相談する際は、事前に次の資料を用意しておくと、スムーズに進めることができます。
- 退職者から送付を受けた内容証明郵便
- 就業規則や賃金規程などの社内規程
- タイムカードや勤怠管理表などの退職者の労働時間を管理する資料
- 給与明細の控えや賃金台帳
前編はここまでです。A社長は、この難局をどう切り抜けるのか、次のコンテンツでご確認ください。
以上(2025年11月更新)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)
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