【助成金(育児サポート編)】仕事と育児の両立支援で最大1342万円!

1 両立支援等助成金で社員の子育てをサポート!

「育児休業」(以下「育休」)等をはじめ、子育てをする社員の支援制度は近年ますます手厚くなっています。社員にとっては嬉しい一方、人手不足の中小企業にとっては、「育休等を取得する社員が増えたら、仕事が回らなくなる……」という不安があるかもしれません。

ですが、

休業する社員の業務をカバーする他の社員に手当等を支給したり、代替要員を新たに雇ったりすると、最大で1342万円が支給

されるのをご存じでしょうか。この記事で紹介する両立支援等助成金がそうです。「働きやすさ」が社会的にも求められている昨今、会社に「子育てなどと仕事の両立」を求める社員もいるでしょう。このニーズに応える上で、この助成金はとても重要です。以降で、制度概要と申請上のポイントを専門家が解説します。

なお、助成金の内容は2026年4月8日時点のもので、将来変更される可能性があります。また、申請書の書き方や添付書類については、全コースまとめてこちらに記載されていますので、ご確認ください。

■厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html

2 育休中等業務代替支援コース(最大1342万円)

1)育休中等業務代替支援コースとは?

社員が育休を取得したり、短時間勤務制度を利用したりしている間、その社員の業務をカバーする他の社員に手当等を支給したり、代替要員を新たに雇ったりした場合に助成金を受け取れるコースです。

2)助成金を受け取るには?

このコースは「手当支給等(育児休業)」「手当支給等(短時間勤務)」「新規雇用(育児休業)」に分かれていて、次の要件などを満たす必要があります。

1.手当支給等(育児休業)

社員が7日以上の育休(産後パパ育休を含む)を取得し、その業務をカバーする他の社員に対し、会社が手当等を支給する必要があります。手当等の内容は事前に就業規則等で定めなければなりません。

2.手当支給等(短時間勤務)

社員が短時間勤務制度(3歳未満の子を養育する社員を対象とするもの)の措置を受けられる制度を1カ月以上利用し、その業務をカバーする他の社員に対し、会社が手当等を支給する必要があります。手当等の内容は、事前に就業規則等で定めなければなりません。

3.新規雇用(育児休業)

社員が7日以上の育休(産後パパ育休を含む)を取得し、その業務をカバーする他の社員を、会社が新たに雇用し(または派遣で受け入れ)、実際に業務を代替させる必要があります。

3)受け取れる金額はいくら?

手当支給等(育児休業)・手当支給等(短時間勤務)・新規雇用(育児休業)それぞれについて、図表1の額を受け取れます。その他、

  • 育休取得者(または短時間勤務利用者)が有期雇用の場合、業務代替期間が1カ月以上であれば「有期雇用労働者加算」
  • プラチナくるみん認定を受けている場合、「プラチナくるみん認定事業主への加算」
  • 育休の取得状況を厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で公表した場合、「育休等に関する情報公表加算」

を受けられます。

■厚生労働省「両立支援のひろば」■
https://ryouritsu.mhlw.go.jp/

育休中等業務代替支援コース

支給額の計算がややこしいですが、仮に手当支給等(育児休業)を1年度10人まで申請した場合、加算も含めると最大1342万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

子育てをする社員へのサポートに注力するあまり、その業務をカバーする周囲の社員へのフォローが手薄になり、「制度を利用する人だけが優遇されている」といった不平不満が職場から上がるケースは珍しくありません。支援制度は、対象となる社員だけでなく、その業務を引き受ける同僚にも目を配ってこそ、職場全体で納得感をもって運用できるものです。助成金額と照らし合わせつつ、手当等がカバーに回る社員の負担を考慮した額になるよう制度を設計しましょう。

また、このコースは1年度につき10人までが支給対象になるという手厚い内容ではありますが、「手当支給等(育児休業)」「手当支給等(短時間勤務)」「新規雇用(育児休業)」を合わせて10人なので、どの方法で社員の負担を軽減していくのかを計画的に決めましょう。

くるみん認定・トライくるみん認定を受けている事業主については特例があり、2031年3月31日までに1事業主当たり延べ50人までの申請が可能です。認定取得済み、あるいは取得予定の企業にとっては、さらに活用余地が広がります。

なお、コース共通の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。申請日が行動計画期間内であることも条件となっていますので、ギリギリで動くのではなく余裕を持った対応が求められます。(プラチナくるみん認定を受けている場合、行動計画の策定・届出がなくても支給対象)。

3 柔軟な働き方選択制度等支援コース(最大197万円)

1)柔軟な働き方選択制度等支援コースとは?

3歳以上小学校就学前の子を養育する社員のために、短時間勤務などの柔軟な働き方に関する制度等を複数導入した上で、実際に対象者に利用させた場合に助成金を受け取れるコースです。

2)助成金を受け取るには?

このコースでは、「柔軟な働き方選択制度」という図表2の制度等を、最低でも3つ以上導入する必要があります(就業規則等への規定も必須です)。制度等を導入した上で、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」という、社員の柔軟な働き方をサポートするための計画を策定します。その計画に基づいて社員が利用開始から6カ月間のうちに、制度等を一定基準以上利用すると、助成金を受け取れます。助成対象は中小企業のみです。

柔軟な働き方選択制度

3)受け取れる金額はいくら?

次の2つの場合に、図表3の額を受け取れます。

  • (制度等を導入し、対象者が利用)柔軟な働き方選択制度を3つ以上導入し、社員が1つ以上制度を利用した場合
  • (子の看護等休暇制度有給化支援)子の看護等休暇を有給化し、社員が利用した場合

また、「育休等に関する情報公表加算」の他、柔軟な働き方選択制度の全てまたは子の看護等休暇(有給)を、次の子を養育する社員が利用できるようにした場合にも、次の加算を受けられます。

  • (制度利用期間延長加算)3歳以上中学校修了前の子を養育する社員が対象
  • (障害児等要配慮支援加算)18歳到達年度の末日(3月31日)までまたは高等学校等を修了する年の末日(3月31日)までの障害児等を養育する社員が対象

柔軟な働き方選択制度等支援コース

制度等を4つ以上導入して1年度に社員5人が利用し、さらに子の看護等休暇を有給化した場合、加算も含めると最大197万円を受け取れる計算になります。

4)専門家からのワンポイントアドバイス

このコースは、育児・介護休業法の「柔軟な働き方を実現するための措置等」との関連性が深いです。会社は2025年10月1日から、図表2で紹介した「始業時刻の変更」など5つの制度から2つ以上を選択して実施する義務を負っています。

このコースも、受給の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。

4 出生時両立支援コース(最大127万円)

1)出生時両立支援コースとは?

会社(実際は支店等の事業場単位)が、「男性社員」が育休を取得するための雇用環境や業務体制を整備し、男性社員が実際に育休を取得した場合、助成金を受け取れるコースです。「子育てパパ支援助成金」とも呼ばれます。

2)助成金を受け取るには?

このコースは「男性労働者の育児休業取得」「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」に分かれていて、次の要件などを満たす中小企業が対象となります。

1.男性労働者の育児休業取得

一定の「雇用環境整備措置」を講じた上で、就業規則等に基づいて引き継ぎなどの業務体制を整備し、男性社員が産後8週間以内に連続5日以上の育休(産後パパ育休を含む)を取得する必要があります(2人目の取得者は10日以上、3人目の取得者は14日以上)。この他、休業期間中に含まれる所定労働日数に関する日数条件もあります。

雇用環境整備措置とは、次の5つです。育休取得者の数などに応じて、2~5つの措置を講じなければなりません。

  • 育休に係る研修の実施
  • 育休に関する相談体制の整備
  • 育休の取得に関する事例の収集・提供
  • 育休に関する制度・育休の取得の促進に関する方針の周知
  • 育休の取得が円滑に行われるようにするための業務配分や人員配置の見直し

2.男性労働者の育児休業取得率の上昇等

男性社員の育休取得率が、一定の要件を満たす必要があります。また、「男性労働者の育児休業取得」と同じく雇用環境や業務体制の整備に関する要件もあります。

3)受け取れる金額はいくら?

「男性労働者の育児休業取得」「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」それぞれについて、図表4の額を受け取れます。また、育休中等業務代替支援コースと同じく、「プラチナくるみん認定事業主への加算(「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」のみ)」「育休等に関する情報公表加算」も受けられます。

出生時両立支援コース

「男性労働者の育児休業取得(3人分)」と「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」、さらに加算を含めると、最大127万円を受け取れる計算になります。ただし、第1種と第2種を、同一年度内に申請することはできません。

4)専門家のワンポイントアドバイス

このコースも、受給の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。

「男性社員の育休取得」を後押しするものですが、制度を整えるだけでは取得は進みません。特に中小企業では、「自分が休んだら現場が回らない」「上司や同僚に迷惑がかかる」と感じて取得をためらう男性社員が少なくありません。雇用環境整備措置の中でも「研修の実施」や「事例の収集・提供」を通じて、「取得して当たり前」という空気をつくることが大切です。

5 育児休業等支援コース(最大122万円)

1)育児休業等支援コースとは?

社員(男性・女性を問わない)の育休の取得・職場復帰が円滑に進むよう、会社が一定の取り組みをした場合、助成金を受け取れるコースです。

2)助成金を受け取るには?

このコースは「育休取得時」「職場復帰時」に分かれていて、次の要件などを満たす中小企業が対象です。

1.育休取得時

「育休復帰支援プラン」という、育休(産後パパ育休を含む)の取得・職場復帰をサポートするための計画書を策定する必要があります。まず、育休復帰支援プランを使って、育休の取得・職場復帰をサポートする旨を社内に周知し、育休取得者のプランを本人との面談を通して作成します。その上で、本人に連続3カ月以上の育休を取得させる必要があります。

2.職場復帰時

1.の育休取得者の休業終了時に、本人と面談をして原職等に復帰させ、6カ月以上継続雇用する必要があります。「育休取得時」の助成金を受給していないと申請できません。また、育休取得者を継続雇用する際は、本人が雇用保険の被保険者である必要があります。

3)受け取れる金額はいくら?

育休取得時・職場復帰時それぞれについて、図表5の額を受け取れます。どちらも社員2人(無期雇用1人、有期雇用1人)まで受給可能です。また、「育休等に関する情報公表加算」なども受けられます。

育児休業等支援コース

育休取得時(2人分)と職場復帰時(2人分)、さらに加算を含めると、最大122万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

支給要領では、育休復帰支援プランを策定する場合、少なくとも育休取得者の、

  • 業務の整理、引き継ぎに関する措置
  • 休業中の業務内容等に関する情報提供に関する措置

について定めなければならないとされています。厚生労働省ウェブサイトでは、プランの様式や、職場の状況(代替要員の確保が難しい、残業が多いなど)に応じたモデルプランを記載したマニュアルが公表されているので、参考にしながら策定を進めてください。

■厚生労働省「育休復帰支援プラン策定のご案内」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000067027.html

このコースも、受給の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。

6 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース(最大90万円)

1)不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースとは?

女性社員が不妊治療と仕事を両立したり、健康課題(月経や更年期)に対応したりするため、休暇制度などを導入し、実際に対象者に利用させた場合に助成金を受け取れるコースです。

なお、不妊治療部分は男女問わず対象となりますが、月経・更年期対応は女性社員が対象です。

2)助成金を受け取るには?

このコースは「不妊治療」「女性の健康課題対応(月経)」「女性の健康課題対応(更年期)」に分かれていますが、大まかな要件は共通しています。次の制度のいずれかを導入し、1年間に5日以上、対象者に利用させる必要があります。助成の対象は中小企業のみです。

  • 休暇制度(不妊治療や女性の健康課題に対応するための特別休暇。多様な目的で利用できるものも可)
  • 短時間勤務制度(1日の所定労働時間を1時間以上短縮する制度。ただし、利用しても1時間当たりの基本給等の水準の引き下げや雇用形態の変更がされないことが条件)
  • 所定外労働制限(残業免除)、時差出勤制度、フレックスタイム制度、在宅勤務等

さらに、本コースの特徴として他コースのような上司面談ではなく、「両立支援担当者」の選任と相談対応体制の整備が申請要件となっています。

3)受け取れる金額はいくら?

不妊治療・女性の健康課題対応(月経)・女性の健康課題対応(更年期)それぞれについて、図表6の額を受け取れます。加算は特にありません。

不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

それぞれについて支給要件を満たした場合、最大90万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

このコースでは、休暇制度や短時間勤務制度を1年に5日以上対象者に利用させる必要がありますが、不妊治療や女性の健康課題対応が目的であることが明確でない場合、利用しても日数にカウントされません。

例えば、休暇制度を設ける場合、女性社員が利用しやすいよう「ファミリーサポート休暇」などの名称にすることがあります。ただし、助成金の受給を考えるのであれば、「休暇申請書などの際に利用目的を記載する欄を作ること」などを検討する必要があるかもしれません。ただ、その場合、労務担当者が男性だと申請しにくい女性社員もいるでしょう。制度の運用をスムーズにするためにも、「両立支援担当者」を男女混合の少人数チームで構成するなどの配慮も検討しましょう(両立支援担当者の選任は、本コースの要件でもあります)。

以上(2026年5月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

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【管理会計】部門や支店が増えた場合に役立つ「貢献利益」による業績評価

1 質問:部門ごとの利益を把握していますか?

店舗販売部門、外商部門、卸売部門の3つの部門を持つA社。会社全体の利益はすぐに出てくるものの、部門ごとの利益は売上総利益(売上-売上原価)までしか把握できていません。

創業当初はシンプルだった組織も、事業規模が拡大していくにつれ、さまざまな部門が設置され、営業所なども増えてきます。ここで問題となるのが、部門や営業所ごとの業績が見えにくくなることです。こうした状況に直面した場合における判断の基準をご紹介します。

2 部門などごとに「貢献利益」を算出する

貢献利益とは、限界利益(売上高から変動費を引いた値)から管理可能固定費を引いた値です。管理可能固定費とは、各部門でコントロールできる固定費をいいます。

貢献利益は次のように計算します。

  • 限界利益=売上高-変動費
  • 貢献利益=限界利益-管理可能固定費

貢献利益のイメージ

管理会計では、費用は売上高の増減に合わせて変動する「変動費」と、売上高の増減に関係なく発生する「固定費」とに分けられます。売上高が伸びると変動費は増えますが、固定費は一定です。

例えば小売業の場合、売上原価などは売上高に合わせて増減する変動費になります。一方、人件費や減価償却費、賃借料などが固定費となり、その中には各部門で管理可能(コントロール可能)なものと管理不能(コントロール不能)なものがあります。

各部門で決裁権のある費用は管理可能固定費となります。例えば、消耗品費、会議費、交際費などについて、各部門や支店での判断が可能ならばコントロール可能な固定費となります。

部門や支店の要請で人員補充が行われる場合、人件費も管理可能固定費とします。一方、支店、営業所、工場などの開設に伴う賃借料や減価償却費、支払利息のように経営者の経営判断によるものは、各部門にとっては管理不能固定費とします。

3 事例を用いた「貢献利益」の計算例

1)事例前提条件

A社には、店販部門、外商部門、卸売部門の3つの販売部門があります。また、自社ビルを保有し、その中にこの3部門が設置されています。

A社の部門別売上高と費用

店舗販売部門は、自社ビル内の店舗で小売販売をしています。店販部門の売上高は10億円です。商品の値入率は55%(原価率45%)です。管理可能固定費は、人件費1億4400万円(480万円×30人)とします。

外商部門は、会員顧客(年間に一定金額以上を購入する優良顧客)向けに訪問販売と通信販売を行っています。掛率(小売価格に対する販売価格の割合)は90%です。管理可能固定費は、人件費7200万円(480万円×15人)、車両費・物流費4200万円(営業車7台分の減価償却費・管理費・燃料費700万円+代金引換を含む小口配送費用3500万円)とします(便宜上、配送費用は管理可能固定費に含めています)。

卸売部門は、百貨店等の大規模小売店や専門店に対して商品を卸売りしています。掛率は65%です。管理可能固定費は、人件費7200万円(480万円×15人)と交通費・物流費2700万円(営業交通費200万円+商品配送費用2500万円)とします。商品配送費用は、売上高に応じて変動する性質の費用ですが、ここでは管理可能固定費としています。

2)店販部門の貢献利益

店販部門の売上高は10億円、商品の値入率が55%なので、売上原価と限界利益は次のように算出することができます。

  • 売上原価=売上高10億円×売上原価率45%=4億5000万円
  • 限界利益=売上高10億円-売上原価4億5000万円=5億5000万円

店販部門の管理可能固定費は、人件費1億4400万円なので、貢献利益は次のように算出することができます。

  • 貢献利益=限界利益5億5000万円-管理可能固定費1億4400万円=4億600万円
  • 従業員1人当たり貢献利益=貢献利益4億600万円/従業員数30人=1353万3300円

3)外商部門の貢献利益

外商部門の売上高は6億円、店販部門の販売価格に対して掛率90%で販売しているので、売上原価と限界利益は次のように算出することができます。

  • 売上原価=売上高6億円/90%×売上原価率45%≒3億円
  • 限界利益=売上高6億円-売上原価3億円=3億円

外商部門の管理可能固定費は、人件費7200万円と車両費・物流費4200万円なので、貢献利益は次のように算出することができます。

  • 貢献利益=限界利益3億円-管理可能固定費1億1400万円=1億8600万円
  • 従業員1人当たり貢献利益=貢献利益1億8600万円/従業員数15人=1240万円

4)卸売部門の貢献利益

卸売部門の売上高は10億円、店販部門の販売価格に対して掛率65%で販売しているので、売上原価と限界利益は次のように算出することができます。

  • 売上原価=売上高10億円/65%×売上原価率45%=6億9200万円
  • 限界利益=売上高10億円-売上原価6億9200万円=3億800万円

卸売部門の管理可能固定費は、人件費7200万円と交通費・物流費2700万円なので、貢献利益は次のように算出することができます。

  • 貢献利益=限界利益3億800万円-管理可能固定費9900万円=2億900万円
  • 従業員1人当たり貢献利益=貢献利益2億900万円/従業員数15人≒1393万3300円

5)各部門の比較

A社の部門別貢献利益を一覧で示すと次の通りです。

A社の部門別貢献利益

3部門で貢献利益が最も大きいのが店販部門で、他2部門を大きく上回っています。次いで卸売部門、外商部門となっています。

店販部門は、売上高が大きく限界利益率が高いことが特徴です。卸売部門は、限界利益率は低いものの、それを売上高でカバーしている状況です。

従業員1人当たり貢献利益では、卸売部門が最も大きく、次いで店販部門、外商部門という結果になっています。

実際には、部門別に時系列で比較し、各事業部門の貢献利益の増減を比較評価するのが効果的な方法です。

4 貢献利益を運用する際の注意点

1)目に見えないもう1つの貢献利益

部門別の貢献利益によって、部門や支店ごとの業績が把握できます。活用方法はさまざまで、例えば賞与の査定に差をつけることもできます。

ただし、慎重に運用しなければなりません。なぜなら、各部門は独立した組織であるようでいて他部門から少なからず影響を受けているものであり、各部門からのアシストについても考慮する必要があります。

各部門の貢献利益を比較する場合、他部門からの好影響(創業からの貢献度合いやブランド価値など)も考えなければなりません。これを考えずに、部門別貢献利益を他部門との比較のために用いると、部門間にあつれきが生じる危険があります。

2)適正な売上管理や労務管理が大前提

管理可能固定費というのは、各部門でコントロールが可能な費用です。部門別業績評価をする場合、各部門の売上管理や労務管理等が適正に行われていることが不可欠です。

例えば、各部門に未払いの残業代があるなどの場合が問題です。もし、部門内でサービス残業が常習化しているような場合、それを管理可能固定費に加味すると貢献利益は異なってきます。また、評価基準を利益に重きを置きすぎたときに生じる売上の粉飾もあります。不正へのきっかけとならないためにも、社員教育の徹底や管理体制の整備も同時に行っていきましょう。

5 練習問題

1.(問題1)

A事業部の売上高は5000万円(変動費率55%)、管理可能固定費は1500万円です。A事業部の貢献利益はいくらですか?

(問題1の回答)

A事業部の限界利益は、売上高の5000万円から変動費の2750万円を引いた2250万円となります。貢献利益は限界利益から、管理可能固定費を引いた利益なので750万円(2250万円-1500万円)となります。

問題1の答え:750万円

2.(問題2)

A事業部に係る費用項目は次の通りです。A事業部の管理可能固定費はいくらですか?

接待交際費180万円、福利厚生費30万円、器具備品の減価償却費80万円、

オフィス賃借料850万円、光熱費100万円、広告宣伝費130万円、旅費交通費200万円、

A事業部の役員給与1000万円、A事業部の従業員給与8640万円

(問題2の回答)

管理可能固定費とは、A事業部がコントロールできる費用です。上記の中では、接待交際費、福利厚生費、光熱費、広告宣伝費、旅費交通費、A事業部の従業員給与となります。なお、役員給与は株主総会(役員個人の給与額については取締役会または代表取締役)の決議事項であるため、管理不能固定費に該当します。

問題2の答え:9280万円

以上(2026年4月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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画像:photo-ac

【朝礼】意見される人になろう

【ポイント】

  • 周囲の人は、「この人にもっと能力を発揮してもらいたい」と考え、意見を言う
  • 意見されるには、周囲の人が意見を言いやすい環境づくりが必要
  • 立場にかかわらず、意見してくれた人には感謝の気持ちを伝える

今朝は、いつも周囲の人から「意見される人」についてお話ししようと思います。周囲の人からいつも意見される人と聞くと、おっちょこちょいで、いつも失敗ばかりしている人や、思慮が足りず周囲から注意される人といった、マイナスの印象を与える人を思い浮かべるかもしれません。一方で、周囲の人は、「この人にもっと能力を発揮してもらいたい」「意見する価値がある人だ」と考え、意見を言います。周囲の人の意見には、自分だけではなかなか気づくことのなかったたくさんのアイデアや視点が含まれています。意見される人は、こうした意見をうまく自分の仕事に反映し、成果を得ているはずです。

豊臣秀吉と竹中半兵衛、本田宗一郎と藤沢武夫といったように、偉人や名経営者と呼ばれる人の隣には名参謀がいます。偉人や名経営者と呼ばれる人も自分だけの能力ではなく、自分に意見してくれる人材、参謀に恵まれたからこそ、十分な力を発揮することができたといえるでしょう。

それでは、周囲の人からいつでも意見される人であるには、どうすればよいのでしょうか。私は「日ごろから相手と意思疎通を図っておく」「いかなる場合も人の話に耳を傾ける」といった、周囲の人が意見を言いやすい環境づくりが必要だと思います。例えば、部下から上司に対して意見があったとしても、忙しそうにしていて話を聞いてもらえる様子がなかったり、以前に意見したときに全く取りあってもらえなかったとすれば、その部下は上司に意見を言うことはないでしょう。

従って、部下を持つ上司は、常日ごろから部下に声をかけたり、意見を求めたりすることが大切です。そして、立場にかかわらず、意見してくれた人には、感謝の気持ちを伝えましょう。時には、耳の痛い意見や、意に沿わない意見もあるかもしれません。しかし、そうした意見を言ってくれる人こそ、あなたのことを真剣に考えてくれている場合が多いものです。

一般的に、担当する仕事量が増えて忙しくなったり、役職が上がって部下の人数が増えたりするといった状況になると、人から意見されにくくなります。どのような状況にあっても、周囲の人から意見される人であるよう、周囲の人が意見を言いやすい環境づくりを忘れないように心がけ、人の意見をうまく取り入れて、自らの糧としていきましょう。

              

以上(2026年4月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

「DDoS攻撃」の防御策と踏み台にされないための対策とは

1 IoT機器などが乗っ取られて、攻撃の踏み台に!

「DDoS攻撃」(Distributed Denial of Service attack; 分散型サービス妨害攻撃)は、

サーバーやネットワークなどに意図的に過剰な負荷をかけることで、正常なサービスを提供できなくするサイバー攻撃

です。「ディードス」と読みます。

攻撃者は、何らかの方法で乗っ取った複数の機器で構成されるネットワーク(ボットネット)を踏み台として、特定のサーバーやネットワークに対して大量のアクセスを一斉に仕掛けて高負荷状態にさせる、もしくは回線帯域を占有してサービスを利用できなくします。

IPA(情報処理推進機構)が毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威」では、「DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)」が、組織向け脅威として取り上げられており、2026年には第9位にランクインしています。

情報セキュリティ10大脅威

「DDoS攻撃」は、ルーターやネットワークカメラなどのIoT機器を狙う「Mirai」と呼ばれるウイルス(IoTマルウェア)や、その亜種に感染したボットネットを踏み台とするのが主流でしたが、足元では「Mirai」とは異なるIoTマルウェアの感染も拡大しているといいます。

大規模な「DDoS攻撃」を受けると、ウェブサイトの停止、業務の中断といった深刻な被害が生じます。中小企業も対策を怠ると攻撃の踏み台にされてしまう恐れがあります。

この記事では、「DDoS攻撃」の防御策と、攻撃の踏み台にされないための対策を紹介します。

2 「DDoS攻撃」の防御策

1)海外に割り当てられたIPアドレスからの通信の遮断

攻撃元となるIPアドレスの多くは、海外に割り当てられたIPアドレスです。例えば、サービス対象者が国内に限られるウェブサイトを運営している場合、海外に割り当てられたIPアドレスからのアクセスを制限(ジオブロック)することで、被害を抑えられます。

2)DDoS攻撃の影響を排除または軽減するための専用の対策装置やサービスの導入

WAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)、IDS/IPS(不正侵入検知システム/不正侵入防止システム)、UTM(統合脅威管理)、DDoS攻撃対策専用アプライアンス製品等を導入し、DDoS攻撃を防ぐため必要な設定を行います。

3)コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)サービスの利用

CDNは、独自に構築したキャッシュサーバーやそれにひも付くネットワークを利用して、ウェブサイトのコンテンツを配信するサービスです。元々、ウェブサイトのレスポンス向上を目的として利用されてきましたが、「DDoS攻撃」に対しても、CDNが攻撃トラフィックを分散処理することで、オリジンサーバーへの負荷軽減が期待できます。オリジンサーバーへの直接アクセスを防ぐため、オリジンサーバーのIPアドレスを隠蔽する必要があります。

4)その他各種DDoS攻撃対策の利用

インターネットサービスプロバイダーや、WAF/CDNを提供するクラウドサービス事業者が別途提供する、DDoS対策機能を利用することも有用です。

5)サーバー装置、端末及び通信回線装置、通信回線の冗長化

代替のサーバー装置などに切り替える対策です。この場合、DDoS攻撃の検知、代替サーバー装置などへの切り替えが許容される時間内に行えるようにする必要があります。

6)サーバー等の設定の見直し

代替のサーバー装置などについて、パケットフィルタリング機能、3way handshake時のタイムアウト短縮、各種Flood攻撃への防御、アプリケーションゲートウェイ機能がある場合は、有効にしましょう。

3 攻撃の踏み台にされないための対策

1)オープンリゾルバー対策

オープンリゾルバー(Open Resolver)とは、外部の不特定のIPアドレスからの、再帰的な問い合わせを許可しているDNSサーバーのことです。DNSサーバーの設定不備によるものだけでなく、ブロードバンドルーターなどのネットワーク機器に組み込まれているリゾルバーが、意図せずインターネットからアクセス可能になっているケースもあります。

JPCERTコーディネーションセンターが運用する「オープンリゾルバー確認サイト」に、ウェブブラウザでアクセスすると、自身の利用する環境がオープンリゾルバーとして機能していないか、適切な設定や対策が施されているかを確認できます。設定されているDNSサーバーやブロードバンドルーターが、オープンリゾルバーと判定されたときは、設定を見直しましょう。

■JPCERTコーディネーションセンター「オープンリゾルバー確認サイト」■
https://www.openresolver.jp/

2)セキュリティパッチの適用

サーバーやネットワーク機器の脆弱性を放置すると、攻撃者にマルウェアを仕掛けられ、DDoS攻撃の踏み台として悪用される恐れがあります。

OS、ミドルウェア、アプリケーションの定期的なアップデートが欠かせません。ベンダーからセキュリティパッチがリリースされたら、速やかに適用し、脆弱性が含まれるプログラムや設定を更新・修正しましょう。

3)フィルタリングの設定

正常な通信パケットでは、ヘッダー部分にあるIPアドレスは送信者のアドレスになっています。このIPアドレスを書き換えた詐称パケットで相手先に接続を試みるのが、「IPスプーフィング」と呼ばれる手法です。

ルーターやファイアウォールにおいて、送信元IPアドレスが詐称されているパケットをフィルタリングすることが求められます。

4 参考

■みんなで守る、IoT。NOTICE■
https://notice.go.jp/
■情報通信研究機構 サイバーセキュリティ研究所「NICTER Atlas」■
https://www.nicter.jp/atlas

以上(2026年4月作成)

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【書籍ダイジェスト】『となりの陰謀論』

本書は、陰謀論の存在感が増す社会において、なぜこうした考え方が生まれ、広がり、力を持つようになってきたのかを考察している。
陰謀論とは、世の中の問題について、不確かな根拠のもとに「誰かの陰謀である」と決めつける考え方を指す。昔からあり、誰もがそうした考え方をする素質を持っているものだという。しかし、インターネットの出現によって陰謀論の世界は激変し、アクセスも容易になった。陰謀論は無視するのではなく、政治がそれらとどう関わっていくのかに目をこらしていく必要があるようだ。

書籍ダイジェストは、こちらからお読みいただけます。pdf

中小企業が「標的型攻撃」の踏み台にならないための多層防御とは

1 油断大敵! あなたの会社もサイバー攻撃のターゲットに

「標的型攻撃」は、

特定の企業や組織をターゲットとして、機密情報や知的財産、アカウント情報(ID、パスワード)などを窃取しようとするサイバー攻撃

です。中国や北朝鮮といった国家を背景とする犯行グループの関与が疑われる事案も後を絶ちません。

IPA(情報処理推進機構)が毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威」では、「機密情報を狙った標的型攻撃」が、初選出の2016年から11年連続で組織向け脅威として取り上げられており、2026年には第5位にランクインしています。

情報セキュリティ10大脅威

「うちは中小企業で、狙われるような機密情報もないし、関係ないだろう」と、仮にあなたがそう考えているのであれば、その認識は甘いと言わざるを得ません。

なぜなら、第1位の「ランサム攻撃による被害」、第2位の「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」などの端緒は、標的型攻撃メールなどによる侵入のことも多く、大企業に対する攻撃の踏み台として、「取引先である中小企業」が標的にされることもあるからです。巧妙な標的型攻撃を100%防ぐことは不可能です。

この記事では、標的型攻撃の主な手法を知った上で、ネットワークに侵入されることを前提とした「多層防御」の考え方について解説します。

2 標的型攻撃の主な手法

1)標的型攻撃メール

標的型攻撃の侵入経路として多く使われるのは、今なお、電子メールです。この「標的型攻撃メール」の手法は、簡単に言うと、

添付ファイル(Word、Excel、PDF、Zipなど)の開封や本文中のURLリンクのクリックを促すことで、マルウェアに感染させるもの

ですが、メール受信者の心理的な隙を突くために、手口が非常に巧妙化しています。

例えば、実在の取引先、上司や同僚、公的機関(税務署・保健所など)になりすましたり、採用応募や問い合わせをかたったりした、不審なメールを受信したことのある人も多いのではないでしょうか。

ここ数年は、AIの技術がすさまじい速度で発展しており、「不自然な日本語に気を付ける」といった、メールを読んだときの違和感による真偽の見極めは、通用しなくなってきています。

2)不正アクセス

攻撃者が何らかの方法でネットワークに不正アクセスし、追加の認証情報の窃取や不正アカウントの作成、バックドアの設置などを行い、「踏み台」として使うものです。

コロナ禍を経てよく見られるのが、テレワークのために設置したVPN機器が初期設定のままだったり、リモートデスクトッププロトコル(RDP)のポートがインターネットに公開されていて、簡単なパスワードだったりするケースです。そうすると、総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)によって容易にネットワークに侵入されてしまいます。

3)ウェブサイトの改ざん(水飲み場型攻撃)

ターゲットが信頼している場所(=水飲み場)で待ち伏せする手口です。例えば、業界団体のニュースサイトなど、情報収集の目的でよく閲覧するウェブサイトがあったとします。そのウェブサイトのセキュリティ対策が甘いと、サイトが改ざんされ、マルウェアを仕掛けられて、そのサイトにアクセスするだけで、マルウェアに感染してしまう恐れがあります。

3 多層防御の考え方

情報システムのセキュリティ対策は、旧来、攻撃者による侵入をネットワークの入り口で防ぎ切れるという考えの下で、入り口対策に重きが置かれてきました。しかし、標的型攻撃は、入り口対策だけでは防ぎ切れません。メールフィルタリングやウェブフィルタリング、マルウェア対策ソフトの利用といった基本的な入り口対策に、内部対策、出口対策を重ね、一つの層が破られても別の層で守られるという、「多層防御」の考え方が重要です。

1)入り口対策

自社が管理するネットワーク、システムや端末などと、インターネットなどの外部環境との接続点で、不正な通信が入り込むことを防ぐ対策です。先に述べた基本的なメールフィルタリングやウェブフィルタリング、マルウェア対策ソフトの利用の他に、次のような対策が考えられます。

  • 多要素認証(MFA):VPNやRDP、クラウドサービスへのアクセスには、ID/パスワードだけでなく、MFAを必須とし、不正ログインを防ぎます。
  • パッチ管理:OSやソフトウェア、特にVPN機器などの脆弱性をなくすためのセキュリティパッチを、迅速かつ確実に適用します。

また、「標的型攻撃メール訓練」も有効です。標的型攻撃メールを疑似的に再現したメールを従業員に対して送信し、その開封状況や万が一、引っかかってしまった際の対応策が、会社のルールにのっとってきちんと実施できているか、などを可視化できます。

2)内部対策

入り口対策をすり抜けた不正な通信に対して、内部ネットワーク環境に保存・設置されている機密情報やシステム等に対する、攻撃の予兆などを検知・隔離するものです。次のような対策が考えられます。

  • ふるまい検知:旧来のマルウェア対策ソフトは、パターンファイルにマッチする既知のウイルスを検出するものでした。ふるまい検知は、プログラムの挙動から悪意のあるマルウェアを検出する仕組みで、「不審な動作」をしているかどうかを監視するため、データベースに登録されていない新種のマルウェアにも対応可能です。
  • EDR(Endpoint Detection and Response):PCやサーバーの「エンドポイント」でプログラムの動作などを監視し、その動きによってウイルスの感染を検知し、情報収集・調査や感染PCの遠隔隔離などをすることで、リスクを最小限に抑えるものです。
  • XDR(Extended Detection and Response):EDRの情報に加え、ネットワーク機器やクラウドのログも相関的に分析し、より高度な脅威検知を実現します。

また、アクセス権限の適切な設定も重要です。本来の目的に必要な最低限の権限しか与えない、「最小特権の原則」を守るようにしましょう。

3)出口対策

組織内から重要な情報が外部に送信される段階で、被害を食い止める対策です。次のような対策が考えられます。

  • 社外へのアクセス経路の制限:社内ネットワークとインターネットの間にプロキシサーバーを配置し、通信を仲介することで、有害なコンテンツや不正な宛先への通信を遮断します。
  • WAF(ウェブ Application Firewall)の導入:WAFは、アプリケーションレベルで通信の中身を解析し、特定の条件にマッチする通信を検知・遮断します。

また、万が一、データが流出してしまっても情報にアクセスできないよう「データを暗号化」しておくことや、いつ、何が起きたのか調査し対策を講じるために、サーバーやウェブアプリケーションなどの「ログを記録」しておくことも重要です。

4 対策の定期的な見直しが不可欠

中小企業が「標的型攻撃」の踏み台にならないためには、多層的な防御策を講じることが求められます。「入り口」「内部」「出口」の各所で、それぞれの対策が連携して機能することで、初めて効果を発揮します。

そして、セキュリティを取り巻く環境は常に変化します。新たな脅威に対応するため、定期的に対策を見直し、改善していく継続的な取り組みが不可欠です。

5 参考

■国民のためのサイバーセキュリティサイト「標的型攻撃への対策」■
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/security/business/staff/04/
■国民のためのサイバーセキュリティサイト「電子メールとウェブサイトにおける対策」■
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/security/business/admin/05/

以上(2026年4月作成)

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【管理会計】その選択をしなかった場合の結果を「機会費用」として検討する

1 質問: まだ確定していない注文を見込むべきか?

自社の商品Aをいくつ製造するか決めたいと思っています。既にB社から5000個の発注を受けていますが、営業担当者によるとB社以外からも5000個の注文をもらえる可能性があるとのこと。さぁ、選択です。

B社向けに5000個だけ製造するか、B社以外の販売も見込んで1万個製造するか

営業担当者が“いける”というのなら、B社以外の販売先の注文も受けたいものですが、もし注文がこなかったらと心配になります。こうしたシーンに直面することはよくあるので、判断の基準をご紹介します。

2 「機会費用」という感覚を持つ

「機会費用」とは、

ある選択をした場合に、選ばなかった別の選択をすることで得られた利益

のことです。商品Aの販売単価は1000円、製造原価は700円です。5000個だけ製造することを選んだ場合、B社以外の販売先に5000個販売することで得られたはずの利益150万円(=5000個×利益300円)が機会費用です。

機会費用は「収益の最大化」を意識して検討します。例えば、営業担当者がB社以外の販売先を複数見込んでおり、有力な先もあるのであれば、1万個の製造を選択しやすくなります。さらに大量生産で製造単価も下がるならなおさらです。

反対に、有力な見込み先がなく、製造単価も削減できないなら、5000個だけ製造してB社に売り切ったほうがよさそうです。在庫リスクはなく、営業担当者も他の商品の営業に注力できるので、商品Aの機会費用はなくなります。

3 機会費用を意識した優先順位

もう1つ、機会費用を検討するトレーニングをしましょう。

営業先にC社とD社とがあります。C社は過去に取引実績があり、要求も厳しくありません。競合他社も存在しないので、商談はスムーズに進むでしょう。C社で期待できる利益は400万円です。一方、D社は新規であり、要求はかなり複雑です。競合他社も多数存在するので、受注できるか分かりません。しかし、D社で期待できる利益は1200万円と、C社の3倍です。

C社かD社のいずれか1社としか取引ができないとすると、皆さんはどう判断しますか?

リスクを低減するならC社を優先して400万円を獲得します。800万円の機会費用が発生しますが、営業上のトラブルや、D社に対応することでリソースが割かれ、他の営業先に悪影響が生じることはありません。

反対にD社を選択する場合は何を考えるでしょうか。1200万円の利益は魅力的で、D社の要求に応えるための努力 (技術やノウハウ) は自社の財産になるかもしれません。競合他社に敗れても、将来に向けたビジネスの可能性が広がります。

これは単純な例ですが、機会費用を意識することでより深く検討できます。

4 後ろ髪を引かれても「サンクコスト」は気にしない

管理会計では「サンクコスト(埋没費用)」という考え方も重要です。サンクコストとは、

既に投資したコストや時間など

を指すものです。例えば、人気のラーメン店の行列に並んでいるとき、

予定より待ち時間が長くておなかペコペコだけど、ここまで待ったのだから我慢する

と、それまでのコストや時間を考慮するのがサンクコストの典型です。気持ちは分かりますが、意思決定においては、既に支払っているサンクコストは考慮しないのがセオリーです。そのため、

おなかペコペコなので、別の店にいく。ここまで待った時間は意識しない (諦める)

と、判断します。

ビジネスに話を戻しましょう。ビジネスでは常に撤退プランが準備されています。「これはやるべきではないかもしれない」 「無駄かもしれない」と気付いたとき、それまで費やしたコストや時間を考慮せず、素早く撤退の判断したほうがよいのです。

5 練習問題

(問題1)

商品Aの販売単価は1000円、製造単価は1~5000個では700円、5001~1万個では690円の商品があります。

B社以外への販売を考慮せず、5000個だけ製造しました。しかし、B社以外から5000個受注したとすると、機会費用はいくらになるでしょうか? なお、商品Aを販売する際の販売費及び一般管理費などは考慮しません。

(問題1の回答)

1万個製造する場合、5000個までの製造単価は700円、残り5000個は690円で作れます。この場合、B社以外に追加で5000個販売したときの機会費用は次の通りです。

155万円=(1000円-690円) ×5000個

(問題2)

商品Aの販売単価は1000円、製造単価は1~5000個までは700円、5001~1万個では690円の商品があります。

B社以外への販売を見込み、1万個製造しました。ところが、B社以外に納品する前に1000個に欠陥があることが判明し、1000個を追加で製造しました。また、納期が遅れたため、この1000個の販売単価を1000円から990円に値下げしました。一方、作り直し分の製造単価は680円に抑えることができました。

B社への5000個、B社以外への5000個は、全て販売できたものとした場合、作り直しが発生しなかった場合と比較してどう違うでしょうか?

(問題2の回答)

答えは以下の通りです。

マイナス69万円(=236万円-305万円)

1.1000個の作り直しが発生した場合の利益 (236万円)

  • 売上高(a):999万円=1000円×9000個+990円×1000個
  • 製造原価(b):763万円=700円×5000個+690円×5000個+680円×1000個
  • 利益(a-b):236万円=999万円-763万円

2.作り直しが発生しなかった場合の利益 (305万円)

  • 売上高(a):1000万円=1000円×1万個
  • 製造原価(b):695万円=700円×5000個+690円×5000個
  • 利益(a-b):305万円=1000万円-695万円

以上(2026年4月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人税理士 安積健)

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ストレスチェックの対象は全企業へ!47項目の実務チェックリスト

1 いよいよ中小企業でも、ストレスチェック制度が義務に!

ストレスチェック制度とは、

社員が所定の質問に答えて自身のストレス状態を把握する「ストレスチェック」や、高ストレス者に対する「医師による面接指導」などの一連の施策のこと

です。現状、社員数が常時50人以上の会社は、年1回以上、ストレスチェック制度を実施する義務があります。これまでは常時50人未満の会社については現状努力義務でしたが、昨今のメンタルヘルス不調の増加などを受けて、

常時50人未満の会社においても、2025年5月14日から3年以内に、ストレスチェック制度の実施が「義務化」

されることになりました。

そのような状況となりましたので、中小企業も今のうちから義務化に向けた準備を進める必要があります。ただ、注意しなければならないのは、「健康診断と違って社員に受検を強制できない上に、受検結果も社員の同意がないと取得は不可」などストレスチェック制度特有のルールがあり、場当たり的に取り組むと法令違反や実務の抜け漏れが起きかねないという点です。

そこで、この記事では、

ストレスチェック制度で最低限押さえるべき47項目の実務チェックリスト

を紹介します。ストレスチェック制度を実施する前に、この記事の実務チェックリストを確認してみてください。

なお、厚生労働省では、ストレスチェック制度の実施が全企業で義務化されることを受け、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表していますので、こちらもご確認ください。また、ストレスチェック制度の実施に当たって疑問や悩みがある場合は、労働者健康安全機構の「ストレスチェック制度サポートダイヤル」などもご利用ください。

厚生労働省「『小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル』を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69680.html
労働者健康安全機構「ストレスチェック制度サポートダイヤル」
https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/helpline/tabid/1008/Default.aspx

2 これだけは押さえる! 実務チェックリスト47項目

ストレスチェック制度を実施する際は、次のチェックリストを実務の抜け漏れ防止にご活用ください。

チェックリストは、こちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

(図表)【ストレスチェック制度の実務チェックリスト47項目】

区分 項目 チェック
会社の
現状
常時50人以上の社員(パート等や派遣社員を含む)がいますか?(50人以上いる場合、現時点でストレスチェック制度の実施は義務。50人未満の場合も、2025年5月14日から3年以内に実施は義務になります)  
ストレスチェック制度の対象になる社員を雇用していますか?(正社員、所定労働時間が正社員の4分の3以上かつ1年以上雇用見込みがあるパート等)  
ストレス
チェック
実施者は決まっていますか?(医師・保健師、研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師)  
実施事務従事者(実施者の補佐役)は決まっていますか?(会社の労務担当者(直接的な人事権を持たない者)など。衛生推進者や安全衛生推進者の選任義務のある50人未満の事業場は、当該者を担当とすることが望ましい)  
実施者と実施事務従事者は社内に周知されていますか?  
ストレスチェックの受検は努力義務になっていますか?(受検を強制するのは違法)  
ストレスチェックの受検をどのように社員に勧奨するか決まっていますか?(書面、メールなど)  
実施時期と頻度は決まっていますか?(年1回以上。定期健康診断などの時期に合わせることも可)  
実施媒体は決まっていますか?(書面、ICTなど。併用も可)  
質問項目(調査票)は決まっていますか?(厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」など)  
質問項目に「性格検査」「適性検査」「うつ病検査」などが含まれていませんか?(ストレス状態の把握が目的なので、目的に関係ない項目は除外)  
ストレスの程度の評価方法や高ストレス者の選定方法・基準は決まっていますか?(厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」など)  
社員に提供する受検結果の内容は決まっていますか?(ストレスの特徴・傾向、ストレスの程度、医師による面接指導の要否は必ず通知)  
実施者から社員への受検結果の提供方法は決まっていますか?(書面、メール、ICTで受検する場合は受検終了後に画面に表示するなど)  
受検結果が他人に類推されないように配慮していますか?(「高ストレスの社員だけに、職場で受検結果を配布する」などの方法は不適当)  
会社が実施者から受検結果を取得する場合、社員から同意を得るようになっていますか?(同意がなければ、受検結果の取得は不可)  
受検結果の取得について、社員から同意を得る方法は決まっていますか?(書面、メールなど。衛生委員会の合議などで包括的に同意を得るのは不可)  
受検結果を誰が保存するか決まっていますか?(実施者、実施事務従事者、会社(社員から同意を得た場合))  
受検結果をどこに保存するか決まっていますか?(社内サーバー、キャビネット、委託先である外部機関の保管場所など)  
受検結果を何年保存するか決まっていますか?(会社が保存する場合、5年間(義務)。実施者などが保存する場合も5年間が望ましい)  
第三者に見られないよう、受検結果の管理体制を整えていますか?(システムへのログインパスワードの管理、キャビネットの鍵の管理など)  
ストレスチェックを外部に委託する場合、外部機関に「サービス内容事前説明書」の作成・提出を求め、内容について説明を受けていますか?(実施体制・実施方法・料金体系・面接指導・情報管理など。社員数が常時50人未満の場合、原則外部委託を推奨)  
医師に
よる
面接指導
面接指導を実施する条件は決まっていますか?(ストレスチェックで高ストレス者に該当し、実施者が必要と認めた場合)  
面接指導の申し出を、誰が、いつ、どのように社員に勧奨するか決まっていますか?(実施者が望ましく、ストレスチェック終了後概ね1カ月以内、書面、メールなど)  
面接指導は医師のうち、誰が実施するか決まっていますか?(産業医、地域産業保健センターの医師など)  
社員が面接指導を申し出る方法は決まっていますか?(書面、メールなど)  
面接指導をいつ、どこで実施するか決まっていますか?(申し出後概ね1カ月以内、社内や地域産業保健センターの個室など)  
オンラインで面接指導を実施する場合、対応方法などを検討していますか?(衛生委員会などでの審議、社員への周知、面接環境の整備など)  
面接指導の実施時期、実施場所を社員に通知する方法は決まっていますか?(書面、メールなど)  
就業上の措置について、いつ、どのように医師から意見を聴取するか決まっていますか?(面接指導後概ね1カ月以内、書面、メールなど)  
面接指導の結果を記録・保存する体制が整っていますか?(会社が記録し、会社が5年間保存(義務))  
就業上の
措置
措置の内容(労働時間の短縮、配置転換など)の決定方法は決まっていますか?(社員との話し合いで決定するよう努める。産業医などが同席するのが望ましい)  
措置の実施、変更、解除などについて、関係者と連携する体制が整っていますか?(産業医などに随時相談する、職場の管理監督者に措置の目的や内容を説明するなど)  
社員のストレス状態が改善した場合の方針は決まっていますか?(産業医などの意見を聴いた上で、通常の勤務に戻すなど)  
集団ごとの集計・分析 ストレスチェックの受検結果を集団(部、課など)ごとに集計・分析していますか?(実施は努力義務)  
集団ごとに集計・分析する場合、個人が特定されないよう配慮していますか?(集団は10人以上とするなど。集計・分析の単位が10人を下回る場合には、個人が特定される恐れがあるため、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけない)  
集計・分析結果の活用方法は決まっていますか?(結果を基に、ストレスチェックの実施者などから職場改善について意見を聴くなど)  
集計・分析結果を記録・保存する体制が整っていますか?(会社が記録し、会社が5年間保存するのが望ましい)  
相談窓口 ストレスチェック制度に関する情報開示や苦情対応のための相談窓口がありますか?(社内の労務担当者、外部機関など)  
情報開示の請求や苦情の申し立て方法は決まっていますか?(書面、電話、メールなど)  
窓口担当者の守秘義務について、社内に周知していますか?  
就業規則
など
ストレスチェック実施方針を定め、表明しましたか?(ストレスチェック制度の実施目的、実施要領、個人情報の保護など)  
ここまでの内容を就業規則(ストレスチェック実施規程など)に落とし込みましたか?(ストレスチェック制度の実施方法の詳細、受検結果の取扱いなど)  
制度全般において、社員に不利益な取扱いが生じないルールになっていますか?(ストレスチェックを受けない社員や受検結果が良くない社員の評価を下げるなど)  
ストレスチェック制度の実施に当たり、社内にて意見聴取を行いましたか?(常時50人以上の場合は衛生委員会など。50人未満の場合は社員から広く意見を募るなど)  
就業規則については、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見を聴取した上で、労働基準監督署に届け出て、社内に周知しましたか?  
その他 ストレスチェックの実施後、所轄労働基準監督署への報告が必要なのを知っていますか?(心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書。常時50人未満の会社は現状不要だが、社員数のカウント方法に要注意)  

(出所:日本情報マート作成)

最後(その他)の「心理的な負担の程度を把握するための検査等報告書」については、常時50人未満の会社は現状提出不要ですが、社員数のカウント方法に注意が必要です。

ストレスチェックの「50人」は、正社員と、所定労働時間が正社員の4分の3以上かつ1年以上雇用見込みがあるパート等が何人いるかで判断しますが、心理的な負担の程度を把握するための検査等報告書の「50人」は、

ストレスチェックの対象者のように契約期間や週の労働時間によるのではなく、常態として使用されているかどうかで判断するので、労働時間が短いパート等も対象になり得る

からです。

なお、この報告書は、

「電子政府の総合窓口(e-Gov)」によるオンラインでの提出(電子申請)が原則義務化

されているので注意が必要です。

厚生労働省「労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/denshishinsei.html

以上(2026年4月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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【規程・文例集】「ストレスチェック制度実施規程」のひな型

1 50人未満の事業場もストレスチェックの実施が義務に?

ストレスチェック制度とは、

労働者が所定の質問に答えて自身のストレス状態を把握する「ストレスチェック」や、高ストレス者に対する「医師による面接指導」等の、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を主な目的とした一連の取り組みのこと

です。労働者数が50人以上の事業場は、年1回以上、ストレスチェックを実施しなければなりません。50人未満の事業場は努力義務でしたが、昨今のメンタルヘルス不調の増加等を受け、

労働者が50人未満の事業場においても、2025年5月14日から3年以内に、ストレスチェックの実施が「義務化」

されることになりました。

ストレスチェック制度を実施するには、制度の実施体制や受検結果の取扱い等について、社内ルール(ストレスチェック制度実施規程等)を定める必要があります。問題は、

ストレスチェック制度と健康診断のルールを混同している会社が少なくないこと

です。どちらも労働者の健康状態をチェックするための制度ですが、両者は似て非なるものです。

ストレスチェック制度と健康診断のルール

「健康診断と混同している部分があるかもしれない・・・・・・」という人は、次章で専門家が監修したストレスチェック制度実施規程のひな型を紹介していますので、自社のルールと照らし合わせながら確認してみましょう。

2 ストレスチェック制度実施規程のひな型

以下で紹介するひな型は一般的な事項を一例として示したものです。実際にこのような規程を作成する際には、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【ストレスチェック制度実施規程のひな型】

第1章 総則

第1条(目的)

本規程は、株式会社○○○○(以下「会社」)が、労働安全衛生法第66条の10の規定に基づく「心理的な負担の程度を把握するための検査等」(以下「ストレスチェック制度」)を実施するに当たり、その実施方法等を定めるものである。本規程に定めのない事項は、労働安全衛生法その他の関係法令によるものとする。

第2条(定義)

本規程において使用する語句の定義は次の各号に定める通りである。

  • ストレスチェック:
    ストレスに関する質問票に従業員が記入し(またはITシステムに入力し)、それを集計・分析することで、従業員が自らのストレスの状態を調べる検査。
  • ストレスチェック制度:
    ストレスチェックの結果を踏まえた医師による面接指導や集団分析等、労働安全衛生法第66条の10に係る一連の取り組みの総称。
  • 衛生委員会:
    労働安全衛生法第18条に定められている組織で、従業員の健康障害を防止するための基本となるべき対策等を調査審議する。
  • 衛生管理者:
    労働安全衛生法第12条に定められている者で、従業員の安全または衛生のための教育の実施等、衛生にかかる技術的事項を管理する者。
  • 産業医:
    労働安全衛生法第13条に定められている者で、健康診断や面接指導の実施、作業環境の維持管理や作業の管理等の従業員の健康管理、健康教育等の業務を行う、医学に関する専門的知識を有する医師。
  • 集団分析:
    ストレスチェックの結果を、個人が特定されない一定の規模で分析すること。

第3条(適用範囲)

1)ストレスチェック制度の適用範囲は、次の各号のいずれにも該当する従業員である。

  • 会社と期間の定めのない労働契約を交わしている従業員。次のいずれかに該当する期間の定めのある労働契約を交わしている従業員を含む。
    a. 労働契約の契約期間が1年以上の従業員
    b. 契約更新により1年以上使用される予定の従業員
    c. 契約更新により1年以上継続して使用されている従業員
  • 1週間の労働時間数が、当該事業場の同種の業務に従事する通常の従業員の4分の3以上の従業員。

2)会社は、原則として人材派遣会社等から当社に派遣されている派遣労働者をストレスチェック制度の適用対象としない。

第4条(趣旨等の周知)

会社は、次の各号に定める内容を社内掲示板に掲示するほか、本規程を配布する等の方法により、ストレスチェック制度の趣旨等を従業員に周知する。

  • ストレスチェック制度は、従業員自身のストレスへの気付きおよびその対処の支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防を目的とするものであり、メンタルヘルス不調者の発見を一義的な目的とはしないものである。
  • 従業員にストレスチェックの受検義務はない。ただし、専門医療機関に通院中等の特別な事情がない限り、受検することが望ましい。
  • ストレスチェックの結果は直接本人に通知され、本人の同意なく会社が結果を入手することはない。従って、ストレスチェックを受検するときは、正直に回答することが重要である。
  • 本人がストレスチェックの結果を会社に提供することに同意した場合や、医師による面接指導を申し出た場合、会社はそれらによって得た情報を本人の健康管理のために限って使用する。
  • 本規程第37条に定める事項。

第2章 ストレスチェック制度の実施体制

第5条(ストレスチェック制度担当者)

1)ストレスチェック制度担当者(以下「担当者」)は、ストレスチェック制度の実施計画の策定や計画に基づく実施の管理等の実務を行う。

2)担当者は人事労務課の従業員および衛生管理者とし、その氏名は社内掲示板に掲示する等の方法により従業員に周知する。

3)人事異動等により担当者の変更があった場合は、その都度、同様の方法により従業員に周知する。本規程第6条のストレスチェックの実施者、第7条のストレスチェックの実施事務従事者、第8条の面接指導の実施者についても同様の扱いとする。

第6条(ストレスチェックの実施者)

1)ストレスチェックの実施者(以下「実施者」)は、実際にストレスチェックを行うほか、ストレスチェック制度の実施計画の策定等にも積極的に協力する。

2)実施者は会社の産業医および保健師の2名とし、産業医を実施代表者、保健師を共同実施者とする。

第7条(ストレスチェックの実施事務従事者)

1)ストレスチェックの実施事務従事者(以下「実施事務従事者」)は、実施者の指示のもと、ストレスチェックの日程調整、従業員等への連絡、調査票の配布と回収、結果のデータ入力等の各種事務処理を担当する。

2)実施事務従事者は人事労務課の従業員および衛生管理者とするが、人事に関する権限を有する者は実施事務従事者になることはできない。

第8条(面接指導の実施者)

ストレスチェックの結果に基づく面接指導の実施者は会社の産業医とする。

第3章 ストレスチェック制度の実施方法

第1節 ストレスチェック

第9条(ストレスチェックの実施時期)

ストレスチェックは1年以内ごとに1回実施するものとし、実施時期は業務の状況を勘案して部門ごとに設定する。

第10条(対象者)

1)適用対象となる従業員は、専門医療機関に通院中等の特別な事情がない限り、実施時期にストレスチェックを受検するように努めなければならない。

2)ストレスチェック受検の意思があるものの、出張等の業務上の都合により、ストレスチェックの実施期間にストレスチェックを受検することができなかった従業員は、会社が別途指定する実施時期にストレスチェックを受検するものとする。

3)ストレスチェックの実施時期の全期間に休職しており、休職期間が1ヵ月以上の従業員については、ストレスチェックの対象外とする。

第11条(受検の勧奨)

会社は、従業員の受検状況を把握し、未受検の従業員に対して、実施事務従事者または各職場の管理者を通じて受検の勧奨を行うことがある。

第12条(調査票および方法)

1)ストレスチェックは、厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を用いて行う。

2)ストレスチェックは、社内LANを用いてオンラインで実施する。社内LANが利用できない従業員は、紙媒体で実施する。

第13条(ストレスの程度の評価方法・高ストレス者の選定方法)

1)ストレスチェックの個人結果の評価は、厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(以下「マニュアル」)に示されている素点換算表を用いて換算し、その結果をレーダーチャートに示すことにより行う。

2)高ストレス者の選定は、マニュアルに示されている「評価基準の例 (その1)」に準拠し、以下のいずれかに該当する者を高ストレス者とする。

  • 「心身のストレス反応」 (29項目) の合計点数が77点以上である者。
  • 「仕事のストレス要因」 (17項目) および 「周囲のサポート」 (9項目)を合算した合計点数が76点以上であって、かつ「心身のストレス反応」 (29項目) の合計点数が63点以上の者。

第14条(ストレスチェックの結果の通知方法)

ストレスチェックの個人結果の通知は、「実施者または実施者の指示を受けた実施事務従事者」(以下「ストレスチェックの結果通知者」)が実施者名で行う。通知方法は、原則として各従業員に電子メールを送信することで行うが、電子メールが利用できない従業員および電子メールを希望しない従業員に対しては封筒に封入し、紙媒体で通知する。

第15条(セルフケア)

従業員は、ストレスチェックの結果および結果に記載された実施者の助言・指導に基づき、ストレスを軽減するためのセルフケアを適切に行うように努めなければならない。

第16条(会社への結果提供に関する同意の取得方法)

実施者は、ストレスチェックの結果を従業員に通知する際、その内容を会社に提供することについて同意するか否かの意思確認を行う。従業員が同意する場合は、従業員は結果通知の電子メールに添付または封筒に同封された「同意書」(省略。以下、同様)に入力または記入し、発信者宛てに送付するものとする。同意書の提出が確認された場合、ストレスチェックの結果通知者は、実施者の指示により、ストレスチェックの結果の写しおよび「同意書」の写しを人事労務課に提供する。

第17条(ストレスチェック受検時の賃金の取扱い等)

1)ストレスチェックの受検に要する時間は業務時間として取り扱う。

2)従業員は、業務時間中にストレスチェックを受検するものとし、管理者は従業員がストレスチェックを受検する時間を確保できるように配慮しなければならない。

第2節 医師による面接指導

第18条(面接指導の申出の方法)

1)ストレスチェックの結果、医師による面接指導を受ける必要があると判定された従業員が医師の面接指導を希望する場合、結果通知の電子メールに添付または封筒に同封された「面接指導申出書」(省略。以下、同様)に入力または記入し、結果通知の電子メールあるいは封筒を受け取ってから30日以内に、発信者宛てに送付するものとする。

2)医師による面接指導を受ける必要があると判定された従業員から、結果通知後20日以内に「面接指導申出書」の提出がなされない場合は、ストレスチェックの結果通知者は、実施者の指示により、実施者名で電子メールまたは電話により申出の勧奨を行う。また、結果通知後30日を経過する前日に最終的な意思確認を行う。この際、第三者にその従業員が面接指導の対象者であることが知られないよう配慮する。

3)医師による面接指導を受ける必要があると判定された従業員以外の従業員から、面接指導の申出を受けた場合、会社はこれを拒むことができる。

第19条(面接指導の実施方法)

1)面接指導の実施日時および場所は、面接指導の実施者または面接指導の実施者の指示を受けた実施事務従事者が、該当する従業員およびその管理者に電子メールまたは電話により通知する。この際、第三者にその従業員が面接指導の対象者であることが知られないよう配慮する。なお、面接指導の実施日時は、「面接指導申出書」が提出されてから、30日以内に設定する。

2)通知を受けた従業員は、指定された日時に面接指導を受けるものとし、管理者は従業員が指定された日時に面接指導を受けることができるよう配慮しなければならない。

第20条(面接指導結果に基づく医師の意見聴取方法)

会社は、面接指導が終了してから30日以内に、「面接指導結果報告書兼意見書」(省略。以下、同様)により、面接指導の実施者から結果の報告および意見の提出を受ける。

第21条(面接指導結果を踏まえた措置の実施方法)

1)面接指導の実施者から、面接指導の結果を踏まえた就業上の措置が必要であるとの意見書が提出され、これに基づいて会社が人事異動を含めた就業上の措置を実施する場合、人事労務課の担当者が該当する従業員に就業上の措置の内容およびその理由等を説明する。なお、前記説明を行う際は面接指導の実施者も同席するものとする。

2)従業員は、正当な理由がない限り、会社が指示する就業上の措置に従わなければならない。

第22条(面接指導を受けるのに要する時間の賃金の取扱い)

面接指導を受けるのに要する時間は業務時間として取り扱う。

第3節 集団ごとの集計・分析

第23条(集計・分析の対象集団)

ストレスチェックの結果の「集団ごとの集計・分析」(以下「集団分析」)は、原則として、課ごとの単位で行う。ただし、10人未満の課については、他の課と合算する等して個人が特定されない規模で行う。

第24条(集計・分析の方法)

集団分析は、マニュアルに示されている仕事のストレス判定図を用いて行う。

第25条(集計・分析結果の利用方法)

1)ストレスチェックの結果通知者は、実施者の指示により、人事労務課に集団分析の結果(個人のストレスチェックの結果が特定されないもの)を提供する。

2)会社は、集団分析の結果に基づき、必要に応じて、職場環境の改善のための措置、管理者に対する研修を行う。従業員は、会社が行う職場環境の改善のための措置の実施に協力しなければならない。

第4章 記録の保存

第26条(ストレスチェックの結果の記録の保存担当者)

ストレスチェックの結果の記録の保存担当者は、実施事務従事者である衛生管理者とする。

第27条(ストレスチェックの結果の記録の保存期間・保存場所)

ストレスチェックの結果の記録は、会社のサーバーまたは金庫内に5年間保存する。

第28条(ストレスチェックの結果の記録の保存に関するセキュリティの確保)

保存担当者は、会社のサーバーまたは金庫内に保管されているストレスチェックの結果が第三者に閲覧されることがないよう、パスワードの設定等、必要な管理を徹底しなければならない。

第29条(会社に提供されたストレスチェックの結果・面接指導結果の保存方法)

1)人事労務課は、従業員の同意を得て会社に提供されたストレスチェックの結果の写しおよび「同意書」の写し、ストレスチェックの結果通知者から提供された集団分析の結果、「面接指導結果報告書兼意見書」を、社内の金庫に5年間保存する。

2)人事労務課は、金庫内に保管されている前項の資料が第三者に閲覧されることがないよう、必要な管理を徹底しなければならない。

第5章 ストレスチェック制度に関する情報管理

第30条(ストレスチェックの結果の共有範囲)

従業員の同意を得て会社に提供されたストレスチェックの結果の写しおよび「同意書」の写しは、人事労務課内のみで保有する。

第31条(面接指導結果の共有範囲)

「面接指導結果報告書兼意見書」は、人事労務課内のみで保有する。そのうち就業上の措置の内容等、職務遂行上必要な情報に限定して、該当する従業員の管理者および上司に提供する。

第32条(集団分析結果の共有範囲)

1)実施者から提供された集団分析の結果は、人事労務課内で保有するとともに、課ごとの結果については当該課の管理者に提供する。

2)会社は、集団分析の結果とそれに基づいて実施した措置の内容を、衛生委員会に報告する。

第33条(健康情報の取扱いの範囲)

ストレスチェック制度に関して取り扱われる従業員の健康情報のうち、診断名、検査値等の生データや詳細な医学的情報は実施者が取り扱うものとし、人事労務課に関連情報を提供する際は、適切に加工しなければならない。

第6章 情報開示、訂正、追加および削除と苦情処理

第34条(情報開示等の手続き)

従業員は、ストレスチェック制度に関して情報の開示等を求める際には、「ストレスチェック制度の情報開示等請求書」(省略)を人事労務課に提出するものとする。

第35条(苦情申し立ての手続き)

従業員は、ストレスチェック制度に関する情報の開示等について苦情の申し立てを行う際には、「ストレスチェック制度の苦情申立書」(省略)を人事労務課に提出するものとする。

第36条(守秘義務)

従業員からの情報開示等や苦情申し立てに対応する人事労務課の従業員は、それらの職務を通じて知り得た従業員の秘密を第三者に漏らしてはならない。

第7章 不利益な取扱いの防止

第37条(会社が行わない行為)

会社は、ストレスチェック制度に関して次の行為を行わない。

  • 医師による面接指導の申出を行った従業員に対して、申出を行ったことを理由として、その従業員に不利益となる取扱いを行うこと。
  • 従業員の同意を得て会社に提供されたストレスチェックの結果を理由として、その従業員に不利益となる取扱いを行うこと。
  • ストレスチェックを受検しないことを理由として、その従業員に不利益となる取扱いを行うこと。
  • ストレスチェックの結果を会社に提供することに同意しないことを理由として、その従業員に不利益となる取扱いを行うこと。
  • 医師による面接指導が必要とされたにもかかわらず、その申出を行わないことを理由として、その従業員に不利益となる取扱いを行うこと。
  • 就業上の措置を行うに当たって、面接指導の実施者から意見を聴取する等、労働安全衛生法および労働安全衛生規則に定められた手順を踏まずに、その従業員に不利益となる取扱いを行うこと。
  • 面接指導の結果に基づく就業上の措置を行うに当たって、面接指導の実施者の意見と内容・程度が著しく異なる等必要と認められる範囲内となっていないものや、従業員の実情が考慮されていないもの等、労働安全衛生法その他の法令に定められた要件を満たさない内容で、その従業員に不利益となる取扱いを行うこと。
  • 面接指導の結果に基づく就業上の措置として、次に掲げる措置を行うこと。
    a.解雇すること。
    b.期間を定めて雇用される従業員について契約の更新をしないこと。
    c.退職勧奨を行うこと。
    d.不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換や職位(役職)の変更を命じること。
    e.その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること。

第8章 雑則

第38条(改廃)

本規程の改廃は、衛生委員会において調査審議を行い、その結果に基づいて変更を行うものとする。

附則

本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2026年4月更新)
(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 坪井諒介)

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画像:ESB Professional-shutterstock

2026年5月27日開催!従業員定着・採用力強化セミナーの開催のご案内

2026年5月27日、きらやか銀行は、リクルート、インディードリクルートパートナーズとの共催で、「従業員定着・採用力強化セミナー」を開催いたします。

このセミナーでは、離職のメカニズムと採用・定着の工夫についてわかりやすくご紹介いたします。

このページの最後に、従業員定着・採用力強化に役立つコンテンツも紹介していますので、ぜひご覧ください!


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お申し込みフォームはこちらから(外部サイトへリンク)(先着順)

お申し込み締め切りは2026年5月20日(水)17:00です。

開催概要

  • 日時:2026年5月27日(水) 15:00~17:00(受付開始14:30)
  • 会場:きらやか銀行本社 3階大会議室(定員50名)、
    ZOOMでのオンライン(定員制限なし)
  • 参加費:無料

講師

  • 「採用定着に向けた当行の取組みについて」
    きらやか銀行 総務部 副部長 戸津 智
  • 「『守りの“人材定着” ×攻めの“採用PR ”』の新常識」
    株式会社リクルート 小山 拓 氏
    株式会社インディードリクルートパートナーズ 武田 梨那 氏

プログラム

  • 14:30-15:00 受付開始
  • 15:00-15:05 開会挨拶
  • 15:00-15:25 「採用定着に向けた当行の取組みについて」
    きらやか銀行 総務部 副部長 戸津 智
  • 15:25-16:45 「「『守りの“人材定着” ×攻めの“採用PR ”』の新常識」
    株式会社リクルート 小山 拓 氏
    株式会社インディードリクルートパートナーズ 武田 梨那 氏
  • 16:45-16:55 質疑応答
  • 16:55-17:00 閉会挨拶
お問合わせ先
きらやか銀行 法人サポート部 担当:鈴木、福田
電話:023-628-3822(直通)

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