国内EC市場は拡大傾向:BtoC/BtoBの最新動向と中小企業の戦略【経営者とっておきニュース】

経済産業省が公表した「電子商取引に関する市場調査」によると、2025年の国内BtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は物販系分野が15兆8233億円(前年比3.97%増・EC化率9.80%)、サービス系分野が8兆9362億円(同8.64%増)、デジタル系分野が2兆7985億円(同4.52%増)となり、合計で27兆5580億円規模に拡大しました。また、BtoB-EC(企業間電子商取引)の市場規模も560兆870億円(前年比8.9%増)となり、EC化率は前年から2.8ポイント上昇して45.9%を記録しています。

国内EC市場拡大の背景には、コロナ禍を経て定着したオンライン取引の利便性に対する評価に加え、各事業者のデジタル投資の加速、物価上昇による名目上の金額増加などがあります。

中小企業の現場やサプライチェーンにおいて、この動向は大きな影響をもたらしています。BtoB-EC分野では、卸売業や製造業(食品や輸送用機械など)を中心に受発注のデジタル化(EDI標準化など)が進んでおり、業務効率化や人手不足への対抗策としてメリットを生む一方で、対応が遅れる企業にとっては商流からの置き去りや受発注コストの増大といったリスクが顕在化しています。

また、物販系BtoC市場ではネットスーパーやモール型・自社サイトの活用が日常化する一方、リアル店舗を持つ中小小売業は、オンラインと実店舗を融合させるOMO(Online Merges with Offline)戦略など、独自の付加価値提供が急務となっています。

今後は、国内市場の成熟や人口減少を見据え、単なる国内向けのEC展開にとどまらず、グローバルな視点や効率的なデジタル投資が不可欠となります。世界全体で越境ECが急拡大する中、日本の高品質な製品やコンテンツに対する潜在需要は依然として高い水準にあります。

限られた予算や人員リソースの中小企業がこの波を乗りこなすためには、大掛かりなシステム投資を急ぐのではなく、まずは身近なクラウドツールや少人数で運用可能なSaaSを活用し、最小限のコストから始めるスモールスタートの実践が求められます。自社の強みをデジタル上でいかに表現し、継続的な顧客接点を構築できるかが今後の成長を分ける鍵となるでしょう。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」■
https://www.meti.go.jp/press/2026/10/20261021001.html

以上(2026年10月作成)

pj10228
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ブルーインパルス展示飛行で注目 国産SAF廃食用油回収キャンペーン【経営者とっておきニュース】

国土交通省は、経済産業省・農林水産省・防衛省・Fry to Fly Projectと連携し、2027年3月に横浜で開幕する「GREEN × EXPO 2027」の開幕日に予定されている、航空自衛隊ブルーインパルスの展示飛行において、国産のSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)を使用することを発表しました。

このSAFの原料として、家庭から排出される廃食用油を回収するキャンペーンが、2026年12月9日から2027年2月28日まで実施される予定です。国内での資源循環と航空分野の脱炭素化を同時に推進する官民連携の取り組みとして、大きな注目を集めています。

航空分野における温室効果ガスの削減は世界的な急務となっており、化石燃料に代わるSAFの導入拡大が強く求められています。しかし現状では、製造コストや原料調達の面で多くの課題が存在します。今回の取り組みは、大規模なイベントを契機に国民的な認知度を高めると同時に、家庭の廃食用油という身近な資源を国内のサプライチェーンに組み込む画期的な試みです。

この動きは、航空業界やエネルギー産業にとどまらず、地域経済や中小企業の現場にも多大な影響を与えます。例えば、飲食店や食品関連の中小企業から排出される廃食用油の価値が見直され、新たなリサイクルネットワークや地域循環型ビジネスの創出につながる可能性があります。環境配慮型の取り組みが企業の信頼性を左右する現代において、サプライチェーン全体での持続可能性の確保は、中小企業が生き残るための重要な要素となっています。

今後、航空分野の脱炭素化の流れはさらに加速し、SAFの需要は確実に対象範囲を広げていくと予想されます。それに伴い、廃食用油をはじめとするバイオマスの回収・流通市場においても、地域密着型の新たなビジネスチャンスが生まれるでしょう。

中小企業においても、身近なところから環境負荷低減を図ることが肝要です。「身近なツールや少人数で、最小限のコストから始める実践ステップ」を意識し、まずは自社の業務から出る廃棄物の見直しや、地域のエコ活動への参画といったスモールスタートから取り組むことが求められます。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■経済産業省「ブルーインパルスによる展示飛行に国産SAFを使用し、原料となる廃食用油を回収するキャンペーンを実施します」■
https://www.meti.go.jp/press/2026/10/20261020001.html

以上(2026年10月作成)

pj10229
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(東北経済産業局)事業会社とスタートアップの共創支援を開始【経営者とっておきニュース】

東北経済産業局は、地域内における中堅・中小企業等(以下「事業会社」)とスタートアップの共創を促進する新たなマッチング支援策を発表しました。公募により選定された事業会社が提示する課題や新規事業の共創ニーズに対し、自社の技術やサービスを活かして連携を希望する域内スタートアップのエントリーを募集します。応募期間は2026年10月19日から11月27日までで、費用は無料です。

共創の可能性が高いスタートアップには、事業会社1社につき最大3社程度が選定され、個別面談や成果報告会・交流会を通じた事業化の支援が行われます。地域経済を支える中堅・中小企業では、既存事業の成熟化や人手不足が進む中、新規事業の立ち上げや業務プロセスの変革が急務となっています。しかし、社内リソースや最新技術の知見が限られるため、単独でのイノベーション創出には限界がありました。

一方で、先進的な技術や柔軟なアイデアを持つスタートアップも、地域での実証実験の場や、信頼性の高い顧客ネットワーク、生産基盤の獲得に課題を抱えています。

本事業の推進により、以下のような好循環が期待されます。

  • 事業会社側のメリット:自社の経営資源とスタートアップの機動力を掛け合わせることで、低リスクかつスピーディーに新規事業を検証できます。
  • サプライチェーン・地域経済への影響:域内での事業連携が活性化することで、外注依存からの脱却や新たな地場産業の育成、高度人材の定着につながります。
  • 現場の課題:文化や事業スピードの違いによるミスマッチを起こさないよう、相互の役割分担を明確に管理する体制構築が求められます。

この取り組みを通じて、従来の「親会社と下請け」的な取引構造から、互いの強みを活かし合うフラットなオープンイノベーション構造への移行が地域全体で加速すると予想されます。

中小企業が持続的に成長するためには、自社単体での経営効率化にとどまらず、発注元や提携先、エンドユーザーを含めた商流全体の価値を高める視点が欠かせません。スタートアップの技術を自社の強みと融合させて商流の上流へと進出するか。本事業のような共創機会を活かし、自社のビジネスモデルを再定義することが、今後生き残る鍵となります。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■東北経済産業局「『域内事業会社とスタートアップとのマッチング支援事業(スタートアップ枠)』の公募について」■
https://www.tohoku.meti.go.jp/koho/koshin/kobo/2026/k261019001.html

以上(2026年10月作成)

pj10231
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(中国経済産業局)副業・兼業人材で切り拓く! 中小企業の人材確保術【経営者とっておきニュース】

中国経済産業局は、中小企業における人材確保と経営課題の解決を目的とした「副業・兼業人材活用セミナー」を、2026年11月2日に開催することを発表しました。本セミナーは、会場(庄原市交通交流施設・備後庄原駅舎)とオンラインのハイブリッド形式で実施され、参加費は無料です(申込期限2026年11月1日まで)。

内容は、都市部から離れた地域における副業・兼業人材活用のポイントや実践事例の紹介に加え、NPO法人MEGURUを迎えた講演が予定されています。「自社の課題にどのような人材が必要か」「外部の専門人材をどう活用するか」を学べる構成です。さらに、セミナー後には個別相談会も実施され、企業が抱える具体的な活用可能性への疑問に踏み込んだ支援が行われます。

少子高齢化が加速する地方において、中小企業の人手不足は深刻な経営課題となっています。特に都市部から離れた地域では、優秀なフルタイム人材の採用が難しく、既存の従業員への負担増加や事業縮小を余儀なくされるケースも少なくありません。こうした背景の中、注目されているのが都市部の高度なスキルや専門性を持つビジネスパーソンを「副業・兼業」として迎え入れる手法です。

この動きは、自社のリソースだけでは解決できなかったマーケティング、DX、新規事業開発などの課題を、限られたコストで突破する有効な一手となります。一方で、地方の中小企業にとっては、「自社のどの業務を切り出して外部人材に任せるべきか」という事前の課題整理や、社外の人間と協働するための受け入れ態勢の整備が不可欠です。

地元経済全体で見ても、外部の知見が流入することで新たなイノベーションが生まれ、地域企業の持続可能性を高める重要な転換点となっています。

人口減少が進む地方市場において、自社単体のリソースだけで持続的な成長を描くことは一段と難しくなっていきます。今後は、雇用形態にとらわれず、必要な時・必要な専門性だけを外部から柔軟に調達する「関係人口」や副業人材の活用が、中小企業の生存戦略としてさらに一般化していくとみられます。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■中国経済産業局「副業・兼業人材活用セミナー『企業成長のカギは、「社外」にある。』を開催します」■
https://www.chugoku.meti.go.jp/r8fy/event/jinzai/261020.html

以上(2026年10月作成)

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(四国経済産業局)「採る」から「育てる・活かす」へ。人財共創の新戦略【経営者とっておきニュース】

四国経済産業局は、中小企業における深刻な人手不足の解消と持続的な成長を支援するため、2026年11月6日に香川県高松市にて「四国人財共創フォーラム」を開催すると発表しました。

対象は四国地域の中小企業、経営支援機関、自治体、教育機関などで、参加費は無料です。本フォーラムの最大の特徴は、これまでの「人材をただ採用する」という枠組みから脱却し、地域全体で人材を育み活かす「人財共創」へ舵を切る点にあります。当日は、「地域の人事部」による採用・育成支援、外部の副業・兼業人材の活用、そして若者との新たな接点となる地域連携型インターンシップの推進に関する実践事例が紹介される予定です。

少子高齢化が進む現在、地方の中小企業における人材確保の難易度は年々高まっています。大手企業のような十分な採用予算や知名度を持たない中小企業にとって、従来の求人広告を出して待つだけの「採る」手法には限界が訪れています。こうした背景から、自社単体での努力にとどまらず、地域社会や教育機関、他社と連携して人材を呼び込み、定着させる仕組みづくりが急務となっています。

一社の力では解決できない採用や育成の課題を、地域全体で補完し合う「地域の人事部」のような取り組みが浸透すれば、個社を超えたノウハウの共有や雇用の流動化が促進されます。また、都市部の優秀なプロ人材を副業・兼業として呼び込むことは、自社に不足しがちな新規事業開発や組織変革のノウハウをもたらし、中小企業の経営基盤を強固にする起爆剤となります。一方で、自社の魅力を言語化し、オープンに発信する姿勢を持たない企業は、ますます人材獲得競争から取り残されるという二極化のリスクも孕んでいます。

今後、地域経済や中小企業を取り巻く労働環境は、単なる「人手不足の深刻化」というフェーズから、「自社の存在意義(パーパス)や、いかに多様な人材とつながるか」が問われる選別の時代へとシフトしていくことが予想されます。

限られた経営資源の中で持続的な成長を遂げるためには、自前主義にこだわり続けるのではなく、外部の知見や地域のリソースを柔軟に受け入れるオープンな組織体制への変革が欠かせません。こうした先進的な取り組みや他社の成功事例に触れ、自社の採用・育成戦略をアップデートしていくための今後の動向に、引き続き高い注目が集まります。


【ご注意】本記事は公的資料等を基に生成AIを活用して作成し、編集部で事実確認を行っています。技術の特性上、記述の正確性を完全に保証するのは難しいところがありますので、正確な最新情報については、必ず参照URLの一次情報をご確認ください。
■四国経済産業局「四国人財共創フォーラム『人が集まる企業には、理由がある“採る”から“つながる・育てる・活かす”へ』を開催します」■
https://www.shikoku.meti.go.jp/01_releases/2026/09/20260924a/20260924a.html

以上(2026年10月作成)

pj10233
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採用や評価の判断、どこまでAIに任せる? 海外事例に学ぶAI人事

1 事例をなぞる前に決めておきたい「線引き」の話

「有給休暇の残日数は?」「申請書の置き場所は?」「慶弔休暇は何日取れる?」など、人事にはこうした質問が毎日届きます。どれも規程に書いてあるのに、質問は人のところへ来ます。制度の見直しや就業規則の整備に手が回らない理由の多くは、こうした問い合わせ対応に時間を取られていることにあります。

現在、こうした定型的な問い合わせ対応を含め、人事に関する業務を「AI(人工知能)」に任せる取り組み(以下「AI人事」)が進んでいます。特に海外の大企業の取り組みは先進的で、例えばIBMが人事への問い合わせをAIへ集約したり、Workdayが社員のスキルをAIで可視化したりしています。

一方、日本の中小企業の状況はどうでしょうか。中小機構(中小企業基盤整備機構)の調査で、すでにAIを導入している企業について業務分野別にみると、導入が最も進んでいるのは「総務・管理部門」(68.3%)です。人事を含む管理業務がAIを取り入れやすい分野である点は、海外と共通しているようです。

ただ、そもそもAIを導入している企業の割合が、企業全体の20.4%と低く、導入予定・検討中の企業を含めても39.0%にとどまっています。「成功事例や活用事例などの情報」を十分に入手できていない企業が83.3%に上っており、情報不足が導入の壁の一つになっているようです。

■中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査 (2026年3月)」■
https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202603_AI_point.pdf

そこで、この記事ではまず、先進的な海外企業で何が起きているのか、どのような経緯で今の形になったのかを紹介し、その事例から見えてくるAIと人の役割分担、さらに中小企業が何から取り組むべきかを掘り下げていきます。

また、AI活用を急ぐあまり壁にぶつかった例や、採用へのAI活用をめぐって訴訟に発展した例もあります。だからこそ重要になるのが、何をAIに任せ、どこから人が判断するのかという「線引き」です。

2 海外ではAI人事がどこまで進んでいるのか

1)IBM――繰り返される問い合わせをAIへ集約

海外AI人事の代表例の一つが、IBMの社内人事エージェント「AskHR」です。

AskHRは、給与、福利厚生、休暇、異動、証明書の発行、キャリア、スキル開発など、人事への問い合わせや手続きを一つの窓口へ集約しています。

■IBM「Transforming HR support with agentic AI」■
https://www.ibm.com/case-studies/ibm-askhr

IBMの公表によると、AskHRは2024年に従業員との1150万件以上のやり取りを処理し、よくある質問の94%をAskHRだけで解決しました。人事の専門担当者へ引き継がれたのは6%です。AskHRを含むAI活用は、過去4年間で人事チームの運用コストの40%削減に貢献しました。また、2022年から2024年にかけて、一部の人事業務では生産性が最大75%向上したとしています。休暇申請や給与明細の閲覧など、約80のタスクについて自動化が組み込まれています。

ただし、最初からこの形だったわけではありません。出発点は、社内に複数の人事向けボットや問い合わせ窓口が存在し、従業員が「結局どこに聞けばいいのか分からない」状態でした。そこでIBMは、バラバラだったボットをAskHRという一つの窓口へ統合します。さらに2018年には、全従業員向けの人事電話・メール窓口を停止し、管理職に対する人事パートナーの直接支援も見直しました。多くの管理職にとってAskHRが人事支援の中心的な窓口となり、従来の個別対応からセルフサービス型へ大きく転換したのです。

AskHRのポイントは、AIが人事判断を代行したことではありません。

答えの決まっている問い合わせをAIに任せ、人事担当者が制度設計や複雑な個別対応へ時間を使える状態をつくった

ことにあります。そして、もう一つ重要なのが前提条件です。IBMでは、規程や人事情報がデジタル化され、決まった形式で整理・管理されていました。

就業規則が最新版か分からない、規程が複数のファイルに散らばっている状態では、検索させる材料自体が存在しないため、AIが十分に機能しないのです。

2)Workday――社員を「所属」ではなく「スキル」で見る

もう一つの方向性が、社員の能力をAIで可視化する使い方です。ある部署でデータ分析のできる人材が必要になったとき、多くの会社はまず「経験者を採用しよう」と考えます。しかし、その採用、本当に必要でしょうか? もしかしたら、営業や企画、経理、研究開発など別の部門に、関連する経験やスキルを持つ社員がいるかもしれません。

そこに気づければ、社内異動、兼務、短期プロジェクトへの参加、追加研修など、採用以外の選択肢が生まれます。

人材管理プラットフォーム大手のWorkdayは、社員を所属部署や役職だけでなく「何ができるか」で捉える仕組みとして「Skills Cloud」を展開しています。

■Workday「Workday Skills Cloud」■
https://www.workday.com/ja-jp/products/human-capital-management/skills-cloud.html

Workday Skills Cloudでは、社員の経験や学習履歴、保有スキルを一元的に整理します。AIがそれらの関連性を分析することで、「社内にどんなスキルを持つ人がいるのか」「どのスキルが不足しているのか」「誰を育成・配置すればよいのか」といった情報を見える化します。

ここでもポイントはAIそのものではありません。

AIに分析をさせるためには、資格や研修履歴、過去に担当した業務、社内で身につけた技能など、社員の情報が蓄積されている必要があるため、AIを入れる前に、「自社ではどんなスキルが必要で、それを誰が持っているのか」を会社側が把握できる状態にしておかなければならないのです。

3)Meta――「AIを入れた分だけ人を減らす」は成立しなかった

一方、AI活用を一気に組織再編まで広げようとして、壁にぶつかった企業もあります。Metaです。

2026年8月のロイター報道によると、Metaでは「Project OT(Organization Transformation)」と呼ばれる組織改革が検討され、AIエージェントを前提にチームを小規模化する構想が進められていました。大幅な人員削減を前提とした案も含まれていたとされます。しかし報道によると、AIが期待通りの生産性を発揮しなかったことに加え、急激な組織変更への社員の反発などもあり、当初構想されていた追加の大規模削減は見送られたそうです。

■Reuters「Mark Zuckerberg had a bold plan to replace Meta staff with AI. Here’s how it imploded.」■
https://www.reuters.com/investigations/mark-zuckerberg-had-bold-plan-replace-meta-staff-with-ai-heres-how-it-imploded-2026-08-26/

報道で紹介された社内の数字では、コードの変更量は前年比220%増と大きく伸びた一方、ユーザーが実際に使える新機能や改善につながった変更は36%増にとどまっていました。AIによってコード生成や変更は大きく増えたものの、ユーザーに届く成果は同じペースでは増えなかったということです。

AIの技術と資金を潤沢に持つ企業でも、「AIを入れた分だけ人を減らせる」という単純な計算は成立しませんでした。ここから学ぶべきは、

AI導入の目的を「何人減らせるか」に置くべきではないということです。考えるべきは、人がやらなくてよい仕事は何か、そこで生まれた時間を何に使うのかという業務設計

です。

3 3社から見えてくる「AIに任せる仕事」と「人が決める仕事」

IBM、Workday、Metaの事例はそれぞれ違いますが、共通して見えてくることがあります。

AIは「情報を検索する」「整理する」「集計する」「候補を示す」といった仕事は得意ですが、人の生活やキャリアを左右する判断までAIに委ねると、リスクが急激に高まる

のです。人事へのAI活用を、大きく4つの領域に分けて考えてみましょう。

1)問い合わせ対応

規程の検索、休暇や福利厚生の案内、申請方法の説明、定型文書の作成などは、AIと相性がよい業務です。一方、制度の個別解釈、例外的な運用、労務トラブルやハラスメント相談は、人が対応する必要があります。

2)採用

求人票の下書き、応募者からの定型質問への回答、面接日程の調整、書類の不備確認、候補者情報の要約などはAIが支援しやすい業務です。ただし、採否の最終判断、面接、採用基準の設計は人が中心となります。

3)配置・育成

スキルの抽出、研修の推薦、社内公募候補の提示、キャリア情報の整理はAIが支援できます。しかし異動、昇進、処遇の最終決定や本人との面談は、人が担うべき領域です。

4)人事分析

勤怠、従業員サーベイ、離職傾向の集計や組織課題の可視化はAIの得意分野ですが、「この社員を異動させる」「評価を下げる」「懲戒を行う」といった個人への介入を、分析結果だけで決めるべきではありません。

目安はシンプルです。「AIの判断だけで、その人の働き方や待遇が変わるか」。変わるのであれば、自動決定にはせず、人による確認と最終判断を残します。

【社労士の実務メモ】
「AIで人事を効率化したい」という相談を受けたときは、まず業務を一覧にしてもらいます。すると、AIに任せやすい定型業務と、人が判断すべき業務が混ざったまま処理されているケースが少なくありません。特に採否、評価、昇進、異動、休職対応、懲戒、退職勧奨などは、AIに最終判断を委ねない運用をあらかじめ決めておくことが重要です。

4 AIが選んでも、責任は会社に残る

AIに判断を任せすぎたとき、どんな問題が起きるのでしょうか。その象徴的な事例が、Workdayをめぐる訴訟です。

Workdayは現在、米国でAIを使った採用スクリーニングをめぐる訴訟の被告となっています。いわゆる「Mobley v. Workday」です。

■SHRM「The Workday AI Lawsuit Is a Wake-Up Call for HR」■
https://www.shrm.org/topics-tools/news/technology/workday-ai-lawsuit-wake-up-call-hr

原告のデレク・モブリー氏は、自身が黒人であり、40歳以上で、障害があると述べています。同氏はWorkdayのシステムを利用する企業の求人に100件を超えて応募しましたが、全て不採用でした。なかには、応募から数時間、場合によっては数分後に自動の不採用通知が届いたものもあり、同氏は「人種、年齢、障害を理由とする差別に当たる」として訴訟を起こしています。ただし、現時点では原告側の主張であり、裁判で差別が認定されたわけではありません。

それでもこの訴訟が注目されているのは、AIツールを導入した企業だけでなく、AIを提供するベンダーの責任まで争点になっているからです。

2024年7月、裁判所はWorkday側の主張を一部認める一方で、原告の請求の一部については審理の継続を認めました。具体的には、Workdayを職業紹介事業者とみる原告の主張は退けました。しかし、応募者の選別や不採用の判断といった採用の中核的な機能をWorkdayが顧客企業に代わって担っているのであれば、雇用主の「代理人(agent)」として差別禁止法上の責任を負う可能性があるとしました。2026年6月22日にも、カリフォルニア州法などに基づく差別請求について審理継続を認める判断が示されています。

ここから読み取れることはシンプルです。

AIを活用した採用ツールを導入しても、選考の責任が会社から離れるわけではなく、「AIがそう判定した」「ベンダーのシステムが落とした」は通用しない

ということです。

日本でも、採用選考は応募者の基本的人権を尊重し、本人の適性や能力に基づいて行うことが基本とされています。職業安定法第5条の5は、求職者の個人情報について、業務の目的の達成に必要な範囲で収集・使用することを求めています。

人種、信条、社会的身分、病歴、障害などに関する情報は、個人情報保護法上の要配慮個人情報に当たり、特に慎重な取り扱いが必要です。

さらに、AIは過去のデータをもとに判断するため、過去の採用に偏りがあれば、その傾向を再現する可能性があります。担当者一人の偏りとは違い、AIは偏った基準を大量の応募者へ一度に、しかも即時に当てはめてしまう点にも注意が必要です。

【社労士の実務メモ】
採用ツールは、機能の多さだけで選ばないことが重要です。会社側で判定の根拠を確認できるか、問題が起きたときに検証できるかまで見ておきましょう。

5 では、中小企業はどこから始めるか

ここまで海外の事例を見てきましたが、中小企業がIBMやWorkdayと同じ仕組みをそのまま導入する必要はありません。まず必要なのは、AIを導入することではなく、AIを使える状態をつくることです。

1)繰り返される問い合わせを洗い出す

最初に、人事へどのような問い合わせが集中しているのかを確認します。直近3カ月に寄せられた質問を書き出し、「規程を見れば答えられる」「毎回ほぼ同じ説明をしている」ものを分けてみてください。

有給休暇、各種申請、福利厚生、社内制度など、繰り返し寄せられる問い合わせが、最初にAIに任せる候補になります。ただし、その前に就業規則や社内規程が最新版になっているか、情報が1箇所に整理されているかも確認しておく必要があります。

2)「誰が何をできるか」を整理する

次に、人事データを見直します。まず自社の主要な仕事を挙げ、それぞれに必要な知識、経験、資格、技能を書き出します。その上で社員ごとに、

  • 保有資格
  • 受講した研修
  • これまで経験した業務
  • 現在担当できる仕事
  • 今後身につけてほしいスキル

を整理します。最初から精密なスキルデータベースをつくる必要はありません。まずは「どの仕事を、誰ができるのか」が一覧で分かる状態を目指します。

この整理は、AI活用のためだけのものではありません。社員の経験やスキルが記録されていれば、人が替わっても情報が失われにくくなり、配置転換や育成を考える材料にもなります。

3)AIに任せる範囲を決める

次に、人事業務を「AIに任せやすい仕事」と「人が判断する仕事」に分けます。規程検索、日程調整、書類の要約などはAIに任せやすい業務です。一方、採否、評価、昇進、異動、懲戒など、本人の処遇を左右する判断では、人による最終判断を残します。

誰が最終確認をするのかも、あらかじめ決めておきましょう。

4)AIツールの契約内容を確認する

すでに採用管理システムやAIを活用した採用支援ツールを使っている場合は、契約書や利用規約も確認してください。特に確認したいのは、

  • バイアス検証をどのように行っているか
  • AI機能を停止・変更できるか
  • 入力データの保存・二次利用・学習条件はどうなっているか
  • 問題が起きたときの責任分担はどう定められているか

の4点です。

6 AI導入より先に「利用ルール」が必要な会社もある

そして、中小企業にとっては、AI導入の方法を考えるより先に対応した方がよい問題があります。それは、社員がすでに生成AIを使い始めているケースです。

商工中金が2026年1月に実施した調査では、生成AIについて「会社での導入はなく、使用は個人の判断に任せている」と答えた中小企業が64.9%で最も多くなりました。多くの中小企業では、会社主導で生成AIを導入するより先に、社員個人の判断による利用が広がっていることがうかがえます。

■商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」■
https://www.shokochukin.co.jp/report/data/assets/pdf/futai202603.pdf

特に人事部門には、履歴書、職務経歴書、面接メモ、人事評価、給与情報、休職情報、健康情報など、外部へ出すべきではない情報が集まっているため、生成AIの利用にはくれぐれも注意が必要です。

個人情報保護委員会も、生成AIサービスへ個人情報を入力する際には、利用目的の達成に必要な範囲かを確認するとともに、入力した情報がAI提供事業者の機械学習などに利用されないかを十分に確認するよう注意を促しています。

■個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)■
https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/

例えば、

「文章を要約してほしい」「休職者へのメールを考えてほしい」

と軽い気持ちで、実名や具体的な事情を一般向け生成AIへ貼り付ける運用は避けるべきです。

こうしたリスクを回避するには、「AI利用規程」など、AIの使い方に関する社内ルールを定めておくことが有効です。といっても、最初から何ページものAI利用規程をつくる必要はありません。まずはA4用紙1枚でも構いませんので、

  • 入力してよい情報
  • 入力してはいけない情報
  • 利用目的
  • 確認者

の4項目を決めてください。

【社労士の実務メモ】
健康に関する情報は、病歴など内容によっては要配慮個人情報に当たり、漏えいや不適切な利用が起きたときの影響が大きくなります。AIツールの性能比較を始める前に、「何を入力してよくて、何を入力してはいけないのか」という最低限のルールを決めておくことが重要です。

7 AI人事の成否を分けるのは「線引き」

海外事例から見えてくるのは、最新のAIを導入すれば人事が変わる、という単純な話ではありません。IBMでは、AIに問い合わせを任せる前に、情報と窓口を整理していました。Workdayのようなスキル活用も、社員の経験や能力に関するデータがなければ始まりません。Metaの事例からは、AI導入をそのまま人員削減へ結びつける難しさが見えてきます。

中小企業も同じです。まず業務と情報を整理する。その上で、検索や整理、分析といったAIが得意な仕事はAIに任せ、人の処遇に関わる判断は人が担う。そして、個人情報の扱いや責任の所在を決めておく。

AIによって生まれた時間を、社員との対話や組織の改善にどう使うのかまで設計できて、初めて人事のAI化が意味を持ちます。

何をAIに任せ、どこから人が判断するのか。その線を引くのは、AIではありません。経営者と管理職の仕事です。

以上(2026年11月作成)

pj00844
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内部積立の退職一時金、もうやめたい場合はどうすれば?

創業期から会社を支えてきた従業員が、来年2人続けて定年を迎える。退職金規程に沿って支給額を計算してみたら、想像していたより大きな額になった。決算書には引当金が載っているけれど、その分の現金が手元にあるわけではない……。

退職金を社内で積み立ててきた中小企業では、こうした場面をきっかけに「今の退職金制度のままでいいのか」と制度の見直しを考え始めるケースが少なくありません。

この記事では、内部積立の退職一時金が抱える問題を整理した上で、移行先の制度、自社の課題に合わせた選び方、移行で失敗しないための注意点を解説します。

1 内部積立の退職一時金は、何が問題なのか

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、従業員30~99人の企業で退職給付制度があるのは70.1%で、そのうち77.2%が「退職一時金制度のみ」です。また、この規模で退職一時金制度がある企業が退職金の資金をどう準備しているかを見ると、「社内準備」が49.6%と約半数を占めています。

このように多くの企業が導入している内部積立の退職一時金制度ですが、実は次のような懸念点もあります。

1)資金繰りと見えない債務

従業員が辞めたときに企業がまとめて現金で払うため、定年退職が重なる年には大きな支出が一度に発生します。退職給付引当金を計上して会計上は費用にしても、その繰入額は税務上の損金になりません。また、引当金を計上するだけでは、支払いに必要な現金は確保されません。将来払う退職金は見えにくい債務でもあり、事業承継やM&A、融資審査で評価を下げる要因になります。

2)従業員のニーズとのずれ

勤続年数が長いほど退職金が増える仕組みの企業は多いですが、転職を前提にキャリアを考える若手には、必ずしも魅力的に映りません。また、物価上昇を反映する仕組みがなければ、退職金の実質的な価値が目減りする可能性があります。資産運用への関心も高まっており、「退職金も自分で運用できないのか」という声も出てくるかもしれません。

試しに自社の退職金規程をもとに、

「今、全員が自己都合で退職したら合計でいくら払うか」を試算

してみてください。今後10年間に定年を迎える従業員の人数と時期も一覧にすると、支出が集中する年が見えてきます。

なお、この試算は現状を把握するための目安です。退職一時金から別の退職金制度に移行を検討する場合、定年まで勤めた場合の支給額や将来の増加分も含めて、移行前後を比べる必要があります。

【社労士の実務メモ】
見直しの出発点としてまず確認していただきたいのが、退職金の総額です。決算書に引当金が載っていても、規程どおりの要支給額と一致しているとは限りません。見直しの前に、要支給額を従業員ごとに算出し、決算書の数字と突き合わせてください。

2 移行先にはどんな制度があるのか

中小企業の主な移行先は、中退共と企業型確定拠出年金(企業型DC)です。

1)中退共(中小企業退職金共済制度)

中退共は国の退職金共済制度です。企業が毎月掛金を払い、退職金は中退共から本人に直接支払われます。掛金は法人なら全額損金です。加入できるのは中小企業に限られ、従業員数または資本金が次の条件を満たす必要があります。

  • 一般業種(製造業、建設業等):300人以下または3億円以下
  • 卸売業:100人以下または1億円以下
  • サービス業:100人以下または5千万円以下
  • 小売業:50人以下または5千万円以下

なお、新規加入時には、掛金月額の2分の1(1人当たり上限5000円)を、加入後4カ月目から1年間、国が助成します。

2)企業型DCと選択制DC

企業型DCは、企業が掛金を出し、従業員が自分で運用商品を選ぶ制度です。運用で損失が出ても、企業に補填する義務は原則としてありません。ただし、継続的な投資教育など、制度を運営する責任は企業が負います。資産は従業員ごとに管理され、転職時には転職先の企業型DCやiDeCo(イデコ)に移せます。なお、

拠出限度額は、2026年12月から月額5.5万円から6.2万円に引き上げ(他の企業年金と併用していない場合)

となります。

企業型DCには、

給与の一部を掛金にするか給与で受け取るかを従業員が選べる「選択制DC」

という制度もあります。企業の追加負担を抑えられる一方、掛金にした分は社会保険料の算定対象から外れるため、将来の厚生年金などの給付が減る可能性があります。また、企業負担の退職金をやめて給与からの選択拠出だけに置き換えると、それまで企業が負担していた分がなくなり、従業員の不利益が大きくなります。社会保険給付への影響に加えて、企業の負担額がどう変わるかも比べる必要があります。

3)iDeCo+(イデコプラス)と制度の組み合わせ

この他、企業年金を実施しておらず、厚生年金被保険者が300人以下の企業の場合、「iDeCo+」という選択肢もあります。これは、従業員が自ら掛金を拠出するiDeCoに、企業が掛金を上乗せするというものです(中退共との併用も可能)。制度は1つに絞る必要はなく、中退共で最低限の退職金を確保し、選択制DCを上乗せするといった組み合わせもできます。主な制度の違いは次の通りです。

主な制度の違い

4)企業が取り組むべきこと

自社が中退共の加入範囲に入っているかを、業種と従業員数・資本金から確認してください。数年以内に範囲を超えそうな場合は、その点も判断材料にしてください。なお、中小企業の範囲を超えた場合でも、一定の要件を満たせば確定給付企業年金や企業型DCへ資産を引き継げます。

【社労士の実務メモ】
社労士として相談を受ける中で、特に慎重に検討していただきたいのが選択制DCです。「企業の負担なしで導入できる」という面だけで判断すると、社会保険の給付が減る可能性という従業員側の不利益を見落としがちです。検討の段階で、年収別に手取りと将来の給付への影響を試算した資料を用意してください。

3 自社の課題から、どの制度を選べばよいのか

制度選びの決め手は「どれがいちばん得か」ではなく、「自社のどの課題を解決したいか」です。

1)資金繰りの負担と見えない債務を減らしたい場合

将来の一括支出を毎月の掛金に置き換えたいなら、中退共か企業型DCが基本です。どちらも、将来の支払いに備える費用を、毎月一定額で計画できるようになります。ただし、移行前の分の支払義務が残る場合があります。また、社内規程で約束した額が中退共などの支給額を上回る場合、その差額も企業が負担することがあります。

手続きの負担を抑えたい小規模な企業には中退共が向いています。ただし中退共は、掛金納付が11カ月以下だと原則として退職金が支給されず、12~23カ月では掛金総額を下回るため、早期離職が多い職場では従業員から不利に見えることがあります。

難しいのは、これまでに積み上がった過去分の扱いです。主な方法は次の4つです。

これまでに積み上がった過去分の扱い

中退共の「過去勤務期間通算制度」を使えるのは新規加入時だけで、対象は加入時点で1年以上勤務している従業員、通算できるのは最長10年です。企業型DCへの移換は4~8年度にわたり、年度ごとに均等に分けて行うのが原則で、一括移換は認められていません。

そのため、M&Aや事業承継を控えている企業は、承継の時期から逆算して着手してください。打切支給を退職所得として扱うには、中退共や企業型DCへの移行など相当の理由による規程改正に伴う支給であり、その後の退職金の計算で打ち切った期間を一切加味しないことが条件です(所得税基本通達30-2)。要件を満たすかは、顧問税理士と事前に確認してください。

2)採用に活かし、運用ニーズに応えたい場合

若手へのアピールと資産運用ニーズの両方に応えるなら、企業型DCが適しています。持ち運べる資産であることは、退職一時金にはない強みです。選択制DCを軸にする場合も、全員に月数千円でも企業拠出を上乗せすると、企業が資産形成を後押ししているというメッセージが伝わります。

ただし、DCの資産は原則60歳まで引き出せず、60歳から受け取るには通算加入者等期間が10年以上必要です。「持ち運べる」と「すぐに使える」は別物であることを、説明会で明確に伝えてください。運用結果は従業員本人が負うため、企業は継続的な投資教育に取り組む必要があります。商品を選ばない人への対応として、「指定運用方法」の設定も検討してください。

3)税と手取りへの不満に応えたい場合

企業型DCは、拠出・運用・受取の各段階で税制上の優遇があります。拠出時は事業主掛金が損金になり、従業員の給与所得にもなりません。運用益は非課税で、受け取るときは一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除の対象です。制度を比較するときは、受取時だけでなく、拠出時・運用時を含めた税務上の扱いを確認することが大切です。

一方で、DCの一時金と勤務先の退職金の両方を受け取る場合のルールは変わりました。DCの一時金を先に受け取り、その後に勤務先の退職金を受け取る場合、勤続期間の重複を調整する判定期間が「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に延びました。

この9年の調整ルールは、先に受け取るDCの老齢一時金が2026年1月1日以後の支払いである場合に適用されます(国税庁「源泉徴収のあらまし」令和8年版)。

勤務先の退職金を先に受け取り、その後にDCの一時金を受け取る場合の判定期間は「前年以前19年内」で、今回は変わっていません。DCと退職一時金を併用する企業は、受け取りの順序と時期によって税額が変わることを従業員に案内する必要があります。

4)移行の流れ

移行は、退職金債務の算定、過去分の扱いの決定、制度設計と運営機関の選定、従業員への説明と労使協議、規程改定、個別通知、制度開始の順で進みます。説明と協議を重ねてから規程改定に進むのが基本です。

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、退職金規程を含む就業規則を変更した場合、過半数労働組合または過半数代表者の意見書を添えて、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

企業型DCの場合は、就業規則の「意見聴取」とは異なり、対象となる厚生年金被保険者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)の「同意」を得て規約を作成し、地方厚生(支)局長の承認を受けます。過去分の扱いも含めると、年単位の計画が必要です。

5)企業が取り組むべきこと

第1章で試算した「今、全員が自己都合で退職したら合計でいくら払うか」の額をもとに、過去分を図表2の4つの方法のどれで扱えば資金繰りが回るかを比べてください。その上で解決したい課題を1つに絞ると、制度選びの軸が定まります。

【社労士の実務メモ】
社労士として相談を受ける中で、制度選びと並行して必ず進めていただきたいのが、過去分の扱いの検討です。制度を決めても、過去分の扱いが決まらなければ移行は進みません。従業員がいちばん気にするのも「これまでの分が減らないか」です。移行日時点の要支給額を一人ひとりに書面で示せる準備を、制度設計と同時に進めてください。

4 移行で失敗しないために気をつけること

1)不利益変更のルールを外さない

退職金は賃金の後払いとしての性格を持つ重要な労働条件で、企業が一方的に廃止・減額しても原則として効力は認められません。就業規則の変更で不利益に変えるには、労働契約法第10条に基づき、変更が合理的で周知されている必要があります。

企業側の必要性が高いだけでも、減額への署名があるだけでも、変更が有効になるとは限りません。最高裁は、退職金など重要な労働条件に実質的な不利益を及ぼす変更には、高度の必要性に基づいた合理的な内容であることを求めています(最高裁第三小法廷昭和63年2月16日判決)。

また、減額に同意する書面に署名押印があっても、その同意が本当に従業員の自由な意思によるものか、客観的に見て合理的な理由があるかが問われます。判断に当たっては、不利益の内容や程度をどこまで説明したかが重視されます(最高裁第二小法廷平成28年2月19日判決)。

減る部分があるなら代償措置を設計し、定年退職時の支給額や将来の増加分、受取時期を含めた移行前後の比較を書面で示し、検討期間を確保した上で同意を得てください。

2)引当金と手元資金は別物

引当金は会計上の負債であって、お金を取り分けておく仕組みではありません。過去分を一括清算しようとして初めて資金不足に気づくケースもあります。凍結を選ぶ場合も、凍結額に利息相当を付けるか、倒産時にどう保全するかを事前に詰めておく必要があります。

3)説明会を形だけで終わらせない

説明会を1回開いてその場で同意書を回収する進め方は、法的リスクを高めるうえ、不信感も生みます。受け取りが近い従業員は「もらえる額が減らないか」、まだ先の従業員は「自分で運用できるか」「持ち運べるか」と、立場によって気にする点が異なります。

説明会を対象者に応じて分け、個別シミュレーションを渡し、受け取りが近い従業員には旧制度を継続できる経過措置も検討してください。質問と回答はQ&Aにまとめて全員に配ると、後の「聞いていない」を防げます。

4)企業が取り組むべきこと

従業員の年齢構成を確認し、移行の影響が特に大きい層を特定してください。その層に必要な説明資料と経過措置を書き出しておくと、労使協議の準備が具体的になります。

【社労士の実務メモ】
社労士として相談を受ける中で、特にお伝えしておきたいのが、同意書に署名があるだけでは、同意が有効とは限らないということです。後から「説明が不十分だった」と争いになったとき、企業の説明を裏付けるのは記録です。説明会の資料、個別面談の記録、質問への回答を、すべて日付入りで保管してください。

移行前のチェックリスト

□ 規程に基づく要支給額を従業員ごとに算出し、決算書の引当金と突き合わせた

□ 今後10年間の定年退職者の人数と時期を把握した

□ 解決したい課題を1つに絞った

□ 過去分の扱いと、それぞれの資金計画を比べた

□ 定年時の支給額や将来の増加分を含めた、移行前後の比較を用意した

□ 代償措置と経過措置の内容を決めた

□ 説明会・個別面談の記録を残す体制を整えた

5 退職金制度の見直しは「未来への投資」

内部積立の退職金を社外の制度へ移すことは、退職時にまとめて支払う負担を軽減し、退職金を毎月の費用として計画しやすくする取り組みです。従業員にとっても、社外に積み立てた分は企業の業績や手元資金に左右されずに確保されるという安心につながります。

ただし、その効果は制度の選び方以上に、現状の正確な把握、過去分への配慮、丁寧な合意形成という移行の進め方で決まります。本稿の内容は2026年10月時点の制度に基づく一般的な解説です。制度設計や税務・会計処理は企業ごとに条件が異なるため、着手の前に、社会保険労務士や税理士、運営管理機関に相談しながら進めることをおすすめします。

以上(2026年11月作成)

pj00845
画像:ChatGPT

経営のヒントとなる言葉(松平春嶽)

「我に才略なく我に奇無し。常に衆言を聴きて宜しきところに従ふ」(*)

出所:「福井市立郷土歴史博物館ウェブサイト」(福井市立郷土歴史博物館)

冒頭の言葉は、

  • 「自分には特別な才能はない。従って、常に周囲の意見に耳を傾け、よいと思った点を取り入れる」

ということを表しています。

1838年、養父の松平斉善(まつだいらなりさわ)の急逝により、春嶽は若くして福井藩藩主の座に就きました。当時、福井藩は財政面で困窮し、領民の生活も貧窮していたことを背景に、春嶽は藩内の人事改革に取り組み、橋本左内(はしもとさない)や横井小楠(よこいしょうなん)などの有能かつ革新的な人材を積極的に登用し、家臣の意見も取り入れて教育改革や財政改革、軍事改革に力を注ぎました。

そうした中、1853年にペリーが黒船を率いて来航します。当初、春嶽は攘夷(じょうい)(外国人や外国文化を排斥すること)を主張していましたが、周囲の意見を受け入れて開国派に転じました。同年には将軍徳川家慶(とくがわいえよし)が逝去し、健康面で問題を抱えていた徳川家定(とくがわいえさだ)が跡を継ぐこととなりました。そこで、春嶽をはじめとする有力大名は、黒船来航という緊急時に対応できる将軍として一橋慶喜(ひとつばしよしのぶ。後の徳川慶喜)の擁立運動に取り組みました。しかし、この動きに反対する保守派に敗れ、春嶽は保守派の大老井伊直弼(いいなおすけ)による粛清(安政の大獄)を受け、隠居を強いられてしまいました。しかし、1860年に桜田門外の変で直弼が倒れると、春嶽は幕政への参加を許されることとなります。

その後、政事総裁職に就任した春嶽は、一橋慶喜とともに幕政改革に取り組み、幕末から明治にかけての激動の時期に臨機応変に対応しました。

春嶽は、生涯を通じ、身分や立場にこだわることなく幅広い人材を登用したことで知られています。例えば、熊本藩に生まれた横井小楠は、藩の要職に就くこともなく私塾を開いていましたが、春嶽に政治顧問として招かれ、その後は福井藩の藩政改革、そして政事総裁職である春嶽の助言者として活躍しました。

また、坂本龍馬(さかもとりょうま)との出会いも春嶽の気質をよく表しています。当時は、春嶽のような身分の高い者が、土佐藩の脱藩浪士であった龍馬に会うことなど考えられない厳しい封建制度の時代だったのです。しかし、春嶽は龍馬に会い、その話に熱心に耳を傾け、さらには幕府の軍艦奉行並であった勝海舟(かつかいしゅう)への紹介状を渡します。これがきっかけとなって龍馬と海舟が出会い、以降、明治維新への道が大きく開けたといわれています。

中国古典「孟子」の一節である次の言葉は、春嶽の座右の銘とされ、直筆の墨書としても残されています。

「自ら反(かえり)みて縮(なお)からずんば、褐寛博(かつかんぱく)と雖(いえど)も、吾(われ)惴(おそ)れざらんや。自ら反(かえり)みて縮(なお)くんば、千万人と雖(いえど)も、吾(われ)往(い)かん」(**)

この言葉は、「自らを省みて、やましい点があれば、たとえ相手が自分よりも地位の低い者であっても、私は恐れる。しかし、自らを省みて、正しいと確信できるのであれば、私は千万人の敵であろうと恐れることはない」といった意味があります。

一人の人間の思考には限度があり、狭い世界しか見ることができません。しかし、多くの人の意見に耳を傾ける柔軟性を持つことで、見える世界は大きく広がります。それと同時に、人の意見に流されるままではなく、確固たる基準をもって、それに基づいた決断を下すことができれば、リーダーとしての信頼を得て、春嶽のように多くの優れた人材を引き寄せることができます。春嶽のリーダーとしての姿勢は、現代の経営者にとっても見習うべきものだといえるでしょう。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

まつだいらしゅんがく(本名:松平慶永(まつだいらよしなが))(1828~1890)。江戸(現東京都)生まれ。1838年、福井藩(現福井県)第16代藩主。

【参考文献】

(*)「福井市立郷土歴史博物館ウェブサイト」(福井市立郷土歴史博物館)
(**)「孟子 新訳 『孔子の正統な後継者』が唱えた理想的なリーダーの心得」(守屋洋(訳)、PHP研究所、2012年12月)
「松平春嶽のすべて」(三上一夫、舟澤茂樹(編)、新人物往来社、1999年12月)

以上(2026年10月更新)

pj​15158
画像:日本情報マート

「睡眠不足」の経済損失は18兆円!? 心地よく眠れる8つのポイント

1 社員の健康なくして生産性の向上なし

近年、企業の持続的な成長を支える戦略として、従業員の健康管理やウェルビーイングへの関心が急速に高まっています。その中で、特に重要視されている分野の一つが従業員の「睡眠」です。人間にとって睡眠は、日中に疲労が蓄積した脳や体をしっかりと休ませ、心身のバランスを整えるために欠かせない生命活動です。また、成長ホルモンの分泌を促して体の成長を支えたり、免疫力を高めたり、精神を安定させたりする重要な役割も担っています。

現代の日本では成人の5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えており、睡眠不足による生産性の低下などにより、年間18兆~20兆円の経済損失との試算もあります。企業経営において労働生産性の向上は喫緊の課題ですが、その根底にある睡眠の課題は見過ごせません。

この記事では、睡眠不足がビジネス環境にもたらすリスクに加え、最新の睡眠科学、高機能枕やリカバリーウェア、機能性表示食品といった最新アイテムの活用法について、分かりやすく解説します。

2 睡眠不足が企業とビジネスパーソンにもたらす深刻なリスク

1)睡眠不足が企業活動に与える多大な悪影響

睡眠不足は脳の働きを鈍らせ、身体能力を低下させることが分かっています。パフォーマンスが悪くなったり、作業ミスをしがちになったりするのは典型例です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」のベースとなった研究などでは、人間が十分に覚醒して作業を行うことができるのは起床後12~13時間が限界であり、起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下するとしています。また、睡眠不足が6~7日間続いた場合、その後3日間十分な睡眠を取っても日中の作業能率は元に戻りません。毎日十分な睡眠を取ることが重要です。

2)ストレスチェック制度の義務化と睡眠

従業員50人以上の事業所にはストレスチェックの実施が義務付けられており(50人未満の事業所の場合、2028年3月末までは努力義務)、メンタルヘルス不調の未然防止を図ることが求められます。標準の57の質問には「よく眠れない」という項目が含まれています。不眠症状とうつ病は密接に関連しているため、従業員の睡眠にも気を配ることは重要です。

3 注目される「オレキシン」と睡眠の科学

近年、睡眠研究の分野において世界的な注目を集めているのが、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳澤正史教授らの研究チームによる「オレキシン」の発見です。オレキシンは、脳の視床下部で作られる神経伝達物質であり、私たちが「起きていようとする覚醒状態」を安定して維持するために極めて重要な役割を果たす物質です。

人間の脳内には、「起きていようとする覚醒システム」と「眠ろうとする睡眠システム」が存在し、互いにバランスを取り合っています。柳澤教授らは1998年に、この覚醒を保つためのスイッチとして働くオレキシンを世界で初めて発見しました。このオレキシンの働きが先天的に欠乏してしまうと、日中に突然耐え難い強い眠気に襲われる睡眠障害「ナルコレプシー」を発症することが明らかになりました。

さらに、この基礎研究の成果は実際の臨床現場や創薬にも大きな変革をもたらしました。従来の睡眠薬の多くは脳全体を強制的に鎮静させるアプローチが主流でしたが、オレキシン研究の進展によって「脳の覚醒スイッチであるオレキシンの働きを一時的にブロックし、自然な睡眠への移行を促す」という受容体拮抗薬が開発されました。この功績により、柳澤教授は世界最高峰の賞である「アルバート・ラスカー基礎医学研究賞」を受賞し、将来のノーベル賞の有力候補として期待されています。最先端の睡眠科学の知見は、生活習慣を見直す大きな羅針盤となります。

4 押さえておきたい「快眠のための8つのポイント」

日々の睡眠の質を高めるための8つのポイントを確認していきましょう。人によって効果は異なるため、自分に合った方法を見つけましょう。

1)規則正しい生活習慣を維持する

毎日同じ時刻に眠り決まった時間に起きることで体内に睡眠のリズムがつくられ、休日もリズムを崩さないことが大切です。睡眠のリズムが狂っている場合は、太陽の光を浴びるとよいでしょう。

2)朝食をしっかりと摂取する

朝食は覚醒後のエネルギーとして利用され、抜くと体に負担がかかります。食事を3度きちんと取ると睡眠リズムが回復します。

3)寝る前にはぬるめのお風呂にゆっくりと浸かる

20~30分ほどぬるめのお湯にゆっくり浸かることで心臓に負担をかけず心身をリラックスさせられます。入浴剤や音楽の活用も効果的です。

4)適度な運動を日課にする

適度な運動は熟睡を促しますが、寝る前の過剰な運動は心身を活発にするため控えましょう。

5)日中に適切な昼寝を取り入れる

13~15時の間に15~20分程度の昼寝をすることで午後の活動が活性化し夜の熟睡につながります。1時間以上寝ると逆効果です。

6)カフェインの量を減らす

寝る前のカフェイン摂取は不眠の原因になり、過剰摂取は頭痛やめまいなどを引き起こすため注意が必要です。

7)睡眠環境を改善する

枕の高さや硬さ、ベッド、間接照明、リラックスできる音楽など、自分の体に合う睡眠環境を工夫しましょう。

8)「眠らなければならない」と意識し過ぎない

「眠らなければならない」と強く意識し過ぎると、自己暗示となり、かえって眠れなくなるため、横になったら音楽を聴くなどしてリラックスすることが大切です。

5 睡眠環境とコンディションを底上げする

日々の生活習慣の改善に加えて、近年は睡眠の質や日中のコンディションを物理的・生理的に高める高機能アイテム(枕やマットレスなどの寝具、リカバリーウェア)や機能性表示食品の活用が大きな注目を集めています。

例えば、「ブレインスリープ」などの高機能枕は抜群の通気性と高い放熱性を備えており、睡眠中の頭部の温度上昇や蒸れを防ぎます。人間は脳や頭部の温度が下がることでスムーズに入眠初期の深い睡眠に入りやすくなるため、熱をこもらせない枕は有効なアプローチです。

また、「BAKUNE」などのリカバリーウェアは、特殊繊維が身体から発せられる遠赤外線を輻射し、血行を促進することで筋肉のコリを和らげ、疲労回復をサポートします。

さらに、多忙なビジネスパーソンの間で広く活用されているのが、「ヤクルト1000」などの機能性表示食品です。一部の乳酸菌やGABAなどの成分には、一時的な精神的ストレスがかかる状況におけるストレス緩和や、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を高める機能があることが報告されています。そうした成分を含む製品が多く販売されており、日々のプレッシャーにさらされがちなビジネスパーソンにとって、手軽なセルフケア手段として大きな支持を集めています。

6 従業員の健康管理と生産性向上に向けて

従業員の睡眠の質的向上は、個人の健康を守るだけでなく企業全体の生産性を高める重要な基盤です。

睡眠不足が続くと生産性や判断力が鈍るため睡眠薬を使用するビジネスパーソンもいますが、使用法を誤ると心臓や血管への負担や依存症のリスクがあります。使用の際は必ず医師に相談し、自己判断で量を増やしたりアルコールと一緒に服用したりしないよう注意しましょう。

また、良かれと思ってやりがちな「寝酒」も要注意です。アルコールの作用で寝付きは良くなりますが、眠りが浅くなってしまいます。浅い睡眠は睡眠の質の低下を意味し、二日酔いの朝に早く目が覚めてしまうのもアルコールによる覚醒作用のためです。「寝付けないから寝酒」という行為は実は逆効果です。

最先端の睡眠科学の知見や、高機能アイテム・機能性表示食品の活用、そして日々の生活習慣の改善を通じて、組織全体のパフォーマンス向上に向けた取り組みを一歩前進させてみてはいかがでしょうか。

以上(2026年10月更新)

pj60108
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その指導、パワハラかも……? 弁護士が教える、危うい上司4タイプ!

1 上司に悪気がないからこそ厄介なパワハラ

パワハラ(職場におけるパワーハラスメント)とは、

職場の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた(行き過ぎた)言動により、就業環境が害される(就業する上で看過できない程度の支障が生じる)こと

です。「職場の優越的な関係」の典型的なパターンは「上司と部下」で、一般的な行為類型は次の6つです(通称:パワハラの6類型)。

パワハラの6類型

ただ、実は上司が明確な悪意を持ってパワハラをするケースはあまり多くありません。むしろ、部下のほうに問題(指示したことができない、同じミスを繰り返すなど)があって、

上司が「良かれと思って」指導をした結果、そのやり方が行き過ぎてパワハラになる

というケースが多いのです(指導中、感情がヒートアップして暴言を吐いてしまうなど)。

部下の指導は上司の役目であり、そこに臆病になる必要はありません。ただ、

指導が「業務上必要かつ相当な範囲」を超えないよう、自己分析をすることは大切

です。この記事では、日本ハラスメントカウンセラー協会の顧問として数々の会社のハラスメント対策に向き合ってきた弁護士(筆者)が、「パワハラ予備軍」とでも呼ぶべき上司のタイプを次のように分け、その指導をどう改善していけばよいかを解説します。

  • 部下を精神的に追い込む「価値観押し付けタイプ」
  • 論理的だが話を聞かない「正論押し付けタイプ」
  • 部下にかまいすぎる「過干渉タイプ」
  • 部下に任せきりで指導をしない「丸投げタイプ」

2 部下を精神的に追い込む「価値観押し付けタイプ」

価値観押し付けタイプ

1)どういうタイプ?

「価値観押し付けタイプ」の上司は、

「〇〇すべき」「仕事はこういうもの」といった昔ながらの価値観を、部下にも強制してしまうタイプ

です。上司自身も若い頃、自分の上司からその価値観を押し付けられ、時には暴言にさらされるような環境で過ごしてきたため、今の部下に対して同じような態度で接してしまいます。

具体的には、

  • 部下に対する言葉がキツくなり、「お前はばかだ」「新入社員以下だ」など暴言を吐いてしまう
  • 部下のことを「常識がない」などと決めつけ、その部下に異様に冷たく接してしまう。ミーティングに参加させなかったり、仕事を取り上げたりする

といった特徴が見られます。

2)どういう指導がパワハラになる?

上司側は“愛の鞭”のつもりでも、部下に対して「お前はばかだ」「新入社員以下だ」など、

名誉や人格を著しく傷付ける言動を繰り返すと、指導する業務上の必要性があったとしても、その態様が社会通念上相当な範囲を超えた言動(「精神的な攻撃」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。部下が暴言により精神を病み、休職や退職に追い込まれるケースは少なくなく、裁判で高額の損害賠償(自殺事案だと数千万円以上、自殺事案でなくても100万円以上)が認められたパワハラ判決の多くは、このタイプの上司による事案です。

価値観の合わない部下に異様に冷たく接する、ミーティングに参加させないといったように、

個人を疎外する行為は、業務上の必要性に照らして社会通念上相当な範囲を超えたものであれば、パワハラ(「人間関係からの切り離し」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。期待通りの働きができない部下に単純作業だけを命じるなど、

仕事を取り上げる行為は、業務上の合理性を欠いた言動(「過小な要求」型のパワハラ)

になります。

なお、パワハラ全般に言えることですが、上司の言動がパワハラと認定されるのは、

原則として問題のある言動が「何度も、継続的」に行われた場合です。ただ、頻度や継続性に関係なく、1回の言動でパワハラ(一発アウト)になるケースも存在

します。例えば、他の社員のいる状況で「お前の働きぶりをご両親に報告してやろうか」など、家族に言及しさらし者にする行為は、侮辱的な言動として一発アウトになる可能性が高いです。カッとなってゴミ箱を投げ付けるなどの「身体的な攻撃」も、原則として一発アウトです。

3)指導の改善のポイントは?

次章以降で紹介するタイプにも言えることですが、筆者の経験上、

パワハラの加害者は、人格価値と関連のない属性(職務上の上下関係、男性・女性、勤務成績、年齢、容姿など)に基づいて、相手を軽く扱う傾向がある

と感じます。当たり前のことですが、職務上の上下関係はあくまで組織の指揮系統であって、上司だから部下を軽んじていいなんてことは決してありません。ですから、

まず大切なのは、部下を個人として尊重した振る舞いをすること

です。例えば、自分よりも上位の役職者や同僚には到底使えないような言葉を部下にぶつけていないか、取引先などが相手なら絶対しないような態度で部下に接していないかを確認します。

ジェネレーションギャップへの対応、つまり、

昭和・平成時代は良しとされた(黙認された)価値観や言動が、令和の時代では必ずしも通じないと自覚すること

も大切です。「若い頃に厳しく鍛えられたから今の自分がある」「今さら自分を変えるなんて難しい」という上司もいるでしょうが、社会の変化を感じ取って指導の仕方を修正しないと、パワハラで糾弾されるリスクからは逃れられません。

部下の指導は上司の役目ですから、指摘すべき点は毅然と指摘すべきですが、

指導する際は業務上の問題点に焦点を絞り、人格に踏み込まないこと

が大切です。「〇〇の部分ができていない」と事実ベースで問題点を指摘するなどしましょう。人格に踏み込む発言はパワハラになりやすいだけでなく、部下のほうも「自分を否定された」という印象ばかりが残り、肝心の指導内容が頭に入っていきにくいです。

部下を指導する際、つい感情的になってしまうという人は、

自分の感情を意識しながら指導すること(アンガーマネジメント)を心掛ける

ようにしましょう。例えば、不手際に接してイラッとした場合に、「ああ、自分はいらついているんだな」と、自分の感情を客観的に見つめる癖を付けると、意外と冷静になれるものです。

3 論理的だが話を聞かない「正論押し付けタイプ」

正論押し付けタイプ

1)どういうタイプ?

「正論押し付けタイプ」の上司は、

感情に左右されず、論理的に指導をするが、その論理から外れた行動をする部下に異常に厳しいタイプ

です。なお、「論理的に指導をしている」というのはあくまで上司自身の認識で、実際は部下の力量や経験、他の業務の状況などを正しく把握できておらず、的外れな指導をしてしまうケースも多いです。自分に自信がある分、意外と周りが見えていないタイプともいえるでしょう。

具体的には、

  • 「私の言うこと、間違っている?」「この通りにやれば成果が出るはずなのに、なぜやらない?」などの言い方で、部下を追い詰めて萎縮させる
  • 「私の言うやり方ならできるはずだ」と、部下の力量や経験、他の業務の状況などを考えず、キャパオーバーの業務を振り、部下が難色を示しても取り合わない

といった特徴が見られます。

2)どういう指導がパワハラになる?

部下のミスに対して、指導する時と場所を選べるにもかかわらず、

周囲に他の社員がいる状況で長時間の叱責をすると、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「精神的な攻撃」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。

キャパオーバーの業務を振り、部下が難色を示しても取り合わないのは、

明らかに遂行不可能な業務を振るなど業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであれば、パワハラ(「過大な要求」型のパワハラ)

になります。部下の言い分を聞いて軌道修正を図るならよいですが、「言い訳する暇があったら先に進もうよ」などと言って、取り合わないのはNGです。

正論押し付けタイプの上司に接すると、部下は逃げ場がなくなってしまい、ストレスの蓄積により精神を病んでしまうことがあります。パワハラによるストレスだけで精神を病んだとはいえなくても、他のストレス(困難な業務による精神的負担や長時間の勤務などによるストレス)が合わさって、メンタルヘルス不調になったと判断されることがあるので注意が必要です。

3)指導の改善のポイントは?

正論押し付けタイプは、部下が相談を持ちかけても、上司側の正論で一刀両断してしまうため、部下にとっては「取り付く島もない」状態になることもあります。上司にとっては「相談するまでもないこと」でも、部下にとってはそうではありません。

まずは上司が部下の話によく耳を傾けること、つまり「傾聴」

が大切です。上司が話を聞いてくれれば、部下は言葉に出しながら自らの問題点や課題を整理でき、解決の糸口を見つけられます。部下の発言が、上司側の正論から外れたものであったとしても、まずは「部下には部下の言い分があるのだろう」と肯定的に受け止めましょう。

また、価値観押し付けタイプの上司にも言えることですが、正論押し付けタイプの上司には、自身の誤りを認めることが得意でない人がいます。部下の納得を得るためにも、

上司の指示や指導に落ち度があれば、素直に認めること

が大切です。これは「謝るべきは謝り、過大な謝罪要求は毅然とお断りする」という、カスタマーハラスメントなどと同様の対応です。

4 部下にかまいすぎる「過干渉タイプ」

過干渉タイプ

1)どういうタイプ?

「過干渉タイプ」の上司は、

部下がちゃんと働いているかが気になって、過剰に干渉してしまうタイプ

です。業務の進捗を管理するのは上司の役目ですが、その管理が行き過ぎることで、かえって仕事に支障を来してしまうのです。

具体的には、

  • 必要以上に連絡を取ろうとし、ある程度経験がある部下が相手でも、細かく仕事の進め方を決めないと気が済まない
  • 部下が期待通りの働きをしていない場合、「普段の生活態度が仕事に影響してくるんだ」などと、部下の私生活にまで言及してしまう
  • 「部下が大変そうだから」「定時で帰らせたいから」と、任せた仕事を引き取ってしまう

といった特徴が見られます。

2)どういう指導がパワハラになる?

部下の業務の進捗管理については、

休日や深夜などの時間帯にまで連絡を入れて報告を求めると、連絡する業務上の必要性があったとしても、その態様が社会通念上相当な範囲を超えたものとして、パワハラ(「過大な要求」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。テレワークをしている部下に、勤務時間中はオンライン会議システムのカメラを常にオンにしておくように命じたり、頻繁に点呼を取ったりするのも、業務上の必要性に照らして社会通念上相当な範囲を超えたものであれば、パワハラ(過大な要求)と評価される可能性があります。

期待通りの働きをしていない部下に、「普段の生活態度が仕事に影響してくるんだ」などと、

私生活にまで言及して叱責するのは、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「精神的な攻撃」型または「個の侵害」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。毎日定時で帰る部下に「そういう甘い考え方だから仕事も中途半端になるんだ。考えを改めよう」と叱責したりするケースなども同様です。一方、

育児や介護をしている部下について、業務量を調節するために家族の事情について質問する場合などは、業務上の必要性や相当性が認められ、基本的にパワハラにはならない

と考えられます。とはいえ、根掘り葉掘り質問をして、部下が「個人的なことですから」と、話したくない態度を示したのにしつこく質問すると、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「個の侵害」型のパワハラ)と評価される可能性があります。

「部下が大変そうだから」「定時で帰らせたいから」と、

部下に任せた仕事を引き取るのは、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「過小な要求」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。業務負担の偏りや納期などの事情に配慮して、部下の仕事を引き取ることは業務上必要なことなので、本来パワハラにはなりませんが、簡単な仕事しか与えない状況が常態化している場合などは話が変わってきます。

3)指導の改善のポイントは?

目の届かない所で仕事をしている部下が心配なのは分かりますが、上司の目の前で仕事をしている社員が成果を上げているとは限りませんし、その逆もしかりです。まずは、

上司として、ある程度部下を信頼して任せる態度を取ること

が大切です。監視・干渉しなくても、業務管理できるシステムの導入などを検討しましょう。

また、上司と部下の間で、

1日の中で業務の定期連絡をするタイミングを決めておき、メールやチャットの場合、上司が勤務時間外に送信しても、部下は勤務時間中の返信可能なときに返信すればよい

という具合に、連絡に関するルールを共有しておくのもよいでしょう。ただ、勤務時間外に繰り返し上司からメールやチャットが送信されるようだと、部下が「自分も早く返信しなければ」と圧を感じることがありますから、勤務時間外の送信は最低限にしておきましょう。

一度部下に任せた仕事を引き取るのは、業務負担の偏りや納期などを考慮して、

どうしても必要な場合だけにとどめ、上司が仕事を引き取る状況を当たり前にしない

ように注意しましょう。「一度仕事を任せた以上は、部下にやらせる」という意識を持たないと、部下はいつまでたっても成長しませんし、上司の負担も増えます。なお、仕事を引き取る際は、上司の意図が部下に正しく伝わらないと、部下は「経験を積みたいのに、自分は嫌われているのだろうか」などと不安に感じますから、引き取る理由を明確に伝えましょう。

5 部下に任せきりで指導をしない「丸投げタイプ」

丸投げタイプ

1)どういうタイプ?

「丸投げタイプ」の上司は、

ハラスメントと言われるのが怖かったり、管理職になりたてで指導に自信がなかったりして、部下とコミュニケーションをあまり取らないタイプ

です。言葉を選ばずに言うと、部下を指導する上司の役目を放棄している人たちです。

具体的には、

  • 指導を嫌がる。部下に「分からないことがあったら聞いて」と言っておきながら、いざ相談されたら「少しは自分で考えろ」と言って突き放す
  • 「プレーヤー」としての自分の仕事以外の「マネジャー」的な仕事をしたがらない

といった特徴が見られます。

2)どういう指導がパワハラになる?

部下が新入社員だったり、異動直後だったりと、

明らかにサポートを必要としている状況にもかかわらず、指導や相談対応をしない場合、部下の負担の大きさによっては、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「過大な要求」型のパワハラ)

になります。また、私傷病休職から復帰した直後の部下なども、心身が十分に回復しておらずケアが必要な場合がありますが、こうしたケースで部下に配慮をせず、

休職前と変わらない業務を担当させ、「パフォーマンスが悪い」などと叱責すると、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(「精神的な攻撃」または「過大な要求」型のパワハラ)

と評価される可能性があります。

3)指導の改善のポイントは?

丸投げタイプの上司の場合、まずは自身がマネジャーであることを意識すること、つまり、

「部下を指導するのは上司の役目」という自覚を持つこと

が大切です。とはいえ、ハラスメントと言われるのが怖い、新任管理職なので指導に自信がないという上司の心情も理解できます。このあたりは、経営者などが「指導そのものはハラスメントにはならない」ということを明確に伝えたり、上司の上位者(部長クラスなど)が、必要に応じて指導の相談に乗ったりすることも大切です。

なお、上司がマネジメント業務を怠ると、

それが上司と部下だけでなく、会社全体の問題に発展してしまうケースがあることも認識

しておきましょう。実際にあったケースで、社内で発生したハラスメント問題(部下が被害者)について、上司が「見て見ぬふり」をしてしまい、ハラスメントがエスカレートしてしまった事案があります。会社は社員に対して「安全配慮義務」(労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務)を負っています。実際の裁判でも、

上司は会社の安全配慮義務の「履行補助者」である

として、上司が部下の安全が害されていると知りながら放置した場合、会社の安全配慮義務違反を認定するケースがありますから、マネジメント業務をおろそかにしてはいけません。

以上(2026年11月更新)
(執筆 東京エクセル法律事務所 弁護士 坂東利国)

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画像:ChatGPT