健康保険の被扶養者の認定基準の一つに、年間収入に関する基準があります。これまで、この年間収入は「今後1年間の収入見込み」によって判断されていましたが、4月からは「労働条件通知書から見込まれる年収」に基づいて判断する取扱いに変わりました。本稿では、この変更についてお伝えします。
健康保険の被扶養者の年収判断
健康保険の被扶養者の認定基準の一つに、年間収入に関する基準があります。これまで、この年間収入は「今後1年間の収入見込み」によって判断されていましたが、4月からは「労働条件通知書から見込まれる年収」に基づいて判断する取扱いに変わりました。本稿では、この変更についてお伝えします。
1 健康保険の被扶養者の認定
健康保険の被扶養者になるためには、次の年収に関する基準を満たす必要があります。この点は以前と変わりません。
年収が130万円(※1)未満で
- 被保険者と同居の場合には、被保険者の年収の2分の1未満
- 被保険者と別居の場合には、被保険者からの仕送り額未満
(※1)19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く)は150万円。60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度のある人は180万円
今年3月まで、年収130万円未満かどうかは、過去の収入や現時点の収入などから、今後1年間の収入を見込んで判断していました。
4月1日以降は、労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入で判断することになりました。その際は、労働条件通知書等の労働契約の内容が分かる書類により、年収130万円未満かどうかを確認します。
年収の計算は、労働条件通知書等に規定された時給、労働時間、労働日数などを基に行います。諸手当や賞与も、労働条件通知書等に記載されていれば計算に含めます。
労働契約書等に明確な定めがなく、契約段階で金額を見込みにくい時間外労働に対する賃金等は、年間収入の見込額に含まないこととなります。そのため、給与明細書や課税(非課税)証明書等で結果的に年収が扶養認定基準を上回っていても、残業代等が「社会通念上妥当な範囲」であれば扶養認定を取り消す必要はないとされています。
今年3月までは、残業代を含めて年収を見込んでいました。このため、パート・アルバイトで働く人は、毎年秋ごろになると、年収が130万円以上にならないように労働時間を減らさざるを得ませんでした。こうした働き控え(就業調整)が行われると、繁忙期に人手が不足するため、企業にとっても痛手でした。今回の見直しは、こうしたマイナス面に対処する取り組みとなっています。
2 実務面の注意事項
従業員の家族を被扶養者にする場合、企業はその届を保険者(※2)に提出します。保険者はこの届をもとに、被扶養者にするかどうかを判断します。
(※2)全国健康保険協会(協会けんぽ)や各健康保険組合のこと。協会けんぽに加入している企業は、年金事務所に健康保険被扶養者(異動)届」を提出する。
全国健康保険協会の届を例に挙げると、企業の担当者は「健康保険被扶養者(異動)届」を書く際、労働条件通知書等から見込み年収を確認し、「収入(年収)」欄に記載します。また、異動届の「扶養に関する申立書」欄に、対象者が給与収入のみである旨を書きます。
労働条件通知書等で年収を確認するのは、対象者が給与収入のみのケースです。給与収入のほかに、年金収入や事業収入があるときには、従来通り、給与明細書や、自治体が発行する課税(非課税)証明書などにより年収を判定します。
また、労働条件通知書等で見込み年収が計算できないことがあります。例えば「シフト制」で労働時間がはっきりしない方や、契約期間が1年に満たない方などです。このようなケースも、給与明細書や課税(非課税)証明書などにより見込み年収を計算します。労働条件通知書がない場合も同様です。
3 さいごに
本稿制作時点では、厚生労働省の通知やQ&Aにより、基本的な取扱いは示されています。実際の手続きや必要書類の案内は保険者によって異なる場合があるため、日本年金機構や加入先の健康保険組合等のホームページなどで最新情報を確認しておきましょう。
また、企業は保険者から年1回、被扶養者の収入確認を求められます。その際も、給与収入のみの被扶養者については、労働条件通知書で年収を確認します。
※本内容は2026年4月10日時点での内容です。
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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目的で異なる3つの会計。 財務会計・税務会計・管理会計はどのように違うのか?
1 経営者が意識する3つの会計
会計は、法令に基づく「制度会計」と「管理会計」とに大別され、さらに制度会計は「財務会計」と「税務会計」とに分かれます。それぞれを簡単に説明すると、
- 財務会計:制度会計の1つ。株主など社外の関係者に経営状況を説明するための会計
- 税務会計:制度会計の1つ。税金を正しく計算、納税するための会計
- 管理会計:投資判断やコスト管理など、経営者などが経営判断をするための会計
といった具合になります。また、気になるこれらの関係性は次の通りです。

中小企業には、上場企業のように財務諸表を外部に開示する義務がありません。一方、納税義務はあるので、財務諸表は財務会計(会社法や企業会計原則など)ではなく、税務会計(法人税法など)に基づいて作成されるなど、税務会計に偏りがちです。
しかし、金融機関などに業績を説明する際、税務会計に基づく財務諸表だけだと内容が不十分なことがあります。それに、管理会計によって、定量的な指標から意思決定をすることも大切です。大切なのは、それぞれの会計の使い分けなので、この記事でそれぞれの特徴を分かりやすく説明していきます。
2 財務会計とは
財務会計は、
会社法・金融商品取引法(上場会社のみ)・会計基準などの法律や規則に基づいて実施
されます。そのため、財務会計に基づいて作成された財務諸表は他社と比較することができ、株主にとっては投資の参考資料、取引先などにとっては取引の判断材料になります。
財務会計では、会社の活動を「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」に区分して財務諸表を作成します。このうち資産・負債・純資産は「貸借対照表」に集計され、ある時点の会社の財産の状態を表します。また、収益・費用は「損益計算書」に集計され(収益と費用の差額が利益(または損失))、一定期間の業績を表します。
貸借対照表と損益計算書以外にも、会社のキャッシュの流れを表す「キャッシュフロー計算書」や、純資産の増減内容を表す「株主資本等変動計算書」などが作成されます。
3 税務会計とは
税務会計は、
法人税法・地方税法などに基づいて実施
されます。正しく納税額を計算して、申告期限までに確定申告書を税務署などに提出します。
税務会計では、財務会計で計算された当期純利益に一定の調整を加え、納税額を計算するための基礎となる所得を導きます。なお、財務会計の「収益・費用・利益」は、税務会計の「益金・損金・所得」と言い換えられますが、一部で取り扱いが異なります。そのため、税務会計の所得を計算する際は、次の4つの調整をします。

なお、中小企業の制度会計は、上述の通り税務に偏っているのが実情であり、多くの中小企業では、税務上の益金・損金の基準に合わせて決算書を作成しています。例えば、財務会計上は認識すべき退職給付引当金について、税務上は損金不算入となるため費用計上しないといったことが生じます。その結果、貸借対照表、損益計算書に会社の財務状況が正しく反映されていないケースが多いことに留意が必要です。
4 管理会計とは
管理会計は、
法令上の決まりなどはなく、会社の考えに従って実施
されます。社内で利用するために管理会計の代表的な分析方法にCVP分析(損益分岐点分析)があります。CVP分析では、まず、財務会計上の費用(製造などに係るもの)を、
- 変動費:売上の増減に比例して発生する費用。材料費、外注費など
- 固定費:売上の増減に関係なく発生する費用。地代家賃、水道光熱費、交際費など
に分けます。そして、損益分岐点を計算するのですが、損益分岐点とは、
売上高から変動費を引いた「限界利益」と固定費が同額になる状態
であり、限界利益が固定費を上回ったら黒字です。損益分岐点の計算式は次の通りです。
損益分岐点=固定費/(1-(変動費/売上高))
5 それぞれの会計の処理と利益の違い
それぞれの会計の処理の違いを比べてみましょう。分かりやすく示すために、交際費を年間1000万円とします。
- 収益:10億円
- 費用:9億8000万円(材料費5億8000万円、労務費3億円、経費1億円(交際費1000万円))
- 資産:3億円
- 負債:2億5000万円
- 純資産:5000万円
- 1年決算法人
1)財務会計における取り扱い
財務会計では、交際費は損益計算書の費用になります。この場合の貸借対照表と損益計算書は次の通りです。

2)税務会計における取り扱い
税務会計では、原則として、交際費は全額が損金不算入とされます。ただし、会社規模に応じた一定の措置が設けられています。期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下であるなどの場合、損金不算入額は次のいずれかの金額を選択できます。
- 交際費(全額接待飲食費に該当する場合)の50%相当を超える部分の金額
- 年間800万円に事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額(定額控除限度額)を超える部分の金額
交際費が年間1000万円の場合の損金不算入額および所得は、次のようになります。

3)管理会計における取り扱い
管理会計でCVP分析を行う場合、交際費は固定費に分類します。前提要件に基づいて作成する管理会計(CVP分析)上の損益計算書は次の通りです。

限界利益は4億2000万円で、固定費の4億円を上回っているので2000万円の利益が出ています。
ここで、CVP分析により、翌期に3000万円の利益を出すために必要な売上高を考えてみましょう。変動費率は今期と同じ58%(5億8000万円/10億円)、固定費は今期より2000万円増えて、4億2000万円になる予定です。この場合、来期に必要な売上高は次のように計算することができます。
(固定費+必要利益)/(1-変動費率)
=(4億2000万円+3000万円)/(1-0.58)
≒10億7143万円
以上(2026年4月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
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周りに遠慮して休まない社員に上手に休暇を取らせる方法とは?
1 仕事をしながら休暇を取ってもいい!
適度に休み、心身のコンディションを整えて仕事のパフォーマンスを上げる。何の異論もないところですが、なぜか休まない社員がいます。どうやら、
- 周囲が忙しそうなのに自分だけ休めない
- 休むといっても引き継ぎをするのが面倒
などと考えているようなのです。こうした社員は、
この会社は、いざというときに周囲のサポートを当てにできない
と考えており、ちょっとした気持ちの変化で文句を言ったり、ライフイベント(結婚や出産、介護など)の発生によって転職を決意したりします。そうならないために、
- 雰囲気づくり:休暇を歓迎し、上司も快く部下の休暇を承認する
- 休暇制度の見直し:半日休暇などを検討する
を進めることをご提案します。なお、休暇取得を促進するのは、決して甘い組織をつくりたいわけではなく、メリハリのある働き方の実現するためです。
2 休暇を取りやすい雰囲気づくり
1)休暇は楽しい!
「休暇は楽しい!」という雰囲気をつくりましょう。「え、そんなことでいいの?」と思われるかもしれませんが、とにかく休暇を取得する社員には明るく接し、プライベートに深入りしない程度に「いいね! どこに行くの?」「何の映画を見るの?」など、休暇を歓迎します。
もちろん、経営者自身も休みを取りましょう。差し支えなければ、自分の休暇の過ごし方をみんなに話して、
仕事もプライベートも大切にする会社であることをアピール
します。
2)上司(管理職)を巻き込む
休暇を申請したら上司がいい顔をしなかった。あるいは、上司がいつも残業しているのに自分だけ休むのは気が引ける……。こんな職場では部下は畏縮して休暇を取得できません。
そこで、経営者は、上司に部下の休暇取得を促進するように指示します。人事考課の中に、
部下の年休(年次有給休暇)の取得率を対前年度比で◯%向上させる
ことを加えるのもよいでしょう。
また、部下が遠慮しないで済むよう、上司自身にも休暇を取らせましょう。例えば、マネジメントが苦手で1人で仕事を抱え込んでしまう上司には、「それは君がやる仕事ではない」と伝え、部下に振るよう指導します。そうすれば、休暇のための時間は案外簡単に捻出できるものです。
3 休暇制度の中身を見直す
1)半日単位・時間単位の休暇にしてみる
半日単位や時間単位の休暇は、比較的、取得しやすいです。仕事とプライベートの用事(子どもの送り迎えや家族の介護など)を交互にこなす社員は多いですし、旅行先でレジャーを楽しみながら合間に仕事をしたい社員にとってもうれしいものです。
年休については半日単位で付与できますし、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)と労使協定を締結すれば1時間単位でも付与できます。会社が独自に就業規則等で定める特別休暇についても、内容によっては半日単位・時間単位を検討してみましょう。
2)休暇取得日をあらかじめ指定する
休暇取得日をあらかじめ指定するのも一策です。年休の場合、
付与日数が年10日以上の社員(基本は正社員)については、そのうち5日まで会社が休暇取得日を指定して取得させる義務
があります。会社命令であれば、社員も周囲に遠慮せず休むことができます。
また、会社が年休取得日を計画的に割り振る「計画的付与」という制度もあります(労使協定の締結が必要)。社員が休暇を取得する日が事前に分かるので、同僚は協力してフォローすることができます。ただし、一度割り振った休暇取得日を後から変更することはできません。
休暇取得日を指定する場合は、ゴールデンウイークや夏季休暇、年末年始などに合わせて長期休暇を実現させるのもよいでしょう。例えば“年末年始が10連休以上”となれば、社員はそれを1つのゴールとして頑張ることができます。なかなか休暇が取得できない社員でも、夏季休暇や年末年始などであれば休みを取りやすいでしょう。
3)取得時季や目的が明確な特別休暇を利用する
休暇には、法令で定められている「法定休暇」と、会社が独自に設定する「特別休暇」があります。特別休暇は、取得時季や取得目的が明確な場合が多いことが特徴です。原則としていつでも取得できる年休よりも、特別休暇のほうが取得しやすいという社員も少なくないようです。
例えば、次のような特別休暇があります。

ちなみに、図表の赤字の休暇は、「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」という助成金と関わりがあります。
図表の赤字の休暇のいずれか(有給のものに限る)を導入し、就業規則等で前述した「年休の5日取得」の規定を整備するなど一定の取り組みをすると、最大1020万円
を受給できる可能性があります(なお、図表の赤字以外にも、助成金の対象となる特別休暇があります)。興味のある人は、厚生労働省のウェブサイトをご確認ください。なお、2026年度の助成金の申請期限は、2026年11月30日までです。
■厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html
以上(2026年4月更新)
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令和7年の交通事故の発生状況(2026/5号)【交通安全ニュース】
※ボタンを押すとSOMPOリスクマネジメント(株)のサイトへ移動します。
活用する機会の例
- 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
- 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
- マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など
警察庁より「令和7年における交通事故の発生状況について」が公表されました。
今号では、近年の交通事故の発生状況とその対策をまとめました。
1 交通事故死者数・重傷者数の推移
令和7年の交通事故死者数は2,547人で、昨年から116人減少し、過去最少を記録しました。
うち、65歳以上の高齢者の死者数は1,423人で昨年より90人減少したものの、全体の55.9%を占めています。(図1)
図1.死者数の推移

一方、重傷者数は27,563人で、昨年から278人増加しました。
命に別状はなくとも、身体に長期的な影響を及ぼす重大な事故は減っていないことが浮き彫りになっています。(図2)
図2.重傷者数の推移

出典:図1、図2とも、警察庁「令和7年における交通事故の発生状況について」から当社作成
政府が策定した「第11次交通安全基本計画」では、令和7年までに交通事故による死者数を2,000人以下、重傷者数を22,000人以下にするという目標を掲げていましたが、達成することはできませんでした。
2 主な交通事故におけるドライバーの対策
1.歩行者との事故
【特徴】
- 歩行中の死者の約7割が高齢者(図3)
- 高齢者の事故は、横断歩道ではない場所を渡っている時が半分近くを占める
- 歩行中の事故の約6割は、横断違反などのルール違反が原因
図3.年齢別歩行中死者数

【対策】
- 歩行者が多い住宅街などでは、時速30km以下でゆっくり走行
- 危険が予測される場面では、いつでもブレーキを踏めるように準備しておく(構えブレーキ)
2.携帯電話を使いながらの運転の事故
【特徴】
- 罰則が厳しくなったにもかかわらず事故は近年増加傾向(図4)
- 携帯電話を使っていると死亡事故を起こす確率が約3.4倍も高くなる(図5)
※例えば、時速60kmで2秒よそ見をすると、車は約33mも進んでしまう
図4.携帯電話等使用による死亡・重傷事故件数の推移

図5.携帯電話等使用有無別死亡事故率の比較

出典:図3~図5とも、警察庁「令和7年における交通事故の発生状況について」から当社作成
【対策】
- 運転中は携帯電話の電源を切るか、ドライブモードに設定
- 携帯電話を操作する必要がある場合は、安全な場所に車を停めてから利用
3 交通事故のない社会を目指して
統計数値だけを見ると、事故は減少傾向にあるように見えます。しかし、悲惨な事故は後を絶たず、尊い命や人々の生活が失われているという現実は依然として存在します。
政府は、「第12次交通安全基本計画」において、「令和12年までに交通事故による死者数を1,900人以下、重傷者数を20,000人以下にする」という目標を掲げています。
この目標を達成するためには、私たち一人ひとりが運転者としての高い安全意識を持ち、安全運転を心がけることが不可欠です。
以上(2026年5月)
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※ボタンを押すとSOMPOリスクマネジメント(株)のサイトへ移動します。
経営のヒントとなる言葉(野口英世)
「モノマネから出発して、独創にまでのびていくのが、我々日本人のすぐれた性質であり、たくましい能力でもあるのです」(*)
出所:「20世紀名言集 科学者/開発者篇」(情報センター出版局)
冒頭の言葉は、
「たとえ最初はモノマネであっても、志を持ってたゆまぬ努力を続けることで、それは独創にまで成長する」
ということを表しています。
野口氏は、幼い頃に誤っていろりに落ち、左手に障がいを持っていましたが、このハンディキャップにも負けず、小学校では熱心に勉学に励みました。そして、その後は恩師の援助を受けて高等小学校に進学しました。
高等小学校でも、野口氏は優秀な成績をおさめていましたが、障がいを案じて将来を悲観していました。その心境に心を打たれた教師や同級生は、費用を出し合い、手術によって野口氏の手を治すことを提案しました。こうして、海外で西洋医学を学んだ外科医渡部鼎(わたなべかなえ)氏の手術を受けたことによって、野口氏の左手は物をつかんだり握ったりできるようになりました。このとき、野口氏は、医師になって多くの人々を救うことを決心しました。
その後、野口氏は、渡部氏のもとで書生として働き、医学の基礎を学びました。書生としての生活は、客の取り次ぎや下働き、さまざまな雑用などで多忙を極めましたが、野口氏はわずかな時間も惜しみ、毎日の睡眠時間も削って勉学に励みました。
こうした中、野口氏は運命的な出会いを果たします。当時、東京の高山歯科医学院(現東京歯科大学)で幹事を務めていた血脇守之助(ちわきもりのすけ)氏が渡部氏のもとを訪れていました。血脇氏は、野口氏の医学に関する優れた才能を認め、東京で勉強することを勧めました。これを受けて、野口氏は上京し、高山歯科医学院で働きながら医学を学び、1897年には医術開業後期試験にも合格し、ついに医師となることができました。
その後、野口氏は米国に渡り、さまざまな大学で細菌学の研究に没頭しました。そして梅毒の原因となるスピロヘータや黄熱病病原体の研究などを通じて、日本のみならず世界の医学界に大きく貢献しました。
野口氏が偉業を成し遂げることができた背景には、たゆまぬ努力がありました。貧しさや障がいなど、野口氏は大きなハンディキャップを抱えていましたが、常にそれらをバネにして困難に立ち向かいました。
上京する際、野口氏は生家の柱に次のような言葉を刻んでいます。
「志(こころざし)を得ざれば再び此地(このち)を踏まず」(**)
これは、「志を達成するまでは、決して故郷には戻らない」という、野口氏の不退転の決意を表すものです。
明治維新後の日本の医学は、西洋医学をそのまま移入したものにすぎませんでした。しかし、野口氏をはじめとする明治時代の研究者たちは日々努力を重ね、やがては単なるモノマネを超えた独創的な研究結果を勝ち得ました。
「学ぶ」の語源は「まねる」であるといわれるように、何事も、まずは自分でまねてみることが重要です。しかし、そのままではそこから先に進むことはできません。ビジネスにおいても、優れた経営者がたどった軌跡をまねるだけでなく、そこに自分自身の新たな「気付き」を加えることで、自分自身にしか得られない成功を獲得することができます。「必ず志を達成する」という強い意志と、その実現に向けたたゆまぬ努力こそが、単なるモノマネを独創に変えるのです。
【本文脚注】
本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。
【経歴】
のぐちひでよ(1876~1928)。福島県生まれ。猪苗代高等小学校卒。1897年、医師資格取得。梅毒の原因となるスピロヘータや黄熱病病原体の研究により世界の医学界に貢献。
【参考文献】
(*)「20世紀名言集 科学者/開発者篇」(ビジネス創造力研究所(編)、造事務所(編著)、情報センター出版局、2000年11月)
(**)「野口英世伝」(野口英世記念会、1963年11月)
「正伝野口英世」(北篤、毎日新聞社、2003年2月)
以上(2026年4月更新)
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画像:日本情報マート
【助成金(健康経営編)】残業削減などに取り組むと1370万円!
目次
1 働き方改革推進支援助成金を活用しよう!
働き方改革やSDGsの観点から、社員の「健康」維持が大きく注目されています。残業を減らす、休暇や休日を増やすなど、アプローチの方法はさまざまです。就業規則の整備や設備導入にはコストがかかるため、助成金を活用しながら取り組みを進めることをお勧めします。
例えば、
建設業など特定の業種が時間外労働の削減などに取り組み、一定の成果目標を達成した場合に最大1370万円が支給
されるのをご存じですか。具体的には「働き方改革推進支援助成金」という助成金がそうです。以降では、それぞれの制度概要と申請上のポイントを専門家が解説します。
なお、助成金の内容は2026年4月13日時点のもので、将来変更される可能性があります。また、申請書の書き方や添付書類については、全コースまとめてこちらに記載されていますので、ご確認ください。
厚生労働省「働き方改革推進支援助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html#h2_free3
2 業種別課題対応コース(最大1370万円)
1)業種別課題対応コースとは?
建設業、運送業等、病院等、砂糖製造業、情報通信業、宿泊業の中小企業が生産性を向上させ、時間外労働の削減などに取り組んだ場合に助成を受けられるというものです。なお、砂糖製造業は、「鹿児島県・沖縄県の事業者のみ」が対象です。
2)助成金を受け取るには?
中小企業で、申請時点において一定の要件(年5日の年休(年次有給休暇)の取得に向けた就業規則等を整備している、法的要件を満たした36協定を締結し、届け出ている等)を満たしている会社が、「成果目標」を設定し、成果の達成に向けて「支給対象となる一定の取り組み」を実施する必要があります。
具体的な「成果目標」となるのは次の7つで、1つ以上を選択する必要があります。
- 月60時間超の36協定の時間外・休日労働時間数の縮減
- 所定外労働時間数の削減(1.との同時選択は不可)
- 年休の計画的付与制度の導入
- 時間単位年休+1つ以上の特別休暇(注1)の導入
- 勤務間インターバル制度の導入
- 4週における所定休日の1日以上の増加(建設業のみ)
- 「医師の働き方改革の推進(注2)」の実施(病院等のみ)
(注1)病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇等が対象です。
(注2)労務管理体制の構築(労務管理責任者の設置等、副業・兼業を行う医師の労務管理体制の整備、労働時間管理に関する研修の実施)、医師の労働時間の実態把握を指します。
「支給対象となる取り組み」は次の7種類です。
- 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの、業務研修を含む)
- 社員に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(注)
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(注)
(注)原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
3)受け取れる金額はいくら?
取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表1の額)を受け取れます。なお、指定する社員について、
- 賃上げの実施を成果目標に加え、実施を達成した場合は「賃上げに関する加算」
- 割増賃金の引上げを成果目標に加え、実際に達成した場合は「割増賃金率の引上げに関する加算」
が受けられます(次章以降の「労働時間短縮・年休促進支援コース」「勤務間インターバル導入コース」にも一部、同様の制度があります)。

要件を満たし、選択した成果目標の達成や各種加算の適用条件を満たした場合、最大で次の額の助成を受けられる計算になります。
- 建設業:1370万円
- 運送業等:1290万円
- 病院等:1340万円
- 砂糖製造業:1270万円
- 情報通信業、宿泊業:1270万円
4)専門家のワンポイントアドバイス
働き方改革推進支援助成金は全部で5つのコースがありますが、いずれも
2026年度の「交付申請書」の申請期限は、2026年11月30日まで(予算の制約により11月30日以前に締め切られる場合があるので注意)
となっているので、早めに準備を進める必要があります。加えて、時間外労働の削減などの各種取り組みについても、
交付決定後、2027年1月31日までに提出した計画に沿って取り組みを実施した上で、支給申請期限までに都道府県労働局に支給申請をしなければならない
ので、交付申請書の提出時期によっては非常にタイトなスケジュールになります。期限内に提出するためにも、余裕を持って計画的にプロジェクトの立案等を進めるようにしてください。
このコースは選択肢が多い分、「自社の業種で、どの成果目標を組み合わせれば最大効果を狙えるか」を考えることが肝要です。特に注意すべきは、
成果目標1(36協定の縮減)と成果目標2(所定外労働時間数の削減)は同時選択できない
という制約がある点です。
賃上げ加算は、「常時30人以下」の事業主の場合、1人当たりの加算額が2倍になるため、小規模の会社ほど相対的にメリットが大きい仕組みです。自社の規模を踏まえて、賃上げ対象人数を戦略的に設定しましょう。
3 労働時間短縮・年休促進支援コース(1020万円)
1)労働時間短縮・年休促進支援コースとは?
生産性を向上させ、時間外労働の削減、年休や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組んだ場合に助成を受けられるというものです。
2)助成金を受け取るには?
中小企業で、申請時点において一定の要件(年5日の年休(年次有給休暇)の取得に向けた就業規則等を整備している等)を満たしている会社が、「成果目標」を設定し、成果の達成に向けて「支給対象となる一定の取り組み」を実施する必要があります。
具体的な「成果目標」となるのは次の3つで、1つ以上を選択する必要があります。
- 月60時間超の36協定の時間外・休日労働時間数の縮減
- 年休の計画的付与制度の導入
- 時間単位年休+1つ以上の特別休暇(注)の導入
(注)病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇等が対象です。
「支給対象となる取り組み」は次の7種類です。
- 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの、業務研修を含む)
- 社員に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(注)
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(注)
(注)原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
3)受け取れる金額はいくら?
取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表2の額)を受け取れます。

要件を満たした場合、最大1020万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
このコースは、残業削減を掲げるだけでなく、年休の計画的付与や時間単位年休と特別休暇の新規導入など、制度整備を伴う成果目標が中心です。就業規則の整備や年休管理簿の作成が要件に含まれるため、申請前に社内規程と運用実態を点検しておくとスムーズです。
その他の基本的な注意点は、業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年1月31日までとなります。
4 勤務間インターバル導入コース(最大970万円)
1)勤務間インターバル導入コースとは?
勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設ける勤務間インターバル制度の導入などを行った場合に助成を受けられるというものです。
2)助成金を受け取るには?
中小企業で、申請時点において一定の要件(36協定を締結しており、過去2年間に月45時間超の時間外労働の実態がある、年5日の年休(年次有給休暇)の取得に向けた就業規則等を整備している等)を満たしている会社が、「成果目標」を設定し、成果の達成に向けて「支給対象となる一定の取り組み」を実施する必要があります。
具体的な「成果目標」となるのは次の3つで、1つ以上を選択する必要があります。
- 新規導入(所属社員の1/4超を対象とする勤務間インターバルを新たに導入する)
- 適用範囲の拡大(勤務間インターバルの適用範囲を所属社員の1/4または1/2超とする)
- 時間延長(所属社員の1/4または1/2超とする勤務間インターバルの休息時間数を、2時間以上延長して9時間以上とする)
「支給対象となる取り組み」は次の7種類です。
- 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの、業務研修を含む)
- 社員に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(注)
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(注)
(注)原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
3)受け取れる金額はいくら?
取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表3の額)を受け取れます。

要件を満たし、成果目標の達成に加えて賃上げ加算や割増賃金率引上げ加算の適用条件も満たした場合、最大970万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
成果目標は支給要領の別表に基づいて上限額が変わるため、申請前に対象人数と休息時間数の組み合わせを確認し、賃上げ加算や割増賃金率加算を組み合わせるかも含めて計画することが重要です。
また、制度導入に当たっては、
単に「○時以降の残業禁止、○時以前の始業禁止」と定めるだけでは対象にならない
ので注意してください。就業規則等で「終業から次の始業までの休息時間を確保する」旨を明記する必要があります。
なお、2026年度の改正で、11時間以上の休息時間を新規導入する場合の上限額が150万円に引き上げられました(2025年度は120万円)。可能であれば11時間以上を目指すことで、助成額を最大化できます。
その他の基本的な注意点は、業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年1月31日までとなります。
5 団体推進コース(最大500万円)
1)団体推進コースとは?
事業主団体等(中小企業の団体やその連合団体等で1年以上の活動実績があるものなど)が、傘下の構成事業主(社員を雇用する会社)の社員について、労働条件を改善するため、時間外労働の削減や賃上げに向けた取り組みを実施した場合に助成を受けられるというものです。
2)助成金を受け取るには?
課題対応の「成果目標」として
事業主団体等が事業実施計画に基づき、時間外労働の削減・賃上げに向けた改善事業の取り組みを行い、構成事業主の2分の1以上にその取り組みまたは取り組み結果を活用
する必要があります。
支給対象となる取り組みは、次の10種類です。いずれも成果目標の達成に向けて実施する必要があります。
- 市場調査
- 新ビジネスモデルの開発、実験
- 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)
- 取引適正化への理解促進など、労働時間などの設定の改善に向けた取引先との調整
- 販路の拡大などの実現を図るための展示会開催および出展
- 好事例の収集、普及啓発
- セミナー(勤務間インターバル制度に関する事項を含む)の開催など
- 巡回指導、相談窓口の設置など
- 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
- 人材確保に向けた取り組み
3)受け取れる金額はいくら?
取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表4の額)を受け取れます。

要件を満たした場合、最大500万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
前述した通り、このコースでは、団体自身が取り組みを実施するだけでは足りず、構成事業主の2分の1以上にその取り組みまたは取り組み結果を活用させる必要があります。そのため、
申請段階から「誰に、どう横展開するか」を具体化しておく
ことが肝要です。事業計画の策定段階から、構成事業主への事前説明・参加意向の確認を丁寧に行い、「計画倒れ」にならない体制を整えましょう。
その他の基本的な注意点は、業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年2月14日までとなります。
6 取引環境改善コース(最大100万円)
1)取引環境改善コースとは?
荷主集団等が、トラックドライバーの時間外労働の削減等のために、荷待ち・荷役時間の短縮に向けた取引環境整備の取り組みを実施した場合に助成を受けられるというものです。
2)助成金を受け取るには?
この助成金は、次の要件などを満たす荷主集団等を対象としています。
- 荷主集団等を代表して、本助成金の申請に係る事務等を行う事業者(代表事業主)および構成員を合わせて3者以上で構成された組織であること
- 代表事業主を含め、少なくとも1以上の荷主もしくは倉庫事業者および1以上の運送事業者で構成されていること
- 組織として現に活動しているまたは今後具体的に活動することが見込まれる荷主集団であること
- 中小企業事業主の占める割合が、構成員たる運送事業者の1/2を超えていること
荷主集団等は、
事業実施計画で定める改善事業を行い、運送事業主の1/2以上に対して荷待ち・荷役時間および労働時間の短縮に効果を上げる
という成果目標を達成する必要があります。
支給対象となる取り組みは、次の5種類です。いずれも成果目標の達成に向けて実施する必要があります。
- 取引適正化への理解促進など、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整
- 好事例の収集、普及啓発
- セミナー(勤務間インターバル制度に関する事項を含む)の開催など
- 巡回指導、相談窓口の設置など
- 運送事業者等が利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新
この他、代表事業主が法人格を有すること、代表事業主および全構成員が同一の企業グループに属していないことなども要件に含まれます。
3)受け取れる金額はいくら?
取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表5の額)を受け取れます。

要件を満たした場合、最大100万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
他の4コースとは異なり、個社の中小企業事業主ではなく「荷主集団等」が申請主体となります。荷主集団等の構成要件を満たすことに加え、構成員である運送事業者の2分の1以上に対して、荷待ち・荷役時間や労働時間の短縮効果を上げる必要があります。そのため、申請時にはどの取引工程を見直し、どのような効果を見込むかまで具体化しておくことが重要です。
その他の基本的な注意点は業種別課題対応コースなどと同じです。なお、交付決定後の取り組み実施期間は、2027年2月14日までとなります。
以上(2026年5月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)
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脇役に徹した坂本龍馬が作った「透明なレガシー」とは?
「世の人は我を何とも言わば言え、我が成すべき事は我のみぞ知る」
坂本龍馬は、幕末期に活躍した土佐藩出身の志士です。1835年に現在の高知県で生まれ、剣術修行のため江戸に遊学したのち、藩を脱して倒幕運動に関わりました。薩摩藩と長州藩の同盟を仲介するなど、激動の幕末において新しい国家の形を構想した人物で、33歳のとき、中岡慎太郎と共に暗殺されましたが、そのキャラクターは今なお多くの人に愛されています。
冒頭の言葉は、龍馬の詠草(和歌を書き残した紙の意)として残されているものです。詠まれた時期は正確には分かっていませんが、1861〜1867年ごろと考えられています。この時期は、脱藩、勝海舟との出会い、薩長同盟の仲介、海援隊の設立など、龍馬の人生でも特に濃密だった7年間と重なっています。
さて、「好きな歴史上の人物」といえば、必ずと言っていいほど名前が挙がる龍馬ですが、「何がすごかったのか」と問われると、意外と答えに詰まる人も多いのではないでしょうか。龍馬は有名でありながら、いわゆる「維新の三傑」に数えられるわけでもありません。実際、司馬遼太郎氏の小説『竜馬がゆく』が広く読まれるようになる以前までは、彼は幕末の脇役であり、歴史の教科書でもそれほど大きく扱われていませんでした。
ですが、そのある種の「脇役っぷり」こそが彼が長く愛される所以なのかもしれません。龍馬の功績といえば、まずは長年対立していた薩摩藩と長州藩の間を取り持ち、影役者として薩長同盟を成立させたこと。それから、明治維新後の政治体制の原型ともいわれる「船中八策」を構想して同志に託し、のちの大政奉還につながるきっかけを作ったこと。いずれの歴史的イベントも、龍馬自身が主役になったわけではありません。しかし彼が結びつけた人々や残した構想は、明治維新を成し遂げる重要な礎になりました。
龍馬は明治を見る前に息絶えますが、彼は自分が主役にならなくても、日本を変える変革の土台を作ること、「透明なレガシー」を残すことに人生をかけたのです。冒頭の龍馬の言葉からも、「周囲がどう評価するかではなく、自分が何を成すべきかを信じよ」という強い覚悟が感じ取れます。
経営者も会社の将来を見据え、人脈作りや設備投資など、日々さまざまな「種まき」をしています。種まきの成果はすぐには出ませんし、なかには社員にも気付かれない地味な取り組みもありますから、経営者のやっていることが周囲に理解されないケースもあるかもしれません。そんな周囲の視線にさらされ、経営者自身、「自分は本当に正しいのだろうか」と悩むこともあるでしょう。ですが、そんなときこそ、龍馬にならって、自分だけが見えている「成すべき事」に立ち返ってみてください。たとえ、周囲には伝わりにくい取り組みであっても、経営者が信念に従って積み重ねた日々が将来、会社を変える変革の土台「透明なレガシー」になるはずです。
出典:「龍馬の手紙」(宮地佐一郎著、講談社、2003年12月)
以上(2026年4月作成)
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社員から「年休を買い取ってほしい」と言われたら応じるべき?
目次
1 年休の買い取りはあくまで例外的な対応
労働基準法により、会社は入社後6カ月以上勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤した社員に「年休(年次有給休暇)」を付与します。

年休の付与日数は図表の通りですが、問題は規模の小さい会社ほど、仕事が忙しくて年休を取得する余裕がない社員が多いことです。そして、そうした社員の中には、
使わない年休を買い取ってほしい(使わない年休分の賃金を支払ってほしい)
と考えたり、実際に請求したりする人がいます。
経営者や労務担当者も、「年休が取れないなら、せめて社員が損をしないよう買い取ってあげたい」と考えるかもしれませんし、
見方を変えれば、年休の買い取りは新しい福利厚生
になります。法令上、年休は社員の疲労回復やリフレッシュのために「休暇」として与えるのが原則で、買い取りは法的には認められてはいませんが、例外的な対応として一定の条件を満たせば可能とすることができます。
この記事では、
- 年休の買い取りに関する実務のポイント(第2、3、4、5章)
- 年休の買い取りについて就業規則に定める場合の規定例(第6章)
を紹介します。
2 会社も社員も、年休の買い取りの「強制」はできない
まず押さえておきたいのは、
- 会社は社員に「年休を買い取るから、休まず出勤しろ」と強制することはできない
- 社員も会社に「使わない(使えなかった)年休を買い取れ」と強制することはできない
という点です。
前述した通り、年休は社員が疲労を回復して心身ともにリフレッシュするための制度です。買い取りが当たり前になってしまうと、休暇としての意味がなくなってしまいますから、制度の趣旨を損なうような買い取りの仕方はNGとされているのです。
労働基準法には、年休の買い取りに関する具体的な定めがありませんが、行政通達では
会社が年休の買い取りを予約することや、本来なら請求できるはずの年休日数を減らしたり与えなかったりすることは違法である
とされています(昭和30年11月30日基収4718号)。つまり、会社が社員に「年休を買い取るから、休まず出勤しろ」と強制することはできません。逆に、社員が会社に「使わない(使えなかった)年休を買い取れ」と強制するケースについては、
未消化の年休を事後に使用者が買い取る義務はない
とした裁判例があります(大阪高裁平成14年11月26日判決)。他の言葉に言い換えると、
年休の買い取りは、会社と社員が自由な意思に基づき合意した場合に初めて認められる
ということです。
3 年休の買い取りが認められやすいケースが3つある
会社と社員が年休の買い取りについて合意していても、買い取りが無制限に認められるわけではありません。例えば、労働基準法には
年10日以上の年休が付与されている社員には、会社が時季を指定して年5日の年休を取得させなければならない
というルールがあり、仮に会社と社員が合意していても、付与された10日以上の年休を全て買い取るといった対応は認められません。会社が時季指定して付与した5日分については、たとえ本人と合意があっても買い取りによって消化
することはできず、これに違反すると労働基準法違反(罰則対象)となります。
会社は労働基準法の年休のルールに違反しないよう、買い取りを認めるケースを明確に決めておく必要があります。一般的に、次の3つのケースは、年休の買い取りが認められやすいとされています。
- 時効により消滅した年休の買い取り
- 退職により取得されない年休の買い取り
- 法定の付与日数を上回る部分の年休の買い取り
1.時効により消滅した年休の買い取り
労働基準法では、社員が年休を取得しない場合、その年休は付与された日(基準日)から2年が経過したタイミングで、時効により消滅します。時効により消滅した年休はもう取得できないので、買い取っても問題ありません。
2.退職により取得されない年休の買い取り
退職が近い社員は、退職日までに残っている年休を使いきれない場合があります。こうした場合に、使いきれなかった日数分の年休を買い取ることは問題ありません。退職時の引き継ぎなどの関係で、年休を取得したかったのに退職日直前まで出勤をした結果、取得しきれなかった年休が発生した場合、社員と相談して買い取るという対応も可能です。
ただし、前述した通り、社員に年休の買い取りを条件として出社を強制するのは違法です。
3.法定の付与日数を上回る部分の年休の買い取り
会社によっては、独自の休暇制度を設けて、法定の付与日数を上回る年休を社員に付与しているところがあります。例えば、法令上は「年10日」の年休を付与すべき社員に、会社ルールで「年15日」の年休を付与している場合、5日(15日-10日)分については、買い取っても問題ありません。
4 買い取った年休分の賃金の算定方法は?
年休の買い取り金額に関して法的な決まりはありません(例外的な対応であるため)が、実際に年休を取得した場合の賃金額と同じとするケースが一般的です。具体的には、
- (通常賃金)1日働いた場合の通常の賃金。月給制の場合、月給÷1カ月の所定労働日数などで1日単位に換算した額
- (平均賃金)直近3カ月間の賃金総額(賞与等を除く)÷直近3カ月間の総日数
- (標準報酬日額)標準報酬月額÷30日 ※労使協定の締結が必要
のいずれかになります。どれを選択するかは、就業規則に定めます。なお、2026年の法改正に向けて
年休の賃金の算定方式を「通常賃金」に一本化することが政府内で議論されている
ので、今後の動向に注意が必要です。
5 買い取った年休分はどうやって支払う?
年休の買い取りを行う際、もっとも注意すべきは、その支払いが「在職中か」「退職時か」ということです。
在職中の社員から年休を買い取る場合、
その分の賃金は「賞与」として支払うのが通常
です。社員が社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者の場合、買い取った年休分の賃金(賞与)には社会保険料がかかってきます。賞与の社会保険料は、
支給日から5日以内に日本年金機構に提出する「被保険者賞与支払届」
に基づいて決まりますので、書類の提出漏れがないように注意しましょう。なお、被保険者賞与支払届は賞与を支払うたびに提出が必要になりますので、業務の煩雑さを考えるのであれば、
年休の買い取り分の賃金は、賞与支給月(6月、12月など)に通常の賞与と合算して支払う(賞与明細の内訳などで、年休の買い取り分の賃金がいくらかを明らかにする)
といった対応にするのもよいでしょう。
一方、
退職に起因して残日数分を買い取る場合は、その支払いは「退職手当(退職所得)」として計上されます。
退職所得として処理する最大のメリットは社会保険料がかからない点です。
他の退職金と同様に、勤続年数に応じた「退職所得控除」の対象となるのも特徴です。ただし、「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合は、一律20.42%の源泉徴収が必要となる点にご注意ください。また、会社は退職後1カ月以内に「退職所得の源泉徴収票」を本人へ交付する義務があります。
6 年休の買い取りについて、就業規則ではどう定める?
最後に、年休の買い取りに関する就業規則の規定例を紹介します。なお、実際にこうした規定を盛り込む際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受け、自社に沿った内容で対応されることをお勧めします。
【規定例】
第◯条(年次有給休暇の買い取り)
1)会社は、次の各号について社員から年次有給休暇の買い取りの請求があり、会社が法の定める年次有給休暇の趣旨などを考慮して問題がないと判断した場合、その買い取りを行う。
- 時効(基準日から2年後)により消滅した年次有給休暇の買い取り
- 退職により取得されない年次有給休暇の買い取り
- 法定の付与日数を上回る部分の年次有給休暇の買い取り
2)会社は、社員からの請求に基づき、年次有給休暇の付与日数、基準日および時効、その他年次有給休暇の買い取りに関し必要な情報を提供する。
3)年次有給休暇の買い取り日数は、会社と社員が協議の上決定する。なお、労働基準法第39条第7項に基づき時季を指定して付与する年次有給休暇については、買い取りの対象としない。
4)年次有給休暇を買い取る場合、その1日当たりの賃金額は、就業規則第◯条で定める、実際に年次有給休暇を取得した場合の賃金額と同額とする。
5)年次有給休暇を買い取る場合、会社はその賃金額を明らかにした上で、毎年6月または12月に支給する賞与に合算して社員に支払う。ただし、第1項第2号に基づく年次有給休暇の買い取りの場合においては、当該社員の退職月に退職金(退職手当)として支給する。
以上(2026年5月更新)
(監修 社会保険労務士 三原明日香)
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【助成金(採用活動編)】 特定の人材の採用などで最大240万円!
目次
1 採用活動を強力にサポートする助成金を使いこなす!
最新の主要調査によると、2025年の中途採用費用(年間平均)は609.9万円です(社員数3名以上の会社を対象とした、マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」)。人手不足を背景に、中途採用に力を入れている企業が多いことが伺えます。
一方、中小企業などでは
「採用活動にそこまでお金をかけられない」と、積極的に取り組めずにいる会社
が少なくありません。そもそも採用活動に割けるリソースが限られる上に、入社した社員がすぐに辞めてしまうことも多い昨今、慎重にならざるを得ないのは無理からぬことです。
しかし、諦めないでください。
採用活動をサポートするための助成金を上手に活用し、採用コストに充当すること
でこの問題を打開できる可能性があります。国や自治体が実施する助成金の中には、一定の条件に該当する社員を雇い入れたり、訓練したりすることで受給できるものがあります。
この記事では、
採用活動に関する中小企業向けの助成金を4つ紹介
します。支給額や要件などの情報に加え、専門家のワンポイントアドバイスも載せています。なお、助成金の内容は、2026年4月3日時点のもので将来変更される可能性があります。また、申請書の書き方や添付書類等については、各章で紹介しているURLをご参照ください。
2 早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)
1)早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)とは?
会社都合などでやむを得ず離職した社員を、離職日の翌日から3カ月以内に無期雇用社員(週20時間以上勤務)として採用し、かつ給与を5%以上アップさせ、6カ月を超えて継続雇用すると、助成金を受け取れる制度です。
厚生労働省「早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082805.html
2)助成金を受け取るには?
次の要件などを満たす必要があります(詳細は厚生労働省ウェブサイトをご参照ください)。
【会社側の要件】
- 対象者を、離職日の翌日から3カ月以内に、雇用保険被保険者となる無期雇用社員(週の所定労働時間が20時間以上)として雇用する
- 採用時に、社員の所定内賃金を離職前よりも5%以上アップさせる
- 採用後、6カ月を超えて雇用する
- 採用日の前後6カ月間に、解雇や雇止めを行っていない
【社員側の要件】
- 「再就職援助計画の対象者」「求職活動支援書の対象者」「雇用保険の特定受給資格者」のいずれかである(主に倒産や事業縮小など会社都合で離職した人が該当)
3)受け取れる金額はいくら?
雇い入れにかかった費用の一部を定額で受給(早期雇入れ支援)できます。生産指標等により一定の成長性が認められる会社は、「優遇助成」が受けられます。

4)専門家のワンポイントアドバイス
離職から3カ月以内に社員を雇用するという要件があるので、タイミングを意識して採用計画を立てることが重要です。また、訓練を実施して人材育成支援を受ける場合は、訓練前に「職業訓練計画」を立てて都道府県労働局の認定を受ける必要がある点に注意が必要です。
3 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
1)特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは?
60歳以上の高年齢者や障害者など、就職が特に困難とされる人材を社員として雇い入れた場合、所定の金額(定額)を受け取れるというものです。
厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html
2)助成金を受け取るには?
次の要件などを満たす必要があります(詳細は厚生労働省ウェブサイトをご参照ください)。
【会社側の要件】
- ハローワーク等からの紹介により、対象者を所定労働時間が週20時間以上の雇用保険被保険者として雇用すること
- 雇入れ日の前後6カ月間に解雇等を行っていないこと
【社員側の要件】
- 「高年齢者(60歳以上の者)(注)」「身体・知的・精神障害者」「母子家庭の母等」「ウクライナ避難民」「補完的保護対象者」といった、就職が困難とされる者であること
(注)2026年5月1日以降は、雇入れ時の年齢が60歳以上であることに加え、紹介日において、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることが要件に追加されます。
有期雇用社員の場合は、契約が「自動更新」であることを契約書に明記し、労働者が希望する限り更新可能であること(更新条件は就業規則の解雇要件以内)、かつ65歳以上まで継続して2年以上(一部は3年以上)雇用することが確実である必要があります。
3)受け取れる金額はいくら?
対象社員に支払われた賃金の一部に相当する額として、次の金額が支給対象期(6カ月)ごとに定額で(ただし、対象期に支払われた賃金額を上限として)支給されます。なお、「短時間労働者」とは、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者をいいます。

4)専門家のワンポイントアドバイス
特定就職困難者コースは、ハローワーク等からの紹介により人材を雇用することが必須の要件です。そのため、求人を出す際は事前にハローワークに求人票を提出し、「助成金対象となる人材を雇用したい」とはっきり伝えておくことが重要です。
また、有期雇用での採用の場合は「自動更新」であることの記載漏れや、就業規則の解雇条件を超えた条件を設けると助成金が受け取れません。雇用契約書や就業規則をよく確認し、適切な条件で雇用契約を結ぶよう注意しましょう。
加えて、
2026年4月以降の申請分からは、賃金台帳の提出が必須
になっているので注意してください(賃金台帳の提出が確認できない場合、不支給となる)。
4 特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)
1)特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)とは?
「就職氷河期世代(おおむね1993年~2004年ごろに就職活動を行っていた人)」を含む35歳から60歳未満の中高年層のうち、就職の機会を逃したなどの理由で正社員としてのキャリア形成が難しかった人を、正社員として雇用する場合に助成金が支給される制度です。
厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/chuukou.html
2)助成金を受け取るには?
次の要件などを満たす必要があります(詳細は厚生労働省ウェブサイトをご参照ください)。
【会社側の要件】
- ハローワークまたは一定の要件を満たす民間職業紹介事業者から紹介された対象者を、正社員(期間の定めがなく、所定労働時間が週30時間以上、かつ昇給・賞与・退職金など長期雇用を前提とした待遇のある雇用)として雇い入れること
【社員側の要件(次の全ての要件を満たす必要あり)】
- 雇入れの日において35歳以上60歳未満である
- 雇入れ前の過去5年間において、正社員として雇用された期間が通算1年以下である
- 雇入れ前の過去1年間において、正社員として雇用されたことがない(ただし、過去1年以内に会社都合の解雇等により離職した場合は対象になる)
- ハローワーク等の紹介の時点で「安定した職業に就いていない状態であり、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている
- 正社員として雇用されることを自ら希望している
3)受け取れる金額はいくら?
対象社員に支払われた賃金の一部に相当する額として、次の金額が支給対象期(6カ月)ごとに定額で支給されます。ただし、支給対象期ごとに対象社員に支払った賃金額が図表4の額を下回る場合、その賃金額が支給額の上限となります。

4)専門家のワンポイントアドバイス
本助成金は「ハローワーク等からの紹介」が必須条件です。求人時にその点を明記し、採用ルートが助成金の要件に合致するかを必ず確認しましょう。また、非正規雇用期間が長い方や離職期間が長かった方が対象となるため、入社後のOJTやOFF-JTなどの人材育成を丁寧に実施することで、社員の早期戦力化と定着を促進できます。
なお、こちらのコースも、
2026年4月以降の申請分からは、賃金台帳の提出が必須
になっているので注意してください(賃金台帳の提出が確認できない場合、不支給となる)。
5 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
1)トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)とは?
職業経験の不足やスキル不足等により就職に不安がある方を「トライアル雇用(試行雇用)」として一定期間雇用した場合に助成金が支給される制度です。原則として3カ月間の試用期間中に対象者の適性を確認し、期間終了後に無期雇用契約(正社員等)へ移行することを目的としています。

厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/newpage_16286.html
2)助成金を受け取るには?
次の要件などを満たす必要があります(詳細は厚生労働省ウェブサイトをご参照ください)。
【会社側の要件】
- ハローワークまたは一定の要件を満たす民間職業紹介事業者から紹介された対象者を雇い入れること
- 対象者を、有期雇用契約で所定労働時間が週30時間以上(日雇労働者などの場合は週20時間以上)の雇用保険被保険者として、原則3カ月間トライアル雇用すること
- トライアル雇用終了後、無期雇用契約(所定労働時間が週30時間以上)への転換を前提としていること
【社員側の要件(次のいずれかに該当する必要あり)】
- 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
- 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている(※パート・アルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと)
- 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
- 紹介日時点で60歳未満であり、ハローワーク等で担当者制の個別支援を受けている
- 就職援助に特別な配慮が必要な者に該当する(母子家庭の母等、父子家庭の父、生活保護受給者など)
3)受け取れる金額はいくら?
対象者1人につき、月額4万円(母子家庭の母等または父子家庭の父の場合、月額5万円)が最大3カ月分支給されます。トライアル期間中に雇用期間が1カ月未満の月があった場合や、社員の都合による休暇、会社都合による休業等が発生した場合は、その月について以下の計算式により助成額が調整されます。
実際に就労した日数÷就労予定日数

また、トライアル雇用終了後に対象社員を無期雇用として継続雇用する場合、特定求職者雇用開発助成金の対象にもなり得ます。
4)専門家のワンポイントアドバイス
トライアル雇用を開始してから2週間以内に、対象社員を紹介したハローワーク等に「トライアル雇用実施計画書」を提出し、必ず認定を受ける必要があります。これを怠ると助成金が受け取れないため注意しましょう。
また、助成金の申請はトライアル雇用終了後の無期雇用契約移行後2カ月以内に行う必要があります。トライアル期間中の社員の適性確認や能力評価は丁寧に実施し、無期雇用契約への円滑な移行と社員の定着を図りましょう。
以上(2026年4月更新)
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画像:日本情報マート