人間ドックに育児サポート……「人事労務」で100年続く会社へ

1 【SDGs】人事労務に関係する4つの目標

誤解を恐れずに言えば、かつての中小企業では、社員にかけるお金はコスト(人件費)として捉えられ、さらに慢性的な人手不足も相まって、「人事労務」の仕事が他の業務よりも後回しにされがちでした。

しかし、時代は変わりました。「人的資本経営」という言葉もあるように、今では社員のスキルや能力を「資本」として捉え、そこにかけるお金は「コストでなく投資である」という考え方が浸透しつつあります。社員を大切にしなければ会社は生き残っていけませんから、ある意味、これからの会社の未来は人事労務にかかっているともいえるのです。

ただ、人事労務の仕事内容は幅広く、見直すにもどこからメスを入れればいいか分からないという人も多いでしょう。そこで、この記事では、

SDGs(持続可能な開発目標)をベースに、人事労務の重要な取り組みを洗い出すこと

をご提案します。SDGsでは、「地球の社会課題に向き合い、変化に対応し、持続可能な社会を実現する」という観点から、17の目標が設定されています。次の図表は、そのうち人事労務に関係する4つの目標と具体的な取り組みの例を挙げたものです。以降で、図表の各取り組みのポイントを紹介するので、御社の人事労務の状況を確認する参考情報としてご活用ください。

人事労務に関係する4つの目標と具体的な取り組みの例

2 目標3「すべての人に健康と福祉を」

目標3は、年齢に関係なく全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進するというものです。「健康経営」という言葉もあるように、社員の健康は、会社が経営を続けていく上で、必ず守らなければならないものです。

1)過重労働の防止

残業(時間外労働)は、月45時間を超えると健康障害のリスクが高まり、月100時間(または2~6カ月平均80時間)を超えると過労死の危険があるとされています。近年は「時間外労働の上限規制」など、過重労働を防ぐための法整備が進んでいますが、例えば、社員が会社に隠れて残業する「サービス残業」の問題には対処できているでしょうか。

まずは、社員の労働時間を正しく管理できているか改めて確認しましょう。例えば、手書きの勤怠管理表などで社員の労働時間を管理している会社では、定期的に自己申告の内容とオフィスの施錠記録やPCのログ情報を照合するなどして、実態を調査する必要があります。

勤怠管理システムを導入している場合も、必要に応じてシステムの見直しを検討しましょう。例えば、オフィス向け入退室管理システム(スマートロック)の中には、記録される入退室のログ情報を勤怠管理の目的で使用できるタイプなどがあり、より正確に労働時間を管理できます。

過重労働の防止については、次の記事などが参考になります。

2)人間ドックなどの実施

会社には年1回以上、定期健康診断を実施する義務があります。ですが、法律で決められた「法定項目」を社員に受診させるだけでは、自覚症状のない病気などを見落とすこともあります。

そこで、法定項目以外の「法定外項目」を含む人間ドックなどを実施することを検討します。人間ドックは受診項目が多いだけでなく、医療機関によっては、例えば、脳疾患や心臓疾患、性別に特有のがん(例:子宮がん)など、分野を絞って集中的に検査できる所もあります。

忙しくてなかなか人間ドックの時間が取れないという場合もあるでしょうが、最近は、約30分で脳ドックの受診が終わる「スマート脳ドック」など、あまり時間のかからない検査も登場しています。

人間ドックなどの実施については、次の記事などが参考になります。


3)“ちょっとした体調不良”の改善

過重労働や病気に注目するあまり、肩こり、腰痛、ストレスといった社員の“ちょっとした体調不良”をおろそかにしていないでしょうか。「たかが肩こり」などと考えて放置すると、社員が仕事に集中できずミスをしたり、体調が悪化したりして、欠勤よりも大きな損失を会社にもたらしかねません。こうした状態を「プレゼンティーイズム」といいます。

定期健康診断の結果を確認するだけでなく、例えば社内アンケートで「あなたの仕事に悪影響を及ぼしている体調不良は?(肩こり、腰痛、ストレス、疲れ目(ドライアイ)、寝不足など)」を聞いたりすると、社員の体調不良の状況を「見える化」できます。

体調不良の改善方法はさまざまです。例えば、ヘルシーな社食サービスを導入したり、「1日の歩数」を計測するアプリを導入したり、昇降式のスタンディングテーブルを導入して立った状態でも仕事ができるようにしたりといった方法があります。

“ちょっとした体調不良”の改善については、次の記事などが参考になります。

3 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

目標5は、性別に関係なく、誰もが平等に活躍できる社会を実現しようというものです。「女性の権利向上」をイメージするかもしれませんが、「性別に関係なく平等に」が趣旨なので、男性、LGBTQなど性的少数者に対しても同じように配慮が必要です。

1)ハラスメントの防止

都道府県労働局や労働基準監督署への「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、2024年時点で5万4987件に上ります(厚生労働省「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)。社員の権利意識の高まりなどの背景もありますが、会社以外の機関にこうした相談が多く寄せられるのは、会社の「ハラスメント防止措置」がちゃんと機能していないからかもしれません。

会社は「ハラスメント相談窓口」を設置し、社員からの相談に応じて、事実確認、行為者の処分や被害者のケア、再発防止策の実施などを適正に行う義務があります。「相談窓口が周知されているか」「経営者が把握していない相談内容がないか」などを、いま一度確認しましょう。

また、2026年10月1日からは、カスハラ(カスタマーハラスメント、顧客等による嫌がらせ)、就活セクハラ(就活生に対するセクシュアルハラスメント)についてもハラスメント防止措置が義務付けられるようになります。こちらの準備も早めに進めておきましょう。

ハラスメントの防止については、次の記事などが参考になります。

2)妊娠・出産や育児のサポート

「育休(育児休業)」などの法整備が進み、妊娠・出産や育児を理由に退職することなく、仕事を続ける人が増えてきました。ただ、これまで育休の取得がなかった会社などは、いざ社員から相談があると、実務に不慣れなゆえに対応を誤ってしまう恐れがあります。

まずは、法制度の内容を正しく押さえましょう。近年は育児・介護休業法の法改正が続いていて、特に2025年度は、「子の看護等休暇」の対象となる子の年齢が「小学校就学前 → 小学校3年生修了まで」に引き上げられる、3歳以上小学校就学前の子を育てる社員のための「柔軟な働き方を実現するための措置等」が新設されるなど、大幅な改正がありました。法改正対応について見落としがないか、いま一度確認しておきましょう。

妊娠・出産や育児のサポートについては、次の記事などが参考になります。

4 目標8「働きがいも経済成長も」

目標8は、経済成長を持続させつつ、全ての人が働きがいと十分な収入のある仕事に就ける社会を実現しようというものです。働きがいと十分な収入を確保するには、休みや仕事の生産性にも目を向ける必要があります。

1)賃上げの検討

社員の収入を確保する最もシンプルな方法は「賃上げ」です。日本労働組合総連合会(連合)では、毎年春闘での賃上げ率(平均賃金方式、定期昇給相当分を含む)を公表していますが、直近(加重平均)では、2024年度が5.10%(中小企業は4.45%)、2025年度が5.25%(中小企業は4.65%)という高水準の賃上げが実施されています(連合「2024年春季生活闘争第7回(最終)回答集計結果」「2025年春季生活闘争第7回(最終)回答集計結果」)。

一方で、多くの経営者は「先行きが不透明で、簡単には賃上げができない……」と不安を抱えています。賃上げは簡単でも、賃下げは「労働条件の不利益変更」等の問題があって難しいので、不安になるのも無理はありません。そこでご提案したいのが、助成金を上手に活用し、賃上げによるコストアップに対応することです。例えば、中小企業の場合、有期パート等(契約期間の定めがある非正規雇用の社員)の基本給を3%以上増額すると受け取れる「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)」などがあります。

2)休暇取得の促進

仕事のパフォーマンスを上げるためには、適度な休みも必要です。ですが、社員の中には「周囲が忙しそうなのに自分だけ休めない」などの理由から、休暇を取得しない人がいます。

休暇取得を促進する方法としては、まず「取得のハードルを下げること」が挙げられます。例えば、年休(年次有給休暇)は、必要な手続きを踏めば、「半日単位」「1時間単位」で与えたり、一定日数まで会社が取得時季を計画的に割り振ったりすること(計画的付与)ができます。

また、会社が独自に定める「特別休暇」の場合、取得時季や目的を明確に設定することで取得しやすくなるケースもあります。例えば、本人の誕生日(または誕生月)に取得できる「誕生日休暇」、子どもの学校行事に参加する場合に取得できる「学校行事休暇」などがあります。

休暇の取得促進については、次の記事などが参考になります。

3)ペーパーレス化の促進

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進行などを背景に、紙からデータへの動きが本格化しています。印刷などの手間を減らせば業務のスピードアップが図れますし、紙の消費量を減らすことでコスト削減や環境保全にもつながります。

ペーパーレス化の対象となる書類はさまざまですが、人事労務に関して言うと、例えば社員の入社時に交付する労働条件通知書は、社員の同意があればメールなどで交付できますし、法定書類(社会・労働保険関連、税務関連)の提出も「電子政府の総合窓口(e-Gov)」を使って電子申請で行えます。

2026年度に制度が拡充された「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」も積極的に活用していきましょう。例えば、働き方改革や賃上げに対応するため、生産性向上・業務効率化に役立つITツール(ソフトウェアやAIを含む)を導入する場合、その導入経費の一部が補助されることがあります。

ペーパーレス化の促進については、次の記事などが参考になります。

5 目標10「人や国の不平等をなくそう」

目標10は、国内や国家間の不平等を是正しようというものです。会社の場合、社員が雇用形態、年齢、国籍などによって不利益を被ることがないように注意する必要があります。

1)同一労働同一賃金の実現

同一労働同一賃金は、簡単に言うと「同じ(価値の)仕事をしている社員には、同じ額の賃金を支払わなければならない」という考え方です。正社員とパート等の待遇格差を是正する観点から2020年4月に法制化されましたが、いまだに実現に至っていない会社は少なくありません。

同一労働同一賃金のポイントは、「仕事内容、能力、成果などの違いに基づく待遇格差は違法でない」という点です。例えば、正社員、パート等の役割分担に基づいて基本給や手当の額に差を付けるのは問題ありません。ちなみに会社はパート等から求められた場合、待遇格差の内容や理由を説明する義務があるので、いざというとき合理的な説明ができるよう準備しておきましょう。

なお、パート等の待遇改善は重要ですが、それが逆にパート等に不利益に働くケースもあるので注意が必要です。例えば、厚生年金保険の被保険者数が常時50人超の会社(2035年10月以降は全ての会社が対象)に勤めるパート等は、一定の要件を満たすと社会保険に加入し、社会保険料を負担する義務が生じます(家族の扶養に入れなくなる)。

同一労働同一賃金の実現については、次の記事などが参考になります。

2)高齢社員の活用

会社には、社員を65歳まで雇用するための措置を講じる義務、70歳まで働ける機会を確保する努力義務があります。人間は基本的に加齢によって身体機能が変化するので、高齢社員を雇用し続ける場合、その点を考慮する必要があります。

例えば、平衡機能の低下(直立姿勢時の重心動揺が大きくなり、転倒しやすくなる)や聴力の低下(騒音時の声などが聞こえにくく、「危ない」と言われても気付かない)はけがにつながる恐れがあるので、定期的に健康診断や体力チェックテストを実施して社員の状態を把握するなど、対策を講じる必要があるでしょう。

なお、高年齢者雇用安定法では、社員が70歳まで働ける機会を確保するための選択肢として、フリーランス化なども認めています。フリーランスは、労働時間という概念がなく自分のペースで働きやすい面もあるので、社員が定年を迎えたら、雇用という選択肢にこだわらず、フリーランスとして力を貸してもらうというのも1つの方法です。

高齢社員の活用については、次の記事などが参考になります。

3)外国人の活用

今や外国人が働いている会社は日本でも珍しくありませんが、初めて外国人を雇用する会社などは、日本人を雇用する場合との違いが分からず、戸惑ってしまうかもしれません。

結論から言うと、日本で働く外国人には労働基準法などの労働関係法令が適用されるので、基本的な扱いは日本人と変わりません。ただ、それぞれの外国人が持つ「在留資格」によって、行える活動や日本で働ける期間に違いがあるので、その点には注意が必要です。

また、就業時間中に礼拝のため席を外したり、食べてはいけない食材の関係で他の社員がお菓子を勧めた際にトラブルになったりすることがあるので、宗教・文化の違いについてはある程度把握しておく必要があります。難しい面もあるかもしれませんが、外国人が働きやすい社内体制や関係性を構築した結果、高い成果を上げている会社も数多くあります。

外国人の活用については、次の記事などが参考になります。

以上(2026年3月更新)

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【業務効率化】脱FAXが無理でも「紙」のやり取りはなくせる

1 FAXで「紙」をやり取りするのは非効率

FAXは、「簡単に送受信できる」「手書き原稿を送れる」といった利便性があり、使い慣れている会社では、業務フローの見直しが進みにくいかもしれません。実際、情報通信ネットワーク産業協会が2024年に実施した国内調査によると、回答者のうち約4割が、業務の中で通信手段としてFAXを利用しているようです。

とはいえ、FAXで「紙」をやり取りするのは非効率です。もし、相手に合わせてFAXの利用を続けざるを得ないと諦めているとしたら、話は簡単です。

「紙」のやり取りをなくすだけならば、自社の環境を変えることで実現可能

なのです。

まずは「紙」のやり取りをなくす方法について、既存のネットワーク接続対応の複合機を利用できる場合とそうでない場合、それぞれご紹介します。

2 FAXで「紙」をやり取りをなくす方法

1)既存の複合機のPC-FAXを利用する

PC-FAXは、ネットワーク接続対応の複合機とパソコンとを連携し、FAXを送受信する機能です。既にネットワーク接続対応の複合機があるのに、PC-FAXを使いこなしていないだけならば、複合機メーカーのマニュアルやサポートサービスを頼りに、比較的容易に設定できます。

FAXを送信する際は、パソコンから印刷するのと同じ手順で、文章や画像などのファイルをそのまま送信データとして選択できます(紙の文書を読み取って送信することもできます)。また、受信したFAXは、PDF形式などのファイルに変換され、所定のフォルダに保存したり、メール添付で所定のメールアドレスに転送したりできます。

従前と同様、電話回線(FAX回線)を使うため、その分の通信費はかかりますが、印刷しなければ紙やインク、トナー代(印刷費)を抑えられます。

なお、社外から社内のネットワーク環境にアクセスするためには、VPN接続やリモートデスクトップを使うなど、PC-FAXとは別に設定が必要です。

2)新たにインターネットFAXを利用する

インターネットFAXは文字通り、インターネットを通じてFAXの送受信を行うサービスです。

サービス提供会社からFAX番号を取得し、メールアドレスを登録すると、そのメールアドレスを使ってFAXを送受信できるようになります。

FAXを送信する際は、登録したメールアドレスから、文章や画像などのファイルを添付して送信します。また、受信したFAXは、PDF形式などのファイルに変換され、添付ファイルとして登録したメールアドレスに届きます。

電話回線(FAX回線)を使わないため、その分の通信費はかからず、FAX機や複合機がなくてもFAXを使えます。印刷しなければ紙やインク、トナー代(印刷費)を抑えられます。

例えば、次のようなサービスがあります。

アクセルコミュニケーションズ 「メッセージプラス」
https://www.messageplus.jp/
エディックワークス 「faximo (ファクシモ)」
https://www.edicworks.com/service/faximo/
Karigo「秒速FAX」
https://fax.toones.jp/
グラントン「03FAX」
https://03plus.net/03fax/
j2 Global Japan 「eFax」
https://www.efax.co.jp/
日本テレネット 「MOVFAX (モバックス)」
https://movfax.jp/
ヤマトシステム開発 「どこでもMyFAX」
https://www.nekonet.co.jp/service/dokodemo-myfax

3 「手書き」した紙をデジタル化する方法

「紙」のやり取りをなくすために文章や画像などのファイル(デジタルデータ)が必要になりますが、「手書き」した紙をデジタル化する方法は、よく分からないという方もいらっしゃるかもしれません。

既存のネットワーク接続対応の複合機がある場合は、スキャナ機能を使って読み取って保存することができます。

新たにインターネットFAXを利用する場合は、スマートフォンのカメラで撮影して保存するなど、別のデバイス・アプリを使う必要があります。

例えば、次のようなサービスがあります。

Apple 「メモ」
https://apps.apple.com/jp/app/id1110145109
Google 「Googleドライブ」
https://support.google.com/drive/answer/3145835
Adobe 「Adobe Scan」
https://www.adobe.com/jp/acrobat/mobile/scanner-app.html

4 便利なサービス 比較のポイントは?

1)使いやすさ

本格導入した際に今まで通りの流れで業務が遂行できるかどうかがポイントです。直感的に操作できるか、機能が多く複雑過ぎないかなど、使い勝手を確認しましょう。

2)セキュリティー

インターネットFAXなどのウェブサービスを利用する場合、情報漏洩対策がしっかり取られているかがポイントです。不正アクセスやマルウエアへの感染対策などを事前に確認しましょう。

以上(2026年3月更新)

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自社商品の買取り強要

営業ノルマを達成させるため、従業員に自社商品を買わせていないでしょうか?「自爆営業」とも呼ばれ、従業員の経済的損失や精神的苦痛につながるだけでなく、法令上も問題があるため、厚生労働省が注意を呼び掛けています。本稿では、法令に触れる自社商品の買取り強要の例を紹介します。

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自社商品の買取り強要

営業ノルマを達成させるため、従業員に自社商品を買わせていないでしょうか?「自爆営業」とも呼ばれ、従業員の経済的損失や精神的苦痛につながるだけでなく、法令上も問題があるため、厚生労働省が注意を呼び掛けています。本稿では、法令に触れる自社商品の買取り強要の例を紹介します。

1 民法、労働法令に抵触

自社商品の買取り強要は、民法や労働基準法、労働契約法に抵触しかねません。事例ごとに、どの法令に違反する可能性があるのか説明します。

 

事例の内容

違反の可能性がある法令

1

従業員ごとに売上高のノルマを設定。ノルマ未達成の場合、就業規則や口頭等で自社商品購入を求める

・民法第90条(公序良俗)
・民法第709条(不法行為による損害賠償)
・労働基準法第24条(賃金の全額払い)

2

従業員に自社商品の購入を求めたが、従業員が断ったため、懲戒処分や解雇を行った

・労働契約法第15条(懲戒権の濫用)
・労働基準法第16条(解雇権の濫用)

1の事例では、自社商品の売買契約が公序良俗に反して無効となるほか、不法行為による損害賠償責任が認められる可能性もあります。賃金控除に関する労使協定を締結せずに購入代金を従業員の賃金から控除した場合には、賃金の一部を控除して支払うことを禁じた労働基準法第24条に違反します。

購入代金を本人が直接支払う場合でも、従業員が断ることができない状況で自社商品を購入させられているため、労働者保護の観点から不適切です。

このケースに関連した裁判例(東京地裁 平成20年11月11日判決)もあります。営業社員が、会社から「商品を理解しなければ仕事はできない、そのためには商品を買う必要がある」と強く言われたが、購入を拒否したところ、重ねて「商品を理解しない者には仕事をさせるわけにはいかない」と言われたため、やむを得ず自社商品を購入した事案です。

判決では、使用者としての立場を利用し、仕事にからめて従業員に不要な商品を買わせたことが、「公序良俗に違反する商法」で「不法行為を構成する」と判断されました。商品代金相当額の損害賠償請求も認められました。

2の事例は、懲戒権や解雇権の濫用にあたり、懲戒処分や解雇が無効になると考えられます。

2 達成困難なノルマ

厚生労働省は、次のようなケースも「注意が必要」としています。

 

事例の内容

違反の可能性がある法令

3

従業員ごとに売上高のノルマを設定。ノルマ未達成の場合、人事上の不利益取扱いを受けることを明示。従業員がノルマ達成のため自身の判断で自社商品を購入

・民法第90条(公序良俗)
・民法第709条(不法行為による損害賠償)
・労働契約法第15条(懲戒権の濫用)

4

現実的に達成困難なノルマを設定。ノルマ未達成の場合、人事上の不利益処分を行う

・労働契約法第3条第5項(権利濫用の禁止の原則)
・民法第709条(不法行為による損害賠償)

3の事例では、会社は自社商品購入を強要していません。しかし、従業員が高額の商品を繰り返し買っている状況を知りながら放置しているような場合は、従業員との売買契約が公序良俗に反して無効となりえます。不法行為による損害賠償責任が認められる可能性もあります。

また、単純にノルマ未達成だけを理由に懲戒処分を行うことは、懲戒権の 濫用として無効となる場合があります。

4の事例では、達成困難なノルマ設定が、業務命令権の濫用として無効になりかねません。無効になった場合には、ノルマを前提とした不利益処分も無効となります。また、このようなノルマの達成を指示すること自体について、不法行為として損害賠償責任が認められる場合があります。

4の事例に関連した裁判例(大阪地裁 平成27年4月24日判決)もあります。飛び込みで新規顧客開拓を1日100件行うよう指示された営業職の事案です。裁判所は、会社の指示は相当ハードルが高く、合理的な理由があるとは認められず、その他の事情をあわせて考慮した上で、指示は「労働者に対する嫌がらせであり、不法行為を構成する」と判断。慰謝料請求も認めました。

3 さいごに

自社商品の買取り強要は、場合によっては法令違反に当たり、刑事処分や損害賠償など企業に多大な悪影響を及ぼします。自社商品の買取りを強要する就業規則や職場風土は、すぐに見直さなければなりません。

また、厚生労働省は、職場のパワーハラスメントが、自社商品の買取り強要の背景にあるとみて、パワハラの防止措置を適切に講じるよう企業に呼び掛けています。

※表はすべて、厚生労働省のリーフレット「労働者に対する商品の買取り強要等の労働関係法令上の問題点」を参考に作成

※本内容は2026年3月10日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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コーヒーに潜む「カフェイン」の罠 上手に付き合っていくには?

1 心安らぐコーヒータイム、でも飲み過ぎは禁物!

仕事の合間にちょっと一息……業務中のお供として、コーヒーなどの飲み物をデスクに置いているビジネスパーソンは多いです。「頭がスッキリするから」「水分を補給したいから」「ないと落ち着かないから」など、頼りにする理由は人それぞれですが、飲み過ぎにはご注意!

多くの飲み物には「カフェイン」が含まれていて、摂取しすぎると、めまいや心拍数の増加、不眠などの健康被害を招く恐れがある

からです。ちなみに、カフェインといえば、コーヒーやエナジードリンクのイメージがありますが、

実は、緑茶・烏龍茶・ほうじ茶などにもカフェインが含まれています。

そこで、この記事では、ビジネスパーソンがカフェインと上手に付き合っていくために、

  • コーヒーやお茶などは、1日にどのくらい飲んでいいのか
  • 何時までなら飲んでいいのか
  • コーヒーやお茶以外で、どんなものにカフェインが含まれているのか

などを紹介します。

2 カフェインの「安全圏」はどこまで?

1)1日の摂取限度の目安

厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A」などによると、

健康な成人のカフェイン摂取限度は1日400mgが目安

とされています。これを超えると、前述した通りめまいや心拍数の増加、不眠などの健康被害を招く恐れがあります。では、具体的に飲み物をどのくらい飲むと、400mgのカフェインを摂取したことになるのでしょうか?

飲料ごとの目安は次の通りです。

  • ブラックコーヒー:約660ml
  • カフェラテ:約700〜1000ml(ミルクの比率による)
  • 紅茶:約1330ml
  • 緑茶・烏龍茶・ほうじ茶:約2000ml
  • エナジードリンク:約1000〜1200ml(製品により異なる)

コーヒーやカフェラテ、エナジードリンクに含まれているカフェイン量が多いのは納得ですが、緑茶や烏龍茶、健康に良いイメージがあるほうじ茶にも、かなりのカフェインが含まれているのです。

2)身近なサイズを知る

また、カフェインの摂取量を把握するために、よく利用するショップや容器の、大体の容量を知っておきましょう。

1.コーヒーチェーン

コーヒーチェーン

図表1は、コーヒーチェーンのカップ容量の例です。中身がコーヒーの場合、2番目に大きなサイズで頼んだとしても、1日のカフェイン摂取限度(400mg)の80%以上を占めてしまいます。

2.コンビニ

コンビニ

図表2は、コンビニのカップ容量の例です。コーヒーチェーンと比べると量は控えめですが、1日に何杯もリピートするときは注意が必要です。大きいサイズを2杯飲むと、1日のカフェイン摂取限度(400mg)の80%弱が埋まってしまいます。

3.缶コーヒー

缶コーヒー

図表3は、自動販売機などで買える缶コーヒーの容量の例です。特にボトルタイプのものだと、容量も多くなりがちですので、自動販売機で販売されている飲料は、身近にあるだけに注意が必要です。

4.マグカップやコーヒーカップ

マグカップやコーヒーカップ

図表4は、マグカップやコーヒーカップの容量の例です。実際はカップによって容量が大きく違いますので、普段使っているマグカップの容量を確認しておくと、「カフェインの摂り過ぎ」を防げます。

3 「何時まで」がカフェイン摂取のデッドライン?

カフェインの影響で最も注意すべきは「摂取するタイミング」です。厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると、カフェインが体内で半分に減る時間(半減期)は3〜7時間と個人差が大きく、私たちが思う以上に長く体内に残り続けます。例えば、

朝9時にカフェイン400mg(コーヒー約4杯分)を摂取した場合、14時になっても200mg、19時になっても100mgが体内に残存

します。夕方以降に100mg以上のカフェインが残っていると、寝付きの悪さや熟睡(徐波睡眠)の減少につながり、翌日のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。

同資料では、次の時間を「睡眠を妨げないデッドライン」としています。

  • カフェインを107mg以上摂取する場合:就寝の約9時間前まで
  • カフェインを217.5mg以上摂取する場合:就寝の約13時間前まで

良質な睡眠を確保するためには、1日のカフェイン総量を抑えるとともに、夕方以降はカフェインをオフにするのが望ましいです。

4 「隠れカフェイン」に要注意! 意外な落とし穴

コーヒーを控えていても、知らずに摂取しているのが「隠れカフェイン」です。特に、次のカテゴリーは見落としやすいため注意が必要です。

1)お菓子・スイーツ類

コーヒーや紅茶とともに食べることもある菓子類には、カフェインが含まれているものもあるので注意が必要です。

  • 高カカオチョコレート:例えば、カカオ70%の製品の場合、50g当たり約40mgのカフェインが含まれている
  • 抹茶・ほうじ茶のスイーツ:茶葉を粉末にして使うため、成分が凝縮されており、粉末1g当たり約32mgのカフェインが含まれている
  • コーラ・ドクターペッパーなど:100ml当たり約10mgのカフェインが含まれている

2)医薬品

医薬品にもカフェインが含まれている場合があります。

  • 解熱鎮痛剤(痛み止め):血管を収縮させるために配合されているものがある
  • 総合感冒薬(風邪薬):副作用の眠気を抑えるために配合されているものがある

5 「カフェインコントロール」を心がけよう

「コーヒーや緑茶がないと仕事にならない」という方も、飲み物の特性を知ることで、体調に合わせた選択が可能になります。例えば、カフェインをあまり気にすることなく飲めるものとして、次のようなものがあります。

  • デカフェ(カフェインレス)飲料:本来はカフェインを含む素材から、成分を抽出・除去したもの。夜でもコーヒーや紅茶を楽しみたいときに最適
  • ノンカフェイン(カフェインゼロ)飲料:穀物由来のお茶(麦茶・そば茶・黒豆茶・とうもろこし茶など)、ルイボスティー、ハーブティーなど。食事中の緑茶をこれらに変えるだけで、カフェインコントロールが可能

ちなみに、夜に飲むイメージもあるココアには、純ココア10gで20mg、調整ココアではごく少量ですがカフェインが含まれていますので、カフェインを摂取しすぎた日には、ココアを飲むのは控えることも考えましょう。

カフェインを主体的にコントロールし、摂取量や時間を調整することは、自律神経を整え、安定した体調を維持することにつながります。こうした小さな習慣の積み重ねが、社員の健康を守り、活気ある職場環境をつくるための第一歩となるはずです。

以上(2026年4月作成)

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画像:日本情報マート

トーマス・アルヴァ・エジソン(発明家)/経営のヒントとなる言葉

「もっともらしい考えの中に、新しい問題の解決の糸口はない」(*)

出所:「エジソンの言葉 ヒラメキのつくりかた」(大和書房)

冒頭の言葉は、

「既成概念にとらわれない新しい考えだけが、新しい問題を解決することができる」

ということを表しています。

エジソン氏は、生涯で数多くの画期的な発明をしましたが、それらはいずれも「既成概念にとらわれない新しい考え」から生まれています。

1878年、英国の物理学者J・W・スワン氏によって白熱電球が発明され、翌1879年にエジソン氏がその実用化に成功しました。この成功も、エジソン氏の既成概念にとらわれない新しい考えから生まれたものです。

当初、エジソン氏は白熱電球のフィラメント(電球を発光させる細い糸状の芯)に白金(プラチナ)を使用していました。しかし、白金製のフィラメントは、何度実験を重ねても熱ですぐに溶けてしまい、しかも非常に高価であったため実用化には向きませんでした。

新しいフィラメントの材料を模索していたあるとき、エジソン氏は、白金のような金属ではなく、炭化させた繊維をフィラメントの材料として用いることを思い付きました。早速、実験してみると、予想した以上の良い結果が得られました。そこで、さらに実験を重ね、苦心の末に炭化させた木綿糸製のフィラメントを長時間点灯させることに成功したのです。

その後も、エジソン氏は糸や木の皮、紙などありとあらゆる材料を使用して実験を行いました。その結果、最も長時間の点灯に耐えられたのは、日本の京都産の竹を炭化させたフィラメントでした。こうして、エジソン氏の白熱電球のフィラメントには竹が採用され、竹製のフィラメントは、後にタングステン製フィラメントが発明されるまで、多くの家庭や商店などで明かりを灯し続けました。

エジソン氏は、20世紀を代表する天才的な発明家でしたが、必ずしもすべての研究が順調に進んだわけではありません。前述の白熱電球の実用化においても、フィラメント材料として木綿や木材など世界のあらゆる国々からさまざまな種類の材料を集めて試しましたが、いずれもフィラメントとしては適さず、失敗に終わりました。こうした失敗について、エジソン氏は次のように述べています。

「失敗が重なったときは出発点に戻る勇気をもて」(*)

白金を用いたフィラメントの実験は失敗の連続で、エジソン氏は支持者たちから厳しい批判を受けました。こうした中、エジソン氏は失敗の原因をたんねんに調べ、白金がフィラメントに適さないことに気付くと、それまでの研究をすべてやめて、すぐさま別の素材を用いた実験に取りかかりました。そして、そこから再び気が遠くなるような回数の実験を重ね、ついに実用化に成功したのです。

新しい考えには失敗がつきものです。しかし、新しい問題は新しい考えによってしか解決できません。失敗しても諦めず、新しい考えを貫くことこそが成功につながるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

トーマス・アルヴァ・エジソン(1847~1931)。米国生まれ。1855年、小学校中退。1876年、メンロパーク研究室設立。1878年、エジソン電灯会社(現General Electric社)設立。

【参考文献】

(*)「エジソンの言葉 ヒラメキのつくりかた」(浜田和幸、大和書房、2003年12月)
「エジソン 20世紀を発明した男」(ニール・ボールドウィン(著)、椿正晴(訳)、三田出版会、1997年4月)

以上(2026年3月更新)

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画像:日本情報マート

【入社1年目の教科書】休んでもお給料がもらえる「年次有給休暇」って素敵だ!

よく働いて、よく遊ぶ。仕事だけではなくプライベートも充実させないとね! 会社には、休みなのにお給料がもらえる「有休」という制度があるらしい。一体、何日、休むことができるのかな。連休にくっつけて休んでもいいのかな。あぁ?、休みのことを考えていたら、すごく楽しい気分になってきたぞ!!

1 休んでもお給料がもらえる「年次有給休暇(有休)」

会社にはさまざまな休みがあります。その中に、休みなのにお給料がもらえるという「年次有給休暇」(以下「有休」)があります。有休とは、

労働基準法という法律で定められている休暇で、入社後6カ月以上勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤する

という2つの条件を満たせばもらえます。もらえる有休の日数は、勤続年数によって次のように違います。長く勤めれば、有休も増えるということです。

年次有給休暇

いずれにしても、6カ月頑張らなければ有休はもらえません。入社したばかりだと有休はありませんが、安心してください。会社には夏季休暇や誕生日休暇などさまざまな休みがあるので、使えるものがないかを確認してみましょう。使える休暇がなかったとしても、会社に許可を取れば休めます。ただし、その場合は「欠勤」となってお給料が出ないこともあるので、注意してください。

ちなみに、休暇と似た言葉に休日がありますが、両者の意味は厳密には違います。

  • 休暇:本来は働く日だが、休むことにした日
  • 休日:もともと働かなくてよい日

この記事の最後で、多くの会社で整備されている一般的な休暇、休日をまとめているので、参考として確認してみてください。

2 余裕を持って申請するのがマナー

有休を取るときは、事前に会社に申請します。申請のルールは会社ごとに違うので、慣れないうちは先輩に確認しましょう。基本的に、有休は皆さんの好きな日にもらえます。しかし、仕事に大きな支障が出そうな場合に限り、会社が有休の日を変えることがあります。

有休は皆さんの権利なので、遠慮せずに取ってよいのですが、いきなり「明日、有休をもらいます!」というのはマナー違反です。急用なら仕方ないですが、そうでなければ1週間前には申請し、引き継ぎも丁寧にしましょう。皆さんの仕事で引き継ぐことは少ないかもしれませんが、

皆さんが担当している仕事の進捗を整理し、特に滞っていることがないか

を伝えるようにしましょう。

3 1年間に5日の有休を取るのが決まり!

有休にはちょっと不思議なルールがあります。それは、

10日以上の有休がある社員は、1年間に5日の有休を取らないといけない

という労働基準法のルールです。皆さんが正社員の場合、入社して6カ月後には10日の有休がもらえるので、そこから1年以内に5日の有休を取らないといけないのです。法律によって「休まないといけない」という、不思議でうれしいルールです。この5日については、皆さんの好きな日に取ることもできますが、会社が「○月○日に有休を取ってください」と指定してくることもあります。

なお、有休は「1日単位」のイメージがありますが、会社によっては「半日単位」でも取れます。その場合、就業規則などで定められているので、確認してみましょう。半日の有休を取った場合、0.5日の有休としてカウントされます。

ちなみに、会社によっては「1時間単位」で有休を取れる所もありますが、時間単位の有休は、「5日の有休」にはカウントされません。

4 もしも有休を使い切れなかったら?

有休をもらったけど、予想以上に仕事が忙しくて、「10日有休をもらったものの、9日しか取得できなかった」なんてケースがあるかもしれません。この場合、「残り1日の有休はどうなってしまうんだろう?」と気にするかもしれませんが、ご安心ください。

有休は付与されてから「2年」有効なので、付与された年に使い切れなくても、翌年に繰り越すことができます。とはいえ、2年たつと時効により消滅してしまうので、取得はある程度計画的に!

5 会社にあるさまざまな休暇、休日

有休の他にも、さまざまな休暇、休日があります。一般的なものは次の通りです。法律の定めが「あり」のものは、原則としてどの会社でも利用できます。法律の定めが「なし」のものは、会社が就業規則などで定めていれば利用できます。

会社にあるさまざまな休暇

ちなみに、この記事で紹介した有休はお給料がもらえる有給の休暇でしたが、上の図表の休暇については、有給か無給かが会社によって異なります。詳しくは、先輩などに確認してみてください。

いずれにしても、

休暇、休日は皆さんの権利なので、休むことに遠慮は不要です。ただし、休暇の申請は事前に行い、引き継ぎなどはしっかり行うことがマナー

であることを忘れないでください。

以上(2026年1月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【動画で学ぼう】入社3〜5年目の中堅社員に必要な部下対応

中小企業にとって中堅社員は組織の要であり、皆さんの成長こそが企業の成長につながります!「半歩先行く中堅社員」シリーズは、そのためのエッセンスをまとめた15本のシリーズです。
今回、新たに動画版の公開をスタートしましたので、ぜひ、参考にしてみてください。

1 おごってくれない上司を、部下はケチだと思うか?

大切なのはコミュニケーションの質! 「上司はおごるもの」という強迫観念から解放され、「おごるか否かの基準」を設けましょう。

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


テキスト版はこちら


2 定時退社の上司に、部下はついていけるのか?

中堅社員は、仕事ができて“愛”のある上司を目指していきましょう!ただし、「依存と自立」のバランスを忘れずに。

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


テキスト版はこちら


3 「決められる部下」を育てるには?

「決められる部下」を育てるには、部下に意思決定の経験を積ませつつ、権限委譲することが大切。仕事の意味づけも忘れずに!

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


テキスト版はこちら


動画制作
アーティスソリューションズ
https://www.artis-sol.co.jp/index.html

以上(2026年3月作成)

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画像:Eriko Nonaka

副業社員の「残業代」を負担するのは自社か副業先か?

1 副業社員の労働時間はどう管理する?

働き方改革が進み、中小企業でも社員の「副業」を認めるケースが増えてきています。本業がおろそかになる、副業先に社員を引き抜かれてしまうなどといったネガティブなイメージよりも、人手不足の解消や社員のスキルアップなど前向きな捉え方が浸透しつつあるのです。

一方、副業には通常と異なる労務管理のルールがあるので、この記事では基本となる労働時間管理を取り上げます。ポイントは次の3点です。

  • 自社と副業先での労働時間は通算される
  • 残業代の支払い義務は「労働契約の締結時期」と「実際の労働順序」で判断する
  • 「管理モデル」を活用すれば、実労働時間の把握負担を軽減できる

副業特有の労務管理のルールについて詳しく知りたい場合、次のURLの厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」も併せてご確認ください。

■厚生労働省「副業・兼業」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html

2 自社と副業先で労働時間を通算

労働基準法(以下「労基法」)では、事業場(就業場所)が異なる場合(これには使用者が異なる場合も含まれると解釈されます)、その労働時間を通算して規定を適用します。例えば、

自社で8時間、副業先で4時間働いたら、12時間(8時間+4時間)働いた

ものとして扱います。

ただし、このルールが適用されるのは「労基法上、労働時間規制が適用される社員」に限られるため、次に該当する場合は通算されません。

  • 労基法が適用されないケース:フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事など
  • 労基法は適用されるが労働時間制度が適用されない場合:農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度の対象者など

3 残業代の支払い義務は「労働契約の締結時期」と「実際の労働順序」で判断する

労働時間を通算する場合、気になるのは、

自社と副業先のどちらが残業代を支払うのか

ですが、これは労働契約の締結順と所定外労働が行われた順で判断します。簡単に言うと、原則として次の順番で労働時間を通算することになります。

  • 所定労働時間を「先に契約をした会社→後に契約をした会社の順」に通算する
  • 所定外労働時間を「実際に所定外労働が行われる順」に通算する

1)所定労働時間を「先に契約をした会社→後に契約をした会社の順」に通算する

まず、

自社が副業先よりも早く社員と労働契約を締結していれば、「自社の所定労働時間→副業先の所定労働時間」の順で通算し、法定労働時間を超えていれば、副業先で時間外労働が発生(逆の場合は、自社で時間外労働が発生)

します。

図表1は、1日の所定労働時間(就業規則に定める労働時間)が8時間の社員が、新たに副業先と1日の所定労働時間が4時間の労働契約を締結したイメージです。

労働契約の締結時期と時間外労働の関係

2)所定外労働時間を「実際に所定外労働が行われる順」に通算する

次に、

自社と副業先の所定労働時間を通算に加えて、所定外労働時間がある場合には、実際に所定外労働が行われる順に通算し、法定労働時間を超えたら時間外労働が発生

します。

図表2は自社と副業先の所定労働時間が共に1日4時間の社員が、自社で5時間、副業先で5時間働いた場合のイメージです。

自社と副業先の所定労働時間

自社と副業先の所定労働時間は通算8時間(4時間+4時間)で、すでに法定労働時間(原則として、1日8時間、週40時間)に達しています。ここで社員の労働時間を延長した場合、自社で1時間(5時間-4時間)、副業先で1時間(5時間-4時間)の時間外労働が発生します。

3)足元では「労働時間の通算ルール」を見直す方向で議論が進行中

以上が原則的な「労働時間の通算ルール」ですが、実は政府内ではこのルールを見直す方向で議論が進められています。簡単に言うと、

割増賃金を算定する際、本業先と副業先の労働時間を通算しない運用にする

ことが検討されています。

1)と2)のルールを運用するには、本業先と副業・兼業先がお互いの会社の労働時間を正確に把握する必要があり、会社の負担が大きすぎるのではないかと懸念されているのです。政府は労働時間の通算ルールの規制を緩和することで、全国的に副業を促進しようと考えているようです。

4 「管理モデル」を活用すれば、実労働時間の把握負担を軽減できる

前章の3)の「労働時間の通算ルール」はあくまで議論中の段階ですが、実は現行のルールでも、

副業先での実労働時間を把握しなくても、労基法を遵守できる労働時間管理の方法があります。いわゆる「管理モデル」を使用する場合

です。ガイドラインでは、

自社と副業先がそれぞれ時間外労働の上限を設定し、社員がその範囲内で働く場合、互いの実労働時間を把握しなくても労基法を遵守できる

とされています。これが管理モデルです。具体的には、

労働時間を通算した際に、時間外労働(休日労働を含む)が単月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内となるよう、自社と副業先がそれぞれ時間外労働の上限を設定

します。なお、この単月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内というのは、労基法で定められている時間外労働の上限です。

例えば、図表3は所定労働時間が共に1日4時間の自社と副業先が、1日単位・1カ月単位(20日稼働)でそれぞれ時間外労働の上限を設定する場合のイメージです。

管理モデルのイメージ

社員の時間外労働の上限は1カ月単位で通算60時間(3時間×20日)です。社員がこの上限を守って6カ月間働く場合、時間外労働は通算で単月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内に収まるので、自社と副業先は互いの実労働時間を把握しなくてもよいということです。なお、管理モデルを採用したとしても、割増賃金の支払いは免れません。自社では法定労働時間を超えた部分について割増賃金を支払う必要があり、また、副業先は副業先の労働時間全体を時間外労働として計算し、割増賃金を支払うことになります。

また、当然のことながら、それぞれの会社の時間外労働の上限については、事前に社員を通じて共有しておかないと、管理モデルが正しく機能しません。また、副業・兼業先に対して、直接または社員を通じて、管理モデルを適用することを提案する必要があります。

以上(2026年3月更新)
(監修 TMI総合法律事務所 弁護士 池田絹助)

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画像:takasu-Adobe Stock

【業務効率化】Wordでできる!? 音声データから議事録作成

1 議事録作成は、もはや「生成AI」の利用が前提に

会議につきものの議事録作成ですが、「Zoom」「Microsoft Teams」「Google Meet」といったオンライン会議ツールが普及した今では、会議中にリアルタイムで発言をテキスト化し、生成AIで要約を自動作成し、議事録として共有することも当たり前のようになっています。

こうしたオンライン会議ツールを利用していない場合、多くの会社で使われている Word for Microsoft 365が役に立ちます。あまり知られていないかもしれませんが、

Wordの「トランスクリプト機能」を使って、音声ファイルから文字起こしすることが可能

です。トランスクリプト機能は、発話者を個別に区切って音声をテキストに変換するものです。この記事では、Windows PCを使う前提で、事前に録音した音声ファイルをアップロードし、トランスクリプト機能を使って文字起こしする方法を紹介します。

2 音声ファイルのアップロードから文字起こしまで

1)音声ファイルのサンプル

ここでは政府広報オンライン「音声広報CD『明日への声』令和8年(2026年)1月発行」に収載されている「リチウムイオン電池、誤った捨て方で火災に!」(onseicd_202601_04.mp3)を音声ファイルのサンプルとして使用することとし、あらかじめダウンロードしておきます。

政府広報オンライン 「音声広報CD 『明日への声』令和8年(2026年)1月発行」
https://www.gov-online.go.jp/media/cd/202601/

2)Wordの [ホーム] タブ画面

Wordを起動し、[ホーム]タブ画面の「ディクテーション」のドロップダウンから「トランスクリプト」をクリックします。

文字起こしの手順

「音声をアップロード」をクリックすると、エクスプローラー画面が開きます。なお、「録音を開始」をクリックすると、Wordで直接録音した音声ファイルを使うことができますが、詳細は割愛します。

エクスプローラー画面で、あらかじめダウンロードしておいた音声ファイルを選択して[開く]をクリックします。

文字起こしの手順

しばらく待ちます。

文字起こしの手順

文字起こし結果が表示されます。「ドキュメントに追加」をクリックすると、「テキストのみ」「話者」「タイムスタンプを使用する」「話者とタイムスタンプ」の4つから選択してWord文書に追加できます。

文字起こしの手順

Microsoft 「レコーディングの文字起こし」
https://support.microsoft.com/ja-jp/office/-7fc2efec-245e-45f0-b053-2a97531ecf57

3 音声ファイルから文字起こしして議事録を作成するポイント

1)いかにクリアな音質の音声ファイルを用意するか

前章でサンプルとして使用した音声ファイルは、クリアな音質でしたが、こうした音声ファイルを実際の会議で録音できるかどうかは、事前に何度か試してみる必要があります。音質は、録音機材、特にマイクの性能に依存するので、品質に定評のあるものを選ぶようにしましょう。ノイズキャンセリング機能を搭載したものや、周囲の雑音を拾いにくい指向性マイクを使うのも良いかもしれません。

2)生成AIでの文字起こしや要約を鵜呑みにしない

実際の会議では、そのまま文字起こしすると「えーっと」「あの」「ちょっと」などのフィラー(つなぎ言葉)が目立つかもしれません。このあたりは、生成AIを上手に使うことで相当な部分が解決できます。

一方、雑音や複数の話者の発言が重なることで文字起こし自体に誤りがあったり、固有名詞や専門用語をAIが認識できなかったりすることもしばしばです。生成AIは、会議内容を誤解したり、存在しない情報を捏造したりして、誤った議事録を作成してしまう恐れもあります。最終的な情報の正確性は人間が担保する必要があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Golubovy-shutterstock