目次
1 両立支援等助成金で社員の子育てをサポート!
「育児休業」(以下「育休」)等をはじめ、子育てをする社員の支援制度は近年ますます手厚くなっています。社員にとっては嬉しい一方、人手不足の中小企業にとっては、「育休等を取得する社員が増えたら、仕事が回らなくなる……」という不安があるかもしれません。
ですが、
休業する社員の業務をカバーする他の社員に手当等を支給したり、代替要員を新たに雇ったりすると、最大で1342万円が支給
されるのをご存じでしょうか。この記事で紹介する両立支援等助成金がそうです。「働きやすさ」が社会的にも求められている昨今、会社に「子育てなどと仕事の両立」を求める社員もいるでしょう。このニーズに応える上で、この助成金はとても重要です。以降で、制度概要と申請上のポイントを専門家が解説します。
なお、助成金の内容は2026年4月8日時点のもので、将来変更される可能性があります。また、申請書の書き方や添付書類については、全コースまとめてこちらに記載されていますので、ご確認ください。
■厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html
2 育休中等業務代替支援コース(最大1342万円)
1)育休中等業務代替支援コースとは?
社員が育休を取得したり、短時間勤務制度を利用したりしている間、その社員の業務をカバーする他の社員に手当等を支給したり、代替要員を新たに雇ったりした場合に助成金を受け取れるコースです。
2)助成金を受け取るには?
このコースは「手当支給等(育児休業)」「手当支給等(短時間勤務)」「新規雇用(育児休業)」に分かれていて、次の要件などを満たす必要があります。
1.手当支給等(育児休業)
社員が7日以上の育休(産後パパ育休を含む)を取得し、その業務をカバーする他の社員に対し、会社が手当等を支給する必要があります。手当等の内容は事前に就業規則等で定めなければなりません。
2.手当支給等(短時間勤務)
社員が短時間勤務制度(3歳未満の子を養育する社員を対象とするもの)の措置を受けられる制度を1カ月以上利用し、その業務をカバーする他の社員に対し、会社が手当等を支給する必要があります。手当等の内容は、事前に就業規則等で定めなければなりません。
3.新規雇用(育児休業)
社員が7日以上の育休(産後パパ育休を含む)を取得し、その業務をカバーする他の社員を、会社が新たに雇用し(または派遣で受け入れ)、実際に業務を代替させる必要があります。
3)受け取れる金額はいくら?
手当支給等(育児休業)・手当支給等(短時間勤務)・新規雇用(育児休業)それぞれについて、図表1の額を受け取れます。その他、
- 育休取得者(または短時間勤務利用者)が有期雇用の場合、業務代替期間が1カ月以上であれば「有期雇用労働者加算」
- プラチナくるみん認定を受けている場合、「プラチナくるみん認定事業主への加算」
- 育休の取得状況を厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で公表した場合、「育休等に関する情報公表加算」
を受けられます。
■厚生労働省「両立支援のひろば」■
https://ryouritsu.mhlw.go.jp/

支給額の計算がややこしいですが、仮に手当支給等(育児休業)を1年度10人まで申請した場合、加算も含めると最大1342万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
子育てをする社員へのサポートに注力するあまり、その業務をカバーする周囲の社員へのフォローが手薄になり、「制度を利用する人だけが優遇されている」といった不平不満が職場から上がるケースは珍しくありません。支援制度は、対象となる社員だけでなく、その業務を引き受ける同僚にも目を配ってこそ、職場全体で納得感をもって運用できるものです。助成金額と照らし合わせつつ、手当等がカバーに回る社員の負担を考慮した額になるよう制度を設計しましょう。
また、このコースは1年度につき10人までが支給対象になるという手厚い内容ではありますが、「手当支給等(育児休業)」「手当支給等(短時間勤務)」「新規雇用(育児休業)」を合わせて10人なので、どの方法で社員の負担を軽減していくのかを計画的に決めましょう。
くるみん認定・トライくるみん認定を受けている事業主については特例があり、2031年3月31日までに1事業主当たり延べ50人までの申請が可能です。認定取得済み、あるいは取得予定の企業にとっては、さらに活用余地が広がります。
なお、コース共通の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。申請日が行動計画期間内であることも条件となっていますので、ギリギリで動くのではなく余裕を持った対応が求められます。(プラチナくるみん認定を受けている場合、行動計画の策定・届出がなくても支給対象)。
3 柔軟な働き方選択制度等支援コース(最大197万円)
1)柔軟な働き方選択制度等支援コースとは?
3歳以上小学校就学前の子を養育する社員のために、短時間勤務などの柔軟な働き方に関する制度等を複数導入した上で、実際に対象者に利用させた場合に助成金を受け取れるコースです。
2)助成金を受け取るには?
このコースでは、「柔軟な働き方選択制度」という図表2の制度等を、最低でも3つ以上導入する必要があります(就業規則等への規定も必須です)。制度等を導入した上で、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」という、社員の柔軟な働き方をサポートするための計画を策定します。その計画に基づいて社員が利用開始から6カ月間のうちに、制度等を一定基準以上利用すると、助成金を受け取れます。助成対象は中小企業のみです。

3)受け取れる金額はいくら?
次の2つの場合に、図表3の額を受け取れます。
- (制度等を導入し、対象者が利用)柔軟な働き方選択制度を3つ以上導入し、社員が1つ以上制度を利用した場合
- (子の看護等休暇制度有給化支援)子の看護等休暇を有給化し、社員が利用した場合
また、「育休等に関する情報公表加算」の他、柔軟な働き方選択制度の全てまたは子の看護等休暇(有給)を、次の子を養育する社員が利用できるようにした場合にも、次の加算を受けられます。
- (制度利用期間延長加算)3歳以上中学校修了前の子を養育する社員が対象
- (障害児等要配慮支援加算)18歳到達年度の末日(3月31日)までまたは高等学校等を修了する年の末日(3月31日)までの障害児等を養育する社員が対象

制度等を4つ以上導入して1年度に社員5人が利用し、さらに子の看護等休暇を有給化した場合、加算も含めると最大197万円を受け取れる計算になります。
4)専門家からのワンポイントアドバイス
このコースは、育児・介護休業法の「柔軟な働き方を実現するための措置等」との関連性が深いです。会社は2025年10月1日から、図表2で紹介した「始業時刻の変更」など5つの制度から2つ以上を選択して実施する義務を負っています。
このコースも、受給の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。
4 出生時両立支援コース(最大127万円)
1)出生時両立支援コースとは?
会社(実際は支店等の事業場単位)が、「男性社員」が育休を取得するための雇用環境や業務体制を整備し、男性社員が実際に育休を取得した場合、助成金を受け取れるコースです。「子育てパパ支援助成金」とも呼ばれます。
2)助成金を受け取るには?
このコースは「男性労働者の育児休業取得」「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」に分かれていて、次の要件などを満たす中小企業が対象となります。
1.男性労働者の育児休業取得
一定の「雇用環境整備措置」を講じた上で、就業規則等に基づいて引き継ぎなどの業務体制を整備し、男性社員が産後8週間以内に連続5日以上の育休(産後パパ育休を含む)を取得する必要があります(2人目の取得者は10日以上、3人目の取得者は14日以上)。この他、休業期間中に含まれる所定労働日数に関する日数条件もあります。
雇用環境整備措置とは、次の5つです。育休取得者の数などに応じて、2~5つの措置を講じなければなりません。
- 育休に係る研修の実施
- 育休に関する相談体制の整備
- 育休の取得に関する事例の収集・提供
- 育休に関する制度・育休の取得の促進に関する方針の周知
- 育休の取得が円滑に行われるようにするための業務配分や人員配置の見直し
2.男性労働者の育児休業取得率の上昇等
男性社員の育休取得率が、一定の要件を満たす必要があります。また、「男性労働者の育児休業取得」と同じく雇用環境や業務体制の整備に関する要件もあります。
3)受け取れる金額はいくら?
「男性労働者の育児休業取得」「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」それぞれについて、図表4の額を受け取れます。また、育休中等業務代替支援コースと同じく、「プラチナくるみん認定事業主への加算(「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」のみ)」「育休等に関する情報公表加算」も受けられます。

「男性労働者の育児休業取得(3人分)」と「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」、さらに加算を含めると、最大127万円を受け取れる計算になります。ただし、第1種と第2種を、同一年度内に申請することはできません。
4)専門家のワンポイントアドバイス
このコースも、受給の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。
「男性社員の育休取得」を後押しするものですが、制度を整えるだけでは取得は進みません。特に中小企業では、「自分が休んだら現場が回らない」「上司や同僚に迷惑がかかる」と感じて取得をためらう男性社員が少なくありません。雇用環境整備措置の中でも「研修の実施」や「事例の収集・提供」を通じて、「取得して当たり前」という空気をつくることが大切です。
5 育児休業等支援コース(最大122万円)
1)育児休業等支援コースとは?
社員(男性・女性を問わない)の育休の取得・職場復帰が円滑に進むよう、会社が一定の取り組みをした場合、助成金を受け取れるコースです。
2)助成金を受け取るには?
このコースは「育休取得時」「職場復帰時」に分かれていて、次の要件などを満たす中小企業が対象です。
1.育休取得時
「育休復帰支援プラン」という、育休(産後パパ育休を含む)の取得・職場復帰をサポートするための計画書を策定する必要があります。まず、育休復帰支援プランを使って、育休の取得・職場復帰をサポートする旨を社内に周知し、育休取得者のプランを本人との面談を通して作成します。その上で、本人に連続3カ月以上の育休を取得させる必要があります。
2.職場復帰時
1.の育休取得者の休業終了時に、本人と面談をして原職等に復帰させ、6カ月以上継続雇用する必要があります。「育休取得時」の助成金を受給していないと申請できません。また、育休取得者を継続雇用する際は、本人が雇用保険の被保険者である必要があります。
3)受け取れる金額はいくら?
育休取得時・職場復帰時それぞれについて、図表5の額を受け取れます。どちらも社員2人(無期雇用1人、有期雇用1人)まで受給可能です。また、「育休等に関する情報公表加算」なども受けられます。

育休取得時(2人分)と職場復帰時(2人分)、さらに加算を含めると、最大122万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
支給要領では、育休復帰支援プランを策定する場合、少なくとも育休取得者の、
- 業務の整理、引き継ぎに関する措置
- 休業中の業務内容等に関する情報提供に関する措置
について定めなければならないとされています。厚生労働省ウェブサイトでは、プランの様式や、職場の状況(代替要員の確保が難しい、残業が多いなど)に応じたモデルプランを記載したマニュアルが公表されているので、参考にしながら策定を進めてください。
■厚生労働省「育休復帰支援プラン策定のご案内」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000067027.html
このコースも、受給の条件として、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていることが必要となります。
6 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース(最大90万円)
1)不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースとは?
女性社員が不妊治療と仕事を両立したり、健康課題(月経や更年期)に対応したりするため、休暇制度などを導入し、実際に対象者に利用させた場合に助成金を受け取れるコースです。
なお、不妊治療部分は男女問わず対象となりますが、月経・更年期対応は女性社員が対象です。
2)助成金を受け取るには?
このコースは「不妊治療」「女性の健康課題対応(月経)」「女性の健康課題対応(更年期)」に分かれていますが、大まかな要件は共通しています。次の制度のいずれかを導入し、1年間に5日以上、対象者に利用させる必要があります。助成の対象は中小企業のみです。
- 休暇制度(不妊治療や女性の健康課題に対応するための特別休暇。多様な目的で利用できるものも可)
- 短時間勤務制度(1日の所定労働時間を1時間以上短縮する制度。ただし、利用しても1時間当たりの基本給等の水準の引き下げや雇用形態の変更がされないことが条件)
- 所定外労働制限(残業免除)、時差出勤制度、フレックスタイム制度、在宅勤務等
さらに、本コースの特徴として他コースのような上司面談ではなく、「両立支援担当者」の選任と相談対応体制の整備が申請要件となっています。
3)受け取れる金額はいくら?
不妊治療・女性の健康課題対応(月経)・女性の健康課題対応(更年期)それぞれについて、図表6の額を受け取れます。加算は特にありません。

それぞれについて支給要件を満たした場合、最大90万円を受け取れる計算になります。
4)専門家のワンポイントアドバイス
このコースでは、休暇制度や短時間勤務制度を1年に5日以上対象者に利用させる必要がありますが、不妊治療や女性の健康課題対応が目的であることが明確でない場合、利用しても日数にカウントされません。
例えば、休暇制度を設ける場合、女性社員が利用しやすいよう「ファミリーサポート休暇」などの名称にすることがあります。ただし、助成金の受給を考えるのであれば、「休暇申請書などの際に利用目的を記載する欄を作ること」などを検討する必要があるかもしれません。ただ、その場合、労務担当者が男性だと申請しにくい女性社員もいるでしょう。制度の運用をスムーズにするためにも、「両立支援担当者」を男女混合の少人数チームで構成するなどの配慮も検討しましょう(両立支援担当者の選任は、本コースの要件でもあります)。
以上(2026年5月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)
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