【規程・文例集】「防災管理規程」のひな型

1 能登半島地震が起こった今年、改めて防災を考える

 日本では、地震に限らず、様々な災害が発生します。万一の際、社員の安全や自社の資産を守るための拠り所となるのが防災管理規程です。もし、防災管理規程をまだ作成していないようであれば、これを機に検討してみましょう。防災対策に関する情報をまとめた行政機関のウェブサイトもあります。参考にしてください。

■内閣府「企業防災のページ(内閣府防災担当)」■

https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/

■東京都防災ホームページ「防災ブック」■

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1028036/

2 防災管理規程のひな型

以下で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容は異なります。規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【防災管理規程のひな型】

第1条(目的)

本規程は防災管理の徹底を期し、災害における人的・物的被害を最小限にとどめるために必要な事項について定める。なお、本規程でいう災害とは、火災、地震、暴風雨、洪水などに起因する災害をいい、労働災害、交通事故、テロ、ミサイル、感染症は除く。

第2条(適用範囲)

本規程は、消防法などの関連法令に基づき全社に適用する。

第3条(防災管理体制)

会社は、防災管理の推進・維持のため、次に定める管理者および会議体を置く。

  1. 全社防災対策本部長
  2. 地域防災対策責任者
  3. 防火管理者
  4. 火元責任者
  5. 防災対策本部
  6. 防災対策委員会
  7. 自衛消防隊

第4条(全社防災対策本部長の任命および職務)

1)全社防災対策本部長は、本社に置くものとし、総務部長がその任に当たる。

2)全社防災対策本部長は、全社的な防災対策の統括をするものとする。

第5条(地域防災対策責任者の任命および職務)

1)地域防災対策責任者は、拠点ごとに置くものとし、労働安全衛生法に基づいて選任した総括安全衛生管理者とする。ただし、総括安全衛生管理者を置かない拠点においては、労働安全衛生法に基づいて選任した安全管理者などの中から会社が個別に指名する。

2)地域防災対策責任者は、拠点における防災対策の統括をする。また、災害に際しては臨機応変な処置を講じるとともに、速やかに全社防災対策本部長に状況を報告しなければならない。

第6条(防火管理者の任命および職務)

1)防火管理者は、拠点ごとに置くものとし、法的資格者の中から全社防災対策本部長が任命する。また、防火管理者を置かない場合は、地域防災対策責任者が防火管理者の職務に準じて防火管理事項を実施・推進するものとする。

2)防火管理者は火災の予防および災害の防止を図るため、次の職務を誠実に行うものとする。

  1. 消防計画の作成および変更
  2. 建物、火気使用設備器具、危険物施設などの検査および危機管理
  3. 避難通路および避難設備などの維持管理
  4. 消防用設備などの点検および整備
  5. 火気の使用または取り扱いに関する監督
  6. 収容人員の管理
  7. 消火、通報および避難などの訓練の実施
  8. 従業員などに対する防災意識の啓発
  9. 火災およびその他の災害に対応できる体制、対策の維持管理
  10. その他、防災管理上必要な業務

3)防火管理者は前項の職務を遂行するに当たり、必要に応じて第7条に定める火元責任者および建物・諸設備などの点検を行う者(以下「設備点検員」)を任命するものとし、消防管理上必要な命令および指示をしなければならない。

第7条(火元責任者の任命および職務)

1)火元責任者は、各部門の責任者もしくはそれに準ずる従業員の中から防火管理者が任命する。

2)火元責任者は、防火管理者の命令および指示に従い、防火措置の実施、確認、その他の責任を負うものとする。

第8条(防災対策本部および活動)

会社は、重大な災害が発生した場合、本社に防災対策本部を置き、対策を決定する。また、必要に応じて、防災対策本部の決定した対策を講じるための全権を委嘱した役員を被災地に派遣する。

第9条(防災対策委員会)

1)防災対策委員会は、拠点ごとに置く。

2)防災対策委員会の委員長は、地域防災対策責任者とする。

3)防災対策委員会は、防火管理者、火元責任者、設備点検員、拠点内の各部門から任命された1名以上で構成する。

4)防災対策委員会は、原則として2カ月に1度開催する。

第10条(防災対策委員会の活動)

防災対策委員会は、主として次の事項に関する審議を行い、必要な事項を実施・推進する。

  1. 消防計画の立案
  2. 防災に関する諸規程の立案
  3. 防火対象物の防火構造および避難施設並びに消防用設備などの維持管理
  4. 消防設備の改善強化
  5. 消火・通報および避難訓練などの立案
  6. 防災意識の啓発
  7. 防災予防上必要な教育および消防・避難訓練の計画並びに実施
  8. 火災の際の隣接防火対象物の応援協定
  9. その他防災に関する必要事項

第11条(自衛消防隊)

1)自衛消防隊は、拠点ごとに置くものとし、火災のみならずその他の災害発生時に、人的・物的被害を最小限にとどめるための活動を行う。

2)自衛消防隊の隊長は、地域防災対策責任者とする。

3)自衛消防隊の隊長補佐は、防火管理者とする。

4)自衛消防隊には、隊長および隊長補佐の下に次の班を置く。

  1. 通報連絡班
  2. 初期消火班
  3. 避難誘導班
  4. 応急救護班
  5. 安全防護班

5)第4項に定める各班には、班長を置く。班長は各部門の責任者、もしくはそれに準ずる従業員の中から地域防災対策責任者が任命する。また、各班の班員は地域防災対策責任者が任命する。班員数については拠点の規模などを勘案の上、防災対策委員会が決定する。

第12条(自衛消防隊の活動)

自衛消防隊は、火災やその他の災害が発生した場合に、所有する組織力や装備を有効に活用して、人的・物的被害を最小限にとどめることを目的に、次の活動を実施する。

  1. 消防機関への通報
  2. 初期消火活動
  3. 人命の救助
  4. 関係者以外の者の立ち入り禁止処置
  5. 消防活動の障害となる物件の排除
  6. 従業員の避難誘導
  7. 必要な資器材の調達
  8. その他、人的・物的被害を最小限にとどめることに資する活動

第13条(消防計画)

防火対象物全般にわたる消防計画は防火管理者が企画・立案し、防災対策委員会で決定する。なお、消防計画については消防法など法令の定めるところによる。

第14条(防火点検)

建築物・火気・電気・危険物などにおける各施設の自主点検は、火元責任者が週1回実施し、点検結果は記録して、必要な整備事項があれば地域防災対策責任者に報告し処置するものとする。

第15条(設備管理)

1)消防用諸設備および用水については、火元責任者が管理状況を確認するものとし、防火管理者は巡回点検を定期的に行い、実施状況を監督しなければならない。

2)電気設備、警報設備、避難設備など、専門的な点検を要するものは、防火管理者が点検依頼先を指定し、社内外の専門技術者の点検を受けるとともに、点検結果を記録しなければならない。

第16条(防災訓練)

1)防災対策委員会は防火管理者が中心となり、防災訓練と防災教育の講習会を年1回開催する。

2)従業員は防災訓練並びに防災教育の講習会に参加しなければならない。

第17条(火災予防)

1)社内における指定場所以外の喫煙は厳禁とし、社内外における工事や大量の危険物取り扱いの際の喫煙場所は、事前に防火管理者の承認を受けなければならない。

2)臨時に火気を使用する場合、防火管理者並びに火元責任者の許可を得なければならない。

第18条(災害防御)

災害防御のため、該当者は次の項目に努めるものとする。

  1. 通報連絡
  2. 災害(特に火災)発生において発見者は、所轄の消防署へ通報するとともに、地域防災対策責任者などの関係者もしくはそれに準ずる者に連絡する。連絡を受けた者は、社内放送または口頭連絡により、災害発生を知らせる。

  3. 消火活動
  4. 自衛消防隊は、社内放送および連絡に基づき、直ちに消火活動に当たる。

  5. 避難誘導
  6. 自衛消防隊の誘導により行う。

第19条(安否確認)

従業員は各自、自身と家族の安全措置を講じた後、速やかに所属拠点へ安否情報を報告する。

第20条(災害復旧)

1)地域防災対策責任者は、事業を速やかに回復させるため、次の項目に努めるものとする。

  1. 勤務環境の整備
  2. 土地、施設および設備の復旧
  3. 備品などの調達および修繕
  4. その他、災害復旧に必要な事項

2)地域防災対策責任者は、応援要員、復旧資材、宿泊施設、食料、復旧日程などの計画を策定し、全社防災対策本部長に報告する。

3)地域防災対策責任者は、復旧計画の実施に当たって、自治体、防災関係機関などと密接な連絡を取りながら復旧を行う。

第21条(罰則)

役員および従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第22条(改廃)

本規程の改廃は、取締役会の承認による。

附則

本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2024年9月更新)

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安否確認に資金繰り……災害からヒト、カネ、モノを守りきれ!

大規模な災害が続く昨今、万が一のとき、会社が社員の安全を守り事業を継続するには、日ごろからの準備が欠かせません。社員の安否確認やデータ・書類のバックアップ、資金繰り、労務管理など、あらゆる場面で発生するイレギュラーに対し、その場の判断だけで対応するのは不可能です。この【中小企業のためのBCP】シリーズでは、中小企業が押さえておきたい防災・BCPの基本を、テーマごとに分かりやすくご紹介します。

1 「そのとき社員は動けるか?」~AED に初期消火、今こそ見直す防災訓練~

大規模な災害時、社員が適切な行動を取るためには、日ごろの防災訓練が欠かせません。例えば、大地震の場合、「安全確保と応急救護」「通報と初期消火」「避難」というのがおおまかな初動対応の流れになります。これを想定した防災訓練を実施する場合、まずは基本となる

「応急救護訓練」「通報・伝達訓練」「消火訓練」「避難訓練」のポイントを押さえる

ことが大切です。次のコンテンツで、AEDの使い方、119番通報の具体的な伝え方、消火器の適切な使用方法などを紹介します。

2 社員の「安否確認」手段を整備しよう

いざ災害が起こってもスムーズに行動できるよう、事前に決めておきたいのが、安否確認の手段です。具体的には「メールやSNS」「災害用伝言ダイヤル(171)」「災害用伝言板(web171)」などがありますが、

それぞれの手段で一長一短があるので、違いを理解し、どれを優先的に使うかを決める

ことが大切です。次のコンテンツで、社員の安否確認手段の整備方法を紹介します。

3 テレワークや外出中の社員を災害から守るためのチェックリスト

社員が外出中に災害があった場合、普段の連絡手段が使えないことがあります。加えて、

オフィス街、住宅街、地下街、電車の中、車での運転中など、どこで災害にあったかによって対処法も異なる

ので注意が必要です。次のコンテンツで、オフィスの外での防災対策について、災害が発生した際の対処法や普段から備えておくべきことをチェックリスト付きで紹介します。

4 重要なデータ・書類のバックアップ

電子データや紙の重要書類は、それが使えなくなると事業の存続に関わる危機的な影響が及ぶため、バックアップが不可欠です。電子データや書類をバックアップする方法としては

  • 電子データ:外部記憶媒体、ネットワークストレージ(NAS)、オンラインストレージ
  • 書類:コピーを取る、スキャナーなどで電子データ化する

などが挙げられます。次のコンテンツで、重要なデータ・書類のバックアップ方法や、バックアップ体制を整えるポイントを紹介します。

5 チェックリストで確認! 「経理部門」のBCP

会社にとって「カネ」を管理する経理部門は、事業活動の血液とも言える重要な役割を担っています。その機能が停止すると事業に甚大な影響を及ぼすため、

「オフィスや工場の閉鎖」「情報システムの使用不能」「社員の勤務不可能」といったシナリオも想定した上で、被害額の算出、運転・復旧資金の見積もりなどの対策を打つ

必要があります。次のコンテンツで、経理部門におけるBCPの策定ポイントを紹介します。

6 災害時の労務管理!社員の賃金が振り込めなくなったら?

災害時は会社の事業継続が重要で、「労務管理」もその一環です。例えば、家族の治療や家屋の修理などでお金が必要なときに、賃金の支払いが滞ったら大変です。労働基準法などの定めに従って行動することが基本になりますが、

  • 災害時も平常時も変わらず適用されるルール(例:賃金は毎月1回以上、一定の期日に支払わなければならない)
  • 災害時のみ適用される特殊なルール(例:36協定によらずに社員に残業を命じられる)

があるので注意が必要です。次のコンテンツで、災害時の賃金支払い、休業手当、労働時間管理などの労務管理ルールを紹介します。

7 【規程・文例集】「防災管理規程」のひな型

万が一の際に社員の安全や自社の資産を守るための拠り所となるのが防災管理規程です。被害を最小限にとどめるためには、

組織体制(全社防災対策本部長、防火管理者など)を明確にした上で、職務や活動内容(火災予防、設備点検、消防計画の策定、消火・通報・避難訓練の実施など)を定める

ことが大切です。次のコンテンツで、「防災管理規程」のひな型を紹介します。

以上(2025年7月作成)

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【労災の落とし穴(運送業)】 積み降ろしや長距離運転のぎっくり腰は労災じゃないでしょ?

この記事では、現役社労士が直面した小さな運送業の労災の事例として、「業務中にぎっくり腰を起こした社員について、『もともと腰が悪かったのなら、労災ではない』と判断してしまった会社」の話を紹介します(実際の会社が特定できないように省略したり、表現を変えたりしているところがあります)。

1 荷物の積み降ろしや長距離運転で腰痛に。でも会社が労災申請してくれない……

社員数5人の配送会社に勤めるドライバーのDさん。重たい段ボール箱を1人で何度も積み降ろしする作業を続けていました。フォークリフトはあるものの、使い勝手が悪く、「急いでいるから手作業のほうが速い」という社長の考えから、ほとんど使われていない状態です。ある日、Dさんは作業中に積み荷を落としそうになって腰をひねり、病院で「急性腰痛(ぎっくり腰)」と診断されます。数日は安静が必要と言われ、配送業務を休まざるを得なくなりました。

また、Dさんに加え、もう1人ぎっくり腰になってしまった社員ドライバーがいました。勤続10年以上の長距離トラックドライバー、Eさんです。Eさんは、座った姿勢を長時間維持し続ける運転業務で腰に負担がかかり続け、ある日、トラックから降りた拍子に腰を痛めてしまいました。

しかし、社長はDさんにもEさんにも「もともと腰が弱かったんじゃない? ぎっくり腰なら健康保険で通院して、休むなら有休を消化してくれ」と言い放ち、労災申請をする気配がありません。2人とも「仕事が忙しいから無理が祟ったのかも」と考え、会社に迷惑をかけたくない一心で、そのまま健康保険を使ってしまいました。

2 実務のポイント(正しい認識)

腰痛の業務起因性については、図表のように独自の基準が定められています。「災害性の原因による腰痛」「災害性の原因によらない腰痛」にそれぞれの基準がありますが、今回の場合、体勢を崩して腰をひねったDさんは赤字部分、長時間立ち上がることができずに業務を続けたEさんは青字部分のルールが適用される可能性があります。

腰痛の業務起因性

Dさんは作業中に腰をひねり、ぎっくり腰と診断されているので、

医師が「業務により症状が著しく悪化した」と明確に結論付けたのなら、業務起因性が認められる可能性が高い

です。業務遂行性については、そもそも業務時間中に発生した事故ということで認められるので、このケースが労災認定される可能性も高いといえるでしょう。

Eさんは、長時間立ち上がれず、同じ姿勢を保って行う業務に従事したことにより、腰を痛めています。災害性の原因によらない腰痛は、災害性の原因による腰痛に比べると、業務との因果関係が証明しにくい面がありますが、こちらも

医師が「長距離トラックの運転業務に従事したことにより、筋肉等の疲労を原因とした腰痛を発症した」と明確に結論付けたのなら、業務起因性が認められる可能性が高い

です。なお、いずれのケースも、医師の判断も待たず、健康保険で通院させることは、労災かくしにつながる恐れがあるのでやめましょう。

また、このケースでは社長がDさんとEさんに「休む場合は、有休(年次有給休暇)を消化するように」と指示していますが、そもそも労災により休業する場合、一定の要件を満たすことで労災保険の休業補償給付が受けられるので、有休よりもそちらを利用したほうが、会社も金銭的リスクを軽減できます。

3 腰痛については医師の判断に任せつつ、社内では腰痛予防対策を講じる

腰痛の悪化に医学的な根拠があるかどうかを判断するのは医師なので、社員本人や社長が勝手に判断せず、まずはきちんと医師に相談するようにしましょう。

Dさんの場合、フォークリフトなどの機器を導入していても、活用せずに手作業を行っていたことがぎっくり腰の遠因になっていますが、こうした状況は、会社が安全配慮義務に違反していると判断されかねません。1人で扱える荷重の目安や、チームで分担して運ぶルールを設けるなど、労災予防策を整備しましょう。

また、Eさんの場合、長時間座った姿勢を保持することの悪影響を考慮して、トラックドライバーの限度基準告示などを確認しながら、「複数のドライバーが交代で運転する」「休憩時間を十分に確保する」などの対応が必要になってきます。

以上(2025年7月作成)

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【債権回収】日ごろから「債権管理」を徹底する

1 皆さんの会社は「債権管理」をしていますか?

皆さんの会社では、取引を開始した後も定期的に取引先の経営状態をチェックしていますか。もし、取引開始時の与信情報から何もアップデートしていないとしたら、危険なことです。請求業務も経理担当者任せにしたままだと、ある日突然、「未払いが回収できません!」と報告を受けることになるかもしれません。その取引先が大口だと事態は深刻です。中小企業の場合、

一部の大口との取引で収益の多くを賄っていることが多く、そうした取引先に対する売掛金が未回収だと、自社の資金繰りに大きな影響を及ぼし、最悪の場合は資金ショートを起こしてしまうからです。

そうならないためにも、日ごろから「債権管理」を徹底しましょう。債権管理とは、

滞りなく売掛金を回収するための業務全般

のことで、具体的には「請求書の発行や入金チェック、未入金の場合は催促」などの一連の流れとなります。

この記事では、債権管理の一般的な内容を紹介します。業務フローはさまざまなので、会社の状況に合わせて債権管理を徹底してください。

2 一般的な債権管理の流れ

1)請求書を発行する

取引先に請求書を発行します。継続取引の場合は、毎月、決まった日に請求書を発行します。スポットの場合は、納品(検収)後、速やかに発行するようにします。開発案件では、半年分の開発を期末にまとめて請求することもありますが、売掛金をきちんと把握していないと請求漏れが生じます。また、

取引先と共通の認識を持つために、面倒でも、その都度「注文書」と「注文請書」でやり取りすること

が大切です。

2)入金の確認と催促

請求書を発行したら、期日までに入金があるかをチェックします。インターネットバンキングを利用していれば、いつでも入出金明細を確認することができます。

また、たまにあるのが入金された金額の間違い(請求金額と違っている)です。取引先が悪意なく間違えているケースがほとんどで、継続取引の場合、実務負担を減らすために次回請求で調整することがあります。ただし、

実態と異なる会計上の処理は、「粉飾決算」となり得ます。自社としては効率的に処理したいだけかもしれませんが、問題行為であることを認識しなければなりません(特に決算月をまたぐ場合)。

3)未入金の場合の催促

もし、支払期日になっても入金がない場合は、速やかに取引先に催促の連絡をします。手違いのケースが多く、通常は即座に処理してもらえるのですが、最悪の事態は、こうしたありがちなシーンから始まるのも事実です。そのため、

  • 具体的な支払期日を明示せずに支払猶予を求められる
  • 催促メールを送ったが返信がなかなか来ない
  • 電話をしたが、いつもと様子が違った

といったように、違和感を覚えることがあれば要注意です。具体的にどのような対応を取るかは状況次第ですが、少しモードを変える必要があり、

状況によっては取引継続の有無を判断したり、債権債務(売掛債権と仕入債務)を相殺したりすること

になるかもしれません。

3 取引状況を把握する

取引の規模を確認します。例えば複数の部門と取引している取引先がある場合は、全体だけではなく部門ごとにも把握するのが理想的です。また、継続取引をしている場合は、足元の状況だけではなく、将来発生する可能性のある債権債務についても把握します。その上で、以下の情報をまとめておきます。

  • 取引先との間で発生している債権債務の額
  • 取引先との間で発生している債権債務の弁済期
  • 担保を設定しているか

取引先との間で債権債務が発生していれば、いざというときに相殺して、事実上債権を回収することができます。また、契約において「期限の利益喪失条項」を定めておけば、支払期日前でも債権回収ができることがあります。期限の利益喪失条項とは、支払遅延等が生じた場合に、

債務者に本来の支払期日よりも前に債務を弁済させる義務を生じさせる条項

です。

この他、取引先が有する不動産や動産などの資産、取引のある金融機関、取引先がどういった会社と取引をしているのかについて把握します。これにより取引先の体力等が推測できるので、取引を継続するか否かの重要な判断材料となります。

以上(2025年7月更新)
(監修 みらい総合法律事務所 弁護士 田畠宏一)

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隠れ脱水と交通事故リスク(2025/7号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

今年の夏も猛暑が予想されています。夏の高温多湿下では、熱中症のリスクが高まります。

2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、熱中症対策が義務付けられました。事業者には、より安全で健康的な職場環境の維持が求められています。

熱中症を引き起こす原因はいくつかありますが、今号ではその一つである「隠れ脱水」について確認していきます。

隠れ脱水と交通事故リスク

1 熱中症を引き起こす隠れ脱水に注意!

夏場の車内は、エアコンを停止するとすぐに高温になってしまうという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

暑さ指数(WBGT)※1 は熱中症予防を目的に提案されたものですが、これが28を超えると熱中症リスクが高まります(図1)。車内はエアコン停止の15分後に暑さ指数が危険レベルに達することもあります※2。

暑さ指数と熱中症患者発生率との関係

出典:環境省「熱中症予防情報サイト」/暑さ指数(WBGT)について学ぼうhttps://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_lp.php(2025年6月12日閲覧)

一方で、エアコンが効いている車内でも自覚のないまま脱水症状になってしまうことがあります。これを「隠れ脱水」と呼び、熱中症につながるため注意が必要です。

運転中は、トイレなどの心配から水分摂取を控えてしまう傾向があります。また、体感温度が下がっているため、喉の渇きを感じづらくなります。これらは隠れ脱水を招く要因となります。

隠れ脱水になると、体内の水分不足により血液の流れを悪化させ、熱がこもりやすくなります(図2)。その結果、体温が下がりにくくなり、熱中症のリスクが高まります。

熱が体内にこもりやすくなる「隠れ脱水」

※1 暑さ指数(WBGT)=熱中症指数 とは
熱中症の危険度を判断する値として気温、湿度、日射・輻射の周辺熱環境を考慮した指数
出典:環境省「熱中症予防情報サイト」/暑さ指数とは?https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php(2025年6月12日閲覧)

※2 出典:一般社団法人日本自動車連盟 JAFユーザーテスト「真夏の車内温度」
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/summer(2025年6月12日閲覧)

2 隠れ脱水に気付くには

気がつかないうちに脱水症状が進むと、熱中症につながります。それだけでなく意識障害などで重大事故を起こす可能性がありますので、できるだけ早めにその発症に気付くことが重要です。初期症状が出た場合や、その他体調に異変を感じたら、すぐに運転を中止し、医者にかかる、ためらわずに周囲に助けを求める、などの対応を行ってください。

~隠れ脱水の主な症状~

【初期】

  • 集中力・記憶力・認知機能の低下
  • 体がだるく感じる
  • 肌がべたつく
  • ふらつく

【中等度】

  • 頭痛、胃のむかつき

【高度】

  • 意識障害や痙攣

隠れ脱水症のチェック方法

出典:厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001088384.pdf(2025年6月12日閲覧)

3 隠れ脱水を防ぐために

こまめな水分・塩分の補給

喉が渇く前に意識的に水分補給を心がけましょう。目安は1~2時間に100~200mlで、水分と一緒に塩分の補給をすることも大切です。スポーツドリンクや経口補水液は、水分と塩分を同時に補給ができるのでおすすめです。利尿作用のあるコーヒーや緑茶などカフェイン入りの飲料は避けましょう。

こまめな水分・塩分の補給

適切な休憩

疲労を感じる前に、1~2時間に1回、15分程度の休憩を取りましょう。疲れていなくても、早めに休憩を取ることが大切です。休憩時には、車外に出て軽いストレッチをしたり、体を動かしたりすることも有効です。

特に高齢の方は、体温調節機能が低下しているため注意が必要です。なお、運転中の体調の変化は気づきにくいため、ウェアラブル機器※3によるアラート通知を利用することも有効です。

夏場は、これらの点に注意して隠れ脱水を防ぎ、安全な運転を心がけてください。

※3 SOMPOリスクマネジメント(株) 熱中症管理サービス『みまもりふくろう』
https://www.sompo-rc.co.jp/services/view/184

以上(2025年7月)

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中小企業の同一労働同一賃金

独立行政法人 労働政策研究 ・ 研修機構が今年3月に公表した「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査(企業調査)」の結果のうち、中小企業(従業員300人以下)に関係する主なデータを紹介します。

この記事は、こちらからお読みいただけます。pdf

2025年7月2日開催!脱炭素経営入門セミナーで未来を拓く!

2025年7月2日、山形県および県内金融機関3行にて、「脱炭素経営入門セミナー」を開催します。
参加費は無料です。ぜひご参加ください。

このセミナーでは、脱炭素経営の「なぜ」から「どうすればいいのか」まで、中小企業の経営者の皆様に本当に必要な情報を厳選してお届けします。

お申し込み締め切りは2025年6月30日(月)23:59 ※定員は100名程度です。定員になり次第締め切る場合があります。

お申し込みフォームはこちらから(外部サイトへリンク)(先着順)

セミナー内容はこちらの山形県のページ↓からもご確認いただけます。

セミナー概要

日時: 2025年7月2日(水)13:00~16:00(開場:12:15~)

会場: 山形県高度技術研究開発センター「多目的ホール」 (山形市松栄二丁目2番1号)

参加費: 無料

定員: 100名程度(定員に達し次第、締め切らせていただきます)

持ち物: お名刺2枚、筆記用具

ぜひお申し込みください!

脱炭素経営は、決して難しいことではありません。まずはこの「入門セミナー」で、その第一歩を踏み出してみませんか?

お申し込み締め切りは2025年6月30日(月)23:59 ※定員になり次第締め切る場合があります

お申し込みフォームはこちらから(外部サイトへリンク)(先着順)

【本件に関するお問い合わせ先】
きらやか銀行 法人サポート部 TEL:023-628-3788

以上(2025年6月)

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【中小企業のためのBCP】チェックリストで確認! 「経理部門」のBCP

1 経理部門におけるBCP策定が必要なわけ

企業において「カネ」を管理する経理部門は、決算業務(決算書・申告書の作成など)の他、現金の管理・出納業務、各種伝票の起票や請求書の発行など多岐にわたる重要な業務を担います。これにより、人間の血液のように企業にカネが循環し、事業活動をスムーズにしています。もし、災害などで経理の機能がストップしたら、事業活動に大きな影響を及ぼすため、

経理部門に特化したBCP

の策定が必要です。

災害のみならず、さまざまなリスクを想定し、どのような事態が起こるのかを把握していかなければなりません。

2 経理の機能がストップした場合のリスクシナリオ

経理業務を中断せざるを得なくなるリスクには、地震・津波などの広域災害、火災、感染症のまん延、情報システムの故障などがあります。これが顕在化した場合、オフィスや工場などの閉鎖、情報システムの使用不能、社員の勤務(出社・リモート)が不可能になるなどの被害が出る恐れがあります。

その際のリスクシナリオは次の通りです。

経理の機能がストップした場合のリスクシナリオ

最悪のシナリオは、

地震・津波などの広域災害、電気などの社会インフラの故障、デモなどによるオフィス・施設の破壊が生じて、オフィスや工場などの閉鎖、情報システムが使用不能、社員の勤務(出社・リモート)が不可能という3つの被害が「同時」に発生すること

です。BCP策定の際は、このような最悪の状況も想定しなければなりません。

3 当面の運転資金はいくら必要か?

緊急時は、事業継続に不可欠な経営資源が不足することに加え、急激かつ大幅に収益が落ち込む恐れがあります。そのため、当面の運転資金やオフィス・機械の修理に必要な復旧資金の確保が重要な課題となります。同時に取引先や、社員に対する給料の支払いも重要です。

そのような状況において、

経理部門は被害額を算出し、運転・復旧資金の見積もりを行うなど、通常の業務以外に重要な業務を任される

ことが想定されます。これらの見積もりは、経営者層がBCPを実行するに当たっての判断材料として、資金繰りや復旧スケジュールの決定などに大きな影響を与えるでしょう。

なお、決算や税務申告については、東日本大震災や新型コロナ感染症の感染拡大時などのケースにもあるように、一定期間の猶予が認められると想定されます。

4 支払いの遅延を防ぐための考え方

1)オフィスや工場などの閉鎖

オフィスや工場などが使用不能となった場合の対策は、

決算書、仕訳帳・現金出納帳、伝票などの重要書類を電子データ化し、別の場所(クラウドを含む)に保管すること

です。また、本社と支社が分かれている場合、被災した本社または支社の業務を、一時的に他の場所に移すことも検討しましょう。

2)情報システムが使用不能

情報システムが使用不能となった場合の対策は、

会計システムなどの基幹システム・データのバックアップ、複数のサーバーを置くこと

です。そうすることで、経理機能を他の支店などに移す場合もスムーズになります。また、インターネットバンキングを利用していれば、移動先でも資金決済などができます。

3)社員の勤務(出社・リモート)が不可能

社員が出社することも、リモート勤務することもできなくなった場合は問題です。一般的に経理業務は専門性が高く、また内部統制の観点から、担当者間の職務分掌(責任と権限の所在が分かるよう業務を整理・配分していること)が徹底されています。そのため、同じ経理部門でも担当外の業務を代行するのは難しいのです。それに、決済の権限がないために業務が進められないことも想定されます。

このようなケースを想定した対策は、

担当外業務の代行訓練、緊急時の権限移譲ルールの明確化、業務のマニュアル化

です。

5 被害額の算出、運転・復旧資金の見積もり

1)他部門間との連携方法を決めておく

緊急時に、被害額の算出、運転・復旧資金の見積もりなどの特別業務を行うためには、誰が、どの業務を、どのように進めるかを、事前に決めておく必要があります。被害状況の情報収集先となる部門とも事前に連携方法を決めてきましょう。

2)必要資金の見積もり

緊急時に、運転・復旧に十分な資金を確保することは簡単ではなく、事前の準備が重要です。万一の場合に備え、事前に緊急時の財務状況(復旧費用総額、キャッシュフローなど)を見積もり、それに基づいて必要な資金を確保しておくことが理想です。

中小企業庁が「中小企業BCP策定運用指針」で、財務診断モデルを紹介しているので参考になります。

■中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」財務診断モデル■
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/bcpgl_download.html#excel

3)緊急時の資金調達方法

追加の資金が必要になったら、政府系金融機関、民間金融機関などの貸し付けを検討します。

なお、災害発生時には政府系金融機関や国、地方自治体などが特別な融資制度を設ける場合も多いので、情報収集や活用の検討を行いましょう。加えて、復旧資金については、事前にオフィスや機械の損害保険、共済などに加入しておくことも有効です。

緊急時は、経理の責任者が経営者の代わりに資金繰りなどを任されることもあるでしょう。そうした場合に備え、経理の責任者は、日ごろから経営者と緊急時の財務管理について認識を共有しておく必要があります。

6 BCPを策定・定着させる

検討した対策をBCPとしてまとめます。その際、「全社共通」「リスク別」「部門・チーム別」などのようにレベル分けすると管理しやすくなります。さらに、BCPの発動基準や発動時の態勢、関係者の連絡手段なども明らかにします。

また、BCPは策定しただけでは十分に機能しないので、定期的な訓練や勉強会を行って組織全体にBCPを浸透させましょう。同時に、BCPの有効性も定期的にチェックし、必要に応じて内容の見直しを行うことが大事です。

7 経理部門におけるBCPの策定チェックリスト

1)ヒト

  • 災害が勤務時間外に起こった場合も、社員と連絡が取れるか?
  • 経理の責任者や実務担当者が勤務できない場合のルールは明確か?
  • 緊急時における業務の優先順位は明確か?
  • 緊急時における業務の役割分担はできているか?
  • 被害額の算出など、緊急時特有の業務について担当者は理解しているか?

2)モノ

  • オフィスの設備に転倒防止などの措置が施されているか?
  • オフィス周辺のハザードマップは把握しているか?
  • オフィス以外の場所(クラウドを含む)に情報のバックアップを保管しているか?
  • 情報伝達の手段、ルールは明確か?
  • 情報システムが停止した場合の代替案は決まっているか?

3)カネ

  • 事業が中断された際の、期間ごとの損失を想定しているか?
  • 1~2カ月分程度の運転資金に相当するキャッシュを確保しているか?
  • 損害保険で十分にリスクの移転ができているか?
  • 災害復旧を目的とした融資制度を把握しているか?
  • 緊急時の仕入れ先への代金、社員への給与の支払い方法を決めているか?

以上(2025年7月更新)

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画像:unsplash

2025年度版 「助成金」受給&活用マニュアル(2025年7月号)

国の雇用政策として、若者、女性、高年齢者、障害者など働く意欲のあるすべての人々が、能力を発揮し、安心して働き、安定した生活を送ることができる社会の実現が推し進められています。誰もが「出番」と「居場所」のある社会の実現を目指しています。
この雇用政策を達成するための手段のひとつが、雇用保険の助成金です。
雇用・労働分野の助成金は大きく分けて「雇用関係助成金」と「労働条件等関係助成金」があります。前者は雇用の安定、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上などを対象にしています。一方、後者は職場環境の改善、生産性向上に向けた取組みなどを対象としています。
本冊子では、これらの助成金のうち、中小企業にお勧めのものを中心に解説しています。
なお、助成金の詳細な要件については、個別に都道府県労働局やハローワークへ問い合わせて確認してください。

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中小企業の同一労働同一賃金

正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金ルール」が中小企業に適用され、約4年がたちました。政府は現在、同一労働同一賃金をより定着させるため、ルールの見直しを検討しています。本稿では、独立行政法人 労働政策研究 ・ 研修機構が今年3月に公表した「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査(企業調査)」の結果のうち、中小企業(従業員300人以下)に関係する主なデータを紹介します。

1 非正規労働者の待遇改善

調査は2023年9~10月に行われ、中小企業2,677社、大企業761社の有効回答が集まりました。同一労働同一賃金へ対応するため待遇を見直した中小企業では、パートや有期契約社員の基本給や賞与の改善が進みました。

慶弔休暇や病気休暇などの休暇制度、教育訓練も拡充されました。多くの中小企業で、同一労働同一賃金について何らかの対応が行われたことがうかがえます。詳細は次の表のようになっています。

パートや有期契約社員の待遇の新設・拡充等を行った中小企業の割合

基本給 57.0%
基本給の昇給の仕組み 40.0%
家族手当 13.1%
住宅手当 9.0%
精皆勤手当 10.1%
通勤手当 27.0%
賞与 41.1%
退職金 14.7%
慶弔休暇 28.3%
健康診断に伴う勤務免除や休暇 27.6%
病気休暇 24.1%
上記以外の法定外の休暇・休職 24.5%
教育訓練(OJT) 24.9%
教育訓練(Off-JT) 19.7%

2 毎月の給与が上昇

同一労働同一賃金へ対応した結果、多くの中小企業で、パートや有期契約社員の毎月の給与(1人あたり)が上昇しました。「有期フルタイム」「有期パートタイム」「無期パートタイム」に分けて集計したところ、いずれも9割近くの中小企業で、毎月の給与(1人あたり)がアップしています。

同一労働同一賃金ルールへの対応によるパートや有期契約社員の毎月の給与(1人あたり)の変化

  変わらない、
または減った
少し増えた
(1~3%程度)
やや増えた
(4~5%程度)
かなり増えた
(6%以上)
無回答
有期フルタイム 12.7% 44.8% 29.5% 12.9% 0.1%
有期パートタイム 11.5% 44.1% 26.3% 17.0% 1.1%
無期パートタイム 14.1% 45.5% 29.5% 10.4% 0.4%

※「無期パートタイム」については、端数処理の関係で合計が100%にならない

中小企業における年間の賞与(1人あたり)もアップしました。「有期フルタイム」の賞与をアップさせた企業は85.3%、「有期パートタイム」では80.9%、「無期パートタイム」では67.1%に達しました。

同調査では、同一労働同一賃金への対応にあたって、労使の話し合いを行ったかどうかについても尋ねました。パートや有期契約社員を雇う中小企業のうち、労使の話し合いを行ったのは46.5%。内訳は、パートや有期契約社員を含めて話し合いを行った企業が28.3%、含めずに行った企業が18.2%でした。

3 さいごに

中小企業の同一労働同一賃金への対応については、「既に必要な見直しを行った(対応完了)」が44.6%、「検討の結果、見直しは必要ないと判断した(対応予定なし)」が23.2%、「現在、必要な見直しを行っている(対応中)」が11.5%でした。一方、「今後の見直しに向けて具体的な対応方策を検討中(対応予定)」が10.5%、「まだ見直しについて検討していない」が10.3%となっています。規模が小さい企業ほど、「まだ見直しについて検討していない」と答えた割合が高い傾向がありました。

同一労働同一賃金については、ルールの難解さや対応に時間がかかるなどの課題があり、中小零細企業にとっては負担が大きいかと思いますが、改めてこの機会にご検討いただくのも良いのではないでしょうか。

※表はいずれも「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査(企業調査)」の結果より

※本内容は2025年6月10日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:illust-ac