個人データの取り扱いを委託する場合に守らなければならないルール【かんたん個人情報保護法(4)】

1 個人データの管理を委託する場合のルールは3つ

個人データの取り扱いの全部または一部を外部に委託する場合、守らなければならないルールが3つあります。具体的には

  • 適切な委託先を選定する
  • 委託契約を締結する
  • 委託先における個人データ取扱状況を把握する

です。以降でポイントを確認していきましょう。

2 適切な委託先を選定する

委託先の選定に当たっては、委託先が、自社と同等あるいはそれ以上の安全管理措置を講じていることを確認することが求められます。

そのため、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」の「10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容」に定める各項目が、委託する業務内容に沿って、確実に実施されることについて、あらかじめ確認しなければなりません。詳しくは次のウェブサイトをご覧ください。

■ガイドライン10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a10

3 委託契約を締結する

委託契約には、当該個人データの取り扱いに関する、必要かつ適切な安全管理措置として、委託元、委託先の双方が同意した内容を定めます。そうするとともに、「委託先における委託された個人データの取扱状況を委託元が合理的に把握することを盛り込むことが望ましい」とされています。

例えば、次のような事項が盛り込まれた契約を締結するとよいでしょう(ここで委託者は委託元、受託者は委託先を指します)。

  • 委託者および受託者の責任の明確化
  • 個人データの安全管理に関する事項
  • 再委託に関する事項
  • 個人データの取扱状況に関する委託者への報告の内容および頻度
  • 契約内容が遵守されていることを委託者が、定期的に、および適宜に確認できる事項
  • 契約内容が遵守されなかった場合の措置
  • 事件・事故が発生した場合の報告・連絡に関する事項
  • 契約終了後の措置

なお、委託契約の締結と言っても、必ず「業務委託契約書」を取り交わさなければならないわけではありません。委託元、委託先の双方が安全管理措置の内容について合意をすれば法的効果が発生するので、合意内容を客観的に明確化できるなら、書式は問われません。例えば、委託先から委託元への誓約書の差入れや、覚書や合意書などの取り交しでも問題ありません。

4 委託先における個人データ取扱状況を把握する

委託契約で定める内容と重複するところがあるかもしれませんが、委託先における委託された個人データの取扱状況を把握するために、「定期的に監査を行う等により、委託契約で盛り込んだ内容の実施の程度を調査した上で、委託の内容等の見直しを検討することを含め、適切に評価することが望ましい」とされています。

5 (参考)個人データの取り扱いの委託は第三者提供ではない

個人情報保護法では、法令に基づく場合などの例外を除いて、「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」とされています。

一方、委託については、「第三者に該当しないものとする」とされています(この他に第三者に該当しないものとして、事業の承継、共同利用もあります)。そのため、委託元は、あらかじめの本人の同意または第三者提供におけるオプトアウトを行うことなく、委託先に対して、個人データを提供することができます(その代わりに、委託先に対する監督責任が課されます)。

個人データの取り扱いを委託する先は他の者(=第三者)なのだから、「第三者提供なのでは?」と理解に苦しむかもしれませんが、

個人データの提供先は個人情報取扱事業者とは別の主体として形式的には第三者に該当するものの、委託された業務の範囲内でのみ、本人との関係において提供主体である個人情報取扱事業者と一体のものとして取り扱うことに合理性があるため、第三者に該当しないものとする(ガイドライン3-6-3 第三者に該当しない場合)

というルールなのです。

以上(2026年7月更新)

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画像:日本情報マート

「そのとき社員は動けるか?」~AEDに初期消火、今こそ見直す防災訓練~

1 【提案】日ごろからの訓練で災害に備えましょう!

大地震などの災害時に適切な行動が取れるようにするには、日ごろの訓練が欠かせません。特に近年は大規模な災害が続いており、改めて企業の防災意識と備えが求められています。具体的には、以下を実現させましょう。

  • 災害が発生した場合の初動対応の流れ(全体像)を理解する
  • 初動対応を円滑に進められるよう、代表的な防災訓練である「応急救護訓練」「通報・伝達訓練」「消火訓練」「避難訓練」のポイントを押さえ、実施する

2 仕事中に大地震が発生したらどうする?

仕事中に大地震が発生した場合を想定した際の初動対応は、一般的に次のようになります。

  • 安全確保と応急救護
  • 通報と初期消火(火災が発生した場合)
  • 避難

大地震が発生した場合を想定した際の初動対応

火災も発生してしまった場合には、周囲に火災が発生した旨を伝え、119番通報(第4章参照)を促した上で、初期消火(第5章参照)などを行います。

火災が発生した場合の対応

火災や建物の倒壊の危険があったり、役所・警察・消防から避難の指示があったりした場合はすぐに避難(第6章参照)します。避難の流れは次の通りで、火災や建物の倒壊の危険がなく、役所・警察・消防から避難の指示がない場合、会社が避難すべきかどうかを判断します。

  • 近所の学校や公園などの「一時集合場所」に避難
  • 一時集合場所への避難が危険な場合、大きな公園・広場などの「避難場所」に避難
  • 火災や建物の倒壊の危険がなくなり自宅に被害がない場合、帰宅
  • 自宅で生活できない場合、学校などの「避難所」に避難

以上が、大地震が発生した場合の初動対応の流れですが、日ごろから訓練していなければ、いざというとき適切な対応を取るのは難しいです。次章からは、いよいよ具体的な防災訓練のポイントを見ていきます。ここまでの初動対応の流れを踏まえ、

  • 応急救護訓練
  • 通報・伝達訓練
  • 消火訓練
  • 避難訓練

という順番で紹介します。防災訓練についてより詳細な情報を知りたい方は、総務省消防庁のマニュアルなども参考になります。また、訓練内容や消防署員の派遣などについて相談したい方は、最寄りの消防署にお問い合わせください。

■総務省消防庁「消防安第31号 小規模ビル避難等訓練マニュアルについて」■
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/post1367/
■東京消防庁「自衛消防訓練~もしもの時に備えて訓練していますか?~」■
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/life11.htm

3 応急救護訓練

1)応急救護訓練の概要

災害が発生したとき、まずは身の安全を確保し、周りの人の安否を確認します。その際、けがをした人に応急救護する必要があります。応急救護訓練では、三角巾やAED(自動体外式除細動器)の使い方、人工呼吸や心臓マッサージのやり方などを身に付けます。専門的な内容もあるので、可能であれば消防署に相談の上、救命講習を受講するのが理想です。総務省消防庁の「一般市民向け応急手当WEB講習」サイトなどでも、基本的な知識を学ぶことができます。

■一般市民向け応急手当WEB講習■
https://www.fdma.go.jp/relocation/kyukyukikaku/oukyu/

応急救護訓練

2)応急救護訓練のポイント

応急救護の基本的な流れは、

  • 負傷者の状況を確認し、必要に応じ119番通報する
  • 救急車の到着まで手当てをする

です。手当ての内容は、「出血している」「骨折している」「意識・呼吸がない」などの状況によって異なるので、救命講習で状況ごとの対応を習いましょう。

また、救命処置の一環として、特にAEDの場所と使い方は社員に周知しておきましょう。

AEDとは、心臓がけいれんして血液を全身に送れない状態(心室細動)になった場合、電気ショックを与えて蘇生を試みるための医療機器

です。

一般市民が心肺蘇生を実施した傷病者(全体)の1カ月後の生存率は15.3%なのに対し、AEDを使用した傷病者の1カ月後の生存率は53.6%になっています(総務省消防庁「令和7年版 救急救助の現況」)。

AEDは全国の駅や公共施設など、さまざまな場所に設置されています。AEDの設置場所を検索したり、地図上で確認したりできるサービス・アプリが登場しているので使ってみるとよいでしょう。

■日本救急医療財団「財団全国AEDマップ」■
https://www.qqzaidanmap.jp
■日本AED財団「AED N@VI」■
https://aed-navi.jp
■アルム「日本全国AEDマップ」■
https://aedm.jp

AEDの基本的な使い方については、前述した一般市民向け応急手当WEB講習のサイトなどで動画が公開されているので、こちらも併せて社内に周知しておきましょう。

■一般市民向け応急手当WEB講習「心肺蘇生 AEDの基本的な使い方」■
https://www.fdma.go.jp/relocation/kyukyukikaku/oukyu/01futsu/05shinpai/01_05_11.html

4 通報・伝達訓練

1)通報・伝達訓練の概要

通報訓練では、火災などの災害発生時から通報するまでの一連の流れ(119番通報の方法、非常放送の流し方など)を身に付けます。119番通報の訓練で実際に119番通報することもできますが、この場合は消防職員の立会いが必要です。

通報・伝達訓練

2)通報・伝達訓練のポイント

119番通報などをする場合の基本的な流れは、

  • 非常ベルを押す
  • 火災を確認後、非常放送などで社内に知らせる
  • 119番通報する

です。非常放送では、次のように「火災の状況」と「社員に対する指示」を正確かつ簡潔に知らせます。

  • (非常ベルを押した場合)ただ今○階で、非常ベルが作動しました。現在、確認中ですので、指示があるまで待機してください
  • (火災の発生を確認した場合)ただ今○階で、火災が発生しました。所属長の指示に従って避難してください
  • (確認したが、火災でなかった場合)先ほど今○階で、非常ベルが作動しましたが、火災ではないことが確認できました。安全を確認しましたので、ご安心ください
  • (火災が発生後、消火が完了した場合)先ほど〇階で発生した火災の消火が完了しました。避難中の社員の皆さんは、安全の確認が取れるまでそのまま待機してください

消防署員にも正確かつ簡潔に状況を伝えます。総務省消防庁が、通報に便利な「119番通報メモ」を公表しているので、あらかじめ通報項目を記入して、電話機の前などに貼っておくとよいでしょう。なお、スマートフォンの場合は通報前にGPS機能をONにしておくと、災害発生場所の特定がより迅速になることが期待されます。

119番通報メモ

5 消火訓練

1)消火訓練の概要

消火訓練では、消火器や屋内消火栓の使い方を身に付けます。屋内消火栓は消火器よりも放水能力が高く、消火器での初期消火が難しい場合などに使われます。

放水訓練(実際に燃えている火を消す訓練)の場合、最寄りの消防署や防災センターなどに問い合わせることで、訓練が受けられます。最近はVRなどを使って、初期消火を擬似的に体感しながら学ぶ訓練もあります。

消火訓練

2)消火訓練のポイント

消火器を使う場合の基本的な流れは、

  • 火事だと大きな声で周囲に知らせる
  • 消火器を取りに行く
  • 初期消火を行う

です。消火器は安全ピンを抜いてから使用しますが、運搬時に誤ってピンを抜くと事故のもとなので気を付けましょう。また、

消火器で初期消火を行える限界は、炎が天井に到達するまでが目安

です。危険を感じたら直ちに初期消火を中止し、安全な場所に避難してください。

消火器の操作

なお、消火器は使用期限を過ぎると腐食が進み、破裂などの事故を起こす恐れがあります。

使用期限は、業務用消火器の場合で約10年(住宅用消火器は約5年)

ですので、社内の消火器が使用期限を過ぎていないか必ず確認してください。

屋内消火栓を使って消火を行う場合、

  • 1号消火栓(ホースを延長しないと、水を流せないタイプ)
  • 2号消火栓・易操作性1号消火栓(ホースが収納状態でも、水を流せるタイプ)

の2種類があり、それぞれ操作要領が違うので注意が必要です。下記にて両者の違いがイラスト付きで掲載されているのでご確認ください。

■総務省消防庁「小規模ビル避難等訓練マニュアル 消火訓練」(下記2枚目を参照)■
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/160305an31_1.pdf

6 避難訓練

1)避難訓練の概要

避難訓練では、通路・階段を使った、安全な場所までの避難方法を身に付けます。火災で煙が出ることを想定する場合、ハンカチやタオルで鼻・口を押さえ、姿勢を低くして避難します。

避難器具(緩降機や避難はしご)の使い方を訓練する場合、事故防止のため消防署員の立会いのもとで行うことが推奨されています。

避難訓練

2)避難訓練のポイント

非常放送(第4章)が流れてから避難するまでの基本的な流れは、

  • 避難誘導を行う
  • 避難通路・避難階段を使って外に出て、安全が確保できる場所まで誘導する
  • 避難者を確認する

です。避難誘導は、所属長が拡声器を使うなどして避難ルートを指示しながら行います。エレベーターの使用は禁止し、あらかじめ決められた通路・階段を使って外に出ます。この際、

通路・階段に物が放置されていると、消防法違反になる上、避難経路が断たれてしまう

ので、避難ルートの状況は必ず確認し、誘導灯の照明が切れていないかなどにも注意します。

避難経路

実際は出火場所などによって通れない通路や階段も出てくるので、

避難ルートを何パターンか決めておき、出火場所の想定を訓練のたびに変えるなどして、状況に合わせた避難ができるよう社員を訓練すること

も大切です。避難器具については、使い方が分からないという社員も少なくないので、消防署員の立会いのもと、学習の機会を設けましょう。また、東京消防庁のウェブサイトでは、緩降機や避難はしごの使い方を動画で説明しているので、併せて社員に周知するとよいでしょう。

■東京消防庁「消防用設備などの取扱い要領メニュー」■
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/learning/contents/shobo-setsubi/#breadcrumb

以上(2026年8月更新)

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画像:TY Lim-shutterstock

【管理会計】値上げ、値下げ。目標利益を達成するために必要な売上高の求め方

1 質問:必要な売上高を計算できますか?

当期の営業利益は1億円。来期は強気に2億円まで伸ばす計画です!

現在の損益の状況と次期目標利益は次の通りなのですが、この目標利益を達成するために必要な売上高はいくらでしょうか。売上原価は売上高の増減に合わせて変動し、販売管理費は一定とします。

現在の損益の状況と次期目標利益

このケースの売上高は、

12億5000万円=(3億円+2億円)/0.4

となります。上の数式の「0.4」は、本ケースの売上総利益率です(40%(1-0.6))。

これが基本的な答えですが、会社の営業戦略によって変わる部分があります。例えば、強気に値上げをする場合もあれば、値下げして販売量を増やすこともあります。こうしたシーンに直面することはよくあるので、判断の基準をご紹介します。

2 「損益分岐点」という感覚を持つ

「損益分岐点」とは、

売上と費用がトントンの状態

です。損益分岐点は管理会計で用いられる最もポピュラーな指標の1つで、これを知ることで意思決定に明確な根拠を持たせることができます。

さて、損益分岐点を求めるには費用を次のように分けます。

  • 変動費:売上高に応じて変動する費用。小売業の場合は支払運賃、支払荷造費など
  • 固定費:売上高に関係なく発生する費用。人件費や減価償却費、賃借料など

そして、横軸を販売数量、縦軸を金額(費用、利益、売上高)とした場合、変動費、固定費、利益、売上高の関係は次のようになります。

変動費・固定費・利益・売上高の関係図

図表2では変動費の上に固定費を置いているので、固定費ラインが費用の合計(変動費+固定費)になります。売上高ラインと固定費ライン(費用の合計)が交差する点が損益分岐点です。

また、変動費と固定費の上に目標利益を置いています。売上高ラインと目標利益ラインが交差する点が「目標利益達成点」です。必要売上高は次のように算出することができます。なお、「変動費率」は「変動費/売上高」です。

必要売上高=(固定費+目標利益)/(1-変動費率)

さらに分かりやすくすると、「1-変動費率」のことを「限界利益率」といいます。限界利益率を用いると、計算式は次のようにシンプルになります。

必要売上高=(固定費+目標利益)/限界利益率

3 営業戦略のバリエーション

目標利益を達成するための必要売上高の求め方は、損益分岐点の考え方でお分かりいただけたと思います。次は、設定した目標利益をどのように達成するか、つまり営業戦略の問題です。ここでは、次の4つの営業戦略を想定し、それぞれの必要売上高を求めます。

ちなみに、図表3を見て戦略1~4はどのような内容か想像できますか?

利益の増加のイメージ

それぞれの戦略は、次のようなものです。

  • 戦略1:販売単価を10%値上げ
  • 戦略2:販売単価を10%値下げ
  • 戦略3:販売管理費を1億円増強
  • 戦略4:販売管理費を1億円削減

これらは企業がとり得る基本的な営業戦略です。条件次第で結果は変わってきますが、以降では「目標営業利益2億円を達成する」ために必要な売上高と販売数量を検討する際の基本的な考え方を紹介します。

4 戦略1:販売単価を10%値上げ

値上げをすると限界利益率が高くなるので利益が出やすくなりますが、一方で販売数量が減少する恐れがあります。

値上げ戦略は、「価格弾力性が低い商品」に適しています。価格弾力性が低い商品とは、

価格の影響を受けにくい商品です。つまり、販売数量は値上げしてもあまり減少せず、逆に値下げしてもあまり増加しない

ということです。具体的には、食品や日用品などが挙げられます。

ここでは販売単価を10%値上げして限界利益率を上げ、営業利益2億円を目指します。従来の変動費率は60%(6億円/10億円)ですが、販売単価を10%値上げすることで変動費率は54.5…%(6億円/(10億円×1.1))になります。これを基に必要売上高を算出すると次の通りです。

必要売上高
=(固定費+目標営業利益)/(1-変動費率)
=(3億円+2億円)/(1-0.545…)=11億円

この場合、販売数量は現在の100%(11億円/(10億円×1.1))、つまり、現状と同じ販売数量で必要売上高を達成できます。

5 戦略2:販売単価を10%値下げ

値下げをすると限界利益が低くなるので利益が出にくくなりますが、一方で販売数量の増加が見込めます。薄利を上回る多売を実現すれば、目標利益の達成が可能になります。

値下げ戦略は、「価格弾力性が高い商品」に適しています。価格弾力性が高い商品とは、

価格の影響を受けやすい商品です。つまり、販売数量は値上げしたら減少し、逆に値下げすると増加する

ということです。具体的には、家具や家電製品など耐久消費財などが挙げられます。

ここでは販売単価を10%値下げして販売数量を増やし、営業利益2億円を目指します。従来の変動費率は60%(6億円/10億円)ですが、販売単価を10%値下げすることで変動費率は66.6…%(6億円/(10億円×0.9))になります。これを基に必要売上高を算出すると次の通りです。

必要売上高
=(固定費+目標営業利益)/(1-変動費率)
=(3億円+2億円)/(1-0.666…)=15億円

この場合、必要売上高を達成するには、販売数量を現在の約1.7倍(15億円/(10億円×0.9))にする必要があります。

6 戦略3:販売管理費を1億円増強

販売管理費を1億円増強し、営業担当者を増やしたり、広告を出したりして拡販につなげます。製品のライフサイクルが成長期にある場合、営業力強化による拡販は効果的です。

ここでは固定費(販売管理費)を1億円増やして4億円とし、営業利益2億円を目指します。これを基に必要売上高を算出すると次の通りです。

必要売上高
=(固定費+目標営業利益)/(1-変動費率)
=(4億円+2億円)/(1-0.6)=15億円

この場合、必要売上高を達成するには、販売数量を現在の1.5倍(15億円/10億円)にする必要があります。

7 戦略4:販売管理費を1億円削減

販売管理費を1億円削減し、利益を上げやすくします。とはいえ、営業力が極端に低下してはいけないので、基本は不採算店の閉鎖、物流の効率化、在庫の圧縮などの効率化となります。製品のライフサイクルが成熟期にある場合、固定費の削減は効果的です。

ここでは固定費(販売管理費)を1億円削減して2億円とし、営業利益2億円を目指します。これを基に必要売上高を算出すると次の通りです。

必要売上高
=(固定費+目標営業利益)/(1-変動費率)
=(2億円+2億円)/(1-0.6)=10億円

この場合、現状と同じ必要売上高と必要販売数量で目標利益を達成できます。ただし、売上高が減少局面にある場合、売上高を維持することは容易ではありません。

8 法人税等を考慮した場合

ここまで紹介してきた4つの営業戦略による売上高、売上原価(変動費)、販売管理費(固定費)、営業利益は次の通りです。

売上高、売上原価(変動費)、販売管理費(固定費)、営業利益

また、目標利益が税引後利益の場合、法人税等に留意が必要です。例えば、固定費3億円、変動費率60%、法人実効税率30%とした場合、目標税引後利益2億円を達成する必要売上高は次の通りです。

必要売上高
={固定費+目標税引後利益/(1-法人実効税率)}/(1-変動費率)
={3億円+2億円/(1-0.3)}/(1-0.6)≒14億6429万円

目標とする税引後利益から必要売上高を算出する場合、税引後利益に法人税等を加味して、税引前利益を求めてから計算しましょう。

以上(2026年7月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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画像:tiraimi-Adobe Stock

【経理業務の効率化】法人クレジットカードを使って経費精算の手間を軽減

1 経費精算の手間は減り、社内の現金も少なくできる

毎月の経費精算が無くなれば…。

会社で働く人であれば、一度は思ったことがあるでしょう。特に外出や出張の多い役員や営業担当者の交通費精算は、多くの手間と時間を要します。また、経理担当者としても、経費精算の提出遅れやミスがあると決算作業が遅れたりして困ります。

そうした中、比較的手ごろに取り組める経費精算の効率化として注目されているのが、

法人クレジットカードを利用

です。主なメリットは次の通りです。

  • 経費申請の時間短縮。ウェブサイト上のカード利用明細から直接会計データを取り込み、経費精算システムが連動できるサービスもある
  • 経費の請求漏れやミスの防止
  • 現金の出し入れ回数の削減
  • 支払いが翌月以降に繰り延べられることで資金繰り改善、ポイント還元される

この他、経営者や経理担当者が気になるのは、

法人クレジットカードを利用したときの会計処理(仕訳)はどうなるのか?

でしょう。そこで、この記事では法人クレジットカードを利用した場合の会計処理を分かりやすく解説しますので、経理業務の効率化を進めるためにご活用ください。なお、以降で紹介する勘定科目は一例なので、貴社の実情に合わせて読み替えてください。

2 会計処理(仕訳)

1)法人クレジットカードの利用時

法人クレジットカードで経費を支払った場合、実際の支払日(会社から出金がある日)と、費用の発生日が異なるため、いったん「未払金」勘定で処理します。

法人クレジットカードの利用時

2)カード利用額が口座からの引き落とし時

カードの利用額が口座から引き落とされたら、「未払金」勘定を解消します。

カード利用額が口座からの引き落とし時

3)誤って個人利用をしてしまった場合

誤って法人クレジットカードを個人利用してしまった場合、カード利用時、返金時、引き落とし時にそれぞれ次のように処理します。

誤って個人利用をしてしまった場合

3 税務上の留意点

法人クレジットカードを使って支払った経費を損金算入するには、請求書や領収書など(以下「請求書等」)の書類を保存しておかなければなりません。法人クレジットカードの利用明細書だけでは十分な証憑(しょうひょう)書類として認められないケースがある(商品やサービス内容や購入者の氏名など、一定の事項が記載されているものを除く)ので、法人クレジットカード利用時に受領する請求書等を保管します。

これは、消費税の控除(以下「仕入税額控除」)も同様で、仕入税額控除を受けるためには、法人クレジットカードの利用明細ではなく、支払った先の店舗やサービス業者から受け取るインボイスの保管が必要になります。

また、電子帳簿保存法により、紙ではなく、データ(PDFやシステム上の請求書ダウンロードなど)で請求書等を受け取る場合には、一定の要件のもと、データでの保存が義務化されています。経理担当者とデータ上でやり取りできる仕組み作りも必要になります。

4 厳格なルールが必要

法人クレジットカードの不正利用を防ぐために、法人クレジットカードの利用ルールや規程(以下「利用ルール」)の整備が必須です。利用ルールを作成したら、その内容と違反した場合の罰則について役員・社員に周知します。

  • 部長以上など、利用対象者や利用人数を限定する
  • 利用用途を限定する(旅費交通費、交際費の支払いに限定するなど)
  • 役職ごとにカードの利用限度額を設定する
  • 不正利用した場合の罰則を定めておく(最悪の場合は刑事告訴するなど)

以上(2026年7月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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画像:karinrin-Adobe Stock

【朝礼】あなたの「お客様目線」は本物ですか、それとも「つもり」ですか?

【ポイント】

  • 旅館のスタッフが、旅館の雰囲気に合わせ、古びた革製のタブレットカバーを使っていた
  • 「これでいいだろうか」と問いを持ち続けることが、じわじわと仕事の質を上げていく
  • 「お客様のことを考えているつもり」と「本当にお客様の目線に立てている」は異なる

先日、家族と旅行に出かけ、古い旅館に泊まりました。黒塗りの柱や床が印象的な、レトロな雰囲気のある宿です。チェックインのとき、スタッフの方がタブレットで予約を確認してくれました。ふと目に入ったのが、そのタブレットのカバーです。使い込まれた、古びた革製のカバーでした。最初は「ずいぶん古いものを使っているな」と思いました。ところが、宿の中を歩きながら、ふと考え直したのです。もしかしてこれは、旅館の雰囲気に合わせて、あえて選んだものではないか、と。

最新のデジタル機器を使いながら、カバー一つにまで宿の世界観を貫く。もしそうだとしたら、なんと細やかな配慮だろうと感心しました。もし、あのタブレットのカバーが真新しいプラスチック製で、鮮やかな色のものだったとしたら、私は「あれ、なんか雰囲気と合わないな」と、どこかひっかかりを覚えたまま過ごしていたかもしれません。一方で、旅館のスタッフ自身はそのカバーを毎日見ていて違和感を抱かないでしょうから、その場合、私のひっかかりはずっと見過ごされたままになっていたでしょう。タブレットカバー一つで大げさかもしれませんが、これは私たちの仕事にもつながる大切なことです。

私たちは普段、「お客様のことを考えて仕事をしている」と思っています。でも、本当にそうでしょうか。例えば、わが社の服装は基本的に自由ですが、皆さんは「この格好でお客様の前に立って、どう思われるだろう」と考えたことはありますか。お客様がそこまで気にしているとは限りませんし、何でも迎合すればいいというわけでもありません。ですが、「これでいいだろうか」と問いを持ち続けることは大切です。その積み重ねが、じわじわと仕事の質を上げていくのだと思います。

「お客様のことを考えているつもり」と「本当にお客様の目線に立てている」の間には、意外と大きな溝があります。その溝は、悪意から生まれるものではありません。毎日同じ仕事を続けるうちに、最初は気になっていたことが当たり前になり、問いを立てる習慣そのものが薄れていく。この溝を埋めていくには、日々の小さな違和感と正直に向き合い、自問自答を繰り返すことが大切です。旅先での小さな気づきが、そんなことを教えてくれました。今日も一日、細部まで目を向けながら仕事に臨んでいきましょう。

以上(2026年8月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

  

【2026年度版 助成金ブック】採用・人材育成・賃上げなど25種類

2026年度の最新情報を基に、「採用」「人材育成」「賃上げ」などの助成金について、支給要件や実務のポイントを印刷できるPDFにまとめました。ぜひご覧ください。


こちらからダウンロード

収録されている助成金は次の通りです。

【採用活動編】

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース):最大240万円
  • 特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース):最大60万円
  • 早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース):最大40万円
  • トライアル雇用助成金(一般トライアルコース):最大15万円

【人材育成編】

  • 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース):最大1億円
  • 人材開発支援助成金(人への投資促進コース):最大3500万円
  • 人材開発支援助成金(人材育成支援コース):最大1000万円
  • 人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース):最大36万円

【育児サポート編】

  • 両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース):最大1342万円
  • 両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース):最大197万円
  • 両立支援等助成金(出生時両立支援コース):最大127万円
  • 両立支援等助成金(育児休業等支援コース):最大122万円
  • 両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース):最大90万円

【賃上げ編】

  • キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース):最大740万円
  • 業務改善助成金:最大600万円
  • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース):最大325万円

【健康経営編】

  • 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース):最大1370万円
  • 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース):最大1020万円
  • 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース):最大970万円
  • 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース):最大500万円
  • 働き方改革推進支援助成金(取引環境改善コース):最大100万円

【パート雇用編】

  • キャリアアップ助成金(正社員化コース):最大1680万円
  • キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース):最大75万円
  • キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース):最大60万円
  • キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース):最大56.8万円

以上(2026年7月作成)

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画像:日本情報マート

事業承継・M&A・紛争リスクを見据えた 中小企業の株式実務ハンドブック(2026年8月号)

非上場の中堅・中小企業の株式実務は、日常的に発生しないこともあり、株式管理が見直されないまま放置されてしまいがちです。しかし、場合によっては重大な経営リスクに直結することもあり得ます。

そこで本冊子では、非上場の中堅・中小企業の法務・総務担当者を主な読者として、自社で何を確認し、どの問題を経営陣に共有すべきか、どの場面で専門家に相談すべきかという観点から、株式実務の基本と実務上の留意点を整理します。


「サポート詐欺」に注意! 警告が表示されても電話しないで

1 「サポート詐欺」の手口を知っておこう

「サポート詐欺」をご存じでしょうか? パソコンでウェブサイトを閲覧中、

  • ウイルスに感染したかのような画面を表示させたり、警告音を発生させたりするなどして、不安をあおる
  • 解除するためには画面に記載された電話番号に連絡する必要があると思い込ませ、電話をかけさせる
  • サポート窓口の担当者をかたって遠隔操作ソフトをインストールさせたり、金銭をだまし取ったりする

といった詐欺の手口です。以降、こうした画面のことを「偽画面」と呼ぶことにします。

偽画面は全画面表示され、「閉じる」ボタンがないため、マウス操作では画面を閉じることができません。警告音が鳴りやまず、パニックに陥った状態で、つい偽画面に記載された電話番号に電話をかけてしまう……。そうすると、サポート窓口の担当者をかたった詐欺被害に遭ってしまうわけです。

サポート詐欺の偽画面が表示されるきっかけは、ウェブサイトに表示された広告枠の「次のページに進むためのボタンに見せかけた広告」や「続きが気になる画像」をクリックしたり、検索結果の上位に表示された偽広告をクリックしたりすることです。巧妙につくられているため、この時点で見破るのは難しいですが、

あらかじめ偽画面のイメージと、所定のキーを使った画面の閉じ方を押さえておく

ようにすれば、万が一クリックしてしまっても落ち着いて行動できます。

以降で、サポート詐欺の被害に遭わないための対策を確認していきましょう。

2 実際にどんな状態になるのか、パソコンで体験してみよう

情報処理推進機構(IPA)では、「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」を設けて注意喚起しています。パソコンで、同ページから「偽セキュリティ警告画面の閉じ方体験サイト」に行くと、実際にどんな状態になるのかを疑似体験できます。

■情報処理推進機構「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/measures/fakealert.html

(注)体験サイトを起動する前に、説明をよくお読みください。

偽セキュリティ警告画面の閉じ方体験サイト

偽画面を開いてしまったとしても、いきなりウイルスに感染するわけではありません。まずは、落ち着いてパソコンの音量を下げましょう。その後、偽画面を閉じれば問題ありません。大切なのは、

絶対に偽画面に表示された番号に電話をかけないこと

です。偽画面の閉じ方は、

  • キーボードの「Esc」キーを長押しして全画面表示を解除して、ウインドウを閉じる
  • キーボードの「Ctrl」と「Alt」と「Delete」キーを同時に押して強制再起動する

といった方法があります。詳しくは、情報処理推進機構(IPA)の次のウェブサイトをご確認ください。

■パソコンに偽のウイルス感染警告を表示させるサポート詐欺に注意■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2024/mgdayori20241119.html

3 サポート詐欺で金銭をだまし取られると戻ってこない?

サポート詐欺でだまし取られた金銭を取り戻すことは難しいのが現実です。サポート詐欺の手口は人間の焦燥感・恐怖と安心感の心理的なギャップを巧みに突くもので、(偽画面に)表示された番号に電話をかけると、次のようなかたちで金銭をだまし取られてしまいます。

  • 指示に従って、相手に指定された金融機関口座に自ら振り込んでしまう
  • 指示に従って、コンビニエンスストアで相手に指定された電子マネー(例えば「Amazonギフトカード」など)を購入し、コードを伝えてしまう
  • 指示に従って、遠隔操作ソフトをインストールし、パソコンへのアクセスを許可した結果、相手にインターネットバンキングの口座にアクセスされて不正送金されてしまう

1.のように自ら振り込んでしまった場合、「本人が同意して送金手続きを行った」とみなされてしまうため、金融機関側の制度による救済を受けられないケースがほとんどです。

2.のように電子マネーのコードを伝えた場合、犯人がまだコードを使って(チャージして)いなければ、電子マネーの発行元のサポート窓口に連絡し、アカウントの利用停止や額面の返金に対応してもらえる可能性があります。

3.のように遠隔操作による不正送金の場合、不正アクセスによる被害として、金融機関の補償対象になる可能性があります。

いずれの場合も、泣き寝入りを避けるために、まずは次の3カ所に同時並行で連絡を入れてください。

  • 警察(警察相談専用電話:#9110)
  • 金融機関(振り込みを行った金融機関、振込先の金融機関)
  • 消費者ホットライン(局番なしの188)

4 参考ウェブサイト

情報処理推進機構(IPA)では、次のウェブサイトなどを通じて注意喚起しています。

■サポート詐欺の偽セキュリティ警告はどんなときに出るのか?■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2023/mgdayori20240227.html
■会社や組織のパソコンにセキュリティ警告が出たら、管理者に連絡!■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2023/mgdayori20230711.html
■偽のセキュリティ警告に表示された番号に電話をかけないで■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2021/mgdayori20211116.html
■遠隔操作を他人に安易に許可しないで■
https://www.ipa.go.jp/security/anshin/attention/2020/mgdayori20201125.html

日本サイバー犯罪対策センター(JC3)では、解説動画をYouTubeで公開しています。

■サポート詐欺の手口について(動画解説)■
https://www.jc3.or.jp/threats/examples/article-356.html
■サポート詐欺の電話番号に電話をかけてみた(動画公開)■
https://www.jc3.or.jp/threats/examples/article-570.html

以上(2026年7月更新)

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画像:日本情報マート

仕事はできるが態度が悪い社員は会社に残すべきか?

1 優秀だけど問題が多い社員。残すかどうか?

仕事はできるものの、短気で口が悪い、上司の命令に従わない、遅刻が多いといった社員への対応には、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。ただの問題社員であれば、場合によっては辞めてもらう(解雇する)という選択肢も考えられますが、相手が会社の中核を担う優秀な社員となると、辞めてしまった後の影響が心配になるものです。とはいえ、優秀だからといって、問題のある言動をそのままにしておくわけにもいきません。

このようなケースにどう対応すればよいのか、次の2つのポイントから考えてみましょう。

  • 誰が相手でも「服務規律違反」には毅然と対処する
  • 辞めさせたくないなら「解雇する前」の段階で手を打つ

2 誰が相手でも「服務規律違反」には毅然と対処する

就業規則には「服務規律(社員が守るべき基本的な行動規範)」が定められています。誰が相手であっても、この「服務規律」をきちんと適用することが基本です。その上で、勤務態度が良くない社員には、次のような流れで対応していくとよいでしょう。

対処の流れ

図表のうち2)については労働条件通知書、雇用契約書や就業規則への定めが、3)から5)については就業規則への定めが必要になります。なお、1)については特に定めがなくても構いません。

また、5)の「普通解雇」とは、

社員としての適性がない(能力、健康状態、勤務態度などに問題がある)ことを理由とする解雇

です。問題社員への対処というと「懲戒解雇」をイメージする方も多いかもしれませんが、懲戒解雇は本来、横領やハラスメントといった重大な問題行為を対象とする処分ですので、単に勤務態度が良くない社員に対して行うと、無効となってしまう可能性が高い点には注意が必要です。

図表のケースでいえば、1)から4)までの行程を経ても社員の勤務態度が改善されない場合は、5)の普通解雇もやむを得ないという考え方です。逆にいえば、

1)から4)までの行程で社員が問題行為を起こさない状況をつくれば、解雇する必要はなくなる

ということになります。次章では、「『解雇する前』の段階で手を打ち、社員に会社に残ってもらう」という観点から、図表の各行程のポイントをご紹介していきます。

3 辞めさせたくないなら「解雇する前」の段階で手を打つ

1)注意:問題行為は必ず注意する。ただし、社員の言い分も聞く

社員の勤務態度に問題があるときは、まずはその上司から「君の言動は間違っている。改めなさい」などと注意してもらいましょう。大切なのは、「問題行為に気づいたら必ず注意する」という姿勢です。対応がその時々でまちまちになると、せっかく注意をしても社員から「今日は、上司の機嫌が悪いから注意されたのかな」などと、軽く受け取られる恐れがあります。

また、注意する際には、社員の言い分にも耳を傾けるようにしましょう。例えば、仕事の進め方について上司の指示に従わない社員は、もしかすると自分のやり方のほうが合理的だと考えているのかもしれません。実際にそうであれば、

「君のやり方のほうが良さそうだ、今回はそれでやってみよう。ただし、次回から自分の考えを試したい場合は事前に相談してくれ」

と社員の意見も取り入れながら、事前に相談しなかった点についてはやんわりと注意します。

それでも繰り返し注意して改善が見られない場合は、

「注意書」「指導書」などの形で、どのような注意をしたかを書面で残しておく

ようにすると、「言った、言わない」というトラブルを防ぐことができます。

2)配置転換など:問題行為を起こしにくく、能力を発揮できる状況をつくる

注意しても社員の勤務態度が改善しなければ、

  • 短気で口が悪い社員は、他の社員と関わらずに1人でできる業務を与える
  • 上司の命令に従わない社員には、思い切って権限を移譲してみる
  • 遅刻が多い社員は、「9時始業、18時終業」などの均一的な労働時間管理が適していない可能性を考え、働く時間を自分で決められる「フレックスタイム制」を適用する

といった具合に、配置転換や労働条件の変更を検討してみましょう。社員の勤務態度を無理に改めさせるというよりも、問題行為が起こりにくい状況を一緒につくっていくイメージです。

ただし、例えば「問題行為は起きにくいものの、単純作業しか行わないポジションに就ける」といった配置転換は、場合によってはパワハラと受け取られる恐れがありますし、優秀な社員を活かし続けたいという会社側の意図にも沿いません。ですから、

社員が「どうすれば問題行為を起こしにくいか」だけでなく、「どうすれば能力を発揮しやすいか」も一緒に考えながら、配置転換などを検討していくことが大切

です。

3)懲戒処分:貢献度に応じて処分を軽減しつつ、警告を忘れない

配置転換などをしても効果が見られなければ、就業規則の懲戒事由に基づいて懲戒処分を検討することになります。懲戒処分は、一般的に次の7種類に分けられます。ただし、社員の問題行為に対して重すぎる懲戒処分や、弁明の機会を与えずに行った懲戒処分は無効になってしまうこともあるため、注意しましょう。

  • 戒告:厳重注意を言い渡す(懲戒処分として行うので、前述した「注意」とは異なる)
  • けん責:始末書を提出させ、将来を戒める
  • 減給:一定期間、賃金額を下げる
  • 出勤停止:数日間、出勤することを禁じ、その間は無給とする
  • 降格:役職の罷免・引き下げ、または資格等級の引き下げを行う
  • 諭旨解雇:退職届の提出を勧告した上で、退職届の提出がなければ解雇とする
  • 懲戒解雇:即時に解雇する

一概にはいえませんが、単に勤務態度が良くない社員に対して懲戒処分を行う場合は、

一般的には「1.戒告」から「3.減給」あたりが妥当(「口が悪い」が行き過ぎてパワハラに当たる指導を繰り返した場合などは、「4.出勤停止」「5.降格」もあり得る)

です。実際には、「当該行為の動機、目的、方法、頻度等の行為態様」「会社に与えた損害や周囲への影響」「社員の過去の処分歴・指導歴や反省態度」「会社側の落ち度」「社員の会社への貢献度」などを考慮しながら、慎重に判断していきましょう。

例えば、社員が過去に新サービスを立ち上げたなど、客観的に評価できる実績を残している場合は、

その貢献度を考慮して、処分を引き下げること

ことも可能です。とはいえ、単に処分を軽くするだけでは社員が増長してしまう恐れもあるので、

「今回は、君のこれまでの会社への貢献度を考えて軽い懲戒処分とする。ただ、今後勤務態度に改善が見られなければ、次はより重い処分を科す用意がある」

といった具合に、社員が反省しない場合に備えて、警告も添えておきましょう。

4)退職勧奨:退職を促しつつ、社員に反省の意思があれば雇用継続を検討する

懲戒処分をしても状況が変わらない場合は、「退職勧奨」の実施を検討することになります。退職勧奨とは、

会社から社員に自主退職を促し、社員が同意した場合に退職させること

のことで、一般的な流れは次のようになります。

  • 「注意」「配置転換など」「懲戒処分」を実施したが状況が改善しなかったため、会社としては社員に自主退職してもらいたいと考えている旨を伝える
  • 退職勧奨に応じる場合の条件(退職金の支払い、年次有給休暇の消化など)について説明する
  • 社員に退職勧奨に応じるかを確認し、応じた場合に退職が成立する

退職勧奨は、会社が一方的に労働契約を解除する解雇とは違い、社員に退職を強制するものではありません。ですから、

仮に社員がこの時点で「退職したくありません、これまでの勤務態度を改めます」などと言ってくるようであれば、反省の様子によっては雇用を継続する

という選択肢もあります。逆に、ここでも社員が反省せず退職勧奨にも応じない場合や、「勤務態度を改める」と言いつつもそれが口だけで、その後も改善が見られないといった場合には、残念ながら解雇せざるを得ないという判断になります。

5)普通解雇:この行程まで来たら雇用継続は諦める

退職勧奨後も改善が見られない場合は、「普通解雇」の行程に移ることになります。労働基準法では、

普通解雇に限らず、解雇はその30日前に解雇予告をして実施しますが(解雇予告手当を支払えば日数を短縮可)、一度解雇予告をしたら会社の意思で撤回することは不可

です。つまり、普通解雇を決定した時点で、社員の雇用を継続する道は残念ながらなくなってしまいます。

繰り返しになりますが、どれだけ優秀であっても、ここまでの行程を経ても勤務態度に改善が見られない社員を雇用し続けることは、企業秩序を危うくしてしまいます。企業秩序と社員の定着、どちらも両立できるのが一番ですが、

いざ両立が難しくなったときは、企業秩序を優先するという姿勢を貫くこと

ことが大切です。

以上(2026年8月更新)

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個人データを自ら取り扱う場合に守らなければならないルール【かんたん個人情報保護法(3)】

1 個人データを自ら取り扱う場合のルールは3つ

個人データを個人情報取扱事業者(会社)が自ら取り扱う場合、守らなければならないルールが3つあります。具体的には

  • データ内容の正確性を保ち、必要がなくなったら消去する
  • 安全管理措置を講じる
  • 従業者を監督する

です。以降でポイントを確認していきましょう。

2 データ内容の正確性を保ち、必要がなくなったら消去する

個人データは、正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければなりません。

「正確かつ最新の内容に保つ」とはいえ、保有する個人データをすべて、いつも最新化しなければいけないわけではありません。それぞれの利用目的に応じて、その必要な範囲内で正確性・最新性を確保すれば大丈夫です。

また、「遅滞なく消去する」といっても、具体的に「いつまでに」「○日以内に」という期限は特にありません。業務の遂行上の必要性や引き続き個人データを保管した場合の影響等も勘案し、必要以上に長期にわたることのないようにしましょう。ただし、他の法令で保存期間が定められている場合があることに気をつけなければいけません。例えば、賃金台帳は労働基準法に基づき原則5年間保存が義務付けられています。

3 安全管理措置を講じる

取り扱う個人データの漏えい、滅失または毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければなりません。

個人データの「漏えい」とは個人データが外部に流出すること、「滅失」とは個人データの内容が失われること、「毀損」とは個人データの内容が意図しない形で変更されることや、内容を保ちつつも利用不能な状態となることをいいます(3つまとめて、「漏えい等」といいます)。

「安全管理のために必要かつ適切な措置」については、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」に具体例が示されています。この記事の第5章で、参考として、社員数100人以下の「中小規模事業者」が講じるべき安全管理措置について紹介しています。最低限対応しないといけない内容ですので、確認してみてください。

■ガイドライン10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容■
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a10

4 従業者を監督する

従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりません。

「従業者」は、雇用関係にある社員(正社員、契約社員、嘱託社員、パート社員、アルバイト社員など)だけではなく、取締役、執行役、理事、監査役、監事、派遣社員なども含まれます。

「必要かつ適切な監督」は、前述した安全管理措置で「やる」と決めたことがしっかり守られているかチェックすることです。

5 (参考)「中小規模事業者」が講じるべき安全管理措置

ガイドラインの10「(別添)講ずべき安全管理措置の内容」で例示されている中小規模事業者における手法を紹介します。

1)基本方針の策定

「事業者の名称」「関係法令・ガイドライン等の遵守」「安全管理措置に関する事項」「質問および苦情処理の窓口」などの項目を策定する

2)個人データの取り扱いに係る規律の整備

個人データの取得、利用、保存等を行う場合の基本的な取り扱い方法を整備する

3)組織的安全管理措置

  • (組織体制の整備)個人データを取り扱う従業者が複数いる場合、責任ある立場の者とその他の者を区分する
  • (個人データの取り扱いに係る規律に従った運用・個人データの取扱状況を確認する手段の整備)あらかじめ整備された基本的な取り扱い方法に従って個人データが取り扱われていることを、責任ある立場の者が確認する
  • (漏えい等事案に対応する体制の整備)漏えい等事案の発生時に備え、従業者から責任ある立場の者に対する報告連絡体制等をあらかじめ確認する
  • (取扱状況の把握および安全管理措置の見直し)責任ある立場の者が、個人データの取扱状況について、定期的に点検を行う

4)人的安全管理措置

  • (従業者の教育①)個人データの取り扱いに関する留意事項について、従業者に定期的な研修等を行う
  • (従業者の教育②)個人データについての秘密保持に関する事項を就業規則等に盛り込む

5)物理的安全管理措置

  • (個人データを取り扱う区域の管理)個人データを取り扱うことのできる従業者および本人以外が容易に個人データを閲覧等できないような措置を講じる
  • (機器および電子媒体等の盗難等の防止①)個人データを取り扱う機器、個人データが記録された電子媒体または個人データが記載された書類等を、施錠できるキャビネット・書庫等に保管する
  • (機器および電子媒体等の盗難等の防止②)個人データを取り扱う情報システムが機器のみで運用されている場合は、当該機器をセキュリティワイヤー等により固定する
  • (電子媒体等を持ち運ぶ場合の漏えい等の防止)個人データが記録された電子媒体または個人データが記載された書類等を持ち運ぶ場合、パスワードの設定、封筒に封入し鞄に入れて搬送する等、紛失・盗難等を防ぐための安全な方策を講じる
  • (個人データの削除および機器、電子媒体等の廃棄)個人データを削除し、または、個人データが記録された機器、電子媒体等を廃棄したことを、責任ある立場の者が確認する

6)技術的安全管理措置

  • (アクセス制御)個人データを取り扱うことのできる機器および当該機器を取り扱う従業者を明確化し、個人データへの不要なアクセスを防止する
  • (アクセス者の識別と認証)機器に標準装備されているユーザー制御機能(ユーザーアカウント制御)により、個人情報データベース等を取り扱う情報システムを使用する従業者を識別・認証する
  • (外部からの不正アクセス等の防止①)個人データを取り扱う機器等のオペレーティングシステムを最新の状態に保持する
  • (外部からの不正アクセス等の防止②)個人データを取り扱う機器等にセキュリティ対策ソフトウェア等を導入し、自動更新機能等の活用により、これを最新状態とする
  • (情報システムの使用に伴う漏えい等の防止)メール等により個人データの含まれるファイルを送信する場合に、当該ファイルへのパスワードを設定する

7)外的環境の把握

外国において個人データを取り扱う場合、当該外国の個人情報の保護に関する制度等を把握した上で、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる

以上(2026年7月更新)

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