目次
1 テレワーク環境のセキュリティ対策は十分ですか?
会社から離れた場所(自宅など)で、ITツールを使って仕事をするテレワーク。働き方改革の一環として、また、自然災害などの非常時でも事業を継続する手段として注目され、コロナ禍をきっかけにテレワークを行えるようにした会社も多くあります。
一方、セキュリティが十分に確保されていない環境でのテレワークが依然として行われており、そうした脆弱性を突かれて、さまざまな会社が深刻な被害に遭っています。
IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威2026」では、「リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃」が第8位としてランクイン
しました(初選出の2021年以来、6年ぶり6回目)。
(注)「リモートワーク」と「テレワーク」はほぼ同義として扱われるため、この記事では総務省などの公的資料に倣い「テレワーク」という表記に統一して解説します。
この記事では、中小企業の経営者やマネジメント層、そして現場の従業員の方に向けて、テレワーク環境を狙ったサイバー攻撃の脅威に焦点を当て、今すぐ実践すべき注意点を解説します。
2 テレワークを行う際のセキュリティ上のポイント
1)基本は、日常における情報セキュリティ対策
テレワークを行う際のセキュリティ上のポイントは「ネットワーク環境の安全性」です。中でも、無線LAN(Wi-Fi)は、通信内容が傍受(盗聴)される危険性があるため特に要注意です。
ユーザーIDやパスワードなどのログイン情報をはじめ、機密性の高い情報をやり取りする場合には、自分と相手先との間で通信が暗号化されていることを確認しましょう。自宅内など自分でアクセスポイントを設置して利用する場合、無線LANの暗号化方式は「WPA3」もしくは「WPA2」を利用することが推奨されます。
メーカーのサポートが終了した機器の利用は避け、脆弱性を解消するアップデートプログラム(ファームウェア)を定期的に、できれば自動更新機能で適用しましょう。その他、外部からの不審な接続がないか、管理画面へのアクセス権限が適切かなど、ルーターの設定状況を定期的にチェックします。
また、ルーターの接続パスワードや管理画面のパスワードを、初期設定のままにしたり、簡単な文字列にしたりするのは厳禁です。
もちろん、次のような基本的な対策は欠かせません。
- パソコンやスマートフォンのOS・ソフトウェアを常に最新版にする
- セキュリティソフトを必ず導入し、定義ファイルの自動更新を有効化しておく
- 安易にメールのリンクをクリックしたり添付ファイルを開いたりしない
- パソコンの紛失、盗難に気をつける
- パソコンの画面を覗き見されないようにする
2)「会社の管理外」のネットワーク環境にも注意
外出先(カフェ、ホテルや空港など)でテレワークを行う場合、最大のリスクは「会社がコントロールできない公衆無線LAN環境」に情報がさらされることです。会社としてモバイルルーターを貸与し、公衆無線LANへの接続を禁止するのも一手です。
もちろん、次のような基本的な対策は欠かせません。
- 攻撃者が設置した「偽のアクセスポイント」に誤って接続しない
- ウェブブラウザのURLを確認し、HTTPS通信になっているか(暗号化されているか)確認する
- パソコンのファイル共有機能をオフにする
3)参考:日本テレワーク協会の「ツール一覧」の活用
技術的対策について「具体的にどのような製品を選べばよいか分からない」という課題に直面しがちです。その強力な助けとなるのが、日本テレワーク協会の「テレワーク関連ツール一覧」です。この資料は、テレワーク推進担当者向けに作成されており、導入時に検討すべき安全なネットワークや、各種ITツール(ソフトウェア・サービス等)を網羅的に提示しています。
■日本テレワーク協会「テレワーク関連ツール一覧」■
https://japan-telework.or.jp/tw_info/suguwakaru/guide/#tool
3 VPN機器の脆弱性などに要注意!
1)ランサム攻撃の侵入経路の6割以上がVPN機器
テレワークを実施する会社の多くは、外部から社内システムに安全に接続するための仕組みとしてVPN(Virtual Private Network)を導入しています。テレワーク環境を狙ったサイバー攻撃で、現在、最も警戒すべきなのが「VPN機器」への攻撃です。
警察庁の統計資料によると、2025年にランサム攻撃の被害に遭った企業・団体など226件へのアンケート結果で、「侵入経路はVPN機器が6割以上を占める」状況となっています。ランサム攻撃は、パソコンやサーバーなどに保存されているデータを暗号化して使用できない状態にした上で、そのデータを復号する対価として金銭や暗号資産を要求するサイバー攻撃です(IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」で第1位)。
ランサム攻撃の侵入経路
警察庁調査(2025年・被害企業226件)─ 侵入経路の6割以上がVPN機器
超
がVPN機器からの侵入
中小企業では「サポート切れ機器の放置」や「例外措置の形骸化」が特に深刻。数年前に導入したまま見直していないVPN機器が、攻撃者にとって格好の標的になっている。
(出所:警察庁統計資料、IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」)
2)SSL-VPN接続は見直しが必要
テレワーク環境を持つ全ての会社が直面している重要な技術的トピックとして、
今まで広く使われてきたSSL-VPN接続は非推奨となっていること
が挙げられます。
例えば、統合脅威管理(UTM)機器「FortiGate」で知られる、業界大手の米Fortinet(フォーティネット)社は、同社製機器における「SSL-VPN接続機能」のサポート終了へと舵を切りました。これには、SSL-VPNという通信方式そのものに構造上の脆弱性が多く、世界中の攻撃者から執拗に狙われ続けてきたことが背景にあります。同社は、短期的には「SSL-VPN」から「IPSec-VPN」への移行を推奨しています。
SSL-VPNからIPSec-VPNへ
構造上の脆弱性を理由に、業界大手Fortinet社もSSL-VPNのサポート終了へ
非推奨
SSL-VPN接続
通信方式に構造上の脆弱性が多く、世界中の攻撃者から狙われ続けている
移行を推奨
IPSec-VPN
Fortinet社が短期的な移行先として推奨する通信方式
(出所:Fortinet社発表資料ほか)
4 テレワーク環境の安全性を確かめるためのチェックリスト
1)経営者・マネジメント層向け
| チェック項目 | 済 |
|---|---|
| テレワークに関する社内ルールを策定し、全社に周知・徹底しているか | □ |
| 承認制にするなど、テレワークを行う従業員を特定しているか | □ |
| テレワークを行う従業員に対し、会社としてパソコンやモバイルルーターを貸与、管理しているか | □ |
| テレワークを行う従業員に対し、定期的に情報セキュリティや労働時間などに関する教育を行っているか | □ |
| 社外から社内ネットワークへの接続を認める場合、「SSL-VPN以外」の方法を採用しているか | □ |
2)従業員向け
| チェック項目 | 済 |
|---|---|
| 自宅の無線LANの暗号化規格は「WPA3」もしくは「WPA2」であるか | □ |
| 無線LANルーターの接続パスワードや管理画面のパスワードを推測されにくい複雑なものにしているか | □ |
| 無線LANルーターはサポート期間中で、ファームウェアが最新になっているか | □ |
| 無線LANルーターの設定を定期的に確認しているか | □ |
| 接続するアクセスポイント(SSID)を確認しているか | □ |
| ウェブブラウザのアドレスバーでURLが「https://」となっているのを確認しているか | □ |
| 意図せずファイルやフォルダを他人に見られないよう、パソコンの共有設定に注意しているか | □ |
| 電車の網棚にパソコンが入った鞄を置き忘れたり、カフェなどでパソコンを放置して離席したりしていないか | □ |
| パソコンに覗き見防止フィルターを装着しているか | □ |
以上(2026年7月作成)
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