1 ボードゲームカフェは「初心者にも優しい」が売り
ボードゲームカフェは
飲食と併せて、世界中のさまざまな種類のボードゲームを楽しめる施設
です。
ボードゲームカフェが人気を博している理由には、次の要因があるとされています。
- 個人での入手が難しかったり、保管場所を取ったりするボードゲームも、パックなどの時間料金で気軽に楽しめる。
- 店舗スタッフがお客さんの人数や好みに合わせておすすめのゲームを提案したり、ルール説明も行ったりするので、慣れていない人でもボードゲームを楽しめる。
- ボードゲームは通常、2人以上のグループで遊ぶことが想定されているが、店舗によっては相席イベントを開催しており、スタッフが仲介してその場で一緒になったお客さん同士でゲームを楽しめるので、1人で店舗に行ける場合もある。
一方で、ボードゲームに興味があり、これからボードゲームカフェを始めてみたいと考えている人にとっては、次のようなことを疑問に感じるかもしれません。
- 飲食店などと比べて初期投資が低く、参入しやすいと言われているが、開業のきっかけや費用の目安はどのくらいなのか
- 毎月、多くの新作ボードゲームが発売されているが、ボードゲームカフェではどこから、何を基準にしてボードゲームを揃えているのか
- レンタルスペースやカラオケなどでもボードゲームの貸し出しサービスがあり、ボードゲームを遊べる場所は増えている中で、ボードゲームカフェとして他店と差異化するためのポイントは何なのか
この記事では、新規開業を検討する事業者の参考となるよう、ボードゲームについての前提知識や実際の店舗にヒアリングした開業と店舗運営の勘所を紹介します。事例を先に知りたい人は、第3章をご確認ください。
2 ボードゲームについての前提知識
1)ボードゲームの種類は?
ボードゲームの種類はさまざまなものがありますが、ボードゲームの総合情報サイト「ボドゲーマ」などのウェブサイトによると、例えば次のようなものがあります。
■「ボドゲーマ」■
https://bodoge.hoobby.net/
1.セットコレクション
特定の色・数字・種類などのカードやアイテムを「特定の組み合わせ(役)」で集めることで得点や特殊な効果を得る仕組みです。麻雀やポーカーの役作りに似た仕組みとなっています。
ゲームの例:宝石の煌き、カタン

2.タイル・カード配置
地形や建造物などのタイルを、決められたルールやエリアに従って盤面に並べていくゲームです。タイルの繋がりや配置によって得点が発生し、その得点を競い合います。
ゲームの例:カルカソンヌ、ブロックス、枯山水

3.推理
探偵や脱出などのテーマで、様々なヒントによって犯人を当てたり、答えを導き出したりするゲームです。犯人の特定や暗号解読、他プレイヤーの隠された役割を暴くなど、仮説と検証を繰り返すプロセスを楽しめます。
ゲームの例:スコットランドヤード、正体隠匿

4.ブラフ
自分の正体や手札の情報を隠し、嘘やハッタリを交えて相手を騙す心理戦を行うゲームです。推理や情報開示のタイミング、相手の発言や動向を見破りながら自分にとって有利な状況を作ることがポイントです。
ゲームの例:ブラックホワイトハウス、海鮮魚ーず

5.エリアマジョリティ(陣取り)
各エリアに配置したコマの数や影響力を競い、最も優勢(過半数など)なプレイヤーが得点を得る仕組みです。特定の領域での優位を巡る直接的な相殺や介入の攻防が魅力です。
ゲームの例:カルカソンヌ、ブロックス

2)ボードゲームカフェの店舗数は?
ボードゲームの総合情報ウェブサイト「ボドゲーマ」によると、都道府県ごとのボードゲームカフェの店舗数は次の通りです。
■「ボドゲーマ」■
https://bodoge.hoobby.net/

2026年10月15日時点で全国のボードゲームカフェ・プレイスペースは643店舗に達しており、最も店舗数が多いのは東京都の152店舗となっています。次点で大阪府の70店舗、愛知県の46店舗、神奈川県の37店舗と続き、大都市に店舗が集中していることが分かります。
また、こうした地域では、公民館・レンタルスペース・ボードゲームカフェなどの場所を利用して、ボードゲーム好きな主催者や参加者の私物を持ち込み、参加者が会費を払って遊ぶ「ボードゲーム会」と呼ばれるイベント開催も盛んとされています。
3)ボードゲームの仕入れ方法は?
ボードゲームカフェがボードゲームを仕入れる方法には、次のようなものがあります。
1.卸売業者や代理店から仕入れるケース
卸売業者や代理店から仕入れる方法で、仕入れ先には次のような企業があります。国内外のボードゲームを幅広く仕入れられる反面、「実店舗がある事業者のみが取引対象」といった条件もあるため、取引条件には注意が必要です。
■ホビージャパン(東京都渋谷区)■
https://hobbyjapan.games/
■アークライト(東京都千代田区)■
https://www.arclight.co.jp/
■ジーピー(東京都新宿区)■
https://www.gp-inc.jp/corporate.html
■すごろくや(東京都中野区)■
https://sugorokuya.jp/
■Engames(富山県富山市)■
https://engames.jp/
2.オンラインサイトでの購入
ボードゲーム専門店やオンラインサイトで、一般価格で購入する方法です。例えば、前述のボードゲームの総合情報ウェブサイト「ボドゲーマ」では、通販ストアのページもあり、対象年齢や人数、プレイ時間などに合わせてボードゲームを選ぶことができます。
3.クラウドファンディング
ボードゲーム制作者向けのクラウドファンディングサイトで、新作のボードゲームを支援者として仕入れる方法です。クラウドファンディングの例として「ボドゲーマ」の運営元である、オーバードライブ(東京都新宿区)が手掛ける、ボードゲーム制作者向けのクラウドファンディング「ボドファン」があります。
■ボドファン■
https://bodoge.hoobby.net/columns/bodofun-entry
4.イベント経由
新作ゲームの発表、販売、試遊イベントでボードゲームを探す方法です。イベントの例として、アークライト(東京都千代田区)が運営を手掛ける国内最大級のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」があります。新作ボードゲームの発表や同人クリエイターの出展が多く集まっており、店舗が取り扱うゲームの多様化や、新作を目当てにした来店需要の創出にもつながっているとされています。
■ゲームマーケット■
https://gamemarket.jp/
4)ボードゲームの商用利用について
一般的には、ボードゲームのルールそのものはアイデアとみなされており、著作権で保護されないとしています。また、販売店から購入したボードゲームを店舗内でお客さんに遊んでもらう形であれば、著作物の使用という扱いになり著作権者への許諾は不要とされています。
ただし、販売店によっては商品の2次利用やイベントでの使用にガイドラインを設けているところもあります。例えば、商品のパッケージを編集、加工して告知画像に使用したり、参加費などで運営にかかる費用以上の収益を得るためにイベントを開催したりする際は、販売店への事前確認が必要な場合があるため注意が必要です。
5)その他の注意点
風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)に関しては、ボードゲームカフェへのヒアリングによると、「風営法上の許可を取得せずに運営しており、スタッフの接客は受付やゲームのルール説明に留めるケースが多い」とされています。一方で、風営法の許可を取得すれば、スタッフがお客さんと一緒にボードゲームを遊ぶといった、踏み込んだ接客も可能になります。また、お客さん同士がゲームの勝敗に応じて金銭を賭けることは、刑法の賭博罪に当たるため認められません。
3 実際の店舗に聞く 開業と店舗運営の勘所
ここでは、ボードゲームカフェの立地選定や接客、他店との差異化策といった開業・店舗運営の勘所を、実際のボードゲームカフェにヒアリングした結果を紹介します(取材を受けていただいた順番で掲載しています)。
1)キウイゲームズ新大阪南方店(大阪府大阪市)

JR・地下鉄御堂筋線の新大阪駅や西中島南方駅からアクセスできるボードゲームカフェです。
360種類のボードゲームを楽しめるだけでなく、ボードゲームも販売しています。また、一般の利用に限らず、婚活パーティーや企業内サークルの貸し切り利用も多いといいます。
■キウイゲームズ新大阪南方店■
http://kiwigames-som.jp/
開業のきっかけ
- 「キウイゲームズ本店」(現在は閉店)へのFC加入で開業した形になります。本業でゲームシナリオライターを手掛けており、制作会社の立ち上げにあたり、事務所兼副業としてボードゲームカフェを開店しました。初期投資は約400万円で、内訳は内装、水道工事系で300万円、ボードゲームや家具類で約100万円です。
立地の選定基準
- 「新大阪 ボードゲーム」で検索して店舗を見つけてくれるお客さんが多いです。例えば、京都、滋賀、兵庫など、隣接する地域の友人同士が集合して遊ぼうとしたときに、新大阪は交通の便が良くて集まりやすいというのはポイントかもしれません。
ボードゲーム仕入れの基準
- 実際に自分で遊んでみたり、評判や宣伝を聞いたりして「面白い」と確信できたものを店舗に置くようにしています。たとえ有名なゲームであっても、自分が楽しめないとお客さんにもおすすめしにくいからです。また、常連のお客さんの人数に合わせて、5~6人で楽しめるゲームを置いています。
接客・リピーターの確保策
- ゲームのプレイ時間と、楽しみ方(勝ち負けを競いたいか/協力したいか/とにかく盛り上がりたいか)をヒアリングすることで、おすすめするゲームを決めています。また、お客さん同士で盛り上がっているときは話しかけず、邪魔をしないことを徹底しています。中には入退店のときしか挨拶しないこともありますが、退店時に遊んでもらったゲームの感想を一言聞くことで、コミュニケーションを取りつつ、お客さんの印象に残るようにすることが大切かもしれません。
差異化のポイント
うまく続いている店舗の特徴は、
- 新作のボードゲームを途切れなく入荷し続けている
- 漫画家や小説家などが副業として店舗を運営しており、本業の知名度を活かして顧客を確保している
- 風営法上の許可を取得し、スタッフがお客さんと一緒にボードゲームを遊んでいる
- お手洗いや内装の清潔感を重視し、男女ともに入りやすい雰囲気がある
などが挙げられます。
2)U-cafe(東京都台東区)

みんなの「好き」が集まる場所をコンセプトに、カフェ・ボードゲーム・ダイニング・コワーキングなど多目的に過ごせる空間を提供しているボードゲームカフェです。2000種類以上のボードゲームを常備しており、フードやドリンクメニューにも力を入れていることが特徴です。
■U-cafe(東京都台東区)■
https://u-cafe.tokyo/
開業のきっかけ
- 元々別のブランドでボードゲームカフェの運営経験があり、既存の店舗に隣接する場所で新業態のボードゲームカフェを開業しました。既存のボードゲームカフェはドリンクのみの提供でしたが、新業態ではフードメニューに力を入れ、さらに、コワーキングスペースや結婚式の2次会などのイベントスペースとして使える空間にすることで、既存顧客の流入と新規顧客の獲得を狙いました。
立地の選定基準
- お客さんは検索で調べた上で来てくれるので、そもそも検索されにくい辺鄙(へんぴ)な駅名の立地では店舗を見つけてもらいにくくなります。ターミナル駅付近で交通の便が良ければ、一等地を選ぶ必要がないことがこのビジネスでは強みになると思います。
ボードゲーム仕入れの基準
- お客さんのほとんどはライト層のお客さんになるので、カタンやitoなど、知名度があり今日初めてボードゲームを遊ぶという人でも楽しめる品揃えを意識しています。一方で、ボードゲームを目的に来る人にはコア層のお客さんもいるので、1年に1度遊ばれるかどうかといったようなマニアックなゲームも置いています。
■カタン■
https://www.gp-inc.jp/catalog_catan.html
■ito■
https://arclightgames.jp/product/ito/
接客・リピーターの確保策
- 店舗のコンセプトが「コミュニケーションの場を作ること」なので、ボードゲームありきではなく、あくまで補助ツールとして考えています。ボードゲーム利用の人に限らず、カフェ利用やイベント参加などで来た人も居心地が良い場所になるような雰囲気づくりをしています。
差異化のポイント
- 新規開業で意識しておかなければいけないのは、ボードゲームカフェは狭い業界で、差異化によって既にファンが付いている店舗から顧客を奪うというのが基本になることです。ボードゲームのプロであったり、コミュニティーに属したりしているわけではない人が、ただボードゲームが好きという気持ちだけで続けていくのは難しいかもしれません。ボードゲームカフェは、個人店が多くあります。ただ、複数店舗を展開する方が少ないのが現状です。
3)ボードゲームと珈琲豆 新宿店(東京都新宿区)

スペシャルティコーヒーの専門店「堀口珈琲」の珈琲を飲みながら世界中のボードゲームで遊べるカフェです。ボードゲームは約500種類を取り揃えています。大人同士での利用に限らず、日中の学生のお客さんも多いといいます。
■ボードゲームと珈琲豆 新宿店■
https://boardgames-coffeebeans.com/
開業のきっかけ
- ボードゲームは趣味として楽しんでいました。元々は小売業やITでの営業、経営企画の仕事をしていたのですが、経営学を勉強していたのと、事業経営に興味があり、新規開業に踏み切りました。初期投資としては1000万円程度で、内装工事・備品で600~800万円、物件の敷金関係で300~400万円という内訳です。
立地の選定基準
- 一番は複数の地域から集まりやすいという交通の利便性です。2~5人のグループのお客さんが多いので、距離の離れた友人同士でも集まりやすい場所にあることが大切だと考えています。また、検索で見つかりやすいように、SNSでの情報発信やSEO(Googleなどの検索結果で、ウェブサイトを検索の上位に表示させるための取り組み)にも注力しました。
ボードゲーム仕入れの基準
- 初心者~中級者をメイン層としているので、そうした人が遊びやすい品揃えとしています。ボードゲームに慣れていない人は、種類が多過ぎると、かえって何で遊んでいいか分からなくなってしまうので、物量と選びやすさのバランスは意識しています。また、初心者のお客さんが誤って難易度の高いボードゲームを選んでしまわないように、ルールの覚えやすさやプレイ時間などを目安に、3段階の難易度に分けています。
接客・リピーターの確保策
- 難易度やジャンルなどを基に、複数のボードゲームを勧めてみて反応が良かったものを遊んでもらっています。何より「店舗に来て良かった」という体験を提供することを大切にしています。LINEの友達追加でも定期的に情報発信をしており、リピーターの確保につなげています。また、初心者を誘いやすい場所であることも意識しており、席同士の間隔を広めに取り、窮屈さのない空間を提供することも大切にしています。
差異化のポイント
- 自分がボードゲームを楽しみたいからではなく「どのような人をお客さんにしたいか」の視点が大切だと思います。例えば、「初心者をお客さんにしたいのに、入りづらい場所にあったり、扱うゲームがコア層向けになっていたりする」など、店舗のコンセプトと求めるお客さんとの整合性が取れていないと、続けていくのは難しいかもしれません。また、お客さんの滞在時間が1組当たり5~6時間(土日の場合)と長く、回転率は低いので、収益性が高くないのは意識しておかなければいけません。
4 まとめ:ボードゲームカフェ開業・運営のポイントは?
3店舗のヒアリングから見えてきた開業・運営のポイントを整理すると、次の通りです。
- 開業のきっかけは、ゲームシナリオライターや既存店運営者など、ボードゲームに慣れ親しんだ人によるキャリアの延長・多角化がほとんどで、初期投資は内装・備品中心に400万~1000万円程度が目安となる
- 立地は「一等地の路面店」である必要はなく、ターミナル駅からの交通の便や、Google検索で見つけてもらいやすいことが優先される
- ボードゲームの選定は、店主自身が「面白い」と確信できるかを軸にしつつ、お客さんの主なレベル(初心者中心か、コア層も含むか)に応じて品揃えの幅や難易度表示を調整している
- 接客は「ゲームを勧めて終わり」ではなく、プレイの好み(勝敗重視か、盛り上がり重視か)のヒアリングや、退店時の一言コミュニケーションなど、少ない接点でも印象に残す工夫が共通する
- 長続きする店の条件は、明確なターゲット像(初心者向けか、コア層も含むかなど)と、立地・品揃え・接客の一貫性があるかどうかに集約される
以上(2026年10月作成)
pj50583
画像:ChatGPT