繁忙期にアイドルの握手会に行く部下の年休取得は認めるべき?

1 年次有給休暇は社員が求める時季に与えるのが基本

1)Aさんの場合

Aさんの部下が、「今週の金曜日に年休を取得したい」と言ってきました。推しのアイドルの握手会に行くようです。Aさんが「この忙しいときに、そんな理由は認められない!」と叱ると、部下は落ち込みながら席に戻りました。

その日の昼、Aさんが休憩を取っていると社長が話し掛けてきました。

社長:アイドルの握手会に行くために年休を申請した部下を叱ったそうだね。なぜかな?

Aさん:私の部署は今が一番忙しくて、1人でも欠けると業務に支障が出ます。それなのに、アイドルだなんて……。

社長:気持ちは分かるが、年休は取得理由に関係なく与えるものだ。業務に支障が出るのなら、部下には違う対応をすべきだったね。

2)業務に支障が出る場合は、その旨を部下に伝えて年休の取得時季を変更する

年休は、入社後6カ月以上勤務し、なおかつ全労働日の8割以上出勤した社員に与えられます。

正社員の場合、年休の付与日数は次の通りです。

年休の付与日数(正社員の場合)

注意しなければならないのは、年休をどのように利用するかは社員の自由であり、

原則として取得理由によって年休取得の可否を決めることはできない

ということです。休暇申請書に休暇の取得理由を記入する欄を設けているケースでも、年休の場合は取得理由の記載は任意であり「私用のため」といった程度で有効です。なお、「私用のため」などの抽象的な理由が記載されていた場合に、上司が部下に有給取得の具体的な理由を口頭で尋ねることは、場合によってはハラスメントに該当し得るので注意が必要です。

また、原則として、社員は申請した時季に年休を取得できます。ただし、例外として、

社員が申請した時季に年休を与えると会社の事業運営に支障が出る場合に限り、年休の取得時季を変更することができる

というルールがあります。これを「時季変更権の行使」といいます。

3)時季変更権の行使は慎重に判断し、確実に年休を取得させる

過去の裁判では、「1人の欠務者も許容できないほど員数の余裕がなかったわけではない」ことなどから、時季変更権の行使が無効となった例もあるため注意が必要です(横手郵便局事件 秋田地裁昭和61年1月31日判決)。

また、会社は

年10日以上の年休が付与される社員(正社員など)について、年5日の年休を時季を指定して取得させる義務

があります。会社の方針などを確認しながら、「1日単位の年休に比べて取得がしやすい半日単位の年休の取得を勧める」「年度初めなどに各社員に年休を取得する日を決めさせる」など、年休の取得が滞らないよう注意しましょう。

なお、年休の申請を快く受け止め、前向きな声掛けをすることも管理職の大切な役割です。あらかじめ業務の代替体制を整えておくなど、部下が気兼ねなく年休を取得できる雰囲気づくりを心掛けましょう。

2 申請がなくても残業になる

1)Bさんの場合

Bさんが勤める会社の就業時間は9時〜18時です。ある日、Bさんは私用で定時退社するため、朝礼で「今日、残業する人は17時までに申請するように」と部下に伝えました。17時になっても残業申請はなく、Bさんは定時で退社しました。

翌日Bさんが出社すると、顔をしかめた社長がBさんに話し掛けてきました。

社長:昨夜、Bさんの部下が遅くまで残って仕事をしていたぞ。君が残業を命じたの?

Bさん:いいえ、私は命じていませんし、部下からの申請も受けていません。部下が勝手に残業したのですね。困ったものだ……。

社長:確かに困った部下だ。しかし、君も「困ったものだ」で済ませてはダメだよ。残業申請がなくても労働時間に当たるケースがあるのだから。

2)業務量が多過ぎる場合や残業を黙認している場合は、労働時間に当たる恐れがある

「残業」とは、一般的に、

労働基準法(以下「労基法」)の法定労働時間を超える労働のことで、「時間外労働」と定義されているもの

です。法定労働時間とは、労基法で定められている労働時間の上限のことで、原則として1日8時間、週40時間(休憩時間を除く)です。

会社は本来、この法定労働時間を超えて社員を働かせることはできないのですが、

通称「36(さぶろく)協定」と呼ばれる労使協定の締結・届け出をすることで、36協定に定めた時間数の範囲内で、社員に残業を命じられる

ようになります。実際は、社員が手書きの申請書や勤怠管理システムで残業申請を行い、管理職が内容を確認して残業を命じる(承認する)のが一般的です。

ここまでを聞いて、「社員から残業申請がなく、管理職も残業を命じていなければ残業(労働時間)にならないのでは?」と思った人がいるかもしれませんが、それは誤りです。実は、

残業しないと終わらない量の業務を与えたり、社員が残業をしていることを知りながら放置したりすると、明確に残業を命じていなくても、命じたものとみなされる

というルールがあるのです。これを「黙示の指示」といいます。

3)未申請の残業がまかり通らないよう、管理職から社員に働き掛ける

社員が管理職に黙って残業をするようでは、過重労働を助長しかねません。特にテレワークでは、社員の状況が分かりにくくなります。もし「残業申請が形骸化し、未申請の残業がまかり通っている」のであれば、いま一度、残業申請を徹底しなければなりません。

また、「自分の業務が滞っていることを管理職に知られたくない」ので残業申請をしない社員もいます。こうした社員には、管理職が定期的に業務の進捗を確認し、「今日は◯時間残業してくれ」「今日は定時で上がってくれ」などと指示をするとよいでしょう。

なお、管理職自身が「残業をして当然」という空気をつくらないことも大切です。自らが率先して定時退社を心掛けたり、日頃から部下の業務量や進捗を把握したりする姿勢が、部下にとって申請しやすい風通しの良い職場づくりにつながります。

3 通勤途中のけがでも労災になるとは限らない

1)Cさんの場合

Cさんの部下が顔に絆創膏(ばんそうこう)を貼っていました。理由を聞くと、昨日、会社から帰宅する途中に転倒したとのこと。「労災になりますよね?」と部下に聞かれましたが、Cさんは確信が持てません。

周囲に労務に詳しい人がいないため、Cさんは思い切って社長に尋ねました。

Cさん:社長、私の部下が会社からの帰宅途中に軽いけがをしました。これは労災ですか?

社長:その部下がけがをした状況によるな。寄り道をせず直接自宅に帰ったのかな?

Cさん:いえ。映画館に立ち寄り、劇場内でステップにつまずいて転倒したそうです。映画館は通勤経路の途中にあるのですが……。

2)「合理的な経路の逸脱」「移動の中断」があると、労災に当たらない可能性が高い

「労災」(労働災害)とは、「業務上の事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等」のことです。労災のうち、

  • 業務上の事由による労災を「業務災害」
  • 通勤による労災を「通勤災害」

といいます。

社員が労災に遭った場合、所定の手続きを行うと、労災保険の給付を受けられます。例えば、「療養(補償)給付たる療養の給付請求書(下記URLからダウンロード可能)」を、労災保険の治療に対応した「労災指定医療機関経由」で所轄労働基準監督署に提出すると、無料で治療や薬剤の支給を受けられます(通勤災害の場合は、一部負担金として原則200円が徴収されます)。

■厚生労働省「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousaihoken.html

さて、帰宅途中に被災したCさんの部下の事案が、通勤災害に当たるか否かを見ていきます。まず、通勤災害が成立するのは、

「1.自宅と就業場所との間」「2.就業場所と他の就業場所との間」「3.帰省先と単身赴任先との間」のいずれかを、合理的な経路・方法で移動していて被災した場合

です。ただし、

  • 合理的な経路を逸脱する(通勤上、不要な遠回りなどをする)
  • 移動を中断する(通勤と関係ない行為をする)

といった場合、逸脱・中断の間とその後の移動は、原則として通勤とはみなされず、その間に被災しても通勤災害には当たりません。映画館が通勤経路上にあったとしても、映画を観るために通勤を中断しているため、労災認定されない可能性が高いです。

3)逸脱・中断があっても労災として認められる例外がある

逸脱・中断の間とその後の移動は、原則として通勤とみなされません。ただし、次のいずれかに該当する場合は、逸脱・中断の後の移動については通勤とみなされます。

  • 日用品の購入等(惣菜等の購入、クリーニング店への立ち寄りなど)
  • 公共職業能力開発施設での職業訓練等
  • 選挙権の行使等
  • 病院・診療所での診察・治療等要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、配偶者の父母の介護(継続的にまたは反復して行われるものに限る)

労災に当たるか否かの判断は複雑な面があるため、自身の判断に不安がある場合は、所轄労働基準監督署に確認するようにしたほうがよいでしょう。

なお、けがや体調不良があった際に部下がためらわず報告できるよう、日頃から声を掛け合いやすい関係を築いておくことも大切です。早めの相談・共有は、労災か否かの判断だけでなく、部下の安全確保にもつながります。

4 パワハラの境界線として「業務上適正な範囲」を知る

1)Dさんの場合

Dさんとその部下は商品パンフレットの制作担当です。部下は誤字・脱字などのミスが多く、配属から1年たっても改善しません。耐えかねたDさんが「同じミスを繰り返すな!」と叱ると、部下は「一方的に怒るのはパワハラだ!」と、出ていってしまいました。

Dさんは、思い切ってこのことを社長に相談してみました。

Dさん:社長、部下の仕事ぶりを注意したら、パワハラと言われてしまいました……。

社長:業務上適正な範囲なら、本人が不満に感じてもパワハラにはならないよ。君はその部下を他の社員の前で、長時間叱ったかい?

Dさん:いえ、私の部署は私と部下の2人だけです。それに一言注意しただけです。

2)業務上必要な指導であれば、パワハラにはなりにくい

「パワハラ」(パワーハラスメント)とは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為です。厚生労働省では、パワハラの類型として次の「パワハラの6類型」を示しています。

  • 精神的な攻撃:侮辱、暴言など精神的な攻撃を加える
  • 過大な要求:遂行不可能な業務を押し付ける
  • 人間関係からの切り離し:仲間外れや無視など個人を疎外する
  • 個の侵害:個人のプライバシーを侵害する
  • 過小な要求:本来の仕事を取り上げる
  • 身体的な攻撃:蹴ったり、殴ったり、体に危害を加える

「業務の適正な範囲」とは、管理職などが、職位・職能に応じて、業務上必要な指揮監督や教育指導を行うことです。会社の商品パンフレットの品質を損なわないための指導は、管理職がその職責を果たすための行為といえます。

ただし、そのやり方(言動)には注意が必要です。例えば、

部下を指導する過程で管理職の感情がヒートアップして、「こんな仕事なら新入社員でもできる」と暴言を浴びせてしまう

といったケースです。こうした場合、管理職に悪意がなくても、その言動は「精神的な攻撃」などに該当し、パワハラとなる恐れがあります。

3)部下が萎縮し過ぎないよう、コミュニケーションにも配慮する

管理職が特に注意すべきなのは、

部下からパワハラと言われることを恐れて、本来すべき指導ができなくなってしまうこと

です。そのため、日頃から部下に対して「業務上必要があれば指導を行う」という姿勢を徹底することが大切です。

一方、管理職の「自分の指導は正しい」という思いが強過ぎると、部下は萎縮して本音を話しにくくなってしまいます。厚生労働省ウェブサイトでは、上司が部下との相互尊重を実践するためのスキルとして、

  • 事実ベースで100%褒めて、一緒に喜ぶ(できたことはできたと褒める)
  • 事実で叱り、解決策は情報共有(何が問題かを事実で指摘し、解決策を社内共有する)
  • メンツを気にせず部下に謝る(上司がミスをした場合は、取り繕わずに謝る)
  • 権限委譲する(一度部下に仕事を任せたら、途中で口出ししない)
  • 逆「ホウレンソウ」する(上司が部下に対して報告や相談をする)

の5つを紹介しているので、コミュニケーションの参考にするとよいでしょう。

■厚生労働省あかるい職場応援団「【5】育成と指導|言い方ひとつで変わる会話術」■
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/countermeasure/conversation-technique/c5/

なお、指導の際に感情的にならないよう、自分自身の状態を客観視する習慣を持つことも有効です。強めに指摘した後は、日を改めて声を掛けるなどのフォローを心掛け、部下との信頼関係を保つよう意識しましょう。

以上(2026年7月更新)

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営業戦略策定に使える!マーケティング分析の手引き

1 「マーケティング分析」を用いて営業戦略を見直してみよう

営業活動は、会社の業績を支える重要な業務です。そして営業戦略は、

営業活動の方向性を定め、営業活動の指針となるもの

です。しかし現実的には、この戦略策定が曖昧なまま営業活動を行っている企業も多いのではないでしょうか。例えば、

  • 「目標売上金額○億円(対前年度比10%増)」といった業績目標はあるものの、それを実現するための道筋(戦略)が不明瞭である
  • 営業戦略はあるものの、前年度の内容を踏襲したもので、市場環境の変化などを踏まえておらず実態に合っていない

といった具合です。

営業部門が効果的に営業活動に取り組み、成果を上げていくためには、しっかりと練られた営業戦略が不可欠です。そして、

効果的な営業戦略を策定するためには、自社を取り巻く環境や現在の状況を整理し、明文化する、「マーケティング分析」が何より大切

です。以降で、営業戦略策定に役立つマーケティング分析の方法を紹介します。

2 顧客・製品・環境のマーケティング分析

営業戦略を策定する際の第一歩は、外部環境や内部環境についてしっかりとマーケティング分析を行うことから始まります。

ここでは、こうした点を検討する際に利用できる主な分析手法などを紹介していきます。

1)顧客に関する分析

顧客層を分析する方法はさまざまありますが、よく知られているものとして、

  • ターゲットセグメンテーション分析
  • パレート分析

があります。

1.ターゲットセグメンテーション分析

ターゲットセグメンテーション分析とは、市場を特定の基準に基づいて細分化し、それぞれの集団の特徴を分析する方法です。市場を細分化する際には、

「各集団が同質的なニーズを有する」「各集団間はニーズが異なる」ようにするのが基本

です。

市場を細分化する際は、次のように、比較的情報を入手しやすい基準を使うことから始めてみるとよいでしょう。

  • (個人向け市場の場合)年齢、性別、学歴、職業、所得水準、居住地など
  • (法人向け市場の場合)業種、所在地、企業規模(売上金額、従業員数、資本金)など

2.パレート分析

ある成果について、全体のうち少数の要素(人や商品など)がその成果の多くに貢献することを、「パレートの法則」と呼びます。分かりやすく店舗で例えると、2割の顧客による売上金額が、売上金額全体の8割を占めている、といった具合です。

そしてパレート分析とは、売上金額や利益額、そして累計売上比率などに基づいて、既存顧客の会社への貢献度を分析する方法です。先述の「パレートの法則」と同じように、少数の優良顧客が売上金額などの大半を占めているケースがよく見られます。そこで、パレート分析を行うことで、顧客の貢献度合いや会社にとっての重要度を分析し、可視化することができます。

例えば、図表1では、「自社売上金額の大部分を占める顧客」をグループA、「Aへのランクアップを視野に営業する顧客」をグループB、「自社としては積極的な営業を控え、継続して情報を発信する顧客」をグループCに区分しています。

パレート分析

なお、パレート分析は、必ずしも図表1のようにABCの3つのグループに分ける必要はありません。各社の実情に応じてグループを増やしたりして分析するのもよいでしょう。

3.デジタル接点の分析

近年、顧客との接触経路は対面や電話だけにとどまらず、Webサイト、SNS、メールマガジン、口コミサイトなど多岐にわたります。中小企業においても、こうしたデジタル接点を把握・分析することが、営業戦略の精度を高める上で欠かせなくなっています。

デジタル接点の分析で特に押さえておきたいのが、カスタマージャーニーの考え方です。カスタマージャーニーとは、顧客が自社の製品・サービスを「認知」してから「購入」「継続利用」に至るまでの一連の行動と心理の流れを指します。この流れを可視化したものがカスタマージャーニーマップです。

例えば、法人向けサービスを提供する企業であれば、顧客の行動は次のような流れが考えられます。

課題を認識する → Web検索・SNSで情報収集 → 自社サイトやセミナーで詳細を確認 → 担当者へ問い合わせ → 商談・提案 → 発注

この流れを整理することで、「どのデジタル接点で顧客を取りこぼしているか」「どの段階に営業リソースを集中すべきか」が見えてきます。

2)製品に関する分析

自社製品の可能性を分析するために役立つ分析方法の1つがPPM(Product Portfolio Management)です。PPMとは、自社製品を「相対的シェア」と「市場の成長率」の2つの軸に基づいて自社製品の可能性を整理し、経営資源をどう振り分ければよいかを4象限で示したものです。PPMの概念は図表2の通りです。

PPMの概念

PPMでは「市場の成長率」と「相対的シェア」を軸に、製品を「問題児」「花形」「金のなる木」「負け犬」に分類しますが、この4つのパターンは製品の“誕生”から“死滅”へのプロセス(プロダクトライフサイクル)にもたとえられます。つまり、

  • 「問題児」として登場
  • 「花形」に成長
  • 「金のなる木」に成長
  • 「負け犬」となって消えていく

という考え方です。

そのため、PPMにのっとって基本的な経営資源の配分を考えると、「金のなる木」で得た資金を「花形」や将来性の見込める「問題児」に投資し、育成していくことになります。そして、花形への移行を見込めない一部の「問題児」や「負け犬」からは撤退を考えます。

ただし、実際には「負け犬」になりかけている製品のテコ入れを行ったり、リニューアルをしたりして、再び他の象限に該当するような製品になるケースもあります。そのため、基本的な経営資源の配分の考え方をベースにしつつ、自社の方針などを踏まえて、各製品の位置付けを検討することになるでしょう。

3)外部環境・内部環境の分析

外部環境や内部環境を分析する最もポピュラーな方法が、SWOT分析です。SWOT分析は、自社の内部環境を強み(Strength)と弱み(Weaknesses)、外部環境を機会(Opportunities)と脅威(Threat)に分けて分析します。SWOT分析の視点は、図表3の通りです。

SWOT分析

SWOT分析の結果に基づく戦略策定の基本方針は図表の通りですが、いずれにせよ

「強みをいかにして活かすか」という点を重視して考える

ことが大切です。弱みに対する相応の対処は必要ですが、弱みは経営者の考え方、組織上の問題などが複雑に絡み合っていて、簡単には改善できないケースが多く見られます。ですから、強みを活かすほうが、営業活動を効果的に行える可能性が高いといえます。

なお、他の環境分析手法には次のようなものがありますので、状況に応じて活用を検討してみるといいでしょう。

主な環境分析手法

3 営業目標と2種類の戦略を定める

分析が済んだら、早速目標や戦略を定めていきます。

具体的な営業戦略の内容はさまざまですが、主な要素を整理すると次のようになります。

  • 営業目標
  • 営業目標を達成するための市場戦略(以下「市場戦略」)
  • 営業活動を支えるための内部戦略(以下「内部戦略」)

以降で、それぞれの要素について解説します。

1)営業目標

「営業目標」とは、1年間の営業活動を通じて達成すべき目標です。営業上の目標というと、「目標売上金額○億円(対前年度比●%増)」といった業績目標が思い浮かびますが、売上金額以外の目標設定も忘れてはいけません。

例えば、「営業担当者の育成」「営業情報の共有化による組織のレベルアップ」など、業績目標とは直接的な関連が薄いものであっても、営業力を強化するためになど解決すべき課題があれば、営業目標として設定しましょう。

2)市場戦略

「市場戦略」とは、営業目標を達成するための外部に対する戦略です。具体的には、

「どの顧客に」「どの製品を」「どのようにして」販売していくのか

といった観点があげられます。マーケティング戦略であれば、「○○地域の法人をターゲットに、A製品を重点的に販売する」といったように、「市場=一定のマス」として説明されることが多いですが、市場戦略では「より具体的な形にする」必要があります。

市場戦略の一例

例えば、○○地域の法人をさらにセグメント化しその中で優先順位を付け、営業目標を達成するためにいつまでに何をすべきか、といった点まで落とし込むと、営業部門が実際に活動する際の指針として、市場戦略が効果的にはたらくでしょう。

3)内部戦略

「内部戦略」とは、営業活動を支える社内に関する戦略のことです。例えば、組織体制や業務フローの見直し、営業担当者の確保・育成などといった営業力強化のための社内における取り組みなどが該当します。

これらの営業戦略は、営業部門のみで全てを決定できるものではありません。また、経営戦略をはじめ企業活動を規定するその他の戦略などとの整合性もとれている必要があります。実際にはこうした整合性を確認しながら、

「営業戦略を策定し、その他の戦略や企業活動にも反映させていく」→「その他の戦略や企業活動の内容を踏まえて、営業戦略の内容を見直す」

ことを繰り返し、最適な戦略を練っていくことになります。

次章では、この3種類の目標と戦略をどのように策定していくかを解説・紹介していきます。

4 分析結果を戦略に反映させるには?

各種分析結果を基にして、より説得力ある、そして実現性の高い戦略を策定することができます。

戦略の策定に際して、前述したような手法で行った分析結果を活用する最大のメリットは、過去の延長線上の営業戦略から脱却できるという点

にあります。以降では、効果的な営業戦略を策定する際のポイントを紹介します。

1)戦略の階層

まず、実効性のある営業戦略を策定する際には、「営業目標」「基本方針」「個別戦略」「アクションプラン」の4つの階層に分けて考えるのが基本です。営業戦略のイメージ(市場戦略)は図表6の通りです。

営業戦略のイメージ(市場戦略)

内容は企業ごとに異なりますが、まず「営業目標」の下に営業戦略の方向性を示す「基本方針」を策定します。この基本方針を実現するための取り組みが個別戦略です。個別戦略は、地域別、顧客層別、製品別など、複数の戦略を策定するのが一般的です。

そして、個別戦略において具体的に実行すべき事項を整理したのがアクションプランです。上図のアクションプランは簡略化していますが、実際には「誰が」「いつまでに」「何をするのか」といった点が分かるように決めておきます。例えば、「ターゲットのリスト化と担当割を△チームが4月中に行う」といったように、できる限り目標を具体的に定めておくことが大切です。

内部戦略についても同様に、4つの階層に分けて考えるのが基本となります。具体的には図表7のようなイメージです。

内部戦略のイメージ

内部戦略については特に、社内のさまざまな部門との調整が必要になります。各部署と連携しつつ、目標を達成するために必要な戦略を整えていきましょう。

2)戦略を策定する際の注意点

まず、営業戦略を策定する際には、例えば「新規顧客の開拓」といった1つの方向性の営業戦略のみを検討するのではなく、新たな成長の可能性を探るため、複数の方向性を検討してみるのもひとつの手です。

そして内部戦略は一見、すぐには目に見える結果につながらないように思えますが、将来的な成長には欠かせない要素です。策定する際は、何より各部署との整合性を図り、慎重に作り上げていくことが重要です。

また、営業戦略と内部戦略どちらも共通して、

戦略とは「やらないことを決めること」

でもあります。営業目標を達成するためには、多くのことに取り組んだほうがよいことは確かですが、優先順位付けを行うことも不可欠です。関係部署と議論を重ねつつ、取捨選択を重ね、最良の営業戦略を選択することが望ましいでしょう。

小回りの利く中小企業の場合は、営業戦略の見直しなどを比較的容易に行うことができ、これは規模の大きな企業には真似できない利点です。営業戦略の進捗状況や成果を常に注視して臨機応変に営業戦略を見直し、自社の成長に役立てていきましょう。

以上(2026年6月更新)

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【部門別の見える化】 「この店舗の赤字は本当に一時的なものなのか」を判断する

1 なぜ、会社は「見えなくなる」のか?

会社の「見える化」の重要性を理解しても、そのための取り組みを行わなければ、次第に会社が見えなくなっていきます。会社が歴史を積み重ねていくと、必然的に顧客の数、支社・店舗の数、関連会社の数などが増加し、マンパワーだけでは徐々に管理できなくなっていくからです。

こうした段階になれば、システム構築などを検討すべきですが、実際は従来の延長線上で管理を続け、適切な対策を講じていない会社が少なくありません。そうすると、次第に会社全体の姿を正確に把握できない(=会社が見えない)状況に陥ってしまうのです。

この記事では、支社・支店・店舗などの部門別の損益について、会社の「見える化」を推進する際のポイントなどを、店舗別の事例を交えて紹介します。なお、グラフから業績のトレンドや問題点を把握することを重視するため、個々のグラフについての数値に関する詳細な説明は省略しています。

2 各店舗の問題点の把握

部門別の観点とは、全社的な損益の観点の一部、ないしは詳細版です。そのため、全社的な損益グラフを部門別に細分化すれば、部門別グラフは作成できます。しかし、それだけでは不十分です。部門別の「見える化」を行う上では、

各部門間での相対比較を行い、各部門の存在価値(優劣)を一目で分かるようにすることがポイント

です。

例えば、「各店舗を売上高と利益でプロットしたグラフ」というと、図表1のようなグラフをイメージする人が多いかもしれません。

店舗別の売上高・利益のプロット図(イメージ)

全ての店舗において、売上高と利益の割合がほぼ一定である場合は、こうしたグラフになります。しかし、実際には、図表2のようなグラフとなるケースが一般的です。

店舗別の売上高・利益のプロット図(現実)

図表2と同様に、次のようなケースが少なくありません。

  • 売上高、利益とも高い10~20%程度の優良店舗が全体をけん引しており、その他の店舗が“お荷物状態”になっている
  • 全体の30~50%程度の店舗が赤字になっている
  • 売上高が大きくても、利益はそれほどでもない(利益率が低い)店舗がある
  • 売上高ナンバーワンが、利益ナンバーワンとは限らない

こうした実情が分かれば、次は赤字店舗の状況について詳細に把握し、検討していくことになります。その際は、グラフの集計期間に注意する必要があります。例えば、集計期間がある特定の月であれば、その月特有の事情があるかもしれません。こうした特殊要因の影響を排除するためには、累計値のグラフを作成する必要があります。

図表3は、最も赤字を出している1店舗の月次損益の推移をグラフにしたものです。なお、13期7月時点での検討を想定しているため、13期のデータは7カ月分しか表示されていません。

赤字店舗の月次損益の推移(11期以降、累計)

このグラフを見て、現状をどのように分析するでしょうか。もしかすると、「この3年は、物価高の影響があるから……。もう少し様子を見てみよう」といったように、“言い訳”をする人が出てくるかもしれません。

しかし、図表3に表示されている3期に加えて、前4期分の情報を追加すると、どうでしょうか(図表4)。

赤字店舗の月次損益の推移(7期以降、累計)

図表4を見ると、“ここ数年”といった短・中期的に業績に影響を与えるような偶発的要因が、業績不振の原因ではないことが分かります。より長期間の状況をグラフで示すと、偶発的要因を排除した状況を簡単に把握することができます。ここで大切なことは、分布図で部門の相対評価を行うのは、各部門の相対価値を関係者が共有するためであり、その先の検討には、店舗別(部門別)の損益グラフが必要になるということです。

3 会社全体の問題点の把握

ここでは、各部門の順位グラフを検討し、会社全体の問題点について見ていきます。各店舗の業績(売上高および利益)を、利益の多い順にグラフにしたものが図表5です。

各店舗の売上高・利益(利益順)

また、各店舗の利益を、利益の多い順に左側から積み上げたものが図表6です。

各店舗の利益(積み上げ)

図表6では、右端にあるA店の部分にある数値が、全店舗合計の利益を表しているので、全社的には約5億円の利益が出ていることになります。また、上位2店舗(H店とI店)のみでも、5億円以上(約7億円)の利益が出ていることが分かります。これは決してイレギュラーな現象ではありません。件数ベースで上位約20%の部門だけで、全体利益の数百%を構成する場合もあります。ただし、経営上の観点からいうと、こうした比率は重要ではありません。本当に大切なことは、このグラフが会社を継続していくと共にどのように変化しているかを把握することです。会社を継続していくと、図表7のような兆候が発生しがちです。

各店舗の利益2(積み上げ)

会社を継続すると、必然的に規模の拡大が行われるため、店舗(部門)の数は増加します。全部が一定率の利益を出す、すなわちグラフで表すと右肩上がりの直線的なものになるようであればよいのですが、現実は図表7のような形が出現しがちです。言い換えると、会社を継続するほど、収支がほぼ均衡する“胴体の部分”(図表7でいえばE~T店)が長くなってきます。

つまり、「顧客や店舗はどんどん増えるけれど、利益が増えない」状態です。

一方で、固定費が増加しない仕組みを構築しない限り、顧客や店舗が増えれば必然的に全社ベースでの固定費は増大します。そのため、こうした仕組みを構築することができなければ、いずれこの会社は固定費の増大に耐えられなくなります。

自社にこの症状は出ていないか、グラフを使って確認してみるとよいでしょう。

以上(2026年7月更新)
(監修 公認会計士 益子宣夫)

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社長の「泥臭い価値観」が100年先の未来を創る

Kalep,中小企業事例集は、読者の皆さまの経営にお役立ていただけるような中小企業の事例をご紹介するシリーズです。経営者へのインタビューを通して、AIに聞いても分からない中小企業の取り組みや、人物の魅力に迫っていきます。

今回は、中小企業のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)策定を支援されている、山と風のホールディングスプロデューサー 中村 知嗣(なかむら としつぐ)さんにお話を伺いました!

1 組織崩壊の痛みから学んだ「理念」の必要性

――中村さんは長年、中小企業のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)策定に心血を注いでいらっしゃいます。この仕事についたきっかけは何ですか?

私の原点は、新卒入社した会社で携わっていた採用支援にあります。会社の魅力を求人票に落とし込み続けていく中で、最も重要で最終的な差別化ポイントは年収や事業内容ではなく、

「その企業がどんな想いでその事業に取り組んでいるのか」という一点に集約される

ことに気づいたのです。

その後、コロナ禍の際、とあるスタートアップ企業に創業メンバーに近いタイミングで参画しました。事業は急成長し、組織は150人規模まで拡大しましたが、そこで私は「急速に拡大した組織が伸び悩み、求心力を失っていくさま」を経験します。

経営環境の変化に伴い、一気に50人が離職。組織は停滞し、昨日まで一緒に戦っていた部下に、私が泣きながら退職を勧奨することもありました。この時痛感したのは、

「根っこにある価値観、言い換えれば社長の腹の中にある泥臭い価値観が言語化されていない組織は、外的な衝撃に耐えられず、成長が止まり、いずれ瓦解する」

ということです。

数値目標は達成できても、組織に心が通っていなければ優秀な人材は留まりません。

経営者の腹の底にある「泥臭い原動力」を抽出し、それを組織の武器に変える。

その重要性を、身を以て知ったからこそ、今このフィールドに立っています。

2 MVVは「最新のOS」であり、「家族の約束」である

――ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)は、多くの経営者にとって「知ってはいるけれど定義や使い分けがうまくできず、重要性もいまひとつ理解できていない」といった曖昧な存在かもしれません。中村さんはMVVをどう噛み砕いて説明されていますか?

まず、ミッション・ビジョン・バリューを一言で示すと、次のようになります。

  • ミッション(Mission):存在意義
  • ビジョン(Vision):未来の映像
  • バリュー(Value):ルール

これらを、2つの例え話で噛み砕いてみます。

1)スマートフォンの「OS」と「アプリ」

日々の業務や新規事業を「アプリ」に例えたとします。アプリはそのときの状況に合わせて入れ替えるべきものですが、それを動かす「OS」、つまり企業でいえばMVVが古かったり、バグだらけだったりすると、どんなに最新のアプリをインストールしても正常に動くことはありません。

MVVを作ることは、

会社のOSを最新かつ最強の状態へアップデートし、どんなアプリでも動かせる土台を作る行為

といえます。

2)家族の「ドライブ旅行」

あるいは、子どもを連れた家族のドライブ旅行を想像してみてください。この場合MVVは、以下のように定義できます。

  • ミッション(Mission):なぜ行くのか?
  • ビジョン(Vision):どこへ行くのか?
  • バリュー(Value):車内でのルール

現代は、「VUCA(先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態)」の時代です。海に向かうドライブの途中、突然の大雨や大渋滞といった予期せぬトラブルで、海に行くことを断念せざるを得ない事態になることもあるでしょう。もし、その家族にMVVがなければ、車内で喧嘩を始め、最悪の空気で帰宅することになってしまうかもしれません。

しかし、「ミッションは思い出作り、そのために海に行くビジョンを描いていた。みんな楽しく、というバリューがある」というMVVが共有されていれば、「海には行けないけれど、目的は思い出作り。ルール通り、みんな笑顔で、近くの室内遊園地に目的地を変えよう」と、瞬時に軌道修正をして、ドライブ旅行を楽しむことができるはずです。これこそが、組織におけるMVVの重要性だと考えています。

ドライブ旅行

(出所:ChatGPT)

3 判断のスピードと「求心力」の劇的変化

――実際にMVVを導入・刷新した企業では、どのような変化が起きるのでしょうか。

決定的な違いは2つあります。

「判断のスピード」と「求心力」

です。

MVVがない企業では、全ての判断基準が「儲かるかどうか」に集約されます。社員が30〜50人を超えると、社長の頭の中が現場に伝わらなくなり、組織は疲弊してしまいます。

一方、MVVがある組織では、現場が「これはバリューに沿っているか?」を自問自答し、社長がいなくても自走することができます。

いくつか、事例を紹介させていただきます。

1)急成長に伴う「OSの限界」を迎えた地域事業会社

1社目は山梨県にある事業会社の事例です。同社は創業から10年ほど、地域商社や障害者就労支援など、多角的に事業を展開しています。

もともとMVVはあり、社長の求心力も非常に強い組織でした。しかし、

事業(アプリ)が増え、組織が拡大したことで、既存のミッション・ビジョンでは今の活動を「包摂」しきれなくなっている

という課題がありました。現場の判断スピードが落ち、社長一人の独断に頼る「労働集約的な経営」へと陥っていたので、そこからの脱却が必要でした。

そこで、弊社は今までの成功体験を否定するのではなく、次の10年を見据えてOS(MVV)を刷新することを提案しました。その結果、「自分たちが改めて何に価値を置くべきか」が整理され、社長が不在でも現場が自らMVVに照らして判断できる土壌が整いました。

2)創業間もないスタートアップの「行動加速」

もう1社はbirchさまの事例です。同社の代表取締役である赤井 義大さんは、これまで地域事業を数多く立ち上げてきた実績がおありですが、今回は過去のしがらみなく事業に挑戦するために、birchを設立しました。設立時の社員数は10名以下です。

赤井さんの中に熱い想いはあるものの、それが整理されておらず、

誰に共感してもらい、どの事業を優先すべきかの取捨選択に迷いが生じている

という課題がありました。そこで、私は複数回のディープインタビューを赤井さんと実施した後、実際に現地へ赴き、2日間、赤井さんの運転する車で町中を案内してもらいながら対話を通して事業の魅力と社長の本音に向き合いました。こうして徹底したヒアリングを行い、赤井さんの「熱源」を言語化。何度も議論を重ね、本人が「これだ」と確信できる理念体系を納品しました。

結果として、MVV策定の会議中から、赤井さん自身が「ビジョンの世界」に生き始め、顔つきが変わってきました。納品後は、理念に沿った事業構想の取捨選択と優先順位付けが明確になり、現在は圧倒的なスピードで社員の行動が加速しているそうです。今回、赤井さんのコメントをいただいたので、ご紹介します。

(赤井さんのコメント)

創業から走り出してしばらくの間は、目の前の継続事業を回すことに精一杯で、「私たちは何のために存在するのか」「どんな未来を描くのか」を、一本線で語れずにいました。

地域のしがらみから独立して新しい挑戦の起点を作りたかったはずなのに、その旗が立っていなかったんです。

中村さんとの対話やご提案を通して、自分の腹の底にずっとあった熱源を、一つひとつ言葉として取り出してもらう時間でした。「挑戦と驚きを生み出し、ローカルキャリアの土壌をつくる」というミッションが定まった瞬間、迷っていた事業構想の取捨選択が、一本の線でつながりました。今は新しい話が来ても、これに沿うか否かで即座に判断できますし、意思決定のスピードが、策定前と別物になりました。

赤井 義大さん

赤井 義大さん

4 組織名に込めた思想:「山と風」と「共繁栄」

――中村さんがプロデューサーをされている「山と風のホールディングス」。お名前が非常に印象的です。ここにはどのような思いがあるのでしょうか。

私たちのグループの土台には、「KEIPE(ケイプ)」という会社があります。これは漢字で「恵みの風(恵風。けいふう)」に由来します。

そこに、拠点の山梨の「山」をつけ、「困難な『山』を越えて価値を広げていく」という意味を込めました。

自然界で山と風が共生するように、

ステークホルダーと100年先を見据えた「共繁栄(きょうはんえい)」が実現できる関係性を発明すること

が、私たちのミッションです。

山と風の共繁栄関係が自然界でずっと続いていくように、企業のMVVも作ったら終わり、ということはありません。MVVについて何らかの施策を講じたり、アンケートをとって終わり、というものでもありません。MVV策定、そして策定後の企業の活動は、それこそ100年先までじわじわと浸透し続ける終わりなき旅です。

MVVを策定した企業は、どこに向かっていくのか? 100年先にどんな姿を見せて、社会にとってどんな存在になっているのか?

常にそんなことを考えながら、ご支援しています。

■山と風のホールディングス■
https://yama-kaze.co.jp/

組織名に込めた思想

(出所:山と風のホールディングス)

5 次世代へ「明るいビジョン」を繋ぐために

――最後に、中村さん自身のミッションを教えてください。

私の個人的なミッションは、

「世の中に、才能を発揮する人を増加させる」こと

です。

人は、誰しも才能を持っています。企業のMVVを整えることは、そこで働く人たちが「自分の力をどう生かすか」を考えるきっかけになります。これが、最もレバレッジの効く社会貢献だと信じています。

私は「失われた30年」の中で育ち、日本全体に明るいビジョンがない空気感を感じながら生きてきました。だからこそ、あらゆる企業が自らのビジョンを誇れる世界を作りたいんです。効率や正解だけを求めるAIの時代だからこそ、社長の熱源を言葉にし、次の世代へ繋いでいく。それが、私の人生を捧げるべき挑戦なのです。

【編集後記】

中村さんへのインタビューを通じて感じたのは、

MVVとは単なる「お飾り」ではなく、組織という生命体を動かす「血液」そのものであるということ

です。「このMVVを100回、口にしたいですか?」という問いに答えられるか。経営者の真実の言葉だけが、未来を切り拓くことができます。

以上(2026年5月作成)
(聞き手 日本情報マート 代表取締役 松田泰敏)

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画像:日本情報マート

「地域課題解決セミナー 事業承継編」開催のご案内

2026年7月28日・29日、きらやか銀行および仙台銀行は、株式会社SBI新生銀行、および公益財団法人やまがた産業支援機構 山形県事業承継・引継ぎ支援センター・公益財団法人みやぎ産業支援機構 宮城県事業承継・引継ぎ支援センターの後援を受け、「地域課題解決セミナー 事業承継編」を開催いたします。

このセミナーでは、「後継者問題・人材不足をどう乗り越えるか」というテーマに着目し、税制改正に伴う事業承継への影響と取組事例を交えて解説します。

このページの最後に、事業承継に関するコンテンツも紹介していますので、ぜひご覧ください!

↑クリックで拡大表示↑

お申し込みはこちらから!

お申し込み締め切りは2026年7月24日(水)17:00です。

開催概要

  • 日時/会場:
    【山形会場(山形ビッグウイング2階 交流サロン)】
    2026年7月28日(水)15:00-17:00(受付開始14:30)
    【仙台会場(仙台銀行ビル9階)】
    2026年7月29日(木)15:00-17:00(受付開始14:30)
  • 参加費:無料

講師

  • 「税制改正に伴う事業承継・M&Aへの影響を徹底解説」
    小谷野税理士法人 税理士・公認会計士 長谷川 徳男氏
  • 「取組事例を踏まえたSBIグループの事業承継支援について」
    株式会社SBI 新生銀行 地域産業金融部 法人コンサルティング室 室長 永田 貴士氏

プログラム

  • 14:30-15:00 受付開始
  • 15:00-15:05 開会挨拶
  • 15:05-15:35 第一部/「税制改正に伴う事業承継・M&Aへの影響を徹底解説」
    小谷野税理士法人 税理士・公認会計士 長谷川 徳男氏
  • 15:35-16:40 5分休憩
  • 15:40-16:20 第二部/「取組事例を踏まえたSBIグループの事業承継支援について」
    株式会社SBI 新生銀行 地域産業金融部 法人コンサルティング室 室長 永田 貴士氏
  • 16:20-16:30 第三部/「じもとグループの事業承継に対する取り組みについて」
  • 16:45-17:00 質疑応答
お問合わせ先
きらやか銀行 法人サポート部 担当:五十嵐、鈴木(陵)
電話:023-628-3822(直通)

きらやか情報ステーションでは、事業承継に関するコンテンツも公開しています。ぜひご覧ください!

【損益の見える化】グラフを使った月次経営管理の基本的な流れ

1 損益が劇的に把握しやすくなる「グラフ化」

数字が羅列された表だと見落としてしまうことも、グラフだと発見しやすくなります。日々の経営では、月次試算表に基づく経営成績のチェックが不可欠ですが、実際に次のような月次試算表が手元に届いたとしましょう。この会社は12月決算で、13期7月(以下「最新月」)時点の月次試算表になります。

月次試算表(13期7月時点) align=

経営者は次の視点から検討することでしょう。

  • 最新月の売上高の確認
  • 最新月の売上高の、対前期や対前月での増減額および増減率の確認
  • 最新月は黒字か、赤字か、またその額の確認
  • 最新月の原価率(または売上総利益率)の確認
  • 人件費の額、構成比の確認
  • 個々の会社において、特に注意を要すべき費目(例えば、広告宣伝費など)の額の確認

また、累計月次試算表に基づいて、期首からの累計値で同様の検討を行い、異常な増減などがあれば、その原因を把握し、必要に応じて対策を検討・実施します。これで最新月の検討が終わり、翌月の月次試算表が届いたら、対策の効果などに目を配りつつ、再度同様のことを行う、この繰り返しではないでしょうか。

2 月次損益を把握する流れ

ここでは、月次の経営管理に活用する基本的なグラフについて見ていきます。

月次損益の推移(単月)

図表2の月次損益の推移のグラフから、売上高、売上総利益、利益の月別状況が分かります。ただし、年度ごとの状況が分かりにくいので、年次累計グラフが必要です。

月次損益の推移(年次累計)

図表3は図表2を年次累計(12カ月サイクル)グラフにしたものです。年度を通じて、黒字なのか、赤字なのか、また、その幅(金額)など年度の状況を確認できます。ただし、対前期同月比の推移が分かりにくいので、対前期同月比グラフが必要です。

対前期同月比の推移

図表4は図表3を対前期同月比グラフにしたものです。設例では11期からのデータを使用しているため、図表4はその翌期である12期からのグラフになっています。

対前期同月比グラフにして、増減金額のみをグラフ化すると、増減トレンドがはっきりと分かります。このグラフが一方的にマイナスサイドに伸びている場合は、減収減益トレンドが止まらないことを表し、一方的にプラスサイドにグラフが伸びている場合は、増収増益トレンドが継続していることを表します。また、売上高と利益のグラフ方向が逆に伸びる場合がありますが、これは増収減益、減収増益といった状況を示します。損益の増減を、部門別(店舗別)に分解してみると、より多くのことが分かります(図表5)。

対前期同月比(店舗別)

図表5は図表4の最新月(13期7月)を、部門別(店舗別)グラフにしたものです。ここでは、部門を店舗として設定していますが、実際には、事業部門、顧客、地域など自社の実情に応じて部門を設定することになります。

なお、この図表5の場合、L店が相対的に減収減益幅が大きいため、次は、L店の時系列グラフ(図表2~4)を作成し、この減収減益が一時的なものなのか、トレンドとして続いているのかを検討していくことになります。

以上(2026年7月更新)
(監修 公認会計士 益子宣夫)

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画像:Logmotion-Adobe Stock

「従業員定着・採用力強化セミナー」開催レポート 

2026年5月27日、きらやか銀行は、

「従業員定着・採用力強化セミナー」を開催

しました!

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本セミナーは、リクルート、インディードリクルートパートナーズとの共催で行われたもので、オンライン(Zoom)から80名近くの多くの参加者が集まり、地方中小企業の経営者や人事担当者の「人手不足」に対する関心の高さが表れていました。

セミナーの主題は、

「離職のメカニズムと採用・定着の工夫について」

です。

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第1部では、きらやか銀行 総務部 副部長 戸津 智也が登壇し、人的資本経営の実践として、当行における取り組みを紹介しました。

主な取り組みとしてご紹介したのは、以下の3つです。

1.定着率向上

離職者分析から、「人間関係の悩み」「成長への不安」が、離職の主因と判明。上司・人事・新入行員向けの多層的な面談制度を整備するとともに、地域貢献プロジェクトや行内インターンシップ、キャリアチャレンジ制度で「やりがい」を創出しています。

2.制度の拡充

育児・介護・健康の3分野で、柔軟な制度を整備。育児短時間勤務の延長や介護休暇の倍増、不妊・がん治療向けの休暇新設など、ライフステージに応じたサポートをハンドブックで全行に周知しています。

3.採用の多様化

新卒一括採用に加え、スカウト型・リファラル採用など「攻め」の手法を導入。応募者の関心(社風・条件・成長機会)に合わせたPRで、中途採用も本格化しています。

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第2部では、株式会社インディードリクルートパートナーズ 武田 梨那 氏が、

地方都市における採用の生存戦略

についての講演を行いました!

採用支援のプロフェッショナルによって示された、地方都市における採用の最優先課題は、

今いる社員を辞めさせない「離職防止」

です。

一方で、採用活動そのものの見直しも欠かせません。「離職防止」「採用の見直し」のために、中小企業はどのような具体策を講じることができるのでしょうか? 

講演では、以下のアプローチが紹介されました。

1.【離職防止に向けて】「びっくり退職」の早期察知

退職者のコンディションは、実際の離職の約3カ月前から低下しているというデータがあります。

具体策として、

毎月1分で答えられる簡単なアンケート(睡眠・人間関係など)を導入するだけで、退職者を大幅に減らした企業の事例

が紹介されました。

2.【採用の見直し】採用要件を広げる

「同業種経験者」へのこだわりは、母集団を狭めます。

業界を超えて活きる「ポータブルスキル(関係構築力・ニーズを汲み取る力など)」に着目する

ことで、間口を広げて採用を行うことが提案されました。

具体策として、保険営業出身者を食品会社の品質管理に、美容師を不動産管理に採用した事例が紹介されました。

3.【採用の見直し】リアルなエピソードで伝える

採用を行う際、「アットホームな職場」のような抽象的な言葉を使っても、求職者には響きません。

「17時になるとタイムカードの前に列ができる」「現場の声で倉庫に空調服を導入した」など、具体的なエピソードこそが求職者の心を動かす

という事例が紹介されました。

従業員の定着や採用力の強化は、「制度を一つ変えれば解決する」ものではありません。

日々の小さなコミュニケーションを積み重ねること、自社の「当たり前」の中に眠っている魅力を丁寧に掘り起こすことなど、各企業の地道な歩みの先に、安定した人材確保が待っている

のではないでしょうか。

「人手不足」という課題を他人事にせず、まずは自社に合った小さなアクションから一歩を踏み出してみる。そのきっかけを与えてくれる、非常に有意義なセミナーでした。

以上(2026年6月作成)

【外国人雇用】外国人雇用Q&A~雇用の手順や住居の手続き

1 在留資格を押さえれば、他は基本的に日本人雇用と同じ

外国人雇用を検討する会社は多いですが、一方で「日本人と同じように雇用して大丈夫なの?」と不安に思っている経営者も多いはずです。そこで、外国人雇用と日本人雇用の違いを簡単にまとめてみました。

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「日本人雇用と異なる点が多い」と思うかもしれませんが、これらの違いは

外国人が日本に滞在し、活動するための資格「在留資格」に関するもの

です。在留資格とは、

外国人が日本に在留して行うことができる活動、または日本に在留できる身分・地位を示す資格

です。在留資格ごとに、行うことができる活動や在留期間が定められています。在留資格で認められていない仕事に就いたり、在留期間を超えて働いたりするのは違法です(ただし、在留期間が無期限のものもある)。逆に言えば、

在留資格にさえ注意しておけば、外国人雇用と日本人雇用は基本的に同じ

ということになります。

以降では、ここまでの内容をもう少し掘り下げ、外国人を雇用する際の手続きや、在留資格の確認のポイント、雇用した後の注意点などを紹介していきます。なお、在留資格の種類や在留期間については、出入国在留管理庁のウェブサイトなどをご確認ください。

■出入国在留管理庁「在留資格一覧表」■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html

2 外国人を雇用する際はどんな手続きが必要?

1)海外から国内に外国人を呼び寄せて雇用する場合

外国人を国内に呼び寄せる場合、「在留資格認定証明書」という書類の交付を申請します。これは、外国人の国内での活動内容が、在留資格の条件に適合していることを証明する書類です。

会社は入管に交付を申請後、交付された証明書を海外にいる外国人本人に送付します。外国人が在外日本大使館や領事館での査証(ビザ)申請を行う際や、入国審査官による上陸審査を受ける際に、この証明書を提出すると審査がスムーズに行われます。

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2)海外から技能実習生を受け入れて雇用する場合

技能実習制度は、外国人の技能実習生が、日本で実習を行う会社(実習実施者)の下で働き、母国では得がたい技能の修得などを図るための制度です。実習実施者になるには、

技能実習生ごとの「技能実習計画」を作成し、外国人技能実習機構の認定を受ける

必要があります。

なお、技能実習制度については廃止が予定されており、

2027年4月1日より、新たに「育成就労制度」が開始

される予定です。

■出入国在留管理庁「育成就労制度」■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/index_00005.html

3)現在日本に住んでいる外国人を雇用する場合

外国人の在留資格が、雇用後の業務内容に適合していれば、雇用できる可能性があります。ちなみに、外国人の在留資格や就労制限の有無は、在留カード等で確認します。

2026年6月14日からは、マイナンバーカードとしての機能を付加した「特定在留カード」

の制度も開始されています。ただし、特定在留カードの取得は任意であり、従来型の在留カードとマイナンバーカードを別々に所持することも可能です。そのため、実務上は、在留カードまたは特定在留カードの券面等を確認します。

■出入国在留管理庁「【※2026年6月14日運用開始※】特定在留カード等交付申請について」■
https://www.moj.go.jp/isa/tokutei.html

在留カードの券面に記載されていた「在留期間(◯年)」「許可の種類」「許可年月日」「交付年月日」の項目が、6月14日以降に発行されるカードではICチップ内にのみ記録され、券面からは削除されます。一方、「在留期間の満了の日」「就労制限の有無」は引き続き券面で確認できます。なお、手元にある旧様式の在留カードは有効期限まで使用可能です。

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在留資格を確認し、

現在の在留資格では働けない場合、入管に在留資格の変更を申請

する必要があります。一方で、「永住者」や「日本人の配偶者等」といった就労制限がない在留資格もあります。

4)現在日本に住んでいる留学生を雇用する場合

日本の大学や専門学校、日本語学校などに「留学」の在留資格で在留している外国人をアルバイトとして雇用する場合、外国人が「資格外活動」の許可を受けていれば、雇用できます。卒業と同時に正社員などとして雇用する場合、入管に申請し、在留資格を「留学」から業務内容に適合したものに変更します。

ここまで紹介した4つは許可手続きの主なケースです。外国人の滞在場所などによって手続きの詳細が異なる場合があるため、実務では申請取次行政書士などの専門家に相談してください。

3 在留資格の確認など採用時の注意点は?

1)在留資格を確認する際は何に注意すればいい?

在留資格と査証(ビザ)は混同されがちですが、

  • 査証(ビザ)は、上陸審査時に必要となるもの
  • 在留資格は、日本での滞在・活動時に必要となるもの

といったように全く違うものです。そのため、

報道などで使われる「就労ビザ」という言葉も、本来は「就労可能な在留資格」のことを指します。査証(ビザ)だけ持っていても日本では働けないので、必ず在留資格を確認

しなければなりません。外国人の在留資格を確認する際は、在留資格と雇用後の業務内容に齟齬(そご)がないか、在留期間が終了していないかなどをチェックします。

2)在留資格の判断に迷ったら?

外国人の在留資格が有効か判断しにくい場合、入管に「就労資格証明書」を申請すると、外国人が行える活動について法務大臣の証明が受けられます。また、現在の在留資格では働けないものの、どの在留資格に変更すればよいか分からない場合、入管や厚生労働省の機関である外国人雇用サービスセンターに問い合わせると、アドバイスを受けられます。

在留資格の確認は非常に重要です。この対応をショートカットして後で在留資格と業務内容とが適合していない事が発覚した場合、違法性を問われる事になりますので、注意して対応する必要があります。

3)在留資格の確認以外に、採用での注意点は?

求人募集では、外国人のみを対象としたり、外国人が応募できないという条件を出したりすることはできません。

選考では、言語の違いから面接などでの意思疎通がうまくいかないケースがあります。能力等を正確に知りたい場合は、実技を行わせたり、同じ分野の専門家を外国人と面談させて専門分野に関する質問を行ったりして、適性や能力を判断してみるとよいでしょう。

採用が決まったら、労働条件通知書などで労働条件を明示します。労働基準法では昇給、退職金、賞与など、口頭で明示してもよい労働条件がありますが、トラブルを回避するなら書面で明示したほうが無難です。

なお、厚生労働省では、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語など13カ国語に対応した「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を公表しています。

■厚生労働省「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」(下記URL中段)■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056460.html

4 外国人を雇用した後の主な注意点は?

1)外国人を雇用した後に必要な手続きは?

1.外国人雇用状況の届け出

外国人を雇用した場合、所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に外国人雇用状況の届け出を行います。届け出の方法は、外国人が雇用保険の被保険者になるかどうかで変わります。

  • 被保険者になる:「雇用保険被保険者資格取得届」を入社月の翌月10日までに届け出
  • 被保険者にならない:「外国人雇用状況届出書」を入社月の翌月末日までに届け出

なお、雇用保険の資格取得を行う場合、雇用保険被保険者資格取得届の提出をもって外国人雇用状況届出書を提出したものとみなされます。

2.健康保険・厚生年金保険の届け出

外国人が健康保険・厚生年金保険の被保険者になる場合、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を、入社日から5日以内に所轄の年金事務所に届け出ます。

被扶養者がいる場合、「健康保険被扶養者(異動)届」なども併せて提出します。なお、被扶養者になれるのは、原則「国内居住者」だけです。国内居住者かどうかは、住民票があるか否かで判断します。この他は基本的に日本人雇用と同じです。

なお、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない場合や個人番号制度の対象外である場合については、「ローマ字氏名届」の提出も必要となります。

2)在留資格の管理は会社がするべきか?

在留資格は永住者など一部の例外を除き、在留期間が決まっており、在留期間を1日でも超えたら「不法滞在」となってしまいます。ですから、

外国人の「氏名」「国籍」「在留資格」「在留期限」などは、会社側で管理しておく

のが望ましいでしょう。在留期間の期限が近づいてきたら、満了前に入管に更新を申請する必要があります。6カ月以上の在留期間を有する場合、期限満了の約3カ月前から申請できます。

なお、在留資格の更新・変更にかかる手数料については、2026年度中(2027年3月31日までの間において政令で定める日)に、次の通り上限額の大幅な引き上げが予定されています(2026年5月29日に参院本会議で可決・成立)。手数料は原則として外国人本人の負担ですが、金額が大幅に増えることから、会社として一部を負担することも検討に値するかもしれません。

  • 在留資格の変更許可:(現行)6000円→(改正後)上限10万円
  • 在留期間の更新許可:(現行)6000円→(改正後)上限10万円
  • 永住許可:(現行)1万円→(改正後)上限30万円

3)住居をどうするか?

在留資格の取得などを済ませて日本に入国した中長期在留者は、住居地を定めた日から14日以内に、市区町村で住居地の届出等を行う必要があります。必要な手続きは日本人と同じ(転入届・転出届など)で、手続き後に住民票が作成されます。

住所を定めるには住居を確保する必要がありますが、言語の違いから不動産オーナーとうまくコミュニケーションが取れないケースもあるようです。この辺りは、外国人賃貸専門の不動産会社を利用するなどして対応しましょう。

なお、出入国在留管理庁では、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語など19カ国語に対応した「外国人生活支援ポータルサイト」を運営していて、住居の他、日本での生活に必要な知識などを確認できます。

■出入国在留管理庁「外国人生活支援ポータルサイト」■
https://www.moj.go.jp/isa/support/portal/index.html

4)外国人に効果的な教育法は?

外国人を教育する際も、言語の違いから意思疎通がうまくいかないケースがあります。特に安全衛生に関する意思疎通がうまくいかないと、外国人が作業現場などでけがをする恐れがあるので、絵や動画など視覚に訴える方法でポイントを伝えるようにしましょう。

なお、厚生労働省では、外国人の安全衛生管理の手引きや、働く人の安全と健康について学べる教材(漫画)などを公表しています。

■厚生労働省「外国人労働者の安全衛生対策について」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186714.html

5)宗教・文化の違いはどう配慮すべきか?

宗教や文化の違いにもある程度の配慮が必要です。例えば、宗教上決められた時間に礼拝を行う必要がある外国人には就業時間中の礼拝を認めたり、中国の旧正月(毎年2月ごろ)のように、外国人が本国独特の文化で長期にわたって帰国するときは、スムーズに帰国できるよう配慮したりします。

6)外国人に子どもが生まれたときは?

外国人が雇用後に結婚し、子どもが生まれた場合、子どもが日本国籍を持つ場合と持たない場合があります。例えば、父親(労働者)が外国人、母親が日本人の場合、子どもは日本国籍を持ちます。この場合、子どもの在留資格の取得手続きは原則として必要ありません。一方、

父親(労働者)と母親の両方が外国人の場合、子どもは日本国籍を持ちません。この場合、子どもが日本に在留するには、出生日から30日以内に在留資格取得許可の申請が必要

です。

以上(2026年7月更新)
(監修 弁護士 坂東利国)

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画像:ChatGPT

【2026年度版】 社員に関する法定義務の一覧表

1 まずは全企業共通の法定義務から押さえる

「人」に関するルールは複雑で、10人以上で就業規則の作成義務、50人以上でストレスチェックの実施義務などのように決まっています。抜け漏れなく行うために一覧表で確認しましょう。この記事では各種労働法に基づく人事労務の法定義務の内容を、

  • 全企業共通のもの
  • 業種や事業形態(法人、個人)などによって変わるもの

に分けて一覧表で紹介します。

2 人事労務の主な法定義務など(2026年7月1日時点)

早速ですが、人事労務の主な法定義務など(2026年7月1日時点)は次の通りです。一覧表は社員数または該当者数の昇順となっており、社員数で見る項目には「●」印を、該当者数で見る項目には「○」印を付けています。また、2026年度に施行される項目(既に施行済のものを含む)は「赤字」にしています。赤字部分に法改正に関する関連記事へのリンクも貼ってありますので、併せてご確認ください。

法定義務などの具体的な内容は、( )内の法令を参照してください。また、安衛法(労働安全衛生法)の「安全衛生管理体制」に係る法定義務については、対象業種を一部省略して記載しています。詳しくは、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」などをご確認ください。

■厚生労働省「職場のあんぜんサイト(安全衛生キーワード)」■
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo_index01.html

(図表)【人事労務の主な法定義務など(2026年7月1日時点)】

社員数または該当者数 1.全企業共通のもの 2.業種や事業形態(法人、個人)などによって変わるもの
1人以上 ●労災保険、雇用保険の強制適用事業(労災法、雇用保険法)
●労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の調製(労基法)
●36協定の締結・届け出(労基法。時間外労働などを命じることがある場合)
●派遣元・派遣先責任者の選任(派遣法。派遣社員1人以上)(注3)
●ハラスメント防止措置の実施(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法、フリーランス・事業者間取引適正化等法。2026年10月からは「カスハラ」「就活セクハラ」についても防止措置が義務化)

●健康保険、厚生年金保険の強制適用事業所(健保法、厚年法。法人)
●作業主任者の選任(安衛法。法定の危険・有害業務に従事する業種)
●化学物質管理者の選任(安衛法。リスクアセスメント対象物の製造・取扱い・譲渡提供をする場合)
●保護具着用管理責任者の選任(安衛法。リスクアセスメントに基づく措置として労働者に保護具を使用させる場合)
4人以下 ●労災保険の暫定任意適用事業(労災法。個人の農業・水産業)
●雇用保険の暫定任意適用事業(雇用保険法。個人の農業・林業・水産業)
●健康保険、厚生年金保険の任意適用事業所(健保法、厚年法。個人)(注4)
5人以上 ●多数離職届(高年法。1カ月以内に45歳以上70歳未満の者を5人以上解雇等する場合)
●障害者職業生活相談員の選任(障害者雇用促進法。障害者を5人以上雇用する場合)
9人以下 ●法定労働時間が1日8時間、1週44時間になる特例(労基法。商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業)
10人以上 ●就業規則の作成・届け出(労基法)
●安全衛生推進者(衛生推進者)の選任(安衛法)
●外国人労働者雇用労務責任者の選任(雇対法。外国人を10人以上雇用する場合)
11人以上 ●男女別の便所の設置義務(安衛法。10人以下の会社は、男女別の便所の設置が困難な場合、独立個室型の便所を設けることで足りる)
20人以上 ●店社安全衛生管理者の選任(安衛法。ずい道等の工事などを行う建設業(元請))
29人以下 ●1週間単位の非定型的変形労働時間制(労基法。小売業、旅館・料理店・飲食店)
30人以上 ●休養室の設置(安衛法。女性社員30人以上)
○再就職援助計画の提出(雇対法。事業規模縮小で、1カ月で常用雇用の社員が30人以上離職する場合)
○大量雇用変動届の提出(雇対法。自己都合退職以外で、1カ月で常用雇用の社員が30人以上離職する場合)
●統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者の選任(安衛法。ずい道等の工事などを行う建設業(元請))
●安全衛生責任者の選任(安衛法。ずい道等の工事などを行う建設業(下請))
37.5人以上 ●障害者雇用率制度の対象(障害者雇用促進法。2026年7月から「40人以上→37.5人以上」に
50人以上 ●休養室の設置(安衛法)
●ストレスチェックの実施(安衛法)
●定期健康診断などの結果報告(安衛法)
●衛生管理者1人以上の選任(安衛法)
●産業医の選任(安衛法)
●衛生委員会の設置(安衛法)
●サイレンなど非常時の警報器具の設置(安衛法。屋内作業場)
●安全管理者の選任(安衛法。屋外産業、屋内工業)
●統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者の選任(安衛法。鉄骨造りなどを行う建設業(元請))
●安全衛生責任者の選任(安衛法。鉄骨造りなどを行う建設業(下請))
●安全委員会の設置(安衛法。屋外産業)
51人以上 ●パート等(一定の要件を満たす者)に関する健康保険、厚生年金保険の加入手続き(健保法、厚年法)
100人以下 ●障害者雇用報奨金の対象(障害者雇用促進法)
100人以上 ●総括安全衛生管理者の選任(安衛法。屋外産業)
●安全委員会の設置(安衛法。屋内工業)
101人以上 ●男性社員と女性社員の「賃金差異」の公表(女性活躍推進法。2026年4月から)
●女性活躍のための一般事業主行動計画の作成(女性活躍推進法)
●仕事と子育ての両立などに関する一般事業主行動計画の作成(次世代法)
●障害者雇用納付金の対象(障害者雇用促進法)
●障害者雇用調整金の対象(障害者雇用促進法)
201人以上 ●衛生管理者2人以上の選任(安衛法)
299人以下 ●労災保険の暫定任意適用事業(労災法。個人の林業。常時雇用はなく、かつ年間延べ労働者数が300人未満)
300人以上 ●総括安全衛生管理者の選任(安衛法。屋内工業)
●専任の安全管理者の選任(安衛法。有機化学工業製品製造業など)
301人以上 ●公益通報対応業務従事者の選任、内部通報の体制整備(公益通報者保護法。2026年12月からは行政命令に従わない場合、「刑事罰の対象
●正規雇用労働者の中途採用比率の公表(労働施策総合推進法)
●男性社員の育児休業等の取得状況の公表(育児・介護休業法)
500人以上 ●専任の安全管理者の選任(安衛法。無機化学工業製品製造業など)
●専属の産業医の選任(安衛法。有害業務に常時500人以上が従事する業種)
501人以上 ●衛生管理者3人以上の選任(安衛法) ●専任の衛生管理者の選任(安衛法。有害業務に常時30人以上が従事する業種)
1000人以上 ●専属の産業医の選任(安衛法) ●総括安全衛生管理者の選任(安衛法。屋内非工業)
●専任の安全管理者の選任(安衛法。紙・パルプ製造業など)
1001人以上 ●衛生管理者4人以上の選任(安衛法)
●専任の衛生管理者の選任(安衛法)
2000人以上 ●専任の安全管理者の選任(安衛法。過去3年間に休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える林業など)

(出所:日本情報マート作成)

(注1)法令名は略称であり、正式名称ではありません。
(注2)社員数または該当者数2000人までを示していますが、これよりも大規模な企業を対象とした決まりもあります。
(注3)派遣元・派遣先責任者の選任義務は、派遣社員100人ごとに1人ずつ増えていきます。
(注4)個人経営である一部の業種は人数要件に関係なく任意適用事業所になります。

以上(2026年7月更新)

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画像:ChatGPT

【資金調達】「資産、負債、純資産」ごとの資金調達法〜バランスシートに注目

1 貸借対照表の勘定で区分した資金調達

資金は会社の血液であり、事業の存続のために資金を絶やさないことが不可欠です。経営の先行きはいつも不透明だからこそ、適切な資金調達によって憂いのない資金繰りを実現することは経営者の重要な責務の1つです。

資金調達の方法はさまざまですが、この記事では、貸借対照表(バランスシート)の「資産」「負債」「純資産」の3つに分けて整理していきます。

2 「資産」に注目した資金調達

貸借対照表の「資産」に計上されている項目に関する資金調達には、ファクタリング、動産担保融資、リース、不要な資産の売却があり、アセットファイナンスと呼ばれます。それぞれ保有資産を現金化したり、資産購入時の支払いを先延ばししたりすることで行われます。

1)ファクタリング

ファクタリングは、会社がファクターと呼ばれる事業者に対して、回収期日前の売掛債権を譲渡することで現金化する資金調達方法です。利用に際しては、ファクターへの手数料が必要になることや、基本的には売掛先の同意を取り付けなければならないので注意が必要です。

2)動産担保融資(ABL_Asset Based Lending)

動産担保融資は、原材料・在庫・売掛金などを担保に金融機関から融資を受ける資金調達方法です。企業の事業性などを考慮した上で動産の担保価値を評価するため、「経営能力は高いものの、不動産など一般的な担保が乏しい」ケースでも、相応の金額の資金を調達できる可能性があります。

3)リース

リースはリース会社を通して設備を導入する方法であり、契約で定めるリース期間にわたって、リース料を支払います。そのため、購入すると多額の資金が必要になるような設備もリース期間にわたって分割払いすることで、少額の手元資金で設備の導入ができます。

リースの利用は、直接的な資金調達方法ではありませんが、資金調達と同じような効果を得ることができるため、高額な設備購入の際には検討しましょう。

4)不要な固定資産の売却

不要だけれど、会社が保有し続けている固定資産を売却し現金化する資金調達方法です。例えば、活用されていない建物や土地、現在取引がなくなった得意先の有価証券などがあります。

また、テレワークの広がりにより、以前はオフィスにあることが当たり前だったものも、不要になっている可能性があります。例えば、オフィス機器や家具類など(備品)は、全社員がオフィスにいることが前提の分量が用意されていましたが、在宅勤務によりオフィスに通勤する社員の数が激減し、使用していないものが相当数出てきます。現状にあった見直しにより資金調達とまではいかないまでも、コスト削減による資金確保ができるかもしれません。

3 「負債」に注目した資金調達

貸借対照表の負債に計上される資金調達には、金融機関(銀行や保険会社など)からの借入や社債の発行などがあり、デットファイナンスと呼ばれます。この方法により資金調達した場合には、調達した金額(元本)と利息の返済・支払いが必要になります。

1)金融機関からの借入(融資)

金融機関からの借入(融資)は、資金調達時の交渉相手が金融機関だけであり、比較的手間のかからない資金調達の方法で、主なものに証書借入、当座借越、手形借入、手形(電子記録債権)割引などがあります。

1.証書借入(オンラインレンディング含む)

証書借入は、金額、利率、借入期間、返済条件などを記載した金銭消費貸借契約証書を金融機関に差し入れる資金調達方法で、主に比較的大きな額の設備資金など、中長期資金の調達に利用されます。

この証書借入の一部で、オンライン上で申し込みから審査、入金までが完結するのがオンラインレンディング(オンライン融資)と呼ばれる借入方法です。会計データなどを基にAIが審査を行うため、手続き全てがオンライン上で済み、スピーディーに借入できるのが大きな特徴です。

2.当座借越(ビジネスローン含む)

当座借越は、当座預金の残高を超えて融資を受ける資金調達方法で、機動的に資金調達できるため、主に短期の運転資金の調達に利用されます。金融機関と当座勘定借越契約を結ぶことで、契約の限度内で何度でも借り入れることができ、ビジネスローンなども該当します。

3.手形借入

手形借入は、自社が金融機関を受取人とした手形を振り出して融資を受ける資金調達方法で、3カ月程度の短期の運転資金の調達に利用することが一般的です。なお、2027年3月31日の手形の廃止に伴い、2027年4月1日以降を期日とする紙の手形借入の新規受付は停止されています。取り扱いの詳細については各金融機関で異なりますので、取引のある金融機関のウェブサイトをご参照ください。

4.手形または電子記録債権割引

手形または電子記録債権割引は、支払期日前の手形や電子記録債権を金融機関に譲渡して融資を受ける資金調達方法です。資金調達できる金額は、手形の場合は額面金額から割引料(金利+手数料相当額)を差し引いた金額、電子記録債権の場合は金融機関に譲渡した金額から割引料を差し引いた金額となります。なお、2027年3月31日の手形の廃止に伴い、2027年4月1日以降を期日とする紙の手形割引の新規受付は停止されています。取り扱いの詳細については各金融機関で異なりますので、取引のある金融機関のウェブサイトをご参照ください。

2)社債発行

社債の発行は、社債(会社が発行する債券)を、投資家などに引き受けて(購入して)もらい資金を調達する方法です。社債を発行する方法として、私募債と公募債があり、私募債は投資家を限定する方法で、公募債は不特定多数の投資家などに対して発行する方法です。また、企業が発行する社債には、次のような種類があります。

社債発行

4 「純資産」に注目した資金調達

貸借対照表の純資産に計上される資金調達には、株式の発行やクラウドファンディングなどがあり、エクイティファイナンスと呼ばれます。資金調達した金額(出資額など)の返済は必要ありません。ただし、配当により出資者に対する支払いが必要であったり、発行する株式の種類によっては投資家による経営介入のリスクが高まったりする可能性があります。

1)株式の発行

株式の発行の方法は、「公募」「株主割当」「第三者割当」の3つに分けられます。

公募は、不特定多数の者に対して募集を行う形態です。証券取引所(金融商品取引所)への上場時や、上場後に行うのが一般的です。

株主割当は、既存株主に株式の割当を受ける権利を与えた上で、これらの者に株式を発行する形態をいいます。

第三者割当は、特定の者のみを相手に募集を行い、その者だけに株式を発行する形態です。例えば、ベンチャーキャピタルや役員・従業員などの自社の関係者に対して、新たに引き受けてもらいます。

また、企業が発行できる株式には、次のような種類があります。

株式の発行

2)クラウドファンディングの利用

クラウドファンディングは、ウェブサイト上で企業と出資者を仲介して資金調達する方法です。

出資者は、リターン(返礼)を受け取るなどができます。このリターンの内容によって、さまざまな種類に分けられます。一般的に利用されるのは、株式型、ファンド型、融資(貸付)型、購入型、寄付型などです。なお、株式型とファンド型以外は、純資産に計上される資金調達ではありませんが、まとめてここで紹介しています。

1.株式型

株式型は、未公開株式を提供して事業資金を募集する方法です。企業の調達可能額が年間で1億円未満、出資者の投資可能額は同一の企業につき年間で50万円以下といった制限があります。

2.ファンド型

ファンド型は、ファンドを組成した上で、事業資金を募集する方法です。融資(貸付)型と似ていますが、利息ではなく事業の配当を支払います。配当だけでなく、事業で作られた商品やサービスの割引券などを提供する場合もあります。

3.融資(貸付)型

融資(貸付)型は、ソーシャルレンディングともいわれる方法で、事業資金への融資を募集します。融資してくれる人には元金を返済し、利払いをします。なお、受け取ったお金は、通常の融資と同様貸借対照表の負債(借入金)として計上されます。

4.購入型

購入型は、リターンは支援金額に応じた金銭以外の商品やサービスになります。例えば、新製品の開発・生産コストを募集するプロジェクトであれば、商品を一般販売よりも先行して手に入れられるといった特典が付いている場合があります。なお、受け取ったお金は一旦貸借対照表の資産(前受金)として計上し、商品などを引き渡した時に損益計算書の収益(売上)に計上されます。

5.寄付型

寄付型は、被災地支援や途上国の支援など社会的意義が大きい一方で、収益が見込めないプロジェクトで多く採用されることが多く、リターンがないものをいいます(活動報告書など無償の成果物が提供される場合があります)。なお、受け取ったお金は損益計算書に収益(受贈益などの勘定)として計上されます。

5 上記以外の資金調達(助成金・補助金)

国(各省庁)や地方自治体などでは、創業間もない会社に対する助成金・補助金事業を行っています。助成金・補助金は、原則、返済の必要がありませんが、一定の要件に該当する場合しか利用できなかったり、該当していても応募者数が多い場合などは受給できなかったりすることがあります。

また、提出する書類が多く手続きが煩雑であったり、多くの助成金・補助金は受け取った資金用途が決められたりするので、内容をしっかり確認するようにしましょう。

以上(2026年7月更新)

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画像:Rummy & Rummy-Adobe Stock