労働者を取り巻く環境が急速に変化し、職業人生の長期化・多様化が進むなかで、必要とされるスキルや労働需要の変化に対応しながら、自らのキャリア形成を図っていくリスキリングの取組みが重要性を増しています。厚生労働省では、リスキリングの重要性・必要性についての理解を広げるとともに、労働者がキャリアコンサルティングを受ける機会の提供や、従業員のキャリア形成支援に取り組む企業等への支援を推進しています。
【税の勘所】押さえておきたい経営者のための税金の境界線(パーセンテージ編)
1 押さえておきたい税金の「パーセンテージ」
税金には、意識すべき数字(パーセンテージ)があります。例えば、
- 55%、45%、15%
- 95%未満
などです。これらは単なる数字ではありません。税金の種類ごとの最高税率や消費税の負担、税制優遇を受ける際の税率を表す重要な境界線です。
この記事では、中小企業経営者が押さえておくべき主な税金(法人税・所得税・消費税・相続税・贈与税)に関する「パーセンテージ」を整理します。

2 95%未満:消費税
95%未満は、消費税の仕入税額控除が一部できなくなる課税売上割合です。
課税売上割合とは、全体の売上高のうち、課税売上高(消費税が課される売上高)が占める割合で、消費税の仕入税額控除の計算などに使用されます。消費税の仕入税額控除の計算方法には、
- 全額控除方式:課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除
- 個別対応方式:課税仕入れ等に係る消費税額の一部を控除
- 一括比例配分方式:課税仕入れ等に係る消費税額の一部を控除
の3つがあります。
全額控除方式を適用することができるのは、課税期間における課税売上割合が95%以上で、かつ課税売上高が5億円以下の事業者に限られます。そのため、課税期間における課税売上割合が95%未満の場合、または課税売上高が5億円超の場合は、個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかを利用することになり、課税仕入れ等に係る消費税額が一部控除できなくなります。
3 55%:相続税、贈与税
55%は、相続税と贈与税の最高税率です。
1)【相続税】相続税の最高税率
相続税の税率は、次の通り8段階に区分されており、最高税率は55%です。

2)【贈与税】贈与税の最高税率
2015年以降の贈与税の税率は、次の通り「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されましたが、いずれのケースも8段階に区分されており、最高税率は55%です。

4 45%:所得税
45%は、所得税の最高税率です。
所得税の税率は、分離課税(株式等の譲渡で生じた所得などと、他の所得を分離して計算)に対するものなどを除くと、次の通り7段階に区分されており、最高税率は45%です。

5 30.64%:法人税
30.64%は、法人実効税率(外形標準課税適用法人)です。
法人実効税率とは、法人税だけでなく、地方法人税、法人住民税、法人事業税の税率を考慮した、実際に法人が負担する税率です。法人実効税率は次の算式で計算されます。

標準税率を適用した場合の今後の法人実効税率は次の通りとなります。

6 15%(17%または19%):法人税
15%(17%または19%)は、法人税の軽減税率です。
普通法人で資本金が1億円以下の法人(中小法人)の場合、年800万円以下の所得金額部分については、通常よりも低い税率(軽減税率)が適用されます。ただし、資本金が1億円以下でも、資本金が5億円以上の法人と完全支配関係にある場合、軽減税率が適用されません。

以上(2026年8月更新)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)
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【税の勘所】押さえておきたい経営者のための税金の境界線(金額編)
目次
1 押さえておきたい税金の「金額」
税金には、超えてはいけない、または活用すべき数字(金額)があります。例えば、
- 売上1000万円
- 売上5000万円
- 所得800万円
- 資本金1億円
などです。これらは単なる数字ではありません。消費税の負担や税制優遇の適用可否を左右する重要な境界線です。
この記事では、中小企業経営者が押さえておくべき主な税金(法人税・所得税・消費税・相続税・贈与税)に関する「金額」を整理します。

2 5億円超:消費税
5億円超は、消費税で一部の仕入税額控除が認められなくなる課税売上高です。
消費税の納税額は次のように計算されます(簡易課税制度の場合を除く)。

課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を差し引くことを仕入税額控除といいます。消費税の仕入税額控除の計算方法には、
- 全額控除方式:課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除
- 個別対応方式:課税仕入れ等に係る消費税額の一部を控除
- 一括比例配分方式:課税仕入れ等に係る消費税額の一部を控除
の3つがあり、全額控除方式を利用できるのは、
課税期間における課税売上割合が95%以上で、かつ課税売上高が5億円以下の事業者
に限られます。課税売上割合とは、全体の売上高のうち、課税売上高(消費税が課される売上高)が占める割合です。
そのため、課税期間における課税売上割合が95%未満の場合、または課税売上高が5億円超の場合は、個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかを利用することになり、課税仕入れ等に係る消費税額が一部控除できなくなります。
3 1億6000万円:相続税
1億6000万円は、配偶者に相続税がかからない取得財産の金額です。
配偶者が財産を相続する場合、同一世代間における財産の移転の場合が多いことや、配偶者は被相続人の遺産形成に貢献していること、また、被相続人が死亡した後の配偶者の生活水準を保つなどの理由から、相続税を軽減する措置が設けられています。
そのため、配偶者が財産を相続した場合、その財産の額が次のいずれか多い金額までは配偶者に相続税はかかりません。
- 1億6000万円
- 配偶者の法定相続分相当額(相続人が配偶者と子の場合は、遺産の2分の1相当額)
4 1億円以下:法人税
1億円以下は、法人税の優遇措置を利用できる中小企業者等の判定に関する金額です。
法人税には、中小企業者等が利用できるさまざまな優遇措置があります。主な優遇措置は次の通りで、いずれも資本金が1億円以下でなければ利用できません。
- 法人税の軽減税率
- 交際費等の損金不算入制度における定額控除限度額(年800万円)
- 欠損金の繰越控除
- 欠損金の繰戻還付
- 貸倒引当金の法定繰入率
- 特定同族会社における留保金課税の不適用
- 少額減価償却資産の取得価額の損金算入
- 賃上げ促進税制(中小企業向け)の適用
ただし、注意点があります。上記1.~6.は、資本金が1億円以下でも、資本金が5億円以上の法人と完全支配関係にある場合は利用できません。
また、上記7.~8.については、資本金が1億円以下でも、大規模法人に発行済株式の2分の1以上を所有されている場合、または2以上の大規模法人に発行済株式の3分の2以上を所有されている場合などは利用できません。なお、大規模法人とは、資本金が1億円を超える法人、資本もしくは出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1000人を超える法人、又は大法人(資本金が5億円以上である法人)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人をいいます。
5 5000万円以下:消費税
5000万円以下は、消費税の「簡易課税制度」が選択できる課税売上高です。
簡易課税制度は、事業の種類に応じ、課税売上高に一定割合を乗じて仕入税額控除を計算する方法で、
小規模事業者だけ
が利用できます。原則的な消費税の計算方法は複雑なので、簡易課税制度で小規模事業者の負担を軽減しています。簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5000万円以下で、「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出している事業者が利用できます。
6 2000万円超:所得税(確定申告)
2000万円超は、所得税の確定申告をしなければならない給与の年間収入です。
給与所得者は年末調整をするので、ほとんどの人は確定申告をする必要はありません。しかし、当該給与所得以外にも所得がある場合や給与の年間収入金額が2000万円を超える場合は、年末調整の対象外となるので、自身で所得税の確定申告をしなければなりません。
7 2000万円超:所得税(住宅ローン控除)
2000万円超は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)が受けられない合計所得金額です。
住宅借入金等特別控除とは、個人が住宅ローンを利用して、マイホームの取得や増改築した場合に、その住宅ローンの年末残高を基に計算した一定額を住み始めた年分以後の各年分の所得税額から控除できる制度です。住宅借入金等特別控除は、適用する年の合計所得金額が2000万円を超える年分については対象外となります。
8 2000万円以下:贈与税
2000万円以下は、住宅取得資金贈与を受けるための受贈者の要件の1つとなる金額です。
投資や賃貸用ではなく、自身の住宅を取得するため、直系尊属である父母や祖父母などから贈与により金銭を取得した場合、一定の金額までは贈与税がかかりません。この特例を受けるには、贈与を受けた年の受贈者(贈与を受ける人)の合計所得金額が原則2000万円以下であるなどの要件を満たす必要があります。
9 1000万円以下:消費税
1000万円以下は、消費税の納税義務が免除される基準期間の課税売上高です。
事業者は、国内において行った資産の譲渡や貸付け、役務の提供について、消費税を納めなければなりません。ただし、基準期間の課税売上高が1000万円以下の場合、一定の場合を除き、消費税の納税義務が免除されます。
10 1000万円未満:消費税
1000万円未満は、基準期間が無い場合に消費税の納税義務が免除される資本金の額です。
新規に設立された法人は基準期間がありません。そのため、その事業年度開始の日における資本金が1000万円未満なら、一定の場合を除き、消費税の納税義務が免除されます。
11 850万円超:所得税
850万円超は、所得税の給与所得控除の上限となる収入金額(195万円控除)です。
給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて計算し、上限は195万円です。

12 800万円:法人税
800万円は、中小法人における交際費等の損金算入限度額の1つとなる金額です。
原則として交際費等は損金算入できませんが、資本金が1億円以下の法人(中小法人)は、特例として、年800万円(定額控除限度額)まで交際費等を損金算入できます。ただし、資本金が1億円以下でも、資本金が5億円以上の法人と完全支配関係にある場合は対象外です。
なお、交際費等のうち、接待飲食の費用の50%相当額は損金算入できるので、年800万円と比較して有利なほうを選択しましょう。
13 800万円以下:法人税
800万円以下は、中小法人が法人税の軽減税率を受けられる所得金額です。
普通法人の場合、各事業年度に適用される税率は次の通りです。中小法人の場合、年800万円以下の所得金額部分については、通常よりも低い税率(軽減税率)が適用されます。ただし、資本金が1億円以下でも、資本金が5億円以上の法人と完全支配関係にある場合、軽減税率が適用されません。

14 300万円以下:法人税
300万円以下は、中小企業者等が40万円未満の減価償却資産を全額損金算入できる限度額です。
中小企業者等が、取得価額が40万円未満である少額減価償却資産を取得した場合、取得価額の全額を損金算入できます。ただし、1事業年度に損金算入できる限度は300万円以下です。事業年度が1年未満の場合は、月数で按分します。
15 110万円以下:贈与税、相続税
110万円以下は、贈与税(暦年課税)および相続時精算課税の基礎控除額です。
贈与税は個人が個人から財産をもらったときに課される税金ですが、個人がその年の1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計が110万円以下なら贈与税はかかりません。これを「基礎控除」といいます。基礎控除は、贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人ごとに1年間で110万円となります。なお、死亡日以前7年間(2023年12月31日以前の贈与については3年間)の分については、基礎控除分であっても、相続財産に加えることになっており、相続税の対象になります。
また、2024年1月以降は、相続時精算課税(贈与税については2500万円までの特別控除が受けられるが、贈与した財産については相続時にまとめて相続税が課せられる制度)の適用を選択した場合でも、毎年110万円の基礎控除が設けられるようになりました。以前は、相続時に生前贈与した財産の全額が相続税の課税対象となっていましたが、2024年1月以降の贈与については、毎年110万円を控除した残額の合計が相続税の課税対象とります。
16 1万円以下:法人税
1万円以下は、交際費等から除かれる一定の飲食代の1人当たりの金額です。
飲食等の費用のうち、1人1万円以下までなら損金算入できます。1万円の判定は、法人が適用している消費税等の経理処理(税抜経理方式または税込経理方式)に応じて行われます。
なお、経営者や社員、その親族の接待で使った飲食代は、1万円以下でも損金算入できません。
以上(2026年8月更新)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)
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【ビジネス文書・法令文書】給与計算担当者が知っておきたいフリンジベネフィット
フリンジベネフィットは福利厚生の充実につながる一方で、給与課税や社会保険上の報酬に該当するかの判断を誤ると、税務調査で指摘を受けるおそれがあります。また、令和7年度・8年度税制改正では食事や通勤手当の取扱いも見直されています。
そこで本稿では、税制改正のポイントを踏まえ、代表的なフリンジベネフィットの課税関係や社会保険上の取扱いをわかりやすく解説します。
ビジネス文書・法令文書 今月の特集は、こちらからお読みいただけます。
巷で噂の税金対策は本当に得をする? 中古車、社宅、出張手当
1 経営者の間で噂されるさまざまな税対策
「4年落ちの中古車を買えば税負担が下げられる」「役員社宅にすれば家賃が会社の経費になる」など、中小企業の経営者の間で、さまざまな税対策の話題は尽きません。心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
役員報酬の調整や交際費の活用といった『王道』の税対策は、すでに実践されている方も多いはずです。それでも、「もっと節税できるはず」「同業者はもっとうまくやっているのでは」ーーそんな思いから、つい耳を傾けてしまうこともあるのではないでしょうか。ネットや経営者仲間の間で広まっているのは、もう一歩踏み込んだ税対策です。
その一方で、心のどこかにこんな不安を抱えてはいないでしょうか。
「本当に税務調査で指摘されないのか?」
「やりすぎて脱税と見なされないか?」
「節税のつもりが、かえって損をしていないか?」
そうした迷いを抱える経営者の方に向けて、この記事では、巷で語られる税対策の実態を、税務・法律の難しい用語をなるべく使わず、できるだけ分かりやすく解説します。
2 巷でよく聞く税対策の実態は? その仕組みと注意点
1)新車よりも中古車、特に「4年落ちの中古車」は購入費の全額を即経費にできる
車は年々価値が下がる資産であるため、購入費用は通常、一度に経費にするのではなく、数年に分けて計上します。新車であれば、法律で定められている耐用年数は6年なので、6年間に分けて少しずつしか経費に計上できませんが、中古車の耐用年数は、
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
という計算式(簡便法)で求められます。普通自動車の法定耐用年数は6年です。4年落ちの中古車(登録から4年以上経過した普通車)の場合は、「(6-4)+4×0.2=2.8年」、端数を切り捨てて耐用年数は2年になります。つまり、高額な車でも短期間で経費にできるため、購入後の早い時期に多額の経費を計上して税負担を下げる効果が期待できます。
特に注目すべきは、法人では原則として「定率法(耐用年数ごとに定められた一定の率を乗じて減価償却費を計算する方法)」が適用される点です。耐用年数2年の定率法の償却率は1.000となり、購入初年度に取得価額から1円を引いたほぼ全額を経費として計上できます。
例えば500万円の4年落ちの中古車を定率法で処理した場合、初年度に約500万円(厳密には499万9999円)を一気に経費に計上できます。ただし、購入時期が期中であれば月割り計算となるため、期首に購入することで税負担を最も軽減する効果が得られます。

ただし、いくつか注意点があります。
経費として認められるのは事業で使用した割合に限られます。プライベートでも使用する場合は「家事按分」が必要です。税務調査に備えて走行記録(行き先や目的など)を日頃から残しておくことが重要です。
また、減価償却が終了すれば経費計上による利益圧縮効果はなくなります。「税負担を下げるためだけに不要な高級車を購入する」のは本末転倒です。500万円の現金が会社から実際に流出することを忘れてはいけません。加えて、高級車やスポーツカーは事業との関連性が弱いと判断されるケースもあり、経費を否認されるリスクもあります。
中古車は修理リスクも高いため、税負担を下げる効果だけでなく総コストや資金繰りも踏まえて慎重に判断しましょう。
2)役員社宅で家賃を経費にできる
社宅制度を活用した税対策とは、会社が物件を借り上げ、その住まいを役員に「社宅」として貸し出す方法です。会社が支払う家賃は全額を経費にできる一方、役員が会社へ支払う自己負担額は「賃貸料相当額」と呼ばれる計算式に基づいた一定額でよい仕組みです。そのため、その差額分が税負担を下げる効果につながります。なお、賃貸料相当額は、社宅の規模ごとに固定資産税の課税標準額などを基に算定します。多少複雑になりますので、顧問税理士に相談して決めるようにしましょう。
この制度を適切に活用すれば、家賃の50~90%程度を会社の経費にできるケースもあります。役員個人から見れば、住居費の大部分を税引き前のお金で負担できることになり、個人・会社の双方にメリットが期待できます。

ただし、いくつか注意点があります。
まず、役員の自己負担額は「賃貸料相当額」の計算式に従って設定する必要があります。この金額を下回る場合、その差額が給与とみなされ、所得税や社会保険料の負担が増える可能性があります。
また、豪華な物件は「豪華社宅」と判定され、通常の社宅とは異なるルールが適用されます。判定は床面積だけでなく、取得価額や設備の状況なども総合的に考慮されます。豪華社宅と判定される床面積240㎡という数字はあくまでも目安の1つであり、それ以下の物件でも取得価額・設備の状況などを総合的に見て判定されるケースもあるので注意が必要です。豪華社宅に該当すると、役員の自己負担額は「賃貸料相当額」ではなく「通常の市場価格(時価)」が基準になるため、税負担を軽くする効果はほぼ見込めなくなります。
さらに、社宅制度が適用されるのは会社名義で契約した物件に限られます。個人名義で契約したままでは社宅として扱われず、税負担を下げる効果は得られません。
3)決算前に翌1年分のサービス料を支払って、経費を前倒しで計上できる
継続的なサービスに対する費用を前払いした場合、支払った事業年度に全額を経費として計上できる税法上の特例制度(短期前払費用の特例)があります。例えば地代・家賃や損害保険料など、今後1年以内に受けるサービスの費用をまとめて前払いすることで、その期の利益を圧縮できます。決算直前に利益が多く出た場合の税負担を下げる手段として活用できます。もともと支払う予定のある費用であれば、キャッシュアウトのタイミングを前倒しするだけで節税につなげられる点が特徴です。

ただし、いくつか注意点があります。
この特例が認められるには、次の要件をすべて満たさなければなりません。
1.支払日から1年以内に提供を受けるサービスであること
2.毎年継続して同じ処理を行うこと
3.一定の契約に基づき、継続的に提供される「質や量が均一」なサービスであること
特に3.の「質や量が均一」なサービスという点は、見落とされがちな重要な要件です。例えば、コンサルティング料や税理士顧問料は、月ごとに提供内容が異なるため、原則としてこの特例の対象になりません。また、借入金の利息のように収益と対応させる必要がある費用も対象外です。対象になるのは、家賃・地代・損害保険料・サービス利用料など、内容が均一な継続サービスに限られます。
また、この方法は実質的に翌年へ利益を先送りしているだけです。翌年以降はその分の経費がなくなるため、「1年だけ税金の支払いを後ろ倒しにする」効果と正しく理解しておく必要があります。
さらに、決算月になって突然、必要性の乏しい契約を結んで多額の費用を前払いするなど不自然な支出は、税務調査で認められない可能性があります。税負担を下げることありきで無理に支出を増やすのではなく、もともと必要な費用の支払い時期を前倒しする方法として活用することが重要です。
4)出張手当は旅費交通費として経費に計上できる、かつ従業員の所得税が非課税
会社が役員や社員に対して「旅費規程」を定め、出張日当を支給する方法があります。出張手当は通常の役員報酬や給与とは別に支給されるもので、会社側では経費に計上でき、かつ役員や従業員の実質的な手取りを増やせます。合理的な金額で運用すれば、税負担を抑えながら出張に伴う費用を補てんできます。特に大きいのは、従業員が受け取る出張手当には所得税がかからない点です。

ただし、いくつか注意点があります。
所得税の非課税と認められるには、次の要件をすべて満たさなければなりません。
1.出張の業務上の必要性があること
2.支給額が同業種・同規模の他社と比べて相当と認められる水準であること
3.役職などに応じた合理的な基準で全員に公平に適用されていること
日当の金額の実務上の目安(1日当たり。国内出張の場合。)は、
- 一般社員:2000~3000円程度
- 管理職:3000~4000円程度
- 役員:5000~1万円程度
が一般的な相場です。もちろん、会社の規模や出張の頻度によって適正額は異なります。上記以上の金額を設定する際には、その理由を客観的に説明できるようにしておきましょう。
また、旅費規程を整備した上で、出張の日付・行き先・目的などを記録・保存しておくことが必要です。こうした記録がなければ、出張の実態を証明できず、経費として認められない可能性があります。交通機関の控えや宿泊証明、名刺やメール履歴などの資料も併せて保管しておくと、実態を裏付ける証拠として有効です。
5)役員退職金は全額経費に計上できる
経営者(社長や役員など)が退職する際に支払う退職金は、会社にとって経費になります。受け取る側にとっても、退職金は給与と比べて税負担が大きく軽減される仕組みになっています。これは、「退職所得控除(勤続年数に応じて退職金から差し引ける控除額)」を適用した上で、原則としてその残額の2分の1だけが課税対象(2分の1課税)となるためです。

ただし、いくつか注意点があります。
勤続年数5年以下の役員が受け取る退職金については、この「2分の1課税」の優遇が適用されないため、短期間しか役員を務めていない場合は、想定よりも税負担が重くなる可能性がある点に注意が必要です。
長年の功績に対する退職金であれば、会社・個人の双方に多額の税負担を下げる効果が期待できます。特に、経営者が引退するタイミングや後継者への事業承継を行う際に活用しやすい方法です。ただ、金額はいくらでもよいというわけにはいきません。
支給額が、過大な役員退職金と判断された部分は、会社の経費として認められません。税務上の適正額は、次の3要素を総合的に勘案して判断されます。
1.役員が会社の業務に従事した期間
2.退職の事情
3.同業類似会社の支給状況
実務上、最も多く用いられる計算方法が「功績倍率法」です。具体的には、
最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率
で算定します。功績倍率は判例や税務実務上おおむね3倍以内が目安とされており、これを超えると税務調査で否認リスクが高まります。また、退職直前に役員報酬を不自然に引き上げて退職金の計算基礎を増やすケースも、税務調査で厳しく確認されるポイントです。
また、分掌変更(社長から会長・顧問への役職変更)による退職金の支給も一定の要件下で認められています。
- 常勤から非常勤になること
- 分掌変更後の報酬がおおむね50%以上減少すること
などにより、実質的に退職したと同様の事情にあると認められる必要があります。形式的な役職変更にとどまり、退職後も経営に深く関与し続けている場合などには、退職金としての経費として認められません。
なお、退職金を支給する際は、株主総会の議事録や退職金規程など、支給根拠を示す書類を必ず整備しておかなければなりません。
6)小規模企業共済・経営セーフティ共済の掛け金は全額経費にできる
国の制度を活用した積み立て型の税対策として、小規模企業共済と経営セーフティ共済(倒産防止共済)があります。小規模企業共済は経営者個人が掛け金を支払い、その全額を所得控除(課税対象となる税務上の利益である所得から控除)できます。一方、経営セーフティ共済は法人が掛け金を支払い、その全額を経費にできます。いずれも税制上の優遇措置が法令で明確に定められており、税負担を下げる効果を得やすい制度です。
掛け金の上限は、
- 小規模企業共済が月額7万円(年間最大84万円)
- 経営セーフティ共済が月額20万円(年間最大240万円)
です。経営セーフティ共済は累計積立額が800万円に達した時点で掛け金の払い込みが停止されます。将来の退職金準備や事業上のリスクへの備えをしながら現在の税負担を軽減できる点が、両制度共通のメリットです。

ただし、いくつか注意点があります。
受け取るときの課税の仕組みはそれぞれ異なるため、「入口」だけでなく「出口」まで理解して活用することが重要です。
小規模企業共済の場合、受け取り方によって課税区分が変わります。廃業・退任を事由とした一括受け取りは退職所得扱いで税負担が軽くなりますが、任意解約による解約手当金は一時所得扱いとなり、税制上の優遇が小さくなります。さらに、加入から20年(240カ月)未満で任意解約すると元本割れが生じます。12カ月未満での解約は解約手当金がゼロ(全額掛け捨て)になります。「課税の先送りと将来の優遇を組み合わせた制度」である以上、任意解約は極力避け、長期積み立てを前提に加入することが大切です。
経営セーフティ共済の場合、解約手当金は受け取った全額が益金(税務上の収益)として計上されます。解約のタイミングに大きな利益が重なると、かえって税負担が増える可能性があります。また、2024年10月の制度改正以降は、解約後2年以内に再加入しても掛け金を経費にできなくなりました。従来は短期間での解約・再加入を繰り返す節税手法が一部で行われていましたが、この改正によってそうした活用は実質的に封じられています。さらに、経営セーフティ共済も加入から11カ月以内に解約した場合は解約手当金がゼロ(全額掛け捨て)になります。また、40カ月未満の解約では元本割れとなる点にも注意が必要です。
両制度とも、掛け金を継続して支払い続けることが前提となります。税負担を下げる効果だけに注目して加入するのではなく、長期にわたって無理なく支払いを続けられるか、会社や個人のキャッシュフローへの影響も十分に考慮して活用しましょう。
7)絵画・アートの購入費は全額経費にできる
会社で絵画や彫刻、写真作品などの美術品を購入し、社内のエントランスや応接室、会議室などに展示すると、一定の条件のもとで購入費を経費にできます。基本的な仕組みは「減価償却」ですが、購入金額によって処理方法と経費に落とせるタイミングが変わってきます。

特に税負担を下げる効果が大きいのは、要件を満たす中小企業が、少額減価償却資産の特例を利用して40万円未満の作品を購入するケースです。例えば39万円の絵画を購入年度に全額経費にできます。

ただし、いくつか注意点があります。
1点100万円以上の美術品は、原則として減価償却できません。「時の経過によって価値が明らかに減少するもの」として国税庁が認めた場合に限り例外的に減価償却が可能ですが、その要件は厳格です。
展示場所も重要な要件です。会社のエントランスや応接室など、事業に使用するスペースへの展示が必要です。経営者の自宅に飾ったり倉庫に保管したりしている作品は事業用資産として認められません。また、投資目的や転売による利益を狙って購入した作品も、事業使用とは認められない可能性があります。
作品の種類にも注意が必要です。購入価格が100万円未満であっても、歴史的・希少価値のある古美術品や出土品などは減価償却できない場合があります。骨董品の類は価格だけで判断できないため、慎重な確認が必要です。
また、減価償却資産として計上した美術品は、市区町村への償却資産税の申告が必要になる場合があります。10万円未満の消耗品費扱いや、一括償却資産(3年均等償却)として処理したものは申告不要ですが、少額減価償却資産の特例を適用した資産は償却資産税の申告対象となります。申告を怠ると後から追徴される可能性があるため、購入後の税務手続きもあわせて確認してください。
3 本当に意味のある税対策かを見極める3つの問い
1)キャッシュは本当に手元に残るか?
税対策を考えるとき、まず確認したいのは「税金がいくら減るか」ではなく、「最終的に会社の現金がいくら残るか」です。例えば500万円の車を購入して税金が150万円減ったとしても、手元の現金は350万円減っています。税金を減らすために不要な支出を増やせば、資金繰りを悪化させるだけです。もともと必要な設備投資や将来の支出を前倒しするのは有効な方法です。ただし、税負担の軽減額だけで判断せず、購入後のキャッシュ残高や投資効果まで含めて検討しましょう。
2)事業上の実態があるか?
税対策をする際に最も重要なのは、書類上の形式ではなく、実際の事業上の必要性と利用実態です。例えば社宅であれば、会社が契約し、役員が実際に居住しているかが問われます。出張日当であれば、実際に出張し、その記録が残っているかが問われます。契約書や規程を整備していても、実態が伴わなければ税務上の処理を否認される可能性があります。「税対策のために形だけ整える」のではなく、第三者に事業上の必要性を説明できるかを基準に判断することが重要です。
3)税理士に相談した上で実行しているか?
「ネットで見た」「経営者仲間から聞いた」という理由だけで、税対策をそのまま実行するのは危険です。税制は毎年改正があり、また、同じ制度でも会社の規模や取引の実態によって適用要件や税務上の扱いが異なります。
実行前には、顧問税理士に「自社で利用できるか」「税負担の軽減額はいくらか」「将来どのような課税があるか」を確認しましょう。節税は合法的に税負担を減らす行為ですが、実態のない取引や形式だけの処理は脱税とみなされるおそれがあります。目先の税負担の軽減額だけで判断せず、税務リスクや資金繰りも含めて、専門家と慎重に判断することが重要です。
以上(2026年8月作成)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)
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画像:日本情報マート
【書籍ダイジェスト】『南緯69度のチーム 南極地域観測隊』
本書では、第60次南極地域観測隊で副隊長、第66次隊で隊長を任された原田尚美氏が、日本国内での準備・計画、実際に南極に到着してからの活動の詳細について、リーダーシップやチームビルディングのコツなどを含めて語っている。
南極地域観測隊は、長期プロジェクトでありつつも、隊員が毎年選出され、さまざまな分野のプロフェッショナルが集まり互いに協力して成果をめざすところに特徴がある。
問題社員との上手な別れ方 「すぐ解雇」より「手順」が大事
1 問題社員と別れるための現実的な対応は?
世の中には、遅刻や無断欠勤を繰り返す、指示に従わない、注意しても改善が見られない――そうした「問題社員」が少なくありません。こうした問題社員を抱える経営者の本音は、言葉を選ばずに言えば「できることなら、早く辞めてもらいたい」というところではないでしょうか。
しかし、日本の労働法制のもとでは、解雇のハードルは決して低くありません。なかでも懲戒解雇は、有効と認められるための要件が非常に厳しいのです。仮に解雇に踏み切っても、後になって無効と判断されれば、遡っての賃金支払いや復職対応など、会社にとって大きなリスクを抱えることになります。
だからこそ実務では、
いきなり解雇を目指すのではなく、注意・指導を重ねながら、最終的には合意退職という形に落ち着ける、という進め方
が広く行われています。この記事では、社会保険労務士の視点から、そうした現実的な対応の進め方を、架空の事例を交えながら整理します。
2 【事例】勤務不良の社員と穏便に別れるには?
1)勤務不良が続く社員と穏便に別れたい
勤怠不良が続く社員への対応を、できるだけ穏便な形で進めるというケースを想定します。
社員15名の製造業A社。営業職のBさん(30代)は、入社3年目から遅刻・無断欠勤が目立つようになった。注意しても改善がなく、他の社員からの不満も出ている。就業規則には懲戒事由の記載があるが、Bさんはギリギリ該当しない状況。社長は「できれば穏便に辞めてもらいたい」と考えている。
月に何度も遅刻がある、欠勤の連絡が遅い、無断欠勤に近い状態がある。これらは現場の不満がたまりやすい典型例です。会社として、どのように対応を進めていけばよいのでしょうか。
2)いきなり解雇に踏み切るのはリスキー
結論から言えば、Bさんのようなケースでは、いきなり重い処分に進むのではなく、まずは事実を整理し、注意を明確にした上で、改善を求めていくのが基本です。
遅刻や無断欠勤の事実があったとしても、それによる会社への被害状況を考慮しなくてはならないので、この事例では一概に懲戒事由に該当していると判断することは難しいといえます。そのため、仮に解雇を検討するとしても、制裁的な性格を持つ懲戒解雇ではなく、能力不足や勤怠不良などを理由とする普通解雇が対象になります。ここで解雇の種類を改めて整理しておきましょう。
(図表1)【3種類の解雇】
| 概要 | 特徴 | |
|---|---|---|
| 1.懲戒解雇 | 横領、暴力、重大なハラスメントなど、極めて悪質な規律違反や非行があった場合に社員を解雇する | 最も重い懲戒処分。それゆえに有効と認められるハードルが非常に高く、最初から懲戒解雇のみを見据えて処分を進めるのはリスクが高い |
| 2.諭旨解雇 | 本来は懲戒解雇もあり得る社員に対し、会社が反省や情状を考慮して退職届の提出を促し、応じなければ解雇する | 懲戒解雇を検討する前段階で選択肢の1つとして考えられることも多く、中小企業の実務では比較的現実的な対応になりやすい |
| 3.普通解雇 | 遅刻や欠勤の繰り返し、勤務態度不良、能力不足、業務命令に従わないことなどを理由に社員を解雇する | 能力不足のように目に見えにくい事情が背景にある場合、解雇に踏み切る前に、本人を指導して問題点を理解させたり、配置転換などを検討したりする必要がある |
(出所:筆者作成)
普通解雇であっても、その有効性は裁判で厳しく判断されます。仮に解雇に踏み切り、後から無効と判断されれば、次のようなリスクを抱えることになります。
- (バックペイ)「解雇した日~裁判や和解が決着した日」までの期間について、賃金を遡って支払わなければならなくなることがある(併せて社会保険料も発生する)
- (職場環境の悪化)問題社員が解雇無効で復職してくる場合、復職後の配置や人間関係をめぐって職場環境が不安定になりがち。結局、解決金等の条件調整を経て退職に至ることが多い
- (時間や労力の浪費)解雇をめぐる争いでは、書類の準備、弁護士との打ち合わせ、エビデンスの整理、期日対応など、想像以上に時間がかかることが多い
- (遡及手続きと費用)退職手続きを既に行っていた場合、各種手続きを遡って取り消さなければならず、労働保険料なども遡って支払う必要が出てくる
こうしたリスクを踏まえ、A社は懲戒解雇や普通解雇をすぐに目指すのではなく、
注意や指導を重ねた上で、最終的に合意退職という選択肢も取り得るかを見ながら進める
ことにしました。実際の対応を見てみましょう。
3)Bさん、その後の対応
Bさんの遅刻はその後も繰り返され、顧客への返信漏れや上司への報告の遅れも重なっていきました。A社は当初、口頭注意にとどめていましたが、
取引先からのクレームが重なった段階で、注意書を交付し、1カ月間の改善目標を設定
しました。その後も改善が乏しかったため、面談の機会を設けて業務の優先順位や報告のルールを文書で再提示しました。さらに配置の見直しも試みましたが、改善は見られませんでした。最終的に「このまま在籍を続けるより、退職条件を整理した上で合意退職という形を検討するほうが、双方にとって現実的ではないか」と提案するに至りました。
このケースで大切なのは、最初から退職の話に進んでいないことです。まず注意書で
- 遅刻の回数と日時
- 顧客返信漏れの内容
- 報告がなかった案件
を具体的に示し、併せて「今後は始業時刻を守ること」「顧客メールは当日中に一次返信を行うこと」「日次で上司に進捗報告をすること」といった改善項目を期限付きで明記します。報告書や顛末書の提出を求めることも考えられます。その上で、改善が見られなければ、人事上の配置・役割の見直しや今後の雇用継続について協議する可能性がある旨も添えておきます。こうしたこまめな対応が、実務上は非常に重要です。
残しておきたいエビデンスとしては、
勤怠記録、遅刻時の連絡履歴、取引先からのメールやクレーム記録、上司との面談メモ、注意書の交付記録、チャットや日報、そのほか顛末書や自戒のための誓約書など
が挙げられます。
「何度も注意した」という感覚だけではなく、「いつ、何を、どう伝えたか」を残しておくことが最終的に会社を守ることにつながります。また、Bさんのようなケースでは、顧客対応の不備が続くことで、本人だけでなく部署全体の信頼にも影響が及びます。そのため、本人への注意と同時に、現場へのフォローや引継ぎの準備も並行して考えておくことが、管理側としては重要になります。
4)退職時の条件面は最後にきちんと整える
円満に進まない可能性もあるため、あとで問題が蒸し返されないよう、条件面を整理しておくことも大切です。退職の話し合いでは、退職日、有給休暇の扱い、貸与物の返還、秘密保持に関する確認事項、今後の連絡方法などを明確にしておくことが考えられます。この場面でも、書面で確認しながら進めることが望まれます。
また、退職となる社員が営業職のように取引先を担当している職種や管理業務を担う立場の場合は、退職日の決め方ひとつで現場の負担が大きく変わります。引継ぎ資料の作成、取引先への連絡の順番、社内アカウントの停止時期なども含めて整理しておくと、退職後の混乱を防ぎやすくなります。
5)事例から見える、実務で大切な4つのポイント
Bさんのケースを振り返ると、実務で大切なのは、次の4つの「前段階」の積み重ねです。
1.口頭注意だけで終わらせない
現場で社員が非違行為をした際、口頭注意だけで終わってしまうとエビデンスが残らないため、あとで会社の対応が見えにくくなります。そこで注意をしたら、注意書を出す、面談をしたらメモを残す、といった後で確認できる形で残すことが大切です。
今回の事例では「就業規則の懲戒事由にはギリギリ該当しない」と記載がありましたが、仮に就業規則を作成しておらず、対応を急ぐ場合には、このような注意書等が当該社員との約束事となりますので、非違行為を就業規則に代わって明示することになります。
2.改善点はできるだけ具体的に伝える
「気を付けてください」だけでは、本人も何をどう直せばよいのか分かりません。例えば、遅刻の問題なら始業時刻を守ること、遅れる場合の連絡方法、再発防止策をいつまでに出すかなどを、目に見える形で提示します。改善点は、行動レベルまで落とし込むことが大切です。
3.確認日を決めて変化を見る
注意したまま時間が流れてしまうと、次の対応に進みにくくなります。1カ月後など日にちを区切り、次回の面談で確認することをルールにしておくことが大切です。改善の機会を設け、その結果を見て次を考えます。この流れができると、本人にも会社にも納得感が生まれやすくなります。また、少しでも前向きな変化が見えたときは、その点も記録に残しておくと、注意一辺倒ではない丁寧な対応として伝わりやすくなります。
4.面談は「追い込む場」ではなく「整理する場」にする
面談の場で感情的になってしまうと、社員が会社に不信感を抱き、話し合いが難航します。会社が困っている事実、これまで求めてきた改善点、現時点で変わっていない点を、落ち着いて整理して伝えることが大切です。「何が問題なのか」「いつまでにどう変わってほしいのか」「変化が見られない場合には、今後の配置や役割、雇用継続のあり方を検討する可能性があるのか」を、冷静に確認する姿勢が、結果として会社を守ることにつながります。
3 トラブルを防ぐための実務のポイント
1)就業規則や書式の整備を日ごろから進めておく
このような退職にかかわる場面はトラブルになりやすいため、日ごろからの備えが最も重要です。退職の根拠となる就業規則や雇用契約書に加え、手続面で用いる確認書、注意書、面談記録の様式などが整っていると、対応のぶれを小さくすることができます。
特に中小企業では、対応する上司や担当者によって言い方や運び方が変わりやすいため、あらかじめ使う書式や流れを揃えておくことが、結果としてトラブル予防につながります。
2)時間と金銭の組み合わせ(対応方法の考え方)
これまで述べてきた手順を踏むことでリスクを小さくしていくことは大切ですが、社員側も退職後の生活を考えているため、直ちに退職を受け入れないケースもあります。そこで、時間的な猶予と金銭的な条件を組み合わせて提示することで、合意退職に向けた話し合いが進みやすくなる場合があります。

図のイメージは次のようになっています。
- 左下(赤):時間も金銭もほとんどかけずに即時に退職を迫る
- 左上(橙):ある程度の条件調整を行いながら、比較的早めに整理を目指す
- 右下(青):一定期間雇用を継続するが、出勤は停止(免除)して、転職支援などを組み合わせながら、次の進路を考える時間をとる
- 右上(緑):時間面と金銭面の両方から支援する条件を提示することで、合意退職に向けた話し合いを進めやすい状態をつくる
もっとも、この図はあくまで考え方の整理です。実際の対応では、非違行為の内容や回数、会社への影響だけでなく、当該社員の役職、勤続年数、家族の状況などの事情も踏まえて、どの程度の時間をかけるのが適切か、どのような条件調整や配慮が現実的なのかを見極めることになります。必要に応じて、外部専門家への相談を検討する場面も出てくるでしょう。
例えば、勤続年数が長く、家計を支える立場にある社員に対しては、急ぎすぎる進め方をすると、強い反発を招く恐れがあります。
反対に、再就職が比較的容易と考えられる職種や年齢層であれば、時間的猶予を与えることが、必ずしも有効な条件になるとは限りません。また、役職者である場合には、周囲への説明や権限の外し方まで含めて、慎重に段取りを組む必要があります。
このように退職における条件調整を考える場面では、金銭面だけで解決を急ぐのではなく、引継ぎ期間の設定、有給休暇の消化方法、再就職活動に配慮した日程調整など、時間面の配慮を組み合わせることも選択肢になります。
ただし、常にこの組み合わせで対応しようと考えてしまうと、「強く争えば何らかの条件上乗せが得られる」と他の社員に受け取られるおそれがあります。そのため、慎重に進めつつも、非違行為の内容次第では毅然とした対応を取る必要があることはいうまでもありません。
3)実務上のポイント
- 就業規則や雇用契約書で非違行為について、明確にしておくこと
- 問題が起きたら、口頭注意だけで終わらせず、注意書や面談記録を残すこと
- 改善点は、できるだけ具体的に伝えること
- 注意や面談の機会を設けたら確認日を設定し、改善の有無を見ながら次の対応を考えること
- 最初から強い処分にこだわらず、最終的に合意退職に向けた話し合いができる状態を整えること
4 結局、大切なのは「退職の前段階の対応」
問題社員対応では、最後にどのような結論になるかということ以上に、
その前段階でどのような注意・指導を行い、どのような手続きを踏んできたか
が大切です。対応を急ぐあまり、手順や説明の整理が不十分なまま進めてしまうと、かえって会社側の負担が大きくなることもあります。だからこそ、強い対応を急ぐのではなく、まずは事実と経過を丁寧に整理し、段階を踏んで進めることが求められます。
実際には、「この段階で注意書を出してよいのか」「面談ではどこまで伝えるべきか」「配置の見直しを先に検討すべきか」「退職勧奨を視野に入れるのはいつ頃か」といった判断に悩む経営者は少なくありません。こうした場面では、早い段階で現状を整理し、実務上の進め方や選択肢を確認しておくことで、不要な混乱や感情的な対立を避けやすくなります。
特に中小企業では、ひとつの対応が職場全体の空気や今後の人材定着にも影響しやすいものです。問題が大きくなる前に、注意の進め方、記録の残し方、面談の組み立て方、今後の選択肢の整理まで含めて、一度専門家と一緒に見直してみるのもよいでしょう。
なお、この記事では問題社員対応における退職を中心に扱いましたが、他にもメンタルヘルス不調や私傷病により復職が難しい場合など、解雇や退職を検討する場面は様々あります。そのような場面では、注意書による対応が前提にならないこともありますし、「時間と金銭の組み合わせ」の考え方も異なってくる可能性があります。それでも、
何を根拠に、どのような説明と手続で進めるかという基本は共通
しています。そうした意味でも、平時から対応の指針を定めておくことが重要です。
以上(2026年8月作成)
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画像:ChatGPT
【朝礼】相手の立場に立つことで指導が生きる
【ポイント】
- 厳しい言葉で指導されると、失敗を反省するよりも、怒られたことばかりに気持ちが向いてしまうもの
- 部下に厳しい言葉を使ってしまったときは、時間を置いて指導の意図を説明すること
- 部下は、少し時間を置いてでも、指導を受けた内容を振り返ってみよう
先日、上司から叱られて、ひどく落ち込んでいる社員を見かけました。その社員は恐らく、上司から叱責されたことに対して、自分が否定されたような気持ちになったのだと思います。私にも経験がありますが、「どうしてこんなことができないんだ!」といった厳しい言葉で指導されると、指導の原因となった失敗について反省するよりも、怒られたことばかりに気持ちが向いてしまうものです。とはいえ、指導は今の仕事ぶりを見直して、今より成長するための大切な行程。コミュニケーションのすれ違いで成長のチャンスを逃すのはあまりにもったいないことです。そこで、今日は上司の皆さんと部下の皆さん、それぞれに押さえてほしい指導のポイントをお伝えします。
まず、上司の皆さん。今から行おうとしている指導は、厳しい言葉でないと伝わらないのかということを、事前に考えるようにしてください。言葉を吟味せずに、厳しい言葉で指導するだけでは部下に伝わらないことが少なくないのです。もし、思わず厳しい言葉を使ってしまったときは、時間を置いて指導の意図を説明してあげてください。短い説明であっても、「ひどく注意されてしまった」と悶々としていた部下の心は晴れ、指導を素直に受け入れてくれる心の余裕が生まれます。
そして、部下の皆さん。なぜ上司がそれほど厳しい言葉で指導したのか、考えてみてください。あなたがそれほど厳しい言葉で指導を受けたのは、「これくらいの仕事はきっちりと責任をもって果たしてほしい」という上司の期待のあらわれです。ですから、決して、表面上の言葉だけをとらえて、落ち込むことはしないようにしてください。厳しい言葉で指導された直後は冷静になれないこともあるでしょうが、少し時間を置いて、指導を受けた内容を振り返ってみてください。指導を受けた直後には気付かなかった上司の真意に気付くことができるはずです。
上司、部下とも、相手の立場に立って、指導をしたり、指導をされたりすることで、自分の真意を伝え、相手の真意を理解することができます。当たり前のことのようですが、いま一度、この点を心に留めておくことで、上司として、また部下として成長することができるはずです。
以上(2026年8月更新)
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画像:Mariko Mitsuda
地域資源×DXで挑む!地方中小企業が拓く持続可能な新市場【経営者とっておきニュース】
全国各地で、伝統産業や地域特有の資源にデジタル技術(DX)を掛け合わせ、新たな顧客層を開拓する中小企業の動きが加速しています。地方の製造業者や農畜産業者が、ECサイトの構築やSNSマーケティング、データに基づく生産管理を導入することで、これまでアプローチが難しかった都市部や海外市場への直接販売を成功させる事例が増加中です。単なる省力化にとどまらず、地域の魅力をストーリーとして発信し、高付加価値なブランド戦略を展開する取り組みが、地域経済の新たな活力として大きな注目を集めています。
こうした動きの背景には、国内市場の縮小や人手不足といった構造的な課題に加え、消費者の意識変化があります。現代の消費者は、単にモノを買うだけでなく、「購買を通じた地域貢献」や「商品の背景にあるストーリー」を重視する傾向(エシカル消費)を強めています。従来の元請け依存や中間流通に頼るビジネスモデルでは利益率の確保が難しくなった中小企業にとって、自社で顧客と直接つながるD2C(Direct to Consumer)化は急務となっています。
この取り組みが業界や地域に与える影響は多大です。第一に、中間コストを削減することで高い利益率を確保でき、浮いた資金を商品開発や従業員の賃金還元に回す好循環が生まれます。第二に、サプライチェーン全体において、需要予測データに基づく生産が可能となり、廃棄リスクや在庫コストの低減につながります。
さらに、地元経済への波及効果も無視できません。成功事例が生まれることで、周辺事業者とのコラボレーションや地域ブランド全体の認知度向上が期待できます。課題としては、デジタル人材の不足や初期投資の負担が挙げられますが、自治体や公的支援機関の補助金・伴走支援を活用することで、着実にハードルを乗り越える企業が増えています。
今後は、単独企業でのDX推進にとどまらず、地域内の複数企業や異業種が連携した「地域一体型のデジタルプラットフォーム」の構築が進むと予測されます。データを共有し、地域全体で観光・特産品・体験型コンテンツをパッケージ化して発信する取り組みが標準化していくでしょう。
他地域のビジネスパーソンが明日から意識すべき視点は、「自社の強み(地域資源・技術)をデジタルという言葉(ストーリー)で翻訳し直すこと」です。既存の技術や商品そのものを大きく変える必要はありません。「誰に、どのような価値として届けるか」の視点を切り替え、適切なデジタルツールで発信することこそが、地域や規模を問わず次の成長を引き寄せる最大の鍵となります。
【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
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以上(2026年8月作成)
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家業の資源で挑む新事業!「アトツギ甲子園」第7回募集のポイント【経営者とっておきニュース】
経済産業省中小企業庁は、中小企業の後継予定者が既存の経営資源を活用した新規事業アイデアを競うピッチイベント「第7回アトツギ甲子園」のエントリー受付を、8月3日より開始します(締め切りは11月25日)。
対象は39歳以下の後継予定者で、親族外承継も対象に含まれます。書類審査を通過した応募者は、全国6ブロックで開催される地方大会へ進み、勝ち抜いたファイナリストが2027年2月に都内で行われる決勝大会に挑みます。また、8月末には支援者や若手後継者が一堂に会するキックオフイベント「アトツギSUMMER CAMP」も開催されます。
日本全国で中小企業の高齢化と後継者不足が進む中、単なる事業の継続にとどまらない「第二の創業」としての事業承継が強く求められています。従来型の事業を引き継ぐだけでは、市場の縮小や急速な環境の変化に対応しきれないケースが増えているためです。こうした背景のもと、本イベントは若手後継者の戦略立案能力や実行力を養い、既存の技術や顧客基盤といった地域資源を活用したイノベーションを後押しする狙いがあります。
この取り組みは、地元の伝統産業や地場企業に新たな価値をもたらす大きなメリットがあります。若手の柔軟な発想によって新商品や新サービスが生まれることで、自社の売上向上にとどまらず、地域のサプライチェーン全体に刺激を与え、地元の雇用創出や活性化へと波及するためです。
一方で、既存の社内文化やベテラン社員との意見対立を乗り越える社内コミュニケーションの確立や、新規事業を軌道に乗せるための資金調達・伴走支援体制の確保といった課題も存在します。地元の自治体や金融機関による継続的なサポート体制の構築が不可欠となります。
「アトツギ甲子園」のような挑戦の場が定着することで、地域経済を牽引する次世代リーダーの育成が加速度的に進むと見込まれます。旧来のビジネスモデルからの脱却を目指す動きは全国各地へと広がり、地方発のイノベーション事例が益々増加していくでしょう。
他地域のビジネスパーソンにとっても、本施策から得られる教訓は明確です。それは「既存の経営資源×客観的・先進的な視点」こそが、競争優位性を生み出す源泉になるという点です。自社が当たり前に持っている強みや資産を再定義し、時代の変化に合わせてどう再構築できるかという問いを、常に持ち続けることが持続的成長の鍵となります。
【ご注意点】この記事は生成AIを活用して作成したものです。文章の正確性は保証されておらず、誤りが含まれる場合があります。詳細については参照URLの情報を必ずご確認ください。
■中小企業基盤整備機構「第7回「アトツギ甲子園」8月3日エントリー受付開始」■
https://j-net21.smrj.go.jp/news/bt5puv000000p7cl.html
以上(2026年8月作成)
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