1 副業は「原則禁止」から「原則容認」へ
働き方改革の影響もあり、社員の副業を検討する会社が増えています。厚生労働省「モデル就業規則」でも、以前は「原則禁止」とされていた副業が、「原則容認」というスタンスに変わってから久しくなっているので、皆さんの会社でも、副業を希望する社員が増えていると思います。
とはいえ、
副業を無制限に認めてしまうと、過重労働や情報漏洩のリスクがあるので、「原則容認」のスタンスは守りつつ、就業上のルールを「副業取扱規程」などで定める
ことが大切です。例えば、次のようなルール作りが考えられます。
1)副業を禁止・制限するケース
副業を禁止・制限するケースとして、
- 長時間労働や深夜労働などによって労務提供に支障がある場合
- 同業他社など、自社の利益を害する恐れがある業種・業務の場合
- 副業に関する業務上の指示に従わない場合
などを定め、副業を希望する社員に対しては「副業許可届出書」などの提出を義務付けます。
2)労働時間管理
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)では、副業時の労働時間管理について、
- 自社と副業先の労働時間は、原則として通算しなければならない(注)
- ただし、いわゆる「管理モデル」を適用する場合、自社と副業先がそれぞれ時間外労働の上限を設定し、社員がその範囲内で働けば、互いの実労働時間を把握しなくてもよい
というルールを定めています。ただし、管理モデルを適用するには、副業開始前に、自社の時間外労働の上限などを社員に通知しておく必要があります。また、副業・兼業先に対して、直接または社員を通じて、管理モデルを適用することを提案する必要があります。
(注)2026年2月現在、割増賃金を算定する際の労働時間の通算義務については、今後撤廃する方向で政府内での議論が進められています(現状は、管理モデルを適用しない限り義務)。
上記のような点を踏まえつつ、次章では専門家が監修した、副業取扱規程のひな型を紹介します。前述した「副業許可申請書」のひな型も掲載していますので、併せてご確認ください。なお、厚生労働省のガイドラインについては、次のURLから確認できます。
■厚生労働省「副業・兼業」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
2 副業取扱規程のひな型
以降で紹介するひな型は、一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
【副業取扱規程のひな型】
第1条(目的)
本規程は、従業員が適切な職業選択を通じ、多様なキャリア形成を図ることを促進することを目的とする。会社は、従業員が就業時間外において、他の会社その他の団体(以下「副業先」)の業務に従事し、または自ら事業を営むこと(以下「副業」)について、本規程に定める条件を満たす限りにおいて、原則として認めるものとする。なお、本規程に定めのない事項は、労働基準法その他の関係法令によるものとする。
第2条(対象範囲)
本規程の適用を受ける従業員は、就業規則第○条に定める、会社と期間の定めがない労働契約を交わした従業員とする。ただし、本業に習熟が必要な新卒入社1年未満の従業員については、個別の教育訓練状況を鑑み、副業・兼業を制限することがある。
第3条(副業の定義)
本規程において「副業」とは、次の各号に掲げる場合をいう。
- 副業先に雇用される場合
- 副業先の役員に就任する場合
- 業務委託、請負契約などに基づき、副業先の業務に従事する場合
- 自ら起業し、または事業を営む場合
第4条(副業の許可)
1)従業員は、第3条各号に掲げる副業を行おうとするときは、その開始を希望する日の2週間前までに、所定の「副業許可申請書」を会社に提出し、副業の許可を受けなければならない。
2)従業員は、届出内容(業務内容、労働時間等)に変更があった場合、または副業を終了した場合には、速やかにその旨を会社に報告しなければならない。
第5条(許可基準)
会社は、第4条の許可を受けようとする従業員が、次の各号のいずれかに該当する場合、当該従業員の副業を禁止または制限することができる。
- 長時間労働や深夜労働により、健康を害する恐れ、または本業に支障を来す恐れがある場合
- 自社の技術上、営業上の秘密が漏洩する恐れがある場合 (生成AI等への不用意な機密入力行為を含む)
- 同業他社への勤務等、競業行為により自社の利益を不当に害する場合
- 公序良俗に反する業務等に従事し、会社の社会的信用を損なう恐れがある場合
第6条(副業時における労働時間の取り扱い)
1)会社と他社の双方が雇用関係にある場合、労働時間は通算して管理する。
2)会社は、労働時間管理の事務負担軽減および健康確保のため、厚生労働省ガイドラインに基づく「管理モデル」を適用することができる。この場合、従業員は会社が指定する時間外労働上限時間を遵守し、副業先へもその旨を伝達しなければならない。
3)管理モデルを適用しない場合、従業員は1週間ごとに副業先での実労働時間を会社に報告しなければならない。
第7条(副業に関する報告義務)
1)従業員は、次の各号のいずれかに該当する事由が生じた場合、速やかに会社へ報告しなければならない。
- 第5条各号に定める許可基準を満たすことができなくなった場合
- 副業先において、長期欠勤、休職、退職もしくは退任する場合、または副業を廃業等する場合
- 副業先での業務上の負傷または疾病、事故が発生した場合
- 通勤中に事故が発生した場合
- 前各号に準じる事由が発生した場合
2)従業員は、前項の報告に当たって、会社から必要な書類の提出を求められた場合には、速やかに会社に提出するとともに、必要な報告・説明を行わなければならない。
3)副業に関する事故などが労働災害である場合、当該事故などに関する労災保険の適用については、労働者災害補償保険法その他の関係法令によるものとする。
第8条(情報の提出およびAIセキュリティ)
1)会社は、安全配慮義務の履行およびセキュリティ管理のため、必要に応じて副業先での勤務実績や業務内容の報告を求めることができる。
2)従業員は、副業において生成AI等のデジタルツールを利用する場合、自社の機密情報 (顧客情報、独自のノウハウ等)を学習データとして入力してはならず、情報の保護に万全を期さなければならない。
第9条(健康管理、業務の調整等)
1)従業員は、副業を行うに当たって、会社の業務と副業の間に休憩時間を確保する、会社の業務と副業の双方に従事しない休日を確保する等、自らの健康を確保するように努めなければならない。
2)会社は、従業員の副業に関する報告または従業員の状況を踏まえて必要があると判断した場合、従業員に対し、会社の業務の変更、時間外労働の制限、勤務時間および勤務日数等の勤務条件の変更を命じることができる。
3)会社は、通算労働時間が月間一定時間を超える従業員に対し、産業医による面接指導等の健康確保措置を実施し、必要に応じて副業・兼業の制限または中止を命じることができる。
第10条(許可の取消し等)
会社は、従業員に副業を許可した場合でも、次の各号のいずれかの事由が生じた場合、許可の取消し、または条件の変更をすることができる。
- 第5条各号に定める事由に該当した場合
- 本規程に定める報告義務または提出義務に違反した場合
- 第9条に定める命令に違反した場合
- 前各号に準じる事由がある場合
第11条(懲戒処分)
次に違反した従業員は、就業規則第○条に定める懲戒処分を行うことがある。
- 第4条の許可を受けることなく、副業を行った場合
- 副業の内容について、故意に虚偽の報告を行った場合
- 副業により、会社に実害(秘密漏洩、顧客奪取等)を与えた場合
- 前各号に準じる事由がある場合
第12条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会の承認による。
【副業許可申請書】

以上(2026年3月更新)
(監修 石原法律事務所 弁護士 磯田翔)
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画像:ESB Professional-shutterstock






















