日本でも数少ない老眼対策のエキスパートで、話題の書籍『100歳アイ』の著者でもある眼科医・伊勢屋貴史さんへの特別インタビュー。「令和の現代病」とも呼ばれ、10代の子どもから高齢者まで日本人の多くがむしばまれているという「スマホ老眼」についてです。健康やパフォーマンスに深刻な影響を与えるといわれていますが、何がそんなに危なく、通常の老眼とはどう違うのでしょうか。
【書籍ダイジェスト】『ソフトバンクホークス 4軍制プロジェクトの正体』
本書は、福岡ソフトバンクホークスの4軍制の取り組みについて、多くの関係者に取材し、そのシステムの特徴を解き明かしている。
かつて野球界にはびこっていた軍隊気質の練習方法が通用しなくなった現代においては、若い選手の「主体性」を引き出すことが求められるようになっている。そのために、科学的なデータをもとに、必要な練習を選手が自ら選ぶための優れた施設の導入が進んでいるようだ。また、3軍、4軍が本拠地を構える筑後市は、人口や世帯数の増加など、スタジアムビジネスが地域を活性化する成功事例となりつつある。
【ビジネス文書・法令文書】36協定限度時間オーバー まずい事例と適切な対策
36協定を締結・届出していても、限度時間を超える残業は違法となり、書類送検や企業イメージの低下など重大なリスクを招きます。
そこで本稿では、違法残業と判断される典型事例や原因を示すとともに、労働時間の正確な把握方法、誤った対策の問題点、実効性のある業務改善や管理手法など、実務に役立つ対応策を解説します。
ビジネス文書・法令文書 今月の特集は、こちらからお読みいただけます。
カスハラ予防! 顧客対応で火に油を注ぐ6つの「NGワード」とは?
目次
1 なぜ、カスハラは起きてしまうのか?
近年、カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)は、深刻な社会問題として広く認識されるようになりました。2026年10月からは、労働施策総合推進法により 「カスハラへの防止措置を講じること」が事業主の義務となり、会社として取り組むべき課題となっています。
ただ、注意しなければならないのは、現場で発生するカスハラの多くは、必ずしも悪意ある言動から始まっているわけではないということです。むしろ、「商品・サービスに不具合があった」「説明を受けた内容と違っていた」など、
最初はごく普通のクレーム (苦情・問い合わせ)だったはずが、会社側の対応によって顧客の怒りがエスカレートし、カスハラに発展する
というケースが多いのです。
なぜ、こうした問題が起きてしまうのか。それは、
顧客は「きちんと説明・対応してほしい」と期待しているのに対し、会社側が「早く解決したい」 「トラブルを大きくしたくない」という思いや知識・経験の不足から、曖昧な返答や場当たり的な謝罪をしてしまう
からです。それが「話をきちんと聞いてもらえていない」「責任を回避しようとしている」と受け取られ、顧客の怒りをエスカレートさせてしまうのです。
つまり、現場のカスハラ対応で会社がまず見直すべきは「クレームの内容そのものの重大さ」よりも「どのように顧客に対応するか」です。特に初動では、
会社側の何気ない一言 (以下「NGワード」)が、顧客に「責任を認めた」 「対応を約束した」と受け取られ、その結果、想定外の要求につながるケース
などがあります。
この記事では、あるショッピングモール内の家電量販店を舞台に、
- 先週購入したコードレス掃除機を持った顧客が来店し、クレームを言ってくる
- 6人の店員がそれぞれ 「NGワード」を言って、顧客の怒りをエスカレートさせてしまう
というケースを紹介します。トラブルを招きやすいNGワードと併せて、誤解を避ける言葉遣いと冷静な対話を維持するためのポイントも解説しますので、ぜひご確認ください。
2 NGワードその1 「私どもが全面的に悪いです」
1)謝罪をして逆にトラブルに・・・・・・
ここは、ショッピングモール内の家電量販店。ある日、先週購入したコードレス掃除機を持った顧客が来店しました。対応したのはAさんです。
「この掃除機、買ったときからバッテリーの持ちが悪いんですけど。フル充電してもすぐ切れてしまって。仕事の合間にわざわざ来ているのに時間を無駄にしました」
顧客はいら立った様子で、やや強い口調でこう訴え、
「初期不良じゃないんですか? こういう商品を売るのはどうなんですか?」
と不満を続けました。
Aさんは状況を確認しようとしますが、会話の主導権を握られてしまいました。焦ったAさんは、その場を収めようとして思わず、
「申し訳ございません。今回の件は、私どもが全面的に悪いです」
と口にしてしまいました。すると、顧客の表情が変わりました。
「全面的に悪いって認めましたね? じゃあ、上位モデルに交換してください。それくらいの対応が普通でしょう、迷惑かけたんだから!」
と、語気も荒くなり、要求の水準が一気に高まりました。
Aさんが「交換の場合は同一機種での対応となります」と説明しても、「さっき全面的に悪いって言いましたよね?」と納得してもらえず、対応は長時間化し、周囲の顧客も注目する騒ぎになってしまいました。
2)OK対応「このたびはご不便をおかけして申し訳ございません。状況を確認させてください」
トラブル対応の場面では、「まずは謝罪を」と考えがちです。しかし、事実関係が確認できていない段階で「全面的に悪い」と伝えてしまうと、その発言が顧客に「会社が責任を認めた」と受け取られてしまう恐れがあります。
顧客は「会社が責任を認めた以上、それに見合った補償を受けられるはずだ」と考え、問題を解決することよりも、“どの程度まで補償してもらえるのか”という点に関心が移ってしまうのです。その結果、本来の不具合対応を超えた要求へと発展してしまうこともあります。
こうした場合は、まず顧客から苦情が入った時点で、
「このたびはご不便をおかけして申し訳ございません。状況を確認させてください」
と、不快な思いをさせたことに対してのみ謝意を示し (部分的謝罪にとどめ)、まずは状況の確認を優先することが重要です。
また、顧客から「誠意を見せてほしい」といった発言があった場合でも、その場で具体的な対応を約束するのではなく、
「恐れ入りますが、社内で確認の上、改めてご案内いたします」
と伝えることで、今後の対応の流れを明確に示すことができます。
顧客対応においては、迅速な謝罪が重要な場面もありますが、責任の所在が明らかでない段階での全面的な非の認定(全面的謝罪)は、かえってトラブルを複雑にしてしまう恐れがあります。初動対応では、謝罪の内容と範囲を意識することが、問題の長期化を防ぐポイントといえるでしょう。
3 NGワードその2「できる限りの対応をさせていただきます」
1)曖昧な約束が、期待のズレを生んでしまった・・・・・・
「この掃除機、買ったときからバッテリーの持ちが悪いんですけど。フル充電してもすぐ切れてしまって、仕事の合間にわざわざ来ているのに時間を無駄にしました」
Bさんが対応した顧客はいら立った様子で、やや強い口調でこう訴え、
「初期不良じゃないんですか? こういう商品を売るのはどうなんですか?」
と不満を続けました。
Bさんは状況を確認しようとしますが、会話の主導権を握られてしまいました。焦ったBさんは、まずは誠実に対応しようと考え、
「申し訳ございません。できる限りの対応をさせていただきます」
と伝えました。すると、顧客の表情が変わり、
「そうですか。では、もっと性能の良い上位モデルに交換してもらえるということですね?」
と返答してきました。Bさんは慌てて、
「交換については、製品不良が確認された場合に限られます」
と説明しますが、
「さっき“できる限りの対応をする”って言いましたよね?」
と納得してもらえず、その後のやり取りは平行線のままとなってしまいました。
Bさんは、ただ誠実に対応しようとしただけでした。しかし、当初は「まずは掃除機を見てもらいたい」という相談だったにもかかわらず、曖昧な表現がきっかけとなり、顧客側では「柔軟な補償対応をしてもらえる」という認識へと変わってしまいました。
2)OK対応「社内で確認の上、対応可能な内容について改めてご案内いたします」
顧客対応の場面では、誠実な印象を与えようとして、「できる限り対応します」といった表現を使ってしまうことがあります。しかし、「できる限り」という言葉の解釈は、会社側と顧客側で異なる場合があります。
会社側が「社内規定の範囲内で対応する」という意味で使ったとしても、顧客には「最大限の補償をしてもらえる」と受け取られてしまう恐れがあります。そして、「どの程度の対応が可能か」が明確に示されないままやり取りが進むと、顧客の期待が膨らみ、実際に可能な対応とのズレが生じやすくなります。
こうした場合は、まず顧客から苦情が入った時点で、
「社内で確認の上、対応可能な内容について改めてご案内いたします」
と、現時点では具体的な対応を約束できないと明確に伝えることが重要です。
また、顧客から具体的な補償内容を求められた場合でも、その場で判断するのではなく、
「恐れ入りますが、担当部署と確認の上、改めてご連絡いたします」
と伝えることで、対応の範囲について誤解が生じるのを防げます。
「できる限り」といった曖昧な表現は、相手の期待値を不用意に引き上げてしまう恐れがあります。初動対応では、対応の見通しを明確に示,し、現時点で確約できない事項については慎重に伝えることが、トラブルの拡大を防ぐポイントといえるでしょう。
4 NGワードその3「ですが、ですから」
1)説明を畳みかけて、かえってトラブルに・・・・・・
「この掃除機、買ったときからバッテリーの持ちが悪いんですけど。フル充電してもすぐ切れてしまって、仕事の合間にわざわざ来ているのに時間を無駄にしました」
Cさんが対応した顧客はいら立った様子で、やや強い口調でこう訴え、
「初期不良じゃないんですか? こういう商品を売るのはどうなんですか?」
と怒りを続けました。
Cさんは、製品仕様について説明しようと、
「ですが、バッテリーの使用時間は使用状況によって変わる場合がございますので・・・」
と伝えました。顧客が「でも、購入時にはそんな説明は・・・」 と言いかけたところで、
「ですから、まずは使用方法を確認させていただかないと判断ができません」
と、Cさんは説明を重ねました。それでも顧客が話し始めようとしたので、
「だ〜か〜ら〜,、先ほども申し上げましたが、使用環境によって変わる仕様となっております」
と、やや強い口調で説明を続けました。すると顧客は、
「ちゃんと話を聞いていますか? こっちの言っていることを理解してもらえていない気がするんですが・・・」
と語気を強め、その後のやり取りはぎくしゃくしたものになってしまいました。
Cさんとしては、製品の仕様について丁寧に説明したつもりでしたが、顧客の側では「理解できていないのはあなたの方だと言われている」 「話を遮られている」と受け取られてしまったといえます。
2)OK対応「少し整理してご説明しますね。分かりにくい点があれば教えてください」
顧客対応の場面では、状況を正しく説明しようとするあまり、「ですが」「ですから」といった接続詞を使ってしまうことがあります。また、「先ほども申し上げましたが」「何度も説明していますが」といった表現も、つい口にしてしまいがちです。
しかし、こうした言葉は、会社側としては説明を補足する意図であっても、顧客の側では、「理解できていないのはあなたのほうだ」と指摘されているように受け取られてしまう恐れがあります。その結果、自分の訴えを受け入れてもらえていないという不満が生じ、対話そのものが成立しにくくなることもあります。
こうした場合は、まず顧客の話を一度受け止めた上で、
「少し整理してご説明しますね。分かりにくい点があれば教えてください」
というように、説明に入る前に“理解を支援する姿勢”を示すことが重要です。
また、事情を説明する際にも、
「ご指摘の点について確認させていただいた上で、ご案内いたします」
など、相手の話を踏まえていることを明確に伝えると、対話を維持しやすくなります。
顧客対応においては、正確な説明が必要な場面もありますが、伝え方によっては「否定された」と受け取られてしまうことがあります。まずは相手の話を受け止める姿勢を示した上で説明に入ることが、トラブルの拡大を防ぐポイントといえるでしょう。
5 NGワードその4「分かりません」
1)社内事情を伝えたことで、かえってトラブルに・・・・・・
「この掃除機、購入時に“フル充電すれば1時間は使える”って説明を受けたんですけど、実際には30分も持たないんです。話が違うじゃないですか」
Dさんが対応した顧客はいら立った様子でこのように訴え、
「そのときの担当者は“1時間は使える”って説明していましたよね? それを信じて購入したんですが」
と、納得がいかないようでした。
Dさんは、該当する担当者が本日休みであることを思い出し、
「申し訳ございません。本日、担当者が休みのため、その点については分かりません」
と伝えました。すると顧客は、
「分からないってどういうことですか? そっちの会社の事情ですよね?」
と表情を曇らせました。Dさんが「担当者が出勤次第、確認いたします」と続けると、
「じゃあ、今日は何も対応してもらえないんですか?」
と語気が強まり、その後のやり取りは険悪な雰囲気になってしまいました。
Dさんとしては、現時点で確認できない事情を説明したつもりでしたが、顧客の側では「社内の問題を理由に対応を断られた」 「問題解決を先送りされた」と受け取られてしまったといえます。
2)OK対応「担当者の確認も含めて、こちらで対応いたしますのでお時間をいただけますでしょうか」
顧客対応の場面では、確認が必要な内容について、「分かりません」と答えてしまうことがあります。しかし、この言葉は、会社側としては事実を伝えたつもりでも、顧客の側では、「対応する意思がない」 「会社の事情を優先している」と受け取られてしまう恐れがあります。
特に、「担当者が不在」 「本日は確認できない」といった社内事情は、顧客にとっては関係のない情報です。そのため、「分かりません」と伝えることで、責任を回避していると感じさせてしまうこともあります。
こうした場合は、まず顧客から苦情が入った時点で、
「担当者の確認も含めて、こちらで対応いたしますのでお時間をいただけますでしょうか」
と、社内事情ではなく、会社として対応する姿勢を示すことが重要です。
また、確認に時間がかかる場合には、
「確認が取れ次第、改めてご連絡いたします」
といった形で、今後の対応の流れを明確に伝えることで、対応放棄と受け取られるのを防ぐことができます。
顧客対応においては、正確な情報を提供することも重要ですが、それと同時に、「問題解決に向けて動いている」という姿勢を示すことが求められます。その場で回答できない場合でも、次の行動を示すことで、トラブルの拡大を防ぐことができるでしょう。
6 NGワードその5「あり得ません」
1)事実を伝えたつもりが、顧客の不信感を招いてしまった・・・・・・
「この掃除機、フル充電しても30分も持たないんですけど。購入時には1時間は使えるって説明を受けたんですが」
Eさんが対応した顧客は納得がいかない様子でこのように訴え、
「もしかして、バッテリーに不具合があるんじゃないですか?」
と続けました。
Eさんは製品仕様を思い出しながら、
「そのような不具合は技術的にあり得ません」
と伝えました。すると顧客は、
「あり得ないって、どういうことですか? 実際に起きているんですけど」
と表情を曇らせました。Eさんが「使用状況によって変わる場合はあります」と補足しても、
「じゃあ、こっちの使い方が悪いってことですか?」
と語気が強まるばかりで、その後のやり取りは険悪な雰囲気になってしまいました。
Eさんとしては、製品の仕様に基づいて説明したつもりでしたが、顧客の側では「自分の訴えを否定された」「責任を押し付けられた」と受け取られてしまったのです。
2)OK対応「現時点では同様の事例は確認されておりませんが、改めて確認させてください」
顧客対応の場面では、技術的に考えにくい現象について、「あり得ません」と答えてしまうことがあります。しかし、この言葉は、会社側としては事実を伝えたつもりでも、顧客の側では、「あなたの訴えは間違っている」と否定されたように受け取られてしまう恐れがあります。
その結果、「問題は存在しない」という前提で対応されていると感じ、不信感を強めてしまうこともあります。
こうした場合は、まず顧客から苦情が入った時点で、
「現時点では同様の事例は確認されておりませんが、改めて確認させてください」
と、現時点での情報を伝えつつも、調査の余地を残した表現を用いることが重要です。また、顧客の使用状況について確認する際にも、
「念のため、使用状況を確認させていただいてもよろしいでしょうか」
と伝えることで、「責任を押し付けられている」と受け取られるのを防ぐことができます。
顧客対応においては、事実に基づいた説明も重要ですが、伝え方によっては、顧客の訴えそのものを否定していると受け取られてしまうことがあります。まずは可能性を排除せず、調査の姿勢を示すことが、トラブルの拡大を防ぐポイントといえるでしょう。
7 NGワードその6「それ、カスハラですよ」
1)ラベリングしてしまい、別のトラブルに発展・・・・・・
「この掃除機、フル充電しても30分も持たないんですけど。購入時には1時間は使えるって説明を受けたんですが」
Fさんが対応した顧客は納得がいかない様子でこのように訴え、対応への不満を口にし始めます。その後、
「こんな商品を売っておいてどう責任を取るんですか?」
「誠意ある対応をしてもらえないなら、上に話を通しますよ」
と語気を強めていきました。
対応に苦慮したFさんは、
「そのような言い方はお控えください。それ、カスハラですよ」
と伝えてしまいました。すると顧客は、
「今、私のことをカスハラだと言いましたよね? 侮辱されたので、別の窓口に相談します」
と強く反発し、その場で本社の相談窓口に連絡を入れてしまいました。
Fさんに侮辱の意図はなかったのですが、結果として「カスハラと言われた」という新たな苦情が本社に寄せられ、当初の製品不具合に関する相談とは別に、担当者の対応そのものが問題視される事態となってしまいました。
2)OK対応「恐れ入りますが、そのような言い方はお控えいただけますでしょうか」
顧客対応の場面では、行き過ぎた言動に対して、「カスハラではないか」と感じることもあります。しかし、「カスハラ」という言葉をそのまま顧客に伝えてしまうと、「自分を侮辱された」と受け取られてしまう恐れがあります。
その結果、問題の焦点が、当初の相談内容から「担当者の発言の適切性」へと移ってしまうこともあります(二次苦情)。特に、「あなたはカスハラです」といったラベリングは、相手の行動を修正するどころか、防衛的な反応を引き起こし、対立を深めてしまう恐れがあります。
こうした場合は、まず顧客から苦情が入った時点で、
「恐れ入りますが、そのような言い方はお控えいただけますでしょうか」
と、行動に焦点を当てて伝えることが重要です。
また、対応が困難な場合には、
「これ以上のやり取りが難しい場合は、別の担当者へおつなぎいたします」
といった形で、状況の沈静化を図ることも有効です。
顧客対応の目的は、状況の沈静化や安全確保であり、相手にラベルを貼ることではありません。行動そのものに対して対応を求めることで、対立の激化を防ぐことができるでしょう。
以上(2026年4月作成)
pj00819
画像:日本情報マート
【朝礼】Appleを世界企業へと押し上げた「50年間のこだわり」
【ポイント】
- 最初から完璧を目指さない。不格好でもいいから、とにかく「動く」ことを意識しよう
- お客様の体験に執着し、「助かった」「ラクになった」にフォーカスしよう
- 時には仕事を減らす勇気も大切。“捨てる・絞る・磨く”を積み上げよう
皆さん、おはようございます。今月、2026年4月は、ある世界的な企業が大きな節目を迎えました。Apple(アップル)の設立50周年です。1976年、スティーブ・ジョブズ氏らがたった数人で、しかも実家のガレージで始めた会社が、50年経った今、私たちの生活のインフラになっています。今日、皆さんのポケットやカバンの中にも、彼らのプロダクトが入っているのではないでしょうか。アップルの50年には、私たちの仕事にもそのまま刺さる学びが3つあります。
1つ目は、最初から完璧を目指さないこと。Appleの最初の製品「Apple I」は、今の完成品のパソコンのイメージと違って、一枚の基板(ボード)として売られたもので、買った側が周辺を整える前提でした。つまり最初から「全部入りの完成形」ではなく、まず形にして、届けて、改善していくという始まり方だったわけです。新しい取り組みというのは、最初は不格好で当然です。石橋を叩いて渡るのは大切ですが、チャンスを失っては本末転倒。とにかく「動く」ことを意識しましょう。
2つ目は、お客様の体験に執着すること。2007年に初代iPhoneを出したとき、Appleは「大きなマルチタッチ画面」と「指で直感的に操作できる新しいUI(操作画面)」を前面に出しました。機能を盛るより、「迷わず使える」体験を優先したのです。機能が充実した製品やサービスはもちろん便利ですが、行き過ぎると、お客様を置いてきぼりにしてしまうこともあります。それよりも「助かった」「ラクになった」にフォーカスすること。選択肢を増やすより、迷いを減らす。ここに執着したいですね。
3つ目は、仕事を減らす勇気を持つこと。ジョブズ氏が1997年に復帰したとき、社内のラインはかなり複雑になっていて、彼は会議の場で「もうやめよう」と制止し、2×2の表(コンシューマー(一般向け)/プロ向け×デスクトップ/ポータブル(ノート型))を書き、作るものを絞り込む方向へ舵を切ったと語られています。大切なのは、“捨てる・絞る・磨く”を積み上げることです。
私は、Appleの今日の成功は決して奇跡ではなく、上の3つのこだわりを50年間大切にしてきたからだと思っています。大きなイノベーションでなくても構いません。今日の皆さんの「小さなこだわり」が、我が社の次の50年を作る土台になります。新年度も張り切っていきましょう。
以上(2026年4月作成)
pj17248
画像:Mariko Mitsuda
「出張手当」を使った税金対策 賃上げなしでも手取りが増える!
目次
1 複雑な手続きなしで税金対策・手取り増・事務効率化
「出張は必要経費だから、特に見直す余地はない」 ――そう考えている経営者も多く、実際、出張の際には、交通費や宿泊費などの経費を処理するだけで終わっている会社も少なくありません。
ここで、見直すべきは経費そのものではなく、「出張手当(出張時に定額で支給する日当)」の設計です。出張手当を適切に制度化することで、
- 会社の税負担の軽減などができる
- 従業員や経営者の実質的な手取りが増やせる
- 社内の事務効率が向上する
といったメリットがあるからです(詳細は後述)。
原材料費や人件費、社会保険料の上昇が続く昨今、こうした対策はますます重要になってきます。「税金対策」というと何だか難しく聞こえるかもしれませんが、法律で認められている仕組みを正しく整備して使うだけなので、過度なリスクを取る必要も、複雑な手続きに追われる必要もありません。
すでに出張手当を支給している会社であっても、昨今の物価上昇を踏まえ、現在の金額が実情に合っているかを見直すことは重要です。食事代などの相場が上がっているにもかかわらず、何年も金額を据え置いている会社も少なくありません。ですが、適正な範囲内で現実に即した水準に都度調整するようにしないと、制度の合理性が保たれなくなってしまいます。
出張手当は単なる税金対策にとどまりません。会社として「費用をどう管理し、どのように還元するか」という方針を明確にする、経営の仕組みを整える意味合いもあります。
この記事では、出張手当がもたらすメリットや経営上の仕組みとして活用する方法と、税務調査で否認されないための実務上のポイントを解説します。
2 出張手当がもたらす3つのメリット
1)会社の税負担の軽減などができる
出張手当を適切に制度化した場合、税負担の軽減などが可能になります。もう少し詳しく言うと、次のような効果が得られます。
1.法人税の負担を抑えられる
出張旅費規程(出張時の費用や手当のルール)に基づいて支給した出張手当は、会社の費用として計上できます。その結果、税金を計算する基になる所得(税務上の利益)が少なくなり、法人税、事業税や住民税などの負担も軽くなります。
2.消費税の計算上、税額控除が受けられる
国内出張における旅費や出張手当は、消費税法の計算上「課税仕入れ」として扱われるため、会社は仕入税額控除 (支払った消費税を課税計算の中で控除できる仕組み)の適用を受けられます。これは、同じ金額を給与として支給した場合には得られない特徴です。なお、海外出張の場合は取り扱いが異なります。消費税は国内での取引に対してかかる税金のため、海外での宿泊費や海外出張に係る出張手当などは、原則として仕入税額控除の対象にはなりません。
3.社会保険料(健康保険や厚生年金など)の負担を増やさずに済む
出張手当は給与とは取り扱いが異なるため、社会保険料を計算する際の基準額に含まれません。つまり、会社は社会保険料の会社負担分(法定福利費)を増やさずに、従業員や役員に実質的な還元することができます。
2)従業員や経営者の実質的な手取りが増やせる
従業員にとっても、経営者にとっても、出張手当は給与ではなく、出張中にかかる食事代や雑費を補うために支給されるお金です。そのため、一般的に妥当な範囲(詳細は後述)であれば、所得税や住民税がかからない非課税の扱いになります。
この違いは、特に役員報酬などで高い税率が適用される経営者にとって大きな意味を持ちます。同じ金額を報酬として受け取る場合と比べ、出張手当として支給されるほうが、実質的な手取りが増えることになります。
3)社内の事務効率が向上する
実務面で特に大きな効果が表れるのが、領収書を処理する負担の軽減です。出張手当は、あらかじめ規程で決めた金額を定額で支給する仕組みなので、実際に使った金額を都度精算するのに比べると、事務作業が非常に簡略化されます。
ただし、出張手当を導入したからといって、全ての出張費用が定額になるわけではありません。一般的には、
- 飛行機や新幹線などの交通費や宿泊費のように金額が大きく変動しやすいものは、領収書に基づいて実費で精算する
- 食事代などの細かな支出は出張手当でまとめて補う
という使い分けが、実務では広く行われています。
このように役割を整理して運用すると、出張者は細かな支出を気にしすぎることなく本来の業務に集中でき、経理担当者も領収書の確認や処理にかかる手間を大幅に減らすことが可能になります。
3 出張手当はいくらまで認められるのか
経営者が最も気になるのは、「いくらまで認められるのか」という上限の問題でしょう。結論から言うと、税法上「何円まで」という明確な基準はありません。ただし、
「食事代などの補てんとして支給している」と合理的に説明できる水準であるか
は見られます。税務署が確認する主なポイントは、大きく2つあります。
1)社内でバランスが取れた運用をしているか
役職ごとの責任や職務内容に応じた差があること自体は問題ありませんが、経営者だけが極端に高額といった不自然な設定は、実質的な給与とみなされるリスクが高くなります。
2)同業種・同規模の会社と比べて妥当な水準か
いわゆる「世間の相場」から大きく外れていないかが見られます。実務上の目安(1日当たり)としては、
- 一般社員:2000~3000円程度
- 管理職:3000~4000円程度
- 役員:5000~1万円程度
が一般的な相場です。もちろん、会社の規模や出張の頻度によって適正額は異なります。上記以上の金額を設定する際には、その理由を客観的に説明できるようにしておきましょう。
4 出張手当支給を適正に行うための事前準備
出張手当が会社の経費として認められるためには、まず、
出張旅費規程を整備する
ことが前提となります。規程がないまま出張手当を支給すると、税務上は単なる給与と判断される恐れがあります。
出張旅費規程には、
- どのようなケースを出張として扱うかという基準 (移動距離や宿泊の有無など)
- 役職ごとの支給額、申請や報告の方法
など、運用ルールを明確に記載しておく必要があります。こうした内容が曖昧だと、制度としての客観性が弱くなり、税務調査の際に説明が難しくなります。
さらに、出張旅費に関する定めは、就業規則の相対的必要記載事項(定めをする場合、必ず記載しなければならない事項)に該当するので、
常時10人以上の従業員を雇用している会社が、出張旅費規程を整備・変更する場合、就業規則の一部として、所轄労働基準監督署に届け出る
必要があります。なお、出張旅費規程(就業規則)は、全従業員が規程の内容をいつでも閲覧できる状態にして周知しなければなりません。周知されていない規程は、万が一の労務トラブルの際に法的効力を否定される恐れがあるため、作成後は必ず社内共有を徹底しましょう。
また、役員に出張手当を支給する場合は、株主総会で承認を受け、議事録(会議内容を記録した書類)を残しておくと、後の税務調査で正当な手続きであることを説明しやすくなります。
5 出張手当の運用上の注意点
1)出張報告書の作成
制度が整っていても、税務調査で最も重視されるのは実際の運用です。規程通りに運用されていることを示すためには、出張報告書の作成が欠かせません。
領収書が不要となる出張手当の部分であっても、
- 訪問先
- 業務目的
- 訪問内容
などを記録し、出張が業務として行われた事実を示す必要があります。さらに、交通機関の控えや宿泊証明、名刺やメール履歴などの資料も併せて保管しておくと、実態を裏付ける証拠として有効です。これらの書類は、税務上原則7年間(欠損金がある年度は10年間)の保存が求められます。
2)社会保険料リスクの回避
出張手当は、本来、出張中にかかる費用を補うために支給されるお金である(給与ではない)ため、社会保険料を計算する際の基準額には含まれません。ただし、
- 実態が伴わない支給(出張していないのに毎月定額を払うなど)をしている
- 一般的な支給額と比べて、あまりに高すぎる額を支給している
といった場合、年金事務所の調査等で実質的には給与とみなされ、過去に遡って社会保険料の徴収を求められるリスクがあります。あくまで「出張に必要な実費の補填」という大原則を逸脱しない運用が重要です。
以上(2026年4月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)
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画像:日本情報マート
【規程・文例集】「出張旅費規程」のひな型
1 出張旅費規程とは
業務を進める上で、顧客との商談や支社などでの会議や打ち合わせ、研修などで出張する場合があります。出張旅費規程は出張に関わる旅費(交通費・宿泊を伴う出張の宿泊費・日当)の支給などについて定めるものです。支給する旅費の額などは企業によって異なりますが、職位ごとに支給する旅費の額を定めておくのが一般的です。
出張旅費規程を定める際のポイントとしては、主に次の2点が挙げられます。
- 支給する旅費の額は、実際の交通機関の料金や宿泊料金の相場などを考慮した上で、分かりやすく一覧表にして明示する
- 旅費の支給に関するルールを明示する
上記のうち、2.については、例えば「交通費は最短の経路で計算すること」「ハイヤーなどは会社が必要と認めた場合にのみ利用できること」「出張から帰ったら旅費の精算をするための手続きを行うこと」などが挙げられます。
また、人事異動で従業員やその家族が新任地に向かうための引っ越し費用(交通費や家財道具の荷造り、運送に関わる費用など)について、出張旅費規程で定める場合があります。例えば、「会社が引っ越しに関わる費用をどこまで負担するか」などは定めておいたほうがよい項目です。ピアノなど、いわゆるぜいたく品などは運送費が高額になるため、企業と従業員とでトラブルになりやすいといわれるからです。以降で紹介する出張旅費規程では省略していますが、「ピアノについては1台分までは会社が負担する」「高額な骨董(こっとう)品は本人負担とする」などのように、別途内規を設けて詳細に定めておいたほうがよいでしょう。
この他、企業によっては国内だけではなく、海外へ出張する場合があります。以降で紹介する出張旅費規程のひな型では紹介していませんが、業務内容によっては、海外出張についても定めておく必要があります。
2 出張旅費規程のひな型
以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
【出張旅費規程のひな型】
第1条(目的)
本規程は、役員および従業員(以下「従業員等」)が会社の業務のために出張する場合の手続きおよびその旅費、並びに転勤のために居住地を変更する場合の交通費等の支給について定める。
第2条(出張の定義)
本規程で定める出張とは、会社の出張命令による国内出張をいう。
第3条(出張の区分)
1)出張の区分は次の通りとする。
1.日帰り出張
出張する従業員等(以下「出張者」)の勤務地より片道150キロメートル以上かつ片道2時間以上の地域で出発の当日帰着できる出張。
2.宿泊出張
通常、宿泊を必要とする地域への出張として会社が認めた地域への出張。
2)日帰り出張であっても、業務の都合上または交通不便等のため日帰りが困難な場合は宿泊出張として取り扱うことがある。
第4条(旅費の種類)
本規程で定める旅費の種類は次の通りとする。
1.交通費
2.宿泊費
3.日当
第5条(出張中の傷病・災難)
出張中の傷病(ただし業務外を除く)のため、または不慮の災難等によりやむを得ず出張した地域へ滞在したときは、医師の診断書、または事実の証明のある場合に限り、原則として7日以内において別表第1「旅費」(以下「別表第1」)に定める日当および宿泊費を支給する。
第6条(出張中の勤務)
出張中の勤務に関しては、特別の事情がある場合を除いて就業規則に定める所定労働時間を勤務し、休日に休務したものとみなす。ただし、業務の都合によりやむを得ず出発の日が休日となる場合または出張期間内に休日がある場合の旅費の取り扱いは次の通りとする。
1.宿泊費
休日の宿泊費は別表第1に定める宿泊費を支給する。
2.日当
休日勤務の場合の日当は別表第1に定める日当を支給する。
移動のみの場合の日当は別表第1に定める日当の50%を支給する。
完全休日の場合の日当は支給しない。
第7条(旅費の計算)
旅費の計算は最短の経路または時間によらなければならない。ただし、天災その他やむを得ない事由で順路を変更した場合は、実際の経路により旅費を計算し支給する。
第8条(タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等の利用)
タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等は緊急または特別の必要のある場合において所属長の許可を受けて利用できるものとし、航空機については会社が認める航空会社の航空機を利用するものとする。
第9条(交通費)
1)交通費のうち、鉄道運賃、船舶運賃、航空運賃については、別表第1に定める職位に応じた等級の額を支給する。
2)バス運賃についてはその実費を支給する。
3)社有自動車を利用した場合、あるいは他社の自動車に便乗した場合、交通費は支給しない。ただし、燃料費、通行料、駐車料等は実費を支給する。
4)タクシー、ハイヤー、レンタカー、航空機等の利用については第8条に基づいて会社が必要と認めた場合であって、第14条第1項および第2項に定める手続きを行う際に領収書を添付したときには実費を支給する。
5)出張区間と通勤手当の認定区間が重複する場合には、それに該当する区間の交通費は支給しない。ただし、特に会社が必要と認めた場合にはこの限りではない。
第10条(宿泊費)
1)宿泊費は宿泊した夜数(午前0時を過ぎるごとに1夜とする)に応じて別表第1に定める額を上限とする実費を支給する。
2)宿泊研修等で宿泊費込みの受講料を会社が負担している場合は、宿泊費を支給しない。
第11条(日当)
1)日当は出張の初日から最終日まで、暦日により出張日数に応じて別表第1に定める額を支給する。ただし、午後出発の場合および午前帰着の場合には、その日については別表第1に定める日当の50%を支給する。
2)第3条第1項第1号の日帰り出張の場合は、その日について別表第1に定める日当の50%を支給する。
第12条(出張の手続き)
出張者は、出発の前日までに出発の日時、行き先、訪問先および用件について、別途定める「出張承認申請書」(省略)を所属長に提出し、承認を得なければならない。この手続きをしない者に対しては、旅費の支給をしないことがある。
第13条(旅費の仮払い)
出張者は、第12条に定める承認を得た場合には、出発前に別途定める「仮払申請書」(省略)を所属長に提出し、承認を得た上で旅費の仮払いを受けることができる。
第14条(帰社の報告および旅費の精算)
1)出張者が出張先から帰着したときは、3営業日以内に別途定める「旅費請求書」(省略)および「出張報告書」(省略)を所属長に提出し、承認を得た上で旅費の精算をしなければならない。
2)出張先からの帰着が予定より遅延するときは、電話その他によりその旨を所属長に報告しなければならない。
3)第14条第1項および第2項に定める手続きをしない者に対しては、旅費の支給をしないことがある。
第15条(転勤旅費の種類)
本規程で定める転勤旅費の種類は次の通りとする。
1.本人交通費
会社から転勤を命ぜられ転勤する者(以下「転勤者」)の旧任地から新任地までの交通費。
2.荷造り運送費
家財道具等の荷造り、運送に要する費用。
3.家族交通費
転勤者の家族の旧任地から新任地までの交通費。
4.宿泊費
転勤者及びその家族の新任地における宿泊費。
第16条(転勤者本人の交通費)
転勤者には、第9条に定める交通費を支給する。
第17条(荷造り、運送費等)
赴任および帰任に伴う荷造り、運送などの費用は会社が実費を支給する。
第18条(家族の交通費)
1)転勤者が配偶者、転勤者の父母および子を帯同するときは、帯同する家族1人につき、転勤者本人と同等の交通費の実費を支給する。ただし、子については、12歳未満の者は半額、6歳未満の者には支給しない。
2)転勤者が赴任した後、3カ月を経ても移転しない家族に関する交通費は、原則として支給しない。
第19条(転勤者の宿泊費)
転勤者およびその家族が、新任地に赴任してから新しい住居に入居するまでは、会社が認める宿泊施設に宿泊するものとし、その宿泊費は会社が負担する。
第20条(罰則)
役員および従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。
第21条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。
附則
本規程は、○年○月○日より実施する。
■別表第1「旅費」■

以上(2026年4月更新)
(監修 税理士 石田和也)
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