1 事業承継・M&A補助金とは?
中小企業が抱える後継者不足や成長戦略の課題……。事業承継やM&Aは、これらの課題を解決し、経営資源を円滑に移転するための有効な手段となり得ます。ただ、M&Aプロセスには専門的な知識が必要であり、多額の費用が発生することが少なくありません。
そこで利用を検討したいのが、経済産業省の「事業承継・M&A補助金」です。これは、
中小企業・小規模事業者等が、事業承継やM&Aに際して行う設備投資等や、事業承継・事業再編及び事業統合に伴う経営資源の引継ぎ、または引継ぎ後の経営統合に係る経費の一部を補助する補助金
で、事業の移行と活性化の多様な側面に対応するため、4つの枠組みで構成されています。

ここでは、令和7年度補正予算による第14次公募(2026年2月27日~4月3日)の内容を紹介します。詳細については、こちらの公式ページをご確認ください。
■事業承継・M&A補助金(14次公募)■
https://shoukei-mahojokin.go.jp/r7h/
2 事業承継促進枠
1)枠の概要
事業承継促進枠は、親族内承継や従業員承継等の事業承継を契機として経営や事業を引き継ぐ予定の中小企業が、引き継ぐ予定の経営資源を活用した設備投資等に取り組む際の費用を補助する枠です。
2)補助率等

3)補助対象経費
- 設備費(建物工事・ソフトウェア等を含む)、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費などが対象
- 事業承継に際して支払う譲り受け費用(土地・資産購入費等)や被承継者に対して支払う費用は原則補助対象外
- 廃業費は本枠単独では補助対象外で、廃業・再チャレンジ枠との併用申請をした場合のみ補助対象
4)主なポイント
- 補助事業期間を含む5年間の事業承継対象期間内に、親族内承継・従業員承継を完了する必要があります。
- 承継者と被承継者間での実質的な事業承継(経営権・所有権の移転)が客観的に確認できることが条件です。
- 申請前に、認定経営革新等支援機関等から事業承継計画に対する確認書の発行を受ける必要があります。
- 引き継ぐ経営資源を活用した生産性向上等に係る取組であることが必要です。生産性向上要件として、付加価値額または1人当たりの付加価値額の伸び率が3%/年の向上を含む計画が求められます。
- 本枠は専門家活用枠・PMI推進枠との同一公募回での申請はできません。
3 専門家活用枠
1)枠の概要
専門家活用枠は、事業再編・事業統合に伴う経営資源の引継ぎ(M&A)を行う中小企業(買い手・売り手)が、M&Aプロセスにおいて専門家の支援を受ける際に発生する費用を補助する枠で、次の通り、2つの支援類型および特例に細分化されています。
- 買い手支援類型(Ⅰ型):株式・経営資源を「譲り受ける」予定の中小企業が対象
- 売り手支援類型(Ⅱ型):株式・経営資源を「譲り渡す」予定の中小企業が対象
- 買い手支援類型(Ⅰ型)100億企業特例:「売上高100億円」を目標とする「100億宣言」を行う中小企業が対象
2)補助率等

3)補助対象経費
- 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料、廃業費(廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費用)などが対象
- 委託費のうち、M&Aの手続き進行支援に係る手数料はM&A支援機関登録制度に登録されたFA・仲介業者の場合のみ対象
- 保険料は、M&Aの最終合意契約における表明保証に関する保険契約の保険料
- 在庫廃棄費のうち、商品在庫等を売却して対価を得る場合の処分費は対象外
- リースの解約費のうち、ファイナンスリース取引の解約に伴う解約金・違約金、リース資産の売買に係る費用は対象外
4)主なポイント
- 買い手支援類型(Ⅰ型)は、PMI推進枠(PMI専門家活用類型)との同時申請が可能です。
- 補助事業期間内に事業承継(クロージング)が実現しなかった場合は補助上限額が300万円に減額されます。
4 廃業・再チャレンジ枠
1)枠の概要
廃業・再チャレンジ枠は、M&Aによって事業を譲り渡せなかった中小企業が、地域の新たな需要の創造や雇用の創出にも資する新たなチャレンジをするために、既存事業を廃業する場合にかかる経費の一部を補助する枠です。本枠には「再チャレンジ申請(単独申請)」と「併用申請(事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠との同一公募回での同時申請)」の2パターンがあります。
2)補助率等

3)補助対象経費
- 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費(併用申請のみ計上可)などが対象
- 廃業支援費についての補助上限額は50万円
- 在庫廃棄費については、商品在庫等を売却して対価を得る場合の処分費は対象外
- リースの解約費については、ファイナンスリース取引の解約に伴う解約金・違約金のうち、リース資産の売買に係る費用は対象外
4)主なポイント
- 単独申請の場合、2020年以降にM&A仲介業者等を通じて売り手として3カ月以上取り組んでいた実績が必要です。
- 他の枠との「併用申請」を活用することで、M&Aプロセスと廃業準備を並行して進めることができます。
5 PMI推進枠
1)枠の概要
PMI推進枠は、経営資源の引継ぎ(M&A)を行った、または行う予定の中小企業が、事業再編・事業統合後の経営統合作業(PMI:Post-Merger Integration)に取り組む際の費用の一部を補助する枠です。PMIの内容に応じて2類型があり、補助対象経費はそれぞれ異なります。
- PMI専門家活用類型:M&A後の経営統合に際してPMI専門家を活用した際の費用(謝金・旅費・委託費)を補助
- PMI事業統合投資類型:経営統合に伴う設備投資費用等を補助(専門家費用は対象外)
2)補助率等

3)補助対象経費
【PMI専門家活用類型】
- 謝金、旅費、委託費(PMI専門家に対する費用)などが対象
- 説明会の開催や個別面談の実施、取引先への対応(M&Aに関する説明、継続的なコミュニケーション)など、信頼関係構築に関わる専門家支援は対象外
【PMI事業統合投資類型】
- 設備費、外注費、委託費などが対象
- 委託費のうち、M&A仲介手数料、DD 費用、M&Aコンサルティング費用、PMI専門家への手数料は対象外
4)主なポイント
- 補助対象となるM&Aの成立前(クロージング前)に、承継者によるデュー・ディリジェンス(DD)が実施されていることが必要です。
- グループ内の事業再編・親族間の事業承継は対象外です。
- PMI事業統合投資類型とPMI専門家活用類型の同時申請はできません。
6 申請手続き
1)GビズIDの取得
本補助金の申請はJグランツを通じた電子申請となるため、GビズID(1つのIDで複数の行政サービスにアクセスできるサービス)のプライムアカウントが必要です。アカウント発行までの期間は通常1~2週間程度(混雑時は3週間程度)です。
取得には、印鑑証明書原本(発行から3カ月以内)、法人代表者の実印または個人事業主の登録印を押印した申請書、法人代表者または個人事業主のメールアドレスおよびSMS受信可能な電話番号が必要です。必要書類をgBizID運用センターへ郵送またはオンライン(マイナンバーカード読み取り可能なスマートフォンおよびGビズIDアプリが必要)で申請します。
■GビズID(gBizID)■
https://gbiz-id.go.jp/top/
2)M&A支援機関(FA・仲介業者)の選定
専門家活用枠で、M&Aに関する業務の一部を第三者に委託する場合、M&Aの手続き進行の支援に関する手数料については、「M&A支援機関登録制度」によりあらかじめM&A支援機関として登録されたFA・仲介業者の場合のみが補助対象となります。そのため、申請前に自社の状況やM&Aの目的に沿って、信頼できるM&A支援機関を選定することが重要です。
■M&A支援機関登録制度「登録支援機関データベース」■
https://ma-shienkikan.go.jp/search
3)公募申請・採択
Jグランツを通じて指定された書類をダウンロードし、必要事項を記入して提出します。主な提出書類には、
- 直近3期分の決算書
- 株主名簿
- 株主代表に係る確認書
- 営業利益率低下に関する計算書(売り手支援類型(Ⅱ型)で補助率2/3以内での申請を希望する場合)
- 審査において加点される事由を証明する賃金引き上げ計画の誓約書
- 賃金引き上げ計画の表明書
などがあります。その他、法人であれば履歴事項全部証明書、個人であれば住民票(3カ月以内に発行されたもの)などが必要になることがあります。
申請後、申請された内容に対して審査委員会および事務局による採択が実施されます。第14次公募の採択予定は2026年5月中旬です。採択・不採択の結果は、Jグランツから通知されます。
4)交付申請・交付決定
補助事業を行うに当たり、使途ごとの必要経費を具体的に算出し、各経費の見積もりを取得します。その後、Jグランツ上の交付申請用フォームに必要事項を記載し、取得した見積書などとともにオンラインで申請します。
申請後、提出された書類が審査され、交付が決定されます。この交付決定日が補助事業の開始日となります(2026年6月上旬以降予定)。
5)各事業の実施・報告
交付決定を受けたら、M&Aの専門家との契約やM&Aの実行、費用の支払いを行います。交付決定前に契約・発注・支払いを行った費用は補助金の対象とならないため、注意が必要です。また、補助対象となる経費を使うときは、必要な証憑(領収書等)を保管する必要があります。
補助対象事業完了後、補助事業者がJグランツを通じて、実際にかかった費用等の事業実績内容を事務局へ報告します。
6)補助金交付
事業実績報告の確定検査が行われると、補助金決定額が確定し、交付請求に基づいて補助金が交付されます。
7 不正行為に関する注意
補助金の申請に当たって
- 虚偽の申請による不正受給
- 補助金の目的外利用
- 補助金受給額を不当につり上げ、関係者へ報酬を配賦する
といった不正な行為が判明した場合は、交付規程に基づき交付決定取り消しとなるだけでなく、補助金交付済みの場合、加算金(年10.95%)を課した上で当該補助金の返還が求められます。
また、交付決定の取り消しを受けた者は、不正内容の公表等を受けることや「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」に基づく、5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金または両方に処せられる可能性があります。
以上(2026年5月更新)
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