1 ガチャガチャが地域活性化のきっかけに?
小銭を入れてハンドルを回すと、おもちゃや雑貨などが入ったカプセルがランダムに出てくる「ガチャガチャ」。かつては、店舗の軒先やエスカレーターの脇に筐体が置かれているイメージでしたが、今では大型専門店の出店ラッシュをきっかけに、ショッピングモールや駅ナカなど、さまざまな場所でガチャガチャを見かける機会が増えています。

2022年以降、市場規模が急拡大しています。業界を牽引する日本ガチャガチャ協会(東京都中央区)へのヒアリングによると、背景には次のような動きがあるそうです。
- 2020年の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ショッピングモールなどの商業施設からテナントが撤退、空きスペースに「ガチャガチャの森」や「ガシャポンのデパート」などの数百台規模でガチャガチャを並べる大型専門店が入ることで、人が集まりやすく、遠出が難しくなった人がちょっとしたワクワク感を満たせる場所となった
- InstagramやX(旧Twitter)、TikTokなどのSNSで、ガチャガチャ専門店が入荷情報を紹介したり、インフルエンサーが私物にガチャガチャの商品を付けて発信したりするなど、情報発信が盛んとなり、購買層を開拓している
- 女性や購買力のある大人向け需要を意識した商品展開が盛んとなり、「めじるしアクセサリー®」やキャラクター物のペンケース、ポーチなど、コレクション需要もあり、実用品として普段使いできる商品が人気を博している
- 特に、キャラクター物では、今の大人世代が子どものころに慣れ親しんだり、流行ったりしたキャラクターがガチャガチャになることで、懐かしさや推し活としてガチャガチャを回すケースも増えている
こうしたガチャガチャの人気に注目し、自治体や観光協会の中には、その地域の名所や特産品などをキーホルダーやバッジなどのモチーフにした「ご当地ガチャ」として販売することで、地元愛の醸成や外部への魅力発信につなげる動きがあります。
さらに、単なるお土産としてのガチャガチャに留まらず、ガチャガチャを回しながら、その地域を巡ったり、観光消費も促進したりする仕組みを作る「街ガチャ®」の導入も進んでいます(街ガチャ®は、カプセルトイやキャラクターグッズの企画・製造・販売を行っているfunbox(ファンボックス)の登録商標です)。
この記事では、前提知識として、ガチャガチャ市場の最近の動向をはじめ、日本ガチャガチャ協会へのインタビュー、ご当地ガチャ、街ガチャ®の取り組み事例の紹介を通じて、ガチャガチャはどのような仕組みのビジネスなのかをひもといていきます。
なお、ガチャガチャは、メディアによっては「カプセルトイ」や「カプセル玩具」などと呼ぶこともありますが、昨今ではガチャガチャに入る商品が多種多様となっており、正確な表現とはいえなくなっています。そのため、この記事でも特別な注釈がない限りは、「ガチャガチャ」で呼称を統一していることをあらかじめご承知おきください。
2 まずは、ガチャガチャビジネスの仕組みをひもとこう
1)ガチャガチャビジネスのプレーヤーは?
ガチャガチャビジネスも他業界と同じように、「メーカー」「オペレーター」「販売店」の3者に大きく分けられます。

1.メーカー
商品の企画・販売を手掛ける企業です。バンダイ(東京都台東区)とタカラトミーアーツ(東京都葛飾区)が市場シェアの7割を占めているといいます。また、ガチャガチャの筐体(きょうたい)製造もこの2社が市場シェアを独占しているようです。
2.オペレーター(代理店)
メーカーが作った商品や筐体を仕入れ、ショッピングモールなどの販売店に筐体の設置を手掛ける企業です。ハピネット(東京都台東区)やペニイ(東京都葛飾区)が代表的な企業とされています。オペレーターは、設置料として売り上げの15~20%を販売店に支払って筐体を設置し、商品の補充や売り上げの集金などのメンテナンスを行います。
ガチャガチャの流通は、メーカーが発行する新商品情報をオペレーターが見て3カ月前に発注数を決め、その数量だけメーカーが商品を製造してオペレーターに納品するという仕組みになっています。
また、筐体から得た利益をメーカーと販売店に還元したり、販売店で商品が売れ残ったりしたときには、在庫のリスクを負う役割もあります。
3.販売店
オペレーターから供給された商品と筐体を自社のスペースに置いて、消費者向けに販売します。
かつては個人経営の駄菓子屋や文房具店の軒先などに筐体がよく置かれていましたが、昨今では、ショッピングモールやゲームセンター、駅ナカなど、販売店となる場所が増えています。

2)進化するガチャガチャのトレンド
1.キャッシュレス決済
これまでガチャガチャを購入するには、100円単位の小銭が必要でしたが、昨今では、QRコードや交通系ICカードなどで、キャッシュレス決済が可能な筐体が登場しています。
消費者側では、両替などで手元に小銭を用意しなくても手軽に購入できるようになったり、メーカー側でも、100円単位でしか商品の値段を設定できないという制約がなくなったりするなどのメリットがあります。
一方で、ガチャガチャ協会へのヒアリングによると
- QRコードや交通系ICカードの読み取り機能が筐体に付いている兼ね合いで、通常の筐体よりも使用する際のロイヤリティが高くなりがちなので、普及にはまだまだ時間がかかりそうだと考えている
- キャンペーンやイベント会場など、売上金を現金で数えるのが大変だったり、人が多く、1度小銭が詰まると販売機会を逃してしまったりするシーンで活躍する機会が多い
といいます。
2.環境に配慮したカプセルの登場
ガチャガチャが登場してから現在に至るまで、商品がプラスチックのカプセルに入っているスタイルは変わりませんが、SDGsや脱プラなどの流れに合わせて、カプセルのリサイクルや、プラスチックを使わないカプセルを用いる動きがあります。
カプセルのリサイクルでは、ガチャガチャのカプセルは商品に合わせた形状やサイズの違いから、回収してもそのまま使い回せるわけではなく、ペンやTシャツ、アメニティなどの別の用途で再生する動きがあるといいます。
プラスチックを使わないカプセルとして、例えば、ケーツーステーション(大阪府岸和田市)がレンゴー(大阪府大阪市)、大宝工業(大阪府守口市)と共同で開発した紙カプセルの「ecoポン」があります。資源ごみとして回収すればリサイクルが可能で、一般ごみとして焼却しても有害物質が出ないという特徴があります。

3.ガチャガチャ購入のオンライン化
ガチャガチャを購入するには、筐体のある場所に行かなければならず、購入者にとっては、目当ての商品を探して店舗を何軒もはしごするという手間があります。
こうした側面から、通販でガチャガチャの商品を購入できる環境が整っています。
例えば、バンダイが運営している「ガシャポンオンライン」では、自社で取り扱っているガチャガチャの商品をオンライン上で購入できます。
また、ホビーストック(東京都墨田区)が運営するウェブサイトの「colone(コロネ)」は、オンラインで決済をすることで、ガチャガチャを回すことができるサービスです。購入した商品が重複してしまった際には、ユーザー同士で交換することもできます。
一方で、ガチャガチャ協会へのヒアリングによると
- 地方など、ガチャガチャ専門店がまだない場所もあるので、そうした場所での需要はありそう。
- 実際の筐体に100円玉を入れて、ハンドルを回すという体験自体がガチャガチャの楽しさになるので、アナログな需要は根強く残るだろう
とのことでした。ガチャガチャを回すワクワク感よりも、商品を効率よくコレクションしたい人には向いているといえるでしょう。
3 日本ガチャガチャ協会に聞く ご当地ガチャ成功の秘訣
ここでは、ガチャガチャビジネスのコンサルティングや商品企画などを手掛けている、日本ガチャガチャ協会代表理事の小野尾勝彦氏に、ご当地ガチャ成功の秘訣をインタビューしました。
1)そもそも、ご当地ガチャとはどんなものでしょうか?
地域の活性化にガチャガチャを用いる試みです。観光客向けの商品から、地域の人だけが知っている名所やお店などのローカルなネタまで広く取り扱い、外部向けには地域の魅力発信、内部向けには地元愛の醸成を図るものになります。
多くは地域の観光協会や地元企業など、有志のグループが自主的に取り組んでおり、メーカーやオペレーターは関与していません。そのため、ライセンス商品やメーカーオリジナル商品とはまた違った分類になります。

2)ご当地ガチャにしやすい人気の商品はありますか?
ご当地ガチャになる商品は、キーホルダーやバッジがほとんどです。特に、アクリルキーホルダーはイラストや写真をきれいに写しやすく、フィギュアやミニチュアなどの立体物よりも低価格、小ロットで、クオリティーの高い商品ができるので人気があります。
お土産物屋でアクリルキーホルダーをレジ横などに置いて販売するよりも、ガチャガチャの商品にすることで低価格で購入できるので、お土産として人にプレゼントしやすくなるし、何が出るか分からないワクワク感から、楽しんで購入してもらえるといったメリットがあります。
また、その地域で有名な店舗の看板は、目にする機会は多いものの、商品化されることが少ないので、ガチャガチャの商品として人気があります。
3)ご当地ガチャのPRは、どのような媒体が向いていますか?
新聞や地元のフリーペーパーによるPRが一般的です。また、ガチャガチャはSNSでのウケも良く、SNSで拡散されて話題になった結果、テレビ番組などでも特集されて一気に認知度が高くなったケースもあります。
4)ご当地ガチャの企画を進める際に、苦労しがちな点は何でしょうか?
地域の店舗などをモチーフに商品を作る際に、店舗の管理者に商品化の許諾を取ったり、商品の監修などを依頼したりするところは、特に時間がかかる工程です。
店舗ごとに個別に交渉するよりも、商店街振興組合など、その地域の店舗を取りまとめている組織があれば、そちらに交渉するとスムーズに企画が進められるかもしれません。
また、今でこそガチャガチャの認知度は高まりつつありますが、一昔前だと子どものおもちゃというイメージもあったため、商品化に乗り気ではなかったケースもあります。
5)ここまでを踏まえて、ご当地ガチャの企画を進める際の秘訣は何でしょうか?
その地域の中で、ご当地ガチャをやりたいという仲間を、どれだけ集められるかが肝心です。例えば、地元のイラストレーター、新聞社やフリーペーパーなどの媒体に携わっている人、観光協会、地域の商店街の組合員など、その地域における影響力や外部への発信力が高い人との人脈を築けると、スムーズに企画が進められると思います。
4 「ご当地ガチャ」の取り組み事例
1)大宮ガチャタマ(埼玉県さいたま市)
ご当地ガチャの先駆けといわれており、大宮駅周辺の観光スポットや老舗などをモチーフにしたアクリルキーホルダーを販売しています。
大宮駅前西口で商業ビルを展開するアルシェ(埼玉県さいたま市)が企画し、大宮駅や株式会社ルミネアソシエーツが協力、ジェットワークスが販売元となっています。
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、大宮を元気にするきっかけとして、地元しか知らないものやマニアックなものを商品化したいということが始まりといいます。
2021年3月から発売を開始して、当初は最初のロットとして1000個が売れればよいと想定されていましたが、SNS上での投稿などで話題となり、2日で完売したといいます。現在は第6.5弾までがシリーズ化されています。
2)島根県安来(やすぎ)市のイチゴ農家が発案した「安来ガチャ」
市内の農家や地元産業の店主ら住民をキャラクターにしたシールや、イチゴなどの特産品をデザインしたマスキングテープなどが入ったガチャガチャです。
市民をデフォルメしたシールをガチャガチャに入れて販売する奇抜なアイデアで話題をつくるだけでなく、キャラシールは農家や店に持ち込むと特典があるため、特典・景品を利用して安来の中に入り込んでもらったり、リピーターづくりにつなげたりしているといいます。
3)全国初のカーボンオフセット カプセルトイ(北海道南富良野町)
北海道ガス(北海道札幌市)と南富良野町が共同で取り組んでいます。
「道の駅南ふらの」でカーボンオフセット証明(20kg-CO2)と、南富良野町のイメージキャラクター「南ちゃん」グッズをセットにしたカプセルを、1個につき500円で販売しています(カーボンオフセット分が220円、グッズが280円。いずれも税込価格)。このうち、カーボンオフセット分の売上金を全額、南富良野町の環境保全活動に活用しています。
観光客など、現地を訪れた人がガチャガチャを購入し、気軽にカーボンオフセットに参加できる仕組みをつくることで、環境保全の取り組みへの理解促進につなげることを狙いとしています。
5 「街ガチャ®」の取り組み事例
1)街ガチャin小平(東京都小平市)
小平市立小平第八小学校と日本ガチャガチャ協会が共同で、市内の特産品や名所などをキーホルダーにした街ガチャ®です。小学校との共同は全国初の事例となります。
「小平市の魅力を伝える」ことをテーマに、同校の5年生児童からガチャガチャを魅力発信の手段として活用したいと声が上がったのがきっかけといいます。
街ガチャ®化に当たっては、総合的な学習の時間で紹介したい特産品や名所などを実際に取材し、ガチャガチャに同封するミニブックの紹介文を書いただけでなく、キーホルダーのイラストも児童が書いたものを採用しているといいます。

2)街ガチャin船橋(千葉県船橋市)
船橋市観光協会と日本ガチャガチャ協会の共催で、「カプセルトイで街を元気に!ジモト愛をガチャに込めて、街を盛り上げるプロジェクト」として、 2021年10月から市内の名物、名所、文化をイラストに描いたキーホルダーを製作・販売しています。
2026年8月現在、第5弾までが商品として販売されていますが、第5弾では、初の試みとして、デザイン案を一般公募した上で制作されています。応募作品は41点にのぼり、市民まつりでの総選挙によって13点が商品化されました。
ガチャガチャの筐体には、小銭が不要でキャッシュレス決済ができる「ピピットガチャ」を使用しています。また、ガチャガチャのカプセルも生分解性プラスチックでできている「AMバイオカプセル®」を使うなど、環境に配慮していることも特徴です。
日本ガチャガチャ協会によると、観光協会などと連携し、商品化からリリースまでの期間が短く、早めに告知ができたことで売上の拡大につながったといいます。

3)街ガチャin琴平町(香川県琴平町)
琴平町の高校生、事業者、行政と日本ガチャガチャ協会の共催で町内の観光施設や飲食店などをイラストに描いたキーホルダーを製作・販売しています。街ガチャ®化には、町独自の魅力の発信や滞在時間の向上、再来を促す狙いがあるといいます。商品化に当たっては、地元高校生が紹介スポットの選定やデザイン出しを手掛けています。
また、琴平町は2018年5月に台湾・新北市瑞芳区と友好協定を締結し、相互交流や台湾夜市が開催されており、台湾夜市を盛り上げるためのコラボ街ガチャも制作されています。

以上(2026年8月更新)
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画像:naka-Adobe Stock
Mariko Mitsuda